(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】非対称の閾値電圧を有するナノシート金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240214BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01L29/78 301G
H01L29/78 301Y
H01L27/092 D
H01L29/78 301H
H01L29/78 301Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563097
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 CN2022077293
(87)【国際公開番号】W WO2022183938
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 崇志
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ルイロン
(72)【発明者】
【氏名】レズニチェク、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジンギュン
【テーマコード(参考)】
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F048AC03
5F048BA14
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5F140AA05
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5F140BG27
5F140BH06
5F140BH47
5F140BK18
(57)【要約】
半導体構造体および半導体構造体を形成する方法は、半導体基板上のチャネル・ナノシート間に位置する内部スペーサであって、内部スペーサの第1の部分が半導体構造体の第1の側に位置し、内部スペーサの第2の部分が第1の側とは反対側の第2の側に位置し、第1の側の内部スペーサの第1の部分は、内部スペーサの第1の部分の中央上面から外方へ延びる突出領域を含む、内部スペーサと、内部スペーサに直接接触する金属ゲート・スタックであって、内部スペーサの第1の部分は、第1の側の閾値電圧を増大させるために、金属ゲート・スタックをピンチオフする突出領域を含む、金属ゲート・スタックとを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体構造体であって、
半導体基板上のチャネル・ナノシート間に位置する内部スペーサであって、前記内部スペーサの第1の部分が前記半導体構造体の第1の側に位置し、前記内部スペーサの第2の部分が前記第1の側とは反対側の第2の側に位置し、前記第1の側の前記内部スペーサの前記第1の部分は、前記内部スペーサの前記第1の部分の中央上面から外方へ延びる突出領域を含む、前記内部スペーサと、
前記内部スペーサに直接接触する金属ゲート・スタックであって、前記内部スペーサの前記第1の部分は、前記第1の側の閾値電圧を増大させるために、前記金属ゲート・スタックをピンチオフする前記突出領域を含む、前記金属ゲート・スタックと
を備える、半導体構造体。
【請求項2】
前記内部スペーサの前記第1の部分によって前記金属ゲート・スタックから分離された、前記第1の側に前記チャネル・ナノシートの側壁に沿って位置するソース領域と、
前記第2の側の前記内部スペーサの前記第2の部分によって前記金属ゲート・スタックから分離された、前記第2の側に前記チャネル・ナノシートの反対側の側壁に沿って位置するドレイン領域と
をさらに備える、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項3】
前記突出領域はT字形内部スペーサを提供し、前記突出領域と前記チャネル・ナノシートとの間の空間が、前記金属ゲート・スタックの内側窒化物層の厚さの2倍未満である、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項4】
オフセット・スペーサに隣接して前記金属ゲート・スタック上方に金属ゲートをさらに備える、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項5】
前記半導体構造体はNFETデバイスを含み、前記金属ゲート・スタックは、前記内側窒化物層と外側窒化物層との間に位置するドープ遷移金属層によって形成された3層ゲート金属スタックを含み、前記ドープ遷移金属層は、アルミニウム・ドープ遷移金属炭化物を含む、請求項3に記載の半導体構造体。
【請求項6】
前記突出領域は、前記閾値電圧を増大させるために、前記内側窒化物層をピンチオフして、前記第1の側における前記ドープ遷移金属層の堆積を防ぐ、請求項5に記載の半導体構造体。
【請求項7】
前記半導体構造体はPFETデバイスを含み、前記金属ゲート・スタックは前記内側窒化物層を含む、請求項3に記載の半導体構造体。
【請求項8】
前記突出領域は、閾値電圧を増大させるために、前記内側窒化物層をピンチオフして、前記第1の側における前記内側窒化物層の有効金属厚さを減少させる、請求項7に記載の半導体構造体。
【請求項9】
前記チャネル・ナノシートはシリコンを含み、前記内部スペーサは、SiN、SiC、SiOC、SiCN、BN、SiBN、SiBCN、SiOCN、およびSiOxNyのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項10】
半導体構造体であって、
半導体基板上の分離領域上方の複数のチャネル・ナノシートと、
前記複数のチャネル・ナノシートの各々の間の内部スペーサであって、前記内部スペーサの第1の部分が前記半導体構造体の第1の側に位置し、前記内部スペーサの第2の部分が前記第1の側とは反対側の第2の側に位置し、前記第1の側の前記内部スペーサの前記第1の部分は、前記内部スペーサの前記第1の部分の中央上面から外方へ延びる突出領域を含む、前記内部スペーサと、
前記第1の側に前記複数のチャネル・ナノシートの側壁に沿って位置するソース領域から、前記内部スペーサの前記第1の部分によって分離された金属ゲート・スタックであって、前記金属ゲート・スタックは、前記第2の側に前記複数のチャネル・ナノシートの反対側の側壁に沿って位置するドレイン領域から、前記内部スペーサの前記第2の部分によって分離され、前記内部スペーサの前記第1の部分の前記突出領域は、前記第1の側の閾値電圧を増大させるために、前記金属ゲート・スタックをピンチオフする、前記金属ゲート・スタックと
を備える、半導体構造体。
【請求項11】
前記突出領域はT字形内部スペーサを提供し、前記突出領域と前記チャネル・ナノシートとの間の空間が、前記金属ゲート・スタックの内側窒化物層の厚さの2倍未満である、請求項10に記載の半導体構造体。
【請求項12】
オフセット・スペーサに隣接して前記金属ゲート・スタック上方に金属ゲートをさらに備える、請求項10に記載の半導体構造体。
【請求項13】
前記半導体構造体はNFETデバイスを含み、前記金属ゲート・スタックは、前記内側窒化物層と外側窒化物層との間に位置するドープ遷移金属層によって形成された3層ゲート金属スタックを含み、前記ドープ遷移金属層は、アルミニウム・ドープ遷移金属炭化物を含む、請求項11に記載の半導体構造体。
【請求項14】
前記突出領域は、前記閾値電圧を増大させるために、前記内側窒化物層をピンチオフして、前記第1の側における前記ドープ遷移金属層の堆積を防ぐ、請求項13に記載の半導体構造体。
【請求項15】
前記半導体構造体はPFETデバイスを含み、前記金属ゲート・スタックは前記内側窒化物層を含む、請求項11に記載の半導体構造体。
【請求項16】
前記突出領域は、前記閾値電圧を増大させるために、前記内側窒化物層をピンチオフして、前記第1の側における前記内側窒化物層の有効金属厚さを減少させる、請求項15に記載の半導体構造体。
【請求項17】
前記複数のチャネル・ナノシートはシリコンを含み、前記内部スペーサは、SiN、SiC、SiOC、SiCN、BN、SiBN、SiBCN、SiOCN、およびSiOxNyのうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の半導体構造体。
【請求項18】
半導体構造体を形成する方法であって、
ナノシート・スタックを半導体基板上に形成することであって、ダミー・ゲートがオフセット・スペーサに隣接して前記ナノシート・スタック上方に位置し、前記ナノシート・スタックは、犠牲ナノシートおよびチャネル・ナノシートの交互配列を含み、前記犠牲ナノシートは、第1のナノシートと第3のナノシートとの間に位置する第2のナノシートを含み、前記第1のナノシートおよび前記第3のナノシートは、前記第2のナノシートの第2のゲルマニウム濃度よりも低い第1のゲルマニウム濃度を有する、前記形成することと、
前記犠牲ナノシートを選択的にエッチングすることであって、前記第1のゲルマニウム濃度が低いことにより、前記第1のナノシートおよび前記第3のナノシートは前記第2のナノシートよりもゆっくりとエッチングされて、前記ナノシート・スタックの両側にくぼみ領域を形成し、前記くぼみ領域は、前記犠牲ナノシートの残りの第2のナノシートに向かって細くなる形状を有する、前記エッチングすることと
を含む、方法。
【請求項19】
前記犠牲ナノシートの両側に第1の内部スペーサを形成することであって、前記第1の内部スペーサは前記くぼみ領域を実質的に埋める、前記形成することと、
第1の凹部を形成するために、前記半導体構造体の第1の側に位置する前記第1の内部スペーサの第1の部分を選択的に除去することであって、前記第1の内部スペーサの第2の部分が、前記第1の側とは反対側の前記半導体構造体の第2の側に残る、前記除去することと、
前記犠牲ナノシートの前記両側に、前記チャネル・ナノシートに直接接触して第2の内部スペーサを形成することであって、前記第2の内部スペーサの第1の部分が、前記第1の側の前記第1の凹部を実質的に埋め、前記第1の側の前記第2の内部スペーサの前記第1の部分は、前記第2の内部スペーサの前記第1の部分の中央上面から前記犠牲ナノシートの残りの第2の層に向かって延びる突出領域を有する、前記形成することと
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の側に前記チャネル・ナノシートの側壁および前記第2の内部スペーサに沿ってソース領域を形成し、前記第2の側に前記チャネル・ナノシートの反対側の側壁および前記第2の内部スペーサに沿ってドレイン領域を形成することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ダミー・ゲートおよび前記犠牲ナノシートを除去することと、
前記第1の内部スペーサの残りの部分を前記第2の側から除去することであって、前記ダミー・ゲート、前記犠牲ナノシート、および前記第1の内部スペーサの前記残りの部分を除去することによって、第2の凹部を形成する、前記除去することと、
ゲート誘電体および仕事関数金属を前記第2の凹部内にコンフォーマルに堆積させることであって、前記第2の内部スペーサの前記突出領域は、前記第1の側に位置する前記仕事関数金属の一部をピンチオフして、前記第1の側の閾値電圧を増大させる非対称の仕事関数金属分布を形成する、前記堆積させることと
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の側に保護有機平坦化層を形成することと、
前記第1の内部スペーサを前記第1の側から除去することと、
前記保護有機平坦化層を前記第2の側から除去することと
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記チャネル・ナノシートはシリコンを含み、前記第1のナノシート、前記第2のナノシート、および前記第3のナノシートはシリコン・ゲルマニウムを含み、前記第1のナノシートおよび前記第3のナノシートの前記第1のゲルマニウム濃度は25%ゲルマニウムを含み、前記第2のナノシートの前記第2のゲルマニウム濃度は35%ゲルマニウムを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の内部スペーサは、SiN、SiC、SiOC、SiCN、BN、SiBN、SiBCN、SiOCN、およびSiOxNyのうちの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記突出領域はT字形内部スペーサを提供し、前記突出領域と前記チャネル・ナノシートとの間の空間が、前記仕事関数金属の窒化物層の厚さの2倍未満である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、相補型金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)・デバイスの分野に関し、より詳細には、非対称の閾値電圧を有するナノシートMOSFETに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の半導体デバイス作製プロセスにおいて、電界効果トランジスタ(FET)などの多数の半導体デバイスが、単一のウエハ上に組み立てられている。ナノシートFETを含む非平面デバイス・アーキテクチャは、平面デバイスと比べてデバイス密度が高く、性能が高い。ナノシートFETでは、従来のFETとは対照的に、ゲート・スタック(gate stack)が各ナノシートの周囲全体を包み込んで、チャネル領域のより完全な空乏(depletion)を可能にし、短チャネル効果を低減させる。また、ナノシート・デバイスで使用されるラップアラウンド・ゲート構造体(wrap-around gate structure)は、駆動電流が増大したときであっても、活性領域の漏れ電流のより優れた管理を可能にすることができる。しかしながら、電気特性を向上させるために平面FETで使用される横方向非対称チャネル(lateral asymmetric channel)(LAC)ドーピング・プロファイルを、積層ナノシートFETで実現することは困難であり得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施形態によれば、半導体構造体は、半導体基板上のチャネル・ナノシート間に位置する内部スペーサ(inner spacer)であって、内部スペーサの第1の部分が半導体構造体の第1の側に位置し、内部スペーサの第2の部分が第1の側とは反対側の第2の側に位置し、第1の側の内部スペーサの第1の部分は、内部スペーサの第1の部分の中央上面から外方へ延びる突出領域を含む、内部スペーサと、内部スペーサに直接接触する金属ゲート・スタックであって、内部スペーサの第1の部分は、第1の側の閾値電圧を増大させるために、金属ゲート・スタックをピンチオフ(pinch off)する突出領域を含む、金属ゲート・スタックとを備える。
【0004】
本開示の別の実施形態によれば、半導体構造体は、半導体基板上の分離領域上方の複数のチャネル・ナノシートと、複数のチャネル・ナノシートの各々の間に位置する内部スペーサであって、内部スペーサの第1の部分が半導体構造体の第1の側に位置し、内部スペーサの第2の部分が第1の側とは反対側の第2の側に位置し、第1の側の内部スペーサの第1の部分は、内部スペーサの第1の部分の中央上面から外方へ延びる突出領域を含む、内部スペーサとを備える。半導体構造体は、第1の側に複数のチャネル・ナノシートの側壁に沿って位置するソース領域から、内部スペーサの第1の部分によって分離された金属ゲート・スタックをさらに備え、金属ゲート・スタックは、第2の側に複数のチャネル・ナノシートの反対側の側壁に沿って位置するドレイン領域から、内部スペーサの第2の部分によって分離され、内部スペーサの第1の部分の突出領域は、第1の側の閾値電圧を増大させるために、金属ゲート・スタックをピンチオフする。
【0005】
本開示のさらに別の実施形態によれば、半導体構造体を形成する方法は、ナノシート・スタックを半導体基板上に形成することであって、ダミー・ゲートが、オフセット・スペーサに隣接してナノシート・スタック上方に位置し、ナノシート・スタックは、犠牲ナノシートおよびチャネル・ナノシートの交互配列(alternating sequence)を含み、犠牲ナノシートは、第1のナノシートと第3のナノシートとの間に位置する第2のナノシートを含み、第1のナノシートおよび第3のナノシートは、第2のナノシートの第2のゲルマニウム濃度よりも低い第1のゲルマニウム濃度を有する、形成することと、犠牲ナノシートを選択的にエッチングすることとを含む。第1のゲルマニウム濃度が低いことにより、第1のナノシートおよび第3のナノシートは第2のナノシートよりもゆっくりとエッチングされて、ナノシート・スタックの両側にくぼみ領域(indentation region)を形成し、くぼみ領域は、犠牲ナノシートの残りの第2のナノシートに向かって細くなる形状を有する。
【0006】
例として示され、本発明を限定するものではない以下の詳細な説明は、添付図面と併せて最もよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態による、半導体基板上に形成されたナノシート・スタックを示す半導体構造体の断面図である。
【
図2】本開示の実施形態による、犠牲ナノシートを凹ませた(recess)後の、半導体構造体の断面図である。
【
図3】本開示の実施形態による、第1の内部スペーサを形成した後の、半導体構造体の断面図である。
【
図4】本開示の実施形態による、犠牲ナノシートの残りの部分を除去した後の、半導体構造体の断面図である。
【
図5】本開示の実施形態による、保護有機平坦化層(protective organic planarization layer)を形成し、第1の内部スペーサの一部を除去した後の、半導体構造体の断面図である。
【
図6】本開示の実施形態による、保護有機平坦化層を除去し、第2の内部スペーサを形成した後の、半導体構造体の断面図である。
【
図7】本開示の実施形態による、ソース領域およびドレイン領域を形成した後の、半導体構造体の断面図である。
【
図8】本開示の実施形態による、ダミー・ゲートおよび犠牲ナノシートを除去した後の、半導体構造体の断面図である。
【
図9】本開示の実施形態による、第1の内部スペーサの残りの部分を除去した後の、半導体構造体の断面図である。
【
図10A】本開示の実施形態による、ゲート・スタックおよび金属充填物(metal fill)を堆積させた後の、半導体構造体の断面図である。
【
図10B】本開示の実施形態による、ゲート・スタックおよび金属充填物を堆積させた後の、半導体構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は概略図に過ぎず、本発明の特定のパラメータを表すことを意図していない。図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示すことを意図している。図中、同様の番号は同様の要素を示す。
【0009】
本明細書では、特許請求される構造体および方法の詳細な実施形態が開示される。しかしながら、開示される実施形態は、様々な形態で実施可能な、特許請求される構造体および方法の説明に過ぎないことを理解されたい。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施可能であり、本明細書に記載の例示的な実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。本説明では、本実施形態が不必要に曖昧にならないように、周知の特徴および技術の詳細を省略することがある。
【0010】
以下の説明の目的で、「上」、「下」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上部」、「下部」などの用語およびそれらの派生語は、図面内で方向付けされているような、開示された構造体および方法に関連するものとする。「上方」、「上にある」、「上に」、「上部に」、「上に位置決めされた」、または「上部に位置決めされた」などの用語は、第1の構造体などの第1の要素が第2の構造体などの第2の要素上に存在し、第1の要素と第2の要素との間に界面構造体などの介在する要素が存在してもよいことを意味する。用語「直接接触」は、第1の構造体などの第1の要素と第2の構造体などの第2の要素とが、2つの要素の界面に中間の導電層、絶縁層、または半導体層なしで接続されていることを意味する。
【0011】
本発明の実施形態の提示が不明瞭にならないようにするために、以下の詳細な説明において、当技術分野で知られている一部の処理ステップまたは動作が、提示および例示の目的で1つにまとめられていることがあり、場合によっては、詳細には説明されていないことがある。また、当技術分野で知られている一部の処理ステップまたは動作についてまったく説明されていないこともある。以下の説明は、むしろ本発明の様々な実施形態の特有の特徴または要素に重点を置いていることを理解されたい。
【0012】
開示される実施形態は、シリコン・ナノシートおよびシリコン・ゲルマニウム・ナノシートを有する例示的なナノシートFETアーキテクチャの詳細な説明を含むが、本明細書に記載の教示の実施は、本明細書に記載の特定のFETアーキテクチャに限定されないことを理解されたい。むしろ、本発明の実施形態は、現在知られているまたは後に開発される任意の他のタイプのFETデバイスと共に実施することができる。
【0013】
集積回路の作製は、より小型で高密度の集積回路を製造するための努力を続けており、5nmノード技術およびそれを超える技術の実行可能な代替案として、ナノシートFETがある。前述したように、特に、ナノシートFETのゲート・スタックが各ナノシートの周囲全体を包み込んで、チャネル領域のより完全な空乏を可能にし、短チャネル効果を低減させる。これにより、平面デバイスと比べてデバイス密度を高め、性能を高めることができる。
【0014】
ナノシートFETは、スタックに配置された異なる半導体材料の薄い交互層(ナノシート)を含むことが多い。通常、ナノシートは、ナノシート・フィンにパターニングされる。ナノシート・フィンがパターニングされると、ゲート・スタックがナノシート・フィンのチャネル領域上に形成され、ソース/ドレイン領域がゲート・スタックに隣接して形成される。一部のデバイスでは、ゲート・スタックまたはソース/ドレイン領域が形成されると、エッチング・プロセスが行われて、異種材料のうちの1つのナノシート層をフィンから選択的に除去する。エッチング・プロセスにより、ナノシート・フィンの層のアンダカットおよび宙吊り(suspension)を生じて、ゲートオールアラウンド型デバイスを形成するために使用可能なナノシートまたはナノワイヤを形成する。
【0015】
従来のMOSFET製造では、デバイスの電気特性を向上させるために、横方向非対称チャネル(LAC)ドーピング・プロファイル法が実施されている。LAC MOSFETの場合、チャネル領域のソース側のドーピング濃度は、ドレイン側のドーピング濃度よりも高い。したがって、不均一なチャネル・ドーピングにより、デバイスの動作中、チャネル領域のソース側におけるチャネル電位遷移(channel potential transition)は、ドレイン側におけるチャネル電位遷移よりもはるかに急になる。チャネル領域のソース側近くのこのような急な電位分布は、横方向チャネル電界(lateral channel electric field)を強化し、したがってキャリア移動度(carrier mobility)を高める。しかしながら、従来技術の短チャネル・デバイス(例えば、ナノシート)において不均一なチャネル・ドーピング・プロファイルを実施することは、デバイス領域が小さいため、非常に困難になり得る。したがって、積層ナノシートFETにおいてチャネルの一部にハロー領域(halo region)を自己整合方式(self-aligned manner)で導入するための代替設計および技術が必要である。
【0016】
したがって、本開示の実施形態は、チャネル領域のソース側近くで仕事関数金属(work function metal)をピンチオフすることによって、チャネル領域にわたる非対称の閾値電圧分布を実現する、積層ナノシート相補型金属酸化膜半導体(CMOS)構造体を提供する。これにより得られる非対称の仕事関数金属分布は、金属ゲートのパターニングを必要とすることなく、チャネル領域のソース側の閾値電圧を増大させることによって、デバイスの性能を向上させる。チャネルにわたる非対称の閾値電圧分布を実現するために仕事関数金属をピンチオフする1つの方法として、非対称の内部スペーサを形成することが挙げられる。以下で、
図1~
図10Bの添付図面を参照しながら、非対称の閾値電圧分布を有する積層ナノシート構造体を実現するために非対称の内部スペーサを形成することができる実施形態について、詳細に説明する。
【0017】
図1を参照すると、本開示の実施形態による、ナノシート・スタック108を含む半導体構造体100の断面図が示されている。ナノシート・スタック108は、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)犠牲ナノシート110、112、114(以下「犠牲ナノシート」)およびシリコン(Si)・チャネル・ナノシート120(以下「チャネル・ナノシート」)の交互配列から形成されている。ナノシート・スタック108は、半導体基板102(例えば、シリコン)上に形成された酸化物分離層106に形成されている。図示を簡単にするために、限定する意図なく、15の交互の犠牲ナノシート110、112、114およびチャネル・ナノシート120の配列が
図1に示されている。しかしながら、設計要件を満たすために、任意の数の犠牲ナノシート110、112、114およびチャネル・ナノシート120を半導体構造体100に形成することができる。
【0018】
1つまたは複数の実施形態において、犠牲ナノシート110、112、114およびチャネル・ナノシート120の交互配列は、所望の数および所望の厚さのナノシートが実現されるまで、1つの層をエピタキシャル成長させた後に次の層をエピタキシャル成長させることによって形成される。エピタキシャル材料は、気体前駆体または液体前駆体から成長させることができる。エピタキシャル材料は、気相エピタキシ(VPE)、分子線エピタキシ(MBE)、液相エピタキシ(LPE)、または他の適切なプロセスを使用して成長させることができる。トランジスタのタイプに応じて、ドーパント、すなわちn型ドーパント(例えば、リンもしくはヒ素)またはp型ドーパント(例えば、ホウ素もしくはガリウム)を添加することにより、堆積中に、エピタキシャル・シリコン、シリコン・ゲルマニウム、もしくは炭素ドープ・シリコン(Si:C)・シリコン、またはその組合せをドープする(その場ドープする(in-situ doped))ことができる。
【0019】
用語「エピタキシャル成長もしくはエピタキシャル堆積またはその両方」および「エピタキシャル形成された、もしくはエピタキシャル成長させた、またはその両方」は、別の半導体材料(結晶性材料)の堆積面における半導体材料(結晶性材料)の成長であって、成長している半導体材料(結晶性オーバレイヤ)が、堆積面の半導体材料(シード材料)と実質的に同じ結晶特性を有する成長を意味する。エピタキシャル堆積プロセスでは、堆積面の原子の結晶配列と向きを整合させるべく堆積原子が半導体基板の堆積面を動き回るのに十分なエネルギーを有して堆積原子が堆積面に到着するように、原料ガスによって供給される化学反応物を制御することができ、システム・パラメータが設定される。したがって、エピタキシャル成長させた半導体材料は、そのエピタキシャル成長させた材料が形成された堆積面と実質的に同じ結晶特性を有する。例えば、{100}方位の結晶面に堆積させたエピタキシャル成長させた半導体材料は、{100}方位をとる。一部の実施形態において、エピタキシャル成長プロセスもしくはエピタキシャル堆積プロセスまたはその両方が、半導体表面での形成に対して選択的であり、一般に、二酸化ケイ素表面または窒化ケイ素表面などの露出した表面には材料を堆積させない。
【0020】
一部の実施形態において、エピタキシャル半導体材料を堆積させるためのガス源は、シリコン含有ガス源、ゲルマニウム含有ガス源、またはこれらの組合せを含む。例えば、エピタキシャル・シリコン層は、シラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、ヘキサクロロジシラン、テトラクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、エチルシラン、メチルジシラン、ジメチルジシラン、ヘキサメチルジシラン、およびこれらの組合せからなる群から選択されたシリコン・ガス源から堆積させることができる。エピタキシャル・ゲルマニウム層は、ゲルマン、ジゲルマン、ハロゲルマン、ジクロロゲルマン、トリクロロゲルマン、テトラクロロゲルマン、およびこれらの組合せからなる群から選択されたゲルマニウム・ガス源から堆積させることができる。一方、エピタキシャル・シリコン・ゲルマニウム合金層は、このようなガス源の組合せを利用して形成することができる。水素、窒素、ヘリウム、およびアルゴンのようなキャリア・ガスを使用することができる。
【0021】
ある実施形態によれば、(第1のまたは下部)犠牲ナノシート110および(第3のまたは上部)犠牲ナノシート114は、約25%Geの第1のゲルマニウム(Ge)濃度を有するシリコン・ゲルマニウム(SiGe)を含み、犠牲ナノシート110と犠牲ナノシート114との間に位置する(第2のまたは中間)犠牲ナノシート112は、約35%Geの第2のゲルマニウム濃度を有して形成される。以下で詳細に説明するように、異なるGe濃度により、犠牲ナノシート110、114と犠牲ナノシート112との間で異なるエッチング速度を有することができる。
【0022】
ある実施形態によれば、ナノシート・スタック108を形成する犠牲ナノシート110、112、114およびチャネル・ナノシート120の交互配列に、既知の処理技術が適用されている。例えば、既知の処理技術は、ナノシート・スタック108上にフィン・ハード・マスク(図示せず)を形成することを含むことができる。フィン・ハード・マスクは、例えば、化学蒸着(CVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)、または誘電体堆積のための任意の適切な技術を使用して、最初にハード・マスク材料(例えば、窒化ケイ素)をナノシート・スタック108に堆積させることによって形成することができる。次に、堆積したハード・マスク材料を、複数の個々のフィン・ハード・マスクにパターニングする。ハード・マスクのパターニングは、半導体デバイスのチャネル領域を形成するために使用される所望の設置面積およびチャネル・ナノシート120の位置に相応する。例示的な実施形態によれば、反応性イオン・エッチング(RIE)を使用して、犠牲ナノシート110、112、114およびチャネル・ナノシート120の交互配列をエッチングし、
図1に示すようなナノシート・スタック108を形成する。
【0023】
引き続き
図1を参照すると、ダミー・ゲート130およびハード・マスク(HM)140が、ナノシート・スタック108の上および周りに形成されている。具体的には、当業者に知られているように、ダミー・ゲート130は、ナノシート・スタック108の上部および側壁(図示せず)に形成されている。1つまたは複数の実施形態において、ダミー・ゲート130はアモルファス・シリコン(a-Si)から形成され、ハード・マスク140は、窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素、酸化物/窒化物スタック、または同様の材料および構成から形成されている。ハード・マスク140は、通常、ダミー・ゲート130上に形成されて、エッチング・ストップ(etch stop)として作用する。
【0024】
図示するように、オフセット・スペーサ(offset spacer)150が、ダミー・ゲート130およびハード・マスク140の側壁に沿って形成されている。オフセット・スペーサ150は、スペーサ・プルダウン形成プロセス(spacer pull down formation process)を使用して形成することができる。オフセット・スペーサ150は、スペーサ材料の堆積と、それに続く堆積したスペーサ材料の指向性RIEとを含む、側壁イメージ転写(SIT)スペーサ形成プロセスを使用して形成することもできる。オフセット・スペーサ150の幅寸法は、オフセット・スペーサ150とハード・マスク140とが初期幅(w)を定義するように選択される。
【0025】
当業者に知られているように、オフセット・スペーサ150をマスクとして使用して、図示するように、オフセット・スペーサ150およびダミー・ゲート130の下に存在しない犠牲ナノシート110、112、114およびチャネル・ナノシート120の部分を凹ませる。例えば、RIEプロセスを使用して、オフセット・スペーサ150およびダミー・ゲート130の下に存在しない犠牲ナノシート110、112、114およびチャネル・ナノシート120の部分を凹ませることができる。図示しないが、通常、犠牲ナノシート110、112、114およびチャネル・ナノシート120は、溝(図示せず)を形成して酸化物分離層106内に凹んでいる。ダミー・ゲート置換ステップ(dummy gate replacement step)(以下で詳細に説明する)の前にフィン・エッチングが行われているので、本明細書に記載の半導体デバイス作製プロセスを、フィンの第1のプロセスと呼ぶことができる。
【0026】
次に
図2を参照すると、本開示の実施形態による、犠牲ナノシート110、112、114を凹ませた後の、半導体構造体100の断面図が示されている。本実施形態において、例えば、塩化水素(HCL)ガス等方性エッチングなどの等方性エッチング・プロセスを、半導体構造体100において行って、犠牲ナノシート110、112、114を凹ませることができる。選択される等方性エッチング・プロセスは、シリコンを攻撃することなくシリコン・ゲルマニウムをエッチングできることが好ましい。
【0027】
前述したように、犠牲ナノシート110、114のゲルマニウム濃度は、犠牲ナノシート112のゲルマニウム濃度よりも低い。したがって、エッチング・プロセス中、より高いゲルマニウム濃度を有して形成された犠牲ナノシート112は、より低いゲルマニウム濃度を有して形成された犠牲ナノシート110、114よりも速くエッチングされる。これにより、図示するように、犠牲ナノシート112の凹部またはくぼみ領域202がより深くなる。言い換えると、犠牲ナノシート110、114のゲルマニウム濃度が低いため、これらの層は、犠牲ナノシート112よりもゆっくりとエッチングされて、くぼみ領域202を形成する。犠牲ナノシート110、114のシリコン・ゲルマニウムの残りの部分を含む領域204は、エッチング・プロセス後も半導体構造体100に存在し得ることに留意されたい。犠牲ナノシート110、114と犠牲ナノシート112とのエッチング速度の差により、くぼみ領域202は必然的に、図示のように犠牲ナノシート112に向かって細くなる形状を有する。
【0028】
次に
図3を参照すると、本開示の実施形態による、第1の内部スペーサ320を形成した後の、半導体構造体100の断面図が示されている。本実施形態において、第1の内部スペーサ320は、例えば、くぼみ領域202(
図2)をピンチオフする内部スペーサ材料のコンフォーマルな堆積(conformal deposition)によって形成することができる。第1の内部スペーサ320を形成する内部スペーサ材料は、例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)を含む。
【0029】
次に、ウェット・エッチングなどの等方性エッチングを行って、図示のように、第1の内部スペーサ320を凹ませる。第1の内部スペーサ320を凹ませると、オフセット・スペーサ150の下およびチャネル・ナノシート120の上に位置する犠牲ナノシート110、114の残りの部分(例えば、
図2の領域204)が露出する。等方性エッチング・プロセス中に、半導体構造体100の他の領域からの過剰な内部スペーサ材料を除去することができることに留意されたい。
【0030】
次に
図4を参照すると、本開示の実施形態による、第1の内部スペーサ320を凹ませた後に露出した、オフセット・スペーサ150の下およびチャネル・ナノシート120の上の犠牲ナノシート110、114の残りの部分を除去した後の、半導体構造体100の断面図が示されている。
【0031】
図示のように、オフセット・スペーサ150の下およびチャネル・ナノシート120の上に位置する犠牲ナノシート110、114の露出した残りの部分は、半導体構造体100から(すなわち、
図2の領域204の露出した部分から)選択的に除去されて、その後に形成されるソース/ドレイン・エピ領域(source/drain epi region)に対するSiGe放出のダメージ(SiGe release damage)を防ぐ。例示的な実施形態において、例えば、塩化水素(HCL)ガス等方性エッチングなどの等方性エッチング・プロセスを行って、オフセット・スペーサ150の下およびチャネル・ナノシート120の上の犠牲ナノシート110、114の露出した残りの部分を除去することができる。図示のように、犠牲ナノシート110、114の一部は、ダミー・ゲート130、チャネル・ナノシート120の内部領域、および酸化物分離層106に接触したままであってよい。
【0032】
次に
図5を参照すると、本開示の実施形態による、保護有機平坦化層(OPL)520を形成し、第1の内部スペーサ320の一部を保護OPL520とは反対側の半導体構造体100の第1の側から除去した後の、半導体構造体100の断面図が示されている。
【0033】
保護OPL520は、その後のエッチング・プロセス中に下層のダメージを効果的に防ぐことができる有機平坦化材料を堆積させることによって形成される。ある実施形態によれば、保護OPL520は、図示のように、半導体構造体100の第1の側から第1の内部スペーサ320を除去するために使用されるエッチング・プロセス中に、第1の側とは反対側の半導体構造体100の第2の側を保護する。以下で説明するように、ソース・ドレイン領域が、半導体構造体100の第1の側に形成され、ドレイン領域が、半導体構造体100の反対側の第2の側に形成される。
【0034】
保護OPL520は、必ずしも限定されないが、C、H、およびNを含む有機ポリマーを含むことができる。ある実施形態によれば、OPL材料はシリコン(Si)を含まなくてよい。別の実施形態によれば、OPL材料は、Siおよびフッ素(F)を含まなくてよい。本明細書で説明するように、材料の原子レベルが当技術分野で使用可能な分析方法により検出可能な微量レベル(trace level)以下であるとき、材料は原子を含まない。保護OPL520を形成するOPL材料の非限定的な例として、JSR HM8006、JSR HM8014、AZ UM10M2、Shin Etsu ODL 102、または他の同様の市販の材料が挙げられる。保護OPL520は、例えば、スピン・コーティングによって、堆積させることができ、化学機械研磨(CMP)などの平坦化プロセスがそれに続く。
【0035】
保護OPL520を形成した後、例えば、希釈HFなどのウェット・エッチング・プロセスを使用して、第1の内部スペーサ320の一部を選択的に除去する。第1の内部スペーサ320の一部を半導体構造体100の第1の側から除去することにより、第1の凹部510を形成する。第1の内部スペーサ320の一部を半導体構造体100の第1の側から除去した後、
図6に示すように、保護OPL520を除去する。
【0036】
次に
図6を参照すると、本開示の実施形態による、保護OPL520を除去し、第2の内部スペーサ640を形成した後の、半導体構造体100の断面図が示されている。実施形態において、保護OPL520は、例えば、トレース・ポイント検出(trace point detection)を含むOPL RIEを使用して、除去することができる。
【0037】
第1の内部スペーサ320と同様に、第2の内部スペーサ640は、内部スペーサ材料のコンフォーマルな堆積によって形成することができる。ある実施形態によれば、第2の内部スペーサ640を形成する内部スペーサ材料は、例えば、SiN、SiC、SiOC、SiCN、BN、SiBN、SiBCN、SiOCN、SiOxNy、およびこれらの組合せを含む。RIE、ウェット・エッチング、または等方性気相ドライ・エッチングを含むエッチング・プロセスを行って、過剰な内部スペーサ材料を半導体構造体100から除去することができる。
【0038】
第2の内部スペーサ640は、半導体構造体100の主な内部スペーサを構成することに留意されたい。1つまたは複数の実施形態において、第1の内部スペーサ320を形成するスペーサ材料は、第2の内部スペーサ640を形成するスペーサ材料に対してエッチングの選択性を与えることに基づいて選択される。図示するように、半導体構造体100の第1の側の第2の内部スペーサ640は、
図2に示すくぼみ領域202に対応する第1の凹部510(
図5)を実質的に埋める。
【0039】
図示するように、第2の内部スペーサ640は、内部スペーサ640の中央上面から残りの犠牲ナノシート112に向かって外方へ延びる突出領域612を含む。突出領域612は、突出領域612とチャネル・ナノシート120との間の空間が、その後に形成される窒化物層(例えば、
図10Aに示す内側窒化物層1010)の厚さの2倍未満となるように形成されたT字形内部スペーサを提供する。それにより得られる第2の内部スペーサ640の非対称の形状は、以下で詳細に説明するように、半導体構造体100の第1の側すなわちソース側にその後に形成される窒化物層をピンチオフすることができる。
【0040】
例示的な実施形態において、第2の内部スペーサ640の厚さは、約5nm~約10nmで変化することができ、その範囲にわたっているが、5nm未満および10nm超の厚さであってもよい。第2の内部スペーサ640の突出領域612の厚さは、約2nm~約5nmで変化することができるが、2nm未満および5nm超の厚さであってもよい。
【0041】
次に
図7を参照すると、本開示の実施形態による、ソース領域720およびドレイン領域722を形成した後の、半導体構造体100の断面図が示されている。
【0042】
製造プロセスのこのステップで、ソース領域720およびドレイン領域722は、エピタキシャル層成長プロセスを使用して、チャネル・ナノシート120の露出端部に形成される。その場ドーピング(ISD)または外部ドーピング(ex-situ doping)を適用して、ソース領域720およびドレイン領域722をドーピングすることができ、それにより、半導体デバイスの必要な接合部を形成する。ほぼすべての半導体トランジスタが、接合部の形成に基づいている。接合部は、加えられるバイアスに応じて、電流を遮断することができ、電流を流すことができる。接合部は通常、反対の極性を有する2つの半導体領域を互いに接触させることによって形成される。最も一般的な接合部はp-n接合部であり、これは、ホールが多いp型シリコン片(p-type piece of silicon)と電子が多いn型シリコン片との接触部から構成される。n型FETおよびp型FETは、必要な接合部を形成するために、異なる型のドーパントをデバイスの選択された領域に注入する(implant)ことによって形成される。n型デバイスは、ヒ素(As)またはリン(P)を注入することによって形成することができ、p型デバイスは、ホウ素(B)を注入することによって形成することができる。
【0043】
半導体構造体100の第1の側は、ソース領域720が位置する側(すなわち、ソース側)に対応することを理解されたい。同様に、半導体構造体100の第2の側(第1の側とは反対側)は、ドレイン領域722が位置する側(すなわち、ドレイン側)に対応する。
【0044】
ソース領域720およびドレイン領域722を形成した後、レベル間誘電体(ILD)層730が形成されて、半導体構造体100内のゲート構造体と他の存在するデバイスとの間の空隙を埋める。ILD層730は、例えば、誘電体材料のCVDによって形成することができる。ILD層730を形成するための誘電体材料の非限定的な例として、酸化ケイ素、窒化ケイ素、水素化シリコン炭素酸化物、シリコン・ベースの低k誘電体、流動性酸化物、多孔誘電体、または多孔有機誘電体を含む有機誘電体が挙げられる。ILD層730を堆積させた後、半導体構造体100においてCMPプロセスを行って、図示のようにダミー・ゲート130の上面を露出させる。
【0045】
次に
図8を参照すると、本開示の実施形態による、ダミー・ゲート130および犠牲ナノシート110、114を除去した後の、半導体構造体100の断面図が示されている。
【0046】
ダミー・ゲート130および(SiGe)犠牲ナノシート110、114は、例えば、RIEまたは化学的酸化物除去(COR)を含む既知のエッチング・プロセスによって除去することができる。ゲートラスト作製プロセスでは、除去されたダミー・ゲート130は、その後、当技術分野で知られているように、金属ゲート(図示せず)に置き換えられる。ダミー・ゲート130および犠牲ナノシート110、114は、半導体構造体100の第2の側に残っている第1の内部スペーサ320に対して選択的に除去されることに留意されたい。
【0047】
次に
図9を参照すると、本開示の実施形態による、第1の内部スペーサ320の残りの部分を除去した後の、半導体構造体100の断面図が示されている。本実施形態において、例えばRIEまたはウェット・エッチングなどの既知のエッチング・プロセスを使用して、第1の内部スペーサ320の残りの部分を半導体構造体100の第2の側またはドレイン側から除去することができる。ダミー・ゲート130(
図7)、犠牲ナノシート110、114(
図7)、および第1の内部スペーサ320(
図8)を除去した後、第2の凹部910が半導体構造体100に形成される。
【0048】
第1の内部スペーサ320(
図8)の残りの部分を半導体構造体100のドレイン側から除去した後、第2の内部スペーサ640の非対称の構成を、半導体構造体100において視覚的に認識することができる。図示するように、半導体構造体100の第1の(ソース)側の第2の内部スペーサ640は、第2の凹部910に向かって延びる突出領域612を含み、一方、半導体構造体100の第2の(ドレイン)側の第2の内部スペーサ640は突出領域612を有していない。前述したように、半導体構造体100のソース側の突出領域612は、以下で詳細に説明するように、その後に形成される窒化物層をピンチオフすることができるT字形内部スペーサ構成を提供する。
【0049】
次に
図10A、
図10Bを参照すると、本開示の実施形態による、ゲート・スタックおよび金属充填物を堆積させた後の、半導体構造体100の断面図が示されている。当業者に知られているように、置換金属ゲート(replacement metal gate)またはゲートラスト作製プロセスでは、ダミー・ゲート130(
図7)は、n型またはp型金属ゲート・スタックに置き換えられる。
【0050】
ある実施形態によれば、
図10Aは、n型電界効果トランジスタ(NFET)・デバイスに適したゲート誘電体および仕事関数金属を堆積させた後の、半導体構造体100を示す。図示を容易にするために、ゲート誘電体は図示されていない。本実施形態において、内側窒化物層1010と外側窒化物層1030との間に位置するドープ遷移金属層1020によって形成された3層ゲート金属スタックが、第2の凹部910(
図9)内に連続してコンフォーマルに堆積されている。
【0051】
内側窒化物層1010は、任意の適切な堆積プロセスを使用して、第2の凹部910(
図9)内にコンフォーマルに形成することができる。一部の実施形態において、内側窒化物層1010は、ALDを使用してコンフォーマルに堆積される。一部の実施形態において、内側窒化物層1010は窒化チタン(TiN)を含む。内側窒化物層1010の厚さは、約1nm~約2nmで変化し得る。
【0052】
ドープ遷移金属層1020は、内側窒化物層1010に形成される。一部の実施形態において、ドープ遷移金属層1020は、ALDを使用して堆積される。一部の実施形態において、ドープ遷移金属層1020は、アルミニウム・ドープ遷移金属炭化物を含む。一部の実施形態において、ドープ遷移金属層1020は、遷移金属を含む前駆体と炭化アルミニウムを含む前駆体との交互パルス(alternating pulse)を有するハイブリッドALD/CVDプロセスを使用して形成される。本実施形態において、ドープ遷移金属層1020は、例えば、アルミニウム・ドープ炭化チタン(TiAlC)から形成される。ドープ遷移金属層1020の厚さは、約3nm~約5nmで変化し得る。
【0053】
当業者に知られているように、アルミニウム(Al)を含む金属の存在により、デバイスの閾値電圧が低下することがある。T字形の第2の内部スペーサ640を形成することにより、内側窒化物層1010は、半導体構造体100のソース側でピンチオフされ、それにより、ドープ遷移金属層1020からのAlを含む金属の堆積を防ぐ。したがって、
図10Aに示す内部スペーサ-ゲート金属スタック構成は、半導体構造体100の第1の側すなわちソース側の閾値電圧を高くする、非対称の仕事関数金属分布を有する横方向非対称チャネル(LAC)構造体を提供する。これにより、追加の金属パターニングなしで、デバイスの短チャネル性能を向上させることができる。
【0054】
外側窒化物層1030は、内側窒化物層1010と同様の方法で、ドープ遷移金属層1020上にコンフォーマルに形成することができる。一部の実施形態において、外側窒化物層1030は、ALDを使用してコンフォーマルに堆積される。一部の実施形態において、外側窒化物層206は窒化チタン(TiN)を含む。外側窒化物層1010の厚さは、約1nm~約2nmで変化し得る。
【0055】
一部の実施形態において、ゲート誘電体(図示せず)が、チャネル・ナノシート120と内側窒化物層1010との間に形成される。ゲート誘電体は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ホウ素、高k材料、またはこれらの材料の任意の組合せから形成することができる。高k材料の例として、限定されないが、酸化ハフニウム、ハフニウム・シリコン酸化物、ハフニウム・シリコン酸窒化物、酸化ランタン、ランタン・アルミニウム酸化物、酸化ジルコニウム、ジルコニウム・シリコン酸化物、ジルコニウム・シリコン酸窒化物、酸化タンタル、酸化チタン、バリウム・ストロンチウム・チタン酸化物、バリウム・チタン酸化物、ストロンチウム・チタン酸化物、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、鉛・スカンジウム・タンタル酸化物、および鉛亜鉛ニオブ酸塩などの金属酸化物が挙げられる。高k材料は、ランタンおよびアルミニウムなどのドーパントをさらに含むことができる。一部の実施形態において、ゲート誘電体は、約1nm~約3nmで変化する厚さを有することができる。
【0056】
別の実施形態によれば、
図10Bは、p型電界効果トランジスタ(PFET)・デバイスに適した仕事関数金属を堆積させた後の、半導体構造体100を示す。本実施形態において、窒化物層1012が、第2の凹部910(
図9)内にコンフォーマルに堆積される。窒化物層1012は、任意の適切な堆積プロセスを使用して、凹部910(
図9)内にコンフォーマルに形成することができる。一部の実施形態において、窒化物層1012は、ALDを使用してコンフォーマルに堆積される。一部の実施形態において、窒化物層1012は窒化チタン(TiN)を含む。窒化物層1012の厚さは、約3nm~約5nmで変化し得る。
図10Aを参照して前述したように、ゲート誘電体(図示せず)を、チャネル・ナノシート120と窒化物層1012との間に形成することができる。
【0057】
半導体構造体100がPFETデバイスである実施形態において、アルミニウム(Al)を含む金属は、ゲート金属スタックに含まれない。したがって、これらの実施形態において、非対称の閾値電圧プロファイルは、半導体構造体100のソース側とドレイン側との有効金属厚さの差によって生じる。言い換えると、半導体構造体100のソース側の(金属)窒化物層1012の有効厚さは、半導体構造体100のドレイン側の窒化物層1012の有効厚さよりも小さい。このように半導体構造体100のソース側の有効金属厚さが小さいことは、第2の内部スペーサ640の突出領域612によって生じる。
【0058】
したがって、非対称の仕事関数金属分布および(第1の)ソース側の高い閾値電圧を有する横方向非対称チャネル(LAC)構造体を、半導体構造体100がPFETデバイスである実施形態において実現することができる。上記の
図10Aで説明したNFETデバイスと同様に、追加の金属パターニングなしで、デバイスの短チャネル性能を向上させることができる。
【0059】
引き続き
図10A、
図10Bを一緒に参照すると、当業者に知られているように、第2の凹部910(
図9)内に対応する(p型またはn型)仕事関数金属を堆積させた後、図示のように、導電性ゲート層1040が、半導体構造体100において、最上窒化物層の上方に堆積される。導電性ゲート層1040は、金属(例えば、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ルテニウム(Ru)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、スズ(Sn)、銀(Ag)、金(Au))、導電性金属化合物材料(例えば、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、炭化タンタル(TaC)、炭化チタン(TiC)、チタン・アルミニウム炭化物(TiAlC)、ケイ化タングステン(WSi)、窒化タングステン(WN)、酸化ルテニウム(RuO
2)、ケイ化コバルト(CoSi)、ケイ化ニッケル(NiSi))、遷移金属アルミナイド(例えば、Ti
3Al、ZrAl)、TaC、TaMgC、またはこれらの材料の任意の適切な組合せであってよい。様々な実施形態において、導電性ゲート層1040は、堆積中または堆積後に取り込まれるドーパントをさらに含むことができる。任意の既知の堆積プロセスを使用して、導電性ゲート層1040を形成することができる。CMPなどの平坦化プロセスは、一般に、導電性ゲート層1040を堆積させた後に、半導体構造体100において行われる。
【0060】
最後に、提案された実施形態により、ソース領域とドレイン領域との間に非対称の閾値電圧プロファイルを有する半導体構造体を形成することができ、それにより、デバイス性能を向上させることができ、ナノシート技術のさらなるスケーリングを可能にすることができる。
【0061】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されてきたが、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることは意図されていない。多くの修正および変形形態が、記載された実施形態の範囲から逸脱しないことは、当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場で見られる技術に対する実際の適用または技術的改善を最もよく説明するために、または当業者が本明細書に開示される実施形態を理解できるようにするために選択された。
【国際調査報告】