(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのためのコンピュータ実装方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20240214BHJP
C23C 14/48 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01J37/317 C
C23C14/48 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551238
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2022054573
(87)【国際公開番号】W WO2022180124
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523231510
【氏名又は名称】エムイー2-ファクトリー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン・コサト
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・クリッペンドルフ
【テーマコード(参考)】
4K029
5C101
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA24
4K029BA03
4K029BB03
4K029BC03
4K029BD01
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4K029EA01
4K029HA01
5C101AA25
5C101BB03
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5C101FF16
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5C101FF59
5C101LL01
(57)【要約】
エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのためのコンピュータ実装方法(200)が提供され、エネルギーフィルタ(25)の少なくとも一部を決定するステップ(201)と、イオンビーム源(5)の少なくとも一部を決定するステップ(202)と、基板(26)内のシミュレーション領域(g)を決定するステップ(203)と、エネルギーフィルタ(25)の決定された少なくとも一部、イオンビーム源(5)の決定された少なくとも一部、基板(26)内の決定されたシミュレーション領域(g)を実装するステップ(204)と、実装された基板(26)のドーピング深さプロファイル(40)におけるエネルギー分布の所望の程度の横方向の均質化を可能にするためにエネルギーフィルタ(25)の実装された少なくとも一部と実装された基板(26)との間の最小距離(50)を決定するステップ(205)と、エネルギーフィルタ(25)についてのエネルギー角度スペクトルをシミュレートすることによってエネルギーフィルタ(25)の最大予想散乱角(a)を決定するステップ(206)と、総シミュレーションボリューム(Sv)を定めるステップ(207)と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのためのコンピュータ実装方法(200)であって、
エネルギーフィルタ(25)の少なくとも一部を決定するステップ(201)と、
イオンビーム源(5)の少なくとも一部を決定するステップ(202)と、
基板(26)内のシミュレーション領域(g)を決定するステップ(203)と、
前記エネルギーフィルタ(25)の前記決定された少なくとも一部、前記イオンビーム源(5)の前記決定された少なくとも一部、前記基板(26)内の前記決定されたシミュレーション領域(g)を実装するステップ(204)と、
前記実装された基板(26)のドーピング深さプロファイル(40)におけるエネルギー分布の所望の程度の横方向の均質化を可能にするために前記エネルギーフィルタ(25)の前記実装された少なくとも一部と前記実装された基板(26)との間の最小距離(50)を決定するステップ(205)と、
前記エネルギーフィルタ(25)についてのエネルギー角度スペクトルをシミュレートすることによって前記エネルギーフィルタ(25)の最大予想散乱角(α)を決定するステップ(206)と、
総シミュレーションボリューム(S
V)を定めるステップ(207)と、を含む方法(200)。
【請求項2】
前記エネルギーフィルタ(25)と前記基板(26)との間の前記最小距離(50)は12MeVの運動一次エネルギーでのAlイオンのEFIIプロセスのシミュレーションでは100μmと1000μmとの間である、請求項1に記載の方法(200)。
【請求項3】
前記エネルギーフィルタ(25)はシングルフィルタユニットセル(30)から構成され、前記決定された最大予想散乱角(α)による前記エネルギーフィルタ(25)の全幅は、互いに隣り合って配置される前記シングルフィルタユニットセル(30)の数である、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項4】
前記基板内(26)の解析される前記シミュレーション領域(g)は1μmと500μmとの間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項5】
エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのためのコンピュータ実装方法(300)であって、
少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)においてエネルギーフィルタ(25)を近似するステップ(301)と、
前記少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)のうちの少なくとも1つを選択して、シミュレートされる前記エネルギーフィルタ(25)の所望の形状および材料組成を、前記選択された基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)から組み立てることができるようにするステップ(302)と、
前記選択された少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)についてのエネルギー角度スペクトルを決定するステップ(303)と、
前記選択された少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)の前記決定されたエネルギー角度スペクトルに基づいて仮想イオンビーム源(5)を決定するステップ(304)と、
基板(26)内のシミュレーション領域(g)内の注入効果をシミュレートするステップ(305)と、を含む方法(300)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)は、少なくとも1つのエネルギーフィルタ要素(25a)の少なくとも一部、前記エネルギーフィルタ(25)のフィルタユニットセル(30)、または一組の離散エネルギーフィルタ(25)のうちの1つである、請求項5に記載の方法(300)。
【請求項7】
前記エネルギーフィルタ(25)は、三角形状、角錐形状、逆角錐形状、または自由形状である、請求項5または6に記載の方法(300)。
【請求項8】
前記エネルギーフィルタ(25)の前記フィルタユニットセル(30)は、異なる形状、異なる材料組成または異なる層構造の複数の基本要素で構成されている、請求項6に記載の方法(300)。
【請求項9】
前記注入効果は、欠陥生成、ドーピングプロファイル、マスキング効果のうちの少なくとも1つを含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項10】
新たなフィルタ形状、新たなフィルタ材料の選択、前記エネルギーフィルタ(25)の新たな層組成、新たな一次イオン、新たな一次イオンエネルギー、新たな一次イオン注入角度および新たな仮想イオンビーム源(5)が決定される、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)をデータベースに格納するステップ(306)をさらに含む、請求項5から10のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項12】
前記仮想イオンビーム源(5)をデータベースに格納するステップ(307)をさらに含む、請求項5から11のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項13】
マスキング厚さ、材料組成およびマスキングレイアウトを最適化するため、ならびに前記基板内の3Dドーパントプロファイルを最適化するために、前記基板(26)上のマスキング構造(70)をパラメトリック解析するステップ(308)をさらに含む、請求項5から12のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項14】
前記マスキング厚さ、材料組成およびマスキングレイアウトを最適化するため、ならびに前記基板内の前記3Dドーパントプロファイルを最適化するために、前記基板(26)上の前記マスキング構造(70)を解析する前記ステップ(308)は、モンテカルロシミュレーションを使用している、請求項13に記載の方法(300)。
【請求項15】
コンピュータによって実行されると、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を前記コンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年2月24日に出願されたルクセンブルク特許出願第102558号の利益およびこれに対する優先権を主張するものである。ルクセンブルク特許出願第102558号の開示全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明はエネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのためのコンピュータ実装方法に関する。
【背景技術】
【0003】
商業指向のマイクロ技術的生成プロセスにおいて、マスクされたおよび/またはマスクされていないドーピング元素が、数ナノメートルから数十マイクロメートルまでの深さ範囲の所定の深さプロファイルで、半導体(シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム)または光学材料(ガラス、LiNbO3、PMMA)のような材料内へイオン注入によって導入される。
【0004】
イオン注入は、数ナノメートルから数十マイクロメートルの深さ範囲の所定の深さプロファイルで、半導体材料または光学材料のような材料においてドーピングまたは欠陥プロファイルの生成を達成する方法である。このような半導体材料の例は、シリコン、炭化シリコン、および窒化ガリウムを含むが、これらに限定されない。このような光学材料の例は、LiNbO3、ガラスおよびPMMAを含むが、これらに限定されない。
【0005】
単一エネルギーイオン照射によって取得可能なドーピング濃度ピークまたは欠陥濃度ピークより広い深さ分布を有する深さプロファイルをイオン注入によって生成する、あるいは1つまたは少数の単純な単一エネルギー注入によって生成することができないドーピングまたは欠陥深さプロファイルを生成する必要性がある。ドーピング濃度ピークは大抵、ガウス分布によって近似的に、またはピアソン分布によってより正確に表すことができる。しかしながら、特にいわゆるチャネリング効果が結晶材料に存在するとき、このような分布からの逸脱もある。単一エネルギーイオンビームが微細構造化エネルギーフィルタコンポーネントを通過する際に単一エネルギーイオンビームのエネルギーが変更される構造化エネルギーフィルタを使用して深さプロファイルを生成するための先行技術の方法が知られている。結果として生じるエネルギー分布は、標的材料における深さプロファイルのイオンの作成につながる。これは、たとえば、特許文献1に記載されている。半導体ドーピング用途において深さプロファイルを調整するためのエネルギーフィルタが、非特許文献1から知られている。ナノ構造のイオンビーム照射は、非特許文献2から知られている。
【0006】
このようなイオン注入装置20の一例が
図1に示されており、イオンビーム10が構造化エネルギーフィルタ25に衝突する。イオンビーム源5は、サイクロトロン、高周波線形加速器、静電タンデム加速器、またはシングルエンド静電加速器であってもよい。他の態様において、イオンビーム源5のエネルギーは0.5と3.0MeV/核子との間、または一態様において1.0と2.0MeV/核子との間である。1つの特定の態様において、イオンビーム源は1.3と1.7MeV/核子との間のエネルギーを備えたイオンビーム10を生成する。イオンビーム10の総エネルギーは1と50MeVとの間であり、一態様において、4と40MeVとの間であり、さらなる一態様において8と30MeVとの間である。イオンビーム10の周波数は1Hzと2kHとの間、たとえば3Hzと500Hzとの間、一態様において、7Hzと200Hzとの間であってもよい。イオンビーム10は連続イオンビーム10であってもよい。イオンビーム10内のイオンの例は、アルミニウム、窒素、水素、ヘリウム、ホウ素、リン、炭素、ヒ素、およびバナジウムを含むが、これらに限定されない。
【0007】
図1はエネルギーフィルタの基本原理を示す。単一エネルギーイオンビームが微細構造化エネルギーフィルタコンポーネントを通過する際、入口点に応じて、単一エネルギーイオンビームはそのエネルギーが変更される。結果として生じるイオンのエネルギー分布は、基板マトリックスにおける注入物質の深さプロファイルの変更につながる。
【0008】
図1は、右手側に三角形の断面形状を有する膜からエネルギーフィルタ25が作製されていることを示すが、この種の断面形状は本発明を限定するものではなく、他の断面形状を使用してもよい。上部イオンビーム10-1がエネルギーフィルタ25を通過する領域25
minはエネルギーフィルタ25における膜の最小厚さであるため、上部イオンビーム10-1は、エネルギーがほとんど減少せずにエネルギーフィルタ25を通過する。換言すれば、左手側の上部イオンビーム10-1のエネルギーがE1であれば、上部イオンビーム10-1のエネルギーは右手側でも実質的に同じ値E1を有することになる(膜におけるイオンビーム10のエネルギーの少なくともいくらかの吸収につながる膜の停止力による小さなエネルギー損失があるのみ)。
【0009】
他方、下部イオンビーム10-2は、エネルギーフィルタ25の膜が最も厚い領域25maxを通過する。左手側の下部イオンビーム10-2のエネルギーE2は実質的にエネルギーフィルタ25によって吸収されるため、右手側の下部イオンビーム10-2のエネルギーは減少し、上部イオンビームのエネルギーより低く、すなわち、E1>E2となる。その結果、より高エネルギーの上部イオンビーム10-1は、より低エネルギーの下部イオンビーム10-2より基板材料30において大きな深さまで浸透することが可能である。この結果、たとえば、半導体ウェハの一部である、基板材料30に差異的な深さプロファイルが生じる。
【0010】
この深さプロファイルを
図1の右手側に示す。濃い長方形の領域は、イオンが基板材料をd1とd2との間の深さまで浸透することを示す。しかしながら、水平プロファイル形状は特殊なケースであり、これは、たとえば、イオンのすべてのエネルギーが幾何学的に均等に考慮されれば、そしてエネルギーフィルタと基板の材料が同じであれば得られる。ガウス曲線は、エネルギーフィルタ25がなく、d3の深さで最大値を有する近似的深さプロファイルを示す。イオンビーム10-1のエネルギーのいくらかがエネルギーフィルタ25に吸収されるため、深さd3は深さd2より大きいことが理解されるであろう。
【0011】
1MeVから数十MeV(たとえば、40MeV)までのエネルギー範囲の典型的なイオン種(N、Al、B、P)では、低エネルギーイオンが大きな散乱角を有する傾向があり、高エネルギーイオンが小さな散乱角を有する傾向があることを観察することができる。この異なる散乱挙動の理由は下にある停止メカニズムのエネルギー依存性である。高い運動エネルギーを持つイオンは、いわゆる電子停止、すなわち、基板の電子系の励起によって優先的にそのエネルギーを失う。この結果、通常、小さな方向偏差、すなわち、小さな散乱角のみが生じる。低い運動エネルギーを持つイオンは、基板の原子との弾性衝突、いわゆる核停止によって優先的にそのエネルギーを失う。この結果、大きな角散乱が生じる。
【0012】
ドーピング深さプロファイルのシミュレーションについての一態様である、静的注入配置(すなわち、フィルタと基板が互いに対して移動しない)では、フィルタと基板との間の距離が決定的な役割を果たす。
図6Aおよび
図6Bに見られるように、距離50があまりに小さく選択されれば、高エネルギーイオンの低散乱のため、注入ドーピング深さプロファイルへのフィルタ構造の転写が発生する可能性がある。換言すれば、この影響を回避するため、シングルフィルタユニットセルまたはシングルフィルタ要素によって生成されるプロファイルは、所望の程度の横方向の均質化が達成されるように十分に重なり合わねばならない。
【0013】
要約すると、所与のイオン種、所与の初期イオンエネルギー、所与のフィルタ設計および所与の基板材料および所与のフィルタ基板間距離について、フィルタ透過イオンの特定のエネルギー分布および角度分布が生成されることになる。
【0014】
先行技術においてエネルギーフィルタ25の製造のための多くの原理が知られている。通常、エネルギーフィルタ25はバルク材料から作製され、エネルギーフィルタ25の表面は、
図1から知られる三角形の断面パターンのような所望のパターンを生成するようにエッチングされることになる。特許文献2において、異なるイオンビームエネルギー低減特性を有する材料の層から製造されたエネルギーフィルタが記載された。エネルギーフィルタから生じる既知の深さプロファイルは材料の層の構造ならびに表面の構造に依存する。
【0015】
さらなる構造原理が特許文献3に示されており、エネルギーフィルタは、垂直壁によって互いに接続されている離間した微細構造層を含む。
【0016】
エネルギーフィルタ25を通して吸収することができるイオンビーム10からの最大出力は、エネルギーフィルタ25の効果的な冷却メカニズム、エネルギーフィルタ25が作製される膜の熱機械特性、ならびにエネルギーフィルタ25が作製される材料の選択、という3つの要因に依存する。典型的なイオン注入プロセスにおいて出力の約50%がエネルギーフィルタ25に吸収されるが、これはプロセス条件およびフィルタ形状に応じて80%に上昇する可能性がある。
【0017】
エネルギーフィルタの一例を
図2Aに示しており、エネルギーフィルタ25は、フレーム27に取り付けられた三角形構造化膜で作製されている。非限定的な一例において、エネルギーフィルタ25は、材料の単一片、たとえば、シリコン層21(典型的な厚さは2と20μmとの間であるが、200μmまで)とバルクシリコン23(厚さ約400μm)との間に挟まれた、たとえば0.2~1μmの厚さを有する絶縁層二酸化シリコン層22を含むシリコンオンインシュレータから作製することができる。構造化膜は、たとえば、シリコンから作製されるが、炭化シリコンまたは別のシリコンベースもしくは炭素ベースの材料またはセラミックから作製してもよい。
【0018】
イオンビーム10のための所与のイオン電流のためのイオン注入プロセスにおけるウェハのスループットを最適化し、したがってイオンビーム10を効率的に使用するため、膜が定位置に保持されるフレーム27ではなくエネルギーフィルタ25の膜のみを照射することが1つの態様である。フレーム27の少なくとも一部もイオンビーム10によって照射され、したがって加熱される可能性がある。実際フレーム27が完全に照射されることがあり得る。エネルギーフィルタ25を形成する膜は加熱されるが、膜が薄い(すなわち、2μmと20μmとの間であるが、200μmまで)ため、熱伝導率が非常に低い。膜はサイズが2×2cm2と35×35cm2との間であり、標的ウェハのサイズに対応する。膜とフレーム27との間には熱伝導がほとんどない。したがって、モノリシックフレーム27は膜の冷却に寄与せず、関連する膜のための唯一の冷却メカニズムは膜からの熱放射である。
【0019】
図2Bに示すように、基板ホルダ30は固定である必要がなく、基板12をx-y内(シート面に垂直な面内)で移動させるための装置を任意選択で設けることができる。さらに、注入される基板12が固定され、注入中に回転するウェハホイールも基板ホルダ30として考えることができる。基板ホルダ30をエネルギーフィルタ25に対してイオンビーム10のビーム方向(x方向)に移動させることも可能である。さらに、基板ホルダ30に任意選択で加熱または冷却を提供することができる。
【0020】
図3Aおよび
図3Bは、ウェハ処理を目的としたイオン注入のためのシステムにおけるエネルギーフィルタ25の典型的な設置を示す。
図3Aは、注入される基板26が固定されるウェハホイール24を示す。処理/注入中、ウェハホイール24はイオンビーム10の方向に上向きに90°傾けられ、回転するように設定される。ウェハホイール24にはしたがってイオンビーム10によって同心円状のイオンが「書き込まれる」。ウェハ領域全体を照射するため、ウェハホイール24を処理中に垂直に移動させる。
図3Bにおいて、ビーム出口の領域において取り付けられたエネルギーフィルタ25が見られる。しかしながら、ウェハ処理を目的としたイオン注入のためのシステムにおけるエネルギーフィルタ25の設置は回転セットアップに限定されず、たとえば
図2Bに示すように、ウェハ処理を目的としたイオン注入のための固定セットアップも可能である。
【0021】
図4Aから
図4Dに示すエネルギーフィルタ25のレイアウトまたは三次元構造は、エネルギーフィルタ25を使用して多数のドーピング深さプロファイル40を生成する主な可能性を示す。原理的には、エネルギーフィルタプロファイルを互いに組み合わせて新たなエネルギーフィルタプロファイルおよびしたがってドーピング深さプロファイル40を得ることができる。
【0022】
図4Aから
図4Dは、異なる形状のエネルギーフィルタ微細構造(それぞれ側面図および上面図で示す)についての異なるドーピング深さプロファイル40(基板内の深さの関数としてのドーピング濃度)の概略図を示す。
図4Aにおいて、矩形のドーピング深さプロファイルを生成する三角柱形状の構造が示されている。
図4Bにおいて、より小さな三角柱形状の構造が示されており、深さの分布がより少ない矩形のドーピング深さプロファイルを生成する。
図4Cにおいて、矩形のドーピング深さプロファイルを生成し、プロファイルの始めにピークがある台形プリズム形状の構造が示されている。
図4Dにおいて、基板の深さへと上昇する三角形のドーピング深さプロファイルを生成する角錐形状の構造が示されている。
【0023】
エネルギーフィルタイオン注入をシミュレートすることが知られている。しかしながら、エネルギーフィルタイオン注入をシミュレートする根本的な問題は、注入構造の幾何学的寸法が異なることにある。エネルギーフィルタ構造要素は典型的には、たとえば、シリコンで作製された三角形構造であり、最小および最大膜厚間の高さの差が約1μm超、約16μmから100μmまでである。並べて配置された複数のこのような構造要素がエネルギーフィルタを形成する。エネルギーフィルタ構造要素のイオンビーム方向に垂直な方向における寸法も数マイクロメートルから数100μmのオーダーにある。実際に使用されるエネルギーフィルタでは、エネルギーフィルタ膜の巨視的寸法は、2×2cmから、17×17cmを超えて40×40cmまでが要求される。基板サイズもこの範囲にある。他方、エネルギーフィルタと基板との間の距離は、通常、ミリメートルまたはセンチメートルの範囲にある。
【0024】
図5Aはフィルタ構造のフィルタユニットセル30の概略図を示す。エネルギーフィルタ25は単一要素またはシングルフィルタユニットセル30から構成されている。各ユニットセル30は(最も単純な場合)透過イオンの全エネルギーおよび角度スペクトルを提供する。エネルギーフィルタイオン注入(EFII)の特徴的ドーピング深さプロファイル40はしたがってフィルタユニットセル30の照射から生じる。n個のユニットセル30の横並び配置は単に拡張であり、これは拡張された基板の照射に必要である。
図5A参照。
図5Bは、エネルギーフィルタ25、イオン源5および基板26の静的照射状況のy-z平面における断面図を示す。典型的にはy方向にマイクロメートル寸法で形成される構造は巨視的に拡張されたエネルギーフィルタとなり、並べて配置されると、寸法が最大40cmである。
図5Bにも見られるように、同じことがz方向にも当てはまる。イオンは、エネルギーフィルタ25を通過する間に散乱する。このプロセスの間、イオンは、横方向の散乱と同様に、形状および材料の選択によるエネルギーの損失を経験し、その結果、エネルギーフィルタ25を出た後にイオンの特徴的なエネルギー角度分布が生じる。
【0025】
エネルギーフィルタ25が基板26に対して面平行に、そして基板から十分に大きな規定距離で配置されている、
図5Bによる静的セットアップでは、y-z平面内のイオンのエネルギー分布の所望の程度の横方向の均質化が実現され、したがってエネルギーフィルタ25の微細構造の基板26へのマッピングが、すなわち、数学的マッピング関数の意味において回避される。
図6Aは、エネルギーフィルタ25が基板26と接触し、エネルギーフィルタ25のドーピング深さプロファイル40へのマッピングが起こるようになっている配置を示す。
図6Bにおいて「十分な」距離50を備えたエネルギーフィルタ25および基板26の配置が示されており、ドーピング深さプロファイル40が、イオンビーム10のイオンビーム方向に垂直な平面内で基板26へ横方向(y-z平面)に均質に注入されるようになっている。
【0026】
図7Aから
図7Cは、1000μm×1000μmのフィルタ寸法でシミュレートされた1-D(z-y統合)ドーピング深さプロファイル40ならびに基板26のx-y平面内の2-Dプロファイルを示す。
図7Aから
図7Cにおける上部プロットはy-x平面内のドーピング濃度の二次元分布を示す。
図7Aから
図7Cにおける対応する下部の表現は、それぞれの場合についてのy軸とz軸の両方に沿った積分の合計を示す。
【0027】
次のセクションにおいて、
図5Bのこの照射配置を一例としてより詳細に考察する。特に、結果として生じるエネルギースペクトルの注入配置(フィルタと基板の距離)の設計に対する依存性を、基板26内の場所の関数としての注入イオン濃度に基づいて明らかにすべきである。
【0028】
初期状況:エネルギーフィルタ25のフィルタ寸法は、y≒1000μm、z≒1000μmであり、複数のユニットセル(完全な三角形構造)が並べて配置され、ユニットセル寸法はx=16μm、y≒11μm、zにおいて並進対称である。注入イオンはアルミニウム(Al)、一次エネルギーは12MeV、フィルタ材料は基板材料に等しく、シリコンに等しい。
【0029】
図7Aは、20μm離間させたエネルギーフィルタ25と基板26を示す。
図7Aにおいて、エネルギーフィルタ25と基板26は互いからfs=20μmの距離にある。基板26のx-y平面内の2-Dマップはエネルギーフィルタ25の微細構造の基板26へのマッピングを示す。シングルセルの隣り合うものからのイオンの横方向の散乱は、
図6Aに示すように、基板26内のドーピングのy軸に沿った所望の程度の横方向の均質化を達成するのに十分ではない。
【0030】
図7Bは、500μm離間させたエネルギーフィルタ25と基板26を示す。
図7Bにおいて、エネルギーフィルタ25と基板26は互いからfs=500μmの距離50にある。エネルギーフィルタ25の微細構造の基板26への転写は見られない。隣り合うシングルセルからのイオンの横方向の散乱は、基板26内のドーピングの所望の程度の横方向の均質化を達成するのに十分である。フィルタと基板の間隔はこの場合、正しく選択された。
【0031】
図7Cは、互いから3000μmの距離にあるエネルギーフィルタ25と基板26を示す。
図7Cによれば、エネルギーフィルタ25と基板26との間の距離がさらに増加すると、y-z平面内のイオンのエネルギー分布の不均質化が起こり、その結果、y軸に沿って合計された深さドーピングの深さプロファイルに勾配が生じる。イオンのエネルギースペクトルのこの不均質化は、エネルギーフィルタ25と基板26との間の大きな距離、ならびにイオン源およびエネルギーフィルタ25の寸法に起因する。散乱角が大きい散乱イオンの散乱角と大きなフィルタと基板の距離の両方の結果、強く散乱したイオンの複数がもはや基板25に当たらず、基板25を過ぎて散乱することになる。このように散乱するイオンはもはや基板25に当たらず、したがって「失われる」。
【0032】
実際のエネルギーフィルタ照射において、
図7Bに示す状況に類似するイオンの横方向に均質な濃度およびエネルギー分布を達成することが1つの態様である。ドーピング深さプロファイルの所望の程度の横方向の均質化ならびに完全な特徴的エネルギースペクトルの保存は実際には動的注入によって実現される。ここで、微細構造マッピングは、距離から独立して、基板26からエネルギーフィルタ25への相対移動によって回避される。さらに、実際には、ウェハ基板26の縁部でのイオンの損失は、基板26の縁部を越えてフィルタイオンビームをオーバースキャンすることによって回避される。
【0033】
エネルギーフィルタイオン注入のシミュレーションでは、静的配置が想定される。所望の程度の横方向の均質化を達成するとともに粒子の損失を回避するため、境界条件は、シミュレートされたエネルギーフィルタの結果として生じるエネルギースペクトルがウェハ上の空間座標y-zから独立していなければならないということである。換言すれば、ユニットセルの完全なエネルギー角度スペクトルは、ウェハ上の任意のy-z位置上で見つけねばならない。
【0034】
イオン注入は、多数の個別の事象で「構成される」プロセスである。統計的散乱プロセスにより基板内に典型的な分布を形成するため、多数のシングルイオン(通常1×1012cm-2~1×1015cm-2)が必要である。モンテカルロ技術の使用がしたがってイオン注入の分野で広く普及している。
【0035】
したがって、シミュレーション方法が、開発プロセスをサポートまたは短縮すること、またはプロセスおよび製品の正確な設計および寸法決めを容易にすることができる。十分な統計で時間およびコストの観点から合理的なシミュレーションを実行することを可能にするため、異なるサイズ比を考慮に入れて精度を損なうことなくシミュレーションのための複雑さおよび計算の労力をこのように大幅に削減する方法をしたがって使用せねばならない。
【0036】
半導体技術におけるイオン注入プロセスシミュレーションのための関心のあるシミュレーション領域の典型的な寸法は、数マイクロメートルから数ミリメートルまたはさらにはセンチメートルまでのサイズ範囲でイオンビームに垂直であり、そして数マイクロメートルから100マイクロメートルまでの範囲でイオンビームに対して平行(深さプロファイル)である。すべての方向における典型的な分解能要件は少なくとも5または10ナノメートルである。要求される空間分解能を達成するため、これらの領域をナノメートル範囲の細かいグリッドに細分化し、対応する多数の事象でシミュレートして関連する特性を高い事象密度で分解せねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】欧州特許第0014516号明細書
【特許文献2】独国特許第102016106119号明細書
【特許文献3】独国特許出願第102019120623.5号
【非特許文献】
【0038】
【非特許文献1】CSATO CONSTANTIN et al., “Energy filter for tailoring depth profiles in semiconductor doping application”, NUCLEAR INSTRUMENTS & METHODS IN PHYSICS RESEARCH. SECTION B: BEAM INTERACTIONS WITH MATERIALS AND ATOMS, vol. 365, pages 182-186, XP029313812, ISSN: 0168-583X, DOI: 10.1016/J.NIMB.2015.07.102
【非特許文献2】BORSCHEL C et al., “Ion beam irradiation of nanostructures A 3D Monte Carlo simulation code”, NUCLEAR INSTRUMENTS & METHODS IN PHYSICS RESEARCH. SECTION B: BEAM INTERACTIONS WITH MATERIALS AND ATOMS, vol. 269, no. 19, pages 2133-2138, XP028266956, ISSN: 0168-583X, DOI: 10.1016/J.NIMB.2011.07.004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
本発明の目的は、いわゆる「モンテカルロ」アルゴリズムによってエネルギーフィルタイオンビームのドーピング深さプロファイルのシミュレーションを可能にする方法を提供することである。特に、基板内での実際の物理プロセスおよびその効果を可能な限り正確にアーチファクトなしで再現することを可能にするため、EFIIプロセスのような複雑なイオン注入プロセスを、モンテカルロ法を使用して効率的にシミュレートする方法を提供することである。
【0040】
モンテカルロシミュレーション環境でイオン注入配置を実装することによって、このようなアレイの複雑な構造は関連する構造の実装のための高い作業負荷を示唆する。一般に、フィルタと基板の間隔と比較して微視的フィルタ構造の寸法が広く変動する結果、たとえば、
図8に示す、総シミュレーションボリュームS
Vの「関心のある」シミュレーション領域gに対する比率が低くなる。シミュレーション領域の高いグリッドおよび事象密度に対する要求により、総シミュレーションボリュームS
V内のシミュレーション事象の総数が増え、これらは、コスト集約型コンピューティング技術および長いシミュレーション期間でシミュレートすることができるのみである。
【0041】
本発明の目的は、エネルギーフィルタイオン注入のシミュレーションを、半導体電子デバイスの技術シミュレーション(TCAD)のためのツールランドスケープに組み込むための方法を提供することである。
【0042】
本発明の目的は、エネルギーフィルタ注入プロセスのモンテカルロシミュレーションの効率を大きく改善する、すなわち、モデルの実装のための労力を軽減し、コンピュータシミュレーションの複雑さを軽減し、そして最終的には計算時間を短縮またはコンピュータハードウェアの性能に対する要件を軽減するコンピュータ実装方法を提供することである。幾何学的シミュレーションモデルに関して、本発明は総シミュレーションボリュームSVのシミュレーション領域gに対する比率を改善する。本発明により、シミュレーション領域g内の高い事象密度を維持しながらシミュレーション事象の数を削減することが可能になる。結果として、シミュレーション時間を節約することができる。
【0043】
したがって、エネルギーフィルタイオン注入をシミュレートするための方法を改善する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明の第1の態様によれば、エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのためのコンピュータ実装方法が、エネルギーフィルタの少なくとも一部を決定するステップと、イオンビーム源の少なくとも一部を決定するステップと、基板内のシミュレーション領域を決定するステップと、エネルギーフィルタの決定された少なくとも一部、イオンビーム源の決定された少なくとも一部、基板内の決定されたシミュレーション領域を実装するステップと、実装された基板のドーピング深さプロファイルにおけるエネルギー分布の所望の程度の横方向の均質化を可能にするためにエネルギーフィルタの実装された少なくとも一部と実装された基板との間の最小距離を決定するステップと、エネルギーフィルタについてのエネルギー角度スペクトルをシミュレートすることによってエネルギーフィルタの最大予想散乱角を決定するステップと、総シミュレーションボリュームを定めるステップと、を含む。これによって、シミュレーションボリュームSvを可能な限り小さくして提供するとともにシミュレーションボリュームSvを簡略化して提供することが可能である。静的または動的な実際の注入セットアップから独立して静的なフィルタと基板の配置をさらに提供することができる。したがって、この方法により、エネルギー角度分布および関連する幾何学的制約を考慮することによって形状の簡略化を実装することが可能になる。
【0045】
この方法の一態様において、エネルギーフィルタと基板との間の最小距離は12MeVの運動一次エネルギーでのAlイオンのEFIIプロセスのシミュレーションでは100μmと1000μmとの間である。
【0046】
この方法の別の一態様において、決定された最大予想散乱角によるエネルギーフィルタは、互いに隣り合って配置されるフィルタユニットセルの数を定める。
【0047】
この方法の別の一態様において、基板内の解析されるシミュレーション領域はいずれの方向でも1μmから500μmの間である。
【0048】
本発明の第2の態様によれば、エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのためのコンピュータ実装方法が、少なくとも1つの基本要素においてエネルギーフィルタを近似するステップと、少なくとも1つの基本要素のうちの少なくとも1つを選択して、シミュレートされるエネルギーフィルタの所望の形状および材料組成を、選択された基本要素から組み立てることができるようにするステップと、選択された少なくとも1つの基本要素についてのエネルギー角度スペクトルを決定するステップと、選択された少なくとも1つの基本要素の決定されたエネルギー角度スペクトルに基づいて仮想イオンビーム源を決定するステップと、基板内のシミュレーション領域内の注入効果をシミュレートするステップと、を含む。これによって、より複雑なシミュレーションタスクを、仮想イオンビーム源(すなわち、EFIIS源)を定めることと、任意の基板に対するイオン注入効果の後続のシミュレーションと、に分離することができる。この方法により、全体的なシミュレーションボリュームを低減し、したがってシミュレーションを実行する効率を向上させることを可能にするシミュレーションと連携する一連のプロセスステップにおけるシミュレーションタスクが可能になる。したがって、この方法により、より複雑なエネルギーフィルタのシミュレーションも可能になる。これは、総シミュレーションボリュームSvのシミュレーション領域gに対する比率が改善された結果であり、ここでシミュレーションボリュームは、仮想イオンビーム特性の決定と、事前に定められた仮想イオンビームによるシミュレーション領域gのシミュレーションのステップにおいて互いに独立している。これにより、エネルギーフィルタおよびシミュレーション領域の寸法が大きく異なる場合でも、より良好なシミュレーション効率が可能になる。さらに、この方法の2つのプロセスステップの事象密度とグリッド密度は互いに独立して定めることができ、これにより要件に応じてシミュレーションを最適化することが可能になる。
【0049】
この方法の一態様において、少なくとも1つの基本要素は、少なくとも1つのエネルギーフィルタ要素の少なくとも一部、エネルギーフィルタのフィルタユニットセル、または一組の離散エネルギーフィルタのうちの1つである。
【0050】
この方法の一態様において、エネルギーフィルタは、三角形状、角錐形状、逆角錐形状、または自由形状である。
【0051】
この方法の別の一態様において、エネルギーフィルタのフィルタユニットセルは、異なる形状、異なる材料組成または異なる層構造の複数の基本要素で構成されている。
【0052】
この方法の一態様において、注入効果は、欠陥生成、ドーピングプロファイル、マスキング効果のうちの1つである。
【0053】
この方法の別の一態様において、新たなフィルタ形状、新たなフィルタ材料の選択、エネルギーフィルタの新たな層組成、新たな一次イオン、新たな一次イオンエネルギー、新たな一次イオン注入角度および新たな仮想イオンビーム源が決定される。
【0054】
この方法の一態様において、この方法は、少なくとも1つの基本要素をデータベースに格納するステップを含む。
【0055】
この方法の一態様において、この方法は、仮想イオンビーム源をデータベースに格納するステップを含む。
【0056】
この方法の別の一態様において、この方法は、基板上のマスキング構造をパラメトリック解析して、マスキング厚さ、材料組成、およびマスキングレイアウトを最適化し、マスキング構造によって影響される基板内の3Dドーピングプロファイルを最適化するステップを含む。マスク構造は、その組成、厚さ(部分的な透明度)およびその「斜面」の角度(平坦な角度での部分的な注入)を通じて3Dドーピングプロファイルに大きく影響する可能性がある。本発明による方法でこれらの影響を非常によく解析することができ、またはドーピングプロファイルおよびマスクを最適化することができる。
【0057】
この方法の一態様において、基板上のマスキング構造および/または3Dドーピングプロファイルの最適化は、モンテカルロシミュレーションを使用して実行される。マスク構造は、その組成、厚さ(部分的な透明度)およびその「斜面」の角度(平坦な角度での部分的な注入)を通じて3Dドーピングプロファイルに大きく影響する可能性がある。本発明による方法でこれらの影響を非常によく解析することができ、またはドーピングプロファイルおよびマスクを最適化することができる。
【0058】
本発明を次に図面に基づいて説明する。図面に記載された本発明の態様は単なる例であり、請求項の保護範囲を決して制限するものではないことが理解されるであろう。本発明は請求項およびその均等物によって定められる。本発明の一態様の特徴を本発明の異なる一態様の特徴と組み合わせることができるということが理解されるであろう。本発明は、添付の図面を考慮して開示の一部として複数の例の次の詳細な説明を読むと、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】先行技術において知られているようなエネルギーフィルタを備えたイオン注入装置の原理を示す図である。
【
図2A】エネルギーフィルタを備えたイオン注入装置の構造を示す図である。
【
図2B】可動基板を備えた、ウェハ処理を目的としたイオン注入のためのシステムにおけるエネルギーフィルタの典型的な設置を示す図である。
【
図3A】ウェハ処理を目的としたイオン注入のためのシステムにおけるエネルギーフィルタの典型的な設置を示す図である。
【
図3B】ウェハ処理を目的としたイオン注入のためのシステムにおけるエネルギーフィルタの典型的な設置を示す図である。
【
図4A】エネルギーフィルタを使用して多数のドーピング深さプロファイルを生成する主な可能性を示すフィルタの三次元構造を示す図である。
【
図4B】エネルギーフィルタを使用して多数のドーピング深さプロファイルを生成する主な可能性を示すフィルタの三次元構造を示す図である。
【
図4C】エネルギーフィルタを使用して多数のドーピング深さプロファイルを生成する主な可能性を示すフィルタの三次元構造を示す図である。
【
図4D】エネルギーフィルタを使用して多数のドーピング深さプロファイルを生成する主な可能性を示すフィルタの三次元構造を示す図である。
【
図5A】フィルタ構造のユニットセルの概略図である。
【
図5B】エネルギーフィルタ、イオン源および基板の静的照射状況のy-z平面における
図5Aの断面図である。
【
図6A】エネルギーフィルタが基板と接触するような配置を示す図である。
【
図6B】エネルギーフィルタと基板に「十分な」距離がある配置を示す図である。
【
図7】
図7Aは、20μm離間させたフィルタと基板を示す図である。
図7Bは、500μm離間させたフィルタと基板を示す図である。
図7Cは、3000μm離間させたフィルタと基板を示す図である。
【
図8】本発明の第1の態様によるエネルギーフィルタイオン注入EFIIの静的シミュレーションモデルの概略図である。
【
図9】エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのための本発明の第1の態様による方法のフローチャートを示す図である。
【
図10】シミュレートされるエネルギーフィルタの概略側面図である。
【
図11A】シミュレートされるエネルギーフィルタから近似された基本要素の概略側面図である。
【
図11B】シミュレートされるエネルギーフィルタから近似された基本要素の概略側面図である。
【
図11C】シミュレートされるエネルギーフィルタから近似された基本要素の概略側面図である。
【
図11D】シミュレートされるエネルギーフィルタから近似された基本要素の概略側面図である。
【
図12】フィルタユニットセルでシミュレートされる複合エネルギーフィルタの概略側面図である。
【
図13A】本発明の第2の態様によるエネルギーフィルタイオン注入EFIIのシミュレーションモデルを示す図である。
【
図13B】本発明の第2の態様によるエネルギーフィルタイオン注入EFIIのシミュレーションモデルを示す図である。
【
図14】エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのための本発明の第2の態様による方法のフローチャートである。
【
図15A】本発明の別の一態様に対する最適化されたパラメトリックシミュレーションを示す図である。
【
図15B】本発明の別の一態様に対する最適化されたパラメトリックシミュレーションを示す図である。
【
図15C】本発明の別の一態様に対する最適化されたパラメトリックシミュレーションを示す図である。
【
図16】12MeVの初期エネルギーおよび典型的なフィルタ寸法を備え、最大散乱角αは約70°であるAlイオンのEFIIについてのエネルギー角度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図8は本発明の第1の態様によるエネルギーフィルタイオン注入(EFII)の静的シミュレーションモデルの概略図を示す。EFIIの静的シミュレーションモデルのエネルギー角度分布特性は実際の注入条件ならびにエネルギー角度スペクトルを正確に再現するために要求される幾何学的境界条件の表現に対応する。
図8は注入中のイオンビームのエリアワイドスキャニングプロセスから得られるイオン源の寸法を示す。EFIIプロセスはモンテカルロシミュレーション環境内へシミュレートすることができる。
図8に見られるように、フィルタと基板の距離50(fs)は、イオンの散乱がエネルギー分布の所望の程度の横方向の均質化につながり、一態様の実装においてエネルギーフィルタの微細構造の基板26への構造転写が見られない距離50で少なくとも寸法決めされなければならない。12MeVの運動一次エネルギーでのAlイオンのEFIIプロセスのシミュレーションでは、この最小距離50は
図7Bによればfs=500μmである。
【0061】
フィルタユニットセル30の最大予想散乱角αが決定されるべきである。この目的のため、所与のフィルタユニットセル30についてのエネルギー角度スペクトルがシミュレートされ、最大散乱角α(これは依然として関連する数のイオンが経験する)が決定される。特に、シミュレートされるイオンの数が多いと、90°に近い散乱角を有するイオンが常に複数あることになる。したがって、角度αは、角度αが散乱イオンの関連部分を含む、すなわち、合計でイオンの総数の1%または2%未満を構成する、角度αより大きい散乱角を持つ散乱イオンを考慮しない方法で定めることもできる。これにより精度は低下するがシミュレーションは簡素化される。
図8に示すように、この最大角度αを使用して、フィルタモデルの全幅、すなわち、いくつのフィルタ基本セルを互いに並べて配置せねばならないかを計算する。イオンの全角度スペクトルがシミュレーション領域gに当たることを保証するため、特徴的エネルギーフィルタ注入プロファイルはシミュレーション領域gにおいて生成されることになる。一次運動エネルギーが12MeVでエネルギーフィルタ25と基板26との間の距離50がfs=500μmであるAlイオンのEFIIプロセスのシミュレーションでは、
図16に見られるように、最大散乱角αは約70°である。
図8はエネルギーフィルタ25とイオン源5の幅を示す。基板26内の解析される領域(すなわち、シミュレーション領域g)はg=2μmによって与えられる。イオンビーム源5とエネルギーフィルタ25の要求される全幅はしたがってL=2749μmである。基板26内の解析される領域(すなわち、シミュレーション領域g)も1μmと500μmとの間とすることができる。
【0062】
シミュレーションの総寸法は式L=l+gで計算され、イオンビーム源5とエネルギーフィルタ25の幅lは、次の式で計算され、
l/2=fstan(α)
ここで、α=最大散乱角、そしてfs=エネルギーフィルタ25と基板26との間の距離50である。
【0063】
図9は、エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのための本発明の第1の態様によるコンピュータ実装方法200のフローチャートを示す。エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのための方法200は、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部を決定するステップ201と、イオンビーム源5の少なくとも一部を決定するステップ202と、基板26内のシミュレーション領域gを決定するステップ203と、エネルギーフィルタ25の決定された少なくとも一部、イオンビーム源5の決定された少なくとも一部、基板26内の決定されたシミュレーション領域gを実装するステップ204と、を含む。シミュレーション環境は、たとえば、モンテカルロシミュレーションである。方法200は、実装された基板26のドーピング深さプロファイル40におけるエネルギー分布の所望の程度の横方向の均質化を可能にするためにエネルギーフィルタ25の実装された少なくとも一部と実装された基板26との間の最小距離50(fs)を決定するステップ205と、エネルギーフィルタ25についてのエネルギー角度スペクトルをシミュレートすることによってエネルギーフィルタ25の最大予想散乱角αを決定するステップ206と、総シミュレーションボリュームS
V(
図8における点線を参照)を定めるステップ207と、をさらに含む。
【0064】
たとえば、方法200には、運動一次エネルギーが12MeVであるAlイオンのEFIIプロセスのシミュレーションではエネルギーフィルタ25と基板26との間の最小距離50(fs)が100μmと1000μmとの間であることがさらに要求される。方法200は、運動一次エネルギーが12MeV、そして最小距離50が500μmであるAlイオンのEFIIプロセスのシミュレーションでは、フィルタユニットセル30の最大予想散乱角αが70°であることをさらに含む。方法200は、基板26内のシミュレーション領域gが一次元において2μmであることをさらに含む。方法200は、決定された最大予想散乱角αによるエネルギーフィルタ25の全幅lが、互いに隣り合って配置されるフィルタユニットセルの数であることをさらに含む。たとえば、エネルギーフィルタ25と基板26との間の最小距離50(fs)は、0μm(均質化なし)、100μmを超えて1000μmまで、または数ミリメートル(完全均質化)までとすることもできる。軽イオン(水素)および非常に高いエネルギーおよび大きなフィルタ構造(たとえば、厚さ100μm)では、1000μmより大きな距離50が必要になる。
【0065】
図10は、シミュレートされるエネルギーフィルタの概略側面図を示す。本発明の第2の態様によるコンピュータ実装方法300は、1つまたは複数の基本要素25a-1、25a-2、…25a-nを選択する第1のプロセスステップを含む。基本要素25a-1、25a-2、…25a-nはたとえばエネルギーフィルタ要素25a(
図11Aに示す)、フィルタユニットセル30または一組の離散エネルギーフィルタ要素25a(
図11Cに示す)である。シミュレートされるエネルギーフィルタ25全体の所望の形状および材料組成をこれらの基本要素から組み立てることができるように選択が行われる。
図11Aから
図11Dは、基本要素25a-1、25a-2、…25a-nを選択または定める可能性を示す例を示す。
図11Aから
図11Dは、シミュレートされるエネルギーフィルタ25から近似された基本要素25a-1、25a-2、…25a-nの概略側面図を示す。
図12は、フィルタユニットセル30を備えたシミュレートされる複合エネルギーフィルタの概略側面図を示す。
図11Dに示すように、エネルギーフィルタ要素25aの三角形構造は、n個の隣接する離散フィルタ膜片25a-1、25a-2、25a-3、…25a-nによって近似することができる。
【0066】
図13A~
図13Bは本発明の第2の態様による近似された幾何学的条件を備えたエネルギーフィルタイオン注入EFIIのシミュレーションモデルを示す。
図13Aおよび
図13Bは方法300の幾何学的シミュレーションモデルの概略図ならびにシミュレーションの連続を示す。しかしながら、本発明は一連のシミュレーションに限定されず、単一のシミュレーションであってもよい。
【0067】
図14に示すように、幾何学的条件を近似したエネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのための本発明の第2の態様による方法300は、第1のプロセスステップとして、少なくとも1つの基本要素25a-1、25a-2、…、25a-nにおいてエネルギーフィルタ25を近似するステップ301と、少なくとも1つの基本要素25a-1、25a-2、…、25a-nのうちの少なくとも1つを選択して、シミュレートされるエネルギーフィルタ25の所望の形状および材料組成を、選択された基本要素25a-1、25a-2、…、25a-nから組み立てることができるようにするステップ302と、選択された少なくとも1つの基本要素25a-1、25a-2、…、25a-nについてのエネルギー角度スペクトルを決定するステップ303と、を含む。少なくとも1つの基本要素25a-1、25a-2、…、25a-nは、少なくとも1つのエネルギーフィルタ要素25aの少なくとも一部、エネルギーフィルタ25のフィルタユニットセル30、または一組の離散エネルギーフィルタ25のうちの1つである。エネルギーフィルタ25は、たとえば、三角形状、角錐形状、逆角錐形状、または自由形状とすることができる。エネルギーフィルタ25のフィルタユニットセル30は、異なる形状、異なる材料組成または異なる層構造の複数の基本要素で構成されている。
【0068】
第1のプロセスステップの後、次のステップにおいて、フィルタ特性および一次イオンの特性のためシミュレーション領域gに作用する、イオンビーム特性の関連特性(エネルギーおよび角度、イオンのエネルギーおよび角度のy-z座標依存性)が、選択された基本要素25a-1、25a-2、…、25a-nのすべてについて計算される。本発明による方法300はエネルギーフィルタ25の三角形状のものに限定されない。むしろ、エネルギーフィルタ25についての角錐型、逆角錐型、またはより一般的には自由形態の構造も、方法300を使用してシミュレートすることができる。たとえば、エネルギーフィルタ25またはフィルタユニットセル30は、異なる形状、異なる材料組成または異なる層構造の複数の基本要素25a-1、25a-2、…、25a-nで構成することができる。エネルギーフィルタ25を傾けること、またはイオンビーム10に垂直な軸を中心に鏡映させることも可能である。
【0069】
図14に示すように、第1のプロセスステップの後、エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのための方法300は、第2のプロセスステップとして、決定されたエネルギー角度スペクトルに基づいて仮想イオンビーム源5を決定するステップ304と、選択された少なくとも1つの基本要素25a-1、25a-2、25a-3、…、25a-nのイオンのエネルギーおよび角度の分布の所望の程度の横方向(y-z座標)の均質化を1回のEFIIについて定めるステップと、を含む。さらなる一態様において、単一のエネルギーフィルタ25のエネルギー角度分布が決定され、エネルギーフィルタ25は、
図10のような「単純な」基本セルであっても、または
図12のような「複雑な」基本セルであってもよい。エネルギー角度分布の決定は、異なる方法を使用する複数のステップによって行うことができる。シミュレーション方法(1つまたは複数の基本要素のシミュレーション)、解析方法ならびに実験的に得られた結果またはこのような方法の組み合わせが考えられる。
【0070】
エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのための方法300は、第2のプロセスステップとして、基板26内のシミュレーション領域g内の注入効果をシミュレートするステップ305も含む。次のステップにおいて、あるエネルギー角度特性を備えた仮想イオンビーム源5が定められ、これは、方法300の第1のプロセスステップで選択された基本要素25a-1、25a-2、25a-3、…、25a-nのイオンビーム特性で構成されている。したがって、この複合仮想イオンビーム源5は、シミュレートされるエネルギーフィルタ25全体のイオンビーム特性(エネルギーおよび角度分布)に正確に対応する(または近似する)。
図13Aおよび
図13Bに示すように、EFIIS源5とも呼ばれるこの仮想イオン源5を使用して調査下の標的基板26(シミュレーション領域g)における注入効果(欠陥生成、ドーピングプロファイル、マスキング効果)をシミュレートする。
【0071】
したがって、新たなフィルタ形状、新たなフィルタ材料の選択、エネルギーフィルタ25の新たな層組成、新たな一次イオン、新たな一次イオンエネルギー、新たな一次イオン注入角度(すなわち、分布)ごとに、新たな仮想イオンビーム源5、すなわち、EFIIS源5が定められる。イオンビーム源5、すなわち、EFIIS源5を使用して、任意の基板26に対するイオン注入の効果をシミュレートおよび解析することができる。イオンビーム源5、すなわち、EFIIS源5、およびその下にあるエネルギーフィルタ25の基本要素25a-1、25a-2、25a-3、…、25a-nも、方法300の第1のプロセスステップにおいてデータベース(図示せず)に格納することができる。さらに、シミュレーション結果を実験結果と一致させることによって、仮想イオンビーム源5、すなわち、EFIIS源5を連続的に改善することが可能である。
【0072】
図14に示すように、方法300は、注入効果が欠陥生成、ドーピングプロファイル、マスキング効果のうちの1つであることをさらに含む。方法300は、新たなフィルタ形状、新たなフィルタ材料の選択、エネルギーフィルタ25の新たな層組成、新たな一次イオン、新たな一次イオンエネルギー、および新たな一次イオン注入角度について、新たな仮想イオンビーム源5が決定されることをさらに含む。方法300は、少なくとも1つの基本要素25a-1、25a-2、25a-3、...、25a-nをデータベース(図示せず)に格納するステップ306をさらに含む。方法300は、仮想イオンビーム源5をデータベース(図示せず)に格納するステップ307をさらに含む。
【0073】
さらに重要な利点は、シミュレーション領域内の形状パラメータを変化させて、シミュレーション領域gを系統的に調査することから得られる。これは、たとえば、
図15Aから
図15Cに示されており、これは、基板26上のマスキング厚さを変化させるときの典型的なシミュレーション調査を示す。この調査の目的は、必要なマスキング厚さ、幾何学的形状、材料組成およびレイアウトを決定し、モンテカルロシミュレーションを使用して、固定エネルギーフィルタ25および固定一次イオン特性について、すなわち、所与のイオンビーム源、すなわち、EFIIS源について基板内の3Dドーパントプロファイルを調査/最適化することである。方法300にしたがって第1のプロセスステップと第2のプロセスステップならびに一定のEFIIパラメータを分離することによって、第1のプロセスステップを1回のみ、そして第2のプロセスステップをマスキング厚さの変化ごとに実行する必要がある。第2のプロセスステップの各フォローアップ調査についてのプロセスステップのこの節約はシミュレーション時間の節約に反映される。モンテカルロシミュレーションにおけるフォローアップシミュレーションのために定められたパラメータとともにイオンビーム特性が格納されるライブラリソリューションも考えられる。これらのシミュレーションの最適化は、シミュレーション時間、ハードウェア、リソース、およびエネルギー消費に肯定的な効果をもたらす。
【0074】
図14に示すように、方法300は、
図15Aから
図15Cに示すように、マスキング厚さの幾何学的形状、材料組成およびレイアウトを検出するため、ならびに基板内の3Dドーパントプロファイルを調査/最適化するために、基板26上のマスキング構造70をパラメトリック解析するステップ308をさらに含む。
図14に示すように、方法300は、基板26上のマスキング構造70の解析308はモンテカルロシミュレーションを使用することによって実行されることをさらに含む。
【0075】
図16に示すように、12MeVの初期エネルギー(E)および典型的なフィルタ寸法でのAlイオンのEFIIのためのエネルギー角度分布において、最大散乱角αは約70°である。
【符号の説明】
【0076】
5 イオンビーム源
10 イオンビーム
20 イオン実装装置
21 シリコン層
22 二酸化シリコン層
23 バルクシリコン
24 ウェハホイール
25 エネルギーフィルタ
25a エネルギーフィルタ要素
26 基板
30 フィルタユニットセル
40 ドーピング深さプロファイル
50 距離
60 複合フィルタ
70 マスキング構造
100 イオン注入システム
200、300 コンピュータ実装方法
g シミュレーション領域
l 幅
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのためのコンピュータ実装方法(200)であって、
エネルギーフィルタ(25)の少なくとも一部を決定するステップ(201)と、
イオンビーム源(5)の少なくとも一部を決定するステップ(202)と、
基板(26)内のシミュレーション領域(g)を決定するステップ(203)と、
前記エネルギーフィルタ(25)の前記決定された少なくとも一部、前記イオンビーム源(5)の前記決定された少なくとも一部、前記基板(26)内の前記決定されたシミュレーション領域(g)を実装するステップ(204)と、
前記実装された基板(26)のドーピング深さプロファイル(40)におけるエネルギー分布の所望の程度の横方向の均質化を可能にするために前記エネルギーフィルタ(25)の前記実装された少なくとも一部と前記実装された基板(26)との間の最小距離(50)を決定するステップ(205)と、
前記エネルギーフィルタ(25)についてのエネルギー角度スペクトルをシミュレートすることによって前記エネルギーフィルタ(25)の最大予想散乱角(α)を決定するステップ(206)と、
総シミュレーションボリューム(S
V)を定めるステップ(207)と、を含む方法(200)。
【請求項2】
前記エネルギーフィルタ(25)と前記基板(26)との間の前記最小距離(50)は12MeVの運動一次エネルギーでのAlイオンのEFIIプロセスのシミュレーションでは100μmと1000μmとの間である、請求項1に記載の方法(200)。
【請求項3】
前記エネルギーフィルタ(25)はシングルフィルタユニットセル(30)から構成され、
前記シングルフィルタユニットセル(30)は、異なる形状、異なる材料組成または異なる層構造の複数の基本要素で構成され、前記決定された最大予想散乱角(α)による前記エネルギーフィルタ(25)の全幅は、互いに隣り合って配置される前記シングルフィルタユニットセル(30)の数である、請求項
1に記載の方法(200)。
【請求項4】
前記基板内(26)の解析される前記シミュレーション領域(g)は
いずれの方向でもイオンビーム(10)に対して垂直に見た際に1μmと500μmとの間である、請求項
1に記載の方法(200)。
【請求項5】
エネルギーフィルタイオン注入(EFII)のシミュレーションのためのコンピュータ実装方法(300)であって、
少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)においてエネルギーフィルタ(25)を近似するステップ(301)と、
前記少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)のうちの少なくとも1つを選択して、シミュレートされる前記エネルギーフィルタ(25)の所望の形状および材料組成を、前記選択された基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)から組み立てることができるようにするステップ(302)と、
前記選択された少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)についてのエネルギー角度スペクトルを決定するステップ(303)と、
前記選択された少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)の前記決定されたエネルギー角度スペクトルに基づいて仮想イオンビーム源(5)を決定するステップ(304)と、
基板(26)内のシミュレーション領域(g)内の注入効果をシミュレートするステップ(305)と、を含む方法(300)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)は、少なくとも1つのエネルギーフィルタ要素(25a)の少なくとも一部、前記エネルギーフィルタ(25)のフィルタユニットセル(30)、または一組の離散エネルギーフィルタ(25)のうちの1つである、請求項5に記載の方法(300)。
【請求項7】
前記エネルギーフィルタ(25)は、三角形状、角錐形状、逆角錐形状、または自由形状である、請求項
5に記載の方法(300)。
【請求項8】
前記エネルギーフィルタ(25)の前記フィルタユニットセル(30)は、異なる形状、異なる材料組成または異なる層構造の複数の基本要素で構成されている、請求項6に記載の方法(300)。
【請求項9】
前記注入効果は、欠陥生成、ドーピングプロファイル、マスキング効果のうちの少なくとも1つを含む、請求項
5に記載の方法(300)。
【請求項10】
新たなフィルタ形状、新たなフィルタ材料の選択、前記エネルギーフィルタ(25)の新たな層組成、新たな一次イオン、新たな一次イオンエネルギー、新たな一次イオン注入角度および新たな仮想イオンビーム源(5)が決定される、請求項
5に記載の方法(300)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの基本要素(25-1、25-2、25-3、…、25-n)をデータベースに格納するステップ(306)をさらに含む、請求項
5に記載の方法(300)。
【請求項12】
前記仮想イオンビーム源(5)をデータベースに格納するステップ(307)をさらに含む、請求項
5に記載の方法(300)。
【請求項13】
マスキング厚さ、材料組成およびマスキングレイアウトを最適化するため、ならびに前記基板内の3Dドーパントプロファイルを最適化するために、前記基板(26)上のマスキング構造(70)をパラメトリック解析するステップ(308)をさらに含む、請求項
5に記載の方法(300)。
【請求項14】
前記マスキング厚さ、材料組成およびマスキングレイアウトを最適化するため、ならびに前記基板内の前記3Dドーパントプロファイルを最適化するために、前記基板(26)上の前記マスキング構造(70)を解析する前記ステップ(308)は、モンテカルロシミュレーションを使用している、請求項13に記載の方法(300)。
【請求項15】
コンピュータによって実行されると、請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法を前記コンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【国際調査報告】