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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】放射線硬化性インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240214BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240214BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240214BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20240214BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 116
B41J2/01 501
B41J2/01 125
C09D11/101
B41J2/01 129
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544690
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2022051317
(87)【国際公開番号】W WO2022157293
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】21153139.7
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア-ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソヴァジョ,マリオン
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】マティス,ミッチ
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FB05
2C056FC01
2C056HA40
2C056HA44
2C056HA46
2C056HA47
2C056HA60
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA18
2H186FB34
2H186FB35
2H186FB36
2H186FB37
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB55
4J039AD21
4J039AE02
4J039BE01
4J039BE25
4J039CA07
4J039EA06
4J039EA37
4J039EA40
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA07
4J039GA24
(57)【要約】
重合可能な化合物、フェノール樹脂、及び熱架橋剤を含む放射線硬化性インクジェットインクであって、当該放射線硬化性インクジェットインクが、当該フェノール樹脂が式I 式Iの構造部分を少なくとも1つ含むことを特徴とし、式中、Lが、10個以下の炭素原子を有する二価連結基を表し、nが、0または1を表し、R1及びR2が、互いに独立して、水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルカリル基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換の(ヘテロ)アリール基、及び置換または非置換のアルコキシ基からなる群から選択される基を表す、放射線硬化性インクジェットインク。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能な化合物、フェノール樹脂、及び熱架橋剤を含む放射線硬化性インクジェットインクであって、前記放射線硬化性インクジェットインクが、前記フェノール樹脂が式I
【化1】
の構造部分を少なくとも1つ含むことを特徴とし、
式中、
Lが、10個以下の炭素原子を有する二価連結基を表し、
nが、0または1を表し、
及びRが、互いに独立して、水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルカリル基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換の(ヘテロ)アリール基、及び置換または非置換のアルコキシ基からなる群から選択される基を表す、前記放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項2】
前記フェノール樹脂が、式II
【化2】
の構造部分を少なくとも1つ含み、
式中、
、R、及びRが、互いに独立して、水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルカリル基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換の(ヘテロ)アリール基、及び置換または非置換のアルコキシ基からなる群から選択される基を表し、
が、水素、アルキル基、及びアリール基からなる群から選択される基を表す、請求項1に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項3】
、R、及びRのうちの少なくとも1つが、フェノール基を含む置換基を含む、請求項2に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項4】
が、水素またはC-Cアルキル基である、請求項2または3に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項5】
前記熱架橋剤が、イソシアネート化合物、トリアジン化合物、またはそれらの組み合わせを含む、先行請求項のいずれかに記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項6】
前記熱架橋剤が、ブロックイソシアネート化合物である、請求項5に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項7】
前記熱架橋剤が、式III
【化3】
のトリアジン化合物であり、
式中、
Xが、N、O、S、P、またはCを表し、
、R、及びRが、互いに独立して、置換または非置換のアルキル基を表す、請求項5に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項8】
前記熱架橋剤の総量が、前記インクジェットインクの総重量に対して0.1~10wt%である、先行請求項のいずれかに記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項9】
前記フェノール樹脂の量が、前記インクジェットインクの総重量に対して2.5~10wt%である、先行請求項のいずれかに記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項10】
前記重合可能な化合物が、2-フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、環式トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、及びウレタンアクリレートからなる群から選択される、先行請求項のいずれかに記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項11】
インクジェット印刷ステップを含む電子デバイスの製造方法であって、請求項1~10のいずれかに記載の放射線硬化性インクジェットインクが基板上に噴出され、硬化される、前記製造方法。
【請求項12】
硬化が、LED紫外線を使用して実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
加熱ステップも含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱ステップが、80℃~250℃の温度で実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基板が、導電性回路が設けられた誘電体基板である、請求項11~14のいずれか
に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷ステップを含むプリント基板の製造方法及びそこで使用されるインクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板(PCB)の生産ワークフローは、プロセスステップの量が低減されるように標準的なワークフローからデジタルワークフローへと徐々に変化し、コスト及び環境影響を低減するものになってきており、このことは特に短期生産で起こっている。
【0003】
インクジェット印刷は、エッチレジストからはんだマスク(solder mask)を経てレジェンド印刷(legend printing)に至るまで、異なるPCB製造プロセスステップに好ましいデジタル製造技術である。好ましいインクジェットインクは、UV硬化性インクジェットインクである。
【0004】
異なるPCB生産ステップにおいてインクジェットインクがさまざまな基板に接着することは極めて重要なことである。はんだマスクの生産に放射線硬化性インクジェットインクが使用される場合、いくつかの基板上に接着した硬化インクジェットインクが、はんだ付け(はんだ耐性)及びENIGメッキ(ENIGメッキ耐性)の間に使用される過酷な条件を耐え抜く必要がある。特に、さまざまな過酷条件(pH及び温度)が使用されるENIGメッキプロセスは、インクジェットインクの接着要件に関する要求が非常に厳しいものである。
【0005】
接着を改善するために、インクジェットインクには、いわゆる接着促進剤が添加されている。例えば、特許文献1及び特許文献2(Avecia)では、1つ以上の酸性基を含む(メタ)アクリレート官能性モノマー((メタ)アクリル化カルボン酸、(メタ)アクリル化リン酸エステル、及び(メタ)アクリル化スルホン酸など)が接着改善に提唱されている。
【0006】
特許文献3(Agfa Gevaert /Electra Polymers)では、少なくとも2つのフェノール基を含む化合物と接着促進剤との組み合わせについて開示されている。
【0007】
接着促進剤(例えば、上で言及した酸含有化合物)が存在すると、インクジェットインクの安定性が悪くなり得る。
【0008】
特許文献4(Taiyo Ink Manufacturing)では、熱硬化性官能基を含む(メタ)アクリレートモノマーを含むはんだマスクインクジェットインクについて開示されている。
【0009】
特許文献5(Electra Polymers)では、少なくとも1つのエポキシ官能基またはオキセタン官能基を含む、反応性のモノマー、オリゴマー、またはプレポリマーと、フリーラジカル重合が可能な化合物と、熱架橋剤と、ラジカル開始剤と、を含むはんだマスクインクジェットインクについて開示されている。
【0010】
しかしながら、はんだ耐性及びENIGメッキ耐性が改善されており、かつ十分なインク安定性を有する、PCB製造プロセスにおいて使用可能なインクジェットインクが依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2004/026977号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/105号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2018/087056号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第1624001号明細書
【特許文献5】国際公開第2020/109769号パンフレット
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的の1つは、はんだマスクを調製するためのインクジェット印刷ステップを含むプリント基板(PCB)の製造ための放射線硬化性インクジェットインクを提供することであり、当該はんだマスクは、はんだ耐性及びENIG耐性が改善されたものである。
【0013】
本発明のこの目的は、請求項1に記載の放射線硬化性インクジェットインクによって実現される。
【0014】
本発明のさらなる目的については、本明細書の下記の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
「単官能性」という用語(例えば、単官能性の重合可能な化合物におけるもの)は、重合可能な化合物が、1つの重合可能な基を含むことを意味する。
【0016】
「二官能性」という用語(例えば、二官能性の重合可能な化合物におけるもの)は、重合可能な化合物が、2つの重合可能な基を含むことを意味する。
【0017】
「多官能性」という用語(例えば、多官能性の重合可能な化合物におけるもの)は、重合可能な化合物が、3つ以上の重合可能な基を含むことを意味する。
【0018】
「アルキル」という用語は、アルキル基中の炭素原子の数のそれぞれについて可能なすべての変形形態を意味し、すなわち、メチル、エチル、3つの炭素原子については、n-プロピル及びイソプロピル、4つの炭素原子については、n-ブチル、イソブチル、及びターシャリー-ブチル、5つの炭素原子については、n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピル、及び2-メチル-ブチルを意味する(その他も同様)。
【0019】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアルキル基は、好ましくは、C-Cアルキル基である。
【0020】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアルケニル基は、好ましくは、C-Cアルケニル基である。
【0021】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアルキニル基は、好ましくは、C-Cアルキニル基である。
【0022】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアルカリル基は、好ましくは、1つ、2つ、3つ、またはそれを超える数のC-Cアルキル基を含むフェニル基またはナフチル基である。
【0023】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアラルキル基は、好ましくは、フェニル基またはナフチル基を含むC-C20アルキル基である。
【0024】
別段の指定がない限り、置換または非置換のアリール基は、好ましくは、フェニル基またはナフチル基である。
【0025】
別段の指定がない限り、置換または非置換のヘテロアリール基は、好ましくは、1つ、2つ、または3つの酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、またはそれらの組み合わせによって置換された5員または6員の環である。
【0026】
「置換」という用語(例えば、置換アルキル基におけるもの)は、アルキル基が、そのような基に通常存在する原子(すなわち、炭素及び水素)以外の原子によって置換されたものであり得ることを意味する。例えば、置換アルキル基は、ハロゲン原子またはチオール基を含み得る。非置換アルキル基は、炭素原子及び水素原子のみを含む。
【0027】
別段の指定がない限り、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリル基、置換アリール、及び置換ヘテロアリール基は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及びターシャリー-ブチル、エステル、アミド、アミン、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸エステル、スルホンアミド、-Cl、-Br、-I、-OH、-SH、-CN、及び-NOからなる群から選択される1つ以上の構成要素によって置換されている。
【0028】
放射線硬化性インクジェットインク
本発明による放射線硬化性インクジェットインクは、少なくとも、以下に記載のフェノール樹脂、及び熱架橋剤を含む。
【0029】
放射線硬化性インクジェットインクは、任意の型の放射線で硬化し得るが、好ましくは、紫外線で硬化し、より好ましくは、UV LED由来の紫外線で硬化する。したがって、放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくは、UV硬化性インクジェットインクである。
【0030】
信頼性のある産業用インクジェット印刷については、放射線硬化性インクジェットインクの粘度は、好ましくは、45℃で20mPa.s以下であり、より好ましくは、45℃で1~18mPa.sであり、最も好ましくは、45℃で4~14mPa.sである(すべて、1000s-1のずり速度でのもの)。
【0031】
好ましい噴出温度は、10~70℃であり、より好ましくは、20~55℃であり、最も好ましくは、25~50℃である。
【0032】
良好なイメージ品質及び接着については、放射線硬化性インクジェットインクの表面張力は、好ましくは、25℃で18~70mN/mの範囲内であり、より好ましくは、25℃で20~40mN/mの範囲内である。
【0033】
フェノール樹脂
本発明によるフェノール樹脂は、フェノール基で官能化されたポリマーを含む。
【0034】
フェノール樹脂は、好ましくは、フェノール基で官能化されたポリアクリレート、ポリメタクリレート、またはポリスチレンである。
【0035】
特に好ましいフェノール樹脂は、4-ヒドロキシスチレンベースのポリマーを含み、4-ヒドロキシスチレン部分は、官能基を含むフェノール基でさらに官能化されている。
【0036】
フェノール樹脂は、好ましくは、式I
【化1】
の構造部分を少なくとも1つ含み、
式中、
Lは、10個以下の炭素原子を有する二価連結基を表し、
nは、0または1を表し、
及びRは、水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルカリル基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換の(ヘテロ)アリール基、及び置換または非置換のアルコキシ基からなる群から選択される基を独立して表す。
【0037】
フェノール樹脂は、好ましくは、ポリスチレン骨格を有する。
【0038】
好ましくは、R及びRは、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、または置換もしくは非置換のアラルキル基を独立して表す。
【0039】
より好ましくは、R及びRのうちの少なくとも1つは、追加のフェノール基を含む置換基によってさらに置換されている。
【0040】
別の好ましい実施形態によれば、フェノール樹脂は、好ましくは、式II
【化2】
の構造部分を少なくとも1つ含み、
式中、
、R及びRは、水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルカリル基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換の(ヘテロ)アリール基、及び置換または非置換のアルコキシ基からなる群から選択される基を独立して表し、
は、水素、アルキル基、及びアリール基からなる群から選択される基を表す。
【0041】
好ましくは、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、追加のフェノール基を含む置換基によってさらに置換されている。
【0042】
は、好ましくは、水素またはC-Cアルキル基であり、より好ましくは、メチル基である。
【0043】
式Iまたは式IIの構造部分を含むフェノール樹脂は、コポリマー誘導体であり得るが、好ましくは、さらに官能化されたホモポリマーであり、より好ましくは、官能化されたポリ(4-ヒドロキシスチレン)である。
【0044】
特定の好ましい実施形態では、式Iまたは式IIの構造部分を含むフェノール樹脂は、分岐構造または超分岐構造を有する。
【0045】
特に好ましい本発明によるフェノール樹脂は、US20060099531(DuPont Electronic Polymers L.P.)に開示のものであり、具体的には、パラグラフ0018に開示の構造I、II、III、及びIVを有するフェノール樹脂である。
【0046】
本発明によるフェノール樹脂には、いわゆるフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(ノボラック型樹脂またはレゾール型樹脂など)は含まれない。
【0047】
そのようなフェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、フェノールまたは置換フェノールをホルムアルデヒドと反応させることによって調製される。本発明によるフェノール樹脂との違いは、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂ではフェノール基または置換フェノール基がメチレン基によって互いに隔てられているという事実にある。換言すれば、フェノール基または置換フェノール基が、以下に示される構造に示されるように、ポリマー骨格の一部となっている。
【化3】
【0048】
本発明によるフェノール樹脂では、置換または非置換のフェノール基は、以下に示されるように、ポリマー骨格に付加されている。
【化4】
【0049】
フェノールホルムアルデヒド樹脂中のフェノール基はメチレン基(1つのC原子)によって隔てられている一方で、本発明によるフェノール樹脂では、少なくともいくつかのフェノール基が、少なくとも3つのC原子によって隔てられている。
【0050】
フェノール樹脂の量は、好ましくは、0.5~20wt%であり、より好ましくは、1~15wt%であり、最も好ましくは、2.5~10wt%である(すべて、インクジェットインクの総重量に対するもの)。
【0051】
熱架橋剤
任意の熱架橋剤が使用され得る。
【0052】
熱架橋剤は、異なる程度の官能性を有し得る。
【0053】
インクジェットインクは、異なる熱架橋剤の混合物を含み得る。
【0054】
好ましい熱架橋剤は、イソシアネート化合物またはトリアジン化合物である。
【0055】
イソシアネート化合物は、好ましくは、脂肪族/脂環式イソシアネートまたは芳香族イソシアネートである。
【0056】
脂肪族/脂環式イソシアネートの例としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDIまたはHMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキサン2,4-(2,6)-ジイソシアネート(水添TDI)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、N,N’,N”-トリス(6-イソシアネート-ヘキサメチレン)ビウレット,HDIトリマー,HDIウレトジオン、及びIPDIトリマーが挙げられる。
【0057】
芳香族イソシアネートの例としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジ-フェニル-メタンジイソシアネート(MDI)、及びキシリレンジイソシアネート(XDI)が挙げられる。
【0058】
イソシアネート化合物は、ブロックされたものか、またはブロックされていないものであり得、好ましくは、ブロックされたものであり得る。
【0059】
ブロックイソシアネートの形成に使用されるブロック剤は保護基であり、こうした保護基は、温度上昇時(例えば、熱硬化プロセス中)に除去される。ブロックイソシアネートを使用することで、典型的には、インクジェットインクの保存安定性が改善される。
【0060】
ブロック剤の例としては、アルコール(エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、t-ブタノール、及びイソブタノールなど)、フェノール(フェノール、クロロフェノール、クレゾール、キシレノール、及びp-ニトロフェノールなど)、アルキルフェノール(p-t-ブチルフェノール、p-sec-ブチルフェノール、p-sec-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、及びp-ノニルフェノールなど)、塩基性窒素含有化合物(3-ヒドロキシピリジン、S-ヒドロキシキノリン、及び8-ヒドロキシキナルジンなど)、活性メチレン化合物(マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、及びアセチルアセトンなど)、酸アミド(アセトアミド、アクリルアミド、及びアセトアニリドなど)、酸イミド(スクシンイミド及びマレイン酸イミドなど)、イミダゾール(2-エチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールなど)、ピラゾール(ピラゾール、3-メチルピラゾール、及び3,5-ジメチルピラゾールなど)、ラクタム(2-ピロリドン及び8-カプロラクタムなど)、ケトンまたはアルデヒドのオキシム(アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、及びアセトアルドキシムなど)、エチレンイミン、ならびにバイサルファイトが挙げられる。毒性的な理由から、ヒンダード二級アミンがブロック剤として使用され得る。好ましいヒンダード二級アミンは、エチル-tert.ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、2,6-ジメチル-ピペリジン、エチル-イソプロピルアミン、ジ-tert.ブチルアミン、及びジイソブチルアミンからなる群から選択される。
【0061】
特に好ましいイソシアネート化合物は、3,5-ジメチルピラゾールでブロックされたHDIビウレット(Trixene Bl 7960としてBaxenden Chemicals Ltdから商業的に入手可能)である。
【0062】
熱架橋特性を有する任意のトリアジン化合物が使用され得る。
【0063】
好ましいトリアジン化合物は、式III
【化5】
の化学構造を有し、
式中、
Xは、N、O、S、P、またはCを表し、
、R、及びRは、互いに独立して、置換または非置換のアルキル基を表す。
【0064】
Xは、好ましくは、OまたはCを表し、最も好ましくは、Oを表す。
【0065】
好ましくは、R、R、及びRは、互いに独立して、置換または非置換のC1-C8アルキル基を表す。より好ましくは、R、R、及びRは、互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル、n-オクチル、2-エチルヘキシルからなる群から選択される基を表す。
【0066】
好ましい式IIIのトリアジン化合物及びその調製方法については、US5084541(American Cyanamid Company)に開示されている。
【0067】
好ましい式IIIのトリアジン化合物は、Allnex(名称Cymel(登録商標)NF2000)及びBASF(名称Larotact(登録商標)150)から商業的に入手可能である。
【0068】
本発明によるインクジェットインクは、好ましくは、ブロックイソシアネート化合物または式IIIのトリアジン化合物を含む。
【0069】
より好ましくは、インクジェットインクは、ブロックイソシアネート及び式IIIのトリアジン化合物の両方を含む。
【0070】
熱架橋剤の総量は、好ましくは、0.5~10wt%であり、より好ましくは、1~7.5wt%であり、最も好ましくは、2.5~5wt%である(すべて、インクジェットインクの総重量に対するもの)。
【0071】
イソシアネート化合物の量は、好ましくは、0.1~7.5wt%であり、より好ましくは、0.5~5wt%であり、最も好ましくは、1~3wt%である(すべて、インクジェットインクの総重量に対するもの)。
【0072】
トリアジン化合物の量は、好ましくは、0.1~7.5wt%であり、より好ましくは、0.5~5wt%であり、最も好ましくは、1~3wt%である(すべて、インクジェットインクの総重量に対するもの)。
【0073】
トリアジン化合物及びイソシアネート化合物の両方がインクジェットインクに存在する場合、トリアジン化合物の量は、好ましくは、イソシアネート化合物の量と比較して多い。イソシアネート化合物の量に対するトリアジン化合物の量の比は、好ましくは、0.9~5であり、より好ましくは、1.5~3である。
【0074】
熱架橋剤が存在すると、さまざまなソルダーレジスト(solder resist)特性(熱耐性、硬度、はんだ付け熱耐性、化学物質耐性、電気絶縁特性、ならびに無電解メッキ耐性及び浸漬メッキ耐性など)が改善されることが観測されている。
【0075】
光開始剤
放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくは、光開始剤、好ましくは、フリーラジカル光開始剤を含む。
【0076】
フリーラジカル光開始剤は、化学線に曝露されるとフリーラジカルの形成によってモノマー及びオリゴマーの重合を開始させる化合物である。ノリッシュI型開始剤は、励起後に開裂して即座に開始ラジカルを与える開始剤である。ノリッシュII型開始剤は、化学線によって活性化され、第2の化合物から水素を引き抜くことによってフリーラジカルを形成する光開始剤であり、この第2の化合物が実際の開始フリーラジカルとなる。この第2の化合物は、重合相乗剤または共開始剤と呼ばれる。I型光開始剤もII型光開始剤も
、単独で、または組み合わせて、本発明において使用され得る。
【0077】
適切な光開始剤については、CRIVELLO,J.V.,et al.Photoinitiators for Free Radical,Cationic and Anionic Photopolymerization.2nd edition.Edited by BRADLEY,G..London,UK:John Wiley and Sons Ltd,1998.p.276-293に開示されている。
【0078】
フリーラジカル光開始剤の具体例としては、限定されないが、下記の化合物またはそれらの組み合わせを挙げることができる:ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン(イソプロピルチオキサントンなど)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、または5,7-ジヨード-3-ブトキシ-6-フルオロン。
【0079】
好ましい光開始剤は、チオキサントン化合物(Darocur ITX、2-イソプロピルチオキサントン及び4-イソプロピルチオキサントンの異性体混合物など)である。
【0080】
別の好ましい光開始剤は、アシルホスフィンオキシド化合物である。アシルホスフィンオキシド化合物は、モノ-アシルホスフィンオキシド及びジ-アシルホスフィンオキシドからなる群から選択され得る。好ましいアシルホスフィンオキシド光開始剤は、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(TPO-L)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)(BAPO)、ビス(2,6-ジメチル-ベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、及び2,4,6-トリメトキシベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドである。
【0081】
他の好ましい光開始剤は、α-ヒドロキシ-ケトンI型光開始剤(例えば、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル-フェニル]プロパノン](IGM resinsからEsacure(登録商標)KIP ITとして入手可能)など)である。
【0082】
光開始剤の好ましい量は、0.2~20wt%であり、より好ましくは、0.5~10wt%であり、最も好ましくは、1~8wt%であり、特に好ましくは、1.5~6wt%である(すべて、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に対するもの)。
【0083】
感光性をさらに上昇させるために、放射線硬化性インクジェットインクは、共開始剤を追加で含み得る。共開始剤の適切な例は、下記の3つの群に分類され得る。
(1)ターシャリー脂肪族アミン(メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、及びN-メチルモルホリンなど)、
(2)芳香族アミン(アミルパラジメチル-アミノベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)-エチルベンゾエート、エチル-4-(ジメチル-アミノ)ベンゾエート、及び2-エチルヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートなど)、ならびに
(3)(メタ)アクリル化アミン(ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジエチル-アミノエチルアクリレート)またはN-モルホリノアルキル-(メタ)アクリレート(例えば、N-モルホリノエチル-アクリレート)など)。
【0084】
好ましい共開始剤は、アミノベンゾエートである。
【0085】
好ましい低分子アミノベンゾエートは、RAHNから供給されるGenocure(登録商標)EPDである。
【0086】
特に好ましいアミノベンゾエート共開始剤は、重合可能なアミノベンゾエート共開始剤、オリゴマーアミノベンゾエート共開始剤、及びポリマーアミノベンゾエート共開始剤からなる群から選択される。
【0087】
重合可能な共開始剤については、EP-A2033949(Agfa GraphicsN.V.)に開示されている。
【0088】
より好ましい実施形態では、アミノベンゾエート共開始剤は、オリゴマーアミノベンゾエート誘導体である。
【0089】
特に好ましいアミノベンゾエートは、アミノベンゾエートのポリエーテル誘導体であり、ポリエーテルは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、そのコポリマー、及びポリ(テトラヒドロフラン)、エトキシ化またはプロポキシ化されたネオペンチルグリコール、エトキシ化またはプロポキシ化されたトリメチルプロパン、ならびにエトキシ化またはプロポキシ化されたペンタエリスリトールからなる群から選択される。
【0090】
好ましいオリゴマーアミノベンゾエートについては、W01996/33157(Lambson Fine Chemicals Ltd.)及びWO2011/030089(Sun Chemicals B.V.)に開示されている。ポリエチレングリコールビスp-ジメチルアミノベンゾエートの典型的な例は、OMNIPOL ASA(IGM Resinsから商業的に入手可能)及びSpeedcure 7040(Lambson Fine Chemicalsから商業的に入手可能)である。
【0091】
他のオリゴマー共開始剤またはポリマー共開始剤は、例えば、ESACURE A198(IGMから供給される多官能性アミン)及びSARTOMER(登録商標)CN3755(ARKEMAから供給されるアクリル化アミン共開始剤)である。
【0092】
重合可能な化合物
重合可能な化合物は、好ましくは、フリーラジカル重合が可能な化合物である。
【0093】
フリーラジカル重合が可能な化合物は、モノマー、オリゴマー、及び/またはプレポリマーであり得る。モノマーは希釈剤とも称される。
【0094】
こうしたモノマー、オリゴマー、及び/またはプレポリマーは、異なる程度の官能性を有し得、すなわち、異なる量のフリーラジカル重合可能基を有し得る。
【0095】
モノ官能性、ジ官能性、トリ官能性、及びより高度官能性のモノマー、オリゴマー、及び/またはプレポリマーの組み合わせを含む混合物が使用され得る。放射線硬化性インクジェットインクの粘度は、モノマーとオリゴマーとの比を変えることによって調整され得る。
【0096】
好ましい実施形態では、モノマー、オリゴマー、またはプレポリマーは、重合可能な基として少なくとも1つのアクリレート基を含む。
【0097】
好ましいモノマー及びオリゴマーは、EP-A1911814のパラグラフ[0106
]~[0115]に記載のものである。
【0098】
好ましい実施形態では、放射線硬化性インクジェットインクは、ビニルエーテル基及びアクリレート基またはメタクリレート基を含むモノマーを含む。そのようなモノマーについては、EP-A2848659のパラグラフ[0099]~[0104]に開示されている。ビニルエーテル基及びアクリレート基を含む特に好ましいモノマーは、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートである。
【0099】
重合可能な化合物は、好ましくは、2-フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、環式トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、及びウレタンアクリレートからなる群から選択される。特に好ましい重合可能な化合物は、2-(ビニル-エトキシ)エチルアクリレート及び2-フェノキシエチルアクリレートである。
【0100】
接着促進剤
放射線硬化性インクジェットインクは、さまざまな表面、具体的には、銅表面への硬化組成物の接着をさらに最適化するために接着促進剤を含み得る。
【0101】
任意の接着促進剤を使用することができ、例えば、WO2004/026977及びWO2004/105に開示のもの(両方共AVECIAから供給される)、WO2017/009097及びWO2020/104302に開示のもの(両方共Agfa Gevaertから供給される)、ならびにWO2018/087059、WO2018087052、WO2018087056、及びWO2018087055に開示のもの(すべて、Agfa Gevaert/Electra Polymersから供給される)を使用することができる。
【0102】
放射線硬化性インクジェットインクは、1つの接着促進剤を含むか、または2つ、3つ、もしくはそれを超える数の異なる接着促進剤の組み合わせを含み得る。
【0103】
接着促進剤の総量は、好ましくは、0.1~20wt%であり、より好ましくは、0.5~15wt%であり、最も好ましくは、1~10wt%である(すべて、インクジェットインクの総重量に対するもの)。
【0104】
一方で、本発明によるインクジェットインクは、接着促進剤が存在しなくても、はんだ付け、金メッキ、またはENIGメッキの後でさえ、十分な接着を有し得ることが観測されている。接着促進剤が存在すると、インクジェットインクの安定性が悪化し得るため、本発明による放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくは、接着促進剤を含まない。
【0105】
着色剤
放射線硬化性インクジェットは、実質的に無色のインクジェットインクであり得るか、または少なくとも1つの着色剤を含み得る。例えば、インクジェットインクがエッチレジストとして使用される場合、着色剤によって導電パターンの製造者が一時的な被覆を明確に視認できるようになることで、品質を視覚的に検証することが可能になる。インクジェットインクを使用してはんだマスクが適用される場合、インクジェットインクは、典型的には、着色剤を含む。はんだマスクに好ましい色は緑色であるが、他の色(黒色または赤色など)も使用され得る。
【0106】
着色剤は、顔料または染料であり得る。
【0107】
着色顔料は、HERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.3rd edition.Wiley-VCH,2004.ISBN
3527305769によって開示されているものから選択され得る。適切な顔料については、WO2008/074548のパラグラフ[0128]~[0138]に開示されている。
【0108】
インクジェットインク中の顔料粒子は、特に吐出ノズルにおいて、インクジェット印刷デバイスを介してインクが自由に流れることを可能にする上で十分に小さくあるべきである。色彩強度が最大化するように小さな粒子を使用し、沈降を遅延させることも望ましい。最も好ましくは、平均顔料粒度は150nm以下である。顔料粒子の平均粒度は、好ましくは、動的光散乱の原理に基づいてBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて決定される。
【0109】
一般に、染料は、顔料よりも光退色するが、噴出能力に対する問題は引き起こさない。アントラキノン染料で生じる光退色は、UV硬化性インクジェット印刷で使用される通常のUV硬化条件の下ではごくわずかなものであることが明らかになった。好ましい実施形態では、放射線硬化性インクジェットインク中の着色剤は、アントラキノン染料(LANXESSから供給されるMacrolex(商標)Blue 3R(CASRN 325781-98-4)など)である。
【0110】
他の好ましい染料には、クリスタルバイオレット及び銅フタロシアニン染料が含まれる。
【0111】
好ましい実施形態では、着色剤は、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づいて、0.5~6.0wt%の量で存在し、より好ましくは、1.0~2.5wt%の量で存在する。
【0112】
ポリマー分散剤
放射線硬化性インクジェット中の着色剤が顔料である場合、放射線硬化性インクジェットは、顔料の分散用として、好ましくは、分散剤を含み、より好ましくは、ポリマー分散剤を含む。
【0113】
適切なポリマー分散剤は、2つのモノマーのコポリマーであるが、3つ、4つ、5つ、またはそれを超える種類のモノマーを含み得る。ポリマー分散剤の特性は、モノマーの性質と、ポリマー中でのその分布との両方に依存する。コポリマー分散剤は、好ましくは、下記のポリマー組成を有する。
・モノマーが統計的に重合したもの(例えば、モノマーA及びBが重合して生じたABBAABAB)、
・モノマーが交互に重合したもの(例えば、モノマーA及びBが重合して生じたABABABAB)、
・モノマーがグラジエント(組成勾配(tapered))重合したもの(例えば、モノマーA及びBが重合して生じたAAABAABBABBB)、
・ブロックコポリマー(例えば、モノマーA及びBが重合して生じたAAAAABBBBBB)(ブロックのそれぞれのブロック長(2、3、4、5、またはそれを超える数)はポリマー分散剤の分散能力に重要である)、
・グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、ポリマー側鎖が付加されたポリマー骨格からなる)、ならびに
・これらのポリマーの混合形態(例えば、ブロックグラジエントコポリマー)
【0114】
適切なポリマー分散剤については、EP-A1911814の「分散剤」に関するセクション、より具体的には、[0064]~[0070]及び[0074]~[0077]に記載されている。
【0115】
ポリマー分散剤の商業的な例は下記のものである。
・BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYK(商標)分散剤、・NOVEONから入手可能なSOLSPERSE(商標)分散剤
・EVONIKから入手可能なTEGO(商標)DISPERS(商標)分散剤
・MUeNZING CHEMIEから入手可能なEDAPLAN(商標)分散剤
・LYONDELLから入手可能なETHACRYL(商標)分散剤
・ISPから入手可能なGANEX(商標)分散剤
・CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCから入手可能なDISPEX(商標)分散剤及びEFKA(商標)分散剤
・DEUCHEMから入手可能なDISPONER(商標)分散剤、ならびに
・JOHNSON POLYMERから入手可能なJONCRYL(商標)分散剤
【0116】
重合禁止剤
放射線硬化性インクジェットインクは、インクの熱安定性を改善するための少なくとも1つの禁止剤を含み得る。
【0117】
適切な重合禁止剤には、フェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、リン型酸化防止剤、通常は(メタ)アクリレートモノマーに使用されるヒドロキノンモノメチルエーテルが含まれ、さらには、ヒドロキノン、t-ブチル-カテコール、ピロガロール、2,6-ジ-tert.ブチル-4-メチルフェノール(=BHT)も使用され得る。
【0118】
適切な市販の禁止剤は、例えば、Sumilizer(商標)GA-80、Sumilizer(商標)GM及びSumilizer(商標)GS(Sumitomo Chemical Co.Ltd.によって生産される)、Genorad(商標)16、Genorad(商標)18、及びGenorad(商標)20(Rahn AGから供給される)、Irgastab(商標)UV10及びIrgastab(商標)UV22、Tinuvin(商標)460及びCGS20(Ciba Specialty Chemicalsから供給される)、Floorstab(商標)UV range(UV-1、UV-2、UV-5、及びUV-8)(Kromachem Ltdから供給される)、Additol(商標)S range(S100、S110、S120、及びS130)(Cytec Surface Specialtiesから供給される)である。
【0119】
こうした重合禁止剤を過剰に添加することで硬化速度が低下し得るため、重合を阻止することが可能な量を混合前に決定することが好ましい。重合禁止剤の量は、放射線硬化性インクジェットインクの総量に対して、好ましくは、5wt%未満であり、より好ましくは、3wt%未満である。
【0120】
界面活性剤
放射線硬化性インクジェットインクは、少なくとも1つの界面活性剤を含み得る。
【0121】
界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、または双性イオン性であり得、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づいて通常は総量1wt%未満で添加される。
【0122】
適切な界面活性剤には、フッ素化界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコールのスルホコハク酸エステル塩及びリン酸エステル塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びスルホコハク酸ジオクチルナトリウム)、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、ならびにアセチレングリコール及びそのエチレンオキシド付加物(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ならびにSURFYNOL(商標)104、104H、440、465、及びTG(AIR PRODUCTS & CHEMICALS INCから入手可能)が含まれる。
【0123】
好ましい界面活性剤は、フッ素系界面活性剤(フッ素化炭化水素など)及びシリコーン界面活性剤から選択される。シリコーン界面活性剤は、好ましくは、シロキサンであり、アルコキシル化、ポリエーテル修飾、ポリエーテル修飾ヒドロキシ官能化、アミン修飾、エポキシ修飾、及び他の修飾、またはそれらの組み合わせが施されたものであり得る。好ましいシロキサンは、ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン)である。
【0124】
好ましい市販のシリコーン界面活性剤には、BYK(商標)333及びBYK(商標)UV3510(BYK Chemieから供給される)が含まれる。
【0125】
好ましい実施形態では、界面活性剤は、重合可能な化合物である。
【0126】
好ましい重合可能なシリコーン界面活性剤には、(メタ)アクリル化シリコーン界面活性剤が含まれる。最も好ましくは、(メタ)アクリル化シリコーン界面活性剤は、アクリル化シリコーン界面活性剤であり、この理由は、メタクリレートと比較してアクリレートの方が、反応性が高いことによるものである。
【0127】
好ましい実施形態では、(メタ)アクリル化シリコーン界面活性剤は、ポリエーテル修飾(メタ)アクリル化ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル修飾(メタ)アクリル化ポリジメチルシロキサンである。
【0128】
好ましくは、界面活性剤は、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づいて0~3wt%の量で放射線硬化性インクジェットインクに存在する。
【0129】
難燃剤
放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくは、難燃剤を含む。
【0130】
好ましい難燃剤は、無機難燃剤(アルミナ三水和物及びベーマイトなど)ならびに有機リン化合物(オルガノホスフェート(例えば、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールジフェニルホスフェート(BADP)、及びトリクレジルホスフェート(TCP))、オルガノホスホネート(例えば、ジメチルメチルホスホネート(DMMP))、ならびにオルガノホスフィネート(例えば、アルミニウムジメチルホスフィネート)など)である。
【0131】
好ましい難燃剤については、WO2019/121098に開示されている。
【0132】
インクジェットインクの調製
着色された放射線硬化性インクジェットインクの調製については当業者によく知られている。好ましい調製方法については、WO2011/069943のパラグラフ[0076]~[0085]に開示されている。
【0133】
電子デバイスの製造方法
本発明による電子デバイスの製造方法は、少なくとも1つのインクジェット印刷ステップを含み、上記の放射線硬化性インクジェットインクは、基板上に噴出され、そこで硬化する。
【0134】
好ましい実施形態によれば、電子デバイスは、プリント基板(PCB)である。
【0135】
特定の好ましい実施形態によれば、PCBの製造方法は、インクジェット印刷ステップを含み、はんだマスクが付与される。
【0136】
はんだマスクは、放射線硬化性インクジェットインクを典型的には基板(例えば、導電パターンを含む誘電体基板)上に噴出し、そこで硬化させることによって付与される。
【0137】
熱処理は、好ましくは、噴出及び硬化した放射線硬化性インクジェットインクに適用される。熱処理は、好ましくは、80℃~250℃の温度で実施される。温度は、好ましくは、100℃以上であり、より好ましくは、120℃以上である。はんだマスクの焦げ付きを阻止するために、温度は、好ましくは、200℃以下、より好ましくは、160℃以下である。
【0138】
熱処理は、典型的には、15~90分間実施される。
【0139】
熱処理の目的は、はんだマスクの重合度をさらに増加させることである。
【0140】
電子デバイスの誘電体基板は、任意の非導電性材料であり得る。基板は、典型的には、紙/樹脂複合材料もしくは樹脂/繊維ガラス複合材料、セラミック基板、ポリエステル、またはポリイミドである。
【0141】
導電パターンは、典型的には、電子デバイスの調製に好都合に使用される任意の金属または合金(金、銀、パラジウム、ニッケル/金、ニッケル、スズ、スズ/鉛、アルミニウム、スズ/アルミニウム、及び銅など)から作成される。導電パターンは、好ましくは、銅から作成される。
【0142】
放射線硬化性インクジェットインクは、化学線(電子ビームまたは紫外線(UV)など)にインクを曝露することによって硬化し得る。好ましくは、放射線硬化性インクジェットインクは、紫外線によって硬化し、より好ましくは、UV LEDによる硬化を使用することで硬化し得る。
【0143】
PCBの製造方法は、2つ、3つ、またはそれを超える数のインクジェット印刷ステップを含み得る。例えば、方法は、2つのインクジェット印刷ステップを含み得、1つのインクジェット印刷ステップでエッチレジストが金属表面上に付与され、別のインクジェット印刷ステップで、導電パターンを含む誘電体基板上にはんだマスクが付与される。
【0144】
第3のインクジェット印刷ステップは、レジェンド印刷に使用され得る。
【0145】
インクジェット印刷デバイス
放射線硬化性インクジェットインクは、1つ以上のプリントヘッドがノズルを介して制御様式で基板(プリントヘッド(複数可)に対して移動する)上に小液滴を吐出することによって噴出され得る。
【0146】
インクジェット印刷システムに好ましいプリントヘッドは、ピエゾ方式ヘッドである。
ピエゾ方式インクジェット印刷は、ピエゾ方式セラミックトランスデューサーがそこへの電圧印加時に動作することに基づいている。電圧の印加によってプリントヘッドのピエゾ方式セラミックトランスデューサーの形状が変化することで空隙が創出され、その後にこの空隙がインクで満たされる。電圧が再び除去されると、セラミックが広がって、その元の形状に戻ることで、プリントヘッドからインクの液滴が吐出される。但し、本発明によるインクジェット印刷方法は、ピエゾ方式インクジェット印刷に限定されるものではない。他のインクジェットプリントヘッドを使用することもでき、こうしたインクジェットプリントヘッドには、さまざまな型のもの(連続型のものなど)が含まれる。
【0147】
インクジェットプリントヘッドは、通常、移動するインク受容表面(基板)を横切って横方向に往復スキャンを行う。インクジェットプリントヘッドは、戻り動作中には印刷を行わないことが多い。面積スループットを高くするには双方向印刷が好ましい。別の好ましい印刷方法は、「シングルパス印刷プロセス」によるものであり、この印刷プロセスは、ページ幅のインクジェットプリントヘッドを使用するか、またはインク受容表面の全体幅をカバーする互い違いに配置された複数のインクジェットプリントヘッドを使用することによって実施され得る。シングルパス印刷プロセスでは、インクジェットプリントヘッドは、通常、不動のままであり、インク受容表面がインクジェットプリントヘッドの下に運ばれる。
【0148】
硬化デバイス
放射線硬化性インクジェットインクは、それを化学線(電子ビームまたは紫外線など)に曝露することによって硬化し得る。好ましくは、放射線硬化性インクジェットインクは、紫外線によって硬化し、より好ましくは、UV LEDによる硬化を使用することで硬化する。
【0149】
インクジェット印刷では、硬化手段がインクジェットプリンターのプリントヘッドと組み合わせて配置されることで、硬化可能な液体が噴出直後に硬化放射線に曝露されるように連動して動作し得る。
【0150】
そのような配置では、UV LEDの場合を除き、十分に小さな線源をプリントヘッドに接続し、それと連動させることは困難であり得る。したがって、不動の固定線源(例えば、硬化UV光源)を用いることができ、柔軟な放射線伝導手段(光ファイバー束または内部反射する柔軟な管など)によって当該線源との接続が行われる。
【0151】
あるいは、照射ヘッド上へのミラーの配置を含めて、ミラーの配置によって固定線源から照射ヘッドに化学線が供給され得る。
【0152】
線源は、硬化対象の基板を横切って横方向に広がっている細長い線源でもあり得る。線源はプリントヘッドの横断経路に隣接し得、その結果、プリントヘッドによって形成されるイメージの後続横列がその線源の下を段階的または連続的に通過する。
【0153】
放射光の一部が光開始剤または光開始系によって吸収され得る限り、任意の紫外線源を線源(高圧または低圧水銀ランプ、冷陰極管、ブラックライト、紫外線LED、紫外線レーザー、及び懐中電灯など)として用いることができる。これらの中で、好ましい線源は、300~400nmの主波長を有する比較的長波長のUV寄与を示すものである。具体的には、伴う光散乱が低減されることで、内部硬化の効率が向上することから、UV-A光源が好ましい。
【0154】
紫外線は、一般に、下記のようにUV-A、UV-B、及びUV-Cとして分類される。
・UV-A:400nm~320nm
・UV-B:320nm~290nm
・UV-C:290nm~100nm
【0155】
好ましい実施形態では、放射線硬化性インクジェットインクは、UV LEDによって硬化する。インクジェット印刷デバイスは、好ましくは、1つ以上のUV LEDを含み、好ましくは、その波長が360nm超であり、好ましくは、380nm超の波長を有する1つ以上のUV LEDを含み、最も好ましくは、約395nmの波長を有するUV LEDを含む。
【0156】
さらに、波長または照度が異なる2つの光源を連続的または同時に使用してインクイメージを硬化させることが可能である。例えば、UV-C(具体的には、260nm~200nmの範囲のもの)の比率が高まるように第1のUV源が選択され得る。次に、第2のUV源は、UV-Aの比率が高いもの(例えば、ガリウム添加ランプ)であるか、またはUV-A及びUV-Bの両方の比率が高い異なるランプであり得る。2つのUV源を使用することは、利点(例えば、硬化速度の速さ及び硬化度の高さ)を有することが明らかになっている。
【0157】
硬化を促進するために、インクジェット印刷デバイスは、1つ以上の酸素低減ユニットを含むことが多い。酸素低減ユニットは、窒素雰囲気または他の比較的不活性なガス(例えば、CO)の雰囲気を調節可能な位置に調節可能な不活性ガス濃度で与えることで、硬化環境中の酸素濃度を低減する。残留酸素レベルは、通常、最低で200ppmに維持されるが、一般に、200ppm~1200ppmの範囲内である。
【実施例
【0158】
材料
下記の実施例で使用した材料はすべて、別段の指定がない限り、標準的な供給元(ALDRICH CHEMICAL Co.(Belgium)及びACROS(Belgium)など)から容易に入手可能であった。使用した水は脱イオン水である。
【0159】
VEEAは、2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレート(NIPPON SHOKUBAI,Japanから入手可能)である。
【0160】
PEAは、2-フェノキシエチルアクリレート(ARKEMAからSartomer(商標)SR339として入手可能)である。
【0161】
EDIOXMAは、環式トリメチロールプロパンホルマールアクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートの混合物(IGM ResinsからPhotomer
4141として入手可能)である。
【0162】
ISOPAは、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(ARKEMAからSartomer(商標)SR420として入手可能)である。
【0163】
ACMOは、アクリロイルモルホリン(RAHNから入手可能)である。
【0164】
SR335は、ラウリルアクリレート(ARKEMAからSartomer(商標)SR335として入手可能)である。
【0165】
TMPTAは、トリメチロールプロパントリアクリレート(ARKEMAからSartomer(商標)SR351として入手可能)である。
【0166】
AAは、アクリル酸(ALDRICHから入手可能)である。
【0167】
EPDは、アミノベンゾエート(RAHNからGenocure EPDとして入手可能)である。
【0168】
DAROCUR ITXは、2-イソプロピルチオキサントン及び4-イソプロピルチオキサントンの異性体混合物(BASFから供給される)である。
【0169】
PB5は、分岐ポリ(4-ヒドロキシスチレン)(HYDRITE CHEMICAL
COMPANYからPB5として入手可能)である。
【0170】
BAPOは、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド光開始剤(BASFからIrgacure(商標)819として入手可能)である。
【0171】
Omnipol ASAは、ポリマーアミン相乗剤(IGM Resinsから入手可能)である。
【0172】
FR-1は、ADK STAB FP-600(ADEKAから入手可能な高分子量液体リン酸エステル)である。
【0173】
Novolac-1は、Durite(商標)Resin D_126A(HEXIONから供給されるクレゾールホルムアルデヒドノボラック樹脂)である。
【0174】
Novolac-2は、AV Lite Resin SP1006N(SIBER HEGNERから供給されるノボラック樹脂)である。
【0175】
Trixene BI7960は、ブロックHDIビウレット(BAXENDEN Chemicalsから供給される)である。
【0176】
Laroctat150は、トリアジン熱架橋剤(BASFから供給される)である。
【0177】
INHIBは、表1に記載の組成を有する重合禁止剤を形成する混合物である。
【表1】
【0178】
Cupferron(商標)ALは、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム(WAKO CHEMICALS LTDから供給される)である。
【0179】
DPGDAは、ジプロピレンジアクリレート(ARKEMAからSartomer SR508として入手可能)である。
【0180】
Ebecryl 1360は、ポリシロキサンヘキサ-アクリレート(ALLNEXから供給されるスリップ剤)である。
【0181】
Cyanは、SUN FAST BLUE 15:4(SUN CHEMICALSから入手可能なシアン顔料)である。
【0182】
Yellowは、CROMOPHTAL YELLOW D 1085J(BASFから供給される黄色顔料)である。
【0183】
Disperbyk 162は分散剤であり、BYK(ALTANA)から利用可能な溶液から沈殿している。
【0184】
方法
粘度
インクの粘度は、CAMBRIDGE APPLIED SYSTEMSから入手した「Robotic Viscometer Type VISCObot」を使用して、45℃、ずり速度1000s-1で測定した。
【0185】
産業用インクジェット印刷については、45℃、ずり速度1000s-1での粘度は、好ましくは、5.0~15mPa.sである。より好ましくは、45℃、ずり速度1000s-1での粘度は、15mPa.s未満である。
【0186】
インクジェットインクの接着
接着は、Tesatape(商標)4104 PVCテープを用いて評価した。この評価は、表2に記載の基準に従って実施した。
【表2】
【0187】
はんだ耐性
インクジェットインクのはんだ耐性を評価した。この評価では、「K」グレード63:37 スズ/鉛はんだ(SOLDER CONNECTIONから入手可能)で満たしたSPL600240 Digital Dynamic Solder Pot(L&M
PRODUCTSから入手可能)を使用した。はんだの温度は290℃に設定した。
【0188】
Q-tipを使用してSC7560A(SOLDER CONNECTIONから入手したはんだ付け促進剤)をサンプル(すなわち、接着に記載のように銅表面上に施したインクジェットインクのコーティング)の表面上に適用して表面をクリーンにした。はんだポットの上方にてサンプルを10分間保持することによってはんだ付け促進剤を乾かした
【0189】
はんだポットの中にサンプルを10秒間入れた。これを全部で3回繰り返した後、サンプルを少なくとも10分間冷却した。
【0190】
印刷サンプルを室温で冷却した後、はんだ浸し試験後のインクジェットインクの接着を評価した。その後、剥落/剥離を視覚的に観察することによってサンプルを評価した。剥落/接着喪失が観察されなければ、サンプルはokとした。
【0191】
印刷層の上部にはんだが観察された場合、これは、はんだ浸し試験における明確な不合格サインとした(はんだマスクが剥落し、その下の銅へのはんだの接着が可能となった)。
【0192】
ENIG耐性
以下に記載のENIGシミュレーションを実施した。
-基板を40℃の酸洗浄液(Umicore cleaner 865)の槽中に4分間浸した。その後、基板を取り出し、室温(RT)の脱イオン水(DW)のすすぎ槽中に90秒間浸した。
-8.5wt%のNa及び±3.2wt%のHSO(98%)を含む26~33℃の温度の水を入れたマイクロエッチング槽中に基板を100秒間浸した。その後、基板を取り出し、それぞれDW、2.5wt%のHSO水溶液、及びDW中ですすいだ(すべてRTで90秒間実施した)。
-約30℃の温度のパラジウム活性化剤槽(Accemulta MKN4)中に基板を90秒間浸した後、RTの5wt% HSO水溶液中に75秒間浸した。その後、基板を取り出し、RTのすすぎDW槽中に90秒間浸した。
-次に、約85℃の温度のニッケル槽(Nimuden NPR 4)中に基板を35分間浸した。その後、基板を取り出し、RTのすすぎDW槽中に90秒間浸した。
-最後に、約80℃の温度の金槽(Gobright TAM 55)中に基板を12分間浸した。その後、基板を取り出し、RTのすすぎDW槽中に90秒間浸した。
【0193】
ENIG処理後は、いわゆるブリスタリングが生じる可能性があり、これは特にオープンパッド付近で生じる可能性がある。こうした領域では、ENIG溶液がはんだマスク層を貫通し、ソルダーレジスト層を持ち上げるものと思われる。この現象によって、基板上へのはんだマスクの接着が弱い点が創出され、結果的に層の剥落が生じ得る。
【0194】
ブリスターの発生を下記のように視覚的に評価した。
0:ENIGへの完全耐性。ブリスタリングもハロー効果(halo effect)も見られない。
1:いくつかの領域上に非常に限られた量のブリスターが存在するが、ハロー効果は見られない。
2:オープンパッド付近に少量のブリスターが存在する。ハロー効果は見られない
3:オープンパッド付近に少量のブリスターが存在し、ハロー効果も見られる。
4:オープンパッド付近及び全領域上にブリスターが存在する。銅パッド付近に大きなハロー効果が見られる。
5:基板の至る所にブリスターが存在する結果、接着が完全に失われている。
【0195】
実施例1
この実施例は、本発明によるUV硬化性インクジェットインクが、銅への良好な接着ならびに十分なはんだ耐性及びENIG耐性を併せて付与するはんだマスクインクジェットインクとして使用し得るものであることを例示するものである。
【0196】
緑色分散液(GD)の調製
表3に記載の組成を有する濃緑色分散液(GD)を調製した。
【表3】
【0197】
GDは、下記のように調製した:138gの2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートと、4wt%の4-メトキシフェノール、10wt%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、及び3,6wt%のN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウムをジプロピレングリコールジアクリレート中に含む2gの溶液と、30gのCyan及び30gのYellowと、をDISPERLUX(商標)ディスペンサーを使用して混合した。撹拌を30分間継続した。900gの0.4mmイットリウム安定化ジルコニアビーズ(TOSOH Co.から供給される「耐摩耗性の高いジルコニア粉砕媒体」)を充填したNETZCH MiniZetaミルに容器を接続した。120分間にわたって混合物をミルの循環に供し(滞留時間45分)、ミルの回転速度を約10.4m/sとした。粉砕手順全体を通じて、ミルの中身を冷却して温度を60℃未満に保った。粉砕後、分散液を容器に排出した。
【0198】
比較用インクCOMP-1~COMP-5及び本発明のインクINV-1~INV-3の調製
表4に沿って比較用の放射線硬化性インクジェットインクCOMP-1~COMP-5及び本発明の放射線硬化性インクジェットインクINV-1~INV-3を調製した。重量パーセント(wt%)はすべて、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づくものである。
【表4-1】
【表4-2】
【0199】
Craftpix CPS(Printhead Konica Minolta KM1024iS,UV LED 395 ランプ総出力12W)を使用して銅張積層板(CCL)上に対してインクジェットインクによる印刷を施して、最終の厚みが+/-22μmであるはんだマスク層を得た。CCLは、化学的エッチングによって粗面化された35μmの銅箔を含む。この化学的エッチングステップでは、30℃で加熱した化学エッチング液CZ2001(MECから入手可能)をスプレーしながら、0.4m/分の速度でBungard Sprint3000コンベア搬送式スプレーエッチング装置に銅箔を通した。脱塩水でのすすぎステップの後、1MのHCLを用いる追加のスプレーステップを実施し、その後に脱塩水でのすすぎステップを再度実施した。銅箔をAir2000乾燥機(Bungardから入手可能)中で乾燥させた。この銅基板に対して、この前処理から24時間以内に印刷を施した。
【0200】
印刷後、サンプルを150℃のオーブン中で1時間焼いた。
【0201】
印刷プロトコールは異なるものを使用した:
プリント1:x方向1440dpi及びy方向1440dpiの解像度を有するイメージを印刷し、硬化させた。12Wランプの総出力の10%に相当するUVエネルギーを適用した。最終硬化を適用して、印刷はんだマスク層をさらに硬化させた(12Wランプの全エネルギーで4回パス)。
プリント2:プリント1との比較として、イメージの印刷及び2回パスでのイメージの硬化を行って、ある特定の厚みを達成し、12Wランプの総出力の100%に相当するUVエネルギーを適用した。その後、プリント1について説明したように最終硬化を実施した。
【0202】
上記のようにインクのはんだ耐性を試験した。結果は表5に示される。
【表5】
【0203】
本発明によるフェノール樹脂を含む本発明のインクジェットインクは、ノボラック樹脂を含むインク(COMP-2~COMP-5)と比較して良好なはんだ耐性を有することが表5の結果から明らかである。
【0204】
表6は、上記の印刷プロトコールプリント1を用いて印刷したインクジェットインクCOMP-1及びINV-1のENIG耐性を示す。
【表6】
【0205】
熱架橋剤を含まないインクジェットインクのENIG耐性は不十分であること(ブリスタリングの発生)が表6の結果から明らかである。
【0206】
実施例2
この実施例は、本発明によるUV硬化性インクジェットインクが、銅への良好な接着ならびに十分なはんだ耐性及びENIG耐性を併せて付与するはんだマスクインクジェットインクとして使用し得るものであることを例示するものである。
【0207】
比較用インクCOMP-6及び本発明のインクINV-4の調製
表7に沿って比較用の放射線硬化性インクジェットインクCOMP-6及び本発明の放射線硬化性インクジェットインクINV-4を調製した。重量パーセント(wt%)はすべて、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づくものである。
【表7】
【0208】
実施例1に記載のようにインクジェットインクでの印刷を行った。
【0209】
上記の印刷プロトコールプリント1を使用して、上記のようにENIG耐性を評価した。結果は表8に示される。
【表8】
【0210】
熱架橋剤を放射線硬化性インクジェットインクに添加するとENIG耐性が改善すること(ブリスタリングが少なくなること)が表8から明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能な化合物、フェノール樹脂、及び熱架橋剤を含む放射線硬化性インクジェットインクであって、前記フェノール樹脂が式I
【化1】
の構造部分を少なくとも1つ含むことを特徴とし、
式中、
Lが、10個以下の炭素原子を有する二価連結基を表し、
nが、0または1を表し、
及びRが、互いに独立して、水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルカリル基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換の(ヘテロ)アリール基、及び置換または非置換のアルコキシ基からなる群から選択される基を表す、前記放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項2】
前記フェノール樹脂が、式II
【化2】
の構造部分を少なくとも1つ含み、
式中、
、R、及びRが、互いに独立して、水素、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルカリル基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換の(ヘテロ)アリール基、及び置換または非置換のアルコキシ基からなる群から選択される基を表し、
が、水素、アルキル基、及びアリール基からなる群から選択される基を表す、請求項1に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項3】
、R、及びRのうちの少なくとも1つが、フェノール基を含む置換基を含む、請求項2に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項4】
が、水素またはC-Cアルキル基である、請求項2に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項5】
前記熱架橋剤が、イソシアネート化合物、トリアジン化合物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項6】
前記熱架橋剤が、ブロックイソシアネート化合物である、請求項5に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項7】
前記熱架橋剤が、式III
【化3】
のトリアジン化合物であり、
式中、
Xが、N、O、S、P、またはCを表し、
、R、及びRが、互いに独立して、置換または非置換のアルキル基を表す、請求項5に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項8】
前記熱架橋剤の総量が、前記インクジェットインクの総重量に対して0.1~10wt%である、請求項1に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項9】
前記フェノール樹脂の量が、前記インクジェットインクの総重量に対して2.5~10wt%である、請求項1に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項10】
前記重合可能な化合物が、2-フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、環式トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、及びウレタンアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項11】
インクジェット印刷ステップを含む電子デバイスの製造方法であって、請求項1に記載の放射線硬化性インクジェットインクが基板上に噴出され、硬化される、前記製造方法。
【請求項12】
硬化が、LED紫外線を使用して実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
加熱ステップも含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱ステップが、80℃~250℃の温度で実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基板が、導電性回路が設けられた誘電体基板である、請求項11に記載の方法。
【国際調査報告】