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特表2024-507694気体反応物と液体反応物と反応させるための改良された反応器及び方法
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  • 特表-気体反応物と液体反応物と反応させるための改良された反応器及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】気体反応物と液体反応物と反応させるための改良された反応器及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/06 20060101AFI20240214BHJP
   B01J 10/00 20060101ALI20240214BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20240214BHJP
   C07D 305/12 20060101ALI20240214BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
B01J8/06
B01J10/00 Z
B01J19/24 A
C07D305/12
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023546016
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 US2022012914
(87)【国際公開番号】W WO2022164692
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,348
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511046391
【氏名又は名称】ノボマー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コール,ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】ウーリグ,ジェフ
【テーマコード(参考)】
4G070
4G075
4H039
【Fターム(参考)】
4G070AA05
4G070AB06
4G070BB02
4G070CB02
4G070CB07
4G070CB17
4G070CC01
4G070CC11
4G070DA21
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA45
4G075AA61
4G075AA63
4G075BA10
4G075BB05
4G075BD04
4G075BD13
4G075BD27
4G075CA02
4G075CA54
4G075CA57
4G075CA65
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA01
4G075EB21
4G075EC01
4H039CA65
4H039CF30
4H039CH40
(57)【要約】
ハイブリッド垂直気泡プラグフロー反応器は、間に垂直な管状部材が配置される底部入口と上部出口から構成され、底部入口は、気体反応物が液体反応物と混合される別個の気体反応物入口と別個の液体反応物入口を有し、出口は抽出ポートを有し、抽出ポートは、反応器から液体生成物を取り出し、反応器の管状部材内部に気体のヘッドスペースを維持するように十分拡張している。ハイブリッド垂直気泡プラグフロー反応器は、気体反応物の化学量論要件を超え、気体反応物が気泡を形成し、反応物が反応生成物を形成する触媒の存在下で反応とする気体反応物/液体反応物のモル比で反応する気体反応物と液体反応物を反応させるのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体反応物と液体反応物を反応させる方法であって、
(i)前記気体反応物と前記液体反応物を、底部入口で別々に、管状部材によって接続された前記底部入口と上部出口を有するハイブリッド垂直気泡プラグフロー反応器に導入することであって、前記気体反応物と前記液体反応物が、化学量論量を超え、前記気体反応物が前記液体反応物の中で気泡を形成する気体反応物/液体反応物のモル比をもたらす比率で混合及び導入される、前記導入すること、
(ii)前記気体反応物と前記液体反応物が触媒の存在下で、前記ハイブリッド垂直気泡プラグフロー反応器を通って上向きに流れるときに、反応して反応生成物を形成すること、及び
(iii)前記反応生成物を前記上部出口から除去すること、を含む、前記方法。
【請求項2】
気体ヘッドスペースが前記反応器に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気体反応物/液体反応物のモル比が1.2から約20である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記モル比は1.5から約5である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応器の前記管状部材は中にパッキングを有している、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記気体反応物は噴霧器を通して導入される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記気泡はある速度で前記反応器を通り、前記液体反応物はある速度で前記反応器を通り、前記気泡の前記速度は前記液体反応物の前記速度と同じかそれより大きい、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記液体反応物は溶媒の中で溶解する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記液体反応物が周囲条件で気体であり、前記反応器が、前記液体反応物が液体として維持される圧力及び温度に維持される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記気体反応物が一酸化炭素であり、前記液体反応物がエポキシドである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記エポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはその組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記液体反応物はベータラクトンである、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ベータラクトンはベータブチロラクトン、ベータプロピオラクトン、またはその組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒が、前記反応物と共に導入され、前記反応物及び前記反応生成物と共に前記反応器を通って流れる均一触媒から構成される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
均一触媒が、前記液体反応物と混合され、前記液体反応物と共に前記反応器に導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒は、前記反応器の前記管状部材の内部に分散された担体に固定された不均一触媒から構成される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記強固な担体が前記パッキングから構成されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記圧力は約1バールから約100バールに維持されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記圧力は約2バールから50バールに維持されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
複数の反応器が直列、並列、またはその組み合わせで使用される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも2つの反応器が直列で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも2つの反応器が直列に存在し、1つの反応器の前記生成物が後続の反応器の前記液体反応物となる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記生成物は、前記気体反応物、触媒、及び存在するならば溶媒から分離される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記反応器の長さ/直径のアスペクト比が少なくとも約10である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記アスペクト比は少なくとも20から1000である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記直径は約1cmから約200cmである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記温度は約50℃から200℃である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
界面活性剤が前記反応器に存在する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記界面活性剤が別々に加えられる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記界面活性剤は副産物として前記反応の間インサイチュで生成される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記気泡は、前記液体反応物、及び存在するならばいずれかの溶媒の中で前記気体反応物の飽和を維持する大きさである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ハイブリッド垂直気泡プラグフロー反応器の前記円筒部材の前記長さに沿って、前記気体反応物、前記液体反応物、他の試薬、またはそれらの組み合わせを注入することをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記液体反応物はエポキシドから構成され、前記気体反応物は一酸化炭素から構成され、前記反応生成物は無水物から構成され、前記方法は1つのハイブリッド垂直気泡プラグフロー反応器で実行される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
先行請求項のいずれか1項に記載の方法で生成される反応生成物。
【請求項35】
前記反応生成物がラクトンまたは無水化合物を含む、請求項34に記載の反応生成物。
【請求項36】
前記反応生成物が、ベータブチロラクトン、ベータプロピオラクトン、メチルコハク酸無水物、コハク酸無水物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項35に記載の反応生成物。
【請求項37】
間に垂直な管状部材が配置される底部入口と上部出口から構成される反応器であって、前記底部入口は、前記気体反応物が前記液体反応物と混合される別個の気体反応物入口と別個の液体反応物入口、及び前記垂直管状部材の抽出ポートを有し、前記抽出ポートは、前記反応器から前記液体生成物を取り出し、前記反応器の前記垂直管状部材内部に気体のヘッドスペースを維持するように十分拡張している、前記反応器。
【請求項38】
前記気体反応物入口は噴霧器から構成されている、請求項37に記載の反応器。
【請求項39】
前記管状部材は中にパッキングを有している、請求項37または38のいずれかに記載の反応器。
【請求項40】
前記管状部材は、長さと直径を有し、前記長さ/直径の比は少なくとも10である、請求項37から39のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項41】
前記管状部材の前記長さに沿って半径方向の入口をさらに備える、請求項37から40のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項42】
前記半径方向の入口は、気体反応物を送達するように構成される、請求項41に記載の反応器。
【請求項43】
前記気体反応物は、前記底部入口で前記液体反応物と混合された前記気体反応物と同じである、請求項42に記載の反応器。
【請求項44】
前記温度は、熱交換要素によって制御される、請求項37から43のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項45】
前記熱交換要素は熱交換液体が通る管またはチャネルから構成されている、請求項44に記載の反応器。
【請求項46】
前記熱交換要素は、前記管状部材内部の管、前記管状部材の壁内のチャネル、または前記管状部材の周囲に巻き付けられた管のうちの1つまたは複数で構成される、請求項45に記載の反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体反応物を液体反応物と反応させるための改良された方法に関する。具体的には、本発明は、一酸化炭素によるエチレンオキシドのカルボニル化など、触媒の存在下で気体と液体を反応させてベータプロピオラクトン(BPL)を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
気体と液体反応物の触媒反応は通常、反応気体の過圧と、気体反応物の液体への連続的な注入を維持する撹拌バッチ式または連続撹拌反応器で行われてきた。バッチ反応器は触媒を効率的に使用する傾向がある(つまり、触媒のターンオーバー数「TON」が高い)が、所定のスループットとバッチ間のダウンタイムに対する資本コストが高いことから苛まらせる。いくつかの例では、バッチ反応の撹拌は、気体反応物を液体反応物で起泡させること(すなわち、気泡型反応器)によって達成され得る。
【0003】
連続撹拌反応器は、連続的に生成物を生成することができるが、触媒の非効率的な使用で苛まらせ、触媒の連続的な分離、リサイクル、及び補充を必要とする。このような動作は分離膜などの複雑な方法や技術に関与する場合があり、これらは汚れて一貫性がない動作や生成物となり得る。
【0004】
プラグフロー反応器は、通常、十分な滞留時間と十分な伝熱面積を実現するために長いコイルの管を含むため、これらの反応には一般に使用されてこなかった。これらの反応では通常、液体/溶媒の溶解度の限界を超える気体反応物の過剰供給が必要なため、配管の高い部分に気体反応物が蓄積することが多く、その結果、反応器での液体の停留/滞留時間が変動し、また反応器全体の反応条件が不安定になるに至る。
【0005】
したがって、上述の問題のうちの1つなどの従来技術の問題の1つまたは複数を回避する、気体反応物及び液体反応物を反応させる方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
出願人は、本明細書のハイブリッド垂直気泡プラグフロー反応器(「反応器」)が、バッチ気泡反応器、連続撹拌タンク反応器、及び典型的なプラグフロー反応器に関連する問題を回避しながら、気体反応物と液体反応物を反応させるために使用でき、良好に制御された反応条件、触媒の効果的かつ効率的な使用(例えば、高いTON)を可能にすることを見出した。
【0007】
本発明の第1の態様は、気体反応物と液体反応物を反応させる方法であって、(i)気体反応物と液体反応物を、底部入口で別々に、管状部材によって接続された底部入口と上部出口を有するハイブリッド垂直気泡プラグフロー反応器に導入することであって、気体反応物と液体反応物が、化学量論量を超え、気体反応物が液体反応物の中で気泡を形成する気体反応物/液体反応物のモル比をもたらす比率で混合及び導入される、導入すること、(ii)気体反応物と液体反応物が触媒の存在下で、ハイブリッド垂直気泡プラグフロー反応器を通って上向きに流れるときに、反応して反応生成物を形成すること、及び反応生成物を上部出口から除去することを含む方法である。本明細書における垂直は、管状部材の長さが、地球の重力場ベクトルと本質的に平行である(すなわち、垂直を決定するとき、下げ振りの鉛直線と本質的に平行である)ということを意味する。
【0008】
本発明の第2の態様は、間に垂直な管状部材が配置される底部入口と上部出口から構成される反応器であって、底部入口は、気体反応物が液体反応物と混合される別個の気体反応物入口と別個の液体反応物入口を有し、出口は抽出ポートを有し、抽出ポートは、反応器から液体生成物を取り出し、反応器の前記垂直管状部材内部に気体のヘッドスペースを維持するように十分拡張している反応器である。
【0009】
方法及び反応器は、迅速に反応せず、一酸化炭素によるエポキシドのカルボニル化などの触媒を通常必要とする液体反応物と気体反応物の反応に、特に適している。他の反応は、例えば、水素添加反応(例えば、Hが不飽和の炭化水素と反応)や炭化水素の酸化(例えば、酸素である「気体」とシクロヘキサン)を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のハイブリッド垂直管状反応器の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に提示される説明及び図は、当業者に本発明、その原理、及びその実際の応用を告げることを意図している。説明されている本開示の特定の実施形態は、本開示の範囲を網羅すること、または限定することを意図したものではない。
【0012】
方法は、図1に示すハイブリッド垂直気泡プラグフロー反応器(反応器)10を使用するが、これに限定されない。反応器10は管状部材40によって接続された底部入口20と上部出口30を有している。底部入口は別個の気体反応物入口60と液体反応物入口70から構成されている。底部入口は、さらに、ドレン80または他の成分を導入するための他の入口から構成され得る。底部入口20において、気体反応物は、混合領域90において溶媒と混合され得る液体反応物と混合される。気体反応物入口60はまた、液体反応物内部で所望の気体反応物の気泡のサイズを形成させ、液体反応物、及び使用する場合には溶媒の飽和を促進するための噴霧器(図示せず)から構成され得る。入口は、垂直管状部材40に任意のパッキング45を保持するため、または気体反応物の気泡をさらに分散または低減するために、スクリーンメッシュなど100などからさらに構成され得る。メッシュはいずれであってもよく、Sealing Devices Inc. が提供する製品、はめ込まれた316SS #20メッシュを備えたパイプフランジガスケットなど、気泡をより小さな気泡に崩壊するよう促進し、パッキングを保持するために使用される。底部入口は、管状部材40の底部の半径方向の入口、または上部から管状部材内部を通って管状部材40の底部から出る垂直管など、管状部材40の底部での反応物の注入及び混合を可能にする任意の方法で構成され得ることが理解される。
【0013】
出口30は、当技術分野で知られているものなどの、いずれかの適切な気液の分離の方法で取り付けられる。一実施形態において、出口30は、液体生成物、溶媒、及び残留液体反応物(反応器液50)の中に十分に延びる抽出管75で構成され、該反応器液50の抽出を可能にし、ヘッドスペース65を維持して気体反応物の過圧をもたらすことができる。代替例では、抽出管を、ヘッドスペースの維持も可能にする半径方向の抽出ポートなどの他のいずれかの出口に、置き換えることもできる。液体生成物及び残留溶媒及び未反応の液体反応物のための抽出管、ポート、または他の出口には、別個の気体出口が付属し得る。出口30は、溶媒及び/または触媒の分離、さらなる反応、回収などのさらなる処理のために、反応器液50を輸送するための流出物出口95と、反応器と一体化され得るかまたは一体であり得る、当技術分野で公知の適切な流量制御装置、タンク、バルブ、及び装置(図示せず)を使用する反応器の内部の気体の過圧を維持するための気体出口85とを有する。
【0014】
驚くべきことに、反応器が気体反応物と液体反応物を反応させるべく使用できることが発見された。特に、方法は、触媒をより効果的かつ効率的に使用し、高いTONを実現することを可能にする。ターンオーバー数(TON)は、当技術分野で一般に理解されているように使用され、連続的な反応の場合、所定の時間に生成される触媒及び生成物の量が連続的な反応のTONとなり、(生成物のモル数/時間)/(触媒のモル数/時間)で与えられる。TONは、生成物の産出が同様な連続的な反応に対する触媒の効力を示す。本発明の方法を実施する際、液体反応物は液体反応物入口70を介して混合領域90に注入され、気体反応物は気体反応物入口60を介して混合領域90に注入され、そこで気体反応物の気泡が液体反応物において形成される。反応物は、実行されている反応のタイプに応じて注入されるとき、冷却させるかまたは熱することができる。例えば、本明細書に記載のカルボニル化などの発熱反応のために、冷却した反応物を注入することが望ましい場合がある。
【0015】
管状部材40は垂直に配向されており、垂直からの幾分かの偏りは許容され得るが、本質的に、反応ゾーンは、気体反応物を捕捉し得るいずれかの曲がり、または他の障害物もなく、真っ直ぐであるということが理解される。管状部材40は、正方形、長方形、四角形、六角形、五角形、楕円形、または円形などの任意の断面形状を有することができるが、円形が好ましい。構成する材料は、反応物、及び反応物を反応させるために使用される条件と適合し、当業者が容易に決定できるいずれかのものであり得る。例えば、反応物がエポキシド及び一酸化炭素である場合、ステンレス鋼(例えば、302または316ステンレス鋼)、無機ガラス、有機プラスチック(例えば、エンジニアリングポリマー)及びセラミックが使用され得る。
【0016】
反応器10及び管状部材40の長さは、滞留時間などの所望の反応条件を実現するのに有用ないずれかの長さと直径とすることができる。典型的には、管状部材の直径は、2mm、3mm、5mmまたは1cmから200cm、100cm、50cm、20cmまたは10cmであり得る。非円筒形の管状部材の直径は、そのような管状部材の断面の最大の寸法としてみなされることが理解される。概して、アスペクト比(長さ/直径)は、1000、500、200、100、75または50などのいずれかの商業的に実行可能な比に対して、少なくとも約10、15、または20である。
【0017】
実施形態において、反応器10は、反応物の注入及び生成物の除去のための別個のまたは共有のフランジを備えた並列の複数の管状部材40から構成され得る。このような管状部材40の並列の構成は、例えば、管状部材40を共通に加熱または冷却するための加熱要素または熱伝達流体を有することができる共通の容器に収容することができる。別の実施形態で、反応器10は、例えば、さらなるまたは異なる反応物または触媒を注入するか、または1つの反応器からの生成物を後続の反応器で反応させて異なる生成物を形成するように直列に構成することができる。同様に、並列反応器と直列反応器の組み合わせは、異なる生成物の連続的な形成を可能にし、そのような生成物の混合を調整できるように構成することができる。
【0018】
別の実施形態において、管状部材40は、さらなる反応物または他の成分(例えば、溶媒、安定剤、界面活性剤など)を注入するために、その長さに沿って1つまたは複数の半径方向の入口からさらに構成され得る。まさに溶媒のような、そのような他の成分がまた、底部入口で注入され得るということが理解される。例えば、半径方向の入口を使用して、管状部材40の長さに沿って底部入口20に挿入された同じ気体反応物または液体反応物を注入することができる。気体反応物が半径方向の入口を通して注入されるならば、本明細書に説明されるように、それは噴霧器を含み得る。別の実施形態において、異なる反応物を半径方向の1つまたは複数の入口を通して挿入して、異なる所望の最終生成物を形成することができる。前に記載したように、反応物またはいずれかのさらなる成分は、所望の反応または反応条件に応じて、加熱または冷却することができる。
【0019】
気体反応物/液体反応物の注入比率は、それが気体反応物の所望の反応に対してモル過剰の化学量論量となるものである。例として、気体反応物/液体反応物質のモル比(または当量比)は、1、1.1、1.2、1.4、または1.5から約20、10、7、5、4、または3より大きい。決して限定することなく、反応器の気体反応物が枯渇するのを回避するために、過剰な気体反応物により、反応器内部の滞留時間全体にわたって気体反応物による液体反応物の飽和を維持することが可能になると考えられる。同様に、過剰な量の気体反応物は、限定することなく、液体反応物、生成物、または溶媒を蒸発させて液体反応物内部に形成される気泡にし、したがって触媒反応を阻害し得ると考えられる。
【0020】
望ましくは、液体反応物に形成される気泡は、液体反応物内部の飽和を増し、反応器全体に均一に分布する大きさである。実施形態において、噴霧器が、気体反応物を注入するときに使用できる。噴霧器は、一般的に化学または生化学の産業の中で任意に使われ得る。例えば、噴霧器は、コネチカット州ファーミントンのMott Corp.から入手可能なものなどの多孔質焼結セラミックフリットまたは多孔質金属フリットであってもよい。多孔質焼結フリット噴霧器の細孔径は、0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、2マイクロメートルから100マイクロメートル、50マイクロメートル、20マイクロメートル、または15マイクロメートルの細孔径を有するものなど、有用ないずれかのものであり得る。適切であり得る他のガス噴霧器の例は、所望の気泡の大きさに応じて、多孔板、針、スパイダー、またはそれらの様々なサイズの開口部の組み合わせを含む。
【0021】
別の実施形態では、所望の気泡の大きさまたは反応物の分布は、反応器の中でパッキング45を使って促進され得る。パッキング45は、当技術分野で知られているものや反応物の分配など、より大きな気泡の形成を乱し、より大きな気泡を破壊するのに有用ないずれかのものであり得る。例えば、パッキング45は、良好な半径方向の混合を確実にし、反応器を通るプラグフローを促進するために、プラグフロー反応器で一般的に使用されるような、多孔質のパッキングであってもよい。パッキング45は、任意の有用な形状のビード、モノリシックまたはセグメント化されたインライン静的混合構造またはスクリュー構造、分配プレートまたはふるいであってもよい。
【0022】
さらなる実施形態において、所望の気泡の大きさは、個別に添加されるイオン性(カチオン性、アニオン性、及び両性界面活性剤)または非イオン性の界面活性剤を含むがこれらに限定されない界面活性剤を使用することによって促進され得る。界面活性剤は、注入時に液体反応物に混入されてもよいし、入口20に個別に挿入されてもよい。実施形態において、界面活性剤は副産物としてインサイチュで生成され得る。例えば、エポキシドまたはラクトンを一酸化炭素でカルボニル化するとき、グリコール系オリゴマーが生成され得る。
【0023】
パッキング45がビードである場合、ビードは、球、回転楕円体、円錐、円筒、任意の断面形状を有する平坦な有孔シート、管、立方体、または繊維状などの任意の有用な形状であってもよい。実施形態において、ビードは単一サイズ(球ではない場合は同じ体積または同等の球の直径)であっても、二峰性、三峰性、または連続的なサイズ分布を含む様々なサイズであってもよい。一般に、ビードのサイズは1mmから約25mmである。
【0024】
ビードのサイズは、上述したように、プラグの流れと気泡の破壊を促進する任意の有用なサイズとすることができる。パッキング45は、一般に、管状部材40の中で、約20%から99%のボイド率を作成する。一般に、ボイド率は25%または30%から、80%、90%、または95%である。
【0025】
パッキング45は、使用される反応物及び反応条件を扱うのに有用な任意の適切な材料で作ることができる。適切なビード材料は、例えば、セラミックス(例えば、結晶性酸化物、窒化物、炭化物、及び非晶質ケイ酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩及びそれらの組み合わせ)、プラスチック(例えば、ポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、及びそれらの組み合わせ)、金属(例えば、遷移金属及びその合金)、または前述のいずれかの組み合わせを含み得る。特定の例は、多孔質のホウケイ酸ガラス、シリカガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミナ、ステンレス鋼、ニッケル合金、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、パッキング45は、商品名PRO-PAK(Cannon Instrument Co.,)で入手可能な穴あきの316ステンレス鋼のタブである。実施形態において、方法は噴霧器とパッキングの両方を使用する。さらなる実施形態において、下で説明されるように、パッキング45は触媒作用であり得る。
【0026】
方法において、気体の泡が、液体反応物と同じかそれよりも速い速さ(速度)で反応器10を通って流れることが望ましい。いずれの制限も課すことなく、これは、気体反応物の液体反応物への飽和を促進し、反応器全体に撹拌を生じさせ、反応効率と有効性(例えば、より高いTONと選択性)を高めると考えられる。典型的には、気泡は、反応器10を通る速度が、液体反応物、及び使用される場合には、いずれの溶媒よりも、少なくとも約1.1または1.5から10、5、または4倍速い速度を有する。言い換えれば、気泡は、速度について所与のものと同様の割合(例えば、滞留時間の0.9または0.67から0.1、0.2、または0.25)で、液体反応物よりも短い滞留時間を有する。
【0027】
実施形態において、気体のヘッドスペース65は、例えば、液体反応物及び使用される場合溶媒において気体反応物の飽和を促進するために、管状部材40の内部に維持される。ヘッドスペース65は、前述のように、特定の反応物を反応させるために使用される反応条件に有用な任意の圧力に維持することができる。説明として、液体反応物がエポキシド(例えば、エチレンオキシド及び/またはプロピレンオキシド)またはベータラクトン(ベータブチロラクトン及び/またはベータプロピオラクトン)であり、気体反応物が一酸化炭素である場合、圧力は1、2、3、4、または5バールを超えるものから約100、50、20、または15バールまでの範囲であってもよい。実施形態において、ヘッドスペース65はまた、液体反応物の液体の状態の維持を容易にするために使用され得る。例えば、反応物が通常、周囲条件(本質的に20から25℃及び約1 atmの周囲条件)で気体である場合、液体反応物は、上記のような十分な過圧を有することによって、部分的に維持され得る。
【0028】
方法は、特定の反応物と所望の生成物に対して、いずれかの有用な温度で実行され得る。例として、エポキシドまたはラクトンのカルボニル化の場合、温度は約50℃、60℃、70℃から200℃、150℃、125℃、または100℃であってもよい。反応器の加熱または冷却は、当技術分野で公知のような任意の適切な方法または装置によって実行することができる。例えば、反応器10は、温度制御ジャケットを含み得るが、写真にしてはいない。通常、これは、管状部材40の壁のチャネルなどの熱交換導管を含み得、それは、反応または管状部材40内部に浸漬された加熱/冷却管の温度を制御するために、冷却または加熱液体が反応器を通過して反応器の内外に熱を伝達できるようにするか、またはそれは、管状部材40の周囲に巻かれた加熱テープまたは1つまたは複数の管、管状部材40の壁内部のチャネル、または管状部材40内部の管(すなわち、反応物は反応器内部の管の壁に接触する)、またはそれらの任意の組み合わせなどのいずれかの公知の加熱または冷却方法であり得る。
【0029】
方法は、反応物の導入のいずれかの比率を利用して、反応器10内部で適切な滞留時間を実現することができる。一般に、反応器10の内部の滞留時間は、一酸化炭素とのエポキシド、ラクトン、またはそれらの組み合わせなどの反応物に応じて、2、5または10分から、24時間、10時間、5時間、3時間、2または1時間であってよい。実施形態において、驚くべきことに、反応器10を使用して、エポキシドをカルボニル化してラクトンにし、その後さらに反応して無水物を形成することができる。反応器の中へのエポキシドの連続的な供給があり、触媒はエポキシドの存在下でラクトンを形成する際の選択性が高いため、それは驚くべきことである。方法はまた、例えば所望の生成物の混合物、特に再利用されたCOを実現するために流出物を再利用することもでき、そのとき、本明細書に記載のカルボニル化反応を行うことが特に望ましい場合がある。
【0030】
方法において、反応は触媒の存在下で実行される。触媒は均一触媒、不均一系触媒、またはその組み合わせであり得る。実施形態では、触媒は、液体反応物入口70を介して反応器10に注入されるとき、液体反応物中に存在する。例えば、触媒は、液体反応物に溶解した均一触媒、または反応器10への挿入前に液体反応物(スラリー)に粒子として存在する不均一触媒である。別の実施形態で、触媒は、担体に固定された不均一触媒から構成され、これは部分的または全体的に、パッキング45として使用され得る。説明として、不均一触媒は、参照として本明細書に組み込まれる同時係属出願PCT/US2020/044013に記載されているような、エポキシドまたはラクトンのカルボニル化に有用な、担持された触媒であってもよい。担体は、上述のパッキングビードなどの多孔質セラミックであってもよく、実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる該同時係属出願の段落36に記載されているようなゼオライト、シリカ、チタニア、銀(例えば、粘土結合材の銀)であってもよい。エポキシドまたはラクトンのカルボニル化のための他の例示的な触媒は、U.S. Pat. No. 6,852,865及び9,327,280及びU.S. Pat. Appl. Nos. 2005/0014977及び2007/0213524に記載され、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
触媒の量は、任意の有用な量であり得、特定の反応物及び所望の生成物に依存し得る。一般に、反応器に存在している触媒の量は、反応器10に存在する反応物の量の約0.001重量%から20重量%である。例示的に、触媒が液体反応物に溶解または混入された均一触媒である場合、触媒の量は、液体反応物及び触媒の約0.001重量%、0.01重量%、0.05重量%から約20重量%、10重量%または5重量%である。さらなる説明として、エポキシドまたはラクトンを一酸化炭素でカルボニル化するときの均一触媒の量は、液体反応物/触媒のモル比が50、100から50,000、25,000、10,000、5,000、または2,500で、エポキシドまたはラクトンと共に反応器に供給される。
【0032】
液体反応物は、溶媒に存在し得る、混合され得る、または混入され得る。いずれかの有益な溶媒が使用され得る。溶媒は、液体反応物の中で例えば気体反応物の存在を増大するために使われ得る。説明として、液体反応物がエポキシドである場合、溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化溶媒、エーテル、エステル、ケトン、ニトリル、アミド、カーボネート、アルコール、アミン、スルホン、それらの混合物またはそれらの組み合わせなどの有機溶媒であってよい。例示的な溶媒は、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、グライム、ジグライム、トリグライム、高級グライム、またはそれらの混合物を含み得る。溶媒の量は、本方法を実施するのに有用な任意の量であり得、広範囲にわたって変化し得る。例えば、重量による溶媒対液体反応物の量(溶媒/液体反応物)は、1、10、または20から99、90、または80まで変動し得る。
【0033】
気体反応物はまた、別の気体に存在し得る、混合され得る、または混入され得る。例えば、気体反応物は、不活性気体または窒素などの別の気体と混合され得る。特定の実施形態では、反応気体は、U.S. Pat. No. 10,597,294に記載され、参照により本明細書に組み込まれる、市販の合成ガスなどで水素と混合された一酸化炭素であり、エポキシド、ラクトン、またはそれらの組み合わせのカルボニル化に使用できる。
【0034】
方法の特定の実施形態では、液体反応物は、対応するカルボニル化ラクトン、無水物生成物を形成するためのエポキシドまたはラクトン及び一酸化炭素であり、それは置換または非置換オキシランを指す。代用されたオキシランは、一置換されたオキシラン、二置換されたオキシラン、三置換されたオキシラン、及び四置換されたオキシランを含む。そのようなエポキシドは、さらに、任意選択で代用され得る。いくつかの実施形態において、エポキシドは1つのオキシラン部分から構成されている。いくつかの実施形態において、エポキシドは2つ以上のオキシラン部分から構成されている。ラクトンは前述のエポキシドをカルボニル化する時に生成されたものなどのいずれかのラクトンであり得る。このようなエポキシド及びラクトンの例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びそれらの対応するラクトンカルボニル化生成物であるベータプロピオラクトン及びベータブチロラクトンを含む。このようなラクトンの例は、ベータプロピオラクトン、ベータブチロラクトン、及びそれらの対応するカルボニル化生成物であるコハク酸無水物及びメチルコハク酸無水物を含む。エポキシド及びラクトンのさらなる例は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開WO2020/033267の表A(段落65と66の間)にある。
【0035】
説明的実施形態
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、方法及び反応器を説明するために提供される。すべての部及び百分率は、他に記されない限り重量によるものである。表1は、実施例及び比較例で使用した成分を示す。
【実施例
【0036】
実験室規模のハイブリッド気泡プラグフロー反応器10は、気体反応物入口及び液体反応物入口及びドレンが、2つの半径方向ポートのブリードフランジ及び底部ドレンバルブ80を使用して作られた点を除いて、図1に示されるのと同様の方式で、316ステンレス鋼と、上部出口20及び下部出口30にフランジを有する長さ2フィートの直径1インチのパイプを使用して製造された管状部材40とから構成される。管状部材40は、約1インチのヘッドスペース65を残して、PROPAKパッキングで充填されている。反応器は、底部ブリーダーフランジの上部に316ステンレスストレーナ100(Sealing Devices Incから入手可能な、はめ込まれた316SS #20メッシュを備えたパイプフランジガスケット)を有する。1/4インチの316ステンレス鋼の浸漬管75が、本明細書に記載の流出物を抽出するために使用されている。
【0037】
反応器は表1で示された温度で予熱されて、維持されている。各実施例について表1に示すように、テトラヒドロフラン(THF)の中のエチレンオキシドを反応器に注入し、COを反応器に別々に注入した。各実施例は、反応が複数の滞留時間の間に起こることを確実にしながら、数時間の間実行される。使われた触媒は各実施例で同じである。触媒はUS Pub. No.2019-0030520で説明されているものと本質的に同じである。流出物の構成と濃度は表2で示される。反応器の性能測定基準は表3で示される。他に示されない限り、すべての濃度は質量基準である。実施例のいずれにおいても、気泡の蓄積は認められない。
【0038】
実施例1は、無水化合物が1つの反応器の中の反応器の中で作られる可能性があることを示す。他の実施例は、液体反応物及び気体反応物を反応させるときに使用できる広範囲の実行条件を示している。
【0039】
実施例17は、実施例1から16と同じ反応器を使用して作製し、表4に示す条件下で実行した。比較例1は、実施例17と実質的に同等の滞留時間及び反応器出口ベータプロピオラクトン(bPL)濃度を有する条件下で連続撹拌反応器で製造され、これも表4に示されている。このことから、本発明の反応器は、所与の滞留時間及びbPL産出に対して、同様の条件及び生成物の産出の下で動作する連続撹拌反応器よりも、はるかに高いTONを有することが、容易く明瞭になる。驚くべきことに、bPlの産出は、生成物産物1モルあたり大幅に少ない触媒、及び本質的に同じ滞留時間を使用しながら同等であり、これは単位時間基準でのTONの大幅な増加に反映されている。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【表3】
【表4】
図1
【国際調査報告】