(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】処理流体内で化学反応を行うための反応器および方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/24 20060101AFI20240214BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
C07B61/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547828
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2022052913
(87)【国際公開番号】W WO2022171582
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329305
【氏名又は名称】リンデ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523112002
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ツェルフーバー,マティウ
(72)【発明者】
【氏名】ホフシュテッター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ポッセルト,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】デルホム-ノイデッカー,クララ
(72)【発明者】
【氏名】ミハイロヴィッチ,ディーター
【テーマコード(参考)】
4G075
4H006
【Fターム(参考)】
4G075AA02
4G075BA05
4G075BA10
4G075CA02
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB22
4G075FB02
4G075FC07
4G075FC11
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC12
4H006BC10
(57)【要約】
多相交流電流を使用して少なくとも500℃の温度で少なくとも部分的に進行する化学反応を処理流体内で行うための反応器であって、熱絶縁反応器壁により取り囲まれた反応器チャンバと、多数の実質的に直線状の反応管とを備え、反応管は、反応器チャンバを通って、対向する反応器壁の中の少なくとも1つの管注入口開口部および少なくとも1つの管流出口開口部の間で伸び、電気抵抗加熱を可能にする材料からなり、反応管に沿って互いに間隔を置いて離して配置された2つの導電性ブリッジが反応器チャンバの中に提供され、2つの導電性ブリッジの各々は反応管を互いに導電接続し、反応器壁のうち1つの中の1つまたは複数の入力開口部を通って伸展する導電性電力入力配列が提供され、各反応管は電力入力配列のうち1つに導電接続され、各電力入力配列は、ブリッジの間で反応管のうち1つに導電接続され、交流の相のうち1つに接続される、または接続可能である反応器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相交流を使用して少なくとも500℃の温度で少なくとも部分的に進行する化学反応を処理流体内で行うための反応器(100)であって、断熱絶縁反応器壁(12o、12u、12r、12l)により取り囲まれた反応器チャンバ(10)と、多数の実質的に直線状の反応管(22)とを備え、
前記反応管は、対向する前記反応器壁の中の少なくとも1つの管注入口開口部(14)と少なくとも1つの管流出口開口部(15)の間で前記反応器チャンバを通って伸びて電気抵抗加熱を可能にする材料からなり、
前記反応管に沿って互いに間隔を置いて離して配置された2つの導電性ブリッジ(30)を前記反応器チャンバの中に提供し、前記導電性ブリッジの各々は前記反応管を互いに導電接続し、
前記反応器壁のうち1つの中の1つまたは複数の入力開口部(16)を通って伸展する導電性電力入力配列(18)を提供し、各前記反応管は、前記電力入力配列(18)のうち1つに導電接続され、各前記電力入力配列は、前記ブリッジの間で前記反応管のうち1つに導電接続され、前記交流の相(U、V、W)のうち1つに接続される、または接続可能である反応器。
【請求項2】
2つの前記反応管の間の前記ブリッジの各々の電気抵抗は、電気コンパレータ抵抗よりも小さく、前記コンパレータ抵抗は、前記反応管のうち1つの比較上の長さの両端の電気抵抗に等しく、前記比較上の長さは、2つの前記反応管の距離、入口管寄せと出口管寄せの間の反応管接続の長さおよび前記管注入口または前記管流出口のブリッジ接続の長さから選択され、前記コンパレータ抵抗に対する前記ブリッジの前記抵抗の比は、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/50以下、最も好ましくは1/100以下である、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記ブリッジは、前記反応管と同じ材料、または前記反応管よりも高い導電率を有する材料からなる、および/または2つの前記反応管の間にある前記ブリッジの横断面積は、前記反応管に平行に伸展し、前記2つの反応管により形成される平面に垂直であり、前記反応管の長手方向の軸に垂直な前記反応管の壁の横断面積よりも大きい、請求項1または2に記載の反応器。
【請求項4】
前記反応管は、前記ブリッジのうち少なくとも1つの中に鋳造される、および/または前記ブリッジのうち少なくとも1つに関して、前記反応管ごとに前記ブリッジまたは前記ブリッジの要素と一体化して反応管区域が形成され、好ましくは溶接により他の反応管区域が前記ブリッジに接続される、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項5】
少なくとも1つの前記ブリッジ(30c)は、好ましくは、反応管のうち1つにそれぞれ導電接続された第1のブリッジ要素(38)と、前記第1のブリッジ要素を導電接続する第2のブリッジ要素(40)とを備え、前記第2のブリッジ要素は、前記第1のブリッジ要素が作られた材料よりも高い導電率を有する材料からなり、好ましくは前記第1のブリッジ要素は、前記反応管と同じ材料から作られる、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項6】
前記第2のブリッジ要素は、反応管が伸びて、はめ合い、詳細には圧入の形で前記第1のブリッジ要素が挿入される階段状通路(49)を有する、請求項5に記載の反応器。
【請求項7】
前記第2のブリッジ要素の前記材料は、前記第1のブリッジ要素の前記材料よりも低い熱膨張係数を有し、好ましくは前記第2のブリッジ要素は、大部分は、または完全にモリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、および/もしくはクロムからなる、ならびに/または前記第1のブリッジ要素は前記反応管の材料からなる、請求項6に記載の反応器。
【請求項8】
前記ブリッジは、剛性の構成要素または組立体として設計され、好ましくは前記ブリッジのうち少なくとも1つは、好ましくはブリッジの各々は、一体に、詳細には鋳造部品として設計される、請求項1~7のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項9】
前記1つまたは複数の入力開口部は、前記少なくとも1つの管注入口開口部または前記少なくとも1つの管流出口開口部が位置する反応器壁の間で伸展する前記反応器壁の中に位置する、請求項1~8のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項10】
前記1つまたは複数の入力開口部は、前記反応管の長手方向に平行な細長い形状を有する、請求項9に記載の反応器。
【請求項11】
前記電力入力配列の電流の通じている要素に隣接して配列された冷却パネルを前記反応器チャンバの外側に提供し、前記冷却パネルは、好ましくは前記反応管の前記長手方向に平行に伸展する、請求項1~10のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項12】
前記1つまたは複数の入力開口部は、前記少なくとも1つの管入力開口部から、および前記少なくとも1つの管流出口開口部から空間的に分離される、請求項1~11のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項13】
前記交流を提供する交流電源(50)をさらに備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項14】
少なくとも1つのブリッジに関して、好ましくはすべてのブリッジに関して、前記交流電源の中性点に前記ブリッジを接続する中性線(N)を提供し、好ましくは2つの前記反応管の間にある前記ブリッジの電気抵抗は、対応する前記ブリッジに接続された前記中性線の電気抵抗よりも小さく、さらに好ましくは、これらの抵抗の比は最大で1/5、より好ましくは最大で1/20、最も好ましくは最大で1/50である、請求項13に記載の反応器。
【請求項15】
請求項2に従属する場合、前記中性線の前記電気抵抗は前記コンパレータ抵抗よりも小さい、請求項14に記載の反応器。
【請求項16】
ラジアンで表現した、前記交流電流の2つの相互に異なる相の間の位相シフトは、好ましくは2π・k/Mであり、ここでkはいずれの場合も1~M-1の範囲の整数である、請求項1~15のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項17】
前記電力入力配列(18)から前記2つのブリッジ(30)までの2つの前記距離の比は0.25~1の範囲である、請求項1~16のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項18】
前記2つの距離の比は0.25~0.8の範囲、好ましくは0.25~0.7の範囲である、請求項17に記載の反応器。
【請求項19】
少なくとも500℃の温度で少なくとも部分的に進行する化学反応を処理流体内で行うための方法であって、請求項1~18のいずれか一項に記載の反応器を使用し、前記処理流体は、前記反応器の反応管を通って運ばれ、多相交流を使用して電気抵抗加熱を用いて加熱され、前記化学反応は好ましくは、500℃を超えて少なくとも部分的に行われる、水蒸気分解、水蒸気改質、乾燥改質、プロパン脱水素、炭化水素を用いる反応のうちの1つである方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理流体を加熱するために多相交流を使用して処理流体内で化学反応を行うための反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業での一連の処理では、加熱された反応管を通して1つまたは複数の反応物が運ばれ、そこで触媒作用または非触媒作用で変換される反応器を使用する。加熱は詳細には、化学反応のための活性化エネルギー要件を克服するように行われる。反応は全体が吸熱的に、または活性化エネルギー要件を克服した後に放熱的に進行する可能性がある。本発明は、詳細には強い吸熱反応に関する。
【0003】
そのような処理の例は水蒸気分解、異なる改質処理、詳細には水蒸気改質、乾燥改質(二酸化炭素改質)、混合改質処理、アルカンを脱水素するための処理などである。水蒸気分解では、反応管は、反応器内に少なくとも1つのUベンドを有する管コイルの形をとる反応器を通って導かれるのに対して、水蒸気改質では、典型的にはUベンドなしの反応器を通って伸展する管を使用する。
【0004】
本発明は、反応管のそのような処理および実施形態すべてに適している。単なる例示としてウルマン(Ullmann)の産業化学事典(Encyclopedia of Industrial Chemistry)の「エチレン」、「ガス生産」、および「プロペン」の項目、たとえば2009年4月5日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、および2000年6月15日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a22_211を参照する。
【0005】
それぞれの反応器の反応管は従来、バーナを使用することにより加熱される。反応管は、さらにまたバーナが配列される燃焼室を通って導かれる。
【0006】
現在、二酸化炭素排出を局所的に低減することなく、または低減して作り出された合成ガスおよび水素の需要が高まっている。しかしながら、焼成炉を使用する方法はこの需要を満たすことができない、または典型的には化石燃料を燃やすことが原因でこのよう需要を限られた程度までしか満たすことができない。他の処理は、たとえば費用が高いために受け入れられない。同じことはまた、水蒸気分解またはアルカンの脱水素によりオレフィンおよび/または他の炭化水素を提供することにも当てはまる。そのような場合も、少なくとも現場で、より少ない量の二酸化炭素を排出する処理が望まれる。
【0007】
欧州特許出願公開第3075704(A1)号明細書は、燃焼室を通って導かれる反応管を用いる水蒸気改質のための炉を開示しており、少なくとも1つのバーナに加えて、交流を用いる反応管の電気抵抗加熱が提供され、燃焼室の外側に位置するコレクタは中性点の役割を果たす。米国特許第9347596(B2)号明細書は、パイプラインシステムを電気的に加熱するための機器に関する。
【0008】
国際公開第2015/197181(A1)号は、パイプラインを通って流れる流体を加熱する反応器を開示し、導電性パイプラインは、中性点回路が形成され熱がパイプラインの電気抵抗に従って生成されるように、交流電源の多相に接続される。ここで示す配列は、いわゆるマルチパス管幾何形状に特に適している、すなわち、パイプラインは波線状に前後に伸びる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3075704(A1)号明細書
【特許文献2】米国特許第9347596(B2)号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/197181(A1)号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ウルマン、「産業化学事典」、2009年4月5日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、および2000年6月15日の刊行物のDOI:10.1002/14356007.a22_211
【非特許文献2】DIN EN 10027、Part 1、「Materials(材料)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、加熱されるべきパイプラインが、反応器を通って直線状に伸びる単一パス管幾何形状の場合、これらの公知の、または類似の配列で境界条件、詳細には電気的性質および熱的性質の境界条件を満たすことができない。したがって、目的は、電気的、熱的、および機械的な境界条件を満たすことができる、電気的に加熱可能な反応器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、独立請求項の特徴を有する、化学反応を行うための反応器および方法により達成される。
【0013】
本発明によれば、加熱されるべき反応管の中に入る電力入力を導電性ブリッジの間で行うことが提供され、したがって、導電可能に反応管を接続するブリッジは、電力入力の両側に配列される。相の間の等電位化は、反応管から別の処理ラインを介して、反応管が据え付けられその場所で損傷または危険を引き起こす可能性がある処理プラントの別の部分の中に入る電流の流れを防止または大きく抑制するように、導電性ブリッジを介して行われる。両側のブリッジ配列は、等電位化が注入口側でも流出口側でも行われることを意味する。これは、単一パス管幾何形状の場合、そのような配列を用いて費用が問題となる、別の処理ラインの反応管の電気絶縁を一方の側で他の方法で提供しなければならないので、1つのブリッジだけを用いる配列よりも有利である。
【0014】
同時に、電力入力配列は、本発明による配列を用いて管注入口開口部および管流出口開口部から間隔を置いて離して配置され、その結果、本出願に関連して、空間に関連する連続する処理ラインと競合することなく、大電流を伝導しなければならない電力入力配列に冷却要素を取り付けることができ、詳細には熱い反応管、またはそこに接続された他の処理ラインは、そのような冷却要素の冷却能力に悪い影響を及ぼす可能性がない。また、機械的構成に関連して、大電流が発生することが原因で電流の通じている固体要素を備える電力入力配列と他の処理ラインとの間で空間に関連する競合がまったくない。
【0015】
詳細には、多相交流を使用して処理流体内で化学反応を行うための反応器を提供する。反応器は、断熱反応器壁により取り囲まれた反応器チャンバと、実質的に直線状の多数の反応管とを備える。交流は反応管を電気的に加熱し、しいては、反応管を通って流れる処理流体に化学反応のためのエネルギーを提供するように該処理流体を、電気的に加熱するのに役立つ。交流を使用して反応管が、およびその結果として処理流体が加熱されるという事実は、たとえば化学エネルギーキャリアを点火することにより追加加熱を提供できることを除外することを意図するものではない。化学反応は、少なくとも500℃で少なくとも部分的に進行する化学反応である。
【0016】
反応管は、反応器チャンバを通る対向する反応器壁の中の少なくとも1つの管注入口開口部と少なくとも1つの管流出口開口部の間で伸びて電気抵抗加熱を可能にする材料からなる。反応管またはその材料が電気的に加熱可能であるという事実は、反応管のため、および詳細にはブリッジの間にある区域のために使用する材料が電気加熱に適した導電率を有する材料であることを意味する。例は耐熱合金鋼、詳細には耐熱クロムニッケル合金鋼である。そのような合金鋼はまたブリッジ、および電力入力配列、詳細には電力入力配列の電流の通じている要素のために使用できる。たとえば、DIN EN 10027、Part 1、「Materials(材料)」による標準的名称GX40CrNiSi25-20、GX40NiCrSiNb35-25、GX45NiCrSiNbTi35-25、GX35CrNiSiNb24-24、GX45NiCrSi35-25、GX43NiCrWSi35-25-4、GX10NiCrNb32-20、GX50CrNiSi30-30、G-NiCr28W、G-NiCrCoW、GX45NiCrSiNb45-35、GX13NiCrNb45-35、GX13NiCrNb37-25、またはGX55NiCrWZr33-30-04を有する材料を使用してよい。材料番号1.4852または番号1.4852 Micro(GX40NiCrSiNb35-26)は特に適している。
【0017】
反応器チャンバの中に、反応管に沿って互いに間隔を置いて離して配置された2つの導電性ブリッジを提供し、該導電性ブリッジの各々は反応管を互いに導電接続する。反応器壁のうち1つの中の1つまたは複数の入力開口部(または電力入力開口部)を通って伸展する導電性電力入力配列を提供し、各電力入力配列は、ブリッジの間で反応管のうち1つに導電接続され、交流の相のうち1つに接続される、または接続できる。その結果、電力入力配列から反応管への導電性接続(電力入力点または接触点)は、ブリッジがそうであるように反応チャンバ内部にある。各反応管は、電力入力配列のうち1つに導電可能に接続される。
【0018】
「実質的に直線状の」という表現は、一方では、ブリッジと管注入口開口部または管流出口開口部が位置する最も近い反応器壁との間で反応器チャンバの中に注入口多岐管(いわゆる管寄せ)または流出口多岐管を提供できるという事実を指し、注入口多岐管または流出口多岐管は、いくつかの反応管を接続して単一多岐管を形成する。他方では、ブリッジの間で直線からのわずかな逸脱が発生する可能性がある、すなわち、各反応管は、反応管の直径の10倍の直径を有する円筒内部でブリッジの間で伸びるべきである。
【0019】
反応器壁は反応器チャンバを、すなわち、少なくとも1つの反応器壁によりすべての空間方向で範囲を定められた領域を密閉する、または取り囲む。反応器チャンバは典型的には不活性である。一般に、反応器チャンバを密閉するような方法で連結された多数の個々の壁は、この目的のために使用され、したがって、反応器壁のグループとも呼ぶことができる。密閉された領域、およびしたがって反応器壁のグループは、任意の体積形状を有することができるが、好ましくは正方形プリズムの、またはさらには円筒の体積形状を有することができる。反応器壁は(貫通接続または窓などの)密封された構造要素を有することができるが、さらにまた好ましくは、反応器壁内部の空気を調整するための、他のプラント部分への接続のような恒久的に開いた、および/または閉じることができる開口部、たとえば不活性ガス用注入口ノズル、または煙突管を形成する流出口開口部を有することができる。
【0020】
好ましくは、2つの反応管の間にあるブリッジの各々の電気抵抗(すなわち、対応するブリッジの両端で測定した、2つの反応管の間の電気抵抗)は電気コンパレータ抵抗よりも小さく、コンパレータ抵抗は、反応管のうち1つの(反応管の長手方向での)比較上の長さの両端の電気抵抗に等しく、比較上の長さは、2つの反応管の距離、注入口管寄せと流出口管寄せの間の反応管接続および管の注入口または流出口でのブリッジ接続の長さから選択される(すなわち、反応管接続の長さは、ブリッジと注入口管寄せまたは流出口管寄せの間の距離に対応する)。さらにまた、比較上の長さとして(反応管の)長手方向でのブリッジの寸法を選択することも考えられる。たとえば平均する、または総計することにより、比較上の長さに関するこれらの選択肢の組合せもまた可能である。さらに好ましくは、コンパレータ抵抗に対する(2つの反応管の間にある)ブリッジの電気抵抗の比は最大で1/10、さらにより好ましくは最大で1/50、最も好ましくは最大で1/100である。詳細には、この結果、ブリッジの電気抵抗は、比較的高い温度がそこで依然として優勢であることが原因で典型的には反応管と同じ、またはそれに類似する材料(詳細には鋼鉄)からなり、それに対応して同等の導電率を有する、他の処理ラインまたは注入口管寄せまたは流出口管寄せの電気抵抗よりも小さい。その効果は、等電位化が大部分は達成され、または相の間で発生する電流はブリッジの両端に流れ、電流は、反応器外部の他の処理ラインの中にほんのわずかなしか流れない、またはまったく流れないということである。コンパレータ抵抗は、比較上の長さに等しい長さを有する反応管の区域(比較区域)の電気抵抗に対応する。多数の反応管は、典型的には同じ寸法(内径、外径)を有し同じ材料からなるので、コンパレータ抵抗は、どの反応管を使用してコンパレータ抵抗を決定するかと無関係である。コンパレータ抵抗は容易に算出および/または測定できる。
【0021】
好ましくは、ブリッジは反応管と同じ材料から作られる。その結果、反応管は、詳細には溶接によりブリッジを介して耐熱可能に互いに接続できる。代わりに、ブリッジは反応管よりも高い導電率を有する材料から作られる。また、2つの反応管の間にあり、反応管に平行に伸び、2つの反応管により形成された平面に垂直なブリッジの横断面積が管の長手方向の軸に垂直な反応管の壁の横断面積よりも大きいことが好ましい。これらの実施形態は、ブリッジの電気抵抗が反応管に対して低くできるようにする。
【0022】
好ましくは、反応管は、ブリッジのうち少なくとも1つの中に鋳造される、および/またはいずれの場合も、反応管ごとにブリッジのうち少なくとも1つに関して、ブリッジまたはブリッジの要素と一体化して(一体に)反応管区域が形成され、他の反応管区域は、好ましくは溶接によりブリッジに接続される。
【0023】
さらに、少なくとも1つのブリッジは好ましくは、反応管のうち1つにそれぞれ導電接続された第1のブリッジ要素と、第1のブリッジ要素を導電接続する第2のブリッジ要素とを備え、第2のブリッジ要素は、第1のブリッジ要素が作られた材料よりも高い導電率を有する材料からなり、好ましくは、第1のブリッジ要素は、反応管と同じ材料から作られる。
【0024】
この実施形態により、幾何学的寸法が同じであるときにブリッジの電気抵抗を低減できるようになり、その結果、反応管の間で等電位化は改善される。第1のブリッジ要素の材料は、第1のブリッジ要素がたとえば溶接により簡単な手法で耐熱可能に反応管に接続できるように選択できる、すなわち、反応管の材料はまた、好ましくは第1のブリッジ要素のために使用される。
【0025】
第2のブリッジ要素は好ましくは、反応管が伸び、第1のブリッジ要素がはめ合いの形で、詳細には圧入の形で挿入される通路を有し、さらに好ましくは、第2のブリッジ要素の材料は、第1のブリッジ要素の材料よりも低い熱膨張係数を有する。詳細には、第2のブリッジ要素の材料はモリブデン、タングステン、ニオブ、および/もしくはクロムを備えることができる、または大部分はこれらの材料のうち1つ、もしくはこれらの材料の組合せからなる可能性がある。さらにより好ましくは、第2のブリッジ要素は、大部分は、もしくは完全にモリブデンから作られる、および/または第1のブリッジ要素は反応管の材料から作られる。
【0026】
この実施形態では、1つまたは複数の第2のブリッジ要素は、少なくとも部分的にモリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、および/もしくはクロムに富む材料からなる、またはこれらから形成される。材料は、詳細には第1のブリッジ要素が作られた材料よりも高い特有の導電率を有する。
【0027】
圧入を用いて第1のブリッジ要素を第2のブリッジ要素に接続するという事実が原因で、原理上は解放可能で、たとえば反応管の交換を容易にする接続が作成される。温度が上昇するとき、熱膨張係数が異なる結果、より高い圧力で圧入が行われ、その結果、第1のブリッジ要素と第2のブリッジ要素の間の接触、詳細には電気接触が改善される。モリブデンはたとえば、好ましくは第1のブリッジ要素および反応管として使用される鋼鉄よりも高い伝導率を有し、同時に反応容器内で優勢な高温で使用できる。
【0028】
好ましくは、ブリッジは、剛性の構成要素または組立体として設計され、さらに好ましくはブリッジのうち少なくとも1つは、さらにより好ましくはブリッジの各々は、一体に、詳細には鋳造部品として設計される。剛性に設計することにより、反応管をさらに相対的に固定することになる。
【0029】
1つまたは複数の(電気接続用)入力開口部は、好ましくは少なくとも1つの管注入口開口部または少なくとも1つの管流出口開口部が位置する反応器壁の間で伸びる反応器壁の中に位置し、さらに好ましくは、1つまたは複数の入力開口部は、反応管の長手方向の軸に平行な細長い形状を有する。その結果、電力入力配列は、反応管の熱膨張に伴って動くことができる。その結果、1つまたは複数の入力開口部が位置する反応器壁は、側面の反応器壁である、すなわち、反応器壁は、反応管の方向に(たとえば、反応管に平行に、または反応管に対してある角度で、すなわちほぼ<20°の角度で)伸展する。
【0030】
好ましくは、電力入力配列の電流の通じている要素に隣接して配列された冷却パネルを反応器チャンバの外側に提供し、冷却パネルは、好ましくは反応管の長手方向に平行に伸展する。冷却パネルはさらに好ましくは、入力開口部が配列された反応器壁の外側に配列された(不活性の)接続チャンバの中に収容される。
【0031】
好ましくは、少なくとも1つの入力開口部は、少なくとも1つの管注入口開口部から、および少なくとも1つの管流出口開口部から空間的に分離される。
【0032】
好ましい実施形態によれば、反応器は交流電源、または交流電圧を提供する交流電圧供給源を備える。詳細には、少なくとも1つのブリッジに関して、好ましくはすべてのブリッジに関して、交流電源の中性点にブリッジを接続する中性線を提供し、さらに好ましくは、2つの反応管の間にあるブリッジの電気抵抗は、対応するブリッジに接続された中性線の電気抵抗よりも小さく、さらに好ましくは、これらの抵抗の比は最大で1/5、より好ましくは最大で1/20、最も好ましくは最大で1/50である。
【0033】
好ましくは(ブリッジと交流電源の中性点の間の)中性線の電気抵抗は、電気コンパレータ抵抗よりも小さい。この場合、ブリッジの電気抵抗に関連して上記で導入したコンパレータ抵抗を意味し、異なる比較上の長さに基づき異なるコンパレータ抵抗が規定された場合、一方を選択できる、またはコンパレータ抵抗の平均値を使用できる。
【0034】
ラジアンで表現した、交流電流の2つの相互に異なる相の間の位相シフトは、好ましくはπ・k/Mであり、ここでkはいずれの場合も1~M-1の範囲の整数である。
【0035】
好ましくは、反応器壁を通る貫通接続、すなわち詳細には管注入口開口部、管流出口開口部、および(電力)入力開口部を密封ベローズなどの適切な機器を用いて気密構造にする。気密構造のためのそのような機器は、電気接触を通して電気を供給されている構成要素と対応する反応器壁との間で電気接触がまったくないように電気的に絶縁するように設計される。接続チャンバ内に配列された冷却パネルを提供する場合、入力開口部の気密設計を不要にできる。この場合、接続チャンバは環境に対して気密であるべきである。この実施形態は、たとえば(反応管の熱膨張に起因する長手方向の動きを吸収するために)細長い入力開口部を密封することが困難であるときに有用である。この実施形態では、管注入口開口部および管流出口開口部は気密であるべきである。
【0036】
好ましくは、2つのブリッジに対する電力入力配列の2つの距離の比は0.25~1の範囲である。より好ましくは、2つの距離の比は0.25~0.8の範囲、好ましくは0.25~0.7の範囲である。したがって、接触点、すなわち電力入力配列が反応管に接続される地点は、ブリッジに対して非対称に配列できる。換言すれば、そのような実施形態では、接触点は、2つのブリッジの間に位置する反応管の区域を分割して、異なる長さの2つの管区域にする。これにより2つの管区域で、異なる熱入力が可能になり、その結果、処理制御を改善できるようになる。
【0037】
化学反応は200℃~1700℃の、詳細には300℃~1400℃の、または400℃~1100℃の範囲の温度で少なくとも部分的に進行する化学反応である可能性がある。化学反応は、好ましくは少なくとも500℃の、より好ましくは少なくとも700℃の温度で少なくとも部分的に、詳細には500℃または700℃~1100℃の温度範囲で少なくとも部分的に進行する化学反応である。提供される電圧/電流は、対応する加熱電力を提供するのに適している。反応器および電源は同様に、これらの温度で化学反応を行って、対応する加熱電力を提供するように構成される。化学反応は好ましくは水蒸気分解、水蒸気改質、乾燥改質(二酸化炭素改質)、プロパン脱水素、一般に500℃を超えて少なくとも部分的に行われる、炭化水素を用いる反応のうちの1つである。
【0038】
本発明によれば、少なくとも500℃の温度で進行する化学反応を処理流体内で行うための方法を提案し、前述の請求項のうち1つによる反応器を使用し、処理流体は、反応器の反応管を通って運ばれ、多相交流を使用して電気抵抗加熱を用いて加熱され、化学反応は好ましくは、500℃を超えて少なくとも部分的に行われる、水蒸気分解、水蒸気改質、乾燥改質、プロパン脱水素、炭化水素を用いる反応のうちの1つである。
【0039】
本発明について、水蒸気分解のために、または水蒸気改質のために使用するときの反応管および反応器を参照して以下で最初に記述する。しかしながら、本発明はまた他の反応器タイプで使用されてよい。一般に、言及したように、本発明により提案する反応器は、すべての吸熱化学反応を行うために使用できる。
【0040】
本発明について、本発明の実施形態を例示する添付図面を参照して以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による、交流電源に接続された反応器を示す。
【
図2A】本発明の好ましい実施形態による一体のブリッジの横断面を示す。
【
図2B】本発明の好ましい実施形態による反応管への一体のブリッジの接続の横断面を示す。
【
図3】本発明のさらに好ましい実施形態による、複数の要素で構成されるブリッジの横断面を示す。
【
図4】本発明の実施形態による電力入力配列を概略的に示す。
【
図5A】好ましい実施形態による、電力入力配列を冷却するために冷却パネルが提供された反応器を概略的に示す。
【
図5B】好ましい実施形態による、電力入力配列を冷却するために冷却パネルが提供された反応器を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
これらの図では、構造的または機能的に互いに対応する構成要素について、同一の参照符号または類似する参照符号により示し、明確にするために繰り返して説明しない。要素が繰り返し出現する場合、一部は要素のうち1つだけに代表して参照符号を提供する。
【0043】
図1は、好ましい実施形態による、本発明による反応器100を示す。反応器は、反応器チャンバ10を取り囲む反応器壁12o、12u、12r、12lを備え、その結果、反応器壁は、内部が反応器チャンバを構成する反応容器(または反応器ボックス)を形成する。さらに、反応器は、反応器チャンバ10を通って直線状に伸びる多数の反応管22を備え、反応管22は、下部反応器壁12uまたは上部反応器壁12oの中に形成される管注入口開口部14と管流出口開口部15の間で伸びる。それに加えて、注入口側または流出口側で互いに反応管を流体で接続する、注入口管寄せまたは流出口管寄せと呼ばれる集合ラインを提供できる(図示せず)。この注入口管寄せまたは流出口管寄せは、反応器チャンバの外側に、すなわち反応器チャンバと反対の方向を向く反応器壁の側に、または反応器チャンバ内に配列されてよい。反応器チャンバ内に配列される場合、注入口管寄せまたは流出口管寄せは、それぞれ反応管に沿ってブリッジのうちの1つと最も近い反応器壁との間に配列される。
【0044】
反応管22の各々は、側面の反応器壁12rの中の入力開口部16を通って伸展する電力入力配列18に導電可能に接続される。この目的のために、反応管の上に、電力入力配列に備わった、電流の通じている(導電性)要素の役割を果たす棒状の要素64に導電接続された対応する接触通路を提供する。棒状の要素64は反応器壁を通って伸展する。電力入力配列は、次に1つまたは複数の相接続U、V、Wに、すなわち多相交流電源50に接続され、その結果、相のうち1つは各反応管の中に供給される。図示するように、交流電源は好ましくは3つの相を有し、反応管の数は3またはその倍数、たとえばN・3であり、ここでNは2以上の整数であり、相の各々は、対応する電力入力配列を介して反応管のうち1つに接続される、または反応管の数が3のN倍である場合、各相は、対応する電力入力配列を介してNの反応管に接続される。当然のことながら、相および反応管の1に等しくない3と異なる数(またはその倍数)もまた考えられる。電力入力配列を反応管に接続する接触点は、少なくとも1つの電力入力配列に関して(互いに独立した異なる電力入力配列に関して)ブリッジに対して非対称とすることができる、すなわち、ブリッジの間に位置する対応する反応管の管区域を非対称に分割できる(図示せず)。
【0045】
したがって、一般に相の数はMであり、ここでMは2以上の整数である。相の間の位相シフトは好ましくは、電圧または電流が中性点で互いに相殺するように選択される、すなわち、2つの任意の相の間の位相シフトはラジアン測度で2π・k/M、度で360°・k/Nと表現でき、ここでkは1~M-1の範囲の整数である。したがって、3つの相では120°または240°に対応する2π/3または4π/3である。2つの連続する相の間の位相差は、k=1を用いて得られ、すなわち2π/Mとして得られる。この選択は、相が対称に負荷をかけられたときにブリッジでさまざまな相の交流電圧が互いに相殺するので有利である。
【0046】
交流電源50は、主に本発明を理解して多相交流をどのようにして提供できるかを例示するために示されており、本発明のどんな必要な部分も形成しない。これは、たとえば反応器を据え付けるべき、または反応器を据え付けた製造プラントによって提供できる。
【0047】
適切な交流電源50は、以下のように、たとえば交流変成器として、詳細には大電流変成器として実施できる。一次側、すなわち交流電源50への交流供給は、たとえば公共供給網または発電機から行われる。一次側交流電圧は、典型的には数100ボルト~数1000ボルト、たとえば400V、690V、または1200Vであり得る。電源50の一次側と可能な公共供給網または発電機との間で大電流変成器に適した入力電圧を得るために、少なくとも1つの他の変成器(おそらくは、二次側交流電圧を制御する、またはその電圧を一定の電圧範囲内に調節することができるようする少なくとも1つの調整変成器)を間に置いてよい。間に置かれたこの少なくとも1つの変成器の代わりに、またはそれに加えて、1つまたは複数のサイリスタ電力コントローラを用いて入力電圧、またはその結果得られる加熱出力も設定できる。二次側では、交流の相が提供される相線または相端子U、V、Wを提供する。二次側交流電圧は便宜上、最大300Vまで、たとえば150V未満もしくは100V未満、さらには50V以下の範囲にある可能性がある。二次側は一次側から直流的に分離される。
【0048】
反応管22に導電接続された2つの導電性ブリッジ30を反応器チャンバ10内に提供し、各ブリッジはこの場合すべての反応管に接続される。反応管への接続は、反応管に沿って、すなわち反応管の長手方向(すなわち、処理流体が流れることができる方向)に沿って互いに間隔を置いて離して配置された地点で達成される。回路の観点から、ブリッジ30は中性点を形成し、したがって、スターブリッジと呼ぶことができる。相数MのN倍が反応管上に存在する場合(すなわち,N・M)、これらの倍数ごとに互いに間隔を置いて離して配置された2つの導電性ブリッジが提供され、各導電性ブリッジは、Mの反応管に接続される、または互いに間隔を置いて離して配置された2つのブリッジだけを提供でき、これらのブリッジは次いで、すべての反応管にそれぞれ接続される。組合せもまた考えられ得る。
【0049】
電力入力配列18またはその電流の通じている要素64は、2つのブリッジ30の間で反応管に接続される。たとえばこの場合、ブリッジの間のほぼ中央で接続される。より一般的には、距離比、すなわち2つのブリッジ30に対する電力入力配列18の2つの距離の比(より正確には、これらの距離のうち大きい方に対する小さい方の比)は、0.25(他方よりも4倍大きな距離)~1(サイズが等しい距離)までの範囲であるべきである。この比は好ましくは0.5~1の範囲、より好ましくは0.8~1の範囲である。別の好ましい実施形態によれば、この比は0.25~0.8の範囲、より好ましくは0.25~0.7の範囲である。異なる反応管については、この比は異なる可能性があり、好ましくはすべての反応管について同じである。電力入力配列からブリッジにまでの距離が異なる(1に等しくない距離比)ことにより、異なる強度の電流がもたらされ、その結果、電力入力配列と2つのブリッジの間の2つの管区域の中に入る加熱電力入力が異なることになる。これを使用して化学反応に影響を与えてよい。
【0050】
ブリッジ30は有利には、その電気抵抗が反応管と比較して小さくなるように設計される。これは、ブリッジを介して測定した、2つの反応管の間の電気抵抗が、一定の長さを有する反応管の区域または比較区域の電気抵抗よりも小さくなるという意味で理解すべきであり、電気抵抗は長さに沿って決定される(算出される、および/または測定される)。比較区域の電気抵抗はコンパレータ抵抗を形成する。この場合、好ましくは以下の比較区域、すなわち2つの反応管の距離に等しい長さを有する比較区域、反応管の長手方向にブリッジの寸法に等しい長さを有する比較区域、管の注入口または流出口で注入口管寄せもしくは流出口管寄せとブリッジ接続の間の反応管接続の長さに等しい長さを有する比較区域、またはブリッジから管注入口開口部または管流出口開口部が位置する反応器壁までの距離に等しい長さを有する比較区域のうち1つを使用し、ブリッジは、この反応器壁と反応管を伴う電力入力配列の接続点の間に位置する。ブリッジを介して測定した電気抵抗と比較区域の電気抵抗の間の比は、好ましくは最大で1/10、より好ましくは最大で1/50、最も好ましくは最大で1/100である。
【0051】
さらに、ブリッジを電源の中性点に接続する任意選択の中性線Nを示す。中性線は有利には(ブリッジと電源の間の)中性線の電気抵抗が2つの反応管の間のブリッジの電気抵抗よりも大きく、かつ上記の比較区域の電気抵抗よりも小さくなるように設計される。
【0052】
ブリッジは原理上、反応管用の通路を有する構成要素である可能性がある。この場合、これらの通路を通って伸びる反応管とブリッジの間の接触は、たとえば圧入を用いて作り出すことができる。ブリッジの中に反応管を鋳造することもまた可能である。
【0053】
ここから逸脱するが、好ましくは、ブリッジ自身を通る通路は反応管の区域であり、換言すれば、反応管の区域をブリッジと一一体化して形成することが提供される。次いで溶接によりこれらの区域に他の反応管区域を接続する。対応する実施形態を
図2A、
図2B、および
図3に示す。
【0054】
図2Aおよび
図2Bは、好ましい実施形態による、一体のブリッジ30a、30b、および一体のブリッジ30a、30bから反応管22への接続を横断面で示す。
図2Aでは、ブリッジ30aは、通路32が長手方向に伸展するプレートにより形成される。長手方向に互いに対向する、ブリッジまたはプレートの側面は平坦であり、その結果、通路を除いて、突出部のない平面を形成する。通路32の幾何形状および寸法は、反応管22の内側34の幾何形状および寸法に対応する、またはそれに類似する。長手方向の軸を中心に回転対称である反応管の場合、その結果として通路は円形であり、通路の直径は反応管の内径に等しい。ブリッジは溶接により、すなわち溶接シーム36により、ブリッジの外側に位置する反応管区域に接続され、その結果、通路32は内側34と同一平面をなして伸びる。その結果、通路32は反応管の区域を形成する。
【0055】
図2Bの実施形態は、
図2Aの実施形態に実質的に類似し、この場合、突出部33がブリッジ30bの側面上に提供されという違いがあり、該突出部33の幾何形状および寸法は、反応管22の壁(より好ましくは、ブリッジの外側に位置する反応管区域)の幾何形状および寸法と同じである。したがって、回転対称の反応管の場合、突出部の内径および外径は、反応管の内径および外径と同じである。これらの突出部は、言わば側面を越えて通路を伸展させる。ブリッジの外側に位置する反応管区域は、溶接シーム36により突出部の端面に接続される。
【0056】
図3は、好ましい複数の要素で構成されるブリッジ30cを横断面図で示す。このブリッジ30cは、反応管の数に対応する多数の第1のブリッジ要素38および第2のブリッジ要素40を備える。第1のブリッジ要素38の各々は、それらの幾何形状および寸法が反応管22のうち1つの内側44の幾何形状および寸法に類似する、長手方向の通路42を有する。ブリッジ32cの外側の反応管区域は、そこと通路が整列するように溶接(溶接シーム46)を用いて、対応する第1のブリッジ要素38に接続される。第1のブリッジ要素の外側48は長手方向に平行に伸びる。第1のブリッジ要素の半径方向の厚さ、すなわち通路とブリッジ要素の外側の間の距離は、好ましくは円周方向に一定である。半径方向および円周方向は、反応管により画定される長手方向に対して理解されるべきである。ここから逸脱するが、外側はまた、異なる幾何形状を有する可能性がある。
【0057】
この場合たとえば実質的にプレートである第2のブリッジ要素40は、長手方向に伸展する階段状の通路49を有し、通路の領域(一方の段)は第2のブリッジ要素40の幾何形状および寸法の観点から、はめ合い、詳細には圧入を用いてこれらの領域の中に第1のブリッジ要素を挿入できるように第1のブリッジ要素の外側に適合する。通路の他の領域(他の段)は、一方では対応する第1のブリッジ要素に溶接された反応管区域がこの領域を通って嵌合し、他方では対応する第1のブリッジ要素がこの区域を通って嵌合しないように構成される幾何形状および寸法を有する。その結果、第2のブリッジ要素は、図示する配列で第1のブリッジ要素に載り得、その結果、圧入がない場合でさえ固定される。
【0058】
好ましくは、第2のブリッジ要素は、第1のブリッジ要素の材料と異なる材料からなる。さらに好ましくは、第2のブリッジ要素の材料(たとえば、モリブデンまたはモリブデン合金)は、第1のブリッジ要素の材料よりも高い導電率および低い熱膨張係数を有する(たとえば、高温耐熱Cr-Ni鋼)。
【0059】
第1のブリッジ要素はまた、
図2Bに類似して設計でき(図示せず)、すなわち、通路を伸展させ、幾何形状および寸法の観点から反応管の壁と同じ突出部を提供できる。この場合もまたブリッジの外側の反応管区域は突出部の端面に溶接される。同様に、第1のブリッジ要素の中に反応管を鋳造することが可能である。
【0060】
多数の第1のブリッジ要素の代わりに、単一の第1のブリッジ要素もまた使用でき、単一の第1のブリッジ要素は、多数の反応管を介して張力をかけられ(そして多数の反応管に接続され)単一の第2のブリッジ要素に接続される。
図3を参照すると、第1のブリッジ要素は、その下端部で個々の第1のブリッジ要素に接続でき、その結果、この個々の第1のブリッジ要素は、図示するように第2のブリッジ要素の中に嵌合し続けることができる。その結果、低温状態でさえ第1のブリッジ要素を介して最小の等電位化を行うことができることを確実にでき、場合によって2つの(第1および第2の)ブリッジ要素の間の接触は低減され、これは、温度上昇と共に、および第2のブリッジ要素との接触改善と共に改善される。
【0061】
図4は、反応器チャンバ10を通って伸展する反応管22に接続された代表的電力入力配列18を概略的に示す。電力入力配列18は、反応器壁12(たとえば
図1の反応器壁12r)の中の入力開口部16を通って伸展する導電性棒状要素64を備える。入力開口部16は、好ましくは電気絶縁材料68と整列する。
【0062】
電力入力配列18は、接触通路62内で反応管22に導電接続される。図示するように、これは好ましくは反応管の厚くなった部分として設計され、棒状要素64は、厚くなった部分と一体化して形成される、すなわち、反応管に一体化して接続される。製造中、たとえば、接触通路62および棒状要素64は、一体形の鋳造部品として製造でき、次いで溶接により反応管に接続できる。一体形の実施系の代替形態として、電力入力配列はまた、反応管の周囲に伸びるカラーを用いて反応管に接続できる。棒状要素64は、たとえば、多相交流電源の相(実例では
図1のU、V、W)のうち1つを接続するための2つのバスバーまたはストランド66が取り付けられる電力入力ピン65の中に移行する。
【0063】
さらに、環境に対する反応器チャンバ10の気密性、および反応器壁12に対する棒状要素64の(たとえば、熱均一化移動のための)移動性を同時に確実にするベローズ配列70を任意選択で提供できる。
【0064】
図5Aおよび
図5Bは、いずれの場合も電力入力配列18を冷却するために冷却パネル81を備える冷却配列を提供する好ましい実施形態を概略的に描く。冷却配列は、たとえば反応器チャンバの外側に配列された接続チャンバ80の中に収容される。
図5Aと
図5Bのいずれの場合も、反応器壁12により取り囲まれた反応器チャンバ内の反応管22の配列、および反応管22からブリッジ30および電力入力配列18への接続は、
図1に示すものに対応する。反応管は、
図5Aと
図5Bのいずれの場合も、(実例では、
図4のように、中に含まれる棒状要素を用いて)接触通路62上で電力入力配列18にいずれの場合も導電接続され、反応器壁のうち1つを通って、すなわち入力開口部を通って伸展する(さらに詳細に示さず)。
【0065】
接続チャンバ80の中に収容された冷却パネル81は、入力機器18(棒状要素64)の電気の通じている要素に隣接するように配列され、それに平行に伸びる。詳細には、パネルは、2つの電気の通じている要素または棒状要素64の間にそれぞれ位置する。このようにして、入力機器により反応器から伝導した熱、および入力機器内で電流により発生した熱を散逸させることができる。冷却流体は、好ましくは冷却パネルを通って流れる。
【0066】
2つの図は、異なる反応器壁の中に入力開口部が配列され、それに応じて異なる反応器壁を通って入力機器18または棒状要素64が伸展するという点が異なる。
図5Aでは、これは(図の中の)左側の反応器壁である。より一般的には、反応管により画定される長手方向に平行に伸展する反応器壁はまた、右側、前方、または後方の反応器壁である可能性がある。接続チャンバ80は、反応器チャンバの外側に、左側の反応器壁上に配列される。冷却パネル81は、長手方向に平行に配列される。その結果、通常は移動できない冷却パネル81に対して入力機器18が長手方向に動くことが可能である。典型的には反応管に剛性に接続された入力機器のそのような長手方向の動きは、反応管の熱膨張の結果として得られる可能性がある。それに対応して、入力機器の支持または懸架は好ましくは可撓性があり、その結果、長手方向の動きが可能である。各入力開口部は、好ましくは細長い形状を有するべきであり、すなわち、長手方向での各入力開口部の寸法は、各入力開口部の横方向の寸法よりも大きくなるべきであり、両方の寸法は反応器壁に平行であると理解すべきである。左側、右側、前方、および後方の反応器壁は、一般に側面の反応器壁と見なすことができる。
【0067】
図5Bでは、入力機器、より正確には棒状要素64は、下部反応器壁を通して誘導され、上部反応器壁も同様に可能である。その結果、棒状要素64は、長手方向に平行に伸びる。入力機器18はこの場合、一方では反応器壁を通って伸びる棒状要素64に、他方では反応管22に接続された、他の導電性棒状要素64’を備える。これらの他の棒状要素64’はこの場合、下部反応器壁に平行に伸びるが、さらにまた斜めにも伸びる。この場合も、入力機器18は、好ましくは可撓性に支持または懸架される。
【0068】
図5Aおよび
図5Bの実施形態から理解できるように、本発明は、入力開口部を注入口開口部および流出口開口部から離して取り付けることが可能になり、その結果、電力入力配列の電気の通じている要素は、熱い他の処理ラインによりさらに加熱されることがなく、電力入力配列の効果的冷却が容易になる。
【国際調査報告】