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特表2024-507815回折構造を備えた複合型光調節式眼内レンズ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】回折構造を備えた複合型光調節式眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20240214BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20240214BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240214BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20240214BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61F2/16
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/44
A61L27/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549927
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 US2022016131
(87)【国際公開番号】W WO2022177821
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】17/180,790
(32)【優先日】2021-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519254875
【氏名又は名称】アールエックスサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドシュレガー イリア
(72)【発明者】
【氏名】コンディス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クルツ ロナルド エム
(72)【発明者】
【氏名】シュレスタ リトゥ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB22
4C081BB03
4C081CA08
4C081CA27
4C097AA25
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC12
4C097EE13
4C097SA01
4C097SA06
(57)【要約】
複合型光調節式眼内レンズが回折構造及びハプティックスを備えたアクリル回折眼内レンズと、アクリル回折眼内レンズに取り付けられたシリコーン光調節式レンズとを有する。回折構造は、近見視力から遠見視力までの視力範囲に対応した少なくとも4つの連続した回折次数で強め合う干渉を生じさせ、強め合う干渉は、近焦点、オフサルミックレンズの基本度数に対応した遠焦点、及び近焦点と遠焦点との間の中間焦点を生じさせ、回折次数のうちの少なくとも1つの回折効率は、10パーセント未満に抑制されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合型光調節式眼内レンズであって、
回折構造及びハプティックを備えたアクリル回折眼内レンズと、
前記アクリル回折眼内レンズに取り付けられたシリコーン光調節式レンズと、を有する、複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項2】
前記シリコーン光調節式レンズは、前記回折構造のところで又は前記回折構造とは反対側のところで前記アクリル回折眼内レンズに取り付けられている、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項3】
前記シリコーン光調節式レンズは、前記アクリル回折眼内レンズに対して近位側に位置している、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項4】
前記シリコーン光調節式レンズは、前記アクリル回折眼内レンズに対しての遠位側に位置している、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項5】
前記アクリル回折眼内レンズは、
モノマー、マクロマー、及びポリマーのうちの少なくとも1つから成り、前記少なくとも1つは、
アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、及びアルキルアクリレートとアリールアクリレートを組み合わせたコポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項6】
前記アルキルアクリレートは、
メチルアクリレート、エチルアクリレート、フェニルアクリレート、並びにこれらのポリマー及びコポリマーを含む、請求項5記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項7】
前記アクリル回折眼内レンズのモノマー、マクロマー及びポリマーのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの官能基を有し、前記官能基は、
ヒドロキシ、アミノ、ビニル、メルカプト、イソシアネート、ニトリル、カルボキシル、ハイドライドのうちの少なくとも1つを含み、かつ
カチオン性、アニオン性及び中性のうちの1つである、請求項5記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項8】
前記シリコーン光調節式レンズは、
第1のポリマーマトリックスと、
第1のポリマーマトリックス内に分散した屈折変調組成物と、を含み、
前記屈折変調組成物は、前記シリコーン光調節式レンズの屈折を変調する刺激誘起重合が可能である、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項9】
前記第1のポリマーマトリクスは、
アルキル基又はアリール基を含むマクロマー及びモノマービルディングブロックから形成されたシロキサン系ポリマーを含む、請求項8記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項10】
前記シリコーン光調節式レンズは、
屈折変調照明を吸収し、
照明の吸収時に活性化し、そして
屈折変調化合物の重合を開始させる光重合開始剤を含む、請求項8記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項11】
前記シリコーン光調節式レンズは、
全体にわたって分散して設けられた紫外線吸収剤、及び
前記シリコーン光調節式レンズの遠位側の表面のところに設けられた紫外線吸収層のうちの少なくとも一方を含む、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項12】
前記アクリル回折眼内レンズは、
全体にわたって分散して設けられた紫外線吸収剤、及び
前記アクリル回折眼内レンズの遠位側の表面のところに設けられた紫外線吸収層のうちの少なくとも一方を含む、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項13】
前記回折構造は、近見視力から遠見視力までの視力範囲に対応した少なくとも4つの連続した回折次数で強め合う干渉を生じさせ、
前記強め合う干渉は、近焦点、オフサルミックレンズの基本度数に対応した遠焦点、及び前記近焦点と前記遠焦点との間の中間焦点を生じさせ、
前記回折次数のうちの少なくとも1つの回折効率は、10パーセント未満に抑制されている、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項14】
前記近焦点は、40cmのところの視力に対応し、前記中間焦点は、60cmのところの視力に対応している、請求項13記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項15】
前記4つの連続した回折次数は、(0,+1,+2,+3)であり、
前記抑制回折次数は、前記+1回折次数である、請求項13記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項16】
前記回折構造は、複数の環状回折ステップを有し、
前記回折ステップは、次式、すなわち、
のように連続した半径方向ステップ境界部のところで前記オフサルミックレンズのベース曲率に対応したステップ高さを有し、
上式において、Aiは、前記アクリル回折眼内レンズのベース曲率に対応したステップ高さであり、yiは、対応のセグメント内におけるx軸に対する前記ステップ高さであり、Φiは、前記x軸からの相対的位相遅延であり、xiは、前記x軸に沿う前記回折ステップの位置である、請求項13記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項17】
前記アクリル回折眼内レンズは、前方面及び後方面を有し、
前記回折構造は、前記前方面及び前記後方面のうちの少なくとも一方の上に設けられ、前記回折構造は、複数の環状回折ステップ及び4つの連続した回折次数を有し、
前記アクリル回折眼内レンズは、近焦点、中間焦点、及び遠焦点を生じさせ、各焦点は、前記4つの連続した回折次数のうちの互いに異なる各々にそれぞれ対応し、
前記4つの連続した回折次数は、最も低い回折次数、最も高い回折次数、近‐中間回折次数、及び遠‐中間回折次数を含み、
前記回折構造の前記複数の環状回折ステップは、前記遠‐中間回折次数が抑制され、当該抑制回折次数と関連したエネルギーの少なくとも一部分は、前記近焦点、前記中間焦点、及び前記遠焦点のうちの1つに再分配されるよう構成されている、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項18】
前記複数の環状回折ステップは、
3mmアパーチュアに関する前記最も低い回折次数の回折効率が少なくとも40%であり、
前記3mmアパーチュアに関する前記最も高い回折次数の回折効率が少なくとも20%であり、かつ
前記3mmアパーチュアに関する前記近‐中間回折次数及び前記遠‐中間回折次数の各々の回折効率が10%から20%までの範囲にあるよう構成されている、請求項17記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項19】
前記回折構造は、複数の環状回折ステップ及び4つの連続した回折次数を有し、
前記複合型光調節式眼内レンズは、近焦点、中間焦点、及び遠焦点を生じさせ、各焦点は、前記4つの連続回折次数のうちの互いに異なる各々にそれぞれ対応し、
前記回折構造の前記複数の環状回折ステップは、前記4つの回折次数のうちの1つが抑制され、当該抑制回折次数と関連したエネルギーの少なくとも一部分は、前記近焦点、前記中間焦点、及び前記遠焦点のうちの1つに再分配されるよう構成されている、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項20】
前記4つの連続回折次数は、最も低い回折次数、最も高い回折次数、及び2つの中間回折次数を含み、
前記抑制回折次数は、前記2つの中間回折次数のうちの一方である、請求項19記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項21】
前記シリコーン光調節式レンズは、接着促進剤で前記アクリル回折眼内レンズに取り付けられ、前記接着促進剤は、
前記アクリル眼内インサートのアクリル成分と結合するよう構成された第1の直交官能基、及び
前記シリコーン光調節レンズのシリコーン成分と結合するよう構成された第2の直交官能基を含む、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項22】
前記接着促進剤は、次の構造式、すなわち、
を有し、R3、R3′及びR3″のうちの少なくとも1つは、次の構造式、すなわち、
を有するビニルジアルキルシロキシペンダント基であり、
3、R3′及びR3″の残りのものは、C1‐C10ペンダントアルキル基、例えば、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、シクロブチル、又はメチルシクロプロピルからなる群から独立して選択され、
前記第1の直交官能基は、R2の左に導入された官能基であり、
前記第2の直交官能基はR6であり、
1は、水素、1価の炭化水素基、及び置換C1‐C12アルキルから成る群から選択され、前記アルキルは、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、シクロブチル、又はメチルシクロプロピルであるのがよく、
2は、1‐10炭素原子、(‐CH2)n(ただし、n=1~10)を含むアルキルスペーサであり、
4及びR5は、C1‐C10ペンダントアルキル基、例えばメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、シクロブチル、又はメチルシクロプロピルから成る群から独立して選択され、
6は、ビニル基、ビニルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、及び炭素鎖C1‐C10を含む基のうちの1つである、請求項21記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項23】
前記シリコーン光調節式レンズを前記アクリル回折眼内レンズに取り付ける取り付け構造を有する、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項24】
前記アクリル回折眼内レンズは、トーリック型アクリル回折眼内レンズである、請求項1記載の複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項25】
複合型光調節式眼内レンズであって、
回折構造及びハプティックスを備えたアクリル回折眼内レンズと、
前記アクリル回折眼内レンズに取り付けられたシリコーン光調節式レンズと、を有し、
前記回折構造は、複数の環状回折ステップ及び4つの連続した回折次数を有し、
前記複合型光調節式眼内レンズは、近焦点、中間焦点、及び遠焦点を生じさせ、各焦点は、前記4つの連続回折次数のうちの互いに異なる各々にそれぞれ対応し、
前記回折構造の前記複数の環状回折ステップは、前記4つの回折次数のうちの1つが抑制され、当該抑制回折次数と関連したエネルギーの少なくとも一部分は、前記近焦点、前記中間焦点、及び前記遠焦点のうちの1つに再分配されるよう構成されている、複合型光調節式眼内レンズ。
【請求項26】
複合型光調節式眼内レンズであって、
ハプティックスを備えたアクリル眼内レンズと、
前記アクリル眼内レンズに取り付けられた回折シリコーン光調節式レンズと、を有し、前記回折シリコーン光調節式レンズは、回折構造を有する、複合型光調節式眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光調節式眼内レンズ、特に照明によって調節可能な複合型眼内レンズに関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2017年5月29日付けでI・ゴールドシュレガー(I. Golds Leger)、J・コンディス(J. Kandis)、R・M・クルツ(R.M. Kurtz)、R・シュレスタ(R. Shrestha)、及びG・ツィマニー(Giyani)によって出願された米国特許出願第15/607,681号(発明の名称:Composite Light Adjustable Intraocular Lens)の一部継続出願である2020年4月15日付けでI・ゴールドシュレガー、J・コンディス、R・M・クルツ、及びR・シュレスタによって出願された同時継続米国特許出願第16/849,556号(発明の名称:Composite Light Adjustable Intraocular Lens with Adhesion Promoter)の一部継続出願であり、これら両方の米国特許出願を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
最近、白内障手術の技術が間断なく目覚ましい進歩を遂げている。次世代の水晶体超音波乳化吸引術プラットフォーム及び新たに発明された手術用レーザは、眼内レンズ(IOL)の配置精度を高め続け、望ましくない医療アウトカム(転帰又は予後ともいう)を減少させ続けている。また、軟質アクリレート材料系の現世代型IOLも、非常に良好な視覚アウトカム、並びに植え込みプロセスの容易さ及び制御と有利なハプティック(haptic)設計とを含む数多くのさらなる医学的利点をもたらしている。
【0004】
それにもかかわらず、たとえ最新世代のデバイス及びIOLであっても引き続き幾つかのタイプの課題がある。これらの課題の1つは、外科医が細心の注意を払って術前診断を行って最適なIOLの植え込みを決定しているにもかかわらず、かなりの事例において術後の医療アウトカムが最善ではない点である。この理由としては、とりわけ植え込まれたIOLを傾ける又は動かす切開創の治癒過程に差があること、或いは眼のモデル化が不完全であることを含む様々な要因が考えられる。
【0005】
最近では、白内障手術後に非侵襲的に調節できるレンズの開発によって特筆すべき成果が挙げられた。これらのレンズは、照射による活性化時に光重合する感光性材料を含む。慎重に設計された半径方向プロファイルでの照射によって、対応する半径方向プロファイルでの光重合が開始され、これによってIOLの物理的形状、したがってその屈折力がさらに変化する。これらの光調節式レンズは、術後に残った位置不良の調整及び排除を行い、IOLの「最終的ジオプタ」を術後に非侵襲的に微調整するために非常に有望である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現世代のこれらの光調節式レンズは、依然としてさらなる改善が可能である。改善が見込める分野としては、植え込みの問題を軽減できる最適な材料特性、及び良好なハプティック設計例が挙げられる。
【0007】
したがって、今日の標準的アクリレートIOLと光調節式IOLの望ましくない性能面を最小限に抑えながらこれらの両方の利点をもたらす眼内レンズに関するいまだ満たされていない医療ニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
複合型光調節式眼内レンズが回折構造及びハプティックス(haptics:眼内レンズ支持部)を備えたアクリル回折眼内レンズと、アクリル回折眼内レンズに取り付けられたシリコーン光調節式レンズとを有する。回折構造は、近見視力から遠見視力までの視力範囲に対応した少なくとも4つの連続した回折次数で強め合う干渉を生じさせ、強め合う干渉は、近焦点、オフサルミックレンズの基本度数に対応した遠焦点、及び近焦点と遠焦点との間の中間焦点を生じさせ、回折次数のうちの少なくとも1つの回折効率は、10パーセント未満に抑制されている。幾つかの実施形態では、複合型光調節式眼内レンズが回折構造及びハプティックスを備えたアクリル回折眼内レンズと、アクリル回折眼内レンズに取り付けられたシリコーン光調節式レンズとを有するのがよく、回折構造は、複数の環状回折ステップ及び4つの連続した回折次数を有し、複合型光調節式眼内レンズは、近焦点、中間焦点、及び遠焦点を生じさせ、各焦点は、4つの連続回折次数のうちの互いに異なる各々にそれぞれ対応し、回折構造の複数の環状回折ステップは、4つの回折次数のうちの1つが抑制され、当該抑制回折次数と関連したエネルギーの少なくとも一部分は、近焦点、中間焦点、及び遠焦点のうちの1つに再分配されるよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】複合型光調節式IOLの平面図である。
図2A】複合型光調節式IOL、すなわちCLA・IOLの実施形態の側面図である。
図2B】複合型光調節式IOL、すなわちCLA・IOLの実施形態の側面図である。
図2C】複合型光調節式IOL、すなわちCLA・IOLの実施形態の側面図である。
図3】複合型光調節式IOLの別の実施形態の側面図である。
図4】光調節手順のステップを示す図である。
図5】UV吸収層を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図6】取り付け構造を含むCLA・IOLを示す図である。
図7A】植え込まれて回転したトーリックCLA・IOLにおける逆回転トーリックパターンの形成を示す図である。
図7B】植え込まれて回転したトーリックCLA・IOLにおける逆回転トーリックパターンの形成を示す図である。
図7C】植え込まれて回転したトーリックCLA・IOLにおける逆回転トーリックパターンの形成を示す図である。
図8A】ベクトル定式化を使用した類似する逆回転円柱の形成を示す図である。
図8B】ベクトル定式化を使用した類似する逆回転円柱の形成を示す図である。
図8C】ベクトル定式化を使用した類似する逆回転円柱の形成を示す図である。
図9】複合型光調節式IOLの調節方法を示す図である。
図10A】色収差低減用CLA・IOLを示す図である。
図10B】色収差低減用CLA・IOLを示す図である。
図11】標準的IOLと比較したCLA・IOLの色シフトを示す図である。
図12A】複合型光調節式IOLの色収差補正の実施形態のPCO抑制の側面を示す図である。
図12B】複合型光調節式IOLの色収差補正の実施形態のPCO抑制の側面を示す図である。
図13】接着促進剤を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図14A】複合型光調節式IOLの実施形態の断面図である。
図14B】複合型光調節式IOLの実施形態の断面図である。
図14C】複合型光調節式IOLの実施形態の断面図である。
図15A】接着促進剤の互いに異なる組み込み方の接着促進剤を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図15B】接着促進剤の互いに異なる組み込み方の接着促進剤を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図16A】接着促進剤の互いに異なる組み込み方の接着促進剤を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図16B】接着促進剤の互いに異なる組み込み方の接着促進剤を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図17A】接着促進剤の互いに異なる組み込み方の接着促進剤を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図17B】接着促進剤の互いに異なる組み込み方の接着促進剤を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図17C】接着促進剤の互いに異なる組み込み方の接着促進剤を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図18A】互いに異なる位置にあるUV吸収層を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図18B】互いに異なる位置にあるUV吸収層を含む複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図19A】アクリル(acrylic )眼内インサートが回折構造を有する状態の複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図19B】アクリル眼内インサートが回折構造を有する状態の複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図20】回折構造を備えたIOLを示す図である。
図21A】三焦点IOLを示す図である。
図21B】三焦点IOLを示す図である。
図21C】三焦点IOLを示す図である。
図22A】回折ピークが抑制された回折構造を備えるIOLを示す図である。
図22B】回折ピークが抑制された回折構造を備えるIOLを示す図である。
図23A】複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図23B】複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図24】複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図25】回折次数が抑制された複合型光調節式IOLの実施形態を示す図である。
図26】接着促進剤付き複合型光調節式IOLを示す図である。
図27】取り付け構造を備えた複合型光調節式IOLを示す図である。
図28】回折光が調節可能であるレンズを備えた複合型光調節式IOLを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
既存の光調節式眼内レンズは、ポリシロキサン及び対応するコポリマーなどのシリコーン系ポリマーで作られている場合が多い。既存の非光調節式眼内レンズは、多くの場合、種々のアクリレートで作られる。これら2つのクラスのIOLの問題点(L)及び利点(B)としては以下が挙げられる。
【0011】
(L1)シリコーンを主成分とするIOL(本明細書では「シリコーンIOL」という)の弾性定数は、他の幾つかのIOLの弾性定数よりも強力又は強固である場合が多く、したがってこれらのシリコーンIOLは、比較すると「弾力的」であることが多い。この弾力性の結果、折り畳まれたシリコーンIOLをIOL植え込みプロセス中に外科用インサータハンドピースから眼内に押し出すと非常に素早く展開する。このシリコーンIOLの展開が素早いことにより、手術中、外科医にとってシリコーンIOLの挿入の制御及び適正な位置合わせは幾分困難になる場合がある。
【0012】
(B1)これとは対照的に、アクリレートを主成分とするIOL(本明細書では「アクリレートIOL」という)はさらに柔軟な弾性定数を有し、したがって挿入中の展開がゆっくりである。この特徴により、外科医はアクリレートIOLの挿入をより高度に制御することができる。
【0013】
(L2)多くの場合、シリコーンIOLの設計は3部品型である場合が多く、2つのハプティックスを別々に加工し、その後、中のレンズ本体中に挿入する。この設計特徴によって製造コストが増大し、製造中におけるハプティックスの位置合わせ不良の割合が高くなり、挿入中にIOLレンズ本体からハプティックスが分離してしまうことがある。
【0014】
(B2)これとは対照的に、アクリレートIOLの中には、IOLの中央レンズ本体と同じレンズ材料から、同じ成形ステップで一体型ハプティックスを形成する一体型設計を行うことによってこれらの問題に対処しているものがある。かかる一体型設計は製造コストが安上がりであり、ハプティックスとレンズ本体との位置合わせが良好であり、挿入中にレンズ本体からハプティックスが分離するリスクが低い。
【0015】
ただし、現在知られているアクリレートIOLは光調節式ではない。これらの非光調節式の、多くの場合にアクリレートを主成分とするIOL自体にも欠点がある。これらの欠点としては以下が挙げられる。
【0016】
(L3)外科医らは、白内障手術を計画する際に、最初に白内障の眼を慎重に広範囲にわたって診断する。外科医らは、この診断に基づいて、IOLの最適な配置、位置合わせ及び屈折力を決定する。しかしながら、上述したように、しばしばIOLは、結局は計画された最適な配置から離れ、場合によっては計画に対して傾き又は位置がずれてしまう。この理由としては、手術後の眼組織の発達のばらつきなどの様々な原因を挙げることができる。
【0017】
(B3)光調節式IOLは、この配置ミス及び位置合わせ不良の問題に対する高度な解決策を提供する。IOLが植え込まれて手術後に眼の水晶体嚢に接着したら術後診断を行って、植え込まれたIOLの意図しない整列及び配置のずれを特定することができる。この術後診断の結果を使用して、IOLをどのように補正すれば植え込まれたIOLの配置ミス及び位置合わせ不良を補償できるかを決定することができる。この術後決定を使用して、植え込まれた光調節式IOLの決定されたIOL補正を行う光調節手順を実行することができる。
【0018】
(L4)上記位置合わせ不良の問題は、植え込みの目的が眼の円柱の排除であるトーリックIOLにとっては特に深刻である。トーリックIOLでは、植え込み後にトーリックIOLの軸が意図しない10°回転しただけで約30%の効率損失が生じる恐れがある。例えば、植え込み中又は植え込み後に最終的に円柱軸が10°しか回転しなかった場合でも、トーリックIOLの名目3Dの円柱度数又は屈折力が実効2Dの円柱度数又は屈折力に低下する恐れがある。
【0019】
(B4)光調節式IOLは、あらかじめ形成されたトーリック円柱をなんら伴わずに植え込み可能である。植え込み後、IOLが定着してその不用意な回転が止まると、外科医が照明を当てて定着後のIOL内に円柱を形成し、その軸を正確に計画方向又は目標方向に向けることができる。したがって、光調節式IOLは、トーリックIOLの円柱軸の意図しない位置合わせ不良によって誘発される効率損失の可能性を避けることができる。
【0020】
この文書では、上記の2つのクラスのIOLの利点(B1)~(B4)を組み合わせ、したがって各クラスのIOL自体が有する欠点(L1)~(L4)を克服して回避する可能性を有する眼内レンズについて説明する。以下では、様々な実施形態のさらなる利点も明確になるであろう。
【0021】
図1は、眼内レンズ(IOL)110と、眼内レンズ110に取り付けられた光調節式レンズ(LAL)120と、まとめてハプティックス(haptics:眼内レンズ支持部)114とも呼ばれるハプティックス114‐1及び114‐2とを含む複合型光調節式眼内レンズ100の平面図である。ハプティックス114は、様々な数のハプティック(haptic)アームを含むことができる。1つ、2つ、3つ又は4つ以上のハプティックアームを含む実施形態には全て利点がある。簡潔性及び特異性のために、残りの説明は2つのハプティックアーム114‐1及び114‐2を含む複合型光調節式眼内レンズ100に関して行うが、他の数のハプティックアームを含む実施形態も全体的説明の範囲に含まれると理解される。
【0022】
図2A図2C及び図3は、複合型光調節式眼内レンズ100、すなわちCLA・IOL100の実施形態の側面図である。図2A図2Cは、光調節式レンズ120をIOL110の近位側の表面に取り付けることができるCLA・IOL100を示している。この文書では、「近位」及び「遠位」という用語を、眼の瞳孔から入射する光に関連して使用する。近位は、瞳孔に近い方の位置を示す。図示の実施形態は、ハプティックス114‐1及び114‐2(ここでもまとめてハプティックス114)をCLA・IOL100の構成要素に取り付ける方法が異なる。
【0023】
図2Aは、ハプティックス114がIOL110に取り付けられたCLA・IOL100を示している。例えば、ハプティックス114は、上述した多くのアクリル(acrylic)IOL又はアクリレート(acrylate)IOLの場合と同様にIOL110と共に成形することができる。これらのハプティックス114は、IOL110自体と同じアクリル材料で形成することができ、IOL110自体と同じ単一ステップで成形することができる。上述したように、かかる一体型ハプティックス114は製造が容易であり、IOL110と確実に位置合わせされ、挿入中にIOL110から分離しにくい。
【0024】
図2Bは、ハプティックス110が光調節式レンズ120に取り付けられたCLA・IOL100を示している。最後に、図2Cは、ハプティックス114がIOL110と光調節式レンズ120の両方に共通して取り付けられたCLA・IOL100を示している。
【0025】
図3は、光調節式レンズ120をIOL110の遠位側の表面に取り付けることができるCLA・IOL100を示している。図2A図2Cの光調節式レンズ120とIOL110の順序、及び図3のIOL110と光調節式レンズ120の順序にはいずれも独自の利点がある。
【0026】
幾つかの実施形態では、IOL110を、CLA・IOL100の所期の屈折力の大部分又は全体を提供するように設計又は選択することができる。かかる実施形態では、光調節式レンズ120を、CLA・IOL100が何らかの意図しない位置合わせ不良を伴って眼内に接着した後に必要になる可能性があると外科医が予測する補正及び調整のみを可能にするように設計することができる。かかる実施形態における光調節式レンズ120の役割は、1D~2Dの屈折力又は円柱度数の補正を可能にすることのみであるため、全ての屈折力が光調節可能材料によって生成される非複合型光調節式IOLよりもはるかに薄いレンズとすることができる。したがって、補正用光調節式レンズ120のみを含むCLA・IOLの実施形態は、はるかに薄い光調節式レンズ120を含むことができる。したがって、図4に関連して説明するかかるCLA・IOL100における光調節式レンズ120の調整及びロックイン(lock-in)にはわずかな照射パワーしか必要とせず、これによって全体的な光調節手順の安全性を高めることができる。
【0027】
光調節式レンズ120は、他の実施形態では最大1Dにすぎない視力矯正を、最大2Dまで行うように設計することができる。幾つかの実施形態では、IOL110又は光調節式レンズ120のいずれかをメニスカスレンズとすることができる。
【0028】
化学組成に関して言えば、アクリレートの実施形態では、IOL110が、モノマー、マクロマー又はポリマーを含むことができ、これらはいずれも、アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、又はアルキルアクリレートとアリールアクリレートとを組み合わせたコポリマーを含むことができる。幾つかのIOL110では、アルキルアクリレートが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、フェニルアクリレート、又はこれらのポリマー及びコポリマーを含むことができる。
【0029】
幾つかの実施形態では、IOL110の化学組成が、光調節式レンズ120の化学組成の部分的混合を含むことができる。かかるIOL110は、アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、又はアルキルアクリレートとアリールアクリレートを組み合わせたコポリマーを含むポリマーもしくはコポリマーを形成するシリコーン系モノマー又はマクロマー及び場合によっては架橋剤を含むのがよい。
【0030】
幾つかの実施形態では、IOL110のモノマー、マクロマー又はポリマーが、ヒドロキシ、アミノ、ビニル、メルカプト、イソシアネート、ニトリル、カルボキシル、又はハイドライドを含むことができる官能基を有することができる。官能基は、カチオン性、アニオン性又は中性とすることができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、光調節式レンズ120が、第1のポリマーマトリックスと、第1のポリマーマトリックス内に分散した屈折変調組成物とを含むことができ、この屈折変調組成物は、光調節式レンズ120の屈折を変調する刺激誘起重合が可能である。第1のポリマーマトリックスは、アルキル基又はアリール基を含むマクロマー及びモノマービルディングブロックから形成されたシロキサン系ポリマーを含むことができる。
【0032】
複合型光調節式眼内レンズ100の幾つかの実施形態では、第1のポリマーマトリックスが、アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、及びアルキルアクリレートとアリールアクリレートを結合させるコポリマーのうちの少なくとも1つの部分的混合を含むことができる。これらは、第1のポリマーマトリックスの化合物と共にポリマー及びコポリマーの少なくとも1つを形成することができる。
【0033】
IOL110が光調節式レンズ120の材料の部分的混合を含む上記の実施形態、及び光調節式レンズ120がIOL110の材料の部分的混合を含む上記の実施形態は、レンズ110及び120の材料の適合性を高めることによって、CLA・IOL100の機械的、物理的及び化学的ロバスト性を高めるように形成することができる。
【0034】
光調節式レンズ120の実施形態は、屈折変調照明を吸収し、照明の吸収時に活性化し、屈折変調化合物の重合を開始するように、光開始剤を含むこともできる。幾つかの実施形態では、光調節式眼内レンズ120の光開始剤が紫外線吸収剤を含むこともできる。
【0035】
光調節式レンズ120の実施形態は、共通所有権者であるJ・M・ジェスマラニ等(J. M. Jethmalani et al.)に付与された米国特許第6,450,642号明細書(発明の名称:Lenses capable of post-fabrication power modification)に相当詳細に記載されており、この米国特許を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。
【0036】
図4は、光調節式レンズ120の屈折特性を照明によって修正するプロセスの4つのステップ101a~101dを示している。非常に手短に言えば、ステップ101aにおいて、マトリックス(母材)と、その内部にシリコーンなどの好適な材料から形成された感光性マクロマーとを含む光調節式レンズ120を、半径方向プロファイルを有するレンズ調節光によって照明する。
【0037】
ステップ101bにおいて、調節光への曝露によって感光性マクロマーが重合し、その半径方向プロファイルが調節光の半径方向プロファイルによって決定される。
【0038】
ステップ101cにおいて、既に感光性マクロマーが光重合した中心領域に未重合のマクロマーが拡散する。これにより、この光調節式レンズ120の中心領域が膨張するようになる。(照明光の半径方向プロファイルが光調節式レンズ120の周辺環帯に向かって強くなる相補的プロセスでは、未重合のマクロマーが周辺環帯に向かって外向きに拡散してこの周辺環帯を膨張させる。)
【0039】
さらにステップ101cでは、この膨張後に、基本的に一様な半径方向プロファイルとさらに高い強度とを有するロックイン光を付与して全ての残りのマクロマーを重合させることができる。ステップ101dにおいて、このロックインにより、光調節式レンズ120が、その中心が膨張することによって光調節された屈折力を有する形状に達し、この形状を安定させる。上記は、光調節式レンズ及びその光調節手順の極めて簡単な要約にすぎない。それ以上の詳細な説明は、J・M・ジェスマラニ等の米国特許第6,450,642号明細書に記載されている。
【0040】
幾つかの実施形態では、IOL110及び光調節式レンズ120が、取り付け後にも化学的分離を保持するように適合される。この化学的分離は、例えばIOL110の材料に溶解しない屈折変調組成物を光調節式レンズ120に採用することによって達成することができ、したがってこの組成物は、光調節式レンズ120自体の第1のポリマーマトリックス内でその成分であるマクロマーが移動するにもかかわらず光調節式レンズ120からIOL110内に拡散しない。
【0041】
上述したように、アクリル(アクリル酸樹脂)を主成分としているのがよいIOL110とシリコーンを主成分としているのがよい光調節式レンズ120を組み合わせた場合の利点の1つは、アクリルIOL110の弾性定数をシリコーン光調節式レンズ120の対応する弾性定数よりも柔軟にできる点である。IOL110が光調節式レンズ120よりも大幅に柔軟なCLA・IOL100では、CLA・IOL100全体の「弾力性」を光調節式レンズ120単独での弾力性に比べて大幅に弱めることができる。かかるCLA・IOL100は、白内障手術中に実質的に改善された制御及び予測可能性で挿入でき、したがって手術アウトカムを改善することができる。
【0042】
図4に関して説明したように、幾つかの実施形態では、光調節式レンズ120の屈折特性が、紫外線(UV)照明を適用することによって修正される。安全上を考慮して言えば、適用されたUV照明が眼の網膜に到達するのを防ぎ、或いは少なくともその透過成分の強度を大幅に減衰させるべきである。この目的のために、CLA・IOL100の幾つかの実施形態は、UV吸収剤を含むことができる。UV吸収剤を含めるための設計は、複数の異なるものが存在する。
【0043】
幾つかの実施形態では、UV吸収剤を光調節式レンズ120に関連付けることができる。図5は、幾つかの設計において光調節式レンズ120の遠位側の表面に紫外線吸収層130を形成できることを示す。別の実施形態では、光調節式レンズ120全体に紫外線吸収材料を分散させることができる。幾つかの場合、紫外線吸収層130が光調節式レンズ120の近位側の表面のところにも形成されるのがよい。
【0044】
別の設計では、UV吸収剤をIOL110に関連付けることができる。UV光は、調節手順のために光調節式レンズ120に到達する必要があるので、かかる実施形態では、UV照明が光調節式レンズ120に到達するのをIOL110内のUV吸収剤が妨げないように、光調節式レンズ120をIOL110の近位側の表面に取り付けることができる。かかる配置の場合、幾つかの実施形態では、IOL110全体に紫外線吸収材料を分散させることができ、他の実施形態では、CLA・IOL100が紫外線吸収層130を含むことができる。この紫外線吸収層130は、IOL110の近位側の表面又は遠位側の表面のどちらに存在しても光調節式レンズ120に対して遠位に配置されるので、このいずれの設計も可能である。
【0045】
複合型光調節式眼内レンズ100の実施形態では、様々な設計によって光調節式レンズ120をIOL110に取り付けることができる。幾つかの例では、光調節式レンズ120を、化学反応、熱処理、照明処理、重合プロセス、成形ステップ、硬化ステップ、レージング(lathing)ステップ、低温レージングステップ、機械的プロセス、接着促進剤の塗布、又はこれらの方法のいずれかの組み合わせによってIOL110に取り付けることができる。
【0046】
図6は、CLA・IOL100の幾つかの実施形態が光調節式レンズ120をIOL110に取り付けるための取り付け構造135を含むことができることを示している。この取り付け構造135は、とりわけ光学素子を挿入できる円筒、リング、開放タブ、或いは留め金を含むことができる。かかる構造は、複数の利点を有することができる。
【0047】
(a)例えば、取り付け構造135を含むCLA・IOL100をモジュール式とすることができる。これにより、外科医が保持する在庫がはるかに少なくて済むので、術前目的にとって有利となり得る。外科医は、術前診断によってどのIOL110をどの光調節式レンズ120とペアリングする必要があるかが決まると、別個に保管されたIOL110と別個に保管された光調節式レンズ120とを選択し、選択された2つのレンズを取り付け構造135に挿入することによってCLA・IOL100を組み立てることができる。
【0048】
(b)このモジュール性は、術後にも有利となり得る。理由は何であれ、白内障手術の終了時にIOL110の選択が最適でないと判断された場合、仮に非モジュール式CLA・IOL100を使用していれば、外科医は再び眼を開き、広がったハプティックス114を含む植え込まれたCLA・IOL100全体を取り外す必要がある。かかるIOL全体の取り外しは相当な難題であり、ハプティック部品の破損などの望ましくない医療アウトカムにつながる恐れがある。
【0049】
これとは対照的に、モジュール式CLA・IOL100が植え込まれていた場合、外科医は、再び眼を開いた時にCLA・IOL100全体を取り外す必要がなく、非最適なIOL110のみを取り外して良好に選択されたIOL110と交換すればよい。この処置によってCLA・IOL100全体を取り外す必要性が回避され、したがって望ましくない医療アウトカムのリスクが低下する。また、別の医学的利点として、交換されるのはIOLの一部のみであるため、一般にかかる交換処置に必要な切開部が短くて済む可能性がある。
【0050】
(c)最後に、長尺構造を含むIOLは、後嚢混濁、すなわちPCOの低減との関連で利点がある。この点については、以下で図12A及び図12Bに関連してさらに詳細に説明する。取り付け構造135を含むCLA・IOL100の丈の長さは、外科医が望むだけのものにすることができる。
【0051】
CLA・IOL100の実施形態では、IOL110を、多焦点IOL、非球面IOL、トーリックIOL又は回折型IOLなどの高度で複雑なIOLとすることができる。かかる高度なIOLは、屈折力の補正のみならず視力矯正ももたらす。これらのIOLは、老眼、乱視、円柱度数又はその他タイプの収差の軽減に役立つ。しかしながら、これらの高度なIOLが性能を発揮するには、通常よりも高い精度でIOLを配置する必要がある。白内障手術の終了時又はその後に、植え込まれたIOLの最終的な誤配置又は位置合わせ不良が発覚した場合、視力の改善及び恩恵は、患者に対して期待されるアウトカムに比べて相当に劣ったものになってしまう恐れがある。かなりの割合の白内障手術でかかる意図していない位置合わせ不良及び回転が発生するという事実は、かかる高度なIOLが広く市場に受け入れられることが制限されている主な原因である。
【0052】
対照的に、CLA・IOL100の光調節式レンズ120は、CLA・IOL100が予定の眼内位置、角度又は方向に対して誤配置、位置合わせ不良又は回転を生じた場合に、この位置合わせ不良又は回転を補償するように調整することができる。したがって、CLA・IOL100は、期待される視力改善を患者に対して確実にもたらす可能性がある。このCLA・IOL100の利点は、高度なIOLの市場受け入れ及び市場占有率の急速な拡大を引き起こす可能性がある。
【0053】
他の幾つかの実施形態では、取り付け構造135を剛性構造ではなく流体充填構造にすることによって図6の実施形態の挿入を容易にすることができる。かかる流体充填型取り付け構造135は、未充填の形で眼に挿入し、挿入後にのみ液体を充填することができる。幾つかの実施形態では、光調節式レンズ120の遠位側の表面にUV吸収層130を設けることもできる。
【0054】
図7A図7C並びに図8A図8C及び図9は、眼の円柱度数の矯正を目的とした、トーリックIOL110を含むCLA・IOL100に関する上記の一般的検討事項を示している。
【0055】
図7Aは、外科医が眼の円柱度数を補償するためにトーリックIOL110を含むCLA・IOL100を植え込むと決定し、その目標トーリック軸202が、単純かつ明確にするために図7Aの平面内で垂直になるように選択された指示方向を向くように計画された外科的状況を示している。多くの場合、トーリックIOLは、外科医にトーリック軸の方向を示すための軸マーカ203を含む。
【0056】
図7Bは、白内障手術が終了して切開部を閉じた後に、植え込み後のCLA・IOL100が様々な理由で回転する場合があり、その結果、植え込み後のCLA・IOL100の植え込まれた後に回転したトーリック軸204が目標トーリック軸202との間に意図していない回転角αを形成した状態を示している。
【0057】
図7Cは、外科医がCLA・IOL100の光調節式レンズ120上で照明手順を考案・実行して逆回転トーリックパターン206を形成することによってトーリック軸全体の逆回転を引き起こし、この結果、光調節手順後の補正されたトーリック軸208が当初計画されていた目標トーリック軸202と同じ方向を示すようになった状態を示している。
【0058】
図8Aは、円柱パターン212~218のレベルに対する同じ手順を示している。白内障手術の術前計画段階にある外科医は、図示のように配向された目標円柱パターン212を有するトーリックIOL110を含むCLA・IOL100を植え込むことによって患者の円柱視力問題を治療すべきであると決定することができる。しかしながら、植え込み後には、CLA・IOL100が、植え込まれて回転した円柱214に意図せず回転してしまっている。かかる位置合わせ不良して回転した円柱214は、上述したように視力改善を大幅に低下させる。植え込まれて回転した円柱214は、回転角が大きくなるにつれて正味の悪影響に変化し、患者にとっては利点よりも不快感及び見当識障害(disorientation)の方が大きくなる場合もある。
【0059】
この望ましくない医療アウトカムを補償するために、外科医は、術後診断手順を実行して矯正用逆回転円柱216を決定し、これを実装することによってCLA・IOL100の意図していない望ましくない回転を補正することができる。図示のように、外科医は、光調節式レンズ120内に逆回転円柱216を形成するために、CLA・IOL100の光調節式レンズ120の光調節手順を実行することができる。植え込まれて回転した円柱214と逆回転円柱216とが重なり合うと、当初計画されていた目標円柱212の方向と一致する方向を有する補正された円柱218を有する光調節式レンズの形状にまとまることができる。これらのステップは、上述した図7A図7Cのステップに類似する。
【0060】
図8Bは、同じ手順を幾何学的用語で示しており、対応するベクトルによって円柱パターンを表している。ベクトルの方向は、表される円柱の方向を示し、ベクトルの大きさは、円柱の強度、曲率又はジオプタを表すことができる。目標トーリックベクトル222は目標円柱212を表し、植え込まれて回転したトーリックベクトル224は、植え込み後のCLA・IOL100の植え込まれた後に回転した円柱214を表す。上述したように、外科医は、術後に、トーリックIOL110の意図していない術後回転を補正するのに必要な逆回転円柱216を表す逆回転トーリックベクトル226を決定することができる。外科医が、逆回転トーリックベクトル226を使用して光調節式レンズを調節する光調節手順を実行すると、植え込まれた後に回転したトーリックベクトル224と逆回転トーリックベクトル226との重なり合いによって、目標トーリックベクトル222と同じ方向及び大きさを有するように補正されたトーリックベクトル228が復元される。
【0061】
図8Cは、必要な補正をもたらための異なる方法が存在することをベクトル表現の用語で示している。例えば、この補正パターンは、植え込まれて回転したトーリックベクトル224を縮小し又は排除する縮小トーリックベクトル(reductional Toric vector)227を含むことができる。その後、逆回転トーリックベクトル226を選択して(ベクトル224と227の和に等しい)ベクトル224の残り部分を回転させ、補正されたトーリックベクトル228にすることができる。
【0062】
実証例では、2Dよりも高い円柱度数を補正するためのトーリックIOL110を含むCLA・IOL100の実施形態では、光調節式レンズ120を、円柱度数を最大2Dに補正できるように適合させることができる。例えば、トーリックIOL110が6Dの円柱度数を補正するように意図されていたにもかかわらずトーリック軸が10度だけ回転した場合、これは上述したように30%の効率低下につながり、患者にとっては正味4Dの円柱度数改善しかもたらされない。しかしながら、外科医は、光調節式レンズ120に対して光調節手順を実行して意図していない回転となって失われた2Dの円柱度数を補正することにより、患者に対して期待される完全な6Dの円柱度数を復元することもできる。
【0063】
図9は、植え込まれた複合型光調節式眼内レンズ100を調整する対応法230のステップをさらに一般的な用語で示している。方法230は、以下のステップを含むことができる。
231:複合型光調節式眼内レンズを眼に植え込む目標視覚アウトカムを計画するステップ。
232:複合型光調節式眼内レンズを眼に植え込むステップ。
233:診断測定を実行して植え込みの植え込み視覚アウトカムを評価するステップ。
234:計画した視覚アウトカムと植え込み視覚アウトカムとの比較に基づいて補正を決定するステップ。
235:複合型光調節式眼内レンズの光学特性を調整する刺激を与えて決定された補正を引き起こすステップ。
【0064】
図7A図7C及び図8A図8Cと関連して説明した手順では、目標視覚アウトカムが目標円柱軸202/212/222であり、植え込み視覚アウトカムが植え込まれて回転した円柱軸204/214/224であり、決定される補正が逆回転円柱軸206/216/226である事例に方法230を適合することができる。これらのステップは、植え込まれて回転した円柱軸204/214/224を、目標円柱軸202/212/222に密接に関連する補正済み円柱軸208/218/228に調整することができる。
【0065】
次に、図10図11は、色収差の低減というさらなる医学的利点をもたらすCLA・IOL100の実施形態を示している。この実施形態は、主な構成要素が角膜及びレンズである眼の光学系が、関与する眼組織の有効屈折率neが光の波長に依存し、すなわちne=ne(λ)であることによって色分散を示すという観察から開始して展開される。ne(λ)の導関数は、典型的には負であり、すなわち∂ne/∂λ<0であることが分かっている。したがって、(ne-1)に比例する眼の屈折力Peも波長に関して負の導関数を有し、すなわち∂Pe/∂λ<0である。視力が20/20である健康な人物でも、この眼組織の色分散によって像の短波長(「青色」)成分が網膜の近位に合焦して結像する一方で、長波長(「赤色」)成分が網膜の遠位に合焦し、これによって一定程度のぼやけ及び像質の低下が生じる。この像の色成分のぼやけは、しばしば色収差と呼ばれる。
【0066】
人間の脳は、この色収差をある程度受け入れることを学習した。それにもかかわらず、白内障手術は、眼の独自の色収差を補償して全波長成分を網膜に結像させることによって色収差を低減して視覚を鮮明にする色収差補正用IOLを植え込むことによって、さらなる医学的利点をもたらす可能性がある。
【0067】
多くの場合、屈折率の波長依存性は、V=(nD‐1)/(nF-nC)として定義されるアッベ数によって特徴付けられ、ここでのnD、nF及びnCは、それぞれ589、486及び656nmのフラウンホーファD、F及びCスペクトル線における屈折率である。ほとんどのアッベ数は、20~90の範囲内である。角膜及び水晶体組織では、アッベ数が50~60の範囲内である。眼内レンズの屈折力Plは、レンズメーカーの方程式Pl=(nl-1)(1/Rl-1/R2)を通じて屈折率nl(λ)に依存し、ここでのRl及びR2は、眼内レンズの2つの表面の曲率半径である。したがって、nlのλ依存性は、眼内レンズの屈折力Plも波長λに依存させ、すなわちPl=Pl(λ)となる。なお、この依存性は、レンズの屈折力の符号にも関与する。正の屈折力レンズでは、通常は負の∂nl/∂λ<0が負の∂Pl/∂λ<0をもたらすのに対し、負の屈折力では、負の∂nl/∂λ<0が正の∂Pl/∂λ>0をもたらす。
【0068】
これらを前置きとして、眼内レンズは、その屈折力の波長微分が眼の屈折力の負の波長微分を補償することによって∂Pl/∂λ+∂Pe/∂λ≒0となる場合に色収差を補償することができる。換言すると、∂Pl/∂λ≒-∂Pe/∂λ>0である。
【0069】
ところで、通常の(非回折)眼内レンズは、約20Dの正の屈折力Plをもたらすので、導入部に照らせばこれらの∂Pl/∂λは負であり、また∂Pe/∂λも負であるため、眼自体の色収差を補償することはできない。
【0070】
しかしながら、CLA・IOL100の実施形態は、IOL110及び光調節式レンズ120という2つの異なるレンズで形成される。かかる2レンズ設計は、純粋に新たな可能性をもたらす。CLA・IOL100のレンズの一方は負の屈折力、したがって強度に正の∂P/∂λ>0を有することができ、このため組み合わさった2レンズCLA・IOL100は眼の光学系の色収差を補償できる一方で、2つのレンズの組み合わさった屈折力は、依然として眼内レンズの主要機能を実行して約20Dをもたらすことができる。式では、2レンズCLA・IOL100の第1レンズの屈折力Pl,1と第2レンズの屈折力Pl,2とが、以下の2つの関係を同時に満たすことができる。
l,1+Pl,2=20D (1)
∂Pl,1/∂λ+∂Pl,2/∂λ≒-∂Pe/∂λ>0 (2)
【0071】
幾分詳細に説明すると、図10A及び図10Bは、かかる低減された色収差をもたらすCLA・IOL100の実施形態を示している。従来、かかる複合レンズでは、しばしば負の屈折力レンズが「フリント(flint)」と呼ばれ、正の屈折力レンズが「クラウン(crown)」と呼ばれる。複合レンズ自体がゼロに近い色収差を示す場合には、CLA・IOL100を「アクロマート(achromat)と呼ぶことができる。複合レンズが、CLA・IOL100に眼を加えたものなどのさらに大きな集合体を形成してゼロに近い色収差を示す場合には、CLA・IOL100を「アクロマータ(achromator)」と呼ぶことができる。
【0072】
図10Aは、負の屈折力PIOL<0を有するIOL110がフリントであり、正の屈折力PLAL>0を有する光調節式レンズ(LAL)120がクラウンである実施形態を示す。図10Bは、IOL110が正の屈折力PIOL>0を有し、光調節式レンズ120が負の屈折力PLAL<0を有する逆の実施形態を示している。
【0073】
∂n/∂λの大きさである|∂n/∂λ|は、PMMAでは比較的高く、一般にシリコーンでは低い。したがって、負の屈折力IOL110がPMMA又はその他のアクリレート又は類似のもので形成され、正の屈折力の光調節式レンズ120がシリコーンで形成された、図10Aの設計を含むCLA・IOL100の実施形態は、色収差を効率的に低減することができる。この実施形態では、高い|∂n/∂λ|のPMMA・IOL110には、PIOL≒-10Dなどの低い負の屈折力を与えることができ、低い|∂n/∂λ|のシリコーンLAL120には、PLAL≒+30Dの高い屈折力を与えることができ、したがってCLA・IOL100全体の組み合わさった屈折力は以下のようになる。
IOL+PLAL≒+20D (3)
【0074】
他方、それと同時に、CLA・IOL100は、次のように眼の色収差を補償することもできる。
∂PIOL/∂λ+∂PLAL/∂λ≒-∂Pe/∂λ (4)
【0075】
かかるCLA・IOL100は、約20Dの全体的屈折力をもたらす一方で、IOL110及びLAL120の屈折力の組み合わさった波長導関数が眼の光学系の色収差を大幅に補償し、これによってCLA・IOL100植え込み後の眼の全体的色収差を実質的に低減することができる。(ここでは、白内障手術によって水晶体が除去されているので、「眼の光学系」は主に角膜を意味する。)
【0076】
図11は、上記の概念を色シフトの用語で説明する図である。色シフトは、目標/結像面からの(眼の場合は網膜からの)像の距離を特徴付け、ジオプタで表される。負の色シフトは、像が網膜前方の近位で形成されたことを表すのに対し、正の色シフトは、像が網膜後方の遠位で形成されたことを表す。したがって、波長と共に増加する色シフトは、波長と共に屈折力が減少すること、すなわち∂P/∂λ<0を表す。
【0077】
図11は、自然な眼の光学系単独では∂Pe/∂λ<0と一致して色シフトが増加することを示している。通常は、1つの構成要素であるIOL110単独でも∂PIOL/∂λ<0と一致して色シフトが増加する。破線で示す「複合型光調節式IOL」の線は、CLA・IOL100の色収差補償の実施形態を眼に植え込んだ場合に、CLA・IOL100と眼とを組み合わせたシステムが最低限の色シフト及び色収差を発揮できることを示す。
【0078】
したがって、CLA・IOL100の実施形態では、IOL110がIOLの色シフト変動を有し、光調節式レンズ120が光調節式レンズの色シフト変動を有し、水晶体を除去した眼が眼の色シフト変動を有し、複合型光調節式眼内レンズ100が植え込まれた眼の色シフト変動を水晶体が適所にある眼の色シフト変動よりも小さくすることができ、ここでの色シフト変動は、450nm及び650nmにおける色シフトの差分から定義される。
【0079】
CLA・IOL100の実施形態では、IOL110の屈折力を負とすることができ、光調節式レンズ120の屈折力を正とすることができ、複合型光調節式眼内レンズが植え込まれ眼の色シフト変動を0.5D未満とすることができる。他の実施形態では、この色シフト変動を0.2D未満とすることができる。かかるアクロマータCLA・IOL100が植え込まれた眼では、明らかなさらなる医学的利点として、色分散に起因する像のぼやけが自然な眼のぼやけよりも実質的に小さくなることによって、さらなる側面において視覚が鮮明になることができる。
【0080】
関連する側面を含むアクロマータIOLに関する技術的思想がE・J・フェルナンデス(E. J. Fernandez)及びP・アータル(P. Artal),「アクロマティック・ダブレット・イントラオキュラー・レンズ・フォア・フル・アベレーション・コレクション(Achromatic doublet intraocular lens for full aberration correction)」,バイオメディカル・オプティックス・エクスプレス(Biomedical Optics Express)の第8巻(2017年)の2396頁に提案されており、この論文を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。本論文は、幾つかの観点では有益でとあるものの、とりわけ、関連IOLの光調節機能の観点について説明していない。本論文の技術を光調節式レンズに適合させるには、さらに高度な技術的思想が必要である。
【0081】
図12A及び図12Bは、特にIOL110又は光調節式レンズ120が負の屈折力を有し、したがって非常に丈の長い側面142と鋭利なIOLエッジ144とを有するCLA・IOL100のさらなる医学的利点を示している。かかる実施形態では、鋭利なIOLエッジ144を、1つの構成要素である眼内レンズを押す力よりも大きな力によって挿入先の眼の水晶体嚢15に押し付けることができる。
【0082】
このように力を大きくすることによって、以下の特筆すべき医学的利点を得ることができる。後嚢混濁であるPCOは、白内障手術の有名な負のアウトカム又は合併症の1つである。PCOは、後嚢の水晶体上皮細胞(LEC)の成長及び異常増殖を原因とする。ほとんどのPCOは、繊維状又は真珠様、或いはこれらの組み合わせである。PCOは、臨床的には、例えば後嚢の皺として検出することができる。PCOの発症は、多くの場合、残留LECの増殖、移動及び分化という3つの基本的現象を伴う。
【0083】
PCOを軽減するために様々な薬液が開発されているが、水晶体嚢15に接触する鋭利な機械的障壁の形成によってもPCOが軽減されることが示された。かかる障壁は、線維の成長を抑制してLECの動きを低減することによってPCOを軽減する。
【0084】
CLA・IOL100の実施形態では、アクロマートのフリントレンズが負の屈折力を有するため非常に丈の長い側面142を有し、したがってその側面の丈が中心よりも長いので、鋭利なIOLエッジ144が非常に大きな力で水晶体嚢15に押し付けられる。このため、CLA・IOL100のアクロマートの実施形態は、PCOの軽減というさらなる医学的利点を示す。
【0085】
図12A及び図12Bは、水晶体嚢15を通常よりも大きな力で押圧するCLA・IOL100の組み合わせ及び設計が複数存在し得ることを示している。例えば、IOL110と光調節式レンズ120の順序を逆にすることができる。他の実施形態では、フリントの材料とクラウンの材料を交換することができる。遠位クラウンレンズ、すなわち網膜に近いクラウンレンズを有するCLA・IOL100は、その最も遠位側の表面の形状が網膜の形状に最も近いため、有利に低い収差を示すことができる。これとは対照的に、フリントの方が網膜に近い場合、最も遠位側の表面は実質的に網膜の表面とは異なり、したがって高い収差を生じる。
【0086】
丈の長い側面を含むこれらのCLA・IOL100のさらに別の医学的利点は、高い押圧力が高い水晶体嚢張力を引き起こすことにある。この高い嚢張力は、平坦な標準的IOLによって引き起こされる低い嚢張力の場合よりも良好にCLA・IOL100の配置場所及び軸を安定化する傾向があり、それによりCLA・IOL100が傾き又は違ったやり方で位置合わせ不良になるのを阻止することができる。
【0087】
丈の長いIOL側面142は、大きな又は長い外科的切開部の形成を必要とし得る。さらに、これによって白内障手術後に意図しない乱視が誘発される恐れもある。しかしながら、CLA・IOL100の実施形態では、手術後に光調節式レンズ120を調節できるので、光調節式レンズ120に乱視補償用光調節手順を適用することによって、この乱視を効率的に補償して排除することができる。
【0088】
図13は、複合型光調節式眼内レンズ100の一実施形態を示しており、この複合型光調節式眼内レンズ100は、アクリル眼内インサート110′、接着促進剤300によりアクリル眼内インサート110′に取り付けられたシリコーンを主成分とする光調節式レンズ120、及びハプティックス114‐1,114‐2を有する。諸実施形態では、接着促進剤300は、以下に詳細に説明するように、アクリル眼内インサート110′のアクリル成分と結合するよう構成された第1の直交官能基、及びシリコーン光調節式レンズ120のシリコーン成分と結合するよう構成された第2の直交官能基を含むのがよい。簡潔にするために、説明のところどころ及び図面では、シリコーン光調節式レンズ120は、光調節式レンズ(light adjustable lens)120、又はLAL120と略記されている場合がある。
【0089】
アクリル眼内インサート110′は、屈折力を備えた眼内レンズ(IOL)110を含むのがよく、このアクリル眼内インサートをIOL110の一実施形態とみなすことができる。幾つかの場合、アクリル眼内インサート110′は、屈折力がほぼゼロのキャリアを含むのがよく、また、逆に、眼内レンズ(IOL)110を屈折力の有無を問わずアクリル眼内インサート110′の一実施形態とみなすことができる。
【0090】
これら実施形態は、複合型光調節式IOL100の2つの主要部品、すなわちアクリル眼内インサート110′とシリコーン光調節式レンズ120とが互いに化学的に結合され、そして植え込み及び光調節手技後に剥離することがないようにするために接着促進剤300を含む。
【0091】
アクリルIOLを老眼用途向けの化学的手段によって、シリコーンフレームの縁周りに又はシリコーン付勢要素に取り付けることについては上述してある。しかしながら、それらIOLと現時点において説明しているCLA・IOL100との間には少なくとも以下の差異が存在する。
【0092】
(1)IOL中の光学素子又は観察素子は、不変の固定された形状を有する。したがって、アクリル‐シリコーン接合部のところのひずみ及び張力を適当な作製プロセスによって最小限に抑えることができる。また、標準以下の接合部を有するIOLを作製プロセス中に品質管理の一部として破棄するのがよい。これは、図14A図14Cに詳細に記載しているように、光調節手技が植え込み後にシリコーン光調節式レンズ120の形状を変化させる一方で、アクリル眼内インサート100′の形状を本質的に不変なままにしておくCLA・IOL100の諸実施形態とは対照的である。これらCLA・IOL100では、光調節手技は、植え込み後にシリコーン‐アクリル接合部にせん断及び応力を誘起させ、可能性として、これら2つの要素を互いに剥離させる場合さえある。調節の大きさは、患者ごとに異なるので、光誘起応力及び張力を植え込みに先立って、適当な作製プロセスによって最小限に抑えることができない。その代わりに、シリコーン‐アクリル接合部は、ストレス耐性であることが必要であり、光誘起張力に必要な程度まで耐え、このことには、シリコーン光調節式レンズ120が光調節の結果としてアクリル眼内インサート110′から剥離する傾向に耐えることが含まれる。これは、剥離した部品を持つ植え込み状態のCLA・IOL100を廃棄することができないので、特に要求の厳しい期待である。
【0093】
(2)上述のIOLのうちの大抵のものに関し、シリコーンは、フレーム又は付勢要素を形成し、或いは、アクリルIOLの縁周りに位置決めされる。かかるIOLでは、シリコーン‐アクリレートのインターフェースは、光路内には存在せず、したがって、画質を損なわないようにする上でシリコーン‐アクリル接合部についての要件は大したものではない。これとは対照的に、CLA・IOL100の諸実施形態では、シリコーン‐アクリルのインターフェースは、光路内に存在し、かくして、インターフェース全体は、シリコーン‐アクリルのインターフェースのところに張力及びひずみを誘起する光調節手技にもかかわらず、ひずみなく光を透過することが期待される。上述の2つの検討事項により、従来設計とCLA・IOL100の諸実施形態との間に顕著な差が示されている。
【0094】
図14A図14Cは、シリコーンLAL120の光調節性により顕著になる従来システムからの今説明しているCLA・IOL100の差に関する上述の論点(1)を示している。図14Aは、CLA・IOL100の屈折変調照明の適用を示している。図14Bは、この照明に応答して、CLA・IOL100のシリコーンLAL120がその形状を変えていることを示している。図示の場合は、シリコーンLAL120の屈折力を増大させる光調節方式を示しており、この場合、前面の曲率半径が減少し、これに対し、後面の曲率半径は、多くの場合、増大する。屈折力を減少させる光調節方式では、曲率の逆の変化が誘起される。図14Cは、アクリル眼内インサート110′とシリコーンLAL120との間のインターフェースの一部の拡大図である。屈折変調照明により、シリコーンLAL120の曲率変化及び側方剪断作用111が生じて、シリコーンLAL120がアクリル眼内インサート110′から剥離し、かくして離隔部112が潜在的に誘起される。したがって、形状が固定された要素を有するIOLとは対照的に、屈折変調照明は、アクリル眼内インサート110′とシリコーンLAL120のインターフェースのところに、張力及びひずみを不可避的に誘起する。このひずみ及び張力は、作製プロセス後かつ植え込み後にのみ誘起され、かくして、このひずみ及び張力を作製の変更によってはなくすことはできない。かくして、CLA・IOL100は、屈折変調照明により引き起こされる形状変化によって誘起される張力及びひずみにもかかわらず、アクリル眼内インサート110′とシリコーンLAL120との離隔を阻止するのに十分な強度で2つの表面を化学的に結合する接着促進剤300を必要とする。
【0095】
図15A及び図15Bは、従前どおり、複合型光調節式眼内レンズ(composite light adjustable intraocular lens)100、又はCLA・IOL100の幾つかの実施形態では、ハプティックス114‐1,114‐2をアクリル眼内インサート110′に取り付けることができ、他の実施形態では、ハプティックス114‐1/114‐2がアクリル眼内インサート110′の一部である場合があり、さらに他の実施形態では、ハプティックス114‐1/114‐2を、シリコーン光調節式レンズ120に取り付けることができ、最後に、幾つかのCLA・IOL100では、ハプティックス114‐1/114‐2をアクリル眼内インサート110′とシリコーン光調節式レンズ120の両方に取り付けることができることを示している。
【0096】
図13図17は、シリコーン光調節式レンズ120がアクリル眼内インサート110′の近位側に取り付けられ、すなわち、眼の角膜寄りに位置決めされているCLA・IOL100の諸実施形態を示している。
【0097】
IOL110とちょうど同様に、アクリル眼内インサート110′の諸実施形態は、アクリル眼内インサートは、アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ハロゲン置換アクリレート、ハロゲン置換メタクリレート、アクリルエステル、又はアクリル酸、アクリルアミド、ビニル、及びアルキルアクリレートとアリールアクリレートを組み合わせたコポリマーから成る群から選択されたモノマー、マクロマー、オリゴマー及びポリマーのうちの少なくとも1つから成るのがよい。幾つかのCLA・IOL100に関し、上述のモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、エチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、n‐ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、n‐ビニルピロリドン、フェノキシエチルアクリレート、又はこれらのポリマーもしくはコポリマーであるのがよい。
【0098】
加うるに、対応のbis‐又はマルチ官能性を備えた架橋剤が重合を助けるために存在するのがよい。幾つかのCLA・IOL100に関し、架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、及びプロピレングリコールジエタクリレートであるのがよい。さらに、架橋ネットワークは、熱反応、UV開始反応、又は触媒促進反応により誘起されるのがよい。幾つかのCLA・IOL100に関し、熱開始剤は、2,2‐アゾビス(2,4‐ジメチルペンタニトリル)、2,2‐アゾビス(2,4‐ジメチルブタンニトリル)、アゾビスイソブチロ‐ニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル、又はアゾビスイソメチルプロピオニトリルであるのがよい。幾つかのCLA・IOL100に関し、光開始剤は、ベンゾフェノン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルケタール、ホスフィンオキシド、アシルオキシムエステル、アセトフェノン又はアセトフェノン誘導体であるのがよい。
【0099】
図4に関して上述したように、シリコーン光調節式レンズ120は、第1のポリマーマトリックス、及び第1のポリマーマトリックス中に分散配置された屈折変調組成物から成るのがよく、屈折変調組成物は、シリコーン光調節式レンズ120の屈折率を変調する刺激誘起重合が可能である。第1のポリマーマトリックスは、アルキル基及びアリール基のうちの少なくとも一方を備えたマクロマー及びモノマービルディングブロックから形成されたシロキサン系ポリマーを含むのがよい。
【0100】
加うるに、CLA・IOL100は、屈折変調照明の吸収時に活性化され、そして屈折変調組成物の刺激誘起重合を開始するよう構成された光開始剤を含むのがよい。保護及び安全性を提供するために、CLA・IOL100は、紫外線吸収剤を含むのがよい。
【0101】
図16A及び図16Bは、接着促進剤300をCLA・IOL100中に混ぜ込む種々の仕方を示している。図16Aは、幾つかのCLA・IOL100において、接着促進剤300をアクリル眼内インサート110′内に分散配置されるのがよいことを示している。図16Bは、幾つかのCLA・IOL100において、接着促進剤300が、アクリル眼内インサート110′とシリコーン光調節式レンズ120との間の接着層310内に分散配置されるのがよいことを示している。最後に、幾つかのCLA・IOL100では、接着促進剤300は、シリコーン光調節式レンズ120内に分散配置されるのがよい。幾つかの実施形態では、接着促進剤300は、図17A図17Cの実施形態の幾つかの組み合わせ内に分散配置されるのがよい。
【0102】
図17A図17Cは、幾分異なる仕方での混ぜ込みに関するこれら同一実施形態を示している。図17Aは、接着促進剤300が主として、アクリル眼内インサートインサート110′内に分散配置され、珪素‐炭素共有結合320によりシリコーンLAL120に結合されると共に、結合322によりアクリル眼内インサート110′のアクリレートに結合されている図16Aの実施形態を示している。円で表示された部分は、結合322によるアクリル眼内インサート110′のアクリル成分と結合するよう構成された第1の直交官能基の略図である。三角形は、共有結合320によりシリコーン光調節式レンズ120のシリコーン成分と結合するよう構成された第2の直交官能基の略図である。円及び三角形で概略的に示された両方の直交官能基は、これらの相補対応物と一意的に結合するよう選択されている。図17Bは、接着促進剤300が主として、接着層310内に分散配置され、接着層310は、共有化学結合320によりシリコーンLAL120に結合されると共に結合322によりアクリル眼内インサートインサート110′のアクリレートに結合されている図16Bの実施形態を示している。図17Cは、接着促進剤300が主として、シリコーンLAL120内に分散配置され、共有化学結合320によりシリコーンLAL120に結合されると共に結合322によりアクリル眼内インサート110′のアクリレートに結合されている実施形態を示している。
【0103】
次に、接着促進剤300の実施形態について詳細に説明する。上述したように、接着促進剤300は、これらの特有の化学的性質を用いて重合に別個独立に参与することができる2つの直交官能基を含むのがよく、第1の直交官能基は、アクリル眼内インサータ110′のアクリル成分と結合するよう構成され、第2の直交官能基は、シリコーン光調節式レンズ120のシリコーン成分と結合するよう構成されている。CLA・IOL100の幾つかの実施形態では、接着促進剤300は、次の構造式(1)、すなわち、
を有するのがよく、R3、R3′及びR3″のうちの少なくとも1つは、次の構造式(2)、すなわち
を有するビニルジアルキルシロキシペンダント基であり、
3、R3′及びR3″の残りのものは、C1‐C10ペンダントアルキル基、例えば、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、シクロブチル、又はメチルシクロプロピルからなる群から独立して選択され、
第1の直交官能基は、R2の左に導入された官能基であり、
第2の直交官能基はR6であり、
1は、水素、1価の炭化水素基、及び置換C1‐C12アルキルから成る群から選択され、アルキルは、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、シクロブチル、又はメチルシクロプロピルであるのがよく、
2は、1‐10炭素原子、(‐CH2)n(ただし、n=1~10)を含むアルキルスペーサであり、
4及びR5は、C1‐C10ペンダントアルキル基、例えばメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、シクロブチル、又はメチルシクロプロピルから成る群から独立して選択され、
6は、ビニル基、ビニルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、及び炭素鎖C1‐C10を含む基のうちの1つである。
【0104】
CLA・IOL100の幾つかの実施形態では、R1は、メチルであり、R2は、プロピルであり、R3、R3′及びR3″は各々、ビニルジアルキシルシロキシであり、R4及びR5は各々、C1‐C10アルキル鎖であり、R6は、ビニルである。
【0105】
幾つかの実施形態では、R2は、鎖であるのがよく、他の実施形態では、R2は、アルキルスペーサ、例えばシクロペンチルの枝分かれ又は環状イソマーであるのがよい。さらに、R2は、置換ビニルアリールであるのがよい。オプションとして、R2は、置換芳香族基、例えば置換フェニル又は置換ナフチルをさらに有してもよい。
【0106】
2の左に導入された第1の直交官能基は、アクリル眼内インサート110′と共有結合322を生じる。第2の直交官能基は、二重結合が珪素水和物と相互作用して新たな共有珪素‐炭素結合320を生じることによって、シリコーンLAL120と共有結合320を生じるR6である。
【0107】
多くの二重結合を有する接着促進剤300は、シリコーンLAL120とより多くの共有結合320を生じる。有効二重結合の数の増大は、各々が二重結合を持つR6を含むR3,R3′,R3″のうち2つ又は3つ全てをビニルジアルキルシロキシペンダント基であるよう選択することによって可能になる。その結果として生じる接着促進剤300は、次の構造式(3)、すなわち、
で示される。
【0108】
接着促進剤300のこの実施形態は、メタクリロキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シランと呼ばれ、これは構造式(3)を有し、この場合、R1は、メチルであり、R2は、プロピルであり、R3,R3′,R3″は、ビニルジメチルシロキシであり、R4及びR5は、メチルであり、R6は、ビニルである。この構造式(3)は、適当な接着促進剤300であり、というのは、この接着促進剤は、各々が二重結合を有する3つのビニルR6を含み、かくして、倍増した強度でシリコーンLAL120に結合できるからであり、かかる強度は、上述したように、アクリル眼内インサート110′とシリコーンLAL120との剥離及びこれらのインターフェースのところの光学的ひずみを阻止する上で期待が持てる。
【0109】
接着促進剤300により生じるアクリル眼内インサート110′とシリコーンLAL120との間の全体的定着強度は、個々の接着促進剤分子当たりの共有結合320の強度及び数並びにこれら分子の濃度で決まる。判明したこととして、アクリル眼内インサート110′内に分散配置された5重量%を超える接着促進剤300としてのメタクリロキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シランの濃度は、(1)屈折変調照明後であってもアクリル眼内インサート110′とシリコーンLAL120との剥離を阻止すると共に、(2)アクリル眼内インサート110′‐シリコーンLAL120のインターフェースによる光学的ひずみの発生を回避するのに十分である。濃度が10重量%を超えるCLA・IOL100は、特に良好に働いた。構造式(1)を有するが、R3基のうちの1つだけがビニルジアルキルシロキシペンダント基である接着促進剤300の場合、10重量%よりも高い濃度が十分な品質の結合をもたらすことが判明した。
【0110】
構造式(3)をアクリル眼内インサート110′の処方の範囲内のモノマーユニットとして見ることができ、この場合、構造式(3)は、接着促進剤300として働くことができる。関連実施形態では、対応のビルディングブロックは、幾つか挙げてみただけでも、
メタクリルオキシプロピルジ(ビニルジメチルシロキシ)メチルシラン、
メタクリルオキシプロピル(ビニルジメチルシロキシ)ジメチルシラン、
アクリルオキシプロピルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、
メタクリルオキシブチルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、
アクリルオキシブチルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、
アクリルオキシプロピルジ(ビニルジメチルシロキシ)メチルシラン、
メタクリルオキシブチルジ(ビニルジメチルシロキシ)メチルシラン、
アクリルオキシブチルジ(ビニルジメチルシロキシ)メチルシラン、
アクリルオキシプロピル(ビニルジメチルシロキシ)ジメチルシラン、
メタクリルオキシブチル(ビニルジメチルシロキシ)ジメチルシラン、
アクリルオキシブチル(ビニルジメチルシロキシ)ジメチルシラン、
スチリルメチルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、
スチリルエチルトリス(ビニルジメチルシロキシ)シラン、
スチリルメチルトリスジ(ビニルジメチルシロキシ)シラン、
スチリルエチルジ(ビニルジメチルシロキシ)メチルシラン、
スチリルエチル(ビニルジメチルシロキシ)ジメチルシラン、及び
スチリルエチル(ビニルジメチルシロキシ)ジメチルシランであってよい。
【0111】
このユニットは、シリコーンLAL120の1つ以上の珪素原子と接着促進剤300の1つ以上の炭素原子との間の共有結合320によってシリコーンLAL120に、代表的にはそのR6基を介して結合されるのがよい。
【0112】
幾つかのCLA・IOL100では、共有結合は、ビニルジアルキルシロキシ基のビニル基とシリコーン光調節式レンズ120のSi‐H基とのヒドロシリル化反応により作られる。より多くの枝(n>1)を有する接着促進剤300は、より多くの二重結合された第2の直交官能基を有し、かくして、上述の構造式(3)と関連して言及したように、シリコーン光調節式レンズ120への強固な結合をもたらすことができる。
【0113】
図18A及び図18Bは、幾つかのCLA・IOL100では、シリコーン光調節式レンズ120が、アクリル眼内インサート110′にアクリル眼内インサート110′の近位側の表面のところで結合されていることを示している。これらのCLA・IOL100では、アクリル眼内インサート110′は、アクリル眼内インサート110′全体を通じて分散配置された紫外線吸収物質又は紫外線(UV)吸収層340を有するのがよい。このUV吸収層340は、図18Aに示されているようにアクリル眼内インサート110′の近位側の表面のところに位置してもよく、又は図18Bに示されているようにアクリル眼内インサート110′の遠位側の表面のところに位置してもよい。図18AのCLA・IOL100は、紫外線吸収層340がシリコーン光調節式レンズ120の遠位側の表面のところに形成されているものと同等に特徴づけられるのがよい。これら実施形態の全ては、屈折変調照明の網膜の安全性をさらに高めるのに役立つ。
【0114】
CLA・IOL100では、シリコーン光調節式レンズ120は、化学反応、熱処理、照明処理、重合プロセス、成形ステップ、硬化ステップ、レージングステップ、低温レージングステップ、機械的プロセス、接着促進剤の塗布、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つによってアクリル眼内インサート110′に取り付けられるのがよい。
【0115】
図19A及び図19Bは、屈折力を有するアクリル眼内インサート110′が、上述したようにこの屈折力をもたらすための回折構造350を有するのがよいことを示している。この回折構造350は、図示のように、アクリル眼内インサート110′の遠位側の表面に位置するのがよい。他の場合、回折構造350は、シリコーンLAL120に向いたアクリル眼内インサート110′の近位側の表面のところに位置するのがよい。この後者の設計は、回折IOLに特有のハロ及びグレアを減少させる。
【0116】
複合型光調節式IOL100の幾つかの実施形態では、アクリル眼内インサート110′は、トーリック型アクリル眼内インサート110′であるのがよい。このトーリック型アクリル眼内インサート110′は、幾つかの実施形態では、屈折力を有することができる。
【0117】
複合型光調節式IOL100の幾つかの追加の利点に言及することによって本説明を終わる。(1)複合型光調節式IOL100は、シリコーンのみのLALと比較して、光重合物質の体積を減少させることができ、というのは、アクリルIOL110又はアクリル眼内インサート110′が、10D、15D、又は20Dのベースライン屈折力を提供することができるからである。かくして、シリコーンLAL120は、アクリルIOL110/インサート110′のベースライン屈折力に対して屈折力の変化をもたらすためだけに使用される非常に薄い層であってよい。光重合物質の体積が小さければ小さいほど、これに対応して屈折変調照明の強度及び放射輝度がそれだけ一層低くなり、それによりこの手技の安全性が一層高まる。
【0118】
(2)幾つかの場合、屈折変調照明は、シリコーンLAL120の2つの表面に対して競合する効果を有する。図14Bに示されるように、幾つかの場合、シリコーンLAL120の近位側表面の曲率半径は、減少することができ、それによりその屈折力が高くなる。しかしながら、同一の照明が遠位側表面の曲率半径を増大させることができ、それによりシリコーンLAL120の屈折力が減少する。これら2つの効果は、互いに競合し、かくして、屈折変調照明の効率をわずかに低下させる。CLA・IOL100の実施形態は、シリコーンLAL120の遠位側表面をIOL110に、又はアクリル眼内インサート110′に取り付ける。この取り付けは、曲率の変化に対するシリコーンLAL120の遠位側表面の剛性及び抵抗を増大させ、それにより、シリコーンLAL120の近位側表面により誘起される屈折力の増大に対する競合性を減少させる。遠位側表面の曲率変化を減少させることは、CLA・IOL100の有利な効果の1つであり、というのは、このことにより計画された屈折力変化を達成するのに必要な照明の放射輝度が減少し、それにより網膜の安全性がさらに高まるからである。
【0119】
IOLのために広く用いられている設計は、図19A及び図19Bと関連して上述したように回折パターンをIOLの表面上に形成することによって光を変向きすることである。図20は、かかる回折IOLの設計概念を示している。回折IOLは、普通のレンズ状IOLと同一の屈折力を達成するが、かなり薄く、それにより回折IOLは、それ自体の利点を有する。本項(発明を実施するための形態)では、かかる回折IOLを回折IOL110と表示することによってこれらIOLの回折という性質を強調する。それにもかかわらず、これらの回折IOL110は、本明細書のその前の項で説明したIOLの考えられる実施形態である。したがって、先行する項のIOL110の実施形態について提供された検討事項は、ここで説明する回折IOL110にも当てはまると言える。
【0120】
回折IOL110は、1組の環状体、リング、又は回折ステップ/ゾーン403iを備えた回折構造350を有し、各リングは、隆起表面セグメントを支持している。これらのセグメントの形状は、放物線形であってもよく、正弦波形であってもよく、或いは他の関数の形で説明されてもよい。リング相互間の境界部のところのジャンプの高さは、隣のセグメントから伝搬する光線の光路長の差が指定された距離のところ、例えば焦点距離のところの特定の干渉基準を満たすよう選択される。
【0121】
図21A図21Cは、回折IOL110の種々の実施形態を示している。図21Aは、回折して先頭の回折ピークに至る光線が互いに交差する単一の焦点404を有する単焦点回折IOL110を示している。図21Bは、追加の医療的な利益を提供する二焦点設計例を示している。これら二焦点IOL設計例では、光の一部分は、先頭次数の回折ピークの方向に回折し、それにより図21Aの場合のように、先頭焦点に収束し、他方、残りの部分のほとんどの光は、回折構造350のもう1つの回折ピークの方向に回折し、かくして、第2の焦点に収束する。回折構造350は、第2の焦点に差し向けられた光強度の部分は、相当多く、例えば、全光強度のうちの30~40%になる場合があるよう設計される。多くの場合、ゼロ次回折次数に関連付けられた先頭遠焦点404dは、遠方の物体を網膜に合焦させるよう選択される。最低の次の回折次数、典型的には1次回折次数に関連付けられた近焦点404nは、近くの物体(約40cmの距離)を網膜に合焦させるよう選択される。上述したように、かかる回折二焦点IOLの利益のうちの1つは、かかるIOLがIOLの表面全体と第2の近焦点404nを生じさせるので、患者の視覚的経験(見え方)が瞳孔径の影響を特に受けないということにある。これは、光を近焦点404nに合焦させるために、周辺の環状表面セグメント又はゾーンだけを用いる「ゾーナル」IOLとは対照的である。かかるゾーナルIOLでは、屈折して近焦点404nに至る光の部分、及びかくして視力は、瞳孔径の影響を極めて受けやすい。かかる二焦点IOL設計、例えばAlcon 社のReStor及びAMO 社のTecnisというIOLが医療行為においていまや広く販売されていると共に用いられている。
【0122】
図21Cは、追加の焦点を回折構造によりIOL上に生成する技術的思想がさらに三焦点レンズの導入により拡張されたことを示している。三焦点IOLは、光を部分的に遠焦点404d、近焦点404n、及び中間焦点404iに合焦させるための3つの回折次数を用いている。この後者の中間焦点は、中間距離、例えば80cm~100cmからの光を網膜に合焦させるよう設計されている。したがって、中間焦点404iは、広く用いられているジオプタの逆長さ単位で測定して、近焦点404nと遠焦点404dとの間のほぼ半分のところに、すなわち、「対称に」位置決めされる場合が多い。説明を進める前に、図21A図21Cに示すように、回折IOL110の中には、前面又は近位側の表面上に回折構造を有するものがあれば、背面又は遠位側の表面上に位置するものもあるということが指摘される。これら実施形態はいずれも、ここで説明する利益を達成することができる。
【0123】
しかしながら、これら全ての回折IOL110は、上述の伝統的なIOLの欠点を共有しており、そして以下に列挙するように、これら自体には幾つかの追加の問題がある。既存のIOL技術の既知の欠点の説明から始め、そのリストは、上述の欠点を含む。既存のアクリル回折IOLの欠点としては、以下のものが挙げられる。
【0124】
L1.かなりの事例において、IOLは、植え込み後、ずれてこれらの最適位置から遠ざかる傾向がある。しかしながら、既存のIOLは、これらずれを補償するよう植え込み後に調整することができず、かくして、これらの割り増し価格設定にもかかわらず、最適結果をもたらしてはいない。
【0125】
L2.調整性がないことにより、手術に先立って費用の高くつく診断機器を用いた多岐にわたる診断検査が必要であり、そしてかかる診断検査を行ってもこれにより最適結果が保証されることはない。
【0126】
L3.トーリック型IOLは、組織治癒により引き起こされる術後旋回の影響を特に受けやすい。トーリック型IOLに関し、植え込み後におけるトーリック型IOL軸の10゜だけの意図しない回転であっても、視力の約30%が失われる場合がある。
【0127】
L4.回折IOLに関し、患者は、望ましくない光に関する現象、すなわち、目のかすみ、グレア、ハロ、異常光視症を報告している。これらは、例えば化学反応、例えば酸化によって丸くされた回折構造のパターンの鋭いエッジによって作られる。これらは、残留屈折異常によってさらに増悪される場合がある。これら問題により多くの場合、白内障術後、或いはIOL外植後であっても、引き続くLASIK手技の実施が必要である。かかる第2の手術では、追加のリスク、例えば角膜拡張症や持続性ドライアイが生じる。
【0128】
回折アクリルIOLのこれら欠点L1~L4の全ては、回折IOLを調節可能なLALと組み合わせた場合には、減少又は軽減が可能である。かかる複合型光調節式IOL100、すなわちCLA・IOL100の実施形態について以下に挙げるこれらの利益を列挙で始めて、ここから説明する。
【0129】
B1.CLA・IOL100は、調節可能である。したがって、白内障手術後における照明による調節は、術後のIOLの傾き、ずれ、旋回及び運動を矯正することができ、それにより本質的に最適な結果が保証される。
【0130】
B2.CLA・IOL100の調節可能性により、大規模なかつ費用のかかる診断術前検査の必要性が減少し、多くの場合なくなり、というのは、手術の結果に対する患者の不満をCLA・IOL100の光調節により術後に解消することができる。
【0131】
B3.トーリック型処方をCLA・IOL100の植え込み後に照射によって導入することができる。この術後導入トーリックの方向及び大きさを優れた精度を持つ処方によって整列させると共に設定する。この特徴はまた、製造及び在庫を単純化し、というのは、現時点では多くの場合、同一球面処方の5~10個の回折IOLは、考えられる全てのトーリック処方に及ぶよう、製造業者によって供給され、眼科医によって貯蔵される必要があるからである。注目されるように、トーリック処方のうちの幾つかをアクリル回折IOLで具体化すると、それにより軸の予測誤差の影響を受けにくい高レベルの乱視の矯正範囲を拡張することができる。
【0132】
驚くべきこととして、しかも期待の持てることとして、特にアクリル回折IOL110とLAL120を組み合わせると、以下を含むLAL技術の課題のうちの幾つかが軽減される。
【0133】
B4.シリコーンLALは、アクリルIOLよりも剛性が高いので、多くの場合比較するとより「弾性」であるように見える。この弾性の一結果は、LAL植え込みプロセス中、折り畳みLALが外科用インサータハンドピースから眼中に押し出されているときに、極めて迅速に広がる。シリコーンLALのこの迅速な広がりにより、LALの挿入の制御及び適正な整列が手術中、外科医にとって幾分難題となる。これとは対照的に、アクリレート系IOLは、比較的軟らかい弾性定数及びより望ましい粘弾性特性を有し、かくして、挿入中にゆっくりと広がる。この観点により、外科医は、アクリレート系IOLの挿入に対してより高い管理を行うことができる。かくして、アクリルCLA・IOL100は、「弾性」が低く、しかもより滑らかに広がる。
【0134】
B5.既存のLALの中には、三部品のものがあり、すなわち、2つのハプティックスは、多くの場合、別々に製作され、次に中央のレンズ本体中に挿入される。この設計の特徴は、製造費を増大させ、製造中におけるハプティックスの位置合わせ不良の比率が高くなる場合があり、しかも挿入中、LALレンズ本体からのハプティックスの分離が生じる場合がある。これとは対照的に、アクリレート系IOLの中には、一部品設計を採用することによってこれらの課題を軽減しているものがあり、この場合一体型ハプティクスは、IOLの中央レンズ本体と同一レンズ材料から同じ成形ステップで形成される。かかる一部品設計は、製造費が安く、しかもレンズ本体との良好なハプティックス位置合わせが得られ、しかも挿入中におけるレンズ本体からのハプティックス分離の恐れが減少する。ハプティックスがアクリルそれ自体から成形された一部品設計のアクリル回折IOL110を有するCLA・IOL100は、これらの利益を全て達成することができる。
【0135】
さらなる利益は、特定のCLA/IOL設計と関連しており、この場合、LAL120は、近位/前側/前方に位置し、アクリル回折IOL110は、後方に位置する。
【0136】
B6.上述したように、LAL技術は、LAL120の後方に形成されたUV吸収層130を採用することによって網膜をUV曝露から保護する。このUV吸収層130を製作するには、それ自体の課題のある追加の製造ステップが必要である。CLA・IOLは、同一のUV遮断材料をアクリル回折IOL110それ自体の中に分散させることによって、別個のUV遮断層130を形成する必要性をなくすことができる。
【0137】
B7.シリコーンLAL120は、網膜硝子体切除術を必要としそうな患者では禁忌である場合があり、というのは、空気又はシリコーン油が硝子体腔中に入り込んだ場合、手術中に網膜溝を可視化することが困難になりがちだからである。しかしながら、アクリル回折IOL110をシリコーンLAL120の後方面上に配置させたCLA・IOL100は、その後の網膜手技の可能性がある場合にシリコーンLAL120と空気又はシリコーン油との接触を妨害し、かくして、この禁忌に打ち勝つことができる。
【0138】
B8.例えば図4に示すように、レンズ調節照明は、LAL120の前側/前方表面上におけるかなりの曲率の増加をもたらし、他方、かかるレンズ調節照明は、わずかな曲率の増加をもたらすか、幾つかの場合においては、LAL120の後側/後方表面上に曲率の減少をもたらすかのいずれかを行う。回折構造350により生じる干渉は、光路長のわずかな変化であってもこの影響を受けやすいので、回折IOL110をLAL120の後側/後方面に取り付けることは、回折構造350の曲がりを少なくし、かくして回折IOL110の光学性能を良好に保つ設計方式である。
【0139】
B9.パンオプティクス(PanOptix)IOL中の中間回折ピークの抑制は、特定の回折次数に対応した回折光の弱め合う干渉に基づいており、かくして、回折構造350の鋭利さや形状の正確さに特に敏感である。したがって、パンオプティクス型の抑制回折次数のIOLを前方側よりも曲がり具合が非常に少ないLAL120の後方側に取り付けることが特に有益である。
【0140】
B10.回折構造350のエッジは、デリケートなトレードオフの関係により形成される。エッジを鋭利に作ることにより波面誤差は最小限に抑えられるが、設計外の波長での散乱が増大する。他方、エッジを丸くすると、波面誤差は増大するが、散乱は減少する。したがって、エッジを最適に丸くすることは、かかる回折IOLの設計の際に伸長に選択される。CLA・IOL100では、図23Bに示すように、回折IOL110がLAL120の後方に位置し、その回折構造350は、これらレンズのインターフェースのところに位置し、かかるCLA・IOL100は、デリケートに設計された回折構造350を化学的及び他形式の劣化から効率的に保護し、それにより有利には、散乱及び波面誤差の増大を阻止する。
【0141】
上述の利益B1~B10についての説明は、前側/前方シリコーンLAL120及び後側/後方アクリル回折IOL110を含むCLA・IOL100の多くの利点及び利益を明らかにしている。図1図19を参照して提供した検討事項は、これらの利益に既に関連して例示であった。次に、さらなる利点及びこれら利点の組み合わせについて図20図28を参照して説明する。
【0142】
図20図22は、上述したIOL110の実施形態の一クラスを構成する既存の回折IOL110を示している。これら回折IOL110は、中央レンズ、及びハプティックス114‐1,114‐2を有する。中央レンズは、図の下部に側面図で示した回折構造350を有する。回折IOL110の実施形態の特に注目すべきクラスは、回折次数が抑制された回折IOL110である。
【0143】
上述したように、図21A図21Cは、回折IOL110中の光の伝搬を示している。幾つかの回折IOL110では、回折構造350は、回折IOL110の前側/前方表面上に形成され、他の回折IOL110では、回折構造350は、後側/後方表面上に形成されている。図21Aは、回折IOL110の後側/後方表面上に形成されている回折構図350の一礼を示している。回折構造350は、急峻なジャンプをして再び配置された一連の隆起表面リングを有する。これら表面リングは、到来光を回折させる回折格子を形成しており、その結果、互いに異なるリングからの光ビームは、回折次数と呼ばれる特定の方向にのみ強め合う干渉を生じさせるようになっている。単焦点回折IOL110に関し、大抵の光強度は、図示のように0次回折次数と呼ばれる場合の多い単一の回折次数に回折される。これら回折光は、単焦点404上に収束する。
【0144】
図21Bは、二焦点回折IOL110を示している。かかる回折IOL110では、光の第1の部分は、例えば遠焦点404dに合焦状態になる0次回折次数に回折され、第2の部分は、遠焦点404dよりも回折IOL110の近くに位置する近焦点404nに合焦される1次回折次数に回折される。近焦点404nは、約40~50cmの距離のところに位置する物体からの光が網膜に合焦されるよう設計されている。0.5m及び0.4mの逆数は、2.0D(ジオプタ)及び2.5Dなので、遠焦点404d及び近焦点404nに対応した光パワーは、約2.0~2.5Dだけ異なる。他の設計例は、0次及び1次回折次数の役割を逆にすることができるが、他の設計例は、負の回折次数もまた使用することができる。光の一部分は、高い回折次数に回折された状態になり、一部分は、より拡散的に散乱し、したがって、第1の部分と第2の部分の合計は、代表的には100% 未満である。かかる二焦点回折IOL110は、遠くに位置する物体をこれらの0次回折で網膜上に合焦させるよう眼中に植え込まれると、近くに位置する物体をこれらの1次回折で網膜上に合焦させる。このため、これら二焦点回折IOLは、水晶体の焦点距離を調節する機能が衰えた老眼患者に大きな医療上の利益を提供することができる。
【0145】
最後に、図21Cは、より改良型の設計を示しており、この場合、回折IOL110の第3の回折次数もまた利用される。二焦点IOLは、遠くの物体及び近くの物体について良好な視力を提供する。しかしながら、二焦点IOLを装着した患者の中には、依然として、中間距離のところの物体に焦点合わせすることが困難である人がいる。この課題に取り組むため、三焦点回折IOL110は、遠焦点404dと近焦点404nとの間に中間焦点404iを有するよう設計されており、この場合、高い回折次数が光を合焦させる。この中間次数の回折ピークは、中間距離、例えば80cm~100cmのところから来る光を網膜に合焦させることができる。したがって、中間焦点404iは、広く用いられているジオプタの逆長さ単位で測定して、近焦点404nと遠焦点404dとの間のほぼ半分のところに、すなわち、「対称に」位置決めされる場合が多い。この中間焦点404iに対応した光パワーは、遠焦点に対応した光パワーと近焦点に対応した光パワーの両方とは約1.0~1.25Dだけ異なっている。
【0146】
図22A及び図22Bは、特に成功した三焦点設計、すなわち、アルコン(Alcon)社のPanoptixを示している。図20及び図21A図21Cと同様、回折IOL110は、回折構造350を有し、回折構造350は、到来光線を回折次数に回折させる個々の回折ステップ又はゾーン403iを有する。パンオプティクスIOLは、光を遠焦点404d、近焦点404n、中間焦点404i、及び抑制焦点404sに合焦させるよう4つの回折次数を利用する。注意深い設計によって、全光強度の約10%未満が抑制焦点404sに差し向けられる。この設計により、中間焦点404iが近焦点404n、例えば60cmという「腕の長さ」距離から物体を網膜上に合焦させる近焦点404nの近くか、或いは、遠焦点404d、例えば120cmのところの近くに非対称に動かされる。図22Bの上側のパネルは、特定の三焦点実施形態についての上述の焦点及び回折次数についての回折効率を示している。図22Bの下側のパネルは、x、すなわち、半径方向距離の2乗の関数としてかかる三焦点IOLに関するセグメントの垂れ下がり高さy(x軸からの高さ)を示している。ここでAiは、ステップ高さであり、φiは、位相遅延である。それ以上の詳細に関しては、これら三焦点IOLは、チェ(Choi)等に付与されたに米国特許第9,335,564号明細書及び同第10,278,811号明細書(両特許の発明の名称:Multifocal diffractive ophthalmic lens using suppressed diffractive order)、及びこれまたチェ(Choi)等に付与された米国特許第10,285,806号明細書(発明の名称:Multifocal diffractive ophthalmic lens)に記載されており、これら3つの特許全てを参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。自立型回折IOL110の説明にあたり、CLA・IOL100の実施形態の説明を行う。
【0147】
図23A及び図23Bは、複合型光調節式眼内レンズCLA・IOL100を示しており、CLA・IOL100は、回折構造350及びハプティックス114‐1,114‐2を備えたアクリル回折眼内レンズ、すなわちアクリル回折IOL110、及びアクリル回折眼内レンズ110に取り付けられたシリコーン光調節式レンズLAL120を有する。場合によっては、これらCLA・IOL100を回折CLA・IOL100と言う。図23Aは、一実施形態としてのCLA・IOL100を示し、シリコーン光調節式レンズ120は、回折構造350とは反対側でアクリル回折眼内レンズ110に取り付けられており、図23Bは、シリコーン光調節式レンズ120が回折構造のところでアクリル回折眼内レンズ110に取り付けられた実施形態を示している。
【0148】
図23A及び図23Bはまた、幾つかのCLA・IOL100では、シリコーン光調整式レンズ120がアクリル回折IOL110の近位側に位置している状態を示している。
【0149】
図24は、幾つかのCLA・IOL100では、シリコーン光調節式レンズ120がアクリル回折IOL110の遠位側に位置している状態を示している。CLA・IOL100の幾つかの実施形態では、アクリル回折IOL110は、モノマー、マクロマー、及びポリマーのうちの少なくとも1つを含むのがよく、かかる少なくとも1つは、アクリレート、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、置換アリールアクリレート、置換アルキルアクリレート、ビニル、及びアルキルアクリレートとアリールアクリレートを組み合わせたコポリマーのうちの少なくとも1つを含む。アルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、フェニルアクリレート、並びにこれらのポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0150】
幾つかのCLA・IOL100では、アクリル回折眼内レンズ110のモノマー、マクロマー及びポリマーのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの官能基を有し、官能基は、ヒドロキシ、アミノ、ビニル、メルカプト、イソシアネート、ニトリル、カルボキシル、ハイドライドのうちの少なくとも1つを含み、かつカチオン性、アニオン性及び中性のうちの1つである。
【0151】
幾つかのCLA・IOL100では、シリコーン光調節式レンズ120は、第1のポリマーマトリックスと、第1のポリマーマトリックス内に分散した屈折変調組成物とを含み、屈折変調組成物は、シリコーン光調節式レンズ120の屈折を変調する刺激誘起重合が可能である。第1のポリマーマトリクスは、アルキル基又はアリール基を含むマクロマー及びモノマービルディングブロックから形成されたシロキサン系ポリマーを含むのがよい。
【0152】
幾つかのCLA・IOL100では、シリコーン光調節式レンズ120は、屈折変調照明を吸収し、照明の吸収時に活性化し、そして屈折変調化合物の重合を開始させる光開始剤を含むのがよい。シリコーン光調節式レンズ120は、このレンズ全体にわたって分散して設けられた紫外線吸収剤、及び図5のUV吸収層130や、図18A及び図18Bの類似のUV吸収層340と同様、シリコーン光調節式レンズ120の遠位側の表面のところに設けられた紫外線吸収層をさらに有するのがよい。
【0153】
CLA・IOL100の他の実施形態では、アクリル回折IOL110は、このIOL全体にわたって分散して設けられた紫外線吸収剤、及びアクリル回折IOL110の遠位側の表面ところに設けられた紫外線吸収層のうちの少なくとも一方を有するのがよい。
【0154】
図22B及び図25は、回折IOL110の回折構造350が近見視力から遠見視力までの視力範囲に対応した少なくとも4つの連続した回折次数で強め合う干渉を生じさせ、強め合う干渉が近焦点、オフサルミックレンズの基本度数に対応した遠焦点、及び近焦点と遠焦点との間の中間焦点を生じさせ、回折次数のうちの少なくとも1つの回折効率が10パーセント未満に抑制されていることを示している。例えば、図25の下側のパネルの表において、4つの連続した回折次数は、(0,+1,+2,+3)であり、抑制回折次数は、+1の回折次数である。見て分かるように、この抑制回折次数は、3%の回折効率を有し、この回折効率は、10%未満に抑制された回折ピークの一実施形態である。遠焦点404dに対応した0次の次数の次の1次回折次数は、このCLA・IOL100内で抑制されるので、この実施形態では、中間焦点404iは、近焦点404nの非対称の関係で近くに位置する。例えば、近焦点404nは、40cmのところの視力に対応するのがよく、中間焦点404iは、60cmのところの視力に対応するのがよい。換言すると、近焦点404nは、40cmのところの近くに位置する物体を患者の網膜に合焦させるよう特定の患者について選択されるのがよく、他方、中間焦点404iは、60cmのところの中間に位置する物体を網膜上に合焦させるよう選択されるのがよい。
【0155】
図22Bは、CLA・IOL100では、回折構造350が複数の環状回折ステップ403iを有し、回折ステップ403iが、次式、すなわち、
のように連続した半径方向ステップ境界部のところで前記オフサルミックレンズのベース曲率に対応したステップ高さを有する。
【0156】
上式において、Aiは、アクリル回折眼内レンズのベース曲率に対応したステップ高さであり、yiは、対応のセグメント内におけるx軸に対するステップ高さであり、Φiは、x軸からの相対的位相遅延であり、xiは、x軸に沿う回折ステップ403iの位置である。図25のパネル表は、特定の実施形態を示している。上側のパネルは、CLA・IOL100の3つのリングのステップ高さAiの値及び位相Φiの値を示し、下側のパネルは、0次~3次の回折ピークに関する回折効率を示している。見て分かるように、1次ピークは、回折効率が10%を十分に下回る3%である抑制回折次数である。
【0157】
幾つかの複合型光調節式眼内レンズCLA・IOL100では、アクリル回折IOL110は、前方表面及び後方表面を有し、回折構造350は、前方表面及び後方表面のうちの少なくとも一方の上に設けられている。図22B及び図25に示すように、回折構造350は、複数の環状回折ステップ403i及び4つの連続した回折次数を有し、アクリル回折IOL110は、近焦点404n、中間焦点404i、及び遠焦点404dを生じさせ、各焦点は、4つの連続した回折次数のうちの互いに異なる各々にそれぞれ対応している。これら実施形態では、4つの連続した回折次数は、最も低い回折次数、最も高い回折次数、近‐中間回折次数、及び遠‐中間回折次数を含み、回折構造350の複数の環状回折ステップ403iは、遠‐中間回折次数が抑制され、当該抑制回折次数と関連したエネルギーの少なくとも一部分は、近フォーカス、中間フォーカス及び遠フォーカスのうちの1つに再分配されるよう構成されている。本明細書の幾つかの部分では、「フォーカス」という用語は、このようにするとによって明確さが損なわれない場合には、「焦点」と均等な用語として用いられる。
【0158】
これらのCLA・IOL100のうちの幾つかでは、複数の環状回折ステップ403iは、3mmアパーチュアについての最も低い回折次数の回折効率が少なくとも40%であり、3mmアパーチュアについての最も高い回折次数の回折効率が少なくとも20%であり、3mmアパーチュアについての近‐中間回折次数及び遠‐中間回折次数の各々の回折効率が10~20%の範囲内にあるよう構成されている。したがって、これらCLA・IOL100では、10~20%の範囲への回折次数のうちの1つの抑制は、上述の実施形態の場合よりも低く、これは、中間次数のうちの1つは、10%未満に抑制された回折効率を有していた。
【0159】
CLA・IOL100のさらに別の実施形態では、回折構造350は、複数の環状回折ステップ403i及び4つの連続した回折次数を有し、複合型光調節式眼内レンズ100は、近フォーカス404n、中間フォーカス404i、及び遠フォーカス404dを生じさせ、各フォーカスは、4つの連続回折次数のうちの互いに異なる各々にそれぞれ対応し、回折構造350の複数の環状回折ステップ403iは、4つの回折次数のうちの1つが抑制され、当該抑制回折次数と関連したエネルギーの少なくとも一部分は、近フォーカス404n、中間フォーカス404i、及び遠フォーカス404dのうちの1つに再分配されるよう構成されている。幾つかのCLA・IOL100では、4つの連続回折次数は、最も低い回折次数、最も高い回折次数、及び2つの中間回折次数を含み、抑制回折次数は、2つの中間回折次数のうちの一方である。
【0160】
図26は、幾つかのCLA・IOL100では、シリコーン光調節式レンズ120が、接着促進剤300でアクリル回折眼内レンズ110に取り付けられている状態を示している。図13図19を参照して説明した接着促進剤300の実施形態は、図26のこの実施形態においても具体化でき、この場合、アクリル眼内インサート110/110′は、回折型である。幾つかのCLA・IOL100では、接着促進剤300は、アクリル眼内インサート110/110′のアクリル成分と結合するよう構成された第1の直交官能基、及びシリコーン光調節レンズ120のシリコーン成分と結合するよう構成された第2の直交官能基を含む。上述したように、アクリル眼内挿入物110′は、アクリル回折IOL110の一実施形態として見ることができる。接着促進剤300は、多くの場合、アクリル回折IOL110とシリコーンLAL120を結合する接着層310中に導入される。
【0161】
諸実施形態では、接着促進剤300は、次の構造式、すなわち、
を有し、R3、R3′及びR3″のうちの少なくとも1つは、次の構造式、すなわち、
を有するビニルジアルキルシロキシペンダント基であり、R3、R3′及びR3″の残りのものは、C1‐C10ペンダントアルキル基、例えば、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、シクロブチル、又はメチルシクロプロピルからなる群から独立して選択され、第1の直交官能基は、R2の左に導入された官能基であり、第2の直交官能基はR6であり、R1は、水素、1価の炭化水素基、及び置換C1‐C12アルキルから成る群から選択され、アルキルは、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、シクロブチル、又はメチルシクロプロピルであるのがよく、R2は、1‐10炭素原子、(‐CH2)n(ただし、n=1~10)を含むアルキルスペーサであり、R4及びR5は、C1‐C10ペンダントアルキル基、例えばメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、シクロブチル、又はメチルシクロプロピルから成る群から独立して選択され、R6は、ビニル基、ビニルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、及び炭素鎖C1‐C10を含む基のうちの1つである。
【0162】
図27は、幾つかのCLA・IOL100がシリコーン光調整式レンズ120をアクリル回折眼内レンズ110に取り付ける取り付け構造135を有するのがよいことを示している。上述したように、かかる取り付け構造135により、回折IOLのLAL120の交換が必要になった場合、又は最初の手術の数年後に追加のIOLを植え込むことが容易になる。
【0163】
幾つかのCLA・IOL100では、アクリル回折眼内レンズ110は、トーリック型アクリル回折眼内レンズ110である。
【0164】
図23図25はまた、複合型光調節式眼内レンズ100の諸実施形態を例示しており、この複合型光調節式眼内レンズ100は、回折構造350及びハプティックス114‐1,114‐2を備えたアクリル回折眼内レンズ110と、アクリル回折眼内レンズ110に取り付けられたシリコーン光調節式レンズ120とを有し、回折構造350は、複数の環状回折ステップ403i及び4つの連続した回折次数を有し、複合型光調節式眼内レンズ110は、近フォーカス404n、中間フォーカス404i、及び遠フォーカス404dを生じさせ、各フォーカスは、4つの連続回折次数のうちの互いに異なる各々にそれぞれ対応し、回折構造350の複数の環状回折ステップ403iは、4つの回折次数のうちの1つが抑制され、当該抑制回折次数と関連したエネルギーの少なくとも一部分は、近フォーカス、中間フォーカス、及び遠フォーカスのうちの1つに再分配されるよう構成されている。
【0165】
図28は、CLA・IOL100のさらにもう1つの変形実施形態を示している。この実施形態では、回折構造350が光調節式レンズ120上に形成されるのがよく、それにより図示のように回折光調節式レンズ120′が形成されている。かかる複合型光調節式眼内レンズ100は、アクリル眼内レンズ110と、アクリル眼内レンズ110に取り付けられた回折シリコーン光調節式レンズ120′とを有し、回折シリコーン光調節式レンズ120′は、回折構造350を有する。図1図27を参照して提供した先の実施形態に関する全ての説明を図28のこの実施形態に適用することができ又はこの実施形態と組み合わせることができる。
【0166】
この特許文書は、多くの細目、細部、及び値域を記載しているが、これらは、本開示の範囲及び請求項請求の範囲に記載された本発明の範囲の限定と解されてはならず、これとは異なり、本発明の特定の実施形態に特有の特徴の説明であると解されるべきである。別々の実施形態との関連で本特許文書に記載されているある特定の特徴は、単一の実施形態においてコンビネーション状態でも具体化できる。逆に、単一の実施形態との関連で説明した種々の特徴は、多数の実施形態において別々に又は任意適当なサブコンビネーションの状態でも具体化できる。さらに、特徴をある特定のコンビネーションで働くものとして上述している場合があり、しかもそれ自体としてクレーム請求されている場合があるが、クレーム請求されているコンビネーションからの1つ以上の特徴を幾つかの場合において、このコンビネーションから省くことができ、クレーム請求されているコンビネーションは、別のサブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形例に関する場合がある。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図23A
図23B
図24
図25
図26
図27
図28
【国際調査報告】