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特表2024-507894光学系の結像特性を測定するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光学系の結像特性を測定するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G01M11/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551126
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2022054456
(87)【国際公開番号】W WO2022184513
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102021105027.8
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518193696
【氏名又は名称】トライオプティクス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Trioptics GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ポイカト
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ミルツァレク
(72)【発明者】
【氏名】フランク ピーター
(57)【要約】
この発明は、光学系(4)の結像特性を測定するための装置(2)であって、被検光学系(4)を予め設定された検査位置に配置するように構成された被検体ホルダ(6)と、剛性の高い保持装置(8)と、MTF測定装置(20)とを備え、MTF測定装置(20)が、各MTF測定装置(20)によって、光学系4の視野内のそれぞれ異なりかつ同様に固定的に予め設定可能な角度位置において変調伝達関数を測定することができるように、保持装置(8)の固定的に予め設定可能な位置に配置されている装置に関する。装置は、保持装置(8)が少なくとも第1ホルダ(10)および第2ホルダ(12)を備え、複数のMTF測定装置(20)が第1群および第2群のMTF測定装置(20)を備えるように開発され、第1ホルダ(10)は、第1群のMTF測定装置(20)が第1球面シェル上に配置されるように、第1群のMTF測定装置(20)を第1位置に保持するように構成され、第2ホルダ(12)は、第2群のMTF測定装置(20)が第2球状シェル上に配置されるように、第2群のMTF測定装置(20)を第2位置に保持するように構成され、第1球状シェルおよび第2球状シェルが異なる半径を有し、相互に同心である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検光学系(4)の結像特性を測定するための装置(2)であって、
前記被検光学系(4)を所定の検査位置に配置するように構成された被検体ホルダ(6)と、
剛性の高い保持装置(8)と、
複数のMTF測定装置(20)とを備え、
該MTF測定装置(20)は、前記保持装置(8)の固定的に予め設定可能な位置に配置され、
前記MTF測定装置(20)の各々を用いて、互いに異なり、同様に固定的に予め設定可能な前記被検光学系(4)の視野における角度位置において変調伝達関数を測定することができ、
前記保持装置(8)が、少なくとも第1ホルダ(10)および第2ホルダ(12)を備え、
前記複数のMTF測定装置(20)が、第1群および第2群のMTF測定装置(20)を備え、
前記第1ホルダ(10)は、前記第1群のMTF測定装置(20)が、第1球状シェル上に配置されるように、前記第1群のMTF測定装置(20)を第1位置において保持するように構成され、
前記第2ホルダ(12)は、前記第2群のMTF測定装置(20)が、第2球状シェル上に配置されるように、前記第2群のMTF測定装置(20)を第2位置において保持するように構成され、
前記第1および第2球状シェルが、異なる半径を有し、互いに同心に配置されている装置(2)。
【請求項2】
前記MTF測定装置(20)は、該MTF測定装置(20)の光軸が前記被検光学系(4)の絞りの平面内において交差するように前記保持装置(8)上に配置されている請求項1に記載の装置(2)。
【請求項3】
前記保持装置(8)が、第3ホルダ(40)を備え、
前記複数のMTF測定装置が、第1群、第2群および追加の第3群のMTF測定装置を備え、
前記第3ホルダ(40)は、前記第3群のMTF測定装置が、第3球状シェル上に配置されるように、前記第3群のMTF測定装置を第3位置に保持するように構成され、
前記第3球状シェルが、前記第1球状シェルおよび前記第2球状シェルの半径とは異なる第3半径を有しかつ前記第1球状シェルおよび前記第2球状シェルと同心となるように配置されている請求項1または請求項2に記載の装置(2)。
【請求項4】
前記第1群のMTF測定装置(20)が、それぞれ、前記第2群のMTF測定装置(20)よりも被検光学系(4)から離れて配置され、特に、前記第2群のMTF測定装置(20)が、それぞれ、前記第3群のMTF測定装置(20)よりも被検光学系(4)から離れて配置されるように、前記第1球状シェルの第1半径が、前記第2球状シェルの第2半径よりも大きく、特に、前記第2球状シェルの前記第2半径が、前記第3球状シェルの第3半径よりも大きい請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置(2)。
【請求項5】
全ての前記第1群のMTF測定装置(201)において、前記被検光学系(4)の光軸(263)と前記MTF測定装置(201)の光軸(261)との間の第1横方向角度(α1)が、前記被検光学系(4)の前記光軸(263)と任意の前記第2群のMTF測定装置(202)の光軸(262)との間の第2横方向角度(α2)よりも小さく、特に、全ての前記第2群のMTF測定装置(202)において、前記被検光学系(4)の前記光軸(262)と前記MTF測定装置の前記光軸との間の前記第2横方向角度が、前記被検光学系(4)の前記光軸(263)と任意の前記第3群のMTF測定装置の前記光軸との間の横方向角度よりも小さい請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置(2)。
【請求項6】
前記第1群の隣接配置された2つの前記MTF測定装置(20)間の横方向角度が、前記第2群の隣接配置された2つの前記MTF測定装置(20)間の横方向角度よりも小さく、特に、前記第2横方向角度が、前記第3群の隣接配置された2つの前記MTF測定装置(20)間の第3横方向角度よりも小さい請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の装置(2)。
【請求項7】
前記保持装置(8)の前記ホルダ(10,12)が、少なくとも部分的に、対応する球状シェルに沿って延びている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置(2)。
【請求項8】
前記第1ホルダ(10)が球状キャップとして構成され、前記第2ホルダ(12)および/または前記第3ホルダ(40)が、中央開口部(16)を有する球状キャップとして構成され、特に、前記第2ホルダ(12)および/または前記第3ホルダ(40)が環状であり、さらに特に、前記第2ホルダ(12)および/または前記第3ホルダ(40)が球状帯の形態に構成されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置(2)。
【請求項9】
前記第1ホルダ(10)が球状キャップとして構成され、前記第2ホルダ(12)および/または前記第3ホルダ(40)が、それぞれ少なくとも1つのブラケット(30)として構成され、該ブラケット(30)が、それぞれ前記第1ホルダ(10)に近い第1端部(34)において前記第1ホルダ(10)に固定され、かつ、前記第1または第2球状シェルの大円に沿って遠位の自由端(36)の方向に延び、前記大円が、被検光学系(4)の光軸に沿って交差する平面内に延びている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の装置(2)。
【請求項10】
前記保持装置(8)の前記ホルダ(10)が、関連する前記球状シェル上の前記MTF測定装置(20)の変位が可能であるように構成されている請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置(2)。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置(2)を用いて光学系(4)の結像特性を測定する方法であって、
前記被検光学系(4)を前記被検体ホルダ(6)に配置するステップと、
全ての前記MTF測定装置(20)を用いて同時にMTF測定を行うステップとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の結像特性を測定するための装置に関し、この装置は、被検光学系を所定の検査位置に位置決めするように構成された被検体ホルダと、剛性の高い保持装置と、保持装置の固定的に予め設定可能な位置に、光学系の視野内の互いに異なる、同様に固定的に予め設定可能な角度位置において、各々を用いて変調伝達関数を測定することができるように配置される複数のMTF測定装置とを備える。さらに、本発明は、そのような装置を用いて光学系の結像特性を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学系の結像特性の測定は、品質管理および/または結像光学系の特性評価のためにしばしば実施される。この目的のために広く使用されている測定方法は、変調伝達関数(MTF)の測定である。MTF測定は多種多様な光学系において実施されている。MTF測定は、レンズの大量生産において、また、高品質の特殊光学部品の特性評価において、数多く実施されている。
【0003】
公知のMTF測定装置は、ImageMaster(登録商標)PROという商品名でTrioptics社によって提供されている。ImageMaster(登録商標)PRO装置においては、複数の望遠鏡状のカメラが使用され、各カメラは被検体の光軸に対して、かつ、被検体の瞳に対して「視線」上に、固定された特定の角度位置に取り付けられている。これはドーム形状またはキャップ形状のカメラホルダを使用することによって達成され、カメラはこのドームの内側に配置される。
【0004】
カメラは、MTF測定装置として機能し、それらの光軸に沿ってドームの曲率中心に向けられている。同時に、全ての望遠鏡状のカメラは、検査位置に被検体として置かれた単一の光学系の瞳に向けられる。このような測定装置を用いることにより、被検光学系の視野内の異なる角度位置によって表される異なる視野位置において、複数のMTF測定を同時に行うことができる。この目的のために、例えば、被検光学系の像面内において照明された回折格子が、MTF測定装置の各望遠鏡状の光学系を介して、そのカメラセンサ上に結像される。
【0005】
被検光学系の結像品質をより高精度に測定するために、高い測定点密度を達成することが望ましい。測定点密度は、使用するMTF測定装置の数に直接相関する。検査される結像光学系の角度範囲に配置されるMTF測定装置の数が多ければ多いほど、この角度範囲における測定点密度は高くなる。しかしながら、各MTF測定装置、すなわちその結像光学系を含む個々のカメラは、有限の空間的範囲を有する。
【0006】
このため、既存のシステムの測定点密度を単純に増大させることはできない。MTF測定装置が互いに接触するような、機械的に最も近接し、したがって可能な限り高密度に配置されたMTF測定装置の配置に達すると、可能な測定点数の限界にも達してしまう。
【0007】
測定点の数を増やす1つの方法は、測定装置全体の寸法を大きくすることであり、それにより、より大きな半径を持つドーム上に、より多くのMTF測定装置を配置することができる。しかし、この方法では、測定装置はすぐに手に負えないほど大きくなる。
【0008】
CN104865047Aは、MTF測定に使用される複数のカメラが旋回可能なドームに取り付けられたMTF測定装置を示している。これらのカメラは無限遠測定を行うように設定されている。無限遠測定が行われた後、ドームが旋回させられ、ドームに取り付けられたMTF測定装置が、被検光学系から離れて移動経路を解放する。この移動経路上において、平板上に配置され他の複数のイメージセンサが被検光学系の視野範囲に持ち込まれる。一平面上に配置されたこれらのカメラは、有限遠測定を行うために設置される。したがって、カメラを含む完全なドーム状構造物は旋回可能に設計され、有限遠測定完了後に、他のイメージセンサを用いて、有限距離における測定を行うことができる。
【0009】
したがって、無限遠測定の実行と有限遠測定の実行との間には、測定装置を2つの形態間において移動させる必要がある。これは、機械的に移動可能な構造でのみ可能であり、全体として剛性の高い保持装置とはならない。可動部品を含む保持装置は、必然的に、測定精度および速度に影響する可動部品に関連する設計上の欠点を有する。これらは、とりわけ、構造がより複雑になり、公差および精度は、低下し、または、かなりの追加の労力によってのみ達成可能である。さらに、公知の測定においては、無限遠測定または有限距離の測定のいずれかしか実施できず、利用可能な全てのカメラによる同時測定は構造上不可能である。
【0010】
他の測定装置がCN208751828Uにより公知である。これは、ドーム上に配置された複数のMTF測定装置を備えている。被検光学系の中央の結像領域において高密度の測定値の記録を可能にするために、この装置は、被検光学系の中央領域において測定を行うことができる有限距離に配置されたイメージセンサを備える。有限距離に配置されたこれらの測定装置は、被検光学系が直接結像するセンサであり、より詳細には開示されていない技術を用いて結像品質の判定を行う。付加光学系を有するカメラはMTF測定装置となり得るが、これは、被検光学系によって結像された被検体の直接的な像を得るセンサにより、制限を伴ってのみ技術的に可能である。有限結像の場合に、鮮明な像を得るためには、センサと被検体との間の選択された距離を被検光学系に一致させなければならず、被検構造全体を獲得し得るセンササイズが選択されなければならない。被検体と望遠鏡との間の距離が無関係な無限遠の像に基づいて行われる測定とは対照的に、この条件は開示された解決策の適用範囲を著しく制限する。
【0011】
DE 10 2015 006 015 A1により、光学系の結像特性を測定する装置は公知であり、この装置は、光学系の焦点面に光パターンを生成する。この装置は、互いに離れたN個のカメラの配置を備え、各カメラは、レンズと、レンズの焦点面に配置された光センサとを有する。カメラは、各カメラがその光センサによって、光パターンの正確に1部分の画像から、光学系の協働により得られる画像を獲得するように、光パターン生成装置とは反対側の側面に配置されている。少なくとも1つの光線偏向素子が、光学系と少なくとも1つのカメラとの間に、光学系が位置合わせされた装置の基準軸から少なくとも1つのカメラに入射する光を偏向するように配置される。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、光学系の結像特性を測定するための装置および方法を特定することであり、この装置および方法は、少ない構造上の労力で実現することができ、コンパクトな寸法を有し、被検光学系の中央の結像領域において高い測定点密度でのMTF測定データの取得を可能にする。
【0013】
この目的は、光学系の結像特性を測定する装置によって達成され、装置は、被検光学系を所定の検査位置に位置決めするように構成された被検体ホルダと、剛性の高い保持装置と、それぞれ異なる、同様に固定的に予め設定可能な、光学系の視野内の各角度位置において、各MTF測定装置を用いて変調伝達関数が測定され得るように、保持装置の固定的に予め設定可能な位置に配置された複数のMTF測定装置とを備え、保持装置が、少なくとも第1ホルダおよび第2ホルダを備え、複数のMTF測定装置が、第1群および第2群のMTF測定装置を備え、第1ホルダが、第1群のMTF測定装置を第1位置に保持するように構成され、それによって、第1群のMTF測定装置が第1球状シェル上に配置され、第2ホルダが、第2群のMTF測定装置を第2位置に保持するように構成され、それによって、第2群のMTF測定装置が第2球状シェル上に配置され、第1球状シェルおよび第2球状シェルが、異なる半径を有し、かつ、互いに同心に配置されている点において先進的である。
【0014】
本明細書において、剛性の高い保持装置とは、可動部品を有しない保持装置を意味する。複数のMTF測定装置は、保持装置の固定的に予め設定可能な位置に配置されており、これは、測定値の取得中に固定位置にあり、特に、移動されないことを意味する。MTF測定装置は、例えば、調整のために、保持装置上において位置が変更、特に設定できるような方法で、保持装置に取り付けられ得る。このような変更可能性は、例えば、長孔を通して案内されるねじによってMTF測定装置が受け入れられることにより実現することができる。
【0015】
結像特性が測定される光学系は、特に屈折光学系である。本明細書において、屈折光学系とは、少なくとも1つの屈折光学素子を含む光学系、特に、光学系の全ての光学素子が屈折光学素子である光学系を意味するものと理解される。
【0016】
MTF測定装置は、特に、被検体としての光学系の変調伝達関数(MTF)を決定するように構成された測定カメラである。この目的のために、MTF測定装置は、適切な光学系を備えている。特に、MTF測定装置は、MTF測定装置の視野が重ならないように保持装置に取り付けられる。言い換えれば、MTF測定装置は、測定を行う際に互いに干渉しないように配置される。
【0017】
MTF測定装置の角度位置は、被検光学系の視野におけるMTF測定装置の位置を設定する。
有利なことに、本発明の態様に係る装置は、MTF測定に基づいて、被検光学系の光学的結像品質の同時測定を可能にし、高い測定点密度を得ることができる。MTF測定は、有利には同時に実施することができ、これにより、高速に被検光学系の特性評価を行うことができる。装置の機械構造は、好ましくは可動部品を用いず、実行される測定の精度および速度において利点がある。また、この装置は、この装置を用いて、最大視野角(FOV)が大きい、すなわち、視野角が大きい光学系、および、特に、視野角が小さい光学系の両方を特性評価することができるので、非常に柔軟である。この目的のために、装置を変更したり、調整したり、移動させたりする必要がない。
【0018】
MTF測定装置は、例えば、被検光学系によって結像された被検体、例えば、十字形状の絞り等を記録できるように、適切な有限遠光学系または無限遠光学系を備えたカメラである。また、MTF測定装置に、焦点合わせ可能なコリメータを装備することも可能である。
【0019】
特に、本装置は、本装置に含まれる全てのMTF測定装置が同様に構成されるように、すなわち、同じ種類の測定用に構成されるように構成されている。特に、全てのMTF測定装置が、無限遠測定を行うことを規定されている。
【0020】
可動部品を持たない本装置の機械的構造は極めて温度安定性が高く、長期にわたる光学系の大量検査に特に有利である。保持装置は、例えば、第1ホルダおよび第2ホルダを連結し、または、これらのホルダに適切な保持構造を提供する、複数の機械的に剛性の高い支柱によって実現することができる。
【0021】
従来、知られているようなMTF測定装置の場合には、MTF測定装置の機械的な伸長によって獲得され得る測定点の数は、被検光学系からより大きな距離にMTF測定装置を配置することによって増加させることができる。そうすれば、同じ大きさの被検光学系の視野角内に、より多くのMTF測定装置を配置することが可能になる。しかし、この方法では、光学系の結像特性を測定するための装置がかなり大きくなってしまう。本発明に係る多段構造により、この欠点が克服される。視野角ごとに多数の測定点を記録することができ、同時に測定装置のコンパクトな寸法をほぼ維持することができる解決策が提供される。多段配置においては、視野が重ならないように、MTF測定装置を第1ホルダおよび第2ホルダに配置することができる。このようにして、個々のMTF測定装置を用いて、対応するMTF測定値を、被検光学系の視野内に検出することができる。
【0022】
特に、本装置は、MTF測定装置の光軸が被検光学系の絞りまたは瞳の平面内で交差するように、MTF測定装置がホルダ上に配置される点において先進的である。さらに、特に、球状シェルの中心も、被検光学系の絞りまたは瞳の平面内に配置される。
【0023】
他の有利な実施形態によれば、装置はさらに、保持装置が第3ホルダを備え、複数のMTF測定装置が、第1群、第2群および第3群のMTF測定装置を備え、第3ホルダは、第3群のMTF測定装置が第3球状シェル上に配置されるように、第3群のMTF測定装置を、第3位置に保持するように構成され、第3球状シェルが、第1半径および第2半径とは異なる第3半径を有し、かつ、第1および第2球状シェルと同心に配置されている点において先進的である。
【0024】
第3レベルを導入することにより、被検光学系の視野角当たりの測定点密度をさらに増大させることができる。被検光学系からのMTF測定装置の距離がさらに大きくなることにより、視野角当たりにより多くのMTF測定装置を提供することができる。
【0025】
他の実施形態において、上述の3つのレベルに加えて、他のレベルを提供することも想定され、そのような実施形態に係る装置は3より多いレベルを有する。最初の3つのレベルについて上述したように、記載された概念から逸脱する特別な構造上の手段を講じることなく、第4、第5、第6レベルと、体系的に問題なく継続することができる。
【0026】
他のレベルは、保持装置の他のホルダによって提供され、他の球状シェル上に配置された対応するレベルに保持されたMTF測定装置を保持するように設計されている。全てのホルダの球状シェルは、互いに同心に配置され、それによって、球状シェルの中心は全て一点で一致する。
【0027】
他の有利な実施形態によれば、装置は、第1球状シェルの第1半径が第2球状シェルの第2半径よりも大きく、特に、第2球状シェルの第2半径が第3球状シェルの第3半径よりも大きいという点において先進的であり、それによって、第1群のMTF測定装置が第2群のMTF測定装置よりも被検光学系から大きく離れてそれぞれ配置され、特に、第2群のMTF測定装置が第3群のMTF測定装置よりも被検光学系から大きく離れてそれぞれ配置される。
【0028】
第1群のMTF測定装置は、被検光学系の中央結像領域において高い測定点密度を獲得する役割を果たす。第2群および第3群のMTF測定装置は、被検光学系の視野の内、さらに外側に位置する領域、すなわち、視野の周辺領域を捕捉する役割を果たす。被検光学系の視野角/視野範囲の大きさに応じて、被検光学系を特性評価するために、各群のMTF測定装置のみを使用することもできる。例えば、装置が200°の視野角を有する光学系を測定するように構成される(第1群および第2群のMTF測定装置を使用する)場合には、例えば、50°までの視野角を有する光学系は、第1群のMTF測定装置のみを使用して測定することができる。
【0029】
本装置は、さらに、第1群の全てのMTF測定装置について、被検光学系の光軸とMTF測定装置の光軸との間の第1横方向角度が、被検光学系の光軸と第2群のいずれかのMTF測定装置の光軸との間の第2横方向角度よりも小さく、特に、第2群の全てのMTF測定装置において、被検光学系の光軸とMTF測定装置の光軸との間の第2横方向角度が、被検光学系の光軸と第3群のいずれかのMTF測定装置の光軸との間の横方向角度よりも小さい点に特徴がある。
【0030】
第1群のMTF測定装置の中心配置は、それらの光軸と被検光学系の光軸との間の角度から容易に確認することができる。典型的には、第2群のMTF測定装置の軸と被検光学系の光軸とにより囲まれる角度間隔は、第1群の間隔以上である。
第1群は、典型的には、(被検光学系が理想的に配向されていると仮定して)光軸が被検光学系の光軸と一致する軸方向のMTF測定装置を含む。
【0031】
他の有利な実施形態によれば、装置は、さらに、第1群の隣接配置された2つのMTF測定装置間の横方向角度が、第2群の隣接配置された2つのMTF測定装置間の横方向角度よりも小さく、特に、第2横方向角度が、第3群の隣接配置された2つのMTF測定装置間の第3横方向角度よりも小さくなるように設計されている。
【0032】
隣接配置されたMTF測定装置間の前述の横方向角度は、以下のように決定される。MTF測定装置が第1群、第2群または第3群のいずれであるかに応じて、隣接するMTF測定装置が配置される大円が第1、第2または第3球状シェル上に配置される。角度はこの大円の平面内において決定される。定義によれば、対応する球状シェルの中心も大円の平面内に配置されている。横方向角度の定義は、通常、結像領域の視野角に使用されるものに相当し、この場合、被検光学系が参照される。
【0033】
有利なことに、このような測定装置を用いることにより、高い測定点密度で被検光学系の中央視野範囲におけるMTF測定値を得ることができる。
標準的な工業用カメラの場合には、第1横方向角度は、特に2.7°~3.1°の範囲、さらに、特に2.8°~3.0°の範囲、さらに、特に、少なくとも約2.9°である。第2横方向角度は、例えば、3.0°~9°の範囲、特に、3.1°~7°の範囲にあり、さらに、特に、少なくとも約3.3°である。第3横方向角度は、例えば、特に、9°~13°の範囲にあり、さらに、特に、10°~12°の範囲にあり、さらに、特に、少なくとも約11°である。
【0034】
他の有利な実施形態によれば、装置はさらに、保持装置のホルダが、少なくとも部分的に、対応する球状シェルに沿って延びるように開発されている。
本明細書において、「沿って延びる」という表現は、保持装置の対応するホルダがそれぞれの球状シェルから一定の距離だけ延びることを意味するものと理解されるべきである。すなわち、言い換えると、ホルダが、関連する球状シェルと必ずしも同じ半径を有する必要はない。
【0035】
他の有利な実施形態によれば、装置はさらに、第1ホルダが球状キャップとして構成され、第2ホルダおよび/または第3ホルダが中央開口部を有する球状キャップとして構成され、特に、第2ホルダおよび/または第3ホルダが環状であり、さらに、特に、第2ホルダおよび/または第3ホルダが球状帯の形態に構成されている。
【0036】
球状帯は、球状層または球状ディスクとも呼ばれ、2つの平行な平面によって切り取られた球状表面の一部である。切り取られた表面の曲面部分は、通常、対応する球面層または球面ディスクの球状帯と呼ばれる。第2ホルダまたは第3ホルダは、特に、その表面がこのような球状帯に沿って延びるように構成されている。これにより、隣のレベルのカメラは、下に配置された環状のホルダの中央開口部を通して覗き込むことができる。このように、MTF測定装置が互いに干渉したり、視野角を制限したりすることなく、MTF測定装置のための機械的に安定した支持を提供することができる。
【0037】
他の有利な実施形態によれば、装置はさらに、第1ホルダが球状キャップとして構成され、第2ホルダおよび/または第3ホルダがそれぞれ少なくとも1つのブラケットとして構成され、ブラケットがそれぞれ、第1ホルダに近い第1端部において第1ホルダに固定され、第1球状シェルまたは第2球状シェルの大円に沿って遠位自由端の方向に延び、大円が被検光学系の光軸に交差する平面内に延びている。
【0038】
ホルダのブラケット構造は、当該ホルダの特に軽量化およびさらなる材料節約を可能にする。さらに、第1ホルダと第2ホルダとが互いに直接固定される場合には、第1ホルダと第2ホルダとの間の締結要素を省略することができ、または、構造的に小さく、したがって効率的に構成された部品を使用することができる。例えば、第2ホルダを構成するブラケットは、例えば、有利には、その第1端を、球状キャップである第1ホルダに直接取り付けることができる。好ましい実施形態によれば、この球状キャップは、球状キャップの中心に配置された1つの軸方向のMTF測定装置のみを受ける。他のMTF測定装置はブラケットに受けられる。
【0039】
他の実施形態によれば、この装置は、保持装置のホルダが、関連する球状シェル上においてMTF測定装置が変位可能に構成されるように開発されている。したがって、第1群のMTF測定装置は第1球状シェル上に変位可能に配置され、第2群のMTF測定装置は第2球状シェル上に変位可能に配置され、第3群のMTF測定装置は第3球状シェル上に変位可能に配置される。これは、例えば、長孔を使用してMTF測定装置をホルダに取り付けることによって実現される。長孔は、好ましくは、球状シェルの大円に沿って延びている。
【0040】
他の有利な実施形態によれば、球状キャップとブラケットとの間の接続が、長孔を使用して実現され、それによって、ブラケットは、好ましくは大円に沿って延びるこれらの長孔に沿って移動することができる。これにより、与えられた測定課題に対して装置の視野角を柔軟に調整することができる。
大円はまた、好ましくは共通の軸に交差する平面に沿って延びている。この軸は、好ましくは、被検光学系の光軸と一致する。
【0041】
この課題は、前述の実施形態の1つ以上に係る装置を用いて光学系の結像特性を測定する方法によってさらに解決される。本発明に係る方法は、被検光学系を被検体ホルダに配置するステップと、全てのMTF測定装置を用いて同時にMTF測定を実施するステップとを含む。
【0042】
この方法は、有利なことに、MTF測定が全て同時に行われるため、被検光学系の特性評価を非常に高速に行うことができる。さらに、この方法は、大きな視野角を有する光学系および小さな視野角を有する光学系の両方を単一の同じ装置によって特性評価することができるので、非常に柔軟である。
【0043】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲および添付図面とともに、本発明に係る実施形態の説明から明らかになるであろう。本発明に係る実施形態は、個々の特徴またはいくつかの特徴の組み合わせを満たすことができる。
本発明の説明において、「特に」または「好ましくは」と記された特徴は、任意の特徴として理解される。
【0044】
以下、本発明の一般的な思想を限定することなく、図面を参照した実施形態の例によって本発明を説明するが、これにより、本文中でより詳細に説明されていない本発明の全ての詳細に関して、図面が明示的に参照される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】第1の実施形態に係る光学系の結像特性を測定するための装置の概略的かつ簡略化された斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る光学系の結像特性を測定するための装置の概略的かつ簡略化された斜視図である。
図3図1の装置を下方から見た図である。
図4図1の装置の側面図である。
図5図1の装置の平面図である。
図6】第2の実施形態に係る光学系の結像特性を測定するための装置の概略的かつ簡略化された斜視図である。
図7】第2の実施形態に係る光学系の結像特性を測定するための装置の概略的かつ簡略化された斜視図である。
図8図6の装置を下方から見た図である。
図9図6の装置の第1の側面図である。
図10図6の装置の他の側面図であり、MTF測定装置がいくつかだけ示されている。
図11】第2の実施形態に係る装置の平面図である。
図12】第3の実施形態に係る光学系の結像特性を測定するための装置の概略的かつ簡略化された斜視図である。
図13】第3の実施形態に係る光学系の結像特性を測定するための装置の概略的かつ簡略化された斜視図である。
図14図12の装置の平面図である。
図15図12の装置を下方から見た図である。
図16図12の装置の概略的かつ簡略化された詳細な斜視図であり、MTF測定装置がいくつかだけ示されている。
図17】第4の実施形態に係る光学系の結像特性を測定するための装置の概略的かつ簡略化された縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面においては、各場合において、同一または類似の要素および/または部品には同一の参照符号が付され、各場合における新たな説明は省略する。
図1は、光学系4の結像特性を測定するための装置2の概略的かつ簡略化された斜視図である。
【0047】
光学系4は、特に、屈折光学系4である。以下の説明においては、例としてのみ、このような屈折光学系4を参照する。屈折光学系4は、高度に模式化された形態で示されており、例えば、レンズ等の結像光学系である。装置2は、被検光学系4を所定の検査位置に位置決めするように配置された被検体ホルダ6を備える。装置2は、さらに、剛性の高い保持装置8を備え、この剛性の高い保持装置8は、図示の実施形態においては、第1ホルダ10と、第2ホルダ12と、明瞭化のために、一つにのみ参照符号が付されている、2つのホルダ10,12を連結する支柱14とを備える。
【0048】
例えば、第1ホルダ10は球状キャップ(ドームとも呼ばれる)として構成されている。第2ホルダは環状であり、これも球状キャップとして構成されているが、中央開口部16を有する。第2ホルダ12は球状帯として構成され、すなわち、その表面は2つの同心の球状帯に沿って延びている。第1ホルダ10も第1球状シェルに沿って延びているが、この第1球状シェルは第2ホルダ12が延びている第2球状シェルよりも大きな半径を有している。
【0049】
第1球状シェルと第2球状シェルは互いに同心に配置されている。これら2つの球状シェルの中心は、図1に十字で示された球の中心18に配置されている。この球の中心18は、好ましくは、被検光学系4の絞りの平面内に配置されている。
【0050】
複数のMTF測定装置20が保持装置8に取り付けられている。MTF測定装置20は、明瞭化のために1つだけ参照符号で示されているが、例えば、適切な光学部品を備えたカメラである。MTF測定装置20は、保持装置8上の固定的に予め設定可能な位置に配置されるように、保持装置8に取り付けられている。各MTF測定装置20は、光学系4の視野内の固定的に予め設定可能な角度位置における変調伝達関数(MTF)を測定することができる。
【0051】
保持装置8は剛性が高い、すなわち、可動部品を有しない。MTF測定装置20は固定位置に配置されている。しかし、例えば、装置2の初期調整の状況においては、柔軟に位置決めされてもよい。この目的のために、第1ホルダは長孔22を有し、この長孔に沿ってMTF測定装置20を変位させることができる。
【0052】
MTF測定装置20は、第1ホルダ10の上側に見えるつまみネジによって固定される。長孔22は、好ましくは、第1ホルダ10が延びる第1球状シェルの大円に沿って延びている。
【0053】
装置2は、複数のMTF測定装置20を受け入れるように構成されている。この複数のMTF測定装置20は、第1群および第2群のMTF測定装置20に分けられる。第1群のMTF測定装置20は、第1ホルダ10に取り付けられている。この第1群は図1に示されている。図2には示されていないが、第2群のMTF測定装置20は第2ホルダ12に取り付けられている。これらのMTF測定装置20についても、第1群のMTF測定装置20について前述したのと同様である。これらは固定的に予め設定可能な位置に配置されている。しかし、その位置を調整することは可能である。
【0054】
この目的のために、第2ホルダ12にも長孔22が設けられており、そのうちの1つだけに、明瞭化のために参照符号が与えられている。第2ホルダ12の長孔22は、好ましくは、第2ホルダ12が延びる第2球状シェルの大円に沿って延びている。第1ホルダ10によって保持されるMTF測定装置20について図1に示したものと同様に、第2群のMTF測定装置20は、図1において、第2ホルダ12の下方に配置されている。第1群および第2群のMTF測定装置20は、MTF測定装置20の光軸が球の中心18において交差するように、第1ホルダ10および第2ホルダ12上にそれぞれ配置される。言い換えると、MTF測定装置20は、それらの光軸が被検光学系4の絞りの平面内において交差するように保持装置8に取り付けられる。
【0055】
第1群のMTF測定装置20は、第1球状シェル上に配置されており、これは特に、MTF測定装置20として使用されるカメラのセンサがこの第1球状シェル内に配置されていることを意味する。第1ホルダ10はこの第1球状シェルに沿って延びているが、これはホルダ10がこの球状シェル内で同じ半径で延びていることを意味するものではない。第1ホルダ10は、この第1球状シェルから一定の距離で延びており、それによって、第1群のMTF測定装置20の所望の配置を提供することができる。
【0056】
この構造により、MTF測定装置20を受け入れるための単純なカメラホルダ24を使用することができ、このカメラホルダ24は、第1ホルダ10のドーム状構造によって予め設定される方向性を保持し、MTF測定装置20を半径方向内側に、すなわち、光学系4により近い位置に位置決めするだけである。同じことが、図1には示されていない第2群のMTF測定装置20の受け入れにも当てはまる。
【0057】
第1群のMTF測定装置20は、光学系4の視野の中央領域においてMTF測定を行うように構成されている。これらのMTF測定装置20は、被検光学系4からの距離が大きく配置されているため、第2群と比較して、光学系4の視野角当たりにより多くのMTF測定装置20を配置することができる。これは、光学系4の視野の中央領域において、より高い測定点密度のMTF測定値を取得できることを意味する。同時に、装置2は、MTF測定において大きな視野角をカバーすることが可能であり、第2群のMTF測定装置20によって、大きな視野角にわたるMTF測定を実施することができる。
【0058】
これにより、大きな像または視野角を有する光学系4の検査が可能になり、光学系4の全視野を検査することができる。同時に、装置2は、望遠レンズのような小さな視野角を有する光学系4の検査にも使用することができる。有利なことに、例えば、大きな視野角を有する広角レンズおよび小さな視野角を有する望遠レンズの検査の間に、装置2を変更する必要はない。また、例えば、望遠レンズの検査に第1群のMTF測定装置20のみを使用することも可能である。
【0059】
有利なことに、MTF測定装置20は、この目的のために、それらの画像領域が重ならないように配置される。測定中に、第1群のMTF測定装置20は、第2ホルダ12の中央開口部16を通して覗き込む。同時に、(図1には示されていない)第2群のMTF測定装置20は、第1群のMTF測定装置20の視野を妨げないように配置される。
【0060】
図2は、図1から既に知られている装置2を、さらに概略的かつ簡略化した斜視図によって示している。測定される屈折光学系4および被検体ホルダ6は、明瞭化のために図2には示されておらず、被検体の絞りの平面にある球の中心18のみが示されている。図2は、装置2を下側から見た図である。MTF測定装置20の第1ホルダ10の対応するカメラホルダ24への取り付け方がはっきりとわかる。図示された第1群のMTF測定装置20は、第2ホルダ12の開口部16を通して被検光学系4を見ている。MTF測定装置20の光軸は球の中心18において交差している。
【0061】
図3は、装置2を下側から見た図である。球の中心18を見ている第1群のMTF測定装置20が見える。中央のMTF測定装置20は、軸上測定を行うために使用され、その周囲に集まった4つのMTF測定装置20は、軸外のMTF測定を行う。明瞭化のために、ここでも被検光学系4は図示していない。
【0062】
図4は、装置2を概略的に簡略化した側面図である。この図においても、明瞭化のために光学系4は示されていない。軸上測定を行うための中央のMTF測定装置20の光軸が、軸外測定を行うためのMTF測定装置20の光軸と同様に、一点鎖線によって示されている。軸上のMTF測定装置20の光軸は、被検光学系4(図示せず)の光軸と一致している。
【0063】
側面図においては、第1群のMTF測定装置20が配置される第1球状シェルの第1半径が、図4に示されていない第2群のMTF測定装置20が配置され得る第2半径よりも大きいことがはっきりと見える。これは、第1ホルダ10と第2ホルダ12の異なる曲率半径の比較から直接もたらされる。
【0064】
図5は、装置2を概略的に簡略化した平面図である。この平面図においては、測定装置2の横方向のコンパクトな寸法が明らかである。第1ホルダ10および第2ホルダ12はわずかに異なる直径を有し(図4も参照)、最大寸法は保持装置8によって決定される。
【0065】
さらに、図5においては、主軸に沿って方向づけられた第1ホルダ10および第2ホルダ12の長孔22が、互いに整列していることがわかる。これらは、図5において、水平方向および垂直方向にそれぞれ延びる長孔22である。測定点密度を高めるために、水平方向と垂直方向との間の45°の分割方向に沿って延びる、図示の実施例では使用されていない長孔22に、追加のMTF測定装置20を配置することができる。この点において、装置2は柔軟であり、それぞれの所望の測定課題に適応させることができる。
【0066】
図6は、さらに他の例による、屈折光学系4の結像特性を測定するための装置2の概略的かつ簡略化された斜視図である。再び、光学系4が非常に概略的な形態で示されている。光学系4は被検体ホルダ6上に配置され、この被検体ホルダ6により光学系4は所定の検査位置に位置決めされる。図6には、球の中心18も示されており、この球の中心18は、好ましくは、被検光学系4の絞り平面に配置されている。
【0067】
また、図示の装置2は、球状キャップまたはドームの形状をした第1ホルダ10を備え、このホルダ10は、環状であるが球状キャップまたはドーム形状をした第2ホルダ12およびそれらを連結する支柱14と共に、この装置2のMTF測定装置20のための保持装置8を形成する。また、第2ホルダ12は、第1群のMTF測定装置20が覗き込む中央開口部16を備える。図示の例においては、第2群のMTF測定装置20も示されており、これらは第2ホルダ12に受け入れられている。
【0068】
図7は、図6に示された装置2をさらに斜視図により、この場合は、さらにその下側から示している。第2群のMTF測定装置20は、その光軸が、第1群のMTF測定装置20の光軸と同様に、球の中心18において交差していることがはっきり見える。第2群のMTF測定装置20は、被検光学系4に対して大きな視野角にわたってMTF測定を実施することができる。第1群の多数のMTF測定装置20によって提供される、光学系4の中央結像領域における高い測定点密度も、図7にはっきりと見ることができる。また、対応するカメラホルダ24による第1群および第2群の両方のMTF測定装置20の受け入れは、図7にはっきりと見ることができる。既に上述したように、これらは、第1群のMTF測定装置20が第1球状シェル上に配置され、第2群のMTF測定装置20が第2半径を有する第2球状シェル上に配置されるように、MTF測定装置20を半径方向内側にシフトさせる。第1半径は、第2球状シェルの第2半径よりも明らかに大きい。
【0069】
MTF測定装置20は、保持装置8に、固定的に予め設定可能な位置に取り付けられている。しかし、調整のために、MTF測定装置20は、長孔22に沿って移動させることができる。同様に、MTF測定装置20のカメラホルダ24に沿う半径方向の間隔も、変更することができる。この目的のために、カメラホルダ24にも長孔22が設けられている。
【0070】
図8は、図6および図7に示された装置2をその下側から見た図である。明瞭化のために、被検光学系4は再び図示せず、球の中心18のみが示されている。第1群のMTF測定装置20は、第2ホルダ12の開口部16を通して覗き込んでいる。その明らかに高密度の配置により、被検光学系4の中央結像領域における高い測定点密度が保証される。
【0071】
図9は、第2の実施形態に係る装置2を概略的に簡略化した側面図である。第1群のMTF測定装置20が、(第2ホルダ12によって保持される)第2群のMTF測定装置20よりも大きな半径を有する第1球状シェル上に配置されており、第2群のMTF測定装置20が、より小さな半径を有する第2球状シェル上に配置されていることが明確に分かる。一例として、1つの第1群のMTF測定装置20については、その光軸26が一点鎖線によって描かれている。また、1つの第2群のMTF測定装置20についても、一例として、光軸26が一点鎖線によって示されている。全てのMTF測定装置の光軸26は、例えば、被検光学系4の絞りに位置する球の中心18を通る。
【0072】
図10は、第2の実施形態に係る装置2の概略的に簡略化した側面図であり、1つの軸上MTF測定装置203、第1群のMTF測定装置201のうちの1つ、および第2群のMTF測定装置202のうちの1つのみを示している。それぞれの光軸263,261,262は、球の中心18を通っている。軸上MTF測定装置203の光軸263は、図示されていない被検光学系4の光軸に一致している。
【0073】
被検光学系4の光軸263と第1群のMTF測定装置201の光軸261との間の第1横方向角度α1は、被検光学系4の光軸263と第2群のMTF測定装置202の光軸262との間で測定される第2横方向角度α2よりも小さい。これは、第1群の全てのMTF測定装置201に当てはまり、各MTF測定装置201は、被検光学系4の光軸263とともに、第2群のどのMTF測定装置202よりも小さい横方向角度をなす。言い換えると、これは、第1群のMTF測定装置201が、被検光学系4の中央結像領域において測定値を取得するように構成されていることを意味する。
【0074】
さらに、第1群の2つの隣接配置されたMTF測定装置201間のさらなる横方向角度は、第2群の2つの隣接配置されたMTF測定装置202間の横方向角度よりも常に小さい。言い換えると、第1群のMTF測定装置は、第2群のMTF測定装置よりも近接して配置されている。
【0075】
図11は、第2の実施形態に係る装置2を概略的に簡略化した平面図である。この図においても、第1群のMTF測定装置20の密度が高いことが、後面に存在し、例えば、ローレットねじであり、第1ホルダ10または第2ホルダ12の上側にそれぞれ存在する締結要素から分かる。MTF測定装置20の配置は単に例示的なものであり、その密度は、第1群または第2群の第1ホルダ10および/または第2ホルダ12上の対応するMTF測定装置20を追加および/または除去することによって増減することができる。装置2のこのような調整は、測定課題に応じて柔軟に実施することができ、これにより、MTF測定装置20は、それぞれの測定課題のために固定的に予め設定可能な位置に維持される。MTF測定装置20の柔軟な取り付けのために、第1ホルダ10および第2ホルダ12に長孔22が設けられている。図10に示す水平方向および垂直方向に沿って、第1ホルダ10および第2ホルダ12の長孔22は互いに整列させることができる。
【0076】
図12は、第3の実施形態に係る屈折光学系4の結像特性を測定するための装置2の概略的かつ簡略化された斜視図である。装置2は、球状キャップとして構成された第1ホルダ10を備える。このドーム状の第1ホルダ10には、軸上測定を行う単一のMTF測定装置20のみが中央に直接固定されている。このMTF測定装置20をドーム状の第1ホルダ10に固定している対応するローレットねじ28は、図12において第1ホルダ10の中央に見える。他のMTF測定装置20は、複数のブラケット30の形態に構成されている第2ホルダ12に固定されている。これらのブラケット30は、円柱状の連結片32によってドーム状の第1ホルダ10に取り付けられている。
【0077】
第2ホルダ12を構成するブラケット30は、第1端部34から遠位自由端部36に向かって第2球状シェルの大円に沿って延びている。ブラケット30はそれぞれ第1端部34において連結片32によって第1ホルダ10に連結されている。ブラケット30によって構成される第2ホルダ12は、第1ホルダ10に、大円に沿って設けられた長孔22に沿って、第1ホルダ10への連結を変更できるという点で柔軟である。例えば、ブラケット30aを第1ホルダ10の中心寄りに取り付け、別のブラケット30bを第1ホルダ10の縁に沿う位置にさらに取り付けることができる。MTF測定装置20もブラケット30に調整可能に取り付けられる。この目的のために、ブラケット30にも、それぞれのブラケット30の長手方向に延びる長孔22が設けられている。
【0078】
図13は、第3の実施形態に係る装置2を、さらに下側から見た概略的かつ簡略化された斜視図である。MTF測定装置20は、全て、それらの光軸が球の中心18において交差するように整列されており、この球の中心18は、被検光学系4の絞り内に位置することができる。光学系4は、明瞭化のために図示されていない。図示の実施形態の例は、極めて大きな視野角を有する光学系4の検査に特に適している。MTF測定は、非常に大きな視野角範囲にわたって記録することができる。
【0079】
図14は、この装置2の平面図である。装置2のコンパクトな寸法が分かる。ブラケット30から構成される第2ホルダ12は、第1ホルダ10の外縁を超えてわずかに突出し、ブラケット30の自由端36が見えるだけである。第1ホルダ10の長孔22がはっきりと見え、長孔22は、ホルダ10の中心から縁に向かって放射状に延びており、それに沿って第2ホルダ12のブラケット30が変位可能である。
【0080】
図15は、装置2を下側から見た図を示している。第2ホルダ12のブラケット30には、3つまたは2つのMTF測定装置20が交互に取り付けられている。全てのMTF測定装置20は球の中心18に向けられている。軸上測定を行うためのMTF測定装置20は中央に配置されている。
【0081】
図16は、第3の実施形態に係る装置2を概略的に簡略化した斜視図であり、第2ホルダ12のブラケット30が2つだけ示されている。第1ブラケット30aは、連結片32によって第1ホルダ10の比較的中央に取り付けられ、2つのMTF測定装置20を受け入れている。連結片32によって第1ホルダ10の比較的外側に取り付けられた第2ブラケット30bは、一例として3つのMTF測定装置20を受け入れている。他の実施形態において既に説明したように、MTF測定装置20は、対応するカメラホルダ24によって、ブラケット30と連結片32とによって形成される第2ホルダ12に取り付けられている。
【0082】
図17は、第4の実施形態に係る屈折光学系4の結像特性を測定するための他の装置2の高度に概略化され簡略化された縦断面図である。この装置2は、球状キャップとして構成されている第1ホルダ10を備える。これは、第1群のMTF測定装置20を、第1半径R1を有する球状シェル上に固定するように構成されている。特に、MTF測定装置20として使用されるカメラのイメージセンサ38は、この第1球状シェル上に配置される。装置2はさらに、環状で中央に開口部16を有する第2ホルダ12を備える。これは、第2半径R2を有する球状シェル上に第2群のMTF測定装置20を保持するように構成されている。また、これらのMTF測定装置20のイメージセンサ38は、この第2球状シェル上に配置される。装置2は、さらに、そのイメージセンサ38が第3半径R3を有する第3球状シェル上に配置されるように配置された第3群のMTF測定装置20を保持する第3ホルダ40を備える。R3<R2<R1である。
【0083】
図面のみから汲み取れる特徴、および他の特徴と組み合わせて開示される個々の特徴も含め、言及される全ての特徴は、単独でも組み合わせでも、本発明に必須であるとみなされる。本発明の実施形態は、個々の特徴によって、またはいくつかの特徴の組み合わせによって満たされ得る。
【符号の説明】
【0084】
2 装置
4 光学系
6 被検体ホルダ
8 保持装置
10 第1ホルダ
12 第2ホルダ
14 支柱
16 開口部
18 球の中心
20 MTF測定装置
201 第1群のMTF測定装置
202 第2群のMTF測定装置
203 軸上MTF測定装置
22 長孔
24 カメラホルダ
26 光軸
261 第1光軸
262 第2光軸
263 光学系の光軸
28 ローレットネジ
30,30a,30b ブラケット
32 連結片
34 第1端
36 自由端
38 イメージセンサ
40 第3ブラケット
α1 第1角度
α2 第2角度
R1 第1半径
R2 第2半径
R3 第3半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】