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特表2024-507792ロック機能を有する電気スイッチ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ロック機能を有する電気スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/32 20060101AFI20240214BHJP
   H01H 50/16 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01H50/32 B
H01H50/16 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549016
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022053750
(87)【国際公開番号】W WO2022175299
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021103542.2
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514122166
【氏名又は名称】シャルトバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】弁理士法人MM&A
(72)【発明者】
【氏名】クロイツポイントナー、コルビニアン
(72)【発明者】
【氏名】イグナトフ、アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ゲシュケ、マーティン
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの固定接触子と、これと相互作用する可動接触子とを備えると共に、可動接触子を駆動する電磁作動装置を備えるスイッチ装置に関する。電磁作動装置は、磁界を発生させる励磁コイルと、磁界の磁束密度を増幅する磁気ヨークと、磁界によって初期位置から誘引位置まで誘引され、可動接触子に接触される磁石アーマチュアとを有する。加えて、電磁作動装置は、ロック位置からロック解除位置に移動可能なロック部材を有する。ロック位置は、ロック部材がアーマチュアの移動を制限する位置であり、ロック解除位置は、ロック部材がアーマチュアの移動を許容する位置である。ロック部材は、少なくとも部分的に強磁性材料からなり、磁界の効果によってロック部材がロック解除位置からロック位置に移動するように構成される。本発明によれば、磁気ヨークは、ロック部材がロック位置にあるときに不連続部を有するように設計され、磁気ヨークの不連続部は、ロック部材がロック解除位置にあるときにロック部材によって閉じられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの固定接触子(2)及びこれと協働する可動接触子(3)を備えるスイッチ装置(1)であって、
前記スイッチ装置は、前記可動接触子(3)を駆動する電磁作動装置を備え、
前記電磁作動装置は、
磁界を発生させる励磁コイル(4)と、
前記磁界の磁束密度を増幅する磁気ヨーク(5、5.1、5.2、7)と、
前記磁界により初期位置から誘引位置まで誘引されるように構成されると共に、前記可動接触子(3)に接続された磁石アーマチュア(6)と
を備え、
さらに、前記電磁作動装置は、ロック位置からロック解除位置まで移動可能なロック部材(7)を備え、前記ロック位置は、前記ロック部材(7)が前記磁石アーマチュア(6)及び/又は前記可動接触子(3)の移動を制限する位置であり、前記ロック解除位置は、前記ロック部材(7)が前記磁石アーマチュア(6)及び/又は前記可動接触子(3)の移動を許容する位置であり、
前記ロック部材(7)は、少なくとも部分的に強磁性材料から構成され、
前記ロック部材(7)は、前記磁界の作用により前記ロック解除位置から前記ロック位置に移動されるように構成されている
ことを前提とし、
前記ロック部材(7)が前記ロック位置にあるとき、不連続部を有するように前記磁気ヨーク(5、5.1、5.2、7)が構成され、
前記磁気ヨークの前記不連続部は、前記ロック部材(7)が前記ロック解除位置にあるとき、前記ロック部材(7)により閉じられる
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチ装置(1)において、
前記電磁作動装置は、前記磁気ヨーク(5、5.1、5.2、7)の前記不連続部が前記ロック部材(7)により閉じているとき、前記磁石アーマチュア(6)に作用する磁束を増幅するように構成されている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチ装置(1)において、
前記電磁作動装置は、
前記磁気ヨーク(5、5.1、5.2、7)が閉じているとき、前記電磁作動装置のリターンスプリングの力に抗して前記磁石アーマチュア(6)を誘引し、
前記磁気ヨークが遮断されているとき、前記リターンスプリングの力に抗して前記磁石アーマチュア(6)を誘引するには前記磁石アーマチュア(6)に作用する磁束が不十分である
ように構成されている
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のスイッチ装置(1)において、
前記ロック部材(7)は、回動式アーマチュアの形態で構成される
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のスイッチ装置(1)において、
前記ロック部材(7)は、好ましくは予圧ばね(9)の形態であるリセット部材により前記ロック位置に付勢される
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のスイッチ装置(1)において、
前記ロック部材(7)の移動方向は、前記磁石アーマチュア(6)の移動方向を横切る方向であり、好ましくは、前記磁石アーマチュア(6)の移動方向に対して70°から90°の角度をなす
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のスイッチ装置(1)において、
前記磁気ヨーク(5/7)は、前記励磁コイル(4)を囲むU字状部(5)を含み、
前記ロック部材(7)は、前記ロック部材が前記ロック解除位置にあるとき、前記U字状部と前記ロック部材により閉じたヨークが完成するように、前記U字状部の自由端側に配置される
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のスイッチ装置(1)において、
前記磁気ヨーク(5)は、互いに平行に且つ離間して配置された上側ヨークプレート(5.1)及び下側ヨークプレート(5.2)を備え、
前記上側ヨークプレート及び前記下側ヨークプレートは、前記磁石アーマチュア(6)に対して実質的に垂直であり、前記励磁コイルが前記上側ヨークプレート及び前記下側ヨークプレートの間に配置され、
前記ロック部材(7)が前記ロック解除位置にあるとき、前記ロック部材(7)及び前記2つのヨークプレートがU字状部を形成するように、前記ロック部材(7)が配置される
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のスイッチ装置(1)において、
前記ロック部材(7)は、前記磁石アーマチュア(6)又は前記可動接触子に形成されたバックテーパと相互作用して、前記磁石アーマチュア(6)及び/又は前記可動接触子をロック又はロック解除する突起を有する
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のスイッチ装置(1)において、
前記ロック部材(7)の前記突起は、前記磁石アーマチュア(6)及び/又は前記可動接触子(3)をロックするフック(12)の形態で構成された前記バックテーパと協働する突出部(10)の形態で設けられ、
前記フック(12)は、前記磁石アーマチュア(6)若しくは前記可動接触子(3)に形成されるか、又は前記磁石アーマチュア(6)若しくは前記可動接触子(3)に接続される
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項11】
請求項9に記載のスイッチ装置(1)において、
前記ロック部材(7)の前記突起は、前記磁石アーマチュア(6)に対して実質的に垂直に延在する長穴(21)の形態であり、
前記磁石アーマチュア(6)は、前記長穴(21)を通って延在すると共に、環状溝(22)を有し、
前記環状溝(22)は、前記バックテーパを形成し、前記ロック部材(7)内の前記長穴(21)と相互作用して、前記磁石アーマチュア(6)をロック又はロック解除する
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項12】
請求項8、9、11のいずれか1項に記載のスイッチ装置(1)において、
前記ロック部材(7)は、複数の部分から形成され、
前記ロック部材(7)は、互いにヒンジ接続された作動部(7.1)及びロック部(7.2)を有する
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項13】
請求項12に記載のスイッチ装置(1)において、
前記作動部(7.1)と前記ロック部(7.2)とが互いに80°~100°の角度をなし、
前記ロック部(7.2)は、前記2つのヨークプレート(5.1、5.2)に対して実質的に平行に配置され、
前記長孔(21)が前記ロック部(7.2)に形成される
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のスイッチ装置(1)において、
前記ロック位置にある前記ロック部材(7)は、前記初期位置にある前記磁石アーマチュア(6)をロックする
ことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項15】
請求項14に記載のスイッチ装置(1)において、
少なくとも1つの前記固定接触子(2)及びこれと協働する少なくとも1つの前記可動接触子(3)は、前記磁石アーマチュア(6)が前記初期位置にあるとき、開状態となる
ことを特徴とするスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載したスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なスイッチ装置は、少なくとも1つの固定接触子とこれに対応する可動接触子とを備える。また、一般的なスイッチ装置は、可動接触子を駆動する電磁作動装置を備える。電磁作動装置は、磁界を生み出す励磁コイルと、磁界の磁束密度を増幅する磁気ヨークと、磁界によって初期位置から誘引位置へと誘引されるように構成されると共に、可動接触子と接続された磁石アーマチュアとを有する。さらに、電磁作動装置は、ロック位置からロック解除位置へと移動可能なロック部材を含む。ロック位置は、ロック部材が磁石アーマチュア及び/又は可動接触子の移動を制限する位置であり、ロック解除位置は、ロック部材が磁石アーマチュア及び/又は可動接触子の移動を許容する位置である。ロック部材の少なくとも一部は、強磁性材料から構成される。また、ロック部材は、駆動装置の磁界の作用により、ロック解除位置からロック位置に移動するように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、従来の電磁作動式スイッチ装置は、少なくとも1つの固定接触子と、可動接触子とを有する。スイッチ装置の電磁作動装置の励磁コイルが通電されると、可動接触子は、磁石アーマチュアによって固定接触子に移動される。スイッチ装置が車両構造で使用される場合、例えば事故の際に、大きな力が発生して、電磁作動装置を作動させることなしに接触子が意図せずに閉じてしまうといった危険性がある。接触子の誤った閉動作を確実に防止しなければならない。このことは、例えば、磁石アーマチュアをその初期位置に付勢(予圧)する非常に強力なリターンスプリングを使用することによって達成することができるかもしれない。この解決手段の欠点は、リターンスプリングの大きなばね力に打ち勝つために電磁作動装置が相応に強力でなければならないことである。
【0004】
この課題に対処するために、DE 10 2014 211 735 A1は、磁石アーマチュアを初期位置にロックすることを提案している。例えば、強磁性ボールをロック部材として使用することができる。この強磁性ボールは、磁石アーマチュアと励磁コイルの磁気ヨークの対応する凹部に収容され、ロック位置において磁石アーマチュアと磁気ヨークとの間に能動的なロックを生じさせる。励磁コイルが通電されると、それによって発生した磁束が強磁性ボールをアーマチュアの凹部の外へと誘引し、さらに磁気ヨークの凹部内にわずかに引き込むので、磁石アーマチュアの移動が許容される。従って、文献DE 10 2014 211 735 A1は、独立請求項1の前提部におけるスイッチ装置を開示している。
【0005】
本発明の目的は、一般的なスイッチ装置をさらに改良することである。より具体的には、本発明に係るスイッチ装置は、構造が簡単で製造コストが低く、確実なロック解除を確保するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、独立請求項1の特徴部によって解決される。すなわち、本発明に係る課題の解決手段は、ロック部材がロック位置にあるときに磁気ヨークが不連続部を有し、ロック部材がロック解除位置にあるときに磁気ヨークの不連続部がロック部材によって閉じられるように構成されていれば実現される。
【0007】
従って、本発明によれば、ロック部材は、磁気ヨークの一部である。磁石アーマチュア(磁石電機子)に作用する磁束は、磁気ヨークが閉じているときに増幅される。これにより、当初、磁石アーマチュアに大きな力が作用しないので、磁石アーマチュア及び/又は可動接触子が確実にロック解除可能となり、磁石アーマチュアが動かなくなる危険性をなくすことが可能となる点で有利である。磁石アーマチュア及び/又は可動接触子がロック解除され、強磁性ロック部材によって磁気ヨークが閉じられているときにのみ、磁石アーマチュアに作用する磁束が増大し、完全な締め付け力が加えられる。
【0008】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、電磁作動装置は、磁気ヨークが閉じられているとき、電磁作動装置のリターンスプリングの力に抗して磁石アーマチュアを誘引する(引き出す)一方、磁気ヨークが遮断されている(interrupted)とき、磁石アーマチュアに作用する磁束は、リターンスプリングの力に抗して磁石アーマチュアを誘引するには不十分であるように構成される。
【0010】
本発明の別の特に好ましい実施形態によれば、ロック部材は、回動式アーマチュアの態様で構成される。この実施形態は、特に簡単であると同時に信頼性の高い構成をもたらす。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、ロック部材は、好ましくは予圧ばねの形態のリセット部材によってロック位置に付勢される。その結果、ロック部材はロック位置で確実に保持される。従って、磁石アーマチュアも、好ましくはその初期位置で確実にロックされる。リセット部材は、引張ばね又は圧縮ばねの形態で実現されることが好ましい。
【0012】
本発明の別の特に好ましい実施形態によれば、ロック部材の移動方向は、磁石アーマチュアの移動方向を横切る方向に延び、好ましくは磁石アーマチュアの移動方向に対して少なくとも70°~理想的には90°の角度である。これにより、例えばアクシデント時に発生して、磁石アーマチュアの移動方向に作用する力が、ロック部材に影響を及ぼさないか、実質的に影響を及ぼさないことが確保される。ロック部材が回動式アーマチュアとして構成される場合、ロック部材の移動方向は、ロック部材の回動する端部の移動方向(移動経路に沿って変化し得る)として理解されるべきであり、この回動する端部は、例えば回動式アーマチュアが磁気ヨークに回転可能に接続されている場合、円状経路に沿って移動し得る。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、磁石アーマチュアは、励磁コイルを通って延在するタイロッドとして構成される。これにより、特に簡単でコンパクトな構成となる。
【0014】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、磁気ヨークは、励磁コイルを取り囲むU字状部を有する。また、ロック部材は、ロック部材がロック解除位置にあるとき、U字状部とロック部材により閉じたヨークの形成を完成するように、U字状部の自由端側に配置される。この実施形態は、特に簡単な構成にも寄与する。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、磁気ヨークは、互いに平行に且つ離間して配置された上側ヨークプレート及び下側ヨークプレートを含む。両ヨークプレートは、磁石アーマチュアに対して実質的に垂直であり、両ヨークプレートの間には励磁コイルが配置される。ロック部材がロック解除位置にあるとき、ロック部材が2つのヨークプレートに接することで、2つのヨークプレートと共にU字状部を完成させる。従って、この実施形態において、磁気ヨークは、2つのヨークプレートとロック部材によって形成される。ロック部材がロック位置にある際、磁気ヨークの不連続部は、ロック部材と2つのヨークプレートのうちの1つとの間のエアギャップによって形成される。ロック部材がロック解除位置にある際、不連続部は閉じられ、ロック部材は両方のヨークプレートと接触し、磁気ヨークはU字状に閉じられる。これにより、簡単で軽量な磁気ヨークの構成が実現する。
【0016】
有利な特徴として、磁石アーマチュア及び/又は可動接触子をロック又は開放するために、磁石アーマチュア又は可動接触子に形成されたバックテーパと相互作用する突起をロック部材が有してもよい。これにより、磁石アーマチュア又は可動接触子の簡単且つ確実なロック又はロック解除が確保される。
【0017】
突部が磁石アーマチュア又は可動接触子に形成され、バックテーパがロック部材上に形成されてもよい。
【0018】
さらに別の好ましい実施形態によれば、ロック部材の突起は、磁石アーマチュア及び/又は可動接触子をロックするフックの形態で設けられたバックテーパと協働する突出部(protruding nose)の形態で設けられる。フックは、磁石アーマチュア若しくは可動接触子に形成されるか、又は磁石アーマチュア若しくは可動接触子に接続される。フックは、アーマチュアが誘引位置から初期位置に移動するときに突出部がフックと自動的に再係合するように形成されることが好ましい。フックは、アーマチュアに強固に接続された部品、例えばアーマチュアに接続された接触子キャリアに形成されることが好ましい。しかしながら、フックは、例えば、可動接触子に形成してもよく、この可動接触子は、接触子キャリアに強固に接続されるのではなく、1つ以上の接触子付勢ばねを介して接触子キャリアに接続されてもよい。この場合、可動接触子は主にロック部材によって移動が制限される。磁石アーマチュアもロック部材によって移動が制限されるが、それは、接触子付勢ばねのばねストロークが利用された後にのみである。突出部の代わりに、ロック部材は、フックと係合する対応する凹部を有してもよい。
【0019】
有利な特徴として、ロック部材内の突起は、磁石アーマチュアに対して実質的に垂直に延在する長穴の形態であってもよい。また、磁石アーマチュアは、長穴を通って延在すると共に、環状溝を有してもよい。環状溝は、バックテーパを形成し、ロック部材内の長穴と相互作用して、磁石アーマチュアをロック又はロック解除してもよい。これにより、磁石アーマチュアのロックとロック解除を簡単且つ確実に行うこともできる。
【0020】
ロック部材は、一体的に形成されることが好ましく、また、全体が強磁性材料で構成されることが好ましい。しかしながら、ロック部材は、複数の部分から構成されてもよい。例えば、ロック部材は、ロック解除位置で磁気ヨークを完成させる強磁性部と、当該強磁性部に取り付けられて実際のロックを担う部分とを有してもよい。特に、ロック部材は、作動部とロック部とを含み、ロック部と作動部とは互いにヒンジ接続されてもよい。
【0021】
さらに別の実施形態では、作動部とロック部とが互いに80°~100°の角度をなし、ロック部が2つのヨークプレートに対して実質的に平行に配置され、長孔がロック部に形成される。これにより、簡単で安定した設計も可能になる。
【0022】
さらに好ましくは、磁石アーマチュアがロック位置にあるとき、ロック部材が磁石アーマチュアを初期位置にロックする。これにより、磁石アーマチュアが初期位置にあるとき、少なくとも1つの固定接触子及びそれと協働する少なくとも1つの可動接触子が開くことがさらに好ましい。
【0023】
スイッチ装置は、コンタクタであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るスイッチ装置を、磁石アーマチュアが初期位置にあり、ロック部材がロック位置にある状態で示す概略断面図である。
図2図1に示す本発明に係るスイッチ装置を、磁石アーマチュアが依然として初期位置にあり、ロック部材がロック解除位置にある状態で示す図である。
図3図1及び図2の本発明に係るスイッチ装置を、磁石アーマチュアがロック解除されて、磁石アーマチュアが誘引位置となった後の状態で示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るスイッチ装置を、磁石アーマチュアが初期位置にあり、ロック部材がロック位置にある状態で示す側面図である。
図5図4のスイッチ装置を、磁石アーマチュアがロック解除されて、磁石アーマチュアが誘引位置となった後の状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0026】
以下の複数の実施形態では、同一の部分を同一の参照符号で示す。図が、当該図の関連説明において詳細に記載されていない参照符号を含む場合、それより前又は後の図の説明が参照される。
【0027】
図1は、本発明に係るスイッチ装置1の概略断面を示す。スイッチ装置1は、2つの固定接触子2と、接触子ブリッジ3の形態である1つの可動接触子とを有する。図1において、電気接触子は開状態にある。
【0028】
スイッチ装置1は、可動接触子3を駆動する電磁作動装置も備えている。電磁作動装置は、タイロッドとして構成される磁石アーマチュア6に作用する磁界を発生させる励磁コイル4を備えている。励磁コイル4はボビン14に巻かれている。タイロッド6は、その上端において接触子キャリア11に接続されており、この接触子キャリア11は、対応する接触子付勢ばね13を介して接触子ブリッジに接続されている。
【0029】
また、電磁作動装置は、アーマチュア6に作用する磁束を増幅する磁気ヨークを有する。磁気ヨークは、励磁コイルを三方から囲むU字状部5を有する。U字状部5の2つの脚部は、中空円筒状ボビン14の2つの端面を覆う。この2つの脚部には対応する孔15があり、それらの中を磁石アーマチュア6が延在している。また、U字状部の開放端の1つでは、強磁性ロック部材7がU字状部の下側の脚部においてヒンジ接続されている。ロック部材7は回動式アーマチュア(回動式電機子)として設計されており、ジョイント(接続部)8を介して回動できるように磁気ヨークのU字状部5に配置されている。
【0030】
図1に示す磁石アーマチュア6の初期位置では、励磁コイルが電源オフされているとき、ロック部材7は最初にロック位置にある。この目的のため、ロック部材7は、外向きに突出した突出部10をその自由端側に有し、この突出部10は、接触子キャリア11から突出したフック12でラッチ(保持)される。作動装置が電源オフされると、ロック部材7は、予圧ばね9によって確実にロック位置に保持される。図示の例では、予圧ばね9は引張ばねとして構成され、図示しないハウジング部材に固定されている。
【0031】
励磁コイル4が通電されると、回動式アーマチュアとして構成されたロック部材7は、磁束により磁気ヨークのU字状部5に引き付けられ、ロック部材7の自由端は、U字状部5の上側脚部の自由端に向かって移動する。それにより、フック12が解放され、磁石アーマチュアがロック解除される。その際、ロック部材7は、ロック解除位置にある。同時に、ロック部材7が励磁コイルの磁気ヨークを閉じることで(図2)、磁石アーマチュアに作用する磁束が増加し、磁石アーマチュアはリターンスプリング(図示せず)の力に抗して初期位置から誘引位置に移動して(図3)、電気接触子が閉じられる。
【0032】
図4は、本発明に係るスイッチ装置1のさらなる実施形態を、ロック部材7がロック位置にある状態で示す側面図である。この位置では、スイッチ装置1の接点は開いている(オフ位置)。この第2実施形態に係るスイッチ装置1の構造は、図1図3に示したスイッチ装置の構造に基本的に対応している。従って、以下では、相違点についてのみ言及する。第2実施形態に係るスイッチ装置1の構成要素で説明されていないものについては、図1図3の先行説明を参照されたい。
【0033】
図4に示す実施形態によれば、磁気ヨークは、2つのヨークプレート、すなわち、上側ヨークプレート5.1及び下側ヨークプレート5.2を含む。2つのヨークプレート5.1、5.2は互いに平行に配置されている。ヨークプレート5.1、5.2の間には、ヨークプレート5.1、5.2に対して垂直に延在する複数のボルト17が配置され、ヨークプレート5.1、5.2を互いに離間させて保持する。ボルト17は、2つのヨークプレート5.1、5.2に連結されている。ボルト17は、好ましくは非磁性鋼又はプラスチック製である。試験によれば、磁性材料製のボルトも良好な結果を示している。2つのヨークプレート5.1、5.2は、磁石アーマチュア6の長手軸に対して実質的に垂直に延在する。励磁コイル4は、2つのヨークプレート5.1、5.2の間に配置されている。
【0034】
ロック部材7は、2つの部分で形成され、作動部7.1とロック部7.2を含む。作動部7.1は好ましくは強磁性材料から形成され、磁気ヨークの一部でもある。さらに、作動部7.1は、回動式アーマチュアとして構成され、第1ジョイント8を介して磁気ヨークの下側ヨークプレート5.2に回動可能に連結される。すなわち、作動部7.1は、接点から離れる方向に面してヨークプレート5.2に連結される。ロック部7.2は、第2ジョイント16を介して作動部7.1に回動可能に連結される。ロック部7.2はスライダ(滑り子)の形で構成されている。ロック部7.2は、作動部7.1に対してほぼ直角に延在している。従って、作動部7.1の位置に応じて、ロック部7.2は、作動部7.1と約80°~100°、好ましくは約85°~95°の角度をなす。ロック部7.2は、磁気ヨークの上側ヨークプレート5.1、すなわち接点に面するヨークプレートと実質的に平行に延在している。従って、ロック部7.2は、磁石アーマチュア6の移動方向に対して実質的に直角に延在している。
【0035】
ロック部7.2は、上側ヨークプレート5.1に接して案内されてもよい。さらに、ロック部7.2は、ロック部7.2の長手方向に延在するピン19を有する。ピン19は、作動部7.1から離れる方向に面するロック部7.2の端面を基点として、ロック部7.2の延長部分として、ロック部7.2の長手方向に延在している。上側ヨークプレート5.1には、上側ヨークプレート5.1における磁石アーマチュア6の移動方向に対して実質的に垂直に延びる溝(図5参照)が設けられている。ロック部7.2のピン19は上側ヨークプレート5.1の溝20内を案内される。ロック部7.2のピン19と、上側ヨークプレート5.1の溝20の反対側の端部との間には予圧ばね9が配置されている。予圧ばね9の一端はピン19に取り付けられ、予圧ばねの他端はロック部7.2に取り付けられている。ロック部7.2はヨークプレート5.1、5.2と平行に磁石アーマチュア6に対して移動可能である。
【0036】
さらに、ロック部7.2は、ロック部7.2の長手方向に延在する長穴21を有する。長穴21は、図5において明確に視認可能である。磁石アーマチュア6は、アンカーロッド6.1を有している。アンカーロッド6.1は、励磁コイル4内に配置された磁石アーマチュア6の一部を基点として、接触子キャリア11まで上方に延在している。磁石アーマチュア6のアンカーロッド6.1は、実質的に円筒状であり、ロック部7.2の長穴21を貫通している。アンカーロッド6.1がロック部7.2の長穴21を貫通する領域において、アンカーロッド6.1は環状溝22を有している。環状溝22付近では、アンカーロッド6.1の直径は、環状溝22のため、ロック部7.2の上方及び下方のアンカーロッド6.1の部分よりも小さくなっている。アンカーロッド6.1の環状溝22の幅は、ロック部7.2の厚さよりわずかに大きい。ロック部7.2の長穴21の幅は、環状溝21の下の磁石アーマチュア6のアンカーロッド6.1の直径よりわずかに大きい。従って、ロック部7.2がアンカーロッド6.1の環状溝22と係合していないとき、磁石アーマチュア6又はアンカーロッド6.1は、ロック部7.2の長穴21を通してロック部7.2に対して垂直に上下動することができる。
【0037】
図4では、スイッチ装置1がロック位置にある状態を示している。ここで、作動部7.1はジョイント8を中心に外側に、すなわち励磁コイル4から離れるように回動し、磁気ヨークの上側ヨークプレート5.1と作動部7.1の上端との間にエアギャップ23が形成される。このエアギャップ23は、ロック位置における磁気ヨークの不連続部を形成する。従って、ロック部7.2は、外側に、つまり図4において右側に引っ張られ、ロック部7.2の長穴21の一端が磁石アーマチュア6のアンカーロッド6.1の環状溝22の底に突き当たる。従って、ロック部7.2は、磁石アーマチュア6のアンカーロッド6.1の環状溝22に係合し、軸方向において磁石アーマチュア6をロックする。従って、磁石アーマチュア6は上にも下にも移動することができず、スイッチ装置1の接点は開位置にロックされる。作動装置が電源オフされたときに、ロック部材7、特にロック部7.2を確実にロック位置に保持するために、予圧ばね9が設けられている。既に述べたように、予圧ばね9は、磁気ヨークの上側ヨークプレート5.1の溝20に挿入され、ヨークプレート5.1及びロック部7.2に取り付けられ、ロック部7.2をロック位置に向かって付勢する。
【0038】
図5は、図4の第2実施形態に係るスイッチ装置1を、磁石アーマチュアがロック解除され、磁石アーマチュアが誘引位置となった後の状態で示している。この位置では、スイッチ装置1の接点は閉じている(オン位置)。
【0039】
磁石アーマチュア6をロック解除するために、励磁コイル4が通電される。その結果、回動式アーマチュアとして設計されたロック部材7の作動部7.1は、磁束により2つのヨークプレート5.1、5.2に引き付けられる。作動部7.1の上側の自由端は、上側ヨークプレート5.1の自由端及びエアギャップ23に向かって移動し、その結果、磁気ヨークが閉じられる。同時に、ロック部7.2は磁石アーマチュア6の移動方向に対して実質的に垂直に移動される。ロック部7.2の長穴21の端部は、磁石アーマチュア6のアンカーロッド6.1の環状溝22から押し出される。この際、ロック部7.2はロック解除位置にある。これにより、磁石アーマチュア6が解放すなわちロック解除される。磁石アーマチュア、すなわちアンカーロッド6.1は、ロック部7.2の長穴21を通って上下動可能となる。
【0040】
上記のように、エアギャップ23も同時に閉じられる。従って、作動部7.1が励磁コイル4の磁気ヨークを閉じる。この第2実施形態では、磁気ヨークは、2つのヨークプレート5.1、5.2と、ロック部材、特にロック部材7の作動部7.1とによって形成される。その結果、磁石アーマチュア6に作用する磁束は増幅され、磁石アーマチュア6は図示しないリターンスプリングの力に抗して初期位置から誘引位置に移動される。その結果、接触子ブリッジ3が配置された接触子キャリア11が固定接触子2の方向に移動し、電気接触子が閉じられる。
【符号の説明】
【0041】
1 スイッチ装置
2 固定接触子
3 接触子ブリッジ(可動接触子)
4 励磁コイル
5 磁気ヨークのU字状部
5.1 上側ヨークプレート
5.2 下側ヨークプレート
6 磁石アーマチュア
6.1 アンカーロッド
7 ロック部材
7.1 作動部
7.2 ロック部
8 ジョイント
9 予圧ばね
10 突出部
11 接触子キャリア
12 フック
13 接触子付勢ばね
14 ボビン
15 穴
16 第2ジョイント
17 ボルト
19 ピン
20 溝
21 長穴
22 環状溝
23 エアギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】