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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】磁気分離
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/00 20060101AFI20240214BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20240214BHJP
   B03C 1/01 20060101ALI20240214BHJP
   B03C 1/28 20060101ALI20240214BHJP
   B03C 1/23 20060101ALI20240214BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B03C1/00 A
C12M1/26
B03C1/01
B03C1/00 H
B03C1/28 107
B03C1/23
C12M1/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547544
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2022014447
(87)【国際公開番号】W WO2022169695
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/145,806
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523295305
【氏名又は名称】フェロロジックス,インク.
【氏名又は名称原語表記】FERROLOGIX, INC.
【住所又は居所原語表記】23328 Barfield Drive Valencia, California 91354,The United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マレー コールマン
(72)【発明者】
【氏名】ティーマン ティム
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB11
4B029BB12
4B029CC01
4B029DG08
4B029GB05
4B029HA05
(57)【要約】
磁気ラチェットによって粒子又は細胞を分離するためのシステムは、基板(94)上に間隔をあけて配置された磁気バー(120)のベクトルを有する。システムは、酸化鉄含有量に基づいて磁性物体を分離及び濃縮するために使用され得る。細胞の場合、磁気ビーズに結合したタンパク質又は分子の表面発現に基づいて、異なる表現型が分離され得る。磁界発生器(44)は、溶液(65)内の非磁性粒子又は細胞から磁性粒子又は細胞を分離するように作用する循環磁界を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に間隔をあけて配置された複数の強磁性要素と、
前記強磁性要素の上に配備され、磁性体を受け入れるように構成された支持面と、
前記支持面に隣接して配備された磁界発生器と
を含む、磁性体の磁気分離のためのシステム。
【請求項2】
前記磁界発生器は、完全放射状ハルバッハ配列に配列された複数の永久磁石を有する回転ホイールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記強磁性要素は、NiFe,NiMoFe,CuMnAl,CuMnIn,CuMnSn,NiMnAl,NiMnyIn,NiMnSn,NiMnSb,CoMnAl,CoMnSi,CoMnGa,CoMnGe,PdMnAl,PdMnIn,PdMnSn,PdMnSb,FeNiCo,CuNiFe,及び/又はFeNiALCoCu等の軟磁性合金の間隔をあけて配置されたバーを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記基板及び回転磁界は重力に対して非ゼロの角度配向を有し、前記強磁性要素間の前記間隔は前記基板上の高さが上がるにつれて増加する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
隣接する強磁性要素間の前記間隔は、強磁性要素のベクトルに沿った方向に増加する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
増加したピッチは線形であり、約10μm~約100μmの範囲内である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記支持面の上に配備され、前記強磁性要素の上に配備されたチャネルにつながる入力ウェルを含む上部を更に含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
前記支持面の上に配備され、前記強磁性要素の上に配備されたチャンバにつながる入力チャネル又はチューブを含む上部を更に含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項9】
前記支持面は、強磁性要素ピッチゾーン上に配列された複数の抽出ゲートを有し、前記抽出ゲートは、磁性体又は非磁性体を複数の範囲で分離するように動作可能である、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記支持面は、特定の強磁性ピッチ範囲内で前記抽出ゲートによって閉じ込められた磁性体又は非磁性体を抽出するための複数の抽出ポートを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記基板は、重力に対して非ゼロの角度で配向される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項12】
前記強磁性要素は、前記基板上に一列に配備されたバーを含み、複数のピッチゾーンを形成する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項13】
前記基板は複数の抽出ポートを含み、抽出ゲートは各抽出ポートに関連付けられる、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項14】
前記強磁性要素は、NiFe,NiMoFe,CuMnAl,CuMnIn,CuMnSn,NiMnAl,NiMnyIn,NiMnSn,NiMnSb,CoMnAl,CoMnSi,CoMnGa,CoMnGe,PdMnAl,PdMnIn,PdMnSn,PdMnSb,FeNiCo,CuNiFe,及び/又はFeNiALCoCu等の軟磁性合金の間隔をあけて配置されたバーを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項15】
前記基板はガラスを含み、前記強磁性要素は前記ガラス上の金属層のバーであって、前記基板の長さに対して垂直である前記バーを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項16】
基板と、
前記基板上に一列に間隔をあけて配置された複数の強磁性要素と、
強磁性要素のベクトル上に配備され、粒子又は細胞を受け入れるように構成された支持面と、
前記支持面に磁界を提供する磁界発生器であって、完全放射状ハルバッハ配列に配列された複数の永久磁石を有する回転ホイールを含む前記磁界発生器と、
重力に対して非ゼロの角度配向を有する磁性基板及び回転磁界と
を含む、磁性粒子又は細胞の磁気分離のためのシステム。
【請求項17】
前記強磁性要素間の前記間隔は、前記基板の下端から前記基板の上端に向かって増加する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
基板と、
前記基板上に一列に間隔をあけて配置された複数の強磁性要素と、
強磁性要素のベクトル上に配備され、磁性体を受け入れるように構成された支持面と、
前記支持面に隣接して配備された磁界発生器であって、ハイブリッド電磁石及び希土類磁性平面界発生器を含む前記磁界発生器と
を含む、磁性体の磁気分離のためのシステム。
【請求項19】
基板と、
前記基板上に一列に間隔をあけて配置された複数の強磁性要素と、
強磁性要素のベクトル上に配備された支持面と、
前記支持面に隣接して配備された磁界発生器であって、連続的線形ハルバッハ配列に配列された希土類磁石のコンベヤベルトを含む前記磁界発生器と
を含む、磁性体の磁気分離のためのシステム。
【請求項20】
平坦なガラス部品と、
前記ガラス部品上の複数の磁気バーと
を含み、
隣接する磁気バー間の間隔は、磁気バーのベクトルに沿った方向に増加する、
磁気分離での使用のための基板。
【請求項21】
前記磁気バーは2つ以上のピッチゾーンにグループ化され、前記バーの前記間隔は、連続するピッチゾーン内で線形に増加する、請求項20に記載の基板。
【請求項22】
前記バーは、前記ガラス上に金属層を含み、前記バーは、前記基板の長さに対して垂直である、請求項20又は21に記載の基板。
【請求項23】
バーの前記間隔は約10μm~約100μmの範囲内である、請求項20又は21に記載の基板。
【請求項24】
少なくとも1つの液体入口部を有するハウジングと、
基板上に間隔をあけて配置された複数の強磁気バーを有する前記基板と、
強磁性要素の上に配備された支持面と、
前記ハウジング内の少なくとも1つの抽出ポートと
を含む、磁気分離のためのカートリッジ。
【請求項25】
特定のピッチ範囲で異なる磁化を有する磁性体を分離するように位置づけられた2つの抽出ポートを有する、請求項24に記載のカートリッジ。
【請求項26】
前記バーはガラス上に金属層を含み、前記バーは、前記基板の長さに対して垂直である、請求項24又は25に記載のカートリッジ。
【請求項27】
細胞を磁性にするために、前記細胞が溶液中にある間に磁性材料を前記細胞上又は前記細胞内に提供することと、
前記磁性細胞を含む前記溶液を、基板を有するカートリッジ中に装填することと、
前記基板上の間隔をあけて配置された複数の磁気バーを横切って上向きに前記溶液を移動させることと、
前記磁性細胞に磁界を印加すること
を含む、細胞を分離するための方法。
【請求項28】
前記磁気バーは、前記基板の第1の部分から前記基板の第2の部分に向かって徐々に増加するピッチゾーンを提供するように間隔をあけて配置される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
酸化鉄含有量に基づいて前記細胞を分離することを更に含む、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記磁性要素は2つ以上のピッチゾーンにグループ化される、請求項27又は28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野は、細胞及びその他の微粒子を分離するための強磁性の方法及び装置である。
【背景技術】
【0002】
多くの医療試験及び研究分野では、溶液から細胞を分離する必要がある。磁気ラチェットは、この目的に使用される1つの技術である。磁気ラチェットは、磁気ビーズを特定の種類の細胞、生物学的因子、又は分析物に結合又は組み込むことによって動作し、これによりそれらを磁性体にする。磁気分離力は磁性体にその後印可され得、磁性体を溶液から分離可能にする。一般的に、磁気ビーズは、例えば、5ミクロンから最低約50~100nmまでの範囲のミクロンスケール又はナノスケールのビーズである。磁気ラチェットは過去に様々な程度の成功を収めてきたが、改良された磁気ラチェットの方法及び装置を実現するには工学的な課題が残っている。
【発明の概要】
【0003】
磁性体の磁気分離のためのシステムは、基板上に一列に間隔をあけて配置された複数の強磁性要素を含む。支持面は強磁性要素のベクトル上に位置づけられ、粒子又は細胞を受け入れるように構成される。磁界発生器は支持面に隣接して位置づけられ、完全放射状ハルバッハ配列に配列された複数の永久磁石を有する回転ホイールを含み得る。磁性基板及び回転磁界は、重力に対して非ゼロの角度配向を有し得る。強磁性要素間のピッチ又は間隔は、基板上の高さが上がるにつれて増加し得る。
【0004】
細胞を分離するための方法は、細胞を磁性にするために、細胞が溶液中にある間に磁性材料を細胞上又は細胞中に提供することを含む。磁性体を含む溶液は基板中に装填される。溶液は、間隔をあけて配置された複数の磁性要素を横切って上向きに(uphill)移動させられる。磁性要素は、基板の第1の部分から基板の第2の部分に向かって徐々に増加するピッチゾーンを提供するように間隔をあけて配置され得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図面において、同じ要素番号は各図において同じ要素を指し示す。
【0006】
図1】磁気ラチェット装置の斜視図である。
図2図1の装置の分解斜視図である。
図3】流体ポンプ動作を実施するためにカートリッジと接続するピペットの正面図である。
図4A】容器から溶液を引き込むカートリッジの正面図である。
図4B】容器が取り外された図4Aのカートリッジの側断面図である。
図4C図4Aに示したカートリッジの斜視図である。
図5A】カートリッジの抽出領域内に溶液を有する図4A及び図4Bのカートリッジの正面図である。
図5B図5Aに示したカートリッジの側断面図である。
図5C図1及び図2に示した装置のカートリッジレセプタクル中に挿入された図4A及び図4Bのカートリッジの正面図である。
図6A】磁化された対象細胞、ビーズ、薬剤、又は分析物を含む溶液の抽出を示す図4A図5Bのカートリッジの正面図である。
図6B図6Aに示したカートリッジの側断面図である。
図7】代替の実施形態のカートリッジの斜視図である。
図8】溶液がカートリッジ中に引き込まれた、図7に示したカートリッジの側断面図である。
図9】溶液内の磁性体又は細胞が現在分離された、図7に示したカートリッジの側断面図である。
図10】別の代替の実施形態のカートリッジの斜視図である。
図11A】溶液がカートリッジ中に導入された、傾斜した角度での図10のカートリッジの側断面図である。
図11B】磁性体又は細胞が現在分離された図11Aのカートリッジの側面図である。
図12】別の代替の実施形態のカートリッジの斜視図である。
図13図13のカートリッジの分解斜視図である。
図14図1の装置で使用され得る磁界の概略図である。
図15図1の装置で使用され得る磁界の概略図である。
図16図1の装置で使用され得る磁界の概略図である。
図17図1の装置で使用され得る磁界の概略図である。
図18A】任意のカートリッジで使用され得る磁気バーの配置の概略図である。
図18B】任意のカートリッジで使用され得る磁気バーの配置の概略図である。
図19A図18の磁気バーのピッチ間隔の概略図である。
図19B図18の磁気バーのピッチ間隔の概略図である。
図20】代替の磁気ラチェット装置の斜視図である。
図21図1及び図20に示した磁気ラチェット装置を制御するために使用され得るデバイスの正面図である。
図22】磁気ラチェットを実施するための代替のカートリッジの斜視図である。
図23A】一連の動作を示す図22のカートリッジの正面図である。
図23B】一連の動作を示す図22のカートリッジの正面図である。
図23C】一連の動作を示す図22のカートリッジの正面図である。
図23D】一連の動作を示す図22のカートリッジの正面図である。
図24】磁気ラチェットを実施するための別の代替のカートリッジの斜視図である。
図25A】一連の動作を示す図24のカートリッジの正面図である。
図25B】一連の動作を示す図24のカートリッジの正面図である。
図25C】一連の動作を示す図24のカートリッジの正面図である。
図25D】一連の動作を示す図24のカートリッジの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1及び図2は、従来の設計に比べて利点を有する新規の磁気ラチェット装置の一例を示す。装置又は器具30は、カートリッジレセプタクル36を有し、ハウジング32の前面にディスプレイ34を含み得る。カートリッジレセプタクル36内のカートリッジスロット38は、図3図13に示すカートリッジ60の内の1つ等のカートリッジ60を受け入れるように適合されている。ハウジング32は、装置30の向きを、例えば、図1に示した垂直又は直立位置から水平位置まで、また垂直と水平との間の任意の傾斜角を調整可能にする傾斜プラットフォーム40上に支持され得る。図2に示すように、装置30は、磁性体又は細胞を分離するために使用される磁界を創出するための磁界発生器44を含む。磁界発生器は、モータ50によって回転させられる磁気ホイール46を有する磁気ホイールアセンブリであり得る。磁気ホイール46は、完全放射状ハルバッハ配列に配列された複数の永久磁石を有し得る。磁界発生器44は、代わりに、ハイブリッド電磁石及び希土類磁性平面界発生器でもあり得る。回転数センサ48とモータ50用のコントローラとは、制御回路52に電気的に接続される。
【0008】
使用時、磁性体を含む溶液は、図3に示すように、随意にピペット58を使用して、カートリッジ60内の基板94中に導入される。ここで使用するとき、磁性体とは、磁界の影響を受けて動き得るという意味で、磁性である又は磁性にされた細胞又は粒子を意味する。或いは、図4A及び図4Bに示すように、溶液は、カートリッジ60の下端の入口部64中に引き込まれ得る。図5A及び5Bに示すように、溶液は入口部64からカートリッジ60の抽出領域まで上昇する。図5Cは、装置30のカートリッジスロット38に取り付けられたカートリッジ60を示す。
【0009】
図5A図6Bを参照すると、磁性細胞又は粒子と非磁性細胞又は粒子との両方がカートリッジの底部チャンバ中に引き込まれる。ピペット又はポンプは試料全体をカートリッジ中に引き込む。磁界発生器22は、液体試料内の磁性体を、強磁気バー又は微細構造体を有する基板の表面上に引き寄せる磁界を創出する。非磁性体はカートリッジの底部チャンバの溶液中に残るであろう。磁界発生器44が振動磁界を生み出すと、磁性体は基板を垂直に上方に移動し、抽出チャンバ又は領域70に捕捉される。非磁性粒子はカートリッジの底部チャンバに残る。
【0010】
図4Cに示すように、カートリッジ60は、カートリッジ本体63内に強磁性チップ65を保持するカートリッジ本体63にねじ止めされ得るバッキングプレート61を含み得る。強磁性チップ65は、ガスケット又は接着スペーサ67上に設置され得る。ピペット又はポンプインターフェースフィッティング79は、カートリッジ本体63の上部に設けられる。プランジャ又はリードスクリュー77は、抽出ポートを開閉するために使用され得る。
【0011】
図6A及び図6Bに示すように、磁性体を含む抽出領域又はチャンバ70をカートリッジ60内の残りの溶液65から閉鎖又は密封するために、抽出ゲート又はロック72は、所定の位置にその後移動させられる。抽出ゲート72は、例えば、カートリッジ60の外側にあるノブ76を引く又は押すことによって手で操作でき、ガスケットにカートリッジ内のチャネルを閉鎖させる。磁性体67は、抽出ポート74を介してカートリッジ60からその後抽出され得る。抽出ゲート72の使用は、精製された細胞集団の維持において利点を提供する。抽出ゲートの代替の形式も使用され得る。例えば、制御回路52によって電気的に動作する抽出ゲートが使用され得る。或いは、磁気バリアが随意に使用され得る。
【0012】
カートリッジ内に残る非磁性体を含む溶液は廃棄され、カートリッジは洗浄され得、再利用され得る。或いは、カートリッジは、使い捨て用に設計され得、磁性体が抽出された後に廃棄され得る。使い捨ては、潜在的に無菌システムを提供し得る。抽出ポート74は、以下に説明するように、カートリッジの磁気バー又は要素の列又は行の端にないことが好ましい。
【0013】
図7図9を参照すると、代替のカートリッジ80では、シップ(sip)チップ82及び抽出チップ84がカートリッジの底部に設けられる。カートリッジ80は、抽出された磁性体の純度を最大にするように示した垂直の向きに使用される。シップチップ82は、溶液試料を装填チャンバ86中に引き込む。磁性体は、上に説明したように、磁界を介して分離される。分離後、抽出ゲート72は閉鎖され、磁性体67が抽出チップ84を通じてカートリッジから引き出される。
【0014】
図10は、以下で論じるように、特定のピッチ範囲で異なる磁化を有する細胞を分離するように位置づけられた入力ウェル73、2つの抽出ゲート72、及び2つの抽出ポート74を有する別の代替のカートリッジ90を示す。これにより、カートリッジ90が複数の細胞集団を分離可能にする。例えば、第1の抽出ゲート及び第1の抽出ポートは、カートリッジのピッチ12~30で抽出するように位置づけられ得る一方で、第2の抽出ゲート及び第2の抽出ポートは、カートリッジのピッチ32~50で抽出するように位置づけられ得る。
【0015】
図11A及び図11Bは、傾斜した角度AAで動作するカートリッジ90を示す。テスト結果は、基板が傾斜した角度の場合の磁性体の分離が、(磁性基板が水平の場合の)角度0度に比べて改善されることを示している。角度AAは0°~90°の範囲であり得るが、テスト結果は、30、45、60、又は75~90°のより高い範囲が適切に機能することを示す。正の角度AAは純度と収率との両方を向上させる。短期間(10分間)の細胞懸濁液では重力がこれほど大きな役割を果たすとは予想されなかったため、これは驚くべき結果である。
【0016】
図12及び図13は、カートリッジ90が、随意のガスケット93、磁性基板94、及びバッキングプレート96を有する流体クラムシェル92として提供され得ることを示す。
【0017】
図14図17は、磁界発生器44によって生成され得る磁気波形を示す。図14の連続正弦波磁界は、10~1200ガウスの振幅、1~50Hzの周波数、連続磁化、及び0~90°の接線と法線との間の位相シフトを有し得る。(磁性基板94に平行な)接線磁界と(磁性基板に垂直又は直角な)法線磁界とは異なる振幅を有し得る。図14はまた、完全ハルバッハ配列のコンベヤベルト102として提供される磁界発生器44の実施形態を示す。磁界発生器44はまた、完全放射状ハルバッハ配列106又は多極電磁コイルアセンブリ104として提供され得る。これらの3つの種類の磁界発生器44の各々は、図14の磁界を発生するために使用され得る。テスト結果は、磁性体の分離が部分ハルバッハ配列ではなく完全ハルバッハ配列を有する装置30を使用して改善されることを示唆する。完全ハルバッハ配列を使用することは、磁束密度の強度を200%増加させ得、スループットを増加させる。
【0018】
図15の連続的交番磁界は、図14の磁界と同じ振幅及び周波数範囲を有し得る。この磁界は、単一の磁気ホイール108又はベルト102によって生成され得る。
【0019】
図14に示すように、上部132は、溶液チャネル134を提供する磁性要素120の上部の支持面130の上に間隔をあけて配置される。支持面130は、基板上の薄い(例えば、1ミクロンの)コンフォーマルコーティングであり得る。投入チャネル又はチューブ140は、溶液を基板94中に投入するために、上部と支持面との間のチャンバに通じる上部132の上に設けられ得る。
【0020】
図16及び図17は、随意に使用もされ得る磁気パルス波形を示す。これらはコンベヤベルト102によって生成され得る。
【0021】
カートリッジ60の各々は、図18Aに示すように、磁性要素又はバー120のベクトルを有する磁性基板94を有する。隣接する磁気バー120間のピッチ間隔又はギャップ150は、改善された一次元磁気ラチェットを提供するように、基板の下端から高端まで徐々に増加し得る。各ギャップ150は、図18Aの矢印で指し示したベクトル方向において、前のギャップよりも約2μm~約10μm広くてもよい。典型的な基板ピッチ(バーの中心間の距離)は、基板内の位置に応じて、10μm~100μmの範囲であり得る。しかしながら、ピッチ増分レベルも変化し得る。これらは2つの別個のパラメータである。通常10~100μmの範囲の“要素ピッチ”と、通常2μm~10μmの範囲の“ピッチ増分”である。一例として、基板は20個のピッチゾーン又は間隔をあけて配置された磁気バーのグループを有し、各ピッチゾーンは、例えば、2mmのスパンである。第1のピッチゾーンでは、磁気バーは10ミクロンのピッチで間をあけて配置される。隣接する又は隣の第2の又は次のピッチゾーンは、12ミクロンのピッチで間隔をあけて配置された磁気バーを有し、第3のピッチゾーンは、14ミクロンのピッチで間隔をあけて配置された磁気バーを有する等々であり、各ピッチゾーンのピッチは、2ミクロンずつ、最大50μmの終了ピッチまで徐々に増加する。別の例では、第1のピッチゾーンは10μmの開始ピッチを有し、第2のピッチゾーンは20ミクロンのピッチを有する等々であり、最大100μmの最終ピッチ(すなわち、10、20、30、40・・・100ミクロンのピッチ)である。
【0022】
ピッチ間隔の例を図19A及び図19Bに示す。基板は、ピッチゾーン160及び162に概念的に分割され得る。磁気バーは、NiFe,NiMoFe,CuMnAl,CuMnIn,CuMnSn,NiMnAl,NiMnyIn,NiMnSn,NiMnSb,CoMnAl,CoMnSi,CoMnGa,CoMnGe,PdMnAl,PdMnIn,PdMnSn,PdMnSb,FeNiCo,CuNiFe,及び/又はFeNiALCoCu等の軟磁性合金からなり得る。
【0023】
図18Bに示すような列及び行内のピラーのマトリックスではなく、バー120の単一ベクトルを有する磁性基板94を有するカートリッジ60を使用することは、改善された結果をもたらす。図18Aのバー120の単一ベクトルは、驚くべきことに、図18Bのアレイ/マトリックスで観察される細胞の詰まりを軽減又は回避する。図18Bのピラー設計は、面内磁界バイアスに対してより敏感である。このことは、細胞を輸送させ得、互いに衝突させるので最終的には凝集させ得る。細胞凝集体は磁気ラチェット輸送挙動が大きく異なるため、細胞凝集体は磁気分離の品質を歪め得る。例えば、(磁気ビーズが殆どない)低いシグナルを有する細胞が(磁気ビーズが多い)高いシグナルを有するセルと凝縮する場合、凝集体は、対象細胞の純度が低下し得る高いピラーピッチに移動するであろう。
【0024】
その他のアスペクト比(“パンケーキ”又は“極”)では効果的な分離に必要な種類の界が生成されないため、小さな機構(5~20ミクロン)対する1:1の高さ:幅が重要である。各磁気バー120は、磁界発生器44からの外部から印加された磁界を増幅するので、磁気バーの密度が高くなると、基板1平方センチメートルあたりの磁気エネルギー密度は増加する。平方センチメートルあたりの磁気エネルギーが高くなると、磁性要素の充填率が低い場合と比較して、細胞が基板上でより速く輸送され得るため、より高いスループットを生む。同様の概念が導電率にも当てはまる。シリコンウェーハへのドーピングと同様に、磁気充填量を増やすことにより、印加される磁界をより大きく増幅可能にする。
【0025】
ビーズのサイズではなく鉄含有量に基づいて磁気ビーズを選択することによって、分離結果が向上し得る。分離は、外部表面マーカー抗原に結合した磁気ビーズを有する細胞に限定されず、鉄含有ビーズを内部に取り込む異なる能力を有する生細胞集団によっても可能である。上記の説明は主に細胞に言及しているが、説明した装置及び方法はその他の種類の粒子の使用にも同様に適用される。
【0026】
図20図22は、代替のカートリッジ180から液体を移動させるための、蠕動ポンプ等のポンプ170を有する代替の装置168を示す。ポンプチューブ172は、ポンプ入口部192を図22に示したカートリッジ180上のバルブ186に接続する。ポンプ170の出口部は、排出又は廃棄容器につながる廃棄チューブ174に接続される。図22を参照すると、カートリッジ180は、図4A図4Cに示したカートリッジに関して上に説明したように、カートリッジ本体に取り付けられたバッキングプレートと、ガスケット又は接着スペーサ上の強磁性チップとを備えて構築され得る。カートリッジ180は試料リザーバ182を有し、これはシリンジ本体として提供され得る。カートリッジは、抽出ロックゲートバルブ184、細胞洗浄ポート188、細胞抽出ポート190、及び廃棄出口ポート192を含む。
【0027】
図23A図23Dを参照すると、使用中、カートリッジ180は緩衝液で満たされる。図22に示すようにバルブ186が第1の位置にある場合、図23Aに示すように、ポンプ170は緩衝液をリザーバ182からカートリッジ中に引き込む。次に、バルブ186は第2の位置に移動させられ、試料をカートリッジ180中に引き込むためにポンプが作動させられる。図23B及び図23Cに示すように、磁性細胞が捕捉され、磁気ラチェットが上に説明したように実施される。抽出された細胞又は粒子が隔離されて抽出ロック184がその後閉鎖され、図23Dに示すように、それらは細胞抽出ポート190を介してカートリッジ180から溶出される。
【0028】
図21は、分析器168を制御するためのユーザインターフェースを有するタブレット又は類似のデバイス230を示す。デバイス230は、ケーブル232又は無線接続を介して分析器168に接続される。デバイスはまた、分析器の動作パラメータ及び状態も表示し得る。一実施形態では、デバイス230は、分析器168の状態、及びカートリッジの内外に移動した液体の体積を表示し得る。分離ステップの継続時間等のその他のデータも表示され得る。分析器168は、例えば、カートリッジを満たすステップ、試料を注入するステップ、試料を分離するステップ、及びカートリッジ又はリザーバから液体を吸引するステップのためのタッチアイコンを含み得るデバイス230のタッチスクリーンを介して制御され得る。カートリッジのポンプ及びバルブの動作は、分析器168の自動動作を提供するために、アクチュエータ又はモータを介して自動化され得る。
【0029】
図24は、カートリッジ本体201にねじ止めされたカートリッジ本体バッキングプレート203を有し、カートリッジ200内に強磁性チップ205を保持する別の代替のカートリッジ200を示す。試料リザーバ202がカートリッジ本体201内に形成される。第1及び第2の可撓性ゲートバルブ204A及び204Bは、試料注入部及び試料リザーバを提供する。バッファポート206、流体ポンプポート208、及び細胞除去ポート210は、カートリッジの内外への液体の移動のための流体接続を提供する。カートリッジ200は、上に説明したように、また図25A図25Dに示すように使用され得る。
【0030】
基板は、ガラス上に金属層を塗布し、フォトリソグラフィーを使用して磁気バーパターンをエッチングし、その後金属メッキすることによって製造され得る。ここで使用するとき、細胞への言及は、その他の微視的な粒子又は物体も含む。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図24
図25A
図25B
図25C
図25D
【国際調査報告】