(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】免疫監視を増強するために制御性T細胞を標的化するための材料及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240214BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240214BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240214BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240214BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240214BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240214BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240214BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240214BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/02
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12P21/08
A61P35/00
A61K39/395 T
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550008
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022016707
(87)【国際公開番号】W WO2022178067
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】グレワル,イクバル,エス.
(72)【発明者】
【氏名】ガネサン,ラジクマール
(72)【発明者】
【氏名】シン,サンジャヤ
(72)【発明者】
【氏名】ディース,サンディー
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA11
4B063QA19
4B063QQ03
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4B063QR08
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4B063QR35
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4C085GG01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
分子は、制御性T(Treg)細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の手段と、Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合することができる第2の手段と、を含み、分子は、Treg細胞の成長若しくは増殖を阻害するか、又はそれを枯渇することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子であって、
a.制御性T(Treg)細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、
b.前記Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含み、
任意選択で、前記分子が、多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、分子。
【請求項2】
前記第1の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、請求項1に記載の多重特異性抗体。
【請求項3】
前記第1の抗原が、CD25である、請求項1に記載の多重特異性抗体。
【請求項4】
前記第1の結合ドメインが、
(i)配列番号1に記載のVH相補性決定領域(CDR)1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、重鎖可変領域(VH)と、
(ii)配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、軽鎖可変領域(VL)と、を含む、請求項1に記載の多重特異性抗体。
【請求項5】
前記第1の結合ドメインが、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む、請求項4に記載の多重特異性抗体。
【請求項6】
前記第2の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項7】
前記第2の抗原が、CD39である、請求項1~6のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項8】
前記第2の結合ドメインが、
(i)配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、
(ii)配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項9】
前記第2の結合ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む、請求項8に記載の多重特異性抗体。
【請求項10】
前記第1の結合ドメイン及び/又は前記第2の結合ドメインが、ヒト化されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項11】
前記多重特異性抗体が、IgG抗体である、請求項1~10のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項12】
前記IgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である、請求項11に記載の多重特異性抗体。
【請求項13】
前記IgG抗体が、IgG1抗体である、請求項12に記載の多重特異性抗体。
【請求項14】
前記IgG抗体が、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む、請求項12に記載の多重特異性抗体。
【請求項15】
前記抗体が、カッパ軽鎖を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項16】
前記抗体が、ラムダ軽鎖を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項17】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項18】
前記多重特異性抗体が、二重特異性抗体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項19】
前記第1の結合ドメインが、scFv領域であり、前記第2の結合ドメインが、Fab領域である、請求項18に記載の多重特異性抗体。
【請求項20】
前記多重特異性抗体が、Tregの枯渇又は阻害を誘導する、請求項1~19のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体をコードする、核酸。
【請求項22】
請求項21に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項23】
請求項22に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項24】
請求項22に記載のベクターと、そのためのパッケージと、を含む、キット。
【請求項25】
請求項1~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体と、そのためのパッケージと、を含む、キット。
【請求項26】
請求項1~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の医薬組成物を製造する方法であって、前記多重特異性抗体を医薬的に許容される担体と組み合わせて、前記医薬組成物を得ることを含む、方法。
【請求項28】
請求項1~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体を作製するプロセスであって、前記多重特異性抗体をコードする1つ以上の核酸を宿主細胞に導入することを含み、前記多重特異性抗体が、
a.制御性T(Treg)細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、
b.前記Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、プロセス。
【請求項29】
CD25を発現する細胞を濃縮、単離、分離、精製、選別、選択、捕捉、検出、又は枯渇する方法であって、前記CD25を発現する細胞を含む試料を提供することと、前記試料を請求項1~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体と接触させることと、CD25を発現し、かつ前記多重特異性抗体と結合する細胞を濃縮、単離、分離、精製、選別、選択、捕捉、検出、又は枯渇することと、を含む、方法。
【請求項30】
CD39を発現する細胞を濃縮、単離、分離、精製、選別、選択、捕捉、検出、又は枯渇する方法であって、前記CD39を発現する細胞を含む試料を提供することと、前記試料を請求項1~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体と接触させることと、前記CD39を発現し、かつ前記多重特異性抗体と結合する細胞を濃縮、単離、分離、精製、選別、選択、捕捉、検出、又は枯渇することと、を含む、方法。
【請求項31】
前記細胞が、制御性T(Treg)細胞である、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記試料が、血液試料である、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記試料が、組織試料である、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
Treg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、前記Treg細胞を、請求項1~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体と接触させることを含む、方法。
【請求項35】
がん細胞及びTreg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、前記がん細胞及び前記Treg細胞を、請求項1~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体と接触させることを含む、方法。
【請求項36】
がんを有する対象においてがん細胞及びTreg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、請求項1~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項37】
対象においてがんを治療する方法であって、請求項1~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項38】
前記がんが、固形腫瘍がんである、請求項36又は請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記がんが、血液がんである、請求項36又は請求項37に記載の方法。
【請求項40】
多重特異性分子であって、Treg細胞上に発現される第1の抗原と結合することができる第1の手段と、前記Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合することができる第2の手段と、を含む、多重特異性分子。
【請求項41】
前記第1の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、請求項40に記載の多重特異性分子。
【請求項42】
前記第1の抗原が、CD25である、請求項40~41のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項43】
前記第2の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、請求項40~42のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項44】
前記第2の抗原が、CD39である、請求項40~42のいずれか一項に記載の多重特異性分子。
【請求項45】
1つを超える標的分子と結合する分子を作製するためのプロセスであって、Treg細胞の表面上で第1の抗原と結合することができる結合ドメインを取得する機能を実行する工程と、前記Treg細胞の表面上で第2の抗原と結合することができる結合ドメインを取得する機能を実行する工程と、前記第1の抗原及び前記第2の抗原と結合することができる分子を提供する機能を実行する工程と、を含む、プロセス。
【請求項46】
Treg細胞の成長若しくは増殖を阻害するか、又はそれを枯渇する方法であって、前記Treg細胞を請求項40~45のいずれか一項に記載の分子と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年2月19日に出願された米国仮出願第63/151,636号、2021年2月19日に出願された米国仮出願第63/151,635号、2021年2月19日に出願された米国仮出願第63/151,634号、2021年2月19日に出願された米国仮出願第63/151,633号、及び2021年2月19日に出願された米国仮出願第63/151,631号の利益を主張し、これらのそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、28,898バイトのサイズで2022年2月14日に作成された14620-627-228_SEQ_LISTING.txtと題されたテキストファイル、本出願とともに提出された配列表を、参照により組み込む。
【0003】
1.分野
本明細書で提供されるのは、制御性T(regulatory T、Treg)細胞上に存在する抗原と結合することができる手段を含む、有用な多重特異性分子及びそれに関連するプロセス、並びに宿主における免疫を調節するため、及び/又はがんなどの疾患若しくは障害を治療するためのその使用である。
【0004】
2.背景
免疫療法の出現は、がんを含む様々な細胞及び組織の治療において改善を導いた。免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍特異的ナチュラルキラー(natural killer、NK)及びT細胞関連物、がんワクチン、並びに多くの他の免疫系療法の使用を通じて、様々な形態の抗腫瘍免疫応答を促進することによって、有意な生存利益が臨床において観察されている(Myers and Miller,(2020).Nat Rev Clin Oncol,doi:10.1038/s41571-020-0426-7、Waldman et al.,(2020),Nat Rev Immunol,20(11):651-668において概説されている)。
【0005】
制御性T細胞(Treg)は、免疫恒常性及び自己寛容の状態を維持するために免疫系の過剰な活性化を防止する際に機能するCD4+Tリンパ球の動的サブセットである。
【0006】
3.概要
本発明者らは、過剰なTreg活性が抗腫瘍免疫応答を抑制し得ることを認識し、したがって、がんの治療のためにTregを標的化するための理論的根拠を提供する。臨床におけるTreg標的化療法で観察される最適以下の有効性の根底にある主な制限は、抗腫瘍免疫細胞集団の選択的標的化及び同時枯渇の欠如である。したがって、本発明は、抗腫瘍免疫を増強するために、他の免疫細胞集団を温存しながら、Tregを選択的に枯渇させることができる治療法を開発するという、満たされていない医学的必要性を明らかにした。したがって、本発明の一態様では、本明細書で提供されるのは、制御性T(Treg)細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体である。
【0007】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1の抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。
【0008】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD25である。
【0009】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、(i)配列番号1に記載のVH相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、重鎖可変領域(VH)と、(ii)配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、軽鎖可変領域(VL)と、を含む。
【0010】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0011】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第2の抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。
【0012】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第2の抗原は、CD39である。
【0013】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、(i)配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、(ii)配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。
【0014】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0015】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメイン及び/又は第2の結合ドメインは、ヒト化されている。
【0016】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、IgG1抗体である。
【0017】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、IgG抗体は、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む。
【0018】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、カッパ軽鎖を含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、ラムダ軽鎖を含む。
【0019】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0020】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。
【0021】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、scFv領域であり、第2の結合ドメインは、Fab領域である。
【0022】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、Tregの枯渇又は阻害を誘導する。
【0023】
別の態様では、本明細書で提供される多重特異性抗体をコードする核酸が本明細書で提供される。また、本明細書で提供される多重特異性抗体をコードする核酸を含むベクターも提供される。また、本明細書で提供される多重特異性抗体をコードする核酸を含むベクターを含む宿主細胞も提供される。また、本明細書で提供される多重特異性抗体をコードする核酸を含むベクターと、そのためのパッケージと、を含む、キットも提供される。また、本明細書で提供される多重特異性抗体と、そのためのパッケージと、を含む、キットも提供される。
【0024】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、医薬組成物であって、多重特異性抗体と、医薬的に許容される担体と、を含み、多重特異性抗体が、Treg細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、医薬組成物である。
【0025】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、第1の抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。
【0026】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD25である。
【0027】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、(i)配列番号1に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、(ii)配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。
【0028】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0029】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、第2の抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。
【0030】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、第2の抗原は、CD39である。
【0031】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、(i)配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、(ii)配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。
【0032】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0033】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメイン及び/又は第2の結合ドメインは、ヒト化されている。
【0034】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、IgG1抗体である。
【0035】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、IgG抗体は、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む。
【0036】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、抗体は、カッパ軽鎖を含む。本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、抗体は、ラムダ軽鎖を含む。
【0037】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0038】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。
【0039】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、scFv領域であり、第2の結合ドメインは、Fab領域である。
【0040】
本明細書で提供される医薬組成物のいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、Tregの枯渇又は阻害を誘導する。
【0041】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、多重特異性抗体を作製するためのプロセスであって、多重特異性抗体をコードする1つ又は2つ以上の核酸を宿主細胞に導入することを含み、多重特異性抗体が、Treg細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、プロセスである。
【0042】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、第1の抗原は、Tregの免疫抑制活性における機能を有する。
【0043】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD25である。
【0044】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、(i)配列番号1に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、(ii)配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。
【0045】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0046】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、第2の抗原は、Tregの免疫抑制活性における機能を有する。
【0047】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、第2の抗原は、CD39である。
【0048】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、(i)配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVHと、(ii)配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。
【0049】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0050】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、第1の結合ドメイン及び/又は第2の結合ドメインは、ヒト化されている。
【0051】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、IgG1抗体である。
【0052】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、IgG抗体は、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む。
【0053】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、抗体は、カッパ軽鎖を含む。本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、抗体は、ラムダ軽鎖を含む。
【0054】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0055】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。
【0056】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、scFv領域であり、第2の結合ドメインは、Fab領域である。
【0057】
本明細書で提供される多重特異性抗体を作製するためのプロセスのいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、Tregの枯渇又は阻害を誘導する。
【0058】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、CD25及び/若しくはCD39を発現する細胞を濃縮、単離、分離、精製、選別、選択、捕捉、検出、又は枯渇する方法であって、CD25及び/又はCD39を発現する細胞を含む試料を提供することと、試料を多重特異性抗体と接触させることと、CD25及び/若しくはCD39を発現し、かつ多重特異性抗体と結合する細胞を濃縮、単離、分離、精製、選別、選択、捕捉、検出、又は枯渇することと、を含み、多重特異性抗体が、CD25と結合することができる第1の結合ドメインと、CD39と結合することができる第2の結合ドメインと、を含む、方法である。
【0059】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、細胞は、Treg細胞である。本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、試料は、血液試料である。いくつかの実施形態では、試料は、組織試料である。
【0060】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、Treg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、Treg細胞を、Treg細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体と接触させることを含む、方法である。
【0061】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、がん細胞及びTreg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、がん細胞及びTreg細胞を、Treg細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体と接触させることを含む、方法である。
【0062】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、がんを有する対象においてがん細胞及びTreg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、Treg細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体を対象に投与することを含む、方法である。
【0063】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、対象においてがんを治療する方法であって、Treg細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体を対象に投与することを含む、方法である。
【0064】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍がんである。いくつかの実施形態では、がんは、血液がんである。
【0065】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、第1の抗原は、Tregの免疫抑制活性に関与する。
【0066】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD25である。
【0067】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、(i)配列番号1に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、(ii)配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。
【0068】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0069】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、第2の抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。
【0070】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、第2の抗原は、CD39である。
【0071】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、(i)配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、(ii)配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。
【0072】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0073】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、ヒト化されており、かつ/又は第2の結合ドメインはヒト化されている。
【0074】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、IgG1抗体である。
【0075】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、IgG抗体は、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む。
【0076】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、抗体は、カッパ軽鎖を含む。本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、抗体は、ラムダ軽鎖を含む。
【0077】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0078】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。
【0079】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、scFv領域であり、第2の結合ドメインは、Fab領域である。
【0080】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、Tregの枯渇又は阻害を誘導する。
【0081】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、多重特異性分子であって、Treg細胞上に発現される第1の抗原と結合することができる第1の手段と、Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合することができる第2の手段と、を含む、多重特異性分子である。
【0082】
本明細書で提供される分子のいくつかの実施形態では、第1の抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。
【0083】
本明細書で提供される分子のいくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD25である。
【0084】
本明細書で提供される分子のいくつかの実施形態では、第2の抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。
【0085】
本明細書で提供される分子のいくつかの実施形態では、第2の抗原は、CD39である。
【0086】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、1つを超える標的分子と結合する分子を作製するためのプロセスであって、Treg細胞の表面上で第1の抗原と結合することができる結合ドメインを取得する機能を実行する工程と、Treg細胞の表面上で第2の抗原と結合することができる結合ドメインを取得する機能を実行する工程と、第1の抗原及び第2の抗原と結合することができる分子を提供する機能を実行する工程と、を含む、プロセスである。
【0087】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、Treg細胞の成長若しくは増殖を阻害するか、又はそれを枯渇する方法であって、Treg細胞を本明細書で提供される分子と接触させることを含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
4.図面の簡単な説明
【
図1】抗腫瘍免疫のTreg媒介抑制の重要な機構を示す。CD39は、細胞外ATPをAMPに変換するTreg細胞上で発現されるエクトヌクレオチダーゼであり、CD73によって免疫抑制性アデノシンに更に変換される。アデノシンは、エフェクターT細胞上に発現されるA2ARと結合して、それらの抗腫瘍活性を抑制する。CD25は、Treg細胞上で構成的に発現される高親和性ヘテロ三量体IL-2受容体の成分である。IL-2シンクの形成は、Treg上のIL-2RとのIL-2結合を伴い、微小環境におけるIL-2の結果として生じる欠如は、増殖及び生存についてこのサイトカインに依存するエフェクターT細胞を欠乏させる。
【
図2】抗腫瘍免疫を増強するためにTregを枯渇させるためのCD25×CD39二重特異性抗体の設計を示す。CD25×CD39二重特異性抗体は、CD25を標的とする単鎖可変断片(single-chain variable fragment、scFv)及びCD39を標的とする抗原結合断片(antigen-binding fragment、Fab)領域を有するヒトIgG1骨格上にフォーマット化された。ノブインホール(knob-in-hole、KIH)技術を使用して、二重特異性抗体を操作した。CD25×CD39二重特異性抗体の結晶化可能断片(fragment crystallizable、Fc)領域に変異を導入して、抗体依存性細胞食作用(antibody-dependent cellular phagocytosis、ADCP)活性及び抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular cytotoxicity、ADCC)活性を含むFcエフェクター機能を増強し、Tregの枯渇を増大させて抗腫瘍免疫応答を増強した。
【
図3】CD25×CD39二重特異性抗体が抗体依存性細胞食作用(ADCP)アッセイを介してTregを枯渇させることを示す。エフェクター細胞(ヒトFcγRIIa-H131及びNFAT誘導性ルシフェラーゼを安定的に発現するJurkat細胞)を、試験抗体の存在下、37℃/5%CO
2で6時間、6:1のエフェクター対標的比で標的細胞(初代ヒトTreg細胞)と共培養した。標的細胞と結合した試験抗体のFc領域と、ADCPエフェクター細胞上に発現されたFcγRIIa-H131との結合は、NFAT媒介ルシフェラーゼ活性をもたらし、これをBio-Gloルシフェラーゼ試薬の添加時に定量化した。120μg/mLの開始抗体濃度及びその後の1.5倍連続希釈を用いて、10点用量反応曲線を生成した。データは、平均±平均の標準誤差(SEM)として報告される。誘導倍率(RLU)=RLU(試料-バックグラウンド)/RLU(抗体なし対照-バックグラウンド)。log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4つのパラメータ)の非線形回帰曲線フィッティングを行った。
【
図4】CD25×CD39二重特異性抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイを介してTregを枯渇させることを示す。エフェクター細胞(ヒトFcγRIIIa-F158及びNFAT誘導性ルシフェラーゼを安定的に発現するJurkat細胞)を、試験抗体の存在下、37℃/5%CO
2で6時間、6:1のエフェクター対標的比で標的細胞(初代ヒトTreg細胞)と共培養した。標的細胞と結合した試験抗体のFc領域と、ADCCエフェクター細胞上に発現されたFcγRIIIa-F158との結合は、NFAT媒介ルシフェラーゼ活性をもたらし、これをBio-Gloルシフェラーゼ試薬の添加時に定量した。50μg/mLの開始抗体濃度及びその後の3倍連続希釈を用いて、10点用量反応曲線を生成した。データは平均±SEMとして報告される。誘導倍率(RLU)=RLU(試料-バックグラウンド)/RLU(抗体なし対照-バックグラウンド)。log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4つのパラメータ)の非線形回帰曲線フィッティングを行った。
【
図5】CD25×CD39二重特異性抗体が補体カスケードの開始に関与するヒトC1qタンパク質と結合することを示す。高結合MSDプレートを試験抗体の段階希釈物(12点用量反応曲線;200μg/mL開始抗体濃度;2倍段階希釈)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。アッセイプレートを1×MSD Tris洗浄緩衝液で洗浄し、続いてブロッキング溶液を室温で1時間振盪しながら添加した。更に洗浄した後、MSD GOLD SULFO-TAG NHS-エステルに結合した10μg/mLのヒト精製C1qタンパク質をアッセイプレートに添加し、室温で1時間振盪させた。アッセイプレートを洗浄し、続いて2×MSD読み取り緩衝液を添加した後、MSD Imagerで読み取ってRLU値を取得した。データは平均±SEMとして報告される。log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4つのパラメータ)の非線形回帰曲線フィッティングを行った。
【0089】
5.詳細な記述
Tregは、免疫系の生理学的及び病理学的応答を調節するCD4+T細胞の免疫抑制性サブセットである。健康な適応免疫系は、炎症性T細胞集団と免疫抑制Treg集団との最適なバランスによって特徴付けられ、この微妙なバランスを乱すことは、疾患病理をもたらし得る。Treg機能の喪失は、自己免疫を誘導し得るが、過剰なTreg活性は、抗腫瘍免疫応答を弱め、腫瘍形成を促進し得る。
【0090】
本開示は、Treg上の複数の抗原と結合する新規分子、及びこれらの新規分子の高度な特性に部分的に基づく。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される分子は、Treg細胞上に存在する第1の抗原と結合することができる第1の手段と、Treg細胞上の第2の抗原と結合することができる第2の手段と、を含む。いくつかの実施形態では、Treg細胞抗原上に存在する第1の抗原は、Tregの免疫抑制活性における機能を有する。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD25である。いくつかの実施形態では、Treg細胞抗原上に存在する第2の抗原は、Tregの免疫抑制活性における機能を有する。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、CD39である。第7節に示すように、本発明の多重特異性分子は、Tregの枯渇又は阻害を誘導することができる。
【0091】
5.1定義
本明細書に記載又は参照されている技術及び手順には、当業者が概ねよく理解しているもの、及び/又は当業者が従来の手法を使用して通常採用しているもの、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook,et al.,3d ed.2001)、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel,et al.eds.,2003)、Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic(An ed.2009)、Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols(Albitar,ed.2010)、及びAntibody Engineering Vols 1 and 2(Kontermann and Dubel,eds.,2d ed.2010)に記載されている広く利用されている手法などが含まれる。
【0092】
本明細書中で特に定義されていない限り、本明細書で使用されている技術用語及び科学用語は、当業者によって通常理解される意味を有する。この明細書を解釈するために、以下の用語の説明が適用され、必要に応じて、単数形で使用される用語は複数形も含まれ、その逆もまた同様である。記載された用語の任意の説明が、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書と矛盾する場合、以下に記載された用語の説明が優先するものとする。
【0093】
「抗体」、「免疫グロブリン」又は「Ig」という用語は、本明細書で互換的に使用され、最も広い意味で使用され、具体的には、例えば、以下に記載されるように、モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、全長又はインタクトモノクローナル抗体を含む)、ポリエピトープ又はモノエピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル又は一価抗体、多価抗体、及び少なくとも2つのインタクト抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す限りにおいて、二重特異性抗体)を包含する。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、及び/又は親和性成熟されたものであり、並びに他の種、例えば、マウス及びウサギなどからの抗体であり得る。「抗体」という用語は、特定の分子抗原と結合することができ、2つの同一の対のポリペプチド鎖で構成される、ポリペプチドの免疫グロブリンクラス内のB細胞のポリペプチド産物を含むことを意図しており、各対は、1つの重鎖(約50~70kDa)及び1つの軽鎖(約25kDa)を有し、各鎖の各アミノ末端部分は、約100~約130個以上のアミノ酸の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分は、定常領域を含む。例えば、Antibody Engineering(Borrebaeck,ed.,2d ed.1995)、及びKuby,Immunology(3d ed.1997)を参照されたい。具体的な実施形態では、特定の分子抗原は、ポリペプチド又はエピトープを含む、本明細書において提供される抗体によって結合され得る。また、抗体には、合成抗体、組換え産生抗体、ラクダ化抗体又はそれらのヒト化バリアント、細胞内抗体、及び抗イディオタイプの(抗Id)抗体が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「抗体」という用語はまた、Fc領域及び上記のうちのいずれかの機能的断片(例えば、抗原結合断片)を有する任意の結合分子を含み、機能的断片は、断片が由来する抗体の結合活性の一部又は全部を保持する抗体重鎖又は軽鎖ポリペプチドの一部を指す。機能的断片(例えば、抗原結合断片)の非限定的な例としては、単鎖Fvs(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性などを含む)、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド結合Fvs(dsFv)、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、及びミニボディが挙げられる。特に、本明細書において提供される抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えば、抗原と結合する抗原結合部位(例えば、抗体の1つ又は2つ以上のCDR)を含む抗原結合ドメイン又は分子を含む。そのような抗体断片は、例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(1989)、Mol.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers,ed.,1995)、Huston,et al.,1993,Cell Biophysics 22:189-224、Pluckthun and Skerra,1989,Meth.Enzymol.178:497-515;及びDay,Advanced Immunochemistry(2d ed.1990)に見出すことができる。本明細書において提供される抗体は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又は任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)であり得る。抗体は、アゴニスト抗体又はアンタゴニスト抗体であり得る。
【0094】
「抗原」とは、抗体が選択的と結合することができる構造である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、又は他の天然に存在する化合物若しくは合成化合物であり得る。いくつかの実施形態では、標的抗原は、ポリペプチドである。特定の実施形態では、抗原は、細胞と関連し、例えば、細胞上又は細胞内に存在する。
【0095】
「インタクト」抗体とは、抗原結合部位、並びに定常ドメイン(constant domain、CL)並びに少なくとも重鎖定常領域CH1、CH2及びCH3を含むものである。定常領域には、ヒト定常領域又はそのアミノ酸配列のバリアントが含まれ得る。特定の実施形態では、インタクト抗体は、1つ又は2つ以上のエフェクター機能を有する。
【0096】
「結合(binds)」又は「結合すること(binding)」という用語は、例えば、複合体を形成することを含む分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、及び/又はファンデルワールス相互作用を含む非共有相互作用であり得る。複合体には、共有結合若しくは非共有結合、相互作用、又は力によって一緒に保持された2つ若しくはそれ以上の分子の結合も含まれる。抗体の単一の抗原結合部位と、抗原などの標的分子の単一のエピトープとの間の非共有相互作用全体の強さが、そのエピトープに対する抗体又は機能的断片の親和性である。一価の抗原に対する結合分子(例えば、抗体)の解離速度(koff)と会合速度(kon)との比(koff/kon)は、解離定数KDであり、親和性とは逆の関係にある。KD値が低いほど、抗体の親和性は高くなる。KDの値は、抗体及び抗原の異なる複合体によって様々であり、kon及びkoffの両方に依存する。本明細書において提供される抗体の解離定数KDは、本明細書で提供されている任意の方法、又は当業者に周知である任意の他の方法を使用して決定することができる。1つの結合部位での親和性は、必ずしも抗体と抗原との間の相互作用の真の強さを反映するものではない。多価抗原などの複数の繰り返し抗原決定基を含む複雑な抗原が、複数の結合部位を含む抗体と接触した場合、ある部位での抗体の抗原との相互作用は、第2部位での反応の確率を増加させるであろう。そのような多価抗体と抗原との間の複数の相互作用の強さは、親和力と呼ばれる。
【0097】
本明細書に記載されている抗体に関連して、「と結合する」、「と特異的に結合する」などの用語、及び類似の用語も本明細書では互換的に使用され、ポリペプチドなどの抗原と特異的に結合する抗原結合ドメインの抗体を指す。抗原と結合するか、又は抗原と特異的に結合する抗体又は抗原結合ドメインは、関連する抗原と交差反応し得る。特定の実施形態では、抗原と結合するか、又は抗原と特異的に結合する抗体又は抗原結合ドメインは、他の抗原と交差反応しない。抗原と結合するか、又は抗原と特異的に結合する抗体又は抗原結合ドメインは、例えば、イムノアッセイ、Octet(登録商標)、Biacore(登録商標)、又は当業者に知られている他の技術によって同定することができる。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合ドメインは、ラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay、RIA)及び酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme linked immunosorbent assay、ELISA)などの実験技術を使用して決定される任意の交差反応性抗原よりも高い親和性で抗原と結合する場合、抗原と結合するか、又は抗原と特異的に結合する。典型的には、特異的又は選択的な反応は、バックグラウンドのシグナル又はノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍を超える場合がある。結合特異性に関する考察については、例えば、Fundamental Immunology 332-36(Paul,ed.,2d ed.1989)を参照されたい。特定の実施形態では、「非標的」タンパク質に対する抗体又は抗原結合ドメインの結合の程度は、例えば、蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorting、FACS)分析又はRIAによって決定される、その特定の標的抗原に対する抗体又は抗原結合ドメインの結合の約10%未満である。「特異的結合」、「と特異的に結合する」、又は「と特異的な」などの用語に関しては、結合は、非特異的な相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、概ね結合活性を有していない類似構造の分子である対照分子の結合と比較して、分子の結合を決定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似した対照分子、例えば、過剰な非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、標識標的のプローブとの結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害される場合、特異的結合が示される。抗原と結合する抗体又は抗原結合ドメインには、その抗体が、例えば、抗原を標的とした診断又は治療剤として有用であるように、十分な親和性で抗原と結合することが可能なものが含まれる。特定の実施形態では、抗原と結合する抗体又は抗原結合ドメインは、1000nM、800nM、500nM、250nM、100nM、50nM、10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、又は0.1nM以下の解離定数(KD)を有する。特定の実施形態では、抗体又は抗原結合ドメインは、異なる種に由来する抗原間(例えば、ヒトとカニクイザル種との間)で保存されている抗原のエピトープと結合する。
【0098】
「結合親和性」とは、概して、分子の単一の結合部位(例えば、抗体などの結合タンパク質)と、その結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の総和の強さを指す。別段の記載がない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」とは、結合対(例えば、抗体及び抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。結合分子Xのその結合パートナーYに対する親和性は、概ね解離定数(KD)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載されているものを含む、当該技術分野において既知である一般的な方法で測定することができる。低親和性抗体は、概ね抗原とゆっくり結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は、概ね抗原とより速く結合し、より長く結合を維持する傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当該技術分野において既知であり、そのいずれもが本開示の目的のために使用することができる。具体的な例示的実施形態としては、以下のものが挙げられる。一実施形態では、「KD」又は「KD値」は、当該技術分野において既知であるアッセイによって、例えば、結合アッセイによって測定することができる。KDは、例えば、目的の抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて行われるRIAで測定され得る(Chen,et al.,J.Mol Biol,1999,293:865-81)。また、KD又はKD値は、バイオレイヤー干渉法(biolayer interferometry、BLI)、又は、例えばOctet(登録商標)Red96システムを使用するOctet(登録商標)によって、又は、例えばBiacore(登録商標)2000若しくはBiacore(登録商標)3000を使用するBiacore(登録商標)による表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance、SPR)アッセイを使用することによって、測定することができる。また、「オンレート」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「kon」は、例えば、Octet(登録商標)Red96、Biacore(登録商標)2000、若しくはBiacore(登録商標)3000システムを使用して、上述した同じバイオレイヤー干渉法(BLI)又は表面プラズモン共鳴(SPR)技術で決定することができる。
【0099】
特定の実施形態では、抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である一方、鎖の残りの部分が、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である、「キメラ」配列を含むことができるが、それらが所望の生物活性を示す場合に限る(米国特許第4,816,567号、及びMorrison,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1984,81:6851-55を参照されたい)。
【0100】
特定の実施形態では、抗体は、ネイティブCDR残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(例えば、ドナー抗体)の対応するCDRからの残基に置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(例えば、レシピエント抗体)を含むキメラ抗体である、非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態の「ヒト化」形態の部分を含み得る。場合によっては、ヒト免疫グロブリンの1つ又は2つ以上のFR領域残基が、対応する非ヒト残基に置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体で見出されない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の性能を更に改良するために行われる。ヒト化抗体の重鎖又は軽鎖は、少なくとも1つ又は2つ以上の可変領域の実質的に全てを含むことができ、その場合、CDRの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分を含む。更なる詳細については、Jones,et al.,Nature,1986,321:522-25、Riechmann,et al.,Nature,1988,332:323-29、Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,1992,2:593-96、Carter,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1992,89:4285-89;米国特許第6,800,738号;同第6,719,971号;同第6,639,055号;同第6,407,213号;及び同第6,054,297号を参照されたい。
【0101】
特定の実施形態では、抗体は、「完全ヒト抗体」又は「ヒト抗体」の一部を含むことができ、これらの用語は、本明細書で互換的に使用され、ヒト可変領域、及び、例えば、ヒト定常領域を含む、抗体を指す。具体的な実施形態では、これらの用語は、ヒト起源の可変領域及び定常領域を含む抗体を指す。「完全ヒト」抗体は、特定の実施形態では、ポリペプチドと結合し、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン核酸配列の天然に存在する体細胞バリアントである核酸配列によってコードされる、抗体も包含することができる。「完全ヒト抗体」という用語には、Kabatらにより記載されたようにヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に対応する可変領域及び定常領域を有する抗体が含まれる(Kabat,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照されたい)。「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はヒト抗体を作製するための技術のうちのいずれかを使用して作製されたものである。このヒト抗体の定義では、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外している。ヒト抗体は、当該技術分野で知られている様々な技術を使用して産生することができ、その中には、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,1991,227:381;Marks,et al.,1991,J.Mol.Biol.,1991,222:581)及び酵母ディスプレイライブラリ(Chao,et al.,Nature Protocols,2006,1:755-68)が含まれる。また、ヒトモノクローナル抗体の調製には、Cole,et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy 77(1985)、Boerner,et al.,J.Immunol.,1991,147(1):86-95、及びvan Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,2001,5:368-74に記載されている方法も利用可能である。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、マウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば、Jakobovits,Curr.Opin.Biotechnol.,1995,6(5):561-66、Bruggemann and Taussing,Curr.Opin.Biotechnol.,1997,8(4):455-58;、並びに、XENOマウス(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。また、例えばLi,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2006,103:3557-62(ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体に関する)も参照されたい。
【0102】
特定の実施形態では、抗体は、「組換えヒト抗体」の部分を含むことができ、この語句には、組換え手段によって調製、発現、作成、若しくは単離されたヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニック及び/又はトランス染色体である動物(例えば、マウス又はウシ)から単離された抗体(例えば、Taylor,L.D.,et al.,Nucl.Acids Res.,1992 20:6287-6295)、又は、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作成、若しくは単離された抗体が含まれる。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有することができる(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照されたい)。しかしながら、特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(又は、ヒトIg配列のトランスジェニックである動物を使用する場合は、インビボ体細胞変異誘発)を受けており、したがって、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVH配列及びVL配列に由来し、関連しているが、インビボでのヒト抗体生殖細胞系列レパートリ内に天然には存在しない場合がある配列である。
【0103】
特定の実施形態では、抗体は、「モノクローナル抗体」の一部を含むことができ、本明細書で使用されるこの用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、例えば、集団を含む個々の抗体は、微量で存在し得る天然に存在する起こり得る変異を除いて同一であり、各モノクローナル抗体は、典型的には、抗原上の単一のエピトープを認識する。具体的な実施形態では、本明細書で使用される「モノクローナル抗体」とは、単一のハイブリドーマ又は他の細胞によって産生される抗体である。「モノクローナル」という用語は、抗体を作製するための特定の方法に限定されるものではない。例えば、本開示で有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al.,1975,Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって調製され得るか、又は細菌若しくは真核動物若しくは植物細胞で組換えDNA法を使用して作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。また、「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson,et al.,Nature,1991,352:624-28、及びMarks,et al.,J.Mol.Biol.,1991,222:581-97に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離され得る。クローン細胞株及びそれによって発現するモノクローナル抗体を調製するための他の方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Short Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.eds.,5th ed.2002)を参照されたい。
【0104】
典型的な4鎖抗体ユニットは、2本の同一の軽鎖(L)及び2本の同一の重鎖(H)で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgGの場合、4鎖ユニットは、概ね約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合でH鎖によって連結され、2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプに応じて1つ又は2つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結される。また、各H鎖及びL鎖は、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(variable domain、VH)に続いて、α鎖及びγ鎖の各々に3つの定常ドメイン(constant domain、CH)並びに、μ及びεのアイソタイプには4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(variable domain、VL)に続いて、もう一方の末端に定常ドメイン(CL)を有する。VLは、VHとアラインメントし、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とアラインメントしている。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖の可変ドメイン間の界面を形成すると考えられる。VH及びVLの対合は、単一の抗原結合部位をともに形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology 71(Stites,et al.eds.,8th ed.1994);and Immunobiology(Janeway,et al.eds.,5th ed.2001)を参照されたい。
【0105】
「Fab」又は「Fab領域」という用語は、抗原と結合する抗体領域を指す。従来のIgGは通常、2つのFab領域を含み、各々がY字型IgG構造の2つのアームのうちの1つに存在する。各Fab領域は、典型的には、重鎖及び軽鎖の各々の1つの可変領域及び1つの定常領域で構成されている。より具体的には、Fab領域における重鎖の可変領域及び定常領域は、VH及びCH1領域であり、Fab領域における軽鎖の可変領域及び定常領域は、VL及びCL領域である。Fab領域におけるVH、CH1、VL、及びCLは、本開示に従って抗原結合能力を付与するために様々な方式で配置することができる。例えば、VH領域及びCH1領域は、1つのポリペプチド上にあり、VL領域及びCL領域は、従来のIgGのFab領域と同様に、別個のポリペプチド上にあり得る。あるいは、VH領域、CH1領域、VL領域、CL領域の全てが同じポリペプチド上に存在し、以下の節でより詳細に説明するように、異なる順序で配向することも可能である。
【0106】
「可変領域」、「可変ドメイン」、「V領域」、又は「Vドメイン」という用語は、軽鎖又は重鎖のアミノ末端に概ね位置し、重鎖では約120~130アミノ酸、軽鎖では約100~110アミノ酸の長さを有する抗体の軽鎖又は重鎖の一部を指し、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性に使用される。重鎖の可変領域は、「VH」と称され得る。軽鎖の可変領域は、「VL」と称され得る。「可変」という用語は、可変領域の特定のセグメントが、抗体間で配列が大きく異なることを指す。V領域は、抗原の結合を媒介し、特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を決定する。しかしながら、可変領域の110アミノ酸のスパン全体では、その可変性は均一ではない。代わりに、V領域は、各々が約9~12アミノ酸の長さである「超可変領域」と呼ばれるより大きな可変性(例えば、極端な可変性)のより短い領域によって分離された、約15~30アミノ酸のフレームワーク領域(framework region、FR)と呼ばれるより可変性の低い(例えば、比較的不変の)ストレッチからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は各々4つのFRを含み、大部分はβシート構造をとり、3つの超可変領域によって接続され、βシート構造を接続するループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。各鎖内の超可変領域は、FRによってともに近接して保持され、他の鎖の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(5th ed.1991)を参照されたい)。定常領域は、抗体を抗原と結合することには直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity、CDC)への抗体の関与など、様々なエフェクター機能を示す。可変領域は、異なる抗体間で配列が大きく異なる。具体的な実施形態では、可変領域は、ヒト可変領域である。
【0107】
「Kabatによる可変領域残基番号付け」又は「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びその変形は、Kabat,et al.、上記の抗体の編集物の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域に使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはCDRの短縮又はこれらへの挿入に対応する、より少ない又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)と、残基82の後に3つの挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)とを含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、その抗体の配列と「標準」Kabat番号付け配列とを相同領域でアライメントすることにより、決定することができる。Kabat番号付けシステムは、可変ドメインの残基(軽鎖の約1~107残基、重鎖の約1~113残基)を参照する際に概ね使用される(例えば、Kabat,et al.,上記)。「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及する際に概ね使用される(例えば、Kabat,et al.,上記で報告されているEUインデックス)。「KabatにあるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。他の番号付けシステムは、例えば、AbM、Chothia、Contact、IMGT、及びAHonによって記載されている。
【0108】
抗体に関して使用される場合の「重鎖」という用語は、約50~70kDaのポリペプチド鎖であって、アミノ末端部分が約120~130個以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含むものを指す。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、及びミュー(μ)と称される5つの明確に異なるタイプ(例えば、アイソタイプ)のうちの1つであり得る。明確に異なる重鎖の大きさは異なり、α、δ、及びγは約450個のアミノ酸を含み、μ及びεは約550個のアミノ酸を含む。軽鎖と組み合わせられると、これらの明確に異なるタイプの重鎖は、それぞれ5つの周知のクラス(アイソタイプなど)の抗体、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM(IgGの4つのサブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4も含まれる)を生じさせる。
【0109】
抗体に関して使用される場合の「軽鎖」という用語は、約25kDaのポリペプチド鎖であって、アミノ末端部分が約100~約110個以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含むものを指す。軽鎖のおおよその長さは、211~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)又はラムダ(λ)と称される2つの異なるタイプがある。
【0110】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「hypervariable region、HVR」、「相補性決定領域」、及び「Complementarity Determining Region、CDR」という用語は、互換的に使用される。「CDR」は、免疫グロブリン(Ig又は抗体)VH β-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域のうちの1つ(H1、H2、若しくはH3)、又は抗体VL β-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域のうちの1つ(L1、L2、若しくはL3)を指す。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。
【0111】
CDR領域は、当業者に周知であり、周知の番号付けシステムによって定義されている。例えば、Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(例えば、Kabat,et al.,上記を参照されたい)。Chothiaは、それに代えて、構造ループの位置を指す(例えば、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.,1987,196:901-17を参照されたい)。Kabat付番規則を使用して付番されたときのChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32からH34まで変化する(これは、Kabat付番スキームが、H35A及びH35Bに挿入を配置するためであり、35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終わり、35Aのみが存在する場合、ループは33で終わり、35A及び35Bの両方が存在する場合、ループは34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の妥協案を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている(例えばAntibody Engineering Vol.2(Kontermann and Dubel,eds.,2d ed.2010)を参照されたい)。「contact」超可変領域は、利用可能な複合結晶構造の分析に基づく。開発され、広く採用されている別の世界共通の番号付けシステムは、ImMunoGeneTics(IMGT)Information System(登録商標)である(Lafranc,et al.,Dev.Comp.Immunol.,2003,27(1):55-77)。IMGTは、免疫グロブリン(immunoglobulin、IG)、T細胞受容体(T cell receptor、TCR)、並びにヒト及び他の脊椎動物の主要組織適合性複合体(major histocompatibility complex、MHC)専門の統合情報システムである。本明細書において、CDRは、アミノ酸配列と、軽鎖又は重鎖内の位置との両方の観点において言及される。免疫グロブリン可変ドメインの構造内のCDRの「位置」は、種の間で保存され、ループと称される構造に存在するため、可変ドメイン配列を構造的特徴に従ってアラインメントする番号付けシステムを使用することにより、CDR及びフレームワーク残基は容易に同定される。この情報は、1つの種の免疫グロブリンからのCDR残基を、典型的にはヒト抗体からのアクセプタフレームワーク内に移植及び置き換えることに使用され得る。Honegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.,2001,309:657-70によって、追加の番号付けシステム(AHon)が開発されている。例えば、Kabat番号付け及びIMGT固有の番号付けシステムを含む番号付けシステム間の対応関係は、当業者に周知である(例えば、Kabat、上記;Chothia及びLesk、上記;Martin、上記;Lefranc,et al.、上記、を参照されたい)。これらの超可変領域又はCDRの各々の残基を以下に示す。
【0112】
【0113】
所与のCDRの境界は、同定に使用されるスキームに応じて異なり得る。したがって、特に明記しない限り、可変領域などの所与の抗体又はその領域の「CDR」及び「相補性決定領域」という用語、並びに抗体又はその領域の個々のCDR(例えば、「CDR-H1、CDR-H2」)は、本明細書で上述した既知のスキームのうちのいずれかによって定義される相補性決定領域を包含すると理解されるべきである。場合によっては、Kabat、Chothia、又はContact法で定義されたCDRなど、特定のCDR又は複数のCDRの同定のためのスキームが指定されている。他の場合には、CDRの特定のアミノ酸配列が挙げられる。
【0114】
超可変領域は、次のような「拡張超可変領域」を含み得る:VL内の24~36又は24~34(L1)、46~56又は50~56(L2)、及び89~97又は89~96(L3)、並びにVH内の26~35又は26~35A(H1)、50~65又は49~65(H2)、及び93~102、94~102、又は95~102(H3)。
【0115】
「定常領域」又は「定常ドメイン」という用語は、抗原に対する抗体の結合に直接関与しないが、Fc受容体との相互作用などの様々なエフェクター機能を示す軽鎖及び重鎖のカルボキシ末端部分を指す。この用語は、抗原結合部位を含む可変領域である免疫グロブリンの他の部分と比較してより保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常領域は、重鎖のCH1、CH2、及びCH3領域、並びに軽鎖のCL領域を含み得る。
【0116】
「フレームワーク」又は「FR」という用語は、CDRに隣接する可変領域の残基を指す。FR残基は、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ドメイン抗体、ダイアボディ、直鎖抗体、及び二重特異性抗体中に存在する。FR残基は、超可変領域残基又はCDR残基以外の可変ドメイン残基である。典型的には、VH領域及びVL領域の各々に4つのFR領域がある。VHにおけるFR領域は、VH FR1、VH FR2、VH FR3、及びVH FR4(又はFR H1、FR H2、FR H3及びFR H4)である。VLにおけるFR領域は、VL FR1、VL FR2、VL FR3及びVL FR4(又はFR L1、FR L2、FR L3及びFR L4)である。
【0117】
本明細書において、「Fc領域」という用語は、例えば、天然配列Fc領域、組換えFc領域、及びバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、Cys226位のアミノ酸残基、又はPro230位のアミノ酸残基からカルボキシル末端まで伸びると定義されることが多い。Fc領域のC末端リジン(EUの番号付けシステムによる残基447)は、例えば、抗体の産生若しくは精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって除去され得る。したがって、インタクト抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基のある抗体とない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、貪食作用、細胞表面の受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーションなどが含まれる。そのようなエフェクター機能は、概ね、Fc領域が結合領域又は結合ドメイン(例えば、抗体可変領域又はドメイン)と組み合わせられることを必要とし、当業者に知られている様々なアッセイを使用して評価することができる。「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば、置換、付加、又は欠失)により、天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換を有しており、例えば、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域において、約1~約10個のアミノ酸置換、又は約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書のバリアントFc領域は、天然配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、又はそれと少なくとも約90%の相同性、例えば、それと少なくとも約95%の相同性を有し得る。
【0118】
抗原又は抗体に関して使用される場合、「バリアント」という用語は、天然又は未修飾の配列と比較して、1つ又は2つ以上(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、又は約1~約5)のアミノ酸配列置換、欠失、及び/又は付加を含むペプチド又はポリペプチドを指し得る。
【0119】
「同一性」という用語は、配列をアラインメント及び比較することによって決定される、2つ若しくはそれ以上のポリペプチド分子又は2つ若しくはそれ以上の核酸分子の配列間の関係を指す。参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大配列同一性パーセントを達成するように、配列同一性の一部としていずれの保存的置換も考慮することなく、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、当該技術分野における技能の範囲内である様々な方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMEGALIGN(DNAStar,Inc.)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。
【0120】
アミノ酸残基/位置の「修飾」とは、出発アミノ酸配列と比較した一次アミノ酸配列の変化を指し、変化は、当該アミノ酸残基/位置を伴う配列変化から生じる。例えば、典型的な修飾には、残基の別のアミノ酸による置換(例えば、保存的置換又は非保存的置換)、当該残基/位置に隣接する1つ又は2つ以上(例えば、一般的には5個、4個、又は3個未満)のアミノ酸の挿入、及び/又は当該残基/位置欠失が含まれる。
【0121】
本明細書中で使用される場合、「エピトープ」とは、当該技術分野の用語であり、抗体が特異的に結合することができる抗原の局在領域を指す。エピトープは、線状エピトープ又は立体構造エピトープ、非線状エピトープ、又は不連続エピトープであり得る。ポリペプチド抗原の場合、例えば、エピトープは、ポリペプチドの連続したアミノ酸(「線状」エピトープ)であり得るか、又はエピトープは、ポリペプチドの2つ若しくはそれ以上の非連続領域からのアミノ酸(「立体構造」、「非線状」、又は「不連続」エピトープ)を含み得る。概ね、線状エピトープは、二次、三次、又は四次構造に依存する場合もあれば、依存しない場合もあることが当業者によって理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、アミノ酸が天然の三次元タンパク質構造に折り畳まれているかどうかにかかわらず、アミノ酸の群と結合する。他の実施形態では、抗体は、エピトープを認識して結合するために、エピトープを構成するアミノ酸残基が特定の立体構造(例えば、屈曲、ねじれ、回転、又はフォールディング)を示すことを必要とする。
【0122】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖又は分岐鎖であってもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸により中断されてもよい。この用語はまた、天然に修飾されているか、又は介入によって修飾されているアミノ酸ポリマー、介入の例としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾がある。また、定義には、例えば、非天然アミノ酸を含むがこれらに限定されない、アミノ酸の1つ又は2つ以上の類似体を含むポリペプチド、並びに当該技術分野で知られている他の修飾も含まれる。本開示のポリペプチドは、抗体又は免疫グロブリンスーパーファミリーの他のメンバーに基づき得るため、特定の実施形態では、「ポリペプチド」は、一本鎖として、又は2つ若しくはそれ以上の関連鎖として生じ得ることが理解される。
【0123】
「ベクター」という用語は、核酸配列を宿主細胞に導入するために、例えば、本明細書に記載されている抗体をコードする核酸配列などの核酸配列を運ぶ又は含むために使用される物質を指す。使用に適用可能なベクターには、例えば、発現ベクター、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソーム、及び人工染色体が含まれ、これらは、宿主細胞の染色体に安定的に組み込むことができる選択配列又はマーカーを含み得る。加えて、ベクターは、1つ又は2つ以上の選択可能マーカー遺伝子及び適切な発現制御配列を含み得る。含めることができる選択マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質又は毒素への耐性を提供し、補助栄養要求性の欠乏を補完し、又は培養液にない重要な栄養素を供給するものである。発現制御配列は、当該技術分野で周知である構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含み得る。2つ又はそれ以上の核酸分子を共発現させる場合(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖の両方、又は抗体VH及びVL)、両方の核酸分子は、例えば、単一の発現ベクター又は別個の発現ベクターに挿入され得る。単一ベクターでの発現の場合、コード核酸は、1つの共通の発現制御配列に動作可能に連結されるか、又は1つの誘導性プロモーター及び1つの構成的プロモーターなどの異なる発現制御配列に連結され得る。宿主細胞への核酸分子の導入は、当該技術分野で周知である方法を使用して確認することができる。そのような方法としては、例えば、ノーザンブロット又はポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)によるmRNAの増幅などの核酸分析、遺伝子産物の発現のための免疫ブロッティング、又は導入した核酸配列若しくはその対応する遺伝子産物の発現を試験するための好適な分析方法が挙げられる。当業者は、核酸分子が所望の産物を産生するのに十分な量で発現されることを理解しており、更に、当業者に周知である方法を使用して十分な発現を得るために発現レベルを最適化することができることを理解している。
【0124】
本明細書で使用する「宿主」という用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)などの動物を指す。
【0125】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、核酸分子をトランスフェクションされ得る特定の対象細胞、及びそのような細胞の子孫又は潜在的な子孫を指す。そのような細胞の子孫は、核酸分子で遺伝子導入された親細胞とは、宿主細胞ゲノムへの核酸分子の後続の生成又は集積において生じ得る、変異又は環境からの影響により、同一ではないことがある。
【0126】
「単離核酸」とは、核酸、例えば、RNA、DNA、又は混合核酸であり、他のゲノムDNA配列、並びに天然配列に天然に会合するリボソーム及びポリメラーゼなどのタンパク質又は複合体から実質的に分離されたものである。「単離」核酸分子とは、核酸分子の天然の供給源に存在する他の核酸分子から分離されたものである。更に、cDNA分子などの「単離」核酸分子は、組換え技術によって製造された場合には、他の細胞材料又は培養液を実質的に含まなくてもよく、化学合成された場合には、化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まなくてもよい。具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗体をコードする1つ又は2つ以上の核酸分子が単離又は精製される。この用語は、天然に存在する環境から取り出された核酸配列を包含し、組換え又はクローン化されたDNA単離物、及び化学的に合成された類似体、又は異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。実質的に純粋な分子には、その分子の単離形態が含まれることがある。
【0127】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」又は「核酸」は、本明細書で互換的に使用される場合、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNA又はRNAポリメラーゼによって、又は合成反応によってポリマーに組み込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びその類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」は、長さが約200ヌクレオチド未満であるが、概して必ずしも必須ではなく、短く、概ね一本鎖の合成ポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドに関する上記の説明は、オリゴヌクレオチドにも同様に完全に適用できる。本開示の抗体を産生する細胞には、親ハイブリドーマ細胞、並びに抗体をコードする核酸が導入された細菌及び真核宿主細胞が挙げられ得る。特に指定のない限り、本明細書で開示されている任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は、5’末端である。二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向は、5’方向と称される。新生RNA転写物の5’から3’への付加の方向は、転写方向と称される。RNA転写物の5’から5’末端にあるRNA転写物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と称され、RNA転写物の3’から3’末端にあるRNA転写物と同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と称される。
【0128】
本明細書で使用するとき、「多重特異性抗体」という用語は、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む抗体を指し、複数のうちの第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第1のエピトープに対する結合特異性を有し、複数のうちの第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第2のエピトープに対する結合特異性を有する。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、重複しないか、又は実質的に重複しない。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、異なる抗原上、例えば、異なるタンパク質(又は多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。ある実施形態では、多重特異性抗体は、第3、第4、又は第5の免疫グロブリン可変ドメインを含む。ある実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体分子、三重特異性抗体分子、又は四重特異性抗体分子である。
【0129】
本明細書で使用するとき、「二重特異性抗体」という用語は、2つ以下のエピトープ又は2つの抗原と結合する多重特異性抗体を指す。二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列、及び第2のエピトープに対する結合特異性を有する第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列によって特徴付けられる。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、異なる抗原上、例えば、異なるタンパク質(又は多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。実施形態では、二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列と、を含む。実施形態では、二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体又はその断片と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体又はその断片と、を含む。実施形態では、二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有するscFv又はその断片と、第2のエピトープに対する結合特異性を有するscFv又はその断片と、を含む。
【0130】
本明細書で使用される「医薬的に許容される」という用語は、動物における使用について、より具体的にはヒトにおける使用について、連邦政府又は州政府の規制機関によって承認されているか、又は米国薬局方、欧州薬局方、若しくは他の一般的に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0131】
「賦形剤」とは、液体又は固体の充填剤、希釈剤、溶媒、カプセル化材料などの、医薬的に許容される材料、組成物、又はビヒクルを指す。賦形剤としては、例えば、吸収促進剤、抗酸化剤、結合剤、緩衝剤、担体、コーティング剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、拡張剤、充填剤、香味剤、湿潤剤、潤滑剤、香料、防腐剤、推進剤、放出剤、殺菌剤、甘味料、可溶化剤、湿潤剤及びこれらの混合物などのカプセル化材料又は添加剤が挙げられる。また、「賦形剤」という用語は、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全又は不完全)又はビヒクルを指すことができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、賦形剤は、医薬的に許容される賦形剤である。医薬的に許容される賦形剤の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、及びその他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(例えば、約10アミノ酸残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含むその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;並びに/又はTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。医薬的に許容される賦形剤の他の例は、Remington and Gennaro,Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th ed.1990)に記載されている。
【0133】
一実施形態では、各成分は、医薬製剤の他の成分と適合性があるという意味で「医薬的に許容される」ものであり、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応、免疫原性、又はその他の問題又は合併症がなく、妥当な利点/リスク比に見合って、ヒト及び動物の組織又は器官と接触して使用するために好適である。例えば、Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia,PA,2005、Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th ed.;Rowe et al.,Eds.;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2009、Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd ed.;Ash and Ash Eds.;Gower Publishing Company:2007、Pharmaceutical Preformulation and Formulation,2nd ed.;Gibson Ed.;CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2009を参照されたい。いくつかの実施形態では、医薬的に許容される賦形剤は、採用される用量及び濃度で、それにさらされる細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。いくつかの実施形態では、医薬的に許容される賦形剤は、pH緩衝水溶液である。
【0134】
いくつかの実施形態では、賦形剤は、水、及び石油、動物、植物、又は合成物由来のものを含む油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの無菌液体であってもよい。水は、組成物(例えば、医薬組成物)が静脈内投与される場合の例示的な賦形剤である。生理食塩水並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液も、特に注射溶液用の液体賦形剤として採用され得る。賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなども挙げることができる。必要に応じて、組成物は、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を更に含み得る。組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態を取り得る。製剤を含む経口組成物は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な賦形剤を含み得る。
【0135】
医薬化合物を含む組成物は、例えば、単離又は精製された形の抗体を、好適な量の賦形剤とともに含み得る。
【0136】
本明細書で使用される「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所望の結果をもたらすのに十分である、本明細書において提供される抗体又は医薬組成物の量を指す。
【0137】
「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用することができる。本明細書で使用される場合、特定の実施形態では、対象は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)又は霊長類(例えば、サル及びヒト)などの哺乳動物である。具体的な実施形態では、対象は、ヒトである。一実施形態では、対象は、病態又は障害と診断された哺乳動物、例えば、ヒトである。別の実施形態では、対象は、病態又は障害を発症するリスクのある哺乳動物、例えば、ヒトである。
【0138】
「投与する」又は「投与」とは、本明細書に記載されているか、又は当該技術分野で知られている、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内、皮下送達、及び/又は他の任意の物理的送達方法などによって、体外に存在する物質を患者に注射又は他の方法で物理的に送達する行為を指す。
【0139】
本明細書で使用される場合、「治療/処置する」、「治療/処置」、及び「治療/処置すること」という用語は、1つ又は2つ以上の治療法を投与することによって生じる、疾患又は病態の進行、重症度、及び/又は持続期間の減少又は寛解を指す。治療は、患者がまだ基礎疾患に罹患している場合があるにもかかわらず、患者に改善が観察されるように、基礎疾患と関連する1つ又は2つ以上の症状の減少、軽減及び/又は緩和があったかどうかを評価することによって決定され得る。「治療/処置すること」という用語は、疾患の管理及び寛解の両方を含む。「管理する」、「管理すること」、及び「管理」という用語は、対象が治療から得られる有益な効果を指し、必ずしも疾患の治癒をもたらすとは限らない。
【0140】
「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、疾患、障害、病態、又は関連する症状の発症(又は再発)の可能性を低減することを指す。
【0141】
「約」及び「おおよそ」という用語は、所与の値又は範囲の20%以内、15%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、又はそれ未満を指す。
【0142】
本開示及び特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形を含む。
【0143】
実施形態が「含む」という用語で本明細書に記載される場合は常に、そうでなければ「からなる」及び/又は「から本質的になる」に関して記載される他の類似の実施形態もまた提供されることが理解される。実施形態が「から本質的になる」という語句で本明細書に記載される場合は常に、そうでなければ「からなる」に関して記載される類似の実施形態もまた提供されることも理解される。
【0144】
「AとBの間」又は「A~Bの間」などの語句で使用される「間」という用語は、A及びBの両方を含む範囲を指す。
【0145】
本明細書の「A及び/又はB」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、A及びBの両方、A又はB;A(単独);及びB(単独)を含むことを意図している。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、以下の各実施形態:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)を含むことを意図している。
【0146】
「CD25」という用語は、インターロイキン-2受容体アルファ鎖とも呼ばれ、Treg細胞の表面上に発現される。「CD25」という用語は、細胞(Treg細胞を含む)によって天然に発現されるか、又はそのポリペプチドをコードする遺伝子若しくはcDNAでトランスフェクトされた細胞上に発現され得る、任意のCD25バリアント、アイソフォーム、及び種相同体を含む。特定の実施形態では、CD25は、ヒトCD25である。
【0147】
NTPDase-1とも呼ばれる「CD39」という用語は、Treg細胞の表面上に発現されるエクトヌクレオチダーゼである。「CD39」という用語は、細胞(Treg細胞を含む)によって天然に発現されるか、又はそのポリペプチドをコードする遺伝子若しくはcDNAでトランスフェクトされた細胞上に発現され得る、任意のCD39バリアント、アイソフォーム、及び種相同体を含む。特定の実施形態では、CD39は、ヒトCD39である。
【0148】
5.2.多重特異性分子
本明細書で提供される多重特異性分子は、Treg細胞上に存在する抗原と結合することができる結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。いくつかの実施形態では、抗原は、CD25である。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、記載の通りであるか、又は上記の抗体に由来する。
【0149】
上記のドメインに加えて、本明細書で提供される多重特異性分子は、第2の抗原と結合することができる追加のドメインを含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、CD39である。いくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、記載の通りであるか、又は上記の抗体に由来する。
【0150】
いくつかの実施形態では、Treg細胞上に存在する第1の抗原と結合することができる第1の結合ドメインと、Treg細胞上に存在する第2の抗原と結合することができる第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、Tregの免疫抑制活性において機能を有する。いくつかの実施形態では、第1の抗原及び第2の抗原の両方が、Tregの免疫抑制活性において機能する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多重特異性抗体は、Treg細胞活性を調節することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多重特異性抗体は、Tregの選択的枯渇又は阻害を誘導する。いくつかの実施形態では、Treg細胞免疫抑制活性を調節できる多重特異性抗体が本明細書で提供される。特定の実施形態では、Treg細胞は、ヒトTreg細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を増強することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多重特異性抗体は、Tregの選択的枯渇又は阻害によって抗腫瘍免疫を増強することができる。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD25である。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、CD39である。いくつかの実施形態では、第1の抗原は、CD25であり、第2の抗原は、CD39である。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される多重特異性分子は、多重特異性抗体である。本明細書で提供される抗体としては、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え産生抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
一態様では、CD25と結合する抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、単一ドメイン抗体又はナノボディではない。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、ヒト化抗体である。
【0153】
一態様では、CD39と結合する抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、単一ドメイン抗体又はナノボディではない。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、ヒト化抗体である。
【0154】
特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体のうちのいずれか1つのVH領域、VL領域、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及び/又はVL CDR3を有するCD25と結合する結合ドメインを含む、CD25二重特異性抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体のうちのいずれか1つのVH領域を有するCD25と結合する結合ドメインを含む、CD25二重特異性抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体のうちのいずれか1つのVL領域を有するCD25と結合する結合ドメインを含むCD25二重特異性抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体のうちのいずれか1つのVH領域と、本明細書に記載される抗体のうちのいずれか1つのVL領域と、を有するCD25と結合する結合ドメインを含む、CD25二重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、記載される抗体のうちのいずれか1つのVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を有するCD25と結合する結合ドメインを含む、CD25二重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体のうちのいずれか1つのVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を有するCD25と結合する結合ドメインを含む、CD25二重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体のうちのいずれか1つのVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3と、本明細書に記載される抗体のいずれか1つのVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3と、を有するCD25と結合する結合ドメイン含む、CD25二重特異性抗体が本明細書で提供される。特定の実施形態では、CD25抗体は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、CD25二重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD39抗体のVH領域、VL領域、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及び/又はVL CDR3を有するCD39と結合する、第2の結合ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、CD25二重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD39抗体のVH領域を有するCD39と結合する、第2の結合ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、CD25二重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD39抗体のVL領域を有するCD39と結合する、第2の結合ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、CD25二重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD39抗体のVH領域と、本明細書で提供されるCD39抗体のVL領域と、を有するCD39と結合する、第2の結合ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、CD25二重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD39抗体のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を有するCD39と結合する、第2の結合ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、CD25二重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD39抗体のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を有するCD39と結合する、第2の結合ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、CD25二重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD39抗体のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3と、本明細書で提供されるCD39抗体のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3と、を有するCD39と結合する、第2の結合ドメインを更に含む。
【0155】
特に、本明細書で提供される抗体には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子が含まれる。本明細書で提供される免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであり得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、IgG1抗体、IgG2抗体、又はIgG4抗体(例えば、IgG4ヌルボディ及びIgG4抗体のバリアント)などのIgG抗体である。特定の実施形態では、IgG抗体は、IgG1抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される様々な多重特異性分子は、エピトープと特異的に結合する能力を保持する抗体断片を含む抗体のバリアント及び/又は誘導体を含む。本明細書で提供される様々な多重特異性分子の他の実施形態では、第1の結合ドメイン及び/又は第2の結合ドメインは、エピトープと特異的に結合する能力を保持する抗体断片を含む抗体のバリアント及び/又は誘導体である。例示的な断片としては、(抗原結合ドメインを含み、ジスルフィド結合によって架橋された軽鎖及び重鎖の一部を含む抗体断片)、Fab’(Fab及びヒンジ領域を通る重鎖の追加部分を含む単一の抗結合ドメインを含む抗体断片)、F(ab’)2(重鎖のヒンジ領域において鎖間ジスルフィド結合によって連結された2つのFab’分子、Fab’分子は、同じ又は異なるエピトープに向かい指向され得る)、二重特異性Fab(2つの抗原結合ドメインを有するFab分子であり、その各々が異なるエピトープに向けられ得る)、scFvとしても知られる可変領域を含む単鎖Fab鎖(10~25アミノ酸の鎖によって連結された抗体の単一軽鎖及び重鎖の可変の抗原結合決定領域)、ジスルフィド結合Fv、又はdsFv(ジスルフィド結合によって一緒に連結された抗体の単一軽鎖及び重鎖の可変抗原結合決定領域)、ラクダ化VH(VH界面のいくつかのアミノ酸が天然ラクダ抗体の重鎖に見られるものである、抗体の単一重鎖の可変抗原結合決定領域)、二重特異性scFv(2つの抗原結合ドメインを有するscFv又はdsFv分子であり、その各々が異なるエピトープに向けられ得る)、ダイアボディ(第1のscFvのVHドメインが第2のscFvのVLドメインと会合し、第1のscFvのVLドメインが第2のscFvのVHドメインと会合するときに形成される二量体化scFv、ダイアボディの2つの抗原結合領域は、同じ又は異なるエピトープに向けられ得る)、トリアボディ(ダイアボディと同様の様式で形成されるが、3つの抗原結合ドメインが単一の複合体中に作製される、三量体化scFv、3つの抗原結合ドメインは、同じ又は異なるエピトープに向かい指向され得る)、テトラボディ(ダイアボディと同様の様式で形成されるが、4つの抗原結合ドメインが単一の複合体中に作製される、四量体化scFv、4つの抗原結合ドメインは、同じ又は異なるエピトープに向かい指向され得る)が挙げられる。抗体の誘導体はまた、抗体結合部位の1つ又は2つ以上のCDR配列を含む。CDR配列は、2つ又はそれ以上のCDR配列が存在する場合、足場上で一緒に連結され得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、単鎖Fv(「scFv」)を含む。scFvは、抗体のVH及びVLドメインを含む抗体断片であり、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成できるようにするVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含む。scFvの概説については、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0157】
特定の実施形態では、CD25と結合する抗体は、VH領域及びVL領域を含む。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、単鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、単一ドメイン抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、ナノボディを含む。特定の実施形態では、CD25抗体は、VHH抗体を含む。特定の実施形態では、CD25抗体は、ラマ抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、単鎖抗体を含まない。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、単一ドメイン抗体を含まない。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、ナノボディを含まない。特定の実施形態では、CD25抗体は、VHH抗体を含まない。特定の実施形態では、CD25抗体は、ラマ抗体を含まない。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、多重特異性抗体である。他の実施形態では、CD25は、二重特異性抗体である。特定の実施形態では、多重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD25抗体の抗原結合断片を含む。他の実施形態では、二重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD25抗体の抗原結合断片を含む。特定の実施形態では、CD25抗体は、Treg細胞を枯渇又は阻害する。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、Treg細胞の活性化を遮断する。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、Treg細胞の活性を調節する。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、Tregの免疫抑制活性を調節する。特定の実施形態では、Treg細胞は、ヒトTreg細胞である。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、抗腫瘍免疫を増強する。
【0158】
特定の実施形態では、CD25と結合する多重特異性抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、三重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、四重特異性抗体である。一実施形態では、多重特異性CD25抗体は、(a)CD25と結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、を含む。一実施形態では、多重特異性CD25抗体は、(a)CD25と結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、(c)第3の標的と結合する第3の結合ドメインと、を含む。一実施形態では、多重特異性CD25抗体は、(a)CD25と結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、(c)第3の標的と結合する第3の結合ドメインと、(d)第4の標的と結合する第4の結合ドメインと、を含む。
【0159】
別の態様では、(a)CD25と結合する第1の結合ドメインと、(b)CD25ではない第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、を含む、二重特異性抗体が本明細書で提供される。別の態様では、(a)CD25と結合する第1の結合ドメインと、(b)Treg細胞上に発現される第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、を含む、二重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、CD39と結合する。
【0160】
いくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、記載の通りであるか、又は上記の抗体に由来する。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号1に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHを含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLを含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの特定の実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号1に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含む、VHを含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、VLを含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの特定の実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Kabatの番号付けシステムに従う。いくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Chothiaの番号付けシステムに従う。いくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、AbMの番号付けシステムに従う。いくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Contactの番号付けシステムに従う。いくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、IMGTの番号付けシステムに従う。
【0162】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD25抗原と結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD25エピトープと結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD25に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3は、CD25の抗原に対する結合部位を形成する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3は、CD25のエピトープに対する結合部位を形成する。いくつかの実施形態では、CD25は、Treg細胞の表面に存在する。
【0163】
別の態様では、CD25との結合について本明細書に記載のCD25抗体のいずれかと競合する抗体が本明細書で提供される。別の態様では、本明細書に記載のCD25抗体のいずれかと同じエピトープと結合する抗体が本明細書で提供される。別の態様では、本明細書に記載のCD25抗体によって結合されたCD25上のエピトープと重複するCD25上のエピトープと結合するCD25抗体が提供される。
【0164】
一態様では、CD25への結合についてCD25参照抗体と競合する抗体が提供される。別の態様では、CD25参照抗体と同じCD25エピトープと結合するCD25抗体が提供される。別の態様では、CD25参照抗体によって結合されたCD25上のエピトープと重複するCD25上のエピトープと結合するCD25抗体が提供される。
【0165】
本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD25抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD25抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第4の標的は、CD25抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD25抗原ではなく、第3の標的は、CD25抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD25抗原ではなく、第4の標的は、CD25抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD25抗原ではなく、第4の標的は、CD25抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD25抗原ではなく、第3の標的は、CD25抗原ではなく、第4の標的は、CD25抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD25エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD25エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第4の標的は、CD25エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD25エピトープではなく、第3の標的は、CD25エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD25エピトープではなく、第4の標的は、CD25エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD25エピトープではなく、第4の標的は、CD25エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD25エピトープではなく、第3の標的は、CD25エピトープではなく、第4の標的は、CD25エピトープではない。
【0166】
本明細書で提供される多重特異性CD25抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD39である。
【0167】
特定の実施形態では、ノブインホール(knob-in-hole)形式で本明細書で提供されるCD25抗体を含む、多重特異性抗体が提供される。特定の実施形態では、ノブインホール形式で本明細書で提供されるCD25抗体を含む、二重特異性抗体が提供される。特定の実施形態では、ノブインホール形式で本明細書で提供されるCD25抗体を含む、三重特異性抗体が提供される。特定の実施形態では、ノブインホール形式で本明細書で提供されるCD25抗体を含む、四重特異性抗体が提供される。他の特異性は、当技術分野で周知の方法を使用して、ノブインホール形式で抗体に付加することができる(例えば、scFvをN末端又はC末端に付加すること)。更に、多重特異性抗体を作製する他の形式及び方法もまた、当技術分野で公知であり、企図される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD25抗体は、二重特異性抗体に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD25抗体は、三重特異性抗体に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD25抗体は、四重特異性抗体に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD25二重特異性抗体は、多重特異性抗体に含まれ得る。
【0168】
特定の実施形態では、本明細書で提供される多重特異性抗体は、第1のCD25エピトープと結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインとを含み、第1のCD25エピトープ及び第2のエピトープは、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性抗体は、第1のCD25エピトープと結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインとを含み、第1のCD25エピトープ及び第2のエピトープは、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される三重特異性抗体は、第1のCD25エピトープと結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインと、第3のエピトープと結合する第3の結合ドメインとを含み、第1のCD25エピトープ、第2のエピトープ、及び第3のエピトープは、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される四重特異性抗体は、第1のCD25エピトープと結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインと、第3のエピトープと結合する第3の結合ドメインと、第4のエピトープと結合する第4の結合ドメインとを含み、第1のCD25エピトープ、第2のエピトープは、第3のエピトープ、及び第4のエピトープは、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される多重特異性抗体は、第1のCD25抗原と結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含み、第1のCD25抗原及び第2の抗原は、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性抗体は、第1のCD25抗原と結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含み、第1のCD25抗原及び第2の抗原は、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される三重特異性抗体は、第1のCD25抗原と結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、第3の抗原と結合する第3の結合ドメインと、を含み、第1のCD25抗原、第2の抗原、及び第3の抗原は、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される四重特異性抗体は、第1のCD25抗原と結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、第3の抗原と結合する第3の結合ドメインと、第4の抗原と結合する第4の結合ドメインと、を含み、第1のCD25抗原、第2の抗原、第3の抗原、及び第4の抗原は、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供されるCD25抗体又はその抗原結合断片は、CD25に特異的と結合する。
【0169】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、第2の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第3の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第4の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。
【0170】
特定の実施形態では、多重特異性抗体又はその抗原結合断片は、CD25に位置する第1のエピトープ及び第2の標的抗原の第2のエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、(a)CD25抗原と結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的抗原と結合する第2の結合ドメインとを含む、多重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、(a)CD25抗原と特異的に結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的抗原と特異的と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、(a)CD25抗原上の第1のエピトープと結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的抗原上の第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、(a)CD25抗原上の第1のエピトープと特異的に結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的抗原上の第2のエピトープと特異的に結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体が本明細書で提供される。
【0171】
特定の実施形態では、CD25抗原は、Treg細胞の表面上に発現される。特定の実施形態では、第2の標的抗原は、CD25ではない。特定の実施形態では、第2の標的抗原は、Treg細胞の表面上に発現される。Treg細胞の表面上に存在するCD25とのCD25多重特異性抗体の結合、及びTreg細胞の表面上に存在する第2の標的抗原の結合は、例えば、Treg細胞の枯渇又はTreg細胞活性の阻害をもたらすことができる。
【0172】
特定の実施形態では、CD39と結合する抗体は、VH領域及びVL領域を含む。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、単鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、単一ドメイン抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、ナノボディを含む。特定の実施形態では、CD39抗体は、VHH抗体を含む。特定の実施形態では、CD39抗体は、ラマ抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、単鎖抗体を含まない。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、単一ドメイン抗体を含まない。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、ナノボディを含まない。特定の実施形態では、CD39抗体は、VHH抗体を含まない。特定の実施形態では、CD39抗体は、ラマ抗体を含まない。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、多重特異性抗体である。他の実施形態では、CD39は、二重特異性抗体である。特定の実施形態では、多重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD39抗体の抗原結合断片を含む。他の実施形態では、二重特異性抗体は、本明細書で提供されるCD39抗体の抗原結合断片を含む。特定の実施形態では、CD39抗体は、Treg細胞を枯渇又は阻害する。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、Treg細胞の活性化を遮断する。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、Treg細胞の活性を調節する。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、Tregの免疫抑制活性を調節する。特定の実施形態では、Treg細胞は、ヒトTreg細胞である。いくつかの実施形態では、CD39抗体は、抗腫瘍免疫を増強する。
【0173】
特定の実施形態では、CD39と結合する多重特異性抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、三重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、四重特異性抗体である。一実施形態では、多重特異性CD39抗体は、(a)CD39と結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、を含む。一実施形態では、多重特異性CD39抗体は、(a)CD39と結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、(c)第3の標的と結合する第3の結合ドメインと、を含む。一実施形態では、多重特異性CD39抗体は、(a)CD39と結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、(c)第3の標的と結合する第3の結合ドメインと、(d)第4の標的と結合する第4の結合ドメインと、を含む。
【0174】
別の態様では、(a)CD39と結合する第1の結合ドメインと、(b)CD39ではない第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、を含む、二重特異性抗体が本明細書で提供される。別の態様では、(a)CD39と結合する第1の結合ドメインと、(b)Treg細胞上に発現される第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、を含む、二重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、CD25と結合する。
【0175】
いくつかの実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインは、記載の通りであるか、又は上記の抗体に由来する。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインは、配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHを含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインは、配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLを含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの特定の実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインは、配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含む、VHを含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を含む、VLを含む。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの特定の実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Kabatの番号付けシステムに従う。いくつかの実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Chothiaの番号付けシステムに従う。いくつかの実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、AbMの番号付けシステムに従う。いくつかの実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Contactの番号付けシステムに従う。いくつかの実施形態では、CD39と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、IMGTの番号付けシステムに従う。
【0177】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD39抗原と結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD39エピトープと結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD39と特異的に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3は、CD39の抗原に対する結合部位を形成する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3は、CD39のエピトープに対する結合部位を形成する。いくつかの実施形態では、CD39は、Treg細胞の表面に存在する。
【0178】
別の態様では、CD39との結合について本明細書に記載のCD39抗体のいずれかと競合する抗体が本明細書で提供される。別の態様では、本明細書に記載のCD39抗体のいずれかと同じエピトープと結合する抗体が本明細書で提供される。別の態様では、本明細書に記載のCD39抗体によって結合されたCD39上のエピトープと重複するCD39上のエピトープと結合するCD39抗体が提供される。
【0179】
一態様では、CD39との結合についてCD39参照抗体と競合する抗体が提供される。別の態様では、CD39参照抗体と同じCD39エピトープと結合するCD39抗体が提供される。別の態様では、CD39参照抗体によって結合されたCD39上のエピトープと重複するCD39上のエピトープと結合するCD39抗体が提供される。
【0180】
本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD39抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD39抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第4の標的は、CD39抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD39抗原ではなく、第3の標的は、CD39抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD39抗原ではなく、第4の標的は、CD39抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD39抗原ではなく、第4の標的は、CD39抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD39抗原ではなく、第3の標的は、CD39抗原ではなく、第4の標的は、CD39抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD39エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD39エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第4の標的は、CD39エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD39エピトープではなく、第3の標的は、CD39エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD39エピトープではなく、第4の標的は、CD39エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD39エピトープではなく、第4の標的は、CD39エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD39エピトープではなく、第3の標的は、CD39エピトープではなく、第4の標的は、CD39エピトープではない。
【0181】
本明細書で提供される多重特異性CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の標的は、CD25である。
【0182】
特定の実施形態では、ノブインホール形式で本明細書で提供されるCD39抗体を含む、多重特異性抗体が提供される。特定の実施形態では、ノブインホール形式で本明細書で提供されるCD39抗体を含む、二重特異性抗体が提供される。特定の実施形態では、ノブインホール形式で本明細書で提供されるCD39抗体を含む、三重特異性抗体が提供される。特定の実施形態では、ノブインホール形式で本明細書で提供されるCD39抗体を含む、四重特異性抗体が提供される。他の特異性は、当技術分野で周知の方法を使用して、ノブインホール形式で抗体に付加することができる(例えば、scFvをN末端又はC末端に付加すること)。更に、多重特異性抗体を作製する他の形式及び方法もまた、当技術分野で公知であり、企図される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD39抗体は、二重特異性抗体に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD39抗体は、三重特異性抗体に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD39抗体は、四重特異性抗体に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD39二重特異性抗体は、多重特異性抗体に含まれ得る。
【0183】
特定の実施形態では、本明細書で提供される多重特異性抗体は、第1のCD39エピトープと結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第1の結合ドメインと、第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインと、を含み、第1のCD39エピトープ及び第2のエピトープは、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性抗体は、第1のCD39エピトープと結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第1の結合ドメインと、第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインと、を含み、第1のCD39エピトープ及び第2のエピトープは、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される三重特異性抗体は、第1のCD39エピトープと結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第1の結合ドメインと、第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインと、第3のエピトープと結合する第3の結合ドメインと、を含み、第1のCD39エピトープ、第2のエピトープ、及び第3のエピトープは、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される四重特異性抗体は、第1のCD39エピトープと結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第1の結合ドメインと、第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインと、第3のエピトープと結合する第3の結合ドメインと、第4のエピトープと結合する第4の結合ドメインと、を含み、当該第1のCD39エピトープ、第2のエピトープは、第3のエピトープ、及び当該第4のエピトープは、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される多重特異性抗体は、第1のCD39抗原と結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第1の結合ドメインと、第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含み、第1のCD39抗原及び第2の抗原は、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される二重特異性抗体は、第1のCD39抗原と結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第1の結合ドメインと、第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含み、第1のCD39抗原及び第2の抗原は、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される三重特異性抗体は、第1のCD39抗原と結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第1の結合ドメインと、第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、第3の抗原と結合する第3の結合ドメインと、を含み、第1のCD39抗原、第2の抗原、及び第3の抗原は、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される四重特異性抗体は、第1のCD39抗原と結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第1の結合ドメインと、第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、第3の抗原と結合する第3の結合ドメインと、第4の抗原と結合する第4の結合ドメインと、を含み、第1のCD39抗原、第2の抗原、第3の抗原、及び第4の抗原は、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供されるCD39抗体又はその抗原結合断片は、CD39に特異的と結合する。
【0184】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、第2の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第3の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第4の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。
【0185】
特定の実施形態では、CD39多重特異性抗体又はその抗原結合断片は、CD39に位置する第1のエピトープ及び第2の標的抗原の第2のエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、(a)CD39抗原と結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、(a)CD39抗原と特異的に結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的抗原と特異的と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、(a)CD39抗原上の第1のエピトープと結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的抗原上の第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、(a)CD39抗原上の第1のエピトープと特異的に結合する第1の結合ドメインと、(b)第2の標的抗原上の第2のエピトープと特異的に結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体が本明細書で提供される。
【0186】
特定の実施形態では、CD39抗原は、Treg細胞の表面上に存在する。特定の実施形態では、第2の標的抗原は、CD39ではない。特定の実施形態では、第2の標的抗原は、Treg細胞の表面上に発現される。Treg細胞の表面上に存在するCD39とのCD39多重特異性抗体の結合、及びTreg細胞の表面上に存在する第2の標的抗原の結合は、例えば、Treg細胞の枯渇又はTreg細胞活性の阻害をもたらすことができる。
【0187】
別の態様では、CD25と結合する第1の結合ドメインと、CD39と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体(「多重特異性CD25/CD39抗体」)が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、多重特異性CD25/CD39抗体は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性CD25/CD39抗体は、三重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性CD25/CD39抗体は、四重特異性抗体である。
【0188】
いくつかの特定の実施形態では、例えば
図2に示すように、以下の第7節で生成される二重特異性抗体が本明細書で提供される。
【0189】
一実施形態では、多重特異性CD25/CD39抗体は、(a)CD25と結合する第1の結合ドメインと、(b)CD39と結合する第2の結合ドメインと、を含む。一実施形態では、多重特異性CD25/CD39抗体は、(a)CD25と結合する第1の結合ドメインと、(b)CD39と結合する第2の結合ドメインと、(c)第3の標的と結合する第3の結合ドメインと、を含む。一実施形態では、多重特異性CD25/CD39抗体は、(a)CD25と結合する第1の結合ドメインと、(b)CD39と結合する第2の結合ドメインと、(c)第3の標的にと合する第3の結合ドメインと、(d)第4の標的と結合する第4の結合ドメインと、を含む。
【0190】
本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号1に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHを含む。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLを含む。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号1に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含む、VHを含む。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、VLを含む。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0191】
本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Kabatの番号付けシステムに従う。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Chothiaの番号付けシステムに従う。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、AbMの番号付けシステムに従う。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Contactの番号付けシステムに従う。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、IMGTの番号付けシステムに従う。
【0192】
本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD25抗原と結合する。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD25エピトープと結合する。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、CD25と特異的に結合する。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3は、CD25の抗原に対する結合部位を形成する。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3は、CD25のエピトープに対する結合部位を形成する。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25は、Treg細胞の表面に存在する。
【0193】
本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインは、配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHを含む。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインは、配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLを含む。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインは、配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含む、VHを含む。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を含む、VLを含む。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む。
【0194】
本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Kabatの番号付けシステムに従う。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Chothiaの番号付けシステムに従う。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、AbMの番号付けシステムに従う。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、Contactの番号付けシステムに従う。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列は、IMGTの番号付けシステムに従う。
【0195】
本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、CD39抗原と結合する。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、CD39エピトープと結合する。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、CD39と特異的に結合する。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3は、CD39の抗原に対する結合部位を形成する。いくつかの実施形態では、第2の結合ドメインのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3は、CD39のエピトープに対する結合部位を形成する。いくつかの実施形態では、CD39は、Treg細胞の表面に存在する。
【0196】
本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、(i)それぞれ配列番号1のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、(ii)それぞれ配列番号2のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列を有するVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含み、CD39と結合する第2の結合ドメインは、(i)それぞれ配列番号3のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、(ii)それぞれ配列番号4のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3のアミノ酸配列を有するVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む。
【0197】
本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む、VHと、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含む、VLと、を含み、CD39と結合する第2の結合ドメインは、(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む、VHと、(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む、VLと、を含む。
【0198】
本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD25抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第4の標的は、CD25抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD25抗原ではなく、第4の標的は、CD25抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD39抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第4の標的は、CD39抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD39抗原ではなく、第4の標的はCD39抗原ではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD25エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第4の標的は、CD25エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD25エピトープではなく、第4の標的は、CD25エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD39エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第4の標的は、CD39エピトープではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体のいくつかの実施形態では、第3の標的は、CD39エピトープではなく、第4の標的はCD39エピトープではない。
【0199】
特定の実施形態では、標的は、哺乳動物に由来する。特定の実施形態では、標的は、ラットに由来する。特定の実施形態では、標的は、マウスに由来する。特定の実施形態では、標的は、霊長類に由来する。特定の実施形態では、標的は、ヒトに由来する。
【0200】
特定の実施形態では、ノブインホール形式の多重特異性CD25/CD39抗体が提供される。特定の実施形態では、ノブインホール形式の二重特異性CD25/CD39抗体が提供される。具体的な実施態様では、ノブインホール形式の三重特異性抗体が提供される。具体的な実施態様では、ノブインホール形式の四重特異性抗体が提供される。他の特異性は、当技術分野で周知の方法を使用して、ノブインホール形式で抗体に付加することができる(例えば、scFvをN末端又はC末端に付加すること)。更に、多重特異性抗体を作製する他の形式及び方法もまた、当技術分野で公知であり、企図される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD25/CD39抗体は、二重特異性抗体に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD25/CD39抗体は、三重特異性抗体に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD25/CD39抗体は、四重特異性抗体に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCD25/CD39二重特異性抗体は、多重特異性抗体に含まれ得る。
【0201】
特定の実施形態では、本明細書で提供される三重特異性CD25/CD39抗体は、CD25エピトープと結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、CD39エピトープと結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第2の結合ドメインと、第3のエピトープと結合する第3の結合ドメインと、を含み、CD25エピトープ、CD39エピトープ、及び第3のエピトープは、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される四重特異性抗体は、CD25エピトープと結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、CD39エピトープと結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第2の結合ドメインと、第3のエピトープと結合する第3の結合ドメインと、第4のエピトープと結合する第4の結合ドメインとを含み、CD25エピトープ、CD39エピトープ、第3のエピトープ、及び第4エピトープは、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される三重特異性抗体は、CD25抗原と結合する本明細書で提供されるCD25抗体を含む第1の結合ドメインと、CD39抗原と結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含む第2の結合ドメインと、第3の抗原と結合する第3の結合ドメインとを含み、CD25抗原、CD39抗原、第3の抗原は、同じではない。特定の実施形態では、本明細書で提供される四重特異性抗体は、CD25抗原と結合し、第2の結合ドメインは、CD39抗原と結合する本明細書で提供されるCD39抗体を含み、第3の結合ドメインは、第3の抗原と結合し、第4の結合ドメインは、第4の抗原と結合し、CD25抗原、CD39抗原、第3の抗原、及び第4の抗原は、同じではない。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体の特定の実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、CD25と特異的に結合する。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体の他の実施形態では、CD39と結合する第2の結合ドメインは、CD39と特異的に結合する。本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体の更に他の実施形態では、CD25と結合する第1の結合ドメインは、CD25と特異的に結合し、CD39と結合する第2の結合ドメインは、CD39と特異的に結合する。
【0202】
いくつかの実施形態では、多重特異性CD25/CD39抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、第2の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、CD25抗体は、単一ドメイン抗体又はナノボディではない。いくつかの実施形態では、第3の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、第4の結合ドメインは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。
【0203】
特定の実施形態では、CD25/CD39多重特異性抗体又はその抗原結合断片は、CD25に位置する第1のエピトープ及びCD39に位置する第2のエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、(a)CD25抗原と結合する第1の結合ドメインと、(b)CD39抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性CD25/CD39抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、(a)CD25抗原と特異的に結合する第1の結合ドメインと、(b)CD39抗原と特異的に結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性CD25/CD39抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、(a)CD25抗原上の第1のエピトープと結合する第1の結合ドメインと、(b)CD39抗原上の第2のエピトープと結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性CD25/CD39抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、(a)CD25抗原上の第1のエピトープと特異的に結合する第1の結合ドメインと、(b)CD39抗原上の第2のエピトープと特異的に結合する第2の結合ドメインとを含む、多重特異性抗体が本明細書で提供される。
【0204】
特定の実施形態では、CD25抗原は、Treg細胞の表面上に存在する。特定の実施形態では、CD39抗原は、Treg細胞の表面上に存在する。Treg細胞の表面上に存在するCD25及びCD39とのCD25/CD39多重特異性抗体の結合は、例えば、がん細胞の死滅をもたらし得る。他の実施形態では、Treg細胞の表面上に存在するCD25及びCD39とのCD25/CD39多重特異性抗体の結合は、例えば、Treg細胞の枯渇及び/又は阻害をもたらし得る。
【0205】
いくつかの実施形態では、配列番号1の第1のVH及び配列番号2の第1のVLを含む、Treg細胞上の抗原と結合する第1の結合ドメインと、配列番号3の第2のVH及び配列番号4の第2のVLを含む、Treg細胞上の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、二重特異性抗体が本明細書に提供される。
【0206】
いくつかの実施形態では、配列番号7の第1のポリペプチドと、配列番号8の第2のポリペプチドと、配列番号9の第3のポリペプチドと、を含む、二重特異性抗体が本明細書に提供される。
【0207】
本明細書で提供される抗体は、鳥類及び哺乳動物(例えば、ヒト、サル、ネズミ、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、又はニワトリ)を含む任意の動物起源に由来し得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、ヒト又はヒト化モノクローナル抗体である。本明細書で使用される場合、「ヒト」抗体には、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体が含まれ、ヒト免疫グロブリンライブラリ又はヒト遺伝子から抗体を発現するマウスから単離された抗体が含まれる。
【0208】
特定の実施形態では、抗体は、完全なマウス抗体である。特定の実施形態では、抗体は、マウス-ヒトキメラ抗体である。特定の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。特定の実施形態では、抗体は、完全なヒト抗体である。他の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、ヒト化抗体(例えば、ヒト定常領域及びフレームワーク領域を含む)である。本明細書で提供される抗体は、二重特異性、三重特異性、又はそれ以上の多重特異性であり得る。
【0209】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、1000nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、100nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、50nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、40nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、30nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、20nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、10nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、9nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、8nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、7nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、6nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、5nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、4nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、3nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、2nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、1nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、0.1nM未満のKDでCD25と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、0.01nM未満のKDでCD25と結合する。KD又はKD値は、例えば、Octet(登録商標)Red96システムを使用するOctet(登録商標)によって、又は、例えば、Biacore(登録商標)TM-2000若しくはBiacore(登録商標)TM-3000を使用するBiacore(登録商標)によって、バイオレイヤー干渉法(BLI)又は表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを使用して、当技術分野で即知の任意の方法によって測定することができる。また、「オンレート」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「kon」は、例えば、Octet(登録商標)Red96、Biacore(登録商標)TM-2000、又はBiacore(登録商標)TM-3000のシステムを用いて、上述したバイオレイヤー干渉法(BLI)又は表面プラズモン共鳴(SPR)という同じ手法で測定することができる。特定の実施形態では、KDは、Biacore(登録商標)アッセイによって決定される。いくつかの実施形態では、CD25は、ヒトCD25である。いくつかの実施形態では、CD25は、カニクイザルCD25である。いくつかの実施形態では、CD25は、ラットCD25である。他の実施形態では、CD25は、マウスCD25である。
【0210】
いくつかの実施形態では、CD25と特異的に結合し、CD25の活性及び/又は発現を調節する(例えば、CD25媒介シグナル伝達を阻害する)ことができる抗体が本明細書に提供される。特定の実施形態では、CD25と特異的に結合し、少なくとも1つのCD25活性を阻害する(部分的に阻害することを含む)、本明細書に記載される抗体である、CD25アンタゴニストが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25のそのリガンドとの結合を阻害する(部分的に阻害又は減少させることを含む)。CD25活性は、当技術分野で既知又は記載されているものなどのCD25の任意の活性に関連し得る。特定の実施形態では、CD25活性及びCD25シグナル伝達(又はCD25媒介シグナル伝達)は、本明細書において互換的に使用される。
【0211】
特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD25活性を減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25活性を少なくとも約10%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25活性を少なくとも約20%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25活性を少なくとも約30%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25活性を少なくとも約40%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25活性を少なくとも約50%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25活性を少なくとも約60%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25活性を少なくとも約70%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25活性を少なくとも約80%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25活性を少なくとも約90%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25活性を少なくとも約95%減弱させる。特定の実施形態では、本明細書に記載させる抗体は、CD25活性を少なくとも約15%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載させる抗体は、CD25活性を少なくとも約20%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載させる抗体は、CD25活性を少なくとも約30%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。
【0212】
特定の実施形態では、CD25活性の減弱は、本明細書に記載の方法によって評価される。特定の実施形態では、CD25活性の減弱は、当業者に即知の方法によって評価される。特定の実施形態では、CD25活性の減弱は、いかなる抗CD25抗体も存在しない刺激の存在下でのCD25活性と比較する。特定の実施形態では、CD25活性の減弱は、無関係な抗体(例えば、CD25と特異的に結合しない抗体)による刺激の存在下でのCD25活性と比較する。
【0213】
CD25活性の非限定的な例は、CD25媒介シグナル伝達である。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約10%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約20%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約30%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約40%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約50%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約60%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約70%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約80%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約90%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約95%減弱させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約15%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約20%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD25媒介シグナル伝達を少なくとも約30%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。
【0214】
他の実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、1000nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、100nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、50nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、40nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、30nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、20nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、10nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、9nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、8nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、7nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、6nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、5nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、4nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、3nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、2nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、1nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、0.1nM未満のKDでCD39と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片は、0.01nM未満のKDでCD39と結合する。KD又はKD値は、例えば、Octet(登録商標)Red96システムを使用するOctet(登録商標)によって、又は、例えば、Biacore(登録商標)TM-2000若しくはBiacore(登録商標)TM-3000を使用するBiacore(登録商標)によって、バイオレイヤー干渉法(BLI)又は表面プラズモン共鳴法(SPR)アッセイを使用して、当技術分野で即知の任意の方法によって測定することができる。また、「オンレート」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「kon」は、例えば、Octet(登録商標)Red96、Biacore(登録商標)TM-2000、又はBiacore(登録商標)TM-3000のシステムを用いて、上述したバイオレイヤー干渉法(BLI)又は表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイという同じ手法で測定することができる。特定の実施形態では、KDは、Biacore(登録商標)アッセイによって決定される。いくつかの実施形態では、CD39は、ヒトCD39である。いくつかの実施形態では、CD39は、カニクイザルCD39である。いくつかの実施形態では、CD39は、ラットCD39である。他の実施形態では、CD39は、マウスCD39である。
【0215】
いくつかの実施形態では、CD39と特異的に結合し、CD39の活性及び/又は発現を調節する(例えば、CD39媒介シグナル伝達を阻害する)ことができる抗体が本明細書に提供される。特定の実施形態では、CD39と特異的に結合し、少なくとも1つのCD39活性を阻害する(部分的に阻害することを含む)、本明細書に記載される抗体である、CD39アンタゴニストが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39のそのリガンドとの結合を阻害する(部分的に阻害又は減少させることを含む)。CD39活性は、当技術分野で既知又は記載されているものなどのCD39の任意の活性に関連し得る。特定の実施形態では、CD39活性及びCD39シグナル伝達(又はCD39媒介シグナル伝達)は、本明細書において互換的に使用される。
【0216】
特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD39活性を減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39活性を少なくとも約10%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39活性を少なくとも約20%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39活性を少なくとも約30%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39活性を少なくとも約40%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39活性を少なくとも約50%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39活性を少なくとも約60%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39活性を少なくとも約70%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39活性を少なくとも約80%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39活性を少なくとも約90%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39活性を少なくとも約95%減弱させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD39活性を少なくとも約15%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD39活性を少なくとも約20%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD39活性を少なくとも約30%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。
【0217】
特定の実施形態では、CD39活性の減弱は、本明細書に記載の方法によって評価される。特定の実施形態では、CD39活性の減弱は、当業者に即知の方法によって評価される。特定の実施形態では、CD39活性の減弱は、いかなる抗CD39抗体も存在しない刺激の存在下でのCD39活性と比較する。特定の実施形態では、CD39活性の減弱は、無関係な抗体(例えば、CD39と特異的に結合しない抗体)による刺激の存在下でのCD39活性と比較する。
【0218】
CD39活性の非限定的な例は、CD39媒介シグナル伝達である。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約10%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約20%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約30%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約40%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約50%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約60%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約70%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約80%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約90%減弱させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約95%減弱させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約15%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約20%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、CD39媒介シグナル伝達を少なくとも約30%~約65%減弱させる(例えば、部分的に減弱させる)ことができる。
【0219】
当技術分野における任意の公知の二重特異性抗体フォーマットを含む、当技術分野において公知の任意の多重特異性抗体プラットフォーム又はフォーマットを、本開示において使用することができる。
【0220】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される多重特異性抗体は、本発明に記載されるものなどの、制御されたFabアーム交換を介して得られたダイアボディ、クロスボディ、又は多重特異性抗体である。
【0221】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体としては、ヘテロ二量体形成を促進する相補性CH3ドメインを有するIgG様分子;組換えIgG様二重標的化分子(この分子の2つの側面は各々、少なくとも2つの異なる抗体のFab断片又はFab断片の一部を含む);IgG融合分子(完全長IgG抗体が、余分のFab断片又はFab断片の一部に融合されている);Fc融合分子(一本鎖Fv分子又は安定化されたダイアボディが、重鎖定常ドメイン、Fc領域、又はその一部に融合されている);Fab融合分子(異なるFab断片が一緒に融合されている);ScFv及びダイアボディベース及び重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)(異なる一本鎖Fv分子又は異なるダイアボディ又は異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が互いに融合されているか、又は別のタンパク質若しくは担体分子に融合されている)が挙げられる。
【0222】
いくつかの実施形態では、相補性CH3ドメイン分子を有するIgG様分子としては、Triomab/Quadroma(Trion Pharma/Fresenius Biotech)、Knobs-into-Holes(Genentech)、CrossMAbs(Roche)及び静電的に調整されたもの(Amgen)、LUZ-Y(Genentech)、ストランドを交換し操作したドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body、SEEDbody)(EMD Serono)、Biclonic(Merus)、並びにDuoBody(Genmab A/S)が挙げられる。
【0223】
いくつかの実施形態では、組換えIgG様二重標的化分子としては、Dual Targeting(DT)-Ig(GSK/Domantis)、Two-in-one Antibody(Genentech)、Cross-linked Mabs(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)、及びCovX-body(CovX/Pfizer)が挙げられる。
【0224】
いくつかの実施形態では、IgG融合分子としては、Dual Variable Domain(DVD)-Ig(Abbott)、IgG-like Bispecific(ImClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)、及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)、並びにTvAb(Roche)が挙げられる。
【0225】
いくつかの実施形態では、Fc融合分子としては、ScFv/Fc融合体(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion,Zymogenetics/BMS)、二重親和性再標的化技術(Fc-DART)(MacroGenics)、及び二重(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine--China)を挙げることができる。
【0226】
いくつかの実施形態では、Fab融合二重特異性抗体としては、F(ab)2(Medarex/AMGEN)、Dual-Action or Bis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)、及びFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられる。ScFv抗体、ダイアボディに基づく抗体、及びドメイン抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャ(Bispecific T Cell Engager、BiTE)(Micromet)、タンデムダイアボディ(Tandem Diabody、Tandab)(Affimed)、二重親和性再標的技術(Dual Affinity Retargeting Technology、DART)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的ナノボディ(Ablynx)、二重標的重鎖のみドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。
【0227】
本明細書で提供される完全長二重特異性抗体は、無細胞環境でインビトロにおいて又は共発現を使用してのいずれかで、異なる特異性を有する2つの抗体半分子のヘテロ二量体を形成するのに好都合になるように、各半分子において重鎖CH3界面に置換を導入することによって、例えば、2つの単一特異性二価抗体間でのFabアーム交換(又は半分子交換)を使用して生成することができる。Fabアーム交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離-会合の結果である。単一特異性親抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は、低減される。単一特異性親抗体のうちの1つについて生じる遊離システインは、第2の単一特異性親抗体分子のシステイン残基と重鎖内ジスルフィド結合を形成し、同時に、親抗体のCH3ドメインは、解離-会合により開放及び再形成する。FabアームのCH3ドメインは、ホモ二量体形成よりヘテロ二量体形成を有利にするように操作され得る。得られた産物は、各々が、異なるエピトープ、すなわち、CD25上のエピトープ及びCD39上のエピトープと結合する、2つのFabアーム又は半分子を有する二重特異性抗体である。多重特異性抗体を作製する他の方法は、既知であり、企図される。
【0228】
本明細書で使用するとき、「ホモ二量体形成」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。本明細書で使用するとき、「ホモ二量体」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0229】
本明細書で使用するとき、「ヘテロ二量体形成」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。本明細書で使用するとき、「ヘテロ二量体」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0230】
「ノブインホール(knob-in-hole)」戦略(例えば、国際公開第2006/028936号を参照のこと)を使用して、完全長二重特異性抗体を生成することができる。簡潔に述べると、ヒトIgGにおけるCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸は、ヘテロ二量体形成を促進するように、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置において変異され得る。小さな側鎖を有するアミノ酸(ホール)が、第1の抗原と特異的に結合する抗体の重鎖内に導入され、大きな側鎖を有するアミノ酸(ノブ)が、第2の抗原と特異的に結合する抗体の重鎖内に導入される。2つの抗体の共発現後に、ヘテロ二量体が、「ホール」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果として形成される。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換の対は、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける改変位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける改変位置として表現)。
【0231】
他のストラテジ、例えば、1つのCH3表面における正に荷電した残基及び第2のCH3表面における負に荷電した残基を置換することによる静電的相互作用を使用する重鎖ヘテロ二量体形成の促進が、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/028637号、又は米国特許出願公開第2011/0123532号に記載されるように使用され得る。他のストラテジでは、ヘテロ二量体形成は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は米国特許出願公開第2013/0195849号に記載されるように、下記置換:L351Y_F405AY407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V K409F Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A Y407V/T350V_T366L_K392L_T394W(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける改変位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける改変位置として表現)により促進され得る。
【0232】
上記の方法に加えて、本明細書で提供される二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号に記載の方法に従って、2つの単一特異性ホモ二量体抗体のCH3領域に非対称な変異を導入し、ジスルフィド結合の異性化を可能にするための還元条件下において2つの親単一特異性ホモ二量体抗体から二重特異性ヘテロ二量体抗体を形成することによって、無細胞環境でインビトロにおいて生成され得る。この方法において、第1の単一特異性二価抗体及び第2の単一特異性二価抗体は、ヘテロ二量体の安定性を促進するCH3ドメインにおいてある特定の置換を有するように操作され、これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合を異性化させるために十分な還元条件下においてともにインキュベートされ、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適には、非還元条件に戻され得る。使用され得る例示的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-mercaptoethylamine、2-MEA)、ジチオスレイトール(dithiothreitol、DTT)、ジチオエリスリトール(dithioerythritol、DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)、L-システイン、及びベータ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度で、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えばpH7.0又はpH7.4で、少なくとも90分間のインキュベートが使用され得る。
【0233】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体であり、一方の結合ドメインはscFv領域であり、他方の結合ドメインはFab領域である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体であり、一方の結合ドメインはCD25と結合するscFv領域であり、他方の結合ドメインはCD39と結合するFab領域である。
【0234】
本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、ヒトである。いくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、ヒトである。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメイン及び第2の結合ドメインの両方は、ヒトである。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、ヒト化されている。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、ヒト化されている。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、第1の結合ドメイン及び第2の結合ドメインの両方は、ヒト化されている。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、両方の第1の結合ドメインは、ヒトであり、第2の結合ドメインは、ヒト化されている。本明細書で提供される多重特異性抗体のいくつかの実施形態では、両方の第1の結合ドメインは、ヒト化されており、第2の結合ドメインは、ヒトである。特定の実施形態では、本明細書で提供される多重特異性抗体は、多重特異性CD25/CD39抗体である。
【0235】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される多重特異性抗体は、多価である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、少なくとも3つの抗原と結合することができる。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、少なくとも5つの抗原と結合することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される多重特異性抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、IgG1抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、IgG2抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、IgG3抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、IgG4抗体である。特定の実施形態では、本明細書で提供される多重特異性抗体は、多重特異性CD25/CD39抗体である。
【0236】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体の一部である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、CD25抗原と結合する第1の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される通り、多重特異性抗体は、CD25抗原と結合する第1の結合ドメインを含み、第2の標的抗原と結合する第2の結合ドメインを含む。特定の実施形態では、多重特異性抗体は、CD25抗原、第2の標的抗原、及び1つ又は2つ以上の追加の抗原と結合する。本明細書で提供される様々な抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、所与の抗原のエピトープと結合する。特定の実施形態では、多重特異性CD25抗体は、多重特異性CD25/CD39抗体であり、第2の標的は、CD39である。
【0237】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体の一部である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、CD39抗原と結合する第1の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される通り、多重特異性抗体は、CD39抗原と結合する第1の結合ドメインを含み、第2の標的抗原と結合する第2の結合ドメインを含む。特定の実施形態では、多重特異性抗体は、CD39抗原、第2の標的抗原、及び1つ又は2つ以上の追加の抗原と結合する。本明細書で提供される様々な抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、所与の抗原のエピトープと結合する。特定の実施形態では、多重特異性CD39抗体は、第2の標的がCD25である、多重特異性CD25/CD39抗体である。
【0238】
いくつかの実施形態では、CD25及びCD39と特異的に結合し、Treg細胞活性を調節することができる、多重特異性抗体が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、Tregの枯渇又は阻害を誘導する。いくつかの実施形態では、CD25及びCD39と特異的に結合し、Treg細胞免疫抑制活性を調節することができる、多重特異性抗体が本明細書に提供される。特定の実施形態では、Treg細胞は、ヒトTreg細胞である。
【0239】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも10%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも20%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも30%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも40%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも50%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも60%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも70%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも80%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも90%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも95%阻害する。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも約15%~約65%阻害することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも約20%~約65%阻害することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg活性を少なくとも約30%~約65%阻害することができる。
【0240】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも10%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも20%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも30%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも40%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも50%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも60%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも70%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも80%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも90%阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも95%阻害する。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも約15%~約65%阻害する。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも約20%~約65%阻害する。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Treg免疫抑制活性を少なくとも約30%~約65%阻害する。
【0241】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも10%選択的に枯渇させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも20%選択的に枯渇させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも30%選択的に枯渇させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも40%選択的に枯渇させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも50%選択的に枯渇させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも60%選択的に枯渇させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも70%選択的に枯渇させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも80%選択的に枯渇させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも90%選択的に枯渇させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも95%選択的に枯渇させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも約15%~約65%選択的に枯渇させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも約20%~約65%選択的に枯渇させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、Tregを少なくとも約30%~約65%選択的に枯渇させる。
【0242】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも10%増強する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも20%増強する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも30%増強する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも40%増強する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも50%増強する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも60%増強する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも70%増強する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも80%増強する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも90%増強する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも95%増強する。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも約15%~約65%増強する。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも約20%~約65%増強する。特定の実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、抗腫瘍免疫を少なくとも約30%~約65%増強する。
【0243】
5.2.1モノクローナル抗体
本開示の多重特異性抗体は、モノクローナル抗体であるか、又はモノクローナル抗体に由来し得る。モノクローナル抗体は、Kohler et al.,1975,Nature 256:495-97によって最初に記載されたハイブリドーマ法を使用して作製され得るか、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作製され得る。
【0244】
ハイブリドーマ方法では、マウス、又はハムスターなどの他の適切な宿主動物を、上記で記載した通りに免疫化して、免疫化のために使用されるタンパク質と特異的に結合する抗体を産生するか、又はこれらを産生することが可能なリンパ球を誘発する。代替的に、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。免疫化の後、リンパ球を単離し、次いで、ポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞系と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,モノクローナル抗体:Principles and Practice 59-103(1986))。
【0245】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、特定の実施形態では、融合されていない親骨髄腫細胞(融合パートナーとも称される)の増殖又は生存を阻害する1つ又は2つ以上の物質を含有する、好適な培養培地中に播種し、増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素であるヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための選択的培養培地は、典型的に、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含み(HAT培地)、これらは、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
【0246】
例示的な融合パートナーである骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定的な高レベルの抗体の産生を支援し、融合させていない親細胞に対して選択する選択的培地に感受性である骨髄腫細胞である。例示的な骨髄腫細胞系は、American Type Culture Collection(Manassas,VA)から入手可能な、SP-2細胞及び派生細胞、例えば、X63-Ag8-653細胞などのマウス骨髄腫系、並びにSalk Institute Cell Distribution Center(San Diego,CA)から入手可能な、MOPC-21マウス腫瘍及びMPC-11マウス腫瘍に由来する、マウス骨髄腫系である。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生のために記載されている(Kozbor,1984,Immunol.133:3001-05;及びBrodeur et al.,1987,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications 51-63)。
【0247】
ハイブリドーマ細胞が増殖する培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降、又はRIA若しくはELISAなどのインビトロにおける結合アッセイにより決定する。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al.,1980,Anal.Biochem.107:220-39において記載されている、スカッチャード分析により決定することができる。
【0248】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定したら、クローンを、限界希釈手順によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding、上記)。この目的に好適な培養培地は、例えば、DMEM培地又はRPMI-1640培地を含む。加えて、例えば、細胞のマウスへのi.p.注射により、ハイブリドーマ細胞を、インビボにおいて、動物における腹水腫瘍として増殖させ得る。
【0249】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体を、例えば、クロマトグラフィ(例えば、プロテインA-セファロース又はプロテインG-セファロースを使用して)又はイオン交換クロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析などの従来の抗体精製手順により、培養培地、腹水、又は血清から、好適に分離する。
【0250】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞を、そのようなDNAの供給源として用いることができる。単離したら、DNAを発現ベクターに入れることができ、次いで、普通であれば抗体タンパク質を産生しない大腸菌(E. coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞にこれらをトランスフェクトして、組換え宿主細胞内のモノクローナル抗体の合成を得ることができる。抗体をコードするDNAの、細菌内の組換え発現についての総説論文は、Skerra et al.,1993,Curr.Opinion in Immunol.5:256-62、及びPluckthun,1992,Immunol.Revs.130:151-88を含む。
【0251】
更なる実施形態では、モノクローナル抗体又は抗体断片は、例えば、Antibody Phage Display:Methods and Protocols(O’Brien and Aitken,eds.,2002)において記載されている技法を使用して作出された抗体ファージライブラリから単離することができる。ファージディスプレイ方法では、機能的な抗体ドメインを、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面上に提示する。本明細書で記載される抗体を作製するのに使用され得るファージディスプレイ方法の例は、Brinkman et al.,1995,J.Immunol.Methods 182:41-50;Ames et al.,1995,J.Immunol.Methods 184:177-186;Kettleborough et al.,1994,Eur.J.Immunol.24:952-958;Persic et al.,1997,Gene 187:9-18;Burton et al.,1994,Advances in Immunology 57:191-280;国際出願第GB91/O1 134号;国際公開第90/02809号、同第91/10737号、同第92/01047号、同第92/18619号、同第93/11236号、同第95/15982号、同第95/20401号、及び同第97/13844号、並びに米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号及び同第5,969,108号において開示されているファージディスプレイ方法を含む。
【0252】
原則として、合成抗体クローンは、ファージコートタンパク質へと融合させた、抗体可変領域(Fv)の多様な断片を表示するファージを含むファージライブラリをスクリーニングすることにより選択される。そのようなファージライブラリを、所望の抗原に対してスクリーニングする。所望の抗原への結合が可能なFv断片を発現するクローンは、抗原へと吸着されるので、ライブラリ内の非結合クローンから分離される。次いで、結合クローンを、抗原から溶離させ、抗原への吸着/溶離の更なるサイクルにより、更に濃縮する。
【0253】
可変ドメインは、例えば、Winter et al.,1994,Ann.Rev.Immunol.12:433-55において記載されている通り、VH及びVLを、短い可撓性ペプチドを介して共有結合的に連結した単鎖Fv(scFv)断片として、又はVH及びVLの各々を定常ドメインへと融合させ、非共有結合的に相互作用させたFab断片として、ファージ上で機能的に提示されることができる。
【0254】
VH遺伝子及びVL遺伝子のレパートリは、Winter et al.、上記において記載されている通り、PCRにより個別にクローニングされ、ファージライブラリ内でランダムに組換えられることができ、次いで、これらを、抗原結合クローンについて検索することができる。免疫された起源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要性を伴うことなく免疫原に高親和性抗体を提供する。代替的に、Griffiths et al.,1993,EMBO J 12:725-34により記載されているように、ナイーブレパートリをクローニングして、広範にわたる非自己に対するヒト抗体の単一の供給源をもたらし、また、免疫化を伴わない自己抗原に対するヒト抗体の単一の供給源ももたらすことができる。最後に、ナイーブライブラリはまた、例えば、Hoogenboom and Winter,1992,J.Mol.Biol.227:381-88により記載されている通り、幹細胞に由来する、再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用して、高度に可変性のCDR3領域をコードし、インビトロにおける再配列を達成することにより、合成により作ることもできる。
【0255】
ライブラリのスクリーニングは、当該技術分野で知られている様々な技術によって達成することができる。例えば、CD25(例えば、CD25ポリペプチド、断片、又はエピトープ)は、吸着プレートのウェルをコーティングするのに使用することができ、吸着プレートへと固定した宿主細胞上で発現させることもでき、細胞選別において使用することができ、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズによる捕捉のためにビオチンへと複合させることができ、パニングディスプレイライブラリのための他の任意の方法において使用することができる。解離反応速度の遅い(例えば、結合親和性が良好な)抗体の選択は、Bass et al.,1990,Proteins 8:309-14及び国際公開第92/09690号において記載されているように、長時間の洗浄及び一価ファージディスプレイの使用、並びにMarks et al.,1992,Biotechnol.10:779-83において記載されているように、抗原の低コーティング密度の使用により促進することができる。
【0256】
抗体は、目的のファージクローンを選択するための好適な抗原スクリーニング手順に続き、Kabat,et al.、(上記)に記載されている、目的のファージクローン及び好適な定常領域(例えば、Fc)配列に由来する、VH配列及び/又はVL配列(例えば、Fv配列)、又はVH配列及びVL配列に由来する多様なCDR配列を使用する、全長抗体クローンの構築を設計することにより得ることができる。
【0257】
本明細書で記載される抗体はまた、例えば、キメラ抗体を含み得る。キメラ抗体とは、抗体の異なる部分が異なる免疫グロブリン分子に由来する分子である。例えば、キメラ抗体は、ヒト抗体の定常領域へと融合させたマウスモノクローナル抗体又はラットモノクローナル抗体の可変領域を含み得る。キメラ抗体を産生するための方法は当該技術分野において既知である。例えば、Morrison,1985,Science 229:1202;Oi et al.,1986,BioTechniques 4:214;Gillies et al.,1989,J.Immunol.Methods 125:191-202;及び米国特許第5,807,715号、同第4,816,567号、同第4,816,397号、及び同第6,331,415号を参照されたい。
【0258】
本明細書で記載されるような技術を使用して産生される抗体又は抗原結合断片は、標準的な周知の技術を使用して単離することができる。例えば、抗体又は抗原結合断片は、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、又は親和性クロマトグラフィなど、従来の免疫グロブリン精製手順により、例えば、培養培地、腹水、血清、細胞溶解物、合成反応材料などから好適に分離することができる。本明細書中で使用される場合、「単離」又は「精製」抗体は、抗体が由来する細胞供給源若しくは組織供給源に由来する細胞物質若しくは他のタンパク質を実質的に含まないか、又は化学合成される場合、化学的前駆物質若しくは他の化学物質を実質的に含まない。
【0259】
5.2.2抗体断片
多重特異性抗体本開示は、例えば、CD25及び/又はCD39と結合する抗体断片を含む多重特異性抗体を提供する。
【0260】
抗体断片の作製のために様々な手法が開発されている。慣例的に、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化を介して誘導された(例えば、Morimoto et al.,1992,J.Biochem.Biophys.Methods 24:107-17;及びBrennan et al.,1985,Science 229:81-83を参照されたい)。しかしながら、これらの断片は現在、組換え宿主細胞によって直接に作製され得る。Fab、Fv、及びscFv抗体断片は全てE.coli又は酵母細胞内で発現及び分泌することができるため、これらの断片の大量生産を可能にする。抗体断片は、上記の抗体ファージライブラリから単離することができる。代替的に、Fab’-SH断片は、E.coliから直接回収でき、化学的に結合してF(ab’)2断片を形成することができる(Carter et al.,1992,Bio/Technology 10:163-67)。別のアプローチにより、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)2断片は、例えば、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の技術は、当業者に明らかであろう。特定の実施形態では、抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である(例えば、国際公開第93/16185号;米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい)。Fv及びscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有し、したがって、それらは、インビボでの使用中の非特異的結合の低減に好適であり得る。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかにおいてエフェクタータンパク質の融合を生じるように構築され得る(例えば、Borrebaeck ed.,上記を参照されたい)。抗体断片はまた、例えば、上で引用した参考文献に記載されるような「直鎖状抗体」であり得る。かかる直鎖状抗体は、単一特異性であっても、二重特異性などの多重特異性であってもよい。
【0261】
より小さな抗体由来結合構造は、単一可変ドメイン抗体(sdAb)とも呼ばれる別個の可変ドメイン(Vドメイン)である。特定の種類の生物、ラクダ科動物及び軟骨魚類は、それらの免疫系の一部としてFc等価ドメイン構造上にマウントされた高親和性単一V様ドメインを有する。(Woolven et al.,1999,Immunogenetics 50:98-101;及びStreltsov et al.,2004,Proc Natl Acad Sci USA.101:12444-49)。V様ドメイン(ラクダ科ではVhHと呼ばれ、サメではV-NARと呼ばれる)は、典型的には、標的抗原の空洞への侵入を可能にする長い表面ループを示す。それらはまた、疎水性表面パッチをマスキングすることによって、単離されたVHドメインを安定化する。
【0262】
これらのVhH及びV-NARドメインは、sdAbを操作するために使用されてきた。ヒトVドメインバリアントは、ファージライブラリからの選択及び他のアプローチを使用して設計されており、安定な高結合VL及びVH由来ドメインをもたらす。
【0263】
本明細書で提供される抗体には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えば、CD25又はCD39エピトープと結合する抗原結合部位を含有する分子が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で提供される免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又は任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)であり得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、IgG1抗体、IgG2抗体、又はIgG4抗体(例えば、IgG4ヌルボディ及びIgG4抗体のバリアント)などのIgG抗体である。特定の実施形態では、IgG抗体は、IgG1抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む。
【0264】
抗体のバリアント及び誘導体は、例えば、CD25及び/又はCD39エピトープと結合する能力を保持する抗体機能的断片を含む。例示的な機能的断片としては、Fab断片(例えば、抗原結合ドメインを含み、ジスルフィド結合によって架橋された軽鎖及び重鎖の一部を含む抗体断片)、Fab’(例えば、Fab及びヒンジ領域を通る重鎖の追加部分を含む単一の抗原結合ドメインを含む抗体断片)、F(ab’)2(例えば、重鎖のヒンジ領域において鎖間ジスルフィド結合によって連結された2つのFab’分子、Fab’分子は、同じ又は異なるエピトープに向かい指向され得る)、二重特異性Fab(例えば、2つの抗原結合ドメインを有するFab分子であり、その各々が異なるエピトープに向けられ得る)、scFvとしても知られる可変領域を含む単鎖(例えば、10~25アミノ酸の鎖によって連結された抗体の単一軽鎖及び重鎖の可変の抗原結合決定領域)、ジスルフィド結合Fv、又はdsFv(例えば、ジスルフィド結合によって一緒に連結された抗体の単一軽鎖及び重鎖の可変抗原結合決定領域)、ラクダ化VH(例えば、VH界面のいくつかのアミノ酸が天然ラクダ抗体の重鎖に見られるものである、抗体の単一重鎖の可変抗原結合決定領域)、二重特異性scFv(例えば、2つの抗原結合ドメインを有するscFv又はdsFv分子であり、その各々が異なるエピトープに向けられ得る)、ダイアボディ(例えば、第1のscFvのVHドメインが第2のscFvのVLドメインと会合し、第1のscFvのVLドメインが第2のscFvのVHドメインと会合するときに形成される二量体化scFv、ダイアボディの2つの抗原結合領域は、同じ又は異なるエピトープに向けられ得る)、トリアボディ(例えば、ダイアボディと同様の様式で形成されるが、3つの抗原結合ドメインが単一の複合体中に作製される、三量体化scFv、3つの抗原結合ドメインは、同じ又は異なるエピトープに向かい指向され得る)、テトラボディ(例えば、ダイアボディと同様の様式で形成されるが、4つの抗原結合ドメインが単一の複合体中に作製される、四量体化scFv、4つの抗原結合ドメインは、同じ又は異なるエピトープに向かい指向され得る)が挙げられる。
【0265】
5.2.3ヒト化抗体
本明細書に記載される多重特異性抗体には、例えば、ヒト化抗体、例えば、脱免疫化ヒト抗体又は複合ヒト抗体が含まれ得る。
【0266】
ヒト化抗体は、ヒトフレームワーク領域及びヒト定常領域の配列を含み得る。例えば、ヒト化抗体は、ヒト定常領域配列を含み得る。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラス、及びIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意のアイソタイプ(例えば、IgG4のバリアント及びIgG4ヌルボディ)から選択され得る。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、カッパ又はラムダの軽鎖定常配列を含み得る。
【0267】
ヒト化抗体は、CDRグラフティング(欧州特許第239,400号;国際公開第91/09967号、米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、及び同第5,585,089号)、ベニヤリング又はリサーフェシング(欧州特許第592,106号、同第519,596号;Padlan,1991,Molecular Immunology 28(4/5):489-498、Studnicka et al.,1994,Protein Engineering 7(6):805-814、及びRoguska et al.,1994,PNAS 91:969-973)、チェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号)、及び例えば、米国特許第6,407,213号、同第5,766,886号、国際公開第93/17105号、Tan et al.,J.Immunol.169:1119 25(2002)、Caldas et al.,Protein Eng.13(5):353-60(2000)、Morea et al.,Methods 20(3):267 79(2000)、Baca et al.,J.Biol.Chem.272(16):10678-84(1997)、Roguska et al.,Protein Eng.9(10):895 904(1996)、Couto et al.,Cancer Res.55(23 Supp):5973s-5977s(1995)、Couto et al.,Cancer Res.55(8):1717-22(1995),Sandhu JS,Gene 150(2):409-10(1994)、及びPedersen et al.,J.Mol.Biol.235(3):959-73(1994)を含むが、これらに限定されない、当該分野で公知の様々な技術を使用して産生することができる。米国特許出願公開第2005/0042664(A1)号(2005年2月24日)も参照されたく、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0268】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、ヒト、カニクイザル、ラット、及びマウスCD25、並びに/又はCD39を含む、CD25及び/又はCD39と結合するヒト化抗体であり得る。例えば、本開示のヒト化抗体は、本明細書で提供される配列表に示される1つ又は2つ以上のCDRを含み得る。非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が、当該技術分野では知られている。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入された1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合「インポート」残基と称され、典型的には、「インポート」可変ドメインから取得される。ヒト化は、例えば、Jones et al.,1986,Nature 321:522-25;Riechmann,et al.,Nature,1988,332:323-27;及びVerhoeyen,et al.,Science,1988,239:1534-36)の方法に従い、超可変領域の配列で、ヒト抗体の対応する配列を置換することにより実施することができる。
【0269】
場合によっては、ヒト化抗体は、親非ヒト抗体(例えば、齧歯動物)の6つのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体フレームワークへとグラフトする、CDRグラフティングにより構築される。例えば、Padlan et al.は、CDRの残基の約3分の1だけが実際に抗原と接触することを決定し、これらを「特異性決定残基」又はSDRと呼んだ(Padlan et al.,1995,FASEB J.9:133-39)。SDRグラフティングの技術では、SDR残基のみが、ヒト抗体フレームワークにグラフトされる(例えば、Kashmiri et al.,2005,Methods 36:25-34を参照されたい)。
【0270】
ヒト化抗体を作るのに使用される、ヒト可変ドメインの、軽鎖及び重鎖の両方の選択は、抗原性を低減するのに重要であり得る。例えば、いわゆる「ベストフィット」方法に従い、非ヒト(例えば、齧歯動物)抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリの全体に対してスクリーニングする。齧歯動物のヒト配列に最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のヒト骨格として選択され得る(Sims et al.,1993,J.Immunol.151:2296-308;及びChothia et al.,1987,J.Mol.Biol.196:901-17)。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carter et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285-89;及びPresta et al.,1993,J.Immunol.151:2623-32)。場合によっては、フレームワークは、最も存在量が多いヒトサブクラスであるVL6亜群I(VL6I)及びVH亜群III(VHIII)のコンセンサス配列に由来する。別の方法では、ヒト生殖細胞系列遺伝子をフレームワーク領域の供給源として使用する。
【0271】
スーパーヒト化と呼ばれるCDRの比較に基づいた代替パラダイムでは、FRの相同性は関係ない。この方法は、非ヒト配列及び機能的ヒト生殖細胞系列遺伝子レパートリを比較することからなる。次いで、マウス配列と同じ又は密接に関連した標準構造をコードする遺伝子が選択される。次に、非ヒト抗体と標準構造を共有する遺伝子のうち、CDR内の相同性が最も高い遺伝子をFRドナーとして選択する。最後に、非ヒトCDRをこれらのFRにグラフトする(例えば、Tan et al.,2002,J.Immunol.169:1119-25参照されたい)。
【0272】
更に、抗体は、抗原に対する親和性及びその他の好ましい生物学的特性を保持したままヒト化されることが概ね望ましい。この目標を達成するために、ある方法によれば、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念のヒト化産物を分析するプロセスによって、ヒト化抗体を調製する。三次元の免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者に周知である。選択された免疫グロブリン配列候補について確率の高い三次元立体構造を図示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらには、例えば、WAM(Whitelegg and Rees,2000,Protein Eng.13:819-24)、Modeller(Sali and Blundell,1993,J.Mol.Biol.234:779-815)、Swiss PDB Viewer(Guex and Peitsch,1997,Electrophoresis 18:2714-23)が挙げられる。これらの表示について精査することにより、免疫グロブリン配列候補の機能において残基が示す可能性の高い働きの分析、例えば、免疫グロブリン候補が、その抗原結合能に影響を及ぼす残基についての分析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増大など、所望の抗体特性が達成されるように、レシピエント配列及びインポート配列から、FR残基を選択し組み合わせることができる。概して、超可変領域残基は、抗原結合に直接的に、ほとんど実質的に関与する。
【0273】
抗体のヒト化の別の方法は、Human String Content(HSC)と呼ばれる抗体のヒト性の測定基準に基づいている。この方法では、マウスの配列とヒト生殖細胞系列遺伝子のレパートリを比較し、その違いをHSCとしてスコアリングする。次いで、標的配列は、全体的な同一性測定を使用して多様なヒト化バリアントを生成するのではなく、そのHSCを最大化することによってヒト化される(Lazar et al.,2007,Mol.Immunol.44:1986-98)。
【0274】
上記の方法に加えて、経験的な方法を用いてヒト化抗体を生成及び選択することができる。これらの方法には、ヒト化バリアントの大規模なライブラリを生成し、濃縮技術又はハイスループットスクリーニング技術を使用する最適なクローンの選択に基づく方法がある。抗体バリアントは、ファージ、リボソーム、及び酵母ディスプレイライブラリから、並びに細菌コロニースクリーニングによって、単離することができる(例えば、Hoogenboom,2005,Nat.Biotechnol.23:1105-16、Dufner et al.,2006,Trends Biotechnol.24:523-29、Feldhaus et al.,2003,Nat.Biotechnol.21:16370、及びSchlapschy et al.,2004,Protein Eng.Des.Sel.17:847-60を参照されたい)。
【0275】
FRライブラリアプローチでは、FRの特定の位置に複数の残基バリアントを導入した後、ライブラリをスクリーニングして、グラフトされたCDRを最もよくサポートするFRを選択する。置換される残基は、CDR構造に潜在的に寄与すると同定された「バーニア」残基の一部又は全て(例えば、Foote and Winter,1992,J.Mol.Biol.224:487-99を参照されたい)、又はBaca et alによって同定されたより限定された標的残基のセットからのものを含み得る(1997,J.Biol.Chem.272:10678-84)。
【0276】
FRシャフリングでは、全FRを、選択された残基バリアントのコンビナトリアルライブラリを創出するのではなく、非ヒトCDRと組み合わせる(例えば、Dall’Acqua et al.,Methods,2005,36:43-60を参照されたい)。ライブラリは、結合について、まず、VLをヒト化するのに続き、VHをヒト化する、2ステッププロセスでスクリーニングすることができる。代替的に、1ステップのFRシャフリングプロセスを使用することができる。かかるプロセスは、得られた抗体が、発現の増強、親和性の増大、及び熱的安定性を含む、生化学的特性及び物理化学的特性の改善を呈したので、2ステップスクリーニングより効率的であることが示されている(例えば、Damschroder et al.,2007,Mol.Immunol.44:3049-60を参照されたい)。
【0277】
「ヒューマニアリング」方法は、必須の最小特異性決定基(minimum specificity determinant、MSD)の実験的同定に基づくものであり、非ヒト断片をヒトFRライブラリに順次置き換えし、結合を評価することに基づいている。ヒューマニアリング方法は、非ヒトVH鎖及び非ヒトVL鎖のCDR3の領域で始まり、VH及びVLの両方の、CDR1及びCDR2を含む、非ヒト抗体の他の領域を、ヒトFRへと徐々に置き換える。この手法により、典型的には、エピトープを保持し、ヒトVセグメントのCDRが明確に異なる複数のサブクラスの抗体を同定する。ヒューマニアリングは、ヒト生殖細胞系列遺伝子抗体に91~96%相同な抗体の単離を可能とする(例えば、Alfenito,Cambridge Healthtech Institute’s Third Annual PEGS,The Protein Engineering Summit,2007を参照されたい)。
【0278】
「ヒト操作」方法は、ヒトにおける免疫原性を低減する一方で、元の非ヒト抗体の所望の結合特性を保持する修飾抗体を産生するように、抗体のアミノ酸配列へと特異的変化を施すことにより、マウス抗体又はキメラ抗体若しくは抗体断片などの非ヒト抗体又は抗体断片を変更することを伴う。一般に、技法は、非ヒト(例えば、マウス)抗体のアミノ酸残基を、「低リスク」残基、「中程度のリスク」残基、又は「高リスク」残基として分類することを伴う。分類は、特定の置換を施すことの予測される利益(例えば、ヒトにおける免疫原性のための)を、結果として得られる抗体のフォールディングに置換が影響を及ぼすリスクに対して査定する、グローバルなリスク/有益性の計算を使用して実施する。非ヒト(例えば、マウス)抗体配列の、所与の位置(例えば、低リスク又は中程度のリスク)において置換される、特定のヒトアミノ酸残基は、非ヒト抗体の可変領域に由来するアミノ酸配列を、特異的又はコンセンサスヒト抗体配列の対応する領域とアライメントすることにより選択することができる。非ヒト配列の低リスク又は中リスクの位置にあるアミノ酸残基は、アライメントに応じてヒト抗体配列の対応する残基に置き換えることができる。ヒト操作タンパク質を作製するための技術は、Studnicka et al.,1994,Protein Engineering 7:805-14、米国特許第5,766,886号、同第5,770,196号、同第5,821,123号、及び同第5,869,619号、並びに国際公開第93/11794号に詳しく記載されている。
【0279】
複合ヒト抗体は、例えば、Composite Human Antibody(商標)テクノロジ(Antitope Ltd.,Cambridge,United Kingdom)を使用して生成することができる。複合ヒト抗体を生成するためには、複数のヒト抗体可変領域配列の断片から、T細胞エピトープを回避する方法で可変領域配列を設計することで、得られる抗体の免疫原性を最小限に抑える。そのような抗体は、ヒト定常領域配列、例えば、ヒト軽鎖定常領域及び/又はヒト重鎖定常領域を含み得る。
【0280】
脱免疫抗体は、T細胞エピトープが除去された抗体である。脱免疫抗体を作製する方法が記載されている。例えば、Jones et al.,Methods Mol Biol.2009;525:405-23、xiv,and De Groot et al.,Cell.Immunol.244:148-153(2006)を参照されたい)。脱免疫抗体は、T細胞エピトープ枯渇可変領域及びヒト定常領域を含む。略述すると、抗体のVH及びVLをクローニングし、その後、T細胞増殖アッセイにおいて、抗体のVH及びVLに由来する重複ペプチドを調べることにより、T細胞エピトープを同定する。T細胞エピトープは、ヒトMHCクラスIIと結合するペプチドを同定するためのインシリコの方法によって同定される。変異は、ヒトMHCクラスIIへの結合を無効にするためにVH及びVLに導入される。次いで、VH及びVLを利用して、脱免疫化抗体を生成する。
【0281】
5.2.4ヒト抗体
具体的な実施態様では、本明細書で提供される多重特異性抗体は、完全ヒト抗ヒト抗体又はその断片を含む。完全ヒト抗体は、当技術分野で即知の任意の方法によって産生され得る。本明細書で提供されるヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列(複数可)を既知のヒト定常ドメイン配列(複数可)と組み合わせることによって構築することができる。あるいは、本開示のヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫細胞株及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、例えば、Kozbor,1984,J.Immunol.133:3001-05;Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications 51-63(1987);及びBoerner et al.,1991,J.Immunol.147:86-95に記載されている。
【0282】
免疫化により、内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の完全なレパートリを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することも可能である。ヒト抗体レパートリを発現するトランスジェニックマウスは、多種多様な潜在的薬物標的に対する高親和性ヒト配列モノクローナル抗体を生成するために使用されている(例えば、Jakobovits,A.,1995,Curr.Opin.Biotechnol.6(5):561-66;Bruggemann and Taussing,1997,Curr.Opin.Biotechnol.8(4):455-58;米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号;並びにLonberg et al.,2005,Nature Biotechnol.23:1117-25を参照されたい)。
【0283】
あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対して指向する抗体を産生するヒトBリンパ球の不死化を介して調製され得る(例えば、そのようなBリンパ球は個体から回収され得るか、又はインビトロで免疫化され得る)(例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy(1985);Boerner et al.,1991,J.Immunol.147(1):86-95;及び米国特許第5,750,373号を参照されたい)。
【0284】
遺伝子シャッフリングを使用して、非ヒト、例えば、齧歯動物の抗体からヒト抗体を誘導することもでき、この場合、ヒト抗体は出発非ヒト抗体と同様の親和性及び特異性を有する。「エピトープインプリンティング」又は「誘導選択」とも呼ばれるこの方法によれば、本明細書に記載されるファージディスプレイ技術によって取得される非ヒト抗体断片の重鎖又は軽鎖可変領域のいずれかがヒトVドメイン遺伝子のレパートリで置き換えられ、非ヒト鎖/ヒト鎖scFv又はFabキメラの集団が作製される。抗原による選択は、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFv又はFabの単離をもたらし、ここで、ヒト鎖は、一次ファージディスプレイクローン中の対応する非ヒト鎖の除去の際に破壊された抗原結合部位を回復させる例えば、エピトープは、ヒト鎖パートナーの選択をガイド(インプリント)する)。残りの非ヒト鎖を置換するためにプロセスを繰り返すと、ヒト抗体が得られる(例えば、国際公開第93/06213号、及びOsbourn et al.,2005,Methods 36:61-68を参照されたい)。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の従来のヒト化とは異なり、この技術は、非ヒト起源のFR又はCDR残基を有さない完全ヒト抗体を提供する。細胞表面抗原に対してマウス抗体をヒト化するための誘導選択の例としては、卵巣がん細胞上に存在する葉酸結合タンパク質(例えば、Figini et al.,1998,Cancer Res.58:991-96を参照されたい)、及び肝細胞がん上で高度に発現されるCD147(例えば、Bao et al.,2005,Cancer Biol.Ther.4:1374-80を参照されたい)が挙げられる。
【0285】
ガイドされた選択アプローチの潜在的な欠点は、一方の抗体鎖のシャッフリングが、他方を一定に保ちながらエピトープドリフトをもたらし得ることである。非ヒト抗体によって認識されるエピトープを維持するために、CDR保持を適用することができる(例えば、Klimka et al.,2000,Br.J.Cancer.83:252-60、及びBeiboer et al.,2000,J.Mol.Biol.296:833-49を参照されたい)。この方法において、非ヒトVH CDR3は、このCDRが抗原結合部位の中心にあり得、抗原認識のための抗体の最も重要な領域であり得るので、一般的に保持される。しかしながら、場合によっては、非ヒト抗体のVH CDR3及びVL CDR3、並びにVH CDR2、VL CDR2、及びVL CDR1が保持されてもよい。
【0286】
5.2.5 Fc操作
本明細書で提供される抗体をFc操作によって修飾することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、抗体のFc領域に対する修飾は、抗体のエフェクター機能の減少又は排除をもたらす。特定の実施形態では、エフェクター機能は、ADCC、ADCP、及び/又はCDCである。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、ADCCである。他の実施形態では、エフェクター機能は、ADCPである。他の実施形態では、エフェクター機能は、CDCである。一実施形態では、エフェクター機能は、ADCC及びADCPである。一実施形態では、エフェクター機能は、ADCC及びCDCである。一実施形態では、エフェクター機能はADCP及びCDCである。一実施形態では、エフェクター機能は、ADCC、ADCP、及びCDCである。これは、抗体のFc領域に1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を導入することによって達成することができる。
【0287】
特定の実施形態では、抗体のFc領域に対する修飾は、抗体のエフェクター機能の増強をもたらす。特定の実施形態では、エフェクター機能は、ADCC、ADCP、及び/又はCDCである。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、ADCCである。他の実施形態では、エフェクター機能は、ADCPである。他の実施形態では、エフェクター機能は、CDCである。一実施形態では、エフェクター機能は、ADCC及びADCPである。一実施形態では、エフェクター機能は、ADCC及びCDCである。一実施形態では、エフェクター機能はADCP及びCDCである。一実施形態では、エフェクター機能は、ADCC、ADCP、及びCDCである。これは、抗体のFc領域に1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を導入することによって達成することができる。いくつかの実施形態では、ノブインホール(Knob-in-hole、KIH)技術を使用して抗体を操作した。
【0288】
抗体の血清半減期を増加させるために、例えば、米国特許第5,739,277号に記載されているように、サルベージ受容体結合エピトープを抗体(特に抗体断片)に組み込むことができる。「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボ血清半減期の増加に関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
【0289】
5.2.6代替え的な結合剤
本開示は、本明細書に開示される抗体と同じエピトープと特異的に結合する非免疫グロブリン結合剤を包含する。いくつかの実施形態では、非免疫グロブリン結合剤は、競合結合アッセイにおいて本開示の抗体を置き換える又は本開示の抗体によって置き換えられる剤として同定される。これらの代替結合剤は、例えば、当該技術分野において既知の操作されたタンパク質スカフォールドのいずれかを含み得る。そのようなスカフォールドとしては、例えば、リガンド結合部位を形成する4つの超可変ループを支持する剛性ベータバレルを特徴とするタンパク質構造である、リポカリンスカフォールドに基づく抗カリンが挙げられる。新規の結合特異性は、機能的ディスプレイ及び誘導選択(guided selection)と組み合わせて、ループ領域における標的ランダム突然変異誘発によって操作され得る(例えば、Skerra,2008,FEBS J.275:2677-83を参照されたい)。他の好適なスカフォールドとしては、例えば、ヒトフィブロネクチンIIIの10番目の細胞外ドメインに基づくアドネクチン又はモノボディ(例えば、Koide and Koide,2007,Methods Mol.Biol.352:95-109を参照されたい);ブドウ球菌タンパク質AのZドメインに基づくアフィボディ(例えば、Nygren et al.,2008,FEBS J.275:2668-76を参照されたい);アンキリン反復タンパク質に基づくDARPin(例えば、Stumpp et al.,2008,Drug.Discov.Today 13:695-701を参照されたい);ヒトFynタンパク質キナーゼのSH3ドメインに基づくフィノマー(例えば、Grabulovski et al.,2007,J.Biol.Chem.282:3196-204を参照されたい);スルフォロブス・アシドラリウス(Sulfolobus acidolarius)のSac7dに基づくアフィチン(例えば、Krehenbrink et al.,2008,J.Mol.Biol.383:1058-68を参照されたい);ヒトy-B-クリスタリンに基づくアフィリン(例えば、Ebersbach et al.,2007,J.Mol.Biol.372:172-85を参照されたい);膜受容体タンパク質のAドメインに基づくアビマー(例えば、Silverman et al.,2005,Biotechnol.23:1556-61を参照されたい);システインリッチノッチンペプチド(例えば、Kolmar,2008,FEBS J.275:2684-90を参照されたい);及び操作されたクニッツ型阻害剤(例えば、Nixon and Wood,2006,Curr.Opin.Drug.Discov.Dev.9:261-68)を挙げることができる。概説については、例えば、Gebauer and Skerra,2009,Curr.Opin.Chem.Biol.13:245-55を参照されたい。
【0290】
5.2.7抗体バリアント
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される、例えば、CD25及び/又はCD39と結合する抗体又は抗原結合断片のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性(特異性、熱安定性、発現レベル、エフェクター機能、グリコシル化、免疫原性の低下、又は溶解性を含むがこれらに限定されない)を改善することが望ましい場合がある。したがって、本明細書において記載される抗体に加えて、抗体バリアントも調製され得ることが企図される。例えば、抗体バリアントは、適切なヌクレオチド変化を、コードするDNAに導入することによって、及び/又は所望の抗体又はポリペプチドを合成することによって調製することができる。当業者は、アミノ酸変化が、グリコシル化部位の数若しくは位置の変化、又は膜アンカー特性の変更など、抗体の翻訳後プロセス変更し得ることを理解する。
【0291】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗体は、例えば、任意のタイプの分子を抗体に共有結合させることによって、化学的に修飾される。抗体誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護(protecting/blocking)基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞のリガンド又は他のタンパク質への連結などにより化学的に修飾された抗体を含み得る。多数の化学的修飾のうちのいずれかは、特異的化学開裂、アセチル化、製剤化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含むがこれらに限定されない、既知の技法により実行することができる。加えて、抗体は、1つ又は2つ以上の非古典的アミノ酸を含み得る。
【0292】
変異は、抗体又はポリペプチドをコードする1つ又は2つ以上のコドンの置換、欠失、又は挿入であって、天然配列の抗体又はポリペプチドと比較してアミノ酸配列の変化を結果としてもたらす、置換、欠失、又は挿入であり得る。アミノ酸置換は、ロイシンのセリンによる置き換え、例えば、保存的アミノ酸の置き換えなど、あるアミノ酸を類似の構造的及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸に置き換えた結果であり得る。当業者に知られている標準的な技術を使用して、例えば、部位特異的変異誘発及びアミノ酸置換をもたらすPCR媒介変異誘発を含む、本明細書において提供される分子をコードするヌクレオチド配列に変異を導入することができる。挿入又は欠失は、任意選択的に、約1~5のアミノ酸の範囲であり得る。特定の実施形態では、置換、欠失、又は挿入は、元の分子と比較して、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、又は2未満のアミノ酸置換を含む。具体的な実施形態では、置換は、1つ又は2つ以上の予測される非必須アミノ酸残基で行われる保存的アミノ酸置換である。許容される変異は、配列内に、アミノ酸の挿入、欠失、又は置換を体系的に施し、結果として得られるバリアントを、全長天然配列又は成熟天然配列が呈する活性について調べることにより決定することができる。
【0293】
アミノ酸配列の挿入には、1つの残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端の融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントは、抗体のN末端又はC末端の、酵素(例えば、抗体指向酵素によるプロドラッグ療法)又は抗体の血清半減期を延長するポリペプチドへの融合体を含む。
【0294】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の電荷を持つ側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるアミノ酸置換である。類似した電荷を持つ側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。代替的に、飽和変異誘発などにより、コード配列の全部又は一部に沿ってランダムに変異を導入することができ、得られた突然変異体の生物活性をスクリーニングして、活性を保持する突然変異体を同定することもできる。変異誘発の後、コードされたタンパク質を発現させ、タンパク質の活性を決定することができる。
【0295】
抗体の生物学的特性における実質的な修飾は、(a)置換領域内のポリペプチドの構造骨格、例えば、シート又はヘリックス立体構造、(b)標的部位における分子の電荷若しくは疎水性、又は(c)側鎖のバルク、の維持に対するそれらの効果が著明に異なる置換を選択することにより達成することができる。代替的に、保存的(例えば、同様な特性及び/又は側鎖による、アミノ酸群内の)置換は、特性を維持するか、又は特性を著明に変化させないように施すことができる。アミノ酸は、以下に挙げるその側鎖の特性の類似性に応じてグループ化することができる(例えば、Lehninger,Biochemistry 73-75(2d ed.1975)参照):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);及び(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。
【0296】
代替的に、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいてグループに分けられることもある:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の向きに影響を与える残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0297】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを、別のクラスのメンバーと交換することを伴う。そのような置換残基はまた、保存的置換部位に、又は残りの(非保存的)部位に導入され得る。したがって、一実施形態では、CD25エピトープと結合する抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載の抗体、例えば、以下の第7節に記載される抗体のアミノ酸配列と少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、CD39エピトープと結合する抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載の抗体、例えば、以下の第7節に記載される抗体のアミノ酸配列と少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0298】
変形は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)変異誘発、アラニンスキャニング、PCR変異誘発など、当該技術分野で知られている方法を用いて行うことができる。部位特異的変異誘発(例えば、Carter,1986,Biochem J.237:1-7、及びZoller et al.,1982,Nucl.Acids Res.10:6487-500を参照されたい)、カセット変異誘発(例えば、Wells et al.,1985,Gene 34:315-23を参照されたい)、又は他の公知の技術を、クローニングされたDNAに対して実施して、抗CD25及び/又は抗CD39抗体バリアントDNAを産生することができる。
【0299】
本明細書で提供される抗体の適切な立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基も、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防ぐために、例えば、アラニン又はセリンなど別のアミノ酸で置換することもできる。逆に、システイン結合を抗体に付加して、その安定性を改善することができる(例えば、抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
【0300】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体分子は、「脱免疫化」抗体である。「脱免疫化」抗体は、ヒト化抗体又はキメラ抗体に由来する抗体であり、それぞれの元の脱免疫化されていない抗体と比較して、抗体の免疫原性の低減をもたらす、そのアミノ酸配列における1つ又は2つ以上の変化を有する。このような抗体変異体を生成するための手順の1つは、抗体分子のT細胞エピトープの同定及び除去を含む。第1の工程では、抗体分子の免疫原性は、当技術分野で即知のいくつかの方法、例えば、T細胞エピトープのインビトロ決定又はそのようなエピトープのインシリコ予測によって決定することができる。T細胞エピトープ機能に重要な残基が同定されたら、免疫原性を除去し、抗体活性を保持するために変異を加えることができる。総説については、例えば、Jones et al.,2009,Methods in Molecular Biology 525:405-23を参照されたい。
【0301】
5.2.8インビトロ親和性成熟
いくつかの実施形態では、親抗体と比較して、親和性、安定性、又は発現レベルなどの特性が改善された抗体バリアントは、インビトロ親和性成熟によって調製され得る。天然のプロトタイプと同様に、インビトロでの親和性成熟は、変異及び選択の原理に基づいている。抗体のライブラリは、生物(例えば、ファージ、細菌、酵母、又は哺乳動物細胞)の表面上に、又はそれらをコードするmRNA若しくはDNAと関連して(例えば、共有結合又は非共有結合で)表示される。ディスプレイされた抗体を親和性選択することで、その抗体をコードする遺伝情報を持つ生物又は複合体の単離が可能になる。ファージディスプレイなどのディスプレイ法を用いて、2~3回の変異と選択を繰り返すことで、通常、ナノモル台前半の親和性を持つ抗体断片が得られる。親和性成熟された抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性を有し得る。
【0302】
ファージディスプレイは、抗体の表示と選択のための広く普及した方法である。抗体は、Fd又はM13バクテリオファージの表面に、バクテリオファージコートタンパク質への融合物として表示される。選択は、抗原にさらされて、ファージディスプレイされた抗体を、標的に結合させること、すなわち「パニング」と呼ばれるプロセスを伴う。抗原に結合したファージを回収し、細菌に感染させてファージを産生し、更に選択を繰り返すために使用する。総説については、例えば、Hoogenboom,2002,Methods.Mol.Biol.178:1-37;及びBradbury and Marks,2004,J.Immunol.Methods 290:29-49を参照されたい。
【0303】
酵母ディスプレイシステムでは(例えば、Boder et al.,1997,Nat.Biotech.15:553-57、及びChao et al.,2006,Nat.Protocols 1:755-68)、抗体は、Aga1pとのジスルフィド結合を介して酵母細胞壁に付着する、酵母凝集素タンパク質Aga2pの接着サブユニットに融合され得る。Aga2pを介したタンパク質のディスプレイは、タンパク質を細胞表面から遠ざけ、酵母細胞壁上の他の分子との相互作用の可能性を最小限にする。磁気分離及びフローサイトメトリーを用いてライブラリをスクリーニングし、親和性又は安定性が改善された抗体を選択する。目的の可溶性抗原への結合は、ビオチン化抗原及びフルオロフォアに複合したストレプトアビジンなどの二次試薬で酵母を標識することによって決定される。抗体の表面発現の変形は、scFvに隣接する血球凝集素又はc-Mycエピトープタグのいずれかを免疫蛍光標識することで測定できる。発現は、ディスプレイされたタンパク質の安定性と相関することが示されているため、抗体を選択して、安定性と親和性を改善することができる(例えば、Shusta et al.,1999,J.Mol.Biol.292:949-56を参照されたい)。酵母ディスプレイの追加の利点は、ディスプレイされたタンパク質が真核生物の酵母細胞の小胞体で折り畳まれ、小胞体シャペロンと品質管理機構が利用されることである。成熟が完了すると、酵母の表面に表示されている間、抗体の親和性を便利に「滴定」することができ、各クローンの発現と精製の必要性がなくなる。酵母表面ディスプレイの理論的な限界は、他のディスプレイ方法に比べて機能的なライブラリのサイズが小さくなる可能性があることである。しかし、最近のアプローチでは、酵母細胞の交配系を利用して、1014サイズと推定されるコンビナトリアル多様性を創出している(例えば、米国特許出願公開第2003/0186374号、及びBlaise et al.,2004,Gene 342:211-18参照されたい)。
【0304】
リボソームディスプレイでは、抗体-リボソーム-mRNA(ARM)の複合体を生成し、無細胞系で選択する。特定の抗体ライブラリをコードするDNAライブラリは、終止コドンを欠くスペーサー配列と遺伝的に融合している。このスペーサー配列は、翻訳されてもペプチジルtRNAに付着したままリボソームトンネルを占めるため、目的のタンパク質がリボソームから突出して折り畳まれることになる。得られたmRNA、リボソーム、及びタンパク質の複合体は、表面に結合したリガンドと結合し、リガンドとの親和性捕捉により、抗体とそれをコードするmRNAを同時に単離することができる。その後、リボソームに結合したmRNAを逆転写してcDNAに戻し、次いで変異誘発を受け、次回の選択に使用することができる(例えば、Fukuda et al.,2006,Nucleic Acids Res.34:e127を参照されたい)。mRNAディスプレイでは、ピューロマイシンをアダプタ分子として用いて、抗体とmRNAとの間に共有結合を形成する(Wilson et al.,2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:3750-55)。
【0305】
これらの方法は完全にインビトロで行われるため、他の選択技術に比べて主に2つの利点がある。最初に、ライブラリの多様性は、細菌細胞の形質転換効率によって制限されるのではなく、試験管内に存在するリボソーム及び異なるmRNA分子の数によってのみ制限される。2番目に、各回の選択の後に、例えば、非プルーフリーディングポリメラーゼによって、ランダムな変異を容易に導入することができ、これは、多様性工程の後にライブラリを変換する必要がないためである。
【0306】
いくつかの実施形態では、哺乳動物のディスプレイシステムを使用することができる。
【0307】
多様性はまた、標的化された方法で、又はランダムな導入を介して、抗体ライブラリのCDRに導入され得る。前者のアプローチには、高レベル又は低レベルの変異誘発を介して抗体の全てのCDRを順次標的にすること、又は体細胞超変異の単離したホットスポット(例えば、Ho et al.,2005,J.Biol.Chem.280:607-17)、又は実験的根拠若しくは構造的理由から親和性に影響を与えると疑われる残基を標的にすることが含まれる。また、DNAシャッフリング又は同様の技術を介して、天然に多様性のある領域を置き換えることで、多様性を導入することもできる(例えば、Lu et al.,2003,J.Biol.Chem.278:43496-507、米国特許第5,565,332号及び同第6,989,250号を参照されたい)。代替的な技術は、フレームワーク領域残基に伸長する超可変ループを標的とするか(例えば、Bond et al.,2005,J.Mol.Biol.348:699-709を参照されたい)、CDRにおけるループ欠失及び挿入を利用するか、又はハイブリダイゼーションに基づく多様化を使用する(例えば、米国特許公開第2004/0005709号を参照されたい)。CDRに多様性を生成する追加的な方法は、例えば、米国特許第7,985,840号に開示されている。抗体ライブラリ及び/又は抗体親和性成熟の生成に使用できる更なる方法は、例えば、米国特許第8,685,897号及び同第8,603,930号、並びに米国特許出願公開第2014/0170705号、同第2014/0094392号、同第2012/0028301号、同第2011/0183855号、及び同第2009/0075378号に開示されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0308】
ライブラリのスクリーニングは、当該技術分野で知られている様々な技術によって達成することができる。例えば、抗体を、固体支持体、カラム、ピン、若しくはセルロース/ポリ(フッ化ビニリデン)膜/他のフィルターに固定化し、吸着プレートに固定される若しくは細胞選別で使用される宿主細胞に発現させる、又はストレプトアビジンでコーティングされたビーズで捕捉のためにビオチンに複合させる、又はディスプレイライブラリをパニングするための任意の他の方法で使用することができる。
【0309】
インビトロでの親和性成熟法の総説については、例えば、Hoogenboom,2005,Nature Biotechnology 23:1105-16、Quiroz and Sinclair,2010,Revista Ingeneria Biomedia 4:39-51、及びその中の参考文献を参照されたい。
【0310】
5.2.9抗体修飾
本明細書で提供される、例えば、CD25及び/又はCD39と結合する抗体の共有結合修飾は、本開示の範囲内に含まれる。共有結合修飾には、抗体の標的アミノ酸残基を、抗体の選択された側鎖又はN末端若しくはC末端残基と反応可能な有機誘導体化剤と反応させることが含まれる。他の修飾としては、グルタミニル及びアスパラギニル残基のそれぞれ対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(例えば、Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties 79-86(1983)を参照されたい)、N末端アミンのアセチル化、並びにC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0311】
本開示の範囲に含まれる本明細書で提供される抗体の他の種類の共有結合修飾には、抗体又はポリペプチドのネイティブなグリコシル化パターンを変更すること(例えば、Beck et al.,2008,Curr.Pharm.Biotechnol.9:482-501、及びWalsh,2010,Drug Discov.Today 15:773-80を参照されたい)、及び、抗体を様々な非タンパク質ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンのうちの1つに、例えば、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、又は同第4,179,337号に記載されている方法で連結することが含まれる。
【0312】
本開示の抗体はまた、別の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列、例えば、エピトープタグと融合された抗体を含むキメラ分子を形成するように修飾され得る(例えば、Terpe,2003,Appl.Microbiol.Biotechnol.60:523-33を参照されたい)、又はIgG分子のFc領域(例えば、Aruffo,Antibody Fusion Proteins 221-42(Chamow and Ashkenazi eds.,1999)を参照されたい)と融合したpIgRと結合する一本鎖抗体を含むキメラ分子を形成するように修飾され得る。
【0313】
例えば、CD25及び/又はCD39と結合する本明細書で提供される抗体、及び異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質も本明細書で提供される。
【0314】
また、本明細書で提供されるのは、CD25及び/又はCD39抗原と結合する抗体のパネルである。特定の実施形態では、抗体のパネルは、異なる結合速度、異なる解離速度、CD25及び/若しくはCD39抗原に対する異なる親和性、並びに/又はCD25及び/若しくはCD39抗原に対する異なる特異性を有する。いくつかの実施形態では、パネルは、約10個、約25個、約50個、約75個、約100個、約125個、約150個、約175個、約200個、約250個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、約550個、約600個、約650個、約700個、約750個、約800個、約850個、約900個、約950個、又は約1000個以上の抗体を含むか、又はそれからなる。抗体のパネルは、ELISAなどのアッセイに例えば、96ウェル又は384ウェルプレートで使用することができる。
【0315】
5.2.10免疫複合体
本開示はまた、合成リンカーによって1つ又は2つ以上の非抗体剤と共有結合された本開示の抗体のいずれか1つを含む複合体を提供する。
【0316】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、例えば、治療剤(例えば、細胞傷害性剤)、又は診断用も若しくは検出可能な分子と複合されるか、又は組換えにより融合される。複合抗体又は組換え融合抗体は、例えば、疾患若しくは障害の治療又は予防に有用であり得る。複合抗体又は組換え融合抗体は、例えば、疾患若しくは障害の発症、発達、進行、及び/又は重症度の監視あるいは予後のために有用であり得る。
【0317】
このような診断及び検出は、例えば、抗体を検出可能な物質にカップリングさせることにより達成することができ、限定されないが、様々な酵素、例えば、限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼ;補欠分子族、例えば、限定されないが、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチン;蛍光物質、例えば、限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリスリン;発光物質、例えば、限定されないが、ルミノール;生体発光物質、例えば、限定されないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、又はエクオリン;化学発光物質、例えば、限定されないが、アクリジニウム系化合物又はHALOTAG;放射性物質、例えば、限定されないが、ヨウ素(131I、125I、123I、及び121I,)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、及び111In)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga及び67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、又は117Sn;種々の陽電子放出断層撮影を使用する陽電子放出金属;及び非放射性常磁性金属イオンが含まれる。
【0318】
また、本明細書で提供されるのは、異種タンパク質又はポリペプチド(又はその断片、例えば、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、又は約100アミノ酸のポリペプチド)と組換えにより融合又は化学的に複合(共有結合又は非共有結合)して融合タンパク質を生成する抗体、及びその使用である。特に、本明細書で提供されるのは、本明細書で提供される抗体の抗原結合断片(例えば、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3)と、異種タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドと、を含む融合タンパク質である。一実施形態では、抗体が融合される異種タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドは、抗体を特定の細胞型に標的化するのに有用である。
【0319】
更に、本明細書で提供される抗体は、精製を容易にするために、ペプチドなどのマーカー又は「タグ」配列と融合させることができる。具体的な実施形態では、マーカー又はタグのアミノ酸配列は、とりわけpQEベクター(例えば、QIAGEN,Inc.を参照)に提供されているタグなどのヘキサヒスチジンペプチドであり、その多くが市販されている。例えば、Gentz et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821-24に記載されているように、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の都合のよい精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグとしては、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する血球凝集素(「HA」)タグ(Wilson et al.,1984,Cell 37:767-78)、及び「FLAG」タグが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0320】
部位(ポリペプチドを含む)を抗体に融合又は複合させる方法が知られている(例えば、Arnon et al.,Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy,in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy 243-56(Reisfeld et al.eds.,1985);Hellstrom et al.,Antibodies for Drug Delivery,in Controlled Drug Delivery623-53(Robinson et al.eds.,2d ed.1987);Thorpe,Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy:A Review,in Monoclonal Antibodies:Biological and Clinical Applications 475-506(Pinchera et al.eds.,1985);Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy,in Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy 303-16(Baldwin et al.eds.,1985);Thorpe et al.,1982,Immunol.Rev.62:119-58;米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、同第5,723,125号、同第5,783,181号、同第5,908,626号、同第5,844,095号、及び同第5,112,946号、欧州特許第307,434号、欧州特許第367,166号、欧州特許第394,827号、国際公開第91/06570号、同第96/04388号、同第96/22024号、同第97/34631号、及び同第99/04813号、Ashkenazi et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:10535-39、Traunecker et al.,1988,Nature,331:84-86、Zheng et al.,1995,J.Immunol.154:5590-600、並びにVil et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:11337-41を参照されたい)。
【0321】
融合タンパク質は、例えば、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エクソンシャッフリング、及び/又はコドンシャッフリング(総称して「DNAシャッフリング」と呼ばれる)の手法で生成され得る。DNAシャッフリングを使用して、例えば、より高い親和性及びより低い解離速度を有する抗体を含む、本明細書で提供される抗体の活性を変更することができる(例えば、米国特許第5,605,793号、同第5,811,238号、同第5,830,721号、同第5,834,252号、及び同第5,837,458号、Patten et al.,1997,Curr.Opinion Biotechnol.8:724-33、Harayama,1998,Trends Biotechnol.16(2):76-82、Hansson et al.,1999,J.Mol.Biol.287:265-76、及びLorenzo and Blasco,1998,Biotechniques 24(2):308-13を参照されたい)。抗体、又はコードされた抗体は、組換えの前に、エラープローンPCR、ランダムヌクレオチド挿入又は他の方法によるランダム変異誘発を受けることによって変更され得る。本明細書で提供される抗体をコードするポリヌクレオチドは、1つ又は2つ以上の異種分子の1つ又は2つ以上のコンポーネント、モチーフ、セクション、パート、ドメイン、断片などと組換えられ得る。
【0322】
本明細書で提供される抗体は、例えば、米国特許第4,676,980号に記載されているように、二次抗体と複合して抗体ヘテロ結合体を形成することもできる。
【0323】
本明細書で提供される抗体は、固体支持体に付着させることもでき、これは、標的抗原のイムノアッセイ又は精製に特に有用である。このような固体支持体としては、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0324】
リンカーは、細胞内での複合薬剤の放出を促進する「切断性リンカー」であり得るが、非切断性リンカーも本明細書において企図される。本開示の複合体に使用するリンカーとしては、限定されないが、酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾンリンカー)、ジスルフィド含有リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー((例えば、アミノ酸、例えば、バリン及び/又はシトルリン、例えば、シトルリン-バリン又はフェニルアラニン-リジンを含むペプチドリンカー)、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー(例えば、Chari et al.,1992,Cancer Res.52:127-31、及び米国特許第5,208,020号を参照されたい)、チオエーテルリンカー、又は多剤輸送体を介した耐性を回避するように設計された親水性リンカー(例えば、Kovtun et al.,2010,Cancer Res.70:2528-37を参照されたい)が挙げられる。
【0325】
抗体及び薬剤の複合体は、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、スルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)などの様々な二官能性タンパク質カップリング剤を用いて作製することができる。本開示は更に、抗体及び薬剤の複合体が、当該技術分野で開示されている任意の適切な方法を用いて調製され得ることを企図している(例えば、Bioconjugate Techniques(Hermanson ed.,2d ed.2008)を参照)。
【0326】
抗体及び薬剤の従来のコンジュゲーションストラテジーは、Lys残基のε-アミノ又はCys残基のチオール基を伴うランダムなコンジュゲーション化学に基づいており、その結果、不均一な複合体が生じていた。最近開発された技術により、抗体への部位特異的コンジュゲーションが可能になり、結果として、均一な充填量を実現し、抗原結合又は薬物動態が変化した複合体亜集団を回避することができる。これらには、反応性チオール基を提供し、また免疫グロブリンの折り畳み及び組み立てを阻害せず、又は抗原結合を変化させない、重鎖及び軽鎖上の位置でのシステイン置換を含む「チオマブ」の操作が挙げられる(例えば、Junutula et al.,2008,J.Immunol.Meth.332:41-52;及びJunutula et al.,2008,Nature Biotechnol.26:925-32を参照されたい)。別の方法では、終止コドンUGAを終結からセレノシステイン挿入に再コードすることにより、セレノシステインを抗体配列に共翻訳的に挿入し、他の天然アミノ酸の存在下でセレノシステインの求核性セレノール基での部位特異的な共有結合的複合を可能にする(例えば、Hofer et al.,2008,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:12451-56;及びHofer et al.,2009,Biochemistry 48(50):12047-57を参照されたい)。
【0327】
5.3.ポリヌクレオチド
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の抗体をコードするポリヌクレオチドを包含する。「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、ポリペプチドのコード配列のみを含むポリヌクレオチド、並びに追加のコード配列及び/又は非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。本開示のポリヌクレオチドは、RNAの形態又はDNAの形態であり得る。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAが挙げられ、これは、二本鎖又は一本鎖であり得、一本鎖の場合は、コード鎖又は非コード(アンチセンス)鎖であり得る。
【0328】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、宿主細胞からのポリペプチドの発現及び分泌を補助するポリヌクレオチド(例えば、ポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)と同じ読み枠で融合した、ポリペプチドのコード配列を含む。ポリペプチドは、「成熟」型のポリペプチドを形成させるために宿主細胞によって切断されるリーダー配列を有することができる。
【0329】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、マーカー又はタグ配列と同じ読み枠で融合した、ポリペプチドのコード配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、細菌宿主の場合、マーカー配列は、マーカーと融合したポリペプチドの効率的精製を可能にするベクターによって供給されるヘキサヒスチジンタグである。いくつかの実施形態では、マーカーは、他の親和性タグと併せて使用される。
【0330】
本開示は更に、本明細書に記載されたポリヌクレオチドのバリアントに関し、バリアントは、例えば、断片、類似体、及び/又は誘導体をコードする。特定の実施形態では、本開示は、抗体又はその抗原結合断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、及びいくつかの実施形態では、少なくとも約96%、97%、98%又は99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0331】
本明細書で使用するとき、「参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば95%「同一」のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」という語句は、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチドごとに最大5個の点変異を含み得ることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意味することを意図している。言い換えれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列のヌクレオチドのうち最大5%が、欠失若しくは別のヌクレオチドで置換され得るか、又は参照配列の全ヌクレオチドのうち最大5%の数のヌクレオチドが、参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列の5’又は3’の末端位置、又はそれらの末端位置の間の任意の場所で起こり得、参照配列のヌクレオチド間で個別に、又は参照配列内の1つ又は2つ以上の隣接グループで散在する。
【0332】
ポリヌクレオチドバリアントは、コード領域、非コード領域、又はその両方に変化を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、サイレント置換、付加、又は欠失をもたらす変化を含むが、コードされたポリペプチドの特性又は活性を変化させない。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、(遺伝子コードの縮重により)ポリペプチドのアミノ酸配列に変化をもたらさないサイレント置換を含む。ポリヌクレオチドバリアントは、様々な理由のため、例えば、特定の宿主に対するコドン発現を最適化するため(すなわち、ヒトのmRNAのコドンを大腸菌などの細菌宿主が好むものに変更する)、産生することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、配列の非コード領域又はコード領域における少なくとも1つのサイレント変異を含む。
【0333】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、コードされたポリペプチドの発現(又は発現レベル)を調節又は変更するために産生される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、コードされたポリペプチドの発現を増加させるために産生される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、コードされたポリペプチドの発現を減少させるために産生される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、親ポリヌクレオチド配列と比較して、コードされたポリペプチドの発現が増加している。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、親ポリヌクレオチド配列と比較して、コードされたポリペプチドの発現が減少している。
【0334】
特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供される配列表に列挙されるポリヌクレオチドと少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、いくつかの実施形態では、少なくとも約96%、97%、98%、又は99%同一のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0335】
特定の実施形態では、本開示は、本明細書で提供されるポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチドと少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、いくつかの実施形態では、少なくとも約96%、97%、98%、又は99%同一のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0336】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、単離される。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、実質的に純粋である。
【0337】
本明細書に記載のポリヌクレオチドを含むベクター及び細胞も提供される。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、ポリヌクレオチド分子を含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、ポリヌクレオチド分子を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ポリヌクレオチド分子を含む1つ又は2つ以上の発現ベクターを含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ポリヌクレオチド分子を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、1つ又は2つ以上のポリヌクレオチド分子を含む。
【0338】
5.4.抗体を作製する方法又はプロセス
更に別の態様では、本明細書で提供される様々な分子を作製するための方法又はプロセスが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、1つを超える標的分子と結合する分子を作製するためのプロセスであって、Treg細胞の表面上で第1の抗原と結合することができる結合ドメインを取得する機能を実行する工程と、Treg細胞の表面上で第2の抗原と結合することができる結合ドメインを取得する機能を実行する工程と、第1の抗原及び第2の抗原と結合することができる分子を提供する機能を実行する工程と、を含む、プロセスである。
【0339】
本明細書で提供される抗体の組換え発現には、抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築が必要である。本明細書で提供される抗体分子、抗体の重鎖若しくは軽鎖、又はそれらの断片(必ずしもではないが、重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインを含むなど)をコードするポリヌクレオチドが取得され、抗体分子を産生するためのベクターは、当技術分野で周知の技術を使用する組換えDNA技術によって産生され得る。したがって、抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを発現することによりタンパク質を調製するための方法が、本明細書において記載される。当業者に周知である方法を使用して、抗体コード配列並びに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝的組換えが挙げられる。プロモーターと作動可能に連結された、本明細書で提供される抗体分子、抗体の重鎖若しくは軽鎖、抗体若しくはその断片の重鎖若しくは軽鎖可変ドメイン、又は重鎖若しくは軽鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターも提供される。これらのベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含み得(例えば、国際公開第86/05807号及び国際公開第89/01036号、並びに米国特許第5,122,464号を参照されたい)、抗体の可変ドメインは、重鎖全体、軽鎖全体、又は重鎖及び軽鎖両方の全体の発現のために、そのようなベクターにクローニングされ得る。
【0340】
発現ベクターは、従来の技術により宿主細胞に移入され、次いで、トランスフェクションされた細胞は、従来の技術により培養されて、本明細書において提供される抗体を産生する。したがって、異種プロモーターと作動可能に連結された、本明細書で提供される抗体若しくはその断片、又はその重鎖若しくは軽鎖又はその断片、あるいは本明細書で提供される単鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞も本明細書で提供される。二本鎖抗体を発現させるための特定の実施形態では、下記で詳述される通り、免疫グロブリン分子全体の発現のために、重鎖及び軽鎖の両方をコードするベクターが、宿主細胞内で共発現され得る。
【0341】
本明細書で提供される融合タンパク質を発現させるために、様々な宿主発現ベクター系が利用され得る(例えば、米国特許第5,807,715号を参照されたい)。そのような宿主発現系は、目的のコード配列が産生され、続いて精製され得るビヒクルを表すが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換又はトランスフェクションされた場合に、本明細書において提供される抗体分子をインサイチュで発現し得る細胞も表す。これらは、限定されないが、例えば、微生物、例えば、抗体コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミドDNA発現ベクター、又はコスミドDNA発現ベクターにより形質転換した細菌(例えば、E.coli及びB.Subtilis);抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、Saccharomyces Pichia);抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させるか、又は抗体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)により形質転換した植物細胞系;又は、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)若しくは哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、NS0、及び3T3細胞)が含まれる。特に組換え抗体分子全体の発現には、Escherichia coliなどの細菌細胞、又は真核細胞を、組換え抗体分子の発現に使用することができる。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーター要素などのベクターと併用することで、抗体の効果的な発現系となる(Foecking et al.,1986,Gene 45:101;及びCockett et al.,1990,Bio/Technology 8:2)。いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗体は、CHO細胞内で産生される。特定の実施形態では、CD25抗原と免疫特異的に結合する、本明細書で提供される抗体をコードするヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、又は組織特異的プロモーターによって調節される。特定の実施形態では、CD39抗原と免疫特異的に結合する、本明細書で提供される抗体をコードするヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、又は組織特異的プロモーターによって調節される。
【0342】
細菌系では、発現させる抗体分子の意図する用途に応じて、多くの発現ベクターが有利に選択され得る。例えば、そのような抗体を大量に産生する場合、抗体分子の医薬組成物を生成するために、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を指示するベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターとしては、融合タンパク質が産生されるように、抗体コード配列がlac Zコード領域と、インフレームで、個別に、ベクターへとライゲーションされ得るE.coli発現ベクターpUR278(Ruther et al.,1983,EMBO 12:1791);pINベクター(Inouye & Inouye,1985,Nucleic Acids Res.13:3101-3109;Van Heeke & Schuster,1989,J.Biol.Chem.24:5503-5509);などが挙げられるが、これに限定されるものではない。pGEXベクターは、グルタチオン5-トランスフェラーゼ(glutathione 5-transferase、GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるためにも使用され得る。概ね、このような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタチオンアガロースビーズに吸着及び結合した後、遊離グルタチオンの存在下で溶出することにより、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローン化された標的遺伝子産物がGST部分から放出され得るように、トロンビン又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計されている。
【0343】
昆虫系では、外来遺伝子を発現させるためのベクターとして、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)が用いられる。ウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞内で増殖する。抗体コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれ得る。
【0344】
哺乳動物の宿主細胞では、多くのウイルスベースの発現系が利用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、目的の抗体コード配列が、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーター及び三連リーダー配列とライゲーションされ得る。次いで、インビトロ又はインビボにおける組換えにより、このキメラ遺伝子は、アデノウイルスゲノム内に挿入され得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)への挿入により、感染した宿主において生存可能であり、抗体分子を発現できる組換えウイルスが生じるであろう(例えば、Logan & Shenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8 1:355-359)。また、挿入された抗体コード配列を効率的に翻訳するためには、特定の開始シグナルが必要となる場合がある。これらのシグナルには、ATG開始コドンと隣接する配列が含まれる。更に、挿入全体の翻訳を確実にするためには、開始コドンが所望のコード配列のリーディングフレームと一致している必要がある。これらの外因性の翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成の両方の様々な起源のものであり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサー要素、転写ターミネーターなどを組み入れることにより、増強され得る(例えば、Bittner et al.,1987,Methods in Enzymol.153:51-544を参照されたい)。
【0345】
更に、挿入された配列の発現を調節するか、又は所望の特定の方法で遺伝子産物を修飾及び処理する宿主細胞株を選択することもできる。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)及び処理(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後の処理及び修飾のための特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。適切な細胞株又は宿主系を選択することで、発現した外来タンパク質を正しく修飾及び処理することができる。この目的で、一次転写物の適切な処理、グリコシル化、及び遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を有する真核性宿主細胞が、使用され得る。そのような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NS0(内因性では免疫グロブリン鎖を全く産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O及びHsS78Bst細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書において提供される完全ヒトモノクローナル抗体は、CHO細胞などの哺乳動物細胞内で産生される。
【0346】
組換えタンパク質を長期間、高収率で産生するためには、安定した発現を利用することができる。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株が操作され得る。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用するのではなく、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)及び選択可能マーカーによって制御されるDNAで、宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後に、操作された細胞は、富化培地中で1~2日間増殖させられ得、次いで、選択培地に切り替えられる。組換えプラスミドの選択マーカーは、選択に耐性を付与し、細胞が、染色体中にプラスミドを安定に組み込み、増殖して増殖巣を形成することを可能にし、次にこの増殖巣は、クローン化して細胞株に増殖することができる。この方法は、抗体分子を発現する細胞株を操作するために有利に使用され得る。そのような操作された細胞株は、抗体分子と直接的又は間接的に相互作用する組成物のスクリーニング及び評価に特に有用であり得る。
【0347】
多数の選択システムを使用することができ、これには、限定されないが、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(Wigler et al.,1977,Cell 11:223)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:202)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al.,1980,Cell 22:8-17)が含まれ、遺伝子は、それぞれtk-、hgprt-、又はaprt-細胞で使用することができる。また、代謝拮抗剤耐性も、以下の遺伝子の選択基準として使用され得る:メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler et al.,1980,Natl.Acad.Sci.USA 77:357;O’Hare et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072);アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Wu and Wu,1991,Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573-596;Mulligan,1993,Science 260:926-932;及びMorgan and Anderson,1993,Ann.Rev.Biochem.62:191-217;1993,TIB TECH 11(5):l55-2 15);及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre et al.,1984,Gene 30:147)。組換えDNA技術の分野で一般に知られている方法を、規定通りに適用して、所望の組換えクローンを選択することができ、そのような方法については、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990);及びChapters 12 and 13,Dracopoli,et al.(eds.),Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY(1994);Colberre-Garapin et al.,1981,J.Mol.Biol.150:1に記載されている。
【0348】
抗体分子の発現レベルは、ベクターの増幅により増大させることができる(総説については、Bebbington and Hentschel,The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning,Vol.3(Academic Press,New York,1987)を参照のこと)。抗体を発現するベクター系のマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞の培養中に存在する阻害剤のレベルが上がると、マーカー遺伝子のコピー数が増加する。増幅された領域は抗体遺伝子と関連しているため、抗体の産生も増加する(Crouse et al.,1983,Mol.Cell.Biol.3:257)。
【0349】
宿主細胞は、本明細書で提供される2つ又はそれ以上の発現ベクターで共トランスフェクトされ得る。2つ又はそれ以上のベクターは、例えば、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの同等な発現を可能にする同一の選択マーカーを含み得る。代替的に、本発明の抗体の異なる成分ポリペプチド、例えば、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、発現することができる単一のベクターを使用することができる。コード配列は、cDNA又はゲノムDNAを含み得る。
【0350】
本明細書において提供される抗体分子が、組換え発現により産生されると、これは、免疫グロブリン分子を精製するための当該技術分野で既知である任意の方法、例えば、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、特に、プロテインAクロマトグラフィの後における特異的抗原についての親和性クロマトグラフィ、及びサイズ除外カラムクロマトグラフィ)、遠心分離、示差的可溶性によって、又はタンパク質を精製するための他の任意の標準的な技法によって、精製され得る。更に、本明細書において提供される抗体は、精製を促進するために、本明細書に記載されているか、又は他の技術分野で知られている異種ポリペプチド配列に融合させることができる。
【0351】
5.5.医薬組成物
一態様では、本開示は、本開示の少なくとも1つの抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を更に提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の本明細書において提供される抗体又はその抗原結合断片と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む。別の態様では、(a)CD25と結合する第1の結合ドメイン、及び(b)第2の標的と結合する第2の結合ドメインと、医薬的に許容される担体と、を含む含む、医薬組成物が本明細書で提供される。本明細書で提供される多重特異性抗体のいずれも、医薬組成物において企図される。特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、CD39と結合する。本明細書で提供される抗体のいずれも、医薬組成物において企図される。
【0352】
別の一般的な態様では、本明細書で提供される多重特異性CD25/CD39抗体と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。特定の実施形態では、多重特異性CD25/CD39抗体は、単離される。また、医薬組成物を製造する方法が提供され、方法は、多重特異性抗体を医薬的に許容される担体と組み合わせて、医薬組成物を得ることを含む。別の態様では、(a)CD25と結合する第1の結合ドメイン、及び(b)CD39と結合する第2の結合ドメインと、医薬的に許容される担体と、を含む含む、医薬組成物が本明細書で提供される。本明細書で提供される多重特異性抗体のいずれも、医薬組成物において企図される。
【0353】
抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物は、所望の純度を有するタンパク質を、水溶液又は凍結乾燥若しくは他の乾燥形態の任意の生理学的に許容される賦形剤(例えば、Remington,Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th ed.1980)を参照されたい)と混合することによって保存用に調製される。
【0354】
本開示の抗体又はその抗原結合断片は、標的細胞/組織への送達に任意の好適な形態で、例えば、マイクロカプセル又はマクロエマルジョンとして(Remington、上記;Park et al.,2005,Molecules 10:146-61、Malik et al.,2007,Curr.Drug.Deliv.4:141-51)、徐放性製剤として((Putney and Burke,1998,Nature Biotechnol.16:153-57)、又はリポソームで(Macleanら,1997,Int.J.Oncol.11:325-32;Kontermann,2006,Curr.Opin.Mol.Ther.8:39-45)製剤化することができる。
【0355】
また、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、例えばコアセルベーション法によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内に、コロイド状薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセルなど)中、又はマクロエマルジョン中に封入することができる。そのような技術は、例えば、Remington(上記)に開示されている。
【0356】
様々な組成物及び送達系が知られており、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片とともに使用することができ、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへのカプセル化、抗体又はその抗原結合断片を発現することができる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu,1987,J.Biol.Chem.262:4429-32)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築などが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、組成物は、制御放出又は徐放系として提供され得る。一実施形態では、制御放出又は徐放を達成するために、ポンプが使用され得る(例えば、Langer,上記;Sefton,1987,Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201-40、Buchwald et al.,1980,Surgery 88:507-16、及びSaudek et al.,1989,N.Engl.J.Med.321:569-74を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用して、予防剤若しくは治療剤(例えば、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片)、又は本明細書で提供される組成物の制御放出若しくは徐放を達成することができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release(Langer and Wise,eds.,1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance(Smolen and Ball eds.,1984);Ranger and Peppas,1983,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61-126、Levy et al.,1985,Science 228:190-92、During et al.,1989,Ann.Neurol.25:351-56、Howard et al.,1989,J.Neurosurg.71:105-12、米国特許第5,679,377号、同第5,916,597号、同第5,912,015号、同第5,989,463号、及び同第5,128,326号、国際公開第99/15154号及び同第99/20253号を参照されたい)。徐放性製剤に用いられるポリマーの例としては、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、及びポリオルトエステルが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、徐放性製剤中で使用されるポリマーは、不活性で、浸出性不純物を含まず、保存時に安定で、無菌で、生分解性である。
【0357】
更に別の実施形態では、制御放出系又は徐放系を特定の標的組織、例えば、鼻腔又は肺に近接して配置することができ、その結果、全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release Vol.2,115-38(1984)を参照されたい)。制御放出系については、例えば、Langer,1990,Science 249:1527-33により議論されている。当業者に公知の任意の技術を使用して、本明細書に記載の1つ又は2つ以上の抗体又はその抗原結合断片を含む徐放製剤を製造することができる(例えば、米国特許第4,526,938号、国際公開第91/05548号及び同第96/20698号、Ning et al.,1996,Radiotherapy & Oncology 39:179-89、Song et al.,1995,PDA J.of Pharma.Sci.& Tech.50:372-97、Cleek et al.,1997,Pro.Int’l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.24:853-54、並びにLam et al.,1997,Proc.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.24:759-60を参照されたい)。
【0358】
5.6.使用方法
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、CD25及び/若しくはCD39を発現する細胞を濃縮、単離、分離、精製、選別、選択、捕捉、検出、又は枯渇する方法であって、CD25及び/又はCD39を発現する細胞を含む試料を提供することと、試料を多重特異性抗体と接触させることと、CD25及び/若しくはCD39を発現し、かつ多重特異性抗体と結合する細胞を濃縮、単離、分離、精製、選別、選択、捕捉、検出、又は枯渇することと、を含み、多重特異性抗体が、CD25と結合することができる第1の結合ドメインと、CD39と結合することができる第2の結合ドメインと、を含む、方法である。いくつかの実施形態では、細胞は、Treg細胞である。いくつかの実施形態では、試料は、血液試料である。別の実施形態では、試料は、組織試料である。
【0359】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、Treg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、Treg細胞を本明細書で提供される多重特異性抗体と接触させることを含む、方法である。
【0360】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、がん細胞及びTreg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、がん細胞及びTreg細胞を本明細書で提供される多重特異性抗体と接触させることを含む、方法である。
【0361】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、がんを有する対象におけるがん細胞及びTreg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、本明細書で提供される多重特異性抗体を対象に投与することを含む、方法である。
【0362】
更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、対象においてがんを治療する方法であって、本明細書で提供される多重特異性抗体を対象に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍がんである。他の実施形態では、がんは、血液がんである。
【0363】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、対象において疾患又は障害を治療する方法であって、有効量の本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を対象に投与することを含む、方法である。
【0364】
また、本明細書で提供されるのは、疾患又は障害を治療する方法であって、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片と組み合わせて1つ又は2つ以上の治療剤を対象に投与する、方法である。
【0365】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、対象における疾患又は障害を治療するための薬剤の製造における、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片の使用である。
【0366】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、対象における疾患又は障害を治療するための薬剤の製造における、本明細書で提供される医薬組成物の使用である。
【0367】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、疾患若しくは状態の予防及び/又は治療に使用するための組成物であり、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を含む。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、疾患又は状態の予防に使用するための組成物であり、組成物は、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を含む。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、疾患又は状態の治療に使用するための組成物であり、組成物は、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を含む。特定の実施形態では、対象は、その治療を必要としている対象である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患又は状態を有する。他の実施形態では、対象は、疾患又は状態を有するリスクにある。いくつかの実施形態では、投与は、疾患又は状態の予防、管理、治療又は寛解をもたらす。
【0368】
一実施形態では、本明細書で提供されるのは、疾患若しくは状態の症状の予防及び/又は治療に使用するための組成物であり、組成物は、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を含む。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、疾患又は状態の症状の予防に使用するための組成物であり、組成物は、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を含む。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、疾患又は状態の症状の治療に使用するための組成物であり、組成物は、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を含む。特定の実施形態では、対象は、その治療を必要としている対象である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患又は状態を有する。他の実施形態では、対象は、疾患又は状態を有するリスクにある。いくつかの実施形態では、投与は、疾患又は状態の症状の予防又は治療をもたらす。
【0369】
別の実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象において疾患若しくは状態を予防及び/又は治療する方法であり、有効量の本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象において疾患又は状態を予防する方法であり、有効量の本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象において疾患又は状態を治療する方法であり、有効量の本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。特定の実施形態では、対象は、その治療を必要としている対象である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患又は状態を有する。他の実施形態では、対象は、疾患又は状態を有するリスクにある。いくつかの実施形態では、投与は、疾患又は状態の予防又は治療をもたらす。
【0370】
別の実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象において疾患若しくは状態の症状を予防及び/又は治療する方法であり、有効量の本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象において疾患又は状態の症状を予防する方法であり、有効量の本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象において疾患又は状態の症状を治療する方法であり、有効量の本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。特定の実施形態では、対象は、その治療を必要としている対象である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患又は状態を有する。他の実施形態では、対象は、疾患又は状態を有するリスクにある。いくつかの実施形態では、投与は、疾患又は状態の症状の予防又は治療をもたらす。
【0371】
また、本明細書で提供されるのは、有効量の本明細書に提供される抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に提供される抗体若しくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を、対象に投与することによって、疾患若しくは状態を予防及び/又は治療する方法である。一態様では、抗体又はその抗原結合断片は、実質的に精製されている(すなわち、その効果を制限するか、又は望ましくない副作用を生じさせる物質を実質的に含まない)。治療を施される対象は、非霊長類又は霊長類(例えば、ヒト)などの哺乳動物であり得る。一実施形態では、対象は、ヒトである。別の実施形態では、対象は、疾患又は状態を有するヒトである。
【0372】
様々な送達系が知られており、予防剤又は治療剤(例えば、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片)を投与するために使用することができ、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへのカプセル化、抗体又はその抗原結合断片を発現することができる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu,J.Biol.Chem.262:4429-4432(1987)を参照されたい)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築などが含まれるが、これらに限定されない。予防剤若しくは治療剤(例えば、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片)、又は医薬組成物を投与する方法は、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び皮下)、硬膜外及び粘膜(例えば、鼻腔内及び経口経路)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、予防剤若しくは治療剤(例えば、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片)、又は医薬組成物は、鼻腔内、筋肉内、静脈内、又は皮下に投与される。予防剤若しくは治療剤、又は組成物は、任意の好都合な経路、例えば、注入又はボーラス注射により、上皮又は皮膚粘膜内壁(例えば、口腔粘膜、鼻腔粘膜、直腸粘膜、及び腸粘膜など)を介する吸収により、投与され得、他の生物学的活性剤とともに投与され得る。投与は、全身性又は局所的であり得る。加えて、例えば、吸入器又は噴霧器、及びエアゾール化剤を伴う製剤の使用による肺内投与を採用することもできる。例えば、各々が参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる、米国特許第6,019,968号、同第5,985,320号、同第5,985,309号、同第5,934,272号、同第5,874,064号、同第5,855,913号、同第5,290,540号、及び同第4,880,078号、及び国際公開第92/19244号、同第97/32572号、同第97/44013号、同第98/31346号、及び同第99/66903号を参照されたい。
【0373】
具体的な実施形態では、本明細書において提供される予防剤若しくは治療剤、又は医薬組成物を、治療を必要とする領域に局所投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、限定を目的とするものではないが、局所注入により、局所投与により(例えば、鼻内噴霧により)、注射により、又はインプラントを用いて達成され得、当該インプラントは、シラスティック膜などの膜又は繊維を含む、多孔性材料、非多孔性材料、又はゼラチン性材料である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を投与する場合、抗体又はその抗原結合断片が吸着しない材料を使用するように注意しなければならない。
【0374】
別の実施形態では、本明細書で提供される予防剤若しくは治療剤、又は組成物は、ベシクル、特に、リポソームで送達され得る(Langer,1990,Science 249:1527-1533、Treat,et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez-Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353-365(1989)、Lopez-Berestein,ibid.,pp.317-327を参照されたい;同書を全般的に参照されたい)。
【0375】
別の実施形態では、本明細書において提供される予防剤若しくは治療剤、又は組成物は、制御放出系又は徐放系で送達されることができる。一実施形態では、ポンプが、制御放出又は徐放を達成するために使用され得る(Langer、上記;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:20、Buchwald et al.,1980,Surgery 88:507、Saudek et al.,1989,N.Engl.J.Med.321:574を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用して、予防剤若しくは治療剤(例えば、本明細書で提供される抗体)、又は本明細書で提供される組成物の制御放出又は徐放を達成することができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974)、Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984)、Ranger and Peppas,1983,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照されたく、また、Levy et al.,1985,Science 228:190、During et al.,1989,Ann.Neurol.25:351、Howard et al.,1989,J.Neurosurg.7 1:105)、米国特許第5,679,377号、米国特許第5,916,597号、米国特許第5,912,015号、米国特許第5,989,463号、米国特許第5,128,326号、国際公開第99/15154号、及び国際公開第99/20253号も参照されたい)。徐放性製剤に用いられるポリマーの例としては、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、及びポリオルトエステルが挙げられるが、これらに限定されない。実施形態では、徐放製剤中で使用されるポリマーは、不活性であり、浸出性不純物を含まず、保存時に安定であり、無菌であり、かつ生分解性である。更に別の実施形態では、制御放出系又は徐放系を治療標的、すなわち、鼻腔又は肺に近接して配置することができ、その結果、全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,in Medical Applications of Release、上記,vol.2,pp.115-138(1984)を参照のこと)。放出制御系がLanger(1990,Science 249:1527-1533)による概説において考察されている。当業者に公知の任意の技術を使用して、本明細書に提供される1つ又は2つ以上の抗体又はその抗原結合断片を含む徐放製剤を製造することができる。例えば、米国特許第4,526,938号、国際公開第91/05548号、国際公開第96/20698号、Ning et al.,1996,「Intratumoral Radioimmunotherapy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel,」Radiotherapy & Oncology 39:179-189、Song et al.,1995,「Antibody Mediated Lung Targeting of Long-Circulating Emulsions,」PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397、Cleek et al.,1997,「Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application,」Pro.Int’l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.24:853-854、及びLam et al.,1997,「Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery,」Proc.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.24:759-760を参照されたく、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0376】
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物が予防剤又は治療剤(例えば、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片)をコードする核酸である場合、核酸を、適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、例えば、レトロウイルスベクターの使用により、核酸が、細胞内核酸となるように、ベクターを投与すること(米国特許第4,980,286号を参照されたい)により、又は直接注射により、又はマイクロ粒子衝突(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)により、又は脂質若しくは細胞表面受容体若しくはトランスフェクション剤によるコーティングの使用により、又は核に侵入することが既知であるホメオボックス様ペプチドと連結して核酸を投与すること(例えば、Joliot et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864-1868を参照されたい)などにより、そのコードされる予防剤又は治療剤の発現を促進するように、核酸を、インビボにおいて投与することができる。代替的に、核酸は、細胞内に導入し、相同組換えによる発現のために、宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
【0377】
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、本明細書で提供される1つ、2つ又はそれ以上の抗体又はその抗原結合断片を含む。別の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、本明細書で提供される1つ、2つ又はそれ以上の抗体又はその抗原結合断片と、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片以外の予防剤又は治療剤と、を含む。一実施形態では、薬剤は、疾患若しくは状態の予防、管理、治療及び/又は寛解に有用であることが既知であるか、又はこれらのために使用されているか、若しくは現在使用されている。予防剤又は治療剤に加えて、本明細書で提供される組成物はまた、賦形剤を含み得る。
【0378】
本明細書で提供される組成物は、単位剤形の調製に使用され得る医薬組成物(例えば、対象又は患者への投与に好適な組成物)の製造において有用なバルク薬剤組成物を含む。実施形態では、本明細書で提供される組成物は、医薬組成物である。そのような組成物は、予防有効量又は治療有効量の1つ又は2つ以上の予防剤又は治療剤(例えば、本明細書で提供される抗体若しくはその抗原結合断片、又は他の予防剤若しくは治療剤)と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む。医薬組成物は、対象への投与経路に好適であるように製剤化されることができる。
【0379】
具体的な実施形態では、「賦形剤」という用語は、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全又は不完全))又はビヒクルを指すこともできる。医薬用賦形剤は、無菌液体、例えば水、及び落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物、又は合成起源のものを含む油であり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合の代表的な賦形剤である。生理食塩水並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液も、特に注射溶液用の液体賦形剤として採用され得る。好適な医薬用賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。必要に応じて、組成物は、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を更に含み得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態を取り得る。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な賦形剤を含み得る。好適な医薬用賦形剤の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)Mack Publishing Co.,Easton,PAにおいて記載されている。このような組成物は、患者に適切に投与するための形態を提供するために、予防的又は治療的有効量の、例えば、精製された形態の、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片を、適切な量の賦形剤とともに含有するであろう。その製剤は、投与様式に適するべきである。
【0380】
実施形態では、組成物は、日常的な手順に従って、ヒトへの静脈内投与に適合させた医薬組成物として製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、滅菌水性等張緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤及び、注射部位の疼痛を和らげるための、リグノカインなどの局所麻酔剤も含み得る。しかしながら、そのような組成物は、静脈内経路以外の経路を介して投与され得る。
【0381】
概して、本明細書で提供される組成物の成分は、例えば、活性薬剤の量を示すアンプル又は小袋などの密封容器内に、乾燥した凍結乾燥粉末又は水分を含まない濃縮物として、個別に、又は単位剤形中に一体に混合して供給される。組成物が注入により投与される場合、組成物は、医薬品グレードの滅菌水又は生理食塩水の入った注入ボトルによって分注され得る。組成物が注射により投与される場合、投与前に成分が混合され得るように、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0382】
本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、抗体の量を示すアンプル又は小袋などの密封容器内に包装され得る。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片を、密封容器に入った乾燥滅菌した凍結乾燥粉末又は水分を含まない濃縮物として供給して、例えば、水又は生理食塩液で、対象への投与に適切な濃度まで復元させることができる。凍結乾燥された抗体又はその抗原結合断片は、その元の容器内で2~8℃で保存され得、抗体又はその抗原結合断片は、復元後12時間以内(例えば、6時間以内、5時間以内、3時間以内、又は1時間以内)に投与され得る。代替的な実施形態では、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、抗体の量及び濃度を示す密封容器内の液体形態で供給される。
【0383】
本明細書において提供される組成物は、中性形態又は塩形態として製剤化され得る。医薬的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するアニオンなどのアニオンとともに形成される塩、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するカチオンなどのカチオンとともに形成される塩が挙げられる。
【0384】
疾患又は状態の予防及び/又は治療に有効である、予防剤又は治療剤(例えば、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片)又は本明細書で提供される組成物の量は、標準的な臨床技術によって決定され得る。加えて、最適な用量範囲を識別するのに役立てるために、任意選択的にインビトロアッセイが採用され得る。製剤に用いる正確な用量は、投与経路及び疾患又は状態の重症度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に応じて決定する必要がある。
【0385】
有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導出される用量反応曲線から外挿することができる。
【0386】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片の用量の患者への投与経路は、経鼻内、筋内、静脈内、皮下、又はこれらの組み合わせであるが、本明細書に記載される他の経路も許容可能である。各用量は、同一の投与経路で投与されても、投与されなくてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で提供される同じ又は異なる抗体又はその抗原結合断片の他の用量と同時に、又はその後に、複数の投与経路を介して投与され得る。
【0387】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、対象に対して予防的に又は治療的に投与される。本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、疾患又は症状を防止する、減少させる、又は寛解させるように、対象に対して予防的に又は治療的に投与され得る。
【0388】
5.7.遺伝子療法
特定の実施形態では、抗体又はその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は、例えば、遺伝子療法によって疾患、障害、若しくは状態を予防、管理、治療、及び/又は改善するために、本明細書で提供される方法で使用するために対象に投与される。このような療法は、発現された核酸又は発現可能な核酸の対象への投与によって行われる療法を包含する。一実施形態では、核酸は、それらがコードする抗体を産生し、その抗体は予防効果又は治療効果を媒介する。当技術分野で利用可能な組換え遺伝子発現(又は遺伝子療法)のための任意の方法を使用することができる。
【0389】
遺伝子療法の方法の一般的な総説については、Goldspiel et al.,1993,Clinical Pharmacy 12:488-505、Wu and Wu,1991,Biotherapy 3:87-95、Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573-596、Mulligan,1993,Science 260:926-932、及びMorgan and Anderson,1993,Ann.Rev.Biochem.62:191-217、May,1993,TIBTECH 11(5):155-215を参照されたい。使用され得る組換えDNA技術の分野において一般的に公知の方法は、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993)、及びKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載されている。
【0390】
特定の実施形態では、組成物は、本明細書で提供される抗体をコードする核酸を含み、核酸は、好適な宿主内で抗体又はキメラタンパク質又はその重鎖若しくは軽鎖を発現する発現ベクターの一部である。特に、そのような核酸は、抗体をコードする領域と作動可能に連結された異種プロモーターなどのプロモーターを有し、プロモーターは誘導性又は構成的であり、任意選択で、組織特異的である。別の特定の実施形態では、抗体をコードする配列及び任意の他の所望の配列が、ゲノム内の所望の部位で相同組換えを促進する領域と隣接し、したがって抗体をコードする核酸の染色体内発現を提供する核酸分子が使用される(Koller and Smithies,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932-8935、Zijlstra et al.,1989,Nature 342:435-438)。いくつかの実施形態では、発現された抗体分子は、単鎖抗体であり、あるいは、核酸配列は、抗体の重鎖及び軽鎖の両方、又はその断片をコードする配列を含む。
【0391】
対象への核酸の送達は、直接的であり得、この場合、対象は核酸又は核酸を運ぶベクターに直接的に曝露され、又は間接的であり得、この場合、細胞は最初にインビトロで核酸で形質転換され、次に対象に移植される。これらの2つのアプローチは、それぞれインビボ又はエクスビボ遺伝子療法として知られている。
【0392】
特定の実施形態では、核酸配列はインビボで直接投与され、そこで配列が発現されてコードされた産物が産生される。これは、当技術分野で公知の多数の方法のいずれかによって、例えば、それらを適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、例えば、欠損若しくは弱毒化したレトロウイルス又は他のウイルスベクターを用いた感染によって配列が細胞内になるようにベクターを投与することにより(米国特許第4,980,286号を参照されたい)、又はネイキッドDNAの直接注射により、又はマイクロ粒子衝突(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)により、又は脂質、細胞表面受容体、又はトランスフェクション剤によるコーティング、リポソーム、微粒子、又はマイクロカプセルへのカプセル化により、又は核に侵入することが既知であるペプチドと連結してそれらを投与することによって、受容体媒介エンドサイトーシスを受けるリガンドと連結してそれを投与することなどにより(例えば、Wu and Wu,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432)(これは、受容体を特異的に発現する細胞型を標的化するために使用することができる)達成され得る。別の実施形態では、リガンドがエンドソームを破壊するための融合性ウイルスペプチドを含み、核酸がリソソーム分解を回避することを可能にする核酸-リガンド複合体を形成することができる。更に別の実施形態では、核酸は、特定の受容体を標的化することによって、細胞特異的な取り込み及び発現のためにインビボで標的とされ得る(例えば、国際公開第92/06180号、同第92/22635号、同第92/20316号、同第93/14188号、同第93/20221号を参照されたい)。あるいは、相同組換えによって、核酸を細胞内に導入し、発現のために宿主細胞DNA内に組み込むことができる(Koller and Smithies,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932-8935、及びZijlstra et al.,1989,Nature 342:435-438)。
【0393】
特定の実施形態では、抗体をコードする核酸配列を含むウイルスベクターが使用される。例えば、レトロウイルスベクターを使用することができる(Miller et al.,1993,Meth.Enzymol.217:581-599を参照されたい)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正確なパッケージング及び宿主細胞DNAへの組み込みに必要な成分を含む。遺伝子療法に使用される抗体をコードする核酸配列は、対象への遺伝子の送達を容易にする1つ又は2つ以上のベクターにクローニングすることができる。レトロウイルスベクターについての更なる詳細は、Boesen et al.,1994,Biotherapy 6:291-302に見出され得、これは、幹細胞を化学療法に対してより耐性にするために、造血幹細胞にMDR1遺伝子を送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載する。遺伝子療法におけるレトロウイルスベクターの使用を説明する他の参考文献は、Clowes et al.,1994,J.Clin.Invest.93:644-651、Klein et al.,1994,Blood 83:1467-1473、Salmons and Gunzberg,1993,Human Gene Therapy 4:129-141、及びGrossman and Wilson,1993,Curr.Opin.in Genetics and Devel.3:110-114である。
【0394】
アデノウイルスは、抗体の組換え産生において使用され得る他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、呼吸上皮に遺伝子を送達するための特に魅力的な媒体である。アデノウイルスは自然に呼吸上皮に感染し、そこで軽度の疾患を引き起こす。アデノウイルスに基づく送達系の他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、及び筋肉である。アデノウイルスは、非分裂細胞に感染することができるという利点を有する。Kozarsky and Wilson,1993,Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503は、アデノウイルスに基づく遺伝子療法の総説を提示している。Bout et al.,1994,Human Gene Therapy 5:3-10は、アカゲザルの呼吸上皮に遺伝子を導入するためのアデノウイルスベクターの使用を実証した。遺伝子療法におけるアデノウイルスの使用の他の例は、Rosenfeld et al.,1991,Science 252:431-434、Rosenfeld et al.,1992,Cell 68:143-155、Mastrangeli et al.,1993,J.Clin.Invest.91:225-234、国際公開第94/12649号、及びWang et al.,1995,Gene Therapy 2:775-783に見出され得る。特定の実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。
【0395】
アデノ随伴ウイルス(AAV)も利用することができる(Walsh et al.,1993,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204:289-300及び米国特許第5,436,146号)。特定の実施形態では、AAVベクターは、本明細書で提供される抗体を発現するために使用される。特定の実施形態では、AAVは、VHドメインをコードする核酸を含む。他の実施形態では、AAVは、VLドメインをコードする核酸を含む。特定の実施形態では、AAVは、VHドメイン及びVLドメインをコードする核酸を含む。本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、対象には、VHドメインをコードする核酸を含むAAV及びVLドメインをコードする核酸を含むAAVが投与される。他の実施形態では、対象には、VHドメイン及びVLドメインをコードする核酸を含むAAVが投与される。特定の実施形態では、VH及びVLドメインは、過剰発現される。
【0396】
遺伝子療法に対する別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、又はウイルス感染のような方法によって、組織培養中の細胞に遺伝子を導入することを包含する。通常、導入方法には、細胞への選択マーカーの導入が含まれる。次いで、細胞は選択下に置かれ、導入された遺伝子を取り込んで発現している細胞が単離される。次いで、これらの細胞が対象に送達される。
【0397】
この実施形態では、核酸は、得られた組換え細胞のインビボ投与の前に細胞に導入される。このような導入は、当技術分野で即知の任意の方法によって行うことができ、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルス又はバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子導入、微小核体媒介遺伝子導入、スフェロプラスト融合などが含まれるが、これらに限定されない。外来遺伝子を細胞に導入するための多くの技術が当技術分野で即知であり(例えば、Loeffler and Behr,1993,Meth.Enzymol.217:599-618、Cohen et al.,1993,Meth.Enzymol.217:618-644、Clin.Pharma.Ther.29:69-92(1985)を参照されたい)、レシピエント細胞の必要な発生及び生理学的機能が破壊されないという条件で、本明細書で提供される方法に従って使用することができる。技術は、核酸が細胞で発現可能であるように、例えば、その細胞子孫で遺伝可能及び発現可能であるように、細胞への核酸の安定した導入を提供するものでなければならない。
【0398】
得られた組換え細胞は、当技術分野で即知の様々な方法によって対象に送達することができる。組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞又は前駆細胞)は静脈内に投与され得る。使用が想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者によって決定され得る。
【0399】
遺伝子療法の目的で核酸を導入することができる細胞には、任意の望ましい利用可能な細胞型が含まれ、これらに限定されないが、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞;血液細胞、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球;様々な幹細胞又は前駆細胞、特に造血幹細胞又は前駆細胞、例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるものなどが含まれる。
【0400】
特定の実施形態では、遺伝子療法に使用される細胞は、対象に対して自己由来である。
【0401】
組換え細胞が遺伝子療法に使用される実施形態では、抗体をコードする核酸配列が、細胞又はその子孫で発現可能となるように細胞に導入され、次いで、治療効果を得るために組換え細胞がインビボで投与される。特定の実施形態では、幹細胞又は前駆細胞が使用される。インビトロで単離及び維持することができる任意の幹細胞並びに/又は前駆細胞は、本明細書で提供される方法のこの実施形態に従って潜在的に使用され得る(例えば、国際公開第94/08598号、Stemple and Anderson,1992,Cell 7 1:973-985、Rheinwald,1980,Meth.Cell Bio.21A:229、及びPittelkow and Scott,1986,Mayo Clinic Proc.61:771を参照されたい)。
【0402】
特定の実施形態では、遺伝子療法の目的で導入される核酸は、適切な転写誘導因子の存在又は非存在で制御することによって核酸の発現が制御可能であるように、コード領域と作動可能に連結された誘導性プロモーターを含む。
【0403】
5.8.診断アッセイ及び方法
本明細書で提供される抗原と免疫特異的に結合する標識抗体並びにその誘導体及び類似体は、疾患若しくは障害を検出、診断、又は監視するための診断目的に使用することができる。
【0404】
本明細書で提供される抗体は、本明細書に記載されるような、又は当業者に公知のような古典的な免疫組織学的方法を使用して生体試料中の抗原レベルをアッセイするために使用することができる(例えば、Jalkanen et al.,1985,J.Cell.Biol.101:976-985、及びJalkanen et al.,1987,J.Cell.Biol.105:3087-3096を参照されたい)。タンパク質遺伝子発現を検出するために有用な他の抗体系の方法としては、免疫測定法、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び放射性免疫測定法(RIA)が挙げられる。好適な抗体アッセイ標識は当技術分野で公知であり、酵素標識、例えば、グルコースオキシダーゼ;放射性同位体、例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)、及びテクネチウム(99Tc)、発光標識、例えば、ルミノール、並びに蛍光標識、例えば、フルオレセイン、ローダミン、及びビオチンが含まれる。本明細書で提供される1つの態様は、ヒトにおける疾患又は障害の検出及び診断である。
【0405】
対象のサイズ及び使用される画像化システムによって、診断画像を生成するのに必要な画像化部分の量が決定されることが当技術分野では理解されよう。放射性同位元素部分の場合、ヒト対象の場合、注入される放射能の量は通常、約5~20ミリキュリーの範囲の99Tcである。次いで、標識された抗体は、特定のタンパク質を含む細胞の位置に蓄積する。インビボ腫瘍画像化は、S.W.Burchiel et al.,「Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments.」(Chapter 13 in Tumor Imaging:The Radiochemical Detection of Cancer,S.W.Burchiel and B.A.Rhodes,eds.,Masson Publishing Inc.(1982)に記載されている。
【0406】
使用される標識の種類及び投与の様式を含むいくつかの可変性に依存して、標識抗体が対象の部位に集中することを可能にし、未結合の標識抗体がバックグラウンドレベルまで除去されるまでの投与後の時間間隔は、6~48時間、又は6~24時間、又は6~12時間である。別の実施形態では、投与後の時間間隔は、5~20日又は5~10日である。
【0407】
一実施形態では、疾患又は障害の監視は、例えば、最初の診断から1か月後、最初の診断から6か月後、最初の診断から1年後など、疾患又は障害を診断するための方法を繰り返すことによって行われる。
【0408】
標識された分子の存在は、インビボ走査のための当該分野で公知の方法を使用して、対象において検出され得る。これらの方法は、使用される標識の種類に依存する。当業者は、特定の標識を検出するための適切な方法を決定することができるであろう。本明細書で提供される診断方法で使用され得る方法及び装置には、コンピュータ断層撮影法(CT)、全身走査、例えば、位置放射断層撮影法(PET)、磁気共鳴画像法(MRI)、及び超音波検査が含まれるが、これらに限定されない。
【0409】
特定の実施形態では、分子は、放射性同位体で標識され、放射線反応性外科器具を使用して患者内で検出される(Thurston et al.、米国特許第5,441,050号)。別の実施形態では、分子は蛍光化合物で標識され、蛍光反応性走査機器を使用して患者内で検出される。別の実施形態では、分子は陽電子放出金属で標識され、陽電子放出断層撮影法を使用して患者内で検出される。更に別の実施形態では、分子は常磁性標識で標識され、磁気共鳴画像法(MRI)を使用して患者内で検出される。
【0410】
5.9.キット
また、本明細書で提供されるのは、適切な包装材料に包装された、本明細書で提供される抗体(例えば、抗CD25二重特異性抗体、抗CD39二重特異性抗体、又はCD25×CD39二重特異性抗体)、又はその組成物(例えば、医薬組成物)を含むキットである。キットは、必要に応じて、構成要素の説明又はその中の構成要素のインビトロ、インビボ、若しくはエキソビボでの使用のための指示書を含むラベル又は添付文書を含む。
【0411】
「包装材料」という用語は、キットの構成要素を収容する物理的構造を指す。包装材料は、構成要素を無菌的に維持することができ、そのような目的のために一般的に使用される材料(例えば、紙、段ボール、ガラス、プラスチック、箔、アンプル、バイアル、チューブなど)から作製することができる。
【0412】
本明細書で提供されるキットは、ラベル又は添付文書を含むことができる。ラベル又は添付文書は、例えば、構成要素、キット、若しくは包装材料(例えば、箱)とは別個に又は添付された、あるいはキット構成要素を含むアンプル、チューブ、又はバイアルなどに添付された、「印刷物」、例えば、紙又はボール紙を含む。ラベル又は添付文書は、コンピュータ可読媒体、例えば、ディスク(例えば、ハードディスク、カード、メモリディスク)、光ディスク、例えば、CD若しくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3、磁気テープ、又は電気的記憶媒体、例えば、RAM及びROM、又はこれらのハイブリッド、例えば、磁気/光記憶媒体、FLASH媒体、記憶型カードを更に含むことができる。ラベル又は添付文書は、製造元情報、ロット番号、製造元所在地、及び日付を識別する情報を含むことができる。
【0413】
本明細書で提供されるキットは、他の構成要素を更に含むことができる。キットの各構成要素は、個々の容器内に封入することができ、様々な容器の全てを単一のパッケージ内に入れることができる。キットは、冷蔵用に設計することもできる。キットは更に、本明細書で提供される抗体、又は本明細書で提供される抗体をコードする核酸を含む細胞を含むように設計することができる。キット中の細胞は、使用の準備ができるまで適切な保存条件下で維持することができる。
【0414】
また、本明細書で提供されるのは、抗原、例えば、CD25及び/又はCD39と免疫特異的に結合する抗体のパネルである。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、異なる結合速度定数、異なる解離速度定数、抗原に対する異なる親和性、及び/又は抗原に対する異なる特異性を有する抗体のパネルである。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、約10個、好ましくは約25個、約50個、約75個、約100個、約125個、約150個、約175個、約200個、約250個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、約550個、約600個、約650個、約700個、約750個、約800個、約850個、約900個、約950個、又は約1000個以上の抗体のパネルである。抗体のパネルは、例えば、ELISAなどのアッセイに例えば、96ウェル又は384ウェルプレートで使用することができる。
【0415】
特に定義されない限り、本明細書で使用されている全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に共通に理解されるものと同じ意味を有している。本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料を本明細書に記載する。
【0416】
本明細書で使用される場合、数値は、本文書全体を通して範囲形式で提示されることが多い。範囲形式の使用は、単に便宜上及び簡潔さのためであり、文脈が別途明確に示さない限り、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではない。したがって、範囲の使用は、文脈が別途明確に示さない限り、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値、並びにそのような範囲内の整数及び範囲内の値又は整数の分数を含む全ての数値又は数値範囲を明示的に含む。この構成は、範囲の広さにかかわらず、本特許文書全体を通して全ての文脈において適用される。したがって、例えば、90~100%の範囲への言及は、91~99%、92~98%、93~95%、91~98%、91~97%、91~96%、91~95%、91~94%、91~93%などを含む。90~100%の範囲への言及は、91%、92%、93%、94%、95%、95%、97%など、並びに91.1%、91.2%、91.3%、91.4%、91.5%など、92.1%、92.2%、92.3%、92.4%、92.5%なども含む。
【0417】
更に、1~3、3~5、5~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、100~110、110~120、120~130、130~140、140~150、150~160、160~170、170~180、180~190、190~200、200~225、225~250の範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などを含む。更なる例では、25~250、250~500、500~1,000、1,000~2500、2500~5000、5000~25000、25000~50000の範囲への言及は、任意の数値又はそのような値内の若しくはそのような値を包含する範囲、例えば、25、26、27、28、29...250、251、252、253、254...500、501、502、503、504...などを含む。
【0418】
同様に本明細書で使用される場合、一連の範囲が本文書全体にわたって開示される。一連の範囲の使用は、上限及び下限の範囲を組み合わせて別の範囲を提供することを含む。この構成は、範囲の広さにかかわらず、本特許文書全体を通して全ての文脈において適用される。したがって、例えば、5~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~75、75~100、100~150などの一連の範囲への言及は、5~20、5~30、5~40、5~50、5~75、5~100、5~150、及び10~30、10~40、10~50、10~75、10~100、10~150、及び20~40、20~50、20~75、20~100、20~150などの範囲を含む。
【0419】
簡潔にするために、特定の略語が本明細書で使用される。一例として、アミノ酸残基を表す単一文字の略語がある。アミノ酸及びそれらに対応する3文字及び1文字の略語は以下の通りである:
【0420】
【0421】
本発明は、概して、多数の実施形態を説明するために肯定的な言葉を使用して本明細書に開示される。また、本発明には、物質又は材料、方法の工程及び条件、プロトコル、手順、アッセイ又は分析など、特定の主題が完全に又は部分的に除外されている実施形態も具体的に含まれる。したがって、本明細書は、概ね、本発明が含まないものに関して本明細書で表現されていない場合であっても、それでもなお、本発明に明示的に含まれていない態様が本明細書で開示される。
【0422】
本発明の多くの実施形態が説明されてきた。しかしながら、様々な修正が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく実行され得ることが、理解されるであろう。したがって、以下の実施例は、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を説明することを意図しているが、限定するものではない。
【0423】
6.実施形態
本発明は、以下の非限定的な実施形態を提供する。
【0424】
1組の実施形態では、以下が提供される。
A1.分子であって、
a.制御性T(Treg)細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、
b.Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含み、
任意選択で、分子が、多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、分子。
A2.第1の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、実施形態A1に記載の多重特異性抗体。
A3.第1の抗原が、CD25である、実施形態A1に記載の多重特異性抗体。
A4.第1の結合ドメインが、
(i)配列番号1に記載のVH相補性決定領域(CDR)1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、重鎖可変領域(VH)と、
(ii)配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、軽鎖可変領域(VL)と、を含む、実施形態A1に記載の多重特異性抗体。
A5.第1の結合ドメインが、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む、実施形態A4に記載の多重特異性抗体。
A6.第2の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、実施形態A1~A5のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
A7.第2の抗原が、CD39である、実施形態A1~A6のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
A8.第2の結合ドメインが、
(i)配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、
(ii)配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む、実施形態A1~A5のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
A9.第2の結合ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む、実施形態A8に記載の多重特異性抗体。
A10.第1の結合ドメイン及び/又は第2の結合ドメインが、ヒト化されている、実施形態A1~A9のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
A11.多重特異性抗体が、IgG抗体である、実施形態A1~A10のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
A12.IgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である、実施形態A11に記載の多重特異性抗体。
A13.IgG抗体が、IgG1抗体である、実施形態A12に記載の多重特異性抗体。
A14.IgG抗体が、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む、実施形態A12に記載の多重特異性抗体。
A15.抗体が、カッパ軽鎖を含む、実施形態A1~A14のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
A16.抗体が、ラムダ軽鎖を含む、実施形態A1~A14のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
A17.抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
A18.多重特異性抗体が、二重特異性抗体である、実施形態A1~A16のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
A19.第1の結合ドメインが、scFv領域であり、第2の結合ドメインが、Fab領域である、実施形態A18に記載の多重特異性抗体。
A20.多重特異性抗体が、Tregの枯渇又は阻害を誘導する、実施形態A1~A19のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
A21.実施形態A1~A20のいずれか1つに記載の多重特異性抗体をコードする、核酸。
A22.実施形態A21に記載の核酸を含む、ベクター。
A23.実施形態A22に記載のベクターを含む、宿主細胞。
A24.実施形態A22に記載のベクターと、そのためのパッケージと、を含む、キット。
A25.実施形態A1~A20のいずれか1つに記載の多重特異性抗体と、そのためのパッケージと、を含む、キット。
【0425】
別の組の実施形態では、以下が提供される。
B1.医薬組成物であって、分子と、医薬的に許容される担体と、を含み、分子が
a.制御性T(Treg)細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、
b.Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含み、
任意選択で、分子が、多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、医薬組成物。
B2.第1の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、実施形態B1に記載の医薬組成物。
B3.第1の抗原が、CD25である、実施形態B1に記載の医薬組成物。
B4.第1の結合ドメインが、
(i)配列番号1に記載のVH相補性決定領域(CDR)1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、重鎖可変領域(VH)と、
(ii)配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、軽鎖可変領域(VL)と、を含む、実施形態B1に記載の医薬組成物。
B5.第1の結合ドメインが、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む、実施形態B4に記載の医薬組成物。
B6.第2の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、実施形態B1~B5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
B7.第2の抗原が、CD39である、実施形態B1~B6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
B8.第2の結合ドメインが、
(i)配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、
(ii)配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む、実施形態B1~B5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
B9.第2の結合ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む、実施形態B8に記載の医薬組成物。
B10.第1の結合ドメイン及び/又は第2の結合ドメインが、ヒト化されている、実施形態B1~B9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
B11.多重特異性抗体が、IgG抗体である、実施形態B1~B10のいずれか1つに記載の医薬組成物。
B12.IgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である、実施形態B11に記載の医薬組成物。
B13.IgG抗体が、IgG1抗体である、実施形態B12に記載の医薬組成物。
B14.IgG抗体が、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む、実施形態B12に記載の医薬組成物。
B15.抗体が、カッパ軽鎖を含む、実施形態B1~B14のいずれか1つに記載の医薬組成物。
B16.抗体が、ラムダ軽鎖を含む、実施形態B1~B14のいずれか1つに記載の医薬組成物。
B17.抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態B1~B16のいずれか1つに記載の医薬組成物。
B18.多重特異性抗体が、二重特異性抗体である、実施形態B1~B16のいずれか1つに記載の医薬組成物。
B19.第1の結合ドメインが、scFv領域であり、第2の結合ドメインが、Fab領域である、実施形態B18に記載の多重特異性抗体。
B20.多重特異性抗体が、Tregの枯渇又は阻害を誘導する、実施形態B1~B19のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0426】
別の組の実施形態では、以下が提供される。
C1.分子を作製するためのプロセスであって、分子をコードする1つ又は2つ以上の核酸を宿主細胞に導入することを含み、分子が、
a.制御性T(Treg)細胞上に発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、
b.Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含み、
任意選択で、分子が、多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、プロセス。
C2.第1の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、実施形態C1に記載のプロセス。
C3.第1の抗原が、CD25である、実施形態C1に記載のプロセス。
C4.第1の結合ドメインが、
(i)配列番号1に記載のVH相補性決定領域(CDR)1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、重鎖可変領域(VH)と、
(ii)配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、軽鎖可変領域(VL)と、を含む、実施形態C1に記載のプロセス。
C5.第1の結合ドメインが、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む、実施形態C4に記載のプロセス。
C6.第2の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、実施形態C1~C5のいずれか1つに記載のプロセス。
C7.第2の抗原が、CD39である、実施形態C1~C6のいずれか1つに記載のプロセス。
C8.第2の結合ドメインが、
(i)配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、
(ii)配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む、実施形態C1~C5のいずれか1つに記載のプロセス。
C9.第2の結合ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む、実施形態C8に記載のプロセス。
C10.第1の結合ドメイン及び/又は第2の結合ドメインが、ヒト化されている、実施形態C1~C9のいずれか1つに記載のプロセス。
C11.多重特異性抗体が、IgG抗体である、実施形態C1~C10のいずれか1つに記載のプロセス。
C12.IgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である、実施形態C11に記載のプロセス。
C13.IgG抗体が、IgG1抗体である、実施形態C12に記載のプロセス。
C14.IgG抗体が、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む、実施形態C12に記載のプロセス。
C15.抗体が、カッパ軽鎖を含む、実施形態C1~C14のいずれか1つに記載のプロセス。
C16.抗体が、ラムダ軽鎖を含む、実施形態C1~C14のいずれか1つに記載のプロセス。
C17.抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態C1~C16のいずれか1つに記載のプロセス。
C18.多重特異性抗体が、二重特異性抗体である、実施形態C1~C16のいずれか1つに記載のプロセス。
C19.第1の結合ドメインが、scFv領域であり、第2の結合ドメインが、Fab領域である、実施形態C18に記載のプロセス。
C20.多重特異性抗体が、Tregの枯渇又は阻害を誘導する、実施形態C1~C19のいずれか1つに記載のプロセス。
【0427】
別の組の実施形態では、以下が提供される。
D1.CD25及び/若しくはCD39を発現する細胞を濃縮、単離、分離、精製、選別、選択、捕捉、検出、又は枯渇する方法であって、CD25及び/又はCD39を発現する細胞を含む試料を提供することと、試料を多重特異性抗体と接触させることと、CD25及び/若しくはCD39を発現し、かつ多重特異性抗体と結合する細胞を濃縮、単離、分離、精製、選別、選択、捕捉、検出、又は枯渇することと、を含み、多重特異性抗体が、CD25と結合することができる第1の結合ドメインと、CD39と結合することができる第2の結合ドメインと、を含む、方法。
D2.細胞が、制御性T(Treg)細胞である、実施形態D1に記載の方法。
D3.試料が、血液試料である、実施形態D1~D2のいずれか1つに記載の方法。
D4.試料が、組織試料である、実施形態D1~D2のいずれか1つに記載の方法。
D5.Treg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、Treg細胞を、
a.Treg細胞上で発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、
b.Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体と接触させることを含む、方法。
D6.がん細胞及びTreg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、がん細胞及びTreg細胞を、
a.Treg細胞上で発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、
b.Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体と接触させることを含む、方法。
D7.がんを有する対象においてがん細胞及びTreg細胞を阻害又は枯渇する方法であって、
a.Treg細胞上で発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、
b.Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体を対象に投与することを含む、方法。
D8.対象においてがんを治療する方法であって、
a.Treg細胞上で発現される第1の抗原と結合する第1の結合ドメインと、
b.Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合する第2の結合ドメインと、を含む、多重特異性抗体を対象に投与することを含む、方法。
D9.がんが、固形腫瘍がんである、実施形態D7又は実施形態D8に記載の方法。
D10.がんが、血液がんである、実施形態D7又は実施形態D8に記載の方法。
D11.第1の抗原が、Tregの免疫抑制活性に関与する、実施形態D1~D10のいずれか1つに記載の方法。
D12.第1の抗原が、CD25である、実施形態D1~D10のいずれか1つに記載の方法。
D13.第1の結合ドメインが、
(i)配列番号1に記載のVH相補性決定領域(CDR)1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、重鎖可変領域(VH)と、
(ii)配列番号2に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、軽鎖可変領域(VL)と、を含む、実施形態D1~D10のいずれか1つに記載の方法。
D14.第1の結合ドメインが、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、を含む、実施形態D13に記載の方法。
D15.第2の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、実施形態D1~D14のいずれか1つに記載の方法。
D16.第2の抗原が、CD39である、実施形態D1~D15のいずれか1つに記載の方法。
D17.第2の結合ドメインが、
(i)配列番号3に記載のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む、VHと、
(ii)配列番号4に記載のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む、VLと、を含む、実施形態D1~D14のいずれか1つに記載の方法。
D18.第2の結合ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、を含む、実施形態D17に記載の方法。
D19.第1の結合ドメインが、ヒト化されており、及び/又は第2の結合ドメインが、ヒト化されている、実施形態D1~D18のいずれか1つに記載の方法。
D20.多重特異性抗体が、IgG抗体である、実施形態D1~D19のいずれか1つに記載の方法。
D21.IgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である、実施形態D20に記載の方法。
D22.IgG抗体が、IgG1抗体である、実施形態D21に記載の方法。
D23.IgG抗体が、Fcエフェクター機能を増強するための変異を有するFc領域を含む、実施形態D21に記載の方法。
D24.抗体が、カッパ軽鎖を含む、実施形態D1~D23のいずれか1つに記載の方法。
D25.抗体が、ラムダ軽鎖を含む、実施形態D1~D23のいずれか1つに記載の方法。
D26.抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態D1~D25のいずれか1つに記載の方法。
D27.多重特異性抗体が、二重特異性抗体である、実施形態D1~D25のいずれか1つに記載の方法。
D28.第1の結合ドメインが、scFv領域であり、第2の結合ドメインが、Fab領域である、実施形態D27に記載の方法。
D29.多重特異性抗体が、Tregの枯渇又は阻害を誘導する、実施形態D1~D28のいずれか1つに記載の方法。
【0428】
別の組の実施形態では、以下が提供される。
E1.多重特異性分子であって、制御性T(Treg)細胞上に発現される第1の抗原と結合することができる第1の手段と、Treg細胞上に発現される第2の抗原と結合することができる第2の手段と、を含む、多重特異性分子。
E2.第1の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、実施形態E1に記載の多重特異性分子。
E3.第1の抗原が、CD25である、実施形態E1~E2のいずれか1つに記載の多重特異性分子。
E4.第2の抗原が、Tregの免疫抑制活性における機能を有する、実施形態E1~E3のいずれか1つに記載の多重特異性分子。
E5.第2の抗原が、CD39である、実施形態E1~E3のいずれか1つに記載の多重特異性分子。
E6.1つを超える標的分子と結合する分子を作製するためのプロセスであって、Treg細胞の表面上で第1の抗原と結合することができる結合ドメインを取得する機能を実行する工程と、Treg細胞の表面上で第2の抗原と結合することができる結合ドメインを取得する機能を実行する工程と、第1の抗原及び第2の抗原と結合することができる分子を提供する機能を実行する工程と、を含む、プロセス。
E7.Treg細胞の成長若しくは増殖を阻害するか、又はそれを枯渇する方法であって、Treg細胞を実施形態E1~E6のいずれか1つに記載の分子と接触させることを含む、方法。
【実施例】
【0429】
以下は、試験に使用された様々な方法及び材料の説明であり、当業者に本開示の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するように記載されており、本発明者らがその開示とみなす範囲を限定することを意図しておらず、また、以下の実験が実施され、実施可能な実験の全てであることを表すことを意図していない。現在形で書かれた例示的な記述は、必ずしも実行されたものではなく、むしろ記述は、本開示の教示に関連するデータなどを生成するために実行できるものであることを理解されたい。使用される数値(例えば、量、パーセンテージなど)についての正確度を保証するための努力はなされているが、多少の実験誤差及び偏差が考慮に入れられるべきである。
【0430】
7.1 実施例1:二重特異性抗体の設計、操作、及び抗体産生
第1の抗原と結合することができる第1の結合ドメインと、第2の抗原と結合することができる第2の結合ドメインと、を含む、例示的な二重特異性抗体を生成し、第1の抗原及び第2の抗原は常駐制御性T(Treg)細胞上に存在する。具体的には、CD25及びCD39と結合することができる抗原結合ドメインを含む二重特異性CD25×CD39抗体を生成した。
【0431】
抗CD25、抗CD39及び抗RSV(クローンB21M、ヌルアーム対照)の可変領域配列を使用して、ノブインホール技術を使用し、JAWA変異を有するヘテロ二量体二重特異性抗体のパネルを生成した。CD25×CD39の設計を
図2に示す。CD25×CD39二重特異性抗体は、CD25を標的とする単鎖可変断片(scFv)及びCD39を標的とする抗原結合断片(Fab)領域を有するヒトIgG1骨格上にフォーマット化した。CD39×ヌル二重特異性抗体を対照として生成した。ノブインホール(KIH)技術を使用して、二重特異性抗体を操作した。CD25×CD39二重特異性抗体の結晶化可能断片(Fc)領域に変異を導入して、抗体依存性細胞食作用(ADCP)活性及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を含むFcエフェクター機能を増強し、Tregの枯渇を増大させて抗腫瘍免疫応答を増強した。
【0432】
抗CD25抗体の可変領域配列を以下の表1に提供する。抗CD39抗体の可変領域配列を以下の表2に提供する。抗RSV抗体の可変領域配列を以下の表3に提供する。
【0433】
【0434】
【0435】
【0436】
抗CD25 scFv-Fc抗体(バシリキシマブ)のアミノ酸配列を表4に提供する。抗CD25 scFv-Fc抗体の配向はLHである。VL及びVHは、20個のアミノ酸リンカー(下線)によって接続される。抗CD39抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を表5に提供する。抗RSV scFv-Fc抗体のアミノ酸配列を表6に提供する。抗RSV scFv-Fc抗体の配向はLHである。VL及びVHは、18個のアミノ酸リンカー(下線)によって接続される。
【0437】
【0438】
【0439】
【0440】
可変領域をコードする核酸配列を、標準的なPCR制限酵素ベースの標準的なクローニング技術を使用して、ヒトIgG1発現カセットの定常領域を含有するカスタム哺乳動物発現ベクターにサブクローニングし、配列決定、検証した。抗CD25 scFv-Fc抗体をコードする核酸配列を以下の表7に提供する。抗CD39抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸配列を以下の表8に提供する。抗RSV scFv-Fc抗体をコードする核酸配列を以下の表9に提供する。
【0441】
【0442】
【0443】
【0444】
二重特異性抗体を、チャイニーズハムスター卵巣細胞株における一過性トランスフェクションによって発現した。抗体を、最初にMab Select SuRe Protein Aカラム(GE Healthcare)によって精製した。カラムをPBS pH7.2で平衡化し、2mL/分の流速で発酵上清を装填した。装填後、カラムを4カラム容量のPBSで洗浄し、続いて、30mM酢酸ナトリウム、pH3.5で溶出した。280nmでの吸光度によってモニターされるようなタンパク質ピークを含有する画分をプールし、1%の3M酢酸ナトリウムpH9.0を添加することによってpH5.0に中和した。二重特異性mAbを、PBS緩衝剤で平衡化した分取Superdex 200 10/300 GL(GE healthcare)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)カラム上で更に精製した。試料の完全性を、エンドトキシン測定、並びに還元及び非還元条件下でのSDS-PAGEによって評価した。
【0445】
7.2 実施例2:抗体依存性細胞食作用(ADCP)アッセイ
アッセイ緩衝液の調製:1.5mLの低IgG血清を36mLのRPMI-1640培地に添加して、37.5mLの96%RPMI-1640/4%低IgG血清を作製した。
【0446】
標的細胞の調製:25μLの初代ヒトTreg(Hemacare;カタログ番号PB425/127NC-2)を、96ウェル、白色、平底アッセイプレート(Corning;カタログ番号3917)のウェルごとに等分し、各ウェルに12,500個のTregが含まれるようにした。抗体希釈系列を調製しながら、標的細胞を37℃/5%CO2で15分間平衡化した。
【0447】
試験抗体の調製:アッセイ緩衝液を希釈剤として使用して、1.5倍抗体連続希釈物を、120μg/mLの開始抗体濃度で調製した(10点用量反応)。25μLの抗体連続希釈物を、予めプレーティングした標的細胞に添加した。アッセイプレートを室温(RT)で15分間インキュベートした。
【0448】
FcγRIIa-H131エフェクター細胞の調製:FcγRIIa-H ADCPバイオアッセイキットは、Promegaから購入した(カタログ番号G9991)。25μLのヒトFcγRIIa-H131エフェクター細胞を、既に標的細胞及び試験抗体を含むアッセイプレートの各ウェルに等分し、各ウェルに75,500個のエフェクター細胞を入れた。アッセイプレートを37℃/5%CO2で6時間インキュベートした。
【0449】
Bio-Glo試薬の調製:アッセイプレートをインキュベーターから取り出し、室温で15分間平衡化した。Bio-Gloルシフェラーゼアッセイ基質を10mLのBio-Gloルシフェラーゼアッセイ緩衝液で再構成して、Bio-Glo試薬を作製した。75μLのBio-Glo試薬をアッセイプレート中の各ウェルに添加し、室温で20分間インキュベートし、アッセイプレートをシェーカー上でわずかに撹拌し、ルミノメーター(Envisionプレートリーダー)を使用して0.5秒/ウェルの積分時間で発光を測定した。加えて、75μLのBio-Glo試薬を含む3つの空のウェルのバックグラウンドシグナルを測定した。
【0450】
データ分析:バックグラウンドシグナルは、Bio-Glo試薬のみを含む3つの空のウェルの平均RLU(相対発光単位)を取得することによって計算した。誘導倍率を、RLU(試料-バックグラウンド)/RLU(抗体なし対照-バックグラウンド)として計算した。データを、誘導倍率(RLU)対Log10[抗体]としてグラフ化した。log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4つのパラメータ)の非線形回帰曲線フィッティングを行い、EC50値を外挿した。結果を
図3に示す。
【0451】
7.3 実施例3:抗体依存性細胞傷害性についてのアッセイ
アッセイ緩衝液の調製:1.4mLの低IgG血清を33.6mLのRPMI-1640培地に添加して、35mLの96%RPMI-1640/4%低IgG血清を作製した。
【0452】
標的細胞の調製:25μLの初代ヒトTreg(Hemacare;カタログ番号PB425/127NC-2)を、96ウェル、白色、平底アッセイプレート(Corning;カタログ番号3917)のウェルごとに等分し、各ウェルに12,500個のTregが含まれるようにした。抗体希釈系列を調製しながら、標的細胞を37℃/5%CO2で15分間平衡化した。
【0453】
試験抗体の調製:アッセイ緩衝液を希釈剤として使用して、3倍抗体連続希釈物を、50μg/mLの開始抗体濃度で調製した(10点用量反応)。25μLの抗体連続希釈物を、予めプレーティングした標的細胞に添加した。アッセイプレートは室温で15分間であった。
【0454】
FcγRIIIa-F158エフェクター細胞の調製:ADCCレポーターアッセイ、Fバリアントキットは、Promegaから購入した(カタログ番号G9790)。25μLのヒトFcγRIIIa-F158エフェクター細胞を、既に標的細胞及び試験抗体を含むアッセイプレートの各ウェルに等分し、各ウェルに75,500個のエフェクター細胞を入れた。アッセイプレートを37℃/5%CO2で6時間インキュベートした。
【0455】
Bio-Glo試薬の調製:アッセイプレートをインキュベーターから取り出し、室温で15分間平衡化した。Bio-Gloルシフェラーゼアッセイ基質を10mLのBio-Gloルシフェラーゼアッセイ緩衝液で再構成して、Bio-Glo試薬を作製した。75μLのBio-Glo試薬をアッセイプレート中の各ウェルに添加し、室温で20分間インキュベートし、アッセイプレートをシェーカー上でわずかに撹拌し、ルミノメーター(Envisionプレートリーダー)を使用して0.5秒/ウェルの積分時間で発光を測定した。加えて、75μLのBio-Glo試薬を含む3つの空のウェルのバックグラウンドシグナルを測定した。
【0456】
データ分析:バックグラウンドシグナルは、Bio-Glo試薬のみを含む3つの空のウェルの平均RLUを取ることによって計算した。誘導倍率を、RLU(試料-バックグラウンド)/RLU(抗体なし対照-バックグラウンド)として計算した。誘導倍率(RLU)対Log10[抗体]としてのグラフデータ。log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4つのパラメータ)の非線形回帰曲線フィッティングを行い、EC50値を外挿した。結果を
図4に示す。
【0457】
7.4 実施例4:ヒトC1q結合アッセイ
スルホタグ付きヒトC1qタンパク質の調製:ヒトC1qタンパク質(OriGene;カタログ番号BA148)のタグ精製を、MSDプロトコルに従ってMSD GOLD SULFO-TAG NHS-Esterを使用して実行した。
【0458】
試験抗体によるMSDプレートのコーティング:希釈剤として1×PBSを使用して、200μg/mLの開始抗体濃度で2倍抗体段階希釈物を調製した(12点用量反応)。40μLの抗体段階希釈物を、マルチアレイMSD高結合96ウェルアッセイプレート(MSD;カタログ番号L15XB)に添加した。アッセイプレートをシェーカー上で5分間穏やかに撹拌して、確実に均一に分布させた。アッセイプレートを4℃で一晩インキュベートした。
【0459】
洗浄工程:アッセイプレートをMSD Tris洗浄緩衝液(1x)(MSD;カタログ番号R61TX-2)で3回洗浄した。
【0460】
ブロッキング工程:150μLのブロッキング溶液を、MSD Blocker Aキット(MSD;カタログ番号R93AA-2)から調製したアッセイプレートの各ウェルに添加した。アッセイプレートを振盪しながら室温で1時間インキュベートした。
【0461】
洗浄工程:アッセイプレートをMSD Tris洗浄緩衝液(1x)で3回洗浄した。
【0462】
スルホタグ付きヒトC1qタンパク質の添加:25μLのスルホタグ付きヒトC1qタンパク質をアッセイプレートの各ウェルに添加して、10μg/mLの最終濃度を達成した。アッセイプレートを振盪しながら室温で1時間インキュベートした。
【0463】
洗浄工程:アッセイプレートをMSD Tris洗浄緩衝液(1x)で3回洗浄した。
【0464】
読み取り緩衝液の添加:150μLの2×読み取り緩衝液を、MSD読み取り緩衝液-T 4x(MSD;カタログ番号R29TC-2)から調製したアッセイプレートの各ウェルに添加した。アッセイプレートをMSD画像機器上で読み取り、RLU値を得た。
【0465】
データ分析:log(アゴニスト)対応答-可変勾配(4つのパラメータ)の非線形回帰曲線フィッティングを行った。結果を
図5に示す。
【0466】
7.5 実施例5:他の例示的な二重特異性抗体
7.5.1 例示的な二重特異性抗体の構築
追加の例示的な二重特異性抗体を生成した。例示的な二重特異性抗体は、第1の抗原と結合することができる第1の結合ドメインと、第2の抗原と結合することができる第2の結合ドメインと、を含む。第1の抗原及び第2の抗原の両方は、常在性制御性T(Treg)細胞上に存在する。例示的な構築物の1つのセットにおいて、第1の抗原及び第2の抗原は、CD25、CD39、CD3、CD4、CD5、FoxP3、5’ヌクレオチダーゼ/CD73、CD103、CD127、CD134、Ki67、CD62L(LECAM-1)、CD45RA、GITR、CD223(LAG-3)、FR4、CD194(CCR4)、CD152(CTLA-4)、GARP(LRC32)、OX40、LAP、ICOS、PD1、TCR、及びニューロピリン-1からなる群から選択される。
【0467】
一部の構築物では、ノブインホール(KIH)技術を使用して二重特異性抗体を操作した。二重特異性抗体の結晶化可能断片(Fc)領域に変異を導入して、抗体依存性細胞食作用(ADCP)活性及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を含むFcエフェクター機能を増強し、Tregの枯渇を増強させて抗腫瘍免疫応答を増強した。
【0468】
7.5.2 例示的な二重特異性抗体についての機能アッセイ
抗体依存性細胞食作用(ADCP)アッセイ及び抗体依存性細胞傷害性(ADCC)アッセイを実施して、Tregの枯渇に対する例示的な二重特異性抗体の効果を試験した。ADCPアッセイ及びADCCアッセイの手順は、第7.2節及び第7.3節で上述した手順と同様である。
【配列表】
【国際調査報告】