(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】電磁放射線改変物品を製造する方法、その方法によって作製される物品、装置、及び電磁放射線を改変する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240213BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240213BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20240213BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240213BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240213BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/112
B29C64/124
B29C64/153
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551093
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 IB2022050599
(87)【国際公開番号】W WO2022180458
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】エイヒラー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ワインマン,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ガイデ,トム
(72)【発明者】
【氏名】シュタルダー,ミヒャエル ハー.
(72)【発明者】
【氏名】エッゲルト-リヒター,セバスチャン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA21
4F213AA29
4F213AA31
4F213AD02
4F213AD05
4F213AE03
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4F213WL12
4F213WL25
4F213WL67
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
本開示は、電磁放射線を改変することに関する方法、物品、及び装置を提供する。物品を製造方法は、a)ポリマーマトリックスを提供し、任意選択で誘電体粒子をポリマーマトリックスに埋め込むことによって電磁放射線改変材料を形成するステップと、b)電磁放射線改変材料の初期誘電特性を得るステップと、を含む。本方法は、c)材料から得られた物品が目標電磁放射線改変特性を有するのに好適な材料の電磁放射線改変特徴をモデル化し、それによって電磁放射線改変物品のシミュレーションを得るステップと、d)電磁放射線改変物品のシミュレーションに基づいて電磁放射線改変物品を積層造形するステップと、を更に含む。本方法によって得られた電磁放射線改変物品もまた提供される。更に、電磁放射線改変物品を含む装置が提供される。電磁放射線改変物品を電子デバイス又は電磁放射線生成デバイスのいずれかに組み込むステップ、又は物品をデバイスの近傍に配置するステップを含む、電磁放射線の改変方法が提供される。本開示の態様は、電磁放射線改変物品のための最適化された材料及び設計の達成に有利に寄与する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線改変物品を製造する方法であって、
a)ポリマーマトリックスを提供し、任意選択で複数の誘電体粒子を前記ポリマーマトリックスに埋め込むことによって、電磁放射線改変材料を形成するステップと、
b)周波数F1で測定されたときの初期比誘電率(ε
r1)及び初期誘電損失正接(tanδ1)を含む、前記電磁放射線改変材料の初期誘電特性を得るステップと、
c)前記電磁放射線改変材料から得られた前記電磁放射線改変物品が目標電磁放射線改変特性を有するのに好適な前記電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴をモデル化し、それによって前記電磁放射線改変物品のシミュレーションを得るステップと、
d)前記電磁放射線改変物品の前記シミュレーションに基づいて前記電磁放射線改変物品を積層造形するステップと、
e)任意選択で、積層造形から得られた前記電磁放射線改変物品の前記電磁放射線改変特性を測定し、前記電磁放射線改変物品の前記測定された電磁放射線改変特性を前記目標電磁放射線改変特性と比較するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の誘電体粒子が存在し、前記ポリマーマトリックス中にランダムに分布して埋め込まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周波数F1で測定されたときの初期比透磁率(μ
r1)、初期磁気損失正接(tanδ3)、又はその両方を含む、前記電磁放射線改変材料の初期磁気特性を得るステップを更に含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴をモデル化する前記ステップが、目標電磁放射線改変特性を有するように前記電磁放射線改変材料の前記電磁放射線改変特徴を最適化するステップ、前記電磁放射線改変物品の前記シミュレーションに対して電磁放射線改変計算を行うことによって前記電磁放射線改変物品の前記シミュレーションの前記電磁放射線改変特性をシミュレートするステップ、又はその両方を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
電磁放射線改変材料を形成する前記ステップが、初期ポリマーマトリックスを選択するステップと、その中に埋め込むための複数の初期誘電体粒子を選択するステップと、を含み、前記初期ポリマーマトリックス及び/又は前記複数の初期誘電体粒子を異なるポリマーマトリックス及び/又は異なる複数の誘電体粒子によって置き換えるステップと、前記電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴をモデル化するステップの後に前記プロセスを繰り返すステップと、を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴を再モデル化するステップと、積層造形から得られた前記電磁放射線改変物品の前記電磁放射線改変特性を測定する前記ステップの後に前記プロセスを繰り返すステップと、を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記目標電磁放射線改変特性が、周波数F2で測定されたときの、目標比誘電率(ε
r 2)及び目標誘電損失正接(tanδ2)を含む前記電磁放射線改変物品の誘電特性、目標比透磁率(μ
r2)を含む前記電磁放射線改変材料の磁気特性、目標磁気損失正接(tanδ4)を含む前記電磁放射線改変材料の磁気特性、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーマトリックスが、ポリアミド、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、及びエポキシド含有モノマーに基づくポリマー材料;熱可塑性ポリウレタン(TPU);ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記誘電体粒子が存在し、ガラス微小球、被覆ガラス微小球、炭化ケイ素粒子、酸化ジルコン粒子、酸化アルミニウム粒子、窒化ホウ素粒子、チタン酸バリウム粒子、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子、カルボニル鉄粒子、チタン酸ナトリウムビスマス粒子、チタン酸ジルコン酸鉛粒子、ジルコン酸カルシウム粒子、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電磁放射線改変材料の初期誘電特性を得る前記ステップが、透過法、反射法、誘電体共振(SPDR)法、静電容量法、LC共振(U/I)法、摂動法、開放共振器法、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される測定方法を使用して実行される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電磁放射線改変材料の前記電磁放射線改変特徴が、電磁レンズ、回折格子、周波数選択性の表面又は材料、電磁エネルギー吸収体、メタ材料、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電磁放射線改変物品の前記シミュレーションに基づいて前記電磁放射線改変物品を積層造形する前記ステップが、光造形(SLA)、選択的レーザ焼結(SLS)、デジタル光処理(DLP)、材料噴射、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される積層造形法を使用して実行される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記電磁放射線改変材料が、前記誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、1~3.0、1~2.8、1.0~2.5、1.2~2.3、1.5~2.0、4~11、4.5~11、5~10、5~9、5~8、又は更には12~15の範囲の初期比誘電率(e
r1)を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記電磁放射線改変材料が、前記誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、0.01~0.04、0.01~0.03、0.01~0.02、0.05~0.15、0.06~0.12、0.08~0.12、0.2~0.5、0.2~0.45、又は更には0.2~0.4の範囲の初期誘電損失正接(tanδ1)を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記電磁放射線改変材料が、前記LC共振(U/I)測定法に従って1.0GHzで測定されたときに、1~1.5、1~1.3、又は更には1~1.2の範囲の初期比透磁率(μ
r1)を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記周波数F1又はF2が、300MHz~300GHz、300MHz~3GHz、3GHz~30GHz、又は更には30GHz~300GHzの範囲内である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって得られた電磁放射線改変物品。
【請求項18】
請求項17に記載の電磁放射線改変物品を含む装置。
【請求項19】
電磁放射線生成デバイス、電子デバイス、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるデバイスを更に備え、前記電磁放射線改変物品が、前記デバイスに組み込まれる、又は前記デバイスの近傍に配置される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
電磁放射線生成デバイスから発生し、電子デバイスによって受け取られる電磁放射線を改変する方法であって、請求項17に記載の物品を前記電子デバイスに組み込むステップ、又は請求項17に記載の物品を前記電子デバイスの近傍に配置するステップを含む、方法。
【請求項21】
電磁放射線生成デバイスから発生する電磁放射線の改変方法であって、請求項17に記載の物品を前記電磁放射線生成デバイスに組み込むステップ、又は請求項17に記載の物品を前記電磁放射線生成デバイスの近傍に配置するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デバイスによって放出される電磁放射線を改変することに関する。
【発明の概要】
【0002】
電磁放射線を改変することに関する方法、物品、及び装置が提供される。第1の態様では、電磁放射線改変物品の製造方法が提供される。本方法は、a)ポリマーマトリックスを提供し、任意選択で複数の誘電体粒子をポリマーマトリックスに埋め込むことによって、電磁放射線改変材料を形成するステップと、b)周波数F1で測定されたときの初期比誘電率(εr1)及び初期誘電損失正接(tanδ1)を含む、電磁放射線改変材料の初期誘電特性を得るステップと、を含む。本方法は、c)電磁放射線改変材料から得られた電磁放射線改変物品が目標電磁放射線改変特性を有するのに好適な電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴をモデル化し、それによって電磁放射線改変物品のシミュレーションを得るステップと、d)電磁放射線改変物品のシミュレーションに基づいて電磁放射線改変物品を積層造形するステップと、を更に含む。任意選択で、本方法は、e)積層造形から得られた電磁放射線改変物品の電磁放射線改変特性を測定し、電磁放射線改変物品の測定された電磁放射線改変特性を目標電磁放射線改変特性と比較するステップを更に含む。
【0003】
第2の態様では、電磁放射線改変物品が提供される。電磁放射線改変物品は、第1の態様による方法によって得られる。
【0004】
第3の態様では、装置が提供される。この装置は、第2の態様による電磁放射線改変物品を含む。
【0005】
第4の態様では、電磁放射線生成デバイスから発生し、電子デバイスによって受け取られる電磁放射線を改変する方法が提供される。本方法は、第2の態様による物品を電子デバイスに組み込むステップ、又は第2の態様による物品を電子デバイスの近傍に配置するステップを含む。
【0006】
第5の態様では、電磁放射線生成デバイスから発生する電磁放射線を改変する方法が提供される。本方法は、第2の態様による物品を電磁放射線生成デバイスに組み込むステップ、又は第2の態様による物品を電磁放射線生成デバイスの近傍に配置するステップを含む。
【0007】
本開示の少なくとも特定の態様は、電磁放射線改変物品のための最適化された材料及び設計の達成に有利に寄与する。
【0008】
本開示の上記の「発明の概要」は、本発明の各開示された実施形態又は全ての実施態様の記載を意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願にわたり数箇所において、例の列挙を通して指針が提供されており、これらの例は、様々な組み合わせで用いることができる。それぞれの事例において、記載された列挙項目は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。したがって、本開示の範囲は、本明細書に記載の特定の例示的な構造に限定されるべきではなく、少なくとも特許請求の範囲の文言によって説明される構造、及びこれらの構造の同等物にまで拡大する。本明細書において代替物として明確に列挙されている要素のいずれも、所望に応じた任意の組み合わせで、特許請求の範囲に明示的に含めることも、又は特許請求の範囲から排除することもできる。様々な理論及び可能な機構が本明細書で検討され得るが、いかなる場合であっても、このような検討は、特許請求可能な主題を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書による電磁放射線改変物品を製造する例示的な方法のフローチャートである。
【
図3】物品の積層造形のためのシステム全般のブロック図である。
【
図4】物品のための製造プロセス全般のブロック図である。
【
図5】例示的な物品製造プロセスの高レベルフローチャートである。
【
図6】例示的な物品積層造形プロセスの高レベルフローチャートである。
【
図7】例示的なコンピューティングデバイスの概略正面図である。
【
図8】実施例4による内部ハニカム構造を有するプレートの概略斜視端面図である。
【
図9A】実施例4による中実プレート及びハニカムプレートの誘電率のグラフである。
【
図9B】実施例4による中実プレート及びハニカムプレートの誘電損失係数のグラフである。
【
図10A】周波数選択性表面(FSS)プロトタイプの概略斜視図である。
【
図11】FSSを試験するためのチャンバの概略側断面図である。
【
図12】実施例5によるサンプルのシミュレーション及び測定されたFSS透過率を示すグラフである。
【0010】
上記で特定された図は、本開示のいくつかの実施形態を記載するものであるが、本明細書で言及される通り、他の実施形態もまた企図される。図は、必ずしも縮尺通りに描かれているとは限らない。全ての場合において、本開示は、限定ではなく代表例の提示によって、本発明を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
用語解説
本明細書で使用されるとき、「化学線」は、UV線、電子ビーム線、可視光線、赤外線、ガンマ線、及びこれらの任意の組み合わせを包含する。
【0012】
本明細書で使用されるとき、「マトリックス」は、三次元的に連続した媒質を指す。
【0013】
本明細書で使用されるとき、「モノマー」は、それ自体又は他のモノマーと組み合わせてオリゴマー又はポリマーを形成し得る単一の1単位分子であり、「オリゴマー」は、2~9個の繰り返し単位を有する成分であり、及び「ポリマー」は、10個以上の繰り返し単位を有する成分である。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「粒子」は、幾何学的に決定され得る形状を有する固体である物質を指す。その形状は規則的であっても不規則的であってもよい。粒子は、典型的には、例えば粒径及び粒径分布に関して分析することができる。粒子は、1つ以上の微結晶を含み得る。したがって、粒子は、1つ以上の結晶相を含み得る。用語「一次粒径」は、一次粒子であるとみなされる、非会合の単一のナノ粒子のサイズを指す。X線回折(X-ray diffraction、XRD)は、典型的には、結晶性材料の一次粒径を測定するために使用され、透過型電子顕微鏡(transmission electron microscopy、TEM)は、典型的には、非晶質材料の一次粒径を測定するために使用される。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「直径」は、形状の中心と交差する形状(二次元又は三次元)を横切る最長直線長さを指す。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「流体」は、エマルション、分散液、懸濁液、溶液、及び連続液相を有する純粋な成分を指し、固体形態の粉末及び微粒子を除外する。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「硬化」及び「重合」は各々、例えば、熱、光、放射線、電子ビーム、マイクロ波、化学反応、又はこれらの組み合わせの何らかの機構による組成物の硬質化又は部分的硬質化を意味する。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「硬化した」は、1つ以上の硬化機構によって硬質化又は部分的硬質化された(例えば、重合した又は架橋した)材料又は組成物を指す。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「光重合性」及び「光硬化性」のそれぞれは、化学線を使用して硬化又は部分的に硬化することができる少なくとも1つの材料を含有する組成物を指す。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの組み合わせを指す省略表現であり、「(メタ)アクリル(acrylic)」は、アクリル、メタクリル、又はこれらの組み合わせを指す省略表現であり、「(メタ)アクリル(acryl)」は、アクリル及びメタクリル基を指す省略表現である。「アクリル」は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、及びメタクリルアミドなどのアクリル酸の誘導体を指す。「(メタ)アクリル」とは、少なくとも1つのアクリル基若しくはメタクリル基を有するモノマー又はオリゴマーであって、2つ以上の基を含有する場合、脂肪族セグメントによって結合される、モノマー又はオリゴマーを意味する。本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート官能性化合物」は、とりわけ(メタ)アクリレート部分を含む化合物である。
【0021】
また、本明細書では、全ての数は「約」という用語で修飾されるものと想定され、好ましくは「厳密に」という用語で修飾されると想定される。本明細書で使用される場合、測定した量との関連において、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。また、本明細書においては、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0022】
特性又は属性に対する修飾語として本明細書で使用するとき、用語「概して」は、特に定めのない限り、その特性又は属性が、当業者によって容易に認識されるものであるが、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではないこと(例えば、定量化可能な特性に関しては、±20%の範囲内)を意味する。用語「実質的に」は、特に定めのない限り、高い近似度(例えば、定量化可能な特性に関しては、±10%の範囲内)を意味するが、この場合もまた、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではない。同一の、等しい、均一な、一定の、厳密に、などの用語は、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではなく、特定の状況に適用可能な、通常の許容誤差又は測定誤差の範囲内にあるものと理解される。
【0023】
電磁波を改変することは、様々な点で商業的に重要である。多くの場合、電子デバイス(例えば、「犠牲者」)は、反射、減衰、又はリダイレクトのいずれかによって、別のデバイス又は装置(例えば、「干渉物」)からの干渉電磁波から保護される。ますます多くの技術分野のデジタル化だけでなく、電子デバイスの密度が絶えず増加するにつれて、デバイスの保護のための解決策がますます重要になっている。1つの応用分野は、アンテナ信号からの電磁波の分布の適応であり、例えば、局所的な制限に起因して電磁波の方向を改変すること、又はアンテナの効率を高めることである。
【0024】
本開示は、積層造形(例えば、「3D印刷」とも呼ばれる)設計自由度を使用して特定の電磁放射波改変設計を有する誘電体材料(例えば、誘電体ポリマー及び/又は誘電体粒子充填ポリマー)の組み合わせを提供する。誘電体材料は、4つの一般的な材料クラス(すなわち、透明電磁波、リダイレクト電磁波、吸収電磁波、又は反射電磁波)に分類することができる。積層造形は、新しい設計オプションに起因して、重量低減又はより容易な組み立てに関する解決策を提供するための独自の可能性を提供する。いくつかの事例では、周波数範囲に応じて、特定の誘電体フィラー粒子が好適であり、ポリマーマトリックス複合材ベースの積層造形又は3D印刷技術(例えば、選択的レーザ焼結(selective laser sintering、SLS)、光造形(stereolithography、SLA)など)で加工することができる。更に、部品設計及び材料適応最適化の概念が本明細書で提供され、これは、用途要件に基づいて電磁波改変設計の迅速かつカスタマイズ可能な適応を可能にする。材料及び設計適応の組み合わせは、積層造形によって提供される設計自由度を活用することができ、したがって、様々な用途のための電磁波改変能力を更に改善するための特定の解決策を提供する。
【0025】
電磁波改変設計は、例えば、異なる原理のレンズ設計、周波数選択性表面、メタ材料、及び吸収体を含む様々な形態を有する。
【0026】
電磁レンズ又は電磁リダイレクタを使用して干渉パターンを生成し、電磁エネルギーを焦点又は異なる方向に効果的に集束又はリダイレクトすることができる。必要な異なる位相遅延は、レンズ媒質を通る電磁波の異なるランタイム(例えば、群遅延)を通じて実現することができる。これは、材料に沿った勾配として厚さ又は実効誘電率のいずれかを改変することによって達成することができる。勾配は、要求される仕様に応じて、連続的又は段階的であってもよい。例えば、積層造形を使用して、材料上にほぼ任意の種類の表面トポロジーを生成して、この勾配を生成することができる。トポロジーはまた(又は代替的に)、材料ブロックの内側に隠されてもよく、又は異なる密度の材料によって実現することができる。多材料積層造形の場合、材料勾配又は組成変化を使用することができる。
【0027】
周波数選択性表面又は材料は、所定の波長に対してフィルタのように作用する。いくつかの周波数は通過することができるが、他の周波数は反射される。これは、材料上又は内部に、ある大きさの波長を有する構造的特徴(例えば、穴、スロット、含有物など)を追加することによって達成することができる。特に積層造形を使用して、これらの種類の共振特徴を生成することによって、複雑な周波数特性を生成する実質的な自由度を達成することができる。これは、特定のニーズに合わせて調整することができる解決策をもたらすことができる。例えば、使用される通信チャネルの周波数帯域幅では透明であるが、他の周波数では反射して不要な信号からアンテナを遮蔽する、アンテナ用のカバーを作成することができる。
【0028】
吸収体は、電磁エネルギーを熱に変換する。この現象は、例えば、電子回路を放射線から保護するために使用することができる。高損失材料は、被保護回路又は干渉回路のプリント回路基板(printed circuit board、pcb)上に完全に嵌合するように設計された形状を有するように、積層造形を介して印刷され得る。この設計自由度により、吸収体は、小型化をサポートするためにタイトなハウジング内でも使用することができる。
【0029】
あるいは、電磁放射線改変材料の構造は、有効な媒質を生成するように設計され得る。構造化されていない材料の特性は、放射波長が構造的特徴サイズよりもはるかに大きい(例えば、4倍を超えて大きい)場合、中空、多孔質、又は格子状構造を使用して改変することができる。一例として、誘電特性の直接比較は、例えば以下の実施例に記載されるように、無充填ベースポリマーについて、一度は固体プレートとして、一度はハニカム設計を使用して総重量を減少させて決定することができる。有効媒質原理は、更に低い誘電率(例えば、1に近い)を有する材料を生成するために使用されてもよく、強化された透明材料をもたらす。この設計オプションは、重量削減の可能性も提供する。
【0030】
有効媒質原理の別の変形形態は、メタ材料を含む。「メタ材料」は、通常は自然界に見出されない電磁特性を有する材料の総称である。通常、材料の透磁率及び/又は誘電率の実部は正である。メタ材料では、両方の特性が負であり、負の屈折率をもたらす(すなわち、二重負材料(DNG))。周囲の媒質の波長と比較して小さいが、バルク材料に対して共振する小さい含有物を設計することによって、誘電率及び透磁率の両方の実部は、ある小さい周波数帯域に対して負であるように設計されることができる。そのような材料は、例えば、アンテナ、レンズ、小型化などのための有用な設計をもたらすことができる。
【0031】
電磁放射線改変物品を製造する方法
第1の態様では、方法が提供される。電磁放射線改変物品の製造方法は、
a)ポリマーマトリックスを提供し、任意選択で複数の誘電体粒子をポリマーマトリックスに埋め込むことによって、電磁放射線改変材料を形成するステップと、
b)周波数F1で測定されたときの初期比誘電率(εr1)及び初期誘電損失正接(tanδ1)を含む、電磁放射線改変材料の初期誘電特性を得るステップと、
c)電磁放射線改変材料から得られた電磁放射線改変物品が目標電磁放射線改変特性を有するのに好適な電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴をモデル化し、それによって電磁放射線改変物品のシミュレーションを得るステップと、
d)電磁放射線改変物品のシミュレーションに基づいて電磁放射線改変物品を積層造形するステップと、
e)任意選択で、積層造形から得られた電磁放射線改変物品の電磁放射線改変特性を測定し、電磁放射線改変物品の測定された電磁放射線改変特性を目標電磁放射線改変特性と比較するステップと、を含む。
【0032】
図1を参照すると、第1の態様の方法のフローチャートが提供されている。より具体的には、本方法は、a)ポリマーマトリックスを提供し、任意選択で複数の誘電体粒子をポリマーマトリックスに埋め込むことによって、電磁放射線改変材料を形成するステップ110を含む。多くの場合、電磁放射線改変材料を形成するステップは、初期ポリマーマトリックスを選択するステップと、その中に埋め込むための複数の初期誘電体粒子を選択するステップと、を含む。ポリマーマトリックス及び誘電体粒子に使用するための例示的なポリマー材料を以下に詳細に記載する。無充填ポリマーマトリックスが採用される場合、ポリマー材料は誘電体材料を含む。
【0033】
本方法は、b)周波数F1で測定されたときの初期比誘電率(εr1)及び初期誘電損失正接(tanδ1)を含む、電磁放射線改変材料の初期誘電特性を得るステップ120を更に含む。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料の初期誘電特性を取得するステップは、透過法及び/又は反射法、誘電体共振法(すなわち、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)法)、静電容量法、LC共振(「U/I」とも呼ばれる)法、摂動法、開放共振器法、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される測定方法を使用して初期誘電特性を測定することによって行われる。初期誘電特性の好ましい測定方法は、反射法、LC共振(U/I)法、誘電体共振(SPDR)法、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。これらの方法のそれぞれについて、以下で更に論じる。いくつかの実施形態では、初期誘電特性は既に利用可能であり、例えばデータベース又はデータシートからアクセスすることができる。
【0034】
好適な透過法及び/又は反射法は、導電性又は放射性の方法のいずれかを使用して実現することができる。導電性の透過法及び/又は反射法は、同軸又は導波管伝送線路法を含む。放射透過法及び/又は反射法は、無響R性のF測定チャンバ内の自由場測定セットアップ、並びに反射器、あるいはレンズ又はこれらの組み合わせを使用する準光学的方法を含む。
【0035】
好適な誘電体共振法(例えば、スプリットポスト誘電体共振器)は、以下の実施例において「誘電体共振(SPDR)測定法」として詳細に説明される。
【0036】
好適な静電容量法は、プレート間に交換可能な誘電体媒質を有する周知の試験コンデンサ構造の測定と、異なる誘電体材料によって伝導される静電容量の変化の測定と、を含む。
【0037】
好適なLC共振法(又はU/I方法)は、組み合わされたRLC回路の共振特性を決定するためのLCRメータの使用、関連するコンデンサの誘電体材料を試験下の材料と交換すること、及び共振特性の結果として生じる差から誘電特性を計算することを含む。
【0038】
好適な摂動法は、空洞共振器の共振特性の測定、誘電体サンプルを挿入するときの共振特性の変化の監視、及び共振特性の摂動からの誘電特性の計算を含む。
【0039】
好適な開放共振器法は、例えば、ファブリーペロー開放共振器の使用を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料の初期誘電特性が測定される周波数F1は、300MHz~300GHzの範囲内である。いくつかの実施形態では、周波数F1は、300MHz~3GHz(例えば、極高周波数(Ultra High Frequency、UHF))の範囲内である。いくつかの実施形態では、周波数F1は、3GHz~30GHz(例えば、超高周波数(Super High Frequency、SHF))の範囲内である。いくつかの実施形態では、周波数F1は、30GHz~300GHz(例えば、極超短波(Extremely High Frequency、EHF))の範囲内である。いくつかの実施形態では、周波数F1は、1~10GHz、1~8GHz、1~6GHz、又は更には2~6GHz(例えば、5G中GHz帯)の範囲内である。
【0041】
いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料は、以下の実施例に記載される誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、1~3.0、1~2.8、1.0~2.5、1.2~2.3、又は更には1.5~2.0の範囲内の初期比誘電率(εr1)を有する。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料は、誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、4~11、4.5~11、5~10、5~9、又は更には5~8の範囲内の初期比誘電率(εr1)を有する。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料は、誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、15超の初期比誘電率(εr1)を有する。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料は、誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、100以下、70以下、50以下、40以下、又は30以下の初期比誘電率(εr1)を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料は、以下の実施例に記載される誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、0.01~0.04、0.01~0.03、又は更には0.01~0.02の範囲内の初期誘電損失正接(tanδ1)を有する。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料は、誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、0.05~0.15、0.06~0.12、又は更には0.08~0.12の範囲内の初期誘電損失正接(tanδ1)を有する。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料は、誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、0.2~0.5、0.2~0.45、又は更には0.2~0.4の範囲内の初期誘電損失正接(tanδ1)を有する。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料は、誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、0.5超の初期誘電損失正接(tanδ1)を有する。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料は、誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、0.8以下又は0.6以下の初期誘電損失正接(tanδ1)を有する。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態では、電磁放射線改変材料は、誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、12~15の範囲内の初期比誘電率(εr1)及び0.01~0.15の範囲内の初期誘電損失正接(tanδ1)を有する。いくつかの好ましい実施形態では、電磁放射線改変材料は、誘電体共振(SPDR)測定法に従って5.2GHzで測定されたときに、12~15の範囲内の初期比誘電率(εr1)及び0.2~0.5の範囲内の初期誘電損失正接(tanδ1)を有する。
【0044】
再び
図1を参照すると、電磁放射線改変物品を製造する方法は、c)電磁放射線改変材料から得られた電磁放射線改変物品が目標電磁放射線改変特性を有するのに好適な電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴をモデル化し、それによって電磁放射線改変物品のシミュレーションを得るステップ130を更に含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴をモデル化するステップは、透過法/反射法、自由場測定、伝送線路法、誘電体共振(SPDR)法、静電容量法、LC共振(U/I)法、摂動法、開放共振器法、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される方法によって得られる電磁放射線改変材料の初期誘電特性を使用して実行される。好ましい測定方法は、反射法/透過法、LC共振(U/I)法、誘電体共振(SPDR)法、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0046】
電磁放射線改変材料の例示的な好適な電磁放射線改変特徴が、電磁レンズ、回折格子、周波数選択性の表面又は材料、電磁エネルギー吸収体、メタ材料、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。選択された実施形態では、電磁放射線改変特徴は、電磁レンズ、リダイレクタ、及び/又は電磁エネルギー吸収体である。
【0047】
いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴をモデル化するステップは、目標電磁放射線改変特性を有するように電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴を最適化するステップを含む。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴をモデル化するステップは、電磁放射線改変物品のシミュレーションに対して電磁放射線改変計算を行うことによって電磁放射線改変物品のシミュレーションの電磁放射線改変特性をシミュレートするステップを含む。好適なモデル化技術は、例えば、解析計算、有限要素シミュレーション、有限差分時間領域法シミュレーション、及びモーメントシミュレーションの方法を含むが、これらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施形態では、目標電磁放射線改変特性は、周波数F2で測定されたときの目標比誘電率(εr2)及び目標誘電損失正接(tanδ2)を含む、電磁放射線改変物品の誘電特性を含む。いくつかの実施形態では、目標電磁放射線改変特性は、周波数F2で測定されたときの目標比透磁率(μr2)を含む、電磁放射線改変材料の磁気特性を含む。いくつかの実施形態では、目標電磁放射線改変特性は、周波数F2で測定されたときの目標磁気損失正接(tanδ4)を含む、電磁放射線改変材料の磁気特性を含む。
【0049】
一定の実施形態では、電磁放射線改変材料の誘電特性が測定される周波数F2は、300MHz~300GHzの範囲内である。一定の実施形態では、周波数F2は、300MHz~3GHz(例えば、極高周波数(UHF))の範囲内である。一定の実施形態では、周波数F2は、3GHz~30GHz(例えば、超高周波数(SHF))の範囲内である。一定の実施形態では、周波数F2は、30GHz~300GHz(例えば、極超短波(EHF))の範囲内である。一定の実施形態では、周波数F2は、1~10GHz、1~8GHz、1~6GHz、又は更には2~6GHz(例えば、5G中GHz帯)の範囲内である。
【0050】
再び
図1を参照すると、電磁放射線改変物品を製造する方法は、d)電磁放射線改変物品のシミュレーションに基づいて電磁放射線改変物品を積層造形するステップ140を更に含む。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変物品のシミュレーションに基づいて電磁放射線改変物品を積層造形するステップが、光造形(SLA)、選択的レーザ焼結(SLS)、デジタル光処理(digital light processing、DLP)、選択的レーザ溶融(selective laser melting、SLM)、熱溶解積層法(fused deposition modeling、FDM)、直接光処理、結合剤噴射、材料噴射、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される積層造形法を使用して実行される。いくつかの好ましい実施形態では、電磁放射線改変物品のシミュレーションに基づいて電磁放射線改変物品を積層造形するステップが、光造形(SLA)、選択的レーザ焼結(SLS)、デジタル光処理(DLP)、材料噴射、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される積層造形法を使用して実行される。一定の実施形態では、採用される積層造形法は、光造形(SLA)を含む。一定の実施形態では、積層造形法は、選択的レーザ焼結(SLS)を含む。一定の実施形態では、積層造形法は、デジタル光処理(DLP)を含む。一定の実施形態では、積層造形法は、材料噴射を含む。
【0051】
本明細書に記載の三次元物体を印刷する方法は、1層ずつ重ねる方式により、本明細書に記載の光重合性組成物の複数の層から物品を形成することを含むことができる。更に、構築される材料組成物の層を、コンピュータ可読形式の三次元物体の画像に従って堆積させることができる。いくつか又は全ての実施形態では、光重合性組成物は、予め選択されたコンピュータ支援設計(computer aided design、CAD)パラメータ(例えば、データファイル)に従って堆積される。
【0052】
本明細書に記載の三次元物体を製造する方法は、いわゆる「光造形法/液槽重合」3D印刷法を含むことができることが理解される。三次元製造のための他の技法が知られており、本明細書に記載の用途で使用するために好適に適応されてもよい。より全般的には、三次元製作技法が次々と利用可能になってきている。そのような技法は全て、指定された物品特性にかなう製作粘度及び分解能を提供する限り、本明細書に記載の光重合性組成物と共に使用するように改変することができる。製作は、本明細書に記載の製作技術のいずれかを、単独で又は様々な組み合わせのいずれかで使用し、三次元のオブジェクトを表すデータを使用して実行されてもよく、このデータは必要に応じて、特定の印刷技術又は他の製作技術に合わせてフォーマットし直されるか、又は他の方法で適応されてもよい。
【0053】
光重合性組成物から液槽重合(例えば、光造形法)を使用して三次元物体を形成することは、完全に可能である。例えば、いくつかの事例では、三次元物体を印刷する方法は、本明細書に記載の光重合性組成物を流体状態で容器内に保持し、容器内の光重合性組成物に選択的にエネルギーを印加して光重合性組成物の流体層の少なくとも一部分を凝固させ、それによって、三次元物体の断面を画定する硬質化された層を形成することを含む。更に、本明細書に記載の方法は、光重合性組成物の硬質化された層を昇降させて、未硬質化の光重合性組成物の新たな、つまり第2の流体層を容器内の流体の表面に提供し、続いて、容器内の光重合性組成物に再び選択的にエネルギーを印加して、光重合性組成物の新たな、つまり第2の流体層の少なくとも一部分を凝固させ、三次元物体の第2の断面を画定する第2の凝固された層を形成することを更に含むことができる。更に、光重合性組成物を凝固させるためのエネルギーの印加によって、三次元物体の第1及び第2の断面をz方向(つまり、上記の昇降の方向に相当する構築方向)に互いに結合又は接着することができる。更に、容器内の光重合性組成物に選択的にエネルギーを印加することは、光重合性組成物を硬化させるのに十分なエネルギーを有する、紫外線、可視放射線又は電子ビーム放射線などの化学線を適用することを含むことができる。方法はまた、昇降機のプラットフォームを昇降させることによって提供される光重合性組成物の流体の新たな層を平坦化することを含むことができる。このような平坦化は、いくつかの事例では、ワイパー又はローラ又はリコータを利用することにより行うことができる。平坦化では、分注された材料を平らにして余分の材料を除去し、プリンタの支持プラットフォーム上に均一かつ滑らかに露出した又は平らな上向きの面を作り出すことによって、1つ以上の層の厚さを、材料を硬化させる前に補正する。
【0054】
三次元物体を提供するために前述のプロセスを選択された回数だけ繰り返すことができることについて、更に理解されたい。例えば、いくつかの事例では、このプロセスを「n」回繰り返すことができる。更に、光重合性組成物の層にエネルギーを選択的に印加するステップなどの、本明細書に記載の方法の1つ以上のステップをコンピュータ可読形式の三次元物体の画像に従って行うことができると理解される。好適な光造形プリンタとしては、3D Systems(Rock Hill,SC)から入手可能なViper Pro SLA及び、Asiga USA(Anaheim Hills,CA)から入手可能なAsiga PICO PLUS39が挙げられる。
【0055】
図2は、例えば、本明細書に記載の光重合性組成物及び方法と共に使用されてもよい光造形装置(stereolithography apparatus、「SLA」)を示す。一般的に、装置200は、レーザ202、光学素子204、ステアリングミラー又はレンズ206、昇降機208、及びプラットフォーム210を、光重合性組成物219で満たされた液槽214内に含んでもよい。動作中、レーザ202は、液槽214の壁220(例えば、床)を通って光硬化性組成物に導かれ、光硬化性組成物219の断面を硬化させて、物品217を形成し、その後、昇降機208がプラットフォーム210をわずかに上昇させ、別の断面が硬化される。好適な光造形プリンタとしては、両方とも3D Systems(Rock Hill,SC)から入手可能なNextDent 5100及びFigure 4、並びにAsiga USA(Anaheim Hills,CA)から入手可能なAsiga PICO PLUS39が挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、デジタル光処理(Digital Light Processing、「DLP」)による液槽重合は、硬化性ポリマー(例えば、光重合性組成物)の容器を採用する。DLPに基づくシステムでは、硬化性材料の上に二次元の断面を投影して、投影されたビームを横切る平面全体の所望のセクションを一度に硬化させる。光重合性組成物と共に使用するための1つの好適な装置は、Rapid Shape D40 II DLP 3D printer(Rapid Shape GmbH(Heimsheim,Germany))である。本明細書に記載の光重合性組成物と共に使用するように適合されてもよいこのような硬化性ポリマー系は全て、本明細書で使用されるとき「液槽重合」又は「光造形」の範囲内にあることが意図される。一定の実施形態では、例えば、米国特許第9,205,601号及び同第9,360,757号(両方ともDeSimoneら)に記載されているように、連続モードでの使用に適応した装置、例えば、Carbon 3D,Inc.(Redwood City,CA)から市販されている装置が採用されてもよい。
【0057】
三次元物品(例えば、電磁放射線改変物品)を表すデータは、コンピュータ支援設計(computer aided design、CAD)データなどのコンピュータモデリングを使用して生成されてもよい。物品の設計を表す画像データは、STLフォーマット又は任意の他の好適なコンピュータ処理可能なフォーマットにて、積層造形機器にエクスポートすることができる。
【0058】
多くの場合、機械可読媒体は、コンピューティングデバイスの一部として提供される。コンピューティングデバイスは、1つ以上のプロセッサ、揮発性メモリ(RAM)、機械可読媒体を読み取るためのデバイス、並びに、例えば、ディスプレイ、キーボード及びポインティングデバイスなどの入力/出力デバイスを有し得る。更に、コンピューティングデバイスは、オペレーティングシステム及び他のアプリケーションソフトウェアなどの他のソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせも含み得る。コンピューティングデバイスは、例えば、ワークステーション、ラップトップ、携帯情報端末(PDA)、サーバ、メインフレーム又は任意の他の汎用若しくは特定用途向けコンピューティングデバイスであってもよい。コンピューティングデバイスは、コンピュータ可読媒体(ハードドライブ、CD-ROM、又はコンピュータメモリなど)から実行可能なソフトウェア命令を読み出してもよく、又は別のネットワークコンピュータなどの、コンピュータに論理的に接続された別のソースからの命令を受信してもよい。
図7を参照すると、コンピューティングデバイス700は、多くの場合、内部プロセッサ780、ディスプレイ710(例えば、モニタ)、並びにキーボード740及びマウス720などの1つ以上の入力デバイスを含む。
図7では、物品730(例えば、レンズ)が、ディスプレイ710に表示されている。
【0059】
図3を参照すると、一定の実施形態では、システム300は、電磁放射線改変物品を製造する方法において採用される。システム300は、物品(例えば、
図7のディスプレイ710に表示されているような物品730)の3Dモデル310を表示するディスプレイ320と、ユーザにより選択された3Dモデル310に応じて、物品360の物理的オブジェクトを3Dプリンタ/積層造形デバイス350に作製させる、1つ以上のプロセッサ330と、を備える。多くの場合、入力デバイス340(例えば、キーボード及び/又はマウス)は、特にユーザが3Dモデル310を選択するために、ディスプレイ320及び少なくとも1つのプロセッサ330と共に採用される。
【0060】
図4を参照すると、プロセッサ420(又は2つ以上のプロセッサ)は、機械可読媒体410(例えば、非一時的媒体)、3Dプリンタ/積層造形デバイス440、及び任意選択でユーザが見るためのディスプレイ430のそれぞれと通信する。3Dプリンタ/積層造形デバイス440は、機械可読媒体410から、物品450(例えば、
図7のディスプレイ710に示すような物品730)の3Dモデルを表すデータを提供するプロセッサ420からの命令に基づいて、1つ以上の物品450を製造するように構成されている。
【0061】
図5を参照すると、例えば、限定するものではないが、積層造形法は、(例えば、非一時的)機械可読媒体から、本開示の少なくとも1つの実施形態による物品の3Dモデルを表すデータを取り出すこと510を含む。方法は、1つ以上のプロセッサによって、データを使用して造形デバイスとインタフェースする積層造形アプリケーションを実行すること520と、製造デバイスによって、物品の物理的オブジェクトを生成すること530と、を更に含む。1つ以上の様々な任意選択の後処理ステップ540を実行してもよい。典型的には、未硬化の光硬化性成分を物品から除去し、それに加えて、物品を更に熱処理するか、さもなければ後硬化させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、ステップc)の前に、非一時的機械可読媒体から、三次元物品の3Dモデルを表すデータを取り出すステップと、1つ以上のプロセッサによって、このデータを使用して製造デバイスとインタフェースする3D印刷アプリケーションを実行して、三次元物品の物理的オブジェクトを生成するステップと、を更に含む。
【0062】
更に、
図6を参照すると、物品を製造する方法は、1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、(例えば、三次元)物品を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信するステップ610と、積層造形プロセスにより製造デバイスを用いて、このデジタルオブジェクトに基づく物品を生成するステップ620と、を含む。この場合も、物品に後処理630の1つ以上のステップを実施してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、ステップc)の前に、1つ以上のプロセッサを有する製造デバイスによって、三次元物品を規定するデータを含むデジタルオブジェクトを受信するステップと、積層造形プロセスによる製造デバイスを用いてデジタルオブジェクトに基づく三次元物品を生成するステップと、を更に含む。
【0063】
図1に戻って参照すると、いくつかの実施形態では、電磁放射線改変物品を製造する方法は、e)任意選択で、積層造形から得られた電磁放射線改変物品の電磁放射線改変特性を測定し、電磁放射線改変物品の測定された電磁放射線改変特性を目標電磁放射線改変特性と比較するステップ150を更に含む。いくつかの実施形態では、電磁放射線改変特性は、放射測定、伝導測定、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される方法を使用して測定される。
【0064】
いくつかの実施形態では、本方法は、周波数F1で測定されたときの初期比透磁率(μr1)を含む、電磁放射線改変材料の初期磁気特性を得る(例えば、情報が別様に利用可能でないときに測定する)ステップを更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、周波数F1で測定されたときの初期磁気損失正接(tanδ3)を含む、電磁放射線改変材料の初期磁気特性を得る(例えば、測定する)ステップを更に含む。多くの場合、電磁放射線改変材料の初期磁気特性を得る(例えば、測定する)ステップは、伝送線路法、自由空間透過法/反射法、LC共振(U/I)法、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される測定方法を使用して実行される。
【0065】
いくつかの実施形態では、電磁放射線改変材料は、以下の実施例に記載されるLC共振(U/I)測定法に従って1.0GHzで測定されたときに、1~1.5、1~1.3、又は更には1~1.2の範囲内の初期比透磁率(μr1)を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、本方法は、初期ポリマーマトリックス及び/又は複数の初期誘電体粒子を異なるポリマーマトリックス及び/又は異なる複数の誘電体粒子(誘電体粒子が採用される場合)によって置き換える(例えば、反復)ステップと、電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴をモデル化するステップの後にプロセスを繰り返すステップと、を更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、電磁放射線改変材料の電磁放射線改変特徴を再モデル化する(例えば、反復)ステップと、積層造形から得られた電磁放射線改変物品の電磁放射線改変特性を測定するステップの後にプロセスを繰り返すステップと、を更に含む。そのような反復プロセスは、特に設計段階における短い最適化サイクルにより、特定の用途に合わせて調整された電磁放射線改変物品を効率的に開発することに寄与することができる。
【0067】
シミュレーション設計最適化のために材料を選択する際には、周波数依存性だけでなく材料特性の側面も考慮しなければならない。また、加工性も考慮しなければならない。したがって、材料の誘電特性の必要性は、用途電磁放射波周波数、設計概念の必要性、印刷するスケール(例えば、設計のスケーリングにつながる誘電定数の変更)、及び適用するスケール(例えば、特定の用途の必要性に適合するように誘電定数を変更)の組み合わせに依存する。
【0068】
実際には、積層造形プロセスに適合する境界条件(例えば、サイズ)、特定の用途、及び変更される波長(単数又は複数)に基づいて、一連の材料(例えば、ポリマーマトリックス及び任意選択で誘電体粒子)が選択され、3D印刷を使用して製造されるように開発される。次いで、材料(単数又は複数)の材料特性が測定され、電磁波改変物品の設計及びモデルに適用される。モデルが最終設計と境界条件との間の不一致を明らかにする場合、再スケーリングは、一般に、材料特性を適合させることによって(例えば、物品を再スケーリングするために誘電率を変更することによって)可能である。
【0069】
設計モデルが完成すると、積層造形を使用して部品を製造することができ、オープンフィールド試験セットアップを使用して用途関連特性(例えば、電磁波のリダイレクト)を特徴付けることができる。必要であれば、電磁波改変物品の性能を改善するために、設計への適応を行うことができる。最適設計が達成されると、ユーザはそれを適用することができる。
【0070】
本開示による電磁放射線改変物品は、電子用途、電気通信用途、及び輸送市場用途(例えば、自動車及び航空宇宙用途)などの産業用途に有用であり得る。
【0071】
ポリマーマトリックスは、積層造形での使用に好適であるように選択される。典型的には、ポリマーマトリックスは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマーポリマー、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。例えば、ポリマーマトリックスは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択されてもよい。ポリマーマトリックスとして使用するための例示的な好適な材料としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル、ポリアミド、ナイロン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrene、ABS)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(acrylonitrile styrene acrylate、ASA)、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエーテルケトンケトン(polyether ketone ketone、PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(polyether ether ketone、PEEK)、ポリフェニルスルホン(polyphenyl sulfone、PPSF)、ポリアニリン、ポリビニルエーテル(polyvinyl ether、PVE)、エポキシド、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate、PMMA)、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンオキシド、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane、TPU)、パーフルオロアルコキシアルカン(perfluoroalkoxy alkane、PFA)、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスが、ポリアミド;(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、及びエポキシド含有モノマーに基づくポリマー材料;熱可塑性ポリウレタン(TPU);ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。選択された実施形態では、ポリマーマトリックスは、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、ポリペプチド、ヘキサメチレンアジパミド、及びポリカプロラクタム);及び(メタ)アクリレート含有モノマーに基づくポリマー材料からなる群から選択される。
【0073】
好適な単官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、限定するものではないが、ジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジメチル-1-アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート(例えば、tert-ブチルメタクリレート又はイソブチルメタクリレート)、ベンジルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ブチル-シクロヘキシルメタクリレート(例えば、cis-4-tert-ブチル-シクロヘキシルメタクリレート、73/27trans/cis-4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、又はtrans-4-tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート)、2-デカヒドロナフチルメタクリレート、1-アダマンチルアクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート(例えば、d,l-イソボルニルメタクリレート)、ジメチル-1-アダマンチルメタクリレート、ボルニルメタクリレート(例えば、d,l-ボルニルメタクリレート)、3-テトラシクロ[4.4.0.1.1]ドデシルメタクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、第三級ブチルアクリレート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
2つの(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、1,2-エタンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,12-ドデカンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレン/ポリプロピレンコポリマージアクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート変性カプロラクトンが挙げられる。
【0075】
3つ又は4つの(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Cytec Industries,Inc.(Smyrna,GA,USA)から商品名TMPTA-Nで、及びSartomer(Exton,PA,USA)から商品名SR-351で市販)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-444で市販)、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-454で市販)、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-494で市販)、トリス(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-368で市販)、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(例えば、Cytec Industries,Inc.から、商品名PETIAでテトラアクリレート対トリアクリレートの比が約1:1のもの、及び商品名PETA-Kでテトラアクリレート対トリアクリレートの比が約3:1のものが市販)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-295で市販)及びジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-355で市販)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
5つ又は6つの(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、限定するものではないが、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR-399で市販されているもの)及び六官能性ウレタンアクリレート(例えば、Sartomerから商品名CN975で市販されているもの)が挙げられる。
【0077】
典型的には、誘電体粒子が含まれる場合、複数の誘電体粒子が、ポリマーマトリックス中にランダムに分布して埋め込まれている。いくつかの実施形態では、誘電体粒子は、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、チタン酸塩、ジルコン酸塩、ケイ酸塩、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される無機材料を含む。例示的な好適な誘電体粒子は、(例えば、中空)ガラス微小球、被覆(例えば、中空)ガラス微小球(例えば、特に金属被覆中空ガラス微小球)、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、(例えば、六方晶)窒化ホウ素粒子、チタン酸バリウム、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)粒子、カルボニル鉄粒子、チタン酸ナトリウムビスマス、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコン酸カルシウム、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から任意選択で選択される。一定の実施形態では、誘電体粒子は、(例えば、中空)ガラス微小球、金属被覆(例えば、中空)ガラス微小球(例えば、特にアルミニウム被覆ガラス微小球)、炭化ケイ素、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。選択された実施形態では、誘電体粒子は、金属被覆中空ガラス微小球である。
【0078】
一定の実施形態では、(例えば、任意選択の)誘電体粒子は、微小粒子又はナノ粒子を含む。ナノ粒子の少なくとも1つの寸法は、1マイクロメートル未満、例えば、950ナノメートル以下、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、又は300ナノメートル以下;及び1ナノメートル以上、2、5、7、10、12、15、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、又は275ナノメートル以上である。一定の実施形態では、(例えば、任意選択の)誘電体粒子は、0.5マイクロメートル以上、1マイクロメートル以上、2マイクロメートル以上、3マイクロメートル以上、4マイクロメートル以上、5マイクロメートル以上、6マイクロメートル以上、7マイクロメートル以上、8マイクロメートル以上、9マイクロメートル以上、10マイクロメートル以上、12マイクロメートル以上、15マイクロメートル以上、18マイクロメートル以上、20マイクロメートル以上、又は25マイクロメートル以上の平均粒径(すなわち、最大寸法);及び100マイクロメートル以下、90マイクロメートル以下、80マイクロメートル以下、70マイクロメートル以下、60マイクロメートル以下、50マイクロメートル以下、40マイクロメートル以下、30マイクロメートル以下、又は20マイクロメートル以下の平均粒径を有する。別の言い方をすれば、平均粒径は、0.5マイクロメートル~100マイクロメートル又は0.5マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0079】
典型的には、本開示による電磁放射線改変物品(及び物品を作製するための光硬化性組成物)は、電磁放射線改変物品(又は光硬化性組成物)の総体積に基づいて、0.1体積パーセント(体積%)以上、0.2体積%以上、0.5体積%以上、0.8体積%以上、1.0体積%以上、1.5体積%以上、2.0体積%以上、3.0体積%以上、4.0体積%以上、5.0体積%以上、6.0体積%以上、8.0体積%以上、10.0体積%以上、12.5体積%以上、15.0体積%以上、17.5体積%以上、20.0体積%以上、22.5体積%以上、25.0体積%以上、27.5体積%以上、又は30.0体積%以上の(例えば、任意選択の)誘電体粒子;及び電磁放射線改変物品(又は光硬化性組成物)の総体積に基づいて、70.0体積%以下、65.0体積%以下、62.5体積%以下、60.0体積%以下、57.5体積%以下、55.0体積%以下、52.5体積%以下、50.0体積%以下、47.5体積%以下、45.0体積%以下、42.5体積%以下、40.0体積%以下、37.5体積%以下、35.0体積%以下、又は32.5体積%以下の(例えば、任意選択の)誘電体粒子を含む。別の言い方をすれば、電磁放射線改変物品(又は光硬化性組成物)は、電磁放射線改変物品の総体積に基づいて、0.1体積%~70体積%、1.0体積%~50.0体積%、又は2.0体積%~25.0体積%の(例えば、任意選択の)誘電体粒子を含んでもよい。
【0080】
一定の実施形態では、(例えば、任意選択の)誘電体粒子は、電磁放射線改変物品(又は光硬化性組成物)の総体積に基づいて、20重量%以上、22重量%、25重量%、28重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、又は44重量%以上;電磁放射線改変物品の総体積に基づいて、60重量%以下、59重量%、58重量%、57重量%、56重量%、55重量%、54重量%、53重量%、52重量%、51重量%、50重量%、49重量%、48重量%、47重量%、又は46重量%以下の量で存在する。別の言い方をすれば、電磁放射線改変物品(又は光硬化性組成物)は、電磁放射線改変物品の総体積に基づいて、20重量%~60重量%、25重量%~60重量%、30重量%~60重量%、35重量%~60重量%、40重量%~60重量%、又は30重量%~45重量%の(例えば、任意選択の)誘電体粒子を含んでもよい。
【0081】
物品及び装置
第2の態様では、本開示は、上記の第1の態様による方法によって得られた(例えば、三次元)電磁放射線改変物品(例えば、部品)を提供する。特に、上述の方法の任意の詳細(単数又は複数)を採用して、この第2の態様の電磁放射線改変物品を調製することができる。
【0082】
第3の態様では、本開示は、第2の態様による(例えば、三次元)電磁放射線改変物品を含む装置を提供する。典型的には、装置は、電磁放射線生成デバイス(例えば、干渉物又は送信機)及び/又は電子デバイス(例えば、犠牲者)からなる群から選択されるデバイスを更に備える。いくつかの実施形態では、電子デバイス又は電磁放射線生成デバイスは、アンテナ、インターネット接続デバイス、スマートフォン、タブレットPC、TV、通信衛星、無線送信機、無線ルータ、無線増幅器、自律運転支援デバイス、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。典型的には、電磁放射線改変物品は、装置若しくはデバイスに組み込まれる、又は装置若しくはデバイスの近傍に配置される。電磁放射線改変物品の配置は、電磁放射線を放出するデバイスと、放出された電磁放射線の影響から保護されることが望ましいデバイス又は材料との間になるように選択することができる。したがって、電磁放射線改変物品は、放出された電磁放射線を反射、減衰、リダイレクト、又はこれらの任意の組み合わせを行って、放出デバイスから保護されるデバイス又は材料(例えば、犠牲者)に到達する(例えば、受け取られる)電磁放射線の量を減少させることができる。
【0083】
電磁放射線を改変する方法
第4の態様では、本開示は、電磁放射線生成デバイスから発生し、電子デバイスによって受け取られる電磁放射線を改変する方法であって、上記の第2の態様による電磁放射線改変物品を電子デバイスに組み込むステップ、又は上記の第2の態様による物品を電子デバイスの近傍に配置するステップを含む、方法を提供する。いくつかのそのような方法では、上記の実施形態のいずれかによる電磁放射線改変物品は、電磁放射線生成デバイスから来る電子デバイスに向けられた電磁放射線を減少させるために電子デバイスと関連付けられ、又は電子デバイスの近くにあり、この場合、電子デバイスは「犠牲者」である。いくつかのそのような方法では、上記の実施形態のいずれかによる電磁放射線改変物品は、電磁放射線生成デバイスから放出された電磁放射線を電子デバイスにリダイレクトするために電子デバイスと関連付けられ、又は電子デバイスの近くにあり、この場合、電子デバイスは(「犠牲者」とは対照的に)「受信者」である。そのような方法の一例は、電子デバイスに向かって特定の方向に電磁放射線を反射することによって、都市環境における信号(例えば、5G信号)の受信を可能にすることである。
【0084】
第5の態様では、本開示は、電磁放射線生成デバイスから発生する電磁放射線を改変する方法であって、上記の第2の態様による物品を電磁放射線生成デバイスに組み込むステップ、又は上記の第2の態様による物品を電磁放射線生成デバイスの近傍に配置するステップを含む、方法を提供する。いくつかのそのような方法では、上記の実施形態のいずれかによる電磁放射線改変物品は、他の電子デバイスと潜在的に干渉する可能性があるデバイスから放出される電磁放射線を減少させるために電磁放射線生成デバイスと関連付けられ、又は電磁放射線生成デバイスの近くにあり、この場合、電子デバイスは「犠牲者」である。いくつかのそのような方法では、上記の実施形態のいずれかによる電磁放射線改変物品は、電磁放射線生成デバイスから放出された電磁放射線を電子デバイスにリダイレクトするために電磁放射線生成デバイスと関連付けられ、又は電磁放射線生成デバイスの近くにあり、この場合、電子デバイスは(「犠牲者」とは対照的に)「受信者」である。
【0085】
上記の2つの方法において、改変することは、多くの場合、電磁放射線を反射、減衰、及び/又はリダイレクトすることなどによって電磁放射線に干渉することを含む。多くの実施形態では、電子デバイス又は電磁放射線生成デバイスは、アンテナ、インターネット接続デバイス、スマートフォン、タブレットPC、TV、通信衛星、無線送信機、無線ルータ、無線増幅器、自律運転支援デバイス、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0086】
以下の実施例は、本発明の更なる特徴及び実施形態を説明するために記載される。
【実施例】
【0087】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。別段の記載がない限り、又は文脈から容易に明らかでない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、体積基準である。
【0088】
【0089】
試験方法
誘電体共振(SPDR)測定法
材料サンプルの誘電定数及び損失正接は、ネットワークアナライザと組み合わせてスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)を使用して測定した。使用されるSPDRの公称周波数は、10ギガヘルツ及び15ギガヘルツである。他の標準周波数は、1.1ギガヘルツ、2.4ギガヘルツ、及び5ギガヘルツである。
【0090】
測定手順:
-ネットワークアナライザの較正
-SPDRとネットワークアナライザとの結合調整
-空のSPDRの測定(共振周波数、Q値)
-材料サンプルを用いたSPDRの測定(共振周波数、Q値)
-サンプル厚さの測定
-SPDR専用ソフトウェアによる複素誘電パラメータの計算
【0091】
厚さhのサンプルに対する精度は、以下の通りである:
Δε/ε=±(0.0015+Δh/h)
Δtanδ=±2*10-5又は±0.03*tanδのいずれか高い方。
【0092】
両方のSPDRの材料サンプルサイズは、50ミリメートル×40ミリメートル×<0.5ミリメートルであるべきである。
【0093】
1ギガヘルツ未満(及び1ギガヘルツを含む)の誘電特性の測定のために、以下の手順を使用した:
誘電定数及び損失正接は、1メガヘルツから1ギガヘルツの周波数範囲をカバーするインピーダンスアナライザを使用して測定した。材料特性を測定するために、アナライザを測定固定具で拡張した。誘電特性の測定のための固定具は、平行板コンデンサの原理を使用することによって、材料パラメータを測定可能なインピーダンスに変換する。使用される測定固定具は、1メガヘルツから1ギガヘルツまでの周波数範囲における周波数依存性の誘電定数(Dk)及び損失正接(インピーダンスの実数部及び虚数部)を測定できる。
【0094】
最も正確な結果のために、試験下の材料(material under test、MUT)は、0.3ミリメートル~3ミリメートルの厚さ及び≧15ミリメートルの直径を有するディスクに調製された。
【0095】
較正は、材料測定の現場でベンダーが供給した較正アーチファクトを用いて実行した。
【0096】
各サンプルディスクの正確な厚さを、キャリパーを使用して測定した。インピーダンス及び厚さの既知の値を用いて、誘電率の複素値を得るために計算を実行することができる。
【0097】
実施例1:高誘電率を有するUV硬化性3D印刷材料の調製、処理、及び測定
それぞれ100.0グラムのUCST 45及び150.0グラムのチタン酸バリウムからなる2つのバッチを、DAC 400 FVZ/VAC-P/LR Speedmixer (Hauschild GmbH(Hamm,Germany))中で、2500回転/分、400ミリバールで4分間混合し、その後合わせた。この混合物を、混合直後にD30II 3Dプリンタ(Rapid Shape GmbH(Heimsheim,Germany))のリザーバに充填し、印刷ジョブを開始した。
【0098】
印刷ジョブの準備は、Netfabb2019(Autodesk(San Rafael,CA))を用いて、以下のパラメータで行った:エネルギー照射量:950ミリジュール/平方デシメートル;支持体幅:200マイクロメートル;オフセット:0マイクロメートル;収縮:0.6パーセント;Z補正:0マイクロメートル;層サイズ:25マイクロメートル;バーンイン因子:500パーセント。
【0099】
3D印刷された部品を、印刷後にプラットフォームから注意深く取り外し、イソプロパノールを含有する閉鎖可能な容器に移した。この容器を、水を満たしたSonorex Super RK 1028 BH超音波浴(Bandelin electronic GmbH(Berlin,Germany))に移し、超音波処理に15分間曝露した。その後、部品を容器から取り出し、圧縮空気を使用して残留している3D印刷材料及びイソプロパノールを除去した。この洗浄手順を2回実行した。
【0100】
各部品を洗浄した後、RS Cure UV硬化チャンバ(Rapid Shape GmbH(Heimsheim,Germany))内で、真空下で1200秒間、最大強度で両方の波長を使用して、部品を後硬化した。
【0101】
誘電特性の測定は、10ギガヘルツ及び15ギガヘルツで誘電体共振(SPDR)測定法に従って行った。結果を以下の表1に示す。
【0102】
【0103】
実施例2:低誘電率を有するUV硬化性3D印刷材料の調製、処理、及び測定
75.4グラムのSR 540、75.4グラムのTRGDMA、26.2グラムのMA 1、16.6グラムのHPMA、4.8グラムのMA 2、1.4グラムのOMNIRAD 819、及び68グラムのiM16 Kガラスバブルの2つのバッチを、DAC 400 FVZ/VAC-P/LR Speedmixer(Hauschild GmbH(Hamm,Germany))において、1400回転/分、400ミリバールで2分間混合した。この混合物を、混合直後にD30II 3Dプリンタ(Rapid Shape GmbH(Heimsheim,Germany))に充填し、印刷ジョブを開始した。
【0104】
印刷ジョブの準備は、Netfabb2019(Autodesk(San Rafael,CA))を用いて、以下のパラメータで行った:エネルギー照射量:500ミリジュール/平方デシメートル;支持体幅:200マイクロメートル;オフセット:0マイクロメートル;収縮:0.6パーセント;Z補正:0マイクロメートル;層サイズ:50マイクロメートル;バーンイン因子:500パーセント。
【0105】
3D印刷された部品を、印刷後にプラットフォームから注意深く取り外し、イソプロパノールを含有する閉鎖可能な容器に移した。この容器を、水を満たしたSonorex Super RK 1028 BH超音波浴(Bandelin electronic GmbH(Berlin,Germany))に移し、超音波処理に15分間曝露した。その後、部品を容器から取り出し、圧縮空気を使用して残留している3D印刷材料及びイソプロパノールを除去した。この洗浄手順を2回行った。
【0106】
各部品を洗浄した後、RS Cure UV硬化チャンバ(Rapid Shape GmbH(Heimsheim,Germany))内で、真空下で1200秒間、最大強度で両方の波長を使用して、部品を後硬化した。
【0107】
誘電特性の測定は、2.4ギガヘルツ及び5.2ギガヘルツで誘電体共振(SPDR)測定法に従って行った。結果を以下の表2に示す。
【0108】
【0109】
実施例3:高誘電損失係数を有する熱可塑性3D印刷粉末材料の調製、処理、及び測定
2.15キログラムのポリアミド12粉末及び2.85キログラムの炭化ケイ素粉末を円形容器に秤量し、最初に密閉容器を振盪しながら混合した。その後、ローラ架台を使用して30回転/分で10分間更に混合した。粉末容器をFormiga P110選択的レーザ焼結3Dプリンタ(EOS GmbH(Krailing,Germany))に接続した。粉末床を作製し、窒素雰囲気下で150℃の温度で2時間機械を予熱することによって、プリンタを準備した。印刷ジョブでは、メインチャンバの温度を150℃に設定し、赤外線ヒータの温度を175℃に設定した。レーザプロセスは、EOSによって提供されるPA12用の標準パラメータセットを使用して実行した。
【0110】
印刷ジョブは、Magics(Materialise(Lowen,Belgium))を使用して準備した。
【0111】
印刷プロセス後、プリンタを12時間冷却した後、部品をプリンタから取り出し、ガラス媒体を用いたサンドブラストによって洗浄した。
【0112】
誘電特性の測定は、1GHzで誘電体共振(SPDR)測定法に従って行った。結果を以下の表3に示す。
【0113】
【0114】
実施例4:3D印刷された本体の誘電特性を低減するためのハニカム設計の使用
Netfabb 2019(Autodesk(San Rafael,CA))及びMagics(Materialise(Lowen,Belgium))を使用して、プレートの2つのCADファイルを生成した。両プレートは1.85ミリメートルの厚さを有していた。1つのプレートは、1立方センチメートル当たり1.15グラムの密度を有する中実体として作製された。第2のプレートは、33%の密度減少をもたらすハニカム設計を使用して印刷された。
図8を参照すると、波形形状830を有する内部材料によって第2の外壁820に接続された第1の中実外壁810を有する低密度プレート800が示されている。したがって、プレート800は、プレート800全体の密度を減少させる複数の開放空間840を画定する。
【0115】
75.4グラムのSR 540、75.4グラムのTRGDMA、26.2グラムのMA 1、16.6グラムのHPMA、4.8グラムのMA 2、及び1.4グラムのOMNIRAD 819からなる3D印刷樹脂を使用して、プレートを印刷した。この混合物を、D30II 3Dプリンタ(Rapid Shape GmbH(Heimsheim,Germany))のリザーバに充填し、印刷ジョブを開始した。
【0116】
印刷ジョブの準備は、Netfabb2019(Autodesk(San Rafael,CA))を用いて、以下のパラメータで行った:エネルギー照射量:400ミリジュール/平方デシメートル;支持体幅:200マイクロメートル;オフセット:0マイクロメートル;収縮:0.6パーセント;Z補正:0マイクロメートル;層サイズ:50マイクロメートル;バーンイン因子:500パーセント。
【0117】
3D印刷された部品を、印刷後にプラットフォームから注意深く取り外し、イソプロパノールを含有する閉鎖可能な容器に移した。この容器を、水を満たしたSonorex Super RK 1028 BH超音波浴(Bandelin electronic GmbH(Berlin,Germany))に移し、超音波処理に15分間曝露した。その後、部品を容器から取り出し、圧縮空気を使用して残留している3D印刷材料及びイソプロパノールを除去した。この洗浄手順を2回行った。
【0118】
中実プレート及びハニカムプレートの誘電特性の測定は、誘電体共振(SPDR)測定法に従って行った。2つのプレート間の誘電率の差は、
図9Aのグラフに周波数の関数としてプロットされている。2つのプレート間の誘電損失係数の差は、
図9Bのグラフに周波数の関数としてプロットされている。
【0119】
実施例5:円筒形誘電体共振器を使用した純粋な誘電体周波数選択性表面の設計及び検証
純粋な誘電体周波数選択性表面(FSS)を形成するために、複数の円筒形ディスク誘電体共振器が、一定のピッチを有するマトリックスに配列されるように設計された。サンプルが作製された材料は、3Dプリンタと共にしばしば使用される誘電体材料であるポリアミド12(PA12)であった。
【0120】
PA12材料の電磁特性を、誘電体共振(SPDR)測定法に従って測定した。PA12は、10GHzで約2.44の誘電定数(例えば、誘電率の実部)及び0.007の損失正接を有すると決定された。
【0121】
共振器を所定の位置に保持し、機械的安定性を高めるために、格子構造が共振器アレイの外側シェル上に層として適用される。格子は、特徴(例えば、格子サイズ)が目標波長と比較して小さくなるように設計されたので、格子全体は、共振に対してわずかな影響しか及ぼさず、低減された誘電率を有するプレーン材料のシートとして扱うことができる。設計は、3D電磁シミュレーションソフトウェアCST/Dassault Design Suiteを使用して実行した。
【0122】
アレイのプロトタイプのモデルを
図10Aに示す。プロトタイプ1000Aは、z軸に沿って変動する直径を有する円筒形ディスク誘電体共振器1010を含んでいた。その共振器スタイルでは、共振器の総体積は、外径を改変する必要なく、したがってこの場合は外側格子構造1020を変更する必要なく、更に非常に正確に調整することができる。更なる寸法は、
図10Bから得ることができる。1つの「セル」は、X/Y平面の24ミリメートル(mm)×24mmの正方形の切り欠きとして定義され、その縁部は、格子1020の縁部に対して接線方向に整列され、正方形の中心は、円筒1010の中心に等しい。
【0123】
3Dシミュレーションから、3D CADファイルが生成され、
図10Cに示すプロトタイプサンプルを積層造形(3D印刷)するために使用された。構造1000Cは、上述の手順を使用して分析された。
【0124】
図11を参照すると、FSSアレイ構造1000Cを試験するために、この測定のために作製された専用試験セットアップを含む無響遮蔽チャンバ1100が使用され、チャンバ1100内部の各側に対面して位置決めされた送信機アンテナ1110及び受信機アンテナ1112を含む、2つの周知の試験アンテナを含む測定が行われた。チャンバ1100は、セットアップが周囲の影響から遮蔽されることを確実にし、チャンバ1100内の望ましくない反射を最小化するように設計された。各試験アンテナ1110、1112とFSSサンプル1000Cとの間の距離は、2m~2.5mであり、両方のアンテナに対して等しかった。フラウンホーファー距離を超えるのに十分に大きい距離を選択することが好ましい。チャンバ1100の中央において、各試験アンテナ1110、1112から同じ距離に、送信アンテナ側に面するピラミッド状発泡吸収体で作製されたバリア平面1120が配置された。平面1120の中央(例えば、約1.5mの高さ)において、FSSサンプル1000Cのサイズを有する吸収体から小さな窓が切り取られた。この窓は透過領域と呼ばれ、FSSサンプル1000Cがその窓内に配置された。試験アンテナ1110、1112は、測定帯域幅をカバーするように選択された。
【0125】
較正は、「スルー(thru)」測定と呼ばれる空の透過領域を用いて透過測定を実行することによって実行した。次いで、サンプル1000Cをチャンバ1100の窓領域に配置し、測定を繰り返した。結果を「スルー」測定値に対して正規化した。
図12を参照すると、4つの主要な周波数領域が識別された。1つの通過帯域は約11.4GHzまでの範囲である。通過帯域は、RF波が実質的に減衰されることなく(減衰<2dB)構造を通過することができる周波数帯域である。阻止帯域は、11.5GHzを中心として約11.4GHzから11.6GHzまでの範囲である。阻止帯域は、RF波が減衰又は反射され、構造を実質的に通過できない(減衰≧2dB)周波数帯域として定義される。第3の領域は、約11.6GHzから約12.5GHzまでの別の通過帯域である。第4の領域は、約12.5GHzで始まり、共振器及び格子の高次モードによって形成される。この領域は、アプリケーションのために使用されることが意図されていない。FSSは、領域4のより低い周波数を可能な限り高く(基礎となる通過帯域に可能な限り遠く)シフトするように設計されるべきである。12.5GHzまで、FSSの周波数挙動は、一般的に帯域消去フィルタとして説明することができる。
図12における測定とシミュレーションとの比較は、シミュレーションによって捕捉されなかった不完全な測定セットアップに主に起因するいくつかの小さな差異を伴う良好なアライメントを示す。
【0126】
本明細書に引用した特許、特許文献、及び刊行物の全開示は、それぞれが個別に組み込まれたかのごとく、それらの全体が参照により組み込まれる。記載されている本明細書と、参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文書の開示との間に、何らかの矛盾又は不一致が存在する限りにおいて、記載されている本明細書を優先するものとする。当業者には、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することのない、本開示に対する様々な改変及び変更が明らかとなるであろう。本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されることは意図していないこと、並びにそのような実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図した本開示の範囲内の例としてのみ提示されることを理解されたい。
【国際調査報告】