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  • 特表-生分解性ポリエステルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】生分解性ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/06 20060101AFI20240214BHJP
   C08G 63/87 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08G63/06
C08G63/87
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023552012
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 US2022017599
(87)【国際公開番号】W WO2022182810
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/154,014
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511046391
【氏名又は名称】ノボマー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デローザ,クリストファー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】スタウテンブルグ,エリック
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA02
4J029AB01
4J029AB04
4J029AD01
4J029EG01
4J029EG02
4J029EG03
4J029JB232
4J029JB242
4J029JB252
4J029JB262
4J029JB272
4J029JC141
4J029JC142
4J029JC161
4J029JC162
4J029JC171
4J029JC172
4J029JC231
4J029JC232
4J029JC261
4J029JC262
4J029JC281
4J029JC282
4J029JC621
4J029JC622
4J029JC631
4J029JC632
4J029KE09
(57)【要約】
双性イオンの重合開始剤を利用して3-ヒドロキシプロピオネート(ベータ-プロピオラクトン)からポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)(ポリプロピオラクトン)及び関連するコポリマーを効率的に製造する方法が開示される。別の態様において、本発明は、開始剤及びモノマーの組み合わせを含み、一緒に、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)(ポリプロピオラクトン)及び関連コポリマーの効率的製造を可能にする重合系を提供する。先に製造されたポリマー及びポリマー組成物と差別化する構造及び/又は組成の特性を有する新規のポリマー組成物が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトンのポリマーの1つ以上のポリマー鎖を含み、陰イオン及び陽イオンを有する双性イオンの残基を前記鎖の一端に有するポリマーであって、陰イオン部が前記ポリマー鎖の前記一端に共有結合している、ポリマー。
【請求項2】
前記1つ以上のポリマー鎖が、前記鎖の他端に末端封鎖剤の残基を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記末端封鎖剤が、有機ハライド、有機スルホネート、ハロアルキルシラン、アニリン誘導体、ホスフェート誘導体、及びイソフタル酸誘導体のうちの1種以上である、請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記陰イオンが酸素又は硫黄系陰イオンであり、前記陽イオンが有機オニウム陽イオンである、請求項1~3のいずれかに記載のポリマー。
【請求項5】
前記オニウム陽イオンが、窒素、リン、硫黄、アンチモン又はヒ素を含む、請求項1~4のいずれかに記載のポリマー。
【請求項6】
前記双性イオンの前記陰イオン及び前記陽イオンが、結合又は多価有機部分によって連結されている、請求項1~5のいずれかに記載のポリマー。
【請求項7】
下記式P-I又はP-II
+Z-L-X-(A)-H P-I
+Z-L-X-(A)-R P-II
(式中、
Aは、各出現において別々に、開環したベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン単位を有するポリマー鎖であり、
Zは、各出現において別々に、双性イオンから由来の陽イオンであり、
Lは、各出現において別々に、結合又は多価有機部分であり、
Xは、各出現において別々に、双性イオンから由来の陰イオンであり、
は、各出現において別々に、末端封鎖剤の残基である。)
による鎖を含む、請求項1~6のいずれかに記載のポリマー。
【請求項8】
Aが各出現において別々に、ベータ-プロピオラクトン由来の単位を含むポリマー鎖であり、
Zが各出現において別々に、有機オニウム陽イオンであり、
Lが各出現において別々に、任意選択的に置換されたC~C100脂肪族基であり、
Xが各出現において別々に、酸素又は硫黄系陰イオンであり、
が各出現において別々に、有機ハライド、有機スルホネート、ハロアルキルシラン、アニリン誘導体、ホスフェート誘導体、及びイソフタル酸誘導体のうちの1種以上である末端封鎖剤の残基である、
請求項7に記載のポリマー。
【請求項9】
Lが各出現において別々に、任意選択的に置換されたC~C40脂肪族基であり、
Zが各出現において別々に、窒素、リン、硫黄、アンチモン又はヒ素を含む有機オニウム陽イオンである、
請求項7又は8に記載のポリマー。
【請求項10】
a.1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン、及び
b.1種以上の双性イオン開始剤
を含む重合性組成物。
【請求項11】
1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトンと共重合する、1種以上のコモノマーを含む、請求項10に記載の重合性組成物。
【請求項12】
連鎖移動剤、連鎖延長剤及び末端封鎖剤のうちの1種以上を含む、請求項10又は11に記載の重合性組成物。
【請求項13】
前記1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトンと前記1種以上の双性イオン開始剤との比が、約100:1~約1000,000:1である、請求項10~12のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項14】
前記末端封鎖剤が、有機ハライド、有機スルホネート、ハロアルキルシラン、アニリン誘導体、ホスフェート誘導体、及びイソフタル酸誘導体のうちの1種以上である、請求項10~13のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項15】
前記末端封鎖剤が、添加される双性イオン開始剤の量に対して10モル当量未満の量で存在する、請求項10~14のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項16】
コモノマーが、カプロラクトン、ラクチド、エポキシド、オキセタン、環式無水物、ラクタム、エピスルフィド、アジリジン、(メタ)アクリレート、バレロラクトン、ブチロラクトン、及びグリコリドのうちの1種以上である、請求項10~15のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項17】
コモノマーが1種以上のエポキシドである、請求項10~16のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項18】
前記末端封鎖剤が、有機ハライド、有機スルホネート、ハロアルキルシラン、アニリン誘導体、ホスフェート誘導体、及びイソフタル酸誘導体のうちの1種以上である、請求項10~17のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項19】
前記双性イオンが陰イオン及び陽イオンを有し、前記陰イオンが酸素又は硫黄系陰イオンであり、前記陽イオンが有機オニウム陽イオンである、請求項10~18のいずれか一項に記載の重合性組成物。
【請求項20】
前記オニウム陽イオンが、窒素、リン、硫黄、アンチモン又はヒ素を含む、請求項10~19のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項21】
前記双性イオンの前記陰イオン及び前記陽イオンが、結合又は多価有機部分によって連結されている、請求項1~20のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項22】
開環したベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン単位を有する1つ以上のポリマー鎖を含み、陰イオン及び陽イオンを有する双性イオンの残基を鎖の一端に有し、陰イオン部が前記ポリマー鎖の一端に共有結合している1つ以上のポリマーを調製するための条件下で、1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン及びコモノマーを、1種以上の双性イオン開始剤と接触させる工程を含む、方法。
【請求項23】
前記1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトンと、前記1種以上の双性イオン開始剤との比が、約100:1~約1,000,000:1である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン及びコモノマー並びに1種以上の双性イオン開始剤が、約0℃~約120℃の温度で接触させられる、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン及びコモノマー並びに1種以上の双性イオン開始剤が、約1バール~約20バールの圧力で接触させられる、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン及びコモノマー並びに1種以上の双性イオン開始剤が、前記1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン及びコモノマーの所望の分子量を得るのに十分な時間接触させられる、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
所定の反応時間の後、又はポリマー組成物が所望の分子量に到達したときに、クエンチ剤が重合反応を停止するために添加される、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記クエンチ剤が、1種以上の鉱酸、有機酸、及び酸性樹脂若しくは酸性固体である、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
所定の反応時間の後、又はポリマー組成物が所望の分子量に到達したときに、末端封鎖剤が添加される、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記末端封鎖剤が1種以上の求電子有機化合物を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記末端封鎖剤が、有機ハライド、有機スルホネート、ハロアルキルシラン、アニリン誘導体、ホスフェート誘導体、及びイソフタル酸誘導体のうちの1種以上である、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記末端封鎖が、双性イオン開始剤の量に対して10モル当量未満の量で存在する、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年2月26日に出願された米国特許仮出願第63/154,014号の優先権を主張し、その全体をあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルポリマーは、広範囲に使用される用途の広い材料であることが分かっている。石油由来の芳香族モノマーに基づくポリエステルは最も広く利用されるポリマーの1つであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)は水筒、テキスタイル及び他の消費財を製造するために大規模に製造される。残念ながら、PETは、生物分解性ではなく、そのため、消費者使用済みプラスチック残留廃棄物によって、海洋生態系への害を含む環境汚染の増大する問題の主要な原因になっている。近年、生分解性ポリエステルにおいて関心が高まり、その例は、ポリ乳酸(PLA)及びポリ-3-ヒドロキシブチレート(PHB)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのポリマーが高いコスト及び特性を有するため、既存の大量のポリマーを置き換えるために大量生産用途に対応することは困難になっている。製造業者が製品のコストと持続可能性の側面を均衡させることを可能にする、高性能生分解性ポリエステル、及び柔軟な原料供給源からそのようなポリマーを製造する方法に対する必要性は依然存在する。本開示は、これら及び他の関連する問題に対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
優れた特性を有する高分子量生分解性ポリエステル及び生分解性ポリエステルコポリマーの調製のための、双性イオン開始剤を使用するベータ-ラクトンの重合のプロセスが開示される。以前は非常に高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート(p3HP)又は関連するコポリマーを経済的に製造することができず、それらを多くの用途に最適化するためにポリマーの組成特性及び二次構造を制御することも簡単ではなかった。双性イオン重合開始剤の利用により効率的にポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)及び関連するコポリマーを製造する方法が開示される。製造されるポリマーは、要求される商業的用途に適合させ、他の方法によって製造された公知のポリエステルと差別化する独自の性質を有することができる。開始剤、モノマー、オリゴマー、末端封鎖剤(end capping agent)、連鎖延長剤、連鎖移動剤及び架橋剤の、優れたポリマー製品の製造を可能にする独自の組み合わせを含む重合系が開示される。以前に製造されたポリマー及びポリマー組成物から差別化する構造及び/又は組成特性を有するポリマー組成物が開示される。
【0005】
ベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトンのポリマーの1つ以上のポリマー鎖を含み、陰イオン及び陽イオンを有する双性イオンの残基を鎖の一端に有するポリマーであって、陰イオン部がポリマー鎖の一端に共有結合している、ポリマーが開示される。1つ以上のポリマー鎖は、鎖の他端に末端封鎖剤の残基を有していてもよい。末端封鎖剤は、有機ハライド、有機スルホネート、ハロアルキルシラン、アニリン誘導体、ホスフェート誘導体、及びイソフタル酸誘導体のうちの1種以上であってもよい。陰イオンは酸素又は硫黄系の陰イオンであってもよく、陽イオンは有機オニウム陽イオンであってもよい。オニウム陽イオンは、窒素、リン、硫黄、アンチモン又はヒ素を含んでいてもよい。双性イオンの陰イオン及び陽イオンは、結合又は多価有機部分によって連結されていてもよい。ポリマーは、下記式P-I又はP-II
+Z-L-X-(A)-H P-I
+Z-L-X-(A)-R P-II
(式中、Aは、各出現において別々に、開環したベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン単位を有するポリマー鎖であってもよく、Zは、各出現において別々に、双性イオンから由来の陽イオンであってもよく、Lは、各出現において別々に、結合又は多価の有機部分であってもよく、Xは、各出現において別々に、双性イオンから由来の陰イオンであってもよく、Rは、各出現において別々に、末端封鎖剤の残基であってもよい。)
による鎖を含んでいてもよい。Aは、各出現において別々に、3-ヒドロキシプロピオネート及び/又は置換3-ヒドロキシプロピオネートから由来の単位を含むポリマー鎖であってもよい。Zは、各出現において別々に、有機オニウム陽イオンであってもよい。Lは、各出現において別々に、任意選択的に置換されたC-C100脂肪族基であってもよい。Xは、各出現において別々に、酸素又は硫黄系の陰イオンであってもよい。Rは、各出現において別々に、有機ハライド、有機スルホネート、ハロアルキルシラン、アニリン誘導体、ホスフェート誘導体、及びイソフタル酸誘導体のうちの1種以上であってもよい末端封鎖剤の残基であってもよく、Zは、各出現において別々に、窒素、リン、硫黄、アンチモン又はヒ素を含む有機オニウム陽イオンであってもよい。Lは、各出現において別々に、任意選択的に置換されたC~C40脂肪族基であってもよい。
【0006】
a.1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン;及びb.1種以上の双性イオン開始剤を含む重合性組成物が開示される。重合性組成物は、1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトンと共重合する、1種以上のコモノマーを含んでいてもよい。1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトンと1種以上の双性イオン開始剤との比は、約100:1から約1,000,000:1であってもよい。末端封鎖剤は、添加された双性イオン開始剤の量に対して10モル当量未満の量で存在してもよい。重合性組成物は、コモノマーがカプロラクトン、ラクチド、エポキシド、オキセタン、環式無水物、ラクタム、エピスルフィド、アジリジン、(メタ)アクリレート、バレロラクトン、ブチロラクトン、及びグリコリドのうちの1種以上を含んでいてもよい。重合性組成物は、末端封鎖剤、連鎖移動剤、クエンチ剤、連鎖延長剤、分岐剤などのうちの1種以上を含んでいてもよい。重合性組成物は、連鎖移動剤、連鎖延長剤及び末端封鎖剤のうちの1種以上を含んでいてもよい。
【0007】
開環したベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン単位を有する1つ以上のポリマー鎖を含み、陰イオン及び陽イオンを有する双性イオンの残基を鎖の一端に有し、陰イオン部がポリマー鎖の一端に共有結合している1つ以上のポリマーを調製するための条件下で、1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン及びコモノマーを、1種以上の双性イオン開始剤と接触させる工程を含む、方法が開示される。1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン及びコモノマー並びに1種以上の双性イオン開始剤は、約0℃~約120℃の温度で接触させられてもよい。1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン及びコモノマー並びに1種以上の双性イオン開始剤は、約1バール~約20バールの圧力で接触させられてもよい。1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン及びコモノマー並びに1種以上の双性イオン開始剤は、1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は置換ベータ-プロピオラクトン及びコモノマーの所望の分子量に到着するのに十分な時間接触させられる。クエンチ剤は、1種以上の鉱酸、有機酸、酸性の樹脂又は固体及び末端封鎖剤であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】様々なM:I比におけるベタイン及びラウリルベタインからのモル質量の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
特定の官能基及び化学用語の定義は以下により詳細に記載される。本発明の目的に合わせて、化学元素は、元素周期表、CAS版、「Handbook of Chemistry and Physics」75版内表紙に従って特定され、特定の官能基は、一般にそこに記載されるように定義される。さらに、有機化学の一般原理、並びに特定の官能性部分及び反応性は、「Organic Chemistry」,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito,1999年;Smith and March「March’s Advanced Organic Chemistry」5版、John Wiley & Sons, Inc.,New York,2001年;Larock「Comprehensive Organic Transformations」VCH Publishers,Inc.,New York,1989年;Carruthers、「Some Modern Methods of Organic Synthesis」3版、Cambridge University Press,Cambridge,1987年に記載され、その各々の全内容を参照により本明細書に組み込む。
【0010】
開示されるあるポリマーは、1つ以上の不斉中心を含むことができ、したがって様々な立体異性形態、例えば、エナンチオマー及び/又はジアステレオマーで存在することができる。ポリマー及びその組成物は、個々のエナンチオマー、ジアステレオマー若しくは幾何異性体の形態であってもよく、又は立体異性体の混合物の形態であってもよい。開示されるポリマーはエナンチオピュアな化合物であってもよい。エナンチオマー又はジアステレオマーの混合物が開示される。
【0011】
開示されるあるポリマーは、複数の部位での反応によって結び付ける能力のあるモノマーを含み、したがって、結果として得られたポリマー鎖において位置異性の可能性を生み出すことがある。開示されるあるポリマーは、異なる位置異性形態で存在することができる。本明細書において記載のあるポリマー及びそれらの組成物は、位置規則的であってもよく、又は位置不規則度を含んでもよく、又はさらに実質上位置ランダムであってもよい。開示されるポリマーは、実質上位置規則的であってもよい。開示されるポリマーは、1種以上の結晶性多形体を含んでもよく、したがって様々な結晶性形態で存在することができる。ポリマー及びその組成物は、β結晶性多形体、γ結晶性多形体若しくはδ結晶性多形体の形態であってもよく、又は、結晶性多形体の混合物の形態をしていてもよい。本明細書において記載される場合、あるポリマーは、特に断らなければ、Z又はE異性体のいずれかとして存在することができる1つ以上の二重結合を有していてもよい。他の異性体を実質上含まない個々の異性体として、代替として、様々な異性体の混合物、例えばエナンチオマーのラセミ混合物としてのポリマーが開示される。前述のポリマーは、それ自体、1種以上のポリマーを含む組成物を包含してもよい。本明細書において使用される場合、用語「異性体」は、幾何異性体、立体異性体及び位置異性体をすべて含む。例えば、「異性体」は、シス異性体及びトランス異性体、E-及びZ-異性体、R-及びS-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、それらのラセミ混合物、及びそれらの他の混合物を含む。例えば、一部の実施形態において、1種以上の対応する立体異性体を実質上含まない立体異性体が提供され、また「立体化学的に富む」と称されてもよい。
【0012】
本明細書において使用される用語「ベータ-ラクトン」は、酸素原子、カルボニル基及び任意選択的に置換された2つのメチレン基を含む四員環を有する、置換又は非置換の環式エステルを指す。非置換の場合、ベータ-ラクトンはプロピオラクトンと称される。置換ベータ-ラクトンは、一置換、二置換、三置換及び四置換ベータ-ラクトンを含む。ベータ-ラクトンは単一ラクトン部分を含む。ベータ-ラクトンは、2つ以上の四員環エステル部分を含んでいてもよい。
【0013】
本明細書において使用される用語「エポキシド」は、置換又は非置換のオキシランを指す。そのような置換オキシランは、一置換オキシラン、二置換オキシラン、三置換オキシラン及び四置換オキシランを含む。エポキシドは単一オキシラン部分を含む。エポキシドは2つ以上のオキシラン部分を含む。
【0014】
本明細書において使用される用語「ポリマー」は、相対的に高分子量の分子を指し、その構造は、実際に又は概念的に、相対的に低分子量の分子から由来の単位の多数の繰り返しを含む。ポリマーはベータ-ラクトンモノマーで構成されてもよい(例えば、ポリプロピオラクトン)。開示されるポリマーは、2種以上の異なるモノマーを組み込むコポリマー、ターポリマー、ヘテロポリマー、ブロックコポリマー又は先細りのヘテロポリマーであってもよい。そのような高分子の構造描写に関して、スラッシュによって分離された異なるモノマー単位又はポリマーブロックの結び付きを示す慣例が、本明細書において使用されてもよい。例えば、構造:
【0015】
【化1】
を、ベータ-プロピオラクトン及びベータ-ブチロラクトンのコポリマーを表わすために使用することができる。そのような構造は、別段の定めがない限り、描かれた異なるモノマー単位の任意の比を組み込むコポリマーを包含すると解釈されることになっている。本発明の描写もまた、別段の定めがない限り、ランダム、先細り、ブロックコポリマー、及び暗示されるこれらすべての任意の2つ以上の組み合わせを表わすことを意図する。
【0016】
本明細書において使用される用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(臭素、-Br)及びヨウ素(ヨード、-I)から選択される原子を指す。本明細書において使用される用語「脂肪族基」又は「脂肪族基」は、直鎖(すなわち非分岐)、分岐又は環式(縮合、橋架け及びスピロ縮合多環式を含む)であってもよく、完全に飽和していてもよく、又は芳香族でないが1つ以上の不飽和単位を含んでいてもよい炭化水素部分を示す。脂肪族基は、1~40炭素原子、1~20炭素原子、2~20炭素原子、1~12炭素原子、1~8炭素原子、1~6炭素原子、1~5炭素原子、1~4炭素原子、1~3炭素原子、又は1つ若しくは2つの炭素原子を含んでいてもよい。例示の脂肪族基は、以下に限定されないが、直鎖又は分岐のアルキル、アルケニル及びアルキニル基、及びそれらの混成体、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル又は(シクロアルキル)アルケニルを含む。本明細書において使用される用語「ヘテロ脂肪族」は、1つ以上の炭素原子が、酸素、硫黄、窒素又はリンからなる群から選択される1つ以上の原子と独立して置き換えられる脂肪族基を指す。1~6炭素原子は、独立して、酸素、硫黄、窒素又はリンの1つ以上と置き換えられてもよい。ヘテロ脂肪族基は、置換又は非置換、分岐又は非分岐、環式又は非環式であってもよく、飽和、不飽和又は部分的に不飽和の基を含んでいてもよい。本明細書において使用される用語「不飽和」は、部分が1つ以上の二重又は三重結合を有することを意味する。単独で又はより大きい部分の一部として使用される用語「脂環式」、「炭素環」又は「炭素環式」は、本明細書において記載されるように、3~12員を有する、飽和又は部分的不飽和の環式脂肪族単環式又は多環式の環系を指し、脂肪族環系は、以下に定義され本明細書において記載されるように任意選択的に置換される。脂環式基は、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、ノルボルニル、アダマンチル及びシクロオクタジエニルを含む。脂環式基は3~6炭素を有していてもよい。用語「脂環式」、「炭素環」又は「炭素環式」はまた1つ以上の芳香族環又は非芳香族環に縮合した脂肪族環、例えば、デカヒドロナフチル又はテトラヒドロナフチルを含み、結合の基又は場所は脂肪族環にある。
【0017】
本明細書において使用される用語「アルケニル」は、単一水素原子の除去によって少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、直鎖又は分岐鎖脂肪族部分から由来の一価の基を示す。本明細書において使用される用語「アルキニル」は、単一水素原子の除去によって少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する、直鎖又は分岐鎖脂肪族部分から由来の一価の基を指す。本明細書において使用される用語「アルコキシ」は、先に定義されたように、酸素原子によって親分子に結合したアルキル基を指す。アルコキシの例は、以下に限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、ネオペントキシ及びn-ヘキソキシを含む。本明細書において使用される用語「アシル」は、カルボニル含有官能基、例えば-C(=O)R[式中、Rは、水素であり、若しくは任意選択的に置換された脂肪族、ヘテロ脂肪族、ヘテロ環、アリール、ヘテロアリール基であり、又は、置換された(例えば水素又は脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール若しくはヘテロアリール部分で)酸素若しくは窒素含有官能基(例えばカルボン酸、エステル又はアミド官能基を形成する)である。]を指す。本明細書において使用される用語「アシルオキシ」は、酸素原子によって親分子に結合したアシル基を指す。単独で使用される、又は「アラルキル」、「アラルコキシ」若しくは「アリールオキシアルキル」中のような大きい部分の一部として使用される用語「アリール」は、合計五~二十環員を有する単環式及び多環式環系を指し、系中の少なくとも1つの環は芳香族であり、系中の各環は三~十二環員を含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」と交換可能に使用されてもよく、「アリール」は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどを含むがこれらに限定されず、1つ以上の置換基を有していてもよい芳香族環系を指す。また、本明細書において使用される用語「アリール」の範囲内に含まれるものは、芳香環が、1つ以上の追加の環、例えば、ベンゾフラニル、インダニル、フタリミジル、ナフチミジル、フェナントリジニル(phenantriidinyl)、又はテトラヒドロナフチルなどに縮合した基であり、結合の基又は場所はアリール環にある。単独で、又は例えば、「ヘテロアラルキル」若しくは「ヘテロアラルコキシ」のより大きい部分の一部として使用される用語「ヘテロアリール(heteroaryl)」及び「ヘテロアリール(heteroar-)」は、環式配列に6、10又は14π電子を共有し;5~14環原子、好ましくは5、6又は9つの環原子を有し;炭素原子に加えて、1~5つのヘテロ原子を有する基を指す。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」及び「ヘテロアリール基」と交換可能に使用されてもよく、その用語のいずれも任意選択的に置換された環を含む。用語「ヘテロ原子」は、窒素、酸素又は硫黄を指し、窒素又は硫黄の任意の酸化形、及び塩基性窒素の任意の四級化形態を含む。ヘテロアリール基は、これらに限定されないが、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、ベンゾフラニル及びプテリジニルを含む。本明細書において使用される用語「ヘテロアリール(heteroaryl)」及び「ヘテロアリール(heteroar-)」はまた、ヘテロアリール環が、1つ以上のアリール、脂環式又はヘテロシクリル環に縮合した基を含み、結合の基又は場所がヘテロアリール環にある。非限定的な例は、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、及びピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンを含む。ヘテロアリール基は単環又は二環であってもよい。用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリールによって置換されたアルキル基を指し、アルキル及びヘテロアリールの部分は独立して任意選択的に置換されている。ある実施形態において、用語「五員~十員ヘテロアリール」は、窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3ヘテロ原子を有する五員~六員ヘテロアリール環、又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される1~4ヘテロ原子を有する八員~十員の二環式ヘテロアリール環を指す。用語「部分的不飽和」とは、少なくとも1つの二重又は三重結合を含む環部分を指す。用語「部分的不飽和」とは、複数の不飽和部位を有する環を包含するように意図されるが、しかし、本明細書において定義されるアリール又はヘテロアリール部分を含むようには意図されない。
【0018】
開示される化合物は「任意選択的に置換された」部分を含んでいてもよい。用語「任意選択的に」が先行しても先行しないとしても、用語「置換」は、指定部分の1つ以上の水素が適切な置換基と置き換えられていることを意味する。特に断らなければ、「任意選択的に置換された」基は、基の各置換可能な位置で適切な置換基を有していてもよく、所与の構造中に複数の位置がある場合、特定の基から選択される複数の置換基で置換されていてもよく、置換基はすべての位置で同一であっても又は異なっていてもよい。構想される置換基の組み合わせは、安定な、又は化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。本明細書において使用される用語「安定な」は、それらの製造、検出、ある実施形態において、それらの回収、精製、及び、本明細書において開示される1つ以上の目的のための使用を可能にする条件にかけたとき、実質上変わらない化合物を指す。本明細書において使用される場合、用語「アルコキシ化」とは、分子の1つ以上の官能基(通常、官能基はアルコール、アミン又はカルボン酸であるが、決してこれらに限定されない)が、分子にヒドロキシ末端アルキル鎖を付加したことを意味する。アルコキシ化化合物は単一アルキル基を含んでいてもよく、又は、それらはヒドロキシル末端ポリエーテルなどのオリゴマー部分であってもよい。別段の定めがない限り、「a」、「an」、「the」及び「少なくとも1つ」は、交換可能に使用され、1つ又は1つ以上を意味する。
【0019】
方法
ベータ-プロピオラクトン(BPL)及び/又は置換ベータ-プロピオラクトンを、任意選択的に1つ以上の追加のコモノマー(総体としてモノマー)と組み合わせて、双性イオン重合開始剤を使用して重合する方法が開示される。開始剤は、最終のポリマー製品中に共有結合されていても結合されていなくてもよい。
【0020】
供給比及びポリマー特性
方法は、モノマーを双性イオン開始剤と接触させる工程を含み、ここで、所望の分子量のポリマーを調製するために、モノマーと開始剤のモル比が選択され、例えば、モル比は、10:1以上、100:1以上、1,000:1以上、2,000:1以上、3,000:1以上、4,000:1以上、5,000:1以上、7,500:1以上、10,000:1以上、15,000:1以上、20,000:1以上、30,000:1以上、40,000:1以上、50,000:1以上、75,000:1以上又は100,000:1以上であってもよい。開始剤は、所望の分子量のポリマーを調製するのに十分な時間、モノマーと接触させられる。方法は、ポリマー組成物が、50,000g/モル以上、75,000g/モル以上、100,000g/モル以上、150,000g/モル以上、200,000g/モル以上、250,000g/モル以上、300,000g/モル以上、400,000g/モル以上、500,000g/モル以上、600,000g/モル以上、又は700,000g/モル以上の数平均分子量Mが形成されるまで開始剤がモノマーと接触することを可能にする工程を含んでいてもよい。ポリマー組成物のMnは、溶媒としてCHClを使用し、ポリメタクリル酸メチル標準を基準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるものを指す。
【0021】
生成されるポリマー組成物のGPCクロマトグラムは、多モードであり、約5,000g/モル以下、約4,500以下、約4,000以下、約3,500以下、約3,000以下、約2,500以下、約2,000以下、約1,500以下又は約1,000g/モル以下の分子量を有する、低分子量オリゴマー(例えばポリエステル鎖)の個別集団を表わす1つ以上のピークを含んでいてもよい。生成されたポリマー組成物のGPCクロマトグラム、50,000g/モルを超えるMnを有するポリマー鎖から得られるピークの面積と、5,000g/モル未満のMnを有するオリゴマーを表わすピークの面積との比は少なくとも10:1であってもよい。
【0022】
方法は、双性イオン開始剤が所定間隔の時間モノマーと接触することを可能にする工程を含む。方法は、重合反応の進行を監視する工程(例えば、GPCなどの適切な技法によって又はインサイチューで監視技法を利用することによって反応混合物からのアリコートを分析することにより)を含んでいてもよい。方法は、ポリマーの分子量の増加を監視する及び/又はモノマー濃度の低下を監視する工程を含んでいてもよい。方法は、ポリマー組成物の分子量(又は分子量の代わりに、例えば反応物粘度)が望ましい値に到達するか、又は所定の閾値を越えたときに、反応を止める工程を含んでいてもよい。方法は、それらの濃度が所望の濃度に到達するか、所定の閾値を下回るまで、モノマーの枯渇を監視する工程を含んでいてもよい。方法は、モノマーの濃度が所望の濃度に到達するか、所定の閾値を下回る場合に、反応物を止める工程を含んでいてもよい。
【0023】
形成されたポリマー組成物は、低い多分散性、3.5以下、3.0又は2.5以下又は2.2以下の多分散性指数(PDI)を有していてもよい。形成されたポリマー組成物は、1.05以上、1.1以上、1.2以上、1.5以上又は2.0以上のPDIを有していてもよい。記述されるPDI値は、GPCによって測定されるものを指す。PDI値は、約5,000g/モル未満、約4,500未満、約4,000未満、約3,500未満、約3,000未満、約2,500未満、約2,000未満、約1,500未満又は約1,000g/モル未満のMnを有するオリゴマーから生じるGPCピークを包含せずに算定されてもよい。
【0024】
方法は、形成されたポリマー組成物が20,000g/モル~200,000g/モルのM、及び1.5未満のPDIを有することを特徴とすることができる。方法は、形成されたポリマー組成物が、20,000g/モル~50,000g/モルのM、及び1.5未満のPDI;50,000g/モル~100,000g/モルのM、及び1.5未満のPDI;100,000g/モル~200,000g/モルのM、及び1.5未満のPDI;200,000g/モル~500,000g/モルのM、及び1.5未満のPDI;400,000g/モル~800,000g/モルのM、及び1.5未満のPDI;20,000g/モル~50,000g/モルのM、及び2.0未満のPDI;50,000g/モル~100,000g/モルのM、及び2.0未満のPDI;100,000g/モル~200,000g/モルのM、及び2.0未満のPDI;200,000g/モル~500,000g/モルのM、及び2.0未満のPDI;400,000g/モル~800,000g/モルのM、及び2.0未満のPDI;20,000g/モル~50,000g/モルのM、及び2.5未満のPDI;50,000g/モル~100,000g/モルのM、及び2.5未満のPDI;100,000g/モル~200,000g/モルのM、及び2.5未満のPDI;200,000g/モル~500,000g/モルのM、及び2.5未満のPDI;400,000g/モル~800,000g/モルのM、及び2.5未満のPDI;20,000g/モル~50,000g/モルのM、及び3未満のPDI;50,000g/モル~100,000g/モルのM、及び3未満のPDI;100,000g/モル~200,000g/モルのM、及び3未満のPDI;200,000g/モル~500,000g/モルのM、及び3未満のPDI;又は400,000g/モル~800,000g/モルのM、及び3未満のPDIを有することを特徴とすることができる。分子量範囲の列挙された例のそれぞれのPDIは、3.0を超え最高約20.0、約10.0又は約6.0であってもよい。
【0025】
反応条件
モノマーは溶媒中で双性イオン開始剤と接触させられてもよく、溶媒は、極性非プロトン性溶媒、例えばアミド、ニトリル及びスルホキシド、プロトン性液体、例えば水又はアルコール、エーテル、エステル、ケトン、又は脂肪族若しくは芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、又はフッ素化炭化水素を含んでいてもよい。溶媒は、C4~12の脂肪族炭化水素、エーテル又は塩素化炭化水素を含んでいてもよい。溶媒は、エーテル、石油エーテル、イソブタン、ペンタン、ヘキサン若しくはヘプタン、又は高次の脂肪族炭化水素を含んでいてもよい。溶媒はイソブタン又はヘキサンで構成されていてもよい。溶媒は実質上無水であってもよい。溶媒は、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、ジメトキシエタン、ダイグライム、トリグライム、テトラグライム、1,3-ジオキソラン、t-ブチルメチルエーテル及びジエチルエーテルから選択されるエーテルを含んでいてもよい。溶媒は、無水であってもよいテトラヒドロフランを含んでいてもよい。
【0026】
方法は、溶媒を含まない双性イオン開始剤とモノマーを接触させる工程を含んでいてもよい。重合はニートモノマー中で行なわれてもよい。モノマーは、双性イオン開始剤が可溶でない溶媒系中で接触させられてもよい。方法は、双性イオン開始剤を含む固体粒子の懸濁液とコモノマーを接触させる工程を含んでいてもよい。方法は、ニートモノマー中で不溶性である、双性イオン開始剤を含む固体粒子と、ニートモノマーを接触させる工程を含んでいてもよい。
【0027】
方法は、ミセルを形成する双性イオン開始剤とモノマーを接触させる工程を含んでいてもよい。反応混合物は、複数の双性イオン分子から形成されたミセルを含んでいてもよい。ミセルを形成する双性イオン開始剤は、以下により詳細に記載される。ミセルは適切な溶媒中で懸濁されてもよい。ミセルの懸濁液は重合混合物に供給されてもよい。方法はニートモノマー中でそのようなミセルを直接に形成する工程を含んでいてもよい。そのような方法のために使用される双性イオン開始剤は、疎水性部分(以降でより完全に記載される)を含んでもよく、極性液体媒質中で分散させた場合、開始剤はミセルを形成する。方法は、極性溶媒中に双性イオン開始剤を含むミセルを含む組成物と、モノマーを接触させる工程を含んでいてもよい。
【0028】
BPL蒸気を含む気体が、双性イオン開始剤を含む固体粒子と接触させられてもよい。モノマー蒸気を含む気体は、空気又は窒素又はアルゴンなどの不活性ガスとともにモノマーの混合物を含んでいてもよい。固体粒子は、そのような気体流中で懸濁されてもよい。粒子は、それらがポリマー形成により大きくなると、気体流から分離される。追加の開始剤粒子が、流れから分離された粒子を置き換えるために、気体流(連続的に又は不連続に分割して)に添加されてもよい。気体流れは、亜大気圧及び/又は高温で維持されてもよい。
【0029】
双性イオン開始剤及びモノマーは低温、常温又は高温で接触させられてもよい。混合物は、約30℃以上、約40℃以上、約50℃以上、約60℃以上、約70℃以上、約80℃以上、約100℃以上又は約120℃以上の温度で維持されてもよい。混合物は、約100℃以下又は約120℃以下の温度で維持されてもよい。混合物は、約20℃未満、約15℃未満、約10℃未満、約5℃未満、約0℃未満、約-10℃未満又は約-20℃未満の温度で維持されてもよい。方法は、所望の温度を維持するために混合物から熱を除去する工程を含んでいてもよい。方法は、プロセスの間に重合混合物の温度を変化させる工程を含んでいてもよい。方法は、所望の温度を維持するために混合物を冷却する工程を含んでいてもよい。方法は、プロセスの間に重合混合物の温度を経時的に変化させる工程を含んでいてもよい。
【0030】
重合は高圧で行なわれてもよい。高圧は、ある反応混合物成分(例えば、溶媒及びモノマー)の沸点を超える温度でプロセスが行なわれることを可能にすることができ、及び/又は、加圧されたプロセス流又は反応槽が減圧される場合、揮発性成分の分離を援助し得る。モノマーは、1バールを超える、約2バール以上、約3バール以上、約5バール以上、約10バール以上、約15バール以上、約20バール以上、約30バール以上又は約40バール以上の圧力で双性イオン開始剤と接触させられてもよい。圧力は、約50バール以下、約60バール以下、約70バール以下、約80バール以下、約90バール以下又は約100バール以下であってもよい。圧力は、反応混合物に接する反応器ヘッドスペースの加圧により(例えば加圧された不活性ガスの導入によって)印加されてもよい。圧力は、含まれる量の混合物を熱することにより印加されてもよい。圧力は、背圧調節器又は他の圧力解除システムの適用によって制御されてもよい。圧力は、流体静力学的に充填した反応槽に圧力を印加することにより維持されてもよい。これらの手法の2つ以上が使用されてもよい。
【0031】
本明細書において提供される方法は、バッチプロセス、連続プロセス、バッチ及び連続プロセスの混成体(例えば供給バッチ反応(fed batch reaction))で遂行することができる。方法は、重合混合物に経時的に1つ以上の成分を供給する工程を含んでいてもよい。モノマー、オリゴマー、末端封鎖剤、連鎖延長剤、連鎖移動剤又は架橋剤が、重合混合物に経時的に(連続的に又は1つ以上の不連続添加で)添加されてもよい。そのような供給される反応物に添加されるモノマーの組成は、経時的に変化させられてもよい。生成されたポリマー組成物は、先細りのコポリマー又はブロックコポリマーを含む。
【0032】
クエンチ
開示される方法は、重合反応をクエンチする工程を含んでいてもよい。クエンチ剤は、所定の反応時間の後に、又はポリマー組成物が所望の分子量に到達したとき(例えば形成されたポリマー組成物のMnが所定の閾値を越える場合)に添加されてもよい。クエンチ剤は、モノマーの目標部分が消費されたら、又は、所望の分子量が達成されたら添加されてもよい。方法が、栓流反応器を利用する連続プロセスを含む場合、クエンチ剤は、反応器の長さに沿った特定の場所で添加されてもよい。クエンチ剤は、1種以上の鉱酸、有機酸、酸性の樹脂又は固体であってもよい。クエンチ剤は、HCl、HSO、RSOH、HBr、HPO、酸性樹脂又は酸性無機固体であってもよい。クエンチ剤は、スルホン酸誘導体、ホウ酸又はホウ酸誘導体、リン酸又はリン酸誘導体であってもよい。クエンチ剤はスルホン酸であってもよい。スルホン酸は、式RSOH[式中、Rは、任意選択的に置換された脂肪族、任意選択的に置換されたアリール、任意選択的に置換された複素環及び任意選択的に置換されたヘテロアリール基からなる群から選択される基である。]を有する。Rは、任意選択的に置換されたC~C20アルキル、C~C20アルケニル及び任意選択的に置換されたフェニル基から選択される基であってもよい。スルホン酸は、1種以上のp-トルエンスルホン酸(またpTSA又はトシル酸としても知られる)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、4-ニトロフェニルスルホン酸、スルホ酢酸、キュメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、2-スルファニルエタンスルホン酸、3-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸、4-エチルベンゼンスルホン酸、2,5-ジメチルベンゼンスルホン酸、4-メチルメタニル酸、1-ナフタリンスルホン酸、及びペルフルオロオクタンスルホン酸であってもよい。クエンチ剤は、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸又はスルファミン酸であってもよい。クエンチ剤として使用される酸は、ポリマーに結合した陽イオン(例えば、双性イオン開始剤から生じる共有結合したZ基)の対イオンとして作用する酸の陰イオンとともに、ポリマーの活性な鎖末端をプロトン化する(例えば-OH又はCOH基を形成する)ことにより作用してもよい。例として、式Me(CHCO の双性イオン開始剤とモノマーを接触させる工程を含む重合方法は、そのような反応がHClを用いてクエンチされる場合、構造:Me(CHCO(CHCHCOCHCHCO のポリマー鎖の形成を導き、得られたクエンチされたポリマー組成物は、式:[Me(CHCO(CHCHCOCHCHCOH]Clの鎖を含む。酸性クエンチ剤は、酸の共役塩基が実質上非求核的であることを特徴とすることができる。
【0033】
クエンチ剤は、少なくとも1種の酸性水素原子を有するリン酸誘導体であってもよい。リン酸誘導体は、リン酸、ピロリン酸、三リン酸、リン酸、ピロリン酸又は三リン酸のアルキル誘導体、リン酸、ピロリン酸又は三リン酸のアリール誘導体及びそれらの混合物から選択されてもよい。クエンチ剤は、式:
【0034】
【化2】
[式中、R及びRは独立して、水素、モノホスフェート、ジホスフェート、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアリール、任意選択的に置換された複素環、モノホスフェートのエステル誘導体又はジホスフェート基のエステル誘導体の基である。]
を有するリン酸であってもよい。クエンチ剤は、亜リン酸、ホスホン酸又は少なくとも1つの酸性水素原子を有するホスフィン酸誘導体であってもよい。クエンチ剤は、R、R及びRのそれぞれが先に定義された通りである式:
【0035】
【化3】
を有するホスホン酸又はホスフィン酸であってもよい。クエンチ剤はホウ素含有化合物であってもよい。クエンチ剤はフルオロホウ酸であってもよい。
【0036】
クエンチ剤は固体支持体と組み合わせた酸であってもよい。固体に支持された酸は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト、金属酸化物又は粘土の無機固体を含んでいてもよい。クエンチされた組成物は、無機固体クエンチ剤を有するポリマー複合体を形成する。方法は、ポリマーに支持された酸をクエンチ剤として添加する工程を含んでいてもよい。高分子支持体は、スチレン、クロロメチル化スチレン及びジビニルベンゼンモノマーの少なくとも1つから由来のポリマーを含んでいてもよい。高分子固体支持体は、ポリスチレン、ポリスルホン、ナイロン、ポリ(クロロメチルスチレン);ポリオレフィン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル及び架橋したエトキシレートアクリル樹脂から選択されてもよい。クエンチ剤が固体を含む場合、方法は、クエンチされていないポリマーを含む反応流れを固体クエンチ剤の固定床に流す工程を含んでいてもよい。方法が栓流反応器を利用する連続プロセスを含む場合、クエンチ剤は、反応器の長さに沿った1つ以上の場所で添加されてもよい。
【0037】
末端封鎖
方法は、その全体を参照により本明細書に組み込む国際出願PTC国際公開第2019241596号明細書に開示される重合をクエンチするために末端封鎖剤を添加する工程を含む。モノマーは、形成されたポリマー鎖の末端が、カルボン酸又はカルボキシレート官能基を有するように重合されてもよい。末端基は、末端封鎖剤と反応させられる。末端封鎖剤は、形成されたポリマーをより安定にすることができる。末端封鎖剤は、求電子有機化合物を含んでいてもよい。末端封鎖剤は、有機ハライド、有機スルホネート、ハロアルキルシラン、アニリン誘導体、ホスフェート誘導体、及びイソフタル酸誘導体のうちの1種以上を含んでいてもよい。親電子試薬は生長鎖末端を封鎖し、共有結合Z基の電荷を満たす陰イオンを放出する。化合物R-X’は、陰イオン鎖末端と反応する(例えば-OR、COR基を形成する)ことができ、一方、遊離した陰イオンX’は、ポリマーに結合した陽イオン(例えば、双性イオン開始剤から生じる共有結合Z基)の対イオンを演じる。式Me(CHCO の双性イオン開始剤とBPLを接触させる工程を含む重合方法は、次に、そのような反応物が臭化ベンジル(BnBr)を用いてクエンチされる場合、構造:Me(CHCO(CHCHCOCHCHCO のポリマー鎖の形成に至り、結果として得られるクエンチされたポリマー組成物は、式:[Me(CHCO(CHCHCOCHCHCOBn]Brの鎖を含んでいてもよい。
【0038】
末端封鎖剤は、ハロゲン化アルキル、例えば、脂肪族クロリド、ブロミド又はヨージドを含んでいてもよい。クエンチ剤は、式R-X[式中、Rは任意選択的に置換されたC1~40脂肪族基であり、XはCl、Br又はIから選択される。]の化合物を含んでいてもよい。末端封鎖剤は、R-CH-X[式中、Rは、-H、又は脂肪族アリール、ヘテロ環及びヘテロアリール基の任意選択的に置換された基である。]を含んでいてもよい。末端封鎖剤は、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化アリル、臭化アリル、塩化ベンジル又は臭化ベンジルの1つ以上であってもよい。末端封鎖剤は、式ROSO[式中、Rは上記に定義されている。]に対応し得る有機スルホネートを含んでいてもよい。クエンチ剤は、トリフリン酸メチルを含んでいてもよい。末端封鎖剤は、式ROSOOR[式中、Rは上記に定義された通りである。]に対応し得る有機サルフェートを含んでいてもよい。クエンチ剤は、硫酸ジメチル又は硫酸ジエチルなどの硫酸ジアルキルを含んでいてもよい。
【0039】
末端封鎖剤は、シランであってもよく、シリル又はシロキシ基を含む化合物を含んでもよい、式:
【0040】
【化4】
[式中、Xは上に定義された通りであり、各Rはメチル、エチル又はプロピルであり、各Rは-H、クロロ、メチル又はエチルであり、Xは-Clであってもよく、Rはメチル又はエチルであってもよく、Rはメチルであってもよい。]
のうちの1つに相当してもよい。末端封鎖剤はδ-クロロプロピルトリメトキシシランを含んでいてもよい。
【0041】
熱に安定なアニリン誘導体は、アゾール、例えば、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、2-アミノチオフェノール、o-フェニレンジアミン及び2-アミノフェノールからなる群から選択されるものを含んでいてもよい末端封鎖剤であってもよい。
【0042】
例示の末端封鎖剤は、トリメチルホスフェートなどのホスフェートをさらに含んでいてもよい。例示の末端封鎖剤は、他の添加剤及びイソフタル酸などの安定剤をさらに含んでいてもよい。
【0043】
方法は、連鎖延長剤又は架橋剤を重合反応に添加する工程を含んでいてもよい。連鎖延長剤又は架橋剤はクエンチ剤として添加されてもよい。単一分子中に2つ以上の適切な反応性官能基を有する上記末端封鎖剤の類似物がクエンチ剤として利用される場合、それらは、連鎖延長剤又は架橋剤としてそれぞれ作用してもよい。二官能性連鎖延長剤でクエンチすると、2つの別のポリマー鎖のカルボキシレート終端との反応が起こり、二量体の鎖伸長生成物が形成される。上記のクエンチ剤のいずれかの二官能性類似物が同様の効果を得るために利用することができることは理解されよう。
【0044】
連鎖延長剤は、式X’-L’-X’[式中、X’は独立して本明細書において定義される陰イオンであり、L’は二価の部分を含む。]の化合物を含んでいてもよい。L’-は、任意選択的に置換されたC~C100脂肪族基、-任意選択的に置換されたC~C40脂肪族基;任意選択的に置換されたC1~24脂肪族基、任意選択的に置換されたC~C20脂肪族基、任意選択的に置換されたC~C12脂肪族基、任意選択的に置換されたC~C10脂肪族基;任意選択的に置換されたC~C脂肪族基、任意選択的に置換されたC~C脂肪族基、任意選択的に置換されたC~C脂肪族基、任意選択的に置換されたC~C脂肪族基、任意選択的に置換されたC~C12脂肪族基又は任意選択的に置換されたC、C、C、C、C、C、C又はC脂肪族基であってもよい。
【0045】
L’-は、任意選択的に置換された直鎖アルキル鎖又は任意選択的に置換された分岐アルキル鎖であってもよい。L’-は、-C(R)-[式中、R及びRはそれぞれ独立してC~Cアルキル基である。]で置き換えた1つ以上のメチレン基を有するC~C20アルキル基であってもよい。L’-は、1つ以上のgem-ジメチル置換炭素原子を含む2~30炭素を有する脂肪族基であってもよい。L’-は、1つ以上の任意選択的に置換された環、例えば、飽和又は部分的に不飽和の炭素環、飽和又は部分的に不飽和の複素環、アリール及びヘテロアリールを含んでいてもよい。L’-は、置換された環であってもよい(すなわち、X’基は、-L’-中の環を構成する原子に直接連結されている。)。環は、1つ以上の非環ヘテロ原子を有するL’-部分の一部、又は環から1つ以上のX’基を分離する任意選択的に置換された脂肪族基であってもよい。L’-は、その主鎖中に1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい(すなわち、共有結合した原子の基中で-X’基の結合部位を分離する)。L’-は、任意選択的に置換されたC~C40脂肪族部分の1つ以上のsp炭素原子を、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、-OC(O)-、-OC(O)O-、-NRC(O)-、-NRC(O)O-、-NRC(O)NR-、-N=N-、-NRC(N)NR-、-SC(O)-、-SC(O)S-、-SC(S)S-、-NRC(O)S-及び-NRC(S)O-[式中、Rは、上記並びに本明細書中の属及び亜属に定義された通りである。]から選択される基に置き換えることから得られた構造に対応する部分を含んでもよく、ただし、そのような置き換えから得られた-L’-部分が、安定な有機分子の構造を定義する、認識された原理と一致する構造を有することを条件とする。複数のそのような置換が存在する場合、それらは、少なくとも1つの脂肪族炭素原子、少なくとも2つの脂肪族炭素原子によって分離される。L’-は、1つ以上のエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合及び/又はアミド連結を含んでもいてよい。L’-は、オリゴマー又はポリマーを含んでいてもよい。ポリマーは、1種以上のポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカルボネート、ポリアミド及びポリイミドであってもよい。-L’-がポリマーを含む場合、X’基は、ポリマー鎖の終端に存在してもよい。
【0046】
三官能性又は高官能性の末端封鎖剤が利用される場合、星形又は櫛形ポリマー組成物が得られてもよい。そのような末端封鎖剤は、式X’-L’’-X’[式中、X’は上記及び本明細書において定義された通りであり、L’’は、L’について列挙された式のうちのいずれかを有するが、しかし、X’官能基の共有結合のために利用可能な3つ以上の部位を有する多価リンカーである。L’’は、3から約50以上のX’基が結合していてもよい。L’’は3又は4~6のX’基が結合していてもよい。L’’は、多数の(すなわち数十又は数百の)結合したX’基を有するポリマーを含んでいてもよい(例としては、X’基が、ポリマーL’’を含むモノマーの置換基として存在する場合)。
【0047】
クエンチ剤、末端封鎖剤、架橋剤又は連鎖延長剤は、重合プロセスに添加される双性イオン開始剤の量に対して10モル当量未満の量、双性イオン開始剤の量に対して、例えば0.1~10モル当量、又は0.1~2モル当量、又は1~2モル当量又は約1モル当量で反応混合物に添加されてもよい。
【0048】
ベータ-プロピオラクトン及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトン
ベータ-プロピオラクトン(BPL)及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトンを含有する幾つかの新規ポリマー系が開示される。ベータ-プロピオラクトンはまた3-ヒドロキシプロピオネートとしても知られている。本開示はヒドロキシアルカノエートの使用に関する。ポリプロピオラクトンはポリ(3-ヒドロキシプロピオネートとしても知られている。本開示は、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)と称されるポリマーに関連する。ベータ-プロピオラクトン及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトンは、同一ポリマー又は異なるポリマーに基づいてもよい高分子層間で結合層として使用することができる。異なるポリマーは互いに不適合性であってもよい。官能化ベータ-プロピオラクトン及び/又はベータ-プロピオラクトンは、高分子構造体を一緒に又は他の基材に結合するために接着層として使用されてもよい。ベータ-プロピオラクトン及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、コーティング若しくは自立性フィルムとして、又は多層のコーティング又はフィルムで使用されてもよい。官能基は他のモノマー系と反応してポリマー層間に架橋を形成してもよく、又は、他のコポリマーの形成された層へ重合することができる。ベータ-プロピオラクトン及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトンは、基材へのフィルム又はコーティングの結合を改善する官能基を有していてもよい。
【0049】
官能化ベータ-プロピオラクトンからの官能基は、官能化ベータ-プロピオラクトンから調製されたポリマー及びコポリマーに官能基を与えることができる。官能基は、重合開始剤として機能し、ある基材又はポリマー系に対するポリマーの接着を改善し、疎水性又は親水性を改善し、硬度又は耐引っかき性、重合触媒などを改善することができる。官能化ベータ-プロピオラクトン及び/又はベータ-プロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、異なるポリマーの層を有するそのようなフィルムを含む多層フィルムにおいて中間層として機能してもよい。官能化ベータ-プロピオラクトン及び/又はベータ-プロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、ある状況の下で分解し、再利用時の再使用のために他の層が容易に分離されることを可能にする。官能化ベータ-プロピオラクトン及び/又はベータ-プロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、他のポリマーのコーティングと基材の中間層として機能してもよい。官能化ベータ-プロピオラクトン及び/又はベータ-プロピオラクトンのポリマー及びコポリマーはある状況の下で分解し、再利用時の再使用のために基材が容易に分離されることを可能にする。官能化ベータ-プロピオラクトン及び/又はベータ-プロピオラクトンのポリマー及びコポリマーは、外側フィルム層若しくは分解することができるコーティング層として使用することができ、又は、そのような外側層を官能化して所望の性質の組を構造に提供することができる。
【0050】
一般式:
【0051】
【化5】
[式中、Rは各出現において独立して水素、ヒドロカルビル部分又はフルオロカルビル部分であり;ヒドロカルビル又はフルオロカルビル部分は任意選択的に少なくとも1つのヘテロ原子又は少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい。]
を有するベータ-プロピオラクトン及び官能化ベータ-プロピオラクトンが開示される。官能化ベータ-プロピオラクトンは、コーティング又はフィルムに有用なポリマー鎖に組み込まれた官能化ベータ-プロピオラクトンの機能を高め得るヒドロカルビル又はフルオロカルビル部分として存在する少なくとも1つのRを有する。少なくとも1つのRはヒドロカルビル又はフルオロカルビル基であり、1つ以上の不飽和基、求電子基、求核基、陰イオン基、陽イオン基、双性イオン含有基、疎水基、親水基、ハロゲン原子、天然鉱物、合成鉱物、炭素系粒子、紫外線活性基、界面活性を有するポリマー及び重合開始剤又は反応性複素環式環を含んでいてもよい。官能基は、基の官能性部を環式環に連結するように機能する連結基(M)によって環に連結されてもよい。例示の連結基は、ヒドロカルビレン、フルオロカルビレン基、エーテル、チオエーテル、ポリエーテル(ポリアルケンエーテルなど)であってもよい。1つ以上のRは、ハロゲン置換アルキル基、スルホン酸置換アルキルオキシ基;アルキルスルホネートアルキルオキシ基;アルキルエーテル置換アルキル基;ポリアルキレンオキシド置換アルキル基、アルキルエステル置換アルキル基;アルケニルオキシ置換アルキル基;アリールエステル置換アルキル基;アルケニル基;シアノ置換アルキル基;アルケニルエステル置換アルキル基;シクロアルキル置換アルキル基;アリール基;ヘテロ原子含有シクロアルケニル、アルキルエーテル置換アルキル基;ヒドロキシル置換アルキル基、脂環式置換アルケニル基;アリール置換アルキル基;ハロアリール置換アルキル基;アリールオキシ置換アルキル基;アルキルエーテル置換アルカリール基;ヘテロ原子含有脂環式基置換アルキル基;ヘテロ原子含有アリール置換アルキル基、アルキルアミド置換アルキル基、アルケニル置換脂環式基であってもよく;2つのRは、1つ以上の不飽和基;1つ以上のエーテル基及び/又は1つ以上のヒドロキシル基を任意選択的に含んでいてもよい、ベータ-プロピオラクトン基で置換されたアルキル基;グリシジルエーテル基、又は1つ以上のエーテル基で任意選択的に置換されたベンゾシクロブテニル置換アルキル基を任意選択的に含んでいてもよい環式環を形成してもよい。ベータ-プロピオラクトンは、Rがすべて水素である式に対応する。一部の実施形態において、1つの炭素原子上のRは両方ともHであるが、一方、他の炭素原子上の両Rは、任意選択的に置換されたC1~40脂肪族、任意選択的に置換されたC1~20ヘテロ脂肪族、任意選択的に置換されたアリールであってもよく、又は、両R基は、任意選択的に一緒になって1つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む任意選択的に置換された環を形成してもよい。異なる炭素原子上のRのうちの1つ又は2つはメチルであってもよく、他のものは水素であってもよい。同一炭素原子上の2つのRはメチルであってもよく、一方、他のRは水素である。
【0052】
記載される1つ以上の官能化ベータ-プロピオラクトン又はベータ-プロピオラクトンから調製されたホモポリマーが開示される。ベータ-プロピオラクトン及び1つ以上の官能化ベータ-プロピオラクトンのコポリマーが開示される。1つ以上の官能化ベータ-プロピオラクトンと反応性の1つ以上のモノマーを有する、開示される1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトンのコポリマーを含む組成物が開示される。そのようなコポリマーは複数の1つ以上のジオール、二官能性ポリアルキレンオキシド、アミン末端ポリアルキレンオキシド、1つ以上の二官能性ポリエステル、環式ラクトン、環式無水物又はポリエーテルを含む。これらのコポリマーはベータ-プロピオラクトンから由来の単位を含んでいてもよい。開示されるコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーであってもよく、又は1つ以上の鎖はポリマー骨格にグラフト化されてもよい。
【0053】
コモノマー
1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトンと反応性の1つ以上のモノマーとの、開示される1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトンのコポリマーを含む組成物が開示される。1種以上の官能化ベータ-プロピオラクトンと反応性の1種以上のモノマーとの、開示される1種以上のベータ-プロピオラクトン及び/又は官能化ベータ-プロピオラクトンのコポリマーを含む組成物が開示される。そのようなコポリマーは、複数の1種以上のジオール、二官能性ポリアルキレンオキシド、アミン末端ポリアルキレンオキシド、1種以上の二官能性ポリエステル、ラクタム、ラクチド、環式ラクトン、環式無水物、エポキシド、エピスルフィド又はポリエーテルを含む。そのようなコモノマーは、1種以上のエポキシド、オキシラン、ラクタム及びラクチドであってもよい。コモノマーは、無水コハク酸、メチル無水コハク酸、メチルジグリコール酸無水物、メチルグルタル酸無水物、無水マレイン酸、無水フタル酸、シトラコン酸無水物、trans-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物を含む1種以上の環式無水物であってもよい。これらのコポリマーは、ベータ-プロピオラクトンから由来の単位を含んでいてもよい。開示されるコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーであってもよく、又は、1つ以上の鎖はポリマー骨格にグラフト化されてもよい。
【0054】
1種以上の置換ベータ-ラクトンは、以下:
【0055】
【化6】
[式中、Arは任意選択的に置換されたアリール基であり、Phはフェニル基である。]
であってもよい。
【0056】
1種以上の置換プロピオラクトンは以下:
【0057】
【化7】
[式中、R10は各出現において独立して-H、任意選択的に置換されたC1~40脂肪族、任意選択的に置換されたC1~20ヘテロ脂肪族、及び任意選択的に置換されたアリール基である。]
であってもよい。
【0058】
1種以上の置換プロピオラクトンは以下
【0059】
【化8】
[式中、Arは任意選択的に置換されたアリール基である。R12は、各出現において独立して-H、任意選択的に置換されたC1~40脂肪族、任意選択的に置換されたC1~20ヘテロ脂肪族、及び任意選択的に置換されたアリールであり、R13は、各出現において独立して、完全に又は部分的に不飽和のC2~20直鎖脂肪族基である。]
であってもよい。ポリマーは、1つの炭素原子上の両Rが水素であり、他の炭素原子上の両Rがメチル基で置換されたBPL及びピバロラクトンの混合物から調製されてもよい。1種以上の置換プロピオラクトンは以下:
【0060】
【化9】
であってもよい。
【0061】
ポリマーは、BPLと、式:
【0062】
【化10】
のうちの1種のベータ-ラクトンの混合物から調製されていてもよい。
【0063】
ポリマーは、BPLと、位置異性体の混合物として提供される1種以上の置換プロピオラクトンの混合物から調製されてもよい。上記の置換ベータ-ラクトンコモノマーのいずれもそれらの位置異性体と組み合わせて提供されてもよい。置換ベータ-ラクトンコモノマーが位置異性体混合物として提供される場合、環酸素原子に隣接する炭素上の最大置換基を有する位置異性体は、他の位置異性体に対して過剰モル存在する。主な位置異性体は、少量の位置異性体に対して少なくとも3:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、又は少なくとも100:1の2:1以上の比で存在する。
【0064】
ポリマーは、BPLと、テトラヒドロフラン、置換テトラヒドロフラン又はエポキシドを含む1種以上の環式エーテルの混合物から調製されていてもよい。エポキシドは、置換エポキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、4-ビニルシクロヘキセンオキシド、4-エチルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、グリシドールエーテル、グリシドールエステル又はシクロヘキセンオキシドであってもよい。エポキシドは、式:
【0065】
【化11】
[式中、Rは本明細書において定義される通りである。]
に対応してもよい。1種以上の置換エポキシドは、式:
【0066】
【化12】
[式中、R10は本明細書の属及び亜属において定義された通りである。]
に対応してもよい。1種以上の置換エポキシドは以下:
【0067】
【化13】
であってもよい。
1種以上の置換エポキシドは、式:
【0068】
【化14】
[式中、Ar、R10、R12及びR13のそれぞれは、上記に定義された通りである。]
のうちの1つに対応してもよい。
【0069】
コモノマーは、無水コハク酸、メチル無水コハク酸、メチルジグリコール酸無水物、メチルグルタル酸無水物、無水マレイン酸、無水フタル酸、シトラコン酸無水物、trans-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物を含む1種以上の環式無水物であってもよい。
【0070】
方法において、コモノマーがBPLと共に存在する場合、コモノマーはBPLと合わせてプロセスの初めに添加されてもよく、例えば、バッチ重合が、BPLと1種以上のコモノマーの定義された混合物を使用して遂行されてもよい。方法は、重合混合物に対する追加のモノマーの添加によって経時的にモノマー組成を変化させる工程を含んでいてもよい。そのような添加は、BPL、コモノマー又はBPLとコモノマーの混合物の連続的な添加を含んでいてもよい。そのような添加は、BPL、コモノマー又はBPLとコモノマーの混合物のバッチ様式の添加を含んでいてもよい。提供される反応条件、及び重合条件下のコモノマーの相対的な重合速度に応じて、そのような方法は、ランダムコポリマー、先細りのコポリマー又はブロックコポリマーをもたらし得る。
【0071】
連鎖移動剤
方法は、連鎖延長剤、連鎖移動剤及び/又は架橋剤の使用を含む。方法は、1種以上の連鎖移動剤の存在下でベータ-プロピオラクトン(及び任意選択のコモノマー)を双性イオン開始剤と接触させる工程を含んでいてもよい。本発明の文脈において、連鎖移動剤は、1つのポリマー鎖の成長を停止することができる、及び新しいポリマー鎖の重合を開始させることができる任意の物質又は試薬として定義される。リビング重合において、これは通常、可逆過程であり、正味の影響は、組成物中で平均して、すべての鎖が類似速度で成長することである。連鎖移動剤は、生成されるポリマー組成物の分子量を制御するために、使用される触媒の量を最適化するために、及び/又は、生成されるポリマー組成物の多分散性を制御するために使用することができる。連鎖移動剤はまた、鎖終端に追加の官能基を導入するために(例えば後続の架橋又は鎖延長反応のために、又は物理的性質、例えば親水性又は疎水性などを与えるために)使用することができ、後者の例は、ビニル基などのラジカル重合性官能基、ペルフルオロ部分又はシロキシ基を有する連鎖移動剤を含む。
【0072】
連鎖移動剤は酸性化合物を含んでいてもよい。そのような酸性化合物は、それらの共役塩基が求核性であることを特徴とすることができる。提供される酸性連鎖移動剤の共役塩基は、ベータ-プロピオラクトンを開環する(又は提供されるコモノマーと反応する)のに十分な求核性を有していてもよい。例示の連鎖移動剤は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、チオール、フェノールなどを含む。
【0073】
連鎖移動剤(CTA)は、式Y’-T-(Y’)[式中、各Y’は独立して、酸性官能基(又はそのような基のプロトン脱離によって形成された塩)であり、-T-は多価部分であり、rは0又は1~10の整数である。]の化合物を含んでいてもよい。Y’は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、チオール及びフェノール性-OH基(又はこれらのうちのいずれかのプロトン脱離によって形成された陰イオン)から独立して選択されてもよい。連鎖移動剤は、連鎖移動剤として作用する能力のある、複数の官能基を有する分子(例えばジカルボン酸、トリカルボン酸など)を含んでいてもよい。連鎖移動剤は、カルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシブタン酸、乳酸、安息香酸、アクリル酸及びメタクリル酸を含んでいてもよい。連鎖移動剤は、フェノール、チオール又はそれらの誘導体を含んでいてもよい。
【0074】
CTAは、反応の初めに存在してもよく、又は、重合プロセス中に(一定若しくは可変速度で連続的に、又は分割添加によって)添加されてもよい。CTAは、反応中に1つ以上の時点で分割添加されて二モード又は多モードの分子量分布を有するポリマー組成物を与えてもよい。CTAは、重合プロセスの少なくとも一部で連続的に添加されて広い分子量分布を有するポリマー組成物を与えることができる。CTAが重合反応の初めに添加される場合、結果は狭いPDIを有するポリマー組成物である。連鎖移動剤は、双性イオン重合開始剤に対して約1:1~約10,000:1の、又は約1:1~約10:1、例えば1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、8:1又は10:1、又は約10:1~約100:1、例えば20:1、30:1、40:1、50:1、75:1又は100:1、約100:1~約1,000:1、例えば200:1、300:1、400:1、500:1、750:1、1000:1のモル比で提供されてもよい
【0075】
重合方法は、ベータ-ラクトンの製造のためのプロセスへ統合されてもよい。そのような統合プロセスは、エネルギー効率の観点で利点を有することができ、水、酸素又は他の不純物の導入が低減されるので、高品質のポリマー生成物をもたらすことができる。方法は、一酸化炭素とエチレンオキシドを反応させてベータ-プロピオラクトンを形成する工程を含んでいてもよい。そのようなプロセスのための例示の触媒及び方法は、公開された国際公開第2013/063191号、国際公開第2014/004858号、国際公開第2003/050154号、国際公開第2004/089923号、国際公開第2012/158573号、国際公開第2010/118128号、国際公開第2013/063191及び国際公開第2014/008232号;米国特許第10,662,283号明細書、第5,359,081号明細書及び第5,310,948号明細書、並びに刊行物“Synthesis of beta-Lactones”J.Am.Chem.Soc.,124巻、2002年、1174-1175頁において記載され、その各々の全内容は参照により本明細書に組み込む。方法は、カルボニル化触媒及び溶媒の存在下でエチレンオキシドを一酸化炭素と接触させてベータ-プロピオラクトンを含む反応流れを与える工程;反応流れからベータ-ラクトンを含む生成物流れを分離し、重合反応器へベータ-ラクトン含有反応流れを供給し、それを双性イオン触媒と接触させて(任意選択的に1種以上のコモノマーの存在下で)生分解性ポリエステルを含む第2の反応流れを与える工程を含んでいてもよい。そのような統合カルボニル化/重合プロセスは、実質上すべてのカルボニル化触媒が、重合反応器に流れを供給する前にベータ-プロピオラクトンを含む反応流れから除去されることを特徴とすることができる。そのような統合カルボニル化/重合プロセスは、カルボニル化方法が遂行される溶媒の少なくとも一部が、ベータ-プロピオラクトンを含む反応流れ中に存在し、重合反応器に供給されることを特徴とする。方法は、ポリマーを含む第2の反応流れから溶媒を分離する工程を含んでいてもよい。方法は、カルボニル化反応に分離された溶媒を再生利用する工程を含んでいてもよい。プロセスは、ベータ-プロピオラクトンを含む反応流れが残余のエチレンオキシドを含み、ベータ-プロピオラクトンエチレンオキシド混合物が重合反応器に供給されることを特徴とすることができる。エチレンオキシドはBPL重合においてコモノマーであってもよい。
【0076】
双性イオン開始剤
本明細書において記載される方法は、BPL及び任意選択のコモノマーを、双性イオンである重合開始剤--例えば、単一分子に両方とも共有結合した少なくとも1つの陽イオン及び少なくとも1つの陰イオンを有する重合開始剤と接触させる工程を含む。そのような双性イオンは小さな分子であってもよく、又は、それらはオリゴマー又はポリマーを含んでいてもよい。双性イオン開始剤は、単一の共有結合した陽イオン及び単一の共有結合した陰イオンを有する小さな分子であってもよく、又は2つ若しくは幾つかの共有結合した陽イオン、2つ若しくは幾つかの共有結合した陰イオンを含んでいてもよい。双性イオン開始剤は、複数の共有結合した陽イオン及び陰イオンを含むポリマーを含んでいてもよい。双性イオン開始剤は、全体として中性電荷(例えば、結合した陽イオンと結合した陰イオンの電荷は等しく、互いに相殺される)を有するが、しかし、ある実施形態において、与えられた双性イオン開始剤は、遊離の(例えば、非共有結合した)陰イオン又は陽イオンによって全体として正又は負電荷をそれぞれ均衡させてもよい。双性イオン開始剤は、基本的に純粋な化学物質、又は双性イオン開始剤として機能する能力のある分子の混合物を含んでいてもよいが、というのも、双性イオン開始剤がオリゴマー又は高分子構造を含む場合、--そのような組成物は、例えば、関連する分子の統計的な混合物を含むからである。
【0077】
双性イオン開始剤は、式:(Z-L-(X[式中、各Zは陽イオンであり、各Xは陰イオンであり、-L-は結合、又は各Z及びX基に共有結合した多価有機部分であり、a及びbはそれぞれ1~20の整数である。]を有していてもよい。本発明の文脈における多価という用語は、切り離して考慮すると、部分-L-の構造を意味し、Z+及びX-イオンが共有結合によって適切に結合して安定な分子構造を形成することができる複数の位置を有することを意味する。例えば、この慣例を使用すると、式MeCHCHCHCO を有する双性イオン開始剤は、式(Z-L-(X[式中、Zはトリメチルアンモニウムであり、Xはカルボキシレートであり、-L-は二価部分-CHCHCH-であり、a及びbはそれぞれ1である。]の化合物である。
【0078】
陽イオン基(Z
双性イオン開始剤は有機「オニウム陽イオン」を含んでいてもよい。そのようなオニウム陽イオンは最も一般的には、ヘテロ原子、窒素、リン又は硫黄(又は2つ以上のこれらの組み合わせ)を含むが、しかし、また、スチボニウム又はアルソニウム陽イオンなどのそれほど一般的でない有機陽イオンも適用可能である。
【0079】
双性イオン開始剤は、アンモニウム、アミジニウム、及びグアニジニウム陽イオン、窒素含有複素環例えば、任意選択的に置換されたピリジニウム、イミダゾリウム、ピロリジニウム又はピペリジニウムであってもよい窒素系オニウム陽イオンを含んでいてもよい。オニウムカチオンは以下であってもよい:
【0080】
【化15】
[式中、R、R及びRは、独立して各出現時に、C1~40脂肪族;C1~40ヘテロ脂肪族;フェニル;三~八員飽和又は部分的不飽和又は芳香族の単環式炭素環;7~14炭素飽和、部分的不飽和又は芳香族の多環式炭素環;窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~4ヘテロ原子を有する、五又は六員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される1~3ヘテロ原子を有する、三~八員飽和又は部分的不飽和の複素環式環;窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~5ヘテロ原子を有する、六~十二員多環式飽和又は部分的不飽和の複素環;窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~5ヘテロ原子を有する八~十員の二環式ヘテロアリール環;及び任意の2つ以上のR、R及びR基が、介在原子と任意選択的に一緒になって、1つ以上の追加のヘテロ原子を任意選択的に含む、1つ以上の任意選択的に置換され、任意選択的に不飽和の環を形成するポリマー鎖からなる群から選択される任意選択的に置換された基であり;Rは、各出現時に独立して、水素、又はC1~40脂肪族;C1~40ヘテロ脂肪族;三~八員飽和又は部分的不飽和の単環式炭素環;七~十四員飽和又は部分的不飽和の多環式炭素環;窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~4ヘテロ原子を有する五~六員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~5ヘテロ原子を有する八~十四員多環式ヘテロアリール環;窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~3ヘテロ原子を有する三~八員飽和又は部分的不飽和の単環式ヘテロ環式環;窒素、酸素又は硫黄から独立して選択される1~5ヘテロ原子を有する六~十四員飽和又は部分的不飽和の多環式複素環;フェニル;八~十四員多環式アリール環;及び2つのR基又はR並びに1つ以上のR及び/若しくはR基は介在原子と一緒になって1つ以上の任意選択的に置換された炭素環式、ヘテロ環式アリール又はヘテロアリール環を形成することができるポリマー鎖からなる群から選択される任意選択的に置換された基であり;環Aは、1つ以上の追加のヘテロ原子及び/又は不飽和部位を任意選択的に含む、任意選択的に置換された五~十員環である。]。
【0081】
陽イオンは、式:
【0082】
【化16】
[式中、R、R及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]
に対応し得る第四級アンモニウム陽イオンであってもよい。R、R及びRそれぞれは、独立してC1~20脂肪族基、C1~12脂肪族基、C1~8脂肪族基、C1~9脂肪族基若しくはC1~4脂肪族基、又はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル及びC8~20アルキルであってもよい。R、R及びRの少なくとも1つはメチルであり、R、R及びRのうちの2つはメチルであり、第3の基はC2~20アルキル鎖を含み、又はR、R、Rはそれぞれメチルである。R、R及びRの1つは、ポリマー鎖又は疎水性部分を含んでいてもよい。2つ以上のR、R及びR基は一緒になって環、例えば、1つ以上の追加のヘテロ原子を任意選択的に含む、五~六員飽和又は不飽和の環を形成する。アンモニウム陽イオンは
【0083】
【化17】
[式中、R20は任意選択的に置換されたC2~40脂肪族、任意選択的に置換されたアリール、任意選択的に置換されたベンジル及びポリマー鎖から選択される。]
であってもよい。
【0084】
双性イオン開始剤はリン系陽イオンを含んでいてもよい。双性イオン開始剤はホスホニウム陽イオンを含んでいてもよい。双性イオン開始剤は、式:
【0085】
【化18】
[式中、R、R及びRそれぞれは上記に定義された通りである。]
のホスホニウム塩を含んでいてもよい。R、R及びRの少なくとも1つ又はすべては、アリール基、例えばフェニルであってもよい。R、R及びRの少なくとも1つはポリマー鎖であってもよく、ポリマー鎖は、ホスホニウム陽イオンのアリール環を介してリン原子に連結されていてもよく、ホスホニウム陽イオンは、
【0086】
【化19】
[式中、Ar及びR20のそれぞれは、上記並びに本明細書中の属及び亜属に定義された通りであり;任意選択的に置換されたアリール、任意選択的に置換されたヘテロアリール、及びポリマー鎖であってもよい。]
であり得る。
【0087】
陽イオンはアミジニウム陽イオンであってもよい。アミジニウム陽イオンは、炭素原子又はアミジニウム基を構成する2つの窒素原子のいずれかを介して-L-部分に連結されてもよい。そのような陽イオンの共鳴形態はすべて包含される。陽イオンは以下であってもよい:
【0088】
【化20】
式中、R、R及びRのそれぞれは定義された通りである。R、R及びRのそれぞれは独立して、C1~12脂肪族基、C1~8脂肪族基、C1~9脂肪族基、又はC1~4脂肪族基であってもよい。R、R及びRは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル及びC8~20アルキルから独立して選択されてもよい。R、R及びRの少なくとも1つはメチルであってもよい。そのようなアミジン中の2つ以上のR及びR基は、一緒に、五又は六員飽和又は不飽和環などの環を形成してもよい。陽イオンは、二環式アミジニウム基であってもよい。これは、3つの非水素置換基、及び4つの非水素置換基との結合を有する第2の窒素原子を有する1つの窒素原子を有してもよい。そのような非水素置換基は、脂肪族置換基又は二環式アミジニウム基の環であってもよい。
【0089】
アミジニウム陽イオンは:
【0090】
【化21】
[式中、Rは上記に定義された通りである。]
であってもよい。
【0091】
陽イオンはそのような陽イオンのすべての共鳴形のグアニジニウム陽イオンであってもよい。陽イオンは、
【0092】
【化22】
[式中、R、R及びRのそれぞれは上に定義された通りであり、C及びDは五~八員飽和又は部分的不飽和の環を表わす。]
であってもよい。
【0093】
陽イオンは、
【0094】
【化23】
[式中、Rは上記に定義された通りである。]
などのグアニジニウム陽イオンであってもよい。R、R及びRのそれぞれは独立して、C1~12脂肪族基、C1~8脂肪族基、C1~9脂肪族基又はC1~4脂肪族基であってもよい。R、R及びRのそれぞれは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル及びC8~20アルキルからなる群から独立して選択されてもよい。R、R及びRの少なくとも1つはメチルであってもよい。そのようなアミジン中の2つ以上のR及びR基は、一緒になって、五又は六員飽和又は不飽和の環などの環を形成してもよい。陽イオンは二環式アミジニウム基であってもよく、二環式アミジニウム基は3つの非水素置換基を有する1つの窒素原子、及び4つの非水素置換基に対する結合を有する第2の窒素原子を有していてもよい。非水素置換基は、脂肪族基又は二環式アミジニウム基の環であってもよい。
【0095】
陽イオンは、スルホニウム塩などの硫黄系オニウム塩を含んでいてもよい。スルホニウム塩は、
【0096】
【化24】
[式中、そのそれぞれは上記に定義された通りである。]
であってもよい。R及びRはそれぞれメチルであってもよい。陽イオンは、
【0097】
【化25】
[式中、R、R、R及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]
であってもよいスルホキソニウム陽イオンであってもよい。R及びRのそれぞれはメチルであってもよく、及び/又は、Rはメチルであってもよい。この文脈において、R及びRの少なくとも1つは、任意選択的に置換されたアリール基であってもよい。
【0098】
陽イオンは、窒素原子、及びホスファゼニウム陽イオンなどのリン原子の両方を含んでいてもよい。ホスファゼニウム陽イオンは:
【0099】
【化26】
[式中、R、及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]
であってもよい。存在する各R及びR基は、メチルであってもよい。陽イオンは:
【0100】
【化27】
であってもよい。
【0101】
、R及びRは、C1~40脂肪族又は任意選択的に置換されたフェニル基、C1~40脂肪族基、C1~20フッ素化脂肪族及び任意選択的に置換されたアリール、C1~40脂肪族基、C1~20脂肪族基、C1~12脂肪族基又はフェニル基、C1~12脂肪族基、C1~8脂肪族基、C1~6脂肪族基、又はC1~4脂肪族基からそれぞれ独立して選択される。R、R及びRはそれぞれ、メチル、エチル、ブチル、任意選択的に置換されたフェニル基、フェニル又はトリフルオロメチルであってもよい。R及びRはそれぞれメチルであってもよく、RはC2~20脂肪族基又は任意選択的に置換されたフェニル基であってもよい。R、R及びRの少なくとも1つは、C1~20フッ素化脂肪族基、C1~12脂肪族基、C1~8フッ素化脂肪族基、C1~6フッ素化脂肪族基、又はC1~4フッ素化脂肪族基、トリフルオロメチルであってもよい。
【0102】
陰イオン基(X-)
双性イオン開始剤は1つ以上の共有結合した陰イオン(例えばX基)を含む。陰イオンは酸素又は硫黄系陰イオンであってもよい。酸素系陰イオンは、式-Q-O[式中、Qは硫黄、リン、ホウ素又はカルボニル基を含む。]の陰イオンであってもよい。陰イオンXは、-CO 、-SO 、-OPORO 、-PORO -OPRO 又は-PRO [式中、Rは、-H、任意選択的に置換されたC1~40脂肪族、任意選択的に置換されたアリール及びポリマー鎖から選択される。]を含んでいてもよい。陰イオンは、-CO 、-SO 、-OP(O)ORO(ホスフェート陰イオン)、又は-PR(O)O(ホスフィネート陰イオン)であってもよい。陰イオンは硫黄陰イオンであってもよく、XはSである。陰イオンはジチオカルボキシレート陰イオンであってもよい。Xは、(-C(S)S)-(S)[式中、nは1~20の整数である。]であってもよい。
【0103】
リンカー基(-L-)
双性イオン開始剤は、式:(Z-L-(X、[式中、-L-は、結合、又は陽イオン及び陰イオンが共有結合された多価有機部分である。]を有する。本発明は-L-の構造に限定を置かず、それは任意の炭素含有部分であってもよい。--例えば、陽イオンZが、X基の結合部位となり得る1つ以上の炭素原子を含む(又は逆もまた同様に含む)場合、L-は共有結合を含むと考えてもよい。L-は上文に記載された通りである。
【0104】
L-は、任意選択的に置換された環であってもよく(すなわち-Z及び-X基は、-L-で環を構成する原子に直接連結されている。)、環は、1つ以上のZ又はX基を環から分離する1つ以上の非環ヘテロ原子又は任意選択的に置換された脂肪族基を有していてもよい。構造的束縛が部分-L-に組み入れられて互いに対してZ及びX基の配置及び配向を制御する。構造的束縛は、環式部分、二環式部分、橋架け環式部分及び三環式部分であってもよい。-L-がポリマーを含む場合、Z及びX基は、ポリマーに組み込まれたモノマーに存在してもよい。
【0105】
アンモニウムカルボキシレート双性イオン開始剤
双性イオン開始剤は、窒素含有陽イオン及びカルボキシレート陰イオンを含んでいてもよい。これは、式R-L-CO [式中、R、R、R及び-L-のそれぞれは上記に定義された通りである。]に対応し得る。そのような双性イオン開始剤は、Me-L-CO 、Et-L-CO 、i-PrEt-L-CO 、n-Bu-L-CO 又はR20Me-L-CO [式中、-L-及びR20のそれぞれは、上記に定義された通りである。]から選択される式を有していてもよい。
【0106】
双性イオン開始剤は、式R-L-CO [式中、Lは、C1~100の任意選択的に置換された二価脂肪族基であってもよく、R、R及びRは、上記に定義された通りである。]を有していてもよい。Lは、C1~40の任意選択的に置換された二価脂肪族基、C1~40の分岐若しくは非分岐の二価アルキル基、C1~20の分岐若しくは非分岐の二価アルキル基、C1~12の分岐若しくは非分岐の二価アルキル基、C1~8の分岐若しくは非分岐の二価アルキル基、又はC1~6の分岐若しくは非分岐の二価アルキル基;C1~20直鎖二価アルキル基、C1~12直鎖二価アルキル基、C1~8直鎖二価アルキル基、C1~8直鎖二価アルキル基、又はC1~6直鎖二価アルキル基であってもよい。双性イオン開始剤は、Me-L-CO 、Et-L-CO 、i-PrEt-L-CO 、n-Bu-L-CO 又はR20Me-L-CO [-L-及びR20のそれぞれは上記に定義された通りである。]から選択される式を有していてもよい。双性イオン開始剤は、クロロ酢酸、ブロモ酢酸などとの第三級アミンの反応から由来してもよい。双性イオン開始剤は、式:
【0107】
【化28】
[式中、R、R、及びRは上記に定義された通りである。]
を有する。
【0108】
双性イオン開始剤は、
【0109】
【化29】
であってもよい。
【0110】
双性イオン開始剤はアミノ酸から由来してもよい。そのような試薬は、アミン基を四級化する能力のあるアルキル化剤でアミノ酸を処理することにより得られてもよく、そのような双性イオン開始剤は、
【0111】
【化30】
[R、R、及びRのそれぞれは、上記並びに本明細書中の属及び亜属に定義された通りである。]であってもよい。
【0112】
双性イオン開始剤はアミノ酸のベタインであってもよく、それは:
【0113】
【化31】
であってもよい。
【0114】
双性イオン開始剤は、アミジニウム陽イオン及びカルボキシレート陰イオン、例えば、
【0115】
【化32】
[式中、R及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]
であってもよい。
【0116】
双性イオン開始剤は、
【0117】
【化33】
[式中、L、L、R、R及びRのそれぞれは、上記に定義された通りである。]
であってもよい。
【0118】
双性イオン開始剤は、グアニジニウム陽イオン及びカルボキシレート陰イオン、例えば
【0119】
【化34】
[式中、R、R及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
を含んでいてもよい。双性イオン開始剤は、
【0120】
【化35】
[式中、L、L及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]
であってもよい。
【0121】
ホスホニウムカルボキシレート双性イオン開始剤
双性イオン開始剤は、リン含有陽イオン及びカルボキシレート陰イオンを含んでいてもよい。そのような双性イオン開始剤は、式R-L-CO 又はR-L-CO [式中、L、L、R、R及びRのそれぞれは、上記並びに本明細書中の属及び亜属に定義された通りである。]を有していてもよい。双性イオン開始剤は、Me-L-CO 、Et-L-CO 、i-PrEt-L-CO 、n-Bu-L-CO 、Ar-L-CO 、Ph-L-CO 又はR20Ph-L-CO [式中、-L-、Ar及びR20のそれぞれは上記に定義された通りである。]であってもよい。
【0122】
アンモニウムスルホネート双性イオン開始剤
双性イオン開始剤は窒素含有陽イオン及びスルホネート陰イオンを含んでいてもよい。双性イオン開始剤は、式R-L-SO 又はR-L-SO [式中、L、R、R及びRは上記に定義された通りである。]を有していてもよい。そのような双性イオン開始剤は、Me-L-SO 、Et-L-SO 、i-PrEt-L-SO 、n-Bu-L-SO 又はR20Me-L-SO [式中、-L-及びR20のそれぞれは上記に定義された通りである。]の式を有していてもよい。
【0123】
双性イオン開始剤は、式:
【0124】
【化36】
[式中、R、R、R、R及びLのそれぞれは、上記に定義された通りである。]
を有していてもよいアミジニウム陽イオン及びスルホネート陰イオンを含んでいてもよい。
【0125】
双性イオン開始剤は、式:
【0126】
【化37】
[式中、L、L及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]
を有していてもよい。
【0127】
双性イオン開始剤は、式:
【0128】
【化38】
[式中、R、R及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
を有していてもよいグアニジニウム陽イオン及びスルホネート陰イオンを含んでいてもよい。そのような双性イオン開始剤は、式:
【0129】
【化39】
[式中、L、L及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]
を有していてもよい。
【0130】
ホスホニウムスルホネート双性イオン開始剤
双性イオン開始剤は、リン含有陽イオン及びスルホネート陰イオンを含んでいてもよい。そのような双性イオン開始剤は、式R-L-SO 又はR-L-SO [式中、L、L、R、R及びRのそれぞれは、上記に定義された通りである。]を有していてもよい。そのような双性イオン開始剤は、Me-L-SO 、Et-L-SO 、i-PrEt-L-SO 、n-Bu-L-SO 、Ar-L-SO 、Ph-L-SO 又はR20Ph-L-SO [式中、-L-、Ar及びR20のそれぞれは上記に定義された通りである。]の式を有していてもよい。
【0131】
リン酸アンモニウム双性イオン開始剤
双性イオン開始剤は、窒素含有陽イオン及びホスフェート陰イオン、例えば、式:
【0132】
【化40】
[式中、R、R、R、R、L及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
を含んでいてもよい。そのような双性イオン開始剤は、
【0133】
【化41】
[式中、L、R及びR20のそれぞれは上記に定義された通りである。]
の式を有していてもよい。
【0134】
双性イオン開始剤は、例えば、
【0135】
【化42】
[式中、R、R、R、R及びLのそれぞれは、上記に定義された通りである。]
の式を有するアミジニウム陽イオン及びホスフェート陰イオンを含んでいてもよい。そのような開始剤は、
【0136】
【化43】
[式中、R、R及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
の式を有していてもよい。
【0137】
双性イオン開始剤はグアニジニウム陽イオン及びホスフェート陰イオン、例えば、式:
【0138】
【化44】
[式中、R、R、及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
のものを含んでいてもよい。そのような開始剤は、式:
【0139】
【化45】
[式中、R、R及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
のものであってもよい。
【0140】
双性イオン開始剤は、ホスホネート(O又はP連結した)又はホスフィネート陰イオンと組み合わせて窒素系陽イオンを含んでいてもよい。双性イオン開始剤は、上記に記載されたホスフェート双性イオンのうちのいずれかのホスホネート又はホスフィネート類似物を含む。そのような開始剤は、式:
【0141】
【化46】
[式中、R、R及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
を有していてもよい。
【0142】
双性イオン開始剤は窒素含有陽イオン及びホスホネート又はホスフィネート陰イオンを含んでいてもよい。双性イオン開始剤は、ホスホン酸アンモニウム又はホスフィン酸アンモニウム、例えば:
【0143】
【化47】
[式中、R、R、R、R、R及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
を含む。
【0144】
双性イオン開始剤は、式:
【0145】
【化48】
[式中、R、R、R、R、R及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
のうちの1つに対応し得るアミジニウムホスホネート又はアミジニウムホスフィネートを含んでいてもよい。
【0146】
双性イオン開始剤は、式:
【0147】
【化49】
[式中、R、R、R、R、R及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
のうちの1つに対応し得るグアニジニウムホスホネート又はグアニジニウムホスフィネートを含んでいてもよい。
【0148】
ホスホニウムホスフェート双性イオン開始剤
双性イオン開始剤は、リン含有陽イオン及びリン含有陰イオンを含んでいてもよい。これは、式:R-L-OPORO 、R-L-OPRO 、R-L-PRO 及びR-L-PORO [式中、L、R、R、R及びRは上記に定義された通りである。]のうちの1つに対応し得る。
【0149】
双性イオン開始剤は、ホスホニウムホスフェートを含んでいてもよい。これは、式R-L-OPORO [式中、L、Rのそれぞれは上記に定義された通りである。]又はMe-L-OPORO 、Et-L-OPORO 、i-PrEt-L-OPORO 、n-Bu-L-OPORO 、Ar-L-OPORO 、Ph-L-OPORO 及びR20Ph-L-OPORO [式中、-L-、Ar、R、R、R、R及びR20は定義された通りである]から選択される式のうちの1つに対応し得る。
【0150】
双性イオン開始剤は、酸素(O-)連結ホスホニウムホスホネートを含んでいてもよい。これは、R-L-OPRO 、又はMe-L-OPRO 、Et-L-OPRO 、i-PrEt-L-OPRO 、n-Bu-L-OPRO 、Ar-L-OPRO 、Ph-L-OPRO 、及びR20Ph-L-OPRO [式中、-L-、Ar、R、R、R及びR及びR20は上記に定義された通りである。]のうちの1つに対応し得る。
【0151】
双性イオン開始剤は、P連結ホスホニウムホスホネートを含んでいてもよい。これは、式R-L-PORO 、又はMe-L-PORO 、Et-L-PORO 、i-PrEt-L-PORO 、n-Bu-L-PORO 、Ar-L-PORO 、Ph-L-PORO 及びR20Ph-L-PORO [式中、-L-、Ar、R、R、R、R及びR20は上記に定義された通りである。]のうちの1つに対応し得る。
【0152】
双性イオン開始剤は、酸素(O-)連結ホスホニウムホスフィネートを含んでいてもよい。これは、式R-L-PRO 又はMe-L-PRO 、Et-L-PRO 、i-PrEt-L-PRO 、n-Bu-L-PRO 、Ar-L-PRO 、Ph-L-PRO 、及びR20Ph-L-PRO [式中、-L-、Ar、R、R、R、R及びR20は上記に定義された通りである。]のうちの1つに対応し得る。
【0153】
双性イオン開始剤は、ジチオカルボキシレート陰イオン、並びに本明細書において記載された陽イオン基及びリンカー部分のうちのいずれかを含んでいてもよい。そのようなジチオカルボキシレート双性イオンは、参照により本明細書に組み込むJournal of Pharmaceutical Sciences,67巻、7号、1978年、962-964頁(1978年)に記載の方法に従って2-メチルピリジニウム-、キノリンイウム-及びピリミジニウム塩から得ることができる。そのような双性イオン開始剤は、
【0154】
【化50】
であってもよい。
【0155】
錯化剤
開示される方法は、錯化剤の存在下でモノマーを双性イオン開始剤と接触させる工程を含んでいてもよい。錯化剤の添加は、重合の速度を増加させポリマーの収率を高めることにより方法を改善することができ、又は、分子量若しくは多分散性などの性質の制御によって改善されたポリマー物性をもたらすことができる。例示の錯化剤は、クラウンエーテル、並びに-O-、-NR-及び/又は-S-の複数のヘテロ原子を有する他のマクロポリ複素環含有環を含む。錯化剤は、クラウンエーテル、例えばその全内容を参照により本明細書に組み込むAPPLICATIONS OF CROWN ETHERS IN INDUSTRIAL ANIONIC POLYMERIZATIONS (Thomas Newton Montgomery,Jr.;Georgia Institute of Technology,1977年12月)と題する学位論文に記載のものを含む。例示の錯化剤は、1,4,7,10,13,16-ヘキサオキサシクロオクタデカン(18-クラウン-6);1,4,7,10,13-ペンタオキサシクロペンタデカン(15-クラウン-5)、1,4,7,10-テトラオキサシクロドデカン(12-クラウン-4)、ジベンゾ18-クラウン-6,21-クラウン-7及びこれらのいずれかの誘導体又は混合物を含む。錯化剤は15-クラウン-5又は12-クラウン-4を含んでいてもよい。クラウンエーテルは、プロセスにおいて使用される双性イオンの重合開始剤中に存在する陽イオン官能基と錯体を効果的に形成するその能力に基づいて選択されてもよい。錯化剤は、酸素以外のヘテロ原子を含むマクロ複素環;1つ以上の酸素原子が窒素又は硫黄原子と置き換えられたクラウンエーテル;4,7,13,16,21-ペンタオキサ-1,10-ジアザビシクロ[8.8.5]トリコサンなどのアザクラウンエーテル、1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン及び1,4,10,13-テトラオキサ-7,16-ジアザシクロオクタデカン;又はチアクラウンエーテルを含んでいてもよい。錯化剤は、その全体を参照により本明細書に組み込む米国特許第3890278号明細書において記載のものを含んでいてもよい。錯化剤は、重合プロセスの初めに、又は任意の後の時間に導入されてもよい。錯化剤は、双性イオン重合開始剤と同時に添加されてもよい。錯化剤は、双性イオンの重合開始剤との混合物又は溶液として与えられてもよく、混合物は、開始剤の添加のために上記に記載された反応に供給されてもよい。錯化剤は、双性イオンの重合開始剤に対して約1:100~約100:1、双性イオンの重合開始剤に対して1:10~10:1、1:2~2:1のモル比の範囲の量で使用されてもよい。連鎖移動剤が方法において利用されてもよく、錯化剤は、1:10~10:1、1:5~5:1又は1:2~2:1の範囲の、CTAに対するモル比で与えられてもよい。
【0156】
ポリマー組成物
ポリマー組成物が開示される。ポリマー組成物は、式P-I:Z-L-X-(A)-H[式中、Z、-L-のそれぞれは上記に定義された通りであり、-X-は、上記に定義された陰イオンXの共有結合した形態であり;-(A)-は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を含むポリマー鎖又は鎖に組み込まれた1種以上のコモノマーとのポリ(3-ヒドロキシプロピオネートを含むコポリマーであり、-Hはプロトンである。]のポリマー鎖を含んでいてもよい。ポリマー組成物は、式P-II:Z-L-X-(A)-R、又は、式P-IIa:Z-L-X-(A)-CH[式中、Z、-L-、X及び-(A)-は定義された通りであり、RはR又はシリコン含有官能基である。]のポリマー鎖を含んでいてもよい。
【0157】
Aは、式:
【0158】
【化51】
によって表わされてもよいポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)(ポリプロピオラクトン)鎖を含んでいてもよい。
【0159】
A-は、本明細書において開示される(A)-として1種以上のコモノマーとのベータ-プロピオラクトンのコポリマーを含んでもよく、式:
【0160】
【化52】
[式中、R10及びR13は上記に定義された通りである。]
のうちの1つを有していてもよい。
【0161】
-(A)-が、ベータ-プロピオラクトン及び1種以上の置換ベータ-ラクトンのコポリマーを含む場合、置換ベータ-ラクトンモノマーは位置異性体の混合物として存在してもよい。そのようなコポリマーは、式:
【0162】
【化53】
[式中、R10は上記に定義される通りである。]
を有していてもよい。
【0163】
コポリマーは、上記及び本明細書において記載の置換ベータ-ラクトンのうちのいずれかの位置異性体混合物とのプロピオラクトンのポリマーであってもよい。Aは、式:
【0164】
【化54】
に対応し得る、ベータ-プロピオラクトン及び1種以上のエポキシドのコポリマーを含んでいてもよい。
【0165】
Aは、式:
【0166】
【化55】
[式中、R10、R12及びR14のそれぞれは上記に定義された通りである。]
のうちの1つによって表わされるベータ-プロピオラクトンエポキシドコポリマーを含んでいてもよい。
【0167】
Aは、式
【0168】
【化56】
のうちの1つに対応し得るベータ-プロピオラクトン及びラクチドのコポリマーを含んでいてもよい。
【0169】
Aは、式:
【0170】
【化57】
に対応し得るベータ-プロピオラクトン及びカプロラクトンのコポリマーであってもよい。
【0171】
Aは、ベータ-プロピオラクトン、及び2種以上の追加のコモノマー、例えば任意の2種以上のエポキシドコモノマー、任意の2種以上の置換ベータ-プロピオラクトンコモノマー、少なくとも1種のエポキシド及び少なくとも1種の置換ベータ-プロピオラクトン、少なくとも1種のエポキシド及びラクチド、少なくとも1種のエポキシド及びカプロラクトン、少なくとも1種の置換ベータ-プロピオラクトン及びラクチド少なくとも1種の置換ベータ-プロピオラクトン及びカプロラクトン、又はラクチド及びカプロラクトンのコポリマーを含んでいてもよい。
【0172】
ポリマー組成物は、任意の式P-I、P-II、又はP-IIa[式中、部分Z-L-X-は、式:R-L-C(O)O-を有し、-L-、R、R及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]を有するポリマー鎖を含む。部分Z-L-X-は、Me-L-C(O)O-、Et-L-C(O)O-、i-PrEt-L-C(O)O-、n-Bu-L-C(O)O-、又はR20Me-L-C(O)O-[式中、-L-及びR20のそれぞれは上記に定義された通りである。]から選択される式を有してもよい。
【0173】
部分Z-L-X-は、式R-L-C(O)O-[式中、Lは、Me-L-C(O)O-、Et-L-C(O)O-、i-PrEt-L-C(O)O-、n-Bu-L-C(O)O-又はR20Me-L-C(O)O-から選択される式と共に記載され、-L-及びR20のそれぞれは上記に定義された通りである。]を有していてもよい。部分Z-L-X-は、式:
【0174】
【化58】
[式中、R、R、R、R、L及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
のうちの1つに対応してもよい。
【0175】
ポリマー組成物は、任意の式P-I、P-II又はP-IIaを有するポリマー鎖を含んでもよく、ここで、部分Z-L-X-は、式:R-L-C(O)O-[式中、L、R、R及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]、又はMe-L-C(O)O-、Et-L-C(O)O-、i-PrEt-L-C(O)O-、n-Bu-L-C(O)O-、Ar-L-C(O)O-、Ph-L-C(O)O-又はR20Ph-L-C(O)O-[式中、-L-、Ar及びR20は上記並びに本明細書中の属及び亜属に定義された通りである。]を有する。
【0176】
ポリマー組成物は、任意の式P-I、P-II又はP-IIaを有するポリマー鎖を含み、ここで、部分Z-L-X-は、式:R-L-S(O)O-又はR-L-SO-、[式中、L、L、R、R及びRは上記に定義された通りである。]を有する。Z-L-Xは、Me-L-SO-、Et-L-SO-、i-PrEt-L-SO-、n-Bu-L-SO-又はR20Me-L-SO
【0177】
【化59】
[式中、R、R、R、R、L、L-及びR20のそれぞれは上記に定義された通りである。]
であってもよい。
【0178】
ポリマー組成物は、任意の式P-I、P-II又はP-IIaを有するポリマー鎖を含み、ここで、部分Z-L-X-は、式:R-L-S(O)O-[式中、L、R、R及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]、又はMe-L-S(O)O-、Et-L-S(O)O-、i-PrEt-L-S(O)O-、n-Bu-L-S(O)O-、Ar-L-S(O)O-、Ph-L-S(O)O-又はR20Ph-L-S(O)O-[式中、-L-、Ar及びR20のそれぞれは上記に定義された通りである。]を有する。ポリマー組成物は、任意の式P-I、P-II又はP-IIaを有するポリマー鎖を含んでもよく、ここで、部分Z-L-X-は、式:
【0179】
【化60】
[式中、R、R、R、R、R20L及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
を有する。
【0180】
Z-L-X-は、アミジニウムホスホネート又はアミジニウムホスフィネートを含んでいてもよい。部分Z-L-X-は、式:
【0181】
【化61】
[式中、R、R、R、R、R及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
のうちの1つに対応してもよい。
【0182】
Z-L-X-はグアニジニウムホスホネート又はグアニジニウムホスフィネートを含んでいてもよい。Z-L-Xは、式:
【0183】
【化62】
[式中、R、R、R、R、R及びLのそれぞれは上記に定義された通りである。]
のうちの1つに対応してもよい。
【0184】
部分Z-L-X-はリン含有陽イオン及びリン含有陰イオンを含んでもよく、式R-L-OPORO-、R-L-OPRO-、R-L-PRO-及びR-L-PORO-[式中、L、R、R、R及びRは上記に定義された通りである。]のうちの1つに対応してもよい。
【0185】
Z-L-X-は、式R-L-OPORO-、Me-L-OPORO-、Et-L-OPORO-、i-PrEt-L-OPORO-、n-Bu-L-OPORO-、Ar-L-OPORO-、Ph-L-OPORO-及びR20Ph-L-OPORO-[式中、-L-、Ar、R、R、R、R及びR20は上記に定義された通りである。]の1つのものを含むホスホニウムホスフェートを含んでいてもよい。
【0186】
Z-L-X-は、式R-L-OPRO Me-L-OPRO-、Et-L-OPRO-、i-PrEt-L-OPRO-、n-Bu-L-OPRO-、Ar-L-OPRO-、Ph-L-OPRO-及びR20Ph-L-OPRO-[式中、-L-、Ar、R、R、R、R及びR20は上記に定義された通りである。]のうちの1つのものを含む、O連結ホスホニウムホスホネートを含んでいてもよい。
【0187】
Z-L-X-は、式R-L-POROMe-L-PORO-、Et-L-PORO-、i-PrEt-L-PORO-、n-Bu-L-PORO-、Ar-L-PORO-、Ph-L-PORO-及びR20Ph-L-PORO-[式中、-L-、Ar、R、R、R、R及びR20は上記に定義される通りである。]のうちの1つのものを含むP連結ホスホニウムホスホネートを含んでいてもよい。
【0188】
Z-L-X-は、式R-L-PRO-、Me-L-PRO-、Et-L-PRO-、i-PrEt-L-PRO-、n-Bu-L-PRO-、Ar-L-PRO-、Ph-L-PRO-及びR20Ph-L-PRO-[式中、-L-、Ar、R、R、R、R及びR20のそれぞれは上記に定義された通りである。]のうちの1つのものを含むO連結ホスホニウムホスフィネートを含んでいてもよい。
【0189】
Z-L-X-は、ジチオカルボキシレート陰イオン及び、式
【0190】
【化63】
のうちの1つのものを含む、上記に記載された陽イオン基及びリンカー部分のいずれかを含んでいてもよい。
【0191】
式P-II:Z-L-X-(A)-R[式中、Z、-L-、X、-(A)-及びRのそれぞれは上記に定義された通りである。]に対応し得る、ポリマー鎖の一端に末端封鎖剤を有するポリマー組成物が開示される。そのようなポリマー組成物は、式:Z-L-X-(A)-OCHZ-L-X-(A)-OCHCHZ-L-X-(A)-OCHCHCHZ-L-X-(A)-OCHCH=CHZ-L-X-(A)-OCHAr及びZ-L-X-(A)-OCHPh[式中、Z、-L-、X、-(A)-及びArのそれぞれは上記に定義された通りである。]のうちの1つに対応してもよい。例示のポリマー組成物は、式:
【0192】
【化64】
[式中、Z、L、-X-、(A)、R、R及びmのそれぞれは上記に定義された通りである。]
のうちの1つに対応するポリマー鎖を含む。ポリマー組成物は、式:Z-L-X-(A)-L’-(A)-X-L-Z[式中、Z、-L-、X、-(A)-及びL’のそれぞれは上記並びに本明細書中の属及び亜属に定義された通りである。]に対応し得る延長した鎖であったポリマー鎖を含んでいてもよい。そのようなポリマー組成物は、式:
【0193】
【化65】
[式中、Z、-L-、X及び-(A)-のそれぞれは上記に定義された通りである。]
のポリマー鎖を含んでいてもよい。
【0194】
多官能性連鎖延長剤を含むポリマー組成物は、式:Z-L-X-(A)-L’’-[(A)-X-L-Z[式中、gは2~約50の整数であり、Z、-L-、X、-(A)-及びL’’のそれぞれは上記に定義された通りである。]のポリマー鎖を含んでいてもよい。ポリマー組成物は、鎖に存在する開始基によって区別されるポリマー鎖の2種以上の個別集団を含むことを特徴とすることができる。そのような組成物は、例えば異なる双性イオン開始剤の混合物が用いられる場合、又は連鎖移動剤が重合時に存在する場合生じ得る。前者の事例において、結果として得られた混合物は2種以上の異なるポリマー鎖を含み、上記に記載された式P-I又はP-IIに合致する構造を有する。そのような混合物はとりわけ本明細書において企図され開示される。ポリマー結合双性イオン開始剤が特定の特性を与える場合、本発明のタイプの混合物は有用になり得て(例えば、幾つかの表面に関して親水性、疎水性、親和性、抗菌性性質など)、そのような特性を最適化又は修正することが所望される。
【0195】
本明細書において得られた(すなわち、連鎖移動から生じた)混合ポリマー組成物の第2の範疇は、恐らく式P-I又はP-IIに合致しないポリマー鎖の集団を含む。例えば、CTAが本明細書において記載された式に対応する場合である。ポリマー組成物は、式P-Iのポリマー鎖、及び式Y’-T(-Y’):T-[Y’-(A)-H]g+1[式中、各T、Y’、(A)及びgは上記に定義された通りである(-Hはプロトンである)。]の連鎖移動剤の作用から得られる式P-Iの鎖の混合物を含む。式P-Iのポリマー鎖と組み合わせた式P-Iのポリマー鎖を含むポリマー組成物が開示され、例えば、gが0である場合、式P-Iのポリマー鎖は構造T-CO-(A)-H、T-SO-(A)-H、T-S-(A)-H(式中、Sは硫黄原子である)、T-CS-(A)-H T-C(S)O-(A)-Hを有する。式P-Iのポリマー鎖と組み合わせて式P-Iのポリマー鎖を含むポリマー組成物が開示され、例えば、gが0を超える場合、式P-Iのポリマー鎖は、構造T[-CO-(A)-H]、T[-SO-(A)-H]、T[-S-(A)-H]又はT[-CS-(A)-H](式中、各Sは硫黄原子であり、gは2、3、4、5又は5を超える。)を有する。
【0196】
式P-II:T-[Y’-(A)-Rg+1[式中、T、Y’、(A)、R及びgのそれぞれは上記に定義された通りである。]のポリマー鎖を含むポリマー組成物が開示される。開示されるポリマー組成物は、式P-IIのポリマー鎖と組み合わせて式P-II、例えば、gが0の場合、T-CO-(A)-R、T-SO-(A)-R、T-S-(A)-R(式中、Sは硫黄原子である)、T-CS-(A)-R又はT-C(S)O-(A)-R)のポリマー鎖を含む混合物を含んでいてもよい。式P-II、例えばgが0を超える場合、T[-CO-(A)-Rのポリマー鎖と組み合わせて、式P-IIのポリマー鎖を含む混合物を含むポリマー組成物が開示される。ある実施形態において、式P-IIのポリマー鎖は、構造T[-SO-(A)-R、T[-S-(A)-R又はT[CS-(A)-R(式中、各Sは硫黄原子であり、gは1、2、3、4、5又は5を超える。)を有する。
【0197】
ポリマー組成物は、式P-I及びP-I、又はP-II及びP-IIの鎖の混合物を含んでもよく、組成物は、鎖P-I:P-I又はP-II:P-IIの比が約1:1~約1:10000の範囲であることを特徴とする。開示されるポリマー組成物は、約1:1~約10:1(例えば、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、8:1又は10:1)、約10:1~約100:1(例えば20:1、30:1、40:1、50:1、75:1又は100:1)、約100:1~約1,000:1(例えば200:1、300:1、400:1、500:1、750:1又は1000:1)、又は約1,000:1~約10,000:1(例えば、2,000:1、3,000:1、4,000:1、5,000:1、7,500:1又は10,000:1)の比で存在する式P-I及びP-Iの鎖の混合物を含む。開示されるポリマー組成物は、約1:1~約10:1(例えば、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、8:1又は10:1)、約10:1~約100:1(例えば20:1、30:1、40:1、50:1、75:1又は100:1)、約100:1~約1,000:1(例えば、200:1、300:1、400:1、500:1、750:1又は1000:1)、又は約1,000:1~約10,000:1(例えば2,000:1、3,000:1、4,000:1、5,000:1、7,500:1又は10,000:1)の比で存在する式P-II及びP-IIの鎖の混合物を含んでいてもよい。
【0198】
与えられたポリマー組成物が異なるポリマータイプの混合物を含む実施形態において、組成物は、組成物に適用される分析技術によって直接判定されてもよい。ポリマー構造又はポリマー末端基を識別する能力のある高感度分光技法(すなわち核磁気分光法又は質量分光法)はこの点で特に有用である。代替として、ポリマー組成物を調製するのに使用される供給原料についての知識(すなわち用いられる双性イオン開始剤、連鎖移動剤、及びモノマーの同一性及び比)から組成物が推論されてもよい。幾つかの事例において、ポリマー組成物の、分別又は分解もまた、構造特性を判定するために(単独で又は他の分析技術と組み合わせて)使用されてもよい。
【実施例
【0199】
以下の実施例は単に例証であり、決して本開示のいずれの態様をも限定することが目的ではない。強塩基の添加はインサイチューで双性イオン開始剤を発生する。例示の強塩基は下記を含む。
【0200】
【化66】
【0201】
[実施例1]
ベタイン;2.1mg;0.015mmol)、ベータ-プロピオラクトン(1.15g;16mmol)、及びTHF(溶媒;13mL)をガラスバイアル中で合わせると、100%のbPLを24時間で消費して溶液から沈殿するP3HPの白いポリマーが得られる(GPCによるとMnは62,400g/モルであり、PDIは3.4である。)。
【0202】
[実施例2]
ベタイン;1.1mg;0.008mmol)、ベータ-プロピオラクトン(1.15g;16mmol)、及びTHF 13mLをガラスバイアル中で合わせると、100%のbPLを6時間で消費して溶液から沈殿するP3HPの白いポリマーが得られる(GPCによるとMnは108,500g/モルであり、PDIは2.9である。)。
【0203】
[実施例3]
先に実施例2に記載されたようにP3HPを調製することができるが、しかし、ベタインの代わりにラウリルベタインを使用し、反応は24時間で完了して、白いポリマーが得られる(GPCによるMnは51,300g/モルであり;PDIは3.7である。)。
【0204】
[実施例4]
先に実施例1に記載されたようにP3HPを調製することができるが、しかし、ベタインの代わりにジメチルアミノピリジン(DMAP)を使用し、反応は18時間で完了して、白いポリマーが得られる(GPCによるMnは32,600g/モルであり;PDIは3.5である。)。DMAPの添加はインサイチューで双性イオン開始剤を発生する。
【0205】
[実施例5]
実施例1において記載されるようにP3HPを調製することができるが、しかし、ベタインの代わりにDBUを使用し、反応は12時間で完了して、白いポリマーが得られる(GPCによるMは19,000g/モルであり;PDIは3.2である。)。DBUの添加はインサイチューで双性イオン開始剤を発生する。
【0206】
[実施例6]
先に実施例1において記載されたようにP3HPを調製することができるが、ベタインアセタートの代わりにTBDを使用し、反応は18時間で完了して、白いポリマーが得られる(GPCによるMは40,100g/モルであり;PDIは5.6である。)。TBDの添加はインサイチューで双性イオン開始剤を発生する。
【0207】
[実施例16]
先に実施例1に記載されたようにP3HPを調製することができるが、しかし、ベタインの代わりにMTBDを使用し、反応は18時間で完了して、白いポリマーが得られる(GPCによるMは48,400/モルであり;PDIは3.0である。)。MTBDの添加はインサイチューで双性イオン開始剤を発生する。
【0208】
様々な開始剤を用いるベータ-プロピオラクトンの重合からのポリマーモル質量の要約は表1に示される。
【0209】
【表1】
【0210】
双性イオン化合物の構造は重合有効性に影響を及ぼす場合がある[図1]。長いアルキル鎖は、ラウリルベタインに示すように、目標モル質量より低いが、制御可能なモル質量を有するポリマーを生成する。対照的に、ベタインは、反応のM:I比には無関係に高いモル質量のポリマーを生成する。これは恐らく溶解性が制約されたプロセスである。しかしながら、幾つかの実施例において、ベタインを使用して24時間未満で高分子量ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)(Mn=108,500g/モル)を生成させることができる。
【0211】
他の実施形態
上記は、本発明の特定の非限定的な実施形態について説明した。したがって、本明細書において記載された本発明の実施形態が本発明の原理の適用の単なる例証であることは理解されるべきである。本明細書における例証の実施形態の詳細を参照することは、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。これは、それ自体が、本発明にとって不可欠であると考えられる特徴を列挙している。
図1
【国際調査報告】