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特表2024-507785機械的に拘束されないマスター装置が術者及び関連するロボットシステムによって移動可能である、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムによって実行される遠隔操作を開始するための方法
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  • 特表-機械的に拘束されないマスター装置が術者及び関連するロボットシステムによって移動可能である、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムによって実行される遠隔操作を開始するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】機械的に拘束されないマスター装置が術者及び関連するロボットシステムによって移動可能である、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムによって実行される遠隔操作を開始するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20240214BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548902
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 IB2022051226
(87)【国際公開番号】W WO2022175792
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021000003419
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518132307
【氏名又は名称】メディカル・マイクロインストゥルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL MICROINSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100230640
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 望
(72)【発明者】
【氏名】タンツィーニ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ディ グアルド,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ルッファルディ,エマヌエーレ
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】プロクター,マイケル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】プリスコ,ジュゼッペ マリア
【テーマコード(参考)】
3C707
4C130
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707JT04
3C707JU12
3C707JU14
3C707KS31
3C707KW01
4C130AB02
4C130AD02
4C130AD09
4C130BA02
4C130BA04
4C130BA16
4C130DA10
(57)【要約】
医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムによって実行される遠隔操作を開始及び/又は準備するための方法が記載される。前記ロボットシステムは、手持ち式であって機械的に拘束されないとともに、術者によって移動されるようになっている少なくとも1つのマスター装置と、マスター装置によって制御されるようになっている超微細手術器具を備える少なくとも1つのスレーブ装置とを備える。マスター装置本体は、接地されておらず、遠隔操作中に外科医が手で持つように意図される。マスター装置は、ロボットシステムの一部とのデータ接続のために配線することができる。ロボットシステムは、術者が遠隔操作に入る意図をロボットに伝達できるようにするマンマシンインタフェースを備える遠隔操作準備第1の制御手段を更に備える。方法は、前述の遠隔操作準備第1の制御手段を動作させることによって遠隔操作準備ステップを開始するステップと、次いで、マスター装置とスレーブ装置との間の位置合わせのステップを実行するステップであって、スレーブ装置が、外科用器具の方向をマスター装置の方向に位置合わせするように移動できるようにされる、ステップと、次いで、マスター装置とスレーブ装置との間の前述の位置合わせステップが完了した後に遠隔操作に入るステップとを含む。準備ステップ中及び位置合わせステップの前に、方法は、位置合わせステップに入るための1つ以上の第1のチェックを実行するステップと、1つ以上の第1のチェックの全てにうまく合格した場合にのみ位置合わせステップの開始を可能にするステップとを含む。更に、遠隔操作ステップに入る前に、方法は、位置合わせステップを可能にするための1つ以上の第2のチェックを実行するステップと、1つ以上の第2のチェックの全てにうまく合格した場合にのみ遠隔操作に入ることを可能にするステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムによって実行される遠隔操作を開始及び/又は準備する方法であって、前記ロボットシステムは、手持ち式で機械的に拘束されないとともに術者(750;850;950;1050)によって移動されるようになっている少なくとも1つのマスター装置(110;710,720;810,820;910,920;1010,1020)と、前記マスター装置によって制御されるようになっている外科用器具(170;770,780)を備える少なくとも1つのスレーブ装置(740)とを備え、前記ロボットシステムは、遠隔操作準備第1の制御手段を更に備え、
前記方法は、
-前記遠隔操作準備第1の制御手段を作動させることによって遠隔操作準備ステップを開始するステップと、
-前記マスター装置と前記スレーブ装置との間の位置合わせのステップを実行するステップであって、前記スレーブ装置(740)が、前記外科用器具(170;770,780)の方向を前記マスター装置の方向に位置合わせするように移動できるようにされる、ステップと、
-前記マスター装置と前記スレーブ装置との間の位置合わせの前記ステップが完了した後に遠隔操作に入るステップと、
を含み、
前記準備ステップ中及び前記位置合わせステップの前に、前記方法は、前記位置合わせステップに入るための1つ以上の第1のチェックを実行するステップと、前記1つ以上の第1のチェックの全てにうまく合格した場合にのみ前記位置合わせステップの開始を可能にするステップとを含み、
前記遠隔操作ステップに入る前に、前記方法は、前記位置合わせステップを可能にするための1つ以上の第2のチェックを実行するステップと、前記1つ以上の第2のチェックの全てにうまく合格した場合にのみ前記遠隔操作に入ることを可能にするステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記位置合わせステップは、前記スレーブ装置の前記外科用器具が移動できないようにされる、動きを伴わない位置合わせのサブステップと、前記スレーブ装置の前記外科用器具が移動できるようにされる、動きを伴う位置合わせのサブステップとを含み、
前記方法は、前記マスター装置に対する前記スレーブ装置の位置合わせを達成するようになっている位置合わせ動作を実行するステップを含み、
前記方法は、動きを伴わない位置合わせの前記サブステップと動きを伴う位置合わせの前記サブステップとの間の移行をチェックするようになっている1つ以上の第3のチェックを実行するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
動きを伴わない及び動きを伴う位置合わせの前記サブステップは、サイクル内で互いに追従し、各サイクルで又は各サイクルの終わりに、前記方法は、
-前記第1のチェックの結果を検証し、全ての前記第1のチェックが肯定的な結果を与える場合、前記位置合わせステップに残り、前記第1のチェックの少なくとも1つが肯定的な結果を与えない場合、前記位置合わせステップを終了して準備ステップに戻るステップと、
-前記第2のチェックの結果を検証し、全ての前記第2のチェックが肯定的な結果を与える場合に前記遠隔操作ステップに入るステップと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のチェックは、
-前記マスター装置の正しい把持のチェック、及び/又は
-前記マスター装置の位置の合否チェック、及び/又は
-前記マスター装置の構造的完全性のチェック、及び/又は
-前記マスター装置の信号品質のチェック、及び/又は
-超微細手術器具がロボット装置上に正しく設置されることのチェック、
のうちの1つ以上を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マスター装置が相対移動の自由度を有し、前記マスター装置の正しい把持の前記チェックは、
-前記相対移動の自由度が静止位置として規定された規定可能な閾値を超えたことを検証するステップ、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
-前記相対移動の自由度が開閉の自由度であり、検証する前記ステップは、前記開閉の自由度が開角閾値を下回る開角で僅かに閉じられることを検証するステップとを含み、及び/又は
-前記相対移動の自由度が直線変位の自由度であり、検証する前記ステップは、前記直線変位が特定の接近/離間閾値を超える接近/離間直線変位であることを検証するステップを含み、及び/又は
-前記相対移動の自由度がねじれの自由度であり、検証する前記ステップは、前記ねじれが特定のねじれ閾値を超えていることを検証するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マスター装置は、接触センサ、例えば静電容量センサ及び/又は圧力センサを備え、前記マスター装置の正しい把持の前記チェックは、例えば前記マスター装置が前記ユーザと接触しているかどうかを決定するために、前記接触センサによって検出される情報を処理するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記マスター装置の位置の合否の前記チェックは、
-前記マスター装置が、予め規定された又は予め決定可能な作業空間領域、例えば、追跡システムによって決定された空間領域内にあることを検証するステップ、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記マスター装置の位置の合否の前記チェックは、
-前記マスター装置が静止形態にないことを検証するステップであって、前記静止形態が、例えば、前記マスター装置を手持ち式でないときに収容するようになっている空間領域内の前記マスター装置の位置、好ましくは方向及び/又は開閉レベルにも対応する、ステップ、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記マスター装置の信号品質の前記チェックは、
-前記マスター装置とシステムとの間のデータ通信が、アクティブであって機能しており、それぞれの所定の閾値を超える品質レベル及び/又は信号対雑音比を有する電気信号によってサポートされることを検証する、及び/又は前記マスター装置のセンサが接続されてアクティブであることを検証するステップ、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記マスター装置の構造的完全性の前記チェックは、
-前記マスター装置の構造的完全性を示す1つ以上の所定の拘束を検証するステップであって、前記拘束が、前記マスター装置の位置及び/又は速度及び/又は加速度の検出に基づいて検証可能である、ステップ、
及び/又は、前記マスター装置が予期される方向に対応する検出された方向を規定することを検証するステップ、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のチェックは、
-前記マスター装置の方向と前記スレーブ装置の方向との間の位置合わせ一致のチェック、
及び/又は前記マスター装置の開閉レベルと前記スレーブ装置の開閉レベルとの間の一致のチェック、
のうちの1つ以上を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のチェックは、前記マスター装置と前記スレーブ装置との間の前記位置合わせ及び前記開閉レベルの両方の一致のチェックを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記位置合わせ一致のチェックは、
-前記マスター装置の方向と前記スレーブ装置の方向とが、前記マスター装置の方向と前記スレーブ装置の方向との間の許容される最大方向差閾値によって表わされる所定の許容範囲内で等しいことを検証するステップ、
すなわち、前記マスター装置の方向と前記スレーブ装置の方向との間の差が前記最大方向差閾値を下回ることを検証するステップ、
を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記開閉レベルの一致のチェックは、
-前記マスター装置の把持閉鎖又は開角と、前記スレーブ装置の把持閉鎖又は開角とが、前記マスター装置の前記開閉レベルと前記スレーブ装置の前記開閉レベルとの間の許容される最大把持閉鎖差閾値によって表わされる所定の許容範囲内で等しいことを検証するステップ、
すなわち、前記マスター装置及び前記スレーブ装置の把持閉鎖間又は開角間の差が、前記開閉レベル間の最大差の前記閾値を下回ることを検証するステップ
を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
前記第3のチェックは、
-前記スレーブ装置の方向による前記マスター装置の方向の到達可能性のチェック、及び/又は
-前記マスター装置の方向に対する前記スレーブ装置の方向の位置合わせ一致のチェック、
のうちの1つ以上を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項17】
所定の前記第3のチェックの全てに合格することは、動きを伴う位置合わせのサブステップへの移行を可能にし、
前記第3のチェックのうちの少なくとも1つに合格しないことは、動きを伴わない位置合わせのサブステップにあるときに、動きを伴う位置合わせの前記サブステップへの移行が可能ではない、又は、動きを伴う位置合わせの前記サブステップにあるときに、動きを伴わない位置合わせの前記サブステップへの移行を強制する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記位置合わせ一致チェックは、
-前記マスター装置の方向と前記スレーブ装置の方向とが、前記マスター装置の方向と前記スレーブ装置の方向との間の許容される最大方向差閾値(dV)によって表わされる所定の許容範囲内で等しいことを検証する、すなわち、前記マスター装置の方向と前記スレーブ装置の方向との間の差f(RPYs-RPYm)が前記最大方向差閾値(dV)を下回ることを検証するステップ、
を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のチェックとの関連で又は前記第3のチェックとの関連で実行される前記位置合わせ一致チェックは、前記スレーブ装置の方向のそれぞれの自由度ごとに検証される、請求項12又は請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のチェックとの関連で又は前記第3のチェックとの関連で実行される前記位置合わせ一致チェックは、単一の全体の絶対値として検証される、請求項12又は請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記最大方向差閾値(dV)は、前記スレーブ装置の方向に依存し、及び/又は前記スレーブ装置の作業空間内の前記スレーブ装置の前記超微細手術器具の方向に基づいて変化する、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記最大方向差閾値(dV)が2つの部分回転への分解によって検証され、前記第1の部分回転の第1のエラー及び前記第2の部分回転の第2のエラーが、それぞれの閾値に対して検証され、
又は、「ねじれ及び振れ」計算方法が使用され、この方法では、いずれも関連装置の主寸法と一体である前記スレーブ装置の主方向及び前記マスター装置の主方向を規定すると、前記第1の方向エラー又は振れエラーが、その主方向間の前記角度エラーとして規定され、前記第2のエラー又はねじれエラーが、前記第1のエラーが補償されたと仮定して、前記マスター装置及び前記スレーブ装置の前記方向間の角度距離として規定される、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記マスター装置と前記スレーブ装置との前記方向間の距離が「クオータニオン距離」計算方法によって計算され、
又は、前記マスター装置の方向と前記スレーブ装置の方向との間の前記距離は、現在の閾値計算方法によって計算され、それにより、それぞれの閾値内で前記位置合わせが検証される前記軸に関してのみ、独立した軸上での動きを伴う前記位置合わせサブステップへの移行を可能にし、又は、それぞれの閾値内の全ての軸に関して位置合わせが検証されるときにのみ、全ての軸の動きを伴う前記位置合わせサブステップへの移行を可能にする、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記方向位置合わせチェックは、好ましくは前記方向チェックの幾つかがうまく合格した場合にのみ、位置ずれ範囲内で、前記マスター装置の前記本体によって規定可能な長手方向軸周りの0°の位置合わせ又は180°回転の位置合わせに関してうまく合格し、好ましくは、前記マスター装置本体は、規定可能な長手方向軸に対して機能的に対称であり、好ましくは、前記スレーブ外科用器具本体は、規定可能な長手方向軸に対して機能的に対称である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記位置合わせ動作が、以下の挙動、すなわち、
-一定及び/又は制限された位置合わせ速度、
-前記位置ずれ値又は方向差の前記ベクトルの前記ノルムに反比例する動きの速度、
-所定の位置合わせ移動戦略に従った前記スレーブ装置の軌道の追跡、
を達成することを目的とした1つ以上の動作を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項26】
前記超微細手術器具を前記マスター装置に対して位置合わせする間の前記スレーブ装置の動きの速度が位置合わせ速度閾値を下回る、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記スレーブ装置の動き位置合わせ軌道の前記瞬間角速度は、前記位置ずれ閾値(dV)の前記ベクトルの前記ノルムに反比例する、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記スレーブ装置の前記動き位置合わせ軌道の前記瞬間角速度は、前記位置合わせステップにおける永続性の時間に正比例する、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記マスター装置の方向に対応する初期の方向(RPYs1)から最終的な方向(RPYs2)への前記スレーブ装置の前記追跡移動が、前記2つの方向間の距離を単調に減少させるようになっている軌道をたどる、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
動きを伴う位置合わせ及び動きを伴わない位置合わせの前記サブステップにおける最大永続性時間を確立して、前記所定の最大永続性時間を超えるときに前記サブステップのうちの1つを終了する更なるステップを含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記遠隔操作準備第1の制御手段は、前記位置合わせステップを開始するために押圧されて前記位置合わせステップが完了するまで押圧され続けられ得るペダル又はボタンを備える、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
各サイクルにおいて、前記ペダル又はボタンが押され続けていることを検証する更なるステップを含み、前記ペダル又はボタンが押され続けていない場合、前記方法は、前記位置合わせステップからの退出を決定するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記位置合わせステップが完了して前記遠隔操作ステップにおける進入がうまく行なわれた時点で、前記制御ペダルが例えば3秒~15秒のタイムアウト期間内に解放されることを検証する更なるステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記マスター装置に動作可能に接続された、術者とシステムとの間のインタフェースを設けるステップであって、前記インタフェースは、遠隔操作して位置合わせ状態に入るという前記術者の意思を前記術者が示すことができるようにする、好ましくは前記位置合わせ状態を維持することもできるようにするべく構成される、更なるステップ、を含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記インタフェースは、遠隔操作時に、前記スレーブ装置の開閉又は把持のスレーブ化された自由度を作動させるように構成される開閉又は把持のマスターコマンドである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムは、2つのマスター装置、すなわち、右マスター装置及び左マスター装置と、2つのそれぞれのスレーブ装置、すなわち、右スレーブ装置及び左スレーブ装置とを備え、
各スレーブ装置は、独立した位置合わせ時間で、他のスレーブ装置の遠隔操作への進入とは独立して個別に遠隔操作への進入を伴って、他のスレーブ装置とは独立してそれぞれのマスター装置との動きを伴う位置合わせのプロセスを行なう、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記位置合わせステップの開始は、前記右装置と前記左装置との間で同時に行なわれる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のチェックは、前記左右のマスター装置がそれぞれ、所定の又は予め決定可能な作業空間領域内で、左側に1つ及び右側に1つであることを検証するステップを含む、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記遠隔操作が開始された後、前記遠隔操作の最中に順守されなければならない更なる拘束に関して更なるチェックが実行され、前記方法は、前記更なる拘束が順守されない場合、前記遠隔操作を終了する及び/又は前記遠隔操作からの退出を可能にする更なるステップを含む、請求項1から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記拘束は、所定の初期遠隔操作期間にわたって、前記マスター装置及びスレーブ装置の速度又は加速度がそれぞれの特定の閾値を下回ることを検証するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記位置合わせステップへの進入、そのようなステップにおける永続性、及び前記遠隔操作ステップへの進入の成功又は失敗が、適切なオーディオ/ビデオ信号によって通知され、
及び/又は位置合わせステップにおける前記永続性は、0.5~2Hzの周波数の断続音によって特定される、請求項1から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
遠隔操作を開始及び/又は準備するための前記方法によって制御されるようになっている医療又は外科遠隔操作のためにロボットシステム(700)であって、
-手持ち式であって機械的に拘束されないとともに、術者によって移動されるようになっている少なくとも1つのマスター装置(110;710,720;810,820;910,920;1010,1020)と、
-マスター-スレーブ制御アーキテクチャにしたがって、複数のN個の制御可能な自由度のうちの1つ以上に委ねられる前記スレーブ装置の動きが前記マスター装置のそれぞれの動きによって制御されるように、前記マスター装置によって制御されるようになっている外科用器具(170;770,780)を備える少なくとも1つのスレーブ装置(740)と、
-請求項1から40のいずれか一項に記載の遠隔操作を開始及び/又は準備するための方法を実行するように前記システムを制御するべく構成される、前記マスター装置及び前記スレーブ装置の両方に動作可能に接続される制御ユニットと、
を備えるシステム(700)。
【請求項43】
前記システムは、遠隔操作される超微細手術用のロボットシステムであり、前記スレーブ装置の前記外科用器具が超微細手術器具である、請求項42に記載のシステム(700)。
【請求項44】
前記遠隔操作の開始後、前記遠隔操作の最中に順守されなければならない更なる拘束に関して更なるチェックを実行するように構成され、前記更なる拘束が順守されない場合、前記遠隔操作を終了する及び/又は前記遠隔操作からの退出を可能にするように更に構成される、請求項42に記載のシステム(700)。
【請求項45】
前記拘束は、所定の初期遠隔操作期間にわたって、前記マスター装置及びスレーブ装置の速度又は加速度が特定の閾値を下回ることを検証することを含む、請求項44に記載のシステム(700)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療又は外科的遠隔操作のためのロボットシステムによって実行される遠隔操作を開始するための方法及びシステムに関する。
【0002】
特に、本発明は、機械的に拘束されずに術者によって移動可能なマスター装置を有する、マスター-スレーブ外科遠隔操作のためのロボットシステムによって実行される遠隔操作を開始するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムの分野では、「マスターコントローラ」装置として作用する機械的に拘束された電動の脚を伴うマスターコンソールが知られている。
【0004】
そのような場合、遠隔操作状態を終了するとき、マスター装置の方向はロックされてスレーブ装置と常に位置合わせされたままであり、マスター装置の方向とスレーブ装置の方向との完全な対応を確保するようにマスター装置がモータによって移動されることも起こり得る。
【0005】
マスターとスレーブとの間のこの方向の位置合わせが実行されない場合、スレーブの制御は、殆ど直感的ではなく、人間工学的ではない。
【0006】
コンソールに拘束されたマスター装置を有するマスター-スレーブロボットシステムの例は、マスター装置を移動させるための有限の能力を必然的に課すものであり、例えば、米国特許出願公開第2020-0179068号明細書に示される。
【0007】
それ以外には、近年、ロボットシステムの「マスターコントローラ」ステーションに機械的に拘束されないマスター装置、すなわち、「機械的に接地されていない」又は「機械的に拘束されない」又は「手持ち式の」装置、つまり、例えば同じ出願人の国際公開第2019-020407号、国際公開第2019-020408号、国際公開第2019-020409号に示されるような種類の装置、また例えば米国特許第8521331号明細書に示されるような装置を用いた解決策が登場した。
【0008】
そのような解決策では、遠隔操作開始手順を確保する方法の問題、特にマスター装置とスレーブ装置との間の位置合わせの問題は、マスターコンソールとの機械的拘束がなく、そのようなコンソールのモータによって確保されるスレーブ化がない場合、未解決のままである。
【0009】
したがって、考慮されている技術分野では、マスター-スレーブ位置合わせ手順及び遠隔操作開始のチェックを効果的に実行することが強く必要とされており、これは、容易ではなく(マスターコンソールによる機械的拘束がない場合)、他方では、絶対的に必要であり、ロボットシステムによる遠隔操作手術又は超微細手術の分野で課される非常に厳しい安全要件、及び各外科医によって非常に重要と考えられる使いやすい要件を満たすように実行されなければならない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムによって実行される遠隔操作を開始するための方法であって、従来技術に関連して前述した欠点を少なくとも部分的に克服できるようにし、考慮される技術分野において特に感じられる前述の必要性に応答する方法を提供することである。そのような目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0011】
そのような方法の更なる実施形態は、請求項2~41に規定される。
【0012】
また、本発明の目的は、遠隔操作を開始/準備する前述の方法を実行するべく装備された医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを提供することでもある。
【0013】
そのような目的は、請求項42に記載のシステムによって達成される。
【0014】
そのようなシステムの更なる実施形態は、請求項43~45によって規定される。
【0015】
提案された解決策のおかげで、少なくとも1つの拘束されないマスター装置と(スレーブ装置の)少なくとも1つのスレーブ化可能な外科用器具との間の満足のいくレベルの位置合わせを、この理由のためにマスター装置の所定の移動を課すことなく、及び/又は術者にとって一定の許容可能なレベルの制御及び直感性を維持することなく、安全かつ確実に達成することが可能である。
【0016】
本発明に係るシステム及び方法の更なる特徴及び利点は、添付図面に関連して例示的で非限定的な例として与えられる好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】方法の実施形態に含まれるマスター装置とスレーブ装置との間の相互作用の一例を示す。
図2】一実施形態に係るスレーブ外科用器具、並びに想定し得る動作モードに係る方法の幾つかのステップを概略的に示す。
図3】想定し得る動作モードに係る方法実施形態を示すフローチャートである。
図4】方法の実施形態で使用される基準座標系、及び前述の基準座標系間の変換を概略的に示す。
図5】実装オプションに係る、図4で言及された基準座標系、及び前述の基準座標系間の変換を概略的に更に示す。
図6】想定し得る動作モードに係る、方法の実施形態に含まれる幾つかのステップを概略的に示す。
図6bis】想定し得る想定し得る動作モードに係る、方法実施形態に含まれる幾つかのステップを概略的に示す。
図7】一実施形態に係る、遠隔操作システム(又はロボット遠隔操作システム)を概略的に示す。
図8】一実施形態に係る遠隔操作システム(又はロボット遠隔操作システム)の一部、及び想定し得る動作モードに係る方法の幾つかのステップを概略的に示す。
図9】一実施形態に係る遠隔操作システム(又はロボット遠隔操作システム)の一部、及び想定し得る動作モードに係る方法の幾つかのステップを概略的に示す。
図10】一実施形態に係る遠隔操作システム(又はロボット遠隔操作システム)の一部、及び想定し得る動作モードに係る方法の幾つかのステップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図10を参照すると、医療又は外科的遠隔操作のためにロボットシステムによって実行される遠隔操作を開始及び/又は準備する方法が記載されている。そのようなロボットシステムは、手持ち式であって機械的に拘束されないとともに、術者によって移動されるようになっている少なくとも1つのマスター装置と、マスター装置によって制御されるようになっている超微細手術器具を備える少なくとも1つのスレーブ装置とを備える。マスター装置の本体は接地されておらず、遠隔操作中に外科医によって手で保持されるように意図されている。マスター装置は、ロボットシステムの一部とのデータ接続のために配線することができる。
【0019】
ロボットシステムは、遠隔操作準備第1の制御手段を更に備える。例えば、前記遠隔操作準備第1の制御手段は、術者が遠隔操作に入る意図をロボットに伝えることを可能にするマンマシンインタフェースを備える。
【0020】
方法は、前述の遠隔操作準備第1の制御手段を動作させることによって遠隔操作準備ステップを開始するステップと、次いで、マスター装置とスレーブ装置との間の位置合わせのステップを実行するステップであって、スレーブ装置が、外科用器具の方向をマスター装置の方向に位置合わせするように移動できるようにされる、ステップと、次いで、マスター装置とスレーブ装置との間の前述の位置合わせステップが完了した後に遠隔操作に入るステップとを含む。
【0021】
準備ステップ中及び位置合わせステップの前に、方法は、位置合わせステップに入るための1つ以上の第1のチェックを実行するステップと、1つ以上の第1のチェックの全てにうまく合格した場合にのみ位置合わせステップの開始を可能にするステップとを含む。
【0022】
更に、遠隔操作ステップに入る前に、方法は、位置合わせステップを可能にするための1つ以上の第2のチェックを実行するステップと、1つ以上の第2のチェックの全てにうまく合格した場合にのみ遠隔操作に入ることを可能にするステップとを含む。
【0023】
スレーブ装置が外科用器具の方向をマスター装置の方向に位置合わせさせるように移動することができる前述の位置合わせステップを提供することによって、マスター装置とスレーブ装置とが位置合わせされていない場合に遠隔操作への進入を回避することが可能であり、したがって遠隔操作中に進入位置ずれを回復する必要性を回避し、同時に、位置合わせステップを可能にするための位置ずれ閾値は、遠隔操作からの退出を決定する位置ずれ閾値よりも緩やかであり得るため、遠隔操作への進入を可能にすることは直感的であることに留意すべきである。
【0024】
方法実施形態によれば、位置合わせステップは、スレーブ装置の外科用器具が移動することができない、動きを伴わない位置合わせのサブステップと、スレーブ装置の外科用器具が移動することができる、動きを伴う位置合わせのサブステップとを含む。
【0025】
この場合、実装オプションによれば、方法は、マスター装置に対するスレーブ装置の位置合わせを取得するようになっている位置合わせ動作を実行するステップを含み、動きを伴う位置合わせと動きを伴わない位置合わせとの前述のサブステップ間の移行をチェックするようになっている1つ以上の第3のチェックを実行するステップを更に含む。
【0026】
実装オプションによれば、動きを伴う及び動きを伴わない位置合わせの上記のサブステップは、周期的に互いに続く。
【0027】
そのような場合、各サイクルの終わりに、方法は、第1のチェックの結果をチェックするステップと、全ての第1のチェックが肯定的な結果を与える場合、位置合わせステップに留まるステップと、第1のチェックのうちの少なくとも1つが肯定的な結果を与えない場合、位置合わせステップを終了して準備ステップに戻るステップとを含み、更に、第2のチェックの結果をチェックし、全ての第2のチェックが肯定的な結果を与える場合、遠隔操作ステップに入るステップを含む。
【0028】
方法の様々な想定し得る実施形態によれば、前述の第1のチェックは、
-マスター装置の正しい把持のチェック、及び/又は
-マスター装置の位置の合否チェック、及び/又は
-前スター装置の構造的完全性のチェック、及び/又は
-マスター装置の信号品質のチェック、及び/又は
-超微細手術器具がロボット装置上に正しく設置されることのチェック、
のうちの1つ以上を含む。
【0029】
マスター装置が相対移動の自由度を有する方法の実施形態によれば、マスター装置の正しい把持の前述のチェックは、相対移動の自由度が静止位置として規定された規定可能な閾値を超えたことを検証することを含む。
【0030】
実装オプションによれば、前述の相対移動の自由度は、開閉の自由度であり、検証ステップは、前述の開閉の自由度が、開角閾値を下回る開角でわずかに閉じられていることを検証することを含む。
【0031】
別の実装オプションによれば、前述の相対移動の自由度は直線変位の自由度であり、検証ステップは、直線変位が特定の接近/離間閾値を超える接近/離間直線変位であることを検証することを含む。
【0032】
別の実装オプションによれば、前述の相対移動の自由度はねじれの自由度であり、検証ステップは、ねじれが特定のねじれ閾値を超えていることを検証することを含む。
【0033】
マスター装置が接触センサ、例えば静電容量センサ及び/又は圧力センサを備える方法の実施形態によれば、マスター装置の正しい把持の前述のチェックは、例えばマスター装置がユーザと接触しているかどうかを決定するために、接触センサによって検出された情報を処理することを含む。
【0034】
方法の実施形態によれば、マスター装置の位置の合否の前述のチェックは、マスター装置が所定の又は予め決定可能な作業空間領域、例えば追跡システムによって決定された空間領域内にあることを検証することを含む。
【0035】
別の方法実施形態によれば、マスター装置の位置の合否の前述のチェックは、マスター装置が静止形態にないことを検証することを含み、そのような静止形態は、例えば、手持ち式でないときにマスター装置を収容するようになっている作業領域領域内のマスター装置の位置、好ましくは方向及び/又は開閉レベルにも対応する。
【0036】
方法の実施形態によれば、マスター装置の信号品質の前述のチェックは、マスター装置とシステムとの間のデータ通信がアクティブかつ機能しており、それぞれの所定の閾値を超える品質レベル及び/又は信号対雑音比を有する電気信号によってサポートされていることを検証することを含む。
【0037】
実装オプションによれば、マスター装置の信号品質の前述のチェックは、マスター装置のセンサが接続されてアクティブであることを検証することを含む。
【0038】
方法の実施形態によれば、マスター装置の構造的完全性の前述のチェックは、マスター装置の構造的完全性を示す1つ以上の所定の拘束を検証することを含み、そのような拘束は、マスター装置の位置及び/又は速度及び/又は加速度の検出/測定に基づいて検証可能である。
【0039】
一実装オプションによれば、マスター装置の前述の構造的完全性チェックは、マスター装置が予期される方向に対応する検出された方向を規定することを検証することを含む。
【0040】
方法の様々な可能な実施形態によれば、前述の第2のチェックは、以下のチェック、すなわち、マスター装置とスレーブ装置との方向の間の位置合わせ一致のチェック、及び/又はマスター装置とスレーブ装置との開閉レベルの一致のチェックのうちの1つ以上を含む。
【0041】
一実施形態によれば、前述の第2のチェックは、マスター装置とスレーブ装置との間の位置合わせレベル及び開閉レベルの両方の一致のチェックを含む。
【0042】
一実装オプションによれば、前述の位置合わせ一致のチェックは、マスター装置の方向とスレーブ装置の方向とが、マスター装置とスレーブ装置との方向の間の許容される最大方向差閾値によって表される所定の許容範囲内で等しいことを検証することを含む。言い換えれば、そのような位置合わせ一致のチェックは、マスター装置とスレーブ装置との間の方向の差が前述の最大方向差閾値を下回ることを検証することを含む。
【0043】
実装オプションによれば、開閉レベルの一致の前述のチェックは、マスター装置の把持閉鎖又は開角とスレーブ装置の把持閉鎖又は開角とが、マスター装置とスレーブ装置の開閉レベル間の許容される最大把持閉鎖差閾値によって表される所定の許容範囲内で等しいことを検証することを含む。換言すれば、このような位置合わせの一致のチェックは、この場合、マスター及びスレーブ装置の把持閉鎖又は開角の間の差が、開閉レベル間の最大差の前記閾値を下回ることを検証することを含む。
【0044】
本方法の様々な可能な実施形態によれば、前述の第3のチェックは、以下のチェック、すなわち、スレーブ装置の方向によるマスター装置の方向の到達可能性のチェック、及び/又はマスター装置の方向に対するスレーブ装置の方向の位置合わせ一致のチェックのうちの1つ以上を含む。
【0045】
実装オプションによれば、所定の第3のチェックの全てに合格することは、動きを伴う位置合わせのサブステップへの移行を可能にし、一方、第3のチェックのうちの少なくとも1つに合格しないことは、動きを伴わない位置合わせのサブステップにあるときに、動きを伴う位置合わせのサブステップへの移行が可能ではない、又は、動きを伴う位置合わせのサブステップにあるときに、動きを伴わない位置合わせのサブステップに戻る移行を強制する。
【0046】
実装オプションによれば、前述の方向到達可能性のチェックは、マスター装置の方向とスレーブ装置の外科用器具の運動学的方向との間の初期位置ずれがマスター-スレーブ初期位置ずれ閾値未満であることを検証することを含む。
【0047】
別の実装オプションによれば、前述の方向到達可能性のチェックは、可能な位置合わせ軌道が存在することを検証することを含む。
【0048】
一実施形態によれば、前述の位置合わせ一致のチェックは、マスター装置の方向とスレーブ装置の方向とが、マスター装置とスレーブ装置との方向の間の許容される最大方向差閾値dVによって表される所定の許容範囲内で等しいことを検証することを含む。言い換えると、これは、マスター装置fとスレーブ装置fとの方向の差(RPYs-RPYm)が前述の最大方向差閾値dVを下回ることを検証することを意味する。このようなパラメータdVは、後述するパラメータDELTA Vに相当し得る。
【0049】
方法の実施形態によれば、前述の第2のチェックの一部として、又は前述の第3のチェックの一部として実行される位置合わせ一致チェックは、スレーブ装置の方向の自由度ごとに検証される。そのような特徴は、「オイラー角」を参照して以下により詳細に開示される。
【0050】
別の方法実施形態によれば、前述の第2のチェックの一部として、又は前述の第3のチェックの一部として実行される位置合わせ一致チェックは、単一の全体的な絶対値として検証される。
【0051】
一実装オプションによれば、前述の最大方向差閾値dVは、スレーブ装置の方向に依存し、及び/又はその作業空間内のスレーブ装置の超微細手術器具の方向に基づいて変化する。
【0052】
他の想定し得る実装オプションによれば、前述の最大方向差閾値dVは他のパラメータに依存する。
【0053】
一実装オプションによれば、前述の最大方向差閾値dVは、2つの部分回転への分解によって検証され、それぞれの閾値に関して、第1の部分回転の第1のエラー及び第2の部分回転の第2のエラーが検証される。
【0054】
例えば、そのような実装オプションでは、「ねじれ&振れ」計算方法が使用され、両方とも関連装置の主寸法と一体であるスレーブ装置の主方向及びマスター装置の主方向を規定すると、第1のエラー又は振れエラーは、その主方向間の角度エラーとして規定され、第2のエラー又はねじれエラーは、第1のエラーが補償されていると仮定して、マスター装置とスレーブ装置の方向間の角度距離として規定される。
【0055】
別の実装オプションによれば、マスター及びスレーブ装置の方向間の距離は、「クオータニオン距離」計算方法によって計算される。
【0056】
実装オプションによれば、マスター及びスレーブ装置の方向間の距離は、現在の閾値計算方法を使用して計算され、それぞれの閾値内で位置合わせが検証された軸に関してのみ独立した軸上での動きを伴う位置合わせサブステップへの移行を可能にするか、又はそれぞれの閾値内の全ての軸について位置合わせが検証された場合にのみ全ての軸の動きを伴う位置合わせサブステップへの移行を可能にする。
【0057】
実装オプションによれば、前述の方向位置合わせチェックは、好ましくは方向チェックの幾つかがうまく合格した場合にのみ、位置ずれ範囲内で、マスター装置の本体によって規定可能な長手方向軸周りの0°の位置合わせ又は180°回転の位置合わせに関してうまく合格し、好ましくは、マスター装置本体は、規定可能な長手方向軸に対して幾何学的に及び/又は機能的に対称であり、好ましくは、スレーブ外科用器具本体は、規定可能な長手方向軸に対して機能的に対称である。
【0058】
そのような特徴は、以下により詳細に開示される。
【0059】
一実装オプションによれば、本方法はまた、スレーブ装置の制御ポイントの位置合わせ移動が純粋な回転移動のみを実行することを検証するステップを含む。
【0060】
方法の実施形態によれば、前述の位置合わせ動作が、以下の挙動、すなわち、
-一定及び/又は制限された位置合わせ速度、
-位置ずれ値又は方向差のベクトルのノルムに反比例する動きの速度、
-所定の位置合わせ移動戦略に従った前記スレーブ装置の軌道の追跡、
を得ることを目的とした1つ以上の動作を含む。
【0061】
一実装オプションによれば、超微細手術器具をマスター装置に位置合わせする間のスレーブ装置の動きの速度は、位置合わせ速度閾値を下回る。
【0062】
本方法の別の実装オプションによれば、スレーブ装置の動き位置合わせ軌道の瞬間角速度は、位置ずれ閾値dVのベクトルのノルムに反比例する。
【0063】
本方法の別の実装オプションによれば、スレーブ装置の動き位置合わせ軌道の瞬間角速度は、位置合わせステップにおける永続性の時間に正比例する。
【0064】
本方法の別の実装オプションによれば、マスター装置の方向に対応する初期の方向RPYs1から最終的な方向RPYs2までのスレーブ装置の追跡動作は、2つの方向の間の距離を単調に減少させるようになっている軌道に従う。
【0065】
一実施形態によれば、本方法は、移動あり及び移動なしの位置合わせのサブステップの最大永続性時間を確立し、所定の最大永続性時間を超えた場合に前述のサブステップのうちの1つを終了する更なるステップを含む。
【0066】
方法の実施形態によれば、前述の遠隔操作準備第1の制御手段は、位置合わせステップを開始するために押圧され、位置合わせステップが完了するまで押圧され続けることができるペダル又はボタンを備える。
【0067】
術者は、例えば外科医又は医師であり得る。
【0068】
実装オプションによれば、本方法は、各サイクルにおいて、ペダル又はボタンが押され続けていることを検証する更なるステップを含み、ペダル又はボタンが押され続けていない場合、本方法は、位置合わせステップからの退出を決定するステップを含む。
【0069】
別の実装オプションによれば、本方法は、位置合わせステップが完了し、遠隔操作ステップへの進入が成功した後、制御ペダルがタイムアウト期間内、例えば3から15秒の間で解放されることを検証する更なるステップを含む。
【0070】
ペダルが解放されていない場合、遠隔操作は中断される。したがって、本方法は、位置合わせステップが完了した時点で、術者が、制御ペダル、又は任意の他の遠隔操作制御手段を、前記終了時間閾値(又はタイムアウト期間)よりも長い時間にわたって押し続けると、ロボットシステムが遠隔操作を終了することを想定している。
【0071】
一実施形態によれば、本方法は、マスター装置に動作可能に接続され、遠隔操作ステップにアクセスし、位置合わせ条件に入るという術者の意図を術者が示すことを可能にするように構成され、好ましくは、その可能な完了までそのような位置合わせステップに留まるという意図も術者が示すことを可能にするように構成された、術者とシステムとの間のインタフェースを提供する更なるステップを含む。
【0072】
実装オプションによれば、前述のインタフェースは、遠隔操作中にスレーブ装置の開閉又は把持のスレーブ自由度を作動させるように構成された開閉又は把持のマスターコマンドである。
【0073】
方法の実施形態によれば、医療又は外科遠隔操作のための前述のロボットシステムは、2つのマスター装置、すなわち、右マスター装置及び左マスター装置と、2つのそれぞれのスレーブ装置、すなわち、右スレーブ装置及び左スレーブ装置とを備え、方法は、各スレーブ装置が、独立した位置合わせ時間で、他のスレーブ装置の遠隔操作への進入とは独立して個別に遠隔操作への進入を伴って、他のスレーブ装置に対して独立してそれぞれのマスター装置との動きを伴う位置合わせのプロセスを行なうことを含む。
【0074】
実装オプションによれば、右装置の位置合わせステップの開始は、左装置の位置合わせステップの開始と同時に行われる。これにより、システムが2つのマスター装置を備えるか、又は単一のマスター装置を備えるかどうかを認識することもできる。
【0075】
前述の事例では、本方法の実装オプションは、前述の第1のチェックが、幾何学的拘束のチェックに基づいて、右マスター装置が術者の右手に把持されていること、及び左マスター装置が術者の左手に把持されていることを検証することを含むことを提供する。
【0076】
実装オプションによれば、前述の幾何学的拘束は、作業空間内の左右のマスター装置の相対位置を検出することを含む。
【0077】
一実装オプションによれば、前述の幾何学的拘束は、左右のマスター装置の検出された位置が、測定システムに対して、又は単一のマスター装置に対して、それぞれ作業空間の右半分及び左半分に位置することを検証することを含む。
【0078】
方法実施形態によれば、スレーブ装置とマスター装置との間の位置合わせステップの開始は、不随意の遠隔操作開始を回避するために、遠隔操作制御手段が所定の時間にわたって操作及び/又は押圧され、操作及び/又は押圧され続けるという更なる拘束を受ける。
【0079】
更なる方法の実施形態によれば、遠隔操作の開始後、遠隔操作中に順守されなければならない更なる拘束条件に対して更なるチェックが実行される。そのような場合、本方法は、前述の更なる拘束が考慮されない場合、遠隔操作を終了する、及び/又は遠隔操作からの終了を可能にする更なるステップを含む。
【0080】
実装オプションによれば、前述の拘束は、マスター及びスレーブ装置の速度又は加速度が、所定の初期遠隔操作期間の間、特定のそれぞれの閾値を下回ることを検証することを含む。
【0081】
本方法の様々な想定し得る実装オプションによれば、位置合わせステップへの進入、そのようなステップにおける永続性、及び遠隔操作ステップへの進入の成功又は失敗は、適切なオーディオ/ビデオ信号によって通知され、及び/又は位置合わせステップにおける永続性は、0.5Hz~2Hzの周波数の断続音によって特定される。
【0082】
実装オプションによれば、本方法は、術者が制御ペダルを再び押すか、又は別の遠隔操作制御手段を作動させると、ロボットシステムが遠隔操作を終了することを含む。
【0083】
一実施形態によれば、本方法は、遠隔操作のためのロボットシステム上で動作する。
【0084】
次に、遠隔操作を開始及び/又は準備するための前述の方法によって制御されるようになっている医療又は外科的遠隔操作用のロボットシステムについて説明する。
【0085】
そのようなシステムは、手持ち式であって機械的に拘束されないとともに、術者によって移動されるようになっている少なくとも1つのマスター装置と、外科用器具を備える少なくとも1つのスレーブ装置であって、マスター-スレーブ制御アーキテクチャに従って、複数のN個の制御可能な自由度のうちの1つ以上に委ねられるスレーブ装置の移動が、マスター装置のそれぞれの移動によって制御されるように、マスター装置によって制御されるようになっている、少なくとも1つのスレーブ装置とを備える。
【0086】
システムは、この明細書に開示された実施形態のいずれかに係る遠隔操作を開始及び/又は準備する方法を実行するようにシステムを制御するべく構成された、マスター装置及びスレーブ装置の両方に動作可能に接続された制御ユニットを更に備える。
【0087】
制御ユニットは、好ましくは、マスター装置の姿勢に関する情報を取得して、スレーブスレーブ装置の外科用器具に動作信号を送信するようになっている。制御ユニットは、好ましくはコンソールに含まれる。
【0088】
ロボットシステムは、好ましくは、スレーブ装置の外科用器具の位置及び方向をチェックするために、拘束されない又は「飛行」マスター装置の位置及び方向をマッピングするべく、追跡装置、例えば磁気追跡及び/又は光学追跡を備える。
【0089】
好ましくは、マスター装置の並進移動とスレーブ装置の外科用器具の少なくとも1つの特定制御ポイントのスレーブ移動との間にスケーリング関係があり、言い換えれば、スレーブ外科用器具のチェックポイントの並進は、マスターの並進の一部(1/3~1/20の範囲)である。スケーリングが大きくなるにつれて、マスター装置をその作業容積内に再配置又は収容する能力が特に有利になる。
【0090】
一実施形態によれば、システムは、遠隔操作超微細手術用のロボットシステムである。そのような場合、スレーブ装置の前述の外科用器具は超微細手術器具である。
【0091】
非限定的な例として、本発明による方法の更なる詳細を以下に提供する。
【0092】
本方法の実装オプションによれば、前述の第2のチェックは、マスター装置の方向とスレーブ装置の超微細手術器具の運動学的方向との間の初期位置ずれがマスター-スレーブ位置ずれ閾値未満であることを検証することを含む。
【0093】
方法の実施形態によれば、前述の位置ずれ閾値は、ロボットシステムの所定の方向に対するスレーブ装置の超微細手術器具の方向に基づいて変化する。
【0094】
好ましくは、位置合わせステップの開始を可能にするための位置ずれ閾値は、ロボットシステムの所定の方向(例えば、スレーブ外科用器具の上流に拘束された位置決めスピンドルの長手方向)に対するスレーブ装置の外科用器具の現在の姿勢及び/又は所望の姿勢に依存する。
【0095】
方法実施形態によれば、前述の第2のチェックは、マスター装置の方向と運動学的アーキテクチャに拘束されたロボットシステムの所定の既知の方向との間で測定された初期位置ずれが第2のマスター-スレーブ位置ずれ閾値よりも低いことを検証することを含む。
【0096】
一実装オプションによれば、前述の第2の位置ずれ閾値は、絶対値で0度と90度との間の範囲内にある。
【0097】
更なる実装オプションでは、前述の第2の位置ずれ閾値は、絶対値で0度と45度との間の範囲内にある。
【0098】
実装オプションによれば、拘束のないマスター装置の本体は、実質的に幾何学的に対称である。
【0099】
「幾何学的に対称」という用語は、好ましくは、マスター装置の本体が、規定可能な長手方向軸の周りに180°回転したときに術者にとって区別できないことを意味する。
【0100】
一実施形態によれば、「幾何学的に対称」という用語は、マスター装置の本体が、2つ以上の規定可能な平面の交差によって特定される長手方向軸に対して幾何学的に対称であることを意味し、そのような実装オプションによれば、マスター装置の局所長手方向は、前述の平面の交差によって与えられるように規定される。換言すれば、本実施形態において「幾何学的に対称」とは、マスター装置本体が「N倍」対称に幾何学的に対称であることを意味する。
【0101】
一実施形態によれば、「幾何学的に対称」という用語は、マスター装置の本体が2つの直交する長手方向平面及び水平面に対して幾何学的に対称であることを意味し、そのような実装オプションによれば、マスター装置の局所長手方向は、前述の対称面の交差によって与えられるように規定される。
【0102】
好ましくは、スレーブ装置の外科用器具は機能的に対称である。「機能的に対称」という用語は、スレーブ装置の外科用器具が、幾何学的観点から対称でなくても、規定された長手方向軸(例えば、スレーブ装置のシャフトを通過する「ロール」軸又は「ねじれ」軸)の周りを180°回転して使用される場合、いかなる機能も失わないことを意味する。
【0103】
実装オプションによれば、スレーブ装置の外科用器具も幾何学的に対称である。
【0104】
一実施形態によれば、「機能的に対称」という用語は、スレーブ外科用器具の本体がその局所的な長手方向及び水平面に対して対称であり、スレーブ長手方向の規定を可能にすることを意味する。
【0105】
遠隔操作ステップの間、マスター装置の純粋な回転は、その長手方向軸に対して同じ振幅を有する純粋な回転をスレーブ装置に命令する。
【0106】
マスター装置に対称性がある実施形態によれば、マスター装置は、前述の長手方向軸に対して180°だけオフセットされた2つの対称位置で、術者が区別なく手に持つことを可能にする。
【0107】
当業者には理解されるように、マスター装置の把持が区別できないこのような特性は、スレーブ装置の2つの可能な目標方向を、マスター装置の長手方向対称軸に対して互いに180°オフセットしたマスター装置の各方向と関連付ける。好ましくは、2つの目標方向のうちの一方のみが、遠隔操作中にスレーブ装置による追跡に使用される。
【0108】
一実施形態によれば、そのような選択は、位置合わせステップの前及び/又は最中に、マスター装置とスレーブ装置の外科用器具との間の相互の方向、及び/又は他の偶発的及び特定の動作条件に基づいて行われる。
【0109】
異なる実装オプションによれば、マスター装置及び/又はスレーブ装置及び/又はその両方の非完全な長手方向対称性の場合にも、マスター装置の把持の区別不可能性のそのような特性が得られる。
【0110】
次に、本発明の別の態様に係る、医療又は外科的遠隔操作のためにロボットシステムによって実行される遠隔操作を開始及び/又は準備及び/又は実行するための別の方法について説明する。
【0111】
前述のロボットシステムは、手持ち式であり、機械的に拘束されておらず、術者によって動かされるようになっている少なくとも1つのマスター装置と、マスター装置によって制御されるようになっている外科用器具を備える少なくとも1つのスレーブ装置とを備える。マスター装置は、マスター装置の所定の単一の長手方向軸(X)に関して機能的に対称である。
【0112】
本方法は、マスター装置の作業空間の主基準座標系(MFO)に対して、マスター装置の局所基準座標系(MF)及びその長手方向軸(X)を検出するステップと、次いで、検出された局所基準座標系と機能的に等価である複数の局所基準座標系を規定するステップであって、そのような局所基準座標系が、マスター装置の前記長手方向軸(X)を中心にそれぞれの角度だけ回転される、ステップと、を含む。
【0113】
続いて、本方法は、検出された局所基準座標系と機能的に等価である、前述の複数の局所基準座標系のマスター装置の前述の局所基準座標系のそれぞれについて、スレーブ装置の作業空間内の対応する目標基準座標系をマッピングするステップを含む。
【0114】
最後に、本方法は、スレーブ装置の軌道の最適化のための基準に従って、検出された局所基準座標系と機能的に等価な前述の複数の局所基準座標系の中から、動作基準座標系を選択するステップを含む。
【0115】
方法実施形態によれば、検出するステップは、マスター装置の長手方向軸Xの方向MFを検出するステップを更に含み、マッピングするステップは、スレーブ装置の作業空間内で、対応する目標方向MFSをマッピングするステップを更に含み、選択するステップは、前記対応する目標方向MFSに収束するために、関連する目標姿勢が最適になるように動作基準座標系を選択するステップを更に含む。
【0116】
一実装オプションによれば、複数の局所基準座標系は、マスター装置と一体の局所基準座標系を含む。
【0117】
一実施態様によれば、複数の局所基準座標系は、長手方向軸Xに平行な成分を有する局所基準座標系を含む。
【0118】
方法の実施形態によれば、検出するステップは、マスター装置の姿勢も検出することを含み、姿勢は、位置及び方向情報を含む。
【0119】
一実施形態によれば、本方法は、マスター装置とスレーブ装置との間の位置合わせの一般的なステップで実行される。
【0120】
一実施形態によれば、本方法は、スレーブ装置の外科用器具がまだマスター装置と位置合わせされていない状態で実行される。
【0121】
一実施形態によれば、本方法は、スレーブ装置の外科用器具が未だマスター装置と位置合わせされておらず、スレーブ装置が、外科用器具の方向をマスター装置の方向に位置合わせするように移動できるようにされる条件下で、マスター装置とスレーブ装置との間で動きを伴って又は伴わずに位置合わせするステップの間に実行される。
【0122】
そのような場合、本方法は、スレーブ装置の作業空間にマッピングされるように、マスター装置及びスレーブ装置の方向に基づき、1つ以上の位置合わせチェックを実行するステップと、次いで、選択された前述の動作基準座標系に対するマスター装置の方向を示すステップと、次いで、選択された動作基準座標系に関して示されたマスター装置の前述の方向をスレーブ装置の作業空間内の対応する目標の方向にマッピングするステップ、すなわち、マスター装置の方向とスレーブ装置の外科用器具の目標方向との間の双方向一義的関連付けを確立するステップと、最後に、選択された動作基準座標系に対して示されたマスター装置の方向をマッピングすることによって得られたスレーブ装置の前述の目標方向に基づいて、スレーブ装置とマスター装置との間の位置合わせを実行するステップとを更に含む。
【0123】
方法の実施形態によれば、異なる局所基準座標系間の回転角度は同じであり、すなわち、N個の局所基準座標系が提供されてそれらの間で2π/Nに等しい角度だけ回転される。
【0124】
一実装オプションによれば、本方法は、2つの局所基準座標系、すなわち、マスター装置と一体である第1の局所基準座標系(MF-ID)と、マスター装置と一体であり、マスター装置の前述の長手方向軸Xを中心として第1の局所基準座標系に対して180°回転した第2の局所基準座標系(MF-FLIP)とを含む。この場合、局所基準座標系の数Nは2に等しい。
【0125】
一実装オプションによれば、第1の局所基準座標系(MF-ID)及び第2の局所基準座標系(MF-FLIP)を規定する前述のステップは、マスター装置の検出された方向に基づいて第1の局所基準座標系を規定するステップと、第1の局所基準座標系と恒等変換関数IDとを関連付けるステップと、第1の局所基準座標系に、長手方向軸Xに対して180°の回転行列で表される回転変換関数FLIPを適用して第2の局所基準座標系を規定するステップとを含む。
【0126】
そのような場合、動作基準座標系を選択する前述のステップは、前述の恒等関数ID及び回転関数FLIPの中から、基準座標系に適用される関数を選択することを含む。
【0127】
方法の実施形態によれば、マスター装置は、前述の長手方向軸Xに対して軸対称性を有し、ロボットシステムは、長手方向軸Xに対する位置合わせを必要とせず、したがって、遠隔操作ステップへの進入を可能にし、及び/又は長手方向軸Xを中心としたマスター装置の任意の回転のために遠隔操作ステップで動作する。
【0128】
方法の実施形態によれば、マスター装置は、前述の長手方向軸Xに対して幾何学的に対称である。
【0129】
方法の実施形態によれば、スレーブ装置(特にスレーブ装置の制御ポイント)は、スレーブ装置の軸に対して移動可能である。そのようなスレーブ装置軸は、所定の相関関係に従ってマスター装置Xの前述の長手方向軸と関連している。
【0130】
方法の実施形態によれば、スレーブ装置(及び特にスレーブ装置の外科用器具)は、スレーブ装置の前述の軸に対して幾何学的及び/又は機能的に対称である。
【0131】
一実施形態によれば、遠隔操作ステップ中に、所定の時間閾値を下回る短時間で生じる術者による操作に起因して、長手方向軸Xを中心とした回転移動が存在する場合、方法は、動作基準座標系を前述のローカル動作基準座標系の一方から他方に切り替えるステップを含む。
【0132】
更に言及される別の実施形態によれば、遠隔操作ステップ中に、所定の時間閾値を下回る短時間に発生する術者による操作に起因して、長手方向軸Xを中心とした回転移動の存在下で、本方法は、マスターの転動速度が前述の時間閾値を下回るまで、マスターの長手方向軸Xによって制御される移動にスレーブ化された移動のみを参照して、スレーブのスレーブ化された移動を分離することを提供する。
【0133】
一実施形態によれば、スレーブ装置が制御可能な自由度の一部の間だけマスター装置にスレーブ化される、制限された遠隔操作の段階及び/又は中断された遠隔操作の段階の間、本方法は、所定の時間閾値を下回る、短い時間で起こる、術者による操作に起因する、長手方向軸Xを中心とした回転移動の存在下で、マスター装置の目標方向の計算に使用するために、複数の局所動作基準座標系のうちのどれかを再評価するステップを含む。
【0134】
方法の実装オプションによれば、術者による操作に起因する長手方向軸(X)を中心とした前述の回転移動は、180°の回転に対応する。
【0135】
一実施形態によれば、動作基準座標系を選択する前述のステップは、位置合わせチェックの結果に基づき、1つ以上の所定の選択基準に基づいて実行される。
【0136】
そのような実施形態の様々な可能な実装オプションによれば、前述の1つ以上の選択基準は、マスター及びスレーブ装置の絶対的及び/又は相互の方向の値、及び/又はマスター装置とスレーブ装置との間の方向の差に基づいており、及び/又はロボットシステムの内部及び/又は外部状態に基づいて他の状態を検証することを更に含み、及び/又は患者の安全に関する基準を含む。
【0137】
スレーブ装置が、1つ以上の自由度に対する回転及び/又は移動を可能にするようになっている関節を備える方法の実施形態によれば、前述の1つ以上の選択基準は、
-前記第1の局所基準座標系に関して表された、スレーブ装置の作業空間にマッピングされた、スレーブ装置の関節の方向及び/又は位置とマスター装置の目標方向との間の第1の距離を計算するステップと、
-前記第2の局所基準座標系に関して表された、スレーブ装置の作業空間にマッピングされた、スレーブ装置の関節の方向及び/又は位置とマスター装置の目標方向との間の第2の距離を計算するステップと、
-第1の距離又は第2の距離がそれぞれより短いかどうかに応じて、マスター装置の第1の局所基準座標系又は第2の基準座標系を選択するステップと、
を含む。
【0138】
一実装オプションによれば、前述の選択するステップは、スレーブ装置の作業空間にマッピングされた、スレーブ装置の関節の方向及び/又は位置とマスター装置の目標方向との間の距離の重み付き関数を最小化する局所基準座標系を選択することを含む。
【0139】
スレーブ空間内の目標姿勢及び/又は目標基準座標系は、スレーブ関節の所定の関連する位置及び/又は方向を有することに留意すべきである。
【0140】
任意選択的に、そのような関連付けは一意的な関連付けである。
【0141】
任意選択的に、前述の関節は回転しているだけである。
【0142】
方法の実施形態によれば、前述の1つ以上の選択基準は、スレーブ装置の作業空間内のスレーブ装置に関連付けられた基準座標系に対する軸角エラーを最小にするなどのために、スレーブ装置の作業空間内にマッピングされたマスター装置の結果として生じる姿勢及び/又は方向を決定する局所基準座標系を選択することを含む。
【0143】
別の方法実施形態によれば、前述の1つ以上の選択基準は、スレーブ装置の作業空間の所定の限界からの距離を最大化するなどのために、スレーブ装置の作業空間にマッピングされたマスター装置の結果としての姿勢及び/又は方向を決定する局所基準座標系を選択することを含む。
【0144】
方法の実施形態によれば、前述の1つ以上の選択基準は、スレーブ装置が前述の結果として生じるマスター装置の姿勢及び/又は方向に収束するために必要な軌道が、移動する角度距離及び/又は必要な位置合わせ時間に関して最短であり、及び/又は患者の安全に関する基準を最適化するように、スレーブ装置の作業空間にマッピングされたマスター装置の結果として生じる姿勢及び/又は方向を決定する局所基準座標系を選択することを含む。
【0145】
実装オプションによれば、スレーブ装置が結果として生じるマスター装置の姿勢及び/又は方向に向かって収束するのに必要な前述の軌道は、スレーブ装置に近い障害物及び/又は重要領域を考慮に入れる。
【0146】
方法実施形態によれば、位置合わせステップは複数の制御サイクルを含み、局所基準座標系を選択するステップは、位置合わせステップの前述の制御サイクルのそれぞれで実行されるか、又は位置合わせステップの開始時にのみ実行される。
【0147】
別の方法実施形態によれば、位置合わせステップは、スレーブ装置の外科用器具が移動することができない、動きを伴わない位置合わせのサブステップと、スレーブ装置の外科用器具が移動することができる、動きを伴う位置合わせのサブステップとを含み、局所基準座標系を選択するステップは、動きを伴わない位置合わせのサブステップの間にのみ実行される。
【0148】
方法実施形態によれば、位置合わせステップの終了後、遠隔操作ステップは、位置合わせステップ中に選択された動作基準座標系に基づいて、目標装置の現在の方向、したがってスレーブ装置のスレーブ化された方向を示すことによって行われる。
【0149】
別の実装オプションによれば、位置合わせステップ中に選択された最後の変換関数は、後続の遠隔操作の全継続時間中に使用される。
【0150】
一実装オプションによれば、前述の所定の長手方向軸Xは、互いに直交するマスター装置の2つの対称面の交差によって規定される軸である。
【0151】
別の実装オプションによれば、スレーブ装置の前述の機能対称軸はまた、スレーブ装置の幾何学的対称軸、すなわち、2つのスレーブ対称面に関して対称軸である。
【0152】
方法の実施形態によれば、動きと位置合わせするステップは、例えば、スレーブの動きが術者によって理解され、安全になるように、超微細手術器具をマスター装置に位置合わせしながらスレーブ装置の移動速度を制限することを含む。
【0153】
方法の実施形態によれば、位置合わせステップは、スレーブ装置がスレーブ装置自体の一部に対して回転移動を排他的に実行することを提供する。
【0154】
実装オプションによれば、回転移動について検証されるスレーブ装置の前述の部分は、スレーブ装置のチップとして理解されるべきである。
【0155】
実装オプションによれば、前述のチェックは、超微細手術器具の仮想作用点、例えばスレーブ装置の制御された端部間の中間点に対して実行される。
【0156】
実装オプションによれば、チップ以外のチップに関節接合された(上流位置決め及び方向移動連鎖に属する)スレーブ装置の他の部分は、並進することができ、したがって、排他的な回転移動の前述の検証の対象ではない。
【0157】
既に述べたように、一実施形態では、マスター装置は、開閉と呼ばれる相対移動の自由度を有する。実装オプションによれば、そのような開閉の自由度は、マスター装置又はその一部の変形レベルに関連付けられる。別の実装オプションによれば、そのような自由度は、マスター装置又はその一部に対して術者によって誘発される力及び/又はトルクの量に関連付けられる。
【0158】
そのような場合、実装オプションによれば、前述のチェックは、開角が特定の閾値よりも低いことを検証することを含む。
【0159】
一実装オプションによれば、前述の開角閾値は、マスター装置の剛性部分の間の10度から45度の範囲内にあるか、又は開始開角、すなわち静止角度に対して5度から15度の範囲内の偏差閾値である。
【0160】
一実施形態によれば、前述の開閉の自由度は、マスターの変形/並進によって、又はマスター自体の構造と一体の2点の距離によって特定される。
【0161】
一実施形態では、その開閉度を決定するポイントは、マスター装置のチップである。そのような場合、前述の線形開口閾値は、3から20mmの間、好ましくは3から10mmの間の範囲にある。
【0162】
一実施形態によれば、マスター装置は、術者によってマスター又はその幾つかの部分に加えられた力又はトルクの量を測定するようになっているセンサセットを有する。
【0163】
そのような場合、前述の第1のチェックは、マスター又はその幾つかの部分で測定された物理量の大きさが、そのようなマスター装置が術者によって実際に操作されることを示唆することを検証することを含む。
【0164】
方法の実施形態では、術者とシステムとの間の前述のインタフェースは、作業領域内の拘束のないマスター装置の位置からなる。
【0165】
実装オプションによれば、マスター装置の姿勢のセットは、そのような装置が静止状態又は収容状態にあると認識される又はマスターを操作されていないときに収容するようになっているボリュームに格納される、そのような作業領域から除外される。
【0166】
実装オプションによれば、そのような静止状態は、所与の空間領域内のマスター装置の存在、並びにその格納を示すマスター装置の方向及び/又は開閉レベルによって特定される。一実施形態では、そのような静止状態は、所与の空間領域内のマスター装置の位置によって一意的に特定される。
【0167】
位置合わせステップの間、マスターとスレーブとの間のスレーブ戦略は、患者の解剖学的構造に関連する安全上の拘束に対するコンプライアンスを最大にし、必ずしもスレーブ装置の動きを最小にしないように関節移動されることに留意すべきである。実装オプションでは、スレーブ装置は、位置合わせ中に最短角度軌道に従わない場合がある。
【0168】
一実施形態によれば、本方法は、ロボットシステムが、そのようなステップが例えば2から15秒の間の位置合わせ時間閾値よりも大きい時間を超える場合、位置合わせステップを終了することを含む。
【0169】
非限定的な例として、既に前述したものを含む多種多様なチェック及び検証を含む好ましい方法実施形態の更なる詳細を以下に示す。
【0170】
以下に述べる基準座標系を図1図10(特に図5)に示す。
「マスターフレーム」(MF)又は「マスター基準座標系」;
「マスターフレーム原点」(MFO)、又は「マスター基準座標系原点」;
「スレーブフレーム」(SF)、又は「スレーブ基準座標系」;
「スレーブフレーム原点」(SFO)、又は「スレーブ基準座標系原点」;
「固定基準系」(FRS)、又は固定外部基準系;
「マスター-スレーブ変換」(MST);
「スレーブ作業空間のマスターフレーム」(MFS)、又は「スレーブ作業空間内のマスター基準座標系」
【0171】
一般的に言えば、マスター装置及びスレーブ装置のスレーブ外科用器具の開閉(「把持」)の自由度を考慮せずに、
1)各マスター装置の姿勢は、「マスターフレーム原点(MFO)」と呼ばれる追跡システムと一体の基準座標系に対して示される「マスターフレーム(MF)トリプル」によって一意的に特定される;
2)スレーブ装置の姿勢は、「スレーブフレーム原点」と呼ばれるロボットシステムと一体の基準座標系に対する「スレーブフレーム(SF)トリプル」によって特定される。
【0172】
したがって、固定基準系(FRS)を所与として、「マスター-スレーブ変換」(MST)は、MFO関連の変換をSFO関連の変換にマッピングする変換として規定され、したがって、MSTのMFからMFOへの変換への適用は、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」(MFS)として規定される。
【0173】
システムが遠隔操作されているとき、ロボットシステムは、その「スレーブフレーム」SFが(並進スケール及びオフセット係数とは別に)ユーザによって制御される「スレーブ基準系におけるマスターフレーム」MFSを追跡するようにスレーブ装置を作動させる。
【0174】
したがって、回転の観点から、一実施形態によれば、マスター装置及びスレーブ装置は、その長手方向平面に関して完全に対称であり、「スレーブフレーム」SFが、上記のように計算された、又は「マスターフレーム」MFの前回転から導出される「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSを、マスター装置の主寸法(例えば、コンソールに対して機械的に拘束されていないマスター装置本体の長手方向の延長)の周りで180°だけ追跡することは、問題にしない。
【0175】
これに関連して、ロボットシステムの可能性及び遠隔操作を開始する術者の意図が検証された時点で、ロボットシステムは、以下のように適合された予備的ステップを実行する。
1.スレーブが2つの可能な「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFS解決策のうちのどれを追跡しなければならないかを規定する。選択は、以下でより詳細に説明する位置合わせ軌道を最小化するための基準の1つに従って実行される。
2.遠隔操作中にスレーブ作業空間内のマスター装置の相対位置を一意的に特定するように、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSと「スレーブフレーム」SFとの間の並進オフセットを規定する。これらのオフセットは、遠隔操作への各進入において規定され、それにより、遠隔操作における各並進スレーブ移動は、遠隔操作への進入後に発生したマスター移動の結果のみであり得る。
3.「スレーブフレームSFトリプル」と「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSとを位置合わせする、又はスレーブ装置の外科用器具がユーザによって制御されるものと適合する方向を有する場合にのみ遠隔操作を開始する。
4.存在する場合、スレーブ装置の外科用器具の開閉状態(「把持」)によってマスター装置の開閉状態(「把持」)を再現する。
【0176】
好ましい方法の実施形態の更なる詳細が以下に示されており、これは、すでに述べたものを含む広範な複数のチェック及び検証を含み、外科医は、制御ペダルを介して遠隔操作の準備、開始及び実行ステップの間の移行を制御する。
【0177】
外科医がマスターコンソールに座ったとき、ロボットシステム(以下、「ロボット」とも呼ばれる)はまだ遠隔操作されていない。
【0178】
この時点で、外科医は制御ペダルを押し、位置合わせステップが完了するまでそれを押し下げる。制御ペダルが位置合わせステップの完了前に解放される好ましい実装オプションによれば、ロボットは、遠隔操作ステップを開始することなく位置合わせステップを終了する。
【0179】
術者の操作ペダルに対する操作が検出されると、ロボットは、以下のチェック1)、2)、3)、4)を直ちに操作するように構成される。
【0180】
1)スレーブ装置の外科用器具がロボットマイクロマニピュレータによって係合されたこと、すなわち、ロボットが外科用器具を正しく検出し初期化したことの検証。例えば、実装オプションによれば、外科用器具は、例えば、作動されるのを待っている専用の「ポケット」内の正しい位置に置かれており、ロボットは、外科用器具の作動手段(「準備完了」状態)、例えばモータピストンの延長を準備している。
【0181】
前記検証1)に合格すると、ロボットは確認信号(例えば、緑色光及び音響信号)を提供する。
【0182】
好ましくは、その後、同時に、ロボットは以下のチェックに進む。
【0183】
2)マスター装置が、マスター装置自体のために配置された作業空間内にあることの検証。
【0184】
これは、例えば、ロボットシステムに含まれるマスター装置追跡サブシステムによって実行することができる。例えば、ロボットシステムは、マスターコンソールと一体の追跡磁場発生器を備えることができる。
【0185】
実装オプションによれば、ロボットシステムには光学追跡システムが設けられる。例えば、光学追跡システムは、カメラの立体システムを備え、所定の作業空間内でマスター装置の姿勢を一意的に特定することができる。
【0186】
制御ペダルを押すと、ロボットは、追跡サブシステムから来る情報を処理して、所定の作業空間内のマスター装置の有無を検出する。
【0187】
3)マスター装置が構造的に無傷であることの検証。
【0188】
これは、例えば、マスター装置のモデルを追跡センサの現在の姿勢と比較することによって、マスター装置と関連付けられる2つの追跡センサ134,135(例えば、磁力計型センサ及び/又は光学マーカ)が平面内にあることを評価することによって行うことができる。例えば、そのような比較は、マスター装置本体のロッド又はアームが変形しているか、又は変形していないことを示すことができる。他の完全性チェックの例は、マスター装置のロッド又はアームの位置及び方向の測定値に基づくことができる。
【0189】
4)外科医が遠隔操作に入る意図をロボットに提供することの検証。
【0190】
これは、外科医がマスター装置のロッドを閉鎖に向かって押すことによって行うことができる。そのような場合、ロッド又はアームの開き角が所定量(DeltaM)、例えばマスター装置アームの最大開き及び/又は初期開きの一部未満であることを検証することによって、遠隔操作に入るという外科医の意図が検出され、それによって、互いに接近する追跡センサ134,135を検出する。
【0191】
実装オプションによれば、マスター装置の開閉の自由度のわずかな閉鎖は、遠隔操作に入る意図を検出することができる量に対応する。
【0192】
或いは、これは、マスターが格納されている静止領域以外の領域におけるマスター装置の存在を評価することによって行うことができる。
【0193】
好ましくはリアルタイムで、すなわち数分の1秒で行われる前述のチェック1)、次いで2)、3)、4)が肯定的な結果を与える場合、ロボットはまだ遠隔操作ステップに入らず、スレーブ装置が移動できるようにする位置合わせステップを開始することに留意すべきである(それぞれの音響信号又は視覚信号によってシグナリングされ得る)。
【0194】
前述のチェックのうちの1つでも失敗した場合、ロボットは異常警告信号(音響及び/又はビデオ)を発し、ペダルを解放し、次にそれを再び押して再試行する、言い換えれば、遠隔操作に入る意図を提供するステップからやり直す必要がある。
【0195】
一実施形態では、ユーザは、位置合わせステップへの進入並びに完全な遠隔操作への進入に関する音響、映像又は振動通信をマスター装置から受信する。
【0196】
一実施形態では、ユーザは、マスター装置を作業領域内に保持すること、閉じることによって遠隔操作の意図を行使すること、制御閾値を超えるようにマスター装置を配向方向(orientation direction)に移動させることなど、ペダルを押した後に前記第1のチェックに合格するために取られるべき動作に関する情報を受信する。
【0197】
位置合わせステップでは、外科医によって保持され、一時的に静止したままであってもよいマスター装置の動きと、スレーブ装置の動きとの間に不一致があり、実際には、スレーブ装置はマスター装置に対する位置ずれを回復しなければならない。換言すれば、位置合わせステップの目的の1つは、遠隔操作を進める前に、スレーブ装置の外科用器具がマスター装置に対してあらゆる方向エラーを回復することを確実にすることである。
【0198】
このステップでは、スレーブ装置の外科用器具の動きは、適切な追跡戦略を尊重し、術者によって保持された拘束されていないマスター装置の更なる動きに対して予測可能な方法で反応するため、術者にとって依然として「直感的」であるが、必ずしもマスター装置の動きを忠実に再現、スケーリングする必要はない。このステップでは、スレーブ装置の外科用器具のチップが患者の近くにある可能性があり、したがって、スレーブ装置の大きな制御されない動きを絶対に回避しなければならないことに留意すべきである。このため、位置合わせステップ中、スレーブ外科用器具を特定する制御ポイントは、純粋に回転移動のみを実行することができ、並進することはできない。言い換えれば、スレーブ装置の外科用器具が回転のみを行うことを提供することによって、並進移動することなく位置合わせを達成するために、スレーブ側の大きな制御されない動きが回避される。
【0199】
位置合わせステップ中のスレーブ装置の移動を最小限に抑えるために、前記位置合わせステップは、以下でより詳細に説明するように、A)スレーブ動作のない位置合わせ、及びB)スレーブ動作による位置合わせの2つのサブステップで関節結合されていると見なすことができる。2つのサブステップ間の移行は、ロボットによって連続的に評価することができ、繰り返しても両方向に発生することができる。全体として、位置合わせステップは、マスター-スレーブ遠隔操作状態に入るか、又は失敗して終了する。
【0200】
前述のように、マスター装置は、幾何学的及び/又は機能的に対称となることができ、スレーブ装置の外科用器具は、少なくとも機能的対称性を有し得る。
【0201】
好ましい実装オプションによれば、マスター装置及びスレーブ外科用器具の両方は、水平方向及び長手方向に対称であり、すなわち、マスター装置及びスレーブ装置のそれぞれについて、相対的な2つの対称面の交差(二平面対称性)によって与えられる長手方向(対称軸)が規定可能である。
【0202】
マスター装置が対称である場合、長手方向軸に対するマスター装置の2つの対称的な構成は、術者によって区別できず、機能的及び幾何学的に等価である。そのような実装オプションによれば、スレーブ装置の長手方向に関してスレーブ装置の2つの対称的な構成は、機能的に同等であり、好ましくは幾何学的にも同等であり、区別できない。
【0203】
そのような実装オプションによれば、ロボットシステムは、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSとしてスレーブ空間に転置される前にマスター装置の空間的方向を前処理する。前処理は、2つの可能な変換関数のうちの1つをマスター姿勢MFに適用することを含むことができ、これはマスター装置とスレーブ装置との間の対称性の特性を利用し、すなわち、
(i)「フリップ」変換関数を適用する、すなわち、マスター姿勢をその長手方向対称軸の周りに180°回転させる、又は
(ii)「恒等」変換関数を適用する、すなわち、開始マスター姿勢を変更しない。
【0204】
ロボットシステムの内部及び/又は外部状態に基づくマスター及びスレーブ装置の相互の及び/又は絶対的な方向及び/又は他の条件に基づいて、ロボットシステムは、「恒等」及び「フリップ」機能の中から、追跡に使用される目標方向の計算に使用するものを選択する。選択は、以下に説明する基準の1つ以上に従って行われる。
【0205】
基準FLIP1)-「恒等」及び「フリップ」の中で、スレーブ装置の関節(例えば、スレーブ装置の外科用器具の関節、及び/又はスレーブ装置のマイクロマニピュレータ)の方向及び/又は位置と、結果として得られる目標姿勢「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSに関連する関節の方向及び/又は位置との間の距離の重み付き関数を最小化する変換関数を選択する。
【0206】
基準FLIP2)-「恒等」及び「フリップ」の中から、「スレーブフレーム」SFに対する軸-角度エラーを最小にする、結果として得られる姿勢「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSの変換関数を選択する。
【0207】
基準FLIP3)-「恒等」及び「フリップ」の中から、結果として得られる「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSがスレーブ作業空間の限界からの距離を最大化する変換関数を選択する。これにより、次の遠隔操作ステップ中に術者が作業空間を出る可能性が低減される。
【0208】
基準FLIP4)-「恒等」及び「フリップ」の中で、スレーブ装置が結果として得られる「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSに収束するのに必要な軌道が、移動した角距離及び/又は必要な位置合わせ時間に関して最短になるように、及び/又は患者の安全性に関する基準を最適化するように、変換関数を選択する。
【0209】
実装オプションによれば、そのような軌道は、スレーブ装置の近くの障害及び/又は重要な領域を考慮に入れることができる。
【0210】
実装オプションによれば、ロボットシステムは、位置合わせステップの各制御サイクルで1つ以上の選択基準を最もよく満たす変換関数を選択する。そのような実装オプションによれば、位置合わせステップ中に選択された最後の変換関数は、次の遠隔操作の全継続時間中に使用される。
【0211】
異なる実施態様によれば、使用される変換関数の選択は、位置合わせステップの最初の瞬間にのみ行われる。
【0212】
異なる実施態様によれば、使用される変換関数の選択は、動きのない位置合わせステップ中にのみ実行される。
【0213】
それぞれの規定可能な長手方向軸、又はそれぞれの規定可能な少なくとも1つの長手方向面に対するマスター装置(幾何学的対称性)及びスレーブ外科用器具のそれぞれの対称性(幾何学的対称性であってもよい少なくとも機能的対称性)を提供する実装オプションによれば、ロボットは、2つの可能な構成、すなわち、(i)マスター装置の姿勢から直接得られる構成、及び(ii)マスター装置本体をその長手方向延在方向の周りに180°回転させる(「フリップ」)得られた構成で、スレーブ空間(「スレーブ作業空間のマスターフレーム」MFS)内のマスター装置の空間的方向を評価する。次いで、ロボットは、以下の要件(以下、「MASTERMAP」と呼ぶ)のうちの1つ以上を満たす構成を選択する。
【0214】
MASTERMAP 1)-ロボットシステムの関節(例えば、スレーブ装置の外科用器具の関節、及び/又はスレーブ装置のマイクロマニピュレータ)の動きの重み付き関数を最小化する「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSを選択する。これにより、位置合わせステップ中のロボットシステムの1つ以上の関節の動きを最小限に抑え、物理的スレーブ作業空間の限界に向かう可能性のあるドリフトを回避することが可能である。
【0215】
MASTERMAP 2)-「スレーブフレーム」SFとの軸-角度エラーを最小にする「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSを選択する。これにより、位置合わせステップ中に術者によって知覚されるスレーブ装置の物理的な動きを最小限に抑えることが可能である。
【0216】
MASTERMAP 3)-最終的な「スレーブフレーム」SF方向と物理スレーブ作業空間の限界との間の距離を最小にする「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSを選択する。これにより、術者が次の遠隔操作ステップにおいてロボットシステムの関節の運動学によって課される物理的作業空間を出る確率が低減される。
【0217】
進行中の位置合わせステップのサブステップに関係なく、ロボットはいつでも、採用された選択基準を最もよく満たす「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSを使用する。遠隔操作で使用される「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSは、位置合わせステップ中に選択された最後の「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSである。
【0218】
異なる実施態様によれば、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSは、位置合わせステップが始まるとすぐに、上記の基準の1つを使用して固定される。
【0219】
異なる実施態様によれば、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」 MFSは、スレーブ装置が動いていない位置合わせステップのサブステップにおいてのみ、上記に列挙した基準のうちの1つを使用して固定される。
【0220】
位置合わせプロセスを説明する2つのサブステップA、Bについては、以下でより詳細に説明する。
【0221】
第1の位置合わせサブステップAは、「スレーブ動作を伴わない位置合わせ」ステップである。そのようなサブステップAは、スレーブ装置の動きを提供せず、マスター-スレーブ位置合わせを完了しない。
【0222】
このサブステップAにおいて、ロボットは、以下のチェックを含む更なるチェックを実行する。
【0223】
A1)マスター装置がスレーブ装置によって到達可能な3次元方向を有すること、すなわち、マスター装置の方向を達成するためのスレーブ装置の移動が実現可能であることの検証。言い換えると、ロボットは、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSで特定されるマスター装置の方向が、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSに収束するスレーブ作業空間内の軌道が存在するような3次元の方向であることを検証する。ロボットは、患者の解剖学的構造又は他の動作条件によって指示される境界条件、並びに最適化及び軌道安全基準を考慮に入れることができるため、必ずしも最短位置合わせ経路を処理しない。
【0224】
「スレーブフレーム原点」SFO基準座標系に対する「スレーブフレームSFトリプル」」によって特定されるスレーブ装置の外科用器具のチップ又はスパウト142,143は、スレーブ外科用器具に属する制御ポイント、又はスレーブ外科用器具と強固に関連付けられた仮想ポイントを指すことに留意すべきである。制御ポイントは、このステップでは純粋な回転のためにのみ移動しなければならず、いかなる並進も回避する。これは、患者にとっての潜在的な壊滅的なリスクを回避するのに役立つ。
【0225】
様々な実装オプションによれば、ロボットのソフトウェアによって実行される制御は、前述のチップを制御ポイント、又はチップの自由端と一致しないが、例えば、接触して外科用針を把持するように意図されたスパウト又はチップの点又はその周りにある仮想ポイントとしてとることによって実行することができる。
【0226】
A2)「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSによって特定されるマスター装置と「スレーブフレーム」SFによって特定されるスレーブ装置との間の角度距離が量DELTA Vによって制限されることの検証。したがって、実装オプションによれば、所定の許容エラー値「DELTA V」の閾値を超えるスレーブ外科用器具のチップ142,143の方向もロボットによって受け入れられる。そのような「DELTA V」値は、スレーブ装置のチップの絶対的な方向などの様々なパラメータに応じて予め決定することができる。
【0227】
様々な実装オプションによれば、DELTA Vの値の計算は、以下の計算方法を使用して得ることができる。
【0228】
DELTA V 1)「オイラー角」計算方法。この実装オプションでは、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSのオイラー角ベクトル(MEUL)は、「スレーブフレーム原点」SFO基準座標系、及び「スレーブフレーム原点」SFOに関連するその「スレーブフレーム」SFの対応するスレーブベクトル(SEUL)に関して規定される。したがって、DELTA Vは、角度測定単位で表される3要素ベクトルとしても規定される。この場合、検証A2は、
ベクトルの各要素iについて、
|MEULi-SEULi|<DELTA V
である場合に合格する。
【0229】
オイラー角を抽出するために、RPY規則(「ロール-ピッチ-ヨー」)又はオイラー角を表す既知の方法によって企図される非連続等軸の他の11個のシーケンスのいずれかを使用することが可能である。DELTA Vの可能な選択は5°から15°の間である。
【0230】
DELTA V 2)「クオータニオン距離」計算方法。この実装オプションでは、「スレーブフレーム原点」SFO基準座標系内の「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSフレーム及び「スレーブフレーム」SFフレームにそれぞれ関連付けられたクオータニオン(QM及びQS)間の角度距離(EA)、すなわち、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSと「スレーブフレーム」SFとの間の相対変換のスカラー回転量が評価される。したがって、DELTA Vは、角度計測単位で示されるスカラーとして規定される。この場合、検証A2は、
|EA|<DELTA V
の場合に合格する。5°~15°の間のDELTA Vの値を選択することができる。
【0231】
DELTA V 3)「ねじれ&振れ」計算方法。この実装オプションでは、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFS(すなわち、位置合わせに必要なもの)内で「スレーブフレーム」SFを運ぶ回転は、2つの回転、すなわち、(i)外科用器具のチップの主要寸法、すなわち長手方向延在部に対するスレーブ装置のねじれ回転(RT);(ii)外科用器具のチップの主寸法、すなわち長手方向延在部に直交する別の軸に対するスレーブ装置の揺動回転(RS)の合成として見られる。したがって、DELTA Vは、角度測定単位で前述の回転の回転量RS及びRTを表す2要素ベクトルとして規定される。この場合、検証A2は、
ベクトルの両方の要素iについて、
|vect(RT、RS)i|<DELTA V i
の場合に合格する。第1の構成要素は、より大きなマージン(例えば、5°~30°)を有することができ、第2の構成要素は、より小さなマージン(例えば、5°~15°)を有することができる。
【0232】
異なる実装オプションによれば、量DELTA Vは、任意の「スレーブフレーム」SF及び「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFS対について条件A2を常に真にするのに十分な大きさに任意に選択することができる。
【0233】
異なる実装オプションによれば、数量DELTA Vは、「スレーブフレーム」SF、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFS、選択された倍率(「スケーリング」、又はロボットシステムのソフトウェアのこれら及び他の内部状態の組み合わせに応じて固定又は可変であり得る。
【0234】
チェックA1及びA2が肯定的に合格である場合、ロボットは第2の位置合わせサブステップ、すなわち「スレーブ動作との位置合わせ」サブステップBに入る。
【0235】
そのようなサブステップの間、スレーブ装置はマスター装置の方向に到達するように移動する。すなわち、「スレーブフレーム」SFは、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSに到達するように移動する。
【0236】
サブステップBの間に、
(i)マスター装置が静止している場合、スレーブ装置は、マスター装置のようにそれ自体を方向させるように導く軌道を実行する;
(ii)マスター装置がその間に移動している場合、すなわち、サブステップBの間にマスター装置が移動する場合、スレーブ装置は、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」の現在の方向に収束するようになっている軌道で移動する。
【0237】
好ましくは、このサブステップBの間にも、前述のマスター装置上の前述のチェック2)、3)、4)が連続的に実行され、マスター2)、3)、4)上のそのようなチェックのうちの少なくとも1つが失敗した場合、ロボットは、位置合わせステップ及び/又は動作との位置合わせのサブステップBを終了する。
【0238】
実装オプションによれば、ロボットは、動きを伴う位置合わせサブステップBを終了し、動きを伴わない位置合わせサブステップAに戻る。
【0239】
移動サブステップBとの位置合わせの間、スレーブ装置によって実行される軌道は、以下の制御方針のうちの1つ以上に従う。
B1)前記位置合わせ軌道の瞬時角速度は一定である;
B2)位置合わせ軌道の瞬間角速度は制限される、すなわち、特定の閾値未満である;
B3)位置合わせ軌道の瞬間角速度は制限され、この制限は位置合わせステップにおける永続性の時間に正比例する;
B4)位置合わせ軌道の瞬間角速度は、上記で規定された速度限界のうちの小さい方によって制限される。
B5)位置合わせ軌道の瞬時角速度閾値は、前述の方法のいずれかによって計算されたベクトルDELTA Vのノルムに反比例し、言い換えれば、それは、マスター-スレーブ位置ずれ角度が減少する間に増加する。
【0240】
位置合わせ軌道は、以下の要件のうちの1つ以上を満たすように適切に構成される。
B6)前記軌道は、前記最短経路をたどる;
B7)軌道は、現在の動作条件に基づいて決定された最も簡単な経路をたどる;
B8)軌道は、ユーザ安全性最大化基準によって指示される経路をたどる。
【0241】
動作サブステップBとの位置合わせ中、スレーブ外科用器具の閉鎖(把持部)は、1つ以上の要件B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8を満たす軌道でマスター装置の閉鎖に収束する。動作サブステップBとの位置合わせの間、条件A1及びA2は、1秒のうちの短い割合の周期でリアルタイムで連続的にチェックされる。
【0242】
前述のチェックA1~A2のうちの少なくとも1つが合格しなかった場合、ロボットは、両方のチェックA1~A2が肯定されるのを待つスレーブの動きを伴わない位置合わせブステップAに戻る。
【0243】
前述のA1-A2チェックの全てが代わりに肯定的な結果を与える場合、ロボットは、位置合わせステップが完了するまでサブステップBに留まる。
【0244】
このサブステップBの間も、前述のマスター装置上の前述のチェック2)、3)、4)が連続的に実行され、ロボットは動きを伴う位置合わせサブステップBを終了し、動きを伴わない位置合わせサブステップAに戻ることに留意すべきである。この場合、2)3)及び4)の条件も満たされる場合にのみ、サブステップBに戻ることが可能である。
【0245】
位置合わせステップは、サブステップBの間に、以下の条件が発生したときに完了する。
COND-TELEOP 1)-マスター装置とスレーブ装置の開閉(把持)度が同等(エラーDeltaGripを除く);
COND-TELEOP 2)-マスター装置(すなわち、「スレーブ作業空間のマスターフレーム」MFS)とスレーブ装置(「スレーブフレーム」SFとの間の方向エラーは、方向エラーDelta Uと呼ばれる量Delta U未満である。方位エラーDelta Uの算出は、DELTA Vの場合について既に説明したいずれの算出方法によっても評価することができる。
【0246】
上記の条件COND-TELEOP1及びCOND-TELEOP2がタイムアウトA以内に到達しない場合、ロボットシステムは位置合わせステップを直ちに終了し、新しい位置合わせステップを開始する前に制御ペダルを解放する必要がある。
【0247】
好ましい実装オプションによれば、位置合わせステップと遠隔操作ステップとの間の移行において、2つの可能な対向する「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFS構成のうちのどれが遠隔操作の残りの部分で使用されるかが決定される。加えて、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSの変換オフセットは、好ましくは、まさに最初の遠隔操作への進入の瞬間に、基準座標系「スレーブフレーム原点」SFOに対する「スレーブフレーム」SFの原点と一致するマスター装置の相対位置を取得することを可能にするように規定される。
【0248】
更なる実装オプションによれば、上記の条件のうちの1つ以上が失われると、ロボットは、動きを伴う位置合わせサブステップBを終了し、動きを伴わない位置合わせサブステップAに戻る。この場合、2)3)及び4)の条件も再び満たされた場合にのみ、サブステップBに戻ることが可能である。
【0249】
遠隔操作ステップは、制限された持続時間の第1の段階では、位置合わせステップから遠隔操作ステップへの移行中のスレーブ装置の移動ジャークを回避するために、移動が速度及び/又は加速度に関して制限されることを提供する。
【0250】
実装オプションによれば、ロボットが遠隔操作ステップに入ると、制御ペダルは、特定のタイムアウトT内、例えば3から20秒の間で解放されなければならない。そのような時間内にペダルが解放されない場合、ロボットシステムは遠隔操作状態を終了し、ペダルを解放し、位置合わせシーケンスを再開する必要がある。
【0251】
なお、ここでは、マスター装置が1台のみであり、子機が1台のみである場合について説明した。
【0252】
2つのマスター装置及び2つのスレーブ装置がある好ましいシステム実施形態では、制御戦略は以下のように構成される。
-マスター-スレーブ対1及び2の両方が一緒に(同時に)位置合わせステップに入らなければならない;
マスター-スレーブ対1及び2の両方が一緒に(同時に)遠隔操作ステップに入らなければならない。
【0253】
その結果、
(i)2つのマスター-スレーブ対のうちの1つが位置合わせステップに入らない場合(例えば、外科用器具が係合されておらず、チェック1が失敗するか、又は外科医がマスターの1つで操作する意図を表しておらず、チェック4が失敗する場合)、2つの対のうちの1つのみの位置合わせを続行することが可能であり、次いで、全てのチェックに合格したマスター-スレーブ対のみで更に遠隔操作することが可能である。
(ii)2つの対(例えば、マスター-スレーブ・対2)のうちの一方が遠隔操作に入らないが、両方の対がすでに位置合わせステップに入っている場合、ロボットは、両方のマスター-スレーブ対1及び2が位置合わせされるまで待機し、その後遠隔操作に入る。このプロセスは数秒続く可能性がある。
【0254】
この場合、位置合わせに達することができない場合、単一のマスター-スレーブ対を用いた遠隔操作は許可されず、術者は、処置全体の最初に戻らなければならず、すなわち、ペダルを解放し、次いでそれを再び押さなければならない。
【0255】
好ましいシステム実施形態では、制御戦略は以下のように構成される。
(COND1)両方のマスター-スレーブ対1及び2が位置合わせステップに入る場合、それらは一緒に(同時に)位置合わせステップに入る。
(COND2)マスター-スレーブ対1及び2の両方が位置合わせステップに入った場合、それらは最終的に一緒に(同時に)遠隔操作ステップに入る。
【0256】
その結果、
(COND1)2つのマスター-スレーブ対のうちの1つが位置合わせステップに入らない場合(例えば、外科用器具は係合されておらず、条件1は失敗する)、又は外科医がマスター装置のうちの1つに対して操作する意図を表明しておらず、条件4が失敗する場合)、2つのマスター-スレーブ対のうちの1つのみの位置合わせを継続することが可能であり、位置合わせステップが完了すると、遠隔操作に入る唯一のマスター-スレーブ対でもある。
(COND2)2つの対(例えば、マスター-スレーブ・対2)のうちの一方のみが位置合わせ条件を満たさないが、両方の対が以前に位置合わせステップに入った場合、ロボットは、マスター-スレーブ対1及び2の両方が前述の条件を満たすまで待機してから、遠隔操作に入る。
【0257】
この場合、位置合わせができなければ、1つのマスター-スレーブ対での遠隔操作はできない。
【0258】
所定の時間が使い尽くされると、マスター-スレーブ対の両方について位置合わせプロセスが失敗し、術者は、新たな遠隔操作進入の試みを再開する前にペダルを解放しなければならない。
【0259】
異なる実装オプションによれば、(COND1)を緩和することができ、両方のマスター-スレーブ対が時間的に遅れて位置合わせステップに入ることを可能にする(「事前」対が依然として位置合わせステップにあり、遠隔操作ステップにまだ入っていない限り)。
【0260】
異なる実装オプションによれば、(COND2)を緩和することができ、一方のマスター-スレーブ対が遠隔操作に入ることを可能にし、他方は依然として位置合わせステップにある。この場合、遠隔操作に入った子機は、回転のみで移動したり、並進する可能性が限られたりする。
【0261】
一実施形態によれば、各マスター装置は、それぞれのスレーブ装置に一意的に割り当てられ、それによって、右マスター装置は、右にあり、右スレーブを制御しなければならない。これに関連して、2つのマスター-スレーブ対の場合、位置合わせステップの開始のための追加の必要条件、すなわち条件5)「左右交換」が存在し、すなわち、幾つかのマスター-スレーブ対の場合、基準座標系「MFO」内の右マスターに関連するフレームの位置は、左マスターに関連するフレームに対して「右側」でなければならない。「右」及び「左」の評価は、術者の視点からの左右の自然な概念と一致するMFOの方向に沿ってマスターフレームの座標を投影することによって行われる。マスターが「交換」である場合、制御ペダルが押されると、位置合わせステップを開始することはできないが、術者は、画面上のメッセージによってマスターを交換するように通知される。
【0262】
異なる実装オプションによれば、条件5)は、位置合わせステップ全体に緩和又は拡張することができる。後者の場合、動作サブステップBとの位置合わせにおけるマスター-スレーブ対の持続性のために、条件A1及びA2に条件5)を満たすことが追加される。
【0263】
パラメータDELTA V、DELTA U、並びに2つのマスター-スレーブ対の位置合わせステップ中の軌道の構築戦略は、一般に互いに独立しており、ロボットシステムの状態並びに係合される外科用器具の種類に依存し得ることに留意すべきである。
【0264】
一実施形態では、DELTA Vは Delta Uよりも大きい、すなわち、許容可能な位置ずれ閾値は、動きを伴う位置合わせサブステップBにあるときに対して動きを伴わない位置合わせサブステップでより大きい。例えば、3つのDELTA Vのセットは、10°-90°/10°-60°/10°-85°の範囲の値を用いてオイラー角法で計算され、Delta Uは、0°-10°の範囲の「クオータニオン距離」法で計算された値である。
【0265】
異なる実装オプションによれば、マスター-スレーブ対のDELTA V、Delta Uは、位置合わせ手順の現在の状態に依存し得る。例えば、対のうちの1つの収束、又は位置合わせステップの開始から経過した時間は、ロボットシステムの有用性を高めるように、許容エラーDELTA V及びDelta Uを広げることができる。
【0266】
要約すると、上記で詳細に開示された実装オプションは、以下のように要約することができる。
-外科医がペダルを押し、位置合わせ処置の終了までそれを押したままにする;
-システムは、ロボットの状態に関する以下の態様のチェック、並びにマスター装置の状態によって観察される術者状態のチェックを実行するように構成される。
-CHECK 1):スレーブ外科用器具がスレーブ装置と係合される;
-CHECK 2):マスター装置が規定の作業空間内にある;
-CHECK 3):マスター装置が自発的に術者に手持ちされている(一実装オプションでは、遠隔操作ステップに入るという術者の意図を示すために、完全には開いておらず、わずかに閉じていることが検証される);このチェックは、マスター装置の追跡システムの信号品質が適切な所定の品質基準を満たすことを更に検証することができる。
-CHECK 4):マスター装置の構造は、1つ以上の構造的完全性試験に照らして無傷である;
-CHECK 5)両方の機器を用いて遠隔操作に入る意図がある場合(2つのマスター装置に対して1から4の検査が行われる)、両方のマスター装置は正しく手持ちされ、すなわち、同時に術者によって自発的に手持ちされる。
【0267】
上記の全てのチェックに合格した場合、ロボットシステムは、オーディオ及び/又はビデオ確認信号をユーザに提供する。
【0268】
位置合わせステップ、特に「スレーブ動作を伴わない位置合わせ」のサブステップに入る。実装オプションによれば、2つのマスター装置の場合、各マスター-スレーブ対は、互いに独立して位置合わせステップのサブステップAに入る。前記サブステップAにおいて、
-A1:マスターがスレーブによって到達可能な方向を有するかどうかをチェックする;
-A2:マスター装置の方向とスレーブ装置の方向との間の距離が量DELTA V未満であることをチェックする。
【0269】
上記が発生した場合、スレーブの「動きとの位置合わせ」のサブステップBに入り、ここで、スレーブ装置が移動されてマスター装置に到達し、特に、それぞれのマスター装置によって制御される方向及び開閉度に到達する。条件A1又はA2のうちの1つが欠落している場合、ロボット装置は位置合わせステップのサブステップAに戻る。
【0270】
位置合わせサブステップBの間、スレーブ装置は、前述したように制御ダイナミクスを尊重する軌道での回転によってのみ移動する。
【0271】
それぞれの長手方向軸/平面に関してマスター及びスレーブ装置の本体が対称である場合、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSと、マスター装置の主寸法、すなわち長手方向延在部に対して180°回転したバージョンの両方でスレーブ装置を制御することが可能である。このため、いずれのサブステップにおいても、前述したある最適化基準に基づいて、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSの2つのバージョンのいずれを使用するかを連続的に決定することができる。
【0272】
サブステップのいずれかの間に、CHECK2-CHECK4からの条件の1つが失敗した場合、ロボットシステムは直ちに位置合わせステップを中断する。文書で既に説明されている他の実装オプションは、この条件を緩和する。
【0273】
所定の時間の後、ロボットシステムが依然として位置合わせステップにある場合、位置合わせステップは、遠隔操作に入ることなく終了する。そうではなく、所定の時間内に、位置合わせを開始した全てのマスター-スレーブ対がその中で実際に位置合わせされた場合(前記エラーDelta Uを除く)、ロボットシステムは遠隔操作に入る。
【0274】
遠隔操作に入ると、マスター-スレーブ対のそれぞれについて、「スレーブ作業空間におけるマスターフレーム」MFSの使用バージョンが凍結され、マスター空間とスレーブ空間との間の並進オフセットが規定される。
【0275】
一実装オプションによれば、遠隔操作ステップの開始時に、スレーブの加速度及び速度は、特定の初期有限期間にわたって制限される。
【0276】
遠隔操作に入ると、制御ペダルは、遠隔操作の強制的な中断のペナルティの下で、特定の時間内に解放されなければならない。術者は、オーディオ及びビデオインタフェースの変更によって、位置合わせステップにおける存在及び遠隔操作ステップへの移行を区別することができる。実装オプションによれば、ロボットは、位置合わせステップ中に断続音を発する。そのような音は、遠隔操作への進入が成功した場合、又は位置合わせステップが失敗した場合、互いに区別可能な幾つかの他の音で終了する。
【0277】
図1に示す例では、位置合わせステップは概略的に示されており、スレーブ装置170は、マスター装置110と位置合わせするようにスレーブ175の作業空間内を移動することが可能であり(図示の例では、スレーブ外科用器具170の開始姿勢は網掛けと実線で示され、マスター装置110の姿勢と位置合わせされたスレーブ外科用器具170の目標姿勢は網掛けなしで破線で示されている)、スレーブ外科用器具170の制御ポイント600は、マスター装置110の姿勢と位置合わせするように純粋に回転移動を排他的に実行する。
【0278】
図1の例では、マスター装置本体は、共通の軸を中心に回転するように回転関節内に拘束されたそれぞれのセンサ又はマーカ134,135と一体である2つの剛性部分を備える。
【0279】
図2に示す例では、ロールR、ピッチP及びヨーY移動のための関節が設けられ、並びにチップ142,143間の開閉(又は把持G)の自由度が設けられた関節手首を備えるスレーブ外科用器具170が概略的に示されており、制御ポイント600は、位置合わせステップ中に純粋な回転移動を排他的に実行することが可能にされる。チップ142,143は両方とも、ヨー軸Yの周りにヒンジ止めされて示されている。
【0280】
図6の例は、前述したものによる恒等関数又はフリップ関数の選択を概略的に示す。
【0281】
図6-2に示す例では、長手方向軸X-Xに対して幾何学的に対称な本体を有する拘束されていないマスター装置110が示されており、マスター装置本体は、共通の軸を中心に回転するように回転関節内に拘束されたそれぞれのセンサ又はマーカ134,135と一体の2つの剛性部分を備え、示されている例では、マスター装置110の本体は、長手方向軸X-Xの周りで互いに180°回転した2つの構成(a)及び(b)で外科医150によって手持ち式に示されている。ここで概略的に示されている対称性は、マスター及びスレーブの両方の幾何学的タイプであるが、スレーブ装置及び/又はマスター装置は幾何学的に対称でなくてもよく、依然として機能的に対称になる。
【0282】
前述したように、マスター装置110は、開放/閉鎖又は把持Gのスレーブ化された程度を制御するために共通の軸の周りを回転するように回転関節内に拘束された2つの剛性部品を必ずしも備えず、例えば、マスター装置は、開放/閉鎖又は把持Gのスレーブ化された自由度を制御するための存在又は接触センサを備える、共通の軸及び/又はボタン及び/又は感知されたインタフェースに沿って互いに対して並進するように拘束された2つの剛性部品を備えることができる。
【0283】
図7は、外科医750によって保持された2つのマスター装置710,720がコンソール755と一体の作業空間715内に示されている遠隔操作ロボットシステム700、及び2つのマスター装置710,720によってそれぞれスレーブ化された2つのスレーブ外科用器具770,780を備えるスレーブ装置740の実施形態を示す。
【0284】
図8に示される例は、コンソール855と一体化されたマスター815の作業空間内の静止領域又は収容領域818を示し、拘束のないマスター装置810,820は外科医850によって手持ちで示され、ロボットは、マスター装置810,820が収容領域818内にないことを検証することができる。
【0285】
図9は、外科医950によって手持ち式の2つの拘束されていないマスター装置910,920を示し、ロボットは、各マスター装置910,920がそのそれぞれの作業空間915,925内にあることを検証する(左右の各作業空間915,925は、コンソール955と一体に示されている)。
【0286】
図10は、外科医1050によって保持された2つの拘束されていないマスター装置1010、1020を示し、ロボットは、両方のマスター装置1010、1020がそれぞれの空間的関係で作業空間1015(ここではコンソール1055と一体に示されている)内にあることを検証する。
【0287】
図から分かるように、先に示した本発明の目的は、詳細に上記に開示した特徴により、上記の方法によって完全に達成される。
【0288】
実際、前述した方法及びシステムは、機械的に拘束のないマスター装置であっても、マスター-スレーブ位置合わせ手順及び遠隔操作開始時のチェックを効果的に実行することを可能にする。
【0289】
位置合わせの前及び間、並びに遠隔操作の前に実行される手順及びチェックは、必要に応じて様々な方法で連接することができ、ロボットシステムによって遠隔操作される外科手術又は超微細手術の分野で課される非常に厳しいものであっても広範囲の安全要件を満たすことを可能にする。
【0290】
特に、先に観察されたように、スレーブ装置が移動して外科用器具の方向をマスター装置の方向に位置合わせさせることができる位置合わせステップを提供することによって、マスター及びスレーブが位置合わせされていない場合、遠隔操作への進入を回避することが可能であり、したがって、遠隔操作中に進入時の位置ずれを回復する必要性を回避し、同時に、位置合わせステップを可能にするための位置ずれ閾値が遠隔操作からの退出を決定する位置ずれ閾値よりも緩やかであり得るので、遠隔操作への進入を可能にすることは直感的である。換言すれば、前述の第1のチェックが満たされると、位置合わせステップ中にスレーブがマスター装置の方向と位置合わせするように移動することが可能になるため、術者(外科医)に補助が提供される。
【0291】
偶発的なニーズを満たすために、当業者は、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、前述の方法の実施形態に変更及び適合を行うことができ、又は機能的に等価な他の要素と要素を置き換えることができる。可能な実施形態に属するものとして前述された全ての特徴は、説明された他の実施形態に関係なく実装されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6bis
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】