IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャスビジョン アーペーエスの特許一覧

特表2024-507774潜在的なアブレーション療法を分析するための方法
<>
  • 特表-潜在的なアブレーション療法を分析するための方法 図1
  • 特表-潜在的なアブレーション療法を分析するための方法 図2
  • 特表-潜在的なアブレーション療法を分析するための方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】潜在的なアブレーション療法を分析するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/352 20210101AFI20240214BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20240214BHJP
   A61B 18/12 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
A61B5/352
A61B5/33 100
A61B18/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548712
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2021084257
(87)【国際公開番号】W WO2022171327
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】21156619.5
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519129126
【氏名又は名称】キャスビジョン アーペーエス
【氏名又は名称原語表記】CathVision ApS
【住所又は居所原語表記】Titangade 11, 2200 Koebenhavn N, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルーネ パーマン
(72)【発明者】
【氏名】マス エミル マティーセン
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG02
4C127GG05
4C127GG10
4C127GG13
4C160KK01
(57)【要約】
本発明は、潜在的なアブレーション療法(1)を分析するための方法、特に心房細動を有する患者(P)に対する、コントロールシステム(2)を介した、潜在的なアブレーション療法を分析するための方法に関し、この方法は、分析ステップ(3)を備えており、この分析ステップ(3)において、コントロールシステム(2)は、トレーニングされた機械学習モデル(4)を入力データ(5)に適用し、これによって出力データ(6)が生成され、入力データ(5)は、少なくとも1つの潜在的なアブレーション療法(1)の患者(P)からの心電図データ(8)から導出された電気的バイオマーカ(7)を備えており、潜在的なアブレーション療法(1)は、潜在的なアブレーション位置(10)を伴う少なくとも1つの潜在的なアブレーションイベント(9)を含んでおり、出力データ(6)は、潜在的なアブレーション療法(1)を患者(P)に適用した後の電気的バイオマーカ(7)の予測される変化を備えており、予測される変化は、トレーニングされた機械学習モデル(4)を介して入力データ(5)から導出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜在的なアブレーション療法(1)を分析するための方法であって、特に心房細動を有する患者(P)に対する、コントロールシステム(2)を介した、潜在的なアブレーション療法(1)を分析するための方法であって、
前記方法は、分析ステップ(3)を備えており、前記分析ステップ(3)において、前記コントロールシステム(2)は、トレーニングされた機械学習モデル(4)を入力データ(5)に適用し、これによって出力データ(6)が生成され、
前記入力データ(5)は、少なくとも1つの潜在的なアブレーション療法(1)の患者(P)からの心電図データ(8)から導出された電気的バイオマーカ(7)を備えており、前記潜在的なアブレーション療法(1)は、潜在的なアブレーション位置(10)を伴う少なくとも1つの潜在的なアブレーションイベント(9)を含んでおり、
前記出力データ(6)は、前記潜在的なアブレーション療法(1)を前記患者(P)に適用した後の前記電気的バイオマーカ(7)の予測される変化を備えており、
前記予測される変化は、前記トレーニングされた機械学習モデル(4)を介して前記入力データ(5)から導出される、
方法。
【請求項2】
前記入力データ(5)は、主に心電図由来のデータによって、特に前記電気的バイオマーカ(7)によって構成されており、または、前記入力データ(5)は、主に心電図由来のデータと心電図データ(8)とによって構成されており、かつ/または
前記方法は、前記患者(P)に対する潜在的なアブレーションターゲットを識別するために、前記出力データ(6)を分析することを備えている、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記トレーニングされた機械学習モデル(4)は、前記コントロールシステム(2)によるトレーニングデータセット(14)でのトレーニングステップ(13)においてトレーニングされている、またはトレーニングされ、
好ましくは、前記トレーニングデータセット(14)は、アブレーション療法データ(16)を備えているトレーニングデータベース(15)から導出され、前記アブレーション療法データ(16)は、アブレーションイベント(9)と、前記アブレーション療法(1)および/または1つもしくは複数の前記アブレーションイベント(9)の前後に決定される心電図データ(8)と、を含んでおり、
より好ましくは、前記トレーニングステップ(13)は、前記トレーニングデータベース(15)を遡及的にラベル付けすることを備えており、これによって前記トレーニングデータセット(14)の少なくとも一部が生成される、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記コントロールシステム(2)は、少なくとも部分的に、特に主にまたは完全に、前記アブレーション療法(1)および/または、1つもしくは複数の前記アブレーションイベント(9)の前後の前記トレーニングデータベース(15)の前記心電図データ(8)から前記電気的バイオマーカ(7)を導出する、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記潜在的なアブレーション療法(1)は、種々異なるアブレーション位置(10)を伴う少なくとも2つの潜在的なアブレーションイベント(9)を含んでおり、
前記トレーニングステップ(13)において、前記コントロールシステム(2)は、1つの前記潜在的なアブレーションイベント(9)の適用の後に前記電気的バイオマーカ(7)の予測される変化を導出するように第1のモデル(17)をトレーニングし、かつ/または、前記潜在的なアブレーション療法(1)の適用の後に前記電気的バイオマーカ(7)の予測される変化を導出するように第2のモデル(18)をトレーニングする、
請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記分析ステップ(3)において、前記コントロールシステム(2)は、前記入力データ(5)に前記第1のモデル(17)および/または前記第2のモデル(18)を適用して、前記電気的バイオマーカ(7)の前記予測される変化を導出し、
好ましくは、前記分析ステップ(3)において、前記コントロールシステム(2)は、1つまたは複数の前記潜在的なアブレーションイベント(9)の後、かつ、前記潜在的なアブレーション療法(1)の後に、前記電気的バイオマーカ(7)の予測される部分変化を導出するために、前記電気的バイオマーカ(7)の種々異なる部分集合に、前記第1のモデル(17)および前記第2のモデル(18)を適用し、
前記コントロールシステム(2)は、前記電気的バイオマーカ(7)の前記予測される部分変化から、前記予測される変化を導出する、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記トレーニングデータセット(14)における前記アブレーション療法(1)は、主に少なくとも1つのフォーカルソースアブレーションイベントを備えており、
好ましくは、前記トレーニングデータセット(14)は、主にフォーカルソースアブレーションイベントを含んでいるアブレーション療法(1)を備えている、
請求項3から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記コントロールシステム(2)がアルゴリズムを前記心電図データ(8)に適用して、前記心電図データ(8)から前記電気的バイオマーカ(7)の少なくとも一部を自動的に導出する導出ステップを備えており、
好ましくは、前記導出ステップにおいて、前記コントロールシステム(2)は、1つまたは複数の前記電気的バイオマーカ(7)を導出するために、1つまたは複数の非機械学習アルゴリズムを前記心電図データ(8)に適用し、かつ/または
前記導出ステップにおいて、前記コントロールシステム(2)は、1つまたは複数の前記電気的バイオマーカ(7)を導出するために、1つまたは複数のトレーニングされた二次機械学習モデルを前記心電図データ(8)に適用する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記電気的バイオマーカ(7)は、心臓周期長、心電図モルフォロジ分類、信号振幅、信号出力、心臓リズム分類、ピークタイミング値、特にRピークタイミング値、ピーク変動性、特にRピーク変動性、または心拍間、特に連続した心拍間の定量的変化、例えば平均二乗誤差値のうちの少なくとも1つを備えており、かつ/または
前記入力データ(5)は、患者データ、好ましくは、年齢、性別、危険因子ならびに/または生体バイオマーカ、好ましくは血圧データを表すバイオマーカおよび/または血液測定されたバイオマーカのうちの少なくとも1つをさらに備えている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記トレーニングされた機械学習モデル(4)、特に前記第1のモデル(17)は、前記トレーニングデータセット(14)として前記トレーニングデータベース(15)の前記アブレーション療法(1)の最後の前記アブレーションイベント(9)を主に使用することによって、または前記アブレーション療法(1)全体にわたったアブレーションイベント(9)を使用することによって、トレーニングされる、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、アブレーション療法分類ステップを備えており、前記アブレーション療法分類ステップにおいて、前記コントロールシステム(2)は、1つもしくは複数の潜在的なアブレーションイベント(9)および/または前記潜在的なアブレーション療法(1)の分類を決定し、特に前記出力データ(6)から、前記潜在的なアブレーション療法(1)を適用することによって、前記患者(P)の成功した治療の確率に関する成功スコアを決定することによって決定し、
好ましくは、前記方法は、アブレーション療法決定ステップを備えており、前記アブレーション療法決定ステップにおいて、前記コントロールシステム(2)は、少なくとも2つの潜在的なアブレーションイベント(9)および/または少なくとも2つの潜在的なアブレーション療法(1)の分類を、前記出力データ(6)から決定し、かつ/または、前記アブレーション療法決定ステップにおいて、前記コントロールシステム(2)は、最適化されたアブレーション療法(1)を、前記出力データ(6)から決定する、
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記コントロールシステム(2)は、特に手術中に、好ましくは患者(P)のオンライン測定から心電図データ(8)を受け取り、潜在的なアブレーション療法(1)の前記分類を出力し、
好ましくは、前記潜在的なアブレーション療法(1)は、手術中に、潜在的なアブレーション位置(10)において、または潜在的なアブレーション位置(10)の近くで、心電図データ(8)を測定することによって少なくとも部分的に定義される、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
トレーニングされた機械学習モデル(4)が格納されているコンピュータ可読媒体であって、
前記トレーニングされた機械学習モデル(4)は、請求項3および場合によっては請求項4から12までのいずれか1項記載のトレーニングステップ(13)において導出されている、
ことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている、
コントロールシステム。
【請求項15】
コントロールシステム(2)に接続されている、またはコントロールシステム(2)の一部を形成する手術システムであって、
前記コントロールシステム(2)は、請求項11および場合によっては請求項12に記載された方法を実施するように構成されており、
前記手術システム(19)は、手術中に使用されるように適合させられており、手術中にオンライン心電図データ(8)を受け取るように適合させられており、かつ前記アブレーション療法分類ステップおよび/または前記アブレーション療法決定ステップの結果を表示するように適合させられている、
手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載された、潜在的なアブレーション療法を分析するための方法、請求項13の上位概念に記載された、トレーニングされた機械学習モデルが格納されているコンピュータ可読媒体、請求項14に記載された、上述の方法を実施するように構成されているコントロールシステムおよび請求項15に記載された手術システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この方法は、特に、心房細動に対するアブレーション療法に関する。心房細動は、電気的には、心房の筋細胞の無秩序な興奮である。心房細動の間、心房は心臓の機能に最小限しか寄与しない。したがって心房細動は心臓の拍出量を低下させてしまうが、これは切迫した危険ではない。しかし、心房細動が慢性化した場合には、心房細動は、罹患率および死亡率の上昇と相関する。心房細動に対する治療の選択肢の1つに、アブレーション療法がある。アブレーション療法は、電気波のリエントリを可能にする細胞の破壊であり、これによって心房の筋細胞の無秩序な興奮が低減する。
【0003】
アブレーション療法の成功率は、アブレーションの位置に関連する。心房細動の多くのケースでは、肺静脈入口の周囲の心房の筋細胞がアブレーションされる。この標準療法は多くの患者に対して良好な結果を示しているが、常に成功するわけではない。複雑な心房細動または特に再発性心房細動を有する患者には、電気波の前面およびリエントリポイントの心房マッピングが利用可能である。しかし、このようなマッピングは複雑であり、解釈が困難である。したがって、アブレーションの潜在的なターゲットの識別および評価のためのさらなる方法が必要である。
【0004】
欧州特許出願公開第3744282号明細書のような既知の方法では、機械学習アルゴリズムを使用して、心臓アブレーション治療計画が生成される。しかし、機械学習を多数の入力変数に適用するためには、大きなトレーニングデータセットが必要となる。どちらかと言えば不均一な入力データから一般的な治療計画を生成することができる機械学習アーキテクチャを設計することはさらに困難である。理論的には、多数の入力変数を考察することによって、機械学習アルゴリズムの精度を高めることができるが、実際には、多数のアブレーション療法を考慮することによって、スクラッチからトレーニングデータセットを収集することは実現不可能である。
【0005】
その他の既知の方法(国際公開第2019/217430号)は、心臓の測定および機能モデルに基づく興奮経路および治療位置の学習に関する。機能モデルは、機械学習アルゴリズムおよび必要なトレーニングデータセットの複雑さを低減するための優れた手法である。しかし、心房細動の機能的な理解は依然として進行中であり、機能モデルと機械学習アルゴリズムとを組み合わせることは、それ自体で複雑なタスクである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、現実的にトレーニング可能かつ使用可能な、管理可能な複雑さを伴った、潜在的なアブレーション療法を分析するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題は、請求項1に記載された方法によって解決される。
【0008】
本発明の主な認識は、アブレーションによって治療される心臓の病状が一般的に電気的な誤動作に関係するということである。そのため、これらは電気的な測定の結果によって良好に表される。したがって、電気的なデータ、すなわち心電図データに基づいて機械学習アルゴリズムを開発することが可能である。潜在的なアブレーション療法を適用した後の電気的バイオマーカの変化を予測するために、心電図データから電気的バイオマーカを導出し、トレーニングされた機械学習モデルを使用することによって、機械学習アルゴリズムの複雑さが大幅に低減される。特に、多数のデータを使用して、治療の広く定義された全般的な成功を学習しようとする試みから焦点を移すことによって、機械学習モデルのトレーニングのためのコスト関数の定義は、本発明においてより容易に管理可能になる。優れたコスト関数を選択できることは、機械学習アルゴリズムを首尾よく適用するための鍵である。
【0009】
さらなる利点は、アブレーション療法の前後の電気的な測定が、多数の患者に対して既に利用可能であることである。電気的バイオマーカの予測される変化を導出することによって、この予測される変化を医師に提示することも可能となる。これによって医師は、この予測される変化に基づき、医師の知識および経験と組み合わせて、患者に適した全般的な治療を設計することができる。これによって、全般的な治療の質ならびに医師と患者とによる、提案された方法の受け入れをさらに向上させることができる。
【0010】
詳細には、潜在的なアブレーション療法を分析するための方法であって、特に心房細動を有する患者に対する、コントロールシステムを介した、潜在的なアブレーション療法を分析するための方法が提案され、この方法は、分析ステップを備えており、この分析ステップにおいて、コントロールシステムは、トレーニングされた機械学習モデルを入力データに適用し、これによって出力データが生成され、入力データは、少なくとも1つの潜在的なアブレーション療法の患者からの心電図データから導出された電気的バイオマーカを備えており、潜在的なアブレーション療法は、潜在的なアブレーション位置を伴う少なくとも1つの潜在的なアブレーションイベントを含んでおり、出力データは、潜在的なアブレーション療法を患者に適用した後の電気的バイオマーカの予測される変化を備えており、予測される変化は、トレーニングされた機械学習モデルを介して入力データから導出される。
【0011】
請求項2によれば、入力データは、主に心電図由来のデータによって、または心電図由来のデータと心電図データとによって構成されていてよく、これによって上述の利点がさらに高められる。請求項2は、患者に対する潜在的なアブレーションターゲットを識別するための、出力データの分析の可能性にも関する。電気的バイオマーカの予測される変化は、潜在的なアブレーションターゲットを識別し、アブレーション療法を計画するための良好な指標となり得る。
【0012】
機械学習モデルのためのトレーニングステップが、請求項3において提案されている。トレーニングデータセットは、遡及的にラベル付けされ得るトレーニングデータベースから導出されてよい。このデータベースは、オープンなデータベースまたは商業用データベースに基づいていてよく、これによって、提案された方法のユーザビリティを著しく向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載された実施形態では、電気的バイオマーカは、コントロールシステムによってトレーニングデータベースの心電図データから導出されてよい。
【0014】
目下、単一のアブレーションイベントおよび全アブレーション療法に対するバイオマーカ応答が、特に、関心の対象である。請求項5に記載された実施形態では、1つの潜在的なアブレーションイベントの適用の後に電気的バイオマーカの変化を導出するように第1のモデルがトレーニングステップにおいてトレーニングされてよい、かつ/または電気的バイオマーカの変化を導出するように第2のモデルがトレーニングステップにおいてトレーニングされてよい。いくつかのケースでは、単一のアブレーションイベントは、明確に定義されたバイオマーカ応答を有し得るが、他のケースでは、アブレーション療法のバイオマーカ応答は、2つ以上のアブレーションイベントによって構成される。後者の場合、単一のアブレーションイベントが相乗効果を有していてよく、アブレーション療法全体を考察することによって、この相乗効果を見ることができる。
【0015】
請求項6は、第1のモデルおよび第2のモデルが別々にまたは共同で、特に種々異なる電気的バイオマーカに適用され得る可能性に関する。
【0016】
請求項7に記載された実施形態では、トレーニングデータセットは、フォーカルソースアブレーションイベントを備えていてよい。マッピングの結果であるフォーカルソースアブレーションはより特異的であり、より広範囲のアブレーション位置を提供し、提案された方法による潜在的なフォーカルソースの識別を可能にする。
【0017】
請求項8は、心電図データから電気的バイオマーカを自動的に導出するための導出ステップに関する。電気的バイオマーカは、非機械学習アルゴリズムによって心電図データから導出されてよい。ここでは、既知のアルゴリズムを使用して、心電図データから多数の電気的バイオマーカを導出することができる。特に、請求項9において挙げられたものが、提案された方法において適用される。しかし、1つまたは複数の電気的バイオマーカを導出するために、機械学習モデルを使用することが同様に好ましい。この機械学習モデルは、電気的バイオマーカの予測される変化を導出するための機械学習モデルの一部であってよく、これによって、心電図データに直接的に基づく予測が可能になる。
【0018】
請求項10に記載された実施形態では、特に、利用可能なトレーニングデータセットに応じて、トレーニングデータベースのアブレーション療法の最後のアブレーションイベントを主に使用すること、またはアブレーション療法全体にわたったアブレーションイベントを使用することの可能性が考察される。
【0019】
請求項11の実施形態は、同様に機械学習アルゴリズムに基づき得る出力データの使用による潜在的なアブレーション療法の分類の決定に関する。さらに、非機械学習アルゴリズムに基づく電気的バイオマーカの分析が、この分類において利用されてもよい。
【0020】
請求項12によれば、この方法は、特に、オンライン心電図データ測定から、潜在的なアブレーション療法の分類の出力を提供することができる。手術中であっても、潜在的なアブレーション位置を識別または検証するために、この出力を使用することができる。
【0021】
同じ重要性を有する、請求項13に記載された別の教示は、トレーニングされた機械学習モデルが格納されているコンピュータ可読媒体に関する。提案された方法に関して、特にトレーニングステップに関して与えられたすべての説明が、完全に適用可能である。
【0022】
同様に同じ重要性を有する、請求項14に記載された別の教示は、提案された方法を実施するように構成されているコントロールシステムに関する。提案された方法に関して与えられたすべての説明が、完全に適用可能である。
【0023】
同様に同じ重要性を有する、請求項15に記載された別の教示は、提案されたコントロールシステムに接続されている、または提案されたコントロールシステムの一部を形成する手術システムに関する。提案された方法に関して与えられたすべての説明が、完全に適用可能である。
【0024】
以降では、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】提案された方法を概略的に示す図である。
図2】機械学習モデルのトレーニングを示す図である。
図3】トレーニングされた機械学習モデルの適用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
提案された方法は、潜在的なアブレーション療法1を分析するために使用される。図に示した好ましいケースでは、提案された方法は、心房細動を有する患者Pに使用される。潜在的なアブレーション療法1は、コントロールシステム2を介して分析される。図1では、コントロールシステム2が、患者Pに接続されているハードウェアを備えている専用のコントロールシステム2として概略的に示されている。コントロールシステム2は、汎用コンピュータ、クラウドベースコンピュータシステムなどであってもよく、提案された方法を実施するように構成されていてよい。
【0027】
この方法は分析ステップ3を備えており、この分析ステップ3において、コントロールシステム2が、トレーニングされた機械学習モデル4を入力データ5に適用し、これによって出力データ6が生成される。
【0028】
目下、「トレーニングされた機械学習モデル」という用語は、機械学習アルゴリズムのトレーニングの結果を適用するために必要な、少なくとも最少量のデータを記述している。トレーニングされた機械学習モデル4は、圧縮された表現で存在していてよく、任意の汎用コンピュータによって使用可能である必要はない。トレーニングされた機械学習モデル4は、例えば、別の様式で予め定義された人工ニューラルネットワークの重みを備えていてよい。トレーニングされた機械学習モデル4を適用するために必要な演算は、コントロールシステム2に格納されていてよい、かつ/またはトレーニングされた機械学習モデル4の一部であってよい。しかし、好ましい実施形態では、トレーニングされた機械学習モデル4は、プログラムコードを備えており、汎用オペレーティングシステムによって入力データ5に適用可能である。
【0029】
入力データ5は、少なくとも1つの潜在的なアブレーション療法1の患者Pからの心電図データ8から導出された電気的バイオマーカ7を備えている。潜在的なアブレーション療法1は、潜在的なアブレーション位置10を伴う少なくとも1つの潜在的なアブレーションイベント9を含んでいる。入力データ5は、図1の左側に概略的に示されている。電気的バイオマーカ7については、以降で詳細に説明する。潜在的なアブレーション療法1は、1つの潜在的なアブレーションイベント9のみを備えていても、2つ以上の潜在的なアブレーションイベント9を備えていてもよい。潜在的なアブレーション療法1、潜在的なアブレーションイベント9および潜在的なアブレーション位置10は、任意の適切なデータ構造で格納されていてよい。このデータ構造は、好ましくは標準化されている。図1では、値x,y,zは、各潜在的なアブレーション療法1を表しており、例えば潜在的なアブレーション療法1における潜在的なアブレーション位置10の座標を表しており、これらは例示を目的とした一例として示されている。図1には3つの潜在的なアブレーション療法1が示されており、そのうちの1つは2つの潜在的なアブレーションイベント9を備えている。「潜在的な」という用語は、このアブレーション療法1が、必ずしも患者Pに適用される必要がないことを意味している。目下、提案された方法は、どちらかと言えば、この潜在的なアブレーション療法1を患者Pに適用することが有望であるかどうかを予測するのに役立つ。
【0030】
アブレーションイベント9は、共通のフォーカルソースを対象とするエリア内の1つまたは複数の領域によって、または別の様式で共通のエリア、例えば肺静脈入口を共有する1つまたは複数の領域によって形成される。アブレーションイベントは、例えばクライオカテーテルの1つの適用であってよい。
【0031】
出力データ6は、潜在的なアブレーション療法1を患者Pに適用した後の電気的バイオマーカ7の予測される変化を備えている。予測される変化は、トレーニングされた機械学習モデル4を介して入力データ5から導出される。図1では、変化した電気的バイオマーカのセット11において、この変化が示されている。さらに、説明を目的として、心電図データ8における変化が図示されている。
【0032】
心電図データ8は、好ましくは表面心電図データまたは心臓内心電図データであり、コントロールシステム2に接続されている電極12によって測定されてよい。
【0033】
これらの電気的バイオマーカ7またはこれらの電気的バイオマーカ7のいくつかは、時間に関連していてよい、かつ/または時間に関連していなくてよい。機械学習機構の焦点として電気的バイオマーカ7を選択し、電気的バイオマーカ7の予測される変化に目を向けることによって、多数の機械学習アーキテクチャが、提案された方法に特に適したものとなる。好ましいアーキテクチャの以降のリストは、包括的ではないと理解されるべきである。
【0034】
トレーニングされた機械学習モデル4は、一般に知られている様式でのトレーニングによって導出される。トレーニングされた機械学習モデル4は、トレーニングされた機械学習モデル4のトレーニングおよび適用を備えている機械学習機構の一部である。
【0035】
基礎となるアーキテクチャは、固定インプットアーキテクチャであってよい。好ましくは、固定インプットアーキテクチャは、畳み込みニューラルネットワーク、フィードフォワードネットワーク、ディープ残差ネットワークまたはサポートベクターマシンもしくはベイズ分類器などの分類アーキテクチャである。固定インプットアーキテクチャは、オートエンコーダに結合され得る。
【0036】
固定インプットを生成するために、心電図データ8を、1つまたは複数のQRS群を備えている固定長の時間窓に分割することができる。付加的または択一的に、電気的バイオマーカ7は、時間に関連していなくてよい。2D入力データ5には、畳み込みネットワークが使用されてよい。しかし、1Dの実装も適用することができ、これは時系列に良好に適している。入力データ5に応じて、特に単純なアプローチを形成し得るフィードフォワードネットワークが好ましい。特に、入力データ5が長い時系列を備えている場合には、ディープ残差ネットワークのような勾配消失問題に対する解を使用することができる。一般に、アブレーション療法1の前の心電図データ8は時間関連性を有していてよく、ここでは早いイベントと遅いイベントとが等しく重要である。挙げられた分類アーキテクチャは、多数の相関している電気的バイオマーカ7に特に有利となり得る。
【0037】
また、回帰型アーキテクチャ、特に回帰型ニューラルネットワークが好ましく、長・短期記憶またはゲート付き回帰型ユニットに基づくアーキテクチャがより好ましく、これは、例えば、心電図データ8および/または電気的バイオマーカ7の長さに応じて使用可能である。別の好ましいアーキテクチャは、アテンションアーキテクチャ、特にトランスフォーマ・アーキテクチャおよび/またはアテンション機構を備えた非回帰型アーキテクチャである。潜在的なアブレーション療法1の成功を予測するための関連情報が、心電図データ8のどの部分に配置され得るのかが不明である場合、心電図データ8の低周波を使用し、電気的バイオマーカ7の長いシーケンスを導出することが有利な場合がある。特に、関連情報が散在的に分散されている場合、アテンションアーキテクチャが良好に適している。
【0038】
トレーニングのためのコスト関数は、以降で説明するように、アブレーション療法1に対する既知の応答に基づいていてよい。応答は、アブレーション療法1および/またはアブレーションイベント9までの時間間隔によって補償され得る。電気的バイオマーカ7の長時間変化および/またはアブレーション療法1の直後の電気的バイオマーカ7の直接的な変化を予測することが好ましい。
【0039】
ここで、好ましくは、入力データ5は、主に心電図由来のデータ、特に電気的バイオマーカ7によって構成されている。択一的に、入力データ5は、主に心電図由来のデータと心電図データ8とによって構成されていてよい。ここで、さらに以降で、「主に」という用語は、挙げられたデータが各データまたは各データを使用するアルゴリズムのコアを形成するが、他のデータも存在し得ることを意味している。これは、結果に大きな影響を与えることなく、機械学習アルゴリズムに追加データを含めることが可能であることを考慮している。したがって、「主に」という用語の定義は、機能的な定義として理解されるべきである。
【0040】
非電気的なデータ8の目的に合った使用は、提案された方法にとって有利であり得る。提案された方法は、患者Pに対する潜在的なアブレーションターゲットを識別するために出力データ6を分析することを備えていてよい。
【0041】
図2を参照して、機械学習モデル4のトレーニングについて説明する。ここで、好ましくは、トレーニングされた機械学習モデル4は、コントロールシステム2によるトレーニングデータセット14でのトレーニングステップ13においてトレーニングされている、またはトレーニングされる。トレーニングデータセット14は、アブレーション療法データ16を備えているトレーニングデータベース15から導出されてよく、アブレーション療法データ16は、アブレーションイベント9と、アブレーション療法1および/または1つもしくは複数のアブレーションイベント9の前後に決定される心電図データ8と、を含んでいる。
【0042】
電気的バイオマーカ7の変化を予測することは、さまざまなアブレーション療法1を有するデータベースをトレーニングに使用することができるという利点を有している。したがって、好ましくは、トレーニングステップ13は、トレーニングデータベース15を遡及的にラベル付けすることを備えており、これによって、トレーニングデータセット14の少なくとも一部が生成される。
【0043】
ラベル付けは、原則として、少なくとも部分的に手動で実行されてよい。しかし、コントロールシステム2が、少なくとも部分的に、特に主にまたは完全に、アブレーション療法1および/または1つもしくは複数のアブレーションイベント9の前後のトレーニングデータベース15の心電図データ8から電気的バイオマーカ7を導出することが好ましい。アブレーション療法1の後に、心電図データ8の変化を既に包含しているデータベースから電気的バイオマーカ7を自動的に導出することによって、教師なし学習のための効率的なアプローチが可能となる。
【0044】
好ましい実施形態では、潜在的なアブレーション療法1は、種々異なるアブレーション位置10を伴う少なくとも2つの潜在的なアブレーションイベント9を含んでいる。次いで、トレーニングステップ13において、コントロールシステム2は、1つの潜在的なアブレーションイベント9の適用の後に電気的バイオマーカ7の予測される変化を導出するように第1のモデル17をトレーニングし、かつ/または潜在的なアブレーション療法の適用の後に電気的バイオマーカ7の予測される変化を導出するように第2のモデル18をトレーニングする。いくつかのケースにおいて、完全なアブレーション療法1の結果は、単一のアブレーションイベント9の結果の合計とは異なっていてよい。他のケースにおいて、単一のアブレーションイベント9が、アブレーション療法1の成功の源であってよい。したがって、個々のアブレーションイベント9およびアブレーション療法1に目を向けることによって、分析の改善をもたらすことができる。
【0045】
トレーニングが完全に自動的である必要はないことに留意されたい。トレーニングステップ13ひいてはトレーニングされた機械学習モデル4は、自動的にトレーニングするステップと、手動で微調整するステップと、を備えていてよい。一般に、トレーニングされた機械学習モデル4は、トレーニングされた機械学習モデル4およびさらに手動で導出されたモデルを備えているモデルの一部であってもよい。
【0046】
提案された方法は、トレーニングされた機械学習モデル4をトレーニングするためのコスト関数の効果的な定義を可能にする。これは、コスト関数が多くの種々異なるアーキテクチャと共に使用可能であることから有利である。1つの好ましい実施形態では、機械学習の背後にあるアーキテクチャ自体が、トレーニングステップ13の間、導出され、かつ/または変更される。トレーニングステップ13は、ニューラルアーキテクチャ検索を含んでいてよい、かつ/またはガイド付きハイパーパラメータ調整または自動化されたハイパーパラメータ調整を使用してよい。
【0047】
第1のモデル17および第2のモデル18のより速いトレーニングのために、一般的なモデルがトレーニングされてよく、第1のモデル17および第2のモデル18は、一般的なモデルからの転移学習によってトレーニングされてよい。
【0048】
ここで、好ましくは、分析ステップ3において、コントロールシステム2は、入力データ5に第1のモデル17および第2のモデル18を適用して、電気的バイオマーカ7の予測される変化を導出する。好ましくは、分析ステップ3において、コントロールシステム2は、1つまたは複数の潜在的なアブレーションイベント9の後、かつ潜在的なアブレーション療法1の後に、電気的バイオマーカ7の予測される部分変化を導出するために、電気的バイオマーカ7の種々異なる部分集合に、第1のモデル17および第2のモデル18を適用する。次いで、コントロールシステム2は、電気的バイオマーカ7の予測される部分変化から、予測される変化を導出することができる。
【0049】
トレーニングデータセット14に関して、トレーニングデータセット14におけるアブレーション療法1は、主に少なくとも1つのフォーカルソースアブレーションイベントを備えていてよい。好ましくは、トレーニングデータセット14は、主にフォーカルソースアブレーションイベントを含んでいるアブレーション療法1を備えていてよい。フォーカルソースアブレーションイベントとは、フォーカルソースを識別するために、アブレーション療法1の前に、フォーカルソースのマッピングまたは他の決定が行われており、少なくとも1つのフォーカルソースがアブレーションされるアブレーションイベント9である。それにもかかわらず、提案された方法の利点は、マッピングが常に必要ではないこと、またはほとんど不要ですらあることである。また、トレーニングデータセット14が、マッピングから導出されたフォーカルソースアブレーションイベントを備えている場合であっても、トレーニングデータセット14におけるマッピングについての実際の情報を使用する必要はない。
【0050】
この方法は、コントロールシステム2がアルゴリズムを心電図データ8に適用して、心電図データ8から電気的バイオマーカ7の少なくとも一部を自動的に導出する導出ステップを備えていてよい。好ましくは、この導出ステップにおいて、コントロールシステム2は、1つまたは複数の電気的バイオマーカ7を導出するために、1つまたは複数の非機械学習アルゴリズムを心電図データ8に適用する。付加的または択一的に、この導出ステップにおいて、コントロールシステム2は、1つまたは複数の電気的バイオマーカ7を導出するために、1つまたは複数の二次機械学習モデルを心電図データ8に適用してよい。
【0051】
ここで、好ましくは、トレーニングのために、さらにこの導出ステップにおいて、電気的バイオマーカ7を導出するために、同一のアルゴリズムまたは同一のアーキテクチャが使用される。
【0052】
二次機械学習モデルは、任意の適切なアーキテクチャに基づいていてよく、好ましくは畳み込みネットワークまたはオートエンコーダに基づいていてよい。1つまたは複数の二次機械学習モデルを機械学習モデル4に含め、これらのモデルを共に適用することおよび/またはトレーニングすることも可能である。例えば、特徴抽出層が知られている。
【0053】
電気的バイオマーカ7は、心臓周期長、心電図モルフォロジ分類、信号振幅、心臓リズム分類、ピークタイミング値、特にRピークタイミング値、ピーク変動性、特にRピーク変動性、または心拍間、特に連続した心拍間の定量的変化、例えば平均二乗誤差値のうちの少なくとも1つを備えていてよい。付加的または択一的に、入力データ5は、患者データ、好ましくは、年齢、性別、危険因子ならびに/または生体バイオマーカ、好ましくは血圧データを表すバイオマーカおよび/または血液測定されたバイオマーカのうちの少なくとも1つを備えていてよい。
【0054】
心臓周期長を、R-R間隔の測定および/または周波数分析から導出することができる。モルフォロジを、スコア、T-T電圧上昇のような値、QRSテンプレートとの比較などによって識別することができる。標準化された学習機構が関連している。振幅および出力を、平均値、ピーク値などによって表すことができる。リズム分類は、規則性スコアおよび/または周期長の標準偏差を含んでいてよい。
【0055】
非電気的バイオマーカは、予測の結果を解釈するために機械学習機構に含まれていてよい。非電気的バイオマーカは、電気的バイオマーカ7と混合されてよい、または例えば出力層にのみ含まれていてよい。非電気的バイオマーカを、導出ステップにおいて使用することもできる。
【0056】
ここで、好ましくは、トレーニングされた機械学習モデル4、特に第1のモデル17は、トレーニングデータセット14としてトレーニングデータベース15のアブレーション療法1の最後のアブレーションイベント9を主に使用することによって、またはアブレーション療法1全体にわたったアブレーションイベント9を使用することによって、トレーニングされる。ここで、「主に」という用語の定義に関して上述したように、トレーニングデータセット14に対して顕著な悪影響を及ぼすことなく、最後のアブレーションイベント9ではなかった多数のアブレーションイベント9をトレーニングに含めることが可能であろう。
【0057】
図3には、第1のモデル17および第2のモデル18の可能な適用が示されている。最初に、第1のモデル17を使用して、アブレーションイベント9のバイオマーカ7の変化を予測し、その後、第1のモデル17および第2のモデル18を使用して、アブレーション療法1を締めくくる第2のアブレーションイベント9の後のバイオマーカ7の変化を予測する。
【0058】
提案された方法は、アブレーション療法分類ステップを備えていてよく、このアブレーション療法分類ステップにおいて、コントロールシステム2が、1つもしくは複数の潜在的なアブレーションイベント9および/または潜在的なアブレーション療法1の分類を決定し、特に出力データ6から、潜在的なアブレーション療法1を適用することによって、患者Pの成功した治療の確率に関する成功スコアを決定することによって決定する。好ましくは、この方法はアブレーション療法決定ステップを備えていてよく、このアブレーション療法決定ステップにおいて、コントロールシステム2が、少なくとも2つの潜在的なアブレーションイベント9および/または少なくとも2つの潜在的なアブレーション療法1の分類を、出力データ6に基づいて決定し、かつ/またはアブレーション療法決定ステップにおいて、コントロールシステム2が、最適化されたアブレーション療法1を、出力データ6に基づいて決定する。
【0059】
潜在的なアブレーションイベント9の成功は、潜在的なアブレーション療法1の成功とは異なって分類され得る。特に、コントロールシステム2または医師は、種々異なる電気的バイオマーカを対象とする潜在的なアブレーションイベント9を追加することによって、潜在的なアブレーション療法を設計してよい。提案された方法は、潜在的なアブレーションイベント9を、潜在的なアブレーションイベント9の予め定義されたクラスに分類するステップを備えていてよい。次いで、これらの予め定義されたクラスを、1つまたは複数の電気的バイオマーカ7に関する予め定義された結果のグループの1つを有するクラスとして定義することができる。場合によっては完全な潜在的なアブレーション療法1の文脈を伴わなくても、単一の潜在的なアブレーションイベント9の結果を判断することが可能であることは、提案された方法の利点の1つである。
【0060】
コントロールシステム2は、特に手術中に、好ましくは患者Pのオンライン測定から心電図データ8を受け取り、潜在的なアブレーション療法1の分類を出力してよい。好ましくは、潜在的なアブレーション療法1は、手術中に、潜在的なアブレーション位置10において、または潜在的なアブレーション位置10の近くで、心電図データ8を測定することによって少なくとも部分的に定義される。このようにして、手術中にアブレーション療法1を識別することおよび/または検証することが可能になる。特に、アブレーション療法1における少なくとも1つの潜在的なアブレーションイベント9を含めることまたは除外することが可能になる。
【0061】
コントロールシステム2は、手術システム19から心電図データ8を受け取ってよい。
【0062】
別の教示によれば、トレーニングされた機械学習モデル4が格納されているコンピュータ可読媒体が提案される。上述のすべての説明が参照される。コンピュータ可読媒体上のトレーニングされた機械学習モデル4は、トレーニングステップ13において導出されている。
【0063】
別の教示によれば、提案された方法を実施するように構成されているコントロールシステム2が提案される。上述のすべての説明が参照される。
【0064】
別の教示によれば、コントロールシステム2に接続されている、またはコントロールシステム2の一部を形成する手術システム19が提案される。コントロールシステム2は、提案された方法を実施するように構成されている。上述のすべての説明が参照される。手術システム19は、手術中に使用されるように適合させられており、手術中にオンライン心電図データ8を受け取るように適合させられており、かつアブレーション療法分類ステップおよび/またはアブレーション療法決定ステップの結果を表示するように適合させられている。手術システムは、オンライン心電図データ8を測定するための電極12に接続されていてよい。これは、心電図データ8を処理するためのハードウェア、ディスプレイおよび/またはインプットユニットを含んでいてよい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】