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特表2024-507720電力電子スイッチングデバイスを用いたモータソフトスタータの制御
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  • 特表-電力電子スイッチングデバイスを用いたモータソフトスタータの制御 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電力電子スイッチングデバイスを用いたモータソフトスタータの制御
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/024 20160101AFI20240214BHJP
【FI】
H02P27/024
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547295
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2022025048
(87)【国際公開番号】W WO2022171365
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/147,794
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518042280
【氏名又は名称】イートン インテリジェント パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Intelligent Power Limited
【住所又は居所原語表記】30 Pembroke Road, Dublin 4 D04 Y0C2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、シン
(72)【発明者】
【氏名】ディミノ、スティーブン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウッドリー、カイジャム モーリス
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB00
5H505CC05
5H505DD05
5H505FF01
5H505HA06
5H505HA09
5H505HA10
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505LL22
5H505LL24
(57)【要約】
固体スイッチングデバイスを使用してモータ(40)をソフトスタートさせるためのシステム及び方法が開示される。システム(10)は、複数の固体スイッチ(62、63)からなるソフトスタートスイッチ(53)を含む。システム(10)はまた、モータ(40)の始動動作中に固体スイッチ(62,63)のオン及びオフを繰り返すことによって、始動動作中にモータに供給される電流及び電圧を調整するようにプログラムされている、コントローラ(86)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータをソフトスタートさせる方法(400)であって、前記方法(400)は、
電源(48)と交流(AC)モータ(40)との間に電気的に接続されているソフトスタートスイッチ(53)を設けることであって、
前記ソフトスタートスイッチ(53)は、1つ以上の相を含み、前記相の各々は、
互いに直列又は並列に電気的に接続された、複数の固体スイッチ(62、63)を備える電力電子スイッチングデバイス(70)を備える、ことと、
始動動作中に前記ACモータ(40)に供給される電流及び電圧を調整するために、コントローラ(86)によって前記始動動作中に前記固体スイッチ(62、63)のオン及びオフを繰り返す(410、411)ことと、を含む、方法(400)。
【請求項2】
前記始動動作の完了時に各相内で前記コントローラ(86)によって、前記固体スイッチ(62、63)にオンのままでいるように命令することによって、前記ソフトスタートスイッチ(53)を前記始動動作から実行モードに移行させる(413)ことを更に含む、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項3】
前記ソフトスタートスイッチ(53)は、前記電力電子スイッチングデバイス(70)と並列に電気的に接続されている機械式スイッチ(61)を更に備える、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項4】
前記始動動作の完了時に各相内で前記コントローラ(86)によって、
アクチュエータに前記機械式スイッチ(61)を閉じさせること、及び
前記固体スイッチ(62、63)にオンのままでいて、短絡状態を作り出すように命令すること、又は
前記固体スイッチ(62、63)にオフになり、オフのままでいて、バイパス状態を作り出すように命令することのいずれか、によって、前記ソフトスタートスイッチ(53)を前記始動動作から実行モードに移行させる(413)ことを更に含む、請求項3に記載の方法(400)。
【請求項5】
前記始動動作中に前記固体スイッチ(62、63)のオン及びオフを繰り返す(410、411)ことは、前記コントローラ(86)によって、
1つ以上の電流センサ88)から電流データを受信し(401)、複数の電流サイクルにわたって前記電流データにおいて複数の電流ゼロ交差を検出する(402)ことと、
1つ以上の電圧センサ(90)から電圧データを受信し(403)、複数の電圧サイクルにわたって前記電圧データにおいて複数の電圧ゼロ交差を検出する(404)ことと、
相ごとに、
現在の電圧サイクルに対する点弧角を決定する(405)ことと、
ゲート制御してオンにするように当該相の固体スイッチ(62、63)に命令する時間を決定するために、検出した前記電圧ゼロ交差及び前記現在の電圧サイクルに対する前記点弧角を使用する(406)ことと、
ゲート制御してオフにするように当該相の固体スイッチ(62、63)に命令する時間を決定するために、検出した前記電流ゼロ交差情報及び電流ゼロ交差検出許容閾値を使用する(409)ことと、を含む、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項6】
前記点弧角を決定する(405)ことは、前記モータのモータプロファイルデータにアクセスすることと、前記モータプロファイルから、前記始動動作における現在の時間に対応する点弧角を特定することと、を含む、請求項5に記載の方法(400)。
【請求項7】
モータをソフトスタートさせるためのシステム(10)であって、前記システム(10)は、
ソフトスタートスイッチ(53)であって、
電源(48)に接続するためのライン側及びモータ(40)に接続するための負荷側と、
前記ライン側と前記負荷側との間に位置付けられ、互いに直列又は並列に電気的に接続された複数の固体スイッチ(62、63)を備える、電力電子スイッチングデバイス(70)と、を備える、ソフトスタートスイッチ(53)と、
前記モータ(40)の始動動作中に前記固体スイッチ(62、63)のオン及びオフを繰り返すことによって、前記始動動作中に前記モータ(40)に供給される電流及び電圧を調整するように構成されたコントローラ(86)と、を備える、システム(10)。
【請求項8】
前記複数の固体スイッチ(62、63)の各々は、
金属酸化膜電界効果トランジスタ(MOSFET)、
窒化ガリウム(GaN)オンシリコンパワー電界効果トランジスタ、
接合型電界効果トランジスタ(JFET)、
MOS制御サイリスタ(MCT)、又は
別の炭化ケイ素(SiC)系、若しくはGaN系、若しくは他の半導体材料系の能動的にスイッチ可能なパワー半導体デバイスを備える、請求項7に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記複数の固体スイッチ(62、63)の各々は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)又は別のシリコン(Si)系スイッチングデバイスを備える、請求項7に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記ソフトスタートスイッチ(53)は、前記電力電子スイッチングデバイス(70)と並列に電気的に接続されている機械式スイッチ(61)を更に備える、請求項7に記載のシステム(10)。
【請求項11】
1つ以上の電流センサ(88)と、
1つ以上の電圧センサ(90)と、
プログラミング命令であって、前記コントローラ(86)に、
前記1つ以上の電流センサ(88)から電流データを受信させ、
複数の電流サイクルにわたって前記電流データにおいて複数の電流ゼロ交差を検出させ、
前記1つ以上の電圧センサ(90)から電圧データを受信させ、
複数の電圧サイクルにわたって前記電圧データにおいて複数の電圧ゼロ交差を検出させ、
相ごとに、
現在の電圧サイクルに対する点弧角を決定させ、
ゲート制御してオンにするように当該相の固体スイッチ(62、63)に命令する時間を決定するために、検出した前記電圧ゼロ交差及び前記現在の電圧サイクルに対する前記点弧角を使用させ、
ゲート制御してオフにするように当該相の固体スイッチ(62、63)に命令する時間を決定するために、検出した前記電流ゼロ交差情報及び電流ゼロ交差検出許容閾値を使用させるように構成されている、プログラミング命令と、を更に備える、請求項7に記載のシステム(10)。
【請求項12】
前記コントローラ(86)は、前記モータ(40)のモータプロファイルデータを含有するメモリを備え、前記モータプロファイルは、
前記モータ(40)の点弧角値を前記始動動作にわたって複数の時点にマッピングする、点弧角データと、
前記電流ゼロ交差検出許容閾値と、を含む、請求項11に記載のシステム(10)。
【請求項13】
前記電力電子スイッチングデバイス(70)は、複数のバリスタ(72、73)を更に備え、前記バリスタの各々は、前記固体スイッチ(62、63)のうちの1つ以上の両端間に並列に電気的に接続されている、請求項12に記載のシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年2月10日に出願された「Control of Motor Soft Starter Using Power Electronic Switching Devices」と題する米国特許仮出願第63/147,794号の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示される概念は、概して、モータをソフトスタートさせるためのデバイス及び方法に関し、具体的には、モータをソフトスタートさせるために電力電子スイッチングデバイスを使用するデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モータソフトスタータは、モータの始動時に交流(AC)電源から電気モータ(誘導モータなど)への電圧及び電流の供給を制御するデバイスである。ソフトスタータは、始動中の電気モータに対する過渡電圧及び突入電流を制限するように構成されており、モータ速度のランプアッププロファイルが制御された、「ソフト」モータスタートプロセスをもたらす。動作中、AC電源からの電力は、サイリスタ又はシリコン制御整流器(SCR)の形態の1対の逆並列スイッチ又はバックトゥバック固体スイッチなどソフトスタータ内の電力電子スイッチングデバイスを通過して電流の流れを制御し、次に、電気モータの端子電圧を制御し、電気モータのトルク及び速度を直接調整する。
【0004】
金属酸化膜電界効果トランジスタ(MOSFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、又は接合型電界効果トランジスタ(JFET)などワイドバンドギャップスイッチングデバイスに基づいた固体回路遮断器内にソフトスタート制御トポロジを実装する場合、ソフトスタートは、固体スイッチングデバイスに電気的ストレス及び熱的ストレスを引き起こす可能性がある。ソフトスタートに必要なエネルギーに対処できるようにするために、特別に設計された構成要素及び/又は多数の固体構成要素が必要である。このため、ソフトスタートデバイスが大きく、高価になり、多くの用途にとって非実用的なものになる可能性がある。更に、固体スイッチングデバイスがモータの始動中にあまりにも高速で動作すると、熱的ストレス、又はアークフラッシュさえも発生する可能性がある。
【0005】
したがって、上述の問題に対処することができる方法及びシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
これらの必要性及び他の必要性は、モータをソフトスタートさせるために固体スイッチングデバイスを使用するシステム及び方法によって満たされる。本システムは、複数の固体スイッチからなるソフトスタートスイッチを含む。本システムはまた、モータの始動動作中に固体スイッチのオン及びオフを繰り返すことによって、始動動作中にモータに供給される電流及び電圧を調整するようにプログラムされている、コントローラを含む。
【0007】
開示される概念の一態様によると、モータをソフトスタートさせる方法は、電源と交流(AC)モータとの間に電気的に接続されているソフトスタートスイッチを設けることを含み、ソフトスタートスイッチデバイスは、1つ以上の相を備え、1つ以上の相の各々は、互いに直列又は並列に電気的に接続された複数の固体スイッチを備える、電力電子スイッチングデバイスを備える。本方法は、始動動作中にACモータに供給される電流及び電圧を調整するために、始動動作中にコントローラによって固体スイッチのオン及びオフを繰り返すことを更に含む。
【0008】
開示される概念の別の態様によると、モータをソフトスタートさせるためのシステムは、ソフトスタートスイッチと、コントローラと、を備える。ソフトスタートスイッチは、電源に接続するためのライン側及びモータに接続するための負荷側と、ライン側と負荷側との間に位置付けられた電力電子スイッチングデバイスと、を備える。電力電子スイッチングデバイスは、互いに直列又は並列に電気的に接続された、複数の固体スイッチを備える。コントローラは、モータの始動動作中に固体スイッチのオン及びオフを繰り返すことによって、始動動作中にモータに供給される電流及び電圧を調整するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の完全な理解は、添付図面と併せて読むと、以下の発明を実施するための最良の形態から得ることができる。
図1】開示された概念の例示的な実施形態による、3相AC電気モータを始動させ、動作させるための例示的な回路構成を示す図である。
図2A図1の相のいずれかにおいて使用され得る例示的なスイッチングデバイスの構成要素を示す。
図2B図1の相のいずれかにおいて使用され得る例示的なスイッチングデバイスの構成要素を示す。
図3】開示された概念の例示的な実施形態による、ソフトスタート構成のための例示的な回路トポロジを示す。
図4】開示された概念の例示的な実施形態による、ソフトスタートプロセスを示すフロー図である。
図5図4のフローに続く例示的なソフトスタートプロセスを示す電圧波形及び電流波形を示す。
図6】開示された概念の例示的な実施形態による、図4に示されたソフトスタートプロセスにおいて使用される様々なパラメータをコントローラが取得することができる、モータプロファイルデータセットの一例を示す。
図7】開示された概念の別の例示的な実施形態による、図4に示されたソフトスタートプロセスにおいて使用される様々なパラメータをコントローラが取得することができる、モータプロファイルデータセットの別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数のものへの言及が含まれる。特に定義されない限り、本文書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本文書で使用するとき、用語「備える(comprising)」(又は「備える(comprises)」)は、「限定するものではないが、含む(including)(又は「含む(includes)」)ことを意味する。本明細書で使用するとき、用語「例示的な(exemplary)」は、「例として(by way of example)」を意味することを意図するものであり、特定の例示的な項目が好ましいか又は必要であることを示すことを意図するものではない。
【0011】
本明細書で使用するとき、用語「第1の」及び「第2の」などが名詞を修正するために使用される場合、そのような使用は、単に1つの項目を別の項目と区別することを意図するものであり、具体的に記載されない限り順序を必要とすることを意図するものではない。
【0012】
本明細書で使用するとき、数値に関連して使用されるときの用語「およそ(approximately)」は、数値に近いが正確には数字ではない値を含むことを意図する。例えば、いくつかの実施形態では、用語「およそ」は、値の+/-10パーセント以内の値を含み得る。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「メモリ」は、コンピュータ可読データ、プログラミング命令、又はその両方が記憶される非一時的デバイスを指す。この用語は、単一デバイスの実施形態、複数のメモリデバイスがデータ又は命令のセットを一緒に又は集合的に記憶する実施形態、並びにそのようなデバイス内の個々のセクタを含むことを意図する。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「プロセッサ」は、マイクロプロセッサ又は他の論理回路など、プログラミング命令を実行するように構成されている電子デバイスのハードウェア構成要素を指す。プロセッサ及びメモリは、マイクロコントローラ、カスタム構成可能集積回路、プログラマブルシステムオンチップ、又は様々な機能を実行するようにプログラムされ得る他の電子デバイスの素子であり得る。特に明記しない限り、単数形の用語「プロセッサ」は、単一処理デバイスの実施形態、及び複数の処理デバイスが一緒に又は集合的にプロセスを実行する実施形態の両方を含むことを意図する。
【0015】
本明細書で使用するとき、別段の定めがある場合を除き、用語「低電圧」及び「中電圧」は、関連する技術分野で既知であり得る全ての電圧範囲を含むことを意図する。例えば、「低電圧」システムは、典型的には、1000V以下の電圧を処理する定格の電気システムを含む。「中電圧」(MV)システムは、典型的には、約1000V~約38kVの電圧を処理するように定格された電気システムを含む。いくつかの規格は、MVを、600V~約69kVの電圧範囲を含むものと定義する(NECA/NEMA600-2003を参照)。中電圧の他の規格は、1kV、1.5kV、又は2.4kVの下限と、35kV、38kV、65kV、又は69kVの上限と、を有する範囲を含む(例えば、MVを1kV~35kVと定義するIEC60038、ANSI/IEEE1585-200、及びIEEE Std.1623-2004を参照)。そのような規格では、用語「低電圧」は、そのようなレベル未満の全範囲を含む。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「接続された」及び「電気的に接続された」は、2つ以上の通電構成要素を指すときに、構成要素が、導電性機械接続によって直接的に、又は1つ以上の導電性経路及び/若しくは中間電気構成要素を介して間接的にのいずれかで、互いの間に電流を通すことができる構成をそれぞれ指す。
【0017】
図1は、3相AC電気モータ40を始動させるための例示的なシステムを示す。AC電気モータ40は、Y配列で接続された3つの固定子巻線42、44、46を有するものとして示されている。しかしながら、ACモータ40は、本発明の範囲から逸脱することなく、デルタ配列で接続され得る。ACモータ40の固定子巻線42、44、46は、モータ端子56、58、60において対応する導体51A、51B、51Cを介してAC電源48の対応する相に動作可能に接続されている。導体51A、51B、51Cの各々は、電源48の3相のうちの1つに対応する。相順は、図示された特定の構成に限定されるものではなく、モータの所望の構成及び/又は回転方向に応じて他の構成が使用され得る。更に、12パルス又は18パルス変圧器など可変周波数ドライブが、必要に応じて電源48とともに使用され得ることが理解されよう。
【0018】
ソフトスタータ10は、AC電源48とAC電気モータ40との間に接続されている。図示の例では、ソフトスタータ10は、AC電気モータ40の外側に(すなわち、Y字の外側に)位置する。しかしながら、様々な実施形態では、ソフトスタータ10は、AC電気モータ40の内側に(すなわち、Y字の内側に)位置付けられ得、モータ自体の構成要素であり得、これは、統合(又はモジュール式)モータ駆動/ソフトスタータ用途であると考えられ得る。ソフトスタータ10は、始動中のACモータ40への過渡電圧及び電流を制限するように構成されており、「ソフト」モータスタートをもたらす。
【0019】
ソフトスタータ10は、相ごとにソフトスタートスイッチ53A、53B、53Cのセットを含み、その各々は、導体51A、51B、51Cのうちの1つに接続され、オン又はオフに切り替えることによって、当該導体を通る電流の流れを選択的に許可するか、又は遮断する。簡略化するために、本文書は、導体のうちの1つ以上を指すために参照番号51を使用することがあり、ソフトスタートスイッチのうちの1つ以上を指すために参照番号53を使用することがある。加えて、図1は、3相モータ及び3つの電力電子スイッチングデバイスを備える3相回路を示すが、様々な実施形態では、ソフトスタータ10は、単相回路内の単相モータに接続される単相ソフトスタートスイッチ53を含み得る。他の実施形態では、3相よりも多い相を有する多相回路が使用され得る。更に、三相又は他の多相用途では、別個のソフトスタートスイッチの代わりに、各相のソフトスタートスイッチの素子を単一のデバイスに組み込むことができる。
【0020】
ソフトスタートスイッチ53は、固体スイッチング構成要素を含み、任意選択的に、電力電子スイッチング構成要素を含み得る。ソフトスタートスイッチ53の構造は、図2A及び図2Bに関連して以下に説明される。
【0021】
ソフトスタータ10は、プロセッサと、プロセッサにソフトスタートスイッチ53の固体スイッチング構成要素、又は任意選択的に固体構成要素及び機械的構成要素の両方の動作を制御させるように構成されたプログラミング命令を含むメモリと、を含むコントローラ86を含むか、又はそれに接続されている。
【0022】
図2A及び図2Bは、導体を通る電流の流れを制御するために導体51に沿って位置付けられているソフトスタートスイッチ53-1又は53-2の例示的な構成要素を示す。ソフトスタートスイッチ53-1又は53-2は、1つ以上の固体スイッチ62、63を含むワイドバンドギャップ又は他の電力電子スイッチングデバイス70を含む。図2Aは、純粋に固体ソフトスタートスイッチ53-1を示す。図2Bは、固体構成要素及び機械的構成要素の両方を備える、ハイブリッドソフトスタートスイッチ53-2である一実施形態を示す。図2Bのハイブリッドソフトスタートスイッチ53-2では、機械式スイッチ61は、真空遮断器、気中遮断器、又は導体51に沿った電流の流れを遮断することができる任意の他のタイプの機械的に動作する電気スイッチであり得る。例として、機械式スイッチ61は、米国特許第10,796,867号(Liら)に開示されているものなど真空遮断器を含み得、その開示は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。機械式スイッチ61は、電源48に電気的に接続するライン側と、モータ40に電気的に接続する負荷側と、を含む。機械式スイッチ61はまた、コントローラ86によってトリガされると、真空遮断器、気中遮断器、又は機械式スイッチ61の他の電気接点を含む構成要素を開閉する力を生成するアクチュエータを含み得る。
【0023】
電力電子スイッチングデバイス70は、電源(図示せず)と負荷(モータ40の1相)との間に、互いに直列に、かつ機械式スイッチ61と並列に電気的に接続されている、少なくとも一対の固体スイッチ62、63を含む。ワイドバンドギャップ電力電子スイッチングデバイスでは、固体スイッチ62、63の各々は、金属酸化膜電界効果トランジスタ(MOSFET)、窒化ガリウム(GaN)オンシリコンパワー電界効果トランジスタ、接合型電界効果トランジスタ(JFET)、MOS制御サイリスタ(MCT)、又は別の炭化ケイ素(SiC)系、若しくはGaN系、若しくは他の半導体材料系の能動的にスイッチ可能なパワー半導体デバイスなどトランジスタであり得る。しかしながら、本発明は、ワイドバンドギャップデバイスに限定されず、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)など従来の及び他のシリコン(Si)系スイッチングデバイスが使用され得る。一方の固体スイッチ62のソース側は、他方の固体スイッチ63のソース側に電気的に接続されていて、集合的に双方向スイッチを提供することができる。この構成では、ワイドバンドギャップ電力電子スイッチングデバイス70は、ソフトスタート用途で使用され得、バイパス動作にも使用されて、機械式スイッチ61の開放時にアーク放電の除去を支援し得る。更に、各固体スイッチ62又は63は、任意選択的に、並列又は直列に接続された2つ以上のそのようなスイッチを備えて、回路の電流又は電圧処理能力を高めることができる。
【0024】
電力電子スイッチングデバイス70では、第1のダイオード金属酸化膜バリスタ(MOV)72が、第1の固体スイッチ62の両端間に並列に接続され得る。第2のダイオード73は、第2の固体スイッチ63の両端間に並列に接続され得る。図では、各固体スイッチ62、63のドレイン側は、その対応するMOV72、73の一方の側に接続されており、各スイッチ62、63のソース側は、その対応するMOV72、73の他方の側に接続されている。この図では例としてMOVが示されているが、ツェナーダイオードと直列のR-Cスナバ回路など代替の回路保護構成要素が、各MOVの代わりに使用され得る。先に述べたように、各固体スイッチ62又は63は、任意選択的に、並列又は直列に接続された2つ以上のそのようなスイッチを備え得、対応するMOV72、73は、必要に応じて数を増加させて、回路の電流又は電圧処理能力を増加させ得ることが理解されよう。
【0025】
図3は、電力電子スイッチングデバイス70A~70Cを使用するソフトスタート構成のための例示的なトポロジを示し、その各々は、機械式スイッチ61の相に接続されている(図3では、説明を容易にするために2回示される)。電力電子スイッチングデバイス70A~70Cの各々は、図2A図2Bの議論において上記でより詳細に説明されるように、いずれの場合においても2つ以上の固体スイッチ62A/63A、62B/63B、又は62C/63C、並びに2つ以上のMOV又は他の回路保護器72A/73A、72B/73B、又は72C/72Cを含む。
【0026】
図1図3をまとめて参照すると、AC電気モータ40がオフであるとき、各電力電子スイッチングデバイス53の固体スイッチ62、63はオフであり、開回路をもたらす。モータ40の始動/ランプアップ中、ソフトスタータ10は、始動、すなわち「ランプアップ」モードで動作し、その間、システムのコントローラ86は、以下で説明する制御アルゴリズムに従って固体スイッチ62、63をオン及びオフにすることによって固体スイッチ62、63を通る電流を変調させ、したがって、AC電気モータ40に印加される電流(したがって電圧)を制御する。次いで、固体スイッチのみを有する実施形態では、始動後、固体スイッチ62、63はオンのままであって、モータ動作のために回路を閉じたままにする。ハイブリッドスイッチングデバイスを備えるシステムでは、AC電気モータ40の始動に続いて、ソフトスタータ10は、コントローラ86が各相の機械式スイッチデバイス61を閉じさせる「通常」モードになり、固体スイッチ62、63は、短絡状態でオンのままであるか、又はオフになり、機械式スイッチの回路によってバイパスされ得る。
【0027】
ソフトスタータ10の動作は、システムが各相の電流及び電圧を監視することを必要とする。コントローラ86は、1つの電流センサセットから各相の電流測定値を取得する。図1の図示された実施形態では、電流センサセット88は、3つの相のうちの2つに電流センサ88A及び88Bを含む。この場合、システムは、2つの相測定値を使用して、第3の相における電流を計算することができる。代替の実施形態は、各相が2つの電流センサ88A-1/88A-2、88B-1/88B-2、及び88C-1/88C-2を含む図3の実施形態に示すように、3相ごとに1つ以上のそれぞれの電流センサを含み得る。そのような場合、システムは、3相全てで電流を個別に測定することができるか、又は1つの電流センサが故障した場合、2相で電流を測定し、当該データを使用して第3の相の電流を計算することができる。あるいは、2つの電流センサを3相のいずれか2つに設置して2相の電流を測定することができる。この場合、コントローラ86は、2つの測定値及び他のシステムパラメータを使用して、第3の相の電流を計算することができる。ソフトスタータ10はまた、スイッチングデバイスの両端間の電圧を測定する、1つ以上の電圧センサ90を備える。一例として、1つの電圧センサ90のみが図1に示され、3つの電圧センサ90が図3に示されている(1相に全て)が、様々な実施形態は、相ごとに1つ以上の電圧センサの個々のセットを含み得る。あるいは、電圧センサは、3相のうちのいずれか2相に配置されて、2つの相-接地/中性点電圧、又は3つのうちのいずれか2つの相-相電圧を測定することができる(この場合、コントローラ86は、第3の相-接地/中性点電圧又は相-相電圧を計算することができる。1つ以上の温度センサを含む、任意選択の温度感知ユニット92はまた、ソフトスタータ10の温度を監視するために設けられ得る。一緒に、電流センサ、電圧センサ、及び/又は温度感知ユニット(使用される場合)は、コントローラ86にフィードバックを提供するセンサシステム94を形成する。
【0028】
図4及び図5は、システムのコントローラ86が、始動動作中に固体スイッチングデバイスのオン及びオフを繰り返して、AC電気モータへの電流の突入を制限する方法400を示す。図4はプロセスフロー図であり、図5は方法の視覚的な図を提供する。この方法では、システムの相ごとに、コントローラ86は、検出した電圧ゼロ交差及び当該相の位相角基準に基づいてシステムが決定するタイミングに従って、ゲート制御してオンにするように当該相の固体スイッチングデバイスに命令する。加えて、コントローラ86は、検出された電流ゼロ交差及び当該相に対する電流ゼロ交差検出許容範囲の閾値に基づいてシステムが決定するタイミングに従って、ゲート制御してオフにするように各相の固体スイッチングデバイスに命令する。
【0029】
図4及び図5を参照すると、上述したように、システムの固体スイッチングデバイスがオンになると、システムのコントローラ86は、システムの電流センサ及び電圧センサから受信したデータから、401及び403における電流及び電圧を相ごとに決定する。電圧は、電圧波形501として表され得、電流は、電流波形502として表され得る。402において、システムは、電流ゼロ交差(図5において504a及び504bとして一例として表される)を検出し、404において、システムは、電圧ゼロ交差(図5において503として一例として表される)を検出する。
【0030】
405において、システムは、現在の電圧サイクルに対する点弧角を決定する。システムは、始動したモータに利用可能なモータプロファイルデータセットにアクセスするなど、任意の適切なプロセスを使用して点弧角を決定することができる。このようなデータセットは、点弧角値をモータ始動中の時点にマッピングする。点弧角マップは、較正中若しくは試験中に決定することができるか、又はモータを稼動させる前に、ソフトスタータ製造業者、モータ供給業者、又は別のエンティティから受け取ることができる。経時的な点弧角データ606の例示的なマップが図6に示されている。
【0031】
図4及び図5に戻ると、406において、コントローラ86は、ターンオン時間TON511を計算する。これは、コントローラ86がゲート制御して固体スイッチをオンにする、次の電圧ゼロ交差503後の時間511である(図5では時間505として示されている)。407において、コントローラ86は、時間505を測定する。システムは、例えば以下の式を用いてターンオン時間TON511を計算することができる。
【0032】
【数1】
【0033】
上記の式において、2πは、1電圧サイクルの角度を表す。Tperiodは、システムの電圧センサによって測定される測定数であり得るか、又はTperiod≒2(式中、Tは、2つの隣接する電圧ゼロ交差間の測定距離である)などの式を使用して計算され得る。
【0034】
電流がオンになった後、408において、システムは、電流ゼロ交差検出許容閾値IZEROを特定し、任意選択的に、固体デバイスを流れる電流がIZEROからゼロに減少するのに要する推定時間を表す時間Δtも特定する。図7に示されるように、電流ゼロ交差検出許容閾値IZERO701及び時間Δt702の両方は、コントローラ86のメモリ内のモータプロファイルデータに、又はコントローラ86にアクセス可能なメモリ内に、始動したモータ用のモータプロファイルデータセット内でのように記憶され得る。モータの定格及び使用される電圧レベルに応じて、低電圧用途では、IZERO701は、(いずれの場合においてもおよそ)5アンペア、10アンペア、20アンペア、若しくは30アンペア、又はおよそ5~およそ30アンペアの範囲内である別のレベル、又は別のモータにとって好適なレベルであり得る。ΔT702は、較正中若しくは試験中に決定することができるか、又はモータを稼動させる前にモータ又はモータスタータの供給業者から受け取ることができる。
【0035】
図4及び図5に戻ると、409において、システムは、電流レベルが電流ゼロ交差検出許容閾値IZEROに到達する時間としてTOFFを決定する。これを行うために、システムは、電流センサからの測定値を使用して、又はTOFF=T-ΔT(式中、Tは、波形の負の方向(図5に512として示されるように)又は波形の正の方向のいずれかにおいて次に予想される電流ゼロ交差までの時間である)など時間ベースの計算によって、実際の電流レベルを決定することができる。
【0036】
サイクルごとにターンオン時間を決定した後、コントローラ86は、ターンオン時間505においてゲート制御してオンにするように固体デバイスにコマンドを送信し(ステップ410)、コントローラ86は、ターンオフ時間506において固体デバイスにゲートオフコマンドを送信する(ステップ411)。
【0037】
各電圧波形サイクル及び電流波形サイクルの完了後、システムは、412において始動が完了したかどうかを判定する。システムは、任意の適切な方法を使用して、始動が完了したかどうかを判定することができる。例えば、システムは、モータのプロファイルで定義される期間、及び/又はモータ負荷条件に基づいて様々である期間にわたって始動動作を実施するようにプログラムされ得、期間が終了したことを判定することによって始動が完了したことを判定することができる。あるいは、システムは、システム内の電圧及び/又は電流を測定し、システム電圧及び/又は電流が閾値レベル又はモータプロファイルで定義されるような他の基準に到達したときに、始動が完了したと判定することができる。あるいは、システムは、相電流及び/又はモータロータ速度などモータの動作の1つ以上の側面を測定することができ、測定した側面が1つ以上の標的レベルに到達すると、始動が完了したと判定することができる。システムは、他の要因、又はこれら及び他の要因の組み合わせを使用して、種々の実施形態における完了を判定することができる。
【0038】
始動が完了していない場合(412:いいえ)、システムは、ステップ408~411に記載されているように、点弧角を決定し、固体デバイスのオン及びオフを繰り返す。点弧角は、点弧角マップに従って経時的に変化する。始動が完了した場合、413において、コントローラ86は、各ソフトスタートスイッチ53を始動モードから実行モードに移行させる。ソフトスタートスイッチ53がハイブリッドスイッチである場合、413において実行モードに移行するために、機械式スイッチのアクチュエータが機械式スイッチを閉じる。これにより、固体スイッチングデバイスをバイパスする、電源からモータへの導電経路が形成される。機械式スイッチが閉じるのに十分な時間の経過後、コントローラ86は、固体デバイスを短絡状態でオンのままにすることができるか、又は任意選択的に、コントローラ86は、ゲート制御して固体デバイスをオフにし、バイパス動作を完了することができる。ソフトスタートスイッチ53が純粋に固体デバイスであり、ハイブリッドスイッチではない場合、コントローラ86は、413において、実行モードに移行するために、固体デバイスをオンのままにして、回路を閉じたままにし、モータを動作させることができる。
【0039】
ソフトスタートに加えて、当業者は、特定の用途において、図4に関して説明されたフロー図をわずかに修正して、電気機械の制御された停止及び取り付けられた負荷を提供し得ることを理解するであろう。非限定的な一例では、線形及び非線形の両方の様々な点火マップを使用して、ポンピング用途でモータを惰性回転させて停止させる効果を効果的に防止することができる。
【0040】
開示されるソフトスタータのいくつかの実施形態は、AC電気モータのソフトスタートに関して本明細書で説明されてきたが、開示されるソフトスタータは、開示される概念の範囲から逸脱することなく、電気機械以外の負荷を処理するために使用することもできることに留意されたい。
【0041】
本発明の概念の特定の実施形態について詳細に説明してきたが、当業者であれば、それらの詳細に対する様々な修正及び代替物が、本開示の全体的な教示に照らして開発され得ることを理解するであろう。上記の特徴及び機能、並びに代替物は、多くの他の異なるシステム又は用途に組み込まれ得る。様々な代替物、修正、変形、又は改善は、当業者によって行われてもよく、これらの各々はまた、開示される実施形態によって包含されることを意図している。したがって、開示された特定の構成は、単に例示的なものであり、添付の特許請求の範囲の全容及びそれらの任意の及び全ての等価物を与えられる本開示の概念の範囲に関して限定されるものではないことを意味する。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】