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特表2024-507643ポケットサイズの自動体外式除細動器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ポケットサイズの自動体外式除細動器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61N1/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023540884
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 US2022014318
(87)【国際公開番号】W WO2022165179
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/142,910
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523251909
【氏名又は名称】ユーエスエー メディカル エレクトロニクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クーッティ,トミ
(72)【発明者】
【氏名】チホノフ,ビクター
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ01
4C053JJ11
4C053JJ23
(57)【要約】
自動体外式除細動器(AED)デバイスは、患者に除細動ショックを与えるために必要とされるエネルギーを保存するように構成された高電圧コンデンサ(HV Cap)と、HV Capを充電するように構成されたバッテリーと、高電圧変圧器、関連するドライバを有するFETスイッチ、及び整流ダイオードを含むDC/DCコンバータ回路と、HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するように構成されたHブリッジ回路と、AEDデバイスを動作させるように構成された、メモリ及びマイクロプロセッサと、を含み得る。特に、HV Cap、DC/DCコンバータ回路、Hブリッジ回路、1つ以上のバッテリー、並びにメモリ及びマイクロプロセッサは、ポケットサイズのハウジング内に収容され得、AEDデバイスは、バッテリーがHV Capを充電する速度を継続的にモニタリング及び調整するように構成され得、AEDデバイスは、患者のZ身体測定値を取得するように構成された可変周波数緩和発振器回路を含み得る。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動体外式除細動器(AED)デバイスであって、
患者に除細動ショックを与えるために必要とされるエネルギーを保存するように構成された高電圧コンデンサ(HV Cap)と、
前記HV Capを充電するように構成された1つ以上のバッテリーと、
高電圧変圧器(HV XFMR)、関連するドライバを有する電界効果トランジスタ(FET)スイッチ、及び整流ダイオードを含むDC/DCコンバータ回路と、
前記HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するように構成されたHブリッジ回路と、
前記AEDデバイスの動作のためのコンピュータ実行可能命令を格納及び実行するように構成されている、メモリ及びマイクロプロセッサと、を備え、
前記HV Cap、前記DC/DCコンバータ回路、前記Hブリッジ回路、前記1つ以上のバッテリー、並びに前記メモリ及び前記マイクロプロセッサが、ポケットサイズのハウジングに収容されている、自動体外式除細動器(AED)デバイス。
【請求項2】
前記DC/DCコンバータ回路が、バッテリー電圧を約2000ボルトに増加させるように構成されている、請求項1に記載のAED。
【請求項3】
一対の除細動器パッドと、
前記HV Capを前記一対の除細動器パッドに動作可能に接続するためのケーブルと、を更に備え、前記除細動器パッドが、ポケットサイズである、請求項1又は2に記載のAED。
【請求項4】
前記ハウジングが、155mm×86mm×28mm以下の寸法を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項5】
前記1つ以上のバッテリーが、4つのCR2バッテリーからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項6】
前記HV Capは、前記AEDデバイスが電源オンされたときに、充電を開始するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項7】
前記マイクロプロセッサが、(i)前記1つ以上のバッテリーの最大放電速度、及び(ii)前記1つ以上のバッテリーの最大動作温度、を上回らないように、前記HV Capの充電速度をモニタリング及び調整するように構成され、それによって、前記HV Capが、利用可能なバッテリー電力で可能な最大速度で充電されることを可能にする、請求項1~6のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項8】
前記最大放電速度が、1000mAであり、前記最大動作温度が、75℃である、請求項7に記載のAEDデバイス。
【請求項9】
リアルタイムクロック(RTC)及び温度センサ集積回路(温度センサIC)を更に備え、それらの各々が、前記RTC及び温度センサICにプログラムされた動的パラメータに従って、前記AEDデバイスに電源投入するように構成されており、前記マイクロプロセッサは、前記AEDデバイスが使用されていないときには、(スリープモードになっているのではなく)完全に電源オフになっているように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項10】
前記AEDデバイスが使用されていないときには、全ての回路及びコンポーネントが、前記RTC、前記温度センサIC、及びそれらのサポート回路を除いて、電源オフになっている、請求項9に記載のAEDデバイス。
【請求項11】
前記RTCが、前記マイクロプロセッサを定期的に電源投入して、一連の組み込み自己試験(BIST)を実施して、前記AEDデバイスの1つ以上のバッテリー及びハードウェアを点検するように構成されている、請求項9又は10に記載のAEDデバイス。
【請求項12】
前記ハウジング内に収容され、かつ音声プロンプトをユーザに提供するように構成されているスピーカーを更に備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項13】
前記AEDデバイスが、前記ハウジング内の前記スピーカーの近くに配設されたマイクロフォンを更に備え、前記RTCは、少なくとも1つのコンピュータプロセッサに定期的に電源投入して、信号が前記コンピュータプロセッサから前記スピーカーを通じて送信されるBISTを実施するように構成され、前記コンピュータプロセッサが、前記送信された信号を、前記マイクロフォンを通じて受信された前記信号と比較して、前記スピーカーの完全性を評価する、請求項12に記載のAEDデバイス。
【請求項14】
使用中、AEDデバイスが、前記AEDデバイスの前記動作中に前記マイクロフォンによって受信された音声を記録するように構成され、前記AEDデバイスの前記動作中に前記マイクロフォンによって受信された前記音声を格納するための外部フラッシュメモリを有する、請求項12に記載のAEDデバイス。
【請求項15】
前記温度センサICは、前記AEDデバイスの回路の他の部分の電源が切られているときを含めて、前記AEDデバイスの温度を継続的にモニタリングするように構成されている、請求項9~14のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項16】
(i)前記RTCからの信号によって定期的に電源オンされて、前記AEDデバイスハウジング及び/又は前記除細動器パッドの温度をモニタリングするように、かつ(ii)前記モニタリングされた温度が指定温度に達した場合に、前記マイクロプロセッサを電源オンして警告するように、構成されている低電力型マイクロコントローラを更に備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項17】
Z身体測定で使用するように構成された可変周波数緩和発振器回路を備えており、前記回路が、前記患者の身体インピーダンスに比例する周波数で自励発振するのに有効である、請求項1~16のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項18】
前記マイクロプロセッサが、前記除細動器パッド及びケーブルの完全性を検証するように構成されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項19】
前記マイクロプロセッサが、前記AEDデバイス内の心電図(ECG)回路の完全性を検証するように構成されている、請求項1~18のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項20】
前記マイクロプロセッサが、心拍を模擬する信号を定期的に生成して、前記信号をアナログフロントエンド(AFE)回路に送信し、次いで、前記送信された信号を、前記AFE回路によって処理された信号と比較するように構成されている、請求項19に記載のAEDデバイス。
【請求項21】
ハウジングが、電源オンボタンである単一のボタンを有する面を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項22】
自動体外式除細動器(AED)デバイスであって、
患者に除細動ショックを与えるために必要とされるエネルギーを保存するように構成された高電圧コンデンサ(HV Cap)と、
前記HV Capを充電するように構成された1つ以上のバッテリーと、
高電圧変圧器(HV XFMR)、関連するドライバを有する電界効果トランジスタ(FET)スイッチ、及び整流ダイオードを含むDC/DCコンバータ回路と、
前記HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するように構成されたHブリッジ回路と、
コンピュータ実行可能命令を格納するように構成されたメモリと、
前記メモリにアクセスし、かつ前記コンピュータ実行可能命令を実行して、前記1つ以上のバッテリーが前記HV Capを充電する速度を継続的にモニタリング及び調整するように構成された少なくとも1つのマイクロプロセッサと、を備える、自動体外式除細動器(AED)デバイス。
【請求項23】
前記1つ以上のバッテリーの最大温度又は最大放電速度のいずれも上回らずに、前記HV Capを、前記1つ以上のバッテリーからの利用可能な電力で可能な最大速度で充電するために、前記1つ以上のバッテリーの放電電流及び温度を同時にモニタリングするように構成されている、請求項22に記載のAEDデバイス。
【請求項24】
自動体外式除細動器(AED)デバイスであって、
患者に除細動ショックを与えるために必要とされるエネルギーを保存するように構成された高電圧コンデンサ(HV Cap)と、
前記HV Capを充電するように構成された1つ以上のバッテリーと、
高電圧変圧器(HV XFMR)、関連するドライバを有する電界効果トランジスタ(FET)スイッチ、及び整流ダイオードを含むDC/DCコンバータ回路と、
前記HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するように構成されたHブリッジ回路と、
コンピュータ実行可能命令を格納するように構成されたメモリと、
前記メモリにアクセスし、かつ前記コンピュータ実行可能命令を実行して、
前記患者のECGを読み取り、かつ分析して、前記患者がショックを受けることができる心リズムを有するかどうかを決定することと、
前記HV Capを充電することと、
前記患者のZ身体測定に少なくとも部分的に基づいて、前記除細動ショックのための放電電流を決定することと、
前記除細動ショックを与えることと、を行うように構成された少なくとも1つのマイクロプロセッサと、を備え、
前記AEDデバイスが、前記患者のZ身体測定値を取得するように構成された可変周波数緩和発振器回路を備え、前記回路が、前記患者の身体インピーダンスに比例する周波数で自励発振するのに有効である、自動体外式除細動器(AED)デバイス。
【請求項25】
自動体外式除細動(AED)デバイスであって、
患者に除細動ショックを与えるために必要とされるエネルギーを保存するように構成された高電圧コンデンサ(HV Cap)と、
前記HV Capを充電するように構成された1つ以上のバッテリーと、
高電圧変圧器(HV XFMR)、関連するドライバを有する電界効果トランジスタ(FET)スイッチ、及び整流ダイオードを含むDC/DCコンバータ回路と、
前記HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するように構成されたHブリッジ回路と、
コンピュータ実行可能命令を格納するように構成されたメモリと、
前記AEDデバイスの動作のためのコンピュータ実行可能命令を実行するように構成されたメインマイクロプロセッサと、を備え、
前記AEDデバイスは、リアルタイムクロック(RTC)を含む電源ハンドラ回路を更に備え、前記メインマイクロプロセッサが電源オフになっているときにはスリープモードに入らず、
前記電源ハンドラ回路は、前記メインマイクロプロセッサが前記RTCによって電源オフになっているときには、前記AEDデバイスを制御するように構成され、前記RTCが、前記メインマイクロプロセッサを定期的に電源オンして、組み込み自己試験(BIST)シーケンスを実施するように構成されている、自動体外式除細動(AED)デバイス。
【請求項26】
前記DC/DCコンバータ回路が、前記バッテリー電圧を約2000ボルトに増加させるように構成されている、請求項22~25のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項27】
前記1つ以上のバッテリーが、4つのCR2バッテリーからなる、請求項22~26のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項28】
前記HV Cap、前記DC/DCコンバータ回路、前記Hブリッジ回路、前記1つ以上のバッテリー、並びに前記メモリ及び前記マイクロプロセッサが、ポケットサイズのハウジングに収容されている、請求項22~27のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項29】
前記ハウジングが、約155mm×約86mm×約28mmである寸法を有する、請求項28に記載のAEDデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月28日に出願された米国仮特許出願第63/142,910号の優先権を主張し、それは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、医療用電子機器分野に関し、
より詳細には、携帯型自動体外式除細動器(AED)に関する。
【背景技術】
【0003】
世界保健機関によれば、推定1800万人の人々が、毎年、心臓血管疾患(CVD)が原因で死亡しており、CVDは、世界一の死因となっている。毎年、ほぼ800,000人の米国人が、心臓発作を起こし、米国心臓学会(AHA)によれば、ほぼ300,000人の米国人が、毎年、急性心停止(SCA)が原因で死亡している。
【0004】
高血圧症、糖尿病、若しくは高脂血症などの危険因子を有する人々、又は心臓疾患を有する人々は、心臓発作又はSCAのリスクが最も高い。そして、毎年、以前に心臓発作を経験したことがあるほぼ200,000人の人々が、再発を被っている。多くの2回目の心臓発作は、死に至る。
【0005】
更に、心臓発作の70%は、院外心停止(OHCA)であり、OHCA発生の90%は、死に至る。心停止の間、生存は、救命ショックを除細動器によって心臓に与えることができる速度に依存し、1分間遅延する毎に、生存のチャンスは、10%ずつ低下する。しかしながら、米国では、警察への緊急電話と、救急医療サービス(EMS)の到着との間の平均時間の長さは、約8分であり、又は農村地域では、14分である。その結果、ほとんどの心臓発作による死亡は、除細動療法が十分迅速に実施されていないために、起こっている。
【0006】
残念なことに、救急車又は救急救命士が被害者のところに8分以内に到着した場合であっても、5分超の酸素欠乏により不可逆的な脳損傷が起こる可能性があるため、脳外傷は、すでに発生している可能性がある。したがって、患者が心臓発作から生き残った場合でも、患者らは、恒久的な機能障害の状態に陥る場合があり、その後の完全な生活を楽しむことができない可能性がある。
【0007】
命を救うために、除細動療法は、心臓疾患の危険因子を有する人々の自宅内に移動されなければならない。しかしながら、従来のAEDは、典型的には、空港及び体育館などの公的な場所でのみ見出される。これらの従来のAEDは、大きく、かさばり、かつ複雑であり、並びに、ほとんどの人々にとって、やや畏縮することが想定される。従来のAEDはまた、ドアを開けたときにアラームが鳴ることを示す標識とともに、壁に取り付けられた外装ケース内に設置される場合も多い。非常時には、これは、潜在的な善良なサマリア人の懸念及び不安を増加させるため、意図とは逆の効果を生み出す場合があり、その善良なサマリア人が関与するのを妨げる可能性がある。更に、従来のAEDの最大20%が、その時々でほとんど機能せず、更に、これらのAEDのうちの多くが、メンテナンスが必要である場合に、また必要であるときに、十分目立つようには表示されていない。
【0008】
したがって、心臓疾患の危険因子を有する人々により近いところで除細動療法を可能にすることが望ましいであろう。また、心臓疾患者の家族メンバ又は介護者が持ち運ぶのに十分コンパクトで、使いやすく、必要なとき及び必要な場所ですぐに使用することができ、かつ、サービス又はメンテナンスが必要とされるときはいつでも非常に目立つ警告を提供するAEDデバイスを提供することも望ましいであろう。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、自動体外式除細動器(AED)デバイスが提供され、このAEDデバイスは、患者に除細動ショックを与えるために必要とされるエネルギーを保存するように構成された高電圧コンデンサ(HV Cap)と、HV Capを充電するように構成された1つ以上のバッテリーと、高電圧変圧器(HV XFMR)、関連するドライバを有する電界効果トランジスタ(FET)スイッチ、及び整流ダイオードと、を含み、好ましくは、バッテリー電圧を約2000ボルトに増加させるように構成されたDC/DCコンバータ回路と、HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するように構成されたHブリッジ回路と、AEDデバイスの動作のためのコンピュータ実行可能命令を格納及び実行するように構成されている、メモリ及びマイクロプロセッサと、を備え、HV Cap、DC/DCコンバータ回路、Hブリッジ回路、1つ以上のバッテリー、並びにメモリ及びマイクロプロセッサは、ポケットサイズのハウジングに収容される。いくつかの実施形態では、AEDデバイスは、一対の除細動器パッドと、HV Capを一対の除細動器パッドに動作可能に接続するためのケーブルと、を更に含み、その除細動器パッドはまた、ポケットサイズでもある。
【0010】
別の態様では、1つ以上のバッテリーがHV Capを充電する速度を継続的にモニタリング及び調整するように構成されているAEDデバイスが提供される。好ましい実施形態では、AEDデバイスは、1つ以上のバッテリーの放電電流及び温度を同時にモニタリングして、1つ以上のバッテリーの最大温度又は最大放電速度のいずれも上回らずに、HV Capを、1つ以上のバッテリーからの利用可能な電力で可能な最大速度で充電するように構成される。
【0011】
更に別の態様では、患者のZ身体測定値を取得するように構成された可変周波数緩和発振器回路を含むAEDデバイスが提供され、その回路は、患者の身体インピーダンスに比例する周波数で自励発振するのに有効である。
【0012】
また更に別の態様では、リアルタイムクロック(RTC)を含む電源ハンドラ回路を含み、かつ、メインマイクロプロセッサが電源オフになっているときにはスリープモードに入らない、AEDデバイスが提供され、電源ハンドラ回路は、メインマイクロプロセッサがRTCによって電源オフになっているときにはAEDデバイスを制御するように構成され、RTCは、メインマイクロプロセッサを定期的に電源オンして、組み込み自己試験(BIST)シーケンスを実施するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付図面を参照して、詳細な説明が述べられる。同じ参照数字の使用は、同様又は同一の品目を示し得る。様々な実施形態は、図面に例示されるもの以外の要素及び/又は構成要素を利用することができ、いくつかの要素及び/又は構成要素は、その様々な実施形態において存在しない場合がある。図中の要素及び/又は構成要素は、必ずしも縮尺通りには描かれているわけではない。
【0014】
図1A】開示された本発明の一実施形態によるAEDデバイスの正面斜視図である。
図1B図1Aに示されたAEDデバイスの背面斜視図である。
図2A】開示された本発明の一実施形態による、パッケージングのために構成された除細動器パッドの斜視図である。
図2B図2Aに示された除細動器パッド及び構成要素の分解組立図である。
図3A】開示された本発明の一実施形態によるAED回路基板及び高電圧コンデンサアセンブリの正面図である。
図3B図3Aに示されたAED回路基板及び高電圧コンデンサアセンブリの背面図である。
図4A】開示された本発明の一実施形態によるAED回路基板の分解組立側面図である。
図4B図4Aに示されたAED回路基板の背面斜視図である。
図5】開示された本発明の一実施形態によるAEDデバイスのためのソフトウェアブロック図である。
図6】開示された本発明の一実施形態による高電圧コンデンサ充電回路の例である。
図7】開示された本発明の一実施形態によるZ身体測定シーケンスを描写するブロック図である。
図8】従来技術において共通の、従来のZ身体測定回路の例である。
図9】開示された本発明の一実施形態による、緩和発振器を利用するZ身体測定回路の例である。
図10】開示された本発明の一実施形態による、ECG及びショック付与シーケンスを描写するブロック図である。
図11】開示された本発明の一実施形態による組み込み自己試験(BIST)シーケンスを描写するブロック図である。
図12】開示された本発明の一実施形態による、マイクロフォンモニタリングを利用するスピーカー検証回路の例である。
図13】開示された本発明の一実施形態によるアナログフロントエンド検証回路の例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
新しい、よりコンパクトな自動体外式除細動器(AED)デバイスが開発された。有利なことに、それは、ポケットサイズであり、そのサイズは、独自のハードウェア及びソフトウェア構成要素を、本明細書に説明される実用可能な革新と組み合わせることによって達成される。このAEDデバイスは、患者とともに運ばれるのに十分小さいため、有利なことに、それは、必要とされる可能性があるどんなときでも、またどんなところでも存在することができる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ポケットサイズ」という用語は、AEDデバイスが、上着若しくはズボンのポケット内、又は、170mm×95mm×40mm以下の寸法を有するなどの小さい財布若しくはハンドバッグ内で、人に運ばれるのに十分小さいことを意味する。
【0017】
従来のAEDと比較したときに、AEDのサイズ及び重量を削減するための鍵のうちの1つは、デバイスが必要とするバッテリーのサイズ及び/又は個数を削減することである。これは、間違いなく、AEDデバイスを動作させるのに蓄えられ、かつ利用可能な電力の量を削減し、したがって、以下で説明されるように、いくつかの低消費電力化及び動作上の革新を必要として、信頼性、メンテナンス/サービス時間間隔などの他の性能の期待を維持又は上回りながら、規制上の性能要件を満たす。好ましい実施形態では、本明細書に開示されるようなAEDデバイスは、4つのCR2バッテリーを使用する。CR2バッテリーは、サイズ、充電時間、及び利用可能な電源の組み合わせの理由から好ましいが、AEDデバイスは、現在開示されているAEDデバイスのサイズ及び性能要件を満たす他の適切なタイプ又は数の市販のバッテリーを使用するために適合させることができる。
【0018】
同様に、本AEDに使用される除細動器パッドの寸法もまた、従来のAEDに使用される大きなサイズの除細動器パッドに比較して削減される。好ましい実施形態では、FDAに応じた最小許容パッドサイズに従って、パッドサイズは、有効性の無駄のない6.0インチ×3.3インチ(152mm×84mm)に削減され、これは、従来のAEDのサイズと比較して、サイズの削減である。
【0019】
AEDデバイスは、患者の身体インピーダンスを測定し、適切なショックを与えるために必要とされるエネルギーを計算し、患者の心電図(ECG)を分析し、その患者がショックを受けることができるリズムを有するかどうかを判断し、救命ショックとして適切なエネルギーを送達する。更に有利なことに、本明細書に説明されるAEDデバイスは、十分小さいため、心臓疾患者若しくはその患者の家族メンバ、又は他の介護者によって、例えば、衣服のポケット、ハンドバッグ、又はバックパックに入れて、容易に運ぶことができる。したがって、AEDデバイスは、除細動療法を、自宅、及び、従来のAEDがない、かつ/又は緊急医療サービススタッフへのタイムリーなアクセスが利用できない他の場所に移動させることによって、救命を容易にする。
【0020】
更に、本AEDデバイスは、有利なことに、いくつかの特徴を提供して、その使用及び信頼性を容易にする。例えば、いくつかの実施形態では、AEDデバイスは、緊急時の間に何をすべきかについてユーザを静かに案内する音声プロンプトを提供するスピーカーを含む。更に、そのスピーカーはまた、バッテリー又は除細動器パッドが交換される必要があるとき、デバイスの内部温度が熱くなり過ぎるとき、又は他の保守サービスが必要とされるときに、ユーザにも知らせる。音声プロンプトは、多くの言語でプログラムされ得る。更に、好ましい実施形態では、AEDデバイスは、いくつかの自己点検を実施して、必要に応じて準備をするか、あるいは、マイクロプロセッサ、スピーカー、又は他の障害、例えば、AEDデバイスに含まれるLED及びピエゾ式ブザーを伴って発生したときに、ユーザに警告することになり、その結果、メンテナンスサービスは、AEDデバイスが使用されることを求められる前に、AEDデバイス上で実施することができる。
【0021】
好ましい実施形態では、AEDデバイスの前面は、最小限のボタン及び文字で整頓されて、ユーザの気を煩わせないか、又は集中させる。例えば、好ましい実施形態では、AEDデバイスは、ユーザがそのデバイスを「電源オン」してその使用を開始するための単一のボタンのみを含む。いくつかの他の実施形態では、AEDは、ユーザがそれに触れるたびにそのデバイスを電源オンする容量性スイッチによって、又は、運動が検出されるたびに(例えば、保管ポーチ、スリーブから取り外されるたびに)そのデバイスを電源オンする運動センサによって作動される。これらの実施形態では、その目的は、ユーザがストレスの多い医療状況中にデバイスを使用することを、できるだけ単純にすることである。
【0022】
AEDデバイスの好ましい実施形態が、図1A~1Bに示されている。AEDデバイス100は、デバイス100の内部の電子部品を収容するハウジング102を含む。好ましい実施形態では、ハウジング102は、長さ(L)が6.1インチ(155mm)、幅(W)が3.4インチ(86mm)、及び高さ(H)が1.1インチ(28mm)、並びに重量がほんの約1ポンド(450g)という測定値である。
【0023】
図1Aに示すように、ハウジング102の面は、整頓されており、単一のONボタン106、スピーカー孔110、ピエゾ式ブザー孔112、及びLEDステータスライト108を含む。AEDデバイス100は、OFFボタンを含まず、それによって、ユーザ又はその場に居合わせた人が使用中に間違って電源をオフすることを防止する。図1Bに示すように、ハウジング102の背面には、バッテリーボックスカバー114があり、それは、AEDデバイス100内のバッテリーへのアクセスを提供するように構成されている。ハウジング102の上部から延在するものは、(対応する除細動器パッド202、204に接続し、図2A~2Bに示されている)2本の除細動器ケーブル104である。
【0024】
使用していないとき、AEDデバイス100、除細動器ケーブル104、及び除細動器パッド202、204は、小さいポーチ、スリーブ、又はケース(図示せず)にともに保管することができる。例えば、それは、柔らかい布製ポーチ、二つ折りケースなどであってもよい。ポーチ、スリーブ、又はケースは、それぞれ、AEDデバイスによって放出される聴覚又は視覚サービス通知の消音又は遮断を最小限に抑えるように設計することができる。
【0025】
除細動器パッド202、204の一実施形態が、図2A~2Bに示されている。除細動器パッド202、204は、除細動器ケーブル104と一体化され、その結果、除細動器パッド202、204が患者の胸部上に配置されたときに、AEDデバイスからのショックは、除細動器ケーブル104を通って除細動器パッド202、204に伝わり、患者にショックを与える。図2Aに示すように、除細動器パッド保管アセンブリ200は、除細動器パッド202、204の導電性ゲル層203、205の間に配置された積層紙206を含み、それらは、封止された気密性ポーチ(図示せず)内に、向き合って格納される。このパッケージング構成は、導電性ゲル層203、205の完全性を維持するのに役立つ。各図が示すように、除細動器パッド202、204は、ハウジング102と同様の長さ及び幅の寸法を有するため、そのハウジングは、それらのコンパクトな格納をともに容易にする。一実施形態では、除細動器パッド202、204は、長さがほぼ6cm、幅が約3cmである。除細動器パッドが関連する規制要件に準拠する限り、他の除細動器パッドの寸法も可能である。例えば、米国食品医薬品局(FDA)は、除細動器パッドが、合計で少なくとも150cm、又はパッド毎に75cmの接触面積を有することを要求する。
【0026】
図2Bは、除細動器パッド202、204の構造、及びパッケージングのための構成を示している。各除細動器パッド202、204は、導電性ゲル層203、205でコーティングされている導電性面を有する。取り外し可能な感圧積層紙206が、除細動器パッド202、204の導電性ゲル層203、205の間に配置されている。
【0027】
図3A~3Bは、AEDデバイス100の内部の電子部品を示しており、高電圧コンデンサ(HV Cap)302及び回路基板304(図4A~4Bに、より詳細に図示してある)を含み、それらは、ともに内部アセンブリ300を形成している。図3Aは、内部アセンブリ300の正面図を示している。この実施形態によれば、電子部品は、メインプリント基板(PCB)306上に配列されている。より具体的には、メインPCB306の前面は、電源ボタン308、スピーカー310、圧電式ブザー312、LEDステータスライト314、マイクロフォン316、バックアップバッテリー318、及びマイクロSDメモリカード320を保持している。プライマリマイクロプロセッサ602及びセカンダリマイクロプロセッサ(図示せず)もまた、メインPCB306内に統合されている。HV Cap302は、コンデンサリード線322によって回路基板304の遠位端に取り付けられ、そのリード線は、メインPCB306の後面に位置されたコンデンサ接点334に接続している。
【0028】
図3Bは、内部アセンブリ300の背面図を示している。メインPCB306の背面は、CR2バッテリー(図示せず)を保持するためにサイズ設計された4つのバッテリーボックス328、高電圧変圧器(HV XFMR)326、コンデンサ接点334、及び除細動器ケーブル接点のための領域330を保持する。したがって、HV Cap302は、HV XFMR326によって、バッテリー(図示せず)に間接的に接続されている。この実施形態では、HV XFMR326は、バッテリー(図示せず)によって供給される電力を、HV Cap302が受け取ることができるレベルに変換する。メインPCB306の背面はまた、セカンダリPCB324上にリレー332及びHブリッジ回路も含み、それらの両方は、各種の異なる構成で、AEDデバイスの標準的な部品である。
【0029】
図5は、これらの電子部品の配置及び相互作用を示すソフトウェアブロック図である。AEDデバイス100の機能は、2つのカテゴリ、すなわち、除細動タスク及び組み込み自己試験(BIST)タスクのうちの一方に分類することができる。除細動タスクは、AEDデバイス100が完全に電源オンされているときにのみ実施することができるが、BISTタスクは、AEDデバイス100が電源オン又はオフになっているかどうかにかかわらず、実施されることになる。
【0030】
これらの2つの主要なタスクカテゴリに加えて、AEDデバイス100はまた、オーディオドライバ(図示せず)も利用し、そのオーディオドライバは、音声合成デバイスと、これらのオーディオファイルが格納されているSDカード320との間のインターフェース接続を担当する。除細動タスク及びBISTタスクが実施されている間、オーディオドライバは、SDカード320から適切な音声ファイルを引き出し、そのオーディオを音声シンセサイザにルーティングし、かつそのオーディオをユーザのために再生する。
【0031】
AEDデバイス100はまた、データ記録タスクも利用し、それはまた、SDカード320とのインターフェースも形成する。除細動タスク又はBISTタスク中に収集された任意のデータは、SDカード320に格納され、その後、外部デバイス上で取り出すことができる。AEDデバイス100はまた、IR送信機又は受信機とインターフェース接続するためのIrDA UARTドライバも含む。このIrDA UARTは、互換性のあるデバイスと通信するように機能する。例えば、IrDA UARTは、記録されたデータを送信するか、又はAEDデバイス100上にインストールされるべきファームウェア更新を受信することができる。
【0032】
プライマリAEDデバイス100タスクに戻ると、図6~10は、プライマリ除細動タスクに関する追加の詳細を提供し、その詳細には、HV Cap302を充電すること、Z身体測定を実施すること、患者のECGを取得及び分析すること、並びにショックを実施することが含まれる。除細動タスクは、AEDデバイス100が完全に電源オンになっていることを要求するため、ユーザは、AEDデバイス100を電源オンして、これらのタスクのいずれかを開始しなければならない。そうするために、ユーザは、電源ボタン308に接続されているONボタン106を押し下げ、その電源ボタンにより、マイクロプロセッサ602が内部アセンブリ300を電源投入することが可能になる。
【0033】
図6は、HV Cap302充電回路600の例示的な実施形態を示している。AEDデバイス100は、図6に図示してある帰線接続型DC/DCコンバータ600を使用して、バッテリー電圧(ほぼ12ボルト)を、ショックパルスのための十分に高い電圧(最大2000ボルト)に昇圧する。
【0034】
このコンバータは、電界効果トランジスタ(FET)スイッチ3002、ドライバ3003、スナバ回路3006、変圧器326、及び整流ダイオード3004からなる。マイクロコントローラ602は、ソフトウェア制御下で、ドライバ3003によって増幅されるパルスの裾引きを生成して、FETスイッチ3002のゲートを動作させる。そのスイッチは、周期的に開閉して電流を流すことか、又は変圧器326の一次巻線を通る電流を遮断することを可能にする。電流が遮断されると、このコイルの基本的特性を表すレンツの法則に従って、変圧器326の一次巻線上に、逆電磁力(EMF)電圧が生成される。
【0035】
変圧器326の二次巻線の巻数が一次巻線の巻数よりはるかに多いため、二次巻線におけるEMF電圧は、一次巻線と二次巻線との間の巻数比によって乗算される。その比は、逆EMFパルスのピークが2000ボルトに達することができるように選択される。この電圧は、HV Cap302を充電するダイオード3004によって整流される。
【0036】
好ましい実施形態では、AEDデバイス100は、CR2バッテリーを使用して、AEDデバイス100に電力を供給し、HV Cap302を充電する。それらのバッテリーは、従来のAEDデバイスで使用されるバッテリーよりもはるかに小さいため、HV Cap302は、従来のAEDデバイスの場合よりも多くの充電時間を必要とする。従来のAEDデバイスはまた、典型的には、ショックを受けることができる心リズムが検出されるまで、充電を開始しない。したがって、より小さいバッテリーを考慮するために、AEDデバイス100は、AEDデバイス100が電源オンされた直後、かつショックを受けることができる心リズムが存在するかどうかを検出しようとする前に、HV Cap302の充電を開始する。好ましい実施形態によれば、HV Cap302は、AEDデバイス100が電源オンされてから30~40秒以内に完全に充電されることになる。
【0037】
マイクロプロセッサ602は、HV Cap302の充電速度をモニタリング及び制御するようにプログラムされている。HV Cap302を充電するために、マイクロプロセッサ602は、HV XFMR326からHV Cap302に一連の方形波パルスを送信し、その場合、これらのパルスの周波数は、HV Cap302の充電速度を効果的に制御する。したがって、マイクロプロセッサ602は、パルスの周波数を調整して、必要に応じて充電速度を調整することになるフィードバックループを用いてプログラムされる。
【0038】
特に、今回開示されたAEDデバイスのマイクロプロセッサ602は、充電速度を部分変更して、バッテリーがメーカー指定の放電速度及び温度、すなわち、CR2バッテリーの場合、1000mA及び60℃を上回らないことを確実にするように構成されている。したがって、充電回路600は、フィードバックをマイクロプロセッサに収集及び提供するための温度センサ604及び電流モニタ606を含む。このプロセスは、HV Cap302がその時点での利用可能なバッテリー電源が与えられた場合の最速可能速度で充電されることを確実にする。
【0039】
更に、今回開示されたAEDデバイスのマイクロプロセッサ602は、充電速度を部分変更して、HV Cap302が充電されている間に発生するAEDデバイス100の機能を考慮するように構成されている。例えば、スピーカー310は、充電プロセス中に、様々な命令をユーザに与えているであろう。スピーカー310がバッテリーから引き出している電流を考慮するために、マイクロプロセッサ602は、HV Cap302への電流を適切に減少させて、バッテリーを、指定された放電及び温度閾値以内に保持することになる。そして、音声プロンプトが完了すると、マイクロプロセッサ602は、元の充電速度に戻ることになる。
【0040】
HV Cap302が充電している間、AEDデバイス100は、ショックを実施することができる前に、2つの除細動タスクを実施し、それらのうちの第1の除細動タスクは、身体インピーダンス(Z身体)測定を実施することである。Z身体測定は、AC電流が印加されたときに、患者の身体の抵抗及び静電容量の両方を組み込む。Z身体測定は、与えるべきショックの大きさを決定する際に不可欠である。特に、AEDデバイス100によって実施されるショックは、電流の大きさが、心臓を脱分極するのに十分高い場合にのみ有効である。しかし、電流は、患者の心臓組織を損傷させるほど高くすることはできない。したがって、Z身体測定は、ショックがこの有効な非損傷の範囲内にあることを確実にする。
【0041】
Z身体測定を実施するプロセスが、図7に示されている。ユーザがAEDデバイス100を電源オンして、患者の胸部上に除細動器パッド202、204を適切に配置した後に、AEDデバイス100は、Z身体測定を検出しようとすることになる。例示的な実施形態によれば、図9に示すように、AEDデバイス100は、緩和発振器回路900を用いてZ身体測定を実施する。このプロセスは、図8のような回路を使用してZ身体測定を実施する従来のAEDデバイスとは非常に異なっている。Z身体測定を実施する従来のプロセスは、一般的に、除細動器ケーブル及びパッドを介して一定の高周波AC信号を送信することを含み、その信号は、著しい外部干渉の影響を受ける。したがって、従来のAEDデバイスは、高価な精密回路部品を使用して、これらの信号を測定し、かつ不可避の干渉をフィルタリングしなければならない。
【0042】
したがって、緩和発振器回路900は、従来のZ身体測定回路よりも設計上、より単純であり(かつ安価であり)、より少ない場所しか取らず、干渉に対するより多くの耐性を有するため、その緩和発振器回路を使用することは有利である。
【0043】
図9に示す回路900は、そのタイミング部品によって画定される周波数で自励発振する。Z身体測定のためにこのタイプの発振器を使用する背後にある基本的なアイデアは、人体を、発振器のためのタイミング構成要素のうちの1つとして含めること、及び、発振器が生成する周波数変化を取り込むことである。較正後、回路の出力周波数の測定は、変化を引き起こした唯一の変化構成要素(人体)のZ身体値を決定することになる。
【0044】
好ましい実施形態では、その回路は、電圧比較器907を含み、その電圧比較器は、反転入力908、非反転入力909、及び出力910、分圧器901及び905、並びに、固定抵抗器904及びコンデンサ906を有するタイミングRC回路を有する、マイクロプロセッサ602に集積化されている。回路によって抵抗器として見える人体911は、心尖912及び胸骨913と呼ばれる2本のケーブルを介して、抵抗器904と並列に接続されている。
【0045】
フィードバック抵抗器902は、発振プロセスを開始するために必要とされる正のフィードバックを提供する。抵抗器903は、フィードバック信号の大きさをスケーリングするために使用される。回路は、接地電位915に対して電源914から電力を供給される。比較器907は、その出力状態が、その入力のステータスに応じて、2つの事前定義された値のみ、すなわち、ほぼ0ボルト(V)、又は電源電圧に近いボルト値のみを有することができる電子デバイスである。回路に3.3Vを供給するAEDの場合、比較器の出力910は、ほぼ0V又は3.3Vになる。比較器907は、その入力908、909上の電圧を比較して、それに応じて出力910を設定する。非反転入力の909電圧が反転入力の908電圧よりも高い場合、出力910は、3.3Vに設定されることになる。それ以外の場合では、出力910は、0Vになる。
【0046】
回路900の動作は、以下の通りである。
電源914を印加すると、比較器907の非反転入力909上の電圧は、較正抵抗器903を通る心尖912電圧によって詰め込まれた分圧器901及び905に応じて設定される。抵抗器901及び905が等しい値に設定されている場合、この例では、供給電圧914の半分、又は1.65Vになる。しかしながら、それは、抵抗器903を介して入力909に印加された心尖912ワイヤ上の電圧に応じて、増加又は減少することになり、そして今度は、比較器の出力910のステータスに依存する。部品の選択された値に基づいて、非反転入力909電圧は、出力910が0Vであるときに、約1.55Vとなり、出力910が3.3Vにあるときに、1.75Vになるであろう。
【0047】
最初、反転入力908上の電圧は、コンデンサ906が最初放電されるため、ゼロ近くになり、したがって、比較器907の出力910は、3.3Vに設定されることになる。この電圧は、人体911インピーダンス(Z身体)に対して並列に、フィードバック抵抗器902及びタイミング抵抗器904を介してコンデンサ906に印加される。コンデンサ906は、フィードバック抵抗器902及び較正抵抗器903により形成された分圧器によって設定された電圧に向かって、抵抗器904及び人体911を通って流れる電流から充電を開始することになる。分圧器の比は、心尖ワイヤ912上の最終電圧が1.75Vよりも高くなるように設定される。
【0048】
反転入力908に接続されたコンデンサ906の電圧が、非反転入力909上に存在する1.75Vを上回ると、比較器907の出力910は、3.3Vから0Vに反転する。これにより、心尖912の電圧が、1.55V未満の値に減少し、非反転入力909上の電圧が直ちに約1.55Vに変化する。
【0049】
次いで、コンデンサ906は、抵抗器904及び人体911を介して、放電を開始する。そのコンデンサが1.75Vから1.55Vまで放電すると、非反転入力の電圧は、反転入力の電圧よりも高くなり、サイクルが繰り返され、比較器907の出力910上にデジタル周波数(0V~3.3Vの間の)を生成する。
【0050】
上述したように、コンデンサ906が1.55Vから1.75Vへの充電を保持し、かつ、1.75Vから1.55Vへの放電を保持するために必要とされる時間は、Rが抵抗器904と人体911インピーダンス(Z身体)との並列からなるRC定数に依存する。抵抗器904は、一定でかつ既知であるため、比較器907の出力910上の最終的な発振周期(例えば、周波数)を決定する変数は、人体911インピーダンス(Z身体)のみである。既知のインピーダンスのセットに対して発振器を較正することによって、発振器の周波数変化に対する人体911の寄与は、比較器907の出力910上の信号の周波数、及びZ身体値を計算することから決定することができる。
【0051】
したがって、マイクロプロセッサ602は、Z身体測定値を計算するためのより少ない変数を必要とする。更に、緩和発振器回路900は、アナログ信号を使用及び測定しないために、外部の干渉に対して全く影響を受けないため、緩和発振器回路900は、従来のZ身体測定回路と比較して最適である。そして、以前述べたように、緩和発振器回路の単純さにより、より少ない部品が必要であるため、デバイスの製造コスト、並びにデバイスのサイズが削減される。
【0052】
更に、緩和発振器回路900は、高価で精密な抵抗器又はコンデンサの使用を必要としない。この回路は、電圧比較器、及びわずかな非精密な受動抵抗器及びコンデンサのみを使用して出力信号を駆動するため、結果として、従来技術のZ身体測定回路よりも部品数の大幅な削減をもたらす。回路の出力周波数の測定値を使用して、患者の身体インピーダンスを決定する。その出力は、周波数が振幅とは独立して測定されることが可能になるデジタル信号であり、これは、従来技術のZ身体測定方法を上回る更に大きなノイズ耐性をもたらす。
【0053】
しかしながら、いくつかの状況では、AEDデバイス100は、この測定を行うことができない場合がある。一般的に、除細動器パッド202、204が患者の胸部上で適切に配置されていない場合、AEDデバイス100は、Z身体測定を行わないであろう。したがって、Z身体測定に失敗した後、ユーザは、除細動器パッド202、204を調整するように指示されることになる。測定に3回失敗した場合、ユーザは、代わりに心肺蘇生法(CPR)を実施するように指示されることになる。
【0054】
AEDデバイス100がZ身体測定を正常に実施された場合、AEDデバイス100は、患者のECGの読み取り及び分析にかかわる第2の除細動タスクに進むことになる。このプロセスは、概して、図10に示されており、患者の心リズムをモニタリングして、患者が2つのショックを受けることができるリズムパターンのうちの一方を有するかどうかを判定する。除細動は、患者が心室性頻拍(Vtach)又は心室性細動(Vfib)にあるときにのみ有効であり、したがって、AEDデバイス100は、これらの2つのショックを受けることができるリズムがいずれも検出されない場合、ユーザにCPRを実施するように指示することになる。Vtach又はVfibが検出され、かつHV Cap302が十分充電されている場合、AEDデバイス100は、ショックを実施する前に、ユーザに、邪魔しないで離れるように指示することになる。その後、ユーザは、CPRを実施するように指示されることになる。
【0055】
患者の心リズムを検出するプロセスは、メインPCB306に統合化されているアナログフロントエンド(AFE)回路(図示せず)を利用する。例示的な実施形態によれば、AFEは、ECGデータを取り込むだけでなく、ECG信号の判読率を最大化するのに必要な利得、サンプル速度、バイアス、極性、及びフィルタ調整を制御するためのMAX30003集積回路(IC)(図示せず)を含む。この実施形態では、ICは、患者の低電圧心リズムを受信し、その心リズムは、アナログデジタルコンバータ(ADC)(図示せず)に送信される。これらのデジタル出力は、定期的にサンプリングされ、その時点でバッファ記憶されたデータは、マイクロプロセッサ602に送信され、そのマイクロプロセッサは、患者がショックを受けることができる心リズムを有するかどうか判定するようにプログラムされている。AEDデバイス100は、ショックを受けることができるパターンの少なくとも6つの連続した心リズムを取り込まなければならず、そうでなければ、ショックは、与えられないことになる。
【0056】
例示的な実施形態によれば、AEDデバイス100は、ソフトウェア高電圧(HV)ショックドライバ(図示せず)を利用して、除細動プロセスに関与する全ての回路間をインターフェース接続する。より具体的には、HVショックドライバソフトウェアは、Z身体測定が実施された後、HV Cap302の電圧を測定して、HV Cap302の電圧が適切なレベルに充電されていることを確実にする。更に、HVショックドライバソフトウェアはまた、ECGデータが収集された後に、ショックが実際に実施されるかどうかを制御する責任も果たす。
【0057】
AEDデバイス100が電源投入され、かつ除細動器パッド202、204が患者に取り付けられたときに、AEDデバイス100は、患者のECG波形を継続して測定し、リアルタイムでそれを分類する。その分類が、ショックを受けることができる波形、すなわち、(i)心室性頻拍(Vtach)か、又は(ii)心室性細動(Vfib)のいずれかであると判定され、かつ、この分類が最小6秒間一定のままであった場合、高電圧ショックは、除細動器パッドを介して患者に与えられる。
【0058】
ショックを与えるために、AEDデバイス100は、HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するHブリッジ回路324を利用し、その二相性パルスは、連続して印加される反対極性の2つのパルスとして定義される。ショックが与えられた後、AEDデバイス100は、ユーザに、患者のECGをモニタリングし続けながら、CPRを実施するように指示することになる。2分間のCPRの後、患者のECGの分析が、2回目のショックが必要であると判断した場合、上記のプロセスは、繰り返され、必要に応じて、再度、3回目のショックが繰り返されることになる。いずれの場合も、デバイスは、ユーザに、ショックの間に2分間のCPRを実施するように指示することになる。
【0059】
好ましい実施形態では、AEDデバイスは、OFFボタンを有さないため、デバイスがタイミング悪い瞬間に誤って電源を落とすことを防止する。代わりに、デバイスは、指定された非アクティブ期間の後に、例えば、3分間の総非アクティブ期間の後に、電源をオフするように構成されている。スピーカー310は、ユーザに、AEDデバイス100が電源オフになっていることを警告することになる。
【0060】
前述した除細動タスクとは別にして、AEDデバイス100は、図11の図に部分的に基づいて、いくつかの組み込み自己試験(BIST)タスクを実施する。一般に、BISTタスクは、AEDデバイス100が適切に動作していることを確実にし、これらのBISTタスクの大部分は、AEDデバイス100がオフである間に実施される。
【0061】
本AEDデバイスは、従来のAEDデバイスよりもかなり小さいバッテリーを使用するため、内部部品は、できるだけ多くのバッテリー電力を保持するような方法で構成及びプログラムされている。したがって、AEDデバイス100の例示的な実施形態は、できるだけ多くのバッテリー電力を保持しながら、BISTタスクを制御するための電源ハンドラシステム(図示せず)を含む。より具体的には、電源ハンドラシステムは、AEDデバイス100が使用されていないときに、いくつかの超低電力部品を除いて、全ての回路がオフであることを確実にする。常時オンのままである超低電力部品は、ナノアンペアの範囲で動作し、リアルタイムクロック(RTC)(図示せず)を含むが、これに限定されない。この電源ハンドラシステムは、使用していないときに「スリープモード」に入ることが多い従来のAEDデバイスと比較して独特である。しかしながら、スリープモードは、依然として大量のエネルギーを消費するため、この電源ハンドラシステムは、長期間の非アクティブ中に消費される電力を削減するために、特に有利である。
【0062】
一般に、RTCは、マイクロプロセッサ602を定期的に呼び出すようにプログラムされてBISTシーケンスを開始し、このシーケンスは、一連のハードウェア検証及びバッテリーレベル点検に関与する。BISTが成功すると(誤差なしが識別されると)、AEDデバイス100ステータスは、更新されて、緑色のステータスLED314が周期的に点滅することになる。この緑色のステータスLED314は、マイクロプロセッサ602が電源オフになった後も、次のBISTシーケンスまで点滅を続けることになる。BISTが成功せず、かつスピーカー310が適切に機能している場合、赤色のステータスLED314は、「保守サービスが必要です」などの音声プロンプトが実施されたときに、点滅する。次いで、マイクロプロセッサ602は、電源オフになり、そうしている間に、赤色のステータスLED314が点滅し、ピエゾ式ブザー312がビープ音を発することになる。このプロセスは、AEDデバイス100が保守サービスされるまで、30分毎に繰り返される。スピーカー310が適切に機能しない場合、又はマイクロプロセッサ602が応答しない場合、赤色のステータスLED314は、ピエゾ式ブザー312がビープ音を発している間中、点滅する。これらのアラームは、AEDデバイス100が保守サービスされるまで、途切れずに継続するか、又は断続的に続く。
【0063】
BISTシーケンス中に実施される特定の検証に目を向けると、図12は、例示的なスピーカー検証回路1200を示している。音声プロンプトの信頼性、音圧レベル、及び完全性は、ユーザのAEDデバイスの使用を案内する際に重要であり、したがって、スピーカー310は、頻繁にモニタリングされる必要がある。例示的な実施形態によれば、スピーカー310は、Oリング又はガスケット(図示せず)を使用して、ハウジング内に統合され、許容できる侵入保護(IP)レベルまでの防滴又は防水を達成する。ハウジング102内のスピーカー孔110は、スピーカー310からの音圧がAEDデバイス100を出て行くことを可能にするが、例えば、水、又はスピーカー孔を貫通する鋭利な物体によって、スピーカーが潜在的に損傷を受けやすくなる場合がある。この種の損傷は、肉眼では気付かない可能性があるが、音声プロンプトを歪ませるか、又は更には存在しないものにする可能性がある。
【0064】
例示的な実施形態によれば、メインPCB306は、スピーカー310のすぐ近くに位置決めされた小さなマイクロフォン316が取り付けられる。RTCによって電源が投入されると、マイクロプロセッサ602は、ほぼ20~50ミリ秒続く短時間の音を生成し、その音は、スピーカー310を介して再生される。マイクロプロセッサ602はまた、マイクロフォン316を通して繰り返されるこの音についても「聞く」。スピーカー310が何らかの方法で損傷を受けた場合、その音は、一致しないことになり、マイクロプロセッサ602は、前述したように、必要な警告シーケンスに入ることになる。
【0065】
携帯型AEDデバイスに対する別の潜在的な脆弱性は、デバイスの温度である。より具体的には、AEDデバイスは、AEDデバイスの指定された動作温度範囲及び保管温度範囲を上回る高温環境内に保管されたときに、損傷を受けやすい。例示的な実施形態によれば、AEDデバイス100は、概して図6に示された温度センサ集積回路(温度感知IC)を利用して、常時、AEDデバイス100の温度をモニタリングする。RTCと同様に、温度感知ICは、超低電力部品であり、したがって、マイクロプロセッサ602が電源オフになっていても、AEDデバイスの温度をモニタリングすることになる。AEDデバイス100の温度が許容できる範囲外に入ると、温度センサICは、マイクロプロセッサ602に電源投入し、そのマイクロプロセッサは、必要な警告シーケンスに入ることになる。
【0066】
本AEDデバイスはまた、除細動器ケーブル104及び除細動器パッド202、204の損傷に対しても独特に脆弱である。従来のAEDデバイスは、典型的には、しっかりと壁に取り付けられた収容器内に保管され、したがって、個々の部品は、通りがかりの通常活動によって損傷受ける可能性は低い。対照的に、今回開示されたAEDデバイスは、個人使用を意図されているため、AEDデバイスは、例えば、自宅に放置されている間、かつ/又は車両及び屋外に運ばれている間、従来のAEDデバイスではない方法での改ざん及び損傷を受けやすい可能性があり、それによって、AEDデバイスは、落下するか、又は水及び様々な温度に晒されるなどの可能性がある。除細動器パッド202、204、及び除細動器ケーブル104が正常に運転できる状態にあることを確実にするために、AEDデバイス100は、パッド202、204、及びケーブル104の完全性を検証するためのいくつかの方法を有する。
【0067】
第1の例示的な実施形態によれば、BISTシーケンス中、マイクロプロセッサ602は、ほぼ30kHzの低周波数信号を生成し、この信号を、除細動器ケーブル104及び除細動器パッド202、204を通じて送信する。信号がマイクロプロセッサ602に戻り、かつ所定の誤差マージン以内で元の信号と一致する場合、除細動器ケーブル104及び除細動器パッド202、204は、無傷である。信号に有意な変化が存在する場合、除細動器パッド202、204は、もはや適切に封止されていないか、又は導電性ゲル層203、205が乾燥してしまった可能性が高い。信号が全く戻らない場合、除細動器パッド202、204、及び/又は除細動器ケーブル104のうちの少なくとも1つは、有意に損傷されている。送信された信号と戻った信号が一致しないいずれの場合も、マイクロプロセッサ602は、必要な警告シーケンスを開始することになる。
【0068】
別の例示的な実施形態では、除細動器パッド202、204の間に位置決めされた感圧積層紙206は、導電性ゲル層203、205が直接接触するように、少なくとも1つの小さな孔を有する。ここで、マイクロプロセッサ602は、除細動器ケーブル104及び除細動器パッド202、204を通して送信される、ほぼ3~5VDCの低電圧DC信号を定期的に生成するようにプログラムされている。前述した実施形態と同様に、マイクロプロセッサ602は、(信号が戻された場合)戻された信号を元の信号と比較して、除細動器ケーブル104又は除細動器パッド202、204が損傷しているかどうかを判定する。マイクロプロセッサ602は、除細動器パッド202、204及び/又は除細動器ケーブル104のうちの少なくとも1つへの損傷が検出されたときに、必要に応じて、適切な警告シーケンスを開始することになる。
【0069】
更に別の実施形態によれば、除細動器ケーブル104、及び除細動器パッド202、204の完全性は、Z身体測定を実施することに関して説明した方法と同様の方法を使用して検証される。特に、この検証方法は、図9の緩和発振器回路を利用する。BISTシーケンス中、緩和発振器は、確立された周波数範囲内で発振を開始することになる。マイクロプロセッサ602は、この発振を検出し、その後、発振周波数を計算する。計算された発振周波数が確立された範囲内にある場合、除細動器ケーブル104及び除細動器ケーブル202、204は、適切に機能している。計算された周波数がこの範囲外にある場合、又はマイクロプロセッサ602が発振を検出することができない場合、少なくとも1つの除細動器パッド202、204及び/又は除細動器ケーブル104が損傷し、マイクロプロセッサ602は、必要な警告シーケンスに入ることになる。
【0070】
FDAは、AEDデバイスの除細動器パッドが少なくとも2年毎に交換されることを要求する。したがって、例示的な実施形態によれば、RTCは、除細動器パッド202、204が交換されなければならないときに、2年毎にマイクロプロセッサ602に警告することになるタイマーでプログラムされる。マイクロプロセッサ602が、保守サービスが必要であることを警告されると、そのマイクロプロセッサは、所定の警告シーケンスを開始して、ユーザに、新しい除細動器パッド202、204が必要であることを知らせることになる。
【0071】
BISTシーケンスはまた、AFE回路の機能性を検証することも含む。例示的な実施形態によれば、このプロセスは、図13に図示してある回路を使用して実行される。AEDデバイス100がBISTシーケンスに入ると、マイクロプロセッサ602は、ほぼ1~5Hzの心拍を模擬する低周波数信号をAFE回路に送信する。この信号が受信されると、AFE回路は、信号がECGデータを収集しているかのように、その信号を読み取りかつ処理して、それに応じてそのデータを処理し、それをマイクロプロセッサ602に報告することになる。AFE回路は、マイクロプロセッサ602に戻されたデータが、所定の誤差マージン内で元の信号と一致したときに、適切に機能していると見なされる。しかしながら、データが戻されない場合、又は戻されたデータが所定の誤差マージン外に入った場合、マイクロプロセッサ602は、必要な警告シーケンスに入ることになる。
【0072】
更に、BISTシーケンスは、いくつかの追加の検証に関与する。例示的な実施形態によれば、BISTシーケンスはまた、電源電圧及びバッテリーステータスも検証する。電源電圧が低いときに、又はバッテリーステータスに誤差が検出されたときに、ユーザは、適切に警告されることになる。しかしながら、AEDデバイス100は、バックアップバッテリー318が装備されて、RTCなどの部品が常に電源を供給されることを確実にする。バックアップバッテリー318はまた、バッテリーが保守サービスされている(例えば、交換されている)間、AEDデバイス100に電力を供給するためにも非常に重要である。
【0073】
BISTシーケンスはまた、RAM及びSDカード320の機能性も検証する。SDカード320の主な目的は、AEDデバイス100、及び保守サービスを必要とする任意の特定の部品のステータスに関係する情報を保持することである。例示的な実施形態によれば、SDカード320は、容易に取り外し可能であり、AEDデバイス100のための全てのステータス情報をコンピュータにアップロードすることになる。このアップロードにより、ユーザは、AEDデバイス100が保守サービスを必要としているかどうかを容易に識別することが可能になり、もしそうである場合には、どの部品及び/又はシステムが保守サービスを必要としているかを識別することが可能になる。
【0074】
更に、別の例示的な実施形態によれば、マイクロフォン316はまた、デバイスが使用中である間、周囲環境の音声を記録することもできる。したがって、AEDデバイス100、又は、より具体的には、SDカードは、この音声データを維持するための十分な記憶装置を有しなければならない。このデータを使用して、任意の失敗した復活の試みについての法医学上の情報を提供することができる。
【0075】
BISTシーケンスはまた、マイクロプロセッサ602の機能性を暗黙的に検証する。より具体的には、マイクロプロセッサ602は、前述のタスクのうちのいずれかの間に、マイクロプロセッサ602が応答しない場合、適切に機能していない。そのような事例では、セカンダリマイクロプロセッサは、限られた数の処理機能を引き継ぐ。特に、セカンダリマイクロプロセッサは、適切な警告シーケンスを開始して、ユーザに、保守サービスが必要であることを知らせることになる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それがともに使用されている数の数値のプラス又はマイナス10%を意味する。
【0077】
本開示は、いくつかの例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本開示は、そのような開示された実施形態に限定されないことが、当業者によって理解されるであろう。逆に、開示された実施形態は、本明細書に記載されていない任意の数の変形、変更、代替、又は等価な構成を組み込むように修正することができるが、それらは、本開示の範囲内である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動体外式除細動器(AED)デバイスであって、
患者に除細動ショックを与えるために必要とされるエネルギーを保存するように構成された高電圧コンデンサ(HV Cap)と、
前記HV Capを充電するように構成された1つ以上のバッテリーと、
高電圧変圧器(HV XFMR)、関連するドライバを有する電界効果トランジスタ(FET)スイッチ、及び整流ダイオードを含むDC/DCコンバータ回路と、
前記HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するように構成されたHブリッジ回路と、
前記AEDデバイスの動作のためのコンピュータ実行可能命令を格納及び実行するように構成されている、メモリ及びマイクロプロセッサと、を備え、
前記HV Cap、前記DC/DCコンバータ回路、前記Hブリッジ回路、前記1つ以上のバッテリー、並びに前記メモリ及び前記マイクロプロセッサが、ポケットサイズのハウジングに収容されている、自動体外式除細動器(AED)デバイス。
【請求項2】
前記DC/DCコンバータ回路が、バッテリー電圧を約2000ボルトに増加させるように構成されている、請求項1に記載のAED。
【請求項3】
一対の除細動器パッドと、
前記HV Capを前記一対の除細動器パッドに動作可能に接続するためのケーブルと、を更に備え、前記除細動器パッドが、ポケットサイズである、請求項1又は2に記載のAED。
【請求項4】
前記ハウジングが、155mm×86mm×28mm以下の寸法を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項5】
前記1つ以上のバッテリーが、4つのCR2バッテリーからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項6】
前記HV Capは、前記AEDデバイスが電源オンされたときに、充電を開始するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項7】
前記マイクロプロセッサが、(i)前記1つ以上のバッテリーの最大放電速度、及び(ii)前記1つ以上のバッテリーの最大動作温度、を上回らないように、前記HV Capの充電速度をモニタリング及び調整するように構成され、それによって、前記HV Capが、利用可能なバッテリー電力で可能な最大速度で充電されることを可能にする、請求項1~6のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項8】
前記最大放電速度が、1000mAであり、前記最大動作温度が、75℃である、請求項7に記載のAEDデバイス。
【請求項9】
リアルタイムクロック(RTC)及び温度センサ集積回路(温度センサIC)を更に備え、それらの各々が、前記RTC及び温度センサICにプログラムされた動的パラメータに従って、前記AEDデバイスに電源投入するように構成されており、前記マイクロプロセッサは、前記AEDデバイスが使用されていないときには、(スリープモードになっているのではなく)完全に電源オフになっているように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項10】
前記AEDデバイスが使用されていないときには、全ての回路及びコンポーネントが、前記RTC、前記温度センサIC、及びそれらのサポート回路を除いて、電源オフになっている、請求項9に記載のAEDデバイス。
【請求項11】
前記RTCが、前記マイクロプロセッサを定期的に電源投入して、一連の組み込み自己試験(BIST)を実施して、前記AEDデバイスの1つ以上のバッテリー及びハードウェアを点検するように構成されている、請求項9又は10に記載のAEDデバイス。
【請求項12】
前記ハウジング内に収容され、かつ音声プロンプトをユーザに提供するように構成されているスピーカーを更に備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項13】
前記AEDデバイスが、前記ハウジング内の前記スピーカーの近くに配設されたマイクロフォンを更に備え、前記RTCは、少なくとも1つのコンピュータプロセッサに定期的に電源投入して、信号が前記コンピュータプロセッサから前記スピーカーを通じて送信されるBISTを実施するように構成され、前記コンピュータプロセッサが、前記送信された信号を、前記マイクロフォンを通じて受信された前記信号と比較して、前記スピーカーの完全性を評価する、請求項12に記載のAEDデバイス。
【請求項14】
使用中、AEDデバイスが、前記AEDデバイスの前記動作中に前記マイクロフォンによって受信された音声を記録するように構成され、前記AEDデバイスの前記動作中に前記マイクロフォンによって受信された前記音声を格納するための外部フラッシュメモリを有する、請求項12に記載のAEDデバイス。
【請求項15】
前記温度センサICは、前記AEDデバイスの回路の他の部分の電源が切られているときを含めて、前記AEDデバイスの温度を継続的にモニタリングするように構成されている、請求項9~14のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項16】
(i)前記RTCからの信号によって定期的に電源オンされて、前記AEDデバイスハウジング及び/又は前記除細動器パッドの温度をモニタリングするように、かつ(ii)前記モニタリングされた温度が指定温度に達した場合に、前記マイクロプロセッサを電源オンして警告するように、構成されている低電力型マイクロコントローラを更に備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項17】
Z身体測定で使用するように構成された可変周波数緩和発振器回路を備えており、前記回路が、前記患者の身体インピーダンスに比例する周波数で自励発振するのに有効である、請求項1~16のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項18】
前記マイクロプロセッサが、前記除細動器パッド及びケーブルの完全性を検証するように構成されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項19】
前記マイクロプロセッサが、前記AEDデバイス内の心電図(ECG)回路の完全性を検証するように構成されている、請求項1~18のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項20】
前記マイクロプロセッサが、心拍を模擬する信号を定期的に生成して、前記信号をアナログフロントエンド(AFE)回路に送信し、次いで、前記送信された信号を、前記AFE回路によって処理された信号と比較するように構成されている、請求項19に記載のAEDデバイス。
【請求項21】
ハウジングが、電源オンボタンである単一のボタンを有する面を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項22】
自動体外式除細動器(AED)デバイスであって、
患者に除細動ショックを与えるために必要とされるエネルギーを保存するように構成された高電圧コンデンサ(HV Cap)と、
前記HV Capを充電するように構成された1つ以上のバッテリーと、
高電圧変圧器(HV XFMR)、関連するドライバを有する電界効果トランジスタ(FET)スイッチ、及び整流ダイオードを含むDC/DCコンバータ回路と、
前記HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するように構成されたHブリッジ回路と、
コンピュータ実行可能命令を格納するように構成されたメモリと、
前記メモリにアクセスし、かつ前記コンピュータ実行可能命令を実行して、前記1つ以上のバッテリーが前記HV Capを充電する速度を継続的にモニタリング及び調整するように構成された少なくとも1つのマイクロプロセッサと、を備え、
前記AEDデバイスが、前記1つ以上のバッテリーの最大温度又は最大放電速度のいずれも上回らずに、前記HV Capを、前記1つ以上のバッテリーからの利用可能な電力で可能な最大速度で充電するために、前記1つ以上のバッテリーの放電電流及び温度を同時にモニタリングするように構成されている、自動体外式除細動器(AED)デバイス。
【請求項23】
自動体外式除細動器(AED)デバイスであって、
患者に除細動ショックを与えるために必要とされるエネルギーを保存するように構成された高電圧コンデンサ(HV Cap)と、
前記HV Capを充電するように構成された1つ以上のバッテリーと、
高電圧変圧器(HV XFMR)、関連するドライバを有する電界効果トランジスタ(FET)スイッチ、及び整流ダイオードを含むDC/DCコンバータ回路と、
前記HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するように構成されたHブリッジ回路と、
コンピュータ実行可能命令を格納するように構成されたメモリと、
前記メモリにアクセスし、かつ前記コンピュータ実行可能命令を実行して、
前記患者のECGを読み取り、かつ分析して、前記患者がショックを受けることができる心リズムを有するかどうかを決定することと、
前記HV Capを充電することと、
前記患者のZ身体測定に少なくとも部分的に基づいて、前記除細動ショックのための放電電流を決定することと、
前記除細動ショックを与えることと、を行うように構成された少なくとも1つのマイクロプロセッサと、を備え、
前記AEDデバイスが、前記患者のZ身体測定値を取得するように構成された可変周波数緩和発振器回路を備え、前記回路が、前記患者の身体インピーダンスに比例する周波数で自励発振するのに有効である、自動体外式除細動器(AED)デバイス。
【請求項24】
自動体外式除細動(AED)デバイスであって、
患者に除細動ショックを与えるために必要とされるエネルギーを保存するように構成された高電圧コンデンサ(HV Cap)と、
前記HV Capを充電するように構成された1つ以上のバッテリーと、
高電圧変圧器(HV XFMR)、関連するドライバを有する電界効果トランジスタ(FET)スイッチ、及び整流ダイオードを含むDC/DCコンバータ回路と、
前記HV Capから解放されたエネルギーを二相性パルスに変換するように構成されたHブリッジ回路と、
コンピュータ実行可能命令を格納するように構成されたメモリと、
前記AEDデバイスの動作のためのコンピュータ実行可能命令を実行するように構成されたメインマイクロプロセッサと、を備え、
前記AEDデバイスは、リアルタイムクロック(RTC)を含む電源ハンドラ回路を更に備え、前記メインマイクロプロセッサが電源オフになっているときにはスリープモードに入らず、
前記電源ハンドラ回路は、前記メインマイクロプロセッサが前記RTCによって電源オフになっているときには、前記AEDデバイスを制御するように構成され、前記RTCが、前記メインマイクロプロセッサを定期的に電源オンして、組み込み自己試験(BIST)シーケンスを実施し、前記AEDデバイスの1つ以上のバッテリー及びハードウェアを点検するように構成されている、自動体外式除細動(AED)デバイス。
【請求項25】
前記DC/DCコンバータ回路が、前記バッテリー電圧を約2000ボルトに増加させるように構成されている、請求項22~24のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項26】
前記1つ以上のバッテリーが、4つのCR2バッテリーからなる、請求項22~25のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項27】
前記HV Cap、前記DC/DCコンバータ回路、前記Hブリッジ回路、前記1つ以上のバッテリー、並びに前記メモリ及び前記マイクロプロセッサが、ポケットサイズのハウジングに収容されている、請求項22~26のいずれか一項に記載のAEDデバイス。
【請求項28】
前記ハウジングが、約155mm×約86mm×約28mmである寸法を有する、請求項27に記載のAEDデバイス。
【国際調査報告】