(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】腸内微生物叢においてブラウティア(Blautia)属種の集団を増大させる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/525 20060101AFI20240214BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240214BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240214BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240214BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240214BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240214BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240214BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240214BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240214BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240214BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K31/525
A61K31/375
A61K31/355
A61K31/015
A61P25/28
A61P19/00
A61P29/00
A61P25/00
A61P17/00
A61P37/08
A61P1/16
A61P1/00
A61P35/00
A61P11/00
A61P1/04
A61P37/06
A61P31/04
A61P31/18
A61P25/24
A61P27/02
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/08
A61P3/10
A61P25/16
A61P15/00
A61P1/18
A61P25/18
A61P39/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549032
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2022055332
(87)【国際公開番号】W WO2022184802
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ファム, タン‐ヴァン
(72)【発明者】
【氏名】レーマン, アティークル
(72)【発明者】
【氏名】シュタイネール, ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】シベスマ, ウィルバート
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
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4C086BA18
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(57)【要約】
大腸管への抗酸化化合物(ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンE)の直接的送達により、腸内でブラウティア(Blautia)属種の集団が増大する。ブラウティア(Blautia)属種の量が低い人々ほど、多くの場合、肥満、インスリン耐性及び慢性炎症、大うつ病性障害、並びに他の症状を、ブラウティア(Blautia)属の集団を増大させることによって乗り越えることができることを経験している。また、ブラウティア(Blautia)属の集団の増大により、同様に、腸管内での有益な短鎖脂肪酸の量が増える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸内微生物叢においてブラウティア(Blautia)属種の集団を増大させる方法であって、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を大腸管に直接的に送達することを含む方法。
【請求項2】
ブラウティア菌(Blautia wexlerae)の集団が増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブラウティア(Blautia)属の前記集団は、前記少なくとも1つの抗酸化剤の直接的送達の前に低下していた、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
人が、健康な認識力を維持することができないアルツハイマー病、強直性脊椎炎、自閉スペクトラム症、アトピー性皮膚炎、肝硬変、結腸直腸癌、肺癌、クローン病、潰瘍性大腸炎、クロストリジウムディフィシール(Clostridium difficile)感染による炎症性腸疾患、グレーブス病、HIV、大うつ病性障害、多系統萎縮症、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、肥満、健康な体重を維持することができない内臓脂肪蓄積、健康な血糖バランスを維持することができないインスリン耐性、高血糖、2型糖尿病、パーキンソン病、子癇前症、妊娠中の消化器系の疾患(便秘、嘔吐、及び脂肪肝を含む)、精神分裂病、重度の急性膵炎、シューグレン症候群、及び慢性炎症の症状の少なくとも1つを経験しているか、又は経験するリスクがある、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
腸管内の短鎖脂肪酸が増大する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEが、腸に直接的に送達される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
腸内微生物叢においてブラウティア(Blautia)属種の集団を増大させるための、大腸管に直接的に送達される、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤の使用。
【請求項8】
ブラウティア菌(Blautia wexlerae)の集団が増大する、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
ブラウティア(Blautia)属の前記集団は、直接的に送達される前記少なくとも1つの抗酸化剤の使用前に低下していた、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
人が、健康な認識力を維持することができないアルツハイマー病、強直性脊椎炎、自閉スペクトラム症、アトピー性皮膚炎、肝硬変、結腸直腸癌、肺癌、クローン病、潰瘍性大腸炎、クロストリジウムディフィシール(Clostridium difficile)感染による炎症性腸疾患、グレーブス病、HIV、大うつ病性障害、多系統萎縮症、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、肥満、健康な体重を維持することができない内臓脂肪蓄積、健康な血糖バランスを維持することができないインスリン耐性、高血糖、2型糖尿病、パーキンソン病、子癇前症、妊娠中の消化器系の疾患(便秘、嘔吐、及び脂肪肝を含む)、精神分裂病、重度の急性膵炎、シューグレン症候群、及び慢性炎症の症状の少なくとも1つを経験しているか、又は経験するリスクがある、請求項7~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
腸管内の短鎖脂肪酸が増大する、請求項7~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEが、腸に直接的に送達される、請求項7~11のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の簡単な説明]
大腸管への抗酸化化合物(ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンE)の直接的送達により、腸内でブラウティア(Blautia)属種の集団が増大する。ブラウティア(Blautia)属種の量が低い人々ほど、多くの場合、肥満、インスリン耐性及び慢性炎症、大うつ病性障害、並びに他の症状を、ブラウティア(Blautia)属の集団を増大させることによって乗り越えることができることを経験している。
【0002】
[発明の背景]
ブラウティア(Blautia)属種は、腸内微生物叢において一般的に見出される。その一種ブラウティア菌(B.wexlerae)は、肥満した人々、インスリン耐性のある人々において、そしてとりわけ双方の症状を示す人々において、低下していることが見出されている。逆に言えば、細身の大人は、ミクロフローラ内に当該微生物の高い集団を有する。さらに、ブラウティア菌(B.wexlerae)は、種々の血球に及ぼす抗炎症効果を発揮するので、集団が高いほど、多くの慢性症状において一般的に観察される慢性炎症を低下させることができる。
【0003】
さらに、ブラウティア(Blautia)属集団はまた、以下を患っている人々において低下していることが認められている:
アルツハイマー病;強直性脊椎炎、自閉スペクトラム症;アトピー性皮膚炎;肝硬変;結腸直腸癌;クローン病;グレーブス病;HIV;クロストリジウムディフィシール(Clostridium difficile)感染によるIBD;肺癌;大うつ病性障害(MDD)、多系統萎縮症;視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD);肥満;インスリン耐性;パーキンソン病;子癇前症;精神分裂病;重度の急性膵炎;シューグレン症候群;2型糖尿病;潰瘍性大腸炎;内臓脂肪蓄積。さらに、ブラウティア(Blautia)属の増大は、良好な認識力と関連し、そして全身性炎症を低下させた。
【0004】
ブラウティア(Blautia)属種の集団の増大は、移植片対宿主疾患(GVHD)から保護することができ、そしてさらに、GVHDが発生した場合に生存率を上昇させることができる。
【0005】
また、ブラウティア菌(Blautia wexlerae)集団は、便秘、嘔吐、及び脂肪肝等の消化器系の疾患を妊娠中に経験している妊娠女性において、低下していることが認められている。
【0006】
ウェルネスを増強するために、ブラウティア(Blautia)属種、特にブラウティア菌(Blautia wexlerae)の集団を増大させることができることが所望される。
【0007】
[発明の詳細な説明]
本発明に従えば、大腸管へのビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤の直接的送達により、腸内微生物叢においてブラウティア(Blautia)属種の集団が増大し得ることが見出された。結果として生じるブラウティア(Blautia)属集団の増大は、人が健康な体重を維持し、体重を減らし、健康な血糖バランスを維持する助けとなり、高血糖及び2型糖尿病を予防又は処置し、慢性炎症を低下させ、移植片対宿主病を回避し、妊娠中の女性によって経験される消化器系の疾患を低下させることができ、当該人は、以下の症状のいずれかを経験しているか、又は経験するリスクがある:
-アルツハイマー病(健康な認識力を維持することができない);
-強直性脊椎炎;
-自閉スペクトラム症;
-アトピー性皮膚炎;
-肝硬変;
-結腸直腸癌;肺癌;
-クローン病;潰瘍性大腸炎;クロストリジウムディフィシール(Clostridium difficile)感染による炎症性腸疾患;
-グレーブス病;
-HIV;
-大うつ病性障害;
-多系統萎縮症;
-視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD);
-肥満;内臓脂肪蓄積(健康な体重を維持することができない);
-インスリン耐性(健康な血糖バランスを維持することができない);高血糖、2型糖尿病;
-パーキンソン病;
-子癇前症;妊娠中の消化器系の疾患(便秘;嘔吐;及び脂肪肝を含む);
-精神分裂病;
-重度の急性膵炎;
-シューグレン症候群;及び
-慢性炎症。
【0008】
ゆえに、本発明の一態様は、人においてブラウティア(Blautia)属種、好ましくはブラウティア菌(Blautia wexlerae)の集団を増大させる方法であり、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEから本質的になる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を、上述の症状の1つを経験しているか、又は経験するリスクのある、したがってこれを必要とする人の大腸管に直接的に投与することを含む。
【0009】
好ましくは、「これを必要とする人」は、以下の症状の少なくとも1つを経験しているか、又は経験するリスクのある人を含む:
・超過体重、肥満、内蔵脂肪蓄積、又は理想的な体重を維持しようと試みている;
・高血糖、グルコース不耐性(健康なグルコースバランスを維持することができない);インスリン耐性又は2型糖尿病を患っている
・慢性炎症によって特徴付けられる症状、例えば、糖尿病、認知症、心血管疾患、関節炎及び関節疾患、アレルギー、強直性脊椎炎、並びに慢性閉塞性肺疾患を患っている
・移植片対宿主疾患を患っているか、又は患うリスクがある
・癌、例えば結腸直腸癌及び肺癌を患っているか、又は発症するリスクがある
・妊娠中であり、且つ妊娠と関連する消化器系の疾患(嘔吐、便秘、又は脂肪肝疾患)を経験している;又は妊娠中であり、且つそのような消化器系の疾患を回避することを望んでおり、又は子癇前症のリスクがある;
・腸管症状又は疾患、例えば: クローン病;潰瘍性大腸炎;クロストリジウムディフィシール(Clostridium difficile)感染による炎症性腸疾患;
・自己免疫疾患、例えば:シューグレン症候群、グレーブス病
・脳の健康及び/又はメンタルウェルネスに関する問題、例えば、大うつ病性障害、認知症、自閉スペクトラム症、パーキンソン病、精神分裂病、アルツハイマー病、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、又は神経変性障害、例えば多系統萎縮症の経験;及び
・他の症状、例えば、アトピー性皮膚炎、肝硬変、HIV、重度の急性膵炎。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本研究に用いた(Prodigest,Technologiepark-Zwijnaarde 94,9052 Gent,Belgiumによって提供されるSHIME又はTWINSHIME又はQuadSHIME等の)連続バッチ発酵モデルの改訂版を示す。St:胃腸管、SI:小腸管、St/SI:胃及び小腸として機能する管、PC:近位結腸、並びにDC:遠位結腸。
【
図2】近位(A)及び遠位結腸(B)でのブラウティア菌(Blautia wexlerae)の存在量についてブランク対照(CTRL)と比較した、抗酸化剤混合物(AOB)及びプレバイオティクスXOS処理の効果。*ブランク対照と比較した有意差(p<0.05)。
【0011】
[定義:]
全体を通して用いられる場合、以下の定義が適用される。
【0012】
用語「リボフラビン」は、「ビタミンB2」と交換可能に使用可能であり、リボフラビン及びそのエステル、特にリボフラビン-5’-ホスファートを含む。
【0013】
用語「ビタミンC」は、「アスコルビン酸」と交換可能に使用可能であり、その薬理学的に許容される塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム及びアスコルビン酸カルシウム)、並びにその薬理学的に許容されるエステル(特にパルミチン酸アスコルビル)も含む。
【0014】
用語「β-カロテン」は、β-カロテン又はプロピタミンAを指す。
【0015】
用語「ビタミンE」は、トコフェロールの4つの形態(アルファ-トコフェロール、ベータ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、及びデルタ-トコフェロール)及びトコトリエノールの4つの形態(アルファ-トコトリエノール、ベータ-トコトリエノール、ガンマ-トコトリエノール、及びデルタ-トコトリエノール)を含む。
【0016】
用語「直接的に送達される」は、抗酸化剤が、より下部の腸管内ミクロフローラに利用可能なように製剤化されていることを意味する。これを達成することができる種々の遅延放出形態又は持続放出形態が、当該技術において知られている。
【0017】
用語「処理すること」は、治療的に処置するか、又は非治療的に処理することを含む。
【0018】
用語「AOB」は、抗酸化剤混合物を意味し、これは、リボフラビン、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEの組合せである。
【0019】
[過剰な体重に関連する症状]
腸内微生物叢は、食物が代謝される方法に影響し、そしてブラウティア菌(Blautia wexlerae)の高い集団は、細身のボディマスと関連する。ゆえに、人の体重減少は、少なくとも1つの直接的に送達される抗酸化剤の追加により増強することができる。好ましくは、全4つの抗酸化剤(ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンE)は、より下部の腸に直接的に送達される。また、抗酸化剤は、体重維持、体重減少後の体重維持、及び体重増予防(前もっての体重減少なし)の助けとなる。好ましくは、抗酸化剤は、体重減少及び/又はエクササイズ増大のために意図される食物に加えて、服用される。
【0020】
ゆえに、本発明の一実施形態は、体重を減らし、体重を維持し、且つ/又は体重増を予防若しくは改善する方法であって、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を、肥満の、超過体重の、又は健康な体重を維持したい個人に投与することを含む方法である。別の実施形態は、肥満を処置若しくは予防するか、体重を引き下げるか、体重を維持するか、又は体重増を寛解させるための、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの直接的に送達される抗酸化剤の使用である。別の実施形態は、体重を減少させるか、体重を維持するか、又は体重増を改善するための、薬剤又は栄養補助食品の製造における、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤の使用である。これらの実施形態の各々において、全4つの抗酸化剤が送達されることが好ましい。
【0021】
[血糖制御に関連する症状]
高血糖及び2型糖尿病、又は血糖調節に関連する他の症状を患う人々は、腸内微生物叢においてブラウティア(Blautia)属がより少ないことが観察されてきた。理論に拘束されることを望むものではないが、このことは、食物中の炭水化物の利用、及び当該利用に対するブラウティア(Blautia)属の影響に関連しているかもしれない。
【0022】
ゆえに、本発明の別の実施形態は、増大した血糖レベルを正常化し、高血糖を減らし、2型糖尿病を処置するか、寛解させるか、又は予防する方法であって、大腸管に直接的に、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物を、これを必要とする人に投与することを含む方法である。別の実施形態は、増大した血糖レベルを正常化し、高血糖を減らし、2型糖尿病を処置するか、寛解させるか、又は予防するための、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用であり、組成物は、大腸管への直接的送達用に製剤化されている。別の実施形態は、増大した血糖レベルを正常化し、高血糖を減らし、2型糖尿病を処置するか、寛解させるか、又は予防するための薬剤の製造における、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用である。好ましくは、上述の実施形態の全てにおいて、少なくとも2つの抗酸化剤が存在する。より好ましい実施形態において、組成物は、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEを含む。
【0023】
[妊娠中の子癇前症及び消化器系の疾患]
ブラウティア(Blautia)属のレベルの低下が、子癇前症、又は嘔吐、便秘、及び/若しくは脂肪肝疾患(以降、妊娠に関連する「消化器系の疾患」)を患う妊娠中の女性において観察されてきた。ブラウティア(Blautia)属のレベルの上昇が、これらの症状を予防するか、寛解させるか、又は処置することとなる。ゆえに、本発明の一実施形態は、妊娠中の女性によって経験される子癇前症又は消化器系の疾患の重症度を予防するか、処置するか、又は寛解させる方法であって、妊娠中の女性の大腸管への直接的送達のために製剤化された、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物を投与することを含む方法である。別の実施形態は、妊娠中の女性において子癇前症若しくは消化器系の疾患の重症度を予防するか、若しくは引き下げるか、又は当該子癇前症若しくは消化器系の疾患を処置するための、大腸管への直接的送達のために製剤化された、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用である。別の実施形態は、妊娠中の女性によって経験される子癇前症若しくは消化器系の疾患の重症度を予防、寛解させるか、又は当該子癇前症若しくは消化器系の疾患を処置するための薬剤の製造における、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用である。
【0024】
好ましくは、上述の実施形態の全てにおいて、少なくとも2つの抗酸化剤が存在する。より好ましい実施形態において、組成物は、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEを含む。
【0025】
[慢性炎症]
慢性炎症は、糖尿病、認知症、心血管疾患、関節炎及び関節疾患、アレルギー、並びに慢性閉塞性肺疾患が挙げられるいくつかの疾患の徴候である(以降、「慢性炎症性疾患」と称される)。ブラウティア(Blautia)属集団が、これらの全てにおいて低下することが観察されてきたので、ブラウティア(Blautia)属の増大が、上述の疾患の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させ、又は当該徴候を処置することとなる。
【0026】
ゆえに、本発明の別の実施形態は、又は慢性炎症性疾患の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置する方法であって、大腸管に直接的に、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物を、これを必要とする人に投与することを含む方法である。別の実施形態は、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用であり、当該組成物は、大腸管への直接的送達のために製剤化されており、慢性炎症性疾患の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置するのに用いられる。別の実施形態は、慢性炎症性疾患の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置するための薬剤の製造における、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用である。好ましくは、上述の実施形態の全てにおいて、少なくとも2つの抗酸化剤が存在する。より好ましい実施形態において、組成物は、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEを含む。
【0027】
[腸管関連症状]
「腸管関連症状」として、ブラウティア(Blautia)属集団の低下によって各々特徴付けられる、クローン病;潰瘍性大腸炎;クロストリジウムディフィシール(Clostridium difficile)感染による炎症性腸疾患(「IBD」)等の腸管症状又は疾患が挙げられる。ゆえに、ブラウティア(Blautia)属の増大が、これらの疾患の有害徴候を処置するか、予防するか、又は寛解させることとなる。本発明の一実施形態は、クローン病、潰瘍性大腸炎、及びIBDからなる群から選択される腸管症状の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置する方法であって、大腸管に直接的に、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物を、これを必要とする人に投与することを含む方法である。別の実施形態は、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用であり、当該組成物は、大腸管への直接的送達のために製剤化されており、クローン病、潰瘍性大腸炎、及びIBDからなる群から選択される腸管症状の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置するのに用いられる。別の実施形態は、クローン病、潰瘍性大腸炎、及びIBDからなる群から選択される腸管症状の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置するための薬剤の製造における、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用である。好ましくは、上述の実施形態の全てにおいて、少なくとも2つの抗酸化剤が存在する。より好ましい実施形態において、組成物は、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEを含む。
【0028】
[脳の健康又はメンタルウェルネスに関する症状]
また、ブラウティア(Blautia)属の集団の低下が、種々の精神失陥及び/又は脳障害と関連してきた。さらに、より高い集団が、認識力とポジティブに関連してきた。ゆえに、本発明の一実施形態は、大うつ病性障害、認知症、自閉スペクトラム症、パーキンソン病、精神分裂病、アルツハイマー病、視神経脊髄炎スペクトラム障害、及び多系統萎縮症からなる群から選択される脳疾患又は精神失陥の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置する方法であって、大腸管に直接的に、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物を、これを必要とする人に投与することを含む方法である。別の実施形態は、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用であり、当該組成物は、大腸管への直接的送達のために製剤化されており、大うつ病性障害、認知症、自閉スペクトラム症、パーキンソン病、精神分裂病、アルツハイマー病、視神経脊髄炎スペクトラム障害、及び多系統萎縮症からなる群から選択される脳疾患又はメンタルヘルスに関連する症状の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置するのに用いられる。別の実施形態は、 大うつ病性障害、認知症、自閉スペクトラム症、パーキンソン病、精神分裂病、アルツハイマー病、視神経脊髄炎スペクトラム障害、及び多系統萎縮症からなる群から選択される脳疾患又は精神失陥の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置するための薬剤の製造における、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用である。好ましくは、上述の実施形態の全てにおいて、少なくとも2つの抗酸化剤が存在する。より好ましい実施形態において、組成物は、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEを含む。
【0029】
[移植片対宿主疾患]
ブラウティア(Blautia)属の集団の低下が、移植片対宿主疾患を患っている人々において観察されてきた。ゆえに、ブラウティア(Blautia)属の集団の増大が、移植片対宿主疾患と関連する徴候を処置するか、又は減らすのに有益であり得る。ゆえに、本発明の一実施形態は、移植片対宿主疾患の徴候の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置する方法であって、大腸管に直接的に、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物を、これを必要とする人に投与することを含む方法である。別の実施形態は、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用であり、当該組成物は、大腸管への直接的送達のために製剤化されており、移植片対宿主疾患の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置するのに用いられる。別の実施形態は、移植片対宿主疾患の徴候の重症度を予防するか、減らすか、若しくは寛解させるか、又は当該徴候を処置するための薬剤の製造における、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの抗酸化剤を含む組成物の使用である。好ましくは、上述の実施形態の全てにおいて、少なくとも2つの抗酸化剤が存在する。より好ましい実施形態において、組成物は、ビタミンB2、ビタミンC、ベータ-カロテン、及びビタミンEを含む。
【0030】
[短鎖脂肪酸産生の増大]
また、本発明に従って、大腸管内に存在する短鎖脂肪酸(SCFA)の量が、抗酸化剤の投与によって増大し得ることが見出された。ブラウティア(Blautia)属は、SCFA、特に、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2-メチルプロパン酸、3-メチルブタン酸、及びヘキサン酸を産生する種である。最も重要なSCFAは、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸である。ゆえに、ブラウティア(Blautia)属の増大が、SCFAを増大させる有益な効果を高める方法であり、これは一般に、腸管の健康を向上させること、腸内細菌叢の活性を増大させること、及び病原体の存在量を低下させることを含む。
【0031】
ゆえに、本発明の別の実施形態は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2-メチルプロパン酸、3-メチルブタン酸、及びヘキサン酸からなる群から選択される少なくとも1つのSCFAの量を増大させる方法であって、微生物のフローラにおいてブラウティア(Blautia)属種の集団を増大させることを含む方法である。
【0032】
[用量:]
全ての場合において、直接的に送達される抗酸化剤を、唯一の治療法として用いることができ、又は追加の薬剤若しくは変容行動と組み合わせて有効性を増強することができる。
【0033】
好ましくは、ビタミンB2が、結腸内での局所濃度が少なくとも0.01g/L、好ましくは少なくとも0.1g/L、より好ましくは0.125g/Lとなるような量で投与され得る。結腸内での好ましい局所濃度は、約0.1g/L~約0.5g/L又は約0.1g/L~約0.2g/Lに及び、好ましくは約0.125g/Lである。1日あたりの具体的な投薬量は、最大で200mg/日、好ましくは5~100mg/日、より好ましくは10~50mg/日に及び得る。
【0034】
好ましくは、β-カロテンが、結腸内での局所濃度が少なくとも0.1g/L、好ましくは少なくとも0.15g/L、最も好ましくは少なくとも0.2g/Lとなるような量で投与される。結腸内での好ましい局所濃度は、約0.05g/L~約0.4g/L、より好ましくは、約0.15g/L~約0.25g/Lに及ぶ。1日あたりの好ましい一投薬量は、最大150mgである。
【0035】
好ましくは、ビタミンE(50%)が、結腸内での局所濃度が少なくとも0.005g/L、好ましくは少なくとも0.05g/L、最も好ましくは少なくとも0.15g/Lであるような量で投与される。結腸内での好ましい局所濃度は、約0.005g/L~約2.5g/L、より好ましくは約0.15g/L~約1.75g/Lに及ぶ。1日あたりの好ましい一投薬量は、最大1000mgである。
【0036】
好ましくは、アスコルビン酸は、結腸内での局所濃度が少なくとも0.05g/L、好ましくは少なくとも0.1g/L、最も好ましくは少なくとも2g/Lとなるような量で投与され得る。結腸内での好ましい局所濃度は、約0.05g/L~約1.5g/L、より好ましくは約0.5g/L~約1g/L、最も好ましくは約0.8g/L~約0.9g/Lに及ぶ。1日あたりの具体的な投薬量は、最大で2000mg/日、好ましくは100~2000mg/日、より好ましくは200~1000mg/日に及び得る。
【0037】
好ましくは、酸化防止剤は、以下の比率で存在する:
リボフラビン 0.5~2
アスコルビン酸 4~15
ビタミンE 1~5
ベータ-カロテン 0.5~3
【0038】
より好ましくは、リボフラビン/アスコルビン酸/ビタミンE/β-カロテンの比率は、1.0/6.6/1.3/1.6である。好ましい実施形態において、組成物は長期間投与され、例えば、少なくとも3日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、そして少なくとも4週間、1日あたり少なくとも1回投与される。
【0039】
酸化防止剤は、好ましくは、酸化防止剤が大腸管内で放出され得る製剤により投与される。そのような形態は、当該技術において一般に知られている。これ以外にも、非ヒト投与についておそらく好ましくは、酸化防止剤について、上部腸管内での吸収を克服して、大腸管内に存在するほど十分高い用量が動物に投与される。
【0040】
本発明をよりよく説明するために、下記の非限定的な実施例を示す。
【0041】
[実施例]
本研究の目的は、直接供給された酸化防止剤の効果を、2つの確立されたプレバイオティクス: キシロオリゴ糖(XOS)の効果と比較することであった。以下に示すインビトロ実験は、抗酸化剤が、より下部の腸管ミクロフローラに利用可能であるように製剤化されているインビボ状況を模倣するように設計している。
【0042】
長期SHIME(登録商標)実験用のドナーを選択し、管腔腸内微生物叢の(16S Illuminaシーケンシングによって評価される)組成に及ぼす試験製品の繰返し摂取の影響を評価した。
【0043】
[SHIME(登録商標)実験の設計]
SHIME(登録商標)の典型的な反応器機構は、ヒト成人の消化管を表す。これは、ヒト消化管の異なる部分をシミュレートする一連の5つの反応器を有する。最初の2つの反応器は、食品摂取及び消化における様々な工程をシミュレートするためのフィル・アンド・ドロー原理のものであり、蠕動ポンプにより、定義された量のSHIMEフィード(140mL 3×/日)並びに膵液及び胆汁液(60mL 3×/日)を、それぞれ胃(V1)及び小腸(V2)区画に加えて、明記された間隔後に各反応器を空にする。最後の3つの区画は、大腸をシミュレートする。これらの反応器は連続的に撹拌され、容量及びpH制御が一定である。異なる管の維持時間及びpHを、結腸の異なる部分におけるインビボ条件に類似するように選択する。糞便微生物叢の接種直後に、これらの反応器は、上行結腸(V3)、横行結腸(V4)、及び下行結腸(V5)をシミュレートする。接種物調製、維持時間、pH、温度設定、及び反応器フィード組成を、他の箇所に記載している。結腸の異なる領域における微生物群の安定化直後に、代表的な微生物群が、3つの結腸区画内に定着する。これらは、異なる結腸領域において組成及び機能性の双方が異なる。
【0044】
従来のSHIME機構を、TWINSHIME構成からQuadSHIME(登録商標)構成に適応させて(
図1)、4つの異なる条件を同時に比較することを可能にした。この特定のプロジェクトの間、健康成人ヒトドナーの微生物叢を用いて、3つの異なる試験成分及びブランク対照の特性を、平行TripleSHIME(登録商標)構成により評価した。追加的な試験条件に関する妥協点として、結腸領域を、TWINSHIMEにおける3つの領域と比較して、2つの領域に限定した。維持時間及びpH範囲を最適化して、完全GITシミュレーションを表す結果を得た。実際には、QuadSHIME(登録商標)実験において、それぞれがAC-TC-DC構成(上行、横行、及び下行結腸)で構成される2ユニットとの連携の代わりに、4つのPC-DCユニットを用いた。ヒト成人の糞便微生物叢による接種直後に、これらの反応器は、近位結腸(PC;pH5.6~5.9;維持時間=20時間;500mLの容量)及び遠位大腸(DC;pH6.6~6.9;維持時間=32時間;800mLの容量)をシミュレートする。
【0045】
本研究のためのSHIME(登録商標)実験は、2段階からなった(以下の表1)。
【0046】
安定化期間:適切な糞便試料による結腸反応器の接種の後に、2週の安定化期間により、微生物群が、局所環境条件に応じて、異なる反応器内で分化することが可能となった。この期間中、基礎栄養マトリックスをSHIMEに提供して、糞便接種物中に最初から存在する腸内微生物叢の最大多様性を補助した。この期間の終了時の試料の分析により、異なる反応器内のベースライン微生物群の組成及び活性を判定することが可能となる。
【0047】
処理期間:この2週間、SHIME反応器を基準条件下で、しかし試験製品が補充された食物と共に稼働させた。この期間に結腸反応器から採取した試料により、在住する微生物群の組成及び活性に及ぼす特定の効果を調査することが可能となる。ブランク対照条件について、標準SHIME栄養分マトリックスをさらに、モデルに14日間投与した。これらの反応器の試料の分析により、異なる反応器内の基準微生物群の組成及び活性を判定することが可能となり、これらを、処理効果を評価するための参照として用いる。
【0048】
【0049】
以下の時点にて試料を収集して、異なる試験製品に対する微生物叢の適応を追跡した:
-安定化期間の最後の3日;
-第1の処理週の最後の2日;
-第2の処理週の最後の2日。
【0050】
[微生物群の組成及び活性の分析]
SHIMEの重要な特徴は、安定化された微生物叢群と連携して、更なる分析用に異なる腸内領域から規則的に試料を収集する可能性である。結腸領域内の大容量は、微生物群を撹乱することなく、又は残りの実験を危うくすることなく、毎日、十分な容量の液体の収集を可能にする。SHIME実験の全体を通して、いくつかの微生物パラメータを監視する。これらの測定は、モデルの性能を評価するのに必須であり、プレバイオティクス処理に起因する微生物群の組成及び活性の基本的変化を監視することを可能にする。
【0051】
[微生物群組成:]
16S rRNA遺伝子ターゲットIlluminaシーケンシング用の試料を収集した。
【0052】
[微生物群組成の分析]
異なる処理によって誘導される群のシフトをマッピングするために、2つの技術を組み合わせた。詳しくは、以下の通りである。
・16S rRNA遺伝子ターゲットIlluminaシーケンシング、PCRベース法。これによって、微生物配列が飽和まで増幅されるので、異なる系統発生的レベル(微生物門、科、及びOTUレベル)での異なる分類群の比例存在量が提供される。ProDigestによって使用される方法論は、16S rDNAの2つの超可変領域(V3~V4)に及ぶプライマーを含む。ペアシーケンシングアプローチである2×250bpのシーケンシングを用いることで、424bpのアンプリコンが得られる。そのようなフラグメントは、分類学上より情報量が少ないより小さいフラグメントと比較して、分類学上より有用である。
・フローサイトメトリによる試料中の総細菌細胞の正確な定量化。フローサイトメトリによる細胞数の正確な計数と一緒に16S rRNA遺伝子ターゲットIlluminaの高解像度系統発生情報を組み合わせて、反応器内の異なる分類学上の実体の高度に精密な定量的存在量を得ることができる。
【0053】
微生物代謝マーカー及び微生物群パラメータに関する異なる安定化及び処理週の正規分布データの比較を、等分散を仮定するStudentのT検定によって実行した。p<0.05であれば、差異は有意であると考えた。
【0054】
[トライアル]
このプロジェクトでは、ブランク対照と比較して、3つの異なる試験製品を試験した。試験製品及びこれを試験したインビトロ用量を、表2に見ることができる。
【0055】
【0056】
[結果]
[有益な細菌ブラウティア菌(Blautia wexlerae)の存在量の増大(
図2)]
酸化防止剤による近位及び遠位結腸管の処理により、対照と比較して、ブラウティア菌(Blautia wexlerae)の存在量が有意に高くなった。興味深いことに、この増大は、プレバイオティクスXOS処理容器よりもかなり大きかった。
【国際調査報告】