(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】左心室補助装置を移植した患者の肺高血圧症を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20240214BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P9/12
A61K9/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551206
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2022054742
(87)【国際公開番号】W WO2022180194
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500226786
【氏名又は名称】アクテリオン ファーマシューティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH-4123 Allschwil,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】マーク ロッコ
(72)【発明者】
【氏名】モナ セレジ
(72)【発明者】
【氏名】キャロル ジャオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA42
(57)【要約】
本開示は、左心室補助装置(LVAD)移植患者における肺高血圧症を治療する方法、及びLVAD移植患者における心臓移植適格性を改善する方法を提供する。本方法は、治療的有効量のマシテンタン又はアプロシテンタンを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的有効量のマシテンタンを、それを必要とする患者に投与することを含む、左心室補助装置(LVAD)移植患者における肺高血圧を治療する方法であって、前記LVAD移植が、前記マシテンタンを投与する前の約90日以内である、方法。
【請求項2】
前記LVAD移植後及びマシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、25mmHg以上の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)、及び3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マシテンタンによる治療の開始前約14日以内に、前記患者が、25mmHg以上の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)、及び3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記LVAD移植が、前記マシテンタンによる治療を開始する45日超~約90日前である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、チャイルド-ピュークラスCの肝疾患を有さない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記LVAD移植後及びマシテンタンによる前記治療を開始する前に、前記患者が、3WU超~約7WUのPVRを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法はPVRを減少させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記PVRが、マシテンタンによる治療を受けていない、疾患診断が同レベルの患者集団と比較して少なくとも約10%減少する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記LVAD移植後及びマシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、約12mmHg超~約45mmHgの経肺勾配(TPG)を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、経肺勾配を減少させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記TPGが、マシテンタンによる治療を受けていない、疾患診断が同レベルの患者と比較して少なくとも約10%減少する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マシテンタンの治療的有効量が、約5mg~約15mgである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
マシテンタンの前記治療的有効量は、約10mgである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マシテンタンが、錠剤の形態で1日1回経口投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記マシテンタンの治療的有効量が、約60mg~約90mgである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記マシテンタンの量が、1日当たり10mgから、続いて、1日当たり約25mg~約50mgまで、続いて、治療的有効量の約60mg~約90mgまで用量増量される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1日当たり10mgのマシテンタンが、約15~約45日間投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1日当たり25mg~約50mgのマシテンタンが、約15~約45日間投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記マシテンタンの治療的有効量が、約75mgである、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記マシテンタンが、錠剤の形態で1日1回経口投与される、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
治療的有効量のアプロシテンタンを、それを必要とする患者に投与することを含む、左心室補助装置(LVAD)移植患者における肺高血圧を治療する方法であって、前記LVAD移植が、前記アプロシテンタンを投与する前の約90日以内である、方法。
【請求項22】
LVAD移植後及びアプロシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、25mmHg以上の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)、及び3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アプロシテンタンによる治療の開始前約14日以内に、前記患者が、25mmHg以上の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)、及び3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記LVAD移植が、前記アプロシテンタンによる治療を開始する45日超~約90日前である、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約100mg~1日当たり約1500mgである、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約100mg~1日当たり約1250mgである、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約300~約450mg、好ましくは1日当たり約325~約425mg、より好ましくは1日当たり約350~約400mg、最も好ましくは1日当たり約375mgである、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約125~約250mg、好ましくは1日当たり約150~約225mg、より好ましくは1日当たり約175~約200mg、又は1日当たり約187.5mgである、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約50mgから、続いて、1日当
たり約125~約250mg、好ましくは1日当たり約187.5mg、任意に続いて、1日当たり約300~約450mg、好ましくは1日当たり約375mgに漸増される、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
治療的有効量のマシテンタンを、それを必要とする患者に投与することを含む、左心室補助装置(LVAD)移植患者における心臓移植適格性を改善する方法であって、前記LVAD移植が、前記マシテンタンを投与する前の90日以内である、方法。
【請求項31】
前記LVAD移植後及びマシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記マシテンタンによる治療の開始前約14日以内に、前記患者が、3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記LVAD移植が、マシテンタンによる治療を開始する45日超~約90日前である、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、患者のPVRを3WU未満に低下させる、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記マシテンタンの治療的有効量が、約5mg~約15mgである、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記マシテンタンの治療的有効量が、約10mgである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記マシテンタンが、錠剤の形態で1日1回経口投与される、請求項30~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記マシテンタンの治療的有効量が、約60mg~約90mgである、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記マシテンタンの量が、1日当たり10mgから、続いて、1日当たり約25mgから約50mgまで、続いて、治療的有効量の約60mgから約90mgまで用量増量される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記1日当たり10mg用量のマシテンタンが、約15日間~約45日間投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記マシテンタンの治療的有効量が、約75mgである、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記マシテンタンが、錠剤の形態で1日1回経口投与される、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記患者が、心臓移植待機リストに載っている、請求項30~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、前記患者を前記待機リスト上に移動させるか、又は前記待機リスト上に残す、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
治療的有効量のアプロシテンタンを、それを必要とする患者に投与することを含む、左心室補助装置(LVAD)移植患者における心臓移植適格性を改善する方法であって、前記LVAD移植が、前記アプロシテンタンを投与する前の90日以内である、方法。
【請求項46】
前記LVAD移植後及びアプロシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記アプロシテンタンによる治療の開始前約14日以内に、前記患者が、3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記LVAD移植が、アプロシテンタンによる治療を開始する45日超~約90日前である、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記患者が、心臓移植待機リストに載っている、請求項45~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記方法が、前記患者を前記待機リスト上に移動させるか、又は前記待機リスト上に残す、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約100mg~1日当たり約1500mgである、請求項45~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約100mg~1日当たり約1250mgである、請求項45~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約300~約450mg、好ましくは1日当たり約325~約425mg、より好ましくは1日当たり約350~約400mg、最も好ましくは1日当たり約375mgである、請求項45~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約125~約250mg、好ましくは1日当たり約150~約225mg、より好ましくは1日当たり約175~約200mg、最も好ましくは1日当たり約187.5mgである、請求項45~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約50mgから、続いて、1日当たり約125~約250mg、好ましくは1日当たり約187.5mg、任意に続いて、1日当たり約300~約450mg、好ましくは1日当たり約375mgに漸増される、請求項45~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
ある量のマシテンタンを投与することを含む、左心室補助デバイス(LVAD)移植患者における肺高血圧を治療するマシテンタンであって、前記LVAD移植が、前記マシテンタンを投与する前の約90日以内である、マシテンタン。
【請求項57】
前記LVAD移植後及びマシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、25mmHg以上の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)、及び3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項56に記載のマシテンタン。
【請求項58】
前記マシテンタンによる治療の開始前約14日以内に、前記患者が、25mmHg以上
の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)、及び3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項56又は57に記載のマシテンタン。
【請求項59】
前記LVAD移植が、前記マシテンタンによる治療を開始する45日超~約90日前である、請求項56~58のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項60】
前記患者が、チャイルド-ピュークラスCの肝疾患を有さない、請求項56~59のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項61】
前記LVAD移植後及びマシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、3WU超~約7WUのPVRを有する、請求項56~60のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項62】
前記方法が、PVRを減少させる、請求項56~61のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項63】
前記PVRが、マシテンタンによる治療を受けていない、疾患診断が同レベルの患者と比較して少なくとも約10%減少する、請求項62に記載のマシテンタン。
【請求項64】
前記LVAD移植後及びマシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、約12mmHg超~約45mmHgの経肺勾配(TPG)を有する、請求項56~63のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項65】
前記方法が、経肺勾配を減少させる、請求項64に記載のマシテンタン。
【請求項66】
前記TPGが、マシテンタンによる治療を受けていない、疾患診断が同レベルの患者と比較して少なくとも約10%減少する、請求項65に記載のマシテンタン。
【請求項67】
前記マシテンタンの量が、約5mg~約15mgである、請求項56~66のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項68】
前記マシテンタンの量が、約10mgである、請求項67に記載のマシテンタン。
【請求項69】
前記マシテンタンが、錠剤の形態で1日1回経口投与される、請求項56~68のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項70】
前記マシテンタンの量が、約60mg~約90mgである、請求項56~66のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項71】
前記マシテンタンの量が、1日当たり10mgから、続いて、1日当たり約25mg~約50mgまで、続いて、約60mg~約90mgの量まで用量増量される、請求項70に記載のマシテンタン。
【請求項72】
前記1日当たり10mgのマシテンタンが、約15~約45日間投与される、請求項71に記載のマシテンタン。
【請求項73】
前記1日当たり25mg~約50mgのマシテンタンが、約15~約45日間投与される、請求項71に記載のマシテンタン。
【請求項74】
前記マシテンタンの量が、約75mgである、請求項70~73のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項75】
前記マシテンタンが、錠剤の形態で1日1回経口投与される、請求項70~74のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項76】
ある量のアプロシテンタンを投与することを含む、左心室補助デバイス(LVAD)移植患者における肺高血圧を治療するアプロシテンタンであって、前記LVAD移植が、前記アプロシテンタンを投与する前の約90日以内である、アプロシテンタン。
【請求項77】
前記LVAD移植後及びアプロシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、25mmHg以上の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)、及び3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項76に記載のアプロシテンタン。
【請求項78】
前記アプロシテンタンによる治療の開始前約14日以内に、前記患者が、25mmHg以上の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)、及び3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項76又は77に記載のアプロシテンタン。
【請求項79】
前記LVAD移植が、前記アプロシテンタンによる治療を開始する45日超~約90日前である、請求項76~78のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項80】
前記アプロシテンタンの量が、1日当たり約100mg~1日当たり約1500mgである、請求項76~79のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項81】
前記アプロシテンタンの量が、1日当たり約100mg~1日当たり約1250mgである、請求項76~80のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項82】
前記アプロシテンタンの量が、1日当たり約300~約450mg、好ましくは1日当たり約325~約425mg、より好ましくは1日当たり約350~約400mg、最も好ましくは1日当たり約375mgである、請求項76~81のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項83】
前記アプロシテンタンの量が、1日当たり約125~約250mg、好ましくは1日当たり約150~約225mg、より好ましくは1日当たり約175~約200mg、又は1日当たり約187.5mgである、請求項76~81のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項84】
アプロシテンタンの量が、1日当たり約50mgから、続いて、1日当たり約125~約250mg、好ましくは1日当たり約187.5mg、任意に続いて、1日当たり約300~約450mg、好ましくは1日当たり約375mgに漸増される、請求項76~81のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項85】
ある量のマシテンタンを投与することを含む、左心室補助装置(LVAD)移植患者における心臓移植適格性を改善するマシテンタンであって、前記LVAD移植が、前記マシテンタンを投与する前の90日以内である、前記マシテンタン。
【請求項86】
前記LVAD移植後及びマシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項85に記載のマシテンタン
。
【請求項87】
前記マシテンタンによる治療の開始前約14日以内に、前記患者が、3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項85又は86に記載のマシテンタン。
【請求項88】
前記LVAD移植が、前記マシテンタンによる治療を開始する45日超~約90日前である、請求項85~87のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項89】
前記マシテンタンが、前記患者のPVRを3WU未満に低下させる、請求項85~88のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項90】
前記マシテンタンの量が、約5mg~約15mgである、請求項85~89のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項91】
前記マシテンタンの量が、約10mgである、請求項90に記載のマシテンタン。
【請求項92】
前記マシテンタンが、錠剤の形態で1日1回経口投与される、請求項85~91のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項93】
前記マシテンタンの量が、約60mg~約90mgである、請求項85~89のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項94】
前記マシテンタンの量が、1日当たり10mgから、続いて、1日当たり約25mg~約50mg、続いて、約60mg~約90mgの量で用量増量される、請求項93に記載のマシテンタン。
【請求項95】
前記1日当たり10mg用量のマシテンタンが、約15日間~約45日間投与される、請求項94に記載のマシテンタン。
【請求項96】
前記マシテンタンの量が、約75mgである、請求項93~95のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項97】
前記マシテンタンが、錠剤の形態で1日1回経口投与される、請求項93~96のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項98】
前記患者が、心臓移植待機リストに載っている、請求項85~97のいずれか一項に記載のマシテンタン。
【請求項99】
前記マシテンタンが、前記患者を前記待機リスト上に移動させるか、又は前記待機リスト上に残す、請求項98に記載のマシテンタン。
【請求項100】
ある量のアプロシテンタンを投与することを含む、左心室補助装置(LVAD)移植患者における心臓移植適格性を改善するアプロシテンタンであって、前記LVAD移植が、前記アプロシテンタンを投与する前の90日以内である、アプロシテンタン。
【請求項101】
LVAD移植後及びアプロシテンタンによる治療を開始する前に、前記患者が、3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項100に記載のアプロシテンタン。
【請求項102】
前記アプロシテンタンによる治療の開始前約14日以内に、前記患者が、3WU(Wo
od単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する、請求項100又は101に記載のアプロシテンタン。
【請求項103】
前記LVAD移植が、アプロシテンタンによる治療を開始する45日超~約90日前である、請求項100~102のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項104】
前記患者が、心臓移植待機リストに載っている、請求項100~103のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項105】
前記方法が、前記患者を前記待機リスト上に移動させるか、又は前記待機リスト上に残す、請求項104に記載のアプロシテンタン。
【請求項106】
前記アプロシテンタンの量が、1日当たり約100mg~1日当たり約1500mgである、請求項100~105のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項107】
前記アプロシテンタンの量が、1日当たり約100mg~1日当たり約1250mgである、請求項100~106のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項108】
前記アプロシテンタンの量が、1日当たり約300~約450mg、好ましくは1日当たり約325~約425mg、より好ましくは1日当たり約350~約400mg、最も好ましくは1日当たり約375mgである、請求項100~107のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項109】
前記アプロシテンタンの量が、1日当たり約125~約250mg、好ましくは1日当たり約150~約225mg、より好ましくは1日当たり約175~約200mg、最も好ましくは1日当たり約187.5mgである、請求項100~107のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【請求項110】
前記アプロシテンタンの治療的有効量が、1日当たり約50mgから、続いて、1日当たり約125~約250mg、好ましくは1日当たり約187.5mg、任意に続いて、1日当たり約300~約450mg、好ましくは1日当たり約375mgに漸増される、請求項100~107のいずれか一項に記載のアプロシテンタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左心室補助装置を移植した患者の肺高血圧症を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
末期心不全(HF)は、心臓移植が最良の治療選択肢を提供する衰弱状態であるが、ドナー心臓の必要性は供給を大幅に上回る。左心室補助装置(LVAD)は、最初の承認以来、末期HF患者にとってますます頻繁に治療選択肢となってきている。LVADは、左側の血行動態変数を改善するが、LVADの移植後に生じる右心室不全(RVF)は、罹患率及び死亡率の主要な原因である。持続的に上昇した肺血管抵抗(PVR)は、LVAD移植後のRVFに関連する。
【0003】
LVAD移植後のPHの管理は、術前期間におけるRVFを防止するための措置から始まる。手術後、これらの患者におけるRVFと合併したPHの管理は、肺血管拡張薬の使用、心エコー検査誘導下でのポンプ速度の変更、及び難治性RVFの場合、右心室補助装置(RVAD)移植の考慮を含む。今日まで、標的化PAH療法は、この患者集団における無作為化比較試験から有効性及び安全性を実証していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LVAD移植後にPH患者においてPHを管理する療法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の実施形態では、本開示は、治療的有効量のマシテンタンを、それを必要とする患者に投与することを含む、左心室補助装置(LVAD)移植患者における肺高血圧を治療する方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療的有効量のアプロシテンタンを、それを必要とする患者に投与することを含む、LVAD移植患者における肺高血圧を治療する方法を提供する。
【0007】
更なる実施形態では、本開示は、治療的有効量のマシテンタンを、それを必要とする患者に投与することを含む、LVAD移植患者における心臓移植適格性を改善する方法を提供する。
【0008】
他の実施形態では、本開示は、治療的有効量のアプロシテンタンを、それを必要とする患者に投与することを含む、LVAD移植患者における心臓移植適格性を改善する方法を提供する。
【0009】
更なる実施形態では、本開示は、ある量のマシテンタンを投与することを含む、左心室補助装置(LVAD)移植患者における肺高血圧を治療するマシテンタンであって、LVAD移植が、マシテンタンを投与する前の約90日以内である、マシテンタンを提供する。
【0010】
他の実施形態では、本開示は、ある量のアプロシテンタンを投与することを含む、左心室補助デバイス(LVAD)移植患者における肺高血圧を治療するアプロシテンタンであって、LVAD移植が、アプロシテンタンを投与する前の約90日以内である、アプロシテンタンを提供する。
【0011】
更なる実施形態では、本開示は、ある量のマシテンタンを投与することを含む、左心室補助装置(LVAD)移植患者における心臓移植適格性を改善するマシテンタンであって、LVAD移植が、マシテンタンを投与する前の90日以内である、マシテンタンを提供する。
【0012】
更に他の実施形態では、本開示は、ある量のアプロシテンタンを投与することを含む、左心室補助デバイス(LVAD)移植患者における心臓移植適格性を改善するアプロシテンタンであって、LVAD移植が、アプロシテンタンを投与する前90日以内である、アプロシテンタンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1に記載される治療の概略図である。同図において、
aLVAD移植は、無作為化の日の前90日以内(両端を含む)に行われなければならず、無作為化は、RHCの認定後14日以内に行わなければならない。
b記録された重度の閉塞性肺疾患、中等度から重度の拘束性肺疾患、又は肺静脈閉塞性疾患を有する患者は除外される。
c全ての副次評価項目及び探索的評価項目は、ベースラインから12週目までの変化として計算される。
【
図2】実施例1の患者の配置を示すフローチャートである。
【
図3】3WU未満のPVRを達成する患者の割合を示す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示では、特に明示しない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形の言及を包含し、特定の数値への言及は、少なくともその特定の値を包含する。したがって、例えば、「材料(a material)」への言及は、少なくとも1つのこのような材料、及び当業者に既知のその等価物、及び類似のものへの言及である。
【0015】
値が、記述語「約」又は「実質的に」の使用によって近似値として表現されるとき、その特定の値は、別の実施形態を形成することが理解される。一般的に、用語「約」又は「実質的に」の使用は、開示する発明主題によって得ようとしている所望の特性に依存して変動し得る近似値を示すが、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈において解釈されるべきである。当業者は、これを日常的な問題として解釈することができる。一部の場合、特定の値に対して用いられる有効数字の数は、用語「約」又は「実質的に」の程度を決定する1つの非限定的な方法であり得る。他の場合、一連の値において用いられる漸次的変化を用いて、それぞれの値について用語「約」又は「実質的に」に利用可能な意図する範囲を決定することができる。存在する場合、全ての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。すなわち、範囲で記述される値への言及は、その範囲内の全ての値を含む。
【0016】
リストが提示される場合、特に指定しない限り、そのリストの各個々の要素及びそのリストの全ての組み合わせを別々の実施形態として解釈すべきであることを理解されたい。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」、又は「A、B、又はC」を含むと解釈されるべきである。
【0017】
別個の実施形態の文脈において明確性のために本明細書に記載される、本発明のある特定の特徴はまた、単一の実施形態内に組み合わされて提供されてもよいことが理解される。すなわち、明白に不適合であるか又は除外されない限り、それぞれ個別の実施形態は、任意の他の実施形態に適合すると見なされ、このような組み合わせは、別の実施形態であると考えられる。逆に、単一の実施形態に照らして簡潔にするために記載される本発明の
異なる特徴は、別々に又は任意の部分的組み合わせとして提供されてもよい。特許請求の範囲は、いずれかの任意選択的な要素を除外するように起案される場合もあることに更に留意されたい。したがって、この記載は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連する「だけ」、「のみ」などの排他的な用語の使用、又は「否定的」限定の使用に対する先行的限定の根拠として機能することを意図する。最後に、実施形態は、一連の工程の一部として又はより一般的な構造の一部として記載し得るが、各工程をそれ自体が独立する実施形態であると考えてもよい。
【0018】
方法
本明細書に記載される方法は、左心室補助装置(LVAD)を移植された患者における肺高血圧症(PH)を治療することに関する。このような患者は、移植後の右心不全及び死亡の危険性が増大するため、心臓移植の候補ではない。PHを有し続けるLVAD後の患者のほとんどにおいて、投薬は、標準治療として処方されることが多い。しかしながら、全てのLVAD後患者が追加のPH治療を必要とするわけではなく、追加の薬剤で不必要に治療されるか、又は一貫した効果を実証していない薬剤で治療される可能性がある。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、患者への不必要なPH薬剤の投与を防止し、代わりに、LVAD後PH薬剤を必要とする患者、例えば、持続性PHを有するLVAD後患者のみを治療することを目的とする。
【0019】
本明細書に記載される方法はまた、LVAD移植患者、特に、例えば、上昇したPVRに起因して心臓移植が禁忌である患者における心臓移植適格性を改善する。本明細書に記載されている方法は、患者が、同所性心臓移植の候補と見なされない状態から、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療後に心臓移植の候補として挙げられる状態への移行をもたらすことができる。既に心臓移植待機リストに登録されている進行性心不全患者の場合、3WU超のPVRの発生は、移植後RVF及び死亡のリスクに起因して、移植リストから外されることとなる。これらの方法は、移植適格性のために、PVRを好ましい範囲(3WU未満)に保つことができた。
【0020】
本明細書及び当技術分野で使用される場合、「肺高血圧症」及び「PH」という用語は互換的であり、患者が肺動脈において高血圧を有する一般的な状態を定義する。PHは、肺全体の非常に小さな動脈の直径が狭くなると発症し、それにより、肺を通る血流に対する抵抗が増加する。PHは、(i)肺動脈高血圧症(PAH)、(ii)左心疾患によるPH、(iii)肺疾患によるPH、(iv)慢性血餅(CTEPH)によるPH、又は(v)種々雑多な疾患によるPHを含むサブグループに分類される。いくつかの実施形態では、本方法は、望ましくはPAHを治療する。
【0021】
「肺動脈肺高血圧症」及び「PAH」という用語は互換的であり、肺の動脈の壁が引き締まって硬くなる慢性の肺高血圧症を定義する。いくつかの実施形態では、狭窄、すなわち、特発性肺高血圧症(iPAH)の根本的な病因は知られていない。PAHはまた、(i)家族性又は遺伝性PAH、(ii)薬物又は毒素によって引き起こされるPAH、(iii)結合組織病(強皮症又は狼瘡)、先天性心臓病、肝臓の高血圧、HIV、及び感染症(住血吸虫症)などの他の状態に関連するPAH、(iv)稀な血液状態(例えば、肺毛細管腫症)によって引き起こされるPAH、又は(v)乳児のPAH(新生児の持続性肺高血圧症)、を含むサブグループに分類される。患者におけるPAHの重症度は、一般に、分類システム、すなわち、世界保健機関(WHO)クラスシステムによって評価される。表1を参照。
【0022】
【0023】
したがって、本方法は、LVAD後の患者に対して、より良好な生活の質又は全生存を提供し得る。本明細書に記載される治療方法に適格な患者は、当業者、すなわち、主治医によって選択され得る。更なる実施形態では、患者は、重度の肝障害、例えば、チャイルド・ピュークラスCの肝疾患を有さない。当技術分野で知られているように、「チャイルド・ピュースコア」は、肝疾患の5つの臨床的尺度をスコア付けすることによって決定され、これらのスコアの合計は、患者をクラスA、B、又はCのいずれかに分類する。表2を参照。
【0024】
【0025】
他の実施形態では、患者は、気管支拡張薬投与後の予測値の約50%未満のFEV1に関連する、約0.7未満のFEV1/FVCとして定義される重度の閉塞性肺疾患を有さない。更なる実施形態では、患者は、予測値の約60%未満の全肺気量として定義される中等度から重度の拘束性肺疾患を有さない。更に他の実施形態では、患者は、肺静脈閉塞性疾患を有さない。更なる実施形態では、患者は透析を受けていない。他の実施形態では、患者のヘモグロビンは、約8.5g/dL超である。更なる実施形態では、患者のAST又はALTは、正常上限の約3倍未満である。更に他の態様では、患者のドップラー平均血圧は、約65mmHg超である。また更なる実施形態では、患者のGFRは、約30mL/分超である。
【0026】
適格な患者は、心臓移植待機リスト上にあってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、患者を待機リスト上に移動させる。他の実施形態では、本方法は、患者を待機リストに残す。あるいは、本方法は、患者を心臓移植待機リストに追加させる。
【0027】
本明細書で使用される「LVAD」という用語は、左心室補助装置を指す。LVADは、左心室(心臓の主ポンプ室)が血液を身体の残りの部分に送り出すのを助ける、電池式の機械ポンプである。本明細書で使用されるLVADは、(i)外科的に移植されたポンプ、(ii)流入カニューレ、(iii)流出グラフト、(iv)12時間までの寿命を有するバッテリ、(v)経皮ドライブライン、及び(vi)システムコントローラを含む、いくつかの構成要素を含む。いくつかの実施形態では、ポンプは、左心室への流入カニ
ューレ及び上行大動脈への流出グラフトを介して、心臓と並行して動作する。他の実施形態では、LVADは、連続流軸流ポンプ、遠心ポンプ、又は混合設計ポンプであり、ポンプは軸流であるが、血液は遠心ポンプのように流入に対して垂直に出る。LVAD器具は、当該技術分野において既知であり、HVAD(登録商標)(Medtronic)、HeartMate II(商標)(Abbott)、及びHeartMate 3(商標)(Abbott)を含むが、これらに限定されない。
【0028】
LVAD移植は、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療の開始前の約90日以内であることが望ましい。いくつかの実施形態では、LVAD移植は、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療の開始前の約90日、約80日、約75日、約70日、約65日、約60日、約55日、約50日、約45日、約40日、約35日、約30日、約25日、約20日、約15日、約10日、又は約10日以内である。更なる実施形態では、LVAD移植は、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前の、約5~約90日、約5~約80日、約5~約70日、約5~約60日、約5~約50日、約5~約40日、約5~約30日、約5~約20日、約5~約10日、約10~約90日、約10~約80日、約10~約70日、約10~約60日、約10~約50日、約10~約40日、約10~約30日、約10~約20日、約20~約90日、約20~約80日、約20~約70日、約20~約60日、約20~約50日、約20~約40日、約20~約30日、約30~約30~約90日、約30~約80日、約30~約70日、約30~約60日、約30~約50日、約30~約40日、約40~約90日、約40~約80日、約40~約70日、約40~約60日、約40~約50日、約45~約90日、約45~約80日、約45~約70日、約45~約60日、約50~約90日、約50~約80日、約50~約70日、約50~約60日、約60~約90日、約60~約80日、約60~約70日、約70~約90日、約70~約80日、又は約80~約90日以内である。他の実施形態では、LVAD移植は、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療の開始前の約90日以内である。更なる実施形態では、LVAD移植は、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前の45日超~約90日以内である。
【0029】
本方法は、治療的有効量のマシテンタン又はアプロシテンタンを、それを必要とする患者に投与することを含む。LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者は、約25mmHg以上の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)を有する。本明細書で使用される「安静時」という用語は、患者が活動していない、例えば、動きがない状態で座っている期間を指す。いくつかの実施形態では、患者は、約30mmHg、約35mmHg、約40mmHg、約45mmHg、約50mmHg、約55mmHg、約60mmHg、約65mmHg、約70mmHg、約75mmHg、約80mmHg、約85mmHg、約90mmHg、約95mmHg、又は約100mmHg以上のmPAPを有する。他の実施形態では、患者は、約30mmHg以上のmPAPを有する。更なる実施形態では、患者は、約40mmHg以上のmPAPを有する。
【0030】
患者はまた、LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、約18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)を有し得る。いくつかの実施形態では、患者のPAWPは、約18mmHg、約17mmHg、約16mmHg、約15mmHg、約14mmHg、約13mmHg、約12mmHg、約11mmHg、約10mmHg、約9mmHg、約8mmHg、約7mmHg、約6mmHg、又は約5mmHg以下である。更なる実施形態では、患者のPAWPは、約17mmHg以下である。更に他の実施形態では、患者のPAWPは、約15mmHg以下である。更なる実施形態では、患者のPAWPは、約12mmHg以下である。他の実施形態では、患者のPAWPは、約10mmHg以下である。
【0031】
患者は、LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する
前に、約3WU(Wood単位)を超える肺血管抵抗(PVR)を更に有し得る。特定の実施形態では、患者は、LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、約4WU、約5WU、約6WU、約6.5WU、約7WU、約8WU、又は約9WUのPVRを有する。他の実施形態では、患者は、約3超~約7WU、約3超~約6.5WU、約3超~約6WU、約3超~約5WU、約3超~約4WU、約4~約7WU、約4~約6WU、約4~約5WU、約5~約7WU、約5~約6WU、又は約6~約7WUのPVRを有する。
【0032】
LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者はまた、約25mmHg以上の安静時mPAP及び約18mmHg以下のPAWPを有し得る。更なる実施形態では、LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者は、約25mmHg以上の安静時mPAPを有し、約3WU超のPVRを有する。更に他の実施形態では、LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者は、約18mmHg以下のPAWP、約25mmHg以上の安静時mPAP、及び約3WU超のPVRを有する。更に別の実施形態では、LVAD移植後かつマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者は、約25mmHg以上の安静時mPAP、約18mmHg以下のPAWP、及び約3WU超のPVRを有する。
【0033】
LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者はまた、約12mmHgを超える経肺勾配(TPG)を有し得る。いくつかの実施形態では、LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者は、約15mmHg、約20mmHg、約25mmHg、約30mmHg、約35mmHg、約40mmHg、約45mmHg、約50mmHg、約55mmHg、約60mmHg、約65mmHg、又は約70mmHg以上のTPGを有する。更なる実施形態では、患者は、LVAD移植後かつマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、約12~約60mmHg、約12~約55mmHg、約12~約50mmHg、約12~約45mmHg、約12~約40mmHg、約12~約35mmHg、約12~約30mmHg、約12~約25mmHg、約12~約20mmHg、約15~約60mmHg、約15~約55mmHg、約15~約50mmHg、約15~約45mmHg、約15~約40mmHg、約15~約35mmHg、約15~約30mmHg、約15~約25mmHg、約20~約60mmHg、約20~約55mmHg、約20~約50mmHg、約20~約45mmHg、約20~約40mmHg、約20~約35mmHg、約20~約30mmHg、約25~約60mmHg、約25~約55mmHg、約25~約50mmHg、約25~約45mmHg、約25~約40mmHg、約25~約35mmHg、約30~約60mmHg、約30~約55mmHg、約30~約50mmHg、約30~約45mmHg、約30~約40mmHg、約35~約60mmHg、約35~約55mmHg、約35~約50mmHg、約35~約45mmHg、約40~約60mmHg、約40~約55mmHg、約40~約50mmHg、約45~約60mmHg、約45~約55mmHg、約50~約60mmHg、又は約55~約60mmHgのTPGを有する。他の実施形態では、LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者は、約12~約45mmHgのTPGを有する。
【0034】
LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者は、約18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)を更に有し得る。いくつかの実施形態では、LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者は、約17mmHg、約16mmHg、約15mmHg、約14mmHg、約13mmHg、約12mmHg、約11mmHg、約10mmHg、約9mmHg、約8mmHg、約7mmHg、約6mmHg、約5mmHg、約4mmHg、約3mmHg、約2mmHg、又は約1mmHg以下のPAWPを有し得る。いくつかの実施形態では、
LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者は、約1~約15mmHg、約1~約10mmHg、約1~約5mmHg、約5~約15、約5~約10mmHg、又は約10~約15mmHgのPAWPを有し得る。
【0035】
本方法は、患者のPVRを、例えば、正常範囲内のレベルまで低下させるのに有効であることが望ましい。例えば、本方法は、患者のPVRを約3WU未満に低下させるのに有効である。他の実施形態では、本方法は、患者のTPGを低減するのに有効である。例えば、本方法は、患者のTPGを約12mmHg未満に低下させるのに有効である。更なる実施形態では、本方法は、患者のPVR及びTPGを低減するのに有効である。例えば、本方法は、患者のPVRを約3WU未満に低下させ、患者のTPGを約12mmHg未満に低下させるのに有効である。
【0036】
典型的には、LVADの移植後、患者は、薬物の最初の投与前の最後の測定中に、右心カテーテル法(RHC)を介してPHのベースライン血行動態基準を満たす。特定の実施形態では、LVAD移植後及びマシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を開始する前に、患者は、25mmHg以上の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)、及び3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する。より具体的には、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療の開始前約14日以内に、患者は、25mmHg以上の安静時の平均肺動脈圧(mPAP)、18mmHg以下の肺動脈楔入圧(PAWP)、及び3WU(Wood単位)超の肺血管抵抗(PVR)を有する。そのようなタイミングを確立することは、例えば、患者への不必要なPH薬剤の投与を回避し、代わりに、LVAD後PH薬剤を必要とする患者を治療し得る。
【0037】
本方法はまた、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を受けていない、疾患診断が同レベルの患者と比較して、患者のPVRを少なくとも約10%減少させるのに有効であり得る。本明細書で使用される「患者集団」という用語は、統計的に信頼できる結果を提供する患者の数を指す。いくつかの実施形態では、患者集団は、2人以上の患者である。例えば、患者集団は、実施例1に記載される患者の集団を含む。他の実施形態では、患者集団は、約10人の患者、約50人の患者、約100人の患者、約150人の患者、約200人の患者、約250人の患者、約300人の患者、約350人の患者、約400人の患者、約450人の患者、約500人の患者、約550人の患者、約600人の患者、約650人の患者、約700人の患者、約750人の患者、約800人の患者、約850人の患者、約900人の患者、約950人の患者、約1000人の患者、又はそれ以上である。更なる実施形態では、患者集団は、約50人以上の患者である。更に他の実施形態では、患者集団は、約100人以上の患者である。なお更なる実施形態では、患者集団は、約150人以上の患者である。他の実施形態では、患者集団は、約200人以上の患者である。しかしながら、当業者であれば、統計的に関連する結果を得るために必要な患者の数を容易に決定することができるであろう。
【0038】
一部の実施形態では、本方法は、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を受けていない同レベルの病気診断の患者集団と比較して、患者のPVRを約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、又はそれ以上減少させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を受けていない同じレベルの病気診断の患者集団と比較して、患者集団のPVRを約30%減少させるのに有効である。
【0039】
本方法は更に、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を受けていない、同じ病気を有し、同じ病気診断レベルにある患者集団と比較して、患者のTPGを、少なくとも約10%減少させるのに有効であり得る。いくつかの実施形態では、本方法は、マシテンタン又はアプロシテンタンによる治療を受けていない同レベルの病気診断の患者集団と比
較して、患者のTPGを約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、又はそれ以上減少させるのに有効である。
【0040】
本方法は、治療的有効量のマシテンタン又はアプロシテンタンを投与することを含む。本明細書で使用するとき、用語「治療的有効量」は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医により求められている、治療されている疾患又は障害の症状の緩和を含む、組織系、動物又はヒト内で生体学的反応又は医薬反応を引き出す活性化合物又は医薬的薬剤の量を意味する。いくつかの実施形態では、治療的有効量は、マシテンタン又はアプロシテンタンの遊離塩基又は遊離塩基形態型に相当する。他の実施形態では、治療的有効量は、マシテンタン又はアプロシテンタンの塩、溶媒和物、又は水和物に相当する。特に明記しない限り、本明細書に開示される量は、例えば、溶媒(溶媒和物又は水和物など)又は対イオン(薬学的に許容される塩など)を除いて、マシテンタン又はアプロシテンタンの遊離形態に相当する。
【0041】
特定の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約15mg未満である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、又は約15mgである。他の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約1~約15mg、約1~約10mg、約1~約5mg、約5~約15mg、約5~約10mg、又は約10~約15mgである。なお更なる実施形態では、治療的有効量は、約5~約15mgである。なお更なる実施形態では、治療的有効量は、約10mgである。
【0042】
より多量のマシテンタンもまた、本明細書に記載される方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、少なくとも約15mgである。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約15mg、約17.5mg、約20mg、約22.5mg、約25mg、約27.5mg、約30mg、約32.5mg、約35mg、約37.5mg、約40mg、約42.5mg、約45mg、約47.5mg、約50mg、約52.5mg、約60mg、約62.5mg、約65mg、約67.5mg、約70mg、約72.5mg、約75mg、約77.5mg、約80mg、約82.5mg、約85mg、約87.5mg、約90mg、約92.5mg、約95mg、約97.5mg、約100mg、約102.5mg、約105mg、約107.5,mg、約110mg、約112.5mg、約115mg、約117.5mg、約120mg、約122.5mg、約125mg、約127.5mg、約130mg、約132.5mg、約135mg、約137.5mg、約140、約142.5mg、約145mg、約147.5mg、約150、約152.5mg、約155mg、約157.5mg、約160mg、約162.5mg、約165mg、約167.5mg、約170mg、約172.5mg、約175mg、約177.5mg、約180mg、約182.5mg、約185mg、約187.5mg、約190mg、約192.5mg、約195mg、約197.5mg、約200mg、又はそれ以上である。他の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約25~40mg、25~45mg、25~50mg、30~40mg、30~45mg、30~50mg、35~40mg、36~39mg、50~約90mg、約50~約85mg、約50~約80mg、約50~約75mg、約50~約70mg、約50~約65mg、約50~約60mg、約60~約90mg、約60~約85mg、約60~約80mg、約60~約75mg、約60~約70mg、約65~約90mg、約65~約85mg、約65~約80mg、約65~約75mg、約70~約90mg、約70~約85mg、約70~約80mg、約70~約75mg、約72~約78mg、約75~約90mg、約75~約85mg、約80~約90mg、約110~約200mg、約110~約150mg、約110~約160、約125~約160mg、約125~約175mg、約145~約155mg、約140~約160mg、又は約140~
約175mgである。なお更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約60~約90mgである。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約75mgである。
【0043】
これらの量は、1日当たり1回又は2回投与され得る。いくつかの態様では、これらの量は、1日1回投与される。別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約25~約40mgを1日1回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約25~約45mgを1日1回である。更に他の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約25~約50mgを1日1回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約30~約40mgを1日1回である。別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約30~約45mgを1日1回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約30~約50mgを1日1回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約35~約40mgを1日1回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約36~約39mgを1日1回である。他の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約37.5mgを1日1回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約60~約80mgを1日1回である。更に他の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、1日1回約60~約85mgを1日1回である。なお更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約60~約90mgを1日1回である。別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約65~約75mgを1日1回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約65~約85mgを1日1回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約65~約90mgを1日1回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約70~約80mgを1日1回である。別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約72~約78mgを1日1回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約75mgを1日1回である。更に他の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約110~約200mgを1日1回である。なお更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約110~約150mgを1日1回である。別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約110~約160mgを1日1回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約125~約160mgを1日1回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約125~約175mgを1日1回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約145~約155mgを1日1回である。別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約140~約160mgを1日1回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約140~約175mgを1日1回である。更に他の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約150mgを1日1回である。
【0044】
更なる態様では、治療的有効量は、1日2回投与される。別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約25~約40mgを1日2回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約25~約45mgを1日2回である。更に他の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約25~約50mgを1日2回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約30~約40mgを1日2回である。別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約30~約45mgを1日2回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約30~約50mgを1日2回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約35~約40mgを1日2回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約36~約39mgを1日2回である。他の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約37.5mgを1日2回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約60~約80mgを1日2回である。更に他の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約60~約85mgを1日2回である。なお更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約60~約90mgを1日2回である。別の実施形態では、マシテンタン
の治療的有効量は、約65~約75mgを1日2回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約65~約85mgを1日2回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約65~約90mgを1日2回である。更に別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約70~約80mgを1日2回である。別の実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約72~約78mgを1日2回である。更なる実施形態では、マシテンタンの治療的有効量は、約75mgを1日2回である。
【0045】
本方法はまた、治療的有効量のアプロシテンタンを投与することを含む。特定の実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、1日当たり約100mg~1日当たり約1500mgである。他の実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、1日当たり約100mg~1日当たり約1500mgである。別の実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、1日当たり約300~約450mgである。別の実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、1日当たり約325~約425mgである。更なる実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、1日当たり約350~約400mgである。更に他の実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、1日当たり約375mgである。本開示のいくつかの実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、約300~約425mgである。他の実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、約300~約400mgである。更なる実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、1日当たり約300~約375mgである。更に他の実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、約325~約450mgである。なお更なる実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、1日当たり約325~約375mgである。別の実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、1日当たり約360~約390mgである。更なる実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、約75mg未満である。更なる実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、約1mg、約10mg、約12.5mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、又は約75mgである。他の実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、約5~約75mg、約5~約50mg、約5~約25mg、約12.5~約75mg、約12.5~約50mg、約25~約75mg、約25~約50mg、又は約50~約75mgである。なお更なる実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、約25~約75mgである。なお更なる実施形態では、アプロシテンタンの治療的有効量は、約50mgである。
【0046】
本開示はまた、ある期間にわたってマシテンタンの量をより少ない量からより多い量に用量増量することを提供する。いくつかの実施形態では、マシテンタンの開始量は、第1の期間に患者に投与される。次いで、マシテンタンの開始量は、その後続期間に後続量に用量増量される、すなわち増加される。例えば、第2の量のマシテンタンが、第2の期間投与される。次いで、第2の量のマシテンタンは、第3の期間、第3の量のマシテンタンに用量増量される。
【0047】
開始量は、主治医によって決定されるような増分で、後続量(複数可)に増加され得る。いくつかの実施形態では、増分は、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、又は約50mgである。マシテンタンの開始量及びその後続量は、本開示において言及される任意の治療的有効量であり得る。いくつかの実施形態では、マシテンタンの開始量は、1日当たり約10mgである。他の実施形態では、その後の量は、1日当たり約25mg~約50mg又は約60mg~約90mgのマシテンタンであり得る。更なる実施形態では、マシテンタンの開始量に続くマシテンタンの第1の後続量は、1日当たり約25mg~約50mgである。他の実施形態では、マシテンタンの第1の後続量に続くマシテンタンの第2の後続量は、約60mg~約90mgである。例えば、マシテンタンの開始量は、1日当たり約10mgであり、これは、1日当たり約25mg~約50mgのマシテンタンに用量増量され
、これは1日当たり約60mg~約90mgのマシテンタンに用量増量される。
【0048】
いくつかの実施形態では、マシテンタンの開始量は、第1の期間で約10mgである。例えば、第1の期間は、約1日又は2日、好ましくは2日である。次いで、マシテンタンの開始量は、第2の期間、約37.5mgのマシテンタンの第2のマシテンタン量に用量増量される。例えば、第2の期間は、約2~4日、好ましくは3日である。次いで、第2の量のマシテンタンは、第3の期間、約75mgのマシテンタンの第3の量のマシテンタンに用量増量される。例えば、第3の期間は、約6~約10日、好ましくは8日である。他の実施形態では、10mgが患者に2日間連続して投与され、続いて、約37.5mgのマシテンタンが3日間連続して投与され、続いて、約75mgのマシテンタンが8日間投与される。
【0049】
いくつかの実施形態では、1日当たり約10mg/日のマシテンタンが、約15~約45日間投与される。他の実施形態では、1日当たり約25mg~約50mgのマシテンタンが、約15~約45日間投与される。更なる実施形態では、マシテンタンの量は、1日当たり約10mgから、続いて、1日当たり約25mg~約50mg、続いて、1日当たり約60mg~約90mgに用量増量される。
【0050】
以下の態様(a)~(l)及び(a’)~(l’)は、マシテンタン又はアプロシテンタンを投与するための態様を記載する。いくつかの実施形態では、態様(a)~(l)及び(a’)~(l’)は、マシテンタンを投与することによって、左心室補助装置(LVAD)移植患者における肺高血圧を治療する方法に関する。他の実施形態では、態様(a)~(l)及び(a’)~(l’)は、アプロシテンタンを投与することによって、左心室補助装置(LVAD)の移植患者における肺高血圧を治療する方法に関する。更なる実施形態では、態様(a)~(l)及び(a’)~(l’)は、マシテンタンを使用して左心室補助装置(LVAD)移植患者における心臓移植適格性を改善する方法に関する。更に他の実施形態では、態様(a)~(l)及び(a’)~(l’)は、アプロシテンタンを使用して左心室補助装置(LVAD)移植患者における心臓移植適格性を改善する方法に関する。
【0051】
(a)いくつかの態様において、マシテンタンの量は、1日当たり20mg~1日当たり300mgである。量はまた、1日当たり20mg超~1日当たり300mgであり得る。量は、1日当たり25mg~1日当たり300mgであり得る。例えば、量は、1日当たり20mg以上~1日当たり250mg以上である。好ましくは、量は、1日当たり25mg~200mgである。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0052】
(b)他の態様、例えば態様(a)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり60~90mgである。好ましくは、量は1日当たり65~85mgであり、より好ましくは、量は1日当たり70~80mgであり、最も好ましくは、量は1日当たり75mgである。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mgである。更に、マシテンタンの投与量は、1日当たり10mgから漸増されてもよく、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mgとされ、続いて1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgとされ、任意に続いて、1日当たり100~200mg、好ましくは1日当たり150mgとされてもよい。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0053】
(c)更なる態様、例えば態様(a)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり25~50mgである。好ましくは、量は1日当たり30~45mg、より好ましくは、1日当たり35~40mg、最も好ましくは、1日当たり37.5mgである。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち量はまた、1日当たり25~45mg、又は1日当たり25~40mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり30~50mg、又は30~40mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり36~39mgである。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0054】
(d)他の態様、例えば、態様(a)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり110~200mgである。好ましくは、量は、1日当たり125~175mg、より好ましくは1日当たり140~160mg、最も好ましくは1日当たり150mgである。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり110~175mg、1日当たり110~160mg、又は1日当たり110~150mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり125~160mg又は140~175mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり145~155mgである。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0055】
(e)更なる態様において、例えば態様(a)によれば、マシテンタンの量は、60~90mgを1日2回である。好ましくは、量は、65~85mgを1日2回、より好ましくは、70~80mgを1日2回、及び最も好ましくは、75mgを1日2回である。上記に開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、60~85mgを1日2回、60~80mgを1日2回、又は60~75mgを1日2回であってもよいことを理解されたい。また、65~90mgを1日2回、又は65~75mgを1日2回の量も開示される。更に好ましい範囲は、72~78mgで1日2回である。
【0056】
(f)他の態様において、例えば態様(a)によれば、マシテンタンの量は、25~50mgを1日2回、好ましくは30~45mgを1日2回、より好ましくは35~40mgを1日2回、最も好ましくは37.5mgを1日2回である。上記に開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、25~45mgを1日2回、又は25~40mgを1日2回であってもよいことを理解されたい。また、30~50mgで1日2回、又は30~40mgで1日2回の量も開示される。更に好ましい範囲は、36~39mgで1日2回である。
【0057】
(g)更なる態様において、例えば、態様(a)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり10mgから、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgに漸増され得る。「続いて、1日当たり25~50mg」とは、好ましくは、量が1日当たり30~45mg、より好ましくは、1日当たり35~40mg、及び最も好ましくは、1日当たり37.5mgであることを意味する。開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり25~45mg、又は1日当たり25~40mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり30~50mg、又は30~40mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり36~39mgである。より多い量へのいかなる漸増も、より多い量に耐えられない場合には、より少ない量に戻すことができることを理解されたい。「任意に続いて、1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり65~85mgであり、より好ましくは、量が1日当たり70~80mgであり、及び最も好ましくは、量が1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと
組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mgである。より多い量へのいかなる漸増も、より多い量に耐えられない場合には、より少ない量に戻すことができることを理解されたい。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0058】
また更なる態様において、マシテンタンの量は、1日当たり10mgである。この量を得る患者は、1日当たり37.5mgに、任意に続いて、1日当たり75mgへの即時用量漸増を受けてもよい。
【0059】
更に、マシテンタンの量は、1日当たり10mgから、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mg、任意に続いて、1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり150mgに漸増され得る。「任意に続いて、1日当たり110~200mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり125~175mg、より好ましくは、1日当たり140~160mg、及び最も好ましくは、1日当たり150mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり110~175mg、1日当たり110~160mg、又は1日当たり110~150mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり125~160mg又は140~175mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり145~155mgである。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0060】
(h)更なる態様において、例えば態様(a)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり10mgから、続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは75mgを1日に1回又は37.5mgを1日に2回に漸増される。「任意に続いて、1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり65~85mgであり、より好ましくは、量が1日当たり70~80mgであり、及び最も好ましくは、量が1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mgである。より多い量へのいかなる漸増も、より多い量に耐えられない場合には、より少ない量に戻すことができることを理解されたい。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0061】
他の態様において、態様(a)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり10mgから、続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは75mgを1日1回、37.5mgを1日2回、任意に続いて、1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり150mgに漸増される。「任意に続いて、1日当たり110~200mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり125~175mg、より好ましくは、1日当たり140~160mg、及び最も好ましくは、1日当たり150mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり110~175mg、1日当たり110~160mg、又は1日当たり110~150mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり125~160mg又は140~175mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり145~155mgである。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0062】
更に他の態様において、マシテンタンの量は1日当たり10mgである。この量を投与される患者は、1日当たり75mg又は1日当たり150mgまでの即時用量漸増を受け得る。
【0063】
(i)更なる態様において、例えば、態様(g)によれば、マシテンタンの量は、好ましくは15~45日間、1日1回10mgから、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは37.5mgを1日1回、好ましくは15~45日間であり、及び任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは75mgを1日1回、又は37.5mgを1日2回に漸増される。より多い量へのいかなる漸増も、より多い量に耐えられない場合には、より少ない量に戻すことができることを理解されたい。これにおいて、用語「15~45日」は、好ましくは20~40日、より好ましくは21~35日、最も好ましくは28~30日、すなわち約1ヶ月を意味する。更に、「続いて、1日当たり25~50mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり30~45mg、より好ましくは、1日当たり35~40mg、及び最も好ましくは、1日当たり37.5mgであることを意味する。開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり25~45mg、又は1日当たり25~40mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり30~50mg又は30~40mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり36~39mgである。更に、「続いて、1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり65~85mgであり、より好ましくは、量が1日当たり70~80mgであり、及び最も好ましくは、量が1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mg、又は36~39mgを1日2回である。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0064】
他の態様において、例えば、態様(g)によれば、マシテンタンの量は、好ましくは15~45日間、1日1回10mgから増加され、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは37.5mgを1日1回、好ましくは15~45日間、任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは75mgを1日1回、又は37.5mgを1日2回、好ましくは15~45日間であり、任意に続いて、1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり150mgである。「任意に続いて、1日当たり110~200mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり125~175mg、より好ましくは、1日当たり140~160mg、及び最も好ましくは、1日当たり150mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり110~175mg、1日当たり110~160mg、又は1日当たり110~150mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり125~160mg又は140~175mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり145~155mgである。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0065】
(j)更なる態様において、例えば、態様(h)によれば、マシテンタンの量は、好ましくは15~45日間、1日1回10mgから増加され、続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは75mgを1日1回、又は37.5mgを1日2回である。これにおいて、用語「15~45日」は、好ましくは20~40日、より好ましくは21~35日、最も好ましくは28~30日、すなわち約1ヶ月を意味する。「続いて、1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり65~85mgであり、より好ましくは、量が1日当たり70~80mgであり、及び最も好ましくは、量が1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと
組み合わされてもよく、すなわち量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mg、又は36~39mgを1日2回である。
【0066】
他の態様において、例えば、態様(h)によれば、マシテンタンの量は、好ましくは15~45日間、1日1回10mgから増加され、続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは75mgを1日1回、又は37.5mgを1日2回、好ましくは15~45日間であり、任意に続いて、1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり150mgである。「任意に続いて、1日当たり110~200mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり125~175mg、より好ましくは、1日当たり140~160mg、及び最も好ましくは、1日当たり150mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり110~175mg、1日当たり110~160mg、又は1日当たり110~150mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり125~160mg又は140~175mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり145~155mgである。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0067】
(k)更なる態様において、例えば態様(a)~(c)のいずれか1つによれば、マシテンタンの量は、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mgに、好ましくは、15~45日間漸増され、任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgであり、より多い量へのいかなる漸増も、より多い量に耐えられない場合には、より少ない量に戻すことができることを理解されたい。これにおいて、用語「15~45日」は、好ましくは20~40日、より好ましくは21~35日、最も好ましくは28~30日、すなわち約1ヶ月を意味する。更に、「続いて、1日当たり25~50mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり30~45mg、より好ましくは、1日当たり35~40mg、及び最も好ましくは、1日当たり37.5mgであることを意味する。開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、量はまた、1日当たり25~45mg、又は1日当たり25~40mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり30~50mg又は30~40mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり36~39mgである。更に、「続いて、1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり65~85mgであり、より好ましくは、量が1日当たり70~80mgであり、及び最も好ましくは、量が1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mg、又は36~39mgを1日2回である。任意に、マシテンタンの量は、1日当たり110~200mgに達するように更に上昇させることができることを理解されたい。それによって、量は、態様(h)~(k)のように漸増される。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0068】
(l)他の態様において、例えば、態様(a)又は(b)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgである。「1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは、量が1日当たり65~85mgであり、より好ましくは、量が1日当たり70~80mgであり、及び最も好ましくは、量が1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~
78mg、又は36~39mgを1日2回である。任意に、マシテンタンの量は、1日当たり110~200mgに達するように更に上昇させることができることを理解されたい。それによって、量は、態様(h)~(k)のように漸増される。より好ましい態様によれば、これらの量は、1日1回適用される。
【0069】
(a’)特定の態様において、マシテンタンの量は、1日当たり20mg~1日当たり300mgである。態様(a)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0070】
(b’)他の態様において、例えば、態様(a’)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり65~85mg、より好ましくは1日当たり70~80mg、最も好ましくは1日当たり75mgである。態様(b)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0071】
(c’)更なる態様において、例えば、態様(a’)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり30~45mg、より好ましくは1日当たり35~40mg、最も好ましくは1日当たり37.5mg/日である。態様(c)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0072】
(d’)他の態様において、例えば、態様(a’)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり125~175mg、より好ましくは1日当たり140~160mg、最も好ましくは1日当たり150mgである。態様(d)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0073】
(e’)更なる態様において、例えば、態様(a’)によれば、マシテンタンの量は、60~90mgを1日2回、好ましくは65~85mgを1日2回、より好ましくは70~80mgを1日2回、最も好ましくは75mgを1日2回である。態様(e)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0074】
(f’)他の態様において、例えば、態様(a’)によれば、マシテンタンの量は、25~50mgを1日2回、好ましくは30~45mgを1日2回、より好ましくは35~40mgを1日2回、最も好ましくは37.5mgを1日2回である。態様(f)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0075】
(g’)他の態様において、例えば態様(a’)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり10mgから漸増され、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mgとされ、任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgとされる。態様(g)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0076】
(h’)更なる態様において、例えば態様(a’)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり10mgから、続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg又は1日当たり2回37.5mgに漸増される。態様(h)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0077】
(i’)他の態様において、例えば、態様(g’)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり10mgから、好ましくは15~45日間にわたって漸増される。続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは37.5mgを1日1回、好ましくは15~45日間であり、及び任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは75mgを1日1回、又は37.5mgを1日2回である、請求項9に記載の機能的単心室心臓疾患患者、特にフォンタン手術で緩和された患者における肺血管疾患及び/又は心機能不全の治療に使用するためのマシテンタン。態様(i)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0078】
(j’)更なる態様において、例えば態様(h’)によれば、マシテンタンの量は、1日1回、好ましくは15~45日間、10mgから漸増される。続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは75mgを1日1回、又は37.5mgを1日2回である。態様(j)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0079】
(k’)他の態様において、例えば、態様(a’)~(c’)のいずれか1つによれば、マシテンタンの量は、好ましくは15~45日間、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgに漸増される。態様(k)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0080】
(l’)更なる態様において、例えば、態様(a’)又は(b’)によれば、マシテンタンの量は、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgである。態様(l)の開示が同様に当てはまることを理解されたい。
【0081】
態様(a)~(l)のコメント及び詳細はまた、態様(a’)~(l’)にも適用されることを理解されたい。
【0082】
本発明の更なる態様によれば、上述の態様のそれぞれにおいて、すなわち、態様(a)~(l)及び(a’)~(l’)のそれぞれにおいて、マシテンタンはアプロシテンタンによって置き換えることができ、マシテンタンの重量は5倍重量のアプロシテンタンによって置き換えられ、アプロシテンタンの量は、1日当たり300~450mgである。好ましくは、アプロシテンタンの量は1日当たり325~425mgであり、より好ましくは、アプロシテンタンの量は1日当たり350~400mgであり、及び最も好ましくは、アプロシテンタンの量は1日当たり375mgである。上記で開示の下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、アプロシテンタンの量はまた、1日当たり300~425mg、300~400mg、又は300~375mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり325~450mg、又は325~375mgのアプロシテンタンの量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり360~390mgのアプロシテンタンである。より好ましい態様によると、これらの量のアプロシテンタンは、1日1回適用される。
【0083】
本明細書に記載の方法はまた、肺高血圧症の治療に有用な別の医薬品の投与を中止することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本方法は、マシテンタン又はアプロシテンタンの投与前に、マシテンタン又はアプロシテンタンではないエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)による治療を中止することを含む。例えば、ERAは、ボセンタン、アンブリセンタン、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、ERAは、ボセンタンである。他の実施形態では、ERAは、アンブリセンタンである。
【0084】
他の実施形態では、本方法は、マシテンタン又はアプロシテンタンの投与前にホスホジエステラーゼ5型(PDE-5)阻害剤による治療を中止することを含む。例えば、PDE-5阻害剤は、タダラフィル、シルデナフィル、バルデナフィル、若しくはウデナフィル、又はそれらの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、PDE-5阻害剤は、シルデナフィルである。更なる実施形態では、PDE-5阻害剤は、バルデナフィルである。他の実施形態では、PDE-5阻害剤は、ウデナフィルである。なお更なる実施形態では、PDE-5阻害剤は、タダラフィルである。タダラフィルは、Adcirca(商標)として市販されており、以下の構造を有する。
【0085】
【0086】
更なる実施形態では、本方法は、マシテンタン又はアプロシテンタンの投与前に他のPAH特異的療法による治療を中止することを含む。例えば、他のPAH特異的療法としては、とりわけ、吸入一酸化窒素(iNO)、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤、又は経口プロスタノイド(例えば、静脈内又は皮下)が挙げられる。いくつかの実施形態では、PAH特異的療法は、iNOである。他の態様において、PAH特異的療法は、sGC刺激薬である。sGC刺激薬の一例は、リオシグアトである。リオシグアトは、Adempas(商標)として市販されており、以下の構造を有する。
【0087】
【0088】
他のPAH療法を受けていた患者において、本方法はまた、マシテンタン又はアプロシテンタンを投与する前にウォッシュアウト期間を含んでもよい。本明細書で使用される「ウォッシュアウト期間」という用語は、他のPAH療法が継続されない期間を指す。いくつかの実施形態では、ウォッシュアウト期間は、少なくとも1日、又は好ましくは少なくとも1週間である。
【0089】
本明細書に記載される方法は、PVRの低下に有効である。いくつかの実施形態では、PVRは、マシテンタンによる治療を受けていない、同レベルの疾患診断の患者(プラセボ群)に対して、少なくとも約10%減少する。他の実施形態では、本方法は、約4WU未満へのPVRレベルの低下をもたらす。更なる実施形態では、本方法は、約3WU未満へのPVRレベルの低下をもたらす。更に他の実施形態では、本方法は、約2WU未満、又は約1WUへPVRレベルの低下をもたらす。
【0090】
本明細書で使用される場合、別段の記載がない限り、マシテンタンは、プロピルスルファミン酸[5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル]-アミド、
【0091】
【化3】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、若しくは形態学的形態を含む医薬組成物として定義される。いくつかの実施形態では、本開示は、マシテンタン遊離塩基に関する。他の実施形態では、本開示は、マシテンタン塩に関する。更なる実施形態では、本開示は、マシテンタン溶媒和物に関する。更に他の実施形態では、本開示は、マシテンタン水和物に関する。更なる実施形態では、本開示は、マシテンタンの形態学的形態に関する。
【0092】
マシテンタンは、2つのエンドセリン(ET)受容体サブタイプであるETA及びETB拮抗薬として作用するエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)である(Kholdani
et al,Macitentan for the treatment of pulmonary arterial hypertension.Vasc.Health Risk Manag.(2014),10,665~673)。現在、マシテンタンは、1日1回10mgの経口用量として服用される。ヒトにおける半減期は約16時間であり、定常状態は、第3の投与日に到達する(Bruderer et al.,Absorption,distribution,metabolism,and excretion of macitentan,a dual endothelin receptor antagonist,in humans.Xenobiotica(2012),42(9),901-910)。それは、血漿中にゆっくりと吸収される(Sidharta et al.,Macitentan:entry-into-humans study with a new endothelin receptor antagonist.Eur.J.Clin.Pharmacol.(2011),67,977-984)。マシテンタンは脱アルキル化して活性代謝物ACT-132577、すなわち、アプロシテンタン(aprocitentan)になり、これは最初の投与量が投与された約30時間後にピーク血漿濃度に達し、約48時間の半減期を有する。ACT-132577は、その親化合物よりも、ET受容体に対して低い親和性を有し(Iglarz et al.,Pharmacology of macitentan,an orally active tissue-targeting dual endothelin receptor antagonist.J.Pharmacol.Exp.Ther.(2008),327(3),736-745)、それは、マシテンタンよりも高い血漿濃度を維持する。両方の化合物は、尿又は糞便を通して身体から排泄され得る。
【0093】
本開示の更なる態様によれば、マシテンタンは、コード名ACT-132577及び国際非商標名アプロシテンタンで知られているその活性代謝産物によって置き換えることができ、
【0094】
【化4】
これにより、任意の重量のマシテンタンが、5倍の重量のアプロシテンタンに置き換えられる。いくつかの実施形態では、本開示は、アプロシテンタン遊離塩基に関する。他の実施形態では、本開示は、アプロシテンタン塩に関する。更なる実施形態では、本開示は、アプロシテンタン溶媒和物に関する。更に他の実施形態では、本開示は、アプロシテンタン水和物に関する。更なる実施形態では、本開示は、アプロシテンタンの形態学的形態に関する。
【0095】
本明細書で使用するとき、「形態学的形態」は、マシテンタン又はアプロシテンタンの非晶形態又は結晶形態を指す。いくつかの実施形態では、マシテンタン又はアプロシテンタンは、結晶形態である。他の実施形態では、マシテンタン又はアプロシテンタンは、非晶形態である。結晶化度は、例えば、とりわけ、単一結晶X線回折、粉末X線回折、示差走査熱量測定、融点などの1つ又は2つ以上の技術を使用して、当業者によって決定され得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、「水和物」は、マシテンタン又はアプロシテンタンの形態を含み、それによって、1つ以上の水分子が、分子間力又は化学結合を介して、マシテンタン又はアプロシテンタンの1つ以上の位置に結合される。
【0097】
本明細書で使用される「溶媒和物」は、1つ以上の溶媒が分子間力又は化学結合を介してマシテンタン又はアプロシテンタンの1つ以上の位置に結合しているマシテンタン又はアプロシテンタンの形態を指す。
【0098】
マシテンタン又はアプロシテンタンの薬学的に受容可能な塩は、当業者によって容易に選択され得る。薬剤として許容される塩という表現には、例えば塩酸若しくは臭化水素酸などのハロゲン化水素酸;硫酸、リン酸、硝酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸、メチルスルホン酸、p-トルオスルホン酸など、又はマシテンタン又はアプロシテンタンが本質的に酸性である場合、アルカリ若しくはアルカリ土類塩基のような無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのような無機酸付加塩又は有機酸付加塩のいずれかを包含する。
【0099】
本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、用語「治療すること」、「治療」などは、疾患、状態、又は障害と闘う目的での、患者の管理及びケアを含むものとする。用語「治療すること」及び「治療」はまた、(a)疾患、状態、若しくは障害の1つ以上の症状若しくは合併症を緩和するため、(b)疾患、状態若しくは障害の1つ又は2つ以上の症状若しくは合併症の発病を予防するため、及び/又は(c)疾患、状態若しくは障害の1つ以上の症状若しくは合併症を排除するための、本明細書に記載される化合物又は医薬組成物の投与を含む。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「被験者」及び「患者」は、治療の対象である動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。
【0101】
この方法はまた、併用される標準のケア又はバックグラウンド療法を施すことを可能にする。用語「標準のケア」は、典型的には、問題となっている病状に対する医師の処方による治療を指す。一部の実施形態では、標準治療は、PHを治療するのに有効な追加の医薬品を投与することを含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。標準のケアは、マシテンタン又はアプロシテンタンの前、後、又は同時に患者に施され得る。いくつかの実施形態では、標準のケアは、マシテンタン又はアプロシテンタンの前に施される。他の実施形態では、標準のケアは、マシテンタン又はアプロシテンタンの後に施される。更なる実施形態では、標準のケアは、マシテンタン又はアプロシテンタンと同時に施される。更に他の実施形態では、標準のケアは、マシテンタン又はアプロシテンタンの投与に先立って安定した用量で少なくとも3か月間存在する。
【0102】
いくつかの実施形態では、標準のケアは、PDE5阻害剤である。PDE5阻害剤の例としては、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、及びウデナフィル、好ましくはタダラフィルが挙げられるが、これらに限定されない。PDE5阻害剤標準ケアを含む特定の実施形態では、シルデナフィルは使用されない。他の実施形態では、標準のケアは、プロスタサイクリン類似物である。プロスタサイクリン類似体の例としては、エポプロステロール、トレプロスチニル、イロプロスト、及びベラプロストが挙げられるが、これらに限定されない。更なる実施形態では、標準のケアは、プロスタサイクリン受容体拮抗薬である。有用なプロスタサイクリン受容体拮抗薬の例としては、セレキシパグ及びラリネパグ、好ましくはセレキシパグが挙げられるが、これらに限定されない。更に他の実施形態では、標準のケアは、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤である。可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤の例としては、リオシグアト及びベリシグアトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
本明細書に記載の方法では、マシテンタン又はアプロシテンタンの治療的有効量は安全か、有効か、又は安全及び有効である。本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、用語「安全」は、過度の有害な副作用(毒性、刺激、若しくはアレルギー反応など)がないことを意味するものとし、本発明の様式で使用されるとき、妥当な利益/リスク比に相応する。同様に、特に断りがない限り、用語「有効な」は、治療的有効量で投与されたときのPH患者の治療に対して治療の有効性が実証されていることを意味する。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は安全である。他の実施形態では、本明細書に記載の方法は有効である。更なる実施形態では、本明細書に記載の方法は、安全かつ有効である。更に他の実施形態では、マシテンタン又はアプロシテンタンの治療的有効量は、安全である。なお更なる実施形態では、マシテンタン又はアプロシテンタンの治療的有効量は、有効である。他の実施形態では、マシテンタン又はアプロシテンタンの治療的有効量は、安全かつ有効である。
【0104】
処方/組成物
マシテンタン又はアプロシテンタンを活性成分として含有する医薬組成物は、従来の医薬配合技術によって、マシテンタン又はアプロシテンタンを製薬担体とよく混合することによって調整することができる。本明細書で使用するとき、用語「組成物」及び「処方」は、互換的に使用され、指定の量の指定の成分を含む生成物に加えて、指定の量の指定の成分の組み合わせから直接的又は間接的に生じる、医薬製品などの任意の生成物を包含する。医薬組成物の概要は、かかる開示に関して参照により本明細書に組み込まれているが、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mac
k Publishing Company,1995);Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975;Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;及びPharmaceutical Dosage
Forms and Drug Delivery Systems,Seventh
Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 1999)に記載されている。
【0105】
医薬組成物又は医薬製剤は、当業者によって決定される多数の経路によって投与され得る。好ましくは、医薬組成物又は製剤は、マシテンタン又はアプロシテンタンに好適な経路によって投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物又は製剤は、経口、直腸、非経口、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、若しくは経皮投与によって、若しくは舌下に、若しくは眼内製剤として投与されるか、又はエアロゾルとして、好ましくは経口投与される。好ましくは、医薬組成物又は薬物製品は経口投与される。適用例は、カプセル剤、錠剤、経口投与懸濁剤又は液剤、座薬、注射剤、点眼液、軟膏又はエアロゾル/ネブライザである。
【0106】
好ましい適用は、経口投与である。使用される用量は、特定の活性成分の種類、患者の年齢及び要件、並びに適用の種類によって異なる。一般に、約70kgの平均体重に対して、1日当たり0.001~0.25mg/kg体重の用量が検討される。調製物は、不活性又は同様に薬力学的に活性な賦形剤を含有することができる。錠剤又は顆粒は、例えば、多くの結合剤、充填用賦形剤、担体物質、又は希釈剤を含有し得る。
【0107】
組成物は、例えば、錠剤、糖衣錠、ゼラチンカプセル、エマルジョン、液剤、若しくは懸濁剤などの経腸又は経口形態で、噴霧剤のような鼻腔形態で、又は直腸に座薬の形態で投与されてもよい。組成物はまた、筋肉内、非経口、又は静脈内、例えば、注射剤の形態で投与されてもよい。
【0108】
これらの医薬組成物は、乳糖、トウモロコシ又はこれらの誘導体、タルカン、タルク、ステアリン酸、又はこれらの材料の塩のような医薬産業において通常である無機及び/又は有機賦形剤と組み合わせたマシテンタン又はアプロシテンタンを含有してもよい。
【0109】
ゼラチンカプセルには、植物油、ワックス、脂肪、液状、又は半液状ポリオールが使用されてもよい。液剤及びシロップ剤の調整には、例えば、水、ポリオール、サッカロース、グルコースが使用され得る。注射剤は、例えば、水、ポリオール、アルコール、グリセリン、植物油、レシチン又はリポソームを使用することによって調整され得る。座薬は、天然又は硬化油、ワックス、脂肪酸(脂肪)、液状又は半液状ポリオールを使用することによって調整されてもよい。
【0110】
組成物は、加えて防腐剤、安定性向上物質、粘度向上又は調節物質、溶解度向上物質、甘味料、染料、味覚向上化合物、浸透圧を変化させる塩、緩衝剤、又は酸化防止剤を含有してもよい。
【0111】
そのような医薬組成物を調整するために、活性成分としてのマシテンタン又はアプロシテンタンは、従来の医薬配合技術に従って医薬担体とよく混合され、この担体は、投与に所望される製剤の形態、例えば、経口又は筋肉内などの非経口に応じて様々な形態をとり得る。組成物を経口剤形態で調製する際、任意の通常の医薬媒体を用いることができる。それゆえに、例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの経口液体製剤の場合、好適な
担体及び添加剤としては、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、防腐剤、着色剤などが挙げられる。散剤、カプセル剤、カプレット、ゲルキャップ、及び錠剤などの経口固形製剤の場合、好適な担体及び添加剤としては、デンプン、糖類、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられる。投与が容易であるため、錠剤及びカプセルは最も有利な経口投薬単位形態であるが、この場合、固体医薬担体が使用されることは明らかである。所望される場合には、標準的な技術により錠剤を糖衣又は腸溶剤コーティングしてもよい。非経口の場合、担体は、通常、滅菌水を含むが、例えば、溶解性を助けるなどの目的のため、又は保存のために他の成分を含んでよい。注射用懸濁液を調製してもよく、その場合、適切な液体担体、懸濁化剤などを用いてよい。本明細書の医薬組成物は、投薬単位、例えば、錠剤、カプセル、粉末、注射液、小さじ1杯など毎に、上記の有効用量を送達するのに必要な活性成分の量を含有することになる。本明細書の医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、注射剤、坐剤、茶さじ一杯などの用量単位当たり、本明細書に開示されるマシテンタン又はアプロシテンタンの治療的有効量を含有する。しかしながら、投与量は、患者の必要量、治療されている症状の重症度、及び使用されるマシテンタン又はアプロシテンタンに応じて変動し得る。連日投与又は間欠投与のいずれを用いてもよい。
【0112】
好ましくは、医薬組成物は、錠剤、丸薬、カプセル剤、散剤、顆粒、滅菌非経口溶液又は懸濁液、計量エアゾール又は液体スプレー、液滴、アンプル、自己注射器デバイス又は坐剤などの単位剤形であり、経口非経口、鼻腔内、舌下若しくは直腸投与、又は吸入若しくは吹送による投与用である。錠剤のような固体組成物の調製に関しては、主要な有効成分(例えば、マシテンタン又はアプロシテンタン)を、医薬担体、例えば、トウモロコシデンプン、乳糖、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、又はゴムのような従来の錠剤化成分、及びその他の医薬希釈剤、例えば、水と混合して、マシテンタン又はアプロシテンタンの均質混合物を含有する固体の事前処方組成物を形成する。特定の実施形態では、2つの活性成分が、例えば、二相錠剤製剤のように一緒に配合することができる。これらの事前処方組成物を均質と呼ぶ場合、組成物を錠剤、丸剤及びカプセルのような同等に有効な投与形態に容易に細分することができるように、有効成分が組成物の全体にわたって均一に分散していることを意味する。この事前予備配合組成物は、次に治療的有効量のマシテンタン又はアプロシテンタンのいずれかを含有する、上述した種類の単位投与形態に細分される。組成物の錠剤若しくは丸剤は、コーティングされ、又は他の方法により調合され、持続的作用の利点を付与する投薬剤形を提供し得る。例えば、錠剤若しくは丸剤は、内殻投与成分及び外殻投与成分を含むことができ、後者は前者を封入する形態のものである。
【0113】
本開示の組成物を経口投与又は注射により組み込み得る液剤の剤形としては、水性液剤、好適に香味付けされたシロップ剤、水性若しくは油性懸濁剤、及び、綿実油、ゴマ油、ヤシ油若しくはピーナッツ油などの食用油による、香味付けされたエマルジョン、並びにエリキシル剤及び同様の製薬用賦形剤が挙げられる。水性懸濁剤用の好適な分散剤又は懸濁化剤としては、合成及び天然ゴム、例えばトラガカント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニル-ピロリドン、又はゼラチンが挙げられる。
【0114】
本明細書に記載される方法はまた、マシテンタン又はアプロシテンタン、及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を使用して実施されてもよい。担体は、結合剤、懸濁化剤、滑沢剤、着香剤、甘味剤、保存剤、染料、及びコーティングが挙げられるがこれらに限定されない、必要とされ不活性な医薬賦形剤を含む。経口投与用に好適な組成物としては、固形剤形、例えば、丸剤、錠剤、カプレット、カプセル剤(各々、即時放出、時限放出及び徐放性処方が挙げられる)、顆粒剤、及び散剤など、並びに液体剤形、例えば、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、エマルジョン、及び懸濁剤などが挙げられる。非経口投
与に有用な形態としては、滅菌液剤、エマルジョン及び懸濁液が挙げられる。
【0115】
有利なことに、マシテンタン又はアプロシテンタンは、1回1日の用量を投与してもよく、又は1日の総用量を1日2回、3回若しくは4回に分割して投与してもよい。いくつかの実施形態では、マシテンタン又はアプロシテンタンは、錠剤の形態で1日1回経口投与される。好ましくは、マシテンタン又はアプロシテンタンは、単回用量で、又はより好ましくは1日1回の錠剤で投与される。
【0116】
例えば、錠剤又はカプセル剤の形態の経口投与の際には、活性薬剤成分(例えば、マシテンタン又はアプロシテンタン)をエタノール、グリセロール、水などのような経口用の無毒の薬剤として許容される不活性担体と組み合わせることができる。更に、望ましい又は必要な場合、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び着色剤もまた、その混合物に組み込まれ得る。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、グルコース又はβ-ラクトースなどの天然の糖、コーン甘味料、アカシア、トラガカントなどの天然及び合成ガム、又はオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
液体は、例えばトラガカント、アカシア、メチルセルロースなどのような好適に香味付けされた懸濁化剤又は分散剤の形態をとる。非経口投与には、滅菌懸濁液及び溶液が望ましい。静脈内投与が所望される場合、好適な保存剤を一般に含有する等張製剤を用いる。
【0118】
本開示の医薬組成物を調整するには、活性成分として、マシテンタン又はアプロシテンタンを、従来の医薬配合技術に従って、医薬担体とよく混合されるが、担体は、投与(例えば、経口又は非経口)において所望される製剤の形態に応じて、非常に様々な形態をとることができる。薬学的に許容される好適な担体は、当該技術分野において周知である。これらの医薬的に許容される担体のいくつかの説明は、米国薬剤師会及び英国薬剤師会により出版されたThe Handbook of Pharmaceutical Excipientsに見出すことができるが、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
医薬組成物を製剤化する方法は、Marcel Dekker,Inc.によって発行されたLiebermanら編のPharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Second Edition,Revised and Expanded,Volumes 1-3;Avisら編のPharmaceutical
Dosage Forms:Parenteral Medications,Volumes 1-2;及びLiebermanら編のPharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Volumes 1-2など、多くの出版物に記載されているが、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
以下の実施例は、この開示内に記載する概念の一部を示すために提供される。実施例は、実施形態を提供するものと見なされるが、本明細書に記載されるより一般的な実施形態を限定するものと見なされるべきではない。更に、以下の実施例では、使用される数値(例えば、量、温度など)に関する精度を担保するための努力はしているが、若干の実験誤差及び偏差は考慮されなければならない。
【0121】
【0122】
【0123】
【実施例1】
【0124】
これは、LVAD移植後のPHにおけるマシテンタンの効力及び安全性を評価する、二重盲検、プラセボ対照、多施設、並行群第2相試験である。LVAD移植後にPHを有する約57人の成人患者を無作為化して(1:1)、マシテンタン10mg又は対応するプラセボのいずれかを1日1回経口投与した。
【0125】
LVADの移植後、患者は、25mmHg以上の安静時mPAP、18mmHg以下のPAWP、及び3WU超のPVRとして定義される、薬物の最初の投与前の最後の測定中にRHCを介したPHのベースライン血行動態基準を満たす。患者は、LVADの外科的移植の90日以内及びベースラインRHCの14日以内に無作為化される。
【0126】
患者は、ベースラインRHCの48時間前に安定であると考えられる。安定は、ベースラインRHCの48時間前に、LVADポンプ速度/流量の変化がないこと、経口利尿剤の安定用量であること、静脈内変力薬又は昇圧薬を投与されていないこと、及び歩行可能であることとして定義される。
【0127】
こうした利点としては以下のものがある。表3を参照。
【0128】
スクリーニング期間(来院1)
全てのスクリーニング評価は、LVAD移植から始まり、無作為化の前の90日のスクリーニング期間内に行われる。来院2の手順が開始される前に来院1の全ての手順が完了している場合、スクリーニング及び無作為化は同日に行うことができる。来院1は、以下を含む。
・患者番号の取得。
・人口統計、ベースライン特性、及び病歴の記録。
・過去の及び併用薬の記録。
・身体検査。
・バイタルサイン、身長、及び体重の測定。
・妊娠可能な女性の妊娠検査を含む完全な検査室検査。
・避妊法(妊娠可能な女性のみについて)の記録、及び該当する場合、プロトコル準拠の避妊の開始。
・RHC(手順が既に実施され、無作為化の90日以内である場合を除く)。
・AE及びSAEの記録。
【0129】
無作為化(来院2)
来院2は、全てのスクリーニング評価が実施された後に適格である患者についての治療期間の開始(1日目)に対応する。それはLVAD移植後90日以内であり、ベースラインRHCの14日以内である。来院2は以下を含む。
・併用薬の変化の記録。
・バイタルサイン及び体重の測定。
・妊娠可能な女性の血清妊娠検査を含む完全な検査室検査。
・避妊法の評価(妊娠可能な女性のみ)。
・血清NT-proBNPの血液試料。
・IL-6、TNF-α、hsCRP、ET-1、ガレクチン-3、GDF-15、インターロイキン1受容体ST2、NGAL、コペプチン、hs-cTnT、シスタチン-C、及びオステオポンチンなどの更なる循環バイオマーカのための血液試料。
・WHO FC。
・エコー(すなわち、3D、2D、Mモード及びドップラー心エコー検査)が実行される。それらには以下が含まれる。TAPSE、S’、RVFAC、E’、A’、グローバルRVLS、RV領域及びRVSI。加えて、右心室及び左心室エコー変数は、利用可能な科学的証拠に基づいて、探索形式(事後)で解析されてもよい。ベースラインECHOは、無作為化の日に発生する。
・AE/SAEの記録。
【0130】
治療期間:治療は、二重盲検薬物(マシテンタン又はプラセボ)の患者による投薬(摂取)として定義される。二重盲検治療期間は、無作為化直後、来院2(1日目)の終了時
に薬物の最初の投与で開始され、薬物の最後の投与日のEOT(84日目、12週目として予定される)又は治療の早期中止の場合にはそれ以前に終了した。治療期間中の来院スケジュールは、以下を含む。
【0131】
4週目(来院3)
来院3は、無作為化の4週間(±7日)後に予定される。来院3は、以下を含む。
・併用薬の変化の記録。
・血清妊娠検査を含む完全な検査室検査。
・避妊法の評価。
・AE及びSAEの記録。
【0132】
8週目(来院4)
来院4は、無作為化の8週間(±7日)後に予定される。来院4は、以下を含む。
・併用薬の変化の記録。
・妊娠可能な女性の血清妊娠検査を含む完全な検査室検査。
・避妊法の評価(妊娠可能な女性のみ)。
・AE及びSAEの記録。
【0133】
治療終了(来院5)
EOTは、無作為化後12週間(±7日)、又は治療の早期中断の場合にはそれより早く予定される。EOTは、以下を含む。
・併用薬の変化の記録。
・身体検査。
・バイタルサイン及び体重の測定。
・妊娠可能な女性の血清妊娠検査を含む完全な検査室検査。
・避妊法の評価。
・RHC。
・血清NT-proBNPの血液試料。
・IL-6、TNF-α、hsCRP、ET-1、ガレクチン-3、GDF-15、インターロイキン1受容体ST2、NGAL、コペプチン、hs-cTnT、シスタチン-C、及びオステオポンチンなどの更なる循環バイオマーカのための血液試料。
・WHO FC。
・エコー(すなわち、3D、2D、Mモード及びドップラー心エコー検査)が実行される。それらには以下が含まれる。TAPSE、S’、RVFAC、E’、A’、グローバルRVLS、RV領域及びRVSI。更に、右心室及び左心室エコー変数が解析されてもよい。
・AE及びSAEの記録。
【0134】
試験終了(来院6)
計画通りに治療を完了した患者、すなわち、全12週間の期間及び治療を早期に中止した患者は、30日間の安全性追跡期間に入り、これは、治療の恒久的中止(薬物の最後の投与)の少なくとも30日(+7日)後のEOS来院で終了する。EOSは、以下を含む。
・併用薬の変化の記録。
・妊娠可能な女性の血清妊娠検査を含む完全な検査室検査。
・避妊法の評価。
・AE及びSAEの記録。
【0135】
【0136】
個々の患者について、EOTが実施され、30日間の安全性追跡調査が完了したら(E
OS)、治療を終了した。患者の参加は、90日(スクリーニング期間)+12週(二重盲検治療期間)+30日(安全性追跡期間)までである。全体の設計を
図1に示す。
【0137】
1.目的
主要目的:LVAD移植後のPH患者におけるプラセボと比較したときの、PVRに対するマシテンタン10mgの効果を評価する。
【0138】
副次的目的
・LVAD移植後のPH患者における心肺血流力学及び重症度について、プラセボと比較したマシテンタン10mgの効果を評価する。
・LVAD移植後のPH患者におけるマシテンタン10mgの安全及び忍容性を評価する。
【0139】
探索的目的
・LVAD移植後のPH患者における右室機能について、プラセボと比較したマシテンタン10mgの潜在的効果を調査する。
・LVAD移植後のPH患者における選択された臨床事象について、プラセボと比較したマシテンタン10mgの潜在的効果を調査する。
・LVAD移植後のPH患者におけるGFRによって測定される腎機能について、プラセボと比較したマシテンタン10mgの潜在的効果を調査する。
【0140】
2.患者集団
患者は、18歳以上の男性又は女性であり、LVAD移植後のPHの血行動態基準を満たす。患者は、臨床的に安定であると考えられる。患者の人口統計及びベースライン特性を、表4及び5に詳述する。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
主な目的は、プラセボと比較して、マシテンタン治療によるPVR対ベースラインの減少を実証することであった。したがって、上昇したPVR(3WU超)及び18mmHg以下のPAWPを示した患者は、彼らの上昇PVR及びmPAPが左側機能不全によるものであることを除外する。WHO FC及び6MWDに対する制限がないことにより、重度の症候性PH患者を登録することができた。
【0145】
8.5g/dL未満のヘモグロビン、又は3×ULN超のAST、及び/又はALTを有し、スクリーニング期間中に回復しない患者は除外される。
【0146】
A.組み入れ基準
組み入れに関して、以下は組み入れ基準である。
【0147】
【0148】
B.除外基準
患者は、以下の除外基準のいずれも満たさない。
【0149】
【0150】
C.妊娠可能な女性の基準
女性は、以下の基準の少なくとも1つを満たさない限り、妊娠の可能性があると考えられる。
・過去の両側卵管摘出、両側卵管卵巣摘出、又は子宮摘出。
・専門医によって確認された早発性卵巣機能不全。
・思春期前、XY遺伝子型、ターナー症候群、子宮無発生症。
・別の医学的原因を伴わず、月経がない連続12ヶ月と定義される閉経(ICH M3の定義)。
【0151】
3.治療プロトコル
治療は二重盲検であり、1日1回経口投与される活性薬物マシテンタン又は対応するプラセボを含む。用量増量又は用量減量は適用しない。対応するプラセボを経口投与し、また1日1回投与する。
【0152】
薬物の最初の投与は、無作為化(来院2)中に行われる。その後、1錠(マシテンタン10mg又は対応するプラセボ)が、食物摂取に関係なく毎朝経口摂取される。朝の投与を逃した場合、次の投与は、次の予定された朝の時点で行われる(すなわち、夕方に1錠を服用せず、次の朝に1錠を服用する)。同日に2錠を服用することはない。
【0153】
その後の全ての来院時に、任意の手順が行われる前に薬物が服用される。来院の到着前の朝に用量が服用されない場合、次の用量は来院時及び任意の評価の前に投与することができる。
【0154】
A.治療の割り当て
適格患者をマシテンタン10mg又はマッチングプラセボのいずれかに1:1比で無作為化した。治療への患者の曝露については表6を参照されたい。
【0155】
【0156】
来院1(スクリーニング)では、スクリーニングされた全ての患者に番号を割り当てる。来院2(無作為化)において、患者は無作為化される。これを二重盲検様式で行い、最終解析のために非盲検化を行う。SUSARが参加している患者に対して生じる場合、治療割り当ての非盲検化が非盲検化される。SUSARは、盲検様式で考慮される。患者の治療については
図2を参照されたい。
【0157】
治療の中断/早期中止の基準には、以下が含まれる。
(i)妊娠:女性患者が治療中に妊娠した場合、治療は直ちに中止される。
(ii)肝臓アミノトランスフェラーゼ異常:スクリーニング期間の初期における異常な検査結果(例えば、高いALT又はAST)について、患者を監視し、適切な治療を提供し、スクリーニング期間(LVAD移植から90日)を通じて適格性について再評価され得る。
【0158】
治療の中断
治療は、以下の場合に中断される:3以上かつ8×ULN以下のアミノトランスフェラーゼ(すなわち、ALT及び/又はAST)
【0159】
そのような場合、アミノトランスフェラーゼ(ALT及びAST)、総ビリルビン及び直接ビリルビン、並びにアルカリホスファターゼの再試験が、1週間以内に行われる。AST及び/又はALTの上昇が確認された場合、アミノトランスフェラーゼ、総ビリルビン及び直接ビリルビン、並びにアルカリホスファターゼレベルを、値が治療前レベル又は正常範囲内に戻るまで毎週監視する。アミノトランスフェラーゼ値が治療前レベル又は正常範囲内に戻る場合、治療の再導入を考慮することができる。中断は、連続2週間未満である。より長い中断は、治療の永久的な中断につながる。
【0160】
治療中断後の治療の再導入は、マシテンタンによる治療の潜在的利益が潜在的リスクを上回る場合、及び肝臓アミノトランスフェラーゼ値が治療前レベル内又は正常範囲内である場合にのみ考慮されるべきである。
【0161】
次いで、肝臓アミノトランスフェラーゼレベルを、再導入後3日以内にチェックし、更に2週間後に再びチェックし、その後、上記の推奨に従って(すなわち、1ヶ月間隔で)チェックする。
【0162】
治療の永続的中断:以下の場合、治療は停止され、その再導入は考慮されない。
・8×ULN超のアミノトランスフェラーゼ。
・3×ULN以上のアミノトランスフェラーゼ及び関連する肝損傷の臨床症状、例えば、悪心、嘔吐、発熱、腹痛、黄疸、異常な嗜眠又は疲労、インフルエンザ様症候群(関節痛、筋肉痛、発熱)。
・3×ULN以上のアミノトランスフェラーゼ及び2×ULN以上の関連する総ビリルビンの増加。
【0163】
(iii)ヘモグロビン異常
スクリーニング期間の初期における異常な結果(例えば、低ヘモグロビン)について、患者を監視し、適切な治療を提供し、スクリーニング期間(LVAD移植から90日)を通して適格性について再評価することができる。ベースラインからのヘモグロビン減少が2.0g/dL超である場合、再検査を10日以内に行い、追加の検査室評価を行うが、これには、赤血球細胞指数(平均血球体積、平均赤血球血色素量、平均赤血球血色素濃度)、末梢血液塗抹標本、網状赤血球数、鉄状態(鉄レベル、血清フェリチン、総鉄結合能、トランスフェリン飽和度)、乳酸デヒドロゲナーゼ、間接ビリルビンが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0164】
治療は、以下の状況のいずれかにおいて一時的に中断され得る。
・6.5g/dL未満へのヘモグロビン低下。
・5.0g/dL超であるベースラインからのヘモグロビン低下(ベースラインヘモグロビン:治療の最初の投与前に取得された最後の値)。
・輸血の必要性。
【0165】
(iv)禁止併用薬の開始:禁止併用薬が開始された場合、治療は恒久的に中止される。
【0166】
(v)PH又はHFの悪化の臨床的証拠:患者がPH及びRVFの悪化を反映する進行性HFの徴候及び症状を示す場合、治療を中止してもよい。例としては、変力薬による薬理学的な、又はRVADの移植による機械的なRV支持の必要性、利尿剤耐性の発生、心エコー検査におけるRV機能低下の客観的証拠、RHCにおけるPVR増加及び/又はCO減少の証拠、並びにPH療法の漸増の必要性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
(vi)心臓移植:患者が心臓移植のレシピエントになった場合、治療は恒久的に中断される。患者候補を定義するために心臓移植前に取得されたRHCは、EOT RHCとして捕捉される。早期治療中止の場合、全てのEOT評価、特にRHCは、EOT来院毎に詳述されるように実施され得る。
【0168】
B.過去の及び併用療法
過去の療法は、終了日がインフォームドコンセントの署名の前である任意の治療である。併用療法は、開始日がインフォームドコンセントの署名時若しくは署名後、又は治療中止後30日までの任意の治療である。治療に付随する療法は、開始日が治療の最初の投与時又はその後から12週目まで、又は治療の早期中断の場合にはそれより早い任意の治療である。
【0169】
許容された併用療法
経口又は静脈内利尿剤が許容され、治療期間中に調整され得る。経口利尿剤による治療は、ベースラインRHCの少なくとも48時間前に安定な用量で継続している場合に許可される。
【0170】
禁止される併用療法
・PAH特異的療法(ERAs、静脈内、皮下、吸入、若しくは経口プロスタノイド、PDE5阻害剤、グアニル酸シクラーゼ刺激剤)。
・iNO。
・強力なCYP3A4阻害剤、例えば、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、ネファゾドン、リトナビル、サキナビル、ボセプレビル、テラプレビル、イオピナビル、フォサンプレナビル、ダルナビル、チプラナビル、アタザナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、及びインジナブル)、並びにCYP3A4の強力な誘導物質(例えば、カルバマゼピン、rifampicin、リファブチン、フェニトイン、及びセントジョーンズワート)。
・任意の治験薬。
【0171】
許容LVAD流量
LVADポンプ速度/流量は、治療期間中及びベースラインRHC中に調整され得る。LVADポンプ速度/流量は、ベースラインRHCの少なくとも48時間前に安定である。
【0172】
4.エンドポイント
ベースラインは、治療の最初の投与前に取得された最後の値として定義される。
【0173】
A.有効性評価項目
(i)主要有効性評価項目:主要有効性評価項目は、ベースラインに対する12週目のPVR比である。PVRは、熱希釈法によって得られる。FASについては表7、ESについては表8、及びPPSについては表9を参照されたい。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
これらの結果は、マシテンタンが初期LVAD後集団においてPVRを有意に減少させ
たことを示す。1日1回のマシテンタン10mgによる治療は、プラセボ群と比較して、12週目にPVRが統計的に有意に大きく減少し、プラセボ調整幾何平均比(GMR)は0.74であった(95%CI:0.58、0.94、p=0.0158)。治療効果(GMR-1×100%)は、マシテンタン対プラセボについてのPVRの統計的に有意な26%減少に対応する。
図3の散布図は、マシテンタン又はプラセボのいずれかを投与されている評価可能な患者についての、RHCによるベースラインから12週目までの熱希釈PVRの変化を示す。プラセボ群と比較して、12週目にマシテンタン治療群においてPVRの統計的に有意なより大きな減少が観察された。
【0178】
全体として、マシテンタン群の16人(66.7%)の患者及びプラセボ群の10人(40.0%)の患者が、統計的に有意である(ベースラインPVR群について調整したコクラン・マンテル・ヘンツェル統計に基づく、p=0.0383)、3WU未満のポストベースラインPVRを有し、すなわち、プラセボに対してマシテンタンを投与された患者の方が多く、事後解析において、3WU未満のPVRを達成した(p=0.0383)。ベースラインでは、平均PVRは両方の治療群で同様であった。
【0179】
4WU以下のベースラインPVRを有する患者のうち、3WU未満のベースライン後PVRの割合は、マシテンタン群(n=10)で90.0%であり、プラセボ群(n=11)で63.6%であった。4WU超のベースラインPVRを有する患者のうち、3WU未満のベースライン後PVRの割合は、マシテンタン群(n=14)で50.0%、プラセボ群(n=14)で21.4%であった。
【0180】
(ii)副次有効性評価項目
mRAP、mPAP、PAWP、CI、TPR、及び混合SvO2におけるベースラインから12週目までの変化は、全て安静時に測定された。
【0181】
NT-proBNPにおけるベースラインから12週目までの変化。
【0182】
WHO FCにおけるベースラインから12週目までの変化。表10を参照。
【0183】
【0184】
(iii)探索的有効性評価項目
・2DグローバルRVLS、RVSI、RV収縮末期面積、RV拡張末期面積、TAPSE、S’、RVFAC、及びE’、A’を含む心エコー変数におけるベースラインから12週目までの変化。
・登録から12週目までの臨床事象の最初の発生までの時間。これらの臨床事象は、HFの入院、48時間以上の静脈内利尿剤の再開、48時間以上の静脈内変力薬の再開、PDE5阻害剤の開始、RVAD/TAHの必要性、RRTの必要性、又は死亡を含む。
・HFのための入院以降の日数。
・ベースラインから12週目までのGFRの変化。
【0185】
B.安全性評価項目
・治療中止後30日までの治療下で発生したAE。
・治療の早期中止につながるAE。
・治療中止後30日までの死亡。
・治療中止後30日までの治療中に発生したSAE。
・ベースラインからEOTまでのバイタルサインの変化。
・EOTまでの肝機能検査(ALT及び/又はAST)異常の発生(3×ULN以上;3×ULN以上かつ5×ULN未満;5×ULN以上かつ8×ULN未満;8×ULN以上)。
・EOTまでの2×ULN以上のビリルビンに伴う3×ULN以上のALT及び/又はASTの異常の発生。
・EOTまでのベースラインと比較した、治療下で発現したヘモグロビン異常(10.0g/dL未満、及び8.0g/dL未満)を有する患者の割合。
・EOTまでの治療中に発生した顕著な検査異常。
【0186】
C.バイオマーカ評価項目
NT-proBNPの変化は、副次有効性評価項目解析の一部として、ベースラインから12週目(EOT)まで評価される。
【0187】
5.評価
適宜、評価は以下の順序で実行され得る。
・血液サンプリング。
・身体検査。
・WHO FC。
・安静時RHC。
・エコー(すなわち、3D、2D、Mモード及びドップラー心エコー検査法)。
【0188】
A.スクリーニング/ベースライン評価
インフォームドコンセントの日付、ベースライン人口統計(性別、年齢、人種、民族性、体重、身長)、並びに女性が妊娠の可能性があると考えられない理由(該当する場合)は、インフォームドコンセントが署名された後にのみ来院1/スクリーニング時に記録される。
【0189】
(過去の及び無作為化時に継続中の)完全な臨床関連の病歴及び疾患特性、バイタルサイン、BMI、及び過去の/継続中の投薬を、来院1/スクリーニング時に記録する。LVAD RHC前及びLVAD RHC後の非ベースラインの履歴データが入力され得る。
【0190】
来院1/スクリーニング及び来院2/無作為化において、患者の身体検査が実行され得る。
【0191】
血清検査及び妊娠検査は、来院1/スクリーニングにおいて実施され、来院2/無作為化において繰り返され得るが、ベースラインNT-proBNPのための血液サンプリングは、来院2/無作為化においてのみ実施されるべきである。
【0192】
来院2/無作為化において、WHO FC、バイタルサイン、及び体重が評価される。
【0193】
B.有効性評価
適格性は、LVAD RHC前又はLVAD直後の血行動態においてPH(例えば、3WU超のPVR)の臨床的又は血行動態の証拠を有することを条件として、全てのLVA
D後患者について考慮され得る。PHの臨床的又は血行力学的証拠のない患者はスクリーニングされるべきではない。患者は、ベースラインRHCの前の48時間安定している。安定化は次のように定義される。
・LVADポンプ速度/流量の変化なし、
・安定用量の経口利尿剤、
・静脈内変力薬又は昇圧薬なし、及び
・歩行可能な患者。
【0194】
ベースラインRHCは、LVAD移植後、治療の最初の投与前の最後の血行動態測定値として定義される。ベースラインRHCに対するPHの血行力学的証拠は、組み入れ基準の1つである。PHは、次のように定義される。
25mmHg以上のmPAP、18mmHg以下のPAWP、及び3WU超のPVR。
【0195】
インフォームドコンセントに署名する前に実施されたRHCは、ベースラインRHCとして受け入れられ得る。ベースラインRHCは、LVAD移植後、治療の最初の投与(LVADの外科的移植後90日以内に行われる)の前に、熱希釈法によって行われる。無作為化(来院2)は、ベースラインRHCの14日以内である。患者は、ベースラインRHC又は治療開始前7日以内に、ERA、PDE5阻害剤、静脈内、皮下、若しくは経口プロスタノイド、又はグアニル酸シクラーゼ刺激剤で治療された場合に除外される。患者は、ベースラインRHC又は治療開始前24時間以内に、吸入プロスタノイド(例えば、イロプロスト、エポプロステロール)、酸化窒素又は静脈内変力薬若しくは昇圧薬で治療された場合に除外される。LVADポンプ速度/流量は、治療期間中及びベースラインRHC中に調整され得る。
【0196】
RHCは、12週目に繰り返されるか、又は12週目の前である場合、治療の永続的中断の7日以内に繰り返される。12週目のRHCは、静脈内変力薬又は昇圧薬による治療の24時間以内ではなく、熱希釈法によって行われる。
【0197】
以下の変数も測定される。脈拍数、PAWP、mRAP、収縮期/拡張期/平均PAP、CO、及びSVO2、並びに利用可能であれば非侵襲的平均、SBP及びDBP。PVRを計算する。ベースライン及び12週目のRHCの両方の間のCO測定及びPVR計算は、熱希釈法によって得られる。全ての主要評価項目計算は、熱希釈法により計算されたPVRに基づく。
【0198】
以下の血行動態変数を計算する:PVR、TPR、及びCI。
【0199】
RHCパラメータ(mPAP、mRAP、PAWP、CO、CI、mPAP、TPR、SvO2、DPG、及びTPG)のベースラインの変化については、表11を参照されたい。
【0200】
【0201】
【0202】
これらの結果は、マシテンタンの使用が、LVAD移植後の患者におけるLV充填を改善したことを示唆する。例えば、特にPAWP及びCOデータを参照されたい。RHC解析は、TPGがマシテンタン対プラセボで統計的に有意に減少し、最小二乗平均の差が-2.7であり、p値が0.0499であることを実証した。
【0203】
血液試料を、血清NT-proBNPの解析のために無作為化(来院2)及びEOT(来院5)で採取する。FASのベースラインと比較した12週目の血清NT-proBNPについては表12を参照されたい。
【0204】
【0205】
エコー(すなわち、3D、2D、Mモード、及びドップラー心エコー検査)は、来院2/無作為化で行われ、これはベースライン測定を表し、12週目の来院時に繰り返される。ベースラインECHOは、無作為化の日に発生する。以下の変数を評価する:2D RVLS、RVSI、RV収縮末期面積、RV拡張末期面積、TAPSE、S’RVFAC、E’、及びA’。
【0206】
B.臨床事象
登録から12週目までの臨床事象の最初の発生までの時間を記録する。これらの臨床事象は、HFの入院、48時間以上の静脈内利尿剤の再開、48時間以上の静脈内変力薬の再開、PDE5阻害剤の開始、RVAD/TAHの必要性、RRTの必要性、及び死亡を含む。
【0207】
C.検査室検査
血液検査:血液検査は、来院(来院1~6)毎に実施され、ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数、白血球百分率を伴う白血球数、及び血小板数を含む。
【0208】
臨床化学:臨床化学検査は、来院(来院1~6)毎に実施され、AST/ALT、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン及び直接ビリルビン、LDH;クレアチニン、BUN;尿酸;グルコース;コレステロール、トリグリセリド;ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム;及びタンパク質、アルブミンを含む。
【0209】
GFR:GFRは、血清クレアチニンレベルに基づいて推定される。
【0210】
妊娠検査:妊娠可能な女性のための血清妊娠検査は、来院1~6において、妊娠が疑われる場合に行われる。
【0211】
D.バイオマーカ及び遺伝的評価
NT-proBNPに加えて、IL-6、TNF-α、hsCRP、ET-1、ガレクチン-3、GDF-15、インターロイキン1受容体ST2、NGAL、コペプチン、高感度心筋トロポニンThs-cTnT、シスタチン-C、及びオステオポンチンなどの更なる循環バイオマーカが解析され得る。
【0212】
6.安全性の定義
A.有害事象
AEは、任意の有害な変化、すなわち、患者において生じる異常な検査所見、症状、又は疾患を含む、任意の好ましくない及び意図しない徴候である。AEは、以下を含む。
・既存疾患の悪化。
・既存のエピソード疾患又は医学的状態の頻度又は強度の増加。
・治療開始前に存在していたかもしれないが、検出又は診断された疾患又は病状。
・治療開始時に存在し、開始後に悪化する持続的な疾患又は症状。
・治療開始時に存在しなかったか、又は治療の過程で悪化した臨床的に有意な所見を表す場合の異常評価、例えば、身体検査、ECG所見の変化。
・治療開始時に存在しなかった、又は治療の経過中に悪化した、又は用量低減、治療の中断、若しくは恒久的中断をもたらした、症候的又は非症候的な臨床的に有意な所見を表す場合の検査室検査異常。
【0213】
治療下で発現したAEは、治療の使用に一時的に関連する任意のAEである(治療開始から治療中止後30日まで)。治療の過剰投与、誤用、及び乱用は、AEと見なされ得る。
【0214】
臨床AEの強度は、3点スケール-軽度、中等度、重度で等級付けされる。強度の3つのカテゴリは、以下のように定義される。
・軽度:事象が患者に認識可能であり得る。事象が日常活動に影響せず、通常は介入を必要としない。
・中程度:事象が患者を不快にし得る。日常活動のパフォーマンスが影響を受ける場合があり、介入が必要とされる場合がある。
・重度:この事象は、顕著な不快感を引き起こす可能性があり、通常、日常活動を妨げる。患者は継続することができない場合があり、治療又は介入が通常必要とされる。
【0215】
各AEは、治療との因果関係の妥当な可能性があるかどうかに関して評価される。AEは、設計又はプロトコル規定手順のいずれかに対する因果関係の妥当な可能性を有するように見える場合、投与設計又はプロトコル規定手順に関連するものとして定義される。例としては、ウォッシュアウト期間中に患者の以前の治療を中止し、基礎疾患の増悪をもたらすことが挙げられる。
【0216】
表13~15は、有害事象(表11)、SSについて治療中止につながるAE(表12)、及び治療群の10%以上でSSについて頻繁に報告されるAEの全体的な概要を提供する。
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
これらの結果は、マシテンタンがこれらのLVAD移植後の患者において好ましい安全プロフィールを有することを示す。これらの結果は、マシテンタンが初期LVAD後集団において十分に許容されたことを示す。特に、報告されたAEは、研究集団の基礎疾患に主に関連するか、又はPAHを有するマシテンタン治療対象の他の研究において観察されたものと一致するかのいずれかであった。
【0221】
B.重篤な有害事象
SAEは、ICHガイドラインによって、以下の基準のうちの少なくとも1つを満たす任意のAEとして定義される。
・致死的。
・生命を脅かす:患者が事象の時点で死のリスクがあった事象を指す。生命を脅かすとは、仮により重度であれば死に至り得た事象を指すわけではない。
・入院又は現行の入院期間の延長が必要となる。
・永続的又は著しい障害/機能不全に至る。
・先天性異常又は出生異常。
・医学的に重要:直ちに死に至る、生命を脅かす、又は入院を必要とするものではないが、患者を危険にさらす場合にSAEと見なすことができ、上記定義に列挙した転帰の1つを予防するために医学的又は外科的介入を必要とする可能性がある重要な医学的事象を指す。
【0222】
しかしながら、入院中に起こる合併症は、AE又はSAEである(例えば、合併症が入院を長引かせる場合)。
【0223】
表16は、いずれかの治療群における2人以上の患者における重篤なAEを示す。
【0224】
【0225】
全体として、各治療群において同様の割合の患者が重篤な有害事象を経験した。表15を参照。
【0226】
7.統計方法
統計解析計画は、データ導出のために使用された解析、データ表示、及びアルゴリズムの完全な詳細を提供する。
【0227】
A.解析セット
スクリーニングされた解析セット:この解析セットは、スクリーニングされ、スクリーニング番号を受けた全ての患者を含む。
【0228】
安全性セット(SS):SSは、治療期間中に少なくとも1用量の薬物を投与される全ての患者を含む。
【0229】
完全解析セット(FAS):FASは、無作為化された全ての患者を含む。
【0230】
修正完全解析セット(FAS):修正FASは、治療期間中に少なくとも1回の治療用量を投与されており、ベースライン及び少なくとも1つのベースライン後PVR測定値を有する、FASにおける全ての患者を含む。
【0231】
プロトコル遵守セット(PPS):PPSは、主要有効性変数の主要解析に影響を及ぼし得る治験実施計画書からの大きな逸脱のないFASの全ての患者を含む。
【0232】
主要有効性解析は、無作為化された治療に基づいてFASに対して行われる。副次有効性解析及び探索的有効性解析もまた、FASに対して行う。感度解析は、主要有効性評価項目及び選択された副次有効性評価項目について修正FASに基づいて行われる。二重盲検治療期間に関連する安全性解析を、受けた治療に基づいてSSに対して行う。患者リストは、特に明記しない限り、SSに基づく。患者の配置は、スクリーニングされた分析セットについて記載される。表17を参照。
【0233】
【0234】
B.変数
主要有効性変数は、ベースラインに対する12週目のPVR比である。PVR[WU]は、(mPAP-PAWP)/COとして計算される。
【0235】
副次有効性変数は、ベースラインから12週目までの以下の変化である。
・mRAP(mmHg)
・mPAP(mmHg)
・PAWP(mmHg)
・Cl(L/min/m2)、BSA(m2)=0.007184×体重0.425(kg)×身長0.725(cm)として計算される。
・TPR(WU)、mPAP/COとして計算される。
・SVO2(%)
・NT-proBNP(pmol/L)
・WHO FC(I-IV)。
【0236】
探索的有効性変数は、以下を含む。
・2DグローバルRVLS、RVSI、RV収縮末期面積、RV拡張末期面積、TAPSE、S’、RVFAC、及びE’、A’を含む心エコー変数。
・HFの入院、48時間以上の静脈内利尿剤の再開、48時間以上の静脈内変力薬の再開、PDE5阻害剤の開始、RVAD/TAHの必要性、RRTの必要性、及び死亡を含む臨床事象。
・心不全による指標入院後の入院日数。
・ベースラインから12週目までのGFRの変化。
【0237】
安全性変数は、以下を含む。
・治療中止後30日までの治療下で発生したAE。
・治療の早期中止につながるAE。
・治療中止後30日までの死亡。
・治療中止後30日までの治療中に発生したSAE。
・ベースラインからEOTへのバイタルサインの変化。
・以下のように分類される、ベースラインからEOTまでの治療下で発現したALT及び/又はAST異常を有する患者の割合、
-3×ULN以上;
-3×ULN以上かつ5×ULN未満;
-5×ULN以上かつ8×ULN未満;
-8×ULN以上。
・ベースラインからEOTまでの2×ULN以上の総ビリルビンと組み合わせて、3×ULN以上のALT及び/又はAST異常を有する患者の割合。
・EOTまでのベースラインと比較した、治療下で発現したヘモグロビン異常を有する患者の割合、以下のように分類される。
-8.0g/dL未満
-10.0g/dL未満。
・EOTまでの治療中に発生した顕著な検査異常。
【0238】
全体的な第一種過誤は、α=0.025(片側)である。第二種過誤を0.20に設定し、電力を80%に設定した。
【0239】
C.主要有効性変数の解析
帰無仮説は、平均PVR比がマシテンタン群とプラセボ群で同じであるというものである。別の仮説は、平均PVR比がプラセボ群と比較してマシテンタン群において低いということである。
【0240】
PAWPの欠落のためにPVRを計算することができないが、mPAP及びCOが同じ来院に利用可能である場合、以下のうちの1つが適用される。
1.PAWPがベースライン時及びベースライン後の両方で欠落している場合、治療群中央値が代入される(FASに基づく)。
2.PAWPがベースライン又はポストベースラインのいずれかで欠落している場合、患者の利用可能なPAWPが代入される。
【0241】
この代入は、マシテンタンがPAWPに影響を及ぼさないという臨床仮定に基づく。
【0242】
ベースライン:ベースラインPVR測定値を有さない患者は、解析から除外される。
【0243】
ベースライン後:12週目の前にベースライン後PVR測定値が得られた患者では、最後のベースライン後PVR測定値が繰り越される。
【0244】
患者がベースライン後PVR測定値を有さない場合、ベースラインPVRに対する12週目の比は、FASに基づく治療群中央値を使用して代入される。
【0245】
PVR値についての他の代入法は、感度解析として考慮される(例えば、多重代入法)。
【0246】
(i)主要解析
主要有効性解析は、FASに関して実施される。記述統計並びに幾何平均及びCVを使用して、PVRを時点別及び治療群別に要約する。ベースラインPVRに対する12週目の比も同様に要約する。
【0247】
ベースラインPVRに対する12週目の比を対数変換し(ベースe)、治療群についての因子及びベースラインlog PVR(マシテンタン対プラセボ)についての共変量を用いた共分散解析(ANCOVA)を使用して解析する。治療群の差(対数スケール)及びその95%信頼区間(両側)をモデルに基づいて推定した。幾何平均比(GMR;マシテンタン対プラセボ)及びその95%信頼区間をべき乗によって取得する。全95%信頼区間が1未満である場合、帰無仮説は棄却される。
【0248】
治療効果は、(GMR-1)×100%として表され、負の値は、プラセボ群と比較したマシテンタン群におけるPVRの減少を示す。
【0249】
PVRの対数変換は、ベースラインに対する比が、対数変換後により密接に正規分布に従うという事実によって正当化される。加えて、対数スケールにおけるベースラインからの平均絶対変化は、指数化によって(幾何)平均比に変換することができる。
【0250】
(ii)支持/感度解析
主要有効性評価項目及び選択された副次有効性評価項目を、感度解析として修正FASに対して解析する。
【0251】
(iii)他の有効性変数の解析
副次有効性解析を、95%CLを使用してα=0.025(片側)でFASに対して実施する。これらの解析には、複数の検査のための補正は適用されない。
【0252】
ベースラインから12週目までの圧力-容積変数(例えば、mRAP、mPAP、PAWP、CI TPR)及びSVO2の変化を要約し、解析するが、対数変換は行わない。
【0253】
記述統計並びに幾何平均及びCVを使用して、NT-proBNPを時点別及び治療群別に要約する。ベースラインNT-proBNPに対する12週目の比も同様に要約する。NT-proBNPにおけるベースラインに対する比を対数変換し、治療群及びベースラインlog NT-proBNPについての共変量を用いるANCOVAを使用して解析する。
【0254】
頻度表を使用して、WHO FCを時点及び治療群毎に要約する。WHO FCにおけるベースラインからの変化は、悪化(すなわち、変化0超)対変化なし又は改善(すなわち、変化0以下)として二分化する。悪化は、治療群及びWHO FCについての共変量を用いたロジスティック回帰モデルを使用して解析する。
【0255】
(iv)探索的有効性変数の解析
探索的有効性解析は、95%CLを使用してα=0.025(片側)でFASに対して実施する。
【0256】
TAPSE、S’、RVFAC、E’、A’、RVLS、RV面積及びRVSIを含む心エコー変数を、記述統計(n、平均、SD、中央値、Q1、Q3、及び範囲)を使用して、治療及び時点(ベースライン、12週目/EOT)毎に要約する。これらの変数におけるベースラインから12週目/EOTへの変化を同様に要約し、ANCOVAを使用して、治療のための因子並びに共変量ベースラインlog PVR及びベースラインTAPSE、S’、RVFAC、E’、A’、RVLS、RV面積及びRVSIをそれぞれ用いて解析する。調整された治療効果及びその95%CIが示されている。
【0257】
HFのための入院、48時間以上の静脈内利尿剤の再開、48時間以上の静脈内変力薬の再開、RVAD/TAHの必要性、RRTの必要性、及び死亡を含む臨床事象を治療群毎にまとめ、ログランク検定を使用して時間対事象治療の差を解析する。
【0258】
リハビリテーション滞在を除く入院期間を治療群毎にまとめ、モデルにおける治療及びベースラインPVRとの共分散解析を用いて解析する。
【0259】
GFRは、記述統計(n、平均、SD、中央値、Q1、Q3、及び範囲)を使用して、治療及び時点(ベースライン、12週目/EOT)毎に要約される。GFRにおけるベー
スラインから12週目までの変化が同様に要約される。GFRにおけるベースラインからの変化を、治療のための因子並びに共変量ベースラインlog PVR及びベースラインGFRを用いてANCOVAを使用して解析する。調整された治療効果及びその95%信頼区間が示されている。
【0260】
(vi)安全性変数の解析
以下に説明する安全性解析は、SSに対して実行される。
【0261】
(vii)有害事象
治療下で発現したAEは、治療の使用に一時的に関連する任意のAEである。治療下で発現したAE及びSAEを少なくとも1回経験した患者の数及びパーセンテージを、治療群毎に及び以下によって表にする。
・発生率の降順で、MedDRA SOC及び各SOC内の個々の好ましい用語。
・発生率の降順で、同じ好ましい用語でコード化された事象を有する患者の頻度。
【0262】
更に、治療中に発現したAE及びSAEは、重症度及び治療との関係によって上記に説明されたように表にされる。治療の早期中断及び死をもたらすAEもまた、上記のように要約される。
【0263】
SAEを含む、全ての報告されたAEについてリストが提供される。更に、SAE、治療の早期中止につながるAE、及び死亡につながるAEについて別々のリストが提供される。
【0264】
D.検査室変数
来院による記述的要約統計は、血液学的及び臨床化学的検査室検査の両方において、ベースラインからの観察された値及び絶対変化について提供される。欠落データを最小限に抑えて、予定外の来院を可能にするために、EOT+30日間までの全ての記録された評価は、その評価の最良の適合時間窓に従って、最も適切な来院時点に割り当てられる。
【0265】
検査室変数は以下の通りである。
・血液学:ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数、白血球百分率を伴う白血球数、血小板数。
・血液化学:AST、ALT、アルカリホスファターゼ、全ビリルビン及び直接ビリルビン、LDH、クレアチニン、BUN、尿酸、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、タンパク質、アルブミン。
【0266】
肝機能検査異常を有する患者の数及びパーセンテージを、治療群毎に表にする。ヘモグロビン異常を有する患者の数及び割合を、治療群毎に表にする。
【0267】
血圧(すなわち、DBP及びSBP)、脈拍数、及び体重(kg単位)を、絶対値及びベースラインからの変化の両方について、治療群毎に通常の場所及び要約統計量を使用して、各来院時に要約する。ベースライン後の値が利用可能でない患者は、SSにおけるベースラインからの変化の解析から除外される。
【0268】
実施例2:高用量のマシテンタンの投与
これは、健康な男性対象における1シークエンス、非盲検単一施設、第1相試験である。本試験は、マシテンタンの75mgのqd投与の効果を評価した。本試験は、初回のマシテンタン投与の21日前のスクリーニング相、続いて非盲検治療期を含む。無作為化は使用されず、対象は同じ治療を受けた。
【0269】
A.対象集団
29人の対象を登録された。11人の対象を、マシテンタン治療の用量の増量を含まない初期プロトコルの下で登録した。18人の対象を、マシテンタン治療の用量の増量を含む修正プロトコルの下で登録した。
【0270】
B.試験治療
B.1.マシテンタンの用量増量を含まない試験治療
75mg qdのマシテンタンの投与を、1日目に開始した。マシテンタンを、毎日、午前8時~午前11時に、240mlの非炭酸水で投与した。したがって、1つの75mgのマシテンタンフィルムコーティング錠を、摂食条件下で複数回qd経口用量として投与した。
【0271】
対象は、以下の時点で、マシテンタンが摂食状態で投与される投与日に標準化された食事を受けた。
・翌日のマシテンタン投与の10時間前までの夕食。
・マシテンタン投与前30分以内の朝食(1~9日目及び11~12日目)。
・マシテンタン投与の約4時間後の昼食。
・マシテンタン投与の約7時間後の軽食。
・マシテンタン投与の約10時間後の夕食。
【0272】
対象が、マシテンタン75mgを15日間服用するように計画した。しかしながら、試験は8日目の朝に中断され、すなわち対象が7回のマシテンタン75mgを受けた時点で中断した。
【0273】
B.2.マシテンタンの用量増量を含む試験治療
マシテンタンを、午前8時~午前11時に、240mLの非炭酸水で用量増量レジメンで投与した。1つのマシテンタンフィルムコーティング錠(10mg、37.5mg、又は75mg)を、1~9日目及び11~12日目に摂食条件下で、及び10日目及び13日目に絶食条件下で、複数回qd経口用量として投与した。用量増量レジメンは、2qd用量の10mgのマシテンタン及び3qd用量の37.5mgのマシテンタン、続いて8qd用量の75mgのマシテンタンからなる。4日目、3日目、10日目、及び13日目(すなわち、絶食条件下で投与が行われた日)では、マシテンタンの投与前1時間から投与後1時間まで、水をとる以外の水分摂取は許容されなかった。
【0274】
対象は、以下の時点で、マシテンタンが摂食状態で投与される投与日に標準化された食事を受けた。
・翌日のマシテンタン投与の10時間前までの夕食。
・マシテンタン投与前30分以内の朝食(1~9日目及び11~12日目)。
・マシテンタン投与の約4時間後の昼食。
・マシテンタン投与の約7時間後の軽食。
・マシテンタン投与の約10時間後の夕食。
【0275】
C.安全性測定
表18~20は、安全性測定の頻度及びタイミングを要約する。
【0276】
【0277】
【0278】
【0279】
表21の試験を実施した。
【0280】
【0281】
D.安全性分析
治療相中に発生した全ての報告されたAEは、分析に含まれた。心血管変数に対する効果を評価し、以下の変数を収集した:PR(ms)、QRS(ms)、QT(ms)、QTcB(ms)、QTcF(ms)、心拍数(bpm)、及びRR。バイタルサインの正常範囲は、以下のように定義される。
・収縮期血圧:100~140mmHg
・拡張期血圧:60~90mmHg
・脈拍数:45~90bpm
・呼吸数:1分当たり8~20
・体温:35.0℃~37.5℃
【0282】
AEは、あらゆる医療上の出来事、すなわち、マシテンタンの使用に伴って一時的に関連する、意図しないあらゆる徴候(異常所見を含む)、症状、又は疾患である。治療中に発生したAEは、発症が新しいか、又はベースライン状態から重症度が悪化するあらゆる出来事である。以下を使用して、全てのAEを評価する。
・関連する:マシテンタン投与とAEとの間に妥当な因果関係がある。
・関連市内:マシテンタン投与とAEとの間に妥当な因果関係がない。
【0283】
AE重症度グレード評価は、以下の一般的なカテゴリ記述子を使用して行われた:
軽度:容易に耐容され、最小限の不快感を引き起こし、日常活動を妨害しない症状の認識。
中等度:普段の活動の妨害を引き起こすような十分な不快感が存在する。
重度:機能の重大な障害又は機能不全を引き起こす、極度な苦痛。正常な日常活動が妨害される。
【0284】
E.結果
次いで、用量増量あり及び用量増量なしの第1のコホートにおける対象についてのAEを分析した。表22を参照。
【0285】
【0286】
AEは、2日目以降から報告され、主に軽度であった。マシテンタンの中断から4日後に、AEの大部分は解決した。バイタルサイン、ECG及びラボパラメータについては、臨床的に重要な変化は報告されなかった。更に、ヘモグロビンの低下が、予想範囲内で観察された(2g/dL減少なし超)。
【0287】
要約すると、データは、用量増量レジメンの導入が75mgのマシテンタンの忍容性を改善したことを示す。全ての対象は、用量増量レジメンコホートにおいてマシテンタンによる治療を完了した。
【国際調査報告】