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特表2024-507877パリレンエレクトレットコンデンサマイクロホン用バックプレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】パリレンエレクトレットコンデンサマイクロホン用バックプレート
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/04 20060101AFI20240214BHJP
   H04R 19/01 20060101ALI20240214BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H04R19/04
H04R19/01
H04R1/00 320Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550619
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 US2022070395
(87)【国際公開番号】W WO2022183157
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】17/184,338
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】504189151
【氏名又は名称】シュアー アクイジッション ホールディングス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHURE ACQUISITION HOLDINGS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】グリッグ、 ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ネトル、 ドナルド ディー.
【テーマコード(参考)】
5D021
【Fターム(参考)】
5D021CC08
(57)【要約】
マイクロホンアセンブリ(100)は、ハウジング(107)と、単一の可撓性ダイヤフラム(101)と、剛性バックプレート(102)とを含む。前記バックプレート(102)は、前記バックプレートの直径に亘るバックプレート(102)の平坦度偏差を減少させるのに寄与するように構成されたパリレンで被覆されている。複数の開口部(309)は、バックプレート(102)の上部からバックプレート(102)の下部まで延びることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロフォンアセンブリであって、
上部及び下部を有するハウジングを含み、前記ハウジングは、
バックプレートアセンブリの上方に配置された可撓性ダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムと前記バックプレートとの間にエアギャップを形成する、前記ダイヤフラムと前記バックプレートアセンブリとに介在されたスペーサと、をさらに含み、
前記バックプレートアセンブリは、前記ハウジングに結合され、本体をさらに含み、
前記本体は、
直径と、
上面と、
下面と、を含み、
前記本体の前記上面には、蒸着エレクトレット材料のコーティングが被覆されており、
前記本体は、前記ダイヤフラムが前記バックプレートアセンブリ上に崩壊するのを防止するように構成された、前記本体の直径に亘る平坦度偏差を有する、マイクロフォンアセンブリ。
【請求項2】
前記本体の直径に亘る平坦度偏差が前記エアギャップの高さの10%以下である、請求項1に記載のマイクロフォンアセンブリ。
【請求項3】
前記蒸着エレクトレット材料のコーティングがパリレン-AF4を含む、請求項1に記載のバックプレートアセンブリ。
【請求項4】
前記バックプレートアセンブリは、前記本体の上面から前記本体の下面を通って延びる複数の貫通孔をさらに含み、前記蒸着エレクトレット材料のコーティングは、前記複数の貫通孔の複数の内径を被覆している、請求項1に記載のマイクロフォンアセンブリ。
【請求項5】
前記蒸着エレクトレット材料のコーティングはパリレン-AF4を含む、請求項4に記載のバックプレートアセンブリ。
【請求項6】
前記バックプレートの前記本体はプリント回路基板を含む、請求項1に記載のマイクロフォンアセンブリ。
【請求項7】
前記バックプレートの前記本体は金属化プラスチックを含む、請求項1に記載のマイクロフォンアセンブリ。
【請求項8】
前記バックプレートの前記本体は金属化セラミックを含む、請求項1に記載のマイクロフォンアセンブリ。
【請求項9】
前記蒸着エレクトレット材料のコーティングは、少なくとも20μmの厚さである、請求項1に記載のマイクロフォンアセンブリ。
【請求項10】
前記バックプレートは-1900Vの最大初期充電容量を示す、請求項1に記載のマイクロフォンアセンブリ。
【請求項11】
コンデンサマイクロホン用バックプレートアセンブリであって、
本体を含み、
直径と、
上面と、
下面と、
前記本体の前記上面から前記バックプレートの前記下面まで延びる複数の貫通孔と、を含み、
蒸着エレクトレット材料のコーティングは、前記本体の前記上面および前記複数の貫通孔の複数の内径を被覆し、前記蒸着エレクトレット材料のコーティングは、前記バックプレートアセンブリ全体にわたって均一な電荷分布を確保するのに寄与するように構成される、コンデンサマイクロホン用バックプレートアセンブリ。
【請求項12】
前記本体は、前記本体の直径にわかって、前記ダイヤフラムと前記バックプレートアセンブリとの間に介在されたエアギャップの高さの20%以下の平坦度偏差を有する、請求項11に記載のバックプレートアセンブリ。
【請求項13】
前記蒸着エレクトレット材料のコーティングは、パリレン-AF4を含む、請求項11に記載のバックプレートアセンブリ。
【請求項14】
前記バックプレートは-1900Vの最大初期充電容量を示す、請求項11に記載のバックプレートアセンブリ。
【請求項15】
前記バックプレートの本体は、プリント回路基板を含む、請求項11に記載のバックプレートアセンブリ。
【請求項16】
前記バックプレートの本体は金属化プラスチックを含む、請求項11に記載のマイクロフォンアセンブリ。
【請求項17】
前記バックプレートの本体は、金属化セラミックを含む、請求項11に記載のマイクロフォンアセンブリ。
【請求項18】
コンデンサマイクロホン用バックプレートアセンブリであって、本体を含み、
前記本体は、
直径と、
上面と、を含み、
前記本体の前記上面には、蒸着エレクトレット材料のコーティングが被覆されており、
前記本体は、前記本体の直径にわたって、前記ダイヤフラムと前記有孔バックプレートアセンブリとの間に介在させたエアギャップの高さの10%以下の平坦度偏差を有する、コンデンサマイクロホン用バックプレートアセンブリ。
【請求項19】
前記蒸着エレクトレット材料のコーティングはパリレン-AF4を含む、請求項18に記載のバックプレートアセンブリ。
【請求項20】
前記蒸着エレクトレット材料のコーティングは、前記本体の上面から前記バックプレートの下面を通って延びる複数の貫通孔の複数の内径を被覆している、請求項18に記載のバックプレートアセンブリ。
【請求項21】
前記蒸着エレクトレット材料のコーティングはパリレン-AF4を含む、請求項20に記載のバックプレートアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にマイクロホンに関し、より具体的には、代替エレクトレット材料で製造されたバックプレートなどのエレクトレットコンデンサマイクロホンアセンブリに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2021年2月24日に出願された米国特許出願第17/184,338号の優先権と利益を主張しており、その開示内容は引用により全体としてここに組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
マイクロホンは、ダイヤフラムを含むトランスデューサを用いて音を電気信号に変換し、音を機械的な運動に変換し、機械的な運動を電気信号に変換する。一般に、マイクロホンはトランスデューサ方式(例えば、コンデンサ、ダイナミック、リボン、カーボン、レーザー、または微小電気機械システム(MEMS))によって分類できる。コンデンサマイクロホンはオーディオ、オーディオ、エレクトロニクス、計測機器業界で広く使用されている。エレクトレットコンデンサマイクロホンは、可撓性ダイヤフラムまたは薄膜と、1つまたは複数の開口部を含むことができる剛性バックプレートとを含む。ダイヤフラムまたは可撓性ダイヤフラムはエレクトレット材料で被覆されていてもよい。
【0004】
エレクトレットコンデンサマイクロホンは、ダイヤフラムがコンデンサの一方のプレートとして機能し、バックプレートが他方のプレートとして機能する。振動はダイヤフラムとバックプレートとの間の距離を変化させる。ダイヤフラムとバックプレートとの間に保持される電圧は、電荷をQ=クーロン、静電容量をC=ファラ、電位差をV=ボルトとした静電容量式(C=Q/V)により、空気中の振動に応じて変化する。この電圧変化はFETで増幅され、DCのブロッキングコンデンサを介して出力にオーディオ信号が現れる。
【0005】
いくつかの場合、可撓性ダイヤフラムはエレクトレット材料で被覆れる。他の場合、(ダイヤフラムの代わりに)剛性バックプレートがエレクトレット材料で被覆される。未加工のパンチメタルバックプレートには、テフロン(登録商標)またはテフロン(登録商標)バリアントのコーティングを施すことができる。このエレクトレット材料を金属バックプレートに塗布する一般的な方法はラミネートによるものである。このラミネートプロセスでは、ラミネートに必要な高熱により、バックプレートに反りが生じる場合がある。特定の例では、ラミネートプロセスにおいて、穴開けプロセス中に未加工のパンチングメタルバックプレートに組み込まれていた応力が解放され、その結果、バックプレートに反りが生じる。
【0006】
製造中に剛性バックプレートの平坦度を一定に保つことで、マイクロフォンアセンブリの感度を一定に保つことができる。コンデンサマイクロホンのカート隆起部は、通常、ダイヤフラムとバックプレートとの間に1000分の1~2000インチのエアギャップができるように組み立てられている。バックプレートが10,000分の6~8インチずれているだけでも、マイクロフォンアセンブリのパフォーマンスに大きな影響を与える。
【発明の概要】
【0007】
以下に、本開示のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化した概要を提示する。この概要は、開示内容の広範な概要を示すものではない。その目的は、本開示の主要または主要な要素を識別することではなく、また、本開示の範囲を記述することでもない。以下の概要は、以下に提供するより詳細な説明への序文として、本開示のいくつかの概念を簡略化した形で提示するだけである。
【0008】
本開示は、蒸着ポリマーコンフォーマルコーティング材料のようなエレクトレット材料で被覆された有孔バックプレートアセンブリを含むマイクロフォンアセンブリによって上記の問題の多くを解決する。一例において、エレクトレット材料は、パリレンであってもよい。パリレンは上記のラミネート塗布法とは異なり、非加熱蒸着法により塗布される。この結果、パリレン被覆バックプレートは非常に平坦であり、マイクロフォンアセンブリの安定した感度を確保するのに寄与する。
【0009】
バックプレートは、本体と、上面及び下面と、バックプレートの上面からバックプレートの下面に延びる複数の貫通孔とを含む。一実施形態では、バックプレートの上面は、パリレンのような、蒸着ポリマーコンフォーマルコーティング材料で被覆される。バックプレートの本体は、円形、長方形、または他の所望の形状としてもよい。バックプレートの本体は、未加工のパンチングメタル、金属化セラミック、金属化プラスチック、またはプリント回路基板から製造されてもよい。別の実施形態では、複数の貫通孔の複数の内径もパリレンで被覆されている。
【0010】
以下の本開示の詳細な説明、特許請求の範囲および図面によって、本開示のこれらおよび他の新規な利点、詳細、実施形態、特徴、および目的は、本開示を解釈する際に有用である当業者にとって明白である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示およびその利点のより完全な理解は、添付図面を考慮した以下の説明を参照することによって得られ得るが、ここで、同じ参照符号は同じ特徴を表し、ここで、以下の説明を参照することによって得られる。
【0012】
図1】本開示によるマイクロホンコンデンサアセンブリの第1例の斜視分解図である。
【0013】
図2図1に示されるマイクロホンコンデンサアセンブリの一部の断面図である。
【0014】
図3】本発明に係るバックプレートの第1例の平面図である。
【0015】
図3A図3の線3a/3bに示す第1例の断面図である。
【0016】
図3B図3の線3a/3bに示す第2例の断面図である。
【0017】
図4】本開示に係るバックプレートの第3例の平面図である。
【0018】
図5】蒸着プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な例の以下の説明では、本明細書の一部を形成し、態様が実施され得る様々な例が例示として示される添付の図面が参照される。「実施形態」、「実施例」などへの参照は、このように説明された本開示の実施形態または実施例が特定の特徴、構造、または特性を含むことができることを示しているが、各実施形態または実施例が必ずしも特定の特徴、構造、または特性を含む必要はない。さらに、特定の実施形態または実施例は、他の実施例について説明された特徴のいくつか、すべて、あるいは全く備えないことも考えられる。また、本開示の範囲を逸脱することなく、他の実施形態および実施例を利用することができ、構造的および機能的な変更が可能であることを理解されたい。
【0020】
別段の記載がない限り、「第1」、「第2」、「第3」など、構成要素を説明するために使用される一連の形容詞は、類似した構成要素であってもよい異なる構成要素を示すためにのみ使用される。しかし、この連続形容詞の使用は、構成要素が時間的、空間的、順序的、またはその他任意の方法で与えられた順序で提供されなければならないことを意味しない。
【0021】
また、本明細書では、様々な例示的な特徴および要素を「フロント」、「バック」、「側」などの用語を使用して説明することができるが、便宜上、これらの用語は、例えば、図面に示された例示的な方向および/または典型的な使用における方向に基づいて、本明細書で使用される。本明細書中のいかなる内容も、請求項の範囲内に入るために、構造が特定の3次元的又は空間的方向を有することを要求していると解釈されるべきではない。
【0022】
コンデンサマイクロホンはオーディオ、電子と計器業界に広く応用されている。コンデンサマイクロホンは、有線でも無線でもよい。有線の場合、これらのマイクロホンは、ツイストペア線、同軸ケーブルまたは光ファイバを含む様々なケーブルのいずれかを介して送信機または受信機に接続され得る。これらの有線マイクロホンはまた、LEMOコネクタ、XLRコネクタ、TQGコネクタ、TRSコネクタ、USBまたはRCAコネクタを含む様々なコネクタのいずれかを使用して送信機または受信機に接続され得る。コンデンサマイクロホンは、無線であってもよく、WiMAX、LTE、Bluetooth、Bluetoothブロードキャスト、GSM、3G、4G、5G、Zigbee、60GHz Wi-Fi、Wi-Fi(例えば、IEEE 802.11a/b/g対応)などを含む様々なプロトコル、またはNFCプロトコルのいずれかによってオーディオシステムに接続される。この実施形態では、送信機は、マイクロホン内に含まれてもよいし、マイクロホンに接続されてもよい。
【0023】
図1および図2を参照して、一例では、本開示は、バックプレート102から分離された金属化コーティングを有する単一の可撓性フィルムまたはダイヤフラム101を含むマイクロフォンアセンブリ100を含む。保護グリル(図示せず)は、環境保護バリアとして機能するために、ダイヤフラム101の上に取り付けられてもよい。ダイヤフラム101は、静電容量型電気音響変換器の感知電極として用いられ、マイクロホンダイヤフラムを構成するために用いられる既知の材料、例えば金属フィルムや金属化ポリマーフィルムからなる。
【0024】
ダイヤフラム101とバックプレート102は、キャパシタとも呼ばれるコンデンサを形成する。ダイヤフラム101に音波が当たるとダイヤフラムが移動し、ダイヤフラム101とバックプレート102との間のエアギャップ103の高さが変化する。このギャップの変化により、ダイヤフラム101とバックプレート102とで形成されるコンデンサの静電容量が変化する。コンデンサ上に固定または制御された電荷Qが維持されると、コンデンサの両端に電圧が形成され、この電圧はエアギャップ103の高さの変化に比例して変化する。このような電圧の変化は、プリント回路基板116に結合可能なトランジスタ115によって増幅される。オーディオ信号は、図2に示すように出力117に現れる。トランジスタ115は、電界効果トランジスタ(FET)またはバイポーラ接合型トランジスタ(BJT)として構成され得る。
【0025】
ダイヤフラム101は、ダイヤフラムフレーム104上に張設され、ダイヤフラムフレームに接着または接着固定されてもよい。ダイヤフラムフレーム104は、ダイヤフラム101に張力を保持することができる。バックプレート102は、剛性であるか、または固定されている。ダイヤフラム101は、スペーサ105によって画成された狭いエアギャップ103(図2に示す)によってバックプレート102から離間されている。バックプレート102は、例えば、未加工のパンチングメタル製である。スペーサ105は、例えば硬質プラスチック絶縁材料からなり、圧力によるスペーサ105の変形を防止し、ダイヤフラム101とバックプレート102との間に電流が流れるのを防止する。スペーサは、壁または隆起部のような多数の形状をとることができる。ダイヤフラム101、バックプレート102、スペーサ105は、ハウジング107に結合され得る。ハウジング107は金属製であってもよい。ハウジング107は、電気的なアースとしても機能する。
【0026】
ダイヤフラム101及びバックプレート102は、様々な形状及び構成を用いることができる。例えば、図1では、ダイヤフラムフレーム104は円形であってもよく、バックプレートも円形であってもよい。当業者であれば、ハウジング107および本開示の他の構成要素の形状に応じて、ダイヤフラムおよびバックプレートは、他の形状を含むことができることを理解する。
【0027】
いくつかの場合、可撓性ダイヤフラムはエレクトレット材料で被覆されていてもよい。他の場合、バックプレートはエレクトレット材料で被覆されていてもよい。テフロン(登録商標)は何十年にもわたってエレクトレット材料として使われてきた。このエレクトレット材料を卑金属バックプレート上に塗布する一般的な方法は、ラミネートによるものである。しかし、このラミネートプロセスでは、ラミネートに必要な高熱により、バックプレートに反りが生じることがある。図2を再び参照すると、一例では、エアギャップ103は(ダイヤフラムが静止しているとき)0.0015インチであってもよい。別の例では、エアギャップ103は0.0015インチを超えてもよい。バックプレートとダイヤフラムの間の間隔が増加すると、すなわちエアギャップの高さが高くなると、適切なマイクロホン感度を維持するために必要な電圧を高くする必要がある。マイクロホン感度とは、マイクロホンの出力電圧を気圧外乱の大きさで割ったものである。バックプレートがわずか1000分の1インチ歪むだけでも、マイクロフォンアセンブリ100の性能に大きな影響を与える可能性がある。例えば、テフロン(登録商標)被覆バックプレートは、平均して、総エアギャップ高さの約 46 %の偏差がある可能性がある。したがって、このような平坦度の変化は、静電容量の変化につながり、マイクロフォンアセンブリ100の感度の変化につながる可能性がある。いくつかの場合、ダイヤフラムがバックプレートに静電的に吸着されて、バックプレート上に崩れて、マイクロフォンアセンブリ100が故障する可能性がある。このため、生産量が抑制されている可能性がある。
【0028】
逆に、一例では、エレクトレット材料としてパリレンのようなポリマーコンフォーマルコーティング材料を使用し、非熱蒸着法により適用することができる。パリレンはポリマーシリーズのメンバーの総称であり、その単量体は通常、p-フェニレンジイル環(ベンゼン環)と1,2-エチレンジイル架橋(脂肪架橋)を含む。このシリーズの基本的なメンバーはポリ(p-パラキシリレン)(パリレン N)であり、その誘導体はN単量体中に存在する特定の水素原子の代わりに他の官能基を含んでもよい。図3aは、エレクトレットコーティング312を有するバックプレート102を示す。バックプレート102は、バックプレート本体308の直径にわたって測定した場合に、(ダイヤフラムが静止している間)エアギャップの総高さの10%の平坦度偏差を示すように構成され得る。一例では、エレクトレットコーティング312を有するバックプレート102は、エレクトレットコーティング312を有するバックプレート102は、バックプレート本体308の直径にわたって測定したとき、(ダイヤフラムが静止している間)エアギャップの総高さの10%以下の平坦度偏差を示すように構成され得る。別の例では、エレクトレットコーティング312を有するバックプレート102は、バックプレート本体308の直径にわたって測定したとき、(ダイヤフラムが静止している間)エアギャップの総高さの10%と20%との間の平坦度偏差を示すように構成され得る。さらに他の例では、エレクトレットコーティング312を有するバックプレート102は、バックプレート本体308の直径にわたって測定したとき、(ダイヤフラムが静止している間)エアギャップの総高さの35%未満または20%未満の平坦度偏差を示すように構成され得る。前述の例のいずれにおいても、バックプレートの平坦度偏差は、光学式三次元測定システム、マシンビジョンシステム、レーザートラッカー、および光学コンパレータを含むがこれらに限定されない、任意の数の次元計測装置を使用して測定および確認することができる。したがって、パリレン被覆バックプレートは、製造中にマイクロフォンアセンブリ100の一貫した感度を維持し、ダイヤフラムの崩壊の危険性を軽減するのに寄与することができ、これにより製造歩留まりを増加させることができる。
【0029】
図3および図3aを参照して、バックプレート102は、未加工のパンチングメタル製の本体308を含む。本体308は、矢印309によって示される貫通孔または穴を含んでもよい。これらの開口部は、バックプレートの上面310からバックプレートの下面311への空気の通過を可能にする。蒸着エレクトレットコーティング312は、バックプレート本体308の上面に存在していてもよい。
【0030】
一実施形態では、エレクトレットコーティング312の厚さは25mである。他の実施形態では、エレクトレットコーティング312の厚さは、25m未満であってもよいし、25mを超えてもよい。一例では、蒸着エレクトレットコーティングは、ポリ(α,α,α’α’-テトラフルオロ-p-キシリレン)(パリレン-AF4)として知られるパリレンNの架橋フッ素化誘導体であってもよい。パリレン-AF4は、スペシャルティ・コーティング・システムズ社の登録商標であるパリレンHT(登録商標)、および大三化成株式会社製のdiX SFとして市販されている。パリレン-AF4は、高い絶縁耐力、低い誘電率を有し、室温で均一に蒸着する能力と高い浸透能力を持っている。さらに他のパリレン誘導体や、パリレン-AF4 よりも少ないまたは多いフッ素-水素置換を有するフッ素化パリレンを含む他の炭素-フッ素ベースのポリマーも、効果的なエレクトレット材料として利用できる可能性がある。蒸着可能な他のタイプのポリマーコンフォーマルコーティング材料を使用することもできる。
【0031】
バックプレート102をエレクトレットコーティング312で被覆することの更なる利点は、パリレンで被覆されたバックプレートが、放電前に改善された初期充電容量を示すことである。パリレン被覆バックプレートの放電前の初期充電容量は、テフロン(登録商標)ラミネートバックプレートよりもはるかに高い。例えば、エレクトレットコーティング312を有するバックプレート102は、放電前に約-1900Vの初期充電容量を示すことができ、テフロン(登録商標)をラミネートした同等のバックプレートは、放電前に約-1000Vの初期充電容量を示す。
【0032】
図3bを参照して、バックプレート本体308は、309で示される貫通孔または穴を含んでもよい。これらの開口部は、バックプレートの上面310からバックプレートの下面311への空気の通過を可能にする。均一な蒸着エレクトレットコーティング312は、バックプレート本体308の上面310上に存在してもよい。さらに、貫通孔309の内径314上にエレクトレットコーティング312が存在していてもよい。これはいくつかの理由から有利である。重要なことに、貫通孔309の内径314をエレクトレットでコーティングすることは、バックプレート本体にわたってより均一な電荷分布を確保することに寄与し得る。この構成は、製造中およびその後の品質管理段階でのバックプレート電圧の読み取りに関連する問題を軽減するのにも役立ち、その結果、製造および品質管理テストの効率が向上する。別の例では、内径314がエレクトレットコーティング312で被覆されるのを防ぐために、貫通孔309をマスクしてもよい。
【0033】
当業者が理解するように、貫通孔または穴の位置、数、およびサイズは、周波数応答および感度などのマイクロホンのオーディオ特性に影響を与える。穴のサイズおよび配置の任意の数のバリエーションも、内径314の蒸着エレクトレットコーティング312から利益を得ることができる。例えば、バックプレートの直径が数十mmから数mmの場合には、バックプレートの穴がその分小さくなる。例えば、直径が0.120インチ以下のバックプレートには、0.020インチ以下の穴がある場合がある。貫通孔の縁に沿ってテフロン(登録商標)フィルム層をせん断するように構成された現在のプロセスは、0.020インチ未満の直径を有するバックプレートの穴を実質的に除去することができない可能性がある。例示的なプロセスは、ポリウレタンプラグを下に有するネスト内に配置され得る0.001インチのステンレス製シムを含んでもよい。バックプレートは、ポリテトラフルオロエチレン(登録商標)ラミネート側をシムに向けて、シム上に配置してもよい。プレス機が高圧でバックプレートをシムに押し込む可能性があり、その時点でウレタンプラグが液体化し、シムに力がかかる可能性がある。ウレタンプラグはシムの後ろに一定の圧力を加えるので、シムがバックプレートの鋭利なエッジに切り込み、余分なテフロン(登録商標)をトリミングすることがある。
【0034】
上記のプロセスは、直径0.020インチ未満の穴の除去には適していない場合がある。その結果、バックプレートの穴を通過する空気の流れが制限され、マイクロホンのカプセルが故障する可能性がある。逆に、パリレンなどの蒸着ポリマーコンフォーマルコーティングを使用すると、バックプレートに蒸気相で細かく均一に塗布できるため、コンフォーマル材料の層を穴から剪断する必要がなくなる可能性がある。これにより、様々な用途に使用するための、より小型のコンデンサエレクトレットマイクロホンアセンブリを製造することができる。さらに、テフロン(登録商標)の代わりにエレクトレット材料として、パリレンなどの蒸着ポリマーコンフォーマルコーティングを使用することにより、バックプレートの製造プロセスを簡略化することができる。具体的には、上記のプロセスは、シムが余分なテフロン(登録商標)を剪断できるように、バックプレートの穴の周囲に鋭いエッジを備えたバックプレートを製造する必要がある場合がある。このような制限は、パリレンなどの蒸着ポリマーコンフォーマルコーティングを使用することによって回避することができ、したがって、バックプレート製造プロセスを簡略化し、および/または代替バックプレート製造プロセスを可能にすることができる。
【0035】
本開示の代替の実施形態は、無熱蒸着プロセスによって可能となる。高熱を必要とする従来のラミネート方法と異なり、蒸着コーティングプロセスは低熱環境で行う。したがって、感熱材料および構成要素は、バックプレートアセンブリを製造するために使用することができる。これには、金属化プラスチック、金属化セラミック、およびプリント回路基板などの代替の未加工バックプレート材料が含まれる。この実施形態では、図3及び図4を再び参照して、バックプレート102の本体308は、プリント基板からなる。エレクトレットコーティング312は、バックプレート102の上面310に均一に塗布される。プリント回路基板は、電界効果トランジスタまたはバイポーラ接合型トランジスタのような増幅回路を含んでもよい。
【0036】
エレクトレット材料としてのパリレンのような蒸着されたポリマーコンフォーマルコーティングを利用するもう1つの利点は、蒸着プロセスに関連する製造効率である。従来のラミネートプロセスでは、生産量が大幅に制限されていた。いくつかの場合、現在のラミネートプロセスでは、一度に数十枚のバックプレートしかラミネートできない。逆に、蒸着プロセスは、生産量を少なくとも10倍に増やすことができる。例えば、大きな堆積チャンバには数百または数千の部品を収容できるため、一度に数百のバックプレートをパリレンで被覆できる。
【0037】
図5を参照すると、基板515は、コーティングのために堆積チャンバ521内に配置される。金属、プラスチック、金属化プラスチック、金属化セラミック、エラストマー、シリコン、およびシリコン系誘導体を含む様々な基板を使用することができる。その後、二量体516を蒸発チャンバ517に入れる。多くの異なる種類の二量体を使用することができる。二量体516は、二量体ガス518に気化される。二量体ガス518は熱分解炉519に入り、そこで加熱されて単量体ガス520に変換される。単量体ガス520は、周囲温度の堆積チャンバ521に入り、基板515の露出表面を重合させる。一例では、基板515の露出表面がパリレンで被覆されると、追加の硬化ステップは必要とされない。パリレンコーティングの厚さは、1μmから数百μmの範囲であってもよい。
【0038】
マイクロフォンアセンブリは、上部および下部を含むハウジングを含んでもよく、ハウジングは、バックプレートアセンブリの上方に位置する可撓性ダイヤフラムと、ダイヤフラムとバックプレートアセンブリとの間に介在させたスペーサとをさらに含んでもよい。スペーサにより、ダイヤフラムとバックプレートとの間にエアギャップが生じてもよい。バックプレートアセンブリは、ハウジングに結合されてもよい。バックプレートアセンブリは、直径、上面および下面を含む本体をさらに含んでもよい。蒸着エレクトレット材料のコーティングは、本体の上面を被覆してもよく、本体は、バックプレートアセンブリへのダイヤフラムの崩壊を防止するのに寄与するように構成された、本体の直径全体に亘る平坦度偏差を示してもよい。本体の直径に亘る平坦度偏差は、エアギャップの高さの10%以下になる場合がある。バックプレートアセンブリはまた、本体の上面から本体の下面に延びることができる複数の貫通孔を含み、蒸着パリレンのコーティングは、複数の貫通孔の複数の内径を被覆してもよく、蒸着パリレンのコーティングは、バックプレートアセンブリ本体全体にわたって均一な電荷分布を確保することを容易にするように構成されてもよい。信号増幅回路は、バックプレートアセンブリの下に配置されてもよく、バックプレートと、ハウジングの底部から延びる複数の出力リード線とに接続されてもよい。バックプレートの本体は、未加工のパンチングメタル、プリント回路基板、金属化プラスチックまたは金属化セラミックを含んでもよい。蒸着エレクトレット材料のコーティングは、少なくとも20μmの厚さであってもよい。さらに、バックプレートは-1900Vの最大初期充電容量を示す場合がある。
【0039】
コンデンサマイクロホン用バックプレートアセンブリは、本体を含んでもよい。本体は、直径と、上面と、下面と、本体の上面からバックプレートの下面まで延びる複数の貫通孔とを含んでもよい。蒸着パリレンのコーティングは、本体の上面および複数の貫通孔の複数の内径に被覆されていてもよい。蒸着パリレンのコーティングは、バックプレートアセンブリ全体に亘って均一な電荷分布を確保するのに寄与するように構成されてもよい。有孔バックプレートアセンブリの本体は、本体の直径にわたって、ダイヤフラムとバックプレートアセンブリとの間に介在させ得るエアギャップ高さの20%以下の平坦度偏差を有することがある。バックプレートは-1900ボルトの最大初期充電容量を実現できる。有孔バックプレートの本体は、未加工のパンチングメタル、プリント回路基板、金属化プラスチックまたは金属化セラミックを含んでもよい。
【0040】
コンデンサマイクロホンのためのバックプレートアセンブリは、直径および上面を含み得る本体を含んでもよい。蒸着パリレンコーティングは、本体の上に被覆されてもよい。本体は、本体の直径に亘って、ダイヤフラムと有孔バックプレートアセンブリとの間に介在させ得るエアギャップの高さの10%以下の平坦度偏差を有してもよい。蒸着パリレンのコーティングは、本体の上面からバックプレートの下面を通って延びることができる複数の貫通孔の複数の内径を被覆してもよい。蒸着パリレンのコーティングは、バックプレートアセンブリ全体に亘って均一な電荷分布を確保するのに寄与するように構成されてもよい。
【0041】
バックプレート本体の上面および複数の穿孔の複数の内径の両方における蒸着エレクトレット材料のコーティングは、パリレン-AF4を含んでもよい。
【0042】
前述の明細書では、本開示は、その特定の例示的な実施形態を参照して説明された。本開示が好ましい実施形態に従って説明されてきたが、当業者は、本開示の様々な修正、実施形態、または変更が、添付の特許請求の範囲に記載された本開示の精神および範囲内で実施されてもよいことを認識する。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味としてみなされるべきである。したがって、特許請求の範囲を考慮して必要となる場合を除き、開示を制限することは意図されない。
図1
図2
図3
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】