(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ソレノイド動作燃料噴射器を制御する方法
(51)【国際特許分類】
F02D 41/26 20060101AFI20240214BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240214BHJP
F02M 59/44 20060101ALI20240214BHJP
F02D 41/30 20060101ALI20240214BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F02D41/26
F02D45/00 372
F02M59/44 E
F02D41/30
F02D43/00 301J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550580
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2022053416
(87)【国際公開番号】W WO2022175186
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518356774
【氏名又は名称】デルファイ テクノロジーズ アイピー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Delphi Technologies IP Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】ペロー,バティスト
(72)【発明者】
【氏名】メソニエ,ギヨーム
【テーマコード(参考)】
3G066
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G066AA01
3G066BA19
3G066CE21
3G301HA01
3G301JA11
3G301MA11
3G301MA18
3G301NC02
3G301ND25
3G384AA01
3G384BA13
3G384BA17
3G384DA05
3G384EA11
3G384EE31
(57)【要約】
燃料噴射器を制御する方法であって、前記噴射器は、電気制御アクチュエータを含み、前記アクチュエータは、ニードル弁の弁座へのおよび前記弁座からのニードルの動きによって、前記ニードル弁を制御するように構成され、前記方法は、a)前記燃料噴射器のために、前記アクチュエータに送られるアクチュエータ作動パルスのパルス幅に対して、前記燃料噴射器によって送達される燃料量(Q)のプロットを決定するステップと、b)ステップa)のプロットに基づいて、アクチュエータ作動パルスのパルス幅に対して、前記燃料噴射器によって送達される燃料量の変更されたプロットを提供するステップと、c)前記燃料噴射器の活性化を次に制御するために、前記変更されたプロットを用いるステップと、を含み、ステップb)は、d)ステップa)の前記プロットにおけるスプーン領域を識別するステップと、e)ステップa)のプロットのスプーン領域からのデータなしで、ステップa)のプロットを再生するステップと、を含む方法。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射器を制御する方法であって、前記噴射器は、電気制御アクチュエータを含み、前記アクチュエータは、ニードル弁の弁座へのおよび前記弁座からのニードルの動きによって、前記ニードル弁を制御するように構成され、前記方法は、
a)前記燃料噴射器のために、前記アクチュエータに送られるアクチュエータ作動パルスのパルス幅に対して、前記燃料噴射器によって送達される燃料量(Q)のプロットを決定するステップと、
b)ステップa)の前記プロットに基づいて、前記アクチュエータ作動パルスの前記パルス幅に対して、前記燃料噴射器によって送達される燃料量の変更されたプロットを提供するステップと、
c)前記燃料噴射器の活性化を次に制御するために、前記変更されたプロットを用いるステップと、を含み、
ステップb)は、
d)ステップa)の前記プロットにおけるスプーン領域を識別するステップと、
e)ステップa)の前記プロットの前記スプーン領域からのデータなしで、ステップa)の前記プロットを再生するステップと、を含む方法。
【請求項2】
ステップd)において生成される前記プロットは、前記スプーンの前記領域内にギャップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)の前記プロットは、単調である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
スプーン領域は、ピントル/ニードル跳ね返りを表す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)は、前記次の制御のためのトリムデータを決定するために、ステップb)において生成されるプロットからのデータを参照プロットからのデータと比較するステップを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アクチュエータは、ソレノイド制御アクチュエータまたはピエゾ制御アクチュエータである、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ソレノイド制御燃料噴射器を制御する方法に関する。本出願は、直動式燃料噴射器およびソレノイド作動式燃料噴射器に特に適用されるが、それらに限定されるものではない。本出願は、燃料噴射器の制御に際し、トリムを適用する方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の燃料噴射器は、典型的には、電動アクチュエータ(例えば、ピエゾまたはソレノイド作動式アクチュエータ)を用い、電動アクチュエータは、ニードル弁を動作させるために用いられ、この弁は、弁座から離れたニードル弁のニードルの動きを介して燃料を燃焼室に分配するために開閉する。典型的には、特定の持続時間(パルス幅)の活性化パルスは、電動アクチュエータ(例えば、ソレノイドアクチュエータ)に送られ、燃料噴射器を動作させる。燃焼空間内に噴射される燃料の量は、パルスの持続時間に依存する。燃料噴射器は、例えばバイアススプリング手段に対して、アクチュエータが弁座から離れるようにピントル/ニードル(装置)を直接動かして燃料を分配するタイプでもよく、これは、直接噴射器と称され、この種の噴射器は、ガソリンおよびディーゼル両方のために用いられる。典型的には、アクチュエータは、ニードルが従来技術でよく知られるようにピントルに接続されているピントル/ニードル装置を移動させるように構成され、ピントルへの言及は、ニードルへの言及と解釈可能であり、逆も同じであることに留意されたい。本発明は、この種の直接噴射器に特に適用される。アクチュエータは、ソレノイドまたはピエゾ制御アクチュエータであってもよい。
【0003】
代替設計において、多くの現在の燃料噴射器は、直接ニードルを作動させる(例えばソレノイド)アクチュエータよりむしろ油圧で動作し、アクチュエータは、油圧弁(システム)を動作させ、燃料噴射器内の圧力を制御し、弁座からニードルを間接的に移動させ、燃料を選択的に分配する。
【0004】
この種の(例えば、ガソリン)噴射器は、学習を行い、挙動を分析し、補正値を計算し、次の噴射器動作の間これらのトリムを適用することによって、時間とともに補償される。このストラテジーは、ICLC(噴射器閉ループ補償)と呼ばれている。
【0005】
大部分の噴射器制御は、ガソリン噴射器の物理ピントルの跳ね返りを考慮せず、この跳ね返りの結果、スプーン形状の領域である「スプーン」または噴射される燃料に対してパルス長のプロットにおいて発生する「下降」が生ずる。これらは、噴射器流れ曲線(パルス対流れ送達曲線)のフルリフトエリアまたはその後につながるパルス持続時間の初めのプロットにおいて発生する。本願明細書において、「スプーン」という用語は、送達される燃料がパルス持続時間においてわずかな増加を伴って減少する第1の時点から、パルス持続時間においてさらなる増加を伴って、送達される燃料の量Qを(第1の時点、すなわち、下降前に有していた局所的)ピーク値まで戻す時点までの、(例えば、ソレノイドアクチュエータに送られる)(活性化)パルス持続時間に対する送達される燃料Qのプロットにおいて1つまたは複数の下降またはスプーン領域を意味するものと解釈されたい。
【0006】
燃料噴射のECU制御では、スプーンエリアにおいて噴射器に適用される複数のパルス幅が、制御を困難にする同じ燃料送達につながるので、スプーンによって問題が生じる。1つのパルス持続時間にリンクされるただ1つの量を有し、それ以上は有さないことが好ましい。この種の問題を解決するために、制御の目的で、(例えば、ソレノイド)パルス幅制御に対する燃料量(送達)のチャートまたはプロット(例えば、MAPまたは関係としてECU内に格納される)が提供され、プロットは、パルス幅の増加に伴って、噴射された燃料量のみが増加し、すなわち、プロットにおいて単調に増加したようなものである。それゆえ、次に、噴射器挙動は、この条件を満たすために単調なパルス対燃料量曲線を用いてマップされる。
【0007】
次に、この種の変更された単調な曲線/プロットは、ICLCトリム決定(パルス修正)のために用いられる。これは、例えば、いくつかの所定の燃料送達学習点(ICLCブレークポイント)でターゲット挙動(MASTERと呼ばれる)と比較することによって実行可能である。
【0008】
したがって、単調な曲線は、ICLCトリムを決定するために必須であるが、この噴射器の物理的挙動は、単調な曲線を生成することによりなされる仮定により、いくらか異なる。この差は、補償されず、局所誤差を与える
【0009】
最後に、いかなる数のICLC量学習点が選択されても、この現象は、この特定のエリアにおける低いICLC性能につながる。
【0010】
この種の問題を解決する通常の方法は、より高い部分ごとの感度を引き起こす可能性があるか、または、過剰な力のマージンおよび油圧減衰を必要とする噴射器油圧最適化によってこの影響を最小化することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、この種の問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様において、燃料噴射器を制御する方法が提供され、前記噴射器は、電気制御アクチュエータを含み、前記アクチュエータは、ニードル弁の弁座へのおよび前記弁座からのニードルの動きによって、前記ニードル弁を制御するように構成され、前記方法は、
a)前記燃料噴射器のために、前記アクチュエータに送られるアクチュエータ作動パルスのパルス幅に対して、前記燃料噴射器によって送達される燃料量(Q)のプロットを決定するステップと、
b)ステップa)のプロットに基づいて、アクチュエータ作動パルスのパルス幅に対して、前記燃料噴射器によって送達される燃料量の変更されたプロットを提供するステップと、
c)前記燃料噴射器の活性化を次に制御するために、前記変更されたプロットを用いるステップと、を含み、
ステップb)は、
d)ステップa)の前記プロットにおけるスプーン領域を識別するステップと、
e)ステップa)のプロットのスプーン領域からのデータなしで、ステップa)のプロットを再生するステップと、を含む。
ステップd)において生成されるプロットは、スプーンの領域のギャップを有してもよい。すなわち、これらの領域において、格納された関係/MAP/プロットのデータが存在しなくてもよい。
【0013】
スプーン領域は、ピントル/ニードル跳ね返りを表す。
ステップc)は、前記次の制御のためのトリムデータを決定するために、ステップb)において生成されるプロットからのデータを参照プロットからのデータと比較するステップを含んでもよい。
【0014】
前記アクチュエータは、ソレノイド制御アクチュエータまたはピエゾ制御アクチュエータである。
(例えば、(アクチュエータ)パルス幅に対して送達される燃料量Qに関する)格納された「プロット」または「曲線」という用語は、関係データに関連するパラメータ(例えば、格納された関係)と解釈可能である
本発明は、以下、添付の図面を参照して例として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ソレノイド作動式燃料噴射器のソレノイドに適用されるパルス幅のプロット/曲線を示す図である。
【
図2】
図1のプロットに基づいてこの種の単調な曲線/プロットを示す図である。
【
図3】公称(例えば、理想的な)燃料噴射器応答に依存する制御を示す図である。
【
図4】
図2のプロットにおける誤差を示す図である。
【
図5】燃料誤差と燃料要求との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述したように、スプーンエリアにおいて噴射器に適用される複数のパルス幅が、制御を困難にする同じ燃料送達につながるので、ECU制御では、スプーンによって問題が生じる。
【0017】
図1は、ソレノイド作動式燃料噴射器のソレノイドに適用されるパルス幅および典型的な噴射器に対して噴射される結果として生じる燃料量のプロット/曲線1を示す。本発明の態様がソレノイドアクチュエータよりもむしろピエゾアクチュエータを有する噴射器に等しく適用できる点に留意されたい。
【0018】
図からわかるように、パルス幅のわずかな増大に対して燃料量が下降する1つまたは複数のスプーン領域2が存在してもよい。主なスプーンエリアは、参照符号2aによって示される。
【0019】
要約すると、この種の問題を解決するために、制御の目的で、燃料量(送達)対パルス幅制御のチャート/プロット(例えば、MAPとしてECU内に格納される)が提供され、プロットは、パルス幅の増加に伴って、噴射された燃料量のみが増加し、すなわち、プロットにおいて単調に増加したようなものである。それゆえ、噴射器挙動は、次に、この条件を満たすために単調なパルス対燃料送達(量Q)プロット/曲線を用いてマップされる。
図2は、
図1のプロット1によって重畳されるこの種の単調な曲線/プロット3を示す。
【0020】
次に、この変更された単調な曲線は、噴射器の制御のために、例えば、ICLCトリム決定(パルス修正)のために用いられ、いくつかの所定の燃料送達学習点(ICLCブレークポイント)でターゲット挙動(MASTERと呼ばれる)と比較する。
図3は、参照符号4が公称(例えば、理想的な)燃料噴射器応答を参照するこの種の制御を示す。適用されるトリムは、矢印5として示される。
【0021】
単調な曲線は、ICLCトリムを決定するために必須であるが、この噴射器の物理的挙動は、曲線1である。この差は、補償されず、
図4の斜線エリア6によって示される局所誤差を与える(参照符号は前と同様)。
【0022】
図5は、燃料誤差と燃料要求との関係を示し、誤差は、破線の楕円7によって示されるスプーンエリアにおいて多く見られる。最後には、いかなる数のICLC量学習点が選択されても、この現象は、この特定のエリアにおける低いICLC性能につながる。
【0023】
発明
概して、本発明の態様では、フルリフトの初めの低いICLC性能の問題は、スプーン回避によって解決される。
【0024】
本発明者は、スプーンエリアを回避し、同時に単調なままであるパルス対量の特性を有するシステムを作成することをゴールとして問題および解決法を公式化できると判断した。
【0025】
従来の方法では、単調なパルス/量曲線は、すべてのパルス幅を用いて、燃料量/幅(基準曲線)内で所望の燃料量を提供した。
【0026】
その代わりに、一般的な態様に従うと、特定の量の燃料のために燃料噴射器に適用されるパルス幅を決定するとき、曲線/プロット3の特定のエリアは回避される。それゆえ、すなわち、スプーンエリア/領域は回避され、同じ必要な燃料量を与える他のパルス幅がないとき、(スプーン内の)この種のパルスエリアは用いられない。これは、パルス持続時間に対する燃料量の変更されたプロットを生成し、(例えばECU内に)格納することによって、効果的に実行され、これは、実際のプロットに基づくが、プロットから効果的に除去される(データ)部分を伴い、したがって、結果として生ずるプロットは、依然として単調である。次に、この変更されたプロットは、制御のために用いられる。
【0027】
図6および
図7は、本発明を示す。
図6は、前と同様の燃料量対パルスの曲線(単調な修正なし)1のプロットを示す。スプーン領域(参照番号8によって示される)。本発明の例において、これらのスプーン領域8におけるデータを含まない新しい曲線/プロット9が作成される。したがって、
図7のような、(スプーンの領域8に沿ったギャップ10を実質的に有する)新しい(本質的に単調な)曲線9が提供されるが、いかなる燃料送達量に対しても依然としてパルス幅が決定可能であるので、これは問題ではない。
【0028】
したがって、新しい曲線(パルス/量特性)は、必然的に単調であり、1つの量のために1つのパルスのみを与える。これに起因して、制御のためにこの種のプロット9を用いるとき、いくつかのパルス幅は回避され、スプーンおよび次に量の跳ね返り、すなわちピントル/ニードル跳ね返りを回避する。パルス回避は、最適な適応ICLC学習点を用いて実行可能である。2つの特定の学習点について、1つは除去されたエリアの前に配置され、1つは直後に配置され、パルス長は、次の有用なパルス長にジャンプする。
【0029】
スプーンエリアは、(送達される燃料量に直接関連がある)油圧開口(HO)測定対パルス幅のより正確な分析によって検出可能であり、負の勾配を参照されたい。各スプーンのサイズ(パルス幅長)および振幅(HO振幅)は、各噴射器の各スプーンを完全に知るために記録される。
図8は、変動パラメータの3つのスプーン(スプーン1、スプーン2、スプーン3)を示すプロットの一例を示す。HOは、ニードル弁の開閉の間の時間であり、当業者には、これらを決定するためのさまざまな方法が知られている。
【0030】
ICLCのための個々のY軸(送達/HO軸)は、各噴射器のため、各スプーンの開始および終了のために決定可能である。それは、不所望なパルス幅(アクチュエータがオンである時間(例えば、ハイレベルTon)と考えられていてもよい)を用いることを回避し、噴射器特性に完全に適合する送達回答に対して単一のパルス幅を作成する。2つの水平線の間の送達は、禁止され、最も近い許容された点に丸められる。
【0031】
その結果、スプーン上のICLC性能は、非常に改善される。最適化は噴射器ごとに行われ、また、ICLC効率も上昇させる。
図9は、本発明の態様を用いた相対誤差を示し、
図5の誤差と比較される。
【国際調査報告】