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特表2024-507659視覚機器の性能を評価するデバイス及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】視覚機器の性能を評価するデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G02C13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543013
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2022050613
(87)【国際公開番号】W WO2022171376
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】21305189.9
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・タチュール
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・カリクスト
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・フリッカー
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト・デルダル
(72)【発明者】
【氏名】ジルダ・マラン
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006DA05
(57)【要約】
着用者用に意図された視覚機器の性能を評価する本デバイス(10)は、機器によって実施されるべきバーチャルテストを取得するように適合された少なくとも1つの入力(12)であって、各テストは、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルと組み合わされる少なくとも1つのシナリオを含み、モデルが見るべき要素の形状及び位置の記述によって定義される環境内で、一連の固視点を含む視覚タスクがモデルによってどのように実行されるかを定義する、少なくとも1つの入力(12)と、少なくとも1つのプロセッサ(14)であって、着用者による機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された実際の又はシミュレートされた着用者活動プロファイル(P)に基づいて、少なくとも1つのテストを選択し、1つ以上の固視点について、タスクに関して生成される少なくとも1つの性能基準を計算することによって、選択したテストをモデルによって実施する機器の性能を評価するように構成されている、少なくとも1つのプロセッサ(14)と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者用に意図された視覚機器の性能を評価するデバイスであって、
前記視覚機器によって実施されるべき複数のバーチャルテストを取得するように適合された少なくとも1つの入力であって、前記複数のバーチャルテストの各バーチャルテストは、前記着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルと組み合わされる少なくとも1つのシナリオを含み、前記シナリオは、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルが見るべき要素の形状及び位置の記述によって定義される環境内で、一連の固視点を含む所定の視覚タスクが前記少なくとも1つのバーチャルモデルによってどのように実行されるかを定義する、少なくとも1つの入力と、
少なくとも1つのプロセッサであって、
前記着用者による前記視覚機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された実際の又はシミュレートされた着用者活動プロファイルに基づいて、前記複数のバーチャルテストの中から少なくとも1つのバーチャルテストを選択し、
前記固視点のうちの少なくとも1つについて、前記所定の視覚タスクに関して生成される少なくとも1つの所定の性能基準を計算することによって、前記選択した少なくとも1つのバーチャルテストを前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルによって実施する前記視覚機器の前記性能を評価する
ように構成されている、少なくとも1つのプロセッサと、
を含む、デバイス。
【請求項2】
前記着用者は特定の個人であり、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルは前記特定の個人のバーチャルモデルを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記着用者は、全体的な特性によって定義される着用者の群に属し、前記群の各着用者の個々の特性は不明であり、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルは、前記着用者の群を代表する着用者の複数のバーチャルモデルを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記個別化された着用者活動プロファイルは、前記少なくとも1つのシナリオの関連性及び/又は前記視覚機器の前記使用法における前記着用者の前記少なくとも1つの基準の関連性に応じて前記少なくとも1つのシナリオ及び/又は前記少なくとも1つの所定の性能基準に割り当てられる異なる重みを含む、請求項1、2、又は3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記着用者の前記バーチャルモデルは、前記着用者の少なくとも1つの眼のバーチャルモデル、前記着用者の頭部のバーチャルモデル、及び前記着用者の胴部のバーチャルモデルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記所定の性能基準は、視力基準、歪み基準、及び頭部と眼の協調を評価する視覚行動基準のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの所定の性能基準は、単眼視又は両眼視のいずれかに関連する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つのシナリオは、前記所定の視覚タスクが遠方視タスクであり、前記少なくとも1つの所定の性能基準が視力である第1のシナリオ、前記所定の視覚タスクが中間視タスクであり、前記少なくとも1つの所定の性能基準が視力である第2のシナリオ、前記所定の視覚タスクが近方視タスクであり、前記少なくとも1つの所定の性能基準が視力である第3のシナリオ、及び前記少なくとも1つの所定の性能基準が歪み基準である第4のシナリオを少なくとも含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
着用者用に意図された視覚機器の性能を評価する方法であって、
前記着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルを取得するステップと、
前記視覚機器によって実施されるべき複数のバーチャルテストを取得するステップであって、前記複数のバーチャルテストの各バーチャルテストは、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルと組み合わされる少なくとも1つのシナリオを含み、前記シナリオは、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルが見るべき要素の形状及び位置の記述によって定義される環境内で、一連の固視点を含む所定の視覚タスクが前記少なくとも1つのバーチャルモデルによってどのように実行されるかを定義する、複数のバーチャルテストを取得するステップと、
少なくとも1つのプロセッサによって、前記着用者による前記視覚機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された実際の又はシミュレートされた着用者活動プロファイルに基づいて、前記複数のバーチャルテストの中から少なくとも1つのバーチャルテストを選択するステップと、
前記固視点のうちの少なくとも1つについて、前記所定の視覚タスクに関して生成される少なくとも1つの所定の性能基準を計算することによって、前記選択した少なくとも1つのバーチャルテストを前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルによって実施する前記視覚機器の前記性能を前記少なくとも1つのプロセッサによって評価することと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記着用者は特定の個人であり、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルは前記特定の個人のバーチャルモデルを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記着用者は、全体的な特性によって定義される着用者の群に属し、前記群の各着用者の個々の特性は不明であり、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルは、前記着用者の群を代表する着用者の複数のバーチャルモデルを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記個別化された着用者活動プロファイルは、前記少なくとも1つのシナリオの関連性及び/又は前記視覚機器の前記使用法における前記着用者の前記少なくとも1つの基準の関連性に応じて前記少なくとも1つのシナリオ及び/又は前記少なくとも1つの所定の性能基準に割り当てられる異なる重みを含む、請求項9、10、又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記着用者の前記バーチャルモデルは、前記着用者の少なくとも1つの眼のバーチャルモデル、前記着用者の頭部のバーチャルモデル、及び前記着用者の胴部のバーチャルモデルを含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
着用者用に意図された視覚機器の性能を評価するためのコンピュータプログラム製品であって、プロセッサにアクセス可能な1つ以上の命令シーケンスを含み、前記1つ以上の命令シーケンスは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルを取得させ、
前記視覚機器によって実施されるべき複数のバーチャルテストを取得させ、前記複数のバーチャルテストの各バーチャルテストは、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルと組み合わされる少なくとも1つのシナリオを含み、前記シナリオは、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルが見るべき要素の形状及び位置の記述によって定義される環境内で、一連の固視点を含む所定の視覚タスクが前記少なくとも1つのバーチャルモデルによってどのように実行されるかを定義し、
前記着用者による前記視覚機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された実際の又はシミュレートされた着用者活動プロファイルに基づいて、前記複数のバーチャルテストの中から少なくとも1つのバーチャルテストを選択させ、
前記固視点のうちの少なくとも1つについて、前記所定の視覚タスクに関して生成される少なくとも1つの所定の性能基準を計算することによって、前記選択した少なくとも1つのバーチャルテストを前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルによって実施する前記視覚機器の前記性能を評価させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、プロセッサにアクセス可能な1つ以上の命令シーケンスを格納し、前記1つ以上の命令シーケンスは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルを取得させ、
視覚機器によって実施されるべき複数のバーチャルテストを取得させ、前記複数のバーチャルテストの各バーチャルテストは、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルと組み合わされる少なくとも1つのシナリオを含み、前記シナリオは、前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルが見るべき要素の形状及び位置の記述によって定義される環境内で、一連の固視点を含む所定の視覚タスクが前記少なくとも1つのバーチャルモデルによってどのように実行されるかを定義し、
前記着用者による前記視覚機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された実際の又はシミュレートされた着用者活動プロファイルに基づいて、前記複数のバーチャルテストの中から少なくとも1つのバーチャルテストを選択させ、
前記固視点のうちの少なくとも1つについて、前記所定の視覚タスクに関して生成される少なくとも1つの所定の性能基準を計算することによって、前記選択した少なくとも1つのバーチャルテストを前記着用者の前記少なくとも1つのバーチャルモデルによって実施する前記視覚機器の性能を評価させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、視覚機器の着用者用に意図された視覚機器の性能を評価するデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、眼科用レンズ又はソーラーレンズなどの視覚機器の性能は、いくつかの基準、とりわけ、例えば両眼視に関連する視覚の鮮明さ、歪み、又は他の基準を使用することによって評価され得る。
【0003】
この点においては、客が仮想現実デバイスを介した仮想環境内で機器を試着し、主観的に評価することができる眼鏡シミュレーション方法が知られている。このような眼鏡着用シミュレーション方法及びデバイスは、特許文献1によって開示されている。
【0004】
しかしながら、視覚機器の性能の客観的評価は行われない。
【0005】
その上、シミュレーションによる視覚機器の性能の評価は簡単なことではない。光学特性は、着用者によって認識される視覚機器の性能を完全に表すものではない。実際、着用者は視覚機器を様々な状況及び環境で使用し、異なる視覚領域における視野幅及び鮮明さなどの機器の機能特性、幾何学的フロー及びオプティカルフローの歪み、快適領域、並びに姿勢及び両眼視に関する努力などの内的状態の配慮を経験する。
【0006】
人間の着用者によるテストは、視覚機器の性能を評価するための更なる既知の解決策である。特に、「インラボテスト」として知られる特定のタイプの着用者テストにおいては、人間の着用者が、評価されるべき視覚機器を着用したままで、例えば読書、歩行、精密作業の実施などの特定の作業を行うことを要求される。
【0007】
このことは、着用者の視覚習慣の特異性又は各着用者による視覚機器の特定の使用法を必ずしも考慮に入れない長時間のテストプロセスを意味する。
【0008】
より一般には、上記既知の解決策は、視覚機器の性能の全般的な推定値を得ることを可能としない。
【0009】
特許文献2は、人間の着用者が視覚タスクを実施することが意図された視覚機器の性能を評価するデバイス及び方法を開示している。記載されているデバイス及び方法は、視覚タスク及びシミュレートされたバーチャル視覚タスクが実行されるシーンのバーチャルモデルに加えて、人間の着用者のバーチャルモデルであるバーチャル「アバター」を含む。これにより、類似の特性を有すると考えられる特定の着用者集団、すなわち着用者の群に性能評価を適用することが可能になる。したがって、この解決策により、様々な個人に対してテストを繰り返す負担が回避される。
【0010】
しかしながら、このような評価は「アバター」のおかげで着用者の群に対して効率的且つ経済的な手法で行われる可能性があるが、各個人の着用者の非常に特定の習慣を考慮に入れることはない。
【0011】
すなわち、ある特定の個人は、定義された着用者の群の他の個人と類似する特性を有するにもかかわらず、同じ着用者の群内の他の個人と異なるように視覚機器を着用し、使用することがある。例えば、ある特定の個人は、性能が評価された視覚タスク以外の他の視覚タスクのために視覚機器を使用したいことがあり、これらの他の視覚タスクは、同じ着用者の群の他の個人の視覚タスクと必ずしも同じであるとは限らない。更に、他の視覚タスクは、その性能が評価された環境と異なる環境で、シーンの物体までの距離が異なる状態で、異なる照明で、近方視ではなく遠方視などで実行される可能性がある。
【0012】
更に、単一の選択肢、すなわち、その評価された性能が「最良」であると考えられる視覚機器を有する代わりに、各個人は、店頭又はオンラインのいずれかにおいてECP(アイケア専門家)が行った様々な提案及び推奨の事前選択肢の中から自身の個人的基準によって自身の好みの視覚機器を選択したいことがある。
【0013】
したがって、各個人に対し、「既製の」視覚機器ではなく、その個人のための視覚機器性能の全体的な個別化評価によって個人自体及び個人の視覚タスク習慣とそのような視覚機器の用途との両方を考慮に入れた「特注の」視覚機器を着用する可能性を提供するために、視覚機器を各特定の個人に合わせて更にカスタマイズする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2749207号明細書
【特許文献2】国際公開第2020/193436号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2020/193370号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2020/260481号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本開示の目的は、先行技術の上述した欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本開示は、着用者用に意図された視覚機器の性能を評価するデバイスであって、
視覚機器によって実施されるべき複数のバーチャルテストを取得するように適合された少なくとも1つの入力であって、複数のバーチャルテストの各バーチャルテストは、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルと組み合わされる少なくとも1つのシナリオを含み、シナリオは、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルが見るべき要素の形状及び位置の記述によって定義される環境内で、一連の固視点を含む所定の視覚タスクが少なくとも1つのバーチャルモデルによってどのように実行されるかを定義する、少なくとも1つの入力と、
少なくとも1つのプロセッサであって、
着用者による視覚機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された実際の又はシミュレートされた着用者活動プロファイルに基づいて、複数のバーチャルテストの中から少なくとも1つのバーチャルテストを選択し、
固視点のうちの少なくとも1つについて、所定の視覚タスクに関して生成される少なくとも1つの所定の性能基準を計算することによって、選択した少なくとも1つのバーチャルテストを着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルによって実施する視覚機器の性能を評価する
ように構成されている、少なくとも1つのプロセッサと、
を含む、デバイスを提供する。
【0017】
したがって、第1に、本開示によるデバイスは、特定の個人の活動プロファイルを考慮して、シミュレーションコンテキストと、そのような視覚機器の着用者であるその特定の個人に関する視覚機器性能を評価するために関連すると考えられる評価基準を含む一連のバーチャルテストの中から最も適切なバーチャルテストを自動化された手法で選択することを可能にする。
【0018】
第2に、デバイスは、言及した視覚機器性能を、考慮される視覚タスクに関連する少なくとも1つの性能基準に基づいて、同じく自動化された手法で評価することを可能にする。
【0019】
したがって、バーチャルテストによってシミュレートされる視覚タスクの定義、シミュレートされる環境の定義、及び性能基準の定義は全て、各特定の個人に合わせてカスタマイズされる。
【0020】
上記で定義されたデバイスの一実施形態において、着用者は特定の個人であり、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルはその特定の個人のバーチャルモデルを含む。
【0021】
この実施形態において、複数のバーチャルテストは、特定の個人のバーチャルモデルと組み合わされる複数のシナリオを含み得る。
【0022】
デバイスの別の実施形態において、着用者は、全体的な特性によって定義される着用者の群に属し、群の各着用者の個々の特性は不明であり、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルは、その着用者の群を代表する着用者の複数のバーチャルモデルを含む。
【0023】
この実施形態において、複数のバーチャルテストは、着用者の複数のバーチャルモデルと組み合わされる単一のシナリオ、又は着用者の複数のバーチャルモデルと組み合わされる複数シナリオのいずれかを含み得る。
【0024】
一実施形態において、個別化された着用者活動プロファイルは、少なくとも1つのシナリオの関連性及び/又は上述の視覚機器の使用法における着用者の少なくとも1つの基準の関連性に応じて少なくとも1つのシナリオ及び/又は少なくとも1つの所定の性能基準に割り当てられる異なる重みを含む。
【0025】
一実施形態において、着用者のバーチャルモデルは、着用者の少なくとも1つの眼のバーチャルモデル、着用者の頭部のバーチャルモデル、及び着用者の胴部のバーチャルモデルを含む。
【0026】
一実施形態において、所定の性能基準は、視力基準、歪み基準、及び頭部と眼の協調を評価する視覚行動基準のうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
この実施形態において、少なくとも1つの所定の性能基準は、単眼視又は両眼視のいずれかに関連し得る。
【0028】
少なくとも1つのシナリオは、所定の視覚タスクが遠方視タスクであり、少なくとも1つの所定の性能基準が視力である第1のシナリオ、所定の視覚タスクが中間視タスクであり、少なくとも1つの所定の性能基準が視力である第2のシナリオ、所定の視覚タスクが近方視タスクであり、少なくとも1つの所定の性能基準が視力である第3のシナリオ、及び少なくとも1つの所定の性能基準が歪み基準である第4のシナリオを少なくとも含む。
【0029】
本開示はまた、着用者用に意図された視覚機器の性能を評価する方法であって、
着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルを取得することと、
視覚機器によって実施されるべき複数のバーチャルテストを取得することであって、複数のバーチャルテストの各バーチャルテストは、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルと組み合わされる少なくとも1つのシナリオを含み、シナリオは、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルが見るべき要素の形状及び位置の記述によって定義される環境内で、一連の固視点を含む所定の視覚タスクが少なくとも1つのバーチャルモデルによってどのように実行されるかを定義する、複数のバーチャルテストを取得することと、
少なくとも1つのプロセッサによって、着用者による視覚機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された実際の又はシミュレートされた着用者活動プロファイルに基づいて、複数のバーチャルテストの中から少なくとも1つのバーチャルテストを選択することと、
固視点のうちの少なくとも1つについて、所定の視覚タスクに関して生成される少なくとも1つの所定の性能基準を計算することによって、選択した少なくとも1つのバーチャルテストを着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルによって実施する視覚機器の性能を少なくとも1つのプロセッサによって評価することと、を含む、方法を提供する。
【0030】
特定の実施形態では、評価するその方法は、本開示による、その実施形態のいずれかにおける評価するためのデバイスによって実行される。
【0031】
方法の一実施形態において、着用者は特定の個人であり、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルはその特定の個人のバーチャルモデルを含む。
【0032】
この実施形態において、複数のバーチャルテストは、特定の個人のバーチャルモデルと組み合わされる複数のシナリオを含み得る。
【0033】
方法の別の実施形態において、着用者は、全体的な特性によって定義される着用者の群に属し、群の各着用者の個々の特性は不明であり、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルは、その着用者の群を代表する着用者の複数のバーチャルモデルを含む。
【0034】
この実施形態において、複数のバーチャルテストは、着用者の複数のバーチャルモデルと組み合わされる単一のシナリオ、又は着用者の複数のバーチャルモデルと組み合わされる複数シナリオのいずれかを含み得る。
【0035】
方法の一実施形態において、個別化された着用者活動プロファイルは、少なくとも1つのシナリオの関連性及び/又は上述の視覚機器の使用法における着用者の少なくとも1つの基準の関連性に応じて少なくとも1つのシナリオ及び/又は少なくとも1つの所定の性能基準に割り当てられる異なる重みを含む。
【0036】
方法の一実施形態において、着用者のバーチャルモデルは、着用者の少なくとも1つの眼のバーチャルモデル、着用者の頭部のバーチャルモデル、及び着用者の胴部のバーチャルモデルを含む。
【0037】
本開示は更に、着用者用に意図された視覚機器の性能を評価するためのコンピュータプログラム製品であって、プロセッサにアクセス可能な1つ以上の命令シーケンスを含み、1つ以上の命令シーケンスは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、
着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルを取得させ、
視覚機器によって実施されるべき複数のバーチャルテストを取得させ、複数のバーチャルテストの各バーチャルテストは、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルと組み合わされる少なくとも1つのシナリオを含み、シナリオは、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルが見るべき要素の形状及び位置の記述によって定義される環境内で、一連の固視点を含む所定の視覚タスクが少なくとも1つのバーチャルモデルによってどのように実行されるかを定義し、
着用者による視覚機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された実際の又はシミュレートされた着用者活動プロファイルに基づいて、複数のバーチャルテストの中から少なくとも1つのバーチャルテストを選択させ、
固視点のうちの少なくとも1つについて、所定の視覚タスクに関して生成される少なくとも1つの所定の性能基準を計算することによって、選択した少なくとも1つのバーチャルテストを着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルによって実施する視覚機器の性能を評価させる、
コンピュータプログラム製品を提供する。
【0038】
本開示は更に、非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、プロセッサにアクセス可能な1つ以上の命令シーケンスを格納し、1つ以上の命令シーケンスは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、
着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルを取得させ、
視覚機器によって実施されるべき複数のバーチャルテストを取得させ、複数のバーチャルテストの各バーチャルテストは、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルと組み合わされる少なくとも1つのシナリオを含み、シナリオは、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルが見るべき要素の形状及び位置の記述によって定義される環境内で、一連の固視点を含む所定の視覚タスクが少なくとも1つのバーチャルモデルによってどのように実行されるかを定義し、
着用者による視覚機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された実際の又はシミュレートされた着用者活動プロファイルに基づいて、複数のバーチャルテストの中から少なくとも1つのバーチャルテストを選択させ、
固視点のうちの少なくとも1つについて、所定の視覚タスクに関して生成される少なくとも1つの所定の性能基準を計算することによって、選択した少なくとも1つのバーチャルテストを着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルによって実施する視覚機器の性能を評価させる、
非一時的コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0039】
方法、コンピュータプログラム製品、及びコンピュータ可読記憶媒体の利点は、デバイスの利点と同様であるため、ここでは繰り返さない。
【0040】
コンピュータプログラム製品及びコンピュータ可読記憶媒体は、有利には、その実行モードのいずれかで本方法を実行するように構成される。
【0041】
本明細書で提供される説明及びその利点をより詳細に理解するために、添付の図面及び詳細な説明に関連してここで以下の簡単な説明を参照し、同様の参照番号は、同様の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】特定の実施形態における、本開示によるデバイスの概略図である。
図2】多次元性能評価の別の非限定的な例を示すグラフである。
図3】特定の実施形態における、本開示による方法の工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の説明では、図面は、必ずしも縮尺通りではなく、特定の特徴は、明瞭さ及び簡潔さのために又は情報提供の目的のために、一般化された又は概略的な形式で示される場合がある。加えて、様々な実施形態の作成及び使用が以下で詳細に論じられるが、本明細書に記載されるように、多様な状況で具体化され得る多くの発明の概念が提供されることを理解されたい。本明細書で論じられる実施形態は、単に代表的なものにすぎず、本開示の範囲を限定するものではない。当業者には、プロセスに関連して定義される全ての技術的特徴を個別に又は組み合わせてデバイスに置き換えることができ、逆にデバイスに関連する全ての技術的特徴を個別に又は組み合わせてプロセスに置き換えることができることも明らかであろう。
【0044】
用語「含む(comprise)」(並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などのそのいずれかの文法的変形形態)、「有する(have)」(並びに「有する(has)」及び「有している(having)」などのそのいずれかの文法的変形形態)、「含有する(contain)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有している(containing)」などのそのいずれかの文法的変形形態)、並びに「包含する(include)」(並びに「包含する(includes)」及び「包含している(including)」などのそのいずれかの文法的変形形態)は、オープンエンドの連結動詞である。これらは、述べられる特徴、整数、工程若しくは構成要素、又はこれらの群の存在を規定するために用いられるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程若しくは構成要素、又はこれらの群の存在又は追加を排除するものではない。結果として、1つ以上の工程又は要素を「含む(comprises)」、「有する(has)」、「含有する(contains)」又は「含む(includes)」方法又は方法における工程は、それらの1つ以上の工程又は要素を有するが、それらの1つ以上の工程又は要素のみを有することに限定されない。
【0045】
図1に示されるように、特定の実施形態では、「視覚機器」、すなわち、着用者(すなわち、視覚機器を着用する人間又は定義された特徴を有するが任意の特定の既知の実在する人物に対応しない理論上の着用者)用に意図された視覚機器の性能を評価するデバイス10は、1つ以上の入力12を含む。
【0046】
視覚機器は、眼科用レンズ若しくは眼科用レンズ対、又はソーラーレンズ若しくはソーラーレンズ対、又は眼科用ソーラーレンズ若しくは眼科用ソーラーレンズ対であり得る。視覚機器は、眼鏡又はコンタクトレンズの形態であってもよい。
【0047】
1つ以上の入力12は、以下に更に詳細に記載されるように、その視覚機器に関して実施される複数のバーチャルテストを取得するように適合されている。
【0048】
複数のバーチャルテストの各バーチャルテストは、着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルと組み合わされる少なくとも1つのいわゆる「シナリオ」を含む。
【0049】
本開示において、着用者のバーチャルモデルは、着用者の「アバター」とも呼ばれる。着用者のバーチャルモデルは、特許文献2に記載されているように構築され得る、又は特許文献3に提案されているようにデータベースから取得される事前に記録されたデータからなり得る。
【0050】
本開示において、シナリオは、アバターが見るべき要素の形状及び位置の記述によって定義される環境内で、一連の固視点を含む所定の視覚タスクが少なくとも1つのアバターによってどのように実行されるかを定義する。
【0051】
各バーチャルテストは、アバターによるシナリオの実行、及び得られる少なくとも1つの性能評価基準値を表す。
【0052】
視覚機器の性能のバーチャル評価は、少なくとも1つのバーチャルテストを含むバーチャルテストの集合に対応する。バーチャルテストは、同一アバターに対する複数のシナリオ、又は複数のアバターに適用される1つのシナリオ、又は複数のアバターに適用される複数のシナリオからなり得る。
【0053】
非限定的な例として、環境は、部屋、家具、風景、物体を含み得、例えばその構成要素の視覚的特性、例えば輝度、コントラスト、色などの追加の属性を有し得る。
【0054】
シナリオは、環境及び視覚タスクを含み得る。
【0055】
「タスク」とも呼ばれる視覚タスクに含まれる一連の固視点は、環境の構成要素と関連付けられ得る。
【0056】
アバターは、各点を定義された順序で固視することによってタスクを実行する。したがって、アバターを使用し、着用者によるシナリオの実行をシミュレートする。
【0057】
一実施形態において、アバターは、着用者の少なくとも1つの眼のバーチャルモデル、着用者の頭部のバーチャルモデル、及び着用者の胴部のバーチャルモデルを含み得る。
【0058】
一実施形態において、着用者は特定の個人であり、この場合、少なくとも1つのアバターはこの特定の個人のバーチャルモデルを含む。このような場合において、アバターは実在の人物に対応し、この人物と特性を共有する。
【0059】
この実施形態において、複数のバーチャルテストは、特定の個人のバーチャルモデルと組み合わされる複数のシナリオを含み得る。
【0060】
或いは、着用者は、全体的な特性によって定義される着用者の群に属することがあり、その群の各着用者の個々の特性は不明である。その場合、少なくとも1つのアバターは、その着用者の群を代表する着用者の複数のバーチャルモデルを含む。このような場合において、アバターは人物の群に対応する。
【0061】
この実施形態において、複数のバーチャルテストは、着用者の複数のバーチャルモデルと組み合わされる単一のシナリオ、又は複数のバーチャルモデルと組み合わされる複数のシナリオのいずれかを含み得る。
【0062】
更に別の実施形態において、着用者は実在する人物ではなく、事前定義された平均的着用者であってもよく、この場合、アバターの特性はこの平均的着用者の特性に対応する。
【0063】
一連の固視点は、例えばアバターが各点を見る時間的瞬間、各点が見える最低視力などの追加の属性を有し得る。
【0064】
シナリオは、固視点のうちの少なくとも1つに関する視覚機器の性能を評価するために考慮されるべき上記少なくとも1つの性能基準も定義する。換言すると、1つ又はいくつかのアバターによる各シナリオの実行によって所定の視覚タスクに関する少なくとも1つの所定の性能基準が生成される。
【0065】
シナリオは、環境におけるアバターの位置も定義する。シナリオの実行中、この位置は静止し得る。或いは、シナリオの実行中、アバターは移動し得る。非限定的な例として、アバターは、歩く、走る、階段を上る、自動車を運転などすることができる。
【0066】
シナリオは、時間に応じた環境の1つ以上の構成要素の運動も定義し得る。非限定的な例では、ゲーム中にボールが動いている。固視点がボールに取り付けられている場合、その位置も時間とともに変化する。
【0067】
したがって、デバイス10は、それぞれ視覚タスク、環境、及び評価されるべき1つ以上の性能基準が組み合わされた1つのシナリオ又はシナリオの集合を取得することを可能にする。このようなタスク、環境及び性能基準の集合は、所与のN点スケール上で評価される質問数Qからなる着用者テスト評価フォームの項目に基づき得る。Q及びNは、非ゼロの整数である。
【0068】
評価フォームは、視覚機器の特定の特性、又は機器の一般的な日常生活での使用に重きを置くことがある。
【0069】
本開示によるデバイスは、少なくとも1つのプロセッサ14を更に含み、少なくとも1つのプロセッサ14は、以下に更に詳細に記載されるように、着用者による視覚機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された実際の又はシミュレートされた着用者活動プロファイルPに基づいて、複数のバーチャルテストの中から少なくとも1つのバーチャルテストTを選択するように構成されている。
【0070】
一実施形態において、着用者の個別化された活動プロファイルPにより、シナリオの選択をカスタマイズすることが可能になる。
【0071】
一実施形態において、個別化された着用者活動プロファイルPは、少なくとも1つのシナリオの関連性及び/又は視覚機器の使用法における着用者の少なくとも1つの基準の関連性に応じて少なくとも1つのシナリオ及び/又は少なくとも1つの所定の性能基準に割り当てられる異なる重みを含み得る。
【0072】
換言すると、
- スコアの重みは、シナリオが着用者の機器の日常使用をどれほど表しているかを反映するように各シナリオに割り当てられ得る、
- 個別化された着用者活動プロファイルPは、各シナリオに関連する性能基準を、考慮される着用者に対するその重要度に従って重み付けする役割も果たし得る。
【0073】
個別化された着用者活動プロファイルPは、異なる手法で、すなわち、
- 宣言的調査又は質問表から、又は
- 「スマートフレーム」(すなわち、例えば活動、環境、光条件などの視覚機器使用に関する情報を記録するセンサ又は一連のセンサによって提供される追加機能を備える眼鏡フレーム)、又は「クリップオン」デバイス(すなわち、眼鏡フレームに取り付けることができ、且つ視覚機器使用に関する情報も記録するセンサ又は一連のセンサ)に依存する技術などの様々な技術を使用して、又は
- ラージデータ又はビッグデータのデータベースから
生成され得る。
【0074】
上記のバーチャル環境は、人間又は理論上の着用者の通常の実際の環境に適合するように個別化することができ、ハーモン距離などの着用者の解剖学的パラメータを用いて自動的にカスタマイズすることができる。これは、宣言的調査若しくは質問表の使用、コンピュータ支援型環境パラメータ化、又は例えば三次元スキャン若しくはモーションキャプチャによる実世界環境のポジショニングによって行われ得る。
【0075】
プロセッサ14は更に、固視点(図面上にiと示されている)のうちの少なくとも1つについて、所定のタスクに関して生成される少なくとも1つの所定の性能基準C(i)を計算することによって、選択した少なくとも1つのバーチャルテストTを少なくとも1つのアバターによって実施する視覚機器の性能(図面上でPerfと示されている)を評価するように構成されている。
【0076】
一実施形態において、所定の性能基準C(i)は、視力基準、歪み基準、及び頭部と眼の協調を評価する視覚行動基準のうちの少なくとも1つを含み得る。非限定的な例では、性能基準C(i)は単眼視に関連し得る。別の非限定的な例として、性能基準C(i)は両眼視に関連し得る。
【0077】
したがって、デバイス10のプロセッサ14は、各バーチャルテストから得られた性能基準を組み合わせることによって全体的な性能評価を提供する。
【0078】
例えば、実施形態によっては、少なくとも1つのシナリオは、以下の少なくとも1つを含む一連のシナリオであり得、リストは非網羅的である。
タスクが遠方視タスクであり、性能基準が視力である第1のシナリオ、
タスクが中間視タスクであり、性能基準が視力である第2のシナリオ、
タスクが近方視タスクであり、性能基準が視力である第3のシナリオ、
性能基準が歪み基準である第4のシナリオ。
【0079】
シナリオが定義され得る手法を以下に更に詳細に記載する。
【0080】
着用者によって使用される視覚機器の機能特性のリストを提供する。これらの機能特性は、評価することが望ましい様々な性能項目である。
【0081】
各機能特性に関して、その特性の評価に関連性があると考えられるシナリオが定義される。
【0082】
例えば、読み/書き性能及び快適性を評価するために、以下のシナリオ、すなわち、例えばソファ又はテーブルに座っている、立っている、横になっているなどの様々な姿勢条件又は環境制約を受けながらの、例えば本、紙、タブレット画面、スマートフォン画面、雑誌などの様々な読書支持体での読書を定義することができ、例えば視力、視野の幅、歪み、姿勢の柔軟性などの様々な快適性及び性能基準を評価することができる。
【0083】
老視の着用者用の累進多焦点レンズ機器の非限定的な例において評価すべき機能特性のリストを以下に記載する。
【0084】
老視の着用者用の累進多焦点レンズ機器に関して評価すべき機能特性のリスト:
Q1.遠方視における視覚の明瞭さ
Q2.中間視における視覚の明瞭さ
Q3.近方視における視覚の明瞭さ
Q4.遠方視と近方視との間の移行
Q5.着用者が動くときの歪み
【0085】
一般的なシナリオタイプのリスト:
以下の一般的なシナリオは、機器の機能特性を評価するように適合されたものである。
読書シナリオ:様々な姿勢条件又は環境制約にありながら様々な物体/支持体で読書し、様々な視力及び視覚行動基準を評価する、
固視シナリオ:様々な姿勢条件又は環境制約にありながら様々な物体/支持体、又は広範囲に広がった物体上のいくつかの点を見て、様々な視力及び視覚行動基準を評価する。
移行シナリオ:第1の読書又は固視タスクから、異なる距離ではあるが同じ姿勢条件又は環境制約の第2の読書又は固視タスクに移行し、様々な視力及び視覚行動基準を評価する。
眼又は頭部の動きに基づいたシナリオ:頭部と眼だけを動かしながら静止した又は移動する様々な物体を注視し、様々な視力、視覚行動、及び歪み基準を評価する。
移動シナリオ:固視タスクを実施しながらの様々な移動手段による身体変位であり、様々な視力、視覚行動、及び歪み基準を評価する。
それぞれ特定の視野及び/又は視覚に関連する要件(例えば、視力、コントラスト、読者の視野の範囲)を有する様々な物体/支持体の例の非限定的なリスト:本、紙、タブレット、スマートフォン、雑誌、テレビ、人物、車載ナビゲーションデバイス、ノート型パソコン画面、デスクトップパソコン画面、広告看板、交通標識、道路標識、視力検査表、映画画面(広範囲に広がった物体)、風景(広範囲に広がった物体)。
【0086】
物体の網羅的リストの作成よりもむしろ、個別化を最適化するために定義すべき興味深い特徴は、物体の位置、寸法、及び視覚的特性である。
【0087】
様々な姿勢条件の例の非限定的なリスト:
基本姿勢:ソファに座っている、車内に座っている、又はテーブルの前に座っている、立っている、ベッドに横になっている。
姿勢制約:自由な頭部及び胴部の動き、自由な頭部の動き、限定された胴部の動き(例えば車内に座っているとき)、限定された頭部及び体幹の動き(例えば、ベッドに横になっているとき)。
【0088】
環境制約の例の非限定的なリスト:
物体距離:手の届く範囲内、物理的支持体(例えばテーブル)上、部屋のスケール、街路のスケール、又は風景における距離。
物体のアライメント/向き:例えば左右差に応じた行動習慣、支持体に依存したアライメント又は向き。
空間内の物体の分布:着用者の矢状面とのアライメント、着用者の正面平行面とのアライメント、非拘束のアライメント、狭い又は広い位置の広がり、規則的なモデルベースの又はランダムな物体の位置。
【0089】
様々な性能基準の例の非限定的なリスト:
中心視を通じた及びその周辺の視覚の鮮明さを評価する視力基準:好ましくは両眼であるが必ずしもそうではない視力(又は視力低下)、視野、視力の範囲(すなわち、眼は動かすが頭部は動かさずに中心視を用いたときに明瞭に見える領域の範囲)、コントラスト感度。
【0090】
眼の調節と注視方向と頭位との間の関連性を通じて頭部と眼の協調を評価する視覚行動基準:特許文献2に記載されているような頭部姿勢努力及び注視姿勢努力、輻湊及び調節の努力、頭部自由領域。
【0091】
周辺視による空間認知のゆがみを評価する歪み基準:静的歪み、動的歪み、オプティカルフロー/網膜上のフロー(retinal flow)、奥行感知覚。
【0092】
個別化された着用者活動プロファイルPが定義され得る手法を以下に更に詳細に記載する。
【0093】
プロファイルPは、デバイス10が、シナリオの選択を個別化するためにシナリオのリストをフィルタリングすること、又は結果として得られる重み付けされたシナリオの集合が着用者の機器の日常使用を最も良く表現するように各シナリオにスコアの重みを割り当てることのいずれかを可能にするように定義される。
【0094】
更に、優位な性能基準、すなわち、着用者にとって重要な性能基準が、着用者の好みを考慮に入れるために、ランク付けされる、又はまた、重みと関連付けられる。
【0095】
プロファイルPは、機器の使用法及び着用者の生活様式を含む。非限定的な例では、プロファイルPは、以下を含み得る。
- 考慮される着用者によって実施されるタスク又は活動のリスト、
- 着用者の生活における各タスクの量、又は着用者にとっての各タスクの重要度を表すことができるタスクの重み付け、
- 着用者が各性能基準に与える重要度による性能基準の重み付け。
【0096】
プロファイルPの非限定的な例:
- 通常ソファに座ってビデオを見る及びゲームをするためのスマートフォン、使用頻度:低、
- オフィス業務用のノート型パソコン、使用頻度:高、
- 通常、公共交通機関での読書、使用頻度:中、
- スポーツ用の自転車、使用頻度:高、
- 身長1.75m、ハーモン距離0.41m、
- 全ての性能基準は同等に重要である。
【0097】
各シナリオが機器の機能特性の1つを評価することを目的とするシナリオのリストを定義する。以下、シナリオの非限定的な例では、個別化値及び標準値を、個別化のために用いられる手法とともに、括弧内に記載する:[標準値、個別化値、個別化手法]。以下のシナリオのリストの後に個別化手法をより詳細に説明する。
【0098】
シナリオ1 - 遠方視の明瞭さ - 全般的なシナリオタイプ:固視
街路環境に立っているときに身長[1.68m、1.75m、カスタマイズした着用者の身長の適用]の着用者の水平方向120°及び垂直方向40°の視野内の10m先に位置するいくつかの物体を見る。これらの物体を正しく見るためには最低視力9/10を必要とする。性能基準は、あらゆる物体を固視している際の中心窩視力及び姿勢努力の評価である。固視点は、様々なパターンに従って分布する。
【0099】
シナリオ2 - 中間視の明瞭さ - 全般的なシナリオタイプ:固視
机の前で標準的な高さの椅子に座っているときに標準的な高さの机上に置かれた0.70m先のノート型パソコン画面で読む。机及び椅子の標準的な高さは、規格NF EN527-1 D62-044-1(2011年8月)に準拠する0.72m+/-0.015mである。目の高さは、椅子の高さ及び着用者の座高[0.87m、0.91m、身体測定調査に基づく身長に応じた座高]を用いて決定される。この物体(ノート型パソコン画面)は、正しく見るために最低視力9/10を必要とする一連の文字を含む。性能基準は、自然な読書パターンに従った、物体上に分布する各固視点に関する中心窩視力及び姿勢努力の評価である。
【0100】
シナリオ3 - 近方視の明瞭さ -全般的なシナリオタイプ:固視
[室内の椅子に、頭部に対する本の振動を誘発する公共交通機関に、着用者のプロファイルPに個別化されたシナリオ環境に]座っているときに[0.38m、0.41m、着用者の身長及び任意の従来の身体リンク測定モデルに応じたハーモン距離推定値を使用]で手に持った本を読む。この物体(本)は、正しく見るために最低視力9/10を必要とする一連の文字を含む。性能基準は、自然な読書パターンに従った、物体上に分布する各固視点に関する中心窩視力及び姿勢努力の評価である。
【0101】
シナリオ4 - 遠方視と近方視との間の移行 - 全般的なシナリオタイプ:移行
座りながら、[0.38m、0.41m、着用者の身長及び任意の従来の身体リンク測定モデルに応じたハーモン距離推定値を使用]で手に持った本を読むことから、様々な近さ(少なくとも4m:遠方視)にある物体を見ることに移行する。評価される性能基準は、姿勢努力及び頭部自由領域である。「頭部自由領域」という用語は、特許文献4に記載されているように、光学レンズの着用者が、光学レンズを通して特定の点を見たときに特定の事前定義された値を超えて光学性能を損なうことなくとることができる頭位の範囲を指す。
【0102】
シナリオ5 - 歪み - 全般的なシナリオタイプ:移動
身長[1.68m、1.75m、カスタマイズした着用者の身長の適用]の着用者が様々な距離及び位置にある様々な物体を見ながら街路を歩き、静的歪み基準及び動的歪み基準を評価する。
【0103】
各シナリオの結果は、考慮される着用者の関心又は活動を考慮に入れるために後に個別化され得る重み値によってスケーリングされることがある。
【0104】
ここで、特定の実施形態におけるシナリオ及び重みの個別化についてより詳細に説明する。
【0105】
本を読むときの作業距離(以下、DistanceBookと表記する)、したがって、物体/環境の近さは、着用者のハーモン距離(以下、HarmonDistanceと表記する):
DistanceBook=HarmonDistance
に従って個別化され得る。
【0106】
スマートフォン画面を見るときの作業距離(以下、DistanceSmartphoneと表記する)は、着用者のハーモン距離に従って、例えば以下:
DistanceSmartphone=80%xHarmonDistance
のように個別化され得る。
【0107】
様々なシナリオにおいて座っている又は立っているときのアバターの身長は、着用者のプロファイルPに提供される身長及びその人物の身長に応じた任意の従来の身体リンク長さのモデルに従って個別化され得る。
【0108】
異なるシナリオにおける支持体、物体、姿勢条件、及び環境制約は、着用者のプロファイルPの、例えば、シナリオ3(公共交通機関での読書)に記載されている活動及び使用法に従って適合させることができる。
【0109】
シナリオの重みは、着用者のプロファイルPに記載されている活動及び使用法に従って、例えば、以下、すなわち、サイクリングなどの高速移動を含む高頻度の屋外活動のためにシナリオ5に対して高い重み、ノート型パソコンでの高頻度の作業のためにシナリオ2に対して高い重み、中頻度の読書のためにシナリオ3に対して中程度の重み、のように個別化され得る。
【0110】
性能基準の重みは、機器性能要件に関する着用者の好みに従って個別化され得る。本開示に記載される非限定的な例において、全ての性能基準は同等に重要である。
【0111】
プロセッサ14による、固視点のうちの少なくとも1つに関する、所定の視覚タスクに関して生成される少なくとも1つの所定の性能基準の計算後、全体的及び詳細な性能が以前に定義した重みに基づいて計算され得る。
【0112】
詳細な性能とは、各機能特性の客観的評価を指し、全体的な性能は、機器使用法に関する着用者の好みを考慮に入れた視覚機器の全体的な性能を最も良く表す値である。
【0113】
前述の非限定的な例において、Sj、j=1,…,5、5つのシナリオとする。
【0114】
全体的に、性能基準は以下のとおりである。
C1=中心窩視力
C2=姿勢努力
C3=頭部自由領域
C4=歪み
以下、表1に示されるように、シナリオSjにおいて計算された重みWj,kが各基準Ck(k=1,…,4)に割り当てられ得る。
【0115】
【表1】
【0116】
シナリオSjにおいて性能基準Ckがとる値をVj,kとする。
【0117】
計算の最後に、プロセッサ14は、本非限定的な例では5つの機能特性Q1~Q5に沿った機器の全体的な性能Perfを評価するために、表1の各行に沿って加重合計を計算することができる:
Perf(j)=ΣVj,k×Wj,k
式中、jは、シナリオSjにおける性能特性に関し、kは、性能基準Ckに関する。
【0118】
上記例では、1つのシナリオを用いて機器の各特性を評価する方法を示した。別の実施形態は、各機能特性に関して組み合わされる複数のシナリオを定義することができる。
【0119】
図2のグラフは、2つのレンズA及びBに関する自明の「レーダー型」の多次元性能評価の非限定的な例を示す。
【0120】
図3のフロー図は、着用者用に意図された視覚機器の性能を評価する本開示による方法の工程を示す。
【0121】
第1の工程40は、本開示によるデバイスとの関連で上記したように、少なくとも1つのアバター、すなわち着用者の少なくとも1つのバーチャルモデルを取得することを含む。
【0122】
次に続く工程42は、視覚機器によって実施されるべき複数のバーチャルテストを取得することを含み、複数のバーチャルテストの各バーチャルテストは、工程40で取得された少なくとも1つのアバターと組み合わされる少なくとも1つのシナリオを含み、シナリオは、一連の固視点を含む所定の視覚タスクが環境内で少なくとも1つのアバターによってどのように実行されるかを定義する。少なくとも1つのシナリオは、例えば、デバイス10との関連で上記したものである。
【0123】
次に続く工程44は、例えばプロセッサ14などの少なくとも1つのプロセッサが、工程42で取得された複数のバーチャルテストの中から少なくとも1つのバーチャルテストを、例えばデバイス10との関連で上記したような、着用者による視覚機器の使用法を表す少なくとも1つの個別化された着用者活動プロファイルPに基づいて選択することを含む。
【0124】
その後、工程46は、選択した少なくとも1つのバーチャルテストを少なくとも1つのアバターで実施する視覚機器の性能を、上記一連の固視点のうちの少なくとも1つに関して、例えばデバイス10との関連で上記したような、タスクに対して生成される少なくとも1つの所定の性能基準を計算することによって、少なくとも1つのプロセッサが評価することを含む。
【0125】
特定の実施形態では、本開示による方法はコンピュータで実施される。すなわち、コンピュータプログラム製品は、プロセッサにアクセス可能であり、且つプロセッサによって実行されると、プロセッサに、上記のような着用者用に意図された視覚機器の性能を評価する方法の工程を実行させる、1つ以上の命令シーケンスを含む。
【0126】
アバター及びバーチャルテスト(シナリオを含む)は、例えば、クラウドでリモートに又はコンピュータでローカルに構築してもよい。
【0127】
命令シーケンスは、クラウド内の所定位置を含む、1つ又はいくつかの非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納されてもよい。
【0128】
上述のデバイス10の実施形態と同様に、
- 方法の一実施形態において、アバターは、着用者の少なくとも1つの眼のバーチャルモデル、着用者の頭部のバーチャルモデル、及び着用者の胴部のバーチャルモデルを含み得る、
- 方法の一実施形態において、着用者は特定の個人であり、この場合、少なくとも1つのアバターはこの特定の個人のバーチャルモデルを含む。このような場合において、アバターは実在の人物に対応し、この人物と特性を共有する。この実施形態において、複数のバーチャルテストは、特定の個人のバーチャルモデルと組み合わされる複数のシナリオを含み得る、
- 或いは、着用者は、全体的な特性によって定義される着用者の群に属することがあり、その群の各着用者の個々の特性は不明である。その場合、少なくとも1つのアバターは、その着用者の群を代表する着用者の複数のバーチャルモデルを含む。このような場合において、アバターは人物の群に対応する。この実施形態において、複数のバーチャルテストは、着用者の複数のバーチャルモデルと組み合わされる単一のシナリオ、又は複数のバーチャルモデルと組み合わされる複数のシナリオのいずれかを含み得る、
- 方法の更に別の実施形態において、着用者は実在する人物ではなく、事前定義された平均的着用者であってもよく、この場合、アバターの特性はこの平均的着用者の特性に対応する、
- 方法の一実施形態において、個別化された着用者活動プロファイルPは、少なくとも1つのシナリオの関連性及び/又は視覚機器の使用法における着用者の少なくとも1つの基準の関連性に応じて少なくとも1つのシナリオ及び/又は少なくとも1つの所定の性能基準に割り当てられる異なる重みを含み得る。
【0129】
したがって、アバターの使用を通じて様々な視覚タスクを実施する特定の着用者をシミュレートし、各タスクに関する性能基準を生成し、結果を組み合わせることによって、その特定の着用者の特異性を考慮に入れた視覚機器物品の性能の全般的な推定が得られる。
【0130】
本開示によるデバイス、方法、コンピュータプログラム製品及びコンピュータ可読記憶媒体の複数の利点には以下のものがある:
- これらは、着用者のレンズの性能を評価するために使用され得る、
- これらは、例えば、ECP(アイケア専門家)が、客の特性、生活様式、及び視覚機器の使用法を考慮に入れて、考慮される客にどの機器が最も適合するものであるかを決定するために、利用可能な異なるレンズの中からレンズを、その性能を比較することにより選択するために有用な場合がある、
- これらは、研究開発段階において、例えば、異なるプロファイルを有する異なる着用者群(場合によっては異なるシナリオの選択及び/又は異なるアバターを意味する)を使用した新たなレンズ設計の定義を支援するために使用されることがあり、且つこれらは、これらの群に対する性能評価を取得し、低すぎると考えられる性能スコアを有する設計を廃棄することを可能にする。
【0131】
代表的な方法及びデバイスが本明細書で詳細に説明されているが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって説明及び定義されているものの範囲から逸脱することなく、様々な置換形態及び修正形態がなされてもよいことを認識するであろう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】