(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】無線電力伝送
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20240214BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551216
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2022053575
(87)【国際公開番号】W WO2022179882
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ドラーク ヨハネス ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】スターリング アントニウス エイドリアン マリア
(57)【要約】
電力送信機101は、電力伝送信号を生成する送信機コイル103を備える出力共振回路用の駆動信号を生成するドライバ201を具備する。共振検出器307は、出力共振回路の結合共振周波数を判断し、結合共振周波数は電力受信機105の電力伝送入力共振回路の一部である受信機コイル107に結合されている送信機コイル103の出力共振回路の共振周波数である。入力共振回路の品質係数は、10以上である。推定回路309は、第1の実効共振周波数、及び場合によっては、出力共振回路又は入力共振回路の非結合共振周波数に応じて、送信機コイル103と受信機コイル107との結合に関する、結合係数の推定値を判断する。アダプタ311は、結合係数の推定値に応じて動作パラメータを設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力送信機及び電力受信機を備える無線電力伝送システムであって、前記電力送信機が、誘導電力伝送信号を介して、前記電力受信機へ無線で電力を供給し、
前記電力送信機が、
送信機コイル及び少なくとも1つのコンデンサを備える、出力共振回路と、
前記出力共振回路用の駆動信号を生成し、前記誘導電力伝送信号を生成する、ドライバと、
共振測定期間に、前記出力共振回路の第1の結合共振周波数を判断する共振検出器であって、前記第1の結合共振周波数が、前記電力受信機の電力伝送入力共振回路の受信機コイルに結合されている前記送信機コイルの前記出力共振回路の共振周波数である、共振検出器と、
前記第1の結合共振周波数に応じて、前記送信機コイルと前記受信機コイルとの結合に関する、結合係数の推定値を判断する、推定回路と、
前記結合係数の推定値に応じて動作パラメータを設定する、アダプタと
を具備し、
前記電力受信機が、
前記電力送信機及び少なくとも1つのコンデンサから電力を取り出す前記受信機コイルを備える、前記電力伝送入力共振回路であって、前記電力伝送入力共振回路が、前記共振測定期間に、10以上の品質係数を有する、前記電力伝送入力共振回路と、
前記品質係数が10以上に制限されていない電力伝送モードから、前記共振測定期間で、前記電力受信機が測定モードで動作しているときに、前記品質係数が10以上となる、前記測定モードに切り替える、回路と
を具備する、無線電力伝送システム。
【請求項2】
前記共振検出器がさらに、前記共振測定期間に前記出力共振回路の第2の結合共振周波数を測定し、前記第2の結合共振周波数が、前記電力受信機の存在下での、前記出力共振回路の別の共振周波数であり、前記推定回路がさらに、前記第2の結合共振周波数に応じて前記結合係数の推定値を判断する、請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項3】
前記第1の結合共振周波数及び前記第2の結合共振周波数が、前記駆動信号の電流が極大値を示す周波数である、請求項2に記載の無線電力伝送システム。
【請求項4】
前記推定回路がさらに、前記出力共振回路の非結合共振周波数及び前記入力共振回路の非結合共振周波数に応じて、前記結合係数を判断する、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線電力伝送システム装置。
【請求項5】
前記推定回路がさらに、前記出力共振回路の非結合共振周波数と前記入力共振回路の非結合共振周波数との比に応じて、前記結合係数を判断する、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線電力伝送システム装置。
【請求項6】
前記推定回路がさらに、前記出力共振回路の非結合共振周波数と前記入力共振回路の非結合共振周波数との2乗和と、前記受信機コイルに結合されている前記送信機コイルの前記出力共振回路の共振周波数である前記第2の結合共振周波数と前記第1の結合共振周波数との2乗和との比に応じて、前記結合係数を判断する、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線電力伝送システム装置。
【請求項7】
前記共振検出器が、前記出力共振回路の前記非結合共振周波数を、前記駆動信号の前記電流が2以下の前記品質係数を有する前記入力共振回路に対して極大値を示す周波数であると判断し、前記推定回路が、前記出力共振回路の前記非結合共振周波数に応じて、前記結合係数を判断する、請求項1から6のいずれか一項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項8】
前記共振検出器が、前記入力共振回路の前記非結合共振周波数を、前記駆動信号の電流が、10以上の前記品質係数を有する前記入力共振回路に対して、極小値を示す周波数であると判断し、前記推定回路が、前記入力共振回路の前記非結合共振周波数に応じて、前記結合係数を判断する、請求項1から7のいずれか一項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項9】
前記共振測定期間が、電力伝送動作の初期化中にあり、前記動作パラメータが、前記電力伝送動作の初期動作パラメータである、請求項1から8のいずれか一項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項10】
前記ドライバが、電力伝送段階に、少なくとも1つの電力伝送期間及び少なくとも1つの測定期間を含む、繰返し時間フレームに従って前記駆動信号を生成し、前記共振測定期間が、前記測定期間に含まれる、請求項1から9のいずれか一項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項11】
前記動作パラメータが、前記電力受信機から受信した電力制御メッセージに応答して、前記電力伝送信号の電力レベルを適合させる、電力制御ループのループパラメータである、電力ループパラメータである、請求項1から10のいずれか一項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項12】
前記電力受信器が、前記共振測定期間に、前記電力伝送入力共振回路を短絡する回路をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の無線電力伝送システム。
【請求項13】
電力送信機及び電力受信機を備える無線電力伝送システムの動作方法であって、前記電力送信機が、誘導電力伝送信号を介して、前記電力受信機へ無線で電力を供給し、
前記電力送信機が、送信機コイル及び少なくとも1つのコンデンサを備える出力共振回路を具備し、前記電力受信機が、前記電力送信機及び少なくとも1つのコンデンサから電力を取り出す受信機コイルを備える電力伝送入力共振回路を具備し、
前記動作方法は、前記電力送信機が、
前記出力共振回路用の駆動信号を生成し、前記誘導電力伝送信号を生成するステップと、
共振測定期間に、前記出力共振回路の第1の結合共振周波数を判断するステップであって、前記第1の結合共振周波数が、前記電力受信機の前記電力伝送入力共振回路の前記受信機コイルに結合されている前記送信機コイルの前記出力共振回路の共振周波数であり、前記電力伝送入力共振回路が、前記共振測定期間に、10以上の品質係数を有する、第1の結合共振周波数を判断するステップと、
前記第1の結合共振周波数に応じて、前記送信機コイルと前記受信機コイルとの結合に関する、結合係数の推定値を判断するステップと、
前記結合係数の推定値に応じて、動作パラメータを設定するステップと
を実行し、
前記動作方法は、前記電力受信機が、
前記品質係数が10以上に制限されていない電力伝送モードから、前記共振測定期間で、前記電力受信機が測定モードで動作しているときに、前記品質係数が10以上となる、前記測定モードに切り替えるステップを実行する、動作方法。
【請求項14】
電力送信機及び電力受信機を備える無線電力伝送システム用の前記電力受信機であって、前記電力送信機が、誘導電力伝送信号を介して、前記電力受信機へ無線で電力を供給し、
前記電力受信機が、
前記電力送信機及び少なくとも1つのコンデンサから電力を取り出す受信機コイルを備える電力伝送入力共振回路と、
品質係数が10以上に制限されていない電力伝送モードから、共振測定期間で、前記電力受信機が測定モードで動作しているときに、前記品質係数が10以上となる前記測定モードに切り替える、回路と
を具備する、電力受信機。
【請求項15】
電力送信機及び電力受信機を備える無線電力伝送システム用の、前記電力受信機の動作方法であって、前記電力送信機が、誘導電力伝送信号を介して、前記電力受信機へ無線で電力を供給し、前記電力受信機が、前記電力送信機及び少なくとも1つのコンデンサから電力を取り出す受信機コイルを備える電力伝送入力共振回路を具備し、
前記動作方法は、回路が、品質係数が10以上に制限されていない電力伝送モードから、共振測定期間で、前記電力受信機が測定モードで動作しているときに、前記品質係数が10以上となる、前記測定モードに切り替えるステップを有する、動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送システムに関し、詳細には、これらに限定されるものではないが、例えば台所用電気器具などの高出力デバイスへの誘導電力伝送を可能にする、電力送信機の動作に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の電気製品のほとんどは、外部電源から給電するために、専用の電気接点を必要とする。しかしこれは、得てして非実用的であり、ユーザがコネクタを物理的に挿入するか、さもなければ物理的な電気的接触を確立する必要がある。通常、電力要件も著しく異なり、現在、ほとんどのデバイスには専用の電源が設けられているため、一般的なユーザは、多数の様々な電源を有し、各電源は、特定のデバイス専用である。内蔵バッテリを使用すると、使用中は電源に有線接続する必要がないが、バッテリの再充電(又は交換)が必要になるので、これは、部分的な解決策を提供しているに過ぎない。さらに、バッテリを使用すると、デバイスの重量が、また場合によってはコスト及びサイズが、大幅に増加する。
【0003】
著しく向上したユーザエクスペリエンスを提供するために、電力が電力送信機デバイスの送信機インダクタから個々のデバイスの受信機コイルに誘導的に伝送される、無線電源の使用が提案されている。
【0004】
磁気誘導を介した電力送信は、よく知られた概念であり、主に、1次側送信機インダクタ/コイルと2次側受信機コイルとの間に密結合を有する、変圧器で用いられている。2つのデバイス間で、1次側送信機コイルと2次側受信機コイルとを離すことにより、疎結合変圧器の原理に基づいて、両者間の無線電力伝送が可能となる。
【0005】
かかる構成により、どんなワイヤも物理的な電気接続も必要なしに、デバイスへ無線電力伝送を行うことが可能となる。実際、無線電力伝送により、デバイスを外部から再充電又は給電するために、送信機コイルに隣接して又は送信機コイルの上に、ただ単に置くだけで済む。電力送信機デバイスは、例えば、給電するためにデバイスをただ単に置くことができる水平面を備え、配置される。
【0006】
かかる無線電力伝送装置は、さらに、電力送信機デバイスが様々な電力受信機デバイスとの間で使用できるよう設計されているので、有利である。特に、Qi仕様として知られる無線電力伝送手法が規定されており、現在さらに開発が進められている。この手法により、Qi仕様を満たす電力送信機デバイスを、やはりQi仕様を満たす電力受信機デバイスとの間で使用でき、これらのデバイスは、同じメーカのものである必要がなく、互いに専用である必要もない。Qi規格には、特定の電力受信機デバイスに動作を適合させることができる(例えば、特定の電力消費に応じて変わる)、いくつかの機能がさらに含まれている。
【0007】
Qi仕様は、ワイヤレスパワーコンソーシアムによって開発されており、より多くの情報を、例えば、ワイヤレスパワーコンソーシアムのウェブサイトであるhttp://www.wirelesspowerconsortium.com/index.htmlで見つけることができる。特に、規定された仕様文書を、ここで見つけることができる。
【0008】
ワイヤレスパワーコンソーシアムは、Qi仕様に基づいて、台所用電気器具への安全で、信頼性が高く、効率的な無線電力伝送を実現することを目的とした、Ki仕様(コードレスキッチン仕様としても知られている)の開発を進めている。Kiは、最大2.2KWまでの、はるかに高い電力レベルに対応している。
【0009】
無線電力伝送による起こり得る課題は、電力伝送の性能が、特定の条件に著しく依存することである。特に、効率、実現可能な電力レベル、適合応答時間などに関する電力伝送性能は、大抵、送信機コイルと受信機コイルとが、互いに対してどのように配置されているかに大きく依存する。一般に、コイルを並べて互いにより近づけると、大抵、より効率的で信頼性の高い電力伝送が実現する。
【0010】
電力伝送の性能は、通常、結合係数又は率に依存し、結合係数がより高いほど、電力伝送の効率が一層高くなる。
【0011】
より近くに整列させること、及びより高い結合係数は、電力送信機デバイスに対する電力受信機デバイスの位置取りが厳しく制限されるように、例えば、電力受信機を1つの特定の位置に制約するように、デバイスを設計することで実現できるが、これは、システムの実用性を制約するので、一般的に望ましくない。例えば、電力送信機がキッチンカウンタ内に実現されている、台所用電気器具の場合、ユーザは、電気器具を、単に電力送信機コイルのほぼ近くに置くことしかできず、システムが次いで、それに応じて適合することが好ましい。電力伝送機能が、例えば、電力受信機デバイスを制限する、機械的又は物理的案内機構を必要とすることなく、実現されることも好ましい。例えば、完全に平らなキッチンカウンタ表面を使用して、電力送信機を実現できることが望ましい。
【0012】
電力伝送は、動作条件が大幅に変わることを考慮に入れるために、最悪の場合の条件に対して許容可能な性能を実現する、初期動作点で開始される。電力伝送中に、制御ループが、動作点を、より最適な動作点に適合させる。電力伝送は、具体的には、低い電力レベルで開始され、次いで電力伝送中に、徐々に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、かかる手法は、大抵最適にならず、理想的な性能が得られない。かかる手法は、最適な性能が実現するまでに、遅延をもたらしがちである。多くのシナリオ及び状態において、この手法では、結果的に、例えば制御ループが、全体的な最適値へ進むのではなく、局所的な極値に落ち着くため、最適な動作点に到達しない。
【0014】
したがって、電力伝送システムの動作を改善し、特に、柔軟性を高め、コストを削減し、複雑度を低減し、結合係数の推定を向上させ、下位互換性を有し、より高い電力レベルの伝送に対する適合性を高め、電力伝送の初期化を改善し、特定の動作条件への適合性を高め、且つ/又は性能を向上させることが可能な手法は、有益であろう。
【0015】
したがって、本発明は、上記で言及された欠点のうちの1つ又は複数を、単独で、又は任意の組合せで、好ましくは緩和、軽減、又は取り除くことを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、電力送信機及び電力受信機を備える無線電力伝送システムが提供され、電力送信機は、誘導電力伝送信号を介して、電力受信機へ無線で電力を供給するよう構成され、電力送信機は、送信機コイル及び少なくとも1つのコンデンサを備える出力共振回路と、出力共振回路用の駆動信号を生成し、誘導電力伝送信号を生成するよう構成されたドライバと、共振測定期間に、出力共振回路の第1の結合共振周波数を判断するよう構成された共振検出器であって、第1の結合共振周波数が電力受信機の電力伝送入力共振回路の受信機コイルに結合されている送信機コイルの出力共振回路の共振周波数である共振検出器と、第1の結合共振周波数に応じて、送信機コイルと受信機コイルとの結合に関する結合係数の推定値を判断するよう構成された推定回路と、結合係数の推定値に応じて動作パラメータを設定するよう構成されたアダプタとを具備し、電力受信機は、電力送信機及び少なくとも1つのコンデンサから電力を取り出すよう構成された受信機コイルを備える電力伝送入力共振回路であって、電力伝送入力共振回路が、共振測定期間に、10以上の品質係数を有する、電力伝送入力共振回路と、品質係数が10以上に制限されていない電力伝送モードから、共振測定期間で、電力受信機が測定モードで動作しているときに、品質係数が10以上となる、測定モードに切り替えるよう構成された回路とを具備する。
【0017】
本発明は、多くの実施形態において、改善された電力伝送を可能にする。多くの実施形態において、本発明は、初期性能の向上、及び/又は好ましい動作点への、より迅速な適合及び収束を可能にする。多くの実施形態では、この手法は、変化する動作条件に対する電力伝達の適合性を高める。この手法は、典型的には、複雑度が低い実施態様を可能にしながら、有利な電力伝送動作及び性能を実現する。この手法は、結合係数の、効率的で、信頼性が高く、且つ/又は正確な判断を可能にし、電力伝送で通常重要なパラメータの適合性を高めることができ、これにより、改善された電力伝送が可能となる。
【0018】
この手法の特別な利点は、この手法が、多くの実施形態において、必ずしも電力受信機で特定の推定プロセス又は計算を実行することなく、完全に電力送信機ベースとなることである。これにより、多くのシナリオで、コストが削減される。この手法により、実施が容易になり、且つ/又は下位互換性が高まる。
【0019】
結合係数の推定値は、結合係数の変化の推定値である。
【0020】
共振回路の非結合共振周波数とは、共振回路から、共振回路の一部ではないインダクタへの、誘導結合がないときの共振周波数である。出力共振回路の非結合共振周波数は、送信機コイルが、受信機コイルに(通常は、他のどのインダクタにも)結合されていないときの、共振周波数である。
【0021】
第1の結合共振周波数は、出力共振回路が受信機コイル107に結合された電力受信機が電力伝送のために電力伝送位置にあるときの出力共振回路の共振周波数である。
【0022】
いくつかの実施形態では、電力伝送入力共振回路は、共振測定期間に、20、50、100、さらには500以上の品質係数を有する。
【0023】
出力共振回路の結合共振周波数は、駆動信号の共振周波数に対応し、具体的には、駆動信号の変化する周波数に対する駆動信号の特性の極大値(又は場合によっては極小値)に対応する。
【0024】
いくつかの実施形態では、推定回路はさらに、電力伝送入力共振回路の非結合共振周波数に応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、電力伝送入力共振回路の非結合共振周波数は、所定の周波数である。
【0026】
いくつかの実施形態では、電力送信機は、電力受信機からデータを受信する受信機をさらに備え、この受信機は、電力伝送入力共振回路の非結合共振周波数を示すデータを、電力受信機から受信するよう構成される。
【0027】
いくつかの実施形態では、推定回路はさらに、電力伝送出力共振回路の非結合共振周波数に応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、電力伝送出力共振回路の非結合共振周波数は、所定の周波数である。
【0029】
本発明の任意選択の特徴によれば、共振検出器はさらに、共振測定期間に出力共振回路の第2の結合共振周波数を測定するよう構成され、第2の結合共振周波数は、電力受信機の存在下での、出力共振回路の別の共振周波数であり、推定回路はさらに、第2の結合共振周波数に応じて結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【0030】
これは、多くの実施形態において、結合係数の推定を向上させ、且つ/又は容易にし、具体的には、多くのシナリオにおいて、動作環境の変化、構成要素、電力送信機及び/若しくは電力受信機の変化する若しくは未知のパラメータ、並びに/又は測定誤差若しくは不正確さに対する鋭敏性を低下させる。
【0031】
本発明の任意選択の特徴によれば、第1の結合共振周波数及び/又は第2の結合共振周波数は、駆動信号の電流が極大値を示す周波数である。
【0032】
これにより、向上した性能及び/又は動作が実現され、典型的には、結合係数の推定を、容易にするか又は向上させることができる。
【0033】
極大値は、駆動信号の周波数の変化に対する、駆動信号の電流の極大値である。
【0034】
いくつかの実施形態では、推定回路は、第1の結合共振周波数と第2の結合共振周波数との比に応じて、結合係数を判断するよう構成される。
【0035】
本発明の任意選択の特徴によれば、推定回路はさらに、出力共振回路の非結合共振周波数及び入力共振回路の非結合共振周波数に応じて、結合係数を判断するよう構成される。
【0036】
これにより、向上した性能及び/又は動作が実現され、典型的には、結合係数の推定を、容易にするか又は向上させることができる。
【0037】
本発明の任意選択の特徴によれば、推定回路はさらに、出力共振回路の非結合共振周波数と入力共振回路の非結合共振周波数との比に応じて、結合係数を判断するよう構成される。
【0038】
これにより、向上した性能及び/又は動作が実現され、典型的には、結合係数の推定を、容易にするか又は向上させることができる。これは、具体的には、多くのシナリオにおいて、動作環境の変化、構成要素、電力送信機及び/若しくは電力受信機の変化する若しくは未知のパラメータ、並びに/又は測定誤差若しくは不正確さに対する鋭敏性を低下させる。
【0039】
いくつかの実施形態では、推定回路は、第1の結合共振周波数と第2の結合共振周波数との第1の比を判断し、その比の関数である、結合係数を判断するよう構成される。
【0040】
本発明の任意選択の特徴によれば、推定回路はさらに、出力共振回路の非結合共振周波数と入力共振回路の非結合共振周波数との2乗和と、受信機コイルに結合されている送信機コイルの出力共振回路の共振周波数である第2の結合共振周波数と第1の結合共振周波数との2乗和との比に応じて、結合係数を判断するよう構成される。
【0041】
これにより、向上した性能及び/又は動作が実現され、典型的には、結合係数の推定を、容易にするか又は向上させることができる。これは、具体的には、多くのシナリオにおいて、動作環境の変化、構成要素、電力送信機及び/若しくは電力受信機の変化する若しくは未知のパラメータ、並びに/又は測定誤差若しくは不正確さに対する鋭敏性を低下させる。
【0042】
本発明の任意選択の特徴によれば、共振検出器は、出力共振回路の非結合共振周波数を、2以下の品質係数を有する入力共振回路に対して、駆動信号の電流が極大値を示す周波数であると判断するよう構成され、推定回路は、出力共振回路の非結合共振周波数に応じて、結合係数を判断するよう構成される。
【0043】
これにより、現在の条件に対する出力共振回路の非結合共振周波数の判断が向上し、その結果、結合係数の推定が向上する。
【0044】
いくつかの実施形態では、入力共振回路は、出力共振回路の非結合共振周波数に対応する極大値を判断するときに、0.5、1、3、又は5以下の品質係数を有する。
【0045】
極大値は、駆動信号の周波数の変化に対する、駆動信号の電流の極大値である。
【0046】
本発明の任意選択の特徴によれば、共振検出器は、入力共振回路の非結合共振周波数を、10以上の品質係数を有する入力共振回路に対して、駆動信号の電流が極小値を示す周波数であると判断するよう構成され、推定回路は、入力共振回路の非結合共振周波数に応じて、結合係数を判断するよう構成される。
【0047】
これにより、現在の条件に対する入力共振回路の非結合共振周波数の判断が向上し、その結果、結合係数の推定が向上する。
【0048】
いくつかの実施形態では、入力共振回路は、入力共振回路の非結合共振周波数に対応する極小値を判断するときに、5、15、20、又は30以上の品質係数を有する。
【0049】
極小値は、駆動信号の周波数の変化に対する、駆動信号の電流の極小値である。
【0050】
極小値は、共振測定期間に判断され、具体的には、同じ周波数掃引を使用して、出力共振回路/駆動信号の1つ又は複数の結合共振周波数と、入力共振回路の非結合共振周波数との両方を判断する。
【0051】
いくつかの実施形態では、共振検出器は、共振測定期間に周波数が変化する駆動信号を生成するようドライバを制御し、駆動信号の電圧、駆動信号の電流、並びに駆動信号の電圧と駆動信号の電流との位相差のうちの少なくとも1つに応じて、第1の結合共振周波数を判断するよう構成される。
【0052】
これは、特に有利な手法を実現し、結合係数の非常に効率的且つ実用的な判断を、したがって、動作パラメータの設定の改善をもたらす。
【0053】
いくつかの実施形態では、共振検出器は、より高い周波数からより低い周波数に向かって、駆動信号の周波数掃引を実行するようドライバを制御し、駆動信号の共振の基準が満たされる第1の検出周波数である第1の結合共振周波数を判断するよう構成される。
【0054】
これにより、多くの実施形態において、出力共振回路の結合共振周波数の検出が向上し、したがって、結合係数の推定が向上し、電力伝送の改善をもたらす、動作パラメータの設定が改善される。
【0055】
本発明の任意選択の特徴によれば、共振測定期間は、電力伝送動作の初期化中にあり、動作パラメータは、電力伝送動作のための初期動作パラメータである。
【0056】
この手法により、電力伝送の初期化を改善することができる。この手法により、電力伝送の好ましい動作点に向けた、より高速且つ/又はより信頼性の高い収束が可能となる。
【0057】
本発明の任意選択の特徴によれば、ドライバは、電力伝送段階に、少なくとも1つの電力伝送期間及び少なくとも1つの測定期間を含む、繰返し時間フレームに従って駆動信号を生成するよう構成され、共振測定期間は、測定期間に含まれる。
【0058】
この手法により、具体的には、電力送信機に対する電力受信機の移動への適合性を高めるなど、電力伝送中の動作条件の変化への適合性を高めることが可能となる。
【0059】
多くの実施形態では、測定期間の継続時間は、時間フレームの継続時間の5%、10%、又は20%以上である。多くの実施形態では、測定期間の継続時間は、時間フレームの70%、80%、又は90%以下である。測定期間の継続時間は、多くのシナリオでは、5ミリ秒、10ミリ秒、又は50ミリ秒以下である。
【0060】
いくつかの実施形態では、動作パラメータは、電力伝送信号の電力レベルを制御するパラメータである。
【0061】
動作パラメータは、多くの実施形態において、特に有利な動作を実現する。
【0062】
電力伝送信号の電力レベルを制御するパラメータは、具体的には、駆動信号の周波数、デューティサイクル、位相、電流、及び/又は電圧などの、駆動信号のパラメータである。
【0063】
本発明の任意選択の特徴によれば、動作パラメータは、電力受信機から受信した電力制御メッセージに応答して、電力伝送信号の電力レベルを適合させるよう構成された、電力制御ループのループパラメータである、電力ループパラメータである。
【0064】
動作パラメータは、多くの実施形態において、特に有利な動作を実現する。動作パラメータは、電力伝送の制御応答を、現在の条件に対して動的に適合させ、且つ/又は最適化することができる。この手法により、多くのシナリオで、依然として制御ループの安定性を確保しながら、より高速な制御動作が可能となる。
【0065】
ループパラメータは、具体的には、ループゲイン及び/又はループ遅延である。
【0066】
いくつかの実施形態では、推定回路はさらに、電力伝送入力共振回路の非結合共振周波数に応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【0067】
これにより、多くのシナリオで、結合係数の推定を向上させることができる。これにより、結合係数推定の判断が容易になる。
【0068】
電力伝送入力共振回路の非結合共振周波数は、受信機コイルが、送信機コイルに(通常は、他のどのインダクタにも)結合されていないときの、電力伝送入力共振回路の共振周波数である。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、共振検出器はさらに、共振測定期間に出力共振回路の第2の結合共振周波数を判断するよう構成され、第2の動作共振周波数は、電力受信機の存在下での、出力共振回路の別の共振周波数であり、推定回路はさらに、第2の動作共振周波数に応じて結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【0070】
これにより、多くの実施形態において、特に有利且つ/又は円滑な動作及び/又は性能が実現する。
【0071】
いくつかの実施形態では、推定回路は、以下の式のうちの少なくとも1つに応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【数1】
及び
【数2】
ここで、f
pは、共振出力回路の非結合共振周波数、f
sは、電力伝送入力共振回路の非結合共振周波数、Fres1は、第1の結合共振周波数、Fres2は、第2の結合共振周波数、kは、結合係数である。
【0072】
これにより、多くの実施形態において、特に有利且つ/又は円滑な動作及び/又は性能が実現する。
【0073】
電力受信機は、品質係数が10以上に制限されていない電力伝送モードから、共振測定期間で、電力受信機が測定モードで動作しているときに、品質係数が10以上となる、測定モードに切り替えるよう構成された、回路を備える。
【0074】
これにより、多くの実施形態において、特に有利且つ/又は円滑な動作及び/又は性能が実現する。
【0075】
本発明の任意選択の特徴によれば、電力受信器は、共振測定期間に、電力伝送入力共振回路を短絡するよう構成された、回路をさらに備える。
【0076】
これにより、多くの実施形態において、特に有利且つ/又は円滑な動作及び/又は性能が実現する。
【0077】
本発明の別の態様によれば、電力送信機及び電力受信機を備える無線電力伝送システムの動作方法が提供され、電力送信機は、誘導電力伝送信号を介して、電力受信機へ無線で電力を供給するよう構成され、電力送信機は、送信機コイル及び少なくとも1つのコンデンサを備える出力共振回路を具備し、電力受信機は、電力送信機及び少なくとも1つのコンデンサから電力を取り出すよう構成された受信機コイルを備える電力伝送入力共振回路を具備し、この動作方法は、電力送信機が、出力共振回路用の駆動信号を生成し、誘導電力伝送信号を生成するステップと、共振測定期間に、出力共振回路の第1の結合共振周波数を判断するステップであって、第1の結合共振周波数が、電力受信機の電力伝送入力共振回路の受信機コイルに結合されている送信機コイルの出力共振回路の共振周波数であり、電力伝送入力共振回路が、共振測定期間に、10以上の品質係数を有する、第1の結合共振周波数を判断するステップと、第1の結合共振周波数に応じて、送信機コイルと受信機コイルとの結合に関する、結合係数の推定値を判断するステップと、結合係数の推定値に応じて、動作パラメータを設定するステップとを有し、この方法は、電力受信機が実行する、品質係数が10以上に制限されていない電力伝送モードから、共振測定期間で、電力受信機が測定モードで動作しているときに、品質係数が10以上となる、測定モードに切り替えるステップをさらに有する。
【0078】
本発明の別の態様によれば、電力送信機及び電力受信機を備える無線電力伝送システム用の電力受信機が提供され、電力送信機は、誘導電力伝送信号を介して、電力受信機へ無線で電力を供給するよう構成され、電力受信機は、電力送信機及び少なくとも1つのコンデンサから電力を取り出すよう構成された受信機コイルを備える電力伝送入力共振回路と、品質係数が10以上に制限されていない電力伝送モードから、共振測定期間で、電力受信機が測定モードで動作しているときに、品質係数が10以上となる、測定モードに切り替えるよう構成された回路とを具備する。
【0079】
本発明の別の態様によれば、電力送信機及び電力受信機を備える無線電力伝送システム用の、電力受信機の動作方法が提供され、電力送信機は、誘導電力伝送信号を介して、電力受信機へ無線で電力を供給するよう構成され、電力受信機は、電力送信機及び少なくとも1つのコンデンサから電力を取り出すよう構成された受信機コイルを備える電力伝送入力共振回路を具備し、この方法は、品質係数が10以上に制限されていない電力伝送モードから、共振測定期間で、電力受信機が測定モードで動作しているときに、品質係数が10以上となる、測定モードに切り替えるよう構成された、回路を有する。
【0080】
本発明の実施形態を、以下の図面を参照して、ただ単に例として説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、電力伝送システムの要素の一例を示す図である。
【
図2】
図1の電力伝送システムの、等価回路の一例を示す図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、電力送信機の要素の一例を示す図である。
【
図4】電力送信機用の、ハーフブリッジ型インバータの一例を示す図である。
【
図5】電力送信機用の、フルブリッジ型インバータの一例を示す図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による、電力受信機の要素の一例を示す図である。
【
図7】
図3の電力送信機の出力共振回路の、応答の一例を示す図である。
【
図8】結合係数の関数である、
図3の電力送信機の出力共振回路の結合共振周波数の一例を示す図である。
【
図9】結合係数の関数である、
図3の電力送信機の出力共振回路の結合共振周波数の一例を示す図である。
【
図10】
図3の電力送信機の出力共振回路の、応答の一例を示す図である。
【
図11】
図3の電力送信機の出力共振回路の、応答の一例を示す図である。
【
図12】
図3の電力送信機の出力共振回路の、応答の一例を示す図である。
【
図13】
図3の電力送信機の出力共振回路の、応答の一例を示す図である。
【
図14】
図3の電力送信機の出力共振回路の、応答の一例を示す図である。
【
図15】
図1の無線電力伝送システムの、時間フレームの一例を示す図である。
【
図16】
図1の電力伝送システムの、等価回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下の説明では、Qi仕様又はKi仕様で知られるような電力伝送手法を利用する、無線電力伝送システムに適用可能な、本発明の実施形態に焦点を当てる。しかし、本発明は、この用途に限定されるものではなく、他の多くの無線電力伝送システムにも適用されることが理解されよう。
【0083】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、電力伝送システムの一例を示している。電力伝送システムは、送信機コイル/インダクタ103を備える(又は送信機コイル/インダクタに結合された)、電力送信機101を具備する。このシステムは、受信機コイル/インダクタ107を備える(又は受信機コイル/インダクタに結合された)、電力受信機105をさらに具備する。
【0084】
システムは、電力送信機101から電力受信機105へ、電力を誘導的に伝送する、誘導電磁波電力伝送信号を供給する。電力送信機101は、具体的には、送信機コイル又はインダクタ103から磁束として伝搬される、電磁信号を生成する。電力伝送信号は、通常、約20kHzから約500kHzの間の周波数を有し、多くの場合、Qi互換システムでは通常、95kHzから205kHzの範囲であり、Ki互換システムでは通常、20kHzから80kHzの範囲である。送信機コイル103と受電コイル107とは疎結合されているため、受電コイル107は、電力送信機101からの電力伝送信号(の少なくとも一部)を受信する。したがって、電力は、送信機コイル103から受電コイル107への無線誘導結合を介して、電力送信機101から電力受信機105に伝送される。電力伝送信号という用語は、主に、送信機コイル103と受電コイル107との間の誘導信号/磁場(磁束信号)を指すために使用されるが、同じく、送信機コイル103に供給されるか又は受電コイル107によって受信される、電気信号に言及するものとも見なされ、使用されることが理解されよう。
【0085】
この例では、電力受信機105は、具体的には、受信機コイル107を介して電力を受け取る電力受信機である。しかし、他の実施形態では、電力受信機105は、金属発熱体などの金属要素を備え、この場合、電力伝送信号は、直接渦電流を引き起こし、その結果、直接素子を加熱する。
【0086】
システムは、大幅な電力レベルを伝送するよう構成され、特に電力送信機は、多くの実施形態において、500mW、1W、5W、50W、100W、又は500Wを超える電力レベルに対応する。電力伝送は、例えば、Qiに対応する用途では、通常、低電力用途(基本電力プロファイル)の場合、1~5Wの電力範囲、Qi仕様バージョン1.2の場合、最大15W、電動工具、ラップトップ、ドローン、ロボットなど、より高出力の用途の場合、最大100Wの範囲、例えばKi対応の台所用途向けなど、非常に高出力の用途の場合、100Wを超えて、最大2000W超である。
【0087】
以下では、電力送信機101及び電力受信機105の動作について、概ね、Qi若しくはKi仕様(本明細書で説明される(若しくは結果として起こる)修正及び機能強化を除く)に従った、又はワイヤレスパワーコンソーシアムによって開発されている、より高出力の台所用仕様に好適な、実施形態を特に参照しながら説明することにする。電力送信機101及び電力受信機105は、特に、Qi仕様バージョン1.0、1.1、1.2、又は1.3の要素に従うか、又は実質的に互換性を有する(本明細書で説明される(又は結果として起こる)修正及び機能強化を除く)。
【0088】
多くの無線電力伝送システム、特にKiなどの高出力システムは、送信機コイル103が共振回路の一部であり、通常受信機コイル107も共振回路の一部である、共振電力伝送を利用する。多くの実施形態では、共振回路は、直列共振回路であるため、送信機コイル103及び受信機コイル107は、対応する共振コンデンサと直列に結合されている。共振回路を使用すると、大抵、より効率的な電力伝送が実現される。
【0089】
ほとんどの電力伝送システムでは、電力伝送が開始される前に、電力送信機101と電力受信機105との間で通信チャネルが確立される。通信が設定され、2つのデバイスの識別が実施されると、電力送信機101は、電力受信機105への電力伝送を開始する。
【0090】
電力送信機101及び電力受信機105の、電力伝達関数の電気等価図の一例が、
図2に示されている。所与のシステムには、広範な電力送信機及び電力受信機が存在し、これらは、大幅に相異なる特性及びパラメータを有する。例えば、コイルのサイズ、誘導値、及び負荷は、大幅に異なる。したがって、
図2に具体的に示されているシステムパラメータは、実際には、様々なデバイス、機械的構造、位置取りなどにより著しく異なる。特に、電力受信機の配置、したがって受信機コイル107と送信機コイル103との相対位置は、コイル間、すなわち、1次側(電力送信機側)インダクタLpと2次側(電力送信機側)インダクタLsとの結合に、大幅に影響を与えるため、システムの挙動が著しく変化する。
【0091】
受電デバイスは、さらに、例えばいくつかの負荷が、様々なモードでオン又はオフに切り替えられるなど、受電デバイスが動作するいくつかの相異なるモードを有する。例えば、電力受信機がノンオイルフライヤ器具の場合、発熱体をオン又はオフすることができる。この結果、例えば、50から1200Wへの、またその逆への、例えば、非常に大幅な負荷の段差が生じる。さらに、かかる負荷の切替えは、デバイスの動作中に、温度を一定に保つために繰り返される。システムには、非線形負荷が含まれる可能性もある。例えば、電力受信機は、抵抗性部品ではなく、例えばフードプロセッサのモータなどの、モータを駆動することがある。これにより、システムの応答がまったく異なり、具体的には、制御システムの設計に大きな影響を与える。
【0092】
無線電力伝送システムは、通常、システムを、適切な動作点に向けて導くために、電力制御ループを使用する。この電力制御ループは、電力送信機から電力受信機へ送信される電力量を変更する。受信される電力(又は電圧若しくは電流)を測定でき、また設定値である電力値と併せて、誤差信号を生成することができる。電気器具は、この誤差信号、又は場合によっては、所望の電力設定値を、電力送信機の電力制御機能に送信して、静的誤差を低減し、理想的にはゼロにする。
【0093】
しかし、システムの性能及び動作が、既存の電力送信機及び電力受信機の組合せ及び配置によって大きく異なるので、適切な動作点も大きく異なる。これには、電力伝送の起動時/初期化時の条件も含まれるため、最適な初期動作点も大きく異なる。
【0094】
動作に影響を与える重要なパラメータのうちの1つが、結合係数である。結合係数は、さらに、大抵、電力送信機に対する電力受信機(具体的には、送信機コイル103に対する受信機コイル107)の位置取りに依存し、したがって、特定の動作条件に依存する。対照的に、
図2の他のほとんどのパラメータは、大抵既知であり、特定の電力送信機及び受信機コイル107の組合せについて、大抵、比較的一定である。したがって、通常、結合係数を除いて、ほぼすべての関連するシステムパラメータが既知である。結合係数は、特にコイルのサイズ/幾何形状、並びに電力送信機と電力受信機との間の距離を含む、多くのパラメータによって変わる。
【0095】
図1のシステムにおいて、システムは、結合係数を推定し、結合係数に応じて動作パラメータを適合させる機能を有する。具体的には、多くの実施形態において、開ループ伝達関数及び/又はループゲインなどの制御ループのパラメータが、閉ループの性能を最適化及び制御するために適合される。別の例として、好ましい(通常は初期の)、例えば電力レベルなどの動作点は、結合係数に応じて適合される。測定及び適合は、いくつかの実施形態では、電力伝送前に実行され、代替的又は追加的に、電力伝送後に実行されてもよい。
【0096】
例示的な動作として、電力受信機が電力送信機の上に置かれると、電力受信機と電力送信機との間で通信が確立される。これにより、電力送信機は、電力送信を開始できるようになるが、最初に、好適な動作点を確立する必要がある。1つの選択肢は、最悪の場合のシナリオでも動作が可能であることを保証できる、非常に安全で信頼性の高い動作点を選択し、その後、電力伝送中に、動作点を徐々に適合させることであろう。しかし、かかる手法は、得てして時間がかかり、非効率であり、実際、多くのシナリオでは、最適な動作点に徐々に適合することは、現実的ではない(例えば、システムが、全体での最大値に進むのではなく、極大値に留まる)。
【0097】
したがって、所望の動作点を判断し、この所望の動作点又は所望の動作点の近くで、動作を開始することが好ましい。所望の動作点は、既知のシステムパラメータをすべて使用して、推定することができる。既知のシステムパラメータは、例えば、1次側及び2次側インダクタンス、1次側及び2次側共振、負荷抵抗値、電力及び電圧、並びに結合係数を含む(又は、これらからなる)。これらすべてのパラメータがわかれば、電力経路の伝達関数を計算でき、初期動作点を判断することができる。しかし、電力送信機は、例えば電力受信機から伝達される電力受信機のパラメータに基づいて、パラメータのほとんどを知ることができる一方で、結合係数は、デバイスの配置/位置ずれによって異なるため、事前に知ることはできない。
【0098】
電力送信機は、したがって、この例では、結合係数の測定/推定に進む。これは、例えば、電力受信機で負荷がかかっているときに、電力送信機共振回路の1つ又は複数の共振周波数を判断することにより、行われる。電力受信機は、かかる測定中に、高Qモードに入り、共振周波数は、電力送信機での、送信機コイル103を駆動する信号の周波数掃引により判断される。結合係数は、測定される共振周波数に基づいて、例えば、電力受信機の共振周波数及び電力送信機の共振周波数の自走共振周波数に基づいて計算される。
【0099】
次いで、この結合係数を使用して、完全な伝達関数を計算し、次いで、初期動作点及び必要な動作パラメータ、例えば、初期電力レベル及び/又はループゲインなどを計算することができる。動作パラメータを計算した値に設定すると、電力伝送の開始から、初期動作点に達することができ、その結果、適切な電力/電流が電力受信機へ送出されることになる。
【0100】
実際、電力が伝送される前に、電力伝送システムの結合係数を測定することにより、システム応答を、より適切に推定することができる。これにより、初期動作点(電力信号の周波数、デューティサイクル、ループゲインなど)が、より適切に選択される。これにより、所望の電力レベルに、はるかに迅速に達することができる。かかる手法は、さらに、過電圧又は過電流状態が生じるリスクを軽減する。
【0101】
また、電力伝送中に結合係数を測定し、かかる測定に基づいて動作パラメータを適合させることにより、性能が向上し、通常、より正確な最適化及び適合が可能となる。
【0102】
図3は、
図1の電力送信機101の要素をより詳細に示している。
【0103】
電力送信機101は、ドライバ301を備え、ドライバは、送信機コイル103に供給される駆動信号を生成でき、送信機コイルは、引き換えに、電磁波電力伝送信号を生成し、これにより電力受信機105への電力伝送を実現する。送信機コイル103は、送信機コイル103及びコンデンサ303を備える、出力共振回路の一部である。出力共振回路は、この例では、直列共振回路であるが、他の実施形態では、出力共振回路は、並列共振回路であることが理解されよう。複数のインダクタ及び/又はコンデンサを備える共振回路を含む、どんな好適な共振回路が使用されてもよいことが理解されよう。
【0104】
ドライバ301は、出力共振回路に、したがって送信機コイル103に供給される、電流及び電圧を生成する。ドライバ301は、典型的には、DC電圧から交流信号を生成する、インバータの形態の駆動回路である。ドライバ301の出力は、典型的には、スイッチブリッジのスイッチの適切な切替えによって駆動信号を生成する、スイッチブリッジである。
図4は、ハーフブリッジ型スイッチブリッジ/インバータを示している。スイッチS1及びS2は、決して同時に閉じないように制御される。交互に、S2が開いている間はS1が閉じられ、S1が開いている間はS2が閉じられる。スイッチは、所望の周波数で開閉し、これにより、出力に交流信号が生成される。インバータの出力は、典型的には、共振コンデンサを介して送信機インダクタに接続されている。
図5は、フルブリッジ型スイッチブリッジ/インバータを示している。スイッチS1及びS2は、決して同時に閉じないように制御される。スイッチS3及びS4は、決して同時に閉じないように制御される。交互に、S2及びS3が開いている間は、スイッチS1及びS4が閉じられ、次いでS1及びS4が開いている間は、S2及びS3が閉じられ、これにより、出力に方形波信号が作り出される。スイッチは、所望の周波数で開閉する。
【0105】
電力送信機101は、所望の動作原理に従って電力送信機101の動作を制御するよう構成された、電力送信機コントローラ305をさらに備える。電力送信機101は、具体的には、Qi仕様又はKi仕様に従って電力制御を実行するのに必要な機能のうちの多くを有する。
【0106】
電力送信機コントローラ305は、特に、ドライバ301による駆動信号の生成を制御するよう構成され、具体的には、駆動信号の電力レベル、したがって生成される電力伝送信号のレベルを、制御することができる。電力送信機コントローラ305は、電力伝送段階に、電力受信機105から受信した電力制御メッセージに応答して、電力伝送信号の電力レベルを制御する、電力ループコントローラを備える。
【0107】
電力送信機コントローラ305は、電力受信機105と通信するための機能をさらに有する。電力送信機コントローラ305は、例えば、電力伝送信号を変調することによって、電力受信機105へデータを送信し、電力伝送信号の負荷変調を検出することによって、電力受信機105からデータを受信するよう構成される。他の実施形態では、例えば、NFC通信などの、別の通信機能が実施されるなど、他の通信手段が使用されることが理解されよう。
【0108】
送信機コイル103を備える共振回路の使用により、多くのシナリオにおいて、より効率的な電力伝送が可能となることが、よく知られている。さらに、やはり共振回路を使用する、言い換えると、受信機コイル107が共振回路の一部である、電力受信機を有することで、例えば駆動信号の周波数を制御することなどによる、高効率の電力伝送、及び電力伝送の制御の容易さを含む、多くの利点を実現する共振電力伝送がもたらされる。
【0109】
図6は、電力受信機105の、いくつかの例示的な要素を示している。
【0110】
受信機コイル107は、受信機コイル107と共に入力共振回路を形成するコンデンサ603を介して、電力受信機コントローラ601に結合されている。電力伝送は、したがって、共振回路間の共振電力伝送である。
【0111】
電力受信機コントローラ601は、具体的には、負荷605をショートすることができるスイッチ607を介して、受信機コイル107を負荷605に結合する。電力受信機コントローラ601は、受信機コイル107によって取り出された電力を、負荷605に好適な電源に変換する、電力制御経路を備える。いくつかの実施形態では、電力受信機コントローラ601は、入力共振回路が、スイッチ607又は負荷605に単純に接続される、すなわち、電力受信機コントローラ601の電力経路が、単純に2本のワイヤによって実現される、直接電力経路を備える。他の実施形態では、電力経路は、例えば、DC電圧を供給するための整流器、及び場合によっては平滑コンデンサを備える。さらに他の実施形態では、電力経路は、例えば、電圧制御回路、インピーダンス整合回路、電流制御回路などの、より複雑な機能を備える。同様に、スイッチ607は、いくつかの実施形態にしか存在せず、いくつかの実施形態では、負荷605が入力共振回路に恒久的に結合されていてもよいことが理解されよう。
【0112】
電力受信機コントローラ601は、加えて、電力伝送を実行するのに必要な、様々な電力受信機コントローラ機能、特に、Qi又はKi仕様に従って電力伝送を実行するのに必要な機能を有する。
【0113】
電力受信機コントローラ601は、電力送信機101と通信するための機能をさらに有する。例えば、電力伝送信号上に変調されたデータを、復号及び復調するよう構成されてもよく、電力伝送信号を負荷変調することによって、データを電力送信機101に送信するよう構成されてもよい。いくつかの実施形態では、NFC通信機能など、別の通信機能が使用される。
【0114】
システムは、動作中、電力伝送信号が、好適な動作パラメータ/特性を得るように、また電力伝送が、好適な動作点で動作するように、駆動信号を制御するよう構成される。電力送信機は、駆動信号を制御するために、電力伝送信号/駆動信号の電力特性が、電力受信機から受信される電力制御エラーメッセージに応答して制御される、電力制御ループを使用して、駆動信号のパラメータを制御するよう構成される。
【0115】
電力受信機は、一定の間隔で、典型的には頻繁に、電力制御エラーメッセージを電力送信機に送信する。いくつかの実施形態では、(相対的なエラーメッセージではなく)所望の絶対電力レベルを示す、直接電力設定値変更メッセージが送信される。電力受信機105は、かかる電力制御ループに対応する機能を有する。例えば、電力受信機コントローラ601は、負荷に供給される負荷信号の電力又は電圧を継続的に監視し、これが所望の値を上回るか又は下回るかを検出する。電力受信機コントローラは、電力伝送信号の電力レベルを増減させることを要求する電力制御エラーメッセージを、一定の間隔で生成し、この電力制御エラーメッセージを、電力送信機に送信する。
【0116】
送信コントローラ305は、電力受信機から電力制御エラーメッセージを受信すると、要求に応じて電力伝送信号の電力レベルを増減させるために、駆動信号パラメータをどのように修正する必要があるかを判断する。送信機コントローラは、次いで、それに応じて駆動信号パラメータを制御し、適合させる。
【0117】
したがって、電力伝送信号の電力特性を制御し、電力受信機における所望の動作点が得られる、電力制御ループが使用される。電力伝送の動作は、したがって、電力制御ループによって制御され、これが効果的に動作することが、システムの性能にとって重要である。したがって、最適な性能を得るために、電力制御ループを、初期化するか又は動作条件に適合させることが重要である。
【0118】
電力送信機は、説明されているシステムにおいて、結合係数を推定し、結合係数に基づいて電力伝送システム、具体的には電力制御ループの動作を適合させる機能を有する。
【0119】
電力送信機は、具体的には、電力受信機、具体的には、受信機コイル107及び入力共振回路に結合されたときに、出力共振回路の1つ又は複数の共振周波数(及び/又は同等の駆動信号)の検出/測定に応じて、結合係数を判断するよう構成される。電力送信機は、次いで、それに応じて電力伝送システムの動作を適合させる。
【0120】
電力送信機101は、共振測定期間に、出力共振回路の少なくとも1つの結合動作共振周波数を判断するよう構成された、共振検出器307を備える。ここで、結合共振周波数とは、電力受信機が存在する場合、すなわち送信機コイル103が電力受信機の受信機コイル107に結合されているときの、出力共振回路の共振周波数である。結合共振周波数は、したがって、送信機コイル103が受信機コイル107に結合されているときの、出力共振回路の実効共振周波数を反映する。送信機コイル103の実効インダクタンスは、2つのコイルの結合により、どの受信機コイル107にも結合されていないときの、送信機コイル103の自己インダクタンスとは相異なる。同様に、受信機コイル107の実効インダクタンスは、受信機コイルがどの送信機コイル103にも結合されていないときの、受信機コイル107の自己インダクタンスとは相異なる。その結果、実効共振は、結合がないときの自己共振とは相異なるものとなる。さらに、駆動信号は、2つのコイル、したがって2つの共振回路の結合により、実際上2つの(相異なる)共振周波数の影響を受けることになる。すなわち、出力共振回路は、結合により、実際上2つの共振周波数を有し、2つの共振周波数は、出力共振回路の自己(非結合)共振周波数とは相異なるものとなる。
【0121】
多くの実施形態では、共振検出器307は、両方の結合共振周波数を判断するよう構成される。
【0122】
出力共振回路の実効共振周波数又は結合共振周波数は、他のどのインダクタにも結合されていないときの、出力共振回路の自己共振周波数とは相異なるものとなり、その差は、結合に依存することになる。したがって、出力共振回路の結合共振周波数又は動作共振周波数を検出することにより、受信機コイル107との結合に関する情報が得られ、この情報は、電力送信機101において、結合係数を推定するために使用される。
【0123】
共振検出器307は、少なくとも結合共振周波数に基づいて、送信機コイル103と受信機コイル107との結合に関する、結合係数の推定値を判断するよう構成された、推定回路309に結合されている。
【0124】
いくつかの実施形態では、推定回路309は、測定されたただ1つの結合共振周波数だけに基づいて、結合係数の推定値を生成するよう構成される。推定回路309は、例えば、判断された結合共振周波数に対応する入力アドレスワードに対して、結合推定値を提示する、ルックアップテーブルを有する。ルックアップテーブルは、例えば、製造及び設計段階での測定によって生成されるか、又は理論的計算に基づいて生成される。
【0125】
しかし、かかる手法は、多くの実施形態において有利である一方で、関係するパラメータが大幅に変化する場合、得てして結合係数の最適な推定値が得られず、したがって、通常、関係するパラメータ(共振回路の電気パラメータ、電力送信機及び電力受信機の特性などを含む)が非常に制限されている状態だけに限定される。
【0126】
ほとんどの実施形態では、推定回路309は、したがって、追加のパラメータをさらに考慮するよう構成され、多くの実施形態では、推定回路309は、出力共振回路の第2の結合共振周波数、出力共振回路の自己共振周波数/非結合共振周波数、及び入力共振回路の自己共振周波数/非結合共振周波数のうちの少なくとも1つをも考慮することに基づいて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【0127】
推定器309は、特に、多くの実施形態において、結合係数の推定値を判断するときに、出力共振回路の非結合共振周波数をさらに考慮するよう構成される。
【0128】
出力共振回路の非結合周波数は、出力共振回路が受信機コイル107に結合されていないときの、出力共振回路の共振周波数であり、典型的には、出力共振回路がどのインダクタにも結合されていないときの、出力共振回路の共振周波数である。非結合共振周波数は、出力共振回路の自己共振周波数とも呼ばれる。
【0129】
推定回路309は、したがって、多くの実施形態では、送信機コイル103と受信機コイル107との結合が、出力共振回路の共振周波数に及ぼす影響に基づいて、結合係数を推定するよう構成される。
【0130】
推定回路309は、結合係数の推定値に応じて動作パラメータを設定するよう構成された、アダプタ311に結合されている。いくつかの実施形態では、設定は、相対的設定又は絶対的設定である。アダプタ311は、例えば、パラメータ値を所与の量だけ増減させること、例えば、電力レベルを、現在の値から増減させることにより、動作パラメータの相対的設定を実行する。
【0131】
いくつかの実施形態では、アダプタ311は、電力伝送信号パラメータの動作値を適合させるか又は設定するよう構成され、具体的には、電力伝送信号の電力レベルを制御する、電力伝送信号のパラメータ値を設定するよう構成される。かかるパラメータ値には、電力伝送信号の周波数(共振電力伝送システムの電力レベルに影響する)、位相、振幅(電流及び/若しくは電圧)、又はデューティサイクルが含まれる。
【0132】
例えば、結合係数が高い場合、コイル間の電力伝送が効率的であるため、高い電力レベルを設定できるが、結合係数が低い場合、電力伝送の効率がより低いため、より低いレベルに設定する必要がある。
【0133】
したがって、結合係数を推定することによって、好適な電力レベルを判断することが可能であり、電力伝送動作を開始するときに、電力伝送信号の動作パラメータを適切に設定することによって、電力伝送動作が、その電力レベルが所望の値に設定された状態で初期化される。
【0134】
適切な電力レベルは、例えば、製造中に生成されたルックアップテーブル(LUT)を使用して判断される。例えば、様々な特性(例えば、コイル寸法、電力受信機のインダクタンス値など)を有する、様々な電力受信機に対して実行された測定に基づいて、様々な結合係数に対する好適な電力レベルが判断され、LUTに格納される。動作中、新しい電力受信機と共に新しい電力伝送を初期化するとき、電力受信機は、関連するパラメータ値を電力送信機に送信し、電力送信機はさらに、結合係数を推定する。結果として得られた値は、LUT内でテーブルルックアップを実行するために使用され、電力伝送は、対応する電力レベルで初期化される。LUTは、具体的には、駆動信号の周波数、デューティサイクル、及び/又は振幅の、好適な値を出力する。アダプタ311は次いで、例えば、この情報を電力送信機コントローラ305に供給し、電力送信機コントローラは、これらの特性を有する駆動信号を生成するよう、ドライバ301を制御する。システムは、したがって、好適なパラメータを使って電力伝送を開始し、その後、電力制御ループによって適合を実行する。
【0135】
いくつかの実施形態では、アダプタ311は、代替的又は追加的に、電力受信機(105)から受信した電力制御メッセージに基づいて、電力伝送信号の電力レベルを制御する、電力制御ループの電力制御ループパラメータを適合させる。
【0136】
電力制御ループの開ループ性能は、結合係数に大きく依存しており、よって、閉ループ性能も同様である。閉ループは、実際、多くのシナリオでは、結合係数の一部の値に対してしか安定しない。ループのゲインは、通常、結合係数に実質的に比例し、結合係数が大幅に変わるほどに、ゲインも大幅に変わる。ループのゲインの変化は、ループの安定性を含む、閉ループの時間(及び周波数)応答に直接影響する。アダプタ311は、全体のゲインが所望のレベルになるようループゲインを修正し、結合係数の変化を補償するよう構成される。これにより、最悪の場合のシナリオにおける安定性を確保するためにループゲインを設定する必要がなくなるので、より高速に作動するループによって最適化された性能が実現される。
【0137】
いくつかの実施形態では、遅延又は(開ループ)周波数応答の調整など、ループのより複雑な適合が行われる。これにより、より柔軟な適合が可能になり、性能を、より厳密に個別化することができる。例えば、フィルタ応答は、起こり得るどんな自己発振及び不安定性をも防ぐよう適合される。
【0138】
電力伝送信号の電力レベルに関して、パラメータは、例えば、LUTに格納されている適切なパラメータを使った、設計/製造中の測定及び実験によって判断される。実際、制御ループと電力レベル設定との両方のパラメータが、同じLUTに格納される。
【0139】
適合される動作パラメータは、電力レベルパラメータ又はループパラメータに限定されるものではなく、いくつかの実施形態では、代替的又は追加的に、例えば異物検出パラメータ又は通信パラメータなどの、他のパラメータが設定されることが理解されよう。
【0140】
様々な実施形態では、推定器309は、結合係数を判断するために、様々な手法を使用する。特に、出力共振回路が入力共振回路に結合され、これが十分に不減衰で振動できる場合、出力共振回路は、ただ1つの結合共振周波数ではなく、実際上2つの結合共振周波数を示すことになる。特に、具体的には、直列共振回路の短絡により、直列負荷/抵抗値が実質的にゼロの場合など、入力共振回路がまったく減衰されない場合、出力共振回路は、2つの結合共振周波数を示すことになる。
【0141】
図7の例で示されているように、入力共振回路に結合されたときの出力共振回路の応答(これは、十分に不減衰である)は、2つの共振を含む応答である。
図7は、入力共振回路が不減衰である、典型的なシステムパラメータに対する応答(駆動信号の定電圧振幅に対する、1次側の電流の振幅及び位相)の一例を示しており、明確に示されているように、応答は2つの共振ピークを含んでいる。
【0142】
図8は、様々な結合率(coupling coefficient)kに対して、結合出力共振回路の共振周波数がどのように変化するかの一例を示している。この例では、出力共振回路と入力共振回路との両方の非結合共振周波数は、正規化された周波数0.3×10
5である。見てわかるように、結合している場合、第1の共振周波数は非結合周波数よりも高く、第2の共振周波数は非結合周波数よりも低い。やはり見てわかるように、共振周波数は、結合係数に強く依存しており、結合係数が増加すると差も増加する。
【0143】
図9は、
図8の例に相当する一例を示しているが、出力共振回路の正規化された平均非結合共振周波数は、0.268×10
5であり、入力共振回路の正規化された平均非結合共振周波数は、依然として0.3×10
5である。見てわかるように、これにより、結合共振周波数がわずかに相異なる。
【0144】
いくつかの実施形態では、
図8及び
図9に示されている、かかる依存性の測定は、関連する電力送信機及び受信機コイル107の組合せの、製造/設計段階に行われる。結果は、電力送信機が有するLUTに格納される(又は、例えば、一元的に格納され、新しい電力伝送を設定するときに引き出される)。推定器309は、結合共振周波数の判断に続いて、テーブルルックアップを実行し、推定した結合係数を得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、共振検出器307は、共振測定期間に駆動信号の周波数を変化させることによって、結合共振周波数を検出するよう構成され、具体的には、共振検出器は、結合共振周波数があると予想されるか、又は結合係数が許容可能な電力伝送を実現する上で十分高いと考えられる範囲内の、周波数間隔に対応する周波数の範囲にわたって、周波数掃引を実行する。共振検出器307は、次いで、駆動信号を監視し、例えば電流又は電圧振幅の極値を検出する。共振検出器307は、例えば、直列共振回路の場合、ある範囲にわたって一定の電圧振幅で、周波数を変化させるようにドライバ301を制御する。共振検出器307は、次いで、様々な周波数での電流振幅を測定し、最大の電流振幅が判断される結合共振周波数を判断する。共振検出器307は、別の例として、駆動信号の電流と電圧との位相差がゼロ(又はゼロに近い)になるとき、すなわち、出力共振回路によってかかる負荷が完全に抵抗性になるときを検出する。この周波数区間内で結合共振周波数が検出されない場合、これは、結合係数が電力伝送に好適な間隔内にないことを示しており、電力伝送は中止される。
【0146】
いくつかの実施形態では、駆動信号の周波数掃引は、より高い周波数からより低い周波数に向かい、結合共振周波数は、共振の基準(例えば、信号の電流若しくは電圧振幅の極値、又は電圧と電流との位相差ゼロ)が満たされる、最初に検出された周波数と判断される。したがって、例えば、全体での極値を検出するのではなく、最初の局所的な極値が検出される。
【0147】
かかる手法により、2つのうちの、最も高い結合共振周波数を検出することができる。結合係数の変化に対する結合共振周波数の最大の変化は、最も高い結合共振周波数で生じるため、特に、1つの結合共振周波数だけを使用する場合には、通常、最も高い結合共振周波数を使用すると有利であることが認識されている。
【0148】
いくつかの実施形態では、両方の結合共振周波数が検出され、結合係数の推定値を判断するために使用される。例えば、2つの別個のLUTが、それぞれ、低い方の結合共振周波数及び高い方の結合共振周波数について設けられ、結合係数の推定値は、2つのテーブルの、ルックアップの結果の平均と判断される。
【0149】
他の実施形態では、出力共振回路の結合共振周波数を判断するための、他の手法が使用される。例えば、いくつかの実施形態では、逐次近似法が使用される。かかる手法は、周波数間隔に基づいて共振周波数を判断する場合に、非常に有利且つ有用であろう。この手法により、1つ又は複数の共振周波数を迅速に検出することができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、電力受信機は、システムパラメータ、例えば、非結合共振周波数及び/又は受信機コイルのインダクタンスなどを、電力送信機に伝達し、システムパラメータは、結合共振周波数から結合係数を判断するために使用される。LUTは、例えば、こうした電力受信機の要素に依存するか、又は、相異なる電力受信機に対して、相異なるLUTが設けられる(実際、いくつかの実施形態では、LUTは、電力受信機から供給される)。
【0151】
いくつかの実施形態では、結合係数の判断は、解析式に基づく。推定回路309は、具体的には、以下の式のうちの少なくとも1つに応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【数3】
ここで、f
pは、共振出力回路の非結合共振周波数、f
sは、電力伝送入力共振回路の非結合共振周波数、Fres1は、最も高い結合動作共振周波数、Fres2は、最も低い結合共振周波数、kは、結合係数である。
【0152】
これらの式は、結合共振回路に当てはまり、共振検出器307によって(直接的又は間接的に)使用される。
【0153】
いくつかの実施形態では、式のうちの一方だけが使用され、実際、結合係数の推定値は、結合共振周波数のうちの一方だけに基づく。例えば、説明されたように、最も高い結合共振周波数は、より高い周波数からより低い周波数への掃引時の、最初のピークを検出することによって判断される。上記の最初の式に基づき、既知である、入力共振回路及び出力共振回路それぞれの非結合共振周波数の値を使用し、次いで、この最も高い結合共振周波数を使用して、結合係数の推定値を計算する。
【0154】
同じ手法を使用して、最も低い結合共振周波数に基づいて、結合係数を判断する。
【0155】
いくつかの実施形態では、最も高い結合共振周波数と最も低い結合共振周波数との両方が測定され、両方の式が使用される。2つの結合係数の値は、例えば、第1の式及び第2の式のそれぞれ,並びにそれぞれ測定された結合共振周波数を使用して計算され、結合係数の推定値は、2つの結合係数の平均として生成される。他の実施形態では、結合係数の推定値は、上記の式と測定値との間の誤差が最小となる値として計算される。
【0156】
いくつかの実施形態では、両方の結合共振周波数及び両方の式が使用されるが、入力共振回路の非結合共振周波数は、使用されない。この変数は、その代わりに、上記の式、及び2つの結合された共振周波数を使用して推定される。かかる手法では、したがって、電力送信機が、入力共振回路の特定の特性を知る必要がないように、より複雑な推定及び計算が使用される。かかる手法は、特に、一部の電力受信機がこの情報を伝達できない、既存のシステムにおける実施態様で有用である。
【0157】
説明された手法は、出力共振回路と入力共振回路との結合で生じる、共振周波数の変化を考慮することにより、結合係数を推定することに基づく。この変化は、結合係数に依存するが、入力共振回路の品質係数Qにも依存する。この変化は、2つの結合共振周波数が、様々な結合係数(各グラフ内で、k=[0.1、0.2、~0.9])に対してどのように変わるかだけでなく、この変化がQ値にどのように依存するかを示す(Q=1000、10、3、1、0.1のそれぞれのグラフを示す、様々なグラフを比較することでわかる)、
図10~
図14で確認することができる。
【0158】
この手法では、共振測定期間での入力共振回路の品質係数は、10以上であり、通常はそれよりも高い。これにより、結合共振周波数の検出の信頼性が高まり、適度に正確になるため、結合係数の推定値も同様に、信頼性が高く正確になる。したがって、確実に、動作点の適合の信頼性が高まり、効率的な動作が可能となる。
【0159】
いくつかの実施形態では、共振測定期間での高Qは、入力共振回路のQ値が常に10を超えていることによって、すなわち電力受信機が、入力共振回路が常に10を超える品質係数を有するよう設計されていることによって確保される。しかし、これは通常、負荷に適切な電力を供給したいという要望とは対照的である。
【0160】
Q値は、例えば、Kiシステムの場合、一般的な電力値による入力共振回路の負荷により、通常5未満、多くの場合2未満になる。
【0161】
多くの実施形態では、電力受信機は、したがって、共振測定期間外の少なくともしばらくの間、動作モードを、より低い品質係数モードから、共振測定期間間隔に少なくとも10であるQ値を有する、より高い品質係数モードに切り替えるよう構成される。これにより、効率的な電力伝送及び効率的な結合係数の推定が可能となる。電力受信機は、したがって、効率的な電力伝送を可能にするために、品質係数が10を超えるように制限されていない、実際には品質係数が実質的に10未満である、電力伝送モードから、共振測定期間に品質係数が10以上となる、測定モードに切り替えるよう構成される。
【0162】
これは、例えばスイッチ607によって実現する。例えば、電力経路が、共振測定期間外に、スイッチ607及び負荷605を入力共振回路に直接結合する場合、スイッチは、通常の負荷605を入力共振回路に結合する。しかし、スイッチ607は、共振測定期間には、負荷605を切り離す。スイッチ607は、入力並列共振回路の場合、例えば、入力共振回路から電流が引き出されないように、負荷605を切断する。対照的に、入力直列共振回路の場合、スイッチ607は、共振測定期間に、負荷605を短絡することによって負荷を切り離し、これにより電力伝送入力共振回路を短絡する。
【0163】
いくつかの実施形態では、品質係数のかかる変更は、電力受信機が、特定の機能を有していない場合に行われる。例えば、いくつかの実施形態では、負荷は、起動中に、本来備える実質上の短絡を行い、これにより、電力伝送前の、共振測定期間に、本来備える高Qの入力共振回路を有することができる。例えば、負荷がモータの場合、負荷がほぼ短絡状態で起動する。別の例として、電力経路に整流器及び大出力のコンデンサが存在する場合、コンデンサが放電されると、これもほぼ短絡と同じように作用することになる。
【0164】
多くの実施形態では、共振測定期間(又は少なくとも1つの共振測定期間)が、電力伝送の前にある。結合係数の推定値の判断及び動作パラメータの設定は、具体的には、電力伝送動作の初期化中に実行される。電力送信機は、したがって、電力伝送の前に、特定の電力受信機及び電力受信機の特定の位置に好適な、動作パラメータ値を判断する。電力送信機は、次いで、このパラメータ値を初期動作パラメータ値として使用し、電力伝送を開始する。
【0165】
この手法は、例えば、多くの実施形態では、電力伝送信号の初期ループゲイン及び電力レベル値を判断するために使用される。システムは、したがって、最適動作点に近い可能性がより高い状態で電力伝送を開始し、初期の最悪の場合の安全な動作点から、ゆっくりと徐々に適合する必要はない。したがって、より迅速な最適化を実現でき、最適な動作点に到達できないリスクを、軽減することができる。
【0166】
さらに、電力受信機は、電力伝送前である、結合係数推定中に、結合共振周波数検出のための測定モードに入る。具体的には、スイッチ607は、入力共振回路の高い品質係数を実現するために、負荷を短絡する。システムが、電力伝送段階に入ると、電力受信機は、通常の電力伝送動作モードに切り替えて戻され、具体的には、短絡が解消される。
【0167】
いくつかの実施形態では、この手法は、代替的に又は追加的に、電力伝送段階に適用される。かかる手法では、結合係数の推定は、ループパラメータ及び性能を適合させるのに、特に有用である。かかる手法は、例えば、電力受信機の様々な位置に対して、実質的に同じ制御性能を実現できるように、ループパラメータを適合させるために使用される。したがって、性能を向上させ、特に、電力受信機の位置取りの違いに対する鋭敏性を、低くすることができる。
【0168】
この手法が電力伝送段階に使用される多くの実施形態では、システムは、測定期間に測定及び結合共振周波数検出が実行される、タイムスロットモードで動作するよう構成される。共振測定期間は、具体的には、その間に電力が電力受信機に伝送される、少なくとも1つの電力伝送期間をさらに含む繰返し時間フレームの、かかる短い測定期間に実行される。
【0169】
システムは、したがって、かかる実施形態では、電力伝送段階に、時分割を利用する。特に、結合共振周波数の検出と電力伝送とは、例えば、別々の期間に実行されるため、検出と電力伝送との間の干渉を大幅に低減することが可能である。
【0170】
この例では、ドライバ301及び送信機コイル103は、電力伝送間隔に、電力受信機へ電力を伝送する目的で、電磁波電力伝送信号を生成するよう構成される。加えて、結合係数の推定値を判断するため、測定期間に、駆動信号を使用して結合共振周波数を検出する。電力送信機は、電力伝送段階に、駆動信号に繰返し時間フレームを使用し、時間フレームは、少なくとも1つの電力伝送期間及び少なくとも1つの共振測定期間を含む。かかる繰返し時間フレームの一例が
図15に示されており、ここで、電力伝送期間はPTで示され、測定期間はDで示されている(この期間は、検出期間とも呼ばれる)。この例では、各時間フレームFRMは、1つの共振測定期間及び1つの電力伝達期間だけを含み、これらは(時間フレーム自体も同様に)、各フレームで同じ継続時間を有する。しかし、他の実施形態では、他の期間(例えば、通信間隔など)も時間フレームに含まれてもよく、又は複数の共振測定期間及び/若しくは電力伝送期間が、各時間フレームに含まれてもよいことが理解されよう。さらに、いくつかの実施形態では、様々な期間の継続時間(また実際には、時間フレーム自体)が、動的に変わる。
【0171】
したがって、この手法では、測定、通信、及び電力伝送が、時間ドメインで分離されることにより、電力伝送から測定及び結合係数推定までの相互干渉が低減される。したがって、電力伝送の動作条件の変化によって生じる変動性及び不確実性を、測定及び推定から分離することができ、より信頼性が高く正確な推定プロセスがもたらされる。さらに、この手法により、結合共振周波数を検出するために、駆動信号を生成(及び最適化)することが可能である。特に、この手法により、共振検出器307が周波数掃引を実行し、この検出に好適な動作を実行することが可能である。
【0172】
さらに、この手法により、電力受信機を、具体的には、向上した又は最適な特性の検出を実現するように、適合させることが可能である。電力受信機は、特に、多くの実施形態において、電力伝送期間で、負荷が入力共振回路に結合されている(したがって、入力共振回路の品質係数が低い)電力動作モードから、例えば、スイッチ607が負荷をショートすることにより、入力共振回路の高い品質係数が確保される、測定モードに切り替える。
【0173】
したがって、タイムスロット手法により、電力伝送段階での結合係数の推定を実行することが、可能又は容易になる。
【0174】
上記で説明されたように、多くの実施形態では、結合係数の推定値は、少なくとも1つの結合共振周波数に基づくだけでなく、(電力送信機の)出力共振回路の非結合/自己共振及び/又は(入力共振回路の)入力共振回路に基づいて判断される。
【0175】
いくつかの実施形態では、入力共振回路及び/又は出力共振回路の非結合共振周波数は、所定の周波数である。例えば、いくつかの実施形態では、電力送信機及び/又は電力受信機は、例えば、好適な規格の仕様及び規定によって、厳密に制限される。例えば、無線電力伝送規格(例えば、Ki仕様など)は、電力送信機及び電力受信機が、例えば30kHzの非結合共振周波数をそれぞれに有する、出力共振回路及び入力共振回路を使用することを規定している。推定器309は、かかる実施形態では、1つ又は複数の結合共振周波数、及び非結合共振周波数の前提とされる公称値に基づいて、結合係数の推定値を推定するよう構成される。
【0176】
他の実施形態では、システムは、例えば、出力共振回路の若干の変化を許容する。しかし、電力送信機及び推定器309は、多くの場合、出力共振回路の非結合共振周波数を知っておくことができる。出力非結合共振周波数は、例えば、製造中にメモリに格納され、結合係数の推定値を判断するときに、引き出されて使用される。非結合共振周波数は、例えば、送信機コイルの自己インダクタンス及び共振コンデンサの静電容量の値によって生じる、共振周波数として単純に判断され、メモリに格納される。
【0177】
いくつかの実施形態では、かかる所定の(一定でない)ものは、例えば、電力受信機の非結合共振周波数が適切な規格で規定されているシナリオなどにおいて、電力受信機の入力共振回路の前提とされる非結合共振周波数と共に使用される。
【0178】
いくつかの実施形態では、推定器309は、電力受信機から受信したデータに応じて、入力共振回路の非結合共振周波数を判断するよう構成される。いくつかの実施形態では、電力送信機は、電力受信機からデータを受信するよう構成された、データ受信機313を備える。同様に、電力受信機は、電力送信機にデータを送信する、データ送信機609を備える。通信は、例えば、負荷変調を使用するか、又は例えば、当業者には知られているであろう、NFC通信を使用して実施される。
【0179】
いくつかの実施形態では、データ送信機609は、入力共振回路の非結合共振周波数を判断するために使用されるデータを、データ受信機313に送信する。電力受信機は、例えば、入力共振回路の非結合共振周波数を直接表すデータを送信する。他の実施形態では、電力受信機は、特性を示すデータか、さもなければ、電力送信機が入力共振回路を判断できるようにするデータを送信する。
【0180】
電力受信機は、例えば、いくつかの実施形態では、受信機コイルの自己インダクタンス及び共振コンデンサの静電容量など、入力共振回路の構成要素のパラメータを表すデータを送信する。推定器309は、次いで、構成要素の値から、次いで、非結合共振周波数を計算する。電力受信機は、別の例として、例えば、受信機が装備する入力共振回路の種類に関する情報を送信する。例えば、可能性のある1組の入力共振回路の特性(具体的には、非結合共振周波数)が、システムの規格によって特定されており、電力受信機は、どの種類が装備されているかを示す。電力送信機は、様々な種類の入力共振回路の非結合共振周波数を格納しており、示された種類に関する値を引き出す。いくつかの実施形態では、入力共振回路の非結合共振周波数は、電力受信機の種類又は特性に関連づけられており、これが、例えば電力伝送の初期化中に、電力送信機に伝達される。例えば、様々な構成要素の値が、様々な電力レベルについて使用され、電力受信機は、電力送信機が、入力共振回路の非結合共振周波数を判断するためにも使用する、必要な電力レベルの指標を送信する。
【0181】
電力送信機は、したがって、いくつかの実施形態では、電力伝送入力共振回路の非結合共振周波数を示すデータを、電力受信機から受信するよう構成された、データ受信機を備える。データは、非結合共振周波数を直接表すか、又は非結合共振周波数を(通常、電力送信機に格納されている、さらなる情報に基づいて)判断できるデータを提示する。
【0182】
しかし、現在の状況/状態に依存しない、非結合共振周波数の所定の値を使用する、かかる実施形態は、多くの実施形態において、有利な性能を実現する。しかし、入力共振回路及び/又は出力共振回路について、動的に測定された非結合共振周波数を使用して、結合係数の推定値を推定することにより、性能の向上が実現することが認識されている。
【0183】
特に、非結合共振周波数の変化が、無線充電の様々な状態及びシナリオで生じ、この変化は、結合係数の推定値を生成するときに判断され、考慮に入れられることが認識されている。入力共振回路及び/又は出力共振回路の非結合共振周波数の測定値を使用することにより、性能の向上が実現することが認識されている。さらに、結合共振周波数を判断するのと同じ手法を使用して、有利な測定を行うことができ、実際、入力共振回路の結合共振周波数は、結合共振周波数を判断するために使用されるのと同じ周波数掃引の間の、測定から判断されることが認識されている。
【0184】
いくつかの実施形態では、推定器309は、所定の値ではなく、固有共振周波数のうちの少なくとも1つの測定値に応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【0185】
いくつかの実施形態では、共振検出器307はさらに、入力共振回路の非結合共振周波数を、駆動信号の電流が、品質係数が10以上である入力共振回路に対して極小値を示す周波数であると、判断するよう構成される。入力共振回路の非結合共振周波数は、これ以降、入力非結合共振周波数とも呼ばれ、入力共振回路が実質的に不減衰の状態で、駆動信号の測定を行うことによって判断される。多くの実施形態では、入力非結合共振周波数の測定及び判断は、入力共振回路の負荷が実質的にゼロである場合、具体的には、直列共振回路の(直列)負荷が短絡されているか、又は並列共振回路の(並列)負荷が切断されている状態で行われる。
【0186】
共振検出器307は、例えば、入力共振回路が不減衰の状態で周波数掃引を実行し、駆動信号の電流を測定することにより、測定を実行する。共振検出器は、次いで、入力非結合共振周波数を、電流が最小となる周波数であると判断する。いくつかの実施形態では、電流が最小となる周波数の判断は、駆動信号の電圧と電流との間の位相がゼロであること、駆動信号の電力が最小化されていることなどの、様々なパラメータを測定することによる、より間接的なものである。いくつかの実施形態では、かかる状態は、電流の状態が最小である場合に生じる(かかる状態が、その周波数での共振効果によって引き起こされるため)。
【0187】
多くの実施形態では、入力非結合共振周波数の判断は、結合共振周波数の判断と組み合わされる。共振検出器307は、特に、駆動信号の電流の極大値が検出される周波数である、結合共振周波数を判断するために、以前に説明された周波数掃引を実行する。共振検出器は、加えて、同じ周波数掃引に基づいて、駆動信号が最小電流を示す周波数である、入力非結合共振周波数を判断する。この判断は、言及されたように、駆動信号の電流の直接的な測定に基づくか、又は駆動信号の位相、電圧、若しくは電力などの、関係するパラメータの測定による。
【0188】
最小の駆動信号の電流に対する周波数が、入力共振回路の非結合共振周波数の適切な推定を可能にすることが、認識されている。
【0189】
いくつかの実施形態では、共振検出器307はさらに、出力共振回路の非結合共振周波数を、駆動信号の電流が、品質係数が2以下である入力共振回路に対して極大値を示す周波数であると、判断するよう構成される。出力共振回路の非結合共振周波数は、これ以降、出力非結合共振周波数とも呼ばれ、入力共振回路が大きく減衰されているか、場合によっては完全に減衰された状態で、駆動信号の測定を行うことによって判断される。多くの実施形態では、出力非結合共振周波数の測定及び判断は、入力共振回路の負荷が非常に大きい(場合によっては、事実上無限大である)場合、具体的には、直列共振回路の(直列)負荷が切断されるか、又は並列共振回路の(並列)負荷が短絡されている状態で行われる。
【0190】
共振検出器307は、例えば、入力共振回路の共振が生じないように、入力共振回路が完全に減衰された状態で周波数掃引を実行し、駆動信号の電流を測定することにより、測定を実行する。共振検出器は、次いで、出力非結合共振周波数を、電流が最大となる周波数であると判断する。いくつかの実施形態では、電流が最大となる周波数の判断は、駆動信号の電圧と電流との間の位相がゼロであること、駆動信号の電力が最小化されていることなどの、様々なパラメータを測定することによる、より間接的なものである。いくつかの実施形態では、かかる状態は、電流の状態が最大である場合に生じる(かかる状態が、その周波数での出力共振回路の共振効果によって引き起こされるため)。
【0191】
入力共振回路が大きく減衰されている場合の、駆動信号の最大電流に対する周波数が、出力共振回路の非結合共振周波数の適切な推定を可能にすることが、認識されている。具体的には、入力共振回路を大きく減衰させることによって、出力共振回路に対する入力共振回路の共振効果を取り除くか、又は大幅に減ずることができ、これにより、出力共振回路の非結合共振周波数を測定することができる。例えば、直列入力共振回路を開放することにより、受信機コイルを通って電流が流れなくなり、電磁場から、どれほどの電力も取り出されなくなる。入力共振回路は、したがって、出力共振回路に実質的に影響せず、出力共振回路の非結合共振周波数を、効率的に測定することが可能となる。
【0192】
非結合共振周波数の測定により、実質的に、性能の向上、及びより正確な結合係数の推定が可能となる。この手法は、状況、環境、及び電力伝送装置の設定における変化の影響を軽減及び補償し、特に、電力送信機及び電力受信機の特性の影響を軽減及び補償する。例えば、電力受信機の存在が駆動信号に与える影響は、送信機コイルと受信機コイルとの(したがって、共振回路間の)結合に限定されるものではなく、電力受信機及び電力送信機デバイス内の金属の影響など、他の効果の影響も受ける。かかる影響は、結合係数とは無関係であるが、例えば、デバイスの実施態様の特定の特性、及びデバイス又はその近傍にある他の要素の位置取りによって、大幅に変わる。したがって、かかる(通常は未知の又は不適切な)影響により、結合係数の推定が妨げられ、精度がより低下する。しかし、現在の手法では、特定の状況及び状態における実効値を測定することで、非結合共振周波数を判断することにより、かかる依存性及び影響が考慮に入れられる。したがって、入力共振回路又は出力共振回路の非結合共振周波数の、少なくとも一方の測定値を使用することにより、実質的に向上した結合係数の推定を実現する。
【0193】
測定された(状況/状態に依存する)非結合共振周波数は、対合非結合共振周波数とも呼ばれる。
【0194】
推定器309は、以前に説明されたように、多くの実施形態では、出力共振回路/駆動信号の、第1の結合共振周波数と第2の結合共振周波数との両方に応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。結合係数の推定値を判断は、言及されたように、例えば、所定の結合共振周波数又は測定された結合共振周波数を使用して、2つの相異なる結合共振周波数の結合係数の推定値を推定し、その結果を平均することによって行われる。
【0195】
他の実施形態では、2つの結合共振周波数を判断して、出力共振回路の推定された非結合共振周波数と共に使用し、入力共振回路の結合共振周波数の知識を必要とすることなく、結合係数の推定値を推定する。具体的には、以前に提示した2つの数式を一緒に使用し、出力共振回路の結合共振周波数及び2つの非結合共振周波数に基づいて、結合係数の推定値を生成する。
【0196】
結合係数の推定値を判断するために使用される正確な数式及び式は、個々の実施形態特有の選択及び要件に応じて変わることも理解されよう。多くの実施形態では、様々な前提又は単純化に基づく、以前に提示した式の加工及び単純化により、結合係数の推定値を生成するための、有利且つ効率的な手法がもたらされる。
【0197】
多くの実施形態では、推定器309は、第2の結合共振周波数に対する第1の結合共振周波数に応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【0198】
特に、多くの実施形態では、推定器309は、第1の結合共振周波数と第2の結合共振周波数との比に応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。多くの実施形態では、結合係数の推定値は、第1の結合共振周波数と第2の結合共振周波数との比の関数として判断される。いくつかの実施形態では、この関数が、結合共振周波数間の比に依存することにより、第1の結合共振周波数及び第2の結合共振周波数のいずれかに依存するだけであり、この関数は、第1の結合共振周波数も第2の結合共振周波数も、別個には考慮しない。いくつかの実施形態では、この関数は、第1の結合共振周波数及び第2の結合共振周波数が、結合共振周波数間の比としてのみ含まれるように、加工又は再整理できる関数である。
【0199】
多くの実施形態では、推定器309は、第1の結合共振周波数及び第2の結合共振周波数から判断される無次元パラメータ(具体的には、周波数間の比など)の関数である、結合係数の推定値を判断するよう構成される。第1の結合共振周波数及び/又は第2の結合共振周波数への依存性は、無次元パラメータ、具体的には比だけに依存するものである。
【0200】
特に、第1及び第2の結合共振周波数が、測定を実行するときの負荷及び実効品質係数、コイルの特性など、様々なパラメータの関数として大幅に変化する一方で、かかる変化は、第1の結合共振周波数と第2の結合共振周波数との関係、具体的には、これらの関係間の関係に応じて結合係数の推定値を判断することにより、軽減され、補償されることが認識されている。具体的には、結合係数の推定値を判断するときの、入力共振回路及び出力共振回路の非結合共振周波数の変化の鋭敏性は、第1の結合共振周波数と第2の結合共振周波数との比の関数である、結合係数の推定値を判断することにより、大幅に低減される。
【0201】
結合係数は、具体例として、いくつかの実施形態では、以下の関数を使用して判断される。
【数4】
ここで、F1は第1の結合共振周波数、F2は第2の結合共振周波数である。この関数は、様々なシナリオ及びパラメータに対する、高精度の結合係数の推定を可能にすることが判明している。
【0202】
この関数は、入力共振回路及び出力共振回路の非結合共振周波数が実質的に類似している状態で、特に有利な性能を実現することが判明している。特に、周波数間の比を使用すると、測定誤差及び不正確さに対する鋭敏性が大幅に低下することが判明している。さらに、上記のような単純化された式を使用すると、評価がより簡単になり、これにより、実施及び/又は動作が容易になる。例えば、いくつかの実施形態では、ルックアップするための入力として使用されている周波数間の比に基づく、ただ1つのLUTが実現される。
【0203】
多くの実施形態では、推定器309は、以前に説明されたように、入力共振回路及び/又は出力共振回路の非結合共振周波数に応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。この判断は、例えば、結合共振周波数間の比に基づく結合係数の推定値の判断と共に使用され、特に、上記の式を修正するために使用される。
【0204】
多くの実施形態では、推定器309は、出力共振回路の非結合共振周波数と入力共振回路の非結合共振周波数との比に応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。非結合共振周波数間の比を考慮することにより、特に有利な動作が可能となり、特に、変化する、多くの場合未知のパラメータに対する鋭敏性が低下することが、認識されている。
【0205】
多くの実施形態では、結合係数の推定値は、第1の結合共振周波数と第2の結合共振周波数との比、並びに入力共振回路及び出力共振回路の、非結合共振周波数間の比の関数として判断される。
【数5】
ここで、示されているf
rは、入力共振回路の非結合共振周波数、f
tは、出力共振回路の非結合共振周波数、F
1は、最も高い結合共振周波数、F
2は、最も低い結合共振周波数である。
【0206】
結合関数を推定するための特に有利な関数は、具体的には以下の通りである。
【数6】
、ここで
【数7】
及び
【数8】
である。
【0207】
β=1の場合、これで以前の式を解くと、以下となる。
【数9】
【0208】
この関数は、別法として、以下のように表される。
【数10】
これは、以前の式から、β及びTを、適切な周波数の対応する関数で置き換え、いくつかの単純な加工を行うことにより得られる。
【0209】
以下の式は、入力共振回路の負荷がショートされた状態で、以前に提示した式から導出される。
【数11】
周波数を、比f
r=βf
tに置き換えると、
【数12】
となり、以下の式が得られる。
【数13】
fresの左(負)のピークと右(正)のピークとの比、
【数14】
(すなわち、f
right=f
res(+)=F
1及びf
left=f
res(-)=F
2)を使用すると、以下の式が得られる。
【数15】
この数式は、a=1+β
2及び
【数17】
とおくと、
【数16】
の形となる。
【数18】
T(a-b)=a+b
Ta-Tb=a+b
-Tb-b=a-Ta
b(-T-1)=a(1-T)
【数19】
これにより、等号の左側だけにkがある、以下の数式が得られる。
【数20】
単純化すると、
【数21】
となり、以下の式が得られる。
【数22】
【数23】
、ここで
【数24】
及び
【数25】
である。
β=1で、1次側の共振と2次側の共振との両方が同様である場合、
【数26】
【数27】
、ここで、β=1である。
【数28】
、ここで
【数29】
及び
【数30】
である。
β及びTを数式に戻して置き換えると、以下となる。
【数31】
【0210】
結合関数を推定するための特に有利な関数の別の例は、以下の通りである。
【数32】
【0211】
したがって、いくつかの実施形態では、推定器309は、第1及び第2の非結合共振周波数の2乗和と、第1及び第2の結合共振周波数の2乗和との比に応じて、結合係数の推定値を判断するよう構成される。
【0212】
多くの実施形態では、結合係数の推定値は、非結合共振周波数及び結合共振周波数の2乗和の比の関数として判断され、またいくつかの実施形態では、この関数は、この比に依存することで、共振周波数だけに依存し、またこの関数は、かかる比を除いて、結合共振周波数又は非結合共振周波数を考慮しない。いくつかの実施形態では、この関数は、共振周波数が、結合共振周波数の2乗和と非結合共振周波数の2乗和との比としてのみ含まれるように、加工又は再整理できる関数である。
【0213】
多くの実施形態では、推定器309は、第1及び第2の結合共振周波数と第1及び第2の結合共振周波数とから判断される無次元パラメータ(具体的には、周波数間又は周波数の2乗間の比など)の関数である、結合係数の推定値を判断するよう構成される。第1の結合共振周波数及び/若しくは第2の結合共振周波数、並びに/又は第1の非結合共振周波数及び/若しくは第2の非結合共振周波数への依存性は、無次元パラメータ、具体的には比だけに依存するものである。
【0214】
かかる手法は、特に有利であり、環境の変化、構成要素のばらつき、測定誤差などに対する、堅牢性の向上及び鋭敏性の低下をもたらすことが判明している。
【0215】
上記の式は、具体的には、好適な前提及び単純化を使用して、以前に提示した2つの式から導出される。
【数33】
ここで、f
p=f
t、f
s=f
r、F
res1=F
1、及びF
res2=f
2である。
【0216】
より詳細には、
図16の電気等価回路のシステム式から始めて、基本波近似式(First Harmonic Approximation)が導出される。
【数34】
これらの式において、
u
tは、出力共振回路に印加される電圧を表し、
ωは、角動作周波数を表し、
i
tは、出力共振回路の電流を表し、
i
rは、出力共振回路の電流を表し、
L’
tは、出力共振回路のインダクタンスを表し、
C
tは、出力共振回路の静電容量を表し、
R
tは、出力共振回路の抵抗値を表し、
L’
rは、出力共振回路のインダクタンスを表し、
C
rは、出力共振回路の静電容量を表し、
R
rは、出力共振回路の抵抗値を表し、
R
Lは、出力共振回路の抵抗値を表し、且つ
Mは、相互インダクタンスを表す。
【0217】
i
t及びi
rについてのシステム式が判断され、次いで、以下の式に基づいて、伝達関数のピーク及び谷の位置が判明する。
【数35】
【0218】
この式の分子だけを維持し、R
L=0に設定(すなわち、電力受信機の負荷を短絡)し、
【数36】
、
【数37】
、
【数38】
、及び
【数39】
に比例する項を無視し、その結果を因数分解し、ゼロに等しいと定義すると、以下の式が得られる。
f・(β-f)・(β+f)・(f
4k
2-f
4+β
2k
2+f
2-β
2)・(3β
2f
4k
2-f
6k
2+β
4f
2-2β
2f
4+f
6+β
4-2β
2f
2+f
4)=0
【0219】
この式において、
【数40】
は、無次元の動作周波数を表し、ここで、
【数41】
且つ
【数42】
は、非結合共振周波数の比を表し、ここで、
【数43】
である。
【0220】
この式の第2項をゼロに設定すると、谷(極小値)の位置、すなわちf=β、又は同じことであるが、ω=ω’
rが得られる。この式の第4項をゼロに設定すると、2つのピーク(極小値)の位置が得られる。すなわち、
【数44】
又は同じことであるが、
【数45】
が、得られる。
【0221】
2つの結果を分割し、結合係数を分離するために再加工すると、以下の式が得られる。
【数46】
【0222】
この式において、Tは、2つの共振周波数の比(プラス符号を有する解を、マイナス符号を有する解で割ったもの)である。
【0223】
2つの結果を加算すると、以下の式が得られる。
【数47】
再加工すると、
【数48】
又は同じであるが、
【数49】
が得られる。
【0224】
出力共振回路の非結合共振周波数ω’tは、電力受信機の負荷が切断された状態で、出力共振回路の電流のピーク位置(極大値)を測定することにより導出される。非結合共振周波数ω’rは、出力共振回路の電流の2つの共振ピーク間の谷の位置(極小値)を測定することにより導出される。
【0225】
前提などからの逸脱(例えば、直列入力共振回路の短絡が、低い値の抵抗に置き換えられること)が、多少の違いを引き起こし、場合によっては理論値と相異なる周波数が判断されることが理解されよう。しかし、多くの実施形態では、かかる違いは許容されるか、又は無視できることさえある。実際、ずれが比較的大きい場合でさえも、この手法、並びに単純化された数式及び関係式の使用により、有利且つ有用な結合係数の推定が可能となることが判明している。
【0226】
いくつかの実施形態では、電力送信機は、電力送信機に対する電力受信機の(具体的には、送信機コイル103に対する受信機コイル107の)、位置ずれの指標又は程度を判断するよう構成される。具体的には、結合係数がより低いほど、位置ずれは一層大きい。さらに、かかる実施形態では、電力送信機は、位置ずれを示すユーザへの出力を生成するよう構成される。電力送信機は、具体的には、結合係数が閾値を下回った場合に、電力受信機の位置を変更する必要があることをユーザに示す警告を、ユーザに与える。
【0227】
上記の説明は、明確にするために、様々な機能回路、ユニット、及びプロセッサを参照して、本発明の実施形態が説明されてきたことが理解されよう。しかし、本発明から逸脱することなく、様々な機能回路、ユニット、又はプロセッサ間で、機能のどんな好適な分散形態が使用されてもよいことは明らかであろう。例えば、別個のプロセッサ又はコントローラによって実行されるよう示されている機能が、同じプロセッサ又はコントローラによって実行されてもよい。したがって、特定の機能ユニット又は回路への言及は、厳密な論理的又は物理的構造又は構成を示すものではなく、説明された機能を実現する好適な手段への言及にすぎないと見なされるべきである。
【0228】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組合せを含む、任意の好適な形態で実施することができる。本発明は、任意選択で、少なくとも部分的に、1つ又は複数のデータプロセッサ及び/又はデジタル信号プロセッサ上で動作する、コンピュータソフトウェアとして実施される。本発明の一実施形態の要素及び構成要素は、任意の好適なやり方で、物理的、機能的、及び論理的に実現される。機能は、実際、ただ1つのユニットで、複数のユニットで、又は他の機能ユニットの一部として実施される。本発明は、したがって、ただ1つのユニットで実施されるか、又は様々なユニット、回路、及びプロセッサ間で物理的に、また機能的に分散される。
【0229】
本発明が、いくつかの実施形態に関連して説明されてきたが、本明細書に記載の特定の形態に限定されることを意図したものではない。本発明の範囲は、むしろ、添付の特許請求の範囲だけによって限定される。さらに、特徴が、特定の実施形態に関連して説明されているように見えるが、当業者は、説明された実施形態の様々な特徴が、本発明に従って組み合わされてもよいことを認識されよう。特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除するものではない。
【0230】
さらに、複数の手段、要素、回路、又は方法のステップは、個々に列挙されているが、例えば、ただ1つの回路、ユニット、又はプロセッサによって実施されてもよい。さらに、個々の特徴が、相異なる請求項に含まれているが、これらは、場合によっては有利に組み合わされてもよく、相異なる請求項に含まれることは、特徴の組合せが実現不可能であること、及び/又は不利であることを意味するものではない。また、請求項の1つの範疇に特徴が含まれていることは、この範疇への制限を示唆するものではなく、むしろ、その特徴が、必要に応じて他の請求項の範疇にも同様に当てはまることを示している。1つの独立請求項の従属請求項に特徴が含まれていることは、この独立請求項への制限を示唆するものではなく、むしろ、その特徴が、必要に応じて他の独立請求項にも同様に当てはまることを示している。さらに、請求項における特徴の順序は、その特徴が実行される必要がある、どんな特定の順序も示唆するものではなく、特に、方法の請求項における個々のステップの順序は、ステップがこの順序で実行される必要があることを示唆するものではない。ステップは、むしろ、任意の好適な順序で実行されてもよい。加えて、単数への言及は、複数を除外するものではない。したがって、「第1の」、「第2の」などへの言及は、複数を排除するものではない。特許請求の範囲における参照符号は、単に例を明確にするものとして提示されており、決して特許請求の範囲を限定するものと、解釈されないものとする。
【0231】
いくつかのシナリオでは、誘導電力伝送信号を介して、電力受信機(105)へ無線で電力を供給する、電力送信機(101)が提供され、
電力送信機(101)は、
送信機コイル(103)及び少なくとも1つのコンデンサ(303)を備える、出力共振回路と、
出力共振回路(103)用の駆動信号を生成し、誘導電力伝送信号を生成するよう構成された、ドライバ(201)と、
共振測定期間に、出力共振回路の第1の結合共振周波数を測定するよう構成された共振検出器(307)であって、第1の結合共振周波数は、電力受信機(105)の電力伝送入力共振回路の受信機コイル(107)に結合されている送信機コイル(103)の出力共振回路の共振周波数であり、電力伝送入力共振回路は、共振測定期間に、10以上の品質係数を有する、共振検出器(307)と、
第1の結合共振周波数に応じて、送信機コイル(103)と受信機コイル(107)との結合に関する、結合係数の推定値を判断するよう構成された、推定回路(309)と、
結合係数の推定値に応じて動作パラメータを設定するよう構成された、アダプタ(311)とを具備する。
【0232】
誘導電力伝送信号を介して、電力受信機(105)へ無線で電力を供給する、電力送信機(101)の動作方法であって、電力送信機(101)は、送信機コイル(103)及び少なくとも1つのコンデンサ(303)を備える出力共振回路を具備し、
この方法は、
出力共振回路(103)用の駆動信号を生成し、誘導電力伝送信号を生成するステップと、
共振測定期間に、出力共振回路の第1の結合共振周波数を判断するステップであって、第1の結合共振周波数は、電力受信機(105)の電力伝送入力共振回路の受信機コイル(107)に結合されている送信機コイル(103)の出力共振回路の共振周波数であり、電力伝送入力共振回路は共振測定期間に10以上の品質係数を有する、第1の結合共振周波数を判断するステップと、
第1の結合共振周波数に応じて、送信機コイル(103)と受信機コイル(107)との結合に関する結合係数の推定値を判断するステップと、
結合係数の推定値に応じて、動作パラメータを設定するステップとを有する。
【国際調査報告】