(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】選択的に絶縁された超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
A61N 7/00 20060101AFI20240214BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20240214BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61N7/00
H04R31/00 330
H04R17/00 330H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550221
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 IB2022050102
(87)【国際公開番号】W WO2022175754
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512046383
【氏名又は名称】大塚メディカルデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ティルマライ シュルティ アール
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ルイス ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】メリノ ジェイミー
【テーマコード(参考)】
4C160
5D019
【Fターム(参考)】
4C160JJ22
4C160JJ50
4C160MM32
5D019AA19
5D019BB02
5D019BB10
5D019BB25
5D019FF04
(57)【要約】
本明細書には、選択的に絶縁されて、それによって当該トランスデューサの電極間に短絡を引き起こすことなく当該トランスデューサが導電性流体にさらされることを可能にする、超音波トランスデューサが開示される。このようなトランスデューサは、互いから離間して配置されて互いに交差しない第1面及び第2面を有する圧電トランスデューサ本体を備える。当該超音波トランスデューサは、また、前記第1面上に配置された第1電極と、前記第2面上に配置された第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極の一方のみを覆って当該超音波トランスデューサが導電性流体内に配置される時に前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導を抑制するように構成された電気絶縁体と、を備える。このようなトランスデューサを含む装置及びシステムも、開示される。関連する方法も、本明細書に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサであって、
互いから離間して配置されて互いに交差しない第1面及び第2面を有する圧電トランスデューサ本体と、
前記第1面上に配置された第1電極と、
前記第2面上に配置された第2電極と、
前記第1電極を覆って、当該超音波トランスデューサが導電性流体内に配置される時に前記第1電極が当該導電性流体と接触するのを抑制し、それによって当該超音波トランスデューサが前記導電性流体内に配置される時に前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導を抑制する、ように構成された電気絶縁体と、
を備え、
前記第2電極は、電気絶縁体によって覆われておらず、
前記第2電極が電気絶縁体によって覆われていないことにより、当該超音波トランスデューサが前記導電性流体内に配置される時、前記第2電極は前記導電性流体と接触することになる
ことを特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記圧電トランスデューサ本体は、前記第1電極と前記第2電極との間の電圧の印加に応答して超音波を生成するように構成されており、
前記第1電極を覆う前記電気絶縁体は、当該超音波トランスデューサが前記導電性流体内に配置されて前記第1電極と前記第2電極との間に前記電圧が印加される時に、前記第1電極と前記第2電極との間で短絡が生じることを抑制する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記圧電トランスデューサ本体は、内面及び外面を有する圧電材料の中空管を有しており、
前記内面は、前記圧電トランスデューサ本体の前記第1面及び前記第2面のうちの一方であり、
前記外面は、前記圧電トランスデューサ本体の前記第1面及び前記第2面のうちの他方であり、
前記第1電極は、前記圧電材料の前記中空管の前記内面及び前記外面のうちの一方上に配置されており、
前記第2電極は、前記圧電材料の前記中空管の前記内面及び前記外面のうちの他方上に配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記第1電極は、前記圧電材料の前記中空管の前記外面上に配置されており、
前記第2電極は、前記圧電材料の前記中空管の前記内面上に配置されており、
前記電気絶縁体は、前記圧電材料の前記中空管の前記外面上に配置された前記第1電極を覆っており、
前記圧電材料の前記中空管の前記内面上に配置された前記第2電極は、電気絶縁体によって覆われていない
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記圧電材料の前記中空管は、円筒形状である
ことを特徴とする請求項3または4に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記圧電トランスデューサ本体は、8.5~9.5MHzの周波数範囲内の音響エネルギを送達するように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記圧電トランスデューサ本体は、10~80ワットの範囲内の入力電力に応答して、5~45ワットの範囲内の音響出力パワーを生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記導電性流体は、血液、生理食塩水、非純水、または、乳酸ナトリウム溶液、のうちの1つを含む
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記第1電極は、主要な周面と、長手方向端と、を含んでおり、
前記電気絶縁体の一部が、前記第1電極の前記主要周面を覆っており、第1タイプの電気絶縁材料で作られており、
前記電気絶縁体の別の一部が、前記第1電極の前記長手方向端を覆っており、前記第1電極の前記主要周面を覆う前記電気絶縁材料と同一の材料または異なる材料で作られている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
当該超音波トランスデューサは、前記導電性流体で少なくとも部分的に充填されるバルーン内に配置されるように構成されており、
前記バルーンは、体腔の一部を冷却するために使用されるものであり、その内部に当該超音波トランスデューサが位置決めされ得て、
前記バルーンを少なくとも部分的に充填する前記導電性流体は、生理食塩水、非純水、または、乳酸ナトリウム溶液、のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
当該超音波トランスデューサは、その内部に当該超音波トランスデューサが位置決めされ得る体腔を通って流れる血液に直接的にさらされるように構成されており、
前記導電性流体は、血液を含む
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項12】
前記電気絶縁体は、パリレンを含む
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項13】
前記電気絶縁体は、以下のうちの1または複数を含む
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の超音波トランスデューサ:
パリレン;
シアノアセテート;
エポキシ樹脂;
ナイロン;
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);
ポリイミド;
ポリエチレン;
ポリエチレンテレフタレート;
ポリ塩化ビニル(PVC);
合成ダイヤモンドコーティング。
【請求項14】
前記電気絶縁体は、
前記第1電極の外周上に配置されて当該外周を覆うパリレンと、
前記第1電極の長手方向端上に配置されて当該長手方向端を覆うエポキシ樹脂と、
を含む
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項15】
冷却流体を受容するように構成されたバルーンと、
前記バルーン内に配置された超音波トランスデューサと、
を備え、
前記超音波トランスデューサは、
内面及び外面を有する圧電材料の中空管と、
前記圧電材料の前記中空管の前記内面及び前記外面のうちの一方上に配置された第1電極と、
前記圧電材料の前記中空管の前記内面及び前記外面のうちの他方上に配置された第2電極と、
前記第1電極を覆って、前記第1電極が前記バルーンによって受容される前記冷却流体と接触するのを抑制し、それによって前記バルーンによって受容される前記冷却流体が導電性冷却流体である時に前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導を抑制する、ように構成された電気絶縁体と、
を有しており、
前記第2電極は、電気絶縁体によって覆われておらず、前記バルーンによって受容される前記冷却流体と接触することになる
ことを特徴とする装置。
【請求項16】
前記超音波トランスデューサは、前記第1電極と前記第2電極との間の電圧の印加に応答して超音波を生成するように構成されており、
前記第1電極を覆う前記電気絶縁体は、前記バルーン内に受容された前記冷却流体が導電性冷却流体であって前記第1電極と前記第2電極との間に前記電圧が印加される時に、前記第1電極と前記第2電極との間で短絡が生じることを抑制する
ことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記電気絶縁体は、以下のうちの1または複数を含む
ことを特徴とする請求項15または16に記載の装置:
パリレン;
シアノアセテート;
エポキシ樹脂;
ナイロン;
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);
ポリイミド;
ポリエチレン;
ポリエチレンテレフタレート;
ポリ塩化ビニル(PVC);
合成ダイヤモンドコーティング。
【請求項18】
前記電気絶縁体によって覆われた前記第1電極は、前記圧電材料の前記中空管の前記外面上に配置されている
ことを特徴とする請求項15乃至17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記導電性流体は、生理食塩水、非純水、または、乳酸ナトリウム溶液、のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項15乃至18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記圧電材料の前記中空管は、円筒形状である
ことを特徴とする請求項15乃至19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
互いから離間して配置されて互いに交差しない第1面及び第2面を有し、第1電極が前記第1面上に配置されており、第2電極が前記第2面上に配置されている、超音波トランスデューサを提供する工程と、
前記第1電極及び前記第2電極のうちの一方のみを電気絶縁体で覆う工程と、
前記超音波トランスデューサを、前記第2電極とは接触する一方で前記第1電極を覆う前記電気絶縁体によって前記第1電極とは接触することが抑制される導電性流体にさらす工程と、
前記超音波トランスデューサが前記導電性流体にさらされている間に、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して、前記超音波トランスデューサに超音波を生成させる工程と、
前記電気絶縁体を利用して、前記超音波トランスデューサが前記導電性流体にさらされていて前記第1電極と前記第2電極との間に前記電圧が印加される間に、前記第1電極と前記第2電極との間で短絡が生じることを抑制する工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項22】
前記超音波トランスデューサを、バルーンの内部に配置する工程
を更に備え、
前記超音波トランスデューサを前記導電性流体にさらす工程は、前記バルーンを前記導電性流体で少なくとも部分的に充填する工程を含む
ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記超音波トランスデューサを内部に含んだ前記バルーンを、体腔内に挿入する工程
を更に備え、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して前記超音波トランスデューサに超音波を生成させる工程は、前記バルーンが前記体腔内にある間に行われる
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記導電性流体は、生理食塩水、非純水、または、乳酸ナトリウム溶液、のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項21乃至23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記超音波トランスデューサを、血液が流れる体腔内に挿入して、前記超音波トランスデューサが当該血液と接触するようにする工程
を更に備え、
前記導電性流体は、前記血液を含み、
前記超音波トランスデューサを前記導電性流体にさらす工程は、前記超音波トランスデューサを前記血液にさらす工程を含む
ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項26】
超音波トランスデューサであって、
互いから離間して配置されて互いに交差しない第1面及び第2面を有する圧電トランスデューサ本体と、
前記第1面上に配置された第1電極と、
前記第2面上に配置された第2電極と、
前記第1電極を直接的または間接的に覆う電気絶縁体と、
を備え、
前記第2電極は、電気絶縁体によって覆われておらず、当該超音波トランスデューサが導電性流体内に配置される時、前記導電性流体と接触することになる
ことを特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項27】
前記第1電極に接触し、前記第1電極に電力を提供するように構成されたケーブル
を更に備え、
前記電気絶縁体は、前記第1電極の周面と、前記ケーブルと前記第1電極との間の接触部と、の両方を覆う
ことを特徴とする請求項26に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項28】
前記電気絶縁体は、
前記第1電極上に配置された第1絶縁体と、
前記接触部上に配置され、前記第1絶縁体と同一または異なる第2絶縁体と、
を含む
ことを特徴とする請求項27に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権]
本願は、2021年12月 7日に出願された、Thirumalai等による、「選択的に絶縁された超音波トランスデューサ」という表題の米国特許出願第17/457,997号、及び、2021年 2月19日に出願された、Thirumalai等による、「選択的に絶縁された超音波トランスデューサ」という表題の米国特許仮出願第63/151,514号、の優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
本願は、全体として、対象(被験者)の標的とされる解剖学的位置にエネルギ送達を提供する低侵襲性の装置、システム、及び方法に関し、より具体的には、神経組織などの組織の治療のために超音波エネルギを放出するように構成された超音波トランスデューサを含むまたは利用する、カテーテルベースの管腔内装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、成人の約3人に1人が、高血圧症として知られる高血圧に苦しんでいる。治療せずに放置すると、高血圧症は、腎疾患、不整脈、及び心不全を引き起こし得る。近年、高血圧の治療は、腎動脈の周囲の腎神経を不活化するための介入的アプローチに焦点を当てている。自律神経は、血管に沿って、それが支配する臓器に向かう傾向がある。カテーテルは、当該カテーテルが移動する体腔内に近接し得る特定の構造に到達し得る。例えば、あるシステムは、腎動脈の内膜に当てて配置された複数の電極を有するカテーテルに接続された高周波(RF)発生器を使用して、血管壁及び周囲の組織に電界を生成して組織の抵抗(オーミック)加熱を引き起こし、当該組織及び当該組織を通る腎神経を切除するのに十分な温度にまで加熱する。腎動脈を取り囲む全ての腎神経を治療するために、RF電極は、腎動脈の内側の周囲で数回再配置される。しかしながら、RF電極によって生成される比較的限定された電界は、腎神経の一部を見逃し得て、不完全な治療をもたらし得る。付加的に、腎神経を加熱するには、RF電極が内膜と接触する必要があり、当該内膜の損傷または壊死のリスクが生じ得て、これは、血栓の形成、血管壁の線維化、血管の機械的弱化、及び、血管損傷の可能性、をもたらし得る。
【0004】
腎神経の不活化に対するもう1つのアプローチは、高密度焦点式超音波(HIFU)の使用である。これは、振動エネルギを利用して、組織の摩擦加熱と破壊とを引き起こし、更に、アブレーションやリモデリングを引き起こすのに十分に組織温度を上昇させる。しかしながら、血管内でのHIFUの使用は、せいぜい、血管及び周囲の組織への薄い焦点リングの形成に帰結し得る程度である。腎臓の除神経に適用しても、この薄いリングを腎神経と位置合わせすることは困難である。なぜなら、腎神経は、腎動脈の長さに沿って異なる半径方向距離に位置するからである。また、焦点リングが薄いため、血管の軸方向に対して長手方向の治療ゾーンが小さい、ということも問題である。
【0005】
Warnkingの米国特許第9,943,666号、9,981,108号、及び、10,039,901号、Schaerの米国特許第9,700,372号、9,707,034号、及び、10,368,944号、並びに、Taylorの米国特許第10,350,440号、及び、第10,456,605号は、それぞれの全内容が当該参照により本明細書に組み込まれるが(incorporated by reference)、前述のようなRF及びHIFUシステムの欠点の多くを解消する。当該システムの例示的な実施形態は、血管(例えば、腎動脈)に挿入されるように設計されたカテーテルの遠位端に沿って位置決めされた超音波トランスデューサを含む。超音波トランスデューサは、1回または複数回の治療用量(ドース)の非集束超音波エネルギを放出し、これが、当該トランスデューサが配置されている体腔に隣接する組織を加熱する。このような非集束超音波エネルギは、例えば、体腔の内層や体腔外の意図しない器官などの非標的組織を損傷することなく、体腔の周囲の標的神経を切除(アブレート)し得る。当該システムは、カテーテルの遠位端に取り付けられたバルーンを含み得て、当該バルーンは、冷却流体が当該バルーンに送達される時に血管を冷却するように設計される。このような設計が、血管の周囲の異なる位置での長期の神経不活化を達成するのに十分な1または複数の切除(アブレーション)ゾーンの生成を可能にする。
【0006】
超音波トランスデューサは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の円筒形の圧電材料の両側に配置された第1及び第2電極を含み得る。トランスデューサにエネルギを与えるには、圧電材料を共振させるように選択された周波数で、第1電極と第2電極との間に電圧が印加される。これによって、トランスデューサから半径方向外側に放出される振動エネルギが生成される。トランスデューサは、周囲の非標的組織への損傷を抑制するために、略均一で予測可能な放射プロファイルを提供するように設計される。更に、体腔の内壁の加熱を軽減するために、トランスデューサの起動(作動)前、起動(作動)中、起動(作動)後の両方(全て)で、冷却流体がバルーンを通して循環される。この態様では、冷却ゾーン内の組織によって達成されるピーク温度は、冷却ゾーンの外側に位置する組織よりも低いままである。
【0007】
流体を介して超音波トランスデューサの電極間で発生し得る電気的短絡を抑制することが望ましい。このような電気的短絡を抑制する1つの方法は、十分に低い導電率を有する脱イオン水などの非導電性冷却流体をバルーン内に使用することである。もっとも、バルーン内で使用される冷却流体のタイプの選択をより柔軟にすることは、望ましい。付加的に、バルーン無しで超音波トランスデューサを使用することが望ましい場合があり、この場合、超音波トランスデューサは、導電性の血液が流れる体腔に直接的に挿入され得る。このような処置において、導電性の血液を介した超音波トランスデューサの電極間の電気的短絡を抑制することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本明細書には、様々な超音波トランスデューサが開示される。そのようなトランスデューサの電極の一方のみが、電気絶縁体によって覆われて、導電性流体(例えば、バルーン内の冷却流体であり得る、あるいは、導電性の血液が流れる体腔内にトランスデューサが直接的に挿入される場合の血液であり得る)を介した超音波トランスデューサの電極間の電気的短絡が抑制される。このような超音波トランスデューサは、本明細書では、選択的に絶縁されたトランスデューサ、または、部分的に絶縁されたトランスデューサ、と称され得る。あるいは、より簡潔に、(単に)トランスデューサと称され得る。選択的に絶縁されたトランスデューサを有する超音波ベースの組織治療装置及びシステムも、本明細書に開示される。当該システムは、カテーテルベースであり、選択的に絶縁されたトランスデューサを血管(例えば腎動脈)などの適切な体腔内に配置するように、管腔内(例えば血管内)に送達され得る。選択的に絶縁されたトランスデューサは、標的解剖学的領域内の組織を神経調節するように、非集束超音波エネルギを半径方向外側に送達するように起動され得て、これにより、症状、例えば高血圧症、を治療し得る。更に、選択的に絶縁されたトランスデューサは、治療前及び治療中に冷却流体で満たされるバルーン内に配置され得る。当該冷却流体は、使用中に、超音波トランスデューサ及び周囲の組織から熱を逃がすように作用し得る。このような実施形態では、冷却流体は導電性であり得る。
【0009】
本発明技術の特定の実施形態によれば、超音波トランスデューサは、互いから離間して配置されて互いに交差しない第1面及び第2面を有する圧電トランスデューサ本体を備える。当該超音波トランスデューサは、また、前記第1面上に配置された第1電極と、前記第2面上に配置された第2電極と、前記第1電極を直接的または間接的に覆う電気絶縁体と、を備える。前記第2電極は、電気絶縁体によって覆われておらず、それによって、当該超音波トランスデューサが導電性流体内に配置される時、前記導電性流体と接触するように構成されている。
【0010】
本発明技術の特定の実施形態によれば、前記電気絶縁体は、前記第1電極を覆っており、当該超音波トランスデューサが導電性流体内に配置される時に前記第1電極が当該導電性流体と接触するのを抑制し、それによって当該超音波トランスデューサが前記導電性流体内に配置される時に前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導を抑制する、ように構成されている。このような実施形態において、前記第2電極は、電気絶縁体によって覆われていない。前記第2電極が電気絶縁体によって覆われていないことにより、当該超音波トランスデューサが前記導電性流体内に配置される時、前記第2電極は前記導電性流体と接触することになる。
【0011】
本発明技術の特定の実施形態によれば、前記圧電トランスデューサ本体は、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が印加(適用)されることに応答して、超音波を生成するように構成されている。これは、前記第1電極と前記第2電極との間の電圧の印加とも称され得る。このような実施形態において、前記第1電極を覆う前記電気絶縁体は、当該超音波トランスデューサが前記導電性流体内に配置されて前記第1電極と前記第2電極との間に前記電圧が印加される時に、前記第1電極と前記第2電極との間で短絡が生じることを抑制する、好適には防止する、ように構成されている。
【0012】
本発明技術の特定の実施形態によれば、前記圧電トランスデューサ本体は、内面及び外面を有する圧電材料の中空管を有しており、前記内面は、前記圧電トランスデューサ本体の前記第1面及び前記第2面のうちの一方であり、前記外面は、前記圧電トランスデューサ本体の前記第1面及び前記第2面のうちの他方である。特定のこのような実施形態において、前記第1電極は、前記圧電材料の前記中空管の前記内面及び前記外面のうちの一方上に配置され、前記第2電極は、前記圧電材料の前記中空管の前記内面及び前記外面のうちの他方上に配置される。本発明技術の特定の実施形態によれば、前記圧電材料の前記中空管は、円筒形状であり、円形の放射方向断面を有する。別の特定の実施形態では、前記圧電材料の前記中空管は、円形断面を有する円筒形以外の他の形状を有し得る。前記圧電材料の前記中空管、より一般的には前記圧電トランスデューサ本体、の他の断面形状は、長円形または楕円形断面、正方形または長方形断面、五角形断面、六角形断面、七角形断面、八角形断面、などを含むが、これらに限定されない。更に他の実施形態では、前記圧電トランスデューサ本体は中空ではなく、例えば、前記圧電トランスデューサ本体は、全体的に中実の長方形形状、または、何らかの他の中実の形状、を有し得る。例えば、前記圧電トランスデューサ本体は、中実の圧電トランスデューサ本体であり得る。
【0013】
本発明技術の特定の実施形態によれば、前記圧電トランスデューサ本体は、8.5~9.5MHzの周波数範囲内の音響エネルギを送達するように構成される。本発明技術の特定の実施形態によれば、前記圧電トランスデューサ本体は、10~80ワットの範囲内の入力電力に応答して、5~45ワットの範囲内の音響出力パワーを生成するように構成される。
【0014】
本発明技術の特定の実施形態によれば、前記第1電極を覆う前記電気絶縁体は、前記超音波トランスデューサが前記導電性流体内に位置決めされる時、前記第1電極が前記導電性流体と接触することを抑制する(好ましくは防止する)。このような実施形態では、電気絶縁体が前記第2電極を覆っておらず、前記超音波トランスデューサが前記導電性流体内に位置決めされる時、前記第2電極は前記導電性流体と接触することになる。換言すれば、前記第1電極及び前記第2電極のうちの一方のみが、電気絶縁体によって覆われている。
【0015】
一実施形態では、前記導電性流体は、血液、生理食塩水、非純水、または、乳酸ナトリウム溶液、のうちの1つを含む。従って、当該実施形態では、前記導電性流体は、血液、生理食塩水、非純水、乳酸ナトリウム溶液、及び、それらの組み合わせ、からなる群から選択される。
【0016】
一実施形態では、前記第1電極は、主要な周面と、長手方向端と、を含んでいる。このような実施形態では、前記電気絶縁体の一部が、前記第1電極の前記主要周面を覆っており、第1タイプの電気絶縁材料で作られている。当該実施形態では、前記電気絶縁体の別の一部または残部が、前記第1電極の前記長手方向端を覆っており、前記第1タイプの電気絶縁材料で作られている、あるいは、第2の異なるタイプの電気絶縁材料で作られている。
【0017】
本発明技術の特定の実施形態によれば、当該超音波トランスデューサは、前記導電性流体で少なくとも部分的に充填されるバルーン内に配置されるように構成されており、前記バルーンは、体腔の一部を冷却するために使用されるものであり、その内部に当該超音波トランスデューサが位置決めされ得る。当該冷却流体は、また、前記バルーン内に位置決めされる前記トランスデューサを冷却するために使用され得る。特定のこのような実施形態において、前記バルーンを少なくとも部分的に充填する前記導電性流体は、生理食塩水、非純水、または、乳酸ナトリウム溶液、のうちの少なくとも1つを含む。従って、このような実施形態において、前記導電性流体は、生理食塩水、非純水、乳酸ナトリウム溶液、及び、それらの組み合わせ、からなる群から選択される。他の導電性流体の使用も可能であり、本明細書に記載の実施形態の範囲内である。
【0018】
バルーン無し実施形態と称され得る本発明技術の特定の実施形態によれば、当該超音波トランスデューサは、その内部に当該超音波トランスデューサが位置決めされ得る体腔を通って流れる血液に直接的にさらされるように構成される。このような実施形態では、前記導電性流体は、血液を含むか、あるいは、血液である。
【0019】
本発明技術の特定の実施形態によれば、前記電気絶縁体は、パリレンを含む。代替的または付加的な材料が、前記電気絶縁体を提供するために使用され得る。それらは、例えば、シアノアセテート、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、合成ダイヤモンドコーティング、または、これらの組み合わせ、を含むが、これらに限定されない。例えば、一実施形態において、前記電気絶縁体は、前記第1電極の外周上に配置されて当該外周を覆うパリレンと、前記第1電極の長手方向端上に配置されて当該長手方向端を覆うエポキシ樹脂と、を含む。別の実施形態では、前記電気絶縁体は、パリレンからなる。
【0020】
一実施形態では、当該超音波トランスデューサは、前記第1電極に接触して前記第1電極に電力を提供するように構成されたケーブルを更に備える。
当該実施形態では、前記電気絶縁体は、前記第1電極の周面と、前記ケーブルと前記第1電極との間の接触部と、の両方を覆う。
【0021】
ある特定の実施形態では、前記電気絶縁体は、前記第1電極上に配置された第1絶縁体と、前記接触部上に配置され、前記第1絶縁体と同一または異なる第2絶縁体と、を含む。
【0022】
超音波トランスデューサの前述の実施形態は、組み合わせられ得る。
【0023】
本発明技術の特定の実施形態は、冷却流体を受容するように構成されたバルーンと、前記バルーン内に配置された超音波トランスデューサと、を備えた装置に向けられている。
特定のこのような実施形態において、前記超音波トランスデューサは、内面及び外面を有する圧電材料の中空管を有する。第1電極が、前記圧電材料の前記中空管の前記内面及び前記外面のうちの一方上に配置されている。第2電極が、前記圧電材料の前記中空管の前記内面及び前記外面のうちの他方上に配置されている。電気絶縁体が、前記第1電極を覆っており、前記第1電極が前記バルーンによって受容される前記冷却流体と接触するのを抑制する、ように構成されている。従って、当該実施形態では、前記電気絶縁体が、前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導を抑制するように構成されている。
【0024】
一実施形態では、前記圧電材料の前記中空管は、圧電材料の円筒形状の中空管である。
【0025】
一実施形態では、前記導電性冷却流体は、生理食塩水、非純水、または、乳酸ナトリウム溶液、のうちの少なくとも1つを含み得るが、それらに限定されない。従って、一実施形態において、前記導電性冷却流体は、生理食塩水、非純水、乳酸ナトリウム溶液、及び、それらの組み合わせ、からなる群から選択される。
【0026】
特定の実施形態では、前記第1電極(前記電気絶縁体によって覆われている)は、前記圧電材料の前記中空管の前記外面上に配置される。別の実施形態では、前記第1電極(前記電気絶縁体によって覆われている)は、前記圧電材料の前記中空管の前記内面上に配置される。特定のこのような実施形態では、前記第2電極は、電気絶縁体によって覆われておらず、前記バルーンによって受容される前記冷却流体と接触することになる。
【0027】
本発明技術の特定の実施形態によれば、当該装置は、更に、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加してそれによって前記超音波トランスデューサに超音波を生成させるように構成されたコントローラを備える。このような実施形態では、前記電気絶縁体は、前記バルーン内に受容された前記冷却流体が導電性冷却流体であって前記第1電極と前記第2電極との間に前記コントローラによって前記電圧が印加される時に、前記第1電極と前記第2電極との間で短絡が生じることを抑制する(好適には防止する)。幾つかのこのような実施形態では、前記第1電極は、外側電極である。他の実施形態では、前記第1電極は、内側電極である。
【0028】
一実施形態では、前記電気絶縁体は、以下のうちの1または複数を含む:パリレン、シアノアセテート、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、及び、合成ダイヤモンドコーティング。
【0029】
本発明技術の特定の実施形態によれば、方法は、互いから離間して配置されて互いに交差しない第1面及び第2面を有し、第1電極が前記第1面上に配置されており、第2電極が前記第2面上に配置されている、超音波トランスデューサを提供する工程を備える。当該方法は、また、前記第1電極及び前記第2電極のうちの一方のみを電気絶縁体で覆う工程と、前記超音波トランスデューサを、前記第2電極とは接触する一方で前記第1電極を覆う前記電気絶縁体によって前記第1電極とは接触することが抑制される導電性流体にさらす工程と、を備える。付加的に、前記超音波トランスデューサが前記導電性流体にさらされている間に、当該方法は、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して、前記超音波トランスデューサに超音波を生成させる工程を備える。当該方法は、更に、前記電気絶縁体を利用して、前記超音波トランスデューサが前記導電性流体にさらされていて前記第1電極と前記第2電極との間に前記電圧が印加される間に、前記第1電極と前記第2電極との間で短絡が生じることを抑制する工程を備える。前述の導電性流体は、生理食塩水、非純水、または、乳酸ナトリウム溶液、のうちの少なくとも1つを含み得るが、それらに限定されない。前述の導電性流体は、代替的に、体腔を通って流れる血液であり得る。
【0030】
特定の実施形態によれば、当該方法は、前記超音波トランスデューサを、バルーンの内部に配置する工程を更に備える。このような実施形態では、前記超音波トランスデューサを前記導電性流体にさらす工程は、前記バルーンを前記導電性流体で少なくとも部分的に充填する工程を含む。そのような方法は、また、前記超音波トランスデューサを内部に含んだ前記バルーンを、体腔内に挿入する工程を備え得る。このような実施形態では、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して前記超音波トランスデューサに超音波を生成させる工程は、前記バルーンが前記体腔内にある間に行われる。
【0031】
バルーン無し実施形態と称され得る代替的な実施形態によれば、当該方法は、前記超音波トランスデューサを、血液が流れる体腔内に挿入して、前記超音波トランスデューサが当該血液と接触するようにする工程を更に備える。このような実施形態では、前記導電性流体は、前記血液を含み、前記超音波トランスデューサを前記導電性流体にさらす工程は、前記超音波トランスデューサを前記血液にさらす工程を含む。
【0032】
本発明技術の特定の原理によれば、選択的に絶縁されたトランスデューサと共に、導電性冷却流体、例えば生理食塩水または乳酸ナトリウム溶液、が使用され得る。生理食塩水及び乳酸ナトリウム溶液は、病院や他の治療センターで容易に入手できるため、本発明技術のシステムを外科手術環境に組み込むことの容易性を高め得る。従って、選択的に絶縁されたトランスデューサは、当該絶縁されたトランスデューサの内側電極または外側電極の一方を覆う電気絶縁体を含み得て、このことが、バルーン内の導電性流体を介したトランスデューサの電極間の短絡を抑制する。具体的には、電気絶縁体が不在の場合、バルーンが導電性流体で満たされると、内側電極と外側電極との間の電圧の印加が電気的短絡を引き起こし得て、これは、トランスデューサの超音波材料が所望の出力電力の超音波を生成することを抑制してしまう。
【0033】
この概要は、本発明技術の実施形態の完全な説明であることは意図されていない。本発明技術の実施形態の他の特徴及び利点が、添付の図面及び特許請求の範囲と併せて、好適な実施形態が詳細に規定されている以下の説明から明らかになるであろう。
【0034】
本開示の様々な特徴及びそれらを達成する態様が、以下の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面を参照してより詳細に説明される。参照符号が、参照される項目間の対応を示すべく、適当な場合に再利用される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明技術の特定の実施形態による、超音波ベースの組織治療システムの選択された構成要素(コンポーネント)を示す。
【0036】
【
図2A】
図2Aは、
図1に示された超音波ベースの組織治療システムの選択された構成要素の側面図を示す。
【0037】
【
図2B】
図2Bは、本明細書で提供される様々な形態に従って体腔内に挿入される超音波ベースの組織治療システムの追加の選択された構成要素の斜視図を示す。
【0038】
【
図2C】
図2Cは、本発明技術の一実施形態による、超音波ベースの組織治療システムのカテーテルの遠位部分の長手方向断面図を示す。
【0039】
【0040】
【0041】
【
図3B】
図3Bは、
図2CのB-B線に沿ったカテーテルの超音波トランスデューサの一部を横切る断面図を示す。
【0042】
【
図4A】
図4Aは、本発明技術の特定の実施形態による、選択的に絶縁されたトランスデューサを含む超音波ベースの組織治療システムのカテーテルの遠位部分の側面図である。
【0043】
【
図4B】
図4Bは、本発明技術の特定の実施形態による、選択的に絶縁されたトランスデューサの斜視図である。圧電トランスデューサの外側電極が、電気絶縁体によって覆われている。
【0044】
【0045】
【0046】
【
図5A】
図5Aは、本発明技術の別の実施形態による、選択的に絶縁されたトランスデューサの縦断面図を示す。圧電トランスデューサの内側電極が、電気絶縁体によって覆われている。
【0047】
【
図5B】
図5Bは、
図5Aに示された選択的に絶縁されたトランスデューサの径方向断面図である。圧電トランスデューサの内側電極が、電気絶縁体によって覆われている。
【0048】
【
図6A】
図6Aは、トランスデューサの縦断面図を示す。圧電トランスデューサの内側電極及び外側電極の両方が、電気絶縁体によって覆われている。
【0049】
【
図6B】
図6Bは、
図6Aに示されたトランスデューサの径方向断面図を示す。圧電トランスデューサの内側電極及び外側電極の両方が、電気絶縁体によって覆われている。
【0050】
【
図7】
図7は、圧電トランスデューサの入力電力対音響出力電力のグラフであり、様々な異なる電極またはそれらの組み合わせを絶縁することがトランスデューサの性能にどのように影響を与えるか、を示す。
【0051】
【
図8A】
図8Aは、圧電トランスデューサの代替的な形態の斜視図を示しており、トランスデューサ本体は長方形であり、トランスデューサの電極は平面状である。
【0052】
【0053】
【
図9】
図9は、本発明技術の別の実施形態による選択的に絶縁されたトランスデューサの断面図を示す。
【0054】
【
図10】
図10は、本発明技術の更に別の実施形態による選択的に絶縁されたトランスデューサの断面図を示す。
【0055】
【
図11】
図11は、本発明技術の様々な実施形態による方法を要約するために使用される高レベルのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
音響ベースの組織治療トランスデューサ、装置、システムが、本明細書で提供される。好ましくは、当該システムは、カテーテルベースであり、対象(被験者)の標的解剖学的領域内、例えば血管などの適切な体腔内、にトランスデューサを配置するべく、管腔内(例えば血管内)に送達され得る。標的解剖学的領域内に適切に位置決めされると、トランスデューサは、非集束(焦点の合っていない)超音波エネルギを径方向外側に送達するように起動され得て、標的解剖学的領域内の組織を適切に加熱して治療し得る。トランスデューサは、標的組織の治療に適した周波数、時間及びエネルギレベルで起動され得る。1つの非限定的な例では、トランスデューサによって生成される非集束超音波エネルギは、対象(被験者)の神経組織を標的とする(選択する)ことができ、当該神経組織を神経調節(ニューロモデュレート)する(例えば、完全にまたは部分的に切除する、壊死させる、または刺激する)態様でそのような組織を加熱し得る。前述のWarnking特許、Schaer特許及びTaylor特許に記載されているような態様で、腎神経の神経調節が使用され得て、様々な状態、例えば、高血圧、慢性腎臓病、心房細動、不整脈、心不全、慢性腎臓病、末期腎不全、心筋梗塞、不安症、造影剤腎症、糖尿病、代謝異常、インスリン抵抗性など、を治療し得る。もっとも、トランスデューサは、他の神経及び症状、例えば、糖尿病を治療するのに重要な血糖値に関与する肝動脈内の肝神経叢の交感神経、または、任意の適切な組織、例えば異常な心拍リズムを引き起こす心臓組織、を治療するために適切に使用され得て、腎神経組織の治療(例えば神経調節)での使用に限定されない、ということが理解されるべきである。
【0057】
管腔内システムでは、治療前及び治療中に冷却流体で満たされるバルーン内に超音波トランスデューサが配置され得る。代替的に、超音波トランスデューサは、バルーン無し(バルーンレス)実施形態と呼ばれ得る態様において、周囲のバルーン無しで、血流に直接的にさらされ得る(曝露され得る)。
【0058】
[システムの構成要素と機能の概要]
図1、
図2A及び
図2Bは、本明細書で提供される様々な形態による超音波ベースの組織治療システム100の特徴を示している。最初に
図1を参照して、システム100は、カテーテル102、コントローラ120、及び、接続ケーブル140、を含むものとして示されている。特定の実施形態では、システム100は、更に、バルーン112内の超音波トランスデューサ111、リザーバ110、カートリッジ130、及び、手持ち式リモコンなどの制御機構、を含む。「バルーン無し」実施形態と称され得る特定の実施形態では、システム100はバルーン112を含まない。このようなバルーン無しの特定の実施形態では、システム100は、リザーバ110及びカートリッジ130も含まない。バルーン無しの他の特定の実施形態では、システム100は、リザーバ110及び/またはカートリッジ130を含む。
【0059】
図1に示される実施形態では、コントローラ120は、カートリッジ130及び接続ケーブル140を介してカテーテル102に接続されるものとして示されている。特定の実施形態では、コントローラ120は、バルーン112を選択的に膨張及び収縮させるために、カテーテル102に冷却流体を提供するように、カートリッジ130とインタフェース(相互接続)している。バルーン112は、例えば、ナイロン、ポリイミドフィルム、熱可塑性エラストマー(商標PEBAX(登録商標)で販売されているものなど)、医療グレードの熱可塑性ポリウレタンエラストマー(商標PELLETHANE(登録商標)で販売されているものなど)、ペレタン、イソタン、他の適切なポリマー、または、それらの任意の組み合わせ、から製造され得るが、これらに限定されない。
【0060】
ここで
図2Aを参照して、カテーテル102は、遠位部分210及び近位部分220を含む。カテーテル102は、カテーテルシャフト214を含み、当該カテーテルシャフト214は、それを通って延在する1または複数のルーメン(管腔)を含み得る。一例として、カテーテルシャフト214は、ガイドワイヤを受け入れるような形状とされ、サイズとされ、及び、他の態様で構成された、ガイドワイヤルーメン225を含む。例えば腎臓の除神経に適した特定の実施形態では、カテーテル102は、直径が約6フレンチ、長さが約85cmであり得る。カテーテル102の近位部分220は、1または複数のコネクタまたはカップリングを含み得る。例えば、近位部分220は、1または複数の電気カップリング232を含み得る。カテーテル102は、電気カップリング232を接続ケーブル140に接続することによって、コントローラ120に結合され得る。接続ケーブル140は、処置中に複数のカテーテルの使用を許容するために、コントローラ120及び/またはカテーテル102上のポートを介して、コントローラ120及び/またはカテーテル102に取り外し可能に接続され得る。特定の実施形態において、例えば、処置中に1つのカテーテル102のみが使用される必要がある場合、接続ケーブル140はコントローラ120に永久的に接続され得る。
【0061】
特定の実施形態では、カテーテル102の近位部分220は、更に、1または複数の流体ポート、例えば、流体入口ポート234a及び流体出口ポート234b、を含み得る。これらのポートを介して、拡張可能部材(例えば、バルーン112)が、リザーバ110(
図1に示す)に流体的に接続され得る。当該リザーバ110は、冷却流体を供給する。リザーバ110は、任意選択的に、コントローラ120内に含まれてもよいし、
図1に示すようにコントローラ120の外側ハウジングに取り付けられてもよいし、あるいは、別個に提供されてもよい。他の実施形態では、流体入口ポート234a及び流体出口ポート234b、バルーン112、並びに、リザーバ110は、全て(いずれも)、システム100において存在しなくてもよい。他の変形例も可能であって、本明細書に記載の実施形態の範囲内である。
【0062】
図2Bは、カテーテル102の選択された構成要素、例えば、対象(被験者)の体腔BL内に挿入され得る遠位部分210の構成要素、の斜視図を示す。
図2Bにおいて、体腔BLは、血管(例えば、腎動脈)であり、当該血管の外層(例えば、外膜層)に複数の神経Nを有する。
図2Bに示されるように、遠位部分210は、超音波トランスデューサ111、冷却流体213で満たされたバルーン112、カテーテルシャフト214、及び/または、ガイドワイヤ216を受け入れるように構成されたガイドワイヤ支持先端部215、を含み得る。
【0063】
トランスデューサ111は、バルーン112内に部分的または完全に配置され得る。バルーン112は、体腔BLの内面(例えば、内膜)に接触するように冷却流体213で膨張され得る。特定の実施形態では、バルーン112が体腔BLを完全に閉塞する時、トランスデューサ111が音響信号を出力するために使用され得る。バルーン112は、体腔BL内でトランスデューサ111を中心付け得る。例えば腎臓の除神経に適した特定の実施形態では、バルーン112は、冷却流体213を使用して約1.4~2気圧(atm)の作動圧力で処置中の患者の体腔BLに挿入されながら、膨張される。バルーン112は、コンプライアント、セミコンプライアント、またはノンコンプライアントの医療用バルーンであり得るか、または、それらを含み得る。バルーン112は、体腔BLに挿入可能なサイズとなっており、例えば、腎動脈に挿入する場合、バルーン112は、3.5mm、4.2mm、5mm、6mm、7mm、8mm等の外径を含む利用可能なサイズから選択され得るが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、
図2Bに示されるように、コントローラ120の制御下で冷却流体213で満たされて膨張される時、バルーン112の外壁は、トランスデューサ111の外面とほぼ平行になり得る。任意選択的に、バルーン112は、体腔BLと並置状態になるように十分に膨張され得る。例えば、バルーン112は、膨張される時、体腔BLの内壁に少なくとも部分的に接触し得て、体腔BLの内壁と並置状態になり得る。他の形態では、バルーン112は、拡張時に体腔BLに接触しないように構成される。付加的または代替的に、バルーン112は、指定された流量で冷却流体をバルーン112に押し込んだりバルーン112から引き抜いたりすることによって、指定されたサイズに維持され得る。バルーン無しの実施形態では、トランスデューサ111はバルーン内に配置されない。
【0064】
図2Cは、カテーテル102の遠位部分210の長手方向断面図を示す。
図3A1は、一実施形態による、
図2CのA-A線に沿ったカテーテルシャフト214の断面図を示す。
図3A2は、別の実施形態による、
図2CのA-A線に沿ったカテーテルシャフト214の断面図を示す。
図3Bは、一実施形態による、
図2CのB-B線に沿った超音波トランスデューサ111の断面図を示す。特定の実施形態では、カテーテルシャフト214は、直径約1.8mmであり得る。カテーテルシャフト214は、1または複数の内腔を含み、それらは、
図3A1及び
図3A2を参照して以下で更に詳細に説明されるように、流体導管、電気ケーブル通路、ガイドワイヤ内腔、等として使用され得る。例えば腎臓の除神経に適した特定の実施形態では、ガイドワイヤ216は、約0.36mmの直径と約180cm~約300cmの長さとを有し、2.06mmの最小内径と約80cm未満の長さとを有する7フレンチガイドカテーテルを使用して送達される。特定の実施形態では、ガイドワイヤ216を送達するために、6フレンチガイドカテーテルが使用される。特定の実施形態では、ガイドカテーテルは、約55cmの長さを有する。特定の実施形態では、ガイドカテーテルは、約85cmの長さを有し、血栓塞栓症のリスクを低減するべくガイドカテーテルの継続的な灌注を許容するように止血弁がガイドカテーテルのハブに取り付けられる。
【0065】
再び
図2Cを参照して、超音波トランスデューサ111は、圧電材料(例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)など)で作られた円筒形状の中空管201を含み得て、当該円筒管201の内面及び外面上に、それぞれ、内側電極202及び外側電極203が配置されている。このような圧電材料の円筒形状の中空管は、圧電トランスデューサ本体201の一例であり、従って圧電トランスデューサ本体201と称され得る。以下に更に詳細に説明されるように、圧電トランスデューサ本体は、他の様々な形状を有し得て、中空である必要はない。例えば腎臓の除神経に適した特定の実施形態では、圧電トランスデューサ本体201を構成する圧電材料は、ネイビーIII圧電材料としても知られるチタン酸ジルコン酸鉛8(PZT8)である。生のPZTトランスデューサは、圧電トランスデューサ本体(例えば、201)の表面(例えば、内面及び外面)上に電極を生成するために、銅、ニッケル及び/または金の層でメッキ処理され得る。内側電極202及び外側電極203間への電圧及び交流の印加が、圧電材料をして、円筒管201の長手方向に対する横方向に振動させ、半径方向に(放射状に)超音波を放射させる。
図2Cの超音波トランスデューサ111は、バルーンによって取り囲まれたものとして示されていないが、例えば
図2Bに示されるように、超音波トランスデューサ111はバルーン(例えば112)内に位置決めされ得ることが、留意される。
【0066】
図2Cに示されるように、超音波トランスデューサ111は、一般に、裏当て部材またはポスト218を介して支持される。特定の実施形態では、裏当て部材218は、ニッケル及び金でコーティングされたステンレス鋼を含み、ニッケルは、ステンレス鋼と金メッキとの間の結合材料として使用される。例えば腎臓の除神経に適した特定の実施形態では、トランスデューサ111の外径は約1.5mmであり、トランスデューサ111の内径は約1mmであり、トランスデューサ111は約6mmの長さを有する。他の内径、外径及び長さ、より一般的には寸法及び形状、を有するトランスデューサも本明細書に記載の実施形態の範囲内である。更に、各図の図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、しばしば一定の縮尺では描かれていないことが、留意される。
【0067】
図2Cに示されるように、裏当て部材218は、カテーテルシャフト214の遠位部分210から遠位先端215まで延在し得る。例えば、裏当て部材218の遠位端は、先端215における隣接開口内に位置決めされ得て、裏当て部材218の近位端は、電気ケーブル282を介してカテーテルシャフト214の遠位部分210に移動可能に結合され得る。他の実施形態では、カテーテルシャフト214の遠位端と超音波トランスデューサ111の近位端との間に間隙(例えば、
図2Cにおいて符号Dで示される)が存在する。
【0068】
内側電極202及び外側電極203の両方に沿った液体冷却を許容するために、裏当て部材218は、1または複数のスタンドオフアセンブリ230a及び230bを含み得る。スタンドオフアセンブリ230a、230bは、それを通って冷却流体213が裏当て部材218と内側電極202との間のトランスデューサ111(以下に説明される特定の実施形態に従って選択的に絶縁され得る)の空間に入ることができる、1または複数の環状開口部を画定し得る。従って、裏当て部材218は、バルーン112内を循環される冷却流体213と、ガイドワイヤ216を受け入れる裏当て部材218の内腔と、の間の流体バリヤとして機能し得る。例えば、
図2Cに概略的に示されるように、裏当て部材218のスタンドオフアセンブリ230a、230bは、超音波トランスデューサ111の各長手方向端部に沿って、またはそれに隣接して、位置決めされ得て(主ポスト本体289によって分離されている)、超音波トランスデューサ111の円筒管201を裏当て部材218に結合し得る。
図3Bを参照して、スタンドオフアセンブリ230(230aまたは230b)は、トランスデューサ111の内部電極202と係合する複数のラグ、リブ、または取り付け点334、を有し得る。特定の実施形態では、取り付け点334は、トランスデューサ111の内部電極202にはんだ付けされる。リブ334の数、寸法、及び配置は、所望または必要に応じて、変更され得る。例えば、
図3Bに示されるように、合計3つのリブ334が、互いから120°の角度で略等間隔に配置され得て、開口部336を画定し得る。当該開口部336を通って、冷却流体または血液が、円筒管201の内面に沿って配置された内部電極2と裏当て部材218との間の円筒管201の内部空間に入ることができる。特定の実施形態では、スタンドオフアセンブリ230a及び230bの最大外径は、約1mmであり、主ポスト本体289の外径は、約0.76mmであり、裏当て部材218の内径は、約0.56mmである。
【0069】
特定の実施形態によれば、スタンドオフアセンブリ230a、230bは、超音波トランスデューサ111の内部電極202を裏当て部材218に電気的に結合するために、導電性である。電気ケーブル282の1または複数の導体が、裏当て部材218に電気的に結合され得る。従って、コントローラ120が起動される時、電流が電気ケーブル282から裏当て部材218及びスタンドオフアセンブリ230a、230bを介して超音波トランスデューサ111の内部電極202に送達され得て、これは、有利なことに、ケーブル282をトランスデューサ111の内部電極202に直接的に結合する必要性を排除する。他の実施形態では、裏当て部材218及びスタンドオフアセンブリ230a、230bは、1または複数の電気絶縁体材料で作られ、または、それらが導電性材料で作られる場合でも、1または複数の電気絶縁体材料でコーティングされる。
【0070】
更に、
図2Cに示されるように、裏当て部材218は、ガイドワイヤ216(
図2Bに示される)と裏当て部材218との間の電気伝導の可能性を防止または低減するために、その内面に沿って配置された絶縁管219を有し得る。これは、そのような電気伝導が所望されない実施形態で使用される。絶縁管219は、電気絶縁体とも称され得る非導電性材料(例えば、ポリイミドなどのポリマー)で形成され得る。
図2Cに示されるように、絶縁管219は、カテーテルシャフト214からトランスデューサ111内の裏当て部材218の内腔を通って先端215まで延在し得る。この態様では、トランスデューサ111は、カテーテルシャフト214の遠位端から遠位方向にオフセットされる。
【0071】
図2Cに示されるように、カテーテル102は、カテーテル102の遠位端からカテーテル102内で近位方向に延在するボア277を含み得る。当該ボア277は、裏当て部材218の少なくとも一部を受け入れるようなサイズ及び形状であり、それによって、絶縁管219及び/または超音波トランスデューサ111を電気的に絶縁する。従って、治療される解剖学的領域へのカテーテル102の送達中に、裏当て部材218、絶縁管219及び/または超音波トランスデューサ111は、例えば電気ケーブル282を後退させることにより、カテーテル102のボア227内で少なくとも部分的に後退され得て、それによって、カテーテル102が安全な態様で送達され得るように、カテーテル102に十分な剛性を与え得る。
【0072】
図3A1及び
図3A2に示されるように、カテーテルシャフト214は、流体導管、電気ケーブル通路、ガイドワイヤルーメン(管腔、内腔)、等として使用され得る、1または複数のルーメン(管腔、内腔)を含む。例えば、
図3A1及び
図3A2に示されるように、カテーテルシャフト214は、ガイドワイ216ヤを受け入れるような形状とされ、サイズとされ、及び、他の態様で構成された、ガイドワイヤルーメン325を含み得る。特定の実施形態では、
図3A1に示されるように、ガイドワイヤルーメン325は、カテーテルシャフト214内でトランスデューサ111を中心付けるために、カテーテルシャフト214の中心に位置している。代替的に、例えば
図3A2に示されるように、ガイドワイヤルーメン325は、カテーテルシャフト214の中心からオフセットされ得る。カテーテルシャフト214はまた、電気ケーブルを受け入れるためのケーブルルーメン326を含み得る。更に、カテーテルシャフト214は、冷却流体213(例えば、水、滅菌水、生理食塩水、5%デキストロース(D5W))や他の液体または気体等を、コントローラ120の制御下で、カテーテル102の近位部分220にある(患者の外部の)流体源、例えばリザーバ110、からバルーン112まで移送するための1または複数の流体ルーメン327、328を含み得る。組織の最初の約1ミリメートルの積極的な冷却は、血管壁、例えば腎動脈壁、の完全性を維持するために設計されている。
【0073】
カテーテル102は、所望または必要に応じて、単一の流体ルーメンのみを含み得るし、あるいは、2つ以上の流体ルーメン(例えば、3つ、4つ、5つ以上、等)を含み得る。
図3A1に示されるように、一実施形態では、流体ルーメン327及び328とケーブルルーメン326とは、全て、各ルーメン326,327及び328の周囲を最小化しながら面積を最大化することによって、流体流送達の効率を最大化して超音波トランスデューサ111の全体に流体を均一に分配するように構成された、腎臓形またはD形の断面を有する。特定の実施形態では、流体ルーメン327及び328及びケーブルルーメン326の各々は、例えば
図3A1に示されるように、実質的に対称であり、実質的に同一のサイズであり、実質的に同一の幾何学的形状であり、及び/または、実質的に交換可能である。カテーテル内の流体流量の変化は、遅れた治療や不完全な治療をもたらし得る。特定の実施形態では、カテーテルシャフト214は、約40mL/分の流体流量を可能にするように構成される。特定の実施形態では、カテーテルシャフト214は、約35~45mL/分の流体流量を可能にするように構成される。特定の実施形態では、カテーテルシャフト214は、約20~45mL/分の流体流量を可能にするように構成される。例えば、腎臓の除神経の処置中の半径方向(放射状)送達に適した特定の実施形態では、カテーテルシャフト214は、約10~20mL/分の流体流量を可能にするように構成される。1または複数のルーメンの各々(例えば、328)は、カテーテル102の近位部分220において患者の体外にある同一または別個の個別の流体源と流体連通し得る。
【0074】
別の例として、カテーテルシャフト214は、コントローラ120によって実行される指令(命令)に応答して、リザーバ110からバルーン112へ(またはバルーン無しの実施形態ではトランスデューサ111へ)冷却流体を移送するための、任意の適切な数の流体ルーメンを含み得る。特定のバルーン無し実施形態では、カテーテルシャフト214は流体ルーメン327、328を省略し得て、システム100はリザーバ110を省略し得る。特定のバルーン無し実施形態では、カテーテルシャフト214は流体ルーメン327、328を含み、システム100はリザーバ110を含む。
【0075】
特定の実施形態では、
図3A2に示されるように、ガイドワイヤルーメン325は、処置中のカテーテルの迅速な交換を可能にするために、カテーテルシャフト214の近位に配置され、及び/または、カテーテルシャフト214と壁を共有する。このような実施形態では、ケーブルルーメン326は、ガイドワイヤルーメン325の反対側に位置し、カテーテルシャフト214と壁を共有する。ケーブルルーメン326は、例えば、形状が三角形または長方形であり得て、流体ルーメン327及び328が利用可能な面積を最大化して流体ルーメン327及び328の周囲を最小化するように構成され得て、それによって、同一の圧力でより高い流量を可能にし得る。流体ルーメン327及び328は、流量を最適化し、カテーテル102の抗力を減少させるような形状とされ得る。このような実施形態では、流体ルーメン327及び328の面積は最大化されなくてもよいが、その代わりに、流体ルーメン327及び328の壁は、抗力を引き起こし得るポケットを避けるために丸められ得て、それによって、流体ルーメン327及び328内の冷却流体213の流量を最適化し得る。
【0076】
カテーテルシャフト214は、少なくともケーブルルーメン326内に、超音波トランスデューサ111の内側電極202及び外側電極203をコントローラ120に結合する電気ケーブル282(例えば、同軸ケーブル、平行同軸ケーブル、シールドされた平行ペアケーブル、1または複数のワイヤ、または、1または複数の他の電気導体)を含み得る。これにより、コントローラ120は、そのような電極間に適切な電圧を印加し得て、トランスデューサ111の圧電材料をして、対象(被験者)に向けて超音波エネルギを放出させ得る。特定の実施形態では、ケーブルルーメン326は、電気ケーブル282(例えば、同軸ケーブル、ワイヤ、他の導電体など)を受け入れるような形状とされ、サイズとされ、及び、他の態様で構成される。電気ケーブル282は、音響エネルギを対象(被験者)に向けて放出するために、超音波トランスデューサ111の電極202、203が選択的に起動されることを許容し得る。より具体的には、電気ケーブル282は、カテーテル102からコントローラ120へ、及び/または、その逆の、作動周波数及び電力などのトランスデューサ情報の通信、並びに、処置中の超音波トランスデューサ111への電気エネルギの伝送、を許容し得る。
【0077】
カテーテル102の遠位部分210は、任意の適切な管腔内アクセス経路、例えば胃腸経路あるいは大腿ルートまたは橈骨ルート等の血管内経路を介して、標的の解剖学的位置(例えば体腔BL内の特定の位置)に経皮的に送達され得る。特定の実施形態では、コントローラ120は、カテーテル102の遠位部分210が標的の解剖学的位置に適切に位置決めされた後でのみ、バルーン112を冷却流体213で満たすように構成される。カテーテル102は、市販のガイドワイヤの助けを借りて、またはその助けを借りないで、体腔BLを通して送達され得る。例えば、カテーテル102及びバルーン112は、ガイドワイヤ216(
図2Bに示される)に沿って、腎臓ガイドカテーテルを通して、送達され得る。ガイドワイヤベースの超音波トランスデューサの送達の更なる例については、前述の参照により本明細書に組み込まれた米国特許第10,456,605号を参照されたい。もっとも、任意の適切な操縦可能なカテーテルもしくはシース、または、任意の他の適切な誘導装置もしくは方法が、カテーテル102の遠位部分210を対象(被験者)の解剖学的標的位置に送達するために使用され得る。体腔BL内の適切な位置に送達されると、バルーン112が(例えばコントローラ120の制御下で)冷却流体213で膨張され得て、トランスデューサ111が(例えばコントローラ120の制御下で内部電極202及び外部電極203間に電圧を印加することによって)起動され得て、非集束超音波エネルギを標的解剖学的位置に送達し得る。トランスデューサ111は、体腔BL内に挿入可能なサイズとされており、例えば、腎動脈に挿入する場合、トランスデューサ111は、2mm未満の外径、例えば約1.5mmの外径、を有し得て、1.8mm未満の内径、例えば約1mmの内径、を有し得る。以下でより詳細に説明されるように、トランスデューサ111の長さLは、任意選択的に、それが生成する超音波が標的体腔BLの壁に対して所望の領域内でのみ傷害(lesion)を生成させるのに適した近接場深さを有するように、選択され得る。
【0078】
図1、
図2A、
図2C、
図3A1及び
図3A2を参照して、特定の実施形態によれば、接続ケーブル140の近位端がコントローラ120に接続し、接続ケーブル140の遠位端がカテーテル102の近位部分の電気結合部232に接続する。電気ケーブル282は、カテーテルシャフト214のケーブルルーメン(例えば、
図3A1または
図3A2の326)を通って電気結合部232まで延び、それによって、トランスデューサ111を電気結合部232に電気的に結合している。接続ケーブル140をコントローラ120と電気結合部232との間で電気的に結合し、電気ケーブル282を電気結合部232とトランスデューサ111との間で電気的に結合することによって、コントローラ120はトランスデューサ111に電気的に結合され、それによって、トランスデューサ111に電力を供給し、及び、他の態様でトランスデューサ111を制御する。
【0079】
トランスデューサ111が適切に起動(作動)される周波数、電力、及び時間(期間)は、実行予定の治療に基づいて選択され得ることが理解されるであろう。例えば、周波数は、任意選択的に、1~20MHzの範囲であり、例えば、1~5MHz、5~10MHz、8.5~9.5MHz、10~15MHz、15~20MHz、または、8~10MHzであり、例えば、約9MHzである。あるいは、例えば、周波数は、任意選択的に、1MHz未満の範囲であり、例えば、0.1~0.2MHz、0.2~0.3MHz、0.3~0.4MHz、0.4~0.5MHz、0.5~0.6MHz、0.6~0.7MHz、0.7~0.8MHz、0.8~0.9MHz、または、0.9~1.0MHzである。あるいは、例えば、周波数は、任意選択的に、20MHzを超える範囲であり、例えば、20~25MHz、25~30MHz、または、30MHzを超える。任意選択的に、電力は、5~80Wの範囲(例えば、5~50W、5~10W、12.1~16.6W、10~20W、20~30W、30~40W、40~50W、50~60W、60~70W、70~80W、または、80Wを超え得る)であり得る。例えば、電力は、20~40Wであり得て、より小さい直径(例えば、3.5~5mm)を有するバルーンについては20~30Wであり得て、より大きな直径(例えば、5~8mm)を有するバルーンについては30~40Wであり得る。トランスデューサ111が起動(作動)される時間(期間)は、実行予定の特定の治療を完了するのに十分な時間であり得て、トランスデューサの電力、放出される超音波エネルギの周波数、治療される組織領域のサイズ、治療を受ける患者の年齢、体重及び性別、などの要因に依存し得る。例として、幾つかの形態では、トランスデューサ111が起動され得る時間は、約3秒~5分の範囲であり得て、例えば、3~10秒、3~30秒、30秒~1分、30秒~5分、1~3分、約2分、10秒~1分、1~2分、2~3分、3~4分、または、4~5分、であり得る。あるいは、例えば、トランスデューサ111は、10秒未満、例えば、0.1~10秒、1~2秒、2~3秒、3~4秒、4~5秒、5~6秒、6~7秒、7~8秒、8~9秒、または、9~10秒、起動され得る。あるいは、例えば、トランスデューサ111は、5分を超えて、例えば、5~6分、6~7分、7~8分、8~9分、9~10分、10~15分、15~20分、または、20分を超えて、起動され得る。
【0080】
様々な形態において、治療中の超音波エネルギの送達は、例えば、周波数、電力、デューティサイクル及び/または任意の他のパラメータのいかなる中断または変動も無い状態で、連続的または実質的に連続的であり得る。代替的に、周波数、電力、デューティサイクルまたは任意の他のパラメータのうちの1または複数が、治療中に修正され得る。例えば、幾つかの形態では、超音波エネルギの送達は、例えばオンとオフの間、あるいは、比較的高レベルと比較的低レベルの間、で調節されて、隣接する(例えば、標的または非標的の)組織の過熱の可能性を防止または低減する。このような調節の例については、Warnkingの米国特許第10,499,937号を参照されたい。その全内容は、当該参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
神経組織が治療対象である、例えば
図2Bに示される神経Nが治療対象である、例示的な形態では、トランスデューサ111(あるいは、411、511、811、911、1011、111等)は、当該神経組織に隣接する体腔BLの壁を通して(例えば体腔BLの壁を通して)超音波エネルギを送達するように位置決め及び構成され得る。1つの非限定的な例では、トランスデューサ111を使用して治療される腎神経が、腎動脈の内壁から約0.5mm~8mm(例えば、約1mm~6mm)に位置し得る。他の例では、治療される神経組織は、トランスデューサが配置される体腔の内壁から、約0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、6mm、6.5mm、7mm、7.5mm、8mm、0.5mm未満、または、8mm超、に位置し得る。コントローラ120の制御下で、トランスデューサ111(あるいは、411、511、811、911、1011、111等)は、任意の適切な神経組織を加熱する非集束超音波エネルギを生成し、そのような神経組織を少なくとも部分的に神経調節して、例えばそのような神経組織の完全または部分的な切除、壊死、または刺激をもたらす。トランスデューサ111(あるいは、411、511、811、911、1011、111等)によって生成される超音波エネルギは、体腔に対するそのような神経組織の半径方向の向きとは無関係に当該神経組織を標的とするように、半径方向外側に放射し得る。幾つかの形態では、非集束超音波エネルギは、トランスデューサ111(あるいは、411、511、811、911、1011、111等)の連続した周全体に沿って送達される。他の形態では、超音波エネルギは、トランスデューサ111(あるいは、411、511、811、911、1011、111等)の周囲に非連続的または断続的に放出される。神経組織、より具体的には腎神経は、超音波トランスデューサを使用して治療され得る組織の一例にすぎない、ということが理解されるべきである。超音波トランスデューサ11を用いて治療され得る標的解剖学的領域の他の例は、本明細書の他の箇所で説明される。
【0082】
トランスデューサが標的解剖学的領域に送達する音響エネルギの特定の形状または範囲とは無関係に、トランスデューサを取り囲むバルーン112内の冷却流体213は、対象(被験者)の特定の組織を保護し得る。例えば、冷却流体213は、治療中にエネルギが送達される体腔BLの壁に対する狭窄または他の損傷の可能性を防止または低減し得る。幾つかの形態では、冷却流体213は、トランスデューサ111(あるいは、411、511、811、911、1011、111等)の外面及び内面の一方または両方を横切るように流れ、例えば、トランスデューサの外面及び内面の一方または両方に直接的に接触し得る。以下により詳細に説明される特定の実施形態では、トランスデューサの電気絶縁体が、導電性冷却流体213を介しての、または血液を介しての、トランスデューサの電極間の電気的短絡を抑制する。本明細書で使用される場合、「短絡」、「短絡回路」、「電気的短絡」等の用語は、交換可能に用いられており、10,000オーム未満のインピーダンスを有する任意の導電経路を指す。従って、一対の電極間に「短絡」がある場合、これは、当該一対の電極間に10,000オーム未満のインピーダンスの導電経路が存在することを意味する。そのような導電経路は、導電性流体によって提供され得るが、これに限定されない。
【0083】
[選択的に絶縁されたトランスデューサ]
図2Bに戻って、特定の実施形態によれば、超音波トランスデューサ111は、部分的または完全にバルーン112内に配置される。前述のように、
図2Bの最初の議論(説明)では、バルーン112は、体腔BLの内面(例えば内膜)に接触するように、冷却流体213で膨張され得る。より具体的には、冷却流体213は、超音波トランスデューサ111の周囲を循環されて、治療の領域を積極的に冷却する。非導電性の冷却流体213の使用が、超音波トランスデューサ111の内部電極202と外部電極203との間の電気的絶縁を維持する。もっとも、医療従事者は、非導電性冷却流体213を備蓄しておいて、これを使用することを覚えておく必要がある。医療従事係者の便宜のために、本明細書に記載される特定の実施形態による超音波トランスデューサは、例えば生理食塩水(これに限定はされない)等の導電性流体によって取り囲まれる時でも、または、他の態様でそれにさらされる時でも、適切に動作するように設計される。以下の説明から理解されるように、そのような実施形態は、超音波トランスデューサ111の少なくとも一部を絶縁することによって実装される。血液等の導電性冷却流体と共に使用される時でも、または、他の態様で血液等の導電性流体にさらされる時でも、それが適切に動作できるように、超音波トランスデューサが部分的に絶縁されている場合、当該トランスデューサは、一般に、選択的に絶縁されたトランスデューサ、または、部分的に絶縁されたトランスデューサ、と呼ばれ(称され)得る。あるいは、より簡潔には、(単に)トランスデューサと呼ばれ得る。
【0084】
有益なことに、本明細書に開示される選択的に絶縁されたトランスデューサは、当該トランスデューサを冷却するために、導電性の冷却流体(例えば、213)の使用、及び/または、患者自身の血流の使用、を許容する。より具体的には、本明細書に開示される選択的に絶縁されたトランスデューサは、バルーン内にあるかまたは血液である導電性流体を介したトランスデューサの電極(例えば、202と203)間の短絡を抑制する(好ましくは防止する)少なくとも1つの電気絶縁体を含むように構成され得る。例として、本発明の絶縁されたトランスデューサは、バルーン内に配置され得て、内面及び外面を含む、圧電材料で作られた中空円筒管(例えば、201)を備え得る。例えば前述されたような特定の実施形態では、トランスデューサは円筒形である。内部電極(例えば、202)は、中空円筒管(例えば、201)の内面上に配置され得て、外部電極(例えば、203)は、中空円筒管(例えば、201)の外面上に配置され得る。外側電極または内側電極は、導電性流体を介した外側電極(例えば、203)と内側電極(例えば、202)との間の電気的短絡を抑制するために、当該電極を覆う電気絶縁体を有し得る。
【0085】
中空円筒管(例えば、201)を構成する圧電材料は、例えば当該技術分野で知られているような態様で、内側電極(例えば、202)と外側電極(例えば、203)との間に電圧を印加することによって、起動され得る。例えば、内側電極及び外側電極と電気的に通信する、適切にプログラムされたコントローラ(例えば、120)によって、起動され得る。本発明による電気絶縁体が不在の場合、バルーンが不在であれば、あるいは、バルーンが導電性流体で満たされれば、内側電極及び外側電極(例えば、202及び203)間に電圧を印加すると電気的短絡が引き起こされ得て、これは、圧電材料が超音波を発生するのを抑制し得る。本発明による電気絶縁体が不在の場合、そのような短絡は、代わりにバルーン内に非導電性流体、例えば適切に脱イオン化された水やデキストロース(ブドウ糖)、を使用することによっても、抑制され得る。それは、それ自体が、内部電極と外部電極との間の絶縁を提供し得る。しかしながら、そのような非導電性流体を外科手術環境内で使用することは、あまり便利ではない可能性がある。例えば、病院及び他の治療センターは、典型的には、手術病棟内に脱イオン水の供給源を維持していない。本明細書に記載される選択的に絶縁されたトランスデューサは、病院及び他の治療センターにおいて容易に利用可能な導電性流体がバルーン内で使用されることを許容し、これにより、本システムを外科的環境に組み込むことの容易性を高め得る。病院や他の治療センターで容易に入手可能な導電性流体の例は、生理食塩水、非純水、乳酸ナトリウム溶液、を含む。乳酸ナトリウム溶液は、乳酸リンゲル液やハルトマン液としても知られ、等張性の晶質液の一種で、更に補液に使用される平衡液または緩衝液として分類されている。このような乳酸ナトリウム溶液は、273mOsm/Lの浸透圧と約6.5のpHとを有する溶液に混合された、ナトリウム、塩化物、カリウム、カルシウム、及び、乳酸ナトリウムの形態の乳酸塩、を含む。
【0086】
特定の実施形態では、バルーン無しのカテーテルが使用され得て、その場合、体腔内を流れる導電性である血液がトランスデューサを冷却するために使用され得る。バルーンを使用するという要求は、医師が1回の処置中に複数のバルーンとカテーテルを使用する必要があり得るため、処置に時間と複雑さとを付加してしまう。更に、正しいバルーンサイズを使用することに失敗すると、腎動脈の解離、穿孔、動脈瘤、介入を必要とする重大な血管痙攣、意図されていない組織や構造の切除(アブレーション)、または、標的組織の切除の未達、に帰結し得る。更に、副動脈などの一部の動脈は、バルーンのサイズの制約により、治療できない場合がある。副動脈が未治療であると、腎臓の除神経に対する反応の低下が予測され得る。組織の切除を最大化するためには、膨張されたバルーンが腎動脈の壁に対向される必要があるが、バルーンを腎動脈の壁に並置するためにバルーンを複数回膨張させることは、血管外傷の増加に帰結し得る。有益なことに、本明細書に開示される選択的に絶縁されたトランスデューサは、バルーン無しのカテーテルの使用を許容し、患者自身の血流が冷却流体として使用されることを許容する。
【0087】
図4Aは、本発明技術の特定の実施形態による、選択的に絶縁されたトランスデューサ411を含む超音波ベースの組織治療システム(例えば、100)のカテーテル(例えば、102)の遠位部分の側面図である。選択的に絶縁されたトランスデューサ411は、選択的に絶縁されたトランスデューサ411とも称され得るし、または、より簡潔に、トランスデューサ411とも称され得る。
図4Bは、本発明技術の特定の実施形態による、選択的に絶縁されたトランスデューサ411の斜視図であり、圧電トランスデューサ本体(例えば、202)の外側電極(例えば、203)が、電気絶縁体404によって覆われている。
図4C及び
図4Dは、それぞれ、
図4A及び
図4Bに示された選択的に絶縁されたトランスデューサ411の、縦断面図及び径方向断面図を示す。
【0088】
図4A乃至
図4Dの実施形態では、圧電トランスデューサ本体201は、内面及び外面を有する圧電材料の中空管を備え、内部電極202が圧電材料の中空管の内面上に配置されており、外側電極203が圧電材料の中空管の外面上に配置されている。このような実施形態では、圧電材料の中空管が、圧電トランスデューサ本体201の一例である。
図4A乃至
図4Dにおいて、圧電材料の中空管、より一般的には圧電トランスデューサ本体201は、
図4Dから理解され得るように、円筒形状であって、円形の放射方向(半径方向)断面を有する。もっとも、代替的な実施形態では、圧電材料の中空管は、円形の放射方向断面を有する円筒形以外の他の形状を有し得る。圧電材料の中空管、より一般的には圧電トランスデューサ本体201、の他の断面形状は、長円形または楕円形断面、正方形または長方形断面、五角形断面、六角形断面、七角形断面、八角形断面、等を含むが、これらに限定されない。
【0089】
圧電材料の中空管、より一般的には圧電トランスデューサ本体201は、様々な異なるタイプの圧電材料から製造され得る。例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、または、他の現在利用可能な若しくは今後開発される圧電セラミック材料、であるが、これらに限定されない。
図4A乃至
図4Cに示されるように、トランスデューサ411は、米国特許第10,456,605号に記載されているように、段付き部分417を含み得る。当該特許の全内容は、当該参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、トランスデューサ411の近位端の段付き部分417が、例えば平行ワイヤ(図示せず)を介してエネルギをトランスデューサ411に送達する電気ケーブル282の取り付けを許容する。特定の実施形態では、電気ケーブル282は、約50オームの合成インピーダンスを有する平行同軸ケーブルを有する。このような段付き部分417は、本明細書に記載のトランスデューサのいずれにも組み込まれ得る。トランスデューサの近位端と遠位端との両方が段付き部分(417と同一または類似)を含むことも可能であり、当該実施形態は、二重段付き実施形態と呼ばれ得る。
【0090】
図4Cを参照して、腎臓の除神経処置に適した特定の実施形態によれば、圧電トランスデューサ本体201の外径(OD)は、約1.3mm~1.7mmの範囲内であり、圧電トランスデューサ本体201の内径(ID)は、約0.8mm~1.2mmの範囲内である。具体的な実施形態では、ODは約1.5mmであり、IDは約1mmである。特定の実施形態によれば、圧電トランスデューサ本体201の圧電材料の壁厚(W-TH)は、その内径(ID)とその外径(OD)との間で、0.2mm~1.0mmの範囲内である。より具体的には、壁厚(W-TH)は、0.2mm~0.5mmの範囲内であり得る。更に具体的には、壁厚(W-TH)は、0.24mm~0.26mmの範囲内であり得る(更に具体的には、0.25mm+/-0.01mmであり得る)。これは、約9MHzの周波数を有する音響エネルギを生成する超音波トランスデューサを提供し得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の超音波トランスデューサ(例えば、211、411、511、811、911、1011、1211等)は、8.5~9.5MHzの周波数範囲で音響エネルギを送達するように構成される。特定の実施形態では、そのようなトランスデューサは、8.7~9.3MHzまたは8.695~9.304MHzの周波数範囲で音響エネルギを送達するように構成される。8.7~9.3MHzの周波数範囲で音響エネルギを送達するトランスデューサは、平均深さ6mmまでの切除(アブレーション)を生成することが示された。圧電トランスデューサ本体201並びに外側電極203及び内側電極202は、例えばTaylorの米国特許第10,140,041号に記載されている方法など、任意の適切な方法を使用して形成され得る。当該特許の全内容は、当該参照により本明細書に組み込まれる。電気絶縁体404(及び本明細書に記載の他の電気絶縁体)の厚さ(I-TH)は、約10μm~20μmの範囲内であり得るが、これに限定されない。前述の寸法及び厚さは、
図4A乃至
図4Dに示される実施形態を参照して説明されているが、以下に説明される実施形態を含んで、本明細書に説明される他の実施形態にも適用可能である。
【0091】
図4A乃至
図4Dの実施形態では、電気絶縁体が内部電極202上に配置されていない。換言すれば、
図4A乃至
図4Dの実施形態では、内側電極202及び外側電極203に関して、外側電極203のみが電気絶縁体404によって覆われている。このような実施形態では、外側電極203上に配置されて外側電極203を覆う電気絶縁体404は、超音波トランスデューサ411が導電性流体(例えば、213)内に位置決めされている時、外側電極203が当該導電性流体に接触することを抑制する(好ましくは防止する)。換言すれば、そのような実施形態では、電気絶縁体404は、トランスデューサがその内部に配置される導電性流体からの電気的絶縁と物理的絶縁との両方を提供する。しかしながら、内部電極202上には電気絶縁体が配置されていないため、超音波トランスデューサ411が導電性流体(例えば、213)内に位置決めされている時、内部電極202は当該導電性流体に接触し得る。このような実施形態では、外側電極203上に配置された電気絶縁体404が、超音波トランスデューサ411が導電性流体内に配置されている時、内側電極202と外側電極203との間の電気伝導を抑制する(好ましくは防止する)。圧電トランスデューサ本体201は、内側電極202と外側電極203との間に電圧が印加されることに応答して超音波を発生するように構成されている。電気絶縁体404は、超音波トランスデューサ411が導電性流体内に配置され、内側電極202と外側電極203との間に電圧が印加される時、内側電極202と外側電極203との間に短絡が生じることを抑制する(好ましくは防止する)。より具体的には、コントローラ120が、電気ケーブル282を介して内側電極202及び外側電極203に電気的に結合され得て、内側電極と外側電極との間に電圧を印加することによって、選択的に絶縁されたトランスデューサ411(または本明細書で説明される他の選択的に絶縁されたトランスデューサのいずれか)を起動し得て、圧電トランスデューサ本体201の圧電材料をして、半径方向外側に放射する非集束超音波を生成させ得る。
【0092】
特定の実施形態では、超音波トランスデューサ411は、バルーン(例えば、112)内に配置され、当該バルーンは、少なくとも部分的に導電性流体である冷却流体(例えば、213)で満たされる。当該冷却流体は、その内部に超音波トランスデューサ411が位置決めされ得る体腔BLの一部を冷却するために使用される。バルーンが少なくとも部分的に充填される導電性流体は、例えば、生理食塩水、非純水、乳酸ナトリウム溶液、または、それらの組み合わせ、であり得るが、これらに限定されない。バルーン無し実施形態と呼ばれ得る代替的な実施形態では、超音波トランスデューサ411は、その内部に当該超音波トランスデューサが位置決めされ得る体腔BLを通って流れる血液に直接的にさらされる。この場合、導電性流体は、血液を含む。特定の実施形態では、電気絶縁体404は、パリレンであり、より具体的には、パリレンコンフォーマルコーティングである。
【0093】
電気絶縁体404を製造できる材料は、パリレン、シアノアセテート、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、または、それらの組み合わせ、を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、パリレンCが、例えば米国特許第5,908,506号に記載されているような化学蒸着法を使用して、金を含む電極をコーティングするために使用される。別の例として、電気絶縁体404は、例えば化学蒸着(CVD)を使用して堆積され得る合成ダイヤモンドコーティングであり得る。一実施形態では、電極の表面は、電気絶縁体404(例えばパリレン)でコーティングされる前に、例えば、シラン、チタン(Ti)、酸化ケイ素(SiOx)、ダイヤモンド状炭素(DLC)、テトラメチルシラン(TMS)、酸化アルミニウム(AlOx)、1グラムの2-メチルチオエチルメタクリレートまたは1グラムの4-クロロチオフェノールを1Lのプロパノールに希釈した溶液(Th. Geyer GmbH & Co. KG(本社:ドイツ、レニンゲン)から入手可能なもの)、Specialty Coating Systems, Inc.(本社:米国インディアナ州インディアナポリス)及び他の多数のサプライヤーから入手可能なAdPro Plus(登録商標)またはAdPro Poly(登録商標))、等の接着促進剤で処理される。特定の実施形態では、パリレンの層間剥離を防止するために、プラズマ表面処理方法が使用され得る。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、The Chemours Company(本社:米国デラウェア州ウィルミントン)の登録商標であるTEFLON(登録商標)という商標を使用して販売されることが多く、ポリイミドは、DuPont(本社:米国デラウェア州ウィルミントン)の登録商標であるKAPTON(登録商標)という商標を使用して販売されることが多い。ある具体的な実施形態では、外側電極203の周面がパリレンコーティングで覆われ、外側電極203の対向する長手方向の両端部がエポキシ樹脂で覆われる。前述の電気絶縁体材料の他の組み合わせも可能であり、本明細書に記載の実施形態の範囲内である。
【0094】
様々な異なるタイプのパリレンコーティングが使用され得る。そのようなパリレンコーティングは、優れた湿気的、化学的及び絶縁的なバリヤ特性、熱及び紫外線(UV)に対する安定性、並びに、乾燥膜潤滑性、を有する極薄のピンホール無しのポリマーコーティングである、コンフォーマルコーティングであり得る。パリレンの例示的なタイプは、パリレンN、パリレンC、パラレンD、を含むが、これらに限定されない。
【0095】
前述のように、電気絶縁体(例えば、404、及び、本明細書に記載の他の電気絶縁体)の厚さは、約10μm~20μmの範囲内であり得るが、これに限定されない。特定の実施形態によれば、電極に対する電気絶縁体の接着性を改善するために、電極(例えば、外側電極203)と電気絶縁体(例えば、404)との間に接着促進剤が含められ得る。不所望の漏電に帰結し得る電気絶縁体(例えば、404)内の小さなピンホールの存在可能性を低減するべく、電気絶縁体材料の複数の層またはコーティングが、複数回のコーティングサイクル中に塗布され得る。例えば、電気絶縁体が15μm厚さのパリレンコーティングである場合、当該コーティングは3回の別個のコーティングサイクルで電極上に堆積され得て、それらの各々が5μmのコーティング厚さを提供して、集合的に15μm厚さのパリレンコーティングを提供し得る。
【0096】
内側電極202及び外側電極203は、互いに同一の導電性材料で製造され得るし、あるいは、互いに異なる導電性材料で製造され得る。内側電極202及び外側電極203として使用するのに適した導電性材料の例は、銅、銀、金、及び/または、それらの組み合わせ、を含む。特定の実施形態では、鉛が金メッキ電極を劣化させることを防止するためのバリヤ層として、ニッケルが使用され得る。内側電極202及び外側電極203の例示的な厚さは、約120マイクロインチを含む。特定の実施形態では、電極202、203は、約15マイクロインチの無電解銅のベースコートと、約102~120マイクロインチの高リン無電解ニッケルの第2コートと、約5マイクロインチの電解メッキ金の第3コートと、を含む。金属層は、圧電材料を損傷することなく、電気ケーブル282、例えば平行同軸ケーブル、を管の表面にはんだ付けする態様を提供し、また、トランスデューサへの電気負荷の均等な適用を許容する。特定の実施形態では、電極コーティングの金属層は、機械的または熱的な負荷によって剥がれたり剥離したりせずに超音波処理中に均一な電気負荷を供給する電極を生成するように、構成される。内側電極202及び外側電極203は、互いに同一の厚さを有し得て、あるいは、互いに異なる厚さを有し得る。内側電極202及び外側電極203は、これらに限定されないが、例えば無電解めっきや蒸着などの、任意の適切な方法を使用して形成され得る。
【0097】
本明細書に開示されるトランスデューサの内側電極202及び外側電極203(または任意の他の電極)間に電圧を印加するために、あるいは、より一般的にはトランスデューサに入力電力を提供するために、ケーブル(例えば、282)が、コントローラ120(または何らかの他の電圧源)とトランスデューサの電極との間に接続されて、コントローラ120(または何らかの他の電圧源)と電極との間の電気的接続を提供する。例えば、1または複数の同軸ケーブルまたは他のタイプの導電性配線が、トランスデューサの電極にはんだ付けされ得る。トランスデューサの電極の1つが、そのようなケーブルが電極に取り付けられる前または後に、電気絶縁体でコーティングされ得て、それによって覆われ得る。ケーブル(例えば、282)が電極に取り付けられる(例えば、はんだ付けされる)前に、電気絶縁体が電極に適用される場合、当該電気絶縁体の一部が(例えば、エッチングを使用して)除去されるか、あるいは、(例えば、マスクを使用して)絶縁されないまま残されて、ケーブル(例えば、282)が電極にはんだ付けされ得るか、または、他の態様で取り付けられ得る。はんだ付けまたは他のタイプの取り付けの後、はんだボールなどは、エポキシ樹脂などの電気絶縁体で覆われるべきであるが、これに限定されない。換言すれば、ケーブル配線(1または複数のケーブルを含む)と電極(絶縁される予定のもの)との間の接触点も、絶縁されるべきである。そうでなければ、はんだボール(またはケーブルと電極との間の他の電気接点)を導電性流体にさらすことは、電極全体を導電性流体にさらすことと等価となり得る。より一般的には、電気絶縁体で覆われた電極の一方にケーブル配線が接続される場合、当該ケーブル配線や取り付け機構の導電性部分(例えば、はんだボール)がトランスデューサの使用時に導電性流体に露出されないことを保証するように、注意が払われるべきである。これは、トランスデューサ411、並びに、本明細書に記載される他の選択的に絶縁されたトランスデューサ(例えば、511、911、1011等)に適用可能である。
【0098】
図5A及び
図5Bは、それぞれ、本発明技術の別の実施形態による、選択的に絶縁されたトランスデューサ511の縦断面図及び径方向断面図を示しており、圧電トランスデューサ本体201の内側電極202が、電気絶縁体504によって覆われている。このような実施形態では、内部電極202上に配置されて内部電極202を覆う電気絶縁体504は、超音波トランスデューサ511が導電性流体(例えば、213)内に位置決めされている時、内部電極202が当該導電性流体に接触することを抑制する(好ましくは防止する)。換言すれば、そのような実施形態では、電気絶縁体504は、トランスデューサがその内部に配置される導電性流体からの電気的絶縁と物理的絶縁との両方を提供する。しかしながら、外側電極203上には電気絶縁体が配置されていないため、超音波トランスデューサ511が導電性流体(例えば、213)内に位置決めされている時、外側電極203は当該導電性流体に接触し得る。このような実施形態では、内側電極202上に配置された電気絶縁体504が、超音波トランスデューサ511が導電性流体内に配置されている時、内側電極202と外側電極203との間の電気伝導を抑制する(好ましくは防止する)。電気絶縁体504は、超音波トランスデューサ511が導電性流体内に配置され、内側電極202と外側電極203との間に電圧が印加される時、内側電極202と外側電極203との間に短絡が生じることを抑制する(好ましくは防止する)。
【0099】
特定の実施形態では、超音波トランスデューサ511は、バルーン(例えば、112)内に配置され、当該バルーンは、少なくとも部分的に導電性流体である冷却流体(例えば、213)で満たされる。当該冷却流体は、その内部に超音波トランスデューサ411が位置決めされ得る体腔BLの一部を冷却するために使用される。使用され得る導電性冷却流体の例示的なタイプは、
図4A乃至
図4Dの実施形態に関して前述されたため、繰り返される必要はない。電気絶縁体504は、電気絶縁体404に関して前述された、パリレン、他のタイプの電気絶縁体材料のいずれか、または、それらの組み合わせ、で製造され得る。ある具体的な実施形態では、内部電極202の周面がパリレンコーティングで覆われ、内部電極202の対向する長手方向の両端部がエポキシ樹脂で覆われる。前述の電気絶縁体材料の他の組み合わせも可能であり、本明細書に記載の実施形態の範囲内である。
【0100】
図6A及び
図6Bは、それぞれ、トランスデューサ611の縦断面図及び径方向断面図を示し、圧電トランスデューサ本体211の内側電極202及び外側電極203の両方が、電気絶縁体によって覆われている。より具体的には、内側電極202が電気絶縁体504によって覆われており、外側電極203が電気絶縁体404によって覆われている。
図7を参照して以下で更に詳細に説明されるように、超音波トランスデューサの内側電極202と外側電極203の両方(またはより一般的には両方の電極)を絶縁すると、特には入力電力が約5~80ワットの範囲内であって音響出力電力が約5~45ワットの範囲内であるというような、劣った性能を提供し得る。
【0101】
図4A乃至
図4D、
図5A及び
図5Bを参照して前述された選択的に絶縁されたトランスデューサは、その各々が圧電材料の中空管を有する圧電トランスデューサ本体201を含み、また、裏当て部材(例えば、218)、絶縁管(例えば、219)、スタンドオフアセンブリ(例えば、230)、及び/または、取り付け点(334)、を含み得る。それらの例は、
図2C及び
図3Bを参照して図示され前述されている。もっとも、図面を簡略化するために、これらの追加の詳細は、
図4A乃至
図4D、
図5A及び
図5Bには図示されていない。
【0102】
図7は、圧電式超音波トランスデューサの入力電力対音響出力電力のグラフであり、様々な異なる電極またはそれらの組み合わせを絶縁することが冷却流体内に浸漬される超音波トランスデューサの性能にどのように影響を与えるか、を示す。ここで、圧電トランスデューサ本体201は、内面及び外面を有する圧電材料の中空管を有しており、内部電極202及び外部電極203が、それぞれ、当該内面及び当該外面上に配置されている。放射力バランス(RFB)、または、何らかの他の機器及び技術が、異なる電気入力電力に応答した超音波トランスデューサの音響出力電力を測定するために、使用され得る。
図7を参照して、曲線701が、内側電極202と外側電極203の両方が電気絶縁体によって覆われていない超音波トランスデューサ(例えば、
図2Bの111)に対応している。曲線701から理解され得るように、音響出力電力は、電気入力電力が約80ワット(W)に達するまで、当該入力電力の増加に応答して増加し、当該時点の後、超音波トランスデューサは故障し始め、音響出力電力は急速に低下する。曲線702は、外側電極203が電気絶縁体(例えば、404)によって覆われているが、内側電極202が電気絶縁体によって覆われていない超音波トランスデューサ(例えば、411)に対応している。
図7から理解され得るように、曲線701と曲線702とは、ほとんど同一である。従って、曲線702において、音響出力電力は、電気入力電力が約80Wに達するまで、当該入力電力の増加に応答して増加し、当該時点の後、超音波トランスデューサが故障し始め、音響出力電力は急速に低下する。
【0103】
曲線703は、内側電極202が電気絶縁体(例えば、504)によって覆われているが、外側電極203が電気絶縁体によって覆われていない超音波トランスデューサ(例えば、511)に対応している。
図7から理解され得るように、超音波トランスデューサ(例えば、511)の効率は、電極202、203のいずれも電気絶縁体によって覆われていない場合よりも若干低く、あるいは、外側電極203のみが電気絶縁体によって覆われている場合よりも若干低いが、音響出力電力は、電気入力電力が約80Wに達するまで、当該入力電力の増加に応答して増加し、当該時点の後、超音波トランスデューサが故障し始め、音響出力電力は急速に低下する。曲線704は、内側電極202が電気絶縁体(例えば、504)によって覆われていて、且つ、外側電極203が電気絶縁体(例えば、404)によって覆われている超音波トランスデューサ(例えば611)に対応している。曲線704から理解され得るように、音響出力電力は、電気入力電力が約58Wに達するまで、当該入力電力の増加に応答して増加し、当該時点の後、超音波トランスデューサが故障し始め、音響出力電力は急速に低下する。曲線702、曲線703及び曲線704を生成するために試験された電気絶縁体(例えば、404及び504)は、パリレンCコーティングであった。
【0104】
図7に示されるグラフを生成する実験の実行時、冷却流体(その内部に試験されたトランスデューサが浸漬された)は、非導電性流体である脱イオン水であった。このような実験に非導電性流体が使用された理由は、もし導電性冷却流体が使用された場合、その性能が曲線701によって表される超音波トランスデューサ(例えば、111)の非絶縁電極間に電気的短絡が発生したであろう、ということであった。その性能が曲線702及び曲線703によって表される選択的に絶縁された超音波トランスデューサ(例えば、411及び511)に関しては、並びに、その性能が曲線704によって表される両電極が電気絶縁体によって覆われたトランスデューサ(例えば、611)に関しては、
図7の曲線702、曲線703及び曲線704が、生理食塩水、乳酸ナトリウム溶液または血液などの導電性冷却流体に浸漬された場合にそのようなトランスデューサがどのように動作するか、をそれぞれ示している、と考えられる。
【0105】
図7から理解され得るように、最良の性能を提供した選択的に絶縁されたトランスデューサは、(曲線702によって示されているように)約90W未満の入力電力のために外側電極203のみがパリレンコーティングタイプの電気絶縁体によって覆われた選択的に絶縁されたトランスデューサ(例えば、411)であった。次善の性能は、(曲線703によって示されているように)内側電極202のみがパリレンコーティングタイプの電気絶縁体によって覆われた選択的に絶縁されたトランスデューサ(例えば、511)によって提供された。また、
図7から理解され得るように、内側電極202及び外側電極203の両方がパリレンコーティングタイプの電気絶縁体によってコーティングされたトランスデューサ(例えば、611)は、(曲線704によって示されているように)かなり低い入力電力で故障して、劣った性能を示す。
【0106】
より具体的には、
図7から、内側電極202及び外側電極203の両方をそれぞれの電気絶縁体で覆うと、より高い入力電力で、例えば約30Wを超える入力電力で、トランスデューサの出力性能(曲線704)を劣化(低下)させる、ということが理解され得る。そこでは、当該トランスデューサの超音波出力電力は、電気絶縁体がない場合(曲線701)よりも低く、また、電極の一方のみが電気絶縁体で覆われている場合(曲線702及び曲線703)よりも低い。いかなる理論によっても束縛されることは希望していないが、例えば、圧電トランスデューサ本体201の両方の電極上の電気絶縁体が圧電材料内に熱を捕捉(トラップ)し得て機械的応力を発生させ得るために、より高い電力レベルでの動作中にトランスデューサ内において熱的に誘起される機械的応力によってそのような劣化が生じると考えられる。
図7から、内部電極202のみを電気絶縁体で覆うことも、より高い入力電力、例えば約30Wを超える入力電力で、トランスデューサの音響出力電力性能(曲線703)を劣化(低下)させ得る、ということが理解され得る。そこでは、当該トランスデューサの音響出力電力は、電気絶縁体がない場合よりも低い。比較において、例えば
図4A乃至
図4Dを参照して説明されたような、外側電極203のみが電気絶縁体で覆われた選択的に絶縁されたトランスデューサの電力性能(曲線702)は、絶縁されていない超音波トランスデューサの出力性能(曲線701)に対して、全ての電力において同様であり得る。それにもかかわらず、幾つかの形態及び実装形態では、内部電極202のみを電気絶縁体で覆うことが適切であり得る、ということが明確に企図される。
図11を参照して説明される方法の動作は、選択的に絶縁されたトランスデューサの電気絶縁体の特定の配置に基づいて、適切に修正され得る、ということが理解される。
【0107】
例えば腎臓の除神経に適した特定の実施形態では、電気入力電力の好ましい範囲は、約30W~約50Wであり得て、これは、約25W~約35Wの音響出力電力に対応する。
図7で理解されるように、内側電極202及び外側電極203の両方をコーティングすることは(曲線704)、絶縁されていないトランスデューサ(曲線701)または外側電極203のみがコーティングされたトランスデューサ(曲線702)と比較して、これらの電力入力範囲におけるトランスデューサの効率を低下させる。先入観や制限無しで、トランスデューサ111の内側電極202及び外側電極203の両方(またはより一般的には両方の電極)をコーティングすることは、絶縁されていない電極を有するトランスデューサ、または、外側電極203のみが絶縁されている(または内側電極202のみが絶縁されている)トランスデューサよりも、カテーテル(例えば、102)上により多くの熱及び機械的応力を発生させることにより、トランスデューサ自体の寿命に悪影響を与え得る、と理論づけられ得る。
【0108】
図7で理解示されるように、内側電極202のみを電気絶縁体で覆うことは(曲線703)、絶縁されていないトランスデューサ(曲線701)または外側電極203のみが電気絶縁体で覆われたトランスデューサ(曲線702)と比較して、約30W~約50Wの電力入力範囲におけるトランスデューサの効率を低下させる。更に、内部電極202のみを電気絶縁体(例えば、504)で覆うことは、絶縁されていない電極を有するトランスデューサまたは外側電極203のみが電気絶縁体で覆われたトランスデューサ(例えば、404)よりも、より多くの熱と機械的応力を発生させることにより、トランスデューサの寿命に悪影響を与え得る、と理論づけられ得る。これは、バルーン(またはバルーン無し実施形態では血液)内に挿入された冷却流体(例えば、213)が、スタンドオフアセンブリ(例えば、230)の開口部(例えば、336)を介して内部電極202を覆う電気絶縁体(例えば、504)と接触し得るのみ、であるからであり得る。これは、冷却流体が内側電極202から効果的に熱を奪い取ることを困難にし得る。対照的に、冷却流体(例えば、213)がバルーン(またはバルーン無し実施形態では血液)内に供給される場合、外側電極203を覆う電気絶縁体(例えば、404)とはより完全に接触し得て、従って、外側電極203を覆う電気絶縁体、例えばパリレンコーティング、によって捕捉(トラップ)されていた可能性のある熱をより容易に奪い取り得る。
【0109】
前述の実施形態では、圧電トランスデューサ本体は、圧電材料の中空管で製造され、内面及び外面を有し、それらの上に内側電極及び外側電極がそれぞれ配置されたものとして、図示されて説明された。代替的な実施形態では、圧電トランスデューサ本体は、中空である必要はない。一例として、
図8A及び
図8Bに示されるように、超音波トランスデューサ811は、互いに平行な第1及び第2平面状対向面(すなわち、この例では頂面及び底面)を備えた略長方形状(略直方体状)の圧電トランスデューサ本体801を含み得る。当該第1及び第2平面状対向面上に、平面状であって互いに平行な電極802、803が配置されている。この議論(説明)のために、電極802及び電極803は、それぞれ、下部電極及び上部電極と呼ばれる。
図9を参照して、特定の実施形態によれば、選択的に絶縁された超音波トランスデューサ911は、上部電極803のみが電気絶縁体904によって覆われた略長方形状の圧電トランスデューサ本体801を備える。このような実施形態では、電気絶縁体904は、トランスデューサがその内部に配置される導電性流体からの上部電極803の電気的絶縁と物理的絶縁との両方を提供する。
図10を参照して、特定の実施形態によれば、超音波トランスデューサ1011は、下部電極802のみが電気絶縁体1004によって覆われた略長方形状の圧電トランスデューサ本体801を備える。このような実施形態では、電気絶縁体1004は、トランスデューサがその内部に配置される導電性流体からの下部電極802の電気的絶縁と物理的絶縁との両方を提供する。
【0110】
特定の実施形態では、選択的に絶縁された超音波トランスデューサ911、101の各々が、導電性流体である冷却流体(例えば、213)で少なくとも部分的に満たされるバルーン(例えば、112)内に配置され得る。当該導電性冷却流体は、超音波トランスデューサが位置決めされ得る体腔BLの一部を冷却するために使用される。前述のように、当該導電性流体は、超音波トランスデューサー自体をも冷却し得る。使用され得る導電性冷却流体の例示的なタイプは、
図4A乃至
図4Dの実施形態に関して前述されたため、繰り返される必要はない。バルーン無し実施形態と称され得る代替的な実施形態では、選択的に絶縁された超音波トランスデューサ911、1011は、超音波トランスデューサが位置決めされ得る体腔を通って流れる血液に直接的にさらされ得る。この場合、導電性流体は、血液を含む。
【0111】
電気絶縁体904,1004は、電気絶縁体404に関して前述された、パリレン、他のタイプの材料のいずれか、または、それらの組み合わせ、で製造され得る。ある具体的な実施形態では、一方の外側電極(803または802)の周面がパリレンコーティングで覆われ、当該一方の電極(803または802)の対向する長手方向の両端部がエポキシ樹脂で覆われる。前述の電気絶縁体材料の他の組み合わせも可能であり、本明細書に記載の実施形態の範囲内である。
【0112】
本発明技術の実施形態は、図面に図示されて前述された特定の形状を有する超音波トランスデューサに限定されない。一例として、円筒形(または他の形状)の中空の圧電トランスデューサ本体は、一定の外径を有する必要がなく、段差が付けられた長手方向の遠位端及び/または近位端を有し得て、より具体的には、それらは、トランスデューサ本体の残部(すなわち、段差が付けられていない部分)よりも小径を有し得る。他の変形例も可能であり、本明細書に記載の実施形態の範囲内である。トランスデューサ本体の段差が付けられていない部分は、トランスデューサの長さの大部分、例えば、トランスデューサの全長の、50~95%または60~90%(例えば、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~95%、90~99%、前述の範囲間のパーセンテージ、等)、を構成し得る。もっとも、他の実施形態では、所望または必要に応じて、段差が付けられていない部分は、トランスデューサの全長の、60%未満(例えば、40~50%、50~55%、55~60%、40%未満、等)、または、95%を超えて(例えば、95~96%、96~97%、97~98%、98~99%、99%を超えて、等)、延在し得る。
【0113】
更に、
図8A乃至
図10を参照して説明された実施形態におけるように、圧電トランスデューサ本体が中空でない場合には、圧電トランスデューサ本体の形状は、平行な上面及び下面を有する略長方形(略直方体)以外の他の形状を有することもできる。例えば、
図8A乃至
図10に戻って、それらに図示されている圧電トランスデューサ本体801の上面及び下面のうちの1または複数は、凹状または凸状であり得るし、あるいは、何らかの他の非平坦形状を有し得て、これにより、下部電極802及び上部電極803のうちの1または複数がそのような代替的な形状を有するという態様に帰結し得る。このような電極の1つが電気絶縁体でコーティングされる場合、当該電気絶縁体もまた、そのような代替的な形状を有し得る。
【0114】
超音波トランスデューサ及びカテーテルベースの超音波送達システムの設計及び使用に関する追加の選択肢(オプション)が、以下の特許及び公開出願に提供されており、それらの各々の全内容が、当該参照により本明細書に組み込まれる:米国特許第6,635,054号、米国特許第6,763,722号、米国特許第7,540,846号、米国特許第7,837,676号、米国特許第9,707,034号、米国特許第9,981,108号、米国特許第10,350,440号、米国特許第10,456,605号、米国特許第10,499,937号、及び、PCT国際公開番号WO2012/112165。
【0115】
本明細書に記載のトランスデューサ、装置、及びシステムは、任意の適切な組織を治療するために使用され得て、当該組織は標的解剖学的構造と称され得る。例えば、腎神経を治療する(例えば、神経調節する)ための本発明システムの使用が、前述されている。組織を治療するために本発明システムが位置決めされ得る体腔は、必ずしも自然に(天然に)存在する体腔に限定されない、ということが理解される。例えば、治療は、組織内に体腔を形成する工程(例えば、ドリリング(穴あけ)、カニューレ、レーザアブレーション、等を使用する工程)と、次いで、そのような体腔内に適切な構成要素を位置決めする工程と、を含み得る。本発明システムの他の適切な用途は、静脈または不整脈に関与する肺の神経及び組織、椎間板内の神経、椎間板の内部または外部の神経、椎骨内の基底脊椎神経、脳組織内の神経、心臓組織内の不整脈に関与する組織、気管支樹に沿った神経、迷走神経の1または複数の食道枝、及び、膀胱を取り囲む1または複数の神経、の切除(アブレーション)を含む。
【0116】
図11は、本発明技術の様々な実施形態による方法を要約するために使用される高レベルのフローチャートである。
図11を参照して、ステップ1102は、互いから離間して配置されて互いに交差しない第1面及び第2面を有し第1電極が第1面上に配置されていて第2電極が第2面上に配置されている圧電トランスデューサを提供する工程を含む。ステップ1104は、第1電極及び第2電極のうちの一方のみを電気絶縁体で覆う工程を含む。ステップ1106は、圧電トランスデューサを、体腔(例えば、腎動脈)内に挿入する工程を含み、ステップ1108は、圧電トランスデューサを、第2電極とは接触する一方で(第1電極を覆う電気絶縁体によって)第1電極とは接触することが抑制される導電性流体にさらす工程を含む。ステップ1110は、圧電トランスデューサが導電性流体にさらされている(そして体腔BL内に挿入されている)間に、第1電極と第2電極との間に電圧を印加し、それによって圧電トランスデューサに超音波を生成させる工程を含む。ステップ1112は、電気絶縁体を利用して、圧電トランスデューサが導電性流体にさらされていて第1電極と第2電極との間に電圧が印加される間に、第1電極と第2電極との間で短絡が生じることを抑制する(好ましくは防止する)工程を含む。
【0117】
特定の実施形態では、当該方法は、また、バルーンの内部に圧電トランスデューサを配置する工程を含む。このような実施形態では、ステップ1108における圧電トランスデューサを導電性流体にさらす工程が、バルーンを導電性流体で少なくとも部分的に充填する工程を含む。前述のように、導電性流体は、生理食塩水、非純水、または、乳酸ナトリウム溶液のうちの少なくとも1つを含み得るが、これらに限定されない。このような実施形態では、当該方法は、また、圧電トランスデューサを内部に含んだバルーンを、体腔内に挿入する工程を含み得る。このような実施形態では、第1電極と第2電極との間に電圧を印加して、圧電トランスデューサに超音波を生成させる工程が、バルーンが体腔内にある間に行われる。
【0118】
本明細書でバルーン無し実施形態と呼ばれる他の実施形態では、ステップ1108は、圧電トランスデューサが血液と接触するように、血液が流れる体腔内に圧電トランスデューサを挿入する工程によって実行される。このような実施形態では、導電性流体は血液を含み、ステップ1108で圧電トランスデューサを導電性流体にさらす工程は、圧電トランスデューサを血液にさらす工程を含む。
【0119】
本明細書には幾つかの実施形態及び実施例が開示されているが、本出願は、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替的な本発明の実施形態及び/または使用、並びに、それらの修正物及び均等物、に及ぶ。また、実施形態の特定の特徴及び態様の様々な組み合わせまたはサブコンビネーションが製造され得て、それらも本発明の範囲内に含まれる、ということが企図されている。従って、開示された実施形態の様々な特徴及び態様は、開示された本発明の様々なモードを形成するために、相互に組み合わられ得るし、置換され得る。従って、本明細書に開示された本発明の範囲は、前述の特定の実施形態によって限定されるべきではなく、特許請求の範囲を正しく読むことによってのみ決定されるべきである、ということが意図されている。
【0120】
本発明は様々な修正及び代替的形態が可能であるが、その特定の例が図面に示されて本明細書で詳細に説明されている。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態または方法に限定されるものではなく、逆に、本発明は、様々な開示された実施形態及び添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内にある、全ての修正、等価物、及び、代替物、を網羅するものである、ということが理解される。本明細書に開示されたいずれの方法も、記載された順序で実行される必要はない。
【国際調査報告】