(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】有機官能性アルコキシシランを含む組成物およびそれを含むコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20240214BHJP
C08F 30/04 20060101ALI20240214BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20240214BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240214BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240214BHJP
C09J 183/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C07F7/18 C
C08F30/04
C07F7/18 M
C07F7/18 S
C09D183/06
C09D7/63
C09J11/06
C09J183/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546427
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 US2022014692
(87)【国際公開番号】W WO2022169744
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202121004497
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】サルカー,アロク
(72)【発明者】
【氏名】プラタプ,バーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ティワリー,ヨゲシュ
(72)【発明者】
【氏名】チャヴェス,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ポール,エリック
【テーマコード(参考)】
4H049
4J038
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ57
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS57
4H049VT09
4H049VT21
4H049VU21
4H049VV05
4J038CG001
4J038DL061
4J038JC34
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038MA10
4J038NA11
4J038NA26
4J040DF001
4J040EK051
4J040HD35
4J040JA03
4J040JA13
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA22
4J040KA25
4J040KA31
4J040KA35
4J040KA38
4J040KA42
4J100AJ02Q
4J100AL03P
4J100AP16R
4J100BA76R
4J100CA01
4J100CA06
4J100FA03
4J100FA20
4J100FA28
4J100FA30
4J100JA01
(57)【要約】
本願では有機官能性シラン組成物が示され、記述される。有機官能性シラン組成物は、シランモノマーの少なくとも1つがC1~C2アルキル基を有するアルコキシ基を2つまたはより多く含み、そしてシランモノマーの少なくとも1つが3つまたはより多くの炭素原子のアルキル基を有するアルコキシ基を2つまたはより多く含む、有機官能性シランモノマーの混合物を含んでいる。有機官能性シラン組成物はコーティング組成物において用いられることができ、例えば耐スクラブ性などのコーティングの1つまたはより多くの性質を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機官能性シラン組成物であって:
1つまたはより多くのアルコキシ基を有し、そこにおいてアルコキシ基が1つから2つの炭素原子を含む有機官能性アルコキシシランモノマーまたはオリゴマー;および
1つまたはより多くのアルコキシ基を有し、そこにおいてアルコキシ基が3つまたはより多くの炭素原子を含む有機官能性シランモノマーまたはオリゴマーを含む、有機官能性シラン組成物
【請求項2】
(i)モノマー(a)~(d)から選択された2つまたはより多くの有機官能性シランモノマー;(ii)モノマー(a)~(d)から選択された1つまたはより多くのモノマーのオリゴマー;または(iii)(i)および(ii)の混合物を含む有機官能性シラン組成物であって、ここでモノマー(a)~(d)が:
(a)式(I)のシラン:
【化19】
式中R
1およびR
2はそれぞれ独立して1価のC1~C2炭化水素から選択され;R
3はC1~C10のアルキルまたは-OR
5であり、ここでR
5はC1~C2炭化水素;R
4はC2~C60の2価の炭化水素;mは0または1の整数;そしてaは0または1である;
(b)式(II)のシラン:
【化20】
式中R
6は1価のC1~C2炭化水素から選択され;R
7はC3~C20の1価の炭化水素;R
8はC1~C10のアルキルまたは-OR
10であり、ここでR
10はC1~C2炭化水素;R
9は2価のC2~C60炭化水素;nは0または1の整数;そしてbは0または1である;
(c)式(III)のシラン:
【化21】
式中R
11およびR
12はそれぞれ独立して1価のC3~C20炭化水素から選択され;R
13はC1~C10のアルキルまたは-OR
15であり、ここでR
15は1価のC1~C2炭化水素;R
14は2価のC2~C60炭化水素;oは0または1の整数;そしてcは0または1である;および
(d)式(IV)のシラン:
【化22】
式中R
16、R
17、およびR
18はそれぞれ独立して1価のC3~C20炭化水素から選択され;R
19は2価のC2~C60炭化水素から選択され;pは0または1の整数;そしてdは0または1である
から選択され、X
1、X
2、X
3、およびX
4はそれぞれ独立して有機官能基である、有機官能性シラン組成物。
【請求項3】
組成物がシラン(a)およびシラン(b)またはこれらのオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項4】
組成物がシラン(a)およびシラン(c)またはこれらのオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項5】
組成物がシラン(a)およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項6】
組成物がシラン(b)およびシラン(c)またはこれらのオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項7】
組成物がシラン(b)およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項8】
組成物がシラン(c)およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項9】
組成物がシラン(a)、シラン(b)、およびシラン(c)またはこれらのオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項10】
組成物がシラン(a)、シラン(b)、およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項11】
組成物がシラン(a)、シラン(c)、およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項12】
組成物がシラン(b)、シラン(c)、およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項13】
組成物がシラン(a)、シラン(b)、シラン(c)、およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーの混合物またはオリゴマーを含む、請求項2の有機官能性シラン組成物。
【請求項14】
組成物がシラン(a)~(d)の1つまたはより多くのオリゴマーの2つまたはより多くの混合物である、請求項2から13のいずれかの有機官能性シラン組成物。
【請求項15】
(i)シラン(a)~(d)の1つまたはより多く、および(ii)シラン(a)~(d)のオリゴマーの1つまたはより多くを含む、請求項2から14のいずれかの有機官能性シラン組成物。
【請求項16】
R
3が-OR
5;R
8が-OR
10;およびR
13が-OR
15である、請求項2から15のいずれかの有機官能性シラン組成物。
【請求項17】
X
1、X
2、X
3、およびX
4が独立して、アルキル基、芳香族基、脂環式基、アルケニル基、アミノ基、アクリル基、アクリロキシ基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、ヒドロキシル基、またはエポキシ基から選択される、請求項2から16のいずれかの有機官能性シラン組成物。
【請求項18】
X
1、X
2、X
3、およびX
4が独立してエポキシ基から選択される、請求項17の有機官能性シラン組成物。
【請求項19】
X
1、X
2、X
3、およびX
4が独立して:
【化23】
【化24】
から選択される、請求項2から16のいずれかの有機官能性シラン組成物。
【請求項20】
X
1、X
2、X
3、およびX
4が独立してC2~C20アルケニル基から選択される、請求項17の有機官能性シラン組成物。
【請求項21】
アルケニル基がビニル基であり、そしてa、b、c、d、m、n、o、およびpがそれぞれ0である、請求項20の有機官能性シラン組成物。
【請求項22】
(i)X
1、X
2、X
3、およびX
4がそれぞれビニル基であり、そしてa、b、c、d、m、n、o、およびpがそれぞれ0である;(ii)X
1、X
2、X
3、およびX
4がそれぞれアミン基であり、そしてm、n、o、およびpがそれぞれ1であり、R
4、R
9、R
14、およびR
19がそれぞれC3炭化水素、そしてa、b、c、およびdがそれぞれ0である;(iii)X
1、X
2、X
3、およびX
4がそれぞれシアノ基であり、そしてm、n、o、およびpがそれぞれ1であり、R
4、R
9、R
14、およびR
19がそれぞれC3炭化水素、そしてa、b、c、およびdがそれぞれ0である;(iv)X
1、X
2、X
3、およびX
4がそれぞれチオール基であり、そしてm、n、o、およびpがそれぞれ1であり、R
4、R
9、R
14、およびR
19がそれぞれC3炭化水素、そしてa、b、c、およびdがそれぞれ0である;(v)X
1、X
2、X
3、およびX
4がそれぞれアクリロキシ基であり、そしてm、n、o、およびpがそれぞれ1であり、R
4、R
9、R
14、およびR
19がそれぞれC3炭化水素、そしてa、b、c、およびdがそれぞれ0である;(vi)X
1、X
2、X
3、およびX
4がそれぞれアクリルアミド基であり、そしてm、n、o、およびpがそれぞれ1であり、R
4、R
9、R
14、およびR
19がそれぞれC3炭化水素、そしてa、b、c、およびdがそれぞれ0である、請求項2から17のいずれかの有機官能性シラン組成物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれかの有機官能性シラン組成物と、モノマーまたは官能性ポリマーとのコポリマー。
【請求項24】
請求項1から22のいずれかのシラン組成物または請求項23のコポリマーを含むエマルジョン。
【請求項25】
請求項2から23のいずれかのシラン組成物を含む、コーティング、接着剤、またはシーラントの組成物。
【請求項26】
コーティング、接着剤、またはシーラントの組成物が請求項2から21のいずれかのシラン組成物から本質的になる、請求項25のコーティング、接着剤、またはシーラントの組成物。
【請求項27】
コーティング、接着剤、またはシーラントの組成物が水性組成物である、請求項25のコーティング、接着剤、またはシーラントの組成物。
【請求項28】
コーティング、接着剤、またはシーラントの組成物が溶媒系組成物である、請求項25のコーティング、接着剤、またはシーラントの組成物。
【請求項29】
コーティング、接着剤、またはシーラントの組成物がエマルジョンである、請求項25のコーティング、接着剤、またはシーラントの組成物。
【請求項30】
請求項25から29のいずれかの組成物で被覆された基材。
【請求項31】
式(a)を有するシラン、式(b)を有するシラン、式(c)を有するシラン、および式(d)を有するシラン、またはそれらのオリゴマーからなる群より選択された少なくとも2つのシランを反応させることを含むプロセスであって、
(a)式(I)のシラン:
【化25】
式中R
1およびR
2はそれぞれ独立して1価のC1~C2炭化水素から選択され;R
3はC1~C10のアルキルまたは-OR
5であり、ここでR
5はC1~C2炭化水素;R
4はC2~C60の2価の炭化水素;mは0または1の整数;そしてaは0または1である;
(b)式(II)のシラン:
【化26】
式中R
6は1価のC1~C2炭化水素から選択され;R
7はC3~C20の1価の炭化水素;R
8はC1~C10のアルキルまたは-OR
10であり、ここでR
10はC1~C2炭化水素;R
9は2価のC2~C60炭化水素;nは0または1の整数;そしてbは0または1である;
(c)式(III)のシラン:
【化27】
式中R
11およびR
12はそれぞれ独立して1価のC3~C20炭化水素から選択され;R
13はC1~C10のアルキルまたは-OR
15であり、ここでR
15は1価のC1~C2炭化水素;R
14は2価のC2~C60炭化水素;oは0または1の整数;そしてcは0または1である;および
(d)式(IV)のシラン:
【化28】
式中R
16、R
17、およびR
18はそれぞれ独立して1価のC3~C20炭化水素から選択され;R
19は2価のC2~C60炭化水素から選択され;pは0または1の整数;そしてdは0または1である;そして
X
1、X
2、X
3、およびX
4はそれぞれ独立してアルキル基、芳香族基、脂環式基、アルケニル基、アミノ基、アクリル基、アクリロキシ基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、ヒドロキシル基、またはエポキシ基から選択される、オリゴマーを合成するためのプロセス。
【請求項32】
請求項31のプロセスによって合成されたオリゴマー。
【請求項33】
請求項31のプロセスによって合成された1つまたはより多くのオリゴマーの混合物を含む組成物。
【請求項34】
(a)~(d)からなる群より選択された少なくとも1つのシランと、請求項31のプロセスによって合成された少なくとも1つのオリゴマーとの混合物を含む組成物。
【請求項35】
基材をコーティングするためのプロセスであって、請求項2から23のいずれかの組成物を基材の少なくとも1つの表面に適用することを含む、プロセス。
【請求項36】
請求項35のプロセスによって調製された、コーティングされた基材。
【請求項37】
フィルムまたは物品を調製するためのプロセスであって、請求項2から23のいずれかの組成物を、触媒、水分、または放射線で合体または接触させることを含む、プロセス。
【請求項38】
フィルムまたは物品を調製するためのプロセスであって、請求項2から23のいずれかの組成物を硬化条件に曝露することを含む、プロセス。
【請求項39】
硬化条件は硬化pHまたは硬化温度である、請求項38のプロセス。
【請求項40】
請求項37から39のいずれかのプロセスによって調製された硬化フィルムまたは物品。
【請求項41】
請求項2から23のいずれかの組成物から形成された硬化フィルムまたは物品。
【請求項42】
請求項2の有機官能性シラン組成物を製造するためのプロセスであって:
(a)エステル交換触媒とエステル交換可能なアルコキシシランを組み合わせてその混合物を提供し;
(b)工程(a)からの混合物にエステル交換用アルコールを添加して、混合物をエステル交換反応条件に置き;
(c)工程(b)の前および/または間に、工程(a)の混合物に対してエステル交換用アルコールを添加してエステル交換反応媒体を提供し、それによってエステル交換を開始してアルコキシシランエステル交換反応生成物を製造し;
(d)任意選択的に、エステル交換反応媒体のエステル交換触媒を不活性化して、アルコキシシランエステル交換反応生成物を含有する触媒欠乏エステル交換反応媒体を提供し;
(e)任意選択的に、エステル交換に際して形成された副生アルコールをエステル交換反応媒体から除去し;そして
(f)任意選択的に、アルコキシシランエステル交換反応生成物を工程(d)のエステル交換触媒欠乏エステル交換反応媒体から分離することを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は2021年2月2日に出願されたインド共和国特許登録仮出願202121004497号の優先権および利益を主張し、またその開示の全体は、参照を行うことによって本願に取り入れられる。
【0002】
本発明は、2つまたはより多くの有機官能性アルコキシシランを含む組成物、およびそうした有機官能性アルコキシシラン組成物を含むコーティング組成物に関する。特に本発明は、低級炭素アルコキシ基を有する有機官能性アルコキシシランと高級炭素アルコキシ基を有する有機官能性アルコキシシランの混合物を含む組成物に関する。実施形態において、この有機官能性アルコキシシラン組成物は、例えば塗料組成物のようなコーティング組成物において添加剤として使用するのに適している。
【背景技術】
【0003】
官能性アルコキシシランは、塗料配合物中に多く用いられている。官能性アルコキシシランは、接着性、耐食性、疎水性、耐スクラブ性(耐摩耗性)、耐薬品性その他に関して、性能の向上をもたらしうる。官能性アルコキシシランは一般に、他のポリマー/バインダー(膜形成剤)と組み合わせて使用されている。これらはフィラーや顔料と共に、またはフィラーや顔料なしで使用することができる。幾つかの場合には、耐スクラブ性は、アルコキシシランの有機官能基と反応可能な官能基を有するバインダーを、シランのアルコキシ基またはシラノール基と反応可能なフィラーと共に用いることによって改良することができる。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、これは恐らく、バインダーとフィラーの間での改良された結合に起因している。接着性もまた改良されてよいが、これはシランのシラノール末端が、コーティングが適用される基材と相互作用可能なためである。
【0004】
モノマーのアルコキシシランを水中で使用することの1つの問題点は、それらの加水分解および縮合に対する感度が高く、制御が困難なことである。これは経時的に、または貯蔵後に、性能の劣化をもたらしうる。従って、官能性アルコキシシランを使用することで耐スクラブ性のような初期性能を改良することはできるものの、耐スクラブ性のような性能特性は短時間で大きく低下する可能性がある。
【0005】
コーティングの性能を改善するための幾つかの試みは、アルコキシシランモノマーの使用の代替として、アルコキシシランオリゴマーを採用することに注力してきた。例えば米国特許第6,391,999号、第7,595,372号、第8,728,345号、および第10,196,407号は、エポキシシランオリゴマーを用いた組成物を記載している。こうした組成物は、コーティングの種々の側面を改良しうる。しかしながら依然として、組成物の貯蔵後の耐スクラブ性のような特性を改良することに対する関心が存在している。
【発明の概要】
【0006】
以下に示すのは本開示の概要であり、幾つかの実施態様の基本的な理解を提供する。この概要は、主要なまたは重要な要素を識別することを意図したものではなく、実施形態や特許請求の範囲に対する何らかの限定を規定することを意図したものでもない。さらにまた、この概要は、本開示の他の部分においてより詳しく記載されてよい幾つかの実施態様の単純化された概説を提供するものであってよい。
【0007】
提供されるのは、コーティング組成物において添加剤として使用するのに適した組成物である。この組成物は、2つまたはより多くの有機官能性アルコキシシランの混合物を含む。この組成物は、例えば塗料組成物のようなコーティング組成物において有用である。この有機官能性アルコキシシラン組成物は、コーティング組成物の耐スクラブ性を改善することができる。
【0008】
1つの実施態様において提供されるのは、2つまたはより多くの有機官能性アルコキシシランを含む組成物であり、そこにおいて有機官能性アルコキシシランの少なくとも1つは、3つまたはより多くの炭素原子を有している。1つの実施形態において、この組成物は、1つまたはより多くの低級炭素アルコキシ基(例えば、メトキシおよび/またはエトキシ)を含む有機官能性アルコキシシランと、1つまたはより多くの高級炭素アルコキシ基(例えば、3つまたはより多くの炭素原子を有する炭化水素を備えるアルコキシ基)を含む有機官能性アルコキシシランとを含んでいる。
【0009】
1つの実施態様において提供されるのは、膜形成材料と、有機官能性アルコキシシラン混合物を有する有機官能性アルコキシシラン組成物とを含む、コーティング組成物である。有機官能性アルコキシシラン混合物を有する組成物の使用は、こうしたコーティング組成物から形成されるコーティングの耐スクラブ性を改善することができる。この改善は、組成物を長期間貯蔵した後においてさえも、見出すことができる。
【0010】
1つの実施態様において提供されるのは:1つまたはより多くのアルコキシ基を有し、そこにおいてアルコキシ基が1つから2つの炭素原子を含んでいる有機官能性アルコキシシランモノマーまたはオリゴマー;および1つまたはより多くのアルコキシ基を有し、そこにおいてアルコキシ基が3つまたはより多くの炭素原子を含んでいる有機官能性シランモノマーまたはオリゴマーを含む、有機官能性シラン組成物である。
【0011】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、(i)モノマー(a)~(d)から選ばれる2つまたはより多くの有機官能性シランモノマー;(ii)モノマー(a)~(d)から選ばれる1つまたはより多くのモノマーのオリゴマー;または(iii)(i)および(ii)の混合物を含み、ここでモノマー(a)~(d)は以下から選択される:
(a)式(I)のシラン:
【化1】
式中R
1およびR
2はそれぞれ独立して1価のC1~C2炭化水素から選択され;R
3はC1~C10のアルキルまたは-OR
5であり、ここでR
5はC1~C2炭化水素;R
4はC2~C60の2価の炭化水素;mは0または1の整数;そしてaは0または1である;
(b)式(II)のシラン:
【化2】
式中R
6は1価のC1~C2炭化水素から選択され;R
7はC3~C20の1価の炭化水素;R
8はC1~C10のアルキルまたは-OR
10であり、ここでR
10はC1~C2炭化水素;R
9は2価のC2~C60炭化水素;nは0または1の整数;そしてbは0または1である;
(c)式(III)のシラン:
【化3】
式中R
11およびR
12はそれぞれ独立して1価のC3~C20炭化水素から選択され;R
13はC1~C10のアルキルまたは-OR
15であり、ここでR
15は1価のC1~C2炭化水素;R
14は2価のC2~C60炭化水素;oは0または1の整数;そしてcは0または1である;および
(d)式(IV)のシラン:
【化4】
式中R
16、R
17、およびR
18はそれぞれ独立して1価のC3~C20炭化水素から選択され;R
19は2価のC2~C60炭化水素から選択され;pは0または1の整数;そしてdは0または1であり;並びに
X
1、X
2、X
3、およびX
4はそれぞれ独立して有機官能基である。
【0012】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(a)およびシラン(b)またはこれらのオリゴマーを含む。
【0013】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(a)およびシラン(c)またはこれらのオリゴマーを含む。
【0014】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(a)およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む。
【0015】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(b)およびシラン(c)またはこれらのオリゴマーを含む。
【0016】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(b)およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む。
【0017】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(c)およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む。
【0018】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(a)、シラン(b)、およびシラン(c)またはこれらのオリゴマーを含む。
【0019】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(a)、シラン(b)、およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む。
【0020】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(a)、シラン(c)、およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む。
【0021】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(b)、シラン(c)、およびシラン(d)またはこれらのオリゴマーを含む。
【0022】
1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(a)、シラン(b)、シラン(c)、およびシラン(d)の混合物またはオリゴマー、またはこれらのオリゴマーを含む。
【0023】
上述した実施形態のいずれかによる1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、シラン(a)~(d)の1つまたはより多くのオリゴマーの2つまたはより多くの混合物である。
【0024】
上述した実施形態のいずれかによる1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物は、(i)(a)~(d)のシランの1つまたはより多く、および(ii)シラン(a)~(d)の1つまたはより多くのオリゴマーを含む。
【0025】
上述した実施形態のいずれかによる1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物の式中、R3は-OR5;R8は-OR10;そしてR13は-OR15である。
【0026】
上述した実施形態のいずれかによる1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物の式中、X1、X2、X3、およびX4は独立してアルキル基、芳香族基、脂環式基、アルケニル基、アミノ基、アクリル基、アクリロキシ基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、ヒドロキシル基、またはエポキシ基から選択される。
【0027】
上述した実施形態のいずれかによる1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物の式中、X1、X2、X3、およびX4は独立してエポキシ基から選択される。
【0028】
上述した実施形態のいずれかによる1つの実施形態において、有機官能性シラン組成物の式中、X
1、X
2、X
3、およびX
4は独立して:
【化5】
【化6】
から選択される。
【0029】
上述した実施形態のいずれかによる1つの実施形態において、X1、X2、X3、およびX4は独立してC2~C20アルケニル基から選択される。
【0030】
上述した実施形態のいずれかによる1つの実施形態において、アルケニル基はビニル基であり、そしてa、b、c、d、m、n、o、およびpのそれぞれは0である。
【0031】
上述した実施形態のいずれかによる1つの実施形態において、(i)X1、X2、X3、およびX4はそれぞれビニル基でありa、b、c、d、m、n、o、およびpはそれぞれ0;(ii)X1、X2、X3、およびX4はそれぞれアミン基でありm、n、o、およびpはそれぞれ1、R4、R9、R14、およびR19はそれぞれC3の炭化水素、そしてa、b、c、およびdはそれぞれ0;(iii)X1、X2、X3、およびX4はそれぞれシアノ基でありm、n、o、およびpはそれぞれ1、R4、R9、R14、およびR19はそれぞれC3の炭化水素、そしてa、b、c、およびdはそれぞれ0;(iv)X1、X2、X3、およびX4はそれぞれチオール基でありm、n、o、およびpはそれぞれ1、R4、R9、R14、およびR19はそれぞれC3の炭化水素、そしてa、b、c、およびdはそれぞれ0;(v)X1、X2、X3、およびX4はそれぞれアクリロキシ基でありm、n、o、およびpはそれぞれ1、R4、R9、R14、およびR19はそれぞれC3の炭化水素、そしてa、b、c、およびdはそれぞれ0;(vi)X1、X2、X3、およびX4はそれぞれアクリルアミド基でありm、n、o、およびpはそれぞれ1、R4、R9、R14、およびR19はそれぞれC3の炭化水素、そしてa、b、c、およびdはそれぞれ0である。
【0032】
別の実施態様において提供されるのは、上述した実施形態のいずれかの有機官能性シラン組成物と、モノマーまたは官能性ポリマーのコポリマーである。
【0033】
別の実施態様において提供されるのは、上述した実施形態のいずれかによるシラン組成物またはコポリマーを含むエマルジョンである。
【0034】
さらに別の実施態様において提供されるのは、上述した実施形態のいずれかによるシラン組成物を含むコーティング、接着剤、またはシーラントの組成物である。
【0035】
1つの実施形態において、コーティング、接着剤、またはシーラントは、上述した実施形態のいずれかによるシラン組成物から本質的になる。
【0036】
1つの実施形態において、コーティング、接着剤、またはシーラントの組成物は、水性組成物である。
【0037】
1つの実施形態において、コーティング、接着剤、またはシーラントの組成物は、溶媒系組成物である。
【0038】
1つの実施形態において、コーティング、接着剤、またはシーラントはエマルジョンである。
【0039】
さらなる実施態様において提供されるのは、上述した実施形態のいずれかによる組成物でコーティングされた基材である。
【0040】
なお別のさらなる実施態様において提供されるのは、オリゴマーの合成プロセスであり、このプロセスは、式(a)を有するシラン、式(b)を有するシラン、式(c)を有するシラン、および式(d)を有するシラン、またはこれらのオリゴマーからなる群より選択される少なくとも2つのシランを反応させることを含んでいる。
(a)式(I)のシラン:
【化7】
式中R
1およびR
2はそれぞれ独立して1価のC1~C2炭化水素から選択され;R
3はC1~C10のアルキルまたは-OR
5であり、ここでR
5はC1~C2炭化水素;R
4はC2~C60の2価の炭化水素;mは0または1の整数;そしてaは0または1である;
(b)式(II)のシラン:
【化8】
式中R
6は1価のC1~C2炭化水素から選択され;R
7はC3~C20の1価の炭化水素;R
8はC1~C10のアルキルまたは-OR
10であり、ここでR
10はC1~C2炭化水素;R
9は2価のC2~C60炭化水素;nは0または1の整数;そしてbは0または1である;
(c)式(III)のシラン:
【化9】
式中R
11およびR
12はそれぞれ独立して1価のC3~C20炭化水素から選択され;R
13はC1~C10のアルキルまたは-OR
15であり、ここでR
15は1価のC1~C2炭化水素;R
14は2価のC2~C60炭化水素;oは0または1の整数;そしてcは0または1である;および
(d)式(IV)のシラン:
【化10】
式中R
16、R
17、およびR
18はそれぞれ独立して1価のC3~C20炭化水素から選択され;R
19は2価のC2~C60炭化水素から選択され;pは0または1の整数;そしてdは0または1であり;並びに
X
1、X
2、X
3、およびX
4はそれぞれ独立してアルキル基、芳香族基、脂環式基、アルケニル基、アミノ基、アクリル基、アクリロキシ基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、ヒドロキシル基、またはエポキシ基から選択される。
【0041】
1つの実施形態において提供されるのは、このプロセスによって合成されるオリゴマーである。
【0042】
1つの実施形態において提供されるのは、このプロセスによって合成される1つまたはより多くのオリゴマーの混合物を含む組成物である。
【0043】
1つの実施形態において提供されるのは、(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1つのシランと、上述した実施形態のプロセスにより合成された少なくとも1つのオリゴマーの混合物を含む組成物である。
【0044】
1つの実施態様において提供されるのは、上述した実施形態のいずれかの組成物を基材の少なくとも1つの表面に適用することを含む、基材をコーティングするためのプロセスである。1つの実施形態において提供されるのは、このプロセスによって調製されたコーティングされた基材である。
【0045】
1つの実施態様において提供されるのは、フィルムまたは物品を調製するためのプロセスであり、このプロセスは上述した実施形態のいずれかによる組成物を、触媒、水分、または放射線で合体または接触させることを含む。
【0046】
1つの実施態様において提供されるのは、フィルムまたは物品を調製するためのプロセスであり、このプロセスは上述した実施形態のいずれかによる組成物を硬化条件に曝露することを含む。1つの実施形態において、硬化条件は硬化pHまたは硬化温度である。1つの実施形態において提供されるのは、このプロセスによって調製された硬化フィルムまたは硬化物品である。
【0047】
1つの実施態様において提供されるのは、上述した実施形態のいずれかの組成物から形成された硬化フィルムまたは硬化物品である。
【0048】
1つの実施態様において提供されるのは、上述した実施形態のいずれかによる有機官能性シラン組成物を製造するためのプロセスであり、このプロセスは:
(a)エステル交換触媒とエステル交換可能なアルコキシシランを組み合わせてその混合物を提供し;
(b)工程(a)からの混合物にエステル交換用アルコールを添加して、混合物をエステル交換反応条件に置き;
(c)工程(b)の前および/または間に、工程(a)の混合物に対してエステル交換用アルコールを添加してエステル交換反応媒体を提供し、それによってエステル交換を開始してアルコキシシランエステル交換反応生成物を製造し;
(d)任意選択的に、エステル交換反応媒体のエステル交換触媒を不活性化して、アルコキシシランエステル交換反応生成物を含有する触媒欠乏エステル交換反応媒体を提供し;
(e)任意選択的に、エステル交換に際して形成された副生アルコールをエステル交換反応媒体から除去し;そして
(f)任意選択的に、アルコキシシランエステル交換反応生成物を工程(d)のエステル交換触媒欠乏エステル交換反応媒体から分離することを含んでいる。
【0049】
以下の説明および図面は、種々の例示的な実施態様を開示している。幾つかの改良点および新規な実施態様は明示的に識別されていてよく、その他は説明および図面から明らかであってよい。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下では例示的な実施形態を参照するものとし、その例は添付図面に示されている。理解されるように、他の実施形態も用いられてよく、構造的および機能的な変更が行われてよい。さらにまた、種々の実施形態の特徴を組み合わせたり、変更したりしてよい。よって、以下の説明は例示としてのみ提示されるものであり、説明される実施形態に対して行われてよい種々の変更および修正をいかなる意味でも限定するものではない。本開示においては、多くの具体的な詳細事項が本開示の主題の完全な理解をもたらす。理解されねばならないが、本開示の実施態様は、本願に記載したすべての実施態様を必ずしも含むことなしに、他の実施形態について実施されてよい。
【0051】
本願で使用するところでは、「例」または「例示的」という用語は、事例または実例を意味している。「例」または「例示的」という用語は、重要なまたは好ましい実施態様または実施形態であることを示すものではない。「または」という用語は、文脈が特段示唆しない限り、排他的ではなく包括的であることを意図している。例えば、「AはBまたはCを用いる」という言い回しは、すべての包括的な置き換えを含んでいる(例えば、AはBを用いる;AはCを用いる;またはAはBおよびCの両方を用いる)。別の事項として、冠詞「ある」および「1つの」は一般に、文脈が特段示唆しない限り「1つまたはより多く」を意味することを意図している。
【0052】
特許請求の範囲を含めて本明細書において使用されるところでは、単数形「ある」、「1つの」、および「その」は、文脈が明らかに他を示していない限りは複数形を含み、また特定の数値に対する言及は、少なくともその特定の数値を含んでいる。
【0053】
本願において範囲は、「約」または「大体」である1つの特定の値から、および/または「約」または「大体」である別の特定の値までとして表される。こうした範囲が表された場合、別の実施形態もその1つの特定の値から、および/または別の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用することによって値が近似として表された場合、その特定の値は別の実施形態を形成することが理解されよう。
【0054】
理解されるように、本願において記載される任意の数値範囲は、その範囲内のすべての部分範囲、およびそうした範囲または部分範囲の種々の端点の任意の組み合わせを含んでいる。加えて、ある所与の成分についての数値を組み合わせて、新たな特定されていない範囲を形成することができる。
【0055】
さらに理解されるように、構造的、組成的、および/または機能的に関連した化合物、材料または物質の群に属するものとして明示的または暗示的に明細書に開示され、および/または特許請求の範囲に記載された任意の化合物、材料または物質は、その群の個々の代表例およびそれらのすべての組み合わせを含んでいる。
【0056】
「炭化水素ラジカル」という表現は、1つまたはより多くの水素原子が取り除かれた任意の炭化水素基を意味しており、アルキル、アルケニル、アルキニル、環状アルキル、環状アルケニル、環状アルキニル、アリール、アラルキルおよびアレーニルを包含しており、またヘテロ原子を含んでいてよい。
【0057】
用語「アルキル」は、任意の1価の、飽和した直鎖、分岐鎖、または環状の炭化水素基を意味する。アルキルの例には、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルその他が含まれる。
【0058】
用語「環状アルキル」は2環状構造、3環状構造、および高次の環状構造、並びにこれらの環状構造であってさらにアルキル基、アルケニル基、および/またはアルキニル基で置換されたものを含んでいる。代表的な例には、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、シクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニル、シクロヘキシルシクロヘキシル、およびシクロドデカトリエニルが含まれる。
【0059】
3つまたはより多くの炭素原子の炭化水素基またはアルキル基は、こうした化合物の直鎖または分岐鎖構造を含んでいる。
【0060】
提供されるのは、有機官能性アルコキシシラン組成物である。この官能性アルコキシシラン組成物は、2つまたはより多くの官能性アルコキシシランを含み、そこにおいて官能性アルコキシシランの少なくとも1つは、炭素原子が3つまたはより多くの炭素原子であるアルキル基を備えた1つまたはより多くのアルコキシ基を有する。より大きなアルキル基を有するアルコキシシランを含む、異なる有機官能性アルコキシシランの混合物を備えた組成物は、限定するものではないが、塗料組成物のようなコーティング組成物に対して、改善された摩耗特性をもたらすことが見出されている。
【0061】
本組成物は、有機官能性アルコキシシランモノマー、有機官能性アルコキシシランモノマーのオリゴマー、または有機官能性アルコキシシランモノマー(単数または複数)と有機官能性アルコキシシランモノマーのオリゴマーの混合物を含む。1つの実施形態において、有機官能性アルコキシシラン組成物は、(i)ケイ素原子に結合した有機官能基および2つまたはより多くのアルコキシ基を含み、ここで少なくとも2つのアルコキシ基が低級炭素アルコキシ基(例えば、メトキシおよび/またはエトキシ)である有機官能性アルコキシシラン;および(ii)ケイ素原子に結合した有機官能基およびケイ素原子に結合した1つまたはより多くのアルコキシ基を含み、少なくとも1つのアルコキシ基が高級炭素アルコキシ基(例えば、3つまたはより多くの炭化水素のアルコキシ基)を備えたアルコキシ基を有する有機官能性アルコキシシラン、または(i)および(ii)のオリゴマーを含む。
【0062】
シランモノマーは、ケイ素原子に結合した有機官能基を含んでいる。この有機官能基は、反応性有機基または非反応性有機基から選択することができる。適切な有機官能基の例には、限定するものではないが、アルキル基、芳香族基、脂環式基、アルケニル基、アミノ基、アクリル基、アクリロキシ基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、ヒドロキシル基、チオ基、アクリルアミド基、またはエポキシ基などが含まれる。
【0063】
1つの実施形態において、有機官能性シランは、エポキシ基を含むエポキシ官能性シランである。このエポキシ基は特に制限されず、例えばグリシジル基またはグリシドキシ基から選択することができる。エポキシ官能基は一般に、アルコキシシラン中のケイ素原子に対して、任意選択的にヘテロ原子を含むC1からC60のアルキル基のような連結基を介して結合されている。1つの実施形態において、エポキシ官能基はグリシジルアルキル基である。1つの実施形態において、エポキシ官能基はグリシドキシアルキル官能基である。グリシドキシアルキル官能基は、ケイ素原子に結合された基であるエポキシ-(CH2-O)-アルキル-を含んでいる。
【0064】
1つの実施形態において、エポキシ基は:
【化11】
【化12】
である。
【0065】
有機官能性シランはエポキシアルコキシシランであることができ、これはエポキシ官能性トリアルコキシシランまたはエポキシ官能性ジアルコキシシランであることができる。
【0066】
1つの実施形態において、有機官能性シランはアルキル基を含むアルキル官能性シランである。アルキル基は、C1~C10アルキル、C2~C8アルキル、またはC4~C6アルキルから選択することができる。このアルキル基は、直鎖または分岐鎖であってよい。適切なアルキル基の例には、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、またはデシルが含まれる。
【0067】
1つの実施形態において、有機官能性シランは芳香族基を含む。芳香族基は、C6~C30芳香族基から選択することができる。芳香族基は置換または未置換であることができる。芳香族基は1つまたはより多くの芳香族環を含むことができる。2つまたはより多くの芳香族環を含む芳香族基は、環が結合によって接合されているもの、連結基によって接合されているもの、または融合しているものであることができる。適切な芳香族基の例には、限定するものではないが、フェニル、トシル、キシリル、およびその他が含まれる。
【0068】
1つの実施形態において、有機官能性シランは脂環式基を含む。脂環式基は、C3~C30シクロアルキル基、C3~C30シクロアルケニル基、またはC3~C30シクロアルキニル基から選択することができる。
【0069】
1つの実施形態において、有機官能性シランはアルケニル基を含む。アルケニル基は、1つまたはより多くの不飽和炭素-炭素結合をを含むC2~C20アルケニルから選択することができる。1つの実施形態において、アルケニル基はビニル基(H2C=CH-)またはアリル基(H2C=CH-CH2-)から選ばれる。
【0070】
1つの実施形態において、有機官能基はアミノ基から選択される。アミノ基は-NH2、-N(R)H、または-N(R’)(R”)から選択することができ、式中R、R’、およびR”はC1~C10アルキル基から選択される有機基である。
【0071】
1つの実施形態において、有機官能基はアミド基から選択される。アミド基は、式-C(O)-NH2、-C(O)-NH-R’および3級アミド基の群から選択することができ、3級アミド基は構造式-C(O)-NR’R”によって表されてよく、式中R’およびR”はC1~C10アルキル基から選択される有機基である。
【0072】
1つの実施形態において、有機官能基はアクリロキシ基から選択される。アクリロキシという用語は、メタクリロキシ基を含んでよい。こうした基は、CH2=CRC(O)-によって表すことができ、式中RはHまたはCH3である。同様に、用語「(メタ)アクリロキシ」は、アクリロキシ、メタクリロキシ、またはこれらの任意の組み合わせを示し;用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの任意の組み合わせを示し;用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、またはこれらの任意の組み合わせを示し;そして用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド、メタクリルアミド、またはこれらの任意の組み合わせを示す。
【0073】
1つの実施形態において、有機官能性アルコキシシラン組成物は、シランモノマーまたは1つまたはより多くのシランモノマーのオリゴマーを含み、これらは以下から選択される:
(a)式(I)のシラン:
【化13】
式中R
1およびR
2はそれぞれ独立して1価のC1~C2炭化水素から選択され;R
3はC1~C10のアルキルまたは-OR
5であり、ここでR
5はC1~C2炭化水素;R
4はC2~C60の2価の炭化水素;X
1はアルキル基、芳香族基、脂環式基、アルケニル基、アミノ基、アクリル基、アクリロキシ基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、ヒドロキシル基、チオ基、アクリルアミド基、またはエポキシ基から選択され;mは0または1の整数;そしてaは0または1である;
(b)式(II)のシラン:
【化14】
(II)
式中R
6は1価のC1~C2炭化水素から選択され;R
7はC3~C20の1価の炭化水素;R
8はC1~C10のアルキルまたは-OR
10であり、ここでR
10はC1~C2炭化水素;R
9は2価のC2~C60炭化水素;X
2はアルキル基、芳香族基、脂環式基、アルケニル基、アミノ基、アクリル基、アクリロキシ基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、ヒドロキシル基、チオ基、アクリルアミド基、またはエポキシ基から選択され;nは0または1の整数;そしてbは0または1である;
(c)式(III)のシラン:
【化15】
式中R
11およびR
12はそれぞれ独立して1価のC3~C20炭化水素から選択され;R
13はC1~C10のアルキルまたは-OR
15であり、ここでR
15は1価のC1~C2炭化水素;R
14は2価のC2~C60炭化水素;X
3はアルキル基、芳香族基、脂環式基、アルケニル基、アミノ基、アクリル基、アクリロキシ基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、ヒドロキシル基、チオ基、アクリルアミド基、またはエポキシ基から選択され;oは0または1の整数;そしてcは0または1である;および
(d)式(IV)のシラン:
【化16】
式中R
16、R
17、およびR
18はそれぞれ独立して1価のC3~C20炭化水素から選択され;R
19は2価のC2~C60炭化水素から選択され;X
4はアルキル基、芳香族基、脂環式基、アルケニル基、アミノ基、アクリル基、アクリロキシ基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、ヒドロキシル基、チオ基、アクリルアミド基、またはエポキシ基から選択され;pは0または1の整数;そしてdは0または1である。
【0074】
X1、X2、X3、およびX4は同一でも異なっていてもよい。これらは全く同一の基であることができる。これらは化合物の同一の包括的なカテゴリーから選択することができるが、そのカテゴリー内の異なる種であることができる。さらに別の実施形態においては、これらは異なるカテゴリーの基である。
【0075】
1つの実施形態において、X
1、X
2、X
3、およびX
4はそれぞれ独立してエポキシ官能基である。1つの実施形態において、m、n、o、およびpはそれぞれ1であり、そしてR
4、R
9、R
14、およびR
19のそれぞれはC3炭化水素であり;a、b、c、およびdはそれぞれ1;そしてエポキシ基は
【化17】
である。
別の実施形態において、m、n、o、およびpはそれぞれ1であり、そしてR
4、R
9、R
14、およびR
19はそれぞれC2炭化水素;a、b、c、およびdはそれぞれ0;そしてエポキシ基は
【化18】
である。
【0076】
1つの実施形態において、X1、X2、X3、およびX4は独立してアルケニル基から選択され、m、n、o、およびpはそれぞれ0、そしてa、b、c、およびdはそれぞれ0である。1つの実施形態において、X1、X2、X3、およびX4はそれぞれビニルであり、そしてa、b、c、d、m、n、o、およびpはそれぞれ0である。1つの実施形態において、X1、X2、X3、およびX4はそれぞれアミン基であり、そしてm、n、o、およびpはそれぞれ1であり、R4、R9、R14、およびR19はそれぞれC3炭化水素であり、またa、b、c、およびdはそれぞれ0である。1つの実施形態において、X1、X2、X3、およびX4はそれぞれシアノ基であり、そしてm、n、o、およびpはそれぞれ1、R4、R9、R14、およびR19はそれぞれC3炭化水素、そしてa、b、c、およびdはそれぞれ0である。1つの実施形態において、X1、X2、X3、およびX4はそれぞれチオール基であり、m、n、o、およびpはそれぞれ1、R4、R9、R14、およびR19はそれぞれC3炭化水素、そしてa、b、c、およびdはそれぞれ0である。1つの実施形態において、X1、X2、X3、およびX4はそれぞれアクリロキシ基であり、m、n、o、およびpはそれぞれ1、R4、R9、R14、およびR19はそれぞれC3炭化水素、そしてa、b、c、およびdはそれぞれ0である。1つの実施形態において、X1、X2、X3、およびX4はそれぞれアクリルアミド基であり、m、n、o、およびpはそれぞれ1、R4、R9、R14、およびR19はそれぞれC3炭化水素、そしてa、b、c、およびdはそれぞれ0である。
【0077】
1つの実施形態においては、シラン(a)におけるaは0、そしてR4はC2~C10アルキル、C3~C8アルキル、またはC4~C6アルキルである。1つの実施形態において、aは1、そしてR4はC2~C10アルキル、C3~C8アルキルまたはC4~C6アルキルである。1つの実施形態において、aは1、そしてR4はプロピルまたはイソプロピルから選ばれるC3の2価アルキルである。R1、R2、およびR3は同一でも異なっていてもよい。1つの実施形態において、R1、R2、およびR3はそれぞれメチルである。1つの実施形態において、R1、R2、およびR3のそれぞれはエチルである。
【0078】
シラン(b)は、3つまたはより多くの炭素原子を有するアルコキシ基を含んでいる。1つの実施形態において、R7は直鎖、分岐鎖、または環状アルキル基から選択されるC3~C20炭化水素である。1つの実施形態において、R7はC3~C10炭化水素、C4~C8炭化水素、またはC5~C6炭化水素である。1つの実施形態において、R7は、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルから選ばれる。シラン(b)の実施形態において、bは0である。別の実施形態において、bは1、R9はC3~C10の2価の炭化水素であり、また1つの実施形態においてはC3の2価の炭化水素である。実施形態において、R8は-OR10、そしてR6およびR10は同一でも異なっていてもよい。1つの実施形態において、R6およびR10はそれぞれメチルである。1つの実施形態において、R6およびR10はそれぞれエチルである。
【0079】
シラン(c)は、3つまたはより多くの炭素原子を有する2つのアルコキシ基を含んでいる。1つの実施形態において、R11およびR12はそれぞれ独立してC3~C20炭化水素から選択される。このC3~C20炭化水素は、直鎖、分岐鎖、または環状アルキル基から選ばれることができる。R11およびR12は同一でもよく、相互に異なっていてもよい。1つの実施形態において、R11およびR12は同一である。1つの実施形態において、R11およびR12は異なっている。1つの実施形態において、R11およびR12はそれぞれ独立して、C3~C10炭化水素、C4~C8炭化水素、またはC5~C6炭化水素から選ばれる。1つの実施形態において、R11およびR12はそれぞれ独立して、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルから選ばれる。1つの実施形態において、R13は-OR15、そしてR15はメチルである。1つの実施形態において、R15はエチルである。シラン(c)の実施形態において、cは0である。他の実施形態において、cは1、そしてR14はC3~C10の2価の炭化水素であり、また1つの実施形態においてC3の2価の炭化水素である。
【0080】
シラン(d)は、3つまたはより多くの炭素原子を有する3つのアルコキシ基を含んでいる。1つの実施形態において、R13、R14、およびR15はそれぞれ独立してC3~C20炭化水素から選択される。このC3~C20炭化水素は、直鎖、分岐鎖、または環状アルキル基から選ばれることができる。R13、R14、およびR15は同一でもよく、相互に異なっていてもよい。1つの実施形態において、R13、R14、およびR15は同一である。1つの実施形態において、R13、R14、およびR15は異なっている。1つの実施形態において、R13、R14、およびR15はそれぞれ独立してC3~C10炭化水素、C4~C8炭化水素、またはC5~C6炭化水素から選ばれる。1つの実施形態において、R13、R14、およびR15はそれぞれ独立して、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルから選ばれる。シラン(d)の実施形態において、dは0である。他の実施形態において、dは1、そしてR16はC3~C10の2価の炭化水素、また1つの実施形態においてはC3の2価の炭化水素である。
【0081】
シラン組成物は、2つまたはより多くの官能性アルコキシシランであって、そのうち少なくとも1つの官能性アルコキシシランが3つまたはより多くの炭素原子を有するアルコキシ基を有するもの、またはこうした官能性アルコキシシランモノマーのオリゴマーを含んでいる。1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(a)および/またはシラン(b)の少なくとも1つ、およびシラン(c)および/またはシラン(d)の少なくとも1つを含む。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、シラン(a)および/またはシラン(b)の幾らかを有することは、それらがより加水分解性であることから利点があり、また高級炭素アルコキシ基を有するシラン(c)および(d)は、シラン組成物を含むコーティング組成物に対して、改善された摩耗性または耐スクラブ性をもたらすことが見出されている。
【0082】
1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(a)およびシラン(b)を含んでいる。シラン組成物の全モル量に基づいて、シラン(a)は約0.1モル%から約99.9モル%、約1モル%から約50モル%、または約5モル%から約10モル%の量で存在することができ、そしてシラン(b)は約0.1モル%から約99.9モル%、約5モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができる。
【0083】
1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(a)およびシラン(c)を含んでいる。シラン組成物の全モル量に基づいて、シラン(a)は約0.1モル%から約99.9モル%、約1モル%から約50モル%、または約5モル%から約10モル%の量で存在することができ、そしてシラン(c)は約0.1モル%から約99.9モル%、約10モル%から約90モル%、または約30モル%から約80モル%の量で存在することができる。
【0084】
1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(a)およびシラン(d)を含んでいる。シラン組成物の全モル量に基づいて、シラン(a)は約0.1モル%から約99.9モル%、約1モル%から約50モル%、または約5モル%から約10モル%の量で存在することができ、そしてシラン(d)は約0.1モル%から約99.9モル%、約1モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができる。
【0085】
1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(b)およびシラン(c)を含んでいる。シラン組成物の全モル量に基づいて、シラン(b)は約0.1モル%から約99.9モル%、約5モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができ、そしてシラン(c)は約0.1モル%から約99.9モル%、約10モル%から約90モル%、または約30モル%から約80モル%の量で存在することができる。
【0086】
1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(b)およびシラン(d)を含んでいる。シラン組成物の全重量に基づいて、シラン(b)は約0.1モル%から約99.9モル%、約5モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができ、そしてシラン(d)は約0.1モル%から約99.9モル%、約1モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができる。
【0087】
1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(a)、シラン(b)、およびシラン(c)を含んでいる。シラン組成物の全モル量に基づいて、シラン(a)は約0.1モル%から約99.8モル%、約1モル%から約50モル%、または約3モル%から約10モル%の量で存在することができ、シラン(b)は約0.1モル%から約99.8モル%、約5モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができ、そしてシラン(c)は約0.1モル%から約99.8モル%、約10モル%から約90モル%、または約30モル%から約80モル%の量で存在することができる。
【0088】
1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(a)、シラン(b)、およびシラン(d)を含んでいる。シラン組成物の全モル量に基づいて、シラン(a)は約0.1モル%から約99.8モル%、約1モル%から約50モル%、または約3モル%から約10モル%の量で存在することができ、シラン(b)は約0.1モル%から約99.8モル%、約5モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができ、そしてシラン(d)は約0.1モル%から約99.8モル%、約1モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができる。
【0089】
1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(a)、シラン(c)、およびシラン(d)を含んでいる。シラン組成物の全モル量に基づいて、シラン(a)は約0.1モル%から約99.8モル%、約1モル%から約50モル%、または約3モル%から約10モル%の量で存在することができ、シラン(c)は約0.1モル%から約99.8モル%、約10モル%から約90モル%、または約30モル%から約80モル%の量で存在することができ、そしてシラン(d)は約0.1モル%から約99.8モル%、約1モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができる。
【0090】
1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(b)、シラン(c)、およびシラン(d)を含んでいる。シラン組成物の全モル量に基づいて、シラン(b)は約0.1モル%から約99.8モル%、約5モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができ、シラン(c)は約0.1モル%から約99.8モル%、約10モル%から約90モル%、または約30モル%から約80モル%の量で存在することができ、そしてシラン(d)は約0.1モル%から約99.8モル%、約1モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができる。
【0091】
1つの実施形態において、シラン組成物はシラン(a)、シラン(b)、シラン(c)、およびシラン(d)を含んでいる。シラン組成物の全モル量に基づいて、シラン(a)は約0.1モル%から約99.7モル%、約0.5モル%から約50モル%、または約1モル%から約10モル%の量で存在することができ;シラン(b)は約0.1モル%から約99.7モル%、約5モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができ;シラン(c)は約0.1モル%から約99.7モル%、約10モル%から約90モル%、または約30モル%から約80モル%の量で存在することができ;そしてシラン(d)は約0.1モル%から約99.7モル%、約1モル%から約80モル%、または約10モル%から約60モル%の量で存在することができる。
【0092】
技術分野の当業者に理解されるように、組成物中のそれぞれの官能性アルコキシシランモノマーの量の合計は100モル%である。而して、組成物中のそれぞれの成分について記載される範囲の種々の端点の合計は100%未満または100%超となりうるが、モノマーの合計量(モノマーとして表された場合)は100%である。
【0093】
1つの実施形態において、組成物は、モノマー(a)、(b)、(c)、および(d)の1つまたはより多くから形成されたオリゴマーを含んでいてよい。すなわち、オリゴマーはホモオリゴマーまたはコオリゴマーであることができる。1つの実施形態において、組成物は、モノマー(a)、(b)、(c)、および(d)の2つまたはより多くから形成されたオリゴマーから本質的になる。1つの実施形態において、組成物は、(i)個別のモノマー(a)、(b)、(c)、および(d)の1つまたはより多くの混合物;および(ii)モノマー(a)、(b)、(c)、および/または(d)の1つまたはより多くから形成された1つまたはより多くのオリゴマーを含んでいる。
【0094】
シランモノマーの混合物を含むシラン組成物は:(a)エステル交換触媒とエステル交換可能なアルコキシシランを組み合わせてその混合物を提供し;(b)工程(a)からの混合物にエステル交換用アルコールを添加して、混合物をエステル交換反応条件に置き;(c)工程(b)の前および/または間に、工程(a)の混合物に対してエステル交換用アルコールを添加してエステル交換反応媒体を提供し、それによってエステル交換を開始してアルコキシシランエステル交換反応生成物を製造し;(d)エステル交換反応媒体のエステル交換触媒を不活性化して、アルコキシシランエステル交換反応生成物を含有する触媒欠乏エステル交換反応媒体を提供し;そして(e)任意選択的に、エステル交換に際して形成された副生アルコールをエステル交換反応媒体から除去し;および(f)アルコキシシランエステル交換反応生成物を工程(d)のエステル交換触媒欠乏エステル交換反応媒体から分離することを含む、エステル交換反応によって調製されてよい。
【0095】
実施形態におけるエステル交換可能なアルコキシシランは、低級炭素アルコキシ基を有する有機官能性シランから選択される。而して実施形態において、エステル交換可能なアルコキシシランは、有機官能性トリメトキシシラン、有機官能性トリエトキシシラン、有機官能性ジメトキシエトキシシラン、または有機官能性ジエトキシメトキシシランである。1つの実施形態において、エステル交換可能なアルコキシシランは実施形態において低級炭素アルコキシ基を有するエポキシ官能性シランから選択される。而して実施形態において、エステル交換可能なアルコキシシランは、エポキシ官能性トリメトキシシラン、エポキシ官能性トリエトキシシラン、エポキシ官能性ジメトキシエトキシシラン、またはエポキシ官能性ジエトキシメトキシシランである。
【0096】
実施形態におけるエステル交換用アルコールは、高級炭化水素アルコール、例えば3つまたはより多くの炭素原子を含むアルコールから選択される。エステル交換用アルコールは、所望の高級炭素アルコキシ基をもたらすように、所望に応じて選択することができる。適切なエステル交換用アルコールの例には、限定するものではないが、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコールその他が含まれる。
【0097】
適切なエステル交換触媒の例には、限定するものではないが、チタンイソプロポキシド1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)が含まれる。
【0098】
上述したように、エステル交換したシランの調製は、(a)金属/非金属触媒、(b)アルコールの種類-分岐鎖/直鎖その他、(c)プロセスの種類:バッチ式、半バッチ式または連続的なIPAの添加、(d)触媒の不活性化を行う/行わない、(e)アルコール副生物(単数または複数)の除去を行う/行わない、(f)生成物の精製を行う/行わない、および(g)出発物質の除去の任意選択的な選択その他といった、多くの異なる有用なパラメータの組み合わせによって達成することができる。有機官能性アルコキシシランのオリゴマーは、触媒の存在下に有機官能性アルコキシシランモノマーの混合物を加熱することによって調製することができる。
【0099】
1つの実施形態において、有機官能性アルコキシシラン組成物は、組成物中のシランがコポリマーを形成するように、1つまたはより多くのモノマーまたは官能性ポリマーと反応させることができる。モノマーは、特定の目的または意図する用途に望ましいように選択することができる。適切なモノマーの例には、限定するものではないが、エチレン性不飽和モノマー、アクリレートモノマー、その他が含まれる。幾つかの適切なアクリレートモノマーには、限定するものではないが、アクリロニトリル、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ジアミノエチルアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-ヒドロキシルプロピルアクリレート、2-ヒドロキシルプロピルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルアクリレートおよびその他が含まれる。エチレン性不飽和モノマーの例には、限定するものではないが、スチレン、ジビニルベンゼン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルラクタム、ハロゲン化ビニル、ビニルアセテート、ビニルアルコール、アリルアルコール、アリルポリエーテル、およびチオールが含まれる。
【0100】
シラン組成物は、単独で、または組成物の添加剤として、種々の用途に有用である。シラン組成物は、コーティング、シーラント、接着剤その他として用いることができる。シラン組成物それ自体を、コーティング、シーラント、接着剤その他として用いることができ、或いはシラン組成物をコーティング組成物、シーラント組成物、または接着剤組成物の成分とすることができる。1つの実施形態においては、シラン組成物それ自体がコーティング組成物として提供され、基材上にコーティングを形成するために用いられ、または表面処理のために使用される。1つの実施形態においては、シラン組成物は適切な界面活性剤で乳化され、せん断されて水中で分散/乳化され、その後それ自体で、またはコーティング、シーラントまたは接着剤の組成物の成分として使用される。
【0101】
1つの実施形態において、有機モノマーに対するシラン組成物の反応は、バッチプロセスまたは半連続もしくはシード法やフィード法のような連続プロセスといった、乳化重合法を使用して実行することができる。この重合法は1つの開始剤を利用し、これはパーオキシド開始剤、レドックス開始剤、またはマクロ開始剤であることができる。少なくとも1つの乳化剤を使用することが可能であり、これはアニオン性、カチオン性、またはノニオン性であってよい。反応性または重合性の開始剤が存在していてもよい。慣用的に乳化重合において添加されているさらなる添加剤を添加することもできる。
【0102】
コーティング、シーラントまたは接着剤の組成物は、ベースとなる組成物に応じて、任意の適切な方法によって形成することができる。コーティング、シーラントまたは接着剤の形成は、温度(例えば、加熱して反応を促進し溶媒を飛ばす)、水分硬化、触媒硬化、UV照射、その他によって行うことができる。技術分野の当業者は、ベースとなる組成物に応じて、適切な硬化モードを決定することができる。
【0103】
コーティング、シーラントまたは接着剤は、特定の目的または意図する用途に対し、所望に応じて任意の他の適切な添加剤を含むことができる。適切な添加剤の例には、限定するものではないが、バインダー、顔料、フィラー、硬化触媒、染料、可塑剤、増粘剤、カップリング剤、増量剤、分散剤、界面活性剤、グリコール、凝集剤、他のシラン、シリコーン、架橋剤、硬化剤、接着促進剤、粘着付与剤、酸化防止剤、UV安定剤、その他が含まれる。適切なフィラーには、限定するものではないが、例えば、白亜、石灰粉、沈降シリカおよび/または熱分解法シリカ、ケイ酸アルミニウム、粉砕鉱物などの無機化合物、および技術分野の当業者に知られた他の無機フィラーが含まれる。加えて、有機フィラー、特に短いステープルファイバーなども使用されてよい。所望とするチキソトロピー性を付与するフィラー、例えば膨潤性ポリマーもまた、所定の用途に対して用いられてよい。
【0104】
1つの実施形態において、シラン組成物はコーティング組成物の添加剤として有用である。1つの実施形態において提供されるのは、(i)ベースコーティング組成物、および(ii)有機官能性アルコキシシランの混合物を含むシラン組成物を含む、コーティング組成物である。有機官能性アルコキシシランの混合物を含むシラン組成物はコーティング組成物中に、コーティング組成物の合計重量に基づいて約0.001重量%から約10重量%、約0.1重量%から約7.5重量%、約0.5重量%から約5重量%、または約1重量%から約2.5重量%の量で存在することができる。1つの実施形態において、本シラン組成物は、約0.1重量%から約1重量%の量で存在する。ベースコーティング組成物は、コーティングを形成するのに適した残りの材料を含んでおり、約90重量%から約99.95重量%、約92.5重量%から約99.9重量%、約95重量%から約99.5重量%、または約97.5重量%から約99重量%の量で存在することができる。
【0105】
ベースコーティング組成物は一般に限定されたものではなく、特定の目的または意図する用途に対して、所望に応じて選択することができる。ベースコーティングは、水性または溶媒性組成物であることができる。
【0106】
1つの実施形態において、コーティング組成物はさらに、在来のラテックス塗料配合物であることができる。一般に、在来のラテックス塗料は2つの相、外部相と内部相とを含んでいる。外部相は水であり、その中には、湿潤剤(界面活性剤または乳化剤)、分散剤、塗料のレオロジーやパッケージの安定性を制御するためのセルロース系増粘剤、塗布特性や温度感応性を制御するためのグリコール、および細菌の攻撃や腐敗から塗料を保護するための殺菌剤といった、添加剤が加えられている。在来のラテックス塗料の内部相は、有限の粒径内に分散された顔料およびラテックス粒子を含んでいる。
【0107】
組成物に用いられる乳化剤は特に限定されたものではなく、特定の目的または意図する用途に対して、所望に応じて選択することができる。乳化剤は、単一種の乳化剤であることができ、または乳化剤系として提供されてよい。水系についての乳化剤の例は米国特許第10,259,748に記載されており、これはその全体が参照によって本願に取り入れられる。この組成物に適した乳化剤(単独でまたは乳化剤系の一部として)は、限定するものではないが、C8~C18アルキル基を有するアルキル硫酸塩、疎水性ラジカルにC8~C18アルキル基を有し1から40のエチレンオキシド(EO)および/またはプロピレンオキシド(PO)単位を有するアルキル硫酸エーテルまたはアルカリール硫酸エーテル、C8~C18アルキル基を有するアルキルスルホネート、ラウリル硫酸ナトリウム(C12~C16)、C8~C18アルキル基を有するアルカリールスルホネート、スルホコハク酸と5から15の炭素原子を有する1価アルコールまたはアルキルフェノールとのモノエステル、アルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキルラジカルに8から20の炭素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、有機ラジカルに8から20の炭素原子を有するアルキルおよびアルカリールホスフェート、アルキルまたはアラルキルラジカルに8から20の炭素原子を有し、そして1から40のEO単位を有するアルキルエーテルまたはアルカリールエーテルホスフェート、8から40のEO単位を有しアルキルまたはアリールラジカルにC8~C20の炭素原子を有するアルキルポリグリコールエーテルおよびアルカリールポリグリコールエーテル、8から40のEOおよび/またはPO単位を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックコポリマー、C5~C22アルキルラジカルをエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと共に有するアルキルアミンの付加生成物、直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和C8~C24アルキルラジカルおよび1から10のヘキソースまたはペントース単位を有するオリゴグリコシドラジカルを有するアルキルポリグリコシド、ケイ素官能性の界面活性剤、またはこれらの乳化剤の混合物から選択することができる。
【0108】
コーティング組成物は、1つまたはより多くのフィラーを含むことができる。フィラーは特定の目的または意図する用途に対して、所望に応じて選択することができる。適切なフィラーの例には、限定するものではないが、長石のようなアルミノケイ酸塩;カオリンのようなケイ酸塩;タルク;マイカ;マグネサイト;例えば方解石またはチョークの形態の炭酸カルシウムのようなアルカリ土類炭酸塩;炭酸マグネシウム;ドロマイト;硫酸カルシウムのようなアルカリ土類硫酸塩;シリカその他が含まれる。
【0109】
コーティング組成物は、1つまたはより多くの顔料を含むことができる。顔料は、特定の目的または意図する用途に対して選択することができる。適切な顔料の例には、限定するものではないが、例えば二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、三酸化アンチモン、リトポン(硫化亜鉛+硫酸バリウム)、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、蓄光顔料、亜鉛黄、亜鉛緑、群青、マンガン黒、アンチモン黒、マンガンバイオレット、パリスブルーまたはシュヴァインフルトグリーンが含まれる。有機顔料のリストには、限定するものではないが、ブラックセピア、カンボギア、カッセラーブラウン、トルイジンレッド、パラロット、ハンザイエロー、インディゴ、アゾ染料、アントラキノイドおよびインジゴイド色素、ジオキサジン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリ含有非金属および金属錯体顔料が含まれる。
【0110】
別の実施形態において、本発明の組成物はさらに、本有機官能性シラン組成物のシランモノマー以外の1つまたはより多くの在来のオルガノシラン化合物を含むことができる。それらには、例えばシランオリゴマーが含まれうる。実施形態において、この追加的なシランは、ビニルシラン、アルキルシランまたはアルキレンシランのようなシランモノマーから選択することができる。非エポキシ系のシランモノマーの例には、限定するものではないが、ビニルトリメトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest登録商標A-171)、ビニルトリエトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest登録商標A-151)、ビニルメチルジメトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest登録商標A-2171)、ビニルトリイソプロポキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なCoatOSil登録商標1706)、n-オクチルトリエトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest登録商標A-137)、プロピルトリエトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest登録商標A-138)、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest登録商標A-1630)、メチルトリエトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest登録商標A-162)、ポリアルキレンオキシドトリメトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest登録商標A-1230)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest登録商標A-174)、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest登録商標Y-9936)、または3-メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なCoatOSil登録商標1757)が含まれる。
【0111】
別の実施形態によれば、本発明の有機官能性アルコキシシラン組成物は、水性ジンクリッチプライマーまたは保護コーティングシステム、金属系顔料ペースト分散物、金属系ペースト分散物とプライマー、コーティングまたはインク用の水性、ラテックスまたは分散物とのブレンド、水性保護コーティング、水性ショッププライマー、金属系顔料分散物および印刷インクまたはコーティングにおけるそれらの使用、水性ラテックス並びに限定するものではないがアニオン性およびカチオン性分散物、アクリル系、スチレンアクリル系、ポリウレタン系およびエポキシ系分散物などの分散物のための架橋剤、ビニル樹脂、上記したのと同様のシステムのための接着促進剤、金属系フィラーおよび顔料の分散物のための添加剤またはバインダーシステム、炭酸カルシウム、カオリン、クレイその他といった無機フィラーのための顔料分散物、亜鉛その他の金属系顔料を犠牲顔料として使用した水性保護コーティング、金属、プラスチックおよびその他の基材のための水性装飾塗料に使用することができる。
【0112】
別の実施形態によれば、本有機官能性アルコキシシラン組成物は、水性ジンクリッチプライマーまたは保護コーティングシステム、金属系顔料ペースト分散物、金属系ペースト分散物とプライマー、コーティングまたはインク用の水性、ラテックスまたは分散物とのブレンド、水性保護コーティング、水性ショッププライマー、金属系顔料分散物および印刷インクまたはコーティングにおけるそれらの使用、水性ラテックス並びに限定するものではないがアニオン性およびカチオン性分散物、アクリル系、スチレンアクリル系、ポリウレタン系およびエポキシ系分散物などの分散物のための架橋剤、ビニル樹脂、上記したのと同様のシステムのための接着促進剤、金属系フィラーおよび顔料の分散物のための添加剤またはバインダーシステム、炭酸カルシウム、カオリン、クレイその他といった無機フィラーのための顔料分散物、亜鉛その他の金属系顔料を犠牲顔料として使用した水性保護コーティング、金属、プラスチックおよびその他の基材のための水性装飾塗料に使用される。
【0113】
水性コーティングの水性媒体は、pH調節剤を含んでいてよい。pH調節剤は、限定するものではないが、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ホウ酸、オルトリン酸、酢酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸またはその他のカルボン酸であってよい。加えて、本発明の実施形態によれば、pH調節剤は水性媒体の約0.5から約4.0重量%の範囲の量で存在する。
【0114】
水性コーティングの水性媒体は共溶媒を含んでいてよい。共溶媒は、ジプロピレングリコールメチルエーテルであってよい。他の溶媒は、グリコールエーテル溶媒その他の1つまたはより多くの組み合わせを含んでいてよい。別の実施形態によれば、共溶媒はエチレングリコールモノメチルエーテル(EGE)、エチレングリコールモノエチルエーテル(EGEE)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(EGPE)、エチレングリコールモノブチルエーテル(EGBE)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(EGEA)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(EGHE)、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(EGEEHE)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(EGPhE)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(diEGE)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(diEGEE)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(diEGPE)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(diEGBE)、ブチルカルビトール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(diEGE)、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、またはエステル系溶媒である。別の実施形態によれば、エステル系溶媒は、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(EGEEA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(diEGEEA)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(diEGBEA)、n-プロピルアセテート、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテルアセテート、t-ブチルアセテートまたはアルコール系溶媒を含んでいる。さらに別の実施形態によれば、アルコール系溶媒はn-ブタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、またはエタノールであってよい。
【0115】
本発明の別の実施形態によれば、共溶媒は水性媒体の約0.1から約60重量%の範囲の量で存在する。
【0116】
水性コーティングの水性媒体は、界面活性剤を含んでいてよい。界面活性剤は、アルキルフェノールエトキシレート界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、またはポリエーテルシロキサン系の界面活性剤、或いはこれらの任意の組み合わせであってよい。本発明の実施形態によれば、界面活性剤は約5から約13の範囲にわたる親水性-親油性バランス(HLB)を有する。本発明の別の実施形態によれば、水性媒体は2つまたはより多くの界面活性剤を含み、そこにおいて界面活性剤のそれぞれは独立して約5から約15の範囲にわたるHLB値を有する。加えて界面活性剤は、水性媒体の約3から約6重量%の範囲にわたる量で存在してよい。本発明のさらに別の実施形態によれば、水性コーティングの水性媒体は、界面活性剤およびpH調節剤を含む。
【0117】
コーティング組成物の粒状金属は、一般に、微細分割されたアルミニウム、マンガン、カドミウム、ニッケル、ステンレス鋼、錫、マグネシウム、亜鉛、これらの合金または合金鉄のような任意の金属顔料であってよい。1つの実施形態において粒状金属は、粉末状またはペースト分散物状の亜鉛ダストまたは亜鉛フレーク或いはアルミニウムダストまたはアルミニウムフレークである。粒状金属はこれらの任意のものの混合物、並びにこれらの合金および金属間混合物を含んでいてよい。フレークは粉末状金属パウダーとブレンドされていてよいが、典型的にはパウダーの量はごくわずかである。金属粉末は典型的には、すべての粒子が100メッシュを通過し、量の大部分が325メッシュを通過するような粒径を有する(ここで使用する「メッシュ」は、米国の標準ふるい系列である)。粉末は一般に、フレークが箔状であるのとは異なり、球形である。
【0118】
1つの実施形態において、金属粒子はアルミニウムと亜鉛の組み合わせである。金属粒子が亜鉛とアルミニウムの組み合わせである場合、アルミニウムは例えば、最小で粒状金属の約2から約5重量%といった非常に僅かな量で存在してよく、それでも光輝性の外観のコーティングを提供する。通常アルミニウムは、粒状金属の少なくとも約10重量%を占める。かくして多くの場合、そうした組み合わせにおけるアルミニウム対亜鉛の重量比は、少なくとも約1:9である。他方経済的には、アルミニウムは亜鉛とアルミニウムの合計の約50重量%より多くを占めないのが有利であり、かくしてアルミニウム対亜鉛の重量比は1:1に達することができる。コーティング組成物の粒状金属の含有量は、最適なコーティング外観を維持するためには組成物の合計重量の約35重量%を超えず、所望とする光輝性のコーティング外観を一貫して達成するためには、通常は少なくとも約10重量%を占める。有利には、アルミニウムが存在する場合、そして特に他の粒状金属なしに存在する場合、アルミニウムは組成物の合計重量の約1.5から約35重量%をもたらす。典型的には、組成物中に粒状亜鉛が存在する場合、それは組成物の合計重量の約10から約35重量%をもたらす。この金属は、少量の液体、例えばジプロピレングリコールまたはミネラルスピリッツをもたらしてよい。液体をもたらす粒状金属は一般にペーストとして用いられ、そしてこうしたペーストは他の組成物成分と一緒に直接に用いることができる。しかしながら、粒状金属はまた、コーティング組成物中において乾燥形態で用いられてもよいことが理解される。
【0119】
別の実施形態によれば、金属粒子は、クロム酸塩含有防食顔料(例えば、クロム酸亜鉛およびクロム酸亜鉛カリウム)、リン酸塩含有顔料(例えば、リン酸亜鉛、アルミノ三リン酸、リン酸カルシウムマグネシウム、リン酸バリウム、リン酸アルミニウム亜鉛、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、ジルコン酸塩、およびバナジン酸塩)、5-ニトロフタル酸亜鉛塩などの金属有機阻害剤やリン化鉄などの導電性顔料のような防食フィラーまたは顔料であることができる。
【0120】
粒状金属の分散を補助する目的で、分散剤、すなわち本願での用語として使用されるところでは「湿潤剤」または「ウェッター」として作用する界面活性剤を添加してよい。適切な湿潤剤または湿潤剤混合物には、例えばノニオン性アルキルフェノールポリエトキシ付加物のようなアニオン性剤が含まれる。また、アニオン性湿潤剤も用いることができ、そしてこれらは最も有利には発泡性の制御されたアニオン性湿潤剤である。これらの湿潤剤または湿潤剤混合物は、有機リン酸エステルのようなアニオン性剤、並びにビストリデシルスルホコハク酸によって代表されるスルホコハク酸ジエステルを含むことができる。こうした湿潤剤の量は典型的には、コーティング組成物の合計の約0.01から約3重量%の量で存在する。
【0121】
組成物が、最終組成物のpHを調節することのできるpH調節剤を含有してよいことも考慮されている。通常、この組成物はpH調節剤がない場合には、約6から約7.5の範囲内のpHを有する。理解されるように、コーティング組成物が製造されるに際して、特に組成物がその成分の全部に満たない幾つかの成分を有する1つまたはより多くの段階に関して、特定の段階におけるpHは6未満であってよい。しかしながら、完全なコーティング組成物が製造された場合には、そして特にそれが劣化(エージング)された後、この劣化については以下で説明するのであるが、組成物は所要のpHを達成することになる。調節剤が使用される場合、pH調節剤は一般にアルカリ金属の酸化物および水酸化物から選択され、コーティング結合性の改善のためにはリチウムおよびナトリウムが好ましいアルカリ金属である;或いはそれは、通常は周期律表のIIA族およびIIB族に属する金属の酸化物および水酸化物から選択され、そうした化合物はストロンチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、およびカドミウムの化合物のように水溶液に可溶である。pH調節剤はまたこれらの金属の別の化合物、例えば炭酸塩または硝酸塩であってよい。
【0122】
別の実施形態によれば、コーティング組成物は、本願において通常「ホウ酸成分」または「ホウ素含有化合物」と呼ばれるものを含んでいてよい。本願で使用される用語であるところの、こうした「成分」または「化合物」については、商業的には「ホウ酸」として入手可能なオルトホウ酸を使用することが便利であるが、オルトホウ酸を加熱脱水することによって得られる、メタホウ酸、テトラホウ酸、および酸化ホウ素のような種々の生成物を使用することも可能である。
【0123】
コーティング組成物は任意選択的に、増粘剤を含んでいてよい。増粘剤は存在する場合には、組成物の合計重量の約0.01から約2.0重量%の量を占めることができる。この増粘剤は、Cellosize(商標)増粘剤などの水溶性セルロースエーテルであることができる。適切な増粘剤には、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルセルロース、またはこれらの物質の混合物といったエーテルが含まれる。セルロースエーテルはコーティング組成物の増粘性を補完するために水溶性である必要があるが、有機液体に可溶である必要はない。増粘剤が存在する場合、約0.02重量%未満の増粘剤では組成物に有利な粘度を付与するには不十分である一方で、組成物中の増粘剤が約2重量%を超えると作業を困難にするような組成物をもたらす粘度の上昇を生じうる。本発明の実施形態によれば、有害なほどの粘度上昇なしに増粘を行うためには、増粘剤は組成物の合計中に約0.1から約1.2重量%含まれる。理解されるように、セルロース系増粘剤の使用が考慮されており、従って本願では増粘剤はセルロース系増粘剤として参照されてよいのであるが、増粘剤の幾らかまたは全部が別の増粘剤成分であってもよい。そうした他の増粘剤には、キサンタンガム、ウレタン会合型増粘剤およびウレタンを含まないノニオン性会合型増粘剤のような、典型的には不透明で、例えば100℃超で沸騰する高沸点液体である会合型増粘剤が含まれる。他の適切な増粘剤には、高度に選鉱されたヘクトライトクレイおよび有機変性され活性化されたスメクタイトクレイのような変性クレイが含まれる。増粘剤が使用される場合、それは通常、配合物に添加される最後の成分である。
【0124】
コーティング組成物は、これまでに既に列挙した成分に加えて、さらに追加の成分を含有してよい。そうした他の成分は、リン酸塩を含んでいてよい。理解されるように、リンを含有する置換基は、難溶性または不溶性の形態であったとしても、例えばフェロフォスフォルのような顔料として存在してよい。こうした追加の成分は多くの場合、幾らかの耐食性または耐食性の向上の付与を行うための金属コーティングの技術においてしばしば採用されている、無機塩を含むことができる物質である。原料には硝酸カルシウム、二塩基性リン酸アンモニウム、カルシウムスルホネート、1-ニトロプロパン、炭酸リチウム(pH調節剤としても有用)などが含まれ、そして使用される場合、これらは最も普通にはコーティング組成物中に、合わせた合計量で約0.1から約2重量%用いられる。炭酸リチウムが防食剤として、そしてまたpH調節剤としても使用される場合のように、追加の成分が用途の組み合わせについて存在してよい場合には、こうした成分は約2重量%を超えて用いられてよい。最も普通には、コーティング組成物はこれらのさらなる追加成分を含んでいない。
【0125】
本発明の別の実施形態において、配合物は必要な場合には、発泡を低減しまたは脱気を補助するための表面活性剤を含んでいてよい。こうした消泡剤および脱気剤は、鉱油系材料、シリコーン系材料、ポリエーテルシロキサンまたはこれらの任意の組み合わせを含んでいてよい。表面活性剤の濃度は、活性材料の約0.01%から約5%の範囲内で調節することができる。表面活性剤は純材料として、または最終的な水性組成物中へと分散させるための水、或いは任意の他の適切な溶媒中の分散物として使用されてよい。
【0126】
コーティング組成物はまた、耐傷性の増大、摩擦係数の低減、つや消し効果、耐摩耗性の向上などのようにコーティング組成物の表面を変性するために、表面効果付与剤を含有していてよい。例に含まれるものとしては、例えばGEシリコーンから入手可能なSilwet登録商標L-7608および他の変種のようなシリコーンポリエーテルコポリマーがある。
【0127】
本発明のコーティング組成物にはまた、典型的な架橋剤を用いることができる。例えば架橋剤は、イソシアネート、エポキシ硬化剤、アミノ剤、アミノアミド剤、エポキシアミノ付加物、カルボジイミド、メラミン、無水物、ポリカルボン酸無水物、カルボン酸樹脂、アジリジン、チタン酸塩、有機官能性チタン酸塩、有機官能性シランその他であることができる。
【0128】
コーティング配合物はまた、防食剤を含有していてよい。防食剤の例には、クロム酸塩、亜硝酸塩および硝酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩およびモリブデン酸塩、または安息香酸ナトリウムやエタノールアミンなどの有機阻害剤が含まれてよい。
【0129】
代替的には、水性組成物が提供され、それは上述した少なくとも1つのエポキシシランオリゴマーを、界面活性剤、pH調節剤、共溶媒、シランモノマー、バインダー、および例えば増粘剤、架橋剤その他の典型的にコーティングに用いられる任意の他の成分からなる群より選択される1つまたはより多くの任意選択的な成分と共に含む水溶液中の、粒状金属の分散物を含んでいる。
【0130】
バインダーは無機バインダーおよび有機バインダーであることができる。無機バインダーは、シリケート、エチルシリケート、シリカナノ粒子溶液またはシリコーンレジンであることができる。
【0131】
有機バインダーは、ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルコポリマー、酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸コポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、アクリレート、アクリレートコポリマー、ポリアクリレート、スチレンアクリレートコポリマー、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド、ポリアミドアミン樹脂、ポリビニルエーテル、ポリブタジエン、ポリエステル樹脂、オルガノシリコーン樹脂、オルガノポリシロキサン樹脂およびそれらの組み合わせであることができる。ニトロセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース、有機酸のセルロースエステルのようなセルロース誘導体、ヒドロキシメチルまたはエチルセルロースのようなセルロースエーテル、変性天然ゴム、天然ゴム、または前記ポリマーおよびコポリマーの溶液形態といった天然バインダー。
【0132】
有機バインダーはまた、ノニオン性安定化樹脂、アニオン性安定化エマルジョン、またはカチオン性安定化エマルジョンであることができる。
【0133】
コーティング組成物は、フィルムまたは硬化物品を形成するために用いることができる。コーティング組成物は所望とする基材に対して、限定するものではないが、噴霧、刷毛塗布、浸漬、スピンコートその他を含む在来の技術によって、適用することができる。基材の例示には、プラスチック、金属、木材、コンクリート、およびガラスの表面が含まれる。組成物は、組成物を硬化しフィルムまたは硬化物品を形成するのに適した硬化条件に曝露することができる。これには、水分または溶媒を蒸発させるのに十分な温度へと組成物を曝露することが含まれうる。硬化温度は、組成物が水系であるか溶媒系であるか、またどの溶媒が用いられるかに応じて変化してよい。こうした条件は、溶媒に基づいて技術分野の当業者によって確認することができる。1つの実施形態において、硬化温度は、約-30℃から約400℃、約0℃から約200℃、または約5℃から約50℃であることができる。1つの実施形態において、硬化条件は、硬化を行うのに十分なpHへと組成物を曝露することであってよい。pHは使用されている特定の溶媒に依存し、技術分野の当業者によって確認することができる。他の実施形態において、硬化は水分やUVへの曝露、2つまたはより多くの成分の混合によって達成することができる。
【0134】
上記に説明したところは本明細書による例を含んでいる。当然のこととして、本明細書を記述する目的について成分または方法のすべての認識可能な組み合わせを説明することは不可能であるが、技術分野の当業者は、本明細書における他の多くの組み合わせおよび置き換えが可能であることを認識してよい。したがって本明細書は、特許請求の範囲の思想および範囲内に包含されるすべての変更、修正および変動を包囲することを意図している。さらにまた、発明の詳細な説明または特許請求の範囲において「含む」という用語が使用される場合、この用語は、「含む」という用語が特許請求の範囲において「含む」が転換語として用いられる場合に解釈されるのと類似の仕方において、包括的であることを意図したものである。
【0135】
実施例
【0136】
以下は、実施態様および実施形態による例示的な実施例を記載している。これらの実施例は、幾つかの例示的な実施形態を示すことを意図しており、本発明の範囲をそれらの特定的な実施形態に限定することを必ずしも意図したものではない。
【0137】
空気や水分の影響を受けやすいすべての操作は、標準的な真空ラインおよび丸底フラスコを使用し、精製窒素の不活性雰囲気下において実行した。反応のための出発シランは、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なSilquest A-187)であった。イソプロパノールおよびイソブタノール、99.99%の純度のチタンイソプロポキシド、および1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エンはシグマアルドリッチ社から購入し、そのまま使用して実施例1~6のエステル交換反応を行った。クロロホルム-dはケンブリッジ・アイソトープ・ラボラトリーズ社から購入し、すべてのNMR特性評価の目的についてそのまま使用した。
【0138】
耐スクラブ性試験:本シラン組成物の耐スクラブ特性は、壁塗料の耐スクラブ性についての標準試験法(ASTM D2486)に従って評価した。塗料配合物は1日から2日にわたって平衡化され、次いで大体150マイクロメートルの湿潤膜厚でレネタ社のスクラブ試験パネル上に被覆(コーティング)された。被覆された試料は乾燥のため、室温で2時間、60℃で17時間保持された。次いで乾燥した膜を有するパネルのそれぞれについて、塗料のいずれかが塗膜を失うまで、BYK社のスクラブ耐久摩耗試験機を用いて複数回のスクラブサイクルを行った。スクラブ試験後に得られたパネルのスキャンイメージはImageJソフトウェアで処理して、ベンチマーク(基準)塗料と比較しての、それぞれのシラン組成物についての塗料の損失百分率を定量した。
【0139】
貯蔵安定性試験:それぞれのシラン組成物を含有する標準的な塗料配合物に、ベンチマーク塗料と共に、60℃で2週間の加速熱劣化を行った。それぞれの塗料の耐スクラブ特性を、劣化の前および後に評価した(ASTM D2486)。
【0140】
合成例1
【0141】
(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(23.63g、100.0mmol)およびイソプロピルアルコール(48.0g、800mmol)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、還流コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした250mlの3口丸底フラスコに導入した。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの3番目の口をシールした。チタンイソプロポキシド(0.20g、2800ppm)をゴム製セプタムを介して反応器内に注入した。撹拌した内容物を70℃に加熱し、30時間還流を続けた。反応混合物を真空中85℃でストリッピングして、未反応のイソプロパノールおよびメタノール副生物を除去した。残った混合物を次いで120℃および1mbarの圧力で真空蒸留すると、生成物(12.0g)が透明な液体として得られた。29Si NMRで確認したところ、この生成物は:
3.1モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン
28.7モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)ジメトキシイソプロポキシシラン
64.9モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)メトキシジイソプロポキシシラン
3.3モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリイソプロポキシシランの混合物であった。
【0142】
合成例2
【0143】
(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(23.63g、100.0mmol)およびイソプロピルアルコール(48.0g、800mmol)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、還流コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした250mlの3口丸底フラスコに導入した。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの3番目の口をシールした。チタンイソプロポキシド(0.20g、2800ppm)をゴム製セプタムを介して反応器内に注入した。撹拌した内容物を70℃に加熱し、29時間還流を続けた。反応混合物を真空中120℃でストリッピングして、未反応の(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、イソプロパノールおよびメタノール副生物を除去した。残った混合物を次いで165℃および1mbarの圧力で真空蒸留すると、生成物(5.0g)が透明な液体として得られた。29Si NMRで確認したところ、この生成物は:
23.8モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)ジメトキシイソプロポキシシラン
70モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)メトキシジイソプロポキシシラン
6.2モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリイソプロポキシシランの混合物であった。
【0144】
合成例3
【0145】
(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(118.15g、500.0mmol)およびイソプロピルアルコール(240.0g、4000mmol)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、還流コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした500mlの3口丸底フラスコに導入した。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの3番目の口をシールした。チタンイソプロポキシド(1.0g、2800ppm)をゴム製セプタムを介して反応器内に注入した。撹拌した内容物を70℃に加熱し、29時間還流を続けた。反応混合物を真空中85℃でストリッピングして、未反応イソプロパノールおよびメタノール副生物を除去した。残った混合物を次いで165℃および1mbarの圧力で真空蒸留すると、生成物(105.0g)が透明な液体として得られた。29Si NMRで確認したところ、この生成物は:
5.7モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン
34.1モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)ジメトキシイソプロポキシシラン
57モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)メトキシジイソプロポキシシラン
3.2モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリイソプロポキシシランの混合物であった。
【0146】
合成例4
【0147】
(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(23.63g、100.0mmol)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、添加漏斗、還流コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした250mlの4口丸底フラスコに導入した。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの4番目の口をシールした。ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(0.14g、2100ppm)をゴム製セプタムを介して反応器内に注入した。撹拌した内容物を65℃に加熱した。反応を真空下に150から240mbarの間に維持したまま、添加漏斗に取ったイソプロピルアルコール(48.0g、800mmol)を7時間かけて5回に分けて添加した。反応混合物を真空中85℃でストリッピングして、未反応イソプロパノールおよびメタノール副生物を除去した。残った混合物を次いで165℃および1mbarの圧力で真空蒸留すると、生成物(14.0g)が透明な液体として得られた。29Si NMRで確認したところ、この生成物は:
16.2モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)ジメトキシイソプロポキシシラン
75.4モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)メトキシジイソプロポキシシラン
8.4モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリイソプロポキシシランの混合物であった。
【0148】
合成例5
【0149】
(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(23.63g、100.0mmol)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、添加漏斗、還流コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした250mlの4口丸底フラスコに導入した。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの4番目の口をシールした。ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(0.29g、2600ppm)をゴム製セプタムを介して反応器内に注入した。撹拌した内容物を65℃に加熱した。反応を真空下に250mbarに維持したまま、添加漏斗に取ったイソプロピルアルコール(90.0g、1500mmol)を、大体0.5ml/分の速度で4時間かけて滴下により添加した。反応混合物を真空中85℃でストリッピングして、未反応イソプロパノールおよびメタノール副生物を除去した。残った混合物を次いで165℃および1mbarの圧力で真空蒸留すると、生成物(16.0g)が透明な液体として得られた。29Si NMRで確認したところ、この生成物は:
2.7モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)ジメトキシイソプロポキシシラン
77.1モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)メトキシジイソプロポキシシラン
20.2モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリイソプロポキシシランの混合物であった。
【0150】
合成例6
【0151】
(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(23.63g、100.0mmol)およびイソブチルアルコール(59.20g、800mmol)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、還流コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした250mlの3口丸底フラスコに導入した。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの3番目の口をシールした。チタンイソプロポキシド(0.23g、2800ppm)をゴム製セプタムを介して反応器内に注入した。撹拌した内容物を70℃に加熱し、42時間還流を続けた。反応温度を30℃に低下させた。水(0.9g)を添加し、30℃で1時間にわたって撹拌を継続した。反応混合物を真空中110℃でストリッピングして、未反応の水、イソブチルアルコールおよびメタノール副生物を除去した。残った混合物を次いで185℃および1mbarの圧力で真空蒸留すると、生成物(23.0g)が透明な液体として得られた。29Si NMRで確認したところ、この生成物は:
12.4モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)ジメトキシイソブトキシシラン
45.4モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)メトキシジイソブトキシシラン
42.2モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリイソブトキシシランの混合物であった。
【0152】
合成例7
【0153】
(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(23.63g、100.0mmol)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、添加漏斗、還流コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした250mlの4口丸底フラスコに導入した。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの4番目の口をシールした。ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(0.21g、1500ppm)をゴム製セプタムを介して反応器内に注入した。撹拌した内容物を70℃に加熱した。反応を真空下に110mbarに維持したまま、添加漏斗に取ったイソブチルアルコール(118.5g、1600mmol)を、大体0.5ml/分の速度で5時間にわたって滴下により添加した。反応混合物を真空中110℃でストリッピングして、未反応イソプロパノールおよびメタノール副生物を除去した。残った混合物を次いで185℃および1mbarの圧力で真空蒸留すると、生成物(26.0g)が透明な液体として得られた。29Si NMRで確認したところ、この生成物は:
1.3モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)ジメトキシイソブトキシシラン
44.9モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)メトキシジイソブトキシシラン
53.8モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリイソブトキシシランの混合物であった。
【0154】
合成例8
合成例3の生成物(39.38g、138.9mmol)および(1g、55.6mmol)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、還流コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした100mlの3口丸底フラスコに導入した。アミン触媒(1.40g、35000ppm)を反応器内に添加した。撹拌した内容物を一晩70℃に加熱した。反応混合物を真空中100℃でストリッピングして、未反応イソプロパノールおよびメタノール副生物を除去した。残った混合物を窒素雰囲気下に濾過すると、生成物(30.2g)が淡い黄色の液体として得られた。29Si NMRで確認したところ、この生成物は合成例3のモノマーおよびオリゴマーの混合物であった。
【0155】
合成例9
(3-グリシジルオキシプロピル)メトキシオリゴマー(80g)およびチタンイソプロポキシド(0.5g)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、還流コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした3口丸底フラスコに室温で導入した。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの3番目の口をシールした。125℃において、窒素ブランケット下にイソプロピルアルコール(77.8g)を反応器へと4時間にわたり滴下により導入した。反応の間に、凝縮物が容器内に収集された。24時間の反応時間の後に、反応混合物を真空中90℃および100mbarの圧力でストリッピングして、未反応イソプロパノールおよびメタノール副生物を除去した。残った混合物を次いで120℃および1mbarの圧力で真空蒸留すると、生成物(12.0g)が透明な液体として得られた。29Si NMRおよび1H NMRで確認したところシランオリゴマー上に約75モル%のプロポキシ置換であった。
【0156】
合成例10
(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(472.6g)およびチタンイソプロポキシド(4g)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした4口丸底フラスコに室温で仕込んだ。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの4番目の口をシールした。125℃において、窒素ブランケット下にイソプロピルアルコール(960g)を反応器へと14時間にわたり滴下により導入した。反応の間に、凝縮物が容器内に収集された。24時間の反応時間の後に、8gの水を反応混合物へと44℃で添加し、そして1時間撹拌した。続いて1時間後に、反応混合物を真空中90℃および100mbarの圧力でストリッピングして、未反応イソプロパノール、メタノールおよび他の副生物を除去した。残った混合物を次いで室温で濾過すると、生成物(518.92g)が透明な液体として得られた。29Si NMRおよび1H NMRで確認したところ、この生成物は:
14.28モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)ジメトキシイソプロポキシシラン
50.53モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)メトキシジイソプロポキシシラン
31.95モル%の(3-グリシジルオキシプロピル)トリイソプロポキシシラン
3.23モル%のオリゴマー状(グリシジルオキシプロピル)プロポキシメトキシシランの混合物であった。
【0157】
合成例11
ビニルトリメトキシシラン(40.0g)およびチタンイソプロポキシド(0.5g)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした4口丸底フラスコに室温で仕込んだ。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの4番目の口をシールした。イソプロピルアルコール(132g)を窒素ブランケット下に反応器内に導入した。反応温度を95℃に昇温し、撹拌を継続した。24時間の反応時間後に、0.8gの水を反応混合物へと44℃で添加し、そして1時間撹拌した。続いて1時間後に、反応混合物を低圧下に90℃でストリッピングして、未反応イソプロパノール、メタノールおよび他の副生物を除去した。残った混合物を次いで115℃および34mbarの圧力で真空蒸留した。最終生成物が透明な液体として得られた。29Si NMRで確認したところ、この生成物は:
11.1モル%のビニルジメトキシイソプロポキシシラン
54.6モル%のビニルメトキシジイソプロポキシシラン
34.3モル%のビニルトリイソプロポキシシランの混合物であった。
【0158】
合成例12
アミノプロピルトリメトキシシラン(40.0g)およびチタンイソプロポキシド(0.35g)を、加熱マントル、マグネティックスターラー、コンデンサーおよび熱電対を備え、N2でフラッシングした4口丸底フラスコに室温で仕込んだ。ゴム製セプタムを使用して、フラスコの4番目の口をシールした。イソプロピルアルコール(86.73g)を窒素ブランケット下に反応器内に導入した。反応温度を100℃に昇温し、撹拌を8時間継続した。粗反応混合物を収集し、29Si NMRによって検証したところ、これは:
3.67モル%の(アミノプロピル)トリメトキシシラン
24.04モル%の(アミノプロピル)ジメトキシイソプロポキシシラン
39.82モル%の(アミノプロピル)メトキシジイソプロポキシシラン
2.01モル%の(アミノプロピル)トリイソプロポキシシラン
30.46モル%のオリゴマー状(アミノプロピル)プロポキシメトキシシランの混合物であることが判明した。
【0159】
合成例13
以下の表に示す(表A)合成例10から得られた生成物、界面活性剤、および脱ミネラル水をカウルミキサーを用いて混合することにより、エマルジョンを調製した。
【表A】
エマルジョンの粒子径はマルバーン社のマスターサイザー2000を使用して測定し、粒子径分布の50%について10.5マイクロメートル近傍にあることが見出された。
【0160】
合成例14
以下に記載する手順に従って、合成例11から得られた生成物のフリーラジカル乳化重合を行った。
【表B】
モノマー混合物およびラジカル開始剤溶液は、相A、B、C、D、EおよびFの成分から、別々に混合することによって調製した。相Aは、加熱マントル、マグネティックスターラー、コンデンサー、および熱電対を備えた丸底フラスコに室温で仕込み、75℃に加熱して15分間撹拌した。モノマー相BおよびCを混合することにより、機械的エマルジョンを別個に調製した。機械的エマルジョンの5%を相Aに添加し、残りは15分後に相Dと共に4時間にわたって直線的に添加した。反応混合物の温度を40℃まで低下させ、相EおよびFを反応混合物に対して同時に添加して、1時間にわたって40℃で撹拌した。次いで希水酸化ナトリウム溶液でポリマーをpH8~9に中和した。測定されたエマルジョンポリマーの固形分量は48.03%であった。
【0161】
比較例1:シリコーンを含まない市販の塗料配合物(アジアンペインツ社のAce外装用エマルジョン)をベース配合物1として使用した。
【0162】
比較例2:商業的に入手可能な(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランをベンチマーク1として使用した。
【0163】
比較例3:商業的に入手可能なグレードの(3-グリシジルオキシプロピル)メトキシオリゴマーをベンチマーク2として使用した。
【0164】
塗料配合物
【0165】
塗料配合物は、ベース塗料配合物と、本シラン組成物添加剤(例えば、合成例からの)または比較例1~3の比較シランから選択された添加剤で調製された。表1および表2はそれぞれの塗料配合物の組成である。表3は、0週時および2週間後に、上述したイメージ分析方法を使用してASTM D2486に基づいて評価した、スクラブ試験により失われた塗料の百分率を示している。
【表1】
【表2】
【表3】
【0166】
表3に示されているように、本エポキシアルコキシシラン組成物を添加剤として用いている塗料配合物は、従来のシラン添加剤と比較して良好な耐スクラブ性および貯蔵安定性を示す。
【0167】
コーティング組成物C4、C5、F6、およびF7は、表4による成分を室温下(25℃)にハイスピード分散機を使用して混合することによって作成された。
【表4】
【0168】
配合物C4、C5、F6、およびF7の性能評価は、ASTM D2486に記載された標準的なプロトコルに従って行った。而して、レネタ社のパネルをそれぞれの配合物で均一に被覆し、室温で7日間にわたって乾燥した。乾燥したパネルは次いで、湿式摩耗スクラブ試験機を使用して、耐スクラブ性について試験した。性能の比較は、塗膜フィルムを貫通する最初の切れ目が生ずるまでのサイクル数に関して報告されている。表5に示されているように、本発明のアルコキシシランを含有する配合物F6およびF7は、対照配合物C4およびC5と比較して良好な性能を示す。
【表5】
【0169】
コーティング組成物C6、C7、およびF8は、表6による成分を室温(25℃)において高速分散装置を使用して混合することによって作成された。
【表6】
【0170】
配合物C6、C7、およびF8の性能評価は、ASTM D2486に記載された標準的なプロトコルに従って行った。而して、レネタ社のパネルをそれぞれの配合物で均一に被覆し、室温で7日間にわたって乾燥した。乾燥したパネルは次いで、BYK社の湿式摩耗スクラブ試験機を使用して、耐スクラブ性について試験した。性能の比較は、サイクル数に関して報告されている。サイクル数が多いほど、性能が良好である。表7に示されているように、本発明のアルコキシシランを含有する配合物F8は、対照配合物C6およびC7と比較して良好な性能を示す。
【表7】
【0171】
合成例10の性能試験を行うために、2成分の水系エポキシアミン業務用コーティング配合物を作成した。以下に示すのは配合物の詳細およびその説明である:
【表8】
工程1:相Aの成分を使用することによりエポキシ粉砕物を作成し、相Bを使用してレットダウンした。レットダウン相において、合成例10と比較例3の生成物をコーティング配合物F9およびC9に添加した。
工程2:相Cの成分を使用することにより、アミノ架橋剤を作成した。
最後にエポキシ粉砕物とアミノ架橋剤を混合し、冷延鋼板上に被覆した。以下に示すのは上記の配合物についての塗布条件である:
塗布条件
配合物C8、C9およびF9の性能評価は、試験プロトコルとしてISO 6270-2(24時間にわたる一定湿度の凝縮水試験)およびDIN-53151による湿式クロスハッチ接着を使用することにより行った。湿式接着試験は、新たに調製された試料および1ヶ月にわたり50℃におかれた試料について行われた。結果を表に示す(表9)。
【表9】
【0172】
以上の記載は、エポキシアルコキシシランモノマーの混合物を含む組成物、およびエポキシアルコキシシラン組成物を添加剤として含むコーティング組成物の、種々の非限定的な実施形態を特定している。技術分野の当業者、および本発明を作成および使用する者には、改変が想起されてよい。開示された実施形態は単に例示目的のものであり、本発明の範囲または特許請求の範囲に記載された事項を限定することを意図するものではない。
【国際調査報告】