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特表2024-507789グルコサミニダーゼと結合する抗体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】グルコサミニダーゼと結合する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240214BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20240214BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240214BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240214BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240214BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20240214BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240214BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 9/24 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/40 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N15/09 Z
C12Q1/6876 Z
C12N5/10
C12P21/08
C12N9/99
C07K16/12
A61K39/395 N
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K39/395 D
A61K47/68
A61P31/04
A61P43/00 121
A61P43/00 111
C12N9/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548946
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2022016060
(87)【国際公開番号】W WO2022174009
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/149,003
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523307099
【氏名又は名称】テーレポス バイオサイエンシーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベネダイク,マーク
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ46
4B063QQ53
4B063QR32
4B063QR36
4B063QS34
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA03
4B065AA91X
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AA93X
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA34
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC31
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB22
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、Staphylococcusの増殖を阻害することができるグルコサミニダーゼ(Gmd)結合抗体、ならびに、例えば診断予後予測方法及び治療用途において、これらの抗体を作製及び使用する方法を提供する。本開示は、Gmd結合抗体を使用してStaphylococcus(例えば、S.aureus)感染症を処置する方法をさらに提供する。例えば、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、敗血症性ショック、皮膚壊死、及び乳房炎を含む、微生物感染症に関連する病態を処置する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVH-CDR1、配列番号43のVH-CDR2、及び配列番号44のVH-CDR3を含むVLを含み、
(a)配列番号13または14のVHフレームワーク1配列、
(b)配列番号16~18、または19のVHフレームワーク2配列、
(c)配列番号21のVHフレームワーク3配列、
(d)配列番号45、46、または47のVLフレームワーク1配列、
(e)配列番号49、50、または51のVLフレームワーク2配列、及び
(f)配列番号53~58、または59のVLフレームワーク3配列
からなる群から選択されるフレームワーク配列を含む、単離されたGmd結合抗体。
【請求項2】
(a)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号16のフレームワーク2配列、
(b)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号17のフレームワーク2配列、
(c)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号18のフレームワーク2配列、
(d)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号19のフレームワーク2配列、
(e)配列番号14のフレームワーク1配列及び配列番号16のフレームワーク2配列、
(f)配列番号14のフレームワーク1配列及び配列番号17のフレームワーク2配列、ならびに
(g)配列番号14のフレームワーク1配列及び配列番号18のフレームワーク2配列
からなる群から選択されるVHフレームワーク配列を含む、請求項1に記載のGmd結合抗体。
【請求項3】
配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む、請求項1に記載のGmd結合抗体。
【請求項4】
配列番号1~7、または8のVHを含む、請求項1に記載のGmd結合抗体。
【請求項5】
(a)配列番号45のフレームワーク1配列及び配列番号49のフレームワーク2配列、
(b)配列番号46のフレームワーク1配列及び配列番号50のフレームワーク2配列、
(c)配列番号47のフレームワーク1配列及び配列番号50のフレームワーク2配列、
(d)配列番号47のフレームワーク1配列及び配列番号51のフレームワーク2配列、
(e)配列番号49のフレームワーク2配列及び配列番号53のフレームワーク3配列、
(f)配列番号49のフレームワーク2配列及び配列番号55のフレームワーク3配列、
(g)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号54のフレームワーク3配列、
(h)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号55のフレームワーク3配列、
(i)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号56のフレームワーク3配列、
(j)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号57のフレームワーク3配列、ならびに
(k)配列番号51のフレームワーク2配列及び配列番号58のフレームワーク3配列
からなる群から選択されるVLフレームワーク配列を含む、請求項1に記載のGmd結合抗体。
【請求項6】
配列番号1~7、または8のVHを含む、請求項5に記載のGmd結合抗体。
【請求項7】
配列番号1~7または8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVHと、配列番号33~39、または40との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLとを含むGmd結合抗体であって、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない、前記Gmd結合抗体。
【請求項8】
(a)配列番号1の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号34または35の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、
(b)配列番号2の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号34、35、または37の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、
(c)配列番号3の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33、35、36、38、または39の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、
(d)配列番号4の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号39の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、
(e)配列番号5の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号35、36、38、または39の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、
(f)配列番号6の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号35、36、または38の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、
(g)配列番号7の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号34または35の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、ならびに
(h)配列番号8の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~38、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列
からなる群から選択されるVH及びVLのペアを含む、Gmd結合抗体であって、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない、前記Gmd結合抗体。
【請求項9】
配列番号1~7または8のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを有するVH及びVLのペアを含む、Gmd結合抗体。
【請求項10】
(a)配列番号1のVH配列及び配列番号34のVL配列、
(b)配列番号1のVH配列及び配列番号35のVL配列、
(c)配列番号2のVH配列及び配列番号34のVL配列、
(d)配列番号2のVH配列及び配列番号35のVL配列、
(e)配列番号3のVH配列及び配列番号33のVL配列、
(f)配列番号3のVH配列及び配列番号35のVL配列、
(g)配列番号3のVH配列及び配列番号36のVL配列、
(h)配列番号3のVH配列及び配列番号38のVL配列、
(i)配列番号3のVH配列及び配列番号39のVL配列、
(j)配列番号4のVH配列及び配列番号39のVL配列、
(k)配列番号5のVH配列及び配列番号35のVL配列、
(l)配列番号5のVH配列及び配列番号36のVL配列、
(m)配列番号5のVH配列及び配列番号38のVL配列、
(n)配列番号5のVH配列及び配列番号39のVL配列、
(o)配列番号6のVH配列及び配列番号35のVL配列、
(p)配列番号6のVH配列及び配列番号36のVL配列、
(q)配列番号6のVH配列及び配列番号38のVL配列、
(r)配列番号7のVH配列及び配列番号34のVL配列、
(s)配列番号7のVH配列及び配列番号35のVL配列、
(t)配列番号8のVH配列及び配列番号33のVL配列、
(u)配列番号8のVH配列及び配列番号34のVL配列、
(v)配列番号8のVH配列及び配列番号35のVL配列、
(w)配列番号8のVH配列及び配列番号36のVL配列、
(x)配列番号8のVH配列及び配列番号37のVL配列、
(y)配列番号8のVH配列及び配列番号38のVL配列、ならびに
(z)配列番号8のVH配列及び配列番号40のVL配列
からなる群から選択されるVH及びVLのペアを含む、請求項9に記載のGmd結合抗体。
【請求項11】
前記抗体は、完全長抗体である、請求項1~9、または10のいずれか1項に記載のGmd結合抗体。
【請求項12】
前記抗体は、モノクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である、請求項1~10、または11のいずれか1項に記載のGmd結合抗体。
【請求項13】
前記Gmd結合抗体は、
(a)ヒトIgA定常ドメイン、
(b)ヒトIgD定常ドメイン、
(c)ヒトIgE定常ドメイン、
(d)ヒトIgG1定常ドメイン、
(e)ヒトIgG2定常ドメイン、
(f)ヒトIgG3定常ドメイン、
(g)ヒトIgG4定常ドメイン、及び
(h)ヒトIgM定常ドメイン
からなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインをさらに含み、場合により、前記定常ドメインは、カルボキシ末端リジン残基を含まない、請求項1~11、または12のいずれか1項に記載のGmd結合抗体。
【請求項14】
前記Gmd結合抗体は、
(a)ヒトIgカッパ定常ドメイン、及び
(b)ヒトIgラムダ定常ドメイン
からなる群から選択される軽鎖免疫グロブリン定常ドメインをさらに含む、請求項1~12、または13のいずれか1項に記載のGmd結合抗体。
【請求項15】
前記Gmd結合抗体は、ヒトIgG1重鎖定常ドメイン及びヒトラムダ軽鎖定常ドメインをさらに含む、請求項1~12、または13のいずれか1項に記載のGmd結合抗体。
【請求項16】
前記Gmd結合抗体は抗体依存性細胞毒性(ADCC)を有する、請求項1~14、または15のいずれか1項に記載のGmd結合抗体。
【請求項17】
前記Gmd結合抗体は、
(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、
(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、
(c)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、
(d)S.aureusの凝集(クラスター化)を促進すること、
(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び
(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合すること
からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する、請求項1~15、または16のいずれか1項に記載のGmd結合抗体。
【請求項18】
前記Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する、請求項17に記載のGmd結合抗体。
【請求項19】
前記Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する、請求項17に記載のGmd結合抗体。
【請求項20】
前記抗体は、S.aureusの細胞非依存性溶解を促進する、請求項17に記載のGmd結合抗体。
【請求項21】
前記Gmd結合抗体は、≦1nMかつ≧1pMのKDで、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合する、請求項1~19、または20のいずれか1項に記載のGmd結合抗体。
【請求項22】
前記Gmd結合抗体はヒト化抗体である、請求項1~20、または21のいずれか1項に記載のGmd結合抗体。
【請求項23】
前記Gmd結合抗体は、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、またはGmd結合抗体断片である、請求項1~21、または22のいずれか1項に記載のGmd結合抗体。
【請求項24】
Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、ダイアボディ、及び単鎖抗体分子からなる群から選択されるGmd結合断片である、請求項23に記載のGmd結合抗体。
【請求項25】
請求項1~23、または24のいずれか1項に記載のGmd結合抗体をコードする、単離された核酸分子または核酸分子のセット。
【請求項26】
cDNAである、請求項25に記載の単離された核酸分子または核酸分子のセット。
【請求項27】
請求項25もしくは26に記載の核酸分子もしくは核酸分子のセットの断片、またはその補体である、ハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマーまたはシーケンシングプライマーとして使用するのに十分な、単離されたポリヌクレオチドまたはcDNA分子。
【請求項28】
前記核酸分子は制御配列に作動可能に連結されている、請求項25、26、または27のいずれか1項に記載の核酸分子またはcDNA分子。
【請求項29】
請求項25~27、または28のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項30】
請求項25~27、もしくは28のいずれか1項に記載の核酸分子、または請求項29に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項31】
前記宿主細胞は哺乳動物宿主細胞である、請求項30に記載の宿主細胞。
【請求項32】
前記宿主細胞は、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項31に記載の哺乳動物宿主細胞。
【請求項33】
請求項1~23、または24のいずれか1項に記載のGmd結合抗体を作製する方法であって、前記Gmd結合抗体を産生するのに好適な条件下で請求項30、31、または32のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養することを含む前記方法。
【請求項34】
前記宿主細胞から分泌されたGmd結合抗体を単離することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項33または34に記載の方法を使用して産生されたGmd結合抗体。
【請求項36】
請求項1~23、または24のいずれか1項に記載のGmd結合抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項37】
医薬品として使用するための、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
Staphylococcus感染症を処置するための、請求項1~23、もしくは24のいずれか1項に記載の抗体、または請求項37に記載の医薬組成物の使用。
【請求項39】
前記Staphylococcus感染症はS.aureus感染症である、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記S.aureusは、抗生物質に対して耐性がある、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記S.aureusは、メチシリン耐性(MRSA)である、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎からなる群から選択される感染症関連病態を処置するための、請求項38~40、または41のいずれか1項に記載の使用。
【請求項43】
前記Gmd結合抗体は、標識基またはエフェクター基をさらに含む、請求項1~23、もしくは24のいずれか1項に記載の抗体、または請求項36もしくは37に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記エフェクター基は、放射性同位体、ラジオヌクリド、毒素、治療剤及び化学療法剤からなる群から選択される、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
Staphylococcus感染症を処置する方法であって、Staphylococcus感染症を有するまたは有するリスクのある対象に、有効量の、請求項1~23、もしくは24のいずれか1項に記載のGmd結合抗体を含む組成物、または請求項36、37、もしくは44のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む前記方法。
【請求項46】
前記Staphylococcus感染症はS.aureus感染症である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記S.aureusは、抗生物質に対して耐性がある、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記S.aureusは、メチシリン耐性(MRSA)である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎からなる群から選択される感染症関連病態を処置するための、請求項45~47、または48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記Gmd結合抗体または医薬組成物は、単独で、または併用療法として投与される、請求項45~48、または49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記対象は、免疫無防備状態であるか、または50歳を超える年齢である、請求項45~49、または50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
請求項1~24、もしくは35のいずれか1項に記載のGmd結合抗体、または請求項36、37、もしくは44のいずれか1項に記載の医薬組成物とGmdを接触させることを含む、Gmd活性を低減させる方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
Staphylococcus aureusは、世界中で死亡率及び罹患率の主な原因であり、様々な発症機序による多種多様な疾患、ならびに軽度の皮膚及び軟組織の感染症から心内膜炎、骨髄炎、及び壊死性肺炎などの重篤な侵襲性疾患に至るまでの種々の感染症を引き起こす(Lowy F.,N.Engl. J.Med.339(8):520-32(1998)、Klevens et al.,JAMA 298(15):1763-71(2007))。病院及び地域社会の両方における抗菌薬耐性株の保有率の増加により、療法の選択及び治療の成功が大いに妨げられ、その結果、慢性及び再発性感染症の発生率が増加し、医療費が増加している。
【0002】
したがって、細菌感染症全般、特にS.aureus感染症の防止及び処置のための代替方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、Staphylococcusの増殖を阻害することができるグルコサミニダーゼ(Gmd)結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)、ならびにこれらの抗体を作製及び使用する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、Staphylococcus感染症を有するまたは有するリスクのある対象に、治療有効量のGmd結合抗体を投与することを含む、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、感染症は、皮膚感染症、軟組織感染症、または侵襲性感染症である。さらなる実施形態では、本開示は、Staphylococcus感染症に関連する病態を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、Staphylococcus感染症に関連する病態は、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、敗血症性ショック、皮膚壊死、及び乳房炎からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Staphylococcusは、抗菌剤に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、Staphylococcus感染症は、S.aureus感染症である。いくつかの実施形態では、S.aureusはメチシリン感受性(MSSA)である。追加の実施形態では、S.aureusは、抗菌剤に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、S.aureusは、1つ以上のβ-ラクタム抗菌剤に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、S.aureusはメチシリン耐性(MRSA)である。本開示のGmd結合抗体を使用して、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症を検出し、診断または予後予測する方法も提供される。
【0004】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、完全長抗体またはGmd結合抗体断片である。追加の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH及び配列番号41のVLを有する参照Gmd結合抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または該参照Gmd結合抗体とGmdへの結合を競合するが、参照抗体のVH配列、VL配列、またはVH配列及びVL配列を含まない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を有する参照Gmd結合抗体と同じGmdのエピトープに結合するが、参照抗体のVH配列、VL配列、またはVH配列及びVL配列を含まない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の凝集(クラスター化)を促進すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させる、または細胞分裂を阻害すること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0005】
追加の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、CDRセット:VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3を含み、該CDRセットは、(a)(i)VH-CDR1が配列番号10のアミノ酸配列を含み、(ii)VH-CDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、(iii)VH-CDR3が配列番号12のアミノ酸配列を含み、(iv)VL-CDR1が配列番号42のアミノ酸配列を含み、(v)VL-CDR2が配列番号43のアミノ酸配列を含み、(vi)VL-CDR3が配列番号44のアミノ酸配列を含む参照CDRセットからのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を、合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または10個未満有する。特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、(i)VH-CDR1が配列番号10のアミノ酸配列を含まない、(ii)VH-CDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含まない、(iii)VH-CDR3が配列番号12のアミノ酸配列を含まない、(iv)VL-CDR1が配列番号42のアミノ酸配列を含まない、(v)VL-CDR2が配列番号43のアミノ酸配列を含まない、または(vi)VL-CDR3が配列番号44のアミノ酸配列を含まない、CDRセットを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVH-CDR1、配列番号43のVH-CDR2、及び配列番号44のVH-CDR3を含むVLを含み、(a)配列番号13または14のVHフレームワーク1配列、(b)配列番号16~18、または19のVHフレームワーク2配列、(c)配列番号21のVHフレームワーク3配列、(d)配列番号45、46、または47のVLフレームワーク1配列、(e)配列番号49、50、または51のVLフレームワーク2配列、及び(f)配列番号53~58、または59のVLフレームワーク3配列からなる群から選択されるフレームワーク配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号61のVLフレームワーク4配列を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVL-CDR1、配列番号43のVL-CDR2、及び配列番号44のVL-CDR3を含むVLを含み、(a)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号16のフレームワーク2配列、(b)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号17のフレームワーク2配列、(c)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号18のフレームワーク2配列、(d)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号19のフレームワーク2配列、(e)配列番号14のフレームワーク1配列及び配列番号16のフレームワーク2配列、(f)配列番号14のフレームワーク1配列及び配列番号17のフレームワーク2配列、ならびに(g)配列番号14のフレームワーク1配列及び配列番号18のフレームワーク2配列からなる群から選択されるVHフレームワーク配列を含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号24のVHフレームワーク4配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号61のVLフレームワーク4配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVL-CDR1、配列番号43のVL-CDR2、及び配列番号44のVL-CDR3を含むVLを含み、配列番号13のVHフレームワーク1配列及び配列番号18のフレームワーク2配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVL-CDR1、配列番号43のVL-CDR2、及び配列番号44のVL-CDR3を含むVLを含み、配列番号18のVHフレームワーク2配列及び配列番号21のフレームワーク3配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVL-CDR1、配列番号43のVL-CDR2、及び配列番号44のVL-CDR3を含むVLを含み、配列番号13のVHフレームワーク1配列及び配列番号19のフレームワーク2配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVL-CDR1、配列番号43のVL-CDR2、及び配列番号44のVL-CDR3を含むVLを含み、配列番号19のVHフレームワーク2配列及び配列番号21のフレームワーク3配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVH-CDR1、配列番号43のVH-CDR2、及び配列番号44のVH-CDR3を含むVLを含み、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号24のVHフレームワーク4配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVH-CDR1、配列番号43のVH-CDR2、及び配列番号44のVH-CDR3を含むVLを含み、(a)配列番号45のフレームワーク1配列及び配列番号49のフレームワーク2配列、(b)配列番号46のフレームワーク1配列及び配列番号50のフレームワーク2配列、(c)配列番号47のフレームワーク1配列及び配列番号50のフレームワーク2配列、(d)配列番号47のフレームワーク1配列及び配列番号51のフレームワーク2配列、(e)配列番号49のフレームワーク2配列及び配列番号53のフレームワーク3配列、(f)配列番号49のフレームワーク2配列及び配列番号55のフレームワーク3配列、(g)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号54のフレームワーク3配列、(h)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号55のフレームワーク3配列、(i)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号56のフレームワーク3配列、(j)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号57のフレームワーク3配列、ならびに(k)配列番号51のフレームワーク2配列及び配列番号58のフレームワーク3配列からなる群から選択されるVLフレームワーク配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVH-CDR1、配列番号43のVH-CDR2、及び配列番号44のVH-CDR3を含むVLを含み、配列番号45のフレームワーク1配列及び配列番号49のフレームワーク2配列を有するVLを含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVH-CDR1、配列番号43のVH-CDR2、及び配列番号44のVH-CDR3を含むVLを含み、配列番号49のフレームワーク2配列及び配列番号55のフレームワーク3配列を有するVLを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVH-CDR1、配列番号43のVH-CDR2、及び配列番号44のVH-CDR3を含むVLを含み、(a)配列番号45のフレームワーク1配列及び配列番号49のフレームワーク2配列、(b)配列番号46のフレームワーク1配列及び配列番号50のフレームワーク2配列、(c)配列番号47のフレームワーク1配列及び配列番号50のフレームワーク2配列、(d)配列番号47のフレームワーク1配列及び配列番号51のフレームワーク2配列、(e)配列番号49のフレームワーク2配列及び配列番号53のフレームワーク3配列、(f)配列番号49のフレームワーク2配列及び配列番号55のフレームワーク3配列、(g)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号54のフレームワーク3配列、(h)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号55のフレームワーク3配列、(i)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号56のフレームワーク3配列、(j)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号57のフレームワーク3配列、ならびに(k)配列番号51のフレームワーク2配列及び配列番号58のフレームワーク3配列からなる群から選択されるVLフレームワーク配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号1~7または8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVHと、配列番号33~39、または40との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLとを含むGmd結合抗体を含み、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH及び/または配列番号41のVLを有しない。
【0015】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)(i)配列番号1との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号34または35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(b)配列番号2との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号34、35、または37との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(c)配列番号3との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号33、35、36、38、または39との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(d)配列番号4との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号39との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(e)配列番号5との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35、36、38、または39との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(f)配列番号6との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35、36、または38との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(g)配列番号7との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号34または35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(h)配列番号8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号33~38、または40との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLからなる群から選択されるVH及びVLのペアを含むが、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。
【0016】
一実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号1~7または8のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを有するVH及びVLのペアを含む。
【0017】
一実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)配列番号1のVH配列及び配列番号34のVL配列、(b)配列番号1のVH配列及び配列番号35のVL配列、(c)配列番号2のVH配列及び配列番号34のVL配列、(d)配列番号2のVH配列及び配列番号35のVL配列、(e)配列番号3のVH配列及び配列番号33のVL配列、(f)配列番号3のVH配列及び配列番号35のVL配列、(g)配列番号3のVH配列、及び配列番号36のVL配列、ならびに(h)配列番号3のVH配列及び配列番号38のVL配列、(i)配列番号3のVH配列及び配列番号39のVL配列、(j)配列番号4のVH配列及び配列番号39のVL配列、(k)配列番号5のVH配列及び配列番号35のVL配列、(l)配列番号5のVH配列及び配列番号36のVL配列、(m)配列番号5のVH配列及び配列番号38のVL配列、(n)配列番号5のVH配列及び配列番号39のVL配列、(o)配列番号6のVH配列、及び配列番号35のVL配列、(p)配列番号6のVH配列及び配列番号36のVL配列、(q)配列番号6のVH配列及び配列番号38のVL配列、(r)配列番号7のVH配列及び配列番号34のVL配列、(s)配列番号7のVH配列及び配列番号35のVL配列、(t)配列番号8のVH配列及び配列番号33のVL配列、(u)配列番号8のVH配列及び配列番号34のVL配列、(v)配列番号8のVH配列及び配列番号35のVL配列、(w)配列番号8のVH配列、及び配列番号36のVL配列、(x)配列番号8のVH配列及び配列番号37のVL配列、(y)配列番号8のVH配列及び配列番号38のVL配列、ならびに(z)配列番号8のVH配列及び配列番号40のVL配列からなる群から選択されるVH及びVLを含む。
【0018】
一実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号1のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む、VH及びVLを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1のVHと配列番号34または35のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1のVHと配列番号34のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1のVHと配列番号35のVL配列とを含む。
【0019】
別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号2のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号2のVHと、配列番号34、35、または37のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号2のVHと配列番号34のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号2のVHと配列番号35のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号2のVHと配列番号37のVLとを含む。
【0020】
追加のさらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号3のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと、配列番号33、35、36、38、または39のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号33のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号35のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号36のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号38のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号39のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号40のVLとを含む。
【0021】
さらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号4のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号4のVHと配列番号39のVLとを含む、VH及びVLを含む。
【0022】
さらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号5のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号5のVHと、配列番号35、36、38、または39のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号5のVHと配列番号35のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号5のVHと配列番号36のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号5のVHと配列番号38のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号5のVHと配列番号39のVLとを含む。
【0023】
追加の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号6のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号6のVHと、配列番号35、36、または38のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号6のVHと配列番号35のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号6のVHと配列番号36のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号6のVHと配列番号38のVLとを含む。
【0024】
さらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号7のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号7のVHと配列番号34または35のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号7のVHと配列番号34のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号7のVHと配列番号35のVLとを含む。
【0025】
別の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号8のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと、配列番号33~38、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号33のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号34のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号35のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号36のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号37のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号38のVLとを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)配列番号1~7または8の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び(b)配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列を含み、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の凝集(クラスター化)を促進すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂または細胞分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0027】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)配列番号1の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(b)配列番号2の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(c)配列番号3の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(d)配列番号4の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(e)配列番号5の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(f)配列番号6の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(g)配列番号7の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、ならびに(h)配列番号8の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列からなる群から選択されるVH及びVLのペアを含み、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。
【0028】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)配列番号1の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号34または35の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(b)配列番号2の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号34、35、または37の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(c)配列番号3の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有する配列を有するVH、及び配列番号33、35、36、38、または39の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(d)配列番号4の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号39の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(e)配列番号5の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号35、36、38、または39の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(f)配列番号6の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号35、36、または38の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(g)配列番号7の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号34または35の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、ならびに(h)配列番号8の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~38または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列からなる群から選択されるVH及びVLのペアを含み、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。
【0029】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号7の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号34の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号35の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号7の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列と、配列番号34の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列とを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号7の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列と、配列番号35の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列とを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmd結合抗体断片である。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ダイアボディ、DART、及び単鎖抗体分子(例えば、BiTE)からなる群から選択される抗体断片である。
【0035】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片と結合する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号72のアミノ酸残基59~91のアミノ酸配列からなるGmd断片と結合する。
【0036】
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)をコードする核酸及び核酸のセットも提供される。これらの核酸を含むベクター及びベクターのセット、ならびにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞がさらに提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ハイブリドーマまたは哺乳動物宿主細胞、例えば、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。Gmd結合抗体を産生する哺乳動物宿主細胞及びハイブリドーマを含む宿主細胞も提供される。
【0037】
Gmd結合抗体を作製する方法も提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を発現することができる宿主細胞を、タンパク質を発現させるのに好適な条件下で培養することと、場合により、発現されたGmd結合抗体を単離することとを含む。本明細書で開示される方法または当技術分野で知られる他の方法を使用して調製及び/または単離されたGmd結合抗体も提供される。
【0038】
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物がさらに提供される。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示は、Staphylococcus感染症を有するまたは有するリスクのある対象における、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、StaphylococcusはS.aureusである。いくつかの実施形態では、この方法は、対象におけるStaphylococcus力価を減少させる。さらなる実施形態では、本開示は、患者におけるStaphylococcus感染症に関連する病態を処置する方法を提供する。提供される方法を使用して対象において処置され得る病態は、発熱、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎を含むが、これらに限定されない。
【0040】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、単独で投与される。追加の実施形態では、Gmd結合抗体は、併用療法として投与される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、抗生物質との併用療法として投与される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、標準治療処置/療法に対する併用療法として投与される。
【0041】
本開示は、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)とStaphylococcusとを接触させることを含む、Staphylococcus(例えば、S.aureus)の増殖を阻害する方法も提供する。いくつかの実施形態では、StaphylococcusはS.aureusである。いくつかの実施形態では、Staphylococcusの増殖を阻害する方法は、in vitroで行われる。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、この方法はin vivoで行われる。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、この方法は、Gmd結合抗体と抗生物質耐性Staphylococcus(例えば、S.aureus)とを接触させることを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、Gmd結合抗体とメチシリン感受性S.aureusとを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体とメチシリン感受性S.aureus(MSSA)とを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体とメチシリン耐性S.aureus(MRSA)とを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体とバンコマイシン耐性S.aureus(VRSA)とを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体とダプトマイシン耐性S.aureus(DRSA)とを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体とリネゾリド耐性S.aureus(LRSA)とを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体と、バンコマイシン中間感受性S.aureus(VISA)などの改変された抗生物質感受性を有する細菌とを接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、有効量のGmd結合抗体をそれを必要とする対象に投与することを含む、対象におけるStaphylococcusの増殖を阻害する方法を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示は、Staphylococcus感染症を有するまたは有するリスクのある患者に、有効量のGmd結合抗体(例えば、表1に開示されるVH及びVLのペアの配列を含む完全長抗体またはGmd結合抗体)を投与することを含む、Staphylococcus感染症を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、Staphylococcus感染症に関連する病態を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該感染症に関連する病態は、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎(maspatientis)からなる群から選択される。
【0043】
さらなる実施形態では、本開示は、S.aureus感染症を有するまたは有するリスクのある患者に、有効量のGmd結合抗体(例えば、表1に開示されるVH及びVLのペアの配列を含む完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を投与することを含む、S.aureus感染症を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、S.aureus感染症に関連する病態を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該感染症に関連する病態は、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎(maspatientis)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、S.aureusは、1つ以上のβ-ラクタム抗菌剤に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、S.aureusは、VRSA、DRSA、LRSA、及びVISAからなる群から選択されるメンバーである。
【0044】
いくつかの実施形態では、本開示は、骨感染症または関節感染症を有するまたは有するリスクのある患者に、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体(例えば、表1に開示される配列を有する完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与することを含む、Staphylococcus(例えば、S.aureus)の骨感染症または関節感染症を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、Staphylococcusの骨感染症または関節感染症を有するまたは有するリスクのある患者に、有効量のGmd結合抗体Gmd結合抗体(例えば、表1に開示されるVH及びVLのペアの配列を含む完全長抗体またはGmd結合抗体)を投与することを含む、骨髄炎を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、感染症は、S.aureus感染症である。いくつかの実施形態では、S.aureusは、MSSAである。追加の実施形態では、S.aureusは、抗生物質に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、S.aureusは、MRSAである。いくつかの実施形態では、S.aureusは、1つ以上のβ-ラクタム抗菌剤に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、S.aureusは、VRSA、DRSA、LRSA、及びVISAからなる群から選択されるメンバーである。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示は、硬組織または軟組織の処置(例えば、手術など)を受けている、または受けようとしている患者に、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体(例えば、表1に開示される配列を有する完全長抗体及びGmd結合抗体断片)または本明細書で開示される別のものを投与することを含む、硬組織または軟組織を処置しながら感染症を防止する方法を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示は、感染した硬組織または軟組織の処置(例えば、手術など)を受けている、または受けようとしている患者に、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体(例えば、表1に開示される配列を有する完全長抗体及びGmd結合抗体断片)または本明細書で開示される別のものを投与することを含む、感染症(例えば、S.aureus)の存在下の硬組織または軟組織を処置する方法を提供する。
【0047】
追加の実施形態では、本開示は、患者に医療デバイス(例えば、整形外科用インプラント、歯科用インプラント、またはENTインプラント)または組織移植片を導入する方法であって、医療デバイスを必要とする患者に、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与することと、整形外科用インプラント、組織移植片、または医療デバイスを患者に導入することとを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、医療デバイス(例えば、整形外科用インプラント)を導入する前に患者に投与される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、医療デバイスの導入と同時に患者に投与される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、医療デバイスが導入された後に患者に投与される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、医療デバイスが患者に導入される前及び後に患者に投与される。
【0048】
追加の実施形態では、本開示は、本明細書で開示されるGmd結合抗体と患者サンプルを接触させることと、サンプル中に存在するGmd結合抗体とS.aureusまたはGmdとの間の免疫複合体の存在を検出することとを含み、免疫複合体の検出が、患者サンプル中のStaphylococcusの存在を示す、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症を診断または予後予測する方法を提供する。さらなる実施形態では、患者サンプルは患者の血液、血清、または血漿に由来する。
【0049】
別の実施形態では、本開示は、本明細書で開示されるGmd結合抗体とサンプルを接触させることと、サンプル中のGmd結合抗体とStaphylococcusまたはGmdタンパク質との間に形成された免疫複合体の存在を検出することとを含み、免疫複合体の検出が、サンプル中のStaphylococcusの存在を示す、サンプル中のStaphylococcus(例えば、S.aureus)の存在を判定する方法を提供する。さらなる実施形態では、サンプルは生物学的サンプル(例えば、対象の血液、血清、または血漿を含む、またはそれに由来するサンプル)である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、単離及び/または組換えGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を提供する。Gmd結合抗体をコードする核酸、その核酸を含むベクター及び宿主細胞、ならびにGmd結合抗体を作製及び使用する方法も提供される。提供されるGmd結合抗体は、Staphylococcus感染症に関連する疾患及び病態の診断及び処置に使用される。このような使用は、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症、ならびにStaphylococcus感染症に関連する病態、例えば、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎(maspatientis)の処置を含むが、これに限定されない。
【0051】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。本明細書で提供される見出しは、本明細書全体を参照することによって理解され得る様々な実施形態を限定するものではない。さらに、直下で定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより詳細に定義される。
【0052】
「a」、「an」及び「the」という用語は、その用語が使用される文脈による明確な別段の定めがない限り、複数の指示対象を含む。「a」(または「an」)という用語、ならびに「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では交換可能に使用され得る。さらに、本明細書で使用される「及び/または」は、2つ以上の特定の特徴または構成要素の各々の具体的な開示であり、他方の有無にかかわらないものとして解釈されるべきである。したがって、本明細書で「A及び/またはB」などの表現で使用される「及び/または」という用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むように意図されている。同様に、「A、B、及び/またはC」のような表現で使用される「及び/または」という用語は、次の実施形態の各々を包含するように意図されている:a、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0053】
「含む(comprise)」または「含む(comprises)」という用語は、概して、含む(include)、つまり、1つ以上の特徴または構成要素の存在を許容するという意味で使用される。諸実施形態が「含む(comprises)」または「含む(comprising)」という言い回しを用いて本明細書で記述されている場合は常に、「からなる(consisting of)」及び/または「から本質的になる(consisting essentially of)」という観点から記述される別の類似の実施形態も提供される。
【0054】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて数値に関連して使用される「約」及び「およそ」という用語は、当業者によく知られており許容可能な精度の範囲を意味する。概して、このような精度の範囲は±10%である。あるいは、特に生体系において、「約」及び「およそ」という用語は、所定の値の一桁以内、好ましくは5倍以下、より好ましくは2倍以下の値を意味し得る。
【0055】
数値範囲は、その範囲を定義する数を含むものとする。
【0056】
「Gmd」、「エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ」、及び「グルコサミニダーゼ」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、S.aureusグルコサミニダーゼ酵素を指す。Gmdは、公開データベースにおけるS.aureusのすべての株間で95%超保存されており、他のブドウ球菌間ではおよそ85%保存されている。特定の実施形態では、Gmdは、次のアミノ酸配列を有する:
AYTVTKPQTTQTVSKIAQVKPNNTGIRASVYEKTAKNGAKYADRTFYVTKERAHGNETYVLLNNTSHNIPLGWFNVKDLNVQNLGKEVKTTQKYTVNKSNNGLSMVPWGTKNQVILTGNNIAQGTFNATKQVSVGKDVYLYGTINNRTGWVNAKDLTAPTAVKPTTSAAKDYNYTYVIKNGNGYYYVTPNSDTAKYSLKAFNEQPFAVVKEQVINGQTWYYGKLSNGKLAWIKSTDLAKELIKYNQTGMTLNQVAQIQAGLQYKPQVQRVPGKWTDANFNDVKHAMDTKRLAQDPALKYQFLRLDQPQNISIDKINQFLKGKGVLENQGAAFNKAAQMYGINEVYLISHALLETGNGTSQLAKGADVVNNKVVTNSNTKYHNVFGIAAYDNDPLREGIKYAKQAGWDTVSKAIVGGAKFIGNSYVKAGQNTLYKMRWNPAHPGTHQYATDVDWANINAKIIKGYYDKIGEVGKYFDIPQYK(配列番号71)。
【0057】
さらなる実施形態では、GmdのR3ドメインは、S.aureus Gmd(配列番号71)のアミノ酸残基8~144に対応する、次のアミノ酸配列を有する:
QTTQTVSKIAQVKPNNTGIRASVYEKTAKNGAKYADRTFYVTKERAHGNETYVLLNNTSHNIPLGWFNVKDLNVQNLGKEVKTTQKYTVNKSNNGLSMVPWGTKNQVILTGNNIAQGTFNATKQVSVGKDVYLYGTI(配列番号72)。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるGmd結合抗体は、S.aureus Gmd(配列番号71)のR3ドメインに、10-8Mまたは10-9Mを超える親和性、好ましくは10-10Mを超える親和性で結合する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに、10-8Mまたは10-9Mを超える親和性、好ましくは10-10Mを超える親和性で結合する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号72のアミノ酸60~92からなるポリペプチドに、10-8Mまたは10-9Mを超える親和性、好ましくは10-10Mを超える親和性で結合する。
【0058】
「競合する(compete)」または「競合する(competes)」という用語は、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)の文脈で使用される場合、試験下のGmd結合抗体またはGmd結合抗体断片が、共通抗原(例えば、Gmd、またはR3ドメイン(配列番号72)などのその断片)に対する参照Gmd結合タンパク質(例えば、リガンド、または参照抗体)の特異的結合を防止または阻害するアッセイにおいて決定される、Gmd結合タンパク質同士の間の競合を意味する。2つのタンパク質が共通抗原への結合を競合するかどうかを判定するには、例えば、直接的または間接的な固相ラジオイムノアッセイ(RIA)(例えば、Moldenhauer et al.,Scand. J.Immunol.32:77-82(1990)及びMorel et al.,Molec. Immunol.25:7-15(1988)を参照のこと)、直接的または間接的な固相酵素イムノアッセイ(EIA)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung,et al.,Virology 176:546-552(1990)及びKirkland et al.,J.Immunol.137:3614-3619(1986)を参照のこと)、及びサンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al.,Methods in Enzymology 92:242-253(1983)を参照のこと)など、多数の種類の競合結合アッセイを使用することができる。典型的に、そのようなアッセイには、これらの標識されていない被験抗原結合タンパク質及び標識された参照抗原結合タンパク質のいずれかを担持する固体表面または細胞に結合した精製抗原の使用が関わる。
【0059】
競合阻害は、被験抗原結合タンパク質の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を判定することによって測定することができる。通常、被験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイによって識別される抗原結合タンパク質(競合する抗原結合タンパク質)には、参照Gmd結合抗体と同じエピトープに結合するGmd結合抗体のほか、立体障害が発生するように参照Gmd結合抗体が結合するエピトープに十分近接する隣接エピトープに結合するGmd結合抗体も含まれる。通常、競合するGmd結合抗体は、過剰に存在するとき、Gmdへの参照Gmd結合抗体の特異的結合を少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%阻害する。場合によっては、競合するGmd結合抗体は、参照Gmd結合抗体の特異的結合を少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%阻害する。
【0060】
Gmdタンパク質の文脈で使用される場合の「エピトープ」という用語は、本開示のGmd結合抗体に結合することができるGmd(例えば、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片または配列番号72のアミノ酸残基59~91のアミノ酸配列を有するGmd)のタンパク質決定基を指す。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。立体構造エピトープと非立体構造エピトープとは、変性溶媒の存在下で前者への結合が失われるが、後者への結合は失われないことで区別される。Gmd結合抗体が結合するGmdエピトープは、当技術分野で公知の技法を使用して容易に判定することができる。
【0061】
本明細書で開示される抗Gmd結合抗体は、Gmdのエピトープ(複数可)または部分(複数可)、例えば、それらが認識するまたは特異的に結合する標的ポリペプチドの観点から説明または特定することができる。例えば、本明細書で開示されるGmd結合抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用するGmdの部分は「エピトープ」である。エピトープは、隣接アミノ酸、またはタンパク質の第3次折り畳みによって並列した非隣接アミノ酸の両方から形成され得る。隣接アミノ酸から形成されたエピトープは、通常、変性溶媒への曝露時に保持されるが、第3次折り畳みによって形成されたエピトープは、通常、変性溶媒による処理で失われる。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面基を含み得、特定の三次元構造特性及び/または特定の電荷特性を有し得る。エピトープは、典型的には、固有の空間立体構造内に、少なくとも3、4、5、6、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35のアミノ酸を含む。エピトープは、当技術分野で公知の方法を使用して慣例的に判定することができる。
【0062】
「阻害する」、「遮断する」、「低減させる」、「減少させる」、「抑制する」、「アンタゴナイズする」、及び「中和する」という用語は、交換可能に使用され、活性(例えば、Gmdを発現する微生物(例えば、S.aureus)のin vitroもしくはin vivoの増殖もしくは他の活性、またはGmdへのGmd結合抗体の結合)における、あらゆる統計的に有意な減少を指し、活性の完全な遮断を含む。例えば、「阻害」、「抑制」、または「アンタゴナイズ」は、対照と比較した活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の減少を指し得る。
【0063】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、全(完全長)抗体及びその抗原結合断片または単鎖を含む。典型的な抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCHI、CH2、及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができ、CDRは、フレームワーク領域(FW)と称されるより保存された領域と共に散在する。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと次の順序:FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4で配列された3つのCDR及び4つのFWから構成されている。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、様々な免疫系細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。例示的な抗体としては、典型的な抗体、scFv、及びそれらの組み合わせであって、例えば、scFvが、典型的な抗体の重鎖及び/または軽鎖のいずれかのN末端もしくはC末端に共有結合した(例えば、ペプチド結合を介して、または化学的リンカーを介して)、あるいは典型的な抗体の重鎖及び/または軽鎖に挿入されたものが挙げられる。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、カルボキシ末端リジン残基を有しない。
【0064】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、抗体が所望の結合活性を呈する限り、無傷ポリクローナル抗体、無傷モノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片など)、単鎖Fv(scFv)誘導体及び変異体、二重特異性抗体などの多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、ならびに抗原認識部位を含む任意の他の修飾された免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる重鎖定常ドメインの同一性に基づいて、5つの主要な免疫グロブリンクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、またはそれらのサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl及びIgA2)のいずれかであり得る。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる周知のサブユニット構造及び三次元構成を有する。抗体は、裸でもよく、他の分子、例えば毒素、放射性同位体などにコンジュゲートされていてもよい。「IgG」という用語は、認識されている免疫グロブリンガンマ遺伝子によって実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを指す。ヒトの場合、このクラスはIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む。マウスの場合、このクラスはIgG1、IgG2a、IgG2b、及びIgG3を含む。
【0065】
「Gmd結合抗体」、「抗Gmd抗体」または「Gmdに結合する抗体」という用語は、Gmd結合抗体が、それぞれ、治療剤または診断試薬として、Gmdを標的とすることにおいて有用であるように、Gmdと十分な親和性で結合可能である抗体を指す。
【0066】
Gmdタンパク質の文脈で使用される場合の「特異的に結合する」とは、概して、Gmd結合抗体が無関係の対照タンパク質に結合する親和性よりも高い親和性で、Gmd(例えば、好ましくは配列番号72のアミノ酸配列を有するS.aureus Gmd)に結合する、抗体などの結合タンパク質の能力を意味する。いくつかの実施形態では、対照タンパク質は、ニワトリ卵白リゾチームである。好ましくは、Gmd結合抗体は、対照タンパク質への親和性よりも少なくとも100倍、500倍、または1000倍高い親和性でGmdと結合する。好ましくは、Gmd結合抗体は、配列番号72のアミノ酸配列を有するGmdに対して、当技術分野で公知の結合アッセイを使用して測定した場合に≦1×10-7Mまたは≦1×10-8の結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、結合親和性は、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはBIACORE(登録商標)を使用して(例えば、分析物としてのGmd及びリガンドとしてのGmd結合抗体、またはその逆を使用して)測定される。
【0067】
いくつかの実施形態では、無関係の非Gmdタンパク質(例えば、アルブミン)へのGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、BIACORE(登録商標)(分析物としての組換えGmd及びリガンドとしてのGmd結合抗体、またはその逆を使用して)、動態排除アッセイ(KINEXA(登録商標))、または当技術分野で公知の他の結合アッセイによって測定した場合に、GmdへのGmd結合抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦10pM、≦1pM、または≦0.1pM(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)の解離定数(K)を有する完全長抗体またはGmd結合抗体断片である。
【0068】
「Gmd結合抗体断片」という用語は、無傷抗体の抗原結合可変領域(例えば、CDR3)のすべてまたは一部を含む断片を指す。抗体の抗原結合機能は完全長抗体の断片によって果たされ得ることが知られている。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片、線状抗体、単鎖抗体、ならびに1つ以上の抗体断片から形成された多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fv断片、ダイアボディ、または単鎖抗体分子である。
【0069】
「Fc」領域は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を構成するポリペプチドを含む。したがって、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの定常領域免疫グロブリンドメインの最後の2つ、ならびにIgE及びIgMの定常領域免疫グロブリンドメインの最後の3つ、ならびにこれらのドメインのN末端側の可動性ヒンジを指す。IgA及びIgMの場合、FcはJ鎖を含み得る。IgGの場合、Fcは、免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3、ならびにCγlとCγ2との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、そのカルボキシル末端に残基C226またはP230を含むと定義され、このナンバリングは、Kabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,NIH,Bethesda,Md.(1991))に記載されているEUインデックスによるものである。Fcは、この領域単独を指す場合もあれば、全抗体、抗体断片、またはFc融合タンパク質との関連でのこの領域を指す場合もある。EUインデックスによってナンバリングされる270位、272位、312位、315位、356位、及び358位を含むがこれらに限定されない複数の異なるFc位置で多型が観察されており、したがって、提示される配列と先行技術の配列との間には僅かな差異が存在し得る。
【0070】
「モノクローナル抗体」は、単一の抗原決定基すなわちエピトープの高度に特異的な認識及び結合に関与する均質な抗体集団を指す。これは、通常は異なる抗原決定基に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体とは対照的である。「モノクローナル抗体」という用語は、無傷かつ完全長のモノクローナル抗体のほか、抗体部分を含む抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv)、単鎖(scFv)変異体、及び融合タンパク質)、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾された免疫グロブリン分子を包含する。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、及びトランスジェニック動物によるものを含むがこれらに限定されない多数の方法で作製され得る。
【0071】
「キメラ抗体」という用語は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。通常、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、所望の抗原結合特異性、親和性、及び/または機能を有する哺乳動物の一種(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)に由来する抗体の可変領域に対応し、その定常領域は、別の種(通常はヒト)に由来する抗体の配列に相同であり、その種での免疫応答の誘発を回避する。
【0072】
「ヒト化抗体」という用語は、より少ない、好ましくは最小限の非ヒト(例えば、マウス)配列を含むようにエンジニアリングされた、非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリンに由来する抗体を指す。通常、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリンであって、そのCDR由来の残基が、所望の抗原結合特異性、親和性、及び/または機能を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、またはハムスター)のCDR由来の残基で置き換えられたものである(Jones,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann,Nature 332:323-327(1988)、Verhoeyen,Science 239:1534-1536(1988))。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FW)残基は、所望の抗原結合特異性、親和性、及び/または機能を有する非ヒト種由来の抗体における対応する残基で置き換えられる。ヒト化抗体を、Fvフレームワーク領域及び/または置き換えられた非ヒト残基内でのさらなる残基の置換によってさらに修飾して、抗体の特異性、親和性、及び/または機能を洗練及び最適化することができる。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域のすべてまたは実質的にすべてを含む、少なくとも1つ、典型的には2つまたは3つの可変ドメインの実質的にすべてを含むが、FR領域のすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域またはドメインの少なくとも一部分(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分を含む場合もある。ヒト化抗体を生成するために使用される方法の例は、米国特許第5,225,539号及び同第5,639,641号に記載されている。
【0073】
「ヒト抗体」という用語は、ヒトが産生する抗体、または当技術分野で公知の任意の技法を使用して作製されるヒトが産生する抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。「ヒト抗体」という用語には、無傷(完全長)抗体、その断片、及び/または、少なくとも1つのヒト重鎖及び/または軽鎖ポリペプチドを含む抗体、例えば、マウス軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。
【0074】
「アンタゴニスト」抗体、「遮断」抗体、または「中和」抗体は、それが結合する抗原(例えば、Gmd)及び/または抗原を発現する生物(例えば、S.aureus)の活性を阻害する、または低減させるものである。ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmdの活性を実質的にまたは完全に阻害する。いくつかの実施形態では、Gmdの活性は、10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、または100%低減する。さらなる実施形態では、アンタゴニストGmd結合抗体は、Gmdの活性を少なくとも10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、またはさらには100%阻害する、または低減させる。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、S.aureusのin vitro増殖を低減させる、または阻害する。いくつかの実施形態では、Gmdの活性は、10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、または100%低減する。さらなる実施形態では、アンタゴニストGmd結合抗体は、Gmdの活性を少なくとも10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、またはさらには100%阻害する、または低減させる。
【0075】
「結合親和性」は、概して、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位と、その結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。別段の記載がない限り、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば、抗体及び抗原)の間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(K)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができ、本開示の目的のために使用することができる。
【0076】
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」または「ADCC」は、ある特定の細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)に分泌型Igが結合することにより、これらの細胞毒性エフェクター細胞がGmd発現/保有標的細胞に特異的に結合し、その後に細胞毒により標的細胞を殺傷することを可能にする、細胞毒性の形態を指す。標的細胞の表面に対する特定の高親和性IgG抗体は、細胞毒性細胞を「武装」し、かかる殺傷に絶対的に必要である。標的細胞の溶解は細胞外で起こり、直接的な細胞間接触を必要とし、補体は関与しない。抗体に加えて、表面にGmdを発現する標的細胞に特異的に結合する能力を有する、Fc領域を含む他のタンパク質、特にFc融合タンパク質は、細胞媒介性細胞毒性をもたらすことができると想定される。便宜上、Fc融合タンパク質の活性から生じる細胞媒介性細胞毒性も、本明細書ではADCC活性という。
【0077】
「単離された」Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、天然には見られない形態のタンパク質(例えば、抗体)、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物である。単離されたタンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物には、もはやそれらが天然に見られる形態ではない程度まで精製されたものが含まれる。いくつかの実施形態では、単離されたタンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、実質的に純粋である。単離されたタンパク質及び単離された核酸は、それらの天然環境、またはその調製がin vitroもしくはin vivoで行われる組換えDNA技術によるものである場合にはそれらが調製される環境(例えば、細胞培養)において、それらと共に見られる他のポリペプチドまたは核酸など、それらが天然に関連している物質を含まないか、または実質的に含まない。タンパク質及び核酸は、希釈剤またはアジュバントと共に製剤されても実用目的では単離され得る。例えば、タンパク質は、イムノアッセイで使用されるマイクロタイタープレートをコーティングするために使用される場合、通常はゼラチンもしくは他の担体と混合され、または、診断もしくは療法で使用される場合、薬学的に許容される担体もしくは希釈剤と混合される。
【0078】
「対象」、「個体」、「動物」、「患者」、及び「哺乳動物」という用語は、診断、予後予測、または療法が所望される任意の対象、特に哺乳動物対象を指す。哺乳動物対象は、特定の処置のレシピエントとなる、ヒト、非ヒト霊長類、飼育動物、家畜、げっ歯類などを含むが、これらに限定されない。「それを必要とする対象」という用語は、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症またはそれに関連する病態を有するまたは有するリスクのある任意の対象(好ましくはヒト)を指す。
【0079】
細菌増殖または細菌コロニー形成に関する「制御する」または「低減させる」という用語は、細菌増殖またはコロニー形成のあらゆる測定可能な低減または阻害を指し、規定の目的との関連で経験的に、かつ慣例的な様式で判定することができる。
【0080】
本明細書で開示されるGmd結合抗体などのポリペプチドの「有効量」は、規定の目的を遂行するために十分な量である。「有効量」は、規定の目的との関連で経験的に、かつ慣例的な様式で判定することができる。本明細書で使用される「有効量」という表現は、概して、細菌汚染または感染症の存在下での合併症のない骨折治癒または組織リモデリングのような1つ以上の臨床的に測定可能なエンドポイントを提供するために、インプラントに適用される抗菌コーティングの量を指す。「治療有効量」という用語は、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)における感染症(例えば、感染症に関連する病態)を「処置」するのに有効であり、感染症または病態を有する対象にいくらかの改善または利益をもたらす、ポリペプチド、例えば、Gmd結合抗体または他の薬物の量を指す。したがって、「治療有効」量は、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症に関連する少なくとも1つの臨床症状または病態のいくらかの軽減、緩和、及び/または減少をもたらす量である。開示されるGmd結合抗体、該抗体を含む医薬組成物、及び方法を使用して処置され得る感染症及び病態に関連する臨床症状は、よく知られている。さらに、いくらかの利益が対象に提供される限り、治療効果は完全または治癒的である必要はない。いくつかの実施形態では、「治療有効」という用語は、それを必要とする対象におけるGmd活性を低減させることができる治療剤の量を指す。投与される実際の量、ならびに投与の速度及びタイムコースは、処置される適応症の性質及び重篤度に依存する。処置の処方、例えば、投薬量などに関する決定は、一般医及び他の医師の責任の範疇にある。抗体及びその抗原結合断片の適切な用量については広く知られている。Ledermann et al.,Int.J.Cancer 47:659-664(1991)、Bagshawe et al.,Ant. Immun.and Radiopharm.4:915-922(1991)を参照のこと。
【0081】
「Staphylococcus」、「Staphylococcus株」、及び「Staphylococcus菌種」という用語は、別段の記載がない限り、本明細書では同義に使用される。いくつかの実施形態では、Staphylococcusは、ヒトまたは動物にとって病原性である、または病原性であり得る株である。Staphylococcusは、コアグラーゼ陽性またはコアグラーゼ陰性のいずれでもよい。例示的なStaphylococcus株は、限定されるものではないが、S.aureus、S.epidermidis、S.lugdunensis、S.saprophyticus、S.haemolyticus、S.caprae、及びS.simiaeを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるGmd結合抗体は、Staphylococcusの抗生物質耐性株に対して有効である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusに対して有効である。いくつかの実施形態では、S.aureusはメチシリン感受性(MSSA)である。追加の実施形態では、S.aureusは、抗菌剤に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、S.aureusは、1つ以上のβ-ラクタム抗菌剤に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、S.aureusはメチシリン耐性(MRSA)である。いくつかの実施形態では、抗体は、メチシリン耐性株に対して有効である。いくつかの実施形態では、抗体は、バンコマイシン耐性株に対して有効である。本明細書で提供されるアッセイによって使用され得る例示的なStaphylococcus株は、S.aureus亜種Aureus Rosenbach(ATCC(登録商標)29213(商標);MSSA)、S.aureus USA 100(NSR382)MRSA、S.aureus USA 200(NSR383)MRSA、S.aureus USA 300(NSR384)MRSA、S.aureus Newman株(NCTC 10833)MSSA、及びS.aureus Smith株(NCTC 10399)MSSAを含むが、これらに限定されない。
【0082】
「医薬組成物」という用語は、活性成分の生物学的活性を有効にするような形態にあり、かつ組成物が投与される対象にとって許容できないほど有毒である濃度で追加の成分を含まない調製物を指す。そのような組成物は無菌であり得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「医療デバイス」という用語は、患者の体内に外科的または内科的に完全または部分的に導入され、手技後に体内に留まる場合もあれば、処置中に取り除かれる場合もある、あらゆる種類のデバイス/機器を指す。いくつかの実施形態では、医療デバイスは、脊椎、外傷、または歯科用途のために使用される。いくつかの実施形態では、医療デバイスはインプラントである。
【0084】
「インプラント」は、生きている組織ではない、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)の体内に配置されることが意図されるあらゆる医療デバイス(物体)である。インプラントは、整形外科用途、歯科用途、耳鼻咽喉科(「ENT」)用途、脳神経外科用途、及び心血管用途などに使用される。インプラントは、ヒトの体内に通常見られない金属、セラミックス、ポリマー、ゲル、及び流体を含む種々の生体適合性材料で作製され得る。医療デバイス/インプラントの製作に有用なポリマーの例としては、シリコーン、ゴム、ラテックス、プラスチック、サーモプラスチック、ポリ酸無水物、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフタレート、ポリファゼン、及びフルオロプラスチックなどのポリマーが挙げられる。医療デバイスは、ある特定の天然に発生する物質、または処理された天然に発生する物質を使用して製作される場合もある。インプラントは、構成要素の特定の特徴のために選択される組み合わせの、人工材料の任意の組み合わせを含み得る。例えば、股関節インプラントは、重みを支えるための金属シャフト、セラミック人工関節、及び構造体を周囲の骨に付着させるためのポリマー接着剤の組み合わせを含み得る。インプラントは、完全に体内に存在してもよく、部分的に体内かつ部分的に体外に存在してもよい。インプラントは、それらが位置付けられる場所での短期滞留を目的とする場合もあれば、長期滞留を目的とする場合もある。
【0085】
いくつかの実施形態では、インプラントは、整形外科用インプラントである。「整形外科用インプラント」は、骨を置換するインプラント、もしくは骨への固定を行うインプラント、関節の連結面を置換するインプラント、人工装具の支台部を提供するインプラント、またはそれらの組み合わせである。
【0086】
いくつかの実施形態では、インプラントは、歯科用インプラントである。追加の実施形態では、インプラントは、ENTインプラントである。ENTインプラントは、耳、鼻、及び/または咽喉の構造及び/または機能を回復するインプラントである。他の実施形態では、インプラントは、美容インプラントである。美容インプラントは、組織支持を行うインプラント、例えば皮膚充填剤、または構造支持を行うインプラント、例えば頭蓋顎顔面再建手術用の頤である。
【0087】
本明細書で使用される場合、医療デバイスを「導入すること」は、デバイスまたは移植片を初めて導入もしくは設置することのほか、以前に設置されたデバイスもしくは移植片をリサーフェシングする、もしくは別様に改変すること、以前に設置されたデバイスもしくは移植片の全体もしくは一部を交換すること、または以前に設置されたデバイスもしくは移植片を別様に外科的に改変することと定義される。
【0088】
感染症または感染症に関連する病態を有するまたは有するリスクのある対象(患者)において特定の結果を達成する「十分な量」またはその「ために十分な量」は、所望の効果をもたらすのに有効である治療剤(例えば、Gmd結合抗体)の量を指し、所望の効果は、場合により治療効果である(すなわち、治療有効量の投与による)。いくつかの実施形態では、そのような特定の結果は、それを必要とする対象におけるGmd活性の低減である。
【0089】
「標識」という用語は、「標識された」部分を生成するように、Gmd結合抗体などの部分に直接的または間接的にコンジュゲートされる、検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)であってもよいし、または酵素標識の場合、検出可能である基質化合物もしくは組成物の化学改変を触媒してもよい。
【0090】
「処置すること」、もしくは「処置」、「処置する」、または「寛解させること」及び「寛解させる」などの用語は、(a)診断された病状または障害の症状を治癒する、緩徐化する、軽減する、及び/またはその進行を停止させる治療措置、ならびに(b)標的とされる感染症または病態を防止する及び/またはその発達を緩徐化する予防措置または防止措置の両方を指す。したがって、処置を必要とする対象には、感染症または病態を既に有するもの、感染症または病態を有するリスクのあるもの、及び感染症または病態が防止されるべきであるものが含まれる。ある特定の実施形態では、対象が、例えば、感染症または病態に関連する症状の完全な、部分的な、または一過性の寛解または消失を示す場合、その対象は、本明細書で提供される方法に従って首尾よく「処置される」。Gmd結合抗体で処置され得る病態は、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、処置は、処置前の微生物細胞もしくは生物の数に比した、微生物細胞もしくは生物(例えば、対象内)の数の減少;処置前の微生物細胞もしくは生物(例えば、対象内)の生存率(例えば、平均(average/mean)生存率)に比した、微生物細胞もしくは生物(例えば、対象内)の生存率(例えば、平均(average/mean)生存率)の減少;または、処置前の対象の症状に比した、対象における1つ以上の病態に関連する1つ以上の症状の低減を促進するか、またはもたらす。いくつかの実施形態では、本開示は、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、この方法は、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症に関連する病態を処置する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」または「併用療法」は、追加の療法(例えば、第2、第3、第4など)が体内で依然として有効であるような任意の投与形態を指す(例えば、複数の化合物が対象において同時に有効であるようなものであり、これらの化合物の相乗効果を含み得る)。有効性は、血液、血清、または血漿中の薬剤の測定可能な濃度と相関しない場合がある。例えば、異なる治療用化合物は、同じ製剤中または別個の製剤中で、同時または順次のいずれかで、また異なるスケジュールで投与されてもよい。したがって、そのような処置を受ける対象は、異なる療法の複合効果の利益を得ることができる。本明細書で提供される1つ以上のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、1つ以上の他の追加の薬剤及び/または支持療法と同時に、その前に、またはその後に投与されてもよい。概して、各治療剤は、その特定の薬剤について決定された用量及び/またはタイムスケジュールで投与される。レジメンで用いるべき特定の組み合わせは、Gmd結合抗体と療法との適合性及び/または所望の結果を考慮に入れたものである。
【0092】
本開示の方法及び技法は、別段の記載がない限り、公知の従来法に従って、また本開示の全体を通して引用及び記述されている様々な一般的参考文献及びより具体的な参考文献に記載されるように、一般的に行われる。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:a Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、及びHarlow and Lane Antibodies:a Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照されたい。これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、交換可能に使用され、単数の核酸及び複数の核酸を包含することを意図しており、単離された核酸分子(複数可)または構築物(複数可)、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補的DNA(cDNA)、あるいはGmd結合抗体の重鎖及び/または軽鎖をコードするプラスミドDNA(pDNA)を指す。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合または非従来的結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるようなアミド結合)を含む。「核酸」という用語は、ポリヌクレオチドに存在する、任意の1つ以上の核酸セグメント、例えば、DNA、cDNA、またはRNA断片を指す。核酸またはポリヌクレオチドに適用される場合、「単離された」という用語は、その天然の環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを指し、例えば、ベクターに含まれるGmd結合抗体をコードする組換えポリヌクレオチドは、本開示においては単離されているとみなされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例としては、異種宿主細胞内に維持された、または溶液中の他のポリヌクレオチドから(部分的または実質的に)精製された、組換えポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたRNA分子には、本開示のポリヌクレオチドのin vivoまたはin vivo RNA転写物が含まれる。本開示による単離されたポリヌクレオチドまたは核酸は、合成的に産生されたかかる分子をさらに含む。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、または転写終結シグナルなどの調節エレメントを含み得る。
【0094】
「ベクター」という用語は、1つ以上の遺伝子(複数可)、コード配列(複数可)、または他の目的の配列(複数可)を送達することができ、いくつかの実施形態では、それらを宿主細胞において発現することができる構築物を意味する。ベクターの例は、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤と結合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、及びプロデューサー細胞などのある特定の真核細胞を含むが、これらに限定されない。
【0095】
「宿主細胞」という用語は、組換え核酸を保有するまたは保有可能な細胞または細胞集団を指す。宿主細胞は、原核細胞(例えば、E.coli)でも、真核細胞でもよい。宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、またはSchizosaccharomyces pombeなどの酵母を含む真菌細胞であり得る。宿主細胞はまた、昆虫細胞(例えば、Sf-9)または哺乳動物細胞(例えば、HEK293F、CHO、COS-7、NIH-3T3、NS0、PER.C6(登録商標)、及びハイブリドーマ)など、様々な動物細胞のいずれでもよい。さらなる実施形態では、宿主細胞は、CHO-K、CHO-0 CHO-Lec10、CHO-Lec13、CHO-Lec1、CHO Pro-5、及びCHO dhfrからなる群から選択されるCHO細胞である。特定の実施形態では、宿主細胞は、ハイブリドーマである。
【0096】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために交換可能に使用される。このポリマーは、直鎖状でも分岐状でもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語は、自然に、あるいは、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲーションのような任意の他の操作もしくは修飾などの介入によって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。この定義には、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の1つ以上の類似体を含むポリペプチド、及び当技術分野で公知の他の修飾も含まれる。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmd結合抗体断片に基づいているため、単鎖または結合鎖として存在し得ることが理解される。
【0097】
「組換え」ポリペプチド、タンパク質、または抗体は、組換えDNA技術を介して産生されたポリペプチド、タンパク質、または抗体を指す。宿主細胞で発現させた、組換えによって産生されたポリペプチド、タンパク質、及び抗体は、任意の好適な技法によって分離、分画、または部分的もしくは実質的に精製された天然ポリペプチドまたは組換えポリペプチドと同様に、本開示においては単離されたものとみなされる。
【0098】
本開示には、ポリペプチドの断片、バリアント、または誘導体、及びそれらの任意の組み合わせも含まれる。ポリペプチド及びタンパク質に言及する場合の「断片」という用語には、参照ポリペプチドまたはタンパク質の特性の少なくとも一部を保持する任意のポリペプチドまたはタンパク質が含まれる。ポリペプチドの断片としては、タンパク質分解断片、及び欠失断片が挙げられる。
【0099】
「バリアント」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親抗体または参照ポリペプチド配列から異なる抗体またはポリペプチド配列を指す。抗体またはポリペプチドのバリアントには、断片、及びアミノ酸置換、欠失、または挿入に起因して改変されたアミノ酸配列を有する抗体またはポリペプチドも含まれる。バリアントは、天然に発生する場合もあれば、天然に発生しない場合もある。天然に発生しないバリアントは、当技術分野において公知の変異誘発技法を使用して産生することができる。バリアントポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸置換、欠失または付加を含んでもよい。
【0100】
抗体またはポリペプチドに適用される「誘導体」という用語は、天然の抗体またはポリペプチドには見られない追加の特徴を呈するように改変されている抗体または参照親ポリペプチドを指す。「誘導体」抗体の一例は、第2のポリペプチドまたは別の分子(例えば、PEGなどのポリマー、発色団、もしくはフルオロフォア)もしくは原子(例えば、放射性同位体)との融合物またはコンジュゲートである。
【0101】
「アミノ酸置換」という用語は、親配列に存在するアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置き換えることを指す。アミノ酸は、親配列において、例えば、化学的ペプチド合成を介して、または公知の組換え方法によって置換され得る。したがって、「X位での置換」または「X位での置換」への言及は、X位に存在するアミノ酸残基の、代替のアミノ酸残基による置換を指す。いくつかの実施形態では、置換パターンは、スキーマAXYに従って記述されることがあり、ここで、Aは、X位に天然に存在するアミノ酸残基に対応する一文字コードであり、Yは、置換するアミノ酸残基である。他の実施形態では、置換パターンは、スキーマXYに従って記述されることがあり、ここで、Yは、X位に天然に存在するアミノ酸残基を置換するアミノ酸残基に対応する一文字コードである。
【0102】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、塩基性側鎖を有するもの(例えば、Lys、Arg、及びHis)、酸性側鎖を有するもの(例えば、Asp及びGlu)、無電荷極性側鎖を有するもの(例えば、Gly、Asp、Gln、Ser、Thr、Tyr、及びCys)、非極性側鎖を有するもの(例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、及びTrp)、ベータ分岐側鎖を有するもの(例えば、Thr、Val、及びIle)、及び芳香族側鎖を有するもの(例えば、Tyr、Phe、Trp、及びHis)を含め、以前に定義されている。したがって、ポリペプチド中のアミノ酸残基が、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換されている場合、その置換は保存的であるとみなされる。別の実施形態では、アミノ酸残基のストリングが、側鎖ファミリーメンバーの順序及び/または組成において異なる構造的に類似のストリングで保存的に置換され得る。
【0103】
非保存的置換としては、(a)電気陽性側鎖を有する残基(例えば、Arg、His、もしくはLys)が、電気陰性残基(例えば、GluもしくはAsp)を置換する、もしくはそれによって置換されるもの、(b)親水性残基(例えば、SerもしくはThr)が、疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、Phe、もしくはVal)を置換する、もしくはそれによって置換されるもの、(c)CysもしくはProが、任意の他の残基を置換する、もしくはそれによって置換されるもの、または(d)嵩高な疎水性もしくは芳香族側鎖を有する残基(例えば、Val、His、Ile、もしくはTrp)が、より小さな側鎖を有する残基(例えば、AlaもしくはSer)もしくは側鎖を有しない残基(例えば、Gly)を置換する、もしくはそれによって置換されるものが挙げられる。
【0104】
他の置換は容易に識別され得る。例えば、アミノ酸アラニンの場合、置換は、D-Ala、Gly、ベータ-Ala、L-Cys、及びD-Cysのうちのいずれか1つであり得る。リジンの場合、置換は、D-Lys、Arg、D-Arg、ホモ-Arg、Met、D-Met、オルニチン、またはD-オルニチンのうちのいずれか1つであり得る。概して、Gmd結合抗体の特性における変化を誘導すると予想され得る機能的に重要な領域における置換は、(a)極性残基(例えば、SerもしくはThr)が、疎水性残基(例えば、Leu、Ile、Phe、もしくはAla)を置換する(もしくはそれによって置換される)もの、(b)Cys残基が、任意の他の残基を置換する(もしくはそれによって置換される)もの、(c)電気陽性側鎖を有する残基(例えば、Lys、Arg、もしくはHis)が、電気陰性側鎖を有する残基(例えば、GluもしくはAsp)を置換する(もしくはそれによって置換される)もの、または(d)嵩高な側鎖を有する残基(例えば、Phe)が、そのような側鎖を有しない残基(例えば、Gly)を置換する(もしくはそれによって置換される)ものである。前述の非保存的置換のうちの1つがGmd結合抗体の機能的特性を改変し得る可能性は、タンパク質の機能的に重要な領域を基準とした置換の位置とも相関する。したがって、いくつかの非保存的置換は、生物学的特性にほとんどまたはまったく影響を与えない可能性がある。
【0105】
「アミノ酸挿入」という用語は、親配列に存在する2つのアミノ酸残基の間に追加のアミノ酸残基を導入することを指す。アミノ酸残基は、例えば、化学的ペプチド合成を介して、または当技術分野で公知の組換え方法によって、親配列に挿入され得る。したがって、「X位とY位との間の挿入」または「Kabat位置XとYとの間の挿入」という表現(ここで、X及びYは、アミノ酸残基位置に対応する)(例えば、239位と240位との間のシステインアミノ酸残基挿入)は、X位とY位との間のアミノ酸残基の挿入を指し、核酸配列における、X位及びY位のアミノ酸残基をコードするコドン間の、アミノ酸残基をコードするコドンの挿入も指す。
【0106】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の間の「パーセント配列同一性」または「パーセント同一性」という用語は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入されなければならない付加または欠失(すなわち、ギャップ)を考慮に入れた、比較ウィンドウにわたって該配列が共有する同一のマッチする位置の数を指す。マッチする位置とは、標的配列と参照配列との両方で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が生じるあらゆる位置である。ギャップはヌクレオチドでもアミノ酸でもないため、標的配列で生じるギャップはカウントされない。同様に、参照配列からのヌクレオチドまたはアミノ酸ではなく、標的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸がカウントされるため、参照配列で生じるギャップはカウントされない。配列同一性のパーセンテージは、両方の配列において同一のアミノ酸残基または核酸塩基が生じる位置の数を決定して、マッチする位置の数を求め、マッチする位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除し、結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを求めることによって計算される。配列の比較及び2つの配列間のパーセント配列同一性の決定は、容易に入手可能なソフトウェアプログラムを使用して達成され得る。好適なソフトウェアプログラムは、様々な供給源から、また、タンパク質及びヌクレオチド配列の両方のアラインメントのために入手可能である。パーセント配列同一性を決定するための好適なプログラムの1つはbl2seqであり、これは、米国政府の国立生物工学情報センターのBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTプログラムスイートの一部である。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して2つの配列間の比較を行う。BLASTNは核酸配列を比較するために使用され、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。他の好適なプログラムは、例えば、Needle、Stretcher、Water、またはMatcherであり、これらは、バイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSスイートの一部であり、また、欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)からwww.ebi.ac.uk/Tools/psaで入手可能である。
【0107】
CDRまたはCDRセットを担持する構造は、概して、該CDRまたはCDRセットが、再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされる天然に発生するVH及びVL抗体可変ドメインのCDRまたはCDRセットに対応する位置に位置付けられる、抗体の重鎖もしくは軽鎖の配列またはその大部分の構造である。免疫グロブリン可変ドメイン及びそれらのCDRの構造及び位置は、当業者がプログラムを使用することにより容易に決定することができ、Chothia、Chothia+、及びKabatなどの公知の可変ドメイン残基ナンバリングシステムは、全体が参照により本明細書に組み込まれるKabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest.4th Edition.U.S.DHHS.1987、及びインターネット上(例えば、bioinf.org.uk/abysis/sequence_input/key_annotation/key_annotation html;及びimmuno.bme. nwu.edu)で入手可能なツール)を参照することにより、慣例的に決定することができる。
【0108】
CDRは、フィブロネクチン、シトクロムB、アルブミン(例えば、ALBUdAb(Domantis/GSK)及びALB-Kunitz(Dyax))、3または6アミノ酸の非構造化リピート配列(例えば、PASylation(登録商標)技術及びXTEN(登録商標)技術)、及びエラスチン様リピートドメインを含む配列(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国出願第61/442,106号を参照のこと)など、他の足場によって担持されてもよい。
【0109】
実質的に本明細書に記載されるようなCDRアミノ酸配列は、ヒト可変ドメインまたはその大部分においてCDRとして担持され得る。実質的に本明細書に記載されるようなHCDR3配列は、本開示の諸実施形態を表し、これらの各々が、ヒト重鎖可変ドメインまたはその大部分においてHCDR3として担持され得る。
【0110】
本開示で用いられる可変ドメインは、任意の生殖系列もしくは再編成されたヒト可変ドメインから得ることができ、または既知のヒト可変ドメインのコンセンサス配列に基づく合成可変ドメインであってもよい。組換えDNA技術を使用して、CDR(例えば、CDR3)を欠いている可変ドメインのレパートリーに、CDR配列(例えば、CDR3)を導入することができる。例えば、Marks et al.,(Bio/Technology 10:779-783(1992)、これは全体が参照により本明細書に組み込まれている)は、抗体可変ドメインのレパートリーを生成する方法を提供しており、この方法では、可変ドメインエリアの5’末端に向けられた、またはそれに隣接したコンセンサスプライマーを、ヒトVH遺伝子の第3のフレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーと併せて使用して、CDR3を欠いているVH可変ドメインのレパートリーをもたらす。Marks et al.は、さらに、このレパートリーがどのようにして特定の抗体のCDR3と組み合わされ得るかについて説明している。類似の技法を使用して、本開示のCDR3由来配列を、CDR3を欠いているVHまたはVLドメインのレパートリーとシャッフルし、シャッフルされた完全なVHまたはVLドメインを同族のVHまたはVLドメインと組み合わせて、Gmd結合抗体をもたらすことができる。次いで、このレパートリーを、国際出願公開第WO92/01047号、またはKay et al.,((1996)Phage Display of Peptides and Proteins:a Laboratory manual,San Diego:academic Press)を含む後続の多くの文献のいずれかによるファージディスプレイ系のような好適な宿主系において提示して、好適なGmd結合抗体が選択され得るようにすることができる。レパートリーは、10個以上の個々のメンバー、例えば10~10、または1010個のメンバーからなることができる。他の好適な宿主系は、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、T7ディスプレイ、及びリボソームディスプレイを含むが、これらに限定されない。リボソームディスプレイの概説については、Lowe et al.,Curr.Pharm.Biotech.517-527(2004)及び国際出願公開第WO92/01047号を参照されたい。これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。また、類似のシャフリングまたはコンビナトリアル技法がStemmer(Nature 370:389-391 (1994))、これは全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって開示されており、これはβ-ラクタマーゼ遺伝子に関する技法を説明するものだが、この手法が抗体を生成するために使用され得ると述べている。
【0111】
Gmd結合抗体は、Gmdへの参照分子の結合をある程度遮断する程度までGmdに結合すれば、Gmdへの結合を参照分子と「競合する」と言われる。Gmd結合抗体がGmdへの結合を競合し、したがってGmdへの互いの結合に干渉できるかどうか、結合を遮断できるかどうか、または結合を「交差遮断」できるかどうかは、例えば、競合ELISAアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR;BIACORE(登録商標)、Biosensor,Piscataway,N.J.)を含む、当技術分野で知られる任意の標準的な競合結合アッセイによって、またはScatchard et al.(Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660-672(1949))に記載の方法もしくは当技術分野で知られる他の方法に従って判定することができる。Gmd結合抗体は、Gmdへの参照分子の結合を、例えば少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%競合的に阻害すると言われる場合がある。いくつかの実施形態によれば、Gmd結合抗体は、Gmdへの参照分子の結合を少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%競合的に阻害する。他の実施形態によれば、Gmd結合抗体は、Gmdへの参照分子の結合を少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%競合的に阻害する。
【0112】
Gmd結合抗体
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、Gmdではない対照タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)に対するGmd結合抗体の親和性よりも少なくとも100、500、または1000倍高い親和性で、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合する。ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体はGmdと結合し、<1μΜ、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<10pM、<1pM、または<0.1pM(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)の解離定数(K)を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号72の配列を有するGmdに対して、≦1μMかつ≧0.1pM、≦100μMかつ≧0.1pM、または≦100μMかつ≧1pM(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)の範囲内のKを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号71の配列を有するGmdに対して、≦1μMかつ≧0.1pM、≦100μMかつ≧0.1pM、または≦100μMかつ≧1pM(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)の範囲内のKを有する。
【0113】
Gmdに対するGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)の親和性またはアビディティは、当技術分野で知られる任意の好適な方法、例えば、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、またはラジオイムノアッセイ(RIA)、または動態学(例えば、BIACORE(登録商標)もしくはKINEXA(登録商標)分析)を使用して、実験的に決定することができる。直接結合アッセイ及び競合結合アッセイのフォーマットは容易に用いることができる(例えば、Berzofsky et al.,“Antibody-Antigen Interactions,”In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:new York,N.Y.(1984)、Kuby,Immunology,W.H.Freeman and Company:new York,N.Y.(1992)、及び本明細書に記載される方法を参照されたい)。特定の抗体-抗原相互作用の親和性測定値は、異なる条件下(例えば、塩濃度、pH、温度)で測定された場合、変動し得る。したがって、親和性及び他のGmd結合パラメータ(例えば、KまたはKd、Kon、Koff)の測定は、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)及びGmdの標準液で行われ、測定は、本明細書に記載される、または当技術分野で知られる、標準化された条件及び方法を使用して行われる。
【0114】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)が参照Gmd結合抗体と競合できるか/参照Gmd結合抗体によるGmdタンパク質への結合を遮断できるかを判定するために、BIACORE(登録商標)分析が使用される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体が参照Gmd結合抗体と競合できるか/参照Gmd結合抗体によるGmdタンパク質への結合を遮断できるかは、製造元の推奨に従って操作されるBIACORE(登録商標)計器(例えば、BIACORE(登録商標)3000)を使用して、予め結合させた抗niFc IgGによってGmd-Fc融合タンパク質をCM5 BIACORE(登録商標)チップに捕捉して、Gmd(例えば、配列番号72)でコーティングされた表面を生成することで判定される。典型的には、200~800共鳴単位のGmd-Fc(二量体)が、チップにカップリングされることになる(容易に測定可能だが、使用される試験試薬の濃度で容易に飽和可能なレベルの結合をもたらす量)。
【0115】
別の実施形態では、互いと競合する/互いを遮断する能力について評価される2つのGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及び/またはGmd結合抗体断片)(A*及びB*という)を、結合部位のモル比を1対1として、好適なバッファー中で混合して、被験混合物を作る。結合部位ベースで濃度を計算する場合、Gmd結合抗体の分子量は、そのGmd結合抗体におけるGmd結合部位の数でGmd結合抗体の総分子量を除したものと仮定される。被験混合物中の各Gmd結合抗体(すなわち、A*及びB*)の濃度は、BIACORE(登録商標)チップに捕捉されたGmd-Fc分子における、そのGmd結合抗体に対する結合部位を容易に飽和させるのに十分に高いべきである。混合物中のA*及びB*のGmd結合抗体は同じモル濃度であり(結合ベース)、その濃度は典型的に1.00~1.5マイクロモルとなる(結合部位ベース)。Gmd結合抗体A*単独及びGmd結合抗体B*単独を含む別個の溶液も調製する。これらの溶液中のGmd結合抗体A*及びGmd結合抗体B*は、同じバッファー中にあり、かつ被験混合物中と同じ濃度であるべきである。この被験混合物を、Gmd-FcでコーティングされたBIACORE(登録商標)チップ上に流し、結合の総量を記録する。次いで、チップに結合したGmd-Fcを損傷することなく、結合したGmd結合抗体を除去するような要領で、チップを処理する。これは通常、30mM HC1で60秒間チップを処理することによって行われる。次いで、Gmd結合抗体A*単独の溶液を、Gmd-Fcでコーティングされた表面上に流し、結合の量を記録する。チップに結合したGmd-Fcを損傷することなく、結合した抗体を除去するように、チップを再度処理する。次いで、Gmd結合抗体B*単独の溶液を、Gmd-Fcでコーティングされた表面上に流し、結合の量を記録する。次に、Gmd結合抗体A*及びGmd結合抗体B*の混合物の結合の理論最大値が計算され、これは、単独でGmd表面上に流した場合の各Gmd結合抗体の結合の和である。混合物の結合の実際の記録がこの理論最大値を下回れば、2つのGmd結合抗体は互いと競合している/互いを遮断している。したがって、一般に、遮断Gmd結合抗体とは、上記のBIACORE(登録商標)遮断アッセイにおいて、かつ第2のGmd結合抗体の存在下で、結合の記録値が、組み合わせた2つのGmd結合抗体の結合の理論最大値の80%~0.1%(例えば、80%~4%)、具体的には結合の理論最大値の75%~0.1%(例えば、75%~4%)、より具体的には結合の理論最大値(上記で定義したとおり)の70%~0.1%(例えば、70%~4%)となるように、アッセイ中でGmdに結合するものである。
【0116】
上述のBIACORE(登録商標)アッセイは、2つのGmd結合タンパク質(例えば、完全長抗体)がGmdとの結合について互いと競合するか/互いを遮断するかを判定するために使用される例示的なアッセイである。稀に、抗Fc IgGを介してCM5 BIACORE(登録商標)チップにカップリングされたGmd-Fcに、特定のGmd結合抗体が結合しない場合がある(これは例えば、Gmdにおける適切な結合部位が、FcへのGmdの結合によって遮蔽または破壊された場合に起こり得る)。そのような場合、Gmdのタグ付きバージョン、例えばC末端Hisタグ付きGmdを使用して、遮断を判定することができる。この特定のフォーマットでは、抗His抗体をBIACORE(登録商標)チップにカップリングし、次いで、Hisタグ付きGmdをチップの表面上に流し、抗His抗体によって捕捉させることになる。交差遮断分析は、本質的には上述のように行われるが、ただし、各チップ再生サイクル後に、新しいHisタグ付きGmdが、抗His抗体でコーティングされた表面上に再度負荷されることになる。さらに、このような遮断分析には、様々な他の公知のタグ及びタグ結合タンパク質の組み合わせが使用され得る(例えば、HAタグと抗HA抗体、FLAGタグと抗FLAG抗体、ビオチンタグとストレプトアビジン)。以下に、Gmd結合抗体が、Gmdへの参照Gmd結合抗体の結合を遮断するかどうか、または遮断できるかどうかを判定するためのELISAアッセイについて、大まかに説明する。
【0117】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体)が、参照Gmd結合抗体(例えば、本明細書で開示されるGmd結合抗体)とGmdへの結合を競合できるかを判定するために、ELISAを使用する。このようなアッセイの一般原理は、参照Gmd結合抗体(ELISAプレートのウェル上にコーティングされたもの)を用いることである。過剰量の、遮断能があり得る、第2の被験Gmd結合抗体を、溶解状態(すなわち、ELISAプレートに結合していない状態)で加える。次いで、限られた量のGmd(あるいはGmd-Fc)をウェルに加える。コーティングされた参照Gmd結合抗体と、溶解状態の被験Gmd結合抗体とが、限られた数のGmd(またはGmd-Fc)分子の結合を競合する。プレートを洗浄して、コーティングされた参照Gmd結合抗体が結合していないGmdを除去し、また、溶液相の被験Gmd結合抗体のほか、溶液相の被験Gmd結合抗体とGmdとの間に形成されたあらゆる複合体も除去する。次いで、適切なGmd検出試薬を使用して、結合したGmdの量を測定する。コーティングされた参照Gmd結合抗体とGmdとの結合を遮断できる溶解状態の被験Gmd結合抗体は、コーティングされた参照Gmd結合抗体が結合し得るGmd分子の数を、溶液相の第2の被験Gmd結合抗体の非存在下でコーティングされた参照Gmd結合抗体が結合し得るGmd分子の数に比して減少させることができる。アッセイのバックグラウンドシグナルは、コーティングされた参照Gmd結合抗体、溶液相の被験Gmd結合抗体、Gmdバッファー単独(すなわち、Gmdなし)、及びGmd検出試薬を含むウェルで得られるシグナルと定義される。アッセイの陽性対照シグナルは、コーティングされた参照Gmd結合抗体、溶液相の被験Gmd結合抗体バッファー単独(すなわち、溶液相の被験Gmd結合抗体なし)、Gmd検出試薬を含むウェルで得られるシグナルと定義される。ELISAアッセイは、陽性対照シグナルがバックグラウンドシグナルの少なくとも3倍になるような様式で実行される。方法論的アーティファクトのための対照として、交差遮断アッセイを、先ほど記載したフォーマットで、及び逆のフォーマットで、被験Gmd結合抗体をコーティングされた抗体とし、参照Gmd結合抗体を溶液相抗体として実行してもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の凝集(クラスター化)を促進すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させる、または細胞分裂を阻害すること、(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合すること、及び(g)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号71のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有するが、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を有しない。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、4つ、または5つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体とGmdへの結合を競合する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmd結合抗体断片である。特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有するが、配列番号9のVH配列または配列番号41のVL配列を含まない。
【0119】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、Gmdの酵素活性を阻害するが、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を有しない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号81のアミノ酸配列を含むGmdの酵素活性を阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmdの酵素活性を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%阻害する。他の実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmdの活性を少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号81のアミノ酸配列を含むGmdの酵素活性を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%阻害する。他の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号81のアミノ酸配列を含むGmdの酵素活性を少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusの酵素活性を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体とGmdへの結合を競合する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmd結合抗体断片である。特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有するが、配列番号9のVH配列または配列番号41のVL配列を含まない。
【0120】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、S.aureusのin vitro増殖を阻害するが、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を有しない。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体とGmdへの結合を競合する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmd結合抗体断片である。特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有するが、配列番号9のVH配列または配列番号41のVL配列を含まない。
【0121】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、S.aureusのin vitroの細胞非依存性溶解を阻害するが、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を有しない。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitroの細胞非依存性溶解を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitroの細胞非依存性溶解を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivoの細胞非依存性溶解を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体とGmdへの結合を競合する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmd結合抗体断片である。特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有するが、配列番号9のVH配列または配列番号41のVL配列を含まない。
【0122】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、S.aureusのin vitroの細胞分裂を阻害するが、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を有しない。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitroの細胞分裂を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitroの細胞分裂を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体とGmdへの結合を競合するが、配列番号9のVH配列または配列番号41のVL配列を含まない。
【0123】
特定の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、S.aureusの増殖をin vitroで阻害するが、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を有しない。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusの増殖をin vitroで5%~100%、10%~95%、10~90%、10~85%、10~80%、10~75%、10~70%、10~75%、10~70%、10~60%、10~55%、10~50%、または10~45%阻害する。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusの増殖をin vitroで少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%、または約100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体とGmdへの結合を競合するが、配列番号9のVH配列または配列番号41のVL配列を含まない。
【0124】
特定の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、S.aureusの増殖をin vivoで阻害するが、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を有しない。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusの増殖をin vivoで5%~100%、10%~95%、10~90%、10~85%、10~80%、10~75%、10~70%、10~75%、10~70%、10~60%、10~55%、10~50%、または10~45%阻害する。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusの増殖をin vivoで少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%、または約100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureus感染症に関連する1つ以上の病態を阻害するか、または減少させる。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎から選択される病態を処置する。
【0125】
Staphylococcusのin vivo増殖の阻害は、当技術分野で知られる多数の好適な基準に従って測定することができる。一実施形態では、Staphylococcusのin vivo増殖は、生物発光アッセイに従って評価される。例として、生物発光S.aureus(例えば、Xen 29;ATCC 12600)(Francis et al.,Infect. Immun.68(6):3594-600(2000)、Contag et al.,Mol.Microbiol.18(4):593-603(1995)も参照のこと。これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を使用して、外科用インプラントの前に下腿インプラントに500,000CFUを投与する。5週齢の雌BALB/cJマウスに、食塩水、または0.25mlの食塩水中1mgの精製抗体/抗体断片の腹腔内注射を、手術の3日前に与えることができる。マウスを様々な日(例えば、0、3、5、7、11、及び14)にイメージングして、生物発光を評価することができ、BLI画像の比較を比較して、Gmd結合抗体がS.aureusのin vivo増殖を阻害するかどうかを、食塩水対照またはプラセボ抗体を注射した対照マウスに比して評価することができる。
【0126】
別の実施形態では、Staphylococcusのin vivo増殖の阻害は、バイオフィルムの形成によって評価される。例として、40mg/kgの用量の抗体/抗体断片または対照の腹腔内投与で雌Balb/cマウスを受動免疫化することができ、1日後、MRSA株で汚染された下腿ステンレス鋼ピンによって各マウスを感染させることができる。感染後14日目にピンを取り除き、電子走査によって検査し、脛骨を採取することができる。得られた画像を使用して、病変面積を2つの異なる視野(例えば、内側及び外側)で測定することができ、これらを合計して、皮質の厚さを乗じる(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Varrone et al.,J.Orthop. Res.32(10):1389-96(2014)を参照されたい)。
【0127】
別の実施形態では、Staphylococcusのin vivo増殖は、髄管または骨周囲の軟組織におけるStaphylococcus膿瘍群(SAC)の存在(頻度を含む)または非存在によって評価される。例として、40mg/kgの用量のGmd結合抗体または対照の腹腔内投与で雌Balb/cマウスを受動免疫化し、1日後、MRSA株で汚染された下腿ステンレス鋼ピンによって各マウスを感染させることができる。14日後、マウスを安楽死させ、脛骨及び付随する軟組織を採取する。組織学的サンプルを調製し、オレンジG/アルシアンブルー(ABG/OH)で染色し、次いで組織学的サンプルの分析によって膿瘍の存在または非存在を判定することができる。(例えば、本明細書の実施例または当技術分野で別様に説明されているとおり)。
【0128】
Gmd、またはGmdを発現する微生物、例えばS.aureusに依存する薬力学的パラメータは、GmdまたはGmdを発現する微生物(例えば、S.aureus)をアンタゴナイズまたは中和して治療利益をもたらすことができるGmd結合抗体を識別するために、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)のin vivo試験のエンドポイントとして測定され得る。アンタゴニストGmd結合抗体は、かかる薬力学的パラメータにおける、ビヒクル処置動物と比較した統計的に有意な変化を引き起こすことができるものと定義される。かかるin vivo試験は、任意の好適な哺乳動物(例えば、マウス、ラット、またはサル)において行うことができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、モノクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である。
【0130】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmd結合抗体断片である。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv断片、ダイアボディ、または単鎖抗体分子である。追加の実施形態では、Gmd抗体は、Fd、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、シングルドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)、scFv-Fc、またはbis-scFvである。
【0131】
追加の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、VH及びVLを含む抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、重鎖定常領域またはその断片をさらに含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)ヒトIgA定常領域、またはその断片、(b)ヒトIgD定常領域、またはその断片、(c)ヒトIgE定常ドメイン、またはその断片、(d)ヒトIgG1定常領域、またはその断片、(e)ヒトIgG2定常領域、またはその断片、(f)ヒトIgG3定常領域、またはその断片、(g)ヒトIgG4定常領域、またはその断片、及び(h)ヒトIgM定常領域、またはその断片からなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常領域を含む。ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、重鎖定常領域またはその断片、例えば、ヒトIgG定常領域またはその断片を含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、改変されたエフェクター機能及び/または半減期を有する、または有するように変異した、重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0132】
特定の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、エフェクター機能を減少させる変異を含むIgG1重鎖定常領域を含む(例えば、Idusogie et al.,J.Immunol.166:2571-2575(2001)、Sazinsky et al.,PNAS USA 105:20167-20172(2008)、Davis et al.,J.Rheumatol.34:2204-2210(2007)、Bolt et al.,Eur. J.Immunol.23:403-411(1993)、Alegre et al.,Transplantation 57:1537-1543(1994)、Xu et al.,Cell Immunol.200:16-26(2000)、Cole et al.,Transplantation 68:563-571(1999)、Hutchins et al.,PNAS USA 92:11980-11984(1995)、Reddy et al.,J.Immunol.164:1925-1933(2000)、WO97/11971及びWO07/106585、米国出願公開第2007/0148167号A1、McEarchern et al.,Blood 109:1185-1192(2007)、Strohl,Curr.Op. Biotechnol.20:685-691(2009)、ならびにKumagai et al.,J.Clin.Pharmacol.47:1489-1497(2007)を参照されたい。これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0133】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体の重鎖定常領域またはその断片は、野生型IgG定常ドメインに比して1つ以上のアミノ酸置換を含み、修飾されたIgGは、野生型IgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して減少したADCCを有する。ADCCを減少させるFc配列エンジニアリングの例としては、IgG1-K326W、E333S;IgG2-E333S;IgG1-N297A;IgG1-L234A、L235A;IgG2-V234A、G237A;IgG4-L235A、G237A、E318A;IgG4-S228P、L236E;IgG2-EU配列118-260;IgG4-EU配列261-447;IgG2-H268Q、V309L、A330S、A331S;IgG1-C220S、C226S、C229S、P238S;IgG1-C226S、C229S、E233P、L234V、L235A;及びIgG1-L234F、L235E、P331Sに対応する1つ以上の修飾が挙げられ、ここで、位置のナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う。
【0134】
ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、減少したCDC活性を有する、または有するように変異した、重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、CDC活性を減少させる変異を含むIgG1重鎖定常領域を含む(例えば、WO97/11971及びWO07/106585、米国出願公開第2007/0148167号A1、McEarchern et al.,Blood 109:1185-1192(2007)、Hayden-Ledbetter et al.,Clin.Cancer 15:2739-2746(2009)、Lazar et al.,PNAS USA 103:4005-4010(2006)、Bruckheimer et al.,Neoplasia 11:509-517(2009)、Strohl,Curr.Op. Biotechnol.20:685-691(2009)、ならびにSazinsky et al.,PNAS USA 105:20167-20172(2008)を参照されたい;これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。Gmd結合抗体に含まれる、CDCを減少させるFc配列エンジニアリング修飾の例としては、IgG1-S239D、A330L、I332E;IgG2 EU配列118-260;IgG4-EU配列261-447;IgG2-H268Q、V309L、A330S、A331S;IgG1-C226S、C229S、E233P、L234V、L235A;IgG1-L234F、L235E、P331S;及びIgG1-C226S、P230Sに対応する1つ以上の修飾が挙げられる。
【0135】
さらなる実施形態では、重鎖定常領域またはその断片は、野生型IgG定常ドメインに比して1つ以上のアミノ酸置換を含み、修飾されたIgGは、野生型IgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して増加した半減期を有する。例えば、IgG定常ドメインは、251~257位、285~290位、308~314位、385~389位、及び428~436位におけるアミノ酸残基の1つ以上のアミノ酸置換を含むことができ、ここで、アミノ酸位置のナンバリングは、Kabatに記載のEUインデックスに従う。ある特定の実施形態では、IgG定常ドメインは、Kabat位置252のアミノ酸のTyr、Phe、Trp、もしくはThrによる置換;Kabat位置254のアミノ酸のThrによる置換;Kabat位置256のアミノ酸のSer、Arg、Gln、Glu、Asp、もしくはThrによる置換;Kabat位置257のアミノ酸のLeuによる置換;Kabat位置309のアミノ酸のProによる置換;Kabat位置311のアミノ酸のSerによる置換;Kabat位置428のアミノ酸のThr、Leu、Phe、もしくはSerによる置換;Kabat位置433のアミノ酸のArg、Ser、Iso、Pro、もしくはGlnによる置換;またはKabat位置434のアミノ酸のTrp、Met、Ser、His、Phe、もしくはTyrによる置換のうちの1つ以上を含む。特定の実施形態では、IgG定常ドメインは、Kabat位置252のアミノ酸のTyrによる置換、Kabat位置254のアミノ酸のThrによる置換、及びKabat位置256のアミノ酸のGluによる置換を含む、野生型ヒトIgG定常ドメインに比したアミノ酸置換を含み得る。
【0136】
追加の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、軽鎖免疫グロブリン定常領域を含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、ヒトIgカッパ定常領域またはヒトIgラムダ定常領域を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、CDRセット:VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3(ここで、該CDRは、表1に開示されるVH及びVLのペアに存在する)を含むが、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。
【0138】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、CDRセット:(a)VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3、または(b)VL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3を含み、該CDRセットは、表1に開示される参照CDRセットからのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を、合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または10個未満有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、CDRセット:(a)VH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3、または(b)VL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3を含み、CDRのうちの少なくとも1つ、2つ、または3つすべては、配列番号9のVHまたは配列番号41のVLのアミノ酸配列内の対応するCDRと同じ配列を有しない。
【0139】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、CDRセット:VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3を含み、該CDRセットは、(a)(i)VH-CDR1が配列番号10のアミノ酸配列を含み、(ii)VH-CDR2が配列番号11のアミノ酸配列を含み、(iii)VH-CDR3が配列番号12のアミノ酸配列を含み、(iv)VL-CDR1が配列番号42のアミノ酸配列を含み、(v)VL-CDR2が配列番号43のアミノ酸配列を含み、(vi)VL-CDR3が配列番号44のアミノ酸配列を含む参照CDRセットからの参照からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を、合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または10個未満有する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。
【0140】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVH-CDR1、配列番号43のVH-CDR2、及び配列番号44のVH-CDR3を含むVLを含み、(a)配列番号13または14のVHフレームワーク1配列、(b)配列番号16~18、または19のVHフレームワーク2配列、(c)配列番号21のVHフレームワーク3配列、(d)配列番号45、46、または47のVLフレームワーク1配列、(e)配列番号49、50、または51のVLフレームワーク2配列、及び(f)配列番号53~58、または59のVLフレームワーク3配列からなる群から選択されるフレームワーク配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号61のVLフレームワーク4配列を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVL-CDR1、配列番号43のVL-CDR2、及び配列番号44のVL-CDR3を含むVLを含み、(a)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号16のフレームワーク2配列、(b)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号17のフレームワーク2配列、(c)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号18のフレームワーク2配列、(d)配列番号13のフレームワーク1配列及び配列番号19のフレームワーク2配列、(e)配列番号14のフレームワーク1配列及び配列番号16のフレームワーク2配列、(f)配列番号14のフレームワーク1配列及び配列番号17のフレームワーク2配列、ならびに(g)配列番号14のフレームワーク1配列及び配列番号18のフレームワーク2配列からなる群から選択されるVHフレームワーク配列を含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号24のVHフレームワーク4配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号61のVLフレームワーク4配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVH-CDR1、配列番号43のVH-CDR2、及び配列番号44のVH-CDR3を含むVLを含み、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号24のVHフレームワーク4配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号10のVH-CDR1、配列番号11のVH-CDR2、及び配列番号12のVH-CDR3を含むVH、ならびに配列番号42のVH-CDR1、配列番号43のVH-CDR2、及び配列番号44のVH-CDR3を含むVLを含み、(a)配列番号45のフレームワーク1配列及び配列番号49のフレームワーク2配列、(b)配列番号46のフレームワーク1配列及び配列番号50のフレームワーク2配列、(c)配列番号47のフレームワーク1配列及び配列番号50のフレームワーク2配列、(d)配列番号47のフレームワーク1配列及び配列番号51のフレームワーク2配列、(e)配列番号49のフレームワーク2配列及び配列番号53のフレームワーク3配列、(f)配列番号49のフレームワーク2配列及び配列番号55のフレームワーク3配列、(g)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号54のフレームワーク3配列、(h)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号55のフレームワーク3配列、(i)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号56のフレームワーク3配列、(j)配列番号50のフレームワーク2配列及び配列番号57のフレームワーク3配列、ならびに(k)配列番号51のフレームワーク2配列及び配列番号58のフレームワーク3配列からなる群から選択されるVLフレームワーク配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号21のVHフレームワーク3配列を含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7、または8のVHを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、表1に開示される参照VHまたはVLとの少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVHまたはVLを含み、それぞれ、VHの配列は配列番号9ではないか、またはVLの配列は配列番号41ではない。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、表1に開示される参照VH及びVLとの少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH及びVLを含み、VHの配列は配列番号9ではない、及び/または、VLの配列は配列番号41ではない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0145】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)配列番号1との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性、(b)配列番号2との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性、(c)配列番号3との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、ならびに(d)配列番号4との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、(e)配列番号5との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性、(f)配列番号6との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性、(g)配列番号7との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性、及び(h)配列番号8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVHを含み、配列番号9のVH配列を含まない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0146】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)配列番号33との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性、(b)配列番号34との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性、(c)配列番号35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、ならびに(d)配列番号36との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、(e)配列番号37との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性、(f)配列番号38との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性、(g)配列番号39との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性、及び(h)配列番号40との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVHを含み、配列番号41のVL配列を含まない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0147】
一実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号1~7または8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVHと、配列番号33~39、または40との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLとを含み、Gmd結合抗体は、配列番号9の配列を有するVH及び配列番号41の配列を有するVLを含まない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0148】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)(i)配列番号1との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号34または35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(b)配列番号2との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号34、35、または37との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(c)配列番号3との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号33、35、36、38、または39との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(d)配列番号4との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号39との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(e)配列番号5との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35、36、38、または39との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(f)配列番号6との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35、36、または38との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(g)配列番号7との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号34または35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(h)配列番号8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号33~38、または40との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLからなる群から選択されるVH及びVLのペアを含むが、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。
【0149】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)配列番号1との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号34との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(b)配列番号1との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(c)配列番号2との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号34との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(d)配列番号2との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(e)配列番号2との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号37との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(f)配列番号3との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号33との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(g)配列番号3との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(h)配列番号3との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号36との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(i)配列番号3との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号38との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(j)配列番号3との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号39との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(k)配列番号4との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号39との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(l)配列番号5との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(m)配列番号5との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号36との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(n)配列番号5との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号38との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(o)配列番号5との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号39との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(p)配列番号6との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(q)配列番号6との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号36との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(r)配列番号6との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号38との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(s)配列番号7との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号34との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(t)配列番号7との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(u)配列番号8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号33との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(v)配列番号8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号34との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(w)配列番号8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号35との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(x)配列番号8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号36との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(y)配列番号8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号37との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、(z)配列番号8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号38との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVL、ならびに(aa)配列番号8との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH、及び配列番号40との少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLからなる群から選択されるVH及びVLのペアを含み、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0150】
いくつかの実施形態では、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合するVH及び/またはVLアミノ酸配列(複数可)は、表1に記載のVHまたはVL配列に比して8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、1つのアミノ酸の付加、置換(例えば、保存的置換)または欠失を含むが、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。追加の実施形態では、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合するVH及びVLアミノ酸配列は、表1に記載のVH及びVL配列に比して1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のアミノ酸の付加、置換(例えば、保存的置換)または欠失を含むが、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。参照VH領域またはVL領域と比較して1つ以上の置換、欠失及び/または挿入(例えば、保存的置換)を有するVH及びVL領域を含むGmd結合抗体は、VH及び/またはVL領域をコードする核酸分子の変異誘発(例えば、部位指向性変異誘発またはPCRによる変異誘発)の後に、コードされた改変抗体をGmdへの結合について試験し、場合により、本明細書に記載される、または当技術分野で知られる機能アッセイを使用して、保持された機能を試験することによって、慣例的に取得することができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、表1に開示される参照VHまたはVLと比較してアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVHまたはVLを含むが、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、表1に開示される参照VH及びVLのペアと比較してアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH及びVLのペアを含むが、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。
【0152】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、(a)配列番号1の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(b)配列番号2の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(c)配列番号3の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(d)配列番号4の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(e)配列番号5の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(f)配列番号6の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(g)配列番号7の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、ならびに(h)配列番号8の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~39、または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列からなる群から選択されるVH及びVLのペアを含み、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。
【0153】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)配列番号1、(b)配列番号2、(c)配列番号3、(d)配列番号4、(e)配列番号5、(f)配列番号6、(g)配列番号7、及び(h)配列番号8からなる群から選択される参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列を含むが、配列番号9の配列を有しない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0154】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)配列番号33、(b)配列番号34、(c)配列番号35、(d)配列番号36、(e)配列番号37、(f)配列番号38、(g)配列番号39、及び(h)配列番号40からなる群から選択される参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列を含むが、配列番号41の配列を有しない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0155】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)(i)配列番号1の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号34または35の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(b)配列番号2の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号34、35、または37の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(c)配列番号3の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有する配列を有するVH、及び配列番号33、35、36、38、または39の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(d)配列番号4の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号39の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(e)配列番号5の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号35、36、38、または39の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(f)配列番号6の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号35、36、または38の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、(g)配列番号7の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号34または35の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列、ならびに(h)配列番号8の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVH配列、及び配列番号33~38または40の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有するVL配列からなる群から選択されるVH及びVLのペアを含み、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0156】
さらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、VH配列が、配列番号4の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有し、VL配列が、配列番号13の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有する、VH及びVLのペアを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。
【0157】
さらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、VH配列が、配列番号9の参照VH配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有し、VL配列が、配列番号41の参照VL配列からのアミノ酸置換、欠失、及び/または挿入を合計1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個未満、または0個有する、VH及びVLのペアを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。
【0158】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号8のVH配列と、配列番号40のVL配列とを含む。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVH配列及び配列番号40のVL配列を含む抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または配列番号8のVH配列及び配列番号40のVL配列を含む抗体とGmdへの結合を競合する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVH配列及び配列番号40のVL配列を含む抗体と同じGmdのエピトープに結合する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。
【0159】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、マウス抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、多重特異性抗体、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、Fv断片、Fab断片、F(ab’)断片、Fab’断片、dsFv断片、scFv断片、またはsc(Fv)断片である。
【0160】
追加の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、表1に開示されるVH及びVLのペアを含む抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または表1に開示されるVH及びVLのペアを含む抗体とGmdへの結合を競合し、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。追加の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号36のアミノ酸配列を有するVLを含む抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または配列番号3のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号36のアミノ酸配列を有するVLを含む抗体とGmdへの結合を競合し、Gmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。
【0161】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7または8のVHを含む。追加の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号33~39、または40のVLを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1~7または8のVHと、33~39、または40のVLとを含む。追加の実施形態では、Gmd結合抗体は、表1に開示されるGmd結合抗体と同じエピトープに結合し、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。Gmd結合抗体が、参照Gmd結合抗体と結合を競合できるか、及び/または参照Gmd結合抗体と同じGmdのエピトープに結合できるかは、本明細書で開示される、または当技術分野で知られる技法を使用して、容易に判定することができる。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。
【0162】
一実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、表1に開示されるVH及びVLのペアを含む。一実施形態では、Gmd結合は、配列番号1~7または8のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを有するVH及びVLのペアを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。
【0163】
一実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、(a)配列番号1のVH配列及び配列番号34のVL配列、(b)配列番号1のVH配列及び配列番号35のVL配列、(c)配列番号2のVH配列及び配列番号34のVL配列、(d)配列番号2のVH配列及び配列番号35のVL配列、(e)配列番号3のVH配列及び配列番号33のVL配列、(f)配列番号3のVH配列及び配列番号35のVL配列、(g)配列番号3のVH配列、及び配列番号36のVL配列、ならびに(h)配列番号3のVH配列及び配列番号38のVL配列、(i)配列番号3のVH配列及び配列番号39のVL配列、(j)配列番号4のVH配列及び配列番号39のVL配列、(k)配列番号5のVH配列及び配列番号35のVL配列、(l)配列番号5のVH配列及び配列番号36のVL配列、(m)配列番号5のVH配列及び配列番号38のVL配列、(n)配列番号5のVH配列及び配列番号39のVL配列、(o)配列番号6のVH配列、及び配列番号35のVL配列、(p)配列番号6のVH配列及び配列番号36のVL配列、(q)配列番号6のVH配列及び配列番号38のVL配列、(r)配列番号7のVH配列及び配列番号34のVL配列、(s)配列番号7のVH配列及び配列番号35のVL配列、(t)配列番号8のVH配列及び配列番号33のVL配列、(u)配列番号8のVH配列及び配列番号34のVL配列、(v)配列番号8のVH配列及び配列番号35のVL配列、(w)配列番号8のVH配列、及び配列番号36のVL配列、(x)配列番号8のVH配列及び配列番号37のVL配列、(y)配列番号8のVH配列及び配列番号38のVL配列、ならびに(z)配列番号8のVH配列及び配列番号40のVL配列からなる群から選択されるVH及びVLを含む。
【0164】
一実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号1のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む、VH及びVLを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1のVHと配列番号34または35のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1のVHと配列番号34のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号1のVHと配列番号35のVL配列とを含む。
【0165】
別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号2のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号2のVHと、配列番号34、35、または37のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号2のVHと配列番号34のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号2のVHと配列番号35のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号2のVHと配列番号37のVLとを含む。
【0166】
追加のさらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号3のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと、配列番号33、35、36、38、または39のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号33のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号35のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号36のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号38のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと配列番号39のVLとを含む。
【0167】
さらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号4のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号4のVHと配列番号39のVLとを含む、VH及びVLを含む。
【0168】
さらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号5のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号5のVHと、配列番号35、36、38、または39のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号5のVHと配列番号35のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号5のVHと配列番号36のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号5のVHと配列番号38のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号5のVHと配列番号39のVLとを含む。
【0169】
追加の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号6のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号6のVHと、配列番号35、36、または38のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号6のVHと配列番号35のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号6のVHと配列番号36のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号6のVHと配列番号38のVLとを含む。
【0170】
さらなる実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号7のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号7のVHと配列番号34または35のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号7のVHと配列番号34のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号7のVHと配列番号35のVLとを含む。
【0171】
別の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号8のVHと、配列番号33~39、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号3のVHと、配列番号33~38、または40のVLとを含む。一実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号33のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号34のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号35のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号36のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号37のVLとを含む。別の実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号38のVLとを含む。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVHと配列番号40のVLとを含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号1のVH配列と、配列番号34のVL配列とを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号1のVH配列と、配列番号35のVL配列とを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号2のVH配列と、配列番号34のVL配列とを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号2のVH配列と、配列番号35のVL配列とを含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号3のVH配列と、配列番号33のVL配列とを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号3のVH配列と、配列番号35のVL配列とを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号3のVH配列と、配列番号36のVL配列とを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号3のVH配列と、配列番号38のVL配列とを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号3のVH配列と、配列番号39のVL配列とを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号4のVH配列と、配列番号39のVL配列とを含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号5のVH配列と、配列番号35のVL配列とを含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号5のVH配列と、配列番号36のVL配列とを含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号5のVH配列と、配列番号38のVL配列とを含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号5のVH配列と、配列番号39のVL配列とを含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号6のVH配列と、配列番号35のVL配列とを含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号6のVH配列と、配列番号36のVL配列とを含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号6のVH配列と、配列番号38のVL配列とを含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号7のVH配列と、配列番号34のVL配列とを含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号7のVH配列と、配列番号35のVL配列とを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、配列番号8のVH配列と、配列番号33のVL配列とを含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号8のVH配列と、配列番号34のVL配列とを含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号8のVH配列と、配列番号35のVL配列とを含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、配列番号8のVH配列と、配列番号36のVL配列とを含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、Gmd結合抗体断片である。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ダイアボディ、DART、及び単鎖抗体分子(例えば、BiTE)からなる群から選択される。
【0196】
本開示は、異種薬剤にコンジュゲートされたGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)をさらに提供する。ある特定の実施形態では、異種薬剤は、抗菌剤、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、生物学的応答修飾物質、医薬品、リンホカイン、異種抗体もしくは抗体断片、検出可能な標識、またはポリエチレングリコール(PEG)である。ヘテロコンジュゲートGmd結合抗体については、本明細書の他の箇所でさらに詳細に記述されている。
【0197】
Gmd結合抗体の調製
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、公知の技法を使用して容易に調製することができる。例えば、モノクローナルGmd結合抗体は、Kohler and Milstein,Nature 256:495-497(1975)によって記述されたものなどのハイブリドーマ法を含む、当技術分野で公知の技法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法を使用すると、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物が、上述のように免疫化されて、免疫抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球による産生が誘発される。リンパ球は、in vitroで免疫化することもできる。免疫化の後、リンパ球を単離し、好適な骨髄腫細胞系と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成し、次いでこれを、融合していないリンパ球及び骨髄腫細胞から選別することができる。免疫沈降、免疫ブロッティング、またはin vitro結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA);酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって判定した場合に、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)に対して特異的に指向されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、次いで、標準的方法を使用したin vitro培養で(例えば、Goding,Monoclonal Antibodies:principles and Practice,Academic Press,1986を参照のこと)、またはin vivoで動物体内の腹水腫瘍として増殖させることができる。次いでこのモノクローナル抗体を、上記のポリクローナル抗体について説明したように、培地または腹水から精製することができる。
【0198】
本開示のGmd結合抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されている組換えDNA方法を使用して作製することもでき、この方法では、モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドが、Gmd結合抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用するRT-PCRなどにより、成熟型B細胞またはハイブリドーマ細胞から単離され、それらの配列が、公知の手順を使用して決定される。重鎖及び軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドは、その後、好適な発現ベクターにクローニングされ、これが、さもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Per.C6細胞、または骨髄腫細胞(例えば、NS0細胞)などの宿主細胞にトランスフェクトされると、宿主細胞によってモノクローナル抗体が生成される。組換え抗Gmdモノクローナル抗体は、公知の技法を使用して、所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリから容易に単離することもできる(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)を参照のこと)。
【0199】
Gmd結合抗体は、場合により、Gmd抗原への高い親和性及び他の好ましい生物学的特性を示すように、ヒト化、リサーフェシング、及びエンジニアリングされ得る。例えば、ヒト化(またはヒト)Gmd結合抗体は、一般に利用可能な三次元免疫グロブリンモデリング、ならびにフレームワーク(FW)残基、コンセンサス配列、及び生殖系列配列を選択するための公知の手順を使用して、Gmdに対する増加した親和性などの所望の抗体特性をもたらすように、容易に設計及び調製することができる。
【0200】
親和性成熟ストラテジー及び鎖シャフリングストラテジーは、当技術分野で公知であり、高親和性Gmd結合抗体ならびに本明細書で開示されるGmd結合抗体の誘導体及びバリアントを生成するために用いられ得る。例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれるMarks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)を参照されたい。高親和性Gmd結合抗体ならびに本明細書で開示されるGmd結合抗体の誘導体及びバリアントを生成するための追加のストラテジーは、可変ドメイン全体で変異を生成するために、1つ以上の選択されたVH及び/またはVLコード配列のランダム変異誘発を使用して、本開示のCDR由来配列を有する新規のVHまたはVL領域を生成することである。エラープローンPCRを使用するこのような技法は、Gram et al.(PNAS USA 89:3576-3580(1992))によって説明されている。いくつかの実施形態では、1つまたは2つのアミノ酸置換が、VH CDR及び/またはVL CDRのセット内に作られる。さらなるストラテジーは、本明細書で開示されるGmd結合抗体をコードするVHまたはVL核酸のCDR領域に直接変異誘発を使用する。そのような技法の例は、Barbas et al.(PNAS USA 91:3809-3813(1994))及びSchier et al.(J.Mol.Biol.263:551-567(1996))によって開示されている。
【0201】
本開示のGmd結合抗体のヒト化、リサーフェシング、またはエンジニアリングは、Jones et al.,Nature 321:522(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988)、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)、Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901(1987)、Carter et al.,PNAS USA 89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5,639,641号、同第5,723,323号、同第5,976,862号、同第5,824,514号、同第5,817,483号、同第5,814,476号、同第5,763,192号、同第5,723,323号、同第5,766,886号、同第5,714,352号、同第6,204,023号、同第6,180,370号、同第5,693,762号、同第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,225,539号、同第4,816,567号、同第7,557,189号、同第7,538,195号、及び同第7,342,110号、国際出願第PCT/US98/16280号、同第PCT/US96/18978号、同第PCT/US91/09630号、同第PCT/US91/05939号、同第PCT/US94/01234号、同第PCT/GB89/01334号、同第PCT/GB91/01134号、同第PCT/GB92/01755号、国際出願公開第WO90/14443号、同第WO90/14424号、及び同第WO90/14430号、ならびに欧州特許公開第EP229246号に記載されているものを含むがこれらに限定されない、任意の公知の方法を使用して行うことができ、これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。同様に、公知のアッセイが、望ましい特徴を示す抗Gmd抗体を容易に選択するために利用可能である(例えば、Gmdへの結合親和性を判定するためのアッセイ;本明細書に記載されるBIACORE(登録商標)ベースのGmd結合抗体競合結合アッセイなどの交差遮断アッセイ)。
【0202】
非ヒト抗体またはヒト抗体をエンジニアリング、ヒト化、またはリサーフェシングするための方法を使用することもでき、これらは当技術分野で公知である。ヒト化された、リサーフェシングされた、または同様にエンジニアリングされた抗体は、ヒトではない供給源、例えば、限定されるものではないが、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類または他の哺乳動物からの1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「輸入」残基と称される残基によって置換され、「輸入」残基は通常、既知のヒト配列の「輸入」可変ドメイン、定常ドメイン、または他のドメインから得られる。このような輸入された配列を使用して、免疫原性を低減させる、または結合、親和性、オンレート、オフレート、アビディティ、特異性、半減期、もしくは当技術分野で知られる任意の他の好適な特徴を低減させる、増強する、もしくは改変することができる。好ましくは、非ヒトまたはヒトCDR配列の一部または全部が維持され、可変領域及び定常領域の非ヒト配列は、ヒトまたは他のアミノ酸で置換され得る。
【0203】
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)をコードする核酸(複数可)は、代替的な抗体を生成するために、組換えDNA技術を使用して、複数の異なる様式でさらに修飾されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、マウスモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の定常ドメインをコードする核酸(複数可)を、(a)例えば、ヒト抗体の領域をコードするものに置換して、キメラ抗体を生成してもよく、または(b)非免疫グロブリンコード核酸(複数可)に置換して、融合抗体を生成してもよい。いくつかの実施形態では、定常領域は、モノクローナル抗体の所望の抗体断片を生成するために切断または除去される。可変領域コード配列の部位指向性変異誘発または高密度変異誘発を使用して、モノクローナル抗体の特異性、親和性などを最適化することができる。
【0204】
抗Gmdヒト抗体は、当技術分野で知られる多数の技法のいずれかを使用して直接調製することができる(例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boemer et al.,J.Immunol.147(1):86-95(1991)、及び米国特許第5,750,373号を参照のこと)。同様に、ヒトGmd結合抗体は、in vitroで免疫化された不死化ヒトBリンパ球から容易に取得することができ、Gmdに対する抗体を産生する免疫化された個体から単離することもできる。
【0205】
ヒトGmd結合抗体は、例えば、Vaughan et al.,Nat.Biotech.14:309-314(1996)、Sheets et al.,PNAS 95:6157-6162(1998)、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991)に記載されているような、ヒト抗体を発現するファージライブラリから選択することもできる。抗体ファージライブラリの生成及びスクリーニングのための技法は、米国特許第5,969,108号、同第6,172,197号、同第5,885,793号、同第6,521,404号、同第6,544,731号、同第6,555,313号、同第6,582,915号、同第6,593,081号、同第6,300,064号、同第6,653,068号、同第6,706,484号、及び同第7,264,963号、ならびにRothe et al.,J.Mol.Biol.376(4):1182-1200(2008)にも記載されており、これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0206】
ヒトGmd結合抗体は、免疫化されると、内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体を産生することができる、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むトランスジェニックマウスにおいて作製することもできる。この手法は、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号に記載されている。
【0207】
ヒトGmd結合抗体は、例えば、国際出願公開第WO012/009568号、同第WO09/036379号、同第WO10/105256号、及び同第WO03/074679号、ならびに米国出願公開第US2002/0177170号で開示されているような、酵母ベースの抗体提示ライブラリから選択及び/または単離することもでき、これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。そのようなライブラリは、ヒト免疫前レパートリーによってもたらされる多様性を反映するように、in silicoで設計される。
【0208】
あるいは、Gmd結合抗体は、酵母提示抗体ライブラリから選択されてもよい。例えば、Blaise et al.,Gene 342(2):211-218(2004)、Boder et al.,Nat Biotechnol.15(6):553-557(1997)、Kuroda et al.,Biotechnol. Lett.33(1):1-9(2011).Review、Lauer et al.,J.Pharm.Sci.101(1):102-15(2012)、Orcutt K.D.and Wittrup K.D.Antibody Engineering,yeast display and selection 207-233(2010)、Rakestraw et al.,Protein Eng.Des. Sel.24(6):525-30(2011)、ならびに米国特許第6,423,538号、同第6,696,251号、及び同第6,699,658号を参照されたい。
【0209】
抗原結合抗体断片を産生するための様々な技法が知られている。従来、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解消化により得られている(例えば、Morimoto et al.,J.Biochem. Biophys. Meth.24:107-117(1993)、及びBrennan et al.,Science 229:81(1985)を参照のこと)。ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体断片は、組換え的に産生される。Fab、Fv、及びscFv抗体断片がすべて、E.coliまたは他の宿主細胞で発現されて分泌され得るため、これらの断片の大量産生が可能になる。そのようなGmd結合抗体断片は、上述のGmd結合抗体ファージライブラリからさらに単離され得る。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体断片は、米国特許第5,641,870号に記載されているような線状抗体である。当技術分野では、抗原結合抗体断片を産生するための他の技法も知られている。
【0210】
Gmdと結合する単鎖抗体を産生するように、公知の技法を容易に適合させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)。さらに、Gmdに対する所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ効果的な識別を可能にするために、Fab発現ライブラリを構築するように、公知の方法を慣例的に適合させることができる(例えば、Huse et al.,Science 246:1275-1281(1989)を参照のこと)。Gmd結合抗体断片は、当技術分野で公知の技法によって産生することができ、(a)抗体のペプシン消化によって産生されるF(ab’)断片、(b)F(ab’)断片のジスルフィド橋を還元することによって生成されるFab断片、(c)パパイン及び還元剤でGmd結合抗体を処理することによって生成されるFab断片、ならびに(d)Fv断片を含むがこれらに限定されない。
【0211】
ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、その血清半減期を増加させるために修飾され得る。これは例えば、Gmd結合抗体における適切な領域の変異によってサルベージ受容体結合エピトープをGmd結合抗体に組み込むこと、または、サルベージ受容体エピトープをペプチドタグに組み込み、これをその後、Gmd結合抗体のいずれかの末端もしくは中央に(例えば、DNAまたはペプチド合成によって)融合することによって達成することができる。Gmd結合抗体の血清半減期を増加させる他の方法、例えば、PEGなどの異種分子へのコンジュゲーションは、当技術分野で公知である。
【0212】
ヘテロコンジュゲートGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)も、本開示の範囲内にある。ヘテロコンジュゲートGmd結合抗体は、共有結合した2つのタンパク質から構成される。ヘテロコンジュゲートGmd結合抗体は、架橋剤を必要とするものを含め、合成タンパク質化学における公知の方法を使用して、in vitroで調製され得ることが想定される。例えば、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築することができる。この目的に好適な試薬の例としては、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデート(mercaptobutyrimidate)が挙げられる。
【0213】
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、Gmd結合抗体とGmdとの会合をもたらす任意の種類の可変領域を含むことができる。そのような可変領域は、液性応答を展開してGmd抗原に対する免疫グロブリンを生成するように誘導され得る任意の哺乳動物を含むか、またはそれに由来することができる。Gmd結合抗体の可変領域は、例えば、ヒト由来、マウス由来、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、マカク)由来、またはオオカミ(lupine)由来であり得る。いくつかの実施形態では、修飾型Gmd結合抗体の可変領域及び定常領域の両方がヒトである。他の実施形態では、適合性抗体(通常は非ヒト供給源に由来する)の可変領域をエンジニアリングして、または特異的に調整して、分子の結合特性を改善する、または分子の免疫原性を低減させることができる。この点において、親和性成熟、変異誘発手順、鎖シャフリングストラテジー、及び/または本明細書に記載される他の方法もしくは当技術分野で知られる他の方法を使用して、輸入されたアミノ酸配列を含めることにより、本開示に従って有用な可変領域をヒト化または別様に改変することができる。
【0214】
ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体の重鎖及び軽鎖の両方の可変ドメインが、1つ以上のCDRの少なくとも部分的な置換によって、及び/または、部分的なフレームワーク領域置換及び配列変化によって改変される。CDRは、フレームワーク領域の由来であるGmd結合抗体と同じクラスまたはさらにはサブクラスの抗体に由来し得るが、CDRが異なるクラスの抗体に由来し、ある特定の実施形態では、異なる種の抗体に由来することが想定される。ある可変ドメインの抗原結合能力を別の可変ドメインに移行させるために、CDRのすべてをドナー可変領域の完全なCDRで置換する必要はない。むしろ、抗原結合部位の活性を維持するために必要な残基を移行させることのみが必要である。免疫原性が低減した機能的な抗体を慣例的に取得することは、十分に当業者の能力の範囲内にある。例えば、米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号、及び同第5,693,762号を参照されたい。
【0215】
可変領域の改変にかかわらず、本開示の修飾型Gmd結合抗体には、天然または非改変型の定常領域を含むおよそ同じ免疫原性の抗体と比較すると減少したADCCまたは増加した血清半減期のような所望の生化学的特性をもたらすように、定常領域ドメインのうちの1つ以上の少なくとも一部が欠失しているまたは別様に改変されている抗体が含まれることを、当業者は理解するであろう。いくつかの実施形態では、修飾型Gmd結合抗体の定常領域は、ヒト定常領域を含む。定常領域の修飾は、1つ以上のドメインにおける1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換を含み得る。本明細書で開示される修飾型Gmd結合抗体は、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2またはCH3)のうちの1つ以上及び/または軽鎖定常ドメイン(CL)への改変または修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のドメインが部分的または全体的に欠失している定常領域を含む修飾型Gmd結合抗体が想定される。いくつかの実施形態では、修飾型Gmd結合抗体は、CH2ドメイン全体が除去されたドメイン欠失型構築物またはバリアント(ΔCH2構築物)を含む。いくつかの実施形態では、削除された定常領域ドメインは、不在の定常領域によって通常与えられる分子の柔軟性の一部をもたらす短いアミノ酸スペーサー(例えば、10残基)で置換され得る。
【0216】
定常領域がいくつかのエフェクター機能を媒介することは一般に理解されている。例えば、抗体への補体のC1成分の結合は、補体系を活性化する。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン作用及び溶解において重要である。補体の活性化はまた、炎症応答も刺激し、そして自己免疫過敏症にも関与し得る。さらに、抗体は、Fc領域を介して細胞に結合し、Gmd結合抗体のFc領域上のFc受容体部位が、細胞上のFc受容体(FcR)に結合する。IgG(ガンマ受容体)、IgE(イータ受容体)、IgA(アルファ受容体)及びIgM(ミュー受容体)を含む、抗体の異なるクラスに特異的な複数のFc受容体がある。細胞表面上のFc受容体への抗体の結合は、抗体被覆粒子の呑食及び破壊、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体被覆標的細胞の溶解(抗体依存性細胞媒介性細胞毒性またはADCCと呼ばれる)、炎症性メディエーターの放出、胎盤通過及び免疫グロブリン産生の制御を含む複数の重要かつ多様な生物学的応答を引き起こす。
【0217】
ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、改変されたエフェクター機能を有し、その結果、投与されたGmd結合抗体の生物学的プロファイルが影響を受ける。例えば、定常領域ドメインの欠失または不活性化(点変異または他の手段による)は、循環する修飾型抗体のFc受容体結合を低減させ得る。他の場合には、定常領域修飾は、補体結合を緩和することにより、コンジュゲートされた細胞毒の血清半減期及び非特異的会合を低減させ得る。定常領域のさらに他の修飾を使用して、抗原特異性または抗体の柔軟性の増加に起因して局在化を増強することを可能にするジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を消失させることができる。同様に、本開示に係る定常領域への修飾は、当業者に知られている生化学的技法または分子エンジニアリング技法を使用して容易に行うことができる。
【0218】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、1つ以上のエフェクター機能を有しないGmd抗体である。例えば、いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)活性及び/または補体依存性細胞毒性(CDC)活性を有しない。ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、Fc受容体及び/または補体因子に結合しない。ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体は、エフェクター機能を有しない。ADCC及び/またはCDC活性ならびにFc受容体及び/または補体因子結合を低減または消失させるFc配列エンジニアリング修飾の例は、それを試験するためのアッセイ及び手順と同様に、本明細書に記載されているか、または当技術分野で知られている。
【0219】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、CH3ドメインをそれぞれの修飾型抗体のヒンジ領域に直接融合するようにエンジニアリングされる。他の構築物では、ペプチドスペーサーが、ヒンジ領域と、修飾されたCH2及び/またはCH3ドメインとの間に挿入される。例えば、CH2ドメインが欠失し、残りのCH3ドメイン(修飾型または非修飾型)が5~20アミノ酸のスペーサーでヒンジ領域に結合した、適合性構築物が発現され得る。このようなスペーサーは、例えば、定常ドメインの調節エレメントが自由かつアクセス可能な状態を保つこと、またはヒンジ領域が柔軟性を保つことを確実にするために付加され得る。場合によっては、アミノ酸スペーサーが免疫原性をもち、構築物に対する望まれない免疫応答を誘発することが判明することがある。したがって、ある特定の実施形態では、構築物に付加される任意のスペーサーは、修飾型Gmd結合抗体の所望の生化学的質を維持するために、相対的に非免疫原性であってもよく、またはさらには完全に省略されてもよい。
【0220】
追加の実施形態では、Gmd結合抗体は、定常領域における少数またはさらには単一のアミノ酸の部分的欠失または置換によって修飾される。例えば、CH2ドメインの選択された領域内の単一のアミノ酸の変異が、Fc結合を実質的に低減させるのに十分であり得る。同様に、エフェクター機能(例えば、補体C1Q結合)を制御する1つ以上の定常領域ドメインを完全または部分的に欠失させてもよい。このような定常領域の部分的欠失は、Gmd結合抗体の選択された特性(例えば、血清半減期)を改善しながら、対応する定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能をそのままに保つことができる。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体の定常領域は、得られる構築物のプロファイルを増強する1つ以上のアミノ酸の変異または置換によって修飾される。この点において、修飾型Gmd結合抗体の構成及び免疫原性プロファイルを実質的に維持しながら、保存された結合部位によって提供される活性(例えば、Fc結合)を破壊することが可能である。本開示は、望ましい特性を増強するために、例えば、エフェクター機能を減少もしくは増加させるために、または1つ以上の細胞毒、標識、もしくは炭水化物部分の結合部位を提供するために、定常領域への1つ以上のアミノ酸の付加を含むGmd結合抗体も提供する。そのような実施形態では、選択された定常領域ドメインに由来する特定の配列を挿入または複製することが望ましい場合がある。
【0221】
本開示は、表1で開示されるGmd結合抗体のバリアントであるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を提供するが、このGmd結合抗体は、配列番号9のVH配列、配列番号41のVL配列、または配列番号9のVH配列及び配列番号41のVL配列を含まない。特定の実施形態では、バリアントGmd結合抗体は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。
【0222】
提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、例えば、溶解性、生物学的半減期、バイオアベイラビリティを改善することが当技術分野で知られている追加の化学部分を含むように、また、Gmd結合抗体の安定性、製剤特性及び/または治療特性を別様に改善するように、誘導体化され得る。そのような部分の非網羅的な概要は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(2000)に見出すことができる。
【0223】
Gmd結合抗体をコードする核酸及びそれらの発現
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)をコードする核酸分子及び核酸分子の組み合わせも提供される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、完全長Gmd結合抗体またはGmd結合抗体断片などのGmd結合抗体をコードする。さらなる実施形態では、本開示は、本明細書で提供される完全長抗体またはGmd結合抗体断片のバリアントまたは誘導体をコードする核酸分子を提供する。
【0224】
本明細書で開示される核酸分子は、RNAの形態でもDNAの形態でもよい。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAを含み、二本鎖でも一本鎖でもよく、一本鎖の場合はコード鎖/または非コード(アンチセンス)鎖でもよい。ある特定の実施形態では、核酸分子は、単離される。追加の実施形態では、核酸分子は、実質的に純粋である。いくつかの実施形態では、核酸は、cDNAであるか、またはcDNAに由来する。いくつかの実施形態では、核酸は、組換え的に産生される。
【0225】
いくつかの実施形態では、核酸分子(複数可)は、宿主細胞またはin vitroでのコード配列の発現を制御する配列(複数可)に作動可能に連結された、Gmd結合タンパク質(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)のコード配列(複数可)を含む。特定の実施形態では、コード配列はcDNAである。本開示は、宿主細胞またはin vitroでのコード配列の発現を制御する制御配列に作動可能に連結されたGmd結合抗体コード配列を含む核酸分子を含むベクターにも関する。
【0226】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、同じリーディングフレーム内で異種ポリヌクレオチド配列に融合しているGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)のコード配列を含む。いくつかの実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、Gmd結合抗体をコードする核酸分子(複数可)で形質転換された宿主細胞からの発現タンパク質の分泌を促進するリーダーペプチド配列をコードする。リーダー配列を含むタンパク質は、プレタンパク質と称され、成熟型のGmd結合抗体を形成するために宿主細胞によって切断されるリーダー配列を有し得る。このようなリーダーペプチド配列、及び宿主細胞における組換えタンパク質の分泌を促進するそれらの使用は、当技術分野で広く知られている。追加の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、例えば、組換え的に発現されたGmd結合抗体の精製を容易にするように、かつ、そのタンパク質安定性及び/または治療特性もしくは診断特性を加えるまたは改善するように機能し得る、追加の5’アミノ酸残基をコードする。
【0227】
いくつかの実施形態では、本開示は、ハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマーまたはシーケンシングプライマーとして使用するのに十分な、cDNA断片をコードするGmd結合抗体などの単離された核酸を提供する。
【0228】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号72のアミノ酸配列からなるGmd断片(例えば、配列番号72のアミノ酸残基59~91からなる断片)と特異的に結合し、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の、凝集(クラスター化)を促進する、または細胞分裂を阻害すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)をコードする。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、コードされるGmd結合抗体は、本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または本明細書で開示されるGmdに結合するVH及びVLのペアを有する抗体とGmdへの結合を競合する。追加の実施形態では、コードされるGmd結合抗体は、本明細書で開示される抗体と同じGmdのエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、コードされるGmd結合抗体は、本明細書で開示されるVH及びVLのペアを有するGmd結合抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または本明細書で開示されるVH及びVLのペアを有するGmd結合抗体とGmdへの結合を競合する。追加の実施形態では、コードされるGmd結合抗体は、本明細書で開示される抗体と同じGmdのエピトープに結合する。さらなる実施形態では、核酸分子は、本明細書で開示されるVH及びVLのペアを含むGmd結合抗体をコードする。
【0229】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)をコードする核酸及び核酸セットを含むベクター及びベクターセットを提供する。これらの核酸、核酸セット、ベクター、及びベクターセットで形質転換された宿主細胞も提供され、Gmd結合抗体を作製し使用する方法も提供される。
【0230】
ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体をコードする核酸(複数可)は、例えばコードされたポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列に、同じリーディングフレーム内で融合した、成熟型Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)のコード配列(複数可)を含む。例えば、マーカー配列は、細菌宿主の場合には、マーカーに融合した成熟型ポリペプチドの精製を行うためにpQE-9ベクターによって供給されるヘキサ-ヒスチジンタグでもよく、または、マーカー配列は、哺乳動物宿主(例えば、COS-7細胞)が使用される場合には、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来する血球凝集素(HA)タグでもよい。
【0231】
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)をコードする核酸バリアントも提供される。核酸バリアントは、コード領域、非コード領域、またはその両方に改変を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸バリアントには、サイレント置換、付加、または欠失をもたらすが、コードされたポリペプチドの特性または活性を改変しない改変が含まれる。いくつかの実施形態では、核酸バリアントは、遺伝コードの縮重に起因するサイレント置換によって産生される。核酸バリアントは、種々の理由で、例えば、特定の宿主のためにコドン発現を最適化する(ヒトmRNAにおけるコドンを、E.coliなどの細菌宿主に好まれるものに変更する)ために産生され得る。本明細書に記載される核酸を含むベクター及び細胞も提供される。
【0232】
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)をコードする核酸配列は、オリゴヌクレオチドシンセサイザーを使用した化学合成によって構築される。そのようなオリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドのアミノ酸配列、及び宿主細胞の優先傾向に基づくコドン最適化に基づいて設計され得る。標準的方法を慣例的に適用して、Gmd結合抗体をコードする単離ポリヌクレオチド配列を合成することができる。
【0233】
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)をコードする核酸配列がアセンブルされたら(合成、部位指向性変異誘発、または別の方法によって)、これを、慣例的に、所望の宿主におけるGmd結合抗体の発現に適切な制御配列に作動可能に連結させることができる。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体をコードする核酸配列(複数可)は、1つ以上の発現ベクターに挿入され、所望の宿主におけるタンパク質の発現に適切な制御配列(複数可)に作動可能に連結される。トランスフェクトされたコード配列の宿主における高い発現レベルを得るために、選択された発現宿主において機能的な転写及び翻訳発現制御配列に、コード配列を作動可能に連結する、または会合させることができる。
【0234】
ある特定の実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)をコードするDNAを増幅及び発現させるために、組換え発現ベクターが使用される。組換え発現ベクターは、哺乳動物、微生物、ウイルス、または昆虫の遺伝子に由来する好適な転写または翻訳調節エレメントに作動可能に連結されたGmd結合抗体のポリペプチド鎖をコードする合成またはcDNA由来のDNA断片を有する、複製可能なDNA構築物である。転写ユニットは一般に、以下に詳述するように、(1)遺伝子発現を調節する役割を有する遺伝要素(複数可)、例えば、転写プロモーターまたはエンハンサー、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造的配列またはコード配列、ならびに(3)適切な転写及び翻訳の開始配列及び終結配列のアセンブリを含む。このような調節エレメントには、転写を制御するためのオペレーター配列が含まれ得る。通常は複製起点によって付与される、宿主で複製する能力と、形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子とが、さらに組み込まれてもよい。DNA領域は、それらが互いに機能的に関連しているとき、作動可能に連結されている。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現する場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結しているか、プロモーターは、それがコード配列の転写を制御する場合、その配列に作動可能に連結しているか、またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を可能にするように位置付けられている場合、コード配列に作動可能に連結されている。酵母発現系での使用を目的とする構造エレメントには、翻訳されたタンパク質の宿主細胞による細胞外分泌を可能にするリーダー配列が含まれる。あるいは、組換えタンパク質がリーダーまたは輸送配列なしで発現される場合、タンパク質はN末端メチオニン残基を含み得る。この残基は、場合により、最終的なタンパク質をもたらすために、発現された組換えタンパク質から後に切断され得る。ある特定の実施形態では、本開示は、上記または本明細書の他の箇所に記載される核酸またはベクターを含み、場合により、1つ以上の担体、希釈剤、賦形剤、または他の添加剤をさらに含む、医薬組成物などの組成物を提供する。
【0235】
いくつかの実施形態では、本開示は、上掲のような核酸分子もしくは核酸分子の組み合わせまたはベクターを含む宿主細胞を提供し、この宿主細胞は、場合によっては、Gmdに結合するGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を発現し得る。さらなる実施形態では、本開示は、上掲のような核酸分子もしくは核酸分子の組み合わせまたはベクターで形質転換された宿主細胞を提供し、この宿主細胞は、場合によっては、Gmdに結合するGmd結合抗体を発現し得る。このような宿主細胞は、本明細書で提供されるGmd結合抗体を作製する方法において利用することができ、この方法は、(a)宿主細胞を培養すること、及び(b)宿主細胞によって発現されたGmd結合抗体を単離することを含む。
【0236】
また、本明細書で開示される核酸分子(複数可)(例えば、cDNA)及び/またはベクターで形質転換された宿主細胞も提供される。本開示は、制御配列(複数可)に作動可能に連結され、場合によりベクターに挿入された、本開示の核酸分子(複数可)で形質転換された、宿主細胞も提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。さらなる実施形態では、哺乳動物宿主細胞は、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。他の実施形態では、宿主細胞は、ハイブリドーマである。
【0237】
追加の実施形態では、本開示は、Gmd結合抗体を産生するのに好適な条件下で、本明細書で開示される形質転換された宿主細胞またはハイブリドーマを培養することを含む、本明細書で提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を作製する方法を提供する。本開示は、場合により、宿主細胞から分泌されたGmd結合抗体を単離することを提供する。本開示はまた、場合により、この方法を使用して産生されたGmd結合抗体、ならびにGmd結合抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0238】
発現制御配列及び発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存する。多種多様な発現宿主/ベクターの組み合わせを用いることができる。真核生物宿主で有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス、及びサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主で有用な発現ベクターとしては、pCR1、pBR322、pMB9及びそれらの誘導体を含むE.coli由来のプラスミドなどの既知の細菌プラスミド、ならびにM13及び繊維状一本鎖DNAファージといったより広い宿主の範囲のプラスミドも挙げられる。
【0239】
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)の発現に好適な宿主細胞としては、適切なプロモーターの制御下の、原核生物、酵母、昆虫、または高等真核細胞が挙げられる。原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性の生物、例えば、E.coliまたは桿菌が含まれる。高等真核細胞には、後述する哺乳動物由来の樹立細胞系が含まれる。無細胞翻訳系を用いることもできる。抗体産生を含むタンパク質産生の方法に関する追加の情報は、例えば、米国出願公開第2008/0187954号、米国特許第6,413,746号及び同第6,660,501号、ならびに国際出願公開第WO04/009823号に見出すことができ、これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0240】
様々な哺乳動物または昆虫細胞培養系を好都合に利用して、組換えGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を発現させることもできる。哺乳動物細胞における組換えGmd結合抗体の発現は、そのようなタンパク質が概して正しく折り畳まれ、適切に修飾され、かつ完全に機能的であるために行われ得る。好適な哺乳動物宿主細胞系の例としては、HEK-293及びHEK-293T、Gluzman(Cell 23:175(1981))によって記述されたサル腎臓細胞のCOS-7系、ならびに、例えばL細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、及びBHK細胞系を含む他の細胞系が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、複製起点、発現させようとする遺伝子に連結された好適なプロモーター及びエンハンサー、及び他の5’または3’隣接非転写配列などの非転写エレメント、ならびに、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプター部位、及び転写終結配列などの5’または3’非翻訳配列を含み得る。昆虫細胞において異種タンパク質を産生するためのバキュロウイルス系は、Luckow and Summers,BioTechnology 6:47(1988)によって概説されている。
【0241】
形質転換された宿主細胞またはハイブリドーマによって産生されたGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、任意の好適な方法に従って精製され得る。そのような標準的方法には、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解性の差、またはタンパク質精製のための任意の他の標準的技法が含まれる。ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのアフィニティータグをタンパク質に結合させて、適切なアフィニティーカラムに通すことによる容易な精製を可能にすることができる。タンパク質分解、核磁気共鳴、及びx線結晶構造解析などの技法を使用して、Gmd結合抗体を物理的に特性解析することもできる。
【0242】
例えば、組換えGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を培地に分泌する系からの上清を、まず、市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮することができる。濃縮ステップ後、濃縮物を好適な精製マトリックスに適用してもよい。あるいは、アニオン交換樹脂、例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)のペンダント基を有するマトリックスまたは基質を用いてもよい。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質精製に一般に用いられる他の種類でもよい。あるいは、カチオン交換ステップを用いてもよい。好適なカチオン交換体には、スルホプロピルまたはカルボキシメチル基を含む様々な不溶性マトリックスが含まれる。最後に、疎水性RP-HPLC媒体、例えば、ペンダントメチル基または他の脂肪族基を有するシリカゲルを用いる、1つ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)ステップを用いて、Gmd結合抗体をさらに精製してもよい。前述の精製ステップのいくつかまたはすべてを、様々な組み合わせで慣例的に用いて、均質な組換えGmd結合抗体をもたらすこともできる。
【0243】
細菌培養で産生された組換えGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、例えば、最初に細胞ペレットから抽出し、その後、1つ以上の濃縮、塩析、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィーステップを行うことにより、単離することができる。最終的な精製ステップには高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることができる。組換えタンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクリング、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む、任意の簡便な方法によって破壊することができる。
【0244】
完全長抗体及び抗原結合抗体断片などの標的Gmd結合抗体を精製するための当技術分野で公知の方法には、例えば、米国出願公開第2008/0312425号、同第2008/0177048号、及び同第2009/0187005号に記載されているものも含まれ、これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0245】
使用方法
本開示のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、in vitro及びin vivoの診断用途及び治療用途に応用される。例えば、Gmd結合抗体は、種々の疾患または病態を処置、防止、または診断するために、培養下の細胞に、例えば、in vitroもしくはin vivoで、または対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、ヒト抗体、マウス抗体、またはヒト化抗体である。
【0246】
提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症(感染症関連病態を含む)の診断方法、予後予測方法、及び処置方法を含むがこれらに限定されない、種々の用途において有用である。
【0247】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示されるGmd結合抗体と患者サンプルを接触させることと、サンプル中に存在するGmd結合抗体とS.aureusまたはGmdとの間の免疫複合体の存在を検出することとを含み、免疫複合体の検出が、患者サンプル中のStaphylococcusの存在を示す、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症を診断または予後予測する方法を提供する。さらなる実施形態では、患者サンプルは患者の血液、血清、または血漿に由来する。
【0248】
別の実施形態では、本開示は、本明細書で開示されるGmd結合抗体と生物学的サンプルを接触させることと、サンプル中のGmd結合抗体とStaphylococcusまたはGmdタンパク質との間に形成された免疫複合体の存在を検出することとを含み、免疫複合体の検出が、サンプル中のStaphylococcusの存在を示す、サンプル中のStaphylococcus(例えば、S.aureus)の存在を判定する方法を提供する。さらなる実施形態では、サンプルは生物学的サンプル(例えば、対象の血液、血清、または血漿を含む、またはそれに由来するサンプル)である。「生物学的サンプル」とは、個体、細胞系、組織培養物、またはGmdを含むもしくは発現する可能性のある他の細胞源から得られる、任意の生物学的サンプルを意味する。哺乳動物から組織生検及び体液を得るための方法は当技術分野で公知である。Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片、ならびにそれらのバリアント及び誘導体)は、当業者に知られる従来の免疫組織学的方法(例えば、Jalkanen,et al.,J.Cell. Biol.101:976-985(1985)、Jalkanen et al.,J.Cell Biol.105:3087-3096(1987)を参照のこと)を使用して、生物学的サンプル中のGmdレベルをアッセイするために使用することもできる。Gmdタンパク質発現を検出するために有用な他の抗体ベースの方法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、またはウエスタンブロッティングなどのイムノアッセイが含まれる。本明細書で使用される場合、「生物学的サンプル中のGmdレベルをアッセイする」とは、第1の生物学的サンプル中のGmdタンパク質のレベルを、直接的に(例えば、絶対的なタンパク質レベルを判定または推定することにより)、または相対的に(例えば、第2の(対照)生物学的サンプル中の疾患関連ポリペプチドレベルと比較することにより)、質的または量的に測定または推定することを意味する。第1の生物学的サンプル中のGmdタンパク質発現レベルを測定または推定し、標準Gmdタンパク質レベルと比較することができ、この標準は、障害を有しない個体から取得された第2の生物学的サンプルから得られるか、または障害を有しない個体の集団からのレベルを平均することによって決定される。当技術分野において理解されるように、「標準」Gmdタンパク質レベルが分かれば、これを比較用標準として繰り返し使用することができる。
【0249】
追加の実施形態では、本開示は、本明細書で提供されるGmd結合抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、医薬品として使用するための、Gmd結合抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本開示は、Gmdを発現する微生物、例えばS.aureusの感染症、及び該感染症に関連する病態を処置するための、本明細書で開示される医薬組成物の使用も提供する。いくつかの実施形態では、感染症に関連する病態は、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、または乳房炎である。
【0250】
いくつかの実施形態では、本開示は、Staphylococcus感染症を有するまたは有するリスクのある対象に、有効量の本開示のGmd結合抗体または医薬組成物を投与することを含む、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、StaphylococcusはS.aureusである。いくつかの実施形態では、この方法は、対象におけるStaphylococcus力価を減少させる。さらなる実施形態では、本開示は、患者におけるStaphylococcus感染症に関連する病態を処置する方法を提供する。提供される方法を使用して対象において処置され得る病態は、発熱、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎を含むが、これらに限定されない。
【0251】
本開示は、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)とStaphylococcusとを接触させることを含む、Staphylococcus(例えば、S.aureus)の増殖を阻害する方法も提供する。いくつかの実施形態では、StaphylococcusはS.aureusである。いくつかの実施形態では、Staphylococcusの増殖を阻害する方法は、in vitroで行われる。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、この方法はin vivoで行われる。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vivo増殖を20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、または80%~100%阻害する。いくつかの実施形態では、この方法は、Gmd結合抗体と抗生物質耐性Staphylococcus(例えば、S.aureus)とを接触させることを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、Gmd結合抗体とメチシリン感受性S.aureusとを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体とメチシリン感受性S.aureus(MSSA)とを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体とメチシリン耐性S.aureus(MRSA)とを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体とバンコマイシン耐性S.aureus(VRSA)とを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体とダプトマイシン耐性S.aureus(DRSA)とを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体とリネゾリド耐性S.aureus(LRSA)とを接触させることを含む。場合によっては、この方法は、Gmd結合抗体と、バンコマイシン中間感受性S.aureus(VISA)などの改変された抗生物質感受性を有する細菌とを接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、有効量のGmd結合抗体をそれを必要とする対象に投与することを含む、対象におけるStaphylococcusの増殖を阻害する方法を提供する。
【0252】
いくつかの実施形態では、本開示は、Staphylococcus感染症を有するまたは有するリスクのある患者に、有効量のGmd結合抗体(例えば、表1に開示されるVH及びVLのペアの配列を含む完全長抗体またはGmd結合抗体)を投与することを含む、Staphylococcus感染症を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、Staphylococcus感染症に関連する病態を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該感染症に関連する病態は、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎(maspatientis)からなる群から選択される。
【0253】
さらなる実施形態では、本開示は、S.aureus感染症を有するまたは有するリスクのある患者に、有効量のGmd結合抗体(例えば、表1に開示されるVH及びVLのペアの配列を含む完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を投与することを含む、S.aureus感染症を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、S.aureus感染症に関連する病態を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該感染症に関連する病態は、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎(maspatientis)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、S.aureusは、1つ以上のβ-ラクタム抗菌剤に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、S.aureusは、VRSA、DRSA、LRSA、及びVISAからなる群から選択されるメンバーである。
【0254】
いくつかの実施形態では、本開示は、骨感染症または関節感染症を有するまたは有するリスクのある患者に、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体(例えば、表1に開示される配列を有する完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与することを含む、Staphylococcus(例えば、S.aureus)の骨感染症または関節感染症を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、Staphylococcusの骨感染症または関節感染症を有するまたは有するリスクのある患者に、有効量のGmd結合抗体Gmd結合抗体(例えば、表1に開示されるVH及びVLのペアの配列を含む完全長抗体またはGmd結合抗体)を投与することを含む、骨髄炎を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、感染症は、S.aureus感染症である。いくつかの実施形態では、S.aureusは、MSSAである。追加の実施形態では、S.aureusは、抗生物質に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、S.aureusは、MRSAである。いくつかの実施形態では、S.aureusは、1つ以上のβ-ラクタム抗菌剤に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、S.aureusは、VRSA、DRSA、LRSA、及びVISAからなる群から選択されるメンバーである。
【0255】
追加の実施形態では、本開示は、患者に医療デバイス(例えば、整形外科用インプラント、歯科用インプラント、またはENTインプラント)または組織移植片を導入する方法であって、医療デバイスを必要とする患者に、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与することと、整形外科用インプラント、組織移植片、または医療デバイスを患者に導入することとを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、医療デバイス(例えば、整形外科用インプラント)を導入する前に患者に投与される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、医療デバイスの導入と同時に患者に投与される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、医療デバイスが導入された後に患者に投与される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、医療デバイスが患者に導入される前及び後に患者に投与される。
【0256】
別の態様では、本開示は、Staphylococcus(例えば、S.aureus)の存在についてサンプルをスクリーニングする方法を提供する。いくつかの実施形態では、サンプルは、血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルは、粘膜関連リンパ組織(MALT)サンプル、脳脊髄液サンプル、関節液サンプル、胸膜液サンプル、唾液サンプル、尿サンプル、または組織生検サンプルである。いくつかの実施形態では、この方法は、本明細書で開示されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)とサンプルを接触させることと、免疫複合体がGmd結合抗体とStaphylococcusまたはGmdとの間に生じるかどうかを検出することとを含み、免疫複合体の検出は、サンプル中のStaphylococcusの存在を示す。免疫複合体の形成を検出する方法は、当技術分野で公知であり、サンプル中のStaphylococcusの存在を検出するために適用すること、または慣例的に改変することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるGmd結合抗体のうちの1つ以上を使用するイムノアッセイを使用して、サンプル中のStaphylococcusの存在を検出する。本明細書に記載される、または当技術分野で知られる様々なイムノアッセイが、提供される方法を行う際に使用でき、これは例えば、ラテックス凝着法、比濁法、ラジオイムノアッセイ法(例えば、RIA及びRIMA)、酵素イムノアッセイ法(例えば、ELISA及びEIA)、ゲル拡散沈降反応、フローサイトメトリー、免疫電気泳動(例えばウエスタンブロッティング)、ドットブロット法、免疫拡散アッセイ、プロテインAイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ(例えば、FIA及びIFMA)、免疫クロマトグラフィー法、及び抗体アレイ法などの一般的なイムノアッセイ法を含む。タンパク質を標識するための様々な方法が、当技術分野で公知であり、提供される方法を行う際に使用できる。
【0257】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)と、薬学的に許容される担体とを含み、Gmd結合抗体は、標識基またはエフェクター基をさらに含む。「標識」は、スクリーンでの検出を可能にするために結合される1つ以上の元素、同位体、または化合物を指す。標識は一般に、(a)放射性同位体または重同位体であり得る同位体標識、(b)蛍光色素及び比色色素、または他の標識方法を可能にするビオチンなどの分子を含み得る小分子標識、ならびに(c)抗体によって認識される融合パートナーとして組み込まれるエピトープであり得る免疫標識という3つのクラスに分けられ、「標識基」は、あらゆる検出可能な標識を指す。いくつかの実施形態では、標識基は、潜在的な立体障害を低減させるために、スペーサー(例えば、ペプチドスペーサー)を介してGmd結合抗体にカップリングされる。標識は、任意の位置で化合物に組み込むことができ、タンパク質発現中にin vitroまたはin vivoで組み込むことができる。タンパク質を標識するための様々な方法が、当技術分野で公知であり、提供される方法を行う際に使用できる。追加の実施形態では、標識基は、同位体標識、磁性標識、レドックス活性部分、光学色素、ビオチン化基、及び二次レポーターによって認識されるポリペプチドエピトープからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、標識基は、緑色蛍光タンパク質またはその誘導体(例えば、改良型GFP、青色蛍光タンパク質またはその誘導体(例えば、EBFP(改良型青色蛍光タンパク質)、EBFP2、Azurite、mKalama1、シアン蛍光タンパク質またはその誘導体(例えば、ECFP(改良型シアン蛍光タンパク質)、Cerulean、CyPet)、黄色蛍光タンパク質またはその誘導体(例えば、YFP、Citrine、Venus、YPet)などの蛍光タンパク質である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドエピトープは、ビオチンペプチド、ヒスチジンペプチド(his)、血球凝集素(HA)、Flag、金結合ペプチドから選択されるメンバーである。追加の実施形態では、エフェクター基は、放射性同位体、ラジオヌクレオチド、毒素、治療剤及び化学療法剤からなる群から選択される。
【0258】
Gmd活性を阻害する方法も提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)とGmdを接触させることを含む。場合によっては、この方法はin vivoで行われる。他の場合には、この方法はin vitroで行われる。いくつかの実施形態では、Gmd活性の遮断は、(a)S.aureusのin vitro増殖を阻害すること、(b)S.aureusのin vivo増殖を阻害すること、(c)S.aureus(例えば、Xen29)の凝集(クラスター化)を促進すること、(d)S.aureusの細胞非依存性溶解を促進すること、(e)S.aureusの二分裂を減少させること、及び(f)≦1nMかつ≧1pMのKDで(例えば、BIACORE(登録商標)分析によって判定した場合)、配列番号72のアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合することから選択される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの2つ、3つ、または4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、上記の特徴のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを有する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、S.aureusのin vitro増殖を5%~100%、10%~80%、または10%~60阻害する。
【0259】
一実施形態では、本開示は、Gmd、またはGmdを発現する微生物、例えばS.aureusに関連する、感染症もしくは病態を有する、または感染症もしくは病態を有するリスクのある対象に、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を投与することを含む、感染症または感染症関連病態の処置を提供する。別の実施形態では、処置は、対象から単離された組織または細胞へのGmd結合抗体の投与を含み、この対象は、Gmd、またはGmdを発現する微生物、例えばS.aureusに関連する、感染症もしくは病態を有するか、または感染症もしくは病態を有するリスクがある。
【0260】
本開示は、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。対象におけるGmd媒介活性またはGmdを発現する生物(例えば、S.aureus)の存在に関連する病態を処置する及び/または寛解させる方法であって、それを必要とする対象に、本明細書で提供されるGmd結合抗体を含む有効量の医薬組成物を投与することを含む方法も提供される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、単独で投与される。他の実施形態では、Gmd結合抗体は、併用療法として投与される。有効量のGmd結合抗体を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象におけるGmd活性またはGmdを発現する生物(例えば、S.aureus)の存在を低減させる方法も提供される。
【0261】
本明細書で提供されるように、有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、Staphylococcus感染症または関連する病態を処置するために投与され得る。いくつかの実施形態では、投与される抗Gmd抗体は、表1に開示されるVH及びVLのペアを有する抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または表1に開示されるVH及びVLのペアを有する抗体とGmdへの結合を競合する。いくつかの実施形態では、投与される抗Gmd抗体は、表1に開示されるVH及びVLのペアを有する抗体と同じGmdのエピトープに結合する。場合によっては、対象は、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症を有するか、または有するリスクがある。
【0262】
別の態様では、本開示は、Staphylococcus感染症を有するまたは有するリスクのある対象に、有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与することを含む、Staphylococcus感染症を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体の投与は繰り返される。初回投与及び繰り返し投与は、他の療法と同時でも、他の療法に対して順次でもよく、全身的に行われても、Staphylococcus感染症の部位に直接行われてもよく、その両方でもよい。いくつかの実施形態では、Staphylococcus感染症を処置する方法は、皮膚、筋肉、心臓、気道、消化管、眼、腎臓及び尿路の感染、ならびに骨または関節の感染を含むがこれらに限定されない部位における、Staphylococcus感染症を処置するために使用される。本明細書で開示される処置の方法は、ヒト及び非ヒト哺乳動物を含む任意の必要な患者を処置するために使用することができるが、該方法は、あらゆる年齢の免疫無防備状態患者、及び50歳を超える年齢の患者のために特に有用である。
【0263】
別の実施形態では、本開示は、S.aureus感染症を有するまたは有するリスクのある対象に、有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与することを含む、S.aureus感染症を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体の投与は繰り返される。初回投与及び繰り返し投与は、他の療法と同時でも、他の療法に対して順次でもよく、全身的に行われても、Staphylococcus感染症の部位に直接行われてもよく、その両方でもよい。いくつかの実施形態では、この方法は、皮膚、筋肉、心臓、気道、消化管、眼、腎臓及び尿路、ならびに骨または関節から選択される部位における、Staphylococcus感染症を処置するために使用される。
【0264】
いくつかの実施形態では、本開示は、心内膜炎を有するまたは有するリスクのある対象に、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与することを含む、心内膜炎を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、対象は、S.aureus関連心内膜炎を有するか、または有するリスクがある。
【0265】
いくつかの実施形態では、本開示は、骨髄炎を有するまたは有するリスクのある対象に、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与することを含む、骨髄炎を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、骨感染症または関節感染症を有するまたは有するリスクのある対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、Staphylococcusの骨感染症または関節感染症を有するか、または有するリスクがある。さらなる実施形態では、対象は、S.aureusの骨感染症または関節感染症を有するか、または有するリスクがある。これらの薬剤または組成物の投与は、上記の経路または当技術分野で公知の他の経路のいずれを使用して行ってもよいが、特定の実施形態では、薬剤は骨または関節の感染部位に直接投与される。
【0266】
いくつかの実施形態では、本開示は、デバイス/インプラント関連感染症を有するまたは有するリスクのある対象に、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与することを含む、デバイス/インプラント関連感染症を処置する方法を提供する。さらなる実施形態では、対象は、S.aureus関連のデバイス/インプラント関連感染症を有するか、または有するリスクがある。いくつかの実施形態では、インプラントは、整形外科用または歯科用インプラント、例えば、骨を置換するインプラント、もしくは骨への固定を行うインプラント、関節の連結面を置換するインプラント、人工装具の支台部を提供するインプラント、またはそれらの組み合わせである。他の実施形態では、インプラントは、耳、鼻、及び/または咽喉(「ENT」)用途のためのものである。いくつかの実施形態では、インプラントは、人工装具である。他の実施形態では、インプラントは、心血管デバイス(例えば、心臓弁、アロプラスチック血管壁支持体、または完全人工心臓インプラント)である。他の実施形態では、インプラントは、Kirschnerワイヤ、骨プレート、スクリュー、ピン、タック、ロッド、釘、ナット、ボルト、座金、スパイク、ボタン、ワイヤ、フラクチャープレート、内部人工装具及び外部人工装具、骨内経皮人工装具、スペーサー、メッシュ、インプラント支台部、アンカー、バーブ、クランプ、縫合糸、任意の形状の管、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。追加の実施形態では、インプラントは、眼科用インプラントである。他の実施形態では、インプラントは、眼科用インプラントではない。
【0267】
特定の実施形態では、提供される方法は、感染率、感染症の重篤度、感染症の持続期間、感染もしくは他の合併症(例えば、汚染された開放創及び感染、または感染のリスクがある閉鎖創)の存在下での創傷治癒時間、またはそれらの任意の組み合わせを低減させる。ある特定の実施形態では、防止的または治療的な処置の方法は、SRCもしくは膿瘍の総数を低減させる、もしくは完全に消失させる、及び/または無菌のSRCもしくは膿瘍の数を増加させることができる(SRCもしくは膿瘍が存在すると仮定する)。ある特定の実施形態では、病変サイズまたは体積の低減によって示される、溶骨性病変の部分的または完全な治癒が想定される。
【0268】
医療デバイス(例えば、整形外科用インプラント)に関する手術部位感染(SSI)は、著しい患者罹患率及び死亡率につながる、よく知られた、広く行き渡った深刻な問題である。医療デバイスはしばしば、骨ではなく感染したデバイス周辺の線維組織の形成を引き起こす細菌コロニー形成及びバイオフィルムの巣となる。このシナリオは、骨を分解し、セグメントを安定化させるために必要なデバイス固定(多くの場合、最初の手術の主な目的)を低下させることにより、患者転帰をさらに複雑にする。しかし、インプラントと骨の界面の安定性を維持する必要があるため、デバイスを適所に留置し、潅注、創傷清拭(複数可)及び/または抗生物質などで感染症の処置を試みることが、一般的な脊椎固定術などの多くの手技の標準治療となっている。いくつかの実施形態では、本開示は、SSIを有するまたは有するリスクのある対象に、本明細書で開示される有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与することを含む、SSI関連感染症を処置する方法を提供する。
【0269】
本開示によって提供される処置方法は、任意の必要な患者を処置するために使用することができるが、該方法は、あらゆる年齢の免疫無防備状態患者、及び50歳を超える年齢の患者のために特に有用である。
【0270】
一実施形態では、整形外科用インプラント、医療デバイス、または移植片を導入する方法は、整形外科用インプラント、医療デバイス、または移植片を必要とする患者に、有効量のGmd結合抗体もしくはGmd結合抗体断片またはそれを含む医薬組成物を、全身的に、または埋め込み部位に直接投与することを含む。あるいは、またはさらに、整形外科用インプラント、医療デバイス、または移植片は、インプラント部位におけるその埋め込みの前、その間、またはその直後に、モノクローナル抗体もしくは結合断片またはそれを含む医薬組成物でコーティングまたは処理されてもよい。
【0271】
整形外科用インプラントは、人工関節、移植片、または合成インプラントなど、Staphylococcus感染症になりやすい任意の種類のインプラントであり得る。例示的な人工関節は、限定されるものではないが、人工膝、人工股関節、人工指、人工肘、人工肩、人工側頭下顎、及び人工足関節を含む。他の人工装具を使用することもできる。例示的な移植片または合成インプラントは、限定されるものではないが、血管移植片、心臓弁インプラント、人工椎間円板、半月板インプラント、または合成もしくは同種移植片の前十字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯、後十字靱帯、アキレス腱、及び回旋腱板を含む。他の移植片またはインプラントを使用することもできる。
【0272】
医療デバイスは、Staphylococcus感染症になりやすい任意の医療デバイスであり得る。例示的な医療デバイスは、限定されるものではないが、心臓ペースメーカー、脳脊髄液シャント、透析カテーテル、または人工心臓弁を含む。
【0273】
さらなる実施形態では、本開示は、整形外科用インプラント、組織移植片、または医療デバイスを患者に導入する方法であって、そのようなインプラントを必要とする患者に、本明細書で開示される有効量のモノクローナル抗体、結合部分、または医薬組成物を投与することと、整形外科用インプラントまたは医療デバイスを患者に導入することとを含む方法を提供する。
【0274】
一実施形態では、本開示は、整形外科用インプラントまたは医療デバイスを対象に導入する方法を提供する。この方法は、有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、投与されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、表1に開示されるVH及びVLのペアを有する抗体のGmdへの結合を交差遮断するか、または表1に開示されるVH及びVLのペアを有する抗体とGmdへの結合を競合する。いくつかの実施形態では、投与されるGmd結合抗体は、表1に開示されるVH及びVLのペアを有する抗体と同じGmdのエピトープに結合する。
【0275】
別の実施形態では、本開示は、整形外科用インプラントを必要とする対象に、有効量の本開示のGmd結合抗体または医薬組成物を投与することと、整形外科用インプラントを対象に導入することとを含む、対象に整形外科用インプラントを導入する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、Gmd結合抗体または医薬組成物を埋め込み部位に直接投与することを含む。追加の実施形態では、整形外科用インプラントは、インプラント部位におけるインプラントの埋め込みの前、その間、またはその直後に、Gmd結合抗体または医薬組成物でコーティングまたは処理される。いくつかの実施形態では、整形外科用インプラントは、人工関節、移植片、または合成インプラントである。例示的な人工関節は、限定されるものではないが、人工膝、人工股関節、人工指、人工肘、人工肩、人工側頭下顎、及び人工足関節を含む。本明細書に記載される、または当技術分野で知られる、他の人工装具を使用することもできる。例示的な移植片または合成インプラントは、限定されるものではないが、人工椎間円板、半月板インプラント、または合成もしくは同種移植片の前十字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯、後十字靱帯、アキレス腱、及び回旋腱板を含む。他の移植片またはインプラントは、本明細書に記載されているか、または当技術分野で知られており、これらを使用することもできる。
【0276】
いくつかの実施形態では、本開示は、整形外科用インプラントを対象に導入する方法を提供し、この方法は、全関節再置換物を取り付けるプロセスを包含する。最初の関節置換の感染症、特にStaph感染症が生じた場合、唯一実行可能な処置は、全関節再置換である。この処置は、感染した人工関節を取り外し、その後、根底にある感染症について対象を処置することを含む。この処置は通常、長期間(例えば、6か月)にわたって行われ、その間、対象は動くことができず(または可動性が限られている)、根底にある感染症を処置するために高用量の抗生物質を受ける。根底にある感染症が処置されたら、新しい人工関節が取り付けられる。本開示のいくつかの実施形態では、本明細書で提供されるGmd結合抗体または医薬組成物は、感染した人工関節を取り外した後に対象に投与される。本明細書で提供される追加の実施形態では、新しい人工関節の取り付けの直前(すなわち、新しい人工関節を取り付ける前の2週間以内)、そして場合によりその後に、本明細書で開示されるGmd結合抗体または医薬組成物が対象に投与される。この処置は、取り付け後の期間に1回以上繰り返され得る。抗生物質による処置を、Gmd結合抗体または医薬組成物と組み合わせて、またはそれと同時に施与してもよい。これらの処置は、全関節再置換中の感染または再感染を防止するために有効である。
【0277】
デバイス感染症の発症における重要なステップは、異物表面への細菌の接着及び細菌バイオフィルムの形成である。バイオフィルムは、自己産生されたポリマーマトリックスに封入され、不活性なまたは生きた表面に接着する、細菌細胞の構造化された群集と定義される。例えば整形外科的外傷では、整形外科的ハードウェアの5~10%ほどが宿主感染を助長し、開放骨折、戦闘関連傷害、及び関節再置換の発生率が増加している。ほとんどの天然のバイオフィルムは複数の細菌種によって形成されるが(Yang et al.,Int.J.Oral Sci.,3:74-81(2011))、バイオフィルムは単一の細菌株によって形成される場合もある。バイオフィルム集団への抗生物質の適用は、それらの独特の生理機能及び物理的なマトリックスバリアのために、効果的でないことが多い。
【0278】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、例えば、外科用インプラント、ステント、カテーテル、及び別の留置医療デバイスとの関連で、バイオフィルムの形成を防止するまたは低減させるために使用される。
【0279】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)とバイオフィルムを接触させることを含む、バイオフィルム感染症を処置する方法を提供する。
【0280】
いくつかの実施形態では、本開示は、バイオフィルム感染症を有するまたは有するリスクのある対象に、有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を投与することを含む、バイオフィルム感染症を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、バイオフィルムは、抗生物質耐性菌を含む。さらなる実施形態では、バイオフィルム細菌は、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)、バンコマイシン耐性S.aureus(VRSA)、ダプトマイシン耐性S.aureus(DRSA)、またはリネゾリド耐性S.aureus(LRSA)である。いくつかの実施形態では、該細菌は、改変された抗生物質感受性を有する。さらなる実施形態では、該細菌は、バンコマイシン中間感受性S.aureus(VISA)を有する。
【0281】
いくつかの実施形態では、本開示は、グラム陽性菌(例えば、S.aureusなどのStaphylococcus)を含むバイオフィルム及び/またはバイオフィルム関連感染症を処置または破壊する方法を提供し、前記方法は、Staphylococcus(例えば、S.aureus)を含むバイオフィルム中のグラム陽性菌を消散させるまたは殺傷するのに有効な量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)とバイオフィルムを接触させることを含む。該方法のいくつかの実施形態では、接触させるステップは、ヒトによる使用またはヒトにおける使用を特に目的とする溶液、材料、またはデバイスを滅菌または除染するために、in vitroまたはex vivoで行われる。いくつかの実施形態では、バイオフィルムに関連する細菌は、抗生物質耐性菌である。さらなる実施形態では、バイオフィルムに関連する細菌は、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)、バンコマイシン耐性S.aureus(VRSA)、ダプトマイシン耐性S.aureus(DRSA)、またはリネゾリド耐性S.aureus(LRSA)である。
【0282】
追加の実施形態では、本開示は、バイオフィルム中のグラム陽性菌を殺傷する方法であって、バイオフィルム中のグラム陽性菌(例えば、S.aureus)を殺傷するのに有効な量の提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)とバイオフィルムを接触させるステップを含み、それによってヒトにおけるグラム陽性菌の数が低減する方法を提供する。この方法の特定の態様において、対象は、Staphylococcus(例えばS.aureus)菌に曝露されるか、または曝露されるリスクがある。一実施形態では、方法はin vivoで行われる。一実施形態では、方法はin vitroまたはex vivoで行われる。一実施形態では、方法はex vivoで行われる。一実施形態では、方法は、哺乳動物対象(例えば、ヒト)による使用または哺乳動物対象(例えば、ヒト)における使用を特に目的とする溶液、材料、またはデバイスを滅菌または除染するために、in vitroまたはex vivoで行われる。
【0283】
追加の実施形態では、本開示は、対象(例えば、ヒト)におけるグラム陽性菌バイオフィルムを防止する、消散させる、または処置する方法を提供し、バイオフィルムは、1つ以上のStaphylococcusまたはStreptococcus菌を含み、この方法は、グラム陽性菌バイオフィルムを有するまたは有するリスクのある対象に、バイオフィルムを防止する、消散させる、または処置するのに有効な量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を投与するステップを含む。さらなる実施形態では、対象におけるグラム陽性菌の数が低減する。特定の実施形態では、グラム陽性菌は、S.aureus菌を含む。さらなる実施形態では、グラム陽性菌は、MRSAを含む。
【0284】
いくつかの実施形態では、本開示は、バイオフィルム中のグラム陽性菌の集団を低減させる方法であって、バイオフィルム中のグラム陽性菌の少なくとも一部を殺傷または放出するのに有効な量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)とバイオフィルムを接触させるステップを含む方法を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、ヒトにおけるバイオフィルムが関わる、またはそれを含む、抗生物質耐性S.aureus感染症を消散させるまたは処置する方法であって、抗生物質耐性S.aureusバイオフィルム感染症を有するヒトに、バイオフィルムを消散させてその中の及び/またはそこから放出されるS.aureusを殺傷するのに有効な量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を投与するステップを含み、それによって、ヒトにおけるS.aureusの数が低減する、及び/または、バイオフィルム及び付随する感染症が低減する方法を提供する。いくつかの実施形態では、細菌またはバイオフィルム細菌は、抗生物質耐性菌を含む。さらなる実施形態では、細菌は、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)、バンコマイシン耐性S.aureus(VRSA)、ダプトマイシン耐性S.aureus(DRSA)、及びリネゾリド耐性S.aureus(LRSA)からなる群から選択される抗生物質耐性菌を含む。
【0285】
いくつかの実施形態では、本開示は、バイオフィルム中のグラム陽性菌を消散させる方法であって、S.aureusを含むバイオフィルム中のグラム陽性菌を消散させるのに有効な量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)とバイオフィルムを接触させるステップを含む方法を提供する。一実施形態では、この方法は、ヒトによる使用またはヒトにおける使用を特に目的とする溶液、材料、またはデバイスを滅菌または除染するために、in vitroまたはex vivoで行われる。細菌は、メチシリン耐性S.aureus(MRSA)、バンコマイシン耐性S.aureus(VRSA)、ダプトマイシン耐性S.aureus(DRSA)、またはリネゾリド耐性S.aureus(LRSA)を含む、抗生物質耐性であり得る。細菌は、例えば、バンコマイシン中間感受性S.aureus(VISA)のように、改変された抗生物質感受性を有し得る。
【0286】
別の実施形態では、本開示は、表面上の細菌バイオフィルムの形成を阻害するまたは低減させる方法であって、ある量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を表面に適用するステップを含む方法を提供する。生体医用材料をGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)でコーティングすると、インプラントへのブドウ球菌などの細菌の初期接着を首尾よく防止することにより、バイオフィルムの形成を回避できる可能性もある。したがって本開示は、本明細書で開示されるGmd結合抗体を投与すること、または本明細書で開示されるGmd結合抗体でデバイスもしくはインプラントをコーティングすることを含む、デバイスまたはインプラントの表面上のバイオフィルム増殖を低減させるまたは防止する方法も提供する。いくつかの実施形態では、デバイスまたはインプラントは、整形外科用または歯科用インプラント、例えば、骨を置換するインプラント、もしくは骨への固定を行うインプラント、関節の連結面を置換するインプラント、人工装具の支台部を提供するインプラント、またはそれらの組み合わせである。別の実施形態では、デバイスまたはインプラントは、耳、鼻、及び/または咽喉(「ENT」)用途のためのもの(例えば、耳チューブ、気管内チューブ、人工呼吸チューブ、蝸牛インプラント、及び骨固定補聴器)である。さらに別の実施形態では、デバイスまたはインプラントは、心臓弁、アロプラスチック血管壁支持体、または完全人工心臓インプラントなどの心血管デバイスである。いくつかの実施形態では、デバイスまたはインプラントは、眼科用インプラントである。他の実施形態では、デバイスまたはインプラントは、眼科用インプラントではない。
【0287】
追加の実施形態では、本開示は、Streptococcus(例えば、S.aureus)感染症及び/または発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎などの関連病態、ならびに上記の疾患または病態のうちの1つ以上に関連する障害/病態を有するまたは有するリスクのある対象に、治療有効量のGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)を、単独で、または1つ以上の追加の療法(例えば、1つ以上の追加の抗菌剤または他の治療剤)と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。
【0288】
本開示は、例えば、所定の処置レジメンの有効性を判定するための、臨床試験手順の一環としての、血液または組織中のタンパク質レベル(例えば、Gmdレベル)の診断的モニタリングのための、本明細書で提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)の使用も提供する。例えば、検出可能な物質にGmd結合抗体をカップリングすることによって検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、及び/または放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンが挙げられ、発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられ、好適な放射性物質の例としては、125I、131I、35S、またはHが挙げられる。
【0289】
医薬組成物及び投与方法
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を調製し、それを必要とする対象に投与する方法は、当業者に公知であるか、または当業者によって容易に決定される。Gmd結合抗体の投与経路は、例えば、経口、非経口、吸入、または局所であり得る。非経口という用語には、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、眼球内、皮下、直腸、または経膣投与が含まれる。これらの投与形態のすべてが本開示の範囲内にあるものとして明確に想定されるが、投与形態の別の例は、注射用の、特に静脈内もしくは動脈内の注射または点滴用の溶液である。通常、好適な医薬組成物は、バッファー(例えば、酢酸、リン酸、またはクエン酸バッファー)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、場合により安定化剤(例えば、ヒトアルブミン)などを含み得る。本明細書の教示に適合する他の方法では、本明細書で提供されるGmd結合抗体を、臓器及び/または線維症もしくは腫瘍の部位に直接送達し、それにより、治療剤への患部組織の曝露を増加させることができる。一実施形態では、投与は、気道に直接、例えば、吸入または鼻腔内投与によって行われる。
【0290】
本明細書に記述されるように、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、Streptococcus(例えば、S.aureus)またはGmd媒介性疾患、ならびにS.aureus感染症、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎などの病態のin vivo処置のために、薬学的有効量で投与され得る。これに関して、本開示のGmd結合抗体が、活性剤の投与を容易にし、その安定性を促進するように製剤され得ることは理解されるであろう。本開示に係る医薬組成物は、薬学的に許容される無毒で無菌の担体、例えば生理食塩水、無毒性バッファー、防腐剤などを含み得る。本出願においては、コンジュゲートされているかコンジュゲートされていないかを問わず、Gmd結合抗体の薬学的有効量は、Gmdへの効果的な結合を達成するため、かつ利益を達成するため、例えば、感染症もしくは病態の症状を寛解させるため、または物質もしくは細胞を検出するために十分な量を意味する。本明細書で開示される治療方法で使用するのに好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.)16th ed.(1980)に記載されている。
【0291】
本明細書で提供される、ある特定の医薬組成物は、例えばカプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含む、許容される剤形で経口投与され得る。ある特定の医薬組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与されてもよい。そのような組成物は、ベンジルアルコールもしくは他の好適な防腐剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、及び/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を用いて、食塩水中の溶液として調製され得る。
【0292】
単一剤形をもたらすために担体材料と組み合わされ得るGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)の量は、処置される対象及び特定の投与様式に応じて変わる。組成物は、単回用量として、複数用量として、または確立された期間にわたって輸液中で投与され得る。投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療的または予防的な応答)を提供するために調整されてもよい。
【0293】
本明細書で提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、前出の処置方法に従って、ヒトまたは他の対象に、治療効果をもたらすために十分な量で投与され得る。Gmd結合抗体は、公知の技法に従って、従来の薬学的に許容される担体または希釈剤とGmd結合抗体を組み合わせることによって調製された従来の剤形で、かかるヒトまたは他の対象に投与され得る。薬学的に許容される担体または希釈剤の形態及び性質は、それと組み合わせられる活性成分の量、投与経路、及び他の周知の可変要素によって決定付けられ得る。1つ以上の異なるGmd結合抗体を含むカクテルを使用することもできる。
【0294】
Streptococcus(例えば、S.aureus)感染症または病態(例えば、感染症、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、及び乳房炎)の処置のためのGmd結合組成物の治療有効用量は、投与の手段、標的部位、対象の生理学的状態、対象がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び処置が予防的であるか治療的であるかを含む、多くの異なる要因に応じて変化する。通常、対象はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も処置され得る。処置投薬量は、安全性及び有効性を最適化するために、当業者に知られる慣例的方法を使用して滴定され得る。
【0295】
細菌感染症及びその関連病態の処置のための提供されるGmd結合抗体及び医薬組成物の有効用量は、投与様式、標的部位、患者の生理学的状態、投与される他の薬剤、及び処置が予防的であるか治療的であるかを含む、多くの異なる要因に応じて変化する。予防的適用においては、比較的低い投薬量が、比較的低頻度の間隔で長い期間にわたって投与される。一部の対象は、残りの生涯にわたって処置を受け続ける可能性がある。治療的適用においては、比較的短い間隔での比較的高い投薬量が、疾患の進行が低減もしくは終止するまで、そして好ましくは対象が感染症または関連病態の症状の部分的または完全な寛解を示すまで、必要とされることがある。それ以降、対象は、予防的投与計画を施与され得る。Staphylococcus感染症に対する予防的処置では、Staphylococcusに個体が曝露される前に医薬組成物(複数可)が投与され得ること、そして、細菌が対象から排除され得るように、生じる免疫応答が、細菌感染症を阻害し得る、またはその重篤度を低減させ得ることが意図される。例えば、Gmd結合抗体または医薬組成物は、関節置換、または人工装具インプラントを要する任意の手技などの外科手技の前、その間、及び/またはその直後に投与され得る。追加の実施形態では、Gmd結合抗体は、外科的切除/除去手技の前、その間、及び/またはその後に対象に投与される。
【0296】
本開示のGmd結合抗体またはGmd結合抗体断片による受動免疫化では、投薬量は、宿主の体重基準で約0.0001~約100mg/kg、より一般には約0.01~約5mg/kgの範囲である。例えば、投薬量は、約1mg/kg体重もしくは約10mg/kg体重、または約1~約10mg/kgの範囲内であり得る。例示的な処置体制は、2週間ごとに1回、または1か月に1回、または3~6か月ごとに1回の投与を伴う。いくつかの方法では、異なる結合親和性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、その場合、投与される各抗体の投薬量は、示された範囲内に入る。受動免疫化抗体療法は、典型的には、複数の機会に施与される。単回の投薬の合間の間隔は、毎日、毎週、毎月、または毎年であり得る。いくつかの方法では、投薬量は、1~1000μg/ml、またいくつかの方法では25~300μg/mlの血漿抗体濃度が達成されるように調整される。あるいは、抗体は徐放製剤として投与されてもよく、その場合、より低頻度の投与が必要とされる。投薬量及び頻度は、対象におけるGmd結合抗体の半減期に応じて変化する。
【0297】
特定の感染症または病態の症状をGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)の投与によって寛解させることは、Gmd結合の投与に起因または関連し得る、恒久的か一時的か、持続的か一過性かを問わない、あらゆる軽減を指す。
【0298】
本開示は、例えば、Staphylococcus(例えば、S.aureus)感染症、またはStaphylococcus(例えば、S.aureus)感染症関連病態(例えば、発熱、菌血症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎、敗血症、皮膚壊死、または乳房炎)を処置する、防止する、または寛解させるための医薬品の製造におけるGmd結合抗体などの、Gmd結合抗体の使用も提供する。
【0299】
併用療法
いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)は、1つ以上の他の療法と組み合わせて投与される。そのような療法は、追加の治療剤及び他の医学的介入を含む。例示的な療法は、例えば、関節置換、または人工装具インプラントを要する任意の手技などの外科手技を含む。
【0300】
補助剤は、溶解酵素の治療効果を相乗的に増強するのに有効な量における、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、マクロライドファミリーの他のメンバー、ペニシリン、セファロスポリン、及びそれらの任意の組み合わせなどの抗生物質であり得る。事実上あらゆる他の抗生物質を、改変型及び/または未改変型の溶解酵素と共に使用することができる。細胞壁ペプチドグリカン生合成に影響を与える抗生物質には、ペプチドグリカンマトリックスへのN-アセチルムラミン酸(NAM)及びN-アセチルグルコサミン(NAG)ペプチドサブユニットの組み込みを防止することによってペプチドグリカン合成を阻害する糖ペプチドが含まれる。利用可能な糖ペプチドには、バンコマイシン及びテイコプラニン;ペプチドグリカン架橋の形成を阻害することによって作用するペニシリンが含まれる。ペニシリンの官能基であるベータラクタム部分は、細菌中のペプチドグリカン分子を結合させるDD-トランスペプチダーゼに結合し、これを阻害する。加水分解性酵素は細胞壁を分解し続け、浸透圧に起因する細胞溶解または死を引き起こす。一般的なペニシリンには、オキサシリン、アンピシリン及びクロキサシリン、ならびに、形質膜の外側にペプチドグリカン構成要素を運ぶ分子であるC55-イソプレニルピロリン酸の脱リン酸化に干渉するポリペプチドが含まれる。細胞壁に影響を与えるポリペプチドはバシトラシンである。他の有用かつ適切な抗生物質には、バンコマイシン、リネゾリド、及びダプトマイシンが含まれる。
【0301】
本開示のGmd結合抗体及び医薬組成物は、単独で、または1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体(例えば、完全長Gmd抗体またはGmd結合抗体断片)は、1つ以上の抗菌剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、Gmd結合抗体は、抗生物質剤または免疫療法剤と組み合わせて投与される。提供される抗体及び医薬組成物と共に投与され得る例示的な抗生物質剤は、限定されるものではないが、バンコマイシン、トブラマイシン、セファゾリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、リファンピン、ゲンタマイシン、フシジン酸、ミノサイクリン、コトリモキサゾール、クリンダマイシン、リネゾリド、キヌプリスチン-ダルホプリスチン、ダプトマイシン、チゲサイクリン、ダルババンシン、テラバンシン、オリタバンシン、セフトビプロール、セフタロリン、イクラプリム、カルバペネムCS-023/RO-4908463、及びそれらの組み合わせを含む。提供される抗体及び医薬組成物と共に投与され得る例示的な免疫療法剤は、限定されるものではないが、テフィバズマブ、BSYX-A1 10、Aurexis(商標)、及びそれらの組み合わせを含む。抗生物質剤及び免疫療法剤の上記リストは非限定的な例であることが意図され、したがって、他の抗生物質剤または免疫療法剤も想定される。第2の治療剤の組み合わせまたは混合物を本開示の目的のために使用することもできる。これらの薬剤は、同時期に、または単一の製剤として投与され得る。
【0302】
さらなる実施形態では、Gmd結合抗体は、(a)ビグアナイド(例えば、ブホルミン、メトホルミン、またはフェンホルミン)、(b)インスリン、(c)ソマトスタチン、(d)アルファ-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、ボグリボース、ミグリトール、またはアカルボース)、(e)DPP-IV阻害剤(例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、またはサキサグリプチン(例えば、米国特許第6,699,871号B1に開示されている))、(f)LXRモジュレーター、(g)インスリン分泌促進物質(例えば、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリボルヌリド、グリクラジド、グリメルピリド(glimerpiride)、グリピジド、グリキジン(gliquidine)、グリソキセピド、グリブリド、グリヘキサミド、グリピナミド、フェンブタミド、トラザミド、トルブタミド、トルシクラミド、ナテグリニド、またはレパグリニド)、(k)CB1阻害剤(例えば、リモナバン、タラナバント、または国際出願公開第WO03/077847号A2及び同第WO05/000809号A1に開示されている他の治療用化合物)、または(l)シブトラミン、(m)トピラマート、(n)オルリスタット、(o)Qnexa、(p)メバスタチン、(q)シンバスタチン、(r)エゼチミブ、(s)アトルバスタチン、(t)ナルトレキソン、(u)ブプリオピオン(bupriopion)、(v)フェンテルミン、(w)ヒドロクロロチアジド、または(x)ロサルタンからなる群から選択されるメンバーと組み合わせて投与される。
【0303】
Gmd結合抗体を含むキット
本開示はさらに、好適なパッケージのGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)と、書面資料とを含み、本明細書に記載される方法を行うために使用され得るキットを提供する。書面資料は、次の情報のいずれを含んでもよい:使用説明書、臨床研究の記述、副作用の一覧、科学的参考文献、添付資料、臨床試験結果、及び/またはこれらの概要など。書面資料は、組成物の活性及び/または利点を示す、もしくは確立する、及び/または投薬、投与、副作用、薬物相互作用、もしくは医療提供者にとって有用な他の情報を記載することができる。かかる情報は、様々な研究、例えば、in vivoモデルを伴う実験動物を使用した研究、及び/またはヒト臨床試験に基づく研究の結果に基づき得る。キットはさらに、別の療法(例えば、別の薬剤)、及び/または、他の療法(例えば、他の薬剤)に関する情報を提供するのに役立つ上述のような書面資料を含んでもよい。
【0304】
ある特定の実施形態では、キットは、1つ以上の容器内に、少なくとも1つの精製されたGmd結合抗体(例えば、完全長抗体またはGmd結合抗体断片)を含む。いくつかの実施形態では、キットは、すべての対照、アッセイを行うための使用法、及び/または結果の分析及び提示のための任意の必要なソフトウェアを含め、検出アッセイを行うために必要及び/または十分な構成要素のすべてを含む。
【0305】
イムノアッセイ
Gmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、免疫特異的結合について、当技術分野で知られる任意の方法によってアッセイされ得る。使用され得るイムノアッセイは、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(REA)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝着アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光イムノアッセイ、またはプロテインAイムノアッセイのような技法を使用する競合アッセイ系及び非競合アッセイ系を含むが、これらに限定されない。このようなアッセイは、慣例的であり、当技術分野で公知である(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれるAusubel et al.,eds,(1994)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley&Sons,Inc.,NY)Vol.1を参照のこと)。
【0306】
本明細書で提供されるGmd結合抗体(例えば、完全長抗体及びGmd結合抗体断片)は、組織学的に、免疫蛍光法、免疫電子顕微鏡法、または非免疫学的アッセイなどで、Gmdまたはその保存されたバリアントもしくはペプチド断片のin situ検出のために用いられ得る。In situ検出は、当技術分野で公知の方法に従って達成することができる。当業者は、慣例的な実験を用いることにより、各判定のための操作条件及び最適なアッセイ条件を決定することができるであろう。Gmd結合抗体の結合特性の決定に好適な方法は、本明細書に記載されているか、さもなければ当技術分野で公知である。かかる動態分析のために設計された機器及びソフトウェアは市販されている(例えば、BIACORE(登録商標)、BIAevaluation(登録商標)ソフトウェア、GE Healthcare;KINEXA(登録商標)ソフトウェア、Sapidyne Instruments)。
【0307】
別段の記載がない限り、本開示の実践には、当業者の技能の範囲内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技法が用いられる。
【0308】
下記の実施例は、例として提示されるものであり、限定として提示されるものではない。
【0309】
特定の実施形態の前述の説明は、他者が当業者の技能の範囲内にある知識を適用することにより、不要な実験を行うことなく、本開示の一般的概念から逸脱せずに、かかる特定の実施形態を様々な用途のために容易に改変及び/または適合できるように、本開示の一般的性質を完全に明らかにするものである。したがって、そのような適合及び改変は、本明細書で提示される教示及び助言に基づき、開示される実施形態の均等物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書における表現または用語は、本明細書の教示及び助言を考慮することで本明細書の用語または表現が当業者によって解釈されるように、制限ではなく説明を目的としたものであることを理解されたい。
【0310】
本開示の広さ及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきでなく、下記の請求項及びそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【0311】
2021年2月12日に出願された米国出願第63/149,003号の開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0312】
本出願に引用された公開文献、特許、特許出願、及び/または他の文献はすべて、あたかも各個別の公開文献、特許、特許出願、及び/または他の文献があらゆる目的のために参照により組み込まれることが個別に示されるのと同じ程度まで、あらゆる目的のために、それらの全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0313】
以下の実施例は、特許請求される主題の実践を例示することを意図しているが、決してその範囲を限定することを意図するものではない。
【0314】
実施例1。ヒト化Gmd結合抗体の生成
複数ラウンドの選択手順を使用して、高い親和性でGmdと結合するヒト化ヒトIgG抗体を選択した。
【0315】
実施例2。Gmd結合抗体の特性解析
【0316】
先の実施例に従って生成された例示的な最適化ヒト化抗Gmd結合抗体を、配列、SPR、及び細胞ベースの脂肪分解阻害アッセイの分析によってさらに特性解析した。
【0317】
実施例1に記載の方法に従って生成された例示的なヒト化Gmd結合抗体の配列を表1に提示する(例示的なCDR配列には下線が引かれている)。親1C11抗体に対応する配列を表2に提示する。
【表1】







【表2】

【国際調査報告】