(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】負極極板、その製造方法及びそれを含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240214BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240214BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240214BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240214BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240214BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240214BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240214BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/04 A
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/02 Z
H01M10/0566
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550602
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 CN2022122555
(87)【国際公開番号】W WO2023066004
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202111229457.6
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張銅賢
(72)【発明者】
【氏名】張明
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ11
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ08
5H029HJ01
5H029HJ03
5H029HJ07
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA11
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA03
5H050HA07
(57)【要約】
本出願は、負極極板を提供し、それは、集電体と前記集電体の少なくとも一つの表面上に位置する負極膜層とを含み、負極膜層は、負極活物質とエマルジョン型接着剤とを含み、負極活物質の表面上に、少なくとも一部の前記エマルジョン型接着剤は、不規則な膜状分布を呈する。この負極極板は、顕著に向上した凝集力と接着力とを有し、活物質の粉落ち、負極膜層の割れ、負極膜層の脱落などの極板の歩留まりを低減させる問題が顕著に改善され、本発明の負極極板を含む二次電池のサイクル性能が顕著に向上する。本出願は、負極極板の製造方法、この負極極板を含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極極板であって、
集電体と前記集電体の少なくとも一つの表面上に位置する負極膜層とを含み、前記負極膜層は、負極活物質とエマルジョン型接着剤とを含み、ここで、
前記負極活物質の表面上に、少なくとも一部の前記エマルジョン型接着剤は、不規則な膜状分布を呈し、
前記不規則な膜状分布は、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、エマルジョン型接着剤が単粒子状でも単粒子からなるクラスタ状でも分布せず、形状が不規則なフィルム状で負極活物質表面上に分布する状態を指す、ことを特徴とする負極極板。
【請求項2】
前記負極活物質の表面上に、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、いずれか一箇所の不規則な膜状分布を呈するエマルジョン型接着剤を選び、その膜状構造のエッジに沿って閉領域を構築し、前記閉領域を正規化してなる標準円の半径は、500nmよりも小さくない、ことを特徴とする請求項1に記載の負極極板。
【請求項3】
前記SEM写真において、エマルジョン型接着剤が不規則な膜状分布を呈する領域の合計面積をAとし、前記エマルジョン型接着剤が単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布する領域の合計面積をBとすると、Aと(A+B)との比は、少なくとも10:100であり、選択的には60:100~100:100であり、さらに選択的には80:100~98:100である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負極極板。
【請求項4】
前記負極膜層の外面に沿って前記集電体に向かう方向に、前記負極膜層の縦方向深さの負極膜層全体の総厚さに対する比をdとし、前記縦方向深さの負極膜層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量の負極膜層全体におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量に対する比をxとし、ここで、負極膜層全体の総厚さを1に設定し、負極膜層全体におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量を1に設定すると、0<d<1であり、0<x<1であり、x及びdは、1<x/d≦1.8を満たし、選択的には1<x/d≦1.5である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項5】
前記負極膜層の下半層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量は、その上半層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量よりも小さく、差は、12%を超えず、前記下半層と上半層とは、前記集電体の同一側に位置する負極膜層の厚さの1/2を境界とする、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項6】
前記エマルジョン型接着剤は、スチレンブタジエンゴムと、ポリアクリレートと、エチレンプロピレンゴムと、ニトリルゴムと、ポリフッ化ビニリデンとから少なくとも一つ選択される、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項7】
負極極板の製造方法であって、
エマルジョン型接着剤に対して前処理を行うステップであって、前記前処理方式が超音波と、沈降と、遠心と、混練操作とのうちの少なくとも一つを含むステップと、
負極活物質、導電剤、添加剤を所定比例に従って混合し、第一の混合物を得るステップと、
前記前処理後のエマルジョン型接着剤、前記第一の混合物、脱イオン水を混合し、負極スラリーを得るステップと、
前記負極スラリーを集電体の少なくとも一つの表面に使用し、乾燥後に前記負極極板を得るステップと、を含み、選択的に、
前記方法は、
負極活物質、導電剤、添加剤を所定比例に従って混合し、第一の混合物を得るステップと、
混練攪拌によって、前記エマルジョン型接着剤、前記第一の混合物、脱イオン水を均一に混合させ、負極スラリーを得るステップと、
前記負極スラリーを集電体の少なくとも一つの表面に使用し、乾燥後に前記負極極板を得るステップと、を含み、
ここで、
前記負極極板は、集電体と前記集電体の少なくとも一つの表面上に位置する負極膜層とを含み、ここで、前記負極膜層は、負極活物質とエマルジョン型接着剤とを含み、前記負極活物質の表面上に、大部分又はすべての前記エマルジョン型接着剤は、不規則な膜状分布を呈し、
前記不規則な膜状分布は、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、エマルジョン型接着剤が単粒子状でも単粒子からなるクラスタ状でも分布せず、形状が不規則なフィルム状で負極活物質表面上に分布する状態を指す、負極極板の製造方法。
【請求項8】
二次電池であって、正極極板と、負極極板と、セパレータと、電解液とを含み、ここで、前記負極極板は、請求項1~6のいずれか1項に記載の負極極板、又は請求項7に記載の方法によって製造された負極極板である、二次電池。
【請求項9】
電池モジュールであって、請求項8に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項10】
電池パックであって、請求項9に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項11】
電力消費装置であって、請求項8に記載の二次電池、請求項9に記載の電池モジュール又は請求項10に記載の電池パックから選択された少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム電池技術分野に関し、特に負極極板、その製造方法、この負極極板を含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は、多くの分野に広く用いられる。しかしながら、二次電池の負極極板の製造プロセスでは、特に負極極板の乾燥プロセスでは、負極接着剤が水分の蒸発に従って顕著に浮かび上がりやすいことによって、接着剤の負極膜層での分布を不均一にし、さらに負極活物質の間の接着力が悪く、極板に粉落ちが発生しやすく、割れるなどの不具合が現れることを引き起こし、電池性能にネガティブな影響をもたらす。
【発明の概要】
【0003】
本出願は、上記課題に鑑みて行われ、その目的は、接着剤が均一に分布し、粉落ちと割れが発生しにくい負極極板及びその製造方法を提供するとともに、前記負極極板により製造された二次電池を提供することである。
【0004】
上記目的を達成するために、本出願は、負極極板及びその製造方法を提供する。
【0005】
本出願の第一の態様は、負極極板を提供し、この負極極板は、
集電体と前記集電体の少なくとも一つの表面上に位置する負極膜層とを含み、ここで、前記負極膜層は、負極活物質とエマルジョン型接着剤とを含み、前記負極活物質表面上に、少なくとも一部の前記エマルジョン型接着剤は、不規則な膜状分布を呈し、
前記不規則な膜状分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)による前記負極膜層の画像において、10Kの拡大倍数で、エマルジョン型接着剤が単粒子状でも単粒子からなるクラスタ状でも分布せず、形状が不規則なフィルム状で負極活物質表面上に分布する状態を指す。
【0006】
いずれかの実施形態では、負極活物質の表面上に、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、いずれか一箇所の不規則な膜状分布を呈するエマルジョン型接着剤を選び、その膜状構造のエッジに沿って閉領域を構築し、前記閉領域を正規化してなる標準円の半径は、500nmよりも小さくない。
【0007】
それによって、本出願は、負極活物質上に、少なくとも一部が不規則な膜状分布を呈するエマルジョン型接着剤によって、負極極板の接着力と凝集力とを向上させ、電池性能を改善する。
【0008】
いずれかの実施形態では、前記負極膜層について、10Kの拡大倍率で、前記SEM写真において、エマルジョン型接着剤が不規則な膜状分布を呈する領域の合計面積をAとし、前記エマルジョン型接着剤が単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布する領域の合計面積をBとすると、Aと(A+B)との比は、少なくとも10:100であり、選択的には60:100~100:100であり、さらに選択的には80:100~98:100である。
【0009】
エマルジョン型接着剤の不規則な膜状分布の平均面積割合を増やすことによって、負極極板の凝集力と接着力とを向上させることができ、それによって極板の構造安定性を改善する。
【0010】
いずれかの実施形態では、前記負極極板において、前記負極膜層の外面に沿って前記集電体に向かう方向に、前記負極膜層の縦方向深さの負極膜層全体の総厚さに対する比をdとし、前記縦方向深さの負極膜層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量の負極膜層全体におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量に対する比をxとし、ここで、負極膜層全体の総厚さを1に設定し、負極膜層全体におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量を1に設定すると、0<d<1であり、0<x<1であり、xとdは、1<x/d≦1.8を満たし、選択的には1<x/d≦1.5である。
【0011】
エマルジョン型接着剤の負極膜層厚さ方向上での分布の均一性と一致性を改善することによって、負極極板の機械的安定性を向上させる。
【0012】
いずれかの実施形態では、集電体の同一側の表面上で、前記負極膜層は、同じ膜層厚さを有する二つのサブ膜層領域を含み、前記負極膜層の外面に沿って前記集電体に向かう方向に、前記負極膜層の下半層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量は、その上半層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量よりも小さく、差は、12%を超えず、前記下半層と上半層とは、前記集電体の同一側に位置する負極膜層の厚さの1/2を境界とする。エマルジョン型接着剤の負極膜層厚さ方向上での分布の均一性と一致性とを改善することによって、負極極板の機械的安定性を向上させる。
【0013】
いずれかの実施形態では、前記エマルジョン型接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)と、ポリアクリレートと、エチレンプロピレンゴムと、ニトリルゴムと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とから少なくとも一つ選択される。適切なエマルジョン型接着剤を選択することによって、より良い接着性能を取得することができる。
【0014】
本出願の第二の態様は、負極極板の製造方法をさらに提供し、この方法は、
エマルジョン型接着剤に対して前処理を行うステップであって、前記前処理方式が超音波と、沈降と、遠心と、混練操作とのうちの少なくとも一つを含むステップと、負極活物質、導電剤、添加剤を所定比例に従って混合し、第一の混合物を得るステップと、前記前処理後のエマルジョン型接着剤、前記第一の混合物、脱イオン水を混合し、負極スラリーを得るステップと、前記負極スラリーを集電体の少なくとも一つの表面に使用し、乾燥後に前記負極極板を得るステップとを含み、選択的に、
前記方法は、
負極活物質、導電剤、添加剤を所定比例に従って混合し、第一の混合物を得るステップと、混練攪拌によって、前記エマルジョン型接着剤、前記第一の混合物、脱イオン水を均一に混合させ、負極スラリーを得るステップと、前記負極スラリーを集電体の少なくとも一つの表面に使用し、乾燥後に前記負極極板を得るステップとを含み、
ここで、
前記負極極板は、集電体と前記集電体の少なくとも一つの表面上に位置する負極膜層とを含み、ここで、前記負極膜層は、負極活物質とエマルジョン型接着剤とを含み、前記負極活物質表面上に、大部分又はすべての前記エマルジョン型接着剤は、不規則な膜状分布を呈し、
前記不規則な膜状分布は、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、エマルジョン型接着剤が単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布せず、形状が不規則なフィルム状で負極活物質表面上に分布する状態を指す。
【0015】
それによって、本出願は、プロセス調整によって、エマルジョン型接着剤の従来の加え方式を変え、前記負極活物質の表面上に、その一部又はほとんどが不規則な膜状分布状態の特徴を呈するようにすることによって、負極極板の凝集力と接着力とを向上させ、電池性能を改善する。
【0016】
本出願の第三の態様は、二次電池を提供し、この電池は、本出願の第一の態様による負極極板を含む。
【0017】
本出願の第四の態様は、電池モジュールを提供し、この電池モジュールは、本出願の第三の態様の二次電池を含む。
【0018】
本出願の第五の態様は、電池パックを提供し、この電池パックは、本出願の第四の態様の電池モジュールを含む。
【0019】
本出願の第六の態様は、電力消費装置を提供し、この装置は、本出願の第三の態様の二次電池、本出願の第四の態様の電池モジュール又は本出願の第五の態様の電池パックから選択された少なくとも一つを含む。
【発明の効果】
【0020】
従来の技術に対し、本発明では、製造プロセスの調整によって取得された少なくとも一部が不規則な膜状分布を呈するエマルジョン型接着剤を含む負極極板は、負極極板の乾燥プロセスでは、エマルジョン型接着剤が負極膜層表面へ遷移して浮かび上がることを抑制し、負極極板の接着力と凝集力とを向上させるとともに、電池のサイクル性能を改善するという有益な技術的効果を少なくとも実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1の負極極板上の負極膜層のSEM画像であり、ここで、異なる状態分布のエマルジョン型接着剤を代表的に示す:1領域が不規則な膜状分布のエマルジョン型接着剤であり、2領域が単粒子状分布のエマルジョン型接着剤であり、3領域が単粒子状の粒子からなるクラスタ状分布のエマルジョン型接着剤である。
【
図2】比較例1の負極極板上の負極膜層のSEM画像である。
【
図3】実施例5の負極極板上の負極膜層のSEM画像であり、それは、不規則な膜状分布を呈するエマルジョン型接着剤を示す。
【
図4】実施例5と比較例1とを使用して組み立てられた二次電池のサイクル維持率のテスト結果である。
【
図5】実施例5と比較例1とを使用して組み立てられた二次電池の直流内部抵抗(DCR)テスト結果である。
【
図6】本出願の一実施形態の二次電池の概略図である。
【
図7】
図6に示す本出願の一実施形態の二次電池の分解図である。
【
図8】本出願の一実施形態の電池モジュールの概略図である。
【
図9】本出願の一実施形態の電池パックの概略図である。
【
図10】
図9に示す本出願の一実施形態の電池パックの分解図である。
【
図11】本出願の一実施形態の二次電池を電源とする電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図面を適当に参照しながら具体的に開示された本出願の負極極板及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気学装置の実施形態を詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されたテーマを限定することを意図しない。
【0023】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限との形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限とを選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限とは、特定の範囲の境界を限定した。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110との範囲がリストアップされている場合、60~110と80~120との範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1及び2がリストアップされており、最大範囲値として3、4及び5がリストアップされている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a~b」という数値範囲は、a~bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、a及びbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書では「0~5」の間のすべての実数がすでにすべてリストアップされたことを表し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0024】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施形態及び選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0025】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0026】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0027】
特に説明しない場合、本出願に言及された「含む」と「包含」とは、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」とは、リストアップされていない他の成分をさらに含むか又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含むか又は包含してもよいことを表してもよい。
【0028】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「又は」は包括的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在する)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBとがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0029】
現在、二次電池の負極は、一般的にはエマルジョン型接着剤を負極接着剤として採用する。しかしながら、エマルジョン型接着剤は、分散ミセルの形態でスラリー内に存在し、このスラリーにより製造された負極極板に接着力が悪いという問題が常に現れ、負極活物質の間、又は活物質層と集電体との間の接着力不足を招き、活物質の粉落ち、負極膜層の割れ、負極膜層の脱落などを引き起こし、さらに電池性能を悪化させる。
【0030】
上記問題に鑑み、発明者は、接着剤が不規則な膜状で負極活物質表面に分布する負極極板を開発し、この負極極板の負極活物質の粒子の間は、顕著に向上した凝集力を有し、この負極極板の負極膜層と集電体との間は、顕著に向上した接着力を有し、活物質の粉落ち、負極膜層の割れ、負極膜層の脱落などの極板の歩留まりを低減させる問題が顕著に改善され、本発明の負極極板により製造された二次電池のサイクル性能が顕著に向上する。
【0031】
[負極極板]
本出願は、負極極板を提案し、集電体と前記集電体の少なくとも一つの表面上に位置する負極膜層とを含み、ここで、前記負極膜層は、負極活物質とエマルジョン型接着剤とを含み、ここで、
前記負極活物質の表面上に、少なくとも一部の前記エマルジョン型接着剤は、不規則な膜状分布を呈し、
前記「不規則な膜状分布」は、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、エマルジョン型接着剤が単粒子状でも単粒子からなるクラスタ状でも分布せず、形状が不規則なフィルム状で負極活物質表面上に分布する状態を指す。例えば、
図1のSEM写真を参照すると、図における1領域における不規則なフィルム状の物質は、「不規則な膜状分布」を呈するエマルジョン型接着剤である。
図3は、不規則な膜状分布のエマルジョン型接着剤を示す。
【0032】
「エマルジョン型接着剤」は、非水溶性重合体の水エマルジョン接着剤であり、樹脂型のエマルジョンとゴム型のラテックスとを含有する接着剤であってもよく、重要な水系接着剤である。説明すべきこととして、ここでの「エマルジョン型接着剤」は、負極膜層内に位置し、すでに極板の乾燥プロセスによって脱水して形成された接着剤生成物を指し、接着剤のタイプを意味し、接着剤の負極活物質表面上の形態を意味しない。本出願のエマルジョン型接着剤は、スチレンブタジエンゴムと、ポリアクリレートと、エチレンプロピレンゴムと、ニトリルゴムと、ポリフッ化ビニリデンとから少なくとも一つ選択される。
【0033】
負極活物質の表面上に、「少なくとも一部」の前記エマルジョン型接着剤は、不規則な膜状分布を呈する。「少なくとも一部」は、負極活物質表面に、前記の、不規則な膜状で分布するエマルジョン型接着剤に加えて、単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布するエマルジョン型接着剤がさらに存在することを指す。例えば、
図1のSEM写真を参照すると、図における1領域は、不規則な膜状分布のエマルジョン型接着剤であり、2領域は、単粒子状分布のエマルジョン型接着剤であり、3領域における色が比較的濃い物質について、明らかに、これらの色が比較的濃い物質は、単粒子からなるクラスタ状分布のエマルジョン型接着剤である。
図2のSEM写真は、単粒子状分布のエマルジョン型接着剤をより明瞭に示す。
図3のSEM写真は、不規則な膜状分布を呈するエマルジョン型接着剤の概略図である。
【0034】
「負極活物質の表面」は、10Kの拡大倍数でのSEM写真において、負極活物質粒子(例えば、黒鉛)の表面を意味する。
【0035】
本出願の負極極板の負極活物質の表面上に、従来の技術の「単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布する」接着剤に比べ、本出願のエマルジョン型接着剤は、「不規則な膜状分布」の形式で負極活物質表面に密着し、一方で負極活物質の粒子と粒子との間の接着面積を顕著に大きくし、凝集力を顕著に増加させ、さらに活物質の粉落ち、負極膜層の割れなどを明らかに改善し、他方では、負極活物質と集電体との間の接着面積を増加させ、両方の間の接着力を顕著に大きくし、さらに負極膜層の脱落を明らかに改善し、本出願の負極極板により製造された二次電池は、サイクル性能が顕著に改善される。
【0036】
好ましい実施形態として、本出願の負極極板では、負極活物質の表面上に、すべての前記エマルジョン型接着剤は、いずれも不規則な膜状分布を呈する。
【0037】
本出願と異なっており、
図2の比較例1のSEM写真を参照すると、従来の技術の負極極板において冷間プレスを経た後に、接着剤が依然として明らかな粒子状分布であり、これによって負極活物質粒子と粒子との間、負極活物質と集電体との間の接着力が本出願の負極極板に顕著に及ばない。
【0038】
いくつかの実施形態では、本出願に記載の負極活物質の表面上に、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、いずれか一箇所の不規則な膜状分布を呈するエマルジョン型接着剤を選び、その膜状構造のエッジに沿って閉領域を構築し、前記閉領域を正規化してなる標準円の半径は、500nmよりも小さくない。前記不規則な膜状分布は、負極極板の凝集力、接着力を顕著に補強することができる。
【0039】
前記「正規化してなる標準円の半径」について、SEMの面積テストツールを利用して前記閉領域の面積をSとして得、S=πR2が標準円の面積に等価することを利用し、算出されたRは、本出願に記載の「正規化してなる標準円の半径」である。
【0040】
いくつかの実施形態では、選択的に、前記負極活物質の表面上に、エマルジョン型接着剤が単粒子状分布又は単粒子からなるクラスタ状分布を呈する時に、単一粒子の最大粒径の、前記エマルジョン型接着剤がエマルジョン状態を呈する時の粒径に対する増加率≦150%である。
【0041】
前記「エマルジョン型接着剤がエマルジョン状態を呈する時の粒径」は、市販されている、製造方法において原料として、エマルジョン状態を呈するエマルジョンにおける単一ミセルの粒径を指し、前記粒径は、一般的には50~300nmである。
【0042】
前記「最大粒径」は、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、形状が不規則な略球形の単粒子状エマルジョン型接着剤の最長直径である。
【0043】
一つの実施形態として、前記負極活物質の表面上に、一部のエマルジョン型接着剤が単粒子状分布を呈する時に、前記単粒子状分布のエマルジョン型接着剤の最大粒径の、前記エマルジョン型接着剤がエマルジョン状態を呈する時の粒径に対する増加率≦150%である。
【0044】
説明すべきこととして、本出願の負極膜層に含まれる単粒子状分布の接着剤について、それは、エマルジョン型接着剤がエマルジョン状態を呈する時の基本形態と大きさを基本的に維持し、本出願の技術的効果、即ち負極極板の凝集力と接着力の顕著な補強に対し、顕著な改善作用を果たさず、実際に、本出願の技術的効果は、主に負極極板の製造方法を最適化することで生じた前記の、不規則な膜状分布を呈するエマルジョン型接着剤によって取得され、即ち前記接着剤の不規則な膜状分布は、負極極板の凝集力と接着力とを顕著に改善する作用を果たす。
【0045】
いくつかの実施形態では、選択的に、負極膜層について10Kの拡大倍率でのSEM写真において、エマルジョン型接着剤が不規則な膜状分布を呈する領域の合計面積をAとし、前記エマルジョン型接着剤が単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布する領域の合計面積をBとすると、Aと(A+B)との比は、少なくとも10:100であり、選択的には60:100~100:100であり、さらに選択的には80:100~98:100である。
【0046】
発明者は、エマルジョン型接着剤の不規則な膜状分布の面積割合を増加することによって、負極活物質の粒子の間の接着作用、及び負極活物質と集電体との間の接着強度を向上させ、さらに負極極板の凝集力と接着力とを向上させることができ、比較的高い極板構造安定性を有し、さらに極板のサイクル性能を改善することができることを発見した。
【0047】
前記(A+B)は、以下の方法によってテストできる。同じ拡大倍数(10K又は20K)で、同一の負極極板上で、20の異なる位置をランダムに選んで撮影し、各枚の結像写真におけるエマルジョン型接着剤が不規則な膜状分布を呈する領域の合計面積、及びエマルジョン型接着剤が粒子状又は単粒子からなるクラスタ状分布を呈する領域の合計面積を計算し、その後にこの20枚の結像写真に基づき、それらのそれぞれの合計面積の平均値を計算し、この平均値は、該当する分布領域の合計面積である。
【0048】
本出願に記載の「凝集力」は、負極膜層の活物質の粒子の間の接着性能を意味する。
【0049】
本出願に記載の「接着力」は、負極膜層と集電体との間、負極活物質と集電体との間の接着性能を意味する。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記負極膜層の外面に沿って前記集電体に向かう方向に、前記負極膜層の縦方向深さの負極膜層全体の総厚さに対する比をdとし、前記縦方向深さの負極膜層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量の負極膜層全体におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量に対する比をxとし、ここで、負極膜層全体の総厚さを1に設定し、負極膜層全体におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量を1に設定すると、0<d<1であり、0<x<1であり、xとdは、1<x/d≦1.8を満たし、選択的には1<x/d≦1.5である。
【0051】
(x/d)-1の差の大きさは、エマルジョン型接着剤が負極膜層全体に均一に分布する理想的な状態(即ちx/d=1)に対し、ある縦方向深さの負極膜層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量とこの均一分布状態とのずれ程度を表し、これによって負極膜層の厚さ方向での、エマルジョン型接着剤の浮かび上がり程度を表す。
【0052】
本出願の負極極板のx/d≦1.8であることは、接着剤分布が不均一(浮かび上がり問題)であるという現象が改善され、負極極板の構造安定性及びこの負極極板を使用する二次電池性能が最適化されることを表す。
【0053】
本出願のいずれかdのテストプロセスは、集電体の一方側の負極膜層を選び、負極膜層厚さをDとして測定し、SAICAS(表面と界面切削分析システム)を使用し、負極膜層の厚さ方向に沿い、負極膜層表面から所定深さD1まで、所定深さD1に対応する負極膜層(即ち剥離された負極膜層の厚さがD1である)を剥離し、d=D1/Dであることであり、
本出願のいずれかxのテストプロセスは、熱分解-質量スペクトル分析(Py-MS)を使用してテストし、負極膜層全体のエマルジョン型接着剤の質量がXであり、そして厚さがD1である負極膜層が剥離された後に残った負極膜層におけるエマルジョン型接着剤の質量がY1であり、x=(X-Y1)/Xであることである。
【0054】
いくつかの実施形態では、選択的に、本出願の負極極板では、その負極膜層の下半層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量は、その上半層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量よりも小さく、差は、12%を超えず、前記下半層と上半層とは、前記集電体の同一側に位置する負極膜層の厚さの1/2を境界とする。
【0055】
いくつかの実施形態では、集電体の一つの同じ表面上で、前記負極膜層は、同じ膜層厚さを有する四つのサブ膜層領域を含み、前記負極膜層の外面に沿って前記集電体に向かう方向に、前記四つのサブ膜層は、順に第一のサブ膜層、第二のサブ膜層、第三のサブ膜層と第四のサブ膜層であるとともに、そのうちに含まれるエマルジョン型接着剤の含有量は、順に減小し、前記第一のサブ膜層と第三のサブ膜層とに含まれる前記エマルジョン型接着剤の含有量の差は、15%を超えず、選択的には10%を超えず、第二のサブ膜層と第四のサブ膜層とに含まれる前記エマルジョン型接着剤の含有量の差は、18%を超えず、選択的には15%を超えない。
【0056】
発明者は、さらに細分化された各負極膜層のサブ層において、エマルジョン型接着剤含有量の差が多くとも18%であることを発見し、これは、本発明の負極膜層の厚さ方向上で、接着剤分布の均一性と一致性とが改善され、電気化学装置のサイクル維持率の向上に有利であることを表明する。
【0057】
二つの負極膜層のサブ層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量の差は、下式によって計算される。(S1-S2)/S2*100%。
【0058】
ここで、前記負極極板の同一側で、前記負極膜層の外面に沿って前記集電体に向かう方向に、S1は、集電体に対してより遠いサブ層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量であり、S2は、集電体に対してより近いサブ層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量である。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成された金属層と含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、負極活物質は、当分野において公知の電池に用いられる負極活物質を採用してもよい。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料及びチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記シリコン系材料は、シリコン単体と、シリコン酸化物と、シリコン炭素複合体と、シリコン窒素複合体と、シリコン合金とから少なくとも一つ選択されてもよい。前記スズ系材料は、スズ単体と、スズ酸化物と、スズ合金とから少なくとも一つ選択されてもよい。しかしながら、本出願は、これらの材料に限定されず、さらに他の電池負極活物質として用いる可能な従来材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、導電剤をさらに選択的に含む。導電剤は、超伝導カーボンと、アセチレンブラックと、カーボンブラックと、ケッチェンブラックと、カーボンドットと、カーボンナノチューブと、グラフェンと、カーボンナノファイバーとから少なくとも一つ選択されてもよい。
【0062】
本出願の負極極板の負極活物質の表面上に、従来の技術の「単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布する」接着剤に比べ、本出願のエマルジョン型接着剤は、「不規則な膜状分布」の形式で負極活物質表面に密着し、一方で負極活物質の粒子と粒子との間の接着面積を顕著に大きくし、凝集力を顕著に増加させ、さらに活物質の粉落ち、負極膜層の割れなどを明らかに改善し、他方では、負極活物質と集電体との間の接着面積を増加させ、両方の間の接着力を顕著に大きくし、さらに負極膜層の脱落を明らかに改善し、本出願の負極極板により製造された二次電池は、サイクル性能が顕著に改善される。
【0063】
[負極極板の製造方法]
負極極板の製造方法は、
エマルジョン型接着剤に対して前処理を行うステップであって、前記前処理方式が超音波と、沈降と、遠心と、混練操作とのうちの少なくとも一つを含むステップと、
負極活物質、導電剤、添加剤を所定比例に従って混合し、第一の混合物を得るステップと、
前記前処理後のエマルジョン型接着剤、前記第一の混合物、脱イオン水を混合し、負極スラリーを得るステップと、
前記負極スラリーを集電体の少なくとも一つの表面に使用し、乾燥後に前記負極極板を得るステップと、を含み、ここで、
前記負極極板は、集電体と前記集電体の少なくとも一つの表面上に位置する負極膜層とを含み、ここで、前記負極膜層は、負極活物質とエマルジョン型接着剤とを含み、前記負極活物質の表面上に、大部分又はすべての前記エマルジョン型接着剤は、不規則な膜状分布を呈し、
前記不規則な膜状分布は、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、エマルジョン型接着剤が単粒子状でも単粒子からなるクラスタ状でも分布せず、形状が不規則なフィルム状で負極活物質表面上に分布する状態を指す。
【0064】
発明者は、前記超音波、沈降、遠心又は混練操作によって、エマルジョン型接着剤のミセルハウジングを破壊させ、それによってエマルジョン型接着剤の形態及びその負極活物質表面上での分布状態を変え、その一部又はほとんどが膜状分布の特徴を呈するようにすることによって接着剤の浮かび上がりを抑制し、負極極板の凝集力と接着力とを向上させ、二次電池の性能を改善し、例えばサイクル性能が向上し、電池内部抵抗が低減することを発見した。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の負極極板の製造方法は、以下のようなステップを含む。
【0066】
(a)負極活物質、導電剤、添加剤を所定比例に従って混合し、第一の混合物を得、
(b)混練攪拌によって、前記エマルジョン型接着剤、前記第一の混合物、脱イオン水を均一に混合させ、負極スラリーを得、
(c)前記負極スラリーを集電体の少なくとも一つの表面に使用し、乾燥後に前記負極極板を得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、具体的に以下のようなステップを含む。
【0068】
(b-1)ステップ(a)で取得された第一の混合物内に前記エマルジョン型接着剤を加え、そして脱イオン水を加えて、固体成分の質量分率が63-68重量%の範囲内にあるように調節し、初期スラリーを取得し、
(b-2)ステップ(b-1)で取得された初期スラリーを混練して攪拌し、
(b-3)脱イオン水を加えて、固体成分の質量分率が50-60重量%であるように調節し、負極スラリーを取得し、
ここで、前記ステップ(b-1)、(b-2)及び(b-3)は、順序に従って順に行われる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)では、負極活物質の負極スラリーの全固体に対する質量分率は、90~98重量%であり、導電剤の負極スラリーの全固体に対する質量分率は、0.5~2重量%であり、添加剤の負極スラリーの全固体に対する質量分率は、0.5~2重量%であり、選択的に、負極活物質、導電剤、添加剤の質量比は、選択的に96:1:1.5である。
【0070】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)では、混練時間は、2~100分であり、選択的に20~80分であり、公転速度は、20~200rpmであり、選択的に50~150rpmである。適切な機械強度と混練時間とによって、エマルジョン型接着剤と負極活物質との十分な接着を保証するだけでなく、さらにエネルギーを節約する。
【0071】
いくつかの実施形態では、エマルジョン型接着剤に対して行われる前処理操作は、超音波、沈降、遠心、混練の処理方式に加えて、また他の通常処理方式、例えば希釈と同時に結び付けて使用してもよい。選択的に、希釈と超音波との組み合わせ使用、又は希釈と沈降との組み合わせ使用によって、エマルジョン型接着剤に対して前処理を行う。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記超音波操作において、それは、30~70℃、選択的に40~60℃の温度で行われ、パワー範囲は、30~60kHzであり、選択的に35~50kHzであり、超音波時間は、10~50分であり、選択的に20~40分である。適切な超音波作用によって、エマルジョン型接着剤のミセルハウジングを十分に破壊することができるだけでなく、さらにエネルギーを節約することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記沈降操作において、用いられる沈降剤は、アルコール類、例えばメチルアルコール、ブタノール、イソプロパノールなど、又は炭酸エステル類、例えばメチルエチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどから選択されるとともに、沈降剤の質量とエマルジョン状接着剤の固体成分の質量との比は、2:98~10:90であり、選択的に4:96~6:94である。適切な沈降剤を使用するとともに、沈降剤とエマルジョン状接着剤の固体成分との質量比を制御することによって、エマルジョン型接着剤のミセルハウジングを十分に破壊することができるだけでなく、さらにコストを節約することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記希釈操作において、用いられる希釈剤は、脱イオン水であるとともに、希釈を経た後のエマルジョン型接着剤の固体成分含有量は、5~20重量%であり、選択的に8~16重量%であり、これは、希釈後のスラリーの総重量に基づいて計算される。脱イオン水による希釈を使用することによって、エマルジョン型接着剤の表層乳化剤と溶媒との間の準安定状態のバランスを破壊し、前記沈降、超音波及び混練がエマルジョン型接着剤のミセルハウジングをより容易に破壊するようにさせる。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記遠心操作において回転数は、2000~4000rpmであり、選択的に2500~3500rpmであり、持続時間は、5~20分であり、選択的に7~15分である。適切な回転数と遠心時間とによって、エマルジョン型接着剤のミセルハウジングを十分に破壊することができるだけでなく、さらにエネルギーを節約することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記添加剤は、また一つの接着剤を含んでもよく、それは、エマルジョン型接着剤と異なる。そのため、本発明の上下文では、エマルジョン型接着剤を第一の接着剤とも称し、また一つの接着剤を第二の接着剤と称する。
【0077】
選択的に、ここで、エマルジョン型接着剤(第一の接着剤)の固体成分とまた一つの接着剤(第二の接着剤)との質量比は、1:4~4:1であり、選択的に1:2~2:1であり、選択的に、前記また一つの接着剤(第二の接着剤)は、非エマルジョン型接着剤、例えば改質又は非改質のポリアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース又はキトサンである。添加剤を加えることによって、スラリーの安定性の改善に有利である。
【0078】
また、以下では図面を適切に参照しながら本出願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を説明する。
【0079】
本出願の一つの実施形態では、二次電池を提供する。
【0080】
一般的には、二次電池は、正極極板と、負極極板と、電解質と、セパレータとを含む。電池の充放電中では、活性イオンが、正極極板と負極極板との間で挿入脱離を繰り返す。電解質は、正極極板と負極極板との間でイオン伝導の作用を果たす。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、主に正負極の短絡を防止する作用を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0081】
[正極極板]
正極極板は、正極集電体と正極集電体の少なくとも一つの表面に設置された正極膜層とを含み、前記正極膜層は、本出願の第一の態様の正極活物質を含む。
【0082】
例として、正極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方上に設置される。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)及びポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、正極活物質は、当分野において公知の電池に用いられる正極活物質を採用してもよい。例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそのそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つを含んでもよい。しかしながら、本出願は、これらの材料に限定されず、さらに他の電池正極活物質として用いることが可能な従来材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211と略称されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622と略称されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811と略称されてもよい))、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びその改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(LFPと略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。
【0085】
いくつかの実施形態では、正極膜層は、接着剤をさらに選択的に含む。例として、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、正極膜層は、導電剤をさらに選択的に含む。例として、前記導電剤は、超伝導カーボンと、アセチレンブラックと、カーボンブラックと、ケッチェンブラックと、カーボンドットと、カーボンナノチューブと、グラフェンと、カーボンナノファイバーとのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、以下のような方式によって正極極板を製造してもよい。上記の、正極極板を製造するための成分、例えば正極活物質、導電剤、接着剤といずれか他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)内に分散し、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後に、正極極板を得ることができる。
【0088】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間でイオン伝導の作用を果たす。本出願は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択してもよい。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体状であってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、前記電解質として、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムのうちから選択された少なくとも一つであってもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンから少なくとも一つ選択されてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、前記電解液は、添加剤をさらに選択的に含む。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤と、正極膜形成添加剤とを含んでもよく、電池の何らかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などをさらに含んでもよい。
【0093】
[セパレータ]
いくつかの実施形態では、二次電池にはセパレータがさらに含まれる。本出願は、セパレータの種類に対して特に限定せず、任意の公知の良好な化学的安定性と機械的安定性とを有する多孔質構造セパレータを選択して用いることができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニリデンフルオライドから少なくとも一つ選択されてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に限定されていない。セパレータが多層複合フィルムである時に、各層の材料は、同じ又は異なってもよく、特に限定されていない。
【0095】
いくつかの実施形態では、正極極板、負極極板及びセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装体を含んでもよい。この外装体は、上記電極アセンブリ及び電解質をパッケージングするために用いられてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装体は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。二次電池の外装体は、パウチ、例えば袋式パウチであってもよい。パウチの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどを列挙することができる。
【0098】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは、円筒型、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図6は、一例とする四角形構造の二次電池5である。
【0099】
いくつかの実施形態では、
図7を参照すると、外装体は、ケース51とカバープレート53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とは、囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口に覆設できることで、前記収容キャビティを密閉する。正極極板、負極極板及びセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52内に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、具体的な実際の需要に応じて選択してもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用と容量とに基づいて選択することができる。
【0101】
図8は、一例とする電池モジュール4である。
図8を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べて設置されてもよい。無論、他の任意の方式で配列してもよい。さらに締め具によってこれらの複数の二次電池5を固定してもよい。
【0102】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0103】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの応用と容量とに基づいて選択することができる。
【0104】
図9及び
図10は、一例とする電池パック1である。
図9及び
図10を参照すると、電池パック1には電池ボックスと電池ボックス内に設置された複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3に覆設され、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式に従って電池ボックス内に配列されてもよい。
【0105】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動体機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これに限らない。
【0106】
前記電力消費装置として、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0107】
図11は、一例とする電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の二次電池の高パワーと高エネルギー密度とに対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用してもよい。
【0108】
別の例とする装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般的には薄型化を要求し、二次電池を電源として採用してもよい。
【0109】
実施例
以下では、本出願の実施例を説明する。以下で記述された実施例は、例示的であり、本出願を解釈するためのものに過ぎず、本出願に対する限定と理解されるべきではない。実施例では具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当分野における文献に記述された技術又は条件又は製品の明細書に従って行う。用いられる試薬又は計器にメーカーが明記されていない場合、いずれも市販されている通常製品である。
【0110】
I.製造方法
実施例1
[負極極板]
ステップ1:黒鉛:超伝導カーボン:ヒドロキシメチルセルロース(CMC)=96:1:1.5の重量比に従って混練ダブルパドル付きのダブルプラネタリーミキサー内に加え、20rpmの公転速度で且つ自転を起動させない条件で15分攪拌し、均一に混合した後に、第一の混合物を取得し、
ステップ2:ステップ1で取得された第一の混合物内に、1:1のSBR固体成分とCMCとの質量比に従ってスチレンブタジエンゴムエマルジョン(SBRエマルジョン、固体成分含有量は、50重量%である)を加え、
ステップ3:ステップ2で取得された、SBRを含む混合物内に、脱イオン水を加え、スラリーの固体成分質量分率を65重量%(スラリーの総重量に基づいて計算する)に調節し、初期スラリーを取得し、
ステップ4:ステップ3で取得された初期スラリーを100rpm公転速度で且つ自転を起動させない条件で2分混練して攪拌し、
ステップ5:ステップ4で取得されたスラリー内に、脱イオン水を加えて、スラリーの固体成分質量分率を55重量%(スラリーの総重量に基づいて計算する)に調節し、20rpm公転速度、1000rpm自転速度で、90分攪拌し続け、負極スラリーを取得する。
【0111】
ステップ6:上記製造された負極スラリーを、0.2g/1540.25mm2の塗布重量で塗布し、乾燥、冷間プレス、スリットプロセスを経て負極極板に製造する。
【0112】
[正極極板]
正極三元系材料(NCM811)、超伝導カーボン、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を96:2.5:1.5の重量比に従って均一に混合した後に、溶媒N-メチルピロリドン(NMP)を添加し、固体成分質量分率を75重量%に調節し、均一に攪拌した後に正極スラリーを得、その後に塗布、乾燥、冷間プレス、スリットを経て正極極板に製造する。
【0113】
[電解液]
アルゴンガス雰囲気において、EC(エチレンカーボネート)とEMC(メチルエチルカーボネート)とを3:7の質量比に従って混合し、LiPF6を加えて電解液を形成し、前記電解液において、LiPF6の質量含有量は、12.5%である。
【0114】
[セパレータ]
ポリプロピレンセパレータ
【0115】
[二次電池]
正極極板、セパレータ、負極極板を順番に積層し、セパレータを正、負極板の間に位置させて隔離の作用を果たし、さらに四角形のベアセルに捲回した後に、ケースに詰め込み、該当する電解液を注入し、封止し、静置、熱間冷間プレス、化成、クランプ、類別などの工程を経た後に、二次電池を得る。
【0116】
実施例2-8
実施例2-8において関わる負極極板と実施例1の負極極板との製造方法は、一致し、ステップ4における混練攪拌の時間を調整するに過ぎず、具体的な数値は、それぞれ5、10、20、50、60、70、80分である。
【0117】
実施例9
[負極極板]
ステップ1:黒鉛:超伝導カーボン:ヒドロキシメチルセルロース(CMC)=96:1:1.5の質量比に従って混練ダブルパドル付きのダブルプラネタリーミキサー内に加え、20rpmの公転で且つ自転をオンにしない条件で15分攪拌し、均一に混合した後に、第一の混合物を取得し、
ステップ2:ステップ1で取得された第一の混合物内に脱イオン水を加えて、スラリーの固体成分質量分率を65重量%に調節し、初期スラリーを取得し、
ステップ3:ステップ2で取得された初期スラリーを、20rpm公転速度、200rpm自転速度で、30分攪拌し、混合物を得、
ステップ4:SBRエマルジョンの前処理プロセス(希釈+沈降):SBRエマルジョン内に無水エタノールを予め加え、加えられた無水エタノールの質量とSBR固体成分の質量との比を5:95にし、そして脱イオン水を加えて希釈し、SBR固体成分の含有量が15重量%であるまで持続し、ここまで前処理プロセスが終了する。その後に、上記前処理を経たSBRエマルジョンをステップ3の混合物内に加え、SBRエマルジョンの加え量は、混合系統におけるSBR固体成分とCMCとの質量比を1:1にする。
【0118】
ステップ5:ステップ4で取得された混合系統内に脱イオン水を加えて、スラリーの固体成分質量分率を55重量%に調節し、20rpm公転速度、1000rpm自転速度で、60分攪拌し、負極スラリーを取得する。
【0119】
ステップ6:
上記製造された負極スラリーを、0.2g/1540.25mm2塗布重量で塗布し、乾燥、冷間プレス、スリットプロセスを経て負極極板に製造する。
【0120】
他の[正極極板]、[電解液]、[セパレータ]及び[二次電池]の製造プロセスは、実施例1と一致する。
【0121】
実施例10
実施例9における負極極板の製造プロセスと類似し、相違点は、ステップ4のSBRエマルジョンの前処理プロセスを希釈+超音波に変更し、SBRエマルジョンを脱イオン水で固体成分含有量が10重量%になるまで希釈し、そして40kHzパワー、50℃で30分超音波処理することである。
【0122】
他の[正極極板]、[電解液]、[セパレータ]及び[二次電池]の製造プロセスは、実施例1と一致する。
【0123】
実施例11
実施例9における負極スラリーの製造プロセスと類似し、相違点は、ステップ4のSBRエマルジョンの前処理プロセスを遠心に変更し、SBRエマルジョンを3000rpm回転数で10分遠心することである。
【0124】
他の[正極極板]、[電解液]、[セパレータ]及び[二次電池]の製造プロセスは、実施例1と一致する。
【0125】
実施例12
実施例9における負極スラリーの製造プロセスと類似し、相違点は、ステップ4のSBRエマルジョンの前処理プロセスを沈降に変更し、SBRエマルジョン内にメチルエチルカーボネート(EMC)を加え、ここで、加えられたEMCの質量とSBR固体成分の質量との比が5:95であることである。
【0126】
他の[正極極板]、[電解液]、[セパレータ]及び[二次電池]の製造プロセスは、実施例1と一致する。
【0127】
実施例13
実施例1における負極スラリーの製造プロセスと類似し、相違点は、ステップ2のSBRエマルジョンをエチレンプロピレンゴムエマルジョンに置き換えるとともに、ステップ4における混練攪拌時間を50分に変えることである。
【0128】
他の[正極極板]、[電解液]、[セパレータ]及び[二次電池]の製造プロセスは、実施例1と一致する。
【0129】
実施例14
実施例1における負極スラリーの製造プロセスと類似し、相違点は、ステップ2では、SBRエマルジョンをアクリレートエマルジョンに置き換えるとともに、ステップ4における混練攪拌時間を50分に変えることである。
【0130】
他の[正極極板]、[電解液]、[セパレータ]及び[二次電池]の製造プロセスは、実施例1と一致する。
【0131】
比較例1
実施例9における負極スラリーの製造プロセスと類似し、相違点は、ステップ4におけるエマルジョンに対して前処理を行うプロセスが欠け、SBRエマルジョンをステップ3の混合物内に直接に加え、SBR固体成分とCMCとの質量比を1:1にすることである。
【0132】
他の[正極極板]、[電解液]、[セパレータ]及び[二次電池]の製造プロセスは、実施例1と一致する。
【0133】
比較例2
実施例9における負極スラリーの製造プロセスと類似し、相違点は、ステップ4におけるエマルジョンに対して前処理を行うプロセスが欠け、エチレンプロピレンゴムエマルジョンをステップ3の混合物内に直接に加え、エチレンプロピレンゴム固体成分とCMCとの質量比を1:1にすることである。
【0134】
他の[正極極板]、[電解液]、[セパレータ]及び[二次電池]の製造プロセスは、実施例1と一致する。
【0135】
比較例3
実施例9における負極スラリーの製造プロセスと類似し、相違点は、ステップ4におけるエマルジョンに対して前処理を行うプロセスが欠け、アクリレートエマルジョンをステップ3の混合物内に直接に加え、アクリレート固体成分とCMCとの質量比を1:1にすることである。
【0136】
他の[正極極板]、[電解液]、[セパレータ]及び[二次電池]の製造プロセスは、実施例1と一致する。
【0137】
II.各パラメータのテスト方法
[負極極板パラメータテスト]
1.エマルジョン型接着剤が不規則な膜状分布を呈する領域の面積A、単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布する領域の面積B
本発明の負極極板上から、20個の異なる位置での負極膜層をランダムに選び、同じ拡大倍数(10K又は20K)でSEM結像(ドイツZEISSのSigma-02-33型走査型電子顕微鏡、SEM)を行い、20枚のSEM結像写真を得る。SEM機器に付属する面積テストツールを利用し、先ず各枚の結像写真におけるエマルジョン型接着剤が不規則な膜状分布を呈する領域の合計面積を計算し、そしてこの20枚の結像写真のこの合計面積を加算して得られた加算値を20で割ると、前記不規則な膜状分布の領域の合計面積の平均値を得、この平均値は、本出願に記載の合計面積Aである。同様な方法に従って単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布する領域の合計面積Bを同時に得る。
【0138】
2.接着力テスト
各実施例と比較例との負極極板を取り、長100mm、幅10mmのテストサンプルに切断する。一本の幅が25mmのステンレス板を取り、両面テープ(幅11mm)を貼り、テストサンプルをステンレス板上の両面テープ上に貼り付け、2000gプレスロールを用いてその表面を300mm/分の速度で三回往復圧延する。そして、テストサンプルの一端を180度折り曲げ、手動でテストサンプルの負極膜層と集電体とを長手方向に沿って25mm剥がし、このテストサンプルを試験機上(例えばINSTRON 336)に固定し、剥離面と試験機力線との一致を維持し(試験機の引き方向が極板の長手方向に平行するように維持する)、試験機は、30mm/分の速度で連続的に剥離し、剥離力曲線を得る。剥離力曲線上の安定部に対応する剥離力F0を取り、テストサンプルにおける負極膜と集電体との間の接着力F=F0/テストサンプルの幅(Fの計量単位:N/m)である。
【0139】
3.凝集力テスト
各実施例と比較例との負極極板を取り、長100mm、幅10mmのテストサンプルに切断する。一本の幅が25mmのステンレス板を取り、両面テープ(幅11mm)を貼り、テストサンプルをステンレス板上の両面テープ上に貼り付け、2000gプレスロールを用いてその表面を300mm/分の速度で三回往復圧延する。また、前記テストサンプルの負極膜層の表面に低粘度グリーングルーを貼り(前記低粘度グリーングルーの接着強度350±20g/25mm)、そして、テストサンプルの一端を180度折り曲げ、手動で負極膜層とグリーングルーとを長手方向に沿って25mm剥がし、このテストサンプルを試験機(例えばINSTRON 336)上に固定し、剥離面と試験機力線との一致を維持し(試験機の引き方向が極板の長手方向に平行するように維持する)、試験機は、30mm/分の速度で連続的に剥離し、剥離力曲線を得る。剥離力曲線上の安定部に対応する剥離力N0を取り、テストサンプルにおける負極膜と集電体との間の接着力N=N0/テストサンプルの幅(Nの計量単位:N/m)である。
【0140】
4.xとdのテスト
本出願のいずれかdのテストプロセスは、集電体の一方側の負極膜層を選び、負極膜層厚さDを測定し、SAICAS(表面と界面切削分析システム、Daipla Wintes Japan)を使用し、負極膜層の厚さ方向に沿い、負極膜層表面から所定深さD1まで、所定深さD1に対応する負極膜層(即ち剥離された負極膜層の厚さがD1である)を剥離し、d=D1/Dであることであり、
本出願のいずれかxのテストプロセスは、熱分解-質量スペクトル分析(島津Py-GCMS QP-2020)を使用して負極膜層全体の接着剤含有量Xをテストし、そして厚さがD1である負極膜層が剥離された後に残った負極膜層における接着剤の含有量がY1であり、x=(X-Y1)/Xであることである。SBRについて、スチレン断片を特徴イオンとし、リザーブ時間は、4.075分であり、分子量は、104である。
【0141】
[二次電池性能テスト]
1.電池サイクル性能テスト
45℃で、各実施例と比較例とで製造して得られた二次電池を0.5C倍率で充電カットオフ電圧4.25Vまで定電流充電し、その後に電流≦0.05Cまで定電圧充電し、この時の電池の容量をC0として記録し、10分静置し、次に0.5C倍率で放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、10分静置し、これは、一つの充放電サイクルである。この方法に従って電池に対して50サイクルの充放電サイクルテストを行い、最終回が終了する時に対応する電池放電容量Cを記録し、サイクル容量維持率=C/C0*100%である。
【0142】
2.荷電状態(SOC)と直流内部抵抗(DCR)との測定方法
SOC:25℃で、各実施例と比較例とで製造して得られた二次電池を0.5C倍率で充電カットオフ電圧4.25Vまで定電流充電し、その後に電流≦0.05Cまで定電圧充電し、10分静置し、次に0.5C倍率で放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、10分静置し、これは、一つの充放電サイクルである。
【0143】
その後に、25℃で、各実施例と比較例とで製造して得られた二次電池を0.5C倍率で充電カットオフ電圧4.25Vまで定電流充電し、その後に電流≦0.05Cまで定電圧充電し、この時の電池容量を100%SOCとして記し、
その後に、25℃で、1C倍率で6分定電流放電し、1時間静置し、この時の容量は、90%SOCであり、電圧をU0として記し、その後に、5C倍率、電流Iで10s放電し、電圧をU1として記し、90%SOC DCR=(U0-U1)/Iである。
【0144】
同じ方法に従い、1C放電深度が50%であり、20%SOCのDCRであることをテストする。
【0145】
III.性能評価
負極活物質の表面における接着剤の分布形態
図1及び
図2から分かるように、実施例1の接着剤の一部は、負極活物質に不規則な膜状分布を呈し、これは、負極活物質の粒子と粒子との間の凝集力及び負極膜層と集電体との間の接着力を顕著に増加させ、比較例1の負極活物質の表面における接着剤は、単粒子形式のみで分布し、従って、接着力と凝集力とが悪い。
【0146】
負極極板と二次電池との性能テスト
上記実施例1-14と比較例1-3とにおいて製造された負極極板と二次電池とに対して性能テストを行い、結果は、表1~表2に示す。
【0147】
【表1】
備注:「エマルジョン型接着剤に対する前処理方式」における「/」は、前処理及び混練をしなかったことを表し、「A/(A+B)」における「/」は、不規則な膜状分布を観察したことがないことを表す。
【0148】
表1に基づき、実施例1-5と比較例1との結果を比べると分かるように、エマルジョン型接着剤SBRを超伝導カーボン、黒鉛活物質、カルボキシメチルセルロースナトリウムとともに100rpm公転で混練することによって、SBRの黒鉛活物質表面での分布形態を変え、製造された極板における前記SBRの不規則な膜状分布を呈する領域の合計面積Aと単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布する領域の合計面積Bとの比は、変わる。混練時間の延長に従って、A/(A+B)は、徐々に向上し、極板の接着力と凝集力とは、高まり、該当する電池の50サイクルのサイクル維持率は、高まる。
【0149】
実施例6-8の結果から分かるように、他の条件をそのまま維持し、さらにSBRが存在する場合の混練時間を高め、極板におけるA/(A+B)は、いずれも80:100よりも大きく、接着力と凝集力と、製造された電池の50サイクルのサイクル容量維持率とは、いずれも比較的高いレベルを維持する。
【0150】
実施例9-12から分かるように、他のエマルジョン型接着剤に対する前処理の方式、例えばSBRエマルジョンに対する沈降、超音波、遠心、又は希釈を行う方法を採用することで、エマルジョン型SBRのエマルジョン粒子の安定性を低減させるとともに、A/(A+B)の比較的大きい割合を取得することができ、製造された極板の接着力と凝集力とを高め、そしてこの極板を用いて製造された電池の50サイクルのサイクル容量維持率も改善される。
【0151】
実施例13、14と比較例2、3との結果を比べると分かるように、他のエマルジョン型接着剤(例えばエチレンプロピレンゴム、ポリアクリレートエマルジョン)を接着剤として採用し、本発明の製造方法によって、極板の接着力、凝集力を向上させ、そして製造された電池の50サイクルのサイクル容量維持率を向上させる効果を達成することができる。
【0152】
エマルジョン型接着剤の質量含有量の測定
【0153】
【0154】
表2の結果から分かるように、混練時間の増加に従って、x/dの最大値は、徐々に低減し、SBRの負極膜層の上半層と下半層とにおける質量含有量の差は、徐々に減小し、負極膜層におけるSBR分布は、均一化になる傾向にあり、接着剤の浮かび上がりを抑制するとともに、製造された極板の接着力と凝集力とを補強し、そしてこの極板を用いて製造された電池の50サイクルのサイクル容量維持率を向上させる。
【0155】
二次電池の直流内部抵抗(DCR)のテスト結果
以上に記載の荷電状態(SOC)と直流内部抵抗(DCR)との測定方法によって、比較例1と実施例5とで製造された二次電池を測定し、その結果は、
図5に示す。図において、同じSOCで、比較例1と比べ、本発明の実施例5の二次電池は、より低い直流内部抵抗を有する。これは、本発明では、エマルジョン型接着剤が極板膜層においてより均一に分布し、エマルジョン型接着剤の上層における凝集程度を低減させ、それによって上層におけるSBR凝集によるリチウムイオン遷移阻害を減少させるため、製造された電気化学装置の直流内部抵抗DCRが改善される(実施例5及び比較例1)。
【0156】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施形態に限らない。上記実施形態は、例示であり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨を逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到できる様々な変形を加え、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築された他の方式も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0157】
1 電池パック
2 上部筐体
3 下部筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ケース
52 電極アセンブリ
53 カバープレート
【手続補正書】
【提出日】2023-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極極板であって、
集電体と前記集電体の少なくとも一つの表面上に位置する負極膜層とを含み、前記負極膜層は、負極活物質とエマルジョン型接着剤とを含み、ここで、
前記負極活物質の表面上に、少なくとも一部の前記エマルジョン型接着剤は、不規則な膜状分布を呈し、
前記不規則な膜状分布は、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、エマルジョン型接着剤が単粒子状でも単粒子からなるクラスタ状でも分布せず、形状が不規則なフィルム状で負極活物質表面上に分布する状態を指す、ことを特徴とする負極極板。
【請求項2】
前記負極活物質の表面上に、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、いずれか一箇所の不規則な膜状分布を呈するエマルジョン型接着剤を選び、その膜状構造のエッジに沿って閉領域を構築し、前記閉領域を正規化してなる標準円の半径は、500nmよりも小さくない、ことを特徴とする請求項1に記載の負極極板。
【請求項3】
前記SEM写真において、エマルジョン型接着剤が不規則な膜状分布を呈する領域の合計面積をAとし、前記エマルジョン型接着剤が単粒子状又は単粒子からなるクラスタ状で分布する領域の合計面積をBとすると、Aと(A+B)との比は、少なくとも10:100であり、選択的には60:100~100:100であり、さらに選択的には80:100~98:100である、ことを特徴とする請求項
1に記載の負極極板。
【請求項4】
前記負極膜層の外面に沿って前記集電体に向かう方向に、前記負極膜層の縦方向深さの負極膜層全体の総厚さに対する比をdとし、前記縦方向深さの負極膜層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量の負極膜層全体におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量に対する比をxとし、ここで、負極膜層全体の総厚さを1に設定し、負極膜層全体におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量を1に設定すると、0<d<1であり、0<x<1であり、x及びdは、1<x/d≦1.8を満たし、選択的には1<x/d≦1.5である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項5】
前記負極膜層の下半層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量は、その上半層におけるエマルジョン型接着剤の質量含有量よりも小さく、差は、12%を超えず、前記下半層と上半層とは、前記集電体の同一側に位置する負極膜層の厚さの1/2を境界とする、ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項6】
前記エマルジョン型接着剤は、スチレンブタジエンゴムと、ポリアクリレートと、エチレンプロピレンゴムと、ニトリルゴムと、ポリフッ化ビニリデンとから少なくとも一つ選択される、ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の負極極板。
【請求項7】
負極極板の製造方法であって、
エマルジョン型接着剤に対して前処理を行うステップであって、前記前処理方式が超音波と、沈降と、遠心と、混練操作とのうちの少なくとも一つを含むステップと、
負極活物質、導電剤、添加剤を所定比例に従って混合し、第一の混合物を得るステップと、
前記前処理後のエマルジョン型接着剤、前記第一の混合物、脱イオン水を混合し、負極スラリーを得るステップと、
前記負極スラリーを集電体の少なくとも一つの表面に使用し、乾燥後に前記負極極板を得るステップと、を含み、選択的に、
前記方法は、
負極活物質、導電剤、添加剤を所定比例に従って混合し、第一の混合物を得るステップと、
混練攪拌によって、前記エマルジョン型接着剤、前記第一の混合物、脱イオン水を均一に混合させ、負極スラリーを得るステップと、
前記負極スラリーを集電体の少なくとも一つの表面に使用し、乾燥後に前記負極極板を得るステップと、を含み、
ここで、
前記負極極板は、集電体と前記集電体の少なくとも一つの表面上に位置する負極膜層とを含み、ここで、前記負極膜層は、負極活物質とエマルジョン型接着剤とを含み、前記負極活物質の表面上に、大部分又はすべての前記エマルジョン型接着剤は、不規則な膜状分布を呈し、
前記不規則な膜状分布は、走査型電子顕微鏡による前記負極膜層のSEM写真において、10Kの拡大倍数で、エマルジョン型接着剤が単粒子状でも単粒子からなるクラスタ状でも分布せず、形状が不規則なフィルム状で負極活物質表面上に分布する状態を指す、負極極板の製造方法。
【請求項8】
二次電池であって、正極極板と、負極極板と、セパレータと、電解液とを含み、ここで、前記負極極板は、請求項1~
3のいずれか1項に記載の負極極板、又は請求項7に記載の方法によって製造された負極極板である、二次電池。
【請求項9】
電池モジュールであって、請求項8に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項10】
電池パックであって、請求項9に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項11】
電力消費装置であって、請求項8に記載の二次電池、請求項9に記載の電池モジュール又は請求項10に記載の電池パックから選択された少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0110】
I.製造方法
実施例1
[負極極板]
ステップ1:黒鉛:超伝導カーボン:カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)=96:1:1.5の重量比に従って混練ダブルパドル付きのダブルプラネタリーミキサー内に加え、20rpmの公転速度で且つ自転を起動させない条件で15分攪拌し、均一に混合した後に、第一の混合物を取得し、
ステップ2:ステップ1で取得された第一の混合物内に、1:1のSBR固体成分とCMCとの質量比に従ってスチレンブタジエンゴムエマルジョン(SBRエマルジョン、固体成分含有量は、50重量%である)を加え、
ステップ3:ステップ2で取得された、SBRを含む混合物内に、脱イオン水を加え、スラリーの固体成分質量分率を65重量%(スラリーの総重量に基づいて計算する)に調節し、初期スラリーを取得し、
ステップ4:ステップ3で取得された初期スラリーを100rpm公転速度で且つ自転を起動させない条件で2分混練して攪拌し、
ステップ5:ステップ4で取得されたスラリー内に、脱イオン水を加えて、スラリーの固体成分質量分率を55重量%(スラリーの総重量に基づいて計算する)に調節し、20rpm公転速度、1000rpm自転速度で、90分攪拌し続け、負極スラリーを取得する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0117
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0117】
実施例9
[負極極板]
ステップ1:黒鉛:超伝導カーボン:カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)=96:1:1.5の質量比に従って混練ダブルパドル付きのダブルプラネタリーミキサー内に加え、20rpmの公転で且つ自転をオンにしない条件で15分攪拌し、均一に混合した後に、第一の混合物を取得し、
ステップ2:ステップ1で取得された第一の混合物内に脱イオン水を加えて、スラリーの固体成分質量分率を65重量%に調節し、初期スラリーを取得し、
ステップ3:ステップ2で取得された初期スラリーを、20rpm公転速度、200rpm自転速度で、30分攪拌し、混合物を得、
ステップ4:SBRエマルジョンの前処理プロセス(希釈+沈降):SBRエマルジョン内に無水エタノールを予め加え、加えられた無水エタノールの質量とSBR固体成分の質量との比を5:95にし、そして脱イオン水を加えて希釈し、SBR固体成分の含有量が15重量%であるまで持続し、ここまで前処理プロセスが終了する。その後に、上記前処理を経たSBRエマルジョンをステップ3の混合物内に加え、SBRエマルジョンの加え量は、混合系統におけるSBR固体成分とCMCとの質量比を1:1にする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】