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特表2024-507860眼病態に対するウイルスベクターベースの遺伝子療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】眼病態に対するウイルスベクターベースの遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20240214BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240214BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P27/02
A61K35/76
A61K38/16
A61P27/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550535
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 US2022017279
(87)【国際公開番号】W WO2022178410
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/152,152
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】508128082
【氏名又は名称】ザ・リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・コロラド、ア・ボデイー・コーポレイト
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラム エイチ. ナガライ
(72)【発明者】
【氏名】ルーバン ビー. ナホミ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA20
4C084MA16
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA16
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA33
(57)【要約】
被験体における網膜疾患、傷害または病態に対する遺伝子療法が、Hsp27等の少なくとも1つの熱ショックタンパク質をコードする組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含む医薬組成物を被験体に投与することを含む。組換えアデノ随伴ウイルスベクターは、網膜神経節細胞において特異的に熱ショックタンパク質の産生を誘導するプロモーター配列を含むことができる。かかる細胞の喪失は、眼病態に罹患した患者において網膜損傷および視力喪失を引き起こす。開示のウイルスベクターは、投与デバイスを用いて硝子体内投与され得る医薬組成物に含まれていてもよい。単回注射が様々な眼病態を治療するうえで治療的に十分であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における網膜疾患、傷害または病態の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防または緩和する方法であって、
前記被験体に、組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含む治療有効量の組成物を投与することを含み、前記ベクターが、
少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質をコードする核酸配列であって、前記少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質がHsp27を含む、核酸配列、と
前記核酸配列の上流に位置するプロモーター配列であって、前記プロモーター配列が網膜神経節細胞における前記核酸配列の発現を誘導する、プロモーター配列
を含む、
方法。
【請求項2】
前記網膜神経節細胞が哺乳動物網膜神経節細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記被験体が前記傷害を受けるか、または前記網膜疾患もしくは病態が診断されてから24時間以内に少なくとも1回、前記組成物を投与する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記組成物を硝子体内投与する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記組成物を1回だけ投与する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記アデノ随伴ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス2型ベクターを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記網膜疾患、傷害または病態が緑内障である、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記網膜疾患、傷害または病態が黄斑変性、糖尿病性眼疾患、網膜剥離および網膜色素変性症からなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記網膜疾患、傷害または病態が興奮毒性損傷、物理的損傷、化学的損傷、神経栄養因子欠乏、酸化ストレス、炎症、ミトコンドリア機能不全、軸索輸送不全またはそれらの組合せによって引き起こされる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記網膜疾患、傷害または病態が網膜神経節細胞の喪失、眼内圧の上昇またはその両方を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
被験体における網膜疾患、傷害または病態の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防または緩和するためのシステムであって、
注射デバイスと、
組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含む治療有効量の組成物であって、前記ベクターが、
少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質をコードする核酸配列であって、前記少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質がHsp27を含む、核酸配列、および
前記核酸配列の上流に位置するプロモーター配列であって、前記プロモーター配列が網膜神経節細胞における前記核酸配列の発現を誘導する、プロモーター配列
を含む、組成物と
を含み、
前記注射デバイスが前記組成物を前記被験体に硝子体内投与するように構成される、
システム。
【請求項12】
前記網膜疾患、傷害または病態が緑内障である、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記網膜疾患、傷害または病態が網膜神経節細胞の喪失、眼内圧の上昇またはその両方を含む、請求項11または12記載のシステム。
【請求項14】
前記網膜神経節細胞が哺乳動物網膜神経節細胞を含む、請求項11から13までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項15】
前記注射デバイスが単回使用デバイスである、請求項11から14までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項16】
前記アデノ随伴ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス2型ベクターを含む、請求項11から15までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項17】
医薬組成物であって、
組換えアデノ随伴ウイルスベクターであって、
少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質をコードする核酸配列であって、前記少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質がHsp27を含む、核酸配列、および
前記核酸配列の上流に位置するプロモーター配列であって、前記プロモーター配列が網膜神経節細胞における前記核酸配列の発現を誘導する、プロモーター配列
を含む、組換えアデノ随伴ウイルスベクターと、
薬学的に許容可能な担体と、
を含み、
前記医薬組成物が被験体における網膜疾患、傷害または病態の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防または緩和するように配合される、
医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が硝子体内投与用に配合される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記アデノ随伴ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス2型ベクターを含む、請求項17または18記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記網膜疾患、傷害または病態が網膜神経節細胞の喪失、眼内圧の上昇または緑内障の1つ以上を含む、請求項17から19までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利の陳述
本発明は、米国国立眼科研究所からの支援に加え、ゲイツ再生医療センター(Gates Center for Regenerative Medicine)および失明予防研究所(Research to Prevent Blindness)からの追加支援を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2021年2月22日に出願された、「眼病態に対するウイルスベクターベースの遺伝子療法(Viral Vector-Based Gene Therapy for Ocular Conditions)」と題する米国仮特許出願第63/152,152号明細書の優先権を主張し、その全体をあらゆる目的で参照により本明細書に援用するものとする。
【0003】
本開示は概して、傷害または疾患によって引き起こされる網膜損傷を治療するための組成物、システムおよび方法に関する。具体的な実施態様は、眼損傷に罹患したか、または発症するリスクがある被験体の網膜神経節細胞への少なくとも1つの熱ショックタンパク質のウイルスベクター媒介送達を含む。
【0004】
発明の背景
緑内障には世界で7500万人近くが罹患しており、およそ800万人がこの疾患で失明している。米国だけでも300万人近くが緑内障に罹患しており、この数は2050年までに2倍以上になると予想されている。緑内障に関連した視力喪失は、眼内圧として知られる眼球内部の圧力の上昇に主に起因することが多いため、従来の緑内障治療の第一選択は、通常は眼内圧を低下させるように配合された薬物の局所適用を含む。しかしながら、このアプローチにより圧力の低下に成功したとしても、軸索変性および網膜神経節細胞(「RGC」)として知られる網膜内の細胞の継続的な死滅のために、多くの患者が失明することとなる。軸索変性およびRGC死に個別に、また特に組合せで寄与する因子の多様性から、緑内障および他の眼病態の治療は困難となっている。したがって、RGC死および軸索変性に対抗する安全かつ効果的な方法が必要とされている。
【0005】
発明の概要
本開示は、緑内障を含む様々な眼病態に対する新規の遺伝子療法を含む。実施形態には、少なくとも1つの熱ショックタンパク質(「HSP」)をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む組換えアデノ随伴ウイルスベクター(「rAAVベクター」)が含まれる。開示のrAAVベクターは、コードされたHSPが眼内で最も必要とされる箇所でのHSPの標的発現を誘導するRGC特異的プロモーター配列を含むこともできる。網膜損傷によって引き起こされる眼病態の少なくとも1つの症状の治療、予防および/または緩和の成功は、rAAV-HSPベクターの単回投与によって達成することができる。本明細書に要約される実験データによって示されるように、開示のベクター、医薬組成物および関連療法は、長時間(例えば、少なくとも約20週間)にわたってRGC死を実質的に阻止、減速および/または低減することにより、網膜損傷を予防または治療することができる。
【0006】
本開示の特定の実施形態によると、被験体における網膜疾患、傷害または病態の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防および/または緩和する方法は、被験体にrAAVベクターを含む治療有効量の組成物を投与することを含み得る。rAAVベクターは、Hsp27(本明細書では「HspB1」とも称される)等の少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質をコードする核酸配列を含むことができる。rAAVベクターは、核酸配列の上流に位置するプロモーター配列を含むこともできる。プロモーター配列は、網膜神経節細胞における核酸配列の発現を誘導することができる。
【0007】
方法の幾つかの実施形態では、網膜神経節細胞は、哺乳動物網膜神経節細胞を含み得る。方法の幾つかの実施形態では、哺乳動物網膜神経節細胞は、ヒト網膜神経節細胞を含み得る。方法の幾つかの実施形態では、組成物は、被験体が眼傷害を受けるか、または被験体において網膜疾患もしくは病態が診断されてから24時間以内に少なくとも1回投与することができる。方法の幾つかの実施形態では、組成物を硝子体内投与することができる。幾つかの実施形態では、組成物を1回だけ投与することができる。方法の幾つかの実施形態では、rAAVベクターは、アデノ随伴ウイルス2型ベクターであり得る。
【0008】
方法の幾つかの実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は緑内障である。方法の幾つかの実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は、黄斑変性、糖尿病性眼疾患、網膜剥離および網膜色素変性症からなる群から選択される。方法の幾つかの実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は、興奮毒性損傷、物理的損傷、化学的損傷、神経栄養因子欠乏、酸化ストレス、炎症、ミトコンドリア機能不全、軸索輸送不全またはそれらの組合せによって引き起こされる。方法の幾つかの実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は、網膜神経節細胞の喪失を含む。方法の幾つかの実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は、眼内圧の上昇を含む。
【0009】
本開示の実施形態によると、被験体の網膜神経節細胞におけるHsp27タンパク質産生を増加させる方法が、被験体の眼にrAAVベクターを含む治療有効量の組成物を投与することを含む。rAAVベクターは、Hsp27タンパク質をコードする核酸配列を、核酸配列の上流に位置するプロモーター配列とともに含み得る。プロモーター配列は、網膜神経節細胞における核酸配列の発現を誘導することができる。処置した眼の網膜神経節細胞におけるHsp27タンパク質の量は、組成物を投与しない別の眼の網膜神経節細胞と比較して増加し得る。方法の幾つかの実施形態では、被験体の網膜神経節細胞は、ヒト網膜神経節細胞を含み得る。方法の幾つかの実施形態では、rAAVベクターは、アデノ随伴ウイルス2型ベクターであり得る。
【0010】
本開示の実施形態によると、被験体における網膜疾患、傷害または病態の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防および/または緩和するためのシステムは、注射デバイスと、rAAVベクターを含む治療有効量の組成物とを含み得る。rAAVベクターは、Hsp27等の少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質をコードする核酸配列を含むことができる。rAAVベクターは、核酸配列の上流に位置するプロモーター配列を含むこともできる。プロモーター配列は、網膜神経節細胞における核酸配列の発現を誘導することができる。注射デバイスは、組成物を被験体に硝子体内投与するように構成され得る。
【0011】
システムの幾つかの実施形態では、注射デバイスはツベルクリン注射器であり得る。システムの幾つかの実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は緑内障である。システムの幾つかの実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は、網膜神経節細胞の喪失を含む。システムの幾つかの実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は、眼内圧の上昇を含む。システムの幾つかの実施形態では、網膜神経節細胞は、哺乳動物網膜神経節細胞を含み得る。システムの幾つかの実施形態では、網膜神経節細胞は、ヒト網膜神経節細胞を含み得る。システムの幾つかの実施形態では、注射デバイスは単回使用デバイスであり得る。システムの幾つかの実施形態では、rAAVベクターは、アデノ随伴ウイルス2型ベクターであり得る。
【0012】
本開示の実施形態によると、医薬組成物は、rAAVベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含み得る。rAAVベクターは、Hsp27等の少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質をコードする核酸配列を含むことができる。rAAVベクターは、核酸配列の上流に位置するプロモーター配列を含むこともできる。プロモーター配列は、網膜神経節細胞における核酸配列の発現を誘導することができる。医薬組成物は、被験体における網膜疾患、傷害または病態の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防または緩和するように配合され得る。
【0013】
組成物の幾つかの実施形態では、網膜神経節細胞は、哺乳動物網膜神経節細胞を含み得る。組成物の幾つかの実施形態では、哺乳動物網膜神経節細胞は、ヒト網膜神経節細胞を含み得る。組成物の幾つかの実施形態では、医薬組成物は、硝子体内投与用に配合され得る。組成物の幾つかの実施形態では、rAAVベクターは、アデノ随伴ウイルス2型ベクターであり得る。組成物の幾つかの実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は、網膜神経節細胞の喪失、眼内圧の上昇および/または緑内障を含む。
【0014】
本開示の実施形態によると、rAAVベクターを含む医薬組成物は、被験体における網膜疾患、傷害または病態の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防または緩和するための薬剤の製造に使用することができる。rAAVベクターは、Hsp27等の少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質をコードする核酸配列を含むことができる。rAAVベクターは、核酸配列の上流に位置するプロモーター配列を含むこともできる。プロモーター配列は、網膜神経節細胞における核酸配列の発現を誘導することができる。
【0015】
幾つかの製造実施形態では、医薬組成物は、硝子体内投与用に配合され得る。幾つかの製造実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は緑内障を含む。幾つかの製造実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は、網膜神経節細胞の喪失を含む。幾つかの製造実施形態では、網膜疾患、傷害または病態は、眼内圧の上昇を含む。
【0016】
本開示の実施形態によると、rAAVベクターは、Hsp27等の少なくとも1つの生物学的に活性な熱ショックタンパク質をコードする核酸配列を含むことができる。rAAVベクターは、核酸配列の上流に位置するプロモーター配列を含むこともできる。プロモーター配列は、網膜神経節細胞における核酸配列の発現を誘導することができる。rAAVベクターは、被験体における網膜疾患、傷害または病態の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防または緩和するように配合され得る。
【0017】
本概要は、本開示の完全な範囲(extent and scope)を代表すると意図されるものではなく、そのように解釈されるべきでもない。さらに、本明細書における「本開示」またはその態様への言及は、本開示の或る特定の実施形態を意味すると理解すべきであり、必ずしも全ての実施形態を特定の記載に限定すると解釈されるべきではない。本開示は、添付の図面および詳細な説明のみならず、本概要に様々な詳細度で記載され、本概要に要素、構成要素等を含めるか、または含めないことによる、本開示の範囲に関する限定は意図されない。開示の実施形態のいずれかからの特徴は、限定されることなく互いに組み合わせて用いることができる。加えて、本開示の他の特徴および利点が、以下の詳細な説明および添付の図面を検討することにより、当業者に明らかとなるであろう。
【0018】
図面は、本発明の幾つかの実施形態を説明するものであるが、同一の参照番号は、図面に示される異なる図または実施形態において同一または類似の要素または特徴を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本明細書に開示される実施形態によるHsp27タンパク質をコードする核酸配列を含むrAAVベクターのマップである。
図2】本明細書に開示される実施形態によるαA-クリスタリンタンパク質をコードする核酸配列を含むrAAVベクターのマップである。
図3】本明細書に開示される実施形態によるαB-クリスタリンタンパク質をコードする核酸配列を含むrAAVベクターのマップである。
図4】本明細書に開示される実施形態によるHsp20タンパク質をコードする核酸配列を含むrAAVベクターのマップである。
図5】本明細書に開示される実施形態による、Brna3免疫染色による健常および緑内障マウスに由来するRGCに対する様々なrAAV2ベクターの効果を示す共焦点顕微鏡画像である。
図6】本明細書に開示される実施形態による、健常および緑内障マウスに由来するRGCに対する様々なrAAV2ベクターの定量的効果を示す棒グラフである。
図7A】rAAV2-Hsp27の硝子体内投与によって媒介されるRGCにおけるHsp27の発現を示す共焦点顕微鏡画像である。
図7B図7Aに示すRGCから抽出されたHsp27タンパク質を示すウエスタンブロットである。
図8A】rAAV2-αA-クリスタリンの硝子体内投与によって媒介されるRGCにおけるαA-クリスタリンの発現を示す共焦点顕微鏡画像である。
図8B図8Aに示すRGCから抽出されたαA-クリスタリンタンパク質を示すウエスタンブロットである。
図9A】rAAV2-αB-クリスタリンの硝子体内投与によって媒介されるRGCにおけるαB-クリスタリンの発現を示す共焦点顕微鏡画像である。
図9B図9Aに示すRGCから抽出されたαB-クリスタリンタンパク質を示すウエスタンブロットである。
図10A】rAAV2-Hsp20の硝子体内投与によって媒介されるRGCにおけるHsp20の発現を示す共焦点顕微鏡画像である。
図10B図10Aに示すRGCから抽出されたHsp20タンパク質を示すウエスタンブロットである。
図11A】本明細書に開示される実施形態による眼内圧に対するマイクロビーズ注射の効果を示す折れ線グラフである。
図11B図11Aに示すマイクロビーズベースの高眼圧症のマウスモデルにおけるRGC死に対する硝子体内rAAV2-HspB1投与の効果を示す棒グラフである。
図11C】本明細書に開示される実施形態によるBrna3免疫染色を用いた健常マウスまたは高眼圧症に罹患したマウスのRGCに対する硝子体内rAAV2-HspB1投与の効果を示す共焦点顕微鏡画像である。
図12A】本明細書に開示される実施形態によるマイクロビーズベースの高眼圧症のマウスモデルにおけるRGC軸索輸送に対する硝子体内rAAV2-HspB1投与の効果を示す棒グラフである。
図12B】本明細書に開示される実施形態によるCT-B染色を用いたRGC軸索輸送に対する硝子体内rAAV2-HspB1投与の効果を示す共焦点顕微鏡画像である。
図13A】本明細書に開示される実施形態によるrAAV2-HspB1投与の前後の眼内圧に対する複数回のマイクロビーズ注射の効果を示す折れ線グラフである。
図13B図13Aに示すマイクロビーズベースの高眼圧症のマウスモデルにおけるRGC死に対する硝子体内rAAV2-HspB1投与の効果を示す折れ線グラフである。
図13C】本明細書に開示される実施形態によるBrna3免疫染色を用いた図13Bに示すRGCに対する硝子体内rAAV2-HspB1投与の効果を示す共焦点顕微鏡画像である。
図14A】マイクロビーズベースの高眼圧症のマウスモデルにおけるRGC軸索輸送に対する硝子体内rAAV2-HspB1投与の効果を示す棒グラフである。
図14B】CT-B染色を用いた図14Aに示すRGC軸索輸送に対する硝子体内rAAV2-HspB1投与の効果を示す共焦点顕微鏡画像である。
図15A】本明細書に開示される実施形態によるrAAV2-HspB1投与後20週間にわたる眼内圧に対するマイクロビーズ注射の効果を示す折れ線グラフである。
図15B】本明細書に開示される実施形態によるマイクロビーズ注射およびrAAV2-HspB1投与を受けた網膜で測定されたパターン網膜電図(「PERG」)振幅を示す棒グラフである。
図16】本明細書に開示される実施形態による網膜グリオーシスに対する硝子体内rAAV2-HspB1投与の効果を示す共焦点顕微鏡画像パネルである。
【0020】
詳細な説明
本開示は、緑内障および関連する眼損傷を含む網膜疾患、傷害または病態の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防および/または緩和するための組成物、方法およびシステムに関する。実施形態は、Hsp27等の少なくとも1つのHSPをコードするrAAVベクターを含む医薬組成物を投与することを含む遺伝子療法アプローチによってRGC死を低減または予防することを含む。特にRGCにおけるHSPレベルを上昇させるために、rAAVベクターは、HSP配列に操作可能に連結したRGC特異的プロモーター配列を含み得る。許容可能な担体および/または添加剤も含み得る医薬組成物は、被験体が緑内障(例えば正常眼圧緑内障)等の眼病態と診断される前および/もしくは後、または被験体が眼傷害を受けた後に1回以上投与することができる。幾つかの例では、医薬組成物の1回の投与だけで、眼病態を効果的に治療または予防するのに十分であり得る。開示の方法で、例えば硝子体内に医薬組成物を投与すると、眼内の抗アポトーシスHSPのレベルが上昇することで、そうでなければ傷害または眼病態の発症後に起こり得るRGC死が顕著に阻害される可能性がある。本明細書に記載される遺伝子療法に従って用いられるrAAVベクターは、有利には、低い免疫原性および最小限の細胞毒性を示し得る。要するに、これらの利点により、眼療法の分野で以前に検討されていなかった安全で効果的な方法でRGC死を予防、低減および/または減速することができる。
【0021】
以下に別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の目的上、以下の用語を明確にするために定義する。
【0022】
本明細書で使用される場合、HSPは、それぞれ約80~約100アミノ酸残基の範囲のクリスタリンコアドメインを有するストレスタンパク質である。HSPは、更なる生理的機能の中でも、それらが存在する細胞内で抗アポトーシス活性および分子シャペロン活性を示すことがある。HSPは、低分子量HSP(約12~43kDa)と高分子量HSP(約100~110kDa)とに分類することができる。低分子量HSPの例としては、Hsp27(HspB1とも呼ばれる)、Hsp20(HspB6とも呼ばれる)およびα-クリスタリン(αAおよびαBの2つのサブユニットから構成される)が挙げられる。高分子量HSPとしては、例えばHsp90が挙げられる。本開示において、HSP遺伝子または配列は、HSPタンパク質またはその一部をコードする核酸配列を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「被験体」は、ヒトまたは他の哺乳動物を意味する。非ヒト被験体には、例えば家庭用ペットおよび/または家畜等の様々な哺乳動物が含まれ得るが、これらに限定されない。被験体は、治療を必要とするとみなすことができる。開示の組成物、方法およびシステムは、健常なヒト被験体、緑内障と診断された患者、1つ以上の他の眼疾患と診断された患者、様々な眼傷害を患っている患者、糖尿病患者、または視力喪失を起こしている患者の治療に効果的であり得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「眼病態」は、被験体の片眼または両眼に悪影響を及ぼすものを含む、眼に関係する全ての疾患または病態を包含する。本明細書に開示される治療方法の標的とされる眼疾患、傷害および病態は、特に網膜組織を損傷する可能性がある。本明細書で企図される眼病態の非限定的な例としては、緑内障、正常眼圧緑内障、黄斑変性、糖尿病性眼疾患、糖尿病性網膜症、網膜グリオーシス、網膜剥離、網膜色素変性症、RGC死、眼内圧上昇、興奮毒性損傷、物理的損傷(例えば、虚血および/または再灌流)、化学的損傷、神経栄養因子欠乏、酸化ストレス、炎症、ミトコンドリア機能不全、軸索輸送不全またはそれらの組合せを挙げることができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「緑内障」は、視神経の不可逆的損傷による視覚機能の永久的喪失を特徴とする疾患を指す。緑内障の2つの主なタイプは、原発性開放隅角緑内障および閉塞隅角緑内障であり、これらの一方または両方を本明細書に記載される実施形態に従って治療することができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「眼内圧」という用語は、眼球内の液体の圧力を指す。正常なヒトの眼の眼内圧は通例、約10~約21mmHgの範囲である。眼内圧「上昇」は従来、約21mmHg以上と考えられる。眼内圧上昇は、緑内障の発症のリスク因子であり得る。
【0027】
本明細書で企図される網膜損傷の治療は、疾患、傷害または他の病態によって引き起こされるか、またはそれと関連する網膜損傷の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防または緩和することを包含する。したがって、「治療する」、「治療」または「緩和」は、治療処置および予防(prophylactic or preventative)措置の両方を指し、その目的は、標的の病的状態および/または症状を予防または減速(軽減)することである。治療を必要とする人には、病態を罹患または発症する傾向がある人だけでなく、既に病態と診断された人が含まれる。被験体が本開示の方法に従って治療有効量の医薬組成物を受けた後、視力障害、視力喪失、視力異常、RGC軸索変性、RGCの細胞体の損傷、およびRGC死の1つ以上の観察可能かつ/もしくは測定可能な低減、またはその欠如を示す場合、被験体は網膜損傷の「治療」に成功する。「治療する(treat)」または「治療する(treating)」という用語は、本明細書において説明を簡単にするためだけに一貫して使用され、したがって限定的なものと解釈されるべきではない。
【0028】
「低減する(Reducing)」、「低減する(reduce)」または「低減」は、網膜損傷の重症度、範囲、頻度または長さを減少させることを意味する。
【0029】
rAAVベクターを含む組成物の「有効量」は、具体的に記載された目的を果たすのに十分な量であり、記載の目的に関して経験的に日常的な方法で決定することができる。例えば、本明細書で使用される「有効量」は、被験体のRGCにおけるHSPタンパク質産生を増大または増強するrAAVベクターの量と定義することができる。「治療有効量」という用語は、被験体における網膜疾患、傷害または病態の少なくとも1つの症状を検出可能に繰り返して治療、リスク低減、予防または緩和するrAAVベクターを含む組成物の量を指す。これには、眼内圧上昇、RGC細胞体損傷、RGC死、視力喪失および/またはRGC軸索変性等の疾患の兆候または症状の頻度または重症度の低減が含まれるが、これらに限定されない。かかる改善は、本明細書に開示される方法に従って開示の医薬組成物を投与していない眼または被験体と比べて検討され得る。治療により病状が改善し得るが、疾患の完全な治癒ではない可能性があることが当業者には理解される。例えば、緑内障患者の治療の成功は、患眼における視野喪失がそれ以上進行しないこと、または患眼における視野喪失の進行速度が減速することから明らかであり得る。
【0030】
化合物、組成物または作用物質「の投与」および「を投与する」は、本明細書に記載される化合物、組成物もしくは作用物質、化合物、組成物もしくは作用物質のプロドラッグ、または医薬組成物の提供を意味すると理解されるべきである。化合物、作用物質または組成物は、他者が被験体へと(例えば、硝子体内または腹腔内に)提供もしくは投与してもよく、または被験体が自己投与してもよい。
【0031】
「医薬組成物」または「医薬配合物」は、或る量(例えば単位投与量)の開示の化合物、例えばrAAV-HSPの1つ以上を、担体、希釈剤および/またはアジュバントを含む1つ以上の非毒性の薬学的に許容可能な添加物、ならびに任意に他の生物学的に活性な成分とともに含む組成物である。かかる医薬組成物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa. (19th Edition)に開示されているような標準的な医薬配合技術によって調製することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な添加剤」または「薬学的に許容可能な担体」は、医薬組成物の所望の形態または粘稠度に寄与する薬学的に許容可能な材料、組成物またはビヒクルを意味する。各々の添加剤または担体は、被験体に投与した場合に本開示の組成物の有効性を実質的に低下させる相互作用、および薬学的に許容可能でない医薬組成物をもたらす相互作用が回避されるように、混合した場合に医薬組成物の他の成分に適合する必要がある。加えて、各々の添加剤または担体は、薬学的に許容可能となるように十分に高純度である必要がある。薬学的に許容可能な担体の非限定的な例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油等を挙げることができる。付加的または代替的には、担体は滑沢剤、湿潤剤、香料、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤等を含むことがある。
【0033】
本明細書で使用される場合、「アデノウイルス」という用語は、非エンベロープ一本鎖DNAウイルスを指す。「組換えアデノ随伴ウイルスベクター」または「rAAVベクター」という用語は、少なくとも1つの「HSP配列」を含む組換えアデノウイルス構築物を指し、「HSP配列」はHSP、HSPフラグメントまたはHSPドメインをコードする核酸配列、例えば遺伝子を指す。遺伝子発現およびDNA複製に必要とされる付加的な核酸配列が、所与のrAAVベクターに含まれていてもよい。かかる配列には、1つ以上のポリアデニル化配列、複製起点、転写エンハンサー等とともにHSP配列に操作可能に連結した組織特異的プロモーターが含まれ得る。開示のrAAVベクターは、標的細胞に高い導入効率で導入することができ、そこでベクターが少なくとも1つのHSP構築物を発現する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「操作可能に連結した」という用語は、要素が通常の機能を果たすことを可能にする要素の配置を指す。例えば、HSP配列等のDNAコード配列は、コード配列がmRNAに正確に転写され、スプライシング/結合され、ポリペプチドに翻訳され、生じるタンパク質が生細胞内で適切に機能するのに必要な立体構造にフォールディングするように、プロモーター、エンハンサーおよび/またはターミネーター配列等に融合させることができる。プロモーターおよび/または付加的な調節要素は、かかる要素がHSP配列の発現を指示する限りにおいて、必ずしもHSP配列と連続していなくてもよい。例えば、転写されたDNA配列がプロモーター配列とHSP配列との間に存在していても、プロモーター配列がコード配列に「操作可能に連結する」とみなすことができる。組換えベクターへの操作可能な連結は、相同的組換え等の当該技術分野で既知の遺伝子組換え技術を用いて作製することができる。
【0035】
本明細書に開示されるrAAVベクターは、異種、組織特異的、構成的または誘導性のプロモーターを含むことができる。実施形態には、RGCにおいて特異的に少なくとも1つのHSPをコードする1つ以上の核酸の強固な発現を誘導するRGC特異的プロモーターが含まれる。幾つかの実施形態では、RGC特異的プロモーターは、RGCにおいてのみ発現を駆動することで、潜在的なオフターゲット効果を最小化または排除することができる。幾つかの実施形態では、プロモーターはヒトDNA、ミニRGC特異的ニューロフィラメント軽鎖プロモーター、例えばPle345-NEFLを含み得る。RGC喪失が緑内障に罹患した被験体における失明の主要なドライバーであるため、RGC特異的プロモーターは、疾患を発症するリスクがあるまたは既に疾患と診断された被験体においてRGC喪失を予防するうえで重要である可能性がある。
【0036】
開示の遺伝子療法および関連システムでは、RGCにおけるHSPの発現を誘導するように構築されたrAAVベクターの形態の発現構築物を含む医薬組成物を利用する。本明細書で使用される場合、「発現構築物」は、HSPまたはそのペプチドフラグメントをコードする核酸を含む任意のタイプの遺伝子構築物を指すことがある。発現構築物は、それにコードされるHSPの上方調節または過剰発現を駆動することができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「同一性」または「類似性」という用語は、配列を比較することによって決定される2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列間の関係を表す。当該技術分野において、同一性はまた、配列の文字列間の一致によって決定されるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味する。
【0038】
単数形の用語「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他の指定がない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または」という語は、文脈上明らかに他の指定がない限り、「および」を含むことを意図したものである。「含む(comprises)」という用語は「含む(includes)」を意味する。また、「AまたはBを含む」とは、文脈上明らかに他の指定がない限り、AもしくはBまたはAおよびBを含むことを意味する。本開示の実施または試験において、本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。加えて、材料、方法および例は例示にすぎず、限定を意図したものではない。
【0039】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照文献は、参照により本明細書に援用される。本明細書で引用される参照文献は、請求項に係る発明の先行技術であるとは認められない。
【0040】
ベクター
本開示のベクターは、RGC特異的プロモーター配列とともに少なくとも1つのHSPをコードするrAAVベクターを含む。
【0041】
図1は、本明細書の実施形態に従って用いられる、配列番号1を有する例示的なrAAVベクター100を示す。示されるように、rAAVベクター100は、この例ではPle345 NEFLであるRGC特異的プロモーター104の下流に配置されたHsp27コード配列102(「Hsp27配列」)を含む。幾つかの例では、Hsp27は、眼傷害または疾患と関連するRGC死を予防、低減および/または減速するのに最も効果的なHSPであり得る。Hsp20、αA-クリスタリンおよび/またはαB-クリスタリンを含む付加的なHSPも、本明細書に開示されるrAAVベクターによって被験体に送達された場合にRGC死に効果的に対抗する可能性がある。かかるHSPは、幾つかの例ではHsp27より効果が低いことがある。特定のHSPは、治療される被験体および/もしくは病態、ならびに/または治療方法に応じて様々な有効性レベルを示す可能性がある。上述のHSPの1つ以上が、RGCの細胞体および/または軸索を、損傷または疾患によって引き起こされる変性から保護するのに特に効果的であり得る。
【0042】
rAAVベクター100のHsp27配列102およびそのプロモーター104には、ウイルス複製およびパッケージングを促進する2つの逆方向末端反復106a,106bが隣接する。シャイン-ダルガノ配列108の形のリボソーム結合部位も、mRNAプロセシングおよびHSP発現を増強するキメライントロン配列110と同様に含まれる。rAAVベクター100はまた、ウッドチャック肝炎転写後調節要素(「WPRE」)112、SV40ポリアデニル化配列114、SV40pA-R配列116、および酵素的制限切断のための第Xa因子部位118を含む。rAAVベクターは複製起点120を含み、転写時のRNAポリメラーゼの結合のためにlacプロモーター122および重複lacオペレーター配列124を含む。f1複製起点126は、ファージ粒子へのssDNAのパッケージングを促進する。in vitro選択のために、例示するrAAVベクター100は、アンピシリン耐性遺伝子128および上流のプロモーター130も含む。抗生物質耐性カセットは、哺乳動物注射用に構築されるrAAVベクターの実施形態を含む全ての実施形態に含まれていなくてもよい。1つ以上の付加的なDNA構築物が種々の実施形態に含まれていてもよく、例示したDNA構築物の1つ以上を除外してもよい。
【0043】
本発明のrAAVベクターの作製に使用される特定のアデノウイルスは様々であり得る。例えば1型、2型、3型、4型、5型等を使用することができる。具体的に図示する実施形態では、rAAVベクターはアデノ随伴ウイルス2型ベクター(「rAAV2ベクター」)である。
【0044】
Hsp27配列102は、野生型Hsp27タンパク質をコードする核酸配列を含み得る。付加的または代替的には、実施形態はHSPの一部、例えばHsp27の一部を構成するポリペプチドをコードする核酸配列を含むことができる。かかる配列は、野生型Hsp27をコードする核酸配列と約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%または約99%同一であり得る。
【0045】
付加的または代替的には、本明細書で企図されるrAAVベクターは、幾つか例を挙げるとHsp20、αA-クリスタリンまたはαB-クリスタリン等の1つ以上の異なるHSPをコードする1つ以上の核酸配列を含むことができる。したがって、単一のrAAVベクターは、1つのHSPまたは複数のHSPのコード配列を含み得る。
【0046】
幾つかの例では、rAAVベクターは、スクリーニングおよび/または追跡目的でレポーター遺伝子および/またはマーカーを含むことができる。例示的なレポーター遺伝子としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、改変緑色蛍光タンパク質(mGFP)、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、改変赤色蛍光タンパク質(mRFP)、増強赤色蛍光タンパク質(ERFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、増強青色蛍光タンパク質(EBFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、増強黄色蛍光タンパク質(EYFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、増強シアン蛍光タンパク質(ECFP)等をコードする遺伝子を挙げることができる。
【0047】
医薬組成物
本開示の医薬組成物は、RGC死および/または網膜グリオーシスによって引き起こされるか、またはそれと関連する眼疾患、傷害および/または病態の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防または緩和するのに適している。医薬組成物の実施形態は、RGC特異的プロモーター配列とともに少なくとも1つのHSPをコードするrAAVベクターを含み得る。医薬組成物は、被験体の標的部位へのrAAVベクターの送達を促進および/または安定化するように構成される薬学的に許容可能な担体を含んでいてもよい。
【0048】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、各々が1つ以上の固有のHSPをコードする2つ以上の異なるrAAVベクターの混合物を含んでいてもよい。例えば、医薬組成物は、Hsp27をコードするrAAVベクター、Hsp20をコードするrAAVベクター、αA-クリスタリンをコードするrAAVベクター、および/またはαB-クリスタリンをコードするrAAVベクターを含み得る。
【0049】
実施形態において、医薬組成物は1つ以上の添加剤を含むか、またはそれと同時に投与することができる。好適な添加剤は、用いられる特定の投与量によって異なることがある。加えて、好適な添加剤は、安定な剤形の製造を容易にする能力等の特定の機能によって選ばれ得る。添加剤は、規則遵守のために選ばれることもある。非限定的な添加剤の例としては、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、造粒剤、コーティング剤、湿潤剤、溶媒、共溶媒、懸濁化剤、乳化剤、着色料、固化防止剤、保湿剤、キレート剤、可塑剤、粘性剤、酸化防止剤、防腐剤、安定剤および界面活性剤が挙げられる。当業者であれば、或る特定の薬学的に許容可能な添加剤が2つ以上の機能を果たすことがあり、最終組成物中に添加剤がどの程度存在し、組成物中に他のどの成分が存在するかに応じて代替的な機能を果たすことがあることを理解するであろう。
【0050】
実施形態において、rAAVベクターを1つ以上の緩衝剤および/または希釈剤と同時に投与することができ、その非限定的な例としては、様々な濃度の水酸化ナトリウムおよびリン酸ナトリウムを挙げることができる。
【0051】
特定の添加剤および/または担体の含有は、投与経路によって異なり得る。例えば、非経口投与用の調製物には、滅菌水溶液、非水溶媒、懸濁液、エマルション、凍結乾燥調製物および/または坐剤が含まれ得る。非水溶媒としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油および/または注射用エステルを挙げることができる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール、マクロゴール、tween 61、カカオバター、ラウリンバター、グリセロゼラチン等を使用することができる。ペプチドの安定性または吸収性を高めるために、グルコース、スクロースもしくはデキストラン等の炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオン等の酸化防止剤、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定剤を使用することができる。
【0052】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は局所組成物、例えば液滴形態で提供してもよい。点眼剤は1つ以上の分散剤、可溶化剤および/または懸濁剤も含む水性または非水性基剤を用いて配合することができる。かかる実施形態によると、医薬組成物中のrAAVベクターの濃度は、硝子体内実施態様に用いられる濃度よりも高いことがある。
【0053】
治療的アプローチ
眼病態を治療する方法は、治療有効量の本明細書に開示されるrAAV-HSP組成物を被験体の眼に投与することを含み得る。組成物は、眼傷害を受けるか、または眼疾患が診断された後に投与することができる。実施形態は、被験体が疾患を発症するのを予防するか、または疾患発症時の症状の重症度を軽減するために、未診断の被験体に開示のrAAV-HSP組成物を投与することも含み得る。幾つかの例では、予防的投与は、被験体に平均を上回る眼疾患発症リスクがあると決定された後に行ってもよい。幾つかの実施形態では、開示の医薬組成物の単回硝子体内投与により、眼内の1つ以上のHSPの濃度を、未治療のままであれば別の方法で不可逆的網膜損傷を引き起こし得るRGC喪失を低減するのに十分なレベルにまで増加させることができる。実施形態では、1つ以上のHSPの濃度を標的RGCの細胞体において特異的に増加させることができる。
【0054】
硝子体内投与が網膜損傷の局部的な改善に最も効果的である可能性があるが、具体的な投与方法は様々であり得る。許容可能な投与方法の非限定的な例としては、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与または局所投与を挙げることができる。
【0055】
前節で述べたように、医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含むか、またはそれと同時に投与することができる。関連して、医薬組成物は単独で、または他の治療剤と組み合わせて連続的もしくは同時に投与することができる。かかる付加的な作用物質は、同じ眼病態を治療するために配合しても、またはそうでなくてもよい。
【0056】
幾つかの例では、1つ以上の用量の本明細書に開示される医薬組成物を含み得る単回投与だけで、緑内障およびその1つ以上の症状を含む眼病態を治療するのに十分である可能性がある。1回しか投与が必要でないことにより、患者ノンコンプライアンスの問題を回避することができ、それにより成功の可能性がさらに高まる。2回以上の投与を必要とする被験体については、投与頻度を変化させることができる。実施形態において、薬学的有効量の組成物を毎週、毎月または毎年投与することができる。開示の組成物を被験体に投与する回数は、治療期間の長さとともに、網膜損傷を引き起こすか、またはそのリスクがある病態の重症度またはタイプによって異なり得る。例えば、医薬組成物を投与して眼傷害を治療する実施形態は、より持続的な治療アプローチを必要とし得る、rAAV組成物を投与して緑内障等の疾患を治療する実施形態よりも少ない個別投与を含むことがある。治療期間の長さも患者特有であり、医師または他の医療供給者によって定期的に再評価され得る。様々な実施形態において、医薬組成物は傷害の直後、例えば傷害から1、2、6、12または24時間以内に投与することができる。配合物は1回または複数回、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上投与することができる。幾つかの例では、単回用量の開示の医薬組成物により、眼病態を少なくとも約20週間にわたって効果的に治療することができる。かかる例によると、医薬組成物は20週間に1回投与され得る。
【0057】
本明細書に開示される医薬組成物は、本明細書に記載される目的で特別に構成され得るツベルクリン注射器または点滴デバイス等の注射デバイスを用いて投与することができる。幾つかの例では、投与デバイスは単回使用デバイスであってもよく、これは単回用量の医薬組成物も含むキットに含まれていてもよい。したがって、注射デバイスは、網膜損傷の少なくとも1つの症状を治療、リスク低減、予防または緩和するためのシステムの一部を構成し得る。
【0058】
被験体に投与される医薬組成物の治療有効量は変化し得る。実施形態において、被験体に提供される医薬組成物の各硝子体内用量は、約2×10pfu/ml~約1×1010pfu/ml、もしくは約1×1010ウイルスゲノム/ml(vg/ml)、約1×1011vg/ml、約1×1012vg/ml、約1×1013vg/ml、約1×10vg/眼、約5×10vg/眼、もしくはそれ以上の範囲のrAAV濃度、またはその間の任意の濃度を含み得る。投与は、例えば治療される病態、病態の重症度、配合物の性質、投与方法、被験体の状態、被験体の年齢、被験体の体重、またはそれらの組合せによって異なり得る。投与量レベルは通例、in vitro、in vivoまたは組織培養において有効であることが示された濃度と少なくとも同じ濃度を作用部位で達成するのに十分なものである。
【0059】
複数の投与技術およびスケジュールに対応するために、本明細書に開示される医薬組成物は、当業者に用いられる方法に従い、薬学的に許容可能な担体および/または添加剤とともに単位投与形態または複数投与形態で調製することができる。例示的な配合物は、水性もしくは油性溶液、懸濁液、またはエマルションの形態であり得る。安定性の向上および長期保存のために、医薬組成物を凍結乾燥してもよい。
【0060】
以下の実験例は、本発明の例示的な実施形態を説明するために提供され、限定的なものとみなすべきではない。
【0061】
実施例
実施例1
緑内障等のRGC死を特徴とする網膜病態に対する様々なHSPのrAAV2媒介送達の効果を評価するために、緑内障のマウスモデルを作製し、本明細書に開示される医薬組成物を1回硝子体内投与して治療した。
【0062】
緑内障マウスモデルの作製は、野生型(WT)マウスを麻酔し、眼内圧を15mmHgから120mmHgに上昇させることによって虚血/再灌流(I/R)傷害を生じさせることを含むものであった。上昇させた圧力を1時間維持した後、正常範囲内の圧力まで再び低下させた。この手順により、緑内障患者で観察されるRGC死の程度と同様の相当量のRGC死(>50%)が引き起こされた。
【0063】
硝子体内注射は、ハミルトン注射器(Hamilton Bonaduz AG,Bonaduz,Switzerland)に取り付けたガラスピペットを用いて行った。眼瞼を慎重に広げ、33ゲージ針を縁郭の真後ろの硝子体に向かって45°の角度で強膜から硝子体へと挿入した。2μLの溶液を各注射の間に30秒の間隔を空けて1μLずつ注射した。注射後に針をゆっくりと引き抜き、注射部位を局所抗生物質で処置した。
【0064】
I/R傷害の4週間前に、コードされる特定のHSPのみが異なる4つの別個のrAAV2治療ベクターを治療マウスの別々の群に硝子体内投与し、RGC死を予防、低減および/または減速する能力について評価した。I/R傷害を受けていない無傷の対側眼および傷害を受けた対側眼を、それぞれ健常対照および非治療緑内障対照として用いた。
【0065】
配列番号2を有する1つのrAAV2ベクターであるrAAV2-HspB4のマップを図2に示す。示されるように、rAAV2-HspB4 200は、Hsp27配列102の代わりにHspB4(αA-クリスタリン)コード配列202を含むことによってのみ、rAAV2-Hsp27(図1を参照されたい)と異なる。図3は、Hsp27配列102の代わりにHspB5(αB-クリスタリン)コード配列302を含む、配列番号3を有する別のrAAV2ベクターであるrAAV2-HspB5のマップを示す。図4は、Hsp27配列102の代わりにHspB6(Hsp20)コード配列402を含む、配列番号4を有する第3のrAAV2ベクターであるrAAV2-HspB6のマップを示す。最終ベクターであるrAAV2-HspB1は、配列番号1を含み、図1に示されるようにrAAV2-Hsp27と同一である(Hsp27=HspB1)。
【0066】
I/R傷害の14日後およびrAAV2投与の6週間後に、全てのマウスを麻酔し、網膜を解剖し、平らにマウントし、RGCのマーカーであるBrn3a(脳特異的ホメオボックス/POUドメインタンパク質3A)について免疫染色した。RGC細胞体損傷および全RGC喪失に対する1回限りの硝子体内rAAV2投与の効果を図5に示す。より高いBrn3a陽性RGC染色(右下のスケールバー=100μm)から明らかなように、RGC数は健常治療群502から摘出した対側網膜で最も多く、非治療緑内障群504から摘出した対側網膜で最も少なかった。健常マウスと比べて、rAAV2-HspB1治療群512のRGC数が最も多く、その後にrAAV2-HspB6治療群510、rAAV2-HspB5治療群508およびrAAV2-HspB4治療群506が続いた。したがって、rAAV2-HspB1(rAAV2-Hsp27)が、緑内障のマウスモデルにおいてRGC喪失を低減するのに最も効果的であった。注目すべきことに、他のHSPをコードするrAAV2ベクターも、非治療緑内障マウスと比べてRGC喪失を低減し、単独または組合せで眼病態を治療する潜在的有効性が示された。
【0067】
切除した網膜1平方ミリメートル当たりに存在するRGCの数に基づく、RGC喪失に対する各rAAV2ベクターの1回限りの硝子体内投与の定量的効果を図6にグラフで示す。ここで、ns=有意でない、p<0.05および***p<0.001である。示されるように、I/R傷害を受けていない健常対照マウス(「Cont」)は、1mm当たり2000個を超えるRGCを有していたが、非治療緑内障マウス(「ビヒクル」)は、有意なRGC喪失を示した。非治療緑内障マウスと比べて、rAAV2-HspB5、rAAV2-HspB6およびrAAV2-HspB1で治療した緑内障マウスは全て、RGC喪失の統計的に有意な予防を示した。本研究では統計的に有意ではなかったが、rAAV2-HspB4で治療した緑内障マウスでもRGC喪失の予防が観察された。
【0068】
緑内障のマウスモデルを用いて得られたデータに鑑みると、HSPをコードするrAAV2ベクターの僅か1回の硝子体内投与が、RGCを変性から有意に保護し、RGC喪失を低減するのに効果的な可能性があり、rAAV2-HspB1(またはrAAV2-Hsp27)が最も効果的である。RGC細胞体および軸索はどちらも、本明細書に開示されるrAAV2ベクターの投与によって保護され得るが、rAAV2-HSP投与の保護効果は、軸索とは対照的にRGC細胞体において特に顕著である可能性がある。このため、開示のrAAV2ベクターは、緑内障等の眼傷害または疾患を患っている哺乳動物、例えばヒトにおいて視力喪失を予防するか、または少なくとも低減することができる長期的効果を示す可能性がある。
【0069】
実施例2
実施例1で評価したrAAV2ベクターが効果的にRGCに浸透し、その中で少なくとも1つのHSPの持続的な過剰発現を誘導するかを確認するために、非治療マウスおよび試験rAAV2ベクターの1つで治療したマウスから得た網膜切片を、硝子体内注射の1ヶ月後に投与したHSPについて免疫染色した。標的RGCも硝子体内投与の1ヶ月後に消化し、各HSPに特異的な抗体を用いて行ったウェスタンブロッティングによりHSPタンパク質レベルを決定した。
【0070】
図7Aに示されるように、rAAV2-Hsp27を投与していない対側眼から得られた対照RGCと比べて、rAAV2-Hsp27を硝子体内注射した網膜のRGCにおいてHsp27が過剰発現された。図7Bにグラフで示されるように、rAAV2ベクターに感染させていない対照細胞の二連サンプル(レーン1およびレーン2)は、検出可能なHsp27タンパク質を全く含まなかったが、rAAV2-Hsp27に感染させた細胞の二連サンプルは、レーン3およびレーン4に存在する濃い約25kDaのバンドによって示される、強固なレベルのHsp27を含んでいた。
【0071】
図8Aは、rAAV2-αA-クリスタリンを投与していない対側眼から得られた対照RGCと比べて、rAAV2-αA-クリスタリンを硝子体内注射した網膜のRGCにおいてαA-クリスタリンが過剰発現されたことを示す。図8Bに示されるように、rAAV2-αA-クリスタリンに感染させたRGCの二連サンプルは、レーン3およびレーン4に存在する濃い約19kDaのバンドによって示される、強固なレベルのαA-クリスタリンを産生した。レーン1およびレーン2は、rAAV2ベクターに感染させていない対照細胞が、検出可能なαA-クリスタリンタンパク質を全く含まなかったことを示す。
【0072】
図9Aは、rAAV2-αB-クリスタリンを投与していない対側眼から得られた対照RGCと比べて、rAAV2-αB-クリスタリンを硝子体内注射した網膜のRGCにおいてαB-クリスタリンが過剰発現されたことを示す。図9Bのブロットは、rAAV2-αB-クリスタリンに感染させたRGCが、レーン3およびレーン4に存在する濃い約20kDaのバンドによって示される、強固なレベルのαB-クリスタリンを産生したことを示す。レーン1およびレーン2は、rAAV2ベクターに感染させていない対照細胞が、検出可能なαB-クリスタリンタンパク質を全く含まなかったことを示す。
【0073】
図10Aは、rAAV2-Hsp20を投与していない対側眼から得られた対照RGCと比べて、rAAV2-Hsp20を硝子体内注射した網膜のRGCにおいてHsp20が同様に過剰発現されたことを示す。図10Bのブロットは、rAAV2-Hsp20に感染させたRGCが、レーン3およびレーン4に存在する濃い約18kDaのバンドによって示される、強固なレベルのHsp20を産生したことを示す。レーン1およびレーン2は、rAAV2ベクターに感染させていない対照細胞が、検出可能なHsp20タンパク質を全く含まなかったことを示す。
【0074】
実施例3
rAAV2-HspB1がRGC死を予防することができるかを決定するために、高眼圧症のマウスモデルを採用し、眼内圧が上昇する前にマウスにベクターの硝子体内注射を行った。
【0075】
rAAV2-HspB1投与の予防効果を試験する最初の実験では、試験動物において高眼圧症を誘導する2週間前に、HBSS中の1×10vg/眼または5×10vg/眼のいずれかの単回用量のrAAV2-HspB1を治療マウスの別々の群に硝子体内注射した。2週間後、初めにマウスを0.5%塩酸プロパラカインの局所適用で補助したケタミン/キシラジンの腹腔内注射によって麻酔することで高眼圧症モデルを作製した。ポリスチレンマイクロビーズ(直径10μm、PBS 1mL当たり500万個のビーズ)を各動物の右眼の前房に注射することにより、高眼圧症を片側でのみ誘導した。33G針を用いて角膜の中央付近を静かに穿刺し、小さな気泡を注入して前眼房を持ち上げた。少量(2μL)のマイクロビーズを、ハミルトン注射器に接続したマイクロピペットによって気泡下の前房に注射した。感染を予防するために、注射した眼に抗生物質軟膏を局所適用した。
【0076】
眼圧計を用い、眼内圧を4週間にわたって毎週測定した。特に、イソフルランの持続流(酸素と混合した2L/分の5%イソフルラン)で満たした麻酔室にマウスを入れた。毎週のチェックイン毎に眼圧計により5回測定し、最高および最低の読取り値を除外し、残りの読取り値から各マウスについて平均眼内圧を生成した。
【0077】
マイクロビーズ注射の4週間後に眼を解剖し、4%PFAを用いて4℃で一晩、後固定した。網膜を続いて解剖し、PBSで3回洗浄した後、一晩ブロッキングした(PBS中の5%正常ロバ血清および1%Triton X-100)。次いで、全載網膜をRGCのマーカーであるBrn3aについて免疫染色した。Brn3a陽性RGC数は、ImageJソフトウェア(NIH)を用いて、全載網膜の4つの象限から中間周辺部で計数した(細胞/mm)。対側の無傷眼を対照として用いた。
【0078】
図11Aに示されるように、眼マイクロビーズ注射により、眼内圧は1週間で約11mmHgから約18mmHgに上昇した。眼内圧は、その後低下し、マイクロビーズ注射の4週間後に約14mmHgの最低値に達した。高眼圧(hypertension)マウスにおける眼内圧は、マイクロビーズを注射していない対照マウスよりも有意に高かった(***p<0.001、****p<0.0001、0日目と比較)。
【0079】
rAAV2-HspB1注射の6週間後のRGC生存に対するrAAV2-HspB1の硝子体内投与の影響を図11Bにグラフで示す。ここで、ns=有意でない、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001である。示されるように、眼内圧上昇を受けないか、またはウイルスベクターで治療しなかった対照サンプルから摘出した網膜は、1mm当たりほぼ3900個のRGCを有していた。対照的に、マイクロビーズおよびPBSを注射した非治療高眼圧マウス(「ビヒクル」)は、6週間後に1mm当たり約2000個のRGCしか有さず、マイクロビーズおよびrAAV2カプシドを注射したマウス(「AAV2」)は、1mm当たり約2300個のRGCを有していた。1×10vg/眼のrAAV2-HspB1で治療したマウスから摘出した網膜は、6週間後に1mm当たり3600個を超えるRGCを保持しており、5×10vg/眼のrAAV2-HspB1で治療したマウスから摘出した網膜は、1mm当たり約3900個のRGCを有していた。したがって、どちらの用量のrAAV2-HspB1も、高眼圧レベルまで上昇した眼内圧を有する網膜内に存在するRGCの喪失を有意に予防した。
【0080】
図11Bの定量的RGC濃度を得た網膜の共焦点顕微鏡画像を図11Cに示す。より高いBrn3a染色から明らかなように、RGC数は健常対照群1102から摘出した網膜において最も高かった。Brn3a染色は、非治療高眼圧症群1104およびrAAV2-カプシド高眼圧症群1106では、はるかに低かった。1×10vg/眼のrAAV2-HspB1群1108および5×10vg/眼のrAAV2-HspB1群1110は、より高いBrn3a染色から明らかなように、非治療高眼圧症群1104およびrAAV2-カプシド高眼圧症群1106と比べてRGC死の有意な予防を示した。
【0081】
RGCにおける軸索輸送欠損に対するrAAV2-HspB1の予防効果も、硝子体内rAAV2-HspB1注射の6週間後に測定した。図12Aにグラフで示されるように(ns=有意でないおよびp<0.05)、コレラ毒素B(「CT-B」)標識を用いて、RGCにおける軸索輸送を可視化および定量化した。対照マウスから摘出した網膜は、rAAV2-HspB1注射の6週間後に約42のCT-B強度値を示した。対照的に、PBS中のマイクロビーズを注射した非治療マウス(「ビヒクル」)は、6週間後に約25のCT-B強度値しか示さず、マイクロビーズおよびrAAV2カプシドを注射したマウスは、約26のCT-B強度値を示した。1×10vg/眼のrAAV2-HspB1で治療したマウスから摘出した網膜は、6週間後に約35のCT-B強度値を示し、5×10vg/眼のrAAV2-HspB1で治療したマウスから摘出した網膜は、約42のCT-B強度値を示した。したがって、低用量のrAAV2-HspB1は、眼内圧上昇を受けたRGC内の軸索輸送欠損の発生を部分的に予防し、高用量のrAAV2-HspB1は、軸索輸送欠損の発生を有意に予防した。5×10vg/眼のrAAV2-HspB1を注射したRGC内の軸索輸送は、眼内圧上昇を受けていないRGCで測定された軸索輸送とほぼ等しく、5×10vg/眼のrAAV2-HspB1の硝子体内投与が、後に高眼圧症に罹患するマウスにおいて軸索輸送欠損の発生を実質的に予防するのに十分であり得ることが示された。
【0082】
図12Aの定量的CT-B強度値を得たRGC軸索の共焦点顕微鏡画像を図12Bに示す。比較的高いCT-B染色から明らかなように、健常対照群1202における軸索輸送は、5×10vg/眼のrAAV2-HspB1を注射した高眼圧群1210で測定された軸索輸送と同様であった。非治療高眼圧症群1204およびrAAV2-カプシド高眼圧群1206では、軸索輸送は顕著に低かった。1×10vg/眼のrAAV2-HspB1群である1208群は、非治療高眼圧症群1204およびrAAV2-カプシド高眼圧群1206と比べて或る程度の軸索輸送の維持を示した。したがって、高眼圧症によって引き起こされる軸索媒介CT-B輸送の減少は、5×10vg/眼のrAAV2-HspB1の硝子体内投与によって実質的に予防された。
【0083】
実施例4
眼内圧上昇後のrAAV2-HspB1介入が、RGC死および軸索輸送欠損を低減、解消または減速することができるかを決定するために、高眼圧症のマウスモデルを採用し、眼内圧が上昇した後にマウスにベクターの硝子体内注射を行った。
【0084】
初めにマウスを0.5%塩酸プロパラカインの局所適用で補助したケタミン/キシラジンの腹腔内注射によって麻酔することで高眼圧症モデルを作製した。ポリスチレンマイクロビーズ(直径10μm、PBS 1mL当たり500万個のビーズ)を各動物の右眼の前房に注射することにより、高眼圧症を片側でのみ誘導した。33G針を用いて角膜の中央付近を静かに穿刺し、小さな気泡を注入して前眼房を持ち上げた。少量(2μL)のマイクロビーズを、ハミルトン注射器に接続したマイクロピペットによって気泡下の前房に注射した。感染を予防するために、注射した眼に抗生物質軟膏を局所適用した。
【0085】
眼圧計を用い、眼内圧を6週間にわたって毎週測定した。特に、イソフルランの持続流(酸素と混合した2L/分の5%イソフルラン)で満たした麻酔室にマウスを入れた。毎週のチェックイン毎に眼圧計により5回測定し、最高および最低の読取り値を除外し、残りの読取り値から各マウスについて平均眼内圧を生成した。
【0086】
試験動物において高眼圧症を誘導してから1週間後に、rAAV2-HspB1の単回用量(1μLのハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中1×10個のウイルスゲノム)を治療群のマウスに硝子体内注射した。2番目の矢印によって示されるように(最初の矢印は初回マイクロビーズ注射を表す)、眼内圧はrAAV2-HspB1投与の2週間後の2回目のマイクロビーズ注射によってさらにもう一度上昇した。
【0087】
図13Aの折れ線グラフに示されるように、マイクロビーズおよびrAAV2カプシドの注射を受けた網膜では、最初の眼マイクロビーズ注射により、眼内圧が1週間で約10mmHgから約23mmHgに上昇した。眼内圧は3週目まで低下し、その時点で2回目のマイクロビーズ注射を投与した。注射していない非治療対照眼は、実験期間を通してほぼ一定のIOPを維持した。マイクロビーズおよびrAAV2-HspB1を注射した眼は、2週目および4週目に、健常対照およびAAV2カプシドを注射した高眼圧症眼と比べてIOPレベルの上昇を示した。しかしながら、3週目には、rAAV2-HspB1の硝子体内注射は、AAV2カプシドを注射した高眼圧症眼と比べて眼内圧を低下させた。
【0088】
眼圧上昇を受けた眼におけるRGC生存に対する硝子体内rAAV2-HspB1注射の影響を図13Bにグラフで示す。示されるように、対照マウスから摘出した網膜は、最初のマイクロビーズ注射の1週間後に、1mm当たりほぼ3800個のRGCを有していた。RGCの数は、2週目に1mm当たり約3500個に減少し、4週目に1mm当たり約3700個に増加し、その後6週目には1mm当たり約3400個まで減少した。
【0089】
対照的に、マイクロビーズおよびrAAV2カプシドを注射したマウスは、1週間時点の1mm当たり約3500個から始めて、2週目に1mm当たり3000個、4週目に1mm当たり2500個、6週目に1mm当たり2200個と研究の過程で1mm当たりのRGCの数の着実な減少を示した。
【0090】
rAAV2-HspB1で治療したマウスから摘出した網膜は、研究の2週目に1mm当たり約3400個のRGCを有していた。続いて、RGCの濃度は、4週目に1mm当たり約3500個のRGCに上昇し、その後6週目に1mm当たり約3100個のRGCまで低下した。したがって、rAAV2-HspB1で治療した網膜における最終RGC濃度は、健常対照網膜で測定された最終RGC濃度の約88%であった。したがって、rAAV2-HspB1の硝子体内注射は、眼内圧上昇を受けた網膜におけるRGCの喪失を、眼内圧上昇を受け、rAAV2カプシドを注射した網膜と比べて有意に低減した(**p<0.01、***p<0.001)。
【0091】
図13Bの定量的RGC濃度を得た網膜の共焦点顕微鏡画像を図13Cに示す。研究の6週目のより高いBrn3a染色から明らかなように、rAAV2-HspB1群1302におけるRGC数は、健常対照群1304のRGC数と同等であったが、非治療高眼圧症群1306ではRGC数が研究の過程で有意に減少した。
【0092】
高眼圧症の6週間後の軸索輸送に対する硝子体内rAAV2-HspB1注射の影響をも測定し、図14Aにグラフで示す。ここで、ns=有意でないおよびp<0.05である。示されるように、対照マウスから摘出した網膜は、研究参加の6週間後に約40のCT-B強度値を示した。対照的に、マイクロビーズおよびPBSを注射した非治療マウス(「ビヒクル」)は、6週目に約30のCT-B強度値を示し、マイクロビーズおよびrAAV2カプシドを注射したマウスは、約29のCT-B強度値を示した。rAAV2-HspB1で治療したマウスから摘出した網膜は、6週間後に約39のCT-B強度値を示した。したがって、硝子体内rAAV2-HspB1投与は、眼内圧上昇を受けたRGC内の軸索輸送欠損を、同じ眼内圧上昇を受けた非治療RGCと比べて低減した。rAAV2-HspB1を注射したRGC内の軸索輸送は、眼内圧上昇を受けていないRGCで測定された軸索輸送とほぼ同等であった。
【0093】
図14Aの定量的CT-B強度値を得た網膜の共焦点顕微鏡画像を図14Bに示す。CT-B染色から明らかなように、軸索輸送は健常対照群1402で最大であった。CT-B強度は、非治療高眼圧症群1404およびrAAV2-カプシド高眼圧症群1406では、はるかに低かった。rAAV2-HspB1群1408は、非治療高眼圧症群1404およびrAAV2-カプシド高眼圧症群1406と比べて、ほぼ正常な軸索輸送レベルを維持していた。
【0094】
実施例5
rAAV2-HspB1の硝子体内投与が20週間にわたってRGC機能低下を緩和することができるかを決定するために、高眼圧症のマウスモデルを採用し、眼内圧が上昇した後にマウスにベクターの硝子体内注射を行った。
【0095】
高眼圧症モデルは、実験の1日目にマイクロビーズ注射、続いて3週目および6週目に後続のマイクロビーズ注射を行うことによって作製した。眼圧計を用い、眼内圧を20週間にわたって毎週測定した。最初のマイクロビーズ注射の1週間後に、rAAV2-HspB1またはAAV2カプシドの単回用量をマウスの別々の群に硝子体内注射した。
【0096】
図15Aに示されるように、眼マイクロビーズ注射は、初期値の約10mmHgから6週目の約18mmHgまで眼内圧を有意に上昇させたが、その後20週目には圧力は約13まで低下した(ns=有意でない、***p<0.001、****p<0.0001)。
【0097】
RGC機能は、20週間の研究期間にわたってパターン網膜電図(PERG)振幅により評価した。PERG測定は、Joervec機器(Intelligent Hearing Systems,Miami,FL)を用い、製造業者の指示に従って行った。基準電極および接地電極は、それぞれ頭皮および尾部の皮下に配置し、角膜電極は眼球と接触する下円蓋部に配置した。角膜乾燥を防ぐために、少量のGelTear点眼液を両眼に適用した。システムに取り付けた2つの異なるLEDモニターを用い、空間周波数0.095サイクル/度および輝度500cd/mでコントラスト反転水平バーを表示させた。表示モニターと眼との距離は10cmに保った。光信号のより良好な投影のために、LEDモニターをおよそ60度の角度で設置した。次いで、両眼からの372回の掃引(オン-オフ)からなる各ランについて生成されたPERG波形をPERGソフトウェアによって各眼別々に処理し、平均した。PERGソフトウェアを用いて総平均PERG波形を分析して、主要な陽性波(P1)および陰性波を特定し、振幅および潜時を算出した。
【0098】
P1振幅読取り値(μVで測定)を図15Bに示す。示されるように、rAAV2-カプシドマウスの眼における眼内圧上昇は、対照マウスと比較してP1振幅の有意な低下を引き起こした。対照的に、硝子体内rAAV2-HspB1注射は、対照マウスで測定されたP1振幅にほぼ等しいP1振幅を維持した。(p<0.03;ns=有意でない)。したがって、硝子体内rAAV2-HspB1注射は、眼内圧を上昇させることによって作製した緑内障のマウスモデルにおいてRGCの視覚機能を改善した。
【0099】
実施例6
rAAV2-HspB1の硝子体内注射が網膜グリオーシスを緩和することができるかを決定するために、高眼圧症のマウスモデルを採用し、眼内圧が上昇した後にマウスにベクターの硝子体内注射を行った。
【0100】
グリオーシス研究では、マウスの対照群にはマイクロビーズまたはウイルスベクターを注射せず、陽性対照群にマイクロビーズおよびrAAV2カプシドを注射し、第3の群にマイクロビーズおよびrAAV2-HspB1を注射した。グリア線維性酸性タンパク質(「GFAP」)およびイオン化カルシウム結合アダプター分子1(「Iba1」)染色を用いて、高分化型グリア細胞の増殖から明らかな網膜グリオーシスを特定した。より高い染色は、より高レベルのグリオーシスを表していた。
【0101】
図16の20倍共焦点顕微鏡画像に示されるように、グリオーシスの顕著な増加を示した、rAAV2カプシドを注射した非治療高眼圧症群1604a,1604bと比べて、対照群1602a,1602bは、より低いGFAPおよびIba1染色をそれぞれ示した。rAAV2-HspB1治療高眼圧マウス1606a,1606bでは、グリオーシスが健常対照群と実質的に同様のレベルまで低減した。
【0102】
以上、様々な代表的な実施形態および実施態様を或る程度まで詳細に説明したが、当業者であれば、明細書および特許請求の範囲に記載される本発明の主題の趣旨または範囲から逸脱することなく、開示の実施形態に多数の変更を加えることができる。場合によっては、本明細書に直接または間接的に記載される方法論において、様々な工程および操作が或る可能な操作順序で記載されるが、当業者であれば、本開示の趣旨および範囲から必ずしも逸脱することなく、工程および操作を再編成、置換えまたは除外し得ることを認識するであろう。上記の説明に含まれるか、または添付の図面に示されるあらゆる事項が例示にすぎず、限定的なものではないと解釈されることが意図される。詳細または構造の変更は、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の趣旨から逸脱することなく行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
【国際調査報告】