(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】単一支配モードのマイクロ波反応器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/72 20060101AFI20240214BHJP
H05B 6/74 20060101ALI20240214BHJP
H05B 6/64 20060101ALI20240214BHJP
H05B 6/70 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H05B6/72 C
H05B6/72 A
H05B6/74 F
H05B6/64 D
H05B6/70 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023541877
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2022054262
(87)【国際公開番号】W WO2022175526
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523261458
【氏名又は名称】オーガニック フューエル テクノロジー アーエス
【氏名又は名称原語表記】ORGANIC FUEL TECHNOLOGY A/S
【住所又は居所原語表記】Inge Lehmanns Gade 10 8000 Aarhus C (DK)
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】ペデルセン、イェンス クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】レト-エスペンセン、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヒョルツホジ、アンデルス
【テーマコード(参考)】
3K090
【Fターム(参考)】
3K090AA02
3K090AA11
3K090AB04
3K090AB09
3K090CA01
3K090DA20
3K090EB01
(57)【要約】
本発明は、単一モード又は単一支配モードのマイクロ波反応器、単一支配モードのマイクロ波反応器システム、及びバイオ燃料などの燃料の製造方法に関する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器チャンバと、
前記反応器チャンバに接続され前記反応器チャンバに単一モードのマイクロ波を供給するための少なくとも1つの手段と、
を備える単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項2】
前記単一モードのマイクロ波を供給するための少なくとも1つの手段は、
マイクロ波入口及びマイクロ波出口を有する、マイクロ波を送信する手段と、
フィルタリング手段と、
を備える、請求項1記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項3】
前記マイクロ波を送信する手段は、ホーンアンテナであるか、又はホーンアンテナを備えている、請求項2記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項4】
前記マイクロ波を送信する手段は、マイクロ波平面アンテナであるか、又はマイクロ波平面アンテナを備えている、請求項2記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項5】
前記フィルタリング手段は、モードフィルタであるか、又はモードフィルタを備えている、請求項2から4のいずれかに記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項6】
前記モードフィルタは、互いに離間した金属棒又は金属円筒で構成され、前記マイクロ波を送信する手段のマイクロ波出口に配置される、請求項5記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項7】
前記金属棒又は金属円筒は、前記マイクロ波の伝搬方向に送信マイクロ波の1/4波長未満、かつ前記マイクロ波の伝搬方向と直交する方向に送信マイクロ波の1/2波長未満だけ互いに離れている、請求項6記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項8】
前記反応器チャンバは円筒形の反応器チャンバである、請求項1から7のいずれかに記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項9】
前記反応器チャンバ内に配置された回転装置を備え、前記回転装置は、前記反応器チャンバ内で処理される材料を混合するように構成され、それにより、前記処理される材料への均一なマイクロ波放射を保証する、請求項1から8のいずれかに記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項10】
前記回転装置はインペラであるか、又はインペラを備えている、請求項9記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項11】
前記回転装置は、回転軸に取り付けられたヘリカルブレードを備えている、請求項9から10のいずれかに記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項12】
マイクロ波伝搬の前記単一支配モードは、TE10基本モードである、請求項1から11のいずれかに記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の単一支配モードのマイクロ波反応器と、
前記単一支配モードのマイクロ波反応器に接続されたマイクロ波発生器と、
を備える単一支配モードのマイクロ波反応器システム。
【請求項14】
前記システムはデュアルシステムである、請求項13記載の単一支配モードのマイクロ波反応器システム。
【請求項15】
原料を供給する工程と、
前記供給原料を、請求項1から12のいずれかに記載のマイクロ波反応器のマイクロ波反応器チャンバ又は請求項13から14のいずれかに記載のマイクロ波反応器システムに移送する工程と、
前記供給原料にマイクロ波エネルギーを印加することによって、前記供給原料を処理シーケンスに供する工程であって、それによって前記供給原料に電界の分散発生を生じさせること、
を有する燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一モード又は単一支配モードのマイクロ波反応器、単一支配モードのマイクロ波反応器システム、及び燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波エネルギーは、通信、食品加工、木材乾燥から、化学反応や医療治療まで、50年を超えて多くの用途に使われている。マイクロ波技術が応用される分野には、乾燥、焼成、分解、粉末合成、焼結、化学プロセス制御などが含まれる。
【0003】
マイクロ波加熱技術を化学反応に応用すると、より安全な溶媒と反応条件を利用し、事故の可能性を最小限に抑え、生成物の無駄を防ぎ、反応時間を最短にすることで、持続可能な「グリーン・ケミストリー」が実現する。例えば、異なるマイクロ波周波数を用いることで、マイクロ波を使用しない従来の合成に頼る場合よりも、はるかに短い時間で効率的にナノ粒子を合成することが可能である。
【0004】
マイクロ波を使用しない他の方法と比較して、マイクロ波加熱の使用は反応時間を短縮し、合成スラッジの均質性を概して向上させる。
【0005】
しかし、現在のマイクロ波システムソリューションは、必ずしも均等にマイクロ波を放射しているとは限らず、試料の残りの体積に対して、「ホットスポット」とも呼ばれる、ある種の局所的な過熱を発生させる。
【0006】
ホットスポットの存在は、均質な試料内での電磁場の不均一な分布に起因する、材料の異なる部分での選択的加熱による、マイクロ波エネルギーの不均一な散逸を示している。
【0007】
それ故、より均質な加熱を可能にし、より良いプロセス制御とエネルギー効率を与え、より大規模な応用を可能にするマイクロ波フロー反応器が求められている。
【0008】
従って、より均一な電磁場分布を提供する改良型マイクロ波反応器が有利であり、特に、処理対象の材料内に電磁場をより均一に分布させることが可能な、より効率的なマイクロ波反応器が有利である。
【0009】
発明の目的
本発明の目的は、処理対象の材料内にマイクロ波エネルギーを均一に分布させることができるマイクロ波フロー反応器を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、処理対象の材料内での均一なマイクロ波放射を保証するマイクロ波反応器を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、また、先行技術に代わるものを提供することである。
【0012】
特に、本発明の目的は、処理対象の材料がより均一な電界の分布を受けるように、オーバーモードの伝搬を抑制することによって、従来技術の上述した問題を解決する単一モード又は単一支配モードのマイクロ波フロー反応器を提供することである。
【発明の概要】
【0013】
従って、上述の目的及び他のいくつかの目的は、本発明の第1の態様において、反応器チャンバと、反応器チャンバに接続され反応器チャンバに単一モードのマイクロ波を供給するための少なくとも1つの手段と、を備える単一支配モードのマイクロ波反応器を提供することによって得られることが意図される。
【0014】
一般に、電磁波は導波管に沿っていくつかの異なるモードを使って進むことができる。
【0015】
矩形導波管と同様に、導体が1本しか存在しない中空導波管では、電気的横波(TE)と磁気的横波(TM)の2種類の波が存在する。
【0016】
電気的横波(TE)モードは、伝搬方向に沿って磁界のみを持ち、伝搬方向に電界を持たないという特徴がある。
【0017】
TEモードは、電気ベクトル(E)が伝搬方向に対して常に直交する。
【0018】
導波管の基本モードとは、カットオフ周波数が最も低いモードのことである。矩形導波管の場合、TE10モードが基本モードである。
【0019】
単一モード又は単一支配モードのマイクロ波反応器とは、本明細書では、マイクロ波が実質的に単一モードで伝搬する反応器と定義される。
【0020】
伝搬の単一モード又は単一支配基本モードは、電気的横波(TE)モードであってもよい。
【0021】
その点で、いくつかの実施形態では、本発明のマイクロ波反応器は、基本モードとは異なる伝搬モードを効果的に抑制し制御する。
【0022】
他のいくつかの実施形態では、単一モードのマイクロ波を供給するための少なくとも1つの手段は、マイクロ波入口及びマイクロ波出口を有する、マイクロ波を送信する手段と、フィルタリング手段とを備える。
【0023】
マイクロ波を送信する手段は、マイクロ波の伝搬を可能にするものであれば如何なる手段であってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、マイクロ波を送信する手段は、ホーンアンテナであるか、又はホーンアンテナを備えている。
【0025】
ホーンアンテナ又はマイクロ波ホーンは、ホルンのような拡径された形状の金属導波管で構成され、電波をビーム状に導くアンテナである。これらのアンテナは概してフィードアンテナとして使用され、本明細書ではフィードホーンとも呼ぶ。
【0026】
ホーンアンテナのインタフェースは、基本的なTE10モードで動作する導波管であってもよい。
【0027】
導波管は、WR340導波管のような標準的な3.4インチ導波管であってもよい。しかし、適切な調整を施すことにより、異なる寸法の導波管を使用することもできる。
【0028】
他のいくつかの実施形態では、マイクロ波を送信する手段は、平面マイクロ波アンテナであるか、又は平面マイクロ波アンテナを備えている。
【0029】
いくつかの実施形態では、フィルタリング手段は、モードフィルタであるか、又はモードフィルタを備えている。
【0030】
フィルタリング手段は、起こりうるオーバーモードの存在をキャンセル又は減衰させる機能を持つ。
【0031】
モードフィルタは、互いに離間した金属棒又は金属円筒で構成されるものであってもよく、マイクロ波を送信する手段のマイクロ波出口に配置される、ホーンアンテナのようなものであってもよい。
【0032】
モードフィルタは、マイクロ波を送信する手段の出口、すなわちマイクロ波を送信する手段の端部、反応器チャンバのマイクロ波入口に配置される。
【0033】
モードフィルタがない場合、複数のオーバーモードが存在する可能性がある。モードフィルタには、モードフィルタの金属棒又は金属円筒に平行な電界成分を持つオーバーモードをキャンセル又は減衰させる機能がある。
【0034】
金属棒又は金属円筒は、マイクロ波の伝搬方向に送信マイクロ波の1/4波長未満、マイクロ波の伝搬方向と直交する方向に送信マイクロ波の1/2波長未満だけ互いに離れていてもよい。
【0035】
マイクロ波の伝搬方向については、マイクロ波反応器を使用し、送信手段を介してマイクロ波を反応器に供給する場合のマイクロ波の伝搬方向を意図している。
【0036】
いくつかの実施形態では、金属棒又は金属円筒は、マイクロ波の伝搬方向に3mm、マイクロ波の伝搬方向と直交する方向に15mm、互いに離れている。
【0037】
いくつかの実施形態では、反応器チャンバは円筒形の反応器チャンバである。
【0038】
本発明のマイクロ波反応器は、異なるタイプの材料を処理するために適合させることができるものであってもよく、したがって、異なるタイプの反応を実行するために使用することができる。
【0039】
反応器チャンバは反応器の内部空間であり、ここで反応が起こる。
【0040】
いくつかの更なる実施形態では、本発明の第1の態様による単一支配モードのマイクロ波反応器は、さらに、反応器チャンバ内に配置された回転装置を備える。回転装置は、反応器チャンバ内の処理対象の材料を混合するように構成されるものであってもよく、それにより、処理対象の材料への均一なマイクロ波放射が保証される。
【0041】
回転装置は、反応器チャンバ内の処理対象の材料を撹拌及び/又は混合するように適合されている。処理対象の材料を移動及び回転させる手段が存在することにより、処理対象の材料への均一な電界の分布が保証される。
【0042】
いくつかの実施形態では、回転装置はインペラであるか、又はインペラを備えている。
【0043】
回転装置はまた、撹拌下での効率的な乱流をさらに促進し、より均一な混合をもたらす、ヘリカルコイルを含むものであってもよい。
【0044】
いくつかのさらなる実施形態では、回転装置は、回転軸に取り付けられたヘリカルブレードを備えている。
【0045】
モードフィルタと結合した回転装置により、処理対象の材料に電界をほぼ均一に分布させることができ、反応器チャンバ内の反応効率が向上するという利点がある。
【0046】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による単一支配モードのマイクロ波反応器と、単一支配モードのマイクロ波反応器に接続されたマイクロ波発生器と、を備える単一支配モードのマイクロ波反応器システムに関する。
【0047】
このように、単一支配モードのマイクロ波反応器システムは、ホーンアンテナのような単一モードのマイクロ波を送信する手段にインタフェースされた、マグネトロンのような1つ以上のマイクロ波源を備える。
【0048】
いくつかの実施形態では、単一支配モードのマイクロ波反応器システムは、独立したモードフィルタを持つ2つ以上のマイクロ波発生器を備える。
【0049】
これらの実施形態はデュアルシステムとも呼ばれるものであってもよい。
【0050】
2つ以上のマイクロ波反応器を備えたシステムにおいて、マイクロ波発生器間の結合の必要性は、オーバーモードの抑制によって最小限に抑えられている。
【0051】
単一支配モードのマイクロ波反応器システムは、処理対象の材料内に均一な電界分布があることが有利ないくつかの用途に使用することができる。
【0052】
例えば、本発明の単一支配モードのマイクロ波反応器システムは、環境・医療用、食品加工用、インク・塗料用や、木材処理用、農業用など、いくつかのマイクロ波加熱用途に使用することができる。
【0053】
本発明の単一支配モードのマイクロ波反応器システムは、無機合成又は有機合成に関連するマイクロ波化学及び材料処理や、生化学反応、ポリマー関連プロセス、及び触媒化学処理に使用されるものであってもよい。
【0054】
第3の態様において、本発明は燃料の製造方法に関し、当該方法は、
原料を供給する工程と、
この供給原料を、本発明の第1の態様に係るマイクロ波反応器のマイクロ波反応器チャンバ又は本発明の第2の態様に係るマイクロ波反応器システムに移送する工程と、
供給原料にマイクロ波エネルギーを印加することによって、供給原料を処理シーケンスに供する工程であって、それによって供給原料に電界の分散発生を生じさせること、を有する。
【0055】
好ましくは、供給原料は、供給原料をマイクロ波反応器又はマイクロ波反応器システムに移す前に触媒と混合される。処理シーケンスは、好ましくは、供給原料又は触媒と供給原料の混合物を、マイクロ波反応器を通して静的マイクロ波発生器を通過させて移動させることによって制御されるものであってもよい。このプロセスは、好ましくは無溶媒である。本プロセスは、バッチ処理又は連続処理として実施するものであってもよい。供給原料又は触媒と供給原料の混合物の温度は、処理中に80~500℃の間の温度、例えば好ましくは100~480℃、150~450℃、200~400℃、例えば250~380℃に昇温される。反応器内の操作圧力は、燃料を得るために、好ましくは50~130kPaの間である。燃料は、好ましくはバイオ燃料であってもよい。好ましくは、マイクロ波エネルギーが供給原料に適用される処理シーケンスは、1~200分、例えば5~100分、10~80分、好ましくは15~70分である。
【0056】
供給原料は、好ましくは固体供給原料である。好ましくは、供給原料は、再生可能な供給原料、及び/又はバイオマス供給原料のような、重合した炭化水素鎖を含む供給原料である。供給原料は、わら、スラリー、スラリー繊維、菜種油粕、エネルギーヤナギ、ナッツ殻、木材チップ、木材ペレット、藻類、汚泥、加圧クレオソート木材、ゴム、又はこれらの任意の組み合わせからなるリストから選択されるものであってもよい。ゴムには、使用済みタイヤを含むゴム廃棄物が含まれていてもよい。タイヤは、破砕されたものであってもよい。好ましくは、有機物の供給原料は、15%未満、10%未満又は5%未満などの許容可能な量の水を含むような乾燥処理を含む、前処理がなされる。前処理は、乾燥、加熱、細断、押出し、及び/又はペレット化を含むものであってもよい。
【0057】
触媒は、好ましくは、アルミノ珪酸鉱物、好ましくはゼオライトなどのマイクロ波吸収剤であってもよい。触媒と供給原料の混合物は、好ましくは15%(w/w)未満の触媒、例えば10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、例えば好ましくは1%(w/w)未満の触媒を含むものであってもよい。触媒は、0.01~15%(w/w)、例えば0.1~10%、0.1~5%、0.2~3%、例えば0.5~2%(w/w)の範囲で混合物中に存在するものであってもよい。
【0058】
本発明の主旨は、オーバーモードの伝搬を効果的に制御し抑制することにより、処理対象の材料の表面に電界を均一に分布させるマイクロ波反応器に関するものであり、材料は均一に分布したエネルギー場で処理される。
【0059】
本発明の第1及び他の態様並びに実施形態はそれぞれ、他の態様並びに実施形態のいずれかと組み合わせることができる。本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明する実施形態を参照することにより明らか且つ明瞭にされるであろう。
【0060】
次に、本発明のいくつかの態様に係る単一支配モードのマイクロ波反応器、単一支配モードのマイクロ波反応器システム及びバイオ燃料の製造方法を、添付の図面に関してより詳細に説明する。図面は、本発明を実施する1つの方法を示すものであり、添付の特許請求の範囲に包含される他の可能な実施形態を制限するものとして解釈されるものではない。
【0061】
図中のx方向、y方向及びz方向への言及は、マイクロ波の伝搬方向に関連しており、zはマイクロ波の伝搬方向を示すベクトルであり、x及びyはベクトルzに直交するベクトルである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1A】
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態に係る単一支配モードのマイクロ波反応器の説明図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明のいくつかの実施形態に係る単一支配モードのマイクロ波反応器の、いくつかの内部の特徴を明確にする切断図である。
【
図2】
図2は、本発明のいくつかの実施形態に係る単一支配モードのマイクロ波反応器の、フィルタリング手段のいくつかの内部の特徴を明確にする切断図である。
【
図3】
図3は、本発明のいくつかの実施形態に係る単一支配モードのマイクロ波反応器の一部である、フィルタリング手段を備えたホーンアンテナの上面図である。
【
図4】
図4は、本発明のいくつかの実施形態に係る単一支配モードのマイクロ波反応器の、内部のマイクロ波の伝搬方向における電界の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明のいくつかの実施形態に係る単一支配モードのマイクロ波反応器内のマイクロ波の伝搬方向に直交する電界の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明のいくつかの実施形態に係る、2つのホーンアンテナを有する単一支配モードのマイクロ波反応器の概略図である。
【
図7】
図7は、本発明のいくつかの実施形態に係る、2つのホーンアンテナを有する単一支配モードのマイクロ波反応器の、フィルタリング手段の概略図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明のいくつかの実施形態に係る、2つのホーンアンテナを有する単一支配モードのマイクロ波反応器の、フィルタリング手段の断面図である。
【
図8B】
図8Bは、本発明のいくつかの実施形態に係る、2つのホーンアンテナを有する単一支配モードのマイクロ波反応器の、フィルタリング手段の断面図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明のいくつかの実施形態に係る、2つのホーンアンテナを有する単一支配モードのマイクロ波反応器の断面図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明のいくつかの実施形態に係る、2つのホーンアンテナを有する単一支配モードのマイクロ波反応器の断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2の態様のいくつかの実施形態に係る、単一支配モードのマイクロ波反応器システムの概略図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の態様のいくつかの実施形態に係る、バイオ燃料の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態に係る、反応器とも呼ばれる、単一支配モードのマイクロ波反応器1を示す。
【0064】
反応器1は、反応が発生する円筒形の空間である反応器チャンバ3に接続されたフィードホーンアンテナ2を備える。その点で、反応器チャンバは、処理対象の材料のための円筒形の載置部である。
【0065】
反応器チャンバ3内に回転装置を設置するものであってもよい。
【0066】
回転装置は、反応器チャンバ3内に配置された処理対象の材料を移動及び回転させることを目的とした、回転軸に取り付けられたヘリカルブレードを備えるものであってもよい。
【0067】
シミュレーションとテストにより、この回転装置が電界を実質的に乱さないことが示されている。
【0068】
反応器は、図示されていないいくつかの検査及び測定用配管をさらに備えるものであってもよい。
【0069】
ホーンアンテナ2へのインタフェースは、2.45GHzの基本TE10モードで動作するWR340導波管であってもよい。
【0070】
ホーンアンテナ2の内部には、
図1Bに示すように、互いに離間した金属円筒又は金属棒を備えたものであってもよいモードフィルタ4が設けられる。
【0071】
【0072】
図2に示すように、金属円筒6は互いに数ミリメートル離れているものであってもよい。例えば、金属円筒は、y方向に15mm、波の伝搬方向すなわちz方向に3mm離れているものであってもよい。
【0073】
モードフィルタ4の位置では、モードフィルタのないシステムでもいくつかのオーバーモードが存在する可能性がある。モードフィルタには、モードフィルタ4の金属円筒6と平行な電界成分を持つオーバーモードをキャンセル又は低減する機能がある。
【0074】
モードフィルタ4は、
図1Aに示すように、WR340導波管内のTE10モード偏光の方向にエネルギーが保存された準平面波が、反応器チャンバ3に伝搬することを保証する。
【0075】
図3は、フィルタリング手段4を備えたホーンアンテナ2の上面図である。
【0076】
図3は、フィード導波管に向かって反応器フィードホーン2内を見た、モードフィルタ4を示す。
【0077】
この構造により、反応器内の電界の伝搬方向での断面つまりy-z平面の視野8を示す
図4からわかるように、載置部内の処理対象の材料への、エネルギーと電界の方向の均一な集中が保証される。
【0078】
図5は、本発明のいくつかの実施形態に係る、単一支配モードのマイクロ波反応器内のマイクロ波の伝搬方向に直交する電界の断面つまりx-z平面の視野9を示す。
【0079】
図6は、本発明のいくつかの実施形態に係る、単一支配モードのマイクロ波反応器10の異なる実施形態の概略図である。
【0080】
単一支配モードのマイクロ波反応器10は、2つのホーンアンテナ12、13の存在によって特徴付けられる。
【0081】
反応器チャンバ11で処理される材料の表面にマイクロ波エネルギーを均一に分布させるために、ホーンアンテナ12、13の両方と交差する単一モードフィルタ14が使用される。
【0082】
この構造は、単一モードフィルタを備えることにより、2つのホーンアンテナを持つシステムの複雑さを軽減するという利点がある。
【0083】
図7は、2つのホーンアンテナ12、13を有する単一支配モードのマイクロ波反応器10の、フィルタリング手段又はモードフィルタ14の概略図である。
【0084】
モードフィルタ14は、y軸とz軸に沿って互いに間隔を開けた金属円筒又は金属棒15を備えるものであってもよい。
【0085】
図8A及び
図8Bは、2つのホーンアンテナの存在により特徴づけられる単一支配モードのマイクロ波反応器10の、y軸及びz軸に沿った金属円筒又は金属棒15の間隔を示す、フィルタリング手段又はモードフィルタ14の断面図である。
【0086】
図9A及び
図9Bは、2つのホーンアンテナの存在により特徴づけられる単一支配モードのマイクロ波反応器10の断面図である。
【0087】
図9Bには、反応器チャンバ内に配置された処理対象の材料を移動及び回転させるための、回転軸に取り付けられたヘリカルブレードを備えた回転装置16の存在が示されている。
【0088】
図10は、単一支配モードのマイクロ波反応器チャンバ20と、単一モードのマイクロ波19を反応器チャンバ20に供給するための少なくとも1つの手段とを備えた、単一支配モードのマイクロ波反応器システム17の概略図である。
【0089】
反応器システム17はまた、供給手段19を介してマイクロ波をマイクロ波反応器チャンバ20に供給するマイクロ波発生器18を備える。
【0090】
図11は、本発明の第3の態様のいくつかの実施形態に係る、バイオ燃料の製造方法のフローチャートである。
【0091】
本発明の第3の態様によるバイオ燃料21の製造方法は、
S1として、原料を供給する工程と、
S2として、供給原料を、マイクロ波反応器又はマイクロ波反応器システムのマイクロ波反応器チャンバに移送する工程と、
S3として、供給原料にマイクロ波エネルギーを印加することによって、供給原料を処理シーケンスに供する工程と、
を有する。
【0092】
この方法によって、供給原料内に電界を均一に分布させることができるため、ホットスポットの形成が回避され、ひいては供給原料のより効率的な処理が可能になる。
【0093】
本発明を特定の実施形態に関連させて説明したが、本発明は提示された実施例に何ら限定されるものと解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。特許請求の範囲の文脈において、用語「備えている」又は「備える」は、他の可能な構成要素又は工程を排除するものではない。加えて、「a」又は「an」などの言及は、複数を排除するものとして解釈されるべきではない。図面に示された構成要素に関する特許請求の範囲における参照符号の使用も、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。さらに、異なる特許請求の範囲に記載された個々の特徴は、有利に組み合わされる可能性があってもよく、異なる特許請求の範囲におけるこれらの特徴の言及が、特徴の組み合わせが可能であり有利であることを排除するものではない。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一支配モードのマイクロ波反応器であって、マイクロ波伝搬の前記単一支配モードはTE10基本モードであり、前記単一支配モードのマイクロ波反応器は、
反応器チャンバと、
前記反応器チャンバに接続され前記反応器チャンバに単一モードのマイクロ波を供給するための少なくとも1つの手段と、
を備え、
前記単一モードのマイクロ波を供給するための少なくとも1つの手段は、
マイクロ波入口及びマイクロ波出口を有する、マイクロ波を送信する手段と、
フィルタリング手段と、を備え、
前記フィルタリング手段は、モードフィルタであるか、又はモードフィルタを備え、前記モードフィルタは、互いに離間した複数の金属棒又は複数の金属円筒で構成され、前記マイクロ波を送信する手段のマイクロ波出口に配置され、前記複数の金属棒又は複数の金属円筒は、前記マイクロ波の伝搬方向に送信マイクロ波の1/4波長未満、かつ前記マイクロ波の伝搬方向と直交する方向に送信マイクロ波の1/2波長未満だけ互いに離れている、
単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項2】
前記マイクロ波を送信する手段は、ホーンアンテナであるか、又はホーンアンテナを備えている、請求項1記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項3】
前記マイクロ波を送信する手段は、マイクロ波平面アンテナであるか、又はマイクロ波平面アンテナを備えている、請求項1記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項4】
前記反応器チャンバは円筒形の反応器チャンバである、請求項1から
3のいずれか
1項に記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項5】
前記反応器チャンバ内に配置された回転装置を備え、前記回転装置は、前記反応器チャンバ内で処理される材料を混合するように構成され、それにより、前記処理される材料への均一なマイクロ波放射を保証する、請求項1から
4のいずれか
1項に記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項6】
前記回転装置はインペラであるか、又はインペラを備えている、請求項
5に記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項7】
前記回転装置は、回転軸に取り付けられたヘリカルブレードを備えている、請求項
5から
6のいずれか
1項に記載の単一支配モードのマイクロ波反応器。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか
1項に記載の単一支配モードのマイクロ波反応器と、
前記単一支配モードのマイクロ波反応器に接続されたマイクロ波発生器と、
を備える単一支配モードのマイクロ波反応器システム。
【請求項9】
前記システムはデュアルシステムである、請求項
8に記載の単一支配モードのマイクロ波反応器システム。
【請求項10】
原料を供給する工程と、
前記供給原料を、請求項1から
7のいずれか
1項に記載のマイクロ波反応器のマイクロ波反応器チャンバ又は請求項
8から
9のいずれか
1項に記載のマイクロ波反応器システムに移送する工程と、
前記供給原料にマイクロ波エネルギーを印加することによって、前記供給原料を処理シーケンスに供する工程であって、それによって前記供給原料に電界の分散発生を生じさせること、
を有する燃料の製造方法。
【国際調査報告】