(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】小児期発症てんかん症候群の治療におけるカンナビジオール及びクロバザムの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5513 20060101AFI20240214BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20240214BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K31/5513
A61K31/05
A61P25/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551776
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 GB2022050476
(87)【国際公開番号】W WO2022180379
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】319016758
【氏名又は名称】ジーダブリュー・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー・アルミン・クナッペルツ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・アダム・チェケッツ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC55
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA06
4C086ZA06
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4C206MA02
4C206MA04
4C206NA06
4C206ZA06
(57)【要約】
本発明は、抗てんかん薬であるクロバザムを同時に服用している小児期発症てんかん症候群の患者の治療におけるカンナビジオール(CBD)の使用に関する。CBDをクロバザムと組み合わせて使用する場合には、注意して行うべきである。前記患者は、前記2つの医薬品の間の薬物-薬物相互作用5の副作用に関して注意される、且つ/又はモニターされる必要がある場合がある。特に、前記患者は、肺炎の発生に関して注意される、且つ/又はモニターされるべきである。このような状況において、CBD及び/又はクロバザムの用量を、減少させることが必要とされる場合がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロバザムを同時に服用している患者の小児期発症てんかんの治療であって、前記患者が、肺炎の発生率に関してモニターされることを特徴とする治療における使用のためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項2】
前記CBDの用量が、5~50mg/kg/日の間である、請求項1に記載の使用のためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項3】
前記CBDの用量が、10%~90%の間で減少される、請求項2に記載の使用のためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項4】
前記クロバザムの用量が、5~60mg/日の間である、請求項1に記載の使用のためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項5】
前記クロバザムの用量が、10%~90%の間で減少される、請求項4に記載の使用のためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項6】
前記CBDが、高度に精製された大麻の抽出物であって、少なくとも95%(w/w)のCBDを含む抽出物の形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項7】
前記CBDが、合成化合物として存在する、請求項1に記載の使用のためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項8】
前記小児期発症てんかんが、レノックス-ガストー症候群、ドラベ症候群、及び結節性硬化症複合体(TSC)からなる群から選ばれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項9】
前記患者が、CBD及びクロバザムに加えて、抗生物質療法を施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のためのカンナビジオール(CBD)。
【請求項10】
それを必要とする個人における小児期発症てんかんを治療する方法であって、前記患者に治療上有効な量のカンナビジオールを注意して投与することを含み、前記個人がクロバザムを同時に服用している、方法。
【請求項11】
前記注意が、カンナビジオールの用量を減少させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記注意が、クロバザムの用量を減少させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記注意が、カンナビジオール及びクロバザムの用量を減少させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記注意が、有害事象に関する前記個人のモニタリングを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記有害事象が肺炎である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記注意が、前記有害事象が認められた場合に、カンナビジオールの投与を中止することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記注意が、前記併用療法からの副作用について前記個人に通知することを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗てんかん薬であるクロバザムを同時に服用している小児期発症てんかん症候群の患者の治療におけるカンナビジオール(CBD)の使用に関する。CBDをクロバザムと組み合わせて使用する場合には、注意して行うべきである。前記患者は、前記2つの医薬品の間の薬物-薬物相互作用の副作用に関して注意される、且つ/又はモニターされる必要がある場合がある。特に、前記患者は、肺炎の発生に関して注意される、且つ/又はモニターされるべきである。このような状況において、CBD及び/又はクロバザムの用量を、減少させることが必要とされる場合がある。
【0002】
さらなる実施形態において、使用されるCBDは、そのCBDが全抽出物の95%(w/w)を上回って存在し、カンナビノイドテトラヒドロカンナビノール(THC)が0.15%(w/w)以下のレベルまで大幅に除去されているというような高度に精製された大麻の抽出物の形態である。
【0003】
より好ましくは、使用されるCBDは、98%(w/w)以上のCBD及び2%(w/w)以下の他のカンナビノイドを含む植物由来の精製CBDの形態である。より好ましくは、存在する他のカンナビノイドは、0.1%(w/w)以下の濃度のTHC、0.15%(w/w)以下の濃度のCBD-C1、0.8%(w/w)以下の濃度のCBDV、及び0.4%(w/w)以下の濃度のCBD-C4である。植物由来の精製CBDは、好ましくは、トランス-THC及びシス-THCの両方からなる混合物も含む。代替として、合成によって製造されたCBDが使用される。
【背景技術】
【0004】
てんかんは、世界人口の約1%で発生し(Thurman他、2011)、そのうちの70%は、入手可能な既存の抗てんかん薬(AED)でそれらの症状を適切に制御することが可能である。しかし、この患者群の30%は(Eadie他、2012)、入手可能なAEDによって発作を消失させることができず、このため、難治性又は「治療抵抗性てんかん」(TRE)に罹患していると称される。
【0005】
難治性又は治療抵抗性てんかんは、2009年に国際抗てんかん連盟(ILAE)によって、「持続的な発作の消失を達成するための、忍容性があり、適切に選択され、使用された2つのAEDスケジュール(単剤療法としても、組合せとしても)の適正な臨床試験の失敗」(Kwan他、2009)として定義された。
【0006】
誕生後数年の間にてんかんを発症した個人は、治療が難しい場合が多く、このため、しばしば治療抵抗性と称される。小児期に頻繁な発作を経験する小児には、認知、行動、及び運動の遅滞の原因となり得る神経損傷が残ることが多い。
【0007】
小児期発症てんかんは、小児及び若年成人における有病率が100,000あたり約700人である比較的一般的な神経疾患である。これは、人口あたりのてんかんの成人数の2倍である。
【0008】
小児又は若年成人が発作を呈した場合、その原因を検討するための調査が通常行われる。小児てんかんは、多くの異なる症候群及び遺伝子変異によって引き起こされることがあり、そのため、これらの小児に対する診断には、いくらかの時間を要することがある。
【0009】
てんかんの主な症状は、繰り返される発作である。患者が罹患しているてんかん又はてんかん症候群の種類を確定するために、患者が経験している発作型の調査が行われる。臨床観察及び脳波記録(EEG)検査が実施され、発作型が、ILAE分類に従って分類される。
【0010】
全般発作は、両側に分布するネットワーク内で生じ、両側に分布するネットワークを速やかに巻き込む発作であり、強直間代(大発作)発作、欠神(小発作)発作、間代発作、強直発作、脱力発作、及びミオクロニー発作の6つの亜型に分けることができる。
【0011】
焦点(部分)発作は、一側大脳半球にのみ限局されたネットワーク内に起始する発作であり、これも下位分類に分かれる。ここで、発作は、前兆、運動、自律神経性、及び意識/反応性を含む、1つ又は複数の発作の特徴に従って特徴付けられる。発作が、限局性発作として開始し、速やかに進展して両側のネットワーク内に分布される場合、この発作は、両側痙攣発作として知られており、これは二次性全般発作(焦点発作から進展し、もはや限局されていない全般発作)を置き換えるために提案された用語である。
【0012】
対象の意識/反応性が変化する焦点発作は、機能障害を伴う焦点発作と称され、対象の意識又は反応性が損なわれていない焦点発作は、機能障害を伴わない焦点発作と称される。
【0013】
小児期発症てんかん症候群は、多くの異なる発作型を示すことが多く、標準的なAEDの多くが、所定の発作型/亜型を治療することを目的とするか、又は、所定の発作型/亜型に有効であるにすぎないため、患者が患う発作型を同定することは重要である。
【0014】
あるこのような小児期発症てんかん症候群は、レノックス-ガストー症候群(LGS)である。LGSは、てんかんの重度の形態であり、この発作は、通常4歳になる前に発症する。患者間で変化する発作型には、強直(体の硬直、目の上方偏位、瞳孔の散大、及び呼吸パターン変化)、脱力(突然の転倒を招く、筋緊張及び自覚の短時間の喪失)、非定型欠神(凝視発作)、及びミオクロニー(突然の筋肉の痙攣)が含まれる。頻繁に発作を生じる期間が、短時間の比較的発作を生じない期間と混在していることがある。
【0015】
LGSの発作は、「転倒発作」としてしばしば記述される。このような転倒発作は、転倒、怪我、椅子に崩れ落ちること、若しくは患者の頭部を表面にぶつけることを引き起こしたか、又は引き起こした可能性のある、体全体、体幹、若しくは頭部に及ぶ発作(attack)又は発作(spell)(脱力、強直、又は強直間代)として定義される。
【0016】
LGS患者の大半が、発達遅延及び行動障害と共に、知的機能又は情報処理のある程度の障害を生じている。
【0017】
LGSは、脳奇形、周産期仮死、重度の頭部外傷、中枢神経系感染症、及び遺伝性の変性状態又は代謝状態によって引き起こされる可能性がある。症例の30~35%において、原因を見出すことができない。
【0018】
別の小児期発症てんかん症候群は、ドラベ症候群である。ドラベ症候群の発症は、それまで健康で、発達上正常な幼児において、間代発作及び強直間代発作を伴って、ほぼ常に生後1年間の間に生じる(Dravet、2011年)。症状は、生後約5ヵ月でピークに達する。持続性の焦点性認知障害発作及び短時間の欠神発作のような他の発作は、1~4歳の間に発症する。
【0019】
ドラベ症候群患者は、焦点発作及び全般発作のいずれも罹患し、非定型欠神発作、ミオクロニー欠神発作、脱力発作。及び非痙攣性てんかん重積状態も生じる場合がある。
【0020】
発作は、進行して高頻度となり、また発作が治療に十分応答しないことを意味する治療抵抗性となる。また発作は、5分間を超えて続き、持続する傾向がある。持続性の発作は、てんかん重積状態を引き起こすことがあり、これは、30分間を超えて続く発作、又は次々と群発する発作である。
【0021】
予後は不良であり、小児の約14%は、感染症のために発作中に死亡するか、又はしばしば、過酷な神経学的衰退のために原因不明で突然死亡する。患者は、知的能力障害及び生涯継続する発作を発症する。知的障害は、患者50%における重度から、それぞれが症例25%を占める中等度及び軽度の知的能力障害に変化する。
【0022】
さらなる小児期発症てんかん症候群は、結節性硬化症複合体(TSC)であり、これらの患者は、一連の異なる発作型を生じる。TSCは、身体の特定の部位に発生する良性腫瘍を主に引き起こす遺伝性疾患である。腫瘍が脳内に発生した場合、これらは発作を引き起こすことが多く、この発作は、腫瘍が存在する脳の一領域に限局されることが多い。
【0023】
てんかんは、TSCの極めて一般的な特徴であるが、TSCに関連する発作を患う多くの患者は、既存のAEDを使用して発作を制御することができない。脳から腫瘍を切除する手術又は迷走神経刺激のような代替治療は、役立つ場合がある。
【0024】
TSCのようなてんかん症候群は、多くの異なる発作型を示すことが多い。標準的なAEDの多くが所定の発作型を治療することを目的とするため、患者が患う発作型を同定することは重要であり、これらは全般発作型と焦点発作型の両方である可能性がある。
【0025】
LGS、ドラベ症候群、及びTSCに具体的に適応される唯一のFDA既承認の治療は、Epidiolex(登録商標)(植物由来の精製されたカンナビジオール)である。他の一般的に処方される薬物には、以下の抗痙攣薬の組合せが含まれる:クロバザム、クロナゼパム、レベチラセタム、トピラマート、及びバルプロ酸。
【0026】
管理には、ケトン誘発食、並びに物理的刺激及び迷走神経刺激も含まれることがある。抗痙攣薬に加えて、小児期発症てんかん症候群の患者の多くは、抗精神病薬、覚醒剤、及び不眠症を治療する薬物を用いて治療される。
【0027】
過去40年にわたり、発作を治療するための、非精神活性カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)の使用に関する多くの動物試験及びヒト試験が行われてきた。
【0028】
純粋なCBDを200mg/日で成人患者4名に与えた1978年の試験では、患者4名中2名において発作が消失したが、残りの患者では、発作頻度に変化がなかった(Mechoulam及びCarlini、1978)。
【0029】
Cunha他は、CBDを、全般てんかんを有する成人患者8名に投与することで、これらの患者のうち4名において発作が著しく減少したことを報告し(Cunha他、1980)、Consroe他(1982)は、CBDが痙攣促進薬の投与又は電流後のマウスにおける発作を予防することが可能であることを断定した。
【0030】
上述の試験とは対照的に、ある非盲検試験からの報告では、純粋なCBD200mg/日は、施設に収容された成人患者12名における発作の制御に対して無効であった(Ames及びCridland、1986)。
【0031】
上述の全ての試験は、全般てんかんに罹患している対象を治療することに焦点を当てており、具体的な発作亜型の治療を考慮していなかった。
【0032】
特許出願WO2011/001169は、焦点発作の治療におけるCBDの使用について記載されており、WO2012/093255は、てんかんの治療における標準的な抗てんかん薬と組み合わせたCBDの使用について記載されており、WO2013/045891は、てんかんの治療における使用のためのCBD及びCBDVを含む組成物について記載されている。
【0033】
Porter及びJacobson(2013)は、治療抵抗性てんかんを有する小児に対するCBDを富化した大麻の使用を探究したFacebookグループを介して実施された親調査に関して報告している。調査された親19名中16名が、彼らの子供のてんかんにおける改善を報告したことがわかった。この論文に関する調査を受けた全ての子供は、CBDを高濃度で含有すると主張されている大麻を摂取していたが、多くの事例において、存在するCBD及びTHCを含む他の構成成分の量は不明であった。実際に、CBDレベルは、0.5~28.6mg/kg/日(試験された抽出物中)の範囲であったが、THCレベルは、0.8mg/kg/日と同程度の高さであったと報告されている。TREを有する子供に、痙攣促進物質として記載されている(Consroe他、1977)THCを、精神活性の可能性がある用量の0.8mg/kg/日で含む大麻抽出物を与えることは懸念事項である。
【0034】
ある非盲検試験では、結節性硬化症複合体を有する患者10名の治療において、治療不応性てんかんの治療におけるCBDの使用が実践された(Geffrey他、2014)。加えて、WO2016/059399は、TSCの治療における25mg/kg/日まで漸増させた用量でのCBDの使用について記載されている。
【0035】
2019年9月に、欧州医薬品庁(EMA)は、2歳以上の患者におけるレノックス-ガストー症候群及びドラベ症候群に伴う発作の治療のためのクロバザムと併用したCBDの使用のための販売許可を与えた(European Medicines Compendium、2019年9月、「Epidyolex 100mg/ml oral solution」)。先行文献は、てんかんの治療におけるCBD及びクロバザムに関連する有害作用に関して報告している(Dos Santosら、2020; Devinskyら、2020; Gunningら、2021; Chesneyら、2020)。
【0036】
本出願人は、3つの異なる症候群であるLGS、ドラベ症候群、及びTSCにおける小児期発症てんかんを有する患者に対する多くの二重盲検プラセボ対照試験を通して、CBD及び抗てんかん薬であるクロバザムを同時に用いて治療された患者は、肺炎のリスクが増加したことを見出した。このような相互作用は予想外であり、このため、これらの薬物を組み合わせて使用する場合は、患者の綿密なモニタリングを行うべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】WO2011/001169
【特許文献2】WO2012/093255
【特許文献3】WO2013/045891
【特許文献4】WO2016/059399
【非特許文献】
【0038】
【非特許文献1】European Medicines Compendium、2019年9月、「Epidyolex 100mg/ml oral solution」
【非特許文献2】Handbook of Cannabis、Roger Pertwee、第1章、3~15ページ
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明の第1の態様に従って、クロバザムを同時に服用している患者の小児期発症てんかんの治療であって、前記患者が、肺炎の発生率に関してモニターされることを特徴とする治療における使用のためのカンナビジオール(CBD)が提供される。
【0040】
好ましくは、CBDの用量は、5~50mg/kg/日の間である。より好ましくは、CBDの用量は、10%~90%の間で減少される。
【0041】
さらなる実施形態において、クロバザムの用量は、5~60mg/日の間である。好ましくは、クロバザムの用量は、10%~90%の間で減少される。
【0042】
本発明の一実施形態において、CBDは、高度に精製された大麻の抽出物であって、少なくとも95%(w/w)のCBDを含む抽出物の形態である。
【0043】
代替として、前記CBDは、合成化合物として存在する。
【0044】
好ましくは、前記小児期発症てんかんは、レノックス-ガストー症候群、ドラベ症候群、及び結節性硬化症複合体(TSC)からなる群から選ばれる。
【0045】
本発明のさらなる実施形態において、前記患者は、CBD及びクロバザムに加えて、抗生物質療法を施される。
【0046】
本発明の第2の態様に従って、それを必要とする個人における小児期発症てんかんを治療する方法であって、前記患者に治療上有効な量のカンナビジオールを注意して投与することを含み、前記個人がクロバザムを同時に服用している、方法が提供される。
【0047】
好ましくは、前記注意は、カンナビジオールの用量を減少させること及び/又はクロバザムの用量を減少させることを含む。
【0048】
より好ましくは、前記注意は、有害事象に関する前記個人のモニタリングを含む。より好ましくは、更に前記有害事象は肺炎である。
【0049】
さらなる実施形態において、前記注意は、前記有害事象が認められた場合に、カンナビジオールの投与を中止することを更に含む。
【0050】
好ましくは、前記注意は、前記併用療法からの副作用について前記個人に通知することを含む。
【0051】
定義
本発明を説明するために使用される用語のうちのいくつかの定義は以下に詳述される。
【0052】
100を超える異なるカンナビノイドが同定されており、例えば、Handbook of Cannabis、Roger Pertwee、第1章、3~15ページを参照されたい。これらのカンナビノイドは、以下の通り、異なる群に分けることができる:植物性カンナビノイド、内因性カンナビノイド、及び合成カンナビノイド(これは、新規のカンナビノイドである場合、又は植物性カンナビノイド若しくは内因性カンナビノイドを合成によって製造する場合がある)。
【0053】
「植物性カンナビノイド」は、天然由来であり、大麻植物中に認められ得るカンナビノイドである。植物性カンナビノイドは、高度に精製された抽出物を製造するために植物から単離され得るか、又は合成によって複製され得る。
【0054】
「高度に精製されたカンナビノイド」は、大麻植物から抽出され、高度に精製されたカンナビノイドが純度95%(w/w)以上となるように、カンナビノイドと共抽出された他のカンナビノイド及び非カンナビノイド成分が除去される程度まで精製されたカンナビノイドとして定義される。
【0055】
「合成カンナビノイド」は、カンナビノイド構造又はカンナビノイド様構造を有する化合物であり、植物によってというよりも化学的手段を使用して製造される。
【0056】
植物性カンナビノイドは、そのカンナビノイドを抽出するために使用された方法に応じて、中性形態(脱炭酸形態)又はカルボン酸形態のいずれかとして得ることができる。例えば、カルボン酸形態を加熱することによって、大半のカルボン酸形態が脱炭酸されて中性形態となることが知られている。
【0057】
「治療抵抗性てんかん(TRE)」又は「難治性てんかん」は、2009年のILAEガイダンスに従って、1種又は複数のAEDの臨床試験によって適切に制御されないてんかんとして定義される。
【発明を実施するための形態】
【0058】
高度に精製されたCBD抽出物の調製
以下は、既知の定組成を有する高度に精製された(>95%w/w)カンナビジオール抽出物の製品について説明している。
【0059】
要約すると、使用された原薬は、CBDを得るために溶媒晶析法によって更に精製された、カンナビス・サティバ・エル(Cannabis sativa L.)の高CBD含有化学型の液体二酸化炭素抽出物である。具体的には、結晶化工程で、他のカンナビノイド及び植物成分を除去し、95%w/wを上回るCBDを得る。合成によってというよりも、大麻植物から製造されることから、前記CBDは、高度に精製されているが、前記CBDと同時に製造され、同時に抽出される少数の他のカンナビノイドが存在する。これらのカンナビノイドの詳細及び前記医薬品中に存在するそれらの含量は、以下のTable A(表1)に記載されている。
【0060】
【0061】
植物由来の精製CBDの調製
以下は、98%w/w以上のCBD及び 以下の他のカンナビノイドを含む、前記植物由来の精製CBDの製品が、以下の実施例1に記載される非盲検拡大治験に使用されたことについて説明する。
【0062】
要約すると、臨床試験で使用された原薬は、CBDを得るために溶媒晶析法によって更に精製された、カンナビス・サティバ・エル(Cannabis sativa L.)の高CBD含有化学型の液体二酸化炭素抽出物である。具体的には、結晶化工程で、他のカンナビノイド及び植物成分を除去し、95%w/wを上回るCBD、典型的には98%w/wを上回るCBDを得る。
【0063】
カンナビス・サティバ・エル植物を栽培し、収穫し、処理して植物抽出物(中間生成物)を製造し、次に、結晶化によって精製してCBD(植物由来の精製CBD)を得る。
【0064】
植物出発物質は、植物原料(BRM)と称され、その植物抽出物は、中間生成物であり、その医薬品有効成分(API)は、CBDであり、原薬である。
【0065】
工程の全ての部分は、規格によって管理される。植物原料の規格はTable B(表2)に記載され、CBDのAPIはTable C(表3)に記載される。
【0066】
【0067】
【0068】
植物由来の精製CBD製剤の純度は98%以上であった。この植物由来の精製CBDには、THC及び他のカンナビノイド、例えば、CBDA、CBDV、CBD-C1、及びCBD-C4が含まれる。
【0069】
カンナビス・サティバ・エル植物の異なる化学型は、特定の化学成分である、カンナビノイドの産出量を最大限に高めるために作成された。特定の化学型はCBDを主に産生する。CBDの(-)-トランス異性体のみが天然に生じると考えられている。精製の間、CBDの立体化学は影響を受けない。
【0070】
CBDの植物原薬の製造
植物抽出物である中間生成物を製造するためのステップの概要は以下の通りである:
a)栽培
b)直接乾燥
c)脱炭酸
d)抽出-液体CO2を使用
e)エタノールを使用した脱ろう
f)濾過
g)蒸発
【0071】
高CBD化学型を栽培し、収穫し、乾燥させ、梱包して、必要とされるまで乾燥室で保存した。1mmの篩を取り付けたアペックスミルを使用して、植物原料(BRM)を細かく刻んだ。粉砕したBRMを、抽出前に冷凍庫で保存した。
【0072】
熱を用いて、CBDAのCBDへの脱炭酸を行った。BRMを115℃で60分間脱炭酸した。
【0073】
液体CO2を使用して抽出を実施し、植物原薬(BDS)を製造し、次に、結晶化して試験物質を製造した。この粗CBD BDSを、標準条件下(2倍量のエタノールで-20℃にて約50時間)で脱ろうし、抽出物を純化した。沈殿したワックスを濾過によって除去し、溶媒を除去してBDSを得た。
【0074】
植物由来の精製CBD製剤の製造
BDSから植物由来の精製CBD製剤を製造するための製造ステップは、以下の通りであった:
a)直鎖又は分枝状のC5~C12アルカンを使用して結晶化
b)濾過
c)真空乾燥
【0075】
上記の方法論を用いて製造されたBDSを、直鎖又は分枝状のC5~C12アルカンに分散した。この混合物を、全ての塊が砕けるまで手作業で撹拌し、次に、密閉した容器を、冷凍庫に約48時間静置した。結晶を減圧濾過によって単離し、一定量の冷却した直鎖又は分枝状のC5~C12アルカンで洗浄し、10mb未満の減圧下で60℃の温度にて乾燥するまで乾燥させた。この植物由来の精製CBD製剤を、FDA食品グレード既承認のシリコーンシール及びクランプを備えた医薬品グレードステンレス鋼容器中で-20℃にて冷凍庫に保存した。
【0076】
植物由来の精製CBDの物理化学的特性
本発明に記載される臨床試験で使用された植物由来の精製CBDは、98%(w/w)以上のCBD及び2%(w/w)以下の他のカンナビノイドを含む。存在する他のカンナビノイドは、0.1%(w/w)以下の濃度のTHC、0.15%(w/w)以下の濃度のCBD-C1、0.8%(w/w)以下の濃度のCBDV、及び0.4%(w/w)以下の濃度のCBD-C4である。
【0077】
使用された植物由来の精製CBDは、トランス-THC及びシス-THCの両方からなる混合物をさらに含む。トランス-THCのシス-THCに対する比率は、処理工程及び精製工程によって、未純化の脱炭酸状態で3.3:1(トランス-THC:シス-THC)から高度に精製された場合の0.8:1(トランス-THC:シス-THC)の範囲で変更され、制御され得ることが認められた。
【0078】
更に、植物由来の精製CBD中に認められるシス-THCは、(+)-シス-THC及び(-)-シス-THCアイソフォームの両方からなる混合物として存在する。
【0079】
明らかに、CBD製剤は、複製成分を有する組成物を製造することによって、合成による製造が可能である。
【0080】
以下の実施例1は、LGS、DS、及びTSCに関連する発作を有する患者における有害事象プロファイルであって、CBD対プラセボの無作為化、二重盲検、並行群間臨床試験の一環として記録された有害事象プロファイルについて説明している。
【実施例1】
【0081】
レノックス-ガストー症候群(LGS)、ドラベ症候群(DS)、及び結節性硬化症複合体(TSC)に関連する発作を有する患者における有害事象プロファイル
試験デザイン
CBDは、1歳以上の患者におけるレノックス-ガストー症候群(LGS)、ドラベ症候群(DS)、及び結節性硬化症複合体(TSC)に関連する発作の治療に適応される。
【0082】
CBD対プラセボの無作為化、二重盲検、並行群間臨床試験が行われ、前記患者に生じた有害事象が照合され、検討された。
【0083】
要約すると、患者は、1週間のスクリーニング期間及び4週間のベースライン期間を完了した後、CBD又は同等の体積のプラセボを投与されるように無作為に割り付けられた。無作為化を年齢によって層別化した。
【0084】
患者は、割り付けられた用量まで漸増する4週間の用量漸増期間を開始した後、盲検下の治験薬(IMP)の安定用量を12又は14週間継続投与された。
【0085】
各患者に対する用量漸増は、安全性及び忍容性に関する治験責任医師の評価次第である。ある用量の忍容性が低下した場合、治験責任医師は、一次的又は永続的に、残りの試験のための用量を減少させることを判断する場合がある。
【0086】
治療終了時(113日目)までに、スクリーニングのため(-35日目)、ベースラインのため(-28日目)、無作為化のため(1日目)、漸増中の15及び29日目、並びに43、57、71(電話)、及び85日目に来院が行われた。漸増の間及び漸増終了後1週間の間の2日置き、並びに非盲検延長(OLE)に参加しない患者に対しては来院10回目から来院12回目まで週1回、安全のための電話を完了した。
【0087】
患者は、発作情報を記録するため、対話型音声応答システム(IVRS)電話を1日1回行うよう求められた。IMP投与及びAED同時投与に関する情報を伴う紙の日記を1日1回書くことも求められた。
【0088】
盲検期完了後、患者は、OLE中にCBD投与を継続するよう勧められた。
【0089】
OLEに参加しないことを選択した患者は、10日間の漸減期間(10日間1日あたり10%漸減)を完了した。
【0090】
OLEは、3週間の漸増期間とそれに続く維持期間及び10日間の漸減期間で構成された。
【0091】
漸増スケジュールに従った漸増後、患者は、自身のCBD最適用量で継続するであろう。しかし、治験責任医師は、患者が不耐性を経験した場合、又はより良好な発作制御を必要とする場合は、適量がみつかるまで、それぞれ用量を減少させるか、又は用量を最大で50mg/kg/日まで増加させることがある。
【0092】
記録された安全性及び忍容性の評価基準には、有害事象、臨床検査パラメータ、12-誘導心電図(ECG)、身体検査パラメータ(身長及び体重を含む)、バイタルサイン、適用可能なコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS;19+歳)又はC-SSRS小児(6~18歳)スコア、てんかんによる入院患者の入院回数、乱用傾向、及び月経周期に対する影響(女性)が含まれた。
【0093】
レノックス-ガストー症候群又はドラベ症候群を有する患者
脱落の最も多い原因は、トランスアミナーゼ上昇であった。トランスアミナーゼ上昇による脱落発生率は、用量反応性であった。トランスアミナーゼ上昇に対するリスク因子は、同時投与のバルプロ酸塩及びクロバザム、CBDの用量、並びにベースライントランスアミナーゼ上昇を含む。
【0094】
CBDで治療したLGS又はDSを有する患者において発生した最も一般的な有害反応(プラセボよりも少なくとも10%以上高い発生率)は、下痢、疲労、食欲減退、傾眠、及び発熱であった。
【0095】
以下のTable 1.1(表4)は、第III相対照臨床試験における14週間の治療期間の間に、CBDを用いて治療されたDS及びLGS患者において報告された有害反応の一覧である。
【0096】
【0097】
【0098】
結節性硬化症複合体を有する患者
TSCに対する対照臨床試験において、脱落の最も多い原因は、トランスアミナーゼ上昇、発疹、及び傾眠であった。トランスアミナーゼ上昇による脱落は、用量反応性であった。
【0099】
以下のTable 1.12(表5)は、第III相対照臨床試験における12週間の治療期間の間に、CBDを用いて治療されたTSC患者において報告された有害反応の一覧である。
【0100】
【0101】
LGS、DS、又はTSCを有する患者における追加の有害反応
体重減少
CBDは、体重減少の原因となり得る。体重の減少は、用量依存的であると思われる。いくつかの症例において、体重減少は、有害事象として報告された。
【0102】
血液学的異常
CBDは、ヘモグロビン及びヘマトクリットの減少の原因となり得る。CBD-OSで治療されたLGS及びDSを有する患者の27パーセント(27%)並びにCBD-OSで治療された(25mg/kg/日)TSCを有する患者の38%は、前記試験の過程中に、研究施設で新規に定義された貧血(ベースラインにおける濃度を正常ヘモグロビン濃度として定義し、次の時点において、正常値の下限を下回る値が報告された場合)を発症したのに対して、プラセボを投与されたLGS及びDSを有する患者の14%並びにプラセボを投与されたTSCを有する患者の15%が、貧血を発症した。
【0103】
クレアチニンの増加
CBDは、血清クレアチニンの上昇の原因となり得る。その機序は、まだ特定されていない。健常成人及びLGS、DS、及びTSCを有する患者における対照試験において、血清クレアチニンの約10%増加が、CBD-OS投与開始の2週間以内に認められた。この増加は、健常成人において可逆的であった。LGS、DS、又はTSCにおける可逆性は、試験で評価されなかった。
【0104】
肺炎
肺炎は、クロバザムを用いた場合(10mg/kg/日のCBDを服用している患者の14%、20mg/kg/日のCBDを服用している患者の7%、及びプラセボを服用している患者の1%)とクロバザムを同時に用いない場合(10mg/kg/日のCBDを服用している患者の0%、20mg/kg/日のCBDを服用している患者の3%、及びプラセボを服用している患者の2%)の対照臨床試験で認められた。
【0105】
25mg/kg/日のCBDを服用しているTSCを有する患者において、肺炎は、クロバザムを同時に用いた場合(25mg/kg/日を服用している患者の17%及びプラセボを服用している患者の0%)とクロバザムを用いない場合(25mg/kg/日を服用している患者の0%及びプラセボを服用している患者の2%)に認められた。
【0106】
以下のTable 1.3(表6)は、LGS及びDS患者における肺炎の発生率に関する詳細である。
【0107】
【0108】
以下のTable 1.4(表7)は、TSC患者における肺炎の発生率に関する詳細である。
【0109】
【0110】
以上のように、肺炎の発生率は、CBDに加えてクロバザムを同時に服用している患者において著しく高い。
【0111】
結論
これらのデータは、3つの異なる症候群:LGS、ドラベ症候群、及びTSCにおける小児期発症てんかんと診断された患者であって、抗てんかん薬であるクロバザムと組み合わせたCBDを用いて治療された患者は、肺炎のリスクが増加したことを示唆する。このような相互作用は予想外であり、このため、これらの薬物を組み合わせて使用する場合は、患者の綿密なモニタリングを行うべきである。
【0112】
肺炎は、全般強直間代発作の既知の合併症である。てんかんを有する患者における肺炎は、鼻及び口の中の分泌物の誤嚥によって引き起こされ、これは、誤嚥の発生を通常防ぐ防御反射が、発作によって妨げられることによると考えられる。
【0113】
驚くべきことに、本明細に提示されたデータは、発症した発作の回数が減少した患者は、肺炎のリスクが増加したことを明示している。この点に関して、過去に実証された通り、単独か、又はクロバザムと組み合わせてかのいずれかでCBDを服用していた患者は、全ての治療群において、発作回数がプラセボに対して大幅に減少した。
【0114】
したがって、CBD及びクロバザムを同時に服用している患者が、肺炎の発生に関して注意され、且つモニターされることは肝要である。喘息又はCOPDのような合併する肺状態によってリスクが増加した患者において、このような患者は、肺炎の発生を予防するため、予防的に使用する抗生物質を処方される場合がある。
【0115】
更に、CBDの用量、クロバザムの用量、又はCBD及びクロバザムの両方の用量の減少が、患者における肺炎のリスクを減少させるために必要とされる場合がある。
【国際調査報告】