(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】プラダー・ウィリ症候群の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4985 20060101AFI20240214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240214BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240214BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240214BHJP
A61P 5/38 20060101ALI20240214BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 38/27 20060101ALI20240214BHJP
A61P 5/06 20060101ALI20240214BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240214BHJP
C07D 487/10 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P1/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P21/00
A61P5/00
A61P15/00
A61P25/20
A61P19/00
A61P17/00
A61P1/14
A61P25/28
A61P25/22
A61P25/00
A61P25/18
A61P5/38
A61K45/00
A61K38/27
A61P5/06
C07D487/04 140
C07D487/10 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548798
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 NZ2022050017
(87)【国際公開番号】W WO2022173315
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516024567
【氏名又は名称】ニューレン ファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】グラス,ローレンス アーウィン
(72)【発明者】
【氏名】コグラム,パトリシア
【テーマコード(参考)】
4C050
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA04
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC08
4C050DD10
4C050EE02
4C050FF02
4C050GG03
4C050HH01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA44
4C084CA18
4C084CA56
4C084DB22
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA051
4C084ZA052
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA181
4C084ZA182
4C084ZA291
4C084ZA292
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZC011
4C084ZC012
4C084ZC081
4C084ZC082
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC541
4C084ZC542
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA05
4C086ZA15
4C086ZA18
4C086ZA29
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZC01
4C086ZC35
4C086ZC54
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、一般に、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグ、および式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの治療的有効量を被験体に投与することを含む、被験体のプラダー・ウィリ症候群(PWS)を治療するための方法、および本明細書に記載の薬剤の製造におけるこれらの使用に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの治療有効量を被験体に投与することを含む、被験体のプラダー・ウィリ症候群の治療方法。
【化1】
(式中、
X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
ここで、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、またはハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
またはR
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
またはR
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
ただし、R
1がCH
3であり、R
2が水素であり、R
3が水素であり、R
4が水素である場合、R
5はベンジルではなく、R
1が水素である場合、R
2およびR
3の少なくとも一方は水素ではない。)
【請求項2】
前記R
1は、水素、-CH
3および-CH
2CHCH
2からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記R
2は、水素および-CH
3からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記R
3は、水素および-CH
3からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記X
1はNHである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記X
2は、CH
2およびSからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記R
4およびR
5は、それぞれ、水素であるか、または、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
3-CH
2-および-CH
2-(CH
2)
2-CH
2-からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記式Iの化合物は、次からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項9】
前記式Iの化合物は次の式である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【化5】
【請求項10】
プラダー・ウィリ症候群の1つ以上の症状の可能性または重症度を予防または軽減することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記プラダー・ウィリ症候群は、遺伝子検査、血清中のIGF-1、総IGF-1、遊離IGF-1、(IGFBPと結合)IGF-1、脳脊髄液(CSF)中のIGF-1、総IGF-1、遊離IGF-1、血清中のIGFBP、血清中のIGFBP-1、-2、-3、-4、-5、-6、CSF中のIGFBP、IGFBP-1、-2、-3、-4、-5、-6、血糖値、血中脂質(HDL、LDL、VLDL、トリグリセリド)、インスリン抵抗性の恒常性モデル評価(HOMA-IR)、ボディマス指数(BMI)、および体脂肪評価(BFA)からなる群から選択される1つ以上の臨床検査を用いて評価される、請求項1~10に記載の方法。
【請求項12】
症状の重症度は、臨床試験に使用される過食症アンケート(HQ-CT)、臨床全般重症度(CGI-S)、変化の臨床全般印象(CGI-I)、変化の介護者全般印象(CaGI-I)、異常行動チェックリスト(ABC)およびABCサブ尺度、対人応答性尺度、反復行動尺度-改訂版(RBS-R)、PWS不安および苦悩アンケート(PADQ)、腸内細菌叢の組成(16Sまたはその他のシーケンシング方法)、小児イェール・ブラウン強迫性尺度(CY-BOCS)、およびモンテフィオーレ・アインシュタイン硬直尺度-改訂版PWS(MERS-R-PWS)からなる群から選択される1つ以上の臨床検査を用いて評価される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
プラダー・ウィリ症候群に関連する症状または所見は、早期発育不全、過剰食欲(過食症)、肥満、2型糖尿病、血中インスリン上昇、メタボリックシンドローム、多発性内分泌異常、筋緊張低下、性腺機能低下、睡眠障害、睡眠時無呼吸、言語障害、疼痛感受性低下、骨健康障害、斜視、色素脱失、胃腸の運動性低下、側弯症、副腎機能不全、発作、甲状腺機能低下症、低血糖、性腺刺激性機能低下症、特徴的な顔貌、軽度から中等度の知的障害および学習障害、認知障害、神経行動障害、知的障害、認知硬直、不安の高まり、激しい癇癪、強迫行為、自傷行為、精神疾患、自閉症の症候、および成長ホルモン欠乏症(GHD)からなる群から選択される、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記式I、II、IIIまたはIVの化合物は治療剤と組み合わせて投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療剤は、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ヒト成長ホルモン、組換えヒトIGF-1(rhIGF-1)、IGF-1、IGF-2、任意のIGF結合タンパク質(IGFBP)、IGFBP-3、インスリン、任意のスタチン、任意の食欲抑制剤、トランスフォーミング成長因子-β1、アクチビン、神経成長因子、成長ホルモン結合タンパク質、塩基性線維芽細胞成長因子、酸性線維芽細胞成長因子、hst/Kfgk遺伝子産物、FGF-3、FGF-4、FGF-6、ケラチノサイト成長因子、およびロゲン誘導増殖因子、int-2、線維芽細胞増殖因子、相同因子-1(FHF-1)、FHF-2、FHF-3、FHF-4、ケラチノサイト成長因子2、グリア活性化因子、FGF-10、FGF-16、毛様体神経栄養因子、脳誘導神経成長因子、ニューロトロフィン3、ニューロトロフィン4、骨形成タンパク質2(BMP-2)、グリア細胞株由来神経栄養因子、活動依存性神経栄養因子、サイトカイン白血病阻害因子、オンコスタチンM、インターロイキン、a-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、コンセンサスインターフェロン、TNF-a、クロメチアゾール;キヌレン酸、セマックス、タクロリムス、L-トレオ-1-フェニル-2-デカノイルアミノ3、3-モルホリノ-1-プロパノール、副腎皮質刺激ピン-(4-9)類似体(4-9)(ORG2766)、ジゾルシピン[MK-801]、セレギリン、NPS1506、GV1505260、MK-801、GV150526、2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイルベンゾ(f)キノキサリン(NBQX)、LY303070、LY300164、および抗MAdCAM-1抗体MECA-367からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記治療剤は、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物は経口投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記式I、II、IIIまたはIVの化合物は、約0.001mg/kg~約600mg/kgの用量で投与される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記被験体は哺乳動物である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記被験体はヒトである、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記式I、II、III若しくはIVの化合物は、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記薬学的に許容される賦形剤は、結合剤、担体、添加剤、アジュバント、マイクロエマルジョン、粗エマルジョン、および液晶からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記医薬組成物は、経口溶液、経口懸濁液、または経口溶液または経口懸濁液を調製するための粉末として製剤化される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記医薬組成物は、錠剤またはカプセルとして製剤化される、請求項21または22に記載の方法
【請求項25】
プラダー・ウィリ症候群を治療するための薬剤の製造における、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの使用。
【化6】
(式中、
X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
ここで、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、またはハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
またはR
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
またはR
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
ただし、R
1がCH
3であり、R
2が水素であり、R
3が水素であり、R
4が水素である場合、R
5はベンジルではなく、R
1が水素である場合、R
2およびR
3の少なくとも一方は水素ではない。)
【請求項26】
プラダー・ウィリ症候群を治療するための、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグ。
【化7】
(式中、
X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
ここで、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、またはハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
またはR
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
またはR
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
ただし、R
1がCH
3であり、R
2が水素であり、R
3が水素であり、R
4が水素である場合、R
5はベンジルではなく、R
1が水素である場合、R
2およびR
3の少なくとも一方は水素ではない。)
【請求項27】
前記プラダー・ウィリ症候群に罹患した被験体を治療するための、式I、II、IIIまたはIVのいずれかの化合物の使用。
【請求項28】
前記被験体はヒトである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記被験体はヒトである、請求項25~27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
前記化合物は、cG-2-アリルP(式II)、環式シクロペンチル-G-2-MeP(式III)、または環式シクロヘキシル-G-2-MeP(式IV)である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物は水溶液中で製剤化される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物は、cG-2-アリルP(式II)、環式シクロペンチル-G-2-MeP(式III)、または環式シクロヘキシル-G-2-MeP(式IV)である、請求項25~27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
前記化合物は水溶液中で製剤化される、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記化合物の用量は、約0.01mg/kg体重(mg/kg)~約1000mg/kg、約0.1mg/kg~約500mg/kg、約0.1mg/kg~約200mg/kg、約0.01、0.1、1、10、20、50、75、100、500、1000、または5000mg/kgである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、プラダー・ウィリ症候群の薬物治療の分野に関する。より具体的には、本開示は、プラダー・ウィリ症候群の治療における二環式化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラダー・ウィリ症候群(PWS)は、15番染色体の父系コピー上の15q11~q13領域の機能喪失によって引き起こされる稀な遺伝疾患である。症例の約70%は15番染色体の父系コピーの一部の欠失に起因し、約25%は15番染色体の母系コピーの重複(片親二染色体UPD)に起因する。米国では、PWSの出生発生率は1:10,000~1:30,000と推定されており、存命者数は約10,000~20,000人と推定されている。PWSは男性と女性の両方に影響を与え、あらゆる民族的・人種的背景を持つ個人に影響を与える可能性がある(Bohonowychら、2019年)。
【0003】
PWSは初期の発育不全とそれに続く過剰食欲(過食症)の発症を特徴とし、しばしば肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドロームの原因となる。その他の特徴としては、多発性内分泌異常、筋緊張低下、性腺機能低下、睡眠障害、困難な神経行動表現型、自傷行為、軽度から中等度の知的障害および学習障害、および特徴的な顔貌が挙げられる(Bohonowychら、2019年)。
【発明の概要】
【0004】
プラダー・ウィリ症候群に対する治療は現在限られている。ヒト成長ホルモンは筋肉の緊張を改善し、体脂肪を減らすことができる。テストステロンは男性の治療に使用でき、エストロゲンとプロゲステロンは女性の治療に使用して、骨粗鬆症のリスクを軽減できる。睡眠時無呼吸やその他の睡眠障害は、治療によって行動の問題を改善することができる。行動療法は行動上の問題をコントロールするのに役立つ。
【0005】
いくつかの薬物が提供される可能性がある。理学療法、言語療法、発達療法は、社会的スキルや対人スキルの向上に役立つ。PWSに対する治療は現在限られており、これまでのところ、成長ホルモン療法による内分泌異常の治療に集中してきた(Bohonowychら、2019年)。
【0006】
したがって、プラダー・ウィリ症候群および/またはプラダー・ウィリ症候群に関連する症状を治療するための代替的かつ効果的な治療法が依然として必要である。
【0007】
本開示の主題は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグが、プラダー・ウィリ症候群および/またはプラダー・ウィリ症候群に関連する症状を治療することができるという驚くべき発見に部分的に基づく。
【0008】
したがって、第1態様では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの治療有効量を被験体に投与することを含む、被験体のプラダー・ウィリ症候群の治療方法が提供される。
【化1】
(式中、X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、またはハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択される1種以上の置換基で置換されており、ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、または、R
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、または、R
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、ただし、R
1がCH
3であり、R
2が水素であり、R
3が水素であり、R
4が水素である場合、R
5はベンジルではなく、R
1が水素である場合、R
2およびR
3の少なくとも一方は水素ではない。)
【0009】
別の態様では、プラダー・ウィリ症候群を治療するための薬剤の製造における、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの使用が提供される。
【化2】
(式中、X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、または、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、または、R
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、または、R
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、ただし、R
1がCH
3であり、R
2が水素であり、R
3が水素であり、R
4が水素である場合、R
5はベンジルではなく、R
1が水素である場合、R
2およびR
3の少なくとも一方は水素ではない。)
【0010】
別の態様では、プラードウィリー症候群を治療するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグが提供される。
【化3】
(式中、X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、X
2は、CH
2、NR’、O、およびSからなる群から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、または、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、または、R
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、または、R
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、ただし、R
1がCH
3であり、R
2が水素であり、R
3が水素であり、R
4が水素である場合、R
5はベンジルではなく、R
1が水素である場合、R
2およびR
3の少なくとも一方は水素ではない。)
【0011】
化合物、医薬組成物、方法、または使用の他の態様、実施形態、および例が本明細書でさらに説明されることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示の様々な実施形態が利用され得ることが理解されるが、以下では、本開示の複数の例について、以下の添付の図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、cG-2-アリルP(「NNZ2591」ともいう)の化学構造を示す。
【
図2】
図2は、Magel2-ヌルマウスにおいて、野生型マウスと比較して、cG-2-アリルPまたはビークルが活動低下(移動距離)に及ぼす影響についてのオープンフィールド研究結果のグラフを示す。
【
図3】
図3は、Magel2-ヌルマウスにおいて、野生型マウスと比較して、cG-2-アリルPまたはビークルが活動低下(活動時間)に及ぼす影響についてのオープンフィールド研究結果のグラフを示す。
【
図4】
図4は、Magel2-ヌルマウスにおいて、野生型マウスと比較して、cG-2-アリルPまたはビークルが日常生活(巣作り)に及ぼす影響の研究結果のグラフを示す。
【
図5】
図5は、Magel-ヌルマウスにおいて、野生型マウスと比較して、cG-2-アリルPまたはビークルが社会的嗜好に及ぼす影響についての研究結果のグラウを示す。
【
図6】
図6は、Magel2-ヌルマウスにおいて、野生型マウスを比較して、cG-2-アリルPまたはビークルが社会的交流に及ぼす影響についての研究結果のグラフを示す。
【
図7】
図7は、Magel2-ヌルマウスにおいて、野生型マウスと比較して、cG-2-アリルPまたはビークルが認知(ノベルオブジェクト探索)に及ぼす影響の研究結果のグラフを示す。
【
図8】
図8は、Magel2-ヌルマウスにおいて、野生型マウスと比較して、cG-2-アリルPまたはビークルが不安(高架十字迷路:オープンアームで過ごした時間)に及ぼす影響についての研究結果のグラフを示す。
【
図9】
図9は、Magel2-ヌルマウスにおいて、野生型マウスと比較して、cG-2-アリルPまたはビークルが脂肪量に及ぼす影響についての研究結果のグラフを示す。
【
図10】
図10は、Magel2ヌルマウスにおいて、野生型マウスと比較して、cG-2-アリルPまたはビークルが循環IGF-1レベルに及ぼす影響についての研究結果のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解するものと同一の意味を有するものとみなされる(例えば、化学、生化学、医薬化学、微生物学等)。
【0014】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語、例えば「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」を意味するものとして理解され、Aおよび/またはBは、オプションi)A、ii)B、またはiii)AおよびBを含むなど、2つの意味またはいずれかの意味を明確にサポートするものとして理解されるべきである。
【0015】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「約」という用語は、指定された値の+/-20%、通常は+/-10%、通常は+/-5%を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「1つ(a)」、「1(an)」、および「前記(the)」は、文脈によって明示的に別段に示されない限り、数形および複数形の両方の態様を含む。
【0017】
明確にするために、本明細書で個別の実施形態の文脈で説明された、いくつかの特徴も、単一の実施形態では組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。対照的に、単一の実施形態の文脈で説明された様々な特徴は、簡潔さのために、単独で提供されてもよいし、任意のサブ組合せで提供されてもよい。
【0018】
本明細書全体を通じて、本発明の様々な態様および構成要素は、範囲形式で表されてもよい。範囲形式は便宜のために含まれるものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限と解釈すべきではない。したがって、特に指摘されない限り、範囲の記述は、すべての可能なサブ範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているものとみなされるべきである。例えば、1~5のような範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~5、3~5などの特別に開示されたサブ範囲を有するものとみなすべきである。整数が必要であるか、文脈から暗示されている場合を除いて、1、2、3、4、5、5.5、6のように、列挙された範囲内の個々の数字と部分的な数字が含まれている。これは、開示されている範囲の幅にかかわらず適用される。特定の値が必要な場合は、明細書にその旨が記載される。
【0019】
本明細書全体を通して、「含む」または「含んでいる」または「含んだ」のような単語の変形は、要素、整数、ステップ、または要素、整数、ステップのグループを含むことを示唆するものとして理解されるが、他の要素、整数、ステップ、または要素、整数、ステップのグループを除外するものではない。
【0020】
「からなる」という語句は、列挙された要素を意味し、他の要素を意味しない。
【0021】
「実質的に~からなる」という語句は、列挙された要素とその等価物を意味する。
【0022】
多くの先行技術文献がここに引用されているにも関わらず、引用は、これらの文献のいずれかが米国、オーストラリアまたはその他の国における当業者の公知技術の一部を構成することを認めるものではないことを明確に理解されるべきである。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載された方法および材料と類似または同等の方法および材料を使用することができるが、以下に適切な方法および材料を記載する。矛盾が発生した場合は、この仕様(定義を含む)が優先される。加えて、材料、方法および実施例は単に例示的なものであって、限定的なものではない。
【0024】
本明細書で使用される場合、「被験体」という用語は、疾患または病症に影響されやすい任意の生物を指す。被験体は、例えば、哺乳動物、霊長類、家畜(例えば、羊、牛、馬、豚)、コンパニオンアニマル(例えば、犬、猫)、または実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)であってもよい。一実施形態では、被験体は哺乳動物である。一例では、被験体はヒトである。一実施形態では、この疾患または病症はプラダー・ウィリ症候群である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、特定の障害または病症に関連する1つ以上の症状を改善、緩和、軽減または解消することを含む。一実施形態では、この疾患または病症はプラダー・ウィリ症候群である。例えば、本明細書で使用される場合、「プラダー・ウィリ症候群を治療する」という語句は、プラダー・ウィリ症候群に関連する1つ以上の症状を改善、緩和、軽減または解消することを含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、特定の障害または病症の予防、または特定の障害または病症に関連する1つ以上の症状の予防を含む。一実施形態では、1つ以上の症状は、プラダー・ウィリ症候群に関連する1つ以上の症状である。例えば、本明細書で使用される場合、「プラダー・ウィリ症候群を予防する」という語句は、プラダー・ウィリ症候群に関連する1つ以上の症状の発症または持続を予防することを指す。いくつかの実施形態では、「プラダー・ウィリ症候群を予防する」という語句は、プラダー・ウィリ症候群の1つ以上の症状の進行を遅らせるかまたは停止することを指す。予防は絶対的なもの(特定の症状が現れないなど)であったり、特定の個人にのみ有効であったり、ある程度有効であったり、限られた期間だけ有効であったりすることがある。
【0027】
本開示は、式Iの化合物、その薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体、およびプロドラッグに関する。
【0028】
塩は、適切な酸性基または塩基性基を含む式Iの化合物の実施形態の場合に形成され得る。式Iの化合物の好適な塩としては、有機酸または無機酸または塩基と生成した塩が含まれる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」または類似の用語は、薬学的に許容される有機塩または無機塩を指す。本明細書における「塩」への言及は、「薬学的に許容される塩」を含むことができることが理解される。例示的な酸付加塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トシル酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレンビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸))塩が含まれるが、これらに限定されない。塩基付加塩の例としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばカリウムおよびナトリウムの塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウムの塩、および有機塩基との塩、例えばジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルコアミン、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ-、ジ-またはトリ-低級アルキルアミン、例えばエチル-、tert-ブチル-、ジエチル-、ジイソプロピル-、トリエチル-、トリブチル-、ジメチルプロピルアミン-、または、モノ、ジまたはトリヒドロキシル低級アルキルアミン、例えばモノ、ジまたはトリエタノールアミンなどが含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンのような他の分子を含んでもよい。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化させる任意の有機または無機部分であってもよい。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造中に1つまたは複数の荷電原子を有していてもよい。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である場合は、複数の対イオンを有することができる。したがって、薬学的に許容される塩は、1つまたは複数の荷電原子および/または1つまたは複数の対イオンを有することができる。また、非薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される塩を製造するための中間体として、または貯蔵または輸送のために使用され得るので、本開示の範囲内に含まれることが理解されるべきである。
【0030】
有機および/または医薬化学の当業者は、多くの有機化合物が溶媒と複合体を形成し、溶媒中で反応したり、析出したり、結晶化したりすることができることを理解する。これらの複合体は「溶媒和物」と呼ばれる。例えば、水との複合体は「水和物」と呼ばれる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される溶媒和物」または「溶媒和物」という語句は、1つまたは複数の溶媒分子と本開示の化合物との会合を意味する。薬学的に許容される溶媒和物を形成する溶媒の例としては、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸およびエタノールアミンが含まれるが、これらに限定されない。本開示は、水和物を含む式Iの化合物およびその塩の溶媒化形態を含むことが理解されるべきである。
【0031】
本開示の化合物は、キラル(不斉)中心を含んでもよく、または分子全体がキラルであってもよい。個々の立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマー)およびそれらの混合物は、本開示の範囲内である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「立体異性体」という用語は、空間における原子の3次元配向が異なるにもかかわらず、同じ分子式および結合原子配列(原子結合性)を有する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「エナンチオマー」という用語は、互いに重ね合わせることができない鏡像であるという点で立体異性体である2つの化合物を指す。関連する立体中心は、(R)配置-または(S)配置で示される場合がある。
【0033】
有機および/または医薬化学の当業者は、式Iの化合物およびその塩が、非晶質形態または結晶形態で存在し得ることを理解するであろう。本開示は、式Iの化合物およびその塩のすべての形態および多形を含むことが理解されるべきである。
【0034】
本明細書で使用される場合、「保護基」という用語は、有機合成/医薬化学において一般的に関連する意味を有し、すなわち、保護されていない別の反応部位で化学反応が選択的に進行することを可能にする多官能化合物の1つ以上の反応部位を選択的にブロックする化学基であって、選択的反応の完了後に容易に除去されることを可能にする化学基である。
【0035】
当業者が理解するように、式Iの化合物、またはその塩、溶媒和物若しくは立体異性体は、治療有効量で投与される。本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、治療被験体の障害または病症の1つ以上の症状をある程度緩和または予防するのに十分な量で投与される化合物を指す。その結果、疾患または病症の徴候、症状または原因の軽減および/または緩和、または生体系の他の望ましい変化が得られる。一実施形態では、「治療有効量」という用語は、治療結果を提供するために、プラダー・ウィリ症候群に関連する1つ以上の症状を治療および/または予防するのに十分な量で投与される式Iの化合物またはその塩を指す。
【0036】
暗黙の水素原子(ピロール環上に存在する水素原子など)は、明確にするために式から省略されているが、存在することは当業者には理解される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖(すなわち、線形)および分岐炭化水素基の両方を包含する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、s-ブチル、ペンチル、ヘキシル基が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子(すなわち、C1~6アルキル)である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」という用語は、上記または本明細書で個別に記載されたいずれかの例にしたがって、1つ以上の「ハロゲン」基で置換された「アルキル」基を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖状および分岐状の両方の不飽和炭化水素基を指す。アルケニル基の例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニル基が含まれるが、これらに限定されない。一例では、アルケニル基は、2~6個の炭素原子(すなわち、C2~6アルケニル)である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ハロアルケニル」という用語は、上記または本明細書で個別に説明される実施形態にしたがって、1つ以上の「ハロゲン」基で置換された「アルケニル」基を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖状および分岐状の両方の不飽和炭化水素基を指す。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンタニル、およびヘキシニル基が含まれるが、これらに限定されない。一例では、アルキニル基は、2~6個の炭素原子(すなわち、C2~6アルキニル)である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「カルボシクリル(carbocyclyl)」、「炭素環」、「炭素環式」または類似の用語は、炭素原子の芳香族または非芳香族環式基を指す。カルボシクリル基は、例えば、単環式または多環式(すなわち、二環式、三環式)であってもよい。多環式カルボシクリル基は縮合環を含んでいてもよい。一例では、カルボシクリル基は、3~10個の炭素原子(すなわち、C3~10カルボシクリル)である。一例では、カルボシクリル基は、3~7個の炭素原子(すなわち、C3~7カルボシクリル)である。単環式非芳香族カルボシクリル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル基が含まれる。単環式飽和カルボシクリル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基が含まれる。芳香族カルボシクリル基には、フェニルおよびナフタレニルが含まれる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」という用語は、カルボシクリルに類似した芳香族または非芳香族環基を指すが、1ないし3個の炭素原子が窒素、酸素または硫黄から選択される1つまたは複数のヘテロ原子で置換されている。ヘテロシクリル基は、例えば、単環式または多環式(例えば、二環式)であってもよい。多環式ヘテロシクリルは、例えば縮合環を含んでもよい。二環式ヘテロシクリル基では、各環に1つまたは複数のヘテロ原子が存在してもよいし、1つの環にのみヘテロ原子が存在してもよい。ヘテロ原子は、窒素、酸素または硫黄であってもよい。適切な窒素原子を含むヘテロシクリル基は、対応するN-オキシドを含む。一例では、ヘテロシクリル基は3~10個の原子(すなわち、3~10員ヘテロシクリル)である。一例では、ヘテロシクリル基は、3~7個の原子(すなわち、3~7員ヘテロシクリル)である。単環式非芳香族ヘテロシクリル基の例としては、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニルおよびアゼパニルが含まれる。一方の環が非芳香族である二環式ヘテロシクリル基としては、ジヒドロベンゾフラニル、インダニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリル、およびベンゾアゼパニルが含まれる。単環式芳香族ヘテロシクリル基(単環式ヘテロアリール基とも呼ばれる)の例としては、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリジニル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、トリアゾリル、トリアジニル、ピリダジル、イソチアゾリル、イソオキサゾリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、およびピリミジニルが含まれる。二環式芳香族ヘテロシクリル基(二環式ヘテロアリール基とも呼ばれる)の例としては、キノキサリニル、キナゾリニル、ピリドピラジニル、ベンゾオキサゾリジニル、ベンゾチオフェニル、ベンズイミダゾリル、ナフチリジニル、キノリニル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリジニル[4,5-b]ピリジル、ピリドピリミジニル、イソキノリニル、およびベンゾヒドロキシオキサゾールが含まれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「飽和」という用語は、主鎖原子のすべての利用可能な原子価結合が他の原子に結合している基を指す。飽和基の代表例としては、ブチル、シクロヘキシル、ピペリジン基などが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、炭素または適切なヘテロ原子から1つまたは複数の水素または他の原子が除去され、さらなる基(すなわち、置換基)で置換された基を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「非置換」という用語は、さらなる基が連結されていないか、これによって置換されている基を指す。
【0048】
本明細書で引用または参照されているすべての文書、および本明細書で引用または参照されている文書で引用または参照されているすべての文書は、本明細書で言及されているすべての製品または参照により本明細書に組み込まれる任意の文書の製造業者の指示、説明、製品仕様書、および製品シートとともに、本明細書に全体として組み込まれている。
プラダー・ウィリ症候群
【0049】
最もよく見られる内分泌障害は成長ホルモン欠乏症(GHD)であり、報告によると40~100%の患者に発生する。GH-IGF-1軸の調節不全はPWSでは普遍的であると考えられており(Hekschら、2017年)、PWSのほぼ100%の人で血清IGF-1レベルが正常より低いことが報告されている。GHDの正確な病因やGH-IGF-1軸の乱れはまだ完全には明らかにされていない。GH-IGF-1調節不全の程度は、潜在的な遺伝的原因によってある程度変化するが、群内では有意な変動を示した。組換えヒト成長ホルモン(rhGH)はGHDの治療剤として承認されており、通常はGHレベルが正常以下であるかどうかにかかわらず、診断後すぐに処方される。rhGH治療を受けたPWS患者では、通常、末梢循環中のIGF-1レベルは、原発性GHDでPWS治療を受けていない小児よりもはるかに高い。Bakkerら(2015)は、血清IGF結合タンパク質-3(IGFBP3)と酸不安定サブユニット(ALS)も上昇することを発見し、大量のIGF-1がIGF-1/ALS/IGFBP3複合体に隔離されていることを示唆している。PWSが脳内での内因性IGF-1の発現および/またはバイオアベイラビリティーにどの程度影響を及ぼすかは不明である。PWSでは慢性神経炎症も報告されている(Krefftら、2020年)。また、インターロイキン(IL)-1βとIL-13レベルを有意に上昇させ、IL-1βレベルと精神病理学的行動の標準化された測定値との間に有意な正の相関関係が認められた。死後組織のトランスクリプトーム解析では、炎症に関連するミクログリア細胞の遺伝子が上方制御される一方、シナプス可塑性や神経新生に関連する遺伝子が下方制御された(Bochukovaら、2018年)。
【0050】
PWSは、罹患者とその家族の生活の質に重大な悪影響を与える一連の症状と関連している。PWSの初期臨床経過は、運動量の減少、嗜眠、摂食困難、発育不全を伴う乳児の筋緊張低下を特徴とする。PWSの定義的な特徴の1つは、時間の経過とともに食欲が変化し、幼児期以降のある時点で過食症(持続的で病的な過剰食欲)が出現することである。PWSを患った乳児は通常の空腹の兆候を示さず、多くの場合、経鼻胃管またはその他の補助手段による栄養補給が必要であるが、幼児では摂食が改善し、その後小児期に過食症に進行する。食物摂取を制限する厳しい環境管理を実施しなければ、PWSを患う青少年や成人は病的な肥満になる。PWSに関連する他の異常には、ホルモン欠乏症、低性腺刺激性性腺機能低下症、睡眠異常、疼痛感受性低下、骨健康障害、胃腸の運動性低下、および側弯症などが含まれる。中枢性副腎不全、発作、甲状腺機能低下症、および低血糖症などの発生頻度は、影響を受けていない群よりも高いが、すべての個体に存在するわけではない(Bohonowychら、2019年)。
【0051】
身体症状に加えて、知的障害(ID)や神経精神医学的問題がPWS患者全員にある程度存在する。PWS患者は、一般的に、認知硬直、不安の高まり、激しい癇癪、強迫行為、および自傷行為を示す。青少年や成人は精神疾患のリスクに曝されており、特にUPDによるPWS患者では、自閉症の症状が一般的である。過食症による行動には、食物を求める行動、食物の買いだめやあさり、不適切な食物の摂取、食物や食物を買うためのお金の盗み、食物拒否に伴う強い心理的ストレスや行動障害などが含まれる。行動上の問題と食物摂取量をコントロールできないことは、PWS患者の自立生活に対する大きな障害となっており、地域社会への参加、雇用、自立生活、社会活動の機会はこれらの問題によって大きく制約されている(Bohonowychら、2019年)。
治療方法
【0052】
本開示は、プラダー・ウィリ症候群の治療用の化合物の提供に関する。
【0053】
一態様では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグの治療有効量を被験体に投与することを含む、被験体のプラダー・ウィリ症候群の治療方法が提供される。
【化4】
(式中、
X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、-H、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
ここで、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環は、それぞれ、非置換、または、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
またはR
4とR
5は、一緒になって-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
またはR
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数である。)
【0054】
上記の態様のいくつかの実施形態では、ただし、R1がCH3であり、R2が水素であり、R3が水素であり、R4が水素である場合、R5はベンジルではなく、R1が水素である場合、R2およびR3の少なくとも一方は水素ではない。
【0055】
一実施形態では、治療方法は、15番染色体の異常に関連する1つ以上の症状の治療を提供する。一実施形態では、治療方法は、プラダー・ウィリ症候群に関連する1つ以上の症状の治療を提供する。
【0056】
症状の多くはプラダー・ウィリ症候群に関連している。身体症状の例としては、早期発育不全、過剰食欲(過食症)、肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、多発性内分泌異常、筋緊張低下、性腺機能低下、睡眠障害、睡眠時無呼吸、言語障害、疼痛感受性低下、骨健康障害、斜視、色素脱失、胃腸の運動性低下、側弯症、副腎機能不全、発作、甲状腺機能低下症、低血糖症、低性腺刺激性性腺機能低下症、および特徴的な顔貌が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
したがって、いくつかの実施形態では、上記式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグの治療有効量を被験体に投与することを含む、プラダー・ウィリ症候群に関連する症状または所見の治療方法であって、症状は、早期発育不全、過剰食欲(過食症)、肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、多発性内分泌異常、筋緊張低下、性腺機能低下、睡眠障害、睡眠時無呼吸、言語障害、疼痛感受性低下、骨健康障害、斜視、色素脱失、胃腸の運動性低下、側弯症、副腎機能不全、発作、甲状腺機能低下症、低血糖症、性腺刺激性腺機能低下、および特徴的な顔貌からなる群から選択される治療方法が提供される。一例では、プラダー・ウィリ症候群に関連する症状は過食症である。一例では、プラダー・ウィリ症候群に関連する症状は肥満である。一例では、プラダー・ウィリ症候群に関連する所見は血中インスリン上昇である。一例では、プラダー・ウィリ症候群に関連する症状は過食症である。
【0058】
身体症状に加えて、知的障害および神経精神医学的問題がプラダー・ウィリ症候群の症状として現れる場合がある。いくつかの実施形態では、知的障害および/または神経精神症状は、軽度から中等度の知的障害および学習障害、認知障害、神経行動障害、知的障害、認知硬直、不安の高まり、激しい癇癪、強迫行為、および自傷行為からなる群から選択される。青少年や成人には、精神疾患や自閉症の症状を発症するリスクがある。
【0059】
したがって、いくつかの実施形態では、上記式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの治療有効量を被験体に投与することを含む、被験体のプラダー・ウィリ症候群に関連する症状の治療方法であって、症状は軽度から中等度の知的障害および学習障害、認知障害、神経行動障害、知的障害、認知硬直、不安の高まり、激しい癇癪、強迫行為、自傷行為、精神疾患、および自閉症からなる群から選択される、方法を提供する。
【0060】
最もよく見られる内分泌障害は成長ホルモン欠乏症(GHD)であり、IGF-1の欠乏を引き起こす。プラダー・ウィリ症候群に関連する症状の一例はIGF-1の欠乏である。いくつかの実施形態では、上記式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグの治療有効量を被験体に投与することを含む、被験体のプラダー・ウィリ症候群に関連する症状の治療方法であって、症状はIGF-1の欠乏である、方法が提供される。
【0061】
さらなる態様では、プラダー・ウィリ症候群を治療する薬剤の製造における、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの使用が提供される。
【化5】
(式中、
X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、-H、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
ここで、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、またはハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
またはR
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
またはR
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数である。)
【0062】
上記の態様のいくつかの実施形態では、ただし、R1がCH3であり、R2が水素であり、R3が水素であり、R4が水素である場合、R5はベンジルではなく、R1が水素である場合、R2およびR3の少なくとも一方は水素ではない。
【0063】
さらなる態様では、プラダー・ウィリ症候群を治療するための式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグが提供される。
【化6】
(式中、
X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、-H、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
ここで、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、またはハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
またはR
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
またはR
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数である。)
【0064】
上記の態様のいくつかの実施形態では、ただし、R1がCH3であり、R2が水素であり、R3が水素であり、R4が水素である場合、R5はベンジルではなく、R1が水素である場合、R2およびR3の少なくとも一方は水素ではない。
【0065】
一態様は、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの治療有効量を被験体に投与することを含む、被験体のプラダー・ウィリ症候群の前述または後述のいずれかの態様の治療のための方法または使用である。
【化7】
(式中、
X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環、および3~10員複素環からなる群から選択され、
ここで、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、またはハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
またはR
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
またはR
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数である。)
【0066】
上記の態様のいくつかの実施形態では、ただし、R1がCH3であり、R2が水素であり、R3が水素であり、R4が水素である場合、R5はベンジルではなく、R1が水素である場合、2およびR3の少なくとも一方は水素ではない。
【0067】
一態様は、R1が水素、-CH3および-CH2CHCH2からなる群から選択される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0068】
一態様は、R2が水素および-CH3からなる群から選択される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0069】
一態様は、R3が水素および-CH3からなる群から選択される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0070】
一態様は、X1がNHである、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0071】
一態様は、X2がCH2およびSからなる群から選択される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0072】
一態様は、R4およびR5がそれぞれ水素であるか、または一緒になって、-CH2-(CH2)3-CH2-および-CH2-(CH2)2-CH2-からなる群から選択される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0073】
上記の態様、実施形態、および/または例のうちのいずれか1つ以上は、いずれか1つ以上のさらなる態様、実施形態、および/または例を提供するために、互いに組み合わされてもよいことが理解されるべきである。例えば、上記式Iにおいて、R1はアルキルまたはアルケニルであり、R2は水素であり、R3は水素であり、R4およびR5はそれぞれ水素であるか、または一緒になってC3~10炭素環であり、X1はNHであり、X2はCH2であり、アルキル、アルケニルおよびC3~10炭素環はそれぞれ、非置換、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ハロアルキル、アルケニルおよびハロアルケニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、およびアルケニルからなる群から選択される。さらなる例では、R1は、C1~6アルキル(例えば、-CH3)またはC2~6アルケニル(例えば、-CH2-CH=CH2)である。さらなる例では、R4およびR5は、上記または本明細書で定義されるように、置換されていても、置換されていなくてもよい、単環式飽和C3~10炭素環である。非置換または置換の単環式飽和C3~10炭素環は、非置換または置換のシクロペンチルまたはシクロヘキシル基であってもよい。別の例では、C3~10炭素環は、ハロゲン、OH、-NO2、-NH2、-CN、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NH2、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、およびハロアルケニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されている。
【0074】
一態様は、式Iの化合物が以下からなる群から選択される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【化8】
【化9】
【化10】
【0075】
一態様は、式Iの化合物が次の式である、前述または後述のいずれかの実施形態の方法または使用である。
【化11】
【0076】
一態様は、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用であり、この治療は、プラダー・ウィリ症候群の1つ以上の症状の可能性または重症度を予防または軽減することを含む。
【0077】
一態様は、前記プラダー・ウィリ症候群は、遺伝子検査、血清中のIGF-1、総IGF-1、遊離IGF-1、(IGFBPと結合)IGF-1、脳脊髄液(CSF)中のIGF-1、総IGF-1、遊離IGF-1、血清中のIGFBP、血清中のIGFBP-1、-2、-3、-4、-5、-6、CSF中のIGFBP、IGFBP-1、-2、-3、-4、-5、-6、血糖値、血中脂質(HDL、LDL、VLDL、トリグリセリド)、インスリン抵抗性の恒常性モデル評価(HOMA-IR)、ボディマス指数(BMI)、および体脂肪評価(BFA)からなる群から選択される1つ以上の臨床検査を用いて評価される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0078】
一態様は、症状の重症度は、臨床試験に使用される過食症アンケート(HQ-CT)、臨床全般重症度(CGI-S)、変化の臨床全般印象(CGI-I)、変化の介護者全般印象(CaGI-I)、異常行動チェックリスト(ABC)およびABCサブ尺度、対人応答性尺度、反復行動尺度-改訂版(RBS-R)、PWS不安および苦悩アンケート(PADQ)、腸内細菌叢の組成(16Sまたはその他のシーケンシング方法)、小児イェール・ブラウン強迫性尺度(CY-BOCS)、およびモンテフィオーレ・アインシュタイン硬直尺度-改訂版PWS(MERS-R-PWS)からなる群から選択される1つ以上の臨床検査を用いて評価される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0079】
一態様は、プラダー・ウィリ症候群に関連する症状または所見は、早期発育不全、過剰食欲(過食症)、肥満、2型糖尿病、血中インスリン上昇、メタボリックシンドローム、多発性内分泌異常、筋緊張低下、性腺機能低下、睡眠障害、睡眠時無呼吸、言語障害、疼痛感受性低下、骨健康障害、斜視、色素脱失、胃腸の運動性低下、側弯症、副腎機能不全、発作、甲状腺機能低下症、低血糖、性腺刺激性機能低下症、特徴的な顔貌、軽度から中等度の知的障害および学習障害、認知障害、神経行動障害、知的障害、認知硬直、不安の高まり、激しい癇癪、強迫行為、自傷行為、精神疾患、自閉症の症候、および成長ホルモン欠乏症(GHD)からなる群から選択される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用で成長ホルモン欠乏症(GHD)。
【0080】
一態様は、式I、II、III若しくはIVの化合物は治療剤と組み合わせて投与される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0081】
一態様は、前記治療剤は、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ヒト成長ホルモン、組換えヒトIGF-1(rhIGF-1)、IGF-1、IGF-2、任意のIGF結合タンパク質(IGFBP)、IGFBP-3、インスリン、任意のスタチン、任意の食欲抑制剤、トランスフォーミング成長因子-β1、アクチビン、神経成長因子、成長ホルモン結合タンパク質、塩基性線維芽細胞成長因子、酸性線維芽細胞成長因子、hst/Kfgk遺伝子産物、FGF-3、FGF-4、FGF-6、ケラチノサイト成長因子、およびロゲン誘導増殖因子、int-2、線維芽細胞増殖因子、相同因子-1(FHF-1)、FHF-2、FHF-3、FHF-4、ケラチノサイト成長因子2、グリア活性化因子、FGF-10、FGF-16、毛様体神経栄養因子、脳誘導神経成長因子、ニューロトロフィン3、ニューロトロフィン4、骨形成タンパク質2(BMP-2)、グリア細胞株由来神経栄養因子、活動依存性神経栄養因子、サイトカイン白血病阻害因子、オンコスタチンM、インターロイキン、a-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、コンセンサスインターフェロン、TNF-a、クロメチアゾール;キヌレン酸、セマックス、タクロリムス、L-トレオ-1-フェニル-2-デカノイルアミノ3、3-モルホリノ-1-プロパノール、副腎皮質刺激ピン-(4-9)類似体(4-9)(ORG2766)、ジゾルシピン[MK-801]、セレギリン、NPS1506、GV1505260、MK-801、GV150526、2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイルベンゾ(f)キノキサリン(NBQX)、LY303070、LY300164、および抗MAdCAM-1抗体MECA-367からなる群から選択される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0082】
一態様は、治療剤は組換えヒト成長ホルモン(rhGH)である、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0083】
一態様は、医薬組成物は経口投与される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0084】
一態様は、式I、II、III若しくはIVの化合物は約0.001mg/kg~約600mg/kgの用量で投与される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0085】
一態様は、被験体は哺乳動物である、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0086】
一態様は、被検者はヒトである、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0087】
一態様は、式I、II、III若しくはIVの化合物は、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0088】
一態様は、薬学的に許容される賦形剤は、結合剤、担体、添加剤、アジュバント、マイクロエマルジョン、粗エマルジョン、および液晶からなる群から選択される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0089】
一態様は、医薬組成物は、経口溶液、経口懸濁液、または経口溶液または経口懸濁液を調製するための粉末として製剤化される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0090】
一態様は、医薬組成物は、錠剤またはカプセルとして製剤化される、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0091】
一態様は、プラダー・ウィリ症候群を治療するための薬剤を製造するための、式I、II、IIIまたはIVのいずれかの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグである。
【化12】
(式中、
X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環、および3~10員複素環からなる群から選択され、
ここで、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、またはハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
またはR
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
またはR
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
ただし、R
1がCH
3であり、R
2が水素であり、R
3が水素であり、R
4が水素である場合、R
5はベンジルではなく、R
1が水素である場合、R
2およびR
3の少なくとも一方は水素ではない。)
【0092】
一態様は、プラダー・ウィリ症候群を治療するための、式I、II、IIIまたはIVのいずれかの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグである。
【化13】
(式中、
X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
ここで、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環はそれぞれ、非置換、またはハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニルおよびアルキニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、
ここで、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択され、
またはR
4およびR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
またはR
2とR
3は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0~6の整数であり、
ただし、R
1がCH
3であり、R
2が水素であり、R
3が水素であり、R
4が水素である場合、R
5はベンジルではなく、R
1が水素である場合、R
2およびR
3の少なくとも一方は水素ではない。)
【0093】
一態様は、本明細書に記載のプラダー・ウィリ症候群に罹患した被験体を治療するための式I、II、IIIまたはIVのいずれかの化合物の使用である。
【0094】
一態様は、被験体はヒトである、前述または後述のいずれかの態様の方法である。
【0095】
一態様は、被験体はヒトである、前述のいずれかの態様の使用である。
【0096】
一態様は、上記化合物は、化合物は、cG-2-アリルP、環式シクロペンチル-G-2-MeP、または環式シクロヘキシル-G-2-MePである、前述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0097】
一態様は、化合物は水溶液中で製剤化される、前述または後述のいずれかの態様
の方法または使用である。
【0098】
一態様は、化合物は、cG-2-アリルP、環式シクロペンチル-G-2-MeP、または環式シクロヘキシル-G-2-MePである、前述または後述のいずれかの態様の方法または使用である。
【0099】
一態様は、化合物は水溶液中で製剤化される、前述の態様のいずれかの方法または使用である。
【0100】
他の態様は、化合物の用量は、体重1kgあたり約0.01mg/kg~約1000mg/kg、約0.1mg/kg~約500mg/kg、約0.1mg/kg~約200mg/kg、約0.01、0.1、1、10、20、50、75、100、500、1000、または5000mg/kgである、前述または後述のいずれかの態様の方法である。
臨床評価
【0101】
プラダー・ウィリ症候群は、例えば、遺伝子検査、血清中のIGF-1、総IGF-1、遊離IGF-1、(IGFBPと結合)IGF-1、脳脊髄液(CSF)中のIGF-1、総IGF-1、遊離IGF-1、血清中のIGFBP、血清中のIGFBP-1、-2、-3、-4、-5、-6、CSF中のIGFBP、IGFBP-1、-2、-3、-4、-5、-6、血糖値、血中脂質(HDL、LDL、VLDL、トリグリセリド)、インスリン抵抗性の恒常性モデル評価(HOMA-IR)、ボディマス指数(BMI)、および体脂肪評価(BFA)を含む、臨床検査を用いて評価されてもよい。
プラダー・ウィリ症候群に関連する症状の重症度は、例えば、臨床試験に使用される過食症アンケート(HQ-CT)、臨床全般重症度(CGI-S)、変化の臨床全般印象(CGI-I)、変化の介護者全般印象(CaGI-I)、異常行動チェックリスト(ABC)およびABCサブ尺度、対人応答性尺度、反復行動尺度-改訂版(RBS-R)、PWS不安および苦悩アンケート(PADQ)、腸内細菌叢の組成(16Sまたはその他のシーケンシング方法)、小児イェール・ブラウン強迫性尺度(CY-BOCS)、およびモンテフィオーレ・アインシュタイン硬直尺度-改訂版PWS(MERS-R-PWS)を含む、臨床検査を用いて評価されてもよい。
式Iの化合物
【0102】
本明細書に記載のように、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグを含む、プラダー・ウィリ症候群を治療するための使用または方法である。
【化14】
上記式Iにおいて、X
1は、NR’、OおよびSからなる群から選択され、一実施形態では、X
1は、NR’である。一例では、X
1はNHである。一例では、X
1はOである。一例では、X
1はSである。
上記式Iにおいて、X
2は、CH
2、NR’、OおよびSからなる群から選択される。一例では、X
2は、CH
2である。一実施形態では、X
2はNR’である。一例では、X
2はNHである。一例では、X
2はOである。一例では、X
2はSである。
式Iにおいて、R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環、および3~10員複素環からなる群から選択される。
すなわち、上記式Iにおいて、R
1は、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環、および3~10員複素環からなる群から選択される。一実施形態では、R
1はアルキルである。一実施形態では、R
1は、C
1~6アルキルである。一例では、R
1は、CH
3である。一実施形態では、R
1はアルケニルである。一実施形態では、R
1は、C
2~6アルケニルである。一例では、R
1は、-CH
2CHCH
2である。
上記式Iにおいて、R
2は、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環、および3~10員複素環からなる群から選択される。一例では、R
2は水素である。一実施形態では、R
2はアルキルである。一実施形態では、R
2は、C
1~6アルキルである。一例では、R
2は、CH
3である。
上記式Iにおいて、R
3は、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環、および3~10員複素環からなる群から選択される。一例では、R
3は水素である。一実施形態では、R
3はアルキルである。一実施形態では、R
3は、C
1~6アルキルである。一例では、R
3は、CH
3である。
上記式Iにおいて、R
4は、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環、および3~10員複素環からなる群から選択される。一例では、R
4は水素である。
上記式Iにおいて、R
5は、水素、ハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO
2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環、および3~10員複素環からなる群から選択される。一例では、R
5は水素である。
上記式Iにおいて、一実施形態では、R
4とR
5は、一緒になって-CH
2-(CH
2)
n-CH
2-であり、nは0、1、2、3、4、5または6である。一例では、R
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
2-CH
2-である。すなわち、一例では、nは2である。一例では、R
4とR
5は、一緒になって、-CH
2-(CH
2)
3-CH
2-である。すなわち、一例では、nは3である。一例では、R
4およびR
5は共に水素である。
上記式Iにおいて、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、3~10員炭素環および3~10員複素環からなる群から選択される。一例では、R’は、水素、アルキルまたはアルケニルである。一例では、R’は水素である。
上記式Iにおいて、R
1がCH
3であり、R
2が水素であり、R
3が水素であり、R
4が水素である場合、R
5はベンジルではない。上記式Iにおいて、R
1が水素である場合、R
2およびR
3の少なくとも一方は水素ではない。
【0103】
上記の態様、実施形態、および例のうちのいずれか1つ以上は、いずれか1つ以上のさらなる具体的な実施形態および例を提供するために、互いに組み合わされてもよいことが理解されるべきである。例えば、上記式Iにおいて、R1はアルキルまたはアルケニルであり、R2は水素であり、R3は水素であり、R4およびR5は、それぞれ水素であるか、一緒になって、C3~10炭素環であり、X1はNHであり、X2はCH2であり、アルキル、アルケニルおよびC3~10炭素環はそれぞれ、非置換、またはハロゲン、-OR’、-SR’、-NR’R’、-NO2、-CN、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’、-C(NR’)NR’R’、アルキル、ハロアルキル、アルケニルおよびハロアルケニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、R’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、およびアルケニルからなる群から選択される。さらなる例では、R1は、C1~6アルキル(例えば、-CH3)またはC2~6アルケニル(例えば、-CH2-CH=CH2)である。さらなる例では、R4およびR5は、上記または本明細書で定義されるように、置換されていても、置換されていなくてもよい単環式飽和C3~10炭素環である。非置換または置換の単環式飽和C3~10炭素環は、非置換または置換のシクロペンチルまたはシクロヘキシル基であってもよい。他の例では、C3~10炭素環は、ハロゲン、OH、-NO2、-NH2、-CN、-C(O)H、-C(O)OH、-C(O)NH2、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、およびハロアルケニルからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されている。
【0104】
一例では、式Iの化合物は以下からなる群から選択される。
【化15】
【化16】
【化17】
【0105】
一例では、式Iの化合物は以下のとおりである。
【化18】
「環式グリシル-2-アリルプロリン」または「環式G-2-アリルP」または「NNZ2591」式II
すなわち、一例では、式Iの化合物において、X
1はNHであり、X
2はCH
2であり、R
1は-CH
2CHCH
2である。R
2、R
3、R
4、およびR
5は水素である。
【0106】
一例では、式Iの化合物は以下のとおりである。
【化19】
「環式シクロペンチル-G-2-MeP」式III
【0107】
すなわち、一例では、式Iの化合物において、X1はNHであり、X2はCH2であり、R1は、CH3であり、R2およびR3は、それぞれ水素であり、R4とR5は、一緒になって、-CH2-(CH2)2-CH2-である。
【0108】
一例では、式Iの化合物は以下のとおりである。
【化20】
「環式シクロヘキシル-G-2-MeP」式IV
【0109】
すなわち、一例では、式Iの化合物において、X1はNHであり、X2はCH2であり、R1はCH3であり、R2およびR3は、それぞれ水素であり、R4とR5は、一緒になって、-CH2-(CH2)3-CH2-である。
医薬組成物
【0110】
いくつかの実施形態では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグは医薬組成物の形態で投与される、本明細書に記載の使用または方法が提供される。
【0111】
適切には、薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤は、希釈剤、溶媒、pH緩衝剤、結合剤、担体、添加剤、アジュバント、マイクロエマルジョン、粗エマルジョン、液晶、充填剤、乳化剤、崩壊剤、ポリマー、潤滑剤、油、脂肪、ワックス、コーティング、粘度調整剤、流動促進剤などのうちの1つ以上であってもよい。いくつかの実施形態では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与される、本明細書に記載の方法が提供される。
【0112】
希釈剤は、微結晶セルロース、乳糖、マンニトール、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、乾燥デンプン、粉糖などの1種以上を含んでもよい。結合剤は、ポビドン、デンプン、ステアリン酸、ガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの1種以上を含んでもよい。崩壊剤は、デンプン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポビドン、デンプングリコール酸ナトリウムなどの1種以上を含んでもよい。溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、水などの1種以上を含んでもよい。潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアロイルフマル酸ナトリウム、水素添加植物油、ベヘン酸グリセリルなどの1種以上を含んでもよい。流動促進剤は、コロイダルシリカ、タルク、コーンスターチなどの1種以上であってもよい。緩衝液は、リン酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液を含んでもよいが、これらに限定されない。充填剤は、ゼラチン、デンプンおよび合成ポリマーゲルを含む1種以上のゲルを含んでもよいが、これらに限定されない。コーティングは、フィルム形成剤、溶剤、可塑剤などの1種以上を含んでもよい。好適なフィルム形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アクリレートなどの1種以上であってもよい。好適な溶媒は、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、ジクロロメタンなどの1種以上であってもよい。可塑剤は、プロピレングリコール、ヒマシ油、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリソルビトールエステルなどの1種以上であってもよい。
【0113】
医薬賦形剤ハンドブック、第9版、Sheskey、Hancock、Moss & Goldfarb(2020)編を参照し、これには、本開示に従って有用であり得る賦形剤の非限定的な例が提供される本開示による組成物に適した他の医薬賦形剤および/または添加剤は、「Remington:薬局の科学と実践」第23版、Ed.Adejare(2020)編、www._pdr._net (2021における「処方者用デジタルリファレンス」、および、『医薬賦形剤ハンドブック』第3版、Ed.A.H.Kibbe編、製薬雑誌、2000に掲載されている。
【0114】
薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤の選択は、製剤の投与方法に少なくとも部分的に依存することが理解されるべきである。例としてのみ、この組成物は、錠剤、カプセル、カプレット、粉末、経口溶液または懸濁液、経口溶液または懸濁液を調製するための粉末、注射用液体、座薬、徐放性製剤、浸透圧ポンプ製剤、または他の有効かつ安全な投与の形態であってもよい。
【0115】
医薬製剤の例としては、例えば被験者の状態および障害に依存することがあるが、最も適切な経路は、経口投与、胃腸外投与(皮下、皮内、筋内、静脈内および関節内を含む)、吸入投与(種々の計量量の加圧エアゾールによって生成され得る微粒子の粉塵または霧を含む)、噴霧器または吹込み器、直腸内、腹膜内および局所投与(皮膚、口腔、舌下および眼内を含む)に適した製剤が含まれる。一例では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは経口投与される。
【0116】
医薬製剤は、単位剤形で都合よく提供することができ、医薬分野で公知のいずれの方法でも製造することができる。すべての方法は、式Iの化合物、その薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグを、1つ以上の必須成分を構成する賦形剤と結合させるステップを含む。一般的に、製剤は、活性成分を液体担体または微粉固体担体またはその両方と均一かつ緊密に会合させ、次いで必要に応じて生成物を所望の製剤に成形することによって製造される。
【0117】
いくつかの実施形態では、この組成物は経口送達のために配合される。例えば、経口投与に適した本開示の医薬製剤は、それぞれ所定量の有効成分を含むカプセル、カシェ剤、丸薬または錠剤のような個別の単位、粉末または顆粒、溶液または水性液体または非水性液体中の懸濁液、例えばエリキシル剤、チンキ剤、懸濁液またはシロップ、または、水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして提供されてもよい。式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグはまた、ボーラス、錠剤またはペーストとして提供されてもよい。一例では、式Iの化合物、その薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、経口錠剤として投与される。一例では、式Iの化合物、その薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、経口カプセルとして投与される。一例では、式Iの化合物、その薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、経口溶液として投与される。一例では、式Iの化合物、その薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、経口懸濁液として投与される。
【0118】
錠剤は、例えば、圧縮または成形によって、任意に1つまたは複数の副成分を用いて製造してもよい。圧縮錠剤は、任意に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性剤または分散剤と混合された粉末または粒子のような活性成分を、適当な機械内で自由流動形態にて圧縮することによって製造することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末化合物の混合物を適当な機械で成形することによって製造することができる。錠剤は、任意にコーティングまたは刻みを施してもよく、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグの徐放または制御放出を提供するように製剤化されてもよい。式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、例えば、即時放出または持続放出に適した形態で投与することができる。即時放出または持続放出は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグを含む適切な医薬組成物を使用することによって、または特に徐放の場合には、皮下インプラントまたは浸透圧ポンプのようなデバイスを使用することによって達成することができる。式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグはまた、リポソーム的に投与されてもよい。
【0119】
なお、特に上述した成分に加えて、当該製剤の種類を考慮すると、当該分野で従来から使用されている他の製剤を含むことができ、例えば、経口投与に適した製剤には香味剤を含むことができることが理解されるべきである。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、経口溶液として製剤化される。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、経口懸濁液として製剤化される。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、経口溶液または経口懸濁液を調製するための粉末として製剤化される。
溶媒和物および水和物
【0120】
化合物の対応する溶媒和物を調製、精製および/または取り扱うことは、便利または望ましい場合がある。有機化学および/または医薬化学の当業者は、多くの有機化合物が溶反応する溶媒、または沈殿または結晶化する溶媒と錯体を形成できることを理解する。このような複合体は、「溶媒和物」と呼ばれ、本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、溶質(例えば、化合物、化合物の塩)と溶媒との複合体を指す。薬学的に許容される溶媒和物を形成し得る溶媒の例としては、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸およびエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。溶媒和物が水である場合、溶媒和物は慣例的に「水和物」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される溶媒和物は薬学的に許容される水和物である。水和物は、例えば、一水和物、二水和物、三水和物などであってもよい。本明細書に別段の記載がない限り、特定の化合物への言及にはその溶媒和物も含まれる。
プロドラッグ
【0121】
プロドラッグの形態で化合物を調製、精製および/または取り扱うことは、便利または望ましい場合がある。本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は代謝されると(例えば、インビボで)所望の活性化合物を生成する化合物を指す。一般に、プロドラッグは、不活性であるか、または所望の活性化合物よりも低い活性であるが、有利な取り扱い、投与、または代謝特性を提供する可能性がある。
【0122】
また、有機化学および/または医薬化学の当業者によって理解されているように、一部のプロドラッグは、活性化合物を生成するために酵素的に活性化されるか、またはさらなる化学反応の後に活性化合物を生成する化合物を生成する。例えば、プロドラッグは、糖誘導体または他の配糖体コンジュゲートであってもよく、またはアミノ酸エステル誘導体であってもよい。
用量
【0123】
もちろん、治療効果を達成するために必要な有効成分の量は、特定の化合物、投与経路、治療を受ける被験体(患者の種類、種、年齢、体重、性別、病状など)、治療を受ける被験体の腎機能および肝機能、治療対象となる特定の病症、障害または疾患、およびその重症度に応じて変化する。一般の熟練した医師や臨床医は、病症、障害、疾患の予防や治療に必要な薬物の有効量を容易に判断して処方することができる。
【0124】
式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量は、例えば、約0.01mg/kg体重(mg/kg)~約1000mg/kgであってもよい。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量投量は、約0.01~1000、0.1~500、0.1~200、1~200mg/kgである。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量は、約0.01~1000mg/kgである。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量は、約0.1~200mg/kgである。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグの用量は、約1~200mg/kgである。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグの用量は、約0.01、0.1、1、10、20、50、75、100、500、1000mg/kgを超える。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量は、約5000、1000、75、50、20、10、1、0.1mg/kg未満である。
【0125】
式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグは、例えば1日用量として投与することができ、あるいは、1日の総用量を2回、3回または4回に分けて投与することもできる。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物または立体異性体の投与頻度は、1日に1回以下、例えば、2日、3日、4日、5日、6日に1回、または週に1回であってもよい。
【0126】
したがって、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量は、示された効果のために使用される場合、例えば、約0.01mg/kg体重/日(mg/kg/日)~約1000mg/kg/日(1000mg/kg/日を含む)の間であってもよい。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量は、約0.01~1000mg/kg/日、0.1~500mg/kg/日、0.1~200mg/kg/日、または1~200mg/kg/日である。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量は、約0.01~1000mg/kg/日である。一例では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグの用量は、約0.1~200mg/kg/日、または約0.001mg/kg~約600mg/kgである。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量は、約1~200mg/kg/日である。一例では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量は、約0.01、0.1、1、10、20、50、75、100、500、1000mg/kg/日を超える。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグの用量は、それぞれ約5000、1000、75、50、20、10、1、0.1mg/kg/日未満である。
【0127】
上記用量は、式I、II、IIIおよびIVの化合物に適用されることが理解されるべきである。
組み合わせ療法
【0128】
式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、薬剤中の唯一の活性剤として使用されてもよいが、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグは、1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて使用されてもよい。したがって、一例では、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグは、1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて使用される。したがって、本開示はまた、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグと、さらなる治療剤との組み合わせを提供する。本開示はまた、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物若しくはプロドラッグ、さらなる治療剤、および薬学的に許容される賦形剤の組み合わせを含む医薬組成物を提供する。このような1つ以上のさらなる治療薬は、例えば、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ヒト成長ホルモン、組換えヒトIGF-1(rhIGF-1)、IGF-1、IGF-2、任意のIGF結合タンパク質(IGFBP)、IGFBP-3、インスリン、任意のスタチン、任意の食欲抑制剤、トランスフォーミング成長因子-β1、アクチビン、神経成長因子、成長ホルモン結合タンパク質、塩基性線維芽細胞成長因子、酸性線維芽細胞成長因子、hst/Kfgk遺伝子産物、FGF-3、FGF-4、FGF-6、ケラチノサイト成長因子、およびロゲン誘導増殖因子、int-2、線維芽細胞増殖因子、相同因子-1(FHF-1)、FHF-2、FHF-3、FHF-4、ケラチノサイト成長因子2、グリア活性化因子、FGF-10、FGF-16、毛様体神経栄養因子、脳誘導神経成長因子、ニューロトロフィン3、ニューロトロフィン4、骨形成タンパク質2(BMP-2)、グリア細胞株由来神経栄養因子、活動依存性神経栄養因子、サイトカイン白血病阻害因子、オンコスタチンM、インターロイキン、a-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、コンセンサスインターフェロン、TNF-a、クロメチアゾール;キヌレン酸、セマックス、タクロリムス、L-トレオ-1-フェニル-2-デカノイルアミノ3、3-モルホリノ-1-プロパノール、副腎皮質刺激ピン-(4-9)類似体(4-9)(ORG2766)、ジゾルシピン[MK-801]、セレギリン、NPS1506、GV1505260、MK-801、GV150526、2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイルベンゾ(f)キノキサリン(NBQX)、LY303070、LY300164、および抗MAdCAM-1抗体MECA-367である。
【0129】
式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグ、および1つ以上のさらなる薬学的活性剤は、同時に、続いて、または個別に投与されてもよい。例えば、これらは、同じ組成物の一部として投与されてもよく、または別個の組成物によって投与されてもよい。一例では、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグは、組換えヒト成長ホルモンと組み合わせて投与される。
【0130】
さらなる治療剤は、式I、II、III若しくはIVの化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、立体異性体若しくはプロドラッグと組み合わせて使用される場合、例えば、処方者用デジタルリファレンスに示された量、または当業者が他の方法で決定した量で使用されてもよい。
式Iの化合物の合成
【0131】
式I、II、IIIおよびIVの化合物への多くの合成経路は当業者によって考案され得、以下に記載される可能な合成経路は限定を意図するものではない。適切な場合には、最初に製造された式Iの化合物はizuremo、既知の方法により、他の式Iの化合物に変換することができる。
【0132】
式Iの化合物を調製するための出発原料および試薬は、アルドリッチ・ケミカル社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、バッヘム社(カリフォルニア州トーランス)、シグマ社(ミズーリ州セントルイス)等の商業的供給者から入手可能であるか、またはフィーザーおよびフィーザーの有機合成用試薬、第1~17巻、John WileyとSons、ニューヨーク州ニューヨーク、1991年;Roddの炭素化合物の化学,巻1~5および補足資料、エルゼビアサイエンスパブリッシャー、1989年;有機反応、第1~40巻、John WileyとSons、ニューヨーク州ニューヨーク、1991;March J;高度有機化学、第4版.John WileyとSons、ニューヨーク州ニューヨーク、1992;およびLarock:包括的な有機的変革、VCH出版社、1989などの参照文献に記載の手順にしたがって、当業者に周知の方法により調製してもよい。ほとんどの場合、アミノ酸およびそのエステルまたはアミド、並びに保護されたアミノ酸は、広く市販されている。また、修飾されたアミノ酸およびそれらのアミドまたはエステルの調製は、化学および生化学の文献に広く記載されており、したがって当業者にはよく知られている。
【0133】
本開示の出発物質、中間体、および最終生成物は、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含む従来の技術を使用して単離および精製してもよい。それらは、物理定数やスペクトルデータなどの従来の方法を使用して特徴付けてもよい。
【0134】
環式G-2-アリルPは環式ジペプチド(二環式2,5-ジケトピペラジン)の一種であり、環式GP(「cGP」)と呼ばれる化合物クラスのメンバーである。一般的に、cGPおよび環式G-2-アリルPは、ペプチドおよび修飾ペプチド合成の当業者によく知られている方法、本明細書に記載されている反応スキームに従う方法、またはペプチドおよび類似体合成の当業者によく知られている他の方法によって製造されてもよい。例えば、Bodanzsky:ペプチド合成原理、ベルリン、ニューヨーク:Springer-Verlag 1993を参照する。
【0135】
本開示のジケトピペラジン化合物の合成は、溶液相合成でも、Merrifieldら(1963年J.Amer.Chem.Soc.:85、2149-2156.によって例示された固相合成法でもよい。固相合成は、Applied Biosystems Model 430Aのような市販のペプチド合成装置を使用して、装置用に確立されプロトコルを使用して行ってもよい。
【0136】
ジケトピペラジン合成の具体例はFischer,2003,J.Peptide Science:9:9-35およびその中の参考文献に見出すことができる。当業者は、その技術および利用可能な知識、および本開示を考慮して、本発明の化合物の1つまたは複数の適切な合成方法を開発することに困難はない
【0137】
選択された方法(固相または溶液相)に対して適切な保護基を選択すること、および固相合成を用いる場合には適切な基質を選択することは、当業者の技術範囲内である。ペプチド合成のための適切な保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジル(Bzl)、tert-デンプンオキシカルボニル(Aoc)、トシル(Tos)、ベンジルオキシカルボニル(ZまたはCbz)、o-ブロモベンジルオキシカルボニル(BrZ)などである。追加の保護基はGoodman M.(編)、有機化学の方法(Houben-Weyl)の「ペプチドおよびペプチド模倣体の合成」(ワークベンチ版、E22a、b、c、d、e;2004;Georg Thieme Verlag、ニューヨーク州シュトゥットガルト)に記載されている。
【0138】
選択された方法のためのカップリング剤の選択も当業者の技術範囲内である。好適なカップリング剤は、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、Bop(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリ-(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロリン酸)、PyBop(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸)、BopCl(ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド)、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリジニウムヘキサフルオロリン酸(CIP)などを含む。他の化合物、例えば、HOBt(N-ヒドロキシベンゾトリアゾール)やHOAt(1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール)のようなラセミ化を防止するために合成に用いることができる。
実施例
【0139】
本開示は、以下の実施例によってさらに説明される。これらの例は、例示としてのみ提供され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
概要:材料および方法
【0140】
高速クロマトグラフィーはScharlau 60(40~60μmメッシュ)シリカゲルを用いて行われる。0.20mmプレコートシリカゲルプレート(ALUGRAM(登録商標)SILG/UV254)上で分析用薄層クロマトグラフィーを行い、紫外線蛍光またはアルカリ性溶液中の過マンガン酸カリウムに浸漬したプレートの加熱を利用して、化合物を視覚化した。
【0141】
融点(摂氏度、℃)は、Electrothermal(登録商標)融点計で測定され、補正されていない。
【0142】
10-1degcm2g-1の単位で与えられた、Perkin Elmer341旋光計上で光路長10cmのセルを用いて、20℃で旋光度を測定する。所定濃度の溶媒中でサンプルを調製する(測定単位はg/100cm3)。Perkin Elmer Spectrum One FT-IR分光器に赤外スペクトルを記録する。サンプルは、塩化ナトリウムディスク上で薄膜状に調製されるか、臭化カリウムディスク上で固体状に調製された。ワイド信号はbrで表される。吸収極大値としての周波数(u)は波数(cm-1)で与えられる。
【0143】
NMRスペクトルは、Bruker AVANCE DRX400(1H,400MHz;13C,100 MHz)またはBruker AVANCE 300(1H,300MHz;13C,75MHz)にて周囲温度で記録される。1H NMRデータの場合、ケミカルシフトはSiMe4からの低磁場での100万分の1で表され、そして位置(δH)、相対積分、多重数(s=一重項、d=二重項、t=三重項、dd=二重項の二重項、m=多重項、br=ブロード)、結合定数(J/Hz)、および帰属として連続的に報告される。13C NMRデータの場合、ケミカルシフトはCDCl3に対して100万分の1で表され、位置(δC)、DEPT実験によって決定されたハイブリダイゼーションの程度、および帰属として連続的に報告される。1HNMRスペクトルは、SiMe4(δ0.00)またはCDCl3(δ7.26)を用いて内部参照される。13C NMRスペクトルは、CDCl3(δ77.0)を用いて内部参照される。NMRスペクトルにグリシン-プロリンアミド結合周囲の異なる立体構造により2組のピークが現れる場合、2次シス立体異性体のケミカルシフトにはアスタリスク(*)が付けられる。
【0144】
正確な質量測定値はVG-70SE質量分析計で記録される。
【0145】
ヘキサンおよびジクロロメタンは、使用前に蒸留される。マグネシウム削り粉とヨウ素を使用してメタノールを乾燥し、窒素下で蒸留する。トリエチルアミンを水素化カルシウムで乾燥し、窒素下で蒸留する。
【0146】
実施例1:
(8aS)-メチル-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,-ジオン (環式G-2-MeP)の合成
【化21】
スキーム1:試薬、条件、および収率:(i)LDA、THF、-78℃、ヨードメタン、-78-20~50℃、2時間(63%);(ii)SOCl
2、CH
3OH、還流、N
2、2.5時間(98%);(iii)Et
3N、BoPCl、CH
2Cl
2、室温、N
2、20.5時間(78%);(iv)10%Pd/C、CH
3OH、室温、15時間(98%)
(2R,5S)-4-メチル-2-トリクロロメチル-1-アザ-3-オキサビシクロ[3.3.0]オクタン-4-オン(9)
ジイソプロピルアミン(0.86cm
3、6.14mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(10cm
3)の撹拌溶液に、窒素雰囲気下、-78℃でn-BuLi(1.31M、4.68cm
3、6.14mmol)を滴下した。溶液を5分間撹拌し、0℃まで昇温し、15分間撹拌した。次に、オキサゾリジノン8(1.00g、4.09mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(20cm
3)溶液に、この溶液を-78℃で20分間かけて滴下し(暗褐色に変化)、さらに30分間撹拌した後、ヨードメタン(0.76cm
3、12.3mmol)を5分間かけて滴下して、溶液を2時間かけて-50℃に加熱した。水(15cm
3)を加えて、室温まで加熱し、クロロホルム(3×40cm
3)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥した後(MgSO
4)、濾過し、真空中で蒸発乾固し、暗褐色の半固体を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(15%酢酸エチル-ヘキサン)により残渣を精製して、淡黄色固体としてオキサゾリジノン9(0.67g、63%)を得た。mp 55-57℃ (lit., 57-60℃); δH (300 MHz, CDCl
3) 1.53 (3H, s, CH
3), 1.72-2.02 (3H, m, Proβ-H およびProγ-H
2), 2.18-2.26 (1H, m, Proβ-H), 3.15-3.22 (1H, m, Proδ-H), 3.35-3.44 (1H, m, Proδ-H) および4.99 (1H, s, NCH).
L-2-メチルプロリンメチル塩酸塩(10)
a)塩化アセチルの使用
窒素雰囲気下で、オキサゾリジノン9(0.60g、2.33mmol)を乾燥メタノール(15cm
3)に溶解し、さらに、アセチルクロライド(0.33cm
34.66mmol)を氷冷溶液に滴下した。溶液を還流下で4.5時間加熱した後、溶媒を減圧下で除去して、茶色油を得て、これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(10% CH
3OH-CH
2Cl
2)により精製し、塩酸塩10(0.2g,48%)をフレーク状の白色固体として得た。mp 107-109℃ (lit., 106-108℃); δH (300 MHz, CDCl
3) 1.81 (3H, s, CH
3), 1.93-2.14 (3H, m, Proβ-H
AH
B およびProγ-H
2), 2.33-2.39 (1H, m, Proβ-H
AH
B), 3.52-3.56 (2H, m, Proδ-H
2) および3.82 (3H, s, CO
2CH
3).
b)塩化チオニルの使用
オキサゾリジノン9(53mg、0.21mmol)の乾燥メタノール(1cm
3)中の氷冷溶液を、塩化チオニル(0.045cm
3、0.62mmol)で滴下処理した。この溶液を還流下2.5時間加熱した後、冷却し、溶媒を減圧下で除去し、茶色油を得る。この油をトルエン(5cm3)に溶解し、濃縮乾固して残留塩化チオニルおよびメタノールを除去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(10% CH
3OH-CH
2Cl
2)により精製し、塩酸塩10(16mg、43%)をフレーク状白色固体として得た。
1H NMR帰属は、上記で報告された帰属と一致した。
メチル-N-ベンジルオキシカルボニル-グリシル-L-2-メチルプロリン(12)
塩酸塩10(0.11g、0.61mmol)とN-ベンジルオキシカルボニル-グリシン11(98.5%)(0.17g、0.79mmol)の塩化ジクロロメタン(35cm
3)の溶液に、乾燥トリエチルアミン(0.27cm
3、1.96mmol)を滴下した。窒素雰囲気下、室温で、反応混合物を10分間撹拌した。ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド(BoPCl、97%)(0.196g、0.77mmol)を加え、得られた無色溶液を20.5時間撹拌した。10%塩酸水溶液(30cm
3)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30cm
3)で連続的に溶液を洗浄し、乾燥した後(MgSO
4)、濾過し、真空中で蒸発i乾固した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(50~80%酢酸エチル-ヘキサン;勾配溶離)により精製して、ジペプチド12(0.18g、92%)を無色油として得た。
13C NMR分析により、アミド12は配座異性体の98:2トランス:シス混合物として存在することが示された(この比は、それぞれδ20.8と23.5での副配座異性体と主配座異性体のProγ-C原子に帰属する共鳴相対強度から推定される):[α]
D - 33.0 (MeOH中の
c 1.0); nmax (フィルム)/cm
-1 3406, 2952, 1732, 1651, 1521, 1434, 1373, 1329, 1310, 1284, 1257, 1220, 1195, 1172, 1135, 1107, 1082, 1052, 1029, 986, 965, 907, 876, 829, 775, 738 および699; δH (300 MHz, CDCl
3) 1.49 (3H, s, CH
3), 1.77-2.11 (4H, m, Proβ-H
2 およびProγ-H
2), 3.43-3.48 (2H, m, Proδ-H
2), 3.61 (3H, s, OCH
3), 3.85-3.89 (2H, m, Glyα-H
2), 5.04 (2H, s, PhCH
2), 5.76 (1H, br s, N-H) および7.21-7.28 (5H, s, ArH); δC (75 MHz, CDCl
3) 13.8* (CH
3, Proα-CH
3), 21.1 (CH
3, Proα-CH
3), 20.8* (CH
2, Proγ-C), 23.5 (CH
2, Proγ-C), 38.0 (CH
2, Proβ-C), 40.8* (CH
2, Proβ-C), 43.3 (CH
2, Glyα-C), 45.5* (CH
2, Glyα-C), 46.6 (CH
2, Proδ-C), 48.7* (CH
2, Proδ-C), 51.9* (CH
3, OCH
3), 52.1 (CH
3, OCH
3), 60.0* (quat., Proα-C), 66.0 (quat., Proα-C), 66.3 (CH
2, PhCH
2), 68.6* (CH
2, PhCH
2), 127.5 (CH, Ph), 127.6 (CH, Ph), 127.9* (CH, Ph), 128.1 (CH, Ph), 128.3* (CH, Ph), 136.2 (quat., Ph), 155.9 (quat., NCO
2), 166.0 (quat., Gly-CON), 169.4* (quat., Gly-CON) および173.6 (quat., CO
2CH
3); m/z (EI+) 334.1535 (M+. C
17H
22N
2O
5は334.1529を必要).
(8As)-メチル-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン (環式G-2MeP)
ジペプチド12(0.167g,0.51mmol)のメタノール(8.0cm
3)溶液に10%Pdの活性炭(8.1mg,0.076mmol)を添加し、水素ガスで容器を洗浄した。得られた懸濁液を水素雰囲気下で15時間激しく撹拌した。次に、混合物を珪藻土マットで濾過し、次にシリカゲルショートプラグをメタノールで濾過し、減圧下で溶媒を除去して、
環式G-2MeP(83mg、98%)を黄色固体として生成した。mp 133-135℃; [α]
D -128.1 (MeOH中の
c 0.52 ); δH (300 MHz, CDCl
3) 1.36 (3H, s, CH
3), 1.87-2.01 (3H, m, Proβ-
H
A
H
B およびProγ-H
2), 2.07-2.21 (1H, m, Proβ-H
A
H
B
), 3.45-3.64 (2H, m, Proδ-H
2), 3.82 (1H, dd,
J 17.1 および4.1, C
H
A
H
BNH), 3.99 (1H, d,
J 17.1, CH
A
H
B
NH) および7.66 (1H, br s, N-H); δC (75 MHz, CDCl
3) 20.2 (CH
2, Proγ-C), 23.2 (CH
3, Proα-CH
3), 35.0 (CH
2, Proβ-C), 44.7 (CH
2, Proδ-C), 45.9 (CH
2, CH
2NH), 63.8 (quat., Proα-C), 163.3 (quat., NCO) および173.3 (quat., CONH);
m/5
z (EI+) 168.08986 (M+. C
8H
12N
2O
2は168.08988を必要).
【0147】
実施例2:
(8aS)-メチル-スピロ[シクロヘキサン-1,3(4H)-テトラヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン]-1,4(2H)-ジオン (環式シクロヘキシル-G-2-MeP)式IVの合成
【化22】
スキーム2:試薬、条件、および収率:(i)BnO
2CCl、Na
2CO
3、H
2O-ジオキサン(3:1)、19時間、96%;(ii)Et
3N、HOAt、CIP、1,2-ジクロロエタン、還流、N
2、19時間(23%);(iii)10%Pd/C、CH
3OH、室温、17時間(65%)。
N-ベンジルオキシカルボニル-1-アミノシクロヘキサン-1-カルボン酸(14)
1-アミノシクロヘキサンカルボン酸13(0.72g、5.02mmol)と炭酸ナトリウム(1.6g、15.1mmol)を水に溶解した懸濁液にジオキサン(21cm
3、3:1)を滴下し、ベンジルクロロギ酸エステル(0.79cm
3、5.52mmol)を滴下し、室温で19.5時間撹拌した。水層をジエチルエーテル(60cm
3)で洗浄し、2M HClで酸性化し、酢酸エチル(2×60cm
3)で抽出した。有機層を合わせて、乾燥(MgSO
4)し、濾過し、減圧下で蒸発させて無色のオイルを生成し、これを放置して、固体化し、白色固体として粗
ウレタン14(1.23g、88%)を得た。mp 152-154℃ (lit., 148-150℃); δH (400 MHz, CDCl
3) 1.27-1.56 (3H, m, 3 x シクロヘキシル-H), 1.59-1.73 (3H, m, 3 x シクロヘキシル-H), 1.85-1.91 (2H, m, 2 x シクロヘキシル-H), 2.05-2.09 (2H, m, 2 x シクロヘキシル-H), 5.02 (1H, br s, N-H), 5.12 (2H, s, OC
H
2
Ph) および7.27-7.36 (5H, s, Ph); δC (100 MHz, CDCl
3) 21.1 (CH
2, 2 x シクロヘキシル-C), 25.1 (CH2, 2 x シクロヘキシル-C), 32.3 (CH
2, シクロヘキシル-C), 5 59.0 (quat.,1-C), 67.1 (CH
2, O
CH
2Ph), 128.1 (CH, Ph), 128.2 (CH, Ph), 128.5 (CH, Ph), 136.1 (quat., Ph), 155.7 (quat., NCO2) および178.7 (quat., CO
2H).
メチル-N-ベンジルオキシカルボニル-シクロヘキシル-グリシル-L-2-メチルプロリン(15)
塩酸塩10(84.0mg、0.47mmol)、カルボン酸14(0.17g、0.61mmol)および1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(16mg、0.12mmol)の乾燥1,2-ジクロロエタン(26cm
3、1.5mmol)の溶液に、乾燥トリエチルアミン(0.21cm
3、1.5mmol)を窒素雰囲気下、室温で滴下し、反応混合物を10分間撹拌した。2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリジンヘキサフルオロリン酸塩(0.13g、0.47mmol)を添加し、得られた溶液を還流下で21時間加熱した後、10%塩酸水溶液(30cm
3)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30cm
3)で順次洗浄し、乾燥し(MgSO
4)、濾過し、乾固まで真空蒸発させた。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(40~50%酢酸エチル-ヘキサン;勾配溶離)により精製し、
アミド15(16mg、9%)を白色固体として得た。
13C NMR分析により、アミド15は配座異性体の11:1トランス:シス混合物の形で存在することが示された(この比は、それぞれδ41.3および48.2での副配座異性体と主配座異性体のProδ-C原子に帰属された共鳴相対強度から推定される):mp 219-222℃; [α]
D -44.9 (CH
2Cl
2中の
c 1.31); nmax (フィルム)/cm
-1 3239, 2927, 1736, 1707, 1617, 1530, 1450, 1403, 1371, 1281, 1241, 1208, 1194, 1165, 1150, 1132, 1089, 1071, 1028, 984, 912, 25 796, 749, 739 および699; δH (400 MHz, CDCl
3) 1.24-2.10 (17H, m, Proα-CH
3, Proβ-H
2, Proγ-H
2 および5 x シクロヘキシル-H
2), 3.25-3.48 (1H, br m, Prod-
H
A
H
B), 3.61-3.87 (4H, br m, OCH
3 およびProδ-H
A
H
B
), 4.92-5.19 (3H, m, N-H およびOC
H
2
Ph) および7.35-7.37 (5H, s, Ph); δC (100 MHz, CDCl
3) 21.26 (CH
2, シクロヘキシル-C), 21.33 (CH
2, シクロヘキシル-C), 21.7 (CH
3, Proα-CH
3), 24.8 (CH
2, シクロヘキシル-C), 25.0 (CH
2, Proγ-C), 29.4* (CH
2, シクロヘキシル-C), 29.7* (CH
2, シクロヘキシル-C), 31.1 (CH
2, シクロヘキシル-C), 31.6 (CH
2, シクロヘキシル-C), 31.9* (CH
2, シクロヘキシル-C), 32.2* (CH
2, シクロヘキシル-C), 32.8* (CH
2, シクロヘキシル-C), 37.3 (CH
2, Proβ-C), 41.4* (CH
2, Proδ-C), 48.2 (CH
2, Proδ-C), 52.1 (CH
3, OCH
3), 59.1 (quat., Glyα-C), 66.7 (CH
2, O
CH
2Ph), 67.3* (CH
2, O
CH
2Ph), 67.4 (quat., Proα-C), 128.0* (CH, Ph), 128.1* (CH, Ph), 128.3 (CH, Ph), 128.5 (CH, Ph), 128.7 (CH, Ph), 136.6 (quat., Ph), 153.7 (quat., NCO
2), 171.0 (quat., Gly-CO) および174.8 (quat.,
CO
2CH
3);
m/z (EI+) 402.2151 (M
+ C
22H
30N
2O
5 は402.2155を必要).
(8aS)-メチル-スピロ[シクロヘキサン-1,3(4H)-テトラヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン]-1,4(2H)-ジオン(環式シクロヘキシル-G-2MeP))
アミド15(40mg、0.01mmol)のメタノール(3.3cm
3)溶液に10%Pdの活性炭(1.6mg、0.015mmol)を添加し、水素ガスで容器を洗浄した。得られた懸濁液を水素ガス雰囲気下で61.5時間激しく撹拌した後、メタノール(15cm
3)を用いて珪藻土(Celite 登録商標)マットで濾過した。濾液を減圧下で濃縮乾固して、黄色の半固体を生成し、これを逆相C18フラッシュカラムクロマトグラフィー(0~10%CH
3CN/H
2O、勾配溶離)により精製し、
環式シクロヘキシル-G-2MeP(19mg、81%)を白色固体として製造した。mp 174-177℃; [α]
D -63.8 (CH
2Cl
2中の
c 1.13); nmax (フィルム)/cm
-1 3215, 2925, 2854, 1667, 1646, 1463, 1427, 1276, 1232, 1171, 1085, 1014, 900, 868, 818, 783, 726 および715; δH (400 MHz, CDCl
3) 1.31-1.89 (12H, m, 9 x シクロヘキシル-H および8a-CH
3), 1.94-2.15 (4H, m, 7-H2 および8-H
2), 2.26 (1H, td,
J 13.7 および4.5, 1 x シクロヘキシル-H), 3.44-3.51 (1H, m, 6-
H
A
H
B), 3.79-3.86 (1H, m, 6-H
A
H
B
) および6.40 (1H, br s, N-H); δC (100 MHz, CDCl
3) 19.5 (CH
2, 7-C), 20.6 (CH
2, シクロヘキシル-C), 20.8 (CH
2, シクロヘキシル-C), 24.5 (CH
2, シクロヘキシル-C), 25.0 (CH
3, 8a-CH
3), 33.7 (CH
2, シクロヘキシル-C), 36.3 (CH
2, 8-C), 36.5 (CH
2, シクロヘキシル-C), 44.7 (CH
2, 6-C), 59.5 (quat., 8a-C), 64.0 (quat., 3-C), 168.1 (quat., 4-C) および171.6 (quat., 1-C);
m/z (EI
+) 236.15246 (M
+ C
13H
20N
2O
2は236.15248を必要).
【0148】
実施例3:
(8aS)-アリル-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン(環式G-2-アリルP)の合成
【化23】
スキーム3:試薬、条件、および収率:(i)LDA、THF、-78℃、臭化アリル、-78~-30℃、N
2、4時間(60%);(ii)アセチルクロライド、CH3OH、還流、N2、24時間(63%);(iii)Et3N、BoPCl、CH2Cl2、室温、N2、19.5時間(45%);(iv)TFA、CH2Cl2、1時間、次にEt3N、CH2Cl2、23時間(37%)
。
(2R,5S)-4-アリル-2-トリクロロメチル-1-アザ-3-オキサビシクロ[3.3.0]オクタン-4-オン(17)
窒素雰囲気下、-78℃で、ジイソプロピルアミン(1.82cm
3、13.0mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(20cm
3)撹拌溶液にn-BuLi(1.31M、9.93cm
3、13.0mmol)を滴下した。溶液を5分間撹拌し、0℃まで昇温し、15分間撹拌した後、-78℃で、乾燥テトラヒドロフラン(40cm
3)溶液中にオルトオキサゾリジノン16(2.12g、8.68mmol)を20分間以上滴下し、さらに30分間撹拌した後、アリルブロマイド(2.25cm
3、26.0mmol)を5分間以上滴下した。溶液を4時間かけて-30℃までゆっくり昇温し、h
2O(30cmcm
3)で急冷し、室温まで昇温し、クロロホルム(3×80cm
3)で抽出した。合わせられた有機抽出物を乾燥し(MgSO
4)、濾過し、真空中で乾固まで蒸発させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(10-20%酢酸エチル-ヘキサン;勾配溶離)により精製し、
オキサゾリジノン17(1.48g、60%)を、0℃で硬化したオレンジ油として製造した。そのnmrデータは文献で報告されているデータと一致した。δH (400 MHz, CDCl
3) 1.58-1.92 (2H, m, Proγ-H
2), 1.96-2.14 (2H, m, Proβ-H
2), 2.50-2.63 (2H, m, Proδ-H
2), 3.12-3.23 (2H, m, CH
2-CH=CH
2), 4.97 (1H, s, NCH), 5.13-5.18 (2H, m, CH=CH
2) および5.82-5.92 (1H, m, CH=CH
2); δC (100 MHz, CDCl
3) 25.1 (CH
2, Proγ-C), 35.1 (CH
2, Proβ-C), 41.5 (CH
2, Proδ-C), 58.3 (CH
2, CH
2CH=CH
2), 71.2 (quat., Proα-C), 100.4 (quat., CCl
3), 102.3 (CH, NCH), 119.8 (CH
2, CH
2CH=CH
2), 131.9 (CH, CH
2CH=CH
2) および176.1 (quat., C=O);
m/z (CI+) 284.0009 [(M+H)
+. C
10H
13Cl
3NO
2 は284.0012を必要], 285.9980 [(M+H)
+。C
10H
13
35Cl
37Cl
3NO
2は285.9982を必要], 287.9951 [(M+H)
+. C
10H
13
35Cl
37Cl
2NO
2は287.9953を必要] および289.9932 [(M+H)
+. C
10H
13
37Cl
3NO
2 は 289.9923を必要].
L-2-アリルプロリンメチル塩酸塩(18)
オキサゾリジノン17(0.64g、2.24mmol)の乾燥メタノール(15cm
3)の氷冷溶液に、アセチルクロライド(0.36cm
3、5.0mmol)のメタノール(5cm
3)中の溶液を滴下した。溶液を還流下で24時間加熱した後、冷却して、溶媒を減圧下で除去した。得られた茶色油をトルエン(40cm
3)に溶解し、濃縮乾固して残留塩化チオニルおよびメタノールを除去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(5~10%CH
3OH-CH
2Cl
2;勾配溶離)により精製し、
塩酸塩18(0.29g、63%)を得た。そのNMRデータは文献で報告されているデータと一致した。δH(300 MHz, CDCl
3) 1.72-2.25 (3H, m, Proβ-
H
A
H
B およびProγ-H
2), 2.32-2.52 (1H, m, Proβ-H
A
H
B
), 2.72-3.10 (2H, m, Proδ-H
2), 3.31-3.78 (2H, m, C
H
2CH=CH
2), 3.84 (3H, s, CO
2CH
3), 5.20-5.33 (2H, m, CH=C
H
2), 5.75-5.98 (1H, m, C
H=CH
2) および8.06 (1H, br s, N-H);
m/z (CI+) 170.1183 [(M+H)
+. C
9H
16NO
2 は 170.1181を必要].
メチル-N-tert-ブトキシカルボニル-グリシル-L-2-アリルプロリン(20)
窒素雰囲気下、室温で、塩化ジクロロメタン(35cm
3)の塩酸塩18(0.13g、0.63mmol)およびN-tert-ブトキシカルボニル-グリシン19(0.14g、0.82mmol)の溶液に、乾燥トリエチルアミン(0.28cm
3、2.02mmol)を滴下し、10分間撹拌した。ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド(BoPCl、97%)(0.20g、0.80mmol)を添加し、19.5時間撹拌した後、10%塩酸水溶液(35cm
3)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(35cm
3)で連続的に洗浄し、乾燥し(MgSO
4)、濾過し、乾固まで真空蒸発させた。得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(40%酢酸エチル-ヘキサン)により精製し、
ジペプチド20(0.09g、45%)を淡黄色油として得た。 [α]
D +33.8 (CH
2Cl
2中の
c 0.83); nmax (フィルム)/cm
-1 3419, 5 3075, 2977, 2930, 2874, 1739, 1715, 1656, 1499, 1434, 1392, 1366, 1332, 1268, 1248, 1212, 1168, 1122, 1051, 1026, 1003, 943, 919, 867, 830, 779, 739, 699 および679; δH (300 MHz, CDCl
3) 1.42 [9H, s, C(CH
3)
3], 1.93-2.08 (4H, m, Proβ-H
2 およびProγ-H
2), 2.59-2.67 (1H, m, C
H
A
H
BCH=CH
2), 3.09-3.16 (1H, m, CH
A
H
B
CH=CH
2), 3.35-3.44 (1H, m, Proδ-
H
A
H
B), 3.56-3.62 (1H, m, Proδ-H
A
H
B
), 3.70 (3H, s, OCH
3), 3.89 (2H, d,
J 4.2, Glyα-H
2), 5.06-5.11 (2H, m, CH=C
H
2), 5.42 (1H, br s, Gly-NH) および5.58-5.72 (1H, m, C
H=CH
2); δC (75 MHz, CDCl
3) 23.7 (CH
2, Proγ-C), 28.3 [CH
3, C(
CH
3)
3], 35.0 (CH
2, Proβ-C), 37.6 (CH
2,
CH
2CH=CH
2), 43.3 (CH
2, Glyα-C), 47.5 (CH
2, Proδ-C), 52.5 (CH
3, OCH
3), 68.8 (quat., Proα-C), 79.5 [quat.,
C(CH
3)
3], 119.4 (CH
2, CH=
CH
2), 132.9 (CH,
CH=CH
2), 155.7 (quat., NCO
2), 166.9 (quat., Gly-CON) および173.8 (quat.,
CO
2CH
3);
m/z (EI
+) 326.1845 (M
+. C
16H
26N
2O
5 は326.1842を必要).
(8aS)-アリル-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-1,4-ジオン(環式G-2アリルP)式II
ジペプチド20(0.09g、0.28mmol)のジクロロメタン(9cm
3)溶液にトリフルオロ酢酸(1cm
30.013mmol)を室温で滴下し、反応混合物を窒素雰囲気下で1時間撹拌した。この溶液を減圧下で蒸発させて無色油を得、これをジクロロメタン(10cm
3)に溶解し、乾燥トリエチルアミン(0.096cm
3、0.69mmol)を添加し、4.5時間撹拌した後、再びトリエチルアミン(0.096cm
3、0.69mmol)を添加した。反応混合物を一晩撹拌した後、濃縮して乾燥させて、得られた緑色油をフラッシュカラムクロマトグラフィー(10% CH
3OH-CH
2Cl
2)により精製し、
環式G-2アリルPp(20mg、37%)を灰白色固形物として製造した。mp 106-109℃; [α]
D -102.7 (CH
2Cl
2中の
c 0.95); nmax (CH
2Cl
2)/cm-1 3456, 3226, 2920, 1666, 1454, 1325, 1306, 1299, 1210, 1133, 1109, 1028, 1010, 949, 928, 882, 793, 761 および733; δH (400 MHz, CDCl
3) 1.92-2.01 (2H, m, Proγ-H
2), 2.09-2.16 (2H, m, Proβ-H
2), 2.39-2.56 (2H, m, C
H
2CH
2=CH
2), 3.46-3.53 (1H, m, Proδ-
H
A
H
B), 3.78-3.87 (2H, m, Proδ-H
A
H
B
およびGlyα-
H
A
H
B), 4.09 (1H, d,
J 17.2, Glya-H
A
H
B
), 5.16-5.20 (2H, m, CH=C
H2), 5.73-5.84 (1H, m, C
H=CH2) および7.17 (1H, br s, N-H); δC (100 MHz, CDCl
3) 20.1 (CH
2, Proγ-C), 34.1 (CH
2, Proβ-C), 41.7 (CH
2,
CH
2CH
2=CH
2), 44.9 (CH
2, Proδ-C), 46.4 (CH
2, Glyα-C), 67.2 (quat., Proα-C), 120.9 (CH
2, CH=
CH
2), 131.0 (CH,
CH=CH
2), 163.4 (quat., NCO) および171.7 (quat., CONH);
m/z (EI+) 195.1132 (M
+. C
10H
15N
2O
2は5 195.1134を必要).
【0149】
実施例4:
(8aS)-メチル-スピロ[シクロペンタン-1,3(4H)-テトラヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン]-1,4(2H)-ジオン(環式シクロペンチル-G-2-MeP)式IIIの合成
【化24】
スキーム4:試薬、条件、および収率:(i)Et3N、HOAt、CIP、1,2-ジクロロエタン、83℃、N2、19時間(23%);(ii)10%Pd/C、CH3OH、室温、17時間(65%)
N-ベンジルオキシカルボニル-1-アミノシクロペンタン-1-カルボン酸(21)
0℃で、1-アミノシクロペンタンカルボン酸(Fluka)(0.20g、1.54mmol)および炭酸ナトリウム(0.49g、4.64mmol)の水溶液(5cm
3)に、クロロギ酸ベンジル(0.29g、1.1mmol)のジオキサン5(2.5cm
3)溶液を滴下した。室温で一晩撹拌を続け、反応混合物をジエチルエーテルで洗浄した。水層を2M塩酸で酸性化し、酢酸エチルで抽出し、乾燥した後(Na
2SO
4)、濾過し、溶媒を除去して
ウレタン21(0.253g、62%)を静置固化油として得た。
1H NMR分析により、ウレタン21は、配座異性体の70:30混合物であることが示された(この比率は、それぞれδ5.31および7.29-7.40での副配座異性体と主配座異性体のN-Hプロトンに帰属される共鳴積分から推定される)。mp 70-80 °C (lit.1 82-86 °C, 酢酸エチル, 石油エーテル); δH (400 MHz; CDCl
3; Me
4Si) 1.83 (4H, br s, 2 x シクロペンチル-H
2), 2.04 (2H, br s, シクロペンチル-H
2), 2.20-2.40 (2H, m, シクロペンチル-H
2), 5.13 (2H, br s, OC
H
2Ph), 5.31 (0.7H, br s, N-H) および7.29-7.40 (5.3H, m, Ph およびN-H*); δC (100 MHz; CDCl
3) 24.6 (CH
2, シクロペンチル-C), 37.5 (CH
2, シクロペンチル-C), 66.0 (quat., シクロペンチル-C), 66.8 (CH
2, O
CH
2Ph), 128.0 (CH, Ph), 128.1 (CH, Ph), 128.4 (CH, Ph), 136.1 (quat, Ph), 155.8 (quat., NCO
2) および179.5 (quat., CO
2H).
N-ベンジルオキシカルボニルメチルシクロペンチル-グリシル-L-2-メチルプロリン酸(22)
塩酸塩10(78mg、0.43mmol)、カルボン酸21(0.15g、0.56mmol)および1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(Acros)(15mg、0.11mmol)の乾燥1,2-ジクロロエタン(24cm
3、1.4mmol)の溶液に、乾燥トリエチルアミン(0.19cm
3、1.4mmol)を窒素雰囲気下、室温で滴下し、反応混合物を10分間撹拌した。2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリジンヘキサフルオロリン酸塩(CIP)(Aldrich)(0.12g,0.43mmol)を添加し、得られた溶液を還流下で19時間加熱した後、10%塩酸水溶液(30cm
3)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30cm
3)で順次洗浄し、乾燥し(MgSO
4)、濾過し、乾固まで真空蒸発させた。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(60%酢酸エチル-ヘキサン)により精製し、
アミド22(39mg、23%)を白色固体として得た。
13C NMR分析により、アミド22はウレタン配座異性体の3:1
トランス:シス混合物であることが示された(この比は、δ154.1と155.7での主配座異性体と副配座異性体のウレタンカルボニル-C原子に帰属する共鳴相対強度から推定される)。mp 200-203℃; [α]
D -54.5 ( CH
2Cl
2中の
c 1.52); nmax (フィルム)/cm
-1 3432, 3239, 5 3042, 2953, 1736, 1712, 1627, 1540, 1455, 1417, 1439, 1374, 1282, 1256, 1216, 1194, 1171, 1156, 1136, 1100, 1081, 1042, 1020, 107, 953, 917, 876, 756 および701; δH (400 MHz, CDCl
3) 1.33-1.53 (3H, br m, Proα-CH
3), 1.62-2.20 (11H, m, Proβ-H
2, Proγ-H
2 および7 x シクロペンチル-H), 2.59-2.71 (1H, br m, 1 x シクロペンチル-H), 3.31-3.42 (1H, br m, Prod-
H
A
H
B), 3.58-3.79 (4H, br m, OCH
3 およびProδ-H
A
H
B
), 4.92-5.17 (3H, m, N-H およびOC
H
2
Ph) および7.27-7.42 (5H, s, Ph); δC (100 MHz, CDCl
3) 21.7 (CH
3, Proα-CH
3), 24.1* (CH
2, シクロペンチル-C), 24.2 (CH
2, シクロペンチル-C), 24.4 (CH
2, Proγ-C), 24.5 (CH
2, シクロペンチル-C), 36.4 (CH
2, シクロペンチル-C), 37.1 (CH
2, シクロペンチル-C), 37.2* (CH
2, シクロペンチル-C), 37.7 (CH
2, Proβ-C), 38.2* (CH
2, シクロペンチル-C), 48.5 (CH
2, Proδ-C), 52.1 (CH
3, OCH
3), 66.6 (CH
2, O
CH
2Ph), 66.9 (quat., Proα-C), 67.2 (quat., Glyα-C), 127.8 (CH, Ph), 128.2 (CH, Ph), 128.4 (CH, Ph), 136.6 (quat., Ph), 154.1 (quat., NCO
2), 155.7* (quat., NCO
2), 170.5 (quat., Gly-CO) および174.7 (quat.,
CO
2CH
3);
m/z (EI+) 388.1991 (M
+. CC
21H
28N
2O
5 は388.1998を必要).
(8aS)-メチル-スピロ[シクロペンタン-1,3(4H)-テトラヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン]-1,4(2H)-ジオン(環式シクロペンチル-G-2MeP)式III
アミド22(54mg、0.14mmol)のメタノール(4.6cm3)溶液に10%Pdの活性炭(2.2mg、0.021mmol)を添加し、水素ガスで容器を洗浄した。得られた懸濁液を水素雰囲気下で17時間激しく撹拌した後、メタノール(15cm3)を用いて珪藻土(Celite 登録商標)マットで濾過した。濾液を減圧下で濃縮乾固して黄色の半固体を得、逆相C18フラッシュカラムクロマトグラフィー(0~10% CH3CN/H2;勾配溶離)により精製し、環式シクロペンチル-G-2MeP(20mg、65%)を黄色固体として得た。mp 160-163℃; [α]D -97.9 (CH2Cl2中のc 1.61 ); nmax (フィルム)/cm-1 3429, 2956, 2928, 2856, 1667, 1643, 1463, 1432, 1373, 1339, 1254, 1224, 1175, 1086, 1048, 976, 835, 774 および730; δH (300 MHz, CDCl3) 1.47 (3H, br s, 8a-CH3), 1.56-2.19 (11H, m, 8-H2, 7-H2 および7 x シクロペンチル), 2.58-2.67 (1H, br m, 1 x シクロペンチル), 3.48-3.56 (1H, m, 6-HAHB), 3.72-3.82 (1H, m, 6-HAHB) および6.56 (1H, br s, N-H); δC (75 MHz, CDCl3) 19.9 (CH2, 7-C), 24.6 (CH2, シクロペンチル), 24.92 (CH3, 8a-CH3), 24.93 (CH2, シクロペンチル), 36.0 (CH2, 8-C), 38.7 (CH2, シクロペンチル), 41.9 (CH2, シクロペンチル), 44.8 (CH2, 6-C), 64.3 (quat., 8a-C), 66.8 (quat., 3-C), 168.3 (quat., 4-C) および172.2 (quat., 1-C); m/z (EI+) 222.1369 (M+. C12H18N2O2は222.1368である必要がある。).
動物モデルおよび臨床研究
下記の薬理学的研究により、環式G-2アリルPがプラダー・ウィリ症候群(PWS)の症状軽減に有効であることが証明された。これらは限定的なものではなく、本発明の他の組成物および方法は、過度の実験なしに開発することができる。これらの組成物および方法のすべては、本開示の一部であると考えられる。以下のすべての実験は、チリ大学の動物倫理委員会または同等の規制当局が承認したガイドラインに基づいて作成されたプロトコルを使用して行われた。
【0150】
実施例5:経口投与後のcG2-アリルPの脳への送達
インビボ研究では、オスのSprague Dawleyラット(14週齢)にcG-2-アリルP(100mg/kgまたは200mg/kg)を単回経口強制経口投与した。投与後1.5および4時間で脳脊髄液(CSF)および全血を採取し、投与後4時間で脳組織を採取し、cG-2-アリルP曝露を評価した。下記表1は、投与1.5時間後のCSFおよび血液中の血液、CSFおよび脳cG-2-アリルPを示している。
【表1】
単回経口投与後1.5時間の血液および脳脊髄液中のcG-2-アリルP濃度は、4時間の血液、脳脊髄液および脳中のcG-2-アリルP濃度にほぼ比例して増加した。投与後4時間のcG-2-アリルPの血中および脳組織中の濃度はほぼ同等であった。
【0151】
実施例6:プラダー・ウィリ症候群モデルマウスにおけるcG-2-アリルPの作用
A.マウスモデルC57BL/6-Magel2tm1Stw/J Jackson在庫番号:009062
マウス遺伝子座7qB4/B5(ヒト染色体位置15q11~q13のプラダー・ウィリ領域と同一)は、父系で所見された刷り込み遺伝子
Magel2、Ndn、Mkrn3およびPeg12のクラスターを含む。母方の刷り込みは
Magel2対立遺伝子を沈黙するので、父方から受け継いだ
Magel2対立遺伝子のみが発現する。統を維持するために、ヘテロ接合性の雌を野生型の雄(またはC57BL/6J近交系の雄)と交配させた。結果として生じる子孫は異常な表現型を持たないからである。「
Magel2-ヌル」子孫(母系と父系
Magel2の対立遺伝子はいずれも機能しない)を得るために、野生型の雌をヘテロ接合性の雄と交配させた。インプリント/サイレンシングされた野生型対立遺伝子の母親からの伝達と、
Magel2-lacZ(ヌル)対立遺伝子の父親からの伝達が可能になる。
Magel2-ヌルマウスは、概日リズムと代謝、総活動量、摂食量、離乳前の体重、雌雄の生殖能力を破壊するだけでなく、離乳後の肥満の増加や行動の変化を引き起こした。このC57BL/6J遺伝子を背景とする
Magel2ヌルマウスは、プラダー・ウィリ症候群を再現した。Magel2-ヌル動物における遺伝子変異はヒトにおける遺伝子変異と同じであるため、Magel2-ヌルマウスにおける研究は、ヒトに対する化合物の影響を合理的に予測することができる。
B.実験設計
インビボ実験は、P60齢のC57BL/6-Magel2tm1Stw/J(Magel2-ヌル)マウスと明期の野生型同腹子で行われた(対照としてMagel2の野生型同腹子を用いた)。研究1および2では、治療群あたり10匹のマウスを、研究3では、群あたり6匹のマウスを用いた。研究1:C57BL/6-Magel2tm1Stw/J(Magel2-ヌル)マウスを行動アッセイにより評価した。研究2では、Magel2ヌルマウスにおいて、肥満およびインスリンレベルの治療におけるcG-2-アリルPの有効性をテストした。研究3では、Magel2-ヌルマウスのIGF-1レベルをテストした。ヒトも同様の遺伝異常を有することから、Magel2ヌルマウスを用いた研究は、式I、II、IIIおよびIVの化合物がプラダー・ウィリ症候群のヒトに及ぼす影響を合理的に予測することができる。
実験は、1986年の英国動物法(科学的手法)の要件に基づいて実施された。
マウスを5匹ずつプラスチック製のケージ(35×30×12cm)で飼育し、試験開始前に少なくとも1週間動物施設に慣らした。室温(21℃±2℃)、相対湿度(55%±5%)、12時間の明暗サイクル(午前7時から午後7時まで点灯)、空気交換(1時間あたり16回)を自動的に制御した。動物には市販の餌ペレットと水を自由に摂取させた。
テストはサーカディアンリズム周期の照明段階で実施され、テストの順序は、最も負荷の高いテストを最後に実施するという原則に基づいて決定された。アッセイは、
Magel2-ヌルマウスの本来の行動特性を再現、拡張するように設計された。
Magel2ヌル野生型対照マウスには、試験前に1日1回、6週間投与し、cG-2-アリルP(NNZ2591)投与後30分後に試験を行った。研究群と治療マトリックスは、以下の表2に記載されている。
【表2】
TransnetXY自動遺伝子タイピング(www.transnetyx.com/)。TRANSNETYX、INC.、8110 Cordova Rd.Suite 119、Cordova、TN 38016、USAをジェノタイピングに使用した
すべての実験は、被験体が遺伝子型や薬物治療について知らない状態で行われた。別々の研究者が投与溶液を調製およびコード化し、マウスを研究治療群に割り当て、動物に投与し、行動データを収集した
【0152】
実施例6a:オープンフィールドの活動低下
cG-2-アリルPがPWSにおける活動低下の治療に有効であるかどうかを評価するため、オープンフィールド研究を行った。Magel2-ヌルマウスは、WT同腹子よりもオープンフィールドでの活動性が低く、これは運動能力の低下を反映していた。
移動距離と活動時間を測定した実験結果を、それぞれ
図2、
図3に示す。
相対的な移動距離または活動的に費やした時間が縦軸に示され、各治療群の平均が横軸に示された。ビークルのみで治療した野生型(WT)マウス(左欄)は、100%移動するか、または100%の活動を有するとみなされた。
Magel2-ビークルのみで治療したヌルマウス(左から2番目の欄)は、移動距離と活動時間が有意に低かった。cG-2-アリルPを100mg/kgまたは200mg/kgで治療したすべての群は、ビークルで治療した野生型群と変わらず、100mg/kgまたは200mg/kgは
Magel2ヌルマウスの軽度から中程度の活動低下を正常化し、野生型マウスには影響を及ぼさないことを示した。
オープンフィールド(活動低下)-移動距離
ANOVA=分散分析、ns=重要ではない、WT=野生型同腹子対照;
****=p<0.0001
ANOVAの概要
【表3】
Sidakの多重比較検定 概要P値
【表4】
オープンフィールド(活動低下)-運動性
ANOVAの概要
【表5】
Sidakの多重比較検定 概要P値
【表6】
【0153】
実施例6b:巣作り
小型げっ歯類にとって、巣は保温、繁殖、庇護の点で重要である。巣作りは、マウスが子どもを育てるために必要な活動であり、社会的適応や日常生活活動の指標となる。通常、巣作りできなかったなどの巣作り行動の変化は、健康や福祉の変化を示す。巣作り行動は多くの病理疾患状態における遺伝子突然変異に敏感である。
Magel2-ヌルマウスでは、巣作り行動が損なわれた。そこで、cG-2-アリルPが巣作り品質を回復できるかどうかを確かめるために、一連の研究が行われた。結果を
図4に示す。縦軸は1-5段階の巣作り品質を示し、横軸は各処理群の平均値を示している。
ビークルで治療した野生型マウスは約5の巣作り質量を示した(左欄)。対照的に、ビークルのみで治療した
Magel2-ヌルマウス(左から2列目)は、構築した巣の質が著しく低かった。cG-2-アリルPを100mg/kgと200mg/kgで治療したすべての群は野生型群と変わらず、いずれの用量も
Magel2ヌルマウスの異常巣構築を正常化し、野生型マウスには影響を与えなかったことが示された。
巣作り
ANOVA=分散分析、ns=重要ではない、WT=野生型同腹子対照;
****=p<0.00001。
ANOVAの概要
【表7】
Sidakの多重比較検定 概要P値
【表8】
【0154】
実施例6c:社会的嗜好および社会的交流
プラダー・ウィリ症候群の人は、そうでない人と比較して、社会的行動に欠陥が見られた。Magel2-ヌルマウスの社会的行動の欠陥を評価するために、2つのテストが実施された。
社会的嗜好の分割テストは、使い慣れたマウスに対するオブジェクトの嗜好を測定した。テスト結果を
図5に示す。
Magel2-ビークルのみで治療されたヌルマウス(左欄2)は、ビークルのみで治療された野生型(WT)マウス(左欄)よりも、被験体に対する嗜好度が有意に高いことを示した。cG-2-アリルPを100mg/kgまたは200mg/kgで治療したすべての群は、ビークルで治療した野生型群と変わらず、100mg/kgまたは200mg/kgは、
Magel2ヌルマウスのこのような社会的行動の欠陥を正常化し、野生型マウスには影響を及ぼさないことを示した。
社会的嗜好
ANOVA=分散分析、ns=重要ではない、WT=野生型同腹子対照;
****=p<0.0001
ANOVAの概要
【表9】
Sidakの多重比較検定 概要P値
【表10】
社会的交流のスニッフィングテストは、スニッフィングイベントの数を測定した。テスト結果を
図6に示す。
Magel2-ビークルのみで治療されたヌルマウス(左欄2)は、ビークルのみで治療された野生型(WT)マウス(左欄)に比べてスニッフィングイベントが有意に少ないことを示した。cG-2-アリルPを100mg/kgまたは200mg/kgで治療したすべての群は、ビークルで治療した野生型群と変わらず、100mg/kgまたは200mg/kgは、
Magel2ヌルマウスのこのような社会的行動の欠陥を正常化し、野生型マウスには影響を及ぼさないことを示した。
社会的交流
ANOVA=分散分析、ns=重要ではない、WT=野生型同腹子対照;
****=p<0.0001
ANOVAの概要
【表11】
Sidakの多重比較検定 概要P値
【表12】
【0155】
実施例6d:ノベルオブジェクト探索(NOR)
NORテストは認知能力を評価するために用いられ、マウスは慣れ親しんだ物体よりも新しい物体の探索により多くの時間を費やす傾向があることに基づいている。Magel2-ヌルマウスは、既知物体と新規物体の識別能力の欠如を示した。NORテストの結果を
図7に示す。Magel2-ビークルのみで治療したヌルマウス(左欄2)は、ビークルのみで治療した野生型(WT)マウス(左欄)と比較して、新しい相手との時間が有意に減少した。100mg/kgまたは200mg/kgのcG-2-アリルPで治療したすべての群は、ビークルで治療したWT群と変わらず、100mg/kgまたは200mg/kgは、Magel2ヌルマウスのこの認知的欠陥を正常化し、WTマウスには影響を及ぼさないことを示した。
ノベルオブジェクト探索
ANOVA=分散分析、ns=重要ではない、WT=野生型同腹子対照;
****=p<0.0001
ANOVAの概要
【表13】
Sidakの多重比較検定 概要P値
【表14】
【0156】
実施例6e:高架十字迷路
高架十字迷路テストは、不安に関連する行動を評価するために使用される。正常なマウスは、両腕を広げるよりも、両腕を固く閉じることを好む傾向を示した。各群のオープンアーム時間を
図8に示す。ビークルのみで治療された
Magel2ヌルマウス(左欄2、
図8)は、ビークルのみで治療された野生型(WT)マウス(左欄)よりも、オープンアーム時間が有意に多くかかったことを示した。cG-2-アリルPを100mg/kgまたは200mg/kgで治療したすべての群は、ビークルで治療した野生型群と変わらず、100mg/kgまたは200mg/kgは、
Magel2ヌルマウスにおけるこのような欠陥を正常化し、野生型マウスには影響しないことを示した。
高架十字迷路(オープンアーム時間)
ANOVA=分散分析、ns=重要ではない、WT=野生型同腹子対照;
****=p<0.0001
ANOVAの概要
【表15】
Sidakの多重比較検定 概要P値
【表16】
【0157】
実施例6f:Magel2-ヌルマウスにおける肥満およびホルモン異常の治療におけるcG-2-アリルPの有効性
プラダー・ウィリ症候群は、ヒトの代謝やホルモンの異常と関連している。Magel2-ヌルマウスは、プラダー・ウィリ症候群の患者の代謝とホルモンの側面の一部を再現した。cG-2-アリルPが代謝およびホルモンの正常化作用を有するか否かを判定するための実験を行った。
雄Magel2-ヌルマウスは、6~18週齢において同腹子の野生型対照と比較して同様の体重増加曲線を示したが、雌Magel2-ヌルマウスでは経時的に有意な体重増加が認められた。本研究では、雌Magel2-ヌルマウスは同腹子の野生型対照と比較して体重が有意に増加したことから、雌Magel2-ヌルマウスを用いた。
A.Magel2-ヌルマウスの脂肪量に対するcG-2-アリルの影響
各治療群の平均脂肪量を測定したものを
図9に示す。
Magel2-ビークルのみで治療されたヌルマウス(左欄2)は、ビークルのみで治療された野生型マウス(左欄)よりも脂肪量が有意に高かった。cG-2-アリルP(200mg/kg)で治療された
Magel2-ヌルマウスはWT群と変わらず、この用量が
Magel2-ヌルマウスの脂肪量を正常化することが示された。cG-2-アリPで治療されたWTマウスには影響を与えなかった。
脂肪量への影響
ANOVA=分散分析、ns=重要ではない、WT=野生型同腹子対照;
****=p<0.0001
ANOVAの概要
【表17】
Sidakの多重比較検定 概要P値
【表18】
B.Magel2-ヌルマウスのインスリンレベルに対するcG-2-アリルの影響
群ごとにインスリンを測定した。結果を次の表3([表19])に示す。ビークル単独で治療されたMagel2-ヌルマウスは、ビークル単独で治療されたWTマウスよりも有意に高いインスリンレベルを示した。cG-2-アリルP(200mg/kg)で治療されたMagel2-ヌルマウスはWT群と変わらず、この用量がMagel2-ヌルマウスのインスリンレベルを正常化することが示された。cG-2-アリルPで治療されたWTマウスには影響を与えなかった。
表3
【表19】
ns=重要ではない、WT=野生型同腹子対照
【0158】
実施例6g:Magel2-ヌルマウスにおけるIGF-1レベル
プラダー・ウィリ症候群は、ヒトIGF-1レベルの変化と関連している可能性がある。各群の循環IGF-1レベルは、
図10に示されるように測定された。ビークルのみで治療されたMagel2-ヌルマウス(左欄2)は、ビークルのみで治療された野生型マウス(左欄)よりも有意に低い循環IGF-1を示した。cG-2-アリルP(200mg/kg)で治療したMagel2-ヌルマウスはWT群と変わらず、この用量がMagel2-ヌルマウスの循環IGF-1レベルを正常化することが示された。cG-2-アリルPで治療されたWTマウスには影響を与えなかった。
IGF-1レベル
ANOVA=分散分析、ns=重要ではない、WT=野生型同腹子対照;
****=p<0.0001
ANOVAの概要
【表20】
Sidakの多重比較検定 概要P値
【表21】
【0159】
実施例7:プラダー・ウィリ症候群の人に対するシクロ-L-グリシル-L-2-アリルプロリンの作用
方法
提案された研究では、30人のプラダー・ウィリ症候群の被験体が募集された。被験体は4歳から20歳までの女性と男性(平均値=12.1SD=4.4)である。すべての被験体で、15番染色体の父系コピー上の15q11-q13領域の機能喪失が確認され、行動と体性症状の評価に基づくプラダー・ウィリ症候群の診断基準にも適合した。被験体の大部分(72%)はスクリーニング時にrhGH治療を受けていた。被験者には、併用薬が研究前の少なくとも6週間安定しているように指示された。
この研究は、被験者をプラセボに1:1:1で無作為化した無作為化二重盲検プラセボ対照並行研究で、6mg/kgまたは12mg/kgのシクロ-L-グリシル-L-2-アリルプロリン経口液体を1日2回、84日間投与された。
被験体は、臨床試験に使用される過食症アンケート(HQ-CT)、臨床全般重症度(CGI-S)、変化の介護者全般印象(CaGI-I)、異常行動チェックリスト(ABC)およびABCサブ尺度、対人応答性尺度、反復行動尺度-改訂版(RBS-R)、PWS不安および苦悩アンケート(PADQ)、小児イェール・ブラウン強迫症尺度(CY-BOCS)をベースラインに使用して試験を実施した。また、ベースライン時に、体脂肪評価(BFA)、空腹時血糖値、血中脂質(HDL、LDL、VLDL、トリグリセリド)、血清IGF-1(総結合性IGF-1結合タンパク質-3[IGFBP-3])、空腹時インスリン、インスリン抵抗性恒常性モデル評価(HOMA-IR)を実施した。
シクロ-L-グリシル-L-2-アリルプロリン治療の効果は、各測定のベースラインスコアの変化に変化の臨床全般印象(CGI-I)を加えた反復共分散分析(ANCOVA)により分析した。安全性の評価には、介護者からの有害イベント報告、標準臨床検査、心電図(ECG)のパネルを使用した。
示唆的な結果
【0160】
プラセボといずれの用量との間で、治療中に発生した有害イベントの発生率に差はなく、臨床検査や心電図測定における治療に関連した異常パターンもなかった。すべての有害イベントは持続時間が短く、重症度は軽度であった。重篤な有害イベントは報告されていない。すべての被験体が研究を終えた。
有効性分析の結果は次のとおりである。
・CGI-I測定により、実薬群とプラセボ群では改善に用量依存性、統計学的有意差が認められた。
・プラダー・ウィリ苦悩アンケート(PADQ)では、実薬群とプラセボ群のベースラインに対する変化は用量依存性と統計学的有意差があった。
・CY-BOCSのベースラインに対する変化は、実薬群とプラセボ群で統計的に有意差があった。
・遊離IGF-1では、ベースラインに対する実薬群とプラセボ群の変化に用量依存性と統計学的有意差が認められた。
・実薬群とプラセボ群の間で空腹時血糖値とBFAが低下する傾向が見られた。
【国際調査報告】