(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】PICVDコーティングシステムにおけるアークビーム位置監視および位置制御
(51)【国際特許分類】
C23C 16/505 20060101AFI20240214BHJP
H05H 1/40 20060101ALI20240214BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C23C16/505
H05H1/40
C23C16/44 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547846
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2022053164
(87)【国際公開番号】W WO2022171697
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051691
【氏名又は名称】エリコン・サーフェス・ソリューションズ・アクチェンゲゼルシャフト,プフェフィコーン
【氏名又は名称原語表記】OERLIKON SURFACE SOLUTIONS AG, PFAEFFIKON
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツーガー,オトマール
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB05
2G084CC02
2G084CC23
2G084DD01
2G084DD11
2G084DD13
2G084DD21
2G084FF27
2G084FF29
2G084HH02
2G084HH12
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH23
2G084HH25
2G084HH27
2G084HH30
2G084HH43
2G084HH52
4K030AA09
4K030AA17
4K030FA01
4K030KA14
(57)【要約】
本発明は、カソードとアノードとの間に確立されるプラズマビームの位置および形状を安定させる方法に関し、電界がカソードとアノードとの間に確立され、カソードとアノードとの間の最短電界線が基準線を定め、少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルが設けられ、少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルのコイル軸は、コイル開口の両方と交差しコイル軸に対して平行な直線のうちの少なくとも1つが基準線と交差するように、基準線に対して非共線的に方向付けられ、電流が、少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルを通して送られて、プラズマビームを偏向させるまたは引き付けるために使用される磁場を確立する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードとアノードとの間に確立されるプラズマビームの位置および形状を安定させる方法であって、電界が前記カソードと前記アノードとの間に確立され、前記カソードと前記アノードとの間の最短電界線が基準線を定め、
少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルが設けられ、前記少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルのコイル軸は、コイル開口の両方と交差し前記コイル軸に対して平行な直線のうちの少なくとも1つが前記基準線と交差するように、前記基準線に対して非共線的に方向付けられ、前記プラズマビームを偏向させるまたは引き付けるために使用される磁場を確立するために、電流が、前記少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルを通して送られることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記非共線的に方向付けることは、垂直に方向付けることであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのミラーリングされた電磁コイルが、前記少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルに対し、ミラーリング方式で方向付けられ配置されるように設けられ、前記基準線はミラー軸として使用され、前記方向付けられた電磁コイルおよび前記ミラーリングされた電磁コイルは、電磁コイルの第1の対を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
電磁コイルの第2の対が、前記コイル開口と交差し前記コイル軸に対して平行な直線のうちの少なくとも1つが前記基準線と交差するように、前記電磁コイルの第2の対のコイル軸が前記基準線に対して非共線的に方向付けられるよう、設けられて配置され、前記第2の対は前記第1の対の電磁コイルの軸に対しても非共線的に方向付けられることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の対の電磁コイルの向きは、前記基準線に対して垂直であり、好ましくは前記第1の対の電磁コイルのコイル軸に対して垂直であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
磁場が、1つのコイルまたは2つ以上のコイルによって生成され、前記コイルは、磁力線がカソードからアノードまでの軸に対して実質的に平行でありかつ磁場強度がほぼ均質となるように、配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
磁場Bx、Byを生成するコイルのセットが設けられ、前記コイルのセットは、前記磁場Bx、Byが、前記アークビームを安定させる軸方向磁場Bzに対して垂直に方向付けられるように、前記基準線に対して配置され、前記磁場Bx、Byは、好ましくは前記アークビームの位置を求めるために使用され、特にアークインピーダンスを求めることが、前記アークビームの位置を求めるために使用されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アークビームの静止位置が、変調された電圧信号から、復調技術を使用することにより、好ましくは前記変調された電圧信号に適用される位相感応型直交復調を使用することにより、抽出され、特に、課された場変調に対する振幅および位相遅延の両方が検出されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アークビームのオフセット位置を、極座標からデカルト座標への変換により、座標xおよびyで表すことができ、好ましくは、振幅が、中心アライメントからの静的オフセット位置を提供し、位相遅延が、前記アークビームのミスアライメントの角度方向を提供することを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
アークインピーダンス放物面の曲率が、前記アークビームの位置を求めるための特定のプロセス条件に対して使用され、好ましくは、前記インピーダンス放物面の一軸対称性が想定されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
静的オフセット電流IsxおよびIsyが、好ましくは、前記静的オフセット電流IsxおよびIsyをコイル変調信号に重畳することにより、実際のアークビーム位置の補正に使用され、前記アークビームは、特に、Isx=-dlxおよびIsy=-dlyという推定を使用することにより、センタリングされ、前記ビームのセンタリングのチェックが、前記コイル変調信号の消失によって示されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アークビームセンタリングに対する補正プロセスが反復的に繰り返され、反復手順は、好ましくはアークビーム位置をセンタリング位置で経時的に維持するオンラインアークビームセンタリング方法として自動化されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アークインピーダンス放物面の曲率が、静的オフセット電流IsxおよびIsyの特定の設定に対してアーク電圧を手作業でテストすることにより、求められ、好ましくは、前記アークインピーダンス放物面の曲率の値は、各ステップのプロセスの前に求められることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
意図的に不均等なものとされたコイル変調電流ImxおよびImyが、ビーム位置を求めるのに必要な前記曲率を求めるために選択され、前記ビーム位置を求めるのに必要な曲率は、好ましくは請求項13に記載の求める手順のいくつかのステップに対し、同時に得られることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
パーツをコーティングするためのアークビームPICVDコーティングシステムであって、前記アークビームPICVDコーティングシステムは、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されることを特徴とする、アークビームPICVDコーティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にプラズマ誘起化学気相成長プロセス(PICVD(plasma induced chemical vapor deposition)プロセス)において、プラズマビームの位置および形状を安定させる方法、ならびに、特にアークビームPICVDコーティングシステムの形態で、本発明に係る上記方法を実行するように構成されたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
工具、とりわけ精密工具およびそれに関連する構成要素の、耐腐食性および耐摩耗性を高めるために、工具の表面上にダイヤモンドコーティングを施すことが知られている。薄い均一な層構造を形成するために、CVDプロセス、とりわけPICVDプロセスが、今日頻繁に使用されている。
【0003】
基板上にダイヤモンド膜を作製するためのPICVDプロセスは、文献から、たとえば文献US5753045、WO03/031675 A2、US7192483、US5902649、"High current d.c. arc (HCDCA) technique for diamond deposition", J.Karner, M.Pedrazzini, C.Hollenstein, Diamond and Related Materials 5, (1996), 217-220、および、Operating Manual BAI730D Diamond Coating System, BD 802 633 DE, 5th Edition, 04/2004, page 20から知られている。
【0004】
電子放出源(カソード)およびコレクタ(アノード)を用いて生成されるDC-プラズマアークビームに基づくPICVD(プラズマ誘起化学気相成長)システムは、通常、典型的には0.1mbarと10mbarとの間の範囲の低圧ガス雰囲気中で操作される。ダイヤモンド膜の生成のための可能な混合ガスは、アルゴン(Ar)といった希ガス、水素(H2)、および炭化水素ガスを含み得る。炭化水素ガスは、炭素系膜を成長させるための炭素原子源となり得る。水素は、ダイヤモンドsp3炭素結合モードでの成長を保証し得るものであり、Arは、アークビームプラズマを操作するために必要となり得るものである。プラズマアークビームは、カソードからアノードへの非畳み込み経路を形成する磁力線を有する磁場によって安定させることができる。簡潔にするために、カソードおよびアノードは、多くの場合、ベース面およびカバーの上に位置し、したがって円筒形反応器の両側に位置し、よって、従来技術の構成の典型的な状態を示す
図1aおよび1bに示されるように、アークビームは、カソードからアノードまでの直線状の柱を形成することができる。
【0005】
PICVDプロセスにおける磁場は、通常、磁力線10aがカソードからアノードまでの軸に対して実質的に平行でありかつ磁場強度がほぼ均質となるように配置されたコイル(または複数のコイル10)により、生成される。
【0006】
アークビームのホットプラズマにおいて、炭化水素ガス分子が励起されるとともに原子状水素が形成される。これらの種は、アークビームから離れた場所に位置するパーツに拡散移動し得る。パーツの表面上においてこれらの種は反応して炭素膜を形成することができる。パーツからアークビームまでの、適切に選択された距離に対し、ダイヤモンド膜の効率的な成長のための温度条件が満たさなければならない。
【0007】
PICVDシステムでは、任意の表面上で凝縮する励起種からコーティング膜が形成され、これらの種は、コーティングシステムにおいて拡散移動する。表面温度に応じて、異なるタイプの凝縮反応が起こり、異なるタイプのコーティングが表面上に成長する。ダイヤモンド型コーティングを作製するためのシステムにおいて、sp3型ダイヤモンド膜の成長は、700~900℃の範囲の温度を有する表面において適切な量の原子水素の存在下で起こる。アークビームのプラズマからの熱放射と、主に原子状水素の発熱表面反応との両方によって加熱される場合、これらの温度条件は、システムの中心におけるアークビームの周りのある半径方向距離において満たされる。より長い距離では、温度はより低く、グラファイトタイプの成長が有利である。より低い温度の領域において、特に水冷式システムの壁の上では、ポリマータイプの膜成長が観察される可能性がある。
【0008】
不利なことに、ダイヤモンド膜の生成のためのPICVDプロセスにおいて、プラズマアークビームから特定の距離の場所に位置するパーツ上のダイヤモンド膜成長レートは、アークビームの中心からの距離に決定的に依存する。
【0009】
図1a、1bに示すような典型的な構成において、コーティングするパーツ1は、アークビーム軸9から約120mm離れた固定距離の場所に配置される。この構成において、アークビーム中心軸からの距離変動1ミリメートル当たり、3%~5%の相対ダイヤモンド膜厚感度が観察される。一般的に要求される10%未満の相対膜厚精度を達成するために、アークビームからパーツまでの距離は、膜厚にも影響を及ぼす他の影響要因を考慮して、2~3mm未満でなければならない。アークビーム9は、約50mmの径方向半密度幅で、密度がビーム中心軸から減少する、拡散柱であるため、残念ながら、パーツからビーム軸までの有効距離を視覚的に決定することは、精度が数ミリメートルの、非常に不正確な決定である、または不可能である。
【0010】
パーツは、プラズマ電子源の開口7の中心と、システムの反対側の円錐形アノード8とによって定められる、コーティングシステムの幾何学的軸までの固定された距離の場所に、慎重に配置することができるが、アークビーム軸は、この幾何学的軸から偏向する場合がある。外部磁場と、プラズマ環境における固定具の表面電位からの電界との両方が、カソードからアノードまでの途中でアークビーム9のいくらかの偏向を引き起こす可能性がある。たとえば、アノードおよびカソード源を、アーク電流を駆動する電源に接続する高電流ワイヤの磁場は、いくらかの顕著な偏向を引き起こす。加えて、軸方向磁場を生成する外部コイル10の機械的公差またはわずかな幾何学的ミスアライメントは、いくらかのビーム偏向を引き起こす可能性がある。
【0011】
上記問題を解決するために、適切にセンタリングされたアークビームを維持するための手段が使用されてきた。しかしながら、既に述べたように、アークビームの位置の直接的な目視検査は、アークビームが、中心から輝度が徐々に低下する拡散柱であるため、曖昧かつ不正確である。拡散アークビームの位置を視覚的に求めることを、典型的には±1cmよりも優れたものにすることはできない。アークビームまでの予め決定された位置への部品のセンタリングは、システムが開いているときに行うことはできるが、上述のように精度は十分に良好な精度ではない場合がある。パーツを保持する固定具の何らかの位置決め機構によってパーツを調整することは考えられるが、プロセス温度が500℃を遥かに上回るという事実を考慮すると、そのような現場機構を実現することは非常に難しいであろう。代わりに、軸方向磁場を生成するコイルを傾斜させて、アークビームの偏向を開始する水平磁場成分を生成してもよい。しかしながら、そのような調整を行うことは冗長な反復作業である、なぜなら、パーツ上のコーティング厚さの連続測定を伴う数回のコーティングの実行を行うことを意味するからである。加えて、プロセスドリフトに対し、またはプロセス条件によるアークビーム位置の系統的変動に対し、プロセスごとに、または異なるプロセスステップ間でさえも、コイル傾斜の調整を行うことは、多大な労力を要する。電動傾斜手段を使用して、この調整を自動化することにより、プロセスレシピからの遠隔制御ビーム偏向調整を可能にすることができる。
【0012】
システム内のアークビーム軸からの距離とともに急速に低下する温度を考慮し、アークビームの周りの異なる角度位置における温度を同時に測定することを使用して、アークビーム柱の位置を求めることもできる。アークビームをセンタリングするためのそのようなレシピは、J.Karner, M.Pedrazzini, C.Hollenstein, Diamond and Related Materials 5, (1996), 217-220 および Operating Manual BAI730D Diamond Coating System, BD 802 633DE, 5th Edition, 04/2004 に記載されている。しかしながら、すべてのセンサ上で同一表面を維持するだけでなく、温度センサを非常に正確に位置決めすることが必須である。これらの課題は、わずか数mmの位置精度が要求されることを考慮すると、生産型環境ではほとんど克服できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の目的
したがって、本発明の目的は、基板上にダイヤモンド膜を製造するための周知のPICVDプロセスの上述の欠点を、少なくとも部分的に克服することである。特に、本発明の目的は、ダイヤモンドコーティングを、対象を定めて制御可能に施すために、プラズマビームの位置および形状を、単純で費用対効果が高く信頼性の高い方法で安定させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の説明
上記課題は、請求項1に記載の方法および請求項15に記載のシステムによって解決される。本発明のさらに他の特徴および詳細は、それぞれの従属請求項、本明細書および図面から得られる。本発明に係る方法に関して説明した特徴および詳細は、当然ながら、本発明に係るシステムに関しても有効であり、その逆もまた同様であり、したがって、本発明の個々の態様の開示について、相互参照が常に行われるまたは行われ得る。
【0015】
この点に関し、本発明の第1の態様に従い、カソードとアノードとの間に確立されるプラズマビームの位置および形状を安定させる方法が開示され、電界がカソードとアノードとの間に確立され、カソードとアノードとの間の最短電界線が基準線を定め、少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルが設けられ、少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルのコイル軸は、コイル開口の両方と交差しコイル軸に対して平行な直線のうちの少なくとも1つが基準線と交差するように、基準線に対して非共線的に方向付けられ、プラズマビームを偏向させるまたは引き付けるために使用される磁場を確立するために、電流が、少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルを通して送られる。
【0016】
このように、本発明の核心は、PICVDシステム内で均等なコーティング厚さおよび組成を実現するための、システム内のアークビーム位置の正確なアライメントの手段である。これは特に2つの重要な要素を含み、それらは、a)システム内の実際のビーム位置を遠隔で求めること、および、b)偏向を補償するためにシステム内のビーム位置を調整すること、である。予め定められた不均質なコーティングを製造しなければならない場合は、システムにおいてセンタリングされていない状況を意図的に維持可能であることが、理解される。
【0017】
コイル開口の両方と交差し、かつ基準線と交差するコイル軸に対して平行な直線は、特に、コイル軸に対して平行な、コイルを通る仮想の直線として理解することができる。
【0018】
アークビームの位置を明確に求めることおよび効果的に調整することを可能にする構成に関して、好都合には、非共線的に方向付けることが、垂直に方向付けることであってもよい。
【0019】
容易かつ効果的な方法による、特に正確に決定可能かつ調整可能なアークビーム位置決めの範囲において、少なくとも1つのミラーリングされた電磁コイルが、少なくとも1つの方向付けられた電磁コイルに対し、ミラーリング方式で方向付けられ配置されてもよく、好ましくは、基準線はミラー軸として使用され、方向付けられた電磁コイルおよびミラーリングされた電磁コイルは、電磁コイルの第1の対を形成する。
【0020】
特に正確に決定可能かつ調整可能なアークビームの位置決めという文脈において、電磁コイルの第2の対が、コイル開口と交差しコイル軸に対して平行な直線のうちの少なくとも1つが基準線と交差するように、電磁コイルの第2の対のコイル軸が基準線に対して非共線的に方向付けられるよう、設けられて配置され、第2の対は第1の対の電磁コイルの軸に対しても非共線的に方向付けられてもよい。
【0021】
ここで、正確に画定可能かつ調整可能なアークビームの位置決めに関し、特に考えられることは、第2の対の電磁コイルの向きは、基準線に対して垂直であり、好ましくは第1の対の電磁コイルのコイル軸に対して垂直であってもよい、ということである。
【0022】
同様に、正確に画定可能かつ調整可能なアークビームの位置決めに関し、考えられることは、磁場が、1つのコイルまたは2つ以上のコイルによって生成され、コイルは、磁力線がカソードからアノードまでの軸に対して実質的に平行でありかつ磁場強度がほぼ均質となるように、配置されることである。
【0023】
アークビームの位置を明確に求めることおよび効果的に調整することを可能にする構成に関して、好都合には、磁場Bx、Byを生成するコイルのセットが設けられ、コイルのセットは、磁場Bx、Byが、アークビームを安定させる軸方向磁場Bzに対して垂直に方向付けられるように、基準線に対して配置され、磁場Bx、Byは、好ましくはアークビームの位置を求めるために使用され、特にアークインピーダンスを求めることが、アークビームの位置を求めるために使用されてもよい。
【0024】
コーティングプロセス中のアークビームの連続制御を可能にするために、好都合には、アークビームの静止位置が、変調された電圧信号から、復調技術を使用することにより、好ましくは変調された電圧信号に適用される位相感応型直交復調を使用することにより、抽出され、特に、課された場変調に対する振幅および位相遅延の両方が検出されるようにしてもよい。
【0025】
コーティングプロセス中のアークビームの連続制御に関して、アークビームのオフセット位置を、極座標からデカルト座標への変換により、座標xおよびyで表すことができ、好ましくは、振幅が、中心アライメントからの静的オフセット位置を提供し、位相遅延が、アークビームのミスアライメントの角度方向を提供することも、考えられる。
【0026】
この点に関して、アークインピーダンス放物面の曲率が、アークビームの位置を求めるための特定のプロセス条件に対して使用され、好ましくは、インピーダンス放物面の一軸対称性が想定される場合、等しく有益となり得る。
【0027】
さらに、コーティングプロセス中のアークビームの連続制御に関して、好都合には、静的オフセット電流IsxおよびIsyが、好ましくは、静的オフセット電流IsxおよびIsyをコイル変調信号に重畳することにより、実際のアークビーム位置の補正に使用され、アークビームは、特に、Isx=-dlxおよびIsy=-dlyという推定を使用することにより、センタリングされ、ビームのセンタリングのチェックが、コイル変調信号の消失によって示されてもよい。
【0028】
この点に関して、アークビームセンタリングに対する補正プロセスが反復的に繰り返され、反復手順は、好ましくはアークビーム位置をセンタリングされた位置で経時的に維持するオンラインアークビームセンタリング方法として自動化される場合、等しく有益となり得る。
【0029】
コーティングプロセス中のアークビームの連続制御の範囲内で、アークインピーダンス放物面の曲率が、静的オフセット電流IsxおよびIsyの特定の設定に対してアーク電圧を手作業でテストすることにより、求められ、好ましくは、アークインピーダンス放物面の曲率の値は、各ステップのプロセスの前に求められることも、考えられる。
【0030】
同様に、意図的に不均等なものとされたコイル変調電流ImxおよびImyが、ビーム位置を求めるのに必要な曲率を求めるために選択され、ビーム位置を求めるのに必要な曲率は、好ましくは請求項13に記載の求める手順のいくつかのステップに対し、同時に得られることが、考えられる。
【0031】
最後に、本発明の第2の態様に従い、パーツをコーティングするためのアークビームPICVDコーティングシステムが開示され、アークビームPICVDコーティングシステムは、先に述べた方法を実行するように構成される。
【0032】
本発明のさらに他の利点、特徴、および詳細は、本発明の実施形態が図面を参照しながら詳細に説明される以下の記述から明らかであろう。独立請求項および明細書の対応する部分において言及される特徴は、本発明に不可欠なものである可能性がある。独立請求項に含まれていないが従属請求項および明細書の対応する部分において言及されるさらに他の特徴は、個々にまたは任意の組み合わせで本発明の好ましい実施形態を構成する。本明細書において提供される発明の例は、本発明を限定するものとしてではなく、本発明の好ましい実施形態または本発明を表示するものとして理解されねばならない。
図1c~
図8は、本発明の説明の理解を容易にするために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本発明に係るPICVDシステム構成を
図1cに示す。
【0035】
システム内の実際のビーム位置を遠隔で求め、偏向を補償するためにシステム内のビーム位置を調整する、2つの重要な要素は、アークビームを安定させるための軸方向磁場Bzに垂直な磁場Bx、By(
図1c)を生成するコイルのセットによって対処される。好ましくはそれらの軸の方向が垂直になるように配置された2対のコイル10a、10bを使用することにより、アークビームに対して非直線的であり好ましくはアークビームに対して垂直な、任意の方向の磁場ベクトル(Bx,By)を生成することができる。アークビームのプラズマ電子は、カソードからアノードまで通過する際に磁力線を辿る。システム内に(Bzと比較して小さい)水平場を与えることにより、軸方向コイルからの磁力線を偏向させ、その結果、ビームは、そのような水平場の存在下で、カソードとアノードとの間のそれらの経路上で偏向する。水平場成分を生成するコイルの電流の特定の設定により、任意の水平方向におけるビーム欠陥を得ることができる。
【0036】
x、yコイルにおける好ましくは静電流の量および方向を設定し調整することにより、望ましくないどのビーム偏向も補償することができ、適切にビームをセンタリングされた位置に置くことができる。加えて、任意のオフセンタービーム位置(制限内)も、たとえばシステム軸と同心で配置されていないパーツをコーティングする場合に、静的偏向場を生成するために適切なコイル電流を意図的に使用することによって実現することができる。
【0037】
コイルによって生成される水平磁場(Bx,By)を、対処すべき第2のトピックであるビーム位置を求めるために、すなわちアークビーム位置監視のために、利用することもできる。アークビームが水平磁場で偏向するとき、磁力線に沿って移動する電子がアノード付近に近づいてアノード表面に到達するときにこの経路から外れなければならないので、アークインピーダンス(=アーク電圧をアーク電流で割ったもの)は増加する。
【0038】
小型円形開口カソードおよび円錐形アノードの場合、システムは軸対称性を有し、アークビームのインピーダンスは、その偏向の水平方向とは無関係に同じ量だけ増加する。アークビームが軸方向磁場に対して十分に位置合わせされているとき、インピーダンスは最小値を有するので、インピーダンスはビーム欠陥に対して二次的に一次近似で上昇する。したがって、インピーダンスマップ対ビーム偏向は、円錐形アノードの先端によって定められる鉛直軸上において最小値を有する放物面である(
図2a参照)。
【0039】
円錐形アノードの代わりに、円筒形の中空アノードを使用することも可能であり、円筒形の中空アノードも、その対称性によって放物線インピーダンス依存性を有する。
【0040】
アークビーム(横方向)位置に対するインピーダンスの変化を、アークビームの位置を求めるために使用することができる。本明細書において以下ではアークビームインピーダンスRarcを、アークが定電流源によって駆動されると仮定して、アークビーム電圧信号Varc=Rarc・Iarcによって表す。
【0041】
位相シフトされた電流変調をxコイルおよびyコイルに印加することにより、特定の変調周波数fm(変調周期Tp=1/fm)で水平面内で動的に回転する水平磁場成分が生成される。最も単純な場合、コイルは、水平面内に垂直に配置され、
図1bに示すようにx方向およびy方向によって示される。第1の対のコイル(xコイル)に対するコイル電流変調は、正弦関数として選択することができ、第2の対(yコイル)に対する変調は、90°シフトされた正弦関数位相として選択することができる。
【0042】
この磁場成分に従うアークビームは、その静的方向を中心とする対応する円形経路上を移動している。そうすると、アーク電圧(またはインピーダンス)は、アークビームの運動の影響を受ける。アークビームw.r.tの、アノード軸に対する何らかのミスアライメントの場合、アーク電圧は、移動しているアークビームに同期して変調される。インピーダンス放物面上において、対応する経路は楕円である。
図3a、3bおよび3cは、上述の状況を要約する。
【0043】
コイルへの好ましくは静電流が重畳されたビームを適切に偏向させることにより、アークビームをアノード軸に対して位置合わせすることができ、その結果、アーク電圧の変調が消失する。この場合、ビームは、インピーダンス放物面上の固定インピーダンス値で円の上を移動する。このレベルは変調振幅のみに依存する。アーク電圧における変調信号のこの欠如は、アークビームが適切にセンタリングされていることの指標である。
【0044】
変調周期Tpの経過中、この変調周期の前半において、アークビームにより近いパーツ上のコーティングレートは、偏向していないビームの場合よりも瞬間的に大きくなり、この周期の後半において、コーティングレートは相応に小さくなる。この変調周期よりも遥かに長く続く全コーティングプロセスの場合、コーティングレートの変動は、ビーム変調なしの静的厚さに平均化される。最大数時間続くマイクロメートル厚のダイヤモンドコーティングのためのPICVDプロセスにおける典型的な例として、典型的な変調周期は、数秒~10秒の範囲であってもよい。
【0045】
アークビームの静止位置は、復調技術を使用することにより、
図3cに示すように変調された電圧信号から抽出することができる。具体的には、変調された電圧信号に適用される位相感応型直交復調(一般的にはロックイン(Lock-In)技術とも呼ばれる)により、課された場変調に対する振幅および位相遅延の両方を検出することができる。
図5は、復調の模式的実現を示す。振幅は中心アライメントからの静的オフセット位置を提供し、位相遅延はビームのミスアライメントの角度方向を提供する。同等に、ビームのオフセット位置は、極座標からデカルト座標への通常の変換により、座標xおよびyで表すことができる。
【0046】
コイルによる水平磁場(Bx,By)の変調は、以下の式に従い、コイル電流の変調によって生成される。
【0047】
【0048】
式中、fは変調周波数であり、ImxおよびImyはxコイルおよびyコイルの対応する振幅であり、tは時間である。VcosおよびVsinによって表される同期高調波(または1f)復調信号を用いて、xコイルおよびyコイルへの静的補正電流を、以下によって計算することができる。
【0049】
【0050】
式中、φは、変調ハードウェアおよび周波数依存信号システム位相シフトであり、Aは、信号減衰からの、対応して依存する振幅係数であり、c2は、特定のプロセス条件に対するアークインピーダンス放物面の曲率である。簡潔にするために、インピーダンス放物面の一軸対称性が想定される。コイル配置および幾何学形状ならびに軸方向場強度Bzの両方に依存する傾斜パラメータpscalにより、線形と仮定することができる、コイル電流に対するビーム偏向の以前に求められた感度を使用すると、幾何学的ビーム位置は次のようになる。
【0051】
【0052】
実際のビーム位置を補正するには、静的オフセット電流IsxおよびIsyをコイル変調信号に重畳する必要がある。
【0053】
【0054】
Isx=-dIxおよびIsy=-dIyとして、ビームをセンタリングすることができ、これは、
図4cに示すように、アーク電圧の消失変調信号によって特徴付けられる。アークビームは、
図4aに示す中心位置を中心として回転し、アーク電圧は、インピーダンス×アーク電流によって与えられるレベルにおいて一定である。
【0055】
実際、電圧信号の、課されたまたは固有の任意の他の変動は、復調において抑制されるが、それでもなお、補正値dIxおよびdIyの変動をもたらし得る。アークビームセンタリングに対する補正プロセスが、以下に従い反復的に繰り返されてもよい。
【0056】
【0057】
式中、IsxnおよびIsynは、xコイルおよびyコイルに印加される静電流の以前の設定であり、dIxnおよびdIynは、第nの反復ステップにおいて得られる補正電流である。コイル電流pscalに対するビームの位置感度を用いて、アークビーム位置を以下に従い反復的に補正する。
【0058】
【0059】
(xcn,ycn)のシーケンスは、補正dIxnおよびdIynによるビーム位置の各更新後のアークビーム位置を表す。
【0060】
この反復手順は、アークビーム位置をセンタリング位置で経時的に維持するオンラインアークビームセンタリング方法として自動化することができる。これらは、アークビーム位置に影響を及ぼすプロセスステップのより複雑なプロセスレシピシーケンス中のプロセス条件の変化から生じ得る。
【0061】
これまで、アークビームは、システム軸を中心とする等しいコーティングの均一性を実現するために、このシステム軸を中心としてセンタリングしなければならないものと想定されていた。しかしながら、これは、アークビームを予め定められた位置で維持するという特殊なケースとみなすことができる。xコイルおよびyコイルに対して指定されたオフセット電流IpxおよびIpyを加えると、アークビームは、これらの電流のない位置から、固定量Δx=Ipx/pscalおよびΔy=Ipy/pscalだけ、偏向する。理想的にセンタリングされたアークビームの場合、このアークビームは、位置(xp,yp)=(Δx,Δy)にある。そうすると、復調方法は、このアークビーム位置のシフトを、量IpxおよびIpyを含む新たな補正電流dIxおよびdIyとして検出する。アークビーム位置を連続的に補正するための反復式は次の通りである。
【0062】
【0063】
そうすると、アークビームは、所望の位置(xp,yp)の周りで反復的に変動する。
アークインピーダンス放物面の曲率c2を、IsxおよびIsyの特定の設定に対してアーク電圧を手作業でテストすることにより、求めることができる。異なるプロセスパラメータを用いるいくつかのステップからなる、より複雑なプロセスにおいて、放物面の形状は変化する可能性があり、c2値は各ステップのプロセスの前に求めなければならない。
【0064】
このc2を求めることを回避することは、所与のプロセス条件に対して自動的にこれを行う方法にとって、望ましいであろう。
【0065】
既に適用されたコイル変調を使用して、アーク電圧信号を、2f復調方式にも提供する。2f復調直交信号をVcos2およびVsin2で示し、引続き回転対称インピーダンス放物面を仮定すると、c2は以下のようにして得られる。
【0066】
【0067】
このように、意図的に不均等なものとして選択されたコイル変調電流ImxおよびImyに対し、ビーム位置を求めるのに必要な曲率を、ビーム位置の自動補正のために、上記方法における各ステップごとに、同時に得ることができる。不均等なものとして選択されたコイル変調電流ImxおよびImyの場合、アークビームは、
図6aに示されるように、中心位置の周りの楕円経路上を循環する。アーク電圧変調は、1f成分と2f成分の両方からなる(
図6b)。
図6cは、c2の実際の値を提供するオフセットコントローラに与えられる追加の2f復調信号を模式的に示す。
【0068】
その代わりに、アークインピーダンス放物面の曲率を、アークビームを偏向させるいかなる垂直磁場も伴わないアーク電圧V0と、変調された水平磁場(Bx,By)の多数の周期、たとえば復調VcosおよびVsinを生成するために使用されるのと同じ数の周期にわたる、時間平均アーク電圧Vavgとから得ることもできる。水平コイルへの電流IxおよびIyに依存するアーク電圧V=V0+0.5・c2・(Ix2+Iy2)の放物面の式を用いて、時間平均電圧を、固定電流IsxおよびIsy、ならびに正弦波変調振幅ImxおよびImyを用いて、固定数の変調周期にわたる平均のために、以下のように計算することができる。
【0069】
【0070】
このようにして、復調信号およびアークビーム位置を取得するために必要なパラメータc2を同時に取得することができ、このことは、このパラメータがコーティングプロセスの継続時間にわたって変化し得る場合に好都合である。
【0071】
以下、本発明を具体例に基づいて説明する。
[1]~[5]に記載されるようなダイヤモンドコーティングのためのPICVDシステムの典型的な構成において、ビーム偏向感度w.r.t.コイル電流は、約2mm/Aであり、より大きな電流を用いた視覚的欠陥実験と、考慮される幾何学的形状に対する磁力線計算との両方から、観察される。本願の例において、軸方向磁場Bzは10mTであり、アークビームの位置でコイルによって生成された水平磁場は、1アンペアコイル電流当たり約0.1mTであった。
【0072】
コイル電流に対するアーク電圧の依存性は、およそc2=0.3V/A2の静的偏向で観察されている。10変調周期の電圧信号トレースの復調のための他の各種ソースから数10mVのレベルの固有電圧変動の場合、2mm/Aの偏向感度を伴う位置精度は、1mm未満の範囲にあり、10%未満のコーティング厚さ偏差を実現するために典型的に要求されるレベルを下回る。復調に対してより長く持続するトレースを使用すると、より優れた位置精度を実現することができるが、位置の値を得るのにより長い時間を要することにもなる。
【0073】
上述の状況は、配置および変復調方式の特殊なケースである。一般的に、xコイルおよびyコイルは、ビームを偏向させる回転水平磁場成分を生成するために互いに垂直である必要はない。この場合、変調振幅および位相を適合させなければならず、これを復調方式において正しく考慮しなければならないので、ビーム中心位置を求めるための式が複雑になる。加えて、yコイルの変調信号は、sin関数形式である必要はなく、より一般的な形式cos(2*pi*f*t+δ)を有することも可能であり、δ≠πである。この場合、xコイルおよびyコイルに適用される等しい変調振幅ImxおよびImyであっても、アーク電圧の2f成分が存在する。先の一般化と同様に、ビーム位置を得るための式はより複雑になる。
【0074】
いくつかの特殊なケースにおいて、cos型またはsin型変調関数を持たないことが望ましい場合がある。この場合も変復調方式を同様に適用することができるが、やはり、アークビーム中心または位置オフセットを検出し補正するための正しい式はより複雑になる。
【0075】
上述の例では、プラズマビームを偏向させるために2対のコイル(xコイルおよびyコイル)を使用した。しかしながら、コイル対の数を増すことが可能であることに注意されたい。1つの可能性は、プラズマアークビームを「囲む」種類の3対または4対またはN対のコイルを有することである。
【0076】
アークビームに垂直な磁場の生成は、2対のコイルよりも多いコイルを用いて行うこともできる。これは、たとえば2対の配置に何らかの幾何学的または他の望ましくない制限がある場合に、意味をなす可能性がある。その場合、コイルへの電流の波動関数は、単純な三角関数sinおよびcos関数を超えて相応に適合させなければならない。
【0077】
図1aおよび
図1bに示されるような、これまでに検討されたシステムにおいて、カソードおよびアノードは、システムの両側に配置される。本発明は、
図7aおよび
図7bに示されるようなシステム構成に拡張することができる。カソードは、システムの底部に位置するアノードに対してその放出方向に回転したシステムの側部に位置し、アークビームはカソードからアノードまで屈曲した柱を形成する。対応するコイル電流として定義されるカソードにおけるコイル9aおよびアノードにおけるコイル9の両方からの磁場強度の適切な選択により、アークビーム経路を、カソードから水平経路上で延在し、その後かなり短い経路でアノードに向かって屈曲し、最終的にアノードへのほぼ直線状の垂直経路を辿るように、調整し安定させることができる。
【0078】
コイル9aへの電流およびコイル9への電流の両方を適切に変調することにより、アークビームをx方向において前後に偏向させることができる。任意選択のコイル9bにより、追加の磁場を発生させて、x方向におけるアークビームの運動を拡張し単純化することができる。アークビームのy方向の偏向を、一対のコイル10bを用いて、先に
図1aおよび
図1bで説明したシステムと同様に実現することができる。コイル9a、9への電流および任意選択のコイル9bへの電流の両方の、コイル10bへの電流に対する同期変調により、ビーム運動の閉鎖経路を、理想的には楕円経路でまたは円経路でも生成することができ、同じ復調技術を、上記のようにアークビーム位置を求めるために適用することができる。
【0079】
図7aおよび
図7bに記載されるシステムを、
図8に示されるように同じレベルにおいてシステムの反対側に位置する追加のカソード源により、さらに拡張することができる。
【0080】
これは、アークビーム電流を、1つのカソード源の限界を超えて増加させなければならない場合に、必要となり得る。このカソード源も、このカソード源のための磁場を生成するコイル9bを備えている。ここで、コイル9a、9bおよび9からの場は、アークビームを安定させるための磁場を生成し、偏向させるための変調方式は、対応するコイルへの電流をすべて含んでいなければならない。複数のアークビームを有するそのようなシステムでは、アークビーム自体の磁場が他方のアークビームとの相互作用を引き起こすので、アークビーム間の相互作用を考慮しなければならない。複数のアークビームを制御することは、明らかに、組み合わされたアークビームを共通アノードに誘導し安定させるための個々のコイルへのより複雑な電流制御をもたらし得る。
【0081】
同様に、さらにより多くのアークビーム電流が必要とされる場合、システムの垂直側面上に位置する追加のカソード源を用いて上記システムをさらに拡張することができる。そのようなシステムにおいて、ビームをy方向に偏向させるためのコイル10bはもはや使用されなくてもよく、これらの追加の源のコイルをこの目的のために使用すればよい。
【国際調査報告】