(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】新規核酸分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/50 20060101AFI20240214BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/14 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/23 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240214BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240214BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20240214BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240214BHJP
C12N 1/00 20060101ALN20240214BHJP
C12N 7/00 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C12N15/50
C12N15/13 ZNA
C12N15/14
C12N15/23
C12N15/62 Z
C12N15/31
C12N15/88 Z
A61K31/7088
A61K48/00
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/215
A61K39/00 H
A61P35/02
A61K9/127
A61K9/107
A61K9/00
C12N1/00 Z
C12N7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547642
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 KR2022001874
(87)【国際公開番号】W WO2022169339
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0017115
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516017994
【氏名又は名称】エスティー ファーム カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】231,Hyeomnyeok-ro,Siheung-si,Gyeonggi-do,15086 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギョンジン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジュ‐ソン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,カン・ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ユン・チェ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA99Y
4B065CA45
4C076AA17
4C076AA19
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4C086MA01
4C086MA04
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4C086MA22
4C086MA24
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、シグナルペプチドをコードする核酸および抗原をコードする核酸を含むウイルス感染症またはがんの予防または治療用核酸分子に関する。また、本発明は、前記核酸分子を含むウイルス感染症またはがんの予防または治療用ワクチン組成物に関する。本発明に係る核酸分子は、細胞内タンパク質発現率および細胞外部へのタンパク質分泌能に優れている。また、生体内に投与される場合、個体で抗原特異的中和抗体誘導などの体液性免疫力を獲得するようにし、ウイルスの死滅に直接関与する免疫細胞の量を増加させるなどの細胞性免疫力を獲得するようにするので、ウイルス感染症またはがんの予防および治療のためのワクチンとして有用に活用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgE(イムノグロブリンE:Immunoglobulin E)、アルブミン(albumin)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、第IX因子(factor IX)およびムチン-様タンパク質1(mucin-like protein 1)からなる群より選択された1つ以上に由来したシグナルペプチドをコードする核酸;および抗原をコードする核酸を含む、ウイルス感染症またはがんの予防または治療用の核酸分子。
【請求項2】
前記シグナルペプチドをコードする核酸は、配列番号2~4、6~8、10~12、14~16、および18~20からなる群より選択された1つ以上である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記抗原は、コロナウイルス、腫瘍ウイルス(oncovirus)、腫瘍-特異的抗原(cancer tumor-specific antigen)、腫瘍-関連抗原(tumor-associated antigen)および新生抗原エピトープ(neoantigen epitope)からなる群より選択された1つ以上に由来したものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記抗原は、コロナウイルス由来のスパイクタンパク質および膜タンパク質からなる群より選択された1つ以上である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記抗原をコードする核酸は、配列番号22~25、および27~30からなる群より選択された1つ以上である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記核酸分子は、Th細胞エピトープをコードする核酸を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記Th細胞エピトープは、破傷風トキソイド(Tetanus toxoid)、ジフテリアトキソイド(DTH toxoid)および百日咳トキソイド(Purtussis toxoid)からなる群より選択された1つ以上に由来したものである、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記Th細胞エピトープをコードする核酸は、配列番号45および46からなる群より選択された1つ以上である、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記コロナウイルス感染症は、重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome、SARS)、中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome、MERS)およびコロナウイルス感染症-19(Coronavirus disease-2019、COVID-19)からなる群より選択された1つ以上である、請求項9に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記がんは、固形がん腫および血液がん腫からなる群より選択された1つ以上である、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記がんは、胃がん、肺がん、肝がん、大腸がん、結腸がん、腎臓がん、小腸がん、膵臓がん、脳腫瘍、骨がん、皮膚がん、表皮がん腫、扁平上皮がん、乳がん、硬化性腺症、頭頸部がん、食道がん、咽頭がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、神経芽細胞腫、黒色腫、肉腫、前立腺がん、子宮がん、子宮頸部がん、卵巣がん、腟がん、外陰がん、尿道がん、膀胱がん、陰茎がん、精巣がん、血液がん、血管肉腫、白血病、リンパ腫、線維腺腫、およびこれらの転移がんからなる群より選択される1つ以上である、請求項11に記載の核酸分子。
【請求項13】
請求項1に記載の核酸分子を含む、ウイルス感染症またはがんの予防または治療用のワクチン組成物。
【請求項14】
前記核酸分子は、伝達体に担持または連結されたものである、請求項13に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記伝達体は、リポソーム基盤伝達体、脂質基盤伝達体、ポリマー基盤伝達体および脂質-ポリマーハイブリッドナノ粒子からなる群より選択された1つ以上である、請求項14に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記伝達体は、リポソーム(liposome)、フィトソーム(phytosome)、エトソーム(ethosome)、脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle)、脂質-様ナノ粒子(lipid-like nanoparticle)、脂質エマルション(lipid emulsion)、リポプレックス(lipoplex)、脂質ミセル(lipid micelle)、ポリマーソーム(polymersome)、ポリマー性ナノ粒子(polymeric nanoparticle)、デンドリマー(dendrimer)、ナノスフィア(nanosphere)、ポリプレックス(polyplex)、ポリマー性ミセル(polymeric micelle)、脂質-ポリマーハイブリッドナノ粒子(lipid-polymer hybrid nanoparticle)、カチオン性ナノエマルション(cationic nanoemulsion)、アニオン性ナノエマルション(anionic nanoemulsion)およびリポポリプレックス(lipopolyplex)からなる群より選択された1つ以上である、請求項15に記載のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シグナルペプチドをコードする核酸および抗原をコードする核酸を含むウイルス感染症またはがんの予防または治療用核酸分子に関する。また、本発明は、前記核酸分子を含むウイルス感染症またはがんの予防または治療用ワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ワクチンは、多様な方法で開発されて製造されており、具体的な種類としては、病原体を弱毒化された状態で注入する弱毒化/生ワクチン(attenuated vaccine)、病原体そのものではなく疾病を引き起こす原因物質(毒素)を非活性化させて作ったトキソイドワクチン(toxoid vaccine)、抗原として認識される抗原決定部位に相当する部分のみを別に抽出して作ったサブユニットワクチン(subunit vaccine)、遺伝子情報を利用してエピトープのみを別に生産して作った組換えワクチン(recombinant vaccine)などがある。
【0003】
上述したワクチンの中でも、組換えワクチンは、エピトープの以外に他の成分は含まれないため安全性が高いという長所があり、特に、mRNAからなる核酸ワクチンは生産速度が速く低費用であり、細胞媒介免疫(cell-mediated immunity)および体液免疫(humoral immunity)の両方に対して免疫反応を誘導することができるという点で多くの利点がある。また、抗原の多様な構成成分のうち免疫反応を誘導する特定エピトープのみを選別して使用するなど、ワクチンの構成を多様にデザインすることができるところ、ウイルス感染症、がんなどの多様な疾病の予防または治療に有用に活用されている。
【0004】
一例として、ウイルス感染症としては、風邪、インフルエンザ、水痘、口唇ヘルペスなど比較的軽い症状を見せることから、狂犬病、エボラ、マールブルク、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス病、AIDS、鳥インフルエンザ、SARS、COVID-19、がんなどの深刻な副作用および後遺症を引き起こす重症疾患を有することができる。よって、感染後に発現された症状を緩和させて治療するより症状の発現を予防することが主要な問題であることによって、ウイルス感染症を予防するためのワクチンの開発が活発に行われている。
【0005】
また、がんワクチンと関連しては、ウイルス感染によって発病するがんだけでなく、細胞の突然変異によって発病するがんに対しても、予防、治療などの用途でがんワクチンが研究および開発されている。がん細胞は、正常細胞には存在しない腫瘍-特異的抗原が存在するが、がんワクチンは、このような腫瘍-特異的抗原を通じてがん細胞特異的免疫反応を誘導することでがん細胞が過剰増殖される前に死滅させる。一部のがんワクチンは、患者オーダーメード型で製作されることもあり、患者のがん細胞遺伝子を分析することで、がんを誘発した突然変異遺伝子を捜し出し、これによりコードされる新生抗原エピトープ(neoantigen epitope)に翻訳されるmRNAをワクチンで製造して投与する場合、該当患者にのみ強力な免疫反応を誘導することができ、オーダーメード型精密医薬で開発が可能であるという長所がある。
【0006】
ただし、mRNAワクチンなどの核酸ワクチンは、作用機序の特性上タンパク質への発現効率が非常に重要であり、タンパク質の発現程度によってワクチンの効能が決定されるところ、多様な疾病をターゲットにするだけでなく、タンパク質発現能もまた向上した物質の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、シグナルペプチドをコードする核酸および抗原をコードする核酸を含むウイルス感染症またはがんの予防または治療用核酸分子、および前記核酸分子を含むワクチン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において開示されているそれぞれの説明および実施形態は、それぞれの他の説明および実施形態にも適用されることができる。すなわち、本発明において開示されている多様な要素のすべての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、下記に記述された具体的な叙述によって本発明の範疇が制限されると見られない。
【0009】
また、本明細書において特に正義されていない用語に対しては、本発明の属する技術分野において通常的に使用される意味を有するものと理解されなければならないだろう。また、文脈上、特に定義しない場合であれば、単数は複数を含み、複数は単数を含む。
【0010】
本発明の一様態は、シグナルペプチドをコードする核酸および抗原をコードする核酸を含む、ウイルス感染症またはがんの予防または治療用核酸分子を提供する。
【0011】
用語「シグナルペプチド」は、タンパク質合成初期にタンパク質のN-末端に存在するペプチドを意味し、シグナル配列(signal sequence)、ターゲティング配列(targeting signal)、局在化シグナル(localization signal)、局在化配列(localization sequence)、リーダー配列(leader sequence)またはリーダーペプチド(leader peptide)などとも呼ばれる。本発明に係るシグナルペプチドは、核酸分子のタンパク質発現および分泌を増加させる役割を遂行することができる。このとき、本明細書において、前記「タンパク質発現」または「タンパク質発現率」は、「タンパク質翻訳」、「タンパク質翻訳率」、「抗原発現」、「抗原発現率」などと同一の意味で相互交換的に使用されることができる。
【0012】
具体的に、前記シグナルペプチドは、IgE(イムノグロブリンE:Immunoglobulin E)、アルブミン(albumin)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、第IX因子(factor IX)およびムチン-様タンパク質1(mucin-like protein 1、MLP1)からなる群より選択された1つ以上に由来したものであってよいが、これに制限されるものではない。
【0013】
また、前記シグナルペプチドは、IgEに由来した配列番号1、アルブミンに由来した配列番号5、IFN-γに由来した配列番号9、第IX因子に由来した配列番号13、およびMLP1に由来した配列番号17で表示されるペプチドからなる群より選択された1つ以上であってよいが、これに制限されるものではない。
【0014】
また、前記シグナルペプチドをコードする核酸は、配列番号2~4、6~8、10~12、14~16、および18~20からなる群より選択された1つ以上であってよいが、これに制限されるものではない。
【0015】
用語「抗原」は、特異的抗体生産、サイトカイン分泌などの免疫反応を誘発するタンパク質を意味し、前記抗原は、コロナウイルス、腫瘍ウイルス(oncovirus)、腫瘍-特異的抗原(tumor-specific antigen)、腫瘍-関連抗原(tumor-associated antigen)および新生抗原エピトープ(neoantigen epitope)からなる群より選択された1つ以上に由来したものであってよい。
【0016】
前記コロナウイルスの具体的な例として、アルファコロナウイルス属(α-CoV、alphaCoV、alphacoronavirus)、ベータコロナウイルス属(β-CoV、betaCoV、betacoronavirus)、ガンマコロナウイルス属(γ-CoV、gammaCoV、gammacoronavirus)またはデルタコロナウイルス属(δ-CoV、deltaCoV、deltacoronavirus)に属するものであってよく、さらに具体的に、HCoV-229E、HCoV-NL63、Bat-SARS-like(SL)-ZC45、Bat-SL ZXC21、SARS-CoV、MERS-CoV、HCoV-OC43、HKU-1、MHV-A59またはSARS-CoV-2であってよいが、これに制限されるものではない。
【0017】
さらに具体的に、前記抗原は、コロナウイルス由来のスパイクタンパク質(spike protein)および膜タンパク質(membrane protein)からなる群より選択された1つ以上であってよい。
【0018】
さらに具体的に、前記抗原は、コロナウイルス由来のスパイクタンパク質(spike protein)および膜タンパク質(membrane protein)からなる群より選択された1つ以上であってよい。本発明に係るコロナウイルスのスパイクタンパク質は、免疫反応を誘導して中和抗体生成能を増加させる役割を遂行することができ、前記膜タンパク質は、CD4+Th細胞の機能を向上させるなどの免疫反応を誘導してウイルスに感染した細胞を死滅させる役割を遂行することができる。
【0019】
前記腫瘍ウイルスは、腫瘍(がん)の原因になるウイルスを意味し、具体的な例として、HBV(B型肝炎ウイルス:Hepatitis B virus)、HCV(C型肝炎ウイルス:Hepatitis C virus)、HTLV(ヒトTリンパ球向性ウイルス:Human T-lymphotropic virus)、HPV(ヒトパピローマウイルス:Human papillomaviruses)、HHV-8(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス:Kaposi´s sarcoma-associated herpesvirus)、MCV(メルケル細胞ポリオーマウイルス:Merkel cell polyomavirus)またはEBV(エプスタイン・バーウイルス:Epstein-Barr virus)であってよいが、これに制限されるものではない。
【0020】
また、前記「腫瘍-特異的抗原」、「腫瘍-関連抗原」および「新生抗原エピトープ」は、正常細胞には存在せず、がん細胞にのみ特異的に存在する抗原またはエピトープを意味する。具体的な例として、フレームシフト突然変異(mutational frameshift)、スプライス変異(splice variant)、遺伝子融合(gene fusion)、内因性レトロエレメント(endogenous retroelement)など、がん細胞特異的な突然変異によって誘発された突然変異遺伝子、または前記突然変異遺伝子から発現されたmRNAまたはタンパク質であってよい。
【0021】
また、前記抗原は、配列番号21および26からなる群より選択された1つ以上のアミノ酸配列であってよく;前記抗原をコードする核酸は、配列番号22~25、および27~30からなる群より選択された1つ以上の核酸配列であってよいが、これに制限されるものではない。
【0022】
本発明に係る核酸分子は、Th細胞エピトープをコードする核酸を含むことができる。
【0023】
用語「Th細胞エピトープ」は、Th細胞によって認識されてTh細胞による免疫反応を誘導するペプチドを意味し、前記「Th細胞(T helper cell)」は、CD4+細胞、CD4+T細胞、ヘルパーTリンパ球、ヘルパーT細胞などとも呼ばれる免疫細胞を意味する。本発明に係るTh細胞エピトープは、Th細胞による免疫反応を誘導して中和抗体生成能を増加させる役割を遂行することができ、具体的に、IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-10、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13などの多様なサイトカインを分泌し、これによりB細胞の抗体生成、細胞毒性T細胞の活性化、メモリーT細胞の活性化、マクロファージを始めとした食細胞の抗バクテリア活性促進などの免疫反応を遂行することができる。
【0024】
具体的に、前記Th細胞エピトープは、破傷風トキソイド(Tetanus toxoid)、ジフテリアトキソイド(DTH toxoid)および百日咳トキソイド(Purtussis toxoid)からなる群より選択された1つ以上に由来したペプチドであってよい。前記トキソイドは、毒性は除去されたが免疫反応を誘導する免疫原性が残っている物質を意味し、「破傷風トキソイド(Tetanus toxoid)」は、破傷風菌であるクロストリジウム・テタニー(Clostridium tetani)が生産する神経毒素であるテタノスパスミン(tetanospasmin)に由来したもの、「ジフテリアトキソイド(DTH Toxoid)」は、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)が生産する外毒素に由来したもの、「百日咳トキソイド(Pertussis toxoid)」は、百日咳菌であるボルデテラ・パーツシス(Bordetella pertussis)が生産するペプチドグリカン切片に由来したものであってよい。また、前記Th細胞エピトープは、マクロファージあるいは樹状細胞のような抗原提示細胞のMHC クラス IIによって提示され、Th細胞のT細胞受容体(T cell receptor)によって感知されて刺激シグナルを伝達するペプチド配列で構成されたエピトープを含むことができる。
【0025】
また、前記Th細胞エピトープは、切断部位(cleavage site)をコードする核酸を追加で含むことができ、また前記抗原とTh細胞エピトープとの間に切断部位をコードする核酸配列を追加で含むことができる。前記用語「切断部位(cleavage site)」は、タンパク質分解酵素によって切断されるペプチドを意味する。本発明においては、前記核酸分子から発現されたタンパク質が酵素によって認識された部位が切断されることができるようにする役割を遂行し、これを通じて核酸分子に連結された各シグナルペプチド、抗原および/またはTh細胞エピトープが本発明に係る役割を遂行できるようにする。前記切断部位は、細胞内に存在する内因性酵素によって切断されることができ、具体的に、フーリンプロテアーゼ(furine protease)または口蹄疫ウイルス(FMDV)2A自己切断部位によって切断されることができるが、これに制限されるものではない。
【0026】
また、前記Th細胞エピトープは、配列番号44のアミノ酸配列であってよく;前記Th細胞エピトープをコードする核酸は、配列番号45および46からなる群より選択された1つ以上の核酸配列であってよいが、これに制限されるものではない。
【0027】
用語「ウイルス感染症」(viral infection)は、ウイルスが人体の器官や組織で増殖した結果で生じる疾病を意味する。
【0028】
具体的に、前記ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症であってよい。前記コロナウイルス感染症の具体的な例として、重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome、SARS)、中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome、MERS)およびコロナウイルス感染症-19(Coronavirus disease-2019、COVID-19)からなる群より選択された1つ以上であってよいが、コロナウイルス感染による疾病である限り、これに制限されるものではない。
【0029】
また、前記ウイルス感染症は、がんであってよい。前記がんの具体的な例として、固形がん腫および血液がん腫からなる群より選択された1つ以上であってよく、前記固形がん腫としては、肝がん(Hepatocarcinoma)、子宮頸部がん(cervical cancer)、肛門がん(anal cancer)、陰茎がん(penis cancer)、外陰がん(vulva cancer)、腟がん(vaginal cancer)、中咽頭がん(oropharyngeal cancer)、カポシ肉腫(Kaposi´s sarcoma)、鼻咽頭がん(nasopharyngeal carcinoma)、胃がん(stomach cancer)、多発性キャッスルマン病(multicentric Castleman´s disease)、原発性滲出液リンパ腫(primary effusion lymphoma)またはメルケル細胞がん(Merkel cell carcinoma)などであってよく、前記血液がん腫としては、T細胞白血病(T-cell leukemia)、原発性滲出液リンパ腫(primary effusion lymphoma)、バーキットリンパ腫(Burkitt´s lymphoma)、ホジキンリンパ腫(Hodgkin´s lymphoma)または移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disease)などであってよいが、腫瘍ウイルス感染によるものである限り、これに制限されるものではない。
【0030】
また、本発明に係る核酸分子が予防することができるがんには、具体的な例として、固形がん腫および血液がん腫からなる群より選択された1つ以上であってよく、前記固形がん腫としては、胃がん、肺がん、肝がん、大腸がん、結腸がん、腎臓がん、小腸がん、膵臓がん、脳腫瘍、骨がん、皮膚がん、表皮がん腫、扁平上皮がん、乳がん、硬化性腺症、頭頸部がん、食道がん、咽頭がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、神経芽細胞腫、黒色腫、肉腫、前立腺がん、子宮がん、子宮頸部がん、卵巣がん、腟がん、外陰がん、尿道がん、膀胱がん、陰茎がん、精巣がん、線維腺腫またはこれらの転移がんなどであってよく、前記血液がん腫としては、血液がん、血管肉腫、白血病、リンパ腫、またはこれらの転移がんなどであってよいが、これに制限されるものではない。
【0031】
また、本発明に係る核酸分子は、ワクチン製造用核酸分子であってよく、ウイルス感染症またはがんの予防または治療用ワクチンの製造用核酸分子であってよい。
【0032】
用語「予防」は、本発明に係る核酸分子によってウイルス感染症またはがんが抑制または遅延するすべての行為を意味する。
【0033】
用語「治療」は、本発明に係る核酸分子によってウイルス感染症またはがんの症状が好転または完治されるすべての行為を意味する。
【0034】
用語「核酸分子」は、DNAおよびRNA分子を包括的に含む意味を有し、前記核酸分子において基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけでなく、糖または塩基部位が変形されたアナログ(analogue)も含む。本発明の核酸分子の配列は変異することができ、前記変異は、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、非保存的な置換または変形を含む。
【0035】
また、核酸配列およびアミノ酸配列を含む、本発明において利用されるすべての配列は、生物学的に均等活性を有する変異を考慮すると、配列リストに記載した配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものと解析される。前記用語「実質的な同一性」は、本発明の配列と任意の他の配列を最大限対応するように整列(align)し、当業界において通常的に利用されるアルゴリズムを利用して整列された配列を分析した場合に、最小60%の相同性、さらに具体的に70%の相同性、さらに具体的に80%の相同性、最も具体的に90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を示す配列を意味する。
【0036】
したがって、本発明の配列番号1~59で表示される配列と高い相同性を有する配列、例えば、その相同性が70%以上、具体的に80%以上、さらに具体的に90%以上の高い相同性を有する配列も本発明の範囲に含まれるものと解析されなければならない。
【0037】
前記核酸分子は、本発明に係るシグナルペプチド、抗原および/またはTh細胞エピトープを次のような構造で含むことができる:5´-[シグナルペプチド]-[抗原]-3´または5´-[シグナルペプチド]-[抗原]-[Th細胞エピトープ]-3´。
【0038】
このとき、前記シグナルペプチド、抗原および/またはTh細胞エピトープは、上述した順序に制限されるものではなく、本発明に係る役割を遂行することができる限り、その順序には制限がない。
【0039】
また、前記シグナルペプチド、抗原および/またはTh細胞エピトープは、前記核酸分子に単数または複数で含まれることができ、タンパク質の発現率が減少しない限り、その数には制限がない。
【0040】
また、前記核酸分子は、前記シグナルペプチド、抗原および/またはTh細胞エピトープの以外に、タンパク質への発現のための一般的な核酸配列、具体的な例として、7-メチルグアノシン(7-methylguanosine)を含む5´-CAP、Kozak配列、開始コドン、終止コドン、アデノシン(adenosine)を含む3´-ポリAテール(3´-Poly A tail)などを含むことができる。
【0041】
本発明の他の一様態は、前記核酸分子を含む、ウイルス感染症またはがんの予防または治療用ワクチン組成物を提供する。
【0042】
このとき、前記「核酸分子」、「ウイルス感染症」および「がん」に対する説明は、前述のとおりである。
【0043】
用語「予防」は、本発明に係るワクチン組成物の投与によってウイルス感染症またはがんが抑制または遅延するすべての行為を意味する。
【0044】
用語「治療」は、本発明に係るワクチン組成物の投与によってウイルス感染症またはがんの症状が好転または完治されるすべての行為を意味する。
【0045】
用語「ワクチン」は、個体に免疫を与える抗原を含有した生物学的な製剤であって、感染症の予防のために個体に注射するか経口投与することで個体の生体に免疫が生じるようにする免疫原または抗原性物質を言う。前記ワクチンは、RNAワクチンであってよく、具体的にmRNAワクチンであってよい。用語「mRNAワクチン」は、抗原の遺伝子のうち一部を人工的に複製した後、これを投与することで免疫反応を引き起こすワクチンを意味する。このようなmRNAワクチンは、既存のタンパク質ワクチンに比べて多様な長所を持つが、まず、純粋な標的抗原の遺伝情報のみで合成製作が可能であるため、危険な病原体を直接取り扱う必要がなく、毒性誘発に必要な遺伝子のうち一部のみを使用するので、投与されても別に毒性を表す恐れがなく、mRNAのみから構成される単純さのため急に発生する感染病または多様な突然変異に対するワクチンを速かに開発することができるというなどの多様な長所を持っている。
【0046】
具体的に、本発明に係るウイルス感染症またはがんの予防または治療用ワクチン組成物は、コロナウイルス感染症および/またはがんの予防または治療用として使用されることができ、コロナウイルス、腫瘍ウイルス、腫瘍-特異的抗原、腫瘍-関連抗原および/または新生抗原エピトープに対する免疫能を有するものであってよい。前記コロナウイルスの具体的な例として、アルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属、ガンマコロナウイルス属またはデルタコロナウイルス属、さらに具体的な例として、HCoV-229E、HCoV-NL63、Bat-SARS-like(SL)-ZC45、Bat-SL ZXC21、SARS-CoV、MERS-CoV、HCoV-OC43、HKU-1、MHV-A59またはSARS-CoV-2などであってよく、前記腫瘍ウイルスの具体的な例として、HBV、HCV、HTLV、HPV、HHV-8、MCVまたはEBVなどであってよいが、これに制限されるものではない。
【0047】
また、前記ワクチン組成物に含まれる前記核酸分子は、伝達体に担持されるか、または連結されたものであってよく、前記伝達体は、リポソーム基盤伝達体、脂質基盤伝達体、ポリマー基盤伝達体および脂質-ポリマーハイブリッドナノ粒子からなる群より選択された1つ以上であってよいが、これに制限されるものではない。前記伝達体の具体的な例として、リポソーム(liposome)、フィトソーム(phytosome)、エトソーム(ethosome)、脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle)、脂質-様ナノ粒子(lipid-like nanoparticle)、脂質エマルション(lipid emulsion)、リポプレックス(lipoplex)、脂質ミセル(lipid micelle)などのリポソーム基盤伝達体または脂質基盤伝達体;ポリマーソーム(polymersome)、ポリマー性ナノ粒子(polymeric nanoparticle)、デンドリマー(dendrimer)、ナノスフィア(nanosphere)、ポリプレックス(polyplex)、ポリマー性ミセル(polymeric micelle)などのポリマー基盤伝達体;または脂質-ポリマーハイブリッドナノ粒子(lipid-polymer hybrid nanoparticle)、カチオン性ナノエマルション(cationic nanoemulsion)、アニオン性ナノエマルション(anionic nanoemulsion)、リポポリプレックス(lipopolyplex)などの脂質-ポリマーハイブリッドナノ粒子であってよいが、これに制限されるものではない。
【0048】
本発明のワクチン組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。前記用語「薬学的に許容可能な担体」は、任意のすべての溶媒、分散媒質、コーティング剤、抗原補強剤、安定剤、賦形剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張性作用剤、吸着遅延剤などを含む。前記担体の具体的な例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、澱粉、グリセリン、アラビアガム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油を有することができるが、これに制限されるものではない。
【0049】
また、本発明のワクチン用組成物は、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルション、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形および滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用されることができる。製剤化する場合には、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤することができる。
【0050】
前記ワクチン組成物は、多様な形態で個体に投与されることができる。前記「投与」は、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、腹膜内投与、静脈投与、鼻腔投与、経皮投与、非経口投与および経口投与などで遂行されることができるが、これに制限されるものではない。
【0051】
前記ワクチン組成物は、免疫反応を改善または強化させるために1つ以上のアジュバンドなどを含むことができる。適切なアジュバンドには、二本鎖RNA(dsRNA)の合成アナログ、非メチル化されたシチジン-グアニジン型のオリゴ核酸、ペプチド、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウムおよびMarcol 52のようなミネラルオイルまたは植物性オイル、および1つ以上の乳化剤で構成された組成物またはリゾレシチン、多価カチオン、多価アニオンのような表面活性物質などが含まれる。
【0052】
本発明のまた他の一様態は、前記ワクチン組成物をこれを必要とする個体に投与するステップを含む、個体でウイルス感染症またはがんに対する免疫反応を生成する方法を提供する。
【0053】
このとき、前記「ワクチン組成物」、「ウイルス感染症」、「がん」および「投与」に対する説明は、前述のとおりである。
【0054】
用語「個体」は、ウイルスに感染する可能性があるか、感染した個体、またはがんが発病する可能性があるか、発病した個体をすべて含み、ヒト、任意の非ヒト動物、魚類または植物類などを制限なく含むことができる。前記非ヒト動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、犬、牛、馬、豚、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなどであってよい。本明細書において、前記「個体」は、「対象体」または「患者」と相互交換的に使用されることができる。
【0055】
用語「免疫反応」は、抗原の導入に対する反応への個体免疫系が活性化されることを意味する。このとき、前記免疫反応は、細胞媒介免疫(cell-mediated immunity)または体液免疫(humoral immunity)、または両方の形態であってよい。
【0056】
前記免疫反応生成方法において、本発明のワクチン組成物は、有効量の有効成分、すなわち本発明に係る核酸分子を薬学的に許容可能な担体およびアジュバンドとともに含むことができる。用語「有効量」は、前記ワクチン組成物が投与される個体でウイルス感染症またはがんに対して特異的免疫反応を誘導するに十分な量であることを意味する。前記有効量は、当分野の熟練者によって容易に決定されることができ、例えば、動物における通常の実験を通じて決定されることができる。
【0057】
本発明のまた他の一様態は、前記ワクチン組成物を、これを必要とする個体に投与するステップを含む、個体でウイルス感染症またはがんを予防または治療する方法を提供する。
【0058】
このとき、前記「ワクチン組成物」、「ウイルス感染症」、「がん」、「個体」、「投与」、「予防」および「治療」に対する説明は、前述のとおりである。
【発明の効果】
【0059】
本発明に係る核酸分子は、細胞内タンパク質発現率および細胞外部へのタンパク質分泌能に優れている。また、生体内に投与される場合、個体で抗原特異的中和抗体誘導などの体液性免疫力を獲得するようにし、ウイルスの死滅に直接関与する免疫細胞の量を増加させるなどの細胞性免疫力を獲得するようにするので、ウイルス感染症またはがんの予防および治療のためのワクチンとして有用に活用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】各シグナルペプチドと抗原タンパク質としてSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質(以下、「スパイクタンパク質」と命名する)が融合された、mRNA核酸分子の電気泳動結果を見せるイメージである。「ssRNA ladder」はmRNAのサイズを測定するためのサイズマーカーであり、「No SP」は、シグナルペプチドが含まれずにスパイクタンパク質のみ含まれた核酸分子に関する結果、「Albumin SP」は、アルブミン由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「IFN-γ SP」は、IFN-γ由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「Factor IX SP」は、第IX因子由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「Mucin like protein SP」は、MLP1由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果である。
【
図2】各シグナルペプチドと抗原タンパク質としてSARS-CoV-2ウイルス膜タンパク質(以下、「膜タンパク質」と命名する)が融合された、mRNA核酸分子の電気泳動結果を見せるイメージである。「ssRNA ladder」は、mRNAのサイズを測定するためのサイズマーカーであり、「No SP」は、シグナルペプチドが含まれずに膜タンパク質のみ含まれた核酸分子に関する結果、「Albumin」は、アルブミン由来シグナルペプチドおよび膜タンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「IFN-γ」は、IFN-γ由来シグナルペプチドおよび膜タンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「Factor IX」は、第IX因子由来シグナルペプチドおよび膜タンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「MLP」は、MLP1由来シグナルペプチドおよび膜タンパク質が含まれた核酸分子に関する結果である。また、「Wild SP」は、各シグナルペプチドを野生型コドンに最適化した結果、「Yeast opti.SP」は、各シグナルペプチドを酵母コドンに最適化した結果である。
【
図3】各シグナルペプチドと抗原タンパク質としてSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質(以下、「スパイクタンパク質」と命名する)、Th細胞エピトープが融合された、mRNA核酸分子の電気泳動結果を見せるイメージである。「ssRNA ladder」は、mRNAのサイズを測定するためのサイズマーカーであり、「No SP」は、シグナルペプチドが含まれずにスパイクタンパク質のみ含まれた核酸分子に関する結果、「Albumin SP」は、アルブミン由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「IFN-γ SP」は、IFN-γ由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「Factor IX SP」は、第IX因子由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「Mucin like protein SP」は、MLP1由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果である。
【
図4】細胞で発現されるSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質(以下、「スパイクタンパク質」と命名する)の量を見せるイメージであって、各核酸分子で形質感染された細胞溶解物に含まれているタンパク質の量に関する。「Negative control」は、核酸分子で形質感染されていない細胞(陰性対照群)に関する結果、「No SP」は、シグナルペプチドが含まれずにスパイクタンパク質のみ含まれた核酸分子に関する結果、「IgE」は、IgE由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「Albumin SP」は、アルブミン由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「IFN-γ SP」は、IFN-γ由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「Factor IX SP」は、第IX因子由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「Mucin like protein SP」は、MLP1由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果である。
【
図5a】細胞で発現されるSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質(以下、「スパイクタンパク質」と命名する)の量を見せるイメージである。「media」は、各核酸分子で形質感染された細胞培養培地に含まれているタンパク質の量に関し、「lysate」は、各核酸分子で形質感染された細胞溶解物に含まれているタンパク質の量に関する。「Negative control」は、核酸分子で形質感染されていない細胞(陰性対照群)に関する結果、「No SP」は、シグナルペプチドが含まれずにスパイクタンパク質のみ含まれた核酸分子に関する結果、「Albumin SP」は、アルブミン由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「IFN-γ SP」は、IFN-γ由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「Factor IX SP」は、第IX因子由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果、「Mucin like protein SP」は、MLP1由来シグナルペプチドおよびスパイクタンパク質が含まれた核酸分子に関する結果である。
【
図5b】前記
図5aによる細胞で発現される、ローディングコントロールとして使用されたα/β-チューブリンタンパク質の量を見せるイメージである。
【
図5c】細胞で発現されるSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質(以下、「スパイクタンパク質」と命名する)の量を見せるイメージである。「media」は、各核酸分子で形質感染された細胞培養培地に含まれているタンパク質の量に関し、「lysate」は、各核酸分子で形質感染された細胞溶解物に含まれているタンパク質の量に関する。「Negative control」は、核酸分子で形質感染されていない細胞(陰性対照群)に関する結果、「No SP」は、シグナルペプチドが含まれずにスパイクタンパク質およびTh細胞エピトープのみ含まれた核酸分子に関する結果、「Albumin SP」は、アルブミン由来シグナルペプチド、スパイクタンパク質およびTh細胞エピトープが含まれた核酸分子に関する結果、「IFN-γ SP」は、IFN-γ由来シグナルペプチド、スパイクタンパク質およびTh細胞エピトープが含まれた核酸分子に関する結果、「Factor IX SP」は、第IX因子由来シグナルペプチド、スパイクタンパク質およびTh細胞エピトープが含まれた核酸分子に関する結果、「Mucin like protein SP」は、MLP1由来シグナルペプチド、スパイクタンパク質およびTh細胞エピトープが含まれた核酸分子に関する結果である。
【
図5d】前記
図5cによる細胞で発現される、ローディングコントロールとして使用されたα/β-チューブリンタンパク質の量を見せるイメージである。
【
図6a】細胞内で発現されるSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質の量を見せるイメージであって、IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子で形質感染された細胞に対する結果である(「STP2104」)。「S0」は、SARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を意味し、「S1」は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質のサブユニット1を意味する。「α/β-チューブリン」は、ローディングコントロールとして使用した。
【
図6b】細胞の培養液で検出されるSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質の量を見せるグラフであって、IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子で形質感染された細胞に対する結果である。前記核酸分子は、0.1または0.05g/Lの濃度で使用した。
【
図7】マウスで形成されたSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質特異的結合抗体の量を見せるグラフであって、2次(ブースター)接種した後、3週目に測定した結果である。各抗体の量は、エンドポイント力価(endpoint titer)で示した。「Ag1+LNP1」は、IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子に関する結果、「Ag2+LNP1」は、MLP1由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子に関する結果、「Ag3+LNP1」は、IgE由来シグナルペプチド、SARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質およびTh細胞エピトープを含む核酸分子に関する結果である。また、「RBD specific total IgG」は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質のうちRBD(受容体結合ドメイン:receptor binding domain)に特異的な抗体の量に関する結果であり、「S1 specific total IgG」は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質のうちサブユニット1(S1)に特異的な抗体の量に関する結果である。
【
図8】マウスで形成されたSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質特異的中和抗体の量を見せるグラフであって、PRNT(プラーク減少中和試験:Plaque reduction neutralization test)50値をLog値に変換して示した。「Ag1+LNP1」は、IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子に関する結果、「Ag2+LNP1」は、MLP1由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子に関する結果、「Ag3+LNP1」は、IgE由来シグナルペプチド、SARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質およびTh細胞エピトープを含む核酸分子に関する結果、「Mock」は、PBS(リン酸緩衝生理食塩水:Phosphate Buffered saline)に関する結果である。
【
図9a】マウスで形成されたSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質特異的結合抗体(IgG1およびIgG2aアイソタイプ)の量を見せるグラフであって、IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子が1、5または10μgで投与されたマウスに関する結果である。1次(プライム)接種した後、4週目に測定した結果であって、各抗体の量は、光学密度(O.D.)で示した。「RBD protein」は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質のうちRBD(受容体結合ドメイン:receptor binding domain)に特異的なIgG1およびIgG2a抗体の量は免疫接種量によって増加することを示唆する結果、「S protein」は、SARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質に特異的なIgG1およびIgG2a抗体の量は免疫接種量によって増加することを示唆する結果である。本mRNAワクチンの免疫注射による生体内IgG1/IgG2a抗体割合の増加は、Th2タイプの体液性免疫反応が優勢に誘導されることを意味する。
【
図9b】マウスで形成されたSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質特異的結合抗体(IgG1およびIgG2aアイソタイプ)の量を見せるグラフであって、IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子が1、5または10μgで投与されたマウスに関する結果である。2次(ブースター)接種した後、3週目に測定した結果であって、各抗体の量は、光学密度(O.D.)で示した。「RBD protein」は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質のうちRBD(受容体結合ドメイン:receptor binding domain)に特異的なIgG1およびIgG2a抗体の量は免疫接種量によって増加することを示唆する結果、「S protein」は、SARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質に特異的なIgG1およびIgG2a抗体の量は免疫接種量によって増加することを示唆する結果である。本mRNAワクチンの免疫注射による生体内IgG1/IgG2a抗体割合の増加は、Th2タイプの体液性免疫反応が優勢に誘導されることを意味する。
【
図10】マウスで形成された胚中心(Germinal Center;GC)B細胞の量を見せるグラフであって、IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子が1、5または10μgで投与されたマウスに関する結果である。体液性免疫反応は、メモリーB細胞と寿命が長い形質細胞を生成するために、胚中心(GC)でB細胞とCD4+T細胞(濾胞性ヘルパーT細胞(follicular helper T cells;T
FH細胞)の特殊集団間の相互作用を必要とする。GC B細胞とT
FH細胞との間の分子クロストーク(crosstalk)は、各細胞類型の生存、増殖および分化に影響を及ぼす。
【
図11】マウスで形成されたCD4
+セントラルメモリーT細胞(CD4
+細胞のうちCD44
high+およびCD62L
+細胞)の量を見せるグラフである。IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子が1、5または10μgで投与されたマウスから脾腫細胞を分離してスパイク全体アミノ酸配列に対して15mer長さのペプチドを9mer重複するように合成した後、5個のグループでペプチドプールを構成し(ペプチド1~5)、そのうちからペプチドプール2で脾腫細胞を試験管で刺激したフローサイトメトリー分析に関する結果である。
【
図12】マウスで形成されたCD8
+セントラルメモリーT細胞(CD8
+細胞のうちCD44
high+およびCD62L
+細胞)の量を見せるグラフである。IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子が1、5または10μgで投与されたマウスから脾腫細胞を分離して、前述のようなSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質由来ペプチドプール2で刺激して得た結果である。
【
図13】マウスで形成されたCD8
+効果(effector)メモリーT細胞(CD8
+細胞のうちCD44
high+およびCD62L
-細胞)の量を見せてグラフである。IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子が1、5または10μgで投与されたマウスから脾腫細胞を分離して、前述のようなSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質由来ペプチドプール2で刺激して得た結果である。
【
図14】マウスで形成されたIFN-γ分泌細胞の数をELISpotで分析した結果を見せるグラフである。IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子が1、5または10μgで投与されたマウス脾腫から分離した脾腫細胞でIFN-γを分泌する細胞の数に関する結果である。「NC」は、陰性対照群(Negative Control)でペプチドで刺激せずに得た結果、「PP2」は、前述のようなSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質由来ペプチドプール2で刺激して得た結果である。
【
図15】マウスで形成されたIFN-γ分泌細胞のIFN-γ染色程度を活性度で見せるグラフである。IgE由来シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質を含む核酸分子が1、5または10μgで投与されたマウスから脾腫細胞を分離して前述のようなSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質由来ペプチドプール2で刺激して得た結果である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明に対しては、下記の実施例に基づいて、より詳細に説明されるはずであるが、これは、本発明の権利範囲を制限しようとするものではない。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の趣旨を害しない範囲内で本発明に対して多様な変形および修正を加えることができるはずである。
【0062】
実施例1.ワクチン用核酸分子の製造
ウイルス感染症またはがんの予防に使用され得るワクチン候補物質を開発するために、細胞免疫原性および中和抗体生成誘導能に優れ、特にタンパク質への発現率が有意に増加した核酸分子を製造した。
【0063】
具体的に、本発明に係る核酸分子が生体内に投与される場合、抗原タンパク質への発現率が増加されて免疫反応を引き起こす細胞免疫原性が増加し、これにより、人体内の中和抗体が短い時間内に多い量で生成されることができ、さらに、Th細胞による免疫反応が効率的に誘導されてサイトカイン分泌能が増加することで、ウイルス感染症またはがんに対して極大化した予防および/または治療効能を示す。
【0064】
前記目的を達成するために、核酸分子には、シグナルペプチド(signal peptide)、Th細胞エピトープ(T helper cell epitope)などを含ませ、予防および/または治療効能誘導を目的とする特定抗原を含ませた。前記ペプチド、タンパク質などの塩基配列およびアミノ酸配列はGenBankで確保し、前記GenBankで確保した野生型配列に対してヒトまたは酵母のコドンに最適化を遂行することで、抗原タンパク質発現効率が増進した核酸分子を製造した。コドン最適化は、タンパク質をコードする遺伝子がよく発現できるように各個体が選好するコドンになるように変更して最適化させることで、GC含量、繰り返した塩基配列、転写効率、発現量、タンパク質の折りたたみ、mRNA二次構造など多数の要因を考慮して遂行される。前記要因間の相互関連性がコドン最適化結果において多様に影響を及ぼすので、目的とする水準の発現量を示し得るmRNA配列を製作することは、難しい場合が多くて非常に難しい。
【0065】
また、前記核酸分子のGC含量とmRNA 2次構造の自由エネルギーを計算してタンパク質発現量などを予測したが、前記mRNA 2次構造の自由エネルギーが増加すると、構造の安定性が低くなり構造が容易に崩壊するところ、リボソームによる認識効率が増加されることにつれタンパク質発現率が増加することができる。
【0066】
このとき、前記シグナルペプチド、抗原、Th細胞エピトープなどは、次のように構成して核酸分子をデザインした:5´-[シグナルペプチド]-[抗原]-3´または5´-[シグナルペプチド]-[抗原]-[Th細胞エピトープ]-3´。
【0067】
実施例1-1.シグナルペプチド製作
タンパク質発現率に優れたワクチン用核酸分子を製造するために、まず、シグナルペプチド(signal peptide、SP)を製作した。
【0068】
具体的に、ヒト由来のIgE(イムノグロブリンE:Immunoglobulin E)、アルブミン(albumin)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、第IX因子(factor IX、F IX)、ムチン-様タンパク質1(mucin-like protein 1、MLP1)など、互いに異なる5種類のタンパク質に由来したシグナルペプチドを確保した。これらのシグナルペプチドの配列を多様に変異させ、そのうちから抗原タンパク質の発現率に優れた配列を選別した。その結果は、下記表1に示した。例えば、配列番号3の核酸配列は、IgE由来のシグナルペプチドをヒトに対してコドン最適化させた形態である。
【0069】
【0070】
実施例1-2.抗原製作
実施例1-2-1.「SARS-CoV-2」スパイクタンパク質製作
ウイルス感染症またはがんの予防に使用され得るワクチン候補物質を開発するために、1つの例示として、COVID-19を引き起こすウイルスである「SARS-CoV-2」の抗原を使用した。
【0071】
具体的に、宿主細胞の受容体認識、細胞膜融合、中和抗体誘導など感染および病原性に中心的な役割を遂行すると知られているスパイクタンパク質(Spike protein、S)を使用した。以後、前記実施例1-1による方法でコドン最適化を遂行し、その結果は、下記表2に示した。例えば、配列番号23の核酸配列は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質抗原をヒトに対してコドン最適化させた形態であり、配列番号25の核酸配列は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質抗原をヒトに対してコドン最適化させたことと酵母に対してコドン最適化させたことをすべて有する形態である。
【0072】
【0073】
結果的に、酵母コドンとヒトコドンをすべて有する形態がヒト細胞でウイルス抗原の発現率が高く、目的とする感染症の予防効果にも優れる程度で示すことを確認した。
【0074】
よって、以後のワクチン用核酸分子の製造に使用する抗原としては、酵母コドンとヒトコドンをすべて有する形態である配列番号25の核酸を使用した。
【0075】
実施例1-2-2.「SARS-CoV-2」膜タンパク質製作
ウイルス感染症またはがんの予防に使用され得るワクチン候補物質を開発するために、1つの例示として、COVID-19を引き起こすウイルスである「SARS-CoV-2」の抗原を使用した。
【0076】
具体的に、コロナウイルスの多様な変異体間に遺伝子を比較したとき、よく保存された(conserved)遺伝子である膜タンパク質(Membrane protein、M)を使用した。以後、前記実施例1-1による方法でコドン最適化を遂行し、その結果は、下記表3に示した。例えば、配列番号28の核酸配列は、SARS-CoV-2の膜タンパク質抗原をヒトに対してコドン最適化させた形態であり、配列番号30の核酸配列は、SARS-CoV-2の膜タンパク質抗原をヒトに対してコドン最適化させたことと酵母に対してコドン最適化させたことをすべて有する形態である。
【0077】
【0078】
結果的に、酵母コドンとヒトコドンをすべて有する形態がヒト細胞で抗原の発現率が高く、目的とする感染症の予防効果にも優れる程度で示すことを確認した。
【0079】
よって、以後のワクチン用核酸分子の製造に使用する抗原としては、酵母コドンとヒトコドンをすべて有する形態である配列番号30の核酸を使用した。
【0080】
実施例1-3.シグナルペプチドおよび抗原の融合
実施例1-3-1.抗原として「SARS-CoV-2」スパイクタンパク質利用
タンパク質発現効率が増加した核酸分子を製造するために、まず、前記実施例1-1を通じて確保した5種のシグナルペプチドと前記実施例1-2-1を通じて確保したSARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質を融合させた核酸分子を製造した。
【0081】
具体的に、前記スパイクタンパク質は、酵母コドンおよびヒトコドンをすべて有する形態を使用し、これは、下記表4に整理した。
【0082】
【0083】
以後、前記核酸分子をmRNAで合成するために、10X T7 RNA polymerase buffer(ダインバイオ、カタログ#DYP1647)、2mM ATP、2mM UTP、2mM CTP、2mM GTP、3.2mM Cleancap AG(トライリンク、カタログ#N-7113-10)、5% DMSO(シグマアルドリチカタログ#472301-500ML)、10mg/L抗原(SARS-CoV-2スパイクタンパク質)DNA転写鋳型、800U/mL組換えRNase阻害タンパク質(タカラカタログ#2316A)、2U/mL酵母無機ピロホスファターゼ(サーモフィッシャーサイエンティフィックカタログ#EF0221)、2500U/mL T7 RNAポリメラーゼ(ダインバイオカタログ#dy1670)を混合した。前記転写反応混合物を37℃で2時間の間インキュベーションした。mRNAの合成可否は、ロンザGelStarTM Nucleic Acid gel Stain(カタログ#50535)を添加した1%アガロースゲルを利用して電気泳動を進行して確認した。一方、合成した前記mRNAをAKTA(サイティバ、AKTA avant)でOligo(dT)カラム(ビアセパレーション、カタログ#311.1219-2)を使用して精製し、以後のin vitroまたはin vivo実験に使用した。
【0084】
その結果、
図1から見られるように、各シグナルペプチドと抗原タンパク質が融合された核酸分子のすべては、約4,119ntのサイズでバンドを示すことを確認した。これは、各シグナルペプチドと抗原タンパク質をすべて含むサイズであるので、本実施例において合成したワクチン用mRNA核酸分子はよく製造され、完全性(integrity)が確保されたことを確認した。
【0085】
実施例1-3-2.抗原として「SARS-CoV-2」膜タンパク質利用
タンパク質発現効率が増加した核酸分子を製造するために、まず、前記実施例1-1を通じて確保した4種のシグナルペプチドと前記実施例1-2-2を通じて確保したSARS-CoV-2ウイルスの膜タンパク質を融合させた核酸分子を製造し、これは、下記表5に整理した。
【0086】
【0087】
以後、前記実施例1-3-1による方法で、前記核酸分子をmRNAで合成した後、その合成可否を確認し、また合成されたmRNAを精製した。
【0088】
その結果、
図2から見られるように、各シグナルペプチドと抗原タンパク質が融合された核酸分子のすべては、約1,107ntのサイズでバンドを示すことを確認した。これは、各シグナルペプチドと抗原タンパク質をすべて含むサイズであるので、本実施例において合成したワクチン用mRNA核酸分子はよく製造され、完全性(integrity)が確保されたことを確認した。
【0089】
実施例1-4.Th細胞エピトープ製作
細胞免疫原性およびこれによる免疫反応誘導能が増加したワクチン用核酸分子を製造するために、まず、Th細胞エピトープを製作した。
【0090】
具体的に、Th細胞エピトープは1つの例示であって、破傷風トキソイドに由来したTh細胞エピトープ(Tetanus Toxoid Th cell epitope、TTTh)を使用した。また、前記TTThは、互いに異なる配列を有する切断部位(Cleavage site、CS)で連結されるようにした。前記切断部位を含むTh細胞エピトープは終止コドンを含ませ、次のようにデザインしてORFのC-末端に位置するように構成した:5´-[CS1]-[TTTh1]-[CS2]-[TTTh2]-[終止コドン]-3´。前記構成に対応する具体的なアミノ酸配列は次のとおりである:
5´-[RQKR]-[IDKISDVSTIVPYIGPALNI]-[PKKR]-[NNFTVSFWLRVPKVSASHLE]-5´。以後、前記実施例1-1による方法でコドン最適化を遂行し、これは、下記表6に整理した。例えば、配列番号46の核酸配列は、TTThをヒトに対してコドン最適化させた形態である。
【0091】
【0092】
結果的に、ヒトのコドンを有する形態がヒト細胞でTh細胞エピトープ発現率が高く、目的とするワクチン効果にも優れる程度で示すことを確認した。
【0093】
実施例1-5.シグナルペプチド、抗原およびTh細胞エピトープの融合
実施例1-5-1.抗原として「SARS-CoV-2」スパイクタンパク質利用
前記実施例1-1~1-3などを通じて、タンパク質発現率が高いことと立証されたシグナルペプチドは、酵母のコドンを有する形態であって、タンパク質発現率が高いことと立証された抗原「SARS-CoV-2」スパイクタンパク質は、酵母およびヒトのコドンをすべて有する形態であることを確認した。このように確認されたシグナルペプチド配列および抗原配列にTh細胞エピトープ配列を融合して核酸分子を製造した。その配列は、下記表7に整理した。
【0094】
【0095】
以後、前記実施例1-3-1による方法で、前記核酸分子をmRNAで合成し、mRNAの合成可否を確認し、また合成されたmRNAを精製した。
【0096】
その結果、
図3から見られるように、各シグナルペプチドと抗原タンパク質が融合された核酸分子のすべては、約4,119ntのサイズでバンドを示すことを確認した。これは、各シグナルペプチド、抗原タンパク質およびTh細胞エピトープをすべて含むサイズであるので、本実施例において合成したワクチン用mRNA核酸分子はよく製造され、完全性(integrity)が確保されたことを確認した。
【0097】
実施例1-5-2.抗原として「SARS-CoV-2」膜タンパク質利用
前記実施例1-1~1-3などを通じて、タンパク質発現率が高いことと立証されたシグナルペプチドは、野生型のコドンを有するか、酵母のコドンを有する形態であり、タンパク質発現率が高いことと立証された抗原「SARS-CoV-2」膜タンパク質は、酵母およびヒトのコドンをすべて有する形態であることを確認した。このように確認されたシグナルペプチド配列および抗原配列にTh細胞エピトープ配列を融合して核酸分子を製造した。その配列は、下記表8に整理した。
【0098】
【0099】
実施例2.シグナルペプチドを含むワクチン用核酸分子の効果
実施例2-1.ワクチン用核酸分子のタンパク質発現量分析
前記実施例1において製造した核酸分子の効能を確認するために、in vitroでタンパク質発現率を分析した。通常的にin vitroで高発現特性を示す場合、in vivoで高免疫原性を示し、これによりワクチンの効能が増加すると知られている。前記実施例1において製造した核酸分子の中でも、実施例1-3-1または1-5-1において製造した核酸分子に対する効果を確認した。このとき、抗原としては、酵母コドンおよびヒトコドンをすべて有するSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質(配列番号21)を使用し、シグナルペプチドとしては、いずれも酵母コドンに最適化されたものであって、IgE由来(配列番号4)、アルブミン由来(配列番号8)、インターフェロンガンマ由来(配列番号12)、第IX因子由来(配列番号16)またはMLP1由来(配列番号20)のものを使用し、Th細胞エピトープとしては、ヒトコドンに最適化されたもの(配列番号46)を使用して製造した。
【0100】
具体的に、HEK-293T(ATCC、カタログ番号CRL-1586)細胞を10%FBSおよび1%Pen/Strepが含まれたDMEM培地で培養し、4×105細胞/ウェルのHEK-293T細胞に前記実施例によって製造した核酸分子を約0.1または0.05g/Lの濃度で形質感染させた。このとき、前記核酸分子は、伝達体として脂質ナノ粒子(LNP)に担持した形態であるmRNA-LNPで製剤化して使用した。形質感染が完了した後、前記核酸分子の細胞内タンパク質発現およびこれによる細胞外へのタンパク質分泌程度を当業界に知られている方法によってウェスタンブロットおよびELISAを通じて分析した。ウェスタンブロットは、前記形質感染された細胞の溶解物(lysate)に対して、1次抗体としてSARS-CoV-2スパイクRBDポリクローナル抗体(E-AB-V1006、Elabscience)を使用し、2次抗体としてはHRP-接合二次抗体(goat anti-rabbit IgG;ABclonal)を使用して遂行した。ELISAは、前記形質感染された細胞の培養培地(media)に対してSARS-CoV-2スパイクS1タンパク質ELISAキット(RK04154、ABclonal)を使用して遂行した。
【0101】
一方、抗原として使用したSARS-CoV-2のスパイクタンパク質は、サブユニット1(S1)およびサブユニット2(S2)で構成されており、細胞感染に主要役割を遂行すると知られているRBD(受容体結合ドメイン:receptor binding domain)はS1に位置している。ウェスタンブロットに使用した1次抗体がスパイクタンパク質のRBDドメインをターゲットするものであるところ、スパイク全体タンパク質(S0、190 kDa)が探知されるか、またはスパイクタンパク質の中でもRBDドメインが位置したサブユニット1(S1、120 kDa)が探知されるかを確認することで、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の発現および分泌量を分析した。
【0102】
その結果、
図4から見られるように、本発明に係るSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質を含み、IgE、アルブミン、IFN-γ、第IX因子またはMLP1由来シグナルペプチドを含む核酸分子は、細胞内でタンパク質への発現がよく行われることを確認した。
【0103】
また、
図5aおよび5bから見られるように、本発明に係るSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質を含み、アルブミン、IFN-γ、第IX因子またはMLP1由来シグナルペプチドを含む核酸分子は、細胞内でタンパク質への発現がよく行われ、細胞内で発現されたタンパク質が細胞外に円滑に分泌することを確認した。
【0104】
また、
図5cおよび5dから見られるように、本発明に係るSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質を含み、アルブミン、IFN-γ、第IX因子またはMLP1由来シグナルペプチドを含み、Th細胞エピトープを含む核酸分子は、細胞内でタンパク質への発現がよく行われることを確認し、細胞内で発現されたタンパク質が細胞外に円滑に分泌することを確認した。
【0105】
特に、前記シグナルペプチドを含む核酸分子の場合、培養培地に含まれているタンパク質の量が細胞溶解物に含まれているタンパク質量より多いことを確認した。また、前記シグナルペプチドを含む核酸分子とこれを含まない核酸分子とのタンパク質発現量を比較するとき、培養培地ではシグナルペプチドを含む核酸分子のタンパク質量がさらに多く、細胞溶解物ではシグナルペプチドを含まない核酸分子のタンパク質量がさらに多いことを確認した。これを通じて前記シグナルペプチドによってスパイクタンパク質の細胞外分泌が促進できることを確認した。
【0106】
また、
図6aから見られるように、本発明に係るSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質およびIgE由来シグナルペプチドを含む核酸分子は、細胞内においても発現がよく行われることを確認した。
【0107】
また、
図6bから見られるように、本発明に係るSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質を含む核酸分子は、細胞内で発現がよく行われることによって、相当な量のタンパク質が細胞外に分泌することをスパイクタンパク質ELISAを通じて確認した。互いに異なる濃度のmRNA-LNP stock試料に対して、0.1g/L試料で形質感染された細胞では、約6.32ng/mLのタンパク質が発現および分泌し、0.05g/L試料で形質感染された細胞では、約7.71ng/mLのタンパク質が発現および分泌することで、類似した量のスパイク抗原タンパク質量であることを確認した。
【0108】
前記結果は、mRNA-LNP製剤で構成され、各シグナルペプチドおよびSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質を抗原として含む本発明に係る核酸分子は、細胞内で高い効率でタンパク質として発現され、特に、発現されたタンパク質が細胞外に分泌することがあるので、このように分泌した抗原タンパク質は、生体内に存在する他の免疫細胞を刺激して細胞性または体液性免疫反応を誘導することができるという点を見せる。よって、本発明に係る核酸分子は、生体内に投与時に目的とするワクチン機能を発揮することができる。
【0109】
実施例2-2.ワクチン用核酸分子の体液性免疫増強効果
前記実施例1において製造した核酸分子の免疫効能を確認するために、前記核酸分子が生体内に投与される場合に、抗原に対する体液性免疫反応を引き起こして実際ウイルス感染症に対する予防効果を示すのかを確認した。前記実施例1において製造した核酸分子の中でも、実施例1-3-1または実施例1-5-1において製造した核酸分子に対する効果を確認した。このとき、抗原としては、酵母コドンおよびヒトコドンをすべて有するSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質(配列番号21)を使用し、シグナルペプチドとしては、酵母コドンに最適化されたものであって、IgE由来(配列番号4)またはMLP1由来(配列番号20)のものを使用し、Th細胞エピトープとしては、ヒトコドンに最適化されたもの(配列番号46)を使用して製造した。
【0110】
具体的に、前記核酸分子をmRNA-LNPで製剤化し、これを6週齢雌BALB/cマウス(6匹)に4週間隔で2回(1次:プライム、2次:ブースター)にわたって太股の上部に筋肉注射した後、3週目に犠牲にさせた。このとき、前記核酸分子は、1、5または10μg/個体の濃度で注射した。対照群としては、PBSを注射した。
【0111】
以後、前記免疫化されたマウスの血清で抗原としてSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質に対する特異的結合抗体または中和抗体の水準をELISAまたはPRNT(Plaque Reduction Neutralizing Test)アッセイを通じて測定した。ELISAのための1次抗体としては、抗-マウスIgG1-(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)抗体または抗-マウスIgG2a-(Novus、Centennial、CO、USA)抗体を使用した。
【0112】
また、前記免疫化されたマウスから脾腫細胞を分離し、前記脾腫細胞にSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質由来ペプチドを2mg/mlの濃度で処理して24時間の間培養した。培養が完了した後、各特異的抗体で免疫染色してフローサイトメトリー分析を遂行した。
【0113】
その結果、
図7~9bから見られるように、前記核酸分子の接種後には、マウスでRBDまたはスパイク全体タンパク質に対する結合抗体が高い水準で生成されることを確認した。また、生成される結合抗体および中和抗体の量は、前記核酸分子に対して濃度依存的に増加することを確認し(
図7~9b)、1次接種に比べて2次接種後に生成される中和抗体の量は、約2倍以上増加することを確認した(
図9aおよび
図9b)。
【0114】
また、
図10から見られるように、前記核酸分子が10μg/個体の濃度でマウスに接種される場合、胚中心(germinal center、GC)に存在するB細胞(GC B細胞、GL7
+ CD19
+細胞)の数が接種されないマウスに比べて有意に増加することを確認した。胚中心(GC)ではメモリーB細胞および寿命が長い形質細胞(plasma cell)を生成するために、濾胞性ヘルパーT細胞(T
FH細胞)と呼ばれるCD4+ T細胞とB細胞が相互作用する。このようなGC B細胞とT
FH細胞との間の相互作用は、各細胞類型の生存、増殖および分化に影響を及ぼす。
【0115】
前記結果は、mRNA-LNP製剤で構成された前記核酸分子は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質に対する体液性免疫反応を効率的に誘導することができ、これによりSARS-CoV-2ウイルス感染症に対する予防、改善または治療に有用に活用できることを示唆する。
【0116】
実施例2-3.ワクチン用核酸分子の細胞性免疫増強効果
実施例2-3-1.T細胞増加
前記実施例1において製造した核酸分子の免疫効能を確認するために、前記核酸分子が生体内に投与される場合に抗原に対する細胞性免疫反応を引き起こして、実際ウイルス感染症に対する予防効果を示すのかを確認した。細胞性免疫反応の一種として、エフェクターメモリーT細胞およびセントラルメモリーT細胞などのT細胞の生成を増加させることができるのかを確認した。エフェクターメモリーT細胞は、病原体進入部位で即時的であるが持続しない防御を提供し、セントラルメモリーT細胞は、2次リンパ器官で増殖して新たなエフェクター細胞を生成することで、免疫反応を維持する。
【0117】
また、前記実施例1において製造した核酸分子の中でも、実施例1-3-1において製造した核酸分子に対する効果を確認した。このとき、抗原としては、酵母コドンおよびヒトコドンをすべて有するSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質(配列番号21)を使用し、シグナルペプチドとしては、酵母コドンに最適化されたものであって、IgE由来(配列番号4)のものを使用して製造した核酸分子に対する効果を確認した。
【0118】
具体的に、前記実施例2-2および2-3による方法で、mRNA-LNP製剤で構成された本発明に係る核酸分子をマウスに注射し、前記免疫化されたマウスから脾腫細胞を分離した後、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質由来ペプチド(ペプチドプール2)を2mg/mlの濃度で処理した後、フローサイトメトリー分析を遂行した。CD4+セントラルメモリーT細胞(CD4+細胞のうちCD44high+およびCD62L+細胞)、CD8+セントラルメモリーT細胞(CD8+細胞のうちCD44high+およびCD62L+細胞)、CD8+エフェクター(effector)メモリーT細胞(CD8+細胞のうちCD44high+およびCD62L-細胞)の割合を分析した。
【0119】
その結果、
図11ないし13から見られるように、前記核酸分子がマウスに接種される場合、CD4
+セントラルメモリーT細胞、CD8
+セントラルメモリーT細胞およびCD8
+エフェクターメモリーT細胞などの細胞性免疫に寄与する細胞集団の割合が接種されないマウスに比べて有意に増加することを確認した。
【0120】
前記結果は、mRNA-LNP製剤で構成された前記核酸分子は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質に対する細胞性免疫反応を効率的に誘導することができ、これによりSARS-CoV-2ウイルス感染症に対する予防、改善または治療に有用に活用できることを示唆する。
【0121】
実施例2-3-2.IFN-γ分泌細胞増加
前記実施例1において製造した核酸分子の効能を確認するために、細胞性免疫反応の一種として、IFN-γ分泌細胞の生成を増加させることができるのかを確認した。IFN-γは、生来の抗ウイルス反応を担当する重要な構成要素であり、主に、NK細胞または生来のリンパ球タイプ1細胞によって生成される。このような免疫細胞によるIFN-γ生成が行われない場合、生体内でウイルス複製が増加するようになる。
【0122】
また、前記実施例1において製造した核酸分子の中でも、実施例1-3-1または実施例1-5-1において製造した核酸分子に対する効果を確認した。このとき、抗原としては、酵母コドンおよびヒトコドンをすべて有するSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質(配列番号21)を使用し、シグナルペプチドとしては、酵母コドンに最適化されたものであって、IgE由来(配列番号4)またはMLP1由来(配列番号20)のものを使用し、Th細胞エピトープとしては、ヒトコドンに最適化されたもの(配列番号46)を使用して製造した。
【0123】
具体的に、前記実施例2-2によって免疫化されたマウスから脾腫細胞を分離し、前記脾腫細胞にSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質由来ペプチド(ペプチドプール2)を2mg/mlの濃度で処理して48時間の間培養した。培養が完了した後、IFN-γ分泌細胞をELISpot basicキット(Mabtech、Nacka Strand、Sweden)を使用して検出した。
【0124】
その結果、
図14および15から見られるように、前記核酸分子がマウスに接種される場合、IFN-γ分泌細胞の数は接種されないマウスに比べて顕著に増加することを確認した(
図14)。また、前記細胞によるIFN-γの活性も約3000倍以上顕著に増加することを確認した(
図15)。
【0125】
前記結果は、mRNA-LNP製剤で構成された前記核酸分子は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質に対する細胞性免疫反応を効率的に誘導することができ、これによりSARS-CoV-2ウイルス感染症に対する予防、改善または治療に有用に活用できることを示唆する。
【0126】
実施例2-3-3.プラーク減少中和力価(PRNT)分析
前記実施例1において製造した核酸分子の効能を確認するために、細胞性免疫反応の一種として、メモリーT細胞による中和抗体の生成を増加させ得るのかを確認した。プラーク減少中和力価(PRNT)分析は、ウイルスに対するウイルス中和および保護抗体を測定し、ワクチンの免疫原性を評価するのに当たり、広く認められるアプローチ方式である。
【0127】
また、前記実施例1において製造した核酸分子の中でも、実施例1-3-1において製造した核酸分子に対する効果を確認した。このとき、抗原としては、酵母コドンおよびヒトコドンをすべて有するSARS-CoV-2ウイルススパイク全体タンパク質(配列番号21)を使用し、シグナルペプチドとしては、酵母コドンに最適化されたものであって、IgE由来(配列番号4)のものを使用して製造した核酸分子に対する効果を確認した。
【0128】
具体的に、前記実施例2-2によって免疫化されたマウスから分離した血清にSARS-CoV-2ウイルス(NCCP 43326、S-type)を4.5×102PFU/mlの濃度で添加して1時間の間培養した。以後、前記血清-ウイルス培養物をVero E6細胞(ATCC、カタログ番号CRL-1586)に添加して1時間の間培養することで、前記細胞をウイルスに感染させ、当業界に知られている方法によってPRNTを分析アッセイを遂行した。PRNT力価は、Karber方法を用いて計算し、中和用量ND50で表示した(log10ND50=m-Δ(Σ-0.5)、ここで、mは、最高希釈のlog10を示し、Δは希釈係数のlog10を示し、Σはウイルス-血清接種物/ウイルス対照によって生成されたプラークの平均数を示す)。
【0129】
【0130】
その結果、前記表9から見られるように、前記核酸分子がマウスに接種される場合、1次接種後には、中和抗体の生成量が対照群と類似した水準であったが、2次接種後には、中和抗体生成量が顕著に増加することを確認した。このような効果は、個体当たり5または10μgが投与された場合、特に優れることを確認した。
【0131】
前記結果は、mRNA-LNP製剤で構成された前記核酸分子は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質に対する中和抗体を効率的に生成することができ、このため、SARS-CoV-2ウイルス感染症に対する予防、改善または治療に有用に活用できることを示唆する。
【配列表】
【国際調査報告】