(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ローラー圧縮コンクリート用途のための潤滑添加剤としてセルロースエーテルを含有するドライミックス及びセメント並びにそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240214BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20240214BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20240214BHJP
C04B 24/18 20060101ALI20240214BHJP
C04B 24/22 20060101ALI20240214BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20240214BHJP
E01C 19/23 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B20/00 B
C04B24/38 Z
C04B24/18 Z
C04B24/22 Z
C04B24/26 E
E01C19/23
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548901
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 US2022016072
(87)【国際公開番号】W WO2022177807
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ファン、イー
(72)【発明者】
【氏名】トイアーカウフ、イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ラドラー、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】サバ、ステイシー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】コッピ、カート エイ.
(72)【発明者】
【氏名】キーナン、ショーン エム.
(72)【発明者】
【氏名】レビン、ジェシカ アール.
(72)【発明者】
【氏名】サムラー、ロバート エル.
【テーマコード(参考)】
2D052
4G112
【Fターム(参考)】
2D052AA01
2D052AB01
2D052BB00
4G112PA04
4G112PB23
4G112PB25
4G112PB31
4G112PB40
(57)【要約】
本発明は、低粘度セルロースエーテル(歪み制御回転レオメーター(例えば、ARES-G2(商標)、TA Instruments)を使用して、1重量%の固形分、20C及び514s-1の剪断速度において50~750mPa・s)、分級された骨材、及び水硬性セメントのドライミックス組成物、又はそのためのセメント、分級された骨材及びセルロースエーテルを含む混和剤の粒状湿式セメント組成物を提供する。湿式粒状水硬性セメント組成物は、アスファルト組成物のように挙動し、0又はほぼ0のスランプ、高い潤滑性、及び粒状湿式セメント組成物の総重量に基づいて、5重量%~13重量%未満の水、又は好ましくは5%超~10.5重量%の水を有する。低粘度セルロースエーテルは、圧縮を損なうことのない、また空気同伴を引き起こすことのない潤滑性を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライミックス組成物及び水からの粒状湿式セメント組成物であって、
前記ドライミックス組成物の総重量に基づいて、10~23重量%の量の水硬性セメントと、
前記ドライミックス組成物の重量に基づいて、70~89.95重量%の量の分級された骨材であって、前記分級された骨材が、i)200ミクロン~20mmの篩粒度を有する1つ以上の粗骨材と、ii)70ミクロン~3000ミクロン未満の篩粒度を有する1つ以上の細骨材とを含み、前記分級された骨材中の前記i)総粗骨材の前記ii)総細骨材に対する重量比が、4:1~0.9:1である、分級された骨材と、
前記ドライミックス組成物の総重量に基づいて、0.05~1.3重量%の量のセルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物であって、前記セルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物が、歪み制御回転レオメーターを使用し、10点/ディケードで0.03~300/sの歪み速度掃引を使用して決定されるような、各セルロースエーテルについて2回の試験の平均として表されるような、1重量%のセルロースエーテル固形分で、20℃、及び514s
-1の剪断速度にて50~750mPa・sの範囲の水溶液粘度を有し、前記水溶液が前記セルロースエーテルの粉末を70℃の真空オーブン中で一晩乾燥させ、前記粉末を70℃の熱水に分散させ、撹拌しながらそれを室温に冷却しながら溶解させ、それを4℃で一晩冷蔵して、前記水溶液を形成することにより作製される、セルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物と、
前記粒状湿式セメント組成物の総重量に基づいて、5.0~13重量%の量の水と、を含み、
前記粒状湿式セメント組成物が、以下の式によって表されるようにセメント+水である湿式セメントで充填された空隙の百分率によって定義される、58%未満の水飽和レベルを有し、
水飽和度=(V
w+V
c)/V
V、
式中、V
wが前記湿式セメント組成物中の水の体積であり、V
cがセメントの体積V
c=mc/ρcであり、式中、mcが前記湿式セメント組成物中のセメントの質量であり、ρcが前記セメントの材料密度であり、V
Vがセメント及び水以外の各材料の粒子密度ρ
iを測定し、セメント及び水以外の各材料の総質量m
iを測定し、セメント及び水以外の全ての材料の総体積Vを測定し、それら全てを容器に注ぎ十分に混合して、次いで、空隙体積V
v=V-Σ(m
i/ρ
i)を計算することによって決定される、総混合物中の総空隙体積であり、
更に、前記粒状湿式セメント組成物が、前記ドライミックス組成物をプラスチックバッグ中で混合し、前記粉末をHobart混合ボウル中の示された量の水に添加し、速度1で15秒間2回混合し、各回混合後に停止して前記ボウルの側面をこすり、前記混合物を10分間消和させ、前記混合物を3つの等しい層で、スポンジを介して水で湿らせたステンレス鋼コーン中に注ぎ、非吸収性表面に配置し、各層を満たし、ステンレス鋼ロッドを円運動させて混合し、前記ロッドを前記コーンの側面に平行に位置決めし、垂直位置に動かして中心で仕上げ、前記湿式セメント組成物の表面を前記コーンの上部と同一平面に仕上げ、前記コーンを引き上げて前記湿式セメント組成物から離し、前記コーンの全高を測定し、測定された高さと80mmとの差を6mm以下と報告することによって30秒以内のスランプを記録することにより、高さ80mm、上部直径40mm、底部直径90mmのステンレス鋼コーン、直径9.5mm、長さ266.7mmの鋼ロッドスターラーを使用するASTM C143(2010)に従って決定されるようなスランプを有し、
なお更に、ドライミックス組成物中の全ての重量%を合計すると100%になる、粒状湿式セメント組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記粒状湿式セメント組成物の総重量に基づいて、5.0超~10.5重量%の量の水を含む、請求項1に記載の粒状湿式セメント組成物。
【請求項3】
前記セルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物が、Peltier温度コントローラー、TRIOS(商標)データ収集ソフトウェア(TA Instruments)及び同心円筒を備えるDINサンプル固定具を装備した歪み制御回転レオメーターを使用して決定されるような、10点/ディケードで0.03~300/sの歪み速度掃引を使用して、各セルロースエーテルについて2回の試験の平均として表されるような、1重量%のセルロースエーテル固形分で、20℃、及び514s
-1の剪断速度にて、80~500mPa・sの水溶液粘度を有し、前記水溶液が、前記セルロースエーテルの粉末を70℃の真空オーブン中で一晩乾燥させ、それを70℃の熱水に分散させ、撹拌しながらそれを室温に冷却しながら溶解させ、それを一晩冷蔵して(4℃)、前記水溶液を形成することによって作製される、請求項1に記載の粒状湿式セメント組成物。
【請求項4】
前記分級された骨材中の前記粗骨材が、300~2000ミクロンの篩粒度を有する第1の粗骨材と、2000ミクロン~18mmの篩粒度を有する第2の粗骨材との混合物を含み、更に、前記第2の粗骨材の篩粒度の前記第1の粗骨材の篩粒度に対する比が、15:1~1.5:1の範囲である、請求項1に記載の粒状湿式セメント組成物。
【請求項5】
ポリカルボキシレートエーテル含有超可塑剤、ナフタレンスルホネート含有超可塑剤、リグノスルホネート含有超可塑剤、又はそれらの混合物から選択される1つ以上の超可塑剤を更に含む、請求項1に記載の粒状湿式セメント組成物。
【請求項6】
高さ80mm、上部直径40mm、底部直径90mmのステンレス鋼コーン、及び直径9.5mm、長さ266.7mmの鋼ロッドスターラーを使用して、ASTM C143(2010)に従って決定されるような、4.5mm以下のスランプを有する、請求項1に記載の粒状湿式セメント組成物。
【請求項7】
前記組成物が試験される垂直応力に対してプロットされる剪断試験において、前記組成物が降伏する前記垂直応力のレベルとして取られた降伏曲線の傾きの角度として決定される22°~36.8°以下の潤滑性を有し、前記垂直応力が、ASTM D6773-16(2016)に従って予備剪断垂直応力として50,000Paを使用し、次いで垂直応力を減少させ、12,500Pa~少なくとも40,000Paの垂直応力範囲にわたって予備剪断垂直応力の%の5点/ディケードの点間隔で測定する、予備剪断垂直応力の25%~80%で変化する、請求項1に記載の粒状湿式セメント組成物。
【請求項8】
36.0°以下の潤滑性を有する、請求項7に記載の粒状湿式セメント組成物。
【請求項9】
前記1つ以上のセルロースエーテルのうちの少なくとも1つが、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、メチル、及びそれらの組み合わせから選択される側鎖を有する、請求項1に記載の粒状湿式セメント組成物。
【請求項10】
前記1つ以上のセルロースエーテルのうちの少なくとも1つが、0~0.4の範囲のヒドロキシエチル含有量(MS)、及び1.2~1.8のメトキシル含有量(DS)を有するヒドロキシエチルメチルセルロースエーテルであるか、又は1.4~2.4のヒドロキシエチル含有量(MS)を有するヒドロキシエチルセルロースである、請求項9に記載の粒状湿式セメント組成物。
【請求項11】
方法であって、
水、水硬性セメント及び分級された骨材を混合して湿式セメント組成物を形成することによって、請求項1に記載の粒状湿式セメント組成物を形成することと、
前記セルロースエーテル組成物及び任意の超可塑剤を乾燥粉末としてそれに添加し、ポンプ又はパグミルミキサー中で混合することと、
前記粒状湿式セメント組成物を型又は型枠なしで基材に適用することと、次いで
前記湿式セメント組成物を舗装又はロール掛けして、コンクリート又はセメント層を形成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラー圧縮コンクリート(roller compacted concrete)(RCC)において使用するためのドライミックス組成物、及びそれから作製される低スランプ又は0スランプの湿式セメント組成物、並びに湿式セメント組成物を舗装することを含む、方法に関する。より詳細には、本発明は、ドライミックス組成物であって、水硬性セメント、砂などの骨材、石灰石などの微粉化粒状材料、及びドライミックス組成物の総重量に基づいて0.05~1.3重量%、又は好ましくは0.08~1.1重量%の1つ以上のセルロースエーテルを含み、ドライミックス組成物及び粒状湿式セメント組成物の総重量に基づいて最大13重量%又は最大10.5重量%の水から作製された湿式セメント組成物が、ASTM C143(2010)に従って決定されるような、高さ80mm、上部直径40mm、底部直径90mmのステンレス鋼コーン、及び直径9.5mm、長さ266.7mmのスチールロッドスターラーを用いて、6mm未満、又は好ましくは4.5mm未満のスランプを示す、ドライミックス組成物に関する。
【0002】
ローラー圧縮コンクリート(RCC)は、二次道路に使用されてきた耐久性のある低コスト舗装技術である。従来のコンクリート舗装とは異なり、RCCは、型枠、型、又は補強材を使用することなくアスファルト舗装装置で舗装することができる。RCC道路についての使用再開は、舗装後1日程度の速さであり得るが、従来のコンクリート舗装は、道路が開通して通行する前に数週間の硬化を必要とし得る。RCCは、滑らかな外観及びコンクリート舗装の特徴的な高い耐久性を保持することができる限り、より容易な舗装プロセス及び迅速な使用再開によって望ましい選択肢となる。しかしながら、RCCは、従来のコンクリートと比較してより高い体積の骨材を有し、既知のRCC舗装の露出表面は、露出された骨材の高い面積分率を有し、舗装後の不十分な圧縮及び強度の損失のために粗く、急速な劣化を受けやすく、駐車場、産業用道路、基層、及び路肩へのRCCの使用が限定されている。
【0003】
RCCの既知のバージョンでは、圧縮及び作業性の問題は、化学混和剤の添加並びに配合の最適化によって管理されてきた。「圧縮」という用語は、水分含有量を維持しながら気泡を除去することによって材料を高密度化する行為又は結果として定義される。しかしながら、材料を舗装する際には、舗装を圧縮するための圧力を加えると、「圧密」の代替経路が生じることがあり、この場合、材料は、空隙及び水のいずれの除去によっても高密度化される。水の除去は、舗装材料に有害な影響を及ぼし、最終的に破損及び強度の損失を引き起こし得る。上部表面のみから圧縮するときに水組成の傾きを作り出すこともまた、上部における減少した水レベルがセメント硬化に悪影響を与えるので有害であり得、一方、底部における過剰な水は、膨潤状態で硬化された層をもたらし得る。しかしながら、混和剤は、それ自体がRCC組成物に限定されるセメントの流体相又はペースト相に存在するように設計された。所望の圧縮及び作業性への効果を確認するために、非常に高レベルの混和剤が必要とされ、それらを法外なコストにし、及び/又は強度若しくは作業性に悪影響を与える。高比率の混和材料成分なしで良好な圧縮を可能にするRCC形成ドライミックスを作製することが望ましい。
【0004】
Buryらの米国特許第8,377,196(B2)号は、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースの塩、カルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース、及びそれらの混合物を含むセルロースエーテルなどの少なくとも1つの剪断減粘添加剤Aと、1つの非剪断減粘添加剤Bとを含むレオロジー調整添加剤の乾式キャストセメント質組成物を開示している。組成物は、サイクル時間、仕上げの容易さ、圧縮強度、及び圧縮比の改善を可能にすることができる。しかしながら、Buryらの組成物は、型を必要とし、混合されたときにスランプをほとんど又は全く示さない組成物の提供を可能にするのに十分な粘度を現さず、いかなる圧縮コンクリート舗装ソリューションにおける使用も排除する。
【0005】
本発明によれば、本発明者らは、良好な圧縮を示し、スランプをほとんど又は全く示さず、例えばローラー圧縮又は舗装方法における使用に適した湿式セメント組成物を提供するドライミックスを提供するという課題を解決した。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、ドライミックス組成物は以下:
ドライミックス組成物の総重量に基づいて10~23重量%、好ましくは12~20重量%の量の水硬性セメント、例えば、普通ポルトランドセメント、アルミナセメント、フライアッシュ、ポゾラン、及びこれらの混合物と、ドライミックス組成物の総重量に基づいて70~89.95重量%の量の、又は好ましくは75~89.65重量%の量の分級された骨材であって、分級された骨材が、
i)500ミクロン~20mm、又は好ましくは1~18mmの篩粒度を有する1つ以上の粗骨材、例えば、砂、石灰石、砂利、花崗岩、若しくは粘土、又は好ましくは砂若しくは砂利、又は好ましくは第1の粗骨材と第2の粗骨材との組み合わせであって、第1の粗骨材が200ミクロン~3000ミクロンの篩粒度を有し、第2の粗骨材が2000ミクロン~20mmの篩粒度を有し、第1の粗骨材の篩粒度に対する第2の粗骨材の篩粒度の比が15:1~1.5:1、又は好ましくは10:1~2:1の範囲である、組み合わせ、及び
ii)40~3000ミクロン未満、又は好ましくは70~3000ミクロンの篩粒度を有する1つ以上の細骨材、好ましくは石灰石又は砂を含む、分級された骨材と、
ドライミックス組成物の総重量に基づいて、0.05~1.3重量%、又は好ましくは0.08~1.1重量%、又はより好ましくは0.08%~0.35重量%の量の1つのセルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物のセルロースエーテル組成物であって、セルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物が、歪み制御回転レオメーター(好ましくは、Peltier温度コントローラー、TRIOS(商標)データ収集ソフトウェア(TA Instruments)及び同心円筒を備えるDIN(Deutsches Institut fur Normung e.V.in German meaning German Institute for Standardization)サンプル固定具を装備したARES-G2(商標)、TA Instruments,New Castle,DE)を使用し、及び10点/ディケードで0.03~300/sの歪み速度掃引を使用し、及び各セルロースエーテル組成物について2回の試験の平均を報告して決定されるような、1重量%のセルロースエーテル固形分で、20℃、514s-1剪断速度にて50~750mPa*s、又は好ましくは80~500MPa*sの範囲の水溶液粘度を有し、水溶液が、セルロースエーテルの粉末を70℃の真空オーブン中で一晩乾燥させ、それを70℃の熱水に分散させ、撹拌しながら室温に冷却しながら溶解させ、それを4℃で一晩冷蔵することによって作製される、セルロースエーテル組成物と、を含み、
分級された骨材中の総粗骨材の総細骨材に対する重量比が、4:1~0.9:1、又は好ましくは3:1~1:1の範囲であり、
更に、全ての重量%を合計すると100%になる。本発明によるドライミックス組成物は、ポリカルボキシレートエーテル含有超可塑剤、ナフタレンスルホネート含有超可塑剤、リグノスルホネート含有超可塑剤、又はそれらの混合物から選択される1つ以上の超可塑剤、好ましくはポリカルボキシレートエーテル含有超可塑剤を更に含んでもよい。
【0007】
本発明によるドライミックス組成物において、水硬性セメントは、普通ポルトランドセメント、アルミネートセメント、ポゾラン、若しくはそれらの混合物、又は好ましくは、普通ポルトランドセメント、アルミネートセメント、若しくはそれらの混合物から選択されてもよい。
【0008】
好ましくは、本発明によるドライミックス組成物の分級された骨材において、総粗骨材の篩粒度の細骨材の篩粒度に対する比は、10:1~2:1、又は好ましくは8:1~2:1の範囲である。
【0009】
より好ましくは、本発明によるドライミックス組成物は、分級された骨材中の粗骨材として、300ミクロン~2000ミクロンの篩粒度を有する砂又は砂利などの第1の粗骨材と、2000ミクロン~18mmの篩粒度を有する砂利又は石などの第2の粗骨材との混合物を含み、第2の粗骨材の篩粒度の第1の骨材の篩粒度に対する比は、15:1~1.5:1、又は好ましくは10:1~2:1の範囲である。
【0010】
本発明によるドライミックス組成物において、1つ以上のセルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、メチル、及びこれらの組み合わせから選択される側鎖、又は好ましくはヒドロキシエチル及びメチルから選択される側鎖を有する。より具体的には、1つ以上のセルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、0~0.4の範囲のヒドロキシエチル含有量(MS)及び1.2~1.8のメトキシル含有量(DS)を有するヒドロキシエチルメチルセルロースエーテルであるか、又は1.4~2.4、若しくは好ましくは1.8~2.2のヒドロキシエチル含有量(MS)を有するヒドロキシエチルセルロースである。
【0011】
本発明によるドライミックス組成物において、超可塑剤は、存在する場合、0.1~0.5重量%のポリカルボキシレートエーテル、0.2~5.0重量%又は0.3~1.0重量%のナフタレンスルホネート若しくはリグノスルホネート含有材料、好ましくは0.1~0.5重量%のポリカルボキシレートエーテルの量で使用され得る。
【0012】
好ましくは、本発明によるドライミックス組成物は、ドライミックス組成物の総重量に基づいて、セルロースエーテル+超可塑剤の合計2重量%未満を含む。
【0013】
本発明によるドライミックス組成物は、得られる組成物の総重量に基づいて、5.0~13.0重量%、又は好ましくは5.0超~10.5重量%の量の水の別個の成分と混合される場合、本発明の第2の態様による粒状湿式セメント組成物を提供し、組成物は、ドライミックスをプラスチックバッグ中で混合し、粉末をHobart混合ボウル中の示された量の水に添加し、速度1で15秒間2回混合し、各回混合後に停止してボウルの側面をこすり、混合物を10分間消和させ、混合物を3つの等しい層で、スポンジを介して水で湿らせたステンレス鋼コーン(高さ80mm、上部直径40mm及び底部直径90mm)中に注ぎ、非吸収性表面に配置し、各層を満たし、ステンレス鋼ロッド(好ましくは長さ266.7mm及び直径9.5mm)を円運動させて混合し、ロッドをコーンの側面に平行に位置決めし、垂直位置に動かして中心で仕上げ、湿式セメント組成物の表面をコーンの上部と同一平面に仕上げ、コーンを引き上げて湿式セメント組成物から離し、コーンの全高を測定し、測定された高さと80mmとの差を6mm未満、又は好ましくは4.5mm未満と記録することによって30秒以内のスランプを報告することにより、ASTM C143(2010)に従って決定されるようなスランプを有する。
【0014】
本発明によるドライミックス組成物は、2成分組成物の1成分を含むことができ、第1の成分はドライミックス組成物を含み、第2の成分は水を含み、第1の成分又は第2の成分のいずれかは、1つ以上のセルロースエーテル、及び使用される場合、1つ以上の超可塑剤のいずれかを含む。
【0015】
本発明による第2の態様では、ドライミックス組成物及び水からの粒状湿式セメント組成物は、
ドライミックス組成物の総重量に基づいて、10~23重量%、又は好ましくは12~20重量%の量の水硬性セメント、例えば、ポゾラン、普通ポルトランドセメント、アルミネートセメント、フライアッシュ、及びそれらの混合物と、
ドライミックス組成物の総重量に基づいて、70~89.95重量%の量で、又は好ましくは75~89.65重量%の量の分級された骨材であって、分級された骨材が、
i)200ミクロン~20mmの篩粒度を有する1つ以上の粗骨材、例えば、砂、石灰石、砂利、花崗岩、若しくは粘土、又は好ましくは砂、又はより好ましくは第1の粗骨材と第2の粗骨材との組み合わせであって、第1の粗骨材が200ミクロン~3000ミクロンの篩粒度を有し、第2の粗骨材が2000ミクロン~20mmの篩粒度を有し、第2の粗骨材の篩粒度の第1の粗骨材の篩粒度に対する比が15:1~1.5:1、又は好ましくは10:1~2:1の範囲である、組み合わせ、及び
ii)40ミクロン~3000ミクロン、又は好ましくは70ミクロン~3000ミクロンの篩粒度を有する、1つ以上の細骨材、好ましくは石灰石、を含む、分級された骨材と、
0.05~1.3重量%、又は好ましくは0.08~1.1重量%、又はより好ましくは0.08%~0.35重量%の量のセルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物であって、セルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物が、歪み制御回転レオメーター(好ましくは、Peltier温度コントローラー、TRIOS(商標)データ収集ソフトウェア(TA Instruments)及び同心円筒を備えるDIN(Deutsches Institut fur Normung e.V.in German meaning German Institute for Standardization)サンプル固定具を装備したARES-G2(商標)、TA Instruments,New Castle,DE)を使用し、10点/ディケードで0.03~300/sの歪み速度掃引を使用して決定されるような、各セルロースエーテルについて2回の試験の平均として表されるような、1重量%のセルロースエーテル固形分で、20℃、514s-1剪断速度にて50~650mPa・s、又は好ましくは、80~500mPa・sの範囲の水溶液粘度を有し、水溶液が、セルロースエーテルの粉末を70℃の真空オーブン中で一晩乾燥させ、それを70℃の熱水に分散させ、撹拌しながら室温に冷却しながら溶解させ、それを4℃で一晩冷蔵することによって作製される、セルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物と、粒状湿式セメント組成物の総重量に基づいて、5.0~13.0重量%、又は好ましくは、5.0超~10.5重量%の量の水と、を含み、
湿式セメント組成物は、以下の式によって表されるように、湿式セメント又はセメント+水で充填された空隙の百分率によって定義されるように、58%未満、又は好ましくは56.5%以下の水飽和レベルを有し、
水飽和度=(Vw+Vc)/VV、
式中、Vwは湿式セメント組成物中の水の体積であり、Vcはセメントの体積であり、Vc=mc/ρcであり、式中、mcは湿式セメント組成物中のセメントの質量であり、ρcはセメントの材料密度であり、VVはセメント及び水以外の各材料の粒子密度ρiを測定し、セメント及び水以外の各材料の総質量miを測定し、セメント及び水以外の全ての材料の総体積Vを測定し、十分に混合してそれら全てを容器に注ぎ、空隙体積Vv=V-Σ(mi/ρi)を計算することによって決定される総混合物中の総空隙体積であり、
更に、分級された骨材中の総粗骨材の総細骨材に対する重量比が、4:1~0.9:1、又は好ましくは3:1~1:1の範囲であり、
更に、ドライミックス組成物中の全ての重量%を合計すると100%になる。
【0016】
本発明の粒状湿式セメント組成物によれば、総粗骨材の篩粒度の細骨材の篩粒度に対する比は、20:1~1.5:1、又は好ましくは10:1~2:1の範囲であってよい。
【0017】
より好ましくは、本発明の第2の態様による粒状湿式セメント組成物は、分級された骨材中の粗骨材として、300~3000ミクロンの篩粒度を有する砂又は砂利などの第1の粗骨材と、2000ミクロン~18mmの篩粒度を有する砂利又は石などの第2の粗骨材との混合物を含み、第2の粗骨材の篩粒度の第1の粗骨材の篩粒度に対する比は、15:1~1.5:1、又は好ましくは10:1~2:1の範囲である。
【0018】
本発明の第2の態様の粒状湿式セメント組成物によれば、湿式セメント組成物は、2成分組成物の混合物を含んでもよく、第1の成分はドライミックス組成物を含み、第2の成分は水を含み、第1の成分又は第2の成分のいずれかは、ドライミックス組成物について述べた量の1つ以上のセルロースエーテルと、使用される場合、ドライミックス組成物について述べた量の1つ以上の超可塑剤のいずれかと、を含む。
【0019】
本発明の第2の態様による粒状湿式セメント組成物は、ポリカルボキシレートエーテル含有超可塑剤、ナフタレンスルホネート含有超可塑剤、リグノスルホネート含有超可塑剤、又はそれらの混合物から選択される1つ以上の超可塑剤を更に含んでもよい。
【0020】
本発明の第2の態様による粒状湿式セメント組成物において、超可塑剤は、0.1~0.5重量%のポリカルボキシレートエーテル含有材料、0.2~5.0重量%若しくは0.3~1.0重量%のナフタレンスルホネート含有材料又はリグノスルホネート含有材料、好ましくは0.1~0.5重量%のポリカルボキシレートエーテル含有材料の量で使用されてもよく、全ての量はドライミックス組成物の総重量に基づく。
【0021】
本発明の第2の態様による粒状湿式セメント組成物は、ドライミックス組成物としての第1の成分の一部として、ポリカルボキシレートエーテル含有超可塑剤、ナフタレンスルホネート含有超可塑剤、リグノスルホネート含有超可塑剤、又はそれらの混合物から選択される1つ以上の超可塑剤を更に含む。
【0022】
本発明の第2の態様による粒状湿式セメント組成物は、水と混合されるドライミックス組成物の一部として、ポリカルボキシレートエーテル含有超可塑剤、ナフタレンスルホネート含有超可塑剤、リグノスルホネート含有超可塑剤、又はそれらの混合物から選択される1つ以上の超可塑剤を更に含んでもよい。
【0023】
好ましくは、本発明の第2の態様による粒状湿式セメント組成物は、ドライミックスをプラスチックバッグ中で混合し、粉末をHobart混合ボウル中の示された量の水に添加し、速度1で15秒間2回混合し、各回混合後に停止してボウルの側面をこすり、混合物を10分間消和させ、混合物を3つの等しい層で、スポンジを介して水で湿らせたステンレス鋼コーン中に注ぎ、非吸収性表面に配置し、各層を満たし、ステンレス鋼ロッドを円運動させて混合し、ロッドをコーンの側面に平行に位置決めし、垂直位置に動かして中心で仕上げ、湿式セメント組成物の表面をコーンの上部と同一平面に仕上げ、コーンを引き上げて湿式セメント組成物から離し、コーンの全高を測定し、測定された高さと80mmとの差を6mm以下、又はより好ましくは4.5mm以下と記録することによって30秒以内のスランプを報告することにより、高さ80mm、上部直径40mm、底部直径90mmのステンレス鋼コーン、好ましくは直径9.5mm、長さ266.7mmの鋼ロッドスターラーを使用してASTM C143(2010)に従って決定されるようなスランプを有する。
【0024】
より好ましくは、本発明の第2の態様による湿式セメント組成物は、ASTM D6773-16(2016)に従って、好ましくは、ソフトウェアRSTCONTROL95 for MS Windows(Dietmar Schulze,Wolfenbuttel,DE)によって制御される自動剪断試験機を使用し、50,000Paを予備剪断(pre-shear)垂直応力として使用し、次いで、垂直応力を低下させ、12,500Pa~少なくとも40,000Paの垂直応力範囲にわたって、予備剪断垂直応力の%の5点/ディケードの点間隔で測定する、垂直応力(横座標上)に対してプロットされた剪断試験において組成物が降伏する垂直応力の降伏曲線の傾きの角度として決定される、22°~36.8°以下、又は好ましくは26°~36°、又は36.0°以下の潤滑性を有する。
【0025】
本発明による第3の態様では、本発明の第2の態様による粒状湿式セメント組成物を製造及び使用する方法は、水、水硬性セメント及び分級された骨材を混合して湿式セメント組成物を形成することと、それにセルロースエーテル組成物及び任意の超可塑剤を乾燥粉末として添加し、ポンプ又はパグミルミキサー中で混合して、粒状湿式セメント組成物を形成することと、粒状湿式セメント組成物を型又は型枠なしで基材に適用することと、次いで湿式セメント組成物を舗装又はロール掛けして道路又は舗装などのコンクリート又はセメント層を形成することと、を含む。舗装又はロール掛けは、好ましくは熱を加えずに、蒸気なしで蒸気ローラーを使用して、又は従来のアスファルト舗装装置を使用して実施することができる。
【0026】
本発明の第3の態様の方法において、粒状湿式セメント組成物は、水と、ドライミックス組成物とを含み、ドライミックス組成物が、
ドライミックス組成物の総重量に基づいて、10~23重量%、又は好ましくは12~20重量%の量の水硬性セメント、例えば、ポゾラン、普通ポルトランドセメント、アルミネートセメント、フライアッシュ、及びそれらの混合物と、
ドライミックス組成物の総重量に基づいて、70~89.95重量%の量で、又は好ましくは75~89.65重量%の量の分級された骨材であって、分級された骨材が、
i)200ミクロン~20mmの篩粒度を有する1つ以上の粗骨材、例えば、砂、石灰石、砂利、花崗岩、若しくは粘土、又は好ましくは砂、又はより好ましくは第1の粗骨材と第2の粗骨材との組み合わせであって、第1の粗骨材が200ミクロン~3000ミクロンの篩粒度を有し、第2の粗骨材が2000ミクロン~20mmの篩粒度を有し、第2の粗骨材の篩粒度の第1の粗骨材の篩粒度に対する比が15:1~1.5:1、又は好ましくは10:1~2:1の範囲である、組み合わせ、及び
ii)40ミクロン~3000ミクロン未満、又は好ましくは70ミクロン~3000ミクロンの篩粒度を有する、1つ以上の細骨材、好ましくは石灰石、を含む、分級された骨材と、
ドライミックス組成物の総重量に基づいて、0.05~1.3重量%、又は好ましくは0.08~1.1重量%、又はより好ましくは0.08%~0.35重量%の量のセルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物であって、セルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物が、Peltier温度コントローラー、TRIOS(商標)データ収集ソフトウェア(TA Instruments)及び同心円筒を備えるDINサンプル固定具を装備した歪み制御回転レオメーター(ARES-G2(商標)、TA Instruments,New Castle,DE)を使用し、10点/ディケードで0.03~300/sの歪み速度掃引を使用して決定されるような、各セルロースエーテルについて2回の試験の平均として表されるような、1重量%のセルロースエーテル固形分で、20℃、514s-1剪断速度にて50~650m・Pas、又は好ましくは、80~500mPa・sの範囲の水溶液粘度を有し、水溶液が、セルロースエーテルの粉末を70℃の真空オーブン中で一晩乾燥させ、それを70℃の熱水に分散させ、撹拌しながら室温に冷却しながら溶解させ、それを4℃で一晩冷蔵することによって作製される、セルロースエーテル又は2つ以上のセルロースエーテルの混合物と、のドライミックス組成物であり、
水が、粒状湿式セメント組成物の総重量に基づいて、5.0~13重量%、又は好ましくは5超~10.5重量%の量で存在し、
更に、湿式セメント組成物が、以下の式によって表されるように、セメント+水である湿式セメントで充填された空隙の百分率によって定義される、58%未満の水飽和レベルを有し、
水飽和度=(Vw+Vc)/VV、
式中、Vwは湿式セメント組成物中の水の体積であり、Vcはセメントの体積であり、Vc=mc/ρcであり、式中、mcは湿式セメント組成物中のセメントの質量であり、ρcはセメントの材料密度であり、VVはセメント及び水以外の各材料の粒子密度ρiを測定し、セメント及び水以外の各材料の総質量miを測定し、セメント及び水以外の全ての材料の総体積Vを測定し、十分に混合してそれら全てを容器に注ぎ、空隙体積Vv=V-Σ(mi/ρi)を計算することによって決定される総混合物中の総空隙体積であり、
なお更に、分級された骨材中の総粗骨材の総細骨材に対する重量比が、4:1~0.9:1、又は好ましくは3:1~1:1の範囲であり、
また更に、ドライミックス組成物中の全ての重量%を合計すると100%になる。好ましくは、本発明の第3の態様の湿式セメント組成物を適用する方法によれば、組成物は、分級された骨材中の粗骨材として、200ミクロン~3000ミクロンの篩粒度を有する低篩粒度材料と、砂又は砂利などの500ミクロン~20mm、又は好ましくは1.5~18mmの篩粒度を有する高篩粒度骨材との混合物を含む。
【0027】
湿式セメント組成物中の総粗骨材の篩粒度の細骨材の篩粒度に対する比は、20:1~1.5:1、又は好ましくは10:1~2:1の範囲であってよい。
【0028】
本発明の第3の態様の湿式セメント組成物を適用する方法によれば、湿式セメント組成物は、2成分組成物の混合物を含み、第1の成分は、1つ以上のセルロースエーテルを含むか、又は含まないドライミックス組成物、及び使用される場合、1つ以上の超可塑剤のいずれかを含み、第2の成分は水を含み、第1の成分又は第2の成分のいずれかは、ドライミックス組成物について述べたのと同じ量の1つ以上のセルロースエーテルを含み、使用される場合にはドライミックス組成物について述べたのと同じ量の1つ以上の超可塑剤のいずれかを含む。本発明の第3の態様の湿式セメント組成物を適用する方法によれば、湿式セメント組成物は、第1の成分の一部として、第2の成分としての水と混合されるドライミックス組成物、又は水中の溶液若しくは分散液として、第1の成分としてのドライミックス組成物と混合される別個の第2の成分として、ポリカルボキシレートエーテル含有超可塑剤、ナフタレンスルホネート含有超可塑剤、リグノスルホネート含有超可塑剤、又はそれらの混合物から選択される1つ以上の超可塑剤を更に含む。
【0029】
本発明の第3の態様による湿式セメント組成物を適用する方法では、湿式セメント組成物において、超可塑剤は、0.1~0.5重量%のポリカルボキシレートエーテル含有材料、0.2~5.0重量%若しくは0.3~1.0重量%のナフタレンスルホネート含有材料若しくはリグノスルホネート含有材料、又は好ましくは0.1~0.5重量%のポリカルボキシレートエーテル含有材料の量で使用され、全ての量はドライミックス組成物の総重量に基づく。
【0030】
好ましくは、本発明の第3の態様の湿式セメント組成物を適用する方法によれば、湿式セメント組成物は、ドライミックスをプラスチックバッグ中で混合し、粉末をHobart混合ボウル中の示された量の水に添加し、速度1で15秒間2回混合し、各回混合後に停止してボウルの側面をこすり、混合物を10分間消和させ、混合物を3つの等しい層で、スポンジを介して水で湿らせたステンレス鋼コーン中に注ぎ、非吸収性表面に配置し、各層を満たし、ステンレス鋼ロッドを円運動させて混合し、ロッドをコーンの側面に平行に位置決めし、垂直位置に動かして中心で仕上げ、湿式セメント組成物の表面をコーンの上部と同一平面に仕上げ、コーンを引き上げて湿式セメント組成物から離し、コーンの全高を測定し、測定された高さと80mmとの差を6mm未満、又は好ましくは4.5mm未満と記録することによって30秒以内のスランプを報告することにより、高さ80mm、上部直径40mm、底部直径90mmのステンレス鋼コーン、好ましくは直径9.5mm、長さ266.7mmの鋼ロッドスターラーを使用するASTM C143(2010)に従って決定されるようなスランプを有する。
【0031】
より好ましくは、本発明の第3の態様の湿式セメント組成物を適用する方法によれば、湿式セメント組成物は、ASTM D6773-16(2016)に従って、好ましくは、ソフトウェアRSTCONTROL95 for MS Windows(Dietmar Schulze,Wolfenbuttel,DE)によって制御される自動剪断試験機を使用するthe Standard Test Method for Bulk Solids Using Schulze Ring Shear Testerに従って、50,000Paを予備剪断の垂直応力として使用し、次いで、垂直応力を低下させ、12,500Pa~少なくとも40,000Paの垂直応力範囲にわたって、予備剪断垂直応力の%の5点/ディケードの点間隔で測定する、垂直応力(横座標上)に対してプロットされた剪断試験において組成物が降伏する垂直応力のレベルとしてとられた降伏曲線の傾きの角度として決定される、22°~36.8°以下、又は好ましくは26°~36°、又は36.0°以下の潤滑性を有する。
【0032】
単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈により明白に別段の指示がない限り、複数形の指示対象を含む。特に規定しない限り、本明細書で使用する用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0033】
特に指定のない限り、括弧を含む用語は、代替的に、括弧が存在しないかのような用語全体、及び括弧に含まれない場合の同じ用語、並びに各代替物の組み合わせを指す。したがって、「(メタ)アクリレート」という用語は、代替として、メタクリレート、若しくはアクリレート、又はそれらの混合物を包含する。
【0034】
同じ構成成分又は特性を対象とする全ての範囲のエンドポイントは、エンドポイントを含み、独立して組み合わせ可能である。したがって、例えば、1.5:1~4.5:1、又は好ましくは2:1~4:1、又はより好ましくは2.5:1~3.7:1の開示された範囲は、1.5:1~4.5:1、又は1.5:1~2:1、又は1.5:1~2.5:1、又は1.5:1~3.7:1、又は1.5:1~4:1、又は2:1~4.5:1、又は好ましくは2:1~2.5:1、又は好ましくは2:1~3.7:1、又は好ましくは2:1~4:1、又は好ましくは2.5:1~4:1、又はより好ましくは2.5:1~3.7:1の範囲のいずれか又は全てを意味する。
【0035】
別段の指示がない限り、温度及び圧力の条件は、室温(23℃)及び標準圧力(101.3kPa)であり、「周囲条件」とも称される。加えて、特に明記しない限り、全ての条件には50%の相対湿度(relative humidity、RH)が含まれる。
【0036】
引用された全ての範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。例えば、0.25~0.5重量%、又は好ましくは0.35~0.45重量%の開示は、0.25~0.5重量%、又は好ましくは0.35~0.45重量%、又は0.25~0.35重量%、又は0.25~0.45重量%、又は0.35~0.5重量%、又は0.45~0.5重量%の全てを含む。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「アクリル又はビニル」は、α,β-エチレン性不飽和モノマーの付加重合性モノマー又は付加ポリマー、例えば、アルキル及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、エチレン性不飽和カルボン酸、アルキル(メタ)アクリルアミド、又はオキシアルキレン鎖基含有モノマー、例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート(methoxy poly(ethylene glycol)(meth)acrylate、mPEG(M)A)又はポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート(poly(ethylene glycol)(meth)acrylate、PEG(M)A)及びアリルポリ(エチレングリコール)(allyl poly(ethylene glycol)、APEG)などを指す。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「水性」は、連続相又は媒体が、水及び媒体の重量に基づいて0~10重量%の水混和性化合物であることを意味する。好ましくは、「水性」は水を意味する。
【0039】
本明細書で使用するとき、「ASTM」という用語は、ASTM International、West Conshohocken、PAの刊行物を指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、「水硬性セメント」という用語は、ポルトランドセメント、ケイ酸塩含有セメント、アルミネート系又はアルミナセメント、ポゾランセメント及び複合セメントなどの水の存在下で固化及び硬化する物質を含む。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「乾燥混合物」又は「乾燥粉末」は、セメント、セルロースエーテル、任意の他のポリマー添加剤、並びに任意の充填剤及び乾燥添加剤を含有する貯蔵安定性粉末を意味する。乾燥混合物中に水が存在しない。したがって、それは貯蔵安定性である。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「DS」は、Zeisel法によって決定されるように、セルロースエーテル中の無水グルコース単位当たりのアルキル置換OH基の平均数であり、用語「MS」は、無水グルコース単位当たりのヒドロキシアルキル置換OH基の平均数である。用語「Zeisel法」は、MS及びDSの決定のためのZeisel開裂手順を指し、G.Bartelmus and R.Ketterer,Fresenius Zeitschrift fuer Analytische Chemie,Vol.286(1977,Springer,Berlin,DE),pages 161 to 190を参照されたい。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「潤滑性」は、ASTM D6773-16(Standard Test Method for Bulk Solids Using Schulze Ring Shear Tester,2016)に従って、ソフトウェアRSTCONTROL95 for MS Windows(Dietmar Schulze,Wolfenbuttel,DE)によって制御される自動剪断試験機を使用して、50,000Paを所与の予備剪断応力として用いて、剪断試験によって測定された、線形化された降伏軌跡プロットの角度として表される降伏曲線の傾きを指す。潤滑性は、剪断下で互いに対して移動する粒子の能力を測定し、より低い相対垂直力及びより低い傾きがより良好である。言い換えれば、内部摩擦は、材料の粒子間の運動に抵抗する最大内部剪断力と粒子間の垂直力(圧縮)との比、又は圧縮及び剪断下で互いに対して移動する粒子の抵抗であるので、より低い「内部摩擦」角度は、より高い潤滑性を意味する。
【0044】
本明細書で使用するとき、「一晩」という用語は、10~14時間の期間を意味する。
【0045】
本明細書で使用するとき、用語「ペースト」は、水硬性セメント及び水から構成される混合物を指し、ペーストは骨材を除く。
【0046】
本明細書中で使用するとき、他に示されない限り、「ポリマー」という語句は、ホモポリマー及び2つ以上の異なるモノマーからのコポリマーの両方、並びにセグメント化コポリマー及びブロックコポリマーを含む。
【0047】
本明細書で使用するとき、材料の「篩粒度」という用語は、材料の少なくとも10重量%が所与の篩上に保持されるまで、連続的により小さいサイズのメッシュ篩を通して材料を篩分けし、材料の少なくとも10重量%を保持する第1の篩よりも1篩サイズ大きい篩のサイズを記録することによって決定される粒度を指す。
【0048】
本明細書で使用するとき、粗骨材の混合物についての「総粗骨材の篩粒度」という用語は、混合物中の全ての粗骨材の篩粒度の加重平均を意味する。例えば、1mmの篩粒度粗骨材と10mmの篩粒度粗骨材との50:50w/w混合物の篩粒度は、(1mm×0.5)+(10mm×0.5)又は5.5mmである。
【0049】
本明細書で使用するとき、「スランプ」という用語は、いくつかの方法で測定することができる、所与の期間にわたる湿式セメント組成物の静置試料の側方又は下方への流れを指す。
【0050】
本明細書で使用するとき、用語「貯蔵安定性」は、所与の粉末添加剤組成物について、室温条件及び標準圧力下で棚上に放置したとき、5日後、又は好ましくは10日後に、粉末がブロックせず、所与の水性組成物について、液体組成物が濁り、分離し、又は沈殿しないことを意味する。
【0051】
本明細書で使用するとき、「総固形分」、「固体」又は「固体として」という語句は、合成ポリマー、モノマー、天然ポリマー、酸、消泡剤、水硬性セメント、充填剤、無機材料、並びに他の不揮発性材料及び開始剤などの添加剤を含む、所与の組成物中に存在する不揮発性成分又は材料のいずれか又は全ての総量を指す。水、アンモニア及び揮発性溶媒は固体とはみなされない。
【0052】
本明細書で使用するとき、「水飽和度」という用語は、式水飽和度=(Vw+Vc)/VVによって与えられる結果を指し、式中、Vwは湿式セメント組成物中の水の体積であり、Vcはセメントの体積であり、Vc=mc/ρcであり、式中、mcは湿式セメント組成物中のセメントの質量であり、ρcはセメントの材料密度であり、VVは、セメント及び水以外の各材料の粒子密度ρiを測定し、セメント及び水以外の各材料の総質量miを測定し、セメント及び水以外の全ての材料の総体積Vを測定し、十分に混合してそれら全てを容器に注ぎ、空隙体積Vv=V-Σ(mi/ρi)を計算することによって決定される総混合物中の総空隙体積である。空隙体積はまた、空隙率又は粒子間空隙率ε=[V-Σ(mi/ρi)]/Vとも称され、1-εによって与えられる「充填分率」の逆数である。本明細書で使用するとき、別段の指示がない限り、「重量%」という用語は、示された分母に基づく重量パーセントを意味する。
【0053】
本発明によれば、本発明者らは、セメント混和剤中に低粘度セルロースエーテルを使用してアスファルト組成物のように挙動する粒状水硬性セメント組成物を発見した。本発明による粒状湿式セメント組成物は、水中でわずかに不飽和であり、それ自体の重量で固まったり沈降したりしないので、泥のように見えたり挙動したりする。同様に、本発明によるドライミックス組成物を水及び任意選択でセルロースエーテルを含む混和剤と混合することによって形成される湿式セメント組成物は、それら自体の重量で固まったり沈降したりしない。本発明の組成物は、湿式セメント材料の損失なしに「圧縮」又は体積圧縮を介して舗装して最高強度を達成することを可能にする。組成物は、圧縮と比較して塊からの圧密又は水及びセメントの損失を遅らせる粘度を提供する。加えて、組成物は、配合物中の潤滑性の向上を可能にし、これは、舗装を圧縮し、高密度化し、気泡を除去して最適な強度を達成するのに必要な骨材粒子の移動を容易にする。特に、本発明者らは、ローラー圧縮コンクリート(RCC)において、より低粘度のセルロースエーテル又はその混合物(1重量%のセルロースエーテル固形分、20℃、及び514s-1の剪断速度について、10点/ディケードで0.03~300/sの歪み速度掃引を使用するARES-G2(商標)歪み制御回転レオメーター、TA Instruments,New Castle,DEで、50~750mPa・sの範囲)が、驚くべきことに、特にRCCを製造するために水が添加される粒状湿式セメント組成物の重量に基づいて、10.5重量%以下の水を用いて、圧縮、したがってコンクリート強度を改善することを見出した。本発明による湿式セメント組成物において、20℃及び514s-1で測定される間隙水相の粘度は、最適な強度及び圧縮を達成する。更に、水相がこの低粘度範囲にある場合、セルロースエーテルの有用な量の変動は、配合を容易にするために増加させることができる。
【0054】
混和剤は、RCC混合物のために現場で体積測定して添加され、質量によってではなく、RCCのための過剰及び過少投入された混和剤のための配合許容度を有することが非常に重要である。RCC混合物は高粘度セルロースエーテルグレードに対して感度が高すぎたが、1パーセントの分率変化がRCC混合物の強度を低下させることがあり、したがって、現場で使用することは実用的ではなかった。本発明者らは、より低い粘度グレードのセルロースエーテルが、確実に圧縮可能なRCC混合物又は舗装可能なRCC混合物を生成するのに要件とされる必要な配合許容度を可能にすることを見出した。
【0055】
本発明によれば、本発明の水溶性セルロースエーテルによって改善された潤滑性は、骨材材料の粒度、真球度、及び粗さに影響されない。従来のコンクリートと比較した場合、RCCは従来のコンクリートよりも高い体積の骨材、並びにより低いレベルのセメント及び水を有するので、これは驚くべきことである。そのような配合の違いは、0スランプ又はほぼ0スランプの舗装をもたらすが、他方で、配合物中の高い骨材及び低い含水量はまた、RCCを圧縮に対して非常に抵抗性にし、製造物を従来のコンクリート舗装と比べてより粗くする。今日、コンクリート用に開発され、RCCで使用されている既知の粘度調整添加剤(ポリビニルアルコールなどのVMA)は、降伏強度(混合物を降伏又は圧縮させるのに必要な力)を低下させ、潤滑性を改善することができない。むしろ、圧密を回避するために最適化された粘度を達成するために既知の市販のVMAを使用することは、RCC湿式セメント組成物中のVMAの非現実的に高い使用レベルを必要とする。
【0056】
更に、ローラー圧縮セメント質組成物からの製造物の潤滑性及び強度は、セルロースエーテルを超可塑剤と組み合わせることによって更に改善することができる。ポリカルボキシレートエーテル含有可塑剤、リグノスルホネート含有可塑剤、及びナフタレンスルホネート含有可塑剤を含む超可塑剤の添加は、RCCコンクリート及びそれらを製造するための湿式セメント組成物の降伏強度及び粘度を更に改善することができる。超可塑剤の使用が多すぎると、セルロースエーテルと組み合わせたときに降伏強度に悪影響を及ぼすことがあり、一方、少なすぎると、それらを含有する湿式セメント組成物から作製されたコンクリートの強度又は潤滑性を変化させない。したがって、本発明によれば、概ね、湿式セメント組成物の総重量に基づいて1重量%未満の超可塑剤と、2.5重量%以下、又は好ましくは2重量%以下の総量のセルロースエーテルとの組み合わせは、RCC舗装の圧縮及び強度に関して最良の結果をもたらすことができる。
【0057】
本発明によれば、ドライミックス組成物及び湿式セメント質配合物は、セルロースエーテル、粒状材料、水硬性結合剤又はセメント、及び任意選択で他の化学混和剤を含む。湿式セメント組成物は、粒状湿式セメント組成物の総重量に基づいて、5.0~13.0重量%、又は好ましくは5.0超~10.5重量%の量の水と混合されたドライミックス組成物、及び任意選択で混和剤補助セメント質材料(SCM)を含む。分級された骨材、特に粗骨材の粒度が増大するにつれて、水需要量が減少する。したがって、例えば、粗骨材が5mm以上、又は6mm以上の篩粒度を有する場合、好適な水の量は、粒状湿式セメント組成物の総重量に基づいて、5~6.5重量%の範囲である。
【0058】
本発明による1つ以上のセルロースエーテルは、低粘度セルロースエーテルを含む。1つ以上のセルロースエーテルは、ドライミックス組成物の一部を構成してもよく、又はそれらは第1の成分がドライミックス組成物(セルロースエーテルを含まない)を構成する2成分組成物の第2の成分として、水中の溶液又は分散液の一部を構成してもよい。1つ以上のセルロースエーテルのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、メチル、及びそれらの組み合わせ、又は好ましくはヒドロキシエチル及びメチルから選択される側鎖を有する。従って、最も好ましい低粘度セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルメチルセルロースを含む。
【0059】
本発明の低分子量セルロースエーテルにおいて、アルキル置換は、用語「DS」によってセルロースエーテル化学において記載される。DSは、無水グルコース単位当たりの置換OH基の平均数である。メチル置換は、例えば、DS(メチル)またはDS(M)として報告され得る。ヒドロキシアルキル置換は、用語「MS」によって記載される。MSは、無水グルコース単位1mol当たりのエーテルとして結合するエーテル化試薬の平均モル数である。エーテル化試薬エチレンオキシドによるエーテル化は、例えば、MS(ヒドロキシエチル)またはMS(HE)として報告される。エーテル化試薬プロピレンオキシドによるエーテル化は、MS(ヒドロキシプロピル)またはMS(HP)として対応して報告される。側基は、Zeisel法を使用して決定される(参照:G.Bartelmus and R.Ketterer,Fresenius Zeitschrift fuer Analytische Chemie 286(1977),161-190)。
【0060】
本発明によれば、1つ以上のセメントは、水の存在下で固化及び硬化する任意の水硬性セメントを指す。水硬性セメントの好適な非限定的な例としては、ポルトランドセメント、水硬性消石灰、アルミネートセメント、例えばアルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウム半水和物セメント;水の存在下で微粉化された形態で、ポルトランドセメントの水和によって放出される水酸化カルシウムと化学的に反応して、セメント質特性を有する材料、例えば、珪藻土、オパール質チャート、粘土、頁岩、フライアッシュ、シリカフューム、火山凝灰岩及び軽石、例えば、消石灰と混合された火山灰を形成する、消石灰を有するケイ質又はアルミノケイ質材料である、ポゾラン;粉砕された高炉水砕スラグなどの耐火セメント;リン酸マグネシウムセメント、リン酸マグネシウムカリウムセメント、及びそれらの混合物などのマグネシアセメントが挙げられる。ポルトランドセメントは、業界で使用されているように、水硬性ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、及び鉄アルミン酸カルシウムから構成されるクリンカーを、粉砕間添加物中の硫酸カルシウムの形態の1つ以上と一緒に粉砕及び焼成することによって製造される水硬性セメントを意味する。ASTM C150によるポルトランドセメントは、タイプI、II、III、IV、又はVに分類される。
【0061】
粒状材料としては、砂、石灰石、砂利、花崗岩、及び粘土が挙げられるが、これらに限定されず、少なくとも1つの粗骨材及び少なくとも1つの細骨材の分級された骨材を含む。2つ以上の粒度分布を有する組成物などの、より大きな粗骨材粒子と混合されたより小さい細骨材粒子は、空隙体積を減少させ、それによってセメント需要量を減少させ、充填を改善し、したがって、一定の水対セメント比でより少ない水を添加してより高い強度を可能にする。好適な細骨材は、石灰石、微粉シリカ、タルク、充填剤、又は顔料などの、例えば、3000ミクロン未満の篩粒度を有する材料である。好適な粗骨材は、2000ミクロン以上の篩粒度を有する。例えば、シリカ、石英、粉砕された丸い大理石、ガラス球、花崗岩、粗い石灰石、方解石、長石、沖積砂、又は任意の他の耐久性のある骨材の天然又は合成砂、及びそれらの混合物である。
【0062】
混和剤としては、可塑剤、超可塑剤、遅延剤、促進剤、消泡剤、及び粘度調整添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。混和剤は添加剤を含む。本発明の組成物は、加えて、例えば、セメント硬化促進剤及び遅延剤、空気連行剤又は脱泡剤、収縮剤及び湿潤剤などの湿潤又は乾燥形態の従来の添加剤、界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤、鉱油粉塵抑制剤、殺生物剤、可塑剤、オルガノシラン、ポリ(ジメチルポリシロキサン)(poly(dimethylpolysiloxanes)、PDMS)及び乳化PDMS、シリコーン油及びエトキシル化非イオン性物質などの消泡剤;並びにエポキシシラン、ビニルシラン及び疎水性シランなどのカップリング剤を含有することができる。
【実施例】
【0063】
以下の実施例により、本発明を例示する。別段の指示がない限り、全ての部及び百分率は重量によるものであり、全ての温度は℃であり、全ての調製及び試験手順は、室温23℃及び圧力(1atm)の周囲条件で実施される。以下の実施例並びに表1、表2及び表3において、以下の略語を使用した:CE:セルロースエーテル、MPEG:メトキシポリ(エチレングリコール)、MAA:メタクリル酸、AA:アクリル酸、MMA:メチルメタクリレート、PEO:ポリ(エチレンオキシド)。
【0064】
以下の材料を以下の実施例で使用した(全ての成分は受け取ったままの状態で使用した)。
ケイ砂:300ミクロンの篩粒度(Fairmount Minerals 730,Fairmount Minerals LLC,Oklahoma City,OK);
粉砕石灰石:CaCO3、篩粒度44ミクロン(MICRO-WHITE(商標)100,Nagase Specialty Materials NA LLC,Itasca,IL);
人工砂:6mmの篩粒度;
ポルトランドセメント:タイプ1ポルトランドセメント);
水(脱イオン);
セルロースエーテル1:ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、WALOCEL(商標)MW 15000 PFVセルロースエーテル、The Dow Chemical Co.,Midland,MI(Dow)、MS=0.17、DS=1.40);
セルロースエーテル2:HEMC(WALOCEL(商標)M-20678セルロースエーテル、Dow、MS=0.32、DS=1.73);
セルロースエーテル3:ヒドロキシエチルセルロース、CELLOSIZE(商標)QP 15000Hセルロースエーテル、Dow、MS=2.0、DS=0;
セルロースエーテル4:HEMC、WALOCEL(商標)MT 30000セルロースエーテル、Dow、MS=0.40、DS=1.85);
セルロースエーテル5:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、METHOCEL(商標)240Sセルロースエーテル、DuPont,Wilmington,DE、MS=0.15、DS=1.81;
セルロースエーテル6:HEMC、WALOCEL(商標)MT 10000セルロースエーテル、Dow、MS=0.40、DS=1.85;
セルロースエーテル7:HEMC、WALOCEL(商標)MKW 15000セルロースエーテル、MS=0.22、DS=1.64;
セルロースエーテル8:HEMC、WALOCEL(商標)MKX 15000セルロースエーテル MS=0.258、DS=1.60;
粘度調整剤A:好気性発酵により製造されたジウタンガム天然高分子量ガム;KELCOCRETE(商標)DG-Fガム、Cp Kelco Co.、Atlanta,GA;
粘度調整剤B:ビニルアルコール/酢酸ビニルコポリマーV-MAR(商標)F100ポリマーの水溶液、WR Grace GCP Applied Technologies,Chicago,IL(Grace);
粘度調整剤C:グルコン酸ナトリウム減水剤とポリアクリル酸カルボキシレート粘度調整剤とのブレンド、V-MAR(商標)VSC500、Grace
超可塑剤1:ポリ芳香族(キノリン)スルホネート減水剤VISCTROL(商標)、Euclid Chemical Co,Easton,PA(Euclid);
超可塑剤2:MELFLUX(商標)2651Fポリカルボキシレートエーテル、BASF、Ludwigshafen,DE;
超可塑剤3:リグノスルホン酸ナトリウム又はカルシウム減水剤、Eucon LR、Euclid;
超可塑剤4:200gの2000 MW MPEG(MPEG 2000)と44.2gの固形分50重量%で次亜リン酸ナトリウムを含有する水性ポリ(アクリル酸)との水性ポリ(AA/MPEG)櫛型ポリマーエステル化生成物、pH=3であり、ブルックフィールド粘度計により#2スピンドルを用いて30rpm、25℃で測定した粘度が500mPa.sである;
超可塑剤5:ナフタレンスルホン酸ナトリウム又はカルシウム減水剤(TAMOL(商標)SN、Dow)。
【0065】
PEO:CarboWax(商標)ポリエチレングリコール400(380~420g/mol)、Dow。
【表1】
*-比較例を示す。
【0066】
上記表Aの粘度を測定するために、セルロースエーテル粉末を、使用前に70℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。その他の点では、全ての粘度調整剤を、脱イオン水中1重量%の固形分で受け取り、そのまま使用した。セルロースエーテル溶液を、粉末を乾燥させ、70℃の熱水に分散させ、続いて室温に冷却しながら撹拌して溶解させ、一晩(4℃)冷蔵することによって、1重量%の固形分で試験用に調製した。粘度は、Peltier温度コントローラー、TRIOS(商標)データ収集ソフトウェア(TA Instruments)、及び同心円筒を備えるDINサンプル固定具を備えた歪み制御回転レオメーター(ARES-G2(商標)、TA Instruments,New Castle,DE)を使用して測定し、ただし、粘度調整剤B及びCの場合は、DINサンプル固定具を二重壁同心円筒サンプル固定具に置き換えた。各試料について2回の試験を行い、2回の平均を報告した。
【0067】
以下の実施例では、以下の配合方法を使用した。
【0068】
ドライミックス及び湿式セメントの調製:表1A、1B、1C、1D、1E、及び1Fの全てにおいて示された砂、石灰石、セメント、セルロースエーテル、及び超可塑剤を、プラスチックバッグ中で2分間乾式混合し、次いで混合ボウル(Hobart N50 Mixer、Hobart Corp.,Troy,OH)中の水に添加した。各配合物を低回転速度(136RPM)で15秒間混合し、混合ボウルの側面をこすり取り、ボウルの底に戻した。配合物を再び同じ回転速度で混合した。全ての試験において、湿式セメント組成物を調製後10分以内に試験した。全ての組成物は合計800gの粉末固体であり、800gは乾燥粉末の合計部の100%である。水の重量%は、粉末固体及び水を含む全配合物(粒状湿式セメント)の重量に基づく。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
1表1Fにおいて、本発明の組成物はセルロースエーテルを含むが、比較物はそうではない。
【表8】
【表9】
【0069】
試験方法:以下の試験方法を以下の実施例で使用した:
水飽和度:セメントペーストで充填された空隙体積パーセントとして定義される。セメントペーストは、セメント及び水の体積分率の両方を含むが、分級された骨材は除外する。水飽和度は以下の式で与えられ、
水飽和度=(Vw+Vc)/VV、
式中、Vwは湿式セメント組成物中の水の体積であり、Vcはセメントの体積Vc=mc/ρcであり、式中、mcは湿式セメント組成物中のセメントの質量であり、ρcはセメントの材料密度であり、VVはセメント及び水以外の各材料の粒子密度ρiを測定することによって決定される全混合物中の全空隙体積である。セメント及び水以外の各材料の質量miを測定した。セメント及び水以外の各材料の密度ρiは、各材料を目盛り付き容器に注いでその体積を測定することによって決定した。水の体積Vwは、それを目盛り付き容器に注ぐことによって測定した。水の質量mWを記録した。同様に、セメントの密度及び質量、ρi及びmiを測定した。これから、「空隙体積」Vv=V-Σ(mi/ρi)を計算した。空隙体積はまた、空隙率又は粒子間空隙率ε=[V-Σ(mi/ρi)]/Vとも称され、1-εによって与えられる「充填分率」の逆数である。水飽和度を測定するために、示された量の水の体積Vw、乾燥セメントの体積Vc、並びにセメントの質量及び密度を測定した。セメント体積をVc=mc/ρcとして記録し、式中、mcは試料中のセメントの質量であり、ρcはセメントの材料密度である。水飽和度=(Vw+Vc)/VV。湿式セメント組成物における水飽和度を測定するために、セメント及び水を含まない砂と骨材との乾燥混合物を調製し、所与の混合物の乾燥体積Vを、各々目盛り付き容器に注ぐことによって測定した。次いで、示された湿式セメント組成物を形成させ、空隙体積を決定した。
【0070】
リング剪断試験:剪断試験は、ASTM D6773-16(Standard Test Method for Bulk Solids Using Schulze Ring Shear Tester,2016)に従って実施した。ソフトウェアRSTCONTROL 95 for MS Windows(Dietmar Schulze,Wolfenbuttel,DE)によって制御される自動剪断リング試験機を使用して、所与の予備剪断応力として50,000Paでパラメータを測定した。示された湿式セメント組成物試料を、10分間消和させた後、環状試験セルに充填した。各試料の重量を記録した。次いで、試験セルをリング剪断試験機内に配置し、リング剪断試験プログラムを開始した。3つのパラメータを測定して、湿式セメント組成物の特性:単軸降伏強度(unconfined yield strength)、凝集力、及び内部摩擦角を定量化した。単軸降伏強度又は降伏強度は、非拘束状態(拘束側壁がない)における圧縮又は圧密のレベル下でのバルク固体の強度を定量化し、非拘束(支持されていない)状態の湿式セメント組成物を剪断に応答して降伏させる応力レベル(垂直)として決定された。内部摩擦角(潤滑性)、又は組成物中の粒子が剪断下で互いに対して移動する能力を、剪断試験によって測定された降伏曲線の傾きとして決定した。内部摩擦は、圧縮及び剪断下で互いに対して移動する粒子の抵抗に等しく、粒子の移動に抵抗する最大内部剪断力の、粒子間の垂直力に対する比である。潤滑性は、リング剪断試験機によって測定された降伏曲線の傾きとして決定され、曲線では、粒子が移動に抵抗する最大内部剪断を、組成物が垂直の圧縮に曝される垂直応力に対してプロットする。より低い内部摩擦は、より高い潤滑性を意味する。凝集力は、外力が加えられないときの湿式セメント組成物の強度を決定し、粒子間の引力を定量化する。
【0071】
湿式セメント組成物の押出:最終使用条件での押出性能を特徴付けるために、歪み制御キャピラリーレオメーターを設定した。レオメーターは、BLUEHILL3データ収集ソフトウェア(INSTRON)を備えた垂直に取り付けられた試験フレーム(INSTRON model 5985 Instron,Norwood,MA)、クロスヘッドの下に取り付けられた250-kNロードセル、ロードセルを円筒形金属ピストン(直径44.45mm)に接続するクレビスピン(定格100kN)、ピストン(直径44.45mm)の下向きの動きをガイドするように設計された下部試験フレームテーブルに固定された固定金属円筒形バレル(長さ200mm、直径44.45mm)、バレルから下部の取り付けられた金属キャピラリー(直径12.7mm、長さ50.8mm)への円錐形遷移部を備えていた。セットアップを一定温度/湿度の部屋(23℃(73°F)、湿度50%)に置いた。金属円筒形バレルに、300グラムの示された新たに調製された湿式セメント組成物を手で充填し、組成物をピストンによってバレルからキャピラリーに押し下げ、最終的にペースト押出物としてキャピラリーから排出させた。0.2kNの力Fに達するまで遅いピストン速度(20mm/分)を適用し、次いで残りの押出中に、速度を500mm/分に上昇させた。ロードセル力Fをピストン変位Dの関数として測定した。ピストン変位は、ロードセルがその力の上限(90kN)に近づいたときに、最大変位(160mm)の前に停止することがあった。ロードセルによって測定された押出力Fがピストン変位Dの影響を受けなくなったときに、定常状態の流れを特定した。100mmの変位における平均力(D=100mmにおけるF)を、定常状態の力FSSとして記録した。500mm/分での押出は9~20秒で完了した。押出応力又はσを、キャピラリー断面積Aによって割った力Fとして報告し、以下のように計算した:σ(MPa)=(F[N]/{π・(Ddie[m]/2)2})・(10-6MPa/Pa)、ここでDdie[m]=0.50インチ/39.3700787インチ/M=0.0127Mである。キャピラリー壁での押出剪断歪み速度dγ/dt((dγ/dt)=32Q/[π・(Ddie)3=514/s)は、流れのペースト体積速度Q(Q=vpiston・π・(Ddie[m]/2)2)、キャピラリー直径Ddie[m]、及びピストン速度(vpiston)に基づく。キャピラリー壁での剪断速度η(Pa・s)は、キャピラリー壁での押出応力σと剪断押出速度dγ/dt(514s-1)との比として定義される。
【0072】
湿式セメント組成物のレオロジー:レオロジーデータは、Peltier温度コントローラーを備えた応力制御回転レオメーター(AR-G2、TA Instruments,New Castle,DE)を用いて、RHEOLOGY ADVANTAGE(商標)データ収集ソフトウェア(TA Instruments、v5.5.24)を使用して、20.0℃で測定した。材料は、15.00mmの内側半径を有するステンレス鋼カップ内の4羽根ステンレス鋼ロータの回転を介して剪断された。羽根は14.00mmの外側半径を有していた。カップを42.00mmの浸漬高さまで満たした。およその試料体積は28.72mLであった。変換器データをレオロジーに変換するために使用される式は、DIN同心円筒器具と関連付けられ、したがって、レオロジーデータは、見かけのレオロジーとしてラベル付けされた。湿式セメント組成物を、Hobartミキサーで調製した直後に試験した。最初に、Hobartミキサー中の流れからの組成物の回収を、時間分解小振幅振動剪断流(1rad/sの角振動周波数、線形粘弾性レジームにおける応力振幅)を用いて15分間モニターした。回収された非拘束ペーストの降伏応力(σY)を、応力振幅掃引(1~5000Pa、25点/ディケード)で決定した。降伏応力は、複素剪断弾性率の大きさ|G*|の応力振幅σ0への依存性の変曲点に関連する応力振幅として特定した。変曲点は、シグモイド関数を用いた片対数軸上のデータの非線形フィットを用いて定量的に決定した。3回の反復試験を、各反復について新鮮な湿式セメント組成物のアリコートを使用して行い、結果を平均した。
【0073】
湿式セメント組成物のスランプ:スランプは、乾燥成分をプラスチックバッグ中で混合し、粉末をHobart混合ボウル中の示された量の水に添加し、速度1で15秒間2回混合し、毎回の混合後に停止してボウルの側面をこすり、混合物を10分間消和させ、混合物を3つの等しい層で、スプレーボトルによって水で湿らせたステンレス鋼コーン(高さ80mm、上部直径40mm及び底部直径90mm)中に注ぎ、非吸収性表面上に置き、各層を充填し、鋼製ロッドを円運動させて混合し、ロッドをコーンの側面に平行に位置決めし、垂直位置に動かして中心で仕上げ、湿式セメント組成物の表面をコーンの上部と同一平面に仕上げ、コーンを引き上げて湿式セメント組成物から離し、コーンの全高を測定し、測定された高さと初期の80mmの高さとの差を報告することによってスランプを記録することによって決定した。
【表10】
*-比較例を示す;1.応力制御回転レオメーター(AR-G2、TA Instruments)を使用して20.0℃で。
【0074】
上記の表2に示すように、本発明の実施例1-2~1-15のみが、37度未満の許容可能な低い潤滑角度で45kPa以上の許容可能な降伏強度を示した。したがって、本発明の組成物は、圧密することなく容易に圧縮され、圧縮力の非存在下で形状変化に抵抗するのに十分な降伏強度を提供する。
【表11】
*-比較例を示す。
【0075】
上記の表3に示されるように、低粘度セルロースエーテルを含む実施例2-2、2-3、2-4及び2-5における本発明の湿式セメント組成物は、全て圧密なしで圧縮され、力がもはや変位しない点まで圧縮された。
【表12】
*-比較例を示す
【0076】
上記の表4に示されるように、56%の水飽和度で大量の水を有し、圧縮が困難であった実施例3-4を除いて、本発明の湿式セメント組成物3-1~3-7は全て許容可能な潤滑角度及び降伏強度を与えた。
【表13】
*-比較例を示す。
【0077】
上記表5に示されるように、混合物の降伏応力に直接相関するスランプは、水飽和度の高感度の関数である。54%の水飽和度では、実施例5-4、5-5、及び5-6の全てが、自己圧密の臨界限度を超える降伏応力を有する。セルロースエーテル1の低い粘度にもかかわらず、56%の水飽和度において、実施例5-2の本発明の組成物は、比較例5-1におけるセルロースエーテルを含有しない組成物と比較して、制限された又は制御されたスランプを可能にする。一方、超可塑剤は、妥当な限度内でスランプを増加させる。
【国際調査報告】