(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】バイオテクノロジー用途のための流体サンプリングシステム、その操作方法および使用
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
C12M1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551748
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2022054899
(87)【国際公開番号】W WO2022180260
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523258104
【氏名又は名称】セキュアセル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SECURECELL AG
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【氏名又は名称】小松原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】アンドレッタ、カルロ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB01
4B029CC01
4B029HA05
4B029HA09
(57)【要約】
バイオテクノロジー用途のための流体サンプリングシステムは、細胞(6)を含む流体培地(4)のためのバイオリアクターチャンバ(2)を備えており、さらに、制御された量の培地をバイオリアクターチャンバから標的容器(10)に移送するための移送手段(8)を備えている。移送手段は、内部プローブ容積(14)を取り囲み、入口プローブ開口(16)および出口プローブ開口(18)を有する液密プローブハウジングを備えた灌流プローブ(12)と、プローブハウジングに密封接続されるとともに、入口プローブ開口のカバーを形成する流体ろ過要素(20)と、を含む。流体接続ラインは、流体レセプタクル(30)であって、灌流プローブの出口プローブ開口(18)と標的容器(10)との間に配置されるとともに、流体レセプタクルの瞬間重量に対応する重量信号を取得するように構成された重量測定ステーション(32)に配置される、流体レセプタクル(30)を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオテクノロジー用途のための流体サンプリングシステムであって、
細胞(6)を含む流体培地(4)のためのバイオリアクターチャンバ(2)を備えており、さらに、制御された量の培地をバイオリアクターチャンバから標的容器(10)に移送するための移送手段(8)を備えており、移送手段(8)は、
-内部プローブ容積(14)を取り囲むとともに、入口プローブ開口(16)および出口プローブ開口(18)を有する液密プローブハウジングを備えた灌流プローブ(12)と、
-液蜜プローブハウジングに密封接続されるとともに、入口プローブ開口のカバーを形成する流体ろ過要素(20)であって、一次面(22)および一次面(22)の反対側の二次面(24)を有する少なくとも1つのモノリシックプレートレットとして形成されており、一次面は、灌流プローブがバイオリアクターチャンバ内に挿入されるかまたはバイオリアクターチャンバに接続されているときに培地と接触しており、二次面は、灌流プローブの内部容積と接触しており、流体ろ過要素は、一次面と二次面との間にろ過通路を画定するマイクロチャネル(26)のアレイを備えており、マイクロチャネルはそれぞれ、0.2~64μmの範囲で選択される所定の開口部を有している、流体ろ過要素と、
-培地をバイオリアクターチャンバから灌流プローブを通してろ過された培地を得るように駆動するとともに、ろ過された培地を流体接続ラインを通して標的容器へと駆動するための流体ドライバ手段(28a、28b)と、を備えており、
流体接続ラインは、灌流プローブの出口プローブ開口(18)と標的容器(10)との間に配置された流体レセプタクル(30)を備えている、流体サンプリングシステムにおいて、
前記流体レセプタクル(30)が、該流体レセプタクルの瞬間重量に対応する重量信号を取得するように構成された重量測定ステーション(32)に配置されていることを特徴とする、流体サンプリングシステム。
【請求項2】
前記重量測定ステーションが、曲げビームロードセル(34)を備えている、請求項1に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項3】
前記重量測定ステーション(32)が、第1のビーム端部(38)および第2のビーム端部(40)を有するとともに、第1のビーム端部と第2のビーム端部との間に位置する回動点(44)において重量測定ステーションのホルダベース(42)に回動可能に取り付けられた剛性ビーム(36)を備えており、前記流体レセプタクルが、第1のビーム端部に載置され、それによって下向きの力(Fd)を発生させ、第2のビーム端部が、対応する上向きの力(Fu)をロードセル(34)に伝達する、請求項2に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項4】
前記流体レセプタクル(30)が、
-流体密封レセプタクルチャンバ(46)であって、該レセプタクルチャンバの上部領域に位置する流体入口コネクタ(48)を備えている、流体密封レセプタクルチャンバと、
-前記レセプタクルチャンバの底部領域に位置する流体出口コネクタ(50)と、
-前記レセプタクルチャンバの上部領域に位置する気体圧力補正ポート(52)と、を備えている、請求項1~3のいずれか一項に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項5】
前記流体ドライバ手段が、
-前記出口プローブ開口(18)と前記流体入口コネクタ(48)との間に配置された双方向流体ポンプ(28a)と、
-前記流体出口コネクタ(50)と前記標的容器(10)との間に配置された一方向流体ポンプ(28b)と、を備えている、請求項4に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項6】
前記流体ドライバ手段が、
-洗浄流体リザーバ(56)を前記双方向流体ポンプ(28a)に選択的に接続するために、前記出口プローブ開口(18)と前記双方向流体ポンプ(28a)との間に配置された第1の流体スイッチ(54)と、
-前記一方向流体ポンプ(28b)を廃棄物容器(60)に選択的に接続するために、前記一方向流体ポンプ(28b)と前記標的容器(10)との間に配置された第2の流体スイッチ(58)と、をさらに備えている、請求項4または5に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項7】
各流体ろ過要素(16)が、第1の厚さ(D1)を有するフレーム領域を備えており、前記マイクロチャネルアレイが、前記フレーム領域に取り囲まれた少なくとも1つのコア領域(62)内に配置されており、前記コア領域が、前記第1の厚さよりも実質的に小さい第2の厚さ(D2)を有している、請求項1~6のいずれか一項に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項8】
前記マイクロチャネルアレイが複数のアレイセグメントを有しており、隣接するセグメントが、前記第1の厚さ(D1)に実質的に等しい第3の厚さ(D3)を有する分離リブによって分離されている、請求項7に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項9】
各流体ろ過要素がシリコン(Si)から作製されるとともに、接着または溶接によって前記プローブハウジング(64)に密閉接続されている、請求項7または8に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項10】
前記プローブハウジング(64)が、実質的に角筒状であるとともに、一対の互いに平行な第1の側面(66a、66b)と、一対の互いに平行な第2の側面(66c、66d)とを備えており、各対の側面は、他の対の側面に対して垂直であり、前記第1の側面(66a、66b)が、前記入口プローブ開口(16)を形成するように構成されており、前記第2の側面(66c、66d)が、前記出口プローブ開口(18)を形成するように構成されている、請求項7~9のいずれか一項に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項11】
前記プローブハウジング(64)が、管状軸Lに沿って配置された複数の少なくとも2つの別個のプローブコンパートメント(64-1、64-2、64-3)を備えており、各コンパートメントが、それぞれの対の第1の側面および第2の側面を有している、請求項10に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項12】
前記第2の側面(66c、66d)には、長手方向溝(70-1、70-2、70-3、70-4)が設けられており、各長手方向溝が、それぞれのプローブコンパートメント(64-1、64-2、64-3)およびそれぞれの流体出口ポート(72)に接続されており、各第2の側面が、側方カバーパッド(68)で覆われている、請求項10または11に記載の流体サンプリングシステム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の流体サンプリングシステムを操作する方法であって、
a)バイオリアクターチャンバ(2)に、細胞(6)を含む流体培地(4)を充填するステップと、
b)所定時間後に、ある量のろ過した培地を流体レセプタクル(30)に移して、流体レセプタクルの瞬間重量に対応する重量信号を取得するステップと、
c)ある量のろ過した培地を標的容器(10)にさらに移送するステップと、を含む方法。
【請求項14】
請求項6に記載の流体サンプリングシステムを操作する請求項13に記載の方法であって、
-洗浄流体リザーバ(56)を双方向流体ポンプ(28a)に選択的に接続するステップと、一方向流体ポンプ(28b)を廃棄物容器(60)に選択的に接続し、続いて、流体レセプタクル(30)を通して洗浄流体を駆動するステップと、をさらに含んでおり、
上記ステップが、少なくとも一連の前記ステップa)~c)の前に実行される、方法。
【請求項15】
ろ過された培地を、
-グルコース測定ステーション、
-複数のサンプル収集ステーション、
-採取ステーション、のうちの1つに方向付けるための、請求項1~12のいずれか一項に記載の流体サンプリングシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、バイオテクノロジー用途に適した流体サンプリングシステムに関する。さらに、本発明は、そのようなサンプリングシステムを操作する方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの流体サンプリングシステムが、バイオテクノロジーにおいて広く使用されている。そのような流体サンプリングシステムの1つのタイプは、一般に、対象の流体に浸漬された流体サンプリングプローブと、流体の一部を適切な流体受容部に移送する手段とを備えている。培養細胞などの粒子状物質だけでなく、様々な種類のデブリの望ましくないサンプリングを回避するために、このようなサンプリングプローブは一般に、ある種の精密ろ過装置を備えている。用途に応じて、流体サンプリングシステムは、流体スループット、移送される流体部分の精度、または移送される流体部分に含まれる粒子の粒径範囲などの選択された態様に関して最適な性能を発揮するように構成される。
【0003】
多くの場合、移送される流体の量を決定するための連続的に利用可能な手段を備えた流体サンプリングシステムを持つことが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、バイオテクノロジー用途に適した改良された流体サンプリングシステムを提供することである。特に、このような装置は、現在知られている装置の限界や欠点を克服するものである。
【0005】
本発明の一態様によれば、バイオテクノロジー用途のための流体サンプリングシステムは、細胞を含む流体培地(fluid culture medium)のためのバイオリアクターチャンバを備えており、さらに、制御された量の培地(culture medium)をバイオリアクターチャンバから標的容器に移送するための移送手段を備えている。移送手段は、内部プローブ容積を取り囲むとともに、入口プローブ開口および出口プローブ開口を有する液密プローブハウジングを備えた灌流プローブと、液密プローブハウジングに密封接続されるとともに、入口プローブ開口のカバーを形成する流体ろ過要素であって、一次面と一次面の反対側の二次面とを有する少なくとも1つのモノリシックプレートレットとして形成されており、一次面は、灌流プローブがバイオリアクターチャンバに挿入されるかまたはバイオリアクターチャンバに接続されたときに培地と接触し、二次面は灌流プローブの内部容積と接触しており、流体ろ過要素は、一次面と二次面との間にろ過通路を画定するマイクロチャネルのアレイを備えており、マイクロチャネルはそれぞれ、0.2~64μmの範囲で選択される所定の開口部を有している、流体ろ過要素と、流体ドライバ手段であって、培地をバイオリアクターチャンバから灌流プローブを通してろ過された培地を得るように駆動するとともに、ろ過された培地を流体接続ラインを通して標的容器へと駆動するための流体ドライバ手段と、を備えている。流体接続ラインは、灌流プローブの出口プローブ開口と標的容器との間に配置された流体レセプタクルを備えている。流体レセプタクルは、流体レセプタクルの瞬間重量(momentary weight)に対応する重量信号を取得するように構成された重量測定ステーションに配置される。
【0006】
さらなる態様によれば、上記で定義された流体サンプリングシステムを操作する方法が提供され、この方法は以下のステップを含む。
a)バイオリアクターチャンバに、細胞を含む流体培地を充填するステップ、
b)所定時間後に、ある量のろ過した培地を流体レセプタクルに移して、流体レセプタクルの瞬間重量に対応する重量信号を取得するステップ、
c)ある量のろ過した培地を標的容器にさらに移送するステップ。
【0007】
別の態様によれば、上記で定義される流体サンプリングシステムは、ろ過した培地を以下のいずれかに方向付けるために使用される。
-グルコース測定ステーション、
-複数のサンプル収集ステーション、
-採取(harvesting)ステーション。
【0008】
「流体サンプリング」という用語は、サンプルを採取するときに通常使用される少量の流体、すなわち分析用にある量の流体を取り出すこと(withdrawal)に限定されない。この用語にはまた、生産目的に有用な比較的多量の流体も含まれるものとする。
【0009】
本発明は、灌流プローブがバイオリアクターチャンバ内に挿入されるときに、一次面が培地と直接接触する実施形態に限定されるものではない。本発明はまた、適切な接続手段によって、特に適切な追加の流体容器を用いてバイオリアクターチャンバに接続されるときに、一次面が培地と接触する実施形態を含む。
【0010】
流体ろ過要素は、外面と、外面の反対側の内面とを有する少なくとも1つのモノリシックプレートレットとして形成され、内面は、灌流チャンバの内容積と接触している。流体ろ過要素は、外面と内面との間にろ過流体通路を画定するマイクロチャネルのアレイを備えている。マイクロチャネルは、0.2~64μmの範囲で選択される所定の開口部を有する。マイクロチャネルの全てが、製造公差内で正確に同じ開口部を有することが非常に好ましく、これは、10%または実質的にそれ未満の差を意味する。
【0011】
マイクロチャネルの最適な寸法は、特定の用途によって異なる。一般に、0.2~10μmの範囲で選択される。下限は主に利用可能な形成技術によって決定されるが、十分なスループットを確保する必要もある。上限は、マイクロチャネルへの侵入を防ぐべき粒子の大きさによって決定される。細菌が精密ろ過装置を通過するのを防止する必要がある特定の用途では、マイクロチャネルは、約0.45μmを超えない開口部を有していなければならない。他の用途では、マイクロチャネルは、好ましくは0.9~2.2μmの範囲、特に約1.6μmの開口部を有する。0.2~32μmの範囲、特に4~32μmの範囲の開口部は通常、細胞ろ過のために、すなわち、バイオリアクターチャンバから流体を抽出するために使用される。
【0012】
「開口部」という用語は、断面が円形のマイクロチャネルの場合は直径と理解し、断面が円形でないマイクロチャネルの場合は、断面の横方向の最小サイズと理解するものとする。上記の直径範囲の開口部を形成するために現在利用可能な技術は、通常、最大5までの高さと直径の比(「アスペクト比」)を必要とする。言い換えれば、マイクロチャネルを取り囲む領域における前面プレートレットの厚さは、マイクロチャネルの直径にもよるが、1~50μmの範囲で十分に小さくする必要がある。前面プレートレットの十分な剛性を提供するために、特定の実施形態では、マイクロチャネルから変位した位置で実質的により厚い補強領域が提供される。
【0013】
本発明の装置は、一般に、バイオテクノロジー用途を意図しており、水性媒体との適合性ならびに滅菌および洗浄操作への適合性を意味する。したがって、装置は、例えば、適切な等級のステンレス鋼などの適切な材料で有利に作製される。さらに、「流体安全な様式(fluid-safe manner)」および「密封して接続された(sealingly connected)」という用語は、バイオリアクターなどのバイオテクノロジーの設備(setup)で一般的な温度および圧力条件において、望ましくない流体の移動を防止することができる技術的解決策を意味するものとする。これは、一般に、ステンレス鋼、シリコンおよび場合によってはガラスで作られた部品、ならびに適切なエラストマー材料を使用するOリングシールを用いて達成可能である。金属シールも使用可能である。
【0014】
本発明の重要な構成要素は、システム内で移送されている流体の量を連続的に監視することを可能にする重量測定ステーションを含むことである。
有利な実施形態は、従属請求項に記載されており、また以下で説明する。
【0015】
原則として、様々なタイプの重量測定ステーションを使用することができる。特に有利な実施形態(請求項2)によれば、重量測定ステーションは、曲げビームロードセルを備えている。このような装置は、様々な構成および様々な重量範囲のものが入手可能である。
【0016】
有利には(請求項3)、重量測定ステーションは、第1のビーム端部および第2のビーム端部を有するとともに、第1のビーム端部と第2のビーム端部との間に位置する回動点(pivoting point)で重量測定ステーションのホルダベースに回動可能に取り付けられる剛性ビームを備えており、流体レセプタクルは、第1のビーム端部に載置され、それによって下向きの力Fdを発生させ、第2のビーム端部は、対応する上向きの力Fuをロードセルに伝達する。このようにして、重量測定の適切な精度を保ちながら、非常にコンパクトで入手しやすい曲げビームロードセルの使用が可能になる。
【0017】
一実施形態(請求項4)によれば、流体レセプタクルは、レセプタクルチャンバであって、レセプタクルチャンバの上部領域に配置された流体入口コネクタを備えているレセプタクルチャンバと、レセプタクルチャンバの底部領域に配置された流体出口コネクタと、レセプタクルチャンバの上部領域に配置された気体圧力補正ポートと、を備えている。底部領域が、内径が下方向に徐々に減少するテーパ状の断面を有する場合、特に有利である。特定の実施形態では、流体コネクタは、いわゆるルアータイプである。
【0018】
必要な基本の流体処理操作を可能にするために、流体ドライバ手段は、有利には、出口プローブ開口と流体入口コネクタとの間に配置された双方向流体ポンプと、流体出口コネクタと標的容器との間に配置された一方向流体ポンプとを備えている(請求項5)。有利な実施形態(請求項6)によれば、流体ドライバ手段は、洗浄流体リザーバを双方向流体ポンプに選択的に接続するために出口プローブ開口と双方向流体ポンプとの間に配置された第1の流体スイッチと、一方向流体ポンプを廃棄物容器に選択的に接続するために一方向流体ポンプと標的容器との間に配置された第2の流体スイッチと、をさらに備えている。
【0019】
特に有利な実施形態(請求項7)によれば、各流体ろ過要素は、第1の厚さD1を有するフレーム領域を備えており、マイクロチャネルアレイは、フレーム領域に囲まれた少なくとも1つのコア領域に配置されており、コア領域は、第1の厚さよりも実質的に小さい第2の厚さD2を有している。例えば、フレーム領域は、0.3~0.8mm程度、特に約0.5mmの第1の厚さD1を有してもよく、コア領域は、わずか0.005~0.010mm、特に約0.008mmの第2の厚さD2を有してもよい。
【0020】
さらに、マイクロチャネルアレイが複数のアレイセグメントを含み、隣接するセグメントが、第1の厚さD1に実質的に等しい第3の厚さD3を有する分離リブによって分離されている場合に有利である(請求項8)。
【0021】
有利には、流体ろ過要素は、シリコン(Si)または窒化シリコン(窒化ケイ素、Si3N4)などのフォトリソグラフィ加工に適した材料で作られており、これは、明確な形状の狭い構造を形成するのに非常に便利な技術である。一実施形態(請求項9)では、各流体ろ過要素は、シリコン製であり、接着または溶接によってプローブハウジングに密封接続される。いくつかの実施形態では、流体伝達要素は機能化されており、すなわち、適切なコーティングが施されている。このようなコーティングの種類および厚さは、特定の用途によって異なる。
【0022】
特に有利な実施形態(請求項10)によれば、プローブハウジングは、実質的に角筒状(square-tubed)であり、一対の互いに平行な第1の側面と、一対の互いに平行な第2の側面とを備えており、各対の側面は、他の対の側面に対して垂直であり、第1の側面は、入口プローブ開口を形成するように構成されており、第2の側面は、出口プローブ開口を形成するように構成されている。さらなる実施形態(請求項11)によれば、プローブハウジングは、管軸(tubular axis)Lに沿って配置された複数の少なくとも2つの別個のプローブコンパートメントを備えており、各コンパートメントは、それぞれ対の第1の側面および対の第2の側面を有している。さらに別の実施形態(請求項12)によれば、第2の側面は長手方向溝を備えており、各長手方向溝は、それぞれのプローブコンパートメントおよびそれぞれの流体出口ポートに接続されており、第2の側面の各々は、側方カバーパッドで覆われている。
【0023】
有利な実施形態(請求項14)によれば、特定の実施形態の流体サンプリングシステムを操作する方法は、洗浄流体リザーバを双方向流体ポンプに選択的に接続するステップと、一方向流体ポンプを廃棄物容器に選択的に接続し、続いて、流体レセプタクルを通して洗浄流体を駆動するステップと、をさらに含み、上記ステップは、少なくとも一連のステップa)~c)の前に実行される。
【0024】
例えば、単一の流体接続ラインによって、流体ろ過要素を定期的にバックフラッシュ(backflush)するために、流体の取り出し(withdrawal)だけでなく流体の供給も管理することが可能である。理解されるように、このような接続ラインは適切な流体処理システムによって管理される。このようなシステムは通常、少なくとも以下のステップを実行することができるように構成される。
【0025】
a)ろ過された流体を内部チャンバ容積から取り出すステップ、
b)緩衝容積を通してバックフラッシュ媒体を流すステップ。
実際、10回の取り出しと1回のバックフラッシュを繰り返す段階的操作に依存するプロトコルが、流体ろ過要素の表面での固形デブリの形成による目詰まりを非常に効率的に防止できることが判明した。
【0026】
目詰まりを防止するためのさらなる手段として、流体伝達要素の表面を実質的に平行な媒体流が流れるように、連続的な撹拌を適用することができる。
本発明の上記および他の特徴および目的、ならびにそれらを達成する方法は、添付の図面と併せて本発明の実施形態の以下の説明を参照することによって、より明らかになり、そして、本発明をより良く理解することになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】バイオテクノロジー用途のための流体サンプリングシステムの一実施形態を概略図で示す。
【
図2】流体レセプタクルを含む流体サンプリングシステムの重量測定ステーションを概略垂直断面図で示す。
【
図3】部分的に分解された状態の流体レセプタクルを斜視図で示す。
【
図4】組み立てられた状態の
図3の流体レセプタクルを垂直断面図で示す。
【
図5】部分的に分解された状態の流体サンプリングシステムの重量測定ステーションを斜視図で示す。
【
図6】組み立てられた状態の
図5の重量測定ステーションを斜視図で示す。
【
図7】重量測定ステーションと流体レセプタクルとを備える取付ユニットを斜視図で示す。
【
図9】
図8の灌流プローブの流体伝達要素を上面図で示す。
【
図12】分解された状態の
図8の灌流プローブを斜視図で示す。
【
図13】
図8の灌流プローブの先端部分を上面図で示す。
【
図15】側方被覆パッドを除去した状態の
図13の先端部分を
図13のA-A線における断面図で示す。
【
図17】側方被覆パッドを除去した状態の
図13の先端部分を第2の側面図で示す。
【
図19】バイオテクノロジー用途のための流体サンプリングシステムの別の実施形態を概略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一般的な原理をより良く説明するために、
図1は、流体サンプリングシステムの全体概略図を示す。さらに、
図2は、流体レセプタクルを含む、流体サンプリングシステムの重量測定ステーションの概略図を示す。本発明のさらなる詳細は
図3~18および
図19に示す。
【0029】
図1および
図2に示すように、バイオテクノロジー用途のための流体サンプリングシステムは、細胞(6)を含む流体培地(4)のためのバイオリアクターチャンバ(2)を備えており、さらに、制御された量の培地をバイオリアクターチャンバから標的容器(10)に移送するための移送手段(8)を備えている。移送手段は以下を含む。
【0030】
-内部プローブ容積(14)を取り囲むとともに、入口プローブ開口(16)および出口プローブ開口(18)を有する液密プローブハウジングを備えた灌流プローブ(12)、
-液蜜プローブハウジングに密封接続されるとともに、入口プローブ開口のカバーを形成する流体ろ過要素(20)であって、一次面(22)および一次面(22)の反対側の二次面(24)を有する少なくとも1つのモノリシックプレートレットとして形成されており、一次面は、灌流プローブがバイオリアクターチャンバ内に挿入されるかまたはバイオリアクターチャンバに接続されているときに培地と接触しており、二次面は、灌流プローブの内部容積と接触しており、流体ろ過要素は、一次面と二次面との間にろ過通路を画定するマイクロチャネル(26)のアレイを備えており、マイクロチャネルはそれぞれ、0.2~64μmの範囲で選択される所定の開口部を有している、流体ろ過要素(20)、
-流体ドライバ手段(28a、28b)であって、培地をバイオリアクターチャンバから灌流プローブを通してろ過された培地を得るように駆動するとともに、ろ過された培地を流体接続ラインを通して標的容器へと駆動する、流体ドライバ手段(28a、28b)。
【0031】
流体接続ラインは、灌流プローブの出口プローブ開口(18)と標的容器(10)との間に配置された流体レセプタクル(30)を備えており、流体レセプタクル(30)は、流体レセプタクルの瞬間重量に対応する重量信号を取得するように構成された重量測定ステーション(32)に配置されている。
【0032】
図2、5および6に示す実施形態では、重量測定ステーションは、曲げビームロードセル(34)を備えている。重量測定ステーション(32)は、第1のビーム端部(38)および第2のビーム端部(40)を有するとともに、第1のビーム端部と第2のビーム端部との間に位置する回動点(pivot point)(44)において重量測定ステーションのホルダベース(42)に回動可能(pivotably)に取り付けられた剛性ビーム(36)をさらに備えており、流体レセプタクルは、第1のビーム端部に載置され、それによって下向きの力(Fd)を発生させ、第2のビーム端部は、対応する上向きの力(Fu)をロードセル(34)に伝達する。
【0033】
図3および4に示すように、流体レセプタクル(30)は、レセプタクルチャンバの上部領域に配置された流体入口コネクタ(48)と、レセプタクルチャンバの底部領域に配置された流体出口コネクタ(50)と、レセプタクルチャンバの上部領域に配置された気体圧力補正ポート(52)とを有する流体密封レセプタクルチャンバ(46)を備えている。
【0034】
再び
図1に戻ると、流体ドライバ手段は、洗浄流体リザーバ(56)を双方向流体ポンプ(28a)に選択的に接続するために、出口プローブ開口(18)と双方向流体ポンプ(28a)との間に配置された第1の流体スイッチ(54)と、一方向流体ポンプ(28b)を廃棄物容器(60)に選択的に接続するために、一方向流体ポンプ(28b)と標的容器(10)との間に配置された第2の流体スイッチ(58)と、をさらに備えている。
【0035】
本発明をさらに説明するために、
図7は、重量測定ステーションおよび流体レセプタクルを備えている取付けユニットを示している。
図8~18は、灌流プローブのさらなる詳細を示している。
【0036】
各流体ろ過要素(16)は、第1の厚さ(D1)を有するフレーム領域を備えており、マイクロチャネルアレイは、フレーム領域に囲まれた少なくとも1つのコア領域(62)内に配置されており、コア領域は、第1の厚さよりも実質的に小さい第2の厚さ(D2)を有している。マイクロチャネルアレイは複数のアレイセグメントを有しており、隣接するセグメントは、第1の厚さ(D1)に実質的に等しい第3の厚さ(D3)を有する分離リブによって分離されている。
【0037】
図示の実施形態では、各流体ろ過要素は、シリコン(Si)から作製されるとともに、接着または溶接によってプローブハウジング(64)に密閉接続されている。
プローブハウジング(64)は、実質的に角筒状であり、一対の互いに平行な第1の側面(66a、66b)と、一対の互いに平行な第2の側面(66c、66d)とを備えており、各対の側面は、他の対の側面に対して垂直であり、第1の側面(66a、66b)は、入口プローブ開口(16)を形成するように構成されており、第2の側面(66c、66d)は、出口プローブ開口(18)を形成するように構成されている。
【0038】
図12に示す実施形態では、プローブハウジング(64)は、管状軸Lに沿って配置された複数の少なくとも2つの別個のプローブコンパートメント(64-1、64-2、64-3)を備えており、各コンパートメントは、それぞれの対の第1の側面および第2の側面を有している。特に、第2の側面(66c、66d)には、長手方向溝(70-1、70-2、70-3、70-4)が設けられており、各長手方向溝は、それぞれのプローブコンパートメント(64-1、64-2、64-3)およびそれぞれの流体出口ポート(72)に接続されており、各第2の側面は、側方カバーパッド(68)で覆われている。
【0039】
上記したシステムを操作するときは、以下のステップを実行する。
a)バイオリアクターチャンバ(2)に、細胞(6)を含む流体培地(4)を充填するステップ、
b)所定時間後に、ある量のろ過した培地を流体レセプタクル(30)に移すとともに、流体レセプタクルの瞬間重量に対応する重量信号を取得するステップ、
c)ある量のろ過した培地を標的容器(10)にさらに移送するステップ。
【0040】
一実施形態では、操作方法はさらに以下のステップを含む。
-洗浄流体リザーバ(56)を双方向流体ポンプ(28a)に選択的に接続するステップ、および、一方向流体ポンプ(28b)を廃棄物容器(60)に選択的に接続し、その後、流体レセプタクル(30)を通して洗浄流体を駆動するステップ。
【0041】
上記ステップは、少なくとも一連のステップa)~c)の前に実行される。
バイオテクノロジー用途のための流体サンプリングシステムのさらなる実施形態を
図19に示す。
図1に示すシステムとは対照的に、灌流プローブ(12)はバイオリアクター(2)に直接浸漬されない。代わりに、灌流プローブは、接続チューブ、特に可撓性チューブによってバイオリアクター(2)と流体連通している培地容器(100)内に浸漬される。さらに、
図19の例では、灌流プローブ(12)は、2つの流体ろ過要素(20)を備えている。この実施形態は、流体ろ過要素(20)の有効面積を拡大することができるので、
図1の実施形態と比較して実質的に増加した流体スループットを可能にする。
【国際調査報告】