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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】コータコンディショニングモード
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/00 20060101AFI20240214BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C23C14/00 B
C23C14/34 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550548
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2022055085
(87)【国際公開番号】W WO2022184680
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21159980.8
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522475177
【氏名又は名称】ビューラー アルツェナウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ジモン
(72)【発明者】
【氏名】フランク、マルクス
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029AA09
4K029AA24
4K029CA05
4K029CA17
4K029DA03
4K029DA04
4K029DA08
4K029DA09
4K029DC00
4K029EA03
4K029EA05
4K029EA08
4K029EA09
4K029FA09
4K029KA01
(57)【要約】
コータの処理領域から水及び/又は水分を除去するためにコータをコンディショニングする方法が提供され、処理領域は、少なくとも1つのポンプ区画(10)と、少なくとも1つのスパッタリング区画(11)と、を含む。本方法は、処理領域がコンディショニング基板(5)で実質的に満たされるように、処理領域にコンディショニング基材(5)を装填するステップと、処理領域においてスパッタリングプロセスを開始することによって、及び/又は少なくとも1つのポンプ区画(10)を加熱することによって、コータをコンディショニングするステップと、を含む。コンディショニング中、コンディショニング基材(5)は、処理領域内で振動運動を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コータの処理領域から水及び/又は水分を除去するために前記コータをコンディショニングする方法であって、前記処理領域(1)が、少なくとも1つのポンプ区画(10)と、少なくとも1つのスパッタリング区画(11)と、を含み、
-前記処理領域(1)がコンディショニング基板(5)で実質的に満たされるように、前記処理領域(1)に前記コンディショニング基板(5)を装填するステップと、
-前記処理領域(1)においてスパッタリングプロセスを開始することによって、及び/又は少なくとも前記1つのポンプ区画(10)を加熱することによって、前記コータをコンディショニングするステップであって、コンディショニング中に、前記コンディショニング基板(5)が前記処理領域において振動運動を行う、ステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記コンディショニング基板(5)が、金属基板、特に、少なくとも350J/(kg*K)の比熱容量を有する基板であり、前記コンディショニング基板(5)が、好ましくは、前記コータをコンディショニングした後にクリーニングされ、再使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンディショニング基板(5)が、低品質のガラス基板であり、前記コンディショニング基板が、好ましくは、前記コータをコンディショニングした後に廃棄される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
コンディショニング基板(5)の長さが、スパッタリング区画(11)の長さに実質的に対応する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コータ内の2つの連続する基板(5)の間の距離が、約30~100mmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
振動の最小振幅が、前記スパッタリング区画(11)の長さに実質的に対応する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポンプ区画を加熱するために、加熱手段、好ましくは、加熱されたコンダクタンストンネル(101)が使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コンディショニング基板(5)の長さ、及び/又は振動の振幅は、振動中に、単一のコンディショニング基板(5)のみが前記スパッタリング区画(11)内に配置されるように選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
好ましくは、貴重なコーティング材料が、前記コータをコンディショニングした後に前記コンディショニング基板からリサイクルされる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分離された水が、スパッタリング及び/又は加熱中に汲み上げられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
コンディショニング中、スパッタリングが一時的に停止され、前記コータが、乾燥ガスで少なくとも部分的に通気された後、再びポンプダウンされる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記コータ内の残留水の分圧が所定の閾値未満であることを検出することによって、コンディショニングが完了したと判定する場合、前記コンディショニングを停止するステップを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コータ内の前記水の分圧が、残留ガス分析器、及び/又は分光プラズマ発光監視システムを使用することによって検出される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板をコーティングするための装置であって、
少なくとも1つのポンプ区画(10)及び少なくとも1つのスパッタリング区画(11)を含む処理領域(1)と、
前記処理領域(1)を通じて前記基板(5)を移動させるための駆動手段であって、スパッタリング及び/又は加熱によるコンディショニング中、前記基板(5)が前記処理領域(1)内で振動運動を行うように、前記基板を移動させるように構成された駆動手段と、を備える、装置。
【請求項15】
加熱されたコンダクタンストンネル(101)、及び/又は前記水の分圧を判定するための手段を更に備える、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング装置、特にスパッタリングプロセスによってガラス基板をコーティングするための大面積コータに関する。本発明は特に、メンテナンスプロセス後のコータのコンディショニングに関する。
【0002】
一般に、大面積コータへのメンテナンスプロセスの後、機械は閉じられ、ポンプダウンされる。ポンピング後、コータには「コンディショニング」が施される必要がある。「コンディショニング」は、一般に、コータから水を汲み出すことと同義である。水は、コータ内部の表面全体で吸着され、水を効率的に汲み上げるために、水は、表面から分離される必要があり、このプロセスは熱を必要とする。2つの異なる最先端のコンディショニングプロセスが知られている。
【0003】
カソードの始動を可能にする圧力に達するとすぐに、スパッタリングプロセスがコータ全体にわたって開始される。カソードごとに10kW~120kWの間で提供されるプロセス電力は、主に熱エネルギーに変換されるため、主にスパッタリングプロセスがアクティブであるプロセス区画の領域において、コータを加熱するものの、ポンプ区画はアクティブに加熱されない。加熱は、水を表面から分離して汲み出すための所望の効果であるが、2つの不都合な影響がある。つまり、(1)スパッタリング対象が、コーティングされたガラスを生成することなく消費されること、(2)スパッタリングされた材料は、空の区画に堆積され、固有応力を有するコーティング材料の厚い層を構築し、これが、後に、コータが生産モードにあるときにデブリ(製品故障)のリスクを増加させること、である。
【0004】
前述したデブリのリスクを最小限に抑えるために、コンディショニング手順を以下のように修正することができる。スパッタリングの間、例えば、規格外のガラスがコータを連続的に通過する。このようにして、スパッタリングされた材料は、空の区画には堆積されず、スパッタリングされた材料をコータから運び出す低品質ガラス上に堆積される。コーティングされたガラスは、大気に戻して、このプロセスのために再使用することができる。この目的のため、コーティングされたガラスは、コータ出口からコータ入口に戻るように輸送される必要がある。コンディショニングプロセスの終わりに、コーティングされたガラスは廃棄される。このようにして、製造中のデブリのリスクを低減することができる。しかしながら、このリスクの軽減は、ここでもいくつかの不都合を生じる。すなわち、(1)全てのスパッタリングプロセスがアクティブである間にコータを通過するガラスは、著しく加熱され、加熱プロセスが利用可能でないポンピング区画をコンディショニングするのにも役立つ。コータを出るとき、ガラスは、約60℃~70℃の温度に達しているため、真空からかなりの量のエネルギーを抽出するが、これが実際にコンディショニングに必要となる。ガラスは、大気に戻ると、コータ入口に戻る間にただ冷却され、そこで洗浄機械を通過し、再びコータに入って再加熱され、区画表面がスパッタリングされないように保護する。(2)コータを通って出口から入口に戻るようにガラスを複数回循環させると、かなりの積層がガラス上に構築され、その結果、かなりの固有応力が生じ、接着力が失われる。その結果、このコーティングされた材料の一部は、実際のところは未コーティングのガラスを洗い流すように調整された、コータの入口手前の激しい洗浄作業で除去される。ブラシによって機械的に除去されたこれらのコーティング粒子は、洗浄機械を汚染しているため、洗浄機械は生産開始に先立ってクリーニングされる必要がある。
【0005】
米国特許出願公開第2007/254096(A1)号に記載されているように、コータのチャンバは、コーティング作業に先立ってコンディショニングされたパージガスでパージされるが、パージガスの水分含有量は、所定の水分レベル、特に、最大30%の相対水分含有量に設定される。チャンバは、クリーニング動作の前、及び/又はクリーニング動作の間に、20℃~60℃の温度に少なくとも部分的に加熱され得る。
【0006】
国際公開第2006/127472(A1)号によれば、コータの(堆積)チャンバを迅速かつ安価に乾燥させるために、チャンバに乾燥空気を吹き付けて、使用前にチャンバ内の汚染水分を除去する。
【0007】
したがって、本発明の目的は、特に、上記の問題を克服するように改善されたコンディショニング方法及びコータ装置を提供することである。
【0008】
本発明は、独立請求項1及び14によって規定される。従属請求項は、本発明の実施形態を規定する。
【0009】
本発明は、コータの処理領域から水及び/又は水分を除去するためにコータをコンディショニングする方法を提供する。処理領域は、少なくとも1つのポンプ区画及び少なくとも1つのスパッタリング区画を含む。本発明の方法によれば、処理領域全体、好ましくは、移送チャンバがコンディショニング基板で実質的に満たされるように、コンディショニング基板がコータの処理領域に装填される。次いで、処理領域においてスパッタリングプロセスを開始することによって、及び/又は少なくとも1つのポンプ区画を加熱することによって、コータのコンディショニングプロセスが実行される。コンディショニング中、コンディショニング基板は、処理領域内で振動運動(前後)を実行する。
【0010】
コンディショニング基板は、金属基板、特に、少なくとも350J/(kg*K)の比熱容量を有する基板、例えば、アルミニウム基板であり得る。コンディショニング基板は、好ましくは、コータをコンディショニングした後にクリーニングされ、再使用される。
【0011】
あるいは、コンディショニング基板は、低品質のガラス基板である。ガラスコンディショニング基板は、コータをコンディショニングした後に廃棄されてもよい。
【0012】
コンディショニング基板の長さは、好ましくは、スパッタリング区画の長さに実質的に対応する。コータ内の2つの連続する基板間の距離、いわゆる「間隙」は、対象材料がコータ内でスパッタリングされるのを防止するために、可能な限り小さくすべきである。典型的には、間隙は、約30mm~100mmである。コンディショニングに使用される基板の長さに関連して、間隙、すなわち、コータ内の2つの連続する基板間の距離は、最大で最短基板長の約1/8~1/12でなければならない。
【0013】
振動の最小振幅は、好ましくは、スパッタリング区画の長さに実質的に対応する。振動の最大振幅は、好ましくは、移送チャンバの長さであり、コータがバッファチャンバを装備している場合、最大振幅は、バッファチャンバを含むように増大させることができる。
【0014】
加熱されたコンダクタンストンネルは、少なくとも1つのポンプ区画を加熱するために使用され得る。
【0015】
コンディショニング基板の長さ、及び/又は振動の振幅は、好ましくは、単一のコンディショニング基板のみが振動中にスパッタリング区画内に配置されるように選択される。
【0016】
コーティング材料は、コータをコンディショニングした後にコンディショニング基板からリサイクルされ得る。
【0017】
分離された水は、好ましくは、スパッタリング及び/又は加熱の間、汲み上げられる。
【0018】
コンディショニング中、スパッタリングプロセスを少なくとも一度、一時的に停止し、Ar、O2、N2、又は空気のような任意の乾燥ガス又は雰囲気でコータを少なくとも部分的に通気することが好ましい場合がある。その後、コータを再びポンプダウンし、スパッタリングを再開することによって、コンディショニングプロセスを再開し得る。
【0019】
好ましくは、コータ内の残留水の分圧が所定の閾値未満であることを検出することによって、コンディショニングが完了したと判定される場合、コンディショニングプロセスを停止する。好ましくは、コータ内の水の分圧は、残留ガス分析器、及び/又は分光プラズマ発光監視システムを使用することによって検出される。
【0020】
本発明は更に、特に、上述のコンディショニング方法を実施するように構成された、基板をコーティングするための装置を提供する。装置は、少なくとも1つのポンプ区画及び少なくとも1つのスパッタリング区画を含む処理領域と、処理領域を通じて基板を移動させるための駆動手段と、を備える。駆動手段は、スパッタリング及び/又は加熱によるコンディショニング中、基板が処理領域内で振動運動を行うように、基板を移動させるように構成される。
【0021】
装置は、好ましくは、加熱手段、特に、加熱されたコンダクタンストンネル、及び/又は水の分圧を判定するための手段を更に備える。
【0022】
本発明によれば、従来技術の上述のコンディショニング手順の利点を組み合わせ、同時にそれらの不都合を排除するために、本発明の一実施形態による以下の手順が提案される。入口又は出口移送チャンバを潜在的に含むコータプロセス領域全体に、低品質又は仕様外のガラス、又は高い熱容量を提供する任意の代替基板材料、好ましくは、例えばステンレス鋼又はアルミニウムのような金属基板で満たされる。コータは、両端で閉じられてポンプダウンされ、スパッタリングプロセス、及び/又は代替若しくは追加の加熱手段が、コータを加熱するように操作される。ここで基板は、移送チャンバ長さの振幅、又は任意の他の好ましい振幅で、コータ内で振動する。
【0023】
このようにして、以下の利点を達成することができる。すなわち、(1)コンディショニングに必要な熱が、実行中のスパッタリングプロセスによって提供される。(2)ガラス又は代替的な基板材料により、コータ内の表面がスパッタリングされた材料でコーティングされないように保護することで、上述のデブリのリスクを低減する。(3)振動により、プロセス区画に隣接するポンプ区画は、高温基板が、高エネルギースパッタリング区画から必ずしもアクティブに加熱されない「低温」ポンプ区画に移動し、戻ることによって加熱される。
【0024】
ガラス又は代替的な基板材料がコータ内で振動しているため、以下の不都合を排除することができる。(1)基板がもはや真空から出ていないため、コータは、基板によって運搬されるエネルギーを失わない。プロセス熱は、基板に蓄積され、コータのより冷たい領域(ポンプ区画)に分配され、その結果、コンディショニング時間に悪影響を及ぼすことなく、コンディショニングに必要なスパッタリングエネルギーを低減することができる。(2)基板材料をコータ出口からコータ入口に戻す必要がない。(3)洗浄機械は、洗浄手順中に多重コーティングされたコンディショニング基板から除去されたコーティング粒子で汚染されない。したがって、洗浄機械に対して特定のクリーニング手順はもはや必要とされない。
【0025】
低品質ガラスは、コンディショニング中に基板として使用されている場合、コンディショニングプロセス後に廃棄することができる。任意の金属シートが使用される場合、それらは、次のコンディショニングプロセスのために(例えば、サンドブラストによって)クリーニングされ、再使用され得る。
【0026】
基板材料内の熱応力を回避するために、特に、ガラスがコンディショニング基板として使用されている場合、ジャンボ長さ以外の代替のガラスサイズ、最も好ましくは、約850mmであり得る区画長さと同様のガラスサイズを使用することが有利である。装填及び装填解除プロセス中、並びにクリーニング手順(例えば、サンドブラスト)のためには、サイズが小さいほど、取扱いをより容易にすることができるため、寸法がより小さいことは、金属シートが使用される場合にも有利であり得る。
【0027】
コンディショニング基板上にコーティングされた貴重な材料(例えば、銀)を効果的にリサイクルするために、基板を特別な寸法に切断し、銀のみが1つの基板上に堆積されるように配置することができる。コンディショニングプロセスの後、これらの特定の基板を選別することができ、堆積した貴重な材料を基板表面からリサイクルすることができる。他の全ての基板は、サンドブラストによってクリーニングすることができる。
【0028】
スパッタリングプロセスは、コンディショニングに必要なエネルギーを提供するために利用されるので、唯一残っている不都合は、コンディショニング手順中の対象材料が浪費されてしまうことであり、これは生産のために失われる。この不都合は、熱をコンディショニング基板に効果的に伝達する、ポンピング区画内の加熱されたコンダクタンストンネル、又はコータ内の任意の他の加熱手段若しくは加熱可能な構成要素を使用することによって、排除することができる。熱エネルギーが、加熱されたコンダクタンストンネル又は代替構成要素によって基板材料に伝達され得る場合、スパッタリングプロセスは、コンディショニングの目的のために低減され得るか、又は対象材料の浪費を完全に排除するために停止さえされ得る。
【0029】
理想的には、本発明による最適化されたコンディショニング手順は、「ポンピング及び通気の交互プロセス」によって補完することができる。交互の第1のシーケンスにおいて、基板は、スパッタリングプロセスによって、及び/又は加熱されたコンダクタンストンネルによって加熱される一方で、分離された水が汲み上げられる。第2のシーケンスでは、スパッタリングプロセスが停止され、コータは、乾燥空気又は上記の代替ガスで部分的に通気された後、再びポンピングされる一方で、基板は、加熱可能なコンダクタンストンネルによって、及び/又はスパッタリングプロセスによって、圧力がカソードを始動させるとすぐに連続的に加熱される。
【0030】
最後に、全ての記載された特徴及び利点を有する全体のコンディショニング手順は、残留水の分圧についての好適な終点検出を用いて完了され得る。残留ガス分析器(residual gas analyzer、RGA)は、この目的のために、最も関連する区画(例えば、コールドポンプ区画、隣接するAg区画の前のAg若しくはZnOシード層、又はコータ内の他の任意の好ましい位置)に適用することができる。有効な代替として、分光プラズマ発光監視システム(plasma emission monitoring、PEM)も、プラズマがオンにされる限り、本質的なプロセス区画内の関連水発光波長を監視するために適用することができる。残留水の分圧を感知する終点検出のために、他の任意のシステムを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0032】
図1】従来技術によるコンディショニング方法を実施するコータを示す。
図2】本発明の一実施形態によるコンディショニング方法を実施するコータを示す。
図3】本発明の一実施形態によるコンディショニング方法を実施する貴重な材料の処理区画を含むコータを示す。
図4】本発明の実施形態によるコンディショニング方法を実施する加熱可能なコンダクタンストンネルを装備したポンプ区画を含むコータを示す。
【0033】
図1は、上述した従来技術において知られているコンディショニングプロセスを実施するコータを示す。コータは、装填及び装填解除区画と、バッファ/移送区画B/Tと、複数の処理区画Pで構成された処理領域1と、を含む。処理領域1は、図2を参照して以下に説明されるポンプ区画及びスパッタリング区画に細分される。スパッタリングプロセスは、図1に示されるコータの下の矢印によって示されるように、基板5の「無端列」を処理領域を通じて連続的に移動させながら、処理領域を加熱することでコンディショニングするために、処理領域において実施される。従来技術によれば、コータをコンディショニングする際に使用される基板は、コーティングされた基板を製造するために通常使用される基板に相当する。しかしながら、これらの従来技術のプロセスは、エネルギー及びコーティングされた材料の浪費など、上述の問題を抱えている。
【0034】
本発明によれば、図2に示されるように、基板は、図2のコータの下の矢印によって示されるように、コンディショニング中に処理領域1内で振動運動を実施する。好ましくは、基板は、移送区画の長さ(T又はBT)に対応する振幅でコータ内で振動する。例えば、十分な熱容量を有する低品質ガラス基板又は金属基板など、コンディショニング中には特定のコンディショニング基板が使用され得る。しかしながら、コータで通常使用される通常の基板を、コンディショニング中に同様に使用してもよい。
【0035】
図2に示されるように、処理区画Pを有する処理領域1は、概して、ポンプ区画10とスパッタリング区画11とに細分され得る。スパッタリング区画11を操作することによって、(コンディショニング)基板が加熱され、次いで、スパッタリング中にアクティブに加熱されない処理領域の部分、すなわちポンプ区画10を加熱する。これは、現在スパッタリングされている基板領域から処理領域内の他の区画への熱の流れを示す、処理領域内の曲線矢印によって示されている。熱は、代替的又は追加的に、図4を参照して以下に説明されるような加熱可能なコンダクタンストンネルなど、他の加熱手段を使用することによって、コンディショニング中に処理領域に導入されてもよい。
【0036】
スパッタリングプロセスの間、分離された水は、処理領域からポンプ排出される。コンディショニング効率を改善するために、コンディショニング中にスパッタリングを一時的に停止して、乾燥空気でコータを少なくとも部分的に通気してもよい。次いで、コンディショニングプロセスを継続するために、コータは再びポンプダウンされてもよく、スパッタリングプロセスが継続される。
【0037】
コータが十分にコンディショニングされているか否かを検出するために、終点検出が実施され得る。これは、残留水の分圧を判定することによって行われ得る。検出された残留水の分圧が所定の閾値未満に低下するとすぐに、コンディショニングが停止されてもよく、コータは製造の準備ができる。上述したように、残留水の分圧を測定するための任意の適切なシステム及び方法が適用され得る。
【0038】
コンディショニング中の基板の振動の振幅は、例えば、移送チャンバTの長さに実質的に対応してもよく、又はバッファチャンバBを含んでもよい。貴重な材料を用いたスパッタリングの場合、以下に図3を参照して説明されるように、他の振幅又は基板長が有利であることもある。コンディショニング中に実質的にコータ全体が基板で満たされることを確実にするように、後続の基板間の距離は、可能な限り小さく保たれるべきである。例えば、距離が約30mm~100mm又は最短基板長の1/8~1/12であることが適切であり得る。
【0039】
基板材料内の熱応力を回避するために、特に、ガラスがコンディショニング基板として使用されている場合、大面積コータで通常使用される長さ以外の代替のガラスサイズを使用することが有利であり、最も好ましいガラスサイズは、約850mmであり得る区画長さと同様である。装填及び装填解除プロセス中に、並びにクリーニング手順、例えばサンドブラストのためには、サイズが小さいほど取扱いをより容易にすることができるため、金属シートがコンディショニング基板として使用される場合には、寸法がより小さいことが有利であり得る。
【0040】
図3は、図2の図示に加えて、図3に示される例における銀(Ag)などの貴重な材料によるコーティングが実施される区画111を示す。この場合、貴重な材料を効果的にリサイクルできるようにするために、コンディショニング基板は、特別な寸法に切断され、基板の長さに特別に適合され得る振動振幅とともに基板の特定の長さに起因して、貴重な材料のみが1つの基板上にコーティングされるように配置され得る。コンディショニングプロセスの後、貴重な材料のみでコーティングされたこれらの特定のコンディショニング基板が選別され、堆積した貴重な材料は基板表面からリサイクルすることができる。他の全ての基板は、例えば、サンドブラストによってクリーニングされ、再使用されるか、又は単に廃棄されることができる。
【0041】
スパッタリングプロセスは、コンディショニングに必要なエネルギーを提供するために利用されるので、残る1つの不都合は、コンディショニング手順中の対象材料の浪費であり得て、これは生産のために失われる。この欠点は、図4に示されるように、熱をコンディショニング基板、例えば、ポンピング区画内の加熱されたコンダクタンストンネルに効果的に伝達する、コータ内の加熱手段又は加熱可能な構成要素を使用することによって排除することができる。熱エネルギーが、加熱されたコンダクタンストンネル101によって基板材料に伝達され得る場合、スパッタリングプロセスは、対象材料の浪費を完全に排除するために、コンディショニングの目的のために低減され得るか、又は更には停止され得る。一般に、スパッタリングプロセスを動作させることによって熱を導入することに加えて、又はその代わりに、コンディショニングのための熱エネルギーを導入することができるように、コータ内の任意の適切な位置に追加の加熱手段を設置することが可能である。コンダクタンストンネルは、処理区画間の過剰なプロセスガス流を同時に回避しながら、1つの処理区画から別の処理区画への基板の通路を提供するように設計される。したがって、コンダクタンストンネルの高さが最小化され、その結果、「トンネルルーフ」と基板表面との間の距離が小さくなる。このため、コンダクタンストンネル101は、好適な構成要素であり、図4に示すように、加熱されると、付近の基板への効果的な熱伝達を提供する。
【0042】
本発明によれば、振動するガラス又は代替的な基板は、製造中のデブリのリスクを低減するために、及び処理領域におけるコンディショニングに必要なエネルギーを維持し、同時に大気への熱損失を伴うことなく、それをポンピング区画に分配するために、コンディショニング中にコータ内に配置される。コータ内に蓄積される過剰な熱を回避するために、スパッタリング電力が低減され、その結果、エネルギー効率の良いコンディショニングプロセスがもたらされ得る。更に、このようにして、コータ出口からコータ入口への大気中での基板の移動を回避することができる。更に、コーティングされた基板をコータに再導入する前に洗浄するために先行技術によって必要とされる洗浄機械のコーティング粒子による汚染を回避することができる。
【0043】
低品質ガラスと比較して、より高い熱容量の基板が、コンディショニングプロセス後にサンドブラストによってクリーニングされ、再使用され得るコンディショニング基板(例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム)として好適であり得る。
【0044】
基板サイズ(長さ)は、ガラスの場合には基板の破損をもたらす可能性のある、1つの基板上の加熱領域及び非加熱領域によって生じる熱応力を回避するように最適化されるべきである。金属シートが使用される場合、破損の危険性は存在しないが、基板が小さいほど、取扱い(例えば、装填、装填解除、クリーニング)がより容易になるという利点を提供する。
【0045】
コンディショニング基板は、好ましくは、1つの基板のみが貴重な材料スパッタリングプロセスの下で振動するように配置される。このようにして、堆積された材料は、コンディショニングプロセスの後に、それらの特定の基板から効率的にリサイクルされ得る。
【0046】
スパッタリングプロセスを実行することによってコンディショニング熱を提供するために、加熱可能なコンダクタンストンネル101又はコータ内の他の加熱手段若しくは加熱可能な構成要素が、コンディショニング基板を加熱することに加えて、又はその代わりとして適用され得る。このようにして、スパッタリング材料の無駄もなくすことができる。
【0047】
コンディショニングプロセスは、ポンピング及び通気の交互手順によって完了され得る。交互の第1のシーケンスにおいて、基板は、加熱可能なコンダクタンストンネルによって加熱される一方で、分離された水が汲み上げられる。第2のシーケンスでは、コータは、乾燥空気又は代替ガスによって部分的に通気され、水をより効率的に分離するのを助けた後、再びポンプダウンされる一方で、基板は、加熱可能なコンダクタンストンネルによって連続的に加熱される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】