(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】単結晶高ニッケル正極材料及びその調製方法と使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240214BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240214BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/00 A
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549940
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2021130208
(87)【国際公開番号】W WO2022227494
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202110463007.7
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522354388
【氏名又は名称】蜂巣能源科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 加力
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲樹▼涛
(72)【発明者】
【氏名】李 子▲エン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 壮
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲亞▼州
(72)【発明者】
【氏名】白 ▲艷▼
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲海▼▲龍▼
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA02
5H050AA08
5H050AA12
5H050AA19
5H050CA08
5H050CB12
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本開示は単結晶高ニッケル正極材料及びその調製方法と使用を提供し、前記調製方法は、前駆体、リチウム源及びナノ酸化物を混合し、酸素含有雰囲気下で一次焼結処理によって一次焼結材料を得るステップ(1)と、ステップ(1)で得られた一次焼結材料をチタン源及びコバルト源と混合し、酸素含有雰囲気下で二次焼結処理によって前記単結晶高ニッケル正極材料を得るステップ(2)とを含み、本開示は、Ti/Co共同被覆法を採用することで、調製された単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ量を大幅に低減するとともに、容量及びレート性能も高いレベルに保持し、これにより、プロセスフローを低減し、コストを削減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶高ニッケル正極材料の調製方法であって、
前駆体、リチウム源及びナノ酸化物を混合し、酸素含有雰囲気下で一次焼結処理によって一次焼結材料を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた一次焼結材料をチタン源及びコバルト源と混合し、酸素含有雰囲気下で二次焼結処理によって前記単結晶高ニッケル正極材料を得るステップ(2)とを含み、
ステップ(2)における一次焼結材料、チタン源及びコバルト源の質量比は1:(0.001~0.006):(0.001~0.015)である、ことを特徴とする調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)における前記前駆体はNi
xCo
yMn
z(OH)
2を含み
、x≧0.8、0.2≧y≧0、0.2≧z≧0、x+y+z=1である、ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
ステップ(1)における前記ナノ酸化物は、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タングステン、酸化モリブデン、アルミナ又は酸化イットリウムのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記ナノ酸化物が完成品の単結晶高ニッケル正極材料に占める質量百分率は0.05%~0.3%である、ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ(1)における前記一次焼結処理の温度は800~950℃であり、前記一次焼結処理の時間は5~15hである、ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ(2)における前記二次焼結処理の温度は500~850℃であり、前記二次焼結処理の時間は4~20hである、ことを特徴とする請求項1のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の調製方法により調製されて得られる、ことを特徴とする単結晶高ニッケル正極材料。
【請求項8】
請求項7に記載の単結晶高ニッケル正極材料を含み、前記単結晶高ニッケル正極材料の比表面積は0.5~0.8m
2/gであり、
前記単結晶高ニッケル正極材料のpH≦11.8であり、
前記単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ≦3500ppmである、ことを特徴とする正極タブ。
【請求項9】
請求項8に記載の正極タブを含む、ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はリチウムイオン電池の分野に関し、例えば、単結晶高ニッケル正極材料及びその調製方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高ニッケル三元ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)正極材料又はニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(NCA)正極材料を合成する際、材料表面の残留アルカリ含有量が高く、吸水しやすく、一方で、正極材料の後続塗布が困難になると同時に、耐アルカリ性の面で電解液に対してより高い要求が出され、高いアルカリ度は電池がサイクル過程で膨れ上がり、さらに電池のサイクル性能に影響を及ぼし、他方で、充電状態では、正極材料粒子の表面にNi4+が存在し、Ni4+の活性が高く、電解液との副反応が起こりやすいため、電池のインピーダンスが増加し、不可逆容量の損失をもたらす。
【0003】
上記問題に対して、現在最も一般的な解決方法は、正極材料を水洗し、被覆及び複雑な構造設計を行うなどの方式で、材料のサイクル性能とレート性能を改善する方法であるが、改善効果は望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は単結晶高ニッケル正極材料及びその調製方法と使用を提供し、Ti/Co共同被覆法を採用することで、調製された単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ量を大幅に低減するとともに、容量及びレート性能も高いレベルに保持し、これにより、プロセスフローを低減し、コストを削減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、一実施例において単結晶高ニッケル正極材料の調製方法を提供し、前記調製方法は、
前駆体、リチウム源及びナノ酸化物を混合し、酸素含有雰囲気下で一次焼結処理によって一次焼結材料を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた一次焼結材料をチタン源及びコバルト源と混合し、酸素含有雰囲気下で二次焼結処理によって前記単結晶高ニッケル正極材料を得るステップ(2)とを含む。
【0006】
本開示は、ナノ酸化物と前駆体及びリチウム源とのドープを採用することで、リチウムニッケルのミキシングを低減し、結晶構造を安定化させ、電極材料の導電性を向上させ、さらに電池の安全性及び長周期のサイクル安定性を向上させることができる。本開示は、Ti/Co共同被覆法を採用することで、調製された単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ量を大幅に低減するとともに、容量及びレート性能も高いレベルに保持し、これにより、プロセスフローを低減し、コストを削減することができる。
【0007】
一実施例において、ステップ(1)における前記前駆体はNixCoyMnz(OH)2を含み、x≧0.8、例えば、0.8、0.82、0.85又は0.88などであり、0.2≧y≧0、例えば、0、0.05、0.1、0.15又は0.2などであり、0.2≧z≧0、例えば、0、0.05、0.1、0.15又は0.2などであり、x+y+z=1である。
【0008】
一実施例において、ステップ(1)における前記リチウム源は水酸化リチウム及び/又は炭酸リチウムを含む。
【0009】
一実施例において、ステップ(1)における前記ナノ酸化物は、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タングステン、酸化モリブデン、アルミナ又は酸化イットリウムのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0010】
ステップ(1)におけるのリチウム源におけるリチウムと前駆体におけるニッケル、コバルト、マンガン金属のモル総量比は1:(1~1.1)、例えば、:1:1、1:1.02、1:1.05、1:1.08又は1:1.1である。
【0011】
一実施例において、前記ナノ酸化物が完成品の単結晶高ニッケル正極材料に占める質量百分率は0.05%~0.3%、例えば、0.05%、0.08%、0.1%、0.2%又は0.3%などである。
【0012】
一実施例において、ステップ(1)における前記混合の速度は500~3000rpm、例えば、500rpm、800rpm、1000rpm、2000rpm又は3000rpmなどである。
【0013】
一実施例において、ステップ(1)における前記混合の時間は10~30min、例えば、10min、12min、15min、20min、25min又は30minなどである。
【0014】
一実施例において、ステップ(1)における前記酸素の流速は5~20L/min、例えば、5L/min、10L/min、12L/min、15L/min又は20L/minなどである。
【0015】
一実施例において、ステップ(1)における前記一次焼結処理の温度は800~950℃、例えば、800℃、850℃、900℃又は950℃などである。
【0016】
一実施例において、ステップ(1)における前記一次焼結処理の昇温速度は2~5℃/min、例えば、2℃/min、3℃/min、4℃/min又は5℃/minなどである。
【0017】
一実施例において、ステップ(1)における前記一次焼結処理の時間は5~15h、例えば、5h、8h、10h、12h又は15hなどである。
【0018】
一実施例において、ステップ(1)における前記一次焼結処理後に前記一次焼結材料を破砕、粉砕及び篩過する。
【0019】
一実施例において、前記篩過の孔径は300~400メッシュ、例えば、300メッシュ、320メッシュ、350メッシュ、380メッシュ又は400メッシュなどである。
【0020】
一実施例において、ステップ(2)における前記チタン源は、酸化チタン、水酸化チタン又は硫酸チタンのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0021】
一実施例において、ステップ(2)における前記コバルト源は、四酸化三コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルト、水酸化コバルト又は硫酸コバルトのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0022】
一実施例において、前記一次焼結材料、チタン源及びコバルト源の質量比は、1:(0.001~0.006):(0.001~0.015)、例えば、:1:0.001:0.001、1:0.003:0.002、1:0.005:0.01、1:0.005:0.012又は1:0.006:0.015などである。
【0023】
一実施例において、ステップ(2)における前記混合の速度は800~2000rpm、例えば、800rpm、1000rpm、1200rpm、1500rpm又は2000rpmなどである。
【0024】
一実施例において、ステップ(2)における前記混合の時間は10~30min、例えば、10min、12min、15min、20min、25min又は30minなどである。
【0025】
一実施例において、ステップ(2)における前記酸素の流速は5~20L/min、例えば、5L/min、10L/min、12L/min、15L/min又は20L/minなどである。
【0026】
一実施例において、ステップ(2)における前記二次焼結処理の温度は500~850℃、例えば、500℃、650℃、700℃又は950℃などである。
【0027】
一実施例において、ステップ(2)における前記二次焼結処理の昇温速度は2~5℃/min、例えば、2℃/min、3℃/min、4℃/min又は5℃/minなどである。
【0028】
一実施例において、ステップ(2)における前記二次焼結処理の時間は4~20h、例えば、4h、8h、10h、15h又は20hなどである。
【0029】
一実施例において、ステップ(2)における前記二次焼結処理後に単結晶高ニッケル正極材料を破砕及び篩過する。
【0030】
一実施例において、前記篩過の孔径は300~400メッシュ、例えば、300メッシュ、320メッシュ、350メッシュ、380メッシュ又は400メッシュなどである。
【0031】
本開示は、一実施例において単結晶高ニッケル正極材料を提供し、前記単結晶高ニッケル正極材料は前述の方法により調製されて得られる。
【0032】
本開示は、一実施例において正極タブを提供し、前記正極タブは上記単結晶高ニッケル正極材料を含む。
【0033】
一実施例において、前記単結晶高ニッケル正極材料の比表面積は0.5~0.8m2/g、例えば、0.5m2/g、0.6m2/g、0.7m2/g又は0.8m2/gなどである。
【0034】
一実施例において、前記単結晶高ニッケル正極材料のpH≦11.8、例えば、10、10.2、10.8、11、11.5又は11.8などである。
【0035】
一実施例において、前記単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ≦3500ppm、例えば、3000ppm、3100ppm、3200ppm、3300ppm、3400ppm又は3500ppmなどである。
【0036】
本開示は、一実施例においてリチウムイオン電池を提供し、前記イオン電池は上記正極タブを含む。
【0037】
図面は、本明細書の技術案のさらなる理解を提供するためのものであり、且つ明細書の一部を構成し、本願の実施例とともに本明細書の技術案を説明するために用いられ、本明細書の技術案を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本開示の一実施例に記載の単結晶高ニッケル正極材料のSEM図である。
【
図2】本開示の一実施例に記載の単結晶高ニッケル正極材料の3.0~4.3Vでの50週間のサイクル曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示は、一実施例において単結晶高ニッケル正極材料の調製方法を提供し、前記調製方法は、
前駆体、リチウム源及びナノ酸化物を混合し、酸素含有雰囲気下で一次焼結処理によって一次焼結材料を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた一次焼結材料をチタン源及びコバルト源と混合し、酸素含有雰囲気下で二次焼結処理によって前記単結晶高ニッケル正極材料を得るステップ(2)とを含む。
【0040】
本開示は、ナノ酸化物と前駆体及びリチウム源とのドープを採用することで、リチウムニッケルのミキシングを低減し、結晶構造を安定化させ、電極材料の導電性を向上させ、さらに電池の安全性及び長周期のサイクル安定性を向上させることができる。本開示は、Ti/Co共同被覆法を採用することで、調製された単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ量を大幅に低減するとともに、容量及びレート性能も高いレベルに保持し、これにより、プロセスフローを低減し、コストを削減することができる。
【0041】
一実施例において、ステップ(1)における前記前駆体はNixCoyMnz(OH)2を含み、x≧0.8、例えば、0.8、0.82、0.85又は0.88などであり、0.2≧y≧0、例えば、0、0.05、0.1、0.15又は0.2などであり、0.2≧z≧0、例えば、0、0.05、0.1、0.15又は0.2などであり、x+y+z=1である。
【0042】
一実施例において、ステップ(1)における前記リチウム源は水酸化リチウム及び/又は炭酸リチウムを含む。
【0043】
一実施例において、ステップ(1)における前記ナノ酸化物は、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タングステン、酸化モリブデン、アルミナ又は酸化イットリウムのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0044】
ステップ(1)では、前記リチウム源におけるリチウムと前駆体におけるニッケル、コバルト、マンガン金属のモル総量比は1:(1~1.1)、例えば、:1:1、1:1.02、1:1.05、1:1.08又は1:1.1である。
【0045】
一実施例において、前記ナノ酸化物が完成品の単結晶高ニッケル正極材料に占める質量百分率は0.05%~0.3%、例えば、0.05%、0.08%、0.1%、0.2%又は0.3%などである。
【0046】
一実施例において、ステップ(1)における前記混合の速度は500~3000rpm、例えば、500rpm、800rpm、1000rpm、2000rpm又は3000rpmなどである。
【0047】
一実施例において、ステップ(1)における前記混合の時間は10~30min、例えば、10min、12min、15min、20min、25min又は30minなどである。
【0048】
一実施例において、ステップ(1)における前記酸素の流速は5~20L/min、例えば、5L/min、10L/min、12L/min、15L/min又は20L/minなどである。
【0049】
一実施例において、ステップ(1)における前記一次焼結処理の温度は800~950℃、例えば、800℃、850℃、900℃又は950℃などである。
【0050】
本開示のステップ(1)における前記焼結温度は、調製された単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ量に影響を及ぼし、焼結温度を800~950℃に制御することにより、残アルカリ量が低い単結晶高ニッケル正極材料を調製可能であり、温度が800℃未満であると、一方で、材料の残アルカリ量が向上し、他方で、一次粒子が小さく、材料のサイクル安定性に影響を及ぼし、950℃を超えると、材料の一次粒子が大幅に増加し、容量がそれに応じて大幅に低下する。
【0051】
一実施例において、ステップ(1)における前記一次焼結処理の昇温速度は2~5℃/min、例えば、2℃/min、3℃/min、4℃/min又は5℃/minなどである。
【0052】
一実施例において、ステップ(1)における前記一次焼結処理の時間は5~15h、例えば、5h、8h、10h、12h又は15hなどである。
【0053】
一実施例において、ステップ(1)における前記一次焼結処理後に前記一次焼結材料を破砕、粉砕及び篩過する。
【0054】
一実施例において、前記篩過の孔径は300~400メッシュ、例えば、300メッシュ、320メッシュ、350メッシュ、380メッシュ又は400メッシュなどである。
【0055】
一実施例において、ステップ(2)における前記チタン源は、酸化チタン、水酸化チタン又は硫酸チタンのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0056】
一実施例において、ステップ(2)における前記コバルト源は、四酸化三コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルト、水酸化コバルト又は硫酸コバルトのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0057】
一実施例において、前記一次焼結材料、チタン源及びコバルト源の質量比は、1:(0.001~0.006):(0.001~0.015)、例えば、:1:0.001:0.001、1:0.003:0.002、1:0.005:0.01、1:0.005:0.012又は1:0.006:0.015などである。
【0058】
本開示に記載の一次焼結材料、チタン源及びコバルト源の質量比は、調製された単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ量に影響を及ぼし、一次焼結材料、チタン源及びコバルト源の質量比を1:(0.001~0.006):(0.001~0.015)に制御することにより、残アルカリ量が低い単結晶高ニッケル正極材料を調製可能である。
【0059】
一実施例において、ステップ(2)における前記混合の速度は800~2000rpm、例えば、800rpm、1000rpm、1200rpm、1500rpm又は2000rpmなどである。
【0060】
一実施例において、ステップ(2)における前記混合の時間は10~30min、例えば、10min、12min、15min、20min、25min又は30minなどである。
【0061】
一実施例において、ステップ(2)における前記酸素の流速は5~20L/min、例えば、5L/min、10L/min、12L/min、15L/min又は20L/minなどである。
【0062】
一実施例において、ステップ(2)における前記二次焼結処理の温度は500~850℃、例えば、500℃、650℃、700℃又は950℃などである。
【0063】
本開示のステップ(2)における前記焼結温度は、調製された単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ量に影響を及ぼし、焼結温度を500~850℃に制御することにより、残アルカリ量が低い単結晶高ニッケル正極材料を調製可能であり、温度が500℃未満であると、被覆層と一次焼結基材の結合が十分堅固ではなくなり、サイクル過程で被覆層が部分的に脱落し、電解液と正極材料の接触面積が増大し、副反応が多くなり、電池が膨れ上がり、サイクル性能が悪くなり、850℃を超えると、一次粒子の硬い凝集、ブロッキングが発生し、直接篩過しにくくなり、凝集を開くには、破砕工程を増やす必要があり、同時に、一次粒子のサイズを大きくし、材料容量に影響を及ぼす。
【0064】
一実施例において、ステップ(2における前記二次焼結処理の昇温速度は2~5℃/min、例えば、2℃/min、3℃/min、4℃/min又は5℃/minなどである。
【0065】
一実施例において、ステップ(2)における前記二次焼結処理の時間は4~20h、例えば、4h、8h、10h、15h又は20hなどである。
【0066】
一実施例において、ステップ(2)における前記二次焼結処理後に単結晶高ニッケル正極材料を破砕及び篩過する。
【0067】
一実施例において、前記篩過の孔径は300~400メッシュ、例えば、300メッシュ、320メッシュ、350メッシュ、380メッシュ又は400メッシュなどである。
【0068】
本開示は、一実施例において単結晶高ニッケル正極材料を提供し、前記単結晶高ニッケル正極材料は前述の方法により調製されて得られる。
【0069】
本開示は、一実施例において正極タブを提供し、前記正極タブは上記の単結晶高ニッケル正極材料を含む。
【0070】
一実施例において、前記単結晶高ニッケル正極材料の比表面積は0.5~0.8m2/g、例えば、0.5m2/g、0.6m2/g、0.7m2/g又は0.8m2/gなどである。
【0071】
一実施例において、前記単結晶高ニッケル正極材料のpH≦11.8、例えば、10、10.2、10.8、11、11.5又は11.8などである。
【0072】
一実施例において、前記単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ≦3500ppm、例えば、3000ppm、3100ppm、3200ppm、3300ppm、3400ppm又は3500ppmなどである。
【0073】
本開示は、一実施例においてリチウムイオン電池を提供し、前記イオン電池は上記の正極タブを含む。
【0074】
実施例1
本実施例は単結晶高ニッケル正極材料を提供し、具体的には、次のステップを含んだ。
(1)Ni0.83Co0.11Mn0.06(OH)2と水酸化リチウムを取り、リチウム/金属=1.03:1で秤量し、高速混合装置内に入れてから、0.1%のナノ酸化ジルコニウムを加え、1000rpmで20分間混合し、10L/minの酸素流量、3℃/minの昇温速度で850℃まで昇温し、10時間焼結し、室温まで冷却して破砕した後に300メッシュの篩にかけ、一次焼結材料を得て、
(2)ステップ(1)で得られた一次焼結材料を酸化チタン及び四酸化三コバルトと質量比1:0.003:0.008で混合し、10L/minの酸素流量、3℃/minの昇温速度で800℃まで昇温し、15時間焼結し、室温まで冷却して破砕した後に300メッシュの篩にかけ、前記単結晶高ニッケル正極材料を得た。
【0075】
前記単結晶高ニッケル正極材料のSEM図は
図1に示すように、
図1から、本開示に記載の方法を用いて調製された単結晶高ニッケル正極材料の単結晶粒子表面の被覆層は均一であることがわかった。
【0076】
前記単結晶高ニッケル正極材料の3.0~4.3Vでの50週間のサイクル曲線図は
図2に示している。
【0077】
実施例2
本実施例は単結晶高ニッケル正極材料を提供し、具体的には、次のステップを含んだ。
(1)Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)2と水酸化リチウムを取り、リチウム/金属の比1:1で秤量し、高速混合内に入れてから、0.15%のナノ酸化タングステンを加え、1500rpmで20分間混合し、12L/minの酸素流量、4℃/minの昇温速度で900℃まで昇温し、8時間焼結し、室温まで冷却して破砕した後に400メッシュの篩にかけ、一次焼結材料を得て、
(2)ステップ(1)で得られた一次焼結材料を水酸化チタン及び塩化コバルトと質量比1:0.005:0.012で混合し、12L/minの酸素流量、4℃/minの昇温速度で750℃まで昇温し、12時間焼結し、室温まで冷却して破砕した後に400メッシュの篩にかけ、前記単結晶高ニッケル正極材料を得た。
【0078】
実施例3
本実施例と実施例1の区別は、ステップ(1)における前記焼結の温度が800℃であることにあった。
【0079】
実施例4
本実施例と実施例1の区別は、ステップ(1)における前記焼結の温度が950℃であることにあった。
【0080】
実施例5
本実施例と実施例1の区別は、ステップ(2)における前記焼結の温度が500℃であることにあった。
【0081】
実施例6
本実施例と実施例1の区別は、ステップ(2)における前記焼結の温度が850℃であることにあった。
【0082】
実施例7
本実施例と実施例1の区別は、ステップ(2)における前記一次焼結材料と酸化チタンの質量比が1:0.001であることにあった。
【0083】
実施例8
本実施例と実施例1の区別は、ステップ(2)における前記一次焼結材料と酸化チタンの質量比が1:0.006であることにあった。
【0084】
実施例9
本実施例と実施例1の区別は、ステップ(2)における前記一次焼結材料と四酸化三コバルトの質量比が1:0.001であることにあった。
【0085】
実施例10
本実施例と実施例1の区別は、ステップ(2)における前記一次焼結材料と四酸化三コバルトの質量比が1:0.015であることにあった。
【0086】
比較例1
本比較例と実施例1の区別は、酸化チタンを加えないことにあった。
【0087】
比較例2
本比較例と実施例1の区別は、四酸化三コバルトを加えないことにあった。
【0088】
比較例3
本比較例と実施例1の区別は、酸化チタンと四酸化三コバルトを加えないことにあった。
【0089】
実施例1~10及び比較例1~3で調製された単結晶高ニッケル正極材料を評価した。
1、残アルカリのテストステップについて
(1)サンプル処理:10gのサンプルを秤量し、250mLの乾燥ビーカーに入れ、100mLの純水を加え、ビーカーに磁気撹拌子を加えてラップフィルムを被せ、マグネットスターラで30分間撹拌し、撹拌が完了した後に2分間静置し、きれいな漏斗を取ってきれいなコニカルフラスコに置き、円形濾紙を二つ折りにして漏斗に入れて濾過し、濾過後にコニカルフラスコにゴムキャップを被せ、
(2)必要なテスト方法を選択し、クリックしてロードし、
(3)ピペットで50mLの溶液を滴定カップ(状況に応じて調整可能)に移し、電位滴定器ソフトにサンプル質量を入力し、100mLの超純水を加えて希釈し、スタートボタンを押して測定し、
(4)測定過程に2つの明らかな滴定変曲点が現れたとき、滴定終点に到達したと考え、終了キーを押してテストを終了し、2つの変曲点はそれぞれV1とV2であり、
(5)計算した。
【0090】
炭酸リチウム含有量の計算について
X2=c*(V2-V1)*73.89*2/1000/m*100%
V1-測定されるサンプルを第1の明らかな変曲点まで滴定するために使用される標準溶液体積、単位:ミリリットル(mL)、
V2-測定されるサンプルを第2の明らかな変曲点まで滴定するために使用される標準溶液体積、単位:ミリリットル(mL)、
c-塩酸標準濃度、c(HCl)=0.05mol/L、GB/T601に従った。
水酸化リチウム含有量の計算について
X3=c*(2V1-V2)*23.95*2/1000/m*100%
ただし、23.95g/molは水酸化リチウムのモル質量であり、
73.98g/molは炭酸リチウムのモル質量である。
mはサンプル質量であり、単位はgであり、テスト結果は表1に示すとおりである。
【0091】
【0092】
表1から、実施例1及び実施例3~4を比較すると、ステップ(1)における前記焼結温度は、調製された単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ量に影響を及ぼし、焼結温度を800~950℃に制御することにより、残アルカリ量が低い単結晶高ニッケル正極材料を調製可能であり、温度が800℃未満であると、一方で、材料の残アルカリ量が向上し、他方で、一次粒子が小さく、材料のサイクル安定性に影響を及ぼし、950℃を超えると、材料の一次粒子が大幅に増加し、容量がそれに応じて大幅に低下することがわかった。
【0093】
実施例1及び実施例5~6を比較すると、ステップ(2)における前記焼結温度は、調製された単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ量に影響を及ぼし、焼結温度を500~850℃に制御することにより、残アルカリ量が低い単結晶高ニッケル正極材料を調製可能であり、温度が500℃未満であると、被覆層と一次焼結基材の結合が十分堅固ではなくなり、サイクル過程で被覆層が部分的に脱落し、電解液と正極材料の接触面積が増大し、副反応が多くなり、電池が膨れ上がり、サイクル性能が悪くなり、850℃を超えると、一次粒子の硬い凝集、ブロッキングが発生し、直接篩過しにくくなり、凝集を開くには破砕工程を増やす必要があり、さらに、一次粒子のサイズが大きくなり、材料容量に影響を及ぼすことがわかった。
【0094】
実施例1及び実施例7~10を比較すると、ステップ(2)における前記一次焼結材料、チタン源及びコバルト源の質量比は、調製された単結晶高ニッケル正極材料の残アルカリ量に影響を及ぼし、一次焼結材料、チタン源及びコバルト源の質量比を1:(0.001~0.006):(0.001~0.015)に制御することにより、残アルカリ量が低い単結晶高ニッケル正極材料を調製して得ることがわかった。
【0095】
実施例1~10及び比較例1~3で得られた正極材料である最終的に得られた単結晶高ニッケル正極材料に対して、ボタン半電池充放電テストを行い、具体的には、単結晶高ニッケル正極材料:ポリフッ化ビニリデン(PVDF):超伝導カーボンブラック(SP)導電剤を92:4:4の割合で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を加えてスラリー固形分を50%に調整し、その後スラリーをアルミ箔に均一に塗布し、100℃で12時間ベークし、タブ全体を製造し、その後タブ全体を3枚に裁断してロールプレスし、ロールプレスした3枚のタブをまた直径が12mmの円形タブに裁断し、グローブボックスで電池組み立てを行い、負極はリチウム片である。テスト結果は表2に示すとおりである。
【0096】
【0097】
表2から、実施例1~10を比較すると、本開示に記載の方法を用いて製造された電池の0.1C充電容量は226.3mAh/g以上に達し、0.1C放電容量は205mAh/g以上に達し、1C放電容量は187.2mAh/g以上に達し、初回クーロン効率は90.5%以上に達し、50週間サイクル保持率は95.5%以上に達することができることがわかった。
【0098】
実施例1及び実施例3~4を比較すると、ステップ(1)における前記焼結温度は、調製された単結晶高ニッケル正極材料の性能に影響を及ぼし、焼結温度を800~950℃に制御することにより、性能が良好な単結晶高ニッケル正極材料を調製可能であり、一次焼結温度は、単結晶の一次粒子のサイズに影響を及ぼし、温度が低いと、一次粒子が小さく、容量が高いが、サイクル性能は悪く、温度が高いと、一次粒子が大きく、容量が低いが、サイクル性能はよく、以上に基づいて、800~950℃の一次焼結温度範囲を選択することで、各方面の性能がすべて良好な材料を得た。温度が800℃未満であると、単結晶の一次粒子の成長が小さく、材料のサイクル性能に影響を及ぼし、温度が950℃を超えると、単結晶の一次粒子の成長が大きく、サイクル性能がより良好であるが、容量は大幅に低下することがわかった。
【0099】
実施例1及び実施例5~6を比較すると、ステップ(2)における前記焼結温度は、調製された単結晶高ニッケル正極材料の性能に影響を及ぼし、焼結温度を500~850℃に制御することにより、性能が良好な単結晶高ニッケル正極材料を調製可能であり、二次焼結温度が500℃未満であると、被覆層と一次焼結基材の結合が十分堅固ではなくなり、サイクル過程で被覆層が部分的に脱落し、電解液と正極材料の接触面積が増大し、副反応が多くなり、電池が膨れ上がり、サイクル性能が悪くなり、二次焼結温度が850℃を超えると、一次粒子の硬い凝集、ブロッキングが発生し、直接篩過しにくくなり、凝集を開くのに破砕工程を増やす必要があり、同時に、一次粒子のサイズが大きくなり、材料容量に影響を及ぼすことがわかった。
【0100】
実施例1及び実施例7~10を比較すると、ステップ(2)における一次焼結材料、チタン源及びコバルト源の質量比は、調製された単結晶高ニッケル正極材料の性能に影響を及ぼし、一次焼結材料、チタン源及びコバルト源の質量比を1:(0.001-0.006):(0.001-0.015)に制御することにより、性能が良好な単結晶高ニッケル正極材料を調製可能であることがわかった。
【国際調査報告】