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特表2024-507753ビールを醸造するための材料及び方法
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  • 特表-ビールを醸造するための材料及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ビールを醸造するための材料及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/60 20060101AFI20240214BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 9/88 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240214BHJP
   C12P 11/00 20060101ALI20240214BHJP
   C12C 11/00 20060101ALI20240214BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C12N15/60
C12N1/19 ZNA
C12N9/88
C12N15/31
C12P11/00
C12C11/00 A
C12C5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548268
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2022015947
(87)【国際公開番号】W WO2022173928
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/147,963
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/292,226
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523300746
【氏名又は名称】オメガ イースト ラブズ,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ローラ バーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ランス シャナー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4B128
【Fターム(参考)】
4B064CA06
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA10
4B065AA79X
4B065AA79Y
4B065AA80X
4B065AA80Y
4B065BA02
4B065BA23
4B065CA27
4B065CA42
4B128CP10
(57)【要約】
本明細書に記載されるのは、醸造プロセスの中に、3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)の不揮発性形態を遊離3SHに変換するための材料及び方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種プロモーターに作動可能に連結された酵母β-リアーゼ酵素Irc7をコードするポリヌクレオチドを含む組換えSaccharomyces sppであって、前記β-リアーゼ酵素は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、組換えSaccharomyces spp。
【請求項2】
前記異種プロモーターが、TDH3、TDH2、CCW12、PGK1、ADH1、ADH2、CYC1、HHF1、HHF2、TEF1、TEF2、HTB2、PAB1、ALD6、RNR1、RNR2、POP6、RAD27、PSP2、REV1、MFA1、MFa2、GAL1、CUP1、MET25、ICL1、ICL2、GAL3、HXT1、HXT2、MAL11、MAL31、MAL32、MAL33、MRK1又はSUC2プロモーターである、請求項1に記載の組換えSaccharomyces spp。
【請求項3】
S.cerevisiaeである、請求項1又は2に記載の組換えSaccharomyces spp。
【請求項4】
S.pastorianusである、請求項1又は2に記載の組換えSaccharomyces spp。
【請求項5】
前記β-リアーゼ酵素が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換えSaccharomyces spp。
【請求項6】
醸造プロセス中に、3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)の不揮発性形態を遊離3SHに変換する方法であって、前記方法が、冷却された麦芽汁を、請求項1~5のいずれか一項に記載の組換えSaccharomycesと、3SHの不揮発性形態を遊離3SHに変換するのに十分な条件及び時間、接触させることを含む、方法。
【請求項7】
前記3SHの不揮発性形態が、グルタチオン結合3SH、システイン結合3SH、又はそれらの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、未改変Saccharomycesで発酵させた麦芽汁と比較して、前記組換えSaccharomycesで発酵させた麦芽汁中の遊離3SHが3倍増加することをもたらす、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記麦芽汁が、接触工程の後に、少なくとも60ng/Lの遊離3SHを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記接触工程中に、冷却された麦芽汁にホップを加えることを含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ホップが、少なくとも400μg/kgのシステイン結合3SHを含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ホップが、Cascade、Calypso、Hallertau Tradition、Hallertau Perle、Triple Pearl、Nugget、Saaz、Columbus/CTZ、Chinook、Nelson Sauvin、Hallertau Blanc又はSimcoeホップである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
醸造プロセス中に、3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)の不揮発性形態を遊離3SHに変換する方法であって、前記方法が、
(a)3SHの不揮発性形態を含む植物を加えて、マッシュし、麦芽汁を産生することを含む、マッシュホッピング工程と、
(b)(a)によって産生された麦芽汁を沸騰させることと、
(c)麦芽汁を冷却することと、
(d)冷却された麦芽汁と、組換えSaccharomycesとを、3SHの不揮発性形態を遊離3SHに変換するのに十分な時間、接触させることと、を含み、前記組換えSaccharomycesが、
(i)異種プロモーターに作動可能に連結された活性β-リアーゼ酵素Irc7をコードするポリヌクレオチド、又は
(ii)異種プロモーターに作動可能に連結されたシステイン-チオールリアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む、方法。
【請求項14】
前記3SHの不揮発性形態が、グルタチオン結合3SH、システイン結合3SH、及びそれらの組み合わせである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
3SHの不揮発性形態を含む植物材料が、ホップである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記ホップが、少なくとも400μg/kgのシステイン結合3SHを含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ホップが、少なくとも5000μg/kgのグルタチオン3SHを含有する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記ホップが、Cascade、Calypso、Hallertau Tradition、Hallertau Perle、Triple Pearl、Nugget、Saaz、Columbus/CTZ、Chinook、Nelson Sauvin、Hallertau Blanc又はSimcoeホップである、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
3SHの不揮発性形態を含む植物材料が、ブドウ由来生成物である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項20】
前記ブドウ由来生成物が、粉砕されたブドウ又はブドウ粉末である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ブドウ由来生成物が、白ブドウ、赤ブドウ、又はそれらの組み合わせから得られる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記白ブドウが、SauvignonBlanc、Chardonnay、Chenin Blanc、Colombard、Gewurztraminer、Gros Manseng、Koshu、Maccabeo、Muscat、Petit Manseng、Pinot Blanc、Pinot Gris、Riesling、Scheurebe、Semillon、Sylvaner、又はTokayである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記赤ブドウが、Cabernet Franc、Cabernet Sauvignon、Grenache、Merlot、又はPinot Noirである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記β-リアーゼが、細菌性β-リアーゼ又は真菌性β-リアーゼである、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記β-リアーゼが、細菌性β-リアーゼである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記β-リアーゼが、Eschericia sp.;Thermoanaerobacter sp.;Symbiobacterium sp.;Photobacterium sp.;Haemophilus sp.;Vibrio sp.;Proteus sp.;Halobacterium sp.;Desulfitobacterium sp.;又はTreponema sp.に由来する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記細菌性β-リアーゼが、E.coli TNaAである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記真菌性β-リアーゼが、酵母β-リアーゼである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記酵母β-リアーゼが、Saccharomycotina、Taphrinomycotina、又はSchizosaccharomycetesに由来する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記酵母β-リアーゼが、Saccharomycesに由来する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記酵母β-リアーゼが、Irc7である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記Irc7が、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記Irc7が、配列番号1に記載の前記アミノ酸配列を含む、請求項31又は請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記システイン-チオールリアーゼが、PatBである、請求項13~23に記載の方法。
【請求項35】
前記PatBが、S.lugdunensis、S.devriesei、S.hominis、S.haemolyticus、S.petrasii又はB.subtilisに由来する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記PatBが、配列番号8~14のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一のヌクレオチド配列を含む、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、前記マッシング工程中に、1kgの製粉用穀物当たり100グラム未満のホップを加えることを含む、請求項15~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
マッシュホッピング工程が、タンパク質休止を含む、請求項13~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記タンパク質休止が、沸騰工程の前に、少なくとも5分間、130°F未満の温度で、前記マッシュを維持することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記タンパク質休止が、前記沸騰工程の前に、少なくとも5分間、100°F~120°Fの温度で、前記マッシュを維持することを含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質休止後かつ前記沸騰工程前に、糖化休止を更に含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項42】
前記糖化休止が、前記沸騰工程の前に、少なくとも15分間、120°F~160°Fの温度で、前記麦芽汁を維持することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記冷却された麦芽汁をホップと接触させて混合物を生成し、前記混合物を前記組換えSaccharomycesと接触させることを更に含む、請求項13~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記組換えSaccharomycesが、S.cerevisiae又はS.pastorianusである、請求項13~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記麦芽汁が、接触工程の後に、少なくとも60ng/Lの遊離3SHを含む、請求項13~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記接触工程(d)が、45°F~100°Fの範囲の温度で、発酵槽内で生じる、請求項13~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記方法が、非改変S.cerevisiaeで発酵させた麦芽汁と比較して、前記組換えS.cerevisiaeで発酵させた麦芽汁中の遊離3SHが6倍増加することをもたらす、請求項13~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
異種プロモーターに作動可能に連結された酵母β-リアーゼ酵素Irc7をコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母であって、前記β-リアーゼ酵素は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、組換え酵母。
【請求項49】
前記酵母は、Saccharomyces属に属さない、請求項48に記載の組換え酵母。
【請求項50】
前記酵母が、Kloeckera属、Candida属、Starmerella属、Hanseniaspora属、Kluyveromyces/Lachance属、Metschnikowia属、Saccharomycodes属、Zygosaccharomyce属、Dekkera(Brettanomycesとも称される)属、Wickerhamomyces属、又はTorulaspora属のものである、請求項48又は49に記載の組換え酵母。
【請求項51】
前記酵母が、Hanseniaspora uvarum、Hanseniaspora guillermondii、Hanseniaspora vinae、Metschnikowia pulcherrima、Kluyveromyces/Lachancea thermotolerans、Starmerella bacillaris(以前は、Candida stellatal又はCandida zemplininaと称されていた)、Saccharomycodes ludwigii、Zygosaccharomyces rouxii、Dekkera bruxellensis、Dekkera anomala、Brettanomyces custersianus、Brettanomyces naardenensis、Brettanomyces nanus、Wickerhamomyces anomalus、又はTorulaspora delbrueckiiである、請求項48~50のいずれか一項に記載の組換え酵母。
【請求項52】
異種プロモーターに作動可能に連結されたシステイン-チオールリアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む、組換え酵母。
【請求項53】
前記異種プロモーターが、TDH3、TDH2、CCW12、PGK1、ADH1、ADH2、CYC1、HHF1、HHF2、TEF1、TEF2、HTB2、PAB1、ALD6、RNR1、RNR2、POP6、RAD27、PSP2、REV1、MFA1、MFa2、GAL1、CUP1、MET25、ICL1、ICL2、GAL3、HXT1、HXT2、MAL11、MAL31、MAL32、MAL33、MRK1、又はSUC2プロモーターである、請求項51に記載の組換え酵母。
【請求項54】
前記酵母が、Saccharomyces属に属する、請求項51又は52に記載の組換え酵母。
【請求項55】
前記酵母が、S.cerevisiae又はS.pastorianusである、請求項51~53のいずれか一項に記載の組換え酵母。
【請求項56】
前記酵母が、Saccharomyces属に属さない、請求項51又は52に記載の組換え酵母。
【請求項57】
前記酵母が、Kloeckera属、Candida属、Starmerella属、Hanseniaspora属、Kluyveromyces/Lachance属、Metschnikowia属、Saccharomycodes属、Zygosaccharomyce属、Dekkera(Brettanomycesとも称される)属、Wickerhamomyces属、又はTorulaspora属のものである、請求項55に記載の組換え酵母。
【請求項58】
前記酵母が、Hanseniaspora uvarum、Hanseniaspora guillermondii、Hanseniaspora vinae、Metschnikowia pulcherrima、Kluyveromyces/Lachancea thermotolerans、Starmerella bacillaris(以前は、Candida stellatal又はCandida zemplininaと称されていた)、Saccharomycodes ludwigii、Zygosaccharomyces rouxii、Dekkera bruxellensis、Dekkera anomala、Brettanomyces custersianus、Brettanomyces naardenensis、Brettanomyces nanus、Wickerhamomyces anomalus、又はTorulaspora delbrueckiiである、請求項55又は56に記載の組換え酵母。
【請求項59】
前記システインチオールリアーゼが、PatBである、請求項51~57のいずれか一項に記載の組換え酵母。
【請求項60】
前記PatBが、S.lugdunensis、S.devriesei、S.hominis、S.haemolyticus、S.petrasiior又はB.subtilisに由来する、請求項58に記載の組換え酵母。
【請求項61】
前記PatBが、配列番号8~14のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列と少なくとも80%同一のヌクレオチド配列を含む、請求項58又は59に記載の組換え酵母。
【請求項62】
醸造プロセス中に、3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)の不揮発性形態を遊離3SHに変換する方法であって、前記方法が、発酵性糖源を、請求項51~60のいずれか一項に記載の組換え酵母と、3SHの不揮発性形態を遊離3SHに変換するのに十分な条件及び時間、接触させることを含む、方法。
【請求項63】
前記3SHの不揮発性形態が、グルタチオン結合3SH、システイン結合3SH、又はそれらの組み合わせである、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記方法が、未改変酵母で発酵させた発酵性糖と比較して、前記組換え酵母で発酵させた発酵性糖源における遊離3SHが3倍増加することをもたらす、請求項61又は62に記載の方法。
【請求項65】
前記発酵性糖源が、麦芽汁である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記麦芽汁が、前記接触工程の後に、少なくとも60ng/Lの遊離3SHを含む、請求項61~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記方法が、前記接触工程中に、冷却された麦芽汁にホップを加えることを含む、請求項64又は65に記載の方法。
【請求項68】
前記ホップが、少なくとも400μg/kgのシステイン結合3SHを含有する、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記ホップが、Cascade、Calypso、Hallertau Tradition、Hallertau Perle、Triple Pearl、Nugget、Saaz、Columbus/CTZ、Chinook、Nelson Sauvin、Hallertau Blanc又はSimcoeホップである、請求項66又は67に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月10日に出願された米国仮特許出願第63/147,964号、及び2021年12月21日に出願された米国仮特許出願第63/292,226号に対する優先権の利益を主張するものであり、これらの開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された情報の参照による組み込み
本出願は、本開示の別個の部分として、コンピュータ可読形態(ファイル名:56400_Seqlisting.txt;サイズ:42,808バイト;作成日:2022年2月9日)のシーケンスリストを含み、その全体が参照により組み込まれる。
【0003】
飲料業界ではフルーティーな香りとフローラルな香りが求められており、香味プロファイルを増やすか、又は多様化することで、ビールの香りを向上させるための継続的な取り組みが行われている。メルカプタンとしても知られるチオールは、水素原子に結合した硫黄原子を有する硫黄含有有機化合物である。ワインメーカーは、ワインの香りに寄与するチオールを特定した。1つは、4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP、4-メルカプト-4-メチルペンタント-2-オン(4MMP)としても知られる)、セイヨウツゲ、黒スグリ、及びリーベ(ribe)の匂い及び味である。もう1つは、3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH;3-メルカプトヘキサノール-1-オール(3MH)としても知られる)は、多くの場合、エキゾチックであり、パッションフルーツ、ルバーブ、及び柑橘類の匂いがすると説明される。また、3番目は、3-スルファニルヘキシルアセテート(3SHA、3-メルカプトヘキシルアセテート(3MHA)としても知られている)は、パッションフルーツ及びグアバを連想させる。これらの化合物は、全てSauvignon blanc、Riesling、及び他のワインで顕著であるが、ブドウの遊離型芳香族チオールとしては豊富ではない。これらは、ブドウ果醪に存在する前駆体から、発酵中に形成される。
【0004】
いくつかの品種のホップは、これらのチオールの前駆体形態を大量に含有するが、製品の香り又は風味に寄与する遊離芳香族形態の量は少ない。したがって、ビールの芳香族の可能性を最大化するために、発酵プロセス中に、これらの揮発性の芳香族チオールをその前駆体形態から放出する手段に対する必要性が、当該技術分野では、依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結された酵母β-リアーゼ酵素Irc7をコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母も提供し、β-リアーゼ酵素は、配列番号1に記載のアノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。
【0006】
本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結された酵母β-リアーゼ酵素IRC7をコードするポリヌクレオチドを含む組換えSaccharomyces sppを提供し、β-リアーゼ酵素は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。
【0007】
本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結されたシステイン-チオールリアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母も提供する。いくつかの実施形態において、システイン-チオールリアーゼはPatBである。いくつかの実施形態において、PatBは、Staphylococcus属の種に由来する。いくつかの実施形態において、PatBは、S.lugdunensis、S.devriesei、S.hominis、S.haemolyticus、S.petrasii、又はB.subtilisに由来する。いくつかの実施形態において、PatBは、S,petrasii croceilyticus又はS,petrasii petrasiiに由来する。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号8~14のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号8~14のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、異種プロモーターは、TDH3、TDH2、CCW12、PGK1、ADH1、ADH2、CYC1、HHF1、HHF2、TEF1、TEF2、HTB2、PAB1、ALD6、RNR1、RNR2、POP6、RAD27、PSP2、REV1、MFA1、MFa2、GAL1、CUP1、MET25、ICL1、ICL2、GAL3、HXT1、HXT2、MAL11、MAL31、MAL32、MAL33、MRK1、又はSUC2プロモーターである。いくつかの実施形態において、組換えSaccharomyces sppは、S.cerevisiae又はS.pastorianusである。いくつかの実施形態において、β-リアーゼ酵素は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、β-リアーゼ酵素は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含まない。
【0009】
本開示は、醸造プロセス中に、3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)の不揮発性形態を遊離3SHに変換する方法も提供し、本方法は、冷却された麦芽汁と、本明細書に記載の組換えSaccharomycesとを、3SHの不揮発性形態を遊離3SHに変換するのに十分な条件及び時間、接触させることを含む。いくつかの実施形態において、3SHの不揮発性形態は、グルタチオン結合型3SH又はシステイン結合型3SH又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、この方法は、非改変Saccharomycesで発酵させた麦芽汁と比較して、組換えSaccharomycesで発酵させた麦芽汁中の遊離3SHが3倍増加することをもたらす。いくつかの実施形態において、麦芽汁は、接触工程の後に、少なくとも60ng/Lの遊離3SHを含む。
【0010】
この方法は、任意選択的に、接触工程中に、ホップを冷却された麦芽汁に加えることを含む。本明細書に記載の方法で使用するための例示的なホップとしては、Cascade、Calypso、Hallertau Tradition、Hallertau Perle、Triple Pearl、Nugget、Saaz、Columbus/CTZ、Chinook、Nelson Sauvin、Hallertau Blancor又はSimcoeが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ホップは、少なくとも400μg/kgのシステイン結合3SHを含有する。
【0011】
本開示は、醸造プロセス中に、不揮発性形態の3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)を遊離3SHに変換する方法も提供し、この方法は、(a)3SHの不揮発性形態を含む植物を製粉用穀物に加えて、マッシュ(mash)し、麦芽汁を産生することを含む、マッシュホッピング(mash hopping)工程と、(b)(a)によって産生された麦芽汁を沸騰させることと、(c)麦芽汁を冷却することと、(d)冷却した麦芽汁と、本明細書に記載の組換え酵母とを、不揮発性形態の3SHを遊離3SHに変換するのに十分な時間、接触させることと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、組換え酵母は、異種プロモーターに作動可能に連結されたβ-リアーゼ酵素Irc7をコードするポリヌクレオチドを含む組換えSaccharomycesである。いくつかの実施形態において、組換え酵母は、異種プロモーターに作動可能に連結されたシステイン-チオールリアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む組換えSaccharomyces spp.である。いくつかの実施形態において、3SHの不揮発性形態は、グルタチオン結合-3SH又はシステイン結合-3SH、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、この方法は、非改変酵母で発酵させた麦芽汁と比較して、組換え酵母で発酵させた麦芽汁中の遊離3SHが6倍増加することをもたらす。いくつかの実施形態において、麦芽汁は、接触工程の後に、少なくとも60ng/Lの遊離3SHを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、不揮発性形態の3SHを含む植物材料は、ホップである。いくつかの実施形態において、ホップは、少なくとも400μg/kgのシステイン結合3SHを含有する。いくつかの実施形態において、ホップは、少なくとも5000μg/kgのグルタチオン3SHを含有する。いくつかの実施形態において、ホップは、少なくとも400μg/kgのシステイン結合3SH及び少なくとも5000μg/kgのグルタチオン3SHを含有する。いくつかの実施形態において、ホップは、Cascade、Calypso、Hallertau Tradition、Hallertau Perle、Triple Pearl、Nugget、Saaz、Columbus/CTZ、Chinook、Nelson Sauvin、Hallertau Blanc又はSimcoeホップである。
【0013】
いくつかの実施形態において、3SHの不揮発性形態を含む植物材料は、ブドウ由来生成物である。いくつかの実施形態において、ブドウ由来生成物は、粉砕されたブドウ又はブドウ粉末である。いくつかの実施形態において、ブドウ由来の製品は、白ブドウ、赤ブドウ、又はそれらの組み合わせから得られる。例示的な白ブドウ品種としては、Sauvignon Blanc、Chardonnay、Chenin Blanc、Colombard、Gewurztraminer、Gros Manseng、Koshu、Maccabeo、Muscat、Petit Manseng、Pinot Blanc、Pinot Gris、Riesling、Scheurebe、Semillon、Sylvaner、及びTokayが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な赤ブドウ品種には、Cabernet Franc、Cabernet Sauvignon、Grenache、Merlot、及びPinot Noirが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、1kgの製粉用穀物当たり100グラム未満の植物材料を加えることを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、ホップ及びブドウ由来生成物の両方を製粉用穀物に加えることを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、β-リアーゼは、細菌性β-リアーゼ又は真菌性β-リアーゼである。本開示に従って使用するための例示的な細菌性βリアーゼは、Eschericia sp.;Thermoanaerobacter sp.;Symbiobacterium sp.;Photobacterium sp.;Haemophilus sp.;Vibrio sp.;Proteus sp.;Halobacterium sp.;Desulfitobacterium sp.;及びTreponema sp.を含むが、これに限定されない細菌に由来するいくつかの実施形態において、細菌性β-リアーゼは、E.coli TNaAである。
【0017】
いくつかの実施形態において、真菌性β-リアーゼは、酵母β-リアーゼである。本開示に従った使用のための例示的な真菌性β-リアーゼは、Saccharomycotina、Taphrinomycotina、及びSchizosaccharomycetesに由来する。いくつかの実施形態において、酵母β-リアーゼは、Saccharomyces由来である。いくつかの実施形態において、酵母β-リアーゼは、Irc7である。いくつかの実施形態において、Irc7は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%以上)同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、Irc7は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、沸騰工程の前に、タンパク質休止(protein rest)を含む。いくつかの実施形態において、タンパク質休止は、沸騰工程の前に、少なくとも5分間、140°F未満の温度で、マッシュを維持することを含む。いくつかの実施形態において、タンパク質休止は、沸騰工程の前に、少なくとも1時間、100°F~140°Fの温度で、マッシュを維持することを含む。いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、タンパク質休止後かつ沸騰工程前に、糖化休止を更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、この方法は、冷却された麦芽汁をホップと接触させて混合物を産生し、混合物を組換え酵母と接触させることを更に含む。いくつかの実施形態において、組換え酵母はS.cerevisiae又はS.pastorianusである。
【0020】
いくつかの実施形態において、接触工程(d)は、45°F~100°Fの範囲の温度で、発酵槽内で生じる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1に記載のIRC7対立遺伝子のアラインメントである。
図2】未改変OYL-088株と比較して、OYL-088-TDH3-IRC7で発酵させたビールにおける遊離3SHレベルが増加していることを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
多くの植物由来の生成物は、システインS共役体前駆体として結合した揮発性チオールを含有し、不揮発性前駆体の揮発性チオール生成物への変換は、食品又は飲料製品の香りに寄与する。揮発性チオールは、セイヨウツゲ、パッションフルーツ、グレープフルーツ、グーズベリー、及びグアバなどの香りをビールなどの発酵飲料に与える役割を果たす。
【0023】
本開示は、醸造プロセスの発酵工程中に、酵母β-リアーゼ酵素(又はシステイン-チオールリアーゼ)を過剰発現するように改変されている酵母(例えば、Saccharomyces spp.)が、植物材料中の利用可能な不揮発性チオール(例えば、グルタチオン結合チオール又はシステイン結合チオール)の、より望ましい芳香族(すなわち、揮発性又は遊離)形態への変換を引き起こすという発見に、部分的に、基づいている。
【0024】
本開示は、目的の不揮発性チオールを含む植物材料を製粉用穀物に加えて麦芽汁を産生し、その後、麦芽汁と、β-リアーゼ酵素(又はシステイン-チオールリアーゼ)を過剰発現する改変Saccharomyces sppとを接触させることを含むマッシング工程を含むために、従来の抽出方法を修正することが、利用可能な不揮発性チオールの揮発性、芳香族形態への高い変換率をもたらすという発見にも、部分的には、基づいている。
【0025】
組換え酵母。
一態様において、本明細書に記載されるのは、異種プロモーターに作動可能に連結されたβ-リアーゼ(又はシステイン-チオールリアーゼ)酵素をコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母である。「異種プロモーター」という用語は、本明細書で使用される場合、β-リアーゼ(又はシステイン-チオールリアーゼ)酵素に非天然であるプロモーターを指す。
【0026】
いくつかの実施形態において、酵母はSaccharomyces属に属さない。いくつかの実施形態において、酵母は、Kloeckera属、Candida属、Starmerella属、Hanseniaspora属、Kluyveromyces/Lachance属、Metschnikowia属、Saccharomycodes属、Zygosaccharomyce属、Dekkera(Brettanomycesとも称される)属、Wickerhamomyces属、又はTorulaspora属に属する。いくつかの実施形態において、酵母は、Hanseniaspora uvarum、Hanseniaspora guillermondii、Hanseniaspora vinae、Metschnikowia pulcherrima、Kluyveromyces/Lachancea thermotolerans、Starmerella bacillaris(以前は、Candida stellatal又はCandida zemplininaと称されていた)、Saccharomycodes ludwigii、Zygosaccharomyces rouxii、Dekkera bruxellensis、Dekkera anomala、Brettanomyces custersianus、Brettanomyces naardenensis、Brettanomyces nanus、Wickerhamomyces anomalus、又はTorulaspora delbrueckiiである。
【0027】
別の態様において、本明細書に記載されるのは、異種プロモーターに作動可能に連結されたβ-リアーゼ(又はシステイン-チオールリアーゼ)酵素をコードするポリヌクレオチドを含む組換えSaccharomyces spp.である。
【0028】
様々な態様において、組換えSaccharomycesは、S.cerevisiae又はS.pastorianusである。
【0029】
β-リアーゼは、通常熱帯の香りと関連する多官能性チオール、又はメルカプタンと呼ばれる揮発性硫黄化合物の放出を担う酵素である。本開示に従って使用するための例示的なβ-リアーゼ酵素には、国際公開第2007/095682号に記載されるものが含まれるがこれらに限定されず、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、β-リアーゼは、Eschericia sp.;Thermoanaerobacter sp.;Symbiobacterium sp.;Photobacterium sp.;Haemophilus sp.;Vibrio sp.;Proteus sp.;Halobacterium sp.;Desulfitobacterium sp.;又はTreponema sp.などの細菌性β-リアーゼである。いくつかの実施形態において、β-リアーゼはトリプトファナーゼ(E.coli)(UniProt受託番号P0A853)である。
【0030】
いくつかの実施形態において、β-リアーゼは、Saccharomyces cerevisiae(全ての株)、Saccharomyces bayanus並びにBrettanomyces及びDekkeraの種;Candida;Cryptococcus;Debaryomyces;Hanseniaspora、Kloeckera;Kluyveromyces;Metschnikowia;Pichia;Rhodotorula;Saccharomyces;Saccharomycodes;Schizosaccharomyces又はZygosaccharomycesに由来する酵母β-リアーゼなどの真菌β-リアーゼである。いくつかの実施形態において、β-リアーゼはIRC7である。いくつかの実施形態において、β-リアーゼは、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)のアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、システイン-チオールリアーゼは、シスタチオニンに対するKcat/Kmが、0.7×10-1mM-1以下(例えば、0.7×10-1mM-1、0.6×10-1mM-1、0.5×10-1mM-1、0.4×10-1mM-1、0.3×10-1mM-1、0.2×10-1mM-1、0.1×10-1mmM-1以下)である。いくつかの実施形態において、Cys-3M3SHに対するシステイン-チオールリアーゼKcat/Kmは、3×10-1mM-1以上(例えば、3×10-1mM-1、3.5×10-1mM-1、4×10-1mM-1、4.5×10-1、5×10-1mM-1、5.5×10-1mM-1、6×10-1mM-1、6.5×10-1mM-1、7×10-1mM-1、7.5×10-1mM-1、8×10-1mM-1、8.5×10-1mM-1、9×10-1mM-1、9.5×10-1mM-1以上)である。
【0032】
いくつかの実施形態において、システインチオールリアーゼはPatBである。いくつかの実施形態において、PatBはStaphylococcus属由来である。いくつかの実施形態において、PatBは、S.lugdunensis(配列番号9)、S.devriesei(配列番号10)、S.hominis(配列番号8)、S.haemolyticus(配列番号13)、S.petrasii(配列番号11又は配列番号12)、又はB.subtilis(配列番号14)に由来する。
【0033】
別の例示的な態様において、本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結されたPatBをコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母を提供し、PatBは、配列番号8に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む。
【0034】
別の例示的な態様において、本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結されたPatBをコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母を提供し、PatBは、配列番号9に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は同一)アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む。
【0035】
別の例示的な態様において、本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結されたPatBをコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母を提供し、PatBは、配列番号10に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む。
【0036】
別の例示的な態様において、本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結されたPatBをコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母を提供し、PatBは、配列番号11に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む。
【0037】
別の例示的な態様において、本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結されたPatBをコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母を提供し、PatBは、配列番号12に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む。
【0038】
別の例示的な態様において、本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結されたPatBをコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母を提供し、PatBは、配列番号13に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一である(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含む。
【0039】
別の例示的な態様において、本開示は、異種プロモーターに作動可能に結合したPatBをコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母を提供し、PatBは、配列番号14に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、システインチオールリアーゼ(例えば、PatB)をコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母は、TnaA酵素をコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母よりも約2倍大きい4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オン(4MSP)の放出を促進する。
【0041】
「作動可能に連結された」又は「機能的に連結された」という用語は、一方の機能が他方の機能に影響されるように、単一の核酸断片上の核酸配列が関連することを指す。例えば、調節DNA配列がコードDNA配列の発現に影響を与えるように(すなわち、コード配列又は機能的RNAがプロモーターの転写制御下にあるように)2つの配列が位置する場合、調節DNA配列は、RNA又はポリペプチドをコードするDNA配列に「作動可能に連結される」又は「関連付けられる」と言われる。コード配列は、センス方向又はアンチセンス方向の調節配列に作動可能に連結され得る。
【0042】
「プロモーター」という用語は、通常、そのコード配列の上流(5’)のヌクレオチド配列を指し、これは、RNAポリメラーゼ及び適切な転写に必要な他の因子の認識部位を提供することによってコード配列の発現を制御する。「プロモーター」は、場合によっては、TATAボックス及び転写開始部位を特定するのに役立つ他の配列を含む短いDNA配列である最小限のプロモーターを含み、このプロモーターには、発現を増強するために調節エレメントが加えられる。「プロモーター」は、最小プロモーター+調節エレメントを含み、コード配列又は機能的RNAの発現を制御することができるヌクレオチド配列も指す。このタイプのプロモーター配列は、近位及びより遠位の上流エレメントからなり、後者のエレメントは、しばしばエンハンサーと称される。したがって、「エンハンサー」は、DNA配列であり、これは、プロモーター活性を刺激することができ、プロモーターのレベル又は組織特異性を高めるために挿入されたプロモーターの先天性エレメント又は異種エレメントであり得る。両方の向き(正常又は逆転)で動作することができ、プロモーターの上流又は下流のいずれかに移動しても機能することができる。エンハンサー及び他の上流プロモーターエレメントの両方が、それらの効果を媒介する配列特異的DNA結合タンパク質に結合する。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来する場合もあれば、異なるエレメントから構成される場合もあり、自然界に見出される異なるプロモーターに由来する場合もあり、合成DNAセグメントから構成される場合もある。
【0043】
プロモーターは、タンパク質因子の結合に関与するDNA配列も含有し得、このタンパク質因子は、生理学的又は発達状態に応答して転写開始の有効性を制御する。「開始部位」は、転写配列の一部である第1のヌクレオチドを取り囲む位置であり、これは、位置+1としても定義される。この部位に関しては、遺伝子及びその制御領域の他の全ての配列に番号が付けられている。下流の配列(すなわち、3′方向の更にタンパク質をコードする配列)は陽性とし、一方、上流の配列(5′方向の制御領域の大部分)は陰性とする。
【0044】
例示的なプロモーターとしては、TDH3、TDH2、CCW12、PGK1、ADH1、ADH2、CYC1、HHF1、HHF2、TEF1、TEF2、HTB2、PAB1、ALD6、RNR1、RNR2、POP6、RAD27、PSP2、REV1、MFA1、MFa2、GAL1、CUP1、MET25、ICL1、ICL2、GAL3、HXT1、HXT2、MAL11、MAL31、MAL32、MAL33、MRK1、及びSUC2プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、プロモーターはTDH3プロモーターである。
【0045】
例示的な態様において、本開示は、異種プロモーターに作動可能に連結された酵母β-リアーゼ酵素Irc7をコードするポリヌクレオチドを含む組換え酵母(例えば、Saccharomyces spp.)を提供し、β-リアーゼ酵素は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、β-リアーゼ酵素は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、β-リアーゼ酵素は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含まない。
【0046】
細胞内での酵素の組換え発現及び組換え酵母細胞の遺伝子改変のための技術は、当業者に周知である。通常、そのような技術は、関連する配列を含む核酸構築物を用いる細胞の形質転換を伴う。そのような方法は、例えば、Sambrook and Russel(2001)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,又はF.Ausubel et al.,eds.,“Current protocols in molecular biology”,Green Publishing and Wiley Interscience,New York(1987)のような標準的な手引き書から、知ることができる。真菌宿主細胞の形質転換及び遺伝子改変のための方法は、例えば、欧州特許出願第EP-A-0635574号、国際特許公開第98/46772号、国際特許公開第99/60102号、国際特許公開第00/37671号、国際特許公開第90/14423号、欧州特許出願第EP-A-0481008号、欧州特許出願第EP-A-0635574号、及び米国特許第6,265,186号に記載されており、これらの開示は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
方法
本開示は、醸造プロセス中に、3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)の不揮発性形態を遊離3SHに変換する方法を提供する。一態様において、方法は、発酵性糖源(例えば、冷却麦芽汁)と、本明細書に記載の組換え酵母(例えば、異種プロモーターに作動可能に連結された、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む酵母β-リアーゼ酵素IRC7をコードするポリヌクレオチドを含む組換えSaccharomyces spp.;(又は異種プロモーターに作動可能に連結された、ステイン-チオールリアーゼPatBをコードするポリヌクレオチドを含む組換えSaccharomyces spp.)とを、不揮発性形態の3SHを遊離3SHに変換するのに十分な条件及び時間、接触させることを含む。
【0048】
別の態様において、本開示は、醸造プロセスの中に不揮発性形態の3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)を遊離3SHに変換する方法を提供し、本方法は、発酵性糖源を、システイン-チオールリアーゼと、不揮発性形態の3SHを遊離3SHに変換するのに十分な条件及び時間、接触させることを含む。いくつかの実施形態において、システインチオールリアーゼは、接触工程の前に精製される。システインチオールリアーゼの精製は、Rudden et al.、Scientific Reports,10:12500,2020の記載に沿って実施され得、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
いくつかの実施形態において、発酵性糖源は、麦芽汁、穀物/穀類、果物ジュース(例えば、ブドウジュース、リンゴジュース/サイダー)、蜂蜜、甘蔗糖、米、又は麹である。
【0050】
いくつかの実施形態において、3SHの不揮発性形態は、グルタチオン結合3SH又はシステイン結合3SH、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、この方法は、組換え酵母(例えば、Saccharomyces)で発酵させた発酵性糖源(例えば、麦芽汁)において、非改変酵母(例えば、Saccharomyces)で発酵させた発酵性糖源(例えば、麦芽汁)と比較して、遊離3SHが3倍増加することをもたらす。
【0051】
いくつかの実施形態において、方法は、システイン-チオールリアーゼを用いた発酵性糖源(例えば、麦芽汁)において、システイン-チオールリアーゼを用いない発酵性糖源(例えば、麦芽汁)と比較して、遊離3SHが3倍増加することをもたらす。
【0052】
いくつかの実施形態において、システインチオールリアーゼはPatBである。いくつかの実施形態において、PatBはStaphylococcus属の種に由来する。いくつかの実施形態において、PatBは、S.lugdunensis(配列番号9)、S.devriesei(配列番号10)、S.hominis(配列番号8)、S.haemolyticus(配列番号13)、S.petrasii(配列番号11又は配列番号12)、又はB.subtilis(配列番号14)に由来する。
【0053】
いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号8に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号9に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号10に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号11に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号12に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号13に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号14に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%同一(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、97%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、PatBは、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む。
【0060】
本開示はまた、醸造プロセス中に、3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)の不揮発性形態を遊離3SHに変換する方法も提供し、本方法は、(a)3SHの不揮発性形態を含む植物を製粉用穀物に加えて、マッシュし、麦芽汁を産生することを含む、マッシュホッピング工程と、(b)(a)によって産生された麦芽汁を沸騰させることと、(c)麦芽汁を冷却することと、及び(d)冷却された麦芽汁と、本明細書に記載の組換えSaccharomycesとを、3SHの不揮発性形態を遊離3SHに変換するのに十分な条件及び時間、接触させることと、を含む。いくつかの実施形態において、3SHの不揮発性形態は、グルタチオン結合3SH又はシステイン結合3SH、及びそれらの組み合わせである。
【0061】
いくつかの実施形態において、醸造プロセス中に、3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)の不揮発性形態を遊離3SHに変換する方法は、異種プロモーターに作動可能に連結されたシステイン-チオールリアーゼポリヌクレオチドを含む組換え酵母の不在下で行われ得る。この点で、本開示は、醸造プロセス中に、3-スルファニル-1-ヘキサノール(3SH)の不揮発性形態を遊離3SHに変換する方法も提供し、本方法は、(a)3SHの不揮発性形態を含む植物を製粉用穀物に加えて、マッシュし、麦芽汁を産生することを含む、マッシュホッピング工程と、(b)(a)によって産生された麦芽汁を沸騰させることと、(c)麦芽汁を冷却することと、(d)冷却された麦芽汁と、精製システイン-チオールリアーゼとを、3SHの不揮発性形態を遊離3SHに変換するのに十分な条件及び時間、接触させることと、を含む。いくつかの実施形態において、3SHの不揮発性形態は、グルタチオン結合3SH又はシステイン結合3SH、及びそれらの組み合わせである。
【0062】
「3SHの不揮発性形態を含む植物材料」という語句は、グルタチオン結合3SH、システイン結合3SH、又はこれらの組み合わせを含有する任意の植物(又は植物部分)を指す。「植物部分」という用語は、種子、芽、茎、葉、根、花、及び植物組織を含む、植物の全ての構成要素を包含する。いくつかの実施形態において、植物材料は、製粉用穀物に加えられる前に処理されている。植物材料を処理する例示的な方法としては、植物材料を、破砕すること、加圧すること、薄く切ること、混合すること、汁を絞ること、ローラーで延ばすこと、粉砕すること、又はすりつぶすことが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
いくつかの実施形態において、3SHの不揮発性形態を含む植物材料は、ホップである。本明細書に記載の方法での使用に適したホップとしては、Amarillo、Apollo、Cascade、Centennial、Chinook、Citra、Cluster、Columbus、Crystal、Eroica、Galena、Glacier、Greenburg、Horizon、Liberty、Millenium、Mount Hood、Mount Rainier、Newport、Nugget、Palisade、Santiam、Simcoe、Sterling、Summit、Tomahawk、Ultra、Vanguard、Warrior、Willamette、Zeus、Admiral、Brewer’s Gold、Bullion、Challenger、First Gold、Fuggles、Goldings、Herald、Northdown、Northern Brewer、Phoenix、Pilot、Pioneer、Progress、Target、Whitbread Golding Variety(WGV)、Hallertau、Hersbrucker、Saaz、Tettnang、Spalt、Feux-Coeur Francais、Galaxy、Green Bullet、Motueka、Nelson Sauvin、Pacific Gem、Pacific Jade、Pacifica、Pride of Ringwood、Riwaka、Southern Cross、Lublin、Magnum、Perle、Polnischer Lublin、Saphir、Satus、Select、Strisselspalt、Styrian Goldings、Tardif de Bourgogne、Tradition、Bravo、Calypso、Chelan、Comet、El Dorado、San Juan Ruby Red、Satus、Sonnet Golding、Super Galena、Tillicum、Bramling Cross、Pilgrim、Hallertauer Herkules、Hallertauer Magnum、Hallertauer Taurus、Merkur、Opal、Smaragd、Halleratau Aroma、Kohatu、Rakau、Stella、Sticklebract、Summer Saaz、Super Alpha、Super Pride、Topaz、Wai-iti、Bor、Junga、Marynka、Premiant、Sladek、Styrian Atlas、Styrian Aurora、Styrian Bobek、Styrian Celeia、Sybilla、及びSorachi Aceホップが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ホップは、Cascade、Calypso、Hallertau Tradition、Hallertau Perle、Triple Pearl、Nugget、Saaz、Columbus/CTZ、Chinook、Nelson Sauvin、Hallertau Blanc、及び/又はSimcoeホップである。
【0064】
いくつかの実施形態において、ホップは少なくとも約400μg/kgのシステイン結合3SHを含有する。例えば、いくつかの実施形態において、ホップは、少なくとも約400μg/kg、少なくとも約450μg/kg、少なくとも約500μg/kg、少なくとも約550μg/kg、少なくとも約600μg/kg、少なくとも約650μg/kg、少なくとも約700μg/kg、少なくとも約750μg/kg、少なくとも約800μg/kg、少なくとも約850μg/kg、少なくとも約900μg/kg、少なくとも約950μg/kg、又は少なくとも約1000μg/kgのシステイン結合3SHを含む。いくつかの実施形態において、ホップは、約400μg/kg~約1000μg/kg、又は約500μg/kg~約900μg/kg、又は約600μg/kg~約800μg/kg、又は約400μg/kg~約600μg/kgの範囲の量のシステイン結合3SHを含有する。
【0065】
いくつかの実施形態において、ホップは少なくとも約5000μg/kgのグルタチオン3SHを含有する。例えば、いくつかの実施形態において、ホップは、少なくとも約5000μg/kg、少なくとも約5500μg/kg、少なくとも約6000μg/kg、少なくとも約6500μg/kg、少なくとも約7000μg/kg、少なくとも約7500μg/kg、少なくとも約5000μg/kg、少なくとも約8500μg/kg、少なくとも約9000μg/kg、少なくとも約9500μg/kg、又は少なくとも約10,000μg/kg、少なくとも約10,500μg/kg、少なくとも約11,000μg/kg、少なくとも約11,500μg/kg、少なくとも約12,000μg/kg、少なくとも約12,500μg/kg、少なくとも約13,000μg/kg、少なくとも約13,500μg/kg、少なくとも約14,000μg/kg、少なくとも約14,500μg/kg、少なくとも約15,000μg/kg、少なくとも約15,500μg/kg、少なくとも約16,000μg/kg、少なくとも約16,500μg/kg、少なくとも約17,000μg/kg、少なくとも約17,500μg/kg、少なくとも約18,000μg/kg、少なくとも約18,500μg/kg、少なくとも約19,000μg/kg、少なくとも約19,500μg/kg、又は少なくとも約20,000μg/kgのグルタチオン結合3SHを含有する。いくつかの実施形態において、ホップは、約5000μg/kg~約1000μg/kg、又は約5500μg/kg~約9000μg/kg、又は約6000μg/kg~約8000μg/kg、又は約4000μg/kg~約6000μg/kg、又は約5000μg/kg~約8000μg/kg、又は約8000μg/kg~約12,000μg/kg、又は約10,000μg/kg~約20,000μg/kg、又は約15,000μg/kg~約20,000μg/kgの範囲の量のグルタチオン結合3SHを含有する。
【0066】
いくつかの実施形態において、3SHの不揮発性形態を含む植物材料は、ブドウ由来生成物である。好適なブドウ由来生成物は、例えば、粉砕されたブドウ又はブドウ粉末を含む。ブドウ由来生成物は、白ブドウ、赤ブドウ、又はそれらの組み合わせから得られ得る。例示的な白ブドウ品種としては、Sauvignon Blanc、Chardonnay、Chenin Blanc、Colombard、Gewurztraminer、Gros Manseng、Koshu、Maccabeo、Muscat、Petit Manseng、Pinot Blanc、Pinot Gris、Riesling、Scheurebe、Semillon、Sylvaner、及びTokayが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な赤ブドウ品種としては、Cabernet Franc、Cabernet Sauvignon、Grenache、Merlot、及びPinot Noirが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
いくつかの実施形態において、ブドウ由来生成物は、少なくとも約400μg/kgのシステイン結合3SHを含有する。例えば、いくつかの実施形態において、ブドウ由来生成物は、少なくとも約400μg/kg、少なくとも約450μg/kg、少なくとも約500μg/kg、少なくとも約550μg/kg、少なくとも約600μg/kg、少なくとも約650μg/kg、少なくとも約700μg/kg、少なくとも約750μg/kg、少なくとも約800μg/kg、少なくとも約850μg/kg、少なくとも約900μg/kg、又は少なくとも約950μg/kg、又は少なくとも約1000μg/kg、又は少なくとも約1500μg/kg、又は少なくとも約2000μg/kg、又は少なくとも約2500μg/kg、又は少なくとも約3000μg/kg、又は少なくとも約3500μg/kg、又は少なくとも約4000μg/kg、又は少なくとも約4500μg/kg、又は少なくとも約5000μg/kg、少なくとも約5500μg/kg、少なくとも約6000μg/kg、少なくとも約6500μg/kg、少なくとも約7000μg/kg、少なくとも約7500μg/kg、少なくとも約8000μg/kg、少なくとも約8500μg/kg、少なくとも約9000μg/kg、少なくとも約9500μg/kg、又は少なくとも約10,000μg/kg、少なくとも約10,500μg/kg、少なくとも約11,000μg/kg、少なくとも約11,500μg/kg、少なくとも約12,000μg/kg、少なくとも約12,500μg/kg、少なくとも約13,000μg/kg、少なくとも約13,500μg/kg、少なくとも約14,000μg/kg、少なくとも14,500μg/kg、kg、少なくとも約15,000μg/kg、少なくとも約15,500μg/kg、少なくとも約16,000μg/kg、少なくとも約16,500μg/kg、少なくとも約17,000μg/kg、少なくとも約17,500μg/kg、少なくとも約18,000μg/kg、少なくとも約18,500μg/kg、少なくとも約19,000μg/kg、少なくとも約19,500μg/kg、又は少なくとも約20,0000μg/kg、又は少なくとも20,500μg/kg、又は少なくとも21,000μg/kg、又は少なくとも21,500μg/kg、又は少なくとも22,000μg/kg、又は少なくとも22,500μg/kg、又は少なくとも23,000μg/kg、又は少なくとも23,500μg/kg、又は少なくとも24,000μg/kg、又は少なくとも24,500μg/kg、又は少なくとも25,000μg/kg、又は少なくとも25,500μg/kg、又は少なくとも26,000μg/kg、又は少なくとも26,500μg/kg、又は少なくとも27,000μg/kg、又は少なくとも27,500μg/kg、又は少なくとも28,000μg/kg、又は少なくとも28,500μg/kg、又は少なくとも29,000μg/kg、又は少なくとも29,500μg/kg、又は少なくとも30,000μg/kg、又は少なくとも30,500μg/kg、又は少なくとも31,000μg/kg、又は少なくとも31,500μg/kg、又は少なくとも32,000μg/kg、又は少なくとも33,000μg/kg、又は少なくとも33,500μg/kg、又は少なくとも34,000μg/kg、又は少なくとも34,500μg/kg、又は少なくとも35,000μg/kg、又は少なくとも35,500μg/kg、又は少なくとも36,000μg/kgのシステイン結合3SHを含有する。いくつかの実施形態において、ブドウ由来生成物は、約400μg/kg~約1000μg/kg、又は約500μg/kg~約900μg/kg、又は約600μg/kg~約800μg/kg、又は約400μg/kg~約600μg/kg、又は約400μg/kg~約36,000μg/kg、又は約20,000μg/kg~約36,000μg/kg、又は約5,000μg/kg~約8000μg/kg、又は約8000μg/kg~約12,000μg/kg、又は約10,000μg/kg~約20,000μg/kg又は約15,000μg/kg~約20,000μg/kgの範囲の量のシステイン結合3SHを含有する。
【0068】
いくつかの実施形態において、ブドウ由来生成物は、少なくとも約5000μg/kgのグルタチオン3SHを含有する。例えば、いくつかの実施形態において、ブドウ由来生成物は、少なくとも約5000μg/kg、少なくとも約5500μg/kg、少なくとも約6000μg/kg、少なくとも約6500μg/kg、少なくとも約7000μg/kg、少なくとも約7500μg/kg、少なくとも約8000μg/kg、少なくとも約8500μg/kg、少なくとも約9000μg/kg、少なくとも約9500μg/kg、少なくとも約10,000μg/kg、少なくとも約10,500μg/kg、少なくとも約11,000μg/kg、少なくとも約11,500μg/kg、少なくとも約12,000μg/kg、少なくとも約12,500μg/kg、少なくとも約13,000μg/kg、少なくとも約13,500μg/kg、少なくとも約14,000μg/kg、少なくとも約14,500μg/kg、少なくとも約15,000μg/kg、少なくとも約15,500μg/kg、少なくとも約16,000μg/kg、少なくとも約16,5000μg/kg、少なくとも約17,000μg/kg、少なくとも約17,500μg/kg、少なくとも約18,000μg/kg、少なくとも約18,500μg/kg、少なくとも約19,000μg/kg、少なくとも約19,500μg/kg、又は少なくとも約20,000μg/kg、又は少なくとも30,000μg/kg、又は少なくとも35,00μg/kg、又は少なくとも40,000μg/kg、又は少なくとも45,000μg/kg、又は少なくとも50,000μg/kgのグルタチオン結合3SHを含有する。いくつかの実施形態において、ブドウ由来生成物は、約5000μg/kg~約1000μg/kg、又は約5500μg/kg~約9000μg/kg、又は約6000μg/kg~約8000μg/kg、又は約4000μg/kg~約6000μg/kg、又は約400μg/kg~約36,000μg/kg、又は約20,000μg/kg~約50,000μg/kg、又は約5000μg/kg~約8000μg/kg、又は約8000μg/kg~約12,000μg/kg、又は約10,000μg/kg~約20,000μg/kg、又は約15,000μg/kg~約20,000μg/kgの範囲のグルタチオン結合3SHの量を含有する。
【0069】
いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、グリスト1kg当たり100グラム未満の植物材料を加えること(例えば、製粉用穀物1kg当たり75グラム未満の植物材料又は製粉用穀物1kg当たり50グラム未満の植物材料を加えること)を含む。いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、製粉用穀物1kg当たり75~100グラムの植物材料を加えることを含む。いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、製粉用穀物1kg当たり50~75グラムの植物材料を加えることを含む。いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、製粉用穀物1kg当たり25~50グラムの植物材料を加えることを含む。いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、製粉用穀物1kg当たり1~25グラムの植物材料を加えることを含む。いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、ホップ及びブドウ由来生成物の両方を製粉用穀物に加えることを含む。
【0070】
任意選択で、マッシュホッピング工程は、沸騰工程の前のタンパク質休息を含む。例えば、いくつかの実施形態において、タンパク質レストは、マッシュを、沸騰工程の少なくとも5分間(例えば、少なくとも約5分間、又は少なくとも約10分間、又は少なくとも約15分間、又は少なくとも約20分間、又は少なくとも約25分間、又は少なくとも約30分間、又は少なくとも約5分間、又は少なくとも約40分間、又は少なくとも約45分間、又は少なくとも約50分間、又は約1時間前に、120°F未満(例えば、100°F~120°F)の温度で維持することを含む。いくつかの実施形態において、タンパク質休止は、マッシュを沸騰工程の前の1時間以下の間、120°F未満(例えば、100°F~120°Fの間)の温度で維持することを含む。いくつかの実施形態において、タンパク質休止は、沸騰工程の前に、5分~1時間(又は約5分~約20分、又は約5分~約10分、又は約10分~約30分、又は約10分~約1時間)の範囲の時間、120°F未満の温度でマッシュを維持することを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、マッシュホッピング工程は、タンパク質休止後かつ沸騰工程前の糖化休止を更に含む。例えば、いくつかの実施形態において、糖化休止は、沸騰工程の少なくとも15分間、マッシュを160°F未満(例えば、140°F~160°F)の温度で維持することを含む。いくつかの実施形態において、糖化休止は、マッシュを160°F未満(例えば、140°F~160°F、又は148°F~158°F)の温度で、少なくとも約15分、又は少なくとも約20分、又は少なくとも約25分、又は少なくとも約30分、又は少なくとも約5分、又は少なくとも約40分、又は少なくとも約45分、又は少なくとも約50分、又は少なくとも約60分、又は約65分、又は約70分、又は約75分、又は約80分、又は約85分、又は約90分間維持することを含む。いくつかの実施形態において、糖化休止は、マッシュを沸騰工程の前に15分~90分(又は約15分~約30分、又は約20分~約60分、又は約20分~約40分、又は約60分~約90分)の範囲の時間、160°F未満(例えば、140°F~160°F、又は148°F~158°F)の温度で維持することを含む。
【0072】
様々な実施形態において、方法は、冷却された麦芽汁をホップと接触させて混合物を産生することと、混合物を組換えSaccharomycesと接触させることとを更に含む。いくつかの実施形態において、組換えSaccharomycesはS.cerevisiae又はS.pastorianusである。
【0073】
いくつかの実施形態において、接触工程は発酵槽内で45°F~100°Fの範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態において、接触工程は、3日間~14日間(例えば、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、又は約14日間)の範囲の期間にわたって生じる。
【0074】
抽出プロセスにおいて他の不揮発性チオール(例えば、グルタチオン結合型又はシステイン結合型、非3SHチオール)を変換する方法も企図される。例えば、本明細書に記載の方法は、グルタチオン結合型又はシステイン結合型-4MSP、グルタチオン結合型又はシステイン結合型-3SH又はグルタチオン結合型又はシステイン結合型-3SHA)をそれらの芳香族、遊離型に変換するのに有用であることが企図される。
【0075】
本明細書に記載される方法のいずれにおいても、麦芽汁は、接触工程の後に少なくとも60ng/Lの遊離3SHを任意に含む。いくつかの実施形態において、麦芽汁は、接触工程の後に、約60ng/L(又は約65ng/L、又は約70ng/L、又は約75ng/L、又は約80ng/L、又は約85ng/L、又は約90ng/L、又は約95ng/L、又は約100ng/L、又は約110ng/L、又は約120ng/L、又は約130ng/L、又は約140ng/L、又は約150ng/L、又は約160ng/L、又は約170ng/L、又は約180ng/L、又は約190ng/L、又は約200ng/L、又は約250ng/L、又は約300ng/L、又は約350ng/L、又は約400ng/L、又は約450ng/L、又は約500ng/L、又は約550ng/L、又は約600ng/L、又は約650ng/L、又は約700ng/L、又は約750ng/L、又は約800ng/L、又は約850ng/L、又は約900ng/L、又は約950ng/L、又は約1000ng/L)の遊離3SHを含む。試料中の遊離チオールは、例えば、安定同位体希釈アッセイ及びナノ液体クロマトグラフィータンデム質量分析(Nano LC-MS/MS)によって、分析し得る(Roland et al.,J.Chromatography A,1468:154-163,2016、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。試料中の遊離チオールの量を定量する方法は、例えば、誘導体化及び高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析(HPLC-MS/MS)(Capone et al.,Anal.Chem.,87:1226-1231,2015、その開示は参照により組み込まれる)。
【0076】
いくつかの実施形態において、この方法は、非改変Saccharomycesで発酵させた麦芽汁と比較して、組換えSaccharomycesで発酵させた麦芽汁中の遊離3SHが6倍増加することをもたらす。
【実施例
【0077】
実施例1-組換えSaccharomyces
TDH3プロモーターエレメントと共にKANMX4遺伝子を含有する組み込みカセットを、IRC7プロモーターと80bpの相同性を含む配列番号5:5’-AAAAGGCTCCTGATGAAACTGGAGAGTCTCTTTGTTCTGAAATTTTTAAAGTTTAGCACACCATATAG-3’(フォワードプライマー)及び配列番号6:5’-TCCAATAACAGACAGTTGCGTAGTAATACCAAACTTCGATAACTCGGTACGATCAATCATTTTGTTTGTTTATGTGTGTTTATTCGAAAC-3’(リバースプライマー)を含有するプライマーで増幅した。このカセットをそれぞれのS.cerevisiae親株OYL-088(酵母株A.US-05のWGS(SRR8173067))及びOYL-011(酵母株YMD1872のWGS(SRR8172941))に形質転換し、IRC7の上流にKANMX-TDH3pr配列を標的組み込みした。得られたG418耐性コロニーのPCR確認は、IRC7のTDH3プロモーター駆動型過剰発現をもたらす、成功した組み込みを検証した。発現されたIRC7対立遺伝子を更に配列決定し、野生型IRC7配列にアラインメントした(図1)。SNP及び得られたアミノ酸置換は、以下の表1に記す。
【0078】
【表1】
【0079】
その結果、改変OYL-088株は、IRC7の活性対立遺伝子(配列番号1に示されるアミノ酸配列、配列番号2に示されるポリヌクレオチド配列)を発現するが、修飾OYL-011株におけるIRC7をコードするポリヌクレオチドに存在するSNPは、IRC7の不活性対立遺伝子(配列番号3に示されるアミノ酸配列、配列番号4に示されるポリヌクレオチド配列)を発現することが、示された。
【0080】
実施例2-抽出方法
小さなパイロット醸造システムを使用して、麦芽汁を「袋で醸造」又はBIAB法で調製した。マッシュホップされた試料に対して、二条大麦Brewer’s Malt(Briess Malting)及びCascadeホップ(Hopsteiner)を、タンパク質休止のため120°Fで15分間浸した後、糖化休止のため148°Fで15分間加熱した。麦芽汁から穀物とホップを取り出し、沸騰の初めに、体積を目標である10°Pに調整した。麦芽汁を30分間沸騰させた後、更に15分間渦巻きスタンドに移した後、フラスコに移して冷却した。得られた麦芽汁(12°P)を、OYL-088、OYL-011、OYL-088 TDH3-IRC7、又はOYL-011 TDH3-IRC7のいずれかで発酵させた。乾燥ホップした試料に対して同じプロセスを行ったが、ホップはマッシュから省略され、その後、発酵の2日目に8g/L(約2lb/bbl)の同じホップ速度で加えられた。麦芽汁試料及びビール試料を50mlの円錐管中に収集し、1.5mg/Lのメタ重亜硫酸ナトリウムを試料に加え、試料を直ちに凍結した。試料を、Capone al.(Anal.Chem.,87:1226-1231,2015)に記載されているように誘導体化及びHPLC-MS/MSによって評価し、又はRoland al.(J.Chromatography A,1468:154-163,2016)に記載されているように安定同位体希釈アッセイ及びナノLC-MS/MSによっても評価した。
【0081】
図2に示すように、OYL-088 TDH3-IRC7で発酵させたビール試料では、非修飾株(OYL-088)と比較して、遊離3SHレベルがほぼ3倍増加した。OYL-011及びOYL-011 TDH3-IRC7で作られた同じビールの3SHレベルは、比較して変化しなかった(IRC7の不活性対立遺伝子による)。驚くべきことに、OYL-088 TDH3-IRC7で発酵させたマッシュホップビール試料では、非修飾株(OYL-088)と比較して、遊離3SHレベルがほぼ6倍増加した。OYL-011及びOYL-011 TDH3-IRC7で作られた同じビールの3SHレベルは、比較して変化しなかった(IRC7の不活性対立遺伝子による)。
【0082】
上記の結果は、Saccharomycesにおけるβ-リアーゼ過剰発現(具体的には、IRC7過剰発現)が遊離3-SHを産生しないという報告を考慮すると、少なくとも部分的には、驚くべきものであった(Denby et al.、WBC Connect 2020、Poster159)。本明細書に記載される実験の過程で、以前の研究がIRC7の不活性な形態を利用したと決定された。内因性β-リアーゼ活性について細胞抽出物を調べる別の研究(すなわち、過剰発現研究ではない)では、V348L置換(配列番号1と同じ)を有するIrc7が不活性であることが決定された(Curtin et al.,“Mutations in carbon-sulfur β-lyase encoding gene IRC7 affect the polyfunctional thiol-releasing capability of brewers yeast,”World Brewing Congress Connect 2020,Poster 157)。予想外に、及び本明細書に示されるように、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むIrc7は、植物材料中で利用可能な不揮発性チオールを、それらの遊離、芳香族形態に効率的に変換する。加えて、マッシュホッピング工程における活性β-リアーゼの使用は、不揮発性チオールのそれらの遊離形態への変換において顕著な増加をもたらす。
【0083】
実施例3-組換え酵母
GブロックをIDTによって合成し、HYGB選択マーカーを有する酵母シャトルベクターにクローニングした。これらのGブロックは、PGK1プロモーター及びCYC1ターミネーターによる調節下で、S.hominis由来のPatB(配列番号8)、S.cerevisiae由来のIRC7(配列番号1)、又はS.pastorianus由来のIRC7(配列番号7)をコードするポリヌクレオチドを含有した。次に、ベクターをラガー醸造株(OYL-106)に形質転換し、分離株をYPD-HYGB寒天プレート上で増殖させた。これらの分離株をYPD+HYGBに接種し、酢酸鉛紙を用いて硫黄産生をアッセイした。酢酸鉛紙は、S.pastorianus IRC7対立遺伝子で顕著な黒化を示し、S.cerevisiae IRC7対立遺伝子では少なかったが、S.hominis PatB対立遺伝子と空のベクター対照ではほとんど又はまったく黒化しなかった。単離物を、小フラスコ発酵のために、250mlの乾燥麦芽抽出物培地+HYGB中で増殖させた。増殖の48時間後、各増殖培養物を遠心分離し、1000万細胞/mlを使用して、二条大麦麦芽から調製した300mlの15°P麦芽汁を接種した。発酵を1週間行って、その時点で感覚を行った。S.hominis PatB対立遺伝子の結果として生じた感覚的影響は、cerevisiae IRC7対立遺伝子及び空ベクター対照よりも、顕著に目立った。S.hominis PatB発酵の主な芳香族記述子は、全て3SHチオールの特徴である、激しいパッションフルーツ、グアバ、グレープフルーツであった。
【0084】
追加のPatB対立遺伝子に対する調査を、上記と同様の方法で行った。S.anginosus、S.cohnii及びB.subtilis(配列番号14)由来のPatB対立遺伝子を有するプラスミドをラガー醸造株(OYL-106)に形質転換し、S.hominis PatB対立遺伝子と比較した。得られた麦芽汁発酵を感覚的に評価した。B.subtilis PatB対立遺伝子の過剰発現を伴う発酵は、S.hominisのPatB対立遺伝子と同等レベルのパッションフルーツ及びグアバの香りをもたらしたが、S.anginosus及びS.cohnii PatBの対立遺伝子の過剰発現を伴う発酵は、過剰発現を伴わない対照発酵と比較して、香りが顕著に増強しなかった。
【0085】
実施例4-チオール放出におけるPatBシステイン-チオールリアーゼ及びIrc7、及びTnaA β-リアーゼ酵素の効果の比較
試験発酵を実施して、Irc7、PatB、及びTnaA β-リアーゼ酵素の活性及び特異性を評価した。糖化のため、148°Fで30分間二条大麦麦芽をマッシュした後、180°Fで5分間酵素活性を不活化することによって、商業醸造所で麦芽汁を調製した。マッシュの流出物を収集し、30分間沸騰させた。麦芽抽出物を15°Pに希釈し、70℃まで冷却してから、OYL-011、OYL-011+Irc7、OYL-011+PatB、又はOYL-011+TnaAのうちの1つを接種した。硫化水素検出器チューブ(4H Gastec)を用いて、発酵フラスコを構成し、発酵を通して放出される累積HSを定量化した。発酵が完了したとき(11日後)、HSレベルを記録し、得られたビールを遊離チオール3SH及び4MSPについて分析した。結果を以下の表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
上記に示されるように、S.hominis PatBシステイン-チオールリアーゼを発現する株は、S.cerevisiae Irc7 β-リアーゼを発現する株と比較して、3SH出力を増強し、HS出力を減少させた。S.hominis PatB対立遺伝子は、既知のβ-リアーゼ活性を有する別の酵素、C.amalonaticus由来のTnaAトリプトファナーゼと比較して、4MSPの増強も示す。
図1
図2
【配列表】
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【国際調査報告】