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特表2024-507585高スループット超電導体製造用マルチスタックサセプタ反応器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】高スループット超電導体製造用マルチスタックサセプタ反応器
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/46 20060101AFI20240213BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20240213BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C23C16/46
C23C16/458
H01B13/00 561Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552041
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 US2022017868
(87)【国際公開番号】W WO2022182967
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/154,119
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523432771
【氏名又は名称】メトオックス インターナショナル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カンダン,シャハブ
(72)【発明者】
【氏名】シャシダール,ナーガラージャ
(72)【発明者】
【氏名】ノヴォツィロヴ,ミハイル
【テーマコード(参考)】
4K030
5G321
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030BA42
4K030CA02
4K030CA12
4K030EA04
4K030GA02
4K030GA14
4K030KA01
4K030KA23
4K030KA41
5G321AA04
5G321BA01
5G321BA03
5G321BA04
5G321BA99
5G321CA24
5G321DB40
5G321DB41
(57)【要約】
薄膜、特に高温超電導(HTS)被覆導体を堆積するための蒸着反応装置、システム及び方法は、生産スループットを向上させるために多面式サセプタ及びサセプタ対を利用する。反応器はまた、さらなるスループットの向上のために、単一の反応室内でサセプタがマルチスタック配列に構成されることがある。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い基体(230)上に超電導体を製造するための蒸着装置(200)であって、前記装置が、
真空下に維持され、前駆体注入シャワーヘッド(210)、排出ポート(220)、及び基体サセプタ(260)を収容する堆積チャンバ(205)であって、
前記サセプタ(260)が、前記サセプタの上面(262)及び下面(264)の両方を加熱するように構成されたヒータ要素(270)を備える、前記堆積チャンバ(205)と、
繰り出しリール(240)と巻き取りリール(250)との間で連続的に巻き取られる細長い基体テープ(230)であって、前記基体テープが、前記サセプタ(260)の前記上面及び前記下面の両方に摺動可能に接触する、前記細長い基体テープ(230)と、
を備える、前記蒸着装置(200)。
【請求項2】
前記サセプタ(260)が、それぞれが前記基体テープ(230)の幅と実質的に同じ幅を有する複数の隆起部分(420)をさらに備え、各隆起部分が、前記サセプタの本体(410)の前記上面から垂直に、かつ前記サセプタの前記本体の長さに沿って長手方向に、2つの隣接する隆起部分がチャネル(430)を形成するように、延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基体テープ(230)が、前記サセプタの各側面に複数回巻き付いて接触する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記基体テープ(230)が、共に並進する複数の平行テープから構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
各基体テープ(230)が、前記サセプタに複数回巻き付く、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記反応室(205)は、複数対のサセプタ(260)を備え、基体テープ(230)は、前記反応室(205)内で、各対のサセプタ(260)の前記上面及び前記下面の両方に摺動可能に接触する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
細長い基体(230)上に超電導体を製造するための蒸着装置(700/800/900/1000/1100/1110)であって、前記装置が、
真空下に維持され、前駆体注入シャワーヘッド(210)、排出ポート(220)、ならびに上部の第1の基体サセプタ半体(510)及び下部の第2の基体サセプタ半体(520)を備える2ピース型基体サセプタを収容する堆積チャンバ(205)であって、
各サセプタ半体(510/520)がヒータ要素(270)を備える、前記堆積チャンバ(205)と、
繰り出しリール(240)と巻き取りリール(250)との間で連続的に巻き取られる細長い基体テープ(230)であって、前記基体テープ(230)が、前記第1のサセプタ半体(510)の上面及び前記第2のサセプタ半体(520)の下面の両方に摺動可能に接触する、前記細長い基体テープ(230)と、
を備える、前記蒸着装置(700/800/900/1000/1100/1110)。
【請求項8】
前記基体サセプタ半体(510/520)が互いに結合される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記基体サセプタ半体(510/520)が垂直の距離(d)だけ離される、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記2ピース型基体サセプタが、前記サセプタ半体(510/520)の間に位置する仕切り板をさらに備える、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
各サセプタ半体(510/520)が、それぞれが基体テープの幅と実質的に同じ幅を有する複数の隆起部分(420)をさらに備え、各隆起部分が、前記サセプタの本体の前記上面から垂直に、かつ前記サセプタの前記本体(410)の長さに沿って長手方向に、2つの隣接する隆起部分がチャネル(430)を形成するように、延在する、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記基体テープ(230)が、前記2ピース型基体サセプタ(510/520)に複数回巻き付く、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記基体テープ(230)が、共に並進する複数の平行テープから構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項14】
各基体テープ(230)が、前記2ピース型基体サセプタ(510/520)に複数回巻き付く、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記反応室(205)は、複数対の前記2ピース型基体サセプタ(510/520)を備え、基体テープ(230)は、前記反応室(205)内で、各2ピース型基体サセプタの、前記第1のサセプタ半体(510)の前記上面と、前記第2のサセプタ半体(520)の前記下面との両方に摺動可能に接触する、請求項7に記載の装置。
【請求項16】
細長い基体(230)上に超電導体を製造するための蒸着システム(1200)であって、前記システムが、
真空下に維持され、前駆体注入シャワーヘッド(210)と、排出ポート(220)と、複数のサセプタ表面(262/264)、各基体サセプタに接続された複数のヒータ要素(270)、及び繰り出しリール(240)と巻き取りリール(250)との間で連続的に巻き取られる細長い基体テープ(230)を有する基体サセプタ(260/510/520)とを収容する堆積チャンバ(205)を含む蒸着装置(200/700/800/900/1000/1100/1110)であって、前記基体テープ(230)が、各基体サセプタの複数のサセプタ表面(262/264)に摺動可能に接触する、前記蒸着装置(200/700/800/900/1000/1100/1110)と、
前記蒸着装置(1200)のパラメータ(P)を測定するように構成された測定ユニットと、
前記測定ユニットから前記測定パラメータ(P)を受信するように構成されたマスターコントローラ(MC)(1120)と、
前記マスターコントローラ(MC)からコマンドを受信し、前記測定パラメータ(P)に基づいて、前記基体サセプタの少なくとも1つの、個々のサセプタまたは個々のサセプタ表面に関連する第2のパラメータ(P2)を調整するように構成された第2のコントローラ(SC)(1130)と、
を備える、前記蒸着システム。
【請求項17】
前記測定パラメータ(P)は、サセプタ温度であり、前記第2のパラメータ(P2)は、ヒータ要素(270)への熱入力である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記測定パラメータ(P)は、基体(230)の温度であり、前記第2のパラメータ(P2)は、ヒータ要素(270)への熱入力である、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
各サセプタ(260/510/520)が、それぞれが前記基体テープ(230)の幅と実質的に同じ幅を有する複数の隆起部分(420)をさらに備え、各隆起部分が、前記サセプタの本体(410)の前記上面から垂直に、かつ前記サセプタの前記本体の長さに沿って長手方向に、2つの隣接する隆起部分がチャネル(430)を形成するように、延在する、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記基体テープ(230)が、共に並進する複数の平行テープから構成される、請求項16に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月26日に出願され、「Multi-Stack Susceptor CVD Reactor for High-Throughput HTS Tape Manufacturing」と題された米国仮特許出願第63/154,119号からの優先権及び利益を主張するものであり、この米国仮特許出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に開示される主題の実施形態は、一般に、堆積反応器に関し、より詳細には、基体テープ上に高温超電導体を製造するための蒸着反応器に関する。
【0003】
背景の説明
高温超電導体(HTS)は、液体ヘリウム温度(4.2K)で動作する従来の超電導体と比較して、より高い温度で動作する超電導体コンポーネントの開発に可能性をもたらす。したがって、より高い温度で動作する超電導体により、超電導コンポーネント及び製品をより経済的に開発できるようになる。YBaCu7-x(YBCO)で構成される薄膜HTS材料は、酸化物系超電導体のグループの1つである。最初にYBCO超電導体が発見された後に、同様の化学組成を持つが、Yが他の希土類元素に置き換えられた他の超電導体が発見された。この系列の超電導体は、しばしばREBCOと表記される。ここで、REには、Y、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはLuが含まれる場合がある。この材料は、HTSテープ及びワイヤを製造するためのよりコスト効率の高い材料を提供する第2世代または「2G」HTSワイヤ技術の基礎を形成する。
【0004】
このようなHTS膜は、通常、原子配向金属基体上に1つ以上の緩衝層を含み得る配向REBCO薄膜として堆積される。MOCVDの場合、有機配位子が、堆積のために基体に送達される気相前駆体を構成し得る。化学蒸着(CVD)または金属有機化学蒸着(MOCVD)処理による高温超電導体(HTS)の製造では、金属、例えば、ステンレス鋼またはハステロイの基体テープが高温、例えば、800℃~900℃に加熱されて、気相前駆体材料が基体テープ上に堆積し、HTS膜の成長が行われる。
【0005】
MOCVD技術はYBCO膜の成長に直接適用されており、従来の半導体MOCVDをより高い温度、より高い酸化性の雰囲気、及びより低い蒸気圧の前駆体に変更することで、高品質のYBCOを製造できることが示されている(Zhang et. al.)。より高い温度(半導体III-V化合物MOCVDに使用される温度より200Kを超えて高い温度)では、反応器設計の改良、及びヒータの改良が必要となり、より低い蒸気圧の前駆体では、前駆体蒸気流の制御及び安定性に対する注意を高める必要がある。初期成果は有望であって、単結晶酸化物基体上に成長させたYBCO膜では、Tc>90K及びJc>10A/cmが実現された(Schulte et al.)。
【0006】
高温超電導体(HTS)材料の発見により、焦点の1つは、高出力電気用途向けのHTSワイヤの開発に向けられた。このような用途には、送電ケーブル、配電ケーブル、電気モータ、発電機、電磁石、限流器、変圧器、及びエネルギー貯蔵が含まれるが、これらに限定されない。HTSワイヤがこれらの高出力電気用途のソリューションとして成功するには、様々な用途の高出力電気要件を満たしながらも、これらの用途の商用要件を満たすのに十分に低コストである必要がある。
【0007】
HTS製造用の典型的なMOCVD反応器では、反応器内の加熱サセプタを利用して、高温サセプタとの接触によって加熱される金属、例えば、ハステロイまたはステンレス鋼テープの上にYBCO膜を成長させる。従来のCVD反応器100が図1に示されており、この反応器は、排出ポート120を介して真空条件に維持され、前駆体を導入するための注入シャワーヘッド110などの構成要素を収容する反応室105を含む。このような反応器は、サセプタの上面を支持し、サセプタの上面から基体テープ130に熱を伝達するホットブロックタイプのサセプタ160を利用する。基体テープ130は、繰り出しリール140及び巻き取りリール150から連続的に供給され、サセプタ160の上部を横切って並進する。
【0008】
HTSテープの製造スループットはいくつかの要因によって制限されるが、主に反応器のサイズ及びサセプタのサイズ、特にその長さによって制限される。生産スループットを向上させるためにサセプタの長さを単純に長くすることには、テープ上の前駆体ガス流の均一性、及びサセプタの長さを増加させたときにテープ上の温度の均一性を厳密に維持することなどの課題がある。大型の反応器及び長いサセプタには製造上の課題もあり、より大きな製造面積及びスペースが必要になる。サセプタの長さに制限があるため、反応器を追加して生産能力を高めるだけで、製造スループットを向上させることができる。しかし、生産量を増やすために追加の反応器ユニットを増設するには、高価な機器を二重化し、より大きな製造フロアプラン及びスペースが必要となるため、多額の資本コストが追加される。したがって、商業的に魅力的な経済性を備えた高性能HTSワイヤを製造するための高スループット能力を備えた超電導物品製造装置及びプロセスを開発することには、非常に価値がある。
【発明の概要】
【0009】
実施形態によれば、真空下に維持される堆積チャンバ、前駆体注入シャワーヘッド、排出ポート、及び基体サセプタを備える、細長い基体上に超電導体を製造するための蒸着装置が存在する。サセプタは、サセプタの上面及び下面の両方を加熱するヒータ要素を有する。細長い基体テープは、繰り出しリールと巻き取りリールとの間で連続的に巻き取られ、サセプタの上面及び下面の両方に摺動可能に接触する。
【0010】
別の実施形態によれば、真空下に維持される堆積チャンバ、前駆体注入シャワーヘッド、排出ポート、及び上部の第1の基体サセプタ半体と下部の第2の基体サセプタ半体とを備える2ピース型基体サセプタを備える、細長い基体上に超電導体を製造するための蒸着装置が存在し、各サセプタ半体がヒータ要素を有する。細長い基体テープは、繰り出しリールと巻き取りリールとの間で連続的に巻き取られ、第1のサセプタ半体の上面、及び第2のサセプタ半体の下面の両方に、摺動可能に接触する。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、真空下に維持される堆積チャンバ、前駆体注入シャワーヘッド、排出ポート、及び複数のサセプタ表面と複数のヒータ要素とを有する基体サセプタを含む蒸着装置を備える、細長い基体上に超電導体を製造するための蒸着システムが存在する。細長い基体テープは、当該基体テープが複数のサセプタ表面に摺動可能に接触するように、繰り出しリールと巻き取りリールとの間で連続的に巻き取られる。このシステムはまた、蒸着装置のパラメータ(P)を測定するように構成された測定ユニットと、測定ユニットから測定パラメータ(P)を受信するように構成されたマスターコントローラ(MC)と、マスターコントローラ(MC)からコマンドを受信し、測定パラメータ(P)に基づいて、個々のサセプタまたは個々のサセプタ表面に関連する第2のパラメータ(P2)を調整する第2のコントローラ(SC)とを含む。
【0012】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、1つ以上の実施形態を示しており、この説明と併せて、これらの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】サセプタ及び細長い基体テープを備えた従来技術のCVD反応器を示す。
図2】両面式サセプタを備えた例示的なCVD反応装置を示す。
図3】例示的なマルチパス構成でサセプタ上に巻き付けられた単一の基体テープを示す。
図4】隆起部分を有する例示的な両面式一体型サセプタを示す。
図5】隆起部分を有する例示的な両面式2ピース結合型サセプタを示す。
図6a】各半体がある距離だけ分離されている、隆起部分を有する例示的な両面式2ピース型サセプタを示す。
図6b】各半体がある距離だけ分離され、仕切り板を備えている、隆起部分を有する例示的な両面式2ピース型サセプタを示す。
図7】両面式単体型サセプタを備えた例示的な反応装置を示す。
図8】両面式2ピース結合型サセプタを備えた例示的な反応装置を示す。
図9】各半体がある距離だけ分離されている両面式2ピース型サセプタを備えた例示的な反応装置を示す。
図10a】複数の両面式サセプタが垂直に配置された例示的なマルチスタック反応装置を3次元的に示す。
図10b】内部仕切り板を備えた例示的なマルチスタック反応装置を3次元的に示す。
図11a】複数の両面式サセプタが水平に配置された例示的なマルチスタック反応装置を示す。
図11b】複数の両面式サセプタが水平に配置されたマルチスタック反応装置におけるテープ構成の追加の実施形態を示す。
図11c】複数の両面式サセプタが水平に配置された、内部仕切り板を備えているマルチスタック反応装置におけるテープ構成の追加の実施形態を示す。
図12】多数の両面式サセプタを使用する例示的な反応器システムを示す。
図13】薄膜材料を製造するための例示的な方法を示す。
図14】薄膜材料を製造するための別の例示的な方法を示す。
図15】薄膜材料を製造するためのさらに別の例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施形態については、添付図面を参照して説明する。異なる図面における同じ参照番号は、同じまたは類似の要素を識別する。以下の詳細な説明は本発明を限定するものではない。代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。以下の実施形態は、簡単にするために、CVD、より詳細には金属有機化学蒸着(MOCVD)反応器において基体テープ上に堆積された膜から形成される薄膜、特に超電導被覆導体を堆積するための蒸着反応器、システム及び方法に関して説明する。しかしながら、本明細書で説明する実施形態は、そのような要素に限定されない。例えば、本明細書に開示される反応装置は、任意のタイプの基体を加熱するためにサセプタを利用し、高スループットが要求される他のタイプの反応器、例えば、パルスレーザ堆積(PLD)などの堆積プロセス及び薄膜堆積に適用することができる。
【0015】
本明細書全体を通して、「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して種々の箇所にある「一実施形態では」または「実施形態では」という語句は、必ずしも同一の実施形態を指さない。さらに、記載された特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせることができる。したがって、以下の説明は、任意の装置、システムの製造及び使用、ならびに記載される方法の実行を含む、本明細書に開示される主題の例を当業者が実践できるように、それらを提供するものである。主題の特許を受けられる範囲は、特許請求の範囲によって規定され、本開示の恩恵を受ける当業者が思いつく特許請求の範囲に入る他の例を含み得る。
【0016】
両面式一体型基体サセプタを使用する例示的な反応装置が、図2に側面図で示される。この実施形態では、反応装置200は、好ましい実施形態において、排出ポート220で真空ポンプ(図示せず)による排気によって真空条件下に維持される堆積チャンバ205を含む。チャンバ205内にはまた、前駆体材料212を導入するための前駆体注入シャワーヘッド210も収容されている。図2は、上部及び下部のシャワーヘッド210がサセプタ260の上面262及び下面264における流れ及び堆積の均一性を促進する反応室205を示す。そして、二重または多数のシャワーヘッド210構成では、対称性及び流れの均一性を維持するために、反応器205の側壁に位置する単一の出口220が図2に示されていることにも留意されたい。しかしながら、これらのシャワーヘッド及び出口の数、位置及び構成の図は例示的なものであり、本明細書での開示によって他の配列も企図される。
【0017】
化学蒸着(CVD)または金属有機化学蒸着(MOCVD)処理による高温超電導体(HTS)の製造では、前駆体212は、シャワーヘッド210の出口近くであって基体サセプタ260によって支持され加熱される細長い基体テープ230に沿った反応器205内の領域として概して画定される堆積ゾーンに向かって流れる。薄膜、例えば、緩衝層またはYBCOが、サセプタ260の上の基体テープ230の露出面上に堆積するようになる。
【0018】
前駆体212は、MOCVD生成HTSの特定の実施形態では、気相金属有機配位子から構成され得る。前駆体212を送達するための既知のシステムには、気体、液体、固体、及びスラリーをベースにしたアプローチが含まれる。MOCVD、具体的には光支援金属有機化学蒸着(PAMOCVD)に基づく堆積を使用する好ましい実施形態では、前駆体は、テトラヒドロフラン(THF)または他の適切な有機溶媒を使用して、フラッシュ蒸発された固体か、または溶媒和された気相分子かのいずれかとして、有機金属化合物として送達され得る。例えば、システムとして蒸発器を備えた固体供給前駆体送達装置が、本出願人に譲渡され、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれるPCT出願PCT/US2019/68194に開示されている。
【0019】
好ましい実施形態では、基体サセプタ260は、機械加工可能で適切な熱伝導率を有するインコネルなどの金属合金から製造することができ、または代わりに炭化ケイ素(SiC)から構成することもでき、典型的には、1つ以上の行、または千鳥配列、グループ、またはその他の構成として配置された1つ以上の内部ヒータ要素270を含む。ヒータ要素270は、図示のようにサセプタ260の本体に組み込まれる抵抗型(電気)ヒータで構成することができる。しかし、ヒータ要素270は、外付けであり、ただしサセプタ260と直接接触するものであってもよい。他の実施形態では、ヒータ要素270は、放射熱伝達に依存する非接触タイプのもの、例えばハロゲンまたは赤外線(IR)ランプ、あるいは炭化ケイ素(SiC)グローバーといったものであってもよい。HTSの製造では、サセプタ260が、基体テープ230を高温に、例えば、800℃~900℃に加熱して、気相前駆体材料を基体テープ上に堆積させ、HTS膜の成長を行わせる。
【0020】
HTS膜は、典型的には、原子的に配向させた細長い金属基体230、例えば、幅が公称10~12ミリメートルで、長さが1メートルから数百メートル、または数キロメートルにも及ぶ可変長の薄い金属、例えば、ステンレス鋼またはハステロイのテープの上に堆積させ、及び/または成長させた1つ以上の緩衝層を含み得る配向REBCO薄膜として堆積される。図2に示す実施形態に戻ると、基体テープ230は、この例では両方ともに堆積チャンバ205の外部に位置する、繰り出しリール240から巻き取りリール250へと連続的に巻き取られる。ただし、リール240及び250は、汚染を低減し、並進中のテープ230の振動を最小限に抑えるという利点を有する完全に密閉されたシステムとして、堆積チャンバ205内に配置されてもよい。リール240及び250はまた、反応器の外部ではあるが、別個の筐体(例えば、図10aを参照されたい)内に、リール筐体と反応室205との間の導管(図示せず)の有無にかかわらず、収容されてもよい(図10aに関する以下の説明も参照されたい)。
【0021】
図2において、基体テープ230は、チャンバ205の壁の狭いスリットを通ってチャンバ205に入り、基体サセプタ260の上面262にわたって並進し、ローラ272を回って方向を反転し、サセプタ260の下面264に接触し、チャンバ205の壁の別の狭いスリットを通って出て、巻き取りリール250によって取り込まれる。したがって、この例では、サセプタの長さを長くすることなく、または反応室205のサイズを大幅に大きくすることなく、基体サセプタ260の有効堆積ゾーン長が2倍になったので、このようにして同じまたはほぼ同じ反応器のスループットの増加が達成される。
【0022】
基体テープ230がマルチパス配列で構成されている場合、装置200でさらなるスループットの向上を実現することができる。特定の実施形態では、図2の側面図において274として点線で示される第2のローラが追加され、これにより、図3の上面図に示されるように、ローラ272及び274の周囲に基体テープ230を螺旋状に巻き付けることが可能になる。この実施形態では、基体テープ230の各パスは、サセプタ260の上面262及び下面264の両方に接触する。また、図2に示すように、サセプタ260の上面262及び下面264は、基体テープ230との接触を向上させるために長手方向軸に湾曲させてもよい。
【0023】
両面式一体型基体サセプタ260は、同じく本出願人に譲渡されており、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる係属中の国際出願第PCT/US2021/17935号に開示されているような構造的態様を含むこともできる。例えば、図4に示すような特定の実施形態では、基体サセプタ260は、サセプタ260の基部を形成する本体410から構成される。このような実施形態では、サセプタ260は、テープ230の方向を逆転させて反応器堆積ゾーンを複数回通過させるローラ272/274(図示せず)を介してループする、複数の基体テープ230、または同じ基体テープ230の多数のパスを支持するように構成され得る。
【0024】
図4に戻ると、2つ以上の隆起部分420が、本体410から垂直に延在し、かつサセプタ260の長さに沿って縦方向に延在する。各隆起部分420は、所定の深さ422まで下方に延びてチャネル440を形成するギャップ430によって、隣接する隆起部分420から分離されている。これらのチャネルは、それて堆積した材料のリザーバとして機能し、基体テープ230の汚染を最小限に抑えるのに役立つ。隆起部分420は、本体410と同じ組成であることが好ましく、単一の材料ブロックから機械加工、鋳造、またはフライス加工することができる。他のアプローチには、ギャップ430を生成するためのレーザエッチングまたはバンドソー切断が含まれ得る。他の実施形態では、隆起部分420を本体410から分離させるが、本体410に動作可能に結合させることが可能である。この場合、隆起部分420は、本体410と同じ材料であってもよく、または異なる熱伝導率を有する異なる材料であってもよい。この場合、隆起部分420は、異なる方法を使用して本体410に取り付けられてもよい。例としては、ネジまたは高温度結合性化合物が挙げられる。好ましい実施形態では、各隆起部分は垂直側面422を有する形状であり、したがって各部分の断面は長方形であるが、他の実施形態では、隆起部分420は、異なる形状、例えばPCT/US2021/17935に記載されているように、例えば台形であってもよい。
【0025】
隆起部分420の上面424の幅は、好ましくは、単一の基体テープ230の幅と同じであるか、またはそれよりも小さい。例えば、特定の実施形態では、基体テープ230が公称幅12mmの場合があり、したがって隆起部分420の上面424の幅は12mmである。他の実施形態では、隆起部分420の上面の幅がわずかに小さい場合があり、したがって、この例では、上面424の幅が10~11mmの場合がある。この例では、基体テープ230の実質的に最大限の幅が、上面424に露出した部分を残さないので、基体テープ230の側面が汚染されないように、サセプタ260上からそれる堆積の蓄積を最小限に抑える。この実施形態では、図示の両面式ホットブロック基体サセプタ260の上面262及び下面264の両方が、共用のヒータ要素270のセットを介して伝導的に加熱されることに留意されたい。また、簡単のため、サセプタ260の上面262及び下面264は、平坦であるように示されているが、上記のように、基体テープ(複数可)230との接触を促進するために、長手方向軸に湾曲していてもよいことにも留意されたい。
【0026】
したがって、本明細書で説明されるテープ取り扱い構成は、テープ230がサセプタの上方及び下方を通過する「シングルパス」構成を包含し得、あるいは単一長テープ230が(例えば図3に示すように)螺旋状に巻かれた「マルチパス」構成で走行し、またはいくつかの別個のテープ230が、並行して、この場合もやはりサセプタの上方及び下方を走行する。テープの数または構成に関係なく、各テープ(複数可)230が、両面式基体サセプタ260の上面262及び下面264の両方にわたって通過するので、より大きなスループットが達成される。
【0027】
図5に示す別の実施形態では、両面式一体型サセプタの代わりに、2つのサセプタ半体、すなわち、中間の境界面530で結合される上部の第1のサセプタ510と下部の第2のサセプタ520とで構成される両面式2ピース型基体サセプタが利用され得る。2つのサセプタ半体は、例えばクリップロック接続などの任意の適切な機械的接続によって接合することができる。2ピース型サセプタの好ましい実施形態では、各サセプタ半体(510/520)は、それ自体のヒータ要素270を利用し、境界面530には、2つのサセプタ半体間の相互伝導を最小限に抑えるために、ガラス繊維またはセラミック織物もしくはセラミックプレートなどの耐熱性絶縁層がさらに備えられてもよい。2ピース型サセプタ構造には、上部半体と下部半体との個別の温度制御が可能になるという追加の利点がある。これについては後で詳しく説明する。
【0028】
さらに別の実施形態では、図5の2ピース型サセプタ(510/520)の2つの半体を、図6aに示すように分離させることがある。この実施形態では、サセプタ半体510及び520は、垂直方向に距離dだけ離れて分かれている。この例では、2つの半体は、2つの取り外し可能なコネクタポスト610によって距離dだけ離されて維持されるが、プレート、スペーサ、または他の機械的構造を含むいくつかの方法のいずれかによって分離を維持できることが理解されよう。この2ピース型の分離したサセプタの実施形態では、個々のサセプタの温度制御がさらに改善されるとともに、基体テープが、リール間の特性に対応するのを補助する(例えば、テープの曲げ半径を小さくするなど)ように、垂直方向の間隔を調整する機能が可能になる。
【0029】
図6bは、2つの半体の間に仕切り板またはスペーサ620がある2ピース型サセプタ510/520の2つの半体の例を示す。この仕切りは、2つのサセプタ半体の間に配置され、このようにして、上部及び下部のシャワーヘッド210(例えば、図2を参照)からの前駆体212の流れを、別個の排出ポート220が配置され得る側面に独立して導くのにも役立つ。この配列は、スループットをさらに向上させるために、上部サセプタ510及び下部サセプタ520の両方に、対称的なYBCO堆積を達成するのに役立つ。また、そのような仕切り板620は、図5の2ピース型サセプタ、すなわち、2つの半体510/520が分離することなく(dなしで)直接接触している場合にも含まれ得ることに留意されたい。このような実施形態では、仕切り板620は、510と520との間に結果として挟まれ、付加的に、所与の厚さのスペーサ、及び/または先述した絶縁体として機能することができる。
【0030】
図4の両面式一体型基体サセプタ262のマルチレーン構成を採用する例示的な堆積反応装置700が、図7として3次元的表現で示されている。この実施形態では、堆積チャンバ205は、排出ポート220を介して真空下に維持される。チャンバ205は、前駆体212を導入するための前駆体注入シャワーヘッド210を収容する。この例では、4つの細長い基体テープ230が繰り出しリール240から供給され、基体260の上面262の隆起部分420にわたって並進しかつ接触し、内部ローラ272で方向を逆転して基体260の下面264に接触し、その後、リール250によって巻き取られる。
【0031】
マルチレーン構成を採用しているが、図5の2ピース結合型基体サセプタ510/520の、別の例示的な堆積反応器800が、同様に、図8として3次元的表現で示されている。この実施形態では、堆積チャンバ205、排出ポート220、及び前駆体注入シャワーヘッド210の共通要素は、上記の通りである。この例では、基体は、中間境界面530で結合される2つの半体(上部510及び下部520)から構成される。この2ピース型設計により、2つの半体(510/520)を、別個の1つ以上のヒータ要素270を用いて個別に熱制御することが可能になる。前の実施形態と同様に、例示的な4つの細長い基体テープ230が繰り出しリール240から供給され、基体510の上面262の隆起部分420にわたって並進しかつ接触し、内部ローラ272で方向を逆転して基体520の下面264に接触し、その後、リール250によって巻き取られる。また、上記のように、図6bに示すように、サセプタ半体510/520の間に仕切り板620を含めることができることにも留意されたい。
【0032】
マルチレーン構成を採用しているが、図6aの2ピース型基体サセプタ510/520の、さらに別の例示的な堆積反応器900が、同様に、図9として3次元的表現で示されている。この実施形態では、堆積チャンバ205、排出ポート220、及び前駆体注入シャワーヘッド210の共通要素は、この場合もやはり上記の通りである。この例では、基体は、2つのコネクタまたはスペーサポスト610によって距離dだけ隔てられた2つの半体(上部510及び下部520)から構成される。同様に、この2ピース型設計により、2つの半体(510/520)を、別個の1つ以上のヒータ要素270を用いて個別に熱制御することが可能になる。前の実施形態と同様に、例示的な4つの細長い基体テープ230が、外部の繰り出しリール240から供給され、基体510の上面262の隆起部分420にわたって並進しかつ接触し、内部ローラ272で方向を逆転して基体520の下面264に接触し、その後、リール250によって巻き取られる。この2ピース型の分離したサセプタの実施形態では、個々のサセプタの温度制御がさらに改善されるとともに、テープの取り扱いの改善にも役立つコネクタピン610を調整することによって基体テープ230の垂直間隔を調整する機能が可能になる。また、上記のように、図6bに示すように、サセプタ半体510/520の間に仕切り板620を含めることができることにも留意されたい。
【0033】
例示的な図10aに示すように、本明細書に開示される多数のサセプタを単一の反応装置1000内に積み重ねることによって、さらなるスループットの向上が達成され得る。この実施形態では、2つの両面式一体型サセプタ260-1及び260-2が示されている。しかしながら、図中で単純なブロックとして示され、260-1及び260-2として示されているサセプタ(複数可)は、提示を簡単にするためであるが、サセプタ(複数可)は、a)図2図4図7、及び図10aに示す両面式一体型基体サセプタ(260)、またはb)図5及び図8に示す2つの結合された片面式基体サセプタ(510/520)、またはc)図6a/図6b及び図9に示す2つの分離された片面式基体サセプタ(510/520)、の任意の数または組み合わせを含むことができることに留意されたい。また、図10aでは図を簡単にするために、垂直に配列された2つのサセプタ260の周りに螺旋状に巻かれる単一の基体テープ230のみが示されているが、先に開示した他のテープ数及び構成も可能である。
【0034】
図10aの例示的なマルチスタックサセプタ反応装置1000では、2つのサセプタ260が堆積チャンバ205内で垂直に距離d2を離されて分かれている。多数の前駆体注入シャワーヘッド210は、テープが各サセプタの上方及び下方を通過するときに、前駆体212を基体テープ230の表面に向ける。これらのシャワーヘッド210は、チャンバ205の内部または外部に配置された単一マニホルドの流れ分配器(図示せず)によって供給され得ることに留意されたい。また、この例では、排出ポート220はチャンバ205の側壁に配置されているが、チャンバ205の底部または壁の位置の組み合わせに配置されてもよい。この例では、単一の基体テープ230が、基体及び反応器の汚染を最小限に抑えるために密閉及び/または真空または正圧下に維持され得る筐体1010内に収容された外部繰り出しリール240から供給される。また、基体テープ(複数可)230は、圧力及び清浄度を維持するために、筐体1010と反応室205との間に延在する導管(図示せず)内にさらに封入されてもよいことに留意されたい。(先述したように、代わりに、繰り出しリール及び/または巻き取りリールをチャンバ205内に配置してもよい。)
【0035】
基体テープ230は、1つ以上のローラ272を介して、1つのサセプタ260-1の周りに任意の回数巻き付けられてから、第2のサセプタ260-2に「渡される」。ローラ272は、図示されるようにサセプタ260の各隅に、または図2の例に示されるようにサセプタの遠位中間点に、または必要なローラの数を減らし、結果として並進抵抗及び摩擦を減らす他の配置に、構成され得る。
【0036】
この例では、単一の基体テープ230が各サセプタ/サセプタ対の上方及び下方を3回通過するが、例えば、基体テープの寸法、基体テープの並進速度または送り速度、サセプタの寸法、反応器のサイズ及び容積、シャワーヘッドの設計、目標の成長速度、及び所望の全体的なスループット率などを含むいくつかの設計要素から決定して、サセプタ当たりの任意のテープ数及びパス数(または巻き数)を利用することができる。サセプタの数が増加するにつれて、異なる数のサセプタを有する異なる反応器の間で、反応器内のテープの全体的な滞留時間を等しく保つために、それに応じてテープ速度を増加させるようにする。その結果、このテープ速度の増加により、サセプタの数によって決まる倍率でテープ製造スループットが増加することになる。さらに、以下でより詳細に説明するが、各サセプタ当たりのパス数は等しい必要はなく、したがって各サセプタでの条件の調整または個別化を可能にして、各サセプタで様々な成長速度を達成することができる。
【0037】
図10aのマルチスタック反応器の別の変形形態では、図10bに示すように、本明細書に開示されるマルチスタックサセプタ反応装置のいずれかにおいて、部分的な内部仕切り板1020が反応室205の内部に含まれてもよい。図10bに示す例では、多孔板1020がサセプタ260-1と260-2との中間に配置されて、各サセプタ対における流れの均一性を維持するのに役立つ。穿孔の程度は、各半体がそれ自体のシャワーヘッド(複数可)210及び排出口(複数可)220を有する結果として、各サセプタが異なる圧力で動作できるようにするために、より大きな孔及び/またはより多数の孔で調整すること、すなわち、より高度に穿孔することができる。他の実施形態では、プレート1020はまた、チャンバ205の対向する壁から部分的にのみ延在し、サセプタまたはサセプタ対の間にある壁を含んでもよい(例えば、以下の図11cを参照)。
【0038】
他のマルチスタックサセプタ反応装置1100及び1110の実施形態が、2次元側面図である図11a及び図11bに示されている。図11aでは、サセプタ260-1及び260-2は、図10aに示す垂直方向の分離と比較されるように、水平方向に距離d2だけ離されている。この構成には、図11bに示すように、ローラ272の数が減り、したがってテープの取り扱いが簡素化され、排出ポート220が全体的に簡素化されるという追加の利点がある。マルチスタックサセプタが、垂直方向(1100)に離されているか、または水平方向(1110)に離されているかにかかわらず、本明細書に開示される両面式サセプタは、所望のスループットを達成するための反応装置の高度な拡張性を可能にする。反応装置1000/1100/1110は、2、3、4、またはそれ以上の数のサセプタのバンクまたはセットを含むことができ、基体テープ及びパス(巻き)の数に応じて、片面式サセプタに対する単一のテープまたは多数のテープと比較して、大幅な生産速度の向上を達成することができる。図10bを参照して上述したように、図11cは、チャンバ205内に内部多孔仕切り板1020を備えた図11bのマルチスタック反応器を示す。プレート1020は、2つのサセプタ260-1及び260-2の間に配置されて、各サセプタ(260-1/260-2)またはサセプタ対(510/520)における流れ及び圧力を独立して制御するのに役立つ。当然のことながら、サセプタのスタックが垂直に配置された場合には、仕切り板1020は水平に配向され得ることに留意されたい。
【0039】
本明細書に開示されるサセプタ及び反応器のさらなる利点は、各サセプタでの堆積条件の高度なカスタマイズを可能にし、この結果として、テープが反応器を通って進む際に、成長速度パラメータの段階的または逐次的な調整を可能にすることである。異なるサセプタのためのヒータは、異なる温度に設定することができ、同様にガス流も、高品質の初期エピタキシャル層、及びより速い(またはより遅い)YBCOバルク膜の成長を最適化するために、異なる流量に設定することができる。
【0040】
可変条件マルチスタック反応器の例を図12に示す。図示の例示的な反応装置及びシステム1200は、中央面530で結合され(例えば図5を参照)、堆積チャンバ205内に収容された2つの2ピース結合型基体サセプタ510/520の横方向に配列されたスタックから構成される。各サセプタ半体は、別個の前駆体注入シャワーヘッド210を有し、この例では、チャンバ205は、対称的に配列された2つの排出ポート220によって排気される。また、この例では、各サセプタ対(510/520)は2つの個別のヒータ要素によって加熱され、各サセプタの温度は2つの熱電対によって監視される。例えば、左上のサセプタ510は、ヒータ270a1及び270a2によって加熱され、熱電対1110a1及び1110a2によって監視される。サセプタ対の下部半体520も同様に、270b1及び270b2によって加熱され、熱電対1110b1及び1110b2によって監視される。もう一方のサセプタ対も同様に構成されている。
【0041】
したがって、リアクタシステム1200は、上述の構成要素(注入シャワーヘッド210、出力220、基体テープ230、及びサセプタ510/520など)を収容する堆積チャンバ205と共に、熱電対1110(a1・・・d2)または他の温度感知デバイス(例えば、受動型赤外線など)などの測定ユニットからデータ(P)を受信するように構成された入力/出力インターフェースを有するマスターコントローラ1120を備える。コントローラ1120は、反応装置に関連する他のパラメータを測定するために、流量計、圧力計またはトランスデューサ、テープ速度計、エンドコーダ、ならびに他のユニット、デバイス及びセンサなどの他のデバイス及び測定ユニットからデータ及び入力を送受信することもできる。コントローラ1120は、熱電対からのリアルタイムの温度読み取り値に基づいて、ターゲットのサセプタ510/520及び/または基体テープ230の温度を計算し、それに応じて、流量、テープ速度、及びヒータ入力などの他のパラメータ(P1、P2、・・・P)を調整するように構成されたデータプロセッサを含む。
【0042】
したがって、コントローラ1120は、この例では、測定データ(P)に基づいてヒータ要素270(a1・・・d2)への熱入力を個別に制御する温度コントローラ1130である第2のコントローラ(SC)に熱入力設定を送信し、それによって個々のサセプタ及びサセプタ表面の熱調節を調整する。このようにして、例えば、図12の2つのスタックの2ピース結合型基体サセプタ510/520を利用して、コントローラ1120は、スタック内の4つのゾーンで堆積条件を制御することができ、あるいは単一のゾーン内、例えば、単一のサセプタ表面(上面262または下面264)内で、所定の温度プロファイルを達成することもできる。例えば、5度の傾斜を1110a2から1110a1までに入力することができる。この機能により、緩衝層及びHTS層の成長速度及び厚さを段階分けして、単一反応器内で高度に特異的な成長プロファイルを実現できる。
【0043】
次に、図13を参照して、高温超電導体の高スループット生産のための例示的な方法1300について説明する。この方法は、前駆体シャワーヘッド210を含む堆積チャンバ205を提供するステップ1310と、少なくとも1つの排出ポート220による排気によって当該チャンバを真空条件下に維持するステップ1312と、互いに結合された、または垂直の距離を離された、両面式一体型サセプタ260または一対の対向する片面式サセプタ510/520を提供するステップ1314と、所定数のヒータ要素270を用いて当該サセプタ(複数可)(260/510/520)の上面262及び下面264を加熱するステップ1316と、少なくとも1つの細長い基体テープ230をチャンバ205内の堆積ゾーンを通して並進させるステップ1318であって、基体テープ230の並進が、各サセプタ260の上面262及び下面264、またはサセプタ対(510/520)の対向面に接触することを含む、ステップ1318と、前駆体シャワーヘッド210を介して前駆体材料212を堆積チャンバ205に導入するステップ1320と、薄膜、例えばYBCOを堆積するステップ1322と、を含む。
【0044】
図14に示される別の応用例では、方法1400は、上記の方法1300のステップを含み、さらに、単一の堆積チャンバ205内に、本明細書に記載されるように、複数の両面式260、または複数の片面式対向対(510/520)、またはそれらの組み合わせを含むサセプタのマルチスタック構成を提供するステップ1414を含む。この応用例では、少なくとも1つの細長い基体テープ230を並進させるステップ1418は、互いに横方向にまたは垂直方向に配列され得る、または特定の追加の実施形態では、3つ以上のサセプタが互いに対して垂直の位置及び水平の位置の両方に配列され得る、第2のまたは後続のサセプタまたはサセプタ対に、テープ(複数可)230を渡す追加のステップ1420を含む。
【0045】
上述の方法は、図15に示すように、可変の堆積条件を達成する追加のステップをさらに含むことができる。これらの応用例では、方法1500は、方法1300及び1400のステップを含み、さらに、マスターコントローラ1120を提供するステップ1510と、温度コントローラ1130を提供するステップ1520と、マスターコントローラ1120によって、複数のサセプタ(260/510/520)に対応する温度データを受信するステップ1530と、マスターコントローラ1120によって温度データを処理するステップ1540と、マスターコントローラ1120によって、温度コントローラ1130に熱入力設定を送信するステップ1550と、反応室205内の個々のサセプタ(260/510/520)の上面262及び下面264の1つ以上のヒータ要素(複数可)270を制御するステップ1560と、個々の温度または温度プロファイルで個々のサセプタ表面を動作させるステップ1570と、を含む。
【0046】
本明細書に提供される説明は、堆積生成物、特に高温超電導体(HTS)の高スループット生産に関連する主題の例を開示する。本明細書に提供される例は、任意の装置、システムの作成及び使用、ならびに記載された方法の任意の組み合わせの実行を含むそれらの例を当業者が実践できるようにすることを目的としている。したがって、主題の特許を受けられる範囲は、特許請求の範囲によって規定され、本開示の恩恵を受ける当業者が思いつく特許請求の範囲に入る他の例を含み得る。

図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】