(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】グルカゴン様ペプチド-1受容体アンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07K 14/605 20060101AFI20240214BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20240214BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20240214BHJP
【FI】
C07K14/605 ZNA
A61K45/00
A61P3/08
A61K38/22
A61K47/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549044
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 US2022016406
(87)【国際公開番号】W WO2022177878
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507277642
【氏名又は名称】インディアナ ユニバーシティー リサーチ アンド テクノロジー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INDIANA UNIVERSITY RESEARCH AND TECHNOLOGY CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】ディマルキ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ムロツ,ピオトル・アンジェイ
(72)【発明者】
【氏名】タルリ,キショール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC41
4C076CC42
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA31
4C084DB01
4C084DB35
4C084NA14
4C084ZC35
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA55
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
低血糖の処置のためのGLP-1受容体アンタゴニストペプチドおよび医薬組成物が本明細書で提供される。さらに、肥満手術後に高インスリン血症になる者を含む、高インスリン血症になった患者における非定型低血糖を処置する方法が本明細書で提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GLP-1受容体アンタゴニストであって、R
10-DVX
11X
12YLX
15X
16QAX
19X
20EFX
23X
24WLVRGGPSSGAPPPSX
40-R
20 配列番号97)(ここで、
R
10は、NH
2または1個もしくは2個のアミノ酸のN末端伸長であり、N末端伸長のアミノ酸の1個は、場合によりスペーサーを介してC14~C20脂肪酸または二酸でアシル化され、場合により、R
10は、構造:X
7X
8のジペプチドであり、X
7はアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysまたはアシル化dLysであり、X
8はGlyまたはC
1~C
4 N-アルキル化Glyであり;
X
11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X
12は、Arg、Serまたはアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;
X
15は、GluまたはdGluであり;
X
16は、Glu、dGlu、Asp、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸であり;
X
19は、Val、シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはフェニルグリシンであり;
X
20は、Arg、ホモリジンまたはシトルリンであり;
X
23は、Ile、またはdIleであり;
X
24は、Glu、またはAlaであり;および
X
40は、結合またはアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;ならびに
R
20は、COOHまたはCONH
2である)のアミノ酸配列を含み、場合により、X
10またはX
11の一方がTrpまたはdTrpである場合、他方はTrpまたはdTrpではなく、R
10およびX
12は両方ともアシル化アミノ酸を含むことができないという条件で、7位、10位、13位、または16位から選択される1、2または3個のアミノ酸がTrpまたはdTrpで置換され;場合により、16位、18位、19位、24位、26位、または28位のいずれかにおける1、2または3個のアミノ酸がAibで置換されている、上記アンタゴニスト。
【請求項2】
R
10-DVX
11X
12YLX
15X
16QAX
19X
20EFX
23EWLVRGGPSSGAPPPSX
40-R
20 配列番号23)(ここで、
R
10は、NH
2またはX
7X
8であり、X
7は、場合によりスペーサーを介してC14~C20脂肪酸または二酸でアシル化されたアミノ酸であり、X
8はGlyまたはC
1~C
4 N-アルキル化Glyであり;
X
11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X
12は、Arg、Serまたはアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;
X
15は、GluまたはdGluであり;
X
16は、Glu、dGlu、Asp、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸であり;
X
19は、Val、シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはフェニルグリシンであり;
X
20は、Arg、ホモリジンまたはシトルリンであり;
X
23は、Ile、またはdIleであり;および
X
40は、アシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;ならびに
R
20は、COOHまたはCONH
2である)のアミノ酸配列を含み、場合により、16位、18位、19位、24位、26位、または28位のいずれかにおける1、2または3個のアミノ酸がAibで置換されている、請求項1に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項3】
GLP-1アンタゴニストの各アシル化アミノ酸がアシル化Lysである、請求項1に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項4】
X
7がアシル化Lysであり、X
12がArgである、請求項1~3のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項5】
R
10がNH
2であり、X
12がアシル化Lysである、請求項1~3のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項6】
X
7がNH
2であり、X
12がArgである、請求項1~3のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項7】
配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、および配列番号42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項8】
GLP-1アンタゴニストのアシル化アミノ酸が、独立して、Lys側鎖に直接連結された、または場合により
i)ガンマグルタミン酸、
ii)ミニペグポリマー:-[COCH
2(OCH
2CH
2)
kNH]-(ここで、kは2、4、6または8である)、
iii)または任意の複数のi)もしくはii)またはi)もしくはii)の組み合わせ
を含むスペーサーを介して、C16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸でアシル化されたLys残基である、請求項1~7のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項9】
GLP-1受容体アンタゴニストであって、
DX
10X
11X
12YLX
15X
16QAVREFX
23X
24WLVRGGPSSGAPPPS(配列番号98)
(ここで
X
10は、Trp、dTrpまたはValであり;
X
11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X
12は、Arg、LysまたはSerであり;
X
15は、GluまたはdGluであり;
X
16は、Trp、dTrp、dGluまたはGluであり;
X
23は、IleまたはdIleであり;
X
24は、AlaまたはGluである)のアミノ酸配列を含み;
該GLP-1受容体アンタゴニストが、高親和性で血清アルブミンに結合するのに十分なサイズの脂肪酸基または脂肪二酸基でアシル化され、場合により、GLP-1受容体アンタゴニストのアミノ酸が、C16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸でアシル化されている、上記アンタゴニスト。
【請求項10】
GLP-1受容体アンタゴニストであって、
DX
10X
11RYLX
15X
16QAVREFX
23EWLVRGGPSSGAPPPSX
40R
20(配列番号5)(ここで、
X
10は、Trp、dTrpまたはValであり;
X
11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X
15は、GluまたはdGluであり;
X
16は、Trp、dTrp、dGluまたはGluであり;
X
23は、IleまたはdIleであり;
X
40は、アシル化アミノ酸であり;および
R
20は、COOHまたはCONH
2である)のアミノ酸配列を含み、場合により、ペプチドが、16位、18位、19位、24位、26位もしくは28位のいずれかにおけるAibの1つもしくは複数の置換、または場合により12位におけるアシル化Lysの置換を含み、前記位置番号が、天然のエキセンジン4アミノ酸配列と比較した番号である、上記アンタゴニスト。
【請求項11】
X
11が、TrpまたはdTrpである、請求項10に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項12】
16位、18位、19位、24位、26位または28位のアミノ酸がAibで置換されている、請求項9、10または11に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項13】
12位のアミノ酸がアシル化Lysで置換されている、請求項10または11に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項14】
X
15が、dGluであり;
X
16が、Gluであり;および
X
23が、Ileである、
請求項9~13のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項15】
X
15が、Gluであり;
X
16が、Gluであり;および
X
23が、Ileである、
請求項9~13のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項16】
X
40が、場合によりスペーサーを介してアミノ酸の側鎖に連結されたアシル基を有するアミノ酸である、請求項10~15のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項17】
X
40が、式I(場合により、Lys)、式II(場合により、Cys)、または式III(場合により、Ser)の構造を含むアミノ酸であり、式I、II、およびIIIの各々が:
【化1】
である、請求項16に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項18】
X
40がアシル化リジンである、請求項15または16に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項19】
アシル化アミノ酸のアシル基が、(C
1~C
4アルキル)NH-CO(CH
2)
14~20CH
3、(C
1~C
4アルキル)NH-[スペーサー]-CO(CH
2)
14~20CH
3、(C
1~C
4アルキル)NH-CO(CH
2)
14~20COOH、または(C
1~C
4アルキル)NH-[スペーサー]-CO(CH
2)
14~20COOHから選択される、請求項10~18のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項20】
アシル化アミノ酸のアシル基が、スペーサーを介してアシル化アミノ酸のアミノ酸側鎖に共有結合されている、請求項10~19のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項21】
スペーサーがアミノ酸またはジペプチドである、請求項16~20のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項22】
スペーサーが、
i)ガンマグルタミン酸、
ii)ミニペグポリマー:-[COCH
2(OCH
2CH
2)
kNH]-(ここで、kは2、4、6または8である)、
iii)または任意の複数のi)および/もしくはii)またはi)および/もしくはii)の組み合わせ
を含む、請求項16~20のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項23】
アシル化アミノ酸が、C16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸に連結され、場合により、前記酸または二酸が、構造:
-(ガンマグルタミン酸)
p-[COCH
2(OCH
2CH
2)
kNH]
q-(ガンマグルタミン酸)
n-または
-[COCH
2(OCH
2CH
2)
kNH]
q-(ガンマグルタミン酸)
p-[COCH
2(OCH
2CH
2)
kNH]
m-
(ここで、kは、2、4または8から選択される整数であり、mおよびnは、独立して0、1または2から選択される整数であり、pおよびqは、独立して1、2、4または8から選択される整数である)
を含むスペーサーを介して連結されている、請求項10~22のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項24】
アシル化アミノ酸が、構造:
-[COCH
2(OCH
2CH
2)
kNH]
q-(ガンマグルタミン酸)
p-
(ここで、kは2であり、pおよびqは、独立して1または2から選択される整数である)
を含むスペーサーを介してリジン側鎖に連結されたC16~C18脂肪酸を有するLysである、請求項23に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項25】
X
11が、TrpまたはdTrpであり;
X
15が、GluまたはdGluであり;
X
16が、GluまたはdGluであり;
X
23が、IleまたはdIleであり;および
X
40が、C16またはC18二酸でアシル化されたLysであり、場合により、二酸が、構造:
-[COCH
2(OCH
2CH
2)
kNH]
q-(ガンマグルタミン酸)
p-
(ここで、kは2であり、pおよびqは、独立して1または2から選択される整数である)
を含むスペーサーを介して連結されている、請求項10に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項26】
R
20がCONH
2である、請求項10~20のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト。
【請求項27】
アミド結合を通じてGLP-1アンタゴニストに連結されたジペプチドA-B:
【化2】
(ここで
R
1、R
2、R
4およびR
8は、独立してH、C
1~C
18アルキル、C
2~C
18アルケニル、(C
1~C
18アルキル)OH、(C
1~C
18アルキル)SH、(C
2~C
3アルキル)SCH
3、(C
1~C
4アルキル)CONH
2、(C
1~C
4アルキル)COOH、(C
1~C
4アルキル)NH
2、(C
1~C
4アルキル)NHC(NH
2
+)NH
2、(C
0~C
4アルキル)(C
3~C
6シクロアルキル)、(C
0~C
4アルキル)(C
2~C
5複素環)、(C
0~C
4アルキル)(C
6~C
10アリール)R
7、(C
1~C
4アルキル)(C
3~C
9ヘテロアリール)、およびC
1~C
12アルキル(W1)C
1~C
12アルキルからなる群から選択され、W1は、N、SおよびOからなる群から選択されるヘテロ原子であり;
R
3は、C
1~C
18アルキル、(C
1~C
18アルキル)OH、(C
1~C
18アルキル)NH
2、(C
1~C
18アルキル)SH、(C
0~C
4アルキル)(C
3~C
6)シクロアルキル、(C
0~C
4アルキル)(C
2~C
5複素環)、(C
0~C
4アルキル)(C
6~C
10アリール)R
7、および(C
1~C
4アルキル)(C
3~C
9ヘテロアリール)からなる群から選択されるか、またはR
4およびR
3は、これらが結合する原子と一緒にピロリジン環を形成し;
R
5は、NHR
6またはOHであり;
R
6は、H、C
1~C
8アルキルであり;ならびに
R
7は、HおよびOHからなる群から選択される)
をさらに含み、該GLP-1アンタゴニストからのA-Bの化学的切断半減期(t
1/2)が、生理的条件下、PBS中で少なくとも約1時間~約1週間である、請求項9~26のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニストの誘導体。
【請求項28】
ジペプチドA-Bが、GLP-1アンタゴニストアミノ酸配列のN末端アルファアミンに共有結合されている、請求項27に記載の誘導体。
【請求項29】
R
1およびR
8が、独立してHまたはC
1~C
8アルキルであり;
R
2およびR
4が、独立してH、C
1~C
8アルキル、(C
1~C
4アルキル)OH、(C
1~C
4アルキル)SH、(C
2~C
3アルキル)SCH
3、(C
1~C
4アルキル)CONH
2、(C
1~C
4アルキル)COOH、(C
1~C
4アルキル)NH
2、および(C
1~C
4アルキル)(C
6アリール)R
7からなる群から選択され;
R
3が、C
1~C
6アルキルであり;
R
5が、NH
2であり;ならびに
R
7が、水素、およびOHからなる群から選択される、
請求項27または28に記載の誘導体。
【請求項30】
R
1が、C
1~C
8アルキル、(C
1~C
4アルキル)OH、(C
1~C
4アルキル)SH、(C
1~C
4アルキル)COOH、および(C
1~C
4アルキル)NH
2からなる群から選択される側鎖を含み、場合により、C16~C30脂肪酸またはC16~C30二酸が、ガンマグルタミン酸、ガンマグルタミン酸-ガンマグルタミン酸ジペプチド、およびガンマグルタミン酸-[COCH
2(OCH
2CH
2)
kNH]
q-ガンマグルタミン酸(ここで、
kは、1~8の範囲から選択される整数であり;および
qは、1~8の範囲から選択される整数であり、場合により、kは2であり、qは1~8の範囲から選択される)からなる群から選択されるスペーサーを場合により介して該側鎖に共有結合され;
R
2、R
4およびR
8が、独立してH、またはC
1~C
4アルキルであり;
R
3が、C
1~C
6アルキルであり;ならびに
R
5が、NH
2である、
請求項27または28に記載の誘導体。
【請求項31】
R
1が、H、C
1~C
4アルキル、(C
1~C
4アルキル)OHまたは(C
1~C
4アルキル)NH
2であり;
R
2が、Hであり、
R
3が、C
1~C
4アルキルであり;
R
4が、H、またはC
1~C
4アルキルであり;
R
5が、NH
2であり;および
R
8が、水素である、
請求項27または28に記載の誘導体。
【請求項32】
ジペプチドA-Bがアシル化Lys残基およびN-アルキル化Gly残基を含み、LysおよびN-アルキル化Gly残基がペプチド結合を介して連結され、場合により、Lys残基がD-立体構造である、請求項27または28に記載の誘導体。
【請求項33】
R
1が、(C
4アルキル)NH
2または(C
4アルキル)NH(mPeg-γE-二酸)-C18であり;
R
2、R
4およびR
8が、それぞれHであり;
R
3が、C
1~C
4アルキルであり;ならびに
R
5が、NH
2であり;
R
5が、アミンである、
請求項27または28に記載の誘導体。
【請求項34】
請求項1~26のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニスト、または請求項27~33のいずれか一項に記載の誘導体、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項35】
非定型低血糖を患っている患者を処置する方法であって、請求項34の医薬組成物を、血糖値を上昇させるのに有効な量で、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月16日に出願された米国仮特許出願第63/149,852号の優先権を主張するものであり、その開示は明示的に本明細書に援用される。
電子的に提出された資料の参照による援用
本明細書と同時に提出され、次のように識別されるコンピュータ可読ヌクレオチド/アミノ酸配列表:2022年2月14日に作成された、「333142seqlist_ST25.txt」という名前の59キロバイトのアスキー(テキスト)ファイルは、その全体が参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、ヒトの血糖値の調節において重要な役割を果たす。その作用としては、インスリン合成および分泌の刺激、グルカゴン分泌の阻害、ならびに食物摂取の阻害が挙げられる。通常、身体は、血液中のグルコースの濃度を1デシリットルあたり約70~110ミリグラム(mg/dL)、または1リットルあたり3.9~6.1ミリモル(mmol/L)の範囲内で維持する。しかし、グルコースレベルが低くなり過ぎ、低血糖に至る状況も起こり得る。低血糖は、糖尿病をコントロールするために摂取される薬物に起因する場合が最も多い。低血糖のはるかに少ない一般的な原因は、本明細書では「非定型低血糖(atypical hypoglycemia)」と呼ばれ、外因性インスリン投与と無関係に生じ得る。
【0003】
アルコールは肝臓におけるグルコースの形成をブロックし得るため、非定型低血糖は食べずに大酒を飲む人に生じ得る。さらに、ウイルス性肝炎、肝硬変、または肝臓がんなどの肝臓疾患が進行した人は、十分なグルコースを貯蔵し、産生することができない可能性がある。非定型低血糖は、高インスリン血症になる先天性変異を有する乳児および小児が生まれる結果にもなり得る。
【0004】
より最近では、この10年の間に、非定型低血糖は、極端な形態の肥満を元に戻す目的で行われた外科手術の後に生じ得る合併症であるという認識が高まってきている。ルーワイ胃バイパス(RYGB)術を受けた一部の患者(10%未満)は、その後高インスリン血症性低血糖を発症し、血中グルコース濃度は、発作、精神状態の変化、意識喪失、認知機能障害、身体障害、および死を引き起こすほどに低くなる(20~40mg/dL)場合がある。
【0005】
高インスリン血症誘導性低血糖を処置する1つのアプローチは、GLP-1受容体アンタゴニストを投与することである。そのようなペプチドアンタゴニストは、不適切に高い濃度の血漿GLP-1のインスリン分泌を刺激する能力をブロックし、非定型低血糖を経験する患者の血漿グルコースを正常化し、認知障害、血管性疾患および突然死の可能性のリスクを低減するように機能する。
【0006】
エキセンジン-4(配列番号1)は、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体の39アミノ酸アゴニストである。エキセンジン-4は、アメリカドクトカゲ、ヘロデルマ・サスペクタム(Heloderma suspectum)の唾液中に存在する。Ex-4(9-39)a(配列番号2)は、GLP-1受容体アンタゴニストとして機能することが知られるエキセンジン-4のN末端切断型誘導体である。しかし、Ex-4(9-39)aは、慢性非定型低血糖を処置するためのその使用可能性に関して、2つの顕著な制約:その非ヒトアミノ酸配列、およびその比較的短いインビボ作用持続時間を抱えている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの実施形態によれば、肥満外科手術後に生じるかまたは先天性変異に起因する高インスリン血症誘導性低血糖を含む非定型低血糖の処置における薬物候補として使用するための、一連の新規の最適化GLP-1アンタゴニストが提供される。
【0008】
本明細書に開示されているように、非定型低血糖を経験する患者を処置するための、およびより具体的には1つの実施形態では、高インスリン血症誘導性低血糖を経験する患者を処置するための組成物および方法が提供される。1つの実施形態によれば、肥満手術後に生じる高インスリン血症誘導性低血糖を処置するための組成物および方法が提供される。1つの実施形態では、方法は、血糖値を上昇させ、関連急性症状および低血糖と関連する慢性転帰を軽減するのに有効な量のグルカゴン様ペプチド-1受容体アンタゴニスト(GLP1RA)の投与を含む。
【0009】
1つの実施形態によれば、アミノ酸配列
DX10X11RYLX15X16QAVREFX23EWLVRGGPSSGAPPPSX40R20(配列番号5)(ここで
X10は、Trp、dTrpまたはValであり;
X11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X15は、GluまたはdGluであり;
X16は、Trp、dTrp、dGluまたはGluであり;
X23は、IleまたはdIleであり;
X40は、アシル化アミノ酸であり、
R20は、COOHまたはCONH2である)を含むGLP-1受容体アンタゴニストペプチドが提供され、場合によりペプチドは、場合により、X10またはX11の一方がTrpまたはdTrpである場合、他方はTrpまたはdTrpではないという条件で、天然のエキセンジン4配列(配列番号1)と比較して16位、18位、19位、24位、26位もしくは28位のいずれかにAibの1つもしくは複数の置換を含むか、または場合により、天然のエキセンジン4配列(配列番号1)と比較して12位にLysの置換を含む。
【0010】
1つの実施形態によれば、
DVWRYLX15EQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40R20(配列番号96)(ここで、
X15は、dGluであり;
X40は、アシル化Lysであり、R20は、COOHまたはCONH2であり、アシル化Lysのアシル基は、スペーサーを介してLys側鎖に場合により連結されているC16~C18酸または二酸である)のアミノ酸配列を有するGLP-1受容体アンタゴニストペプチドが提供される。1つの実施形態では、スペーサーは、ミニペグ(minipeg)もしくはガンマグルタミン酸サブユニット、または任意の複数のそのようなミニペグもしくはガンマGlu分子またはそのようなミニペグもしくはガンマGlu分子の組み合わせを含む。1つの実施形態では、配列番号96のペプチドは、例えば、配列番号1の天然のエキセンジン4配列と比較して16位、18位、19位、24位、26位もしくは28位の1つもしくは複数におけるアミノイソ酪酸(Aib)による置換;または12位におけるLysの置換を含む、1、2または3個のアミノ酸置換により修飾されている。
【0011】
1つの実施形態によれば、アミノ酸配列
DX10X11RYLX15X16QAVREFX23EWLVRGGPSSGAPPPSX40R20(配列番号5)(ここで
X10は、Trp、dTrpまたはValであり;
X11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X15は、GluまたはdGluであり;
X16は、Trp、dTrp、dGluまたはGluであり;
X23は、IleまたはdIleであり;
X40は、アシル化アミノ酸であり、R20は、COOHまたはCONH2である)を含むGLP-1受容体アンタゴニストペプチドが提供され、場合によりペプチドは、場合により、X10またはX11の一方がTrpまたはdTrpである場合、他方はTrpまたはdTrpではないという条件で、天然のエキセンジン4配列(配列番号1)と比較して16位、18位、19位、24位、26位もしくは28位のいずれかにAibの1つもしくは複数の置換を含むか、または場合により、X7X8による配列番号5のペプチドのN末端伸長を含み、天然のエキセンジン4配列(配列番号1)と比較した位置番号付けで、X7はアシル化アミノ酸(例えば、Lys)であり、X8はGlyまたはC1~C3 N-アルキルGlyである。
【0012】
1つの実施形態によれば、
DVWRYLX15EQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40R20(配列番号96)(ここで
X15は、dGluであり;
X40は、アシル化Lysであり、R20は、COOHまたはCONH2であり、アシル化Lysのアシル基は、スペーサーを介してLys側鎖に場合により連結されているC16~C18酸または二酸である)のアミノ酸配列を有するGLP-1受容体アンタゴニストペプチドが提供される。1つの実施形態では、スペーサーは、ミニペグもしくはガンマグルタミン酸サブユニット、または任意の複数のそのようなミニペグもしくはガンマGlu分子またはそのようなミニペグもしくはガンマGlu分子の組み合わせを含む。1つの実施形態では、配列番号96のペプチドは、例えば、配列番号1の天然のエキセンジン4配列と比較して16位、18位、19位、24位、26位もしくは28位の1つもしくは複数におけるアミノイソ酪酸(Aib)による置換を含む、1、2もしくは3個のアミノ酸置換により修飾されているか;または配列番号96のN末端へのジペプチドX7X8(ここで、天然のエキセンジン4配列(配列番号1)と比較した位置番号付けで、X7はアシル化アミノ酸(例えば、Lys)であり、X8はGlyまたはC1~C3 N-アルキルGlyである)の付加によって修飾されている。
【0013】
1つの実施形態では、1~3個のアミノ酸は、配列番号5のペプチドまたはその類似体のN末端に付加される。1つの実施形態では、N末端伸長を含むアミノ酸の1つはアシル化アミノ酸である。1つの実施形態では、N末端伸長はジペプチド、X7X8である(ここで、X7はアシル化リジンであり、場合によりリジンはD立体構造であり、X8は任意のアミノ酸である)。1つの実施形態では、N末端伸長は、9-29エキセンジン4類似体(例えば、配列番号5のペプチド)のN末端アルファアミンに連結されて、本開示の任意のGLP-1アンタゴニストのプロドラッグを形成する自己切断ジペプチドである。GLP-1アンタゴニストのプロドラッグ誘導体を使用する1つの利点は、そのようなアプローチが、GLP-1受容体によるプロドラッグの認識を阻害する戦略に基づきペプチドの生物学的半減期を延長することである。1つの実施形態では、プロドラッグ誘導体は、GLP-1アンタゴニストに共有結合された自己切断ジペプチド(A-B)を含み、ジペプチドは、生理的条件下および酵素活性の非存在下で切断されて、GLP-1アンタゴニストに完全な活性を戻す。1つの実施形態では、GLP-1アンタゴニストは、GLP-1アンタゴニストのアミンへの1つまたは複数のジペプチド(A-B)(ここで、Aは、アミノ酸またはヒドロキシ酸であり、Bは、Bのカルボキシル部分とGLP-1アンタゴニストのアミンの間のアミド結合を通じてGLP-1アンタゴニストに連結されているN-アルキル化アミノ酸である)の共有結合によって修飾されている。1つの実施形態では、A-Bは、A-BのカルボキシルとGLP-1アンタゴニストのアミンの間のアミド結合を通じてGLP-1アンタゴニストに連結された構造:
【0014】
【0015】
(ここで
R1、R2、R4およびR8は、独立してH、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、(C1~C18アルキル)OH、(C1~C18アルキル)SH、(C2~C3アルキル)SCH3、(C1~C4アルキル)CONH2、(C1~C4アルキル)COOH、(C1~C4アルキル)NH2、(C1~C4アルキル)NHC(NH2
+)NH2、(C0~C4アルキル)(C3~C6シクロアルキル)、(C0~C4アルキル)(C2~C5複素環)、(C0~C4アルキル)(C6~C10アリール)R7、(C1~C4アルキル)(C3~C9ヘテロアリール)、およびC1~C12アルキル(W1)C1~C12アルキルからなる群から選択され、W1は、N、SおよびOからなる群から選択されるヘテロ原子であり;
R3は、C1~C18アルキル、(C1~C18アルキル)OH、(C1~C18アルキル)NH2、(C1~C18アルキル)SH、(C0~C4アルキル)(C3~C6)シクロアルキル、(C0~C4アルキル)(C2~C5複素環)、(C0~C4アルキル)(C6~C10アリール)R7、および(C1~C4アルキル)(C3~C9ヘテロアリール)からなる群から選択されるか、またはR4およびR3は、これらが結合する原子と一緒にピロリジン環を形成し;
R5は、NHR6またはOHであり;
R6は、H、C1~C8アルキルであり;ならびに
R7は、HおよびOHからなる群から選択される)を含み、前記GLP-1アンタゴニストからのA-Bの化学的切断半減期(t1/2)は、生理的条件下、PBS中で少なくとも約1時間~約1週間である。1つの実施形態では、ジペプチドA-Bは、GLP-1アンタゴニストアミノ酸配列のN末端アルファアミンに共有結合されている。R1が、H、C1~C4アルキル、(C1~C4アルキル)OHまたは(C1~C4アルキル)NH2であり;R2はHである1つの実施形態では、R3はC1~C6アルキルであり;R4は、H、C1~C4アルキル、または(CH2)(C6アリール)R7であり;R5はNH2であり;R7はHまたはOHであり、R8は水素である。
【0016】
本開示はさらに、本明細書に記載されたGLP-1アンタゴニストペプチドおよび変異体ペプチドのいずれか、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。1つの実施形態では、非定型低血糖を患っている患者を処置する方法であって、本明細書に記載されたGLP-1アンタゴニストペプチドまたは変異体ペプチドを含む医薬組成物を、血糖値を上昇させるのに有効な量で、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法が提供される。
【0017】
1つの実施形態によれば、非定型低血糖を処置する方法であって、
DVX11RYLX15X16QAVREFX23EWLVRGGPSSGAPPPSK(配列番号11)(ここで、X11は、Trp、またはdTrpであり;X15は、Glu、またはdGluであり;X16は、Glu、またはdGluであり;およびX23は、Ile、またはdIleである)のアミノ酸配列を有するGLP-1受容体アンタゴニストペプチドを、血糖値を上げるために治療的に有効な量で投与するステップを含む方法が提供される。1つの実施形態では、GLP-1受容体アンタゴニストは、高親和性で血清アルブミンに結合するのに十分なサイズの脂肪酸基または脂肪二酸基でアシル化されている。
【0018】
1つの実施形態では、
DX10X11X12YLX15X16QAVREFX23X24WLVRGGPSSGAPPPS(配列番号98);
(ここで
X10は、Trp、dTrpまたはValであり;
X11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X12は、Arg、LysまたはSerであり;
X15は、GluまたはdGluであり;
X16は、Trp、dTrp、dGluまたはGluであり;
X23は、IleまたはdIleであり;
X24は、AlaまたはGluである)のアミノ酸配列を含むGLP-1受容体アンタゴニストが提供され;
前記GLP-1受容体アンタゴニストは、高親和性で血清アルブミンに結合するのに十分なサイズの脂肪酸基または脂肪二酸基でアシル化され、場合により、GLP-1受容体アンタゴニストのアミノ酸は、場合によりX10、X11またはX16の1つのみがTrpまたはdTrpであるという条件で、C16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸でアシル化されている。
【0019】
1つの実施形態では、
DX10X11X12YLX15X16QAVREFX23X24WLVRGGPSSGAPPPS(配列番号98);
(ここで
X10は、Trp、dTrpまたはValであり;
X11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X12は、Arg、LysまたはSerであり;
X15は、GluまたはdGluであり;
X16は、Trp、dTrp、dGluまたはGluであり;
X23は、IleまたはdIleであり;
X24は、AlaまたはGluである)のアミノ酸配列を含むGLP-1受容体アンタゴニストが提供され、さらに、GLP-1受容体アンタゴニストは、高親和性で血清アルブミンに結合するのに十分なサイズの脂肪酸基または脂肪二酸基でアシル化され、場合により、GLP-1受容体アンタゴニストのアミノ酸は、C16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸でアシル化されている。さらなる実施形態では、X10がValであり、X11がTrp、dTrpまたはSerであり、X12がArgであり、X15がGluまたはdGluであり、X16がdGluまたはGluであり、X23がIleまたはdIleであり、X24がAlaまたはGluであり、場合により、X10がValであり、X11がSerであり、X12がArgであり、X15がGluまたはdGluであり、X16がdGluまたはGluであり、X23がIleであり、X24がAlaであり、場合により、X10がValであり、X11がSerであり、X12がArgであり、X15がGluであり、X16がGluであり、X23がIleであり、X24がAlaである、配列番号98のペプチドが提供される。
【0020】
1つの実施形態では、本開示のGLP-1受容体アンタゴニストは、高親和性で血清アルブミンに結合するのに十分なサイズの脂肪酸基または脂肪二酸基でアシル化され、場合により、アシル化アミノ酸はC末端アミノ酸であり、場合により、アミド結合を介した自己切断ジペプチドの結合によってさらに修飾され、ジペプチドのアミノ酸は、高親和性で血清アルブミンに結合するのに十分なサイズの脂肪アシル基で場合によりアシル化されている。1つの実施形態では、アシル化アミノ酸は、40位で配列番号11のC末端に付加され、場合により、付加されたアシル化アミノ酸は、本明細書に開示されたスペーサーのいずれかを介してアミノ酸側鎖に場合により連結されているC14~C20脂肪酸または脂肪二酸でアシル化されたLysである。
【0021】
1つの実施形態では、非定型低血糖を処置するための医薬組成物は、低血糖の処置に有用な任意の既存の治療薬と組み合わせて、本明細書に開示されたGLP-1受容体アンタゴニストのいずれかを含む。例えば、医薬組成物は、本発明のGLP-1受容体アンタゴニストおよび以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい:グルコースサプリメント(例えば、デキストロース);グルカゴンおよびグルカゴン類似体などのグルコース上昇剤ならびにインスリン分泌阻害剤(例えば、ジアゾキシド、オクトレオチド)。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、溶媒対照、Ex-4(配列番号1のアミノ酸配列を有するGLP-1アゴニスト)、またはGLP-1アンタゴニストペプチド(DVSRYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSK
40[mPEG-γE-C16]酸;配列番号16)のマウスへの皮下投与と、それに続くグルコース(体重1kgあたり1.5gグルコース)の腹腔内投与後の経時的な血糖値の用量依存的変化を示すグラフである。グルコースは、GLP-1アンタゴニストの4時間後に皮下投与される。
【
図2A】
図2Aおよび2Bは、マウスがGLP-1アンタゴニストを皮下投与され、その4時間後にグルコース(体重1kgあたり1.5gグルコース)を腹腔内投与されるグルコース負荷試験からのデータを示す。結果は、配列番号16のGLP-1アンタゴニスト(
図2A)が完全アンタゴニストであり、GLP-1アンタゴニストEx-9-40(DVSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS;配列番号2;
図2B)よりはるかに高い効力を有することを実証している。
【
図2B】
図2Aおよび2Bは、マウスがGLP-1アンタゴニストを皮下投与され、その4時間後にグルコース(体重1kgあたり1.5gグルコース)を腹腔内投与されるグルコース負荷試験からのデータを示す。結果は、配列番号16のGLP-1アンタゴニスト(
図2A)が完全アンタゴニストであり、GLP-1アンタゴニストEx-9-40(DVSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS;配列番号2;
図2B)よりはるかに高い効力を有することを実証している。
【
図3】
図3は、GLP-1アンタゴニストの有効性に対するAib置換の効果を調べるグルコース負荷試験からのデータを示す。マウスはGLP-1アンタゴニストを皮下投与され、その4時間後にグルコース(体重1kgあたり1.5gグルコース)を腹腔内投与される。
図3は、(配列番号47)の配列を含む9-40Jant4-K
40(DVSSYLEEQAVREFIAWLVKGGPSSGAPPPSK;配列番号3)のGLP-1アンタゴニストペプチド類似体、ならびに配列番号43(20位のAib)、配列番号44(18位のAib)、および、配列番号45(11位のAib)、配列番号46(10位のAib)の一連のAib置換を含むその誘導体の活性を実証している。
【
図4】
図4は、GLP-1アンタゴニストの有効性に対するD-アミノ酸置換の効果を調べるグルコース負荷試験からのデータを示す。マウスはGLP-1アンタゴニストを皮下投与され、その4時間後にグルコース(体重1kgあたり1.5gグルコース)を腹腔内投与される。溶媒対照ならびに、X
40がC16でアシル化されたLysであり、次のようなD体の対応するアミノ酸:配列番号49(d-Glu
15)、配列番号50(d-Val
19)、配列番号51(d-Ile
23)を有するC末端アミドである置換を含む変異体と比較した、(miniPEG)
2-γE-C16アシル化9-40Jant4-K
40(DVSSYLEEQAVREFIAWLVKGGPSSGAPPPSX
40(配列番号12))ペプチド配列番号48(ここで、X
40は、(miniPEG)2-ガンマGlu-C16でアシル化されたLysであり、C末端アミドを有する)のGLP-1アンタゴニスト活性。
【
図5A】
図5A~5Dは、本発明のGLP-1受容体アンタゴニストのプロドラッグ誘導体に関するデータを提供する。
図5Aは、37℃、PBS中でインキュベートされたプロドラッグdK
7(mPeg-γE-二酸C18)N-Me-Gly
8ペプチド配列番号19の経時的な質量分光光度計データを示す。
図5B~5Dは、DVSRYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX
40;配列番号18のジペプチドプロドラッグのGLP-1アンタゴニスト活性を示すグラフであり、ペプチドは、グルコース負荷がアンタゴニストの投与24時間後(
図5B)、48時間後(
図5C)または120時間後(
図5D)に施行されるグルコース負荷試験において、共有結合dK
7(mPeg-γE-二酸C18)N-iPr-Gly
8ジペプチドで修飾されている。
【
図5B】
図5A~5Dは、本発明のGLP-1受容体アンタゴニストのプロドラッグ誘導体に関するデータを提供する。
図5Aは、37℃、PBS中でインキュベートされたプロドラッグdK
7(mPeg-γE-二酸C18)N-Me-Gly
8ペプチド配列番号19の経時的な質量分光光度計データを示す。
図5B~5Dは、DVSRYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX
40;配列番号18のジペプチドプロドラッグのGLP-1アンタゴニスト活性を示すグラフであり、ペプチドは、グルコース負荷がアンタゴニストの投与24時間後(
図5B)、48時間後(
図5C)または120時間後(
図5D)に施行されるグルコース負荷試験において、共有結合dK
7(mPeg-γE-二酸C18)N-iPr-Gly
8ジペプチドで修飾されている。
【
図5C】
図5A~5Dは、本発明のGLP-1受容体アンタゴニストのプロドラッグ誘導体に関するデータを提供する。
図5Aは、37℃、PBS中でインキュベートされたプロドラッグdK
7(mPeg-γE-二酸C18)N-Me-Gly
8ペプチド配列番号19の経時的な質量分光光度計データを示す。
図5B~5Dは、DVSRYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX
40;配列番号18のジペプチドプロドラッグのGLP-1アンタゴニスト活性を示すグラフであり、ペプチドは、グルコース負荷がアンタゴニストの投与24時間後(
図5B)、48時間後(
図5C)または120時間後(
図5D)に施行されるグルコース負荷試験において、共有結合dK
7(mPeg-γE-二酸C18)N-iPr-Gly
8ジペプチドで修飾されている。
【
図5D】
図5A~5Dは、本発明のGLP-1受容体アンタゴニストのプロドラッグ誘導体に関するデータを提供する。
図5Aは、37℃、PBS中でインキュベートされたプロドラッグdK
7(mPeg-γE-二酸C18)N-Me-Gly
8ペプチド配列番号19の経時的な質量分光光度計データを示す。
図5B~5Dは、DVSRYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX
40;配列番号18のジペプチドプロドラッグのGLP-1アンタゴニスト活性を示すグラフであり、ペプチドは、グルコース負荷がアンタゴニストの投与24時間後(
図5B)、48時間後(
図5C)または120時間後(
図5D)に施行されるグルコース負荷試験において、共有結合dK
7(mPeg-γE-二酸C18)N-iPr-Gly
8ジペプチドで修飾されている。
【
図6A】
図6Aおよび6Bは、2つのアシル化アミノ酸を含む本発明のGLP-1受容体アンタゴニストの誘導体に関するデータを提供する。
図6Aおよび6Bは、グルコース負荷がアンタゴニストの投与24時間後(
図6A)または48時間後(
図6B)に施行されるグルコース負荷試験の結果を示すグラフであり、配列番号16は、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16]-(Jant4、9-40)酸(配列番号16)であり;配列番号17は、dK
7(mPeg-γE(C18二酸)G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16]-(Jant4、9-40)酸(配列番号17)であり;配列番号18は、dK
7(mPeg-γE(C18二酸)i-Pr、G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16]-(Jant4、9-40)酸(配列番号18)であり;配列番号19 dK
7(mPeg-γE(C18二酸)N-Me、G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16]-(Jant4、9-40)酸(配列番号19)であり;配列番号20 dK
7(K(mPeg-γE-C18二酸)
2 G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C18二酸](Jant4、9-40)アミド(配列番号20)であり;配列番号21 dK
7(K(mPeg-γE-C18二酸)
2 G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16](Jant4、9-40)アミド(配列番号21)であり;配列番号22 dK
7(K(mPeg-γE-C18二酸)
2 N-Me、G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16](Jant4、9-40)アミド(配列番号22)である。
【
図6B】
図6Aおよび6Bは、2つのアシル化アミノ酸を含む本発明のGLP-1受容体アンタゴニストの誘導体に関するデータを提供する。
図6Aおよび6Bは、グルコース負荷がアンタゴニストの投与24時間後(
図6A)または48時間後(
図6B)に施行されるグルコース負荷試験の結果を示すグラフであり、配列番号16は、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16]-(Jant4、9-40)酸(配列番号16)であり;配列番号17は、dK
7(mPeg-γE(C18二酸)G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16]-(Jant4、9-40)酸(配列番号17)であり;配列番号18は、dK
7(mPeg-γE(C18二酸)i-Pr、G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16]-(Jant4、9-40)酸(配列番号18)であり;配列番号19 dK
7(mPeg-γE(C18二酸)N-Me、G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16]-(Jant4、9-40)酸(配列番号19)であり;配列番号20 dK
7(K(mPeg-γE-C18二酸)
2 G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C18二酸](Jant4、9-40)アミド(配列番号20)であり;配列番号21 dK
7(K(mPeg-γE-C18二酸)
2 G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16](Jant4、9-40)アミド(配列番号21)であり;配列番号22 dK
7(K(mPeg-γE-C18二酸)
2 N-Me、G
8、R
12、E
24、R
28、K
40[mPEG-γE-C16](Jant4、9-40)アミド(配列番号22)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本発明を記載し、請求する上で、以下に記載された定義に従って以下の用語が使用される。
【0024】
用語「約」は本明細書で使用される場合、述べられた値または値の範囲より10パーセント多いまたは少ないことを意味するが、任意の値または値の範囲をこのより広い定義のみに指定するものではない。用語「約」に先行される各値または値の範囲も、述べられた絶対的な値または値の範囲の実施形態を包含することが意図される。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、アミノ基およびカルボン酸基が同じ炭素(アルファ炭素)に結合されている、アミノ官能基およびカルボキシル官能基の両方を含有する任意の分子を包含する。アルファ炭素は、場合により1個または2個のさらなる有機置換基を有してもよい。アミノ酸は、その3文字表記、1文字表記によって、または一部の場合にはその側鎖の名前によって指定され得る。例えば、アルファ炭素に結合されたシクロヘキサン基を含む非標準アミノ酸は、「シクロヘキサン」または「シクロヘキシル」と呼ばれる。本開示の目的のために、その立体化学を特定しないアミノ酸の指定は、アミノ酸のL型もしくはD型のいずれか、またはラセミ混合物を包含することが意図される。しかし、アミノ酸がその3文字表記(すなわち、Lys)によって指定される例では、そのような指定はアミノ酸の天然のL型を特定することが意図されるのに対し、D型は3文字表記または1文字表記の前に小文字のdを含めること(すなわち、dLysまたはdK)によって特定される。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシル酸」とは、アルファ炭素アミノ基をヒドロキシル基と置き換えるように修飾されているアミノ酸を指す。
本明細書で使用される場合、用語「非コードアミノ酸」は、以下の20個のアミノ酸:Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、TyrのうちのいずれかのL異性体ではない任意のアミノ酸を包含する。
【0027】
「生理活性ポリペプチド」とは、インビトロおよび/またはインビボで生物学的効果を発揮することができるポリペプチドを指す。
本明細書で使用される場合、ペプチドへの一般的な言及は、修飾されたアミノ末端およびカルボキシ末端を有するペプチドを包含することが意図される。例えば、標準的なアミノ酸を指定するアミノ酸配列は、N末端およびC末端の標準的なアミノ酸、ならびにN末端の対応するヒドロキシル酸および/または末端カルボン酸の代わりにアミド基を含むように修飾された対応するC末端アミノ酸を包含することが意図される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「アシル化」アミノ酸は、それが生成される手段に関係なく、天然に存在するアミノ酸に対して非天然であるアシル基を含むアミノ酸である。アシル化アミノ酸およびアシル化ペプチドを生成する例示的な方法は当技術分野で公知であり、ペプチドに含める前のアミノ酸のアシル化、またはペプチド合成とそれに続くペプチドの化学的アシル化を含む。いくつかの実施形態では、アシル基は、(i)循環中の半減期の延長、(ii)作用の発現の遅延、(iii)作用持続時間の延長、(iv)プロテアーゼに対する耐性の改善、および(v)GLP-1受容体における効力の向上のうちの1つまたは複数をペプチドに持たせる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「アルキル化」アミノ酸は、それが生成される手段に関係なく、天然に存在するアミノ酸に対して非天然であるアルキル基を含むアミノ酸である。アルキル化アミノ酸およびアルキル化ペプチドを生成する例示的な方法は当技術分野で公知であり、ペプチドに含める前のアミノ酸のアルキル化、またはペプチド合成とそれに続くペプチドの化学的アルキル化を含む。任意の特定の理論に拘束されるものではないが、ペプチドのアルキル化は、ペプチドのアシル化と同じではないにしても、類似した効果、例えば、循環中の半減期の延長、作用の発現の遅延、作用持続時間の延長、プロテアーゼに対する耐性の改善を達成すると考えられる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン、例えば油/水または水/油エマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかを含む。該用語は、ヒトを含む動物における使用に関して米国連邦政府の規制機関によって承認された、または米国薬局方に収載された薬剤のいずれかも包含する。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の生物活性を保持し、生物学的にまたはその他の点で望ましくなくはない化合物の塩を指す。本明細書に開示された化合物の多くは、アミノ基および/もしくはカルボキシル基またはそれに類似した基の存在により酸性および/または塩基性塩を形成することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「親水性部分」とは、易水溶性であるかまたは容易に水を吸収し、毒性作用なしに哺乳動物種によってインビボで許容される(すなわち生体適合性である)任意の化合物を指す。親水性部分の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ならびに誘導体化セルロース、例えばヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースおよびそれらのコポリマー、ならびに例えば、アルブミン、ヘパリンおよびデキストランを含む天然のポリマーが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「処置(treating)」は、特定の障害もしくは状態に関連する症状の軽減および/または前記症状の予防もしくは排除を含む。例えば、本明細書で使用される場合、用語「低血糖の処置」は、一般に、血糖値を正常に近いレベルに維持するかまたは上げることを指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、GLP-1受容体アンタゴニストの「有効」量または「治療有効量」とは、所望の効果をもたらすためのGLP-1アンタゴニストの非毒性であるが十分な量を指す。例えば、1つの所望の効果は、低血糖の予防または処置となろう。「有効」である量は、個体の年齢および全身状態、投与方法等に応じて対象ごとに異なる。故に、正確な「有効量」を常に特定できるとは限らない。しかし、任意の個体例における適当な「有効」量は、日常の実験を使用して当業者によって決定され得る。
【0035】
用語「非経口」は、消化管を通じてではなく、鼻腔内、吸引、皮下、筋肉内、脊髄内、または静脈内などのいくつかの他の経路によることを意味する。
本明細書で使用される場合、用語「誘導体」は、例えば、ポリペプチドの1つもしくは複数の位置の側鎖に基(例えば、チロシン残基にニトロ基、またはチロシン残基にヨウ素)を導入すること、またはエステル基もしくはアミド基への遊離カルボキシル基の変換、またはアシル化によるアミドへのアミノ基の変換、またはヒドロキシ基をエステルにするアシル化、または1級アミンを2級アミンにするアルキル化、またはアミノ酸側鎖への親水性部分の結合による、インビトロでの化学修飾を含む、化合物(例えば、アミノ酸)に対する化学修飾を包含することが意図される。他の誘導体は、ポリペプチドにおけるアミノ酸残基の側鎖の酸化または還元によって得られる。
【0036】
用語「同一性」は本明細書で使用される場合、2つ以上の配列間の類似性に関する。同一性は、同一の残基の数を残基の総数で割り、結果に100を掛けて百分率を得ることによって測定される。故に、全く同じ配列の2つのコピーが100%同一性を有するのに対し、互いと比較してアミノ酸欠失、付加、または置換を有する2つの配列は同一性の程度がより低い。当業者は、いくつかのコンピュータープログラム、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool、Altschulら(1993)J.Mol.Biol.215:403~410頁)などのアルゴリズムを使用するものが配列同一性を決定するのに利用可能であることが分かるであろう。
【0037】
本明細書で使用される場合、第2の受容体と比較した第1の受容体に関する分子の「選択性」という用語は、以下の比:第1の受容体における分子のEC50で割った第2の受容体における分子のEC50を指す。例えば、第1の受容体で1nMのEC50を有し、第2の受容体で100nMのEC50を有する分子は、第2の受容体と比較した第1の受容体に関して100倍の選択性を有する。
【0038】
本明細書で使用される場合、アミノ酸「修飾」とは、アミノ酸への/からの化学基の付加および/または除去によるアミノ酸の置換、またはアミノ酸の誘導を指し、ヒトタンパク質に一般的に見出される20個のアミノ酸、および非定型または天然に存在しないアミノ酸のいずれかによる置換を含む。非定型アミノ酸の商業的供給源としては、Sigma-Aldrich(ミルウォーキー、WI)、ChemPep Inc.(マイアミ、FL)、およびGenzyme Pharmaceuticals(ケンブリッジ、MA)が挙げられる。非定型アミノ酸は、商業的供給者から購入されてもよく、新規合成されてもよく、または天然に存在するアミノ酸から化学修飾もしくは誘導体化されてもよい。
【0039】
本明細書で使用される場合、アミノ酸「置換」とは、異なるアミノ酸残基による1個のアミノ酸残基の置き換えを指す。
本明細書で使用される場合、用語「保存的アミノ酸置換」は、以下の5つの群の1つの中での交換として本明細書において定義される:
I.小さな脂肪族の非極性またはやや極性残基:
Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;
II.極性の負に荷電した残基およびそれらのアミド:
Asp、Asn、Glu、Gln、システイン酸およびホモシステイン酸;
III.極性の正に荷電した残基:
His、Arg、Lys;オルニチン(Orn)
IV.大きな脂肪族の非極性残基:
Met、Leu、Ile、Val、Cys、ノルロイシン(Nle)、ホモシステイン
V.大きな芳香族残基:
Phe、Tyr、Trp、アセチルフェニルアラニン
本出願全体を通じて、数による特定のアミノ酸位置(例えば、28位)への全ての言及は、天然のエキセンジン4(配列番号1)におけるその位置または任意のその類似体における対応するアミノ酸位置のアミノ酸を指す。例えば、本明細書における「28位」への言及は、配列番号1の第1のアミノ酸が欠失されているエキセンジン4の類似体の対応する27位を意味することになる。したがって、9-39エキセンジン4は、最初の8個のアミノ酸が欠失されているN末端切断エキセンジン4ペプチドを表す。さらに、39より大きい位置への言及(天然のエキセンジン4は39個のアミノ酸のみを有する)は、配列番号1の対応する39位の後にC末端アミノ酸伸長を有する類似体におけるアミノ酸位置を指すことが意図される。
【0040】
本明細書で使用される場合、一般用語「ポリエチレングリコール鎖」または「PEG鎖」とは、一般式H(OCH2CH2)nOH(式中、nは少なくとも2である)によって表される、分岐鎖または直鎖のエチレンオキシドおよび水の縮合ポリマーの混合物をさす。「ポリエチレングリコール鎖」または「PEG鎖」は、そのおおよその平均分子量を示すために数字の添え字と組み合わせて使用される。例えば、PEG-5,000は、約5,000ダルトンの総分子量平均を有するポリエチレングリコール鎖を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「ペグ化」および同様の用語は、ポリエチレングリコール鎖を化合物に連結することによってその天然の状態から修飾されている化合物を指す。「ペグ化ポリペプチド」は、ポリペプチドにPEG鎖が共有結合したポリペプチドである。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「miniPEG」または「OEG」は、構造:
【0043】
【0044】
を含む官能基化ポリエチレン化合物を定義する。
本明細書で使用される場合、「リンカー」または「スペーサー」は、2つの別個の実体を互いに結び付ける結合、分子または分子群である。リンカーは、2つの実体の最適な間隔を提供することができ、またはさらに2つの実体を互いに分離できるようにする不安定結合を供給することができる。不安定結合としては、光切断可能な基、酸不安定部分、塩基不安定部分、および酵素切断可能な基が挙げられる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「二量体」は、リンカーを介して互いに共有結合した2つのサブユニットを含む複合体である。二量体という用語は、限定する用語が何もなく使用される場合、ホモ二量体およびヘテロ二量体の両方を包含する。ホモ二量体は2つの同一のサブユニットを含むのに対し、ヘテロ二量体は異なる2つのサブユニットを含むが、2つのサブユニットは互いと実質的に類似している。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語C16~C20脂肪酸は、構造:-CO(CH2)14~20CH3を指定し、用語C16~C20二酸は、構造:-CO(CH2)14~20COOHを指定し、接頭辞「C16~C20」は、指定によって包含される化合物中の炭素の可変的総数を指定する。例えば、C18二酸は、構造:-CO(CH2)16COOHを表す。本明細書で使用される場合、アシル化アミノ酸への一般的な言及は、脂肪酸でアシル化されたその側鎖を有するアミノ酸および二酸でアシル化されたその側鎖を有するアミノ酸の両方を包含する。
【0047】
本明細書に開示の生理的条件は、温度約35~40℃およびpH約7.0~約7.4を含む、より典型的には、pH7.2~7.4および温度36~38℃を含むことが意図される。生理的pHおよび温度は、高度に定義された範囲内でヒトにおいて厳密に調節されるため、ジペプチド/薬物複合体(プロドラッグ)から薬物への変換速度は、高い患者内および患者間再現性を示す。
【0048】
用語「C1~Cnアルキル」(nは1~6であり得る)は、本明細書で使用される場合、1~特定された数の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖アルキル基を表す。典型的なC1~C6アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
用語「C2~Cnアルケニル」(nは2~6であり得る)は、本明細書で使用される場合、2~特定された数の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を有するオレフィン性不飽和分岐鎖基または直鎖基を表す。そのような基の例としては、1-プロペニル、2-プロペニル(-CH2-CH=CH2)、1,3-ブタジエニル、(-CH=CHCH=CH2)、1-ブテニル(-CH=CHCH2CH3)、ヘキセニル、ペンテニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
用語「C2~Cnアルキニル」(nは2~6であり得る)とは、2~n個の炭素原子および少なくとも1つの三重結合を有する不飽和分岐鎖基または直鎖基を指す。そのような基の例としては、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」とは、1つまたは2つの芳香環を有する単環式または二環式炭素環系を指し、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニル等を含むが、これらに限定されない。アリール環のサイズおよび置換基または結合基の存在は、存在する炭素の数を指定することによって示される。例えば、用語「(C1~C3アルキル)(C6~C10アリール)」は、1~3員アルキル鎖を介して親部分に結合した5~10員アリールを指す。
【0052】
用語「ヘテロアリール」とは、本明細書で使用される場合、1つまたは2つの芳香環を含有し、芳香環中に少なくとも1個の窒素、酸素、または硫黄原子を含有する単環式または二環式環系を指す。ヘテロアリール環のサイズおよび置換基または結合基の存在は、存在する炭素の数を指定することによって示される。例えば、用語「(C1~Cnアルキル)(C5~C6ヘテロアリール)」は、1~「n」員アルキル鎖を介して親部分に結合した5~6員ヘテロアリールを指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群の1つまたは複数のメンバーを指す。
本明細書で使用される場合、さらなる指定がない用語「患者」は、任意の温血脊椎飼育動物(例えば、家畜、ウマ、ネコ、イヌおよび他のペットを含むが、これらに限定されない)およびヒトを包含することが意図され、医者に直接かかっている個体に限定されない。
【0054】
用語「単離された」は本明細書で使用される場合、その天然の環境から取り除かれていることを意味する。
用語「精製された」とは本明細書で使用される場合、天然または自然な環境で通常分子または化合物に関連する混入物を実質的に含まない形態での分子または化合物の単離を指し、元の組成物の他の成分から分離された結果、純度が上がっていることを意味する。用語「精製ペプチド」は、核酸分子、脂質および炭水化物を含むがこれらに限定されない他の化合物から分離されたペプチドを記載するのに本明細書において使用される。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」は、2個以上のアミノ酸および典型的には50個未満のアミノ酸の配列を包含し、アミノ酸は、天然に存在するもしくはコードアミノ酸、または天然に存在しないもしくは非コードアミノ酸である。天然に存在しないアミノ酸とは、インビボで天然に存在しないが、それにもかかわらず、本明細書に記載されたペプチド構造に組み込むことができるアミノ酸を指す。「非コード」とは本明細書で使用される場合、以下の20個のアミノ酸:Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、TyrのうちのいずれかのL異性体ではないアミノ酸を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「部分的に非ペプチド性の」とは、分子の一部が、生物活性を有しアミノ酸の配列を含まない化合物または置換基である分子を指す。
「ペプチドミメティック」とは、既存のペプチドの一般構造とは異なる構造を有するが、例えばそのペプチドの生物活性を模倣することによって、既存のペプチドに類似した様式で機能する化合物を指す。ペプチドミメティックは典型的には、天然に存在するアミノ酸および/または非天然アミノ酸を含むが、ペプチド骨格に対する修飾を含むこともできる。例えば、ペプチドミメティックは、非ペプチド部分、例えばレトロインベルソ断片(retroinverso fragment)の挿入もしくは置換、またはアザペプチド結合(NHによって置換されたCO)もしくはシュードペプチド結合(例えば、CH2で置換されたNH)などの非ペプチド結合、もしくはエステル結合(例えば、1つまたは複数のアミド(-CONHR-)結合がエステル(COOR)結合によって置き換えられるデプシペプチド)の組み込みを有する天然に存在するアミノ酸の配列を含んでもよい。あるいは、ペプチドミメティックは、任意の天然に存在するアミノ酸を欠いてもよい。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「荷電アミノ酸」または「荷電残基」とは、水溶液中、生理的pHで負に荷電(すなわち、脱プロトン化)または正に荷電(すなわち、プロトン化)した側鎖を含むアミノ酸を指す。例えば、負に荷電したアミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン酸、ホモシステイン酸、およびホモグルタミン酸が挙げられるのに対し、正に荷電したアミノ酸としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。荷電アミノ酸は、ヒトタンパク質に一般的に見出される20個のアミノ酸のうちの荷電アミノ酸、および異型または天然に存在しないアミノ酸を含む。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「酸性アミノ酸」とは、例えば、側鎖カルボン酸基またはスルホン酸基を含む第2の酸性部分(アミノ酸のアルファカルボン酸以外)を含むアミノ酸を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「プロドラッグ」は、その完全な薬理作用を示す前に化学修飾を受ける任意の化合物として定義される。
本明細書で使用される場合、「ジペプチド」は、α-アミノ酸またはα-ヒドロキシル酸の、ペプチド結合を通じた別のアミノ酸への結合の結果である。
【0060】
本明細書で使用される場合、いずれのさらなる指定もない用語「化学的切断」は、共有化学結合の切断をもたらす非酵素反応を包含する。
本明細書で使用される場合、用語「非定型低血糖」は、外因性インスリン投与とは無関係に患者に生じる低血糖状態を定義する。
略号:
小文字のk=リジンのD異性体
大文字のK=リジンのL異性体
γE=ガンマグルタミン酸のL異性体
(miniPEG)2=COCH2OCH2CH2OCH2CH2NH
COC16H32CO2H=(C18二酸)
(N-Me)G=サルコシン
実施形態
本開示の1つの実施形態によれば、外因性インスリン投与とは無関係に生じる低血糖状態(すなわち、非定型低血糖)を患っている患者を処置するための組成物および方法が提供される。本開示によれば、GLP-1アンタゴニストを含む組成物は、血糖値を上げならびに/または関連急性症状および低血糖と関連する慢性転帰を軽減するのに十分な量で、非定型低血糖を患っている患者に投与される。1つの実施形態では、非定型低血糖を経験する患者は高インスリン血症の状態も有する。1つの実施形態では、高インスリン血症状態は患者が肥満手術を受けた後で生じる。
【0061】
1つの実施形態によれば、ペプチドDVSSYLEEQAVREFIAWLVKGGPSSGAPPPSK(配列番号3)の類似体であるGLP-1受容体アンタゴニストペプチドであって、配列番号3と1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸修飾が異なり、修飾が、限定されるものではないがC末端アミノ酸のアシル化および/またはアミド化を含むアミノ酸置換、付加またはアミノ酸構造に対する修飾から選択される、GLP-1受容体アンタゴニストペプチドが提供される。1つの実施形態では、アミノ酸修飾は、該ペプチドの12位、16位、18位、19位、24位、26位、27位および28位の1つもしくは複数におけるアミノ酸置換、ならびに/または15位、16位、17位、19位、20位、21位および23位(天然のエキセンジン4(配列番号1)と比較した番号)の1つもしくは複数におけるD異性体による置換である。1つの実施形態では、配列番号3の類似体は、場合によりスペーサーを介してC16~C18脂肪酸または二酸によるC末端アミノ酸側鎖のアシル化によってさらに修飾されている。
【0062】
1つの実施形態によれば、GLP-1受容体アンタゴニストであって、DVSRYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSK(配列番号4)のアミノ酸配列を含むか、またはGLP-1アンタゴニストペプチドが配列番号3の配列を含まないという条件で、配列番号4と1、2、3、4または5個のアミノ酸置換が異なるが、GLP-1受容体アンタゴニスト活性を保持するアミノ酸配列を含む、GLP-1受容体アンタゴニストが提供される。1つの実施形態では、配列番号4のペプチドと以下のうちの1つまたは複数が異なるペプチドが提供される:
i)TrpまたはdTrpによる7位、10位、11位、13位または16位のいずれかにおける1、2または3個のアミノ酸の置換;
ii)D立体構造の対応するアミノ酸による15位、16位または23位のいずれかにおける1、2または3個のアミノ酸の置換;
iii)Aibによる16位、18位、19位、24位、26位、または28位のいずれかにおける1、2または3個のアミノ酸の置換;
iv)アシル化アミノ酸、場合によりアシル化リジンによる12位における置換;
v)dGlu、Asp、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸による16位における置換;
vi)シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはフェニルグリシンによる、19位における置換;
vii)dArg、ホモリジンまたはシトルリンによる20位における置換;
viii)アミドによる天然のC末端カルボキシル基の置換;
ix)場合によりN末端伸長アミノ酸の1個がアシル化されている、1~3個のアミノ酸のN末端伸長の付加;
x)アシル化アミノ酸によるC末端アミノ酸の置換;
xi)i)~x)の任意の組み合わせ。
【0063】
1つの実施形態によれば、GLP-1受容体アンタゴニストであって、
R10-DVX11X12YLX15X16QAX19X20EFX23EWLVRGGPSSGAPPPSX40-R20(配列番号23)(ここで、
R10は、NH2または1、2もしくは3個のアミノ酸のN末端伸長であり、N末端伸長のアミノ酸の1個は、場合によりスペーサーを介してC16~C18脂肪酸または二酸でアシル化され、場合によりR10は、構造:X7X8のジペプチドであり、X7はアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysまたはアシル化dLysであり、X8はGlyまたはC1~C4 N-アルキル化Glyであり;
X11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X12は、Argまたはアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;
X15は、GluまたはdGluであり;
X16は、Glu、dGlu、Asp、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸であり;
X19は、Val、シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはフェニルグリシンであり;
X20は、Arg、ホモリジンまたはシトルリンであり;
X23は、Ile、またはdIleであり;
X40は、アシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;ならびに
R20は、COOHまたはCONH2である)のアミノ酸配列を含み、場合により、10位および11位が両方ともTrpまたはdTrpではないという任意選択の条件で;R10およびX12が両方ともアシル化アミノ酸を含むことができないというさらなる任意選択の条件で、7位、10位、13位、または16位から選択される1、2または3個のアミノ酸がTrpまたはdTrpで置換され;場合により、16位、18位、19位、24位、26位、または28位のいずれかにおける1、2または3個のアミノ酸がAibで置換されている、GLP-1受容体アンタゴニストが提供される。
【0064】
1つの実施形態では、配列番号23のペプチドの7位、12位および40位の1つのみがアシル化アミノ酸を含む。1つの実施形態では、配列番号23のペプチドの7位、12位および40位の2つがアシル化アミノ酸を含む。1つの実施形態では、7位、12位および40位のアシル化アミノ酸は、独立して式I(場合により、Lys)、または式II(場合により、Ser)の構造を含むアミノ酸であり、式I、およびIIの各々は:
【0065】
【0066】
1つの実施形態では、R10がX7X8(ここで、X7はアシル化Lysまたはアシル化dLysである)であり、X12がArgであり、X40がアシル化Lysである、配列番号23のペプチドが提供される。1つの実施形態では、R10がNH2であり、X12がアシル化Lysであり、X40がアシル化Lysである、配列番号23のペプチドが提供される。1つの実施形態では、R10がNH2であり、X12がArgであり、X40がアシル化Lysである、配列番号23のペプチドが提供される。1つの実施形態では、配列番号23のペプチドのアシル化アミノ酸は、アシル化Lys残基であり、場合により、アシル化Lys残基は、独立してC14~C24脂肪酸もしくは脂肪二酸またはC16~C18脂肪酸もしくは脂肪二酸でアシル化され、場合により、脂肪酸または脂肪二酸は、本明細書に開示されたスペーサー分子のいずれかを介してLys残基の側鎖に連結されている。
【0067】
1つの実施形態によれば、GLP-1受容体アンタゴニストであって、
R10-DVX11X12YLEX16QAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40-R20(配列番号24)(ここで、
R10は、NH2または構造:X7X8のジペプチドであり、X7はアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysまたはアシル化dLysであり、X8はGlyまたはC1~C4 N-アルキル化Glyであり;
X11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X12は、Argまたはアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;
X16は、GluまたはAspであり;
X40は、アシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;および
R20は、COOHまたはCONH2である)のアミノ酸配列を含み、場合により、16位、17位、18位、20位もしくは21位から選択される1、2または3個のアミノ酸が、D立体構造の対応するアミノ酸で置換され、および/または16位、18位、19位、24位、26位、または28位のいずれかにおける1、2もしくは3個のアミノ酸がAibで置換されている、GLP-1受容体アンタゴニストが提供される。
【0068】
1つの実施形態によれば、GLP-1受容体アンタゴニストであって、
R10-DVX11X12YLEX16QAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40-R20(配列番号24)(ここで、
R10は、構造:X7X8のジペプチドであり、X7はアシル化Lysまたはアシル化dLysであり、X8はGlyまたはサルコシンであり;
X11は、TrpまたはdTrpであり;
X12は、Argであり;
X16は、Gluであり;
X40は、アシル化Lysであり;および
R20は、COOHまたはCONH2である)のアミノ酸配列を含み、ペプチドの前記アシル化Lys残基が、独立して、本明細書に開示のスペーサーを場合により介してC16~C18脂肪酸または脂肪二酸でアシル化され、場合により、16位、18位、19位、24位、26位、または28位のいずれかにおける1、2または3個のアミノ酸がAibで置換されている、GLP-1受容体アンタゴニストが提供される。
【0069】
1つの実施形態によれば、GLP-1受容体アンタゴニストであって、
R10-DVX11X12YLEX16QAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPS-R20 配列番号97)(ここで、
R10は、構造:X7X8のジペプチドであり、X7はアシル化Lysまたはアシル化dLysであり、X8はGlyまたはサルコシンであり;
X11は、Ser、TrpまたはdTrpであり;
X12は、Argであり;
X16は、Gluであり;
および
R20は、COOHまたはCONH2である)のアミノ酸配列を含み、前記アシル化Lys残基が、本明細書に開示のスペーサーを場合により介してC16~C18脂肪酸または脂肪二酸でアシル化され、場合により、16位、18位、19位、24位、26位、または28位のいずれかにおける1、2または3個のアミノ酸がAibで置換されている、GLP-1受容体アンタゴニストが提供される。
【0070】
1つの実施形態では、GLP-1アンタゴニストペプチドは、DVX11RYLQX15X16AVREFX23EWLVRGGPSSGAPPPSX40-R20(配列番号25)(ここで、
X11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X15は、GluまたはdGluであり;
X16は、GluまたはdGluであり;
X23は、Ile、またはdIleであり;
X40は、アシル化アミノ酸、場合により、スペーサーを場合により介してC16~C18脂肪酸または二酸でアシル化されたLysであり;および
R20は、COOHまたはCONH2である)のアミノ酸配列を含む。場合により、配列番号25のGLP-1アンタゴニストは、配列番号1の天然のエキセンジン4配列の番号付けと比較して16位、18位、19位、24位、26位、もしくは28位のいずれかにおける1つもしくは複数のAib置換、または場合により12位におけるアシル化Lysの置換によってさらに修飾されている。1つの実施形態では、12位におけるアシル化Lysの置換および27位におけるAibの任意選択の置換をさらに含む、配列番号25のペプチドが提供される。
【0071】
1つの実施形態では、GLP-1アンタゴニストペプチドは、
DVX11RYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40R2(配列番号6)または
X7X8DVX11RYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40R20(配列番号26)(ここで、X7はアシル化Lysまたはアシル化dLysであり、X8はGlyまたはサルコシンであり、X11はTrpまたはdTrpであり、X40はアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり、アシル化Lys残基は、場合によりスペーサーを介してLys側鎖に共有結合されたC16~C18脂肪酸または二酸を含み、R20はCOOHまたはCONH2である)のアミノ酸配列を含む。場合により、配列番号6および配列番号26のペプチドは、天然のエキセンジン4(配列番号1)の番号付けに基づく16位、18位、19位、24位、26位もしくは28位のいずれかにおける位置のいずれか1つにおけるAib置換でさらに修飾されていてもよく、または配列番号6のペプチドは、12位のアシル化Lysで場合により置換されている。
【0072】
1つの実施形態では、GLP-1アンタゴニストペプチドは、DVX11RYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40R20 配列番号6)もしくはDVWRYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40R20(配列番号7)(ここで、X11は、TrpまたはdTrpであり、X40は、アミノ酸の側鎖に連結されている、高親和性で血清アルブミンに結合するのに十分なサイズのアシル基を有するアミノ酸であり、場合により、アシル基はスペーサーを介して連結され、R20は、天然のエキセンジン4(配列番号1)の番号付けと比較して16位、18位、19位、24位、26位もしくは28位のいずれか1つにAib置換を場合により有するCOOHまたはCONH2であり、場合により、C末端アミノ酸のカルボキシ基はアミドで置換されている(すなわち、R20はCONH2である))のアミノ酸配列、または配列番号6もしくは配列番号7と1個もしくは2個のアミノ酸置換が異なるアミノ酸を含む。1つの実施形態では、X40は、式I(場合により、Lys)、式II(場合により、Ser)、または式III(場合により、Cys)の構造を含むアミノ酸である(ここで、式I、II、およびIIIの各々は:
【0073】
【0074】
である)。
1つの実施形態では、GLP-1アンタゴニストペプチドは、
DVX11RYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40-COOH(配列番号9)または
DVX11RYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40-NH2(配列番号10)(ここで、X11は、TrpまたはdTrpであり、X40は、場合によりスペーサーを介してアミノ酸の側鎖に連結されたアシル基を有するアミノ酸である)のアミノ酸配列を含む。1つの実施形態では、X40は、アシル化Lysである。
【0075】
1つの実施形態によれば、
DVWX12YLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40-NH2(配列番号8)(ここで、
X12は、アシル化Lysであり;および
X40は、C末端カルボン酸に対するアミド置換を有するアシル化Lysであり、アシル化Lysのアシル基は、スペーサーを介してLys側鎖に場合により連結されているC16~C18酸または二酸である)のアミノ酸配列を有するGLP-1受容体アンタゴニストペプチドが提供される。
【0076】
さらに別の態様では、本明細書に開示されたGLP-1受容体アンタゴニストのいずれかのうちの1位のアミノ酸は、ペプチドのプロテアーゼ分解を阻害するように修飾されている。1つの実施形態では、プロテアーゼの阻害は:
i)N末端アミノ酸の側鎖のアシル化;
ii)N末端アミノ酸とそのD立体異性体との置換;
iii)例えば、アセチル基をアルファアミンに共有結合すること、もしくはアルファアミン基を除去することを含む、N末端アルファアミンの修飾;または
iv)i)~iii)の任意の組み合わせ
によって達成される。
【0077】
1つの実施形態では、DVX11RYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40R2(配列番号6)(ここで、X11は、TrpまたはdTrpであり、X40は、アシル化アミノ酸であり、R20は、COOHまたはCONH2である)の配列を含むペプチドであって、配列番号6と比較して最大3つのアミノ酸修飾を有し、ヒトGLP-1においてアンタゴニスト活性を示す、ペプチドが提供される。
【0078】
1つの実施形態では、GLP-1受容体アンタゴニストは、
DV(dW)RYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号27)
DVWRYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号28)
DV(dW)RYLE(Aib)QAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号29)
DVWRYLE(Aib)QAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号30)
DV(dW)RYLEEQ(Aib)VREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号31)
DVWRYLEEQ(Aib)VREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号32)
DV(dW)RYLEEQA(Aib)REFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号33)
DVWRYLEEQA(Aib)REFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号34)
DV(dW)RYLEEQAVREFI(Aib)WLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号35)
DVWRYLEEQAVREFI(Aib)WLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号36)
DV(dW)RYLEEQAVREFIEW(Aib)VRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号37)
DVWRYLEEQAVREFIEW(Aib)VRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号38)
DV(dW)RYLEEQAVREFIEWLV(Aib)GGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号39)
DVWRYLEEQAVREFIEWLV(Aib)GGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号40)
DV(dW)RYLEEQAV(dR)EFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号41)
DVWRYLEEQAV(dR)EFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40 R20、(配列番号42)、
(ここで、X40は、アシル化アミノ酸、場合により、C16~C18脂肪酸または二酸でアシル化されたLysであり、R20は、COOHまたはCONH2である)からなる群から選択されるペプチドを含み、ペプチドは、ヒトGLP-1においてアンタゴニスト活性を示す。
【0079】
本開示の追加の例示される種としては、表1にリストされたものが挙げられる:
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
1つの実施形態では、ホモもしくはヘテロ多量体またはホモもしくはヘテロ二量体を含む、本開示の2つ以上のGLP-1受容体アンタゴニストペプチドを含む二量体および多量体が調製される。2つ以上のGLP-1受容体アンタゴニストペプチドは、当業者に公知の標準的な連結剤および手順を使用して結合させることができる。例えば、特にシステイン、リジン、オルニチン、ホモシステインもしくはアセチルフェニルアラニン残基を含むかまたはこれらで置換されたGLP-1受容体アンタゴニストペプチドに関して、二量体は、二官能性チオール架橋剤および二官能性アミン架橋剤の使用により2つのペプチド間で形成することができる。二量体は、ホモ二量体であってもよく、またはあるいはヘテロ二量体であってもよい。例示的な実施形態では、2つ(またはそれ以上)の類似体を連結するリンカーは、PEG、例えば、5kDa PEG、20kDa PEGである。いくつかの実施形態では、リンカーはジスルフィド結合である。例えば、二量体の各単量体は、Cys残基(例えば、末端Cysまたは内部に位置するCys)を含んでもよく、各Cys残基の硫黄原子は、ジスルフィド結合の形成に関与する。例示的な態様では、二量体の各単量体はチオエーテル結合を介して連結されている。例示的な態様では、一方の単量体のLys残基のイプシロンアミンがCys残基に結合され、Cys残基は今度は、化学的部分を介して他方の単量体のLys残基のイプシロンアミンに連結されている。
【0087】
いくつかの実施形態では、単量体は、末端アミノ酸を介して(例えば、N末端またはC末端、場合により、アミノ酸は二量体化するようにペプチドの末端に付加される)、内部アミノ酸を介して、または少なくとも1つの単量体の末端アミノ酸および少なくとも1つの他の単量体の内部アミノ酸を介して連結されている。いくつかの実施形態では、多量体の単量体は、「尾-尾(tail-to-tail)」配向で結合されており、ここで、各単量体のC末端アミノ酸が互いに結合されている。あるいは、1つの実施形態では、「頭-頭(head-to-head)」配向で結合されており、ここで、多量体は、各単量体のN末端アミノ酸が互いに結合されている。
【0088】
1つの実施形態では、本明細書に開示されたGLP-1アンタゴニストペプチドのいずれかのうちのC末端アミノ酸は、天然のカルボキシル基をアミドと置き換えるように修飾されていてもよい。1つの実施形態では、本明細書に開示されたGLP-1アンタゴニストペプチドのいずれかのうちのC末端アミノ酸は、天然のアミノ酸カルボキシル基を含む。
医薬組成物
本開示のGLP-1受容体アンタゴニストペプチド、二量体、多量体、またはコンジュゲート(またはそれらの組み合わせ)のうちのいずれか、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物が本開示によってさらに提供される。医薬組成物は、好ましくは滅菌されており、非経口投与に適している。
【0089】
1つの実施形態によれば、好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の純度レベルの、本明細書に開示された新規のGLP-1受容体アンタゴニストのいずれか、および薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。そのような組成物は、本明細書に開示のGLP-1受容体アンタゴニストを少なくとも0.1~10mg/ml、またはそれ以上の濃度で含有し得る。1つの実施形態では、医薬組成物は、滅菌され場合により様々な包装容器内に保管された水溶液を含む。他の実施形態では、医薬組成物は凍結乾燥粉末を含む。医薬組成物は、組成物を患者に投与するための使い捨てデバイスを含むキットの一部としてさらに包装されてもよい。容器またはキットは、周囲の室温または冷蔵温度での貯蔵用に標識されてもよい。1つの実施形態では、医薬組成物および/またはキットは、本明細書に開示されたGLP-1受容体アンタゴニストのいずれかを、限定されるものではないが、グルコースサプリメント(例えば、デキストロース);グルカゴンおよびグルカゴン類似体などのグルコース上昇剤ならびにインスリン分泌阻害剤(例えば、ジアゾキシド、オクトレオチド)を含む、低血糖の処置に有用な任意の既存の治療薬と組み合わせて含む。
【0090】
1つの実施形態によれば、本明細書に開示された医薬組成物は、低血糖の状態を処置または予防する方法、より具体的には非定型低血糖、または低血糖に関連する医学的状態を処置もしくは予防する方法で使用するために企図される。
【0091】
本開示の組成物は、任意の標準的な投与経路を使用して投与することができる。非経口投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されるレシピエントの血液と製剤を等張性にする溶質を含有し得る水性および非水性、等張性滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存料を含み得る水性および非水性滅菌懸濁剤が挙げられる。用語「非経口」は、消化管は通さないが、皮下、筋肉内、脊髄内、または静脈内などのいくつかの他の経路によることを意味する。1つの実施形態では、本開示のGLP-1受容体アンタゴニストを含む医薬組成物は、皮下投与または静脈内投与用に製剤化される。1つの実施形態では、本開示のGLP-1受容体アンタゴニストは、単独でまたは他の適切な成分と組み合わせて、吸入により投与されるエアロゾル製剤として調製されてもよい。
【0092】
1つの実施形態では、組成物は、本開示のGLP-1受容体アンタゴニストと、ペプチドアンタゴニストの吸収を十分に増強することができる吸収促進剤との共製剤による経口送達用に製剤化される。N-[8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウム(SNAC)は、インスリン、GLP-1、カルシトニンなどのペプチド、およびヘパリンなどの他の巨大分子を含む、多様なスペクトルの分子の透過性を増大することが報告されている送達剤である。1つの実施形態によれば、本開示のGLP-1受容体アンタゴニストおよびSNACを含み、場合により錠剤として製剤化される医薬組成物が経口送達用に提供される。
アシル化
1つの実施形態によれば、GLP-1アンタゴニスト活性を示す本明細書に開示されたペプチド、二量体または多量体のうちのいずれかは、例えばヒト(homo sapiens)を含む温血哺乳動物に投与される場合、治療指数が改善し、インビボでの作用時間が延長するようにさらに修飾されていてもよい。より具体的には、1つの実施形態では、本明細書に開示されたペプチドおよび二量体は、高親和性で血清アルブミンに結合するのに十分なサイズのアルキル基またはアシル基の、アンタゴニストペプチドのアミノ酸(場合によりリジン、セリンまたはシステイン)の側鎖への共有結合によって修飾されている。1つの実施形態では、アルキル化またはアシル化アミノ酸は、GLP-1アンタゴニストペプチドまたは二量体のC末端に位置する。1つの実施形態では、GLP-1アンタゴニストペプチドは、2つのアシル化アミノ酸を含む。1つの実施形態では、GLP-1受容体アンタゴニストペプチドのアミノ酸の1つまたは複数は、脂肪酸または脂肪二酸、場合によりC16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸でアシル化されている。1つの実施形態によれば、本明細書に開示されたGLP-1アンタゴニストペプチドまたは二量体の1つまたは複数のリジン残基は、場合によりスペーサーを介したリジンの側鎖へのC16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸の共有結合によって修飾されている。1つの実施形態では、アシル化リジン残基は、GLP-1アンタゴニストペプチドのC末端アミノ酸である。1つの実施形態では、アシル化アミノ酸は、GLP-1アンタゴニストペプチドの40位、および7位または12位から選択される2番目の位置に存在する。2つ以上のアシル化アミノ酸を有する実施形態では、アシル化アミノ酸は同じかまたは異なっていてもよく、連結されているアシル基は、アシル基が血清アルブミンに結合するのに十分なサイズであるという条件で同じかまたは異なっていてもよい。1つの実施形態では、アシル化アミノ酸は、側鎖が場合によりスペーサーを介してC16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸に連結されているリジンである。
【0093】
1つの実施形態では、C16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸は、miniPEG、ガンマGlu、またはminiPEGおよび/もしくはガンマGluの任意の多量体もしくは組み合わせを含むスペーサーを介して、アミノ酸の側鎖に連結されている。1つの実施形態では、本明細書に開示されたGLP-1受容体アンタゴニストペプチドのいずれかは、エキセンジン4の天然の配列に関して場合により7、12および40から選択される位置にアシル化アミノ酸を含むように修飾されていてもよい。1つの実施形態では、アシル化アミノ酸は、構造:
-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-
(ここで、kは、2、4、6または8から選択される整数であり、pおよびqは、独立して1または2から選択される整数である)を含むスペーサーを介してリジン側鎖に連結されたC16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸を有するリジン残基である。1つの実施形態では、スペーサーは、
-(ガンマグルタミン酸)-[COCH2(OCH2CH2)kNH]2-(ガンマグルタミン酸)-、または
-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-、または
-[COCH2(OCH2CH2)kNH]2-(ガンマグルタミン酸)2-、または
-[COCH2(OCH2CH2)kNH]-(ガンマグルタミン酸)2-[COCH2(OCH2CH2)kNH]-、または
-(ガンマグルタミン酸)2-[COCH2(OCH2CH2)kNH]2、または
-(ガンマグルタミン酸)-[COCH2(OCH2CH2)kNH]-(ガンマグルタミン酸)p-[COCH2(OCH2CH2)kNH]-、またはガンマグルタミン酸、またはガンマグルタミン酸-ガンマグルタミン酸ジペプチド、またはガンマグルタミン酸-[COCH2(OCH2CH2)kNH]-ガンマグルタミン酸(ここで、
kは、1~8の範囲から選択される整数であり;ならびに
qおよびpは、独立して1~8の範囲から選択される整数であり、場合により、kは2であり、qおよびpは、独立して1または2である)からなる群から選択される。1つの実施形態では、スペーサーは、
-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-(ここで、
kは、1~4の範囲から選択される整数であり;ならびに
qおよびpは、独立して1~4の範囲から選択される整数であり、場合により、kは2であり、qおよびpは、独立して1または2であり、場合により、kは2であり、qおよびpは両方とも1である)である。
【0094】
1つの実施形態では、GLP-1受容体アンタゴニストペプチドは、場合によりペプチドのC末端に位置するアシル化Lysを含み、Lysの側鎖は、構造:-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-(ここで、
kは、1~4の範囲から選択される整数であり;ならびに
qおよびpは、独立して1~4の範囲から選択される整数である、場合により、kは2であり、qおよびpは、独立して1または2である、場合により、kは2であり、qおよびpは両方とも1である)を含むスペーサーを介してC16~C18二酸でアシル化されている。1つの実施形態では、アシル化Lysの側鎖は、構造-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-COC16H32CO2H(ここで、kは2であり、pおよびqは、独立して1または2である)を含む。1つの実施形態では、
DV(dW)RYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40R20、(配列番号27)または
DVWRYLEEQAVREFIEWLVRGGPSSGAPPPSX40R20、(配列番号28)(ここで、
R20は、COOHまたはCONH2であり、X40は、-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-COC14H28CO2Hまたは-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-COC16H32CO2Hでアシル化されたLysであり、kは2であり、pおよびqは、独立して1または2である)の配列を含むGLP-1受容体アンタゴニストが提供される。
コンジュゲート
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたGLP-1アンタゴニストペプチドのいずれか1つは、免疫グロブリンまたはその部分(例えば、可変領域、CDR、またはFc領域)にコンジュゲートされる。免疫グロブリン(Ig)の既知のタイプとしては、IgG、IgA、IgE、IgDまたはIgMが挙げられる。Fc領域は、再循環(半減期の延長をもたらす)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、および補体依存性細胞傷害(CDC)などの活性を実行するFc受容体への結合に関与する、Ig重鎖のC末端領域である。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されたGLP-1アンタゴニストペプチドのいずれか1つは、親水性部分にコンジュゲートされる。親水性部分は、タンパク質を活性化ポリマー分子と反応させるのに使用される任意の適切な条件下で、GLP-1アンタゴニストペプチドに共有結合することができる。水溶性ポリマーを1つまたは複数のタンパク質に連結するのに使用され得る活性化基としては、スルホン、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフレート、トレシレート(tresylate)、アジリジン、オキシラン、5-ピリジル、およびアルファ-ハロゲン化アシル基(例えば、アルファ-ヨード酢酸、アルファ-ブロモ酢酸、アルファ-クロロ酢酸)が挙げられるが、これらに限定されない。還元的アルキル化によってペプチドに結合されるならば、選択されるポリマーは、重合の程度が制御されるように単一の反応性アルデヒドを有するべきである。例えば、Kinstlerら、Adv.Drug.Delivery Rev.54:477~485頁(2002);Robertsら、Adv.Drug Delivery Rev.54:459~476頁(2002);およびZalipskyら、Adv.Drug Delivery Rev.16:157~182頁(1995)を参照のこと。
【0096】
適切な親水性部分としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、POG)、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)、ポリオキシアルキレン、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、モノ-(C1~C10)アルコキシ-もしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリ(ベータ-アミノ酸)(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、ポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー(PPG)および他のポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、コラン酸または他の多糖ポリマー、フィコールもしくはデキストランならびにそれらの混合物が挙げられる。デキストランは、α1-6結合によって主に連結されているグルコースサブユニットの多糖ポリマーである。デキストランは、多くの分子量範囲、例えば、約1kD~約100kD、または約5、10、15もしくは20kD~約20、30、40、50、60、70、80もしくは90kDで利用可能である。1つの実施形態では、親水性部分、例えば、ポリエチレングリコール鎖は、約500~約40,000ダルトンの範囲から選択される分子量を有する。いくつかの実施形態では、親水性部分は、約500~約5,000ダルトン、または約1,000~約5,000ダルトンの範囲から選択される分子量を有するポリエチレングリコール鎖である。別の実施形態では、親水性部分、例えば、ポリエチレングリコール鎖は、約10,000~約20,000ダルトンの分子量を有する。
【0097】
1つの実施形態では、ジペプチドが配列番号5または配列番号23のペプチドのN末端にペプチド結合を介して共有結合され、場合により、ジペプチドのアミノ酸の1つがアシル化アミノ酸である、配列番号5または配列番号23のペプチドのコンジュゲート誘導体が提供される。1つの実施形態では、ジペプチドは、X7X8の構造を有する(ここで、X7はアシル化アミノ酸であり、X8は任意のアミノ酸である、場合により、X7はアシル化LysまたはdLysであり、X8はGlyまたはC1~C4 N-アルキル化Glyである、場合により、X7はC14~C20脂肪酸または脂肪二酸でアシル化されたLysまたはdLysであり、X8はGlyまたはC1~C4 N-アルキル化Gly(場合によりGlyまたはサルコシン)である、場合により、X7は、本明細書に開示されたスペーサーのいずれかを介してC14~C20脂肪酸または脂肪二酸でアシル化されたLysであり、X8はC1~C4 N-アルキル化Gly(場合によりGlyまたはサルコシン)である)。
【0098】
1つの実施形態によれば、自己切断ジペプチドが、本明細書に開示されたGLP-1アンタゴニストペプチドのアミノ酸側鎖アミンまたはN末端アルファアミンにアミド結合を介して共有結合されている、GLP-1受容体アンタゴニストペプチドのいずれかのうちのコンジュゲート誘導体が提供される。1つの実施形態では、自己切断ジペプチドは、GLP-1アンタゴニストペプチドのN末端アルファアミンに共有結合されている。
【0099】
例示的な態様では、自己切断ジペプチドは、構造:A-B(ここで、Aは、アミノ酸またはヒドロキシ酸であり;Bは、A-BとGLP-1アンタゴニストペプチドのアミンの間のアミド結合を通じてGLP-1アンタゴニストペプチドに連結されているN-アルキル化アミノ酸である)を含み、場合により、GLP-1アンタゴニストペプチドからのA-Bの化学的切断半減期(t1/2)は、生理的条件下、PBS中で少なくとも約1時間~約1週間である。本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシ酸」とは、アルファ炭素アミノ基をヒドロキシル基と置き換えるように修飾されているアミノ酸を指す。
【0100】
いくつかの実施形態では、自己切断ジペプチドは、
【0101】
【0102】
(ここで、
R1、R2、R4およびR8は、独立してH、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、(C1~C18アルキル)OH、(C1~C18アルキル)SH、(C2~C3アルキル)SCH3、(C1~C4アルキル)CONH2、(C1~C4アルキル)COOH、(C1~C4アルキル)NH2、(C1~C4アルキル)NHC(NH2
+)NH2、(C0~C4アルキル)(C3~C6シクロアルキル)、(C0~C4アルキル)(C2~C5複素環)、(C0~C4アルキル)(C6~C10アリール)R7、(C1~C4アルキル)(C3~C9ヘテロアリール)、およびC1~C12アルキル(W1)C1~C12アルキルからなる群から選択され、W1は、N、SおよびOからなる群から選択されるヘテロ原子であり;
R3は、C1~C18アルキル、(C1~C18アルキル)OH、(C1~C18アルキル)NH2、(C1~C18アルキル)SH、(C0~C4アルキル)(C3~C6)シクロアルキル、(C0~C4アルキル)(C2~C5複素環)、(C0~C4アルキル)(C6~C10アリール)R7、および(C1~C4アルキル)(C3~C9ヘテロアリール)からなる群から選択されるか、またはR4およびR3は、これらが結合する原子と一緒にピロリジン環を形成し;
R5は、NHR6またはOHであり;
R6は、H、C1~C8アルキルであり;ならびに
R7は、HおよびOHからなる群から選択される)の一般構造を有し、
前記GLP-1アンタゴニストからのA-Bの化学的切断半減期(t1/2)は、生理的条件下、PBS中で少なくとも約1時間~約1週間である。1つの実施形態では、ジペプチドA-Bは、GLP-1アンタゴニストアミノ酸配列のN末端アルファアミンに共有結合されている。
【0103】
1つの実施形態では、自己切断ジペプチドは、
【0104】
【0105】
(ここで、
R1およびR8は、独立してHまたはC1~C8アルキルであり;
R2およびR4は、独立してH、C1~C8アルキル、(C1~C4アルキル)OH、(C1~C4アルキル)SH、(C2~C3アルキル)SCH3、(C1~C4アルキル)CONH2、(C1~C4アルキル)COOH、(C1~C4アルキル)NH2、および(C1~C4アルキル)(C6アリール)R7からなる群から選択され;
R3は、C1~C6アルキルであり;
R5は、NH2であり;および
R7は、水素、およびOHからなる群から選択される)の一般構造を有する。
【0106】
1つの実施形態によれば、本明細書に開示されたGLP-1アンタゴニストペプチドおよび二量体のうちのいずれかは、自己切断ジペプチドへの結合によってさらに修飾されていてもよく、ジペプチドのアミノ酸は、高親和性で血清アルブミンに結合するのに十分なサイズの脂肪アシル基でアシル化されている。
【0107】
1つの実施形態では、自己切断ジペプチド「A-B」のアミノ酸「A」は、C16~C30脂肪酸またはC16~C30二酸でアシル化されたリジン残基である。1つの実施形態では、AおよびBは、生理的条件下、標準的なPBS溶液中で少なくとも約24時間~約240時間、約48時間~約168時間、または約48~約120時間、または約70~約100時間の本明細書に開示されたGLP-1アンタゴニストペプチドまたは二量体からのA-Bの化学的切断半減期(t1/2)を提供するように選択される。
【0108】
1つの実施形態では、自己切断ジペプチドは、
【0109】
【0110】
(ここで、
R1は、C1~C8アルキル、(C1~C4アルキル)OH、(C1~C4アルキル)SH、(C1~C4アルキル)COOH、および(C1~C4アルキル)NH2からなる群から選択される側鎖を含み、場合により、C16~C18脂肪酸またはC16~C18二酸は、ガンマグルタミン酸、ガンマグルタミン酸-ガンマグルタミン酸ジペプチド、-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p、およびガンマグルタミン酸-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-ガンマグルタミン酸からなる群から選択されるスペーサーを含む、本明細書に開示されたスペーサーのいずれかを場合により介して前記側鎖に共有結合され、
kは、1~8の範囲から選択される整数であり;および
qおよびpは、独立して1~8の範囲から選択される整数であり、場合により、kは2であり、qおよびpは、独立して1または2であり;
R2、R4およびR8は、独立してH、またはC1~C4アルキルであり;
R3は、C1~C6アルキルであり;ならびに
R5は、NH2である)の一般構造を有する。
【0111】
1つの実施形態では、自己切断ジペプチドは、
【0112】
【0113】
(ここで、
R1は、H、C1~C4アルキル、(C1~C4アルキル)OHまたは(C1~C4アルキル)NH2であり;
R2は、Hであり、
R3は、C1~C4アルキルであり;
R4は、H、またはC1~C4アルキルであり;
R5は、NH2であり;および
R8は、水素である)の一般構造を有する。
【0114】
1つの実施形態によれば、自己切断ジペプチドA-Bは、「A」としてのアシル化アミノ酸残基および「B」としてのN-アルキル化Gly残基を含み、「B」アミノ酸は、GLP-1受容体アンタゴニストペプチドのN末端アルファアミンにアミド結合を介して連結され、場合により、前記Lys残基はD-立体構造である。1つの実施形態では、A-Bジペプチドのアシル化アミノ酸「A」は、
【0115】
【0116】
(ここで、nは、1~4の範囲から選択される整数であり、R50は、NH-CO(CH2)14~20COOH、NH-[スペーサー]-CO(CH2)14~20COOH、S(CH2)14~20COOHおよびS-[スペーサー]-CO(CH2)14~20COOHからなる群から選択され、[スペーサー]は、本明細書に開示されたスペーサーのいずれかである)の一般構造を有するアミノ酸である。1つの実施形態では、Aのアシル化アミノ酸は、独立して、リジン、d-リジン、オルニチン、システインまたはホモシステインから選択され、前記アシル化アミノ酸の側鎖は、場合によりアミノ酸またはジペプチドを含むスペーサーを通じて、C16~C22脂肪酸またはC16~C22二酸に共有結合されている。1つの実施形態では、スペーサーは、ガンマグルタミン酸を含む。1つの実施形態では、スペーサーは、ガンマグルタミン酸およびminiPEGポリマーの複数の単位を任意の組み合わせで含む。1つの実施形態では、任意選択のスペーサーは、2つのガンマグルタミン酸を含み、場合により、2つのガンマグルタミン酸は、介在官能基化miniPEGポリマー、[COCH2(OCH2CH2)kHN]q(ここで、kおよびqは、独立してそれぞれ1、2、3、4、5、6、7または8から選択される整数である)を介して互いに連結されている。
【0117】
1つの実施形態では、自己切断ジペプチドは、
【0118】
【0119】
(ここで、
R1は、(C4アルキル)NH2または(C4アルキル)NH(mPeg-γE-二酸)-C18であり;
R2、R4およびR8は、それぞれHであり;
R3は、C1~C4アルキルであり;ならびに
R5は、NH2である)の一般構造を有し、場合により、自己切断ジペプチドの第1のアミノ酸はD-立体構造である。
【0120】
1つの実施形態では、本明細書に開示されたGLP-1アンタゴニストペプチドおよび二量体は、
【0121】
【0122】
(ここで、
R1は、C1~C18アルキル、(C1~C4アルキル)OH、(C1~C4アルキル)SH、(C1~C4アルキル)COOH、および(C1~C4アルキル)NH2からなる群から選択される側鎖であり、場合により、C16~C20脂肪酸またはC16~C20二酸は前記側鎖に共有結合され;
R2、R4およびR8は、独立してH、またはC1~C4アルキルであり;
R3は、C1~C4アルキルか、またはR4およびR3は、これらが結合する原子と一緒にピロリジン環を形成し;ならびに
R5は、R4およびR3がそれらが結合する原子と一緒にピロリジン環を形成する場合、R2はHではないという条件でNH2である)の構造の自己切断ジペプチドに共有結合されている。
【0123】
さらなる実施形態では、自己切断ジペプチドは、
【0124】
【0125】
(ここで、R1は、(C1~C4アルキル)NH-CO(CH2)14~20CH3、(C1~C4アルキル)NH-[スペーサー]-CO(CH2)14~20CH3、(C1~C4アルキル)NH-CO(CH2)14~20COOHであり;R2およびR8は、それぞれHであり;R4は、HまたはCH3であり;R3は、C1~C4アルキルであり、R5は、NH2である)の構造を有し、場合により、自己切断ジペプチドの第1のアミノ酸はD-立体化学的配置のアミノ酸であり、スペーサーは、本明細書に開示されたスペーサーのいずれかから選択される。1つの実施形態では、R2、R4およびR8はそれぞれHである。1つの実施形態では、R1は(C1~C4アルキル)NH-CO(CH2)16COOH、または(C1~C4アルキル)NH-[スペーサー]-(CH2)16COOHであり、R2、R4およびR8はそれぞれHであり、R3はC1~C4アルキル、場合によりCH3であり、場合により、スペーサーは、構造:
-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-
(ここで、kは2であり、pおよびqは、独立して1または2から選択される整数である)を含む。
【0126】
1つの実施形態によれば、自己切断ジペプチドは、第1のアミノ酸としてアシル化アミノ酸を含み、アシル化アミノ酸の側鎖は、C16~C20脂肪酸またはC16~C20二酸でアシル化され、場合により、アシル化アミノ酸は、C16~C20アシル化リジン、C16~C20アシル化オルニチン、C16~C20アシル化システインおよびC16~C20アシル化ホモシステインから選択され、場合により、ジペプチドのアシル化アミノ酸はC16~C20アシル化Lysであり、場合により、自己切断ジペプチドの第1のアミノ酸はD-立体化学的配置のアミノ酸である。
実施形態
実施形態1によれば、GLP-1受容体アンタゴニストであって、
R10-DVX11X12YLX15X16QAX19X20EFX23EWLVRGGPSSGAPPPSX40-R20 配列番号23)(ここで、
R10は、NH2または1個もしくは2個のアミノ酸のN末端伸長であり、N末端伸長のアミノ酸の1個は、場合によりスペーサーを介してC14~C20脂肪酸または二酸でアシル化され、場合により、R10は、構造:X7X8のジペプチドであり、X7はアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysまたはアシル化dLysであり、X8はGlyまたはC1~C4 N-アルキル化Glyであり;
X11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X12は、Argまたはアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;
X15は、GluまたはdGluであり;
X16は、Glu、dGlu、Asp、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸であり;
X19は、Val、シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはフェニルグリシンであり;
X20は、Arg、ホモリジンまたはシトルリンであり;
X23は、Ile、またはdIleであり;および
X40は、アシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;ならびに
R20は、COOHまたはCONH2である)のアミノ酸配列を含み、場合により、X10またはX11の一方がTrpまたはdTrpである場合、他方はTrpまたはdTrpではなく、R10およびX12は両方ともアシル化アミノ酸を含むことができないという条件で、7位、10位、13位、または16位から選択される1、2または3個のアミノ酸がTrpまたはdTrpで置換され;場合により、16位、18位、19位、24位、26位、または28位のいずれかにおける1、2または3個のアミノ酸がAibで置換されている、前記アンタゴニストが提供される。
【0127】
実施形態2によれば、
R10-DVX11X12YLX15X16QAX19X20EFX23EWLVRGGPSSGAPPPSX40-R20(配列番号23)(ここで、
R10は、NH2またはX7X8であり、X7は、場合によりスペーサーを介してC14~C20脂肪酸または二酸でアシル化されているアミノ酸であり、X8はGlyまたはC1~C4 N-アルキル化Glyであり;
X11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X12は、Argまたはアシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;
X15は、GluまたはdGluであり;
X16は、Glu、dGlu、Asp、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸であり;
X19は、Val、シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはフェニルグリシンであり;
X20は、Arg、ホモリジンまたはシトルリンであり;
X23は、Ile、またはdIleであり;および
X40は、アシル化アミノ酸、場合によりアシル化Lysであり;ならびに
R20は、COOHまたはCONH2である)のアミノ酸配列を含み、場合により、16位、18位、19位、24位、26位、または28位のいずれかにおける1、2または3個のアミノ酸がAibで置換されている、実施形態1に記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0128】
実施形態3によれば、GLP-1アンタゴニストの各アシル化アミノ酸がアシル化Lysである、実施形態1または2に記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
実施形態4によれば、X7がアシル化Lysであり、X12がArgである、実施形態1~3のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0129】
実施形態5によれば、R10がNH2であり、X12がアシル化Lysである、実施形態1~3のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
実施形態6によれば、X7がNH2であり、X12がArgである、実施形態1~3のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0130】
実施形態7によれば、配列番号5から配列番号96のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列、またはその任意の組み合わせを含む、実施形態1に記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0131】
実施形態8によれば、前記GLP-1アンタゴニストのアシル化アミノ酸が、独立して、Lys側鎖に直接連結された、または場合により、
i)ガンマグルタミン酸、
ii)ミニペグポリマー:-[COCH2(OCH2CH2)kNH]-(ここで、kは2、4、6または8である)、
iii)または任意の複数のi)および/もしくはii)またはi)および/もしくはii)の組み合わせ
を含むスペーサーを介して、C16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸でアシル化されたLys残基である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0132】
実施形態9によれば、
DX10X11RYLX15X16QAVREFX23EWLVRGGPSSGAPPPSX40R20(配列番号5)(ここで、
X10は、Trp、dTrpまたはValであり;
X11は、Trp、dTrpまたはSerであり;
X15は、GluまたはdGluであり;
X16は、Trp、dTrp、dGluまたはGluであり;
X23は、IleまたはdIleであり;
X40は、アシル化アミノ酸であり;および
R20は、COOHまたはCONH2である)のアミノ酸配列を含み、場合により、ペプチドが、16位、18位、19位、24位、26位もしくは28位のいずれかにおけるAibの1つもしくは複数の置換、または場合により12位におけるアシル化Lysの置換を含み、前記位置番号が、天然のエキセンジン4アミノ酸配列と比較した番号である、実施形態1~8のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0133】
実施形態10によれば、X11がTrpまたはdTrpである、実施形態1~9のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
実施形態11によれば、配列番号5の16位、18位、19位、24位、26位または28位のいずれかにおける位置のアミノ酸がAibで置換され、場合により、Aibが18位で置換されている、実施形態1~10のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0134】
実施形態12によれば、12位のアミノ酸がアシル化Lysで置換されている、実施形態1~11のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
実施形態13によれば、
X15が、dGluであり;
X16が、Gluであり;および
X23が、Ileである、
実施形態1~11のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0135】
実施形態14によれば、
X15が、Gluであり;
X16が、Gluであり;および
X23が、Ileである、
実施形態1~11のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0136】
実施形態15によれば、X40が、場合によりスペーサーを介してアミノ酸の側鎖に連結されたアシル基を有するアミノ酸である、実施形態1~14のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0137】
実施形態16によれば、X40が、式I(場合により、Lys)、式II(場合により、Cys)、または式III(場合により、Ser)の構造を含むアミノ酸であり、式I、II、およびIIIの各々が:
【0138】
【0139】
である、実施形態1~15のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
実施形態17によれば、X40がアシル化リジンである、実施形態1~16のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0140】
実施形態18によれば、アシル化アミノ酸のアシル基が、(C1~C4アルキル)NH-CO(CH2)14~20CH3、(C1~C4アルキル)NH-[スペーサー]-CO(CH2)14~20CH3、(C1~C4アルキル)NH-CO(CH2)14~20COOH、または(C1~C4アルキル)NH-[スペーサー]-CO(CH2)14~20COOHから選択される、実施形態1~17のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0141】
実施形態19によれば、アシル化アミノ酸のアシル基が、スペーサーを介してアシル化アミノ酸のアミノ酸側鎖に共有結合されている、実施形態1~18のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0142】
実施形態20によれば、スペーサーがアミノ酸またはジペプチドである、実施形態1~19のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
実施形態21によれば、スペーサーが、
i)ガンマグルタミン酸、
ii)ミニペグポリマー:-[COCH2(OCH2CH2)kNH]-(ここで、kは2、4、6または8である)、
iii)または任意の複数のi)および/もしくはii)またはi)および/もしくはii)の組み合わせ
を含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0143】
実施形態22によれば、アシル化アミノ酸が、C16~C18脂肪酸またはC16~C18脂肪二酸に連結され、場合により、前記酸または二酸が、構造:
-(ガンマグルタミン酸)p-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)n-または
-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-[COCH2(OCH2CH2)kNH]m-
(ここで、kは、2、4または8から選択される整数であり、mおよびnは、独立して0、1または2から選択される整数であり、pおよびqは、独立して1、2、4または8から選択される整数である)
を含むスペーサーを介して連結されている、実施形態1~11のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0144】
実施形態23によれば、アシル化アミノ酸が、構造:
-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-
(ここで、kは2であり、pおよびqは、独立して1または2から選択される整数である)
を含むスペーサーを介してリジン側鎖に連結されたC16~C18脂肪酸を有するLysである、実施形態1~22のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0145】
実施形態24によれば、
X11が、TrpまたはdTrpであり;
X15が、GluまたはdGluであり;
X16が、GluまたはdGluであり;
X23が、IleまたはdIleであり;および
X40が、C16またはC18二酸でアシル化されたLysであり、場合により、前記二酸が、構造:
-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-(ガンマグルタミン酸)p-
(ここで、kは2であり、pおよびqは、独立して1または2から選択される整数である)
を含むスペーサーを介して連結されている、実施形態1~23のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0146】
実施形態25によれば、R20がCONH2である、実施形態1~24のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
実施形態26によれば、アミド結合を通じて前記GLP-1アンタゴニストに連結されたジペプチドA-B:
【0147】
【0148】
(ここで、
R1、R2、R4およびR8は、独立してH、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、(C1~C18アルキル)OH、(C1~C18アルキル)SH、(C2~C3アルキル)SCH3、(C1~C4アルキル)CONH2、(C1~C4アルキル)COOH、(C1~C4アルキル)NH2、(C1~C4アルキル)NHC(NH2
+)NH2、(C0~C4アルキル)(C3~C6シクロアルキル)、(C0~C4アルキル)(C2~C5複素環)、(C0~C4アルキル)(C6~C10アリール)R7、(C1~C4アルキル)(C3~C9ヘテロアリール)、およびC1~C12アルキル(W1)C1~C12アルキルからなる群から選択され、W1は、N、SおよびOからなる群から選択されるヘテロ原子であり;
R3は、C1~C18アルキル、(C1~C18アルキル)OH、(C1~C18アルキル)NH2、(C1~C18アルキル)SH、(C0~C4アルキル)(C3~C6)シクロアルキル、(C0~C4アルキル)(C2~C5複素環)、(C0~C4アルキル)(C6~C10アリール)R7、および(C1~C4アルキル)(C3~C9ヘテロアリール)からなる群から選択されるか、またはR4およびR3は、これらが結合する原子と一緒にピロリジン環を形成し;
R5は、NHR6またはOHであり;
R6は、H、C1~C8アルキルであり;ならびに
R7は、HおよびOHからなる群から選択される)
をさらに含み、前記GLP-1アンタゴニストからのA-Bの化学的切断半減期(t1/2)が、生理的条件下、PBS中で少なくとも約1時間~約1週間である、実施形態9~25のいずれか一項に記載のGLP-1アンタゴニストの誘導体が提供される。
【0149】
実施形態27によれば、ジペプチドA-Bが、GLP-1アンタゴニストアミノ酸配列のN末端アルファアミンに共有結合されている、実施形態26に記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0150】
実施形態28によれば、
R1およびR8が、独立してHまたはC1~C8アルキルであり;
R2およびR4が、独立してH、C1~C8アルキル、(C1~C4アルキル)OH、(C1~C4アルキル)SH、(C2~C3アルキル)SCH3、(C1~C4アルキル)CONH2、(C1~C4アルキル)COOH、(C1~C4アルキル)NH2、および(C1~C4アルキル)(C6アリール)R7からなる群から選択され;
R3が、C1~C6アルキルであり;
R5が、NH2であり;ならびに
R7が、水素、およびOHからなる群から選択される、
実施形態26~27のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0151】
実施形態29によれば、
R1が、C1~C8アルキル、(C1~C4アルキル)OH、(C1~C4アルキル)SH、(C1~C4アルキル)COOH、および(C1~C4アルキル)NH2からなる群から選択される側鎖を含み、場合により、C16~C30脂肪酸またはC16~C30二酸が、ガンマグルタミン酸、ガンマグルタミン酸-ガンマグルタミン酸ジペプチド、およびガンマグルタミン酸-[COCH2(OCH2CH2)kNH]q-ガンマグルタミン酸(ここで、
kは、1~8の範囲から選択される整数であり、;および
qは、1~8の範囲から選択される整数であり、場合により、kは2であり、qは1~8の範囲から選択される)からなる群から選択されるスペーサーを場合により介して前記側鎖に共有結合され;
R2、R4およびR8が、独立してH、またはC1~C4アルキルであり;
R3が、C1~C6アルキルであり;ならびに
R5が、NH2である、
実施形態26~27のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0152】
実施形態30によれば、
R1が、H、C1~C4アルキル、(C1~C4アルキル)OHまたは(C1~C4アルキル)NH2であり;
R2が、Hであり、
R3が、C1~C4アルキルであり;
R4が、H、またはC1~C4アルキルであり;
R5が、NH2であり;および
R8が、水素である、
実施形態26~29のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0153】
実施形態31によれば、
前記ジペプチドA-Bがアシル化Lys残基およびN-アルキル化Gly残基を含み、前記LysおよびN-アルキル化Gly残基がペプチド結合を介して連結され、場合により、前記Lys残基がD-立体構造である、
実施形態26~30のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0154】
実施形態32によれば、
R1が、(C4アルキル)NH2または(C4アルキル)NH(mPeg-γE-二酸)-C18であり;
R2、R4およびR8が、それぞれHであり;
R3が、C1~C4アルキルであり;ならびに
R5が、NH2であり;
R5が、アミンである、
実施形態26~30のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストが提供される。
【0155】
実施形態33によれば、実施形態1~32のいずれか1つに記載のGLP-1アンタゴニストまたは誘導体、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0156】
実施形態34によれば、非定型低血糖を患っている患者を処置する方法であって、実施形態33の医薬組成物を、血糖値を上昇させるのに有効な量で、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法が提供される。
【0157】
実施例1
Ex-4(9-39)a(配列番号2)は、GLP-1受容体の確立されたアンタゴニストである。しかし、ヒトにおける治療剤としてのその使用は、その非ヒト起源およびその比較的短いインビボでの作用持続時間により限定される。ヒトGLP-1の同等の末端短縮は受容体活性化作用を減少させるが、高効力のアンタゴニストを提供しない。一連のGLP-1/Ex-4ハイブリッドペプチドにより、純粋なGLP-1ベースのアンタゴニストを生成するのに必要とされる最小限の構造変化がGlu16、Val19、およびArg20として同定され、Ex-4(9-39)aと比べて約3倍大きなインビトロ効力のアンタゴニストをもたらした。ヒトベースのアンタゴニストの部位特異的アシル化は、GLP-1受容体アンタゴニストとしての効力が増加した、GIP受容体と比較して選択性が10倍大きいペプチド「9-40 Jant4 K40[C16]」(配列番号3)をもたらした(Pattersonら、ACS Chem.Biol.2011、6、135~145頁)。
【0158】
本明細書に開示されるように、9-40 Jant4-K40の変異体は、さらに改善されたGLP-1受容体アンタゴニストを提供するために調製された。ペプチド9-40 Jant4-K40は、Lys側鎖へのC16アシル基の直接結合によって40位でアシル化されている。Lys側鎖とC16アシル基の間にスペーサーを挿入する変異体が調製された。表2は、これらのアシル化変異体のGLP-1アンタゴニスト活性および可溶性を示す。
【0159】
9-40Jant4-K40(DVSSYLEEQAVREFIAWLVKGGPSSGAPPPSK;配列番号3)の一次配列に対して様々なアミノ酸置換を行った。これらの変異体のGLP-1アンタゴニスト活性および可溶性は、表3に提供される。
【0160】
表4は、Jant4-K40(配列番号3)変異体の活性および可溶性に対するAib置換の効果に関するデータを提供する。表5は、Jant4-K40(C16)(配列番号3)変異体の可溶性に対するd-AA置換の効果に関するデータを提供し、表6は、Jant4-K40(配列番号3)の3位のTrp置換に関するデータを示す。
材料および方法
Fmoc合成
ペプチドを、Wang樹脂(AAPPtec、ルイビル、KY)および6-Cl-HOBt/DIC活性化により開始するSymphonyペプチド合成装置(Peptide Tech-nology、ツーソン、AZ)を使用して自動Fmoc/t-Bu固相法によって調製した。全ての従来型残基はMidwest Biotech(フィッシャー、IN)から購入し、6-Cl-HOBtおよびDICはAAPPtec(ルイビル、KY)から入手した。ペプチドを樹脂から切断し、2.5%TIS、2.5%H2O、1.5%メタノール、2.5%フェノール、0.5%DODTおよび0.5%のジメチルスルホキシドを含有するTFAで処理して脱保護した。標準的な手順に従って、濾過したTFA溶液から低温エチルエーテルでペプチドを沈殿させた。ペプチドの脂肪酸アシル化を、二重カップリングのために繰り返される10倍過剰なFmoc-Glu-OtBu/DEPBT/DIEAと、その後の10倍過剰なパルミチン酸または別の脂肪酸/DEPBT/DIEAを用いて樹脂で行った。
アンタゴニストアシル化
オルソゴナル固相保護スキームを使用してパルミチン酸を合成アンタゴニストペプチドに導入した。Boc合成をペプチド合成に利用し、Lys40における塩基感受性側鎖保護Lys(Fmoc)-OHの選択的導入を可能にした。完全に保護されたペプチドを、DMF中20%ピペリジン(v/v)を用いて樹脂で30分間処理してLys40側鎖Fmoc基を除去した。過剰な脂肪酸およびDMF/DIEA(4:1v/v)中5当量のベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(Fluka)を用いて、アミド結合形成を約18時間促進した。ニンヒドリン試験を使用して反応の進行を監視し、ペプチド切断後にESI質量分析によってアシル化を確認した。
ペプチド精製
ペプチド精製には逆相HPLC(RP-HPLC)を使用した。分取RP-HPLC精製中、C18固定相(Vydac 218TP、250mm_22mm、10μm)を、0.1%トリフルオロ酢酸中の直線アセトニトリル勾配で使用した。C8カラム(Zorbax 300SB、4.6mm×50mm、3.5μm)を用いるRP-HPLCを使用して、分析的解析をピーク画分で行った。ペプチド同一性および純度を、分析用RP-HPLCおよびESIまたはMALDI質量分析によって評価した。全てのペプチドは正しい分子量を有することが見出され、約95%純度であった。凍結乾燥ペプチドを4℃で保管した。
GLP-1受容体媒介cAMP誘導
GLP-1受容体においてcAMP誘導を刺激またはブロックするペプチドの能力を、ルシフェラーゼベースのレポーター遺伝子アッセイによって調べた。ヒトGLP-1受容体(Open Biosystems)およびcAMP誘導性(cAMP応答エレメント)ルシフェラーゼ遺伝子によるHEK293細胞のコトランスフェクションは、受容体活性化を測定することができる細胞構築物を構成した。0.25%ウシ成長血清(HyClone)補充ダルベッコ改変イーグル培地(Invitrogen)で16時間細胞を欠乏させ、次いで、適当な濃度範囲にわたるペプチドの段階希釈物を96ウェルポリ-D-リジンコーティングプレート(BD Biosciences)に添加するバイオアッセイを第1の血清によって行った。受容体活性化作用アッセイのために、希釈ペプチドの後に一定濃度のGLP-1(0.05nM)をアッセイプレートに添加した。インキュベーションを37℃、5%CO2で5時間継続し、その後、等容量(100μL)のLucLite発光基質試薬(Perkin-Elmer)を添加した。プレートを600rpmで3分間振とう後、MicroBeta1450液体シンチレーション測定(Perkin-Elmer)は発光シグナルをカウント毎秒(cps)で定量化した。Originソフトウェア(OriginLab)を使用してデータをプロットし、有効濃度50(EC50)または阻害濃度50(IC50)をシグモイドフィッティングによって決定した。相対EC50値またはIC50値を比較分析して効力を決定した。各実験を少なくとも3回繰り返し、各試料を3重にアッセイした。
動物
C57Bl/6マウスをJackson Laboratoriesから入手した。マウスを22℃、12:12時間明暗サイクルで単独または集団飼育し、餌および水は自由に摂取させた。全ての試験は、シンシナティ大学施設内動物管理使用委員会によって承認され、該委員会のガイドラインに従って行われた。
グルコース負荷試験(GTT)
耐糖能を決定するために、マウスを6時間絶食させ、グルコースを腹腔内注射した。注射は、体重1kgあたり1.5gグルコース(0.9%w/v生理食塩水中25%w/v D-グルコース(Sigma))からなった。尾部血糖値(mg dL-1)は、注射0分前ならびに15、30、60、および120分後に小型血糖値測定器(FreeStyle Freedom Lite)を使用して測定した。
急性インビボ試験
マウスは、ジペプチジルペプチダーゼ-IV保護Ex-4(0.65nmol kg-1)のIP注射でチャレンジする前に、1、4、8、24、48、72、または120時間時点のいずれかに様々な用量でペプチド(PBS中)の皮下注射を受けた。GLP-1注射の15分後にGTTを行った。尾部血糖値を上記のように得た。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】