(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ペプチドサンプル調製のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240214BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240214BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240214BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20240214BHJP
C07K 1/02 20060101ALI20240214BHJP
C07K 1/113 20060101ALI20240214BHJP
C07K 1/06 20060101ALI20240214BHJP
C07K 1/04 20060101ALI20240214BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20240214BHJP
C12N 9/50 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N37/00 101
G01N33/68
B01J19/00 321
C07K1/02
C07K1/113
C07K1/06
C07K1/04
C07K1/14
C12N9/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543413
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022012986
(87)【国際公開番号】W WO2022159495
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ミルハム、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ、ジョナサン シー.
(72)【発明者】
【氏名】アド、オメル
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ、ツァイシア
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4G075
4H045
【Fターム(参考)】
2G045DA36
2G045JA07
4B029AA27
4B029BB15
4B029CC03
4B029DC07
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA39
4G075AA62
4G075AA63
4G075AA65
4G075BA05
4G075BA06
4G075BA10
4G075BB03
4G075BB10
4G075CA02
4G075CA03
4G075CA54
4G075DA02
4G075EA06
4G075EB50
4G075FA12
4G075FB01
4G075FB12
4G075FB13
4H045AA20
4H045BA50
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA50
4H045FA57
4H045GA26
(57)【要約】
本開示の態様は、サンプル中の1つ以上の標的分子の調製および/または研究のための方法、物品、キット、および/またはシステムに関する。いくつかの実施形態において、標的分子は、ペプチド、タンパク質またはその断片もしくは誘導体である。本開示の方法、物品、キット、および/またはシステムの使用を通して、標的分子は、いくつかの実施形態において、より容易に配列決定され得るか、または配列決定のために調製され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドサンプルを調製するための流体デバイスであって、前記流体デバイスは:
アミノ酸側鎖を誘導体化することができる誘導体化剤を受容するように構成された誘導体化剤リザーバと;
1つ以上のマイクロチャネルを介して前記誘導体化剤リザーバに流体接続されたクエンチング領域であって、前記誘導体化剤と反応することができる官能基を含む表面を有する固体基材を含む、クエンチング領域と;
を含む、流体デバイス。
【請求項2】
ペプチドサンプルを調製するための流体デバイスであって、前記流体デバイスは:
サンプルの加熱を容易にするように構成されたインキュベーション領域であって、前記インキュベーション領域はインキュベーションチャネルを含み、前記インキュベーションチャネルはマイクロチャネルである、インキュベーション領域と;
誘導体化領域と;
アミノ酸側鎖を誘導体化することができる誘導体化剤を受容するように構成された誘導体化剤リザーバであって、前記誘導体化剤リザーバは、流体が前記インキュベーションチャネルから前記誘導体化剤リザーバを通って前記誘導体化領域に輸送されるように、前記インキュベーションチャネルおよび前記誘導体化領域に流体接続されている、誘導体化剤リザーバと;
を含む、流体デバイス。
【請求項3】
ペプチドサンプルを調製するためのキットであって、前記キットは:
マイクロチャネルであるインキュベーションチャネルを含むインキュベーション領域を含む流体デバイスと;
還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、およびタンパク質消化剤から選択される1つ以上の試薬と、を含み、
前記インキュベーション領域は、前記1つ以上の試薬を受容するように構成されている、キット。
【請求項4】
前記流体デバイスがカートリッジを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項5】
前記カートリッジが、チャネルを含む表面を有する基層を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項6】
前記カートリッジの前記チャネルのうちのいくつかの少なくとも一部は、前記チャネルの表面開口部を実質的に封止するように構成されたエラストマーを含む表面を有する、請求項5に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項7】
前記流体デバイスが、アミノ酸側鎖を誘導体化することができる誘導体化剤を受容するように構成された誘導体化剤リザーバを含む、請求項3~6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
前記誘導体化剤リザーバが誘導体化剤を含む、請求項1~2および請求項4~7のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項9】
前記誘導体化剤がアジド移動剤を含む、請求項1~2および請求項4~8のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項10】
前記アジド移動剤が、イミダゾール-1-スルホニルアジドを含む、請求項9に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項11】
前記流体デバイスは1つ以上のマイクロチャネルを介して前記誘導体化剤リザーバに流体接続されたクエンチング領域を含み、前記クエンチング領域が、前記誘導体化剤と反応することができる官能基を含む表面を有する固体基材を含む、請求項2および請求項4~10のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項12】
前記固体基材はビーズを含む、請求項11に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項13】
前記固体基材の前記官能基がアミン基を含む、請求項11~12のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項14】
前記クエンチング領域が入口および出口を含み、流体デバイスが、前記クエンチング領域の出口から前記クエンチング領域の入口に流体を輸送することができるように構成されている、請求項1および請求項4~13のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項15】
前記流体デバイスが、サンプルの加熱を容易にするように構成されたインキュベーション領域を含み、前記インキュベーション領域がインキュベーションチャネルを含む、請求項1および請求項3~14のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項16】
前記インキュベーションチャネルがマイクロチャネルである、請求項2~15のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項17】
前記インキュベーションチャネルが第1のチャネル部分と、前記第1のチャネル部分に平行な第2のチャネル部分と、前記第1のチャネル部分と前記第2のチャネル部分とを接続するターン部分とを含む、請求項2~16のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項18】
前記インキュベーションチャネルの少なくとも一部が蛇行構成を有する、請求項2および請求項3~17のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項19】
前記インキュベーションチャネルが、タンパク質、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、および/またはタンパク質消化剤を含む混合物の供給源に流体接続されている、請求項2および請求項3~18のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項20】
前記インキュベーションチャネルが、タンパク質、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤およびタンパク質消化剤を含む混合物の供給源に流体接続されている、請求項2~19のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項21】
前記還元剤がトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む、請求項3~20のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項22】
前記アミノ酸側鎖キャッピング剤がシステインアルキル化剤を含む、請求項3~21のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項23】
前記アミノ酸側鎖キャッピング剤がヨードアセトアミドおよび/またはクロロアセトアミドを含む、請求項3~22のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項24】
前記タンパク質消化剤がプロテアーゼを含む、請求項3~23のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項25】
前記プロテアーゼが、トリプシン、Lys-C、Asp-N、および/またはGlu-Cを含む、請求項24に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項26】
前記流体デバイスが、前記誘導体化剤と前記アミノ酸側鎖との間の反応を促進することができる誘導体化試薬を受容するように構成された誘導体化試薬リザーバをさらに含み、前記誘導体化剤リザーバおよび前記誘導体化試薬リザーバは、流体が前記インキュベーションチャネルから前記誘導体化剤リザーバおよび前記誘導体化試薬リザーバを通って前記誘導体化領域に輸送され得るように流体接続されている、請求項1~2および4~25のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項27】
前記誘導体化試薬がpH調整試薬を含む、請求項26に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項28】
前記誘導体化試薬が前記アミノ酸側鎖と前記誘導体化剤との間の誘導体化反応のための触媒を含む、請求項26~27のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項29】
前記誘導体化試薬がCu
2+源を含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の流体デバイスまたはキット。
【請求項30】
ペプチドサンプルを調製するための方法において、前記方法は:
消化されたペプチドサンプルを形成するために、少なくとも1つのマイクロチャネルを含む流体デバイスのインキュベーション領域においてペプチドサンプルをインキュベートするステップであって、前記ペプチドサンプルが、タンパク質、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤およびタンパク質消化剤を含む混合物を含む、インキュベートするステップと:
前記インキュベートするステップの間に:
前記還元剤は、前記タンパク質のアミノ酸側鎖を還元して、還元されたアミノ酸側鎖を形成することと、
前記アミノ酸側鎖キャッピング剤は、前記還元されたアミノ酸側鎖と共有結合を形成して、キャップされたアミノ酸側鎖を形成することと、
前記タンパク質消化剤は、前記キャップされたアミノ酸側鎖を含むタンパク質のタンパク質分解を誘導して、1つ以上のキャップされたペプチドを形成し、それによって、消化されたペプチドサンプルを形成することと、
を含む、方法。
【請求項31】
ペプチドサンプルを調製するための方法において、前記方法は:
消化されたペプチドサンプルを形成するために、1つ以上のマイクロチャネルを含む第1の流体デバイス部分のインキュベーション領域内でペプチドサンプルをインキュベートするステップと;
官能化ペプチドサンプルを形成するために、前記消化されたペプチドサンプルの1つ以上のペプチドを官能化するステップと、
を含み、前記官能化するステップは:
第2の流体デバイス部分の誘導体化領域において誘導体化剤を使用して前記1つ以上のペプチドのアミノ酸側鎖を誘導体化して、1つ以上の誘導体化ペプチドおよび過剰な誘導体化剤を含むクエンチングされていない混合物を形成することと、
第3の流体デバイス部分のクエンチング領域において前記過剰な誘導体化剤の少なくとも一部を除去することによって、前記クエンチングされていない混合物をクエンチングして、クエンチングされた混合物を形成することと、
を含む、方法。
【請求項32】
前記ペプチドサンプルは、タンパク質、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、およびタンパク質消化剤を含む混合物を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、前記インキュベートするステップの間に:
前記還元剤は、前記タンパク質のアミノ酸側鎖を還元して、還元されたアミノ酸側鎖を形成することと、
前記アミノ酸側鎖キャッピング剤は、前記還元されたアミノ酸側鎖と共有結合を形成して、キャップされたアミノ酸側鎖を形成することと、
前記タンパク質消化剤は、前記キャップされたアミノ酸側鎖を含む前記タンパク質のタンパク質分解を誘導して、1つ以上のキャップされたペプチドを形成し、それによって、消化されたペプチドサンプルを形成することと、
を含む方法。
【請求項34】
前記インキュベートするステップの前に、前記流体デバイスのチャネルから前記インキュベーション領域へ前記ペプチドサンプルを輸送することをさらに含む、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記インキュベートするステップは、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上、または37℃以上の温度で前記ペプチドサンプルを維持することを含む、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記インキュベートするステップは、前記サンプルの少なくとも一部が前記インキュベーション領域のインキュベーションチャネルの少なくとも一部にある間に行われる、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記インキュベーションチャネルがマイクロチャネルである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記インキュベーションチャネルが第1のチャネル部分と、前記第1のチャネル部分に平行な第2のチャネル部分と、前記第1のチャネル部分と前記第2のチャネル部分とを接続するターン部分とを含む、請求項36~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記インキュベーションチャネルの少なくとも一部が蛇行構成を有する、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記還元剤がトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む、請求項30および請求項32~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記アミノ酸側鎖キャッピング剤がシステインアルキル化剤を含む、請求項30および請求項32~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記アミノ酸側鎖キャッピング剤がヨードアセトアミドおよび/またはクロロアセトアミドを含む、請求項30および請求項32~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質消化剤がプロテアーゼを含む、請求項30および請求項32~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記プロテアーゼが、トリプシン、Lys-C、Asp-N、および/またはGlu-Cを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
流体デバイス内で前記消化されたペプチドサンプルの1つ以上のペプチドを官能化して、官能化ペプチドサンプルを形成することをさらに含む、請求項30および請求項32~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記官能化するステップが、誘導体化剤を使用して前記1つ以上のペプチドのアミノ酸側鎖を誘導体化して、1つ以上の誘導体化ペプチドを含むクエンチングされていない混合物を形成することを含む、請求項30および請求項32~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記誘導体化剤がアジド移動剤を含む、請求項31~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記アジド移動剤が、イミダゾール-1-スルホニルアジドを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記誘導体化するステップが、前記1つ以上のペプチドを前記誘導体化剤および1つ以上の誘導体化試薬に曝露することを含む、請求項31~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記1つ以上の誘導体化試薬がpH調整試薬を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記1つ以上の誘導体化試薬が前記アミノ酸側鎖と前記誘導体化剤との間の誘導体化反応のための触媒を含む、請求項49~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記1つ以上の誘導体化試薬がCu
2+源を含む、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記誘導体化するステップが、前記1つ以上のペプチドを、順に、pH調整試薬、前記誘導体化剤、および前記アミノ酸側鎖と前記誘導体化剤との間の誘導体化反応のための触媒に曝露することを含む、請求項31~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
1つ以上の誘導体化ペプチドを含む前記クエンチングされていない混合物が過剰な誘導体化剤を含み、前記官能化するステップが、前記過剰な誘導体化剤の少なくとも一部を除去することによって前記クエンチングされていない混合物をクエンチングしてクエンチングされた混合物を形成することをさらに含む、請求項31~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記クエンチングすることが、前記過剰な誘導体化剤の少なくとも一部を固体基材の表面上の官能基と反応させることを含む、請求項31~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記固体基材はビーズを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記固体基材の前記官能基がアミン基を含む、請求項55~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記クエンチングすることが、前記クエンチングされていない混合物を前記クエンチング領域の少なくとも一部を通して再循環させることを含む、請求項31~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記官能化は、前記1つ以上の誘導体化ペプチドを固定化複合体にコンジュゲートさせて、1つ以上の固定化複合体コンジュゲートペプチドを形成することをさらに含む、請求項31~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記官能化するステップは、前記1つ以上の誘導体化ペプチドを、第4の流体デバイス部分の固定化複合体形成領域の固定化複合体にコンジュゲートさせて、1つ以上の固定化複合体コンジュゲートペプチドを形成することをさらに含む、請求項31~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記固定化複合体がストレプトアビジン担持固定化複合体である、請求項59~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記コンジュゲートすることの少なくとも一部が前記インキュベーション領域において行われる、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
精製された官能化ペプチドサンプルを形成するために、前記官能化ペプチドサンプルの任意の残りの非官能化ペプチドの少なくとも一部を除去することによって前記官能化ペプチドサンプルを精製することをさらに含む、請求項31~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
精製された官能化ペプチドサンプルを形成するために、前記官能化ペプチドサンプルの任意の残りの非官能化ペプチドの少なくとも一部を除去することによって第5の流体デバイス部分の精製領域において前記官能化ペプチドサンプルを精製することをさらに含む、請求項31~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記精製することは、前記官能化ペプチドサンプルをサイズ排除媒体に通過させることを含む、請求項63~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記第1の流体デバイス部分および前記第2の流体デバイス部分は、同じ流体デバイスの一部である、請求項31~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記第1の流体デバイス部分および前記第3の流体デバイス部分は、同じ流体デバイスの一部である、請求項31~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記第2の流体デバイス部分および前記第3の流体デバイス部分は、同じ流体デバイスの一部である、請求項31~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記インキュベーション領域から前記誘導体化領域へ前記消化されたペプチドサンプルの少なくとも一部を自動にて輸送することをさらに含む、請求項31~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記誘導体化領域から前記クエンチング領域へ前記クエンチングされない混合物の少なくとも一部を自動にて輸送することをさらに含む、請求項31~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記クエンチング領域から前記固定化複合体形成領域へ前記クエンチングされない混合物の少なくとも一部を自動にて輸送することをさらに含む、請求項31~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記固定化複合体形成領域から前記精製領域へ前記官能化ペプチドサンプルの少なくとも一部を自動にて輸送することをさらに含む、請求項59~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記流体デバイスがカートリッジを含む、請求項30および請求項32~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記カートリッジはチャネルを含む表面を有する基層を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記カートリッジの前記チャネルのいくつかの少なくとも一部は、前記チャネルの表面開口部を実質的に封止するように構成されたエラストマーを含む表面を有する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記流体デバイスが、請求項1~2および4~29のいずれか一項に記載の流体デバイスである、請求項30~75のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ペプチドなどの生体分子の操作および/または調製に関連する方法、物品、システム、およびキットが一般に記載される。
【背景技術】
【0002】
プロテオミクスは、生物系の研究において重要なものとして出現してきた。個々の生物またはサンプルタイプのこれらの分析は、細胞プロセスおよび応答パターンへの洞察を提供することができ、これは改善された診断および治療戦略につながる。タンパク質の組成および修飾を取り巻く複雑さは、生物学的サンプルについての大規模配列決定情報を決定する際に難題を提示する。
【0003】
タンパク質組成物を操作する(例えば、調製する)ための、改善され、かつより便利な技術およびシステムが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の態様は、サンプル中の1つ以上の標的分子の調製および/または研究のための方法、物品、キット、および/またはシステムに関する。いくつかの実施形態において、標的分子は、ペプチド、タンパク質またはその断片もしくは誘導体である。本開示の方法、物品、キット、および/またはシステムの使用を通して、標的分子は、いくつかの実施形態において、より容易に配列決定され得るか、または配列決定のために調製され得る。本発明の主題は、場合によっては、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替解決策、ならびに/または1つもしくは複数のシステムおよび/もしくは物品の複数の異なる使用を含む。
【0005】
一態様において、ペプチドサンプルを調製するための流体デバイスが記載される。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルを調製するための流体デバイスは、アミノ酸側鎖を誘導体化することができる誘導体化剤を受容するように構成された誘導体化剤リザーバと、1つ以上のマイクロチャネルを介して誘導体化剤リザーバに流体接続されたクエンチング領域(quenching region)とを含み、クエンチング領域は、誘導体化剤と反応することができる官能基を含む表面を有する固体基材(solid substrate)を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルを調製するための流体デバイスは、サンプルの加熱を容易にするように構成されたインキュベーション領域であって、インキュベーションチャネルを含み、同インキュベーションチャネルがマイクロチャネルであるインキュベーション領域と、誘導体化領域と、アミノ酸側鎖を誘導体化することができる誘導体化剤を受容するように構成された誘導体化剤リザーバであって、流体がインキュベーションチャネルから誘導体化剤リザーバを通って誘導体化領域に輸送され得るように、誘導体化剤リザーバがインキュベーションチャネルおよび誘導体化領域に流体接続されている誘導体化剤リザーバと、を含む。
【0007】
別の態様において、ペプチドサンプルを調製するためのキットが記載される。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルを調製するためのキットは、マイクロチャネルであるインキュベーションチャネルを含むインキュベーション領域と、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、およびタンパク質消化剤から選択される1つ以上の試薬とを含む流体デバイスを含み、インキュベーション領域は、1つ以上の試薬を受容するように構成される。
【0008】
別の態様において、ペプチドサンプルを調製するための方法が記載される。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルを調製するための方法は、少なくとも1つのマイクロチャネルを含む流体デバイスのインキュベーション領域内でペプチドサンプルをインキュベートして、消化されたペプチドサンプルを形成することを含み、ペプチドサンプルは、タンパク質、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、およびタンパク質消化剤を含む混合物を含み、インキュベートする間、還元剤は、タンパク質のアミノ酸側鎖を還元して還元アミノ酸側鎖を形成し、アミノ酸側鎖キャッピング剤は、還元アミノ酸側鎖と共有結合を形成してキャップされたアミノ酸側鎖を形成し、タンパク質消化剤は、キャップされたアミノ酸側鎖を含むタンパク質のタンパク質分解を誘導して1つ以上のキャップされたペプチドを形成し、それによって消化されたペプチドサンプルを形成する。
【0009】
いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルを調製するための方法は、1つ以上のマイクロチャネルを含む第1の流体デバイス部分のインキュベーション領域内でペプチドサンプルをインキュベートして消化ペプチドサンプルを形成することと、消化ペプチドサンプルの1つ以上のペプチドを官能化して官能化ペプチドサンプルを形成することとを含み、官能化ステップは、第2の流体デバイス部分の誘導体化領域内で誘導体化剤を使用して1つ以上のペプチドのアミノ酸側鎖を誘導体化して、1つ以上の誘導体化ペプチドと過剰な誘導体化剤とを含むクエンチングされていない混合物を形成することと、第3の流体デバイス部分のクエンチング領域内で過剰な誘導体化剤の少なくとも一部を除去することによってクエンチングされていない混合物をクエンチングしてクエンチング混合物を形成することとを含む。
【0010】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付の図面と併せて考慮されるとき、本発明の様々な非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書および参照により組み込まれる文書が、矛盾するおよび/または一貫しない開示を含む場合、本明細書を優先するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】特定の実施形態に従う、インキュベーション領域、インキュベーションチャネル、誘導体化領域、誘導体化剤リザーバ、および誘導体化試薬リザーバを含む流体デバイスの概略図を示す。
【
図2A】特定の実施形態に従う、誘導体化剤リザーバおよびクエンチング領域を含む流体デバイスの概略図を示す。
【
図3A】特定の実施形態に従う、ペプチドサンプルの消化のための例示的なワークフローを示す。
【
図4】特定の実施形態に従う、固定化複合体に結合されたペプチドを示す。
【
図5】特定の実施形態に従う、固定化複合体の調製のための反応スキームを示す。
【
図6】特定の実施形態に従う、配列決定のためにペプチドを固定化するためのプロセスを示す。
【
図7】特定の実施形態に従う、誘導体化反応スキームを示す。
【
図8】特定の実施形態に従う、ペプチド固定化のスキームを示す。
【
図9】特定の実施形態に従う、サンプル調製モジュールおよび検出モジュールを含む、システムの概略図を示す。
【
図10A】特定の実施形態に従う、流体デバイス部分の配置の概略図を示す。
【
図11】特定の実施形態に従う、流体デバイスのチャネルの断面概略図を示す。
【
図12A】特定の実施形態に従う、複数の流体デバイスを含む、サンプル調製デバイスを示す。
【
図13A】特定の実施形態に従う、タンパク質を消化および調製するためのプロセスを示す。
【
図14A】特定の実施形態に従う、インキュベーション領域、誘導体化領域、およびクエンチング領域を含む流体デバイスの概略図を示す。
【
図15A】特定の実施形態に従う、例示的な流体デバイスにおいて調製されたペプチドサンプルの配列決定の結果を示す。
【
図16A】特定の実施形態に従う、インキュベーション領域を含む流体デバイス部分の概略図を示す。
【
図17A】特定の実施形態に従う、誘導体化領域を含む流体デバイス部分の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の非限定的な実施形態は、添付の図面を参照して例として説明され、添付の図面は概略的であり、別段の指示がない限り、一定の縮尺で描かれることを意図しない。図のいくつかの実施形態において、図示された各々の同一またはほぼ同一の構成要素は、典型的には単一の符号によって表される。明確にする目的で、当業者が本発明を理解することを可能にするために図示が必要でない場合、すべての構成要素がすべての図においてラベル付けされているわけではなく、発明の各実施形態のすべての構成要素が示されているわけでもない。
【0013】
いくつかの態様において、本開示は、(例えば、流体デバイスを使用して)ペプチドサンプル(例えば、ペプチドライブラリ)を調製および分析するための方法、物品、システム、およびキットを提供する。いくつかのそのような実施形態は、(例えば、ペプチド/タンパク質配列決定のための)ペプチドサンプルの調製および分析を加速し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法、物品、およびキットは、流体デバイスの部分内のペプチドサンプルのインキュベーション、消化、官能化(例えば、誘導体化を介する)、クエンチング(例えば、官能化固体基材との接触を介する)、および/または精製を容易にする。場合によっては、流体デバイスの部分は、(例えば、同じカートリッジの一部として)互いに接続されてもよい。これらの実施形態は、ペプチドサンプルの調製および分析に利点を提供し得る。例えば、これらの実施形態は、ペプチドサンプルの調製および分析の2つ以上のステップが、そうでなければ直接的な人間の関与を必要とする混合化合物の洗浄または分離などの介入行為を必要とせずに、自動化にてかつ連続的に(場合によっては同時に)実行されることを可能にし得る。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルはタンパク質またはペプチドを含み、ペプチドサンプルの分析は、タンパク質またはペプチドの配列決定を可能にし得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、ペプチド調製のために構成された流体デバイス(例えば、カートリッジ)が提供される。いくつかのそのような構成は、例えば、ペプチドを化学的に修飾するための(例えば、消化/断片化、誘導体化、またはそれらの組み合わせのための)試薬に適合された領域(例えば、リザーバおよび/またはチャネル)を含んでもよく、いくつかの例では、そのような試薬を含んでもよい。流体デバイスは、1つ以上のマイクロチャネルを備えてもよい。いくつかの実施形態において、流体デバイスは、ペプチドの消化および/またはコンジュゲーションなどの他の修飾を促進するように構成されたインキュベーション領域を含む(例えば、蛇行マイクロチャネルおよび/または熱伝導性固体材料を含むことによって)。ペプチドの消化のための複数の化学修飾は、流体デバイス内で自動にて起こり得る(例えば、還元剤、キャッピング剤、および/または消化剤等の複数の試薬の混合物をインキュベーションチャネルに送ることによって)。流体デバイス(例えば、カートリッジ)は、誘導体化領域および誘導体化剤または試薬リザーバ(例えば、官能化プロセスの一部として)を含んでもよく、過剰な試薬の除去および/または不活性化を容易にするためクエンチング領域を含んでもよい。流体デバイス(例えば、マイクロ流体カートリッジ)は、サンプル調製モジュール(例えば、蠕動ポンプを含む)および検出モジュール(例えば、ペプチド配列決定モジュール)を含むシステムに動作可能に結合するように構成され得る。
【0015】
タンパク質サンプルの調製(および場合によっては分析)のためのワークフローは、多くの場合、いくつかのステップを必要とする。各ステップは、通常、ある程度の材料損失、非効率性、および時間消費と関連付けられ得るため、ワークフローのステップの一部または全部を排除または自動化するアプローチは、多くの利益を提供する。しかしながら、化学的不純物または欠陥の存在も予期せぬ有害な影響をもたらす可能性があるため、これらのステップを排除または自動化することは簡単なプロセスではない。
【0016】
ペプチドサンプルの調製(および場合によっては分析)のためのワークフローを単純化するための1つのアプローチは、流体デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)を使用する1つ以上のステップの実行である。このようなデバイスは、ペプチドサンプルの調製のための化学プロセスの例外的な制御を提供し得、信頼性および収率を増加させる。しかしながら、特定の既存の流体デバイスを使用する場合、多くの場合、いくつかのステップを手動で実行することが依然と必要である。本開示の文脈において、本願の発明者らは、ペプチドサンプルの調製および分析のステップを自動化する必要性を認識しており、この必要性を満たす発明的解決策を提供している。
【0017】
一態様において、ペプチドサンプルを調製するための方法が開示される。いくつかの実施形態において、方法は、流体デバイスのインキュベーション領域内でペプチドサンプルをインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態において、インキュベーション領域は、第1の流体デバイス部分の一部である。インキュベーション領域は、サンプルの加熱を容易にするように構成され得る。いくつかの実施形態において、インキュベーション領域はインキュベーションチャネルを含む。ペプチドサンプルは、インキュベーション領域のインキュベーションチャネル内でインキュベートされ得る。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルをインキュベートすることは、消化されたペプチドサンプルを形成する。例えば、
図1A~1Dは、インキュベーション領域110を含む流体デバイス100の概略図を示す。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、インキュベーション領域110のインキュベーションチャネル112内でインキュベートされる。潜在的に適切なインキュベーション条件の詳細は、以下により詳細に記載される。
【0018】
別の態様において、方法は、消化されたペプチドサンプルの1つ以上のペプチドを官能化すること(functionalizing)を含む。消化されたペプチドサンプルのペプチドを官能化することは、官能化ペプチドサンプルを形成し得る。いくつかの場合において、官能化することは、誘導体化剤を使用して1つ以上のペプチドのアミノ酸側鎖を誘導体化することを含む。例えば、消化されたペプチドは、誘導体化剤に曝露され得る(例えば、ペプチドを含む溶液中に誘導体化剤を溶解すること、ペプチドを含む溶液と誘導体化剤を含む溶液とを混合することなどによって)。いくつかの実施形態において、誘導体化剤は、アミノ酸側鎖を誘導体化することができる。アミノ酸側鎖は、第2の流体デバイス部分の誘導体化領域において誘導体化され得る。例えば、
図1Aにおいて、1つ以上のペプチドのアミノ酸側鎖は、誘導体化領域120において誘導体化され得る。アミノ酸を誘導体化することは、クエンチングされていない(unquenched)混合物を形成してもよい。いくつかの場合において、クエンチングされていない混合物は、1つ以上の誘導体化ペプチドおよび過剰な誘導体化剤を含む。いくつかの実施形態は、クエンチングされていない混合物の少なくとも一部を誘導体化領域からクエンチング領域に自動にて輸送することを含む。
【0019】
本開示のこの文脈において、プロセスは、一般に、プロセスのステップ中またはステップ間に直接的な人間の介入なしに実行される場合、自動化されていると見なされる。多くの場合、自動化プロセスは、予めプログラムされた指示に従うことによってプロセスのステップを実行することができるコンピュータ実装コントローラによって実行される。指示は、(例えば、製造業者またはユーザによって)事前にプログラムされるか、プロセス中にユーザによって手動で提出されるか、またはその2つの組合せであり得る。コンピュータ実装コントローラとインターフェースする人間のユーザは、この文脈において直接的な人間の介入とは見なされない。ユーザが手動で試薬および/またはサンプルの成分を導入、除去、混合、または輸送すること(例えば、ピペッティング/シリンジ注入、注入などによって)は、直接的な人間の介入の例である。
【0020】
いくつかの実施形態において、方法は、クエンチングされていない混合物をクエンチングして、クエンチングされた混合物を形成することをさらに含む。クエンチングされていない混合物をクエンチングする(Quenching)ことは、クエンチング領域中の過剰な誘導体化剤の少なくともいくらか(例えば、少なくとも10重量%、少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、またはそれ以上)を除去し得る。クエンチング領域は、例えば、第3の流体デバイス部分の一部であってもよい。クエンチング領域は、固体基材を含み得る。固体基材は、官能基を含む表面を有してもよい。官能基は、誘導体化剤と反応することが可能であってもよい。例えば、
図2A~2Bは、いくつかの実施形態に従う、クエンチング領域130を含む流体デバイス部分を示す。クエンチング領域130の固体基材表面132は、誘導体化剤と反応することができる官能基(例えば、アミン)134を含む。いくつかの実施形態において、インキュベーション領域からの消化されたペプチドサンプルの少なくとも一部は、インキュベーション領域から誘導体化領域に自動にて輸送される。いくつかの実施形態において、官能基は、例えば、反応によって(例えば、1つ以上の共有結合、静電相互作用、および/または水素結合を形成することによって)誘導体化剤を固定化し得る。
【0021】
別の態様において、ペプチドサンプルを調製するための流体デバイスが記載される。いくつかの実施形態において、流体デバイスは誘導体化剤リザーバを含む。誘導体化剤リザーバは、誘導体化剤を受容するように構成され得る。いくつかの実施形態において、流体デバイスは、クエンチング領域をさらに含む。クエンチング領域は、誘導体化剤リザーバに流体接続され得る。いくつかの実施形態において、クエンチング領域は、1つ以上のチャネルを介して誘導体化剤リザーバに連結されている。これらのチャネルの一部または全部がマイクロチャネルであってもよい。例えば、
図2Aは、誘導体化剤リザーバ122およびクエンチング領域130を含むペプチドサンプルを調製するための流体デバイスを示し、クエンチング領域130は、チャネル(例えば、マイクロチャネル)180によって誘導体化剤リザーバ122に接続されている。
【0022】
本開示の別の態様は、誘導体化領域および誘導体化剤リザーバを含む、ペプチドサンプルを調製するための流体デバイスである。いくつかの実施形態において、誘導体化領域は、誘導体化剤を受容するように構成される。いくつかの実施形態において、誘導体化領域は誘導体化剤を含む(例えば、誘導体化剤の少なくとも一部が誘導体化領域内に含有される)。例えば、
図1Aにおいて、流体デバイス100は、誘導体化領域120および誘導体化剤リザーバ122を含み、インキュベーションチャネル112を含むインキュベーション領域110をさらに含む。この実施形態において、誘導体化剤リザーバ122は、(例えば、ペプチド調製プロセスの前および/または間に)誘導体化剤123を受容するように構成される。いくつかの実施形態において、流体デバイスは、インキュベーションチャネルを含むインキュベーション領域をさらに含む。場合によっては、誘導体化剤リザーバは、流体(例えば、ペプチドサンプルを含む)がインキュベーションチャネルから誘導体化剤リザーバを通って誘導体化領域に輸送され得るように、インキュベーションチャネルおよび誘導体化領域に流体接続される。例えば、
図1Aにおいて、誘導体化剤リザーバ122は、流体がインキュベーションチャネル112から誘導体化剤リザーバ122を通って誘導体化領域120に輸送され得るように、インキュベーションチャネル112および誘導体化領域120に流体接続される。
【0023】
いくつかの実施形態において、流体デバイスは、誘導体化試薬リザーバをさらに含む。いくつかの実施形態において、誘導体化試薬リザーバは、誘導体化試薬を受容するように構成される。例えば、
図1Bは、誘導体化試薬125を受容するように構成された誘導体化試薬リザーバ124を含む流体デバイス100の概略図を提示する。いくつかの実施形態において、誘導体化試薬は、誘導体化剤とアミノ酸側鎖との間の反応を促進することができる。例えば、誘導体化試薬は、誘導体化反応のための触媒であり得る。具体例として、誘導体化剤は、イミダゾール-1-スルホニルアジドなどのアジド転移試薬を含んでもよく、誘導体化試薬は、硫酸銅などのCu
2+源であってもよい。いくつかの実施形態において、誘導体化剤リザーバおよび誘導体化試薬リザーバは、流体がインキュベーション領域(例えば、インキュベーションチャネル)から誘導体化剤リザーバおよび誘導体化試薬リザーバを通って誘導体化領域に輸送され得るように、流体接続される。例えば、
図1Bにおいて、流体は、インキュベーション領域110から、誘導体化剤リザーバ122を通り、誘導体化試薬リザーバ124を通って、誘導体化領域120に輸送され得る。いくつかの実施形態において、流体は、順に、インキュベーション領域(例えばインキュベーションチャネル)から、誘導体化剤リザーバおよび誘導体化試薬リザーバを通って、誘導体化領域へと輸送され得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、誘導体化試薬リザーバは、第1の誘導体化試薬リザーバであり、流体デバイスは、第2の誘導体化試薬リザーバをさらに含む。例えば、
図1Cは、第1の誘導体化試薬リザーバ124および第2の誘導体化試薬リザーバ126を含む流体デバイス100の概略図を示す。いくつかの実施形態において、第2の誘導体化試薬リザーバは、第2の誘導体化試薬を受容するように構成される。いくつかの実施形態において、第2の誘導体化試薬は、誘導体化剤とアミノ酸側鎖との間の反応を促進することができる。例えば、第2の誘導体化試薬は、炭酸カリウム(K
2CO
3)などのpH調整試薬であってもよい。いくつかの実施形態において、誘導体化剤リザーバ、第1の誘導体化試薬リザーバ、および第2の誘導体化試薬リザーバは、流体が、インキュベーション領域(例えば、インキュベーションチャネル)から、第2の誘導体化試薬リザーバを通り、誘導体化剤リザーバを通り、第1の誘導体化試薬リザーバを通り、誘導体化領域へと順に輸送され得るように、流体接続される。例えば、
図1Cにおいて、流体は、インキュベーション領域110から、第2の誘導体化試薬リザーバ126(第2の誘導体化試薬127を受容するように構成されている)を通り、誘導体化剤リザーバ122(誘導体化剤123を受容するように構成されている)を通り、第1の誘導体化試薬リザーバ124(第1の誘導体化試薬125を受容するように構成されている)を通って、誘導体化領域120に輸送され得る。いくつかの実施形態において、第1の誘導体化試薬(例えば、硫酸銅などのCu
2+の供給源)は、第1の誘導体化試薬および第2の誘導体化試薬が消化されたペプチドサンプルと組み合わされる(例えば、混合される)まで、第2の誘導体化試薬(例えば、K
2CO
3などの塩基性緩衝液を含む塩などのpH調整試薬)と曝露(例えば、混合)されない。第1の誘導体化試薬および第2の誘導体化試薬の事前の混合を回避することは、第1の誘導体化試薬および第2の誘導体化が効率的な誘導体化に悪影響を及ぼすような様式で反応し得る場合に有益であり得る。
【0025】
別の態様において、ペプチドサンプルを調製するためのキットが記載される。いくつかの実施形態において、キットは流体デバイスを含む。いくつかの実施形態において、キットは1つ以上の試薬を含む。試薬は、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、および/またはタンパク質消化剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、キットは、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、およびタンパク質消化剤から選択される2つ以上の試薬を含む。いくつかの実施形態において、キットは、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、およびタンパク質消化剤のそれぞれを含む。いくつかの場合において、流体デバイスは、試薬のうちの1つ以上を受容するように構成されるインキュベーション領域を含む。いくつかの実施形態において、流体デバイスおよび試薬は、個別に包装される。いくつかの実施形態において、キットの2つ以上の部分(例えば、流体デバイス、試薬)が一緒に包装される。いくつかの実施形態において、全てのキット構成要素が一緒に包装される。
【0026】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、ペプチドサンプルを対象とする。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、1つ以上のペプチド(例えば、タンパク質)を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、液体溶液(例えば、水性緩衝液)中に少なくとも部分的に(または完全に)溶解される。必ずしもすべてではないがいくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、タンパク質、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、および/またはタンパク質消化剤を含む混合物を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、タンパク質、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、およびタンパク質消化剤を含む混合物を含む。
【0027】
任意の適切な還元剤を使用して、ペプチドサンプル内のタンパク質を還元することができる。いくつかの実施形態において、還元剤は、ジスルフィド結合を還元するのに適している。いくつかの実施形態において、還元剤は、ジスルフィド結合を可逆的に還元し得る。適切な可逆性還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)、β-メルカプトエタノール(BME)、および/またはグルタチオン(GSH)などの化合物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、還元剤は、ジスルフィド結合を不可逆的に還元し得る。適切な不可逆還元剤は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などの化合物を含み得る。いくつかの具体的な実施形態において、還元剤は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含む。
【0028】
任意の適切なアミノ酸側鎖キャッピング剤を使用して、ペプチドサンプル内のタンパク質のアミノ酸側鎖をキャッピングすることができる。いくつかの実施形態において、アミノ酸側鎖キャッピング剤は、ジスルフィド結合の形成を防止する。いくつかの実施形態において、アミノ酸側鎖キャッピング剤は、アミノ酸側鎖が求核基/求電子基または酸化還元反応などのさらなる反応を受けることを防止する。いくつかの実施形態において、アミノ酸側鎖キャッピング剤は、システインキャッピング剤である。いくつかの実施形態において、アミノ酸側鎖キャッピング剤は、スルフヒドリル反応性アルキル化試薬(例えば、システインアルキル化剤)である。例えば、いくつかの実施形態において、アミノ酸側鎖キャッピング剤は、ハロアセトアミド(例えば、クロロアセトアミド、ヨードアセトアミド)またはハロアセテート/ハロ酢酸(例えば、クロロアセテート/クロロ酢酸、ヨードアセテート/ヨード酢酸)を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸側鎖キャッピング剤は、芳香族ベンジルハライドである。例えば、アミノ酸側鎖キャッピング剤は、ベンゼン芳香族基、ピリジン芳香族基、ピラジン芳香族基などに基づく芳香族ベンジルハライド誘導体であってもよい。適切なシステインアルキル化剤の他の例としては、4-ビニルピリジン、アクリルアミド、およびメタンチオスルホネートが挙げられる。いくつかの実施形態において、アミノ酸側鎖キャッピング剤は、ヨードアセトアミドを含む。
【0029】
任意の適切なタンパク質消化方法が使用され得、いくつかが以下に詳細に記載される。いくつかの特定の実施形態において、タンパク質消化試薬は、酵素タンパク質消化試薬である。例えば、いくつかの実施形態において、タンパク質消化剤はプロテアーゼを含む。いくつかの実施形態は、プロテアーゼは、トリプシン、Lys-C、Asp-N、および/またはGlu-Cを含む。いくつかの実施形態において、プロテアーゼはトリプシンである。
【0030】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、特定の範囲内のpHを維持するために緩衝化される。例えば、いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、室温で6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、および/またはそれ以上のpHを維持するように緩衝化される。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、室温で11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、および/またはそれ未満のpHを維持するように緩衝化される。これらの範囲の組み合わせが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、6~9のpHを維持するために緩衝化される。
【0031】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、第1のステップのために第1のpH範囲に緩衝化され、第2のステップのために第2のpH範囲に緩衝化され得る。例えば、いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、インキュベーション中に6~9のpHに緩衝化され、次いで、誘導体化ステップのために10~11のpHに緩衝化される。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、3、4、5、6、7、8、9、および/または10以上のステップの所望のpH範囲に緩衝化される。例えば、いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、固定化複合体形成ステップおよび精製ステップのためにpH7~8に緩衝化される前に、インキュベーション中にpH6~9に緩衝化され、次いで誘導体化ステップのためにpH10~11に緩衝化される。
【0032】
ペプチドサンプルは、ペプチドサンプルの所望のpH範囲に適切な任意の緩衝液で緩衝化され得る。例えば、いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルについて6~9のpHを維持することが望ましい場合がある。そのようなpH範囲に適した例示的な緩衝液は、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液(例えば、PBS)、Tris、Bis-Tris、炭酸緩衝液(例えば、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムなどの炭酸塩、および/または重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩を含む緩衝液)を含んでいてもよく、これらは、pHを所望の範囲内に安定化させるために別々にまたは組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態において、そのようなpH範囲に適した緩衝液は、以下を含み得る:HEPES緩衝液、リン酸緩衝液(例えば、PBS)、Tris、Bis-Tris、炭酸緩衝液(例えば、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムなどの炭酸塩;および/または重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩を含む緩衝液)。当業者は、これらおよび多くの他の緩衝系に精通しており、列記されていない緩衝系の使用が本明細書において企図される。
【0033】
いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、生物学的サンプルを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、血液、唾液、痰、糞便、尿または口腔スワブサンプルを含む。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、または任意の他の哺乳動物に由来する。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、細菌細胞培養物(例えば、E.coli細菌細胞培養物)に由来する。細菌細胞培養物は、グラム陽性細菌細胞および/またはグラム陰性細菌細胞を含み得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、以前に抽出された精製サンプルタンパク質である。血液サンプルは、対象(例えば、ヒト対象)から新たに採取された血液サンプルであってもよく、または乾燥血液サンプル(例えば、固体媒体(例:Guthrieカード)上で保存される)であってもよい。血液サンプルは、全血、血清、血漿、赤血球、および/または白血球を含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、ペプチドサンプル(例えば細胞または組織を含むサンプル)は、本開示によるプロセスで調製、例えば、溶解され得る(例えば、破壊され得る、分解され得る、および/または他の方法で消化され得る)。いくつかの実施形態において、調製される、例えば溶解されるペプチドサンプルは、培養細胞、生検由来の組織サンプル(例えば、癌患者、例えばヒト癌患者由来の腫瘍生検)、または任意の他の臨床サンプルを含む。いくつかの実施形態において、細胞または組織を含むペプチドサンプルは、既知の物理的または化学的方法のいずれか1つを用いて溶解され、標的分子(例えば、標的タンパク質)を該細胞または組織から放出する。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、電解法、酵素法、界面活性剤に基づく方法、および/または機械的均質化を用いて溶解され得る。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプル(例えば、複合組織、グラム陽性またはグラム陰性細菌)は、連続して実施される複数の溶解方法を必要とし得る。いくつかの実施形態において、サンプルが細胞または組織(例えば、精製されたタンパク質を含むペプチドサンプル)を含まない場合、溶解ステップを省略することができる。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルの溶解を行って、標的タンパク質を単離する。いくつかの実施形態において、溶解方法は、ペプチドサンプルを粉砕するためのミルの使用、超音波処理、表面音波(SAW)、凍結-解凍サイクル、加熱、界面活性剤の添加、タンパク質分解物(例えば、ヒドロラーゼまたはプロテアーゼなどの酵素)の添加、および/または細胞壁消化酵素(例えば、リゾチームまたはザイモラーゼ)の添加をさらに含む。溶解用の代表的な洗浄剤(例えば、非イオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリソルベートおよびアルキルフェノールエトキシレート、好ましくはノニルフェノールエトキシレート、アルキルグルコシドおよび/またはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが挙げられる。いくつかの実施形態において、溶解方法は、所望の温度(例えば、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、または少なくとも95℃)で、ペプチドサンプルを少なくとも1~30分、1~25分、5~25分、5~20分、10~30分、5~10分、10~20分、または少なくとも5分間加熱することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、緩衝系の存在下で調製、例えば溶解される。この緩衝系は、ペプチドサンプルのスラリーを作製するため、ペプチドサンプルを懸濁するため、および/または本明細書に記載される方法を含む任意の公知の溶解方法の間にペプチドサンプルを安定化するために使用され得る。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、RIPA緩衝液、グアニジン-HCl緩衝液を含むGCI緩衝液、Gly-NP40緩衝液、TRIS緩衝液、HEPES緩衝液、または任意の他の公知の緩衝溶液の存在下で調製される(例えば溶解される)。
【0036】
本明細書に記載される溶解方法の多くは、ペプチドサンプルの細胞壁が破壊されるようにペプチドサンプルを機械的に均質化することによって、ペプチドサンプルが溶解されることを可能にする。例えば、機械的ホモジナイゼーションによって溶解を引き起こす方法としては、ビーズ破砕、加熱(例えば、細胞壁を破壊するのに十分な高温、例えば、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、または95℃超まで)、シリンジ/針/マイクロチャネル通過(せん断を引き起こすため)、超音波処理、またはグラインダーによる浸軟(maceration)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、任意の溶解方法を任意の他の溶解方法と組み合わせてもよい。例えば、溶解速度を速めるために、任意の溶解方法を加熱および/または超音波処理および/またはシリンジ/針/マイクロチャネル通過と組み合わせてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態において、ペプチドサンプル調製は、細胞破壊(すなわち、溶解後の望ましくない細胞および組織要素のその後の除去)を含む。いくつかの実施形態において、細胞破壊は、タンパク質沈殿を伴う。いくつかの実施形態において、沈殿後、溶解および破壊されたペプチドサンプルは、遠心分離に供される。いくつかの実施形態において、遠心分離後、上清は廃棄される。沈殿は、ウインター(Winter),D.およびH.ステーン(Steen)(2011)に記載されている方法を含むがこれらに限定されない複数のプロセスによって達成することができる。「LC-MS/MSによるHeLa S3細胞の分析のための細胞溶解およびタンパク質消化プロトコルの最適化(Optimization of cell lysis and protein digestion protocols for the analysis of HeLa S3 cells by LC-MS/MS)」、PROTEOMICS、11(24):4726~4730。いくつかの実施形態において、タンパク質またはペプチドは免疫沈降される。いくつかの実施形態において、沈殿したタンパク質の遠心分離に続いて、上清を廃棄し、続いてペレット画分を洗浄する(例えば、クロロホルム/メタノールまたはトリクロロ酢酸を使用して洗浄する)。
【0038】
いくつかの実施形態において、ペプチドサンプル(例えば、標的タンパク質を含むペプチドサンプル)は、本開示に従うプロセスにおいて、例えば、溶解後に精製され得る。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、クロマトグラフィー(例えば、ペプチドサンプルを選択的に結合するアフィニティークロマトグラフィー)または電気泳動を使用して精製され得る。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、沈殿剤の存在下で精製され得る。いくつかの実施形態において、精製ステップまたは方法の後、ペプチドサンプルは、溶出緩衝液を用いて、精製マトリックス(例えば、アフィニティークロマトグラフィーマトリックス)から洗浄および/または放出され得る。いくつかの実施形態において、精製ステップまたは方法は、電気活性ポリマーなどの可逆的に切り替え可能なポリマーの使用を含み得る。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、多孔性マトリックス(例えば、酢酸セルロース、アガロース、アクリルアミド)を通るペプチドサンプルの電気泳動通過によって最初に精製され得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、標的分子(複数可)は、濃縮前に断片化/消化される。いくつかの実施形態において、標的分子は、濃縮後に断片化/消化される。いくつかの実施形態において、標的分子(複数可)は、標的分子(複数可)を濃縮することなく断片化/消化される。
【0040】
いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルを調製することは、インキュベーション(例えば、インキュベーションステップの一部として)を含む。インキュベーションステップは、タンパク質、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、およびタンパク質消化剤のそれぞれを含む混合物を含むペプチドサンプルに対して実施され得る。いくつかの実施形態において、インキュベーションの間、還元剤は、タンパク質のアミノ酸側鎖を還元して、還元されたアミノ酸側鎖を形成する。いくつかの実施形態において、(例えば、同じインキュベーションステップ中に)アミノ酸側鎖キャッピング剤は、還元されたアミノ酸側鎖と共有結合を形成して、キャップされたアミノ酸側鎖を形成する。いくつかの実施形態において(例えば、同じインキュベーションステップ中に)、タンパク質消化剤は、タンパク質のタンパク質分解を誘導して1つ以上のペプチドを形成し、それによって消化ペプチドサンプルを形成する。タンパク質消化剤は、キャップされたアミノ酸側鎖を含むタンパク質のタンパク質分解を誘導して、1つ以上のキャップされたペプチドを形成し、それによって、消化されたペプチドサンプルを形成し得る。本開示の文脈において、特定の既存のペプチド消化技術は、上述のプロセス(例えば、還元、キャッピング、タンパク質分解)の一部または全部を別個のステップとして(例えば、それぞれの試薬を段階的に導入することによって)行うことを含み得ることが認識されている。驚くべきことに、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、およびタンパク質消化剤の一部または全部をペプチドと組み合わせる混合物を使用して、満足した消化を達成できることが認識された。ステップおよび試薬のそのような組み合わせは、構成を単純化し、および/またはリザーバおよび試薬入口の数を低減することによって、流体デバイス(例えば、1つ以上のマイクロチャネルを含むカートリッジ)上でのペプチドの消化を促進し得る。上述のプロセス(例えば、還元、キャッピング、タンパク質分解)の一部または全部は、人間の直接的な介入なしに(例えば、精製/ワークアップステップの介入なしに、試薬の手動による移送なしに、中間生成物の手動による移送なしに)インキュベーション領域において同時にまたは順次に起こり得る。いくつかの実施形態において、インキュベーションステップの一部または全部が自動化にて行われる。
【0041】
いくつかの実施形態において、(例えば、流体デバイスのインキュベーション領域において)インキュベーションステップは、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上、または37℃以上、またはそれ以上の温度でペプチドサンプルを維持することを含む。いくつかの実施形態において、インキュベーションステップは、ペプチドサンプルを、70℃以下、50℃以下、37℃以下、35℃以下、または30℃以下の温度で維持することを含む。これらの範囲の組合せが可能である。例えば、インキュベーションステップは、20℃以上かつ70℃以下の温度でペプチドサンプルを維持することを含み得る。いくつかの実施形態において、インキュベーションステップは、ペプチドサンプルを上述の範囲内の温度(例えば、37℃)で、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間、少なくとも25分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、またはそれ以上維持することを含む。いくつかの実施形態において、インキュベーションステップは、ペプチドサンプルを、上述の範囲内の温度(例えば、37℃)で20時間以下、15時間以下、10時間以下、またはそれ未満にわたって維持するステップを含む。組み合わせ(例えば、上述の温度を少なくとも1分間かつ20時間以下、少なくとも6時間かつ10時間以下維持すること)が可能である。
【0042】
インキュベーションは、ペプチドサンプルの消化をもたらし得る。一般に、ペプチドサンプルの消化は、任意の公知の方法を使用して行われ得るが、典型的には、非酵素的方法または酵素的方法を含むであろう。非酵素的消化のためのアプローチとしては、酸加水分解および/または消化剤(例えば、臭化シアン、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、ジメチルスルホキシド塩酸、BNPS-スカトール[2-(2-ニトロフェニルスルフェニル)-3-メチルインドール]、または2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)を使用する切断が挙げられるが、これらに限定されない。電気化学的酸化および/またはマイクロ波と組み合わせた消化を含む電気物理的消化方法も同様に使用することができる。
【0043】
消化の酵素的方法は、典型的には、タンパク質を成分ペプチドに断片化するためにプロテアーゼなどの消化剤を利用する。これらの酵素としては、トリプシン(典型的には、生成されるペプチドのサイズおよびペプチドのカルボキシル末端における塩基性残基の生成のために好まれる)、キモトリプシン、LysC、LysN、AspN、GLucおよび/またはArgCが挙げられる。酵素的断片化/消化方法は、使用の容易さ、速度、自動化および/または有効性に対して選択および調整され得る。いくつかの実施形態において、酵素的方法は、固体基材上への酵素固定化を含む。酵素的方法は、フロー中(例えば、マイクロ流体チャネル中)で実施され得る。いくつかの実施形態において、酵素的方法はインキュベーション領域で実施される。消化方法は自動化にて行うことができる。代替的に、あるいはそれに加えて、消化方法は手動にて行うことができる。酵素消化は、任意の数の酵素または酵素の組み合わせを利用してもよく、公知の非酵素的方法のいずれかをさらに含んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、断片化/消化プロセスは、
図3Aに記載される通りである。いくつかの実施形態において、標的タンパク質(複数可)を含むサンプルは、最初に変性および還元される(例えば、アセトニトリルおよびTCEPを使用して)。いくつかの実施形態において、断片化される標的タンパク質(複数可)は、システインブロックに供される。いくつかの実施形態において、標的タンパク質(複数可)は、トリプシンおよびLysCの混合物を使用して(例えば、120分間)断片化される。酵素反応はクエンチングされてもよい(例えば、流体デバイスのクエンチング領域を用いて)。対照的に、いくつかの実施形態において、断片化/消化プロセスは、単一ステップで実施されてもよく、ここで、TCEP、ヨードアセトアミド、およびトリプシンを含むペプチド混合物は、上記のようなインキュベーション領域においてインキュベートされる。そのようなプロセスの例示的な実施形態を
図3Bに記載する。
【0045】
いくつかの実施形態は、流体デバイス内で消化されたペプチドサンプルのペプチドのうちの1つ以上を官能化して、官能化ペプチドサンプルを形成することを含む。いくつかの実施形態において、官能化することは、1つ以上のペプチドのアミノ酸側鎖を誘導体化することを含む。いくつかの実施形態において、官能化することは、1つ以上のペプチドを末端官能化することを含む(例えば、以下に記載される方法のうちの1つ以上によって)。いくつかの実施形態において、消化されたペプチドサンプルの1つ以上のペプチドを官能化することにより、1つ以上の誘導体化ペプチドを含むクエンチングされていない混合物が形成される。いくつかの実施形態において、誘導体化剤は、アミノ酸側鎖を誘導体化するために使用される(例えば、以下に記載される方法のうちの1つ以上によって)。誘導体化剤は、アジド移動剤(例えば、イミダゾール-1-スルホニルアジド、トリフルオロメタンスルホニルアジド)を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、アジド移動剤は、イミダゾール-1-スルホニルアジドを含む。いくつかの実施形態において、アジド移動剤は、ベンゼンスルホニル-アジドを含む。1つ以上の誘導体化ペプチドを含むクエンチングされていない混合物はまた、過剰な誘導体化剤を含み得る。いくつかの実施形態において、官能化することは、過剰な誘導体化剤の少なくとも一部を除去することによって、クエンチングされていない混合物をクエンチングして、クエンチングされた混合物を形成することをさらに含む。クエンチングされていない混合物をクエンチングする方法は、以下により詳細に記載される。
【0046】
官能化は、1つ以上の誘導体化ペプチドを固定化複合体にコンジュゲートさせて、1つ以上の固定化複合体コンジュゲートペプチドを形成することをさらに含み得る。固定化複合体へのコンジュゲーションは、以下に詳細に記載される。しかしながら、いくつかの特定の実施形態において、固定化複合体は、DBCO、一本鎖DNA、およびストレプトアビジン(SV)を含み得る。例えば、固定化複合体は、DBCO-Q24-SVであってもよい。コンジュゲーションの少なくとも一部は、流体デバイスのインキュベーション領域で行われてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の誘導体化ペプチドを固定化複合体にコンジュゲートすることは、第4の流体デバイス部分の固定化複合体形成領域において行われてもよい。いくつかの実施形態は、クエンチングされた混合物の少なくとも一部を、クエンチング領域から固定化複合体形成領域に自動にて輸送することを含み得る。いくつかの実施形態は、クエンチングされた混合物の少なくとも一部をクエンチング領域からインキュベーション領域に自動にて輸送することを含み得る。
【0047】
標的分子は、末端または位置で官能化され得る。例えば、標的タンパク質は、そのN-末端またはそのC-末端で官能化され得る。
C末端カルボキシレートの官能化
一態様において、本開示は、以下を含む、ペプチドの選択的C末端官能化の方法を提供する:
a.式(I):
【0048】
【0049】
の複数ペプチドまたはその塩を、式(II)の化合物:
【0050】
【0051】
と反応させて、式(III):
【0052】
【0053】
の複数の化合物またはその塩を得るステップ;および
b.式(III)の複数の化合物またはその塩を、式(IV)の化合物:
【0054】
【0055】
と反応させて、式(V):
【0056】
【0057】
の複数の化合物またはその塩を得るステップ、式中、m、n、P、R(CO2H)n、HX、X、L1、L2、R1、R2、YおよびZは以下に定義される。
mは1~25の整数である。特定の実施形態において、mは1~10である。特定の実施形態において、mは5~10である。特定の実施形態において、mは1~5である。特定の実施形態において、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25である。
【0058】
nは1または2である。特定の実施形態において、nは1である。特定の実施形態において、nは2である。
各Pは独立してペプチドである。特定の実施形態において、Pは2~100個のアミノ酸残基を有する。特定の実施形態において、Pは2~30個のアミノ酸残基を有する。
【0059】
各R(CO2H)nは、独立して、n個のカルボキシレート部分を有するアミノ酸残基である。nは1または2である。特定の実施形態において、nは1である。nが1の場合、R(CO2H)nはリジンまたはアルギニンである。特定の実施形態において、R(CO2H)nはリジンである。別の特定の実施形態において、R(CO2H)nはアルギニンである。特定の実施形態において、nは2である。nが2の場合、R(CO2H)nはグルタミン酸またはアスパラギン酸である。特定の実施形態において、R(CO2H)nはグルタミン酸である。別の特定の実施形態において、R(CO2H)nはアスパラギン酸である。
【0060】
HXは、アシル化することができる求核性部分であり、Hはプロトンである。Xは一つ以上のヘテロ原子である。特定の実施形態において、Xは、O、S、またはNH、またはNOである。
【0061】
L1はリンカーである。特定の実施形態において、L1は、置換または非置換の脂肪族鎖であり、ここで、1つまたは複数の炭素原子は、任意に、ヘテロ原子、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリル部分によって独立して置換されていてもよい。特定の実施形態において、L1はポリエチレングリコール(PEG)である。他の実施形態において、L1はペプチド、またはオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態において、L1は5nm未満である。特定の実施形態において、L1は1nm未満である。
【0062】
L2はリンカーであるか、存在しない。特定の実施形態において、L2は、存在しない。特定の実施形態において、L2は、置換または非置換の脂肪族鎖であり、ここで、1つまたは複数の炭素原子は、任意に、ヘテロ原子、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリル部分によって独立して置換されていてもよい。特定の実施形態において、L2はポリエチレングリコール(PEG)である。他の実施形態において、L2はペプチド、またはオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態において、L2は5~20nmである。
【0063】
R1は、クリックケミストリーハンドルを含む部分である。特定の実施形態において、R1はアジド、テトラジン、ニトリルオキシド、アルキンまたは歪みアルケンを含む部分である。特定の実施形態において、アルキンは第一級アルキンである。特定の実施形態において、アルキンは環状(例えば、単環式または多環式)アルキン(例えば、ジアリールシクロオクチンまたはビシクル(bicycle)[6.1.0]ノニン)である。特定の実施形態において、R1はアジドを含む部分である。特定の実施形態において、歪みアルケンはtrans-シクロオクテンである。特定の実施形態において、テトラジンは、以下の構造を含む:
【0064】
【0065】
R2は、R1に相補的なクリックケミストリーハンドルを含む部分である。R2のクリックケミストリーハンドルは、R1とのクリック反応(すなわち、5員複素環を形成する電子環状反応)を受けることができる。例えば、R1がアジド、ニトリルオキシド、またはテトラジンを含む場合、R2はアルキンまたは歪みアルケンを含むことができる。逆に、R1がアルキンまたは歪みアルケンを含む場合、R2はアジド、ニトリルオキシド、またはテトラジンを含むことができる。特定の実施形態において、R2はアジド、テトラジン、ニトリルオキシド、アルキンまたは歪みアルケンを含む部分である。特定の実施形態において、アルキンは第一級アルキンである。特定の実施形態において、アルキンは環状(例えば、単環式または多環式)アルキン(例えば、ジアリールシクロオクチンまたはビシクル(bicycle)[6.1.0]ノニン)である。特定の実施形態において、R2はBCNを含む。他の特定の実施形態において、R2はDBCOを含む。特定の実施形態において、歪みアルケンはtrans-シクロオクテンである。特定の実施形態において、テトラジンは、以下の構造を含む:
【0066】
【0067】
Yは、R1およびR2のクリック反応から生じる部分である。Yは、R1およびR2の反応性クリックケミストリーハンドル間の電気環状反応(例えば、3+2環化付加または4+2環化付加)から生じる5員複素環である。特定の実施形態において、Yは、1,2,3-トリアゾリル、4,5-ジヒドロ-1,2,3-トリアゾリル、イソオキサゾリル、4,5-ジヒドロイソオキサゾリル、または1,4-ジヒドロピリダジル部分を含むジラジカルである。
【0068】
Zは水溶性部分である。特定の実施形態において、Zは、それが結合している化合物に水溶性を付与する。特定の実施形態において、Zはポリエチレングリコール(PEG)を含む。特定の実施形態において、Zは一本鎖DNAを含む。特定の実施形態(例えば、式(V)の化合物)において、Z1はさらにビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む。Zがビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む場合、Zはストレプトアビジンをさらに含むことができる。特定の実施形態において、Zは二本鎖DNAを含む。いくつかの実施形態において、Zの部分は、別の分子または表面に分子間結合することができ、例えば、Zを含む化合物を分子または表面に固定することができる。
【0069】
特定の実施形態において、式(II)の化合物は式(IIa)からなる:
【0070】
【0071】
特定の実施形態において、式(III)の化合物は式(IIIa)からなる:
【0072】
【0073】
特定の実施形態において、nは1である。特定の実施形態において、nは2である。特定の実施形態において、mは1である。特定の実施形態において、mは5である。
特定の実施形態において、式(IV)は、TCOおよび一本鎖DNAを含む。特定の実施形態において、式(IV)は、ビオチン(例えば、ビスビオチン)をさらに含む。特定の実施形態において、式(IV)は、Q24-BisBt-BCNである。特定の実施形態において、式(IV)は、Q24-BisBt-DBCOである。特定の実施形態において、式(IV)は、Q24-BisBt-TCOである。一般に、式(IV)は、分岐部分(例えば、1,3,5-トリカルボン酸部分)を含み得、ここで、2つの分岐は、ビオチン部分への直接的または間接的結合であり、第3の分岐は、水溶性部分への結合である(例えば、Q24などのポリヌクレオチド)。
図4は、ストレプトアビジンに結合したQ24-BisBt-BCNの図を示す。
図5は、特定の実施形態に従う、Q24-BisBt-BCNおよび/またはQ24-BisBt-DBCOの調製のための反応スキームを示す。
図4および
図5に示されるように、特定の実施形態において、式(IV)は、(i)ビスビオチン-アジド官能化リンカーおよび(ii)アルキン(例えば、BCN)官能化ポリヌクレオチド(例えば、Q24)を含む断片のクリックカップリングから誘導されたトリアゾール部分を含む。クリック結合生成物は、BCNまたはDBCOなどのさらなるクリックハンドルR2を導入するべく誘導体化され得る。
【0074】
特定の実施形態において、式(V)の化合物は式(Va)からなる:
【0075】
【0076】
ここで、m、nは1または2であり;L2、YおよびZは上記で定義したとおりである。ある特定の実施形態において、nは1である。ある特定の実施形態において、nは2である。ある特定の実施形態において、mは1である。ある特定の実施形態において、mは5である。ある特定の実施形態において、L2は、存在しない。特定の実施形態において、Yは、1,2,3-トリアゾリル、4,5-ジヒドロ-1,2,3-トリアゾリル、イソキサゾリル、4,5-ジヒドロイソキサゾリルおよび1,4-ジヒドロピリダジルから選択される部分を含む。特定の実施形態において、Zは一本鎖DNAを含む。特定の実施形態において、ZはQ24を含む。特定の実施形態において、Zは二本鎖DNAを含む。特定の実施形態において、Zは二本鎖DNAを含む。特定の実施形態において、Zはビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む。特定の実施形態において、Zはストレプトアビジンをさらに含む。
【0077】
特定の実施形態において、ステップ(a)の反応は、カルボジイミド試薬の存在下で実施される。特定の実施形態において、カルボジイミド試薬は水溶性である。特定の実施形態において、カルボジイミド試薬は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)である。特定の実施形態において、ステップ(a)の反応は、3~5の範囲のpHで実施される。特定の実施形態(例えば、総ペプチド濃度が1mM未満になる場合)において、EDCの濃度は約10mMであり、式(II)の化合物の濃度は約20mMである。特定の実施形態(例えば、下記のようなトリプシン/LysC消化に関連して)において、式(II)の化合物の濃度は約50mMであり得、そしてEDCの濃度はC末端分子内環化を抑制するために約25mMであり得る。
【0078】
ステップ(a)の特定の実施形態において、式(III)の複数の化合物は、ステップ(b)の前に、例えば、化合物をG10セファデックスカラムに通すことによって、および/または化合物をC18樹脂カラムに通すことによって濃縮される。C18樹脂ベースの濃縮の使用は、式(II)の化合物が約200g/molより大きい場合に特に有用である。濃縮にG-10セファデックスを使用する場合、溶出緩衝液は0.5×PBS(pH7.0)とすることができる。濃縮にC18樹脂を使用する場合、溶出緩衝液は、水中の80%アセトニトリルと0.1%ギ酸とすることができる。ステップ(b)の前に、C18溶離液を乾燥し、残渣を0.5×PBS中に再懸濁させてもよい。
【0079】
特定の実施形態において、ステップ(a)の反応は、固定化されたカルボジイミド試薬の存在下で実施される。例えば、カルボジイミド試薬は、反応溶媒中で固定および/または不溶性である部分に共有結合され得、それによって、過剰な試薬および/または反応副産物および/または未反応ペプチドの分離を容易にする。ある特定の実施形態において、固定化カルボジイミド試薬は、ポリスチレン(PS)などの樹脂に共有結合しているカルボジイミド部分を含む。特定の実施形態において、PS-固定化カルボジイミド試薬は以下の式からなる:
【0080】
【0081】
特定の実施形態において、ステップ(a)の反応が、固定化カルボジイミド試薬、例えば、本明細書に記載されるPS-固定化試薬の存在下で行われる場合、反応は、4~5の範囲のpHで、および/または周囲温度で、および/または約20分間行われる。
【0082】
特定の実施形態において、固定化カルボジイミド試薬、例えば、本明細書に記載されるPS-固定化試薬の存在下でステップ(a)の反応を行うことは、未反応ペプチドが固定化カルボジイミド試薬に共有結合したままであるため、全ての未反応(すなわち、非アシル化)ペプチドの除去を容易にする。
【0083】
固定化カルボジイミド試薬を使用する例示的なプロセスを
図6に示す。自動化互換プロセスの例示的なフローチャートを
図7に示す。ステップ(b)の特定の実施形態において、式(III)の複数の化合物と式(IV)の化合物との間のクリック反応は触媒作用を受けない。特定の実施形態において、クリック反応は、例えば、銅塩(例えば、Cu
+塩、またはその場でCu
+塩に還元されるCu
2+塩)を用いて触媒される。適切なCu
2+塩はCuSO
4を含む。特定の実施形態において、ステップ(b)の反応は、反応混合物を加熱することを含む。
【0084】
特定の実施形態において、式(IV)の化合物は、式(III)の複数の化合物に添加される。特定の実施形態において、式(IV)の化合物および式(III)の複数の化合物の総濃度は、10μM~1mMの範囲に維持される。
【0085】
ステップ(b)の特定の実施形態において、Zが一本鎖DNAを含む場合、方法は、相補的DNA鎖を一本鎖DNAにハイブリダイズして、Zが二本鎖DNAを含む化合物を得ることをさらに含む。特定の実施形態において、一本鎖DNAはQ24であり、相補的DNA鎖はCy3B標識Q24相補鎖である。
【0086】
ステップ(b)の特定の実施形態において、Zがビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む場合、方法は、ビオチン(例えば、ビスビオチン)をストレプトアビジンと接触させて、Zがビオチン(例えば、ビスビオチン)およびストレプトアビジンを含む化合物を得ることをさらに含む。
【0087】
特定の実施形態において、式(I)の複数のペプチドまたはその塩は、タンパク質を酵素消化に供して、式(I)の複数のペプチドまたはその塩を含む消化混合物を得ることによって得られる。特定の実施形態において、酵素消化は、タンパク質のアスパラギン酸および/またはグルタミン酸残基のC末端結合を切断することを含む。ある特定の実施形態において、酵素消化はGlu-C消化である。
【0088】
特定の実施形態において、20μgのタンパク質の消化後の式(I)の複数のペプチドまたはその塩の総濃度は、100μM未満である。
特定の実施形態において、酵素消化は、リン酸緩衝液(pH7.8)または重炭酸アンモニウム緩衝液(pH4.0)中で実施される。
【0089】
特定の実施形態において、酵素消化は、タンパク質のリジンおよび/またはアルギニン残基のC末端結合を切断することを含む。ある特定の実施形態において、酵素消化はトリプシン+Lys-C消化である。
【0090】
特定の実施形態において、タンパク質のカルボン酸部分は、存在する場合、酵素消化の前に保護される。例えば、タンパク質のカルボン酸部分は、存在する場合は、酵素消化の前にエステル化することができる。ある特定の実施形態において、エステル化カルボン酸はメチルエステルである。
【0091】
特定の実施形態において、タンパク質のスルフィド部分は、酵素消化の前に保護される。ある特定の実施形態において、スルフィド部分は、タンパク質をトリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびヨードアセトアミド(ICM)、またはマレイミドに曝露することによって保護される。
【0092】
ある特定の実施形態において、TCEPは、塩酸塩、すなわちTCEP・HClの形態で存在する。
特定の実施形態において、方法は、ステップ(a)の前に消化混合物を濃縮するステップをさらに含む。
【0093】
C末端アミン官能化
別の態様において、本開示は、以下を含む、ペプチドの選択的C末端アミン官能化の方法を提供する:
a.式(VI):
【0094】
【0095】
の複数のペプチドまたはその塩を、式(VII):
【0096】
【0097】
の化合物と反応させて、式(VIII):
【0098】
【0099】
の複数の化合物またはその塩を得るステップ;および
b.式(VIII)の複数の化合物またはその塩を、式(IX):
【0100】
【0101】
の化合物と反応させて、式(X)の複数の化合物:
【0102】
【0103】
またはその塩を得るステップ、式中、P、L3、L4、R3、R4、Y1およびZ1は以下に定義される。
各Pは独立してペプチドである。特定の実施形態において、Pは2~100個のアミノ酸残基を有する。特定の実施形態において、Pは2~30個のアミノ酸残基を有する。
【0104】
L3はリンカーである。特定の実施形態において、L3は、置換または非置換の脂肪族鎖であり、ここで、1つまたは複数の炭素原子は、任意に、ヘテロ原子、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリル部分によって独立して置換されていてもよい。特定の実施形態において、L3はポリエチレングリコール(PEG)である。他の実施形態において、L3はペプチド、またはオリゴヌクレオチドである。
【0105】
L4はリンカーであるか、存在しない。特定の実施形態において、L4は、存在しない。特定の実施形態において、L4は、置換または非置換の脂肪族鎖であり、ここで、1つまたは複数の炭素原子は、任意に、ヘテロ原子、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリル部分によって独立して置換されていてもよい。特定の実施形態において、L4はポリエチレングリコール(PEG)である。他の実施形態において、L4はペプチド、またはオリゴヌクレオチドである。
【0106】
R3は、クリックケミストリーハンドルを含む部分である。特定の実施形態において、R3はアジド、テトラジン、ニトリルオキシド、アルキンまたは歪みアルケンを含む部分である。特定の実施形態において、アルキンは第一級アルキンである。特定の実施形態において、アルキンは環状(例えば、単環式または多環式)アルキン(例えば、ジアリールシクロオクチンまたはビシクル(bicycle)[6.1.0]ノニン)である。特定の実施形態において、歪みアルケンはtrans-シクロオクテンである。特定の実施形態において、R1はアジドを含む部分である。特定の実施形態において、テトラジンは、以下の構造を含む:
【0107】
【0108】
R4は、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換ヘテロアリールである。特定の実施形態において、R4は、置換もしくは非置換フェニルである。ある特定の実施形態において、L4はフェニルである。ある特定の実施形態において、L4は4-ニトロフェニルである。
【0109】
R5は、R3に相補的なクリックケミストリーハンドルを含む部分である。R5のクリックケミストリーハンドルは、R3とのクリック反応(すなわち、5員複素環を形成する電子環状反応)を受けることができる。例えば、R3がアジド、ニトリルオキシド、またはテトラジンを含む場合、R5はアルキンまたは歪みアルケンを含むことができる。逆に、R3がアルキンまたは歪みアルケンを含む場合、R5はアジド、ニトリルオキシド、またはテトラジンを含むことができる。特定の実施形態において、R5はアジド、テトラジン、ニトリルオキシド、アルキンまたは歪みアルケンを含む部分である。特定の実施形態において、アルキンは第一級アルキンである。特定の実施形態において、アルキンは環状(例えば、単環式または多環式)アルキン(例えば、ジアリールシクロオクチンまたはビシクル(bicycle)[6.1.0]ノニン)である。特定の実施形態において、R5はBCNを含む。他の特定の実施形態において、R5はDBCOを含む。特定の実施形態において、歪みアルケンはtrans-シクロオクテンである。特定の実施形態において、テトラジンは、以下の構造を含む:
【0110】
【0111】
Y1は、R3およびR5のクリック反応から生じる部分である。Y1は、R3およびR5の反応性クリックケミストリーハンドル間の電気環状反応(例えば、3+2環化付加または4+2環化付加)から生じる5員複素環である。特定の実施形態において、Y1は、1,2,3-トリアゾリル、4,5-ジヒドロ-1,2,3-トリアゾリル、イソオキサゾリル、4,5-ジヒドロイソオキサゾリル、または1,4-ジヒドロピリダジル部分を含むジラジカルである。
【0112】
Z1は水溶性部分である。特定の実施形態において、Z1は、それが結合している化合物に水溶性を付与する。特定の実施形態において、Z1はポリエチレングリコール(PEG)である。特定の実施形態において、Z1は一本鎖DNAを含む。ある特定の実施形態において、Z1はQ24を含む。特定の実施形態において、Z1は一本鎖DNAを含む。特定の実施形態(例えば、式(V)の化合物)において、Z1はさらにビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む。Z1がビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む場合、Z1はストレプトアビジンをさらに含むことができる。特定の実施形態において、Z1は二本鎖DNAを含む。いくつかの実施形態において、Z1の部分は、別の分子または表面に分子間結合することができ、例えば、Z1を含む化合物を分子または表面に固定することができる。
【0113】
特定の実施形態において、式(VII)の化合物は以下の式から選択される:
【0114】
【0115】
特定の実施形態において、式(VIII)は式(VIIIa)または式(VIIIb)からなる:
【0116】
【0117】
特定の実施形態において、式(IX)は、TCO、一本鎖DNA、およびビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む。特定の実施形態において、式(IX)は、Q24-BisBt-BCNである。特定の実施形態において、式(IX)は、Q24-BisBt-DBCOである。特定の実施形態において、式(IX)は、Q24-BisBt-TCOである。一般に、式(IX)は、分岐部分(例えば、1,3,5-トリカルボン酸部分)を含み得、ここで、2つの分岐は、ビオチン部分への直接的または間接的結合であり、第3の分岐は、水溶性部分への結合である(例えば、Q24などのポリヌクレオチド)。
図4および
図5に示されるように、特定の実施形態において、式(IX)は、(i)ビスビオチン-アジド官能化リンカーおよび(ii)アルキン(例えば、BCN)官能化ポリヌクレオチド(例えば、Q24)を含む断片のクリックカップリングから誘導されたトリアゾール部分を含む。クリック結合生成物は、BCNまたはDBCOなどのさらなるクリックハンドルR
6を導入するべく誘導体化され得る。
【0118】
特定の実施形態において、ステップ(a)の反応は、約20mM~500mMの範囲の濃度および約9~11の範囲のpHを有する緩衝液と、全体積の約20~70%の範囲のアセトニトリルとの存在下で行われる。特定の実施形態において、ステップ(a)の反応は、pH9.5の緩衝液/アセトニトリル(1:3v/v)中、約37℃で実施される。特定の実施形態において、ステップ(a)の反応は、約500μM~50mMの濃度の式(VII)の化合物を使用して実施される。
【0119】
特定の実施形態において、式(VIII)の複数の化合物は、ステップ(b)の前に濃縮される。特定の実施形態において、濃縮は、酢酸エチル/ヘキサン抽出を含む。酢酸エチル/ヘキサンの適切な範囲は、限定されるものではないが、ヘキサン中の20~100体積%の酢酸エチルが含まれる。特定の実施形態において、抽出に使用される有機溶媒の体積は、水層の体積の約10倍である。抽出には、例えば、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエンおよびn-1-ブタノールなど、他の水と混和しない有機溶媒を使用できる。
【0120】
特定の実施形態において、ステップ(b)の反応は、式(VIII)の化合物を約1当量の式(IX)の化合物と反応させることを含む。特定の実施形態において、ステップ(b)の反応は、反応混合物を加熱することを含む。
【0121】
ステップ(b)の特定の実施形態において、Z1が一本鎖DNAを含む場合、方法は、相補的DNA鎖を一本鎖DNAにハイブリダイズして、Z1が二本鎖DNAを含む化合物を得ることをさらに含む。特定の実施形態において、一本鎖DNAはQ24であり、相補的DNA鎖はCy3B標識Q24相補鎖である。
【0122】
ステップ(b)の特定の実施形態において、Z1がビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む場合、方法は、ビオチン(例えば、ビスビオチン)をストレプトアビジンと接触させて、Z1がビオチン(例えば、ビスビオチン)およびストレプトアビジンを含む化合物を得ることをさらに含む。
【0123】
特定の実施形態において、式(VI)の複数のペプチドまたはその塩は、タンパク質を酵素消化に供して、式(VI)の複数のペプチドまたはその塩を含む消化混合物を得ることによって得られる。酵素消化は、タンパク質のリジンおよび/またはアルギニン残基のC末端結合を切断することを含む。特定の実施形態において、酵素消化は、トリプシン、Lys-C、またはそれらの組み合わせを使用して実施される。特定の実施形態において、酵素消化は、Tris-HCl緩衝液(pH8.5)中でタンパク質をトリプシンおよびLys-Cと反応させることを含む。特定の実施形態において、20μgのタンパク質の消化後の式(VI)の複数のペプチドまたはその塩の総濃度は、100μM未満である。特定の実施形態において、酵素消化は、タンパク質をトリプシンと反応させることを含み、トリプシン:タンパク質のモル比は、1:50~1:200の範囲である。
【0124】
特定の実施形態において、タンパク質のスルフィド部分は、酵素消化の前に保護される。ある特定の実施形態において、スルフィド部分は、タンパク質をトリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびヨードアセトアミド(ICM)、またはマレイミドに曝露することによって保護される。
【0125】
特定の実施形態において、方法は、ステップ(a)の前に消化混合物を濃縮するステップをさらに含む。特定の実施形態において、消化混合物は、濃縮または精製なしで、ペプチドの選択的C末端アミン官能基化の方法において使用される。
【0126】
ジアゾ転移を介したアミノ酸側鎖誘導体化
配列決定の前に、消化されたペプチドは、配列決定基材上にペプチドを固定化することができる部分で官能化されなければならない。いくつかの実施形態において、アミノ酸側鎖誘導体化によって達成される。したがって、本開示は、ペプチドのアミノ酸側鎖の選択的N-官能基化の方法を提供し、同方法は、式(XI):
【0127】
【0128】
の複数のペプチドまたはその塩を、式(XII):
【0129】
【0130】
の化合物のような誘導化剤と反応させること(ここで、各Pは独立してN-末端アミンを有するペプチドである):
Cu2+またはその前駆体、および約7~8.5のpHを有する緩衝液を含む条件(a)下で、式(XIIIa):
【0131】
【0132】
の複数のN末端アジド化合物またはその塩を得る;あるいは
Cu2+またはその前駆体、および約10~11のpHを有する緩衝液を含む条件(b)下で、式(XIII):
【0133】
【0134】
の複数のεアジド化合物またはその塩を得る、ことを含む。
いくつか実施形態において、式(XII)の誘導体化剤は塩の形態で存在する。ある特定の実施形態において、式(XII)の化合物は、イミダゾール-1-スルホニルアジドテトラフルオロボレートである。いくつか実施形態において、式(XII)の化合物またはその塩は、試薬溶液の形態で存在する。特定の実施形態において、試薬溶液は、pH調整試薬(例えば、水酸化カリウム)を含む。
【0135】
本開示の文脈において、pH調整試薬は、溶液のpHを化学反応のための所望の値に調整するのに適した任意の化学物質を含み得る。いくつかの実施形態において、pH調整試薬は、塩基(例えば、強塩基、弱塩基)を含む。いくつかの実施形態において、pH調整試薬は、酸(例えば、強酸、弱酸)を含む。いくつかの実施形態において、pH調整試薬は緩衝液を含む。
【0136】
各Pは独立して、N末端アミンを有するペプチドである。特定の実施形態において、Pは2~100個のアミノ酸残基を有する。特定の実施形態において、Pは2~30個のアミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態において、反応におけるペプチドの濃度は、必要な任意の考えられる濃度である。
【0137】
特定の実施形態において、条件(a)は、適切なCu2+塩、例えばCuSO4のような触媒試薬を含む。特定の実施形態において、条件(a)は、約25℃で約30~60分間の反応を含む。特定の実施形態において、条件(a)は周囲温度(例えば、約25℃)で約30~60分間の反応を含む。
【0138】
特定の実施形態において、式(XII)の化合物は、500Da以下のアリール/ヘテロアリールスルホニルアジド化合物によって置き換えられる。例えば、式(XII)の化合物は、式(XIIa)の化合物で置き換えることができる:
【0139】
【0140】
RAは、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換ヘテロアリールである。
特定の実施形態において、条件(b)は、pH10.5のリン酸緩衝液または重炭酸緩衝液を含むことを含む(inclde comprise)。ある特定の実施形態において、条件(b)は、好適なpH調整試薬(例えば、炭酸カリウム)を含む。特定の実施形態において、条件(b)は、Cu2+塩、例えば、CuCl2、CuBr2、Cu(OH)2、またはCuSO4などの適切な触媒試薬を含む。特定の実施形態において、Cu2+塩は、CuSO4である。特定の実施形態において、Cu2+塩のモル量は、式(XI)の化合物のモル量の約2.5倍である。特定の実施形態において、条件(b)は、Cu2+塩の濃度が約250μMであることを含む。いくつかの実施形態において、条件(b)は、Cu2+塩の濃度が1~5mMまたは100~1000μMであることを含む。
【0141】
特定の実施形態において、条件(b)は、約20~30℃、例えば、20~25℃、22~27℃、25~30℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、または30℃での反応をさらに含む。
【0142】
ある特定の実施形態において、条件(b)は、約30~60分間、例えば、30~35分間、35~40分間、40~45分間、45~50分間、50~55分間、または55~60分間の反応をさらに含む。特定の実施形態において、条件(b)は周囲温度(例えば、約25℃)で約60分間の反応を含む。
【0143】
いくつか実施形態において、式(XIIa)の化合物は溶液の形態で存在する。特定の実施形態において、溶液は塩基(例えば、水酸化カリウム)を含む。
特定の実施形態において、条件(b)下でのジアゾ転移反応のN末端:ε選択性は、少なくとも約90%である。
【0144】
ジアゾ移動反応のクエンチング
特定の実施形態において、本明細書に記載されるジアゾ転移化学を利用する方法は、スルホニルアジド試薬を中和する材料を添加することによって未反応のスルホニルアジド試薬をクエンチングする(すなわち、中和する)ステップをさらに含む。特定の実施形態において、材料は樹脂またはビーズ、例えばポリスチレンビーズである。特定の実施形態において、材料は官能基、例えばポリスチレンポリアミンビーズを含む。有利なことに、樹脂またはビーズは濾過によって除去することができる。いくつかの実施形態において、式(XI)の複数のペプチドまたはその塩は、タンパク質を酵素消化に供して、式(XI)の複数のペプチドまたはその塩を含む消化混合物を得ることによって得られる。酵素消化は、タンパク質のアスパラギン酸および/またはグルタミン酸残基のC末端結合を切断することを含む。
【0145】
いくつか実施形態において、酵素消化はトリプシン+Lys-C消化である。いくつかの実施形態において、トリプシン+Lys-C消化は、pH9.5緩衝液中で室温にてタンパク質をトリプシンおよびLys-Cと反応させることを含む。
【0146】
いくつかの実施形態において、方法は、複数の式(XIIIb)の化合物またはその塩を濃縮することをさらに含む。
固定化複合体の形成
いくつかの実施形態において、方法は、複数の式(XIIIb)の化合物またはその塩を、式(XIV):
【0147】
【0148】
(式中、R6はアルキンまたはひずみアルケンを含む部分であり;L5はリンカーであるか、または存在しせず;Z2は水溶性の部分である)
の化合物などの固定化複合体と反応させて、
式(XV):
【0149】
【0150】
の複数の化合物またはその塩を得ることを含み、
ここで、Y2は、式(XIIIb)のアジド部分およびR6とのクリック反応から生じる部分である。
【0151】
R6は、式(XIIIb)のアジド部分に相補的なクリックケミストリーハンドルを含む部分である。R6のクリックケミストリーハンドルは、式(XIIIb)のアジド部分とのとのクリック反応(すなわち、5員複素環を形成する電子環状反応)を受けることができる。特定の実施形態において、R6は、アルキンまたは歪みアルケンを含む。特定の実施形態において、アルキンは第一級アルキンである。特定の実施形態において、アルキンは環状(例えば、単環式または多環式)アルキン(例えば、ジアリールシクロオクチンまたはビシクル(bicycle)[6.1.0]ノニン)である。特定の実施形態において、R6はBCNを含む。他の特定の実施形態において、R6はDBCOを含む。特定の実施形態において、歪みアルケンはtrans-シクロオクテンである。
【0152】
特定の実施形態において、L5は、存在しない。特定の実施形態において、L5は、置換または非置換の脂肪族鎖であり、ここで、1つまたは複数の炭素原子は、任意に、ヘテロ原子、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリル部分によって置換されていてもよい。特定の実施形態において、L5はポリエチレングリコール(PEG)である。他の実施形態において、L5はペプチド、またはオリゴヌクレオチドである。
【0153】
特定の実施形態において、Z2はPEGを含む。特定の実施形態において、Z2は一本鎖DNAを含む。特定の実施形態において、Z2は二本鎖DNAを含む。特定の実施形態において、Z2は、ビオチン(例えば、ビスビオチン)をさらに含む。特定の実施形態において、Z2が一本鎖DNAを含む場合、方法は、相補的DNA鎖を一本鎖DNAにハイブリダイズして、Z2が二本鎖DNAを含む化合物を得ることをさらに含む。特定の実施形態において、一本鎖DNAはQ24であり、相補的DNA鎖はCy3Bである。
【0154】
特定の実施形態において、式(XIV)の化合物は固定化複合体である。特定の実施形態において、式(XIV)の化合物は、TCO、一本鎖DNA、およびビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む。特定の実施形態において、式(XIV)は、Q24-BisBt-BCNである。特定の実施形態において、式(XIV)は、Q24-BisBt-DBCOである。特定の実施形態において、式(XIV)は、Q24-BisBt-TCOである。一般に、式(XIV)は、分岐部分(例えば、1,3,5-トリカルボン酸部分)を含み得、ここで、2つの分岐は、ビオチン部分への直接的または間接的結合であり、第3の分岐は、水溶性部分(例えば、Q24などのポリヌクレオチド)への結合である。
図4および
図5に示されるように、特定の実施形態において、式(XIV)は、(i)ビスビオチン-アジド官能化リンカーおよび(ii)アルキン(例えば、BCN)官能化ポリヌクレオチド(例えば、Q24)を含む断片のクリックカップリングから誘導されたトリアゾール部分を含む。クリック結合生成物は、BCNまたはDBCOなどのさらなるクリックハンドルR
6を導入するべく誘導体化され得る。
【0155】
別の実施形態において、式(XIV)の固定化複合体は、DBCO、一本鎖DNA、およびストレプトアビジン(SV)を含む。ある特定の実施形態において、式(XIV)の化合物は、DBCO-Q24-SVである。
【0156】
特定の実施形態において、Z2がビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む場合、方法は、ビオチン(例えば、ビスビオチン)をストレプトアビジンと接触させて、Z2がビオチン(例えば、ビスビオチン)およびストレプトアビジンを含む化合物を得ることをさらに含む。他の実施形態において、Z2がストレプトアビジンを含む場合、方法は、ストレプトアビジンをビオチン(例えば、ビスビオチン)と接触させて、Z2がストレプトアビジンおよびビオチン(例えば、ビスビオチン)を含む化合物を得ることをさらに含む。
【0157】
クリックケミストリー
特定の実施形態において、ホストをタグにコンジュゲートするために使用される反応は、「クリックケミストリー」反応(例えば、ヒュスゲン(Huisgen)アルキン-アジド付加環化)である。この目的のために、当技術分野で知られている任意の「クリックケミストリー」反応を使用できることを理解されたい。クリックケミストリーは、2001年にシャープレス(Sharpless)によって導入された化学的アプローチであり、小さなユニットを結合することによって物質を迅速かつ確実に生成するように調整された化学を説明する。例えば、コルブ(Kolb)、フィン(Finn)およびシャープレス(Sharpless)、Angewandte Chemie International Edition(2001)、40:2004-2021;エバンス(Evans)、Australian Journal of Chemistry(2007)、60:384-395を参照されたい。例示的なカップリング反応(その一部は「クリックケミストリー」として分類することができる)には、限定されるものではないが、活性化された酸またはハロゲン化アシルからのエステル、チオエステル、アミド(例えば、ペプチドカップリングなど)の形成;求核置換反応(例えば、ハロゲン化物の求核置換または歪んだ環系の開環);アジド-アルキンヒュスゲン環状付加;チオール-イン付加;イミン生成;マイケル(Michael)付加(例えばマレイミド付加);およびディールス・アルダー(Diels-Alder)反応(例えば、テトラジン[4+2]環状付加)が含まれる。
【0158】
「クリックケミストリー」という用語は、The Scripps Research Instituteの K.Barry Sharpless(バリー シャープレス)によって導入された化学合成技術を指し、反応基を含む小さなユニットを一緒に結合することによって共有結合を迅速かつ確実に生成するように調整された化学を説明している。例えば、コルブ(Kolb)、フィン(Finn)およびシャープレス(Sharpless)、Angewandte Chemie International Edition(2001)、40:2004-2021;エバンス(Evans)、Australian Journal of Chemistry(2007)、60:384-395を参照されたい。例示的な反応には、限定されるものではないが、アジド-アルキンヒュスゲン環状付加およびディールス・アルダー反応(例えば、テトラジン[4+2]環状付加)が含まれる。いくつかの実施形態において、クリックケミストリー反応は、モジュール式であり、範囲が広く、高い化学収率を与え、無害な副産物を生成し、立体特異的であり、単一の反応生成物との反応を促進するために>84kJ/molの大きな熱力学的駆動力を示し、および/または生理的条件下で実施することができる。いくつかの実施形態において、クリックケミストリー反応は、高い原子経済性を示し、単純な反応条件下で実施することができ、容易に入手可能な出発物質および試薬を使用し、毒性溶媒を使用しないか、または良性または容易に除去される溶媒(好ましくは水)を使用し、および/または非クロマトグラフィー法(結晶化または蒸留)による単純な生成物の単離を提供する。
【0159】
本明細書で使用される「クリックケミストリーハンドル」という用語は、クリックケミストリー反応に参加できる反応物または反応基を指す。たとえば、歪を有するアルキン、たとえばシクロオクチンは、歪みによって促進される環化付加(例えば表1参照)に参加できるので、クリックケミストリーのハンドルである。一般に、クリックケミストリー反応には、相互に反応できるクリックケミストリーハンドルを含む少なくとも2つの分子が必要である。互いに反応するこのようなクリックケミストリーハンドル対は、本明細書ではパートナークリックケミストリーハンドルと呼ばれることがある。たとえば、アジドは、シクロオクチンまたはその他のアルキンへのパートナークリックケミストリーハンドルである。本発明のいくつかの態様による使用に適した例示的なクリックケミストリーハンドルは、本明細書、例えば、表1および2に記載されている。他の適切なクリックケミストリーハンドルは、当業者に知られている。
【0160】
【0161】
いくつかの実施形態において、金属触媒、例えば銅(II)の存在下で反応して共有結合を形成することができるクリックケミストリーハンドルが使用される。いくつかの実施形態において、金属触媒の非存在下で反応して共有結合を形成することができるクリックケミストリーハンドルが使用される。このようなクリックケミストリーハンドルは当業者に周知であり、例えば、ベーサー(Becer)、ホーゲンブーム(Hoogenboom)およびシューベルト(Schubert)、金属触媒による環状付加を越えたクリックケミストリー(Click Chemistry beyond Metal-Cathased Cycloadding)、Angewandte Chemie International Edition(2009)48:4900-4908に記載されているクリックケミストリーハンドルがある。
【0162】
【0163】
本明細書に記載されるコンジュゲートの方法での使用に適した付加的なクリックケミストリーハンドルは、当業者に周知であり、そのようなクリックケミストリーハンドルは、限定されるものではないが、PCT/US2012/044584および本明細書における参照に記載されるクリックケミストリー反応パートナー、グループ、およびハンドル、ならびにその中の参考文献を含み、これらの参考文献は、クリックケミストリーハンドルおよび方法論について参照により本明細書に組み込まれる。
【0164】
化合物:
特定の態様では、本開示は、様々な実施形態で本明細書に記載されるように、式(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(V)、(Va)、(VII)、(VIII)、(VIIIa)、(VIIIb)、(XIV)、(X)、(XI)、(XII)、(XIIIa)、(XIIIb)、(XV)の化合物およびそれらの塩を提供する。
【0165】
特定の実施形態において、化合物は水溶性である。
ペプチド表面固定化
特定の実施形態において、化合物は、ペプチド配列決定などのタンパク質およびペプチドの分析に関連する用途に有用である。例えば、特定の実施形態において、式(V)、(X)、(XV)の化合物、およびそれらの塩は、共有結合または非共有結合で表面に結合することができる。
【0166】
ある分析法(例えば、単一分子分析法)において、分析される分子は、溶液中の他の反応成分からの干渉なしに分子を監視できるように、表面に固定化される。いくつかの実施形態において、分子の表面固定化により、分子が関与する反応をリアルタイムで監視するために、分子を表面の所望の領域に閉じ込めることが可能になる。
【0167】
したがって、いくつかの態様において、本出願は、本明細書に記載の化合物のいずれか1つを固体支持体の表面に付着させることによってペプチドを表面に固定化する方法を提供する。固体支持体は、本明細書に記載されるサンプル調製のための流体デバイスの下流の検出モジュール(例えば、配列決定モジュール)に結合可能な物品の一部であってもよい。いくつかの実施形態において、方法は、式(V)、(X)、(XV)の化合物またはその塩を固体支持体の表面に接触させることを含む。いくつかの実施形態において、表面は、ペプチドの官能化末端への付着(例えば、共有結合または非共有結合)のために構成された相補的官能基部分で官能化される。いくつかの実施形態において、固体支持体は、固体支持体の表面に形成された複数のサンプルウェルを含む。いくつかの実施形態において、方法は、単一のペプチドを複数のサンプルウェルのそれぞれの表面に固定化することを含む。いくつかの実施形態において、サンプルウェルごとに単一のペプチドを閉じ込めること(confining)は、単一分子の検出方法、例えば、単一分子ペプチド配列決定にとって有利である。
【0168】
本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態において、表面は、基材または固体支持体の表面を指す。いくつかの実施形態において、固体支持体は、本明細書に記載の官能化ペプチドなどの沈着材料を支持することができる受承面などの表面を有する材料、層、または他の構造を指す。いくつかの実施形態において、基材の受承面は、サンプルウェルのアレイなどのナノスケールまたはマイクロスケールの陥凹特徴を含む、1つまたは複数の特徴を任意に有していてもよい。いくつかの実施形態において、アレイは、センサーまたはサンプルウェルなどの要素の平面配置である。アレイは、一次元または二次元であってもよい。一次元のアレイは、第1の次元に要素の1つの列または行を有し、第2の次元に複数の列または行を有するアレイである。第1および第2の次元の列または行の数は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、アレイは、例えば、102、103、104、105、106、または107個のサンプルウェルを含み得る。
【0169】
ペプチド表面固定化の例示的スキームを
図8に示す。示されるように、パネル(I)~(II)は、官能化末端902を含むペプチド900を固定化するプロセスを描写する。パネル(I)において、サンプルウェルを含む固体支持体が示されている。いくつかの実施形態において、サンプルウェルは、非金属層910を含む底面および金属層912を含む側壁面によって形成される。いくつかの実施形態において、非金属層910は、透明層(例えば、ガラス、シリカ)を含む。いくつかの実施形態において、金属層912は、透明層(例えば、二酸化チタン)を含む。いくつかの実施形態において、金属層912は、透明層(例えば、有機ホスホネート層などのリン含有層)を含む。示されるように、非金属層910を含む底面は、相補的機能部分904を含む。選択的表面修飾および官能化の方法は、米国特許出願公開第2018/0326412号明細書、米国仮出願第62/914,356号および米国特許出願公開第2021/0129179号明細書にさらに詳細に記載されており、これらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0170】
いくつかの実施形態において、官能化末端902を含むペプチド900は、固体支持体の相補的官能部分904と接触して、共有結合または非共有結合基を形成する。いくつかの実施形態において、官能化末端902および相補的官能部分904は、例えば、ペプチド900と固体支持体との間に共有結合基を形成するパートナークリックケミストリーハンドルを含む。適切なクリックケミストリーハンドルは、本明細書の別の場所に記載されている。いくつかの実施形態において、官能化末端902および相補的官能部分904は、例えば、ペプチド900と固体支持体との間に非共有結合基を形成する非共有結合パートナーを含む。非共有結合パートナーの例には、相補的オリゴヌクレオチド鎖(例えば、DNA、RNA、およびそれらのバリアントを含む相補的核酸鎖)、タンパク質-タンパク質結合パートナー(例えば、バルナーゼおよびバースター)、およびタンパク質-リガンド結合パートナー(例えば、ビオチンおよびストレプトアビジン)が含まれる。
【0171】
パネル(II)において、ペプチド900は、官能化された末端902と相補的な官能部分904とを接触させることによって形成される連結基を介して底面に固定化されていることが示されている。この例では、ペプチド900は、パネル(III)のズーム領域に示されている非共有結合基を介して結合している。示されるように、いくつかの実施形態において、非共有結合基は、アビジンタンパク質920を含む。アビジンタンパク質はビオチン結合タンパク質であり、一般にアビジンタンパク質の4つのサブユニットのそれぞれにビオチン結合部位を有している。アビジンタンパク質には、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、トラプタビジン、タマビジン、ブラダビジン、ゼナアビジン、およびそれらの相同体およびバリアントが含まれる。いくつかの実施形態において、アビジンタンパク質920はストレプトアビジンである。アビジンタンパク質920の多価性は、4つの結合部位のそれぞれが独立してビオチン分子(白丸で示されている)と結合することができるので、様々な結合配置を可能にすることができる。
【0172】
パネル(III)に示されるように、いくつかの実施形態において、非共有結合は、第1のビスビオチン部分922および第2のビスビオチン部分924に結合したアビジンタンパク質920によって形成される。いくつかの実施形態において、官能化末端902は、第1のビスビオチン部分922を含み、相補的官能部分904は、第2のビスビオチン部分924を含む。いくつかの実施形態において、官能化末端902は、相補的官能部分904と接触する前にアビジンタンパク質920を含む。いくつかの実施形態において、官能化末端904は、相補的官能部分902と接触する前にアビジンタンパク質920を含む。
【0173】
いくつかの実施形態において、官能化末端902は、第1のビス-ビオチン部分922および水溶性部分を含み、この水溶性部分は、第1のビス-ビオチン部分922とペプチド900のアミノ酸(例えば末端アミノ酸)との間の結合を形成する。水溶性部分は、本明細書の別の箇所で詳細に説明されている。
【0174】
いくつかの実施形態は、官能化ペプチドサンプルを精製して、精製された官能化ペプチドサンプルを形成することを含む。官能化ペプチドサンプルを精製することは、第5の流体デバイス部分の精製領域において行われてもよい。いくつかの実施形態は、官能化ペプチドサンプルの少なくとも一部を固定化複合体形成領域から精製領域に自動にて輸送することを含む。いくつかの実施形態において、官能化ペプチドサンプルを精製することは、官能化ペプチドサンプルの任意の残りの非官能化ペプチドの少なくともいくつかを除去することによって達成され得る。いくつかの実施形態において、精製することは、官能化ペプチドサンプルをサイズ排除媒体に通過させることを含む。いくつかの実施態様において、サイズ排除媒体はカラムであり得る。カラムは脱塩カラムであってもよい。いくつかの実施形態において、カラムは、Zeba(商標)カラム(例えば、Zeba(商標)7kDaまたはZeba(商標)40kDaカラム)である。いくつかの実施形態において、サイズ排除媒体は、流体デバイスの一部である。いくつかの実施形態において、サイズ排除媒体は、システムの一部であるが、そのシステムの流体デバイスの一部ではない。
【0175】
いくつかの実施形態において、タンパク質を精製することは、免疫沈降による精製を含む。いくつかの実施形態において、免疫沈降は、標的タンパク質に特異的に結合する抗体を使用して、サンプル(例えば、官能化の前または後のサンプル)から標的タンパク質を沈殿させることを含む。
【0176】
本開示のある態様は、流体デバイスを対象とする。流体デバイスは、システム(例えば、サンプル調製モジュール)と動作可能に連結することができるモジュール式デバイスであってもよい。いくつかの実施形態において、流体デバイスはカートリッジであるか、またはカートリッジを含む。流体デバイス(および/またはサンプル調製モジュール)は、本明細書に説明されるような流体デバイス構成要素(例えば、カートリッジ)を動作させるために使用されることができる、機械的ならびに電子的および/または光学的構成要素を含有してもよい。いくつかの実施形態において、流体デバイスは、流体デバイス部分(例えば、インキュベーション領域)上で特定の温度を達成および維持するように動作する。いくつかの実施形態において、流体デバイス構成要素は、特定の持続時間にわたって特定の電圧を流体デバイスの電極に印加するように動作する。
【0177】
いくつかの実施形態において、流体デバイスは、少なくとも1つのチャネルを含む。いくつかの実施形態において、流体デバイスはマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)のチャネルのうちのいくつかの少なくとも一部は、チャネルの表面開口部を実質的に封止するように構成されたエラストマーを含む表面を有する。いくつかの実施形態において、流体デバイス構成要素は、流体デバイスのリザーバおよび/またはチャネル(例えば、インキュベーションチャネル)に、そこから、またはそれらの間で液体を移動させるように動作することができる。いくつかの実施形態において、流体デバイス構成要素は、流体デバイスのチャネルを通して、例えば、流体デバイスのリザーバおよび/または他のチャネル(例えば、インキュベーションチャネル)へ、そこから、またはそれらの間で、液体を移動させるように動作することができる。いくつかの実施形態において、流体デバイス構成要素は、チャネルを通して流体を圧送するために、流体デバイス(例えば、カートリッジ)のチャネルに関連付けられたエラストマー構成要素(例えば、エラストマーを含む表面層)と相互作用するように構成された蠕動ポンプ機構(例えば、装置)を介して液体を移動させる。
【0178】
いくつかの実施形態において、システムは、サンプル調製モジュールを含み、サンプル調製モジュールは、ローラおよび流体デバイス(例えば、カートリッジ)を含む装置を含む蠕動ポンプを含む。いくつかの実施形態において、サンプル調製モジュールは、ローラと、ローラに接続されたクランク・ロッカー機構とを含む装置を含む蠕動ポンプを含む。いくつかの実施形態において、システムは、サンプル調製モジュールを含み、サンプル調製モジュールは、チャネルを含む表面を有する基層を含む流体デバイス(例えば、カートリッジ)を含む蠕動ポンプを含み、チャネルのうちの少なくともいくつかの少なくとも一部分は、チャネルの基部に単一の頂点を有し、基層の表面に2つの他の頂点を有する、実質的に三角形形状の断面を有する。システムは、サンプル調製モジュールの下流に検出モジュールを備えてもよい。いくつかの実施形態において、サンプル調製領域は、2つ以上の流体デバイスを含む。いくつかの実施形態において、システムは、システムのサンプル調製領域から下流に検出モジュールを含む。
【0179】
例えば、
図9は、いくつかの実施形態に従う、本明細書に説明されるデバイス(例えば、装置、流体デバイス、蠕動ポンプ)を組み込む、例示的なシステム2000の概略図である。いくつかの実施形態によれば、例示的なシステム2000は、サンプルの1つ以上の成分を検出するために使用することができる。いくつかの実施形態において、システム2000は、サンプル調製モジュール1700を含む。いくつかの実施形態において、システム2000は、サンプル調製モジュール1700と、サンプル調製モジュール1700の下流の検出モジュール1800との両方を含む。サンプル調製モジュールおよび検出モジュールの例示的な特徴および関連する方法は、以下により詳細に記載される。サンプル調製モジュール1700および検出モジュール1800は、特定の実施形態によれば、サンプルの少なくとも一部が、調製された後に、サンプル調製モジュール1700から検出モジュール1800に(直接的または間接的に)輸送され(例えば、流され)、そこでサンプルが検出される(例えば、分析され、配列決定され、同定されるなど)ように構成される。
【0180】
いくつかの実施形態において、本開示に記載される2つ以上の流体デバイス部分(例えば、第1の流体デバイス部分、第2の流体デバイス部分、第3の流体デバイス部分、第4の流体デバイス部分、第5の流体デバイス部分)は、同じ流体デバイスの一部である。例えば、いくつかの実施形態において、第1の流体デバイス部分および第2の流体デバイス部分は、同じ流体デバイスの一部である。いくつかの実施形態において、第1の流体デバイス部分および第3の流体デバイス部分は、同じ流体デバイスの一部である。いくつかの実施形態において、第2の流体デバイス部分および第3の流体デバイス部分は、同じ流体デバイスの一部である。いくつかの実施形態において、第1の流体デバイス部分、第2の流体デバイス部分、第3の流体デバイス部分および第4の流体デバイス部分は、同じ流体デバイスの一部である。例えば、
図10Aは、流体デバイス100の一部である、第1の流体デバイス部分102、第2の流体デバイス部分104、および第3の流体デバイス部分106の概略図を提示する。
【0181】
いくつかの実施形態において、本開示にて記載される2つ以上の流体デバイス部分(例えば、第1の流体デバイス部分、第2の流体デバイス部分、第3の流体デバイス部分、第4の流体デバイス部分、第5の流体デバイス部分)は、別個の異なる流体デバイス(例えば、別個のカートリッジ)の一部である。例えば、いくつかの実施形態において、第1の流体デバイス部分および第2の流体デバイス部分は、異なる流体デバイスの一部である。例えば、
図10Bは、別個の流体デバイスの一部である、第1の流体デバイス部分102、第2の流体デバイス部分104、および第3の流体デバイス部分106の概略図を提示する。いくつかの実施形態において、同じ流体デバイスの一部ではない流体デバイス部分は、同じシステムの一部である。いくつかの実施形態において、流体デバイス部分は、1つ以上のチャネルを含む。いくつかの実施形態において、流体デバイス部分は、1つ以上のマイクロチャネルを含む。
【0182】
システム構成要素は、例えば、サンプル情報を入力することができ、特定のプロセスを選択することができ、実行結果を報告することができるユーザインターフェースを駆動するためのコンピュータリソースを含むことができる。流体デバイスおよびシステムの種々の態様および実施形態が、以下に詳細に説明される。
【0183】
いくつかの実施形態において、流体デバイスは、カートリッジであるか、またはカートリッジを含む。いくつかの実施形態において、カートリッジは、1以上の貯蔵試薬(例えば、液体または液体形態への再構成に適した凍結乾燥形態のもの)を含む。カートリッジの貯蔵試薬は、所望のプロセスを実行するのに適した試薬および/または所望のサンプルの種類を処理するのに適した試薬(例えば、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、タンパク質消化剤)を含む。いくつかの実施形態において、カートリッジは、単回使用カートリッジ(例えば、使い捨てカートリッジ)または複数回使用カートリッジ(例えば、再利用可能なカートリッジ)である。いくつかの実施形態において、カートリッジは、ユーザが供給するサンプル(例えばタンパク質の)を受け取るように構成される。ユーザが供給するサンプルは、カートリッジが流体デバイスによって受け取られる前または後に、例えば、ユーザによって手動で、または自動化されたプロセスで、カートリッジに加えられてもよい。
【0184】
いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)は、チャネルを含む表面を有する基層を含む。いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネルの少なくとも一部は、チャネルの基部(base)に単一の頂点を有し、基層(base layer)の表面に2つの他の頂点を有する実質的に三角形の断面を有する。いくつかの実施態様において、少なくともいくつかのチャネルの少なくとも一部は、表面層を有する。表面層はエラストマーを含むことができる。表面層は、チャネルの表面開口部を実質的に封止するように構成されてもよい。カートリッジの実施形態は、本明細書の他の場所でさらに説明される。
【0185】
いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)は、サンプル調製プロセスにおいて使用される流体(例えば、1つ以上の試薬を含む流体)を含有および/または輸送するように構成された1つ以上のチャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)を含む。試薬には、緩衝液、酵素試薬、ポリマーマトリックス、捕捉試薬、サイズ特異的選択試薬、配列特異的選択試薬、および/または精製試薬が含まれる。サンプル調製プロセスで使用するためのさらなる試薬は、本明細書の別の箇所に記載されている。例えば、サンプル調製ステップ(例えば、ペプチドまたはタンパク質の分析、配列決定、または同定)のための上述の試薬(またはそれらの組み合わせ)のいずれかを使用してもよく、かつ/またはカートリッジ(例えば、カートリッジのチャネル、リザーバ、および/または反応容器)内に存在してもよい。
【0186】
いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)は、1以上の貯蔵試薬(例えば、液体または液体形態への再構成に適した凍結乾燥形態のもの)を含む。流体デバイス(例えば、カートリッジ)の貯蔵試薬は、所望のプロセスを実行するのに適した試薬および/または所望のサンプルの種類を処理するのに適した試薬を含む。いくつかの実施形態において、流体デバイスは、単回使用流体デバイス(例えば、使い捨てカートリッジ)または複数回使用流体デバイス(例えば、再利用可能なカートリッジ)である。いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)は、ユーザが供給するサンプルを受け取るように構成される。ユーザが供給するサンプルは、流体デバイスがデバイスによって受け取られる前または後に、例えば、ユーザによって手動で、または自動化されたプロセスで、流体デバイスに加えられてもよい。
【0187】
いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)は、基層を含む。いくつかの実施形態において、基層は、1つまたは複数のチャネルを含む表面を有する。例えば、
図11は、いくつかの実施形態に従う、チャネル202の幅に沿った流体デバイス200の断面図の概略図である。図示された流体デバイス200は、チャネル202を含む表面211を有する基層204を含む。特定の実施形態において、チャネルの少なくとも一部はマイクロチャネルである。例えば、いくつかの実施形態において、チャネル202の少なくともいくつかはマイクロチャネルである。特定の実施形態において、チャネルのすべてがマイクロチャネルである。例えば、再び
図11を参照すると、特定の実施形態において、チャネル202の全てがマイクロチャネルである。
【0188】
いくつかの実施形態において、流体デバイスは、少量の流体(例えば、1~10μL、2~10μL、4~10μL、5~10μL、1~8μL、または1~6μLの流体)を取り扱うことができる。いくつかの実施形態において、配列決定カートリッジは、流体デバイスのサンプル調製デバイスまたはモジュール(例えば、調製されたサンプルが配列決定のために反応混合物に送達されることを可能にするために)に物理的に埋め込まれるか、または関連付けられる。いくつかの実施形態において、サンプル調製デバイスまたはモジュールに物理的に埋め込まれるか、または関連付けられる配列決定カートリッジは、表面シーリングガスケットまたは円錐形プレスフィット(例:ルアーフィッティング)の形態の流体界面を有するマイクロ流体チャネルを含む。いくつかの実施形態において、次いで、サンプル調製デバイスまたはモジュールから配列決定カートリッジを物理的に分離するために、調製されたサンプルの送達後に流体界面を破壊することができる。
【0189】
いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)は、流体を受け入れるように構成された、および/またはサンプル調製プロセスで使用される1つ以上の試薬を含有するように構成された1つ以上のリザーバまたは反応容器を含む。いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネルは、リザーバに接続する。リザーバは、サンプルを含む化学反応のために使用されてもよい。1つの非限定的な例として、リザーバは、サンプルを含む酵素反応のために(例えば、さらなる分析、配列決定、または診断プロセスの前の上流プロセスとして)使用され得る。
【0190】
リザーバは、リザーバの周囲で交差することによって、チャネル(複数可)の底面で少なくともいくつかのチャネル(複数可)に接続されてもよい。いくつかのそのような場合、次いで、リザーバおよびそれが接続されるチャネルは、それぞれ、流体デバイスの表面層(例えば、シリコーン膜等の膜)と相互作用する。しかしながら、いくつかの実施形態において、リザーバは、リザーバまたは流体デバイスの上面を介して、少なくともいくつかのチャネルに接続される。いくつかの実施形態において、リザーバは空である(例えば、本明細書のプロセスのうちの1つ以上の前に最初は空である)。例えば、リザーバは、配列決定(または分析もしくは診断)適用の開始時に最初は空であってもよいが、適用中に、サンプルおよび/または試薬(例えば、酵素反応試薬)が添加される。いくつかの実施形態において、リザーバは、試薬(例えば、数マイクロリットル等の小体積の酵素反応試薬)を含有する。いくつかのそのような実施形態において、サンプルは、試薬を含有するリザーバ内に輸送され、サンプルおよび試薬は、リザーバ内へのサンプルの輸送時に混合する。
【0191】
いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネルは、温度ゾーン内のリザーバに接続する。リザーバは、リザーバ内の流体の温度を調節することができる熱浴に接触しているか、または少なくとも部分的に(または完全に)囲まれている場合、温度ゾーン内にあってもよい。上記および下記のインキュベーション領域は、温度ゾーンであり得る。例えば、リザーバは、リザーバ内の流体の温度を調節することができる金属キャビティ(例えば、器具に一体化された金属キャビティ)によって取り囲まれていてもよい。(例えば、温度ゾーンを介した)リザーバの温度調節は、比較的正確な温度制御を可能にし得る。比較的正確な温度は、所望の反応(例えば、酵素反応)が特定の温度範囲でより効率的に進行する特定の実施形態において有用であり得る。
【0192】
いくつかの実施形態において、流体デバイスはインキュベーション領域を含む。インキュベーション領域は、いくつかの実施形態において、インキュベーションチャネルを含む。例えば、
図1Aを参照すると、流体デバイス100は、インキュベーションチャネル112を含むインキュベーション領域110を含む。インキュベーション領域は、1つ以上の試薬を受容するように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態において、インキュベーションチャネルは、1つ以上の試薬を受容するように構成される。いくつかの実施形態は、インキュベーションステップの前に、ペプチドサンプルを流体デバイスのチャネルからインキュベーション領域に輸送することを含む。いくつかの実施態様において、インキュベーションステップは、サンプルの少なくとも一部がインキュベーション領域のインキュベーションチャネルの少なくとも一部にある間に行われる。
【0193】
インキュベーションチャネルはマイクロチャネルであってもよい。いくつかの実施形態において、インキュベーションチャネルは第1のチャネル部分を含む。いくつかの実施形態において、インキュベーションチャネルは第2のチャネル部分を含む。第2のチャネル部分は、第1のチャネル部分と平行であってもよい。いくつかの実施形態において、第1のチャネル部分および第2のチャネル部分は、第1のチャネル部分の平均方向と第2のチャネル部分の平均方向との間の角度θが、20°以下、15°以下、10°以下、5°以下、またはそれ未満である場合、平行であると見なされてもよい。いくつかの実施形態において、第1のチャネル部分および第2のチャネル部分は、それらが完全に平行である場合(すなわち、第1のチャネル部分の平均方向と第2のチャネル部分の平均方向との間の角度θが0である場合)、平行であると見なされる。例えば、
図1Bにおいて、インキュベーションチャネル112は、第1のチャネル部分116と、第1のチャネル部分116に平行な第2のチャネル部分118とを含む。いくつかの実施形態において、ターン部分(turn portion)は、第2のチャネル部分の第1のチャネル部分を接続する。例えば、再び
図1Bを参照すると、ターン部分117は、第1のチャネル部分116を第2のチャネル部分118に接続する。場合によっては、インキュベーションチャネルの少なくとも一部は、蛇行した構成を有する。例えば、
図1Bにおいて、インキュベーションチャネル112は蛇行した構成を有する。本開示の文脈において、(例えば、蛇行した構成の場合のように)ターン部分を介して接続された第1のチャネル部分および平行な第2のチャネル部分を有することは、(例えば、効率的な加熱によって)効率的なインキュベーションを促進することができることが認識されている。例えば、そのような構成は、比較的小さい設置面積で比較的大きいインキュベーションチャネル体積を提供することができ、それは、インキュベーションチャネル内の流体のより効率的な加熱を促進することができる。体積を増加させるための他の技術が可能であるが、本明細書に記載される構成は、インキュベーションチャネル内に比較的長い経路長を与えることによって、比較的小さいチャネル断面寸法(例えば、マイクロチャネル)の使用を可能にする。
【0194】
本開示の文脈において、チャネルは、ターン部分によって分離された2つ以上の平行なチャネル部分を含む場合、蛇行していると見なされる。いくつかの実施形態によれば、蛇行チャネルは、n個の平行チャネル部分と、ターン部分が平行チャネル部分の各連続対に接続されるように構成されたn-1個のターン部分とを備えてもよく、ここで、nは1より大きい整数である。いくつかの実施形態において、nは、2以上、3以上、4以上、5以上、8以上、10以上、またはそれ以上である。例えば、U字型チャネルまたはS字型チャネルは蛇行していてもよい。
【0195】
インキュベーションチャネルは、混合物の供給源に流体的に接続され得る。例えば、
図1Dにおいて、流体デバイス100は、混合物源114に接続される。混合物は、タンパク質、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤、および/またはタンパク質消化剤を含み得る。いくつかの実施形態において、混合物は、これらの全てを含み得る(例えば、混合物は、タンパク質、還元剤、アミノ酸側鎖キャッピング剤およびタンパク質消化剤を含み得る)。
【0196】
本明細書で使用される場合、「チャネル」という用語は、当技術分野の通常の当業者に知られており、流体を収容および/または輸送するように構成された構造を指す場合がある。チャネルは、一般に、壁;基部(例えば、壁に接続された基部および/または壁から形成された基部);チャネルの1つまたは複数の部分で開口し、覆われ、および/または封止されていてもよい表面開口部、を含む。いくつかの実施形態において、封止される表面部分は完全に封止される。いくつかの実施形態において、封止される表面部分は実質的に封止される。表面開口部は、表面開口部の50%超、60%超、75%超、90%超、または95%超が封止される場合、実質的に封止され得る。いくつかの実施形態において、表面開口部は、エラストマーによって封止されてもよい。
【0197】
本明細書で使用される場合、「マイクロチャネル」という用語は、サイズが1000ミクロン(μm)以下の少なくとも1つの寸法を含むチャネルを指す。例えば、マイクロチャネルは、サイズが1000ミクロン(μm)(例えば、100ミクロン(μm)以下、10ミクロン(μm)以下、5ミクロン(μm)以下)以下の少なくとも一つの寸法(例えば、幅、高さ)を含むことができる。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、1ミクロン(μm)(例えば、2ミクロン(μm)以上、10ミクロン(μm)以上)以上の少なくとも1つの寸法を含む。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、1ミクロン(μm)以上1000ミクロン(μm)以下、10ミクロン(μm)以上100ミクロン(μm)以下)。他の範囲も可能である。いくつかの実施形態でにおいて、マイクロチャネルは、1000ミクロン(μm)以下の水力直径を有する。本明細書中で使用されるように、用語「水力直径(hydraulic diameter)」(DH)は、当業者に知られており、DH=4A/Pとして決定することができ、ここで、Aは、チャネルを通る流体の流れの断面積であり、Pは、断面の濡れた周囲長(perimeter)(流体が接触するチャネルの断面の周囲長)である。
【0198】
いくつかの実施態様において、少なくともいくつかのチャネルの少なくとも一部は、実質的に三角形の断面を有する。いくつかの実施態様において、少なくともいくつかのチャネルの少なくとも一部は、チャネルの基部に単一の頂点を有し、基層の表面に他の2つの頂点を有する実質的に三角形の断面を有する。
図11を参照すると、いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネル202の少なくとも一部は、チャネルの基部に単一の頂点を有し、基層の表面に他の2つの頂点を有する実質的に三角形の断面を有する。
【0199】
本明細書で使用される「三角形」という用語は、三角形が実際の形状に近似または等しくなるように内接または外接され得る形状を指すために使用され、純粋に三角形に限定されるものではない。例えば、三角形断面は、1つまたは複数の部分で非ゼロ曲率を含むことができる。
【0200】
三角形断面は、くさび形を含むことができる。本明細書で使用される「くさび形」という用語は、当業者に知られており、厚い端部を有し、薄い端部に先細りになっている形状を指す。いくつかの実施形態において、くさび形は、厚い端部から薄い端部まで対称軸を有する。例えば、くさび形は、厚い端部(例えば、チャネルの表面開口部)を有し、薄い端部(例えば、チャネルの基部)までテーパ形状であってもよく、厚い端部から薄い端部まで対称軸を有してもよい。
【0201】
さらに、特定の実施形態において、実質的に三角形の断面(すなわち「V溝」)は、様々なアスペクト比を有することができる。本明細書で使用される場合、V溝の「アスペクト比」という用語は、高さ対幅の比を指す。例えば、いくつかの実施形態において、V溝は、2以下、1以下、または0.5以下、および/または0.1以上、0.2以上、または0.3以上のアスペクト比を有することができる。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.1と2との間、または0.1および2に等しい)。他の範囲も可能である。
【0202】
いくつかの実施態様において、少なくともいくつかのチャネルの少なくとも一部は、実質的に三角形の部分と、実質的に三角形の部分に開口し、チャネルの表面に対して実質的に三角形の部分の下に延びる第2の部分とを含む断面を有する。いくつかの実施形態において、第2の部分は、実質的に三角形の部分の平均直径よりも著しく小さい直径(例えば、平均直径)を有する。
図11を再び参照すると、いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネル202の少なくとも一部は、実質的に三角形の部分201と、実質的に三角形の部分201に開口し、チャネルの表面205に対して実質的に三角形の部分201の下に延びる第2の部分203とを含む断面を有し、第2の部分203は、実質的に三角形の部分201の平均直径209よりも著しく小さい直径207を有する。いくつかの実施形態において、実質的に三角形の部分の平均直径に対する第2の部分の直径の比は、0.8以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、および/または0.1以下である。このような場合には、チャネルの第2の部分がチャネルの実質的に三角形の部分の平均直径のそれよりも著しく小さい直径を有することは、実質的に三角形の部分が装置のローラおよび表面層の変形部分に対してアクセス可能であるが、第2の部分がローラおよび表面層の変形部分にアクセス不可能であるという結果になり得る。例えば、再び
図11を参照すると、特定の実施形態によれば、チャネル202の実質的に三角形の部分201は、ローラ(図示せず)および表面層206の変形部分にアクセス可能であるが、第2の部分203は、ローラおよび表面層206の変形部分にアクセス不可能である。いくつかのこのような場合において、第2の部分203を有するチャネル202の部分において、表面層206とのシールを達成することができない。その理由は、表面層206がローラによって変形され、流体が第2の部分203ではなく実質的に三角形の部分201を満たす場合であっても、同流体は第2の部分203内を自由に移動することができるからである。いくつかの実施形態では、チャネルの長さに沿った部分は、実質的に三角形の部分と第2の部分(「深い部分」)の両方を有することができ、チャネルの長さに沿った異なる部分は、実質的に三角形の部分のみを有する。いくつかのそのような実施形態において、装置(例えばローラ)が、実質的に三角形の部分および第2の部分(深い部分)の両方を有する部分と係合する場合、表面層とのシールが達成されないため、ポンプ動作は開始されない。しかしながら、装置がチャネルの長さ方向に沿って係合するとき、装置が実質的に三角形の断面のみを有するチャネルの部分で表面層を変形させると、ポンプ作用が開始されるが、これは、その部分に第2の部分(深い部分)が欠如しているために、シール(結果として圧力差)が形成されることが可能になるからである。したがって、場合によっては、流体デバイス(例えば、カートリッジ)のチャネルの長さに沿った深い部分の有無によって、チャネルのどの部分が装置との係合時にポンプ作用を受けることができるかを制御することができる。
【0203】
流体デバイス(例えば、カートリッジ)のチャネルの少なくとも一部の第2の部分としてそのような「深い部分」を含むことは、様々な潜在的利益のいずれかに寄与し得る。例えば、そのような深い部分(例えば、第2の部分203)は、場合によっては、蠕動ポンププロセスにおけるポンプ容積の減少に寄与し得る。このような場合には、より高い容積分解能のためにポンプ容積を2倍以上減少させることができる。場合によっては、このような深いセクションは、ローラがチャネル上のどこに着地するかによって決定されないポンプ容積の明確に定義された開始点を提供することもできる。例えば、実質的に三角形の部分と第2の部分(深い部分)の両方を有するチャネルの部分と、実質的に三角形の部分のみを有するチャネルの部分との間の界面は、場合によっては、後者のチャネル部分の体積を占める流体のみをポンプすることができるので、ポンプ容積の明確に定義された開始点として使用することができる。場合によっては、ローラがチャネル上に着地すると、カートリッジの位置合わせなどの様々な要因のいずれかに応じて、何らかのエラーが生じることがある。深い部分を含めることは、場合によっては、このような誤差に関連するポンプ容積の変動を低減または排除することができる。
【0204】
本明細書で使用されるように、チャネルの実質的に三角形の部分の平均直径は、実質的に三角形の部分の頂点からチャネルの表面までのz軸にわたる平均として測定され得る。
特定の実施形態において、少なくともいくつかのチャネル(本明細書ではポンピングレーンとも呼ばれる)(例えば、すべてのチャネル)はそれぞれ、エラストマーを含む表面層を含む弁を含む。特定の実施形態において、各弁は、チャネルの端部の幾何学形状によって形成される、関連付けられたチャネル内の閉塞部(blockage)を含む。例えば、チャネルの端部の幾何学的形状は、チャネルの底部からチャネルの上面に及ぶ壁であってもよく、チャネルは、表面層と接合する(interfaces)。いくつかのそのような実施形態において、チャネルは、弁が開放するように十分な圧力が加えられるまで、その関連付けられた弁によって閉鎖されたままである。特定の実施形態において、弁は、表面層が外側に膨らむことによって開く。特定の実施形態において、各弁は、ローラによって効果的に作動される。例えば、いくつかの実施形態において、ローラが弁に比較的近いときにローラによって表面層に及ぼされる圧力は、表面層を外向きに(例えば、ダイヤフラムのように)膨張させ、それによって、小さい閉塞部と表面層との間のシールが可逆的に破壊され、それによって、流体が弁を通過することを可能にする。場合によっては、そのような「受動」弁の使用は、種々の利点のいずれかに寄与することができる。例えば、いくつかの事例では、本明細書に記載されるそのような統合弁の使用は、圧送されていないレーンが(例えば、装置のローラとの係合を介して)閉鎖されたままであることを確実にすることができる。いくつかのそのような場合、装置(例えば、ポンプ)によって係合されるチャネルからの流体のみが、流体デバイス(例えば、カートリッジ)から駆動され、それは、汚染が低減された状態または汚染なしで、マルチチャネルポンプから流体を選択的に駆動するための便利で、単純で、安価な方法を可能にすることができる。
【0205】
特定の実施形態において、チャネルは、特定の比較的小さい幅および深さを有し、深さ/幅のアスペクト比は一般に1以下である。いくつかの実施形態において、チャネル幅は、1mm以上、1.2mm以上、1.5mm以上、2mm以下、1.8mm以下、および/または1.6mm以下である。上記で参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、1mmと2mmとの間、または1mmおよび2mmに等しい)。他の範囲も可能である。いくつかの実施形態において、チャネル深さは、0.6mm以上、0.75mm以上、0.9mm以上、1.5mm以下、1.2mm以下、および/または1.0mm以下である。上記で参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.6mmと1.5mmとの間、または0.6mmおよび1.5mmに等しい)。他の範囲も可能である。いくつかの実施形態において、チャネルアスペクト比は、1以下、0.8以下、0.6以下、0.5以下、0.2以上、および/または0.4以上である。上記で参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.2と1との間、または0.2および1に等しい)。他の範囲も可能である。ある実施形態において、成形プロセスの公差および能力を考慮すると、1.5mm程度の幅および0.75mm程度の深さのチャネルが適切であり得る。特定の実施形態において、チャネル断面は、チャネルへのローラアクセスの容易さ(例えば、より浅いV溝がより良好であり得る)と、より高い体積精度(例えば、少なくとも、体積が、エラストマーを含む表面層の精密な平面性達成することにあまり依存しなくなるため、より深いV溝がより良好であり得る)の両方を提供する、90度のV溝を伴う1/2のアスペクト比を有する。特定の実施形態において、チャネルの深さは、エラストマーを含む表面層の厚さのオーダーであり、したがって、表面層は、チャネル寸法のある重要な部分である可能性が高いチャネル内の不完全性(inperfections)を一時的に埋めて、シールすることができる。
【0206】
いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネルの少なくとも一部は、表面層を有する。
いくつかの実施形態において、表面層はエラストマーを含む。再び
図11を参照すると、例えば、いくつかの実施形態において、チャネル202のうちの少なくともいくつかの少なくとも一部分は、チャネル202の表面開口部を実質的に封止するように構成された、エラストマーを含む表面層206を有する。いくつかの実施形態において、チャネル202のうちの少なくともいくつかの少なくとも一部分は、チャネルの基部に単一の頂点を有し、基層の表面に2つの他の頂点を有する実質的に三角形の断面を有し、チャネル202の表面開口部を実質的に封止するように構成されたエラストマーを含む表面層206を有する。
【0207】
いくつかの実施形態において、エラストマーはシリコーンを含む。いくつかの実施形態では、エラストマーは、シリコーンおよび/もしくは熱可塑性エラストマーを含み、ならびに/またはエラストマーから本質的になる。
【0208】
いくつかの実施形態において表面層は、チャネルの表面開口部を実質的に封止するように構成される。いくつかの実施形態において、表面層は、流体(例えば、液体)がチャネルの入口または出口を経由する以外にチャネルから出ることができないように、チャネルの表面開口部を完全に封止するように構成される。いくつかの実施形態において、表面層は、(例えば、接着剤によって、熱ラミネーションによって、または任意の他の好適な結合手段によって)基層の表面の一部に結合される。いくつかの実施形態において、表面層は、接着剤によって基層の表面の一部に結合される。いくつかの実施形態において、表面層は、熱ラミネーションによって基層の表面の一部に結合される。
【0209】
本明細書で使用される場合、「封止する(seal off)」という用語は、開口部が封止されるように開口部の縁部または縁部付近で接触することを指す。
本明細書で使用される場合、「表面開口部」という用語は、表面層によって覆われていない場合にチャネルを周囲大気に開放するチャネルの部分を指す。例えば、マイクロチャネルは表面開口部を有してもよい。
【0210】
本明細書で使用使用される場合、表面層は、任意の適切な結合手段によって基層の表面の一部に結合され得る。例えば、いくつかの実施形態において、表面層は、共有結合的に、イオン的に、ファンデルワールス相互作用によって、双極子-双極子相互作用によって、水素結合によって、π-πスタッキング相互作用によって、または別の適切な結合手段によって、基層の表面の一部に結合される。
【0211】
いくつかの実施形態において、表面層は、基層の表面の一部と直接接触して張力下で保持される。
本明細書で使用される場合、チャネルの表面(例えば、天井)は、表面層の内面に対応し得る。
【0212】
いくつかの実施形態において、表面層の少なくとも一部は、少なくとも1つの大きさの圧力が付与されない状態で平坦である。いくつかの実施形態において、表面層の全体は、少なくとも1つの大きさの圧力が付与されない状態で平坦である。例えば、いくつかの実施形態において、表面層の少なくとも一部(または全体)は、装置のローラによる係合(圧力の付与を介して表面層の変形を引き起こし得る)がない場合、平坦である。
【0213】
いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネル(複数可)の少なくとも一部は、壁と、生体物質と適合する材料(例えば、実質的に剛性の材料)を含む基部とを有する。いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネル(複数可)の少なくとも一部は、壁と、実質的に剛性の材料を含む基部とを有する。例えば、再び
図11を参照すると、いくつかの実施形態において、少なくともいくつかのチャネル202の少なくとも一部は、壁と実質的に剛性の材料を含む基部とを有する。特定の実施形態において、基部は、基層204の材料と同じ材料を含む。特定の実施形態において、基部は、基層204の材料と異なる材料を含む。例えば、チャネルの壁および基部が剛性材料でコーティングされる場合、基部は、基層204の材料とは異なる材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、実質的に剛性の材料は、生体材料と適合性がある。いくつかの実施形態において、基層は射出成形部品である。
【0214】
いくつかの実施形態において、流体デバイスは誘導体化領域を含む。誘導体化領域は、任意の適切な幾何学形状を有し得る。いくつかの実施形態において、誘導体化領域は容器を含む。例えば、誘導体化領域は、円筒、角柱、平行六面体、チャネル、または適切な体積の任意の他の容器を含み得る。いくつかの実施形態において、誘導体化領域は、加熱または冷却されるように構成され得る。いくつかの実施形態において、誘導体化領域がチャネル(例えば、蛇行チャネル)を含むことが有利である。なぜなら、この構成は、効率的な熱接触を(例えば、効率的な加熱によって)促進することができるからである。例えば、そのような構成は、比較的小さい設置面積で比較的大きいチャネル体積を提供することができ、それは、チャネル内の流体のより効率的な加熱を促進することができる。体積を増加させるための他の技術が可能であるが、本明細書に記載される構成は、誘導体化領域内に比較的長い経路長を与えることによって、比較的小さいチャネル断面寸法(例えば、マイクロチャネル)の使用を可能にする。
【0215】
いくつかの実施形態において、誘導体化領域は、10μL以上、100μL以上、1mL以上、またはそれ以上の体積を有する。いくつかの実施形態において、誘導体化領域は、5mL以下、1mL以下、100μL以下、50μL以下、またはそれ未満の体積を有する。これらの範囲の組み合わせが可能である。例えば、誘導体化領域は、100μL以上、5mL以下の体積を有し得る。これらの範囲外の体積を有する流体デバイスも企図される。
【0216】
いくつかの実施形態において、誘導体化領域は、流体が誘導体化剤リザーバを通過することなくインキュベーション領域から誘導体化領域に自動にて輸送され得るように、インキュベーション領域に流体接続される。いくつかの場合において、誘導体化領域は、誘導体化剤リザーバからの流体が、誘導体化領域内のインキュベーション領域からの流体に(例えば、混合を介して)最初に曝露され得るように構成される。
【0217】
いくつかの実施形態において、流体デバイスはクエンチング領域(quenching region)を含む。クエンチング領域は、任意の適切な幾何学形状を有し得る。いくつかの実施形態において、クエンチング領域は容器を含む。例えば、クエンチング領域は、円筒、角柱、平行六面体、チャネル、または適切な容積の任意の他の容器を含み得る。いくつかの実施形態において、クエンチング領域は、加熱または冷却されるように構成され得る。いくつかの実施形態において、クエンチング領域が混合チャネル(例えば、蛇行チャネル)を含むことが有利である。その理由は、この構成はポンプ駆動混合に寄与し得るからである。例えば、そのような構成は、混合物の撹拌を容易にすることができ、またはクエンチング領域の出口からクエンチング領域の入口へのクエンチングされていない混合物の再循環を簡略化することができる。体積を増加させるための他の技術が可能であるが、本明細書に記載される構成は、クエンチング領域内に比較的長い経路長を与えることによって、比較的小さいチャネル断面寸法(例えば、マイクロチャネル)の使用を可能にする。
【0218】
いくつかの実施形態において、クエンチング領域は、10μL以上、100μL以上、1mL以上、またはそれ以上の体積を有する。いくつかの実施形態において、クエンチング領域は、5mL以下、1mL以下、100μL以下、50μL以下、またはそれ未満の体積を有する。これらの範囲の組み合わせが可能である。例えば、クエンチング領域は、100μL以上、5mL以下の体積を有し得る。これらの範囲外の体積を有する流体デバイスも企図される。
【0219】
いくつかの実施形態において、クエンチング領域は、誘導体化領域と流体接続される。いくつかの実施形態において、クエンチング領域は、誘導体化剤リザーバおよび/または誘導体化試薬リザーバに流体接続される。
【0220】
いくつかの実施形態は、固体基材を含み得るクエンチング領域において(例えば、流体デバイスのクエンチング領域において)、クエンチングされていない混合物をクエンチングすることを含む。いくつかの実施形態において、固体基材はビーズを含む。いくつかの実施形態において、固体基材(例えば、ビーズ)は、クエンチング領域に詰め込まれる。いくつかの実施形態において、固体基材は、クエンチング領域内のフィルタと関連付けられる(例えば、取り付けられる、埋め込まれる、隣接する等)。固体基材は、官能基を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、固体基材は複数のビーズを含み、その一部または全てがそのような官能基を含む表面を有する。いくつかの実施形態において、固体基材の官能基はアミン基を含む。いくつかの実施形態において、固体基材はポリアミンビーズを含む。いくつかの実施形態において、固体基材は複数のポリアミンビーズを含む。いくつかの実施形態において、固体基材は、ポリマー材料(例えば、ポリマー材料を含むビーズ)であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、固体基材はポリスチレンを含む。例えば、固体基材は、複数のポリスチレンビーズ(例えば、アミン基などの官能基を含む)を含み得る。いくつかの実施形態において、クエンチングすることは、クエンチングされていない混合物の過剰な誘導体化剤の少なくとも一部を反応させることを含む。過剰な誘導体化剤は、固体基材の官能基(例えば、クエンチング領域内のビーズのアミン基)と反応し得る。
【0221】
いくつかの実施形態において、流体デバイスは、クエンチングされていない混合物をクエンチング領域の少なくとも一部を通して再循環させるように構成される。クエンチングされていない混合物をクエンチング領域の少なくとも一部を通して再循環させることは、いくつかの利点を提供し得る。例えば、クエンチングされていない混合物をクエンチング領域の少なくとも一部を通して再循環させることは、いくつかの実施形態において、クエンチングの速度を増加させることができる。いくつかの実施形態において、クエンチングされていない領域は入口および出口を含む。例えば、
図2Bの例示的な実施形態は、入口136および出口138を含む。いくつかの場合において、流体デバイスは、流体が出口クエンチング領域からクエンチング領域の入口に輸送され得るように構成される。例えば、
図2Bにおいて、流体デバイス100は、流体がクエンチング領域130の出口138からクエンチング領域130の入口136に輸送され得るように構成される。いくつかの実施形態において、クエンチング領域の出口からクエンチング領域の入口に輸送される流体は、クエンチングされていない混合物を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、クエンチングすることは、固体基材(例えば、複数のビーズ)の存在下でクエンチングされていない混合物を静止状態に保つことを含む。当業者は、この文脈において、混合物が静止しているという事実が、混合物の正味流量が0であることを意味することを理解するであろう。静止した混合物は、混合物の流れに関連しない対流または乱流を依然として経験する可能性がある。いくつかの実施形態において、クエンチングすることは、例えば混合物のゼロでない流れを生成することによって、クエンチングされていない混合物を固体基材と能動的に混合することを含む。いくつかの実施形態において、クエンチングすることは複数のステップを含み、いくつかのステップの間、クエンチングされていない混合物は固体基材の存在下で静止しており、他のステップの間、クエンチングされていない混合物は固体基材と能動的に混合される。例えば、いくつかの実施形態において、クエンチングすることは、1ステップ超、2ステップ超、3ステップ超、4ステップ超、5ステップ超、7ステップ超、10ステップ超、15ステップ超、20ステップ超、またはそれより多くのステップを含む。いくつかの実施形態において、クエンチングすることは、静止混合および能動混合の交互のステップを含む。
【0223】
いくつかの実施形態において、流体デバイスは、シールプレートをさらに含む。いくつかの実施形態において、シールプレートは、硬質プラスチック、および/または射出成形部品を含む。特定の実施形態において、シールプレートは、1つ以上の貫通孔を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の貫通孔は、基層内の1つ以上の関連付けられたチャネルと実質的に同様の形状を有する。この文脈において、「貫通孔」は、例えば装置の1つ以上の機械構成要素が移動して流体デバイスの表面層と係合および/または係合解除することができる、シールプレート内の間隙/孔/空隙を指すことを理解されたい。例えば、本明細書に記載されるようなローラおよび流体デバイス(例えば、カートリッジ)を含む蠕動ポンプは、ローラが、シールプレートの貫通孔の少なくとも一部を通って移動し、流体デバイスの表面層に、その表面と係合および/または係合解除するときに到達するように構成されてもよい。貫通孔は、様々な形状およびアスペクト比(長方形、正方形、円形、長円形など)のいずれかを有し得る。
【0224】
特定の実施形態において、シールプレートの1つ以上の貫通孔のうちの少なくともいくつかは、基層内の1つ以上の関連付けられたチャネルと整列して構成される。いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)は、シールプレートと基層との間に配置されたエラストマーを含む表面層を含む。特定の実施形態において、表面層は、基層内のシールプレートの間に直接配置される。特定の実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)は、シールプレートと基層との間に配置される表面層の1つ以上の露出領域を備え、1つ以上の露出領域のそれぞれは、シールプレートの関連付けられた貫通孔および基層の整列されたチャネルによって画定される。特定の実施形態において、表面層の1つ以上の露出領域の1つ以上の露出部分は、ローラによって変形されて、基層の関連付けられたチャネルの壁および/または基部の1つまたは複数の関連する部分に接触することができる。
【0225】
いくつかの実施形態において、サンプル調製モジュールを含む本明細書のシステムは、配列決定モジュールをさらに含む。いくつかの実施形態において、サンプル調製モジュールおよび配列決定モジュールを含むシステムは、2つのカートリッジが単一の分離不可能な消耗品を含むように、サンプル調製カートリッジに埋め込まれた配列決定チップまたはカートリッジを含む。いくつかの実施形態において、配列決定チップまたはカートリッジは、消耗品支持電子機器(例えば、ワイヤボンド、電気接点を備えたPCB基板)を必要とする。消耗品支持電子機器は、配列決定チップまたはカートリッジと直接物理的に接触してもよい。いくつかの実施形態において、配列決定チップまたはカートリッジは、蠕動ポンプ、温度制御および/または電気泳動コンタクトのためのインターフェースを必要とする。これらのインターフェースは、多くの電気接点およびレーザ位置合わせのための正確な幾何学的位置合わせを可能にすることができる。いくつかの実施形態において、チップまたはカートリッジの異なる部分は、異なる温度、物理的な力、異なる電圧および電流の電気的インターフェース、振動、および/または競合する位置合わせ要件を含むことができる。いくつかの実施形態において、サンプル調製モジュールまたは配列決定モジュールのいずれかに関連する別個の機器サブシステムは、リソースを共有するために近接していなければならない。いくつかの実施形態において、サンプル調製モジュールおよび配列決定モジュールを含むシステムは、ハンズフリーである(即ち、手を使わずに使用できる)。
【0226】
いくつかの実施形態において、サンプル調製デバイスまたはモジュールは、診断目的に対してサンプルを調製するために使用される。いくつかの実施形態において、診断目的に対してサンプルを調製するために使用されるサンプル調製デバイスは、標的分子または複数の分子(例えば、標的タンパク質)を診断モジュールまたは診断デバイスに送達または移動するように配置される。いくつかの実施形態において、サンプル調製デバイスまたはモジュールは、診断デバイスに、直接(例えば、物理的に付着している)、または間接的に接続される。
【0227】
いくつかの実施形態において、システムは、1つ以上の流体デバイスを受容するように構成される(例えば、一度に1つのカートリッジを受容するように構成される)流体デバイスハウジングを含む。
図12Aは、いくつかの実施形態に従う、サンプル調製装置300の概略図を示す。デバイス(例えば、カートリッジハウジングを含むサンプル調製デバイス)は、1つ以上のカートリッジ(または2つ以上、または3つ以上など)を順次または同時に受容するように構成され得る。サンプル調製デバイス300は、例えば、溶解カートリッジ301、濃縮カートリッジ302、断片化カートリッジ303、および/または官能化カートリッジ304のうちの1つ以上を同時にまたは順次に受容するように構成され得る。
【0228】
サンプルおよび試薬は、種々の技術のうちのいずれかを介して、流体デバイス(例えば、カートリッジ)内を(例えば、チャネルを通して)流動させられてもよい。そのような技術の1つは、蠕動ポンプを介して流れを引き起こすことである。いくつかの実施形態において、サンプル調製モジュールは、ポンプを含む。いくつかの実施形態において、ポンプは蠕動ポンプである。このようなポンプのいくつかは、本明細書に記載された流体取り扱いのための本発明の構成要素の1つ以上を含む。例えば、ポンプは、装置および/または流体デバイス(例えば、カートリッジ)を備えてもよい。いくつかの実施形態において、ポンプの装置は、ローラ、クランク、およびロッカーを含む。いくつかのそのような実施形態において、クランクおよびロッカーは、ローラに接続されたクランク・アンド・ロッカー機構として構成される。クランク・アンド・ロッカー機構と装置のローラとの結合は、場合によっては、本明細書に記載する利点のいくつかを達成することを可能にする(例えば、流体デバイスからの装置の容易な離脱、十分に計量されたストローク体積)。特定の実施形態において、ポンプの流体デバイスは、チャネル(例えば、マイクロ流体チャネル)を含む。いくつかの実施形態において、流体デバイスのチャネルの少なくとも一部は、本明細書に記載されるいくつかの利点のいずれかに寄与し得る特定の断面形状および/または表面層を有する。
【0229】
場合によっては、特定の利点を提供し得るいくつかの流体デバイス(例えば、カートリッジ)の1つの非限定的な態様は、流体デバイス内に特定の断面形状を有するチャネルを含むことである。例えば、いくつかの実施形態において、流体デバイスは、V字形チャネルを含む。このようなV字形チャネルを形成するための潜在的に便利であるが限定的ではない1つの方法は、流体デバイス内にV形溝を成形または機械加工することである。装置のローラが流体デバイスと係合してチャネルを通って流体の流れを生じさせる特定の実施形態において、V字形チャネル(本明細書では、V溝または実質的に三角形の断面を有するチャネルとも呼ばれる)を含むことの認識された利点。例えば、いくつかの例では、V字形チャネルは、ローラに対して寸法的に鈍感である(dimensionally insensitive)。言い換えれば、場合によっては、装置のローラ(例えば、くさび形ローラ)がV字形チャネルと適切に係合するために接着しなければならない単一の寸法が存在しない。対照的に、半円形のようなチャネルの特定の従来の断面形状は、チャネルと適切に係合するため(例えば、蠕動ポンピングプロセスにおいて圧力差を生じさせるための流体シールを形成するため)に、ローラが特定の寸法(例えば、半径)を有することを必要とし得る。いくつかの実施形態において、ローラに対して寸法的に鈍感なチャネルを含めることにより、ハードウェア構成要素のより単純で安価な製造が可能となり、構成可能性/柔軟性が向上する。
【0230】
サンプル調製デバイスは、受容された流体デバイス内(例えば、流体デバイスのチャネル/リザーバ内、または流体デバイスの中および/もしくは外)の成分(例えば、試薬、サンプル)を輸送するように構成されるポンプをさらに備えてもよい。例えば、
図12Bを参照すると、サンプル調製デバイス300は、溶解カートリッジ301、濃縮カートリッジ302、断片化カートリッジ303、および/または官能化カートリッジ304のうちの1つ以上の成分を輸送するように構成される、ポンプ305を備えてもよい。いくつかの実施形態において、ポンプは、装置および受容されたカートリッジを備え、ポンプの装置とカートリッジとの間の相互作用は、流体流動を引き起こす。例えば、ポンプ305は蠕動ポンプであってもよく、装置306は、カートリッジ(例えば、カートリッジ301)に動作可能に結合して、カートリッジ内に流体運動を引き起こしてもよい(例えば、装置306がローラを備え、カートリッジ301がローラによって変形可能な可撓性表面(例えば、エラストマー表面)を含む場合)。
【0231】
ある態様において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)は、表面層(例えば、平坦な表面層)を含む。1つの例示的な態様は、実質的に可撓性チューブの半分を製造するために、V溝の上にエラストマー(例えば、シリコーン)を含む(例えば、エラストマーから本質的になる)膜(本明細書においては表面層とも称される)を積層することを含む、潜在的に有利な実施形態に関する。次に、いくつかの実施形態では、エラストマーを含む表面層をチャネル内に変形させてピンチ(pinch)を形成し、次にピンチを並進させることによって、ピンチの後縁に負圧を発生させて吸引し、ピンチの前縁に正圧を発生させてピンチの前縁方向に流体をポンプで送ることができる。特定の実施形態において、このポンピングは、カートリッジ(表面層を有するチャネルを含む)のような流体デバイスを、ローラを含む装置と連動させること(interfacing)によって行われ、この装置は、表面層の一部を関連するチャネルの壁および/または基部に挟み込むために表面層の一部とローラを係合させること、表面層のピンチを壁および/または基部に対して並進させるために関連するチャネルの壁および/または基部に沿ってローラを転動運動で並進させること、および/または表面層の第2の部分とローラとの係合を解除することを含むローラの運動を実施するように構成される。特定の実施形態において、クランク・ロッカー・機構が、ローラのこの運動を実行するために装置に組み込まれる。
【0232】
従来の蠕動ポンプは、一般に、回転キャリッジ上のローラを含む装置内に挿入されたチューブを含み、その結果、ポンプが機能すると、チューブは常に装置の残りの部分と係合する。対照的に、特定の実施形態において、本明細書に記載の流体デバイス(例えば、カートリッジ)内のチャネルは、ローラが水平面と係合するように、直線状であるか、または少なくとも1つの直線部分を含む。特定の実施形態において、ローラが表面層の一部を連続的に挟み込みながら水平表面を追跡することができるように、ローラはバネ負荷された小さなローラアームに連結される。装置(例えば、装置のローラアーム)にばねを負荷することは、場合によっては、装置(例えば、ローラー)によって流体デバイス(例えば、カートリッジ)の表面層およびチャネルに加えられる力を調整することを助けることができる。
【0233】
特定の実施形態において、ローラに接続されたクランク・ロッカー・機構におけるクランクの各回転は、別個のポンピング容積を提供する。特定の実施形態において、ローラがいずれの流体デバイス(例えば、カートリッジ)からも係合解除される係合解除位置に装置を駐車する(park)ことは容易である。特定の実施形態において、前方および後方のポンピング運動は、本明細書に記載の装置によって提供されるように、かなり対称的であり、その結果、前方および後方のポンピング運動には、同程度の力(トルク)(例えば10%以内)が必要とされる。
【0234】
特定の実施形態において、特定のサイズの装置に対して、比較的高いクランク半径(例えば、2mm以上、任意で関連するリンケージを含む)を有することが有利であり得る。したがって、特定の実施形態において、関連する流体デバイス(例えば、カートリッジ)と係合するための比較的高いストローク長(例えば、10mm以上)を有することも有利であり得る。比較的高いクランク半径およびストローク長を有することは、特定の実施形態において、装置の構成要素を流体デバイスに対して移動させるときに、装置と流体デバイスとの間に機械的干渉がないことを保証する。
【0235】
特定の実施形態において、V形溝を有することは、有利には、くさび形の縁部を有する種々のサイズのローラとの使用を可能にする。これとは対照的に、例えば、V溝ではなく矩形チャネルを有することは、矩形チャネルに関連するローラの幅を矩形チャネルの幅に関してより制御しかつ正確にする必要があり、矩形チャネルに加えられる力をより正確にする必要がある。同様に、半円形断面を有するチャネルもまた、関連するローラの幅について、より制御された正確な寸法を必要とし得る。
【0236】
特定の実施形態において、本明細書に記載の装置は、装置の少なくとも一部を複数の次元(dimension)(例えば、2次元、3次元)で移動させるように構成された多軸システム(例えばロボット)を含むことができる。例えば、多軸システムは、関連する流体デバイス間の任意のポンピングレーン位置に装置の少なくとも一部を移動させるように構成することができる。例えば、特定の実施形態において、本明細書に記載のキャリッジは、多軸システムに機能的に接続されてもよい。例えば、特定の実施形態において、ローラは、多軸システムに間接的に機能的に接続されてもよい。特定の実施形態において、ローラに接続されたクランク・ロッカー・機構を含む装置部分を多軸システムに機能的に接続することができる。特定の実施形態において、各ポンピングレーンは、位置によってアドレス指定され、多軸システムを用いて本明細書に記載される装置によってアクセスされ得る。
【0237】
特定の実施形態において、サンプル調製のための本明細書に記載されるシステムは、システムによって調製されたサンプルの少なくとも一部(例えば、全て)を分析するための診断機器と流体接続されてもよい。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプル(例えば、精製されたペプチドサンプル)は、サンプル調製モジュールから診断機器に自動にて輸送されてもよい。特定の実施形態において、診断機器は、サンプルの基礎となる配列に基づくバンドまたは色の存在または非存在に基づいて出力を生成する。構成要素(例えば、モジュール、デバイス)が接続されている(例えば、機能的に接続されている)ものとして説明されるとき、接続は永久的に接続されてもよく、あるいは接続は可逆的に接続されてもよいことを理解されたい。場合によっては、接続されていると説明されている構成要素は、第1の期間中は(例えば、チャネル、チューブ、導管などを介した流体接続で)接続されていても、第2の期間中は(例えば、流体接続を切り離すことで)接続されていなくてもよいという意味で、分離可能に接続されている。いくつかのそのような実施形態において、可逆的/分離可能な接続は、実行されるサンプルの調製/分析/配列決定/同定のタイプに応じて、特定の構成要素を交換または再構成することができるモジュール式システムを提供することができる。
【0238】
本開示の態様はまた、タンパク質の配列決定および同定の方法、タンパク質の配列決定および同定の方法、アミノ酸同定の方法、ならびにかかる方法を実施するための組成物、システム、およびデバイスを含む。いくつかの態様において、標的タンパク質の配列を決定する方法が記載される。いくつかの実施形態において、標的タンパク質は、標的タンパク質の配列を決定する前に、濃縮される(例えば、電気泳動法、例えば、アフィニティーSCODAを使用して濃縮される)。いくつかの態様において、サンプル(例えば、精製されたサンプル、細胞溶解物、単一細胞、細胞の集団、または組織)中に存在する複数のタンパク質(例えば、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、30、50またはそれ以上)の配列を決定する方法が記載される。いくつかの実施形態において、サンプルは、サンプル中に存在する標的タンパク質または複数の標的タンパク質の配列を決定する前に、本明細書中に記載されるように調製される(例えば、標的タンパク質に対して溶解され、精製され、断片化され、および/または濃縮される)。いくつかの実施形態において、標的タンパク質は、濃縮された(例えば、電気泳動法、例えばアフィニティーSCODAを用いて濃縮された)標的タンパク質である。
【0239】
いくつかの実施形態において、本開示は、混合物からタンパク質の1つまたは複数のタイプのアミノ酸を同定することによって、複数のタンパク質を含むサンプル中の個々のタンパク質を配列決定および/または同定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、タンパク質の1以上のアミノ酸(例えば、末端アミノ酸)が(例えば、直接的または間接的に、例えば、結合剤を使用することにより)標識され、タンパク質における標識されたアミノ酸の相対位置が決定される。いくつかの実施形態において、タンパク質中のアミノ酸の相対位置は、一連のアミノ酸標識および切断ステップを用いて決定される。いくつかの実施形態において、タンパク質中の標識されたアミノ酸の相対位置は、タンパク質からアミノ酸を除去することなく決定され得るが、それは、タンパク質分子中の標識されたアミノ酸の相対位置を決定するために、標識されたタンパク質を、孔(例えば、タンパク質チャネル)を介して移動させ、孔を介した移動の間に標識されたアミノ酸からのシグナル(例えば、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)信号)を検出することによってである。
【0240】
いくつかの実施形態において、末端アミノ酸(例えば、N末端またはC末端アミノ酸)の同一性は、末端アミノ酸が除去され、末端の次のアミノ酸の同一性が評価される前に決定され;このプロセスは、タンパク質中の複数の連続したアミノ酸が評価されるまで繰り返すことができる。いくつかの実施形態において、アミノ酸の同一性を評価することは、存在するアミノ酸のタイプを決定することを含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸のタイプを決定することは、実際のアミノ酸同一性(例えば、天然に存在する20個のアミノ酸のうちのどれがアミノ酸であるかを決定すること、例えば、個々の末端アミノ酸に特異的な結合剤を使用すること)を決定することを含む。しかしながら、いくつかの実施形態において、末端アミノ酸タイプの同一性を評価することは、タンパク質の末端に存在し得る潜在的なアミノ酸のサブセットを決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、これは、アミノ酸が1つ以上の特定のアミノ酸ではないこと(すなわち、したがって、他のアミノ酸のいずれであってもよい)を決定することによって達成することができる。いくつかの実施形態において、これは、アミノ酸の特定のサブセット(例えば、サイズ、電荷、疎水性、結合特性に基づく)のどれがタンパク質の末端にあり得るかを(例えば、2つ以上の末端アミノ酸の特定のサブセットに結合する結合剤を使用して)決定することによって達成することができる。
【0241】
いくつかの実施形態において、上記に記載されているように、タンパク質は、複数のより小さいタンパク質に消化することができ、配列情報は、これらのより小さいタンパク質の1つ以上から得ることができる(例えば、タンパク質の末端アミノ酸を順次評価し、そのアミノ酸を除去して末端の次のアミノ酸を露出する方法を使用する)。
【0242】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、そのアミノ(N)末端から配列決定される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、そのカルボキシ(C)末端から配列決定される。いくつかの実施形態において、タンパク質の第1の末端(例えば、NまたはC末端)は固定化され、他の末端(例えば、CまたはN末端)は、本明細書に記載されるように配列決定される。
【0243】
本明細書で使用される場合、タンパク質の配列決定は、タンパク質の配列情報を決定することを指す。いくつかの実施形態において、これは、タンパク質の一部(またはすべて)についての各連続するアミノ酸の同一性を決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、これは、断片(例えば、標的タンパク質の断片または複数のタンパク質を含むサンプルの断片)の同一性を決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、これは、タンパク質内のアミノ酸のサブセットの同一性を評価することと、タンパク質中の各アミノ酸の同一性を決定することなく、1つ以上のアミノ酸タイプの相対位置を決定することと、を含み得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸含有量情報は、タンパク質中の異なるタイプのアミノ酸の相対的位置を直接決定することなく、タンパク質から得ることができる。アミノ酸含有量のみを使用して、存在するタンパク質の同一性を推測することができる(例えば、アミノ酸含有量をタンパク質情報のデータベースと比較し、どのタンパク質が同じアミノ酸含有量を有するかを決定することによって)。
【0244】
いくつかの実施形態において、(例えば、酵素的および/または化学的開裂を介して)複数のタンパク質を含む標的タンパク質またはサンプルから得られた複数のタンパク質断片の配列情報を分析して、サンプル中に存在する標的タンパク質または複数のタンパク質の配列を再構築または推定することができる。したがって、いくつかの実施形態において、1つ以上のタイプのアミノ酸を選択的に結合する1つ以上の標識親和性試薬の発光を検出することによって、1つ以上のタイプのアミノ酸が同定される。いくつかの実施形態において、1つ以上のタイプのアミノ酸は、標識タンパク質の発光を検出することによって同定される。
【0245】
いくつかの実施形態において、本開示は、経時的に(例えば、反復検出および末端でのアミノ酸の切断によって)タンパク質の末端に存在する一連のアミノ酸を同定することによってタンパク質を配列決定するための組成物、デバイス、および方法を提供する。さらに他の実施形態において、本開示は、タンパク質の標識されたアミノ含量を同定し、参照配列データベースと比較することによってタンパク質を配列決定するための組成物、デバイス、および方法を提供する。
【0246】
いくつかの実施形態において、本開示は、タンパク質の複数の断片を配列決定することによってタンパク質を配列決定するための組成物、デバイス、および方法を提供する。いくつかの実施形態において、タンパク質の配列決定は、タンパク質の配列を同定および/または決定するために、複数のタンパク質断片の配列情報を組み合わせることを含む。いくつかの実施形態において、配列情報を組み合わせることは、コンピュータハードウェアおよびソフトウェアによって実行され得る。本明細書に記載される方法は、生物の全プロテオームのような一組の関連タンパク質を配列決定することを可能にし得る。いくつかの実施形態において、複数の単一分子配列決定反応は、本開示の態様に従って並行して(例えば、単一のチップまたはカートリッジ上)行われる。例えば、いくつかの実施形態において、複数の単一分子配列決定反応は、それぞれ、単一のチップまたはカートリッジ上の別個のサンプルウェルにおいて実行される。
【0247】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、複数のタンパク質を含むサンプル中の個々のタンパク質の配列決定および同定のために使用され得る。いくつかの実施形態において、本開示は、複数のタンパク質を含むサンプル中の個々のタンパク質を一意的に同定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、個々のタンパク質は、タンパク質の部分的なアミノ酸配列を決定することによって、混合サンプル中で検出される。いくつかの実施形態において、タンパク質の部分的なアミノ酸配列は、約5~50、10~50、25~50、25~100、または50~100アミノ酸の連続した範囲内にある。
【0248】
特定の理論に拘束されることを望まないが、大部分のヒトタンパク質は、プロテオミクスデータベースを参照した不完全な配列情報を用いて同定できることが期待される。例えば、ヒトプロテオームの単純なモデル化により、6~40アミノ酸の範囲内でわずか4種類のアミノ酸を検出するだけで、約98%のタンパク質をユニークに同定できることが示されている(スワミナサン(Swaminathan)他、PLoS Comput Biol、2015、11(2):e1004080;およびヤオ(Yao)他、Phys.Biol.、2015、12(5):055003を参照されたい)。したがって、複数のタンパク質を含むサンプルは、約6~40アミノ酸の短いタンパク質断片に断片化(例えば、化学的に分解される、酵素的に分解される)することができ、このタンパク質ベースのライブラリの配列決定は、元のサンプル中に存在するタンパク質の各々の同一性および存在量を明らかにするであろう。部分的配列情報を決定することにより、選択的アミノ酸標識およびタンパク質を同定するための組成物および方法は、発明の名称が「単一分子ペプチド配列決定(SINGLE MOLECULE PEPTIDE SEQUENCING)」である2015年9月15日に出願された米国特許出願第15/510962号に詳細に記載されており、同特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0249】
本開示に従う配列決定は、いくつかの態様において、タンパク質(例えば、標的タンパク質)を基材(例えば、本明細書に記載の配列決定デバイスまたはモジュールにおける、例えばチップまたはカートリッジなどの固体支持体)の表面に固定化することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、タンパク質は、基材上のサンプルウェルの表面(例えば、サンプルウェルの底面)に固定化されてもよい。いくつかの実施形態において、タンパク質のN末端アミノ酸は固定化されている(例えば、表面に付着している)。いくつかの実施形態において、タンパク質のC末端アミノ酸は固定化されている(例えば、表面に付着している)。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の非末端アミノ酸が固定化されている(例えば、表面に付着している)。固定化アミノ酸(複数可)は、例えば本開示に記載されるような、任意の適切な共有結合または非共有結合を用いて付着させることができる。いくつかの実施形態では、複数のタンパク質は、例えば、基材上のサンプルウェルのアレイにおいて、複数のサンプルウェルに付着される(例えば、1つのタンパク質が各サンプルウェルの表面、例えば、底面に付着された状態で)。
【0250】
いくつかの実施形態において、末端アミノ酸(例えば、N末端またはC末端アミノ酸)の同一性(identity)が決定され、次いで、末端アミノ酸が除去され、末端における次のアミノ酸の同一性が決定される。このプロセスは、タンパク質中の複数の連続するアミノ酸が決定されるまで、繰り返されてもよい。いくつかの実施形態において、アミノ酸の同一性を決定することは、存在するアミノ酸のタイプを決定することを含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸のタイプを決定することは、例えば、天然に存在する20個のアミノ酸のうちのどれが末端アミノ酸であるかを決定することによって(例えば、個々の末端アミノ酸に特異的である結合剤を用いて)、実際のアミノ酸の同一性を決定することを含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸の種類は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セレノシステイン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンから選択される。いくつかの実施形態において、末端アミノ酸のタイプの同一性を決定することは、タンパク質の末端に存在し得る潜在的なアミノ酸のサブセットを決定することを含み得る。いくつかの実施形態において、これは、アミノ酸が1つ以上の特定のアミノ酸ではないこと(したがって、他のアミノ酸のいずれであってもよい)を決定することによって達成することができる。いくつかの実施形態において、これは、アミノ酸の特定のサブセット(例えば、サイズ、電荷、疎水性、翻訳後修飾、結合特性に基づく)のどれがタンパク質の末端にあり得るかを(例えば、2つ以上の末端アミノ酸の特定のサブセットに結合する結合剤を使用して)決定することによって達成することができる。
【0251】
いくつかの実施形態において、末端アミノ酸のタイプの同一性を評価することは、アミノ酸が翻訳後修飾を含んでいることを決定することを含む。翻訳後修飾の非限定的な例としては、アセチル化、ADPリボシル化、カスパーゼ切断、シトルリン化、ホルミル化、N結合グリコシル化、O結合グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、ネディル化(neddylation)、ニトロ化、酸化、パルミトイル化、リン酸化、プレニル化、S-ニトロシル化、硫酸化、スモイ化(sumoylation)およびユビキチン化などが挙げられる。
【0252】
いくつかの実施形態において、タンパク質またはタンパク質は、複数のより小さいタンパク質に消化することができ、配列情報は、これらのより小さいタンパク質の1つ以上から得ることができる(例えば、タンパク質の末端アミノ酸を順次評価し、そのアミノ酸を除去して末端の次のアミノ酸を露出する方法を使用する)。
【0253】
いくつかの実施形態において、タンパク質分子の配列決定は、タンパク質分子中の少なくとも2つ(例えば、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、またはそれ以上)のアミノ酸を同定することを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのアミノ酸は、隣接するアミノ酸である。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのアミノ酸は、非連続するアミノ酸である。
【0254】
いくつかの実施形態において、タンパク質分子の配列決定は、タンパク質分子中の全アミノ酸の100%未満(例えば、99%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満)の同定を含む。例えば、ある態様において、タンパク質分子の配列決定は、タンパク質分子中の1つのタイプのアミノ酸の100%未満の同定(例えば、タンパク質分子中の1つのタイプの全てのアミノ酸の一部の同定)を含む。いくつかの実施形態において、タンパク質分子の配列決定は、タンパク質分子中の各タイプのアミノ酸の100%未満の同定を含む。
【0255】
いくつかの実施形態において、タンパク質分子の配列決定は、タンパク質中の少なくとも1種類、少なくとも5種類、少なくとも10種類、少なくとも15種類、少なくとも20種類、少なくとも25種類、少なくとも30種類、少なくとも35種類、少なくとも40種類、少なくとも45種類、少なくとも50種類、少なくとも55種類、少なくとも60種類、少なくとも65種類、少なくとも70種類、少なくとも75種類、少なくとも80種類、少なくとも85種類、少なくとも90種類、少なくとも95種類、少なくとも100種類以上のアミノ酸の同定を含む。
【0256】
反復末端アミノ酸検出および切断によるタンパク質配列決定の非限定的な例を
図13Aに示す。いくつかの実施形態において、タンパク質配列決定は、連結基1002を介して固体支持体の表面1004に固定化された(例えば、サンプルウェルの底または側壁面に付着させる)タンパク質1000を提供することを含む。いくつかの実施形態において、連結基1002は、タンパク質1000の官能化末端と表面1004の相補的機能部分との間の共有結合または非共有結合によって形成される。例えば、いくつかの実施形態において、連結基1002は、タンパク質1000のビオチン部分(例えば、本開示に従って官能化されたもの)と表面1004のアビジンタンパク質との間の非共有結合によって形成される。いくつかの実施形態において、連結基1002は核酸を含む。
【0257】
いくつかの実施形態において、タンパク質1000は、配列決定反応において末端アミノ酸を検出および切断するために他の末端が自由になるように、一方の末端で官能化部分を介して表面1004に固定化される。したがって、いくつかの実施形態において、特定のタンパク質配列決定反応で使用される試薬は、タンパク質1000の固定化されていない(例えば遊離の)末端の末端アミノ酸と優先的に相互作用する。このようにして、タンパク質1000は、検出および切断の反復サイクルにわたって固定化されたままである。この目的のために、いくつかの実施形態において、リンカー1002は、例えば、表面1004からのタンパク質1000の分離を制限するために、検出および切断に使用される所望の条件のセットに従って設計され得る。タンパク質を官能化するための適切なリンカー組成物および技術(例えば、タンパク質を表面に固定化するために使用され得る)は、本明細書の他の箇所で詳細に記載されている。
【0258】
いくつかの実施形態において、
図13Aに示されるように、タンパク質の配列決定は、(1)タンパク質1000を、末端アミノ酸の1つまたは複数のタイプと会合する1つまたは複数のアミノ酸認識分子と接触させることによって進行させることができる。示されるように、いくつかの実施形態において、標識アミノ酸認識分子1006は、末端アミノ酸と会合することによってタンパク質1000と相互作用する。
【0259】
いくつかの実施形態において、方法は、標識アミノ酸認識分子1006を検出することによって、タンパク質1000のアミノ酸(末端アミノ酸)を同定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、検出することは、標識アミノ酸認識分子1006からの発光を検出することを含む。いくつかの実施形態において、発光は、標識アミノ酸認識分子1006と特異的に会合し(uniquely associated)、したがって、発光は、標識アミノ酸認識分子1006が選択的に結合するアミノ酸のタイプに会合する。したがって、いくつかの実施形態において、アミノ酸のタイプは、標識アミノ酸認識分子1006の1つまたは複数の発光特性を決定することによって同定される。
【0260】
いくつかの実施形態において、タンパク質配列決定は、(2)タンパク質1000を、タンパク質1000の末端アミノ酸に結合して切断するエキソペプチダーゼ1008と接触させることによって、末端アミノ酸を除去することによって進行する。エキソペプチダーゼ1008によって末端アミノ酸が除去されると、タンパク質配列決定は、(3)タンパク質1000(n-1アミノ酸を有する)を末端アミノ酸認識および切断のさらなるサイクルに供することによって進行する。いくつかの実施形態において、ステップ(1)~(3)は、例えば、動的ペプチド配列決定反応におけるように、同じ反応混合物中で起こる。いくつかの実施形態において、ステップ(1)から(3)は、エドマン分解によるペプチド配列決定などの、当技術分野で知られている他の方法を使用して実施することができる。
【0261】
エドマン分解は、タンパク質の末端アミノ酸の修飾および切断の反復サイクルを含み、連続的に切断された各アミノ酸を同定して、タンパク質のアミノ酸配列を決定する。
図13Aを参照すると、従来のエドマン分解によるペプチド配列決定は、(1)タンパク質1000を、1つ以上のタイプの末端アミノ酸に選択的に結合する1つ以上のアミノ酸認識分子と接触させることによって行うことができる。いくつかの実施形態において、ステップ(1)は、タンパク質1000に選択的に結合しない1つ以上の標識アミノ酸認識分子のいずれかを除去することをさらに含む。いくつかの実施形態において、ステップ(2)は、末端アミノ酸をイソチオシアネート(例えば、PITC)と接触させてイソチオシアネート修飾末端アミノ酸を形成することによる、タンパク質1000の末端アミノ酸(例えば、遊離末端アミノ酸)を修飾することを含む。いくつかの実施形態において、イソチオシアネート修飾末端アミノ酸は、非修飾末端アミノ酸よりも切断試薬(例えば、化学的または酵素的切断試薬)による除去を受けやすい。
【0262】
いくつかの実施形態において、エドマン分解は、(2)タンパク質1000を、イソチオシアネート修飾末端アミノ酸に特異的に結合して切断するエキソペプチダーゼ1008と接触させることによって、末端アミノ酸を除去することによって進行する。いくつかの実施形態において、エキソペプチダーゼ1008は、修飾システインプロテアーゼを含む。エキソペプチダーゼ1008は、Trypanosoma cruzi由来のシステインプロテアーゼなどの修飾されたシステインプロテアーゼを含む(例えば、ボルゴ(Borgo)他、(2015)、Protein Science、24:571-579を参照)。さらに他の実施形態において、ステップ(2)は、タンパク質1000を、イソチオシアネート修飾末端アミノ酸を切断するのに十分な化学的(例えば、酸性、塩基性)条件に供することによって、末端アミノ酸を除去することを含む。いくつかの実施形態において、エドマン分解は、(3)末端アミノ酸切断後にタンパク質1000を洗浄することによって進行する。いくつかの実施形態において、洗浄することは、エキソペプチダーゼ1008を除去することを含む。いくつかの実施形態において、洗浄することは、タンパク質1000を中性pH条件に戻すことを含む(例えば、酸性または塩基性条件による化学的切断の後)。いくつかの実施形態において、エドマン分解による配列決定は、ステップ(1)から(3)を複数のサイクルにわたって繰り返すことを含む。
【0263】
いくつかの実施形態において、ペプチド配列決定は、動的ペプチド配列決定反応で実施することができる。いくつかの実施形態において、再び
図13Aを参照すると、ステップ(1)およびステップ(2)を実施するために必要な試薬は、単一の反応混合物内で組み合わされる。例えば、いくつかの実施形態において、ステップ(1)および(2)は、1つの反応混合物を別の反応混合物と交換することなく、また従来のエドマン分解のように洗浄ステップなしで行うことができる。したがって、この実施形態において、単一の反応混合物は、標識アミノ酸認識分子1006およびエキソペプチダーゼ1008を含む。いくつかの実施形態において、エキソペプチダーゼ1008は、標識アミノ酸認識分子1006の濃度よりも低い濃度で混合物中に存在する。いくつかの実施形態において、エキソペプチダーゼ1008は、標識アミノ酸認識分子1006よりも低い結合親和性でタンパク質1000に結合する。
【0264】
いくつかの実施形態において、動的タンパク質配列決定は、末端アミノ酸と標識アミノ酸認識分子および切断試薬(例えば、エキソペプチダーゼ)との結合相互作用を評価することによってリアルタイムで実施される。
図13Bは、別個の結合事象がシグナル出力のシグナルパルスを生じさせる配列決定方法の例を示す。
図13Bの挿入パネル(左)は、このアプローチによるリアルタイム配列決定の一般的なスキームを示している。示されるように、標識アミノ酸認識分子は末端アミノ酸(ここではフェニルアラニンとして示される)と会合し(例えば、結合し)、同末端アミノ酸から解離し、それは末端アミノ酸を同定するために使用され得るシグナル出力における一連のパルスを発生させる。いくつかの実施形態において、一連のパルスは、対応する末端アミノ酸の同一性の診断となり得るパルスパターン(例えば、特徴的なパターン)を提供する。
【0265】
図13Bの挿入パネル(左)にさらに示されるように、いくつかの実施形態において、配列決定反応混合物は、エキソペプチダーゼをさらに含む。いくつかの実施形態において、エキソペプチダーゼは、標識アミノ酸認識分子の濃度よりも低い濃度で混合物中に存在する。いくつかの実施形態において、エキソペプチダーゼは、ほとんどまたはすべてのタイプの末端アミノ酸を切断するような幅広い特異性を示す。したがって、動的配列決定アプローチは、エキソペプチダーゼ切断活性によって触媒される分解反応の過程にわたって、タンパク質の末端で結合する認識分子を監視することを含み得る。
【0266】
図13Bは、経時的なシグナル出力強度の進行をさらに示す(右パネル)。いくつかの実施形態において、エキソペプチダーゼによる末端アミノ酸切断は、標識アミノ酸認識分子の結合パルスよりも低い頻度で起こる。このようにして、タンパク質のアミノ酸をリアルタイム配列決定プロセスで計数および/または同定することができる。いくつかの実施形態において、1つのタイプのアミノ酸認識分子は、2つ以上のタイプのアミノ酸と会合することができ、異なる特徴的なパターンは、1つのタイプの標識アミノ酸認識分子と異なるタイプの末端アミノ酸との会合に対応する。例えば、いくつかの実施形態において、異なる特徴的パターン(フェニルアラニン(F、Phe)、トリプトファン(W、Trp)およびチロシン(Y,Tyr)のそれぞれによって示されるように)は、分解の過程で、あるタイプの標識アミノ酸認識分子(例えば、ClpSタンパク質)が異なるタイプの末端アミノ酸と会合することに対応する。いくつかの実施形態において、それぞれがアミノ酸の異なるサブセットと会合することができる、複数の標識アミノ酸認識分子を使用することができる。
【0267】
いくつかの実施形態において、動的ペプチド配列決定は、異なる会合事象、例えば、アミノ酸認識分子とペプチドの末端のアミノ酸との間の会合事象を観察することによって行われ、ここで、各会合事象は、一定時間持続するシグナル、例えば、発光シグナルの大きさの変化を生じる。いくつかの実施形態において、異なる会合事象、例えばアミノ酸認識分子とペプチドの末端のアミノ酸との間の会合事象の観察は、ペプチド分解プロセス中に行うことができる。いくつかの実施形態において、ある特徴的なシグナルパターンから別のシグナルパターンへの転移は、アミノ酸切断(例えば、ペプチド分解によるアミノ酸切断)を示す。いくつかの実施形態において、アミノ酸切断は、タンパク質の末端からの少なくとも1つのアミノ酸の除去(例えば、タンパク質からの少なくとも1つの末端アミノ酸の除去)を指す。いくつかの実施形態において、アミノ酸切断は、特徴的なシグナルパターン間の持続時間に基づく推論によって決定される。いくつかの実施形態において、アミノ酸切断は、標識切断試薬とタンパク質末端のアミノ酸との会合によって生じるシグナルの変化を検出することによって決定される。アミノ酸は、分解中にタンパク質の末端から連続的に切断されるので、大きさの一連の変化、または一連のシグナルパルスが検出される。
【0268】
いくつかの実施形態において、シグナルパルス情報を使用して、一連のシグナルパルスにおける特徴的なパターンに基づいてアミノ酸を同定することができる。いくつかの実施形態において、特性パターンは複数の信号パルスを含み、各信号パルスはパルス持続時間を含む。いくつかの実施形態において、複数の信号パルスは、特徴的なパターンにおけるパルス持続時間の分布の要約統計量(例えば、平均値、中央値、時間減衰定数)によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、特徴的なパターンの平均パルス持続時間は、約1ミリ秒~約10秒の間(例えば、約1ms~約1sの間、約1ms~約100msの間、約1ms~約10msの間、約10ms~約10sの間、約100ms~約10sの間、約1s~約10sの間、約10ms~約100msの間、または約100ms~約500msの間)である。いくつかの実施形態において、単一のタンパク質中の異なるタイプのアミノ酸に対応する異なる特徴的なパターンは、要約統計量における統計的に有意な差に基づいて互いに区別され得る。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも10ミリ秒(例えば、約10ms~約10s、約10ms~約1s、約10ms~約100ms、約100ms~約10s、約1s~約10s、または約100ms~約1s)の平均パルス持続時間の差に基づいて、ある特徴的パターンを別の特徴的パターンと区別することができる。いくつかの実施形態において、異なる特徴的パターン間の平均パルス持続時間のより小さな差は、統計的信頼性で互いに区別するために、各特徴的パターン内のより多くのパルス持続時間を必要とし得ることを理解されたい。
【0269】
本開示に従うタンパク質の配列決定は、いくつかの態様において、単一分子分析を可能にするシステムを使用して実施され得る。システムは、配列決定モジュールまたはデバイスと、配列決定デバイスとインターフェースするように構成された機器と、を含み得る。上述のように、いくつかの実施形態において、検出モジュール1800は、そのような配列決定モジュールまたはデバイスを含む。配列決定モジュールまたはデバイスは、ピクセルのアレイを含んでもよく、個々のピクセルは、サンプルウェルおよび少なくとも1つの光検出器を含む。配列決定デバイスのサンプルウェルは、配列決定デバイスの表面上または表面を通して形成され得、配列決定デバイスの表面に配置されたサンプルを受け取るように構成され得る。いくつかの実施形態において、サンプルウェルは、デバイスに挿入することができるカートリッジ(例えば、使い捨てまたは単回使用用カートリッジ)の構成要素である。全体として、サンプルウェルは、サンプルウェルのアレイとみなされうる。複数のサンプルウェルは、サンプルウェルの少なくとも一部が単一の標的分子または複数の分子(例えば、標的タンパク質)を含むサンプルを受け入れるように、適切なサイズおよび形状を有し得る。いくつかの実施形態において、サンプルウェル内の分子の数は、いくつかのサンプルウェルが1つの分子(例えば、標的タンパク質)を含み、他のサンプルウェルが0個、2個、または複数の分子を含むように、配列決定デバイスのサンプルウェル間に分配されてもよい。
【0270】
いくつかの実施形態において、配列決定モジュールまたはデバイスは、サンプル調製デバイスから複数の分子(例えば、標的タンパク質)を含む標的分子またはサンプルを受け取るように配置される。いくつかの実施形態において、配列決定デバイスは、サンプル調製デバイスに直接(例えば、物理的に付着している)または間接的に接続される。しかしながら、サンプル調製デバイスと配列決定デバイスまたはモジュール(または任意の他のタイプの検出モジュール)との間の接続は、全ての実施形態に必要というわけではない。いくつかの実施形態において、標的分子(例えば、標的タンパク質)または複数の分子を含むサンプルは、サンプル調製デバイス(例えば、サンプル調製モジュール)から配列決定モジュールまたはデバイスに、直接的に(例えば、標的分子またはサンプルの組成を変化させるいかなる介在ステップも伴わずに)または間接的に(例えば、標的分子またはサンプルの組成を変化させ得る1つ以上のさらなる処理ステップを伴う)のいずれかで手動で輸送される。手動輸送は、例えば、手動ピペット操作または当該分野で公知の適切な手動技術による輸送を含み得る。
【0271】
励起光は、配列決定デバイスの外部の1つ以上の光源から配列決定デバイスに提供される。配列決定デバイスの光学部品は、光源から励起光を受け取り、その光を配列決定デバイスのサンプルウェルのアレイに向け、サンプルウェル内の照明領域を照明することができる。いくつかの実施形態において、サンプルウェルは、複数の分子を含む標的分子またはサンプルがサンプルウェルの表面に近接して保持されることを可能にする構成を有することができ、これにより、サンプルウェルへの励起光の送達および複数の分子を含む標的分子またはサンプルからの放出光の検出を容易にすることができる。照射領域内に配置された複数の分子を含む標的分子またはサンプルは、励起光によって照射されることに応答して放出光を放出することができる。例えば、タンパク質(またはそれらの複数個)は、励起光の照射によって励起状態を達成することに応答して光を発する蛍光マーカーで標識することができる。次に、複数の分子を含む標的分子またはサンプルによって放出される放出光は、分析される複数の分子を含む標的分子またはサンプルを備えたサンプルウェルに対応するピクセル内の1つまたは複数の光検出器によって検出され得る。いくつかの実施形態によれば、約10,000ピクセル~1,000,000ピクセルの間の数の範囲であり得るサンプルウェルのアレイ全体にわたって実行される場合、複数のサンプルウェルを並行して分析することができる。
【0272】
配列決定モジュールまたはデバイスは、励起光を受け取り、励起光をサンプルウェルアレイの間に導くための光学システムを含むことができる。光学システムは、励起光を配列決定デバイスに結合し、励起光を他の光学部品に向けるように構成された1つ以上の格子カプラを含むことができる。光学システムは、励起光を格子カプラからサンプルウェルアレイに向ける光学部品を含むことができる。そのような光学部品は、光スプリッタ、光結合器、および導波路を含むことができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の光スプリッタは、格子カプラからの励起光を結合し、励起光を少なくとも1つの導波路に送達することができる。いくつかの実施形態によれば、光スプリッタは、導波路の各々が実質的に同量の励起光を受け取るように、全ての導波路にわたって実質的に均一な励起光の送達を可能にする構成を有することができる。そのような実施形態は、配列決定デバイスのサンプルウェルによって受け取られる励起光の均一性を改善することによって、配列決定デバイスの性能を改善することができる。励起光をサンプルウェルに結合するため、および/または放出光を光検出器に向けるための、配列決定デバイスに含めるための適切な構成要素の例は、2015年8月7日に出願された発明の名称が「分子を探査し、検出し、分析するための統合されたデバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」である米国特許出願第14/821,688号および2014年11月17日に出願された発明の名称が「分子の探査し、検出し、分析するための外部光源を備えた統合されたデバイス(INTEGRATED DEVICE WITH EXTERNAL LIGHT SOURCE FOR PROBING,DETECTING,AND ANALYZING MOLECULES)」である米国特許出願第14/543,865号に記載されており、これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる。配列決定デバイスに実装され得る適切な格子カプラおよび導波路の例は、2017年12月15日に出願された発明の名称が「光カプラおよび導波路システム(OPTICAL COUPLER AND WAVEGUIDE SYSTEM)」である米国特許出願第15/844,403号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0273】
追加のフォトニック構造は、サンプルウェルと光検出器との間に配置されてもよく、そうでなければ、放出光を検出する際のシグナルノイズに寄与する励起光が光検出器に到達するのを低減または防止するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、配列決定デバイスのための回路として作用し得る金属層は、空間フィルタとしても作用し得る。適切なフォトニック構造の例は、スペクトルフィルタ、偏光フィルタおよび空間フィルタを含むことができ、2018年7月23日に出願された発明の名称が「光遮断型フォトニック構造(OPTICAL REJECTION PHOTONIC STRUCTURES)」である米国特許出願第16/042,968号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0274】
配列決定モジュールまたはデバイスから離れて配置された構成要素を使用して、励起源を配列決定デバイスに位置決めおよび位置合わせすることができる。そのような構成要素は、レンズ、ミラー、プリズム、窓、開口、減衰器、および/または光ファイバを含む光学構成要素を含み得る。1つ以上の位置合わせ構成要素の制御を可能にするために、追加の機械的構成要素を機器に含めることができる。そのような機械的構成要素は、アクチュエータ、ステッパモータ、および/またはノブを含むことができる。適切な励起源および位置合わせ機構の例は、2016年5月20日に出願された発明の名称が「パルスレーザおよびシステム(PULSED LASER AND SYSTEM)」である米国特許出願第15/161,088号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。ビームステアリングモジュールの別の例は、2017年12月14日に出願された発明の名称が「コンパクトビーム成形およびステアリングアセンブリ(COMPACT BEAM SHAPING AND STEERING ASSEMBLY)」である米国特許出願第15/842,720号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。適切な励起源のさらなる例は、2015年8月7日に出願された発明の名称が「分子を探査し、検出し、分析するための統合されたデバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」である米国特許出願第14/821,688号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0275】
配列決定モジュールまたはデバイスの個々のピクセルとともに配置された光検出器は、ピクセルの対応するサンプルウェルからの放出光を検出するように構成および配置され得る。適切な光検出器のさらなる例は、2015年8月7日に出願された発明の名称が「分子を探査し、検出し、分析するための統合されたデバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」である米国特許出願第14/821,688号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。いくつかの実施形態において、サンプルウェルおよびそのそれぞれの光検出器は、共通の軸に沿って位置合わせされ得る。このようにして、光検出器は、ピクセル内でサンプルと十分に重なる可能性がある。
【0276】
検出された放出光の特性は、放出光に関連するマーカーを同定するための指標を提供し得る。そのような特性は、光検出器によって検出された光子の到着時間、光検出器によって経時的に蓄積された光子の量、および/または2つ以上の光検出器にわたる光子の分布を含む、任意の適切なタイプの特性を含み得る。いくつかの実施形態において、光検出器は、サンプルの発光に関連する1つまたは複数の計時特性(例えば、発光寿命)の検出を可能にする構成を有し得る。光検出器は、励起光のパルスが配列決定デバイスを通って伝播した後の光子到着時間の分布を検出することができ、到着時間の分布は、サンプルの放出光の計時特性(例えば、発光寿命の代替指標(proxy))の指標を提供することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の光検出器は、マーカー(例えば、発光強度)によって放出される放出光の確率の指標を提供する。いくつかの実施形態において、複数の光検出器は、放出光の空間分布を捕捉するようにサイズ設定および配置され得る。次に、1つまたは複数の光検出器からの出力信号を使用して、複数のマーカーの中から1つのマーカー区別することができ、複数のマーカーを使用して、サンプル内の1つのサンプルを同定することができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、複数の励起エネルギーによって励起されてもよく、複数の励起エネルギーに応答してサンプルによって放出される放出光および/または放出光のタイミング特性は、1つのマーカーを複数のマーカーから区別し得る。
【0277】
動作中、励起光を用いてウェル内のサンプルの一部または全部を励起し、光検出器でサンプル放出からの信号を検出することによって、サンプルウェル内のサンプルの並行的解析を行う。サンプルからの放出光は、対応する光検出器によって検出され、少なくとも1つの電気信号に変換され得る。電気信号は、配列決定デバイスと接続された機器に接続され得る、配列決定デバイスの回路内の導線に沿って送信され得る。電気信号は、続いて処理および/または分析され得る。電気信号の処理および/または分析は、機器の内外に配置された適切なコンピューティングデバイス上で行われ得る。
【0278】
測定器(instrument)は、測定器および/または配列決定デバイスの動作を制御するためのユーザインターフェースを含み得る。ユーザインターフェースは、ユーザが、機器の機能を制御するために使用されるコマンドおよび/または設定などの情報を機器に入力できるように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、ユーザインターフェースは、音声コマンド用のボタン、スイッチ、ダイヤル、および/またはマイクロフォンを含み得る。ユーザインターフェースは、ユーザが、適切な位置合わせおよび/または配列決定デバイス上の光検出器からの読み出し信号によって得られる情報など、機器および/または配列決定デバイスの性能に関するフィードバックを受信することを可能にし得る。いくつかの実施形態において、ユーザインターフェースは、可聴フィードバックを提供するためにスピーカーを使用してフィードバックを提供することができる。いくつかの実施形態において、ユーザインターフェースは、ユーザに視覚的なフィードバックを提供するための表示灯および/または表示スクリーンを含み得る。
【0279】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明される機器またはデバイスは、コンピューティングデバイスと接続するように構成されたコンピュータインターフェースを含み得る。コンピュータインターフェースは、USBインターフェース、FireWire(登録商標)インターフェース、または他の任意の適切なコンピュータインターフェースとすることができる。コンピューティングデバイスは、ラップトップまたはデスクトップコンピュータなどの任意の汎用コンピュータであり得る。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、適切なコンピュータインターフェースを介して無線ネットワークを介してアクセス可能なサーバ(例えば、クラウドベースのサーバ)であり得る。コンピュータインターフェースは、機器とコンピューティングデバイスとの間の情報の通信を容易にすることができる。機器を制御および/または構成するための入力情報は、コンピューティングデバイスに提供され、コンピュータインターフェースを介して機器に送信され得る。機器によって生成された出力情報は、コンピュータインターフェースを介してコンピューティングデバイスによって受信され得る。出力情報には、機器の性能、配列決定デバイスの性能、および/または光検出器の読み出し信号から生成されたデータに関するフィードバックが含まれていてもよい。
【0280】
いくつかの実施形態において、機器は、配列決定デバイスの1つまたは複数の光検出器から受信したデータを分析し、および/または制御信号を励起源に送信するように構成された処理デバイスを含み得る。いくつかの実施形態において、処理デバイスは、汎用プロセッサ、および/または特別に適合されたプロセッサ(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラコアなどの中央処理装置(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、カスタム集積回路、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、またはこれらの組み合わせ)を含むことができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の光検出器からのデータの処理は、機器の処理デバイスおよび外部コンピューティングデバイスの両方によって実行され得る。その他の実施形態において、外部コンピューティングデバイスを省略して、1つまたは複数の光検出器からのデータの処理は、配列決定デバイスの処理デバイスによってのみ実行されてもよい。
【0281】
いくつかの実施形態によれば、発光放出特性に基づいて複数の分子を含む標的分子またはサンプルを分析するように構成された機器は、異なる発光分子間の発光寿命および/または強度における差異、および/または異なる環境における同じ発光分子の寿命および/または強度における差異を検出することができる。本発明者らは、発光放出寿命の差を用いて、異なる発光分子の存在または非存在を識別すること、および/または発光分子がさらされる異なる環境または条件を識別することができることを認識し、評価した。場合によっては、(例えば発光波長ではなく)寿命に基づいて発光分子を識別することにより、システムの態様を単純化することができる。一例として、波長識別光学系(例えば、波長フィルタ、各波長用の専用検出器、異なる波長における専用パルス光源、および/または回折光学系)は、寿命に基づいて発光分子を識別するときに、数を減らしてもよく、または排除してもよい。場合によっては、単一の特徴的な波長で動作する単一のパルス光源を使用して、光学スペクトルの同じ波長領域内で発光するが、測定可能な異なる寿命を有する異なる発光分子を励起することができる。同じ波長領域で発光する異なる発光分子を励起および識別するために、異なる波長で動作する複数の光源ではなく、単一のパルス光源を使用する分析システムは、動作および維持するための複雑さが少なく、よりコンパクトであり、より低コストで製造することができる。
【0282】
発光寿命分析に基づく分析システムは、ある種の利点を有し得るが、分析システムによって得られる情報の量および/または検出精度は、追加の検出技術を可能にすることによって増加され得る。例えば、システムのいくつかの実施形態は、さらに、発光波長および/または発光強度に基づいてサンプルの1つ以上の特性を識別するように構成されてもよい。いくつかの実装形態において、ルミネッセンス強度は、異なるルミネッセンス標識を区別するために追加的にまたは代替的に使用され得る。例えば、いくつかの発光標識は、それらの減衰速度が類似していても、有意に異なる強度で発光するか、または励起の確率に有意差(例えば、少なくとも約35%の差)を有し得る。測定された励起光に対してビニングされた信号を参照することによって、強度レベルに基づいて異なる発光標識を区別することが可能であり得る。
【0283】
いくつかの実施形態によれば、異なる発光寿命は、発光標識の励起に続く発光放出事象を時間ビニング(time-bin)するように構成された光検出器によって区別することができる。時間ビニングは、光検出器に対する単一の電荷蓄積サイクルの間に生じ得る。電荷蓄積サイクルは、光発生キャリアが時間ビニング光検出器のビン内に蓄積されるリードアウト事象(read-out events)間の間隔である。時間ビニング光検出器の例は、2015年8月7日に出願された発明の名称が「受信した光子の時間ビニングのための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS)」である米国特許出願第14/821,656号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。いくつかの実施形態において、時間ビニング光検出器は、光子吸収/キャリア生成領域内に電荷キャリアを生成し、電荷キャリア格納領域内の電荷キャリア格納ビンに電荷キャリアを直接転送することができる。そのような実施形態において、時間ビニング光検出器は、キャリア移動/捕捉領域を含まなくてもよい。このような時間ビニング光検出器は、「直接ビニングピクセル」と呼ばれることがある。直接ビニングピクセルを含む時間ビニング光検出器の例は、2017年12月22日に出願された発明の名称が「直接ビニングピクセルを備えた統合光検出器(Integrated photodetector with direct binning pixel)」である米国特許出願第15/852,571号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0284】
いくつかの実施形態において、同じ種類の異なる数のフルオロフォアを、標的分子の異なる成分(例えば、標的タンパク質)またはサンプル中に存在する複数の分子(例えば、複数のタンパク質)に結合することができ、その結果、各個々の分子を発光強度に基づいて同定することができる。例えば、2つのフルオロフォアが第1の標識された分子に結合されてもよく、4つ以上のフルオロフォアが第2の標識された分子に結合されてもよい。異なる数のフルオロフォアのために、異なる分子に関連する異なる励起およびフルオロフォア放出確率が存在し得る。例えば、信号蓄積間隔の間に、第2の標識された分子についてより多くの発光事象が存在することがあり、その結果、ビンの見かけの強度は、第1の標識された分子の場合よりも有意に高くなる。
【0285】
本発明者らは、フルオロフォアの崩壊速度および/またはフルオロフォアの強度に基づいてタンパク質を区別することが、光励起および検出システムの簡略化を容易にすることを認識し、理解している。例えば、光励起は、単一波長源(例えば、複数の光源ではなく1つの特徴的な波長を生成する光源、または複数の異なる特徴的な波長で動作する光源)を用いて行うことができる。さらに、波長識別光学系およびフィルタは、検出システムにおいて必要とされない場合がある。また、単一の光検出器を各サンプルウェルに使用して、異なるフルオロフォアからの発光を検出してもよい。「特徴的な波長(characteristic wavelength)」または「波長」という語句は、限定された放射帯域幅内の中心波長または優勢な波長を指すために使用される。例えば、限られた帯域幅の放射は、パルス光源によって出力される20nm帯域幅内の中心波長またはピーク波長を含むことができる。場合によっては、「特徴的な波長」または「波長」を使用して、ソース(source)による放射出力の全帯域幅内のピーク波長を参照することができる。
【0286】
いくつかの実施形態において、システムは検出モジュールを含む。検出モジュール(例えば、
図9の検出モジュール1800)は、種々の上述の用途(例えば、分析、タンパク質配列決定、ペプチド配列決定、分析物同定、診断等の生体分析用途)のうちのいずれかを行うように構成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、検出モジュールは分析モジュールを含む。分析モジュールは、サンプル調製モジュールによって調製されたサンプルを分析するように構成することができる。分析モジュールは、例えば、流体サンプル中の1つ以上の成分の濃度を決定するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、検出モジュールは配列決定モジュールを含む。一例として、再び
図9を参照すると、いくつかの実施形態によれば、検出モジュール1800は配列決定モジュールを含む。配列決定モジュールは、サンプル調製モジュールによって調製されたサンプルの1つ以上の成分の配列決定を実行するように構成され得る。いくつかの実施形態において、同定モジュールは、ペプチド分子(例えば、タンパク質分子)を同定するように構成される。
【0287】
図9は、別個のサンプル調製モジュール1700および検出モジュール1800(例えば、分析モジュール、配列決定モジュール、同定モジュール)を示すが、サンプル調製モジュール自体(例えば、蠕動ポンプ、装置、カートリッジを含む)は、場合によっては、分析、配列決定、または同定プロセスを行うことが可能であり得ることを理解されたい。いくつかの実施形態において、サンプルモジュールは、分析、配列決定、および/または同定プロセスの組み合わせを行うことが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、ポンプ(例えば、装置1200および流体デバイス1300を含むポンプ1400)は、統合検出器(例えば、光学または電気検出器)に直接または間接的に、ある体積(例えば、ポンプサイクルあたり10μL以下等の比較的小さい体積)のサンプルを(例えば、順に、および/またはある流量で)送達するように構成および/または使用されてもよい。統合検出器は、種々の用途(例えば、分析、配列決定、同定、診断)のうちのいずれかを行うための測定を行うために使用されてもよい。したがって、ある特定の実施形態において、本明細書に記載のシステムによって調製されたサンプル(例えば、ペプチド、タンパク質、身体組織、身体分泌物を含む)は、任意の好適な機械(例えば、異なるモジュール、または同じモジュール)を使用して配列決定/分析することができる。特定の実施形態において、例えば、機械がサンプルの検出(例えば、配列決定)のために最小限のダウンタイムで(例えば、連続的に)使用され得るように、サンプル調製のための本明細書に記載されるモジュールと、システムによって調製されたサンプルの少なくとも一部(例えば、全て)を検出(例えば、配列決定)するための別個の機械とを有することが有利であり得る。いくつかの実施形態において、サンプル調製のためのモジュール(例えば、サンプル調製モジュール1700)は、システムによって調製されたサンプルのうちの少なくともいくつか(例えば、全て)を検出する(例えば、配列決定する)ための機械(例えば、検出モジュール1800)と流体接続されてもよい。特定の実施形態において、サンプル調製のための本明細書に記載されるシステムは、システムによって調製されたサンプルの少なくとも一部(例えば、全て)を分析するための診断機器と流体接続されてもよい。特定の実施形態において、診断機器は、サンプルの基礎となる配列に基づくバンドまたは色の存在または非存在に基づいて出力を生成する。構成要素(例えば、モジュール、デバイス)が接続されている(例えば、機能的に接続されている)ものとして説明されるとき、接続は永久的に接続されてもよく、あるいは接続は可逆的に接続されてもよいことを理解されたい。場合によっては、接続されていると説明されている構成要素は、第1の期間中は(例えば、チャネル、チューブ、導管などを介した流体接続で)接続されていても、第2の期間中は(例えば、流体接続を切り離すことで)接続されていなくてもよいという意味で、分離可能に接続されている。いくつかのそのような実施形態において、可逆的/分離可能な接続は、実行されるサンプルの調製/分析/配列決定/同定のタイプに応じて、特定の構成要素を交換または再構成することができるモジュール式システムを提供することができる。
【0288】
別の態様において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)を作製する方法が提供される。いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)を作製する方法は、表面層を含む表面物品を基層と組み立てて流体デバイス(例えば、カートリッジ)を形成することを含み、(1)表面層はエラストマーを含み、(2)基層は1つ以上のチャネルを含み、(3)1つ以上のチャネルの少なくともいくつかは実質的に三角形の断面を有する。流体デバイスを作製する方法の実施形態は、本明細書の他の箇所でさらに説明される。
【0289】
いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)を作製する方法は、表面層を含む表面物品を基層と組み立てて、流体デバイスを形成することを含む。特定の実施形態において、表面層はエラストマーを含む。特定の実施形態において、基層は、1つ以上のチャネルを含む。特定の実施形態において、1つ以上のチャネルの少なくとも一部は、実質的に三角形形状の断面を有する。
【0290】
特定の実施形態において、方法は、流体デバイス(例えば、カートリッジ)の1つ以上の機械構成要素を製造することを含み、例えば、製造することは、射出成形(例えば、精密射出成形)を含む。いくつかの実施形態において、方法は、硬鋼工具を用いた射出成形を含む。特定の実施形態において、滑らかで欠陥のない表面および厳しい公差(例えば、数十ミクロンのオーダー)が、硬鋼工具を用いた射出成形によって製造される1つ以上の機械構成要素に対して達成され、これは、医療デバイス消耗品を高スループットで製造するのに有利であり得る。
【0291】
特定の実施形態において、方法は、インキュベーションチャネル、クエンチング領域、リザーバ(例えば、誘導体化剤リザーバ、誘導体化試薬リザーバ)および領域(例えば、インキュベーション領域、クエンチング領域、誘導体化領域、固定化形成複合体領域)などの流体デバイスの1つ以上の構成要素を製造することを含む。いくつかの実施形態において、製造することは、射出成形(例えば、精密射出成形)することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、硬鋼工具を用いた射出成形を含む。特定の実施形態において、滑らかで欠陥のない表面および厳しい公差(例えば、数十ミクロンのオーダー)が、硬鋼工具を用いた射出成形によって製造される1つ以上の機械構成要素に対して達成され、これは、医療デバイス消耗品を高スループットで製造するのに有利であり得る。
【0292】
いくつかの実施形態において、方法は、エラストマー(例えば、シリコーン、熱可塑性エラストマー)を含む表面層を、1つ以上の貫通孔を含むシールプレート(例えば、硬質プラスチック射出成形部品)上にオーバーモールドして、表面層およびシールプレートを含む表面物品を形成することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、流体デバイス(例えば、カートリッジ)を形成するために表面物品を基層と組み立てることを含み、組み立てることは、例えば、レーザ溶接、音波溶接、接着(例えば、接着剤を使用して)、および/または消耗品のための別の好適な取り付けプロセスを含む。特定の実施形態において、方法は、シールプレート内の1つ以上の貫通孔を、基層内の対応する1つ以上のチャネルと整列させるステップを含む。
【0293】
いくつかの実施形態において、方法は、予め作製されたシートストックからエラストマーを含む表面層を(例えば、オーバーモールドの代替として)ダイカットすることを含み、これは、デュロメータおよび/または厚さにおいて高い精度を有利に提供し得る。いくつかの実施形態において、方法は、例えば、レーザ溶接、音波溶接、接着、および/または消耗品のための別の好適な取り付けプロセスを使用して、流体デバイス(例えば、カートリッジ)を形成するように、基層(例えば、硬質プラスチックを含む、および/または本質的にそれから成る)とシールプレート(例えば、硬質プラスチックを含む、および/または本質的にそれから成る)との間にエラストマーを含む表面層(例えば、ダイカットエラストマー層)を組み立てるステップを含む。特定の実施形態において、基層は、1つ以上のチャネルを備え、シールプレートは、1つ以上の貫通孔を含む。特定の実施形態において、方法は、シールプレート内の1つ以上の貫通孔を、基層内の対応する1つ以上のチャネルと整列させることを含む。
【0294】
特定の実施形態において、表面層は、システムのための蠕動層、弁ダイヤフラム、および面密閉ガスケットとして機能する。
いくつかの実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)を作製する方法は、表面層を含む表面物品を基層と組み立てて、流体デバイスを形成することを含む。特定の実施形態において、表面層はエラストマーを含む。特定の実施形態において、基層は、1つ以上のチャネルを含む。特定の実施形態において、1つ以上のチャネルの少なくとも一部は、実質的に三角形形状の断面を有する。
【0295】
いくつかの実施形態において、流体デバイスを形成するために、表面層を含む表面物品を基層と組み立てることは、表面層を基層にレーザ溶接、音波溶接、および/または接着することを含む。例えば、いくつかの実施形態において、方法は、接着剤を使用して表面層を基層に接着することを含む。
【0296】
いくつかの実施形態において、方法は、予め作製されたシートストックからエラストマーを含む表面層をダイカットすることを含む。いくつかの実施形態において、表面物品は、表面層から本質的になる。いくつかの実施形態において、表面層を含む表面物品を基層と組み立てて流体デバイス(例えばカートリッジ)を形成することは、エラストマーを含む表面層を基層とシールプレートとの間に組み立てて流体デバイスを形成することを含み、シールプレートは1つ以上の貫通孔を含む。いくつかの実施形態では、基層とシールプレートとの間にエラストマーを含む表面層を組み立てることは、表面層の一方の面上で基層に、および表面層の他方の面上でシールプレートに、表面層をレーザ溶接、音波溶接、および/または接着することを含む。
【0297】
いくつかの実施形態において、方法は、エラストマーを含む表面層を、1つ以上の貫通孔を含むシールプレート上にオーバーモールドして、表面物品を形成することを含み、表面物品は、シールプレートをさらに含む。
【0298】
いくつかの実施形態において、シールプレートの1つ以上の貫通孔の少なくともいくつかは、基層の1つ以上のチャネルの少なくともいくつかの形状と実質的に同様の形状を有する。いくつかの実施形態において、方法は、シールプレート内の1つ以上の貫通孔を、基層の対応する1つ以上のチャネルと整列させることを含む。例えば、特定の実施形態において、1つ以上の貫通孔を1つ以上のチャネルと整列させることにより、基層内の1つ以上の関連するチャネルの上の表面層の1つ以上の露出領域に対応する表面層の1つ以上の露出領域が得られ、その結果、ローラ(例えば、本明細書に記載の装置のローラ)は、表面層の露出領域の露出部分を変形させて、基層内の関連するチャネルの壁および/または基部の一部に接触させることができる。
【0299】
いくつかの実施形態において、方法は、流体デバイス(例えば、カートリッジ)の1つ以上の機械構成要素を射出成形することを含む。例えば、特定の実施形態において、流体デバイスの1つ以上の機械構成要素を射出成形することは、シールプレートを形成するために射出成形することを含む。特定の実施形態において、流体デバイス(例えば、カートリッジ)の1つ以上の機械構成要素を射出成形することは、基層を形成するために射出成形することを含む。射出成形することは、例えば、精密射出成形および/または硬鋼工具を用いた射出成形を含んでもよい。
【0300】
図14A~14Iは、いくつかの実施形態に従う、ペプチドサンプルを調製するための流体デバイスの概略図の種々の図を示す。
図14Aは、いくつかの実施形態に従う、流体デバイス400のトップダウン概略図を示し、
図14Bは、流体デバイス400のトップダウン透視図を示す。
図14Cは、同様に、いくつかの実施形態に従う、流体デバイス400のトップダウン概略斜視図を示し、
図14Dは、流体デバイス400の斜視透視図(perspective transparency view)を示す。カートリッジの形態で示されている流体デバイス400は、インキュベーションチャネル412を含むインキュベーション領域410に(例えば、1つ以上のマイクロチャネルを介して)流体接続されたサンプルローディング領域414を含む。インキュベーションチャネル412は、蛇行構成を有してもよい。サンプルローディング領域414は、(例えば、ピペット、シリンジ、または異なる流体デバイス等の外部源への流体接続を介して)ペプチドサンプルを受容するように構成されてもよい。流体デバイス400は、マイクロチャネルを介して、第2の誘導体化試薬リザーバ426、誘導体化剤リザーバ422、および第1の誘導体化試薬リザーバ424を介してインキュベーションチャネル412に流体接続された誘導体化領域420をさらに含む。流体デバイス400は、誘導体化領域420に(例えば、1つ以上のマイクロチャネルを介して)流体接続されたクエンチング領域430をさらに含む。クエンチング領域430は、官能基(例えば、複数のポリアミンビーズの形態で)を含む固体基材を含み得る。クエンチング領域430は、流体(例えば、ペプチドサンプル)がクエンチング領域を通して任意の所望の回数(例えば、2回、3回、5回、10回、20回など)再循環され得るように構成され得る。例えば、クエンチング領域430は、入口と、入口に流体接続された出口とを含むことができる。流体デバイス400は、クエンチング領域430(および、いくつかの例では、インキュベーション領域410)に流体接続された固定化複合体形成領域440をさらに含み得る。固定化複合体形成領域440は、固定化複合体(例えば、ストレプトアビジン担持固定化複合体)を含み得るか、またはそれを受容するように構成され得る。いくつかの実施形態において、流体デバイス400は、インキュベーション領域410に流体接続された精製領域450(例えば、脱塩カラムなどのサイズ排除媒体を含む)を含む。最後に、流体デバイスは、緩衝液リザーバ490、収集リザーバ492(例えば、配列決定等の下流分析のために、そこから精製ペプチドが流体デバイスから除去され得る)、および廃棄物リザーバ494をさらに備えてもよい。
【0301】
流体デバイス400内の流体および/または試薬の輸送は、蠕動ポンプによって駆動されてもよい。流体デバイス400は、流体デバイス400の前述の領域およびリザーバの一部または全部に流体的に収集されたポンピングレーン470を含むことによって、そのような蠕動ポンピングのために構成されてもよい。ポンピングレーン470は、基層およびエラストマー表面を有するチャネルであってもよい。例えば、
図14C~14Dにおいて、流体デバイス400は、ポンピングレーン470に結合されたエラストマー表面462(例えば、シリコーン層)を含む。ポンプ装置(例えば、装置のローラ)との相互作用は、流体輸送を作動させ得る、ポンピングレーン内の蠕動運動を開始し得る。エラストマー表面462は、シールプレート460を介して流体デバイス400に固定され得る。
図14E~14Gは、エラストマー表面462およびシールプレート460の様々な図を示す、流体デバイス400の側面図(
図14E)、分解側面図(
図14F)、および底面透視図(
図14G)の概略図を示す。
図14Eおよび14Fはまた、基層464を示す。
図14Hは、いくつかの実施形態に従う、エラストマー表面462およびシールプレート460の概略斜視図を示す。
図14Iは、いくつかの実施形態に従う、シールプレート460の概略斜視図を示す。
【0302】
ペプチドサンプルの調製は、いくつかの実施形態において、最初に、ペプチド(例えば、タンパク質)に関してサンプル(例えば、生体サンプル)を溶解および/または濃縮することを含み得る。いくつかの実施形態において、ペプチドサンプルは、ペプチド(例えば、タンパク質)、還元剤(例えば、TCEP-HCl)、アミノ酸側鎖キャッピング剤(例えば、ヨードアセトアミドなどのシステインアルキル化)、およびタンパク質消化剤(例えば、トリプシンなどのプロテアーゼ)の混合物を水性緩衝液中(例えば、10~20%アセトニトリルを含むpH8の100mM HEPESまたはリン酸ナトリウム中)で作製することによって形成される。ペプチドサンプルは、サンプルローディング領域414に導入され、インキュベーション領域410のインキュベーションチャネル410に輸送され得る。次いで、ペプチドサンプルは、インキュベーション領域410においてインキュベートされ得る(例えば、37℃の温度を維持することによって)。インキュベーション中、還元剤は、アミノ酸側鎖を還元して(例えば、2つのシステイン側鎖間のジスルフィド結合を還元することによって)、タンパク質に変性させ得る。また、インキュベーション中に、アミノ酸側鎖キャッピング剤は、還元されたアミノ酸側鎖と共有結合を形成し得る(例えば、得られたシステイン側鎖をアルキル化することによって)。また、インキュベーション中に、タンパク質消化剤(例えば、プロテアーゼ)は、タンパク質のタンパク質分解を誘導して、1つ以上のキャップされたペプチドを形成し、それによって、消化されたタンパク質サンプルを形成し得る。
【0303】
次いで、消化されたタンパク質サンプルは、第2の誘導体化試薬リザーバ426(サンプルのpHが10~11になるように、塩基(例えば、K2CO3)などのpH調整試薬と混合する)、誘導体化剤リザーバ422(アジド移動剤などの誘導体化剤と混合する)、および第1の誘導体化試薬リザーバ424(Cu2+源などの触媒と混合する)を通って輸送され得る。次いで、得られた混合物は、誘導体化領域420に輸送され得、ここで、誘導体化反応が起こり得(例えば、リジンなどの1つ以上の側鎖を誘導体化するために)、1つ以上の誘導体化ペプチドおよび過剰な誘導体化剤を含むクエンチングされていない混合物を形成する。
【0304】
次いで、得られた混合物は、過剰な誘導体化剤と反応する固体基材(例えば、ポリアミンビーズ)を含み得るクエンチング領域430に移され得る。サンプルの再循環が生じてもよく、クエンチング領域内の混合物は、混合を促進するために撹拌されてもよい(例えば、流体デバイスの蠕動ポンプ構成要素からの作用を介して)。誘導体化されたペプチドを含む得られたクエンチングされた混合物は、例えば酸(例えば酢酸)への曝露を介してなど、pH調整(例えばpH7~8などのより低いpHとする)を受けてもよい。次いで、pH調整された誘導体化ペプチドは、固定化複合体形成領域440に輸送され得、そこで、誘導体化ペプチドは、ストレプトアビジンを担持する固定化複合体(例えば、DBCO-Q24-SV)などの固定化複合体と混合され得る。誘導体化されたペプチドおよび固定化複合体の混合物は、インキュベーション領域410に輸送され得、ここで、ペプチドを固定化複合体にコンジュゲートするための固定化複合体形成反応が行われ得る(例えば、37℃の温度を維持することによって)。次いで、官能化ペプチドサンプルは、精製領域450に輸送され得、ここで、任意の残りの非官能化ペプチドが除去され得る(例えば、流体デバイス400に組み込まれた脱塩カラムなどのサイズ排除媒体を通過させることによって)。次いで、精製されたペプチドサンプルを収集リザーバ492から収集することができ、(例えば、サイズ排除媒体からの)廃棄物を廃棄物リザーバ494に送ることができる。
【0305】
図14A~
図14Iに関連して上述したステップの一部または全部は、自動にて実行されてもよい。
本明細書で使用される場合、表面層に関する「内面」という用語は、チャネル内に面する表面を指すために使用され、表面層の「外面」は、チャネルの外側の環境に面する。例えば、マイクロチャネルは、内面および外面を有してもよい。
【0306】
本明細書で使用される場合、「第1の部分」および「第2の部分」という用語は、少なくとも部分的に重複する部分または重複を有さない部分を指し得る。例えば、第1の部分および第2の部分は、実質的に重複してもよい。
【0307】
本明細書で使用される場合、「移す(translating)」という用語は、当業者に知られており、位置を変更することを指す。例えば、移すことは、変形(例えば、弾性変形)の位置を変更することを指してもよい。
【0308】
本明細書で使用される場合、「変形(deformation)」という用語は、当業者に周知であり、加えられた力に応答した物品の形状の変化を指す。例えば、変形は、加えられた力に応じた表面層の形状の変化を指すことができる。変形は弾性的であってもよい。本明細書で使用される場合、「弾性変形する(elastic deformation)」という用語は、当業者に知られており、加えられた力に応答して物品の形状が一時的に変化し、加えられた力が除去されると自然に元に戻ることを指す。例えば、弾性変形は、加えられた力に応答して表面層の形状が一時的に変化し、加えられた力が除去されると自然に反転することを指してもよい。
【0309】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される流体デバイス、物品、およびシステムの構成要素は、流体接続される(fluidically connected)。2つの構成要素は、ある実施形態のいくつかの構成下で、流体がそれらの間を通過し得る場合、流体接続される。例えば、第1の流体デバイス構成要素および第2の流体デバイス構成要素は、それらがチャネル、マイクロチャネル、または管によって接続される場合、流体連通状態(in fluidic communication)であり得る。別の例として、弁によって分離された2つの構成要素は、弁が2つの構成要素間の流体の流れを可能にするように構成され得る限り、依然として流体接続されていると見なされる。対照的に、機械的にのみ接続され、それらの間に流体経路がない2つの構成要素は、流体接続されているとはみなされない。流体接続された構成要素は、直接流体接続されてもよい(すなわち、いかなる介在構成要素を通過することなく流体経路によって接続される)。しかしながら、流体接続された構成要素は、場合によっては、1、2、3、4、5、8、10、15、20、またはそれ以上の介在構成要素を通る流体経路によって接続されてもよい。
【0310】
いくつかの実施形態において、2つの化合物は、互いに反応する「能力がある」。例えば、いくつかの実施形態において、誘導体化剤は、アミノ酸側鎖を誘導体化することができる。この文脈において、「可能である(capable)」という語は、ある温度範囲内で化学反応が自発的に進行することを意味する。例えば、互いに反応することができる2つの化合物は、0℃以上の温度、5℃以上の温度、10℃以上の温度、またはそれ以上の温度でアミノ酸側鎖と自発的に化学的に反応することができる。互いに反応することができる2つの化合物は、100℃以下、80℃以下、50℃以下、40℃以下、またはそれ未満の温度で、アミノ酸側鎖と自発的に化学的に反応し得る。これらの範囲の組み合わせが可能である。例えば、互いに反応することができる2つの化合物は、100℃以下かつ0℃以上の温度でアミノ酸側鎖と自発的に化学的に反応し得る。
【0311】
自発的反応は、当業者によって理解されるように、熱力学的意味において自発的であると考えられることが理解されるべきである。自発的反応は、瞬間的である必要はない。例えば、自発的反応は、完了に達するのに、1分超、5分超、10分超、1時間超、5時間超、および/または24時間超かかり得る。自発的反応の唯一の要件は、反応の進行がエネルギー的に有利であることである。
【0312】
「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、および炭素環式基を指す。同様に、「ヘテロ脂肪族」という用語は、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、および複素環式基を指す。
【0313】
「アルキル」という用語は、1~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐した飽和炭化水素基のラジカル(「C1-20アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~10個の炭素原子を有する(「C1-10アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~9個の炭素原子を有する(「C1-9アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~8個の炭素原子を有する(「C1-8アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~7個の炭素原子を有する(「C1-7アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~5個の炭素原子を有する(「C1-5アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~4個の炭素原子を有する(「C1-4アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~3個の炭素原子を有する(「C1-3アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~2個の炭素原子を有する(「C1-2アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1個の炭素原子を有する(「C1アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は、2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルキル」)。C1-6アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)(例えばn-プロピル、イソプロピル)、ブチル(C4)(例えば、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル)、ペンチル(C5)(例えば、n-ペンチル、3-ペンタニル、アミル、ネオペンチル、3-メチル-2-ブタニル、第三級アミル)、およびヘキシル(C6)(例えばn-ヘキシル)が含まれる。アルキル基のさらなる例には、n-ヘプチル(C7)、n-オクチル(C8)などが含まれる。特に明記しない限り、アルキル基の各例は、独立して非置換である(「非置換アルキル」)か、または1つ以上の置換基(例えば、Fなどのハロゲン)で置換されている(「置換アルキル」)。特定の実施形態において、アルキル基は、非置換C1-10アルキル(例えば、非置換C1-6アルキル、例えば、-CH3(Me)、非置換エチル(Et)、非置換プロピル(Pr、例えば、非置換n-プロピル(n-Pr))、非置換イソプロピル(i-Pr))、非置換ブチル(Bu、例えば、非置換n-ブチル(n-Bu)、非置換tert-ブチル(tert-Buまたはt-Bu)、非置換sec-ブチル(sec-Buまたはs-Bu)、非置換イソブチル(i-Bu))である。特定の実施形態において、アルキル基は、置換C1-10アルキル(例えば、置換C1-6アルキル、例えば、-CH2F、-CHF2、-CF3またはベンジル(Bn))である。アルキル基は分岐していても分岐していなくてもよい。
【0314】
「アルケニル」という用語は、1~20個の炭素原子および1つ以上の炭素-炭素二重結合(例えば、1、2、3、または4個の二重結合)を有する直鎖または分岐した炭化水素基のラジカルを指す。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~20個の炭素原子を有する(「C1-20アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~12個の炭素原子を有する(「C1-12アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~11個の炭素原子を有する(「C1-11アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~10個の炭素原子を有する(「C1-10アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~9個の炭素原子を有する(「C1-9アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~8個の炭素原子を有する(「C1-8アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~7個の炭素原子を有する(「C1-7アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~6個の炭素原子を有する(「C1-6アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~5個の炭素原子を有する(「C1-5アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~4個の炭素原子を有する(「C1-4アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~3個の炭素原子を有する(「C1-3アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1~2個の炭素原子を有する(「C1-2アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1個の炭素原子を有する(「C1アルケニル」)。1つまたは複数の炭素-炭素二重結合は、内部(2-ブテニルなど)にあってもよいし、または末端(1-ブテニルなど)にあってもよい。C1-4アルケニル基の例には、メチリデニル(C1)、エテニル(C2)、1-プロペニル(C3)、2-プロペニル(C3)、1-ブテニル(C4)、2-ブテニル(C4)、ブタジエニル(C4)などが含まれる。C1-6アルケニル基の例には、前述のC2-4アルケニル基、ならびにペンテニル(C5)、ペンタジエニル(C5)、ヘキセニル(C6)などが含まれる。アルケニルのさらなる例には、ヘプテニル(C7)、オクテニル(C8)、オクタトリエニル(C8)などが含まれる。特に明記しない限り、アルケニル基の各例は、独立して非置換である(「非置換アルケニル」)か、または1つ以上の置換基で置換されている(「置換アルケニル」)。特定の実施形態において、アルケニル基は、非置換のC1-20アルケニルである。特定の実施形態において、アルケニル基は、置換C1-20アルケニルである。アルケニル基において、立体化学が特定されていないC=C二重結合(例えば、-CH=CHCH3または
【0315】
【0316】
)は、(E)-または(Z)-配置であってもよい。
「ヘテロアルケニル」という用語は、アルケニル基を指し、同アルケニル基は、酸素、窒素、または硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、1、2、3、または4個のヘテロ原子)をその内部に(例えば、隣接する炭素原子の間に挿入される)、および/または親鎖の一つ以上の末端位置にさらに含む。特定の実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~20個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する基を指す(「ヘテロC1-20アルケニル」)。特定の実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~12個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する基を指す(「ヘテロC1-12アルケニル」)。特定の実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~11個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する基を指す(「ヘテロC1-11アルケニル」)。特定の実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~10個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する基を指す(「ヘテロC1-10アルケニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~9個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-9アルケニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~8個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-8アルケニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~7個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-7アルケニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~6個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-6アルケニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~5個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1個または2個のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-5アルケニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~4個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1個または2個のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-4アルケニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~3個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1個のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-3アルケニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~2個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1個のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-2アルケニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルケニル基は、親鎖内に1~6個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、および1個または2個のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-6アルケニル」)。特に明記しない限り、ヘテロアルケニル基の各例は、独立して非置換である(「非置換ヘテロアルケニル」)か、または1つ以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロアルケニル」)。特定の実施形態において、ヘテロアルケニル基は、非置換のヘテロC1-20アルケニルである。特定の実施形態において、ヘテロアルケニル基は、置換されたヘテロC1-20アルケニルである。
【0317】
「アルキニル」という用語は、1~20個の炭素原子および1つ以上の炭素-炭素三重結合(例えば、1、2、3、または4個の三重結合)を有する直鎖または分岐した炭化水素基のラジカルを指す(「C1-20アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1~10個の炭素原子を有する(「C1-10アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1~9個の炭素原子を有する(「C1-9アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1~8個の炭素原子を有する(「C1-8アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1~7個の炭素原子を有する(「C1-7アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1~6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1~5個の炭素原子を有する(「C1-5アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1~4個の炭素原子を有する(「C1-4アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1~3個の炭素原子を有する(「C1-3アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1~2個の炭素原子を有する(「C1-2アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、1個の炭素原子を有する(「C1アルキニル」)。1つまたは複数の炭素-炭素三重結合は、内部(2-ブチニルなど)にあってもよいし、または末端(1-ブチニルなど)にあってもよい。C1-4アルキニル基の例には、限定されるものではないが、メチリジニル(C1)、エチニル(C2)、1-プロピニル(C3)、2-プロピニル(C3)、1-ブチニル(C4)、2-ブチニル(C4)などが含まれる。C1-6アルケニル基の例には、前述のC2-4アルキニル基、ならびにペンチニル(C5)、ヘキシニル(C6)などが含まれる。アルキニルのさらなる例には、ヘプチニル(C7)、オクチニル(C8)などが含まれる。特に明記しない限り、アルキニル基の各例は、独立して非置換である(「非置換アルキニル」)か、または1つ以上の置換基で置換されている(「置換アルキニル」)。特定の実施形態において、アルキニル基は、非置換のC1-20アルキニルである。特定の実施形態において、アルキニル基は、置換されたC1-20アルキニルである。
【0318】
「ヘテロアルキニル」という用語は、アルキニル基を指し、同アルキニル基は、酸素、窒素、または硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、1、2、3、または4個のヘテロ原子)をその内部に(例えば、隣接する炭素原子の間に挿入される)、および/または親鎖の一つ以上の末端位置にさらに含む。特定の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~20個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する基を指す(「ヘテロC1-20アルキニル」)。特定の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~10個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する基を指す(「ヘテロC1-10アルキニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~9個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-9アルキニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~8個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-8アルキニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~7個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-7アルキニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~6個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1つ以上のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-6アルキニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~5個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1個または2個のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-5アルキニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~4個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1個または2個のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-4アルキニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~3個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1個のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-3アルキニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~2個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1個のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-2アルキニル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキニル基は、親鎖内に1~6個の炭素原子、少なくとも1つの三重結合、および1個または2個のヘテロ原子を有する(「ヘテロC1-6アルキニル」)。特に明記しない限り、ヘテロアルキニル基の各例は、独立して非置換である(「非置換ヘテロアルキニル」)か、または1つ以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロアルキニル」)。特定の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、非置換のヘテロC1-20アルキニルである。特定の実施形態において、ヘテロアルキニル基は、置換されたヘテロC1-20アルキニルである。
【0319】
「アラルキル」は「アルキル」のサブセットであり、結合点がアルキル部分上にある、アリール基によって置換されたアルキル基を指す。
本明細書で使用される場合、用語「アルコキシ」は、アルキル基を結合点に結合する酸素原子を有するアルキル基、すなわち、アルキル-O-を指す。アルキル部分に関しては、アルコキシ基は、C1-6またはC1-4などの任意の適切な数の炭素原子を有することができる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどが含まれる。アルコキシ基は非置換であるが、いくつかの実施形態では置換されているものとして記載することができる。「置換アルコキシ」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ニトロ、シアノ、およびアルコキシから選択される1つまたは複数の部分で置換することができる。
【0320】
「シクロアルキル」という用語は、3~10個の環炭素原子を有する環状アルキルラジカル(「C3-10シクロアルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は、3~8個の環炭素原子を有する(「C3-8シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は、3~6個の環炭素原子を有する(「C3-6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は、5~6個の環炭素原子を有する(「C5-6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は、5~10個の環炭素原子を有する(「C5-10シクロアルキル」)。C5-6シクロアルキル基の例には、シクロペンチル(C5)およびシクロヘキシル(C5)が含まれる。C3-6シクロアルキル基の例には、前述のC5-6シクロアルキル基、ならびにシクロプロピル(C3)およびシクロブチル(C4)が含まれる。C3-8シクロアルキル基の例には、前述のC3-6シクロアルキル基、ならびにシクロヘプチル(C7)およびシクロオクチル(C8)が含まれる。特に明記しない限り、シクロアルキル基の各実例は、独立して非置換である(「非置換シクロアルキル」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換シクロアルキル」)。特定の実施形態において、シクロアルキル基は非置換のC3-10シクロアルキルである。特定の実施形態において、シクロアルキル基は置換されたC3-10シクロアルキルである。
【0321】
本明細書で使用される用語「ヘテロアルキル」は、構成炭素原子の1つ以上がヘテロ原子または任意に置換されたヘテロ原子、例えば、窒素(例えば、
【0322】
【0323】
)、酸素(例えば、
【0324】
【0325】
)、または硫黄(例えば、
【0326】
【0327】
)によって置換されている、本明細書で定義されるアルキル基を指す。ヘテロアルキル基は、本明細書に記載の置換基のいずれかから独立して選択される、1、2、3個、または2個以上の炭素のアルキル基の場合は4、5、または6個の置換基で任意に置換されていてもよい。ヘテロアルキル基置換基は、以下を含む:(1)カルボニル、(2)ハロ、(3)C6-C10アリールおよび(4)C3-C10カルボシクリル。ヘテロアルキレンは二価のヘテロアルキル基である。
【0328】
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、-ORaを指し、Raは、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールである。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、フェノキシ、およびベンジルオキシが挙げられる。
【0329】
「アリール」という用語は、単環式または多環式(例えば、二環式または三環式)4n+2芳香族環系(例えば、6個、10個、または14個のπ電子を環状配列で共有している)のラジカルであって、6~14個の環炭素原子を有し、芳香族環系においてヘテロ原子はゼロであるラジカルを指す(「C6-14アリール」)。いくつかの実施形態において、アリール基は、6個の環炭素原子を有する(「C6アリール」;例えば、フェニル)。いくつかの実施形態において、アリール基は、10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」;例えば、1-ナフチルおよび2-ナフチルなどのナフチル)。いくつかの実施形態において、アリール基は、14個の環炭素原子を有する(「C14アリール」;例えば、アントラシル)。「アリール」はまた、上記で定義したアリール環が、ラジカルまたは結合点がアリール環上にある1つ以上のカルボシクリルまたはヘテロシクリル基と縮合している環系を含み、そのような場合、炭素原子の数は、アリール環系における炭素の数を示し続ける。特に明記しない限り、アリールル基の各例は、独立して非置換である(「非置換アリール」)か、または1つ以上の置換基(例えば、-F、-OHまたは-O(C1-6アルキル))で置換されている(「置換アリール」)。特定の実施形態において、アリール基は、非置換のC6-14アリールである。特定の実施形態において、アリール基は、置換されたC6-14アリールである。
【0330】
「アリールオキシ」という用語は、-O-アリール置換基を指す。
「ヘテロアリール」という用語は、芳香族環系に提供される環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~14員の単環式または多環式(例えば、二環式、三環式)4n+2芳香族環系(例えば、6個、10個、または14個のπ電子を環状配列で共有している)のラジカルを指し、各ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される(「5~14員ヘテロアリール」)。1つまたは複数の窒素原子を含むヘテロアリール基では、結合点は、原子価が許す限り、炭素または窒素原子であり得る。ヘテロアリール多環式環系は、一方または両方の環に1つまたは複数のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロアリール」は、上記で定義したヘテロアリール環が、結合点がヘテロアリール環上にある1つ以上のカルボシクリルまたはヘテロシクリル基と縮合している環系を含み、そのような場合、環メンバー(ring members)の数は、ヘテロアリール環系における環メンバーの数を指定し続ける。「ヘテロアリール」はまた、上記で定義したヘテロアリール環が、結合点がアリールまたはヘテロアリール環上にある1つ以上のアリール基と縮合している環系を含み、そのような場合、環メンバーの数は縮合多環(アリール/ヘテロアリール)環系における環メンバーの数を指定する。1つの環がヘテロ原子を含有しない(例えば、インドリル、キノリニル、カルバゾリルなど)多環ヘテロアリール基であって、結合点がいずれかの環上にあることができ、例えば、ヘテロ原子を有する環(例えば、2-インドリル)またはヘテロ原子を含有しない環(例えば、5-インドリル)のいずれかである。特定の実施形態において、ヘテロアリールは、置換または非置換の、5員または6員の単環式ヘテロアリールであり、ヘテロアリール環系中の1、2、3または4個の原子は、独立して、酸素、窒素、または硫黄である。特定の実施形態において、ヘテロアリールは、置換または非置換の、9員または10員の二環式ヘテロアリールであり、ヘテロアリール環系中の1、2、3または4個の原子は、独立して、酸素、窒素、または硫黄である。
【0331】
いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、5~10員の芳香族環系であって、同芳香族環系に環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される(「5~10員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、5~8員の芳香族環系であって、同芳香族環系に環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~8員の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される(「5~8員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、5~6員の芳香族環系であって、同芳香族環系に環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される(「5~6員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロアリールは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。特に明記しない限り、ヘテロアリール基の各例は、独立して、非置換である(「非置換ヘテロアリール」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換シクロアリール」)。特定の実施形態において、ヘテロアリール基は、非置換の5~14員のヘテロアリールである。特定の実施形態において、ヘテロアリール基は、置換された5~14員のヘテロアリールである。
【0332】
「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」または「複素環式(heterocyclic)」という用語は、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する3~14員の非芳香族環系のラジカルを指し、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される(「3~14員のヘテロシクリル」)。1つまたは複数の窒素原子を含むヘテロシクリル基では、結合点は、原子価が許す限り、炭素または窒素原子であり得る。ヘテロシクリル基は、単環式(「単環ヘテロシクリル」)または多環式(例えば、二環系(「二環式ヘテロシクリル」)または三環系(「三環式ヘテロシクリル」)のような縮合、架橋またはスピロ環系)のいずれかであり得、飽和され得るか、または一つ以上の炭素-炭素二重結合または三重結合を含み得る。ヘテロシクリル多環式環系は、一方または両方の環に1つまたは複数のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロシクリル」はまた、上記で定義されたヘテロシクリル環が1つ以上のカルボシクリル基と縮合し、その結合点がカルボシクリル環またはヘテロシクリル環上のいずれかである環系、または上記で定義されたヘテロシクリル環が1つ以上のアリール基またはヘテロアリール基と縮合し、その結合点がヘテロシクリル環上にあり、そのような場合、環員の数はヘテロシクリル環系における環員の数を指定し続ける環系を含む。特に明記しない限り、ヘテロシクリルの各例は、独立して非置換である(「非置換ヘテロシクリル」)または1つまたは複数の置換基で置換されている(「置換ヘテロシクリル」)。特定の実施形態において、ヘテロシクリル基は、非置換の3~14員のヘテロシクリルである。特定の実施形態において、ヘテロシクリル基は、置換された3~14員のヘテロシクリルである。特定の実施形態において、ヘテロアリールは、置換または非置換の、5員または7員の単環式ヘテロアリールであり、ヘテロアリール環系中の1、2、3または3個の原子は、原子価が許す限り、独立して、酸素、窒素、または硫黄である。
【0333】
いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員の非芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される(「5~10員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~8員の非芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される(「5~8員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、環炭素原子および1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員の非芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される(「5~6員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロシクリルは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロシクリルは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員のヘテロシクリルは、窒素、酸素、および硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。
【0334】
本明細書で使用される「アミノ」という用語は、-N(RN)2を表し、各RNは独立して、H、OH、NO2、N(RN0)2、SO2ORN0、SO2RN0、SORN0、N-保護基、アルキル、アルコキシ、アリール、シクロアルキル、アシル(例えば、アセチル、トリフルオロアセチル、または本明細書に記載の他のもの)であり、これらの列挙されたRN基のそれぞれは、任意に置換され得るか;または2つのRNが結合してアルキレンまたはヘテロアルキレンを形成し、各RN0は独立して、H、アルキル、またはアリールである。本開示のアミノ基は、非置換アミノ(すなわち、-NH2)または置換アミノ(すなわち、-N(RN)2)であり得る。
【0335】
本明細書で使用される「置換された」という用語は、少なくとも1つの水素原子が、限定されるものではないが、例えば、F、Cl、Br、およびIなどのハロゲン原子;水酸基、アルコキシ基、エステル基のような基の酸素原子;チオール基、チオアルキル基、スルホン基、スルホニル基、スルホキシド基などの基の硫黄原子;アミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N-オキシド、イミド、エナミンなどの基の窒素原子;トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基などの基のケイ素原子;および他の種々の基の他のヘテロ原子、のような非水素原子への結合によって置換されることを意味する。「置換された」はまた、1つ以上の水素原子が、オキソ基、カルボニル基、カルボキシル基、およびエステル基中の酸素;およびイミン、オキシム、ヒドラゾン、ニトリルなどの基の窒素、などのヘテロ原子への高次結合(例えば、二重結合や三重結合)によって置換されることを意味する。または、例えば、いくつかの実施形態において、「置換された」とは、1つ以上の水素原子がNRgRh、NRgC(=O)Rh、NRgC(=O)NRgRh、NRgC(=O)ORh、NRgSO2Rh、OC(=O)NRgRh、ORg、SRg、SORg、SO2Rg、OSO2Rg、SO2ORg、=NSO2Rg、およびSO2NRgRhで置換されることを意味する。「置換された」とはまた、1個以上の水素原子がC(=O)Rg、C(=O)ORg、C(=O)NRgRh、CH2SO2Rg、CH2SO2NRgRhで置換されていることを意味する。
【0336】
上記において、RgおよびRhは、同一であるか、または異なっており、独立して水素、アルキル、アルコキシ、アルキルアミニル、チオアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、N-ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、N-ヘテロアリールおよび/またはヘテロアリールアルキル、である。「置換された」とはさらに、1以上の水素原子が、アミニル基、シアノ基、ヒドロキシル基、イミノ基、ニトロ基、オキソ基、チオキソ基、ハロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミニル基、チオアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクリル基、N-ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロアリール基、N-ヘテロアリール基および/またはヘテロアリールアルキル基への結合によって置換されていることを意味する。さらに、前述の置換基のそれぞれは、上記の置換基の1つまたは複数で任意に置換されていてもよい。
【0337】
本明細書で使用される用語「その塩」または「その複数の塩」は、当技術分野で周知の塩を指す。たとえば、ベルジュ(Berge)らは、J.Pharmaceutical Sciences、1977、66、1~19(参照により本明細書に組み込まれる)に、薬学的に許容される塩を詳細に記載している。好適な塩についてのさらなる情報は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、マック・パブリッシング・カンパニー(Mack Publishing Company)、ペンシルバニア州イーストン、1985年(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見いだされる。本発明の化合物の塩には、適切な無機および有機の酸および塩基に由来するものが含まれる。酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、またはマロン酸などの有機酸、またはイオン交換などの当技術分野で知られている他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩など、が含まれる。適切な塩基に由来する塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、およびN+(C1-4アルキル)4塩が含まれる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる薬学的に許容される塩には、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボキシレート、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホネートおよびアリールスルホネートなどの対イオンを用いて形成される無毒のアンモニウム、第4級アンモニウムおよびアミンカチオンが含まれる。
【0338】
「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを指す。通常、タンパク質またはペプチドは、長さが少なくとも3つのアミノ酸である。いくつかの実施形態において、ペプチドは、長さが約3~約100アミノ酸の間(例えば、長さが約5~約25の間、約10~約80の間、約15~約70の間、または約20~約40の間のアミノ酸)である。いくつかの実施形態において、ペプチドは、長さが約6~約40アミノ酸の間(例えば、長さが約6~約30の間、約10~約30の間、約15~約40の間、または約20~約30の間のアミノ酸)である。いくつかの実施形態において、複数のペプチドは、複数のペプチド分子を指すことができ、複数のペプチド分子の各ペプチド分子は、複数のペプチド分子のいずれかの他のペプチド分子とは異なるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、複数のペプチドは、少なくとも1つのペプチドおよび最大1,000のペプチド(例えば、少なくとも1つのペプチドおよび最大10、50、100、250、または500のペプチド)を含み得る。いくつかの実施形態において、複数のペプチドは、1~5、5~10、1~15、15~20、10~100、50~250、100~500、500~1,000、またはそれ以上の異なるペプチドを含む。タンパク質は、個々のタンパク質またはタンパク質の集合を指す場合がある。本発明のタンパク質は、天然のアミノ酸のみを含むことが好ましいが、非天然のアミノ酸(すなわち、天然には存在しないが、ポリペプチド鎖に組み込むことができる化合物)および/または当技術分野で知られているアミノ酸類似体を代わりに使用することもできる。また、タンパク質中の1以上のアミノ酸は、例えば、炭水化物基、ヒドロキシル基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、コンジュゲーションまたは官能化のためのリンカー、または他の修飾のような化学的実体の添加によって修飾されてもよい。タンパク質はまた、単一分子であっても、多分子複合体であってもよい。タンパク質またはペプチドは、天然に存在するタンパク質またはペプチドの断片であってもよい。タンパク質は、天然に存在するもの、組換えられたもの、合成されたもの、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0339】
以下の刊行物は、全ての目的のために、その全体が本明細書中に参考として援用される。米国特許出願公開第2021-0121879号明細書(2021年4月29日公開、米国特許出願第17/082,223号として2020年10月28日出願、発明の名称「サンプル調製のためのシステムおよび方法(Systems and Methods for Sample Preparation)」);米国特許出願公開第2021-0164035号明細書(2021年6月3日公開、米国特許出願第17/082,226号として2020年10月28日出願、発明の名称「配列決定のための方法およびデバイス(Methods and Devices for Sequencing)」);米国特許出願公開第2021-0121875号明細書(2021年4月29日公開、米国特許出願第17/083,126号として2020年10月28日出願、発明の名称「生体分析用途ならびに関連する方法、システムおよびデバイスのための流体の蠕動ポンプ(Peristaltic Pumping of Fluids For Bioanalytical Applications and Associated Methods,Systems,and Devices)」);および米国特許出願公開第2021-0121874号明細書(2021年4月29日公開、米国特許出願第17/083,106号として2020年10月28日出願、発明の名称「流体の蠕動ポンプおよび関連する方法、システムおよびデバイス(Peristaltic Pumping of Fluids and Associated Methods,Systems,and Device)」)。
【0340】
2021年1月20日に出願された発明の名称が「ペプチドサンプル調製のためのデバイスおよび方法(Devices and Methods for Peptide Sample Preparation)」である米国仮特許出願第63/139,332号は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0341】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図しているが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0342】
実施例1
この実施例は、
図14A~14Iに示される流体デバイスを使用するペプチドサンプルの調製を記載し、ここで、インキュベーションステップ、誘導体化ステップ、クエンチングステップ、固定化複合体形成ステップ、および精製ステップは、単一カートリッジの形態の単一流体デバイス上で実施された。カートリッジ内の流体輸送は、上述のように、蠕動ポンプ機構を介して、カートリッジを受容したサンプル調製モジュールにて開始された。タンパク質は、スパイクされた血漿からプルダウンによって調製され、濃縮されたタンパク質は、固体支持体上の抗体またはDNAアプタマーのいずれかを使用して精製された。次いで、タンパク質を、ゲル濾過またはpH調整のいずれかによって、所望の緩衝液で平衡化した。次いで、10~20%アセトニトリルを含む100mM HEPESまたはリン酸ナトリウム(pH6~9)中に2、3、または4種のタンパク質の等量混合物を含む濃縮タンパク質サンプル(100μL中50~200μM)を調製し、還元剤として作用するトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP-HCl、水中200mM、1μL)の溶液、アミノ酸側鎖キャッピング剤として作用する新たに溶解したヨードアセトアミド溶液(97.3μLの水中に9mgで500mMとする、2μL)、およびタンパク質消化剤として作用するトリプシン(1μg/μL、0.5~1μL)と混合した。次に、混合物を混合物源からカートリッジのインキュベーション部分のインキュベーションチャネル(蛇行構成を含む)に自動にて輸送した。ペプチドサンプルをインキュベーションチャネル内で37℃にて6~10時間インキュベートし、タンパク質を変性および消化した。これにより、消化されたペプチドサンプルが形成された。
【0343】
次に、消化されたペプチドサンプルを、一連のリザーバを通って自動輸送し、そこで、誘導体化剤、第1の(触媒)試薬、および第2の(pH調整)試薬と混合した。最初に、消化されたペプチドサンプルを第2の誘導体化試薬リザーバに自動にて輸送し、ここで、それを炭酸カリウム(1M、5μL)に添加して、pHを10~11の値に調整した。この後、消化されたペプチドサンプルを、アジド転移剤であるイミダゾール-1-スルホニルアジド溶液(「ISA」200mM KOH中200mM、1.2μL)を含有する誘導体化剤リザーバに自動にて移した。次に、消化されたペプチドサンプルを第1の誘導体化試薬リザーバに自動にて輸送し、そこで硫酸銅(触媒試薬)溶液と混合した。最後に、消化されたペプチドサンプルを流体デバイスの誘導体化領域に自動にて移し、そこで室温で1時間インキュベートした。これにより、1つ以上の誘導体化ペプチドを含むクエンチングされていない混合物が形成された。
【0344】
誘導体化領域におけるペプチドの官能化に続いて、50μLのクエンチングされていないサンプルを、流体デバイスのクエンチング領域に自動にて輸送した。ここで、クエンチングされていない混合物を複数のポリスチレンビーズ(固体基材)と混合し、10回の能動混合のクエンチングステップを使用してクエンチングし、各クエンチングステップの後に静止混合ステップを合計23分間行った。最後に、得られたクエンチング混合物をオンカートリッジカラムに通して、複数のポリスチレンビーズから濾過した。
【0345】
次に、クエンチングされたペプチドサンプルのpHを、1M酢酸6μLの添加によって7~8に調整した。これに続いて、クエンチングされた混合物を、固定化複合体であるDBCO-Q24-SV(50μM、6μL)と自動にて混合した後、デバイスのインキュベーションチャネルに戻し、そこで37℃で4時間インキュベートした。この後、ペプチドサンプルを、最初に10mM TRIS、10mM酢酸カリウム緩衝液(pH7.5)で平衡化した40kDaのカットオフを有するZeba(商標)脱塩カラム樹脂からなる流体デバイスのカラムに自動にて輸送した。最後に、このワークフローから得られた精製ペプチドサンプルを凍結し、-20℃未満の温度で保存した。
【0346】
後に、精製したペプチドサンプルを配列決定し、観察されたペプチドを、タンパク質配列に対するそれらの対応に基づいて同定した。
図15A~15Dは、棒グラフの形態で結果を示す。
図15Aは、2つのタンパク質-GIPおよびADMの混合物に対応する。
図15Bは、3つのタンパク質-GLP1、インスリン、およびADMの混合物に対応する。
図15Cは、4つのタンパク質-GLP1、ADM、インスリン、およびのGIPの混合物に対応する。
図15Dは、4つのペプチド-GLP1、ADM、インスリン、およびのGIPの混合物に対応する。いくつかのオフターゲットの割り当て801が示されているが、一般に、配列決定されたペプチドは、ペプチドタンパク質中で調製されたタンパク質に正しく割り当てられた。さらに、本実施例において生成されたライブラリは、同じタンパク質混合物の複製手動で調製されたライブラリと同様のまたはそれより多い総リードを有した。この実施例は、精製されたペプチドサンプルが、本明細書に開示されるタイプの流体デバイス上で自動化された方法で調製され得ることを実証する。
【0347】
実施例2
この実施例は、インキュベーションステップ、誘導体化ステップ、クエンチングステップ、固定化複合体形成ステップ、および精製ステップが、複数のモジュラーカートリッジの形態の複数の流体デバイスを使用して行われ得る、例示的なシステムを記載する。この実施形態の流体デバイスは接続されていないが、ペプチドサンプルを実施例1のプロトコルに従って調製した。カートリッジ内の流体輸送は、上述のように、蠕動ポンプ機構を介して、カートリッジを受容するサンプル調製モジュールにて開始された。
図16A~16Bは、それぞれ、本実施例で使用される第1の流体デバイスの具体的実施形態の概略的な上面図および底面図を提示する。第1の流体デバイスでは、タンパク質サンプルを混合物源514にローディングした。次に、混合物を、混合物源から第1の流体デバイスのインキュベーション領域のインキュベーションチャネル512(蛇行構成を有する)に自動輸送した。次に、ペプチドサンプルをインキュベーションチャネル内でインキュベートし(例えば、37℃で5時間)、タンパク質を変性および消化した。インキュベーションカートリッジは、カートリッジ内の流体のポンピングを容易にするためのポンプレーン570、ならびに試薬/サンプル混合物源514および蒸発制御水リザーバ515をさらに備えていた。
【0348】
この流体デバイス部分でのインキュベーション後、ペプチドサンプルは消化されたペプチドサンプルになった。次に、消化されたペプチドサンプルを第2の流体デバイスに自動化にて移し、そこで一連のリザーバを通って自動輸送し、そこで誘導体化剤、第1の(触媒)試薬、および第2の(pH調整)試薬と混合した。
図17A~17Bは、それぞれ、本実施例で使用される第2の流体デバイスの具体的実施形態の概略的な上面図および底面図を提示する。消化されたペプチドサンプルは、サンプル入口(input)529を通して第2の流体デバイスに輸送した。消化されたペプチドサンプルを、第2の誘導体化試薬リザーバ、誘導体化剤リザーバ、および第1の誘導体化試薬リザーバ(
図17Aのリザーバ521)に順に通して自動輸送した。最後に、消化されたペプチドサンプルを、流体デバイスの温度制御された誘導体化領域のチャネル520に自動化にて移し、そこで一定時間(例えば、室温で1時間)インキュベートした。これにより、クエンチングされていない混合物が形成された。第2の流体デバイスは、ポンプレーン570をさらに備えた。
【0349】
クエンチングされていないサンプルの一部を、サンプル入口、ビーズ用フィルタ、小容量酸性試薬リザーバ、および混合チャネルを含む第3の流体デバイスのクエンチング領域に自動にて輸送した。ここで、クエンチングされていない混合物を複数のポリスチレンビーズ(固体基材)と混合し、室温にて混合チャネル内で軽く撹拌した。最後に、得られたクエンチング混合物をオンカートリッジカラムに通して複数のポリスチレンビーズを除去し、酸性試薬リザーバから酢酸を添加することによってpHを7~8に調整した。
【0350】
これに続いて、クエンチングされた混合物を、第1の流体デバイスの混合物供給源においてDBCO-Q24-SV固定化複合体と混合した後、第1の流体デバイスのインキュベーションチャネルに輸送して戻し、37℃でインキュベートした。
【0351】
最後に、ペプチドサンプルを、市販のZeba(商標)脱塩カラム樹脂によってクエンチングされたペプチドサンプルの流れを制御する第4の流体デバイスに自動にて輸送した。さらなる平衡化緩衝液をカラムに分配して、ペプチドがカラムを透過することを確実にした。精製されたペプチドサンプルは、カラムを通過する流体の特定の画分から収集され、一方、残りの流体は、廃棄物リザーバに移された。収集された精製タンパク質サンプルは、上記の技術のいずれかを使用する配列決定に適していた。この実施例は、いくつかの実施形態において、精製されたペプチドサンプルが、複数の流体デバイスを含むシステムを使用して自動化にて生成され得ることを実証する。
【0352】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書で説明および図示されたが、当業者は、本明細書で説明された機能を実行し、および/または結果および/または1つ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想定し、そのような変形および/または修正のそれぞれは、本発明の範囲内であると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が、本発明の教示が使用される特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または日常的な実験のみを使用して確認することができる。したがって、前述の実施形態は、例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明は、具体的に説明および特許請求されるものとは別様に実践されてもよいことを理解されたい。本発明は、本明細書に記載のそれぞれの特徴、システム、物品、材料、および/または方法を対象とする。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0353】
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、明確に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
本明細書および特許請求の範囲において使用される際の「および/または」という句は、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されたい。「および/または」の句により特に特定される要素以外のその他の要素が、明確に反対の指示がない限り、具体的に識別されるそれらの要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、任意選択で存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む(comprising)」などのオープンエンド言語と組み合わせて使用される場合、一実施形態では、Bを伴わないAのみ(任意選択でB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aを伴わないBのみ(任意選択でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(任意選択で他の要素を含む)等を指すことができる。
【0354】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。たとえば、リスト内の項目を区切る場合、「または」あるいは「および/または」は、包括的、つまり要素の数またはリストの少なくとも1つを含むが2つ以上、任意選択的にさらなるリスト化されていない項目を含むと解釈されるものとする。「~のうちの1つのみ(only one of)」、「~のうちのまさに1つ(exactly one of)」、または特許請求の範囲において使用される場合の「~からなる(consisting of)」は、明確に反示される用語に限り、複数の要素の数またはリストのうちのまさに1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される「または」なる用語は、排他性の用語、例えば「いずれか(either)」、「~のうちの1つ(one of)」、「~のうちの1つのみ(only one of)」、または「~のうちのまさに1つ(exactly one of)」等が先行する場合に限り、排他的な代替的用語(すなわち、「一方または他方、ただし両方ではない(one or the other but not both)」)を示すと解釈するものとする。「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0355】
本明細書の明細書および特許請求の範囲で使用される際、1つまたは複数の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という句は、要素のリスト内の要素のうちの任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的にリストされている各々のおよびすべての少なくとも1つを含む必要はなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外するものではないことを理解されたい。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が参照する要素のリスト内で具体的に識別される要素以外の要素が、具体的に識別される要素に関連するかどうかにかかわらず、任意選択で存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、任意選択で2つ以上のAを含み、Bが存在しない(および任意選択でB以外の要素を含む)ということを含む、少なくとも1つ、別の実施形態では、任意選択で2つ以上のBを含み、Aが存在しない(および任意選択でA以外の要素を含む)ということを含む、少なくとも1つ、さらに別の実施形態では、任意選択で2つ以上のAを含む、少なくとも1つと任意選択で2つ以上のBを含む(および任意選択で他の要素を含む)、少なくとも1つと、等を指すことができる。
【0356】
本明細書で使用される場合、「重量%(wt%)」は、重量パーセントの略語である。本明細書で使用される場合、「原子%(at%)」は、原子パーセントの略語である。
いくつかの実施形態は方法として具現化されてもよく、その様々な例が説明されている。方法の一部として実行される動作は、任意の適切な方法で順序付けられてもよい。したがって、動作は、具体的に上述された実施形態において順次実行されるように示されているが、動作が図示されたものとは異なる順序で実行される実施形態が構築されてもよく、その実施形態は、説明されたものとは異なる(例えば、より多いまたは少ない)動作を含んでもよく、および/またはいくつかの動作を同時に実行することを含んでもよい。
【0357】
請求項要素を修飾するための請求項における「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の使用は、それ自体では、ある請求項要素の別の請求項要素に対する任意の優先度、優先順位、もしくは順序、または方法の行為が実行される時間的順序を暗示するものではなく、単に、ある名前を有するある請求項要素を、同じ名前を有する別の要素から区別するためのラベルとして請求項要素を区別するために使用されるものである(序数用語の使用を除く)。
【0358】
特許請求の範囲および上記した明細書において、すべての移行句、例えば「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を担持する(carrying)」、「~を有する(having)」、「~を含有する(containing)」、「~を伴う(involving)」、「~を保持する(holding)」等は非制限的である、すなわち、~を含むが、これらに限定されない、を意味するものと理解される。移行句「~からなる(consisting of)」および「~から本質的になる(consisting essentially of)」に限り、特許審査手順の米国特許オフィスマニュアル(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)、セクション2111.03に規定するように、それぞれ限定的(closed)または半限定的な(semi-closed)移行句であるものとする。
【国際調査報告】