(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】立ち上がり構造を備える室内歩行器
(51)【国際特許分類】
A61H 3/04 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61H3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549888
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 NO2022050043
(87)【国際公開番号】W WO2022177445
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521115524
【氏名又は名称】トプロ・インドゥストリ・アクシェセルスカプ
【氏名又は名称原語表記】Topro Industri AS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】アイデ,アーネ オーラヴ
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046AA45
4C046AA47
4C046BB01
4C046BB07
4C046CC01
4C046CC04
4C046DD08
4C046DD26
4C046DD33
(57)【要約】
【選択図】
図1b
本発明は、ハンドル間にフリー空間を有する歩行ハンドルと、後方にパーキングブレーキを有する車輪又は後方に脚とを備えており、1つ以上の立ち上がり構造が、有効位置に伸長している時、画定される立ち上がり構造空間V
R内に配置されていることを特徴とする、室内歩行器を説明しており、1つ以上の立ち上がり構造は、引き込み位置に収納されている時、画定される歩行空間V
Wの外側に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル間にフリー空間を有する歩行ハンドル(11)と、後方にパーキングブレーキを有する車輪(3)又は後方に脚とを備える室内歩行器(1)であって、1つ以上の収納可能な立ち上がり構造(6)は、有効位置に伸長している時、
床上45cmより上、
床上75cmより下、
前記歩行器の後脚/輪の中心から延びる垂直平面Aの前方、
2つの歩行ハンドル(11)の中心から伸びる垂直平面Bの後方、
各側面において前記後脚/輪(3)及び前輪(2)の中心から伸びる垂直平面の内側3cmにある垂直平面C及びDの内側、
によって画定される立ち上がり構造空間V
R内に配置されることを特徴としており、
前記1つ以上の立ち上がり構造(6)は、引き込み位置に収納されている時、
2つの歩行ハンドル(11)の中心から伸びる前記垂直平面Bの後方、
各側面において前記後脚/輪(3)及び前記前輪(2)の中心から伸びる垂直平面の内側3cmにある垂直平面C及びDの内側、
によって画定される歩行空間V
Wの外側に配置される、歩行器。
【請求項2】
前記1つ以上の立ち上がり構造(6)は、前記立ち上がり空間(V
R)の各側面において後方に向いている立ち上がりハンドル(16)である、
請求項1に記載の歩行器。
【請求項3】
それぞれの立ち上がりハンドルは、伸縮自在構造(7)によって延びている、
請求項2に記載の歩行器。
【請求項4】
前記立ち上がりハンドル(6)は、前記伸縮自在構造(7)を延ばすために前記ハンドルをグリップするためのグリップ構造(8)を有する、
請求項3に記載の歩行器。
【請求項5】
前記立ち上がりハンドル(16)は、折り畳み可能である、
請求項2に記載の歩行器。
【請求項6】
前記歩行器は、2つの歩行器側面(4a、4b)を有するフレームを備える4輪歩行器(1)であり、各側面が後輪(3)と前輪(2)とを有する、
請求項1に記載の歩行器。
【請求項7】
前記立ち上がりハンドル(6)は、前記2つの歩行器側面(4a、4b)を共に保持する橋構造(5)に取り付けられる、
請求項2及び6に記載の歩行器。
【請求項8】
前記1つ以上の立ち上がり構造(6)は、前記立ち上がりハンドル空間(V
R)内の側面から側面に伸びる立ち上がりバー(13)である、
請求項1に記載の歩行器。
【請求項9】
前記立ち上がりバー(13)は、各側面で折り畳みアーム(15)に取り付けられる、
請求項8に記載の歩行器。
【請求項10】
前記立ち上がり構造空間は、床上55cmより上且つ床上70cmより下、より好ましくは床上60cmより上且つ床上65cmより下、によってさらに制限される、
請求項1に記載の歩行器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者、身体障害者、又は慢性疾患患者のための支持用具に関するものであり、より具体的には歩行器の歩行側に向かって立ち上がるハンドルを備える室内歩行器に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行補助器具を使用する人の数と割合は、世界のほとんどの地域で増加しており、これら使用者の生活の質は、多様な支持用具に左右される。歩行器は、最も重要なものの1つであり、使用者が、自立したままとなり、買い物などの日常の作業を行い、自分自身の自由意志に従って動き回ることを可能とする。
【0003】
使用者の数が増加し、高齢者施設が込み合うにつれて、地方自治体、高齢者及び障害者自身は、使用者ができる限り長く家で過ごすことを望んでいる。本発明者らは、車椅子又は歩行器の使用が念頭に置かれない通常の家庭内で使用される、室内軽量4輪歩行器を開発した。
【0004】
課題の1つは、椅子からの立ち上がりである。筋力又はバランスが低下した人は、座った位置から立ち上がることに苦労する。高齢者は、大抵の場合使用される椅子を1つ持っていることが多く、というのもそれは立ち上がることができる椅子だからである。また、便座及び肘掛のない椅子では、立ち上がることが困難であり得る。
【0005】
椅子の肘掛を歩行器の歩行ハンドルと組み合わせた使用は、エルゴセラピスト/理学療法士によって提案されているアプローチである。これにより、片方の手は肘掛(良好な力の伝達となる身体に近い方)に配置され、片方のバランスをとる手は使用者の重心(COG)のさらに前方に配置される。使用者が起立する時、COGは、歩行器の方に移動する。立ち上がっている間、COGは、バランスに最適となる2つの支持の間にたどり着く。
【0006】
歩行器が通常の家庭内で十分に機能するためには、歩行器は、小さく、コンパクト且つ軽量でなければならない。これは、安定性の要求に対してやや矛盾する。このタイプの製品に安定性が要求されるため、立ち上がりハンドルは、製品の側面から離れて配置されなければならない。これにより、2つのハンドル間の空間が比較的狭くなり、歩行が困難になる。本発明は、これらの課題をある程度解決する。
【0007】
文献2012/042918A1には、折り畳み構造を備える杖又は松葉杖が開示されている。杖は、使用者が座った位置から立ち上がるのを支持するために使用するには十分な支持とならない。文献WO2018/014139A1には、使用者が車椅子自体から立ち上がるためのハンドルを備えた車椅子が開示されているが、該文献では、他の腰掛から立ち上がることに関する任意の補助の点では言及されていない。文献EP2853249A1には、使用者がハンドルを備える追加の脚セットを折り畳むことによって座った位置から立ち上がることにおいて補助され得る、解決策が開示されている。ハンドル21は、歩行補助器具のハンドルと縦に並んでおり、歩行補助器具にかなりの重量と不要の部品とを追加する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ハンドル間にフリー空間を有する歩行ハンドルと、後方にパーキングブレーキを有する車輪又は後方に脚とを備える歩行器を説明する。1つ以上の収納可能な立ち上がり構造は、有効位置に伸長している時、
床上45cmより上、
床上75cmより下、
歩行器の後脚/輪の中心から延びる垂直平面Aの前方、
2つの歩行ハンドルの中心から伸びる垂直平面Bの後方、
各側面において後脚/輪及び前輪の中心から伸びる垂直平面の内側3cmである垂直平面C及びDの内側、
によって画定される立ち上がり構造空間VR内に配置されており、
立ち上がり構造は、引き込み位置に収納されている時、
2つの歩行ハンドルの中心から伸びる垂直平面Bの後方、
各側面において後脚/輪及び前輪の中心から伸びる垂直平面の内側3cmである垂直平面C及びDの内側、
によって画定される歩行空間VWの外側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明をより良く理解するために、本発明のいくつかの実施形態を示すいくつかの図面が作成された。これらの図において、同じ参照符号は、異なる図における同じ特徴を参照する。
【
図1】
図1a及びbは、引き込まれた立ち上がりハンドルを備える歩行器と、伸長した立ち上がりハンドルを備える歩行器とを示す。
【
図2】
図2は、立ち上がりハンドルの外側端部におけるグリップ構造の2つの実施形態を示す。
【
図3】
図3は、伸縮自在構造及びクリックインシステムの実施形態を示す。
【
図4】
図4は、本発明に係る歩行器の使用を上面から示す。
【
図5】
図5は、本発明に係る歩行器の使用を側面から示す。
【
図6】
図6a及びbは、立ち上がりハンドル空間と歩行空間とを示す。
【
図7】
図7a及びbは、有効位置及び収納位置における立ち上がりバーを示す。
【
図8】
図8a及びbは、伸縮自在構造に取り付けられる立ち上がりバーを示す。
【
図9】
図9a及びbは、有効位置及び収納位置における折り畳み可能ハンドルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、歩行器1の通常の歩行方向に従って前方と後方とを画定し、高さに関して論ずる時には、歩行器が直立していると仮定する。
【0011】
本発明は、図に見られるように、1つ以上の収納可能な立ち上がり構造6を備える室内歩行器1である。通常、室内歩行器は、
図1a及びbに見られるように、4つの車輪を有するが、他の実施形態も可能である。前方に1つの車輪を有する3つの車輪は、珍しくなく、米国では、後方に車輪の代わりに脚を有する実施形態が普及している。脚バージョンは、安定性を向上させ、コストを低減させるが、速度も低下させ、動き回るのに必要なエネルギも増加させる。4つの車輪/脚のシナリオにおいて、歩行器は、2つの側面、4a及び4bを有しており、各側面が後輪2又は脚と、前輪3とを有する。3つの車輪バージョンでは、2つの側面は、同じ前輪を共有する。4つの車輪バージョンでは、2つの側面は、歩行器の堅固性及びロバスト性を維持する用途を有する橋構造5で接続されている。
【0012】
歩行器1は、通常の家庭内での使用が意図されているため、当該歩行器の幅は、通常の歩行器より小さく、もし歩行器の立ち上がり構造6がISO11199-2によって定められている安定性の要求内にとどまるべきならば、立ち上がり構造は、側面から所定の距離、より正確には前輪3と後輪2との間の直線から立ち上がる垂直面から歩行器の中心に向かう距離、に取り付けられる必要がある。この結果、立ち上がり構造は、歩行が妨げられるように配置されなければならない。従って、立ち上がり構造は、立ち上がる状況のための有効伸長位置と、歩行するための収納受け位置とを有する。明らかに、立ち上がり構造は、幅広の歩行器にも有用であり得るが、歩行器が幅広である場合、固定された立ち上がりハンドルは、同程度に歩行を妨げない。
【0013】
実験と試験とを通じて、1つ以上の収納可能な立ち上がり構造(6)は、伸長している時、
床上45cmより上、
床上75cmより下、
歩行器の後脚/輪の中心から延びる垂直平面A(
図6)の前方、
歩行ハンドル11の中心を通る垂直平面Bの後方、
歩行器の各側面において後脚/輪及び前輪の中心から延びる垂直平面の内側3cmにある、垂直平面C及びDの内側、
によって画定される空間(
図6b参照)内に配置される必要があることが分かった。
この空間を立ち上がり構造空間(V
R)と称する。立ち上がり構造6は、歩行の妨げとならない位置と調和して収納されるべきである。
図6aは、収納位置を示しており、
図6bは、有効位置を示している。立ち上がり構造6の位置は、使用者の初期位置が椅子に座っている状態なので、使用者のサイズにまったく依存しない。一実施形態において、立ち上がり構造空間は、床上55cmより上且つ床上70cmより下、より好ましくは床上60cmより上且つ床上65cmより下、であることによってさらに限定される。
【0014】
立ち上がり構造の可能性のある収納位置を画定するために、使用者が妨げのない歩行を成し得るために利用できる空間である、歩行空間(V
W)を画定する(
図6a及び
図7bを参照)。歩行空間V
Wは、
2つの歩行ハンドル11の中心から伸びる垂直平面Bの後方、
歩行器の各側面において後脚/輪及び前輪の中心から延びる垂直平面の内側3cmにある、垂直平面C及びDの内側、
によって画定される。
歩行空間の高さの制限は、明らかに歩行器の全高である。
【0015】
一実施形態において、
図7a及びbに見られるように、立ち上がり構造6は、
図7a及びbに見られる立ち上がり構造空間V
R内で側面から側面に水平に伸びている折り畳み可能な立ち上がりバー13である。好ましくは、立ち上がりバー13は、各側面でフレームに対して回転可能に接続された折り畳みアーム15に接続されている。該バーは、収納位置において上方に折り畳まれ、ブロックユニット17よってフレームに載置されるように折り畳まれる。
図8a及びbに示されるように、2つの伸縮自在アームに立ち上がりバー13を取り付けることも考えられる。
【0016】
図1a及びbに見られる他の実施形態において、立ち上がり構造6は、前述の空間の各側面にある収納可能な立ち上がりハンドル16である。立ち上がりハンドルは、伸縮自在構造7によって2つの位置の間を移動し得る。
図9a及びbに見られるように、ある種の折り畳み配置を使用することも考えられるが、そのような配置では、大いにかさばり得、軽量室内歩行器に最適と考えられない。立ち上がりハンドルの外側端部には、グリップ構造が、使用者が立ち上がりハンドルを
図2に見られる有効伸長位置に延ばすことを可能とするためのノッチ又はグリップリングの形態で設けられている。
【0017】
好ましい実施形態において、立ち上がりハンドル16の伸長自在構造7は、立ち上がりハンドルを引き込み位置及び伸長位置に保持するクリックイン機構を備えている。周知のクリックイン機構は、
図3に示されるようにばね張力のボールがボールよりわずかに小さい穴に部分的に入ることである。
【0018】
立ち上がり構造は、通常の椅子の肘掛の同じ高さ又はすぐ下に配置されるべきである。これは通常、床上40-70cmの高さ、より好ましくは床上55-65cmである。通常、軽量室内歩行器は、
図1に見られるように歩行ハンドルの間にクロスバー12を有する。立ち上がり構造6又は立ち上がりハンドル16のグリップゾーンの中心を通る垂直面は、クロスバー12を通る垂直面の8cm後方でなければならないことが分かる。これは、歩行ハンドル11間の空間にはいかなる種類の構造物がないべきである、と言っているのに等しい。これは、立ち上がるために立ち上がりハンドルを使う時、使用者が足より上に重心を保つために前かがみになり、肩、胸、頭が歩行ハンドル間に配置される何らかの構造に容易にぶつかるため、必要である。
【0019】
立ち上がり構造が良好に機能するためには、歩行器の少なくとも後輪3は、立ち上がりハンドルが使用中である時、ロックされていなければならない。これは、パーキングブレーキシステムで達成されることができ、又は歩行器が、バー又はハンドルが一定の位置に保持されない限りブレーキが常にかかっていることを意味する、逆ブレーキシステムを有することができる。本明細書において、逆システムは、パーキングブレーキの一種であると考えられる。
【0020】
図4に示されるように歩行器を椅子に対して斜めに置くことによって、使用者は、
図5に示されるように、片方の手で立ち上がりハンドル、反対側の手で歩行ハンドル11から支持を得ることができる。このようにして、歩行器は、肘掛のある椅子と同様の方法で支持を提供することができる。これにより、何人かの使用者が肘掛を有し得ない椅子、ソファ、又はトイレを使用し続けることを可能にすることができる。本製品が企図されている範囲における小柄な使用者の中には、所望されるなら、起立位置に到達するために両手を立ち上がりハンドルに置くことを依然としてできる人もいる。上記の使用者よりもさらに筋力が低下している使用者は、両手を椅子の肘掛に使用することをセラピストによってアドバイスされる。肘掛がない場合、2つの立ち上がりハンドルを使用することが代替として考えられる。
【符号の説明】
【0021】
1 歩行器
2 前輪
3 後輪
4a、4b 歩行器側面
5 橋構造
6 立ち上がり構造
7 伸縮自在構造
8 グリップ構造
8a グリップリング
8b グリップノッチ
9 ばね
10 ボール
11 歩行ハンドル
12 クロスバー
13 立ち上がりバー
15 折り畳みアーム
16 立ち上がりハンドル
17 ブロックユニット
【国際調査報告】