(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】角質剥離または皮膚状態改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/66 20060101AFI20240214BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240214BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240214BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K8/66
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/44
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523639
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-18
(86)【国際出願番号】 KR2021017502
(87)【国際公開番号】W WO2022154247
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0005797
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0060780
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チ・イエ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ユン・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・チュン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ネ・ギュ・カン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC532
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC682
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD332
4C083AD471
4C083AD472
4C083CC02
4C083EE01
4C083EE11
(57)【要約】
本発明は、タンパク質分解酵素系の剥離剤を糖アルコールおよび/またはセリンと共に含む組成物であって、タンパク質分解酵素の組成物内での安定性の低下とこれによる角質剥離効果の低下の問題を解決し、向上した角質剥離および皮膚状態改善効果を有する、安全でありかつ安定な組成物を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質分解酵素と、
糖アルコールおよび/またはセリンと
を含む、角質剥離用組成物。
【請求項2】
タンパク質分解酵素、糖アルコール、およびセリンを含む、請求項1に記載の角質剥離用組成物。
【請求項3】
前記タンパク質分解酵素は、パパイン、ブロメライン、ケラチナーゼ(Keratinase)およびサブチリシン(subtilisin)からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項1に記載の角質剥離用組成物。
【請求項4】
前記糖アルコールは、グリセロール、エリスリトール(erythritol)、ソルビトール、トレイトール(threitol)、アラビトール(arabitol)、キシリトール(xylitol)、マンニトール(mannitol)、ソルビトール(sorbitol)、エチルグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール(Dipropylene Glycol;DPG)、およびブチレングリコールからなる群から選ばれる1つ以上である、請求項1に記載の角質剥離用組成物。
【請求項5】
タンパク質分解酵素および糖アルコールを含む、皮膚状態改善用組成物。
【請求項6】
セリンをさらに含む、請求項5に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項7】
前記タンパク質分解酵素は、パパイン、ブロメライン、ケラチナーゼ(Keratinase)およびサブチリシン(subtilisin)からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項5に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項8】
前記糖アルコールは、グリセロール、エリスリトール(erythritol)、ソルビトール、トレイトール(threitol)、アラビトール(arabitol)、キシリトール(xylitol)、マンニトール(mannitol)、ソルビトール(sorbitol)、エチルグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール(Dipropylene Glycol;DPG)、およびブチレングリコールからなる群から選ばれる1つ以上である、請求項5に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項9】
前記皮膚状態改善は、肌のきめ改善、肌のトーン改善、皮膚毛穴改善、収縮または減少、または皮膚シワ改善である、請求項5に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項10】
タンパク質分解酵素および糖アルコールを含む、皮膚角化症の予防または治療における使用のための薬学的組成物。
【請求項11】
セリンをさらに含む、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記タンパク質分解酵素は、パパイン、ブロメライン、ケラチナーゼ(Keratinase)およびサブチリシン(subtilisin)からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記糖アルコールは、グリセロール、エリスリトール(erythritol)、ソルビトール、トレイトール(threitol)、アラビトール(arabitol)、キシリトール(xylitol)、マンニトール(mannitol)、ソルビトール(sorbitol)、エチルグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール(Dipropylene Glycol;DPG)、およびブチレングリコールからなる群から選ばれる1つ以上である、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
タンパク質分解酵素および糖アルコールを含む薬学的組成物を皮膚角化症の予防または治療を必要とする対象に投与または対象の皮膚に塗布する段階と、前記対象または前記対象の皮膚における皮膚角化症の発生を抑制または減少させる段階と、を含む皮膚角化症の予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角質剥離のための有効成分の安定性を向上させることによって優れた角質ケアおよび肌のきめ改善効果を提供する化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
美容に対する関心が高まり、皮膚管理の観点から、ピーリング、すなわち角質剥離に対する関心および需要が次第に増加している。ピーリングは、皮膚科または皮膚管理店のピーリング施術に代表されるスペシャルケアから化粧品および生活用品を用いるホームケアまでその種類および方法が多様である。しかしながら、皮膚科ピーリング施術と比べて、化粧品を用いたホームケアによるピーリングの体感効果はかなり低い。
【0003】
ピーリングに使用される素材としては、大きく、乳酸、グリコール酸などのAHA(alpha hydroxyl acid)系、サリチル酸などのBHA(beta hydroxy acid)系、およびグルコノラクトンなどのPHA(poly hydroxyl acid)系の化合物を含む化学的剥離剤、パパイン、ブロメライン、タンパク質分解酵素などのタンパク質分解酵素素材、およびスクラブ成分などの物理的剥離剤がある。化学的剥離剤は、皮膚科施術において一般的に使用されるほどに効果が立証され、普遍的に使用されているが、刺激および安全性の問題に起因して効能を体感できるレベルの濃度をホームケア製品に適用することが難しいという問題がある。
【0004】
タンパク質分解酵素には、主にパパイン、ブロメラインなどの植物由来酵素と、サブチリシンなどのバシラス属(Bacillus sp.)微生物の培養を通じて生産されるタンパク質分解酵素とが含まれる。酵素の特性上、1つの分子が複数回作用してタンパク質を分解することができるため、低い濃度でも角質剥離効能に優れ、化学的剥離剤と比較して分子のサイズが大きいため、皮膚内に吸収または浸透せず相対的に刺激が少ないという長所がある。しかしながら、タンパク質からなる素材の特性上、時間および環境による成分自体の活性低下などに起因して、製品の皮膚への適用時の効能が低下する問題点があり、製品化が難しい。
【0005】
このような背景下、本発明者らは、角質剥離効能を有するタンパク質分解酵素系の剥離剤の化粧料組成物内での安定性が向上し、角質剥離効能が増進された化粧料組成物を研究、開発して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】KR10-2165564
【特許文献2】KR10-1673381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、タンパク質分解酵素系の剥離剤の組成物内での安定性の低下とこれによる角質剥離効果の低下の問題を解決するべく研究を行った結果、タンパク質分解酵素系の剥離剤を有効成分として含む化粧料組成物においてセリンおよび糖アルコールが共に含まれる場合、組成物内有効成分の安定性が向上し、角質剥離能の維持時間が増加し、角質剥離効能の増進およびこれによる肌のきめ改善効果とともに、毛穴改善およびシワ改善効果が得られることを確認し、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、有効成分の安定性および角質剥離活性の維持力が増進されて、刺激が少なく、優れた角質剥離効果、肌のきめ改善効果、毛穴改善およびシワ改善効果を有する化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明は、タンパク質分解酵素と糖アルコールおよび/またはセリンとを含む組成物を提供する。具体的には、前記組成物は、タンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンを含んでもよい。
【0010】
本発明の組成物は、タンパク質分解酵素と糖アルコールとを共に含むことによって、タンパク質分解酵素の安定性および角質剥離維持能を向上させることができ、これによって、増進または改善された優れた角質剥離効果を提供することができる。また、タンパク質分解酵素とセリンとを共に含むことによって、これらの組み合わせにより向上した角質剥離効果を提供することができる。このような観点から、本発明は、角質剥離用組成物を提供する。前記組成物は、その使用目的に応じて、化粧料組成物、薬学的組成物、外用剤組成物、医薬部外品組成物または食品組成物などに使用できる。
【0011】
本明細書において「角質剥離」は、皮膚の角質層に積もっている角質が皮膚の角質層から脱落または除去されることを意味する。物理的な力を加えて除去される場合だけでなく、別途の力を加えることなく、簡単な組成物の処理だけで皮膚の角質層から脱離する場合も全て含む意味である。
【0012】
本発明の組成物は、有効成分である角質剥離成分としてタンパク質分解酵素(protease)を含む。
【0013】
本明細書において「タンパク質分解酵素(protease)」は、タンパク質のペプチド結合を加水分解する酵素を意味し、タンパク質加水分解酵素ともいう。皮膚の角質を剥離する効能を有するタンパク質分解酵素であれば、制限なく本発明に含まれる。
【0014】
前記タンパク質分解酵素(protease)は、具体例として、パパイン、ブロメライン、ケラチナーゼ(Keratinase)およびサブチリシン(subtilisin)を含んでもよいし、前記成分からなる群から選ばれる1つ以上が化粧料組成物に有効成分として含まれてもよい。また、前記タンパク質分解酵素のうちいずれかの成分を含んで商業的に販売されている物質も、本発明のタンパク質分解酵素に含まれる。例えば、パパイン成分を含む成分としてX-pressin(バスフ)、パパイン、およびブロメラインを含む成分としてワンダザイム(Wonderzyme)などがタンパク質分解酵素または含酵素物質として本発明に含まれる。前記ケラチナーゼ(Keratinase)の成分としてケラチナーゼH(Keratinase H)またはケラチナーゼS(Keratinase S)なども全て本発明に含まれ得る。
【0015】
本発明の一様態によれば、本発明の組成物は、有効成分としてタンパク質分解酵素を含むことが好ましい。有効成分としてのタンパク質分解酵素は、組成物の総重量に対して0.0001重量%~1.0重量%の量で含まれていてよく、好ましくは、0.0001重量%~0.5重量%で含まれていてよい。タンパク質分解酵素の含有量が前記0.0001重量%未満である場合、角質剥離または皮膚状態改善に対する効果を得ることができず、1.0重量%を超える場合、含有量の増加による効果の増加が微小である。
【0016】
本発明の一実施例において、タンパク質分解酵素(protease)としてケラチナーゼ(keratinase、エルシーエスバイオテック)の皮膚角質剥離効果を試験した結果、タンパク質分解酵素であるケラチナーゼの濃度が増加するにつれて角質剥離効能も増加することを確認した(実施例1)。
【0017】
本発明の組成物は、有効成分である角質剥離成分としてセリンをさらに含む。
【0018】
本明細書において「セリン」は、アミノ酸の1つを意味し、(S)-セリン、L-セリンなど異性体を全て含む意味で使用される。
【0019】
前記セリンは、アミノ酸として化粧料組成物に3.0重量%を超えて含まれる場合、角質剥離効能が飽和し、効果を高めるのに限界がある。しかしながら、本発明の化粧料組成物では、セリンがタンパク質分解酵素および糖アルコールと共に組み合わせて含まれる場合、単一成分のみで使用される場合に比べて、向上した角質剥離能をもたらすことができ、上記した限界を克服することができる。
【0020】
本発明の一様態によれば、本発明の組成物は、セリンを組成物の総重量に対して0.1重量%以上で含まれてもよく、好ましくは、0.1重量%~3.0重量%で含まれてもよい。セリンの含有量が前記0.1重量%未満で含まれる場合、その効果が微小であり、3.0重量%を超過して含む場合、組成物の含有量の増加による効果の増加が微小である。
【0021】
本明細書において「糖アルコール」は、単糖類のカルボニル基のうちアルデヒド基またはケトン基が水素の添加により還元されて作られるヒドロキシ基(-OH)を2個以上有するアルコールや、そのような系に属する化合物を意味する。本発明の組成物において糖アルコールは、タンパク質分解酵素が安定に存在できるようにして、酵素のタンパク質分解活性を向上させる役割及び分解能の維持時間を増進させる役割をし、これによって、角質剥離製品においてタンパク質分解酵素の活性が低くなり、製品の品質と効果が低下する問題点を解決することができる。したがって、タンパク質分解酵素と糖アルコールを共に含む組成物では、タンパク質分解酵素の角質剥離能を長期間維持することができ、同じ濃度でタンパク質分解酵素のみを含む試料に比べて優れた角質剥離効果を得ることができる。
【0022】
前記糖アルコールは、具体例として、グリセロール、エリスリトール(erythritol)、ソルビトール、トレイトール(threitol)、アラビトール(arabitol)、キシリトール(xylitol)、マンニトール(mannitol)、ソルビトール(sorbitol)、エチルグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール(Dipropylene Glycol;DPG)、およびブチレングリコール(例えば、1,3-Butylene Glycol:1,3-BG)などに加えて前記各成分の異性体をも全て含む意味であり、具体的には、糖アルコール成分からなる群から1つ以上の糖アルコールの混合物でありうる。
【0023】
タンパク質分解酵素と単一の糖アルコールとを含む場合、好ましい例として、前記糖アルコールは、グリセロール、ソルビトール、エリスリトール、ジプロピレングリコール、またはブチレングリコールでありうる。
【0024】
また、前記糖アルコールは、グリセロール、ソルビトール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、およびエリスリトールからなる群から選ばれた2以上の成分を含む糖アルコール混合物の形態で含まれてもよい。前記糖アルコール混合物は、好ましい例として、グリセロール、ソルビトール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、およびエリスリトールを含んでもよい。
【0025】
本発明の一様態によれば、本発明の化粧料組成物は、糖アルコールは、組成物の総重量に対して0.001重量%~30.0重量%で含まれてもよい。糖アルコールの含有量が前記0.001重量%未満で含まれる場合、有効成分であるタンパク質分解酵素の安定性を高める効果が微小であり、30.0重量%を超過して含まれる場合、含有量の増加による効果の増加が微小である。
【0026】
前記糖アルコールが糖アルコール混合物として含まれる場合にも、糖アルコール混合物の最大含有量が30重量%を超えない範囲で上記した含有量内で混合されて組成物に含まれてもよい。一例として、糖アルコール混合物として組成物に含まれる場合、本発明の組成物全体に対してグリセロール0.001~20w/w%、ソルビトール0.001~20w/w%、DPG0.001~20w/w%、1,3-ブチレングリコール0.001~20w/w%、およびエリスリトール0.001~10w/w%の含有量の範囲内で糖アルコール混合物全体の含有量が組成物全体に対して30重量%を超過しないように含まれてもよい。
【0027】
本発明の一具体例において、タンパク質分解酵素とグリセロール、ソルビトール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールおよびエリスリトールを含む糖アルコールとを混合して角質剥離効果を確認した結果、糖アルコールには角質剥離活性がないにも関わらず、タンパク質分解酵素を単独で処理した場合と比較して、角質剥離効果が顕著に増進され、タンパク質分解活性が長期間維持されることを確認した(実施例2および3)。
【0028】
前記各成分は、商業的に販売される化合物を購入して使用することができ、商業的に販売される形態で本発明に含まれるものと理解される。
【0029】
また、本発明の組成物は、角質剥離作用を通じて皮膚の状態を改善することができる。このような観点から、本発明は、皮膚状態改善用組成物を提供する。
【0030】
本明細書において「皮膚状態改善」は、皮膚の外形的状態が改善されて肌のきめが細かくなったり、皮膚凹凸が緩和されたり、肌のトーンが改善されて健康色を帯びることだけでなく、皮膚内部の細胞などの均衡が崩れたことが回復、改善されたことを全て含む意味である。本発明の組成物は、皮膚の表面にできた角質を効果的かつ安定的に剥離させる作用を通じて皮膚状態を改善することができる。
【0031】
前記皮膚状態改善は、具体的には、肌のきめ改善、肌のトーン改善、皮膚毛穴改善、皮膚シワ改善、皮膚凹凸緩和、または肌のトーン改善効果を含む。このような観点から、本発明の組成物は、タンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンを含む肌のきめ改善用組成物、肌のトーン改善用組成物、毛穴の改善、収縮または減少用組成物または皮膚シワ改善用組成物を提供する。
【0032】
本明細書において「肌のきめ改善」は、角質剥離(peeling)を通じて皮膚の凹凸などを緩和または除去させて、皮膚の表面がなめらかかつ元気になる状態を意味する。
【0033】
本明細書において「肌のトーン改善」は、角質剥離(peeling)を通じて皮膚の暗い部分が除去されて、皮膚の色が明るくなることを意味する。
【0034】
本明細書において「毛穴の改善」または「毛穴の収縮または減少」とは、皮膚に存在する毛穴のサイズ(直径、体積)が小さくなったり、毛穴の数が減少することを意味する。
【0035】
本明細書において「シワ改善」は、皮膚にシワができることを予防、抑制または阻害したり、すでに生成されたシワを緩和させることをいう。
【0036】
本明細書において「組成物」は、化粧料組成物、薬学的組成物、外用剤組成物、医薬部外品組成物および食品組成物を含む意味である。前記各組成物は、使用目的、有効成分の含有量などに応じてカテゴリーを異ならせて使用することができる。
【0037】
一様態において、前記組成物は、化粧料組成物であってもよく、このような観点から、本発明は、タンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンを含む角質剥離用化粧料組成物または皮膚状態改善用化粧料組成物を提供する。
【0038】
本明細書において「化粧料組成物」は、化粧品の製造を目的に構成された組成物を意味し、広義では、外用剤のための外用剤組成物を含む意味と解釈することができる。
【0039】
本発明による化粧料組成物は、当業界において通常製造されるいかなる剤形で製造することもできる。例えば、前記化粧料組成物は、柔軟化粧水または栄養化粧水などの化粧水、スプレータイプの化粧水、フェイシャルローション、ボディローションなどの乳液、栄養クリーム、水分クリーム、アイクリームなどのクリーム、スティック、エッセンス、化粧軟膏、スプレー、ジェル、パック、サンスクリーン、メイクアップベース、液体タイプまたはスプレータイプなどのファンデーション、パウダー、クレンジングローション、クレンジングオイルなどのメイクアップ除去剤、クレンジングフォーム、せっけん、ボディウォッシュなどの洗浄剤などの剤形を有していてもよいが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明の化粧料組成物は、通常の使用方法によって使用でき、ユーザの皮膚状態または嗜好によって使用回数を異ならせることができる。
【0041】
本発明の化粧料組成物は、通常の化粧品に使用可能なすべての種類の成分、例えば、保湿剤、紫外線遮断剤、中和剤、増粘剤、香料、防腐剤、酸化防止剤または色素をさらに含んでもよい。
【0042】
本発明による化粧料組成物に含まれる上記した成分のそれぞれは、好ましくは、各国政府で定める化粧品の安全に対する法令または規定に記載された最大使用量を超過しない範囲内で本発明の化粧料組成物に含まれてもよい。
【0043】
他の様態において、前記組成物は、薬学的組成物であってもよく、このような観点から、本発明は、タンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンを含む薬学的組成物を提供する。
【0044】
本明細書において「薬学的組成物」は、医薬品の製造を目的に構成された組成物であり、ヒトを含む動物の病気の診断、治療、軽減、処置または予防を目的に使用される組成物を意味する。広義では、上記した目的に使用される組成物のうち、医師の許可なしに購買可能であるが、化粧品または一般外用剤と区分される医薬部外品のための医薬部外品組成物をも含む意味と解釈することができる。
【0045】
本発明の組成物が安定かつ優れた角質剥離効果を有する角質剥離用組成物を提供できるところ、本発明は、タンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンを含む、皮膚角化症の予防または治療における使用のための薬学的組成物でありうる。
【0046】
本明細書において「皮膚角化症」とは、遺伝、または環境的要因によって皮膚の表面に過度な角質が溜まる疾患を意味し、具体的には、毛穴角化症または手足角化症を含む。
【0047】
本明細書において「改善」とは、本発明の組成物を投与することにより目的とする症状が投与前より好転または有益に変更されるすべての行為を意味する。
【0048】
本明細書において「予防」とは、本発明の組成物を投与することにより目的とする症状または病気が発生しないようにし、あるいはその発生または発現を遅延させるすべての行為を意味する。
【0049】
本明細書において「治療」とは、本発明の組成物を投与することにより目的とする症状または病気を好転または消滅させるすべての行為を意味する。
【0050】
本発明の組成物に含まれるタンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンは、薬学的に有効な含有量(有効量)で含まれてもよい。前記用語「有効量」は、皮膚の角質を剥離して皮膚角化症または手掌足底角化症を予防または治療できる効果を示す量を意味する。
【0051】
組成物に含まれる各有効成分の治療濃度により角質剥離効果が示され得る限り、多様な重量%で含まれてもよい。各有効成分が下限未満で含まれる場合には、角質剥離予防または治療効能が発揮されないことがあり、上限超過で含まれる場合には、有効成分自体の物性、色または特有の香味が製品に影響を与えることができる。
【0052】
本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与する。前記薬学的に有効な量は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさないほどの量を意味し、有効用量レベルは、患者の健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、配合または同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定することができる。
【0053】
他の様態において、本発明は、タンパク質分解酵素および糖アルコールを含む薬学的組成物を皮膚角化症の予防または治療を必要とする対象に投与または対象の皮膚に塗布する段階と、前記対象または対象の皮膚における皮膚角化症の発生を抑制または低下させる段階と、を含む皮膚角化症の予防または治療方法を提供する。
【0054】
前記組成物は、マウス、ラット、家畜、ヒトなどの哺乳動物に非経口、経口などの多様な経路で投与することができ、投与のすべての方式は、予想可能であり、例えば、粘膜、皮膚、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射により投与することができる。前記皮膚投与は、皮膚に組成物を外用することを含む。
【0055】
本発明の薬学的組成物は、有効成分とする前記組成物を単独で含んでもよいし、その他の剤形、使用方法および使用目的に応じて薬学的に許容可能な担体、賦形剤、希釈剤または副成分をさらに含んでもよい。
【0056】
より具体的には、前記有効成分の他に、さらに、栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、増進剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などをさらに含有することができる。
【0057】
前記「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容され、動物、好ましくは、ヒトに投与されるとき、通常、胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似の反応を起こさないことを意味する。前記薬学的に有効な量は、疾患およびその重症程度、患者の年齢、体重、健康状態、性別、投与経路または治療期間などによって適宜変化することができる。
【0058】
前記薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシ安息香酸、プロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油、プロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油、デキストリン、カルシウムカーボネート、デキストリン、カルシウムカーボネート、プロピレングリコール、リキッドパラフィンおよび生理食塩水からなる群から選ばれた1以上が挙げられるが、これに限定されるものではなく、通常の担体、賦形剤または希釈剤がいずれも使用可能である。
【0059】
前記成分は、前記有効成分に独立してまたは組み合わせて追加することができる。
【0060】
前記薬学組成物の剤形は、使用方法によって異なっていてもよく、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延した放出を提供できるように、本発明の属する技術分野によく知られた方法を使用して剤形化することができる。前記剤形の例として、軟膏、クリーム、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、水溶液、非水性溶剤、懸濁剤および乳剤で構成される群から選ばれる剤形でありうる。
【0061】
前記剤形のために、賦形剤、一例として、通常の充填剤、増量剤、結合剤、崩解剤、界面活性剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤、甘味剤、芳香剤または保存剤などをさらに含んでもよい。
【0062】
一般的には、経口投与のための固形製剤には、錠剤(TABLETS)、丸薬、軟質または硬質カプセル剤(CAPSULES)、丸剤(PILLS)、散剤(POWDERS)および顆粒剤(GRANULES)などが含まれ、このような製剤は、1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製することができる。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクなどの潤滑剤を使用することができる。
【0063】
また、経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤(SUSTESIONS)、内用液剤、乳剤(EMULSIONS)およびシロップ剤(SYRUPS)などが該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水またはリキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。
【0064】
皮膚投与のために言及できる例としては、ダスティングパウダー、エマルジョン、懸濁液、オイル、スプレー、軟膏、グリージ軟膏、クリームペースト、ゲル、フォーム、または溶液を生成させるのに適しており、経皮薬物伝達体(TTS:Transdermal therapeutic system)に適した担体および/または賦形剤が挙げられる。本発明の局所用薬学製剤は、半固状の剤形であってもよく、特に軟膏(溶液軟膏、懸濁液軟膏)、クリーム、ゲルまたはペーストが挙げられる。油相に主に使用されるものは、脂肪アルコール、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、脂肪酸、例えば、パルミチン酸またはステアリン酸、液状または固状パラフィンまたはオゾケライト、液状ないし固状ワックス、例えば、イソプロピルミリステート、天然脂肪または一部合成脂肪、例えば、ココナッツ脂肪酸トリグリセリド、硬化油、例えば、水素化したピーナッツまたはキャスターオイル、またはグリセロールの脂肪酸の部分エステル、例えば、グリセロールモノステアレートまたはグリセロールジステアレートが挙げられる。好適な乳化剤としては、界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリアルコールまたはその酸化エチレン付加物の脂肪酸エステル、例えば、ポリグリセロール脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ソルビタンオレエートまたはソルビタンイソステアレートなど、イソステアレート、ステロール、またはポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルまたは脂肪酸エステル、例えば、アニオン性界面活性剤、例えば、脂肪アルコールスルホナートのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウムラウリルサルフェート、ナトリウムセチルサルフェートまたはナトリウムステアリルサルフェートが挙げられ、これらは、前記脂肪アルコール、例えば、セチルアルコールまたはステアリルアルコールの存在下で一般的に使用される。これらの中でも、特にクリーム乾燥を防止する製剤、例えば、ポリアルコール、例えば、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを水相に添加すること、あるいは保存剤、香料などを水相に添加することが可能である。
【0065】
本発明の薬学製剤は、無水状態の軟膏であってもよく、局所用途に適しており、体温状態で液体であるパラフィン、特に低粘度パラフィンを含有すること、あるいはは前記天然脂肪または部分合成脂肪、例えば、ココナッツ脂肪酸トリグリセリド、硬化油、例えば、水素化したピーナッツまたはキャスターオイル、グリセロールの脂肪酸の部分エステル、例えば、グリセロールモノステアレートおよびジステアレート、シリコーン、例えば、ポリメチルシロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサンまたはオクタメチルトリシロキサンを含有することができ、例えば、水性クリームに関連して、水分吸収容量を増加させる脂肪アルコール、およびステロール、ウールワックス、他の乳化剤および/またはその他添加剤を含有することができる。
【0066】
本発明において、前記薬学的組成物を医薬品に剤形化する場合、Remington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton PAに開示されている内容を参照することができ、前記文献は、本明細書の一部として含まれる。
【0067】
前記薬学的組成物は、医薬部外品組成物でありうる。
【0068】
本明細書において「医薬部外品」は、病気に対する治療、軽減、処置または予防の効果を示すが、医薬品より人体に及ぼす作用が軽微な物品を意味する。薬事法による医薬品の用途に使用される物品を除き、保健福祉部が別に定めた分類基準による物品を含む。具体的には、皮膚外用剤または個人衛生用品であってもよいが、これに制限されない。
【0069】
本発明の組成物を皮膚角質剥離または皮膚状態改善を予防、改善または治療を目的に医薬部外品組成物に添加する場合、前記組成物をそのまま添加することも、他の医薬部外品成分と共に使用することもでき、通常の方法によって適宜使用することができる。有効成分の混合量は、使用目的によって好適に決定することができる。
【0070】
前記皮膚外用剤は、特にこれに制限されないが、例えば、軟膏剤、ローション剤、スプレー剤、パッチ剤、クリーム剤、散剤、懸濁剤、ゲル剤またはジェルの形態で製造して使用することができる。前記個人衛生用品は、特にこれに制限されないが、具体的には、せっけん、化粧品、ウェットティッシュ、ティッシュ、シャンプー、皮膚クリーム、顔クリーム、歯磨き粉、リップスティック、香水、メイクアップ、ファンデーション、ボールタッチ、マスカラ、アイシャドー、サンスクリーンローション、ヘアケア製品、エアーフレッシュナーゲルまたは洗浄ゲルでありうる。また、本発明の医薬部外品組成物の他の例として、消毒清潔剤、シャワーフォーム、ウェットティッシュ、洗剤せっけん、ハンドウォッシュ、マスクまたは軟膏剤が挙げられる。
【0071】
以上、本明細書に記載された数値は、別途明示されていない限り、均等範囲まで含むものと解釈されなければならない。
【発明の効果】
【0072】
本発明による組成物は、タンパク質分解酵素の組成物内安定性低下とこれによる角質剥離効果低下を改善して、向上した角質剥離効果および皮膚状態改善効果を有する、安全でありながらも安定した組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】本発明のタンパク質分解酵素を単独で使用した場合、化学的剥離剤であるグルコノラクトン(PHA)より角質剥離効果に優れていることを示す。
【
図2】本発明のタンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンの混合組成物が、化学的剥離剤であるグルコノラクトン(PHA)、糖アルコール単独、セリン単独、タンパク質分解酵素単独、糖アルコールおよびセリン混合物、タンパク質分解酵素および糖アルコール混合物、タンパク質分解酵素およびセリン混合物より角質剥離効果に優れていることを示す。
【
図3】本発明の糖アルコールおよびセリンによりタンパク質分解酵素の角質剥離能の維持時間が延びたことを示す。
【
図4】本発明のタンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンを含む組成物による肌のきめおよび毛穴改善効果を示す。
【
図5】本発明のタンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンを含む組成物を含有する剤形による毛穴およびシワ改善効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明のメリットと特徴、およびそれらを達成する方法は、詳細に後述されている実験例および製造例を参照すると明確になる。しかしながら、本発明は、以下で開示される実験例および製造例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現され、単に本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供される。
【実施例】
【0075】
実施例1.タンパク質分解酵素の角質剥離効果
ブタ皮膚(メディキネティクス、2.5cm×2.5cm×1000um)をペーパータオルで押して水分を除去した後、エタノールで消毒した6mmのパンチを用いて穿孔した。ブタ皮膚の切片の表皮部分が上向きになるように96wellプレートに入れ、各実験群に対して設定された濃度の原料125ulに完全に浸漬した後、37℃で20時間保管した(湿度50%)。その後、溶液に脱離した角質細胞の個数を細胞カウントチップを用いて計算し、角質剥離効能を測定した。
【0076】
対照群として、精製水、PHAとしては、グルコノラクトン、タンパク質分解酵素は、ケラチナーゼ(Keratinase、エルシーエスバイオテック)を使用した。
【0077】
タンパク質分解酵素の処理群は、タンパク質分解酵素であるケラチナーゼを0.005w/w%、0.0075w/w%、0.01w/w%、0.05w/w%、0.1w/w%または1w/w%で含み、2w/w%の核酸ジオール、および残量の精製水を含む組成物で実験を行った。
【0078】
化学的剥離剤処理群は、PHA10w/w%組成物において、グルコノラクトンの角質剥離効能が最も高いpH4条件と、一般リーブオン化粧品剤形において通常使用される条件であるpH6条件とに分けて角質剥離程度を確認した。本実験では、精製水により脱離した角質剥離量を0とし、PHA10w/w%(pH4)実験群から脱離した角質剥離量を100に換算した場合、タンパク質分解酵素による角質剥離量を計算した。
【0079】
その結果、
図1に示されたように、0.005w/w%タンパク質分解酵素の角質剥離効能(51.1%)が、一般的に化粧品において使用されるPHA10w/w%(pH6)の角質剥離効能(30.9%)より高いことを確認した。タンパク質分解酵素の濃度が増加するにつれて、角質剥離効能も増加することを確認し、0.05w/w%以上の濃度で効能の飽和が現れられ、角質剥離効果の増加が現れられないことを確認した。
【0080】
実施例2.タンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンを含む組成物の角質剥離増進効果の確認
角質剥離効果は、前記実施例1と同じ方法で確認された。
【0081】
対照群は、精製水のみで処理し、PHA処理群は、グルコノラクトン10w/w%溶液(pH4)とグルコノラクトン10w/w%溶液(pH6)を用いた(
図2で、PHA pH4およびPHA pH6)。糖アルコールは、混合物の形態で用い、具体的には、組成物全体に対してグリセロール5w/w%、ソルビトール5w/w%、DPG5w/w%、1,3-BG5w/w%、およびエリスリトール2w/w%を含む。セリンは、0.5w/w%L-セリンアミノ酸溶液(pH6)を用いた。
【0082】
タンパク質分解酵素は、ケラチナーゼ(Keratinase,エルシーエスバイオテック)を使用し、タンパク質分解酵素は、0.01w/w%濃度で含ませて実験した(
図2で、プロテアーゼ)。
【0083】
プロテアーゼ、セリンおよび糖アルコール(糖アルコール混合物)を全て含む場合、全体組成物100%中、ケラチナーゼ0.01w/w%、セリン0.5w/w%、グリセロール5w/w%、ソルビトール5w/w%、DPG5w/w%、1,3-BG5w/w%、エリスリトール2w/w%、ヘキサンジオール0.02w/w%および残量の精製水77.47w/w%を含む組成物を使用した。
【0084】
実施例1と同じ方法で、各処理群において角質剥離効果を確認し、特に、タンパク質分解酵素、セリン、および糖アルコールをそれぞれ組み合わせる場合の、タンパク質分解酵素の角質剥離効能に及ぼす影響を確認した。
【0085】
その結果、
図2に示されたように、糖アルコール混合物は、角質剥離効能を示さず(2.3%)、セリン単独処理時、約37%の角質剥離能を有することを確認した。セリンと糖アルコールを混合した実験群では、角質剥離能において向上した効果を示さなかった。
【0086】
驚くべきに、セリン(0.5w/w%)とタンパク質分解酵素(0.01w/w%)を組み合わせて処理した場合、およびタンパク質分解酵素と糖アルコールを共に処理した場合(176%)、タンパク質分解酵素の角質剥離能が顕著に増加し、タンパク質分解酵素、セリンおよび糖アルコール成分を全て組み合わせた場合、角質剥離能がさらに顕著に高まったことを確認することができる(223.1%)。したがって、タンパク質分解酵素は、セリンおよび/または糖アルコールと組み合わせる場合、角質剥離において組み合わせによる相乗効果を有することが分かる。
【0087】
また、上記と同じ条件でセリンとタンパク質分解酵素の濃度を異ならせて、角質剥離効果を確認した。0.5w/w%セリンと0.005w/w%ケラチナーゼをそれぞれ単独処理して角質剥離能を確認し、セリンとケラチナーゼを複合処理して角質剥離能を確認した結果、0.5w/w%セリンと0.005w/w%ケラチナーゼをそれぞれ単独処理した場合、それぞれ23%と53%の角質剥離効果を示したが、2つの成分を共に使用した場合、角質剥離効果が86%に向上することを確認し、2つの成分の組み合わせによる相乗効果を提供できることが分かる。
【0088】
実施例3.糖アルコールおよびセリンによるタンパク質分解酵素のタンパク質分解活性維持
タンパク質分解酵素の活性を測定するために、clear zone assayを行った。アガロース1w/w%、脱脂粉乳0.5w/w%含有培地の上に6mmのペーパーディスクを載置し、ペーパーディスクの上にタンパク質分解酵素含有溶液40uLを分注した。溶液が全て乾燥すると、ひっくり返して、恒温恒湿装置(37℃、湿度50%)に24時間保管した。その後、透明になった部分の直径を測定し、タンパク質分解能を測定した。タンパク質分解活性の維持は、0日目のタンパク質分解能(直径、mm)と、苛酷化条件である50℃で2週間保管した後のタンパク質分解能とを比較して測定した。0日目のタンパク質分解能に比べて、25%以上維持される場合に活性が残っていると評価した。
【0089】
また、角質剥離効能を増進させる糖アルコールにより活性維持が増進されるかを測定した。ここで、タンパク質分解酵素は、パパイン(0.5w/w%)を使用した。パパインは、水溶液状態で50℃で2週間保管する場合、0日目を基準としてタンパク質分解活性が0%までに低下する。前記パパイン(0.5w/w%)に組成物の全体濃度を基準としてグリセロール5w/w%、グリセロール20w/w%、ソルビトール5w/w%、ソルビトール20w/w%、キシリトール20w/w%、エリスリトール2w/w%、1,3-ブチレングリコール(1,3-BG)5w/w%、またはDPG5w/w%をそれぞれ混合し、50℃の条件で2週間保管した後にも活性が維持されるかを確認した。
【0090】
また、糖アルコール混合物を組成物全体に対して22w/w%で含ませた。具体的には、組成物全体に対してグリセロール5w/w%、ソルビトール5w/w%、DPG5w/w%、1,3-BG5w/w%、およびエリスリトール2w/w%で含み、セリン0.5w/w%を添加した条件でもパパインの活性が維持されることを確認した。
【0091】
対照群として、ポロキサマー1w/w%、または抗酸化剤であるトロキセルチン(troxerutin)3w/w%を使用して、同じ条件でパパインの活性維持の有無を確認した。
【0092】
これによって、糖アルコールおよびセリンが、角質剥離効能を増進させるだけでなく、タンパク質分解酵素の活性維持に役に立つという事実を確認した(表1)。
【0093】
【0094】
実施例4.糖アルコールおよびセリンによるタンパク質分解酵素の角質剥離効果増進の維持
角質剥離効能は、実施例1と同一に実験を行った。対照群として、精製水、PHA pH4は、グルコノラクトン10w/w%およびpH4の条件、PHA pH6は、グルコノラクトン10w/w%およびpH6の条件である。糖アルコールは、糖アルコール混合物の形態で含ませ、具体的には、全体組成物に対してグリセロール5w/w%、ソルビトール5w/w%、DPG5w/w%、1,3-BG5w/w%、およびエリスリトール2w/w%が含ませた。セリンは、L-セリンアミノ酸0.5w/w%、pH6の条件を用いた。タンパク質分解酵素は、ケラチナーゼ(Keratinase、エルシーエスバイオテック)を使用し、タンパク質分解酵素の濃度は、全体に対して0.01w/w%の濃度で実験を行った。
【0095】
タンパク質分解酵素を50℃で2週間保管する場合、角質剥離効果が初期値に対して70%以上低下し、0週目に比べて残余活性が約28%程度であることを確認した(130.3%→36.2%)。タンパク質分解酵素にセリンおよび糖アルコール混合物を添加した後、50℃で2週間保管した場合には、0週目に比べて残余活性が約71%程度維持され、角質剥離効能の低下程度が30%以内に緩和されたことが分かる。これによって、セリンおよび糖アルコール混合物によりタンパク質分解酵素の角質剥離効果が増進されるだけでなく、増進された角質剥離効能がさらに長く維持されることが分かる(
図3)。
【0096】
実施例5.タンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンの混合組成物による即時の肌のきめおよび毛穴改善効果の確認
下記表2の剤形を朝と夕方に2回塗布後、顎部位の肌のきめおよび毛穴が改善されるかを測定した(n=1)。測定は、Antera 3D(登録商標)(Miravex Limited)を使用し、肌のきめの場合、皮膚平均表面より突出している凹凸のうち、直径0.1~1mmのサイズを有する凹凸の体積および高さを測定した。毛穴の場合、皮膚毛穴のうち、直径が0.5mm以下の毛穴の体積および単位面積当たりの毛穴の個数を測定した。
【0097】
【0098】
図4に示されたように、表2の組成物を使用した場合、2回使用によって凹凸の体積および毛穴の体積、個数が減少し、皮膚凹凸の体積と高さが緩和され、視覚的に肌のきめ改善および毛穴改善効果が確認された。
【0099】
実施例6.タンパク質分解酵素、糖アルコールおよびセリンの混合組成物含有剤形による毛穴およびシワ改善効果の確認
下記表3の剤形を朝と夕方に一日に2回ずつ4週間塗布後、シワおよび毛穴が改善されるかを測定した(n=7)。測定は、JANUS肌診断機(PIE Co.,Ltd.)を使用し、シワおよび毛穴測定部位は顔面全体である。
【0100】
【0101】
図5に示されたように、表3の組成物を皮膚に塗布した場合、毛穴の個数が減少し、シワの深さが減少したことを確認した。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質分解酵素および糖アルコールを含む、皮膚状態改善用組成物。
【請求項2】
前記皮膚状態改善は、皮膚毛穴
の改善、収縮または減少である、請求項
1に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項3】
前記皮膚状態改善は、肌のきめ改善、肌のトーン改善、または皮膚シワ改善である、請求項
1に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項4】
セリンをさらに含む、請求項
1~3のいずれか一項に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項5】
前記タンパク質分解酵素は、ケラチナーゼ(Keratinase)
、サブチリシン(subtilisin)
、パパイン、およびブロメラインからなる群から選ばれる1つ以上である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項6】
前記糖アルコールは、グリセロール、
ジプロピレングリコール(Dipropylene Glycol;DPG)、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール(mannitol)、キシリトール(xylitol)、エリスリトール(erythritol)
、トレイトール(threitol)、
およびアラビトール(arabitol
)からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の皮膚状態改善用組成物。
【請求項7】
タンパク質分解酵素と、
糖アルコー
ルと
を含む、角質剥離用組成物。
【請求項8】
セリンを
さらに含む、請求項
7に記載の角質剥離用組成物。
【請求項9】
前記タンパク質分解酵素は、ケラチナーゼ(Keratinase)
、サブチリシン(subtilisin)
、パパイン、およびブロメラインからなる群から選ばれる1つ以上である、請求項
7または8に記載の角質剥離用組成物。
【請求項10】
前記糖アルコールは、グリセロール、
ジプロピレングリコール(Dipropylene Glycol;DPG)、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール(mannitol)、キシリトール(xylitol)、エリスリトール(erythritol)
、トレイトール(threitol)、
およびアラビトール(arabitol
)からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項
7または8に記載の角質剥離用組成物。
【請求項11】
タンパク質分解酵素および糖アルコールを含む、皮膚角化症の予防または治療における使用のための
医薬部外品組成物。
【請求項12】
セリンをさらに含む、請求項
11に記載の
医薬部外品組成物。
【請求項13】
前記タンパク質分解酵素は
、ケラチナーゼ(Keratinase)およびサブチリシン(subtilisin)、
パパイン、およびブロメラインからなる群から選ばれる1つ以上である、請求項
11または12に記載の
医薬部外品組成物。
【請求項14】
前記糖アルコールは、グリセロール、
ジプロピレングリコール(Dipropylene Glycol;DPG)、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール(mannitol)、キシリトール(xylitol)、エリスリトール(erythritol)
、トレイトール(threitol)、
およびアラビトール(arabitol
)からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項
11または12に記載の
医薬部外品組成物。
【国際調査報告】