(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】その中にカプセル化されたゲストカーゴを含む人工タンパク質ケージ
(51)【国際特許分類】
C07K 14/195 20060101AFI20240214BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240214BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20240214BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240214BHJP
【FI】
C07K14/195
A61K47/42 ZNA
A61K47/62
C12N15/88 Z
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551177
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 PL2022050011
(87)【国際公開番号】W WO2022182262
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512276474
【氏名又は名称】ユニベルシテット ヤギエロンスキ
【氏名又は名称原語表記】UNIWERSYTET JAGIELLONSKI
【住所又は居所原語表記】ul. Golebia 24, PL-31-007 Krakow, Poland
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】ヘドル,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ビエラ,アルトゥル
(72)【発明者】
【氏名】アズマ,ユウスケ
(72)【発明者】
【氏名】ナスカルスカ,アントニナ
(72)【発明者】
【氏名】ボゼッカ-ソラーズ,キンガ
(72)【発明者】
【氏名】ロジッキー,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ストゥプカ,イザベラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB25
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、選択された数のTRAP環およびその中にカプセル化されたゲストカーゴを含む人工TRAPケージを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された数のTRAP環およびその中にカプセル化された少なくとも1種のゲストカーゴを含む、人工TRAPケージ。
【請求項2】
ゲストカーゴは、タンパク質、酵素、抗原、抗体、タンパク質高分子、脂質、ペプチド、核酸、小分子カーゴ、ペプチド核酸、炭素ベースの構造、金属、毒素、またはナノ粒子を含む群から選択される、請求項1に記載のケージ。
【請求項3】
核酸は、DNA、RNA、mRNA、siRNA、tRNA、およびマイクロRNAを含む群から選択される、請求項2に記載のケージ。
【請求項4】
酵素は、代謝障害もしくは疾患における過剰発現、または代謝障害もしくは疾患における過少発現と関連した酵素である、請求項2に記載のケージ。
【請求項5】
酵素は、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、リパーゼ、リアーゼ、リガーゼ、プロテアーゼ、トランスフェラーゼ、レダクターゼ、リコンビナーゼ、およびヌクレアーゼ酸修飾酵素を含む群から選択される、請求項4に記載のケージ。
【請求項6】
治療剤は、がん治療薬、抗感染症治療薬、血管疾患治療薬、免疫治療薬、セノリティック、および神経学的治療薬を含む群から選択される、請求項2に記載のケージ。
【請求項7】
金属は、鉄、亜鉛、白金、銅、ナトリウム、カドミウム、ランタニド、ガドリニウム、テクネチウム、カルシウム、カリウム、クロム、マグネシウム、モリブデン、およびその塩または複合体を含む群から選択される、請求項2に記載のケージ。
【請求項8】
毒素は、リガンド標的毒素、プロテアーゼ活性化毒素、メリチン、および毒素ベースの自殺遺伝子治療薬を含む群から選択される、請求項2に記載のケージ。
【請求項9】
ゲストカーゴはタンパク質であり、好ましくは、タンパク質は、蛍光タンパク質、インターロイキン-2(IL-2)、またはネオロイキン-2/15(NL-2)である、請求項1から8のいずれか一項に記載のケージ。
【請求項10】
ケージは複数のゲストカーゴを含み、ゲストカーゴは互いに同じでありまたは異なり、請求項2から9に記載のケージの任意の組み合わせである、請求項1から9のいずれか一項に記載のケージ。
【請求項11】
少なくとも1種の外的装飾をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のケージ。
【請求項12】
外的装飾の少なくとも1種は、内的ゲストカーゴを含有するケージの細胞内送達を促進する細胞透過剤を含む、請求項11に記載のケージ。
【請求項13】
細胞透過剤はPTD4である、請求項12に記載のケージ。
【請求項14】
TRAPケージにおけるTRAP環の数は6~60個である、請求項1から13のいずれか一項に記載のケージ。
【請求項15】
TRAPケージにおけるTRAP環の数は、12、20、または24個、好ましくは24個である、請求項14に記載のケージ。
【請求項16】
TRAPケージ内腔の内面は極度に帯電しており、TRAPケージタンパク質は、E48QまたはE48K変異を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のケージ。
【請求項17】
人工TRAPケージタンパク質は、K35C、K35H、R64S、E48Q、E48K、K35C/R64S、K35H/R64S、S33C、S33H、S33C/R64S、S33H/R64S、S33C/K35H、S33H/K35H、S33C/K35C、S33H/K35C、K35C/E48Q、K35C/E48K、K35H/E48Q、K35H/E48K、S33C/E48Q、S33C/E48K、S33C/E48Q、およびS33C/E48Kを含む群から選択される変異のいずれか1つまたは複数を含むように改変されている、請求項1から16のいずれか一項に記載のケージ。
【請求項18】
ケージの開口はプログラム可能である、請求項1から17のいずれか一項に記載のTRAPケージ。
【請求項19】
ケージのプログラム可能な開口は、TRAPケージにおいてTRAP環を適所に保つ分子または原子架橋剤の選択に依存している、請求項18に記載のTRAPケージ。
【請求項20】
架橋剤は、(i)還元応答性/感受性リンカー、それによって、ケージは還元条件下で開く;または(ii)光活性化可能なリンカー、それによって、ケージは光に曝露されると開く、のいずれかである、請求項19に記載のTRAPケージ。
【請求項21】
その内的ゲストカーゴの細胞内送達のための送達ビヒクルとしての、請求項1から20のいずれか一項に記載の人工TRAPケージの使用。
【請求項22】
ワクチンとしての、請求項1から20のいずれか一項に記載の人工TRAPケージの使用。
【請求項23】
がん、血管疾患、心血管疾患、糖尿病、感染症、自己免疫病状、神経変性疾患、細胞老化疾患、関節炎、および呼吸器疾患を含む群から選択される病気または病態の治療のための、請求項1から20のいずれか一項に記載の人工TRAPケージの使用。
【請求項24】
(i)適切な発現システムにおけるTRAP環単位の発現、および発現システムからの前記単位の精製によってTRAP環単位を獲得する工程;
(ii)架橋剤との少なくとも1つの遊離チオール連結を介したTRAP環単位のコンジュゲーション;
(iii)ゲストカーゴを捕捉するための適切な内面環境を提供するための、TRAP環単位の修飾;
(iv)ゲストカーゴがカプセル化されるケージ内腔を提供するための、自己会合によるTRAPケージの形成;ならびに
(v)ゲストカーゴをカプセル化したTRAPケージの精製および単離
を含む、カプセル化されたゲストカーゴを有する人工TRAPケージを作製する方法。
【請求項25】
工程(iii)の修飾は、
(i)TRAPケージ内腔の内面を極度に帯電させる工程;
(ii)TRAPケージ内腔の内面へのゲストカーゴの遺伝学的融合;
(iii)TRAPケージ内腔の内面へのゲストカーゴのSpyCatcher/SpyTagコンジュゲーション;ならびに
(iv)化学的および酵素的方法の両方における共有結合形成を介したもの
を含む群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(ii)は、まず、少なくとも1種の金属架橋剤、好ましくは原子金属架橋剤を介したTRAP環単位のコンジュゲーションを含み、次いで、金属架橋剤を分子架橋剤で置き換える工程を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
内面の工程(i)の極度に帯電させる工程は、ケージ内腔の内面での正味の正または正味の負電荷のいずれかを提供する、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
人工TRAPケージタンパク質は、K35C、K35H、R64S、E48Q、E48K、K35C/R64S、K35H/R64S、S33C、S33H、S33C/R64S、S33H/R64S、S33C/K35H、S33H/K35H、S33C/K35C、S33H/K35C、K35C/E48Q、K35C/E48K、K35H/E48Q、K35H/E48K、S33C/E48Q、S33C/E48K、S33C/E48Q、およびS33C/E48Kを含む群から選択される変異のいずれか1つまたは複数を含むように改変される、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
TRAP
K35C E48Qに対するパート(iii)のケージ形成工程は、pH9~11で炭酸水素ナトリウム緩衝液中にて実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
TRAP
K35C E48kに対するパート(iii)のケージ形成工程は、pH10~10.5で炭酸水素ナトリウム緩衝液中にて実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
ゲストカーゴは、TRAPケージの会合前または後のいずれかに担持され得る、請求項24から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
工程(ii)のTRAPケージ内腔の内面へのゲストカーゴの遺伝学的融合は、内腔の内面に面するTRAP
K35CのN末端へのゲストカーゴのN末端融合を介したものである、請求項24から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
工程(iii)のTRAPケージ内腔の内面へのゲストカーゴのSpyCatcher/SpyTagコンジュゲーションにおいて、TRAPケージに会合した場合に内部に面する残基47と48との間のTRAP環のループ領域にSpyCatcherが導入され、ゲストカーゴがSpyTagを含有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
酵素的修飾は、ソルターゼ、アスパラギニル・エンドプロテアーゼ、トリプシン関連酵素、およびサブチリシン由来変種を含む群から選択されるペプチド・リガーゼを介したものであり、共有結合性の化学結合形成は、ひずみ促進型アルキン-アジド環化付加および疑似ペプチド結合を含み得る、請求項24から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項24から34のいずれか一項に記載の方法によって産生された、TRAPケージ。
【請求項36】
医薬としての、請求項1から20のいずれか一項に記載のケージの使用。
【請求項37】
患者に、請求項1から20のいずれか一項に記載のケージを投与する工程を含む、患者を治療する方法。
【請求項38】
患者における疾患を治療することにおけるまたはワクチンとしての使用のための、請求項1から20のいずれか一項に記載のケージ。
【請求項39】
K35C、K35H、R64S、E48Q、E48K、K35C/R64S、K35H/R64S、S33C、S33H、S33C/R64S、S33H/R64S、S33C/K35H、S33H/K35H、S33C/K35C、S33H/K35C、K35C/E48Q、K35C/E48K、K35H/E48Q、K35H/E48K、S33C/E48Q、S33C/E48K、S33C/E48Q、およびS33C/E48Kを含む群から選択される変異のいずれか1つまたは複数を含むように改変された、人工TRAPケージタンパク質。
【請求項40】
核酸、酵素、治療剤、小分子、有機または無機ナノ粒子、ペプチド、金属、抗原、抗体、および毒素、ならびに治療的価値があるすべての前述のもののその断片を含む群から選択される1種または複数の内的ゲストカーゴを持つ人工TRAPケージの治療有効量を投与する工程を含む、がん、血管疾患、心血管疾患、糖尿病、感染症、自己免疫病状、神経変性疾患および神経疾患、細胞老化疾患、関節炎、ならびに呼吸器疾患を含む群から選択される病状に罹患した、療法を必要とする個体の治療の方法。
【請求項41】
核酸、酵素、治療剤、小分子、有機または無機ナノ粒子、ペプチド、金属、抗原、抗体、および毒素、ならびに治療的価値があるすべての前述のもののその断片を含む群から選択される1種または複数の内的ゲストカーゴを持つ人工TRAPケージの治療有効量を投与する工程を含む、がん、血管疾患、心血管疾患、糖尿病、感染症、自己免疫病状、神経変性疾患および神経疾患、細胞老化疾患、関節炎、ならびに呼吸器疾患を含む群から選択される病状により、ワクチン接種を必要とする個体にワクチン接種する方法。
【請求項42】
TRAPケージ治療薬は、鼻腔内吸入または注射を介して投与される、請求項40または41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生化学分野に属する。本発明は、選択された数のTRAP環およびその中にカプセル化されたゲストカーゴを含む、「TRAPケージ」と呼ばれる人工タンパク質ケージに関する。
【背景技術】
【0002】
単分散ケージ様構造に会合するタンパク質は、バイオテクノロジーおよび医学における多様な適用のための有用な分子容器である。そのようなタンパク質ケージは、天然に、例えばウイルスカプシドに存在するが、実験室においても設計され得かつ構築され得る。
【0003】
そのため、本発明者らは、Geobacillus stearothermophilus由来のトリプトファンRNA結合減衰タンパク質の単一システイン変異体であるTRAP-K35Cが、金ナノ粒子との反応を介して、複数の環状11量体サブユニットから構成される中空球体構造に会合し得ることを以前に記載した1。結果として生じたタンパク質ケージは、多くの厳しい条件下で極めて高い安定性を示すが、還元剤の添加によってカプソメア単位に容易に解体する。
【0004】
TRAPケージのそうした魅力的な特徴は、細胞内送達ビヒクルを開発するのに理想的であるものの、本質的な課題は依然としてゲスト・パッケージングである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、化学量論制御可能な様式での、関心対象のタンパク質または治療薬を用いたTRAPケージの内的担持のための簡易でかつ堅牢な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主題は、選択された数のTRAP環およびその中にカプセル化された少なくとも1種のゲストカーゴを含む人工TRAPケージである。好ましくは、人工TRAPケージは、架橋剤によって適所に保たれる選択された数のTRAP環を含む。好ましくは、架橋剤は、分子架橋剤または原子金属架橋剤である。好ましくは、TRAP環は、金またはDTMEによって連結される。
【0007】
好ましくは、ゲストカーゴは、TRAPケージ内腔の直径以下の大きさである。好ましくは、ゲストカーゴは、直径が16nmを下回る。好ましくは、ゲストカーゴは、直径が4nm~16nmである。4nmよりも大きいゲストカーゴは、TRAPケージ内にまたはTRAPケージから拡散することができないであろう。
【0008】
好ましくは、カーゴは、酵素(例えば、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、リパーゼ、リアーゼ、リガーゼ、トランスフェラーゼ、レダクターゼ、リコンビナーゼ、ヌクレアーゼ酸修飾酵素、または他のタイプの酵素)、抗原、抗体を含む群から好ましくは選択されるタンパク質である。または、カーゴは、別のタイプのタンパク質生物学的高分子(例えば、ステロール、ステロイド、または脂肪酸)である。または、カーゴは、脂質、ペプチド(例えば、ペプチド・ホルモン、細胞膜破壊ペプチド、T細胞刺激ペプチド、または別のタイプのペプチド)、核酸(例えば、DNA、DNAオリガミ技法を使用して設計されたものを含めた設計されたDNAナノ構造、DNAザイム、RNA、mRNA、miRNA、siRNA、tRNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、RNAザイム)、薬物等の小分子カーゴ、ペプチド核酸(PNA)、炭素ベースの構造(例えば、フラーレンまたはバックミンスターフラーレン、単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブ)、金属(例えば、鉄、亜鉛、白金、銅、ナトリウム、カドミウム、ランタニド、ガドリニウム、テクネチウム、カルシウム、カリウム、クロム、マグネシウム、モリブデン、およびその塩または複合体)、毒素(例えば、リガンド標的毒素、プロテアーゼ活性化毒素、メリチン、および毒素ベースの自殺遺伝子治療薬)、またはナノ粒子(例えば、金、鉄、銀、コバルト・カドミウム・セレン、酸化チタン等の金属ナノ粒子)もしくはCdS/ZnS、CdSe/ZnS、CdSe/CdS、およびInAs/CdSeナノ粒子等のコアシェル金属ナノ粒子である。
【0009】
好ましくは、核酸は、DNA、RNA、mRNA、siRNA、tRNA、およびマイクロRNAを含む群から選択される。
【0010】
好ましくは、治療剤は、代謝障害もしくは疾患における過剰発現、または代謝障害もしくは疾患における過少発現と関連した酵素である。
【0011】
好ましくは、酵素は、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、リパーゼ、リアーゼ、リガーゼ、プロテアーゼ、トランスフェラーゼ、レダクターゼ、リコンビナーゼ、およびヌクレアーゼ酸修飾酵素を含む群から選択される。
【0012】
好ましくは、治療剤は、がん治療薬、抗感染症治療薬、血管疾患治療薬、免疫治療薬、セノリティック(senolytic)、および神経学的治療薬を含む群から選択される。
【0013】
好ましくは、金属は、鉄、亜鉛、白金、銅、ナトリウム、カドミウム、ランタニド、ガドリニウム、テクネチウム、カルシウム、カリウム、クロム、マグネシウム、モリブデン、およびその塩または複合体を含む群から選択される。
【0014】
好ましくは、毒素は、リガンド標的毒素、プロテアーゼ活性化毒素、メリチン、および毒素ベースの自殺遺伝子治療薬を含む群から選択される。
【0015】
好ましくは、ゲストカーゴはタンパク質である。好ましくは、蛍光タンパク質。好ましくは、GFP、mCherry、またはmOrange。好ましくは、インターロイキン-2(IL-2)またはネオロイキン(Neoleukin)-2/15(NL-2)。
【0016】
好ましくは、治療剤は、がん治療薬、抗感染症治療薬、血管疾患治療薬、免疫治療薬、セノリティック、および神経学的治療薬を含む群から選択される。
【0017】
好ましくは、ケージは複数のカーゴを含み、好ましくは、カーゴは互いに同じであるまたは異なる。
【0018】
好ましくは、本発明に従ったTRAPケージは、少なくとも1種の外的装飾をさらに含む。
【0019】
好ましくは、外的装飾の少なくとも1種は、内的ゲストカーゴを含有するケージの細胞内送達を促進する細胞透過剤を含む。
【0020】
好ましくは、細胞透過剤はPTD4である。
【0021】
好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、6~60個、好ましくは7~55個、好ましくは8~50個、好ましくは9~45個、好ましくは10~40個、好ましくは11~35個、好ましくは12~34個、好ましくは13~33個、好ましくは14~32個、好ましくは15~31個、好ましくは16~30個、好ましくは17~29個、好ましくは18~28個、好ましくは19~27個、好ましくは20~26個である。好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、40個未満、好ましくは35個未満、好ましくは30個未満である。好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、6個を上回る、好ましくは10個を上回る、好ましくは15個を上回る、好ましくは20個を上回る。
【0022】
好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は12~24個である。
【0023】
好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、約24個、好ましくは24個である。好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、約12個、好ましくは12個である。好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、約20個、好ましくは20個である。
【0024】
好ましくは、TRAPケージ内腔の内面は極度に帯電している(supercharged)。好ましくは、極度に帯電した内腔を有するTRAPケージは、E48QまたはE48K変異を含む。好ましくは、極度に帯電した内腔を有するTRAPケージは、K35C/E48QまたはK35C/E48K変異を含む。
【0025】
好ましくは、ゲストカーゴは、TRAPケージ内腔の内面に遺伝学的に融合される。好ましくは、工程(ii)のTRAPケージ内腔の内面へのゲストカーゴの遺伝学的融合は、内腔の内面に面するTRAPK35CのN末端へのゲストカーゴのN末端融合を介したものである。好ましくは、ゲストカーゴは、遺伝学的融合タンパク質、好ましくは蛍光タンパク質、好ましくはGFP、mCherry、またはmOrangeである。好ましくは、遺伝学的融合タンパク質は、インターロイキン-2(IL-2)またはネオロイキン-2/15(NL-2)である。
【0026】
好ましくは、ゲストカーゴは、好ましくはTRAPケージ内腔の内面に、SpyCatcher/SpyTagコンジュゲーションを使用してコンジュゲートされる。好ましくは、工程(iii)のTRAPケージ内腔の内面へのゲストカーゴのSpyCatcher/SpyTagコンジュゲーションにおいて、TRAPケージに会合した場合に内部に面する残基47と48との間のTRAP環のループ領域にSpyCatcherが導入され、ゲストカーゴがSpyTagを含有する。
【0027】
好ましくは、ゲストカーゴは、好ましくは化学的または酵素的結合形成によって、TRAPケージに、好ましくはTRAPケージの内側に、共有結合を介して付着される。
【0028】
好ましくは、ケージの開口はプログラム可能である。好ましくは、前記特異的条件は、架橋剤の特異的切断特徴に相当する。
【0029】
好ましくは、ケージのプログラム可能な開口は、TRAPケージにおいてTRAP環を適所に保つ分子または原子金属架橋剤の選択に依存している。
【0030】
好ましくは、分子架橋剤の特異的切断特徴は、
(i)還元抵抗性/非感受性分子架橋剤、それによって、ケージは還元条件下で閉じたままである;
(ii)還元応答性/感受性分子架橋剤、それによって、ケージは還元条件下で開く;および
(iii)光活性化可能な分子架橋剤、それによって、ケージは光に曝露されると開く
を含む群から選択される。
【0031】
好ましくは、還元抵抗性/非感受性分子架橋剤は、ビスマレイミドヘキサン(bismaleimideohexane)(BMH)およびビス-ブロモキシレンを含む群から選択され得る。好ましくは、還元応答性/感受性分子架橋剤は、ジチオビスマレイミドエタン(dithiobismaleimideoethane)(DTME)を含む群から選択され得る。好ましくは、光活性化可能な分子架橋剤は、ビス-ハロメチルベンゼン、ならびに1,2-ビス-ブロモメチル-3-ニトロベンゼン(o-BBN)、2,4-ビス-ブロモメチル-1-ニトロベンゼン(m-BBN)、および1,3-ビス-ブロモメチル-4,6-ジニトロ-ベンゼン(BDNB)を含めたその誘導体を含む群から選択され得る。
【0032】
好ましくは、分子架橋剤は、ホモ二官能性分子部分およびその誘導体である。好ましくは、ホモ二官能性分子架橋剤はビスマレイミドヘキサン(BMH)である。
【0033】
好ましくは、ケージは、還元条件に抵抗性/非感受性である。好ましくは、ホモ二官能性分子架橋剤はジチオビスマレイミドエタン(DTME)である。
【0034】
好ましくは、ケージは、還元条件に応答性/感受性である。好ましくは、分子架橋剤は、ビス-ハロメチルベンゼンおよびその誘導体である。
【0035】
好ましくは、分子架橋剤は、1,2-ビス-ブロモメチル-3-ニトロベンゼン(BBN)、ビス-ブロモキシレン、および1,3-ビス-ブロモメチル-4,6-ジニトロ-ベンゼン(BDNB)を含む群から選択される。
【0036】
好ましくは、分子架橋剤は、UV光への曝露による光不安定性(photolabile)である。
【0037】
好ましくは、本発明に従ったケージは、種々のプログラム可能な分子架橋剤の混合物を含む。
【0038】
好ましくは、TRAP環は変種である。
【0039】
好ましくは、人工TRAPケージタンパク質は、K35C、E48Q、E48K、R64S、K35C/E48Q、K35C/E48K、およびK35C/R64Sを含む群から選択される変異のいずれか1つまたは複数を含むように改変される。好ましくは、人工TRAPケージタンパク質は、K35C変異を含むように改変される。好ましくは、人工TRAPケージタンパク質は、K35C変異またはK35C/E48Q変異またはK35C/E48K変異を含むように改変される。
【0040】
好ましくは、人工TRAPケージタンパク質は、K35C、K35H、R64S、E48Q、E48K、K35C/R64S、K35H/R64S、S33C、S33H、S33C/R64S、S33H/R64S、S33C/K35H、S33H/K35H、S33C/K35C、S33H/K35C、K35C/E48Q、K35C/E48K、K35H/E48Q、K35H/E48K、S33C/E48Q、S33C/E48K、S33C/E48Q、S33C/R64S/E48Q、K35H/S33C/R64S、S33C/R64S、S33H/K35H/R64S、S33C/K35C/R64S、K35C/R64S/E48Q、K35H/R64S/E48Q、K35H/R64S/E48K、S33C/R64S/E48Q、S33C/R64S/E48K、S33C/R64S/E48Q、およびS33C/E48Kを含む群から選択される変異のいずれか1つまたは複数を含むように改変される。好ましくは、人工TRAPケージタンパク質は、K35H/E48QまたはK35H/E48変異を含むように改変される。
【0041】
好ましくは、TRAPケージは、上昇した温度において、すなわち温度が、通常の室温またはヒト/動物体温よりも上に上昇した場合に安定であり、好ましくは0~100℃で安定であり、好ましくは15~100℃で安定であり、好ましくは15~79℃で安定であり、好ましくは最高95℃で安定であり、好ましくは95℃以下で安定である。
【0042】
好ましくは、TRAPケージは、非中性pHにおいて安定であり、好ましくはpH7よりも上でおよびpH7よりも下で安定であり、好ましくはpH3~11で安定であり、好ましくはpH4~10で安定であり、好ましくはpH5~9で安定である。
【0043】
好ましくは、TRAPケージは、カオトロピック剤(溶液中で水素結合を破壊する、タンパク質または高分子構造を破壊するまたは変性させるであろう作用物質)、またはタンパク質もしくは高分子構造を破壊するもしくは変性させると別様に予想されるであろう界面活性剤において安定である。好ましくは、ケージは、n-ブタノール、エタノール、塩化グアニジン、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、2-プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、および尿素において安定性を示す。好ましくは、TRAPケージは、最高4MのGndHClにおいて安定である。好ましくは、TRAPケージは、最高少なくとも7Mの尿素において安定である。好ましくは、TRAPケージは、最高15%のSDSにおいて安定である。本明細書に記載されるケージの安定性を、これらの作用物質を使用して当業者に公知であろう標準的条件において試験して、前記安定性を実証し得る。
【0044】
本明細書に記載されるケージは、これらの条件において予想外の安定性を呈示し、以前に実証されたよりも安定なTRAPケージを提供する。
【0045】
本発明の主題は、制御された期間におけるかつ所望の場所へのカーゴの送達における、上で規定される本発明に従ったケージの使用でもある。
【0046】
本発明の主題は、その内的ゲストカーゴの細胞内送達のための送達ビヒクルとしての、本発明に従った人工TRAPケージの使用でもある。
【0047】
本発明の主題は、ワクチンとしての、本発明に従った人工TRAPケージの使用でもある。
【0048】
本発明の主題は、がん、血管疾患、心血管疾患、糖尿病、感染症、自己免疫病状、神経変性疾患、細胞老化疾患、関節炎、および呼吸器疾患を含む群から選択される病気または病態の治療のための、本発明に従った人工TRAPケージの使用でもある。
【0049】
本発明の主題は、カプセル化されたゲストカーゴを有する人工TRAPケージを作製する方法であって、方法は、
(i)適切な発現システムにおけるTRAP環単位の発現、および発現システムからの前記単位の精製によってTRAP環単位を獲得する工程;
(ii)架橋剤との少なくとも1つの遊離チオール連結を介したTRAP環単位のコンジュゲーション;
(iii)ゲストカーゴを捕捉するための適切な内面環境を提供するための、TRAP環単位の修飾;
(iv)ゲストカーゴがカプセル化されるケージ内腔を提供するための、自己会合によるTRAPケージの形成;ならびに
(v)ゲストカーゴをカプセル化したTRAPケージの精製および単離
を含む、方法でもある。
【0050】
好ましくは、工程(ii)は、まず、少なくとも1種の金属架橋剤、好ましくは原子金属架橋剤を介したTRAP環単位のコンジュゲーションを含む。工程(ii)は、次いで、金属架橋剤を分子架橋剤で置き換える工程を含む。分子架橋剤は、ケージにおける環の配向を変化させることなく、金属原子を交換し得る。好ましくは、金属は金である。この変更された工程(ii)は、架橋剤が光切断性リンカーであり、好ましくは架橋剤がブロモキシレンまたはビスブロモビマン(bisbromobimane)である場合に好ましくは適用される。
【0051】
好ましくは、工程(iii)の修飾は、
(i)TRAPケージ内腔の内面を極度に帯電させる工程;
(ii)TRAPケージ内腔の内面へのゲストカーゴの遺伝学的融合;
(iii)TRAPケージ内腔の内面へのゲストカーゴのSpyCatcher/SpyTagコンジュゲーション;ならびに
(iv)化学的および酵素的方法の両方における共有結合形成を介したもの
を含む群から選択される。
【0052】
好ましくは、内面の工程(i)の極度に帯電させる工程は、ケージ内腔の内面での正味の正または正味の負電荷のいずれかを提供する。
【0053】
好ましくは、カーゴは、酵素(例えば、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、リパーゼ、リアーゼ、リガーゼ、トランスフェラーゼ、レダクターゼ、リコンビナーゼ、ヌクレアーゼ酸修飾酵素、または他のタイプの酵素)、抗原、抗体を含む群から好ましくは選択されるタンパク質である。または、カーゴは、別のタイプのタンパク質生物学的高分子(例えば、ステロール、ステロイド、または脂肪酸)である。または、カーゴは、脂質、ペプチド(例えば、ペプチド・ホルモン、細胞膜破壊ペプチド、T細胞刺激ペプチド、または別のタイプのペプチド)、核酸(例えば、DNA、DNAオリガミ技法を使用して設計されたものを含めた設計されたDNAナノ構造、DNAザイム、RNA、mRNA、miRNA、siRNA、tRNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、RNAザイム)、薬物等の小分子カーゴ、ペプチド核酸(PNA)、炭素ベースの構造(例えば、フラーレンまたはバックミンスターフラーレン、単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブ)、金属(例えば、鉄、亜鉛、白金、銅、ナトリウム、カドミウム、ランタニド、ガドリニウム、テクネチウム、カルシウム、カリウム、クロム、マグネシウム、モリブデン、およびその塩または複合体)、毒素(例えば、リガンド標的毒素、プロテアーゼ活性化毒素、メリチン、および毒素ベースの自殺遺伝子治療薬)、またはナノ粒子(例えば、金、鉄、銀、コバルト・カドミウム・セレン、酸化チタン等の金属ナノ粒子)もしくはCdS/ZnS、CdSe/ZnS、CdSe/CdS、およびInAs/CdSeナノ粒子等のコアシェル金属ナノ粒子である。
【0054】
好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、6~60個、好ましくは7~55個、好ましくは8~50個、好ましくは9~45個、好ましくは10~40個、好ましくは11~35個、好ましくは12~34個、好ましくは13~33個、好ましくは14~32個、好ましくは15~31個、好ましくは16~30個、好ましくは17~29個、好ましくは18~28個、好ましくは19~27個、好ましくは20~26個である。好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、40個未満、好ましくは35個未満、好ましくは30個未満である。好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、6個を上回る、好ましくは10個を上回る、好ましくは15個を上回る、好ましくは20個を上回る。
【0055】
好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は12~24個である。
【0056】
好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、約24個、好ましくは24個である。好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、約12個、好ましくは12個である。好ましくは、TRAPケージにおけるTRAP環の数は、約20個、好ましくは20個である。
【0057】
好ましくは、ケージの開口はプログラム可能である。好ましくは、前記特異的条件は、架橋剤の特異的切断特徴に相当する。
【0058】
好ましくは、ケージのプログラム可能な開口は、TRAPケージにおいてTRAP環を適所に保つ分子または原子金属架橋剤の選択に依存している。
【0059】
好ましくは、分子架橋剤の特異的切断特徴は、
(i)還元抵抗性/非感受性分子架橋剤、それによって、ケージは還元条件下で閉じたままである;
(ii)還元応答性/感受性分子架橋剤、それによって、ケージは還元条件下で開く;および
(iii)光活性化可能な分子架橋剤、それによって、ケージは光に曝露されると開く
を含む群から選択される。
【0060】
好ましくは、還元抵抗性/非感受性分子架橋剤は、ビスマレイミドヘキサン(BMH)およびビス-ブロモキシレンを含む群から選択され得る。好ましくは、還元応答性/感受性分子架橋剤は、ジチオビスマレイミドエタン(DTME)を含む群から選択され得る。好ましくは、光活性化可能な分子架橋剤は、ビス-ハロメチルベンゼン、ならびに1,2-ビス-ブロモメチル-3-ニトロベンゼン(o-BBN)、2,4-ビス-ブロモメチル-1-ニトロベンゼン(m-BBN)、および1,3-ビス-ブロモメチル-4,6-ジニトロ-ベンゼン(BDNB)を含めたその誘導体を含む群から選択され得る。
【0061】
好ましくは、分子架橋剤は、ホモ二官能性分子部分およびその誘導体である。好ましくは、ホモ二官能性分子架橋剤はビスマレイミドヘキサン(BMH)である。
【0062】
好ましくは、ケージは、還元条件に抵抗性/非感受性である。好ましくは、ホモ二官能性分子架橋剤はジチオビスマレイミドエタン(DTME)である。
【0063】
好ましくは、ケージは、還元条件に応答性/感受性である。好ましくは、分子架橋剤は、ビス-ハロメチルベンゼンおよびその誘導体である。
【0064】
好ましくは、分子架橋剤は、1,2-ビス-ブロモメチル-3-ニトロベンゼン(BBN)、ビス-ブロモキシレン、および1,3-ビス-ブロモメチル-4,6-ジニトロ-ベンゼン(BDNB)を含む群から選択される。
【0065】
好ましくは、分子架橋剤は、UV光への曝露による光不安定性である。
【0066】
好ましくは、本発明に従ったケージは、種々のプログラム可能な分子架橋剤の混合物を含む。
【0067】
好ましくは、TRAPケージ内腔の内面は極度に帯電している。好ましくは、極度に帯電した内腔を有するTRAPケージは、E48QまたはE48K変異を含む。好ましくは、極度に帯電した内腔を有するTRAPケージは、K35C/E48QまたはK35C/E48K変異を含む。
【0068】
好ましくは、人工TRAPケージタンパク質は、K35C、E48Q、E48K、R64S、K35C/E48Q、K35C/E48K、およびK35C/R64Sを含む群から選択される変異のいずれか1つまたは複数を含むように改変される。好ましくは、人工TRAPケージタンパク質は、K35C変異を含むように改変される。好ましくは、人工TRAPケージタンパク質は、K35C変異またはK35C/E48Q変異またはK35C/E48K変異を含むように改変される。
【0069】
好ましくは、人工TRAPケージタンパク質は、K35C、K35H、R64S、E48Q、E48K、K35C/R64S、K35H/R64S、S33C、S33H、S33C/R64S、S33H/R64S、S33C/K35H、S33H/K35H、S33C/K35C、S33H/K35C、K35C/E48Q、K35C/E48K、K35H/E48Q、K35H/E48K、S33C/E48Q、S33C/E48K、S33C/E48Q、S33C/R64S/E48Q、K35H/S33C/R64S、S33C/R64S、S33H/K35H/R64S、S33C/K35C/R64S、K35C/R64S/E48Q、K35H/R64S/E48Q、K35H/R64S/E48K、S33C/R64S/E48Q、S33C/R64S/E48K、S33C/R64S/E48Q、およびS33C/E48Kを含む群から選択される変異のいずれか1つまたは複数を含むように改変される。好ましくは、人工TRAPケージタンパク質は、K35H/E48QまたはK35H/E48変異を含むように改変される。
【0070】
好ましくは、TRAPK35C E48Qに対するパート(iii)のケージ形成工程は、pH9~11で炭酸水素ナトリウム緩衝液中にて実施される。
【0071】
好ましくは、TRAPK35C E48kに対するパート(iii)のケージ形成工程は、pH10~10.5で炭酸水素ナトリウム緩衝液中にて実施される。
【0072】
好ましくは、ゲストカーゴは、TRAPケージの会合前または後のいずれかに担持され得る。
【0073】
好ましくは、工程(ii)のTRAPケージ内腔の内面へのゲストカーゴの遺伝学的融合は、内腔の内面に面するTRAPK35CのN末端へのゲストカーゴのN末端融合を介したものである。好ましくは、ゲストカーゴは、遺伝学的融合タンパク質、好ましくは蛍光タンパク質、好ましくはGFP、mCherry、またはmOrangeである。好ましくは、遺伝学的融合タンパク質は、インターロイキン-2(IL-2)またはネオロイキン-2/15(NL-2)である。
【0074】
好ましくは、工程(iii)のTRAPケージ内腔の内面へのゲストカーゴのSpyCatcher/SpyTagコンジュゲーションにおいて、TRAPケージに会合した場合に内部に面する残基47と48との間のTRAP環のループ領域にSpyCatcherが導入され、ゲストカーゴがSpyTagを含有する。
【0075】
好ましくは、酵素的修飾は、ソルターゼ、アスパラギニル・エンドプロテアーゼ、トリプシン関連酵素、およびサブチリシン由来変種を含む群から選択されるペプチド・リガーゼを介したものであり、共有結合性の化学結合形成は、ひずみ促進型アルキン-アジド環化付加(strain promoted alkyne-azide cycloaddition)および疑似ペプチド結合を含み得る。
【0076】
システインが生体分子に存在しない、またはそれらは存在するが反応に使用可能ではない場合、好ましくはシステインの基としての-SH基が生体分子に導入され得る。
【0077】
システインの導入は、当技術分野において公知の任意の方法によって行われ得る。例えば、システインの導入は、商業的遺伝子合成または改変されたDNAプライマーを使用したPCRベースの部位指向性変異導入等、当技術分野において公知の方法によって実施されるが、それらに限定されるわけではない。上述の方法は当業者によって公知であり、プロトコールを有するすぐに使用できるキットが市販されている。
【0078】
-SH部分は、生体分子における他のアミノ酸の改変によって、すなわち部位指向性変異導入によってまたは固相ペプチド合成によっても生体分子に導入され得る。
【0079】
本発明の主題は、本方法によって産生されたTRAPケージでもある。これらのケージは、上の本発明の第1の態様との関連で記載される特質もしくは特性のいずれか、または本明細書に記載される他の任意のものを有し得る。
【0080】
本発明の主題は、制御された期間におけるかつ所望の場所へのカーゴの送達における、上で規定される本発明に従ったケージの使用でもある。
【0081】
本発明の主題は、医薬としての、本明細書に記載されるTRAPケージのいずれかの使用でもある。
【0082】
本発明の主題は、患者における疾患を治療することにおける、本明細書に記載されるTRAPケージのいずれかの使用でもある。
【0083】
本発明の主題は、前記患者に本明細書に記載されるTRAPケージを投与する工程を含む、患者を治療する方法でもある。本発明の主題は、がん、血管疾患、心血管疾患、糖尿病、感染症、自己免疫病状、神経変性疾患および神経疾患、細胞老化疾患、関節炎、ならびに呼吸器疾患を含む群から選択される病状に罹患した、療法を必要とする個体の治療の方法であって、方法は、核酸、酵素、治療剤、小分子、有機または無機ナノ粒子、ペプチド、金属、抗原、抗体、および毒素、ならびに治療的価値があるすべての前述のもののその断片を含む群から選択される1種または複数の内的ゲストカーゴを持つ人工TRAPケージの治療有効量を投与する工程を含む、方法でもある。
【0084】
本発明の主題は、がん、血管疾患、心血管疾患、糖尿病、感染症、自己免疫病状、神経変性疾患および神経疾患、細胞老化疾患、関節炎、ならびに呼吸器疾患を含む群から選択される病状により、ワクチン接種を必要とする個体にワクチン接種する方法であって、方法は、核酸、酵素、治療剤、小分子、有機または無機ナノ粒子、ペプチド、金属、抗原、抗体、および毒素、ならびに治療的価値があるすべての前述のもののその断片を含む群から選択される1種または複数の内的ゲストカーゴを持つ人工TRAPケージの治療有効量を投与する工程を含む、方法でもある。
【0085】
好ましくは、TRAPケージ治療薬は、鼻腔内吸入または注射を介して投与される。
【発明を実施するための形態】
【0086】
「TRAPタンパク質」への本明細書での言及は、細菌タンパク質であるトリプトファンRNA結合減衰タンパク質を指す。このタンパク質は、例えば、野生型Geobacillus stearothermophilusまたは他のそのような細菌から単離され得る。このタンパク質は、様々な細菌から単離され得るが、本明細書に記載されるように働くであろうTRAPタンパク質は、Alkalihalobacillus ligniniphilus、Anaerobacillus isosaccharinicus、Anoxybacillus caldiproteolyticus、Anoxybacillus calidus、Anoxybacillus pushchinoensis、Anoxybacillus tepidamans、Anoxybacillus tepidamans、Anoxybacillus vitaminiphilus、Bacillaceae細菌、Bacillus alveayuensis、Bacillus alveayuensis、Bacillus sinesaloumensis、Bacillus種FJAT-14578、Bacillus種HD4P25、Bacillus種HMF5848、Bacillus種PS06、Bacillus種REN16、Bacillus種SA1-12、Bacillus種V3-13、Bacillus timonensis、Bacillus timonensis、Bacillus weihaiensis、Bacillus yapensis、Calidifontibacillus erzurumensis、Calidifontibacillus oryziterrae、Cytobacillus luteolus、Fredinandcohnia aciditolerans、Fredinandcohnia humi、Fredinandcohnia onubensis、Fredinandcohnia onubensis、Geobacillus遺伝種(genomosp.)3、Geobacillus種46C-IIa、Geobacillus stearothermophilus、Geobacillus stearothermophilus、Geobacillus stearothermophilus、Geobacillus stearothermophilus、Geobacillus stearothermophilus、Geobacillus stearothermophilus、Geobacillus stearothermophilus、Geobacillus thermodenitrificans NG80-2、Halobacillus dabanensis、Halobacillus halophilus、Halobacillus halophilus、Jeotgalibacillus proteolyticus、Litchfieldia alkalitelluris、Litchfieldia salsa、Mesobacillus harenae、Metabacillus、Metabacillus litoralis、Metabacillus sediminilitoris、Oceanobacillus limi、Oceanobacillus種Castelsardo、Ornithinibacillus、Ornithinibacillus bavariensis、Ornithinibacillus contaminans、Ornithinibacillus halophilus、Ornithinibacillus scapharcae、Parageobacillus caldoxylosilyticus、Parageobacillus遺伝種、Parageobacillus thermantarcticus、Parageobacillus thermantarcticus、Parageobacillus thermoglucosidasius、Parageobacillus thermoglucosidasius、Paucisalibacillus globulus、Paucisalibacillus種EB02、Priestia abyssalis、Priestia endophytica、Priestia filamentosa、Priestia koreensis、Priestia megaterium、Psychrobacillus glaciei、Salinibacillus xinjiangensis、Sutcliffiella cohnii、Thermolongibacillus altinsuensis等の細菌から単離され得る。
【0087】
Trp RNA結合減衰タンパク質は、細菌性環状ホモ11-merである(参照により本明細書によって組み入れられる、A.A.Antson、J.Otridge、A.M.Brzozowski、E.J.Dodson、G.G.Dodson、K.S.Wilson、T.Smith、M.Yang、T.Kurecki、P.Gollnickを参照されたい)。trp RNA結合減衰タンパク質の構造は、文献に見られ得る(参照により本明細書によって組み入れられる、Nature374,693~700(1995))。
【0088】
適切には、本明細書で使用されるタンパク質は、Bacillus stearothermophilusから単離された野生型TRAPの改変バージョンである。これは表1に見られる:
【0089】
【0090】
野生型TRAP Bacillus stearothermophilus遺伝子配列は表2に見られる:
【0091】
【0092】
好ましくは、タンパク質の調製は、適切な発現システムにおける生体分子発現および発現産物の精製によって実施される。好ましくは、上記の野生型TRAP Bacillus stearothermophilus遺伝子配列の改変バージョンを用いる。
【0093】
TRAPタンパク質は、環、本明細書における「TRAP環」を形成し、環はTRAPタンパク質の天然状態である。典型的に、本明細書において実証されるGeobacillus Stearothermophilusタンパク質の場合のように、TRAP単量体タンパク質は、単量体から作製される環状体または環に自然発生的に会合する。
【0094】
「TRAPケージ内腔」への本明細書における言及は、TRAPケージの中空内部である。それは、TRAPケージの壁を形成するTRAP環によって外的環境から分離され、この壁における任意の穴が、穴を裏打ちするTRAP環の端の間の平板によって外部環境から内腔を分離すると考えられる。
【0095】
TRAPケージは、ケージに会合する環をもたらす、架橋され得るシステインの存在を有した、例えば本明細書において実証される特定の条件下でのみ形成される。例えば、本明細書において実証されるように、これらは、35位におけるシステインの存在を有して形成されるであろう(K35C変異の結果)。
【0096】
「TRAP環」への本明細書における言及は、TRAPビルディング・ブロック、TRAPケージ複合体のサブユニット、またはTRAP単量体会合体と同義である。特定のタンパク質またはヌクレオチド配列の「類似体」への本明細書における言及は、指定の機能、例えば本明細書に記載される条件下でのTRAPケージ形成を行い得るのに、または指定の機能、例えば本明細書に記載される条件下でのTRAPケージ形成を行い得るタンパク質をコードするのに、タンパク質またはヌクレオチド配列と十分な同一性または相同性を有するタンパク質またはヌクレオチド配列を指す。
【0097】
2種の配列の同一性/相同性パーセントを判定するために、問題の配列および参照を、最適な比較目的のためにアラインする(例えば、最適なアライメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップが導入され得、非相同配列は、比較目的のために無視され得る)。配列は、それが、関連する長さの参照配列のアミノ酸またはヌクレオチドの、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、75%、80%、82%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%を有する場合、特定のものの類似体と判定され得る。相当するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する場合、第1の配列における位置が、第2の配列における相当する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有される場合には、分子は、その位置で同一である(本明細書で使用される場合、アミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」と等価である)。2種の配列間の同一性パーセントは、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0098】
適切には、TRAPタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の同一性または相同性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、TRAPタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性または相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0099】
「TRAPケージ」への本明細書における言及は、複数の生体分子、本明細書では複合体を形成する複数のTRAPタンパク質環、から形成される会合したタンパク質複合体を指す。TRAPタンパク質環は、架橋剤、本明細書では分子架橋剤によって一緒に連結され得る。「複合体」、「会合体」、「凝集体」は、本記載において代替的に使用され、生体分子間の反応によって構築される上部構造を意味する。複合体に関与する単位の量は、生体分子の性質に依存する。より具体的には、それは、生体分子の量および生体分子に存在する-SH基の量に存在する。
【0100】
TRAPタンパク質は、本発明の方法のための適切な生体分子モデルである。これは、その高い固有の安定性、環状体形状、天然システイン残基の欠如(コンジュゲーション過程のより容易な制御のための)、ならびに、結果として生じるシステインが、適正な結合形成に適した適切な化学的および空間的環境にある、システインに変化し得る残基の使用可能性におそらく起因する。
【0101】
「プログラム可能な」への本明細書における言及は、本発明のTRAPケージが、それらを、特異的な環境条件または刺激への曝露で、特定のかつ選択された様式で挙動する傾向にするまたは挙動しやすくするまたは挙動しやすい性質にする、それらに付与されたまたは操作された特性を有することを伝えることを意図される。
【0102】
「開いた」への本明細書における言及は、破砕した、漏出した、断片化した、壊れた、またはカーゴがケージの内部から脱出するのを広く可能にしたTRAPケージと同義である。
【0103】
「閉じた」への本明細書における言及は、無傷のままの、壊れない、不浸透性の、または概してケージ全体としてとどまるTRAPケージと同義である。
【0104】
「二官能性」への本明細書における言及は、2個の官能基を有する分子架橋剤、例えば本明細書では2個の官能基を有する分子を指し、TRAPケージにおけるTRAP環を接続するために架橋される対象となるシステイン・チオール基のそれぞれに対して1個の官能基がある。「ホモ二官能性」への本明細書における言及は、2個の基が同じである二官能性リンカーを指す。好ましくは、ホモ二官能性リンカーは、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、ジチオビスマレイミドエタン(DTME)、ビス-ハロメチルベンゼンおよびその誘導体、2-ビス-ブロモメチル-3-ニトロベンゼン(BBN)、ビス-ブロモキシレン、ならびに1,3-ビス-ブロモメチル-4,6-ジニトロ-ベンゼン(BDNB)を含む。
【0105】
「分子架橋剤」とは、1つまたは複数の化学結合の形成を介して、単位、サブユニット、分子、生体分子、または単量体を、それの他の例に接続するように作用する分子である。分子架橋剤は、個別の実体である単一原子リンカーではない。
【0106】
TRAPケージ内への「カプセル化」への本明細書における言及は、TRAPケージで取り囲まれた、包み込まれた、含有された、または閉じ込められたと同義である。
【0107】
「ゲストカーゴ」への本明細書における言及は、生物製剤、またはTRAPケージ内にカプセル化されるどんなものも指す。
【0108】
ゲストカーゴは、酵素(例えば、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ヒドロゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、リパーゼ、リアーゼ、リガーゼ、トランスフェラーゼ、レダクターゼ、リコンビナーゼ、ヌクレアーゼ酸修飾酵素、または他のタイプの酵素)、抗原、抗体を含む群から好ましくは選択されるタンパク質であり得る。または、カーゴは、別のタイプのタンパク質生物学的高分子(例えば、ステロール、ステロイド、または脂肪酸)である。または、カーゴは、脂質、ペプチド(例えば、ペプチド・ホルモン、細胞膜破壊ペプチド、T細胞刺激ペプチド、または別のタイプのペプチド)、核酸(例えば、DNA、DNAオリガミ技法を使用して設計されたものを含めた設計されたDNAナノ構造、DNAザイム、RNA、mRNA、miRNA、siRNA、tRNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、RNAザイム)、薬物等の小分子カーゴ、ペプチド核酸(PNA)、炭素ベースの構造(例えば、フラーレンまたはバックミンスターフラーレン、単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブ)、金属(例えば、鉄、亜鉛、白金、銅、ナトリウム、カドミウム、ランタニド、ガドリニウム、テクネチウム、カルシウム、カリウム、クロム、マグネシウム、モリブデン、およびその塩または複合体)、毒素(例えば、リガンド標的毒素、プロテアーゼ活性化毒素、メリチン、および毒素ベースの自殺遺伝子治療薬)、またはナノ粒子(例えば、金、鉄、銀、コバルト・カドミウム・セレン、酸化チタン等の金属ナノ粒子)もしくはCdS/ZnS、CdSe/ZnS、CdSe/CdS、およびInAs/CdSeナノ粒子等のコアシェル金属ナノ粒子である。
【0109】
酵素は、ブロメライン、ボツリヌス毒素A、トロンビン第VIIA因子、プロテインC、TEVプロテアーゼ、具体的にはLon-Aペプチダーゼ、Clpプロテアーゼ、ラクトフェリン(lactoferin)、ヌクレオポリン(nculeoporin)125を含む、SB、SC、SE、SF、SH、SJ、SK、SO、SP、SR、SS、ST、PA、PB、PC、およびPEスーパーファミリー、ならびにS48、S62、S68、S71、S72、S79、S81ファミリーを含めたセリン・プロテアーゼ、具体的にはパパイン、カテプシンK、カルパイン、セパラーゼ、アデナイン、ソルターゼA、およびヘッジホッグ(Hedhehog)タンパク質を含む、CA、CD、CE、CF、CL、CM、CN、CO、CP、PA、PB.PC、PD、およびPEスーパーファミリー、ならびにC7、C8、C21、C23、C27、C36、C42、C53、およびC75ファミリーを含めたシステイン・プロテアーゼ、以下のような具体的な例、BACE1、BACE2、カテプシン(Cathespin)D、カテプシンE、キモシン、ナプシン(Napsin)-Ad、ネペンテシン、ペプシン、プレセニリン、プラスメプシンを含む、AA、AC、AD、AE、およびAFスーパーファミリーを含めたアスパラギン酸プロテアーゼ、具体的にはオルニチン(orhithine)・アシルトランスフェラーゼを含む、PBおよびPEスーパーファミリーを含めたトレオニン・プロテアーゼ、G1およびG2スーパーファミリーを含めたグルタミン酸プロテアーゼ、メタロエキソペプチダーゼ(metalloexpeptidase)およびメタロエンドペプチダーゼを含めたメタロプロテイナーゼを含む群から選択されるプロテアーゼであり得る。
【0110】
酵素は、エンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ(deoxcyribonuclease)I;ヒト・エンドヌクレアーゼV、ガイドRNAを含めた関連核酸の有無にかかわらないCRISPR関連タンパク質(Cas9、Cas12、Cas13を含む);APエンドヌクレアーゼ;フラップ・エンドヌクレアーゼを含む群から選択されるヌクレアーゼであり得る。
【0111】
タンパク質は、別のタイプの酵素、例えばSUMO活性化酵素E1、DNA修復酵素、例えばDNAリガーゼ、DNAメチルトランスフェラーゼ、例えばm6A、m4C、およびm5Cクラス、テン-イレブン転座(ten-eleven translocation)メチルシトシン・ジオキシゲナーゼ、初期増殖応答タンパク質1(EGR1)、オキソグアニン・グリコシラーゼ、カスパーゼ、例えばpVHL、CRBN、Mdm2、ベータ-TrCP1、DCAF15、DCAF16、RNF114、c-IAP1を含めたE3ユビキチン・リガーゼ、もしくはE1リガーゼ、E2リガーゼ、DNAグリコシラーゼ、または毒素、例えばリシン毒素A鎖、ジフテリア毒素およびその断片、孔形成毒素、例えば外毒素A、α-溶血素、Gyr-I、骨髄細胞白血病1(Mcl-1)、DNAポリメラーゼβ、ポリメラーゼδ、およびポリメラーゼεを含めたDNAポリメラーゼ、または酵素置換療法酵素、例えばアガルシダーゼ・ベータ、アガルシダーゼ・アルファ、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼ・アルファ、ベラグルセラーゼ・アルファ、アルグルセラーゼ、セベリパーゼ・アルファ、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、エロスルファーゼ・アルファ、ガルスルファーゼ、アルグルコシダーゼ・アルファであり得る。
【0112】
カーゴは、抗原として認識されるように作用し得る何か、例えばSARS-CoV-2スパイクタンパク質全長、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、受容体結合ドメイン、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、そのペプチド、SARS-CoV-2スパイクタンパク質全長、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、受容体結合ドメイン、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、そのペプチド、AARS-CoV-2非スパイク構造タンパク質、SARS-CoV-2非スパイク構造タンパク質、そのペプチド、SARS-Cov-2ゲノム・コードタンパク質またはその部分、呼吸器合胞体ウイルス・スパイクタンパク質全長、呼吸器合胞体ウイルス・スパイクタンパク質、受容体結合ドメイン、呼吸器合胞体ウイルス・スパイクタンパク質、そのペプチド、呼吸器合胞体ウイルス・スパイクタンパク質全長、呼吸器合胞体ウイルス・スパイクタンパク質、受容体結合ドメイン、呼吸器合胞体ウイルス・スパイクタンパク質、そのペプチド、呼吸器合胞体ウイルス非スパイク構造タンパク質、呼吸器合胞体ウイルス非スパイク構造タンパク質、そのペプチド、呼吸器合胞体ウイルス・ゲノム・コードタンパク質またはその部分、ラッサ・ウイルス・スパイクタンパク質全長、ラッサ・ウイルス・スパイクタンパク質、受容体結合ドメイン、ラッサ・ウイルス・スパイクタンパク質、そのペプチド、ラッサ・ウイルス・スパイクタンパク質全長、ラッサ・ウイルス・スパイクタンパク質、受容体結合ドメイン、ラッサ・ウイルス・スパイクタンパク質、そのペプチド、ラッサ・ウイルス非スパイク構造タンパク質、ラッサ・ウイルス非スパイク構造タンパク質、そのペプチド、ラッサ・ウイルス・ゲノム・コードタンパク質またはその部分、エプスタイン・バール(Epstien-Barr)・ウイルス・スパイクタンパク質全長、エプスタイン・バール・ウイルス・スパイクタンパク質、受容体結合ドメイン、エプスタイン・バール・ウイルス・スパイクタンパク質、そのペプチド、エプスタイン・バール・ウイルス・スパイクタンパク質全長、エプスタイン・バール・ウイルス・スパイクタンパク質、受容体結合ドメイン、エプスタイン・バール・ウイルス・スパイクタンパク質、そのペプチド、エプスタイン・バール・ウイルス非スパイク構造タンパク質、エプスタイン・バール・ウイルス非スパイク構造タンパク質、そのペプチド、エプスタイン・バール・ウイルス・ゲノム・コードタンパク質またはその部分、デング熱ウイルス構造タンパク質N、M、またはE、デング熱ウイルス構造タンパク質N、M、またはE、そのペプチド、デング熱ウイルス構造タンパク質N、M、またはE、その一部分、サイトメガロウイルスタンパク質、その一部分、およびカプシドタンパク質、テグメントタンパク質、ポリメラーゼ、およびウイルス・ゲノムによってコードされる他のタンパク質を含めた由来ペプチド、インフルエンザ・ウイルスHAタンパク質全長、インフルエンザ・ウイルスHAタンパク質、受容体結合ドメイン、インフルエンザ・ウイルスHAタンパク質、そのペプチド、インフルエンザ・ウイルス非HA構造タンパク質、インフルエンザ・ウイルス非HA構造タンパク質、そのペプチド、インフルエンザ・ウイルス・ゲノム・コードタンパク質またはその部分であり得る。
【0113】
カーゴは、抗体、例えば抗p53抗体、抗変異体p53抗体、抗JAK mAb、例えばトファシチニブおよびバリシチニブ、インターロイキン阻害剤、例えばトシリズマブ、セクキヌマブ、およびウステキヌマブ、抗CD20 mAb、例えばリツキシマブ、オファツムマブ、およびオクレリズマブ、抗TNF mAb、例えばインフリキシマブ、アダリムマブ、およびゴリムマブ、抗IgE mAb、例えばオマリズマブ、エポエチン等の造血成長因子、キイトルーダ等の抗PD1およびPDL-1 mAb、抗CTLA4 mAb、例えばイピリムマブ、抗IL2抗体、抗Il12抗体、抗Il15抗体、抗TGFベータ抗体、抗血管新生mAb、例えばアバスチン、A2AおよびA2B受容体のアンタゴニストmAb、抗Her2 mAb、例えばトラスツズマブ、抗体依存性コンジュゲート、抗EGFR mAb、抗VEGFR mAb、抗CD52 mAb、例えばアレムツズマブ、抗BAFF mAb、例えばベリムマブ、抗CD19 mAs、例えばブリナツモマブ、抗CD30 mAb、例えばブレンツキシマブ・ベドチン、抗CD38 mAb、例えばダラツムマブ、抗VEGFR2 mAb、例えばラムシルマブ、または抗IL6 mAb、例えばシルツキシマブであり得る。
【0114】
タンパク質は、別のタイプのタンパク質、例えばラパマイシンの標的(TOR)、GATA転写(transcrition)因子Gaf1(Gafワン)、TALE(転写活性化因子様エフェクター)タンパク質、ジンクフィンガータンパク質、遺伝子発現の制御に関与するもの、例えばp16を含めた腫瘍抑制因子タンパク質、シグナル変換因子、例えば(TGF)-β;チェックポイント制御タンパク質、例えばBRCA1、細胞接着に関与するタンパク質、例えばCADM1、DNA修復タンパク質、例えばp53、転写因子、例えば山中因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)、シトクロムc、Bcl-2(B細胞リンパ腫2)を含めたBCLタンパク質、転写制御タンパク質、例えばNF-κB、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン-2を含めたインターロイキン、およびその人工バージョン、リンホカイン、ならびに腫瘍壊死因子を含めたサイトカイン、熱ショックベータ-1タンパク質を含めた熱ショックタンパク質、成長因子、例えばGDF11、ユビキチン、DNA二本鎖断裂修復タンパク質、例えばDNAリガーゼIIIα、PCSK9阻害剤、例えばエボロクマブおよびアリロクマブ、脳由来神経栄養因子(BDNF)、またはIL-5の阻害剤、例えばメポリズマブおよびレスリズマブであり得る。
【0115】
カーゴは、別のタイプの生物学的高分子(例えば、ステロール、ステロイド、または脂肪酸)であり得る。ステロールはコレステロールであり得る。ステロイドはプロゲステロンであり得る。脂肪酸は、飽和脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、または不飽和脂肪酸、例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸であり得る。
【0116】
カーゴは、リン脂質、例えばホスファチジルコリン(phsophotdiylcholine)、ホスファチジン酸(ホスファチデート)(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI0)、ホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)、ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)、およびホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)、(スフィンゴミエリン)(SPH)、セラミドホスホリルエタノールアミン(スフィンゴミエリン)(Cer-PE)等の脂質であり得る。
【0117】
カーゴは、ペプチド・ホルモン、細胞膜破壊ペプチド、T細胞刺激ペプチド、または別のタイプのペプチド等のペプチドであり得る。ペプチド・ホルモンは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アミリン、アンギオテンシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、カルシトニン、コレシストキニン(CCK)、ガストリン、グレリン、グルカゴン、成長ホルモン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インスリン、レプチン、黄体形成ホルモン(LH)、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、オキシトシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、プロラクチン、レニン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、アルギニン・バソプレシン(AVP)もしくは抗利尿ホルモン(ADH)とも呼ばれるバソプレシン、または血管作動性腸管ペプチド(VIP)であり得る。細胞膜破壊ペプチドはメリチンであり得る。T細胞刺激ペプチドは、上で記載される抗原タンパク質の一部分等の抗原であり得る。別のタイプのペプチドは、マイクロシンB-17および誘導体、アルビシジンおよび誘導体、骨髄細胞白血病1(mcl-1)のペプチド阻害剤、ペプスタチンおよびその誘導体であり得る。
【0118】
カーゴは、抗生物質分子、例えばマクロライド系抗生物質、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD+)、ニコチンアミド・モノヌクレオチド、コレステロール吸収阻害剤、例えばエゼチミブ、フィブラート系薬、例えばゲムフィブロジル、ベザフィブラート、およびシプロフィブラート(cipofibrate)、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、ラノラジン、イバブラジン、グリセリルトリニトレート等のニトレート、ボセンタン等のエンドセリン・アンタゴニスト、ヒドララジン、ミノキシジル、カルシウム・チャネル遮断薬、例えばアムロジピン、ニフェジピン、ベラパミル、ジルチアゼム、アンギオテンシン・アンタゴニスト、例えばロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、およびイルベサルタン、ACE阻害剤、例えばカプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ジゴキシン、アデノシン受容体アゴニスト、クラスIV抗不整脈薬(Antidysrhythmic)、例えばベラパミル、クラスIII抗不整脈薬、例えばアミオダロン、クラスII抗不整脈薬、例えばビソプロロール、エスモロール、およびプロプラノロール、クラスI抗不整脈薬、例えばフレカイニドおよびジソピラミド、抗ヒスタミン薬、例えばプロメタジン、シクリジン、およびセチリジン、グルココルチコイド、例えばプレドニゾロン、デキサメタゾン、およびヒドロコルチゾン、抗増殖性免疫抑制剤、カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリン、尿酸排泄剤、例えばアロプリノールおよびフェブキソスタット(flebuxostat)、DMARD、COX-2阻害剤、例えばセレコキシブ、エトリコキシブ、およびパレコキシブ、NSAID、DOPAデカルボキシラーゼ阻害剤、例えばカルビドパもしくはベンセラジド、選択的B3-アドレナリン受容体アゴニスト、a1-受容体アゴニスト、B1受容体アゴニスト、例えばドブタミン、a1受容体アンタゴニスト、例えばプラゾシン、ドキサゾシン、およびタムスロシン、B2受容体アゴニスト、例えばサルブタモールおよびテルブタリン、ニコチン性部分的アゴニスト、例えばバレニクリン、末梢抗コリンエステラーゼ、例えばネオスチグミン、神経筋遮断薬、例えばパンクロニウム(panucuronium)、ベクロニウム、およびロクロニウム、膀胱制御薬、例えばオキシブチニンおよびトルテロジン、代謝拮抗薬、例えば葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、およびプリン類似体、アルキル化剤、抗真菌薬、例えばグリセオフルビン(Grisofluvin)、カスポファンギン、およびテルビナフィン、抗真菌性抗生物質、例えばアムホテリシンおよびナイスタチン、アルテミシニン誘導体、例えばアルテスナートおよびアルテミシニン、葉酸阻害剤、例えばプログアニル、プリマキン、血液殺シゾント剤(Blood schizonticide)、例えばクロロキン(chloquine)およびキニーネ、ノイラミニダーゼ阻害剤、例えばオセルタミビルおよびザナミビル、DNAポリメラーゼ阻害剤、例えばアシクロビルおよびガンシクロビル(glanciclovir)、プロテアーゼ阻害剤、例えばダルナビルおよびリトナビル(ritanovir)、逆転写酵素阻害剤、例えばネビラピンおよびエファビレンツ、抗てんかん薬、例えばカルバマゼピン(Carbamezepine)、ガバペンチン、およびプレガバリン、三環系抗鬱薬、例えばアミトリプチリン、ノルトリプチリン、およびデシプラミン、オピオイド、AMPA受容体遮断薬、例えばトピラマート、バルビツレート(Barbiturate)、ベンゾジアゼピン、例えばロラゼパム、ミダゾラム、およびジアゼパム、ナトリウム・チャネル阻害剤、例えばカルバマゼピン、オクスカルバゼピン、およびフェニトイン、双極性疾患に対する薬、例えばリチウム、ドーパミン再取り込み阻害剤、例えばブプロピオン、モノアミン・オキシダーゼ阻害剤、例えばフェネルジン、イソカルボキサジド(isocarboxcazid)、およびモクロベミド、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、例えばレボキセチンおよびマプロチリン、SNRI、例えばベンラファキシン、デュロキセチン(duloxetidne)、およびデスベンラファキシン、SSRI、例えばフルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、およびセルトラリン、三環系薬(Tricyclic)、例えばイミプラミンおよびクロミプラミン、抗精神病薬(Anti-pysychotic)、例えばアミスルプリドおよびスルピリド(supiride)、部分的セロトニン・アゴニスト、NMDA受容体アンタゴニスト、例えばメマンチン、コリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジル、リバスチグミン、およびガランタミン、モノオキシダーゼ(Monoxidase)阻害剤、例えばセレギリンおよびラサギリン、エンタカポンおよびトルカポン等のCOMT阻害剤、ドーパミン・アゴニスト、例えばプラミペキソールおよびロチゴチン、ホスホジエステラーゼ・タイプV阻害剤、例えばシルデナフィルおよびタダラフィル、子宮刺激薬、例えばミソプロストール(misoprostal)、エルゴメトリン、およびオキシトシン、GnRH類似体および阻害剤、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、SGLT-2阻害剤、例えばカナグリフロジンおよびエンパグリフロジン、ジペプチジル・ペプチダーゼ阻害剤、例えばシタグリプチン、サクサグリプチン、およびリナグリプチン、プロトン・ポンプ阻害剤、例えばオメプラゾール、ランソプラゾール、およびパントプラゾール、吸入式グルココルチコイド、例えばベクロメタゾン(neclometasone)およびブデソニド、吸入式ムスカリン性アンタゴニスト、例えばチオトロピウムおよびグリコピロニウム、ロイコトリエン・アンタゴニスト、例えばモンテルカスト、ベータ2-受容体アゴニスト、例えばサルメテロール(almetrol)およびホルモテロール、抗凝固薬、例えばダビガトラン(dabigratran)、ヘパリン、およびアピキサバン、STINGアンタゴニスト、インフラマソーム(Inflamasome)阻害剤、標的オンコロジー薬、タンパク質キナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、タンパク質分解のPROTACおよび他の促進因子、PARP阻害剤、例えばニラパリブ、ALK阻害剤、例えばアレクチニブ、HDAC阻害剤、例えばベリノスタット、MEK阻害剤、例えばコビメチニブ、BRAF阻害剤、例えばダブラフェニブ、EGFR阻害剤、例えばエルロチニブ、mTOR阻害剤、例えばエベロリムス、HER2阻害剤、例えばラパチニブ、FLT3キナーゼ阻害剤、例えばミドスタウリン、JAK阻害剤、例えばトファシチニブ、またはBCL2阻害剤、例えばベネトクラクス等の小分子カーゴであり得る。
【0119】
「単位」、「サブユニット」、「分子」、「生体分子」、「単量体」は、本記載において代替的に使用され、複合体形成のためにもう一方の分子に接続する一方の分子を意味する。
【0120】
「還元抵抗性/非感受性分子架橋剤」への本明細書における言及は、ジスルフィド結合が還元剤によって切断される場合に典型的に見られるもの等の還元反応によって切断されない架橋剤への言及である。これらの架橋剤は、還元感受性結合の断裂をもたらすであろう条件下で安定である。これらは、ビスマレイミドヘキサン(BMH)およびビス-ブロモキシレンを含む。
【0121】
「還元応答性/感受性分子架橋剤」への本明細書における言及は、ジスルフィド結合が還元剤によって切断される場合に典型的に見られるもの等の還元反応によって切断される架橋剤への言及である。これらの架橋剤は、還元感受性結合の断裂をもたらすであろう条件下で安定ではない。これらは、ジチオビスマレイミドエタン(DTME)を含む。
【0122】
「光活性化可能な分子架橋剤」への本明細書における言及は、光反応性または光に感受性である架橋剤、すなわち光に曝露された場合に切断されるであろうものへの言及である。この光は、UV、または特異的域の波長の他のそのような光であり得る。これらは、2-ビス-ブロモメチル-3-ニトロベンゼン(o-BBN)、2,4-ビス-ブロモメチル-1-ニトロベンゼン(m-BBN)、および1,3-ビス-ブロモメチル-4,6-ジニトロ-ベンゼン(BDNB)を含む。
【0123】
「極度に帯電している」TRAPケージの内腔への本明細書における言及は、ケージの内腔に面した表面が、非変異(野生型)の環と比較して、TRAP環あたり少なくとも+1または-1と等価の電荷の正味変化を受けることを意味する。ゆえに、24環のTRAPケージは、極度に帯電した場合、極度に帯電していない変種と比較して、-24または+24の電荷の最小変化を持するであろう。
【0124】
さらに、以下の略語が使用されている:TRAP(trp RNA結合減衰タンパク質)、GFP(緑色蛍光タンパク質)、PTD4(タンパク質形質導入ドメイン)、CPP(細胞透過性ペプチド)、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)、TEM(透過型電子顕微鏡法)、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、FBS(胎仔ウシ血清)。
【0125】
細胞への分子カーゴの輸送は、薬物、遺伝材料、または酵素の送達を含めた広範な適用にとって望ましい。それぞれがそれら自身の利点および不利な点を有する、リポソーム、ウイルス様粒子、非ウイルスタンパク質ケージ、DNAオリガミ・ケージ、および無機ナノ粒子を含めて、これを達成するためにいくつかのナノ粒子が採用されている。タンパク質ケージは、しばしば高い効率および特異性を有して、細胞に遺伝材料を送達し得る、天然においてウイルスによって実証される有望な手法である。
【0126】
人工ケージは、ケージ構造を天然には形成しないタンパク質によって構築され、構成タンパク質間の相互作用は、それらの会合を促進するように修飾され得る。そのような手法を使用する利点は、結果として生じるケージが、天然に存在する形態では使用不能または実現不能であり得る特性および能力を与えられ得ることである。これまでに、12サブユニットの4面体ケージを形成し得る2回および3回の回転対称性を有するタンパク質のタンデム融合体、8面体対称性を有する24個のサブユニットのナノキューブ構造、三量体タンパク質ビルディング・ブロックから自己会合する60サブユニットの20面体ケージ構造、ならびに小さなウイルスカプシドのものに匹敵する共会合性2構成要素120サブユニットの20面体タンパク質複合体、ならびにケージを形成するために閉じるネットワークを形成し得る設計ペプチドを含めた、いくつかの人工タンパク質ケージが産生されている。人工タンパク質ケージが、siRNA、mRNA2、および蛍光色素を含めた様々なカーゴで充填されているいくつかの例が存在する。しかしながら、ほんのわずかな事例しか、人工ケージによる細胞へのカーゴの送達を実証していない。本発明者らの知る限りでは、人工タンパク質ケージ(天然ケージとは対照的に)によって媒介される細胞へのタンパク質/治療薬カーゴの送達は、以前に実証されていない。
【0127】
本発明者らは、TRAPケージと称される、天然に存在する環状タンパク質であるTRAP(trp RNA結合減衰タンパク質)からなるビルディング・ブロックを使用して、人工タンパク質ケージを以前に産生した(
図1a)
1。天然では、TRAPは、トリプトファン合成の制御に関与し、構造的におよび生化学的に十分に特徴付けされている。それは、バイオナノサイエンスにおいて多目的なビルディング・ブロックとしても使用されている。TRAPケージは、およそ22nm径を形成する24個のTRAP環、直径が大体16nmの内腔を有する2.2MDaの中空球体からなる。ケージにおける各TRAP環は、5個のTRAP環近隣に結合しており、構造は、直径がおよそ4nmの6個の角穴を含有する。めずらしく、他の天然のおよびほとんどの人工ケージと比較して、ケージにおける環サブユニットは、タンパク質-タンパク質相互作用のネットワークによってではなくつなぎ合わされている。その代わりに、35位における天然に存在するリジンがシステインで置き換えられているタンパク質における環間のシステイン残基の相対する硫黄を、単一の金(I)イオンが架橋する。ケージにおける各環の11個の単量体のうちの10個についてのシステインは、この方式で架橋され、11番目は架橋されないままであり、例えばマレイミド標識された色素を用いて、反応に使用可能である。
【0128】
TRAPケージは、極めて安定であり、少なくとも3時間の95℃の温度、および尿素等の高レベルの変性剤を存続し得る。この高い安定性にもかかわらず、TRAPケージは、細胞還元剤グルタチオンを含めた低濃度の還元剤の存在下で容易くばらばらになる。この特質は、TRAPケージは、それが、その構造を保持すると予想され得、細胞に入るまでカーゴを保護し、そこで細胞内還元剤が解体およびその後のカーゴ放出をもたらすであろうことから、細胞にカーゴを送達するためのシステムとしての実用性を有し得るという見込みを高める。
【0129】
本発明者らは、TRAPケージに、タンパク質カーゴを意図的に充填し得ることを示しており、本発明者らは、例となる分子として緑色蛍光タンパク質の負に極度に帯電した変種GFP(-21)を使用する。本発明者らは、TRAPケージを使用して、ヒト細胞の内部にそのようなカーゴを送達し得ることも示す。この細胞透過は、TRAPケージの表面が、例えば細胞透過性ペプチドによって修飾される場合にのみそれが生じることから、それ自体が制御可能である。結果は、細胞に医学的に関連したカーゴを送達するための潜在的に有用なツールとしてのTRAPケージの開発に向けた最初の一歩であり、治療剤としての人工タンパク質ケージ・システムの潜在性をより広く実証する。
【0130】
本明細書で、本発明者らは、TRAPケージを使用して、タンパク質カーゴを意図的にカプセル化し得、細胞内部にそれを送達し得ることを示す。非修飾形態でまたは外的に装飾されたいずれかで採用されたTRAPケージは、細胞生存率に対して有意な効果を示さなかった。
【0131】
最初の実例において、カーゴを充填することは、ケージへの拡散を通じて負に極度に帯電したGFPを静電的に捕捉するために、その内部に正に帯電したパッチを有する本発明者らの以前に開発したTRAPケージ1を使用して達成された。充填されたカーゴを細胞に送達しようとする試みは、それらが装飾されなかった場合、細胞内へのTRAPケージの透過の証拠を示さなかった。対照的に、TRAPケージの外部への細胞透過性ペプチド(CPP)PTD4の付着は、細胞内部への有意な透過をもたらした。
【0132】
細胞へのカーゴの人工タンパク質ケージ媒介性送達に関する少数の以前の仕事は、非タンパク質カーゴに対する成功を実証している。注目すべきことに、siRNAを担持した人工タンパク質ケージが、種々の哺乳類細胞によって取り込まれ得、そのカーゴを放出して、標的遺伝子発現のRNAiおよびノックダウンを誘導し得ることが示されている3。この場合、低い毒性効果と合わせた高い遺伝子サイレンシング効率は、タンパク質ケージ担体が、治療的送達システムとしての潜在性を有することを示した。人工タンパク質ケージ内へのタンパク質カーゴのカプセル化は、以前に実証されている。しかしながら、これらのケージは、細胞にそれらのカーゴを直接送達し得ることが示されず、その代わりに、多コピーのケージそれ自体が、細胞において作製された脂質エンベロープ内のカーゴとして使用され、包み込まれたタンパク質ナノケージ(EPN)として精製され、脂質エンベロープは宿主細胞膜に由来した。EPNはケージを送達し得、細胞への進入は、タンパク質ケージではなく、包み込む宿主由来の膜によって達成されることを意味した。
【0133】
TRAPケージの全体的な高い安定性、しかし細胞還元剤の存在下で解体するその証明された能力
1を考えると、ケージが、いったん細胞の内側に入ると容易くばらばらになるかどうかを知ることは興味深いであろう。細胞に入り次第の、TRAPケージに結び付いたAlexa-647対GFPの相対シグナル強度の変化は、ケージの細胞内崩壊およびカーゴの放出を示唆する。考え得る説明は、Alexa647およびGFPがTRAPケージとの結び付きに起因して互いにごく接近している場合、GFP蛍光は、色素からのクエンチング効果に起因して減少し得るということである。いったんGFPがTRAPケージ解体によって放出されると、GFPからAlexa-647までの平均距離はより大きくなり、検出されるGFP蛍光の増加をもたらす。この可能性は、細胞内GFPからのシグナルが、それが、Alexa-647を欠くTRAPケージを使用して送達される場合よりも目に見えて明るいという観察結果によって支持される(
図10)。
【0134】
全体として、本明細書において提示される仕事は、人工タンパク質ケージによって媒介される、細胞へのタンパク質送達の最初の実証を与える。実証されたカーゴ充填効率はかなり低く、このことは、それが、ケージ内部により高い密度の正電荷を持するようにTRAPケージをさらに修飾することによって対処され得る。
【0135】
さらに、TRAP単量体の内腔に面するN末端へのカーゴの遺伝学的融合を使用した、TRAPケージ内への機能的タンパク質カーゴの担持が実証される。パッチワーク発現手法は、融合を用いて、またはそれがケージの収容能力を超えないようにカーゴの量の制御を可能にすることなく、TRAP単量体の混合発現を可能にする。このようにして、mCherryカーゴを持つ、ならびにmCherryおよびmOrangeカーゴの混合を持つTRAPケージを実証し、カーゴの存在を確認した。
【0136】
さらに、遺伝学的融合手法を、内腔に面するSpyCatcherタンパク質の多コピーを提供するように適合させ、これが、SpyTagを持つ、機能的タンパク質である緑色蛍光タンパク質(GFP)およびコンピューターで設計されたインターロイキン-2模倣体(ネオロイキン-2/15、NL-2)(Silva DAら、Nature、2019、565、186~191)を捕捉し得ることが実証された。本発明者らは、NL-2とその標的細胞受容体との相互作用が、TRAPケージ内へのカプセル化によって有意に阻害され、TRAPケージが、外的に適用された誘発によって開いた場合に、カーゴは、遊離NL-2と同様のレベルで機能的になることをさらに示した。
【0137】
代替的に、他のタンパク質ケージに関して記載されるように、カーゴ捕捉の種々の方法(共有結合性付着等)が探索され得る4,5。付加的に、本発明者らは、標的化特異性を増加させること、ならびにカプセル化されるカーゴの域および有用性を広げることの両方のために、TRAPケージのさらなる修飾を期待する。最後に、TRAPケージの精確な細胞内の場所およびそれらの四次状態の両方を突き止めかつ追跡するために、将来的な調査が要されるであろう。態様によれば、本明細書に記載されるケージは医薬として使用され得る。これは、患者に本明細書に記載されるケージを投与する工程、または患者における疾患を治療することにおける使用のための本明細書に記載されるケージを含む等、患者を治療することにおけるものであり得る。これは、特に、細胞内送達のための、カーゴを持しかつ還元剤の存在下で解体するように設計されたケージであり得る。これらのケージは、薬学的に許容される担体、アジュバント、または賦形剤とともにまたはその存在下で投与され得る。医薬としての使用のためのまたは患者を治療するためのケージは、前記患者に有益であろう。例えば、活性分子(とりわけ、RNA、DNA、ペプチド、およびタンパク質等の生物学的高分子)に対する薬物送達システム(DDS)として、生物学的高分子は、インビボで見出されるもの等の条件によってしばしば容易に破壊されるまたは消化されることから、それらは利点を提供する。生物学的高分子は、大きなタンパク質であるTRAPにおける穴から拡散するには大きすぎであり、TRAPケージは、全体的構造を破壊することなく顕著な変化を継続させ得る。このことは、それが、治療用カーゴを捕捉するように修飾され得かつ治療標的を標的にするように外部で同時に修飾され得ることを意味する。作用の部位への到着と相関する所望の状況において切断するプログラム可能なリンカーが使用され得る。例えば、標的部位に光を照らして、開いた光切断性TRAPケージを切断し得る。TRAPケージが細胞に透過した場合、細胞の細胞質が高度に還元していくにつれて、還元性リンカーによってつなぎ合わされたものは自然発生的に開きかつカーゴを放出するであろう。ケージは、ワクチンと併せてまたはワクチンとして作用することにおいても使用され得、T細胞応答を刺激すると予想される抗原(すなわち、ペプチド)は、TRAPケージの内側で捕捉され、次いでT細胞に標的化され、その後に誘発された開口が続く。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【
図1】TRAPケージタンパク質の図である。(a)異なる色で示される各TRAP環を有するTRAPケージの構造(PDB:6RVV)。金原子は、黄色の球体として示されている。(b)電荷分布によって色付けされた、TRAPケージ外部(左)および内部(右)の表面描写。(c)電荷に従って色付けされた、示される内部空洞に向く面を有する単一TRAP環の表面像。(d)漫画描写(左)および電荷に従って色付けされた表面像(右)で示された負に極度に帯電したGFP(-21)。(e)GFP(-21)を用いたTRAPケージカプセル化、ならびにAlexa-647色素およびPTD4ペプチドでの外的修飾のスキーム。
【
図2】TRAPケージの充填および装飾の図である。(a)TCEPの非存在下(-TCEP)または存在下(+TCEP)でNi-NTAカラムを通した後の、Hisタグ付けされたGFP(-21)とインキュベートされた精製されたTRAPケージを示すネイティブPAGEゲル。レーン1:GFP(-21)陽性対照;2:ネイティブPAGEに対する分子量マーカー(marked);3:空のTRAPケージ;4:インプット(GFP(-21)を有するTRAPケージ);5および8:素通り;6および9:洗浄;7および10:溶出。回収された画分を、タンパク質に対して染色した(左)、または蛍光検出によって分析した(右、励起488nm)。(b)回収された画分を、SDS-PAGE、それに続く抗GFP検出を用いたウェスタン・ブロットに供した。レーン1:GFP(-21)陽性対照;2:SDS-PAGEに対する分子量マーカー;3:空のTRAPケージ;4:インプット(GFPを有するTRAPケージ);5および8:素通り;6および9:洗浄;7および10:溶出。(c)非修飾TRAPケージ、またはAlexa-647およびPTD4によって外的に修飾されたTRAPケージによる、GFP(-21)のカプセル化を示すネイティブPAGEゲル。レーン1:GFP(-21)を有するTRAPケージ;2:Alexa-647で装飾された、GFP(-21)を有するTRAPケージ;3:Alexa-647およびPTD4で装飾された、GFP(-21)を有するTRAPケージ;4:ネイティブPAGEに対する分子量マーカー。ゲルをタンパク質に対して染色し(上のパネル)、GFP(中央のパネル、励起488nm)およびAlexa-647(下のパネル、励起647)の蛍光検出によって分析した。(d)GFP(-21)を有するTRAPケージのネガティブ染色透過型電子顕微鏡法(左のパネル);Alexa-647で装飾された、GFP(-21)を有するTRAPケージ(中央のパネル);Alexa-647およびPTD4で装飾された、GFP(-21)を有するTRAPケージ(右のパネル)。
【
図3】MCF-7細胞へのGFP(-21)を持するTRAPケージの送達の図である。(a)GFP(-21)を持するAlexa-647標識TRAPケージ((TC+GFP)+Alexa-647と表される)を用いた4時間の処理後の、ならびに15分間、2時間、および4時間の、Alexa-647およびPTD4ペプチドで標識された、GFP(-21)を有するTRAPケージ((TC+GFP)+Alexa-647+PTD4と表される)を用いた処理後の、MCF-7細胞についての代表的なフロー・サイトメトリー・ドット・プロット。x軸およびy軸は、それぞれGFPおよびAlexa-647の蛍光強度を示している。未処理細胞を陰性対照として使用した。(b)同じ実験からのMCF-7細胞についての代表的な赤色および緑色蛍光重ね合わせヒストグラム。(c)15分間、2時間、および4時間のインキュベーション後の、GFPを持しかつAlexa-647で装飾されたまたはAlexa-647およびPTD4の両方で装飾されたTRAPケージで処理された、Alexa-647およびGFP陽性細胞の蛍光強度中央値。データは、未処理細胞に対して正規化され、3回の独立した実験に基づく。対照:1:未処理細胞;2:(TC+GFP)+Alexa-647とインキュベートされた細胞。(d)未処理細胞(対照細胞、上の行)、GFP(-21)を充填されかつAlexa-647のみで標識されたTRAPケージとインキュベートされた細胞(中央の行):GFP(-21)を充填されかつAlexa-647およびPTD4で標識されたTRAPケージとインキュベートされた細胞(下の行)の共焦点顕微鏡法画像。アクチン・フィラメントを、Alexa-568にコンジュゲートされたファロイジンで染色し、核をDAPIで染色した。緑色チャネル-GFP;赤色チャネル-Alexa-647;青色チャネル-DAPI;灰色チャネル-Alexa-568;(スケール・バー:10μM)。
【
図4】MCF-7細胞におけるTRAPケージおよびGFP(-21)の追跡の図である。Alexa-647およびPTD4で装飾されかつ種々の時点で固定された、GFP(-21)を持するTRAPケージとインキュベートされた細胞の共焦点顕微鏡法統合画像。アクチンを、Alexa-568にコンジュゲートされたファロイジンで染色し、一方でDAPIを核染色に使用した;(スケール・バー:10μM)。それぞれの主な画像の下の長方形画像は、yz軸における代表的な直交像である。(a)-赤色チャネル最大投射を用いた画像;(b)-緑色チャネル最大投射を用いた画像。
【
図5】TRAPケージにおけるHisタグ付けされたGFP(-21)分子の数の推定の図である。(a)0~100nMの濃度域を有する、GFP(-21)タンパク質の蛍光測定から獲得された標準曲線。方程式:y=0.0258x+4.4;R
2=0.9786とフィットさせた。(b)バンド・デンシトメトリー分析に使用されたウェスタン・ブロット。レーン1~4:GFP(21);レーン5:GFP(-21)を担持したTRAPケージ((TC+GFP)と表される)。
【
図6】GFP(-21)でのTRAPケージの外的装飾の図である。(a)GFP(-21)を充填されたTRAPケージを装飾するために使用された精製されたPTD4ペプチドを示すRP-HPLCクロマトグラム。(b)コンジュゲーション反応におけるAlexa-647の滴定後の、GFP(-21)を持するTRAPケージを示すネイティブPAGEゲル。ゲルを、Alexa647(左のパネル、励起647)およびGFP(中央のパネル、励起488nm)の蛍光検出によって分析し、タンパク質に対して染色した(右のパネル)。矢印は、さらなる実験において使用された最適な装飾条件を示している。(c)装飾なし、Alexa-647で装飾された、またはAlexa-647およびPTD4の両方で装飾された、GFP(-21)を持するTRAPケージを比較したSDS-PAGEゲル。左:488nmにおける検出;中央:647nmにおける検出;右:抗GFP抗体で検出された同じサンプルについてのウェスタン・ブロット。レーン:1:SDSPAGE電気泳動に対する分子量マーカー;2:GFP(-21)を有するTRAPケージ;3:Alexa-647で装飾された、GFP(-21)を有するTRAPケージ;4:Alexa-647およびPTD4で装飾された、GFP(-21)を有するTRAPケージ;5:GFP(-21)-陽性対照。
【
図7】培養培地におけるTRAPケージ安定性、および細胞生存率試験の図である。(a)18時間のインキュベーション中の、FBS存在の有無でのDMEM培養培地におけるTRAPケージ安定性を示すネイティブPAGEゲル。(b)空のTRAPケージ、GFP(-21)を担持したTRAPケージ、ならびにAlexa-647およびPTD4で装飾された、GFP(-21)を有するTRAPケージへの4時間の曝露後のMCF-7およびHeLa細胞の細胞生存率。M=ネイティブ電気泳動に対する分子量マーカー;TC:空のTRAPケージ;(TC+GFP):GFP(-21)を充填されたTRAPケージ;(TC+GFP)+Alexa-647+PTD4:GFP(-21)を有しかつAlexa-647およびPTD4で装飾されたTRAPケージ。
【
図8】HeLa細胞へのGFP(-21)を有するTRAPケージの送達の図である。(a)4時間の、GFP(-21)を有するAlexa-647標識TRAPケージ((TC+GFP)+Alexa-647と表される)を用いた処理後の、ならびに15分間、2時間、および4時間の、GFP(-21)およびPTD4を有するAlexa-647標識TRAPケージ((TC+GFP)+Alexa-647+PTD4と表される)を用いた処理後の、HeLa細胞についての代表的なフロー・サイトメトリー・ドット・プロット。x軸およびy軸は、それぞれGFPおよびAlexa-647の蛍光強度を示している。未処理細胞を陰性対照として使用した。(b)同じ実験からのHeLa細胞についての代表的な赤色および緑色蛍光重ね合わせヒストグラム。(c)15分間、2時間、および4時間のインキュベーション後の、(TC+GFP)+Alexa-647および(TC+GFP)+Alexa-647+PTD4で処理された、Alexa-647およびGFP陽性細胞の蛍光強度中央値。データは、未処理細胞に対して正規化され、3回の独立した実験に基づく。対照:1:未処理細胞;2:(TC+GFP)+Alexa-647とインキュベートされた細胞。(d)未処理細胞(対照細胞)(上の行)、Alexa-647のみで標識された(TC+GFP)とインキュベートされた細胞(中央の行):GFP(-21)を充填されかつAlexa-647およびPTD4で標識されたTRAPケージとインキュベートされた細胞(下の行)の共焦点顕微鏡法画像。アクチン・フィラメントを、Alexa-568にコンジュゲートされたファロイジンで染色し、核をDAPIで染色した。緑色チャネル-GFP;赤色チャネル-Alexa-647;青色チャネル-DAPI;灰色チャネル-Alexa-568;(スケール・バー:10μM)。
【
図9】HeLa細胞におけるTRAPケージおよびGFPの追跡の図である。Alexa-647およびPTD4で標識されかつ種々の時点で固定された、GFP(-21)を有するTRAPケージとインキュベートされた細胞の共焦点顕微鏡法統合画像。アクチンを、Alexa-568にコンジュゲートされたファロイジンで染色し、一方でDAPIを核染色に使用した;(スケール・バー:10μM)。長方形画像は、yz軸における代表的な直交像である。(a)-赤色チャネル最大投射を用いた画像;(b)-緑色チャネル最大投射を用いた画像。
【
図10】GFP(-21)蛍光に対するAlexa-647の影響の図である。(a)細胞を、Alexa-647およびPTD4で標識された(TC+GFP)(上の行)、またはPTD4のみで標識された(TC+GFP)(下の行)に曝露した。アクチン・フィラメントを、Alexa-568にコンジュゲートされたファロイジンで染色し、核をDAPIで染色した。緑色チャネル-GFP;赤色チャネル-Alexa-647;青色チャネル-DAPI;灰色チャネル-Alexa-568;(スケール・バー:10μM)。(b)細胞を、Alexa-647およびPTD4で標識された(TC+GFP)、またはPTD4のみで標識された(TC+GFP)に曝露したサンプルに対する3つの異なる視野から登録された平均GFP蛍光強度。蛍光強度を、バックグラウンド強度差分を考慮して、ImageJを用いて定量した。(c)溶液中で測定される、装飾されていないおよび十分に装飾されたTRAPケージ内にカプセル化されたGFP(21)の平均蛍光。
【
図11】遺伝学的融合およびパッチワーク形成を使用した、単一タイプのゲストタンパク質のゲスト・パッケージングの図である。(a)遺伝学的融合およびパッチワーク・ストラテジーを使用した、TRAPケージ内へのmCherryカプセル化の略図。Ptet/tetO、テトラサイクリン・プロモーター/オペロン;Pt7/lacO、T7プロモーター/lacオペロン・システム。(b)内腔に変化に富んだ数のmCherryを含有するTRAPケージのネガティブ染色透過型電子顕微鏡画像。
【
図12】遺伝学的融合およびパッチワーク形成を使用した、2種の異なるタイプのゲストタンパク質のゲスト・パッケージングの図である。(a)蛍光タンパク質を担持したTRAPケージの略図。N末端でmCherry(濃い円筒)またはmOrange2(薄い円筒)のいずれかと融合したパッチワークTRAP環を、DTMEまたはトリフェニルホスフィンモノサルフェート(TPPMS)-Au(I)-Clのいずれかとともに混合した。(b)蛍光性カーゴと結び付いた精製されたTRAPケージの蛍光特性を示すネイティブPAGE。ゲルを、InstantBlueタンパク質染色(左)、ならびに532nmにおける励起および610nmにおける発光を使用した蛍光(右)を使用して可視化した。(c)Au(I)(上)またはDTME(下)のいずれかを使用して会合した、空の(左)TRAPケージ、および蛍光タンパク質を充填されたもの(右)のTEM画像。スケール・バー、50nm。
【
図13】TRAPケージにおける二重タンパク質担持の確認の図である。a、b、10mM DTTの添加前および後の、510nmにおける励起があり次第の、mOrange2およびmCherryの両方を担持した、TRAPケージ
Au(I)(a)およびTRAPケージ
DTME(b)の正規化された発光スペクトル。568nmにおけるmOrange2発光ピーク、610nmにおけるmCherry発光ピーク。付加的な線は、それぞれDTTの非存在または存在下における、測定の直前に一緒に混合されたmOrange2またはmCherryタンパク質のみを担持したケージのスペクトルを示す。
【
図14】SpyTag/SpyCatcherシステムを使用したゲスト・パッケージングの概念の図である。(a)SpyTag/SpyCatcher媒介性ゲスト担持のためのストラテジー。(b)TRAPおよびGFP変種の構築物。SpyT、SpyTag;SpyC、SpyCatcher;残基47と48との間の位置にSpyCatcherを含有する。この構築物を、Hisタグ付けされたSUMOを用いて産生し、Ni-NTAアフィニティー・クロマトグラフィーの後にSUMOプロテアーゼによって切断し、TRAP-K35C-ループSpyCを産出した。
【
図15】内腔にSpyCatcherを含有するTRAPケージの産生の図である。(a)TRAP-K35CおよびSpyC-TRAPまたはTRAP-ループSpyCのいずれかから構成されるTRAP 11merの産生についてのSDS-PAGE分析。SN、細胞溶解および遠心分離後の上清;Ni、Ni-NTAアフィニティー・クロマトグラフィー;SU、SUMOプロテアーゼ切断。(b)Au(I)を用いたケージ形成についてのネイティブPAGE分析。反応を、100μM TRAP、0または100μM TPPMS-Au(I)-Cl(Au(I)(-)または(+))、および0または600mM NaCl(NaCl(-)または(+))を含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)において実施した。
【
図16】SpyTag-SpyCatcherシステムを使用したTRAPケージ内へのGFPカプセル化の図である。(a、b)内腔にSpyCatcher部分を含有するTRAPケージ、SpyC-TRAPケージまたはTRAP-ループSpyCケージ、およびSpyTag-GFPの混合物についてのSDS-(a)およびネイティブ-(b)PAGE分析。ネイティブPAGEに関しては、同じゲルを、蛍光およびInstant Blue染色によって可視化した。
【
図17】GFPを充填されたTRAPケージの単離およびイメージングの図である。(a、b)30ng/mLテトラサイクリン誘導を用いて獲得され、SpyTag付けされたGFPと混合された、内腔にSpyCatcher部分を含有するTRAPケージについてのサイズ排除クロマトグラム(a)およびネガティブ染色TEM画像(b)。TRAP-K35C変種から構成され、いかなるカーゴも充填されていないケージを有するものも、比較のために提供される。(c)SpyT-TRAP変種のネガティブ染色TEM画像。
【
図18】光開口性TRAPケージにおけるネオロイキン-2/15のカプセル化のためのストラテジーの図である。パッチワークTRAP環は、K35C、R64S変異を含有しかつ73および74位におけるリジンを欠くTRAP変種、ならびにK35C変異、N末端におけるHisタグtagおよびSUMO、ならびに内腔ループにおけるSpyCatcherを含有するものから構成される。BBN、1,2-ビスブロモメチル-3-ニトロベンゼン;β-ME、β-メルカプトエタノール。
【
図19】TRAPケージからのネオロイキン-2の誘発された放出は、標的細胞を刺激することを示した図である。a、グラフは、NL-2、hIL-2、SpyCatcher-TRAP環とコンジュゲートしたSpy-Tag-NL-2を用いたHEK-Blue細胞の24時間の刺激後に測定された吸光度によって示されるSEAP活性を反映する;b、UV照射前および後の、NL-2、空のTRAPケージ、ならびにUV照射前および後の、SpyTag-NL-2を充填されたSpyCatcher-TRAPケージを用いた24時間の刺激後のSEAPの活性。
【実施例】
【0139】
本発明の実現において採用された技法
電子顕微鏡法
GFP(-21)を充填されたTRAPケージ、GFP(-21)を充填されかつAlexa-647で標識されたTRAPケージ、およびGFP(-21)を充填されかつ十分に装飾されたTRAPケージを、透過型電子顕微鏡を使用して撮像した。サンプルを、典型的に、0.025mg/mlの最終タンパク質濃度に希釈し、10000g、5分間、室温で遠心分離し、上清を、親水性化された(hydrophilized)カーボンコート銅グリッド(STEM Co.)に適用した。次いで、サンプルを、3%リンタングステン酸、pH8を用いてネガティブ染色し、80kVで運転されるJEOL JEM-2100機器を使用して可視化した。
【0140】
フロー・サイトメトリー
TRAPケージ内在化実験に関しては、MCF-7およびHeLa細胞を、ウェルあたり2.5×105個の密度で、10%FBSを有する800μlのDMEM中にて12ウェル・プレート(VWR)に播種し、実験前にさらに16時間培養した。次いで、細胞を、10%FBSを補給された、150mM NaCl pH7.5を有する50mM HEPES中にて、カーゴを充填され、Alexa-647のみで標識されたまたはAlexa-647およびPTD4ペプチドで装飾された50μg(6nM)のTRAPケージとともに15分間、2時間、および4時間インキュベートした。インキュベーションの後、細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(EURx)で5分間3回洗浄し、トリプシン(1mg/ml)を用いて収穫し、150gで5分間遠心分離した。その後、細胞を、遠心分離(3分間150g)によってPBS中で3回洗浄し、PBSに再懸濁した。細胞をNaviosフロー・サイトメーター(Beckman Coulter)においてランし、各サンプルあたり、12000個の細胞の蛍光を回収した。未処理細胞、およびカーゴを充填されかつAlexa-647のみで標識されたTRAPケージで処理された細胞を、陰性対照として使用した。3回の独立した実験に対して獲得されたデータを、Kaluzaソフトウェア(Beckman Coulter)を用いて分析した。Alexa-647/GFP陽性細胞のパーセンテージおよび蛍光強度中央値を、各サンプルに対して判定した。
【0141】
レーザー走査型共焦点顕微鏡法
蛍光レーザー走査型共焦点顕微鏡観察に関しては、細胞を、12ウェル・プレートにプレートされた15-mmガラス・カバー・スリップ上で成長させ(10%FBSを有する800μl DMEM中、ウェルあたり2.5×105個)、フロー・サイトメトリー実験に関して上で記載されるようにさらに刺激した。次に、細胞をPBSで洗浄し(5分間3回)、4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し(15分間、室温)、PBS中0.5%Triton-X100で透過処理した(7分間、室温)。アクチン・フィラメントを、PBS中Alexa-568にコンジュゲートされたファロイジンで染色した(1:300、Thermo Fisher Scientific、1.5時間、室温)。次いで、カバー・スリップを、DAPIを有するProlong Diamond媒体(Thermo Fisher Scientific)を使用して、スライド上に封入した。蛍光画像を、63×油浸対物レンズとともにLSM 880共焦点モジュールを備えたAxio Observer.Z1倒立顕微鏡(Carl Zeiss、Jena、Germany)下で取得した。画像を、ImageJ 1.47v(米国国立衛生研究所)を使用して処理した。
【0142】
実施例1.TRAPケージの充填
TRAPケージに充填するために、本発明者らは、TRAP環の表面の正電荷の顕著なパッチのみが、ケージの内部を裏打ちする面にあるという事実を利用した(
図1a~c、1b、c)。原理上、これは、他のタンパク質ケージに対して実証されているように(例えば、
6)、静電相互作用を介して、負に帯電したカーゴの捕捉を可能にし得る。構成成分のTRAP環が、金(I)の添加までTRAPケージに会合しないという事実
1は、およそ4nmを下回るタンパク質カーゴが、カプセル化まで2種の考え得る経路を有することを意味し、それらは会合前にTRAP環に結合し得る、またはそれらは、TRAPケージ形成後に添加され、4倍の穴を通じてケージ内に拡散するのを可能とされ得る。本発明者らは、負に極度に帯電したGFP(-21)をモデルカーゴとして選定した(
図1d)。この円筒状のタンパク質は、およそ2.4nmの直径を有し、それゆえ、会合したTRAPケージ内に拡散し得ると予想される(
図1e)。Hisタグ付けされたGFP(-21)をTRAPケージと混合し、一晩インキュベートし、その後に、残存する遊離GFP(-21)の除去のためのサイズ排除クロマトグラフィー精製が続いた。ネイティブ・ゲル上での蛍光シグナルの共遊走によって示されるように、2つのタンパク質が結び付いていることが見出された(
図2a)。Hisタグ付けされたGFP(-21)がTRAPケージの内側にあり、その外部に結合していないかどうかを検証するために、本発明者らは、Ni-NTAアフィニティー・クロマトグラフィーを使用したプル・ダウン・アッセイ、それに続くウェスタン・ブロット分析を実行した。TRAPケージと結び付いたGFP(-21)がNi-NTAカラムに結合しなかったという観察結果は、Hisタグをアクセス不能にするカプセル化の成功を示唆した。このことは、還元剤の添加によってケージが解離した後、結び付いたGFP(21)のみが、Ni-NTAカラムと相互作用するために使用可能であることを示したプル・ダウン・アッセイによってさらに支持された(
図2b)。これらの結果は、完全または部分的な様態のいずれかでのTRAPケージ内へのGFPのカプセル化を強く示唆する(部分的カプセル化とは、内部に向くHisタグを有するTRAPケージにおける穴をGFPが「塞ぐ」場合である)。一部は、大幅により多くの数のカーゴを示しているものの、ケージあたりのGFP(-21)の数は、いくつかの他の充填されたタンパク質ケージに見出されるものに匹敵するおよそ0.3個であった。
【0143】
GFP(-21)を充填されたTRAPケージの産生および精製
TRAPケージ産生および精製を、以前に記載されるように実施した1。関連するプラスミドおよびアミノ酸配列情報に関しては、表1を参照されたい。極度に帯電した(21)Hisタグ付けされたGFPタンパク質を、GFP遺伝子をコードするpET28aから発現させ、BL21(DE3)細胞において産生した。タンパク質を、Ni-NTAを使用して精製した。簡潔には、細胞を、プロテアーゼ阻害剤(Thermo Fisher Scientific)の存在下で、50mM Tris-HCl、pH7.9、150mM NaCl、5mM MgCl2、5mM CaCl2中にて4℃で超音波処理によって溶解し、溶解物を20000gで0.5時間4℃で遠心分離した。上清を、50mM Tris、pH7.9、150mM NaCl、20mMイミダゾール(緩衝液A)中であらかじめ平衡化されたNi2+結合ニトリロ三酢酸(His-Pur Ni-NTA、Thermo Fisher Scientific)とカップリングしたアガロース・ビーズとともにインキュベートした。樹脂の3回の洗浄(緩衝液Aを用いた)の後、タンパク質を、50mM Tris、pH7.9、150mM NaCl、300mMイミダゾール(緩衝液B)を用いて溶出した。Hisタグ付けされたGFP(-21)を含有する画分をプールし、室温で50mM Tris-HCl、pH7.9、150mM NaCl中にて、HiLoad 26/600 Superdex 200 pgカラム(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィーに供した。タンパク質濃度を、280nmの波長を使用してNanodrop分光光度計を使用して測定した。
【0144】
等体積の100μMの負に極度に帯電した(-21)Hisタグ付けされたGFPと、50mM Tris、150mM NaCl、(pH7.9)中で一晩インキュベートした1μMのあらかじめ形成されたTRAPケージとを混合することによって、GFPカプセル化を実行した。GFPを担持したTRAPの精製を、50mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl中にて、Superose 6 Increase 10/300カラム(GE Healthcare)を使用したサイズ排除クロマトグラフィーによって行った。TRAPケージを含有する画分を回収し、3~12%ネイティブBis-Trisゲル(Life Technologies)を使用したネイティブPAGE、それに続く488nmにおける励起を用いたChemidoc検出器(BioRad)を使用した蛍光検出によって分析した。
【0145】
TRAPケージにおけるHisタグ付けされたGFP(-21)分子の数を推定する
GFP(-21)の担持を推定するために、2種の方法を使用した:
1.カーゴを充填されたTRAPケージにおけるGFP蛍光の検出に基づく。GFP(21)標準曲線を、0~100nMの濃度域で作成した。λ
emに対して1.0nmの間隔、走査速度6000nm分、λ
ex帯域幅5nmおよびλ
em帯域幅5nmを用い、488nmにおける固定励起波長および495~550nmにおける発光波長域を用い、RF-6000 Shimadzu(登録商標)分光蛍光光度計を使用して、蛍光スペクトルを26℃で取得した。発光最大λ
em510nmにおける蛍光を算出に使用した。TRAPタンパク質濃度を、280nmにおける吸光度から判定した。1:0.28±0.07というTRAPケージ:GFP(-21)化学量論を獲得した(
図5a)。
【0146】
2.デンシトメトリー分析。簡潔には、一連のHisタグ付けされたGFP(-21)希釈物(波長280nmでNanodropによって測定される0.4ng;0.8ng;4ng;8ng)およびサンプルであるカーゴを充填されたTRAPケージ(波長280nmでNanodropによって測定される2μg)を、SDS-PAGEによって分離し、ウェスタン・ブロッティングに供した(
図5b)。Hisタグ付けされたGFP(-21)タンパク質からのシグナルを、化学発光検出器(Chemidoc、BioRad)において、抗GFP抗体および二次HRPコンジュゲート抗体を用いて検出した。結果として生じたブロットについてのImageLab(BioRad)ソフトウェアを使用したデンシトメトリー分析は、0.6ngのHisタグ付けされたGFP(-21)が、カーゴを充填された2μgのTRAPケージに存在することを示した。デンシトメトリー分析は、およそ1:0.4というTRAPケージ:GFP(-21)化学量論をもたらした。
【0147】
Ni-NTA「プル・ダウン」
Hisタグ付けされたGFP(-21)タンパク質を充填された精製されたTRAPケージのサンプルを、2つの部分に分割し、還元(1mM TCEP)または非還元(TCEPなし)条件下でインキュベートした。次に、サンプルを重力流の下でNi-NTA樹脂(Thermo Fisher Scientific)に通し、100μlの各サンプルを、緩衝液Aで平衡化された50μlの樹脂に導入した。3種のサンプルを回収した:(i)素通り、(ii)緩衝液Aを用いた洗浄、および(iii)緩衝液Bを用いた溶出。サンプルを、ネイティブPAGE、それに続く蛍光検出(488nmにおける励起、Chemidoc、BioRad)およびウェスタン・ブロットによって分析した。SDS-PAGEおよびウェスタン・ブロットに関しては、Ni-NTAプル・ダウン・アッセイから回収されたサンプルを、TCEP(最終濃度0.1mM)の添加および15分間の煮沸によって変性させ、その後に、Tris/グリシン・ゲル電気泳動による分離が続いた。ゲルを、活性化PVDF膜への、25mM Tris、192mMグリシン、20%メタノール緩衝液中での電気泳動転写(2時間、90V)に供した。膜を、0.05%のTween20を補給されたTris緩衝生理食塩水(TBS-T)中5%スキム・ミルクでブロッキングし、その後に、マウスモノクローナル抗GFP抗体(1:2500;St.John’s Laboratories、UK)、およびホースラディッシュ・ペルオキシダーゼとコンジュゲートした抗マウス(1:5000、Thermo Fisher Scientific)二次抗体との1.5時間のインキュベーションが続いた。シグナルを、Pierce ECL Blotting Substrate(Thermo Fisher Scientific)を使用して発生させ、BioRad Chemidoc検出器において可視化した。
【0148】
【0149】
本明細書におけるTRAPケージは、極度に帯電した内腔を有し得る。これを有するために、TRAPケージは、E48QまたはE48K変異を含み得る。好ましくは、極度に帯電した内腔を有するTRAPケージは、K35C/E48QまたはK35C/E48K変異を含むであろう。これは付加的なものを提供する。
【0150】
実施例2.蛍光色素でのおよび細胞透過性ペプチド標識でのTRAPケージの装飾
本発明者らは、その細胞進入を促進するためにTRAPケージを修飾することを目指した。本発明者らは、低下した数のアルギニンおよび増加したα-ヘリックス含有量を有してより両親媒性である、細胞膜を透過する有意に向上した能力を示す最適化されたTATベースの細胞透過性ペプチドである、PTD4(YARAAARQARA、配列番号8)を選定する
7。いくつかの仕事は、PTD4または同様のものでナノ粒子をコートすることが、細胞透過を促進することを示している(例えば、
8)。本発明者らは、TRAPケージの表面曝露したリジン上のアミノ基に、PTD4誘導体Ac-YARAAARQARAG(配列番号9)を付着させた。TRAPケージ上に単量体あたり3個のそのような表面曝露したリジンがあり、ケージあたり792個のペプチドが付着されるのを潜在的に可能にする。N末端アミノ基のアセチル化は、TRAPタンパク質の使用可能なアミノ基と反応することを意図される活性化カルボキシル部分との、それらのアミノ基の交差反応の可能性を排除する。付加的に、伸長したC末端グリシン残基は、柔軟性のあるリンカーとして働き、それはキラルアミノ酸ではないことから、カルボキシル活性化中のラセミ化の機会を破棄する。ペプチドを、固相方法論を使用して合成し、逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製した(
図6a)。最適化された反応において、本発明者らは、ネイティブPAGEによって可視化されるように、PTD4との反応後にTRAPケージの見かけの分子量の増加を観察した(
図6c)。
【0151】
そのカーゴから独立してTRAPケージを追跡し得るために、本発明者らは、それをAlexa-647蛍光色素で標識した。これに関して、本発明者らは、色素上のマレイミド基と、環-環相互作用に関与しない、TRAPケージの6個の4-nmの穴を裏打ちする24個の使用可能なシステインとを架橋した。滴定によって、本発明者らは、TRAPケージが容易く標識されかつ遊離色素がサンプルに存在しない、添加されるべき最適な量のAlexa-647(TRAPシステイン基の数と等しい)を立証した。これを、GFP(-21)およびAlexa-647の両方を検出する蛍光測定と組み合わされたネイティブPAGEによって査定した(
図6b)。カーゴGFPは3個のシステイン残基を含有するものの、対照反応は、Alexa647でのGFPの検出可能な標識化を示さなかった(
図6c)。ネガティブ染色透過型電子顕微鏡法(TEM)により、修飾されたTRAPケージがそれらの特徴的な形状を保持することが確認された(
図6d)。
【0152】
PTD4ペプチド合成
PTD4ペプチド誘導体(Ac-YARAAARQARAG、(配列番号10)、簡略化のために、本文においてPTD4と呼ばれる)を、Fmocベースの固相ペプチド合成方法論に従って、Liberty Blue自動マイクロ波合成器(CEM、USA)を使用して0.1mmol規模で合成した。Fmoc-Gly-Wang樹脂(100~200メッシュ、置換0.70mmol/g、Novabiochem、Germany)を、ジクロロメタン(DCM)/ジメチルホルムアミド(DMF)(1:1)を用いて一晩膨張させた。Fmoc脱保護を、DMF中25%モルホリンを用いて85℃で5分間実施した。カップリング反応を、85℃で5分間、5倍過剰のFmoc保護されたアミノ酸誘導体とともにDIC/オキシマ活性化因子を使用して、推奨されるメーカーのプロトコールのとおりに実施した。二重カップリングを、すべてのFmoc-Arg(Pbf)カップリングに適用した。N末端アセチル化を、60℃でDMF中10%無水酢酸を用いて樹脂に対して実施した。樹脂からの切断および側鎖脱保護を、30℃で激しく振とうしながらの4時間のTFA/トリイソプロピルシラン(TIS)//水(94:3:3)を用いた処理によって達成した。樹脂を濾過し、TFAを穏やかな窒素気流下で蒸発させた。粗ペプチドを、冷却ジエチルエーテルの添加、それに続く遠心分離(3000rpm、10分間)によって沈殿させた。樹脂を、冷却エーテル(2×)および酢酸エチル(2×)で洗浄した。沈殿した粗ペプチドを、真空内で一晩乾燥させた。粗ペプチドを8M尿素に溶かし、セミ分取C18(10×150mm)カラム(Cosmosil、ナカライテスク)を使用したAgilent 1260 RP-HPLCで精製した。回収されたペプチド含有画分を凍結乾燥した。精製されたペプチドを、1.0ml/分の流速で30分間、0.1%TFAを有する0~20%のアセトニトリルの線形勾配で、分析的C18カラム(Zorbax SBC18 5mm 4.6×150mm、Agilent)で分析した。ピーク・シグナルを220および280nmにおいて検出した(
図6a)。
【0153】
Alexa-647でのTRAPケージ標識化および細胞透過性ペプチドでの装飾
Alexa Fluor-647 C2マレイミド蛍光色素(Alexa-647、Thermo Fisher Scientific)および細胞透過性PTD4ペプチドを、TRAPタンパク質に存在するシステインおよびリジンとの架橋反応を介して、GFPを充填されたTRAPケージにコンジュゲートした。
【0154】
蛍光標識化を達成するために、GFPを持するTRAPケージ(300μl、16nM)を、Alexa-647 C2マレイミド色素(50μl、1μM)と混合し、反応を、450rpmで連続的に撹拌しながら、室温で2.5時間、150mM NaCl pH7.5を有する50mM HEPES中で実行した。TRAPケージへのマレイミド・コンジュゲートAlexa-647の最適な相互作用比を、滴定によって査定した(
図6b)。簡潔には、GFP(-21)を担持したTRAPケージのアリコート(11.36nM)を、0.1μM~100μMに及ぶマレイミド・コンジュゲートAlexa-647と混合した。次いで、サンプルを、ネイティブ・ゲル電気泳動によって分離し、647nmにおける励起を用いて、Chemidocにおける蛍光検出によって可視化した。遊離Alexa-647がサンプルに存在せずかつAlexa-647シグナルとのGFP干渉が観察されない反応を、最適な装飾条件と見なし、さらなる実験において使用した。
【0155】
付加的に、Alexa-647による直接GFP標識化の可能性を除くために、Alexa-647標識化の有無での、GFP(-21)を担持したTRAPケージを、変性ゲル分離およびウェスタン・ブロッティング、それに続く抗GFP抗体を用いた検出に供した。Alexa-647色素とのGFPの潜在的相互作用によるバンド・シフトは観察されなかった(
図6c)。
【0156】
細胞透過性ペプチド装飾に関しては、PTD4ペプチド(50μl、0.5mM)を、1-エチル-3-(-3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC、10μl、83mM)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、10μl、435mM)と混合し、すべての試薬をddH
2Oに溶かした。その後、過剰の活性化PTD4ペプチドを、GFP(-21)を充填されたTRAPケージに添加し、Alexa-647で標識し、450rpmで連続的に撹拌しながら、室温で次の2.5時間インキュベートした。反応を、5μlの200mM Tris-HCl pH7.5の添加によって停止させた。コンジュゲーション効率を、ネイティブPAGEおよび蛍光ゲル・イメージングによって検証した。装飾されたTRAPケージの分子量の変化は、ネイティブPAGEにおいて観察されるバンド・シフトをもたらす(
図6c)。
【0157】
実施例3.TRAPケージの安定性および細胞生存率に対する効果
細胞送達試験に着手する前に、本発明者らは、まず、TRAPケージが構造的に安定かどうか、すなわち細胞培養条件下で解体しないかどうかを査定した。安定性を、様々な濃度の胎仔ウシ血清(FBS)の有無で、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中にて、37℃、5%CO
2大気にてチェックした。結果は、ケージ構造が、37℃、5%CO
2での18時間以内のインキュベーションにおいてDMEM培養培地中で安定であることを示した(
図7a)。
【0158】
細胞生存率に対するTRAPケージの効果を判定するために、alamarBlueアッセイを行った。この試験は、ミトコンドリアのおよび他の還元酵素によって、青色でかつ非蛍光性の化合物であるレザズリンを、赤色でかつ蛍光性の分子であるレソフリン(resofurin)に変換する生存細胞の天然の能力に基づく
9。ヒトがん細胞株MCF-7およびHeLaを、TRAPケージ、GFP(21)を充填されかつAlexa-647およびPTD4ペプチドで装飾されたTRAPケージの存在下でインキュベートした。細胞生存率試験において使用された細胞の数、TRAPケージ用量、および刺激時間は、TRAPケージの内在化実験が実施された条件に相当する。未処理細胞を対照として使用した。データは、非修飾TRAPケージ、ならびにGFP(-21)を充填されかつAlexa-647およびPTD4で装飾されたTRAPケージの両方とも、少なくとも4時間のインキュベーションの間、MCF-7およびHeLa細胞の生存率に有意に影響を及ぼさないことを示した(
図7b)。
【0159】
細胞培養およびTRAPケージの細胞毒性査定:
HeLaおよびMCF-7細胞を、10%FBS(EURx)、100μg/mlストレプトマイシン、100IU/mlペニシリン(Gibco)を補給されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma)中で培養した。培養を、5%CO
2下にて37℃で維持した。培養培地におけるTRAPケージ安定性を試験するために、精製されたサンプルを、0、2、および10%胎仔ウシ血清(FBS)を含有するDMEM培地に添加し、5%CO
2下にて37℃で2時間、6時間、および18時間インキュベートした。その後、サンプルを、ネイティブPAGE、それに続くInstant blueゲル染色によって分析した(
図7a)。
【0160】
TRAPケージ処理後の細胞生存率を、alamarBlue試験(VWR)を使用して判定した。細胞を、ウェルあたり2.5×10
4個細胞の密度で96ウェル・プレートにおいて培養した。次に、細胞を、10%FBSを補給された、150mM NaCl pH7.5を有する50mM HEPES中にて、5μg(0.6nM)のTRAPケージ、GFP(21)を充填されかつAlexa-647およびPTD4で装飾されたTRAPケージで4時間処理した。処理の後、90μl DMEM培地に希釈された10μlのalamarBlueをウェルごとに添加し、細胞を、5%CO
2下にて37℃で次の3時間インキュベートした。alamarBlueの活性構成要素であるレザズリンは、生存細胞においてのみ高蛍光性化合物レソフリンに還元され、この色素の吸光度(励起570nm、発光630nm)を記録した。無処理細胞を陰性対照として使用した(
図7b)。すべてのサンプルを、3回の独立した実験において三つ組で測定した。
【0161】
実施例4.細胞へのタンパク質カーゴの送達
細胞へのTRAPケージの送達を、ヒトがん細胞株MCF-7およびHeLaを使用して調査した。細胞を、カプセル化されたGFP(-21)を含有しかつAlexa-647のみでまたはAlexa-647およびPTD4で標識された精製されたTRAPケージとともに種々の期間インキュベートし、フロー・サイトメトリーによって分析した。Alexa647およびGFPの両方に起因した蛍光シグナルは、Alexa-647およびPTD4ペプチドで標識された、GFPを有するTRAPケージで処理された両細胞株において長期のインキュベーション時間とともに増加した(
図3a、b、c)。これらの結果は、細胞透過性ペプチドでのTRAPケージの外的修飾が、それらの細胞進入および有効なカーゴ送達を促進することを示している。興味深いことに、この効果は、HeLa細胞株と比較して、MCF-7細胞株の場合により著しかった(
図8a、b、c)。
【0162】
細胞に内在化したTRAPケージからおよび細胞膜で外的に吸着されたものからの蛍光シグナルを区別するために、共焦点顕微鏡法を使用した。GFP(-21)を含有しかつAlexa-647で標識されているがPTD4を欠くTRAPケージは、細胞において観察されなかった。対照的に、GFP(-21)を含有しかつPTD4で装飾されたTRAPケージは、刺激の4時間後に細胞内部において明白なシグナルを示した(
図3dおよび
図8d)。
【0163】
実施例5.TRAPケージの細胞内動力学
適度な濃度の細胞還元剤の存在下でばらばらになるその能力と相まったTRAPケージの高い安定性は、細胞質におけるTRAPケージが容易く解体し、GFP(-21)カーゴを放出することを示唆する。TRAPケージおよびGFPは個別でかつ追跡可能なシグナルを所有することから、本発明者らは、細胞進入後にAlexa-647およびGFPシグナルが共局在しなくなる場合、ケージ解体およびGFP(-21)の放出が強く推測され得るという仮説を立てた。この可能性を査定するために、本発明者らは、MCF-7およびHeLaがん細胞への添加後に両シグナルを経時的に追跡した。注目すべきことに、試験された両細胞株において、インキュベーションの最初の90分間の間、TRAPケージは、そこでのAlexa-647シグナルの強い局在によって示されるように、主に細胞境界に存在し(
図4a、9a)、GFPシグナルはほとんど検出不能であった(
図4b、9b)。しかしながら、インキュベーションの3時間後、TRAPケージ・シグナル(Alexa-647)はより弱くなり、細胞内により一様に分布するように見え、一方でGFPシグナルは、TRAPケージからのその放出におそらく起因してはっきりと検出可能であった(
図4a、bおよび
図9a、b)。
【0164】
実施例6.GFP(-21)蛍光に対するAlexa-647の影響
GFP(-21)蛍光に対するAlexa-647の潜在的影響(
図6a、中央のパネルによって示唆される)を査定するために、本発明者らは、カーゴを充填されたTRAPケージを共焦点顕微鏡イメージングによって比較し、比較されたケージは、PTD4ペプチドのみで装飾されたまたは十分に装飾された(PTD4およびAlexa-647)(
図10a)。簡潔には、細胞を、材料および方法に記載されるように、それぞれのサンプルで処理した。次に、上で記載されるプロトコールに従って、細胞を固定しかつ染色した。緑色チャネルにおける蛍光強度を、ImageJを用いて定量した。平均蛍光強度の算出(
図10b)は、各視野からのバックグラウンド・シグナルを考慮に入れた。
【0165】
付加的に、十分に装飾されたTRAPケージ内にカプセル化されたGFP(-21)の溶液中蛍光を、RF-6000 Shimadzu(登録商標)分光蛍光光度計を使用して、Alexa-647なしのTRAPケージ内のカーゴの蛍光と比較した。
図10cに示されるように、TRAPケージ上のAlexa-647色素の存在は、そのカーゴの蛍光のおよそ30%の低下をもたらす。
【0166】
実施例7.遺伝学的融合によりタンパク質カーゴをTRAPケージに充填する
効率的なタンパク質パッケージングを、ケージを形成するTRAPへのゲストの遺伝学的融合によって達成した。初回モデルとして、本発明者らは、遠赤色蛍光タンパク質mCherryを採用した(
図11a)。N末端にHisタグ付けされた蛍光タンパク質を、会合した場合に内部に面するTRAP
K35CN末端に遺伝学的に融合した。1個の11-mer TRAP単位へのこれらの蛍光タンパク質での過度の修飾は、立体障害に起因してケージ会合を妨げ得ることから、融合タンパク質を、Escherichia coli宿主細胞において非修飾TRAP
K35Cと共産生し、個々の転写レベルは、異なる誘導因子であるそれぞれテトラサイクリンおよびイソプロピル-β-
D-チオガラクトシド(IPTG)によって制御され得る。この共産生システムを使用して、TRAP環あたりのmCherryの数は、テトラサイクリンの濃度を変更することによって十分に調節され得る。mCherryに融合したパッチワークTRAP環を、次いで、Au(I)を使用してケージに会合させた(
図11b)。同じ手法を使用して、TRAPケージに1種を上回るタイプのカーゴタンパク質を充填し得る。
【0167】
タンパク質産生:
パッチワークを産生するために、TRAP環を、pACTet_H-mCherry-TRAP-K35CおよびpET21_TRAP-K35Cで共形質転換した。タンパク質発現を、0.2mMイソプロピル-β-d-チオガラクトピラノシドおよびテトラサイクリン(8ng/ml)の添加によって誘導した。超音波処理による細胞溶解の後、パッチワークTRAP環を、次いで、Ni-ニトリロ三酢酸(NTA)アフィニティー・クロマトグラフィー、それに続くSuperdex 200 Increase 10/300 GLカラムを使用したSECを使用して単離した。
【0168】
ケージ会合および特徴付け:
TRAPケージの形成を、600mM NaClを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)中にて、mCherryを含有する精製されたTRAP環およびクロロ(トリフェニルホスフィンモノスルホキシド)金(I)-(TPPMS-Au(I)-Cl)の等モル量を混合することによって行い、室温で一晩保った。ゲストタンパク質化学量論を、吸光度比280/587nmを使用して判定した。単離されたケージの形態学を、上で記載されるプロトコールを用いて、ネガティブ染色TEMを使用して調べた。
【0169】
細胞透過性ペプチドを用いたmCherry装飾を有するTRAPケージ:
マレイミド部分を、6-マレイミドヘキサン酸およびDIC/オキシマ・カップリング・プロトコールを使用して、樹脂上のペプチドのN末端に導入した。0.5mM 6-マレイミドヘキサン酸(maleimidehexanoic)-PTD4またはHA/E2(25μl、0.5mM)ペプチドを、mCherryを充填されたTRAPケージ(75μl、0.3mg/ml)と混合し、450rpmで連続的に撹拌しながら、室温で一晩インキュベートした。コンジュゲーション効率を、ネイティブPAGEおよび蛍光ゲル・イメージングによって検証した。装飾されたTRAPケージの分子量の変化は、ネイティブPAGEにおいて観察されるバンド・シフトをもたらす。
【0170】
実施例9.遺伝学的融合により2種の異なるタンパク質カーゴをTRAPケージに充填する
1種を上回るタイプのタンパク質をTRAPケージに充填することが可能である。フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)のそれぞれドナーおよびアクセプターとして働く2種の蛍光タンパク質mOrange2およびmCherryを、TRAP単量体のN末端への各カーゴタンパク質の遺伝学的融合によりカプセル化した。融合タンパク質を、Escherichia coli宿主細胞において非修飾TRAPK35Cと共産生し、個々の転写レベルは、異なる誘導因子であるテトラサイクリンおよびイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)によって制御され得る。添加される発現誘導因子の量を最適化して、ケージ形成過程の間の立体障害を避けることを可能にする、TRAP環あたり0.3個のmOrange2および1個のmCherryタンパク質を獲得した。
【0171】
カーゴ修飾されたTRAP環を、次いで1:1モル比で混合し、Au(I)-またはDTMEのいずれかを添加して、ケージ会合を促進した(
図12a)。
【0172】
結果として生じたケージを、次いでサイズ排除クロマトグラフィーによって精製し、蛍光検出およびTEMイメージングと組み合わされたネイティブPAGEによって分析した(
図12b、c)。ネイティブPAGEにより、532nmにおける蛍光励起(発光610nm)によって見られ得る両蛍光性カーゴを用いたTRAPケージのカプセル化の成功が確認された(
図12b)。
【0173】
TEMイメージングは、カーゴ修飾されたTRAP環の混合物を用いたその会合後に、カーゴをはっきりとパッケージされたTRAPケージの単分散集団を示した。結果として生じたものは、Au(I)またはDTMEにより誘導された空のケージと比較してそれらの形態学を保持した(
図12c)。
【0174】
TRAPケージにごく接近したmOrange2およびmCherryタンパク質の存在は、エネルギーが、励起されたフルオロフォアから別の分子に移動する物理的過程であるフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を可能にするはずである。タンパク質ケージの内側にカプセル化された蛍光タンパク質間のエネルギー移動はすでに記載されているが、人工タンパク質ケージの解体反応速度論のモニタリングに適用されたことはない。
【0175】
TRAPケージ
DTMEおよびTRAPケージ
Au(I)の内側のmOrange2およびmCherryタンパク質間のFRETの効率を査定するために、mOrange2に対する励起値を使用して、スペクトルデータを集めた。すべてのスペクトルデータをmOrange2蛍光ピークで正規化し、mCherryとの共局在を、蛍光強度比の相対値によって判断した。蛍光スペクトルを、FRETペアをパッケージされたTRAPケージに対してだけでなく、mCherryまたはmOrange2タンパク質のいずれかのみをカプセル化したTRAPケージ
Au(I)/DTMEである対照サンプルに対しても測定し、後に溶液中で混合した。そのような対照サンプルは、遠いケージ内にカプセル化されて、フルオロフォアが互いに離れているためFRETを示し得ない。実際、FRETペアをパッケージされたTRAPケージ
Au(I)およびTRAPケージ
DTMEのスペクトルは、相当する対照サンプルと比較して、610nmにおけるmCherry発光のおよそ1.5倍高いシグナルを示し(
図13a、b)、それは、DTMEおよびAu(I)により誘導されたTRAPケージの両方の内側でmOrange2とmCherryとの間の効率的なエネルギー移動を示す。
【0176】
タンパク質産生:
E.coli系統BL21(DE3)細胞を、pACTet_H-mOrange-TRAPK35CまたはpACTet_H-mCherry-TRAP-K35Cのいずれか、およびpET21_TRAP-K35Cで共形質転換した。細胞を、アンピシリンおよびクロラムフェニコールを補給された100ml LB培地中にて37℃でOD600=0.5~0.7まで成長させた。この時点で、タンパク質発現を、0.2mM IPTG、およびpACTet_H-mCherry-TRAP-K35Cの場合には10ng/mlのテトラサイクリン、またはpACTet_H-mOrange-TRAP-K35Cの場合には30ng/mlのテトラサイクリンの添加によって誘導し、その後に25℃で20時間のインキュベーションが続いた。次いで、細胞を、5,000×gで10分間の遠心分離によって収穫した。細胞ペレットを、精製まで-80℃で保管した。ペレットを、DNase Iおよびリゾチーム、1錠のプロテアーゼ阻害剤カクテル、ならびに2mM DTTを補給された40ml溶解緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、600mM NaCl、10mMイミダゾール、pH7.4)に再懸濁し、室温で30分間撹拌した。次いで、サンプルを超音波処理し、10,000×g、4℃で20分間の遠心分離によって浄化した。次いで、上清を、重力流カラムにおいて溶解緩衝液中であらかじめ平衡化された4ml Ni-NTA樹脂とともに20分間インキュベートした。次いで、樹脂を、20および40mMイミダゾールを含有する溶解緩衝液中で、10カラム体積を上回って洗浄した。Hisタグ付けされたタンパク質を、500mMイミダゾールを含有する5mlの50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を使用して溶出した。次いで、タンパク質サンプルを、Amicon Ultra-15遠心式フィルター・ユニット(50k分子量カットオフ(MWCO)、Merck Millipore)を使用して、以降本明細書において2×PBS-Eと称される2×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)+5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)に緩衝液交換した。次いで、タンパク質を、0.8ml/分の流速で、Superdex 200 Increase 10/300 GLカラム(GE Healthcare)を使用したサイズ排除クロマトグラフィーに供した。548nmまたは587nmで吸収を示す主なピークをプールし、Amicon Ultra-15(50k MWCO)を使用して濃縮した。タンパク質純度をSDD-PAGEによってチェックし、タンパク質濃度を、減衰係数:εmCherry 587=72,000M-1cm-1、εmOrange 548=58,000M-1cm-1、εTRAP 280=8250M-1cm-1を使用して、UV-1900 UV-Vis分光光度計(島津製作所)を使用して測定された吸光度によって判定した(http://expasy.org/tools/protparam.html)。タンパク質を、使用まで4℃で保管した。
【0177】
ケージ会合および精製:
架橋剤により誘導されたケージ会合に関しては、2×PBS-E中のTRAP(K35C/R64S)(100~500μM)を、5倍モル過剰のDTMEまたはBMHのいずれかと混合し、室温で1時間撹拌した。溶液中の最終DMSO濃度を12.5%以下(no greater than)に保った。反応後、水溶液中での架橋剤の低い溶解度におそらく起因した不溶性画分を、12,000×gで5分間の遠心分離によって除去した。次いで、上清を、AKTA purifier FPLC(GE Healthcare)にて、0.5ml/分の流速で、Superose 6 Increase 10/300 GLカラム(GE Healthcare)を使用したサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。架橋したTRAPケージを含有する画分をプールし、Amicon Ultra-4(100k MWCO)遠心式フィルター・ユニットを使用して濃縮した。獲得された架橋したTRAPケージの典型的な収量はおよそ20%であった。金(I)により誘導されたTRAPケージの形成および精製を、以前に記載されるように実施した(1)。部分的に会合したケージからサンプルを精製するサイズ排除クロマトグラフィーの前に付加的なNi-NTA精製工程を用いて、架橋したおよび金(I)により誘導されたケージの両方に関して記載されるのと同じプロトコールを使用して、融合タンパク質を用いたケージ形成を実施した(ケージの内側で十分に保護されていない、Hisタグ付けされたmCherryおよびmOrange2は、Ni-NTAカラムに結合する)。カプセル化されたゲストのタンパク質濃度および比を、以前に報告されたもの(4)の類似法を使用して、280/548nmまたは280/587nmにおける吸光度比を使用して推定した。算出に使用された減衰係数は、εmCherry 587=72000M-1cm-1、εmOrange2 548=58000M-1cm-1、εTRAP 280=8250M-1cm-1であった。mCherryとmOrange2との間のスペクトル重複に起因して、両方のカプセル化されたゲストの濃度を適正に算出するために、TRAPへの融合なしのmCherryの548/587nmにおける吸光度比を使用して、mCherry減衰係数も548nmにおいて推定した(εmCherry 548=42538M-1cm-1)。同じように、280nmにおけるmCherryおよびmOrange2の減衰係数を、それぞれεmCherry 280=56744M-1cm-1およびεmOrange2 280=52200M-1cm-1として実験的に判定した。会合したケージの形態学的忠実度を、ネガティブ染色TEMおよびネイティブPAGE分析によって確認した。
【0178】
蛍光測定:蛍光スペクトルを、RF-6000蛍光分光光度計(島津製作所)にて、1-cm光路長のポリスチレン・キュベットにおいて2×PBS-E中70nM mOrange2を使用して、室温で取得した。タンパク質を510nmで励起し、発光を530~700nmの波長域にわたって走査した。獲得されたスペクトルを、mOrange2蛍光ピークに対して正規化した。各測定の後、10mM DTTをサンプルに添加して、完全なケージ解体を誘発した。
【0179】
【0180】
実施例10.イソペプチド結合形成を介してタンパク質カーゴをTRAPケージに充填する
遺伝学的融合を使用した堅牢でかつ一般的なシステムにもかかわらず、このストラテジーは、ゲストタンパク質をAu(I)またはマレイミド架橋剤に曝露する要件において依然として欠点を抱える。この手順は、ゲストタンパク質が、活性に重要である遊離システイン残基を含有する場合、例えばシステイン・プロテアーゼの場合に、特に問題があり得る。問題を克服するために、本発明者らは、SpyTag/SpyCatcherシステムを使用した会合後担持システムを考案し、13アミノ酸ペプチドのSpyTagはタンパク質SpyCatcherと相互作用して、イソペプチド結合を自然発生的に形成する(参照により本明細書によって組み入れられる、Zakeri Bら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2012、109、690~697)。タンパク質ケージに充填する文脈において、2種のストラテジーが使用され得る(
図14a)。ストラテジー1では、TRAPケージの内壁がSpyCatcherを持ち、一方でカーゴがSpyTagを持する。第2のストラテジーでは、TRAPケージの内壁がSpyTagを持ち、一方でカーゴがSpyCatcherを持する。本発明者らは、まずTRAPケージにおけるGFPの捕捉のために、この手法に基づいて様々な構築物を設計した(
図14b)。ストラテジー2に関しては、SpyCatcherを、TRAPのN末端または内腔に面するループ(具体的には47と48との間)のいずれかに導入した。すべての宿主TRAPは、精製を容易にするヘキサヒスチジンタグを備え、一方でタグは、カルボキシペプチダーゼまたはSUMOプロテアーゼのいずれかを使用して切断除去されて、それぞれSpyT-TRAPまたはSpyC-TRAPと称される、N末端にSpyTagまたはSpyCatcherを所有するTRAP-K35C変種、ならびにTRAP-ループSpyCと称される、内腔ループにSpyCatcherを有するものを産出し得る。
【0181】
SpyCatcherを所有するTRAP変種を、実施例9に記載されるように、タグなしのTRAP-K35Cとともに宿主細菌において共産生して、パッチワーク環を産出した。過度のSpyCatcher部分に起因した不十分なケージ形成を避けるために、本発明者らは、SpyCatcher融合変種の遺伝子発現レベルを調節する2つの濃度10または30ng/mLのテトラサイクリンを試験した。融合体の変化に富んだ含有量を有するパッチワーク環の産生ならびにSUMOプロテアーゼによるHisタグの切断を、SDS-PAGE分析によって確認した(
図15a)。リン酸緩衝液におけるAu(I)の添加があると、すべての変種はケージ形成を示し、一方で会合効率は、緩衝液のイオン強度を増加させることによってさらに増強した(
図15b)。会合したケージの単離後、それらを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中にて、SpyTagを備えたGFP(SpyTag-GFP)の変化に富んだ濃度と混合した。SDS-PAGE(
図16a)およびネイティブPAGE(
図16b)を使用した分析によって判断される、イソペプチド形成ならびに宿主-ゲスト結び付きがすべての変種に関して観察され、ゲスト・パッケージングの成功を示した。しかしながら、SECおよびTEMを使用した、30ng/mLテトラサイクリンから獲得されたSpyC-TRAPケージ・サンプルのさらなる分析は、空のTRAPケージと比較して溶出時間のわずかなシフト、およびケージ会合体の外部での何らかの物体を示し、ゲストGFPが、ケージから部分的に漏出され得ることを示唆した(
図17)。その一方で、そのような漏出は、TRAP-ループSpyCケージに関して観察されなかった。単離された充填されたケージのUV-Vis吸光度は、これらのTRAPケージが、最高約28個のGFP分子を担持し得、一方でパッケージング密度は、細菌産生におけるテトラサイクリン濃度またはカプセル化過程における混合比のいずれかを変化させることによって制御され得ることを明らかにした。TRAP-SpyCatcher融合体とは対照的に、ストラテジー1は、SpyT-TRAP変種が凝集傾向を示し、ゆえに効率的なAu(I)媒介性ケージ形成が観察されなかったことから困難であることが見出された(
図17c)。すべてを合わせると、TRAP-ループSpyC変種が、ゲスト・パッケージングのための最も堅牢でかつ効率的な変種であると結論付けられ得る。
【0182】
この方式で実証された第2のゲストは、SpyTag付けされたネオロイキン-2/15であり(参照により本明細書によって組み入れられる、Silva DAら、Nature、2019、565、186~191)、それも、内腔にSpyCatcherを所有するTRAPケージ内に担持されることに成功した。光開口性TRAPは、2種の変異K35CおよびR64Sを含有しかつC末端の2個のリジン残基d73Kおよびd74Kを欠く変種と、TRAP-ループSpyCとから構成され、TRAP環は、光切断性架橋剤1,2-ビスブロモメチル-3-ニトロベンゼン(BBN)を用いて互いに接続された(
図18)。GFPの場合と同様に、SpyTag付けされたNL-2をTRAPケージと混合し、充填されたケージをサイズ排除クロマトグラフィーによって単離した(
図19a)。ネガティブ染色TEMおよびSDS-PAGEを使用した後続の分析は、NL-2タンパク質が、イソペプチド結合形成を介してTRAP内にパッケージされることに成功したことを明らかにした(
図19b)。
【0183】
HEK-Blue IL-2細胞アッセイを使用して、TRAPケージ内にカプセル化されたSpyTag-NL-2の特性を査定した。HEK-Blueとは、そのシグナル伝達経路と合わせたヒトIL-2受容体と、付加的な分泌型胚性アルカリ・ホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子とを安定して共発現するように操作されたHEK293T細胞のタイプである。IL-2受容体(IL-2R)へのIL-2またはNL-2の結合は、転写活性化およびSEAPの分泌をもたらすシグナル伝達カスケードの開始につながり、比色法によるそのモニタリングを可能にする。
【0184】
HEK-Blue細胞を96ウェル・プレートに播種した。翌日、NL-2/15をカプセル化されたおよび空のUV-光切断性SpyCatcher-TRAPケージ・サンプルに、10mMシステイン(クエンチャー)を添加し、UV光で10分間処理した。処理サンプルおよび対照を、pM域の様々な濃度まで細胞培地(DMEM)に希釈した。対照サンプルは、UV処理前および後の、非コンジュゲートSpyTag-NL-2および購入されたヒトIL-2、TRAP環とコンジュゲートしたSpyTag-NL-2、および空のTRAPケージを含んだ。細胞を24時間刺激し、それに続いて、分泌型SEAPの量を査定することを可能にするQuanti Blueアッセイを実施した。
【0185】
SpyTag-NL-2、hIL-2、およびTRAP-NL-2対照サンプルで処理されたHEK-Blue細胞は、刺激後に非常に同様のレベルの産生されたSEAPを示し、それは、IL-2R結合が、TRAP環へのNL-2/15のコンジュゲーション、およびSpyTagでのその修飾によって影響を受けないことを示唆する(
図20a)。空のTRAPケージを用いた細胞の処理は、サンプルのUV照射前または後にいかなるシグナル変換ももたらさなかった(
図20b)。
【0186】
SEAPの産生は、UV照射後の、NL-2を充填されたTRAPケージを用いた処理後に目立った(
図20b)。UV光処理なしのサンプルも、IL-2Rを通じてしかしはるかにより低いレベルでシグナル変換の能力があった。
【0187】
タンパク質産生:
TRAP-K35C(または、NL-2カプセル化(encpsulation)に関しては、TRAP-K35C、R64S、d73K、d74K)とともに、SUMOの下流または残基47と48との間のいずれかに、K35C変異、N末端His6-SUMO、およびSpyCatcherを含有するTRAP変種から構成されるパッチワーク構造を、mCherry融合に関するものと本質的に同じプロトコールを使用して産生した。テトラサイクリン(10または30ng/mL)およびITPG(0.2mM)を、タンパク質発現の誘導に使用した。超音波処理による細胞溶解の後、融合タンパク質を、Ni-NTAアフィニティー・クロマトグラフィーを使用して可溶性画分から精製した。次いで、His6-SUMO単位を、SUMOプロテアーゼ1(総タンパク質についての25単位/mg)を用いた4℃で一晩の処理によって全長融合体から切断し、その後に、未反応種およびhisタグ付けされたプロテアーゼを除去するためにNi-NTAアガロース樹脂を用いた処理が続いた。所望のパッチワーク会合体をサイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。タンパク質の忠実度ならびに11merのTRAP環あたりのSpyCatcherの数を、SDS-PAGE分析におけるバンド強度比を使用して推定した。
【0188】
H-SpyT-GFPまたはH-SpyT-NL-2と称される、N末端His6、ならびにSpyTag付けされたGFPおよびネオロイキン-2/15を、T7プロモーターおよびlacオペロン・システムの制御下に、ColE複製の起点、カナマイシン耐性遺伝子、lacリプレッサー、およびH-SpyT-GFPまたはH-SpyT-NL-2を有するpET28ベースのプラスミドであるpET28_H-SpyT-GFPまたはpET28_H-SpyT-NL-2で形質転換されたE.coli BL21(DE3)系統を使用して産生した。タンパク質を、0.2mM IPTGを使用して25℃で20時間発現させ、Ni-NTAアフィニティー・クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製した。
【0189】
ケージ会合および特徴付け:SpyCatcherを含有するパッチワークTRAP環(TRAP単量体について400μM)を、600mM NaCl(TRAP-K35C、R64S、d73K、d74Kを含有するものに関しては2M NaCl)を含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)中TPPMS-Au(I)-Cl(200μM)と混合し、室温で一晩保った。会合したケージを、次いでサイズ排除クロマトグラフィーを使用して単離した。光開口性ケージに関しては、Au(I)媒介性ケージ(TRAP単量体について200μM)に、DMF(最終5%)中1,2-ブロモメチル-3-ニトロベンゼン(300μM、3当量(euiv.))を添加し、室温で1時間撹拌した。次いで、β-メルカプトエタノール(4μL)を反応に添加し、室温で30分間さらに撹拌して、未反応のベンジルブロミドをクエンチし、Au(I)を除去した。これらの小分子反応物を、Amicon ultra-4遠心式ユニット(30,000分子量カットオフ)を使用した限外濾過によって除去し、結果として生じたケージを、さらなる精製なしでカプセル化に使用した。ケージあたりのSpyCatcherの数を、SDS-PAGE分析におけるバンド強度比を使用して推定した。単離されたケージの形態学を、上で記載されるプロトコールを用いてネガティブ染色TEMを使用して調べた。
【0190】
ゲスト担持(小規模):SpyCatcherを含有するパッチワークTRAP環(20μM、SpyCatcherについて)を、PBS中H-SpyT-GFP(0~20μM)と混合し、室温で一晩保った。その後、反応混合物を、SDS-PAGEおよびネイティブPAGEによって分析した。ネイティブPAGE分析に関しては、バンドを、Instant Blue染色、ならびにBiorad ChemiDoc MP撮像装置での青色光励起および発光フィルター(530/28nm)を使用した蛍光の両方を使用して可視化した。
【0191】
ゲスト担持(大規模):SpyCatcherを含有するパッチワークTRAP環(20μM、SpyCatcherについて)を、PBS中H-SpyT-GFP(20μM)またはH-SpyT-NL-2(40μM)と混合し、室温で一晩保った。次いで、ケージを、Superose 6 increase 10/300カラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーによって単離し、その後にTEMおよび分光分析が続いた。TEMイメージングを、上で記載されるように実施した。ケージあたりのゲストの数を、減衰係数:εGFP 488=52,700M-1cm-1、εGFP 280=26,850M-1cm-1、εTRAP 280=8250M-1cm-1を使用して、UV-1900 UV-Vis分光光度計(島津製作所)で測定された吸光度によって推定した(http://expasy.org/tools/protparam.html)。
【0192】
【0193】
HEK-Blue-IL-2レポーター細胞アッセイ
HEK-Blue-IL-2細胞を、10%FBS、100U/mLペニシリン、100ug/mLストレプトマイシン、および50ug/mLノルモシン(Normocin)を有するDMEM-高グルコース培地中で培養した。継代2の後、細胞に、HEK-Blue(商標)CLR Selectionおよびピューロマイシンも補給して、細胞における持続的な導入遺伝子発現を保証した。播種の前に、CLR selection培地を、10%FBS、100U/mLペニシリン、100ug/mLストレプトマイシン(P/S)、および50ug/mLノルモシンを有するDMEM-高グルコース培地に交換した。細胞を、培養瓶(VWR)の表面から細流(stream)によって引き離し、70×gで8分間遠心分離し、ノルモシン添加なしの2mlの新たな培地に再懸濁した。それらの数を査定するために、10μlの細胞懸濁液を計数プレート(BioRad)に移し、TC20全自動セルカウンター(BioRad)に置いた。細胞を、1×104個の密度で180ul培養培地中にて96ウェル培養プレート(VWR)に播種し、37℃および5%CO2において2時間インキュベートした。
【0194】
試験されたタンパク質を、10%FBSを有するDMEM-高グルコース中の10×ストック希釈物として調製した。翌日、HEK-Blue-IL-2細胞を、様々な濃度の20μlのタンパク質の添加によって刺激し、37℃および5%CO2において24時間インキュベートした。Quanti-Blue(商標)溶液を、滅菌H2O中でのQB-bufferおよびQB-Reagentの100×希釈によって調製し、光から保護して10分間穏やかに振とうしながらインキュベートした。180ulのQuanti-Blue(商標)溶液を、新たな96ウェル・プレートの各ウェルに移し、20μlのHEK-Blue-IL-2細胞上清を添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートした。分泌型胚性アルカリ・ホスファターゼ(SEAP)活性を、630nmにおける吸光度測定によって査定した。
【0195】
参考文献
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【国際調査報告】