(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力伝送システムにおけるアークの受動検出および軽減
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20240214BHJP
G01R 31/56 20200101ALI20240214BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240214BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240214BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/56
H02J50/12
H02J50/80
H02J7/00 301D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550537
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 US2022011866
(87)【国際公開番号】W WO2022177662
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514287443
【氏名又は名称】インダクトイーブイ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ウォルゲムス、ジョン エム.
【テーマコード(参考)】
2G014
5G503
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AB29
2G014AB49
2G014AB53
2G014AB58
2G014AC18
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB02
5G503CC02
5G503GB06
5G503GB08
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 電池を充電する充電システムは、交流(AC)電源から受け取った電力を充電のために電池に印加される直流(DC)信号に整流する整流器と、前記直流(DC)信号に付加されたノイズを測定し、測定ノイズ信号を生成するアーク検出回路とを含む。プロセッサは、直列アークを検出するために前記測定ノイズ信号を分析し、直列アークが検出された場合、前記整流器に交流(AC)電流を一定期間の間分流させて、前記整流器の直流(DC)出力をゼロに向けて減少させる。前記整流器と前記電池との間にアーク受動検出回路が挿入され、このアーク受動検出回路は、平滑コンデンサと並列接続されたフィルタコンデンサと感知抵抗とを含む。前記直流(DC)信号を走査して、異なる周波数窓における測定ノイズ信号を取得することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を充電する方法であって、
整流器により、交流(AC)電源から受け取った電力を充電のために電池に印加される直流(DC)信号に整流する工程と、
アーク検出回路により、前記直流(DC)信号に付加されたノイズを測定し、測定ノイズ信号を生成する工程と、
直列アークを検出するために前記測定ノイズ信号を分析する工程と、
直列アークが検出された場合、前記整流器に交流(AC)電流を一定期間の間分流させて、前記整流器の直流(DC)出力をゼロに向けて減少させる工程と
を有する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記直流(DC)信号に付加されたノイズを測定する工程は、
前記整流器と前記電池との間にアーク受動検出回路を挿入する工程であって、前記アーク受動検出回路は、
フィルタコンデンサと感知抵抗とを含む第1の経路と、
前記第1の経路および前記電池と並列接続され、平滑コンデンサを含む第2の経路と
を含むものである、前記挿入する工程と、
前記感知抵抗の両端の電圧をデジタル化する工程と、
前記デジタル化された電圧を前記測定ノイズ信号として出力する工程と
を有する、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、さらに、
前記感知抵抗の両端の電圧を増幅する工程を有する、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記測定ノイズ信号を生成する工程は、アーク受動検出回路により、
前記整流器の付加されたノイズを含む直流(DC)出力の直流(DC)周波数スペクトルを走査して周波数窓内の測定ノイズ信号を取得する工程と、
前記測定ノイズ信号を前記周波数窓における検出閾値と比較する工程と
を有する、方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、さらに、
前記整流器を含む受信アセンブリに関する情報をデータベースから受信する工程であって、前記情報は、走査周期の周期性の通知、充電セッションの即時中止、走査周波数の数の設定、または局所的なノイズ、周囲ノイズ、若しくは干渉要因を回避するための少なくとも1つの周波数窓の調整のために使用されるデータのうちの少なくとも1つのデータを含むものである、前記受信する工程と、
前記整流器の直流(DC)出力の直流(DC)周波数スペクトルを走査して前記周波数窓内の前記測定ノイズ信号を取得する工程の後、前記周波数窓における検出閾値を超えた場合、直列アークを検出する工程と
を有する、方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、さらに、
前記直列アークの検出を示す直列アーク検出イベントに対し信号解析および履歴解析を実行し、誤検出の確率を決定する工程を有する、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記直列アークを検出するために前記測定ノイズ信号を分析する工程は、
前記測定ノイズ信号に対してフーリエ変換(FT)計算を実行して、フーリエ変換(FT)の結果を生成する工程と、
前記フーリエ変換(FT)の結果をマスクして、前記整流器の直流(DC)電流出力の事前選択された周波数窓における結果を導出する工程と、
前記事前選択された周波数窓の各々について、周波数振幅に基づくスコアを作成する工程と、
サンプル数nの積分を実行し、サンプル数nの期間にわたってスコアを平均化して積分されたスコアを生成する工程と、
サンプル数nの各期間について、前記積分されたスコアを所定の閾値と比較する工程と、
前記積分されたスコアが前記閾値を超えた場合、直列アーク検出イベントをトリガする工程と
を有する、方法。
【請求項8】
電池を充電するための充電システムであって、
交流(AC)電源から受け取った電力を充電のために電池に印加される直流(DC)信号に整流する整流器と、
前記直流(DC)信号に付加されたノイズを測定し、測定ノイズ信号を生成するアーク検出回路と、
直列アークを検出するために前記測定ノイズ信号を分析し、直列アークが検出された場合、前記整流器に交流(AC)電流を一定期間の間分流させて、前記整流器の直流(DC)出力をゼロに向けて減少させるプロセッサと
を有する、システム。
【請求項9】
請求項8記載のシステムにおいて、前記アーク検出回路は、前記整流器と前記電池との間に配置されたアーク受動検出回路を有し、当該アーク受動検出回路は、
フィルタコンデンサと感知抵抗とを含む第1の経路と、
前記第1の経路および前記電池と並列接続され、平滑コンデンサを含む第2の経路と
前記感知抵抗の両端の電圧をデジタル化し、当該デジタル化された電圧を前記測定ノイズ信号として出力するアナログ・デジタル変換器と
を有する、システム。
【請求項10】
請求項9記載のシステムにおいて、さらに、
前記感知抵抗の両端の電圧を増幅する増幅器を有する、システム。
【請求項11】
請求項8記載のシステムにおいて、前記プロセッサは、前記整流器の付加されたノイズを含む直流(DC)出力の直流(DC)周波数スペクトルを走査して周波数窓内の測定ノイズ信号を取得し、前記測定ノイズ信号を前記周波数窓における検出閾値と比較するように構成されているものである、システム。
【請求項12】
請求項11記載のシステムにおいて、さらに、
前記整流器を含む受信アセンブリに関する情報を前記プロセッサに提供するデータベースを有し、
前記情報は、走査周期の周期性の通知、充電セッションの即時中止、走査周波数の数の設定、または局所的なノイズ、周囲ノイズ、若しくは干渉要因を回避するための少なくとも1つの周波数窓の調整のために使用されるデータのうちの少なくとも1つのデータを含むものであり、
前記プロセッサは、前記整流器の直流(DC)出力の直流(DC)周波数スペクトルを走査して前記周波数窓内の前記測定ノイズ信号を取得した後、前記周波数窓における検出閾値を超えた場合に直列アークを検出するものである、
システム。
【請求項13】
請求項12記載のシステムにおいて、前記プロセッサは、さらに、
前記直列アークの検出を示す直列アーク検出イベントに対し信号解析および履歴解析を実行し、誤検出の確率を決定するものである、システム。
【請求項14】
請求項8記載のシステムにおいて、前記プロセッサは、
前記測定ノイズ信号に対してフーリエ変換(FT)計算を実行して、フーリエ変換(FT)の結果を生成する工程と、
前記フーリエ変換(FT)の結果をマスクして、前記整流器の直流(DC)電流出力の事前選択された周波数窓における結果を導出する工程と、
前記事前選択された周波数窓の各々について、周波数振幅に基づくスコアを作成する工程と、
サンプル数nの積分を実行し、サンプル数nの期間にわたってスコアを平均化して積分されたスコアを生成する工程と、
サンプル数nの各期間について、前記積分されたスコアを所定の閾値と比較する工程と、
前記積分されたスコアが前記閾値を超えた場合、直列アーク検出イベントをトリガする工程と
を含む動作を実行することにより、前記直列アークを検出するために前記測定ノイズ信号を分析する命令を実行するものである、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、「SAFETY CIRCUITS FOR WIRELESS POWER TRANSFER(ワイヤレス電力伝送のための安全回路)」と題する、2020年4月16日付で出願された米国特許仮出願第63/010,771号および2020年11月19日付で出願された米国特許出願第16/952,933号、ならびに「CURRENT SENSING IN A WIRELESS POWER TRANSFER SYSTEM(ワイヤレス電力伝送システムにおける電流感知)と題する、2020年3月20日付で出願された米国特許出願第16/825,624号に関連する。当該特許出願の内容は、この参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本特許出願は、誘導型ワイヤレス電力伝送システムで使用するワイヤレス充電に関連するワイヤレス電力伝送アセンブリについて記載する。本明細書に記載するワイヤレス電力伝送アセンブリは、直列アーク故障の受動検出および能動的軽減のための回路を含む。
【背景技術】
【0003】
アーク故障は、回路内の意図しない電気的故障である。アークは、電流の偶発的な分岐経路に基づいて2つのタイプに分けられる。並列アークは負荷に対して並列に形成されるアークとして定義され、直列アークは負荷に対して直列に形成されるアークとして定義される。
【0004】
並列アークは、負荷に対して新たな導電路を形成し、この新たに形成された導電路は負荷によって制限を受けないため、大電流が流れることを特徴とする。この新たに形成された導電路は、接地に接続された通常の回路と比べより低電圧の第2の導体、またはより低抵抗の回路である可能性がある。並列アーク故障では、回路内の高電力散逸によって非常に高温となるため、即座に損傷が生じる可能性がある。
【0005】
直列アークは、負荷と直列に導電経路を形成するものであり、通常、接続不良のコネクタ、導体の断線(例えば、破断したワイヤ)、または開放されたリレーに亘って発生する。直列アークでは、依然として接続されている負荷により電流が制限されるため、並列アークによって生じる大電流は阻止される。直列アークでは、負荷により電流が制限されるため、損傷は浸食によって生じ、アークによって形成される局所的なプラズマが導体表面および周囲の絶縁体に損傷を与え、最終的に熱による導電体の機械的損傷、および周囲構造体の損傷を引き起こす連鎖反応を発生させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の詳細な説明においてさらに説明する概念の一部を簡略化した形で導入するために様々な実施例を説明する。本概要は、特許請求の範囲における発明特定事項の範囲の限定に使用することを意図するものではない。
【0007】
例示的な実施形態は、電池を充電するための充電システムに関する。前記充電システムは、整流器と、アーク検出回路と、車両充電制御装置のプロセッサとを含む。前記整流器は、交流(AC)電源から受け取った電力を充電のために電池に印加される直流(DC)信号に整流し、前記アーク検出回路は、前記直流(DC)信号に付加されたノイズを測定し、測定ノイズ信号を生成する。前記車両充電制御装置のプロセッサは、直列アークを検出するために前記測定ノイズ信号を分析し、直列アークが検出された場合、前記整流器に交流(AC)電流を一定期間の間分流させて、前記整流器の直流(DC)出力をゼロに向けて減少させる。
【0008】
例示的な実施形態において、前記アーク検出回路は、前記整流器と前記電池との間に配置されたアーク受動検出回路を有する。前記アーク受動検出回路は、フィルタコンデンサと感知抵抗とを含む第1の経路と、前記第1の経路および前記電池と並列接続され、平滑コンデンサを含む第2の経路とを含む。前記感知抵抗の両端の電圧をデジタル化し、当該デジタル化された電圧を前記測定ノイズ信号として前記プロセッサに対して出力するためにアナログ・デジタル変換器がさらに提供される。また、前記デジタル化の前に前記感知抵抗の両端の電圧を増幅する増幅器をさらに提供することができる。
【0009】
例示的な実施形態において、前記車両充電制御装置のプロセッサは、前記整流器の付加されたノイズを含む直流(DC)出力の直流(DC)周波数スペクトルを走査して周波数窓内の測定ノイズ信号を取得し、前記測定ノイズ信号を前記周波数窓における検出閾値と比較するように構成することができる。また、前記整流器を含む受信アセンブリに関する情報を前記プロセッサに提供するデータベースを提供することができる。前記情報は、走査周期の周期性の通知、充電セッションの即時中止、走査周波数の数の設定、または局所的なノイズ、周囲ノイズ、若しくは干渉要因を回避するための少なくとも1つの周波数窓の調整のために使用されるデータのうちの少なくとも1つのデータを含む。前記プロセッサは、前記整流器の直流(DC)出力の直流(DC)周波数スペクトルを走査して前記周波数窓内の前記測定ノイズ信号を取得した後、前記周波数窓における検出閾値を超えた場合に直列アークを検出することができる。前記プロセッサは、さらに、前記直列アークの検出を示す直列アーク検出イベントに対し信号解析および履歴解析を実行し、誤検出の確率を決定することができる。
【0010】
例示的な実施形態において、前記車両充電制御装置のプロセッサは、前記測定ノイズ信号に対してフーリエ変換(FT)計算を実行して、フーリエ変換(FT)の結果を生成する工程と、前記フーリエ変換(FT)の結果をマスクして、前記整流器の直流(DC)電流出力の事前選択された周波数窓における結果を導出する工程と、前記事前選択された周波数窓の各々について、周波数振幅に基づくスコアを作成する工程と、サンプル数nの積分を実行し、サンプル数nの期間にわたってスコアを平均化して積分されたスコアを生成する工程と、サンプル数nの各期間について、前記積分されたスコアを閾値と比較する工程と、前記積分されたスコアが前記閾値を超えた場合、直列アーク検出イベントをトリガする工程とを含む動作を実行することにより、前記直列アークを検出するために前記測定ノイズ信号を分析する命令をさらに実行することができる。
【0011】
充電回路によって実施される方法も本明細書で説明する。この充電方法は、整流器により、交流(AC)電源から受け取った電力を充電のために電池に印加される直流(DC)信号に整流する工程と、アーク検出回路により、前記直流(DC)信号に付加されたノイズを測定し、測定ノイズ信号を生成する工程と、直列アークを検出するために前記測定ノイズ信号を分析する工程と、直列アークが検出された場合、前記整流器に交流(AC)電流を一定期間の間分流させて、前記整流器の直流(DC)出力をゼロに向けて減少させる工程とを含む。
【0012】
例示的な実施形態において、前記直流(DC)信号に付加されたノイズを測定する工程は、前記整流器と前記電池との間にアーク受動検出回路を挿入する工程を含み、前記アーク受動検出回路は、フィルタコンデンサと感知抵抗とを含む第1の経路と、前記第1の経路および前記電池と並列接続され、平滑コンデンサを含む第2の経路とを含む。前記感知抵抗の両端の電圧は、増幅およびデジタル化されて、前記測定ノイズ信号として出力される。
【0013】
例示的な実施形態において、前記測定ノイズ信号を生成する工程は、アーク受動検出回路により、前記整流器の付加されたノイズを含む直流(DC)出力の直流(DC)周波数スペクトルを走査して周波数窓内の測定ノイズ信号を取得する工程と、前記測定ノイズ信号を前記周波数窓における検出閾値と比較する工程とを含むことができる。前記方法はまた、前記整流器を含む受信アセンブリに関する情報をデータベースから受信する工程を含むことができる。例示的な実施形態において、前記情報は、走査周期の周期性の通知、充電セッションの即時中止、走査周波数の数の設定、または局所的なノイズ、周囲ノイズ、若しくは干渉要因を回避するための少なくとも1つの周波数窓の調整のために使用されるデータのうちの少なくとも1つのデータを含でもよい。前記整流器の直流(DC)出力の直流(DC)周波数スペクトルを走査して前記周波数窓内の前記測定ノイズ信号を取得する工程の後、前記周波数窓における検出閾値を超えた場合、直列アークが検出される。前記方法はまた、前記直列アークの検出を示す直列アーク検出イベントに対し信号解析および履歴解析を実行し、誤検出の確率を決定する工程を含むことができる。
【0014】
例示的な実施形態において、前記直列アークを検出するために前記測定ノイズ信号を分析する工程は、前記測定ノイズ信号に対してフーリエ変換(FT)計算を実行して、フーリエ変換(FT)の結果を生成する工程と、前記フーリエ変換(FT)の結果をマスクして、前記整流器の直流(DC)電流出力の事前選択された周波数窓における結果を導出する工程と、前記事前選択された周波数窓の各々について、周波数振幅に基づくスコアを作成する工程と、サンプル数nの積分を実行し、サンプル数nの期間にわたってスコアを平均化して積分されたスコアを生成する工程と、サンプル数nの各期間について、前記積分されたスコアを所定の閾値と比較する工程と、前記積分されたスコアが前記閾値を超えた場合、直列アーク検出イベントをトリガする工程とを含むことができる。
【0015】
本発明の概要は、進歩性を有する発明特定事項の観点を簡略化して導入するために提供するものであり、以下の発明の詳細な説明の記載においてこの進歩性を有する発明特定事項をさらに詳細に説明する。本発明の概要は、特許請求の範囲における発明特定事項の必須または必要な特徴を特定することを意図するものではなく、本発明の概要において記載した要素の特定の組み合わせおよび順序は、特許請求の範囲における発明特定事項の要素を限定することを意図するものではない。むしろ、以下の部分は、以下の発明の詳細な説明に記載する実施形態の一部の概要例を提供するものであることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書で説明するシステムおよび方法の上述の特徴およびその他の有益な特徴と利点は、添付の図面とともに以下の詳細な説明により明らかになると考えられる。
【
図1】
図1は、ワイヤレス電力伝送システムにおける電池の充電およびDC回路の給電のための、安全強化された磁気共鳴誘導システムの上位レベルの例示的な回路の実施形態を概略的に示す。
【
図2】
図2は、点火の瞬間時の直列アーク故障を図示する。
【
図3A】
図3Aは、最小限に検出可能な直列アークによって導入されたピンクノイズの特性を示す。
【
図3B】
図3Bは、僅かに検出可能な直列アークによって導入されたピンクノイズの特性を示す。
【
図3C】
図3Cは、大型の直列アークによって導入されたピンクノイズの特性を示す。
【
図3D】
図3Dは、最大の直列アークによって導入されたピンクノイズの特性を示す。
【
図4】
図4は、選択された検出周波数を含む、例示的な直列アークのノイズスペクトルを示す。
【
図5】
図5は、例示的な実施形態における直列アークの受動検出のための例示的な回路を概略的に示す。
【
図6】例示的な1実施形態におけるアークの受動検出および軽減の工程を図式化したものである。
【
図7】
図7は、
図7は、例示的な1実施形態における受動走査のための信号解析のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に記載する電流測定装置および方法は、以下の詳細な説明を本開示の一部である添付の図面および実施形態と関連付けて参照することでより理解される。また、本記載は、本明細書に記載する、および/または本明細書に示す特定の製品、方法、条件またはパラメータに限定されるものではないこと、さらに、本明細書で使用される用語は、例示的に特定の実施形態を説明することのみを目的として使用されているものであり、特許請求の範囲に記載する発明特定事項を限定することを意図するものではないことを理解されたい。同様に、可能な機構、動作形態、または改良の必要性の理由に関する任意の説明は例示のみを目的とするものであり、本明細書に記載する発明特定事項は、このような示唆された機構、動作形態、または改良の必要性の理由が正確性、若しくは不正確性よって制約されるものではない。本明細書全体を通して、本説明は方法、および当該方法を実施するシステム/ソフトウェアの双方を言及することを理解されたい。
【0018】
次に、
図1~
図7を参照して、例示的な実施形態を詳細に説明する。本明細書は、可能な実施態様の詳細な説明を提供するが、そのような詳細は例示的であることを意図しており、決して本発明の発明特定事項の範囲を限定するものではないことに留意されたい。本明細書において、「電池」という用語は、一般的な化学エネルギー貯蔵システムを表すために使用され、その他の携帯型エネルギー貯蔵システム(例えば、固体電池、可逆性燃料電池、ウルトラキャパシタ)と置換できること、またはその他の携帯型エネルギー貯蔵システムによって補足またはハイブリッド化することができることに留意されたい。また、使用例の多くは、車載システムに電力を供給し、定置電動車両(EV)の電池を充電するために使用されるワイヤレス電力伝送(WPT)システムに関するのものであるが、このような使用用途は決して唯一の使用用途ではない。
【0019】
高出力誘導型ワイヤレス充電システムは、本質的に高品質(負荷不変の)交流(AC)電源である。当業者であれば、共鳴ネットワークはすべて、共鳴ネットワークのインピーダンスと負荷との間の所定の比によって定義される時点で、電圧源から電流源に移行することを理解すると考えられる。電力が十分高い場合、インピーダンスネットワークは全電力範囲にわたって電流源として動作する。そのような高電力では、多くの測定技術において測定の精度と正確性が損なわれ、必要な回路が利用不可となる。大電力の交流システムにおける直列アーク故障の迅速な検出は、負荷回路が依然としてアクティブであるため困難である。さらに、直流(DC)システムでは、定電流により、交流(AC)システムのようにアークの停止と再点弧との間に冷却が可能でないため、持続的な直列アークによって連鎖的に損傷が生じる確率が増幅される。
【0020】
直列アークから持続的な導電性プラズマ経路が形成されると、明瞭な「ピンク」ノイズ源が発生するが、この特性は、負荷によって生じる減衰、周波数変化、位相シフトによって歪む可能性がある。さらに、ピンクノイズ(pink noise)信号はまた、熱雑音および誘導電磁干渉(EMI)によって損なわれる可能性がある。
【0021】
ワイヤレス電力伝送(WPT)システムでは、誘導結合された一次コイルおよび二次コイルを使用して一定のAC電流源を生成するため、直列アーク故障の検出が困難となる。(例えば、電動車両などの)電池ーパックを充電するためのDC電源を生成するために整流器をワイヤレス電力伝送(WPT)システムに追加した場合、電池パック自体が定電圧DC電源として機能するため、直列アーク故障の検出(および軽減)がさらに複雑になる。ワイヤレス電力伝送(WPT)信号は、整流されると高品質(負荷不変)DC電流源として動作する。高直流(DC)電圧および電流によるセンサの飽和のため、直列アーク故障において維持される公称負荷を高電力レベルで精確に測定することが困難となる。
【0022】
本明細書で説明する直列アーク故障の受動検出システムは、ノイズの多い、高電流、かつ高電圧の動作環境で継続的に動作し、受動的にこのような直列アーク故障を検出および軽減するように設計されている。
【0023】
図1
図1は、ワイヤレス電力伝送システムにおける電池の充電およびDC回路の給電のための、安全強化された磁気共鳴誘導システムの上位レベルの例示的な回路の実施形態を概略的に示す。本システムの1実施形態は、電動車両のワイヤレス充電に使用することができる。
【0024】
図1において、接地側(ground-side)電子機器101は、ローカル電源への接続を提供して、電圧平準化および電気信号整形を行う。接地アセンブリ(GA:ground assembly)102は、一次コイル103と、共鳴磁気信号源を提供する平衡コンデンサ104および105とから構成される。車両アセンブリ(VA)106は、二次コイル107と、平衡コンデンサ108および109とを含み、共鳴磁気信号の受信装置を提供する。一次コイル103および二次コイル107は、コイル間の間隙110を有する開放型変圧器を構成する。例示的な1実施形態では、複数の接地アセンブリ(GA)102と車両アセンブリ(VA)106の対を並列に配置して、利用可能な総電力伝送を増加させることができる。
【0025】
車両アセンブリ(VA)106で生成された電流は、低抵抗電気バス115を介して車両アセンブリ(VA)106から出力ネットワーク111の整流器116に渡される。例示的な1実施形態では、能動型整流器116は、一対の常開型(NO)スイッチ117および118と、一対の常閉型(NC)スイッチ119および120とを有する同期整流回路を含む。整流信号は、低抵抗、大容量電力バス124を介して信号調整回路125に渡される。信号調整回路125の出力は、電池126を充電するために使用される調整されたDC信号である。
【0026】
整流器制御装置113は、第1の電流および電圧センサ114を整流器スイッチ117、118、119、および120のタイミングを制御するための基準として使用し、共鳴ネットワークの電流に位相ロックする。(通常、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または従来のマイクロコントローラである)整流器制御装置113は、第1の電流および電圧センサ114を介して大容量AC電力バス115によって伝送され、リンク112を介して受信される、二次コイル107からの入力AC波形の振幅、周波数、および瞬時位相の推定値を生成するものであり、このような推定値の生成は、AC波形が十分な振幅を有し、スイッチング周波数がその取得範囲内にある場合に常に行われる。また、整流器制御装置113は、第2の電流および電圧センサ127、およびデータリンク128を介して電池126に印加される出力DC電流波形の振幅を監視する。
【0027】
(通常、マイクロプロセッサ上で動作するソフトウェアとして実装される)車両充電プロセッサ129は、インターフェース(例えば、コントローラエリアネットワーク(CAN)バス)を介して内部(ワイヤレス電力伝送(WPT)システムに対する)サブシステムおよび外部車両システムとの通信を処理し、整流器制御装置113の動作を指令することができる。例えば、整流器制御装置113は、例えば、車両充電プロセッサ129からクエリを受けた際に、入力AC信号振幅、入力AC信号周波数、DC出力電圧および電流、ならびにスイッチング装置の温度を報告する。報告された入力スイッチング周波数が許容閉範囲内(例えば、79kHz~90kHz)であり、AC二乗平均平方根(RMS)が閾値(例えば、5A)を超えており、故障の検出がない場合、車両充電プロセッサ129は、整流器制御装置113に、入力AC波形の適切なゼロクロス地点で、制御リンク121を介して一対の上方スイッチ117および118、ならびに一対の下方スイッチ119および120をオン/オフするように命令し、整流の効率を最大化することができる。公称状態は「起動」または「安全」であり、この状態では、一対の上方NOスイッチ117および118は開放されており、一対の下方NCスイッチ119および120は閉鎖されている。二次コイル107が正信号を出力しているときは、第1の組のスイッチ117および119は開放されており、第2の組のスイッチ118および120は閉鎖されている。二次コイル107からの信号が反転すると、第1の組のスイッチ117および119は閉鎖され、2の組のスイッチ118および120は開放される。このシーケンスが繰り返されることで、入力AC信号の数学的な絶対値である出力信号が得られる。
【0028】
車両充電プロセッサ129によって無効化された場合、整流器制御装置113は、一対の上方NOスイッチ117および118をオフにし、一対の下方NCスイッチ119および120をオンに保持する。過電圧、過電流故障状態が第2の電流および電圧センサ127で検出された場合、若しくは過温度故障状態が温度センサ123で検出され、リンク122を介して整流器制御装置に提供された場合、整流器制御装置113は一対の上方NOスイッチ107および108をオフにし、一対の下方NCスイッチ109および110をオンに保持する。
【0029】
整流器制御装置113は、センサ127を介して整流器段116からの出力DC電圧を監視する。整流器制御装置113はまた、電圧および振幅センサ127を介して出力DC電流を測定し、システムが電池126に供給される総電力を計算できるように、当該出力DC電流を車両充電プロセッサ129に報告する。さらに、整流器制御装置113は、整流器のスイッチング装置117~120の取り付け板の温度を測定する温度センサまたは複数の温度センサ(例えば、サーミスタまたはサーミスタのネットワーク)123を監視することができる。この取り付け板の温度は、スイッチング装置117~120のケース温度を表し、スイッチ117~120を通じた電力損失に関連する。
【0030】
共鳴ネットワーク101は、直列共鳴伝送装置(series-series resonant transmitter)(図示せず)と組み合わせた場合、AC電流源となる。共鳴ネットワーク101が開回路となる任意の状態は、安全でない状態をもたらす。但し、同期整流器段116としてNOスイッチ117および118と、NCスイッチ119および120を選択することで、本質的に安全なシステムとなる。通常の状態では、付随的にまたは特別に制御されることで、NCスイッチ119および120は、共鳴ネットワーク116のAC電流源を分流する手段を構成する。NOスイッチ117および118は、出力ネットワーク111、特に電池126の短絡を防止する。
【0031】
故障が発生すると、電池126は信号調整回路125から切り離され、信号調整回路125から流出する電流はゼロに減少するが、信号調整回路125に流入する電流は変化しない。これにより、信号調整回路125と整流器段116の両端の電圧は、整流電流と信号調整回路125のインピーダンスに比例した割合で上昇する。
【0032】
整流器制御装置113は、電圧および振幅センサ127を用いて電圧および/または電流を監視し、電池126の断線を検出する。故障が発生した場合、整流器制御装置113は、スイッチ117および118を開放し、スイッチ119および120を閉鎖ことによって応答する。これにより、AC電流源101が信号調整回路125および電池126から切り離される。信号調整回路125および電池126に対する整流器段116からの整流電流の流れはスイッチ117および118によって遮断され、AC電流源101からの電流の流れはスイッチ119および120を介して分流されるため、電力伝送は直ちに停止される。分流検出イベントが必要とされる場合、整流器制御装置113は、整流器段116を分流するように命令することができる。
【0033】
そのような検出イベントの1つは直列アーク検出である。能動型安全整流器116は、受動検出技術と、車両充電プロセッサ129へ報告するための回路を使用する直列アーク検出スキームの機能を提供し、これにより車両充電プロセッサ129は、整流器制御装置113に対して、二次コイル107からの入力電流を分流してワイヤレス電力伝送(WPT)システムに対する通電を直ちに遮断するように命令する。
【0034】
また、安全整流器116は、制御装置を動作させる、若しくは同期整流を行うための制御電力がないデフォルトの安全状態を提供する。このデフォルト安全状態では、NOスイッチ117および118は出力ネットワーク111を開放し、NCスイッチ119およびと120は共鳴ネットワーク101を分流する。これにより、充電器、負荷、サービス要員は、共鳴ネットワーク101によってピックアップされるスプリアスエネルギー(spurious energy)から保護される。
【0035】
スイッチおよびダイオードの双方に基づいた整流のための安全整流器116のアーキテクチャおよび回路のその他の代替例は、「SAFETY CIRCUITS FOR WIRELESS POWER TRANSFER(ワイヤレス電力伝送のための安全回路)」と題する、2020年11月19日付で出願された米国特許出願第16/952,933号に記載されており、当該特許出願はこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
図2
図2は、点火の瞬間時の直列アーク故障を図示する。直列アークは、同位相内の2若しくはそれ以上の点間の間隙に電気の橋絡が生じたときに発生する。直列アークは同位相内で発生するため、電流量は負荷電流を上回らない。直流(DC)によって直列アークの検出は困難となり、また、磁気共鳴誘導コイルの電流源の性質によって直列アークの検出は潜在的に危険なものとなる。直列アーク故障は、負荷インピーダンスを有効に増加させ、電圧源では、これによって電流および電力出力が減少する。アークが抑制されない場合、最初は電力が増加するが、最終的には自己消滅することになる。しかしながら、電流源では、電流が一定であるため、インピーダンスの増加によって電圧源の電圧が増加する。このため、アークのインピーダンスの増加に伴ってアークの電力散逸が増加する一方となる。
【0037】
図2において、導体は、例えば、断線または接続不良によって、第1のセグメント201と第2のセグメント202に分割されている。断線または接続不良の場合、間隙の大きさは時間とともに変化し、間隙が小さいときにアークが発生する可能性があり、一旦アークが点火すると、間隙が拡大したとしても、はるかに小さい電圧で持続可能である。電圧が間隙の誘電体を克服するのに十分である場合、電流203が流れる。電流の流れ203は、溶融導体204および205によって急速に形成される液体溜り、およびイオン化した誘電体と気化した導体によって形成されるプラズマ雲206によって促進される。アークの点火により、炭化した絶縁体および導体の液滴からなる破片207の噴霧が発生する可能性がある(「銅の微小な輝球の爆発的放出」と表現されることもある)。アークの点火は、気体または液体雰囲気中で破裂音208を伴うこともある。
【0038】
図3
ワイヤレス電力伝送(WPT)の受信装置は、AC/DC整流器段を使用して、二次コイルで生成されたAC信号を、DCシステムを給電、若しくは電池を充電するDC信号に変換する。任意の時点において、整流後の(DC)回路の任意の位置で直列アーク故障が発生する可能性がある。このアークによって、整流処理で既にAC(リップル)アーチファクトを有するDC電流上に1/f(「ピンク」)ノイズが生成される。アーク故障と検出回路との間に、クロストークによってノイズが追加され、信号周波数および位相がシフトし、信号(およびノイズ)が減衰する可能性がある。磁気共鳴ワイヤレス電力伝送(WPT)システムからの狭帯域入力ACにより、整流後および平滑後のリップルは、同一の中心周波数を維持するため、最大電力のDCノイズ源はそのスペクトルが制限され、容易に欠測が生じる。
【0039】
電気アーク放電は、「ピンクノイズ」を発生させる自然作用の1つである。ピンクノイズは、次式で記述することができる。
P(f)=1/fα, (1)
式中、Pはスペクトルパワーであり、αはノイズの「色」を決定する指数であり、α=0は「ホワイトノイズ」(ホワイトノイズは周波数に依存しないと定義される)、α=1はピンクノイズである。ピンクノイズは、パワースペクトルが周波数に反比例して変化する(すなわち1/f振幅)広帯域信号として特徴付けられる。これは、アークの点火により低い周波数に比例してノイズが大幅に増加することを意味する。
【0040】
図3Aは、周波数(kHz)対パワー(dB)の両対数グラフにおいて直列アーク故障の検出が最小限である場合の例を示す。ピンクノイズのシグネチャ301は、正検出のために十分なパワー(約5dB)を有する低周波数(3kHz未満)303において明白である。より高周波数のスペクトル304では、ノイズフロア302がピンクノイズよりも優勢である。
【0041】
図3Bは、周波数(kHz)対パワー(dB)の両対数グラフにおける、低パワーの直列アーク故障の例を示す。ピンクノイズのシグネチャ305は、正検出に十分なパワー(>10dB)を有する低周波(11kHz未満)306において明白である。より高周波数のスペクトル307では、ノイズフロア302がピンクノイズよりも優勢である。直列アークのパワーが増加するに伴って、誤検出の統計的確率が減少するため、より高い周波数で発生するピンクノイズを検出する能力が増加することに留意されたい。
【0042】
図3Cは、周波数(kHz)対パワー(dB)の両対数グラフにおける、高パワーの直列アーク故障の例を示す。ピンクノイズのシグネチャ308は、正検出に十分なパワー(>25dB)を有する低周波(120kHz未満)309において明白である。より高周波数のスペクトル310では、ノイズフロア302がピンクノイズ308よりも優勢である。
【0043】
図3Dは、周波数(kHz)対パワー(dB)の両対数グラフにおける、極めて高パワーの直列アーク故障の例を示す。ピンクノイズのシグネチャ311は、正検出に十分なパワー(>30dB)を有する全周波(1000kHz未満)312において明白である。
【0044】
図4
図4は、整流後の例示的な直列アークのノイズスペクトルを示しており、選択された検出周波数を含む。
図4は、ピンクノイズの存在、したがって直列アーク故障を検出するために、一連の周波数406~410の連続的または周期的な受動走査が実行される事例を示す。周波数(kHz)対パワー(dB)の両対数グラフには、検出器で受信された信号401のスペクトル特性が示されている。検出器回路は、ワイヤレス電力伝送(WPT)システムの(整流後の)DC段に組み込まれている。検波回路はDC信号成分を除去するように設計されており、その結果、検出信号401が得られる。この検出信号401の例では、低周波数スペクトル404にはピンクノイズが見られるが、高周波数スペクトル405には見られない。整流後、狭帯域85kHzのAC充電信号402は完全に除去されている。付加的なノイズ源(ワイヤレス電力伝送(WPT)アセンブリおよびアプリケーションの外部に固有のもの(例えば、電動車両(EV)充電など))の例は、6~8kHzの範囲403で示されている。
【0045】
周波数窓406、407、408、409、および410は、既知のノイズ周波数範囲(通常のホワイトノイズに追加されるノイズ)を回避するように選択される。本例で示すように、周波数窓は、小さなアークによって発生するピンクノイズをより的確に特定するのみでなく、充電信号からの高調波411を回避するために、その大部分が低周波数範囲に分布する。
【0046】
図5
図5は、例示的な実施形態における直列アーク検出のための例示的な回路を概略的に示す。
図5は、電子機器の電力供給およびエネルギー貯蔵システム(例えば、化学電池または固体電池、可逆性燃料電池、ウルトラキャパシタなど)の充電のためのワイヤレス電力伝送(WPT)の受信サブシステム(別名、WPTの二次システム)を示す。このようなシステムの用途の1つは、電動車両の充電である。
図5の実施形態は、ピンクノイズの付加を検出することによる直列アークの受動検出に必要な回路を含む上位レベルの構成を図示する。磁気共鳴誘導回路を使用するワイヤレス電力伝送(WPT)システムでは、共鳴ネットワーク501は、中心周波数が85,000ヘルツ(公称では79~90kHzの範囲が許容される)の高品質電流源である。共鳴ネットワークのインピーダンスにより、狭帯域の共鳴周波数と高調波内で電流を供給することが可能となる。整流器503は、AC電気バス502を介して受信した狭帯域のAC電流を、基本周波数の偶数倍の高調波を有するDC電流に変換する。
図5の整流器段503は、「SAFETY CIRCUITS FOR WIRELESS POWER TRANSFER(ワイヤレス電力伝送のための安全回路)」と題する、2020年11月19日付で出願された米国特許出願第16/952,933で教示されているタイプの安全整流器であってもよい。整流器503からの高調波電流はアーク検出回路506によって分流され、AC電流は出力電流センサ512を通って車両充電制御装置515に至る。負荷505に直列アークが発生すると、ピンクスペクトルのシグネチャを有する広帯域の電流が流れる。「CURRENT SENSING IN A WIRELESS POWER TRANSFER SYSTEM(ワイヤレス電力伝送における電流感知)」と題する、2020年3月20日付で出願された米国特許出願第16/825,624号に記載されているタイプの「部分電流センサ」を使用して、例示的な実施形態における、AC電気バス502およびDC電気バス504の電流検出を提供してもよい。
【0047】
図5の実施形態では、充電信号が磁束を介して共鳴ネットワーク501の二次コイルアセンブリに供給されて電流に変換される。受信されたAC電気信号は、大電力用に配線されたACバス502によって整流サブシステム503に供給される。AC信号は、大電力用に配線されたDCバス504を介して電力貯蔵サブシステム505に供給される前に、電池の充電に適したDC信号に整流される。
【0048】
受動的なアーク検出を可能にするために、整流サブシステム503と電力貯蔵サブシステム505との間にアーク検出回路506が挿入されている。2つの新規の並列経路が設置されており、第1の経路は、フィルタコンデンサ507と、感知抵抗508とを含む。第2の経路は、平滑コンデンサ509を含む。第1および第2の経路は、互いに並列であるとともに、電力負荷/貯蔵サブシステム505と並列である。任意の既存平滑コンデンサまたはコンデンサバンクが平滑コンデンサ509に含まれる。
【0049】
電流感知抵抗508は、リップル電流(整流DC電流ベース上のAC電流ノイズ)にのみ晒される。電流感知抵抗508をフィルタコンデンサ507と直列に配置することで、アーク検出回路506は、整流サブシステム503からのDC負荷電流を除去し、DC負荷電流に付加されたノイズの電圧を測定することが可能となる。
【0050】
感知抵抗508上に生成された電圧は、バンドパスフィルタ処理され、低ノイズ増幅器(LNA)510によって増幅される。特徴的な(1/周波数)ピンクノイズ信号の振幅は、アーク故障の大きさおよび重大度に直接関係するため、このような増幅は、デジタイザ512自体によって誘導されるノイズ源(例えば、コード遷移ノイズ、微分非直線性、入力参照ノイズ)、および低検出範囲を制限する量子化ノイズによって許容されるアーク故障よりもより小さいアーク故障を検出するために使用することができる。フィルタ処理および増幅された電圧は、バス511を介してデジタイザ512(通常、高ダイナミックレンジのアナログ・デジタル変換器)に渡される。デジタイザ512は、事前にフィルタ処理および増幅された電圧を、予測されるナイキスト速度を超える周波数でサンプリングする。このデジタル情報は、分析のためにデジタルデータリンク514を介して車両充電制御装置515に送信される。車両充電制御装置515のプロセッサによるデジタル情報の分析中に直列アークが検出された場合、車両充電制御装置515は、完全なシステムの停止および磁束充電信号の終了が実行されるまで、制御データリンク516を介して安全整流器503に対し、電流を分流して整流器503のDC出力をゼロに向けて減少させるように命令することができる。車両充電制御装置515はさらに、電流および電圧センサ517およびデータリンク516を介して、電力負荷/貯蔵サブシステム505に印加されるDC電流波形の振幅を監視することができる。
【0051】
図6
図6は、例示的な1実施形態におけるアークの受動検出および軽減の工程を図式化したものである。
【0052】
図6に示すように、アークの受動検出工程の開始601は、受信アセンブリ、充電ステーション(存在する場合)、過去の充電履歴、または他の情報の特性を取得可能な(遠隔、ローカル、または電動車両に搭載されている)データベース602との通信を含む。この情報は、走査周期の周期性の通知、充電セッションの即時中止、走査周波数の数の設定、および/または既知の局所的なノイズ、周囲ノイズ、または干渉要因を回避するための周波数窓(複数可)の調整のために使用することができる。
【0053】
受動走査603は、アーク検出回路506から受信した整流DC信号特性に付加されたノイズに関する情報を収集する反復段階である。1実施例では、2若しくはそれ以上の周波数間の振幅差を利用して、パワースペクトル密度(周波数区間あたりのパワー)が信号の周波数に反比例しているかどうかを決定する。所定の周波数範囲および複数の周波数範囲にわたるピンクノイズの反復表示の双方を検出イベントの決定に使用することができる。誤検出の統計的確率を決定するために、検出イベントに対して追加の信号および履歴分析を実行することができる。
【0054】
車両充電制御装置515のプロセッサの走査手段(例えば、
図7のフローチャートを実施するソフトウェア)による受動走査603における高確率の受動検出(例えば、品質閾値を1つ上回るなど)により、充電セッションの中止604がトリガされる。充電セッションが中止604された場合、車両充電制御装置515は、安全整流回路503内の分流回路を接続して、接地ステーションの充電コイルに対する通電が遮断されるまで電流を分流させる。中止工程604の間、ローカルアラーム、告知、およびインジケータが発信され、充電セッションを終了するために接地アセンブリへの通信が行われる。補助システム(例えば、換気、火災検知、火災消火)は、必要に応じて作動されるか、若しくは利用可能となる。
【0055】
接地ステーションの充電コイルに対する通電が遮断されると終了段階605に達し、データベース602は、検出イベントおよび車両特性(例えば、電動車両(EV)のメーカ、電動車両(EV)のモデル、インストールされたソフトウェアパッケージおよび改訂、電池メーカー、モデル、電圧、容量など)に関連する収集データで更新される。
【0056】
図7
図7は、例示的な1実施形態における受動走査のための信号解析のフローチャートを示す。
【0057】
図7に示すように、信号データが収集されると、時間領域から周波数領域への変換(例えば、高速フーリエ変換(FFT))計算701が実行される。FFTの結果は、既知の外部干渉およびノイズ源(例えば、インバータスイッチング、信号高調波)を除去するためにマスク702される。マスクされた結果における、ピンクノイズの1/f振幅特性への適合性に基づいてスコア703が作成される。サンプル数nの積分(n-sample integration)704が実行され、スコアが継続時間にわたって平均化される。サンプル数nの各期間について、積分されたスコアが閾値と比較705される。閾値を超えた場合、受動型直列アーク検出システムによって検出706がトリガされる。例示的な実施形態において、信号解析は、車両充電制御装置515のプロセッサ上で実行されるソフトウェアによって実行されてもよい。
図5に関して上述したように、直列アークが検出された場合、車両充電制御装置515は、完全なシステムの停止および磁束充電信号の終了が実行されるまで、制御データリンク516を介して安全整流器503に対し、電流を分流して整流器503のDC出力をゼロに向けて減少させるように命令することができる。
【0058】
結論
上記で様々な実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は例示的な目的のみで提示されているものであり、限定的なものではないことを理解されたい。例えば、上述したシステムおよび方法に関連する要素のいずれも上述した望ましい機能のうち任意の機能を採用することができる。したがって、好適な実施形態の範囲は、上述した例示的な実施形態のうち任意の実施形態によって限定されるべきではない。
【0059】
本明細書で説明したように、本明細書に記載した方法の態様を実施する論理、コマンド、または命令は、デスクトップまたはノートブックパーソナルコンピュータ、タブレット、ネットブック、およびスマートフォンなどのモバイルデバイス、クライアント端末、およびサーバによってホストされるマシンインスタンスなどのコンピューティングシステムのための任意の数のフォームファクタを含むコンピューティングシステムにおいて提供することができる。本明細書に記載した別の実施形態は、本明細書に記載される技術を別の形態に組み込むことを含むものであり、当該形態は、当該技術の機能を実行する各手段を有する装置を含む、プログラムドロジック、ハードウェア構成、または特殊なコンポーネントもしくはモジュールの別の形態を含む。このような技術の機能を実施するために使用される各アルゴリズムは、本明細書に記載される電子的動作の一部またはすべてのシーケンス、または添付の図面および詳細な説明に記載されるその他の態様を含むことができる。本明細書に記載された方法を実施するための命令を含むシステムおよびコンピュータ可読媒体はまた、例示的な実施形態を構成する。
【0060】
本明細書に記載した整流器制御装置113、車両充電プロセッサ129、および/または車両充電制御装置515の監視機能および制御機能は、1実施形態においてソフトウェアで実施することができる。ソフトウェアは、ローカルまたはネットワーク接続された1若しくはそれ以上の複数の非一時的メモリまたはその他のタイプのハードウェアベースの記憶装置などのコンピュータ可読媒体またはコンピュータ可読記憶装置に格納されたコンピュータ実行可能命令で構成されてもよい。さらに、このような機能はモジュールに対応し、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。必要に応じて複数の機能を1若しくはそれ以上のモジュールで実行可能であり、記載した実施形態は単なる例に過ぎない。ソフトウェアは、パーソナルコンピュータ、サーバ、または特定用途向けにプログラムされた機械に変更されたその他のコンピュータシステムなどのコンピュータシステム上で動作するデジタルシグナルプロセッサ、ASIC(特定用途向け集積回路)、マイクロプロセッサ、またはその他のタイプのプロセッサで実行することができる。
【0061】
本明細書で説明したように、本実施例は、プロセッサ、論理、または多数のコンポーネント、モジュール、または機構(「モジュール」と言う。)を含むことができ、若しくは当該モジュール上で動作することができる。モジュールは、指定された動作を実行することができる有形エンティティ(例えば、ハードウェア)であり、特定の態様で構成または配置されてもよい。一例として、回路は、モジュールとして指定された態様で(例えば、内部に、または他の回路などの外部エンティティに対して)配置されてもよい。一例において、1若しくはそれ以上のコンピュータシステム(例えば、スタンドアロン、クライアントまたはサーバコンピュータシステム)、または1若しくはそれ以上のハードウェアプロセッサの全体または一部は、指定された動作を実行するように動作するモジュールとしてのファームウェアまたはソフトウェア(例えば、命令、アプリケーションの一部分、またはアプリケーション)によって構成されてもよい。一例において、ソフトウェアは、機械可読媒体上に存在してもよい。ソフトウェアは、モジュールの基礎となるハードウェアによって実行されることで、ハードウェアに指定動作を実行させる。
【0062】
したがって、「モジュール」という用語は、有形ハードウェアおよび/またはソフトウェアエンティティを包含するものであり、当該エンティティは、物理的に構築、または(例えば、ハードウェアにより実現される)特定用途向けに構成、または一時的に構成され(例えば、プログラムされ)、指定された態様で動作、若しくは本明細書に記載される任意の動作の一部または全部を実行するものであると理解される。モジュールが一時的に構成される例を考えると、各モジュールは、任意の瞬間時においてインスタンス化される必要はない。例えば、モジュールがソフトウェアを使用して構成された汎用ハードウェアプロセッサからなる場合、汎用ハードウェアプロセッサは、異なる時点でそれぞれの異なるモジュールとして構成されてもよい。したがって、ソフトウェアは、例えば、ある時点では特定のモジュールを構成し、異なる時点では異なるモジュールを構成するように、ハードウェアプロセッサを構成することができる。
【0063】
当業者であれば、本明細書に記載されたトポロジーおよび回路実装方法により、単一の特定用途向け集積回路としての効果的な実現が可能となることを理解すると考えられる。さらに、本明細書に含まれる開示は車両への電力供給に関するものであるが、これは多くの可能な用途の1つに過ぎず、非車両用途を含む他の実施形態も可能であることを理解されたい。例えば、当業者であれば、歯ブラシ、携帯電話、およびその他の装置を充電するために使用される充電器(例えば、PowerMat(商標))など、携帯型家電装置用充電器のなどの非車両誘導充電用途において電流源安全回路を提供する多数の用途があることを理解すると考えられる。したがって、これらの用途およびその他の用途は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
直列アークは、負荷と直列に導電経路を形成するものであり、通常、接続不良のコネクタ、導体の断線(例えば、破断したワイヤ)、または開放されたリレーに亘って発生する。直列アークでは、依然として接続されている負荷により電流が制限されるため、並列アークによって生じる大電流は阻止される。直列アークでは、負荷により電流が制限されるため、損傷は浸食によって生じ、アークによって形成される局所的なプラズマが導体表面および周囲の絶縁体に損傷を与え、最終的に熱による導電体の機械的損傷、および周囲構造体の損傷を引き起こす連鎖反応を発生させる。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2006/0203401号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2005/0024016号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2014/0142873号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2014/0119072号明細書
(特許文献5) 米国特許出願公開第2017/0207746号明細書
(特許文献6) 米国特許出願公開第2017/0237340号明細書
(特許文献7) 米国特許出願公開第2016/0181875号明細書
(特許文献8) カナダ国特許発明第2125026号明細書
【国際調査報告】