(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】制御可能に作動される固定、摩擦低減およびデバイス運動を有する医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61M25/00 540
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550027
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 US2022015864
(87)【国際公開番号】W WO2022177792
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,スティーヴン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB02
4C267BB42
4C267BB52
4C267CC08
4C267HH22
4C267JJ14
(57)【要約】
血管などの体腔内でカテーテルを移動させるために、戦略的に構成されたアクチュエータが配置されたカテーテル(100)を利用して、カテーテルの形状および/または剛性を変更することにより、電子的に作動される固定、摩擦低減および/または原動力を提供するカテーテルシステムおよび方法である。カテーテルは、細長い可撓性の管状部材(12)を含み、管状部材上に配置された1または複数のアクチュエータ(114a、b、c、e、f、g)を有する。アクチュエータは、管状部材の形状および/または剛性を変更して、カテーテルの固定、カテーテル移動中の摩擦低減、および/または体腔内でのカテーテルの推進を含む様々な制御機能を提供するように構成されている。アクチュエータは、電子的に作動可能な電気活性ポリマーアクチュエータ、プルワイヤのような機械的手段によって作動する機械的アクチュエータ、流体圧によって作動する流体圧または空気圧アクチュエータ、またはそれらの組合せであってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルシステムであって
固有の可撓性を有するアンカー部分を備えた細長い可撓性の管状部材と、
前記管状部材上に配置された1または複数のアクチュエータであって、前記1または複数のアクチュエータが、前記管状部材がその弛緩形状を有することを可能にする非作動状態と、作動されることに応答して、前記1または複数のアクチュエータが、前記アンカー部分をアンカー形状に硬化させる作動状態とを有し、前記アンカー形状が、前記アンカー形状に対応する体腔内の定位置に前記アンカー部分を固定するように構成された、1または複数のアクチュエータとを備え、
当該カテーテルシステムが、(a)前記管状部材のアンカー部分がその固有の可撓性を有するように前記1または複数のアクチュエータが非作動である非作動構成と、(b)前記1または複数のアクチュエータが作動され、それにより前記アンカー形状に対応する体腔内の定位置に前記アンカー部分を固定するように構成された前記アンカー形状に前記アクチュエータが前記アンカー部分を硬化させるように前記1または複数のアクチュエータが作動される作動構成とを有することを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記1または複数のアクチュエータが、前記アンカー部分の形状も変更するように構成され、前記1または複数のアクチュエータが、作動構成において、前記アンカー部分を前記アンカー形状に形成することを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記1または複数のアクチュエータが、1または複数の電気制御信号によって作動する電気活性ポリマーアクチュエータを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記複数の電気活性ポリマーアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラをさらに備え、前記コントローラが、前記複数の電気活性ポリマーアクチュエータに電気制御信号を選択的に伝達するように構成されていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記コントローラが、複数の導体によって前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータに結合され、各導体が、それぞれの電気活性ポリマーアクチュエータに接続された第1の端部と、前記コントローラに接続された第2の端部とを有することを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気制御信号が、前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータに印加されるそれぞれの電圧を含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項7】
請求項3に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気活性ポリマーアクチュエータが、パリレンフィルムを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項8】
請求項3に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気活性ポリマーアクチュエータが、パリレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリスルホンおよびポリアセチレンからなる群のなかから選択された電気活性ポリマーを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記1または複数のアクチュエータが、機械的アクチュエータに結合された1または複数のプルワイヤによって作動される機械的アクチュエータを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のカテーテルシステムにおいて、
各機械的アクチュエータが、前記管状部材の中心軸の周りに異方性領域を有するアクチュエータ要素を含み、第1のエリアが第1のコンプライアンスを有し、第2のエリアが前記第1のコンプライアンスとは異なる第2のコンプライアンスを有し、前記1または複数のプルワイヤによる前記アクチュエータ要素への圧縮荷重によって、前記アクチュエータ要素が予め設定された形状に屈曲および硬化するようになっていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のカテーテルシステムにおいて、
各アクチュエータ要素が、前記第1のエリアに第1のコンプライアンスを付与し、前記第2のエリアに第2のコンプライアンスを付与するカットパターンを有するハイポチューブの領域を含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記1または複数のアクチュエータが、圧力アクチュエータに結合された1または複数の圧力ルーメンによって作動される圧力アクチュエータを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項13】
請求項1~11の何れか一項に記載のカテーテルシステムを体腔内で使用する方法であって
カテーテルの遠位端を体腔内に挿入するステップであって、前記カテーテルが、固有の可撓性を有するアンカー部分を備えた細長い可撓性の管状部材と、前記管状部材上に配置された1または複数のアクチュエータとを備え、前記1または複数のアクチュエータが、作動されることに応答して、アンカー形状において前記アンカー部分の剛性を変更するように構成され、前記アンカー形状が、前記アンカー形状に対応する形状を有する体腔内の定位置に前記アンカー部分を固定するように構成された、ステップと、
前記1または複数のアクチュエータを作動させずに、前記アンカー部分がその固有の可撓性を有する状態で、前記カテーテルを、前記アンカー形状に対応する形状を有する標的位置まで体腔内で前進させるステップと、
前記1または複数のアクチュエータを作動させることにより、前記アンカー部分を前記アンカー形状に硬化させ、前記アンカー部分を体腔内の定位置に固定するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記1または複数のアクチュエータが、前記アンカー部分の形状も変更するように構成され、前記1または複数のアクチュエータを作動させるステップが、前記アンカー部分を前記アンカー形状に形成することを特徴とする方法。
【請求項15】
カテーテルシステムであって
固有の可撓性を有するアンカー部分を備えた細長い可撓性の管状部材と、
前記管状部材上に配置された1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータであって、前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータが、1または複数の電気制御信号に応答して、アンカー形状において、前記アンカー部分の剛性を変更するように構成され、前記アンカー形状が、前記アンカー形状に対応する体腔内の定位置に前記アンカー部分を固定するように構成された、1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータとを備え、
当該カテーテルシステムが、(a)非作動構成であって、前記管状部材のアンカー部分がその固有の可撓性を有するように前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータが非作動である、非作動構成と、(b)作動構成であって、前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータが少なくとも1つの制御信号によって作動され、それにより電気活性ポリマーアクチュエータが、前記アンカー形状に対応する体腔内の定位置に前記アンカー部分を固定するように構成された前記アンカー形状において、前記アンカー部分を硬化させる、作動構成とを有することを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータが、前記アンカー部分の形状も変更するように構成され、前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータが、作動構成において、前記アンカー部分を前記アンカー形状に形成することを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項17】
請求項15に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記複数の電気活性ポリマーアクチュエータに動作可能に結合されたコントローラをさらに備え、前記コントローラが、前記複数の電気活性ポリマーアクチュエータに電気制御信号を選択的に伝達するように構成されていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記コントローラが、複数の導体によって前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータに結合され、各導体が、それぞれの電気活性ポリマーアクチュエータに接続された第1の端部と、前記コントローラに接続された第2の端部とを有することを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項19】
請求項17に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気制御信号が、前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータに印加されるそれぞれの電圧を含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項20】
請求項15に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気活性ポリマーアクチュエータが、パリレンフィルムを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項21】
請求項15に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気活性ポリマーアクチュエータが、パリレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリスルホンおよびポリアセチレンからなる群のなかから選択された電気活性ポリマーを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項22】
カテーテルシステムを体腔内で使用する方法であって、
カテーテルの遠位端を体腔内に挿入するステップであって、前記カテーテルが、固有の可撓性を有するアンカー部分を備えた細長い可撓性の管状部材と、前記管状部材上に配置された1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータとを備え、前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータが、1または複数の電気制御信号に応答して、アンカー形状において前記アンカー部分の剛性を変更するように構成され、前記アンカー形状が、前記アンカー形状に対応する形状を有する体腔内の定位置に前記アンカー部分を固定するように構成された、ステップと、
前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータを作動させずに、前記アンカー部分がその固有の可撓性を有する状態で、前記カテーテルを標的位置まで体腔内で前進させるステップと、
少なくとも1つの制御信号を使用して前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータを作動させることにより、前記アンカー形状において前記アンカー部分を硬化させ、前記アンカー部分を体腔内の定位置に固定するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータが、前記アンカー部分の形状も変更するように構成され、1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータを作動させるステップが、前記アンカー部分を前記アンカー形状に形成することを特徴とする方法。
【請求項24】
カテーテルシステムであって
細長い可撓性の管状部材と、
前記管状部材上に配置された複数の電気活性ポリマーアクチュエータであって、前記管状部材を実質的に正弦波の形状に形成し、前記管状部材の形状を、位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状と位相が180°ずれた実質的に正弦波の形状との間で往復して移行させるように構成された複数の電気活性ポリマーアクチュエータと、
前記複数の電気活性ポリマーアクチュエータに動作可能に結合されたコントローラであって、前記複数の電気活性ポリマーアクチュエータに制御信号を送信して、位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状と位相が180°ずれた実質的に正弦波の形状との間で往復して前記管状部材を動的に循環させるように構成されたコントローラとを備えることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項25】
請求項24に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記コントローラが、前記管状部材を体腔内で長手方向に移動させる際に前記管状部材の静止摩擦を減少させる振幅および周波数で、前記管状部材の正弦波形状を動的に循環させることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項26】
請求項25に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記複数の電気活性ポリマーアクチュエータが、第1のセットおよび第2のセットを含み、前記管状部材の第1の側では、前記第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータが、前記管状部材に沿って長手方向に配置され、かつ前記第1の側に前記管状部材に沿って長手方向に配置された第2のセットの電気活性ポリマーアクチュエータと交互に配置され、前記管状部材の前記第1の側とは反対側の第2の側では、前記第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータが、前記管状部材に沿って長手方向に配置され、かつ前記第2の側に前記管状部材に沿って配置された第2のセットの電気活性ポリマーアクチュエータと交互に配置され、それにより、前記電気活性ポリマーアクチュエータの第1のセットの作動によって、前記管状部材の形状を位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状に変更し、前記電気活性ポリマーアクチュエータの第2のセットの作動によって、前記管状部材の形状を位相が180°ずれた正弦波の形状に変更するようになっていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項27】
請求項26に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気活性ポリマーアクチュエータの第1のセットが、電気接続部の第1のペアを介して前記コントローラに電気的に接続され、それにより前記第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータのすべてが前記コントローラからの単一の第1の信号によって作動し、前記電気活性ポリマーの第2のセットが、電気接続部の第2のペアを介して前記コントローラに接続され、それにより前記第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータのすべてが前記コントローラからの単一の第2の信号によって作動し、前記電気接続部の第2のペアが、前記電気接続部の第1のペアから電気的に絶縁/分離されていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項28】
カテーテルシステムを体腔内で使用する方法であって、
前記カテーテルシステムを体腔内に挿入するステップであって、前記カテーテルシステムが、細長い可撓性の管状部材と、前記管状部材上に配置された複数の電気活性ポリマーアクチュエータとを備え、前記複数の電気活性ポリマーアクチュエータが、前記管状部材の形状を、位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状と位相が180°ずれた実質的に正弦波の形状との間で往復して移行させるように構成された、ステップと、
コントローラが前記複数の電気活性ポリマーアクチュエータに制御信号を送信して、前記管状部材を位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状と位相が180°ずれた実質的に正弦波の形状との間で往復して動的に循環させる間に、前記カテーテルを体腔内で長手方向に移動させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、
前記コントローラが、前記管状部材を体腔内で長手方向に移動させる際に前記管状部材と体腔の壁との間の静止摩擦を減少させる振幅および周波数で、前記管状部材の正弦波形状を動的に循環させることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法において、
前記電気活性ポリマーアクチュエータの第1のセットが、前記管状部材の両側において、前記管状部材に沿って長手方向に間隔を開けて第1のセットから第2のセットに交互に配置され、前記電気活性ポリマーアクチュエータの第2のセットと交互に配置され、前記電気活性ポリマーアクチュエータの第1のセットの作動により、前記管状部材の形状を位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状に変更し、前記電気活性ポリマーアクチュエータの第2のセットの作動により、前記管状部材の形状を位相が180°ずれた正弦波の形状に変更するようになっていることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、
前記電気活性ポリマーアクチュエータの第1のセットが、電気接続部の第1のペアを介して前記コントローラに電気的に接続され、それにより前記第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータのすべてが前記コントローラからの単一の第1の信号によって作動し、電気活性ポリマーの第2のセットが、電気接続部の第2のペアを介して前記コントローラに接続され、それにより前記第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータのすべてが前記コントローラからの単一の第2の信号によって作動し、前記電気接続部の第2のペアが、前記電気接続部の第1のペアから電気的に絶縁/分離されていることを特徴とする方法。
【請求項32】
カテーテルシステムであって、
細長い可撓性の管状部材と、
前記管状部材に沿った螺旋経路内で前記管状部材上に配置されたアクチュエータとを備え、前記アクチュエータの作動により、前記管状部材の形状が実質的に螺旋形状に移行し、それにより、体腔内で前記管状部材を安定させるのに十分な前記管状部材の長さに沿って前記管状部材が体腔の壁と周方向に接触することができることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項33】
請求項32に記載のカテーテルシステムにおいて、
実質的に螺旋形状の管状部材が、前記管状部材の挿入可能な長さのほぼ全体にわたって体腔の壁と周方向に接触するように、前記カテーテルが構成されていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項34】
請求項32に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記アクチュエータが、1または複数の電気制御信号によって作動する電気活性ポリマーアクチュエータを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項35】
請求項34に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気活性ポリマーアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラをさらに備え、前記コントローラが、前記電気活性ポリマーアクチュエータに電気制御信号を選択的に送信するように構成されていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項36】
請求項35に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記コントローラが、導体のペアによって前記電気活性ポリマーアクチュエータに接続され、各導体が、前記電気活性ポリマーアクチュエータに接続された第1の端部と、前記コントローラに接続された第2の端部とを有することを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項37】
請求項35に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気制御信号が、前記電気活性ポリマーアクチュエータに印加されるそれぞれの電圧を含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項38】
請求項34に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気活性ポリマーアクチュエータが、パリレンフィルムを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項39】
請求項34に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記電気活性ポリマーアクチュエータが、パリレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリスルホンおよびポリアセチレンからなる群のなかから選択された電気活性ポリマーを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項40】
請求項32に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記アクチュエータが、機械的アクチュエータを含み、この機械的アクチュエータが、機械的アクチュエータに結合された1または複数のプルワイヤによって作動されることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項41】
カテーテルシステムを使用する方法であって、
前記カテーテルシステムを体腔内に挿入するステップであって、前記カテーテルシステムが、細長い可撓性の管状部材と、前記管状部材に沿った螺旋経路内で前記管状部材上に配置されたアクチュエータとを備え、前記アクチュエータの作動により、前記管状部材の形状が実質的に螺旋形状に移行するようになっている、ステップと、
前記アクチュエータの作動により、前記管状部材の形状を実質的に螺旋形状に移行させるステップであって、それにより、体腔内で前記管状部材を安定させるのに十分な管状部材の長さに沿って前記管状部材を体腔の壁と周方向に接触させる、ステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法において、
前記管状部材が、前記管状部材の挿入可能な長さのほぼ全体に沿って体腔の壁と周方向に接触することを特徴とする方法。
【請求項43】
カテーテルシステムであって、
細長い可撓性の管状部材であって、第1の部分と、前記第1の部分から長手方向に間隔をあけて配置された第2の部分と、前記第1の部分および前記第2の部分から長手方向に間隔をあけて配置された第3の部分とを有する管状部材と、
前記管状部材の第1の部分に沿った螺旋経路内で前記管状部材の第1の部分上に配置された第1のアクチュエータであって、第1の作動パターンを使用して前記第1のアクチュエータを作動させると、前記管状部材の第1の部分の形状が実質的に螺旋状に変化する、第1のアクチュエータと、
前記管状部材の第2の部分に沿った螺旋経路内で前記管状部材の第2の部分上に配置された第2のアクチュエータであって、第2の作動パターンを使用してアクチュエータを作動させると、前記管状部材の第2の部分の形状が実質的に螺旋状に変化する、第2のアクチュエータと、
前記管状部材の第3の部分に沿った螺旋経路内で前記管状部材の第3の部分上に配置された第3のアクチュエータであって、第3の作動パターンを使用して前記第3のアクチュエータを作動させると、前記管状部材の第3の部分の形状が実質的に螺旋状に変化する、第3のアクチュエータとを備え、
前記第1、第2および第3のアクチュエータの変調された作動により、前記管状部材と体腔の壁との間に、前記管状部材を体腔内で長手方向に移動させる原動力を生じさせるように、前記第1、第2および第3のアクチュエータが構成されていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項44】
請求項43に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記第1、第2および第3のアクチュエータの変調された作動が、ワームクローラのような運動、反対方向の原動力を生み出す一方向の波動運動、および回転スクリュ運動のうちの1つの原動力を生じさせることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項45】
請求項43に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記第1の作動パターン、第2の作動パターンおよび第3の作動パターンが正弦波振幅変調パターンであり、各変調パターンが他の2つのパターンから位相がずれていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項46】
請求項45に記載のカテーテルシステムにおいて、
各パターンが、他の2つのパターンから120°位相がずれていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項47】
請求項43に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記管状部材の第1、第2および第3の部分の外面が、螺旋状の起伏を有することを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項48】
請求項43に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記第1、第2および第3のアクチュエータが、1または複数の電気制御信号によって作動されるそれぞれの電気活性ポリマーアクチュエータを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項49】
請求項48に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記第1、第2および第3の電気活性ポリマーアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラをさらに備え、前記コントローラが、前記第1、第2および第3の制御信号をそれぞれの第1、第2および第3の電気活性ポリマーアクチュエータに送信するように構成されていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項50】
請求項49に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記第1、第2および第3の電気制御信号が正弦波振幅変調信号であり、各信号が、他の2つの信号から120°位相がずれていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項51】
カテーテルシステムを使用する方法であって、
前記カテーテルシステムを体腔内に挿入するステップであって、前記カテーテルシステムが、
細長い可撓性の管状部材であって、第1の部分と、前記第1の部分から長手方向に間隔をあけて配置された第2の部分と、前記第1の部分および前記第2の部分から長手方向に間隔をあけて配置された第3の部分とを有する管状部材と、
前記管状部材の第1の部分に沿った螺旋経路内で前記管状部材の第1の部分上に配置された第1の電気活性ポリマーアクチュエータであって、第1の電気制御信号を使用して前記第1の電気活性ポリマーアクチュエータを作動させると、前記管状部材の第1の部分の形状が実質的に螺旋状に移行する、第1の電気活性ポリマーアクチュエータと、
前記管状部材の第2の部分に沿った螺旋経路内で前記管状部材の第2の部分上に配置された第2の電気活性ポリマーアクチュエータであって、第2の電気制御信号を使用して電気活性ポリマーアクチュエータを作動させると、前記管状部材の第2の部分の形状が実質的に螺旋状に移行する、第2の電気活性ポリマーアクチュエータと、
前記管状部材の第3の部分に沿った螺旋経路内で前記管状部材の第3の部分上に配置された第3の電気活性ポリマーアクチュエータであって、第3の電気制御信号を使用して電気活性ポリマーアクチュエータを作動させると、前記管状部材の第3の部分の形状が実質的に螺旋状に移行する、第3の電気活性ポリマーアクチュエータとを備える、ステップと、
変調された第1の電気制御信号、変調された第2の電気制御信号および変調された第3の電気制御信号を使用して、前記第1、第2および第3の電気活性ポリマーアクチュエータを作動させ、それにより、前記管状部材と体腔の壁との間に、前記管状部材を体腔内で長手方向に移動させる原動力を生じさせるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法において、
前記第1の電気制御信号、第2の電気制御信号および第3の電気制御信号が、正弦波振幅変調信号であり、各信号が、他の2つの信号から位相がずれていることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法において、
各信号が、他の2つの信号から120°位相がずれていることを特徴とする方法。
【請求項54】
カテーテルシステムであって、
細長い可撓性の管状部材であって、前記管状部材が、半径方向に配置された複数のセグメントを有し、前記セグメントが、前記管状部材の個別の長さに沿って長手方向に一致し、かつ互いに半径方向に間隔をあけて配置されている、管状部材と、
複数のアクチュエータであって、それぞれのアクチュエータが、それぞれのセグメントの長手方向の長さに沿った螺旋経路内で各セグメント内に配置され、それぞれのアクチュエータがそれぞれの作動パターンで作動すると、それぞれのセグメントの形状が実質的に螺旋状に移行する、複数のアクチュエータとを備え、
前記アクチュエータの連続作動により、前記管状部材と体腔の壁との間に、前記管状部材を体腔内で長手方向に移動させる原動力を生じさせるように、前記複数のアクチュエータが構成されていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項55】
請求項54に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記アクチュエータの連続作動が、螺旋状のクローラのような運動および回転スクリュ運動のうちの1つで原動力を生じさせることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項56】
請求項54に記載のカテーテルシステムにおいて、
各アクチュエータのそれぞれの作動パターンが、正弦波振幅変調パターンであり、各アクチュエータの変調パターンが、他のアクチュエータと位相がずれていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項57】
請求項56に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記複数のアクチュエータが3つのアクチュエータからなり、各変調パターンが、他の2つのパターンから120°位相がずれていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項58】
請求項54に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記管状部材のセグメントの外面が、螺旋形状の起伏を有することを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項59】
請求項54に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記複数のアクチュエータが、1または複数の電気制御信号によって作動されるそれぞれの電気活性ポリマーアクチュエータを含むことを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項60】
請求項59に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記アクチュエータに動作可能に接続されたコントローラをさらに備え、前記コントローラが、それぞれの電気活性ポリマーアクチュエータにそれぞれの電気制御信号を送信するように構成されていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項61】
請求項60に記載のカテーテルシステムにおいて、
それぞれの電気制御信号が、正弦波振幅変調信号であり、それぞれの電気信号が、他の電気信号から位相がずれていることを特徴とするカテーテルシステム。
【請求項62】
カテーテルシステムを使用する方法であって、
前記カテーテルシステムを体腔内に挿入するステップであって、前記カテーテルシステムが、
細長い可撓性の管状部材であって、前記管状部材が、半径方向に配置された複数のセグメントを有し、前記セグメントが、前記管状部材の個別の長さに沿って長手方向に一致し、かつ互いに半径方向に間隔をあけて配置されている、管状部材と、
複数のアクチュエータであって、それぞれのアクチュエータが、それぞれのセグメントの長手方向の長さに沿って螺旋経路内で各セグメント内に配置され、それぞれのアクチュエータがそれぞれの作動パターンで作動すると、それぞれのセグメントの形状が実質的に螺旋状に移行する、複数のアクチュエータとを備える、ステップと、
前記アクチュエータを連続作動パターンで作動させることにより、前記管状部材と体腔の壁との間に、前記管状部材を体腔内で長手方向に移動させる原動力を生じさせるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法において、
前記連続作動パターンが、各アクチュエータをそれぞれの正弦波振幅パターンで作動させ、それぞれのパターンが他のパターンから位相がずれていることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項63に記載の方法において、
各パターンが、他のパターンから360°/N位相がずれており、Nが前記カテーテルシステムのアクチュエータの数を示していることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の発明は、概して、患者の血管系の管腔内で処置を行うための医療デバイスおよび方法に関し、より詳細には、血管系内で使用するために、カテーテルの剛性および/または形状を変更して、力誘発機能または電子的に作動可能な機能などの作動可能な機能を提供する、機械式、流体圧式、熱抵抗式または電気活性ポリマーアクチュエータなどのアクチュエータを有するカテーテル、シースおよび/またはガイドワイヤ、並びに、それらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、介入療法、薬物送達、診断、灌流などを含む様々な医療処置を行うための様々な設計の医療デバイスが開示されている。一般に、医療用シース、カテーテルまたはガイドワイヤは、患者の入口部位から静脈や動脈などの患者の血管系にデバイスの遠位端を導入することによって使用される。例えば、カテーテルは、治療および/または診断の医療処置を行うために、カテーテルの近位部分を案内して押すことによって、入口部位から進められ、血管系を介して標的部位までカテーテルが進められる。標的部位までの血管経路は曲がりくねっていることが多く、カテーテルは、曲がりながら方向を変える経路を辿る必要がある。ユーザ(典型的には、医師)は、カテーテルを操作する(例えば、捻ったり、回転させたりする)ことによってカテーテルを前進させる際に、かつ/または遠位端に連結されたプルワイヤまたは他のステアリング機構を使用して血管経路に沿って遠位端を操縦することによりカテーテルを前進させる際に、カテーテルを操縦する必要がある。
【0003】
血管内カテーテルの一例としてガイドカテーテルがある。ガイドカテーテルは、他の器具を血管系内の所望の部位に誘導するために使用される。一般に、ガイドカテーテルは、細長い可撓性の管状部材を含み、プルワイヤのようなステアリング機構を有することもある。一般的なタイプのガイドカテーテルの1つにバルーンガイドカテーテルがあり、このバルーンガイドカテーテルは、管状部材に固定されたバルーン部材も含む。バルーンは、管状部材の遠位部分または他の適切な位置に取り付けられる。バルーンは、ガイドカテーテルを標的部位まで前進させた後に定位置に固定すること、バルーンの位置で血管内腔を封止すること(例えば、流体の流れを遮断すること)、および/または血管の拡張、閉塞部の圧縮などの治療処置を実行することを含む、いくつかの有用な機能のいずれかを提供することができる。また、バルーンガイドカテーテルは、管状部材の近位端から膨張可能なバルーンまで延びる膨張ルーメンであって、バルーンを膨張させるために膨張流体を注入し、またバルーンを収縮させるために流体圧を解放するための膨張ルーメンも含む。
【0004】
これまで、カテーテルの操縦および形状変更するための様々な設計が開示されている。これらの設計の中には、カテーテル上に配置された電気活性ポリマーアクチュエータと、アクチュエータに接続された制御ユニットであって、アクチュエータにカテーテルの構成を変更させる電気制御信号をアクチュエータに選択的に送信する制御ユニットとを利用するものもある。例えば、米国特許第7,261,686号には、軸方向の長さに沿って配置された電気活性ポリマーアクチュエータを有するガイドカテーテルが記載され、このガイドカテーテルでは、制御ユニットから受信した制御信号に基づいて、アクチュエータがガイドカテーテルの形状および/または剛性を変化させるものとなっている。米国特許第7,261,686号は、アクチュエータを使用して、患者の解剖学的構造に適合するようにガイドカテーテルの形状を変え、カテーテルが挿入される際にカテーテルを制御可能に操縦し、カテーテルを硬化させることができると説明している。同様に、米国特許第8,920,870号には、カテーテル上の異なる位置に電気活性ポリマーのセクションを有するカテーテルを含むカテーテルシステムが記載され、このシステムでは、それらセクションが、制御信号によって作動されることにより、カテーテルのセクションをヒンジ運動、湾曲、回転、拡張または収縮させ、あるいはセクションを取り囲む領域の剛性を高めて、カテーテルの押込性を向上させる。
【発明の概要】
【0005】
開示の発明は、作動される固定、摩擦低減および/または原動力を提供して、血管のような体腔内でデバイスを移動させるために、戦略的に構成および位置決めされたアクチュエータが配置されたデバイスを対象とする。アクチュエータは、電気信号によって作動する電気機械式アクチュエータ、プルワイヤのような機械的手段によって作動する機械式アクチュエータ、流体圧によって作動可能な流体圧または空気圧式アクチュエータ、またはそれらの組合せであってもよい。開示の実施形態の説明は、患者の血管系内での治療デバイスの挿入および位置決めに使用されるガイドカテーテルに向けられているが、開示の発明は、ガイドカテーテルに限定されるものではなく、任意の適切なカテーテル、シースまたはガイドワイヤとともに使用され得ることを理解されたい。例えば、本明細書に記載のカテーテルは、ガイドカテーテル、バルーンガイドカテーテル、診断用カテーテル、治療用カテーテル、アクセスシース、ガイドシース、拡張器、ガイドワイヤ、スタイレットなどを含む任意の適切なタイプのデバイスであってよい。
【0006】
一実施形態では、カテーテルシステムが、固有の可撓性を有するアンカー部分を備えた細長い可撓性の管状部材と、管状部材上に配置された1または複数のアクチュエータとを備える。本明細書において、「~上に配置される」という用語は、第1の構造体が第2の構造体上に取り付けられる、第2の構造体と一体化される、第2の構造体に適用される、または他の方法で第2の構造体に取り付けられることを意味する。管状部材は、固有の可撓性を有するアンカー部分を有する。例えば、管状部材は、典型的には、体腔内の曲がりくねった経路を移動するために非常に柔軟である。1または複数のアクチュエータは、管状部材の軸方向長さに沿って配置されるとともに、異なる外周/周方向位置に配置されることもある。1または複数のアクチュエータは、アクチュエータが作動されたときに、アンカー形状に対応する体腔の定位置にアンカー部分を固定するように構成されたアンカー形状において、アンカー部分の剛性を変更するように構成されている。1または複数のアクチュエータは、管状部材が固有の可撓性を有することを許容する非作動状態と、アクチュエータが作動されたときの作動状態であって、アンカー形状に対応する体腔内の定位置にアンカー部分を固定するように構成されたアンカー形状にアンカー部分を1または複数のアクチュエータが硬化させる、作動状態とを有する。
【0007】
カテーテルシステムは、1または複数のアクチュエータが、管状部材のアンカー部分の剛性および/または形状に大きな影響を与えないように非作動である非作動構成を有する。換言すれば、管状部材のアンカー部分は、その弛緩形状および/または固有の可撓性を有する。また、カテーテルシステムは、1または複数のアクチュエータが作動され、それにより、アンカー形状に対応する体腔内の定位置にアンカー部分を固定するように構成されたアンカー形状において、アクチュエータがアンカー部分を硬化させる、作動構成も有する。アンカー形状は、アンカー形状に対応する体腔の定位置にアンカー部分を固定するように構成されている。この固定は管状部材の移動に抵抗し、それによって管状部材が体腔内で長手方向に移動するのを防止する。このため、管状部材がアンカー形状によって定位置に固定されている間、器具および他のカテーテルを管状部材に通して移動および操作することができる。
【0008】
例えば、体腔は、湾曲形状(例えば、錐体頸動脈、または大動脈弓を横断して枝血管に至る経路に対応するS字形状)を有することができ、アンカー部分が体腔の湾曲形状に硬化されたときに、アンカー部分が、管状部材を長手方向に移動されるのに抵抗するように定位置に固定することができる。
【0009】
カテーテルシステムの様々な実施形態では、1または複数のアクチュエータが、アンカー部分の形状も変更するように構成することができる。例えば、アクチュエータは、アンカー部分をアンカー形状に形成するようにも構成することができる。このため、アクチュエータは、アンカー部分をアンカー形状に形成すると同時に、アンカー部分をアンカー形状に硬化させる。S字形状に関する上記例では、管状部材のアンカー部分を解剖学的に対応するS字形状に形成するようにアクチュエータが構成されている。
【0010】
カテーテルシステムの様々な実施形態では、1または複数のアクチュエータが機械的アクチュエータを含むことができ、この機械的アクチュエータが、それに結合された1または複数のプルワイヤによって作動する。一実施形態では、各機械的アクチュエータが、管状部材の中心軸の周りに異方性領域を有するアクチュエータ要素を含み、第1のエリアが第1のコンプライアンスを有し、第2のエリアが第1のコンプライアンスとは異なる第2のコンプライアンスを有し、1または複数のプルワイヤによるアクチュエータ要素への圧縮荷重によって、アクチュエータ要素が予め設定された形状に曲がって硬化するようになっている。異方性領域は、第1のエリアに第1のコンプライアンスを付与し、第2のエリアに第2のコンプライアンスを付与するカットパターンを有するハイポチューブなどのチューブによって形成することができる。
【0011】
カテーテルシステムの他の実施形態では、アクチュエータが、プルワイヤなどの機械的手段によって作動する他のタイプの機械的アクチュエータ、流体圧によって作動可能な流体圧または空気圧アクチュエータ、またはそれらの組合せを備えることができる。代表的な例としては、以下のようなものがある。デバイス内に組み込まれた線形引張または圧縮要素を使用して機械的に駆動されるアクチュエータ要素であって、それら要素に力が加えられると、その力により、所望の形状変化の位置でデバイス内の個別の構造の非対称的な弾性長さの収縮または拡張が引き起こされるアクチュエータ要素。別の例では、アクチュエータが、デバイスの主要な補強材を構成する回転可能な同心の予め湾曲した弾性チューブを使用して機械的に駆動され、チューブの互いに対する回転および/または伸長により、その固有の曲率が弾性的に補強または相殺されて、デバイスの形状をその長さ方向に沿って変化させる。
【0012】
流体圧アクチュエータの一例では、アクチュエータが、デバイスに組み込まれた流体接続部を介して流体圧駆動され、デバイス内に組み込まれた流体キャビティの膨張または排出を可能にし、所望の形状変化の位置でデバイス内に非対称に配置された要素および/またはキャビティの直接的な圧力誘導による弾性的な長さの拡張または収縮、および/または、所望の形状変化の位置で膜によって流体キャビティから分離されたデバイス内の非対称に配置されたキャビティの浸透圧駆動による弾性的な長さの拡張または収縮、のうちの1または複数を介して寸法変化を与えることができる。
【0013】
カテーテルシステムの追加的な実施形態では、アクチュエータが他のタイプの電気アクチュエータであってもよい。例えば、アクチュエータは、デバイスに埋め込まれた導電体を使用して電気的に駆動され、抵抗材料に電位差を加えて温度を変化させ、それによって形状記憶材料の形状を変化させること、電気活性ポリマーに電位差を加えて電気活性ポリマーの形状を変化させること、および/または圧電材料に電位差を加えて圧電材料の形状を変化させること、のうちの1または複数を介して曲げ力を引き起こすことができる。
【0014】
開示の別の実施形態は、カテーテルシステムを使用する方法を対象とする。この方法は、カテーテルシステムの遠位端を挿入するステップと、1または複数のアクチュエータが非作動で、かつアンカー部分が固有の可撓性を有する状態で、カテーテルを標的位置まで体腔内で前進させるステップとを含む。アクチュエータを作動させることにより、アンカー部分をアンカー形状に硬化させ、アンカー部分を体腔内の定位置に固定することができる。硬化されたアンカー部分は、カテーテルを体腔内の定位置に固定する。これにより、カテーテルがその固定位置から移動することなく、他のカテーテルおよび/または器具をカテーテルを通して挿入することができるように、カテーテルの位置が維持される。
【0015】
この方法は、アンカー部分をアンカー形状に形成するようにもアクチュエータが構成されている場合、アクチュエータを作動させてアンカー部分をアンカー形状に形成するステップも含むことができる。
【0016】
さらに追加的な開示の実施形態では、アクチュエータが電気活性ポリマーを含む。電子的に作動可能な電気活性ポリマーを使用することにより、カテーテルを電子的に制御することができ、それにはコンピュータ制御も含むことができる。また、電気活性ポリマーアクチュエータの局所的な電子作動は、プルワイヤ技術とは対照的に、近位シャフトなどのカテーテルの遠隔部分への影響も最小限に抑えることができる。また、電気活性ポリマーアクチュエータの使用により、多数のアクチュエータを使用することができ、より複雑にアクチュエータを配置することができる。また、電子作動を使用することにより、カテーテルにプログラム可能な動的形状および構成を持たせることもでき、さらに、非作動状態のときに電気活性ポリマーの静電容量または誘導電圧を測定することにより、アクチュエータにおける歪み環境を検知する追加機能を持たせることもできる。
【0017】
これらの実施形態では、カテーテルシステムが、カテーテル上および/またはカテーテル内に配置された戦略的に構成された電気活性ポリマーアクチュエータを利用して、電子的に作動する固定、摩擦低減および原動力を提供し、それにより血管などの体腔内でカテーテルを移動させることができる。電子的に作動可能な電気活性ポリマーを使用することで、カテーテルを電子的に制御することができ、これにはコンピュータ制御も含むことができる。電気活性ポリマーアクチュエータの局所的な電子作動は、プルワイヤ技術とは対照的に、近位シャフトなどのカテーテルの遠隔部分への影響も最小限に抑えることができる。また、電気活性ポリマーアクチュエータの使用により、多数のアクチュエータを使用することができ、より複雑にアクチュエータを配置することができる。また、電子作動を使用することにより、カテーテルにプログラム可能な動的形状および構成を持たせることも可能となる。また、電子的作動を使用することにより、周囲の解剖学的内腔形状に一致または模倣したカテーテル形状を誘導するために、歪み検知機能およびフィードバック制御をカテーテルに持たせることができる。
【0018】
本明細書に記載の実施形態で採用されている電気活性ポリマーアクチュエータは、「導電性ポリマー」とも呼ばれる電気活性ポリマーを利用している。電気活性ポリマーを利用するアクチュエータは、非常に小型でありながら大きな力や歪みを発生させることができるため、本明細書に開示のカテーテルにおいて有利である。また、電気活性ポリマーは比較的低コストであり、本明細書で開示のカテーテルへの組み込みも比較的容易である。
【0019】
電気活性ポリマーは、電気刺激、すなわち電気信号に応答して、形状を変化させる能力を有するポリマーの一形態である。電気活性ポリマーの寸法変化は、ポリマー内外へのイオンの物質移動によって生じ得る。このため、電気活性ポリマー内へのイオンの移動または電気活性ポリマーからのイオンの移動は、ポリマー鎖間のイオン挿入および/または鎖間反発による膨張または収縮などの寸法変化をもたらす。このため、それら特性に基づき、電気活性ポリマーを使用して電気活性ポリマーアクチュエータをもたらすことができる。電気活性ポリマーアクチュエータは、アクチュエータへの電気制御信号の印加および除去によって作動および作動停止される。そして、アクチュエータを構造体に適用して、構造体の形状、寸法、剛性および/または位置を変化させるなど、構造体の物理的特性を変化させ得る力を構造体に加えることができる。
【0020】
電気活性ポリマーアクチュエータを利用する例示的な実施形態では、カテーテルシステムが、細長い可撓性の管状部材と、管状部材上に配置された1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータとを有するカテーテルを含む。管状部材は、固有の可撓性を有するアンカー部分を有する。例えば、管状部材は、体腔内の曲がりくねった経路を進むために、典型的には非常に柔軟である。1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータは、管状部材の軸方向長さに沿って配置されるとともに、異なる外周/周方向位置にも配置されることができる。1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータは、1または複数の電気制御信号に応答して、アンカー形状に対応する体腔内の定位置にアンカー部分を固定するように構成されたアンカー形状において、アンカー部分の剛性を変更するように構成されている。
【0021】
このため、カテーテルシステムは、電気活性ポリマーアクチュエータが作動されない非作動構成を有する。換言すれば、電気活性ポリマーアクチュエータが、電圧および/または電流などの電気信号によって作動されることはなく、それらが、管状部材のアンカー部分の剛性および/または形状に大きな影響を与えない弛緩した構成にあり、すなわち管状部材のアンカー部分がその固有の柔軟性を有する。
【0022】
カテーテルシステムは、1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータが電圧および/または電流などの1または複数の制御信号によって作動される作動構成も有する。制御信号により、電気活性ポリマーアクチュエータは、アンカー形状においてアンカー部分を硬化させ、すなわちアクチュエータは、管状部材の固有の可撓性からアンカー部分の剛性を増加させる。アンカー形状は、アンカー形状に対応する体腔内の定位置にアンカー部分を固定するように構成されている。これにより、アンカー形状によって管状部材を静止させたまま、管状部材を通して器具および他のカテーテルを移動および/または操作することができる。
【0023】
一例として、体腔は、湾曲形状(例えば、錐体頸動脈に対応するS字形状)を有することができ、アンカー部分が体腔の湾曲形状で硬化されたときに、アンカー部分が、管状部材を長手方向に移動されるのに抵抗するように定位置に固定することができる。その後、カテーテルを定位置に固定したまま、他のカテーテルや器具を管状部材を通して体腔内の標的部位まで誘導することができる。
【0024】
カテーテルシステムの様々な実施形態では、1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータがアンカー部分の形状も変更するように構成することができる。例えば、電気活性ポリマーアクチュエータは、アンカー部分をアンカー形状に形成するようにも構成することができる。このように、電気活性ポリマーアクチュエータは、アンカー部分をアンカー形状に形成すると同時に、アンカー部分をアンカー形状に硬化させる。S字形状の上記例では、電気活性ポリマーアクチュエータが、管状部材のアンカー部分をS字形状に形成するように構成されている。
【0025】
他の様々な実施形態では、カテーテルシステムが、複数の電気活性ポリマーアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラをさらに含むことができる。コントローラは、アンカー部分の剛性および/または形状を変更するなど、管状部材の構成を変更するための電気制御信号を複数の電気活性ポリマーアクチュエータに選択的に送信するように構成されている。電気制御信号は、電気活性ポリマーアクチュエータの各々に印加される電圧であってもよい。コントローラは、管状部材上に配置されたワイヤ、導電性トレースなどの複数の導体を使用して、1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータに接続することができる。各導体は、それぞれの電気活性ポリマーアクチュエータに接続された第1の端部と、コントローラに接続された第2の端部とを有する。
【0026】
別の実施形態では、コントローラが、誘導電圧または静電容量の変化を介してアクチュエータに加わる歪みを検知することができ、それにより、検知されたアクチュエータの位置におけるデバイスの曲率を解釈し、それにより、作動されていないデバイスが存在する解剖学的形状を解釈することができる。その後、コントローラは、検知されたアクチュエータに信号を加えて、解釈した解剖学的管腔の形状を模倣する形状変化を誘発することができ、それによって、アンカー位置の解剖学的形状の事前の知識がなくても、解剖学的形状に適合するアンカー形状を達成することができる。
【0027】
様々な実施形態では、電気活性ポリマーアクチュエータがパリレンフィルムを含むことができる。他の実施形態では、電気活性ポリマーアクチュエータが、パリレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリスルホンまたはポリアセチレンなどの任意の適切な電気活性ポリマーを含む。
【0028】
開示の本発明の別の態様は、カテーテルシステムの上述した例示的な実施形態を使用する方法を対象とする。この方法は、カテーテルの遠位端を体腔内に挿入するステップと、管状部材のアンカー部分がその固有の可撓性を有するように1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータを非作動とした状態で、カテーテルを体腔内の目標位置まで前進させるステップとを含む。これにより、カテーテルを柔軟な状態で体腔内を前進させることができる。カテーテルが目標位置に配置されると、制御信号を使用して電気活性ポリマーアクチュエータが作動されて、アンカー部分をアンカー形状に硬化させる。硬化されたアンカー部分はカテーテルを体腔内に固定する。これにより、カテーテルが定位置に維持され、カテーテルがその固定位置から移動することなく、他のカテーテルおよび/または器具をカテーテルを通して挿入することができる。
【0029】
また、本方法は、電気活性ポリマーアクチュエータがアンカー部分をアンカー形状に形成するようにも構成されている場合に、電気活性ポリマーアクチュエータを作動させてアンカー部分をアンカー形状に形成するステップも含むことができる。
【0030】
本方法は、上述したカテーテルシステムの他の態様のうちの1または複数をさらに含むことができる。
【0031】
電気活性ポリマーアクチュエータを利用するカテーテルシステムの別の実施形態は、電気活性ポリマーアクチュエータを利用して、カテーテルが体腔内で長手方向に移動する際のカテーテルの静止摩擦を低減するように構成されたカテーテルシステムを対象とする。この実施形態では、カテーテルシステムが、細長い可撓性の管状部材と、管状部材上に配置された複数の電気活性ポリマーアクチュエータとを有するカテーテルを含む。複数の電気活性ポリマーアクチュエータは、管状部材を実質的に正弦波の形状に形成し、位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状と位相が180°ずれた実質的に正弦波の形状との間で往復して正弦波の形状を循環させる(すなわち、正弦波の形状を位相が0°から180°まで往復して移行させる)ように構成されている。換言すれば、管状部材の形状は、正弦波形状の山が谷に移動したり、その逆に移動したりするように周期をなす。
【0032】
また、カテーテルシステムは、複数の電気活性ポリマーアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラも含む。コントローラは、複数の電気活性ポリマーアクチュエータに制御信号を送信して、管状部材を実質的に位相が0°ずれた正弦波形状と実質的に位相が180°ずれた正弦波形状との間で前後に動的に循環させるように構成されている。
【0033】
このため、カテーテルシステムを体腔内で長手方向に移動させると、複数の電気活性ポリマーアクチュエータが作動して管状部材を位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状と位相が180°ずれた実質的に正弦波の形状との間で前後に動的に循環させる。管状部材のこの循環正弦波運動は、カテーテルを長手方向に移動させる際に管状部材の静止摩擦を破壊し、それにより、カテーテルを移動させるのに必要な力をより少なくし、カテーテルの移動をより滑らかにする。
【0034】
摩擦低減の様々な実施形態では、コントローラが、管状部材が体腔内で長手方向に移動される際に管状部材の静止摩擦を低減する振幅、ピーク間の波長および循環周波数で、管状部材の正弦波形状を動的に循環させるように構成されている。例えば、振幅および波長は、静止摩擦を破壊するのにちょうど十分であるように設定することができ、一方、周波数は、体腔の壁を損傷したり、他の望ましくない副作用を引き起こしたりしないように設定することができる。
【0035】
摩擦低減の様々な実施形態では、電気活性ポリマーアクチュエータが、正弦波形状を提供する1つの特定の構成で配置される。複数の電気活性ポリマーアクチュエータは、電気活性ポリマーアクチュエータの第1のセットと、電気活性ポリマーアクチュエータの第2のセットとを含む。管状部材の第1の側では、第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータが、管状部材に沿って長手方向に配置され、第1の側に管状部材に沿って長手方向に配置された第2のセットの電気活性ポリマーアクチュエータと交互に配置されている。同様に、第1の側とは反対側の管状部材の第2の側では、第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータが、管状部材に沿って長手方向に配置され、第2の側に管状部材に沿って配置された第2のセットの電気活性ポリマーアクチュエータと交互に配置されている。さらに、第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータは、第1の側の電気活性ポリマーアクチュエータが第2の側の電気活性ポリマーアクチュエータからオフセットされるように、配置されている。同様に、第2のセットの電気活性ポリマーアクチュエータは、第1の側の電気活性ポリマーアクチュエータが第2の側の電気活性ポリマーアクチュエータからオフセットされるように、配置されている。一態様では、第1の側の第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータが、第2の側の第2のセットの電気活性ポリマーアクチュエータの反対側に位置し、第2の側の第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータが、第1の側の第2のセットの電気活性ポリマーアクチュエータの反対側に位置し、またその逆も同様である。電気活性ポリマーアクチュエータは、第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータの作動により、管状部材の形状を位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状に変更し、第2のセットの電気活性ポリマーアクチュエータの作動により、管状部材の形状を位相が180ずれた正弦波の形状に変更するように構成されている。
【0036】
摩擦低減の実施形態の別の態様では、電気活性ポリマーアクチュエータの第1のセットが、導電体の第1のペアを介してコントローラに電気的に接続され、第1のセットの電気活性ポリマーアクチュエータのすべてが、コントローラからの単一の第1の信号によって作動されるようになっている。同様に、電気活性ポリマーアクチュエータの第2のセットは、導電体の第2のペアを介してコントローラに電気的に接続され、第2のセットの電気活性ポリマーアクチュエータのすべてが、コントローラからの単一の第2の信号によって作動されるようになっている。導電体の第2のペアは、導電体の第1のペアから電気的に絶縁/分離されている。このため、複数の電気活性ポリマーアクチュエータは、第1の信号と第2の信号とを交互に切り替えることにより、実質的に位相が0°ずれた正弦波形状と実質的に位相が180°ずれた正弦波形状との間で往復して管状部材を動的に循環させるように作動させることができる。
【0037】
開示の実施形態の別の態様は、体腔内のカテーテルシステムの摩擦低減の実施形態を使用する方法を対象とする。この方法は、体腔内にカテーテルを挿入するステップを含む。コントローラが複数の電気活性ポリマーアクチュエータに制御信号を送信して、管状部材を実質的に位相が0°ずれた正弦波形状と実質的に位相が180°ずれた正弦波形状との間で往復して動的に循環させる間に、カテーテルは、体腔内で長手方向に移動される。管状部材の循環正弦波運動は、カテーテルを長手方向に移動させる際に管状部材の静止摩擦を破壊する。
【0038】
様々な実施形態では、カテーテルの摩擦低減の実施形態を使用する方法が、カテーテルシステムの上述した第2の実施形態の他の態様のうちの1または複数をさらに含む。
【0039】
電気活性ポリマーアクチュエータを利用するカテーテルシステムの別の実施形態は、電気活性ポリマーアクチュエータを利用して、体腔の壁と実質的に連続的に周方向に接触させるように管状部材を成形し、それによりカテーテルを安定化させるように構成されたカテーテルシステムを対象とする。カテーテルシステムは、細長い可撓性の管状部材と、管状部材に沿って螺旋経路内で管状部材上に配置された電気活性ポリマーアクチュエータとを含む。電気制御信号を使用して螺旋状に配置された電気活性ポリマーアクチュエータを作動させると、管状部材の形状が実質的に螺旋形状に変化し、体腔内で管状部材を安定させるのに十分な管状部材の長さに沿って、管状部材が体腔の壁と周方向に接触することが可能になる。例えば、周方向の接触は、第1の実施形態の固定機能と同様に、体腔内におけるカテーテルの長手方向の移動を防止することができ、かつ/または、体腔内でカテーテルを中央に配置することができ、または他の方法でカテーテルの移動を防止することができる。
【0040】
螺旋形状の様々な実施形態では、実質的に螺旋形状の管状部材が、カテーテルの選択された個別の長さに沿って、または管状部材の挿入可能な長さのほぼ全体に沿って、体腔の壁と周方向に接触するように、カテーテルが構成されている。例えば、カテーテルは、カテーテルの遠位端から第1の距離の位置で始まって、カテーテルの遠位端から第2のより長い長さで終わるような、ある長さに沿って電気活性ポリマーを有するように構成されるものであってもよく、あるいは、カテーテルは、体外に残る近位端を除く、管状部材の実質的に全長に沿って電気活性ポリマーを有するように構成されるものであってもよい。
【0041】
螺旋形状の様々な実施形態では、カテーテルシステムが、電気活性ポリマーアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラをさらに含むことができ、このコントローラは、制御信号を電気活性ポリマーアクチュエータに選択的に送信するように構成されている。
【0042】
螺旋形状のデバイスの様々な実施形態では、1または複数のアクチュエータが、機械的アクチュエータに結合された1または複数のプルワイヤによって作動される機械的アクチュエータを含むことができる。一実施形態では、一連の作動可能な機械的構造が、デバイスの長さに沿って直列に配置され、各機械的構造が異方性作動可能要素(よって、軸に対する好ましい曲げ方向)を含み、作動可能要素が、螺旋経路において、デバイスの中心軸の周りにかつ中心軸に沿って直列に回転可能に割り付けられ、1または複数のプルワイヤによる一連の作動要素への圧縮荷重によって、デバイスが螺旋形状に曲がって硬くなるように構成されている。一連の機械的構造および対応する異方性要素は、個々の各構造の領域に異方性コンプライアンスを付与するカットパターンを有する、ハイポチューブなどのチューブに形成されるものであってもよく、個々の各構造は、隣接する構造と同じであっても異なるものであってもよく、それにより各構造が同じ方向または異なる方向に曲がることを可能にする。
【0043】
別の実施形態では、一連のまたは連続する機械的構造が、デバイスの長さに沿って配置され、各機械的要素または連続体が、デバイスの中心軸(したがって、軸に対する非優先曲げ方向)を中心に等方的な曲げを有し、単一のプルワイヤが、一連のまたは連続的な機械的構造の長さに沿って螺旋経路に配置され、プルワイヤによる一連のまたは連続的な機械的構造への圧縮荷重によって、デバイスが螺旋形状に曲がって硬くなるように構成されている。一連のまたは連続的な機械的構造および対応する等方性要素は、コイルによって形成されるようにしてもよく、代替的には、各構造が任意の方向に非優先的に曲がることを可能にする等方性コンプライアンスを個別の各構造の領域に付与するカットパターンを有するハイポチューブなどのチューブに形成されるようにしてもよい。
【0044】
螺旋形状のデバイスの他の実施形態では、アクチュエータが、プルワイヤ、流体圧によって作動可能な流体圧または空気圧アクチュエータ、またはそれらの組合せなど、機械的手段によって作動される他のタイプの機械的アクチュエータを有することができる。
【0045】
好ましい実施形態では、螺旋形状のデバイスが、螺旋外径および螺旋ピッチを有する。螺旋外径は、固定が行われる標的管腔と少なくとも同じ大きさになるように選択され、より好ましい螺旋外径は、標的管腔の直径の1.25倍~2倍である。螺旋ピッチは、管腔の壁と螺旋形状に形成されたデバイスとの間に、デバイスを定位置に固定することができる摩擦の大きさを与えるのに十分短くなるように選択され、さらに螺旋ピッチは、デバイスのルーメンを通って、または螺旋状デバイスの外側を引き抜くように、他のカテーテルおよび/または器具が円滑に通過するのを妨げない程度の十分な長さである必要がある。好ましい螺旋ピッチは、螺旋外径の3倍~10倍である。
【0046】
開示の発明の別の態様は、体腔内でカテーテルシステムの螺旋形状の実施形態を使用する方法を対象とする。この方法は、電気活性ポリマーアクチュエータを非作動構成として、管状部材がその固有の柔軟性と弛緩形状を有する状態で、カテーテルを体腔内に挿入するステップを含む。電気活性ポリマーアクチュエータは、制御信号を使用して作動され、それにより管状部材の形状を実質的に螺旋形状に移行させて、体腔内で管状部材を安定させるのに十分な管状部材の長さに沿って管状部材が体腔の壁と周方向に接触するようにする。これにより、カテーテルは体腔内で安定化される。本方法の様々な実施形態において、管状部材は、管状部材の挿入可能な長さの実質的に全体にわたって体腔の壁と周方向に接触することができる。
【0047】
螺旋形状のデバイスの別の実施形態は、アクチュエータを利用してカテーテルを体腔内で長手方向に移動させる原動力を発生させるデバイスを対象とする。カテーテルシステムは細長い可撓性部材を含む。可撓性部材は、放射状に配置された複数の直線部分または経路セグメントを有する。それらセグメントは、デバイスの個別の長さに沿って長手方向に一致しており、第1のセグメント、第1のセグメントから半径方向にずれた第2のセグメント、および第2のセグメントから半径方向にずれた第3のセグメントなどのように、互いに半径方向に離間している。それぞれのアクチュエータまたは一連のアクチュエータは、デバイスの個別の長さに沿った螺旋経路内でそれぞれのセグメント内に配置されており、それぞれの制御方法を使用して1または複数のアクチュエータをそれぞれ作動させることにより、デバイスの個別の長さの形状を実質的に螺旋形状に移行させるようになっている。それぞれのアクチュエータまたは一連のアクチュエータは、アクチュエータの変調された作動により、可撓性部材と体腔の壁との間に摩擦力を生じさせるように構成されている。各経路セグメント内のアクチュエータまたは一連のアクチュエータの連続作動により、可撓性部材が体腔内で長手方向に移動される。例えば、経路セグメントの変調された作動は、可撓性部材を長手方向に移動させるための原動力を生じさせるワームクローラのような運動または回転スクリュ運動で可撓性部材を移動させることができる。
【0048】
様々な実施形態では、それぞれの制御方法を使用して、変調された信号または力が、各経路セグメント内のアクチュエータまたは一連のアクチュエータに加えられ、それにより各経路セグメントの形状応答の振幅が制御される。コントローラは、信号または力の正弦波振幅変調を与え、各信号または力は他の信号から位相がずれている。例えば、3つの経路セグメントの場合、各信号または加えられる力は、他の2つの信号または加えられる力から120°位相がずれされ得る。
【0049】
様々な実施形態では、電気活性ポリマー作動を利用するデバイスが、電気活性ポリマーアクチュエータに動作可能に接続されて、それぞれの制御信号をそれぞれの電気活性ポリマーアクチュエータに送信するように構成されたコントローラをさらに含むことができる。同様に、機械的または流体圧作動を利用するデバイスは、機械的または流体圧アクチュエータに動作可能に接続されて、それぞれの制御力または圧力をそれぞれのアクチュエータに伝達するように構成されたコントローラをさらに含むことができる。コントローラは、電気機械式であっても、純粋に機械式であってもよく、それぞれのアクチュエータの変調された作動に必要な変調された力および/または圧力を生成することができる。
【0050】
開示の実施形態の別の態様は、螺旋形状デバイスの実施形態を体腔内で使用する方法を対象とする。この方法は、体腔内にカテーテルシステムを挿入するステップを含む。各経路セグメント内のそれぞれのアクチュエータまたは一連のアクチュエータは、それぞれの経路セグメントに対してそれぞれの変調制御方法を使用して作動される。変調された作動は、可撓性部材と体腔の壁との間に、可撓性部材を体腔内で長手方向に移動させる原動力を生じさせる。
【0051】
様々な実施形態では、それぞれの変調された制御信号または力は、正弦波の振幅変調信号または加えられる力であり、各信号または加えられる力は、他の信号または加えられる力から位相がずれている。例えば、3つの経路セグメントの場合、各信号または加えられる力は、他の信号または加えられる力から120°位相がずれている。
【0052】
このように、本明細書に記載の実施形態は、機械的アクチュエータおよび/または電気活性ポリマーアクチュエータなどのアクチュエータを利用する革新的なデバイス、並びに、体腔内でデバイスを移動させるために作動される固定、摩擦低減および/または原動力を提供する上記デバイスを使用する方法を提供する。電気活性ポリマー作動の実施形態は、コンピュータ制御、遠隔部分への影響を最小限に抑える電気活性ポリマーアクチュエータの局所的な電子作動、多数のアクチュエータの使用、アクチュエータのより複雑な配置を可能にするとともに、プログラム可能とし、かつ/またはデバイスの動的な形状および構造を可能にする、電子的に制御可能なデバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
ここで、開示の発明の他のおよび更なる実施形態および態様とともに、添付の図面を考慮して読まれる以下の詳細な説明において、上述したことをより詳細に説明する。それら図面では、同様の符号が同様の要素を示し、同様の要素に関する説明は、関連するすべての記載の実施形態に適用され得るものとする。
【0054】
【
図1】
図1は、開示の発明の実施形態に係るカテーテルシステムの概略図である。
【
図2】
図2A~
図2Cは、開示の発明の実施形態に係る、
図1のカテーテルシステムで使用するためのカテーテル上のアクチュエータの様々な構成の一部の斜視図である。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、開示の発明の実施形態に係る、
図1のカテーテルシステムで使用するためのカテーテル上の電気活性ポリマーアクチュエータの一構成の部分側面図である。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、開示の発明の実施形態に係る、
図1のカテーテルシステムで使用するためのカテーテルの固定機能を示す側面図である。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、開示の発明の実施形態に係る、
図1のカテーテルシステムで使用するためのカテーテルの別の固定機能を示す側面図である。
【
図6】
図6は、開示の発明の実施形態に係る、
図4A、
図4B、
図5Aおよび
図5Bに示すような固定機能を有するカテーテルを使用する方法のフローチャートを示している。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、開示の発明の実施形態に係る、
図1のカテーテルシステムで使用するための別のカテーテルの側面図である。
【
図9】
図9は、開示の発明の実施形態に係る、
図7Aおよび
図7Bのカテーテルを使用する方法のフローチャートを示している。
【
図10】
図10Aは、開示の発明の実施形態に係る、
図1のカテーテルシステムとともに使用するための別のカテーテルの側面図である。
図10Bは、開示の発明の実施形態に係る、作動構成にある
図10Aのカテーテルの側面図である。
図10Cは、非作動構成にある
図10Aのカテーテルの側面斜視図である。
図10Dは、作動構成にある
図10Aのカテーテルの側面斜視図である。
【
図11】
図11は、開示の発明の実施形態に係る、体腔内で作動構成にある
図10Aのカテーテルの側面図である。
【
図13】
図13は、開示の発明の実施形態に係る、
図1のカテーテルシステムとともに使用するためのさらに別のカテーテルの側面図である。
【
図14】
図14A~
図14Dは、開示の発明の実施形態に係る、原動力を発生させるための変調された作動シーケンスの様々な状態における
図13のカテーテルの側面図である。
図14Eは、開示の発明の実施形態に係る、
図14A~
図14Dに示す変調された作動シーケンスを生成するための、
図13のカテーテルの変調された作動シーケンスのグラフである。
【
図15】
図15は、開示の発明の実施形態に係る、
図1のカテーテルシステムとともに使用するためのさらに別のカテーテルの側面図である。
【
図16】
図16A~
図16Cは、開示の発明の実施形態に係る、原動力を発生させるための変調された作動シーケンスの様々な状態における
図15のカテーテルの側面図である。
図16Dは、開示の発明の実施形態に係る、
図16A~
図16Cに示す変調された作動シーケンスを生成するための、
図15のカテーテルの変調された作動シーケンスのグラフである。
【
図17】
図17は、開示の発明の実施形態に係る、
図13および
図15のカテーテルを使用する方法のフローチャートを示している。
【
図18】
図18は、開示の発明の実施形態に係る、カテーテルシステムで使用するための複数の機械的アクチュエータを有するカテーテル補強の一部の側面図である。
【
図19】
図19は、開示の発明の実施形態に係る、機械的アクチュエータによって提供される様々なコンプライアンスのエリアを示す、圧縮荷重のない状態における
図16のカテーテル補強を示している。
【
図20】
図20は、開示の発明の実施形態に係る、機械的アクチュエータによって提供される様々なコンプライアンスのエリアの曲げ曲率/剛性を示す、圧縮荷重下における
図16のカテーテル補強を示している。
【
図21】
図21は、開示の発明の実施形態に係る、機械的アクチュエータ用のプルワイヤアクチュエータの一実施形態を示す、
図18のカテーテル補強の一実施形態の拡大断面図である。
【
図22】
図22は、開示の発明の実施形態に係る、機械的アクチュエータ用の複数のプルワイヤアクチュエータの別の実施形態を示す、
図18のカテーテル補強の別の実施形態の拡大断面図である。
【
図23】
図23は、開示の発明の実施形態に係る、圧縮荷重のないカテーテル補強の機械的アクチュエータの1つの拡大側面図である。
【
図24】
図24は、開示の発明の実施形態に係る、圧縮荷重下でのアクチュエータの屈曲を示す、
図21の機械的アクチュエータの拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1~
図4は、開示の発明の例示的な実施形態に従って構成されたカテーテルシステム100を示している。カテーテルシステム100は、概して、血管系内の管腔などの体腔内で、医療処置または診断処置などの処置を行うように構成されている。カテーテルシステム100は、カテーテル102およびコントローラ104を含む。カテーテル102は、近位部分108と、遠位部分110と、それらの間に延びる作業ルーメン112とを有する可撓性の細長い管状部材106を含む。この管状部材106は、管状部材106を形成する1または複数の材料の物理的特性および寸法に応じた固有の可撓性(または固有の剛性)を有する。固有の可撓性は、カテーテル102が血管系の体腔の比較的曲がりくねった経路を進むことができるように、典型的には非常に弾性変形し易い。また、カテーテル102は、管状部材106上に配置された1または複数のアクチュエータ114を有する。
【0056】
アクチュエータ114は、管状部材106の遠位部分に配置されたステアリングアクチュエータ114a、114b、114c、114d(図には示されていないが、管状部材106上のステアリングアクチュエータ114bの反対側に配置されている)と、アンカーアクチュエータ114e、114g、114fとを含むことができる。本明細書で説明するように、カテーテル102の所望の作動構成に応じて、任意の適切な数のアクチュエータ114を管状部材106上に配置することができるため、より多くのまたはより少ないアクチュエータ114を利用することができる。アクチュエータ114は、電気活性ポリマー材料を含むことができる。本明細書で説明するように、電気活性ポリマーは、電気刺激、すなわち電気信号に応答して形状を変化させる能力を有する。電気活性ポリマーは、電気活性ポリマーフィルム、または電気活性ポリマーの他の適切な形態であってもよい。電気活性ポリマーは、パリレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリスルホンまたはポリアセチレンなどの任意の適切な電気活性ポリマーであってよい。電気活性ポリマーアクチュエータ114は、アクチュエータに電気制御信号を印加することによって作動し、電気制御信号を除去することによって作動停止する。
【0057】
アクチュエータ114は、管状部材106の形状、寸法、剛性および/または位置を変化させるなど、管状部材106の物理的特性を変化させる力を管状部材106に加えるために、管状部材の構造に力を及ぼすように管状部材106に適用される。
【0058】
アクチュエータ114は、任意の適切な方法によって管状部材106上に配置することができる。いくつかの例として、アクチュエータ114は、接着剤または他の固定手段を使用して管状部材106の表面上(例えば、外面上、内面上)に取り付けることができる。アクチュエータ114は、噴霧堆積、電着または他の適切な堆積手段などによって、管状部材106上に堆積させることができる。アクチュエータ114は、管状部材106の壁内に成形されるなど、管状部材106と一体化されるようにしても、または管状部材内に組み込まれるようにしてもよい。
【0059】
カテーテル102は、アクチュエータ114が制御信号によって作動されない非作動構成を有する。非作動構成では、アクチュエータ114の各々と、それぞれのアクチュエータ114が配置されている管状部材106のそれぞれのセグメントが、弛緩構成(すなわち、非作動構成)にある。弛緩構成では、アクチュエータ114は管状部材106の構成(例えば、剛性および/または形状)に大きな影響を与えない。このため、弛緩構成では、管状部材106はその固有の形状および可撓性を有する。カテーテル102は、1または複数の電気活性ポリマーアクチュエータが1または複数の電気制御信号によって作動される作動構成を有する。この制御信号により、電気活性ポリマーアクチュエータは形状を変化させ、それにより、電気活性ポリマーアクチュエータが適用される管状部材106に力を及ぼし、管状部材106の特性を変更する。後述するように、作動したアクチュエータ114は管状部材106の剛性および/または形状を変化させることができる。電気制御信号が除去されると、アクチュエータ114はその弛緩構成に戻り、管状部材106もその固有の可撓性を含むその弛緩構成に戻る。
【0060】
図2A~
図2Cは、電気活性ポリマーアクチュエータ114が配置された管状部材106の構成に様々な変化をもたらすように配置された電気活性ポリマーアクチュエータ114の様々な構成を示している。
図2Aは、管状部材106および管状部材106上に配置された電気活性ポリマーアクチュエータ114の1つの拡大側面図を示している。
図2Aは、非作動構成(すなわち、電気制御信号が印加されていない状態)にある電気活性ポリマーアクチュエータ114および管状部材106を示している。
図2Bは、
図2Aの電気活性ポリマーアクチュエータ114の作動構成を示しており、アクチュエータ114は、電気制御信号による作動時に拡張し、電気制御信号の除去時に拡張状態から非作動構成に戻るように収縮する。
図2Bに示すように、作動時に、電気活性ポリマーアクチュエータ114は拡張し、それにより、電気活性ポリマーアクチュエータ114に取り付けられた管状部材106のセグメントが(アクチュエータ114が取り付けられた管状部材106の側部に対して)凸状の曲線で曲がる。管状部材106を曲げることに加えて、電気活性ポリマーアクチュエータ114の作動は、管状部材106を湾曲した形状に硬化させる。
【0061】
図2Cは、
図2Aの電気活性ポリマーアクチュエータ114の作動構成を示し、アクチュエータ114は、電気制御信号による作動時に収縮し、電気制御信号の除去時に収縮状態から非作動構成に戻るように拡張する。
図2Cに示すように、作動時に、電気活性ポリマーアクチュエータ114は収縮し、それにより、電気活性ポリマーアクチュエータ114に取り付けられた管状部材106のセグメントが(アクチュエータ114が取り付けられた管状部材106の側部に対して)凹状の曲線で曲がる。ここでもまた、管状部材106を曲げることに加えて、電気活性ポリマーアクチュエータ114の作動は、管状部材106を湾曲した形状に硬化させる。
【0062】
図3Aは、管状部材106および管状部材106上に配置された電気活性ポリマーアクチュエータ114の別の実施形態の拡大側面図を示している。
図3Aにおいて、電気活性ポリマーアクチュエータ114は、管状部材106をほぼ真っ直ぐな形状に硬化するように構成されている。電気活性ポリマーアクチュエータ114は、管状部材106上に周方向に配置されている。代替的には、電気活性ポリマーアクチュエータ114のペアを、互いに張力がかかるように管状部材106の両側に配置することもできる。
図3Aは、非作動構成(すなわち、電気制御信号が印加されていない状態)にある電気活性ポリマーアクチュエータ114および管状部材106を示している。
図3Bは、
図3Aの電気活性ポリマーアクチュエータ114の作動構成を示し、アクチュエータ114は、電気制御信号による作動時に拡張し、電気制御信号の除去時に拡張状態から非作動構成に戻る。
図3Bに示すように、作動時に、電気活性ポリマーアクチュエータ114は拡張し、それにより電気活性ポリマーアクチュエータ114に取り付けられた管状部材106のセグメントが直線状に拡張して硬化する。代替的には、
図3Aの電気活性ポリマーアクチュエータ114は、作動時に収縮するように構成されるものであってもよい。作動時に、電気活性ポリマーアクチュエータ114は収縮して、同様の硬化作用をもたらす。
【0063】
コントローラ104は、電気活性ポリマーアクチュエータ114に1または複数の電気制御信号を選択的に送信するように構成されている。コントローラ104は、1または複数の導体118を使用して、電気活性ポリマーアクチュエータ114に動作可能に接続され、それら導体の各々が、コントローラ104に電気的に接続された第1の端部と、電気活性ポリマーアクチュエータ114の1または複数に電気的に接続された第2の端部とを有する。一実施形態では、各電気活性ポリマーアクチュエータ114に対して導体118のペアが存在し得る。代替的な実施形態では、2以上の電気活性ポリマーアクチュエータ114のセットがコントローラ104からの同じ電気制御信号によって作動されるように、電気活性ポリマーアクチュエータ114のセットが同じ導体118のペアに接続されるようにしてもよい。同様に、カテーテルシステム100は、同じ導体118のペアに接続された複数の電気活性ポリマーアクチュエータ114をそれぞれ有する1または複数のセットを備えるように構成されてもよい。
【0064】
図1に戻ると、カテーテルシステム100は、電気活性ポリマーアクチュエータ114を利用して、1または複数の電気制御信号により、管状部材106の形状および/または剛性などのカテーテル102の構成を選択的に変更するカテーテル102を含む。例えば、ステアリングアクチュエータ114a、114b、114c、114dは、カテーテル102を体腔内で移動させる際に操縦するように構成することができる。一実施形態では、ステアリングアクチュエータ114a、114b、114c、114dの各々は、
図2Bの電気活性ポリマーアクチュエータ114と同一または同様の構成とすることができる。このようにして、ステアリングアクチュエータ114a、114b、114c、114dは、1または複数の制御信号を使用して選択的に作動させることができ、それにより、カテーテル102を体腔内で前進させる際に、ユーザが進ませることを望む方向に管状部材106の遠位部分110を曲げることができる。ステアリングアクチュエータ114a、114b、114c、114dの各々は、独立してコントローラ104に接続され、コントローラ104からのそれぞれの個別の制御信号によって制御可能である。これにより、ステアリングアクチュエータ114a、114b、114c、114dの各々を、他のステアリングアクチュエータ114a、114b、114c、114dから独立して制御することができる。
図1の例示的な実施形態は、4つのステアリングアクチュエータ114を示しているが、所望のステアリング効果を提供するために、任意の適切な数を使用することができる。例えば、単一のステアリングアクチュエータ114aを使用することができ、ユーザは、ステアリングカテーテル114aを作動させることによって管状部材106の遠位部分110が所望の進行方向に曲げられるように、近位端からカテーテル102を手動で操作して、管状部材106を回転させることができる。
【0065】
アンカーアクチュエータ114e、114f、114gは、管状部材106のアンカー部分120に配置されている。アンカーアクチュエータ114e、114f、114gは、管状部材106の剛性および/または形状をアンカー形状に変更するように作動されて、それによりアンカー形状に対応する形状を有する体腔の定位置にアンカー部分を固定するように構成されている。
図1の例示的な実施形態では、アンカーアクチュエータ114e、114gは、管状部材106を硬化させ、かつ/または形状を変更し、管状部材106を湾曲形状にバイアスするように構成され、一方、アンカーアクチュエータ114fは、管状部材106を硬化させ、管状部材106を実質的に真っ直ぐな形状にバイアスするように構成されている。このため、アンカーアクチュエータ114e、114gは、
図2Bの電気活性ポリマーアクチュエータ114と同一または同様である。アンカーアクチュエータ114fは、
図3Aおよび
図3Bに示す電気活性ポリマーアクチュエータ114と同一または同様である。アンカーアクチュエータ114e、114f、114gは、コントローラ104からの別個の制御信号によって独立して作動させることができるように、コントローラ104に別個に接続されるようにしても、あるいは、コントローラ104からの単一の制御信号によって作動させることができるように、セットとしてコントローラ104に接続されるようにしてもよい。
【0066】
カテーテルシステム100の固定機能の非作動構成では、アンカーアクチュエータ114e、114f、114gは、管状部材106のアンカー部分120がその固有の可撓性を有するように作動されていない。換言すれば、アンカー部分120は、カテーテル102が体腔内で前進する際に体腔内の比較的曲がりくねった経路を進むことができるように比較的柔軟である。カテーテルシステム100の固定機能の作動構成では、アンカーアクチュエータ114e、114f、114gは、(上述したように、コントローラへの接続構成に応じて)1または複数の制御信号によって作動される。アンカーアクチュエータ114e、114f、114gの作動により、アンカーアクチュエータ114e、114f、114gは、管状部材106のアンカー部分120を硬化させ、かつ/またはアンカー形状に成形する。
【0067】
図4Aおよび
図4Bは、カテーテル102を例示的な体腔122内に固定または安定させるために使用されるカテーテル102の固定機能を示している。図示の例では、体腔122は、相互接続する複数の血管を含む血管系124内の弓状横断部122である。
図4Aは、カテーテル102が血管系124の体腔122内に前進している様子を示している。
図4Aでは、カテーテル102は、アンカーアクチュエータ114e、114f、114gが非作動である非作動構成にあり、管状部材106のアンカー部分120が本質的に柔軟である。アンカー部分120が体腔122内の所望の位置に配置された状態でカテーテル102が位置決めされると、
図4Bに示すように、アンカーアクチュエータ114e、114f、114gがコントローラ104からの1または複数の制御信号を使用して作動される。
図4Bに示すように、アンカーアクチュエータ114e、114f、114gの作動により、アンカー部分120を体腔122内に押し込むように、アンカー部分120が硬化して、体腔122に対応する形状に成形される。これにより、アンカー部分120が体腔122内で安定化および/または固定され、それによりカテーテル102が定位置に安定化および/または固定される。カテーテル102の固定により、他のカテーテルまたはデバイスなどの他の器具がカテーテル102を介して挿入および前進されるときに、カテーテル102が動くのが防止される。
【0068】
図5Aおよび
図5Bは、カテーテルシステム100の固定機能の別の例示的な実施形態を示している。
図5Aおよび
図5Bに示す固定機能は、S字状曲線(典型的な頚動脈の形状に類似)を有する特定の湾曲した体腔124で使用されるように構成されている点を除いて、
図4Aおよび
図4Bに示す固定機能と同様である。
図5Aおよび
図5Bのカテーテル140は、
図4Aおよび
図4Bのカテーテル102のような真っ直ぐな形状のアンカーアクチュエータ114fを必要としない。その代わりに、カテーテル140は、体腔142のS字カーブ形状に対応するアンカー形状を形成するために互いに反対方向に湾曲するように構成されたアンカーアクチュエータ114hおよびアンカーアクチュエータ114iを有する。
図5Aは、カテーテル140が血管系144の体腔142内に前進している様子を示している。
図5Aでは、カテーテル140は、アンカーアクチュエータ114h、114iが非作動である非作動構成にあり、管状部材106のアンカー部分120が本質的に柔軟である。アンカー部分120が体腔142内の所望の位置に配置された状態でカテーテル140が位置決めされると、
図5Bに示すように、アンカーアクチュエータ114h、114iが、コントローラ104からの1または複数の制御信号を使用して作動される。
図5Bに示すように、アンカーアクチュエータ114h、114iの作動により、アンカー部分120が硬化されてS字形状に成形され、それにより、体腔142に対応する形状でアンカー部分120が固定される。これにより、アンカー部分120が体腔142内に安定化および/または固定され、それによりカテーテル140が定位置に安定化および/または固定される。カテーテル102の固定により、他のカテーテルまたはデバイスなどの他の器具がカテーテル102を介して挿入および前進されるときに、カテーテル140が動くのが防止される。
【0069】
図6を参照すると、カテーテル102または140のいずれかを有するカテーテルシステム100を使用する方法150を示すフローチャートが示されている。カテーテル102または140のいずれかを有するカテーテルシステム100を使用する方法は実質的に同じであるため、カテーテル102を有するカテーテルシステムについて、方法150を説明する。ステップ152では、管状部材106のアンカー部分120がその固有の可撓性を有するように、アンカーアクチュエータ114e、114f、114gを非作動とした状態で、カテーテル102の遠位端110を体腔内に挿入する。ステップ154では、アンカーアクチュエータ114e、114f、114gを非作動にした状態で、カテーテル102を体腔内で前進させ、アンカー部分が体腔122内に位置するようにカテーテル102を所望の位置に配置する。ステップ156では、コントローラ104が1または複数の制御信号をアンカーアクチュエータ114e、114f、114gに送信し、それによってアンカーアクチュエータ114e、114f、114gを作動させる。ステップ158では、アンカーアクチュエータ114e、114f、114gの作動により、アンカー部分120を硬化および/またはアンカー形状に成形して、アンカー部分120を体腔122の定位置に固定する。
【0070】
図7Aおよび
図7Bおよび
図8A~
図8Cを参照すると、
図1のカテーテルシステム100で使用できるアクチュエータ114を有するカテーテル160の別の例示的な実施形態が示されている。さらに、カテーテル160は、図面および本明細書に記載のカテーテル102の特徴および態様のうちの1または複数を含むことができる。カテーテル160は、体腔内で長手方向に移動させる際に、アクチュエータ114を利用してカテーテル160の形状を動的に循環させ、それによりカテーテル160の静摩擦を低減するように構成されている。
図7Aおよび
図7Bに示すように、カテーテル160は、細長い可撓性の管状部材106と、管状部材106上に配置された複数のアクチュエータ114とを含む。アクチュエータ114は、管状部材106の形状をほぼ正弦波形状に変更し、正弦波形状を位相が0°ずれた状態(
図8Bに示す状態)から位相が180°ずれた状態(
図8Cに示す状態)までの間で動的に循環させるように構成および配置されている。
図7Aおよび
図7Bおよび
図8A~
図8Cは、カテーテル160の代表的なセグメントを示しているが、アクチュエータ114j、114kは、管状部材106の任意の適切な長さの上に配置されるようにしてもよく(管状部材106の近位端108から遠位端110まで延びる管状部材106のほぼ全長の上に配置されることを含む)、あるいは管状部材106の挿入可能なほぼ全長の上に配置されるようにしてもよいことを理解されたい。
【0071】
図7Aおよび
図7Bは、管状部材106を位相が0°ずれた正弦波形状および位相が180°ずれた正弦波形状に形成するように構成されたアクチュエータ114の例示的な一配置を示している。複数のアクチュエータ114は、アクチュエータ114jの第1のセット162およびアクチュエータ114kの第2のセット164を含む。管状部材106の(半径方向の)第1の側166において、第1のセット162のアクチュエータ114jは、管状部材106に沿って長手方向に配置され、第1の側166において管状部材106に沿って長手方向に配置された第2のセット164のアクチュエータ114kと交互に配置されている。同様に、管状部材106の、第1の側166と半径方向に反対側の(半径方向の)第2の側168において、第1のセット162のアクチュエータ114jは、管状部材106に沿って長手方向に配置され、第2の側168において管状部材106に沿って長手方向に配置された第2のセット164のアクチュエータ114kと交互に配置されている。
【0072】
図7Aおよび
図7Bに示すように、第1の側166のアクチュエータ114jが第2の側168のアクチュエータ114jから長手方向にオフセットされるように、第1のセット162のアクチュエータ114jは配置されている。同様に、第1の側166のアクチュエータ114kが第2の側168のアクチュエータ114kから長手方向にオフセットされるように、第2のセット164のアクチュエータ114kは配置されている。
図7Aおよび
図7Bにも示すように、この配置により、第1の側166の第1のセット162のアクチュエータ114jは、第2の側168の第2のセット168のアクチュエータ114kの反対側に位置し、第2の側168の第1のセット162のアクチュエータ114jは、第1の側166の第2のセット164のアクチュエータ114kの反対側に位置し、逆もまた同様である。このアクチュエータ114の構成により、アクチュエータ114jの第1のセット162の作動が、
図8Bに示すように、管状部材106の形状を位相が0°ずれた実質的に正弦波形状に変更し、アクチュエータ114kの第2のセット164の作動が、
図8Cに示すように、管状部材106の形状を位相が180ずれた正弦波形状に変更するようになっている。
【0073】
図7Aを参照すると、アクチュエータが電気活性ポリマーを含む場合、電気活性ポリマーアクチュエータ114jの第1のセット162は、電気接続部118a、118bの第1のペアを介してコントローラ104に電気的に接続され、それにより、第1のセット162内の電気活性ポリマーアクチュエータ114jのすべてが、コントローラ104からの単一の第1の電気制御信号によって作動されるようになっている。電気接続部のペアのうちの一方の接続部118aは、電気活性ポリマーアクチュエータ114jの各々の第1の端部に接続され、他方の接続部118bは、電気活性ポリマーアクチュエータ114jの各々の第2の端部に接続されている。電気接続部118a、118bの各々はワイヤを含むことができ、それぞれのワイヤが、管状部材106上に配置され、かつカテーテル160の遠位端110から近位端108に、そしてコントローラ104の接続部まで延びている。ワイヤの代わりに、電気接続部118a、118bは、管状部材106上にコーティングまたは印刷された導電性材料など、他の任意の適切な導電体から構成されるようにしてもよい。
【0074】
同様に、
図7Bに示すように、電気活性ポリマーアクチュエータ114kの第2のセット164は、電気接続部118c、118dの第2のペアを介してコントローラ104に接続され、それにより、第2のセット164内の電気活性ポリマーアクチュエータ114kのすべてが、コントローラ104からの単一の第2の電気制御信号によって作動されるようになっている。電気接続部118c、118dの第2のペアは、電気接続部118a、118bの第1のペアから電気的に絶縁/分離されている。電気接続部のペアうちの一方の接続部118cは、電気活性ポリマーアクチュエータ114kの各々の第1の端部に接続され、他方の接続部118dは、電気活性ポリマーアクチュエータ114kの各々の第2の端部に接続されている。電気接続部118c、118dの各々はワイヤを含むことができ、それぞれのワイヤが、管状部材106上に配置され、かつカテーテル160の遠位端110から近位端108に、そしてコントローラ104の接続部まで延びている。ワイヤの代わりに、電気接続部118c、118dは、管状部材106上にコーティングまたは印刷された導電性材料など、他の任意の適切な導電体から構成されるようにしてもよい。
【0075】
図8A~
図8Cに示すように、第1の信号および第2の信号を使用して第1のセット162および第2のセット164を交互に作動させることにより、位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状と位相が180°ずれた実質的に正弦波の形状との間で管状部材106を往復循環させるように、カテーテル160上の複数のアクチュエータ114を動的に作動させることができる。
図8Aは、第1のセット162および第2のセット164の両方が非作動であり、それにより管状部材106がその固有の可撓性を有するとともに、典型的にはカテーテル160が挿入される体腔の経路の形状である弛緩した形状を有する状態にあるカテーテル160を示している。
図8Bに示すように、(第2のセット164が非作動の状態で)コントローラ104からの第1の制御信号によりアクチュエータ114jの第1のセット162が作動すると、アクチュエータ114jは管状部材106を位相が0°ずれた実質的に正弦波の形状に形成する。
図8Cに示すように、コントローラ104からの第2の制御信号によりアクチュエータ114kの第2のセット164が作動すると(かつ第1の制御信号をオフにすることにより第1のセット162が作動停止されると)、アクチュエータ114kは、管状部材106を位相が180°ずれた実質的に正弦波の形状に形成する。コントローラ104は、第1および第2の制御信号を交互のパターンで変調して、アクチュエータ114jの第1のセット162およびアクチュエータ114kの第2のセット164の作動を動的に循環させ、それにより、管状部材106を実質的に位相が0°ずれたの正弦波形状と実質的に位相が180°ずれた正弦波形状との間で行き来して動的に循環させるように構成されている。
【0076】
カテーテル160を有するカテーテルシステム100は、管状部材106が体腔内で長手方向に移動される際に管状部材の静止摩擦を減少させる振幅および周波数で、管状部材106の正弦波形状を動的に循環させるように構成されている。振幅および周波数は、静止摩擦を低減するのに必要な最小値であって、かつ体腔(血管など)の壁を刺激しないか、または痙攣を引き起こさない値に設定することができる。例えば、例示的な周波数は、1Hz~10Hz(サイクル/秒)の範囲内であり、例示的な振幅は、0.1mm~1.0mmの範囲内である(これは、2.0mm~10.0mmの範囲内のステアリングアクチュエータ114a~114dの動きの例示的な振幅と比較される)。
【0077】
図9を参照すると、カテーテル160を実装するカテーテルシステム100を使用する方法170を示すフローチャートが示されている。この方法170は、カテーテル160の遠位端110を体腔内に挿入するステップ172を含む。カテーテル160は、アクチュエータ114を作動させない状態で体腔内に挿入することができ、あるいはカテーテル160が挿入される際に静的摩擦を低減するためにアクチュエータ114を動的に作動させた状態で、体腔内に挿入することができる。カテーテル160が最初に挿入される際に、カテーテルをより安定させるために、カテーテル160を最初に少なくとも短い長さだけ体腔内に挿入することが想定される。ステップ174では、カテーテル102が体腔内で長手方向に移動される際に、コントローラが、第1および第2の電気制御信号を交互に印加し、それにより、実質的に位相が0°ずれた正弦波形状と実質的に位相が180°ずれた正弦波形状との間で往復して管状部材106を動的に循環させる。管状部材106の循環正弦波運動は、管状部材106の静止摩擦を破壊し、長手方向の移動をより容易に(すなわち、カテーテル160にかかる必要な力をより小さく)、かつより滑らかにする。
【0078】
図10A~
図10Dおよび
図11は、
図1のカテーテルシステム100で使用することができるアクチュエータ114を有するカテーテル180の別の例示的な実施形態を示している。さらに、カテーテル180は、図面および本明細書で記載のカテーテル102の特徴および態様のうちの1または複数を含むことができる。カテーテル180は、管状部材106を螺旋形状に成形して、体腔122の壁182と周方向に接触させることにより、体腔122内でカテーテル180を安定させるように構成された単一の螺旋配置アクチュエータ114mを利用する。
図10Aに示すように、カテーテル180は管状部材106を含む。アクチュエータ114mは、管状部材106に沿って長手方向に螺旋状の経路で管状部材106上に配置されている。
図10A~
図10Dおよび
図11は、カテーテル180の代表的なセグメントを示しているが、アクチュエータ114mは、管状部材106の任意の適切な長さの上に配置されるようにしてもよく(管状部材106の近位端108から遠位端110まで延びる管状部材106のほぼ全長の上に配置されることを含む)、あるいは管状部材106挿入可能なほぼ全長の上に配置されるようにしてもよいことを理解されたい。
図10Aおよび
図10Cに示すように、アクチュエータ114が非作動状態にあるとき、管状部材106はその固有の可撓性を有するとともに、その弛緩した形状を有する(典型的には、カテーテルが挿入される体腔122の経路の形状をとる)。
図10Aおよび
図10Cでは、非作動カテーテル180は実質的に真っ直ぐである。
図10Bおよび
図10Dに示すように、アクチュエータ114mを作動させると、アクチュエータ114mは管状部材106の形状を実質的に螺旋形状に移行させる。アクチュエータ114mが収縮する(すなわち、張力がかかる)ことにより、管状部材106がほぼ螺旋形状に形成され、それによりアクチュエータ114mが(
図10Dに最もよく示すように)螺旋形状の管状部材106の内側半径上に位置することとなる。
【0079】
図1、
図2A~
図3B、
図7Aおよび
図7Bに示すように、アクチュエータが電気活性ポリマーを含む場合、カテーテル180は電気接続部118のペアも有し、各々の一端が電気活性ポリマーアクチュエータ114mに接続され、もう一端がコントローラ104に接続されている。電気活性ポリマーアクチュエータ114mが非作動であるとき、管状部材106は、
図10Aおよび
図10Cに示すように、その固有の可撓性およびその弛緩形状(典型的には、カテーテル180が挿入される体腔122の経路の形状)を有する。
【0080】
図10Bおよび
図10Dに示すように、コントローラ104からの電気制御信号による電気活性ポリマーアクチュエータ114mの作動時に、電気活性ポリマーアクチュエータ114mは、管状部材106の形状を実質的に螺旋形状に移行させる。アクチュエータ114mが収縮する(すなわち、張力がかかる)ことにより、管状部材106は、実質的に螺旋形状に形成され、それによりアクチュエータ114mが螺旋形状の管状部材106の内側半径上に位置するようになる。
【0081】
単一のアクチュエータ114mは、任意のタイプの細長い直線的に動作する収縮または拡張アクチュエータを含むことができる。アクチュエータ114mが収縮アクチュエータである場合、収縮時にアクチュエータは管状部材106の螺旋状に配置されている側を強制的に短縮させ、それにより、アクチュエータ114mが螺旋形状の内側にバイアスされた状態で、カテーテル180が螺旋形状をとるようにする。アクチュエータが拡張アクチュエータである場合、拡張時にアクチュエータは管状部材106の螺旋状に配置されている側を強制的に伸長させ、それにより、アクチュエータ114mが螺旋形状の外側にバイアスされた状態でカテーテル180が螺旋形状をとるようにする。
【0082】
図11に示すように、カテーテル180は、実質的に螺旋形状の管状部材106が体腔122の壁182に周方向に接触(全周にわたって接触)するように構成されている。管状部材106が壁182に周方向に接触することにより、カテーテル180が体腔122内で安定する。例えば、器具および他のカテーテルが管状部材106を通って移動および/または操作される間、カテーテル106は半径方向に移動することが防止されるとともに、体腔122に対してカテーテル180が長手方向に移動することも防止される。
【0083】
図12を参照すると、カテーテル180を実装するカテーテルシステム100を使用する方法190を示すフローチャートが示されている。この方法190は、管状部材106がその固有の可撓性および弛緩形状を有するように電気活性ポリマーアクチュエータ114mを非作動とした状態で、カテーテル180を体腔122内に挿入するステップ192を含む。ステップ194では、カテーテル180を体腔122内の所望の位置まで体腔内を前進させる。ステップ196では、コントローラ104が電気活性ポリマーアクチュエータ114mに電気制御信号を印加する。ステップ198では、コントローラ104が電気活性ポリマーアクチュエータ114mを作動させて、管状部材106の形状を、管状部材106が体腔122の壁182と周方向に接触するような実質的に螺旋形状に移行させる。この周方向の接触により、カテーテル180が体腔122内で安定化および/または固定される。
【0084】
図13および
図14A~
図14Eは、
図1のカテーテルシステム100で使用できるアクチュエータ114を有するカテーテル200の別の例示的な実施形態を示している。さらに、カテーテル200は、図面および本明細書に記載のカテーテル102の特徴および態様のうちの1または複数を含むことができる。カテーテル200は、複数の螺旋状に配置されたアクチュエータ114n、114o、114pなどを含む原動力アクチュエータ202を利用して、体腔122内でカテーテル200を長手方向に移動させる、または移動を補助するための原動力を発生させる。カテーテル200の図示の実施形態は、3つの螺旋状アクチュエータ114n、114o、114pを有する原動力アクチュエータ202を含むが、任意の適切な数の螺旋状アクチュエータ114を利用することができる。
【0085】
本明細書で説明する他のカテーテルと同様に、カテーテル200は細長い可撓性の管状部材106を含む。管状部材106は複数の長手方向セグメントまたは部分204を有し、各螺旋状アクチュエータ114に対して1つのセグメント200を有する。図示の実施形態では、管状部材106が、3つのセグメント204a、204b、204cを有する。セグメント204a、204b、204cは長手方向に互いに間隔をあけて配置され、例えば、第1のセグメント204aがあり、この第1のセグメント204aの遠位側に第2のセグメント204bがあり、この第2のセグメント204bの遠位側に第3のセグメント204cがある。3つのセグメント204a、204b、204cは、管状部材106の遠位部分110に配置することもできる。このようにして、原動力アクチュエータ202は、典型的には、カテーテル200の遠位部分110とともに最初に体腔122内に挿入され、その後、原動力アクチュエータ202は、カテーテル200を体腔122内に押したり引いたりして、カテーテル200を体腔122内の所望の位置まで前進させることができる。
【0086】
各螺旋状アクチュエータ114n、114o、114pは、それぞれのセグメント204a、204b、204cに沿った螺旋経路内でそれぞれのセグメント204a、204b、204c上に配置され、
図14A~
図14Dに示すように、それぞれの制御信号を使用したそれぞれのアクチュエータ114n、114o、114pの作動により、それぞれのセグメント204a、204b、204cの形状が実質的に螺旋形状に遷移するようになっている。
図14Aは、アクチュエータ114nが非作動状態にあり、アクチュエータ114o、114pが作動してセグメント204b、204cをそれぞれの螺旋形状に形成している状態を示している。
図14Bは、アクチュエータ114oが非作動状態にあり、アクチュエータ114n、114pが作動してセグメント204a、204cをそれぞれの螺旋形状に形成している状態を示している。
図14Cは、アクチュエータ114pが非作動状態にあり、アクチュエータ114n、114oが作動してセグメント204a、204bをそれぞれの螺旋形状に形成している状態を示している。
【0087】
それぞれのアクチュエータ114n、114o、114pは、アクチュエータ114n、114o、114pの変調された作動により、管状部材106と体腔122の壁182との間に、管状部材106を体腔122内で長手方向に移動させる原動力が生じるように、構成されている。
【0088】
セグメント204a、204b、204cの各々の外面は、変調された作動に応答して管状部材106の移動を容易にするために、螺旋形状の起伏、リブまたは他の構造を有することができる。起伏、リブまたは他の構造は、管状部材106と体腔122の壁182との間の摩擦を増大させることができる。
【0089】
一態様では、ポリマーアクチュエータ114n、114o、114pの変調された作動により、
図14A~
図14Eに示すように、管状部材106をワームクローラのような運動で移動させる。ワームクローラのような運動を生じさせるために、アクチュエータ114n、114o、114pの各々は、他の2つのアクチュエータから位相がずれた変調方式で作動される。
図14A~
図14Eに示す例示的な実施形態では、各アクチュエータ114の変調された作動は、他のアクチュエータ114と120°位相がずれている。
図14Eは、管状部材106を移動させるクローラのような原動力を生成するための、アクチュエータ114n、114o、114pの変調された作動状態/信号の一例を経時的に示している。
図14Eのグラフでは、作動線220aがアクチュエータ114nの作動状態に対応し、作動線220bがアクチュエータ114oの作動状態に対応し、作動線220cがアクチュエータ114pの作動状態に対応している。
図14Eの時点A1、B1、C1、A2は、
図14A~
図14Dの同様の参照番号に対応する。
【0090】
次に、
図14A~
図14Eを参照して、壁182を有する体腔122内を移動するカテーテル200の動作を説明する。
図14Eに示すように、時点A1において、アクチュエータ114nは非作動であり、アクチュエータ114oは完全に作動し、アクチュエータ114pは完全に作動している。
図14Aは、時点A1における作動状態に対応するカテーテル200の構成を示しており、この構成では、非作動アクチュエータ114が、セグメント204aを実質的に真っ直ぐな形状に形成し、完全作動アクチュエータ114oが、セグメント204bを壁182に接触する螺旋形状に形成し、完全作動アクチュエータ114oが、セグメント204bを壁182に接触する螺旋形状に形成している。
図14Eに示すように、変調された作動が時点A1から時点B1(「時間間隔1」)に進む際に、アクチュエータ114nが徐々に作動し、アクチュエータ114oが徐々に作動停止し、アクチュエータ114pが完全に作動したままである。時間間隔1中、アクチュエータ114nは、セグメント204aを螺旋形状に形成し、アクチュエータ114oは、セグメント204bを螺旋形状から実質的に真っ直ぐな形状に移行させ、アクチュエータ114pは、セグメント204cを螺旋形状に維持する。時間間隔1中、セグメント204cは、原動力アクチュエータ202の後端を壁182に固定し、セグメント204bの伸長により、セグメント204aが左方向に押される。
【0091】
図14Eに示すように、変調された作動が時点B1から時点C1(「時間間隔2」)に進む際に、アクチュエータ114nは作動したままであり、アクチュエータ114oは徐々に作動し、アクチュエータ114pは徐々に作動停止する。時間間隔2中、アクチュエータ114nは、セグメント204aを螺旋形状に維持し、アクチュエータ114oは、セグメント204bを実質的に真っ直ぐな形状から螺旋形状に移行させ、アクチュエータ114pは、セグメント204cを螺旋形状から実質的に真っ直ぐな形状に移行させる。時間間隔2中、セグメント204aは原動力アクチュエータ202の先端を壁182に固定し、セグメント204cは壁182から離脱し、螺旋形状に形成されるときのセグメント204bの収縮により、セグメント204cが左方向に引っ張られる。
【0092】
図14Eに示すように、変調された作動が時点C1から時点A2(「時間間隔3」)へ進む際に、アクチュエータ114nは徐々に作動停止し、アクチュエータ114oは完全に作動したままであり、アクチュエータ114pは徐々に作動する。時間間隔3中、アクチュエータ114nは、セグメント204aを螺旋形状から実質的に真っ直ぐな形状に移行させ、アクチュエータ114oは、セグメント204bを螺旋形状に維持し、アクチュエータ114pは、セグメント204cを実質的に真っ直ぐな形状から螺旋形状に移行させる。時間間隔3中、セグメント204bは、原動力アクチュエータ202の中間部を壁182に固定し、セグメント204aは、原動力アクチュエータ202の先端を壁182から離脱させて、左方向へ延び、セグメント204cは、螺旋形状に形成されるにつれて収縮して、原動力アクチュエータ202の後端を壁182に再び固定する。時点A2では、原動力アクチュエータ202が時点A1のときと同じ構成にあり、変調された作動を繰り返してカテーテル200を動かし続けることができる。当然のことながら、変調された作動は逆転させることができ、それにより、逆方向の原動力を生じさせて、カテーテル200を右に移動させることも可能である。
【0093】
アクチュエータ114間の位相シフトの程度は、アクチュエータ114の数や、所望の原動力を発生させるための運動の設計などの他の考慮事項に応じて異なり得る。さらに、カテーテル200内のアクチュエータ114は、電気活性ポリマーアクチュエータまたは本明細書に開示の他のタイプのアクチュエータを含む、任意の適切なアクチュエータとすることができる。電気活性ポリマーアクチュエータ114の場合、カテーテル200は、電気活性ポリマーアクチュエータ114の各々に対する電気接続部118のペアを有し、各アクチュエータ114の独立した作動を可能にする。コントローラ104は、変調パターンに従ってアクチュエータ114n、114o、114pの各々に変調された電気作動信号を供給して原動力を生成するように構成されている。
【0094】
図15および
図16A~
図16Dは、体腔122内でカテーテルの長手方向に移動させ、またはそれを補助するための原動力を発生させるための原動力アクチュエータ252を有するカテーテル250の別の例示的な実施形態を示している。カテーテル200と同様に、カテーテル250はアクチュエータ114を有し、
図1のカテーテルシステム100に使用することができる。さらに、カテーテル250は、図面および本明細書に記載のカテーテル102の特徴および態様のうちの1または複数を含むことができる。原動力アクチュエータ250は、複数の螺旋状に配置されたアクチュエータ114q、114r、114sなどを含み、体腔122内でカテーテル250を長手方向に移動させるための原動力を発生させる。カテーテル250の図示の実施形態は、3つの螺旋状アクチュエータ114q、114r、114sを有する原動力アクチュエータ252を含むが、任意の適切な数の螺旋状アクチュエータ114を利用することができる。
【0095】
本明細書に記載の他のカテーテルと同様に、カテーテル250は細長い可撓性の管状部材106を含む。
【0096】
各螺旋状アクチュエータ114q、114r、114sは、管状部材106の長手方向の長さに沿った螺旋経路内で管状部材106上に配置され、アクチュエータ114の各螺旋経路が、他のアクチュエータ114の螺旋経路から長手方向に間隔をあけて配置、すなわちオフセットされている。
図15および
図16A~
図16Cに示すように、アクチュエータ114の順序は、左から右へ114q、114r、114sの順に進み、アクチュエータ114q、114r、114sが管状部材に沿って平行に配置されている。螺旋状アクチュエータ114q、114r、114sで構成される原動力アクチュエータ252は、管状部材106の一部254に沿って延びるようにしても、管状部材106の全長に沿って延びるようにしても、管状部材106の長さの少なくともあるパーセンテージ(例えば、90%、または80%、または70%、または60%、または50%)に沿って延びるようにしても、あるいは管状部材の他の適切な長さに沿って延びるようにしてもよい。例えば、原動力アクチュエータ252は、カテーテル250の遠位部分の一部254に配置することもできる。この方法では、先ず、原動力アクチュエータ252をカテーテル250の遠位部分110とともに、体腔122内に挿入し、次いで原動力アクチュエータ252を使用してカテーテル250を体腔122内に押したり引いたりして、カテーテル200を体腔122内の所望の位置まで前進または後退させることができる。
【0097】
各螺旋状アクチュエータ114q、114r、114sは、管状部材106上に配置され、それぞれの制御信号を使用してそれぞれのアクチュエータ114q、114r、114sを作動させると、
図16A~
図16Cに示すように、管状部材106が実質的に螺旋形状に形成されるように構成されている。アクチュエータ114q、114r、114sの各々のオフセット位置により、アクチュエータ114q、114r、114sの各々によって形成される管状部材106の螺旋形状もオフセットされる。このため、アクチュエータ114q、114r、114sの変調された作動により、管状部材106を、管状部材106の長手方向の長さに沿って波状に伝播する螺旋形状に形成することができる。管状部材106の長手方向の長さに沿った第1の方向(例えば、右方向)への螺旋形状の波状伝播により、体腔122の壁182に対する管状部材106の反対方向(例えば、左方向)の原動力が生じ、それによりカテーテル250が原動力の方向に移動する。
【0098】
カテーテル250の管状部材106の外面は、変調された作動に応答した管状部材106の移動を容易にするために、螺旋形状の起伏、リブまたは他の構造を有することができる。起伏、リブまたは他の構造は、管状部材106と体腔122の壁182との間の摩擦を増大させることができる。
【0099】
図16A~
図16Dは、カテーテル250を移動させるための原動力を発生させるための原動アクチュエータ250の変調された作動の一例を示している。
図16Dは、左から右へ波状に伝播する螺旋形状を生成するための、アクチュエータ114q、114r、114sの各々の作動状態/信号を経時的に示している。作動線256aはアクチュエータ114qの作動状態に対応し、作動線256bはアクチュエータ114rの作動状態に対応し、作動線256cはアクチュエータ114sの作動状態に対応している。
図16Dの時点A、B、Cは、
図16A~
図16Cの同様の参照番号に対応する。作動状態/信号256は、正弦波形式で変調され、各アクチュエータ114の正弦波作動状態/信号は、他のアクチュエータ114と120°位相がずれている。換言すれば、アクチュエータ114rに対する正弦波作動状態/信号256bは、アクチュエータ114qに対する作動状態/信号256aから120°位相がずれており、アクチュエータ114sに対する正弦波作動状態/信号256cは、アクチュエータ114rに対する作動状態/信号256bから120°位相がずれており、アクチュエータ114qに対する正弦波作動状態/信号256aは、アクチュエータ114sに対する作動状態/信号256cから120°位相がずれている。
【0100】
図16Aに示すように、
図16Dの時点Aでは、アクチュエータ114q、114sが作動し、アクチュエータ114rが非作動である。これにより、管状部材106は螺旋形状に形成され、アクチュエータ114r、およびアクチュエータ114rに取り付けられた管状部材106の一部分が螺旋形状の外側半径上に位置し、一方、アクチュエータ114q、114sおよび管状部材106のそれぞれの部分が螺旋形状の内側半径上に位置する。
図16Bに示すように、
図16Dの時点Bでは、アクチュエータ114q、114rが作動し、アクチュエータ114sが非作動である。これにより、管状部材106は螺旋形状に形成され、アクチュエータ114s、およびアクチュエータ114sに取り付けられた管状部材106の一部分が螺旋形状の外側半径上に位置し、一方、アクチュエータ114q、114rおよび管状部材106のそれぞれの部分が螺旋形状の内側半径上に位置する。
図16Cに示すように、
図16Dの時点Cでは、アクチュエータ114r、114sが作動し、アクチュエータ114qが非作動である。これにより、管状部材106は螺旋形状に形成され、アクチュエータ114q、およびアクチュエータ114qに取り付けられた管状部材106の一部分が螺旋形状の外側半径上に位置し、一方、アクチュエータ114r、114sおよび管状部材106のそれぞれの部分が螺旋形状の内側半径上に位置する。
【0101】
図16Dに示すように、それぞれの作動信号256a、256b、256を変調することによって、管状部材106の螺旋形状は、管状部材106の長手方向の長さに沿って第1の方向(例えば、右方向)に波状に伝播し、それにより、体腔122の壁182に対する管状部材106の反対方向(例えば、左方向)の原動力を生じさせて、カテーテル250を原動力の方向に移動させることができる。変調された作動パターンは逆転させることができ、それにより逆方向の原動力を生じさせて、カテーテル250を右方向に移動させることも可能である。例えば、アクチュエータ114q、114r、114sの変調された作動により、管状部材106を回転スクリュ運動で移動させことができ、それにより、カテーテル250を長手方向に移動させるための原動力が生成される。
【0102】
原動力アクチュエータ252内のアクチュエータ114間の位相シフトの程度は、所望の原動力を生じさせるための、アクチュエータ114の数や、運動の設計など他の考慮事項に応じて異なり得る。さらに、カテーテル250内のアクチュエータ114は、電気活性ポリマーアクチュエータまたは本明細書に開示の他のタイプのアクチュエータを含む、任意の適切なアクチュエータとすることができる。電気活性ポリマーアクチュエータ114の場合、カテーテル250は、電気活性ポリマーアクチュエータ114の各々に対する電気接続部118のペアも有し、各アクチュエータ114の独立した作動が可能となっている。コントローラ104は、原動力を発生させるための変調パターンに従って、変調された電気作動信号をアクチュエータ114q、114r、114sの各々に供給するように構成されている。
【0103】
図17を参照すると、カテーテル200、250のいずれかを実装するカテーテルシステム100を使用する方法210を示すフローチャートが示されている。この方法210は、管状部材106がその固有の可撓性および弛緩形状を有するようにアクチュエータ114n、114o、114pを非作動とした状態で、カテーテル200を体腔122内に挿入するステップ212を含む。ステップ214では、各アクチュエータ114n、114o、114pへのそれぞれの変調された制御信号の第1のパターンを使用して、アクチュエータ114n、114o、114pを作動させる。コントローラ104は、制御信号を与え、この制御信号は、電気的、機械的、流体圧的、またはエネルギー信号が伝達され得る他の手段を含む様々な形態のエネルギーを含むことができる。それぞれの変調された制御信号は、互いに位相がずれている(例えば、位相が120°ずれている)。変調された作動により、それぞれのセグメント204a、204b、204cを、第1の変調されたパターンで螺旋形状に遷移させ、それにより、管状部材106と体腔122の壁182との間に原動力を生じさせる。ステップ216では、アクチュエータ114n、114o、114pが、管状部材106を引き出す(すなわち、管状部材106を前進の反対方向に移動させる)変調された制御信号の第2のパターン(例えば、第2のパターンは第1のパターンの逆であってもよい)を使用して作動される。
【0104】
図18を参照すると、カテーテルシステムに固定機能を提供するための機械的作動システム300が示されている。このカテーテルシステムは、アクチュエータ114が機械的作動システム300に置き換えられている点を除いて、本明細書に記載のカテーテルシステム100と同様であってもよい。機械的作動システム300は、1または複数の機械的アクチュエータ要素302を有するチューブ304を含む。チューブ304は、ハイポチューブ、またはカテーテルで使用するための他の適切なチューブであってもよい。図示の実施形態は、2つのアクチュエータ要素302a、302bを含む。機械的作動システム300は、対応する形状を有する体腔内に固定するための所望のアンカー形状を提供するために、任意の適切な数の機械的アクチュエータ302を含むことができる。
【0105】
図示の実施形態では、アクチュエータ要素302が、チューブ304内に一体的に形成され、そのようなチューブが、アクチュエータ要素302を含む領域と、アクチュエータ要素302に隣接して位置する非作動領域306a、306b、306cとを含む別個の長手方向領域を有する。非作動領域306a、306b、306cは、軸方向の圧縮コンプライアンスが低く、チューブ304の中心軸の周りで等方的であるチューブ304の領域であり、チューブ304の真っ直ぐな非作動セグメントを形成する。
【0106】
アクチュエータ要素302は、コンプライアンスが中心軸の周りで異方性であるチューブ304の領域であり、様々なコンプライアンスのエリアを含み得る。アクチュエータ要素302aは、下向きのバイアスと中程度のコンプライアンスを有する(すなわち、所与の圧縮力に対して低いコンプライアンスよりも大きく曲がり、高いコンプライアンスよりも小さく曲がる)第1の異方性エリア308aと、下向きのバイアスと高いコンプライアンスを有する(すなわち、所与の圧縮力に対して中程度のコンプライアンスよりも大きく曲がる)第2の異方性エリア308bとを有する。「バイアス」の方向は、
図18~
図20に示す向きに基づいている。換言すれば、第1の異方性エリア308aおよび第2の異方性エリア308bは、
図20に示すように、圧縮力に応じて時計回りに曲がるように構成されている。
図20に示すように、所与の圧縮力に対して、第1の異方性エリア308aは、第2の異方性エリア308bよりも小さく曲がる(すなわち、より大きな曲げ半径または曲げ曲率で曲がる)。同様に、アクチュエータ要素302bは、上向きのバイアスおよび中程度のコンプライアンスを有する(すなわち、所与の圧縮力に対して低いコンプライアンスよりも大きく曲がり、高いコンプライアンスよりも小さく曲がる)第1の異方性エリア310aと、上向きのバイアスおよび高いコンプライアンスを有する(すなわち、所与の圧縮力に対して中程度のコンプライアンスよりも大きく曲がる)第2の異方性エリア310bとを有する。
図16~
図18に示すような向きでは、第1の異方性エリア310aおよび第2の異方性エリア3108bが、
図18に示すように、圧縮力に応じて反時計回りに曲がるように構成されている。
図18に示すように、所与の圧縮力に対して、第1の異方性エリア310aは第2の異方性エリア310bよりも小さく曲がる(すなわち、より大きな曲げ半径または曲げ曲率で曲がる)こととなる。
【0107】
図19は、機械的作動システム300の各領域の相対的な軸方向圧縮コンプライアンスを示している。
図20に示すように、チューブ303に軸方向の圧縮力を加えることによって作動システム300を作動させると、アクチュエータ要素302は、それぞれのアクチュエータ要素302の構成に基づいて曲がることとなる。
図19および
図20を参照すると、2つの代替的な作動機構312a、312bが示されている。
図21の作動機構312aは、カテーテルのルーメン内に配置された単一のプルワイヤ314を含む。プルワイヤ314は、作動システム300の遠位端に取り付けられた遠位端を有し、作動システム300に圧縮力を加えたり除去したりするために操作され得るカテーテルの近位端まで、カテーテルの長さに沿って近位方向に延びている。
図22の作動機構312bは、チューブ304の壁の通路またはルーメン内に配置された複数のプルワイヤ314a、314b、314cを有する。プルワイヤ314a、314b、314cは、
図19のプルワイヤ314と同様に取り付けられ、操作される。複数のプルワイヤ14a、314b、314cは、すべて同時に作動されるようにしても、各々が順次作動されるようにしてもよく、同様に、個々のワイヤにかかる作動力は、すべて同じであっても、各々が異なる大きさであってもよい。
【0108】
図24および
図25を参照すると、アクチュエータ要素302aの例示的な一実施形態が示されている。アクチュエータ要素302aの異方性エリア308a、308bは、ハイポチューブ304におけるレーザカットまたは機械カットなど、チューブ304における複数のカットによって形成されている。カットの幅、間隔および位置は、各異方性エリア308の様々な圧縮コンプライアンスおよび曲げ曲率を確立する。
図22に示すように、圧縮力が加わると、異方性エリア308aは異方性エリア308bよりも大きな半径で曲がる。
【0109】
異方性エリア308は、アクチュエータ要素302の各エリアに対して所与の方向に曲げバイアスを付与することができ、この曲げバイアスは、各エリアにおいて異なる平面での曲げを引き起こすためにエリアごとに変えることができるか、または、作動システム300の一部またはすべてに沿って螺旋形状を形成することを含む複雑な曲げを作り出すために曲げ領域内で連続的に変えることができる。
【0110】
作動システム300を有するカテーテルシステム100を使用する方法は、作動システム300が1または複数のプルワイヤ314を作動させてアクチュエータ要素302に対する軸方向の圧縮力を印加および除去することによって作動されることを除いて、上述したカテーテル120または140を使用する方法と同様である。先ず、作動要素302が非作動であり、かつ管状部材106のアンカー部分120がその弛緩形状および/または固有の可撓性を有するように、作動システム300に圧縮荷重が加えられていない状態で、カテーテル102の遠位端110を体腔内に挿入する。その後、カテーテル102を体腔内に前進させて、アンカー部分が体腔122内に位置した状態でカテーテル102を所望の位置に配置する。次いで、作動要素302に圧縮力を加えることによって作動システム300を作動させ、それにより、アンカー部分120を体腔122内の定位置に固定するアンカー形状に、作動要素302を曲げて硬化させる。
【0111】
同様に、カテーテルシステム100を使用する別の方法は、作動システム300を有するカテーテルシステムを対象とし、この作動システムは、管状部材を体腔内で安定させるのに十分に管状部材106の長さに沿って体腔の壁と周方向に管状部材106が接触することができるように、カテーテル102を螺旋形状に形成するように構成されている。この方法は、管状部材106がその弛緩形状および/または固有の可撓性を有するように作動システム300を非作動とした状態で、カテーテル102を体腔122内に挿入するステップを含む。その後、体腔内の所望の位置まで体腔内でカテーテル100を進める。次いで、作動要素302に圧縮力を加えることによって作動システム300を作動させ、それにより、カテーテル100が体腔の壁と周方向に接触するように、作動要素302を螺旋形状に曲げて硬化させる。周方向の接触は、カテーテル100を体腔内で安定化および/または固定する。
【0112】
特定の実施形態を開示および説明してきたが、上記の説明はそれら実施形態の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の多くの態様の実施形態および変形例を本明細書で開示および説明してきたが、そのような開示は、説明および例示のみを目的として提供されている。このため、特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を加えることが可能である。例えば、実施形態に記載の構成要素のすべてが必要というわけではなく、本発明は、記載の構成要素の任意の好適な組合せを含むことができ、本発明の構成要素の全体的な形状および相対的な大きさは変更され得る。このため、実施形態は、特許請求の範囲に含まれ得る代替物、修正物および均等物を例示することを意図している。よって、本発明は、以下の特許請求の範囲およびその均等物を除き、限定されるべきではない。
【国際調査報告】