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特表2024-507745希土類イオンを含む発光領域を有する発光ダイオード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】希土類イオンを含む発光領域を有する発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/08 20100101AFI20240214BHJP
   H01L 33/22 20100101ALI20240214BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20240214BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/22
H01L33/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547858
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 FR2022050200
(87)【国際公開番号】W WO2022171948
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】2101228
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・ドーダン
(72)【発明者】
【氏名】グウェノレ・ジャコパン
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA12
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA66
5F241CA71
5F241CB27
5F241CB36
5F241FF06
(57)【要約】
複数のピクセル(101)を備えるディスプレイデバイス(100)を作製するための方法であって、各ピクセルの作製が、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当する半導体のPIN接合部を形成するスタック(102)を作製するステップと、第1の発光領域、第2の発光領域、および第3の発光領域をそれぞれ形成するスタックの第1の領域(118)、第2の領域(120)、および第3の領域(122)にそれぞれ対面して配設された第1の開口部、第2の開口部、および第3の開口部(116)を備えるマスク(114)を介して、ネスト部分の第1のパート、第2のパート、および第3のパート中にそれぞれ第1の希土類イオン、第2の希土類イオン、および第3の希土類イオンを注入するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピクセル(101)を備えるディスプレイデバイス(100)を作製するための方法であって、各ピクセル(101)の前記作製が、
nドープ半導体である第1の部分(104)と、前記第1の部分(104)上に配設された、意図せずにドープされた半導体である第3の部分と呼ばれる別の部分(108)とを少なくとも備えるスタック(102)を作製するステップであって、前記第1の部分(104)および前記第3の部分(108)の前記半導体は、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものである、ステップと、次いで、
少なくとも1つの第1の発光領域を形成するように意図された前記スタック(102)の少なくとも1つの第1の領域(118)に対面して配設された少なくとも1つの第1の開口部(116)を備える第1のマスク(114)を介して、前記第3の部分(108)の少なくとも1つの第1のパート中に第1の希土類イオンを注入するステップと、
前記第1の領域(118)とは異なる、および少なくとも1つの第2の発光領域を形成するように意図された前記スタック(102)の少なくとも1つの第2の領域(120)に対面して配設された少なくとも1つの第2の開口部(116)を備える第2のマスク(114)を介して、前記第3の部分(108)の前記第1のパートとは異なる前記第3の部分(108)の少なくとも1つの第2のパート中に、前記第1の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第2の希土類イオンを注入するステップと、
前記第1の領域(118)および前記第2の領域(120)とは異なる、ならびに少なくとも1つの第3の発光領域を形成するように意図された前記スタック(102)の少なくとも1つの第3の領域(122)に対面して配設された少なくとも1つの第3の開口部(116)を備える第3のマスク(114)を介して、前記第3の部分(108)の前記第1のパートおよび前記第2のパートとは異なる前記第3の部分(108)の少なくとも1つの第3のパート中に、前記第1の希土類イオンおよび前記第2の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第3の希土類イオンを注入するステップと
を少なくとも含み、
前記スタック(102)は、pドープ半導体である第2の部分(106)をさらに備え、前記第3の部分(108)は、前記第1の部分(104)と前記第2の部分(106)との間に配設され、前記第2の部分(106)の前記半導体は、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものであり、前記第2の部分(106)は、前記第1の希土類イオン、前記第2の希土類イオン、および前記第3の希土類イオンを注入する前記ステップの実施前または実施後に作製され、
前記スタック(102)の前記第1の領域(118)、前記第2の領域(120)、および前記第3の領域(122)は、前記スタック(102)の上方面に対して平行な平面内において相互に識別可能である、方法。
【請求項2】
前記第2の部分(106)の前記半導体は、マグネシウム原子および/またはインジウム原子でドープされる、および/または
前記第1の部分(104)の前記半導体は、ケイ素原子および/またはゲルマニウム原子でドープされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の部分(106)の前記半導体中のマグネシウムの原子濃度が、1020at/cm~1021at/cmの間である、および/または
前記第1の部分(104)の前記半導体中のケイ素および/またはゲルマニウムの原子濃度が、1019at/cm~1020at/cmの間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の希土類イオン、前記第2の希土類イオン、および前記第3の希土類イオンは、前記第1の発光領域、前記第2の発光領域、および前記第3の発光領域が、赤色、緑色、および青色のそれぞれの波長を発することが可能となるように選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各ピクセル(101)の前記作製に関して、前記第1の領域(118)、前記第2の領域(120)、および前記第3の領域(122)とは異なる、ならびに少なくとも1つの第4の発光領域を形成するように意図された前記スタック(102)の少なくとも1つの第4の領域(124)に対面して配設された少なくとも1つの第4の開口部(116)を備える第4のマスク(114)を介して、前記第3の部分(108)の前記第1のパート、前記第2のパート、および前記第3のパートとは異なる前記第3の部分(108)の少なくとも第4のパート中に、前記第3の希土類イオンを注入する前記ステップ後に実施される、第4の希土類イオンを注入するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の希土類イオン、前記第2の希土類イオン、前記第3の希土類イオン、および前記第4の希土類イオンを注入する前記ステップは、前記第1の発光領域、前記第2の発光領域、前記第3の発光領域、および前記第4の発光領域が、各ピクセル(101)内において2×2マトリクスの形態で構成されるように実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の希土類イオン、前記第2の希土類イオン、および前記第3の希土類イオンは、ユーロピウムイオン、テルビウムイオンおよび/またはエルビウムイオン、ならびにツリウムイオンから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記スタック(102)は、基板(110)上に作製され、前記スタック(102)は、前記基板(110)と前記第1の部分(104)との間に配設されたnドープGaN部分(112)を少なくともさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記スタック(102)は、
ナノワイヤを成長させるステップ、
平坦層を堆積するステップ、または
平坦層を堆積し、次いで前記堆積された層をエッチングしてナノワイヤを形成するステップ
を実施することによって作製される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記スタック(102)が前記ナノワイヤ成長ステップの実施により作製される場合に、前記スタック(102)を作製する前記ステップの後におよび前記第1の希土類イオンを注入する前記ステップの前に実施される、前記ナノワイヤ同士の間に電気絶縁材料を堆積するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の部分(104)、前記第2の部分(106)、および前記第3の部分(108)の前記半導体は、AlNを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のマスク、前記第2のマスク、および前記第3のマスクは、同一のハードマスク(114)に相当するものであり、前記ハードマスク(114)は、前記第1の希土類イオン、前記第2の希土類イオン、および前記第3の希土類イオンを注入する前記ステップの最中において、前記スタック(102)に対する位置が相互に異なり、
前記方法が、請求項5に従属し、前記第4の希土類イオンを注入する前記ステップを含む場合に、前記第4のマスクは、前記第1のマスク、前記第2のマスク、および前記第3のマスクを形成するものと同一のハードマスクに相当するものであり、前記第4の希土類イオンを注入する前記ステップの最中における前記スタック(102)に対する前記第4のマスクの位置は、前記第1の希土類イオン、前記第2の希土類イオン、および前記第3の希土類イオンを注入する前記ステップの最中における前記スタック(102)に対する前記第4のマスクの位置とは異なる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のマスクは、感光性樹脂の上に配置され、前記第2の希土類イオンを注入する前記ステップ前に除去され、
前記第2のマスクは、感光性樹脂の上に配置され、前記第2の希土類イオンを注入する前記ステップの後に除去され、
前記第3のマスクは、感光性樹脂の上に配置され、前記第3の希土類イオンを注入する前記ステップ後に除去され、
前記方法が、請求項5に従属し、前記第4の希土類イオンを注入する前記ステップを含む場合に、前記第4のマスクは、感光性樹脂の上に配置され、前記第4の希土類イオンを注入する前記ステップの後に除去される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
複数のピクセル(101)を有するディスプレイデバイス(100)であって、各ピクセルは、
nドープ半導体である第1の部分(104)、pドープ半導体である第2の部分(106)、および前記第1の部分(104)と前記第2の部分(106)との間に配設された意図せずにドープされた半導体である第3の部分(108)を少なくとも備えるスタック(102)であって、前記第1の部分(104)、前記第2の部分(106)、および前記第3の部分(108)の前記半導体は、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものである、スタック(102)と、
少なくとも1つの第1の発光領域を形成するように意図された前記スタック(102)の少なくとも1つの第1の領域(118)に帰属する前記第3の部分(108)の少なくとも1つの第1のパート中に注入された第1の希土類イオンと、
前記第3の部分(108)の前記第1のパートとは異なる、および少なくとも1つの第2の発光領域を形成するように意図された前記第1の領域(118)とは異なる前記スタック(102)の少なくとも1つの第2の領域(120)に帰属する、前記第3の部分(108)の少なくとも1つの第2のパート中に注入された、前記第1の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第2の希土類イオンと、
前記第3の部分(108)の前記第1のパートおよび前記第2のパートとは異なる、ならびに少なくとも1つの第3の発光領域を形成するように意図された前記第1の領域(118)および前記第2の領域(120)とは異なる前記スタック(102)の少なくとも1つの第3の領域(122)に帰属する、前記第3の部分(108)の少なくとも1つの第3のパート中に注入された、前記第1の希土類イオンおよび前記第2の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第3の希土類イオンと
を少なくとも備え、
前記スタック(102)の前記第1の領域(118)、前記第2の領域(120)、および前記第3の領域(122)は、前記スタック(102)の上方面に対して平行な平面内において相互に識別可能である、ディスプレイデバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードすなわちLEDを使用するディスプレイデバイスの分野に関し、より詳細にはLEDを使用するマイクロディスプレイデバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
これらのディスプレイデバイス、具体的には、例えばスマートフォン画面などに使用されるマイクロディスプレイデバイスは、ピクセルセットを備える。各ピクセルは、少なくとも3つのLEDまたはマイクロLEDを備え、各LEDまたはマイクロLEDは、サブピクセルを形成し、以下の三原色、すなわち赤色、緑色、および青色の中の1つを局所的に発色する。この場合には、RBGピクセルが考慮される。
【0003】
かかるディスプレイデバイスは、画素数が多い場合には、一般的には支持体上に様々なLEDをアセンブルすることによって作製される。このアセンブリングステップは、欠陥を生じさせることなく実施されるようなデリケートなものである。しかし、これらの欠陥が1つでも存在すれば、「ブラック」ピクセルと呼ばれる所望の色を発色しないピクセルが生じ、これは販売を目的としたディスプレイデバイスの場合には許容され得るものではない。
【0004】
現行では、かかるディスプレイデバイスを作製するために使用されるLEDは、有機材料を一般的に含み、OLED(「有機発光ダイオード」)と呼ばれる。赤色、緑色、および青色のこれらの3色は、それぞれ異なる有機材料から得られる。色毎に、大きな表面を有する構造体が製造され、次いでそれぞれがLEDに相当する小さな要素に切り分けられ、その後に最終アセンブリングがなされる。この解決策は、高額の費用がかかり、信頼性が限定的である。
【0005】
さらに、OLEDベースディスプレイデバイスの輝度は、限定的なものに留まる。この輝度は、半導体から作製されたLEDを使用することにより改善され得る。実際に、窒化物ベース半導体材料は、青色については非常に効率的であり緑色についてはやや効率性が劣るLEDの製造を可能にする。具体的には、組み込まれるインジウムの量がLEDの発光波長を修正するために調整される、GaN/InGaNヘテロ構造が使用される。しかし、これらの窒化物ベース半導体材料は、この同技術によれば、青色LEDまたは緑色LEDと同様の効率性を有する赤色LEDを実現することはできない。したがって、赤色サブピクセルを形成するために、異なる族の材料を、すなわちリン化物(GaP/GaInP)の材料を使用することが必要となる。欠陥を伴わずに多数のLEDをアセンブルすることに関連するこの技術上の複雑さおよび難点により、作製が可能なディスプレイデバイスの性能およびサイズは、現行では限定されている。
【0006】
また、GaNナノワイヤまたはAlNナノワイヤに希土類イオンを注入することにより単色LEDを作製することが知られている。しかし、この解決策もまた、このように作製されるサブピクセルのアセンブリングおよび結果として生じる欠陥に関連する問題に直面する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、このLEDタイプの複数の単色サブピクセルから形成されたピクセルを備え、これらの各ピクセルの形成のために個別に作製される複数のサブピクセルのアセンブリングに関連する欠点を有さない、ディスプレイデバイスの作製を可能にする解決策を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これを目的として、複数のピクセルを備えるディスプレイデバイスを作製するための方法が説明される。各ピクセルの作製は、
nドープ半導体である第1の部分と、pドープ半導体である第2の部分と、第1の部分と第2の部分との間に配設された意図せずにドープされた半導体である第3の部分とを少なくとも備えるスタックを作製するステップであって、第1の部分、第2の部分、および第3の部分の半導体が、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものである、ステップと、
少なくとも1つの第1の発光領域すなわち少なくとも1つの第1のサブピクセルを形成するように意図されたスタックの少なくとも1つの第1の領域に対面して配設された少なくとも1つの第1の開口部を備える第1のマスクを介して、第3の部分の少なくとも1つの第1のパート中に第1の希土類イオンを注入するステップと、
第1の領域とは異なる、および少なくとも1つの第2の発光領域すなわち少なくとも1つの第2のサブピクセルを形成するように意図されたスタックの少なくとも1つの第2の領域に対面して配設された少なくとも1つの第2の開口部を備える第2のマスクを介して、第3の部分の第1のパートとは異なる第3の部分の少なくとも1つの第2のパート中に、第1の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第2の希土類イオンを注入するステップと、
第1の領域および第2の領域とは異なる、ならびに少なくとも1つの第3の発光領域を形成するように意図されたスタックの少なくとも1つの第3の領域に対面して配設された少なくとも1つの第3の開口部を備える第3のマスクを介して、第3の部分の第1のパートおよび第2のパートとは異なる第3の部分の少なくとも1つの第3のパート中に、第1の希土類イオンおよび第2の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第3の希土類イオンを注入するステップとを少なくとも含む。
【0009】
さらに、複数のピクセルを備えるディスプレイデバイスを作製するための方法が提案される。各ピクセルの作製は、
nドープ半導体である少なくとも1つの第1の部分と、第1の部分上に配設された、意図せずにドープされた半導体である第3の部分と呼ばれる別の部分とを備えるスタックを作製するステップであって、第1の部分および第3の部分の半導体が、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものである、ステップと、
少なくとも1つの第1の発光領域を形成するように意図されたスタックの少なくとも1つの第1の領域に対面して配設された少なくとも1つの第1の開口部を備える第1のマスクを介して、第3の部分の少なくとも1つの第1のパート中に第1の希土類イオンを注入するステップと、
第1の領域とは異なる、および少なくとも1つの第2の発光領域を形成するように意図されたスタックの少なくとも1つの第2の領域に対面して配設された少なくとも1つの第2の開口部を備える第2のマスクを介して、第3の部分の第1のパートとは異なる第3の部分の少なくとも1つの第2のパート中に、第1の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第2の希土類イオンを注入するステップと、
第1の領域および第2の領域とは異なる、ならびに少なくとも1つの第3の発光領域を形成するように意図されたスタックの少なくとも1つの第3の領域に対面して配設された少なくとも1つの第3の開口部を備える第3のマスクを介して、第3の部分の第1のパートおよび第2のパートとは異なる第3の部分の少なくとも1つの第3のパート中に、第1の希土類イオンおよび第2の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第3の希土類イオンを注入するステップと
を少なくとも含み、
スタックは、pドープ半導体である第2の部分をさらに備え、第3の部分は、第1の部分と第2の部分との間に配設され、第2の部分の半導体は、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものであり、第2の部分は、第1の希土類イオン、第2の希土類イオン、および第3の希土類イオンを注入するステップの実施前または実施後に作製され、
スタックの第1の領域、第2の領域、および第3の領域は、スタックの上方面に対して平行な平面内において相互に識別可能である。
【0010】
スタックの前記少なくとも1つの第1の領域は、意図せずにドープされた半導体である第3の部分の前記少なくとも1つの第1のパートを備える。スタックの前記少なくとも1つの第1の領域、および意図せずにドープされた半導体である第3の部分の前記少なくとも1つの第1のパートは、第1のマスクの前記少なくとも1つの第1の開口部の形状および寸法により、第1のマスクが上に配設されるスタックの面に対して平行な平面内において幾何学的に(形状および寸法)画定される。
【0011】
スタックの前記少なくとも1つの第2の領域は、意図せずにドープされた半導体である第3の部分の前記少なくとも1つの第2のパートを備える。スタックの前記少なくとも1つの第2の領域、および意図せずにドープされた半導体である第3の部分の前記少なくとも1つの第2のパートは、第2のマスクの前記少なくとも1つの第2の開口部の形状および寸法により、第2のマスクが上に配設されるスタックの面に対して平行な平面内において幾何学的に(形状および寸法)画定される。
【0012】
スタックの前記少なくとも1つの第3の領域は、意図せずにドープされた半導体である第3の部分の前記少なくとも1つの第3のパートを備える。スタックの前記少なくとも1つの第3の領域、および意図せずにドープされた半導体である第3の部分の前記少なくとも1つの第3のパートは、第3のマスクの前記少なくとも1つの第3の開口部の形状および寸法により、第3のマスクが上に配設されるスタックの面に対して平行な平面内において幾何学的に(形状および寸法)画定される。
【0013】
この方法は、注入される希土類イオンの性質に依存する可視範囲の種々の波長の光を発することが可能なLEDを形成する複数の発光領域すなわちサブピクセルを実現するために、ディスプレイデバイスのピクセルのPN接合部を形成するまたは形成するように意図されたスタックの種々の領域中に、局所的な様式で希土類イオンの注入を連続的に実施することを提案する。したがって、ディスプレイデバイスのサブピクセルは、同一の半導体スタック中に連続的にin-situ作製され、したがってディスプレイデバイスのピクセルを形成するために個別に作製されたLEDのアセンブリングを実施することが回避される。
【0014】
第1の構成では、第2の部分は、希土類イオン注入ステップの実施前に作製され得る。この場合に、スタックの第1の部分、第2の部分、および第3の部分は、第2の部分が完成するまで中断されない成長によって作製され得る。次いで、希土類イオンが、半導体の第3の部分の種々のパートに到達するまで第2の部分を貫通して注入される。
【0015】
第2の構成では、第2の部分は、希土類イオン注入ステップの実施後に作製され得る。この場合に、半導体である第1の部分および第3の部分は、成長により作製され得る。次いで、成長が中断され、注入が実施され得る。この第2の構成では、注入された希土類イオンは、半導体の第2の部分を横断する必要はなく、これにより、より低いエネルギーでのイオン注入ステップの実施と、実現される注入プロファイルに関するばらつきの軽減とが可能になる。注入の実施後に、成長が再開されて、半導体の第2の部分が作製され、かくしてディスプレイデバイスのピクセルを形成するPN接合部の作製が完了し得る。
【0016】
さらに、この方法は、有機材料を使用せず、場合によってはOLEDベースディスプレイデバイスの場合に実現される輝度よりも優れた輝度を実現することを可能にする。
【0017】
さらに、希土類イオンの発光の特徴である低スペクトル幅の実現により、OLEDベースディスプレイデバイスに比べてより多様な色範囲を実現することが場合によっては可能になる。
【0018】
有利には、この方法は、RGBピクセルディスプレイデバイスを作製するために実施される。すなわち、それぞれが、赤色、緑色、および青色に相当する波長を発する少なくとも3つのサブピクセルを備える。しかし、一般的には、この方法は、それぞれが異なる波長を発し必ずしもRGBピクセルに相当するものではない、少なくとも3つのサブピクセルをそれぞれが備える複数のピクセルを備えるディスプレイデバイスを作製するために実施され得る。
【0019】
この方法は、大面積ディスプレイデバイスを、すなわち例えば5×7cmなどの寸法を有するディスプレイデバイスを作製するために実施され得る。これらのデバイスの複数を後にアセンブルすることにより、コンピュータ画面もしくはテレビ画面のサイズに相当するように、またはウォールディスプレイ用のサイズに相当するように、最終デバイスのサイズを任意の大きさに拡大することが可能になり得る。
【0020】
文献全体を通じて、「LED」という語は、寸法の相違に関わらずLEDまたはマイクロLEDを示すために使用される。
【0021】
この方法では、希土類イオン注入ステップは、スタック、すなわち第1の部分および第3の部分を少なくとも備え、第1の構成の場合には第2の部分をさらに備え得るスタックの少なくともパートの作製後に実施される。
【0022】
第1の部分、第2の部分、および第3の部分の半導体は、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、またはAlGaInNに相当するものであってもよい。
【0023】
意図せずにドープされた半導体すなわちネストは、ドーピングステップを受けていないが、このドーピングステップの最中にドーピング原子が注入された半導体に相当する。
【0024】
さらに、複数のピクセルを備えるディスプレイデバイスを作製するための方法が提案される。前記方法は、
nドープ半導体である少なくとも1つの第1の部分と、pドープ半導体である少なくとも1つの第2の部分と、第1の部分と第2の部分との間に配設された意図せずにドープされた半導体である少なくとも1つの第3の部分とを備えるスタックを作製するステップであって、第1の部分、第2の部分、および第3の部分の半導体は、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものである、ステップと、
第3の部分の第1のパートを備え、各ピクセルに少なくとも1つの第1の発光領域すなわち少なくとも1つの第1のサブピクセルを形成するように意図された、スタックの第1の領域に対面して配設された第1の開口部を備える第1のマスクを介して、第3の部分の第1のパート中に第1の希土類イオンを注入するステップと、
第1の領域とは異なる、および各ピクセルに少なくとも1つの第2の発光領域すなわち少なくとも1つの第2のサブピクセルを形成するように意図された、第3の部分の第2のパートを備えるスタックの第2の領域に対面して配設された第2の開口部を備える第2のマスクを介して、第3の部分の第1のパートとは異なる第3の部分の第2のパート中に、第1の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第2の希土類イオンを注入するステップとを少なくとも含む。
【0025】
さらに、複数のピクセルを備えるディスプレイデバイスを作製するための方法が提案される。前記方法は、
nドープ半導体である少なくとも1つの第1の部分と、第1の部分上に配設された意図せずにドープされた半導体である第3の部分と呼ばれる別の部分とを備えるスタックを作製するステップであって、第1の部分および第3の部分の半導体は、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものである、ステップと、
第3の部分の第1のパートを備え、各ピクセルに少なくとも1つの第1の発光領域すなわち少なくとも1つの第1のサブピクセルを形成するように意図された、スタックの第1の領域に対面して配設された第1の開口部を備える第1のマスクを介して、第3の部分の第1のパート中に第1の希土類イオンを注入するステップと、
第1の領域とは異なる、および各ピクセルに少なくとも1つの第2の発光領域すなわち少なくとも1つの第2のサブピクセルを形成するように意図された、第3の部分の第2のパートを備えるスタックの第2の領域に対面して配設された第2の開口部を備える第2のマスクを介して、第3の部分の第1のパートとは異なる第3の部分の第2のパート中に、第1の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第2の希土類イオンを注入するステップとを少なくとも含み、
スタックは、pドープ半導体である第2の部分をさらに備え、第3の部分は、第1の部分と第2の部分との間に配設され、第2の部分の半導体は、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものであり、第2の部分は、第1の希土類イオン、第2の希土類イオン、および第3の希土類イオンを注入するステップの実施前または実施後に作製され、
スタックの第1の領域、第2の領域、および第3の領域は、スタックの上方面に対して平行な平面内において相互に識別可能である。
【0026】
さらに、この方法は、第1の領域および第2の領域とは異なる、ならびに各ピクセルに少なくとも1つの第3の発光領域すなわち少なくとも1つの第3のサブピクセルを形成するように意図された、第3の部分の第3のパートを備えるスタックの第3の領域に対面して配設された第3の開口部を備える第3のマスクを介して、第3の部分の第1のパートおよび第2のパートとは異なる第3の部分の第3のパート中に、第1の希土類イオンおよび第2の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第3の希土類イオンを注入するステップをさらに含み得る。
【0027】
この方法において実施される希土類イオン注入ステップはそれぞれ、少なくとも1つのタイプの希土類イオンの注入に相当する。換言すれば、これらの注入ステップはそれぞれ、1つまたは複数の異なるタイプの希土類イオンの、および任意には希土類イオンに相当しない原子の注入に相当し得る。例えば、所与の色彩に関して希土類イオンの発光の化学プロセスを最適化するために、同一の発光領域中に2つの異なるタイプの希土類イオンを、場合によっては希土類イオンに相当しない原子と共に注入することが可能である。
【0028】
さらに、実施される希土類イオン注入ステップのそれぞれは、各ピクセルに存在するマスク開口部の個数に応じて、したがって各注入ステップにおいて各ピクセルに対してイオンが注入される第3の部分のパートの個数に応じて、各ピクセル中に1つまたは複数のサブピクセルを形成することが可能である。
【0029】
ある特定の実施形態では、第2の部分の半導体は、マグネシウム原子および/またはインジウム原子でドープされることが可能であり、および/または第1の部分の半導体は、ケイ素原子および/またはゲルマニウム原子でドープされることが可能である。
【0030】
希土類イオンが注入された半導体からの発光に伴う電子遷移は、希土類イオンの4f電子殻に帰属する深い電子において発生する電子遷移に相当する。外方殻の電子によるこの殻のスクリーニングにより、発光は、非常に安定的なものとなり、結晶性または非晶質の半導体または絶縁体であり得る周辺材料の性質から独立したものとなる。これらの希土類イオンが半導体中に注入されると、4f電子殻にて発生する電子遷移が電流の通過により励起され、次いで基底状態への復帰が発光により達成され得る。一方では励起および結合の効率性が、ならびに他方では励起発光寿命が、希土類イオンが注入される半導体のギャップの数値による影響を被りやすい。このギャップがより大きいほど、全体的な効率性は高くなる。本明細書において説明される方法では、第2の部分のpドープ半導体のマグネシウム原子およびインジウム原子でのドーピングにより、例えばAlNなどのワイドギャップ半導体を使用することが可能となり、これにより非常に優れた光効率を有する発光領域を実現することが可能となる。
【0031】
第2の部分の半導体中にインジウムが存在することにより、インジウムを全く含まないこの同一の半導体と比較して、より多数のドーピングマグネシウム原子を混入させることが可能となる。なぜならば、実現されるマグネシウムの原子濃度は、半導体中に存在するインジウムの量に比例するからである。したがって、この例では、第2の部分の半導体において実現され得るp型ドーピングレベルは、より高くなり、より高い電流注入およびより優れた電流線分布の実現を可能にする。例えば、AlNまたはAlGaNの中にインジウムが存在することにより、これらの材料中におけるマグネシウム可溶性限度を約10倍に等しい倍数まで上昇させることが可能となり、したがってこの半導体において実現可能なドーピングレベルを上昇させる。
【0032】
半導体がインジウムを含む場合に、より多数のマグネシウム原子を混入させることが可能になることは、予想外である。なぜならば、これらの2つのタイプの原子は、それぞれ別個にAlNに注入された場合には圧縮応力を引き起こすからである。したがって、インジウムの付加はマグネシウムの付加により引き起こされる弾性応力の緩和に寄与しないため、インジウムおよびマグネシウムの同時注入が弾性エネルギーの蓄積に関して好適なものとなるという先験的根拠は存在しない。
【0033】
第2の部分の半導体中におけるマグネシウムの原子濃度は、1020at/cm~1021at/cmの間であってもよく、もしくは1020at/cm超であってもよい、および/または第1の部分の半導体中のケイ素および/またはゲルマニウムの原子濃度は、1019at/cm~1020at/cmの間であってもよい。マグネシウムのかかる原子濃度は、例えばマグネシウムの原子濃度とインジウムの原子濃度との比が1~20の間であるか、または1~50の間であるか、またはさらには1~100の間である、および好ましくは約10である場合などに実現される。この構成により、第2の部分の半導体の良好なレベルのp型ドーピングを実現することが可能となる。なぜならば、例えばかかるドーピングレベルにおけるマグネシウムの有効電離エネルギーが、大幅に低下するからである。したがって、この構成により、第2の部分が金属電極と類似するまたは同様の導電性を有することによる、LED中への良好な電流注入が可能となる。
【0034】
有利には、第1の希土類イオン、第2の希土類イオン、および第3の希土類イオンは、第1の発光領域、第2の発光領域、および第3の発光領域が、赤色、緑色、および青色のそれぞれの波長を発することが可能となるように選択され得る。このように作製されたピクセルは、RGBピクセルに相当するものとなる。
【0035】
さらに、本方法は、各ピクセルの作製に関して、第1の領域、第2の領域、および第3の領域とは異なる、ならびに少なくとも1つの第4の発光領域すなわち少なくとも1つの第4のサブピクセルを形成するように意図されたスタックの少なくとも1つの第4の領域に対面して配設された少なくとも1つの第4の開口部を備える第4のマスクを介して、第3の部分の第1のパート、第2のパート、および第3のパートとは異なる第3の部分の少なくとも1つの第4のパート中に、第3の希土類イオンを注入するステップ後に実施される、有利には第1の希土類イオン、第2の希土類イオン、または第3の希土類イオンと同様の性質を有する第4の希土類イオンを注入するステップをさらに含んでもよい。
【0036】
スタックの前記少なくとも1つの第4の領域は、意図せずにドープされた半導体である第3の部分の前記少なくとも1つの第4のパートを備える。スタックの前記少なくとも1つの第4の領域および意図せずにドープされた半導体である第3の部分の前記少なくとも1つの第4のパートは、第4のマスクの前記少なくとも1つの第4の開口部のセクションにより、第4のマスクが上に配設されるスタックの面に対して平行な平面内において幾何学的に(形状および寸法)画定される。
【0037】
この場合に、有利には、第1の希土類イオン、第2の希土類イオン、第3の希土類イオン、および第4の希土類イオンを注入するステップは、第1の発光領域、第2の発光領域、第3の発光領域、および第4の発光領域が、各ピクセル内において2×2マトリクスの形態で、すなわち2行および2列を形成する構成で構成されるように、実施され得る。
【0038】
各発光領域は、サブピクセルを画定する。サブピクセルは、平坦層スタックからまたはナノワイヤの形態の材料スタックから作製されることが可能である。各ピクセルは、少なくとも3つの異なる発光領域を備える。
【0039】
第1の希土類イオン、第2の希土類イオン、および第3の希土類イオンは、ユーロピウムイオン(赤色発光を可能にする)、テルビウムイオンおよび/またはエルビウムイオン(緑色発光を可能にする)、ならびにツリウムイオン(青色発光を可能にする)から選択され得る。また、プラセオジムイオン(赤色発光を可能にする)、および/またはホルミウム(緑色発光を可能にする)、および/またはセリウム(青色発光を可能にする)を使用することが可能である。
【0040】
このスタックは、基板上に作製することが可能であり、基板と第1の部分との間に配設された少なくとも1つのnドープGaN部分をさらに備え得る。この場合に、かかるnドープGaN部分は、例えば半導体基板、非晶質基板、または金属基板などの任意のタイプの基板上におけるnドープ半導体である第1の部分の成長を開始させることが可能である。
【0041】
スタックは、
ナノワイヤを成長させるステップ、
平坦層を堆積するステップ、または
平坦層を堆積し、次いで堆積された層をエッチングしてナノワイヤを形成するステップを実施することによって作製され得る。
【0042】
この場合に、この方法は、スタックがナノワイヤ成長ステップの実施により作製される場合に、スタックを作製するステップの後におよび第1の希土類イオンを注入するステップの前に実施される、ナノワイヤ同士の間に電気絶縁材料を堆積するステップをさらに含み得る。
【0043】
より一般的には、デバイスは、スタックの種々の部分を形成する層スタック、または相互に隣接して配設され共にスタックの種々の部分を形成する複数のナノワイヤを備え得る。
【0044】
第1の部分、第2の部分、および第3の部分の半導体は、AlNを含むことが可能である。
【0045】
第1の実施形態では、本方法は、
第1のマスク、第2のマスク、および第3のマスクが、同一のハードマスクに相当するものであり、このハードマスクが、第1の希土類イオン、第2の希土類イオン、および第3の希土類イオンを注入するステップの最中において、スタックに対する位置が相互に異なり、
この方法が第4の希土類イオンを注入するステップを含む場合に、第4のマスクが、第1のマスク、第2のマスク、および第3のマスクを形成するものと同一のハードマスクに相当するものであり、第4の希土類イオンを注入するステップの最中におけるスタックに対する第4のマスクの位置が、第1の希土類イオン、第2の希土類イオン、および第3の希土類イオンを注入するステップの最中におけるスタックに対する第4のマスクの位置とは異なるようなものであることが可能である。
【0046】
第2の実施形態では、本方法は、
第1のマスクが、感光性樹脂の上に配置され、第2の希土類イオンを注入するステップの前に除去され、
第2のマスクが、感光性樹脂の上に配置され、第2の希土類イオンを注入するステップの後に除去され、
第3のマスクが、感光性樹脂の上に配置され、第3の希土類イオンを注入するステップの後に除去され、
本方法が第4の希土類イオンを注入するステップを含む場合に、第4のマスクが、感光性樹脂の上に配置され、第4の希土類イオンを注入するステップの後に除去されるようなものであることが可能である。
【0047】
この第2の実施形態は、標準的なマイクロエレクトロニクス技術を利用するという利点を有し、これにより経済的に有利なものとなる。
【0048】
また、本発明は、複数のピクセルを有するディスプレイデバイスに関する。各ピクセルは、
nドープ半導体である少なくとも1つの第1の部分、pドープ半導体である少なくとも1つの第2の部分、および第1の部分と第2の部分との間に配設された意図せずにドープされた半導体である少なくとも1つの第3の部分を備えるスタックであって、第1の部分、第2の部分、および第3の部分の半導体が、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものである、スタックと、
少なくとも1つの第1の発光領域すなわち少なくとも1つの第1のサブピクセルを形成するように意図されたスタックの少なくとも1つの第1の領域に帰属する第3の部分の少なくとも1つの第1のパート中に注入された第1の希土類イオンと、
第3の部分の第1のパートとは異なる、および少なくとも1つの第2の発光領域すなわち少なくとも1つの第2のサブピクセルを形成するように意図された第1の領域とは異なるスタックの少なくとも1つの第2の領域に帰属する、第3の部分の少なくとも1つの第2のパート中に注入された、第1の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第2の希土類イオンと、
第3の部分の第1のパートおよび第2のパートとは異なる、ならびに少なくとも1つの第3の発光領域すなわち少なくとも1つの第3のサブピクセルを形成するように意図された第1の領域および第2の領域とは異なるスタックの少なくとも1つの第3の領域に帰属する、第3の部分の少なくとも1つの第3のパート中に注入された、第1の希土類イオンおよび第2の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第3の希土類イオンとを少なくとも備える。
【0049】
また、複数のピクセルを備えるディスプレイデバイスが提案される。このディスプレイデバイスは、
nドープ半導体である少なくとも1つの第1の部分、pドープ半導体である少なくとも1つの第2の部分、および第1の部分と第2の部分との間に配設された意図せずにドープされた半導体である少なくとも1つの第3の部分を備えるスタックであって、第1の部分、第2の部分、および第3の部分の半導体が、窒素原子、ならびにアルミニウム原子、および/またはガリウム原子、および/またはインジウム原子を含む化合物に相当するものである、スタックと、
スタックの第1の領域に帰属する、および各ピクセルに少なくとも1つの第1の発光領域すなわち少なくとも1つの第1のサブピクセルを形成するように意図された、第3の部分の第1のパート中に注入された第1の希土類イオンと、
第1の領域とは異なるスタックの第2の領域に帰属する、および各ピクセルに少なくとも1つの第2の発光領域すなわち少なくとも1つの第2のサブピクセルを形成するように意図された、第3の部分の第1のパートとは異なる第3の部分の第2のパート中に注入された、第1の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第2の希土類イオンとを少なくとも備える。
【0050】
また、このディスプレイデバイスは、第1の領域および第2の領域とは異なるスタックの第3の領域に帰属する、および各ピクセルに少なくとも1つの第3の発光領域すなわち少なくとも1つの第3のサブピクセルを形成するように意図された、第3の部分の第1のパートおよび第2のパートとは異なる第3の部分の第3のパート中に注入された、第1の希土類イオンおよび第2の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第3の希土類イオンをさらに備え得る。
【0051】
スタックの第1の領域、第2の領域、および第3の領域は、スタックの上方面に対して平行な平面(または例えばスタックの半導体の2つの異なる部分間の境界部を通過する平面などの、スタックの任意の他の「横方向」平面)内において相互に識別可能である。換言すれば、それぞれ異なる希土類イオンが注入されるそれぞれ異なる領域は、相互に重畳されないが相互に隣接して配設された領域に相当する。スタックの上方面に対して平行な平面内において、注入がなされたスタックの領域、およびしたがってさらには注入がなされた半導体の第3の部分の種々のパートは、相互に隣接して配設される。
【0052】
また、このディスプレイデバイスは、第1の領域、第2の領域、および第3の領域とは異なるスタックの第4の領域に帰属する、ならびに各ピクセルに少なくとも1つの第4の発光領域すなわち少なくとも1つの第4のサブピクセルを形成するように意図された、第3の部分の第1のパート、第2のパート、および第3のパートとは異なる第3の部分の第4のパート中に注入された、第4の希土類イオンを備え得る。
【0053】
添付の図面を参照としてもっぱら示唆的かつ非限定的に提示される例示の実施形態の説明を読むことにより、本発明がよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】第1の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するための方法のステップを示す図である。
図2】第1の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するための方法のステップを示す図である。
図3】第1の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するための方法のステップを示す図である。
図4】第1の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するための方法のステップを示す図である。
図5】第1の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するための方法のステップを示す図である。
図6】第1の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するための方法のステップを示す図である。
図7】第1の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するための方法のステップを示す図である。
図8】第1の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するための方法のステップを示す図である。
図9】第2の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するため方法のステップの一部を示す図である。
図10】第2の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するため方法のステップの一部を示す図である。
図11】第2の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するため方法のステップの一部を示す図である。
図12】第2の実施形態によるディスプレイデバイスを作製するため方法のステップの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下において説明する様々な図面の同等部分、同様部分、または均等部分は、図面間における移動を容易にするために同一の参照数字を有する。
【0056】
図面に示す種々のパーツは、図面をより分かりやすくするために、必ずしも一定の縮尺で図示されるとは限らない。
【0057】
種々の可能性(変形形態および実施形態)は、相互に非排他的なものとして理解されるべきであり、相互に組み合わされることが可能である。
【0058】
次に、図1図8に関連して、第1の実施形態による複数のピクセル101を備えるディスプレイデバイス100を作製するための方法を説明する。
【0059】
本方法の第1のステップは、第1のnドープ半導体部分104と、第2のpドープ半導体部分106と、第1の部分と第2の部分との間に配設された第3の意図せずにドープされた半導体部分108とを少なくとも備えるスタック102を作製することである。第1の部分104の半導体、第2の部分106の半導体、および第3の部分108の半導体は、窒素原子と、アルミニウム原子および/またはガリウム原子および/またはインジウム原子とを含む化合物に相当する。
【0060】
この場合に、スタック102は、例えば半導体からなる基板110上に作製され、この半導体は、例えばシリコンに相当するものであることが可能である。代替的には、基板110は、サファイアまたは他の材料を含んでもよい。
【0061】
本明細書において説明される第1の実施形態では、第1の部分104、第2の部分106、および第3の部分108は、基板110上における局所的成長により作製されたナノワイヤによって形成される。この局所的成長は、MOCVDタイプのエピタキシー(有機金属気相エピタキシー)、または分子ビーム(「分子ビームエピタキシー」なのでMBEとも呼ばれる)に相当するものであってもよい。基板110上における成長を局所化するために、基板110は、リソグラフィにより開口部が形成された、例えばTiNなどを含むマスクで覆われることが可能である。このマスクは、図1図8では見ることができない。
【0062】
具体的な一例によれば、これらのナノワイヤの第1の領域は、nドープGaN部分112の形態で基板110上に最初に形成される。
【0063】
ナノワイヤの成長は、例えば部分112上にnドープAlNなどを備える第2の領域を形成することによって延長される。このn型ドーピングは、例えば成長の最中にナノワイヤの第2の領域にケイ素原子および/またはゲルマニウム原子を混合することによって実現される。これらの第2の領域の半導体中におけるドーパント濃度は、例えば1017at/cm~1020at/cmの間であり、有利には1019at/cm~1020at/cmの間である。
【0064】
これらの第2の領域は、スタック102の第1のnドープ半導体部分104を形成する。ナノワイヤの成長方向に対して平行な方向における第2の領域の寸法(図1図8における軸Zに対して平行な方向における寸法)、すなわちナノワイヤの第2の領域における長さ(さらにこれはスタック102の第1の部分104の厚さに相当する)は、例えば500nmに等しく、より一般的には100~1000nmの間となる。
【0065】
次いで、ナノワイヤの成長は、例えば第2の領域すなわち第1の部分104の上に意図せずにドープされたAlNなどを備える第3の領域を形成することによって延長される。これらの第3の領域は、スタック102の第3の意図せずにドープされた半導体部分108を形成する。この第3の部分108は、光が発せられることとなる半導体発光部分を形成するために後に使用される。第3の部分108の半導体は、意図せずにドープされ、すなわちデバイス100の製造の最中にドーピングステップを受けないが、このドーピングステップの最中にドーピング原子が注入される。ナノワイヤの成長方向に対して平行な方向における第3の領域の寸法、すなわちナノワイヤの第3の領域の長さ(さらにこれはスタック102の第3の部分108の厚さに相当する)は、例えば5nm~50nmの間である。
【0066】
次いで、ナノワイヤの成長は、例えば第3の領域すなわち第3の部分108の上にpドープAlNなどを備える第4の領域を形成することによって延長される。これらの第4の領域は、スタック102の第2のpドープ半導体部分106を形成する。有利には、この場合に、p型ドーピングは、ナノワイヤの第4の領域にマグネシウム原子およびインジウム原子を混合することによって実現される。有利には、ナノワイヤのこれらの第4の領域の半導体中におけるマグネシウムの原子濃度は、1017at/cm~1021at/cmの間であり、有利には1020at/cm~1021at/cmの間である。
【0067】
MBEによる第2の部分106の半導体の成長のためには、アルミニウム、活性窒素、インジウム、および場合によってはガリウムのフラックスが、第3の部分108の上方表面すなわちここではナノワイヤの第3の領域の上方表面に相当する成長表面に対して送られる。さらに、マグネシウムのフラックスが、作製される半導体がマグネシウム原子でpドープされるように送られる。これらのフラックスの数値、すなわちこれらの各化学元素の送られる原子量は、第2の部分106の半導体にとって望ましい組成に従って選択され、具体的にはインジウムの原子濃度が0~1%の間となり、好ましくは0.1%に相当するように選択される。このインジウムのフラックスが存在する場合に、第2の部分106の半導体中のマグネシウムの原子濃度は、この半導体中に混合されるインジウム量に比例し、例えば1017at/cm~1021at/cmの間であり、有利には1020at/cm~1021at/cmの間である。すなわち、マグネシウムの原子濃度は、0.1%~1%の間となる。
【0068】
MOCVDによる成長の最中に、半導体成長のために使用される元素は、有機金属前駆体であり、例えばアルミニウムソースとして使用されるトリメチルアルミニウムまたはトリエチルアルミニウム、窒素ソースとして使用されるアンモニア、インジウムソースとして使用されるトリメチルインジウムまたはトリエチルインジウム、および任意にはガリウムソースとして使用されるにトリメチルガリウムまたはトリエチルガリウムなどである。マグネシウムの原子は、例えばマグネソセンすなわちMg(Cp)の溶液などの適切な前駆体により獲得される。MOCVDにより獲得されるインジウム濃度およびマグネシウム濃度は、MBEにより獲得される濃度と同様であることが可能である。
【0069】
ナノワイヤの成長方向に対して平行な方向における第4の領域の寸法、すなわちナノワイヤの第4の領域の長さ(さらにこれはスタック102の第2の部分106の厚さに相当する)は、後に第3の部分108中に注入されることとなる希土類イオンの侵入深さに適合するように選択される。この希土類イオンの侵入深さは、注入の実施のために用いられるエネルギーに依存する。例えば、典型的な注入エネルギーである300keVの場合には、第2の部分106の厚さは、約50nmと同等になるように選択され得る。
【0070】
例えば、各ナノワイヤの直径は、100nm~150nmの間である。2つの隣接し合うナノワイヤの中心同士の間の距離に相当する、ナノワイヤの作製で用いられる周期、すなわち反復ピッチは、例えば150nm~300nmの間である。ある特定の例示の実施形態では、この周期の数値は、ナノワイヤの中の1つの直径の数値の2倍に等しいものであることが可能である。
【0071】
図1は、本方法のこの段階で実現されるスタック102を概略的に示す。
【0072】
図2は、走査電子顕微鏡法により取得された、スタック102の断面図(a図)および平面図(b図)を示す。
【0073】
代替的には、スタック102は、部分112を備えなくてもよい。
【0074】
スタック102において、第1の部分104、第2の部分106、および第3の部分108は、デバイス100のLEDを形成することを目的としたPIN接合部のセットを形成する。
【0075】
上述のスタック102では、第1の部分104、第2の部分106、および第3の部分108は、AlNを含む。より一般的には、これらの部分104、106、108は、窒素原子と、アルミニウム原子および/またはガリウム原子および/またはインジウム原子とを含む化合物を含んでもよい。したがって、一例の実施形態では、第1の部分104の半導体は、Alx1Ga(1-x1)Nに相当するものであってもよく、ここで0≦X1≦1であり、好ましくは0.7≦X1≦1である。また、第1の部分104の半導体は、インジウム原子を含んでもよく、第1の部分104の化合物は、この場合にはAlGaInNまたはInGaNに相当するものであることが可能である。別の例示の実施形態によれば、第3の部分108の半導体は、Alx4Ga(1-x4)Nに相当するものであってもよく、ここでX4<X1であり、好ましくはX4≦0.9.X1である。別の例示の実施形態によれば、第2の部分106は、マグネシウム原子およびインジウム原子でpドープされたAlx2Ga(1-X2-Y2)InY2Nを含んでもよく、ここでX2>0、Y2>0、およびX2+Y2≦1である。有利には、第2の部分106の半導体は、X2=X1となるようなものである。さらに、0<Y2≦0.01を有し、好ましくはY2=0.001を有することが有利である。
【0076】
一変形実施形態によれば、スタック102は、第1の部分104と第3の部分108との間に、および/または第3の部分108と第2の部分106との間に配設された、少なくとも1つの意図せずにドープされたAlGaN部分を備えてもよい。第3の部分108と第2の部分106との間に配設されたかかる意図せずにドープされたAlGaN部分は、電子ブロック層を形成し、この電子ブロック層は、pドープゾーンにおける電子の余剰を回避し、第3の部分における電荷キャリアの再結合を促進することを可能にする。
【0077】
有利には、作製された構造部中に存在するp型ドーパントを活性化するステップが実施される。この活性化ステップは、熱アニーリングおよび/または電子ビーム照射の実施に相当し得る。熱アニーリングは、例えば100℃~1000℃の間の、および好ましくは700℃相当の温度にて実施される。電子ビームによる照射は、第2の部分106により形成された上方面を経由して、作製された構造部に対して1つまたは複数の電子ビームを送ることからなる。これらの電子のエネルギーは、例えば3keVに等しく、またはより一般的には約2keV~30keVの間である、特に第2の部分106の厚さに従って選択される。線量は、電子ビームの電流値により固定され、1mA/cm~20mA/cmの間で変更可能であり、好ましくは7mA/cmに等しい。この電子照射は、例えば10分に等しい期間にわたり実施される。
【0078】
スタック102が作製された後に、第3の部分108の第1のパート中への第1の希土類イオンの注入が、デバイス100の各ピクセル101に少なくとも1つの第1の発光領域すなわち少なくとも1つの第1のサブピクセルを形成することを目的として、スタック102の第1の領域118に対面して配設された開口部116を備えるマスク114を経由して、実施される(マスク114が配設されたスタック102の部分平面図を示す図3を参照)。第3の部分108の第1のパートは、スタック102の第1の領域118の一部を形成する第3の部分108の複数部分に相当する。
【0079】
本明細書において説明される実施形態では、これらの第1の希土類イオンは、ユーロピウムイオンに相当する。したがって、作製される第1の発光領域は、赤色光を発することが可能であり、各ピクセル101の赤色発光サブピクセルを形成する。これらの各サブピクセルは、複数のナノワイヤを一般的に備える。
【0080】
代替的には、赤色発光領域を作製するためにプラセオジムイオンを注入することが可能である。
【0081】
さらに、第1の注入ステップの最中に、第3の部分108の第1のパート中に複数のタイプの希土類イオンおよび/または他の原子を注入することが可能である。
【0082】
さらに、本明細書において説明される例示の実施形態では、各開口部116が、マスク114の主要面の平面内に、または注入の最中にマスク114が配設されるスタック102の上方面に対して平行な方向の平面内に、実質的に正方形または矩形である形状を有する。この平面内における各開口部116の寸法は、例えば1×1μm~4×4μmの間である。これらの寸法が、1×1μmに等しい場合には、この注入が実施されるスタック102の第1の領域118のそれぞれは、約100本のナノワイヤを備え得る。
【0083】
本明細書において説明される第1の実施形態では、マスク114は、例えば窒化ケイ素SiNなどを含むハードマスクに相当する。かかる注入の実施の詳細は、例えばL.G. Villanuevaら、「Localized Ion Implantation Through Micro/Nanostencil Masks」(IEEE Trans. On Nanotechnology、10、940 (2011))に記されている。
【0084】
次いで、マスク114は、開口部116が第1の領域118とは異なるスタック102の第2の領域120に対面する状態で配設されるように移動され、デバイス100の各ピクセル101に少なくとも1つの第2の発光領域すなわち少なくとも1つの第2のサブピクセルを形成するように意図される。次いで、第3の部分108の第1のパートとは異なる、およびスタック102の第2の領域120の一部を形成する第3の部分108の第2のパート中への、第1の希土類イオンの性質の性質とは異なる性質を有する第2の希土類イオンの注入が、マスク114を介して実施される(図4を参照)。
【0085】
本明細書において説明される例示の実施形態では、第2の希土類イオンは、テルビウムイオンおよび/またはエルビウムイオンに相当する。したがって、作製される第2の発光領域は、緑色光を発することが可能であり、各ピクセル101の緑色発光サブピクセルを形成する。
【0086】
代替的には、緑色発光領域を作製するために、ホルミウムを注入することが可能である。
【0087】
さらに、この第2の注入ステップの最中に、第3の部分108の第2のパート中に複数のタイプの希土類イオンおよび/または他の原子を注入することが可能である。
【0088】
次いで、マスク114は、開口部116が第1の領域118および第2の領域120とは異なるスタック102の第3の領域122に対面する状態で配設されるように移動され、デバイス100の各ピクセル101に少なくとも1つの第3の発光領域すなわち少なくとも1つの第3のサブピクセルを形成するように意図される。次いで、第3の部分108の第1のパートおよび第2のパートとは異なる、ならびにスタック102の第3の領域122の一部を形成する第3の部分108の第3のパート中への、第1の希土類イオンおよび第2の希土類イオンの性質とは異なる性質を有する第3の希土類イオンの注入が、マスク114を介して実施される(図5を参照)。
【0089】
本明細書において説明される例示の実施形態では、第3の希土類イオンは、ツリウムイオンに相当する。したがって、作製される第3の発光領域は、青色光を発することが可能である、各ピクセル101の青色発光サブピクセルを形成する。
【0090】
代替的には、青色発光領域を作製するために、セリウムイオンを注入することが可能である。
【0091】
さらに、この第3の注入ステップの最中に、第3の部分108の第3のパート中に複数のタイプの希土類イオンおよび/または他の原子を注入することが可能である。
【0092】
次いで、マスク114は、開口部116が第1の領域118、第2の領域120、および第3の領域122とは異なるスタックの第4の領域124に対面する状態で配設されるように移動され、デバイス100の各ピクセル101に少なくとも1つの第4の発光領域すなわち少なくとも1つの第4のサブピクセルを形成するように意図される。次いで、第3の部分108の第1のパート、第2のパート、および第3のパートとは異なる、ならびにスタック102の第4の領域124の一部を形成する第3の部分108の第4のパート中への、例えば第1の希土類イオン、第2の希土類イオン、または第3の希土類イオンの性質と同様の性質を有する第4の希土類イオンの注入が、マスク114を介して実施される(図6を参照)。
【0093】
本明細書において説明される例示の実施形態では、第4の希土類イオンは、ユーロピウムイオンに相当する。したがって、作製される第4の発光領域は、赤色光を発することが可能であり、各ピクセル101の赤色発光サブピクセルを形成する。これは、ヒトの目にとって感度が比較的低い赤色に対応する波長範囲での各ピクセル101の発光を強化し、さらにピクセル101による白色光の発光の最適化を可能にする。
【0094】
さらに、この第4の注入ステップの最中に、第3の部分108の第4のパート中に複数のタイプの希土類イオンおよび/または他の原子を注入することが可能である。
【0095】
本明細書において説明される例示の実施形態では、各ピクセル101の第4の発光領域、すなわち各ピクセル101の第4のサブピクセルは、2×2個のサブピクセルの正方形形状マトリクスを形成するように配設される。この例では、各サブピクセルは、平面(X、Y)内において1×1μmに等しい寸法を有し、各ピクセル101は、平面(X、Y)内において2.5×2.5μmに等しい寸法を有する。
【0096】
別の例示の実施形態によれば、各サブピクセルが、平面(X、Y)内において、4×4μmに等しい寸法を有し、各ピクセル101が、平面(X、Y)内において、約8×8μmの寸法を有する。この例では、各ナノワイヤの直径が約150nmに等しく、これらのナノワイヤが約300nmに等しい周期で作製される場合に、各サブピクセルは、約170本のナノワイヤを備える。
【0097】
希土類イオンを注入するために用いられるエネルギーは、例えば300keVに等しい。このように注入される希土類イオンは、各ナノワイヤ内に、第3の部分108を中心としたガウス分布を有する。
【0098】
図7は、上述のステップを実施することにより取得された2つのピクセル101および2つの他のピクセル101の一部を示す。
【0099】
次いで、平坦化が、スタック102を形成するナノワイヤの頂部にて、すなわちナノワイヤの第4の領域の上方面にて実施され得る。
【0100】
次いで、スタック102を例えば1200℃などの高温熱アニーリングすることが実施され得る。その後、電極126が、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)をベースとして各サブピクセルを形成するスタック102の複数パート上に個別に作製される(図8を参照)。
【0101】
次に、図9図12に関連して、第2の実施形態による複数のピクセル101を備えるディスプレイデバイス100を作製するための方法を説明する。
【0102】
最初に、第1の実施形態において前述したものと同様のスタック102が作製される。
【0103】
ナノワイヤ同士の間に空間が存在する場合に、例えば原子層堆積(ALD)による堆積されたAlもしくはSiO、または例えばスピンコーティングにより堆積されたシリカゲルもしくはパリレンなどの電気絶縁材料をナノワイヤ同士の間に堆積するステップが実施され得る。このように堆積された材料は、ナノワイヤ同士の間の空間を充填する。次いで、スタック102の上方表面が平坦になるように、平坦化ステップが実施され得る。
【0104】
次いで、例えば図9図12に示す実施形態におけるような十字形状などのアラインメントマスク128が、スタック102の上方表面上に作製され得る。これらのアラインメントマスク128は、例えばアラインメントマスク128の所望のパターンに従ったフォトリソグラフィ、樹脂現像、金属材料の蒸着(例えばTiおよび/またはAu)、次いで樹脂の除去(または「リフトオフ」)によってスタック102の上方表面上に作製される。スタック102の上方表面上に残る金属材料は、アラインメントマスク128を形成する。
【0105】
アラインメントマスク128は、希土類イオンが注入されることになるスタック102の領域を識別するために使用され、したがって希土類イオンの注入のために使用されるマスクの作製を容易にする。
【0106】
第1の感光性樹脂マスクは、スタック102の上方面上にフォトリソグラフィ、アイソレーション、およびエッチングにより作製される。この第1のマスクは、各ピクセル101に少なくとも1つの第1の発光領域すなわち少なくとも1つの第1のサブピクセルを形成するように意図されたスタック102の第1の領域118に対面して配設された開口部を備えるように、作製される。アラインメントマスク128は、第1のマスクの開口部の位置を正確に特定するために使用される。第1のマスクは、例えば1μm~10μmなどの間である厚さを有する。
【0107】
次いで、第1の希土類イオンは、第1の実施形態に関連して前述したものと同様の様式で、すなわちこれらのイオンが主に第3の部分108内に位置するように、スタック102の第1の領域118中に注入される。
【0108】
本明細書において説明される例示の実施形態では、第1の希土類イオンは、ツリウムイオンに相当する。したがって、作製される第1の発光領域は、青色光を発することが可能である。
【0109】
第1の実施形態におけるように、青色発光領域を作製するために、セリウムイオンを注入することが可能である。さらに、この第1の注入ステップの最中に、第3の部分108の第1のパート中に複数のタイプの希土類イオンおよび/または他の原子を注入することが可能である。
【0110】
この注入の終了時に、第1のマスクは、例えばエッチングなどにより除去される。
【0111】
図10は、この第1の注入の実施後に取得される構造部を概略的に示す。
【0112】
次いで、第2の感光性樹脂マスクが、スタック102の上方面上にフォトリソグラフィ、露光、およびエッチングにより作製される。この第2のマスクは、各ピクセル101に少なくとも1つの第2の発光領域すなわち少なくとも1つの第2のサブピクセルを形成するように意図されたスタック102の第2の領域120に対面して配設された開口部を備えるように、作製される。アラインメントマスク128は、第2のマスク開口部の位置を正確に特定するために使用される。第1のマスクと同様に、この第2のマスクは、例えば1μm~10μmの間などである厚さを有する。
【0113】
次いで、第2の希土類イオンは、第1の実施形態に関連して前述したものと同様の様式で、すなわちこれらのイオンが主に第3の部分108内に位置するように、スタック102の第2の領域120中に注入される。
【0114】
本明細書において説明される例示の実施形態では、第2の希土類イオンは、テルビウムイオンおよび/またはエルビウムイオンに相当する。したがって、取得される第2の発光領域は、緑色光を発することが可能である。
【0115】
第1の実施形態におけるように、緑色発光領域を作製するために、ホルミウムイオンを注入することが可能である。さらに、この第2の注入ステップの最中に、第3の部分108の第2のパート中に複数のタイプの希土類イオンおよび/または他の原子を注入することが可能である。
【0116】
この注入の終了時に、第2のマスクは、例えばエッチングなどにより除去される。
【0117】
図11は、この第2の注入の実施後に取得される構造部を概略的に示す。
【0118】
次いで、第3の樹脂マスクが、スタック102の上方面上にフォトリソグラフィ、アイソレーション、およびエッチングにより作製される。この第3のマスクは、各ピクセル101に少なくとも1つの第3の発光領域すなわち少なくとも1つの第3のサブピクセルを形成するように意図されたスタック102の第3の領域122に対面して配設された開口部を備えるように、作製される。本明細書において説明される実施形態では、スタック102の第3の領域122は、各ピクセル101に2つの第3の発光領域すなわち2つのサブピクセルを形成するように意図される。アラインメントマスク128は、第3のマスク開口部の位置を正確に特定するために使用される。第1のマスクおよび第2のマスクと同様に、この第3のマスクは、例えば1μm~10μmの間などである厚さを有する。
【0119】
次いで、第3の希土類イオンは、第1の実施形態に関連して前述したものと同様の様式で、すなわちこれらのイオンが主に第3の部分108内に位置するように、スタック102の第3の領域122中に注入される。
【0120】
本明細書において説明される例示の実施形態では、第3の希土類イオンは、ユーロピウムイオンに相当する。したがって、各ピクセル101内に作製される第3の発光領域は、赤色光を発することが可能である。
【0121】
第1の実施形態におけるように、赤色発光領域を作製するために、プラセオジムイオンを注入することが可能である。さらに、この第3の注入ステップの最中に、第3の部分108の第1のパート中に複数のタイプの希土類イオンおよび/または他の原子を注入することが可能である。
【0122】
この注入の終了時に、第3のマスクは、例えばエッチングなどにより除去される。
【0123】
図12は、この第3の注入の実施後に取得された構造部を概略的に示す。
【0124】
次いで、デバイス100は、各サブピクセルを形成するスタック102の複数パート上に電極126を作製することにより完成する。平坦化が、ナノワイヤ同士の間の空間内への電気絶縁材料の蒸着後に既に実施されている場合には、電極126は、新規の平坦化を実施する必要性を伴うことなく、スタック102の上方表面上に直接的に作製され得る。
【0125】
上述の例示の実施形態の一変形例として、両実施形態に関して、スタック102の種々の領域中に注入される希土類イオンは、先述のものとは異なるものであることが可能である。また、各ピクセル101内における種々の発光領域の構成が、先述のものと異なることもまた可能である。
【0126】
上述の実施形態において、希土類イオンの注入は、各ピクセル101に4つの異なる発光領域をおよびしたがって4つのサブピクセルを形成するために実施される。代替的には、希土類イオン注入ステップは、各ピクセル101が、3つのみの異なる発光領域すなわちサブピクセルを、または5つ以上の発光領域すなわちサブピクセルを備えるように実施されることも可能である。
【0127】
希土類イオン注入ステップの最中に使用されるマスクは、各注入時に、1つまたは複数の発光領域が、デバイスの各ピクセル101内に、またはより一般的には1つまたは複数のピクセル101内に形成されるような、開口部を備え得る。
【0128】
先述の2つの実施形態では、スタック102は、基板110上に直接的に作製されたナノワイヤのセットにより形成される。代替的には、スタック102の種々の部分(第1の部分104、第2の部分106、および第3の部分108、ならびに第1の領域112)は、相互に上に積層されたおよび基板110上に堆積された層の形態で作製されることが可能であり、これは、例えばエピタキシー、任意には次いでこの層セットのエッチングなどの、一連の堆積ステップを実施することによって作製され得る。別の変形例によれば、スタック102は、層スタックをエッチングすることにより取得されたナノワイヤセットを備えることが可能である(「トップダウン」アプローチ)。
【0129】
上述の例示の実施形態では、第2の部分106は、希土類イオン注入ステップの実施前に作製される。代替的には、第2の部分106は、希土類イオン注入ステップの実施後に作製されることが可能である。この場合には、第1の部分104および第3の部分108は、成長により作製され得る。次いで、この成長は中断され、次いで注入ステップが実施される。これらの注入後に、成長が再開されて、第2の部分106が作製される。
【符号の説明】
【0130】
100 ディスプレイデバイス
101 ピクセル
102 スタック
104 第1のnドープ半導体部分、第1の部分
106 第2のpドープ半導体部分、第2の部分
108 第3の意図せずにドープされた半導体部分、第3の部分
110 基板
112 第1の領域、nドープGaN部分
114 マスク
116 開口部
118 第1の領域
120 第2の領域
122 第3の領域
124 第4の領域
126 電極
128 アラインメントマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】