(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】トリアゾール系誘導体及びその製造方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
C07D 403/06 20060101AFI20240213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240213BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240213BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240213BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240213BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240213BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240213BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240213BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240213BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C07D403/06 CSP
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P31/12
A61P25/00
A61P27/02
A61P37/08
A61P11/00
A61K31/506
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552234
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 CN2022080255
(87)【国際公開番号】W WO2022188846
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】202110267569.4
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523325163
【氏名又は名称】シェンチェン ジカン ファーマシューティカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN JIKANG PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.323-L Room, 3rd Floor, Comprehensive Xinxing Phase 1, No.1 Haihong Road, Fubao Community, Fubao Street, Futian District, Shenzhen, Guangdong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュー ヨンチアン
(72)【発明者】
【氏名】レイ メン
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ ハン
(72)【発明者】
【氏名】ワン シュエユアン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB03
4C063CC41
4C063DD29
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC60
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA33
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZC01
(57)【要約】
本発明は、トリアゾール系誘導体及びその製造方法並びに使用を開示し、医薬技術分野に属す。当該トリアゾール系誘導体の構造は式Iで表され、本発明のトリアゾール系誘導体はCRM1抑制剤としてCRM1活性に関する疾患の治療薬の製造に利用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が式Iで表されることを特徴とする、トリアゾール系誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(但し、
Rは、水酸基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基又は-C(OR
1)(=NR
2)から選ばれ、
R
1及びR
2は、各々独立に水素、C1-6アルキル基、ハロゲン化C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基である。)
【請求項2】
前記Rは、水酸基、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又は-C(OR
1)(=NR
2)から選ばれ、
R
1及びR
2は、各々独立に水素又はC1-4アルキル基である、請求項1に記載のトリアゾール系誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記トリアゾール系誘導体が下記の化合物から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のトリアゾール系誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【化2】
【請求項4】
下記に示されるステップで合成することを特徴とする、請求項1に記載のトリアゾール系誘導体又はその薬学的に許容される塩の製造方法。
【化3】
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載のトリアゾール系誘導体又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、を含むことを特徴とする、CRM1活性に関する疾患、障害又は症状を治療するための医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項に記載のトリアゾール系誘導体又はその薬学的に許容される塩の、CRM1活性に関する障害を治療するための薬物の製造における使用。
【請求項7】
前記CRM1活性に関する障害は、増殖性障害、がん、炎症性障害、自己免疫性障害、ウイルス感染、眼科障害、神経変性障害、異常組織成長障害、食物摂取に関する障害、アレルギー、呼吸障害であることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記CRM1活性に関する障害はがんであることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記CRM1活性に関する障害は多発性骨髄腫であることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬技術分野に属し、具体的には、トリアゾール系誘導体及びその製造方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、悪性腫瘍は依然として人間の命を脅かす主な疾患の1つである。がん治療はこれまで飛躍的に進歩してきたが、がんを根本的に治療したわけではない。現在市販される抗がん薬は一定の効果を持っているものの、その大半が細胞障害性薬であり、重篤な毒性と副作用を有する。そのため、有効な腫瘍標的の観点から新規ターゲティング抗がん薬を研究することは医薬関係者の急務となっている。
【0003】
主にヒトの固形腫瘍及び血液系悪性腫瘍に由来する細胞の多くは、発がん性タンパク質、腫瘍抑制タンパク質及び細胞周期調節因子の様々な異常な細胞内局在を示している。例えば、特定のp53突然変異は、細胞核局在ではなく、細胞質マトリックス局在に繋がる。これにより、完全な腫瘍抑制機能であるにもかかわらず、正常な成長調節の欠失に繋がる。その他の腫瘍において、野生型p53が細胞質に隔離され、又は早速分解されることで、更にその抑制因子機能の喪失に繋がる。機能性p53タンパク質の核局在の適切な回復によって、腫瘍性細胞の幾つかの特性が正常化され、がん細胞のDNA損傷剤に対する敏感性が回復されると共に、増殖した腫瘍の退縮に繋がる。フォークヘッド(Sullivar)、c-Ablなどのその他の腫瘍抑制タンパク質から似たようなデータを得た。また、幾つかの腫瘍抑制因子及び成長調節タンパク質の異常局在は自己免疫性疾患の発症メカニズムに関わる可能性がある。CRM1抑制は、特異的な腫瘍抑制タンパク質(TSP)が除去され、又は機能障害を有する家族性がん症候群(例えば、1つのp53対立遺伝子の欠失によるリ・フラウメニ症候群、BRCA1又はBRCA2がん症候群)において特に有意義な応用を提供すると共に、系統的な(又は局部的な)CRM1抑制剤の投与によって実現されるTSPレベルの向上が正常な腫瘍抑制機能の回復に繋がる。
【0004】
特異的なタンパク質及びRNAが特異的なトランスロケータによって核内に輸送される又は核外に輸送される。分子を核内に輸送するものはインポーチンに分類されるが、分子を核外に輸送するものはエクスポーチンに分類される。核内に輸送された又は核外に輸送されたタンパク質は、核局在化シグナル(NLS)又は核外輸送シグナル(NES)を含む。これらは関連する輸送因子と相互作用する。染色体維持領域1(CRM1)はエクスポーチン-1又はXpolとも呼ばれ、主なエクスポーチンである。CRM1抑制剤による抑制タンパク質と成長調節因子の遮断は、例えばp53、c-Ab1、p21、p27、pRB、BRCA1、IkB、ICp27、E2F4、KLF5、YAP1、ZAP、KIF5、HDAC4、HDAC5又はフォークヘッドタンパク質(例えばFOXO3a)の核外輸送などである。これらは遺伝子発現、細胞増殖、血管新生及びエピジェネティクスに関わる。結果によれば、活性化シグナル又は成長活性化シグナルが存在する場合でも、正常な(変換されていない)細胞に影響を与えずに、CRM1抑制因子によりがん細胞のアポトーシスを誘導できる。CRM1の機能に関する研究の多くは天然産物のレプトマイシンB(LMB)で実施された。レプトマイシンそのものは腫瘍細胞に対して強い毒性を有するが、胃腸に対する毒性が強いため、臨床に適用しかねる。LMBを派生させてドラッグライクネスを改善することで、抗腫瘍活性が保持されると共に動物腫瘍モデルにおいて寛容を有する化合物を得る。そのため、核外輸送抑制剤は腫瘍性障害及びその他の増殖性障害に対して有益な効果を有する。しかしながら、現在、インビトロ及びインビボで用いられる小分子ドラッグライクCRM1抑制剤には依然として一定の欠陥がある。
【0005】
腫瘍抑制タンパク質以外に、様々な炎症性過程に関する幾つかのキータンパク質が更にCRM1によって搬出される。これらのタンパク質はIkB、NF-kB、Cox-2、RXRa、Commal、HIFI、HMGBI、FOXO、FOXPなどを含む。免疫グロブリンxの遺伝子発現を引き起こせるという発見で名付けられた核因子xB(NF-kB/rel)ファミリーの転写活性化因子は、炎症、増殖、免疫、細胞生存に関する様々な遺伝子のmRNA発現を調節できる。基本的な状況において、IkBと呼ばれるNF-kBタンパク質抑制剤が核内でNF-kBと結合すると共に、IKB-NF-kB複合体によってNF-kBの転写機能が不活性化される。炎症刺激の応答において、IkBがIkBNF-kB複合体から解離されて、NF-kBが放出されると同時に、その潜在的な転写活性が回復される。NF-kBを活性化させるシグナルの多くはIkBタンパク質の加水分解を標的とすることでこれらを実現する(これらがIkBのリン酸化により「標識」され、ユビキチン化してから、タンパク質を加水分解)。核IkBa-MF-kB複合体がCRM1によって細胞質に搬出されて、細胞質において解離されることで、NF-kBが改めて活性化される。ユビキチン化されるIkBがNF-kB複合体から解離されて、NF-kBの転写活性を回復させる。ヒトの好中球及びマクロファージ様細胞(U937)においてCRM1に誘導される搬出のIMBによる抑制は、転写活性のない核IkBa-NF-kB複合体の蓄積に繋がるだけでなく、細胞の刺激がある場合でも、初期のNF-kB活性化の防止をもたらした。異なる研究では、肺微小血管内皮細胞においてLMB処理によって、IL-1βに誘導されるNF-KB DNA結合(NF-kB転写活性化の第1のステップ)、1L-8発現及び細胞間接着分子発現が抑制された。COMMD1は、NF-kBと低酸素誘導因子1(HIF1)の両者の転写活性のもう1つの核抑制剤である。CRM1を抑制することで、COMMD1の核外輸送が遮断され、NF-kBとHIF1の転写活性に対する抑制の増加に繋がる。
【0006】
CRM1によりレチノイドX受容体a(RXRa)の輸送が更に仲介される。RXRaは肝臓に高発現すると共に、胆汁酸、コレステロール、脂肪酸、ステロイド及び異物代謝の調節並びに内部環境の安定において重要な働きを果たしている。肝炎期間中に、核RXRaレベルが顕著に低下するが、その主な理由として、CRM1の炎症に仲介されるRXRa核外輸送にある。ヒト肝臓由来細胞において、L-1Bに誘導される細胞質のRXRaレベル増加はLepBによって阻害できる。
【0007】
NF-kB、HIF-1、RXRaシグナル伝達において、CRM1に仲介される核外輸送の作用によれば、核外輸送の遮断は、脈管系(血管炎、動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、粥状動脈硬化症)、皮膚病、リウマチ(関節リウマチ及び関連関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、結晶性関節炎、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、筋炎症候群、皮膚筋炎、封入体筋炎、未分化結合組織病、乾燥症候群、強皮症及びオーバーラップ症候群など)を含む、複数の組織及び器官に関わる多くの炎症過程に対して潜在的な優位性を有する。
【0008】
CRM1の抑制はICp27、E2F4、KL5、YAP1、ZAPなどの一連の転写因子の活性化を抑制することで遺伝子発現に影響する。
【0009】
CRM1の抑制は、炎症性皮膚病(アトピー性、アレルギー皮膚炎、化学性皮膚炎、乾癬)、日焼け(紫外線(UV)ダメージ)、感染を含む、多くの皮膚科症候群に対して潜在的な治療効果を有する。LMBで最も研究されるCRM1抑制は、通常の角質化細胞に対して最低限の作用を示すと共に、UV、TNFa又はその他の炎症刺激における角質化細胞に対して抗炎症活性を示している。CRM1の抑制は、更にNRF2(核因子2関連因子2)の活性をアップレギュレートすることができ、NRF2によって酸化ダメージから角質化細胞を守ることができる。IPV16などの発がん性ヒトパピローマウイルス(PV)のウイルス株に感染された角質化細胞のアポトーシスはLMBにより誘導されるが、感染されていない角質化細胞のアポトーシスはLMBにより誘導されない。
【0010】
重要神経の防御タンパク質の輸送がCRM1に仲介されるが、これらの神経の防御タンパク質は、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症を含む、神経変性疾患に対して有効性を有する可能性がある。例えば、(1)NRF2などの重要神経を保護するための調節因子に対して強制的に核保持を行って、神経細胞に滞留させ、及び/又は(2)1XBを神経膠細胞の細胞核に隔離することで、NF-kBの転写活性に対する抑制を実現して、CRM1の抑制によってこれらの障害で発見される神経細胞の死亡を軽減又は防止できる。また、根拠によれば、神経膠細胞の異常増殖はCRM1レベル又はCRM1機能の異常に関わる。
【0011】
多くのウイルスの完全な成熟は、主にCRM1に仲介される完全な核外輸送が求められる。ライフサイクルにおいて核外輸送に関わるウイルス、及び/又はCRM1自身のウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、アデノウイルス、サル1型レトロウイルス、ボルナ病(Borna disease)ウイルス、インフルエンザウイルス(通常株及びHINLとトリHN1株)、B型肝炎ウイルス(BV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、Dungee、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス、黄熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、単純ヘルペスウイルス(SV)、サイトメガロウイルス(CMV)、メルケル(Merkel)細胞ポリオーマウイルス(MCV)を含む。
【0012】
核小体を通過すると共に細胞核と細胞質との間を往来するHIV-1Revタンパク質は、Rev応答エレメント(RRE)RNAが含まれるスプライシングのない及びシングルスプライシングのHIV転写産物を、CRM1核外輸送経路を介して搬出させる。LepB又はPKF050-638などのCRM1抑制剤によって実現される、Revに仲介されるRNA輸送に対する抑制は、HIV-1の転写過程を阻害し、新しいHIV-1ウイルス粒子の産生を抑制して、HIV-1のレベルを低減させる。
【0013】
デングウイルス(DENV)は、よくある節足動物が媒介するウイルス性疾患のデング熱(DF)及び更に重篤で潜在的で且つ致命的なデング熱出血熱(DHF)の病原体である。DHFはDENVに対する過剰な炎症応答によるもののようであり、NS5はDENVの最大で最も保存的なタンパク質である。CRM1はNS5の細胞核から細胞質までの輸送を調節する。なお、NS5の機能の大半は仲介されるものである。CRM1に仲介されるNS5の核外輸送に対する抑制は、ウイルス動態の変化に繋がると共に、炎症性ケモカインのインターロイキン-8(IL-8)の誘導を低減させて、DENV及びC型肝炎ウイルスによる疾患を含むその他の医学的に重要なフラビウイルスの治療に新しいルートを提供する。
【0014】
CRM1により核外に輸送されるウイルスでコードされるその他のRNA結合タンパク質は、HSVI型中間層タンパク質(P13/14又はHUA7)、ヒトCMVタンパク質pp65、SARSコロナウイルスORF3bタンパク質、RSVマトリックス(M)タンパク質を含む。
【0015】
興味深いことに、これらの疾患の多くは特定種類のヒトがんに関する。これらのがんは、慢性HBV又はHCV感染に起因される肝細胞がん(HCC)、HPVに起因される子宮頸がん、MCVに関連するメルケル細胞がんを含む。そのため、CRM1抑制因子は、ウイルス感染過程及びこれらのウイルスによる腫瘍性変換過程に対して優位性を有する。
【0016】
CRM1は核局在を制御することで、様々なDNA代謝酵素の活性を制御する。これらの例は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)、ヒストンアセチル転移酵素(HAT)、ヒストンメチル基転移酵素(HMT)を含む。
【0017】
CRM1はその他の障害にも関する。網膜神経節細胞の退化と視覚喪失を特徴とする遺伝性疾患のレーバー病(Lebers disorder)はCRM1スイッチの無効に関わる。また、根拠によれば、神経変性障害は異常な核輸送に関する。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、トリアゾール系誘導体及びその製造方法並びに使用を提供することを目的とし、当該トリアゾール系誘導体がCRM1抑制剤としてCRM1活性に関する疾患の治療薬の製造に利用される。
【0019】
上記の発明目的を実現するために、本発明は以下の技術手段を採用する:
構造が式Iで表される、トリアゾール系誘導体又はその薬学的に許容される塩である。
【化1】
(但し、
Rは、水酸基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基又は-C(OR
1)(=NR
2)から選ばれ、
R
1及びR
2は、各々独立に水素、C1-6アルキル基、ハロゲン化C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基である。)
【0020】
更に、前記Rは、水酸基、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又は-C(OR1)(=NR2)から選ばれ、
R1及びR2は、各々独立に水素又はC1-4アルキル基である。
【0021】
更に、前記トリアゾール系誘導体が下記の化合物から選ばれる。
【化2】
【0022】
下記に示されるステップで合成する、上記トリアゾール系誘導体又はその薬学的に許容される塩の製造方法である。
【化3】
【0023】
上記トリアゾール系誘導体又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、含む、CRM1活性に関する疾患、障害又は症状を治療するための医薬組成物である。
【0024】
上記トリアゾール系誘導体又はその薬学的に許容される塩の、CRM1活性に関する障害を治療するための薬物の製造における使用である。
【0025】
更に、前記CRM1活性に関する障害は、増殖性障害、がん、炎症性障害、自己免疫性障害、ウイルス感染、眼科障害、神経変性障害、異常組織成長障害、食物摂取に関する障害、アレルギー、呼吸障害である。
【0026】
更に、前記CRM1活性に関する障害はがんである。
【0027】
更に、前記CRM1活性に関する障害は多発性骨髄腫である。
【0028】
有益な効果:細胞活性の結果によれば、本発明の化合物I及びIVはKPT-8602とほぼ相当する。化合物Iの経口投与及び静脈投与の半減期はKPT-8602の経口投与及び静脈投与の半減期より長い。特に、経口投与の半減期は約2倍になる。また、化合物Iの静脈投与及び経口投与のAUCはKPT-8602より遥かに高く、より良好な薬物動態性質を示している。また、化合物Iは良好な安全性を示している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】化合物IのBALB/Cインビボ毒性実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
化合物の定義
本発明の化合物は、上記に全体的に記述されるものを含み、ここに記載するクラス、サブクラス及び種類により更に説明する。ここで使用されるものは、別途説明しない限り、下記の定義を使用するものとする。本発明の目的を実現するために、元素周期表、CASバージョン、化学と物理マニュアル(Handbook of Chemistry and Physics)第75版に基づいてこれらの化学元素を判定する。
【0031】
本明細書で別途で説明しない限り、本明細書で使用される命名法は基本的にNomenclature of Organic Chemistry(有機化学命名法)のA、B、C、D、E、F、H章に従う。そのための例示的な化学構造命名法及び化学構造命名法に関する規則については、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
本発明の化合物は、不斉中心、不斉軸及び不斉面を有すると共に、ラセミ体、ラセミ混合物及び単一のジアステレオマー又は鏡像異性体として存在してもよく、可能な全ての異性体及びその混合物(光学異性体を含む)が本発明に含まれる。
【0033】
「ハロゲン」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を含む。特に好ましくはフッ素原子及び塩素原子である。
【0034】
「アルキル基」は、1~15の炭素原子を含み、好ましくは炭素原子数は1~10、より好ましくは炭素原子数は1~6、更に好ましくは炭素原子数は1~4の直鎖又は分岐鎖状の炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などが挙げられる。
【0035】
「アルコキシ基」とは、上記「アルキル基」が酸素原子と結合することで形成される基を指す。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0036】
「アルコキシ基」の好ましい実施形態として、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基が挙げられる。
【0037】
「ハロゲン化アルキル基」は、上記「アルキル基」の炭素原子と結合する水素原子を1つ以上の上記「ハロゲン」で置換することで形成される基を含む。例えば、モノフルオロメチル基、モノフルオロエチル基、モノフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、モノクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,1,1-ジフルオロプロパン-2-イルなどが挙げられる。
【0038】
「ハロゲン化アルキル基」の一実施形態として、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基が挙げられる。
【0039】
本発明は、本発明の化合物又はその薬学的に許容される誘導体と、薬学的に許容される担体、補助剤又はキャリアと、を含む、組成物を提供する。本発明の組成物における化合物の量は、生体試料又は患者においてCRMlを有効且つ適切に抑制するための量である。特定の実施例において、これらの組成物を必要とする患者に投与するための本発明の組成物を調製する。ここで使用される用語「患者」とは動物を指す。幾つかの実施例において、当該動物が哺乳動物である。特定の実施例において、当該患者が獣患者(即ち、非ヒト哺乳動物患者)である。
【0040】
用語「薬学的に許容される担体、補助剤又はキャリア」とは、一緒に調製される化合物の薬学的な活性を損害することのない、無毒の担体、補助剤又はキャリアを指す。本発明の組成物に使用できる薬学的に許容される担体、補助剤又はキャリアは、イオン交換剤、酸化アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えばヒト血清アルブミン)、緩衝物(例えばリン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸のパーシャルグリセリド混合物、水、塩又は電解質(例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロック重合体、グリコール、ラノリンを含むが、これらに限定されない。
【0041】
前記トリアゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩の製造方法は、下記に示されるステップで合成する。
【化4】
【0042】
当該反応式において、各基Rは上記のように定義される。式(1)を水硫化ナトリウムの作用で反応させて式(2)を取得する。式(2)で求核置換反応を行わせて(3)を生成する。更に式(3)を臭素水、トリエチルアミンの作用で反応させて式(4)を生成する。式(4)で共役反応を行わせて(5)を生成する。式(5)をLiOHの作用でカルボン酸式(6)に加水分解する。式(6)とアミン系基質を縮合させて式Iの化合物を取得する。
【0043】
以下、本発明の化合物の製造方法について詳しく説明する。
【0044】
化合物1のシアノ基から水硫化ナトリウムと塩化マグネシウムの作用でチオホルムアミドを生成する。更にヒドラジン水和物とギ酸の存在下で反応させてトリアゾール2を生成する。トリアゾール2がトリエチレンジアミンの触媒作用で(Z)-3-ヨードアクリル酸イソプロピルと共役反応して化合物3を生成する。その後、化合物3の二重結合部分が液体臭素と付加反応し、更にトリエチルアミンの作用で1分子の臭素を除去して重要な中間体4を取得する。中間体4がビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの触媒作用でホウ酸構造を持つ様々な含窒素アリール基とそれぞれSuzuki共役反応を行って、異なる含窒素アリール基に連結される化合物5を生成する。最後に、化合物5のエステル結合がLiOHの作用でカルボン酸化合物6に加水分解する。カルボン酸化合物6を更に縮合させて目標の式I化合物を取得する。
【0045】
以下、図面と具体的な実施例を参照しながら本発明について更に詳しく説明するが、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨と実質を逸脱しない限り、本発明の方法、ステップ又は条件について行う修正又は置換も、本発明の範囲に含まれる。実施例で具体的な条件が明記されていない実験方法及び配合が説明されていない試薬は本分野の通常条件に従う。
【0046】
実施例1
一.化合物の合成
本発明の化合物は下記の過程で製造される。
【0047】
【0048】
(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アクリル酸イソプロピル(3)の合成
250mLナスフラスコに3,5-ビス(トリフルオロメチル)シアノフェニル1(10g、41.8mmol)を入れて、DMF(50mL)溶液に溶解させ、NaSH(7.8g、83.7mmol)及びMgCl2(8.5g、41.8mmol)をこの順で入れてから、室温で3h攪拌し続けながら反応させた。完全反応となるようにTLCにより監視した後、反応液を氷水混合溶液(500mL)に注いだ。酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和塩化ナトリウム溶液(100mL×1)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥してろ過し、溶媒を減圧条件で蒸発によって除去して、粗製品3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホンアミド(10.9g、収率95.1%、純度84%)を得た。黄色油状液体である。MS(ESI)m/z 274.35 [M+H]+。次のステップに直接使用した。
【0049】
250mLナスフラスコに3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホンアミド(10.9g、39.8mmol)を入れて、DMF(30mL)溶液に溶解させ、室温で80%ヒドラジン水和物(5.1mL、83.6mmol)を滴下し、混合物を1h攪拌し続けてから、ギ酸(30mL)を滴下した。その後、90℃で3h攪拌し続けながら反応させた。完全反応となるようにTLCにより監視した後、室温になるまで反応させ、反応液を純水(600mL)に注いだ。酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和炭酸水素ナトリウム溶液(300mL×3)及び飽和塩化ナトリウム溶液(100mL×1)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥してろ過し、溶媒を減圧条件で蒸発によって除去して、化合物の粗製品を得た。n-ヘキサン(200mL×3)で攪拌しながら洗浄し、ろ過し、乾燥してから、3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール2(8.5g、収率76.0%、純度90%)を得た。白色固体である。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.63 (s, 2H, Ph), 8.40 (s, 1H, NCH), 8.02 (d, J= 13.8 Hz, 1H, NCHCH), 7.95 (s, 1H, Ph), 6.74 (d, J= 13.8 Hz, 1H, NCHCH)MS (ESI) m/z 279.89 [M+H]+
【0050】
250mLナスフラスコに3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール2(8.5g、30.2mmol)を入れて、DMF(40mL)に溶解させ、DABCO(8.5g、75.5mmol)を入れた。混合物を室温で30min攪拌し続けてから、反応液に(Z)-3-ヨードアクリル酸エチル(7.5g、33.2mmol)を滴下した。その後、室温で3h攪拌し続けながら反応させた。完全反応となるようにTLCにより監視した後、反応液を氷水混合溶液(400mL)に注いだ。酢酸エチル(80mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和塩化ナトリウム溶液(100mL×1)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥してろ過し、溶媒を減圧条件で蒸発によって除去して、化合物の粗製品を得た。得た粗製品をカラムクロマトグラフィ(PE/EtOAc=25:1)により精製して、化合物(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アクリル酸エチル3(7.9g、収率68.2%、純度98%)を得た。白色固体である。1HNMR(400 MHz, CDC13) δ 8.63 (s, 2H, Ph), 8.40 (s, 1H, NCH), 8.02 (d, J= 13.8 Hz, 1H, NCHCH), 7.95 (s, 1H, Ph), 6.74 (d, J = 13.8 Hz, 1H, NCHCH), 4.87 (m, 1H, CH), 1.36 (t, J =7.1 Hz, 6H, Me). MS (ESI) m/z 394.23 [M+H]+.
【0051】
(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル-トリアゾール-1-イル)-2-ブロモアクリル酸イソプロピル(4)の合成
250mLナスフラスコで、事前に得た(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アクリル酸エチル3(7.9g、20.6mmol)をジクロロメタン(40mL)に溶解させた。30min内で液体臭素(6.6g、41.2mmol)をゆっくりと滴下してから、室温で8h攪拌し続けながら反応させた。完全反応となるようにTLCにより監視した後、反応液を氷水混合溶液(100mL)に注いだ。ジクロロメタン(50mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和亜硫酸水素ナトリウム溶液(100mL×3)及び飽和塩化ナトリウム溶液(50mL×1)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥してろ過し、溶媒を減圧条件で蒸発によって除去した。カラムクロマトグラフィ(PE/ EtOAc=50:1)により分離し精製して、3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ジブロモアクリル酸イソプロピル(10.3g、収率92.7%、純度95%)を得た。白色固体である。MS (ESI)m/z 551.97 [M+H]+。
【0052】
前のステップで得た中間体3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ジブロモアクリル酸イソプロピル(103g、19.1mmol)を250mLナスフラスコに量り取り、テトラヒドロフラン(40mL)で溶解させ、氷浴で10min攪拌して、反応液にトリエチルアミン(3.9g、38.2mmol)を滴下しながら30min攪拌し続ける。その後、室温で6h攪拌し続けながら反応させた。完全反応となるようにTLCにより監視した後、反応液に氷水混合溶液(100mL)を入れた。酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和塩化ナトリウム溶液(50mL×1)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥してろ過し、溶媒を減圧条件で蒸発によって除去した。カラムクロマトグラフィ(PE/EtOAc=50: 1)により分離し精製して、(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2-ブロモアクリル酸エチル4(7.7g、収率88.2%、純度96%)を得た。白色固体である。1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 8.75 (s, 1H, NCH), 8.56 (s, 2H, Ph), 7.93 (s, 1H, Ph), 7.65 (s, 1H, CBrCH), 4.38 (m, 1H, CH), 1.37 (t, J=7.1 Hz, 6H, Me). MS (ESI) m/z 473.09 [M+H]+.
【0053】
(E)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2-(ピリミジン-5-イル)アクリル酸イソプロピル(5)の合成
1つの25ml三つ口フラスコを取り、重要な中間体4(200mg、0.44mmol)及び5-ピリミジンボロン酸(81.9mg、0.66mmol)をそれぞれ量り取り、ジオキサン(5mL)と水(1mL)の混合溶液に溶解させた。その後、酢酸ナトリウム(86.4mg、0.88mmol)を量り取って反応液に入れ、窒素ガスで3回置換した後に室温で攪拌しながら反応させた。その後、反応液にPd(PPh3)Cl2(30.9mg、0.04mmol)を入れて、再び窒素ガスで3回置換した後に80℃で一晩攪拌しながら反応させた。完全反応となるようにTLCにより監視した後、室温となるまで反応させて、反応液に純水(50mL)を入れ、酢酸エチル(15mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和塩化ナトリウム溶液(20mL×1)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥してろ過し、溶媒を真空条件で蒸発によって除去して、化合物の粗製品を得た。カラムクロマトグラフィ(PE/EtOAc=8:1)により分離し精製して、(E)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2-(ピリミジン-5-イル)アクリル酸エチル5(125.3mg、収率62.3%、純度93%)を得た。白色固体である。PNMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.28 (s, 1H, Pyrimidine), 8.89 (s, 2H, Pyrimidine), 8.72 (s, 1H, NCH), 8.59 (s, 2H, Ph), 7.96 (s, 1H, Ph), 7.40 (s, 1H, COCCH), 4.85 (m, 1H, CH), 1.36 (t, J=7.2 Hz, 6H, Me). MS (ESI) m/z 472.17 [M+H]+.
【0054】
(E)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2-(ピリミジン-5-イル)プロピレンカルボン酸(6)の合成
25mLナスフラスコで5(125.3mg、0.27mmol)をテトラヒドロフラン(3mL)に溶解させた。氷浴で10min攪拌した後、反応液にLiOH H2O(45.3mg、1.08mmol)の水(1mL)溶液を滴下した。30min攪拌し続けた後、室温で一晩攪拌しながら反応させた。完全反応となるようにTLCにより監視した後、氷水混合溶液(10mL)を反応液に注いで、溶液のpH値が2~3となるように4N塩酸で調整した。酢酸エチル(5mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和塩化ナトリウム溶液(20mL×1)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥してろ過し、溶媒を減圧条件で蒸発によって除去した。比較的に純粋な化合物(E)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2-(ピリミジン-5-イル)アクリル酸(99.4mg、収率85.8%、純度89%)を得た。白色固体である。次のステップに直接使用した。MS (ESI) m/z 427.92 [M-H]-。
【0055】
(E)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-N-メトキシ-2-(ピリミジン-5-イル)アクリルアミド(I)の合成
25mLナスフラスコで6(125.3mg、0.27mmol)をジクロロエタン(3mL)に溶解させた。氷浴で10min攪拌した後、反応液にEDCI(20.3mg、1.08mmol)及びHOBT(70.5mg、1.5mmol)を入れた。30min攪拌し続けた後、室温でDIPEA(54.5mg、3.0mmol)及びメトキシヒドロキシルアミン塩酸塩(23.4mg、1.0mmol)を滴下して、一晩攪拌しながら反応させた。完全反応となるようにTLCにより監視した後、氷水混合溶液(10mL)を反応液に注いだ。酢酸エチル(5mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和塩化ナトリウム溶液(20mL×1)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥してろ過し、溶媒を減圧条件で蒸発によって除去した。化合物(E)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-N-メトキシ-2-(ピリミジン-5-イル)アクリルアミド(35.4mg、収率40%、純度89%)を得た。白色固体である。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.78 (d, J = 5.9 Hz, 2H, Pyridine), 8.40 (s, 2H, Ph), 8.33 (s, 1H, NCH), 7.92 (s, 1H, Ph), 7.87 (s, 1H, COCCH), 7.28 (d, J = 1.6 Hz, 2H, Pyridine), 4.34 (t, J = 7.1Hz, 3H, Me).MS (ESI) m/z 459.10 [M+H]+.
【0056】
合成する具体的な化合物及びその名称は下記表に示される。
【表1-1】
【0057】
【0058】
二.細胞株の抑制活性
1. 細胞の凍結保存
(1) 細胞を収穫した後、常温で1000rpmで5min遠心分離し、PBSで洗浄した。
(2) 7%DMSOと10%ウシ胎児血清を含む1640培地で再懸濁させた。
(3) 凍結保存管に分注し、細胞凍結保存ボックスに置き、-80℃で一晩処理してから、液体窒素で保存した。
【0059】
2.細胞の蘇生と培養
(1) 凍結保存管を液体窒素タンクから取り出し、37℃温水に置き、ゆっくりと振動させて、細胞液を解凍させる。
(2) 無菌遠心分離管に移動し、10%ウシ胎児血清を含む1640培養液を入れて、ゆっくりと懸濁液となるように吹き込む。
(3) 室温で1000rpmで5min遠心分離し、上清を捨て、10%ウシ胎児血清を含む1640培養液を入れて、ゆっくりと懸濁液となるように吹き込む。
(4) 培養瓶に移動し、37℃、5%CO2、飽和湿度のインキュベータで1~2日間培養してから液体を交換した。
【0060】
3. 細胞の継代
元の培地を捨て、無菌PBSを入れて、1回洗浄し、1mLの0.25%のパンクレアチンを入れて1分間ほどインキュベートした。顕微鏡で観察し、細胞の大半が丸くなった後に、パンクレアチンをきれいに吸い取り、新鮮な培地を入れて消化を終了させ、細胞懸濁液となるように細胞を均一に吹き込み、インキュベータに移動してから培養し続けた。
【0061】
4. 細胞障害性実験
(1) 対数増殖期のRPMI8226細胞を1000個/wellで384ウェルプレートに入れて、体積18μL/wellで、37℃、5%CO2で24hインキュベートした。
(2) 保存濃度10mMの対象化合物をDMSOで10倍希釈させ、更に血清を含まない1640培地で100倍希釈させて、1%DMSOを含む10μM作業濃度となった。その後、2倍勾配で希釈させ、1%DMSOの無血清1640培地で10個の濃度で希釈させ、10番目濃度点が溶媒対照群(薬物無し)である。希釈された化合物を吸い取り、1ウェルにつき2μLでプレーティングされた細胞プレートに入れて、化合物を得た。最終濃度が1000nMであり、2倍勾配で希釈し、10個の濃度勾配で、1個の濃度で4つ繰り返して設定する。1%DMSOを溶媒対照とし、KPT-8602を陽性対照とする。
(3) 37℃で72hインキュベートしてから、1ウェルにつき10μLのCell-Titer測定用試薬を入れて、更にインキュベータで10minインキュベートした。
(4) 均一に振動させてから、マイクロプレートリーダーでCell-Titerプログラムを稼動させて測定し、GraphPad Prism 5でinhibition%とIC50値(μM)を計算した。
【0062】
【0063】
細胞活性の結果によれば、化合物I及びIVはKPT-8602とほぼ相当する。
【0064】
三.SDラットにおける薬物の薬物動態の結果
【表3】
【0065】
結論:化合物Iの経口投与及び静脈投与の半減期はKPT-8602の経口投与及び静脈投与の半減期より長い。特に、経口投与の半減期は約2倍になる。また、化合物Iの静脈投与及び経口投与のAUCはKPT-8602より遥かに高く、より良好な薬物動態性質を示している。
【0066】
四.候補化合物BALB/Cのインビボ毒性実験
25匹のBALB/Cマウスをランダムで5群に分ける。溶媒対照群(Control)、陽性対照KPT-8602(30mg/kg、1日1回)群、KPT-8602(60mg/kg、1日1回)群、化合物I(30mg/kg、1日1回)群、化合物I(60mg/kg、1日1回)群である。各群は全て5匹である。対応する濃度の受検物、KPT-8602及び化合物Iを3mL/kgの投与量で各群に胃内投与し、毎日連続投与し、計21日間投与した。
【0067】
化合物溶液の調製方法:
10%スルホブチル-β-シクロデキストリンの調製:
5.0gのスルホブチル-β-シクロデキストリン粉末を量り取り、フラスコに入れ、ピペッターで50mLのクエン酸緩衝液を吸い取り、フラスコに入れて、溶解させてから容器に移動した。
【0068】
化合物Iの調製:
24mgの化合物Iを量り取り、1.6mLの20%ポリエチレングリコール水溶液を入れて、溶解させてから更に10%スルホブチル-β-シクロデキストリン水溶液6.4mLを入れて、3mg/mLの化合物Iの受検物溶液を得た。
【0069】
KPT-8602の調製:
24mgの化合物KPT-8602を量り取り、1.6mLの20%ポリエチレングリコール水溶液を入れて、溶解させてから更に10%スルホブチル-β-シクロデキストリン水溶液6.4mLを入れて、3mg/mLのKPT-8602の受検物溶液を得た。
【0070】
連続投与した後、マウスの体重変化の結果は
図1に示される。
【0071】
結論:
図に示されるように、KPT-8602の60mg/kg群は7日間目に2匹のマウスが死亡し、10日間目に全部死亡し、KPT-8602の30mg/kg群は体重が顕著に減少した。化合物Iの30mg/kg及び化合物Iの60mg/kg群は21日間後の体重がブランクに相当し、良好な安全性を示している。
【国際調査報告】