(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】レオロジー改質剤組成物およびそれに由来する建築用塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240214BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20240214BHJP
C09D 101/26 20060101ALI20240214BHJP
C09D 133/26 20060101ALI20240214BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/43
C09D101/26
C09D133/26
C09D5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550631
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 US2022017509
(87)【国際公開番号】W WO2022182750
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591223105
【氏名又は名称】ハーキュリーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタラム クリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】ジーナ コッツカッパリー チェリアン
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA092
4J038CG031
4J038CG172
4J038CJ031
4J038MA14
4J038NA24
(57)【要約】
ここに開示されている発明概念は、一般に、600万ダルトンを超える重量平均分子量を有する0.05wt.%~70.0wt.%のアクリルアミドポリマーと、および少なくとも一種類の30.0wt.%~99.95wt.%のセルロースエーテルとを含むレオロジー改質剤組成物に関する。さらに、ここに開示されている発明概念は、レオロジー改質剤組成物およびそれを含む水性塗料組成物の調製方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)600万ダルトンを超える重量平均分子量を有する0.05wt.%~70.0wt.%のアクリルアミドポリマーと、及び
(ii)少なくとも一種類の30.0wt.%~99.95wt.%のセルロースエーテルと、
のブレンドを含む、レオロジー改質剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記アクリルアミドポリマーは、非イオン性ホモポリマーまたはアニオン性コポリマーまたはカチオン性コポリマーである、レオロジー改質剤組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記アクリルアミドポリマーは、カチオン性ポリマーである、レオロジー改質剤組成物。
【請求項4】
請求項2に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記アニオン性コポリマーは、少なくとも一つのモノマーが、S、N、O、およびPから構成される群から選択される一つ以上のヘテロ元素を持つ、一つ以上の酸性官能基または無水物官能基またはそれらの組み合わせを有する、レオロジー改質剤組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸または無水物、イタコン酸または水物、クロトン酸、フマル酸およびシトラコン酸から構成される群から選択される、レオロジー改質剤組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記アクリルアミドポリマーの前記重量平均分子量は、約600万ダルトン~約1500万ダルトンの範囲で変化する、レオロジー改質剤組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記アクリルアミドポリマーの前記重量平均分子量は、約800万ダルトン~約1200万ダルトンの範囲で変化する、レオロジー改質剤組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルヒドロキシエチルセルロースセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(CMHEC)、ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(HPHEC)、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、カルボキシメチルメチルセルロース(CMMC)、疎水性修飾カルボキシメチルセルロース(HMCMC)、疎水性修飾ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、疎水性修飾ヒドロキシプロピルセルロース(HMHPC)、疎水性修飾エチルヒドロキシエチルセルロース(HMEHEC)、疎水性修飾カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(HMCMHEC)、疎水性修飾ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(HMHPHEC)、疎水性修飾メチルセルロース(HM MC)、疎水性修飾メチルヒドロキシプロピルセルロース(HMMHPC)、疎水性修飾メチルヒドロキシエチルセルロース(HMMHEC)、疎水性修飾カルボキシメチルメチルセルロース(HMCMMC)、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース(カチオン性HEC)、カチオン性疎水性修飾ヒドロキシエチルセルロース(カチオン性HMHEC)、およびそれらの任意の組み合わせより成る群から選択されるグリオキサール処理した、またはグリオキサール処理していないセルロースエーテルである、レオロジー改質剤組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)またはカルボキシメチルセルロースの単独またはそれらの組み合わせである、レオロジー改質剤組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記セルロースエーテルは、グリオキサール処理していない、ヒドロキシエチルセルロースエーテルである、レオロジー改質剤組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記セルロースエーテルは、グリオキサール処理をしている、ヒドロキシエチルセルロースエーテルである、レオロジー改質剤組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記アクリルアミドポリマーは、0.05wt.%~50.0wt.%、または0.05wt.%~30.0wt.%の量で存在し、前記セルロースエーテルは、50.0wt.%~99.95wt.%または70.0wt.%~99.5wt.%の量で存在する、レオロジー改質剤組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、疎水性修飾エトキシル化ウレタンポリマー、疎水性修飾ポリアセタールポリエーテルポリマー、疎水性修飾アルカリ膨潤性エマルション、疎水性修飾アミノプラスト、アルカリ膨潤性エマルション、およびそれらの組み合わせより成る群から選択される少なくとも一つの会合性ポリマーをさらに含み得る、レオロジー改質剤組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記会合性ポリマーは、疎水性修飾ポリアセタールポリエーテルポリマーである、レオロジー改質剤組成物。
【請求項15】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記組成物は、さらに界面活性剤、分散剤、増粘剤、固化防止剤、消泡剤、防腐剤、ワックス、シリコーンおよび炭化水素を含む疎水化剤、相溶化剤、接着促進剤、安定剤、架橋剤、ならびにそれらの任意の組み合わせより成る群から選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含む、レオロジー改質剤組成物。
【請求項16】
請求項1に記載のレオロジー改質剤組成物において、前記組成物は乾燥粉末ブレンドである、レオロジー改質剤組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の前記組成物を調製する方法において、
(i)600万ダルトンを超える重量平均分子量を有する0.05wt.%~70.0wt.%のアクリルアミドポリマーと、及び
(ii)少なくとも一種類の30.0wt.%~99.95wt.%のセルロースエーテルと、
のブレンドをするステップを備える、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記アクリルアミドポリマーは、0.05wt.%~50.0wt.%、または0.05wt.%~30.0wt.%の量で存在し、前記セルロースエーテルは、50.0wt.%~99.95wt.%または70.0wt.%~99.5wt.%の量で存在する、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、さらに、
界面活性剤、分散剤、増粘剤、固化防止剤、消泡剤、防腐剤、ワックス、シリコーンおよび炭化水素を含む疎水化剤、相溶化剤、接着促進剤、安定剤、架橋剤、並びにそれらの任意の組み合わせより成る群から選択される少なくとも一つの添加剤をブレンドするステップを備える、方法。
【請求項20】
レオロジー改質剤組成物の水性ベース塗料中での使用法であって、前記組成物は、(i)600万ダルトンを超える重量平均分子量を有する0.05wt.%~70.0wt.%のアクリルアミドポリマーと、及び(ii)少なくとも一種類の30.0wt.%~99.95wt.%のセルロースエーテルとのブレンドを含むものである、使用法。
【請求項21】
請求項20に記載の前記レオロジー改質剤組成物の使用法において、前記アクリルアミドポリマーは、0.05wt.%~50.0wt.%、または0.05wt.%~30.0wt.%の量で存在し、前記セルロースエーテルは、50.0wt.%~99.95wt.%または70.0wt.%~99.5wt.%の量で存在する、使用法。
【請求項22】
水性塗料組成物であって、
塗料の組成の総重量に基づいて、
(ia)0.01wt.%~10.0wt.%の請求項1の前記組成物、または(ib)600万ダルトンを超える重量平均分子量を有する0.01wt.%~10.0wt.%のアクリルアミドポリマー、および0.01wt.%~10.0wt.%の少なくとも一種類のセルロースエーテルと、
(ii)5.0wt.%~85.0wt.%の少なくとも一種類のフィルム形成ポリマーと、
(iii)5.0wt.%~15.0wt.%の水と、
を含む、水性塗料組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の水性塗料組成物において、前記アクリルアミドポリマーおよび前記セルロースエーテルどちらもブレンドで前記塗料組成物中に存在している、水性塗料組成物。
【請求項24】
請求項22に記載の水性塗料組成物において、前記フィルム形成ポリマーは、アクリル、ビニル―アクリルおよびスチレン―アクリル、スチレン―ブタジエンコポリマー、酢酸ビニルエチレン、ブタジエン―アクリロニトリルコポリマー、エポキシド、ウレタン、ポリアミド、バーサチック酸ビニルエステル(VeoVa)、およびポリエステルより成る群から選択される、水性塗料組成物。
【請求項25】
請求項22に記載の水性塗料組成物において、前記塗料組成物はさらに、フタロシアニン、酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、インジゴ、水和酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、およびそれらの混合物より成る群から選択される少なくとも一つの顔料を含む、水性塗料組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の水性塗料組成物において、前記塗料組成物は、15%~85%の範囲の顔料体積濃度(PVC)を有する、水性塗料組成物。
【請求項27】
請求項22に記載の水性塗料組成物において、前記塗料組成物は、さらに、界面活性剤、分散剤、増粘剤、固形防止剤、消泡剤、可塑剤、増量剤、防腐剤、ワックス、シリコーンおよび炭化水素を含む疎水化剤、相溶化剤、接着促進剤、架橋剤、殺生物剤、防カビ剤、消泡剤、共溶媒、合体剤、ならびにこれらの任意の組み合わせより成る群から選択される少なくとも一つの添加剤を含む、水性塗料組成物。
【請求項28】
請求項22に記載の水性塗料組成物において、前記水性塗料組成物は建築用塗料組成物である、水性塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示されているプロセス、手順、方法、製品、結果、および/または概念(以下、「本開示」と総称する)は、一般にレオロジー改質剤組成物およびその使用に関する。本開示はさらに、レオロジー改質剤組成物に由来する建築用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に会合性レオロジー改質剤として知られている疎水性修飾エチレンオキシド系ポリウレタン(HEUR)などの疎水性修飾非イオン性合成増粘剤(NSAT)は、レベリング性(平滑性)、耐サグ性等の最適な用途特性をもたらすために、塗料の増粘または粘度上昇に広く使用されている。これらのレオロジー改質剤は、二種類以上の疎水化剤を含む。疎水化剤の機能は、結合したラテックス粒子の表面と会合することであり、その結果、個々のラテックス粒子を結び合わせる網目構造が形成され、したがって、粘度が上昇する。また、塗料産業で使用されるのは、別の種類の非会合性レオロジー改質剤である。非会合性レオロジー改質剤の例としては水溶性ポリマー、例えば、セルロース系(HEC)、デンプン等がある。非会合性レオロジー改質剤は、水溶液中で高度に絡み合ったポリマー分子によってもたらされる増粘メカニズムによって塗料の粘度を高め、塗料の移動性を制限する。非会合性増粘剤としてポリアクリルアミドおよびセルロースエーテル、例えばヒドロキシエチルセルロースを個別に使用することは関連技術分野で知られているが、それにも関わらず、例えば、ネバネバまたドロッとしたレオロジー、貧弱なレベリング(平滑性)および希釈耐性など、若干の欠点を有することが知られている。
【0003】
特許文献1(米国特許第4,425,469号)は、疎水性末端基を含むアクリルアミドの水溶性ビニル付加ポリマーを、吸着剤として、および水性系における流動改質剤として使用することを教示している。アクリルアミドのポリマーは、疎水性連鎖移動剤を介して導入された末端疎水基を有するホモポリマーまたはコポリマーである。
【0004】
特許文献2(中国特許第1225934号)は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリアクリルアミドを含む高粘度の粉末建築用塗料を教示している。
【0005】
ハーキュリーズに譲渡された特許文献3(米国特許第9,834,695号)は、建築用塗料に使用されるレオロジー改質剤組成物を開示しており、このレオロジー改質剤組成物は、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、疎水性修飾ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテルのブレンド、アクリルアミドプロピルトリモニウムクロライドのようなカチオン性ポリマー、アクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド/アクリルアミドコポリマー、および分散剤を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,425,469号明細書
【特許文献2】中国特許第1225934号明細書
【特許文献3】米国特許第9,834,695号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、アクリルアミドポリマーおよびセルロースエーテルの個々の仕様に関連する欠点を克服し、改良された増粘効果、高耐サグ性、希釈耐性、および使用時のコストのような、いくつかの予期せぬ利点を含む費用対効果のあるレオロジー改質剤組成物をもたらすレオロジー改質剤組成物を提供することは、当該技術分野において長年必要とされてきた。
【0008】
一態様において、本開示は、600万ダルトンを超える重量平均分子量を有する0.05wt.%~70.0.wt.%のアクリルアミドポリマーと、および少なくとも一種類の30.0wt.%~99.95wt.%のセルロースエーテルのブレンドと、を含むレオロジー改質剤組成物を提供する。本開示の非限定的な一実施形態において、アクリルアミドポリマーは非イオン性ホモポリマーまたはアニオン性コポリマーまたはカチオン性コポリマーである。本開示の非限定的な一実施形態において、アクリルアミドポリマーはカチオン性ポリマーである。本開示の非限定的な一実施形態において、アクリルアミドポリマーの重量平均分子量は、約600万ダルトン~約1500万ダルトン、または約800万ダルトン~約1200万ダルトンの範囲で変化する。本開示の非限定的な一実施形態において、セルロースエーテルは、グリオキサールで処理をしたセルロースエーテルまたはグリオキサールで処理をしていないセルロースエーテルである。本開示の別の非限定的な実施形態において、セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースであり、これらの単独または組み合わせである。本開示の別の非限定的実施形態では、セルロースエーテルはグリオキサールで処理をしていないヒドロキシエチルセルロースである。本開示のさらに別の実施形態において、セルロースエーテルは、グリオキザールで処理をしたヒドロキシエチルセルロースである。本開示の非限定的な一実施形態において、レオロジー改質剤組成物は、乾燥粉末ブレンドである。
【0009】
別の態様において、本開示は、本開示のレオロジー改質剤組成物を調製する方法を提供し、該方法は、(i)600万ダルトンを超える重量平均分子量を有する0.05wt.%~70.0wt.%のアクリルアミドポリマー、および(ii)少なくとも一種類の30.0wt.%~99.95wt.%のセルロースエーテルをブレンドするステップを備える。
【0010】
さらに別の態様において、本開示は、水性ベースの塗料におけるこのようなレオロジー改質剤組成物の用途を提供し、該組成物は、(i)600万ダルトンを超える重量平均分子量を有する0.05wt.%~70.0wt.%のアクリルアミドポリマー、および(ii)少なくとも一種類の30.0wt.%~99.95wt.%のセルロースエーテルのブレンドを含む。
【0011】
さらに別の態様において、本開示は、(ia)本開示の0.01wt.%~10.0wt.%のレオロジー改質剤組成物、または(ib)600万ダルトンを超える重量平均分子量を有する0.01wt.%~10.0wt.%のアクリルアミドポリマー、および少なくとも一種類の0.01wt.%~10.0wt.%のセルロースエーテル、(ii)少なくとも一種類の5.0wt.%~85.0wt.%のフィルム系形成ポリマー、および(iii)塗料組成物の総重量に基づいて、5.0wt.%~85.0wt.%の水を含む水性塗料組成物を提供する。本開示の非限定的な一実施形態において、アクリルアミドポリマーおよびセルロースエーテルは両方とも、塗料組成物中にブレンドして存在する。本開示の非限定的な一実施形態において、水性塗料組成物はさらに少なくとも一つの顔料を含む。本開示の非限定的な一実施形態において、水性塗料組成物は、建築用塗料組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的な図面、実験、結果、および実験手順を用いて本発明概念の少なくとも一つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明概念は、以下の説明に記載される、または図面、実験および/または結果に例示される構成の詳細および構成の配置に適用範囲が限定されないことを理解されたい。本発明の概念は、他の実施形態、または様々な方法で実施もしくは実施することが可能である。本明細書で使用する文言は、可能な限り広い範囲と意味を与えることを意図しており、実施形態は例示的なものであって、網羅的なものではない。また、本明細書で採用されている言い回しや用語は説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【0013】
本明細書において別途定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の定めがない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される化学に関連して使用される命名法および化学技術は当該技術分野において公知かつ一般的に使用されるものである。反応および精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当技術分野で一般的に達成されているように、または本明細書に記載されているように実施される。
【0014】
本明細書で言及する全ての特許、公開特許出願、および非特許文献は、本開示が関係する当業者の技術レベルを示す。本出願のいずれかの部分で言及されているすべての特許、公開特許出願、および非特許刊行物は、個々の特許または刊行物が、参照により具体的かつ個別に組み込まれると示されている場合と同程度に、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0015】
本明細書において開示され、特許請求される組成物および/または方法の全ては、本開示に照らして過度の実験を行うことなく製造および実行することができる。本発明の組成物および方法が好ましい実施形態の観点から説明されてきたが、本発明の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および/または方法、ならびに方法のステップまたは一連のステップに対して、変形が適用されうることは当業者には明らかであろう。当業者に対して明らかなこのような類似の代替物および改変はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される発明概念の趣旨、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【0016】
本開示に従って利用される場合、以下の用語は、別に示さない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0017】
特許請求の範囲および/または明細書において用語「備える/含む(comprising)」と組み合わせて使用される場合、単語「a」または「an」の使用は「一つ(one)」を意味しうるが、「一つ以上(one or more)」、「少なくとも一つ(at least one)」および「一つ以上(one or more than one)」の意味とも一致する。特許請求の範囲における用語「または(or)」の使用は、「および/または(and/or)」を意味するために使用されるが、代替物をのみを参照する、または代替物が相互に排他的であることを明示的に示していない限り、本開示では代替物および「および/または」のみを指すという定義を支持している。本出願を通して用語「約(about)」は、値は、装置固有の誤差のばらつき、値を決定するために採用される装置、および/または調査対象間に存在するばらつきを含むことを示す。用語「少なくとも一つ」の使用は、1はもちろん、1以上の任意の数を含む、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むがこれらに限定されないと理解されるであろう。用語「少なくとも一つ」は、それが付加される単語によって、100または1000またはそれ以上まで拡張されうるし、さらに、100/1000という数値は限定的なものではなく、それ以上の限界でも十分な結果を生む可能性がある。さらに、「X、Y、およびZの少なくとも一つ」という用語の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX、Y、Zの任意の組み合わせを含むと理解される。
【0018】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「comprising(~を備える/含む)」(および「comprise」、「comprises」などのcomprisingの任意の変化形)、「having(~を有する)」(および「have」、「has」などのhavingの任意の変化形)、「including(~を含む/が挙げられる)」(および「includes」、「include」などのincludingの任意の変化形)または「containing(~を含有する)」(および「contains」、「contain」などのcontainingの任意の変化形)という単語は包括的または制限がなく、かつ、追加の再現されていない要素または方法の工程を除外するものではない。
【0019】
本明細書で使用される用語「またはその組み合わせ(or combinations thereof)」は、その用語の前に列挙された項目の全ての順列および組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCの少なくとも一つを含むことを意図し、もし特定の文脈で順序が重要である場合は、BA、CA、CB、CBA,BCA、ACB,BACまたはCABも含まれる。この例を続けると、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA,CABABBなど、一つ以上の項目または用語の繰り返しを含む組み合わせが明示的に含まれる。熟練した当業者であれば、文脈から明らかな場合を除き、典型的には、任意の組み合わせにおいて項目または用語の数に制限がないことを理解するだろう。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「アクリルアミドポリマー」は、アクリルアミド系を繰り返し単位として重合して形成されるポリマーを意味し、アクリルアミド系の繰り返し単位、アクリルアミド、またはα-炭素原子上もしくは窒素原子上で置換されたアクリルアミドであっても良い。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「水性塗料(aqueous coatings)」は、水が揮発相の50%以上、好ましくは少なくとも80%を構成することで、有機溶媒が存在しても、液体塗料組成物中に存在する揮発性溶媒の大部分が水であるため、これらの塗料は依然として水性とみなされることを条件として、少量の共溶媒および他の揮発性有機材料の含有を許容するという、当該技術分野で認識されている意味を有する。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「建築用塗料(architectural coatings)」は、樹脂バインダーが、主に水である一般的に連続相と呼ばれる水相中に可溶化、分散または乳化(エマルション化)されていることを特徴とする水性塗料を指す。適切な水性バインダーとしては、デンプン、変性デンプン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン/アクリル酸コポリマー、アクリル酸ポリマー、ポリアクリレート、ポリアクリルアミドコポリマー、アクリルニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー/ポリアクリロニトリルなどの材料が挙げられる。水不溶性バインダーの好適かつ非限定的な例としては、ポリアクリレート、メタクリレート、ビニル―アクリル、スチレン―アクリルなどが挙げられる。
【0023】
本開示の一態様は、レオロジー改質剤組成物を提供する。本開示のレオロジー改質剤組成物は、600万ダルトンを超える重量平均分子量を有するアクリルアミドポリマー、および少なくとも一種類のセルロースエーテルのブレンドを含む。本開示の非限定的な一実施形態において、ポリアクリルアミドポリマーは、約0.05wt.%~約70.0wt.%の量で存在し得る。セルロースエーテルは、レオロジー改質剤組成物の総重量に基づいて、約30.0wt.%~約99.95wt.%の量で存在し得る。
【0024】
本開示によるアクリルアミドポリマーは、非イオン性ホモポリマー、アニオン性コポリマーまたはカチオン性コポリマーであり得る。本開示の非限定的な一実施形態において、アクリルアミドポリマーはホモポリマーである。本開示の別の非限定的な一実施形態において、アクリルアミドポリマーは、アニオン性コポリマーである。本開示のさらに別の非限定的な一実施形態において、アクリルアミドポリマーは、カチオン性ポリマーである。本開示によるアニオン性コポリマーは、S、N、O、およびPより成る群から選択される一つ以上のヘテロ原子を有する、一つ以上の酸性官能基または無水物官能基、またはそれらの任意の組み合わせを有する少なくとも一つのモノマー単位を含む。このようなモノマーの好適な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸または無水物、イタコン酸または無水物、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、カチオン性ポリマーの好適な例としては、3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3-メチルアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本開示によるアクリルアミドポリマーは、約600万ダルトン~約1500万ダルトンの範囲の平均分子量を有し得る。本開示の非限定的な一実施形態において、アクリルアミドポリマーの分子量は、800万ダルトン~1200万ダルトンの範囲で変化する。
【0026】
本開示の目的に有用なアクリルアミドポリマーは、関連技術で公知の従来の方法によって調製することができる。あるいは、市販のポリマーを調達することもできる。このような市販のポリマーの好適な例としては、FA 920 VHM、FA 920 VHR、FA 920 SH、FA 920 SHR、FA 920 SD、FA 920 SHD、FA 920、FA 920 HD、AN 905 SH、AN 905 SHU、AN 910 SH、AN 910 SHU、AN 913 SH、AN 913 SHU、AN 923 SH、AN 923 SHU、AN 926 SHなどのFLOPAM(登録商標)(SNFから入手可能)、および、2500/2500TR、2510、2515/2515TR、2520、2525、2530/2530TR、2540/2540TR、2640、644BC、650BCなどのPRAESTOL(Solenis社から入手可能)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0027】
本開示のレオロジー改質剤組成物に使用されるセルロースエーテルは、ヒドロキシアルキルセルロースエーテルであることができる。さらに、本開示の目的に有用なセルロースエーテルは、グリオキサールで処理をしたセルロースエーテルまたはグリオキサール処理をしていないセルロースエーテルであり得る。このようなセルロースエーテルの好適な例としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(CMHEC)、ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(HPHEC)、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、カルボキシメチルメチルセルロース(CMMC)、疎水性修飾カルボキシメチルセルロース(HMCMC)、疎水性修飾ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、疎水性修飾ヒドロキシプロピルセルロース(HMHPC)、疎水性修飾エチルヒドロキシエチルセルロース(HMEHEC)、疎水性修飾カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(HMCMHEC)、疎水性修飾ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(HMHPHEC)、疎水性修飾メチルセルロース(HM MC)、疎水性修飾メチルヒドロキシプロピルセルロース(HMMHPC)、疎水性修飾メチルヒドロキシエチルセルロース(HMMHEC)、疎水性修飾カルボキシメチルメチルセルロース(HMCMMC)、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース(カチオン性HEC)、カチオン性疎水性修飾ヒドロキシエチルセルロース(カチオン性HMHEC)、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の非限定的な一実施形態において、セルロースエーテルはグリオキサールで処理をしたヒドロキシエチルセルロースであっても良い。本開示の別の非限定的な一実施形態において、セルロースエーテルはグリオキサールで処理をしていないヒドロキシエチルセルロースであっても良い。本開示の別の非限定的な一実施形態において、セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースのどちらか一つまたはそれらの組み合わせであっても良い。
【0028】
さらに、本開示の目的に有用なセルロースエーテルは、当技術分野で公知の方法によって、または、NATROSOL 250 HHBR、NATROSOL 250 H4BR、NATROSOL 250 MHBR(Ashland LLCから入手可能)などの任意の市販品を使用することで、調整することできる。
【0029】
本開示の非限定的な一実施形態において、アクリルアミドポリマーは、レオロジー改質剤組成物全重量に対して、約0.05wt.%~約50.0wt.%、または約0.05wt.%~約30.0wt.%の範囲の量で存在し得る。本開示の別の非限定的な実施形態において、アクリルアミドポリマーはカチオン性ポリマーであり、レオロジー改質剤組成物の総重量に対して約0.05wt.%~約50.0wt.%、または約0.05wt.%~約30.0wt.%の量で存在し得る。本開示の非限定的な一実施形態において、セルロースエーテルの量は、レオロジー改質剤組成物の総重量に対して約50.0wt.%~約99.95wt.%、または約70.0wt.%~約99.95wt.%の範囲で変化し得る。セルロースエーテルがヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースの組み合わせである本開示の実施形態では、それらの総量は、レオロジー改質剤組成物の総重量に対して約50.0wt.%~約99.95wt.%、または約70.0wt.%~約99.95wt.%の範囲で変化し得る。
【0030】
本開示のレオロジー改質剤組成物は、疎水性修飾エトキシル化ウレタンポリマー、疎水性修飾ポリアセタールポリエーテルポリマー、疎水性修飾アルカリ膨潤性エマルション、疎水性修飾アミノプラスト、アルカリ膨潤性エマルション、およびそれらの組み合わせより成る群から選択される少なくとも一つの会合性ポリマーをさらに含み得る。本開示の非限定的な一実施形態において、会合性ポリマーは疎水性修飾ポリアセタールポリエーテルポリマーである。
【0031】
レオロジー改質剤組成物は、界面活性剤、分散剤、増粘剤、固化防止剤、消泡剤、防腐剤、ワックス、シリコーンおよび炭化水素を含む疎水化剤、相溶化剤、接着促進剤、安定剤、架橋剤、ならびにそれらの任意の組み合わせより成る群から選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含み得る。
【0032】
分散剤の好適な例としては、ポリカルボン酸、カルボキシル化高分子電解質塩、トリポリリン酸塩およびピロリン酸カリウム、エトキシル化脂肪アルコール、アミノアルコール、アクリル共重合体、ナフタレンスルホン酸―ホルムアルデヒド付加物、スルホン化脂肪酸、大豆レシチン、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、大豆レシチン、ジオレイン酸PEG、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本開示のレオロジー改質剤組成物は、アクリルアミドポリマーとセルロースエーテルとの乾燥粉末ブレンドである。本開示によるアクリルアミドポリマーとセルロースエーテルとの乾燥粉末ブレンドは、アクリルアミドポリマーとセルロースエーテルとをブレンドすることによって調製することができる。本開示の別の態様は、(i)600万ダルトンを超える重量平均分子量を有するアクリルアミドポリマーを0.05wt.%~70.0wt.%、および(ii)少なくとも一種類のセルロースエーテルを30.0wt.%~99.95wt.%配合することを含む、本開示のレオロジー改質剤組成物を調製する方法を提供する。乾燥粉末ブレンドを調整するための関連技術として知られている任意の乾燥ブレンド技術または装置は、本開示のアクリルアミドポリマーおよびセルロースエーテルをブレンドするために公的に使用することができる。このような乾燥ブレンド技術または装置の好適な例としては、乳鉢および乳棒、ボールミル、またはアトライターミルでの乾燥ブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本開示の別の非限定的な実施形態において、セルロースエーテルは、レオロジー改質剤組成物の総重量に基づいて、約50.0wt.%~約99.95wt.%、または約70.0wt.%~約99.95wt.%の量で使用され得る。同様に、アクリルアミドポリマーは、本発明のレオロジー改質剤組成物の総重量に基づいて、約0.05wt.%~約50.0wt.%または約0.05wt.%~約30.0wt.%の量で使用することができる。
【0035】
さらに、本レオロジー改質剤組成物の調整中に、追加の添加剤を加えることもできる。このような添加剤としては、さらに、界面活性剤、分散剤、増粘剤、固化防止剤、消泡剤、防腐剤、ワックス、シリコーンおよび炭化水素を含む疎水化剤、相溶化剤、接着促進剤、安定剤、架橋剤、ならびにそれらの任意の組み合わせより成る群から選択される少なくとも一つの添加剤が挙げられる。
【0036】
本開示のレオロジー改質剤組成物は、水性塗料組成物に使用することができる。特に、本開示のレオロジー改質剤組成物は、装飾および保護塗料ならびに紙用塗工などのあらゆる種類の塗装に有用である。水性保護塗料組成物は、何年も前から一般にラテックス塗料または分散塗料として知られている。水性塗料組成物に使用されるレオロジー改質剤は、特定の加工条件および最終使用状況において、粘度を必要なレベルに増加させ、維持する。水性保護塗料組成物は、レオロジー改良剤の選択を通して、良好なレベリング性および優れた耐サグ性を提供する必要がある。本開示の別の態様は、水性ベースの塗料における本開示のレオロジー改質剤組成物の使用を提供し、この組成物は、(i)約0.05wt.%~約70.0wt.%のアクリルアミドポリマー、および(ii)少なくとも一種類の約30.0wt.%~約99.95wt.%のセルロースエーテルのブレンドを含む。
【0037】
本開示の別の態様は、本明細書中に記載される本開示のレオロジー改質剤組成物を含む水性塗料組成物を提供する。水性塗料組成物は、600万ダルトンを超える分子量を有するアクリルアミドポリマーと、少なくとも一種類のセルロースエーテルと、少なくとも一種類のフィルム形成ポリマーと、及び水と、を含むレオロジー改質剤組成物、を含む、またはより成る、または実質的により成る。
【0038】
本開示の水性塗料組成物に使用されるレオロジー改質剤組成物の量は、水性塗料組成物に所望の増粘性およびレオロジー特性を提供するのに有効な量であり、したがって、所望するレオロジー特性および採用される分散液の両方に依存する。さらに、レオロジー改質剤組成物は、本開示の水性塗料組成物において、600万ダルトンを超える分子量を有するアクリルアミドポリマーと少なくとも一種類のセルロースエーテルとの乾燥粉末ブレンドとして添加され得る。あるいは、600万ダルトンを超える分子量を有するアクリルアミドポリマーおよび少なくとも一種類のセルロースエーテルは、本開示の水性塗料組成物中に個別に添加され得る。
【0039】
レオロジー改質剤組成物が水性塗料組成物中に乾燥粉末ブレンドとして添加され得る本開示の実施形態において、レオロジー改質剤組成物の量は、水性塗料組成物の総重量に基づいて、約0.01wt.%~約10.0wt.%の範囲で変化し得る。本開示の別の非限定的な実施形態において、その量は、水性塗料組成物の総重量に対して、約0.05wt.%~約5.0wt.%の範囲で変化し得る。
【0040】
アクリルアミドポリマーおよびセルロースエーテルが個々に添加される本開示の実施形態において、それらの各々の量は、典型的には水性塗料組成物の総重量に対して約0.01wt.%~約10.0wt.%の範囲で変化する。アクリルアミドポリマーとセルロースエーテルは、水性塗料組成物中に個別に添加された場合、それらの相乗効果のある乾燥ブレンドとして存在する。この場合、それらの組み合わせた重量割合は、水性塗料組成物全重量に対して、約0.01wt.%~約10.0wt.%、または約0.05wt.%~約5.0wt.%の範囲で変化し得る。
【0041】
本開示の水性塗料組成物は、少なくとも一種類のフィルム形成ポリマーを含む水性ポリマー分散液である。本開示の水性塗料組成物において使用されるフィルム形成ポリマーは、関連技術で知られている多種多様なポリマーから選択され得る。例えば、これらのフィルム形成ポリマーは、エチレン、ビニルおよびアクリルモノマーなどの種々のエチレン性不飽和モノマーから得ることができる。このようなモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、α―メチルスチレン、塩化ビニル、アクリルニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸ウレイド、酢酸ビニル、分岐した第3級モノカルボン酸のビニルエステル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、およびエチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、1、3―ブタジエン、イソプロピレンおよびクロロピレンなどのC4―C8共役ジエンを含むことも可能である。フィルム形成ポリマーは、特に揮発性有機化合物(VOC)をほとんど含まない、または含まないラテックス塗料への応用のために、一つ以上の共重合生成物とすることもできる。好適なフィルム形成ポリマーの例としては、酢酸ビニル、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、スチレン、エチレン、塩化ビニル、バーサチック酸ビニルエステル(VeoVa)、プロピオン酸ビニル、ブタジエン、アクリロニトリル、マレイン酸塩、フマル酸塩のホモポリマーまたはコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の非限定的な一実施形態において、フィルム形成ポリマーは、アクリル、ビニル―アクリルおよびスチレン―アクリル、スチレン―ブタジエンコポリマー、酢酸ビニルエチレン、ブタジエン―アクリロニトリルコポリマー、エポキシド、ウレタン、ポリアミド、バーサチック酸ビニルエステル(VeoVa)、およびポリエステルより成る群から選択される。
【0042】
他の適切なフィルム形成ポリマーの例としては、アルキド、セルロース系(ニトロセルロースおよびセルロースエステル)、クマロンインデン、エポキシ、炭化水素、メラミン、天然樹脂、オレオレジン、フェノール、ポリアミド、ポリエステル、ロジン、シリコーン、テルペン、尿素、ウレタン、およびビニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本開示の水性塗料組成物中のフィルム形成ポリマーの量は、水性塗料組成物の総重量に基づいて、約5.0wt.%~約85.0wt.%の範囲で変化し得る。本開示の非限定的な一実施形態において、フィルム形成ポリマーの量は、水性塗料組成物の総重量に基づいて、約40.0wt.%~約70.0wt.%、または約50.0wt.%~約70.0wt.%の範囲で変化し得る。
【0044】
本開示の水性塗料組成物は、少なくとも一つの顔料をさらに含み得る。顔料は、フタロシアニン、酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、インジゴ、水和酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、およびそれらの混合物より成る群から選択することができる。多くの場合、水性塗料組成物中に使用される酸化チタングレードは、ケイ酸塩、アルミ酸塩、およびジルコン酸塩などの、様々な無機酸化物で表面改質されている。ケイ酸アルミニウム、霞石閃長岩、雲母、炭酸カルシウム、および/または珪藻土もまた採用できる。
【0045】
本開示の水性塗料組成物中に存在する顔料の種類および量は、乾燥フィルムの光沢、浸透性、耐スクラブ性、引張強度などの性能特性を規定する。従って、塗料は顔料体積濃度(PVC)によって特徴付けられる。PVCはパーセンテージであり、乾燥フィルム中に存在する全固形分に対する顔料の体積比を表す。PVCは次のように定義される:
【0046】
PVC%=顔料体積/(顔料体積+ラテックス体積)×100
【0047】
顔料粒子間の全ての空隙がフィルム形成ポリマーでちょうど埋まる点を、臨界顔料体積濃度(CPVC)と呼ぶ。
【0048】
本開示の水性塗料組成物は、約85重量%のPVC上限を有する。本開示の非限定的な一実施形態において、水性塗料組成物は、約75重量%のPVC上限を有する。本開示の別の非限定的な実施形態において、水性保護塗料は、約65重量%のPVC上限を有する。同様に、本開示の水性塗料組成物は、約10重量%のPVC下限を有する。本開示の別の非限定的な実施形態において、水性塗料組成物は、約20重量%のPVC下限を有する。より詳細には、ラテックス塗料が高光沢塗料である場合、PVCは約15重量%から約30重量%であり、塗料が半光沢塗料である場合、PVCは約20重量%から約35重量%であり、つやなし塗料である場合、PVCは約40重量%から約85重量%である。顔料は、乾燥粉末の形態またはスラリーの形態で水性塗料組成物に添加することができる。
【0049】
水性塗料組成物の残りは水である。水は、フィルム形成ポリマー分散液中および水性塗料組成物の他の成分中に存在することができる。あるいは、水を水性塗料組成物に別々に添加することもできる。
【0050】
本開示の水性塗料組成物は、少なくとも一つの添加剤をさらに含み得る。このような添加剤の例としては、界面活性剤、ポリリン酸塩、アミノアルコールおよびアクリルコポリマーなどの分散剤、増粘剤、固形防止剤、非シリコーンおよびシリコーン系などの消泡剤、可塑剤、増量剤、防腐剤、ワックス、シリコーンおよび炭化水素を含む疎水化剤、相溶化剤、接着促進剤、架橋剤、殺生物剤、防カビ剤、非シリコーンおよびシリコーン系の消泡剤、共溶媒、グリコールエーテル/エステルなどの合体剤、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの添加剤は、従来の水性塗料組成物の技術分野で公知の方法および量で使用することができる。
【0051】
本明細書に記載される水性塗料組成物は様々な用途に使用することができる。特に、本開示のレオロジー改質剤組成物は、例えば、壁、天井、ドア、トリムなどの装飾および保護塗料および、紙用塗工、乾式壁、石積み、木材、金属、プラスチック、および下塗り表面などのあらゆる種類の塗装において有用である。本開示の非限定的な一実施形態において、塗料組成物は、建築物の内部および/または外部の表面用の建築用塗料組成物である。
【0052】
本開示の別の態様は、本開示の水性塗料組成物を調整する方法をさらに提供し、該方法は、少なくとも一種類のフィルム形成ポリマー、本開示のレオロジー改質剤組成物、および攪拌下で水を混合またはブレンドするステップを備える。顔料は、有利には、水性建築用塗料を得るために添加することができる。本明細書に記載した添加剤はまた、フィルム形成剤、レオロジー改質剤、顔料、またはそれらの組み合わせに、任意の適切な順序で添加できる。
【0053】
水性塗料組成物は、保護塗料として多種多様な表面材料に塗布できる安定した流体である。このような材料の例としては、紙、木材、コンクリート、金属、ガラス、セラミック、プラスチック、石膏、およびアスファルト塗装、ルーフィングフェルト、発泡ポリウレタン断熱材などの屋根用基材、または以前に塗装、下塗り、下地処理、摩耗または風化した基材が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本開示のさらに別の態様は、本開示の水性塗料組成物を様々な表面に塗布する方法を提供する。水性塗料組成物は、当業者に公知の様々な従来の方法によって、一つ以上の表面に塗布することができる。このような塗布方法の例としては、エアロゾルスプレー、ブラシ、ローラー、エアレススプレー、エアアシストスプレー、静電スプレー、高容積低圧(HVLP)スプレーなどによる塗布が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本開示のレオロジー改質剤組成物は、増粘効率、耐サグ性などのような塗料配合物の特定のレオロジー特性に有益な影響を与える。本発明者らは驚くことに、アクリルアミドポリマーとセルロースエーテルとのブレンドを含む組成物が、純粋なアクリルアミドポリマーまたはセルロース系などの従来の非会合性増粘剤と比較して、同等または改善された塗布性能で、より優れた希釈耐性および改善された隠蔽性のような、改善された効率(使用コスト)および増粘効率などの、いくつかの独特かつ予期せぬ特性を示すことを見出した。これらのレオロジー改質剤組成物は、塗料配合物の全体的な増粘効率(ストーマ―粘度、ブルックフィールド粘度、およびICI粘度)を向上または改善し、酢酸ビニルエチレン(VAE)ラテックス塗料のような増粘困難な塗料配合物にも特に適している。加えて、本レオロジー改質剤組成物は耐サグ性の改善など、建築用塗料にかなり多くの構造を提供する。
【0056】
以下の実施例は、ここに開示されている、および/または特許請求されている発明概念を説明し、特に断りのない限り、割合またはパーセンテージは重量%である。各実施例は、現在開示されているおよび/または特許請求されている発明概念の説明のために提示されるものであり、ここに開示されているおよび/または特許請求されている発明概念を限定するものではない。実際、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、現在開示されているおよび/または特許請求されている発明概念に様々な修正および変形を加えることができることは、当業者には明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として図示または説明した特徴を、別の実施形態に使用して、さらに別の実施形態を得ることができる。従って、現在開示されているおよび/または特許請求されている発明概念は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に入るような修正および変形を包含することが意図されている。
【実施例】
【0057】
[試験方法]
特に断りのない限り、以下の試験方法が実施例で使用された。
【0058】
[増粘効率測定]
増粘効率は、実施例で得られたポリマー試料の活性剤を基準として0.15重量%を表2に示す建築用塗料製剤に添加することにより測定した。増粘効率は、増粘した建築用塗料組成物のストーマ―粘度(KU)、ブルックフィールド粘度、およびICI粘度によって測定した。
【0059】
ブルックフィールド粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用し、スピンドル#5、30RPMおよび25℃で測定された。単位はmPa.s.である。
【0060】
ストーマ―粘度は標準試験法ASTM D562に従って、ストーマ―粘度計を用いて測定された。単位はクレブ単位(KU)である。
【0061】
ICI粘度は標準試験法ASTMD4287に従ってICIコーンプレートを用いて測定された。単位はmPa.s.である。
【0062】
耐サグ性は、ASTM D4400に従って様々なクリアランスのマルチノッチドローダウンアプリケーター(Leneta社のアンチサグメーター)の使用により塗料をドローダウンすることによって測定された。耐サグ性は、ミル単位のサグ指数として報告される。
【0063】
[実施例1:HECおよびアクリルアミドポリマーのブレンド(FLOPAM AN 923SH)]
実施例1のレオロジー改質剤組成物の全サンプルは、中程度のアニオン性で1200万~1400万ダルトンMwのアニオン性アクリルアミドポリマーの一種である、乾燥顆粒状のヒドロキシエチルセルロース(HEC HBR 250PA、アシュランド社より入手可能)およびアクリルアミドポリマー(FLOPAM AN 923SH、SNF社より入手可能)を、表1に示す重量比でブレンドすることで準備した。典型的な実験では、ヒドロキシエチルセルロース(HEC HBR 250PA)は8オンスガラスジャーでアクリルアミドポリマーと(AN 923SH)と混合し、ハービル混合機を用いてそれらの均質な混合液が得られるまでブレンドした。
【0064】
[対照例1:対照レオロジー改質剤組成物(CE.1AおよびCE.1B)]
アクリルアミドポリマー(FLOPAM AN 923SH)100wt.%またはHECHBR250PA100wt.%を用いて、実施例1に記載したものと同じ方法で二つの異なる対照レオロジー改質剤組成物(CE.1AおよびCE.1B)を調整し、実施例1のレオロジー改質剤組成物と比較した。
【表1】
【0065】
実施例1のレオロジー改質剤組成物は、塗料配合物(表2Aおよび表2Bに示す)に0.15wt.%で添加された。配合した水性塗料組成物は、ブルックフィールド粘度、ストーマ―粘度反応およびICI粘度を測定する前に一晩均衡化させた。濡れた塗膜のたるみおよび垂れに抵抗する建築用塗料組成物の能力である耐サグ性も測定された。サグ指数の数が高いほど、塗布したての濡れた塗料が液垂れするのを防ぐ塗料組成物の能力が高くなる。
【表2A】
Proxel GXL: ロンザ社から市販されている殺生物剤。
DrewplusTM L-475:アシュランド社から市販されている消泡剤。
TamolTM 731A:ダウ・ケミカル・カンパニーから市販されている分散剤。
StrodexTM PK-90:アシュランド社から市販されている界面活性剤。
StrodexTM TH-4427:アシュランド社から市販されている界面活性剤。
Tronox(登録商標)CR-828:トロノックス・リミテッドから市販されているルチル型に酸化チタン顔料。
Optiwhite MX:ブルゲス・ピグメント社から市販されているか焼アルミナケイ酸塩顔料。
AMP-95:アンガス・ケミカル・カンパニーから市販されている中和剤。
【表2B】
*Acronal 296D:ダウ・ケミカルズから市販されているアクリル酸スチレンブチル乳剤。
**OptifilmTM Enhancer 400:イーストマン・ケミカル・カンパニーから市販されている合体剤。
【0066】
[実施例2:HECおよびアクリルアミドポリマーのブレンド(PRAESTOL A 2530)]
本実施例のレオロジー改質剤組成物は、表3に示す重量割合のアクリルアミドポリマー(PRAESTOL A 2530アニオン性―ポリマー、ソレニスから入手可能)およびヒドロキシエチルセルロース(HEC HBR 250PA)粉末を用いて、実施例1に記載したのと同様の方法で調製された。
【0067】
これらの組成物は塗料配合物(表2Aおよび表2Bに示す)に0.15wt.%で添加された。これらの組成物を使用した塗料配合物のストーマ―粘度、ブルックフィールド粘度、およびICI粘度、およびサグ指数のデータは、表3に示されている。
【表3】
【0068】
[実施例3:HECおよびアクリルアミドポリマーのブレンド(FLOPAM 920 VHM)]
本実施例のレオロジー改質剤組成物は、アクリルアミドポリマー(FLOPAM 920 VHM、SNFから入手可能)を用いている以外、上記の実施例2で記載したのと同じ方法で調製された。アクリルアミドポリマーおよびヒドロキシエチルセルロース粉末は、重量割合で表4に示された通り乾燥ブレンドされた。これらのレオロジー改質剤組成物は塗料配合物(表2Aおよび表2Bに示す)に0.15wt.%で添加された。ストーマ―粘度、ブルックフィールド粘度、およびICI粘度、およびサグ指数のデータは、表4に示されている。
【表4】
【0069】
[実施例4:アクリルアミドポリマーの塗料の増粘効率への影響]
本実施例では分子量(Mw)の異なるアクリルアミドポリマーが、アクリルアミドポリマーの塗料配合物の増粘効率への影響を評価するために使用された。表5に分子量(Mw)を含むアクリロニトリルコポリマー(SNFから入手可能なFLOPAMポリマー)を列挙する。これらのポリマーは、47PVCアクリル酸塩スチレンブチル塗料配合物中に、0.34wt.%(単重)で添加された(表2Aおよび表2B)。
【表5】
【0070】
表5から明らかなように、塗料配合物の増粘効率(KU、ブルックフィールドおよびICI粘度)も、アクリルアミドポリマーのMw、特に非イオン性のアクリルアミドポリマーが低下するにつれて低下する。
【国際調査報告】