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特表2024-507942治療用バイオテクノロジー製造プロセスのための荷電デプスフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】治療用バイオテクノロジー製造プロセスのための荷電デプスフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D39/16 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551977
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 IB2022051648
(87)【国際公開番号】W WO2022180572
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/154,299
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】リン,クアン-イン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイル,アンドリュー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】オニール,ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅之
(72)【発明者】
【氏名】へスター,ジョナサン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ダシャラシ,カナン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォロシン,アレクセイ エム.
【テーマコード(参考)】
4D019
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA13
4D019BB03
4D019BC20
4D019BD01
4D019CB06
4D019DA03
(57)【要約】
バイオ医薬品供給原料から細胞及び/又は細胞破片を除去するための荷電デプスフィルタであって、第1の計算された細孔径及び第1の動的電荷容量を有する第1の官能化不織布層と、バイオ医薬品供給原料の流れの方向に、第1の官能化不織布層の後に配置された、第2の計算された細孔径及び第2の動的電荷容量を有する第2の官能化不織布層と、を含み、第1の計算された細孔径が、第2の計算された細孔径よりも大きく、第1の動的電荷容量が第2の動的電荷容量よりも小さい、荷電デプスフィルタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ医薬品供給原料から細胞及び/又は細胞破片を除去するための荷電デプスフィルタであって、
第1の計算された細孔径及び第1の動的電荷容量を有する第1の官能化不織布層と、
前記バイオ医薬品供給原料の流れの方向に、前記第1の官能化不織布層の後に配置された、第2の計算された細孔径及び第2の動的電荷容量を有する第2の官能化不織布層と、を含み、
前記第1の計算された細孔径が、前記第2の計算された細孔径よりも大きく、前記第1の動的電荷容量が前記第2の動的電荷容量よりも小さい、荷電デプスフィルタ。
【請求項2】
前記第1の官能化不織布層について、前記第1の計算された細孔径が、40.8μm~65.0μmであり、前記第1の動的電荷容量が、150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gであり、前記第2の官能化不織布層について、前記第2の計算された細孔径が、5.0μm~40.8μm未満であり、前記第2の動的電荷容量が300MY DCCmg/g超~650MY DCCmg/gである、請求項1に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項3】
前記第1の官能化不織布層について、前記第1の計算された細孔径が、55.0μm~65.0μmであり、前記第1の動的電荷容量が、150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gであり、前記第2の官能化不織布層について、前記第2の計算された細孔径が、5.0μm~55.0μm未満であり、前記第2の動的電荷容量が300MY DCCmg/g~650MY DCCmg/gである、請求項1に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項4】
前記第1の官能化不織布層及び前記第2の官能化不織布層が、第四級アンモニウム含有モノマー、アミド含有モノマー、及びエポキシ含有モノマーであるインターポリマー化モノマー単位を含むコポリマーでグラフト化されている、請求項1、2、又は3に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項5】
前記第1の官能化不織布層及び前記第2の官能化不織布層が、3-メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、N-ビニルピロリドン、及びグリシジルメタクリレートであるインターポリマー化モノマー単位を含むコポリマーでグラフト化されている、請求項4に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項6】
バイオ医薬品供給原料から細胞及び/又は細胞破片を除去するための荷電デプスフィルタであって、
第1の計算された細孔径及び第1の動的電荷容量を有する第1の官能化不織布層と、
前記バイオ医薬品供給原料の流れの方向に、前記第1の官能化不織布層の後に配置された、第2の計算された細孔径及び第2の動的電荷容量を有する第2の官能化不織布層と、
前記バイオ医薬品供給原料の流れの方向に、前記第2の官能化不織布層の後に配置された、第3の計算された細孔径及び第3の動的電荷容量を有する第3の官能化不織布層と、を含み、
前記第1の計算された細孔径が、前記第2の計算された細孔径よりも大きく、前記第2の計算された細孔径が、前記第3の計算された細孔径よりも大きく、前記第1の動的電荷容量が、前記第2の動的電荷容量よりも小さく、前記第2の動的電荷容量は、前記第3の動的電荷容量よりも小さい、荷電デプスフィルタ。
【請求項7】
前記第1の官能化不織布層について、前記第1の計算された細孔径が、40.8μm~65.0μmであり、前記第1の動的電荷容量が150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gであり、前記第2の官能化不織布層について、前記第2の計算された細孔径が、20.6μm~40.8μm未満であり、前記第2の動的電荷容量が、300MY DCCmg/g超~475MY DCCmg/gであり、前記第3の官能化不織布層について、前記第3の計算された細孔径が、5.0μm~20.6μm未満であり、前記第3の動的電荷容量が300MY DCCmg/g超~MY DCC 650mg/gである、請求項6に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項8】
前記第1の官能化不織布層について、前記第1の計算された細孔径が、55.0μm~65.0μmであり、前記第1の動的電荷容量が150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gであり、前記第2の官能化不織布層について、前記第2の計算された細孔径が、20.6μm~55.0μm未満であり、前記第2の動的電荷容量が、200MY DCCmg/g~475MY DCCmg/gであり、前記第3の官能化不織布層について、前記第3の計算された細孔径が、5.0μm~20.6μm未満であり、前記第3の動的電荷容量が300MY DCCmg/g超~650MY DCCmg/gである、請求項6に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項9】
前記第3の官能化不織布層が水透過性である、請求項6、7、又は8に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項10】
動的電荷容量対計算された細孔径のプロット上で、水透過性線が、5.0μmの計算された細孔径及び300MY DCCmg/gの動的電荷容量を有する点1を通り、20.6μmの計算された細孔径及び525MY DCCmg/gの動的電荷容量を有する点2を通って延び、前記第3の官能化不織布層が、前記第3の動的電荷容量及び前記第3の計算された細孔径のプロット上に点3を有し、前記水透過性線の下に点3が位置する、請求項6、7、又は8に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項11】
前記第1の官能化不織布層、前記第2の官能化不織布層、及び前記第3の官能化不織布層が、第四級アンモニウム含有モノマー、アミド含有モノマー、及びエポキシ含有モノマーであるインターポリマー化モノマー単位を含むコポリマーでグラフト化されている、請求項6、7、又は8に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項12】
前記第1の官能化不織布層、前記第2の官能化不織布層、及び前記第3の官能化不織布層が、3-メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、N-ビニルピロリドン、及びグリシジルメタクリレートであるインターポリマー化モノマー単位を含むコポリマーでグラフト化されている、請求項11に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項13】
繰り返された第1の層が、前記第1の層と前記第2の層との間に配置されている、請求項6、7、又は8に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項14】
膜層が、前記第3の官能化不織布層の後に配置されている、請求項6、7、又は8に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項15】
非官能化不織布層が前記膜層の後に配置されている、請求項14に記載の荷電デプスフィルタ。
【請求項16】
一段階で全細胞及び細胞破片を含むバイオ医薬品供給原料を清澄化する方法であって、2%~12%の血中血球容積PCVを有する前記バイオ医薬品供給原料を、請求項1又は6に記載の荷電デプスフィルタを通して供給して、清澄化されたバイオ医薬品供給原料を形成することを含む、方法。
【請求項17】
前記清澄化されたバイオ医薬品供給原料が、50NTU未満の濁度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記荷電デプスフィルタを通る前記バイオ医薬品供給原料のスループットが、30L/m~200L/mである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオ医薬品供給原料が1,000NTU~10,000NTUの濁度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
流量が50LMH~600LMHである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記清澄化されたバイオ医薬品供給原料が50NTU未満の濁度を有し、前記バイオ医薬品供給原料が1,000NTU~10,000NTUの濁度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記流量が50LMH~600LMHである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が哺乳動物細胞を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓293(HEK-293)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK21)細胞、NS0ネズミ骨髄腫細胞、又はPER.C6(登録商標)ヒト細胞からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
モノクローナル抗体は、標的疾患に対するそれらの特異性に基づく生物薬剤産業における主要なモダリティである。治療用抗体市場は、規制による審査を受けている多くの薬物候補とともに急速に成長している。約100種のモノクローナル抗体が、ここ30年にわたって米国及び欧州連合の規制当局によって承認されており、次世代抗体療法は、今後10年にわたって更に高い割合で増加すると予想される。これらには、抗体-薬物コンジュゲート、バイオシミラー、改変抗体、二重特異性抗体、抗体断片、抗体様タンパク質などが含まれる。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、懸濁液中で適応及び増殖するそれらの能力、無血清合成培地中で増殖する能力、高い産生能力、翻訳後修飾などに基づいて、産業において最も一般的に使用される細胞株である。CHO細胞は、産生されたタンパク質治療薬の>70%を占めるが、これらの生物製剤は、微生物、植物、昆虫、他の哺乳動物細胞を含むいくつかの系において産生され得る。
【0002】
生物薬剤学的に関心のあるタンパク質は、多数の天然に又は組換え的に発現されたタンパク質のいずれかを含む。治療用ベクターとして使用することができる他の生物製剤には、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、若しくはレンチウイルスなどのウイルス粒子、細菌ファージ若しくはウイルス粒子、エクソソーム、又は合成脂質ナノ粒子が挙げられる。CHO細胞とは別に、これらの生物製剤を産生するために使用され得る宿主細胞としては、(ヒト胚性腎臓(HEK)細胞、HeLa細胞、若しくはPER.C6細胞などの他の哺乳動物細胞型、(大腸菌(Escherichia coli)若しくはバチルス属(bacillus)などの細菌、Sf6などの昆虫細胞、酵母細胞、又はタバコなどの植物細胞が挙げられる。細胞型又は治療用ベクターとは無関係に、宿主細胞成分から、及び宿主細胞によって産生される他の成分から目的の生物製剤を単離することに関連する清澄化及び精製の課題は、類似している。
【発明の概要】
【0003】
生物薬剤製造において、細胞培養液がバイオリアクターから採取され、下流の清澄化プロセスに送られると、モノクローナル抗体(mAb)、ウイルス粒子又は他の治療用ベクターなどの目的の標的生体分子を、細胞、細胞破片、及び/又はコロイド粒子を含む供給原料から分離する必要がある。多くの場合、一次清澄化ステップは、遠心分離ステップ、深層濾過、精密濾過(接線流濾過)、又はそれらの組み合わせを使用して行われ、採取された細胞培養液から全細胞及び大きな細胞破片を除去する。
【0004】
細胞培地、細胞工学、及びバイオリアクター設計における著しい進歩は、長年にわたってより高い力価(例えば、10g/L)をもたらした。得られた培養物はまた、600万細胞/mLから5000万細胞/mL超まで増加した細胞密度を有する。細胞密度におけるこの有意な増加は、多数の一次清澄化ステップに影響を与えた。
【0005】
遠心分離機は、一次清澄化のために使用される場合、生産プロセスにおける連続バッチ間の交差汚染がないことを確実にするために、運転間に大規模な洗浄手順を必要とする。したがって、バッチと目的の治療用生体分子との間で交換するときの交差汚染のリスクを排除するために、一次遠心分離清澄化ステップに取って代わる使い捨ての単回使用デバイスが必要とされている。
【0006】
接線流精密濾過は、遠心分離の代わりに一次清澄化ステップとして使用することができる。しかしながら、接線流精密濾過膜は、多くの場合、膜汚染の影響を受けやすく、運転間の交差汚染を防止するために、及び目的の治療用生体分子間で交換する場合に大規模な洗浄手順を必要とする。
【0007】
あるいは、従来のデプスフィルタ(媒体の細孔径に基づいてサイズ排除のみを使用する)を一次清澄化ステップとして使用して、デプスフィルタチャネルのサイズに基づいて細胞及び破片を除去し、デプスフィルタ媒体中の助剤を濾過することができる。しかしながら、細胞密度が600万細胞/mLから5000万細胞/mL超に増加するにつれて、従来の深層濾過によるスループットは、生産製造環境において実行不可能になってきた。したがって、必要とされているのは、一次清澄化ステップとして、遠心分離機、接線流精密濾過、及び従来のデプスフィルタに取って代わることができる単回使用の一次清澄化ステップである。
【0008】
本出願人らは、各層が異なる有効細孔径及び動的電荷容量を有する少なくとも2つの官能化不織布層を有する荷電デプスフィルタが、このような課題を達成することができ、高い細胞密度を有する細胞培養物に特に有効であることを見出した。供給原料がデプスフィルタの層を通って移動するときに、有効細孔径及び動的電荷容量の両方について勾配を注意深く管理することによって、第1の層を全細胞及び大きな細胞破片で詰まらせずに、膜層などのデプスフィルタの最後の層も破片で詰まらないことを確実にするのに依然として有効であるデプスフィルタを構築することができる。両方の状況は、スループットを著しく低下させ、デバイスを生産バイオ医薬品製造プロセスにおける使用に許容できないものにする。
【0009】
特に、本出願人らは、荷電デプスフィルタにおける連続する層の細孔径が減少し、荷電デプスフィルタにおける連続する層の動的電荷容量が増加するはずであることを見出した。供給原料がデプスフィルタにおいて見られる官能化不織布の第1の層に対して、細孔径が小さすぎるか、又は動的電荷容量が大きすぎる場合、それは、全細胞及び/又は大きな細胞破片と容易に固まり、スループットを著しく低下させる。同様に、細孔径を低減させ、連続する層の動的電荷容量を増加させることができないことによって、あまりにも多くの破片が官能化不織布層をすり抜けて、荷電デプスフィルタに最終フィルタ層として任意選択で追加することができる下流濾過部材の目詰まりをもたらす。
【0010】
したがって、一態様では、本発明は、バイオ医薬品供給原料から細胞及び/又は細胞破片を除去するための荷電デプスフィルタであって、第1の計算された細孔径及び第1の動的電荷容量を有する第1の官能化不織布層と、バイオ医薬品供給原料の流れの方向に、第1の官能化不織布層の後に配置された第2の計算された細孔径及び第2の動的電荷容量を有する第2の官能化不織布層と、を有し、第1の計算された細孔径が第2の計算された細孔径よりも大きく、第1の動的電荷容量が第2の動的電荷容量よりも小さい、荷電デプスフィルタに関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】荷電デプスフィルタの入口と出口との間に配置された、4層の官能化不織布(FNW-C/FNW-C/FNW-E/FNW-F)、それに続く膜層、及びそれに続く不織布スパンボンド層を有する荷電デプスフィルタのための媒体スタックの概略図である。
図2】官能化不織布層、FNW-Bの画像である。官能化前の不織布は、14μmの有効繊維直径、10%のソリディティ、200g/mの坪量、及び41.5μmの計算された細孔径を有していた。グラフト化後、それは、21.6μmの有効繊維直径、14.2%のソリディティ、302.0g/mの坪量、50.5μmの計算された細孔径、及び165.0mg/gのMY DCCを有する。
図3】官能化不織布層、FNW-Fの画像である。官能化前の不織布は、6μmの有効繊維直径、10%のソリディティ、200g/mの坪量、及び17.8μmの計算された細孔径を有していた。グラフト化後、9.1μmの有効繊維直径、17.8%のソリディティ、355.8g/mの坪量、17.9μmの計算された細孔径、及び407.4mg/gのMY DCCを有していた。
図4】細胞培養清澄化後の、より大きい細孔の官能化不織布、FNW-B、及び膜の切断された荷電デプスフィルタ媒体スタックの画像である。細胞培養物は、4つの全ての官能化不織布層を容易に貫通し、膜表面を細胞の残留物及び細胞破片で覆う。この媒体スタックは、あまりに多くの破片が膜層を汚染したため、うまく機能しなかった。
図5】細胞培養清澄化後の、より小さい細孔の官能化不織布、FNW-F、及び膜の切断された荷電デプスフィルタ媒体スタックの画像である。細胞培養物は上層を汚染し、全ての官能化不織布層を貫通することができない。第3及び第4の層は利用されず、膜表面は、いかなる細胞の残留物及び細胞破片もなく、清浄である。
図6A】CHO細胞培養物を濾過した後の媒体スタック中の第1の官能化不織布(FNW-C)の上面を示す。細胞、破片、及び/又はDNAは、不織布層の荷電繊維に付着し、官能化繊維の外表面上で丸いボールのように見える。
図6B】CHO細胞培養物を濾過した後の媒体スタック中の第1の官能化不織布(FNW-C)の上面を示す。細胞、破片、及び/又はDNAは、不織布層の荷電繊維に付着し、官能化繊維の外表面上で丸いボールのように見える。
図6C】CHO細胞培養物を濾過した後の媒体スタック中の第1の官能化不織布(FNW-C)の底面を示す。細胞、破片、及び/又はDNAは、不織布層の荷電繊維に付着し、繊維の外表面上で丸いボールのように見える。
図6D】CHO細胞培養物を濾過した後の媒体スタック中の第2の官能化不織布(FNW-C)の上面を示す。細胞、破片、及び/又はDNAは、不織布層の荷電繊維に付着し、繊維の外表面上で丸いボールのように見える。
図6E】CHO細胞培養物を濾過した後の媒体スタック中の第2の官能化不織布(FNW-C)の底面を示す。細胞、破片、及び/又はDNAは、不織布層の荷電繊維に付着し、繊維の外表面上で丸いボールのように見える。
図6F】CHO細胞培養物を濾過した後の媒体スタック中の官能化不織布(FNW-E)の上面を示す。細胞、破片、及び/又はDNAは、不織布層の荷電繊維に付着し、繊維の外表面上で丸いボールのように見える。
図6G】CHO細胞培養物を濾過した後の媒体スタック中の官能化不織布(FNW-E)の底面を示す。細胞、破片、及び/又はDNAは、不織布層の荷電繊維に付着し、繊維の外表面上で丸いボールのように見える。
図6H】CHO細胞培養物を濾過した後の媒体スタック中の官能化不織布(FNW-F)の上面を示す。細胞、破片、及び/又はDNAは、不織布層の荷電繊維に付着し、繊維の外表面上で丸いボールのように見える。
図6I】CHO細胞培養物を濾過した後の媒体スタック中の官能化不織布(FNW-F)の底面を示す。細胞、破片、及び/又はDNAは、不織布層の荷電繊維に付着し、繊維の外表面上で丸いボールのように見える。
図6J】CHO細胞培養物を濾過した後の媒体スタック中の0.2μmの膜層の上面を示す。見られるように、非常に少ない細胞、破片、及び/又はDNAが膜の表面上に存在する。
図7】入口、出口、任意選択のベント、及び細胞培養物を清澄化するために入口と出口との間に配置された媒体スタック(図示せず)を備えたハウジングを有する荷電デプスフィルタの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この文書全体にわたって、範囲の形式で表される値は、その範囲の限界として明示的に記載されている数値を含むだけでなく、その範囲内に含まれる全ての個々の数値又は部分範囲も、各数値及び部分範囲が明示的に記載されている場合と同様に含むように、柔軟に解釈すべきである。例えば、「約0.1%~約5%」又は「約0.1%~5%」の範囲は、単に約0.1%~約5%のみを含むのではなく、示されている範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%、及び4%)及び部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)もまた含むものとして解釈されるべきである。「約X~Y」という記述は、別段の指示のない限り、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、「約X、Y、又は約Z」という記述は、別段の指示のない限り、「約X、約Y、又は約Z」と同じ意味を有する。
【0013】
本文書において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、又は「その(the)」という用語は、文脈上明確な別段の指示がない限り、1つ以上を含むように使用される。「又は」という用語は、別段の指示のない限り、非排他的な(nonexclusive)「又は」を指すために使用される。「A及びBのうちの少なくとも1つ」又は「A又はBのうちの少なくとも1つ」という記述は、「A、B、又はA及びB」と同じ意味を有する。加えて、本明細書で用いられている特に定義されていない表現又は用語は、説明のみを目的としており、限定するためではないと理解されるべきである。節の見出しの使用はいずれも、本文書の読み取りを補助することを意図しており、限定と解釈すべきではなく、及び節の見出しに関連する情報は、その特定の節の中又は外に存在し得る。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、値又は範囲の変動性を許容することができる。例えば、記載された値、又は記載されたある範囲の限界の、10%以内、5%以内、又は1%以内であり、記載された値又は範囲そのものを含む。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「実質的に」という用語は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%又は少なくとも約99.999%以上、又は100%のように、大部分又はほとんどを指す。本明細書で使用されるとき、「実質的に含まない」という用語は、存在する材料の量が、材料を含む組成物の材料特性に影響を及ぼさないような、組成物が材料の約0wt%~約5wt%、又は約0wt%~約1wt%、又は約5wt%以下、又は約4.5wt%以下、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、若しくは約0.001wt%以下の値である、わずかな量である、又は全くないことを意味し得る。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「層」は、処理される流体が通過する、ある厚さの材料を意味し、層内の材料は全て同一材料から形成される。層は、ある厚さの同一材料から形成されたモノリシック層であり得る。あるいは、層は、層内で互いに積み重ねられて層の厚さを形成する、1つ以上の個別の同じ材料プライを有することができる。例えば、一般的なフェイシャルティッシュの1つの層は、多くの場合、対面接触して配置された2つの個別のティッシュペーパーのプライから作製されたティッシュペーパー材料であり、2つの個別のプライは、一般に、クリンプラインの形態をした弱い機械的結合によってまとめられているため、互いから容易に引き離すことができる。
【0017】
本明細書で使用されるとき、単数又は複数の「プライ」は、巻く、折り畳む、切断する、又は積み重ねるなどの、これらに限定されない、従来の変形操作によって加工して層にすることのできる、ある厚さの単一の材料である。多くの場合、プライは、ウェブ製造機上で形成プロセスを完了した後の、ある厚さの材料である。その後、1つ以上の同じ材料のプライを積み重ねて層を形成することができる。例えば、不織布は、形成機で単一のプライとして作製して、ロールに巻くことができる。その後、不織布ロールをほどき、長手方向に変形機を通過させる際に折り畳み板によって機械横方向に半分に折り畳み、次いで、2プライの層を切断ダイによって切断して円盤として、2つの個別のプライを有する不織布材料の円形層を形成することができる。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「官能化層」は、主として層の構造的形状及び完全性を提供する、層の大部分を形成する材料とは異なる、化学部分、リガンド、又は官能基のうち1つ以上が層の表面に存在することに起因する静電力などの引力によって、標的の粒子又は分子を吸着する層である。化学部分、リガンド、又は官能基は、標的の粒子又は分子を官能化層の表面に吸着することを特に意図している。官能化層は、標的の粒子又は分子を分子的に吸着するように設計されたリガンド、モノマー、又はポリマーを多孔質層にコーティング又はグラフト化することによって作製されてもよい。あるいは官能化層は、そのような層を作製するために使用される配合において、形成中に層の表面に局在化する表面改質ポリマー又は化学部分を提供して、その結果、標的の粒子又は分子を吸着するように設計された化学基が層の表面に存在するように作成されてもよい。いくつかの実施形態では、官能化層の表面上の官能基間の引力は、静電力であり、官能化層の表面上に存在する化学部分、リガンド、又はポリマーは、静電的に帯電している。官能化層は、正電荷を有して、負に帯電した粒子を吸着する、すなわち陰イオン交換クロマトグラフィーであってもよいし、又は官能化層は、負電荷を有して、正に帯電した粒子を吸着する、すなわち陽イオン交換クロマトグラフィーであってもよい。他の実施形態では、引力は、ファンデルワールス力であってもよく、標的の粒子又は分子は、相互相対濃度、又は分極性結合部分若しくは水素結合部分の不足によって官能化層表面上の官能基に吸着される(すなわち、疎水性相互作用)。更に、引力は、静電力とファンデルワールス力の組み合わせを含んでもよい(すなわち、混合モード)。荷電デプスフィルタデバイスにおける官能化層に好適な官能化材料は、Pall、Millipore、及びSartoriousによって作製され、以下のブランド:Mustang(登録商標)Q、NatriFlo(登録商標)HD-Q、及びSartobind(登録商標)Qで販売されている。荷電デプスフィルタデバイスにおける使用に好適な官能化層は、不織布、膜、又は他の好適な材料であり得る。好ましい官能化不織布材料が3M Companyによって作製されており、「Nonwoven Article Grafted with Copolymer」と題する米国特許第9,821,276号に開示されている。好ましい官能化膜が3M Companyによって作製されており、「Method of Making Ligand Functionalized Substrates」と題する米国特許第9,650,470号、及び10,017,461号に開示されている。言及された3つの特許は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「非官能化層」とは、層の大部分を形成する材料とは異なるコーティング、グラフト化、又は表面局在化された吸着性の化学部分(例えば、静電的に帯電した化学部分、リガンド、又は官能基)を含まない層である。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「媒体スタック」とは、処理される流体が入口からハウジングを通って出口まで移動する際に、その流体が荷電デプスフィルタのハウジング内で通過する材料層の全てである。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「膜」とは、膜を通る流体の通過を可能にする複数の細孔又は細孔の相互接続ネットワークが配置された材料シートを含む、合成液体透過性膜を指す。そのような膜は、一般的に、好適な溶媒、又は溶媒の組み合わせの中で1つ以上のポリマーの均質な溶液が相分離を経て多孔質構造を形成する、相反転プロセスによって作製されるポリマー膜を含む。相分離は、均質溶液のフィルムを非溶媒液槽に導入すること(拡散誘起相分離として知られる)、非溶媒雰囲気に導入すること(蒸気誘起相分離として知られる)、又は均質溶液の温度を変化させること(熱誘起相分離として知られる)によって、もたらすことができる。あるいは、細孔は、延伸プロセス又は放射線照射プロセスによってポリマーシート内に形成することもできる(飛跡エッチング膜)。膜は、直径約0.1マイクロメートル~約20マイクロメートル(微多孔性膜)の細孔径又は約0.1マイクロメートル未満(超微多孔性膜)の細孔径を有することができる。膜形成に好適なポリマーとしては、酢酸セルロース、ニトロセルロース、セルロースエステル、ビスフェノールAポリスルホン及びポリエーテルスルホンを含むポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド(例えば、ナイロン-6及びナイロン-6,6)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、及びエチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。
【0022】
荷電デプスフィルタ
図1及び図7を参照すると、荷電デプスフィルタは、入口16、出口18、任意選択のベント20を有するハウジング10と、濾過される細胞培養物が入口16から出口18へと媒体スタックを通過するように、入口と出口との間に配置された少なくとも2層の官能化不織布を含むハウジング内に位置する層25、31、33、35、37、及び39(図1)を含む媒体スタックとを含む。媒体スタックの縁部は、最初に媒体スタックを通過することなく、出口への細胞培養物のいかなる漏出も最小限にするか又は排除するために、例えば、圧縮又は熱可塑性溶接シールによって密封されている。媒体スタックを含有し、密封することができる荷電デプスフィルタには、任意の好適なハウジングを使用することができる。多くの場合、商業生産への実験室ベンチスケール研究に適した異なるサイズのハウジング及び媒体スタック体積が提供される。
【0023】
媒体スタックは、第1の計算された細孔径及び第1の動的電荷容量を有する少なくとも第1の官能化不織布層25と、バイオ医薬品供給原料の流れの方向に、第1の官能化不織布層の後に配置された第2の計算された細孔径及び第2の動的電荷容量を有する第2の官能化不織布層33と、を有し、第1の計算された細孔径は第2の計算された細孔径よりも大きく、第1の動的電荷容量は第2の動的電荷容量よりも小さい。
【0024】
ハウジングは、任意の好適なサイズであってよく、サイズは、ハウジング内の媒体表面積に対して適切にスケーリングされる。典型的には、実験室規模のデバイスは、比較的小さく、限られた量の流体を処理するための低いホールドアップ体積を有する。パイロット規模及び生産規模のデバイスは、各運転に対してより大量の流体を処理するために、それらの中に対応するより大量の媒体を有するであろう。例えば、実験室規模のデバイスは、3.2cm~25cmの媒体表面積を有してもよく、パイロット規模のデバイスは340cm~1,020cmの媒体表面積を有してもよく、及び生産規模のデバイスは2,300cm~16,100cmの媒体表面積を有してもよい。他のハウジングサイズ及び媒体体積が、特定の用途のために必要に応じて提供され得る。好適なハウジングは、3Mによって作製され、3M Emphaze AEX Hybrid Purifier製品ラインにおいて使用される。https://www.3m.com/3M/en_US/company-us/all-3m-products/~/3M-Emphaze-AEX-Hybrid-Purifier/?N=5002385+3291555558&rt=rudを参照されたい。本発明の媒体スタックを収容するために、同様のサイズのハウジング及び設計を使用することができる。
【0025】
好適なハウジングは、2019年1月14日に出願された「Sample Size Chromatography Device」と題された米国特許出願第62/792,166号に開示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。図7で最も良く見られるように、ハウジング10は、上部ハウジング12を下部ハウジング14に接合することによって形成される。ハウジングは、入口16と、出口18と、任意選択のベント20と、を有する。入口16と出口18との間で、チャンバ内に媒体スタックが配置されており、入口16からの流体が内部チャンバに入り、次いで、媒体スタックを通過して出口18から出るようになっている。チャンバは、チャンバ内の空気をベント20からパージすることができるように、入口16及び任意選択のベント20と流体連通している。ルアーロックコネクタ(図示せず)をベント20に取り付け、弁として使用して、入口16からの液体がベント20から出始めて弁が閉じられるまでチャンバから空気をパージすることができる。対向する横方向タブ80を有する円筒形突出部32は、ハウジングから延び、ルアーロックコネクタを入口、出口、及びベントに取り付けるためのテーパ穴を有する。長手方向リブ58は、周囲に沿って間隔を置いて配置され、ハウジングを取り扱う際のグリップ力を向上させる。
【0026】
封止膜及びスペーサリングを有する別の好適なハウジングは、2020年5月12日に出願され、「Membrane Sealing Layer and Spacer Ring for Viral Clearance Chromatography Device」と題された米国特許出願第63/023,488号に開示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
媒体スタック
媒体スタックは、ハウジングの入口と出口との間に配置された第1の官能化不織布層25及び第2の官能化不織布層33を含む。第1の官能化不織布層は、第1の計算された細孔径及び第1の動的電荷容量を有し、第2の官能化不織布層は、第2の計算された細孔径及び第2の動的電荷容量を有し、バイオ医薬品供給原料の流れの方向に、第1の官能化不織布層の後に配置されており、第1の計算された細孔径は第2の計算された細孔径よりも大きく、第1の動的電荷容量は第2の動的電荷容量よりも小さい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「第1の」層及び「第2の」層は、これらの層が、流体が媒体スタックを通って移動する際に流体が通過する第1の層及び第2の層でなければならないことを意味しない。むしろ、それらは、流体が最初に第1の層を通って流れ、次いで第2の層を通って流れるという点で互いに対する相対的な位置を示し、媒体スタック内に先の層及び/又は中間層も存在し得る。例えば、媒体スタックは、流体流の方向に、層A、次いで第1の層、層B、層C、次いで第2の層、及び層Dを含むことができる。同様に、第3の官能化不織布層などの他の特定された数値の層は、同じように扱われる。
【0029】
実施例から、第1の官能化不織布層25が、40.8μm~65.0μmの第1の計算された細孔径及び150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gの第1の動的電荷容量を有し、5.0μm~40.8μm未満の第2の計算された細孔径及び300MY DCCmg/g超~650MY DCCmg/gの第2の動的電荷容量を有する第2の官能化不織布層33と組み合わされた場合に、2つの官能化不織布層を使用する荷電デプスフィルタのより良好な性能が観察された。あるいは、第1の官能化不織布層25が、55.0μm~65.0μmの第1の計算された細孔径及び150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gの第1の動的電荷容量を有し、5.0μm~55.0μm未満の第2の計算された細孔径及び300MY DCCmg/g超~650MY DCCmg/gの第2の動的電荷容量を有する第2の官能化不織布層233と組み合わされた場合に、2つの層の荷電デプスフィルタのより良好な性能をもたらし得る。
【0030】
第1の官能化不織布層25が40.8μm~65.0μmの第1の計算された細孔径及び150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gの第1の動的電荷容量を有し、20.6μm~40.8μm未満の第2の計算された細孔径及び300MY DCCmg/g超~475MY DCCmg/gの第2の動的電荷容量を有する第2の官能化不織布層33が続き、その後、5.0μm~20.6μm未満の第3の計算された細孔径及び300MY DCCmg/g超~650MY DCCmg/gの第3の動的電荷容量を有する第3の官能化不織布層35が続いた場合に、3つの官能化不織布層を使用する荷電デプスフィルタのより良好な性能が実施例から観察された。あるいは、第1の官能化不織布層25が、55.0μm~65.0μmの第1の計算された細孔径及び150MY DCCmg/g~300MY DCCmg/gの第1の動的電荷容量を有し、20.6μm~55.0μm未満の第2の計算された細孔径及び200MY DCCmg/g~475MY DCCmg/gの第2の動的電荷容量を有する第2の官能化不織布層33、それに続いて5.0μm~20.6μm未満の第3の計算された細孔径及び300MY DCCmg/g超~650MY DCCmg/gの第3の動的電荷容量を有する第3の官能化不織布層35と組み合わされた場合に、3層荷電デプスフィルタのより良好な性能をもたらし得る。
【0031】
官能化不織布の3つの層を使用する場合、第3の官能化不織布層が水透過性であるとき、より良好な性能が観察された。グラフト化の量のために細孔径が小さくなりすぎると、膜が過度に閉塞される可能性がある。実施例で使用される1つの官能化不織布媒体の水透過性境界線は、動的電荷容量MY DCCmg/g対μmでの計算された細孔径のXYグラフ上に描くことができる。水透過性線のおおよその位置は、5.0μmの計算された細孔径及び300MY DCCmg/gの動的電荷容量を有する点1を通り、20.6μmの計算された細孔径及び525MY DCCmg/gの動的電荷容量を有する点2を通って延びる。この線より上にプロットされたデータ点を有する官能化不織布は、非水透過性である傾向があり、あまり好ましくない。この線より下にプロットされたデータ点を有する官能化不織布は、水透過性である傾向があり、より好ましい。
【0032】
多くの場合、媒体スタックは、追加の官能化層、非官能化層、及び/又は膜層を含有する。細孔径及び/又は動的電荷容量が変化する前に、特定の破片サイズに対する容量を増加させるために、荷電デプスフィルタ内で同一の層が繰り返されてもよい。荷電デプスフィルタの媒体スタックは、構造に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10以上の層を有することができるが、多くの場合、25未満の層を有する。
【0033】
荷電デプスフィルタは、任意選択の膜層を含むことができる。膜層は、最後の官能化層とハウジング出口との間に配置され、カプセル背圧を増加させて濾過均一性を高めるために使用することができる。それは、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、セルロース、再生セルロース、及びポリアミド膜を含むが、これらに限定されない水透過性膜から選択することができる。
【0034】
荷電デプスフィルタは、任意選択の非官能化不織布層を含むことができる。非官能化不織布層は、任意選択の膜層とハウジング出口との間に位置し、カプセルの組み立て及び濾過中に膜の完全性を保護するために使用することができる。非官能化不織布層は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、及びポリエチレンテレフタレート材料が挙げられるが、これらに限定されない不織布材料から選択することができる。
【0035】
図1に示すように、媒体スタックの好ましい構造は6つの層を含む。グラフト化後の第1の官能化不織布層25は、18.9μmの有効繊維直径、272.7g/mの坪量、13.5%のソリディティ、及び45.6μmの第1の計算された細孔径、並びに291.7mg/gの第1の動的電荷容量MY DCCを有する。第1の官能化不織布層には、同一の特性を有する繰り返された第1の官能化不織布層31が続き、すなわち、荷電デプスフィルタには第1の官能化不織布の2つの層が存在する。繰り返された第1の官能化不織布層31には、第2の官能化不織布層33が続く。グラフト化後の第2の官能化不織布層33は、12.1μmの有効繊維直径、356.6g/mの坪量、16.3%のソリディティ、及び25.5μmの第2の計算された細孔径、並びに365.3mg/gの第2の動的電荷容量MY DCCを有する。第2の官能化不織布層33には、第3の官能化不織布層35が続く。グラフト化後の第3の官能化不織布層35は、9.1μmの有効繊維直径、355.8g/mの坪量、17.8%のソリディティ、及び17.9μmの第3の計算された細孔径、並びに407.4mg/gの第3の動的電荷容量MY DCCを有する。第3の官能化不織布層35には、膜層37が続く。膜層は0.2μmのPES膜である。膜層37には、非官能化不織布層39が続く。非官能化不織布層39は、ポリプロピレンスパンボンド層である。
【0036】
ここで図6A~6Jを参照すると、3.2%のPCVを用いてCHO細胞培養物を清澄化した後に、6層構造における様々な層の顕微鏡写真を観察することができる。見られるように、細胞、破片、及び/又はDNAは、官能化不織布層の荷電繊維に付着し、繊維の外表面上で丸いボールのように見える。後続の各層の計算された細孔径及び動的電荷容量の両方は、官能化不織布層又は膜層の表面を詰まらせたり固まらせたりしないように制御される一方で、荷電デプスフィルタ内の各層が、官能化グラフト化繊維に付着した破片を有する層の上面及び底面の両方によって証明されるように、適切なサイズの破片を除去することを依然として確実にする。この構造は、良好なスループット及び破片の除去を保証する。
【0037】
ここで図4を参照すると、「粗過ぎる」荷電デプスフィルタの媒体スタック内の一連の層が示されている。見られるように、細胞培養物清澄化後の、より大きい細孔の官能化不織布、FNW-B、及び膜の切断された荷電デプスフィルタの媒体スタックの画像が提示されている。細胞培養物は、4つ全ての官能化不織布層(ディスクの染色された部分)を容易に貫通し、膜層の表面を細胞及び細胞破片の残留物で覆う。この媒体スタックは、あまりにも多くの破片が膜層(最も右側の円形ディスク)を汚染してスループットを著しく低下させたので、うまく機能しなかった。
【0038】
ここで図5を参照すると、「詰まり過ぎた」荷電デプスフィルタの媒体スタック内の一連の層が示されている。見られるように、細胞培養清澄化後の、より小さい細孔の官能化不織布、FNW-F、及び膜の解離された荷電デプスフィルタの媒体スタックの画像が提示される。細胞培養物は、上部の官能化不織布層(ディスクの染色部分)を汚染し、全ての官能化不織布層を貫通することができない(左からディスク3及び4上に染色がないことに限定される)。第3及び第4の層は利用されず、膜層の表面(最も右側の円形ディスク)は、細胞及び細胞破片のいかなる残留物もなく清浄である。この媒体スタックは、あまりに多くの破片が最初の官能化不織布層を汚染してスループットを著しく低下させたので、うまく機能しなかった。
【0039】
細胞清澄化の一段階法
生物薬剤製造において、清澄化は、更なる下流精製工程の前に、細胞、細胞破片、及び/又はコロイド粒子を除去することによって、採取された細胞培養物供給原料から、モノクローナル抗体(mAb)、ウイルス粒子、又は他の治療用ベクターなどの目的の標的生体分子を分離及び回収することを目的とする最初の処理工程である。哺乳動物細胞培養物(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓293(HEK-293)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK21)細胞、NS0ネズミ骨髄腫細胞、又はPER.C6(登録商標)ヒト細胞)では、除去される必要がある不溶性汚染物質のサイズ範囲は、全細胞については10ミクロンを超え、細胞破片については約1ミクロン~9ミクロンであり、コロイド破片については1ミクロン未満である。目的の他の標的分子は、昆虫細胞株及び細菌細胞株によって産生され得、本発明の荷電デプスフィルタは、これらの供給原料を清澄化するためにも使用され得る。
【0040】
清澄化のための現行のプロセス技術としては、遠心分離、深層濾過、精密濾過(例えば、接線流濾過)、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。広範囲の汚染物質のサイズに起因して、濾過による清澄化のための既存の方法は、第1の段階で大きなサイズの粒子を除去し、続いて第2又は第3の段階でより小さな粒子を除去することによって、2段階又は3段階で達成される。濾過によって細胞培養物から生物学的治療薬を首尾よく清澄化するためのこれらのプロセス又は濾過段階の最適化は、治療用生成物の特性(例えば、等電点)及び細胞培養物の特性(例えば、細胞密度、生存率、粒径分布)に依存する。
【0041】
細胞培地、細胞工学、及びバイオリアクター設計における最近の進歩は、細胞密度(例えば、灌流ベースのシステムにおいて1億細胞/mL超、又は約20%超の血中血球容積)及びmAb力価(例えば、10g/L超)の両方における有意な増加をもたらした。細胞密度のこの有意な増加は、清澄化プロセスに難題をもたらし、遠心分離及び/又は従来の深層濾過プロセスを使用する場合、より低い収率及びスループットをもたらす。
【0042】
本発明の荷電デプスフィルタを使用する濾過による清澄化は、従来のデプスフィルタによって使用される従来のサイズに基づく排除アプローチとは異なる機構を提供する。本発明の荷電デプスフィルタにおいて、全細胞及び細胞破片汚染物質は、電荷に基づく分離及びサイズ排除の両方によって除去される。充填樹脂カラムクロマトグラフィー及び膜クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー分離技術は、それらの小さな多孔性マトリックス及び操作可能なデバイス設計に基づいて、このタイプの用途のためには設計されていない。本発明で提示され、図6A~6JのSEM画像に示される、官能化不織布を使用した細胞及び破片の電荷ベースの除去は、官能化不織布マトリックス内の高い空隙体積に起因して拡散制限されない。細胞培養液中の負に帯電した可溶性及び不溶性汚染物質(例えば、細胞、破片、DNA、及び宿主細胞タンパク質)は、官能化不織布の正に帯電した表面との静電相互作用によって除去され、1段階の繊維クロマトグラフィープロセスをもたらす。
【0043】
本開示で説明される荷電デプスフィルタは、有効細孔径及び動的電荷の両方に基づく勾配構造を有するように設計される。フィルタは、2%~12%の血中血球容積PCV(1000万細胞/mL~6000万細胞/mL)、より好ましくは3%~11%のPCV(1500万細胞/mL~5500万細胞/mL)、又はより好ましくは3%~9%のPCV(1500万細胞/mL~4500万細胞/mL)の高細胞密度培養物を1段階のプロセスで清澄化することができる。このプロセスの間、スループットは、30L/m(リットル/メートル~200L/m(リットル/メートル)であり得る。流量としては、50LMH(リットル/メートル/時間)~600LMH(リットル/メートル/時間)、より好ましくは75LMH~400LMH、又はより好ましくは100LMH~250LMHが挙げられる。高細胞密度培養のための増強されたスループット能力は、従来のデプスフィルタプロセスと比較して製造フットプリントを低減する。
【0044】
全細胞及び細胞破片を含む高密度細胞培養物は、典型的には、1,000ネフェロメ濁度単位(NTU)~10,000ネフェロメ濁度単位(NTU)の範囲の濁度を有する。記載された荷電デプスフィルタを使用する一段階清澄化プロセスは、高密度細胞培養物の濁度を50NTU以下、20NTU以下、15NTU以下、又は10NTU以下まで低下させることができる。
【0045】
本発明の荷電デプスフィルタは、好ましくは水透過性であるように設計され、水のみがプレコンディショニング洗浄に必要とされる。プレコンディショニングのために水を使用することは、コストを削減し、操作を容易にする。
【0046】
本発明の荷電デプスフィルタによる一段階清澄化プロセスの利点としては、限定されるものではないが、生成物収率の増加、製造フットプリントの減少、一貫して低い濁度を有する清澄化流体、及びユーザーフレンドリーな操作が挙げられる。組み合わされたこれらの利点は、治療薬製造のための好ましいプロセス経済性をもたらす。
【0047】
非官能化及び官能化不織布パラメータ
非官能化不織布及び官能化不織布(例えば、コポリマーグラフト化不織布)の対象となる特性としては、坪量、有効繊維直径(EFD)、ソリディティ、及び細孔径が挙げられる。それらは、官能化前又は官能化後の不織布について決定することができる。
【0048】
非官能化不織布基材の繊維は、典型的には、約3マイクロメートル~20マイクロメートルの有効繊維直径を有する。非官能化基材は、好ましくは約10g/m~400g/m、より好ましくは約80g/m~250g/mの範囲の坪量を有する。非官能化基材の平均厚さは、好ましくは約0.1mm~10mmであり、より好ましくは約0.25mm~5mmである。
【0049】
官能化不織布又は非官能化不織布の嵩高性は、ウェブの体積中の固体分率を規定するパラメータであるソリディティによって測定される。ソリディティ値がより低いほど、ウェブの嵩高性がより大きいことを示す。ソリディティは、典型的にはαで表される無単位の分数である。
【数1】
坪量mは、表面積当たりの質量(官能化又は非官能化)であり、ρは、繊維密度(官能化又は非官能化)である。L不織布は、不織布の厚さ(官能化又は非官能化)である。ソリディティは、官能化前又は官能化後に不織布について決定することができる。
【0050】
官能化後のコポリマーグラフト化繊維の繊維密度(ρ)は、以下に記載される実施例における方法Aによって決定される。官能化後のコポリマーグラフト化繊維の繊維密度は、基材とコポリマー成分のモル比が全て固体炭素-13NMR測定から得られ、モル比が重量比に変換される方法Aの修正版によっても決定することができる。不織布基材が2種類以上の繊維の混合物を含む場合、同一のL不織布を用いて繊維のそれぞれの種類について個々のソリディティを求め、これらの個々のソリディティを合計してウェブのソリディティαを得る。
【0051】
有効繊維直径(EFD)は、1気圧及び室温での空気が5.3cm/秒の面速度で既知の厚さのウェブ試料を通過し、対応する圧力低下が測定される、空気透過試験によって決定される不織布繊維ウェブ内の繊維の見かけの直径を意味する。測定された圧力低下に基づいて、有効繊維直径は、C.N.,”The Separation of Airborne Dust and Particles”,Institution of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952に記載されているように計算される。EFDは、官能化前又は官能化後に不織布について決定することができる。
【0052】
計算された細孔径は、算術平均繊維直径及びウェブソリディティに関連し、以下の式によって決定される:式中、Dは計算された細孔径であり、dは算術平均繊維直径であり、αはウェブソリディティである。
【数2】
【0053】
計算された細孔径は、官能化前又は官能化後に不織布について決定することができる。不織布基材は、官能化前に、1マイクロメートル~50マイクロメートルの計算された細孔径を有することが好ましい。
【0054】
官能化不織布基材の動的電荷容量(DCC)は、実施例の方法Bを使用してメタニルイエローチャレンジ溶液を使用して決定され、MY DCC(メタニルイエロー動的電荷容量)として報告される。
【0055】
不織布ベースウェブ
不織布基材は不織布ウェブであり、不織布ウェブの製造のための周知のプロセスのいずれかにより生産された不織布ウェブを含み得る。本明細書で用いる場合、用語「不織布ウェブ」は、不規則にかつ/又は一方向に、マット状に組み込まれた個々の繊維又はフィラメントの構造を有する布地を指す。例えば、繊維不織布ウェブは、カード、エアレイド、ウェットレイド、スパンレース、スパンボンド、電界紡糸、又はメルトスパン若しくはメルトブロー等のメルトブロー法、又はこれらの組み合わせによって作製することができる。スパンボンド繊維は、典型的には、押し出される繊維の直径を持つ、複数の微細で通常は円形の紡糸口金のキャピラリーから、溶融した熱可塑性ポリマーをフィラメントとして押し出し、急激に縮小させることにより形成された小径繊維である。メルトブロー繊維は、典型的に、溶融した熱可塑性材料を、複数の微細で通常は円形のダイキャピラリーを通じて、溶融糸又はフィラメントとして、高速で通常は加熱されたガス(例えば空気)流の中へ押し出すことにより形成され、このガス流により溶融熱可塑性材料のフィラメントが細くなり、それらの直径が減少する。その後、メルトブロー繊維は高速ガス流によって運ばれ、収集表面に堆積し、不規則に分布したメルトブロー繊維のウェブを形成する。任意の不織布ウェブが、単一の種類の繊維から、又は、熱可塑性ポリマーの種類及び/若しくは厚さが異なる2つ以上の繊維から作製され得る。
【0056】
不織布ウェブを作製するために好適なポリオレフィンとしては、これらに限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、エチレンとプロピレンとのコポリマー、アルファオレフィンコポリマー(例えば、エチレン又はプロピレンと、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンとのコポリマー)、ポリ(エチレン-コ-1-ブテン)、ポリ(1-メチルペンテン)及びポリ(エチレン-コ-1-ブテン-コ-1-ヘキセン)が挙げられる。好ましくは、不織布基材はポリプロピレンである。
【0057】
本発明の不織布ウェブの製造方法の更なる詳細は、Wente,Superfine Thermoplastic Fibers,48 INDUS.ENG.CHEM.1342(1956)、又はWente et al.Manufacture of Superfine Organic Fibers,(Naval Research Laboratories Reort No.4364,1954)で見出すことができる。不織布基材を調製する有用な方法は、米国再発行特許第39,399号(Allen)、米国特許第3,849,241号(Butin et.al.)、米国特許第7,374,416号(Cook et.al.)、米国特許第4,936,934号(Buehning)、及び米国特許第6、230,776号(Choi)に記載されている。
【0058】
官能化不織布層
官能化不織布層は、上述の不織布基材と、少なくとも1つが陽イオン性であるか、又は適切なpHの溶液中で陽イオン性にすることができる(「陽イオン的にイオン化可能」)インターポリマー化モノマー単位を含むグラフト化コポリマーと、を含む。好適な官能化不織布ウェブは、2017年11月21日に発行された「Nonwoven Article Grafted with Copolymer」と題する米国特許第9,821,276号に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
陽イオン性又は陽イオン的にイオン化可能なモノマーは、第四級アンモニウム含有モノマー及び第三級アミン含有モノマーを含むことができる。1つ又は2つ以上の陽イオン性又は陽イオン的にイオン化可能なモノマーを使用することができる。モノマーは、典型的には、重合性官能基並びに陽イオン性又は陽イオン的にイオン化可能基を含有する。ある特定のモノマーでは、重合性基及び陽イオン性基は、同じ基であってもよい。重合性基としては、ビニル、ビニルエーテル、(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルアミド、アリル、環状不飽和モノマー、多官能性モノマー、ビニルエステル、及び他の容易に重合性の官能基が挙げられる。
【0060】
有用な(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチルアミノエチルメタクリレート、トリメチルアミノエチルアクリレート、トリエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチルアミノエチルアクリレート、トリメチルアミノプロピルメタクリレート、トリメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルブチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルブチルアミノプロピルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、及び3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートが挙げられる。
【0061】
例示的な(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、3-(トリメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド、3-(トリエチルアミノ)プロピルメタクリルアミド、3-(エチルジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド、及びn-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドが挙げられる。これらの(メタ)アルリロイルモノマーの好ましい第四級塩としては、これらに限定されないが、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩、例えば、3-メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド及び3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)及び(メタ)アクリルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、2-アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2-メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、及び2-アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート)が挙げられる。
【0062】
グラフト化コポリマーは、陽イオン性又は陽イオン的にイオン化可能なモノマーと共重合することができる任意選択のモノマー単位を更に含む。特定の条件下でこれらのモノマーをイオン化することが可能であり得るが、これらは典型的には荷電しておらず、中性である(「中性モノマー」)。これらの中性モノマーは、グラフト重合時に使用するための重合性基を有する。この重合性基は、陽イオン性又は陽イオン的にイオン化可能なモノマー上の重合性基と同じであっても、又は異なっていてもよい。1つ又は2つ以上の中性モノマーが存在してもよい。
【0063】
中性モノマーは、重合性基に加えて、官能基又は2つ以上の官能基を有してもよい。2つ以上の官能基を有する中性モノマーの場合、これらの官能基は同じであっても、又は異なっていてもよい。いくつかの官能基は、中性モノマーが水中に溶解又は分散することを可能にし得る。いくつかの官能基は、重合後に親水性であってもよい。有用な官能基としては、ヒドロキシル、アルキル、アリール、エーテル、エステル、エポキシ、アミド、イソシアネート、又は環状官能基が挙げられる。中性モノマーは、重合基と官能基との間にスペーサー基を含有してもよい。中性モノマーは、オリゴマー又はポリマー官能基を含有してもよい。いくつかの実施形態では、重合基及び官能基は、同じ基であってもよい。
【0064】
エポキシ含有中性モノマーの例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、チオグリシジル(メタ)アクリレート、3-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル(メタ)アクリレート、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシル)フェニル]-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシ-フェニル)プロパン、4-(2,3-エポキシプロポキシル)シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ヒドロキシル含有モノマーの例としては、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なアミドモノマーの例としては、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド、モノ-又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なエーテルモノマーの例としては、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、N-3-メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、他のアルキルエーテル(メタ)アクリレート及びアルキルエーテル(メタ)アクリルアミド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
官能化不織布層を調製するプロセスは、不織布基材を提供する工程と、不活性雰囲気中で不織布基材を電離放射線に曝露する工程と、その後、曝露された基材を、グラフトモノマーを含む溶液又は懸濁液と接触させて、当該モノマーを不織布基材にグラフト重合させる工程と、を含む。
【0066】
第1の工程では、不織布基材は不活性雰囲気中で電離放射線に曝露される。電離放射線の例示的な形態としては、電子ビーム(e-ビーム)、ガンマ線、X線、及び他の形態の電磁放射線が挙げられる。不活性雰囲気は、一般に、最小量の酸素を含む窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスである。電離放射線源によって送達される線量は、単回線量で起こり得るか、又は所望のレベルまで蓄積する複数回線量であり得る。不織布基材の1つ以上の層は、電離放射線に供されてもよい。
【0067】
照射工程の後、照射された不織布基材は、水性モノマー溶液又は水性モノマー懸濁液と接触させられる。「接触させる」とは、照射された不織布基材をモノマー溶液又はモノマー懸濁液と接触させることを意味する。それはまた、照射された不織布基材が、モノマー溶液で飽和され、吸収され、又はコーティングされていると記述することもできる。モノマー溶液は、不織布基材の空隙体積を部分的にのみ充填してもよく、又は空隙体積を完全に充填するのに必要な量よりもはるかに多くの溶液を不織布基材に接触させることができる。モノマー接触工程もまた、不活性雰囲気中で行われる。この雰囲気は、基板が照射されるチャンバ内の雰囲気と同じであっても、又は異なっていてもよい。チャンバは、基板が照射されるチャンバと同じであっても、は異なっていてもよい。モノマー溶液は、モノマー溶液中のモノマーの一部、大部分、又は実質的に全てとグラフト重合するのに十分な時間に、不織布基材と接触したままである。不織布基材を所望の時間接触させたら、グラフト化ポリマーを担持する不織布基材を不活性雰囲気から取り出してもよい。
【実施例
【0068】
【表1】

グラフト化溶液
グラフト化溶液Aを、脱イオン水中に24.4重量%のNVP、8.8重量%のGMA、及び19.4重量%のMAPTACを含有するモノマー溶液として調製した。
【0069】
グラフト化溶液Bを、脱イオン水中に18.3重量%のNVP、6.6重量%のGMA、及び14.6重量%のMAPTACを含有するモノマー溶液として調製した。
【0070】
グラフト化溶液Cは、脱イオン水中に12.2重量%のNVP、4.4重量%のGMA、及び9.7重量%のMAPTACを含有するモノマー溶液として調製した。
【0071】
方法A.官能化不織布の坪量、有効繊維直径(EFD)、ソリディティ、及び細孔径の決定
官能化不織布の坪量、EFD、ソリディティ、及び細孔径の測定値を、以下の手順に従って決定した。試料ディスク(直径13.33cm)を官能化不織布シートから打ち抜き、次いで各ディスクを脱イオン水の2L浴中に15分間浸漬することによって個々にすすいだ。各すすぎ工程に新鮮な脱イオン水を使用して、すすぎ手順を更に3回繰り返した。すすいだ各ディスクを70℃のオーブンで少なくとも4時間乾燥させた。乾燥工程中、重り(約100g)を各ディスクの上に置いて縁のカールを防止した。得られた乾燥官能化不織布試料を、上述の方法及び式に従って特徴づけした(坪量、EFD、ソリディティ、細孔径)。各測定又は計算値について、結果を、3回の独立した試行(n=3)の平均値として、計算された標準偏差(SD)とともに報告した。
【0072】
ソリディティ(a)式について、繊維密度(ρ)測定値を、ポリプロピレン基材の密度(0.91g/cm)と、試験試料のポリプロピレン基材とグラフト化コポリマーとの重量比によって調整されたグラフト化コポリマーの密度(1.07g/cm)との合計として決定した(式1)。ポリプロピレン基材とコポリマーとの重量比を、グラフト化工程前の不織布の坪量を、対応する乾燥した官能化不織布の坪量と比較することによって決定した。
【0073】
グラフト化コポリマーの密度(DGCP)を、まず固体状態13C NMR(ssNMR)を使用して、グラフト化コポリマーのモノマー成分(NVP、MAPTAC、GMA)のモル%を測定し、モル%値を重量%(wt.%)値に変換することによって決定した。各モノマー成分の密度値(モノマー密度:DNVP=1.04g/cm、DMAPTAC=1.067g/cm、DGMA=1.07g/cm)を、対応する成分wt.%値で調整し(掛け合わせ)、得られた3つの調整密度値を合計した(式2)。
式1:
【数3】
式2:
【数4】
【0074】
方法B.官能化不織布のメタニルイエロー動的電荷容量(MY DCC)の決定。
官能化不織布ディスクを方法Aに従って調製した。ディスクの動的電荷容量を、チャレンジ溶液の標的分子として荷電有機染料メタニルイエローを使用して決定した。使用したチャレンジ溶液は、160mg/L(160ppm)のメタニルイエロー濃度を有していた。チャレンジ溶液は、3.2gのメタニルイエロー、93.98gの無水リン酸二ナトリウム、46.64gのリン酸一塩基性一ナトリウム、及び163.63gのNaClを20Lの脱イオン水中に溶解することによって調製した。チャレンジ溶液を調製の2日以内に使用した。必要に応じて、チャレンジ溶液を調製するために使用されるメタニルイエロー試薬の量を、チャレンジ溶液が160ppmのメタニルイエローを含有するように、試薬の純度に基づいて調整した。分析標準グレードのメタニルイエロー(≧98.0%、Sigma-Aldrich Company,St.Louis,MO製の製品番号44426)を使用して試薬純度を較正した。試験アセンブリを前調整するための緩衝溶液もまた、メタニルイエローが含まれていないことを除いて、チャレンジ溶液と同じ配合組成を有するように調製した。
【0075】
濾過試験アセンブリは、透明なポリカーボネート本体部分(内径47mm)を含み、ねじ込み式キャップが本体部分の上部に取り付けられていた。キャップは入口ポート及びベントポートを含んでいた。本体部分の底部は、ストップコックを有する出口ポートを含んでいた。圧力センサを入口ポートの上流に配置した。ポリアミド膜(0.2マイクロメートルグレード)を本体部分の底部に配置した。2つの官能化不織布ディスク(それぞれ直径47mmであり、方法Aに従って調製されたディスクから打ち抜かれた)を含有するスタックを、膜の上部のアセンブリ内に配置した。アセンブリにおいて、不織布ディスクは、2つのPTFEシールリングの間に挟まれ、各シールリングは、不織布に食い込むように内径上にナイフエッジを含んでいた。得られたサブアセンブリを、Oリングを使用して適所に固定した。ディスクスタックの前面表面積は0.00097mであった。キャップを本体部分に取り付け、PendoTech通常フロー濾過システム(PendoTech Company,Princeton,NJ)を入口ポートに接続した。455nm光フィルタ及びフロースルーセルを備えたHach Model 2100 AN濁度計(Hach Company,Loveland,CO)を出口ポートに接続し、濾液中のメタニルイエロー濃度を測定するために使用した。0.8ppm、4ppm及び8ppmの濃度を有するメタニルイエロー溶液を試験標準として調製した。電荷容量測定の終点は、メタニルイエロー溶液の5%ブレークスルー(8ppm)に設定した。流体流量は、15mL/分であった。チャレンジ溶液をポンピングする前に、プレコンディショニング緩衝液をアセンブリに約5分間流した。
【0076】
終点まで試験アセンブリを通過したチャレンジ溶液の体積(すなわち、ブレークスルー体積)を測定し、官能化不織布試料の動的電荷容量(mg/g)を式3に従って計算した。各官能化不織布について、MY DCCを、3つの独立した試行(n=3)からの平均値として計算された標準偏差(SD)とともに報告した。
式3:
【数5】
【0077】
方法C.採取細胞培養液(HCCF)-チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養物の調製
CHO細胞を、凍結細胞ストックからCOインキュベーター内の一連のフラスコ播種培養物へ懸濁液中で培養し、続いて、Waveバイオリアクター(GE Healthcare,Chicago,IL)及びpH制御と溶存酸素モニタリングを備えた50Lの使い捨て細胞バッグを使用して流加培養プロセスを行った。細胞培養培地は、Fujifilm Irvine Scientific(Santa Ana,CA)から入手した。定常期の間、典型的には12日目にCHO細胞培養物を採取した。
【0078】
血球計数器を使用して、生細胞密度及び生存率を測定した。採取細胞培養液を10%(体積/体積)トリパンブルー溶液と混合した後、使い捨て血球計数器に充填した。生存細胞及び死細胞を顕微鏡下で計数した。血中血球容積パーセンテージ(PCV%)を、PCVチューブ(製品番号Z760986、Sigma-Aldrich Company)を使用して測定し、200マイクロリットルの採取細胞培養液(HCCF)をPCVチューブに添加した。チューブを2500相対遠心力(rcf)で1分間遠心分離した。PCV%をHCCFの体積に対する固体体積によって計算した。
【0079】
方法D.採取細胞培養液(HCCF)の清澄化
フィルタハウジングカプセル(図7)を、カプセルのルアーロック入口を介してカプセルに接続されたPendoTech通常フロー濾過システム(PendoTech Company)を用いてHCCF清澄化について試験した。プラスチックフィルタカプセルは、上部ハウジングと下部ハウジングとを有し、これらは超音波溶接によって最終構造において互いに嵌合された。上部ハウジングは、ルアーロック入口ポート及びルアーロックベントを有していた。下部ハウジングは、下部ハウジングの中央に中心が置かれたルアーロック出口ポートを有していた。TYPAR 3161Lポリプロピレンスパンボンド不織布(10ミル厚、Fiberweb,Inc.,Old Hickory,TNから入手)のディスク(直径2.54cm)を下部ハウジングの底部に配置した。0.2マイクロメートルの公称細孔径を有するMICRO-PES Flat Type 2Fポリエーテルスルホン膜(3M Company,St.Paul,MNから入手)のディスク(直径2.54cm)を、不織布層の上に配置した。不織布層及び膜層は、縁部において下部ハウジングの底部内面に超音波溶接した。次いで、4つの官能化不織布層(直径2.54cmのディスク)のスタックを膜の上に配置した。ポリプロピレンスペーサリング(OD25.4mm、ID21.84mm、50ミル厚)を、第2の不織布層と第3の不織布層との間に挿入した。上部ハウジング及び下部ハウジングを互いに嵌合させ、超音波溶接して完成フィルタカプセルを形成した。超音波溶接は、下部ハウジングの外面が超音波ホーンと接触するように、嵌合アセンブリをジグ内に配置することによって達成された。Branson 20kHz超音波溶接機(Model 2000xdt,Emerson Electric Company,St.Louis,MO)、ブラックブースター、及び2.5倍のゲインを有するホーンを使用した。固定パラメータとして、空気圧80psi、降下速度10%、段階的な振幅80%~60%、50ジュールでの段階付け、溶着時間2秒、及び溶着を開始するためのトリガ力200lbfを設定した。溶接エネルギーを450ジュールで一定に保持して、一貫した圧縮レベルを用いて試料を生成した。ハウジングアセンブリを、ハウジングの長手方向軸が超音波ホーンの軸に整列するように、ホーンの下に配置した。溶着プロセスが開始されると、ホーンは、下部ハウジング上に下降して、200lbfの力に達するまでハウジング及び内部構成要素を圧縮する。完成したカプセルの全外径は約3.7cmであり、入口、出口、及びベントポートを含む全高は約4.8cmであった。ディスクスタックの前面表面積は、3.2cmであった。
【0080】
HCCFを手順全体を通して撹拌した。濾過の開始時に、ベントを開き、出口を閉じることによって、フィルタカプセルヘッドスペースを特定の流量でHCCFで充填した。カプセルのヘッドスペースをHCCFで満たした後、ベントを閉じ、出口を開いて、清澄化細胞培養液(CCCF)の収集を可能にした。清澄化プロセスの間、差圧を監視した。差圧が5psid(ポンド/平方インチ差圧)に達したら、清澄化を停止した。収集したCCCF体積及びCCCF濁度を記録した。フィルタの単位表面積当たりに収集されたCCCF体積に基づいて、スループット(L/m)を計算した。Orion AQ4500濁度計(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して、濾液の濁度をネフェロメ濁度単位(NTU)で測定した。
【0081】
方法E.AAV2供給溶液の調製
Gibco LV-MAX産生培地(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)中に懸濁されたHEK293-F細胞を、90rpm(毎分回転数)の一定速度で振盪しながら2.8Lの振盪フラスコを使用してインキュベーター内で増殖させた。インキュベーターを37℃及び8%COで維持した。細胞密度が約2×10細胞/mLに達したとき、トランスフェクションカクテルを調製し、振盪フラスコに投入した。
【0082】
トランスフェクションカクテルは、プラスミドpAAV2-RC2ベクター(部品番号VPK-422)、pHelperベクター(部品番号340202)、(Cell Biolabs,San Diego,CAから入手したプラスミド)、及びFECTOVIR(登録商標)-AAVトランスフェクション試薬(Polyplus Transfection,New York,NY)からなっていた。トランスフェクションカクテルを、最初にpHelperベクター及びpAAV2-RC2ベクターを62%対38%のモル比で添加することによって調製し、総プラスミド量を、トランスフェクションに使用される100万個のHEK細胞当たり1マイクログラムのプラスミド混合物になるように調整した。次に、カクテルを細胞培養フラスコに添加した後に5%のDMEM(体積/体積)の最終濃度が達成されるように、DMEM(ダルベッコの改変イーグル培地、Thermo Fisher Scientificから入手)をカクテルに添加した(すなわち、DMEMについての体積/体積計算値を総細胞培養体積に基づいて調整した)。DMEMの添加後、カクテルを混合し、次いで、カクテル中のプラスミド混合物1μgごとに1μlのFectoVIR-AAVトランスフェクション試薬を添加した。カクテルを穏やかに混合した後、室温で45分間インキュベートした。インキュベーション工程に続いて、完成したトランスフェクションカクテルを穏やかに混合し、次いで、細胞培養物を含有するフラスコに滴加した。トランスフェクションカクテルの添加後、細胞をインキュベーター(37℃及び8%のCO)中で72時間~96時間増殖させて、AAV2の産生を誘導した。
【0083】
血球計数器を用いて細胞生存率を測定した。採取細胞培養液を25%(体積/体積)のトリパンブルー溶液と混合し、次いで使い捨て血球計数器に充填した。生存細胞及び死細胞を顕微鏡下で計数した。トランスフェクト細胞培養物の濁度測定値を、ORION AQ4500濁度計(Thermo Fisher Scientific)を使用してネフェロメ濁度単位(NTU)で決定した。AAV2トランスフェクト細胞培養物は、6.2×10細胞/mLの細胞密度値、74%の細胞生存率、及び560NTUの濁度を有していた。
【0084】
トランスフェクト細胞培養物に、TRITON X-100洗浄剤(Promega Corporation,Madison,WIから入手)を添加して、0.1wt.%の最終洗浄剤濃度を達成し、次いで、インキュベーター(37℃、8%のCOに設定)において90rpmで2時間振盪した。溶解した試料の導電率を、5M塩化ナトリウム溶液を用いて20mS/cmに調整した。較正されたOrion Star A215 pH/Conductivity Benchtop Multiparameter Meter(Thermo Fisher Scientific)を使用して、導電率を測定した。細胞溶解後、得られたAAV2供給溶液は、8.5×1011キャプシド/mLのAAV2キャプシド含量、4230ng/mLの総DNA含量、及び165NTUの濁度を有していた。
【0085】
濾過前の供給溶液及び濾過後に得られた濾液の両方のAAV2キャプシド含量を、ProGen AAV2 Xpress ELISAキット(American Research Products,Inc.,Waltham,MAから入手)を製造業者の指示に従って使用して測定した。濾過前の供給溶液及び濾過後に得られた濾液の両方のDNA濃度を、QUANT-IT PICOGREEN dsDNAアッセイ(Thermo Fisher Scientific)を製造業者の指示に従って使用して測定した。
【0086】
官能化不織布A(FNW-A)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(16マイクロメートルの有効繊維直径(EFD)、200グラム/平方メートル(gsm)の坪量、10%のソリディティ、及び47.4マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、窒素パージしたグラフト化溶液Cでグラフト化した。不織布基材を巻き出し、300kVの電位に設定した電子ビーム(Electrocure、Energy Science,Inc,Wilmington,MA製)を通過させて、7Mradの総線量を送達した。電子ビームチャンバー内の環境を窒素でパージした。次いで、ウェブを、モノマー溶液で窒素パージした飽和工程に直接搬送した。次いで、ウェブをパージ雰囲気内で巻き取った。ウェブをパージ雰囲気中に最低60分間放置し、その後、ウェブを空気に曝した。次いで、ウェブを巻き出し、脱イオン水のタンク内に10フィート/分の速度で約8分間搬送した。タンクから出た後、真空ベルトを使用して塩水溶液(NaCl)をウェブに通すことによってウェブを複数回洗い流した。最終フラッシング工程で少量のグリセリンを塩水溶液に添加した。巻き出されたウェブは、ウェブの水分含有量が14質量%未満になるまで乾燥された。次いで、ウェブをスピンドルに巻き取った。グラフト化物品を官能化不織布A(FNW-A)とラベル付けした。FNW-Aの特性を表2に報告する。FNW-Aのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0087】
官能化不織布B(FNW-B)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(14マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、41.5マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布B(FNW-B)とラベル付けした。FNW-Bの特性を表2に報告する。FNW-Bのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0088】
官能化不織布C(FNW-C)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(12マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、35.6マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布C(FNW-C)とラベル付けした。FNW-Cの特性を表2に報告する。FNW-Cのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0089】
官能化不織布D(FNW-D)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(10マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、29.6マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布D(FNW-D)とラベル付けした。FNW-Dの特性を表2に報告する。FNW-Dのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0090】
官能化不織布E(FNW-E)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(8マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、23.7マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布E(FNW-E)とラベル付けした。FNW-Eの特性を表2に報告する。FNW-Eのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0091】
官能化不織布F(FNW-F)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(6マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、17.8マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布F(FNW-F)とラベル付けした。FNW-Fの特性を表2に報告する。FNW-Fのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0092】
官能化不織布G(FNW-G)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(4.2マイクロメートルの有効繊維直径、100gsmの坪量、8.2%のソリディティ、14.2マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、FNW-Aについて記載したのと同じ手順を用いてグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布G(FNW-G)とラベル付けした。FNW-Gの特性を表2に報告する。MY DCCを、2つのディスクの代わりに4つの官能化不織布ディスクを使用して方法Bによって決定した。官能化不織布Gのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【表2】
【0093】
官能化不織布H(FNW-H)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(14マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、41.5マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Bを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布H(FNW-H)とラベル付けした。FNW-Hの特性を表3に報告する。FNW-Hのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0094】
官能化不織布I(FNW-I)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(12マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、35.6マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Bを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。FNW-Iの特性を表3に報告する。FNW-Iのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0095】
官能化不織布J(FNW-J)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(10マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、29.6マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Bを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布J(FNW-J)とラベル付けした。FNW-Jの特性を表3に報告する。FNW-Jのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0096】
官能化不織布K(FNW-K)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(8マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、23.7マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Bを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布K(FNW-K)とラベル付けした。FNW-Kの特性を表3に報告する。FNW-Kのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0097】
官能化不織布L(FNW-L)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(6マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、17.8マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Bを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布L(FNW-L)とラベル付けした。FNW-Lの特性を表3に報告する。FNW-Lのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0098】
官能化不織布M(FNW-M)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(4.2マイクロメートルの有効繊維直径、100gsmの坪量、8.2%のソリディティ、14.2マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Bを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布M(FNW-M)とラベル付けした。FNW-Mの特性を表3に報告する。MY DCCを、2つのディスクの代わりに4つの官能化不織布ディスクを使用して方法Bによって決定した。官能化不織布Mのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【表3】
【0099】
官能化不織布N(FNW-N)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(14マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、41.5マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Aを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布N(FNW-N)とラベル付けした。FNW-Nの特性を表4に報告する。FNW-Nのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0100】
官能化不織布O(FNW-O)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(12マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、35.6マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Aを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布O(FNW-O)とラベル付けした。FNW-Oの特性を表4に報告する。FNW-Oのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0101】
官能化不織布P(FNW-P)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(10マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、29.6マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Aを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布P(FNW-P)とラベル付けした。FNW-Pの特性を表4に報告する。FNW-Pのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0102】
官能化不織布Q(FNW-Q)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(8マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、23.7マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Aを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布Q(FNW-Q)とラベル付けした。FNW-Qの特性を表4に報告する。FNW-Qのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0103】
官能化不織布R(FNW-R)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(6マイクロメートルの有効繊維直径、200gsmの坪量、10%のソリディティ、17.8マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Aを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布R(FNW-R)とラベル付けした。FNW-Rの特性を表4に報告する。FNW-Rのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【0104】
官能化不織布S(FNW-S)の調製
非官能化メルトブローポリプロピレンマイクロファイバー不織布ウェブ(4.2マイクロメートルの有効繊維直径、100gsmの坪量、8.2%のソリディティ、14.2マイクロメートルの計算平均細孔径を有する)を、グラフト化溶液Cの代わりにグラフト化溶液Aを使用したことを除いて、FNW-Aについて記載された同じ手順を使用してグラフト化した。グラフト化物品を官能化不織布S(FNW-S)とラベル付けした。FNW-Sの特性を表4に報告する。MY DCCを、2つのディスクの代わりに4つの官能化不織布ディスクを使用して方法Bによって決定した。官能化不織布Gのディスク(直径2.54cm)をウェブから打ち抜いた。
【表4】
【0105】
実施例(Ex1).
濾過カプセルを、FNW-Bの2つのディスク及びFNW-Fの2つのディスクを使用して、方法Dに記載されるように組み立てた。カプセル入口から出口へのディスクの配向は、FNW-Bの2つのディスク、続いてFNW-Fの2つのディスクであった。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養液を調製して、組み立てられたカプセル(上記)の濾過性能を評価した。採取細胞培養液(HCCF)は、3.2%の血中血球容積パーセンテージ(PCV%)、25.5%の生存率、及び1879NTUの濁度を有していた。カプセルを、200リットル/平方メートル/時間(LMH)の流量で方法D(上記)に従って試験した。差圧クロスカプセルが5psiに達するまで、得られた清澄化細胞培養液(CCCF)を収集した。スループットは44.4L/mであり、CCCF濁度は3.15NTUであった。
【0106】
実施例2(Ex2).
FNW-Bの2つのディスク及びFNW-Gの2つのディスクを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。カプセル入口から出口へのディスクの配向は、FNW-Bの2つのディスク、続いてFNW-Gの2つのディスクであった。実施例1に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは30.3L/mであり、CCCF濁度は2.98NTUであった。
【0107】
実施例3(Ex3).
FNW-Bの2つのディスク、FNW-Dの1つのディスク、及びFNW-Eの1つのディスクを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。カプセル入口から出口へのディスクの配向は、FNW-B/FNW-B/FNW-D/FNW-Eであった。実施例1に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは37.8L/mであり、CCCF濁度は3.40NTUであった。
【0108】
実施例4(Ex4).
FNW-Cの2つのディスク及びFNW-Eの2つのディスクを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。カプセル入口から出口へのディスクの配向は、FNW-Cの2つのディスク、続いてFNW-Eの2つのディスクであった。実施例1に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは53.4L/mであり、CCCF濁度は3.08NTUであった。
【0109】
実施例5(Ex5).
FNW-Cの2つのディスク、FNW-Eの1つのディスク、及びFNW-Fの1つのディスクを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。カプセル入口から出口へのディスクの配向は、FNW-C/FNW-C/FNW-E/FNW-Fであった。実施例1に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは54.4L/mであり、CCCF濁度は3.58NTUであった。
【0110】
実施例6(Ex6).
FNW-Eの3つのディスク、及びFNW-Gの1つのディスクを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。カプセル入口から出口へのディスクの配向は、FNW-E/FNW-E/FNW-E/FNW-Gであった。実施例1に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは46.6L/mであり、CCCF濁度は3.03NTUであった。
【0111】
比較例A(CExA).
FNW-Aの4つのディスクスタックを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。実施例1に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは13.4L/mであった。濁度測定のために不十分な量のCCCFを収集した。膜の汚染が観察された。
【0112】
比較例B(CExB).
FNW-Bの4つのディスクスタックを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。実施例1に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは22.2L/mであり、CCCF濁度は5.76NTUであった。膜の汚染が観察された。
【0113】
比較例C(CExC).
FNW-Fの4つのディスクスタックを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。実施例1に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは23.1L/mであり、CCCF濁度は2.79NTUであった。細胞培養材料のケーキングがフィルタスタックの上面で観察された。
【0114】
比較例D(CExD).
FNW-Gの4つのディスクスタックを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。実施例1に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは0.6L/mであった。濁度測定のために不十分な量のCCCFを収集した。細胞培養材料のケーキングがフィルタスタックの上面で観察された。
【0115】
実施例1~6(Ex1~Ex6)及び比較例A~D(CExA~CExD)についての濾過結果を表5にまとめる。Ex1~Ex6の濾過カプセルは、低いCCCF濁度を有し、比較例の濾過カプセルよりもスループットが有意に高かった。加えて、比較例の濾過カプセルは、フィルタスタックの上面上の細胞培養材料のケーキング又はフィルタスタックから下流の膜セクションの汚染のいずれかを有した。
【表5】
【0116】
実施例7(Ex7).
FNW-Bの2つのディスク、FNW-Dの1つのディスク、及びFNW-Eの1つのディスクを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。カプセル入口から出口へのディスクの配向は、FNW-B/FNW-B/FNW-D/FNW-Eであった。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養液を調製して、組み立てられたカプセルの濾過性能を評価した。採取細胞培養液(HCCF)は、8.0%の血中血球容積パーセンテージ(PCV%)、80.0%の生存率、及び2483NTUの濁度を有していた。カプセルを、200リットル/平方メートル/時間(LMH)の流量で上記の方法Dに従って試験した。差圧クロスカプセルが5psiに達するまで、得られた清澄化細胞培養液(CCCF)を収集した。スループットは59.4L/mであり、CCCF濁度は4.81NTUであった。
【0117】
実施例8(Ex8).
FNW-Cの2つのディスク、FNW-Eの1つのディスク、及びFNW-Fの1つのディスクを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。カプセル入口から出口へのディスクの配向は、FNW-C/FNW-C/FNW-E/FNW-Fであった。実施例7に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは61.6L/mであり、CCCF濁度は4.98NTUであった。
【0118】
比較例E(CExE).
FNW-Aの4つのディスクスタックを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。実施例7に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは15.3L/mであった。濁度測定のために不十分な量のCCCFを収集した。膜の汚染が観察された。
【0119】
比較例F(CExF).
FNW-Fの4つのディスクスタックを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。実施例7に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは15.3L/mであった。濁度測定のために不十分な量のCCCFを収集した。細胞培養材料のケーキングがフィルタスタックの上面で観察された。
【0120】
比較例G(CExG).
FNW-Gの4つのディスクスタックを使用して、方法Dに記載されるように濾過カプセルを組み立てた。実施例7に記載の手順及びHCCFを使用して、組み立てられたカプセルの濾過性能を決定した。スループットは0L/mであった。細胞培養材料のケーキングがフィルタスタックの上面で観察された。
【0121】
実施例7~8(Ex7~Ex8)及び比較例E~G(CExE~CExG)についての濾過結果を表6にまとめる。Ex7~Ex8の濾過カプセルは、低いCCCF濁度を有し、比較例の濾過カプセルよりもスループットが有意に高かった。加えて、比較例の濾過カプセルは、フィルタスタックの上面上の細胞培養材料のケーキング又はフィルタスタックから下流の膜セクションの汚染のいずれかを有した。
【表6】
【0122】
実施例9(Ex9).
プラスチック濾過カプセルを使用した。カプセルは、密封された円形ハウジングからなっていた。カプセルハウジングを、二等分部分(上半分及び下半分)から調製し、これらの半分は、濾過要素が下部ハウジングの内部空洞に挿入された後に、篏合され、周囲で一緒に密封された。流体入口及びベントポートはハウジングの上部に配置され、流体出口ポートはハウジングの下部に配置された。出口ポートは、下部ハウジング表面の中央に中心が置かれた。
【0123】
TYPAR 3161Lポリプロピレンスパンボンド不織布(10ミル厚、Fiberweb,Inc.,Old Hickory,TNから入手)の2つのディスク(直径27mm)を、下部ハウジングの底部に配置した。0.2マイクロメートルの公称細孔径を有するMICRO-PES Flat Type 2Fポリエーテルスルホン膜(3M Companyから入手)の単一ディスク(直径27mm)を、不織布層の上に配置した。不織布層及び膜層は、縁部において下部ハウジングの底部内面に超音波溶接した。次いで、4つの官能化不織布層(直径27mm)のスタックを膜の上に配置した。スタックは、官能化不織布Cの1つのディスク、官能化不織布Eの2つのディスク、及び官能化不織布Gの2つのディスクを含んでいた。カプセル入口から出口へのディスクの配向は、FNW-C/FNW-E/FNW-E/FNW-G/FNW-Gであった。ポリプロピレンスペーサリング(OD25.4mm、ID21.84mm、50ミル厚)を、第3の不織布層と第4の不織布層との間(すなわち、FNW-EディスクとFNW-Gディスクとの間)に挿入した。上部ハウジング及び下部ハウジングを篏合させ、Branson 20kHz超音波溶接機(Model 2000xdt,Emerson Electric Company,St.Louis,MO)を使用して超音波溶接して、完成フィルタカプセルを形成した。
【0124】
完成したカプセルの全外径は約4.3cmであり、入口、出口、及びベントポートを含む全高は約5.9cmであった。カプセルの有効濾過面積は3.2cmであり、不織布媒体の床体積は2.1mLであった。
【0125】
実施例10(Ex10).
実施例9に従って調製された完成したカプセルを、カプセルの入口ポートを通してPendoTech Normal Flow Filter Screening System(PendoTech Company,Princeton,NJ)に取り付けた。カプセルを、200LMHの一定フラックスで54L/mのスループットまでトリス酢酸緩衝液(50mM、pH7.5、伝導率4mS/cm)で洗い流し、次いで空気で洗い流して(5psidの差圧まで)媒体ディスクを乾燥させた。次に、方法Eで調製したAAV2含有細胞溶解物供給溶液を、140LMHの一定のフラックスで15psidの差圧までカプセルを通してポンプ輸送した。濾液を収集し、スループット、AAV2キャプシド含量、総DNA含量、及び濁度について分析した。合計2個のカプセルを試験した。平均スループットは249L/mであった(標準偏差=69)。AAV2キャプシド含量、総DNA含量についての結果を表7~9に提供する。
【表7】
【表8】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図7
【国際調査報告】