(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステム及び関連するロボットシステムの制限された遠隔操作を自由度のサブセットにわたって制御するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/37 20160101AFI20240214BHJP
B25J 3/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61B34/37
B25J3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548904
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 IB2022051279
(87)【国際公開番号】W WO2022175798
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021000003431
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518132307
【氏名又は名称】メディカル・マイクロインストゥルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL MICROINSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100230640
【氏名又は名称】高山 望
(72)【発明者】
【氏名】タンツィーニ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ルッファルディ,エマヌエーレ
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】プリスコ,ジュゼッペ マリア
【テーマコード(参考)】
3C707
4C130
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707JT04
3C707JU12
3C707MS27
3C707MT01
4C130AB02
4C130AB04
4C130AD02
4C130AD05
4C130BA01
(57)【要約】
医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するための方法が記載される。ロボットシステムは、手持ち式であって地面に機械的に拘束されないとともに、術者によって移動されるようになっている少なくとも1つのマスター装置と、外科用器具を備える少なくとも1つのスレーブ装置であって、マスター-スレーブ制御アーキテクチャに従って、複数のN個の制御可能な自由度のうちの1つ以上に委ねられるスレーブ装置又はスレーブ装置の外科用器具の移動が、マスター装置のそれぞれの移動によって制御されるように、マスター装置によって制御されるようになっている、少なくとも1つのスレーブ装置とを備える。本方法は、まず、システムの第1の状態及びシステムの第2の状態を規定するステップを含む。システムの第1の状態は、スレーブ装置(すなわち、スレーブ装置の外科用器具に属するか又はそれと一体の少なくとも1つの制御ポイント)の外科用器具がスレーブ化されて前記複数のN個の制御可能な自由度の各自由度においてマスター装置に追従する、完全にスレーブ化された追従を伴う遠隔操作の状態に対応する。システムの第2の状態は、スレーブ装置の外科用器具、又はスレーブ装置の外科用器具の少なくとも前述の制御ポイントが、少なくとも1つの分離された自由度に関連してマスター装置から分離されるとともに、前記少なくとも1つの分離された自由度を除外する前記複数のN個の制御可能な自由度のサブセットにおいてのみマスター装置に対してスレーブ化される、制限された遠隔操作状態に対応する。次いで、方法は、前述のロボットシステムに、システム状態移行を制御するための制御手段を設けるステップと、状態移行を制御するための前述の手段を作動させることによって、術者により、システムの前述の第1の状態とシステムの第2の状態との間の移行を制御するステップとを含む。複数の制御可能な自由度は、並進の自由度及び方向自由度を含む。前述の第2の制限された遠隔操作状態は、マスター装置の再配置の状態であり、前述の少なくとも1つの分離された自由度は、全ての並進自由度を含む。上記の方法を実行するために装備された医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムも記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するための方法であって、前記ロボットシステムは、手持ち式で機械的に拘束されないとともに、術者によって移動されるようになっている少なくとも1つのマスター装置(110)と、外科用器具(170)を備える少なくとも1つのスレーブ装置(740)であって、マスター-スレーブ制御アーキテクチャにしたがって、複数のN個の制御可能な自由度のうちの1つ以上に委ねられる前記スレーブ装置(740)の移動、又は前記スレーブ装置の前記外科用器具(170)の移動が、前記マスター装置(110)のそれぞれの移動によって制御されるように、前記マスター装置(110)によって制御されるようになっている、少なくとも1つのスレーブ装置(740)とを備え、
前記方法は、
-前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)、又は前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)に属する又はそれと一体の少なくとも1つの制御ポイント(600)が、前記複数のN個の制御可能な自由度の各自由度においてスレーブ化されて前記マスター装置(110)に追従する、完全にスレーブ化された追従を伴う遠隔操作の状態に対応する、前記システムの第1の状態を規定するステップと、
-前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)、又は前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)の少なくとも前記制御ポイント(600)が、少なくとも1つの分離された自由度に関連して前記マスター装置(110)から分離されるとともに、前記少なくとも1つの分離された自由度を除外する前記複数のN個の制御可能な自由度のサブセットにおいてのみ前記マスター装置にスレーブ化される、制限された遠隔操作状態に対応する、前記システムの第2の状態を規定するステップと、
-前記ロボットシステムにおいて、システム状態移行を制御するための手段を設けるステップと、
-システム状態移行を制御するための前記手段を作動させることによって、前記システムの前記第1の状態と前記システムの第2の状態との間の移行を前記術者によって制御するステップと、
を含み、
前記複数の制御可能な自由度は、並進の自由度及び方向自由度を含み、
前記第2の制限された遠隔操作状態は、前記マスター装置(110)の再配置の状態であり、前記少なくとも1つの分離された自由度が全ての並進自由度を含み、したがって、前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)、又は前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)の前記少なくとも1つの制御ポイント(600)は、並進において前記マスター装置に追従しない、方法。
【請求項2】
前記制御可能な自由度のサブセットが少なくとも2つの方向自由度を含み、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記外科用器具の前記少なくとも1つの制御ポイントは、前記少なくとも2つの方向自由度において前記マスター装置に追従する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スレーブ装置の前記外科用器具又は前記スレーブ装置の前記外科用器具の前記少なくとも1つの制御ポイントが前記マスター装置に追従するとともにそれにスレーブ化されるようにする前記少なくとも2つの方向自由度は、ピッチの自由度及びヨーの自由度を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の制限された遠隔操作状態において、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記外科用器具の前記少なくとも1つの制御ポイントは、全ての方向自由度で前記マスター装置に追従し、並進では前記マスター装置に追従せず、
前記方向自由度は、ピッチの自由度、ヨーの自由度、及びロールの自由度を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の制御可能な自由度は、少なくとも1つの開閉自由度を更に含み、前記第2の制限された遠隔操作状態において、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記少なくとも1つの制御ポイントは、全ての方向自由度及び開閉自由度において前記マスター装置に追従し、並進において前記マスター装置に追従しない、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の制限された遠隔操作状態において、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記少なくとも1つの制御ポイントは、
全ての前記方向自由度において前記マスター装置に追従し、並進において前記マスター装置に追従せず、前記開閉自由度に関連して、開方向においてのみ前記マスター装置に追従し、閉方向においては前記マスター装置を追跡しない、ように動作する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の制限された遠隔操作状態において、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記少なくとも1つの制御ポイントは、
全ての方向自由度において前記マスター装置に追従し、並進において前記マスター装置に追従せず、開閉自由度に関連して、閉方向においてのみ前記マスター装置に追従し、開方向においては前記マスター装置に追従しない、ように動作する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の制御可能な自由度は、少なくとも1つの開閉自由度を更に含み、前記第2の制限された遠隔操作状態において、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記少なくとも1つの制御ポイントは、全ての方向自由度において前記マスター装置に追従し、前記開閉自由度において前記マスター装置に追従せず、並進において前記マスター装置に追従しない、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
-前記システムの前記第1の状態は、外科手術中に前記スレーブ装置が作用する動作状態に対応し、
前記システムの前記第2の状態は、前記マスター装置のその作業空間内の準備及び/又は収容及び/又は再配置状態に対応し、
前記移行は、前記マスター装置の前記制御移動が前記システムの前記第2の状態において規定される前記作業空間に対応するマスター装置作業空間と、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記外科用器具の前記制御ポイントの前記対応する移動が規定されるスレーブ装置作業空間との間で、前記システムの前記第2の状態中に前記術者によって決定される所望の関係を確立できるようになっている、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の制限された遠隔操作状態では、前記制御ポイントの回転の可能性が維持されつつ、前記制御ポイントの前記並進が妨げられ、前記マスター装置の方向に応じて前記スレーブ装置の前記外科用器具の方向を変えるために、前記スレーブ装置基準空間内の前記制御ポイントの位置が変化しないままの状態で、前記マスター装置と前記スレーブ装置の前記外科用器具との間の位置合わせ状態を維持する、すなわち、同じ方向を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記スレーブ装置の前記外科用器具は、前記スレーブ装置と接続するための遠位関節と、外科用針を把持して案内するように構成される2つのチップとを備え、
前記外科用器具の前記制御ポイントは、前記遠位関節と前記チップの端部との間に位置されるポイントに対応する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の状態から前記第1の状態への移行の終わりに、前記マスター装置と前記スレーブ装置の前記外科用器具とが位置合わせされる、すなわち、同じ方向を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の状態から前記第2の状態への移行の終わりに、前記マスター装置と前記スレーブ装置の前記外科用器具とが位置合わせされる、すなわち、同じ方向を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の状態と前記第2の状態との間の前記移行中に、速度及び加速度の運動学的パラメータは、分離可能な自由度のロック/ロック解除を規則的にするように制限される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記運動学的パラメータは、前記移行が前記第2の制限された遠隔操作状態に向かう状態移行であるか又は前記第1の状態に向かう状態移行であるかどうかに応じて異なって制限される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
完全にスレーブ化された追従を伴う遠隔操作の前記システムの前記第1の状態に入る前に、並進のために、前記マスター装置基準空間と前記スレーブ装置基準空間とを相関させる0ポイントが規定され、
前記第2の状態からの出口において、前記制限された遠隔操作ステップの終わりに、前記マスター装置と前記スレーブ装置との間の結果として生じる並進オフセットが記憶されて現在の0ポイントに追加されて、完全にスレーブ化された追従を伴う後続の遠隔操作ステップにおいて、前記マスター装置による前記スレーブ装置の制御は、前記制限された遠隔操作ステップ中に発生した前記並進オフセットを考慮に入れる関係に従う、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ロボットシステム制御方法によって制御されるようになっている遠隔操作される外科手術用のロボットシステム(700)であって、前記システムは、
-手持ち式で機械的に拘束されない少なくとも1つのマスター装置(110)であって、該マスター装置(110)がその所定の作業空間内で自由に移動できるように、術者による機械的拘束を伴うことなく移動されるようになっている、少なくとも1つのマスター装置(110)と、
-外科用器具(170)を備える少なくとも1つのスレーブ装置(740)であって、マスター-スレーブ制御アーキテクチャにしたがって、前記スレーブ装置(740)の移動、又は前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)に属する又はそれと一体の少なくとも1つの制御ポイント(600)の移動が、前記マスター装置(110)のそれぞれの移動によって制御されるように、前記マスター装置(110)によって制御されるようになっており、前記移動が複数のN個の制御可能な自由度のうちの1つ以上に委ねられる、少なくとも1つのスレーブ装置(740)と、
-前記術者によって作動され得るシステム状態移行を制御するための制御手段(752)と、
-前記マスター装置(110)及び前記スレーブ装置(740)の両方に、及びシステム状態移行を制御するための前記制御手段(752)に動作可能に接続される制御ユニットであって、
-前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)、又は前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)に属する又はそれと一体の少なくとも1つの制御ポイント(600)が、前記複数のN個の制御可能な自由度の各自由度においてスレーブ化されて前記マスター装置(110)に追従する、完全にスレーブ化された追従を伴う遠隔操作の状態に対応する、前記ロボットシステムの第1の状態を規定する動作と、
-前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)、又は前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)の少なくとも前記制御ポイント(600)が、少なくとも1つの分離された自由度に関連して前記マスター装置(110)から分離されるとともに、前記少なくとも1つの分離された自由度を除外する前記複数のN個の制御可能な自由度のサブセットにおいてのみ前記マスター装置にスレーブ化される、制限された遠隔操作状態に対応する、前記ロボットシステムの第2の状態を規定する動作と、
-前記ロボットシステムにおいて、システム状態移行を制御するための手段を設ける動作と、
-システム状態移行を制御するための前記制御手段を作動させることによって、前記システムの前記第1の状態と前記ロボットシステムの第2の状態との間の移行を前記術者によって制御する動作と、
を実行することによって前記ロボットシステム(700)を制御するように構成される、制御ユニットと、
を備え、
前記複数の制御可能な自由度は、並進の自由度及び方向自由度を含み、
前記第2の制限された遠隔操作状態は、前記マスター装置(110)の再配置の状態であり、前記少なくとも1つの分離された自由度が全ての並進自由度を含み、したがって、前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)、又は前記スレーブ装置(740)の前記外科用器具(170)の前記少なくとも1つの制御ポイント(600)は、並進において前記マスター装置に追従しない、ロボットシステム(700)。
【請求項18】
状態移行を制御するための前記制御手段は、前記術者によって押され得る、及び/又は押された状態に維持され得る、及び/又は解放され得る制御ボタン又は制御ペダルを備え、前記第2の制限された遠隔操作状態は、前記遠隔操作中に、前記制御ボタンを押されたままにすることによって起動されるとともに、前記制御ボタンを解放することによって起動停止される、請求項17に記載のロボットシステム。
【請求項19】
前記システムは、遠隔顕微手術用のロボットシステムであり、前記スレーブ装置の前記外科用器具が超微細手術器具である、請求項17又は18に記載のロボットシステム。
【請求項20】
前記制御可能な自由度のサブセットが少なくとも2つの方向自由度を含み、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記外科用器具の前記少なくとも1つの制御ポイントは、前記少なくとも2つの方向自由度において前記マスター装置に追従する、請求項17から19のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項21】
前記スレーブ装置の前記外科用器具又は前記スレーブ装置の前記外科用器具の前記少なくとも1つの制御ポイントが前記マスター装置に追従するとともにそれにスレーブ化されるようにする前記少なくとも2つの方向自由度は、ピッチの自由度及びヨーの自由度を含む、請求項20に記載のロボットシステム。
【請求項22】
前記第2の制限された遠隔操作状態において、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記外科用器具の前記少なくとも1つの制御ポイントは、全ての方向自由度で前記マスター装置に追従し、並進では前記マスター装置に追従せず、
前記方向自由度は、ピッチの自由度、ヨーの自由度、及びロールの自由度を含む、請求項17から20のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項23】
前記複数の制御可能な自由度は、少なくとも1つの開閉自由度を更に含み、前記第2の制限された遠隔操作状態において、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記少なくとも1つの制御ポイントは、全ての方向自由度及び開閉自由度において前記マスター装置に追従し、並進において前記マスター装置に追従しない、請求項17から22のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項24】
前記第2の制限された遠隔操作状態において、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記少なくとも1つの制御ポイントは、
全ての方向自由度において前記マスター装置に追従し、並進において前記マスター装置に追従せず、前記開閉自由度に関連して、開方向においてのみ前記マスター装置に追従し、閉方向においては前記マスター装置を追跡しない、ように動作する、請求項23に記載のロボットシステム。
【請求項25】
前記第2の制限された遠隔操作状態において、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記少なくとも1つの制御ポイントは、
全ての方向自由度において前記マスター装置に追従し、並進において前記マスター装置に追従せず、前記開閉自由度に関連して、閉方向においてのみ前記マスター装置を追跡し、開方向においては前記マスター装置を追跡しない、ように動作する、請求項23に記載のロボットシステム。
【請求項26】
前記複数の制御可能な自由度は、少なくとも1つの開閉自由度を更に含み、前記第2の制限された遠隔操作状態において、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記スレーブ装置の前記少なくとも1つの制御ポイントは、全ての方向自由度において前記マスター装置に追従し、前記開閉自由度において前記マスター装置に追従せず、並進において前記マスター装置に追従しない、請求項17から23のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項27】
前記第2の制限された遠隔操作状態中、前記スレーブ装置(170)の前記並進自由度は、好ましくは前記第2の制限された遠隔操作状態の持続時間よりも短い制限された持続時間にわたって前記マスター装置(110)にスレーブ化されない、請求項17から26のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項28】
-前記ロボットシステムの前記第1の状態は、外科手術中に前記スレーブ装置が作用する動作状態に対応し、
-前記ロボットシステムの前記第2の状態は、前記マスター装置のその作業空間内の準備及び/又は収容及び/又は再配置状態に対応し、
-前記移行は、前記マスター装置の前記制御移動が前記第2のシステム状態において規定される前記作業空間に対応するマスター装置作業空間と、前記スレーブ装置の前記外科用器具、又は前記外科用器具の前記制御ポイントの前記対応する移動が規定される前記スレーブ装置作業空間との間で、前記ロボットシステムの前記第2の状態中に前記術者によって決定される所望の関係を確立できるようになっている、請求項17から23のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項29】
前記制御ユニットは、前記マスター装置作業空間と前記スレーブ装置作業空間との間の所定の相対的再配置がもたらされる所定の再配置条件を達成するように前記ロボットシステムを制御するように構成され、
及び/又は、好ましくは、前記制御ユニットは、到達した前記所定の再配置条件を維持するように構成され、
及び/又は、好ましくは、前記予め決定可能な再配置条件は、マッピング中心が前記スレーブ装置(170)の、例えば前記制御ポイント(600)の現在位置に位置決めされることを含む、請求項28に記載のロボットシステム。
【請求項30】
前記第2の制限された遠隔操作状態では、前記制御ポイントの回転の可能性が維持されつつ、前記制御ポイントの前記並進が妨げられ、前記マスター装置の方向に応じて前記スレーブ装置の前記外科用器具の方向を変えるために、前記スレーブ装置作業空間内の前記制御ポイントの位置が変化しないままの状態で、前記マスター装置と前記スレーブ装置の前記外科用器具との間の位置合わせ状態を維持する、すなわち、同じ方向を有する、請求項17から29のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項31】
前記スレーブ装置の前記外科用器具は、前記スレーブ装置と接続するための遠位関節と、外科用針を把持して案内するように構成される2つのチップとを備え、
前記外科用器具の前記制御ポイントは、前記遠位関節と前記チップの端部との間に位置されるポイントに対応する、請求項17から30のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項32】
前記ロボットシステムの前記第2の状態から前記ロボットシステムの前記第1の状態への移行の終わりに、前記マスター装置と前記スレーブ装置の前記外科用器具とが位置合わせされる、すなわち、同じ方向を有する、請求項17から31のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項33】
前記ロボットシステムの前記第1の状態から前記ロボットシステムの前記第2の状態への移行の終わりに、前記マスター装置と前記スレーブ装置の前記外科用器具とが位置合わせされる、すなわち、同じ方向を有する、請求項17から32のいずれか一項にロボットシステム。
【請求項34】
前記ロボットシステムの前記第1の状態と前記ロボットシステムの前記第2の状態との間の前記移行中に、速度及び加速度の運動学的パラメータは、分離可能な自由度のロック/ロック解除を規則的にするように制限される、請求項17から33のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項35】
前記運動学的パラメータは、前記移行が前記第2の制限された遠隔操作状態に向かう状態移行であるか又は前記ロボットシステムの前記第1の状態に向かう状態移行であるかどうかに応じて異なって制限される、請求項34に記載のロボットシステム。
【請求項36】
完全にスレーブ化された追跡を伴う遠隔操作の前記ロボットシステムの前記第1の状態に入る前に、並進のために、前記マスター装置作業空間と前記スレーブ装置作業空間とを相関させる0ポイントが規定され、
前記ロボットシステムの前記第2の状態からの出口において、前記制限された遠隔操作ステップの終わりに、前記マスター装置と前記スレーブ装置との間の結果として生じる並進オフセットが記憶されて現在の0ポイントに追加されて、完全にスレーブ化された追跡を伴う後続の遠隔操作ステップにおいて、前記マスター装置による前記スレーブ装置の制御は、前記制限された遠隔操作ステップ中に発生した前記並進オフセットを考慮に入れる関係に従う、請求項17から35のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項37】
前記制御ユニットは、請求項1から16のいずれか一項に記載の前記ロボットシステムの制御方法を実行するべく前記ロボットシステムを制御するように構成される、請求項17から36のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムの制限された遠隔操作を自由度のサブセットにわたって制御するための方法、及び前述の方法を実行するように装備された医療又は外科遠隔操作のための対応するマスター-スレーブロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムの分野では、マスター装置とスレーブ装置との位置の移動間のスケール低減係数の使用が知られており、並びに、より快適な位置のために又はスレーブ作業空間の縁部に到達するためにマスター装置自体をその作業空間の中央に再配置できるようにするべく自由度の一部が一時的にロック又は分離される特定の機械状態への/からの出入りが知られている。
【0003】
特に、そのような状況では、マスターコンソールが、マスターコントローラ装置として機能する機械的に拘束された電動アタッチメントと共に知られている。そのような場合、部分的遠隔操作の状態から完全遠隔操作のうちの1つへの容易な復帰を可能にするために、部分的遠隔操作ステップにおいて、マスター-スレーブの方向は、マスターの方向の程度をロックすることによって、場合によっては、部分的遠隔操作の全持続時間にわたってマスターの方向とスレーブ装置の方向との完全な対応を確保するようにモータによってマスター装置を移動させることによっても、常に位置合わせされたままである。
【0004】
近年、ロボットシステムのコンソールに機械的に拘束されない、すなわち、拘束されない又は「接地されない」又は「飛行する」、すなわち、例えば同じ出願人の国際公開第2019-020407号、国際公開第2019-020408号、国際公開第2019-020409号に示されるような種類のマスター装置、また例えば米国特許第8521331号明細書に示されるような種類のマスター装置を用いた解決策が登場した。
【0005】
したがって、拘束されない又は「飛行する」マスター装置の場合であっても、遠隔操作の準備の初期ステップをどのように確保するかという問題が残っており、この場合、術者(例えば、医師又は外科医)が遠隔操作に適した初期位置に自身を置くことができるようにしつつ、マスター装置とスレーブ装置との間で満足のいくレベルの初期位置合わせに到達しなければならない。そのようなステップにおいて、マスター装置の動きは、スレーブ装置の動きから明らかに分離されなければならない。
【0006】
そのような特徴は、ロボットシステムが遵守しなければならない非常に厳しい安全要件に関連しているため、非常に重要である。
【0007】
更に、外科医は、特にマスター装置の移動とスレーブ装置の移動との間のスケーリングが高い場合(すなわち、超微細手術の用途で起こるように、「スレーブ」移動が例えば5~20の係数によりスケーリングされた「マスター」移動よりも小さい場合)に、快適さ及び実用性の必要性を有する。
【0008】
そのような場合、マスター装置を保持している間に、外科医は、自分の手を非常に大きく動かさなければならず、自分の手でマスター装置の作業空間の縁部に到達することさえあり得る(同様に、マウスが未だカーソルを画面の端に移動させずにパッドの端に到達した状態で、マウスのパッド上の移動を考える)。
【0009】
したがって、マスター装置とスレーブ装置との間の分離、及び遠隔操作の準備の最初のステップを管理する専用の方法を必要とする多くの理由がある。
【0010】
しかしながら、そのような一時的な分離ステップは、スレーブ装置がマスター装置に追従しないという事実を伴い、したがって、マスターとスレーブとが分離される限り、マスター装置とスレーブ装置との十分な位置合わせを確保することは不可能であり、これは、遠隔操作システムの操作性及び患者の安全性の観点から重大な欠点である。
【0011】
したがって、医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムの分野では、補助的な遠隔操作手順を実行することが強く必要とされており、この補助的な遠隔操作手順は、一方では、手術中の患者の絶対的な安全性及び外科医の快適性を確保できるようにし、他方では、最初の準備ステップの終了時及び実際の遠隔操作の開始前、並びに制限された遠隔操作状態から及び/又は遠隔操作状態に向かう移行の状況において、マスター-スレーブ位置合わせを効果的に得ることができるようにする。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するための方法であって、従来技術に関連して先に主張した欠点を少なくとも部分的に克服できるようにし、考慮される技術分野において特に感じられる前述の必要性に応答する方法を提供することである。そのような目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0013】
そのような方法の更なる実施形態は、請求項2~16に規定される。
【0014】
また、本発明の目的は、前述の制御方法を実行するべく装備される医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを提供することでもある。そのような目的は、請求項17に記載の方法によって達成される。
【0015】
そのようなシステムの更なる実施形態は、請求項18~37によって規定される。
【0016】
提案された解決策により、制限された遠隔操作状態中、並びに前記制限された遠隔操作状態から及び/又は前記制限された遠隔操作状態に向かう状態移行中、一定の満足できるレベルのマスター-スレーブ位置合わせを確保することができる。
【0017】
本発明に係るシステム及び方法の更なる特徴及び利点は、添付図面に関連して例示的で非限定的な例として与えられる好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本方法の一実施形態で提供されるマスター装置とスレーブ装置との間の相互作用の一例を示す。
【
図2】本発明に係る方法の一実施形態に含まれる幾つかのステップを示すブロック図である。
【
図3】本発明に係る方法の他の実施形態に含まれる幾つかのステップを示すブロック図である。
【
図4】本発明に係る方法の幾つかの実施形態で採用される幾つかの基準座標系及び基準座標系間の変換を概略的に示す。
【
図5】方法の実施形態に含まれるマスター装置とスレーブ装置との間の相互作用の一例を示す。
【
図6】方法の一実施形態に係る、制限された遠隔操作状態にあるときのスレーブ装置の一例を示す。
【
図7】本発明のシステムの一実施形態に係る、遠隔操作のためのロボットシステムを概略的に示す。
【
図8】一実施形態に係る、スレーブ装置の一例を概略的に示す。
【
図9】幾つかの実施形態に係る、方法の幾つかの想定し得るステップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図9を参照して、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するための方法について説明する。
【0020】
そのようなロボットシステムは、手持ち式であって地面に機械的に拘束されない(「機械的に接地されない」)とともに、術者によって移動される(例えば、手で保持される)ようになっている少なくとも1つのマスター装置と、外科用器具を備える少なくとも1つのスレーブ装置であって、マスター-スレーブ制御アーキテクチャに従って、複数のN個の制御可能な自由度のうちの1つ以上に委ねられるスレーブ装置又はスレーブ装置の外科用器具の移動が、マスター装置のそれぞれの移動によって制御されるように、マスター装置によって制御されるようになっている、少なくとも1つのスレーブ装置とを備える。
【0021】
本方法は、まず、システムの第1の状態及びシステムの第2の状態を規定するステップを含む。
【0022】
システムの第1の状態は、スレーブ装置の外科用器具(すなわち、スレーブ装置の外科用器具に属するか又はそれと一体の少なくとも1つの制御ポイント)がスレーブ化されて前記複数のN個の制御可能な自由度の各自由度においてマスター装置に追従する、完全にスレーブ化された追従(追跡)を伴う遠隔操作の状態に対応する。簡潔にするために、以下では、この説明の目的のための同等の用語「第1の完全遠隔操作状態」であっても、前記「以下の完全にスレーブ化された追従を伴う遠隔操作の第1の状態」を参照する。
【0023】
システムの第2の状態は、スレーブ装置の外科用器具、又はスレーブ装置の外科用器具の少なくとも前述の制御ポイントが、少なくとも1つの分離された自由度に関連してマスター装置から分離されるとともに、前記少なくとも1つの分離された自由度を除外する前記複数のN個の制御可能な自由度のサブセットにおいてのみマスター装置に対してスレーブ化される、制限された遠隔操作状態に対応する。
【0024】
次いで、方法は、前述のロボットシステムに、システム状態移行を制御するための制御手段を設けるステップと、状態移行を制御するための前述の制御手段を作動させることによって、術者により、システムの前述の第1の状態とシステムの第2の状態との間の移行を制御するステップとを含む。
【0025】
複数の制御可能な自由度は、並進の自由度及び方向自由度を含む。
【0026】
前述の第2の制限された遠隔操作状態は、マスター装置の再配置の状態であり、前述の少なくとも1つの分離された自由度は、全ての並進自由度を含む。したがって、スレーブ装置の外科用器具、又はスレーブ装置の外科用器具の少なくとも1つの制御ポイントは、マスター装置の並進に追従しない。
【0027】
前述したように、システムの第2の状態は、術者がスレーブ装置の幾つかの自由度、より正確にはスレーブ装置の外科用器具の幾つかの自由度の動きをロックすることを可能にし、一方でマスター装置によってスレーブ装置の外科用器具の残りの自由度の制御を可能にする。
【0028】
実装オプションによれば、スレーブ動作及び自由度は、スレーブ装置の外科用器具に属するか又はそれと一体の制御ポイントを指す。例えば、そのような制御ポイントは、並進がロックされた外科用器具のポイントとすることができるが、回転関節内のモータ付きマイクロマニピュレータ及び/又は関連するリンクと一体である点などのスレーブキネマティックチェーンの他のポイントは、前述の第2の制限された遠隔操作状態の間も並進することができる。
【0029】
前述の制御ポイントの規定と一致する実装オプションでは、人間の手首の回転ダイナミクス及び/又はスレーブ外科用器具の回転ダイナミクスによる任意の並進が、使いやすさの理由からスレーブ装置に送信されることが可能になることに留意すべきである。したがって、そのような場合、「第2の制限された遠隔操作状態の間、制御ポイントは、並進においてマスター装置に追従しない」という記述は、好ましくは、人間の手首の回転ダイナミクス及び/又はスレーブ外科用器具の回転ダイナミクスによる任意の並進が、いずれの場合にも、使いやすさの理由でスレーブ装置に送信されることを意味する。
【0030】
本方法の一実施形態によれば、複数の制御可能な自由度は、並進の自由度及び方向自由度を含む。
【0031】
方法の一実施形態によれば、制御可能な自由度の前述のサブセットが少なくとも2つの方向自由度を含み、したがって、スレーブ装置の前記外科用器具、又はスレーブ装置の外科用器具の少なくとも1つの制御ポイントは、前述の少なくとも2つの方向自由度においてマスター装置に追従する。
【0032】
一実装オプションでは、第2の制限された遠隔操作状態は、スレーブ装置の外科用器具が、少なくとも2つの方向自由度、又は2つの回転の自由度でマスター装置に追従し、いかなる並進の自由度でもマスター装置に追従しないことを提供する。
【0033】
これにより、スレーブ装置の外科用器具は、拘束のないマスター装置からの並進の自由度の観点から分離される。例えば、第2の制限遠隔操作状態では、スレーブ装置の外科用器具の制御ポイントのピッチ及びヨーの自由度のみがスレーブ化される。この実装オプションでは、回転の自由度、例えば、第2の制限された遠隔操作状態にあるときにスレーブ化されないロールもあり得る。
【0034】
一実装オプションでは、第2の制限された遠隔操作状態は、スレーブ装置の外科用器具の制御ポイントが全ての回転自由度(例えば、前述の自由度ピッチ、ヨー、及びロール)でマスター装置に追従し、いかなる並進自由度でもマスター装置に追従しないことを提供する。
【0035】
本方法の一実施形態によれば、前述の複数の制御可能な自由度は、少なくとも1つの開/閉(すなわち、開閉)自由度を更に含む(以下、幅広く採用された用語「把持」とも呼ばれる)。
【0036】
一実装オプションでは、第2の制限された遠隔操作状態は、スレーブ装置の外科用器具、又はスレーブ装置の前記少なくとも1つの制御ポイントが、全ての回転自由度及び開閉自由度(例えば、ピッチ、ヨー、ロール、及び把持として上記で規定された全ての自由度において)においてマスター装置に追従し、いかなる並進自由度においてもマスター装置に追従しないことを提供する。
【0037】
制御可能な開閉の自由度は、弾性であり得る拘束されていないマスター装置の本体に設けられた開閉の自由度によって、又は弾性であり得るマスター装置に設けられた任意の内部自由度(例えば、直線軌道に沿った距離/接近の内部自由度;及び/又はボタン)によって、並びに非限定的な例として、圧力センサを含む制御インターフェースによって制御することができる。
【0038】
他の実装オプションによれば、方法は、第2の制限された遠隔操作状態において、スレーブ装置の外科用器具、又はスレーブ装置の前述した少なくとも1つの制御ポイントが、全ての方向自由度においてマスター装置に追従し、並進においてマスター装置に追従せず、開閉自由度に関連して、開方向においてのみマスター装置に追従し、閉方向においてはマスター装置に追従しないように動作することを提供する。
【0039】
他の実装オプションによれば、方法は、前述の第2の制限された遠隔操作状態において、スレーブ装置の外科用器具、又はスレーブ装置の少なくとも1つの制御ポイントが、全ての方向自由度においてマスター装置に追従し、並進においてマスター装置に追従せず、開閉自由度に関連して、閉方向においてのみマスター装置に追従し、開方向においてはマスター装置に追従しないように動作することを提供する。
【0040】
そのような実装オプションは、例えば、スレーブ外科用器具が第2の状態にあるときに、スレーブ外科用器具の不随意の開放を回避して、第2の状態の間に把持状態を変化させないようにするために有用であり得る。
【0041】
方法の他の実施形態によれば、複数の制御可能な自由度は、少なくとも1つの開/閉(すなわち、開放する/閉鎖する)自由度を更に含み、前述の第2の制限された遠隔操作状態において、スレーブ装置の外科用器具、又はスレーブ装置の少なくとも1つの制御ポイントは、全ての方向自由度においてマスター装置に追従し、開閉自由度においてマスター装置に追従せず、並進においてマスター装置に追従しない。
【0042】
一実施形態によれば、前記第2の制限された遠隔操作状態中、スレーブ装置170の並進自由度は、好ましくは前記第2の制限された遠隔操作状態の持続時間よりも短い制限された持続時間にわたってマスター装置110にスレーブ化されない。
【0043】
一実装オプションによれば、第2の制限された遠隔操作状態に向かう移行ステップは、長い時定数を有し、その結果、移行中に、スレーブ装置の並進運動が減速され、同時に、マスター-スレーブマッピングの変位の累積がある。完全にスレーブ化された遠隔操作の第1の状態に戻ると、そのような累積オフセットが適用される。一実施態様によれば、時定数が長い第2の制限された遠隔操作状態の間、把持の自由度(開閉G)は常にスレーブ化されない。
【0044】
好ましい実装オプションによれば、長い時定数を有する第2の制限された遠隔操作状態の間、スレーブ装置170の並進自由度は、マッピングの全体的な持続時間及び/又は制限された遠隔操作状態の持続時間に対してはるかに短くすることができる制限された持続時間の間、マスター装置110にスレーブ化されない。例えば、第2の制限された遠隔操作状態に向かう状態移行制御手段の作動時間と、第1の完全にスレーブ化された遠隔操作状態に向かう状態移行制御手段の作動時間t1との間で、マスター装置110は空間dMを移動し、スレーブ装置170は、制限されたダイナミクスにより、空間dS<dM/sを移動する。全体的な効果は、再配置オフセットQ=dM/s-dSである。
【0045】
ダイナミクスは時間t1-t0の関数として減速されるため、第2の状態の持続時間が長いほど、累積オフセットは大きくなる。例えば、第2の制限された遠隔操作状態の総持続時間が2秒(t1-t0=2秒)であり、スレーブ装置の減速時定数が4秒に等しい(そのような時間でスレーブ速度が0に達する)場合、2秒間で、スレーブ装置は完全に減速せず、完全にスレーブ化された遠隔操作の状態に戻ると、その動きはフル速度で再開するが、マッピングのためのオフセットも累積している。
【0046】
本方法の一実施形態によれば、システムの前述の第1の状態は、スレーブ装置が外科手術中に動作する動作状態に対応し、システムの前述の第2の状態は、その作業空間内の拘束されていないマスター装置の準備及び/又は収容及び/又は再配置状態に対応する。
【0047】
更に、前述の移行は、マスター装置の制御動作が第2のシステム状態で規定される作業空間に対応するマスター装置作業空間と、スレーブ装置の外科用器具、又は外科用器具の制御ポイントの対応する動作が規定されるスレーブ装置作業空間との間に、第2のシステム状態中に術者によって決定された所望の関係を確立することを可能にするようになっている。
【0048】
一実施形態によれば、ロボットシステムは、前記マスター装置作業空間と前記スレーブ装置作業空間との間の所定の相対的な再配置が提供される所定の再配置条件を達成するように制御される。
【0049】
実装オプションによれば、到達した所定の再配置条件が維持される。
【0050】
一実装オプションによれば、前述の所定の再配置条件は、マッピング中心がスレーブ装置(170)の現在の位置、例えば前述の制御ポイント(600)に配置されることを提供する。
【0051】
前述の実施形態を参照して、幾つかの実施形態による、方法の幾つかの可能なステップ、特に、幾つかの可能な実施形態による、a)遠隔操作開始条件、b)制限された遠隔操作状態に入る前の条件、c)、d)e)制限された遠隔操作状態における幾つかの可能な条件を概略的に示す
図9を検討する。
【0052】
前述したように、様々な動作条件において、マスター作業空間715とスレーブ作業空間(
図9-c)との間の相対的な再配置を得るために、ユーザが前記第2の制限された遠隔操作状態(
図9-b)への進入を制御することは便利であり得る。
【0053】
実装オプションによれば、本方法は、所定の再配置条件に到達するステップを含む。所定の再配置条件に達すると、システムは、それにスナップすることによって到達した前記条件を維持することができる。
【0054】
前記所定の再配置条件に到達する及び/又はスナップする信号を提供することができる。
【0055】
システムは、再配置条件に達したことを認識し、完全にスレーブ化された遠隔操作の第1の状態に戻るまでそれを自動的にロックすることができる。実装オプションによれば、マスター装置がそのようなポイントの近くにある限り(「スナップ領域」)、マスター装置とスレーブ装置との間のマッピングは変更されず、そのような領域から離れるように移動して、通常のマッピングが適用される。
【0056】
実装オプションによれば、所定の再配置条件は、マスター作業空間715のマッピング中心がスレーブ作業空間(「スレーブ中心にスナップ」、
図9-d)の中心と一致することを提供する。
【0057】
一実装オプションによれば、所定の再配置条件は、マスター作業空間715のマッピング中心がスレーブ装置の現在位置と一致すること(「現在のスレーブにスナップする」、
図9-e)、例えばスレーブ装置170の制御ポイント600と一致することを提供する。
【0058】
例えば、提案されたオフセットが閾値によって指定された範囲内にある場合、マスター装置とスレーブ装置との間の相対再配置は値0に拘束され、そのような条件が取得されると、術者は可聴フィードバックを受信し、したがって、マスター作業空間をスレーブ作業空間内にセンタリングしたことを理解する。例えば、スレーブ座標の状況を考慮すると、取得された再配置が常に値0を与える1cmのオフセット許容誤差(この仮説によれば、10xのスケーリング係数によりマスター空間で10cm)を使用することができる。
【0059】
別の実装オプションによれば、記載された手法は、幾つかのスレーブに共通の中心に適用することができる。これは、オフセットにのみ作用するため、移行中のスレーブ装置の動き又は最終的な動きに影響を与えない可能性がある。
【0060】
本方法の異なる実装オプションによれば、N個の制御可能な自由度が与えられると、本方法は、N個の制御可能な自由度の任意のサブセットを、1からN-1の間の任意の数の分離された自由度を含む分離された自由度として管理するステップを含む。
【0061】
「把持」又は「開閉」の自由度に関する幾つかの実装オプションを以下に開示する。
【0062】
一実施態様では、第2の制限された遠隔操作状態では、スレーブ装置170の把持自由度(開閉G)がマスター装置110に完全にスレーブ化される。これにより、ユーザは、例えば組織に潜在的な損傷を発生させないように、マスター作業空間715内のマスター装置の再配置中に把持状態を解除することができる。
【0063】
別の実装オプションでは、第2の制限された遠隔操作状態では、スレーブ装置170の把持自由度(開閉G)はマスター装置110によってスレーブ化されない。これにより、マスター作業空間715内のマスター装置の再配置中に、ユーザは、例えば把持力の変調を受けていない手術針上で満足できる把持力を確実に維持することができる。
【0064】
他の実装形態では、第2の制限された遠隔操作状態では、スレーブ装置170の把持自由度(開閉G)は、閉方向においてのみマスター装置110にスレーブ化され、開方向においてはマスター装置にスレーブ化されない。これにより、把持を第2の制限された遠隔操作状態に締め付け及び/又は維持することが可能である。例えば、把持力を推定することができるセンサは、例えばスレーブ外科用器具170の把持ピンセット101,102の内側に配置することによって直接的に、又は例えば、スレーブ外科用器具の開閉自由度Gの動きを制御するロボットマニピュレータの1つ以上のアクチュエータ上で、例えば外科用器具を取り外し可能に関連付けることができるロボットマニピュレータ740内に配置することによって間接的に、スレーブ装置に関連付けることができる。
【0065】
既に観察されたように、一実装オプションでは、前述の第2の制限された遠隔操作状態は、マスター装置の再配置の状態であり、スレーブ装置は、マスター装置の方向にのみ追従し、並進運動では追従せず、したがって、並進運動の観点からマスター装置から切り離される。これにより、第1の状態の間、第2の状態の間、及び第1の状態と第2の状態との間の移行の間、マスター装置とスレーブ装置との間の方向の位置合わせを維持することが可能である。したがって、第1の状態と第2の状態との間の移行は、専用のマスター-スレーブ位置合わせステップを必要としない。
【0066】
機械的に拘束されておらず、スケーリングに従ってスレーブ装置を制御する術者によって手で保持されている間に移動することができる手持ち式マスター装置との関連で、第1の状態と第2の状態との間の移行は、その作業空間内でマスター装置を再配置する必要性に応じて頻繁に行われ得る。
【0067】
一実装オプションによれば、複数の制御可能な自由度は、並進の3つの自由度及び方向の3つの自由度(ロール、ピッチ、ヨー、すでに上で開示されている)を含む。開閉のための更なる制御可能な自由度(既に説明した「把持」)を含むことができる。
【0068】
方法(すでに前述したが、ここでより詳細に説明する)の一実施形態によれば、スレーブ装置に含まれる外科用器具の制御ポイントが画定され、第2の制限された遠隔操作状態では、制御ポイントの回転の可能性が維持されながら、前述の制御ポイントの並進が禁止されて、アライメント条件に達するまで、マスター装置の方向に応じてスレーブ装置の外科用器具の方向を変化させ、アライメント条件では、マスター装置とスレーブ装置の外科用器具との間で同じ方向(所定の許容誤差の範囲内)を有し、スレーブ装置の基準空間内の前述の制御ポイントの位置は変化しないままである。
【0069】
好ましい実装オプションによれば、制御ポイントの方向は、スレーブ外科用器具、好ましくは少なくとも1つの自由端を有する外科用器具の遠位部分の方向をモデル化するようなものとすることができる。
【0070】
そのような場合、本方法は、術者が、第2の制限された遠隔操作状態の間、外科用器具の把持(開閉又は「把持」)によって識別可能なスレーブ装置の外科用器具の方向のみ、及び任意選択的に更なる自由度も制御し、スレーブ外科用器具の制御ポイントの位置を固定したままにすることができることを提供する。これにより、第1の状態と第2の状態との間の移行、又はその逆の移行は、マスター装置とスレーブ装置の外科用器具との間の位置合わせに影響を及ぼさない。
【0071】
前述の実施形態の実装オプションによれば、スレーブ装置の外科用器具は、スレーブ装置と接続するための遠位関節と、外科用針を把持して案内するように構成された2つのチップとを備え、外科用器具の前述の制御ポイントは、前記遠位関節とチップの端部との間に配置された物理的ポイントに対応する。各チップ(又はノズル)は、剛体を含むことができ、自由端を有することができる。外科用器具の先端部は、必ずしも外科用針を把持することを意図していないが、そうであってもよい。
【0072】
実装オプションによれば、制御ポイントは、スレーブ装置の外科用器具のチップ間の中間点である。
【0073】
別の実装オプションでは、外科用器具の制御ポイントは、把持構成で閉じられたときに、チップ(ノズル)が外科用針を把持する点に対応する。
【0074】
他の実装オプションによれば、前述の制御ポイントは、上記に示された物理点と一体である実際のポイント、又は上記に示された物理点と固定的に相関する仮想ポイントに対応する。
【0075】
本方法の実装オプションによれば、第2の状態から第1の状態への移行の終わりに、マスター装置と制御ポイントとが位置合わせされるため、マスター装置とスレーブ装置の外科用器具とは位置合わせされる、すなわち、それらは同じ方向を有する。
【0076】
これにより、制限された遠隔操作ステップを出るとき、マスター装置と制御ポイントとが位置合わせされるため、マスター装置とスレーブ装置の外科用器具とは既に位置合わせされている。
【0077】
本方法の一実施形態によれば、完全にスレーブ化された追跡を伴う遠隔操作の第1のシステム状態に入る前に、変換のためにマスター装置作業空間とスレーブ装置作業空間とを相関させるゼロポイントが規定される。
【0078】
そのような場合、第2の状態からの出口において、制限された遠隔操作ステップの終わりに、マスター装置とスレーブ装置の外科用器具の制御ポイントとの間の結果として生じる並進オフセットが記憶され、現在のゼロポイントに追加され、その結果、完全にスレーブ追跡を伴う後続の遠隔操作ステップにおいて、マスター装置によるスレーブ装置の制御は、制限された遠隔操作ステップ中に発生した前記並進オフセットを考慮に入れる関係に従う。
【0079】
言い換えれば、ゼロポイントは、制限された遠隔操作ステップを終了するときに再割り当てされる。
【0080】
実装オプションによれば、第2の制限された遠隔操作状態の間、計算されたオフセットは、術者が超えることができない最大値に制限される。
【0081】
一実装オプションによれば、第2の状態から第1の状態への、及びその逆の移行の終了時に、マスター装置とスレーブ装置の外科用器具とは位置合わせされ、すなわち、外科用器具とマスター装置の制御ポイントが位置合わせされるため、それらは同じ方向を有する。
【0082】
実装オプションによれば、第1の状態と第2の状態との間の前述の移行の間、速度及び加速度の運動学的パラメータは、自由度のロック又はロック解除を規則的にするように制限される。
【0083】
運動学的パラメータに関して、一般性を失うことなく、スレーブ装置の外科用器具によるマスター装置の追跡(追従)、又は結合された自由度による外科用器具の制御ポイントを主な目的とする制御アルゴリズムの使用を仮定する。次いで、スレーブ装置の作業空間内で、又はスレーブ装置の作動システムの関節に関して表される最大速度及び加速度などの運動学的パラメータが、前記目的の拘束として考慮される。
【0084】
したがって、結果の探索の何らかの制限によって、最初に一次ターゲットに関してスレーブ化の最適化を繰り返し実行し、次に示された拘束に関して結果を拘束する制御アルゴリズム、又はそのような拘束を考慮してそのような最適化を実行する制御アルゴリズムを考慮する。
【0085】
完全遠隔操作と制限された遠隔操作との間の移行では、スレーブ装置の作業空間に表される並進追跡への寄与がキャンセルされる。
【0086】
並進成分の分離を、スレーブ装置の作業空間に表される並進速度拘束としてどのように表すことができるかに留意すべきである。
【0087】
速度及び加速度の限界を記述するそのようなパラメータは、移行の開始時及び終了時に一定であると考えられる。この意味で、そのようなパラメータの適合は、適切な補間式に従って移行中に連続的に変化させることができる。初期状態A及び最終状態B並びに移行時間T及び移行開始時間tOを所与として、所与の作動軸に沿った制限速度などのパラメータPが与えられると、この拘束の線形補間式を使用することが可能である。
P(t)=P_B(t-t0)/T+P_A(1-(t-t0)/T)
【0088】
幾つかのパラメータについては、値を二次的に補間する解がむしろ好ましいことを更に考慮すべきである。したがって、時間t及び一般関数の関数として変数lを導入する。
λ(t)=(t-t0)/T
P(λ)=q3λ3+q2λ2+q1λ+q0
式中、a、b、cは、P(0)=P_A、P(1)=P_Bとなるように計算することができる。そのような定式化は、パラメータの適切な選択のための線形補間の定式化を含むことに留意すべきである。
【0089】
実装オプションによれば、そのような運動学的パラメータは、移行が制限された遠隔操作の第2の状態に向かう状態移行であるか、又は第1の状態に向かう状態移行であるかに応じて異なって制限される。
【0090】
一実施形態によれば、制限された遠隔操作状態を含む移行において、制限された自由度の軌道は、主運動学的パラメータにおいて認識可能な不連続性を有しない。特に、速度及び加速度は、制限された遠隔操作状態に出入りする間に制限され、それによって、関係する自由度の凍結を緩和し、次いで、術者によって知覚される歪み又は衝撃を生成することなくその作動を再開する。
【0091】
制限された遠隔操作を含む状態変化中に運動学的パラメータを制限するために使用される基準は、好ましくは、完全な遠隔操作状態で使用される基準よりも厳しい。そのような基準は、制限された遠隔操作ステップからの出入りの場合に異なるものとして理解されることが好ましい。制限された遠隔操作ステップ中、制限されていない自由度は、完全な遠隔操作中にアクティブな制限よりも厳しい運動学的速度及び加速度パラメータの制限を受ける可能性がある。
【0092】
本方法の特定の実施例に従って、マスター装置及びスレーブ装置の移動を調整するために使用される基準座標系について、幾つかの更なる詳細を以下に提供する。
【0093】
拘束されていないマスター装置の作業空間に関して、スレーブ装置の外科用器具の作業空間に起こり得る制限のために、外科医は、外科手術又は超微細手術処置を容易にするように、自分の姿勢及び位置、並びにマスター装置の作業空間内に拘束されていないマスター装置を保持する1つ以上のハンドの配置を調整するために可能な限り権限を与えられなければならない。
【0094】
以下に提示される実施例によれば、制限された遠隔操作ステップ又は状態は、マスター装置の並進運動をスレーブ装置によって制御される並進運動から一時的に切り離す「クラッチ」の機械的アナログを用いて術者によって知覚される。「制御ポイント」と呼ばれる幾何学的オブジェクトの存在は、遠隔操作の並進成分を、マスター空間とスレーブ空間との間の静的な1-1マッピングとしてではなく、そのような並進マッピングが許容される状態の間、すなわち前記第1の完全な遠隔操作状態の間のマスター装置とスレーブ装置との間の並進速度の拘束された変化として考慮し、したがって管理することを可能にする。
【0095】
特に、これは、術者が、スケーリング関係(すなわち、スケール比又は単に「スケーリング」)のためにマスター装置の作業空間に出入りすることができないスレーブ装置の比較的大きな変位を実行する必要がある場合に有用である。このシナリオでは、術者は、
図3のフローチャートに提示されたアルゴリズムを使用して、スレーブ作業空間に属する任意の位置に到達することができる(一般性を失うことなく、ただ1つの自由度が考慮された)。
【0096】
一実施形態によれば、状態移行を制御するための前述の制御手段は、制御ボタンを備える。
【0097】
実装オプションによれば、そのような制御ボタンは制御ペダルである。
【0098】
実装オプションによれば、制御ボタンは、拘束のないマスター装置と一体であり、例えば、マスター装置の本体に配置される。
【0099】
実装オプションでは、制限された遠隔操作状態に入ること及びその状態に留まることは、制御ペダルを押すことに関連付けられる。操作ペダルを解放すると、自動的に、第2の制限された遠隔操作状態から第1の完全な遠隔操作状態に移行する。
【0100】
実装オプションでは、遠隔操作中であるという事実は、制御ペダルを押すことが制限された遠隔操作状態に入ることを決定するのに十分な条件である。
【0101】
制限された遠隔操作方法の実装オプションを以下に示す。
【0102】
この目的のために、仮想制御ポイント(VCP)を規定することができ、これは、マスター作業空間内のマスター装置の姿勢とスレーブ外科用器具の作業空間内のスレーブ装置の外科用器具の姿勢(簡潔にするために、「スレーブ装置」とのみ呼ばれることもある)との間のマッピングのための基準座標フレームの原点として使用される。
【0103】
一実装オプションでは、マスター装置及びスレーブ装置のそれぞれに関して2つの基準座標フレームが規定され(説明では、「座標フレーム」及び「基準座標系」という用語が同等物として使用される)、すなわち、例えば追跡システムと一体である「マスターフレーム原点」(MFO)座標フレーム、及び例えば拘束されないマスター装置と一体であり、拘束されないマスター装置の姿勢(情報のセット「MP位置、方向」を含む)を記述するために使用される「マスターフレーム」(MF)座標フレーム、及びスレーブ装置の姿勢(情報のセット「MP位置、方向」を含む)を記述するために使用される「スレーブフレーム原点」(SFO)座標フレーム及び「スレーブフレーム」(SF)座標フレームが規定される。「スレーブ装置」は、スレーブ装置の外科用器具の制御ポイントを示す。
【0104】
マスター装置MPの位置が「マスターフレーム原点」MFO座標フレームに対する「マスターフレーム」MF座標フレームの相対位置(並進成分)として規定され、スレーブ装置SPの位置がスレーブロボットシステムと一体の「スレーブフレーム原点」SFO座標フレームに対する「スレーブフレーム」SF座標フレームの相対位置として規定される。
【0105】
一実施例では、マスター装置及びスレーブ装置の移動は、それぞれマスター装置MPの位置及びスレーブ装置SPの位置を制限する別個の独立した作業空間に拘束される。
【0106】
図4に概略的に示す実施形態では、固定基準システム(FSF)が考慮される。したがって、そのような固定基準系FSFにおいて「マスターフレーム原点」MFO及び「スレーブフレーム原点」SFO座標フレームを表現し、「マスタースレーブ原点」SFOに関連する変換において「マスターフレーム原点」MFOに関連するマッピング変換を可能にする「マスターフレーム変換」(MST)を規定することが可能である。
【0107】
したがって、基準座標系SFOに変換MSTを適用して得られる「スレーブフレーム原点」SFO基準座標系内の「スレーブフレーム原点におけるマスターフレーム」(MSFO)座標フレームを規定することができ、更にMSFOに対して「マスターフレーム」MFから「マスターフレーム原点」MFOへの変換を適用して得られる「スレーブフレームにおけるマスター」(MSF)座標フレームを規定することができる。
【0108】
以下に述べる基準座標系は、特に
図5に示される。
「マスターフレーム」(MF)又は「マスター基準座標系」;
「マスターフレーム原点」(MFO)、又は「マスター基準座標系原点」;
「スレーブフレーム」(SF)、又は「スレーブ基準座標系」;
「スレーブフレーム原点」(SFO)、又は「スレーブ基準座標系原点」;
「固定基準系」(FRS)、又は固定外部基準座標系;
「マスター-スレーブ変換」(MST);
「スレーブフレーム原点におけるマスターフレーム」(MSFO)、又は「スレーブ基準座標系原点におけるマスター基準座標系」。
【0109】
マスター装置とスレーブ装置との間の動きの比が1:1である外科用途の状況(本開示に記載された方法を使用することができる用途状況)、及び完全遠隔操作条件を考慮すると、スレーブ装置の外科用器具(以下、「エンドエフェクタ」とも呼ばれる)の動きは、スレーブ装置がスレーブ化される拘束されていないマスター装置の動きによって制御される。
【0110】
これは、「スレーブフレームにおけるマスターフレーム」MSFを基準として使用して、「スレーブフレーム」SFによって表されるスレーブ装置の移動を制御することと同等であり、以下に説明するように並進オフセットを除外する。具体的には、並進の観点から、遠隔操作は、スレーブ装置位置SPによって、座標フレームMPSを辿るように見ることができ、ここで、MPSは、「スレーブフレーム原点」SFO基準座標系における「スレーブフレームにおけるマスターフレーム」MSFの位置である。
【0111】
遠隔操作状態に入ると、マスター装置の機械的に拘束されない性質にも起因して、スレーブ空間MPSにおけるマスター装置の位置とスレーブ装置SPの現在位置との間の位置関係は存在しない。
【0112】
したがって、遠隔操作状態に入るとき、遠隔操作の開始時にスレーブがその基準座標系の原点にあると仮定すると、結果として得られる位置がスレーブ装置SPの位置と最初の瞬間に一致するように、位置MPS:MPS(O)からオフセットMSを減算することが必要である。これにより、そのようなスレーブ装置は、遠隔操作に入った後に発生したマスター装置の動きによってのみ制御される。
【0113】
スレーブ装置の空間内のそのような位置は、「相対マスター位置」(RMP)と呼ばれ、遠隔操作の各瞬間に次のように計算される。
RMP:RMP(t)=MPS(t)-MS
【0114】
本開示に記載された方法を実行することができる更なる適用状況では、すなわち、ロボット遠隔操作システムが超微細手術操作を実行するように構成されている場合、スレーブ装置の動作範囲とマスター装置の動作範囲との間の所望の/必要とされる関係を記述するスケールファクタs(s<1)を考慮する必要がある。このため、この場合、以下のように規定されるスケーリング済みマスター位置CSPを規定する必要がある。
CSP=s・RMP
【0115】
スケールファクタを考慮すると、スケーリングされたマスター位置CSPが達成することができる体積は、マスター装置の作業空間のs3倍に等しい。このため、スケーリングが増大する(したがって、スケールファクタsが減少する)につれて、スレーブ作業空間のごく一部のみが遠隔操作中に到達可能である。
【0116】
この欠点、並びに遠隔操作に入る間にスレーブ装置がその基準座標系原点にない可能性があるという事実を克服するために、実装オプションは、マスター装置の姿勢(位置及び方向)とスレーブ装置の姿勢(位置及び方向)との間のマッピング機構のための基準座標の原点として使用される前述の「仮想制御ポイント」(VCP)を規定する。
【0117】
このポイントの挿入は、ユーザによって制御することができ、この実装オプションでは、以下のようにスレーブ装置に指令された位置を再規定することを可能にする。
CSP:CSP=s・(RMP+VCP)
【0118】
ポイントVCPは、以下の公式に従って遠隔操作が開始される各t=0において初期化される。
VCP=SP(0)/s
【0119】
したがって、任意の倍率sを使用して、術者は、そのサイズに関係なく、「仮想制御ポイント」VCPパラメータの制御によって、スレーブ装置の作業空間の任意のポイントに常に到達することができる。
【0120】
一実装オプションでは、術者が「仮想制御ポイントVCP」パラメータを直感的に制御することを間接的に可能にする方法は、第2の制限された遠隔操作状態に対応する新しい遠隔操作状態の使用である。この第2の制限された遠隔操作状態では、スレーブ装置は、姿勢においてのみマスター装置に追従し、並進では追従しない。
【0121】
制限された遠隔操作状態の間、一実装オプションによれば、一時的仮想制御ポイントTVCPは、以下のように規定される。
TVCP(t)=VCP+RMP(t_0)-RMP(t)=
=VCP+MPS(t_0)-MPS(t)
ここで、MPS(t)は、スレーブ空間におけるマスターの現在位置であり、MPS(t_0)は、制限された遠隔操作に入った瞬間のスレーブ空間におけるマスターの位置である。
【0122】
制限された遠隔操作状態を終了すると、一時的な仮想制御ポイントTVCPが仮想制御ポイントに割り当てられる。
VCP:=TVCP
【0123】
当業者には理解されるように、完全遠隔操作状態に戻ると、仮想制御ポイントVCPの新しい規定は、スレーブ装置CSPに指令される位置の変更を含まない。言い換えれば、前述した「仮想制御ポイント」VCPの動的再規定は、制限された遠隔操作状態の開始時、又は制限された遠隔操作状態の間及び終了時にスレーブ装置の制御された移動が発生しないという事実を可能にする。
【0124】
次に、前述の実装オプションに従って、「制限されたテレオペレーション」状態の適用例について説明する。
【0125】
一般性を失うことなく、この例は、「x」によって示される単一の並進自由度を有する遠隔操作を企図する。
【0126】
ここでも一般性を失うことなく、マスター装置の空間からスレーブ装置の空間へのマッピングは識別情報に等しい、すなわちMPS=MPであると仮定する。
【0127】
これに関連して、時刻t=0の時点において、それぞれの基準座標系においてMP(0)=10cm及びSP(0)=2cmを有するマスター装置を用いて遠隔操作に入ると仮定する。
【0128】
また、マスター空間が+-30cmの最大偏位を有し、スレーブ空間が+-7cmの最大偏位を有すると仮定する。
【0129】
更に、倍率が10倍、すなわちs=0.1の遠隔操作状態にあるとする(マスター装置の変位1cmはスレーブ装置の変位1mmに等しい)。
【0130】
遠隔操作に入る瞬間に、オフセットMSは固定される。
MPS(0)=10cm及び制御ポイントVCP=2cm/0.1=20cm
【0131】
これにより、時刻tにおける制御位置は、
CSP(t)=s・(RMP(t)+VCP)=0.1・(MPS(t)-10+20)
である。
【0132】
t=0では、MPS(0)=10cm及びCSP(0)=0.2mmであり、完全遠隔操作状態に入ると並進がないことに留意すべきである。
【0133】
やはり単に例として、ここで、術者がスレーブ装置の作業空間に属するスレーブ装置の空間内のポイントx=4.5cmに到達しなければならないと仮定する。完全遠隔操作状態を終了することなく、マスター装置の作業空間全体を使用して、最大で、位置を制御することが可能であることに留意すべきである。
CSP=0.1・(max(MPS)-10+20)=0.1・(30-10+20)=4cm
【0134】
そのような位置に到達するために、時間t_0における術者は、例えば、以下の動作を実行することができる。
1)制限された遠隔操作状態に入る。仮制御ポイントTVCPは、
TVCP(t)=VCP+MPS(t_0)-MPS(t)=20+10-MPS(t)
に設定される。
2)術者は、位置x=0に到達するまでマスター装置を移動させる。次いで、一時的な制御ポイントTVCPは、
TVCP=20+10-0=30cm
である。
3)術者は、制限遠隔操作状態を抜けて、完全遠隔操作状態に戻る。パラメータVCPは、現在のTVCP値、すなわち30cmで更新される。新しい制御位置CSPは、制限された遠隔操作に入る前のものと同じであることに留意すべきである。
CSP(t)=s・(MPS(t)-MS+VCP(t))=
=0.1・(0-10+30)2cm
4)術者は、x=25cmの位置までマスター装置を移動させ、マスター作業空間に所属させる。これにより、新たな制御位置は、
CSP(t)=s・(MPS(t)-MS+VCP(t))=
=0.1・(25-10+30)=4.5cm
【0135】
本方法の更なる実装オプションによれば、遠隔操作と制限された遠隔操作との間の状態の変化は、速度及び加速度が徐々に制限される非定時的有限時間内に発生することができ、スレーブ装置が過度の運動歪みを導入することなく停止することを可能にする。
【0136】
同様に、別の実装オプションによれば、制限された遠隔操作と遠隔操作との間の状態の変化は、スレーブ装置に指令される初期速度及び加速度が過度の運動歪みを回避するように制限される非定時的有限時間内に起こり得る。
【0137】
別の実装オプションによれば、制限された遠隔操作ステップは、器具の開閉(「把持」)の自由度の遠隔操作を一時的に制限/防止するか、又は、制限された遠隔操作ステップに入った時点で、スレーブ装置の外科用器具の開閉度(「把持」)は、前述の第2の制限された遠隔操作状態の全滞在の間凍結される。
【0138】
別の実装オプションによれば、制限された遠隔操作ステップは、所与の自由度に関連する可能な状態のサブセットのみを防止する。
【0139】
別の実装オプションによれば、制限された遠隔操作ステップは、閉鎖を防止し、スレーブ装置の外科用器具を可能にする開放を可能にする。換言すれば、この実装オプションによれば、開閉の自由度は、第2の制限された遠隔操作状態では部分的にのみロックされるが、それは、制御が開放では許可されるが閉鎖では許可されないためである。
【0140】
本方法の実装オプションによれば、制限された遠隔操作状態を含む移行では、制限された自由度の軌道は、主運動学パラメータに認識可能な不連続性を有さない。特に、速度及び加速度は、制限された遠隔操作状態からの出入りにおいて制限され、それによって、関連する自由度の凍結を緩和し、次いで、ユーザによって知覚される歪み又は衝撃を生成することなくその作動を再開する。
【0141】
本方法の別の実装オプションによれば、運動学的パラメータを制限するために使用される基準は、制限された遠隔操作を含む状態変化中に、制限された遠隔操作の開始又は終了ステップにおけるスレーブの加速及び/又は減速が、前述の第1の完全な遠隔操作状態における最大加速値よりもはるかに低く、完全な遠隔操作によって使用されるものよりも厳しいことを規定する。そのような基準は、典型的な実装オプションでは、制限された遠隔操作ステップからの出入りの場合に異なる。
【0142】
本方法の別の実装オプションによれば、システム状態移行を制御するための制御手段の実施は、制限された遠隔操作への進入移行又は制限された遠隔操作からの退出移行が完了するまで、加速度及び並進速度などのマスター-スレーブ制御パラメータを変更する。
【0143】
一実装オプションでは、制限された遠隔操作ステップ中、非制限自由度は、完全な遠隔操作中にアクティブな制限よりも厳しい運動学的速度及び加速度パラメータの制限を受ける可能性がある。
【0144】
次に、ロボットシステムを制御するための前述の方法によって制御されるようになっている、遠隔操作用のロボットシステムについて説明する。
【0145】
そのようなシステムは、手持ち式であり、機械的に拘束されておらず、術者による機械的拘束なしに移動されるようになっている少なくとも1つのマスター装置を備え、その結果、マスター装置は、その所定の作業空間内で自由に移動することができる。システムは、外科用器具を備える少なくとも1つのスレーブ装置であって、マスター-スレーブ制御アーキテクチャに従って、複数のN個の制御可能な自由度のうちの1つ以上に委ねられるスレーブ装置の動き(又はスレーブ装置の外科用器具に属するか、又はそれと一体の少なくとも1つの制御ポイントの動き)が、マスター装置のそれぞれの動きによって制御されるように、マスター装置によって制御されるようになっている少なくとも1つのスレーブ装置を更に備える。
【0146】
システムは、術者によって作動可能なシステム状態移行を制御するための制御手段と、マスター装置及びスレーブ装置の両方に、及び状態移行を制御するための制御手段に動作可能に接続される制御ユニットとを更に備える。
【0147】
制御ユニットは、先に開示された実施形態のいずれかによるロボットシステム制御方法を実行するようにシステムを制御するように構成される。
【0148】
一実施形態によれば、ロボットシステム制御ユニットは、以下の動作、すなわち、
-スレーブ装置740の外科用器具170、又はスレーブ装置740の外科用器具170に属するかもしくはそれと一体化された少なくとも制御ポイント600が、前述の複数のN制御可能な自由度の各自由度においてスレーブ化され、マスター装置110に追従する、完全にスレーブ化された追従を伴う遠隔操作の状態に対応する、ロボットシステムの第1の状態を規定する動作と、
-スレーブ装置740の外科用器具170、又はスレーブ装置740の外科用器具170の少なくとも前述の制御ポイント600が、少なくとも1つの分離された自由度に関連してマスター装置110から分離されるとともに、前述の少なくとも1つの分離された自由度を除外する複数のN個の制御可能な自由度のサブセットにおいてのみマスター装置に対してスレーブ化される、制限された遠隔操作状態に対応する、ロボットシステムの第2の状態を規定する動作と、
-ロボットシステムにおいて、システム状態移行を制御するための制御手段を設ける動作と、
-システム状態移行を制御するための手段を作動させることによって、術者により、ロボットシステムの前述の第1の状態と第2の状態との間の移行を制御する動作と、
を実行するようにロボットシステムを制御するべく構成される。
【0149】
複数の制御可能な自由度は、並進の自由度及び方向自由度を含む。
【0150】
前述の第2の制限された遠隔操作状態は、マスター装置110の再配置の状態であり、前述の少なくとも1つの分離された自由度は、全ての並進自由度を含み、したがって、スレーブ装置740の外科用器具170、又はスレーブ装置740の外科用器具170の前述の少なくとも1つの制御ポイント600は、並進においてマスター装置に追従しない。
【0151】
システムの一実施形態によれば、状態移行を制御するための前述の制御手段は、術者によって押され、及び/又は押され続け、及び/又は離され得る制御ボタン又は制御ペダルを備える。そのような場合、第2の制限された遠隔操作状態は、遠隔操作中に、制御ペダルを押したままにすることによって起動され、制御ペダルを解放することによって停止される。
【0152】
一実施形態によれば、システムは、遠隔超微細手術用のロボットシステムであり、スレーブ装置の前述の外科用器具は超微細手術器具である。
【0153】
図7に示す実施形態では、遠隔操作用のロボットシステム700が示されており、機械的に拘束されておらず、術者750によって移動されるようになっている少なくとも1つの手持ち式マスター装置(図示の例では、作業空間715内の2つの拘束のないマスター装置MF1、MF2が示されている)と、マスター装置によって制御されるようになっている外科用器具を備える少なくとも1つのスレーブ装置740(図示の例では、それぞれのマスター装置MF1、MF2によって制御されるスレーブ装置740の2つの外科用器具SF1、SF2が示されている)とを備える。
【0154】
図7に示すロボットシステム700は、術者750によって作動可能なシステム状態移行752を制御するための制御手段と、拘束のないマスター装置及びスレーブ装置740の両方、並びに状態移行752を制御するための制御手段に動作可能に接続された制御ユニットとを更に備える。図示の例では、制御ユニットは、マスター作業空間715と一体のコンソール755の一部を形成するものとして示されている。
【0155】
図6は、制御ポイント600の並進が「スレーブフレーム原点」SFO基準座標系に対してロックされている、第2の制限された遠隔操作状態の間のスレーブ装置740の一例を概略的に示し、そのような例では、制御ポイント600の自由度が概略的に示されており、これらは第2の状態:ピッチP、ヨーY、及び幾つかの実装オプションによって必要とされるように、ロールR及び/又は把持G、すなわち、スレーブ装置の外科用器具SFのチップ(ノズル)101,102の開閉Gの間にスレーブ化されたままである。
【0156】
図1は、第2の制限された遠隔操作状態の一例を概略的に示しており、この状態において、マスター装置110が、術者750によって手持ちされている間に、作業空間715内で「マスターフレーム原点」MFO基準座標系に対して姿勢MF(点線)から姿勢MFへの並進及び回転運動を実行したとしても、制御ポイント600の並進は、「スレーブフレーム原点」SFO基準座標系に対してロックされ、制御ポイント600は、この例では、スレーブ装置740の外科用器具170のチップ(ノズル)101,102の間に示されている。
【0157】
図8に示す例では、スレーブ装置の外科用器具170は、ロールR、ピッチP、及びヨーYを作動させるための関節(又は関節結合された関節)を有する関節結合された手首を備え、制御ポイント600は、第2の制限された遠隔操作状態にあるときに基準座標系SFOにロックされた並進運動を有するように規定される。
【0158】
図5は、スレーブ外科用器具170のチップ101,102の開閉Gのスレーブ可能な自由度を制御するようになっている開閉G’の内部自由度を有するマスター装置110を概略的に示す。図示の例では、マスター装置110の開閉自由度G’は、共通の軸を中心に相対的に回転するように回転関節103内に拘束された2つの剛性部品111,112によって形成される。
【0159】
図から分かるように、先に示した本発明の目的は、詳細に上記に開示した特徴により、上記の方法によって完全に達成される。
【0160】
実際、前述した方法及びシステムは、遠隔操作の状態移行中に、一方では患者の絶対的な安全性及び外科医の動作の快適さを保証し、他方ではマスター-スレーブ位置合わせを効果的に維持することを可能にする状態移行を実行することを可能にする。
【0161】
これは、説明した方法及びシステムの特徴のおかげで、特に、2つの異なる遠隔操作状態、すなわち、一方は完全なエンスラベメントを伴う遠隔操作、他方は制限された遠隔操作(スレーブ装置は、並進の自由度を参照してマスター装置から分離され、複数のN個の制御可能な自由度のサブセットにおいてのみマスター装置にスレーブ化される)の規定のおかげで、及び前述の2つの状態間の全ての移行を自由に制御するために術者(例えば、外科医)に提供される可能性のおかげで得られる。
【0162】
更に、前述したように、好ましい実装オプションによれば、第2の制限された遠隔操作状態では、スレーブ装置170、すなわち制御ポイント600は、方向がマスター装置110に追従する(かつ並進で追従しない)ため、スレーブの方向は常にマスターの方向と位置合わせされたままであり、その結果、完全にスレーブ遠隔操作の状態に戻ると、マスター装置とスレーブ装置、すなわちスレーブ装置の制御ポイント600は位置合わせされる。これは、完全にスレーブ化された遠隔操作への再進入時にマスター-スレーブ関係の歪みを回避し、また、完全にスレーブ化された遠隔操作ステップ中の位置ずれのその後の回復の必要性も回避する。制限された遠隔操作状態の終了時にマスターとスレーブとの間で位置合わせステップを実行する必要も回避される。
【0163】
第2の制限された遠隔操作状態の間、外科医は、スレーブ装置の外科用器具の制御ポイントの並進を課すことなく、マスター装置の作業空間内で拘束されていないマスター装置を再配置又は再配置することができる。
【0164】
提案された解決策により、拘束されていないマスター装置の並進とスレーブ制御ポイントのスレーブ並進との間のスケーリングが提供され、マスター装置の回転とスレーブ制御ポイントの回転との間のスケーリングがない、手術、好ましくは超微細手術用の遠隔操作システムは、第1の状態と第2の状態との間の任意の移行においてマスター-スレーブ位置合わせを維持することを可能にし、その逆も可能である。
【0165】
偶発的なニーズを満たすために、当業者は、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、前述の方法の実施形態に変更及び適合を行うことができ、又は機能的に等価な他の要素と要素を置き換えることができる。可能な実施形態に属するものとして前述された全ての特徴は、説明された他の実施形態に関係なく実装されてもよい。
【国際調査報告】